「時を遡る男」 (10)


何巡目だろうか…
過去に戻ってまたやり直し。気づいたらまた失敗。


俺の選んだ選択肢は、間違っていたのだろうか。
何が一番いい策だったのだろうか。




俺は、代わり映えがない幸せを感じていた。
天使と偽った悪魔が来るまでは。



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ある日突然のことだった。
俺の前に天使が現れたのは。



「貴方の願いをひとつ叶えましょう」



無機質な声でそう言われた時、正直ゾッとした。あの感覚は今でも忘れられない。
それでも、俺には叶えて欲しい夢があった。
俺の彼女を生き返らせて欲しいというものだった。



「残念ながら、生き返らせるということは出来ません。ただし、過去に戻って救う、とか。そういうことなら叶えられます」



俺はその願いを叶えてもらった。
契約書にサインをした―――悪魔の契約書。呼ぶには相応しい。
死ぬまでこの契約は解除されない。俺はそれを承諾してしまった。





過去に遡る『一巡目』













彼女は確か、暴走するトラックに轢かれて死ぬものだった。
全然守れなかった。


その悔しさを果たすために、時を遡る。
俺がどうなったって構わない。




どうやら俺はこの時間の『俺』と『彼女』だけに干渉することができないようだ。
なので、俺はここで死んでもまた下の時間軸へ戻れるようだ。
とても便利な能力だと思うが、不老不死のような存在だから、あまりいい気はしない。





さあ、最初の作戦だ。
俺はもうひとつの車でトラックに轢かれる前にぶつける。
そして彼女は下の時間軸でも生きている。そういった作戦で一か八かやってみることにした。



















期待



トラックが丁度、この時間に暴走して、そして…。
―――そんな未来、俺がぶち壊してやる。



この時間軸の俺と彼女にぶつかってくる…
俺はその瞬間に、ちょうどアクセルを踏んだ。



成功だ!
俺はちょうどトラックに合わせ、車体が破損したがどちらも止まったようだった。
俺は薄れゆく意識の中で、成功を確信した。



また、あの幸せな日常へ戻れる。
また、あの日々へ帰れる。





ちょうど意識がなくなった瞬間に、この時間軸の、俺の、悲痛な声が脳内を埋め尽くした。


戻ってきた。こちらの時間では一分もかかっていないようだった。
要するに、俺は他の時間軸にいるときはこちら側では植物状態だったのだろうか。
いや、こちらでは時間の経過が遅いのだろう。


俺は、とりあえず彼女に連絡をしてみた。
反応は、なし。



―――――――おかしい。
助けたはずなんだが。失敗だったのだろうか。
変な汗が頬を伝って、流れていった。





天使「その後の結末でしょうか。それでしたら、彼女だけ死亡という形でその時間軸は終了しています。」



何故?
何でなんだろうか?




天使「トラックを避けた後、およそ3時間16分47秒後にデパートでテロに出くわし、人質に取られて――――」


男「死亡、…だろ」





もう一回、時を遡る。『2巡目』


天使「何度でも遡ったところで、あなたはそこで絶望するでしょう」


天使「騙して、ごめんなさい。この声は、届かないだろうけど」


天使「でも、仕方なかったんです。私の計画を、実行するために」


天使「―――彼女は助からないんですよ。それは、私の結果で理解できていました」


天使「本当に、男さんを巻き込んでしまって、すみません」


天使「でも、あと5人。あと5人、あなたのように残酷な運命の者にも、他の能力を与えないといけないのです」


天使「あなたは、私たちを倒す『カギ』となる存在」


天使「どうか、早く私たちを倒し、いつもの日常へと戻ってください――」












*********




男「なんで………ッ!」



疲れた。どうやっても駄目だった。
もう7巡目だ。なんで助けることはできないんだ。


テロの襲撃を、警察の力によって押さえ込んでも、逃げる途中で階段から落ちて死ぬ。
やっと家に帰れても、夜を過ごしても、3日経った後でも。





全て待つ結末はどれもこれも死亡なのか?
俺がやってることは全部無駄じゃないのか?





俺は何なんだ?








男「天使!どっかで見てんだろ…!?助けてくれよ!なぁ……………!」



廻り終わったこの時間軸が、全て崩れ落ちようとしている。
俺の叫び声と混じり入った泣き声は、何もなくなる世界に響き渡る。
暗くなった世界の中で意識は徐々に薄れていく。









『時を遡る』話








今回はひとまずここで終わりです。


あと5人いろいろなエピソードを書こうと思っています。



中途半端かもしれませんがごめんなさい。






見てくれた方はありがとうございました。感謝感激です。



また明日か明後日。

よし

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