ほむら「ヒーローなんてくだらない」虎鉄「!」(274)

虎鉄「聞き捨てならねぇな、今のセリフ」

ほむら「何ですか、いきなり」

虎鉄「ヒーローはくだらくなんてないぞ」

ほむら「どなたか知りませんけど、自分の考えを押し付けないでくれませんか」

虎鉄「別に押し付けようとはしてないだろ」

ほむら「自覚がないのも困りものですね。それじゃ」

虎鉄「おいちょっと待っ……消えた!?」

虎鉄「もしかしてアイツ、ネクストか?」

バーナビー「どこからどう見ても押し付けてるでしょう、それ」

アントニオ(牛角)「だな」

カリーナ「いい年したオジサンが知らない女の子に話しかけるなんて、通報されても文句は言えないわよ」

ネイサン「押し付けてるだなんて……もうイヤラしぃわね、ハンサム」

バーナビー「とか言いながら身体を摺り寄せてくれるの、やめていただけませんか?」

虎鉄「おいおい、誰か一人ぐらい俺の味方をしてくれてもいいだろ?」

キース「私はワイルド君の行動は正しいと思う。ヒーローの素晴らしさを伝えたかったのだろう!」

虎鉄「スカイハイ……」

アントニオ「スカイハイの言うとおりだな」

カリーナ「まぁ、ヒーロー馬鹿にされて、気分はよくないわね」

虎鉄「何か前にもこんなやり取りなかったか? ひでぇな、ったく」

バーナビー「まぁ、オジサンですからね」

ネイサン「そうそう」

帰り道――

虎鉄「なんでこうもスカイハイと扱いが違うのかねぇ。オジサンひねくれちゃうぞ」

虎鉄「それにしても昼間の子はヒーローに何か恨みでもあんのか?」

虎鉄「ん? 視界が、歪む……」

虎鉄「仕事続きで疲れてんのかねぇ」

虎鉄「目を閉じてまぶたをこすれば……そら」

虎鉄「な、ななななんじゃこりゃあ!」

虎徹「悪魔でも出そうな雰囲気じゃねぇか……一体ここはどこなんだよ!」

戸惑う虎徹の目の前に、異形の存在が現れる。
白くて丸い頭に立派なひげをつけたその存在は、ゆっくりとこちらへと歩みをすすめる。

虎徹「オイオイ、マジかよ……ハ、ハロー?」

混乱し挨拶をする虎徹に向かって、その存在は黒く細い腕を振りかぶり――殴る。
しかし虎徹はそれをすんでの所でかわす。

虎徹「うわっとぉ! こりゃやるしかねぇか」

虎徹「うおおおおっ!」

拳を突き出し隙だらけの相手に向かって高速の拳を繰り出す。
スーツを付けていないとはいえベテランのヒーロー。あっさりと相手をノックアウト。

虎徹「なんだ、大したことないな。能力を使うまでもねぇ」

虎徹「どんどん行くぜ! そらっ!」

数分後、虎徹の周りには数十体の化け物が地に伏していた。

虎徹「……ふぅ、終わったか?」

虎徹「さすがにこんだけ相手するとキツいな……てか、どうやってここから出りゃいいんだ」

虎徹「少し休憩……する暇もなさそうだ」

座り込もうとした虎徹の目の間に現れるのは、今までの奴らより遥かにでかく、おどろおどろしい存在。

虎徹「お前がこいつらのボスか。お前の目的は何だ、ていうかお前はいったい何なんだ?」

虎徹の問いに化け物は何の言葉も発しない。
言葉の代わりに返されたのは、植物のつるのムチによる攻撃。

虎徹「うぉわっ! こいつは少しヤバイな、一気に決めるとしますか!」

虎徹「ワイルドに吠えるぜ!」

久々に口にした決め台詞を言った瞬間、虎徹の身体が青き光で包まれる。
ワンハンドレッドパワー、5分間だけ自身の身体能力を100倍にする能力。

虎徹「うおりゃあああああああああ!」

殴る、殴る、ひたすら殴る、殴る。
目にも留まらぬ速さで、両の腕から拳を繰り出す。

虎徹「こいつで止めだ!」

右腕を思いっきりひねり、勢い良く突き出す。
あまりの威力に化け物の巨体が吹き飛び、壁に激突。

虎徹「ふぅ、終わったか……1時間以内に能力を使っていたらどうなってたことやら」

虎徹「使用後1時間は使うことができねぇってのも不便なもんだ」

倒したと思い油断している虎徹を、瀕死の魔女がムチで攻撃を仕掛ける。

虎徹「しまっ――」

しかし突如、魔女の身体が爆発。虎徹を襲ったムチも力なく地に落ちた。

虎徹「た、助かった……ってなんだよ今の爆発!」

ほむら「怪我はないかしら。あら、あなたは昼間の……ヒーロー信者さん?」

虎徹「誰がヒーロー信者だ!」

ほむら「そうね、ごめんなさい。訂正するわ、ワイルドタイガー」

虎徹「なっ!」

ほむら「その表情、これは確定ね」

虎徹「は、はめやがったな!」

ほむら「あなたが使った強力な身体強化……あんな能力を持ってる人なんて限られるわよ、正義の壊し屋さん」

ほむら「悪人を捕まえるためならビルだろうとモノレールだろうと何でも壊す……これのどこがヒーローなんだか」

虎徹「……返す言葉もねぇな」

ほむら「まぁ新ヒーローのバーナビーと組んでからはだいぶおとなしくなってるみたいだけど」

虎徹「ヒーロー嫌いって割には詳しいじゃねぇか」

ほむら「知りもしないものを嫌いになんてなれないでしょう」

虎徹「まぁそりゃそうだけどよ。おわっ、また景色が!」

ほむら「安心して、元の場所に戻るだけ。……ほらね」

虎徹「か、帰ってこれたぁ」

ほむら「それじゃ、私はこれで」

虎徹「いやいや、ちょっと待ってくれ。お前もネクストなのか? てかさっきの化け物はなんなんだよ?」

ほむら「いいえ、私はネクストではない。似たようなものかもしれないけれど」

ほむら「さっきのあれは……魔女と呼ばれる物とその使い魔。人の弱みにつけ込んで命を奪う生き物よ」

虎徹「オイオイ、そんなものが居るなんて初めて知ったぞ……こりゃ他の奴にも教えないと」

ほむら「無駄よ。普通の人間には魔女を認識することが出来ない」

虎徹「普通ねぇ……つまり、ネクストだけが認識ができるってことか?」

ほむら「違うわ。ネクストにも認識はできない」

ほむら「ここでいう普通じゃない人間というのは、魔女と戦う者――魔法少女だけよ」

虎徹「魔法少女ねぇ。でもさっきの俺は魔女を認識できたし、倒したぞ」

ほむら「倒したのは私」

虎徹「う、うるさいっ!」

ほむら「あなたは魔女に狙われ、魔女の結界内に誘い込まれたから認識できたのよ」

虎徹「なるほど……」

ほむら「魔女に狙われるのは精神が弱っている人間……あなたはそんな風に見えないわね。偶然かしら」

虎徹「いや、俺にも悩みの一つや二つあるんですけど……」

ほむら「とにかく、普通の人間には対処のしようがないのよ」

ほむら「魔法少女以外には、いつ誰を狙うか、今どこにいるか……まったく分からない」

虎徹「俺には何もできねぇのか? 人の命が狙われてるっていうのに!」

ほむら「あなたたちヒーローは強盗犯やテロリストなどから市民を守っているでしょう?」

ほむら「魔法少女は魔女から人々を守っている。適材適所なのよ」

虎徹「……分かるけどよ、やっぱ納得できねぇ」

ほむら「頑固ね」

ほむら「それじゃ、そろそろ行くわ」

虎徹「待て」

ほむら「まだ何かあるの?」

虎徹「俺のケータイの番号とアドレス。困ったことがあればいつでも連絡しろ」

ほむら「おせっかいね……まぁ、一応貰っておくわ」

虎徹「おう。それと家まで送ってく。もう遅いしな、女の子が一人で出歩いていい時間じゃない」

ほむら「何か変なことでもするつもりかしら?」

虎徹「ガキにんなことしねーっての!」

虎徹「……ってまた消えやがった。年頃の女の子ってのは分かんねぇなぁ」

次の日――

アントニオ「魔女と使い魔、そして魔法少女か……」

カリーナ「タイガーってそんな女の子向けのアニメ見てるの?」

ネイサン「意外とお子様なのね」

キース「いつまでも子供の心を忘れない。素晴らしいことじゃないかワイルド君!」

虎徹「だからアニメじゃないっての! あと俺はアニメなんて見てない!」

イワン「無念……」ボソリ

虎徹「ん? どうした折紙?」

イワン「いえ、なんでもないです!」

ホァン「子供向けのアニメって結構面白いよ? バトルシーンがすごく本格的だった」

アントニオ「ほぉ、ドラゴンキッドがそこまでいうのか。今度見てみるかな」

虎徹「しれっとアニメ談義してんじゃねぇ!」

バーナビー「オジサンの話、僕は信じますよ」

虎徹「えぇっ!?」

バーナビー「なんであなたが驚くんですか……まぁいいでしょう」

バーナビー「ここ最近、シュテルンビルトでは失踪事件が多発しています」

バーナビー「いずれの事件の被害者も、精神的にかなり参っていたようです。これは、魔女とやらが狙う人間の特徴と一致します」

カリーナ「失踪事件!?」

アントニオ「おいおい! 聞いたことないぞ、そんな話は!」

バーナビー「それはそうでしょう。この情報は一般に公開されてる物じゃありませんから」

ネイサン「なんでハンサムはそんなこと知ってるのかしらぁ?」

バーナビー「ちょっと調べ物してたら偶然。まぁそれはどうでもいいでしょう」

キース「魔女め……許せん、正義の鉄槌を下さねば!」

カリーナ「でも、魔女に狙われない限りあたし達には見ることすらできないのよ」

ホァン「うーん、魔法少女を尾行するとかどう?」

みんな「!!」

虎徹「それ、よさそうだな」

アントニオ「だがここにいる全員でつけるのはかなり目立ってしまうぞ」

カリーナ「尾行ねぇ。この中でやるとしたら……」

ネイサン「そりゃモチロン……」

バーナビー「折紙センパイですね」

ホァン「うんうん」

イワン「分かりました。僕、やります!」

キース「だが折紙君だけでは危険だ。念のためもう一人……」

虎徹「まぁ、そこは俺だろう。ほむらと認識もあるしな」

バーナビー「オジサンが尾行ですか……不安ですが、仕方ありませんね」

アントニオ「壊し屋が尾行か、確かに不安だ」

カリーナ「尾行中に物壊したりしないでよ、タイガー」

虎徹「だーっ! せっかく人がやる気になってるってのに!」

虎徹「ここがほむらが通ってる中学校か」

イワン「バーナビーさん、すごいですね。どこの学校に通ってるかを調べるなんて」

虎徹「あいつはそういうの得意だからな……おっ、来たぞ」

虎徹「折紙、お前は近めの距離で頼む。俺は少し離れて尾行する」

イワン「分かりました、いきます!」ボワン

虎徹「女子中学生か、まぁ無難だな。分かってるだろうけど、途中で姿をこまめに変えろよ?」

イワン「はい!」

イワン「一体どこに向かってるんだろう……」

イワン「あれ、いない!?」

イワン「そんな。ここ一本道な上に、障害物もないのに」

イワン「これが彼女の特殊能力か……仕方ない、失敗の合図を送ろう」

虎徹「!」

虎徹「失敗か……」

イワン「すみませんでした」

虎徹「いや、お前の尾行に問題はなかったと思うぞ。よくやった」

虎徹「あいつが尾行に気づいたのか、それとも偶然能力を使用しただけなのかは分からん」

虎徹「とりあえず、今日はここまでにしておこう。どっかで飯でも食ってくか? 俺のおごりだ」

イワン「え、いいですよ。そんな、おごりなんて……」

虎徹「いいからいいから」

虎徹「食った食った」

イワン「ごちそうさまでした! このご恩は一生忘れませぬ」

虎徹「おいおい、おおげさだな」

虎徹「ん、なんだあれ。空間が裂けてる……まさか!?」

イワン「あの病院がどうかしましたか?」

虎徹「折紙、付いてこい!」

さやか「これってもしかして魔女の……」

まどか「みたいだね、どうしよう」

さやか「ま、まどか! 誰かがものすごい勢いでこっちに来る!」

まどか「もしかしてマミさん!?」

キュゥべえ「いや、あの体格でマミっていうのは少し無理があるんじゃないかな……」

虎徹「お嬢ちゃんたち、ちょっといいかな」

さやか「ごめんなさい、あたしたち急いでるんで!」

虎徹「魔女退治にでも行くのか?」

まどか・さやか・キュゥべえ「!?」

まどか「まさかあなた達も、魔法少女なんですか?」

虎徹・イワン「!?」

さやか「ブッ! ちょ、ちょっとまどか。さすがにそれはないでしょ。この人達、どうみてもオジサンじゃん」

イワン「オジサン……」ガーン

まどか「ご、ごめんなさい。さやかちゃんダメだよそんなこと言っちゃ」

さやか「あはは、すいません」

キュゥべえ「それで、君たちは何者だい?」

虎徹「手短に説明するとだな……」





キュゥべえ「なるほどね、魔女に襲われてるところを魔法少女に助けられたわけか」

さやか「その魔法少女ってもしかして黄色い服を着てた?」

虎徹「いや、黒と紫って感じだな」

まどか「ほむらちゃん!」

さやか「あの転校生が人助けぇ? ないない」

まどか「そ、そんなことないと思うよ」

虎徹「なんだ、ほむらの知り合いだったのか」

まどか「はい、友達です」

さやか「ただのクラスメートです」

虎徹「どっちだよ! ……で、この裂け目はなんなんだ?」

キュゥべえ「魔女の結界へと繋がっているのさ」

虎徹「ってことは、まずいんじゃねーのかコレ」

まどか「はい。でもわたしたちは戦えないから、マミさんを呼びに行こうと思って」

さやか「ケータイの番号教えてもらうべきだったなぁ」

虎徹「俺もほむらに番号教えたけど、あいつの番号教えてもらってなかったなぁ」

虎徹「こうなったら俺が行くしかないか」

さやか「何言ってんのオジサン。魔女に襲われたことあるなら分かってるでしょ、魔女には普通の人間じゃ勝てないって」

虎徹「オジサンは普通じゃないんだなー、これが。おりが……ゴホンゴホン、この二人を頼むぞ」

イワン「分かりました、タイ……先輩もご無事で」

キュゥべえ「ボクも行くよ。ボクがいれば、マミたちがボクの反応を探知して、すぐに追ってこれる」

虎徹「分かった、行くぞ!」

さやか「それじゃ、あたしたちはマミさん探してくる! まどかは学校、あたしはマミさんの家!」

まどか「うん!」

イワン「僕はここに人が近づかないようにしておきます!」

まどか「お願いします!」

虎徹「なんじゃこの結界、お菓子だらけじゃねーか! 美味そうだけど、食うのはやばそうだ」

虎徹「ぞろぞろと使い魔が出てきやがったな。お前らなんて相手にならねぇんだよっ!」

虎徹「魔法少女が来る前に片付けるとしますかね……っと!」

キュゥべえ「使い魔を素手で倒すなんて……君は一体何者だい」

マミ「ここね。キュゥべえ、状況は?」

キュゥべえ『未だに信じられないんだけど、謎のオジサンが素手で使い魔をなぎ倒してるよ……』

マミ「は、はい?」

キュゥべえ『それがまっとうな反応だよね……まぁ実際に来れば分かるさ』

マミ「わ、分かったわ。鹿目さん、美樹さん……それと」

イワン「イワンです」

マミ「イワンさん、あなたは?」

イワン「もちろん、行きます!」

ほむら「巴マミ……今回の魔女は私が狩る。あなたは手を引きなさい」

マミ「それはできない相談ね……少し、そこで休んでいるといいわ」

マミが魔法のリボンでほむらを捕まえようとした瞬間、ほむらの身体が吹き飛んだ。

ほむら「きゃっ!」

直前までほむらが立っていた場所にはイワンが立っており、彼はマミのリボンによって拘束されてしまった。

イワン「ぐっ!」

マミ「イワンさん、どういうつもりですか?」

イワン「今は魔法少女同士で争っている場合じゃないでござる! 人の命がかかっているんでござるよ!」

ほむら「…………」

マミ「……っ!」

マミ「イワンさんに免じて今日のところは見逃してあげる」

ほむら「懸命な判断ね。先に行ってるわよ」

マミ「ちょ、ちょっと……! とりあえずリボンを戻しましょう」

マミ「ごめんなさい、イワンさん」

イワン「気にしてないでござるよ……じゃなくて、してないですよ」

キュゥべえ「マミたちがこの結界の中に来たよ」

虎徹「分かった、ここらへんで待機しておくか」

虎徹「腹減ったなぁ、目の前にお菓子があるのに食べられないとか地獄だろ」

キュゥべえ「食べてもいいよ? どうなるか分からないけどね。おっと、来たようだ」

ほむら「キュゥべえ……ってなんであなたがここにいるのよ」

虎徹「まぁ、いろいろとあってな」

ほむら「どおりで使い魔がいないわけね」

マミ「はぁはぁ、やっと追いついたわ」

イワン「ふぅ、ご無事ですか」

虎徹「おう。楽勝よ、楽勝」

マミ「素手で使い魔を倒すなんて……」

ほむら「お喋りは後よ。この魔女は相当手強い、くれぐれも油断しないように」

マミ「油断なんてしないわよ。魔法少女がそんなことしたら命がいくつあっても足りないわ」

ほむら「……そうね」

虎徹「なんだありゃ、えらくちっこい魔女じゃねーか」

ほむら「巴マミはその男とまどかと美樹さやかを守りつつ援護射撃を。攻撃は私とこのオジサンで行うわ」

マミ「あなたに命令されるのはしゃくだけど……分かったわ」

ほむら「最初は下がってて、私一人でやる。能力を使うのはすぐに魔女が正体を現してから」ボソッ

虎徹「? わかった」

ほむら「蜂の巣にしてあげるわ」

ほむらは機関銃を取り出し、魔女向かって射撃。
ものの数秒で魔女の体は地に伏していた。

虎徹「爆弾の次は機関銃かよ……魔法少女の攻撃じゃねーな」

イワン「あれが、魔法少女の新たな形か……」

マミ「あら、もう終わったの? ずいぶんあっけないのね」

ほむら「馬鹿、油断しないで!」

魔女に近寄るマミに向かって黒く太い棒が伸びていき、マミの目の前には凶悪な牙を持つ口を開ける何かが居た。

マミ「え――?」

マミは動けずにいた。危険が迫ってくるのは分かる。
しかしあまりにもその何かの動きが高速で、頭では分かっているけれど身体が追いつかない。

ほむら「逃げて!」

虎徹「させるかよっ!」

虎徹は能力を発動し、その物体を上回る速度でマミの前に移動。
そしてその牙によって右腕を噛まれた。虎徹の右腕から大量の血が飛び散る。

虎徹「ぐわあああああっ!」

マミ「そ、そんな。わ、私のせいで……」

虎徹「ヒーローを、なめんじゃねぇぞ!」

左腕で何度も殴るがまったくダメージを受けていない。

虎徹「クソッ! なんなんだこいつ!」

ほむら「そいつは本体じゃない! 本体は……そこね、消えなさい!」

最初に現れた小さき魔女の色違いに向けて爆弾を投げつけるほむら。
爆弾が地面に落ち、爆発した瞬間……虎徹とマミの前にいる物体も消え去った。

虎徹「くぅっ……能力使ってこのダメージかよ。なんて奴だ」

イワン「先輩!」

マミ「しっかりしてください! すぐに治しますから!」

虎徹「……治す?」

マミは虎徹の右腕にそっと触れ、魔力を解放する。
黄色い淡き光が虎徹の傷を包み、光が消えたときにはその傷は癒えていた。

虎徹「すげーな、魔法少女ってのは」

マミ「いえ、そんなことないです」

ほむら「私、言ったわよね。油断するなって」

マミ「あ……」

バシッ。ほむらはマミの頬に平手打ちをおもいっきりかました。

マミ「痛っ!」

虎徹「落ち着けってほむら」

ほむら「私はいたって冷静よ。忠告したにも関わらず油断した愚か者に比べたらね」

マミ「…………」

ほむら?「そうかしら? そんな愚か者に心を揺さぶられているあなたも、十分愚か者だと思うわよ」

ほむら「なっ!?」

みんな「!?」

ほむら「な、なななななな!」

ほむら?「何、そのみっともない声。笑っちゃうわ」

ほむら「わ、わわわ私が目の前に……? 何なのこれ!? 今までにこんなこと一度も……!」

ほむら?「簡単に取り乱しちゃうのね。まぁ人間なんて不安定な生き物だし、それが普通なのよ。機械じゃないのでござ……じゃないんだから」

虎徹「そのへんにしといてやれ、折紙」

イワン「……そうですね」ボワン

みんな「!?」

さやか「折紙ってまさか……折紙サイクロン!?」

まどか「わ、私ファンなんです」

イワン「そうなんですか、ありがとうございます」

ほむら「あなたもヒーローだったのね……」

マミ「あなた"も"?」

ほむら「そのオジサン、ワイルドタイガーよ」

虎徹「おいおいバラすなよ……ヒーローってのは正体を隠し続けるもんなの!」

キュゥべえ「ヒーロー……なるほど、それならあの強さにも納得が行くよ」

キュゥべえ(ヒーローが魔女と接触するなんてね、想定外の事態だよ)

キュゥべえ(これじゃあ魔法少女の勧誘の難易度が大きく上昇してしまうじゃないか)

キュゥべえ(いや、これはチャンスかもしれない。ヒーローは通常の人間より遥かに大きな因果を背負っている)

キュゥべえ(まどかほどじゃないけど、莫大なエネルギーを生むだろう)

キュゥべえ(ヒーローで魔法少女になれそうなのはブルーローズとドラゴンキッドの二人)

キュゥべえ(この調子でいけばいずれ接触できる機会が来る。ここはひとまず様子を見るとしよう)

マミ「暁美さん」

ほむら「何かしら」

マミ「その、ごめんなさい! あなたが忠告したのに私……」

ほむら「もういいわ。でも、次からは気をつけて頂戴」

マミ「えぇ……。ワイルドタイガーさんも、ごめんなさい!」

虎徹「気にすんな。職業柄、これぐらいの怪我なんてしょっちゅうしてるからよ」

マミ「あまり、無理しないでくださいね」

虎徹「おう。サンキュな」

次の日――

アントニオ「お前がそんなに手こずったのか。魔女ってのは相当やばそうじゃないか」

カリーナ「タイガー、怪我大丈夫なの?」

虎徹「おう。魔法の力でばっちりふさがってるぞ」

カリーナ「ならいいんだけど……」

ホァン「うーん、どうしよう。テレビとかで発表してもらう?」

キース「ほう、それは素晴らしい! そして素晴らしい!」

ネイサン「ダメよ、そんなことしちゃ。街中がパニックになっちゃうわぁ」

バーナビー「そうですね、具体的な対処法もありませんし」

キース「す、すまない……」

虎徹「俺達に出来るのは、あいつらについていって魔女退治を手伝うことぐらいだな」

バーナビー「ちょっと待ってください。僕たちにはヒーローの仕事もあるんですよ」

バーナビー「魔女の結界に入ってる間にテロが起きたりしたらどうするんですか」

虎徹「毎日全員でやれってわけじゃない。日替わりで誰か一人がつけばいいだろ」

アントニオ「それが無難だな」

カリーナ「魔女か……ちょっと怖いわね」

虎徹「無理にやれなんて言わないさ。普段の戦いよりも命がけになるしな」

ネイサン「魔女が出るのって夜が多いんでしょお? アタシとしては若いコにやらせたくないわね」

バーナビー「となると……僕、オジサン、ロックバイソン、ファイヤーエンブレム、スカイハイの5人ですか」

ホァン「ボクも魔女と戦う。命を狙われてる人がいるのに、何もしないなんてイヤだ」

カリーナ「アタシもよ。怖いけど、アタシはヒーローだもん。ヒーローが戦わなくて誰が戦うのよ」

虎徹「お前ら……そうだな。お前らも一人前のヒーローだ」

イワン「非常に申し上げにくいんですけど、僕は……」

バーナビー「折紙センパイの能力は戦闘向きではありませんからね、仕方有りませんよ」

虎徹「だな。でも昨日の尾行みたいな時には折紙には頑張ってもらうぞ」

キース「適材適所、というやつだな」

イワン「はい、頑張ります!」

アントニオ「それじゃ、今日は誰が魔女探索につきあう?」

バーナビー「僕が行きましょう。魔女という物に興味もありますし」

カリーナ「誰かさんと違ってバーナビーなら安心出来るわ」

虎徹「誰のことだよっ!」

ネイサン「そりゃアンタしかいないわよぉ」

ビービー

虎徹「緊急コール! 事件か!」

バーナビー「行きますよ、オジサン」

虎徹「おう!」

キース「む、これは急がねば! さらばだ諸君!」

カリーナ「魔女の件では味方だけど、番組の時は遠慮しないからね!」

虎徹「こっちの台詞だ!」

昼休み――

まどか「お昼ごはんだね、マミさん呼んで屋上で食べよっ」

さやか「オッケー、転校生も来るでしょ?」

ほむら「え、私?」

さやか「あれ、嫌だった?」

ほむら「そんなことはないけれど、意外だったから。あなた、私のこと嫌ってるから」

さやか「別に嫌いじゃないっての、好きかと聞かれたら分かんないけどさ。勝手に決めつけないでよねー」

ほむら「そ、そうね。ごめんなさい」

ほむら(まだ出会ったばかりだったわね……今までのループ的に考えると、どうしてもね)

さやか「まー、いいけどさ」

アナウンサー「おっとここで事件発生です! 先ほど銀行に強盗が入った模様!」

アナウンサー「犯人は5000万シュテルンドルと逃走用のヘリを要求しているようです!」

アナウンサー「うわっとぉ、近寄った警官が犯人に撃たれた! このまま犯人たちの思うつぼなのか!?」

アナウンサー「この番組は、みなさんご存知超能力を持つヒーローたちが、犯罪や災害など実際の現場で活躍する模様を生放送でをお茶の間にお届け!」

アナウンサー「活躍の内容に見合ったポイントを加算し、キング・オブ・ヒーローを決めてしまおうというエンターテイメントレスキュー番組――ヒーローTV LIVE!」

さやか「あ、ヒーローTV LIVEだ。うーん、見たい!」

まどか「でも屋上ではテレビ見れないよ」

さやか「でもそうするとマミさんが……うーん、どうしよう」

マミ「私がどうかしたかしら?」

ほむら「巴マミ……」

マミ「昨日は本当にありがとう、暁美さん」

ほむら「そうね、感謝の気持ちがあるならコーヒー牛乳でも買ってきてもらいましょうか」

マミ「分かったわ」

さやか「うわー、転校生がダークモード入っちゃった」

ほむら「冗談、冗談だからまともに受け取らないでちょうだい」

マミ「あら、そうだったの」

まどか「マミさん。わざわざわたし達の教室に来て、何かあったんですか?」

マミ「ヒーローTV LIVEやってるみたいだし、こっちの教室で食べようかなって思ったの」

さやか「さっすがマミさん話が分かる!」

アナウンサー「おっと最初に現れたのは、ランキング2位という脅威のルーキー……バーナビー・ブルックスJr.だぁ!」

アナウンサー「自らの能力を100倍にする能力であっという間に犯人達を確保ぉ!」

さやか「さすがバーナビー様! かっこいい!」

ほむら「私はあぁいう優男、あまり好みではないわね」

アナウンサー「おっと、犯人の1人がしぶとく立ち上がり、バーナビーの背後で銃を構えた!」

アナウンサー「バーナビー、ピーンチッ!」

バーナビー『しまった!』

犯人A『死ねぇ!』

犯人B『させるか!』

犯人A『ぐわぁ! おい、何しやがる!』

アナウンサー「なんと別の犯人が銃を奪ったぁ! 一体どういう事でしょうか!」

折紙サイクロン『これが忍法、変化の術でござる!』

アナウンサー「な、なんと銃を奪った犯人の正体は折紙サイクロン! 擬態能力を使ったナイスなプレーだ!」

まどか「かっこいいなぁ、折紙サイクロン。実は昨日サインもらっちゃったんだ」

さやか「まどかの趣味が分からん……まぁ素顔は結構イイ感じだったけど」

バーナビー『ありがとうございます、折紙センパイ』

折紙サイクロン『何のこれしき。あ、拙者にかかればちょちょいのちょいでござるぅ!』

アナウンサー「最近の折紙サイクロンは見切れだけじゃない! 今後が実に楽しみなヒーローです!」

アナウンサー「しかし、バーナビーの相棒であるワイルドタイガーは一体何をやっていたのでしょうか!」

アナウンサー「ここで情報が入りました!」

アナウンサー「ワイルドタイガーは得意のワイヤーで2階から侵入を試みたのですが、なんとワイヤーの操作を誤ってがんじがらめになってしまったそうです!」

アナウンサー「かつての人気ヒーローもそろそろ限界でしょうか……」

さやか「ぷぷっ」

ほむら「情けない」

マミ「昨日はあんなにかっこ良かったのに、ウフフ」

まどか「テレビ苦手なのかなぁ」

放課後――

バーナビー「どうも、バーナビー・ブルックスJr.です。今日はよろしくお願いします」

ほむら「よろしく」

マミ「よろしくお願いします」

さやか「ほ、本物のバーナビーさん! 今日の活躍すごかったです! できたら握手してください!」

バーナビー「握手ですか? いいですよ」

さやか「きゃー! 今日は手洗わずに寝よっ!」

まどか「さやかちゃん、はしゃぎ過ぎだよ……」

バーナビー「しかし、一般の方を二人もつれていくのは危険だと思いますが……」

ほむら「そう言ったのだけれど、どうしてもヒーローを生でみたいって聞かなくて」

さやか「だってこんな間近でヒーロー見れる機会なんて滅多にないんだもん!」

ほむら「はぁ……もう満足したかしら?」

さやか「あ、あとこの色紙にサインを!」

バーナビー「分かりました。お名前は、美樹さやかさんでよろしかったですか?」

さやか「は、はいっ!」

バーナビー「はい、どうぞ」

さやか「ありがとうございます! 一生家宝にします!」

まどか「それじゃ、そろそろ行こう。さやかちゃん」

さやか「……本当にもう、魔女退治ついて行っちゃ駄目なんですか?」

マミ「ごめんなさい。自分の身も守れないような私には、あなた達を守り切る自身がない」

ほむら「見たでしょう、ワイルドタイガーの腕が鮮血で染まるところ」

ほむら「ワンハドレッドパワーを使ってもあのダメージ……巴マミや私では一撃で死に至るわ」

さやか「でも……」

バーナビー「君に、傷ついて欲しくないんですよ」

さやか「あ、ありがとうございます……。行こう、まどか」

まどか「うん、お邪魔しました」






ほむら「見事な営業トークとスマイルね」

バーナビー「ありがとうございます」

バーナビー「魔女探索は案外地道な活動ですね。あっさり見つかると思いましたよ」

マミ「何日も連続で魔女が現れる最近のシュテルンビルトが異常なんです。普通は数日から数十日を開けて出現するものですから」

バーナビー「なるほど……」

ほむら「巴マミ」

マミ「えぇ、魔女の反応ね」

バーナビー「シュテルンビルトは今日も異常ってことですか、やれやれ」

バーナビー「何だこれは……人が大勢倒れている!」

ほむら「精神の弱った人間を集めて、集団自殺でもさせようとしたのね」

バーナビー「どうやら僕が思ってる以上に、魔女というのは手ごわそうだ」

マミ「行きましょう」

バーナビー「これが魔女の結界の中ですか」

バーナビー「なんだこれ、自分の身体が伸びたり縮んだり……くっ、身動きがとれない!」

ほむら「普通の人間じゃこの結界内に順応できないみたいね」

バーナビー「普通の人間、ですか。それなら――」

バーナビーの身体を青き光が包みこみ、伸び縮みしていた身体は元の姿を取り戻した。

マミ「虎徹さんと同じ能力でしたっけ。5分間だけ能力を100倍にする、百獣の王の力(ハンドレッドパワー)」

バーナビー「えぇ。何の因果か知りませんが」

宙を漂うパソコンの魔女とそれを取り巻く薄気味悪い人形。

バーナビー「あの片翼の天使みたいな人形が使い魔でしょうか」

ほむら「そう。使い魔に触れられるとどこかに運び去られてしまうから気をつけて」

バーナビー「素手で戦う僕とは相性がよくないですね……」

マミ「私と暁美さんが使い魔の相手をします。バーナビーさん、魔女をお願いできますか?」

バーナビー「分かりました」

ほむら「異存はないわ」

マミとほむらの銃から放たれる弾丸が、宙に浮く人形を次々と砕いていく。
そしてあっという間に、魔女の近くに居た使い魔があらかた破壊された。

バーナビー「やりますね、今だ!」

バーナビーは弾丸に匹敵するスピードで魔女に向かって走り、数メートルもの跳躍。
そして右足を後ろにひねり、魔女に向けて蹴りをかました。
魔女の身体のど真ん中に大きな風穴が開き、魔女は砕け散った。

ほむら「ふぅ。大したことなかったわね」

マミ「あら、油断は禁物よ?」

バーナビー「戦闘能力は大したことなかったですね。まぁ、一般人からしたら化け物でしょうけど」

ほむら「魔女は個体によって能力が大きく異なるわ。今日の魔女は人を操る能力に長けていたの」

バーナビー「あなた方がいなかったら数十人もの被害者が出ていたでしょうね……恐ろしい」

マミ「暁美さん、ひとつ聞いてもいいかしら」

ほむら「なに?」

マミ「あなた、あの魔女について妙に詳しかったわよね。魔女というか、使い魔ね」

バーナビー「使い魔に触れると運び去られてしまう……って言ってましたね」

マミ「えぇ。なぜそんなことを知っているの?」

ほむら「ごめんなさい。それはまだ話せない」

マミ「そう……」

ほむら「いつか、必ず話すわ」

マミ「わかったわ、約束よ」

ほむら「えぇ」

さやか「ふぅ、やっとお昼かー」

まどか「ほむらちゃん、一緒にご飯食べよ!」

ほむら「えぇ、いいわよ。今日も屋上?」

さやか「天気のいい日は屋上が一番っしょ!」

まどか「そうだよねー。じゃ、マミさん呼びに行こっ」

さやか「誰が一番早くマミさんの元へ行けるか競争だっ!」ドンッ

「きゃっ!」

さやか「いったたた……」

「ごめん、大丈夫?」

さやか「いやぁ、こちらこそすいませーん」

「あれ、キミは……美樹さやかちゃん?」

さやか「え、なんであたしの名前知ってるんですか」

「うーん、ここで話すのはちょっとまずいよなぁ。屋上にでもいかない?」

さやか「いいですけど……」

「暁美ほむらちゃんと、鹿目まどかちゃんだよね。よろしく」

ほむら「よろしくって……何者なの、あなた」

「それは後で!」

マミ「お待たせ」

さやか「それじゃ屋上行きますか」

「周りには誰もいないね……ここなら」

ほむら「まどかと美樹さやかは下がってなさい」

「そんなに警戒しなくても」

マミ「誰とも知れぬ相手に警戒するなって、無理があると思わない?」

「あはは、そうだね」

「ボクはホァン・パオリン。ヒーローとしての名前はドラゴンキッド」

ホァン「よろしくね!」

さやか「おぉおおお! ヒーローの時も可愛いけどプライベートだともっと可愛いんですね!」

ホァン「そうかな? ボクよりさやかちゃんのほうが可愛いと思うよ」

さやか「えっ、あたしなんて全然可愛くないですよぉ」

まどか「な、なんだかすごい知り合いが増えていくね……」

ほむら「二人とも、油断しないで」

マミ「そうよ。あなたがヒーローだという証拠はあるのかしら?」

ホァン「うーん、証拠かぁ……。あ、タイガーに電話掛けてみるね」ピッポッパッ

虎徹『ドラゴンキッドが電話をかけてくるなんて珍しいな。どうかしたのか?』

ホァン「学校でほむらちゃんたちに話しかけてみたんだけど、本当にヒーローなのか疑われちゃってて」

虎徹『なるほどなー。んじゃ、ほむらに代わってくれ』

ホァン「うん。はい、ほむらちゃん」

ほむら「どうも……私よ」

虎徹『おう、ほむらか。相変わらず慎重だな』

ほむら「今回は私じゃなくて巴マミだけどね」

マミ「え、私何かしたかしら?」

虎徹『ほほう、マミがか。成長してるじゃないか』

ほむら「私からすれば、まだまだね」

マミ「一体何の話をしているのかしら?」

虎徹『手厳しいねぇ。んじゃ、そろそろ切るぞ』

ほむら「えぇ、じゃあね」ピッ

スパイダーマン「!」
アイアンマン「!」
ソー「!」
キャプテン・アメリカ「!」
X-MEN一同「!」
デアデビル「!」
ハルク「!」
パニッシャー「そうだな」

マミ「暁美さん、一体虎徹さんに何を……まだまだねってなに?」

ほむら「それは……ふふっ、秘密よ」

マミ「もう、いじわるね」

ホァン「ボクが本物のヒーローだって分かってくれたかな」

ほむら「えぇ……悪かったわ」

マミ「疑ってごめんなさいね」

ホァン「ううん。こっちの不手際だし、別にいいよ」

まどか「ホァンちゃんも2年生なんだ」

ホァン「うん。みんなとクラスは違うけどね」

ホァン「今日はボクが探索に付き合うから、挨拶しておこうかなって」

さやか「学校に行ったり、ヒーローやったり、魔女退治したり……すごい生活ですね。あたしだったら絶対無理ですよ」

マミ「学校と魔女退治だけでも大変なのに、それに加えてヒーローなんて。体は大丈夫?」

ホァン「大丈夫だよ、身体の強さには自身があるし! それに、魔女退治のお手伝いは週に1回だからね」

まどか「美味しそうなお弁当だね。お母さんが作ってくれてるの?」

ホァン「えーっと……ボク、家族とは別居してるんだ」

ホァン「ヒーローになれることが決まって、祖国からシュテルンビルトに一人で来たの」

まどか「そうだったんだ、ごめんなさい……」

ホァン「いいって、気にしないで」


マミ「じゃあ、今は一人暮らし?」

ホァン「ううん。会社の人と二人で暮らしてるよ」

まどか「会社の人と二人暮らし……なんだか大変そう」

ホァン「そんなことないよ? いい人だし、お料理も上手だし……時々うるさいけど」

さやか「確かにその玉子焼きはうまそうですな」

ホァン「あ、食べてみる?」

さやか「えっ、いいの? やった」

ホァン「はい、あーん」

さやか「あーん……もぐっ。これ、めちゃうまっすよ!」

ホァン「この玉子焼き、大好きなんだ」

放課後――

ホァン「それじゃ、行こっか」

マミ「えぇ」

ほむら「分かったわ」

さやか「がんばってねー」

まどか「気をつけてね……みんな」

ホァン「これが魔女の結界の中か……なにこれ、何もかもが白と黒で出来てる」

ほむら「こいつは使い魔を利用して全方向から攻撃を仕掛けてくるわ。回避は困難、気をつけて」

そう注意した瞬間、本体から伸びるような細い使い魔がありとあらゆる方向から襲いかかってくる。

マミ「回避ができないなら、撃ち落せばいいだけの話よ!」

大量のマスケット銃を繰り出し、巧みに使い魔を迎撃していく。

マミ「くっ、なんて固さなの! まずい、囲まれた!」

ほむら「マミ!」

ホァン「ボクがなんとかする。ほむらちゃんは本体を!」

マミを取り囲んで襲いかかる使い魔に向かって、神速の電撃を繰り出して動きを封じながら接近。
そして雷を拳と脚に宿し、格闘戦を仕掛ける。

ホァン「ほぁああああああああっ!」

マスケット銃と電撃のダメージが蓄積してるせいか、ホァンの攻撃により使い魔は次々と倒れていく。

ホァン「大丈夫?」

マミ「ありがとう、パオリンさん」

ほむら「この魔女、やっぱりしぶといわね……これ以上爆弾を消費したくはないのだけれど」

ホァン「ほむらちゃん!」

ほむら「使い魔は片付いたようね」

マミ「パオリンさんのおかげでね。この魔女も使い魔同様、そうとう固いみたいね」

マミ「でも使い魔と違って動かないのよね。ここは私に任せて」

ほむら「あぁ……アレね。頼んだわよ」

マミ「最終砲撃(ティロ・フィナーレ)!」

普段とは比べものにならないほどの巨大な銃を構え、トリガーを引く。
大砲とも言えるような弾丸は、魔女の身体を無へと返した。

ホァン「あれが、魔女……手ごわいね」

ほむら「あいつは魔女の中でも結構強い部類だと思うわ」

ホァン「結構? あれよりもっと強いのがいるんだ」

ほむら「……えぇ」

マミ「パオリンさんがいなかったらどうなってたか分からないわ。本当にありがとう」

ホァン「マミさんもすごかったと思うよ。最後の大きな銃の攻撃とか。えっと、ティロ……」

マミ「ティロ・フィナーレよ。結構名前に自信があるのだけれど、どうかしら?」

ホァン「かっこいいと思うよ。アニメのキャラの必殺技みたい」

マミ「フフ……嬉しいわ。あなたは必殺技とかあるの?」

ホァン「うーん、ボクは持ってないなぁ必殺技。なにか考えてみようかな」

マミ「本当? じゃあ一緒に考えましょ!」

ホァン「ウン、面白そうだね」

ほむら(厨二病患者が一人増えてしまった……)

ホァン「戦ったらお腹すいたなぁ」

マミ「喫茶店でもよらない?」

ホァン「そうだね……あれ、バーナビーさん?」

バーナビー「おや、ドラゴ……おっと。魔女探索の帰りですか? お疲れ様です」

ほむら「あなたは?」

バーナビー「調べ物の帰りですよ」

バーナビー「あ、少しご相談があるのですが」

ほむら「何かしら?」

バーナビー「キュゥべえを少し貸していただけませんか」

キュゥべえ『ボクにようかい?』

バーナビー「えぇ、ちょっと」

ほむら「私たちが同席してはまずい話でもあるの?」

バーナビー「そうですね……いや、暁美さんなら」

マミ「なんだか難しい話かしら。別に私は構わないわよ」

バーナビー「ありがとうございます」

マミ「暁美さん、今日はお疲れ様。また明日ね。パオリンさん、行きましょ」

ホァン「うん。またね」

ほむら「えぇ、また明日会いましょう」

ほむら「このあたりなら人もいないわね。それで、キュゥべえに何の用?」

バーナビー「質問がありまして」

キュゥべえ「なんだい? 僕に答えられることがあればなんでも答えるよ」

バーナビー「ではお聞きします。魔女とは一体何ですか」

キュゥべえ「人類に災いをもたらす悪いヤツさ。何度も見てきたよね?」

バーナビー「そういう話をしているのではありません。魔女はなんのために存在しているのです?」

キュゥべえ「さぁ……分からないよ。君は何が言いたいんだい」

バーナビー「なら質問を変えましょう。あなたは一体何者ですか」

キュゥべえ「ボクはキュゥべえ。魔女と戦ってくれる魔法少女を探しているんだ」

バーナビー「あなたはなぜそんなことをしているのですか」

キュゥべえ「なぜって……魔女を放っておいたら人類が滅ぶかも知れないからさ」

バーナビー「人類が滅んであなたに何か不都合でも? 人類以外の生物からしたら、人類なんて滅んだほうが都合がいい」

バーナビー「まぁ、あなたはただの動物ではないでしょうけれど」

キュゥべえ「やれやれ……やっぱり大人相手では苦しいか。教えてあげるよ、魔法少女の真実を」

キュゥべえ「ボクが話さなくてもいずれ君が話すだろうしね、暁美ほむら」

バーナビー「魔法少女が魔女になる、だって?」

キュゥべえ「そうさ。でもこれは宇宙全体を守るためなんだ、仕方ないよ」

バーナビー「確かに、あなたの言う事は筋が通っているかもしれない」

虎徹「ふざけんじゃねぇ!」

ほむら「!」

バーナビー「オジサン!?」

虎徹「そんなこと、俺は絶対に許さねぇ」

ほむら「虎徹……」

キュゥべえ「君が許そうが許すまいが関係ないんだよ」

キュゥべえ「古くは人類が誕生してから、ボクたちインキュベーターは人類の願いを叶えてきてるんだ」

バーナビー「そんな昔からとは……」

キュゥべえ「ボクたちがいなければ、人類は未だに裸でほら穴にでも住んでたんじゃないかな」

虎徹「ほら穴上等じゃねぇか!」

キュゥべえ「今よりも死ぬ人間の数、多いと思うよ? 病気に対処する術も、食べ物を栽培する術もないんだから」

虎徹「そ、それは……」

キュゥべえ「話は終わりかな? じゃ、ボクはこれで」

虎徹「待て、話はまだ終わっちゃいねぇ!」

虎徹「この話を知ってるのはお前だけなのか、ほむら?」

ほむら「えぇ、それとあなた達二人だけ」

虎徹「そうか。バニー、この事は誰にも話すなよ」

バーナビー「分かってます。オジサンこそ気をつけてくださいよ」

虎徹「んだとぉ!」

ほむら「喧嘩はよそでやってちょうだい」

バーナビー「インキュベーターは先ほど、ボクが話さなくてもいずれ君が話すだろう……と言っていた」

バーナビー「あなたはすべて知っていたんですね。一体どういうことですか?」

ほむら「ここまで知ってしまったのだし……話すわ、私が魔法少女という存在を知ってからのこと、すべて」

ほむら「私がシュテルンビルトに来た当初、私は勉強も運動も駄目駄目で死にたいなぁって思ってた」

ほむら「それにつけこまれ、魔女の結界に取り込まれてしまったところを魔法少女である鹿目まどかと巴マミに助けられた」

虎徹「まどかが魔法少女!?」

ほむら「すぐに分かるから少し黙ってて」

虎徹「すまん」

ほむら「私はまどかやマミと日々を過ごすようになり、毎日が楽しかった」

ほむら「でも、その幸せはあっさりと崩れ去ってしまった。強大な魔女の存在によって」

ほむら「その魔女の名はワルプルギスの夜――名前と言ってもある魔女単体を指し示すものではない」

ほむら「強力な魔法少女が魔女になってしまったとき、それはワルプルギスの夜と呼ばれる存在になる」

ほむら「強い魔法少女であればあるほど、魔女になったときも強い。マミも、まどかもそいつと戦って死んでしまった」

ほむら「絶望する私の元にインキュベーターが現れ、私はあいつと契約を果たした」

ほむら「そして私は手に入れたの、まどかとの出会いをやり直すための能力、時間遡行を」

バーナビー「なるほど、過去に戻る能力ですか」

虎徹「だから魔女の特徴とかに詳しいんだな」

ほむら「話、続けるわよ」

虎徹「お、おう」

ほむら「私はまどかやマミと再びであった。今度は同じ魔法少女として」

ほむら「二人と共に魔女と戦う日々が始まったわ。でも、今度はワルプルギスの夜との戦いの後、まどかが魔女になってしまった」

バーナビー「魔法少女が魔女になる条件は、非常に大きな負の感情を抱えたとき、あるいは魔力を使い過ぎてソウルジェムが濁り切ってしまったときでしたね」

ほむら「えぇ……。ワルプルギスの夜との戦いで、まどかは自分の使える魔力の量を遥かに超える量を使ってしまったの」

ほむら「魔法少女が魔女になることを知った私は、再び時間を戻しみんなにそれを伝えた」

ほむら「でも、誰も信じてくれなかった。そして美樹さやかが実際に魔女になるところを見て、マミが絶望し、もう一人の魔法少女である佐倉杏子を殺害」

ほむら「私もマミに殺されそうになったけど、その前にまどかがマミのソウルジェムを砕いた」

ほむら「私とまどかでワルプルギスの夜に挑んだけど、またまどかが魔法少女に……」

ほむら「その時まどかに頼まれたの、キュゥべえに騙される前の馬鹿な私を助けてって」

ほむら「時間を巻き戻し、私は転校前から行動をはじめた。キュゥべえを死なない程度に傷つけて、あいつの行動を妨害」

ほむら「ほとんどの魔女は私一人で片付けた。でも、ワルプルギスの夜との戦いで死にそうになる私を見て、まどかは契約してしまった」

ほむら「そして今に至るの」

虎徹「ほむら……大変だったな」

ほむら「別に同情はいらないわ。自分で決めた道だもの」

虎徹「こんな話聞いたら誰だって心配するだろーが。変な意地張ってんじゃねぇ」

ほむら「別に意地なんて張ってない」

虎徹「張ってる!」

ほむら「張ってない」

バーナビー「暁美さんはともかく……オジサン、あなたいい年した大人でしょう。恥ずかしくないですか」

ほむら「ぷっ」

虎徹「今笑ったな!」

ほむら「ごめんなさい、年下の人にそんなこと言われるオジサンなんて見たことなくて……ふふっ」

虎徹「一体いつから俺はいじられキャラになったんだよ」

バーナビー「そうですね、ヒーローになった頃からずっとじゃないですか?」

虎徹「お前まだ生まれてないだろ!」

バーナビー「ハハッ、そうでしたね」

虎徹「ったく……ん?」

バーナビー「どうしました?」

虎徹「シッ」

虎徹「誰かの泣き声が聞こえる……まさか、聞かれた!?」

「!」

物陰に隠れていた人物が逃げ出す。その後姿には見覚えがあった。

虎徹「待て、マミ!」

ほむら「まずいわ、今の彼女は何をしでかすか分からない!」

虎徹「追いかけるぞ!」

バーナビー「分かりました!」

虎徹「ワイルドに吠えるぜ!」

バーナビー「能力使うんですか。こんな時に犯罪者でも現れたらどうするんです」

虎徹「今だって人の命がかかってんだ、んなこと言ってられるか!」

バーナビー「やれやれ、あなたという人は……はぁあああっ!」

ほむら「そういうあなたも能力使ってるじゃない。やれやれ……」

バーナビー「くっ、完全に見失ってしまった」

ほむら「手分けして探しましょう」

虎徹「分かった!」

バーナビー「こっちの方に行ったと思ったんですが……」

バーナビー「ん?」

バーナビー「そこに居るのは分かってますよ」

マミ「上手く隠れたと思ったんだけど……さすがヒーローね」

バーナビー「それほどでも。その銃、降ろしていただけませんか」

マミ「別にあなたを撃とうしてるわけじゃないわ。自分を撃とうしてるの」

バーナビー「見れば分かりますよ。もう一度言います、銃を降ろしてください」

マミ「魔法少女が魔女になるなら、死ぬしかないじゃない!」

バーナビー「落ち着いてください、条件が整わない限りは魔女にはなりません」

マミ「分かってるわ! でも、いずれはきっと魔女になってしまう」

バーナビー「まだ分からないですよ、そんなこと」

マミ「あなたは魔法少女じゃないからそんなことが言えるのよ」

マミ「魔女との戦いで傷ついても、誰かを助けても、お礼すら言われない」

マミ「こんなこと誰にも相談できないし、一人ぼっちで泣いてばかり」

バーナビー「一人ぼっち……数年前に、ご両親を亡くされたんでしたね」

マミ「そうよ。家族がいない辛さなんて、あなたには分からないわ!」

バーナビー「僕は4歳の時に、目の前で両親を殺されました」

マミ「え?」

バーナビー「両親がいない辛さなんて、嫌というほど味わってきましたよ」

マミ「そうだったの……軽はずみな発言だったわ」

マミ「でもそれなら分かるでしょ」

マミ「こんな孤独で報われない生活続けていたら、いずれ精神が病んでしまう。そうしたら魔女に……」

マミ「魔女になって誰かを傷つけるぐらいなら、死を選ぶわ」

バーナビー「魔法少女である暁美さん。魔法少女ではないけれど事情をある程度知っている鹿目さんと美樹さん……」

バーナビー「あと、最近はドラゴンキッドとも学校でよく話しているんでしたっけ」

マミ「……何が言いたいのかしら?」

バーナビー「魔法少女について知っている人間があなたの周りには4人もいる」

バーナビー「あなたは一人なんかじゃありませんよ。周りに頼れる人間がいることに気づいてないだけです……どこかの誰かみたいに」

マミ「暁美さんとはあまり仲良く慣れてないし、鹿目さんと美樹さんにはこれ以上魔法少女に関わらせたくない」

マミ「パオリンさんはヒーローで大変でしょうし……」

バーナビー「やれやれ」

バーナビー「……だ、そうですよ。みなさん」

マミ「え?」

さやか「水くさいですよマミさん!」

まどか「相談に乗るぐらいなら、わたしにも出来ると思います」

ほむら「まったく、あなたはどれだけ愚かなの」

ホァン「市民の相談に乗るのも、ヒーローの役目だと思うよ。大事な友だちの事なら、なおさらね」

マミ「みんな……」

バーナビー(僕は退散するとしますか)




マミ「待って」

バーナビー「?」

マミ「ありがとう、ブルックス……いいえ、バーナビーさん」

マミ「もっとクールな人だと思っていたけど、案外違うのね」

バーナビー「まさか。僕はいつでもクールですよ」

バーナビー「それじゃ、僕はこれで……」

バーナビー「お待たせしました」

虎徹「おう、上手くいったみたいだな」

バーナビー「えぇ……あの様子なら、巴さんはもう大丈夫かと」

虎徹「さすが、クールバニー」

バーナビー「僕はバニーじゃないと何度言えば分かるんですか。おまけにクールなんてつけたら冷凍兎ですよ、気持ち悪い」

虎徹「冷凍兎……一気に生々しくなったな」

バーナビー「それにしても魔法少女と魔女のシステム、ですか」

虎徹「宇宙人ってのはなんて物を作りやがるんだよ……人の命を何だと思ってやがる」

バーナビー「今、僕らが最もすべきことはワルプルギスの夜への対処ですね」

虎徹「あぁ、ほむらの話では、シュテルンビルトが崩壊するなんていうヤバイ魔女だしな」

バーナビー「こんな大きな街を滅ぼすなんて、正直想像できませんよ」

虎徹「ほむらとマミとヒーロー全員で挑めば何とかなる……と思いたいが」

キュゥべえ「無理だね」

虎徹「テメェ、どの面下げて……」

キュゥべえ「これはまた、えらく嫌われたものだね」

バーナビー「魔法少女2人とヒーロー8人で戦って勝てないと?」

キュゥべえ「あぁ。ワルプルギスの夜は今までの魔女と格が違うのさ」

キュゥべえ「でも、あと2人ぐらい強力な魔法少女がいれば別さ」

虎徹「2人? まさか……」

キュゥべえ「そう、ブルーローズとドラゴンキッド。この2人なら強力な魔法少女になれるよ」

キュゥべえ「ヒーロー2人とこの街全ての市民……君たちはどちらを選ぶんだい?」

バーナビー「貴様……!」

キュゥべえ「そろそろ僕は行くね。契約する気になったらいつでも呼んでよ」

バーナビー「どうすればいいんだ……」

虎徹「俺達だけで話しあっても仕方ねぇ。明日、みんなで話し合おう」

バーナビー「ブルーローズとドラゴンキッドにもですか」

虎徹「……そうだ」

次の日――

虎徹「忙しいところ集まってもらってすまない。ちょいと長いが、大事な話がある」

アントニオ「魔法少女の2人がいるってことはそっち方面の話題だろうな」

キース「ふむ、聞かせてくれたまえ」

虎徹「あぁ。今からする話は、シュテルンビルトの未来に関わる大問題だ」

ネイサン「……シュテルンビルトが滅ぶですって」

キース「ワルプルギスの夜……一体どんな魔女なのだろう」

イワン「ヒーローと魔法少女全員で戦っても勝てないなんて」

カリーナ「勝つにはアタシとドラゴンキッドが魔法少女になるしかないなんて! どういうことなのよ」

ホァン「勝てないかどうかは、やってみないと分からないよ。インキュベーターの作戦かもしれないし」

ほむら「申し訳ないのだけれど、私も勝てないと思ってるわ」

アントニオ「何だとっ!」

虎徹「ほむらはワルプルギスの夜に負けたことはないんだよな?」

ほむら「えぇ……でもそれは、強力な魔法少女であるまどかが居たからよ」

ネイサン「アタシ達だけじゃ無理なら……軍に要請をするしかないわね」

ほむら「忘れたの? 魔女は普通の人間には認識できない」

ほむら「ワルプルギスの夜は強力な魔女だから私たちの世界に直接侵入し、破壊を行う」

ほむら「この時、普通の人間は魔女の破壊活動を竜巻や雪崩、津波などの自然災害として認識するの」

ホァン「あれ? じゃあなんでボクたちは魔女を認識できるんだっけ」

マミ「私たちについてきて魔女の結界に入り、魔女の存在を自分の目で見て知ったからよ」

キース「ならば軍の人々にも魔女の結界に入ってもらえば解決、そして解決!」

ほむら「残念ながら、今までの経験からするともう魔女は出ないわ」

キース「むむむ……やはり私たちだけで対処するしかないのか」

カリーナ「魔女って魔法少女がなるのよね。なら、魔女になる前に何とかできないのかな」

ほむら「!」

バーナビー「なるほど、それなら……」

マミ「いい案だと思うけど、問題がいくつもあるわ」

マミ「まず、今回のワルプルギスの夜がいつ魔女になったのか」

マミ「今の時点で既に魔女になってたのならどうにもならないわ」

カリーナ「姿を現すのは今から一週間後でしょ? 暁美さんの話によれば」

キース「姿を現す時と、魔女になる時が同じ……とは限らないのではないだろうか」

カリーナ「あ、そっか……」

バーナビー「この街を襲うワルプルギスの夜は、まだ魔女になってないと思います」

ほむら「理由は?」

バーナビー「暁美さんが体験した限りでは、街を襲う日は決まっているんですよね?」

ほむら「えぇ」

バーナビー「もし既に魔女になっているのなら、決まった日に襲うといのはおかしいと思います」

バーナビー「魔女にとってはいつ襲ってもいいでしょう。明日だろうと、明後日だろうと、5日後だろうと」

アントニオ「確かに。おかしな話だ」

バーナビー「逆に、まだ魔女になっていなかったとしましょう」

バーナビー「その場合、ワルプルギスの夜が現れる一週間後に、何か絶望するような事が起きるということになります」

バーナビー「例えば肉親の寿命がくる、と言ったように、決まった日に不幸な事が起きるというのは普通に考えられる話ではないでしょうか」

ほむら「なるほど……そんなこと考えもしなかったわ」

マミ「バーナビーさんの話を信じるとして、私たちに出来ることって何かしら」

ホァン「一週間後に不幸に会いそうな人を探すんだよね」

キース「そしてその人を絶望から救いあげる、そして救いあげる!」

虎徹「さすがに無理があるだろ……。シュテルンビルトに何人住んでると思ってるんだ」

ほむら「でも、現状で出来そうなのはそれぐらいよ」

アントニオ「砂に埋もれた金を探すような作業だな」

バーナビー「こういう作戦は、折紙センパイが本領発揮しそうですね」

イワン「久々に僕の能力を生かせそうだ……頑張ります」

3日後――

ほむら「あと4日でワルプルギスの夜が来るっていうのに何もつかめてない……」

虎徹「まだ4日もある、って考えろ。諦めんじゃねぇ」

ユーリ「おや、これはこれは」

虎徹「ユーリさん」

ほむら「知り合い?」

虎徹「あぁ、シュテルンビルト司法局のヒーロー管理官、かつ裁判官っていうすげぇ人だ」

ユーリ「そちらはあなたの娘さん……ではありませんね」

ユーリ「幼い女性と2人で歩くのは、あまり関心しませんね」

虎徹「べ、別に変なことしたりしてませんよ!」

ユーリ「あなたがそんなことをする人間だとは思っていませんよ」

ユーリ「あぁ、一つお尋ねしたいのですか……近頃、何か妙な事はありませんでしたか?」

バーナビー「妙なことですか? いきなりどうしたんです」

ユーリ「先日、あなた方ヒーローによって、様々な物を察知するネクストが逮捕されましたよね」

虎徹「あぁ、ベビーシッター三人組ですか」

ユーリ「ベビーシッター?」

虎徹「誘拐犯という名の、それはそれはお高いベビーシッターということですよ」

ユーリ「なるほど」

虎徹「あいつらがどうかしたんですか?」

ユーリ「あの三人の中に、危険を察知するネクストがいますよね。彼女がここ数日、妙に怯えているみたいなんですよ」

ユーリ「大きな危険がくる、この街は滅びる……とかなんとか」

虎徹「それって、まさか……」

ユーリ「おや、その様子では何か心当たりがあるようだ。お時間があるのなら、刑務所の方に行ってみますか?」

ほむら「虎徹……」

虎徹「あぁ、お願いします」

危険察知「この街を滅ぼすような危険がくるのよ……もうどうにもならないわ」

虎徹「お前、確か危険を匂いで判断するんだよな。なら、どこら辺からその匂いはするか分かるか?」

危険察知「ここからじゃ分からない……外に出てみないと」

虎徹「ユーリさん、何とかなりませんかね」

ユーリ「残念ながら、それは出来ません」

虎徹「お願いします、シュテルンビルトに住む市民全員の命がかかっているんです!」

ほむら「私からもお願いします!」

ユーリ「何か深い事情がありそうだ。お話しいただけませんか」

虎徹「いいか、ほむら」

ほむら「……えぇ」

虎徹「分かりました。ここではあれですし、少し場所を変えましょう」

ユーリ「……にわかには信じがたい話ですが、この少女の能力を見たら信じざるをえないですね」

ユーリ「一刻を争っているときに申し訳ないのですが、1日待っていただきたい」

ユーリ「手続きなどがそれなりに必要ですので」

虎徹「分かりました、よろしくお願いします」

次の日――

ロックバイソン「さすがだなタイガー」

バーナビー「えぇ、今回ばかりは褒めざるをえないですね」

マミ「危険を嗅ぎ分ける能力を使って、ワルプルギスの夜になってしまう子を探すなんて」

ユーリ「お待たせしました」

危険察知「これほどの匂いの危険を何とかするなんて、本当にできるの?」

ワイルドタイガー「あぁ、それが俺たちヒーローの役目だからな」

危険察知「分かったわ……」

危険察知「あの家からものすごい危険な匂いがするわ! うぅ、頭がくらくらしてきた」

ワイルドタイガー「ご苦労さん。バニー、こいつを頼めるか」

バーナビー「分かりました、刑務所に行ってきます」

ロックバイソン「念のため俺も同行しよう」

バーナビー「ありがとうございます」

ワイルドタイガー「あとはあの家に張り込むだけだ」

ブルーローズ「うーん、外からの監視では限度があるんじゃないかしら」

折紙サイクロン「虫にでも化ければ、拙者は侵入が可能でござる!」

ほむら「私も能力を使えば……侵入できるわね」

ワイルドタイガー「そう言えばお前の能力って結局なんなんだ? 過去に戻るだけじゃないよな」

ほむら「時間を操作する能力よ。巻き戻しにはいろいろ条件があるけど、止めるのは魔力の続く限りいくらでも止められる」

ファイヤーエンブレム「なんだかとんでもない能力ねぇ、それ」

スカイハイ「時をかける少女……すばらしい!」

ワイルドタイガー「実際に何かが起きるのは3日後だ。だから3日後は1日中ずっと張り続ける」

ワイルドタイガー「今はあくまでも偵察だ。あまり無理をしないでくれ」

ほむら「室内は私と折紙サイクロンが交代で見張るわ」

ブルーローズ「2人ってかなりキツくない?」

折紙サイクロン「大丈夫でござる、拙者は擬態できるのでこまめに張りながら睡眠も取れるでござるよ」

ブルーローズ「寝たら駄目でしょ……」

ファイヤーエンブレム「ボイスレコーダーでもつけておいて、外の人間に聞かせればいいんじゃないかしら」

ブルーローズ「あ、そっか」

ワイルドタイガー「よし、張り込み開始だ!」

マミ「ウフフ、その格好じゃ目立つわよ」

ワイルドタイガー「はっ、しまった」

ファイヤーエンブレム「それじゃ、いったん解散にしましょ」

虎徹「……結局、この2日間は何もおこらなかったな」

キース「うむ、ごく普通の家庭だ」

マミ「油断は禁物よ、あと数分でワルプルギスの夜が現れる日になる」

虎徹「室内はどうだ、イワン?」

イワン『特に異常な……む、何だか空気が重くなって来たでござる』

虎徹「何だって!?」

イワン『どうやら父親が、会社をクビになったようでござる……』

虎徹「わかった、すぐにほむらを呼んでくる!」

父「もう駄目だ……こんな不況で再就職なんて無理だ」

母「死ねば、楽になれるのかしら」

包丁を構える母親。

父「そうかもな」

イワン「待ってください!」

父「な、なんだね君は!」

イワン「自殺なんてしたらお嬢さんはどうなるんですか!」

母「あの子ひとりなら親戚の誰かが面倒みてくれるわ……」

イワン「そういう問題じゃないでしょう!」

父「じゃあ何か、君が就職先でも見つけてくれるというのかね!」

イワン「そ、それは……」

娘「お父さん、お母さん、うるさくて眠れな……きゃああああ!」

虎徹「悲鳴!? 突入するぞ!」

ネイサン「ええ!」

アントニオ「くそっ、いったい何が……」

バーナビー「急ぎましょう!」

ホァン「ボクは外で待機してる、誰かが逃げてくるかもしれないし」

イワン「階段の方から悲鳴!?」

父「娘! どけっ!」

イワン「うわっ!」

母「階段から落ちたの? 大丈夫?」

娘「痛いよぉ……」

父「待ってろ、すぐに救急車呼ぶからな!」

虎徹「お邪魔します! ……あら?」

父「さっきからなんなんだいったい……警察を呼ぶぞ!」

虎徹「お邪魔しましたー!」

虎徹「おいしいところは全部イワンに持ってかれちまったな」

イワン「あはは……」

バーナビー「さすがですね」

ほむら「これで本当にすべてが終わったのかしら」

イワン「娘さんを心配してるときのあの表情……もう大丈夫だと思いますよ」

ネイサン「やれやれ、人騒がせな家族だこと」

虎徹「今日は一応監視を続けよう。監視先は病院になるだろうけどな」

カリーナ「3」

バーナビー「2」

マミ「1」

キース「スカーイハーイ!」

ほむら「日付が、変わった」

ホァン「これで一安心だね」

虎徹「てか今のはなんなんだよスカイハイ!」

キース「うれしさのあまり、つい……」

虎徹「訳わかんねぇよ!」

アントニオ「これでひとまず危機は去った訳だな」

ネイサン「やっとまともに休めそうだわぁ」

むら「まどか……ようやく」

虎徹「お疲れさん、ほむら」

ほむら「ちょ、ちょっと。頭をなでないでちょうだい」

虎徹「なんだ、嫌だったか?」

ほむら「当然よ。子供扱いしないで」

虎徹「オジサンからみたら子供だもんなぁ」

カリーナ「セクハラはだめよタイガー?」

虎徹「そんなんじゃねぇっての!」

マミ「明日、まどかさんたちと会うのがたのしみね」

ほむら「そうね。今まで過ごせなかった時間が、ようやく始まる」

ほむら「魔女が消えた訳でもなんでもないし、問題も山積みだけどしばらくは日常を楽しみましょう……」

ホァン「どこか旅行にでもいきたいなぁ」

マミ「うーん、でも魔法少女の役目が……」

虎徹「お前たちがいないときは、俺たちがなんとかしてやるさ」

バーナビー「そうですよ、たまには羽をのばすことも大事です」

ほむら「それじゃ明日、みんなで計画でもたてるとしましょう」


おわり

「きゃああああああ!」

「ど、どうしたの姉さん!」

「大きな危険の匂いよ、この前のよりも遥かに危険よ……!」

「街を襲う危険は去ったって言ったじゃない」

「違う。もっと、もっと大きな危険が来るわ」

「じょ、冗談でしょ?」

「脱獄の準備をしないと!」

「この災いからは、誰も逃れられない……」

「きゃああああああ!」

「ど、どうしたの姉さん!」

「大きな危険がこの街に来る……!」

「街を襲う危険は去ったって言ったじゃない」

「違う。もっと、もっと大きな危険が来るわ」

「じょ、冗談でしょ?」

「脱獄の準備をしないと!」

「この災いからは、誰も逃れられない……」

――次回予告――

ほむら「こんにちは。まどか&ほむらのまどかの椅子になりたい方、ほむらです」

さやか「ちょっと転校生、あんた何言ってんのよ!」

ほむら「み、美樹さやか!」

まどか「ほむらちゃんのえっち」

ほむら「ま、まどかまで……そんな!」

マミ「次回、魔法少女ともえ☆マミ『Tiro finale.(最終砲撃)』 Ci vediamo dopo(またね)!」

バーナビー「……なんで君たちが次回予告やってるんですか、今回はオジサンの番ですよ」

まどか「虎徹さん、風邪引いちゃったみたいで」

さやか「だから代わりにあたし達がやっちゃおうかなって話になったんですよ」

ほむら「あの台本考えたの誰よ……」

マミ「私よ? なかなか素敵だったと思うのだけれど」

ほむら「ちょっと屋上来なさい」

マミ「え、ちょっと。きゃあああああ!」




バーナビー「まったくしょうがないな、オジサンは。仕方ない、僕が代わりにやるとしましょう」

バーナビー「とてもじゃないけど、さっきのは放送できませんし」

――真・次回予告――

バーナビー「ハァイ、TIGER&BUNNYのマミさんの武器はマスケット銃よりリボン派な方、バーナビーです!」

バーナビー「オジサンが有給とは珍しいこともありますね。なに、街中で爆破テロ!? 犯人はまさか――!」

バーナビー「次回、TIGER&BUNNY『The calm before the storm.(嵐の前の静けさ)』 See you!」



#The calm before the storm.(嵐の前の静けさ)はTIGER&BUNNYの10話
#このSSの時系列は9話と10話の間みたいな感じ

まさか9時間かかるとは、その割に終盤のあっさりな流れは猛省レベル
読んでくれた人に言いたい。ありがとう! そしてありがとう!

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