研究員「強化ホタテ装甲兵の第一号が、完成したわ!」 (40)

研究員「あなたに施された強化ホタテ装甲は、しなやかにして強靭!」

研究員「あらゆる脅威からあなたを守ることうけあいよ!」

研究員「たとえ破損したとしても強化ホタテ細胞が直ちにホタテ装甲を修復!」

研究員「その再生速度をもってすれば溶岩の中でも数十秒の活動が可能!」

研究員「どう!? 強化ホタテ装甲は24時間あなたを守り続けるの!!」

ホタテ女「あの、一つ聞いてもいいですか」

研究員「ええ、いくらでも聞いて!」

ホタテ女「じゃあ、あの……」

ホタテ女「私これ、薬物試験のアルバイトって聞いてたんですけど」

研究員「ああ」

研究員「それ嘘だから!」

>>1
ヒトデ男の人?

ホタテ女「えー……」

研究員「運がよかったわね! どう、世界最硬の兵士になった気分は!」

ホタテ女「あの、少し動きづらいんですけど」

研究員「ふむ、機動性に改善の余地あり……と」

ホタテ女「あとせめて、服を返してください」

研究員「あれはもうあなたのサイズには合わないわ!」

ホタテ女「でも、その、せめてパンツくらいは……」

研究員「ちゃんとホタテ装甲が守ってるから大丈夫よ!」

研究員「慣れれば開閉もできるようになるはず!」

ホタテ女「着脱したいんですが」

研究員「無理!!」

ホタテ女「ええー……」

研究員「いやあ、誇らしいわ、あなたの誕生に立ち会えて!」

ホタテ女「私、生まれてこの方20年くらい経ってるんですけど」

研究員「あなたは生まれ変わったのよ!!」

ホタテ女「そんな無茶な」

研究員「私も一から作るのは無理かなー、なんて思ってたのだけれど」

研究員「うまい具合に、ホタテの細胞を持ち合わせた人間が居るんだもの!」

ホタテ女「あの、落ち着いてください」

研究員「普通居ないわよ、ホタテとヒトのハーフだなんて!」

研究員「眠れるホタテ細胞をちょちょいと弄ってやればこんなもんよ!」

ホタテ女「あの、せめて私と会話をしては頂けませんか」

研究員「ああもうじれったい、色々すっ飛ばして実戦テスト行きましょう!」

ホタテ女「ああ……なんかダメだこの人……」

竹内力

  ……

ホタテ女「……って、ここ、どこなんですかー……」

研究員「たいした事じゃないわ!」

研究員「ちょっと悪の組織と戦ってもらうだけよ!」

ホタテ女「さらりと無茶を言いなさる」

研究員「来たわよ! お喋りはここまで!

研究員「じゃ、私は車に居るから!」

  バンッ

ホタテ女「ええー……」

  ザッ

???「お前か、俺達に喧嘩を売った愚か者は……」

???「とんだ身の程知らずが居たものよ……」

???「四肢を切り刻み、心臓を抉り出し……」

???「ステキで美味しいお鍋にしてくれよう……」

ホタテ女「……人数、多くないですかね……」

ホタテ女「……逃げよう」

  ガッチャガッチャ

???「おっと、そうは行かないぜ!」

  シュンッ

ホタテ女「は、速い!!」

???「俺がいる限り、お前はどこにも逃げられないぜ!」

???「俺は組織最速の戦士、ゲジゲジ男!」

ホタテ女「ええー……」

ゲジゲジ男「全身に移植されたゲジゲジ細胞は最高の走破性能を俺にもたらす!」

ゲジゲジ男「どうだ! どんな姿勢でも最速で移動できるぜ!」

  シュバッ シュバッ

ホタテ女「うわあ……」

研究員「大丈夫よ!」

ホタテ女「わっ、研究員さんの声が……」

研究員「強化ホタテ細胞に埋め込まれた通信機能よ!」

研究員「24時間、あなたの事をモニタリングできるわ!」

ホタテ女「ちょ……ええー……」

研究員「いいから、私の言うとおりにして頂戴!」

ホタテ女「そんな事言われても……」

ゲジゲジ男「何をブツブツ言っているんだ! 気持ち悪いやつめ!」

  シュンッ

研究員「今よ! 思いっきり手を叩いて!」

ホタテ女「……えいっ!」

  パンッ!

ゲジゲジ男「ひっ!!」

  シュバッ

                  ,。 -‐- 、
                /: : : : : : :ヽ
               //:/_ V _ヽ: :.ヽ

               :/: l ┰  ┰ l: i: ;     支援
               ,': :从  _  从l: l
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            !  l             l. ',
          /  !               l.  ',
           i.=-=',             i=-、l
          レヘv }            レrヘ j

          `^'^''゙             `^''゚

ホタテを舐めるなよ

ホタテ女「……あれ……いなくなった?」

研究員「まずは一人ね! よくやったわ!」

ホタテ女「えー……」

???「ゲジゲジ男が敗北しただと……!」

???「ここは、俺に任せろ」

???「いや……俺が一撃で終わらせる……!」

???「ダメだ、お前に力を使わせるわけにはいかない」

???「くっ……だが……」

???「俺が行く、お前たちはただ待っていればいい」

???「そんな事、できるかよ!」

  ワイワイガヤガヤ

ホタテ女「……」

ホタテ女「……逃げよう」

  ガッチャガッチャ

マジキチ

  ……

  ガッチャガッチャ

研究員「ちょっと、何をしているの!?」

ホタテ女「戦うなんて嫌です」

研究員「戦意喪失、敵前逃亡だなんてその場で射殺されても文句言えないわよ!」

ホタテ女「だって私、兵士とかじゃないですし」

研究員「そんなわがまま許さないわよ!」

ホタテ女「どっちがですか……」

研究員「そっちがそのつもりならいいわ!」

ホタテ女「……」

ホタテ女「……あれ?」

『キルミーベイベードシタノワサワサキルミーベイベーナンデモナーミンキルミーベイベーヤルナラカモカモキルミーベ……』

ホタテ女「な、なんだこれ……歌?」

研究員「あいつらを倒すまでエンドレスで流すわよ!」

ホタテ女「ええええー……」

  ……

???「見つけたぞ! ちょこまか逃げるとはおのれ卑怯な……!」

ホタテ女「ベ……ベイビー……」

???「何をブツブツと……! 俺は組織一のパワーを誇る万力男!」

万力男「いくら貴様が硬かろうが、ゆっくりじっくり締め付ければいいだけの事!」

万力男「俺よりも遅いその足が命取りだな!」

ホタテ女「……ベイビ……ベイビ……」

万力男「くらえ! 必殺、パワーバイスクラッ――」

ホタテ女「ベイビー! プリーズ!」

ホタテ女「キルミー!!!」

  ガッ

万力男「なっ……」

  バキッ

万力男「この……俺が……!」

  ドサッ

貧弱すぎなのではないでしょうか

  ……

『ヒドイヨソーニャチャーン……』

ホタテ女「……く……頭が、痛い……」

研究員「あー、やっぱりダメかー」

研究員「仕方ない、止めよう……」

ホタテ女「今のは一体……」

研究員「驚くなかれ、BDBOXがなんと1万2000円台で買えるのよ!」

ホタテ女「な、何が……?」

研究員「うーん、しかし洗脳プログラムはまだ副作用がなー」

ホタテ女「わ、私になんて事をしてるんですか!」

研究員「でもおかげでそいつ倒せたんだから、感謝してほしいわね!」

ホタテ女「……! もしかして私……人を……!」

研究員「首いったからね! さすがの改造人間もイチコロね!」

ホタテ女「そんな……」

ホタテ女「……私、人を殺しちゃったよ……」

研究員「やっぱり、肉体だけじゃなくてメンタルも改造が必要かしら」

研究員「うーん、でもやっぱり洗脳はなあー……」

ホタテ女「どうして……」

ホタテ女「どうして、こんな事をするんですか!」

研究員「愚問ね!」

研究員「あなたには、自分の可能性というものがわかっていないわ!」

研究員「私の生き甲斐は、可能性の追求!」

研究員「可能性の開拓!」

研究員「あっ、やべ、これいけんじゃね?」

研究員「そう思ったら、やるのが私!」

ホタテ女「そんな事のために……!」

ホタテ女「私を騙して、無理やりこんな事までさせて……!」

研究員「まあ熱くなるのはいいんだけどさー」

研究員「前を見たほうがいいよ前をさ」

???「万力男は……いい奴だった……」

???「それをお前は……」

ホタテ女「ち、違うんです! 私は戦いたく……むぐっ!?」

  ガチャ

研究員「フェイスガードを展開させてもらったわ!」

研究員「余計な事は、言わせないわよ!」

???「何が違うというのだ! 俺は許さんぞ!」

???「組織一のビール好き、ゲルマン男が相手だ!」

ホタテ女「(ただのドイツ人だ……)」

研究員「気をつけて!」

研究員「こいつには、突出した弱点はないわ!」

研究員「モノを言うのは、素の戦闘能力よ!」

ゲルマン男「くらえ! 必殺! ゲルマンパンチ!」

  ドカッ

ホタテ女「……」

  ドカッ ドカッ

  ドカッ
  
ゲルマン男「ゲルマンキーック!」
  
  ドカッ ドカッ
  
ホタテ女「……」

  ドサッ

ゲルマン男「くっ……俺は、なんて非力なんだ……」

ホタテ女「(ええー……)」

研究員「さあ、残るはあと一人よ!」

ホタテ女「何度も言いますが、私は嫌です……」

研究員「もし倒してくれれば……」

研究員「元に戻してあげないことも」

研究員「ないかもしれないかもしれないかもしれない」

研究員「……かもしれないわね!!」

ホタテ女「……」

ホタテ女「あなたは、絶対元に戻してくれないと思います」

研究員「……」

研究員「あちゃー、バレてたかー」

ホタテ女「私に、一体何をさせる気なんですか……」

研究員「それはおいおい考えようと思ってるわ!」

研究員「首尾よく整備された計画は、可能性の否定に他ならないと私は考えているの!」

ホタテ女「……」

ホタテ女「……何を言ってるのこのヒト……」

  ……

???「俺の名は、最終兵器ほや男!」

ほや男「はじめに言っておくぞ、俺が力を解放すれば、お前は塵一つ残らない!」

ほや男「降参しておくのが賢明というものだ!」

研究員「こいつは力を使うと死ぬわ」

ホタテ女「そんな……じゃあ降参しないと……」

ほや男「お……? そ、そうか! よい判断だ!」

ホタテ女「ほや男さん……私は……」

研究員「また余計な事を言うつもりね!」

  ガチャッ
  
  ガッ!!

ホタテ女「私は万力男さんを……殺したくありませんでした」

研究員「フェイスガードが……展開できない!?」

ホタテ女「謝って済むことではないけれど……」

ホタテ女「……本当に……ごめん、なさい……」

万 力男

  ……

研究員「ちょっと、段取りが違うじゃない!」

ほや男「……なるほど、大体の察しはついた」

ゲルマン男「なればこそ、合点が行くというものだな」

ゲジゲジ男「お前も俺たちと同類であったか……」

ホタテ女「ど……同類……?」

研究員「無視はやめて!」

ゲルマン男「俺達の名は……『改造手術被害者の会』!!」

ゲルマン男「聞いているのだろう、クソ女!」

ゲルマン男「懲りずにまた、悪事を働いているようだな!」

研究員「ああもう……仕方ない……」

研究員「あーよいしょ」

  ポチッ

『……アーラーシノスギータアトニー』

ホタテ女「あ……頭が……ぐうっ……!」

ゲルマン男「気を確かに持つんだ!」

ゲジゲジ男「あいつに、負けてはいけない!」

ホタテ女「くっ……うわああーー!!」

ゲジゲジ男「ひっ!」

  シュバッ
  
ほや男「ああっ、ゲジゲジ男がまた逃げてしまった!」

ゲルマン男「くそっ……止められないのか……!」

ホタテ女「キル……キル……キルミー……」

  ……

研究員「最初からこうしておくべきだったわね! はははは!!」

  ドカッ ガチャン

研究員「……」

研究員「……あ」

  ……

ホタテ女「……」

ホタテ女「……あれ、私……」

ゲルマン男「……! 正気に戻ったか!」

ほや男「今のうちだ、早くこの子をアジトへ!」

ゲルマン「ああ! 急ぐぞ!」

  ……

研究員「もう……私の機材がなんでこんな目に……!」

研究員「ああもう、最硬の兵士とかどうでもいいわ!」

研究員「硬いだけじゃない! よく考えたら何もできないわ!」

研究員「でも、私の邪魔をしたのだから、ただじゃ済まさない……」

研究員「……」

研究員「そうだわ、今こそアイツに働いてもらいましょう……!」

  ……

ゲルマン男「……どうだ、落ち着いたか?」

ホタテ女「ありがとうございます……」

ほや男「また、新たな犠牲者を出してしまったのか……」

ゲジゲジ男「くそっ……俺たちには、何もできないのか……!」

ホタテ女「……」

ホタテ女「あなた達が居なかったら、今頃私は……」

ホタテ女「私は、あなた達に命を……心を救われたんです」

ゲルマン男「……そう、言ってくれるか」

ほや男「しかし……もうこれ以上あいつを放っておくことはできない……!」

ゲジゲジ男「居所は割れてるんだ、今からでも……!」

ゲルマン男「だが、俺達の力では……あいつを退けることは難しいぞ」

ほや男「こんな時、万力男が居れば……」

ホタテ女「……」

  ……

研究員「遅いわよ! 早くしてって言ったのに!」

研究員「常々人間やめたがってたでしょう! 願いが叶うのよ!」

???「いちいち声が大きい、鼓膜が破れてしまう」

研究員「破れたところですぐ治るだけじゃない!」

???「痛覚はあると何度も言っているではないか」

???「で、それが例の薬だな」

研究員「私の汗と涙の結晶よ! あとは仕上げなのだけど、幾分お金が足りないの!」

???「相応の金を払っているはずだ」

???「そもそも、お前に涙など無いだろうよ」

研究員「お金が足りない、まだ全然足りないわ!」

研究員「だけど、私の頼みを聞いてくれたら、不足分はこちらで持つわ!」

???「そんな取引があってたまるか」

研究員「ホタテよ! あなたの大好物! ホタテを始末してほしいの!」

ヒトデ男「そういう事ならば、致し方ない」

  ……

ホタテ女「……私が、万力男さんの代わりに戦います」

ゲルマン男「無茶だ、君は素人なんだぞ」

ゲジゲジ男「だが待て、彼女の戦闘能力は俺たちよりもずっと高い」

ほや男「そうだな……戦いにおいては弱点となりうる要素がほとんど無い」

ほや男「もしかしたら、彼女ならば……」

ゲルマン男「……しかし……」

ホタテ女「いいんです、ゲルマン男さん」

ホタテ女「私、やります!」

ゲルマン男「……」

ゲルマン男「……君に、託そう!」

ホタテ女「はい!」

  ……

ゲルマン男「ここがヤツのアジトだ」

ホタテ女「……」

ホタテ女「……ここ、隣が私の家なんですけど……」

ゲジゲジ男「なんてこった、ずっとクソ女の隣に住んでいたのか」

ほや男「よくも今まで無事で居られたものだ」

ホタテ女「もう、あんまり無事じゃないです……」

ゲルマン男「さっきはああ言ったが、無理をすることは無い」

ゲルマン男「今からでも、君は自分の家へ帰れるんだ」

ホタテ女「……いいえ、この格好ではちょっと……」

ホタテ女「それに、悪い人は、こらしめなければいけないのですから」

ヒトデ男「まあ、待ちたまえ」

ヒトデ男「決め付けるのはよくないと、俺は思う」

ホタテ女「あなたは……!」

ゲルマン男「やはり来ていたか……!」

ゲジゲジ男「どうしてこんなクソ女に加担をするんだ!」

ゲジゲジ男「お前だってクソ女の被害者なのだろう!」

ヒトデ男「……だから言っているだろう」

ヒトデ男「勝手に決め付けられては困る」

ヒトデ男「俺は、生まれつきこうなのだ」

ホタテ女「でも……あなた達のおかげでみんなが迷惑しているんです!」

ヒトデ男「だったら言おう、俺たちはお前たちのせいで迷惑している」

ホタテ女「そんな、みんなを騙したのはあなた達じゃないですか!」

ヒトデ男「それはさらに簡単な話だ、騙される奴が悪い」

ホタテ女「そこを……どいてもらいます!」

ヒトデ男「……いいだろう、やってみたまえ」

ヒトデ男「珍しくやる気になっている俺は、手強いだろうがな」

  ……

  ウネウネ

ホタテ女「このくらい、どうってことありません!」

ヒトデ男「ただ丸くなっているだけで、何もしていないではないか」

ヒトデ男「俺の唯一得意な事を教えてやろう」

ヒトデ男「ホタテを食う事だ!」

  ガシャガシャ

ほや男「くそっ、やはりここは俺が……」

ゲルマン男「やめておけ、お前の力は未知数だ」

ゲルマン男「彼女ごと吹き飛ばしでもしたらどうする」

ほや男「くっ……」

ゲルマン男「ところで、ゲジゲジ男はどうした」

ほや男「戦いの音に驚いて、とっくに逃げたよ」

ゲルマン男「そうか……」

  ……

ヒトデ男「くそ……どういう事だ……」

  ガリガリ

ホタテ女「まだまだ、平気です!」

ヒトデ男「いくら噛み砕いても次から次へと……殻が再生している!」

研究員「あー、その殻、ヒトデ男から取ったデータを使ったからね!」

ヒトデ男「……このままじゃ埒が開かないな」

ホタテ女「降参してください!」

ヒトデ男「決め手がないのはお前も同じ事だろう」

ヒトデ男「俺を倒したければ、頭を潰す事だな」

  ガリガリ

ヒトデ男「……ところで、お前はそこに突っ立って何をしているのだ」

研究員「ああ、私?」

研究員「さっきの薬完成したから持ってきたんだけど」

ヒトデ男「さっさとそれを渡せ」

  プスッ

ヒトデ男「……おお……」

  ムニムニ ゴゴゴゴゴゴ

ホタテ女「ヒトデ男さんがどんどん大きく……」

ホタテ女「一体、何をしたんですか!」

研究員「ふふん」

研究員「よくぞ聞いてくれたわね!」

研究員「まず私が着眼したのは彼の異常なまでの再生能力!」

研究員「頭以外ならどこを失っても一瞬で再生するメカニズム!」

研究員「調べてみれば調べてみるほど、実に素晴らしいものだと感動したわ!」

研究員「そこで私が着手したのは、細胞増殖の制限を取り払うこと!」

研究員「今や彼は、誰よりも大きな体に、大きな存在になれるの!」

研究員「人間である事を捨て切れなかった彼はもう居ないわ!!」

研究員「そう! 私は、神を造――」

  プチッ

  ……
  
  ゴゴゴゴゴゴゴ

ヒトデ男「俺が……拡大してゆく……」

ヒトデ男「俺の体が、俺の意識が」

ヒトデ男「そう、俺という存在が」

ヒトデ男「人も、ヒトデも、小さすぎる」

ヒトデ男「どれもこれも、些細な事であった」

ヒトデ男「そうだ、もっと大きくなろう」

ヒトデ男「もっとだ、もっと……」

  ゴゴゴゴゴゴゴ

ヒトデ神「そう、もっと……!!」

  ……

ゲルマン男「もっと速く逃げるんだ!」

ゲルマン男「このままでは、俺たちも潰されてしまう!」

ホタテ女「ううん、放っておくわけには……」

ホタテ女「今止めないと、みんな潰れちゃうよ!」

ゲルマン男「止めるって言っても……」

ホタテ女「……」

ホタテ女「……頭」

ゲルマン男「何……?」

ホタテ女「頭を潰せば、きっと止まります」

ゲルマン男「しかし、この状況で……!」

ほや男「……」

ほや男「ついに来たか、俺の見せ場が」

ゲルマン男「待て……!」

ほや男「俺に押し付けられたこの力……」

ほや男「極限にまで圧縮した俺の内臓を……」

ほや男「あのヒトデ野郎に叩き付ける!!」

ホタテ女「待ってください、ほや男さん!」

ほや男「止めてくれるな!」

ほや男「俺は……そう、俺は!」

ほや男「この時のために生きていたんだ!!」

ホタテ女「ほや男さんッ!!」

ほや男「喰らえ! ヒトデ男ッッ!!」

  ブパッ!
  
  ……
  
  ベショッ

ゲルマン男「なんて事だ……」

ゲルマン男「ただ無駄死にするための力じゃないか……」

ホタテ女「……いいえ、違います」

ホタテ女「無駄死になんかじゃ、ありません……」

ホタテ女「無駄死になんか、させません!」

ゲルマン男「お前に、何ができるというんだ!」

ホタテ女「何もできないのと、何もしないのではまったく違います!」

ホタテ女「やってみて、初めてわかる事のほうが、いっぱいあるはずです!」

ホタテ女「無茶かもしれません……だけど!」

ゲルマン男「……そうか」」

ゲルマン男「……俺と君の違いは、そこだな」

ゲルマン男「自分を非力だと言って、何もかも諦める俺とは違う」

ゲルマン男「君は、今やるべきだと信じる事をするんだ!」

ホタテ女「はい!」

  ……
  
  ゴゴゴゴゴゴゴゴ

ホタテ女「……いくら走っても頭に近付けない……!」

ホタテ女「巨大化する速度が……増している!」

  シュバッ

ゲジゲジ男「お困りのようだな!」

ホタテ女「ゲジゲジ男さん!」

ゲジゲジ男「乗りな!」

ホタテ女「ええっ……それは……」

ゲジゲジ男「いいから早く乗れ!」

ホタテ女「は……はいっ!」

ゲジゲジ男「俺は……もう、逃げない!!」

ゲジゲジ男「飛ばすぜ!」

  シュババババババ

  ……
  
ホタテ女「……」

ホタテ女「……磯くさい……」

ホタテ女「……」

  ムニムニ

ホタテ女「ヒトデ……」

  グニグニ

ホタテ女「……」

ホタテ女「……そっか」

  ムニムニ
  
  ウネウネ

  ……

 おしまい

おわりかよ

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