勇者「いや、お前がいけよ」(205)

王様「勇者よ! 魔王を倒してまいるのだ!」

勇者「だから、お前がいけよ」

王様「えっ」

勇者「お前がいけよ」

王様「はい」


ID:CdrTTiFU0

>>1
代行ありがとうございました

じゃあ、だらだらと行きます

大臣「で、なんで俺が旅に出なきゃいかんのだろうか」

秘書「大臣が王様の土下座に屈したからです。ちなみに私は大臣の土下座に屈しました」

大臣「なるほど」

大臣「さて、とにかく装備を整えないとな。まずは武器屋に行くか」

秘書「そうですね」

―――武器屋―――

秘書「ひのきのぼうを2つくださ……」

大臣「待て待て、幸いにも結構な額の金は持ってるんだ。わざわざ一番安いのを買わなくてもいいんじゃないか?」

秘書「では、この店で一番高い……銅の剣にしますか?」

大臣「そうしよう」

秘書「すいません、銅の剣を2つください」

店主「銅の剣2つですね。すぐに使いますか? それともお持ち帰りですか?」

秘書「……お持ち帰りで」

店主「期間限定の“剣が持ち運びやすいバッグ”をお付けしますね! ありがとうございましたー!」

大臣(すぐに使うって言ったらどうなってたんだろう)

大臣「次は防具屋だな」

秘書「大臣、大臣」

大臣「どうした?」

秘書「どうして私が銅の剣を両方とも持ってなければならないんです」

大臣「がんばれ、男の子だろう。年寄りを労れ」

秘書「私は女です。貴方はまだ28歳です」

大臣「27だ」

秘書「今更ながら、よくそんな歳で大臣になれましたね」

―――防具屋―――

大臣「ここで一番高いのは革の鎧か……」

秘書「正直言って、見た目悪いですね」

大臣「……そうだな」

秘書「旅人の服にしましょう」

―――宿屋―――

大臣「結局、武器屋行って防具屋行って……」

秘書「最後に道具屋行って、一日が終わりましたね」

大臣「お前が道具屋でごねるからだ」

秘書「薬草99個買おうなんて言う方が悪いんです。結局買った荷物は私が全部持たされてるじゃないですか」

大臣「備えあれば憂いなし、だ。最終的には妥協してやっただろ」

秘書「99個が80個になっただけじゃないですか」

大臣「さて、そろそろ寝るか」

秘書「どうしてわざわざこちら側のベッドに入り込んでるんですか」

大臣「お前が人肌恋しいかと思って俺が……わかった。俺が悪かったからその銅の剣をしまえ」

秘書「ところで、まだ城下町から一歩も出ていないのにどうして宿屋に泊る必要があるんでしょう」

大臣「そりゃ当然お前と一緒に寝る口実に決ま……だから銅の剣はダメだって!」

……朝。

秘書「……ふ、あぁあ……。おはようございます大臣。昨夜はよくお休みになられましたか?」

大臣「……手足を縛られると、何故か眠気がなくなってしまうな。多分10分くらいしか眠れてない」

秘書「衣類としてよりも先に、拘束具として役立ちましたね。旅人の服」

大臣「よいしょ……っと。ん? お前は旅人の服、着ないのか」

秘書「拘束具としてとはいえ、大臣が身に付けたものを着るなんてけがらわ……恐れ多いので」

大臣「結構傷ついたぞ」

秘書「それは良かった」

―――フィールド―――

大臣「よし、ともかくはレベル上げだな」

秘書「おぉ、大臣。『さっそく魔王を倒しに行くぞ!』とか訳のわからないことを言うのかと思っていたのですが」

大臣「俺とてそこまで考え無しではない。剣を渡せ」

秘書「はい」

大臣「お、重っ! 銅の剣重い! 無理! 無理!」

大臣「さあ、敵を倒すぞ」

秘書「結局ひのきのぼうを買うことになりましたね。しかも銅の剣を一本売っちゃいましたし」

大臣「誰にでも過ちはある」

秘書「あまりにも間抜けな過ちでしたけどね……あ、いましたよ。敵」

大臣「よし、敵は誰だ! ゼリー状の奴か!? でっかいカラスか!?」

秘書「ドラゴンです」

―――教会―――

大臣「いやおかしいだろ!? 序盤の戦闘ってもっと弱い敵が出るべきだろ!?」

秘書「まあ、確かに。明らかにラスボス手前で出てきそうな敵でしたね」

大臣「くそっ! これじゃレベル上げも何も無いぞ……!」

秘書「待ってください。もしかしたらさっきのはレアモンスターなのかもしれません」

大臣「レアモンスター?」

秘書「むしろ運が良かったのですよ。次はきっと弱い敵と戦えます」

―――フィールド―――

秘書「敵を発見しました」

大臣「よし、誰だ! ゼリー野郎か!? チキン野郎か!?」

―――教会―――

大臣「何がレアモンスターだよ、くそっ!」

秘書「今回は5分も持ったじゃないですか。レベルアップしてますよ」

大臣「ステータスの数値は上がってねえよ!」

秘書「落ち着いてください」

大臣「これが落ち着いていられるか!」

秘書「ドラゴンのブレス……の余熱で火傷して、『ケアル! はやくケアルして!』と言っていたのを国民に言いふらしますよ」

大臣「落ち着いた」

秘書「ケアル(笑)」

―――フィールド―――

秘書「良いですか大臣。きっと敵対心をむき出しにしているから襲われるんです」

大臣「つまり武器を捨て、恐れずに接すれば……?」

秘書「きっとドラゴンは私達の心強い味方となってくれるはずです」

―――教会―――

大臣「……」

秘書「^^」

え、もう完結はしてるの?

>>29
ちょくちょく書き加えてますが、完結してます
トロくてごめんなさい

―――フィールド―――

大臣「ところで」

秘書「なんです?」

大臣「なんで俺は何度も死んでるのに、お前は一度も死んでないんだ?」

秘書「私が死んだら、誰が大臣の棺桶を引っ張って行くんです?」

大臣「それもそうだな……いや、理由になってないぞ」

秘書「あ、敵ですよ」

大臣「どうせまたドラゴンだろ?」

秘書「いえ、スライムです」

大臣「なんだと! 経験値よこせえええ!!」

―――教会―――

大臣「うそつき」

秘書「^^;」

大臣「うそつき」

秘書「優しい嘘というやつです。3秒くらいは希望が持てたでしょう?」

大臣「……『こい! スライム!!』とか思いながら振り返った結果がドラゴンのブレスだったけどな」

―――フィールド―――

大臣「秘書よ、お前は攻撃魔法とか使えないのか?」

秘書「嗜み程度には呪文を使うことができますが」

大臣「嗜み……か。まあ、駄目で元々だ。次にドラゴンとエンカウントしたら使ってみろ」

秘書「わかりました。……ちょうど来ましたよ。ドラゴン」

―――教会―――

大臣「詠唱に時間かかるなら早く言えよ!」

秘書「当たり前じゃないですか。ノータイムで使えるなら“唱える”とは言いませんよ」

大臣「いやまあそうだけどな……結局俺が死んだ後、呪文は放てたのか?」

秘書「まあ、一応」

大臣「はあ……一応、ねえ」

―――フィールド―――

大臣「さて、作戦会議……ん? なんだあれ」

秘書「ドラゴン……の死体ですね」

大臣「何!? ……全身が焼け焦げてるな。普通、ドラゴンって炎に強いもんだろ?」

秘書「そうですね。ドラゴンの鱗は溶岩の熱も通さないと聞きます」

大臣「なのにどうして……はっ、まさか秘書……お前の呪文!」

秘書「はい、私の呪文がこのドラゴンを……」

大臣「なんてな、そんなわけないか。……それにしても、誰がドラゴンをやったんだろう」

秘書「……」

大臣「ドラゴンもいなくなったことだし、心おきなくレベル上げができるな」

秘書「そうですね」

大臣「このやりとりも既に20回を超えたな。いつになったらエンカウントするんだ」

秘書「もしかして、あのドラゴンがこのフィールドでの唯一のモンスターだったんじゃないですか?」

大臣「そんなわけないだろ……と、信じたいが」

大臣「ドラゴンもいなくなったことだし、心おきなくレベル上げができるな」

秘書「そうですね」

大臣「さて、このやりとりは丁度100回目に到達した。もうこのフィールドは諦めよう」

秘書「じゃあ、どうするんです?」

大臣「先へ進む。そのうちモンスターとも出会うだろ」

―――洞窟―――

大臣「えらく暗いな……手、つなぐぞ」

秘書「やめてください、けがらわしい」

大臣「……悪いが、無理矢理にでもつないでもらう。せっかくの美人なんだから転んで怪我しちゃマズいだろ」

秘書「え? あ、そんな、美人なんて……」

大臣「美人だろ?」

秘書「う、うう……外に出るまでですよ?」

大臣(こんな暗いところ、手でも繋がないと怖くて歩けねえよ!)

―――砂漠―――

大臣「しかし、暑いなここは……」

秘書「余計に暑くなるので、それ以上言わないでください。これで238回目ですよ」

大臣「……ところで、水のストックはどのくらいある?」

秘書「水筒一本分だけです」

大臣「秘書よ、提案がある」

秘書「ジャンケンで勝った方が、その一本を丸々貰う……ですか?」

大臣「読心術か!?」

秘書「秘密です。……まあ、構いませんよ。大臣と回し飲みするくらいなら我慢したほうがマシですし」

洞窟を抜けたら砂漠だったのでしょうか…

ID変わった

>>43
都合上、色々と省いてお送りしております

大臣「じゃ、いくぞ。恨みっこ無し、取り消し無しだからな」

秘書「望むところです」

大臣・秘書「ジャーンケン、」

秘書「ポン!」

大臣「ポン!」

秘書「あ、後出し!? ずる……あれ、勝ってる?」

大臣(間違えた……)

―――海―――

秘書「風が気持ち良いですね」

大臣「しかし……こんな立派な船、よく借りられたな」

秘書「ええ。大臣の自宅を生涯貸すという約束で、一週間レンタルです」

大臣「一週間かー」

秘書(突っ込みがこない……)

―――魔王城・正門―――

大臣「なんでだよ!!」

秘書「落ち着いてください」

大臣「落ち着いていられるか! 結局ダンジョンも砂漠も海も、エンカウントせずにここまで着いたぞ!」

秘書「落ち着かないと、夜中に私のパンツの匂いを嗅いでいたことへの制裁を加えますよ」

大臣「落ち着いた」

大臣「落ち着いたところで、どうしたらいいのかわからないぞ……」

秘書「どうしてです。素直に魔王城へ突撃しましょうよ」

大臣「レベルは最低だし、装備もひのきのぼうと旅人の服の俺に死ねと?」

秘書「最悪、魔王城内にいる敵でレベル上げをすればいいじゃないですか」

大臣「魔王城の中に敵がいればいいが……この流れだと多分……」

―――魔王城・玉座の間、手前―――

大臣「言わんこっちゃないだろ! 城内を隈なく探したけどモンスターなんてまったくいなかったじゃねえか!」

秘書「落ち着いてください」

大臣「落ち着いていられるか! この状態で魔王なんかと戦ったら即死じゃねえか!」

秘書「落ち着かないと、私がシャワーを浴びている間に覗いていたことへの制裁を加えますよ」

大臣「落ち着いた。とても良い体をしていましたよ」

おいそのシーンkwsk

>>55
大臣に直接訊けば、かなり詳細な話が聞けると思います

大臣「それでどうするんだ。確実にこのでっかい扉開けたら魔王がいるよな……」

秘書「大丈夫です。扉さえ開かなければ魔王との戦闘にはなりませんから」

大臣「……とにかく作戦を考えないとな。レベル最低でひのきのぼうと旅人の服だけで戦う方法」

秘書「やり込んだゲーマーならきっといけますよ」

大臣「俺はゲーマーじゃないし、ゲーマーでも無理だと思うぞ」

秘書「本当に良いんですか?」

大臣「ああ、考えても仕方ない。死んだときは死んだときだ。教会からやり直すさ」

秘書「またドラゴンの悪夢が蘇りますね」

大臣「よし、秘書よ。銅の剣を貸せ」

秘書「構いませんが……持てるんですか?」

大臣「っ……しょ。構える、というよりは抱えるだが、持てないほどじゃない」

おい待て
先に話し聞かせろ

>>60
わかったちょっと休憩として


―――宿屋(砂漠のオアシス)―――

大臣「ん……・ふあぁ……。ん? なんであいつはこんな夜中にシャワー浴びてるんだ?」

秘書「~♪ ~♪♪」

大臣「鼻歌なんて歌いやがって……腹立つから覗くか」

秘書「♪~♪♪♪」

大臣「……ほう、部分的に着痩せするタイ……!? 目が合った? 気のせいだよな」

秘書「……♪ ………」

大臣「……・もうやめとこう」

パンツの方も頼む

>>64
完結したら書くってことでいいかな?

じゃあ本編に戻ります

―――――――

秘書「長かった旅も、これで終わりますね」

大臣「……ああ。敵がいなかったから、どちらかと言えば旅行だったけどな」

秘書「ふふ……そうですね」

大臣「秘書よ」

秘書「なんです?」

大臣「無事に終わったら……結婚しよう」

秘書「は? ……まあ、ちゃんと魔王を倒せたなら、良いでしょう」

大臣「……そうか」

大臣「開けるぞ」

秘書「はい」

大臣「よいしょ……って、見た目はでかいのに、結構簡単に開くな。この扉」

秘書「……見てください。玉座です」

大臣「……」

秘書「……」

大臣「いない……な」

秘書「……」

大臣「魔王……いない」

秘書「……いますよ」

大臣「いや、いない。あの玉座には、誰も座っていない」

秘書「魔王は……います」

大臣「いない! 誰も座ってないだろ、あの玉座には!」

秘書「魔王は……」

大臣「いないんだ! この世界に魔王なんて! いないんだよ!」

秘書「魔王……は……」

大臣「違う! お前は、魔王なんかじゃない!」

秘書「……」

大臣「……」

秘書「……あは」

大臣「……」

秘書「……あはは。気づいていたんですか」

秘書「いつからです?」

大臣「……」

秘書「いつから、私が魔王だと?」

大臣「……疑ったのは、ドラゴンが倒されたときだ」

秘書「なるほど……」

大臣「そのときは、『こいつ、本当は実力がある奴なんだな』と思ったくらいだったがな」

大臣「本格的に『魔王じゃないか』って疑い始めたのは、ついさっきだ」

秘書「さっき……?」

大臣「この部屋に入る前、俺が『この扉を開けると魔王がいるよな』と言った時……」

秘書「……」

大臣「お前は、『扉さえ開かなければ戦闘にはならない』と返した」

秘書「なるほど……私としたことが、言葉を間違えましたね」

大臣「『いる』でも『いない』でもなく、『戦闘にはならない』」

秘書「そんな答え方をするのは、魔王以外にあり得ない、と」

大臣「……お前は咄嗟に嘘が吐けないんだな、って思ったよ。ま、それでも推測の域を出てなかったがな」

秘書「……」

大臣「お前が魔王であるかもしれないという疑惑を晴らすために、俺は言ってみたんだ」

秘書「……『結婚しよう』」

大臣「笑って欲しかった。怒りでもよかった。……とにかく、否定してほしかった」

大臣「いつものお前なら、とにかく否定するはずだった。間違いなくな」

秘書「……」

大臣「それを肯定したということは……絶対に叶わないことを知っているから」

秘書「……ええ。そうですね、叶いません。なぜならここで」

大臣「ここで、死ぬからだ」

秘書「はい。貴方は死にます。ここで一人」

大臣「違う!」

秘書「っ……!」

大臣「お前の筋書きで死ぬのは……俺じゃなく、お前だ」

秘書「……何を言っているんです? 死ぬのは……」

大臣「俺は、『無事に終わったら』と言った」

秘書「死ぬのは……!」

大臣「お前はそれに対して『魔王を倒したら』と言い換えたんだ。一番出てはいけないところで、本音が出た」

大臣「お前の顔見てると、銅の剣受け取っといて正解だったと思うよ。今にも自殺しそうな顔だ」

秘書「……勇者は、恐れているんです。呪いを」

大臣「なに?」

秘書「魔王を殺した者は死の呪いがかかる」

大臣「死の……呪いねぇ」

秘書「はじめは、私の部下の魔物達が考えだした作り話でした。ですが、勇者はまんまとそれに引っ掛かったようです」

大臣「それで……その魔物達は?」

秘書「その魔物達……いえ、世界中にいた全ての魔物達は勇者に殺されました。フィールドもダンジョンも、エンカウントしないのはそのせいです」

大臣(一年くらい引きこもり状態だったから知らなかった……)

秘書「ですが、全ての魔物を殺した勇者は、私だけ殺せなかった。呪いを恐れて」

大臣「ところで……あのドラゴンは一体何だったんだ? 魔物は勇者が全部殺しちまったんだろ?」

秘書「あれは、勇者のペットみたいなものですよ」

大臣「ペット……か。あれが」

秘書「正直、もう私の力は勇者に遠く及びません。あのドラゴンを倒したことは、私の些細な嫌がらせです」

大臣「だったら、どこかに逃げればいいんじゃないか? 勇者が呪いを信じてるなら、無理に追ってくることはないはずだろう?」

秘書「貴方の国の王は、そう考えてはいないようです」

大臣「なんだと……?」

秘書「どうやら、私が生きている限り魔物は何度も沸いて出てくるとでも思っているようです。一度絶滅した生物は二度と帰ってくることはないのに」

大臣「……」

秘書「呪いは嘘であることがバレるか、国王が刺客を送ってくるか。どちらが先かはわかりませんが、避けられない道です」

大臣「だからって……」

秘書「だからこそ、私は貴方に殺されたい。どうせ殺されるのなら、せめて貴方に」

勇者「なるほど、心配して損したというわけだ。生かしておいた一年半の時間を返してほしいね」

大臣「!?」

勇者「呪いがないのなら、別に恐れる必要はないな。魔王」

秘書「……勇者」

勇者「大臣殿、御苦労だったね。あとは俺に任せておくといい。いや、それとも貴方が魔王を殺すかい?」

大臣「貴様……!」

勇者「―――。ほら、魔王に呪文をかけたよ。今の彼女は人間……いや、それよりもか弱いかもね」

秘書「っ!? ……体が、動かない? 呪文詠唱も……」

勇者「好きな殺し方をするといい。俺はそれを見届けるよ」

大臣「ふざけるなよ……! 殺すならお前を!」

王様「やめたまえ、大臣」

大臣「……国王! こいつを殺そうとするなら、あなたも……!」

王様「一時の感情に身を任せて犬死をするかね? それとも、わしの後ろにいる兵士達が見えないのか?」

大臣「っ……!」

王様「恨むなとは言わん。だがその魔王を殺せば、君には一生の安泰を約束しようじゃないか」

勇者「ほら、国王殿もこう仰っているぞ?」

大臣「秘書を……売れというのか!」

王様「君が望むなら、新しい女も用意しようじゃないか。どうだ? 良い条件だろう」

大臣「断る! ふざけたことをぬかすな!」

秘書「……大……臣」

王様「どうしても駄目かね?」

大臣「当たり前だろうが!」

王様「ふむ……君は信じられない程に優秀だった。だからこそ譲歩をしてやったのだが、仕方ないな」

王様「勇者殿、後は頼むぞ」

勇者「りょうかいりょうかい」

大臣「待て、国王!! くっそが……!」

勇者「ぷっ、はははははは!! そんな剣一本でやる気か? しかも構えられて……ねえよ!」

大臣「!? ……ぐあっ!」

勇者「馬鹿が。……おーい、大臣ちゃん。生きてまちゅかー? 峰打ちで死んじゃだめでちゅよー?」

大臣「っぐ……うう」

勇者「お、生きてた生きてた。ほら、さっさと起きねえと愛しの魔王ちゃんを、助けられないぞー?」

大臣「く……ず……がっ……!」

勇者「屑で結構。ほら、起きろよ! おら! おら!」

大臣「ぐあ! ……がああああああ!!!」

勇者「右腕一本折れたくらいで叫んでんじゃねえよ。ほら、魔王ちゃんを助けるんだろ?」

大臣「……っく……!」

勇者「おっと、本当に立てるんだな。ほら、もう一発峰打ち」

大臣「がっ! ……っはあ!」

勇者「ほら、もう一回立てよ。……もう一本折るのは可哀想だから、踏みつけるのは折れてるほうにしようかな」

大臣「っぐあああ!!」

秘書「……もう……やめ……」

勇者「もうやめてだってさ。じゃ、お言葉に甘えて魔王ちゃんをさっさと殺しちゃおうかな」

大臣「……待……てよ、クズ……野郎!」

勇者「おお、まだ足掴む元気があるんだ。凄い凄い。じゃあ、もう一本の腕も……」

大臣「……魔……王は……」

勇者「ん? なにか言った?」

大臣「……魔王……は……秘、書は……俺が……」

勇者「『俺が守る』って? くくっ、格好良いね」

大臣「……俺が……殺す……!」

勇者「なに……?」

大臣「……はぁっ…はぁ……」

秘書「……大臣」

大臣「……重い……な。銅の……剣」

秘書「……振れますか? 片手で」

大臣「大……丈夫……だ。むしろ……今だから振れ……そうだ」

秘書「大臣、私……」

大臣「なあ……秘書」

秘書「っ、なんです?」

大臣「……『無事に終わったら、結婚しよう』」

秘書「魔……いえ、そうですね。無事に、終わったら……いいですよ」

大臣「そう……か……」

秘書「大臣……? どうして笑っ……」

大臣「……勇、者!」

勇者「なんだよ? もうさっさと殺せば良いじゃないか」

大臣「……が変わった」

勇者「は? もっとでっかい声で言えよ」

大臣「……気が、変わったんだよ!!」

勇者「は……はは……冗談……だろ……?」

大臣「……」

勇者「たか……が……銅の……剣……如き……で……がはっ……」

秘書「嘘……」

兵士A「ど、どういうことだ!? 勇者様の防具は世界で最も堅い素材でできているはず……!」

兵士B「あれ、銅の剣だろ……!? 鎧ごと……! 鎧ごと勇者様を貫きやがった!」

大臣「どう……した……てめえら……! ざっと数え……て……60人は……いる……じゃねえか……! かかって……こいよ」

兵士B「あ、悪魔だ……あいつがきっと魔王なんだ……!!」

大臣「こんな……銅の剣が……怖いの……か? だったら……」

兵士C「や、やばいぞ。これは逃……」

大臣「ひのきのぼうで……十分だあああああああ!!!!」


――――――

大臣「秘……書。終わった……ぞ……無事……に」

秘書「っ何が……何が無事ですか! こんな……こんなに剣……刺さって……」

大臣「何の……ための薬草……だ……何個か……使えば……治……る」

秘書「ま、待っててください! すぐに薬草、塗りますから!」

大臣「は、はは……そんな……に……いそが……なくても……」

秘書「ここと……ここと……! 駄目……! 傷が深すぎる!」

大臣「大丈……夫……薬草……効いてる……」

秘書「嘘! 血……血が、止まってないのに!」

大臣「気の……せいだって……そんなに慌て……なくても……大丈夫」

秘書「止まらない、血が! 止まって! 止まってよ!!」

大臣「……秘……書」

秘書「止まって……!」

大臣「……無事……終わ……ったから……結婚……」

秘書「貴方が死んだら……そんなの、できないじゃないですか! 貴方が死なないなら、結婚だってなんだってしますよ!!」

大臣「そ……うか……だった……ら……絶対に……死ねない……な……秘……」

秘書「……大……臣?」

大臣「……」

秘書「う、あああ……大臣! 大臣!」

大臣「……」

秘書「死なないで……死なないでくださいよ! 私は、あなたのことが……!」

大臣「……なーんてな!」

秘書「え……?」

大臣「ほーら、秘書ちゃん。さっきなんて言おうとしたのかなー? この大臣にもう一回言ってみなー?」

秘書「う、うう……騙したんですか! 心配……心配したんですよ!」

大臣「はっはっは! 死なないって言っただろ、お前と結婚するためにな! ああ、マジで秘書の膝枕が幸せ」

秘書「し、死んだフリなんてする人と結婚なんてしません! ひ、膝枕だって……!」

秘書「……大臣、私と大臣が出会ったときのことを覚えていますか」

秘書「勇者に、全てを奪われて絶望のどん底だった私にとって、あの出会いは強烈なものでした」

秘書「生きる気力も無くして、ふらふらと歩いていた私に、言いましたよね」

秘書「『なんでお前は外を歩いてるのに引きこもりオーラ出してるんだよ。お前見てたらずっと家に引きこもってた俺が恥ずかしくなってきた』って」

秘書「なんだか情けない言葉でしたけど、その時の私の心には刺さりました。今では理由がわかりませんが……運命か何かを感じたのかもしれませんね」

秘書「可笑しいですね。私は神だって殺せるはずの魔王なのに、運命だなんて……それでも」

秘書「生きようって思った。貴方と一緒なら生きられると思った。だから、今の私はここにいるんですよ」

秘書「あと、大臣。玉座の間に入る前のプロポーズですが……」

秘書「きっと、私が魔王じゃなくても否定なんかしなかったはずですよ。間違いなく」

秘書「ねえ聞いてますか、大臣」

秘書「どうして目を開けないんですか、大臣」

秘書「どうして息をしていないんですか、大臣」

秘書「どうして……どうして、心臓が動いてないんですか、大臣……!」

秘書「大臣……! け……結婚、するんでしょう? それまでは死なないんでしょう? それからも、ずっと私といてくれるんでしょう?」

秘書「嘘……だったんですね……! 約束したのに……! 私も、結婚しますって……言ったのに……!」

秘書「生きて……るんでしょう? そうじゃ………なかったら、そんな……そんな優しい顔、できないでしょう?」

秘書「返事……してくださいよ……」



                                                           
                                                                    終わ……?

男「やっぱり左手だと食いにくいな。あーんするから食べさせてくれ」

女「はあ……まったく。もう2年も経つんですからいい加減慣れてるでしょう?」

男「いいや、慣れてないね。きっとこれから死ぬまで慣れないね」

女「甘えてると、いつか見放しますよ、大臣」

男「おや? 大臣って誰のことかな? ここに大臣なんていないんだけどなー」

女「もう、すぐに挙げ足をとるんですから……ほら、あーん」



り!


有り難う御座いました

あ、パンツ忘れてた

―――魔王城・玉座の間―――

大臣「気が、変わったんだよ!」

秘書(……!? 体が……軽くなった?)

秘書(勇者が大臣の言葉で驚いたから? ……違う、そんな訳はない。勇者は常に警戒を怠っていない)

秘書(だったらなぜ? ……・考えている暇はない。とにかく大臣を助けなければならない)

秘書(呪文は……使える。でも、銅の剣に付与呪文を使ったとしても勇者は倒せない……)

秘書(大臣の身体能力を上げる呪文を使う……? 論外だ。どんなに身体能力が高くとも、武器が銅の剣では……)

勇者「ははは……どういうつもりだ? 例え俺が一歩も動かなくても、そんな剣で傷を負う確率は全くないぞ?」

秘書(その通りだ。強力な魔力が封じられたあの鎧には、例えどんな武器だろうと通すことはないだろう)

大臣「わから……ないだろ! やってみないと……わからない!」

勇者「まあ、別にやってもいいけど。鎧の魔力で死んだりしてね。これ、半端ないから」 

秘書(常人なら、仮に死ななかったとしても気が狂うのは免れない。それほどの強力な魔力を持っているのだから、どんな武器も……)

秘書(いや待て。それほどの魔力を持っているのだから、勇者側にも何かリスクがあるはず……それを考えれば)

大臣「じゃ……やらせてもらうぜ。本当に……刺さっても、恨むなよ!」

秘書(堅固な素材……凄まじい魔力……・銅の剣……重要なのは……)

勇者(馬鹿なことを……。銅如きでこの鎧が貫けるはずもないだろうに)

勇者(まあ、その自信満々な表情を絶望にするのも中々面白いか)

勇者(……? 魔王……詠唱している!? 一体何を……)

勇者(どんなに高熱の炎だろうと、どんなに巨大な岩だろうと、この鎧には通用しない)

勇者(魔王も、それは理解しているはず。だが、あえて呪文の詠唱を行うということは……?)

勇者(いや、弱気になってどうする。例え何らかの原因で鎧の効果が失われても、俺の肉体には一撃なら呪文を耐えられる魔力がある)

勇者(剣先との距離は約10ミリ……今更避けるのも不可能か)

勇者(だが、どんな付与呪文がかけられていても、こちらの防御が破られるはずがないのだ)

勇者(肉体の魔力を全て鎧に注ぎ込めば、どんな付与呪文だろうと……!)

秘書(……・勝った!)

勇者「は……はは……冗談……だろ……?」

勇者「たか……が……銅の……剣……如き……で……」

勇者(……違う。これは……銅の剣じゃ……ない)

秘書(魔力は常に反発し合う。銅の剣の切っ先に集めた魔力は鎧と反発し、剣と鎧に大きな力がかかる)

秘書(外側からのダメージではなく、鎧自体から力が発生したため、一瞬でではあるが鎧が大きく凹む)

秘書(その凹み方は銅の剣の切っ先と同様の形、勇者の肉体を貫くのに十分な形状だ)

秘書(しかし、それと同じだけの力が大臣にかかるはずなのだが、その兆しはない)

秘書(この人……本当に謎だ)

駄目だ忘れてくれ
パンツ書いて寝る

―――船内寝室―――

大臣(レンタルしたこの船の船長は、24時間操舵するつもりなのだろうか。俺か秘書が起きている必要があるんじゃないか)

秘書「……すぅ……すぅ」

大臣(……・まあいいか。ところで、こいつは着替えを持っているのか? 俺は無いけど)

大臣(ええっと……この鞄に色々入ってるはずだが……銅の剣とくしゃくしゃの旅人の服、あと薬草しか入ってないな)

大臣(と、いうことは、こいつはずっと着替え無しで……つ、つまりパンツとかパンツとかが……。に、匂うくらいバレナイ?)

大臣「すぅ……はぁ……・」

大臣(あ、ドキドキしてきた。ドキドキしてきたけど罪悪感が生まれてきたからもう寝よう)

大臣「Z.zz..Zzz...」

秘書「……馬鹿」

今度シリアル無しで>>54くらいまでのノリのヤツ書くかもしれない
その時はまた遊んであげてください

お疲れ様です

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