マミ「ひとりぼっちじゃなかったのね」(152)

代理

マミ「ねぇパパ、ドェズニーランドまであとどれくらいで着くの?」

マミ父「そうだなぁ。あと1時間もすれば着くだろうな」

マミ母「今日は道も大分空いてるわね。渋滞に巻き込まれなくて済むのはいいけど、やたらスピードを出す車が多くて怖いわね・・」

マミ「ふふっみんな早くドェズニーランドに行きたいのよ」

マミ「あ~早く着かないかしら。私、ムッキーとムニーちゃんと絶対写真を撮るんだから!」

マミ母「うふふ、マミったら。今からはしゃぐと着く頃には疲れちゃうわよ」

マミ「あははっ、そうね・・」

ハハッ・・ ウフフ・・・

共働きで忙しい私の両親。
家族で出掛けることなんて、14年間数えるほどしかない。

今日はそんな貴重な休日を利用して、前から行きたいとねだっていたドェズニーランドに行くことになった。
いつもは両親の前で大人ぶっている私だけど、この日ばかりは子供のように・・はしゃいでいた。


そう・・後に起こる悲劇など知る由も無く・・・


マミ父「お。仮性臨海公園がみえて来た。マミ、ドェズニーランドまであと少しだぞ」

マミ「ほんと?わぁー!もうすぐで着くのね。あっ・・ママ、観覧車が見えるわ」

マミ母「あら本当。大きいわね~」

マミ「ね。パパ、ママ、今度はあの観覧車に乗りに行こう。最後に家族3人で観覧車に乗ったのは私が幼稚園の時だもん」

マミ母「そういえばそうね・・私もお父さんもなかなか休めなくて、家族で出掛けることも少なかったものね・・」

マミ父「マミ。寂しい思いばかりさせてきて悪かった」

マミ「えぇっ、どうしたの?いきなりしんみりしちゃって・・私、責めるつもりで言ったんじゃ・・」

マミ母「分かっているわ。マミ」

マミ父「マミ。よく聞いてくれ。突然だけど父さんと母さん、会社の経営から一歩退くことにしたんだ」

マミ「・・え?」

マミ母「今まで貴方を1人ばかりにしてきてしまったからね。それでね、お父さんと相談したの」

マミ父「マミは来年受験生だろう。そんな時期こそ父さんと母さんはマミの傍にいてやらないといけないと思ったんだ」

マミ「えっ・・えっ・・?それって、パパとママが家にいる時間が増えるってこと?」

マミ「お夕飯も一緒に食べられるの?休みの日に家族でお散歩に行ったり、あと・・あとっ・・」

マミ父・マミ母「マミ・・」

マミ父「あぁ。どんな時だって傍にいるよ。もうマミを独りぼっちにさせたりしない」

マミ父「今までマミに寂しい思いをさせた分、これからはずっと傍にいるよ」

マミ父「お嫁になんかいかず、ずっとずっと父さんと母さんと一緒にいよう」

マミ「・・わぁ・・わぁー・・!嬉しい!すごく嬉しい!・・けど、きっといつかお嫁にはいっちゃうかも(笑)」

マミ父「マミ~(´;д;`)」

マミ母「お父さんったら・・」クスッ

マミ「パパ冗談よ!・・ふふっ・・あははっ・・あはははっ!!」

マミ「ね。パパ、ママ・・」

マミ「私ね、パパとママのこと・・すごくすごく大好・・・・・」





キャーッ・・危な・・・





キキーーーーッ・・・

ガシャッ・・



――――
――――――――
―――――――――――


またあの日の夢を見た。

あの時、対向車線を猛スピードで走っていたトラックが私たちの乗る車に突っ込んできた。
運転手は飲酒をしていたらしい。


霞ゆく意識の中、私の目の前に現れた謎の生物。
それこそ私の命を救った恩人。名前はキュウベエ。

私は1人生き残りたかった訳じゃない。
パパとママを助けたい一心で・・・願った。それだけを願った。

けれど・・それは叶わぬ望みだった。



「パパとママとそのトラックの運転手は・・・即死だった」

やっと両親と一緒にいられるようになると思っていたのに。
やっと独りぼっちから抜け出せると思っていたのに。

あの時キュウベエが私の前に現れなかったら、今頃両親と一緒にいられたのだろうか。

独りぼっちの哀しみから抜け出せていたのだろうか。



「パパ、ママ・・・」

「私・・今も独りぼっちだよ・・」



あの事故から今日で半年が経っていた。


QB「マミ」

マミ「何かしら?キュウベエ。魔女退治なら私1人で大丈夫って言ったはずよ」


私は今、命を救われた代償として・・・
「魔法少女」として、キュウベエの言う「魔女」と戦っている。
私が魔女と戦うことで救われる命があるらしい。両親の命も救えなかったのに。


それでも・・・・もう誰にも寂しい思いをしてほしくないから・・・・
大切な人を失うなんて・・そんな思い、させたくないから・・・

QB「違うって。ねぇマミ、君の通う中学校の2年生の鹿目まどかっていう人物を知っているかい?」

マミ「2年生のことは私には分からないわ。えぇと鹿目さん・・だったかしら。その子がどうかしたの?」

QB「マミが知らないならいいんだ。たいしたことじゃないよ。気にしないで」

マミ「・・そう」

キュウベエはことある毎に私にこう持ち掛ける。


「ねぇマミ。君も魔法少女の仲間が欲しいんじゃないかい?」


欲しくないと言えば嘘になる。

だけど・・・
魔女と戦うことで救われる人がいるからと、そんな思いで戦う反面、
戦いの中で死に及ぶことがあればそれで良いとも思っている。矛盾しているけど・・

魔法少女になったばかりの頃―――
ひとりぼっちの悲しみに打ち勝てず命を絶とうとした際に、私は知ってしまった。
魔法少女の秘密。

寂しいからって・・私のエゴで他の誰かに同じ運命を背負わせる訳にはいかない。

そんなことになってしまうくらいなら、私はひとりで構わない。
魔女は私ひとりで倒す。

もう・・誰も、終わりのない迷路に巻き込まれないように――――

それにしても・・
キュウベエの言っていた「鹿目まどか」という人物。

一体何者・・?有名な子なのかしら。


キュウベエが彼女について何かを探っているということであれば・・

「・・・!?」







「だめよ」

「彼女を魔法少女にする訳にはいかないわ」

まどか「暁美さん、すごく綺麗な人だよね~」ティヒッ

さやか「暁美・・?あぁ、あの転校生?あんたすごいガン飛ばされてたけど・・知り合い?」

まどか「ううん。知らない。さやかちゃんの気のせいじゃない?」

さやか「そーお?ならいいけどさ」

さやか「あ、それよりまどか。帰りにCDショップに寄って行っていい?」

まどか「うんっ、いいよ。上条くんに?」

さやか「えへへ。まぁそんなとこ」

~♪シャカシャカ

まどか「この曲いいなぁ・・何てタイトルだろう・・?」


(まどかっ・・)


(まどかっ・・こっちへ来て・・)


(僕の話を聞いて)


まどか「えっ・・なに・・?」

まどか「誰?私を呼んでいるのは・・」フラフラ



さやか「・・まどか?どこ行くの・・?」

ガチャ

まどか「あれ・・」

まどか「確かに声がしたと思ったんだけど・・気のせいかな・・あれ?何でこんなところにぬいぐるみ・・」

QB「気のせいじゃないよ。鹿目まどか」

まどか「わぁぁっ!!ぬいぐるみが喋った・・!!」

QB「はじめまして、まどか。僕の名前はキュウベエ。君を呼んでいたのはこの僕だよ」

まどか「えっ・・あっ・・ふぇ・・はじめまして、キュウベエ。でもどうして私の名前を・・」

QB「君にどうしても頼みたいことがあったんだ。こんなところまで呼び出して、すまなかったね」

まどか「・・それで、キュウベエ・・私に頼みたいことって・・?」

QB「まどか。僕と契約して・・・いや、マミの・・・


ユラッ―――――――――――――――

☆★☆★☆★☆★☆★サァァァァァ☆★☆★☆★☆★☆★ギャァァァ☆★☆★☆★☆★

☆★アァァァァァ☆★☆★☆★☆★ギャッギャッギャ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


QB「!?・・マズイ。こんな時に」

まどか「えっ・・!?なに!?ここどこ!?」

QB「まどか。絶対僕の傍を離れないで!!今助けを呼ぶから・・・」


マミ「キュウベエ、間に合ったようね」


QB「マミ!?あぁ、今君を呼ぼうと思ってたんだ」

マミ「えぇ、これは魔女の結界のようね。さっさと終わらせるわよ」

マミ「で・・・そこの貴方は?」

まどか「えっ・・えっと私は・・・ここ何処なんですか・・!?」

マミ「もう大丈夫よ、落ち着いて。ちゃっちゃと片付けちゃうから」

まどか「はっ・・・はい」

マミ「ティロ・フィナーレ!!」ドォォォォン・・

マミ「・・・ふうっ・・・」

QB「お疲れ様、マミ」

まどか「あっ・・あの・・・助けてくれてありがとうございました・・」

マミ「いいのよ。貴方も気をつけてね・・って言っても難しいけど・・」

まどか「あのっ・・さっきのは何なんですか・・?」

マミ「うーん・・あまり無関係の子に話すことではないんだけど・・・」

マミ「結界に巻き込まれた以上無関係ではないわね。私がさっき倒したのは「魔女」というものよ」

まどか「・・・魔女・・?」

マミ「そう、魔女。人間を食い物にしているのよ。私はそれと戦っているの」

マミ「分かった?ならもう帰りなさい。あと、これからは廃ビルや廃病院、こんなところには近づかないことね」

まどか「は・・はい・・・あの、本当にありがとうございました」

マミ「いいのよ。貴方を救えてよかったわ。そういえば・・その制服。見滝原中学校ものよね?」

まどか「はい。私そこの2年生で・・・」

マミ「そうなの。私も見滝原中学校に通う3年生よ。偶然ね」フフッ

マミ「・・・ところで、貴方の名前聞いてもいいかしら?」

まどか「私・・・鹿目まどかです・・」

マミ(何ですって・・・鹿目まどかって・・・確かキュウベエが昨晩言っていた・・・例の子!?)

まどか「あ、あの~・・何か私変なこと・・・?」

マミ「い・・いいえ。気にしないで。鹿目さん。それじゃ、さようなら。気をつけて帰ってね・・」

まどか「はいっ・・失礼します・・・あ、あのっ・・・」

マミ「・・・まだ何かあるの?」

まどか「ごっ、ごめんなさい・・お名前・・お名前聞いても・・・」

マミ(・・・・。)




マミ「巴マミ。魔法少女よ」

バタン

マミ「キュウベエ、どういうこと!?」

QB「どうしたんだい、マミ。何をそんなに怒っているんだい?」

マミ「どうもこうもないわ。貴方、昨日言ってた鹿目まどかって子にわざと近づいたわね」

マミ「貴方あの子をどうするつもり!?まさか魔法少女にするっていうんじゃないでしょうね!?」

QB「マミ。僕があの子に何をしようが、君にとやかく言われる筋合いはないはずだよ」

マミ「なっ・・・!?キュウベエ・・貴方って子は・・・」

QB「違うかい?」

マミ「・・・・ッ」

QB「分かってくれたかい?じゃ、僕は鹿目まどかのところへちょっと行ってくるよ」

マミ「・・ねぇ、1つだけ聞かせて」

マミ「何故あの子なの?何もあの子じゃなくても・・いいんじゃないかしら・・」

QB「彼女は・・鹿目まどかはね、特別なんだ」

QB「魔法少女になるには、もちろん素質があってこそだ。マミ、君もそうだよ」


QB「まどかはね、とてつもない魔力を秘めている。それこそこの宇宙をひっくり返せるくらいのね」

マミ「なんですって・・!?彼女はとてもそんな風には見えなかったけれど・・」

QB「まぁ、それだけじゃないけどね」

マミ「・・・何よ」

QB「それはマミにも言えない。じゃ、僕は出掛けるとするよ」

マミ「あ・・!!ちょっと!話はまだ終わってないわ・・!!」

シュウウン

マミ「行ってしまったわ・・」



鹿目まどか

あなたは一体何者なの・・?

――――
―――――――

スウッ・・・

QB「ただいま、マミ」

QB「マミ、寝てるのかい?」

スゥ・・スゥ・・

QB「・・よく寝てるね」

マミ「・・・んっ・・」

QB(起こしてしまったか・・・)

マミ「・・・zZ」

QB(ほっ)

マミ「パパァ・・・ママァッ・・・」

QB(泣いてる。怖い夢でも見てるんだろうか)

マミ「行かないで・・行かないでっ・・・」

QB(・・・マミ)

さやか「まーどかっ!おはよー!」

まどか「さやかちゃん、仁美ちゃん、おはよう」

仁美「おはようございます」

さやか「そういえばさぁ、まどか。昨日アンタあの後どこ行ってたの?」

まどか「えっ・・!?あ、あぁ・・お手洗いに・・」

さやか「えー!?それならそうと言ってよー!!ずっと待ってたのにさぁ、全然帰ってこないんだもん」

まどか「ごめんね。ちょっと・・お腹痛かったんだ・・」

さやか「もー!次から気をつけるんだぞ!」

まどか「はーい!」

仁美「うふふっ・・まどかさんってば・・あら・・?あそこにいるのって・・」

ほむら「鹿目さん」

まどか「・・!?あっ・・暁美さん、おはよう」

ほむら「鹿目さん、今日の放課後時間取れるかしら」

まどか「えっと・・あ、うん・・大丈夫・・」

ほむら「じゃ、放課後に」スタスタスタ・・


さやか「何あれ?」

仁美「まどかさん、暁美さんに何かしましたの・・?」

まどか「えぇ・・わかんないや・・・」

さやか「・・ふーん。よくわかんない奴」

まどか「・・・・・。」

まどか「暁美さん・・・?私に何か・・」

ほむら「ほむらでいいわ」

まどか「ほむら・・ちゃん。あの・・」

ほむら「・・・・。」

まどか「・・・・。」アセアセ


シーン


まどか「こ、ここの紅茶美味しいよね。ほむらちゃん来たことあるの?」

ほむら「・・・・。」

まどか「・・・(うぅっ・・)」

ほむら「鹿目まどか」

まどか「はっはい・・!」

ほむら「昨日、何かおかしなことに巻き込まれなかった?」


まどか「え…あ…少しだけ…」

ほむら「そう…見たのね。魔女を」

まどか「うん…でも…どうして知ってるの?」

ほむら「巴マミには会った?」

まどか「会ったよ。私を助けてくれた」

ほむら「それで…巴マミは貴方に何を言ったの?」

まどか「何って…何も言われてないよ。これからは気をつけなさいとだけ…」

ほむら「…本当に?」

まどか「本当だよ…あ、あと同じ学校ってことくらいで…特には…」

ほむら「…そう。それなら良いのだけど…」

まどか「でもどうして…ほむらちゃんどうして知ってるの…?」

ほむら「貴方は知らなくていい。時間を取らせて悪かったわね」ガタッ

まどか「あっ…ほむらちゃん………行っちゃった…」

まどか「まさか…ほむらちゃんも…?」

マミ「ここね。魔女が孵化しかかってるわ」

QB「マミ、急ごう!魔女が孵化してしまう前に」

マミ「えぇ、分かっているわ」

タッタッタ…


ほむら「……。」

マミ「病院に結界を作るだなんて、本当に質の悪い魔女ね」

QB「マミ!!魔女が!魔女が産まれるよ!!」




シュウウウウウウ…
ギャァァァァァッ…
ギャァァァァァァァッ…




マミ「…今日もさっさと終わらせるわよ」


ほむら「(巴マミ…)」


――――
―――――――
――――――――――


マミ「ティロ・フィナーレ!!」ドォォン

マミ「ふぅっ….さぁ…帰りましょ…」

魔女「……!!」グパァ

ほむら(くっ…!!使い魔に手こずってしまったわ。巴マミがあぶな…)「マミ!!危ない!!!!」

ほむら「!?」

QB「マミ!!!!!!」

マミ「(ハッ…)!?」ドンッ


グシャアアアアア……

マミ「はぁっ…はぁっ…」

マミ「キュゥベぇ…貴方…」

魔女「ギャァァ…ガツッガツッ…」グシャァァ

QB「……。」

ほむら(どういうことなの…?)

ほむら(インキュベーターが自分を犠牲にして誰かを助けたりなんて…)

マミ「キュウベエ!!どうして!どうして私をかばったりなんて…!!」

ほむら(信じられない。こんなこと…あり得ないわ…)




QB「マミ。忘れていないかい?僕にはスペアがあるってこと」スッ

マミ「キュゥべぇ!!」タッタッタ

QB「マミは魔法少女としてはすごく優秀だからね。みすみす死なせはしないさ」

マミ「だからって…!!キュゥべぇ…!!」ギュッ

QB「こんなことしている場合かい?魔女はまだ生きているよ。早く仕留めるんだ。マミ」タッ…

マミ「……分かっているわ。貴方にとって、私はまだ利用価値があるものね」

マミ「お望み通り…戦ってやるわよ…!!」

ほむら(インキュベーター…貴方……何を企んでいるの……!?)

――――
―――――――
―――――――――

まどか「ほむらちゃん…何で魔女のこと知ってたのかな……」ゴロン

まどか「もしかして、ほむらちゃんもあの魔女と戦ってるのかなぁ…」

QB「そうだよ」

まどか「きゃっ!?…あなた…この間の…キュゥべぇ…」

QB「夜遅くに申し訳ないね。まどか、君に折り入って頼みがあるんだ」

まどか「…そういえばこの間も…そんなこと言ってたよね・・」

まどか「頼みって何?私なんかに出来ることだったら…」


パンッ パンッ パンッ


まどか「!?」

まどか「あ…あ…キュゥべぇ!?キュウゥべぇ!?」

ほむら「鹿目まどか。貴方はこの生き物に耳を貸す必要なんて無いわ」

まどか「どうして!?どうしてこんなことするの!?ひどいよ…ほむらちゃん…」

まどか「この子は私に話があっただけなのに………」

ほむら「貴方は何も知る必要は無い。こいつに奇跡を約束されたとしても、貴方は取り入ってはダメ」

ほむら「さもないと……貴方が大切にしているもの、全てを失うことになるわよ」

まどか「いきなり…そんなこと言われても…わかんないよ……」

ほむら「分かったわね」スッ……

まどか「…………。」


――――
―――――――
――――――――――

ほむら「インキュベーター…いるんでしょ。出てきなさい」

QB「何だい。ほむら」

ほむら「鹿目まどかに近づかないで」

QB「君の指図は受けないよ」

ほむら「貴方…一体何を考えているの」

QB「君なら分かっているだろう。彼女を魔法少女にするのが目的だよ」

ほむら「そうね…」

ほむら「……昨日の魔女のことだけど」

QB「何だい?君も来てたのかい?それならそうと言ってくれたらいいのに」

「そうしたら、僕も無駄に潰される必要はなかったのにな」

ほむら「何故巴マミを助けたの?」

QB「……。」

QB「……マミには死なれたら困るからね」

QB「マミが優秀な魔法少女ってことは君も知っているだろう?」

QB「この辺一帯を縄張りにしているのはマミだし、まだまだ戦ってもらわないとね」

ほむら「…本当に…それだけなの?」

QB「…他に何があるって言うんだい?」

ほむら「……分かったわ。もう用は済んだから消えなさい」

QB「やれやれ。君から呼び出しておいて消えなさい…か。さよなら、ほむら」スゥ…

ほむら「………。」

――――
―――――――
―――――――――

まどか「っと…帰りが遅くなっちゃった…」トボトボ

まどか「それにしても…巴さんやほむらちゃん…それに魔法少女って何なんだろう…」

まどか「魔女と戦うものってことは聞いたけど…よく分からないよ…」

まどか「キュゥべぇ…」


マミ「あら…」

まどか「あっ…巴さん」

マミ「鹿目さん…だったかしら。こんにちは。今帰り?」

まどか「そうです…先生に用事頼まれちゃって」

マミ「あらそう。暗くなる前に帰りなさいね?それじゃ…」

まどか「あ…待ってください!」

マミ「…何かしら?」

まどか「……教えてください。魔法少女について…」

ガチャッ・・・ ギィィィ・・


マミ「上がって。私しか住んでいないから気兼ねしなくていいわよ」

まどか「は、はいっ。お邪魔します」



マミ「たいしたものは出せないけど…」カチャカチャ

まどか「あっ…すみません。お気遣いなく…」

マミ「長い話になるわよ。お茶でも飲んでのんびり話しましょう」

まどか「…はいっ…」


まどか「それで…マミさんはキュウベエと契約して魔女と戦っているんですか」

マミ「えぇ、そうよ」

まどか「願いことを何でも1つ…か。マミさんはどんな願い事をしたんですか?」

マミ「……。」

まどか「あっ…ごめんなさい。ちょっと興味があっただけで、どうしても知りたいって訳じゃ…。」

マミ「命、よ」

まどか「…えっ?」

マミ「昨年家族で出掛けている時にね、交通事故に巻き込まれたの」

マミ「そこにキュゥベぇが現れてね、咄嗟に願ったのよ。『助けて』って」

マミ「両親はその事故で死んでしまって、結果私だけが生き残ってしまったけれどね」

マミ「本来なら私はその事故で死んでいた。死んだも同然の私だもの、怖くないわ。」

マミ「魔女との戦いで死ねるならそれでも構わないと思っているし…」


マミ「…鹿目さん……!?」

まどか「………」グスッ…グスッ…

マミ「貴方…何故泣くの?どうしたのよ一体……」

まどか「だって…だって、マミさんそんなに辛い思いをしてきたのに…」

まどか「それでもっ…魔女と戦って…私を…皆を救って…」

まどか「そんなマミさんが…戦いで死んでもいいだなんて…そんなのっ…そんなのっ…」

まどか「絶対ダメです・・」

マミ「鹿目さん・・」

まどか「マミさん・・私も一緒に魔女と・・」

マミ「・・ダメよ!!それだけは許さないわ」

まどか「マミさん・・」

マミ「同情なんかで魔法少女になったら、貴方絶対に後悔するわ」

まどか「そんな・・同情なんかじゃないです!!マミさんに死んで欲しくないから・・マミさんの力になりたいから・・」

マミ「…鹿目さん。落ち着いて考えてご覧なさい」

マミ「私達はまだ出会って数日。それもたった2回きり。そんな相手の為に貴方が犠牲になる必要はないわ」

マミ「それに貴方には大切な家族や友人がいるんでしょう」

マミ「貴方にもしものことがあった場合、その人達に私と同じ思いをさせるの?それはダメよ」

マミ「私はね、家族も友人もいない。私が死んでも悲しむ人なんていないわ」

マミ「だから…「います」

マミ「!?」

まどか「ここに…マミさんが死んで悲しむ人はいます…だからもう…そんな悲しいこと…言わないで…」ポロポロ

まどか「確かにマミさんとはまだ2回しか会ったことはないです…けどっ…」

まどか「マミさんは…私を助けてくれたじゃないですか。だからっ…今度は私が助ける番なんです…」

マミ「鹿目さん……ありがとう…」ギュッ

マミ「…でも、魔女は私1人で倒すわ」

まどか「…でもっ…」

マミ「私は死なない」

マミ「貴方が悲しむから…私は絶対に死なない」

まどか「マミさん…」

マミ「必ず約束するわ。魔女なんかに負けない。戦いで死んでもいいなんて二度と口にしないから」

マミ「信じて。鹿目さん…」

まどか「マミさん…はいっ…」ギュウッ…

――――
―――――――
――――――――――


QB「まどか、入っていいかい?」

まどか「キュゥベぇ…?いいよ・・」

QB「単刀直入に言うね。まどか、僕と契約して魔法少女になってよ」

まどか「…出来ないよ」

QB「どうしてだい?さっきのマミとの会話では割と乗り気だったじゃないか」

まどか「…マミさんと約束したの。私は魔法少女にはならない。魔法少女にはならないで、マミさんを支えるの」

QB「ふむ…そうか…」

まどか「分かったなら帰って。私は魔法少女にはならないから…」

QB「…気が変わったらいつでも呼んでね……」スゥッ…



まどか(マミさん…)

QB(マミ…)

マミ「あらキュウベエ、どこへ行ってたの?」

QB「ちょっとね。それよりマミ…目が赤いね。また泣いていたのかい?」

マミ「えっ…!?あ…昔話をしたからね、ちょっと両親のことを思い出してしまっただけよ」

QB「そっか…ねぇ、マミ。君はまた父親と母親に会いたいかい?」

マミ「…いきなり何を言い出すのかと思えば……」

QB「どうなんだい?どうしても会いたいかい?」

マミ「会いたいに決まっているじゃない!!」

マミ「会いたいに…決まって…」ポロポロ

QB(マミ……)

まどか「おはよう。ほむらちゃん」

ほむら「…おはよう。貴方のほうから来るなんて珍しいわね」

まどか「あの…ほむらちゃん。ちょっとだけ、話したいことがあるの。屋上…来てくれる?」

ほむら「ここじゃ出来ない話なのね。分かったわ」


―――――――――――――


まどか「ごめんね、いきなり」

ほむら「話って何かしら」

まどか「あの…マミさんから聞いたんだけど、ほむらちゃんって…魔法少女なんだよね?」

ほむら「巴マミは貴方にそんな話をしたのね」

ほむら「…否定はしないわ。それが何?」

まどか「それでね…あの…マミさんと仲良くしてほしいの」

まどか「マミさんから聞いたよ。ほむらちゃんすっごく強いんでしょ」

まどか「その…それでね、マミさんと力を合わせて…2人で魔女を倒せたら…いいんじゃないかなって…」



ほむら「まどか……」

まどか「ごめんっ…すごく勝手なことを言ってるのは分かってるの」

まどか「都合…良すぎるよね…でも私じゃマミさんを救えないから…ほむらちゃんにお願いするしかなくて…」


QB「マミを救えるのは君しかいないよ」

まどか「キュゥべぇ…!?」

ほむら「…ッ…何をしに来たの!?とっとと失せなさい!!」

QB「…お願いだ、まどか。マミを救って欲しい。他の誰にも出来ない。君しかいないんだ」

ほむら「失せなさいって言ったはずよ」ガチャッ

まどか「待ってほむらちゃん!!」

ほむら「……ッ!?」

まどか「ねぇどういうこと?私にしか救えないかって…」

QB「まどかなら…いや、まどかにしか起こせない奇跡…君にそれを望んで欲しい…」

まどか「私にしか…?ねぇ、キュゥべぇ…私が望むことでマミさんが救われるの?」

まどか「キュゥべぇ…貴方は私にどんな奇跡を望むの…?」




QB「……マミの両親を蘇らせて欲しい」

まどか・ほむら「!?」


ほむら「ふざけないでよ…!!貴方、何を企んでいるの!?」

ほむら「それに…いくら魔法少女とはいえ、死者を蘇らせるなんてできないわ!!」

QB「本来であればできないよ…だけどね、まどかが望んで起こせない奇跡なんてない」

QB「それだけの力がまどかにはあるということだよ。君も気付いているだろう。まどかの底の見えない力に…」

ほむら「納得出来ないわ」

QB「…そうだろうね…」

ほむら「大体貴方たちインキュベーターが、家畜程度しか思っていない人間相手にそこまで固執するのはおかしいわ」

QB「……。」

QB「僕にもよくわからない。けど、わかっていることはある」

QB「僕はもうこれ以上マミの泣き顔を僕は見たくない」

QB「マミにはいつも笑っていて欲しい」

QB「マミを悲しみのどん底から救い出してあげたい」

QB「きっとこの気持ちが『感情』というものなのかもしれないね。厄介な疾患だよ、全く…」

QB「自分がどれだけおかしなことを言ってるのかは、これでも分かっているつもりだよ」

QB「…でも…どうしようもないんだ」

QB「これまでの僕がしてきたことを全て否定することになっても」

QB「僕はマミを救いたい」


ほむら「だからって…まどかにそんな願い事をしろっていうの!?それで魔法少女の宿命を背負わされるまどかは!?」

ほむら「まどかがどうなってもいいってこと!?」

QB「…否定はしないよ…もうが言ってることはそういうことだからね…」

ほむら「大体…死んだ人を蘇らせるということがどういうことなのか分かっているの!?」



ほむら「そんな途方もない願い事を叶えてしまったら…」

ほむら「引き換えにまどかが背負う絶望の大きさは…計り知れないものよ…」

ほむら「それでもっ…それでも貴方は…」

ほむら「まどかに魔法少女になれと言うの!?」


QB「まどか…お願いだ…マミを…救ってほしい…」

まどか「…ほむらちゃん」

まどか「ほむらちゃん…心配してくれてるのに…ごめんね」

まどか「私ね、一度マミさんに命を救われてるの」

まどか「だからね、今度は私がマミさんを救う番じゃないかな…って」

ほむら「まどかぁぁ!!だめぇぇ!!」

まどか「こんな私でも…マミさんが救われるなら…」

ほむら「まどかぁぁぁぁぁぁ…!!!」

まどか「私はキュゥべぇの言葉を信じるよ」

QB「…まどか」

まどか「うん。私もキュゥベぇと同じ気持ちだよ」

まどか「マミさんがもう泣かなくて済むように、いつも笑っていられるように、ひとりぼっちにならないように」

まどか「亡くなったマミさんのの両親を…もう一度…「待ちなさいっ…!!」

マミ「暁美さんの魔力の波動が急に強くなったから…」

マミ「何か起きたのかと思って来てみたら…どういうことなの…」

マミ「キュゥべぇ…何故貴方が…」

QB「…マミ…」

まどか「マミさん…キュゥべぇは…マミさんのことを心配して…」

QB「マミ…僕は…」

マミ「キュゥべぇ…!そんなに鹿目さんを魔法少女にしたかったの!?」」

QB「……!?」

QB「……ッ」

QB「………そうだよ。まどかをどうしても魔法少女にしたかったんだよ」

QB「…別に願い事はなんでもよかったよ」

QB「マミのことを持ち出したらまどかは契約してくれるんじゃないかなってね」

まどか「キュゥべぇ…」

QB「マミも知っているよね。僕達は感情を持たないって…」

QB「魔法少女と契約する為だったら…手段を選ばないんだよ…」

QB「分かった?分かったなら…「消えて!!」

マミ「…今すぐ私の傍から消えなさい!!インキュベーター」

マミ「もう…二度と…私の前には現れないで…」

マミ「魔女ならちゃんと倒すわ…これでいい?満足?キュゥべぇ!?」

まどか「マミさん…」

QB「…分かったよ。今までありがとう、マミ。楽しかったよ…」スゥッ…

――――
―――――――
――――――――――

まどか「ねぇ…ほむらちゃん…」

ほむら「何?まどか」

まどか「キュゥべぇのことなんだけどさ…」

ほむら「またその話?貴方はもう忘れなさい。過ぎたことよ」

まどか「私・・どうしてもキュゥべぇがマミさんに向けて言った言葉」

まどか「本心とは思えないんだ」

ほむら「……。」

まどか「ねぇ、ほむらちゃんはどう思う…?」

ほむら「…どうと言われても……」

ほむら「正直言って私は信じられないわ」

まどか「…そっか」

まどか「キュゥべぇの心に…直接聞けたらいいんだけどね…」

ほむら「…そうね」

ほむら「まどか」

ほむら「私はキュゥべぇと過去にいろいろあったから」

ほむら「どうしても肯定的に見ることは出来ないけど、貴方がそう感じるなら」

ほむら「きっと、その可能性も否定できなくはないわ」

まどか「…ほむらちゃん…」

――――
―――――――
――――――――――


あの日以来キュゥべぇは、私だけでなく暁美さん、鹿目さんの前にも姿を現していない。

きっとまた何処かで新しい魔法少女を探しているのだろう…

キュゥべぇはいなくなったけれど、元々私はひとりぼっちだったし、生活に変化はなかった。


マミ「キュゥべぇはいなくても…魔女退治は続けないと…ダメね」

マミ「さて…と。そろそろ行こうかしら…」

マミ「くっ…この魔女…なかなかやるじゃない…」ハァッハァッ

魔女「ギャァァッ ギャアァァァッ」ドォン・・・ドォンッ

マミ「ハァッ…負けない…私は負けない…!!!!」

魔女「ギャッギャッギャ・・!!」



ドオンッ・・・パンッパンッ・・・


マミ「これで…終わりよ…!!」

マミ「ティロ・フィナ・・・「ギャアアアアアアアアアアアアアアアッ」


マミ「・・・!?」

マミ「あっ・・・」

マミ(あ…私、これで死ぬのかな…)

マミ(鹿目さん…ごめんね。約束…守れなかった…)

マミ(悲しむかしら…鹿目さん…ごめんね)



ドッ・・・



マミ(!?)


マミ「キュゥべぇ?!」

ほむら「残念だったわね。キュゥべぇじゃなくて…」

マミ「…まさか貴方が私を助けてくれるなんて、思いもしなかっただけよ…」

ほむら「…(ふぅ)とりあえずここは一旦退くわよ」

マミ「どうして!?魔女が逃げたらどうするの・・・!?あ・・イタッ・・」

ほむら「その怪我で戦うのは無謀よ。この魔女は私が責任を持って倒すから」

ほむら「ここは言うことを聞いて。ほら、私の手をつかみなさい」

マミ「…。」ギュッ



ほむら「結界の外まで…その怪我では辛いだろうけど、走りなさい…」タッタッタ

マミ「…でも、どうして…私を助けたりなんか…」

ほむら「……貴方が死ぬと悲しむ人がいるから」

マミ「え…」

ほむら「言われないとわからないのね。貴方って人は」

ほむら「…それと、私はキュゥべぇを信じていないわ」

マミ「何よ…いきなり…」

ほむら「けどね…まどかはキュゥべぇを信じてる」

マミ「……。」

ほむら「キュゥべぇが貴方に言ったことは…本心ではないと」

ほむら「本当のところはもちろん分からないわ」

ほむら「それでも…」

ほむら「まどかが言うことを私は信じたい」

マミ「…!?」

ほむら「大概私もバカね」

ほむら「巴マミ…貴方はどうなの…?」

ほむら「貴方は自分の本当の気持ちに向き合う覚悟はあるの?」

マミ「…私は…」

ガチャッ…

マミ「ただいま…」

シーン…

マミ「紅茶でも淹れようかしら…」

コポポポポ……

マミ「あ」

マミ「つい癖でキュゥべぇの分まで淹れてしまったわ…」

マミ「キュゥべぇ…」

マミ「私の本当の気持ち…って…」

~~~~~~~~~~~


QB「何だい、マミ。眠れないのかい?」

マミ「えぇ。両親のこと…思い出してしまってね…」

マミ「起こしてごめんなさいね。もう大丈夫だから…キュゥべぇは先に寝て?」

QB「…じゃ、朝まで起きていようか」

マミ「…!?…明日は学校よ?寝ないとダメだわ」

QB「どのみち君は眠れないと言っているんだから、同じことじゃないかい?」

QB「それなら、何かしていたほうが気が紛れると思うけどね」

マミ「ふふっ、QBの言う通りだわ」

マミ「紅茶を淹れてくるわね。今夜はたくさんお喋りしましょう」


~~~~~~~~~~~

マミ「結局気付いたら寝てしまっていたのよね…キュゥべぇを抱いたまま…」

マミ「キュゥべぇの優しさは…私が魔法少女であるから向けられるもので…」

マミ「決して、私という人間に向けられたものではない…」

マミ「義務的にやっていることなんだと、私は思っていたけれど…」

マミ「キュゥべぇ…本当にそうだったの…?」

――――
―――――――
――――――――――


まどか「キュゥべぇ」

まどか「お願い、キュゥべぇ。話がしたいの」

QB「・・呼んだかい」

まどか「キュゥべぇ…ずっと探してたんだよ…」

QB「まどかにそこまで思ってもらえるなんて光栄だよ」

まどか「茶化さないで聞いて、キュゥべぇ」

まどか「あの日…マミさんにあんなこと言ったけど…」

QB「……あんなことって何だい?もう少し具体的に話して欲しいね」

まどか「だから…私を契約させる為に、マミさんの両親の話を持ち出したって…」

QB「……あぁ…そのことかい」

まどか「…ねぇ…あれは本心じゃないんでしょ」

まどか「キュゥべぇは心の底からマミさんを心配して…マミさんの為にって…私に…」

QB「そんなこと君に話してどうなるんだい」

まどか「どうって…」

まどか「マミさんとキュゥべぇがあんな別れ方するなんて…私、嫌だから…」

QB「それならまどかが魔法少女になってくれるっていうのかい?」

まどか「…ううん」

まどか「私ね。あれから考えてたの」

まどか「両親を失ったマミさんの心の傷はとっても深くて、そう簡単に癒せるものじゃない」

まどか「確かにね、両親が生き返れば、その傷はあっという間に癒えるかもしれない」

まどか「ううん。なかったことに出来るかも」



まどか「けどね」

まどか「…何て言えばいいのか分からないけど…」

まどか「それって…何か違うんじゃないかなぁって…」

まどか「きっとね、マミさん1人が生き残ったことにも意味があると思うの」

まどか「それはとても悲しい現実なんだけど…」

まどか「マミさんを支えられる人がいれば…きっとマミさんは悲しみから立ち直れる」

QB「…。」

まどか「マミさん言ってた『私はひとりぼっちだから』って」

まどか「マミさんは1人じゃないよって…その手を握ってくれる人がいれば…」

まどか「…乗り越えられと思うの」

まどか「マミさんは…あんなに怖い魔女に立ち向かえる勇気を持った人だから…」

まどか「だからね…マミさんは深い悲しみから抜け出せるよ…」


まどか「ねぇ、キュゥべぇ」

QB「…何だい」

まどか「一緒に行こう」

――――――――――

マミ「私があの魔女に殺されそうになった時」

マミ「あのまま死んでしまえたらと思って、わざと逃げなかった」

マミ「キュゥべぇはそんな私をかばって殺された」

マミ「スペアはあるんだけどね…」

マミ「キュゥべぇ…」


マミ「両親がいない現実が怖くて…目を覚ますのが怖い朝も」

マミ「お茶の時間もお風呂の時も」

マミ「眠れない夜も…」


マミ「ねぇキュゥべぇ」

マミ「私はね、ずっとずっとひとりぼっちだと思っていたの」

マミ「貴方は…どんな時だって私のそばにいてくれたのよね…」ポロ

マミ「知らず知らずのうちに…私は貴方に救われていたのね…」

マミ「失ってはじめて気付くって…まさしくこの通りだわ…」

マミ「両親もいなくなって…キュウベエもいなくなって…」

マミ「私、本当にひとりぼっちになってしまったのね」

マミ「キュゥべぇ…またひとりぼっちになるくらいなら、あの時魔法少女にならずに死んでしまったほうが良かったのかもしれないわね」

マミ「…なーんて…こんなこと言ったらまた鹿目さんに怒られてしまうかもしれないわ」

マミ「…。」グスッ

マミ「貴方が私を魔法少女にさせたのよ…」

マミ「だったら…ちゃんと…最後まで見届けなさいよっ…」

マミ「ひとりぼっちに…しないでよ…」

マミ「キュゥべぇ…キュゥべぇ…」ポロポロ









QB「呼んだかい?マミ」

まどか「あっ…ごめんなさい。マミさん。勝手にお宅に上がってしまって…」

マミ「キュゥべぇ!?それに鹿目さん…ど、どうしたの!?」ゴシゴシ

まどか「…ほら、キュゥべぇ…」

QB「うん…マミ」

QB「マミ…信じられないかもしれないけど、聞いて欲しいんだ」

QB「僕はね、泣きながら眠る君の寝顔を何度も何度も見るうちに」

QB「僕の中に不思議な気持ちが芽生えていったんだ」

QB「はじめは戸惑ったよ…これまで幾多もの魔法少女と出会ってきたけど…」

QB「特定の個体に対して、こんな思いを抱いたことがないからね」

QB「そこで僕は思い出したんだ」

QB「『感情』というものを」

QB「『感情なんて極めて稀な精神疾患』でしかなかったけど、この時僕はまさかと思ったんだ」

QB「僕自身がその『感情』を得てしまったんじゃないかってね」

QB「そう気付いた時から僕、はたった1つのことだけを考えていた」

QB「マミに寂しい思いをさせたくない」

QB「全く、笑っちゃうよね。人類を家畜程度にしか見ていなかったこの僕がだよ?」フフッ

QB「どうすればマミが寂しい思いをしないか、それだけを考えて行動しているなんて」

QB「子を思う親の気持ちって、こんな感じなのかな?」

QB「…僕が出来る限りのことはしたよ。でもね、やっぱり僕なんかじゃ、マミの心の傷は癒せない。寂しさを埋めることはできない」

QB「それが出来るのは、マミの両親しかいない」

QB「そこで僕は1つの結論に達した。マミの両親を…蘇らせること…」

マミ「貴方…本当に…」

QB「聞いて、マミ。一度死んでしまった人間を蘇らせるなんて、どんな魔法少女にだってなし得ないことだ」

QB「それが出来ていたら、半年間君はこんな寂しい思いをせずにすんだだろう」

QB「だけど、そんな魔法少女の常識をひっくり返してしまうほどの素質を持った少女を見つけてしまったんだ」

まどか「それが……」

QB「そう、君さ。鹿目まどか」



QB「まどかさえ望めば、どんな奇跡だって叶えられる」

マミ「でも…そんな奇跡を起こしてしまったら…鹿目さんがどうなるかなんて、分かり切ったことよね…」

まどか「マミさん…」

QB「もちろん分かっていた。それでも…それでも僕は叶えたかった…マミの涙をもう見たくなかったから…」

まどか「マミさん…」

まどか「結果的に私は契約しなかった。だから…あまりキュウベエを責めないであげてください」

マミ「責めるだなんて…そんなつもりはないの…ごめんなさい」

マミ「私、キュウベエの優しさに甘えていたの…」

マミ「そばにいるのが当たり前で、ちっとも気付かなかったけど…」

マミ「キュゥべぇはずっと私を支えてくれていた。誰よりもそばで…ずっと…ずっと…」

マミ「私は……」

マミ「ひとりぼっちじゃなかったのね」

マミ「キュゥべぇ…ごめんなさい…」

マミ「貴方の優しさに気付かないで…貴方を傷つけてしまって…」

QB「…何故マミが謝るんだい。まったく、訳が…」ギュッ

マミ「キュゥべぇ…私ね…パパとママには会いたいわ」

QB「マミ…」

マミ「けどね、会うとしたらそれは私がこの世から去ってからだわ」

マミ「まだ…2人に会いに行くには早過ぎるもの…」

まどか「…マミさん!」

マミ「それから鹿目さん」

まどか「は、はいっ…」

マミ「ありがとう」

まどか「えっ…?」

マミ「貴方は…キュゥべぇを信じていてくれたのよね」

まどか「えっと…そうです…けど…」

マミ「鹿目さんがいてくれなかったら…きっと私は自分の気持ちと向き合えなかった」

マミ「ずっと、自分は『ひとりぼっち』だって…そう思い続けていたわ」

まどか「そんな…私は何もしてないです…」

マミ「いいえ。そんなことない」

マミ「貴方がいてくれて良かった。私には…こんなに素敵な友人がいたのね」

まどか「マミさん…!」

マミ「キュゥべぇ…鹿目さん…いつか私が円環の理に導かれるその日まで…」

マミ「ずっと、一緒にいてくれる?」

QB「僕はもとよりそのつもりだったよ」ヘヘン

まどか「はいっ!マミさんが寂しい時も嬉しい時も…どんな時だって私はずっとそばにいます…!」

マミ「もう…明けない夜に怯える必要はないわ…だって…私は1人じゃなかったんだもの…!」グスッ…

QB「マミ、泣かないでよ。僕はマミの笑顔が見たくて…」

マミ「悲しくて泣いてるんじゃないの…人はね、嬉しい時にも涙が出るのよ」

QB「…へぇ。人間はまだまだ分からないことだらけだよ」

まどか「ふふっ…」

マミ「直分かるわ。だって貴方は…これからずっと私と一緒なんだもの」

――――
―――――――
―――――――――


ほむら「正直言って…私は未だ半信半疑よ」

まどか「もう…ほむらちゃん…(ちょっとしつこい…)」

ほむら「でも、貴方がキュウベぇと契約せずに済んだのだから…もうそれでいいわ」

まどか「…うんっ。でも…ちょっと、魔法少女になってみたかったかも…」

ほむら「まどか!?貴方はどこまで愚かなの!?」

まどか「…ふふっ、冗談だよ」

ほむら「…貴方、本当に信じられない…冗談でも言っていいことと悪いことが…」

まどか「…?」ニコニコ

ほむら「怒る気も失せるわ…」

ほむら「…それにしても、今後の魔法少女の勧誘やSGのことなんかはどうするのかしらね…」

まどか「さぁー…先のことはまだいいんじゃない?なんて…」

ほむら「貴方ってほんと…」

まどか「だってぇ…こんなに幸せなことないよ」

まどか「マミさんとキュゥべぇは…奇跡を起こしたの」

まどか「そんな2人だもん…」

まどか「これからどんな困難があっても、乗り越えられるはずだよ」

ほむら「そうかしら…」

まどか「そうだよ、ほむらちゃん」

まどか「奇跡も魔法もあるんだ…「おーーーーいっ!!」


さやか「まどかー!それに転校生ー!おっはよー!」

まどか「さやかちゃん、仁美ちゃんおはよう」

仁美「お2人方、おはようございます」

さやか「今日も1日張り切ってこー!!」

まどか「ティヒッ…さやかちゃんってば…」

まどか「…!!あっ」

まどか「マミさーーーん!おはようございまーーす!!」

さやか「おっ…!マミさんだ!おはよ~~!」

仁美「おはようございます。巴さん。さやかさん、声大きすぎますよ」クスクス

ほむら「マミ、早く行かないと遅刻するわよ」



マミ「ふふっ…みんな朝から元気ねぇ…」

さやか「ねぇマミさん聞いてよ~!昨日まどかがねぇ…」

まどか「!?さやかちゃん!!その話はやめて~…!!」

さやか「なにおう!?私に指図するとはこの小娘、生意気な~!!」ダッ

まどか「キャッ…!!さやかちゃん~~くすぐったい!!やめてー!!」ダダッ


キャッキャッ… アハハ… 

マミ「さ、キュウベぇ。私たちも行きましょうか」

QB「そうだね。そろそろ向かわないと遅刻してしまうね」







マミ「キュウベぇ・・」

QB「どうしたんだい?マミ」











マミ「幸せよっ」ニコッ




              おわり

色々と矛盾点もあったと思いますが、これで終わりです。

魔法少女の魔女化・ワルプルギスの夜など…
解決しないといけないことはたくさんありますが…

その後の展開はご想像にお任せします。


深夜3時にも関わらずスレ立てして下さったDvXia/yo0さん
支援下った皆さん。
本当にありがとうございました。

初めてのSSで至らない点も多くあったと思いますが、
完走できて良かったです。



そして…あんこちゃんごめんね…

ありがとうございました。

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