女僧侶「あと38回……」 (105)

勇者(男)「いてて……さっきの戦闘でやられた」

戦士(女)「全く勇者のくせにだらしないぞ!!」

賢者(男)「お待ちください、今回復を」

僧侶「わ、私がやりますっ!」

賢者「しかし僧侶さん、貴女はこの洞窟に入ってから随分MPを消費しています。私はまだ余裕がありますからここはお任せください……ベホイミ!」
 
 ▼勇者のキズが回復した!!

僧侶「あ──」

勇者「おし、さんきゅ、賢者」

賢者「いえ、礼には及びませんよ。さあ進みましょう」

戦士「そうだな!さっさとこんなとこ抜けてメシ食おうぜメシ!」

僧侶「……」

僧侶「あと38回……」

 洞窟最深部

戦士「おおおりゃああ!!」

 ▼戦士の攻撃! 魔物に96のダメージを与えた!

勇者「賢者!僧侶!今だ!!」

 ▼賢者はメラゾーマを唱えた! 魔物に130のダメージを与えた!
 ▼僧侶はバギクロスを唱えた! 魔物に77のダメージを与えた!

戦士「もういっちょぉおお!!」

勇者「だあああっ!!」

 ▼戦士の攻撃! 魔物に89のダメージを与えた!
 ▼勇者の攻撃! 魔物に94のダメージを与えた!

 ▼魔物をやっつけた!!

戦士「おっしゃぁぁぁ!!」

僧侶「て、手ごわかったです……」

勇者「はぁ、はぁ……」

賢者「あの長い洞窟を抜けての戦闘でしたからね……あ、僧侶さん」

僧侶「は、はい?」

賢者「私はリレミトとルーラの分のMPを温存しなければいけませんので、回復をお願いできますか?」

僧侶「! はい、勿論です。ベホマラー!」

 ▼勇者のキズが回復した!
 ▼戦士のキズが回復した!
 ▼賢者のキズが回復した!
 ▼僧侶のキズが回復した!

勇者「あ、悪い僧侶、俺まだ全快してないみたいだ」

僧侶「はい! わかってます! ベホイミ!」

 ▼勇者のキズが回復した!

勇者「ありがとう、僧侶」

僧侶「い、いえこれくらい……」

僧侶(……戦闘中に2回だったから……あと34回)

僧侶(あと少し……あと少し……)

 宿屋にて

賢者「で、本日攻略した洞窟で手に入れたこの石版を、この古地図の上に置くと……」コトッ

勇者「あっ!これはまさか……」

僧侶「この間の搭にあった壁画にそっくりですね」

戦士「むしゃむしゃむしゃ……」

賢者「その通りです。この古地図にこの間の搭の位置に印をつけ、石版にそって線を引くと……」

勇者「つまりこの三本の線の交わる場所が」

賢者「──魔王の根城というわけです」

戦士「お! ついに魔王と闘うのか! よーっし腕がなるぜ!!」

勇者「よしよし、お前はもう少し食べてような、ほらから揚げ」

戦士「がつがつがつ……」

勇者「なんかこの光景も見慣れたな」

僧侶「いつも元気一杯に食べますよね」

賢者「もう少し女性としての慎みを持ったほうがいいと思うのですが」

勇者「魔王城の場所が判ったってことは、この旅の大詰めも近いってことだな」

僧侶「そうなんですね……」

賢者「長かったですね、非常に危険な冒険でした」

勇者「泣いても笑ってももうすぐ魔王との戦いだ。ここまで来て後になんて引けないしな」

僧侶「これで世界に平和が訪れるんでしょうか」

賢者「少なくとも魔物におびえる日々は、終わりになるでしょう」

戦士「心配すんな! どんな魔物でもアタシが全部ぶっ倒してやる!」

賢者「戦士さん、あばれザルの生姜焼きがまだ余ってますよ」

戦士「バクバクバク……」

勇者「よし、明日一日はみんなゆっくり休んで、明後日攻略に向かおう」

賢者「わかりました」

戦士「ぷはーっ食った食った!」

僧侶「相変わらず戦士さんの体のどこにあれだけの量が入るんでしょうか……」

 女部屋にて

僧侶「明後日……ついに魔王の城に乗り込むんですね……」

僧侶「この日のために、勇者様について、一緒に旅をしてきたんです」

僧侶「私も、最後まで役に立てるように頑張らないと!」

僧侶「……」

僧侶「──達成、できるかな……」

僧侶「あと34回……」


 翌日

勇者「というわけで、今日は決戦前の最後の休みだから、みんなしっかり休んでおくように」

戦士「アタシは休んでると体がなまっちゃうから、ちょっと訓練してくる!」

賢者「私は少し情報収集を。地図上では魔王城に最も近い町ですから、何かつかめるかもしれませんし」

勇者「全くあいつら休めって言ってるのに……」

僧侶「皆さんやっぱりそわそわしてますね」

勇者「まあ、俺もちょっと落ち着かないんだけどな」

僧侶「──私も、ドキドキしています」

僧侶「でも勇者様や皆さんと一緒なら、私怖くありません」

勇者「ありがとう、僧侶がしっかりしてるから、みんな心強いよ」

僧侶「いえそんな……私なんて皆さんに頼りっぱなしですし」テレテレ

勇者「そういえば、僧侶って例の目標は達成できたの?」

僧侶「えっ!? あ、いや、その、まだ……です」

勇者「うーん、魔王をやっつけるまでに達成できそうか?」

僧侶「──判りません。でもこんな目標、ほんとは達成しないほうが、いいに決まってますから」

勇者「ふーん、どんな目標かは知らないけど、達成できるといいな。俺応援してるからさ」

僧侶「は、はい」


賢者「──」

賢者(全く……やはりあの人は聖職者にはふさわしくなかった、という事ですか)

 夕方

戦士「ただいまーっ!」ガチャ

勇者「おかえり、って戦士! お前キズだらけじゃないか!」

戦士「なんか体がムズムズするから、ずっと魔物と闘ってたぜ!」

勇者「バカお前休めって言っただろうが!」

戦士「バカって言うなぁぁ!」

僧侶「戦士さん、じっとしてください……ベホイミ!」

 ▼戦士のキズが回復した!

戦士「おお、ありがとう僧侶! これで150回目だな!」

僧侶「えっ?」

戦士「アタシが僧侶に回復してもらったのって、今ので丁度150回目なんだよ!」

僧侶「え? あ、え、そ、そうでしたっけ」

戦士「そうだよ! アタシずーっと数えてたんだからさ」

賢者「この旅の間、ずっとですか?」

戦士「昨日の晩飯は忘れても、受けた恩は絶対忘れるなって親父に教わったんだ」

勇者「そうか、お前ってやっぱバカだけどいいバカだよな」

戦士「誰がバカだ!!」

賢者「戦士さん、今貴女は褒められてるんですよ」

戦士「え? そうなの? やったー!」

勇者「賢者も戦士の扱いが巧くなったな」

賢者「まあ、付き合い長いですしね」

勇者「そうだな、長かったな」

戦士「明日は魔王城だな!」

僧侶「この旅の最終目標、ですね」

勇者「酒場で出会って、旅をはじめて」

賢者「あの頃私は、まだまだ未熟な魔法使いでした」

僧侶「私もですよ。もうすぐ魔王との戦いなんて、あの時には想像もできませんでした」

戦士「いっぱい喧嘩もしたっけ」

勇者「そういやそのたびにお前、なんかすぐに仲直りさせにきたよな、くだらないことでも」

戦士「友達と喧嘩したら仲直りしろ、友達どうしの喧嘩は仲直りさせろってオフクロに教わったからな!」

勇者「そうか、やっぱりお前はいいバカだな」

戦士「バカって言うな!!」

賢者「戦士さん、そろそろ晩御飯の時間ですよ」

戦士「え? ホント!? あー腹へった!」

勇者「──慣れたのか」

賢者「慣れました」

グゥゥ~~

勇者「……」

賢者「……」

僧侶「……わ、私も、その──おなかすきました」

勇者「食事にしようぜ」

賢者「ですね」

 魔王城にて

戦士「だーーっキリがないな!」

賢者「流石魔王の根城です。魔物の強さも数も半端ではありませんね」

勇者「魔法の聖水と祈りの指輪を温存してきてよかったな。節約ばかりじゃ迷宮の攻略のほうがおぼつかなくなってきそうだ」

僧侶「勇者様、今回復を」

勇者「ああ頼む」

 ▼勇者のキズが回復した!

勇者「ありがとう」

僧侶「いえ……戦士さんにもかけますね」

 ▼戦士のキズが回復した!

戦士「おっしゃ! ありがとう僧侶!」

賢者「では進みましょう。まだまだ先は長いかもしれませんが……漂ってくる邪気はどんどん濃厚になってきています」

勇者「そうだな……」

僧侶(魔王城に入ってからこれで……城に来る前とあわせて……)

僧侶(あと……27回)

 魔王の間

側近「ぐべっ!!!」

 ▼側近をやっつけた!

戦士「よしっ! こいつで最後だ!!」

勇者「出て来い魔王! お前の側近は全て倒したぞ!」

  ボウ……

僧侶「っ!? ほ、炎が……」

 ゴォォォ

賢者「炎の中から、何かが来ます」

戦士「まさか……」

???「くくく……そのまさかよ」

勇者一行「「「「──魔王!」」」」

魔王「賞賛をやろう……この魔王城の場所を突き止め、余の眼前にまで踏み入るとは、人間だてらに大したものよ」

勇者「──生憎お前に褒められても、何の感慨も湧かないんだ」

魔王「……その覇気、その眼、覚えがあるぞ……そうか、貴様あの輩の息子か」

勇者「──」

魔王「ふははは!! よもや人間共の願いを一身に受けた聖なる使徒が、よりにもよって復讐心に駆られた小僧だったとはな!!」

勇者「──それは違うぞ魔王」

魔王「ほう?」

勇者「確かに貴様は憎い、父さんの仇を討ちたい。だけど、俺の志は、俺に着いて来てくれた皆と同じ……正義の心だ!!」

魔王「フッ、余の首一つのためにここまで来た者たちだ。よかろう、魔王たる余が、手ずからもてなしてやるとしよう──」

勇者「行くぞみんな!」

戦士「おうっ!」

賢者「了解です!」

僧侶「はいっ!」

 ▼魔王が現れた!!

勇者「だぁぁぁっ!!!」

 ▼勇者の攻撃! 魔王に132のダメージを与えた!

魔王「ふははは!! どうした、それが限界か!!」

 ▼魔王は魔力の玉を投げつけた! 賢者に146のダメージ! 戦士に121のダメージ!

賢者「うぐ……あの攻撃には……スクルトもフバーハも効果が……」

僧侶「ベホマラー!!」

 ▼僧侶はベホマラーを唱えた! 全員のキズが回復した!

戦士「やっぱり僧侶は頼りになるな! うおおおおお!!」

勇者「戦士! 早まるな! 一旦下がれ!」

魔王「バカめ!」

 ▼魔王は鎌を振り回した! 戦士に144のダメージ!

戦士「あぐっ!!」

勇者「あんのバカ!! 賢者、援護を!」

僧侶「今回復を!」

戦士「ぐ……ひ、ひとのこと、バカバカ言ってんじゃねえええええ!!」

 ▼戦士の攻撃! 会心の一撃! 魔王に306のダメージを与えた!

魔王「うぐ! に、人間がこれほどの攻撃をするだと!?」

戦士「──剣を握るなら、相手が魔王でも会心の一撃をぶち込めるくらいの戦士になれ……」

戦士「アニキの……いや、師匠の教えだぁぁぁぁ!!」

賢者「! 今です! 魔王が怯んでいます!」

勇者「全く、大したバカだよお前は!! ギガデイン!!」

 ▼勇者はギガデインを唱えた! 魔王に210のダメージを与えた!!

賢者「ベホマ!」

 ▼賢者はベホマを唱えた! 戦士のキズが回復した!

戦士「ありがとう!」

賢者「全くいつもいつも貴女からは目が離せませんね」

賢者「──おかげでどうでもいい時まで目で追ってしまうようになりましたよ」

戦士「あ? 今なんか言った?」

賢者「ええ、世迷言を少々」

勇者「くそ! なんて頑丈な体してやがる……」

魔王「この魔界の王を舐めるでないわぁぁぁ!!」

 ▼魔王は輝く息を吐いた!!

僧侶「きゃぁっ!」

戦士「僧侶! アタシの後ろに!」

賢者「大丈夫、フバーハがきいています!」

勇者「今だ! はぁぁぁぁぁ!!」

 ▼勇者は精霊の剣を天にかざした! 魔王の放ったブレスが逆風を巻き、魔王に襲い掛かる!

魔王「な、何ぃっ!? バカな……精霊共にそんな力が──ぐぁぁぁぁ!!」

勇者「はぁはぁ……もうひといき……もうひといきだ!」




勇者『すいません、一緒に旅をしてくれる冒険者を探してるんですけど』

(酒場の)主人『ああ、貴方が勇者様ですね。王様からお話は伺っておりますよ』

勇者『えーっと、職業は問いません。魔王を倒すっていう志の高い人を』

戦士『あー! あんたが勇者か!』

勇者『え? あ、うん、そうだけど』

戦士『アタシ戦士! 宜しくな!』

勇者『あ、その、まだ仲間にすると決めたわけじゃ』

戦士『何だよーこれでもアタシのアニキは凄腕の戦士だったんだぞ!』

勇者『兄貴かよ』

戦士『それに! 魔王をぶったおすって心意気だけは誰にも負けないぜ! 必ずアタシがこの剣で仕留めてやる!!』

勇者『はぁ……』

主人『ご希望の条件に合致する方が見つかりました』

勇者『適当すぎるだろ』

魔法使い『全く、騒がしい方ですね』

勇者『ん?』

魔法使い『はじめまして勇者様、私は魔法使いをやっているものです。といっても、まだかけだしの身ですが……』

魔法使い『是非お力になりたいと思い、志願に参りました。何なりとお使いください』

勇者『魔法使いかぁ……確かに攻撃呪文は頼りになるよね。それじゃあお願いしようかな』

魔法使い『ありがとうございます』

勇者『えーっと、あと一人回復のできる人がいればいいんだけど……』

主人『あ、それなら丁度』

僧侶『店長、洗い物終わりましたー』

主人『この娘を使ってやってください』

勇者『え?』

僧侶『え?』

主人『紹介します、僧侶さんです』

僧侶『え、えええっ!? わ、私が勇者様と旅ですか!?』

勇者『えっと、キミ僧侶なの? 回復魔法できる?』

僧侶『は、はい。確かに僧侶ですけど……その、い、今までの冒険者さんからみんな不採用になってしまいまして』

僧侶『実家に帰ろうと思ったら、実家までの旅費が、なくてですね』

主人『仕方なく、ウチでバイトとして雇っていたわけです』

勇者『そんな事情が……うーんでも』

主人『ご心配なく、確かに彼女はちょっと頼りなく見えるでしょうが、かなりの頑張りやさんですよ。雇っていた私が保証します』

勇者『うーん、それなら……一緒に頑張ってみる?』

僧侶『え、えっと……』

僧侶『──私でよければ、是非お願いします』


僧侶「う……」

魔王「ほう、まだ生き残っている者がおるとは……」

僧侶「み、みなさ──ん」

魔王「ククク、こいつらのことか?」

僧侶「──あ、ああ……」

 ▼勇者 HP:0
 ▼戦士 HP:0
 ▼賢者 HP:0

僧侶「そんな──そんな!!」

魔王「それにしても、人の身で魔界の王たるこの余をこれほどまでに追い詰めるとは……ぐ──」ヨロッ

魔王「ふ、ふふ……忌々しいが大したものだな、流石は真の勇者といったところか」

魔王「さて、あとは虫の息の小娘一匹を消せば、勇者一行は晴れて全滅。地上を手中に収める計画を進められるというものよ」

僧侶「あ──」

僧侶「どうすれば……どうすれば……」

魔王「その朽ち果てた体では立ち上がったところでどうにもできまい。よしんば立ちあがったところで、武器も道具も、魔法力すら殆ど残っていない貴様に何ができる」

僧侶「う……」

僧侶「私……私には……何もできない……」




僧侶『ホイミ』

 ▼戦士のキズが回復した!

戦士『すげー! これが回復魔法! すげーすげー!!』

魔法使い『いい加減回復受けるたびにはしゃぐのはやめませんか?』

勇者『いつもありがとうな僧侶』

僧侶『いえ、私これしかできませんから……』

勇者『僧侶がいるから、俺たち安心して闘えるよ。これからもよろしくな』ニコッ

僧侶『あ──』

僧侶『はいっ!』





僧侶「──そう、私にできることなんて、最初から一つだけなんですよね」

魔王「さらばだ──地上の英雄達よ!」

僧侶「──皆さん……私は……」

 ▼僧侶は メガザルを唱えた!!



魔王「な、何だと!?」

勇者「ぐ……これは、一体……」

賢者「この光はまさか──自己犠牲の回復呪文……」

戦士「力が……湧いてくる」

魔王「バカな……人間ふせいが……身を犠牲にしたとはいえ……こんな大魔法を使うだと!?」

勇者「だぁぁぁぁ!!!」

 ▼勇者の攻撃! 会心の一撃! 魔王に276のダメージを与えた!

魔王「う、うぶっ!!」

 ▼魔王の体が ざらざらと灰のように散っていく……

魔王「おのれ……おのれおのれおのれおノレオノレオノレ──」

 ▼魔王を やっつけた!!

勇者「お、おわった……」カラン

戦士「たおしたのか?」

賢者「邪気が消えていきます……」

勇者「! 僧侶! 僧侶はっ!?」

戦士「僧侶ぉぉぉっ!!」

僧侶「     」

賢者「……駄目です、すでに命が砕け散っています」

戦士「あ、ああ……うあああああ!!!!」

勇者「賢者! ザオリクを!」

賢者「申し訳ありません……もう、そこまでの魔法力が……」

勇者「それなら、早く、教会に!」

賢者「──残念ながら、それも無意味でしょう」

勇者「な──どうして!? 僧侶は神の加護を受けてるんだろ!? だったら」

賢者「彼女が、聖職者の禁忌を冒していたからですよ」

勇者「え!?」

賢者「これ以上は……私には言えません」

戦士「何わけわかんないこと言ってんだよ! なあ賢者! なんでもいいから回復してくれよ! お前僧侶と同じ呪文使えるんだろ! ホイミでもなんでもかけてくれよぉ!!」

賢者「……私には、なす術がありません。彼女はよく自分の事を無力だとおっしゃっていましたが、今の私のほうが、何倍も無力です」

勇者「──俺は、諦めない」チャキッ

戦士「ゆ、勇者?」

賢者「まさかあなたは……いけない! そんなことをすれば!」

勇者「この精霊の剣は、精霊達の命の残り火が集まって生まれた剣なんだろ? 全部使い切れば、僧侶の命一人分くらい、まかなえるかもしれない」

賢者「それはわずかにこの世界に残った精霊の力、世界がそれを失えば、たとえ魔物達の脅威が去ったとしても、世界に何が起こるか……」

勇者「……僧侶は、命がけでこの世界を守ったんだ。だから、きっとわかってくれる」

勇者「だから……帰ってきてくれ……僧侶!!」

 ▼勇者は 精霊の剣を破壊した! 剣から溢れ出る命の光が周囲を包み込んだ!




戦士「うう~僧侶ぉぉぉ」ズビッ

僧侶「戦士さん……痛いです……」

賢者「まあ、今回ばかりは彼女の気の済むまでそうさせてあげてください」

勇者「思ってたんだけど、賢者って時々戦士に甘くないか?」

賢者「──」ゲホッ

戦士「アタシはもし子供ができたら、友達が死んでも生き返るまで諦めるなって教えるよ!」

僧侶「それはやめたほうがいいと思います!」

勇者「ともあれ、全員無事に帰ってこれて本当によかった」

賢者「全くですね。それにしても精霊の王も人が悪い。まさかあの剣の中で精霊達が力を蓄えていたなどと」

戦士「ああ、あのブワァァァっていう光な!」

勇者「精霊達の聖なる力が世界中を駆け巡ったのが、俺にも解ったよ」

賢者「無事僧侶さんの命も助けてくれましたしね」

勇者「ところでさ、さっき賢者が言ってた”僧侶が聖職者の禁忌を冒した”ってどういう意味だ?」

賢者「それは……私の口からは絶対に言えません」

勇者「うーん……これ以上は訊かないほうがよさそうだな」

賢者「……」






戦士「いやーっ祝賀パーティーすごかったなー!」

僧侶「すっごいもみくちゃにされました……」

賢者「勇者様はもうしばらく戻ってこれそうにないですけどね」

賢者「そういえば僧侶さん」

僧侶「はい?」

賢者「魔王との決戦であれだけ回復呪文を使っていれば、もう達成したんじゃないですか?」

僧侶「えっ!? あ、あ、き、気付いてたんですか!?」

賢者「まあ……似たような心境の持ち主ということで」

僧侶「……」

僧侶「実は……もう一つだけルールがあったんです」

賢者「というと?」

僧侶「勇者様に回復魔法を一回かけるごとにひとつずつ。でも、勇者様から回復をうけたら、ひとつマイナスなんです。だから……最後の最後で1回だけ足りなくなっちゃいました」

僧侶「この旅の間に200回、勇者様を手助けをする。それが私の決めたルールです」

賢者「達成した時は……」

僧侶「はい、聖職者失格です。神に仕える身なのに、まさか男性に想いを告白する目標なんか、立てちゃうなんて」

賢者「私はそんなことはないと思います。貴女は立派な聖者です。文字通り命を投げ打ってまで世界を救ったのですから」

賢者「そんな貴女の美しい心は、最後の最後まで勇者様の助けになっていたと思いますよ。ですから……これで最後の1カウントです」

僧侶「──最後の最後で、逃げ道、奪っちゃうんですね」

賢者「ええ──こうすれば、私も逃げられなくなりますからね。賢者が他人に厳しくて、自分を甘やかすようでは、失格ですから──あ、戻ってきたようです」

僧侶「……」

 ▼僧侶は 聖職者の帽子を外した!

僧侶「私、伝えてきます。勇者様から貰った、この勇気で」

僧侶「──」タタタッ

賢者「さて……うまくいくといいのですが。──それじゃあ、私も、覚悟を決めますかね……」フゥ…


賢者「──戦士さん」

戦士「ん? さっきまで僧侶となんか……何だよ変な顔して」

賢者「お、おは……おはなしが、あ、あります」

  おしまい

書き溜めてもいないものを長々とありがとうございました
最近は勇者もののSSをあまり見かけないのでちょっぴり寂しい
本当はもっと冒険の部分とか書いてみたかったんだけど、長い前フリにしかならないのでやめました

あと、バカ戦士と知的賢者の組み合わせはもっと広まってもいいとおもいます

では最後まで付き合ってくれた人たちありがとう
おまえらの冒険に幸あれ!

おやすみ

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