勇者「なんかこう、俺を慕ってくれる仲間はいないのかな?」(675)

>>6「勇者様~!」

勇者「」

ボストロールのアナルに住みたい

ボストロール×女勇者

サマンオサ

女勇者「このラーの鏡を使えば」
女賢者「王様がもし偽物ならこれで真の姿を現すはずです」
女戦士「準備はできてるぜ」
女僧侶「私もです」
女勇者「いくよ!」

ピカッ

ボストロール「んごおおおお…ん」
女勇者「やはり魔物が王様に化けていたのか!覚悟!」
ボストロール「チッバレたか。ハエ共が」

ブンッ つうこんの一撃
女戦士「グハッ!」

ブンッ
女僧侶「いやっ!」

ブンッ
女賢者「ああっ!」

ボストロール「後はお前だけだなぁ」
女勇者「そ、そんなばかな!」
ボストロール「他のは潰しちまったけど、お前はイイ身体してんなぁ勇者」
女勇者「…何だと」


的な

勇者「すみませんルイーダさん一つお願いが」
ルイーダ「あー、ダメダメ!男女は選べません!モテないからってハーレムパーティーなんてお姉さん許さないから!」
勇者「いえ、そうではなくて……」
ルイーダ「?」
ルイーダ(なーにが違うんだかこのキモ助!おお神よ!かの者に七難八苦ともりもりマッチョのあらんことを!)
勇者「何卒…何卒…面と向かって『気持ち悪い』と言わない人をよろしくお願いしますっ!」
ルイーダ「ごめん神様アタイ間違ってた!」

みたいな?

ルイーダ「待たせたな!」
勇者「わぁい!」
魔法使い「どうもー♪魔法使いでーす♪キミのハートに魔法をかけちゃうゾ☆」
勇者「勇者です!よろしくお願いします!」
魔法使い「チェンジ」
勇者「えっ」
ルイーダ「えっ」
魔法使い「ルイーダ姉ちゃん、違う、こんなじゃない」
ルイーダ「えっ?ちゃんとした勇者だよ?」
魔法使い「こんな気持ち悪い奴やだ!勇者でもやーだ!」
勇者「」
っていう感じの読みたい

勇者「……」
魔法使い「それで、次はどこに行くのだ?」
剣士「うむ……そうだな」
盗賊「あたしゃここがいいね!最っ高にスリルな気分が味わえそうだ」

魔法使い「そ、そこはとても危険だ!」
剣士「確かに……俺達にはまだ早すぎる」
盗賊「あぁん?んなもん行くまでに強くなりゃいいじゃねぇか」

魔法使い「そう簡単に言うでない。そなたも私も、まだ一人前とは言えぬ。
     道中の魔物には太刀打ちできないだろう」

盗賊「……ケッ、女のくせにおっさんみてぇなしゃべり方だな」
魔法使い「しゃべり方に関してはそなたも人のことは言えぬだろう?」

勇者「あ、あのー……」

剣士「やはり、ここから北西に4kmほど進んだ町を目指すのが無難じゃないか?」
魔法使い「賢明な判断じゃ。私達に今必要なのは食料、これは間違いないだろう」
盗賊「あーあー、わぁーったよ。ったく。おーい、勇者、町に行くってよー」

勇者「あ、はーい……」

剣士「道中の敵はさほど強くないにしろ、油断は禁物だ」
魔法使い「わかっている」
盗賊「くっだらねー、そんなザコに私が負けるかっての」

勇者「……」

盗賊「っんとに頭の堅いやつだなー」

魔法使い「そなたはもう少し物事を考える必要がある」

剣士「……ふう」

勇者(俺……おいてけぼりだなー。3人で前を並んで歩いて、後ろに俺一人……ハハ)

勇者(なんというかこう……もっと俺を慕ってくれる仲間はいないのかな。
   って、無理か。俺には威厳も何もないし……)

勇者(それに比べて剣士は……)

剣士「……」

勇者(貫禄あるよなあ。俺が俺じゃなかったら絶対剣士を慕うし。そんなのもう絶対)

勇者(……はぁ。こんなんでいいのかな、勇者が)

魔法使い「む!?敵じゃ!」
盗賊「来た来たァ!やーっとだぜ……ってあんだよ雑魚じゃねぇか。こいつぁ最高におもしろくねぇな」
剣士「相手の弱さに油断するな」

盗賊「はぁーあ……」

勇者(よ、よしっ!ザコでも敵は敵!俺の存在をアピールするチャンス!)

盗賊「よっと」バキューンッ
魔物「きゅう……」バタッ

勇者「あれ……?」

魔法使い「どうやら、倒したようじゃな」
剣士「心配無用だったか」ジャキッ

盗賊「あんなの雑魚中の雑魚じゃねぇか。何を心配するってんだ」
剣士「最近このあたりで魔物の活性化が発生しているという声をよく聞く」

盗賊「活性化?あれでか?」
剣士「ふむ、間違いの可能性もあるかもしれないな」

勇者(俺の出番……)

剣士「ようやく町に到着だな」

盗賊「あー、シャワー浴びてぇな。汗だくだぜ」
魔法使い「珍しい、そなたと意見が一致するとはな」

剣士「そうだな、しばらく各自自由に行動ということにするか」

盗賊「おっ、気が利くじゃねぇか!おい魔法使い、行くぞっ」ニッ
魔法使い「待て、そう慌てるな」

勇者「じ、自由行動……?」

剣士「俺は食料を調達してくる。羽をのばすといいだろう」

盗賊「んじゃ、また後で~」
魔法使い「ま、待たぬか!」

勇者「あっ」

剣士「俺も行くとしよう」

勇者「ちょっ……」

勇者「えっ……」

勇者「……」ポツーン

猿避けをしなくては


勇者「知らない町で一人、知らない町で一人、知らない町で一人」ブツブツ

勇者「どこかのトイレで時間を潰すか。いやいや、そんなのは嫌だ、個人的に」

勇者「勇者らしく剣の稽古でも……こんな町中で?」

勇者「武器屋……は金がないし」

勇者「食料は剣士が調達してくれるし……俺は……俺は」

勇者「……噴水に座っとこう」

勇者「はぁー」

勇者「とことん俺ってやつは……」

テリーマン「俺もいるぞ!」

勇者「……あ、そうだ」

勇者「得意の武器の手入れでもするか」

勇者「それなら町中でも大丈夫だし」

勇者「……」ゴシゴシ

勇者「……」ゴシゴシ

勇者「……」ジャキッ

勇者「……」ゴシゴシ

子供「なにしてんの~?」

勇者「ん?ああ、これ?剣を磨いてるんだよ」

子供「へぇー、かーっくいー!」

勇者「そ、そうかな?」ヘヘッ

子供「新品みたーい!」

勇者(……だよね、そうだよね、使う機会全然ないんだもんだって)ズーン

盗賊「……ふーん」

盗賊「よっと」ストンッ
勇者「と、盗賊!?」
盗賊「あんだよ、座っちゃいけねぇか?」

勇者「い、いいいや!大丈夫だけど……お、俺の横なんかで……」
盗賊「……」
勇者「あ、えっと、その……」

勇者(何か会話しないと)

勇者「と、盗賊は強くて、その、羨ましいよな!
   お、俺なんか影うすいし、今だってこんな一人で」
盗賊「……勇者よぉ」

勇者「あ、な、何っ?」
盗賊「お前……最高につまんねぇよ」
勇者「……え?」

盗賊「……はぁ、ったく。期待した私が馬鹿だったよ」

勇者「え?き、期待?」
勇者「ちょ、ちょっと!……行っちゃった」
勇者「……な、なんなんだよ」

これはひどいぼっちとビッチ


魔法使い「そなたは何をそんなにイライラしておるのだ」
盗賊「魔法使い……テメェ、勇者のことどう思う?」

魔法使い「勇者……?」
盗賊「ああ」

魔法使い「特に印象はないな。強いて言うなら、もう少し頼れる男になってほしいが。
     そなたはどうなのだ?」
盗賊「……気に入らねェなぁ。あんなに盛り下がる奴は初めてだぜ」

魔法使い「盛り下がる?何かあったのか?」
盗賊「……べっつに、なんでもねぇよ」
魔法使い「……?」

剣士「全員揃ったか」
魔法使い「そのようだ」
盗賊「ああ……」
勇者「……」

剣士「それでは、次はここからさらに北に進んだ町を目指す。長い旅になるだろう」
魔法使い「準備に問題はない」
剣士「盗賊、お前はどうだ?」
盗賊「……問題ねぇよ」
勇者「……お、俺も、大丈夫だ」

剣士「では、行くか」

勇者(……盗賊、なんだったんだよ。まだ怒ってるし。
   期待ってこんな俺に何を期待してたんだよ)

魔法使い「……」
盗賊「……」
剣士「……」

勇者(空気悪っ!……って、俺のせい……なのか、な。やっぱり)


勇者(そもそも俺がここにいる理由はなんだ?)
勇者(魔王を倒すって目的は確かにあるけど、このパーティーにいる意味はどこにある?)
勇者(偶然同じ町に住んでただけのこの繋がりに、何の意味が……)
勇者(盗賊を見る限り、俺は嫌われてるし、俺も落ち込む一方……)

盗賊「あーあー、あんだよこのシケた雰囲気はよぉ。貴族どうしの食事会かよ、つっまんねぇなぁ」
勇者「」ビクッ

魔法使い「……」
剣士「……」

盗賊「……チッ」

勇者「……す、すまん」
剣士「何故勇者が謝るんだ?」
勇者「い、いや、だって……この空気悪いの、俺のせいだし……」

盗賊「……チッ」

魔法使い「そなたのせい?何故そう思うのじゃ?
     確かにおかしな雰囲気ではあるが……」

勇者「お、俺が全然ダメだから……た、頼りないし」

魔法使い「……なんの関係が」
盗賊「おい魔法使い、もうほっとけ。あたしゃこいつのこういうところが嫌いなんだ」

勇者(……や、やっぱり嫌われてる……)

剣士「しかし、旅路は長いぞ。このままでは良くない」
盗賊「勇者に言えばいいじゃねぇか。ご親切に悪いのは自分だと自ら言ってんだ」
魔法使い「と、盗賊……」

勇者「ああ……すまん、皆」

盗賊「……テメェ、そんなので楽しいのかよ」
勇者「……何がだよ」
盗賊「チッ……いちいち自分を卑下して、楽しいかって聞いてんだよ」
勇者「楽しい訳ないだろ……盗賊も、俺が邪魔なら邪魔って言えよ」

盗賊「テメェ……」ジャキッ
剣士「おい、盗賊、仲間に武器を向けることは許されないぞ」

盗賊「もう我慢できねぇ……」
勇者「いいよ、別に。俺は大人しくパーティーを去るからさ」
盗賊「……そうやって逃げるのかよ」
勇者「逃げるも何も、お前が望んでることだろ」
盗賊「いつ私がそんなこと言ったってんだよ、あぁ?」
勇者「……」
盗賊「……」

魔法使い「と、とりあえず武器をしまえ、盗賊」


魔法使い「ほ、本当にパーティーを抜けてしまうとは」
剣士「4人から3人か……1人減るのは中々に痛い」
魔法使い「勇者のいないパーティーなど、見たことがない」

剣士「新しい仲間を探すのは町の掟に反する……どうにかして勇者をまた」
盗賊「ほっとけよ」
魔法使い「……盗賊、いい加減、何があったか教えてはくれぬか」
剣士「……どういうことだ?」
魔法使い「町で勇者と何かがあったのだろう?」
盗賊「……」

剣士「盗賊、話せ」

盗賊「……チッ、たいしたことじゃねぇけどよ」

魔法使い「ああ」

盗賊「前々からあいつの態度が気に入らなかったんだよ。
   何かとありゃすぐに弱音を吐きやがる。女々しいったらありゃしねぇ。
   いつも暗い顔で、くそつまんねぇB級ホラー映画を見てるみてぇでよぉ」

魔法使い「今回のこととどう関係があるのだ……?」

盗賊「前々から溜まってたんだよ。でももう我慢できなくなった」
剣士「何があった」

盗賊「珍しく、あいつが明るい顔してたんだよ。噴水で武器の手入れをしてる時にな」
盗賊「初めて見る顔だったからよ、あいつにもこんな一面があるのかと思って、
   やっとおもしれぇ話ができるんじゃねぇかと期待してたんだ」
盗賊「そしたら、口を開けば『俺なんか』ばかりだよ」
盗賊「今回のシケた雰囲気なのもよ、どっちかっつうと勝手に期待した私のせいなんだよ」
盗賊「言い返してくると思えば、『俺のせい』なんて言いやがる。
   気に入らねェ、ああ、気に入らねェなぁ」

魔法使い「つまり……」
剣士「悪いのは私なのに罪背負ってんじゃねぇよってか、ったく、ガキの喧嘩じゃあるまいし……」
魔法使い「はぁ……」

盗賊「なっ……」

魔法使い「そなたよ……、何故そうそなたは不器用なのだ」
盗賊「なにがだよ」
魔法使い「勇者に刃向かって欲しかったのだろう?『悪いのは盗賊だ』と勇気を出して言って欲しかったのだろう?」

盗賊「な、なにっ」

剣士「違いない。聞いて呆れた。そんなことで俺達は分裂したのか」
魔法使い「まあまあ剣士よ。盗賊も盗賊なりに勇者を気遣ったのだ。責められることではない」

盗賊「テ、テメェら……黙ってりゃあることないことグチグチと……」

魔法使い「素直になれ、そなたよ」
盗賊「テメェ、やんのかぁ!?あぁん!?」
魔法使い「武器をしまえ、それでは肯定したも同然だ」

剣士「はぁ……まあ確かに、勇者の意志にも問題はあった。それを解消するいい機会かもしれん

魔法使い「探しに行くか?」
剣士「おそらく、先程の町にいるだろう。一度引き返す」
魔法使い「ああ」

盗賊「チッ……」


勇者「……これからどうしよう」
勇者「勢いでパーティー抜けたけど、さすがに故郷にはどんな顔して帰ればいいか分からないし……」

勇者「……」

勇者「……結局、俺の居場所はこの噴水か……」

勇者「はぁ……水はいいよなぁ、流れるだけで綺麗だと言われて」
勇者「俺は……流されてたら嫌われたよ」
勇者「情けねぇなぁ……」

勇者「18歳になった若者は魔王を探す旅に出る、なんて掟誰が作ったんだよ」
勇者「しかもなんでパーティーは4人って決まってんだよ……」
勇者「剣士なんか、俺が18になるまで4人集まらなくて10年間も待ったらしいじゃねぇか……」
勇者「若者が少ない田舎の宿命か……」

子供「あー、お昼の剣の兄ちゃん!」

勇者「ん?あ、おう」

子供「まだいたんだ、何してるの?」

勇者「……排水溝にゴミが詰まって、流れなくなっちゃったんだよ」

子供「ぷぷっ、意味わからないこと言ってかっこつけてるー!」

勇者「……」ズゥーン

婆「こりゃ、何してんだ」
子供「あ、婆ちゃん!この人剣持ってるんだよ!」
婆「はぁ?こんな若者がかい?」

勇者「ど、どうも……」

子供「そんでねー、剣持たせてくれたんだー」

勇者「す、すいません……危険なのに」
婆「気にせんでええわい。この子は持ち慣れとるから」
勇者「え?」
婆「ジジィのが山ほどあんだよ、ったく。場所も取るし邪魔だよ、あんな剣」

勇者「お、おじいさんは……」
婆「剣士だよ、元ね。いきなり家でたと思ったらある日突然屍になって帰ってきやがった」
勇者「あっ、えーっと、……すみません」

婆「んがっはっは!気にせんでええわい」

子供「ねー婆ちゃん!この人に夕飯ご馳走してよー」
勇者「えっ?そんな、いいですって」
婆「まあええよ。孫の頼みは断れない。年寄りの罪じゃよ」

勇者「あ、ありがとうございます……」

子供「そうと決まればついてこい、兄ちゃん!
   魔物退治は任せたぞ!」

勇者「え?どこに連れていく気なの?」

子供「町のはずれの森の中だよ!」

勇者「町の外なのか……まあ、このあたりの魔物は弱いし、大丈夫か」

婆「ほれ、行くよ」

子供「あ、待ってー!」

勇者(俺を探しに町に来るなんて……有り得ないよな。だから町を離れても……
   って何を期待してるんだ俺は……くそ)


勇者「そりゃっ!」ズバッ

魔物「ぎぇー」

勇者「へへっ、見たか。俺だって一応戦えるんだ」

子供「婆ちゃん、なんか兄ちゃんがダサいこと言ってるー」
婆「頼りにされたことがないんじゃろ」
子供「あははー」

勇者「……この子供、えげつないよ……」

婆「……」

子供「あ、また出たよ!」
勇者「なに?とりゃっ!」ズバッ
魔物「ぎゃー」

森の奥の小屋

勇者「すげえ……一体何本あるんだ、この剣」
子供「爺ちゃんコレクターだったらしいからねー」
婆「ケッ……ほら、飯だよ」
子供「やったー!」

勇者「うひょー!美味そーう!」

婆「……」
子供「……」

勇者「あ、いやその、テンション上がって……ごめんなさい」

婆「そういえば、まだ何者か聞いてなかったの」
勇者「あっ、俺、一応勇者です。……でも、もう元勇者か」
子供「兄ちゃん勇者なの?」
勇者「お、おう、こんな俺でもな……」
婆「……」

婆「元勇者と言ったの。どういう意味じゃ?」
勇者「……そ、それは……実は」



子供「仲間割れしたんだー」
勇者「まあ……そんなとこ」
婆「……なっさけないねぇ」
勇者「……はい、わかってます」
婆「最悪、最悪じゃ。それも最悪の中の最悪じゃ」
勇者「……」
婆「小僧がでかい口を叩きおって、何が勇者じゃ」
勇者「……そ、そんなに言わなくても」
婆「あぁん?何か言ったかー?耳が遠くて聞こえんわい」
勇者「……」

勇者「……そ、そんなに言わなくてもいいじゃないですか。あなたに俺の何がわかるんですか」
婆「なーんもわかりゃせんよ。わかりたくもない」
勇者「じゃあ何も言わないで下さい」

婆「何もない小僧の何を理解すりゃいいってんだい。
  自分は何もせずに文句を言うだけの小僧の中身に、何が詰まってるんだい。
  そんなもの、わかりたくもないわい。
  勇気のないもんが勇者を名乗るでないわ!
  元勇者?わかってます?最悪じゃ、最悪の中の最悪じゃ。
  小僧は勇者になれてもおらんじゃないか!」

勇者「なっ……」

子供「婆ちゃん、スープおかわりー」

婆「……待っとれ」


子供部屋

勇者「……」
子供「まあ元気だしなよ兄ちゃん。婆ちゃん、ああ見えて剣を扱う人に対しては厳しいんだよ」
子供「爺ちゃんが剣に溺れた人だったしさ、志し無く剣を握るなって俺もよく説教されるよ」
勇者「……」

子供「気にするなってー。だから遊ぼうぜー」
勇者「……」
子供「……ダメだこりゃ」

勇者「」スタッ
子供「あれ?どっか行くのー?もしかして遊んでくれる気になった?」
勇者「」スタスタ
子供「あ、ちょっと、おーい。……ちぇっ」

婆「……何のつもりだい。土下座なんかみっともない」
勇者「お願いします……」
勇者「俺に……剣を教えて下さい」

婆「……何を言い出すかと思えば、そんなことかい」
勇者「……お願いします」
婆「仕方がないのう……」
勇者「じゃ、じゃあ……!」
婆「断る!!」
勇者「えっ……」

婆「わし剣なんか握れないし~、使ったこともないし~」クネクネ

勇者「いや、ちょっ……え?」


婆「実戦や剣の扱いなんてものは、今の小僧には必要ない」
婆「小僧には意志が必要じゃ。何故剣を握る。何故仲間と共にいる。何故旅をしている」
婆「小僧は何がしたい。何故勇者という職を選んだ。何故土下座をした」
婆「小僧には勇気が足りない」
婆「剣の腕を鍛えるのは断る。じゃが……その土下座に免じて、勇者として鍛えてやることはしてやらなくもない」

勇者「ば、婆ちゃん……!」

婆「だーれが婆ちゃんじゃ!馴れ馴れしく呼ぶな!」

勇者「あ、ご、ごめんなさい」

勇者「ありがとう……婆さん」

婆「……ケッ」

数日後・噴水の町

剣士「おかしい……」
魔法使い「勇者よ、そなたはどこへ消えたのだ」
盗賊「ビビって故郷にでも帰っちまったんじゃねぇの?」

剣士「いや、それはない。長がそんなことは許さないだろう」
盗賊「チッ……あの頭の堅い長か」
魔法使い「そなたが軽すぎるのだ。長は博識のある敬うべき存在」
盗賊「あーあーまぁーた始まったよ。そんなに長が好きならデートでもなんでもしてろ」

魔法使い「そのような感情ではない!長は」
盗賊「わぁーった、わぁーったよ、ったく、めんどくせぇなぁ」

剣士「それより本当に勇者はどこへ消えたんだ」
魔法使い「別の町へ行ってしまったとか」
剣士「その線も考えたが、町に滞在するための申請書がこの町以外提出されていない」
魔法使い「つまり……この町のどこかか、あるいは町の外で野宿……」
盗賊「あの勇者がんなことできるとは思えねぇなぁ。魔物だらけだっつぅのに」


子供「婆ちゃん、兄ちゃんまた部屋に閉じ込もってるの?」
婆「修行じゃ。食料も水もない。小僧は精神が弱すぎるから鍛えにゃいかんのじゃ」
子供「婆ちゃん人を鍛えるなんてできたんだ」
婆「何、昔ジジィにしてやったお仕置きをやらせているだけじゃよ」
子供「……だから爺ちゃん、あんなに強かったんだ」

婆「ケッ……わしはそんなつもりはなかったのに、勝手に強くなりおってからに……。
  成長しすぎて剣士となって出ていきおった」

子供「兄ちゃんも……そうなるかな」
婆「……ふん、小僧次第じゃ」

子供(日中は閉じこもって、夜は一人で剣の稽古だもんなあ……。
   兄ちゃん、死ななきゃいいけど)


一ヶ月後・森の奥の小屋・夜明け

子供「……」

勇者「はぁっ!そりゃっ!」ブン!ブン!

子供「よく飽きないなー毎日毎日」

勇者「でりゃあ!はっ!」ブン!ブン!

子供「でも……なんか変わったなあ」

勇者「……すぅーっ」

子供「たくましくなったよなぁ……多分」

婆「ふむ……」

子供「あ、婆ちゃん」

婆「勇者よ、晩飯の後、話がある」
勇者「え?でも、この後は精神の修行だって」
婆「話がある」
勇者「あ、ああ……わかった」


噴水の町

魔法使い「……」
剣士「……仕方がない。一度故郷に戻って、長に説明するしか」
魔法使い「しかし……」
剣士「一ヶ月も探したんだ。4人揃わないと旅にも出られない。さすがにもうこれ以上……」
魔法使い「……」

盗賊「チッ……どこ行きやがったんだ、あの野郎ォ」

剣士「身支度が終わり次第、故郷に向けて出発だ」
魔法使い「仕方がない、か。情けない、長にどんな顔をして会えば良いのやら」
盗賊「……」

町民「きゃーっ!」

剣士「!?」ジャキッ
魔法使い「何事じゃ」


剣士「何があった!?」
町民「ま、魔物が町に……」
魔法使い「魔物?」
町民「は、はい……あそこに」
盗賊「……なんだ?確かに魔物は魔物だけどよ、あいつはいつぞやの雑魚じゃねぇか」

剣士「とりあえず、行ってみよう」
魔法使い「ああ」
盗賊「余裕さ、私に任せな」

魔物「グガァァァっ!!」
盗賊「なっ……」
魔法使い「近付いてみるとわかる……ケタ違いの迫力だ」
盗賊「どうなってんだ?こいつ、ほんの一月前はただの……」

剣士「まさか……」
魔法使い「魔物の活性化、か」
剣士「目に見えぬところで密かに進行していたとはな……迂闊だった。
   もう少し注意しておくべきだった」
魔法使い「仕方のないことだ。私達はそれどころではなかったからな」
盗賊「チッ……あんのボケ勇者ァ!一体どこまでふざけりゃ気が済むんだよ!」

魔法使い「おや……さすがのそなたでも、この魔物には怖じけづいたか?
     言っておったな?スリルが好きだと」
盗賊「あぁん……?おもしれぇこと言うじゃねぇか。
   言ってろよ、こんなやつ、デザートにしちゃ出てくるのが早すぎんぜ」

魔物「グガァァァ!!!」

チョミラスパベリねむい
盗賊がレヴィみたいになった
まあいいか寝る

この書き方というか雰囲気というかはどこかで見覚えがあるんだが、どこだったか……

言い忘れてたけど、保守してくれたら嬉しいなって
まだ全然恋愛部分が書けてないからお願い申し上げます

それと>>64
勇者ものは書くの初めてだから別人かと

>>74だった

すまん書けるの夜になりそう

勇者「婆さん、話ってなんだ」
婆「まあそこに座れ」
勇者「あ、ああ」

婆「一月が経った。完結に問うが、小僧」
勇者「はい」
婆「何を学んだ」

勇者「……」
婆「わからないのかえ?小僧の中身は、今だ空っぽのままかい」
勇者「……いえ、違うんです」
勇者「この一月の修行で、自分に確実に自信がつきました。
   でも、それを言葉にしろと言われると少し難しい。芯の部分に何かがあるのは自分でも分かる。
   しかし、言葉としてそれが出てこない」

婆「……ふむ、いいじゃろう」
勇者「えっ、いいのか?」
婆「違うわい。具体的に質問してやるということじゃ」
勇者「具体的?」
婆「宙ぶらりんの小僧の意志に形をつけてやるということじゃ、たわけ」
勇者「は、はあ……」

婆「小僧、何故剣を握る」
勇者「……仲間には迷惑をかけた。率先して償いたいという思いはある」
婆「償いの剣かい。動機は様々にあるが、仲間のための剣は強い。
  しかし、時に脆い。小僧、何故仲間と共にいる」

勇者「俺を認めて貰いたい」
婆「何故旅をしている」 勇者「人として、成長するためだと思うようになった」


婆「何故勇者という職を選んだ」
勇者「勇気が欲しかったからかもしれない」

婆「何故土下座をした」
勇者「あの時の自分に対して、悔しさと苛立ちを覚えたからだ」

婆「小僧……それこそが意志じゃ」
勇者「……ありがとうございます」

子供「えー、行っちゃうのかよ兄ちゃん」
勇者「ああ、今までありがとな」
子供「寂しくなるなー」
勇者「……ははっ」ワシャワシャ
子供「いててっ、撫でるな!」

婆「持ってけ、これ」
勇者「え?でもこれ」
婆「……そんなもん、場所もとるし、邪魔なだけなのさ」
子供「うわー、爺ちゃんの剣じゃん!」
勇者「本当にいいんですか?」
婆「気にするでないわい!持ってけ持ってけ、持ってっちまえ」
勇者「あ……ありがとうございます」

子供「んじゃ、またなー!」
勇者「ああ、またな」
婆「もう帰ってくるなよー」
勇者「えー……」
婆「……帰ってくるなら、無職になってから帰ってこい、勇者」
勇者「!……はい!」
婆「ケッ……ほら、さっさと行かんか!いつまで年寄りを立たせるつもりなんじゃい!」
勇者「それじゃあ、行ってきます。本当にありがとうございました」
子供「まーたなー!」ブンブン
勇者「ああ!」ブンブン


勇者「ふう……」

勇者「感謝してもしきれないな」

勇者「……」ホロリ

勇者「ダ、ダメだダメだ。気を入れ直して……」
勇者「とりあえず、仲間を探さないと」

勇者「皆、どこにいるんだろう」

勇者「……噴水に、行ってみるか」

噴水の町

勇者「久しぶりだなー、この町も」
勇者「さすがに一月じゃ何も変わらないな」
勇者「とりあえず、町民に話を聞いて、仲間の足取りを掴まないと」

勇者「あの……」
町民「ケ、ケガ人だー!ケガ人が出たぞー!」
勇者「えっ……?」
町民「クソっ!!町長は逃げたか!!」
勇者「あ、あの、どうかしたんですか?」
町民「ああ!?兄ちゃん!危ねぇから早く逃げろ!」
勇者「一体何が……」
町民「魔物だよ!とんでもねぇのが出やがった!いいから、死にたくなけりゃさっさと逃げろ!」

勇者「……」

町民「何ボケっと突っ立ってんだ!?知らねぇ、もう俺は行くぞ!生きろよ、兄ちゃん!」

勇者「……行くしかないだろ、これは」

魔物「グガァァァっ!!」
勇者「うおっ、なんだこいつ!」

魔物「アァガァァァ!!!」
勇者「こ、これは……って、あれはまさか!」

盗賊「くっ……」
勇者「と、盗賊!?」
盗賊「……あぁん?誰かと思えば、ゲホッ!へたれ勇者さんじゃねぇか……」
勇者「お、おい……なんだこの怪我。大丈夫なのか!?」
盗賊「ナ、メんじゃねぇよ……ガハッ!こんなやつに、この……私が……」
勇者「お、おい!盗賊!盗賊!!」





勇者「ちくしょお……」ジャキッ

盗賊(な……にしてんだ、あの野郎……)
盗賊(剣なんか、握りやがって……)
盗賊(あんなへたれに……こんな魔物が……倒せる……ワケ……)

勇者「よくも盗賊を……」
魔物「グガァァァ!!」
勇者「許さねぇ、かかってこいよ、魔物野郎」

盗賊(でかい口叩きやがって……死んだらどうすんだよ……ボケ)

勇者「でぇりゃあぁぁっ!!!」タッタッタッタ
魔物「ガァァァァァァっ!!!!!」
勇者「せりゃあああっ!!!」ズバッ
魔物「アガッ……ガァァァァっ!!」バタッ

勇者「ハァ……ハァ……た、倒せた……」
勇者「ハッ!と、盗賊!!」


勇者「お、おい!大丈夫か!?おい!」
勇者「と、とりあえず安全な場所に運ばないと……」

勇者「くっ……」ズルズル
勇者「盗賊……」
勇者「……ん?」
勇者「な、なんでこいつ……笑ってんだ?」
盗賊「……」
勇者「気絶してるくせに……」
勇者「……まあ、いいか」


町民「ありがとう!」
勇者「ん?」
町民「あなたのおかげだ!」
町民「あの魔物を一撃で倒したってのは本当か!?」

勇者「お、俺?」
町民「ぜ、ぜひ話を聞かせて下さい!」
勇者「い、いや……」
町民「うちの宿に!」
町民「町長に!」
勇者「ご、ごめんなさい!」

町民「あ、逃げた!」
町民「待ってー!」

勇者「怪我人背負ってんだよぉ!!」タッタッタッタ

洞穴

盗賊「……ん、くっ、イテェ」
勇者「まだ安静にしてろ、ひどい怪我なんだから」
盗賊「ゆ、勇者……テメェ、魔物はどうなった」
勇者「……退治したよ」
盗賊「……そ、そうか」

盗賊(……夢じゃなかったみてぇだな)

盗賊「おら、……っと」
勇者「ちょ、寝てろって」
盗賊「これくらいなんともねぇよ」
勇者「でも……」

盗賊「剣士と魔法使いはどうした?」
勇者「それが……俺が魔物のいる場所に辿り着いた時にはもう盗賊しかいなかった」
盗賊「なんだあいつら……食われちまったのか?」
勇者「え、縁起でもないこというなよ……」


盗賊「っつうかあんだよここ……暗いしさみぃしおまけに堅い」
勇者「し、仕方ないだろ……町は怖かったんだから」
盗賊「あぁん?」
勇者「な、なんでもない」

盗賊「……それよりも、勇者よぉ」
勇者「な、なんだ?」
盗賊「テメェ一体……何してやがった?どこにいたんだよ」
勇者「ああ、迷惑をかけたと思ってる」
盗賊「チッ……グダグダうるせーな、いいから話せよ」
勇者「ああ」




盗賊「……つまりなんだ?テメェはそのババァとガキのとこでぬくぬくと暮らしていやがったと」
勇者「しゅ、修行だよ」

盗賊「おまけに剣まで頂いちゃって……あーあー、あったかいアップルパイが出てきそうな話だぜ、ったくよぉ」

盗賊「こちとら毎日毎日町民に話を聞いてどこぞのへたれの情報を集めてたってのによぉ。
   町の外の一軒家かよ、どうりで居場所が掴めねーわけだ」

勇者「そ、そんなに探してたのか……」
盗賊「……チッ」

盗賊「……ちくしょう」
勇者「……えっ、と」

盗賊「おい、勇者、テメェ」
勇者「……な、なんだよ」

盗賊「なんか私に言うことがあるんじゃねぇのか?あぁん?」
勇者「……えっと、ありg」
盗賊「ちなみに生温い礼なんて述べた日にはテメェの命は洞穴のコウモリのエサになると思え」
勇者「じゃなくて……」
勇者(あっぶねー!)

盗賊「……チッ」
勇者「……盗賊」
盗賊「……あんだよ」

勇者「……あの時のことだけど」
盗賊「……」
勇者「あれ、さ」
盗賊「……」
勇者「あれ、俺も7くらい悪いけど、お前も3くらいは悪いだろ!!!
   期待してくれたのは嬉しいけど説明くらいしろよ!!!」

盗賊「なっ……」
勇者(い、言った……言っちまった!殺されるかもしれない、どうしよう!)
盗賊「……」
勇者「……」ドクン、ドクン
盗賊「……ぷっ」
勇者「……えっ?」
盗賊「あーはっはっ!!ゆ、勇者!テメェ、おもしろくなったじゃねぇか!!あっはっはっ!!こりゃ最高だぜ!!
   目の前に積まれたダイヤを蹴飛ばしちまったみてぇだよ!!あーはっはっ!!」

勇者「え?えっ?」


魔法使い「くっ……」
剣士「起きたか、魔法使い」
魔法使い「剣士……?ここは、どこだ?」

剣士「噴水の町の、ケガ人の治療をするための場所だ」
魔法使い「そうか……私達は……ハッ!ま、魔物は!?」
剣士「それが、突如現れた青年が一撃でのしちまったらしい」
魔法使い「なんじゃと!?」
剣士「驚いたが……なんにせよ、町が無事でよかった」
魔法使い「あ、ああ……そうだな」
剣士「で、これからのことなんだがな」
魔法使い「ん?」


剣士「勇者は未だ見つけられず、挙句盗賊も見失っちまった」
魔法使い「そういえば、盗賊の姿がないな」

剣士「町民によると、俺達が倒れている合間もまだ闘っていたらしい。
   それでとりあえず俺達をここへ運び、戻ってきたら姿が無かったそうだ」

魔法使い「な、なんじゃと……まさか盗賊のやつ、食べられてはおるまいな?」
剣士「縁起でもないことを言わないでくれ」
魔法使い「す、すまん」

剣士「それでだ、魔法使い、足はどうだ?」
魔法使い「……バレておったか。先程から、少しも動かせぬ。
     魔物の毒にやられたらしい」
剣士「そのことなんだが」
魔法使い「ん?」

剣士「すぐにここを発たなければならない」
魔法使い「なぜじゃ?」
剣士「なんというか、その毒がまたやっかいでな。もう少し大きな町に行き、
   なるべく早く解毒剤を打たなければまずいらしい。
   その解毒剤とやらが、この町には無いようだ」

魔法使い「なっ……だが、勇者と盗賊はどうなる?それに4人揃わぬのに町を出るなど長が……」

剣士「足が動かん状態でどう探すつもりだ。優先順位を考えろ。
   長もさすがにこれを責めたりはしないだろう」

魔法使い「くっ……」


魔法使い「その、大きな町とは、どこなのだ?」

剣士「幸い、当初俺達4人が向かおうとしていた北の町だ。
   可能性はわずかだが、盗賊と落ち合うこともできるかもしれん」

魔法使い「移動手段は……」

剣士「心配するな。おぶってやる」

魔法使い「なっ……!」

剣士「それしか方法がない、我慢してくれ」

魔法使い「お、おぶっ……」

次の日

盗賊「んで、これからどうすんだよ」
勇者「さっき町で情報を集めてきた。そしたら気になる情報があった」
盗賊「気になる情報?」

勇者「今日の朝、28歳くらいの剣をぶらさげた長髪の男が、19歳くらいの銀色の髪の杖を持った少女をおんぶしていたと」
盗賊「違いねぇ。っつうか何してんだ、あいつら」

勇者「その人の話によると二人は町の建物で怪我の治療をしていたらしい」
盗賊「それなのに次の日にはおんぶか?理解できねぇな」
勇者「そこから先は知らないとのことだから、とりあえず帰ってきた」
盗賊「あぁん?徹底的に情報を集めてこいよ」
勇者「いや、だってもう昼だし……」

盗賊「甘えてんじy」
勇者「怪我人の盗賊を待たせるのはダメだと思ったんだよ、悪かったな。
   せっかくシチューの材料買ってきたってのに」
盗賊「……あ、あんだよ、そんなの、気にすんなよ、うざってぇ」

勇者「なんだよ……」
盗賊「チッ……」


勇者「……」ゴシゴシ
勇者「……」ゴシゴシ
勇者「……」ジャキッ
勇者「……」ゴシゴシ

盗賊「テメェは武器の手入れが好きだなー」

勇者「いいからシチュー食べてろよ」

盗賊「……チッ、つまんねーな」

勇者「……」ゴシゴシ
勇者「とりゃっ」ヒュン
勇者「……よし」

盗賊「……」
勇者「……なんだよ、顔になんかついてるか?」
盗賊「……ぁんでもねーよ」

勇者「……?」
盗賊「あーうめェー」モグモグ

噴水の町・治療室

勇者「……どうしても無理ですか。二人の行き先だけでいい」
医者「個人情報はそう容易く売れないねぇ。うちで怪我の治療をしていたからこそね」
盗賊「あぁん?テメェ、金出せってのか?」
医者「そうは言ってませんよ?まあ、あなた方が是非お支払いしたいと言うのであれば、別に断る理由はありませんがね」
盗賊「野郎ォ……」

勇者「落ち着いてくれ、盗賊。この建物で剣士と魔法使いが治療していたのはわかってるんだ。
   でも逆に言えばそれはここの建物でしか二人の情報は得られないってことだ。
   あの二人は怪我人だから次の日まで外出なんてしないだろうし、情報が他に漏れるようなことは……」

盗賊「あぁ、わぁーった、わぁーったよ。ったく。で、いくらだよ」
医者「100万ギルで」
盗賊「やっぱりこいつはここで死ぬべきだぜ、勇者」チャカッ
勇者「や、やめろ!やめて!」


医者「ふぅ……なんと荒っぽい人だ。それに比べてそちらの方は賢明に見える」
盗賊「なんで止めやがんだよバカ勇者!」
勇者「この人が死んだら情報源無くなっちゃうだろ!?バカはどっちだよ!」
医者「とにかく、100万ギル渡してくれないと教えられないねぇ」

勇者「困ったな……」
盗賊「どうすんだよ……」
勇者「一旦洞穴に戻ろう、練り直しだ」
盗賊「チッ……」


魔法使い「そなたよ」
剣士「ん?なんだ」
魔法使い「お、重くはないか?」
剣士「大丈夫だ」
魔法使い「つ、疲れてはいないか?」
剣士「平気だ」
魔法使い「ど、どこかで休憩でも」
剣士「平気だと言っている」

魔法使い「しかし……お、おんぶなど」
剣士「不満か?」
魔法使い「不満ではない、しかし、申し訳がたたぬ」
剣士「気にするな。それに、妹を思い出す」

魔法使い「妹……?そなたには、妹がおるのか?」
剣士「ああ。生きていれば、お前と同じくらいだろう」
魔法使い「あ……すまない」
剣士「気にするな」

眠くて頭働かない
保守まじでサンクス
まじでサンクス


剣士「まだまだ道は長いぞ」
魔法使い「遠慮せずに休憩してくれ。そなたもまだ、完治しているわけではないのだからな」
剣士「お前さんの怪我に比べりゃたいしたことない。余計な気は遣わなくていい」

魔法使い「遣わせてくれ。そなたの身体を気遣うくらいしか、今の私にはできぬ。
     それさえ奪われたら、私はまさにお荷物そのものじゃ」

剣士「……わかった。それなら、少し休憩してもいいだろうか」
魔法使い「ああ、もちろんじゃ」ニコッ


岩場

魔法使い「そなたは、勇者には意志が足りぬと言っておったな」
剣士「ああ」
魔法使い「どういう意味じゃ?」

剣士「勇者は、流されるままパーティーに参加したようだった。
   旅の目的や剣を握る意味を持ち合わせていないのは、良くないことだ」

魔法使い「なるほどな。そなたの意志、とやらは聞いてもいいものだろうか」
剣士「俺は……話が重くなっちまうからな。お前さんはどうなんだ」

魔法使い「私は、長に認められたい」
剣士「慕ってるんだな」
魔法使い「私に魔法を教えてくれた、師匠でもあるからな」


剣士「俺は色恋沙汰はよくわからんが、盗賊が言っていたのは事実なのか?」
魔法使い「なんだ?」
剣士「お前さんが長に恋心を抱いていると言っていたが」

魔法使い「そ、そのような感情は持ち合わせていないとあれほど……!
     盗賊、あったらただじゃすまさぬ」

剣士「はっはっは」

魔法使い「私は、もっと頼りがいのある男が好みなのじゃ」

剣士「長は頼りがいがないと?」

魔法使い「いざという時はこれ以上にないほど賢明じゃが、
     普段はその、気さくすぎるお方なのでな……」

剣士「はっはっは、違いない」


剣士「よっと、そろそろ出発しよう」
魔法使い「もう大丈夫なのか?」

剣士「ああ、お前さんの話を聞いてると元気が出たよ」
魔法使い「そ、そうか?それほど価値のある話ではなかったように思えるが」

剣士「若さってのは、それだけで力になるもんだ。ほら、背中に乗れ」
魔法使い「あ、ああ……」ギュッ
剣士「いいか?」

魔法使い「ああ、問題ない。大丈夫だ」
剣士「それでは、行くか」
魔法使い「ああ」

なんだかキリが悪かったので良いとこまで書いた
休憩する

洞穴

盗賊「んで、どぉすんだよ」
勇者「うーん……なんとかして100万ギル稼ぐ方法はないかな」
盗賊「ほざいてんじゃねぇぞ勇者。
   んな大金あったら今頃私はワイン片手に政治の話でもしてるだろうさ」
勇者「うーん……」
盗賊「現実的に考えてみろ、んなもん身体を売っても1年はかかるぜ」
勇者「1年で集まるなら」
盗賊「どうやら私の経験値の元手になりてぇらしいな」ジャキッ
勇者「じょ、冗談!冗談だって!」

盗賊「おい勇者」
勇者「ん?」
盗賊「テメェは一体どこまでお人よしなんだ?」
勇者「どういうことだよ」
盗賊「最善の策が浮かんでんだろーが、わかってんだよ」
勇者「……バレてたか。でもなぁ」
盗賊「なんなら私がやってやろうか?」
勇者「いや……俺がやらないと意味ないだろう」
盗賊「できるのかよ、テメェによ」
勇者「…………やっぱり、それしかないか」


盗賊「ハッ、そうと決まれば、早速行くか」
勇者「大丈夫かなぁ……」
盗賊「おいおい頼むぜ勇者。テメェには王様になってもらわねぇと困んだよ」
勇者「お、王様?」
盗賊「気分の話だ。安心しな、私がサポートしてやっから」
勇者(……それが一番不安なんだけど)





噴水の町・治療室前広場

ピー、ガッ、ガッ
盗賊「あー、マイクテス、マイクテス」
盗賊「すぅー……聞きやがれ町民共ォ!!!」
勇者「うわー……」


町民「な、なんだなんだ」
町民「何か始まったぞ」
町民「あれは……魔物を倒してくれた青年じゃないか!?」
町民「なんだって!?」

盗賊「あー、テメェらぁ!!!」

町民「あのおっかねぇ姉ちゃんは何なんだ」
町民「青年の仲間……じゃないか?」
町民「あの姉ちゃんも魔物と闘ってくれた一人だよ。よく覚えてる」

盗賊「ここにいるのはあのデケェ魔物を一撃でのしちまった勇者様だァ!!!」

町民「や、やっぱりか!」
町民「うん、あの格好、間違いない!」

盗賊「テメェらにとって勇者はなんなんだァ!?」

町民「何って……そりゃあ、町を救ってくれた……」
町民「い、命の恩人だ!!!」
町民「英雄だ!!間違いない!!」

盗賊「そぉだろぉがァ!!!」

盗賊「テメェらには感謝の気持ちがねぇのかァ!?」
町民「な、なんだと!!」
町民「あるに決まってるじゃないか!!」
町民「そうだそうだ!!町を救ってくれたんだぞ!!」

盗賊「じゃあお前らの中に、その勇者様に情報を100万ギルで売るなんてケチくせぇことを言うやつがいるのはどういうことだァ!?」
町民「なんだって!?」
町民「だ、誰だそいつは!!出てこい!!」

盗賊「なぁ、お医者さんよぉ!!」

医者「くっ……」
町民「おい医者テメェ!!どういうつもりだ!!」
町民「勇者様から金をとるなんてどういうことか分かってるのか!?」

盗賊「ほらよ、後は勇者に任せるよ」
勇者「……や、やりすぎじゃないか?あの医者だって怪我をした町民を何人も治療してるし、
   剣士や魔法使いも……」
盗賊「始めに喧嘩売ってきたのはあっちだろうが。私達はそれを買っただけだよ。
   それともなんだ?今更怖じけづいたってか?あぁん?」
勇者「い、いや……」

盗賊「いいから早くしろよ、ほら」バシッ
勇者「うわっ!」ヨロッ

町民「ゆ、勇者様だ!!」
町民「勇者様ー!!」

勇者「あ、えっ、あ、っと、その」

勇者「み、皆さんにお願いがあります」
町民「なんでも言ってくれー!!」
勇者「ありがとう。えっと、長髪の剣士と、銀髪の魔法使いの行方を探しています。
   大切な仲間なんです。どなたか、行き先を知っている方はいないでしょうか」
町民「ほら医者!!テメェ知ってんだろ!!」
町民「さっさと言えよ!!」
医者「ぐっ……ち、ちくしょう」
町民「早く言えー!!」
医者「……き、北の町だ。銀髪の少女の足の治療に使う薬を求めて、二人は北の町へ向かった。
   どうだ、これで気が済んだか?」

勇者「……ありがとうございます」
町民「よかったな!!」
町民「気をつけて行けよー!!」

盗賊「んじゃ、早速向かおうぜ、勇者さんよ」
勇者「あ、ああ……」

街道

盗賊「ったく、とんだ苦労だったぜ」
勇者「ちょっと強引すぎたかな」
盗賊「気にすんなよ。っつうかよ、最後のあの医者に対するフォローは必要だったのか?」
勇者「そりゃあ、仲間を治療してくれたわけだし……」
盗賊「こちとらしっかり金取られてんだぜ?」
勇者「まあ、そうだけど」
盗賊「チッ、気に入らねぇなぁ。あんな野郎、弾丸ブっ放してホルマリンに浸けときゃいいんだよ」
勇者「怖ぇよ」

勇者「まあ、なんにせよ、盗賊が居なかったらできなかったよ、あんなこと。
   ありがとな」
盗賊「ア、アホか、いちいち言うんじゃねぇよ、気っ持ち悪ぃな」
勇者「気持ち悪い?」
盗賊「テメェといるとなんかムズムズすんだよ。あー気持ち悪ぃ気持ち悪ぃ」
勇者「じゃあなんでそんなに嬉しそうなんだよ」
盗賊「バッ、あぁん!?テメェ、もう一回言ってみろコラァ!!」
勇者「じゃあなんでそんなに嬉しそうなんだよ」
盗賊「死ね!!!死ねテメェ!!!」バキューン
勇者「あ、あぶねっ!死ぬって!本当に死ぬ!!」


北の街道

魔法使い「大丈夫であるか、そなたよ」
剣士「ああ、なんてことない。しかし、気になるな」
魔法使い「先程の商人の言葉か?」
剣士「ああ。魔物の活発な動きが北に行くほど進んでいると」
魔法使い「これは、魔王への道標になるかもしれぬな」
剣士「なるほどな……そう考えてもいい」

剣士「まあ、俺達にはそれより先にやらなければならないことが山ほどある。
   まずは落ち着いてそれらを一つ一つ片付けていくことだな」
魔法使い「ああ、そうじゃな」


魔法使い「むっ」
剣士「どうした、何か見えるか?」

魔法使い「遠目にじゃが、湖が見える」
剣士「助かった。そこで水分を補給しよう」
魔法使い「ああ、賢明な判断じゃ」

剣士「どのくらいの距離かわかるか?」
魔法使い「それほど遠くはないじゃろう。恐らく5分というところか」

剣士「よし、それなら休憩無しでいけそうだ」

魔法使い「無理だけはするでないぞ」
剣士「承知した」

10分後・北の街道

剣士「すまないが……後どのくらいか聞いてもいいだろうか。
   もう10分は歩いたように思えるが」
魔法使い「す、すまぬ。私の目視が誤っていたようじゃ。もう5分ほどで到着すると思う」

剣士「そうか、安心した」
魔法使い「そなたよ」
剣士「平気だ。湖はすぐだ」
魔法使い「そ、そうか……」

更に10分後・北の街道

魔法使い「お、おかしい……またもや私の目視が……いや、そんなはずは……」
剣士「ど、どういうことだ。歩けど歩けど、湖に近付くことができない」
魔法使い「……まさか」

魔物「キシャァァ!」

剣士「やられた!幻魔術を使う魔物の罠か!!」


剣士「くぅ……!人の欲から生まれる気の緩み、安心感、それを利用されたか!」
剣士「中々賢い手で体力を奪ってきやがる……!」

魔法使い「お、おい!大丈夫なのか!?」
剣士「安心しろ」

魔法使い「そ、そうは言っても、そなた、片手しか使えぬではないか!
     な、なんなら私を置いて」

剣士「馬鹿言ってんじゃねぇ!なんのための剣だと思っている!?仲間を守るためだろうが!
   それに敵に囲まれている!お前さんを下ろすことなんてできやしない!!」

魔法使い「し、しかし……」

魔物「キシャァァ!!」

剣士「来るぞ!」


魔物「キシャァァ!」ヒュン
剣士「ぐっ!」キィンッ
魔法使い「きゃっ!」
剣士「なんのこれしき!!」ズバァッ
魔物「ギャアアアッ!」バタッ

魔法使い「剣士!後ろじゃ!」
剣士「何!?」
魔物「ガアアアッ!」ザシュッ
剣士「ぐっ!!」
魔法使い「剣士!大丈夫か!剣士!」

剣士「……俺をなめるな!」ズバッ
魔物「ギャアアアッ!」バタッ
魔法使い「また来たぞ!」
剣士「くぅ……!」キィンッ





北の街道・道外れの草むら

剣士「ぐっ……ハァ……ハァ……」
剣士「なんとか……助かったな……うっ!」ズキッ
魔法使い「剣士!剣士よ!」
剣士「くそっ……ハァ……ハァ……すまない、意識が飛びそうだ……」
魔法使い「無理をするな!動かなくていい!そのまま寝ていろ!」

剣士「グハッ……」
魔法使い「剣士……!」
剣士「……ははっ」
魔法使い「な、何を笑っておる!」
剣士「……お、お前が……無事で……良かった」
魔法使い「なっ!」ドキッ
剣士「どうだ……お兄ちゃんは……すごい、だろう」ガクッ
魔法使い「け、剣士!おい!しっかりしろ!剣士!!」


魔法使い(……幸い、気絶しただけのようじゃ。
     この様子では、命に別状はないじゃろう)

剣士『……お、お前が……無事で……良かった』

魔法(……)ドキッ

魔法(……ハッ!な、何を考えておるのだこの私は!愚かな!)

剣士『どうだ……お兄ちゃんは……すごい、だろう』

魔法使い(……)

魔法使い(……亡くなった妹は、私と同じくらいだと言っておったな、そなたよ……)

剣士「……」

魔法使い「……」

ちんこブラスター
飯食ってくる

勇者スレ普段覗かないから分からないんだけど、
ドラクエを背景に置くっていう暗黙の了解があったりする?
もしあったらすまん、知らなかった

サンクス


剣士「ん……」
魔法使い「目、目が覚めたか!そなたよ」
剣士「ああ……心配かけたな」
魔法使い「気にするでない。むしろ感謝をする限りじゃ」
剣士「何、あれくらい……くっ」ズキッ
魔法使い「無理をするな。十分に休んでから出発するべきじゃ」
剣士「ああ、そうしてくれるとありがたい」

魔法使い「そなたは、頼りになるな」
剣士「はっはっは、この様にその言葉は似合わない」
魔法使い「何を言うか!そなたほどこの言葉が似合う剣士はおらぬ」
剣士「……どうした?ムキになって、お前さんらしくない」
魔法使い「な、なんでもない」


魔法使い「とにかく、一晩ここで休もう」
剣士「最低限安全な場所に移動する必要があるな」
魔法使い「……くっ、私の足さえ動けば、そなたばかりに負担を押し付けるようなことは……」
剣士「それは言わない約束だ。お前さんが責任を感じることじゃない」
魔法使い「……すまぬ」

剣士「よっと……くっ」ズキッ
魔法使い「もう立てるのか!?そ、そなたよ……」
剣士「多少無理をしてでも早く移動した方がいい。今魔物に襲われたら気絶じゃすまないだろう」
魔法使い「そ、そうじゃが……」

剣士「ほら、背中に乗ってくれ」
魔法使い「あっ……」
剣士「……どうした?」
魔法使い「い、いや、分かっておる。今乗るぞ」ギュッ
剣士「しっかり掴まっていてくれよ」
魔法使い「あ、ああ……」

魔法使い(……くっ、愚かな私よ。今までと変わらぬ背負いではないか)
魔法使い(何を……何を恥ずかしがっておるのじゃ)
魔法使い(体が熱い……)

剣士「……」
魔法使い「……」

北の街へ続く街道

勇者「……盗賊、一つ聞いてもいいか?」
盗賊「あ?」
勇者「婆さんとの修行でさ、俺は旅に目的ができたんだ。
   人として立派になって、皆に認めて貰いたいって」
盗賊「……ふぅーん」
勇者「盗賊はさ、そういうのあるのか?」
盗賊「……あんだよ、いきなり突っ込んだ質問してくるじゃねぇか」
勇者「ああ、ごめん。やっぱり、話しづらいよな」
盗賊「……つまらねぇ話だ。余計な調味料は控えようぜ、勇者。
   せっかくの料理がまずくなっちまう」
勇者「ああ、そうだな」

盗賊「だがこれだけは言っておいてやる」
勇者「ん?」
盗賊「……復讐ってのも、十分に人を動かす力を持ってやがる。
   多分、あのおっさんも同じだろうさ」
勇者「おっさんって、剣士か?」
盗賊「……」

ごめん、ちょっと行き詰まった時間かかりそう


商人「お客さんお客さん、見たところ腕が立ちそうですね」
盗賊「あぁん?」
商人「わたくし、商人をやっておりましてですね。どうです、一つ頼まれてはくれませんかね?」
勇者「なんですか?」
商人「お客さん、北の街へ行かれるのでしょう?そうですよね?なんてったって一本道ですからね」
盗賊「いいからさっさと話せ、こちとら暇じゃねぇんだよ」
商人「まあまあ落ち着いて下さい。実はですね、最近魔物の活動が活発になっておりまして、
   それが北に行くほど深刻になっているのですよ」
勇者「へぇ……」
商人「そこでですね、荷物を北の街の宿屋に届けては貰えませんかね?
   いやはや、商人一人では魔物に太刀打ちできませんから」
盗賊「いくらだ?」
商人「10万ギル……でいかがですか?」


盗賊「じゅ、10万ギルだとぉ!?」
勇者「怪しいな。荷物の中身はなんですか?」
商人「それは言えませんね、一応」
勇者「一応……?」
商人「こちらの話ですよ。どうです?引き受けていただけますか?」
盗賊「お、おい……どうすんだよ」
勇者「怪しすぎるからやめといた方がいいだろ」
盗賊「で、でも10万ギルだぞ!?」
商人「お断りしたいのであればどうぞ遠慮なく。
   何も無理にとは言いませんから」
勇者「……では、お断りします。身の危険を感じるので」
盗賊「あ、おいっ……チッ」
商人「くっくっく。仕方ないですね。また別の旅人に頼みます。
   全く、最近は度胸のない旅人が多くて困る」

盗賊「……あぁん?」ピクッ

盗賊「テメェ、今なんつった?」
商人「はい?あなた方には度胸が足りないと、事実を述べたまでですが」
盗賊「……」

盗賊「……おい、勇者」
勇者「なんだよ」
盗賊「この仕事、引き受けるぞ」
勇者「は、はぁ?」
盗賊「こんなこと言われて黙ってられるってか?あぁん?
   それに10万ギルっつったら当分食料に困らねぇほどの大金だ。
   どこに断る理由があんだよ」

勇者「ど、どこって、明らかに怪しいだろ!」
盗賊「身の危険なんてぶっ飛ばしちまえばいい、そうだろ?」

商人「ふふ……」
商人(ちょろいな)

商人「では、こちらを宿屋までお願いしますよ……」
盗賊「金は?」
商人「もちろん用意してありますよ。くく、宿屋で引き換えてください」
盗賊「嘘だったらテメェを地獄の果てまで追いかけてやるからな」
商人「おー怖い」
勇者「もう勝手にしてくれ……」

北の街道

勇者「本当に大丈夫なんだろうな?」
盗賊「でっけぇ魔物を一撃でのしたやつが何ビビってんだ?」
勇者「それとこれとは……い、一応中身確認しとけよ」
盗賊「あ?……ん、なんか液体だな」
勇者「液体?なんだ?」
盗賊「私が知るかっつーの。とりあえず10万ギルゲットだぜ、へへっ!」
勇者「はぁ……」

勇者(と、とりあえず人の臓器とかじゃなくてよかった……)

街道
商人(たっぷり前金を頂いてるんだ。自分の命の危険に比べたら、10万ギルくらい安い安い)
商人(あいつらが宿屋に届けようが届けまいが、もう関係ない……ふっふっふ)
商人(そうと決まれば早いとことんずらするか)
商人(あの山賊共め……呆れるほどにバカだな、あっはっは!)

次の日・北の街

剣士「ようやく到着か、長い道のりだった」
魔法使い「感謝する、剣士よ」
剣士「礼はいい。とにかく早く医者のところへ」
魔法使い「あ、ああ……」

魔法使い(これでようやく、足が動くようになるのか……)



剣士「なんだって!?」
医者「だから、げどくざい届いてないの!あたちの言うことわかんない?」
剣士「なんということだ……」
医者「んー、多分運んでるときにさんぞくさんか何かに襲われちゃったんだとおもうケド……。
   あれ、すっごく高いから」
剣士「くそっ……これじゃあ、ここまで来た意味が……」

魔法使い(な、なんじゃこのちっこい医者は!)


医者「とにかく、げどくざいが無いかぎり、どうしようもないっぽいね」
剣士「くっ……一体どうすれば……」
魔法使い「い、医者よ」
医者「ん?なぁに?」

魔法使い「その解毒剤は、いくらくらいするのだ?」
医者「んー、注射一本につき100万ギルはするかも」
魔法使い「な、なんじゃと!?」
医者「今の医療の技術をぜーんぶあつめた薬だから、すっごく高いんだよ!」

魔法使い「そ、それでは、どっちみち手に入れられないじゃないか……」
剣士「まさかタダではないと思っていたが……まさかそんなに高いとは」
魔法使い「わ、私の足は……」
剣士「魔法使い……」


医者「とりあえず、届いたられんらくするから、この街から出ないでくれるとありがたいかも」
魔法使い「……」
剣士「……あ、ああ」
医者「そんなに気を落とさないでよおふたりさん。なんなら、ここで休んでいく?
   その方がれんらくとりやすいし」
剣士「……どうする?」
魔法使い「……ああ、すまないが、そうさせてほしい」
医者「はぁーい!」


剣士「……」
魔法使い「……」
剣士「……路頭に迷ってしまったな」
魔法使い「……ああ」

魔法使い「すまないな……苦労してここまで来たというのに」
剣士「お前さんは謝らなくていい」
剣士「しかし、魔物に襲われ命からがら到着したこの街で、目的を見失ってしまうとは。
   他の街に解毒剤はないのだろうか?」
魔法使い「……あるとしても、更に北じゃろうな。私達は南から来たのだから」
剣士「北……か」
剣士「北に行けば行くほど魔物は活性化しているとあの商人が……ん?」
魔法使い「……どうしたのじゃ?」


剣士「……あの商人、確か荷物を届けてくれと言ってきただろう?
   生憎、そんな余裕は無く断ってしまったが」
魔法使い「街道にいた商人のことか?あやつは怪しすぎる。ただの小包に10万ギルなど……あれを引き受けるやつはよほどのあほうじゃ」
剣士「そうだ。ただの小包に10万ギル。そんなに高価なものはそう多くない」
魔法使い「まさか……それが、奪われた解毒剤だと?」
剣士「可能性はある」
魔法使い「しかし、あやつは商人であり、山賊ではない」
剣士「商人とは商売の機会を作り出すプロ。故に口が上手い。
   自分は運び屋のプロだと偽り、狂暴な魔物をだしに山賊を脅したのだろう。
   『この先は危険だ。お前達がこれから得る金に比べたら、俺に渡す金なんかちっぽけなものだろう?
   命と端金、どちらが大事だ』などと言えば、頭が筋肉でできているようなやつらだ。
   コロッと引っ掛かってもおかしくない」
魔法使い「……確かに辻褄は合う。しかし商人にとっての利益はどこにあるのじゃ?」
剣士「運び屋は前金を受け取り、現地で再び金を受け取る。
   高価な解毒剤だ、前金はたんまり貰えただろう」
魔法使い「つまり商人は前金だけ受け取り実際運ぶのは私達のような旅人に任せ、とんずらすると?」
剣士「……どうだ、有り得ない話ではないと思うが」


魔法使い「……そう判断するのは、時期尚早ではないか?
     もしかしたら、いらぬやっかいごとに巻き込まれる可能性だってある」
剣士「しかし、今俺達にできるのはそれだけだ」
魔法使い「……そ、それもそうじゃが」

剣士「あの商人は、どこに届けろと言っていたか覚えているか?」
魔法使い「確か、宿屋じゃったと……」
剣士「でかした」
魔法使い「そ、そなたよ!どこへ行くつもりなのじゃ!?」
剣士「すまん、魔法使い。俺の勘がすぐに動けと言っている」
剣士「悪いが、そこで待っていて欲しい」
魔法使い「なっ……お、おい!剣士よ!」
剣士「心配するな。危険を感じたらすぐに戻る」
魔法使い「あっ……い、行ってしまった……」
魔法使い「剣士に、何もなければ……良いが。
     いや、剣士は賢明で頼りがいのある男。下手なことはしないじゃろう。
     私は、あの男を信じて、待つのみじゃ」

北の街・宿屋

剣士「……」
剣士「……宿屋の裏から声が聞こえる」

??「ったく、どこにいやがんだよ山賊共はよォ。宿屋ってここしかねぇんだろ?」
??「お、おい、やっぱ騙されたんじゃないのか?
   今にも誰かが背後から剣をヌッと」

剣士「おい」ジャキッ

??「ひぃい!やっぱり!やっぱりだよ!ほら見ろ!」
??「あぁん?」チャカッ

剣士「お前ら、今すぐその小包を……ん?」
盗賊「あ?」
勇者「え?え?何?」

剣士「と、盗賊に、勇者だと!?」
盗賊「ありゃ?何してんだおっさん。仲間に剣なんか向けやがって、気が狂ったか?」
勇者「え?け、剣士!?」


盗賊「ハッハァーン、なるほどねぇ」
盗賊「つまり、私が今持ってるこの液体で、魔法使いを救えるかもしれないと」
剣士「ああ、それが解毒剤なら、そういうことになる。しかし驚いたな。
   まさか二人があの商人との取引に応じていたとは」
勇者「盗賊が単純な挑発に乗せられたからだよ」
盗賊「あ、あぁん!?今なんつったテメェ!!
   結果的にラッキーなんだからいいじゃねぇか!!」

剣士「とにかく、余計な手間が省けてよかった。
   さっそく、小包を持って病院に戻ろう」
勇者「あ、ああ」



盗賊「断る」


剣士「なんだと……?」
勇者「お、おい、盗賊」
剣士「なんのつもりだ?その薬を早く届けないと、魔法使いは永久に歩けなくなるかもしれないんだぞ」
盗賊「わぁーってるよ」
勇者「それなら早く」
剣士「裏切るつもりか?
   返答次第では、俺はこの剣先をお前に本気で向けるかもしれない」

盗賊「はぁー……ったく」
盗賊「これだから頭のかてぇやつは」

剣士「何っ!?」
勇者「お、おい……」

盗賊「テメェらよぉ……私の職を忘れて貰っちゃあ困るんだよ」

剣士「……どういうことだ」



盗賊「ふんだくれる時にふんだくる」
盗賊「お前のものは俺のもの……基本だろ?なァ、お二人さんよ」



北の街・夜の宿屋裏

山賊「兄貴によると取引場所はここでいいんだよな」
山賊「ああ、間違いねぇ」
山賊「へっへっ、これで俺達ぁ、大金持ちだぜ」

盗賊「よぉ」

山賊「お、テメェか、取引相手ってのは」
山賊「さっさとその小包渡しやがれ姉ちゃん!ま、姉ちゃん自身でも構わねぇけどな!」
山賊「がっはっはっは!!」

盗賊「チッ……ゲス野郎の解体ショー並につまらねぇやつらだぜ。
   ほらよ、小包だ」

山賊「へっへっ、確かに受け取った。ほら、金だ」
盗賊「ああ、確かに受け取った。『あ~、やっとだぜ』」
勇者「!!」
勇者「イ、イヨォロレイッヒ~!!!」ガサッ
山賊「な、なんだこいつぁ!!」


山賊「……な、なんだったんだ!?」
山賊「へ、変なこと叫びながら飛び出してきたと思えば、そのままどっか行っちまいやがった……」
山賊「ね、姉ちゃん、最近はああいう輩が多いから気をつけろよ」
山賊「って、それ俺達が言えることか?」
山賊「がっはっはっは!テメェの言う通りだ……って、ありゃ?姉ちゃんは?」

病院

盗賊「ブッ、くはっはっはっ!な、なんだありゃ!腹いてぇ!あーはっはっはっは!」
勇者「し、仕方ねぇだろ!!『とにかく注意を引け』なんて
   曖昧な注文する方が悪いんだよ!!」
盗賊「イヨォロレイッヒ~!あーはっはっはっは!!最高!!こりゃ最高だ!!」
勇者「う、うるせぇー!!!!!」

剣士「お、おい……ここは病院なんだ……少しは静かに……」


医者「もうだいじょぶだよー!」
勇者「あ、お医者さん!」
盗賊「イーヒッヒ……イヨォロレイッヒ~……ブホッ!」
勇者「……」

剣士「それで、魔法使いは?」
医者「うん、一日あんせいにしてれば、歩けるようになると思う!」
剣士「本当か?よかった……」
勇者「ああ、安心だな……」
盗賊「イヨォロレイッヒ~……ぷっくく!」
医者「じゃ、代金10万ギルね!」
盗賊「あぁぁぁんっ!?」


盗賊「10万ギルだぁ!?テメェこらチビ医者ぁ!!」
医者「むっ……20万ギルに値上げしようかな」
盗賊「コ、コノ野郎ォ……」
医者「本来なら一本100万ギルのところを取り返してくれたから10万ギルまで値下げしてるんだよ?
   それなのに文句いうひとはかなりのケチかも」
盗賊「ガキなら許されると思って調子乗りやがって……」ピクピク
剣士「落ち着け、盗賊。とても貴重な薬なんだ。
   値下げしてくれただけで十分じゃないか」
盗賊「テメェ、こっちが苦労して手に入れた10万を……」
勇者「確かになんか悔しいな、くそっ。恥かいただけかよ」

剣士「ほら、金はここにある」
医者「うん!いっかつばらい!確かに受け取ったよ!」

盗賊「ちっくしょオ!!!」
勇者「くそぉぉぉ!!!」

多分キリ良いとこだし休憩させて


次の日・北の街の病院

魔法使い「皆……」
剣士「魔法使い、よくなったか」
魔法使い「ああ、ようやく歩けるようになった。ありがとう……感謝している」
勇者「いや、よかった」
盗賊「チッ……」

魔法使い「剣士は命からがら私をここまで運んでくれた。
     盗賊と勇者は解毒剤とお金を苦労して手に入れてくれた。
     これ以上なんと言えば良いか……」

剣士「気にするな。当然のことをしたまでだ」
勇者「ああ」
盗賊「チッ……もっかいケガなんてしてみろ。
   そん時はチーターみてぇな早さで追い撃ちかけてやんよ」

魔法使い「ああ……承知した」


剣士「ということで、ようやく4人での旅の再開だ。
   続いての目的地だが、全員の意見は聞かずとも一致するだろう」
勇者「ああ……さらなる北の大地へ」
魔法使い「異論はない」
盗賊「チッ……かっこつけてんじゃねぇよ」
剣士「……決まりだな」
魔法使い「では早速、出発するとしよう」
勇者「ああ」
医者「ちょーっと待ってー!」
剣士「ん?」
盗賊「あ?」


医者「みんな、北をめざすんだよね?」
剣士「ああ、その通りだが」
魔法使い「何事じゃ?」
医者「あたちの病院ちょくぞくのうんぱん係がね、
     ぜひとも北東にある街までの護衛をおねがいしたいって言ってるんだケド」
勇者「……なんでまた?」
医者「みんながね、解毒剤とりもどしてくれたから、
   お礼ってわけじゃないけど、馬車で移動できるし、すこしでも役にたてたらって言ってた。
    あ、もちろん護衛費もだすよ!」

剣士「悪い話ではないな」
盗賊「どこに悩む要素があんだ?早く着けるし金も貰える。
   良いことづくしじゃねぇか」

医者「じゃあ、おねがい!うんぱん係にはあたちが伝えとくね」
剣士「ああ、頼む」
魔法使い「これは、思わぬ幸運じゃな」

医者の口調がピノコめいてきたぞ、アッチョンブリケ(重低音)

ごめん寝てた
もう限界だ
明日も18時超えると思う保守頼みでごめん

>>321
そこは「大丈夫だ、問題ない」って返すべきだろ…
そんな空気を読まなくて大丈夫か?

>>323
そんな習慣お前の田舎にしかねーよ帰れ

すまん言い過ぎた
去年くらいに兄貴にコメントでぐちゃぐちゃの動画見せられて
兄貴「神ゲーの予感するだろ?」
俺「これだけじゃ解らないよ」
兄貴「そんな理解力で大丈夫か?(ドヤ顔」
って言われて以来こういうネタにはつい過剰反応しちゃう


運搬係「お待ちしておりました」
盗賊「お、なかなか良い馬車じゃねぇか」
運搬係「北東の街までの護衛をよろしくおねがいします」
魔法使い「ああ、任せるがよい」
運搬係「北東の街といえば、ご存知ですか?」
剣士「ん?なんだ?」

運搬係「北へ進むほど魔物が活性化しているという話は耳に入っているでしょうが、
    その原因は魔王にあるのです」

勇者「もう少し詳しくお願いできますか?」

運搬係「はい。魔物の活性化とは、すなわち魔王の放つ悪に染まった力による影響なのです。
    そしてその影響は魔王に近付けば近付くほど顕著になる。
    ここからが本題です」

剣士「ふむ」

運搬係「北東の街とは、すなわち活性化した魔物に覆い尽くされし街。
    人々はある強力な魔物により支配されているのです」

魔法使い「なんじゃと!?」


運搬係「魔物の栄養源は人そのもの。故に人を襲うのです」
勇者「ひ、人を食べるのか!?」
運搬係「はい」

剣士「支配されている、とはどういうことだ?」
運搬係「先代の運搬係から受け継がれてきた話なので詳しくは知りませんが、
    北東の街は、月に一度魔物へ人質を渡すことにより平和が保たれているそうです」

魔法使い「そんなバカな……」
盗賊「……」

運搬係「危険だとは思いましたが、あなた方は魔王を倒す旅をしているとのこと。
    それには北東の街の存在を無視できないと考えたので、今回は護衛をお願いした限りなのです」

剣士「ああ……これは無視できない問題だ。魔王の情報も得られるかもしれん」


運搬係「身に危険の迫る場所です。これまでの話は、契約内容の確認と
    双方の合意を得、契約に問題が生じないよう配慮してのものです。
    つまり私は当事者として、あなた方に改めて問わなければなりません。
    北東の街への護衛を、お願いできますでしょうか?」

剣士「……どうする?って、聞くまでもないか」
魔法使い「ああ、そんな話を聞いておいて、放ってはおけないな」
勇者「ああ」
盗賊「私も、文句はねぇ」
剣士「と、いうことだ」

運搬係「ありがとうございます。それでは馬車に乗って下さい。
    あ、ちなみに二人乗りなので二手に分かれて乗車していただきます。
    男性は前の馬車へ、女性は後ろの馬車へどうぞ」

魔法使い「承知した」


北東の街道・馬車の中

魔法使い「しかし、驚いた……魔物が人を捕食するとは」
盗賊「……」
魔法使い「……そなたよ、どうかしたのか?」
盗賊「ん?ああ……ちょっと、心当たりがあんだよ」
魔法使い「心当たり?」
盗賊「……人さらいの話を聞いたことがあるか?」
魔法使い「人さらい……確かに、聞き覚えはある。
     『おなごを狙いし悪党共は北東へ消える』、と……」

盗賊「……気づかねぇか?」

魔法使い「……今、気づいた。北東とは、まさに北東の街。そして人さらい……」

盗賊「ああ……どうせ、人質を渡しすぎて条件に合う町人が尽きちまったか、そんなとこだろぉぜ」

魔法使い「なんということじゃ……」


盗賊「……魔法使い、こんな話を聞かせちまったテメェだから言う」

魔法使い「……ん?」

盗賊「……一つだけ、頼みがあんだ」

魔法使い「……そなたの、そのような真剣な目は初めて見た。……私でよければ、そなたの話を聞こう」



北東の街道・馬車の中

剣士「ほう……これがその婆さんに貰った剣か」
勇者「ああ。どう思う?」
剣士「……素晴らしいの一言に尽きる。これは後生大事にとっておくべきだ」
勇者「そ、そんなに良いものなのか……」
剣士「何よりも、手入れが隅々まで行き届いている。見事なまでに。この剣を手入れしていたのは?」
勇者「あ、ああ……多分、その婆さんだと思う」


剣士「多分?」
勇者「なんというか……婆さん、剣があまり好きじゃなかったみたいだから」
剣士「というと?」
勇者「何かとあれば『こんなものは場所もとるし邪魔で仕方がない』って言ってたから、
   そんなに完璧な手入れを婆さんがしてたなんてにわかに思えなくて」

剣士「その婆さんは、嘘が下手だな。剣は人の心をうつす。
   この剣から感じられる温もりは、どうしても隠し切れない」

勇者「そ、そうなのか……」

剣士「その婆さん、剣士として、是非一度会ってみたい」

勇者「無職じゃないと会ってくれないって言ってた」
剣士「無職?」
勇者「多分、全ての目的を終えてからって意味だと思う。
   勇者や剣士なんて肩書に意味が無くなってから」

剣士「……なるほどな」


北東の街道・馬車の中

魔法使い「それは一体どういうことじゃ!?」
盗賊「どうもこうもねぇ。テメェに言ったままの意味だ」
魔法使い「私達を信用できないと……?」
盗賊「チッ……ちげぇよ。そんなんじゃねぇ」
魔法使い「ではどういう」
盗賊「あーうっせぇうっせぇ。……これはな、私の問題なんだよ」

魔法使い「しかし……」

盗賊「巻き込みたくねぇんだよ。わかったらこれ以上口だしすんな」

魔法使い「……」


北東の街道・中間地点にある村

運搬係「今日はこの村で休憩をとります。夜になるとこの辺りは危険なので」
剣士「了解した」
勇者「休憩って言っても全く疲れてないな」
魔法使い「しかし、このような場所に村があるとは」
運搬係「この村は偶然掘り当てられたオアシスを囲うようにできています。
    水のある場所には自ずと人が集まりますから」

魔法使い「ほう……水浴びなどできるじゃろうか」

運搬係「可能ですよ」

剣士「そうだな。では各自自由行動としよう」
勇者「えっ?」
魔法使い「ああ、それがいい」
盗賊「決まりだ」
勇者「えっ?」


勇者「……」ゴシゴシ
勇者「……」ゴシゴシ
勇者「……」ゴシゴシ
勇者「……」ゴシゴシ

勇者「……なんか、すごく身に覚えのある状況なんだけど」

勇者「……」

勇者「なんで皆、そうすぐに用事を見つけられるんだろう」

勇者「……でも、前回は盗賊が来てくれたし、今回はそこから話を広げれば……」

勇者「『おい勇者、テメェ何してんだ?』」
勇者「ん?武器の手入れだけど」
勇者「『テメェは本当に武器の手入れが好きだなぁ』」
勇者「まあね。あ、盗賊の武器もやろうか?」
勇者「『本当か?わりぃな、頼りになるぜ』」
勇者「なんつって」
勇者「へへっ」

勇者「……」
勇者「……」ゴシゴシ

ちょっと行き詰まってしまった
遅くなるかも

どれくらいの長さを想定してるん?

>>382
いい加減で申し訳ないけど、書きながら考えてるから
終わり方とか全く決めてない
でも>>1000までとかそんなのは全く思ってない

むわああああああああ
寝てしまっていたあああああああ


勇者「はぁーあ……」
勇者「……暇だ」

男「兄ちゃん、旅人かい?」
勇者「えっ?あ、はい!」

男「その格好……剣士か?」
勇者「いえ、一応勇者やらせてもらってます」
男「兄ちゃんが勇者?見えねぇな、はっはっは」
勇者「あ、はい……」ズゥーン

勇者「あの、あなたは」
男「俺は各地で郷土史を研究してる人間さ。兄ちゃんと同じく旅人って訳だ」
勇者「はぁ」
旅人「まあそう警戒しないでくれ。この街で浮いてしまって寂しかったんだ」

勇者「浮く?どうしてです?」
旅人「ありゃ?知らないのかい?」


旅人「ここは北の街と北東の街のちょうど中間地点にあるってのは知ってるだろ?」
勇者「はい」

旅人「故にな、休憩のために俺達みたいな旅人が多く訪れるんだ」
勇者「それに何か問題が?」

旅人「旅人って言っても、俺達みたいに害のない人間ばかりじゃない。そうだろ?」
勇者「え、ええ……まあ。山賊とかもいますし」

旅人「問題は、そういうやつらなんだよな」
勇者「どういうことですか?」



旅人「荒らす荒らすのやりたい放題よ。オアシスは汚され、
   女子供はさらわれ、男共は殺される。
   どこの街でも部外者が起こしがちな事件だが、この街は特に多くてな」

勇者「なるほど……それで俺達旅人は冷遇されるってことですか?」

旅人「おうよ。なんだ、中々頭が切れるじゃねぇか」
勇者「あ、ありがとうございます……」

旅人「頭の良い兄ちゃんみてぇなやつに聞いてもらいたい話がもう一つある」

勇者「ん?」



旅人「郷土史研究家として話す。ここの村のオアシスの不思議についてだ」
勇者「オアシスの不思議?」

旅人「ああ。どうやら、ここの村のオアシスには精霊が住み着いているらしい」
勇者「せ、精霊!?」

旅人「数多くの文献が残ってる。それに、この街では年に一度精霊を敬う祭が開かれるんだ」

勇者「は、はあ……」

旅人「火のない場所には煙はたたぬ……どうだ?興味があるか?」

勇者「いえ……にわかには信じがたいですね」

旅人「何故だ?」

勇者「……目に見たものしか信じられないから、ですかね」

旅人「はっはっは、えらく現実主義な勇者だな。
   感情でものを語る熱いやつが多いと聞いたが、そうではないらしい」

勇者「ダメでしたか?」

旅人「ダメも良いもないぜ。ただ、頭の切れるやつはこの話をどう捉えるか、知りたかっただけだ」

勇者「そうですか……」


旅人「いや、中々気に入った。話の合う兄ちゃんだ。どうだ、一杯」
勇者「あ、いえ、仲間がいるので……」
旅人「なに!?仲間?」
勇者「は、はい」
旅人「何人だ!?」
勇者「えーっと、3人ですね……」
旅人「そんなにか!ま、まずいな……」
勇者「まずい?あの」
旅人「先程も言ったが、この街は旅人に対してえらく治安が悪い。
   故に旅人は団体で行動しなければならない」
勇者「え?え?」
旅人「落ち着け。この街での危機回避の方法は知識だ」
勇者「知識?」
旅人「ああ、村民の間じゃ、それが合図のようになっている。
   極端な話、ここでは知識さえあれば村民に化けることができる」

勇者「えっと……」

旅人「俺はそのおかげで何度か救われたが……。
   つまりだ、先程俺が兄ちゃんに話したような村のことを知っていなければ、部外者と認定される。
   この村じゃ誰もが知っている話だからな。合理的で確実な方法だ」

勇者「じゃ、じゃああなたが話してくれたのって……」
旅人「気に入ったやつだけだ。村民に対しての予防策という意味で教えた側面もある」
勇者「ま、まずいな……皆に知らせないと」


勇者「な、なんで運搬係の人達はそんな大事なこと……」
旅人「運搬係?」
勇者「俺達をここまで運んでくれた人達です」
旅人「それは、結構な所帯か?」
勇者「ええ、まあ。5、6人の」

旅人「運搬係は村にとっても重要な存在である。
   妨げてしまうと物資の補給ができなくなるし、冷遇されていない可能性が高い」

勇者「知らなかった……ということですか?」

旅人「……恐らく。単に忠告を忘れていただけという可能性もあるがな」

勇者「そんな……」

旅人「とりあえずだ。兄ちゃんの仲間を探さなければならない」
勇者「そ、そうですね」
旅人「特徴は?」
勇者「えっとですね……」



旅人「よしわかった。二手にわかれよう」
勇者「はい!」


オアシスの村・武器屋

剣士「ふむ……中々に良い品揃えだな」
店主「……」
剣士「これなんか、実に……」ジャキッ
店主「お客さん」
剣士「ん?」
店主「その腰にぶら下がっている剣は……もしや」
剣士「ああ、わかるか?」
店主「……こりゃ驚いた。初めて見るな。どれ?少し近くで見せていただいても?」
剣士「ああ、構わん」ジャキッ
店主「ほう……」スッ
店主「こりゃまた素晴らしい……実に良い……いやはや」
剣士「はっはっはっ」
店主「そして……実に愚かだな、剣士よ」ジャキッ
剣士「……客に剣先を向けるとは、どういうつもりだ?」


店主「貴様、オアシスについて何を知っている」
剣士「……どういう意味だ?」
店主「……やはりか、部外者め!」ジャキッ
剣士「……落ち着け、大の大人が、何を感情的になってやがる」
店主「黙れ!貴様らのような薄汚い部外者に、俺の妻は……妻は……!」
剣士「何の話だ。俺には関係がないし身に覚えもない」

店主「……ついてこい。貴様には苦しんでもらう」
剣士「……」

店主「下手な真似はするんじゃねぇぞ。こちとら武器屋だ。
   貴様なんかより武器の扱いには慣れている。
   それに俺の握っているこの剣は、貴様のものだ。これがどういう意味かわかるな?」

剣士「……くっ」

店主「……剣に愛着をもつのも、いいことばかりじゃねぇなあ、剣士さんよ」


オアシスの村・路地裏

盗賊「……ったくよぉ、こんなところで油売ってる暇なんかねぇんだよ……」
子供「姉ちゃん、何してんの?」
盗賊「チッ……ガキは家に帰って母ちゃんの乳でも吸ってろ」
子供「ふぅーん……」
盗賊「あんだよ」

子供「姉ちゃん、危ないよ」
盗賊「あぁん?」
子供「僕に着いてきた方がいい」
盗賊「なんでガキの子守なんかしねぇといけねぇんだ、しっしっ」
子供「……オアシスについて何を知ってる?」
盗賊「……あぁん?知るかクソガキ」

子供「……やっぱりね」

盗賊「なんか知らねぇが気に入らねぇガキだな。
   言いてぇことがあるならもったいぶらずに言いやがれ」

子供「ふぅん、勘は良いんだね」
子供「とにかく、着いてきてよ。こんなクソガキに何ができるわけでもないでしょ?」
盗賊「話はそれからってか?」
子供「ホントに勘だけはいいんだね」


オアシスの街・オアシス

魔法使い「久しぶりに身体を洗えるな……」
魔法使い「それにしても、えらく開放的な場所じゃが、大丈夫なのか?」
村民「あら?あなたも水浴び?」
魔法使い「あ、ああ……そなたもか?」
村民「そうよ。なんて綺麗な銀色の髪……うらやましいわね」
魔法使い「なっ、て、手放しに人を褒めるでない」
村民「ふふっ……」
魔法使い「ふう……そなたは」
村民「ねーぇ」
魔法使い「ん?」
村民「オアシスについて、知ってることはある?」
魔法使い「……どういう意味じゃ?」
村民「……ふふふ」


村民「どうだ?」
村民「一人見つからねぇな」
??「徹底的に調べろ。全部で3人いるはずだ」
村民「は、はい!村長さん!」
村民「部外者め!絶対逃がさねぇ!」

村長「オアシスの村……別名神隠しの村とはここのことよ」

村民「村長!捕まえたやつは牢屋にぶちこんどきますかい?」

村長「ああ、それでいい」

村民「はい!」

村長「……さて、後一人が見つかるのも時間の問題だろう。
   俺もそろそろ動くとするか」

オアシスの村・広場

勇者「くっ……なんでどこにもいないんだ!」
勇者「皆一体どこに……」
旅人「おーい、兄ちゃん!」
勇者「あ!ど、どうですか!?」
旅人「全員無事だぞ!」
勇者「ほ、ほんとですか!?」
勇者「皆は一体どこに!?」
旅人「ついてきな」
勇者「はい!」



オアシスの村・収容所

ガシャーン

勇者「ど、どうして……」
旅人「わりぃな、兄ちゃん」
村民「村長!」
旅人「ん?どうかしたか?」
勇者「そ、村長!?」
村民「やはり一人見つかりません!」
旅人「そんなはずはねぇ。後一人銃を使う盗賊の女がいるはずだ。
   徹底的に探せ!」
村民「はい!」

勇者「どうなってんだ……」


オアシスの村・スラム街

盗賊「おいガキ……一体どこまで連れていくつもりだ?」
子供「もうそろそろだよ」
盗賊「テメェ、妙な真似してみろ、どうなるかわかってんだろうな?」
子供「僕みたいなガキに……それも女の子に、一体何ができるって言うの?
   姉ちゃんの銃を奪う?姉ちゃんを殴り飛ばす?」

盗賊「チッ……」

子供「ま、罠の心配するのもわかるけどさ。僕がおびき寄せた先にはむさい大人達がわんさか……なんてね」

盗賊「テメェ……!」

子供「勘は良いけど頭は切れないね、姉ちゃん。
   そんなこと企んでる人が計画を流暢に話すと思う?」

盗賊「……」

子供「はぁー……これだから大人の女は」

盗賊「こんのメスガキぃ……」プルプル

スラム街・一軒家

子供「父ちゃん、ただいま」
父親「……」
父親「……また、連れてきたのか」
子供「だって放っておけないじゃん。この姉ちゃん、何も知らないみたいだし」
盗賊「あぁん?」
父親「……好きにしろ」
子供「やったね!」

盗賊「……おい、ジジィ」ジャキッ
父親「……」
父親「……口の悪い嬢さんだな」
盗賊「……何を企んでやがる。私をこんな薄汚ぇ場所に連れてきた理由を話せ」
子供「ちょ、ちょっと、姉ちゃん!」
父親「……錆」
盗賊「……あぁん?」
父親「……銃が錆ついてるって言ってんだ。ちゃんと手入れしてんのか」
盗賊「あ、あんだと?」
父親「使う度に手入れをしろ。銃ってのは握るだけで錆ちまう繊細な武器なんだ。
   汚ぇ銃で命を奪うんじゃねぇ」
盗賊「……なっ」
父親「貸してみろ」

書き溜めながら話を整理してるからちょっと待ってて


父親「……」ゴリゴリ、キュッ
盗賊「……」
子供「へへーん、にへへっ」
盗賊「……」
子供「くっ、ぷくくっ!」
盗賊「……ぁんだよ」
子供「父ちゃんに怒られてやんの!」
盗賊「う、うるせぇんだよ黙ってろクソガキィ!!」
子供「へへっ!」
盗賊「……はぁ、ったく」
盗賊(……こんなことなら勇者にでも手入れ頼んどけばよかったぜ……)
父親「……銃を扱うようになってから何年になる」
盗賊「……まだ一年も経ってねぇな。いや、そろそろ一年か」
父親「……どうりで」
盗賊「あぁん?」
父親「……お前は焦りすぎている」


盗賊「何が言いてぇんだ、おっさん」
父親「……背伸びしたガキみてぇな銃の握り方だ。まるで洗練されていない」
盗賊「……あんだと?」

父親「いちいちつっかかるんじゃない。冷静になれ。それでは戦いの場で銃に支配されちまう。
   いいか。銃を使いこなせ。一瞬の気の緩みが真実の瞬間に遅れをとる」

盗賊「……テメェ、なにもんだ」
父親「……場合によっちゃあ、お前に銃を教えてやってもいい」
盗賊「……なんでんなことすんだよ。おっさんに何の得がある」

父親「……銃を扱っていたものとして、お前みたいなやつは見過ごすことができない。
   頑固な性分でね」

盗賊「けっ……」


盗賊「『場合によっちゃあ』ってのは……どういうことだよ」
父親「半月ほど、ここに住め」
盗賊「あぁん?んなことできっかよ。勇者達と明日にでもこの村をでなきゃなんねぇんだ」
父親「……そうか。まだ話していなかったな」
子供「姉ちゃんがここに連れてこられた理由だね」



盗賊「……まじかよ」
子供「うん。村の雰囲気が騒がしくなってたし、多分皆捕らえられちゃってると思う」
盗賊「あいつらは、大丈夫なのか?」
父親「……すぐに殺されることはないだろう」
盗賊「なんでわかんだよ」
子供「村長は全部で4人いるって言ってたから」
盗賊「どういうことだ?」


子供「4人って言っちゃった以上、一人でも欠けてたら徹底的に探すってこと」
子供「どうせ殺すなら4人同時の方が見栄えいいじゃん?」
父親「しかしいつまでも探し続ける訳にはいかない」

盗賊「その限界が、半月ってわけか……」
父親「そういうことだ」
子供「あの村長、部外者狩りで支持を得ているようなもんだからね」
子供「できるかぎり派手なパフォーマンスとして、村民に見せびらかしたいんだよ」
盗賊「ゲスな野郎だな……」

盗賊「……一ついいか?」
子供「ん?」


盗賊「なんで私を助けた」
子供「ああ、それね……」チラッ
父親「……好きにしろ」
盗賊「あ?」
子供「簡単に言うと、僕も部外者だから」
盗賊「あんだと?」
子供「父ちゃんとは血が繋がってないんだ。ある日この街に捨てられていた僕を、父ちゃんが助けてくれた」
子供「まあ、そのせいで父ちゃんは村の人達に迫害されちゃって、今はこんなとこに住んでるんだけどね……」
子供「姉ちゃんがいた路地裏、ちょうど僕が父ちゃんに拾われた場所だったんだ」
子供「そこに一人で何か寂しそうに考えてる姉ちゃんがいたから、放っておけなかった」
盗賊「……それだけの理由か?」
子供「そうだよ。悪い?」
盗賊「……とんだお人よしがいたもんだぜ」
子供「なんて言われようと構わないよ。僕は村長が憎いからね。
   少しでもあの村長を困らせてやりたい」
子供「姉ちゃんが仲間を助けて脱獄!なんてシチュエーションになったら、それこそ最高だね。
   だからやっつけられないように父ちゃん、ビシバシ頼むよ!」
父親「……」
盗賊「……けっ」


盗賊「……」
父親「……納得いかなかったか?」
盗賊「……理解できねぇ部分ってのは、ある。自分に利益のねぇ人間を助けて、何になる」

父親「……損得だけが全てではない。特に、ああいった辛さを経験した子供はな。
   路地裏にいたお前と自分を重ねたのかもしれん」

盗賊「……今まで、何度かあったのか?あのガキが見ず知らずの人間を連れてくることは」
父親「お前で3人目だ。皆、この街を無事に出て行った」
盗賊「……わからねぇなぁ」
父親「……わかってやることが大切なんだ」
父親「……苦労するよ、娘ってのはな」
盗賊「……チッ」


父親「俺もお前に聞きたいことがある」
盗賊「あぁん?」
父親「何故ここにとどまることにした。今すぐにでも仲間を助けるために、収容所に突入することだってできるはずだ」

盗賊「……わかってんだろ。今の私じゃ返り討ちにあっておだぶつだ。
   じゃなきゃおっさんも銃を教えるなんて言うわけがねぇ。
   死ぬのが分かって突入するやつぁ、ただの馬鹿かよほどのお人よしだ。
   生憎私は馬鹿でもお人よしでもねぇ。自分に損なことはしない主義なんでね」

父親「……少しは冷静に考えられるじゃないか」

盗賊「私の目的は目前に迫ってる。確かに焦りすぎてたのかもしれねぇ。
   自分の強さを見失っちまってた。復讐心だけじゃ、手に入れられねぇものがある。私には今、強さが必要なんだ」

父親「……お前の目的とやらはよく分からんが、言ってることは間違ってない」


父親「……肩を見せてみろ」
盗賊「あぁん?」
父親「……かばってるのは分かってる。見せてみろ」
盗賊「……チッ」
父親「……やはりか」
父親「内出血を起こしているな」
盗賊「……なんでわかったんだよ」
父親「構えでわかる。肩の内出血は基礎体力が欠如している証だ。
   何故軍人が鍛えるかわかるか?」
盗賊「……さぁな」

父親「銃の反動に負けないためだ。基礎体力のない素人が映画のように銃を連射するとそうなる」
父親「……徹底的にやるぞ」

盗賊「……おもしれぇじゃねぇか」


オアシスの村・収容所

村長「愚かだねぇ、部外者さんよぉ」
勇者「なんのつもりだ!ここから出せ!」
剣士「俺達になんの恨みがある!」
魔法使い「私達は何もしない!」
村長「はっはっは!言ったろう?お前ら部外者が憎いからだよ」

村長「おい兄ちゃん、もし自分の村に魔物が侵入したらどうする?」
勇者「……どういう意味だ」

村長「徹底的に殺すだろう?村民勢力を上げて、だ。
   いいか?この村にとって部外者は悪そのもの。
   女子供をさらい男を殺すお前らと魔物の違いってなんだぁ?んん?」

魔法使い「……私達は違う。そんなことをするつもりは毛頭ない!」

村長「魔物が何を吠えたって魔物にゃ変わりはねぇ。
   安心しな、もう一人の部外者が見つかるまで殺したりはしねぇよ。
   祭は派手な方がいい、そうだろう?」

勇者「くっ……出せ!ここから出せ!」ガシャアンッ


勇者「くそっ……!」
剣士「これは、とんだ足止めをくらってしまったな」
魔法使い「私達は、殺されてしまうのじゃろうか……」
剣士「……盗賊の行方が気になる」
魔法使い「ああ……無事だといいんじゃが」
勇者「……」

剣士「……まず第一にすることは」
魔法使い「なんじゃ?」
剣士「冷静になることだ。今の状況において、焦りは禁物。
   容易な判断は希望を潰してしまう。そうだろう?勇者」

勇者「……わかってる。すまん」

剣士「気持ちは分かる。でも今俺達にできることは限られている。その判断を見誤るな」

魔法使い「……盗賊を信じるしかなさそうじゃな」

勇者「ああ……」

剣士「とりあえず、今日のところは休もう」
勇者「ああ……」

発狂しそう
少し休む
すぐ北東の街に行けばよかったかな


スラム街・下水道

父親「……ここだ」
盗賊「くっせぇ場所だな……おいおっさん、こんな場所に何があるってんだ?」
父親「ここから村の外へ抜けることができる」
子供「久しぶりだね、ここを通るのは」
盗賊「村の外だぁ?」

父親「ああ……あんな一軒家では訓練など不可能だ。ましてや村の中で発砲するわけにもいかないだろう」
盗賊「村の外にあてがあるのか?」
子供「それは行ってからのお楽しみだね」

盗賊「チッ……もったいぶってんじゃねぇよ」

父親「行くぞ」



北東の森

父親「到着したぞ」
盗賊「……あぁん?楽しみも何も、ただの森じゃねぇか、メスガキ」
子供「えー、僕は好きだけどなぁ。空気も綺麗だし。ただ、毎晩野宿なのはあんまりだけどね」

盗賊「あんだと?小屋の一つもねぇのか?」
父親「ないな」

盗賊「おいおいマジかよ。それはつまらねぇ冗談だぜおっさん。
   こんなにママのコーンスープが恋しくなったのは初めてだぜ」

父親「お前の訓練のためだ」
子供「そうだよ。大人に付き合ってあげてる僕の身にもなってよね?」
盗賊「チッ……つくづくいけ好かねぇガキだな、ったくよぉ」



父親「第一に、基礎体力だ。これは毎日一通りの厳しいメニューをこなして貰う。
   第二に、精神だ。そして第三に、勘だ。
   これらの訓練は実戦形式で行う。
   その次に銃の訓練だ。これは狙い撃ちをひたすら続ける、質問は?」

盗賊「実戦だぁ?熊かなんかと戦えってか?」

父親「俺だ」
盗賊「あぁん?」
父親「お前には、この俺と戦って貰う」
盗賊「……こいつぁ、おもしれぇ」

父親「ルールを説明する。実戦と言っても面と向かってやり合う訳ではない」
盗賊「あぁん?どういう訳だ?」

父親「ここは森だ。地形を最大限に利用した戦闘を行う。
   5分を10セット、10分を8セット、15分を6セットの合計220分24セットで行う」

盗賊「約4時間も闘い続けろってか?」

父親「セットごとに休憩はいれる。
   本題はここからだ。その戦闘方法だが……」


父親「定められた範囲内での戦闘だ。その中ならどこへ隠れたっていい。
   しかしそれは、どこから、いつ、俺の攻撃が飛んでくるか分からないということだ」

父親「もちろんだが、実銃は使わない。あくまで、この訓練は精神と野生的な勘を育てるものだからな」

盗賊「じゃあ何で攻撃すんだ?」
父親「己の身体と自然の産物だ」

父親「最初に言っておく。今のお前では、森に溶け込んだ俺の姿を目視する前にやられてしまうだろう」
盗賊「……言ってくれるじゃねぇか」

父親「当然だ。お前は精神的な面では未熟すぎる。
   冷静さを欠いた瞬間、それが命取りになる。
   戦闘ってのは、弱さを見せた者が負けるんだ」

盗賊「上等じゃねぇか。早速始めようぜ、おっさん」


3日後・北東の森

盗賊「いつつ……」
子供「大丈夫?傷だらけだけど」

盗賊「チッ……メスガキに心配されちまうとは情けねぇ。
   しかしあのおっさん、何者だよ。
   姿どころか攻撃すら見えねぇ」

子供「父ちゃんはね、村で治安維持部隊の隊長だったんだ」
盗賊「あんだと?」

子供「まさに軍隊みたいな集団だったよ。
   ま、父ちゃんはあまり自分からそのことを話したがらないけどね」

盗賊「ふぅーん……」
子供「今の訓練も、その時の経験を生かしたものだと思う」
盗賊「どうりで闘い慣れてるわけだぜ……」
父親「……休憩は終わりだ。次は15分6セットからだ。その後は狙撃の訓練、わかってるな?」
盗賊「ああ……わぁーってるよ」


7日後・北東の森
父親「……」ヒュッ
盗賊「!」ピクッ
盗賊「」ガッ
盗賊「っ……っぶねー!」
父親「……今のを防ぐか」
父親「……」ガサ
盗賊「チッ……また隠れやがったか!」



子供「よんひゃくきゅうじゅうきゅーう、ごーひゃく、ごひゃくいーち」
盗賊「くそっ!なにが!腕立て!200回!追加だよ!あんの!ジジィ!
   ちょっと!寝ちまった!だけじゃねぇか!」
子供「しゃべってると無駄に疲れるよー。はい、ごひゃくじゅうにー」
盗賊「くっ……せぇな!わぁーってるよ!」


盗賊「ふんっ!」バン!バンバン!
子供「……2発も外したね」
盗賊「腕立て追加が効いたか……」
父親「……言い訳はするな。それが今の己の実力だと素直に受け止めろ」
盗賊「……はいよ、わぁーってるよ、ちくしょう」


10日後・収容所

魔法使い「……今日も音沙汰無し、か」
剣士「10日間も村民共が勢力を上げて村中を探しているというのに見つからないとはな」
魔法使い「やはり……」
勇者「……やめようぜ、そんなこと、考えるだけ無駄だ」
剣士「ああ、そうだな。盗賊が俺達を見捨て、村を去っていたならば、他の脱出方法を考えればいいだけだ」
魔法使い「しかし……」
勇者「魔法使いらしくないぞ」
剣士「勇者の言う通りだ」
魔法使い「……すまない。少し、休む」
剣士「ああ」


15日目・明け方・収容所

村長「よぉ、久しぶりだな、兄ちゃん」
勇者「……なんの用だ」
村長「お前達の死刑の日が決まったんでな。ご丁寧に報告してあげようってんだ」
剣士「なんだと!?」
魔法使い「じゃ、じゃあ盗賊は……」
村長「悔しいがそいつぁ見当たらねぇんだ。村の外に逃げたとしか思えねぇんだよなぁ」
村長「お前ら、仲間じゃなかったのか?」
魔法使い「くっ……」
剣士「乗るな。挑発されているだけだ」

村長「まあとにかく。お前らの死刑は明日の明け方に決定した。
   つきましては、一日お前らをみせしめにさせていただきます、なんてな。
   はっはっは!」

村長「……ついてこい」


新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内

新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内

かなり古いが

すごい見苦しいお願いなんだけどさ
>>450-458をちょっと一回なかったことにしていい?
考えてた設定を一つポッカリ入れ忘れててさ、正直どうしようもなくなっちゃったんだよね
というか本当に書けないので設定を入れた形で書き直させて下さいお願いします
本当お願いします

サンクス
子供の存在意義と伏線の意味が0になるところだった
ゴチャゴチャ言ってすまんかった

スラム街・下水道

父親「……ここだ」
盗賊「くっせぇ場所だな……おいおっさん、こんな場所に何があるってんだ?」
父親「ここから村の外へ抜けることができる」
子供「久しぶりだね、ここを通るのは」
盗賊「村の外だぁ?」

父親「ああ……あんな一軒家では訓練など不可能だ。ましてや村の中で発砲するわけにもいかないだろう」
盗賊「村の外にあてがあるのか?」
子供「それは行ってからのお楽しみだね」

盗賊「チッ……もったいぶってんじゃねぇよ」
子供「うぅー、うずうずする!……ね、早く行こうよ!」
盗賊「……そんなにいいとこなのかよ?」
子供「だって、あれが使えるんだもん!」
盗賊「あぁん?」


北東の森

父親「到着したぞ」
盗賊「……あぁん?楽しみも何も、ただの森じゃねぇか、メスガキ」
子供「えー、僕は好きだけどなぁ。空気も綺麗だし。ただ、毎晩野宿なのはあんまりだけどね」

盗賊「あんだと?小屋の一つもねぇのか?」
父親「ないな」

盗賊「おいおいマジかよ。それはつまらねぇ冗談だぜおっさん。
   こんなにママのコーンスープが恋しくなったのは初めてだぜ」

父親「お前の訓練のためだ」
子供「そうだよ。大人に付き合ってあげてる僕の身にもなってよね?」
盗賊「チッ……つくづくいけ好かねぇガキだな、ったくよぉ」


盗賊「おいガキ……テメェ、何がそんなに楽しみだったんだ?
   お子様向けのアスレチックな遊具でもあんのか?あぁん?」

子供「それはね……父ちゃん、いい?」チラッ
父親「……ああ、ここまできたら大丈夫だ」
盗賊「あんだ?」

子供「あっ、これなんかちょうどいい木の棒だね。
   何描こうかなー」

盗賊「……おいコラ。散々人に期待させといて、楽しみな理由がお絵かきってか?
   っざけんなよ?大体お絵かきなんざどこでも」

子供「ふんふーん」ボゥッ
盗賊「!!」
盗賊「……ほ、炎で空中にお絵かきだと……そ、そういうことか……。
   メスガキ、テメェ、魔法が使えるんだな?」

子供「そうだよ。まっ、本当に初級の初級だから、魔物を攻撃したりとかはできないけどね。
   こうして、炎で絵を描いたり、身体を光らせたりとか、そんなのばっかり」

盗賊「……うちの魔法使いがいりゃあなぁ……」


盗賊「でもよ、魔法なんざ隠す必要ねぇじゃねぇか。体質的なもんなんだろ?
   いちいち人の目を避ける必要がどこにあんだ?」

子供「……言ったでしょ?僕は父ちゃんに拾われた部外者なんだ」
盗賊「……あぁん?」

父親「目立てないってことだ。あのスラム街ですらひっそりと生きることしかできない。
   村民の面前で魔法なんか使ってみろ、確実に何かしら身に危険が及ぶ。
   この村は、ここに何年住んでようが、根本的な部分では部外者はいつまでたっても部外者のままなんだよ」

盗賊「ったく……頭がかてぇやつばっかだな……」

盗賊「……おっと」
子供「ん?どうかした?」
盗賊「一つ、おもしれぇことを考えついちまった……」
父親「なんだ?」

盗賊「ま、そう焦るなよおっさん。まだ思いついただけだ。
   ケーキができる前に生クリームを舐めちまうような真似は、見苦しいぜ?」


父親「それでは、第一に、基礎体力だ。これは毎日一通りの厳しいメニューをこなして貰う。
   第二に、精神だ。そして第三に、勘だ。
   これらの訓練は実戦形式で行う。
   その次に銃の訓練だ。これは狙い撃ちをひたすら続ける、質問は?」

盗賊「実戦だぁ?熊かなんかと戦えってか?」

父親「俺だ」
盗賊「あぁん?」
父親「お前には、この俺と戦って貰う」
盗賊「……こいつぁ、おもしれぇ」

父親「ルールを説明する。実戦と言っても面と向かってやり合う訳ではない」
盗賊「あぁん?どういう訳だ?」

父親「ここは森だ。地形を最大限に利用した戦闘を行う。
   5分を10セット、10分を8セット、15分を6セットの合計220分24セットで行う」

盗賊「約4時間も闘い続けろってか?」

父親「セットごとに休憩はいれる。
   本題はここからだ。その戦闘方法だが……」


父親「定められた範囲内での戦闘だ。その中ならどこへ隠れたっていい。
   しかしそれは、どこから、いつ、俺の攻撃が飛んでくるか分からないということだ」

父親「もちろんだが、実銃は使わない。あくまで、この訓練は精神と野生的な勘を育てるものだからな」

盗賊「じゃあ何で攻撃すんだ?」
父親「己の身体と自然の産物だ」

父親「最初に言っておく。今のお前では、森に溶け込んだ俺の姿を目視する前にやられてしまうだろう」
盗賊「……言ってくれるじゃねぇか」

父親「当然だ。お前は精神的な面では未熟すぎる。
   冷静さを欠いた瞬間、それが命取りになる。
   戦闘ってのは、弱さを見せた者が負けるんだ」

盗賊「……ケッ、上等じゃねぇか。早速始めようぜ、おっさん」


3日後・北東の森

盗賊「いつつ……」
子供「大丈夫?傷だらけだけど」

盗賊「チッ……メスガキに心配されちまうとは情けねぇ。
   しかしあのおっさん、何者だよ。
   姿どころか攻撃すら見えねぇ」

子供「父ちゃんはね、村で治安維持部隊の隊長だったんだ」
盗賊「あんだと?」

子供「まさに軍隊みたいな集団だったよ。
   ま、父ちゃんはあまり自分からそのことを話したがらないけどね」

盗賊「ふぅーん……」
子供「今の訓練も、その時の経験を生かしたものだと思う」
盗賊「どうりで闘い慣れてるわけだぜ……」
父親「……休憩は終わりだ。次は15分6セットからだ。その後は狙撃の訓練、わかってるな?」
盗賊「ああ……わぁーってるよ」

7日後・北東の森

父親「……」ヒュッ
盗賊「!」ピクッ
盗賊「」ガッ
盗賊「っ……っぶねー!」
父親「……今のを防ぐか」
父親「……」ガサ
盗賊「チッ……また隠れやがったか!」


子供「よんひゃくきゅうじゅうきゅーう、ごーひゃく、ごひゃくいーち」ボゥッ、ボゥッ
盗賊「くそっ!なにが!腕立て!200回!追加だよ!あんの!ジジィ!
   ちょっと!寝ちまった!だけじゃねぇか!」
子供「しゃべってると無駄に疲れるよー。はい、ごひゃくじゅうにー」 ボゥッ
盗賊「くっ……せぇな!」


盗賊「ふんっ!」バン!バンバン!
子供「……2発も外したね」
盗賊「……いいからしっかり魔法で照らしてくれ。暗くて見えやしねぇ」
父親「……言い訳はするな。それが今の己の実力だと素直に受け止めろ」
盗賊「……わぁーってるよ、ちくしょう」


10日後・収容所

魔法使い「……今日も音沙汰無し、か」

剣士「10日間も村民共が勢力を上げて村中を探しているというのに見つからないとはな」
魔法使い「やはり……」

勇者「……やめようぜ、そんなこと、考えるだけ無駄だ」

剣士「ああ、そうだな。
   盗賊が俺達を見捨て、村を去っていたならば、他の脱出方法を考えればいいだけだ」

魔法使い「しかし……」
勇者「魔法使いらしくないぞ」
剣士「勇者の言う通りだ」
魔法使い「……すまない。少し、休む」
剣士「ああ」


15日目・明け方・収容所

村長「よぉ、久しぶりだな、兄ちゃん」
勇者「……なんの用だ」
村長「お前達の死刑の日が決まったんでな。ご丁寧に報告してあげようってんだ」
剣士「なんだと!?」
魔法使い「じゃ、じゃあ盗賊は……」
村長「悔しいがそいつぁ見当たらねぇんだ。村の外に逃げたとしか思えねぇんだよなぁ」
村長「お前ら、仲間じゃなかったのか?」
魔法使い「くっ……」
剣士「乗るな。挑発されているだけだ」

村長「まあとにかく。お前らの死刑は明日の明け方に決定した。
   つきましては、一日お前らをみせしめにさせていただきます、なんてな。
   はっはっは!」

村長「……ついてこい」


オアシスの村・オアシス

勇者「くっ……」ゴボボッ
村長「どうだぁ?オアシスのど真ん中で、柱に縛り付けられてる気分は」
剣士「一日首から下は水の中、か……良い気はしないな」
村民「へっへっへ……」
魔法使い「ジ、ジロジロと見るでない!」
村長「最後の一日だ。たっぷりと屈辱を味わってくれよ?」

村長「夜明けと同時にお前らの柱はハンマーで打たれる。
   その時は村をあげて酒を片手に祝福してやろうじゃねぇか。
   部外者には最も苦しい溺死をプレゼントしてやるんだ、せいぜい感謝しろよ」

魔法使い「つくづく下劣な男じゃ……」

村長「言ってろ。死人に何を言われようが動じねぇよ。
   見張りは二人、3時間交代だ、いいな?」

村民「了解です、村長」


村民「そ、村長ぉ!村長ぉ!!」
村長「なんだぁ?ギャーギャーと騒がしいんだよ」
村民「と、盗賊の女から、文書が!!」
勇者「!!」
魔法使い「!!」

村長「……現れやがったか。上等だ。おい、その文書とやらを読んでみろ」
村民「はい!」
村民「『今夜、テメェは精霊に泣かされる』……と、一文だけ」

村長「精霊だぁ?あんな作り話を信じてやがるのか?」
勇者「つ、作り話!?」

村長「まさか兄ちゃんも信じてたのか?ハッ、こりゃおもしれぇ。
   つくづくウゼェ連中がよぉ、鼻たれながらみじめに脱走したくせに誇らしげに話しちまうんだよなぁ。
   『オアシスについて聞かれたら、精霊について話せ』なんつってなぁ。
   ところがなまじこの村のことを知ったつもりになっちまった愚かな部外者共は、残念ながら死んじまいましたとさ、はっはっは!」

剣士「……まさか、二重の罠か!?」

村長「おっ、中々頭が切れるじゃねぇか。その通り、本当の答えは
   『そんな作り話信じてないね』なんだよなぁ。
   ま、これから死ぬお前らに特別の出血大サービスってやつだよ。はっはっはぁ!!」


スラム街・一軒家

子供「情報集めてきたよ。処刑はオアシスで行われるって。方法は溺死。既に3人は縛られてる。
   わざわざ村の広場まで行く必要もなかったよ。ここのスラム街だけで、十分に噂になってた。
   ま、派手なパフォーマンスがしたいから、それも狙いの内なんだろうけどさ」

盗賊「オアシスたぁ、ふさわしい舞台を用意してくれてるじゃねぇか」
父親「……実行はいつにするつもりだ」
盗賊「今夜だ」
父親「……作戦は考えてあるのか?」
盗賊「……おっさんとの修行で学んだことがある」
父親「ん?」

盗賊「……地形は、最大限に利用しろってな」


子供「僕にも協力させてよ。というか、させてくれなきゃ所在をバラすよ」
盗賊「ケッ、ガキがいっちょ前に脅しかよ。優しい世の中になったもんだ」
子供「……僕、本気だよ?」

盗賊「まあそう睨むな……端からそのつもりだよ。
   自分の父ちゃんをこんな場所に追いやった元凶の村長を、困らせてやりたいんだったな?」

子供「!……うん。何をすればいい?」

盗賊「ハッ……メスガキのくせにおもしれぇ目をしやがる。
   私と同じ、憎悪に燃える目だ。だがな、安心しな、おっさん」

父親「……ん?」

盗賊「このガキがこんな目をするようになるのも、今日で最後だぜ?」

父親「ああ……そうだといいな」


盗賊「一つ聞いておくが、おっさん。テメェはどうする?」
父親「娘に協力しない親がどこにいる」
盗賊「ケッ、いい答えだ」
父親「俺は何をすればいい」

盗賊「何……望み通り、娘のために動いて貰うだけさ。
   それも、おっさんの得意分野でな」

父親「得意分野?」

盗賊「ああ。身を隠し、銃を2、3発お空にぶち込んでくれりゃいい。
   連中、きっと私だと勘違いするぜ」

父親「……なるほど。フェイクか」
盗賊「おっさんなら、やつらに見つかるようなヘマはしねぇ。そうだろ?」
父親「……ふっ、誰に向かって言ってるんだ、嬢ちゃん」
盗賊「決まりだな」


子供「具体的な作戦内容を教えてくれないと」
盗賊「実は、既に連中には牽制球を投げておいた」
子供「牽制球?」
盗賊「ま、宣戦布告ってやつだ」
父親「いつの間に……」

盗賊「簡単だ。私の名前と内容を紙に書いてそこいらに置いときゃいい。
   村が私を探し回っている状態で、私と偽りそんなことするやつは他にいねぇからな」

子供「悪知恵だけは働くんだね」
盗賊「『だけ』は余計だぜ、メスガキ」

盗賊「それと、だ」
父親「ん?」
盗賊「メスガキのことだが、見た目じゃ誰かわからねぇように布を羽織ってもらう」
子供「なんだ、そんなこと?わざわざ言わなくてもいいのに」
盗賊「馬鹿野郎……バレちまったら、テメェらここにすら住めなくなっちまうだろうがよ……」
父親「……」
子供「……へへっ」ニコッ


夕暮れ時・オアシス

見張り番1「……『精霊に泣かされる』って、どういう意味だろうな」
見張り番2「俺が知るかよ」
見張り番1「……もしかして、本当に精霊を呼んだりして」
見張り番2「何言ってんだか」
見張り番1「だ、だって、有り得ねぇ話じゃねぇだろぉ?魔物なんてのもいるんだ、精霊の一匹くらい……」
見張り番2「……作り話だって知ってるじゃねぇか。それともお前は部外者なのか?」
見張り番1「ち、ちち違うよ!俺達5年の付き合いだろ!?」
見張り番2「じゃあつまらないこと言ってないで、見張りに集中するぞ」
見張り番1「あ、ああ……」

魔法使い「へっくしょ!くしゅっ!」
剣士「大丈夫か?水は冷えるな」
魔法使い「あ、ああ……」
剣士「顔が赤いぞ?」
魔法使い「な、なんでもない。気にしなくて良い」


オアシス・夜

見張り番1「う~さぶいな」
見張り番2「ビビってるからだろ。そうでもないぞ」
見張り番1「そうかな……」

ガサッ

見張り番1「ひぃぃ!」ジャキッ
見張り番2「槍をしまえ、猫か何かだろ」
見張り番1「い、いや、でもっ……」

タン!タンタン!タン!

見張り番2「じゅ、銃声!?」
見張り番1「な、なんだ、なんなんだよぉ!」
見張り番2「くっ、落ち着け!やつらの仲間が来たか!
      ……気配すら感じられねぇ」
見張り番1「お、おい!あれ!オアシス!見ろ!」
見張り番2「あぁ?……っな、ひ、光ってやがる……」

精霊「……」チャプ、チャプ

見張り番1「お、おい!こっちに来るぞ!どうすんだよ!」

魔法使い「き、綺麗じゃ……しかしこれは……魔法……か?」
勇者「こ、子供?」


子供「愚かな人間よ、ぼk……私の言うことを聞け」チャプ、チャプ

見張り番1「ち、近寄るなぁ!!」
見張り番2「おい、止まれ!」

子供「愚かな人間よ……忠告してやろう。
   『後方には、十分注意されたし』」

見張り番1「え?」クルッ
見張り番2「ん?」クルッ

ガッ!、ゴッ!

見張り番1「ぐぁっ!!」
見張り番2「ぐはっ!!」

盗賊「……わりぃね、お二人さんよぉ。でも安心しな、銃の柄だ」

勇者「と、盗賊ぅ!!」
魔法使い「来てくれたのか!!」
剣士「ふう……とりあえず、早く逃げよう」

盗賊「縄はといたか、メスガキィ」
子供「もちろん。後は逃げるだけだね」
盗賊「へへっ、ちょろいぜ」


子供「武器も近くにくくっておいてあったよ!さあ早く逃げよう」
魔法使い「あ、ああ、すまない」
剣士「急げ!」
勇者「待って!……あ、あれは!?」

村長「なぁーにがちょろいってぇ?盗賊さんよぉ」バッ
父親「うっ、くっ……」
村民「へへへっ……」
子供「父ちゃん!!」
村長「困るねぇー、脱走なんてしてもらっちゃあ」
盗賊「テメェ……」
村長「見張りが2人な訳がねぇだろぉ?冷静に考えろよ冷静によぉ」
勇者「お、おい!」
剣士「むやみやたらに飛び出すな!囲まれている!」
勇者「……うっ」
村長「まんまとおびき出されてくれた訳だ。ありがとよぉ、姉ちゃん」
盗賊「クソ野郎がぁ……」ジャキッ
村長「おぉっと。撃てるのかなー?このおっさんを盾にしちゃうぞ~?」
父親「ぐっ……構わん、撃て」
盗賊「……こいつぁ、徹底的にぶちのめされてぇみてぇだな」ジャキ

もう吹っ切れた
何も考えず感じるままに書く
矛盾の3つや4つあった方がおもしろいよな、うん

村長「おっとぉ、本当に撃っちゃうの?それじゃあ、こっちだって容赦はしないぜ、姉ちゃん」
父親「撃て!早く!!俺に当たってもいい!!」
盗賊「くっ……」
村長「やれ」
村民「はっ!」バキューン
盗賊「うっ……!」ビシッ
勇者「と、盗賊!!」
剣士「まずい、相手の弾が命中したぞ!」

父親「馬鹿野郎!!散々言ってきたはずだぞ!!
   お前は俺の下で何を学んだ!!一瞬の気の緩みは真実の瞬間に後れをとると、
   そう言ってきただろうが!!」

村長「ケッ、うるせーじじいだな。おい」
村民「はっ!」タンッ!タンタンッ!
父親「ぐふぅ……!!」

子供「なっ!?」
子供「と、父ちゃん!?おい!!父ちゃん!!」
父親「……」

勇者「あいつ……」
魔法使い「すまない、剣士。私ももう、我慢できそうにない」
剣士「……いいさ、どこに我慢をする必要がある。俺には分からない」
魔法使い「ああ……」
子供「父ちゃん!!父ちゃん!!」

魔法使い「それでは……」
子供「……その杖貸して!!魔法使いの姉ちゃん!!」バッ
魔法使い「あっ……お、おい!」
子供「もう許さない……よくも、よくも僕の父ちゃんを……」

村民「村長、ガキが一匹吠えてますが、どうします?」
村長「わざわざ聞くな。決まってるだろ」

子供「よくも……よくもおおおおおっ!!!!!」

カッ

剣士「なにっ!?」
勇者「うわっ!!」
魔法使い「な、なんじゃ!!この力は!!」

子供「うわああああああ!!!!!!!!」キィィィン

村長「ぐぅわっ!!!!」
村民「ま、まずいっ!!」

子供「父ちゃんを返せええええええ!!!!!!!!!!」

剣士「ひ、ひとまず建物の陰に!!」
勇者「ああ!!これはヤバい!!」
魔法使い「承知した!!」


剣士「……お、落ち着いた……か?」
勇者「おい盗賊!大丈夫か!盗賊!」
盗賊「……っく……っるせーな……こんくらいで……私、が……」
勇者「お、おい!!」
魔法使い「あれを見ろ!」
剣士「ん?」

子供「……」

勇者「た、倒れてる!!」
剣士「保護する!」ダッ
魔法使い「とんでもない魔力を持つ子供だな……。
     生まれ持っての才能か……感情の高ぶりによりリミッターが外れたか……」

勇者「とりあえず、村の外の安全な場所に行こう!」
剣士「ああ、それが賢明だ」


北東の街道

魔法使い「とりあえず、応急処置は施した」
剣士「そうか、大丈夫そうか?」
魔法使い「盗賊もあの娘も大丈夫だが……父親は……」
剣士「……そうか」
魔法使い「勇者はどこへ行ったのだ?」
剣士「さっきの騒ぎで村が混乱している間に、運搬係を見つけてくると言っていた」
魔法使い「だ、大丈夫なのか!?」
剣士「村長もただでは済んでいないだろう。きっと今、あの村に部外者を捉える能力はない」
魔法使い「そ、そうか……」
剣士「魔法使いは、そのまま出来る限りの治療を続けていてくれ」
魔法使い「了解した」


勇者「おーい!!」
運搬係「皆さん!心配していました!ご無事だったんですね!」
剣士「ああ、なんとかな」

運搬係「本当に申し訳ありません。私共の知識不足が原因です。
    村の真相を知らず、あなた方に危険を忠告することができませんでした……」

勇者「仕方がない。あの村長自身が、運搬係には真相を知らせてないって感じで言ってたから」
運搬係「しかし……一体どう責任をとれば……」

魔法使い「それならば、この者たちをあなた方の雇い主である、あの小さな医者のところへ連れて行って欲しいのじゃが」
運搬係「この者たち……?」
勇者「子供と、その父親です」
運搬係「怪我をされているのですか!?」

魔法使い「娘の方は魔力の過剰消費により気を失っておる。
     父親の方は……弾丸を数発、至近距離で食らった。
     出来る限りの処置はした。まだ絶命はしていないようじゃが、かなり厳しいじゃろう。
     少なくとも、私の手ではもうどうにも……」

運搬係「それはすぐにでも向わなければなりませんね……。
    きっと、あの病院の医者なら、なんとかしてくれます。見た目によらず、腕は確かですから」

魔法使い「……願うばかりじゃ」


運搬係「しかし、あなた方を北東の街までお届けするという約束が……」

剣士「気にしなくていい。それよりも大切なことがある。その子と親には、
   うちの盗賊が随分世話になったようだし、俺達も助けられたからな」

勇者「ああ、剣士の言う通りだ。……あ、そうだ」
運搬係「はい?なんでしょうか」

勇者「盗賊はそっちの二人よりは重傷じゃないみたいだから、こっちでなんとかできそうだけど、
   念のため、治療薬のようなものはないですかね?」

運搬係「物資の中にあるので、必要な分だけ持っていって構いません。
    責任は、全て私が取りますので、お気になさらないでください。
    解毒剤の件といい、今回の私達のミスといい、とにかくあなた方の力になりたい」

勇者「あ、ありがとうございます……」

魔法使い「……うむ、これだけの治療薬があれば、なんとかなるじゃろう」
勇者「よかった……」

剣士「問題は、村長だが……」

運搬係「それにつきましても、心配ご無用です。村での騒ぎをききつけ、私達が集まっていたところに勇者殿が現れ、
    事情を説明して下さいました。既に外部に連絡済みです。
    数々の悪行……今度はあの方々が、収容所に入る番でしょう」

魔法使い「それは、安心してあの娘を見送ることができるな」
剣士「ああ……」


運搬係「今回の護衛費は、しっかりと全額お支払いさせていただきます。
    お受け取りください」

勇者「い、いいのか?」
運搬係「何度も繰り返すようですが、こちらの過失ですので、御遠慮なさらずに受け取って下さい」
勇者「……ありがとう」
運搬係「いえ。では、人命がかかっておりますので、私達はこれにて南下し、北の街へと帰ります」

剣士「ああ、世話になったな」
魔法使い「娘と父親の行方が気になる。出来れば連絡して貰えるとありがたい」
運搬係「お安いご用です。それでは」
勇者「はい、気をつけて下さい」

剣士「……行ったか。まあ、ここから北東の街は言うほど遠くはない。
   歩いて一日でなんとかなるだろう」

勇者「とりあえず、この村からもっと離れたいよ」
魔法使い「同感だ。少し忙しない様じゃが、先を急ごう」
剣士「ああ、そうだな」
剣士「盗賊は勇者がおぶってやれ」
勇者「えっ?」
魔法使い「そうだな、賛成じゃ」
勇者「えぇぇっ!?」


北東の街道

勇者「ちょ、ちょっと待ってくれよ……」
剣士「どうした?」
魔法使い「盗賊の重さに耐えられなくなったか?」
勇者「ああ……あ、いやっ、そんなことはない」
剣士「今の発言を盗賊に聞かせたら……」
勇者「やめて下さいお願いします。首から上だけになります」
魔法使い「あっはっは」

剣士「何はともあれ、難が去ってよかった」
魔法使い「しかし、一難去ってはまた一難というぞ」
剣士「そうだな……次の街は、魔物に支配されし街だ」
魔法使い「覚悟する必要がありそうだな……」

勇者「ちょ……ホントに……待って下さい……」


盗賊「うっ……くぅー、いてて……あぁん?」
勇者「あ」
剣士「お」
魔法使い「ほう」

盗賊「」ジャキッ
勇者「えっ!?俺殺されるの!?おんぶしただけで!?」
盗賊「テ、テテテ、テメェ!!お、おろせ!今すぐおろせボケェ!!」
勇者「お、おろせるか!!歩けねぇだろ!?」
盗賊「じゃ、じゃあ剣士と変われ!!今すぐにだ!!」
剣士「何故そうなる」
魔法使い「そ、そうはさせん!」

勇者「俺の背中がそんなに嫌なのかよ……」ズーン


盗賊「変なこと少しでも考えてみろ。その瞬間お前は自分の脳を貫いた弾丸を目の当たりにすることになるぜ」
勇者「なんで俺銃つきつけられながら歩いてるんだろ……」
剣士「仲の良い証拠じゃないか」
盗賊「あぁん!?あんで私がコイツと仲が良いってことになってんだよ!!」
魔法使い「客観的な意見じゃ」

盗賊「テメェ、あの村長に目ん玉でもほじくられたのか?
   それとも頭ん中いじられたか?」

勇者「……」
魔法使い「まあ落ち着けそなたよ。今の様子じゃと、どう見ても焦っているように見えるぞ」
盗賊「ケッ、言ってろ言ってろ。もう私は知らねぇ」
魔法使い「素直じゃないの」
盗賊「テメェが言えたことかよ、ったく」
魔法使い「な!?どういう意味じゃ!!」
盗賊「あぁうっせ、おっさんがうつっちまうぜ」
魔法使い「なんじゃと……!」

勇者「あの……ほんのちょっとでいいから。服についた毛玉くらいでいいから、俺のことも気にしてくれない?
   頭の上で喧嘩されるとさ、すごい辛いんだけど」

剣士「あっはっはっはっは!」


魔法使い「勇者、気にするでないぞ。盗賊は表面はああ言っているが、
     内心嬉し恥ずかしくて仕方がないのじゃ」

勇者「はぁ?」
盗賊「もっぺん言ってみろコラァ!!!!!」ジャキッ
魔法使い「そなたは、表面では」

勇者「ちょ、やめて!魔法使い!やめて!なんか盗賊銃握る手に力入ってるから!
   俺の味噌が飛んじゃうから!!」

盗賊「上等じゃねぇか……おい剣士」
魔法使い「なっ!こらっ!」
盗賊「テメェも魔法使いをおんぶしてやったらどうだ?」
剣士「疲れているのなら、別に俺は構わないが」
魔法使い「えっ……い、いやいや!わ、私は遠慮しておく!」
剣士「ただ、それが女心を弄ぶという目的であるならば、俺は断る」
盗賊「なっ……」
魔法使い「ほっ……」

勇者(何この剣士、性格までイケメンかよちくしょう)

なぜオアシス編なんてやったんだ…

>>551
メチャクチャ後悔してる
正直書いてて苦痛しか感じなかった
北東の街に行くまでに、盗賊の成長を書いときたかったんだけど気づいたらあんな話になってた
トレーニングの描写なしで魔物をバッサバッサ倒すのは個人的に違和感を覚えるから
正直すまんかった

北東の街
剣士「とりあえず到着したが、どうする?」
盗賊「いつも通り自由行動でいいんじゃねぇのか?」
魔法使い「しかし前回のことがあるからな……」
剣士「勇者、お前さんはどう思う?」

勇者「え?あ、俺?俺は……えーっと。や、やっぱり、オアシス村でのこともあるし……
   単独行動は避けた方がいいんじゃないかなとは思うかな。
   2人ずつで行動するべきだと思う」

剣士「ほう」
魔法使い「良い案じゃな。身の危険も2人いれば回避できる可能性は格段に上がる」
盗賊「文句はねぇな」

剣士「では、とりあえずそれぞれの目的でグループを決めよう。
   俺は滞在証明書を提出した後、食料を買うつもりだ」
盗賊「私はいつも通りフラフラ散歩でもすっかな」

魔法使い「私は魔法を磨こうと思う。あの娘の魔法を見てから、どうもな」
剣士「ほう……それは良い心がけだ。俺も付き合おう」
魔法使い「ほ、本当か!?剣士よ!」
剣士「ああ。とりあえず先に俺の用事に付き合ってもらってもいいか?」
魔法使い「もちろんじゃ!」

盗賊「……」
勇者「……」
盗賊「……勇者、テメェは何するつもりなんだよ」
勇者「……ぶ、武器の手入れ」
盗賊「……」
勇者「……」


盗賊「ったぁーくよぉ、なんだってまたテメェの武器の手入れを眺めねぇといけねぇんだよ」
勇者「仕方ないだろ!なんか剣士と魔法使いが意気投合してたんだし!」
盗賊「あいつら……いつの間にあんな仲良くなってんだ?」
勇者「んー、そうだな。運搬係の馬車の中で剣士に聞いたんだけどさ」
盗賊「あぁん?」
勇者「噴水の街で魔法使いが魔物の毒にやられて足動かなくなっただろ?」
盗賊「あぁ」
勇者「その時、剣士が魔法使いをずっとおんぶしてたみたいなんだけどさ」
盗賊「あんだと!?」
勇者「そ、そんなに驚くことか?ま、まあ、とりあえず、それで距離は縮まったと言ってたよ」
盗賊「チッ……あんだよ、あいつもおんぶ経験してたのかよ」
勇者「え?」
盗賊「なんでもねぇよ」
勇者「……なんでちょっと悔しそうなんだ?」
盗賊「な、なんでもねぇっつってんだろぉが!!!」
勇者「えぇぇ!?ごめん!」

盗賊「チッ……」
勇者(……なんで怒ってんだぁ~……?)
盗賊「……」
勇者「……」
盗賊「……見んな」
勇者「……はい」
勇者「……」ゴシゴシ


盗賊「そういや……おい勇者、テメェに頼みがある」
勇者「え!?何!?」
盗賊「うわっ、なんでそんなに嬉しそうなんだよ、気持ち悪ぃな」
勇者「純粋に引くなよ……」

盗賊「テメェ、武器の手入れが好きなんだろ?」
勇者「好き……って言うと語弊があるけど、得意ではあるかな」
盗賊「銃も、できんのか?」
勇者「ん、大丈夫。やろうか?」
盗賊「おう、サンキュー。いやぁー、おっさんに怒られちまってよ」
勇者「あっ、そういえば聞いてなかったな。オアシス村で2週間、一体何してたんだ?」
盗賊「話すと長くなるぜ?」
勇者「構わないよ。どうせ暇だし。盗賊の話聞きたいし」
盗賊「あ、あぁん?な、なんでテメェが私の話を……」
勇者「強いて言えば、盗賊っていう一人の人間に興味があるから、かな」

盗賊「な、ななな、なんだそりゃ?そ、それはどういう意味で言ってんだテメェ。
   ば、場合によっちゃあ……」

勇者「何を焦ってるんだよ」
盗賊「あ、焦ってねぇよクソボケ勇者」
勇者「せめて一つにして?クソボケとか2つくっつけられると傷つくから」
盗賊「知るかよ、んなこと」


北東の街・商店街

剣士「さて、どの食材を選ぶか」
魔法使い「そ、そなたよ」
剣士「ん?」
魔法使い「こ、好みの料理などはないのか?」
剣士「好みの料理、か……そうだな、野菜スープは好きだ。身体にも良い」
魔法使い「そ、そうか!では、私が野菜スープを振舞おう!」
剣士「気を遣わなくていいんだぞ?お前さんの好きなものでも」

魔法使い「野菜スープは誰に対しても身体に良いからな!ははは!
     きっと、盗賊や勇者も喜ぶだろう!」

剣士「……そうか?それなら、お願いしようか」
魔法使い「ああ、任せておけ!」
魔法使い「きっと、おいしい野菜スープを振舞えるだろう!」
剣士「はっはっは!楽しみにしておこう。それこそ魔法のような美味しさのものを一つ、頼むぞ」
魔法使い「承知した!」


北東の街・訓練場

剣士「ほう……このような場所があるとはな」
魔法使い「それなりに大きな街にはあるようじゃな。私も入るのは初めてじゃ」

剣士「ところで、どうする?」
魔法使い「ん?」

剣士「各々特訓に励むか?それとも、実戦形式で指摘し合うか?
   俺は、魔法使いが良いのであれば、お互いにアドバイスをしながら訓練した方が良いと思うが」

魔法使い「き、奇遇じゃな!私もそう思っていたところじゃ!」
剣士「そいつは都合がいい。それでは、早速始めるとするか」
魔法使い「ああ、そうじゃな」

北東の街・商店街

盗賊「バッ!いいっつってんだろぉが!」
勇者「いいや、ダメだ」
盗賊「あんでテメェが決めんだよ!別にどうってことねぇよ!!」
勇者「どうってことないって、村長に撃たれたとこが破けてるだろ!新しい服買った方がいいって」
盗賊「た、確かにそうだけどよ」

勇者「俺の金で買ってもいいから、な?」
盗賊「おっ、ホントか?」
勇者(現金なやつだな……)

服屋「どんな服をお望みだい?」
盗賊「こう、ガンマン!って感じのイカしたやつを一着頼むぜ、おっさん!」
服屋「おっ!元気の良い姉ちゃんじゃねぇか!気に入った!とっておきのやつを持ってくるよ!」
盗賊「おぅ、そうこなくっちゃな!」

勇者「服屋の店員とすぐ仲良くなれる人って羨ましいな……」

盗賊「あ?何暗い顔してんだ?」
勇者「い、いや、なんでもない」


服屋「これなんかどうだ?姉ちゃん!」
盗賊「おいおいおっさんよぉ、こりゃなんの冗談だぁ?」
服屋「ありゃ?ダメだったか?」
盗賊「だーれが今時こんなダッセェふりふり着たがんだよ。こんなのは魔法使いの役目だろうが」
服屋「ありゃー、似合うと思ったんだけどなぁ。なぁ、そっちの暗い顔した兄ちゃんもそう思うだろ?」
盗賊「」ピクッ
勇者「あ、はぁ……別に似合わないってことはないと思いますけど」
服屋「なんだなんだ中途半端な答えだなぁ兄ちゃん。そんなんじゃ彼女に嫌われちまうぜ?
   男ならもっとこう、ビシーッ!と言ってやれよ!」
盗賊「バッ、誰が彼女だ誰が!!」
勇者「は、はぁ……」

服屋「じゃあ、これなんてどうだ!?」ファサッ
勇者「ぶっ!!」
盗賊「お……こりゃ中々」
勇者(ダメだダメだダメだ!露出度が高すぎるだろこれは!!)
服屋「おっ!気に入ったか?」
盗賊「でも、普段着る分にはちっとさみぃかもしれねぇなぁ」
服屋「そうか、うーん……じゃあ……」
勇者(よ、よかった……)


服屋「お!そういやこれがあったじゃねぇか!」
盗賊「あ?」
服屋「ジャジャーン!これでどうだ!?これはまさに姉ちゃんピッタリって感じだぜ?」

勇者(おっ……ワイルドな踊り子って感じで、結構良いんじゃないか、今回は)

盗賊「ほーぅ、こいつぁ……」
服屋「これぞこの街で月に一回開催される祭の踊り子モデル!正規品じゃぁねぇが、別段問題はねぇ!」

勇者(……ん?月に一度……?なんかどっかで聞いたような……)

盗賊「おっさん、最初はどうなることかと思ったが、中々良い趣味してるじゃねぇか!
   気に入った!こいつを買うことにするぜ!」

服屋「へっへ!ありがとよ!きっとその服も姉ちゃんみてぇな女に着てもらえて幸せだろうよ!
   よしっ!特別だ!20%割引きしといてやる!」

盗賊「おーっ、益々気に入ったぜぇ!」
服屋「どうだい?ここで着ていくかい?」
盗賊「んっ、そうだな……じゃあ、そうさせて貰うぜ」
勇者「あ、お金……」
服屋「はいまいどありー!」

魔王倒しに行かないの?

>>582
わかんね

北東の街・訓練場

剣士「ふう……一度休憩するか?」
魔法使い「あ、ああ……こんなに動いたのは久しぶりじゃ」

訓練場員「おや?姫様護衛の人達かい?」

剣士「ん?」
魔法使い「姫様護衛……?」
訓練場員「あれ?違ったか?ここは今、姫様護衛の人以外の一般公開はされていないはずだが……」
魔法使い「なんじゃと!?」
剣士「それはすまないことをした。俺達は旅の者でな」

訓練場員「あぁ、旅のお方でしたか。それは知らなくても無理はない」

魔法使い「一つ聞いても良いだろうか?」
訓練場員「はい?どうしました?」
魔法使い「この街には、姫様がおるのか?」
訓練場員「ん?……あ……あっはっは!いえ、違うのですよ。この街では月に一度、祭が開かれてまして」
剣士「月に一度……?はて、どこかで聞いたような」

魔法使い「もしや……この街を支配する魔物に、おなごを捧げるというやつか?」
訓練場員「……はて?確かに、神様に女の人質をという掟に従う祭ではありますが」
魔法使い「……その人質に選ばれたおなご達は、その後どうなるのじゃ?」
訓練場員「……そういえば、どうなるんでしょう?言われてみれば、祭の後からパタリと見かけなくなりますね……。
     そんなこと、一度も疑問に思ったことがありませんでしたから……。
     何せ、私がこの街に生まれた時には既に存在していた古い祭ですからね……」
魔法使い「そ、そうじゃったか」


剣士「その祭とやらは、いつ開催されるんだ?」

訓練場員「もうすぐですよ。そうですね、今からちょうど3日後です。
     当日は別の街から姫様に従う『付人』と呼ばれる人達も来たりして、すごく盛り上がるのですよ」

剣士「ほう……」
魔法使い「今月の姫様は、既に決まっておるのか?」
訓練場員「はい、ちょうど一週間ほど前に」

剣士「その娘に、会うことは?」
訓練場員「それは厳しいかと。姫様に選ばれた女性は、当日まで私達は知ることができませんから」
剣士「そうか……」

訓練場員「あわよくば姫様の護衛の方からどのような方か聞き出せたら、と思ってあなた方に話しかけたのですがね。
     はっはっは!」

剣士「そ、そうか。それは残念だった」

今日はここまでにしとく
今回は巻き込まれるってより、進んで関わっていく感じにするつもりだけど
もうこういう展開飽きてきた?
伏線とか魔王とか無視してイチャイチャで終わらせた方が良いかな?

失踪って仲間が別々に……みたいな?
もしそうだったらごめん、ほんのちょっとなると思う
良く考えたら同じこと繰り返してるだけかもなこのSS
まあ多分ほんのちょっとだから
オアシスで後悔したから今回は意外とさっくり進めると思う

なんか寝る前にちょっと書き溜めしとくかって感じで書き始めたら止まらないから
もしこの調子で北東の街の話が完結まで書けたら投下するわ

北東の街・宿屋

剣士「全員揃ったか」
勇者「ああ、とりあえず何も問題がなくて良かった」
剣士「ああ」

魔法使い「おや?その服はどうしたのじゃ?ん?ん?」
盗賊「う、うっせぇな!!黙ってろ!!」
魔法使い「勇者も中々……やるではないか」
盗賊「か、関係ねぇよボケ!!!!」
魔法使い「くくく……」

剣士「街で、気になることがあった」
勇者「ん?」
盗賊「あんだ?」
剣士「この街で一カ月に一度だけ開催されるという、祭のことだ」
勇者「あー!今思い出した!服屋の店主さんも一カ月に一度とか言ってて、なんか引っ掛かってたんだよな」
盗賊「……女が人質に出される、あの話のことだろ?」
剣士「おや、気付いていたのか」
盗賊「気付くも何も、忘れてすらいなかったぜ。私はずっと……」
勇者「……ん?」
盗賊「いや、なんでもねぇ」

剣士「そのことだが、どうも臭う」
勇者「どういうことだ?」
魔法使い「訓練場の労働者がな、言っておったのじゃ。『この祭は神に人質を捧げる掟に従うものだ』と。……引っ掛からないか?」
盗賊「そいつぁ、おかしな話だな。運搬係は『魔物による支配の影響で、月に一度人質を捧げ、街の平和を保っている』と言っていたはずだぜ?」

剣士「その通りだ。それに、その訓練場員だが、まるで人質は実際に捧げるものでなく、
   あくまで形式的なものでしかないと、そう信じこんでいるようだった」

勇者「ど、どういうことだ?人質は必要ないのか?」
盗賊「ちげぇ、ちげぇよ勇者。上の人間が隠してんだろぉなぁ」
魔法使い「ああ、違いないだろう」

剣士「大方、事実を述べてしまったら街の民が混乱を起こしてしまうからだろう。
   訓練場員が言っていたが、人質の場へ向かう姫様には『付人』と言われるこの街以外の人間が付き添うことになっているらしい。
   そしてその訓練場員はよそ者である俺達を『護衛人』と勘違いした。
   つまり、姫様の周りは街の部外者で固めるという徹底ぶりだ。
   このことから、この街の上の人間が事実を隠したがっていることが手に取るようにわかる」

勇者「な、なるほど……」

剣士「勘違いしてはいけないことが一つある。先程から出ているように、上の人間は街の混乱を避けている。
   事実を述べると街が崩壊してしまうから、それを危惧しての隠蔽工作だろうな。
   そこから推測されるに、ここの街の上層部はまだまともな組織であると思う。
   もしもこれが極悪非道で性根の腐ったような連中だとしたら、徹底的に街の民を管理し、人っ子一人逃げられないようにするだろうからな。
   つまり、真の悪の元凶は魔物そのもの。そいつさえ消してしまえば、これらの問題は一度に解消される。
   敵を見誤るな、ということだ」

勇者「わ、わかった……」
魔法使い「さすが剣士じゃ……賢明じゃな」
盗賊(……確かに問題は一度に解決される。でもな、おっさんよぉ。テメェはまだ、気付いてねぇことが一つだけあるぜ)

剣士「ということで、提案があるんだが」
魔法使い「なんじゃ?」
剣士「提案というよりも……そうだな、決定事項の報告、と言うべきか」
勇者「決定事項?」
盗賊「あんだよ、もったいぶらずにさっさと言いやがれ」

剣士「まあそう急くな。実は、この宿屋に向かう途中……。
   そうだな、魔法使いと別れて、俺が滞在証明書を提出しに行った時、その窓口の人間に聞いたんだ。
   『姫様の護衛人は決定しているのか?』と。すると、返ってきた答えは……」

盗賊「『いいえ』って訳か。やるじゃねぇか、おっさん」

剣士「ああ、その通りだ。そこでだ、俺はすかさず立候補した」
魔法使い「なんじゃと!?」
勇者「本当か?」

盗賊「当然だ。中々おもしれぇぜ、おっさん。問題を解決したけりゃ、自ら進んで参加すりゃいい。
   つまりだ、それには姫様の護衛として、人質の間までついていくのが最良の手段ってこった。
   何も考え無くていい、単純で分かりやすい方法だぜ」

勇者「な、なるほど……」

剣士「ということで、3日後、俺達は顔も知らぬ姫様と共に人質の間へ向かい、魔物を殲滅する。いいな?」
勇者「あ、ああ!」
魔法使い「よしっ!」
盗賊「いいねぇ……気合いが入るぜ」


翌日・街中

勇者「結局俺一人で買い出しか……。ま、もうこの街は前の街みたいに危険じゃないって分かったからいいけどさ」

ドンッ!

勇者「いたっ!」
女性「きゃっ!」

勇者「……あ、そ、その、大丈夫ですか?」
女性「あ……だ、大丈夫です、すみません」
勇者「いえいえ、こちらもボーっとしてましたから……」
女性「……」
勇者「あ、あの……何か、俺の顔についてますか?」
女性「……ハッ!い、いえ!……そ、その……あの……」
勇者「えーっと、なんですか?」
女性「た、助けてください!!!!!」
勇者「えぇ!?ちょ、えぇ!?ちょ……えぇ!?!?」
女性「お願いします!!助けてください!!」
勇者「わ、わかった!わかったから!!とりあえず叫ぶのやめて?ね?俺すっごい変態みたいな目で見られてるから!」
女性「あ!……え、えっと……ごめんなさい」
勇者「と、とりあえず、宿屋でゆっくり話を聞くからさ!」
女性「……」
勇者「ち、違う違う!宿屋は宿屋だけど変な意味はないから!!本当に!!」
女性「……し、信じます」
勇者(……何これ……俺が助けてほしいよ)


宿屋

盗賊「で、これがテメェがナンパした女だと」
勇者「だから違うって!そんなの俺にできる訳ないじゃん!な?」
女性「……」
盗賊「へぇー……」
勇者「え!?なんで何も言わないの!?ねぇ!一方的な救済だけ求めるつもり!?理不尽だよ君!!」
盗賊「うっせーんだよ、テメェはちょっと黙ってろ」
勇者(えぇぇぇー……)

剣士「何故、勇者に助けを求めた」
女性「……わ、私と同じ、匂いがしたからです」
盗賊「……」ギロッ
勇者「ひぃぃ!なんで睨むんだよ!いや、なんか確かに卑猥だけど!」
魔法使い「勇者……そなたがそのような男じゃったとは……」
盗賊「もうほっとけ、魔法使い。こいつぁ、脳まで性欲で出来てる変態野郎だぜ、きっと」
勇者(もうどうにでもなーれっ♪)


女性「私と同じ、この街の人じゃない匂いがしたからです……」
剣士「……ということは、お前さんは……」
女性「ここから遥か東にある、水源の街を御存じでしょうか?」
剣士「聞いたことはあるな。人口がとても多い街だとか」
女性「その通りです……。私はそこから、この街に無理矢理連れてこられたのです」
盗賊「あんだと?」ピクッ
魔法使い「まさか……人さらい、か?」
盗賊「……」
女性「はい……。この街の祭で、姫様になれと命じられました。しかし、私は聞いてしまったのです」
勇者「聞いた?」
女性「はい……見張りの人が、『この娘も気の毒だ。知らぬ街のために命を落とすなんて』と、言っていたのを……」
魔法使い「なんと……」

姫様「はい……だから、そんな悲惨なことを聞かされた私は……」

剣士「命からがら逃げ出してきた、と……。そういうことか?」
姫様「その通りです……」


剣士「どうする?」

勇者「どうするも何も、放っておけないだろ。人さらいなんて方法は、間違ってる。
   この人を解放してあげるべきだと思う」

魔法使い「そなたにしては、ハッキリとした物の言い方じゃな」
盗賊「こんのクソボケはやっぱり変態だったか」
勇者「なんでそうなる!」

剣士「しかし、助けると言っても……一体どうすれば」
盗賊「なぁに、簡単さ」
剣士「ん?な、何か策があるのか?」
盗賊「なぁ姫様よ、私のこの服装に、見覚えがあるか?」
姫様「服装…………そ、その服は!」
魔法使い「ん?盗賊の服が何かあるのか?」

勇者「そういえば、服屋の店主さんが言ってたな!
   『その服は月に一度開催される祭の踊り子モデル』だ、って」

魔法使い「なんじゃと!?」

姫様「はい……間違いありません。私が閉じ込められていた部屋に置いてあった衣装と、とてもよく似ています」
盗賊「まあ……そんなとこだ」
剣士「お前さん……それがどういうことか分かってるのか?」
盗賊「ああ、重々承知してるつもりだぜ、おっさん。……私が、姫様になる」
姫様「そ、そんな!」


剣士「しかし……」
勇者「ダ、ダメだ!それじゃあ、盗賊の身に危険が……」
盗賊「何言ってんだ、護衛としてテメェらがついてんだろ?」
勇者「で、でも……万が一のことが」
盗賊「だったらなんだ、あぁん?そこにいる「本当の」姫様なら、姫様をしたって構わねぇってか?」
勇者「そんなことは言ってない!もっと他の方法があるだろって話だ……」
盗賊「他の方法?例えばなんだ、言ってみろよ、勇者」
勇者「……お、俺が……一人で」
盗賊「ケッ、つまんねぇこと言ってんじゃねぇよ。それこそ無駄死にだぜ」
盗賊「大体な、人質は女だって決まってんだよ。テメェ一人で何ができる。街の人間も騙さねぇといけねぇんだぞ?」

剣士「確かに……俺達が直々にその魔物を退治させて欲しいと申し出ても、恐らく門前払いだろうな。
   見知らぬ部外者に街を崩壊させられる不安が大きい。そのようなリスクを背負うはずがない」

勇者「ま、魔法使いはどうなんだ?さっきからずっと黙ってるけど、どう思うんだ?」

魔法使い「わ、私は……私は……盗賊の意見に、全面的に賛成じゃ」
勇者「なっ!」
盗賊「……」


時は遡り、北東の街道を走る馬車の中(>>371-372の辺り)

盗賊「……魔法使い、こんな話を聞かせちまったテメェだから言う」
魔法使い「……ん?」
盗賊「……一つだけ、頼みがあんだ」
魔法使い「……そなたの、そのような真剣な目は初めて見た。……私でよければ、そなたの話を聞こう」

盗賊「私の……旅の目的ってのを手短に話す。あんまり、身の上話ってのが好きじゃねぇんだ」
魔法使い「ああ……」

盗賊「……私は、幼い頃から母親一人に育てられてきた。
   父親がとんでもねぇやつで、母親は幼い私を連れて逃げ出したらしい。
   毎日夜遅くまで働いている母親を、私はその日もいつもと同じように一人で待ってた。
   しかし、その夜我が家の玄関を開いたのは母親じゃなかった」

魔法使い「……誰だったのじゃ?」

盗賊「長だ。そしてその長が、開口一番発した言葉はこうだ。
   『お前の母親が人さらいにあった。探すのは諦めろ』」

魔法使い「な、なんと……あ、あの長がそのような……」

盗賊「別に長は怨んじゃいねぇさ。事実、母親をさらったやつらは妙に手慣れていて、一瞬で闇へと消えちまったらしい。
   それ以上深追いすると、被害が拡大する恐れがあった。長からしたら、当然の判断だろうよ。
   でも、当時10歳ほどだった私は違った。泣き叫び、母親の名を呼んださ。
   だがな、それから母親が私の元に帰ってくることはなかった。そっからは、地獄のような施設で暮らす日々さ……」

盗賊「私は、私にそんな辛い思いをさせやがったやつらが許せねェ。
   私の旅の目的は、復讐さ。絶対に見つけ出して、その元凶をぶっ殺してやるってな」

魔法使い「そこで舞い込んできたのが……運搬係が言っていた北東の街の話か」
盗賊「その通りだ。これは私にとって絶対に無視できねぇことだ」
魔法使い「それで……頼みというのは、なんじゃ?」
盗賊「北東の街で……そうだな、恐らく私は、自らを人質の身に置くような行動にでると思う」
魔法使い「なっ……!」

盗賊「復讐心ってのはな、一方的なものなんだ。それを果たすには、こっちから向かわねぇといけねぇ。
   復讐の元凶がノコノコとやってくるなんて優しいお話は、お子様が読む絵本の世界でしかありえねぇんだ」

魔法使い「しかし……」

盗賊「覚悟はガキの時からできてる。どうか、そういう私を止めねぇでくれ。
   それが、テメェにしたかった頼みってやつだ。
   テメェがそうしてくれるだけで、勇者と剣士の気持ちは揺らぐ」

魔法使い「そ、それなら……最初から、みなに旅の目的を話せば良いのではないか?
     そうすれば、誰もそなたを止めようとは……」

盗賊「言ったろ?私は、身の上話をするのが大嫌いなんだ。
   めんどくせぇことをしてるってのは、自分でも分かってる。
   だからこそ、テメェに頼んでんだ」

魔法使い「……」

北東の街・宿屋

剣士「何故だ、魔法使い。盗賊が危険な目にあってもいいとでも?」

魔法使い「それは違う」
魔法使い「よく考えてみてほしい。
     盗賊がそこまで頑固に言い張るのは何故じゃ?
     損得勘定で動くあの盗賊が、姫様を助けて何の利益を得る?
     そこには、盗賊なりの大きな何かがあるのじゃろう。
     私は、その意志を尊重したい。そう思ったからじゃ」

勇者「ま、魔法使い……」

盗賊「……そういうこった。何、テメェらの護衛がついてんだ。
   私は目の前で仲間を死なせちまうような奴と、仲間になった覚えはねぇぜ?」

剣士「……仕方がないな。そこにお前さんの意志が懸かってるってなら、それを俺が止めることはできない」
勇者「……無茶は、しないでくれよ」

盗賊「わぁーってるよ。じゃ、決まりだな」

さるさん食らってた&書き溜め切れた
こっから速度下がる
というか美少女魔王のスレ落ちてるじゃねぇかくそっ


剣士「問題は、姫様をどうするかだな」
姫様「……」
勇者「この部屋にかくまっておけばいいんじゃないのか?」
盗賊「私もそう思うぜ。上の連中が欲しがってるのは姫様じゃねぇ。『姫様』だからな」

魔法使い「ふむ……そうじゃな。3日後まで姫様をここでかくまい、いざ祭という時に盗賊が姫様として出ていけばよい。
      街側も問題はないじゃろう」

剣士「そうだな。祭が終わり、全てが落ち着いたら、姫様はこの街を出ればいい」
姫様「……ほ、本当にありがとうございます。感謝してもしきれません」

剣士「生憎、感謝される筋合いは持ち合わせていないものでな。
   俺達は俺達の野望に向かって行っているだけだ。そこに偶然、姫様が通りがかった。
   だから、お前さんは気にしなくていい」

姫様「……ありがとう、ございます」

魔法使い「3日間の姫様の護衛は勇者に任せた方が良いじゃろうか」
盗賊「いいや、私がやる」
勇者「え、なんで?別に俺がやってもいいけど」
盗賊「テメェが護衛につくと更に姫様の護衛が必要になんだよ」
勇者「どういう意味だよ……別に何もしないよ……」
盗賊「とにかくだ、テメェが姫様に近寄ることはゆるさねぇ」
勇者「えー……」
魔法使い「勇者よ、盗賊の気持ちも察してやれ」
盗賊「なんならこの役、剣士のおっさんに押し付けてもいいんだぜ?」
魔法使い「すまなかった」
剣士「やれやれ……」
勇者「はぁ……」

3日後

街の民1「どうするんだ……結局、姫様は見つからなかった……」
街の民2「まずいな……呑気に祭なんてやってる場合じゃなくなったぞ」
街の民1「なんとかして、今夜までに姫様を見つけないと……」

街の民2「人さらいの部隊も、もう自分の街に帰っちまったし……何より、この街が莫大な依頼金を払うことができねぇ……。
     一月かけて街で貯める金なんだ……今更どうこう……」

街の民1「こうなったら……俺達でどこかの街から人を……」
街の民2「ふ、ふざけんな!町長の街の民を思う気持ちを踏みにじるつもりか!」
街の民1「……くそっ!なんてったってあの魔物はこんな……!」
街の民2「あいつのせいで、街から若い女がいなくなってしまったからな……こうなったら子供を……」
街の民1「ば、馬鹿野郎!!そんなことできる訳ないだろ!!」
街の民2「じゃ、じゃあどうすれば……」
街の民3「お、おい!新たな姫様を見つけたぞ!」
街の民2「なんだって!?」

盗賊「よぉ、逃げ出しちまった姫様ってのの代わりに、私が姫様をやってやってもいいぜ」

街の民1「なっ……お、お前……姫様がどういう運命なのか……」
街の民3「しっ!……それは、トップシークレットだろ」ボソッ
街の民1「そ、そうだった……」

街の民2「これはこれは、お嬢さん。ちょうど新しい姫様候補を探していたところでして。
     非常に助かります。踊り子の服も、よく似合っていますよ」

盗賊「ケッ……聞きたくもねぇお世辞だな。とにかく、付人ってのはどいつなんだ?」
街の民1「そ、そうだな、姫様が現れた以上、護衛人と付人を呼んでこなければ……」
街の民2「姫様、少しだけお待ちを」

街の民1「と、とにかく助かったな!」
街の民2「ああ!俺達は強運の持ち主だ!」
街の民1「しかし、あの女、何故こんな見知らぬ街の姫様にいきなりなりたいなんて……」
街の民2「知るか!そんなこと俺達が気にしたって意味ないだろ!?とりあえず姫様が見つかった!それでいいじゃねぇか」
街の民1「そ、そうだな!うん!」

付人「おーやおやおや、長い間待たされましたねぇ、んふふー」
街の民1「も、申し訳ありません」
街の民2「よ、ようやく姫様が見つかりました」
付人「そーれはよかったですねぇ……危うくこの街が!ぁ壊滅しちゃうところでしたしねーぇ!んふふっ!!」
街の民1(いつも思うが……変わってるよな、この人……)
街の民2「ど、どうぞこちらへ……」
付人「どれ、どれ……自ら立候補したという死に歩み寄る素敵な姫様とはどのような娘なのでぇーす?」
街の民2「あ、あまり大きな声でそのようなことは……!」

盗賊「お、テメェが付人か。よろしく頼むぜ」

付人「んこぉれはこれはぁー!とてもお美しーい!ぁどうぞよろしく……お願い致します」

盗賊(あ、あんだこいつ……気色悪ぃ……)

剣士「俺達が今回、姫様の護衛を務める者だ」
勇者「よ、よろしくお願いします……姫様」
魔法使い「短い付き合いじゃが、よろしく頼む」

付人「ワーンダフォー!!ぁとてもたくましくーぅ……お強い方々なのでしょうねーえ?」
勇者(……なんかキャラ濃いな……疲れるぞこの人……)

街の民1「……と、いうことで、まずは街の人々へご紹介をさせていただいてから、神殿へと繋がる街の外れの洞窟まで行っていただきます」

付人「んふふっ、楽しみですねぇー、すごく楽しみでぇーす!
   あっ、ちなみに私(わたくし)は洞窟の中には入りませんので、そこんとこ、ぁどうぞよろしく」

盗賊「あぁん?あんでだよ」
付人「んジョーイフォー!!姫様が私に話しかけてくださいましたーぁ!」
盗賊「き、気持ち悪ぃんだよ、いちいちテメェはよぉ」

付人「おぉっと失礼、私が洞窟に入らない理由……それはズバリ!!
   恐いからなのでぇーす!!」

勇者「えっ?」

付人「だってそうでしょーう?洞窟の中は魔物だらけですのでぇー……そこから先はあなた方、ぁ護衛人の役目ですよーう!」
剣士「……任せておけ」
勇者(じゃあなんのためにいるんだこの人……)
魔法使い「あ、ああ、私達が姫様を護ろう」

付人「んふふっ!んふふふふふふっ!!」

街の民1「そ、それでは……えぇーっと、準備が整いましたので、どうぞ広場の方へ……」
付人「んレェッツゴーォ!」
勇者「ちょ、調子狂うな……」
魔法使い「ああ……」
盗賊「気ぃ抜くんじゃねぇぞ……私達の歩く先に待ってんのは、街をまるごと支配しちまうような魔物なんだ」ボソッ
勇者「あ、ああ……わかってる」


広場

ワー、ワー

付人「んふふーぅ!!私が付人ですよぉー!!んふふふふふふーぅ!!!!」ブンブン
勇者「な、なんかメチャクチャ手ぇ振ってるけど……」
剣士「……み、見て見ぬふりをしよう」

街の人々「姫様綺麗だな!」
街の人々「気をつけろよー!」
街の人々「付人は例年通りだな……」

盗賊「……」
魔法使い「……そなたよ、大丈夫か?」
盗賊「……あ?」

魔法使い「そなたの旅の目的である復讐を果たす時がきたのじゃ……気持ちはわかる。
     じゃが……あまり気負いすぎぬようにな。そなたの後ろには、私達がいる」

盗賊「……ああ。……わぁーってるよ」


祭壇の洞窟(別名:魔物の潜む洞窟)前

付人「ぁではでは……私はここまでですので、後はよろしくお願いしますよーぅ!」
剣士「ああ、心配はいらない」
勇者「無事に姫様を祭壇まで送るよ」
魔法使い「私達がついていれば、大丈夫じゃ」

付人「んふっ!これはとても心強いですねーえ!では、私はあなた方が洞窟内に入るのを見送りますので……
   ぁどうぞ、いってらっしゃーいませぇー!」

剣士「行くぞ」
勇者「あ、ああ」
魔法使い「気を引き締めるぞ」
盗賊「……」






付人「ぁもしもし……はい。姫様は例年通り、問題なく洞窟内へ入っていきました故……。
   はい?護衛人?……ええ、今回は中々の実力を持つ者のようですが、平気でしょう……。
   どうせ、例年通り、私のペットに食われる運命でぇーす、んふふ……」ボソボソ


神殿の洞窟(別名:魔物の潜む洞窟)前

付人「ぁではでは……私はここまでですので、後はよろしくお願いしますよーぅ!」
剣士「ああ、心配はいらない」
勇者「無事に姫様を祭壇まで送るよ」
魔法使い「私達がついていれば、大丈夫じゃ」

付人「んふっ!これはとても心強いですねーえ!では、私はあなた方が洞窟内に入るのを見送りますので……
   ぁどうぞ、いってらっしゃーいませぇー!」

剣士「行くぞ」
勇者「あ、ああ」
魔法使い「気を引き締めるぞ」
盗賊「……」






付人「ぁもしもし……はい。姫様は例年通り、問題なく洞窟内へ入っていきました故……。
   はい?護衛人?……ええ、今回は中々の実力を持つ者のようですが、平気でしょう……。
   どうせ、例年通り、私のペットに食われる運命でぇーす、んふふ……」ボソボソ


恥ずかしいからやめて


洞窟内

勇者「とりゃっ!!」ズバッ
魔物「ぎゃーっ!!」
盗賊「魔物さん御一行の地獄旅行ツアーだぜ」バンバン
魔物「ぐえっ!!」
剣士「はぁっ!」ズバァ
魔物「がぁぁっ!」
魔法使い「勇者、今治癒魔法を施すぞ!」パァァ
勇者「ありがとう!」

盗賊「ったく、こりゃどうなってんだぁ?こんなに魔物がわんさかいる場所は初めてだぜ」バキューンッ!
魔法使い「あの付人がついて来たがらない訳じゃな。飛べ!炎よ!」ボワッ
剣士「しかし都合がいい。付人がいなくなったおかげで、やり易くなった」ジャキッ
勇者「あの付人、なんのためにいるんだろうな……」

剣士「俺も気になるが、とりあえず今は目の前の敵に集中しよう」
勇者「あ、ああ……そうだな」
魔法使い「白銀の祈りと共に形を成せ……アイスホールド!」キンッ
勇者(詠唱とか名前とかちゃんとあったんだ……)


魔法使い「闇の支配から解き放たれよ……ライトフラッシュ!」
剣士「すまない、これで視界が良くなった」
魔法使い「な、なんのこれしきじゃ。剣士の役に立てて、嬉しく思うぞ」
勇者「俺も視界良くなったんだけど」
盗賊「テメェら、ボサッとしてねぇでさっさと行くぞ」



盗賊「チッ……ゴミみてぇにわんさか湧きやがる……」
勇者「多分、それだけ最深部に近づいてるってことだと思うよ」
剣士「そうかもしれないな。この魔物の数、奥に行けば行くほど増えている」
魔法使い「紅蓮の祈りと共に焼き尽くせ……ファイヤーストーム!」
魔物「ぐぁ!」
魔物「うがっ!」
魔物「ぎぃ……」

魔法使い「そうと決まれば、進むのみじゃな」
剣士「ああ、その通りだ」

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