阿部「やらないか」QB「えっ」(565)

QB「凄まじい魔力の素質を感じる……君は間違いなく最強の魔法少女になるだろう」タタタッ

QB「さあ、鹿目まどか! 僕と契約して、魔法少女になってよ!」バッ


阿部「……」

QB「えっ」

阿部「やらないか」ジイ

QB「えっ」

QB「……」

阿部「……」

QB「あの」

阿部「……」

QB「君は、鹿目まどかではないよね?」

阿部「阿部高和だ」

QB「少女ではないよね?」

阿部「33歳、いい男だ」

QB「……」

阿部「やらないか」ジジイ

QB「ひいっ」

QB「わけがわからないよー!」ダダダッ

阿部「……」

阿部「残念だ……あいつ、可愛い顔してなかなかの雄を感じてたんだがな」

阿部「……」

阿部「やらないか」ジイ

男「ウホッ! いい男……」

まどか「さやかちゃん、仁美ちゃん、おはよー!」

仁美「まどかさん、おはようございます」

さやか「おはよー! お、そのリボン似合ってるねー!」


QB「そんな……あの鹿目まどかの魔力の素質が、さっぱりなくなっている……!」

ほむら「ようやく見つけたわよキュゥべえ……いえ、インキュベーター」

QB「君は……暁美ほむらか」

ほむら「鹿目まどかに近付くのはやめなさい。彼女は絶対に魔法少女にはさせないわ」キリッ

QB「ああ、うん、いいよ別に」

ほむら「!?」

ほむら「な、なぜ? あんなにまどかに固執していたはず……」

QB「うん? どうやら色々と情報を持っているようだね」

QB「確かに、鹿目まどかは素晴らしい素質を持っていたはずだった。でも突然、その素質を失ってしまってね」

QB「今ではカスほどの魔力の資質も感じない。わざわざ魔法少女になってもらう必要はないね」

ほむら「……」

ほむら(喜ばしいはずなのに、この敗北感は何?)

ほむら「では、なぜ貴方はこの街をうろついているのかしら。まどかが目的でないのなら、貴方からわざわざ出向く必要はないはず」

QB「……以前のまどかと同等か、それ以上の素質の持ち主を見つけてしまったからさ」

ほむら(まどかと同等……それなら、契約すればただではすまない。まどかの身にも危険が及んでしまう……)

ほむら「その素質の持ち主は、誰なの?」

QB「……」

QB「彼さ」

阿部「……」

ほむら「……」

ほむら「えっ」

阿部「やらないか」ジイ

QB「やらないよ」

HMR「実は、私の学校で昔、ワルプルギスの夜ってのがきましてぇ」

QB「え、そうなの?(ドン引き)」

・・・・

MDK「ウィヒヒヒ!」

QB「理解に苦しむけどね、彼の持つ素質は歴代の魔法少女すべてを束ねたとしても、それすら軽く凌駕する」

QB「阿部高和。不本意ながら、君が契約すれば歴代最強の魔法少女が誕生するだろう」

ほむら「少……女……?」

阿部「魔法はともかく、少女になるのは御免だな」

QB「いや、契約しても性別や年齢までは変わらないはずだよ」

QB「それに、魔法少女になる契約を交わせば、何でも好きな願いを一つだけかなえてあげられる」

QB「阿部高和、君ほどの素質があれば、万物の神になることだって可能だろう」

阿部「へえ、そいつは太っ腹じゃないの」

ほむら「早まってはいけないわ、阿部高和! ……さん」

ほむら「魔法少女になったが最後、平穏な生活は二度と戻ってこないわ。魔女との戦いに永遠に身を投じることになる」

阿部「魔女? なんだか知らないが、女の相手は御免だね」

QB「その心配はないよ。魔女は便宜上の呼び名に過ぎないからね、性別なんて概念はないに等しい」

阿部「俺は男しか相手にしない主義なんだがね」

ほむら「魔女を相手に何をするつもりでいるの……?」

QB「暁美ほむら、どうして邪魔をするんだい? 阿部高和は君にとって初対面だろう?」

ほむら「彼を魔法少女にすれば、まどかにも危害が及ぶのを私は知っているわ」

QB「君は……」

QB「……」

QB「いいだろう、日を改めることにするよ。まだ機会はあるだろうしね」

ほむら「意外にあっさり引き下がるのね」

QB「正直、こんなに優秀な人材なのに、勧誘に気が乗らないんだよ……」

ほむら「まあいいわ」

ほむら「阿部高和……さん。貴方も魔法少女になろうなんて思わないこと……思わないでください」

阿部「無理して敬語にしなくてもいいぜ」

ほむら「感謝するわ」

ほむら「魔法少女は貴方が思っている以上にリスクが大きすぎる……覚えておいて」スッ…

阿部「……」

QB「阿部高和、僕は諦めないよ」

阿部「俺も諦めないぜ」ジイ

QB「諦めたくなってきたよ」

マミ「……」テクテク

QB「やあマミ、パトロールかい?」

マミ「あらキュゥべえ。ええ、見滝原の平和は私が守らないとね」

QB「さすがだね、マミ。そんなマミを見込んで頼みがあるんだ」

QB「優秀な素質を持った魔法少女候補に、マミの戦いぶりを見せてやってほしいんだ」

マミ「へえ……ええ、構わないわよ」

QB「ありがとうマミ!」


QB「紹介するよ、魔法少女候補の阿部高和だ」

阿部「よろしく」

マミ「えっ」

マミ「キュゥべえ」

QB「そんな目で見ないでくれないか。僕だって、気のせいならどんなによかったと思ったか」

マミ(ようやく仲間ができると思ったのに……この人が魔法少女の姿で、私の隣で戦うの?)

マミ(そんなの考えられない!)

阿部「巴マミ……だったかい」

マミ「え? ……あ、はい」

阿部「危険な仕事だってのに、面倒かけてすまないな。よろしく頼む」

マミ「あ、いえ……」


マミ(……)

マミ(なにこれ。期待外れだったのに、悔しいけど嬉しいっ!)ニマア

魔女「ギイイイイイイ」

マミ「悪いけど、速攻で片付けるわよ!」ドンッドンッ

魔女「ギッ、グキイイイイ!?」


阿部「へえ……凄いもんじゃないの、魔法少女ってのは」

QB「マミは魔法少女の中でもベテランだしね。この辺りでは最も完成された魔法少女だろう」

QB「でも阿部高和、君が契約すればマミなんて比べ物にならない力を手に入れられるよ」

阿部「そいつは未だに信じがたいがね……ところで」


マミ「ティロ・フィナーレ!」カッ


阿部「あれはやっぱりお約束ってやつかい?」

QB「いや、あれはマミの個性だよ」

QB「どうだい、契約する気になったかい?」

阿部「さてね……」

マミ「危険な仕事だから、よく考えて決めてくださいね……一度魔法少女になったら、後戻りはできませんから」

マミ「それでもかなえたい願いがあるなら、話は別ですけど」

阿部「かなえたい願い、ねえ」ジー

QB(……お尻が寒い)

QB「これからもマミのパトロールの時には呼びに行くからね、ゆっくり考えるといいよ!」ソソクサ

阿部「おいおい、足手まといがいて迷惑じゃないのかい?」

マミ「あ、いえ、私は別に」モジモジ

阿部「……」

マミ「……」モジモジ

阿部「……そうか。じゃあ、この次もよろしく頼む」

マミ「は、はいっ」パアア

マミ「それじゃあ、私もこれで……」

阿部「ああ、また」

タタタタッ

阿部「かなえたい願い、か……」

阿部「……」


阿部「お、やらないか」ジイ

通行人「ウホッ! いい男……」

さやか「うわー、遅くなっちゃったな。もう真っ暗じゃん」

さやか「急いで帰らなきゃ…近道近道っと」

さやか「……この公園抜けると早いんだよね。暗いけど、まあ大丈夫でしょっ」タタタ

阿部「……」

さやか(ウホッ! いい男……)

さやか(いや、違うから! あたしそういうキャラじゃないから!)

さやか(何ていうの? 恭介にはない野性味溢れる男の色気っていうか)

さやか(年長者ならではの渋みっていうか……じゃなくてさ!)

阿部「……嬢ちゃん、こんな時間に一人でここを通るのは危ないぜ」

さやか「うおっとぉ!?」ビクッ

さやか(うわ、近い近い! 声に出してなかったよね、あたし!?)

阿部「……?」

さやか(わっわっ、近くで見たら腕とかすごい太いしっ)

阿部「おい、聞こえてるかい?」ズイ

さやか「ひゃ、ひゃいっ!」

阿部「聞こえてるなら少しは反応してほしいもんだな。夢遊病か何かかと思っちまったじゃないの」

さやか「ああ、はい、すみません……」

阿部「いいか、この公園は有名なハッテン場なんだ。昼ならまだしも、夜に嬢ちゃんみたいな子の一人歩きは危ない」

阿部「悪いことは言わないから、迂回して行くんだな」

さやか「えと、はってんばって何ですか?」

阿部「……」

阿部「まあ、一言で言うなら男の溜まり場だな」

さやか「なーんだ、平気ですよそのくらい。タターッと通り抜けちゃいますから!」

阿部「いや、嬢ちゃんが思ってるよりも濃厚な溜まり場でだな」

さやか「大丈夫ですって! それじゃあ失礼しまーす!」タタタッ

阿部「あ、おい……!」

さやか「んー? 危ないってわりに全然人いないじゃん」タタタッ

さやか「ん?」


男A「大尉、自分はもう、暴発寸前であります……!」

男B「イイぞ……これは実戦だ、俺の中に特攻してこい!」

男A「ああッ、小早川大尉! 愛しておりましたァーッ!」

男B「おおーッ! 大日本帝国バンザイーーッ!」


さやか「やだ、なにこれ……」

さやか「え、だってアレ、どう見たって男同士であんな……」

さやか「うわうわ、そんなトコまで……」モジモジ

男C「おいそこのォ」ガシッ

さやか「ひゃっ!?」ビクッ

男C「お前さんフリーか、丁度イイや。あぶれたモン同士楽しもーや」ヒック

さやか「楽しむって、ちょっ、やだ……ッ!」

男C「アン? なんだオメー、女か」

さやか「そ、そうだよ! だから離して!」

男C「ンー、たまにゃあ女もイイか。オラ、ケツ向けな」ボロン

さやか「いやーッ! 変なモン出すな! 向けるな! いや、やめ、ひっ……」

男C「ンゴッ」

さやか「……っ!」

男C「……」

さやか「……?」

男C「あ、あお……っ」

阿部「おいおい、危ないところだったじゃないの」

さやか「あ、助けてくれたの……ですか」

阿部「まあ、一応そうなるかな」

さやか「ありがとうございま……ちょっ」

男C「アッ、アッ、アッ」

さやか「それ、もしかして」

阿部「根元までズップリいってるぜ?」

さやか「イヤーーーッ!!」

男C「ぬふぅ……っ」ガクンガクン

阿部「落ち着いたかい?」

さやか「まあ、なんとか。あ、あんまり寄らないでください」

阿部「心配しなくても俺は男一筋だぜ」

さやか「そういう意味じゃなくて……まあ、いいですけど」


男C「ウオォン…オレハマルデニンゲンカリョクハツデンショダ」ビクンビクン

阿部「ハッテン場ってのはこういう所だ。今の奴みたいな見境のない奴もいるし、バイだっている。忠告は聞いとくもんだ」

さやか「あ、はい……ごめんなさい」

阿部「わかったらさっさと帰りな、親御さんも心配してるだろう」

さやか「はい、えと……」

さやか「その、あなたも誰でもいいから、相手探してるの……ですか?」

阿部「……まあな」

さやか「……嘘、ですよね」

阿部「……」

さやか「あたし、そういうのわかるんです」

さやか「こんな場所にいるし、さっきもあんなことしてたけど、誰でもいい人なんかじゃない。そうですよね?」

阿部「……いや、そいつは嬢ちゃんの勘違いだろ」

さやか「ええー? そんなことないと思うんですけどねー」

さやか「じゃあ、本当にありがとうございましたっ! 今度、昼にでもお礼に来ますね」

阿部「いや、もう来るなよ」

さやか「あはははっ、それじゃあまたー!」

阿部「ああ、気をつけて帰るんだぞ」

タタタタッ…


阿部「誰でもいい人なんかじゃない、ね」

阿部「……」



阿部『どうだ、正樹』

道下『ああっ、阿部さん……最高ですっ……!』

阿部『嬉しいこと言ってくれるじゃないの、それじゃあとことん喜ばせてやるからな』

道下『くあ、あああっ!』

道下『はあっ……阿部さん……』

阿部『ン、どうした? 正樹』

道下『阿部さん、本当に気持ちいいですか?』

阿部『そりゃあ、もちろんじゃないか』

道下『……僕、知ってるんですよ。阿部さん、一度も本気でヤったことないでしょう。僕のこと気遣って……』

道下『お願いです、思いっきり、手加減なしでヤってください!』

道下『阿部さんが好きだから……最高の阿部さんを受け入れたいんです!』

阿部『……そんなに言われちゃ、断れないじゃないの』

阿部『ただし、無理はするんじゃないぞ?』

道下『んぐああっ!! 阿部さん、凄い! 凄いっ!』

阿部『ああっ……最高だ、正樹!』

道下『僕に、遠慮なくっ……阿部さんの、全部くださいぃ……っ!』

阿部『言われなくてもそのつもりじゃないの……!』


阿部『あおおーーーーッ!!!!』ゴビュブビュドブブブッッゴプッ!!!!

阿部『ふぅ……最高だったぜ、正樹……』

阿部『ン……正樹、どうした?』

阿部『正樹……?』


阿部『ま、正樹ーーーッ!!』

阿部「……」

阿部「かなえたい願い、か」

阿部「……」

阿部「今さら、どんな顔で会えるっていうんだ」

阿部「なあ、正樹……」

すみません、所用のため席を外します。
22:30再開予定。

【保守中】
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       ノ)ノ,(ノi         ノ)ノ,(ノi
 ___ (    (ノし ___ (    (ノし ___
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|___| U ̄工´.  |___| U ̄工´.  |___| U ̄工´

               ∧,,∧
              (´・ω・)           シュッ!!   ∧,,∧
              ( っ(⌒)   ◯三二≡=─  ⊂(・ω・`)、

               `u-u'                  ヽ  と)
                                    `u-u'

さやか「いやー、悪いね。つき合わせちゃってさ」

まどか「ううん、私もCDショップって好きだから全然いいよ。視聴とかできるし」

さやか「ありがと。おかげでレアなCDゲットできたよー! 恭介、喜んでくれるかなあ」

まどか「きっと喜んでくれるよ、さやかちゃんセンスいいもん!」

さやか「またまたー、持ち上げてみたって何も出ないぞー? うりうりっ」グリグリ

まどか「もー、そんなんじゃないよー」

まどか「あれ……? ね、さやかちゃん、あれ何かな?」

さやか「んー? 何だろ、真っ黒だね。壁にめり込んでるみたいな……」

まどか「なんか、よくわからないけど嫌な感じ……」

ピシッパキッ

さやか「あれ、割れ」

パキンッ ゴオオオオオオ

まどか「ひゃっ!?」

さやか「うわ……! まどか、掴まって……!」

ゴオオオオオ…

さやか「……おさまったみたいだね」

まどか「さやかちゃん、ここ、どこ……?」

さやか「何だろこれ。床も壁も、全部お菓子みたい」

まどか「なんだか怖いな……」

さやか「うーん……じっとしててもしょうがないし、進んでみようか」

まどか「なんだか広いところに出たね」

さやか「ん、あれ何だろ。なんかぬいぐるみみたいな」

シャルロッテ「……」

まどか「それに、周りにも何かいるみたいだよ」

ピョートル「……」カサコソ

さやか「うわ、なにあれ。コウモリみたいなのがいっぱい」

まどか「ねえさやかちゃん、これって、私たち危ないんじゃないのかな……?」

さやか「あ、まどかもそう思う? なんかさ、いや~な汗が……」

ピョートル「……」ギロッ

まどか・さやか「あっ」

ピョートル「ピギーピギーピギー」バサササッ

まどか「うわわわっ、飛んできたよ!? さやかちゃんっ」

さやか「何ボーッとしてるのさ!? 逃げるんだよ早く!」

まどか「さやかちゃ、そんな引っ張ったら、あっ」ズベッ

さやか「まどか……!?」

まどか「ひっ」

ボキュッ

ピョートル「ピッ」ボトッ

マミ「あなたたち、大丈夫!?」

QB「へえ、迷子で、しかも生存者なんて珍しいね……って、君たちは!」

さやか「何これ、どうなってるの?」

QB「やあ、僕はキュゥべえ。僕と契約して、魔法少女になってよ!」

まどか・さやか「えっ」

QB「あ、ピンクの髪の子。君はいいから」

マミ「キュゥべえ! こんな所で勧誘しても混乱するだけよ!」ドンッドンッ

QB「ああ、動揺ってやつかい? 人間は情報処理の効率も感情が左右するんだね。非効率だよ」

まどか「魔法少女って……」

さやか「あたし、夢でも見てるのかな……」

マミ「驚かせちゃってごめんなさいね、すぐに片付けるから」ジャコッ

さやか「凄い、あんなにいたコウモリが、一匹残らず……」

まどか「それに、なんだか踊ってるみたい。かっこいいな」

QB「マミはベテランの魔法少女だからね、あの程度は朝飯前さ」

さやか「あたしも、魔法少女になったらあんなふうになれるの?」

QB「もちろんさ、君には素質があるからね」

まどか「私は?」

QB「あ、君は無理」

マミ(もう、キュゥべえったら、時と場合を考えてくれないと!)

マミ(でも勧誘するってことは、あの子たちに素質があるってことよね)

マミ(そしたら、まともな後輩が……一緒に戦ってくれる仲間ができるかも)

マミ(これはいい所見せないといけないわね!)

マミ「決めるわ! ティロ・フィナーレ!」ゴオッ


さやか「やっぱり魔法少女ってああいうものなの?」

QB「安心していいよ、あれはマミだけさ」

マミ(体が軽い……!)

マミ(こんな気持ちで戦うの初めて)

マミ(もう何も怖くない!)

マミ(女の子一人じゃないもの!)

QB「……!? マミ、危ない!」

マミ「えっ」

シャルロッテ「……」ニュルン ガパア

さやか「あ……あ……」

QB「美樹さやか! 今すぐ僕と契約を!」

まどか「こんな、こんなのってないよ、あんまりだよ……」

QB「ほら、君は下がっててよ!」


ほむら「その必要はないわ」

QB「僕と契約して、魔法少女になってよ!」

TDN「なれば免許を返していただけるんですね」

まどか「ほむらちゃん……!?」

さやか「転校生!? あんたまで、何その格好」

ほむら「話は後よ。あいつは私の獲物……美樹さやか、あなたごときが契約しても勝てる相手ではないわ」

さやか「な……なんかよくわかんないけど失礼な!」

QB「ベテランのマミが一撃でやられた相手だよ? 君も一人じゃ分が悪いんじゃないのかい?」

ほむら「……それには及ばないわ」

ほむら「だって、巴マミは死んでいないもの」


阿部「ふぅ、間一髪だったじゃないの」

マミ「あ、え?」

マミ(え? 私生きてる? 体が軽いっていうか、阿部さんに抱かれてて、ええっ!?)

ほむら「先に行くわ。巴マミ、あなたも動けるなら加勢しなさい」トトッ

マミ「え? ええ……」

ドーン ドーン ズズーン

マミ「……」

阿部「……」

マミ「あっ! 降ろして! 降ろしてください!」ハッ

ほむら「遅かったわね」

マミ「……面目ないわ」カア

さやか「ベテランだから朝飯前、ねえ」

QB「魔法少女だって無敵じゃないんだ、強い魔女や一瞬の油断でああなることだってあるさ」

阿部「マミの実力は俺が保障しようじゃないの」

まどか(この人は何なんだろ……)

QB「……というわけなのさ。さあ、僕と契約して魔法少女になってよ!」

さやか「急に願いって言われてもなあ……それに、今のピンチ見た後だとちょっと」

マミ「きょ、今日はたまたま調子が悪かったのよ? 本当よ?」

まどか「えっと……大丈夫ですよ、マミさんかっこよかったですよ」

マミ「本当なのよ!?」


阿部「にしてもほむら、随分と凄い能力の持ち主だったんじゃないの」ボソボソ

ほむら「他言無用よ」

阿部「わざわざ俺の手柄にしなくてもよかったと思うんだがねえ」

ほむら「……どう対応していいか、わからないもの」

阿部「ところでいいのかい? あの嬢ちゃんは止めてやらなくて」

ほむら「美樹さやかはたいして問題ないわ。あなたが契約するなら大問題だけれど」

阿部「ふうん……俺としては、そこそこ乗り気なんだがね」

ほむら「っ!?」

阿部「あんたの言うリスク、まだ聞いてないだろ? それで納得しろってのも無理な話じゃないの」

ほむら「……わかったわ。後でちゃんと説明するから」


QB「ところで暁美ほむら。僕はどうして踏みつけられているんだい?」

ほむら「あまりまどかを投げやりに扱わないでくれるかしら」

QB「契約しなければいいんじゃないのかい? わけがわからないよ」

阿部「……」


ほむら『魔法少女の契約を結んだが最後、魂は抜き取られてソウルジェムとなる。私たちの肉体は抜け殻にすぎない』

ほむら『ソウルジェムは魔力や精神の消耗で穢れていき、それを浄化するには魔女の持つグリーフシードを手に入れなければならない』

ほむら『そして、ソウルジェムが限界まで穢れを溜めた時、魔法少女は魔女へと変わる』

ほむら『阿部高和。あなたが魔女となった時、世界は間違いなく滅ぶわ』


さやか「あーべさんっ」

阿部「おいおい嬢ちゃん、忠告聞かずにホイホイこんなやってきて。今度こそ食われちまうぜ?」

さやか「だからちゃんと昼に来たじゃないですか!」

阿部「ああ、忠告を聞いてないのはよくわかった」

さやか「大丈夫ですって。それに、阿部さん助けてくれるでしょ?」

阿部「さて、どうだか」

さやか「……魔法少女のことなんですけど」

阿部「……」

さやか「聞きましたよ、阿部さんが凄い素質の持ち主だって」

阿部「……」

さやか「ホモって少女にカウントされるんですね」

阿部「その発想はなかったな」

さやか「……かなえたい願いごとがあるんですよ」

さやか「あたしにはそこそこの才能があるって言ってもらえたし

さやか「マミさんもよく考えろって言ってくれてるけど、でもすごく期待してくれてるみたいで」

さやか「でも、やぱりちょっと怖くて」

さやか「……阿部さんは、どうなのかなって」

阿部「……」

ほむら『ソウルジェムが限界まで穢れを溜めた時、魔法少女は魔女へと変わる』

ほむら『阿部高和。あなたが魔女となった時、世界は間違いなく滅ぶわ』

阿部「……俺にはかなえたい願いってのが、今のところないからな。まだなろうとは思えん」

阿部「その願いってのは、魔法じゃないとかなわないような願いなのかい?」

さやか「……たぶん、そうです」


ほむら『ソウルジェムが限界まで穢れを溜めた時、魔法少女は魔女へと変わる』

阿部「……」

阿部「よかったら、聞かせてもらえるかい?」

阿部「その幼なじみの手を、ねえ」

さやか「やっぱり、他人に願いを使うっておかしいですか?」

阿部「いや、気持ちはよくわかるさ。相手が男ってだけで、俺たちの恋愛も大差ないんだぜ?」

さやか「言ってることはわかるんですけど、あれを見ちゃうとなかなか……」

阿部「心と体は別なんだぜ?」

阿部「その恭介って男に惚れ込んでるのも、弾かせてやりたいって嬢ちゃんの気持ちもよくわかる」

阿部「ただな、その恭介って男はそれでいいのかい?」

さやか「え?」

阿部「そいつは元通り弾けるようになったとしても、嬢ちゃんのおかげだとも、そこに代償があるのも知らないんだぜ?」

阿部「ただの奇跡だとか、幸運だとか、自分が恵まれてるとだけ思うだろうさ」

阿部「ただ、もしまた弾けなくなったとしたら、そいつはまた同じようになったいまうんじゃないか」

さやか「えっと、どういう意味ですか?」

阿部「才能があるのはいいことさ。ただ、その恭介って奴はそれ一本だけで生きてる」

阿部「人間ってのはもっと色々できる生き物なのさ。そんな一つのものに全てを預けちまうほど薄っぺらでも、弱くもない」

阿部「むしろ、バイオリン以外に触れてみるいい機会なんじゃないのかい? 治すなら、それからでも遅くない」

阿部「男は度胸、何でもやってみるのさ。きっといい気持ちだぜ?」

さやか「……」

さやか「そんなふうに考えようとしたこと、なかった」

さやか「だって恭介の演奏は凄くて、本人も、周りも幸せになれたから……」

さやか「だからあたし、CDとかばかり持っていって、音楽の話ばかりして……」

さやか「……」

コンコンコン ガチャ

さやか「恭介、入るよ」

上条「ん、いらっしゃい、さやか」

さやか「今日はね、恭介にお土産があるんだ」

上条「へえ……またレアなCDかい?」

さやか「ううん、今日はCDじゃなくてね」

ガチャ

阿部「(バイオリン以外のことも)やらないか」

上条「」

上条「さやか、この人は誰だい……?」

阿部「阿部高和。しがない自動車修理工だ」

上条「ああ、ご丁寧にどうも」

さやか「きっといい刺激になると思って、特別に来てもらったんだよ」

上条「ああ、それはともかくとして、二人はどういう」

阿部「やらないか」ズイッ

上条「さやかは僕を苛めてるのかい?」

上条「なるほどね。さやかが危ないところをありがとうございました」

阿部「礼には及ばないぜ」

さやか「大恩人だよ、本当」

上条「うん、さやかは少し反省しようか。せめて女の子って自覚を持とうよ」

さやか「あれ、心配してくれるの?」

上条「そりゃあ、少しはね」

さやか「少しかよー、大事な大事なさやかちゃんのピンチだったんだぞー」

さやか「まあ、それはそれとして」

さやか「今日は恭介にね、聞いてみたいことがあって来たんだ」

上条「なんだい?」

さやか「うん……」

さやか「恭介がさ、もし、このまま一生バイオリンが弾けなかったら……どうする?」

上条「何だよ、突然……」

上条「……」

さやか「……」

上条「……嫌だよ、何で、そんなこと聞くのさ」

さやか「恭す……」

上条「不安に決まってるじゃないか! そんなの、考えたくもない!」

上条「僕には、バイオリンしかないんだよ!? 弾けなくなったら……生きてる意味だって」

阿部「おっとそこまでだ」

さやか「阿部さん……」

阿部「生きてる意味がないって? 面白いこと言ってくれるじゃないの」

上条「……何だって言うんですか」

阿部「いやあ、随分と繊細な男だと思ってね」

上条「……っ」

阿部「思わず、汚してやりたくなってきたな」

上条「えっ」

さやか「ちょ、え?」

ジイイーーー

阿部「ところで、俺のキンタマを見てくれ。こいつをどう思う?」

上条「うわっ、何、なんなんですか!?」

さやか「阿部さん!ストップストップ!」

阿部「このままじゃおさまりがつかないんだよな」グイ

上条「ひいいいいっ!?」

阿部「……とまあ、今のお前は簡単にヤられちまう男だってわけだ」

さやか「え……?」

上条「あ……当たり前じゃないですか! 手も足もまともに動かないのに、そんな」

阿部「いいや、関係ないね」

阿部「その体でも全力で振り払うなり、抵抗するなりすればよかっただろう?」

阿部「やらなかったのは、これ以上怪我がひどくなるのが怖かったからさ」

阿部「健康な状態でも逃げこそすれ、お前はそうだろうな」

阿部「指を怪我して、バイオリンが弾けなくなる体になるのが怖いからだよ。犯される寸前でも、その方がマシだって思えるくらいにね」

上条「……何を言ってるのか、わからないです」

阿部「お前は自分の何よりもバイオリンが大事なのさ。だが、それはまったくいいことじゃない」

阿部「バイオリン依存症だ。立派な病気だよ」

上条「!? 何を勝手なことを!」

阿部「弾けなくなったら生きてる意味がないって言ったな。そんなのは人間じゃない。バイオリンの部品と同じだ」

阿部「お前、バイオリン弾く以外に本当に何もできないのかい? それ以外、お前に価値を見出してくれる人はいないのかい?」

阿部「俺は医者じゃないから状態は知らないが、その手が治らないものだとして」

阿部「その先どうしようって、本気で考えたことはあったか?」

上条「ない……です」

阿部「なんでだい?」

上条「……他のことをやっていくって、考えたこともなかったから」

阿部「……」

上条「それに、他のことなんて、やっていける自信がなくて」

さやか「恭介……」

上条「だって、バイオリンは好きだったし、結果も残せたからさ。人並みにもできない他のことなんて、やりたいとも思わなかった」

上条「そんなの寄り道だって、バイオリンの邪魔になるって」

阿部「でかい拠り所を持っちまった奴ってのは、それに寄りかかりたくなっちまうもんさ」

阿部「でもな、24時間そんな状態でいられるわけがない」

阿部「そんなものなくたって、案外平気で生きてるし、周りも変わらないんだぜ」

阿部「お前がバイオリンを一生弾けなくなったとして、さやかは離れていくと思うかい?」

さやか「……」

上条「あ……」

阿部「まあ、俺に言えるのはここまでだ。あとは二人で頑張りな」

上条「……ありがとうございます」

阿部「それでも何も見つからなかったら、俺がとことん生きる喜びを教えてやるぜ?」ズイ

上条「いえ! 全力で頑張ります! 頑張りますから!!」フルフル

さやか「阿部さん! いい加減にそれしまってください!」

阿部「……」

QB「どういうつもりだい? あのままなら美樹さやかは魔法少女になったっていうのにさ」

阿部「俺は話をしただぜ?」

QB「……まあいいさ。阿部高和、君が契約してくれさえすれば、美樹さやかなんて小さな誤差にすぎないからね」

阿部「俺の方も、そろそろおさまりがつかないんだよな」ジイイ

QB「」ダッ

阿部「そういつも都合よく逃げられると思ったのかい?」ガシッ

QB「えっ」

阿部「心配するなよ、とことん喜ばせてやるからさ」

QB「あ、感情芽生えそう。やめようよ阿部高和、僕にも痛覚はあるし、サイズも明らかに」


QB「あっ」

杏子「ここが見滝原か……あいつ、どこにいるんだ?」

杏子「まったく、連絡よこすだけよこして、場所の指定が曖昧すぎるだろ」

杏子「もう夜も遅いし……今日はこの辺りで野宿でいいか」

杏子「ちょうどいいや、ここの公園のベンチでも遣わせてもら……」


男D「どうだい、コイツが欲しかったんだろう?」

男E「ああっ……はいぃ、先生の、ずっと待ってましたぁ」

男D「悪い子だ! そんな生徒には教育的指導ォーーッ!」

男E「んおおッ、腹の中から意識改革ゥ!!」


杏子「え、なにこれ」


杏子「ちょっ、何アレ、何してんのあれ?」

杏子「いやいやいや、男同士ってそんな、そういうの駄目って親父もゆってたよ?」

杏子「うわ、ぐえ、目が、目が腐る……!」

杏子「ああああ、もう! ひどい、ひどすぎる! あんな醜いの、いっそぶっ殺して」

男C「嬢ちゃん嬢ちゃん、食うかい?」ヒック ボロン

杏子「ギャアアアアアアアアーーーッ!!」

男C「ホグッ」

杏子「てめ、ぶっ殺す」

阿部「おいおい、もう戦意はないから物騒なものはしまってくれ」

杏子「え、あたしまだ何も……ていうか、アンタ何して」

杏子「……」

男C「ンアッ……イイ……」ガクンガクン

杏子「ひいいいいいいっ!?」

阿部「落ち着いたかい?」

杏子「落ち着くわけねーだろ、こんなところで……」

阿部「なら運んでやろうか」

杏子「触んな、この野郎ッ!」

阿部「一応助けたつもりだったんだがなあ」

杏子「やり方ってあるだろ!? そりゃ腰も抜けるよ!」エグッエグッ


男C「ホウチプレイ! ソウイウノモアルノカ…」ビクンビクン

阿部「ところでその武器、嬢ちゃんも魔法少女ってわけか」

杏子「……おっさん、知ってるのか?」

阿部「ああ、俺も誘われてるんでね」

杏子「は?」

阿部「魔法少女に」

杏子「頭沸いてんじゃねーのか、おっさん……」

QB「真に不本意ながら、本当のことだよ佐倉杏子。阿部高和は魔法少女候補さ、しかも規格外の力を秘めた……ね」

杏子「キュゥべえ……いや、インキュベーター!」

QB「……」ヨタヨタ

杏子「……なんでそんな内股でヨタついてんのさ」

QB「新しい個体にもそれなりのコストがかかるからね……活動できる限りはこの個体を使わざるをえないのさ……」

QB「それより佐倉杏子、僕をその名で呼ぶということは、接触しにきた相手っていうのは」

ほむら「ええ、私よ」

杏子「あ、てめーいるんならさっさと出てこいよ! つーかいつからいた!?」

ほむら「親父も駄目ってゆってたよ?」

杏子「死ねっ! 今すぐ死ねっ!」ブンブンッ

阿部「いつからここは女子中学生の溜まり場になったんだ?」

ほむら「佐倉杏子は偶然でしょう。私は阿部高和、あなたを監視していたから」

杏子「こいつを監視って……んな心臓に悪そうなことよくできるな」

ほむら「ええ。おかげで色々と新たな発見が得られたわ」


ほむら「男同士って、いいものね」グッ

QB「こんなの絶対おかしいよ……」

QB「それにしても、君がまさか佐倉杏子とコンタクトをとっているとはね」

ほむら「ワルプルギスの夜に対抗するには、彼女の力が必要と判断したまでよ」

QB「へえ……本当によく知ってるじゃないか。僕に話を聞かれていていいのかい?」

ほむら「あなたを排除したところで、すぐに代わりが来るでしょう。それに」

ほむら「今の状態のあなたを交代させるのは惜しい」

QB「ああ……お腹の奥がなんだかメラメラするよ。これが感情?」ヨタヨタ

杏子「あんたとあたしと、それに巴マミか。これだけ揃ったら余計なくらいなんじゃねーのか?」

ほむら「いいえ、まだ戦力不足なくらいよ。だから、阿部高和を交えて話しておきたかった」

阿部「どういうことだい?」

ほむら「近いうちに、ワルプルギスの夜という超大型の魔女が来る。これまでの魔女とは桁の違う、強大な魔女よ」

ほむら「インキュベーターは必ず、その機に乗じてあなたに契約を迫ってくる」

ほむら「だから、約束して欲しい」

ほむら「私たちに何があっても、絶対に魔法少女にならないで」

阿部「……」

杏子「何だよ、戦力は少しでも多い方がいいんじゃねーのか?」

ほむら「あなたには後で説明するから、今は黙ってて」

ほむら「どうなの、阿部高和……!」


阿部「……ああ、わかった」

ゴウンゴウンゴウンゴウン…

≪大型の嵐は見滝原市を直撃、この嵐は明日未明まで続く見通しで……≫ザザザ

まどか「ほむらちゃんたち、大丈夫かな……」

さやか「きっと大丈夫だよ、マミさんもほむらも、あと杏子ってのも強いもん」

まどか「私、何もできないなんてつらいよ……私にも、力があったらよかったのに……!」

さやか「……」

阿部「妙な気は起こすもんじゃないぜ」

さやか「あ……」

阿部「お前まで行ったら、そこの嬢ちゃんは余計にきついはずだ」

さやか「……」

さやか「あの、阿部さんは……」

阿部「仕事でな、車の部品を運ばなきゃならない」

阿部「ついでに避難所をまわって食料の運搬もやってるよ」

さやか「そうじゃなくて、その……」

阿部「……」

阿部「俺は、こっちで戦ってるのさ」

まどか「阿部さん」

阿部「……」

まどか「阿部さん、力があるんでしょ? すごく強い、魔法少女になれるんでしょ?」

阿部「……」

まどか「勝手なお願いだってわかってるけど、私、ずるい子だってわかってるけど、でもっ」

まどか「ほむらちゃんたちの、力になってあげてください……っ!」

阿部「……そうしたら、避難所の人たちに食料が行き渡らなくなっちまうんだよ」

阿部「また回ってきたら、声をかけに来る。二人とも、気を強く持てよ」

さやか「あ……」

まどか「阿部さん……っ」


阿部「……」

ゴウンゴウンゴウンゴウンゴウン…

ほむら「クッ……こっちも弾薬切れ……」ガシャッ

杏子「クソッ、取り巻きが邪魔で近付けねえ!」

マミ「っ、照準が合わなくなってきたわね……」

杏子「ったく、ダメージは通ってんのかよ、これ!?」

ほむら「大丈夫、確実に蓄積されてはいる、はず……」

ほむら(そうじゃなかったら、勝ち目は……)

阿部「……」

ゴウンゴウンゴウンゴウン…

阿部「……」

阿部「……こんなの」

阿部「こんなの、いい男じゃねえッ!」ガンッ

ブロロロロ…

後輩「しっかし、ただの嵐って感じがしないっすね、ますで天変地異ですよ」

阿部「ああ、そうだな」

後輩「明日には無事に過ぎてくれたらいいんすけどね」

阿部「ああ、明日には晴れるさ。絶対な」

ブロロ……キキッ

阿部「ん、どうした?」

後輩「んー、エンジントラブルっすかねえ」

阿部「うちの倉庫の前じゃないか。随分都合のいい場所で止まるもんだな」

後輩「……」


後輩「先輩、ここで降りてもらえないっすか?」

阿部「……何?」

後輩「先輩、どっか行くとこがあるんでしょ? いつもの先輩じゃないっすもん」

後輩「ここなら車も予備があるし、荷物の積み下ろしくらい、俺一人でできますから」

阿部「……」

後輩「先輩、いつもならここで『嬉しいこと言ってくれるじゃないの』とかって、冗談めかして返してくれるじゃないっすか」

後輩「ねえ、少しくらい、俺も攻めに回らせてくださいよ……阿部さん」

さるさん食らいました。
ちょっとしばらく携帯から書きます。
遅くなると思う。
申し訳ない。

阿部「……」

阿部「……ふっ」

阿部「ははっ、ははははっ!」

阿部「嬉しいこと言ってくれるじゃないの!!」

阿部「いい男になったな…俺が戻ったら、やらないか」

後輩「ええ、喜んで」

マミ「キャッ……!」

杏子「マミ! クソッ、あの野郎、飛び道具の精度上がってきてないか?

ほむら(違う……明らかにこちらの動きが鈍っている)

ほむら(この時間軸も駄目、なのかな……せっかくまどかが、普通の女の子になれたのに……)

杏子「おいほむら! ボサッとすんな、前!」

ほむら「……っ!」

ザクッ

阿部「……ッ」ゴフッ

ほむら「……え?」

マミ「あ……?」

杏子「え、いつの間に、じゃなくてさ……え……」

ほむら「阿部高和……阿部さんッ!」


阿部「ああ、なんとか、間に合ったじゃないの……」ゴボッ

ほむら「どうして来たの……ううん、それよりも生身でなんて、盾になるなんて、無茶なことを……!」

杏子「おいマミ! 治療だ治療! 向こうの攻撃はまかせろ!」ガキンッ

マミ「もうやってるわよ! でもこの傷、深すぎて……!」


阿部「ああ……いいよいいよ、それよりキュゥべえだったか、インキュベーターだったか、聞いてるんだろ?」

QB「ようやく呼んでくれたかい。君ならいい決断をしてくれると思っていたよ」

ほむら「インキュベーター……!」

QB「そう睨まないでくれないか。元はといえば、君たちの実力不足が原因だろう?」

阿部「悪いね……俺も、魔法少女に、ならせてもらう」

QB「懸命な判断だね。そのままじゃ生命活動も維持できないだろうしね」

QB「さあ阿部高和。君はその魂を代償に、何を望むんだい?」

阿部「……俺は」




「過去からずっと、魔法少女はガチホモにしかなれなかったことにしたい」


QB「その願いは……! 君は歴史……いや、世界の法則まで変えてしまおうというのかい!?」

阿部「話を聞いた時から、ずっと思ってたのさ。何で少女なんだって」

阿部「俺みたいな、未来を遺せないガチホモとは違う。未来もあるし、子も産める」

阿部「それに……」

阿部「ほむら、マミ、杏子……それに、さやか、まどかも」

阿部「いい女じゃねえか……!」

阿部「だったら、今度は俺の番だろ?」

QB「……まあいいさ。君には望みをかなえるだけの力がある」

QB「それに、君がどんな願いをかなえようと、君が契約した時点で僕の勝ちだからね」

ほむら「そうよ! あなたは、あなたはもう……!」

阿部「……おいおい、俺の攻めはまだ終わっちゃあいないぜ?」

カッ

マミ「これが、魔法少女になった阿部さん……」

杏子「ひでえ格好だ……」

ほむら「股間のソウルジェムが、悪目立ちするわ……」


阿部「へえ、悪くない気分じゃないの」

マミ「見て! ワルプルギスの夜が……」

杏子「何だ、崩れてく……」

QB「世界の書き換えが始まったんだ。ワルプルギスの夜も元は魔法少女だからね、存在できなくなったんだろう」

QB「阿部高和、君は願いによって、過去・現在・未来、全ての時間、因果律に力を及ぼし続けなければならなくなった。もう人の形も保っていられないだろう」

阿部「……」

ほむら「阿部さん……」

阿部「なあに、この世の理とヤり続けるってのも、乙なモンじゃないの」

ほむら「でも、それでも……」

阿部「安心しな、俺は魔女にはならないさ」ガシッ

QB「ん?」

阿部「要は魔女になる前に、人の姿でいられるうちに、ソウルジェムを砕いちまえばいいってことだろ」

阿部「今ならできるはずだ。鉱石も砕いて、燃やし尽くすような、力強いピストンが」

QB「それと僕を掴んでいるのと、何の関係があるんだい? 考え直した方がいいんじゃないかな? 残された時間はもっと有意義に使うべきじゃないかな?」

阿部「生まれてたった二回目の、全力の腰振りだ。オナニーなんかじゃ惜しいだろ?」

QB「わけが! わけがわらないっ!」

マミ「阿部さんっ……!」

杏子「おっさん……」

ほむら「阿部さん……」

阿部「こんなひどい最後に、泣いてくれちゃって……本当、魔法少女ってのはいい女ばっかりだな」

阿部「胸ん中が、パンパンだぜ……」


QB「きゅっぷい! きゅっぷい! きゅっぷ……アッーーーーーーー」

ピカッ…

まどか「ほーむらちゃんっ!」

ほむら「ひゃっ」

まどか「あはははっ、いい反応! 急がないと次の授業、移動教室だから遅れちゃうよ?」

ほむら「うん、すぐ行くから!」

ほむら「……」

ほむら(目が覚めると私は病院のベッドの中にいて、またあのループ前に戻っていた)

ほむら(ただ違ったのは、ソウルジェムが手元になくて)

ほむら(私が魔法も使えない、ただの人間だったということ)

ほむら(阿部高和のことは、誰も覚えていない)

ほむら(私の記憶が残ったのは、私の魔法の性質のせいなのか)

ほむら(はたまた、まどかに集中していたはずの魔力を持った『阿部高和』という存在自体が、私の能力によって誕生したイレギュラーだったのか)

ほむら(もう確かめる術はない)

ほむら(ただ確かなのは、もう諦めていた、あの日々が)

ほむら(まどかとの、普通の日常が帰ってきたということ)

ほむら(今は、それだけでいい)

まどか「ほむらちゃんっ、もう、置いていっちゃうよ?」

ほむら「すぐ行くわ」パサッ

まどか「あ、何か落としたよ? って、うわあ……」

ほむら「どうしたの?」

まどか「うん……私、ほむらちゃんのこと好きだし、大切な友達だけど、この趣味だけは理解できないよ……」

ほむら「そう? 男同士って、いいものよ」

上条「……」

さやか「恭介、どうしたの? そのCD、気に入らなかった?」

上条「ああ、いや……なんだか、声が聞こえたような気がしてね」

さやか「声?」

上条「うん……なんだか、大事なことを教わった気がするんだ」

上条「……もし、この手が治らなかったらさ、作曲でもやってみようかな」

さやか「え? どうしたの、そんな弱気に」

上条「前向きって言ってほしいなあ。弾いてた頃から、なんとなく自分の曲が欲しいっていうのはあったからさ」

さやか「へえ……うん、いいよ。恭介、それいい!」

さやか「今からでもやろうよ! 手が治っても、それ続けるべきだし! あたしも手伝うからさ!」

上条「ははっ、じゃあさやかには楽譜を読めるようになってもらわないとね」

さやか「うっ……よーし! さやかちゃん、頑張っちゃいますよぉー!」

ブロロロロ…

マミ「旅行、楽しかったね。また行きたいなあ」

父「うーん、今度行けるのは来月になるかな? それまでいい子にしてたらね」

マミ「うんっ」

母「おみやげ、何買ったの?」

マミ「えっとね、ケーキセットと……紅茶の葉っぱ!」

父「うん? マミに紅茶なんて入れられるのかい?」

マミ「あー、パパひどい! そのうちママより美味しく入れてみせるんだから!」

母「あらあら、楽しみにしてるわね」


父「それにしても前のトラック、ずいぶん揺れてるなあ」

母「なんだか蛇行してない? 距離とった方が……」

父「後ろも詰まってるしなあ。一つ早いけど、次のインターで降りようか」

マミ「パパ、アイスクリーム屋さんに寄りたいなあ」

父「仕方ないな、マミは……夕飯前だから、小さいのにしとくんだよ?」

マミ「はーい!」

ガラッ…

母「あっ」

父「えっ」

キキーーーーーーッ

ドガッ


                 グシャアッ

マミ「……っ」フルフル

マミ「……?」フル…

「怪我はなかったかい?」

マミ「阿部、さん……?」


「……? 誰だい、それ」

マミ「えっと……誰だろ、わかんない」

「そっか……でもね、僕も知ってる気がするんだ、その人」


『マミがっ! 子供が投げ出されて!』

『マミーッ! 返事してーっ!』


「ほら、パパとママが心配してるよ。早く帰ってあげな」

マミ「……うん、ありがとう、お兄ちゃん!」

QB「さすがだね……と言いたいところだけれど、魔力の無駄遣いは感心しないね」

「無駄じゃないよ。まあ、君に言ってもわからないだろうけど」

QB「君は優秀な魔ホモ戦士だけど、そういう部分が非効率だよ、正樹」

道下「肝に銘じておくよ」

道下「ところでキュゥべえ、『阿部さん』って知ってるかい?」

QB「知らないね……なんだろう、お尻がゾクゾクするけど」

道下「そっか。僕もね、この名前を聞くとお腹が熱くなるんだ」

QB「そんなことより正樹、魔ホモの反応があったよ! さっきの事故もそいつのしわざみたいだね」

道下「ん、よーし、今日も張り切っていこうか!」

QB「ん? やあ、そこの君」

QB「どうやら君もガチホモのようだね。君には素質がある」

QB「僕はキュゥべえ。君の願いを何でも一つだけかなえてあげられるよ!」

QB「だから……」

QB「僕のケツ穴をFuckして、魔ホモ戦士になってよ!」


≪おしまい≫

こんな朝方までお付き合いいただき、ありがとうございました。
1時には終わらせて布団に入ろうと思ってたのに、どうしてこうなった。
長編が書きたいと思ってプロットを立てたら、こんなに時間がかかるとは…
書き溜めって大事ですね。

6時にはもう起きなきゃいけないけど、寝ます。
おやすみなさい。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年08月11日 (月) 19:40:59   ID: IuKAtIkb

オチw

2 :  SS好きの774さん   2015年03月21日 (土) 12:57:18   ID: iODrU0Ez

これが噂のwww
この人の書くやつ好きだなー

3 :  SS好きの774さん   2015年04月25日 (土) 16:34:11   ID: ctNE6gq9

まさに最高ケツ作♂だ

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