梓「スクランブルメール」(287)



梓「ふう……いいお湯だった」

梓「そろそろ髪切った方がいいかな……伸びてきたし、乾かすのめんどいし、純に日本人形って馬鹿にされたし」

梓「でも、この前唯先輩が『あずにゃんの髪、かわいいね』ってほめてくれたしな。もうちょい伸ばしたら切ることにしよう」

梓「ふあー、よっこいせっと」ギシッ

梓「…………今日の部活は何というか、おかしい雰囲気だった……」

梓「その一番の原因は……律先輩と澪先輩がギクシャクしてたことかな」

梓「あの二人がほとんど会話しないのなんてありえないし」

梓「何かあったのかな……」

梓「んまあ、私ひとりじゃどうすることもできないけど。去年の文化祭のときみたいなのは勘弁だよ」

梓「……明日には、元に戻ってるといいけど」

梓「さてと、ちょっとだけ練習しようかなっと」

ブブエー♪

梓「あっメールだ……唯先輩から?」



From:唯センパイ
Sub:やっほー

あずにゃん元気ー?
いまメールしても大丈夫かな?



梓「どうしたんだろ……何かあったのかな?」

梓「まさか、今日のことについて……とか? ……まあ唯先輩に限ってそれはないか」

梓「えーっと……いいですよ。っと」



To:唯センパイ
Sub:Re:やっほー

はい、いいですよ



梓「送信……」ピッ

梓「さて、唯先輩からメールが来る間にギターでも弾いとこうかな」

梓「カモン! むった」

ブブエー♪

梓「ん? はやっ!?」



From:唯センパイ
Sub:ありがとー

よかったー
あのね、あずにゃんはきのことたけのこどっちが好きかな?
ちなみに私はきのこだよ!フンス



梓「おいおい、まさかそんなことでメールしてきたんですか?」

梓「まったく……唯先輩はかわいいなあ」

梓「っていうか、この質問はちょっと危険なのでは……」

梓「えっと……」



To:唯センパイ
Sub:Re:ありがとー

そうですね
私はあまり食べないんですが……
どっちっかって言うと唯先輩と同じきのこですかね


梓「送信っと」ピッ

梓「私はパイの実しか食べないっていうのに……」

梓「まあ、同じものを好きって言われれば唯先輩もうれしいはずだよね」

梓「さてさて、練習練習っと」

ブブエー♪

梓「はやっ!? って今度は憂からか」



From:憂
Sub:いいかな?

梓ちゃん、今メールしても大丈夫かな?



梓「めずらしいな……憂からこうやってメールしてくるなんて……」


梓「んまあ、とりあえず」



To:憂
Sub:Re:いいかな?

大丈夫だよ



梓「送信っと」ピッ

ブブエー♪

梓「うおわっ!? びっくりしたぁ……唯先輩か……」



From:唯センパイ
Sub:ナカーマ!

やっぱり~!?
だよねだよね! やっぱりきのこだよね!
いや~うちのういがね~きのこよりたけのこの方が好きだって言うもんですから~
あずにゃんが同士でよかったよ~!


梓「……あーなるほど。そういうことか」

梓「憂と唯先輩で言い争ったんだね」

梓「と、いうことは……」

ブブエー♪

梓「そら来た!」


From:憂
Sub:ありがとう

それじゃあ梓ちゃんに聞きたいんだけど
きのことたけのこどっちが好き?
ちなみに私はたけのこなんだけど、お姉ちゃんはきのこなんだって


梓「ほら来たよ~。やっぱり来たよ~」

梓「まったくくだらないことでケンカするなあこの姉妹は」

梓「いや、その前にケンカにすら至ってないかもしれないけど」

梓「ん~……それじゃあとりあえず……」


To:憂
Sub:Re:ありがとう

私はどっちかって言うとたけのこかな
きのこも好きだけどね


梓「ん、無難すぎて自分が恐ろしい……送信」ピッ

梓「あっ、唯先輩に送るの忘れてた」


To:唯センパイ
Sub:Re:ナカーマ

そうだったんですか
まあ、たけのこもおいしいですから憂の気持ちもわかりますが
唯先輩と一緒でわたしもうれしいです


梓「たはー、これって告白一歩手前って感じがするよー! 送信!」ピッ


梓「んまあ、この話題もこれで終わりだからやっと練習が出来るぞ!」フンス

梓「さってと、やりますか」

ブブエー♪

梓「うわっ、まさかのメール」

梓「あれ? ムギ先輩からだ。めずらしい……」


From:ムギセンパイ
Sub:今度の曲について

今メールしても大丈夫かな?
新曲のことについてちょっとお話があるんだけど



梓「わあ……これぞまさしく軽音部のメール!」

梓「さすがはムギ先輩! お菓子論争でメールなんてしませんよね!」

梓「でへへ……しかも、私に相談してくるなんて……頼れる後輩みたいな?」

梓「ぬふふ~……。あっ、返さなきゃ」


To:ムギセンパイ
Sub:Re:今度の曲について

もちろん大丈夫です!


梓「送信っと」ピッ


ブブエー♪

梓「メール……しかも2件」


From:唯センパイ
Sub:私も!

あずにゃんといっしょでうれしいよ!
まあ私はお姉ちゃんだから、ういのことは許してやろうと思う!
それじゃあとでいっしょにきのこ食べようね!


From:憂
Sub:そうなんだ

梓ちゃんは二つも食べられるなんてすごいね!
私はたけのこしか食べられないよ…
でも、きのこ食べてるお姉ちゃんも好きだから
明日はいっしょに食べようかな♪
あ、梓ちゃんも今度いっしょに食べようね♪


梓「なんとか片付いた」

梓「ああ、でもこのあと別々で一緒に食べないといけないのか……」

梓「私はパイの実派だってのに」


梓「さて返信っと」


To:唯センパイ
Sub:Re:私も!

はい
楽しみにしてます!


To:憂
Sub:Re:そうなんだ

うん
楽しみにしてるよ


梓「送信っと……」ピッ

梓「ふふふっ、私は律義に返信するタイプなんだよね」

梓「でも、さすがに二人を相手にするのはちょっと疲れるかな」


ブブエー♪

梓「おっ、ムギ先輩さっそくきた」


From:ムギセンパイ
Sub:Re:Re:今度の曲について

ありがとう
あのね、今度の曲のイメージがあまり出来上がってなくて
それで梓ちゃんの考えも聞いてみたいと思ったの
できればでいいから、聞かせてほしいな


梓「はあはあなるほどなるほど」

梓「これは私の助けが必要ですね」

梓「ん~……そうだなあ……私たちのバンドの方向性を考えると……」

梓「いや、でもあえてのギャップもいいかもしれないし……」

梓「ああ! 考えがまとまんない!」


ブブエー♪

梓「にゃっ!? またメール? 今度は誰から?」

梓「えっ? 純からだ」


From:純
Sub:non title

トイレなう


梓「……はあ?」

梓「なにこれ? どういったメールなの? まさか私の反応が見たいとか?」

梓「純は相変わらず何考えてるかわからないな」


ブブエー♪

梓「また純?」


From:純
Sub:non title

やっぱトイレって新聞読むのに最適な環境だよね
まあ、テレビ欄しか見ませんけど?


梓「……ほんとに何考えてるのかさっぱりだな……」

梓「こんなメール私に送って何がしたいのやら」

梓「んー……まあ、めんどいから返信するのやーめよっと」

ブブエー♪

梓「あっ、返信来た! けど、唯先輩だ」



From:唯センパイ
Sub:楽しみ~

あずにゃんとはやくいっしょに食べたいよ~!
あっ、ういが呼んでるからまたあとでね~


梓「んもう、いちいち返さなくていいのに……」

梓「でも唯先輩のそういうところ、梓はいいと思います」

梓「っていうか、早くムギ先輩に返さなきゃ」


To:ムギセンパイ
Sub:Re:Re:Re:今度の曲について

そうですね…
やっぱり私たちらしさを出すなら明るい曲がいいんじゃないでしょうか
ムギ先輩のアップテンポの曲、私は好きですよ
イメージは…
まるで大空にはばたいている鳥のような
すがすがしい気持ちになる曲なんてどうでしょうか
ムギ先輩のおどるようなピアノの音が多めだと面白いと思います


梓「送信っと。ふう……疲れた」ピッ


梓「これだけ言えば『さすがは梓ちゃん! 頼れる後輩ね!』ってなるんじゃ……」

梓「えへへっ、照れるなあ……」

ブブエー♪

梓「またメール……もう今日はメール来すぎだよ」

梓「あっ、澪先輩だ」


From:澪センパイ
Sub:相談

急にメールしてごめん
梓にちょっと相談があるんだけど……
よかったら返事して
宜しくお願いします( _ _)ペコリ


梓「なんと……まさか澪先輩から相談される日が来るなんて……」

梓「ヤバい、テンションあがってきたよ!」


梓「っとその前に……」


To::澪センパイ
Sub:Re:相談

私に務まるかどうかはわかりませんが
大丈夫ですよ


梓「んで送信っと」ピッ

梓「ふう……やっぱり、今日のアレについてだよね……」

梓「なんで澪先輩と律先輩がの仲があまり良い雰囲気ではなかったのか……これで明らかになる」

梓「あっ、そういえば唯先輩に返信するの忘れてた」

梓「まあでも、憂に呼ばれてるって言ってたし、返さなくてもいいか」


ブブエー♪

梓「おっ? 今度は誰だろ……また純か」


From:純
Sub:non title

ヤバい。紙が無いことに気付いてしまった
が、新聞紙があったのでこれで代用します


梓「うおい! なんであんたのおトイレ事情をメールで知らなきゃならないのよ!」

梓「もしかして紙が無いのを知らせるために……?
  いや、もうそのことについてはとっくに解決してるようだし……」

梓「しかも、返信がないのにこうやって送られてるってことは……!」

梓「そうか! 純はツイッターか何かをしてるんだ!」

梓「そして、それを私に誤爆した、と……なんて間抜けなの」

梓「教えてあげた方がいいのかな……いや、ここはもうちょっと様子見しよう。
  もしかしたら気付くかもしれないし、おもしろいものも見れるかもしれないし」

梓「いやーそれにしても純がツイッターやってるなんてね……。
  意外すぎるよ」


ブブエー♪

梓「おっ、返信きた! ムギ先輩からだ」


From:ムギセンパイ
Sub:Re:Re:Re:今度の曲について

さすがは梓ちゃんね!
私もそんな感じの曲をイメージしてたの
でも、あまり自信がなくていい感じに仕上がらなかったから
梓ちゃんにそう言ってもらえて自信がついてきたような気がする♪

それじゃもう少しやってみる!
ありがとね♪


梓「ぬはーーっ! 完璧ッ! 完璧だよ私!」

梓「ムギ先輩からの急な相談……しかし、私のズバリな返しにムギ先輩も満足満足!」

梓「ああ……これだよ。これが私のしたかったメールだよ!」

梓「……ふう、テンションあがりすぎた」


梓「ふふっ、それにしてもムギ先輩のメールってなんだかかわいいなあ。
  唯先輩とはまた違ったかわいさがあるね」

梓「それじゃあ、返信返信っと」


To:ムギセンパイ
Sub:Re: Re:Re:Re:今度の曲について

お役に立てて光栄です!
曲作りがんばってくださいね
新曲楽しみにしてます!


梓「そうしん!」ピッ

梓「ん~!! 一仕事した~!!」ノビー


ブブエー♪

梓「あっ澪先輩ともメールしてたの忘れてた」


From:澪センパイ
Sub:ありがとう

相談に乗ってくれてありがとう

実は最近、律と話そうとしても律の方から避けたりするんだ……(;一_一)
今日なんて目を見て話さなかったし、帰り道だって会話一つも無く終わってしまった
それで、もし律のことで何か知ってたら教えてくれないかな?
律は、私にはあまり悩みとか言わないから私じゃ何の役にも立てないし…
後輩に頼むのもアレだけど、梓にしか分からないこともあるだろうし

ぜひ、教えてください


梓「……なんか重たいな」

梓「やっぱりこれってケンカしてるのかな……いや、ケンカではないのかもしれないけど」


梓「うーん……律先輩の悩み……か」

梓「そんな態度取ってないような気がするけど……ずっとお茶飲んでたし」

梓「ん~……駄目だわからん」

梓「澪先輩には申し訳ないけど、私じゃわかりませんと送ろう」

ブブエー♪

梓「おわっ!? 誰から?」

梓「り、律先輩!?」


From:律センパイ
Sub:夜遅くにスマン

今、メールしてもいい?
ちょっと聞きたいことがあるんだ
よかったら返信して


梓「……これはひょっとして」

梓「ああ、間違いないね。これはよくあるあパターンだよね、うん」

梓「お二人とも、なんで私なんかに相談するのかわかりませんけど……」


To:律センパイ
Sub:Re:夜遅くにスマン

大丈夫ですよ
どうぞ、相談してください


梓「送信……」ピッ

梓「さすがにお二人相手にメールのやりとりはきついかもしれないけど。
  ここで律先輩の悩みを聞いて、それを澪先輩に報告する……完璧だ」

梓「あー今日はみんなから相談される日なんて、めざまし占いでやってたかな……」

梓「ま、いっか。これも後輩の宿命なんだよ、きっと」


梓「それじゃ、律先輩の返事が来るまで澪先輩への返信は保留ということで」

ブブエー♪

梓「あっ早速きた」


From:律センパイ
Sub:誰にも言うなよ!!

相談のってくれてありがと

実は仲のいい友達のことが好きになってしまったんだ
でもその人は女の子で、同性なんだよ
別に偏見とかそんなのは気にしないけど、やっぱり相手の子のこともあるじゃん
で、どうしたらいいか迷ってる

そのことについて相談したいんだけど
ムギは新曲作りで忙しいし、唯は何と言うか頼っていいのかわからない
そこで、梓にお願いしたんだ
私はどうしたらいいのかな

このことは秘密だぞ!


梓「……想像の斜め上をいくとは」

梓「なんですかこれは! 乙女の感情丸出しですか!」

梓「そうか、律先輩の元気がなかったのはこのせいか」

梓「律先輩に好きな人……プククッ、笑えますね。でも、乙女的な律先輩も悪かないですよ悪かあ」

梓「さーて、このことを澪先輩に報告し……」

梓「……待てよ、もしかして律先輩の好きな人って……」

梓「さっきのメール、律先輩が好きになった人は友達だって言ってるし」

梓「それに、ムギ先輩や唯先輩に相談しようとしてたって書いてあるけど、澪先輩にはしてない」

梓「ということは……やっぱり……だよね……」

梓「律先輩が澪先輩のことを好きってことなんだよね……」


梓「うわあああ! どうしよう! どうすればいいのこれ!」

梓「……これは非常にまずい展開だよ」

梓「澪先輩に『律先輩、澪先輩のこと好きらしいですよ』なんて送ったら、澪先輩が絶対おかしくなってしまうよ」

梓「ただでさえ仲が険悪というか気まずいのに、こんなこと知られたらもう関係修復は無理なんじゃ……」

梓「いや、もしやの『私も好きだよ律!』みたいなことも……ないか」

梓「考えろ……考えろ梓……せめてなにかいい案は……」

梓「……駄目だ思いつかない。もうこうなりゃやけくそだよ!」


To:澪センパイ
Sub:Re:ありがとう

推測ですが
もしかして、律先輩に好きな人が出来たのでは?
最近の律先輩は鏡で髪を整えたりしてましたし
そのことで悩んでてて、澪先輩ともあまり会話しなくなったと思います

まあ、推測なので本気にしないでください


梓「送信……」ピッ

梓「うわあ、これでよかったのかな……? いいよね? いいんだよね?」

梓「ああ、そういえば律先輩にも送らなきゃいけないんだった」

梓「まいったな……私なんかじゃおいそれとアドバイスなんてできないよ」

ブブエー♪

梓「メ、メール!」


From:純
Sub:non title

最近のテレビはつまんないね
はやく内P復活しないかな


梓「あんたの独り言なんてどうでもいいよ! っていうか、ツイッターの反応見てないの?
  どんだけ適当なのよ」


梓「あああ、無駄な時間が過ぎて行く……早くしないと律先輩に引かれたかと思われちゃうよ」

ブブエー♪

梓「にゃっ!? メールきた……」


From:ムギセンパイ
Sub:できました!

新曲がほぼできたの~
これも梓ちゃんのおかげだよ
明日には持っていけるから楽しみにしててね♪


梓「はやっ! 曲できるのはやっ! ムギ先輩おそろしいな」

梓「でも今はそんなことはどうでもいいんだ。重要なことじゃないよ。楽しみだけど」

梓「あああああどうしよどうしよどうしよう……早く送らないと、送らないと……!」


梓「……そうだ。ムギ先輩に質問してみようかな。
  きっと私よりも有益な返しが得られるに違いないよ」

梓「い、イヤダメだ! こんなプライベートな質問しちゃったりなんかしたら人間的にアウトだよ……」

梓「うー……じゃあ、律先輩とかそんなのは伏せたうえで質問しよう。うんそれがいい」

梓「えーい、ままよ!」


To:ムギセンパイ
Sub:Re:できました!

はい! 楽しみにしてます!

話は変わりますが、ここで質問してもいいですか?
もし、ムギ先輩の友達が女の子を好きになったことを悩んでいたらどうしますか?
私の友達がそのことでどうやら悩んでいるみたいなので……
なにかいいアドバイスでもあれば教えてほしいです


梓「送信……」ピッ

梓「ああ、ごめんなさい律先輩……。やっぱり私じゃわからないのです……」


ブブエー♪

梓「き、きたっ! 早いなやっぱり」


From:ムギセンパイ
Sub:Re: Re:できました!

そんなの簡単よ
ただ、応援してあげればいいの
その方が、その友達も幾分かは楽になるんじゃないかな


梓「さすがはムギ先輩です! な~んだ、簡単じゃないか! 難しいことなんて考えちゃダメですよね!」

梓「さてさて、さっそく律先輩にお返しメールを……と」


To:律センパイ
Sub:Re: 誰にも言うなよ!!

そうですね……
難しいことは考えない方がいいんじゃないですか
要は当たって砕けろ! ってことですよ

まあ、がんばってください
応援してます

梓「送信っと」ピッ


梓「あーあ、一仕事終えるとやっぱ気持ちいいね! 胸がスカッとさわやかだよ」

ブブエー♪

梓「き、きたぁ!……って唯先輩からか」


From:唯センパイ
Sub:憂のごはんおいしかった

やっほー
ごはん食べ終わったからまたメールしよー


梓「ああ、まったく唯先輩は人の苦労も知らずに……でも唯先輩ならどんとこいです!」

梓「とは言ってもこの状況……律先輩からの返信待ちだし、澪先輩からも来ないし……。
  唯先輩とはメールやってる暇なんて……」

梓「でも唯先輩とのメールは大事だしね……返信しちゃお」



To:唯センパイ
Sub:Re:憂のごはんおいしかった

いいですよ
でも宿題終わったんですか?
早めにやった方がいいですよ


梓「送信」ピッ

梓「ん……他愛もないメールってなんだか癒されるな……どうしてだろ」

ブブエー♪

梓「きたきた……み、澪先輩からだ」


From:澪センパイ
Sub:non title

へえ、そうなんだ
律に好きな人が…へえ
梓はそのこと知ってたんだ
私は知らなかったのにな
梓はすごいな

で、好きな人って誰なの?
知ってるんだよな?
梓は偉いからなあ
教えてほしいな


梓「……」ゾク

梓「あ、あわわわわ……」

梓「地雷……踏みました……?」

梓「こ、これが……噂のヤンデレ……」

梓「ァ、汗が……体中の穴と言う穴から出てるよ……」ダラダラ

梓「よーし、落ち着け私。そう、深呼吸だ。深呼吸」ヒッヒッフー

梓「……」ヒッヒッフ

梓「……無理!」

梓「あああああ!! もう弁解できないよ! 律先輩が澪先輩のこと好きだなんて言えないのに!」


梓「……フフフ」

梓「……もういいや。どうせ私は、無関係なのだから」

梓「私に害はないのだから」アハハ

梓「み、澪先輩も、律先輩のこと、好きそうだしね」ウフフ

梓「お、送っちゃお……そうしよう……それがいいよねえ」ヒヒヒ

梓「律先輩が澪先輩のこと好きって……言えばいいんだよおおお!」

ブブエー♪

梓「ぬうああ!!? こ、殺されるううう!!?」


From:唯センパイ
Sub:がーん!

まだ終わって無かったよ…
うう、あずにゃんとメールしたいのにー
じゃあ、ちょっとだけ待ってておくんなまし!
あずにゃんのためにちょちょいと終わらせてくるよ
そしたら、メールしようね!


梓「あああああ!! 唯先輩マジ天使!」

梓「天使に触れたよ! 天使に触れたよお!」

梓「砂漠のど真ん中で喉がカラッカラの状態でもうちょいで干からびて死んじゃうってときに、
  いきなり目の前に現れて、キンキンに冷えた水を笑顔で差し出してくれる……大体そんな感じです!」

梓「えへへ……なんだかあったような気がしたけど、なんだっけ~」

梓「あはは……私、今幸せでふ」


ペロロロロロロ…… ペロロロロロロ…

梓「うわあああ!!? で、でででで、電話!?」

着信 澪センパイ

梓「ぎゃああああ! 電話! 電話! 電話怖い!」

梓「ひいいいいい……」ブルブル

ペロロロロロロ…… ペロロロロロロ…

ペロロロロロロ…… ペロロロロロロ…

ペロロロロロロ…… ペロロロロロロ…


ペロロロロロロ…… ペロロロロロロ…

梓「あああ……もうコール20回目なのに、まだ鳴りやまない……」

梓「取ったら終わり……取ったら終わり……取ったら終わり……!」

ペロロロロロロ…… ペロ

梓「や、止んだ。終わったのかな……」

ペロロロロロロ…… ペロロロロロロ…

着信 澪センパイ

梓「ひいいいいい!!? や、やっぱりいいいい!?」

ペロロロロロロ…… ペロロロロロロ…

ペロロロロロロ…… ペロロロロロロ…



10分後


梓「……」

梓「計20件の電話が鳴りました」

梓「怖いので、着信拒否に入れました」

梓「これで、もう鳴ることは無いでしょう」

梓「……これでよかったんだ、これで……」

梓「さあ気を取り直して、唯先輩にメール返さなきゃね!」

ブブエー♪

梓「ひっ」


From:澪センパイ
Sub:non title

なんで電話取らないの?
どうして?
私と話したくないの?
梓?
ねえ
電話取ってよ
律のことで話を聞きたいから
無視しないでよ
梓 梓 梓


梓「」

梓「あはは……もうどうしようもないです」

ブブエー♪


梓「ひっ」


From:澪センパイ
Sub:non title


着信拒否したの?
なんで?
私先輩だよ?
どうして?
何か言えないことでもあるの?
あるんだ
教えてよ


ブブエー♪


梓「ひっ!?」


From:澪センパイ
Sub:non title

メール返さないの?
どうして?
やましいことないでしょ?
あるの?
梓、良い子なのに?
あるんだ?
へえ


ブブエー♪


梓「ひひっ!?」


From:澪センパイ
Sub:non title

ねえ
見てるよね?
何で返さないの?
律がいるから?
わからないよ
メール
かえしてほしいなあ


梓「私、明日にでも殺されるんじゃないかなあ」

梓「首の頸動脈、プシャ! ってさあ」

梓「……まさかあ、あははは」

梓「ゆ、ゆいせんぱあああい! 助けてえええ!!」

ブブエー♪


梓「! ゆ、唯先輩!!」


From:純
Sub:non title

体幹トレーニングっていいですね
ミキミキ鍛えられる! なんつって


梓「お前かあああ!!」

梓「この親友の一大事に……純は……」

梓「はあ……」

梓「……でもちょっとだけ落ち着いた」

ブブエー♪

梓「ひっ!? 今度こそ死んだ!」


From:ムギセンパイ
Sub:また送ってごめんね

やっぱり気になっちゃって…
さっきのメール、梓ちゃんのことだよね?
あっ、違ってたらごめんなさい
さっきのメールは何も考えずに送ったけど、よく考えるとそうかなって

そういうことって言いづらいよね
でもね、やっぱり人ってどうしても何かを好きになっちゃうの
それが普通の人と違うこともあるかもしれないけど
でも、好きって気持ちが一番大事なんだって私は思うの
だから、人とは違うからって落ち込んだりしないでね?
困ったら、私に何でも言ってね?
私、梓ちゃんの力になりたいの!


梓「おうふ」

梓「盛大に勘違いを……なんてこった」

梓「いや、勘違いでもないのかもしれないけど」

梓「このままじゃ……ムギ先輩からずーれーと思われてしまうかもしれない」

梓「……案外悪くないかも」


梓「ムギ先輩の相談に乗っていくうちに、二人は親密な関係に……みたいな!」キャー

梓「なんだかわくわくしてきた!」

ブブエー♪

梓「あっ、メール、誰だ」


From:唯センパイ
Sub:終わった~

やっと宿題終わったよ!
これも愛の力、ですな
それじゃあ、こんどこそメールしよう!


梓「唯先輩……んもう唯先輩は、もう……」

梓「愛の力だなんて……そんな……照れちゃうなあもう」

梓「えへへ……やっぱり唯先輩とのメールは心が安らぎますね」

梓「そいじゃあ返信しちゃおうかな」


ブブエー♪

梓「あっ、これから返そうかなと思ったら……」


From:律センパイ
Sub:サンキュ!

そうだな!
当たって砕けろっていいな!
やっぱり何か考えるのは私の性に合わないしな!




それで
決めたんだけどさ


好きだ 梓
付き合ってくれ


梓「え……」

梓「ええぇぇ……?」

梓「どうして? 澪先輩じゃないの? な、なんで?」

梓「だって澪先輩幼馴染だし、さっきのメールも澪先輩の名前、入ってなかったし」

梓「これ、間違えてるんじゃないの?」

梓「……ど、どうしよう……私、そんな……」

梓「きゅ、急に言われても……ていうか、メールで告白だなんて……」

梓「うう……ど、どうすればいいんですか……」

ブブエー♪


梓「えっ……」


From:唯センパイ
Sub:どうしたの?

メール帰って来ないから心配だよ
何かあった?
そういうときは先輩に頼ってもいいんだよ!
さあさ、なんでも言っちゃいな!


梓「ゆ、唯先輩……」

梓「こ、こんなこと言えるわけないじゃないですか……」

梓「でも……早く、楽になりたいです……」

梓「……や、やっぱりダメ! これは私の問題なんだから……私が解決しなきゃダメ」

梓「うう、ごめんなさい、唯先輩」


To:唯センパイ
Sub:Re:どうしたの?

すぐにメール送らなくてごめんなさい
きっと勘違いですから何でもないんです
でも、もし何かあったらまた、相談にのってくださいね?
すみませんでした


梓「これで……よし!」ピッ

梓「ありがとうございました唯先輩。これからは、私だけでやります!」

梓「つ、次は……律先輩に」

梓「……やっぱり、断ったほうが良いのかな」

梓「私、律先輩のこと、好きだけど……先輩としてって意味だし」

梓「そ、それに……澪先輩のことも……あるし……」


梓「でも……そんな簡単に律先輩の気持ちをふいにしちゃっていいの……?」

梓「女の子の告白って、勇気、いるんだよね」

梓「それに、相手も女の子……もっと勇気いるよ」

梓「……」


To:律センパイ
Sub:Re: サンキュ!

急に言われても困ります
本当に好きだったらメールで告白しないでくださいよ



こんな私でよければ、付き合ってください


梓「……」

梓「……」

梓「~~~~!」

梓「……送信!」ピッ

梓「んもう! あんな! あんなメール来たらオーケイしちゃいますよもう!」

梓「し、仕方ないよね……だって、断ったりしたら律先輩がかわいそうだよ」

梓「そ、それに……そんなに嫌いってわけでもないし……」

梓「これから大変だと思うけど……でも、いいかな。うん」

梓「これで、律先輩と恋人同士かあ……何だか変な気分」

梓「……メール、早く来ないかな」

ブブエー♪


梓「メ、メールきた!」


From:澪センパイ
Sub:non title

返してよ
ねえ
返してよ
メール
何で?
律の家にいるの?
いるの?
いるんでしょ?
いるんだ?
律に電話しても取らないんだ
やっぱりそこにいるんだよね?
わかった


梓「こ、怖いい……!」

梓「覚悟はしてたけど……やっぱり怖い……!」


梓「で、でも……もう澪先輩に負けてられない!」

梓「だって……だって私、律先輩の彼女だもん!」

梓「ええい、なんでも送ってやります!」


To:澪センパイ
Sub:Re:

そうです
わたしと律先輩は付き合ってます
ごめんなさい、今さっき付き合い始めたので言えませんでした
でも、もう、律先輩は私の彼女なので
澪先輩には関係ありませんから
それでは


梓「送信だあ!」ピッ

梓「送ってやったよ! もう後戻りはできないよ!」

梓「明日が楽しみだ! あははは!」

梓「……もう軽音部、元には戻らないだろうな」

梓「わ、私のせいで……軽音部、バラバラになっちゃうのかな……」

梓「最低ですね……私……」


梓「でも、もう後悔しない!」

梓「律先輩はこうなることを予想して告白してくれたんだ……
  だったら、私が信じなくてどうする」

梓「自分で決めたからには……最後までやりぬく!」

梓「……というか、律先輩、メールまだかな」

梓「せっかくオーケーしたのに……」

梓「今頃、喜びすぎてベッドで転がってたりしてそう」

梓「えへへ……」

ブブエー♪

梓「あっ……! 律先輩からだ!」


From:律センパイ
Sub:ドッキリ大成功!

いやあ、まさか梓がマジでOKするとは思わなかった!

今までのアレ、全部ウソだから
ま、知ってて騙されてたのかもしれないけど
告白もナシっつうことで

そいじゃ、またあした~


梓「は?」

梓「え、ちょ、え、なにこれ、え?」

梓「なにドッキリ大成功って? ドッキリ? ウソ?」

梓「好きとかはウソ? 告白もウソ?」

梓「……」


梓「あはは……もう、涙も出てこないです……」

梓「私はピエロ……ピエロだったんですね……」

梓「あは、あはは、あはははは……」

梓「よーし、明日は律先輩に腹パンしちゃお☆」

梓「10発でいいかな? いいよね☆」

梓「楽しみですわぁ! ああはっはははっははははっははh!!!」

ブブエー♪

梓「何だメールか」


From:律センパイ
Sub:助けて!

澪が! 外からこっち見てる!
梓を出せとか言ってるんだけど!
なにかあったのかよ!


梓「あっ、いけね、忘れてた☆」コツン

梓「澪先輩にメール送ってたっけ」

梓「澪先輩のヤンデレはもう、止まりませんよ」

梓「律先輩大丈夫かな」

ブブエー♪

梓「あ、2連チャン」


From:律センパイ
Sub:non title

へやきた
ころされる
たすけて


梓「……ざまあみやが……ゲフン、ご愁傷さまです」


梓「ま、今までの悪行の数々を見てみれば当然の結果ですね」

梓「楽しかったです、律先輩。あなたと過ごした2年間……忘れません」

梓「……やっぱり、なんでもかんでも信じちゃいけませんね」

梓「あやうく、律先輩に食べられちゃうところでした」

梓「さて……そういやムギ先輩にメール返してないや」

梓「今、返そうかな」

ブブエー♪

梓「あっと……返信しようとしたらこれだよ」


From:唯センパイ
Sub:なるほど~

そっかぁ……わかったよ!
と、言いたいところだけども
本音が出ちゃってるね!

私もあずにゃんのこと好きだよ~~!


梓「……うひゃあああ!」ガバッ

梓「唯先輩が……私のこと好きって言った!!」

梓「……って言うと思いましたか?」

梓「まったく……先輩方はいたずらが過ぎます!」プンスカ

梓「きっと4人とも裏では繋がってるんでしょうね。間違いない」

梓「律先輩の相談もウソだったし、澪先輩も……あれは澪先輩なりのジョークだったんでしょう」

梓「そ、それに……い、いきなりす、すす好きだなんて……言わないし……。
  いや、唯先輩なら言うかもだけど」

梓「とにかく私はもう騙されませんよ!」プンスカ


To:唯センパイ
Sub:Re:なるほど~

なんですかもう!

冗談で言っていいこととわるいことがあります!
唯先輩のはわるい冗談です!
私はもう騙されません
唯先輩なんて嫌いです!


梓「中野、怒りの返信!」ピッ

梓「これで先輩方もこりたでしょう」

梓「でも、本音って……何か言ってたかな……?」

梓「特に何も変わらないけど……まあ、そこは唯先輩だから意味なんてないだろうな」

梓「……今までのが先輩方の仕組んだドッキリだったら、
  さっきの澪先輩の逆襲もウソだったってことになるのかな」

梓「……ちえっ、じゃあ律先輩は無傷か」

梓「それにしても唯先輩は……まだウソをつくなんて」

梓「……これがウソじゃなかったらいいんだけど」

梓「はっ! ダメダメ! こういう考えだからあっさり騙されちゃうんだよ! 心を鬼にしていかないと」


ブブエー♪

梓「メール! 今度は誰ですか!」


From:純
Sub:non title

さっらさらのすとおれーとぉ!になりたい!
うらやましいぞあずさ!


梓「なんだ純か。どうでもいいや」

梓「って、私の名前簡単にさらしちゃうのかあいつは。それはアカンよ鈴木さん」

梓「……もしかして、私に送ったメールなのかな?」

梓「わかんないから返さないでいいか」

ブブエー♪

梓「あっメール」


From:憂
Sub:大変なの

お姉ちゃんがすごく落ち込んじゃってるの
さっきまで機嫌がよかったのに
今はアイスも食べようとしないくらい落ち込んでて…

梓ちゃん、何か知ってる?


梓「ゆ、唯先輩は、憂まで使いますか……」

梓「ほんとに最低です! ここまでしますか!」

梓「いくら、ドッキリだからって……やり過ぎです!」

梓「んもう、頭カンカンですよ私! 怒っちゃいましたからね!」


To:憂
Sub:Re:大変なの

もういいんだよ憂
全部わかってるから
唯先輩もひどいよ、まったく


梓「送信!」ピッ

梓「まったく先輩方は……律先輩ドッキリに懲りずにまだやる気ですか」

梓「明日の部活でちょいと説教しなきゃいけませんね!」

梓「……はあ、こうやって騙されるのも、後輩だから、ですか」

梓「そう考えると何だかさびしいです……」

ブブエー♪

梓「ん? また憂から?」


From:憂
Sub:何かあったの?

ケンカでもしたの?
お姉ちゃんは何にも言ってくれないし…
もし梓ちゃんとケンカしてるなら心配だよ

相談にのるから、話してほしいよ


梓「あ、あれ? まだやるの?」

梓「そこまでやられると、ちょっと引いちゃうけど……」

梓「でも、憂は真面目だからな……役になりきっちゃうだろうし」

ブブエー♪

梓「メ、メール?」


From:ムギセンパイ
Sub:またまたゴメンね

返信してこないってことはよっぽどなことなの?
わかった!
梓ちゃんが自分の考えをまとめるまで私待ってる!

大丈夫! 梓ちゃんの信じた道に進んでね!


梓「ム、ムギ先輩まで……」

梓「こ、こまでしますか普通。まさか、ドッキリじゃないってオチ……?」

梓「り、律先輩だけがドッキリの犯人で、他の先輩方はマジだったってこと?」」

梓「……そうだとしたら、唯先輩のあれは……」

梓「ほ、本当のことなの?」

梓「……で、電話電話!! 唯先輩に電話!」

ペロロロロロロ…… ペロロロロロロ…

ペロロロロロロ…… ペロロロロロロ…

ペロロロロロロ…… ペロロロロロロ…

梓「で、出ない……」

梓「や、ヤバい……もし本当だったら、私、なんてことを……」

ブブエー♪

梓「あっ、メール!」


From:唯センパイ
Sub:ふん

電話なんて掛けてこないでよ
私のこときらいなんでしょ

あずにゃんきらい


梓「……ななな……」

梓「そ、そんな……じゃ、じゃああれはマジのメールだったってこと……?」

梓「うわあああ! こ、こんな嫌われ方いやです!」

梓「ど、どうしよう……電話も取ってくれないし……」

梓「……だ、大丈夫です! ゆ、唯先輩と仲直りなんて簡単ですよ!」


To:唯センパイ
Sub:すみませんでした

ごめんなさい
さっきのメールは誤解と言うか
ボタンの掛け違いみたいなものです!
だから私は唯先輩のこと嫌いじゃないですよ!


梓「そ、送信……」ピッ

梓「こ、これで何とかいけるでしょ……うん」

ブブエー♪

梓「き、来た!」


From:唯センパイ
Sub:うそつき

どうせそれも冗談なんでしょ
あずにゃんはうそつきだもん
うそつきはきらい


梓「……なんてこった」

梓「こ、こんな調子じゃ絶対許してもらえないよ……」

梓「あ、ああ……そ、そうだ! 電話すればいいんだ!」

梓「電話して、ちゃんと事情を話せば……行けるよね!」

ペロロロロロロ…… ペロロロロロロ…

ペロロロロロロ…… ペロロロロロロ…

ペロロロロロロ…… ペロロロロロロ…

梓「と、取ってくれない……」

ブブエー♪

梓「あっ」


From:唯センパイ
Sub:電話しないでよ

取らないって言ったじゃん
聞き分けのないあずにゃんなんてきらい


梓「あう……そ、そうだった……」

梓「気が動転して……忘れてました……」

梓「……こ、このまま、唯先輩と不仲のままで……
  卒業しちゃうのかな……」

梓「……なわけないない! あの唯先輩がずっと怒るわけないよね!」

梓「大丈夫大丈夫……明日にはちゃんと全部元通りだよ……」

梓「大丈夫大丈夫」

梓「……ゆ、ゆいせんぱい」

梓「い、いや……唯先輩と仲が悪いのなんて……耐えきれない……」

梓「……唯先輩のところに謝りに行こう!」

梓「き、きっと唯先輩だって……許してくれる……」


梓「今は……午後9時30分! まだ遅くない!」

梓「よし! いってきま

ブブエー♪

梓「す……あれ? メール?」


From:純
Sub:non title

あちゃー外すんごい大雨だよ
こりゃあ当分外に出れないね


梓「う、うそ……」

ザアアアアアアアアア…

梓「そ、そんな……」

梓「で、でも行かなきゃ……行かなきゃダメ……」

ピシャアアアアア! 

梓「きゃああ!」ドテン


梓「い、今の近かった……」

梓「こ、怖い……雷怖い……」

梓「……」

梓「……今日はもう……やめにしようかな……」

梓「そうだよ……明日、謝ればいいんだ」

梓「謝ったら、唯先輩もきっと笑顔で許してくれる」

梓「その方が良いよね……うん、その方が良い。
  さて、眠っちゃおっと」

カチカチ


梓「……」

梓「……きらいだなんて、初めて言われた」

梓「私も……きらいって初めて言っちゃった」

梓「……ごめんなさい唯先輩」

梓「私……最低な子、ですよね」

ブブエー♪

梓「ん? メールだ……」


From:純
Sub:non title

何かをするって大変だけどさ、何もしないって簡単だよね
ダイエットしてて思った17の夜


梓「……そうか」

梓「そうだよね……うん! そうだそうだ!」

梓「何もしないのは簡単! 唯先輩! 今、行きます!」

バタン!!

梓母「梓? こんな遅くにどこ行くの?
    外、雨降ってるわよ」

梓「すぐ帰ってくるから!」

梓母「ちょっと梓!」

……


ザアアアアアア……

梓「うわあ……すごい雨だ」

梓「……でも、決めたからには……!」

梓「うおりゃあああああ!!」

パシャパシャ

梓「はあ……はあ……!」

服はずぶ濡れ
靴もビショビショ
お風呂に入って洗った髪はビシャビシャ
前も見えない
音も聞こえない

でも、携帯は……
携帯は、防水だから大丈夫!

梓「はあ……はあ……!」

ピシャアアアアア!!

梓「うるせええです! この雷やろう!」


梓「ひい……はあ……!」

梓「つ、ついたあ……」

ピンポーン ピンポーン ピンポーン ピンポーン

憂「は、はい……どなたですか……って梓ちゃん!」

梓「はあ……おじゃま……します……はあ」

憂「ど、どうしたのこんな遅くに! それにずぶ濡れだよ!?」

梓「唯先輩……に、会いに……はあ……」

憂「ああ……そっか。それで来てくれたんだね!
  でも、そんな……今日来なくてもよかったのに」

梓「それじゃ、入るね」

憂「あ、待って! 体拭いてから……」

梓「しつれいします」

ビチャ ベチャ

憂「ああ、いっちゃった……。
  うう……床がビチャビチャだよぉ……」


――ゆいのへや

コンコン

梓「唯先輩、梓です」

梓「お話があるので開けてください」

シーン

梓「ダメか……鍵もかかってる」

憂「もう寝ちゃってるかも」

梓「それはない……いや、唯先輩ならあり得るかな……?」

憂「やっぱりケンカしたの?」

梓「うん……ごめんね憂。私のせいなんだ」

憂「それはなんとなくわかったけど……どうしてケンカしたの?」

梓「そ、それは……軽音部の裏事情なので」

憂「えー、梓ちゃんひどい!」


梓「案外、軽いね憂」

憂「そんなことないよ? 私、お姉ちゃんのこと心配で眠れないんだから!」

梓「あーわかったよ」

憂「だから、梓ちゃんもがんばって!」

梓「うん!」

5分後

梓「うーん……結局ここまで来ても駄目なのか」

憂「まだあきらめちゃダメだよ梓ちゃん!
  仲直りに来たんでしょ!」

梓「そうなんだけど……これじゃあ埒が」

ブブエー♪

梓「あっ、メール」


From :純
Sub:non title

メールだメール!
メールなら相手に気持ち伝わるぜ!
っておじいちゃんが言ってた


梓「……」キョロキョロ

憂「どうしたの梓ちゃん? キョロキョロして」

梓「いや、どっかにカメラなんかあったりしないかと思って」

憂「そんなのないよ?」

梓「……この手でいこう」

憂「どの手?」

梓「メールしてみるよ」

憂「メールかあ……お姉ちゃんメール見るかな?」

梓「見るよ、絶対」


To:唯センパイ
Sub:おねがいです

ドアを開けてください
お話があるんです


梓「送信」ピッ

憂「届くかな?」

梓「届くよ」

ガチャリ

梓「ほらね?」

憂「すごい……さすが梓ちゃん!」

梓「いやいやぁ」テレテレ

梓(ナイスだ純! どっかで見てるようなナイスアシスト!)


梓「さて、それじゃあ、あとは二人で話すから」

憂「わ、私も同席したい!」

梓「大丈夫だから、憂は待ってて」

憂「うう……じゃあ何かあったらすぐに呼んでね?」

梓「わかった」

ガチャ

梓「失礼します」

唯「……!」

梓「ど、どうしました?」

唯「あずにゃん、びしょ濡れだよ!? 風邪引いちゃう!」

梓「大丈夫ですよ。ふふ、ケンカしてても心配してくれるんですね、先輩」

唯「あっ……ふ、ふん!」


梓「さてと……それじゃあ、弁解します」

唯「……」

梓「さっきのメールについてですけど……あれには深いわけがありまして」

唯「……」

梓「あの、えっとですねあれは……」

唯「……ん!」ズイッ

梓「はい? 携帯ですか?」

唯「ん、ん!」ピッピッ

梓「……ああ、わかりました。メールで言えってことですね」

唯「ん!」コクッ

梓(話もしたくないほど怒るだなんて……そんなにショックだったのかな……)

アルファルファー♪

唯「……」


From:あずにゃん
Sub:弁解です

唯先輩の心配ごとのメールの前にちょっとしたいざこざがあったんです
正確には、律先輩のドッキリにひっかかっちゃったわけで
それで、唯先輩も私のことをドッキリにひっかけようとしているのかと思ったんです
なので、あのメールについては撤回したいです
あれはナシです

本当にすみませんでした


唯「……」

梓「……ど、どうですか?」

唯「……」ピッ

梓(あくまでメールの会話ですか)

唯「……ん」ピッ

ブブエー♪

梓「……」


From:唯センパイ
Sub:本当に?

ウソ、ついてないよね?
もっと何かあるよね?
私、知ってるんだから


梓「……?」

梓「これで全部ですよ。ウソなんてついてません」

唯「……」

梓「う……」ピッ

アルファルファー♪

唯「……」


From:あずにゃん
Sub:ウソなんてついてません

これで全部です
他に何かあるんですか?
是非教えてください


唯「……」

梓(唯先輩は何か知ってるようだけど……いったいなんだ?)

唯「……う///」

梓(なんか照れてる……)

唯「……」ジー

梓「……そんなに見ないでください」

唯「……///」

梓(もう、いったい何があるんですか……気になって仕方ないです)

ブブエー♪


梓「えーと」


From:唯センパイ
Sub:知ってるよ

あずにゃん、好きな人がいるんでしょ?
ムギちゃんがさっきメールで言ってた
だから、私が好きって言ったから怒ったんでしょ?


梓「えっ……」

唯「……」

梓(まさかムギ先輩が暴走して唯先輩にメールしてたとは……)

梓(つまり、私に好きな人がいるから唯先輩にきらいだなんて言ったってこと……?)

梓「そ、そんなわけないです!」

唯「!」ビク

梓「誤解ですよ! それは律先輩のことでムギ先輩に相談した結果、
  ムギ先輩の誇大妄想によって生み出された謎の解釈なんですよ! 多分」


唯「???」

梓「あー簡単に言うと、あれはただの勘違いと……」

唯「……ん!」ズイ

梓「ああ、メールですか」

アルファルファー♪

唯「……」


From:あずにゃん
Sub:弁解その2です

つまり、あれはただの勘違いです
私には好きな人はいませんし、嫌いな人もいません
だから、唯先輩のこと、嫌いじゃありませんよ


唯「……」ムスー

梓(あ、あれ? なんだか機嫌がよくないよーな)

唯「……」ピッ

ブブエー♪

梓「あっ」


From:唯センパイ
Sub:わかったよ

じゃあ、あれはムギちゃんの勘違いなんだね
それはわかったけど
あずにゃんは私のこと、好きじゃないの?


梓「ふえっ!?」

唯「……」ジー


梓「そ、それはなんというか……
  す、好きなことは好きですけども……」

唯「ん! ん! ん!」ズイズイ

梓「ま、また、メールでですか」

梓「う……///」

梓「こ、こんな恥ずかしいメール、送れない……///」

唯「……」ジー

梓「うぐ……ええい!」ピッ

アルファルファー♪

唯「!!」


From:あずにゃん
Sub:当然です

何を今さら


好きに決まってます


唯「……!」パアア

梓「うう……///」

唯「あ、あずにゃん!」ッダキ

梓「にゃっ!? い、いきなり抱きつかないでください!」

唯「ごめんねあずにゃん! 私も好き~!」スリスリ

梓「そ、そんなすりつけないでくださいよぉ……」

唯「えへへ、私もびしょ濡れ」

梓「んもう……」

唯「初めてケンカしたから怖かったよ。あずにゃん」

梓「私もです。もうケンカはこりごりです」

唯「これからも仲良しでいようね!」

梓「もちろんです!!」


唯「ところであずにゃん」

梓「何ですか?」

唯「このメールのところでさ、『すきです』って読めるの、やっぱり仕組んだの?」

梓「えっ……? ああ!」

唯「もしや知らなかったの?」

梓「どうりで本音出てるとか言ったんですね……」

唯「えへへ、やっぱりあずにゃんは私のこと好きなんだねぇ」

梓「な!? 違いますよもう!」



憂「私の出番は……必要ないみたいだね」

憂「うう……お姉ちゃんの部屋もびちょびちょなんだろうな……」

憂「妹はつらいよ……」


……


――翌日

澪「ごめんなさい!!」ズサア

梓「そんな、寝土下座なんてやめてください」

澪「いいんだ! あんなことして本当に申し訳ない! お願いだから着信拒否解除してくれ!」

梓「わかりました、もう怒ってないですから。顔上げてください」

澪「着信拒否解除してくれるのか?」

梓「も、もちろんですよ」

澪「あ、ありがとう梓ぁ」

唯「それにしても怖いねえ、このメール」

澪「つい、血が昇っちゃって……」

梓「私、殺されるかと思いましたよ」

澪「本当にごめんなさい!」ズサア

梓「だから寝土下座はやめてください」


律「あのー中野さん? 私はいつまでこれを」

梓「律先輩はそこでずっと正座です」

律「ずっととは……」

梓「ずっとです」

律「す、すみませんでした……」

梓「まったく……元はと言えば律先輩のせいなんですから、反省してください」

律「反省しております」

梓「で、結局あれはウソだったんですね?」

律「だからドッキリだって言ったじゃん。あれ? もしかして本気に?」

梓「そんなわけミジンコもないですから」

律「だよなあ」アハハ

梓(ちょっと本気になってたなんて言えない……)


唯「ぶー」

律「唯も悪かったな」

梓「あっそういえば律先輩、昨日は澪先輩とはどうなったんですか?」

律「ひっ!?」

澪「それは……なあ、律」ニヤ

律「ひいい! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

澪「よしよし。いい子だぞ」ナデナデ

律「う、うれしいですぅ……」

梓(怖くて聞けないです……)

紬「……」ワクワク

梓「ああそれと、ムギ先輩は」

紬「は、はいぃ!」

梓「特に何もないです」


紬「え……」

梓「まあ、ムギ先輩のメールも助けになりましたし。
  あと、『私も叱って!』オーラ出し過ぎなので怒りません」

紬「そ、そんな……」ションボリ

梓「そんながっかりするところですか……」

唯「ねえ、あずにゃん」

梓「はい?」

唯「もう一回好きって聞きたいなあ」

梓「はあああ!? な、何をおっしゃるんですか唯先輩!」

紬「唯ちゃん詳しく!」ワクテカ

梓「だ、ダメですダメです! ここで言うなんて無理です!」

唯「えー言ってよあずにゃ~ん」


梓「うう……じゃあ」

アルファルファー♪

唯「あっ、メール」


From:あずにゃん
Sub:特別ですよ

唯先輩のこと
好きです


唯「むふ! えへへへ!」

梓「んもう……メールでだけ、ですからね」

唯「わかってるよぉ」

紬「ナニコレ……素晴らしいわ……」ハアハア

唯「じゃあ私もお返しに!」

ブブエー♪


梓「早いですね、唯先輩」

唯「へ? まだ送ってないよ?」

梓「じゃ、じゃあ誰が……?」


From:純
Sub:non title

メールでしか伝えきれないものもあるんです
さあ、あなたもれっつとらい!


梓「オチはお前か!」



ハッピーエンド☆

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