苗木「ぶっちゃけ超高校級の風紀委員って何してるの?」 (79)

苗木「気にならない? 霧切さん」

霧切「別に」

苗木「だってさ、風紀委員だよ風紀委員!? 霧切さんの前の学校に風紀委員なんていた?」

霧切「いなかったけど」

苗木「それが普通なんだよ! 普通の学校には風紀委員なんて存在しないんだ!」

霧切「そうかもしれないわね」

苗木「いや、そもそも風紀委員なんて実在が疑われるよ。フィクションだけの存在なんじゃないかな?」

霧切「確かに学園が舞台の創作には3割ぐらいの確率で風紀委員が出て来るけど」

苗木「うん、やっぱりそうだよ。そうに違いない!」

霧切「…………」

苗木「ということはだよ、霧切さん!」

霧切「何かしら」

苗木「超高校級の風紀委員としてこの学園にやって来た石丸クンってさ……イレギュラーな存在なんじゃないかな?」

霧切「つまり?」

苗木「超高校級の才能ばかりを結集したこの希望ヶ峰に、石丸クンは相応しくないってことさ!!」

霧切「…………」

苗木「やっぱりこれっておかしいよね? おかしいよね?」

苗木「僕は超高校級の幸運として選ばれて、霧切さんは超高校級の探偵として選ばれて」

苗木「類まれな才能を持つ者として成功を約束された希望ヶ峰にやって来たっていうのに!」

苗木「どうして架空の才能なんかを持つ石丸クンが何食わぬ顔で僕らのクラスメイトとしているんだ!?」

苗木「こんなの絶対違うよ、おかしいよ!」

霧切「大体あなたの言いたいことは分かったわ」

苗木「と言う訳で、僕は早速学園長に抗議してくるよ!」

霧切「待ちなさい、苗木くん」ガシッ

苗木「どうして止めるんだい霧切さん!?」

苗木「僕ら超高校級の才能を持つ超高校級の生徒達が超高校級の生徒でも何でもない石丸クンと一緒にいたら、僕らの才能が汚くなっちゃうよ!」

霧切「まだ結論を下すには早いわ」

苗木「どういうこと?」

霧切「本当に石丸くんが超高校級の風紀委員なのかそうでないのか……」

霧切「抗議はそれを私達自身の目で確かめてからでも遅くはないかしら?」

苗木「うーん……」

苗木「霧切さんがそう言うなら仕方ないね、そうしよう」

霧切「…………」ホッ

翌朝 校門前


苗木「ふわぁぁ……眠いよ、霧切さん」

霧切「シャキっとしなさい、男の子でしょう」

苗木「はーい……」

苗木「って、どうしてこんなに朝早く連れ出してきたの?」

霧切「調査対象の観察は基本中の基本よ、苗木くん。今日一日の石丸くんの行動を見張るのよ」

苗木「成程……なんだか探偵っぽいね、霧切さん」

霧切「探偵だからよ。……来たわよ、石丸くんだわ」


石丸「うーん、今日も良い朝だ! ハッハッハ、今日も一日頑張ろう!」


苗木「相変わらず暑苦しいね、一人で」

霧切「こんなに朝早くから校門の前でラジオ体操してるわ……まだラジオ体操の放送時間じゃないのに」

苗木「凄く暑苦しいよ」


石丸「いっちに! さーんし! ごーろく! しっちはち!」ゴリゴリ

苗木「生徒も登校しはじめて来たね」

霧切「そうね」



石丸「やあ、おはよう!」

生徒A「おはようございまーす」

石丸「おはよう!」

生徒B「おはようございます」

石丸「おはよう!」

生徒C「…………」

石丸「おはよう!!」

生徒C「……ッス」


苗木「生徒に挨拶してるね」

霧切「そうね」

苗木「もうざっと600人以上に挨拶してるね」

霧切「それも一人ずつちゃんと顔を合わせて挨拶してるわね、中々できる芸当じゃないわよ」

苗木「ま、僕だってそのくらいできるよ」

霧切「…………」

石丸「おはよう!」

生徒D「おはよう、石丸くん」

石丸「おはよう!」

田中「フン……俺に朝の挨拶など必要ない、真に必要なのは去り際の言葉だけだ」

石丸「おはよう!」

田中「……おはよう」ボソッ

石丸「おはよう!」

生徒E「おはようございます」

石丸「……? 君、待ちたまえ」

生徒E「え?」


霧切「女子生徒を引き留めたわね」

苗木「犯罪の予感っ」

石丸「君、普段と比べて様子がおかしいぞ!」

生徒E「そ、そんなことないですよ……」

石丸「いいや、絶対におかしい! 顔色も悪いみたいだし……体調が優れないのではないのかね!?」

生徒E「……じ、実は今朝から少しお腹が……」

石丸「何だって!? それは大変だ……よし、この僕が保健室まで負ぶって行こう!」

生徒E「えぇ!? な、何もそこまで!」

石丸「希望ヶ峰には優秀な保健委員もいる、心配することはない!」

生徒E「そういう心配じゃなくて……」

石丸「さぁ、早く背中に!」

生徒E「は、はい」

石丸「行くぞぉ! 全速力っ!」ダダッ

苗木「行っちゃったね」

霧切「そうね」

苗木「それにしても、あの子そんなに具合悪そうに見えた?」

霧切「いいえ、私には分からなかったわ」

霧切「きっと、彼がいつも生徒達とこうして顔を合わせているからこそ気づけたんじゃないかしら?」

苗木「うーん……」

苗木「別にそれなら超高校級の保健委員である罪木先輩でもできることだろうし、そんなに凄くないよね」

霧切「…………」

苗木「あ、石丸クンが帰って来た」

霧切「監視を続けるわよ」

苗木「うん!」

苗木「結局1000人近くと挨拶を交わしてたね」

霧切「ええ、挨拶だけでなく服装や頭髪の乱れがないかも確認してたわね。何人かに注意をしていたわ」

苗木「上級生相手にも変わらない態度だったね」

霧切「さすがは超高校級の風紀委員と言ったところかしら?」

苗木「え? うーん……まぁ、僕が本気を出せばできなくもないかもしれないかな」

霧切「…………」

苗木「それじゃ、授業に出ようか」

霧切「そうね」

教室


桑田「それでよー、仕方ないから俺がガツンと言ってやったワケよ」

桑田「お前は今まで打ったホームランの数を覚えているか?」

桑田「ってな」

舞園「凄い切り返しですね!」

山田「ほほぅ、まるで吸血鬼の悪役のような台詞ですな!」

大和田「俺なら先に手が出てるかもしれねぇな」

十神「くだらん……」

セレス「まぁ、野蛮ですこと」

葉隠「山田っちの背中を椅子にしながら言う台詞じゃないっぺ……」

ガヤガヤ

石丸「諸君!」ガラガラッ

石丸「もう始業2分前だ、各自席に着いて教科書を出して待機していなくてはならない!」


苗木「うわっ、出た。こういうのが暑苦しいんだよね」

霧切「その割には皆従ってるわよ」


タシカニソノトオリダナァ
ヤベェスウガクノキョウカショワスレタッペ
ボクノヲミセテアゲルヨハガクレクン
イシマルキヨタカドノタスケテクレマセヌカ
アラコレハバツゲームナンデスケレド


苗木「…………」

霧切「超高校級の風紀委員だからこそ言うことを聞いてくれるのかもね」

石丸「きりーつ!」ガタッ

石丸「礼!」ビシッ

石丸「宜しくお願いします!」

石丸「着席!」チャクセッキ


石丸「きりーつ!」ガタッ

石丸「礼!」ビシッ

石丸「ありがとうございました!」

石丸「着席!」チャクセッキ


石丸「皆、今度は移動教室だ! 5階の生物室だから遅れないように!」

石丸「皆、次の国語は先生が出張なため自習だ!」

石丸「皆、まだ世界史のプリントを提出していない者は今日の昼休みまでに僕に渡してくれ! 僕が纏めて提出しよう!」

石丸「皆、今日出た宿題のリストと提出物の期限のリストはこのプリントに書いておいた! 参考にしてくれたまえ!」

苗木「なんていうか、日直とかとやってること変わらないよね」

霧切「あら、この仕事量を毎日こなすのは中々骨が折れると思うけれど」

苗木「……いや、でも……」

霧切「そろそろ放課後ね、引き続き対象を尾行するわよ」

苗木「うん」

図書室

苗木「何だって石丸クンは図書室なんかに来たんだ?」

霧切「本でも借りるのかしら」


石丸「やあ!」

生徒F「あ、石丸くん。来てくれてありがとう」

石丸「それで、何処からやればいいのかな?」

生徒F「ええっと、あそこの棚からここまでなんだけど……」

石丸「了解した! 任せてくれたまえ!」

生徒F「うん、ごめんね。じゃあ私はカウンターにいるから!」


苗木「……何をしているんだろう? 本を引っ張り出してバーコードを読み取ってる」

霧切「蔵書点検ね。本の管理を徹底するためにも定期的に蔵書数を点検する必要があるのよ」

苗木「成程。でもどうして石丸クンがそんなことを?」

霧切「聞き込みが必要ね」

霧切「ちょっといいかしら?」

生徒F「なんですか?」

霧切「あそこで働いてるのって石丸くんよね?」

生徒F「そうですけど」

霧切「どうして図書委員でもない石丸くんがあんな仕事をしているのかしら?」

生徒F「実は……最近図書委員の皆の予定が埋まっちゃってて中々蔵書点検ができないの」

生徒F「そのことを聞きつけた石丸くんが『それはいけない、風紀が乱れる元だ!』って言って無償で手伝ってくれてるんです」

生徒F「最初は断ったんですが、石丸くんがどうしてもって言うから……」

苗木「ふぅん」

霧切「成程ね、大体分かったわ」

生徒F「石丸クン、色んなところのお手伝いとして顔を出してるらしいの。生徒会だったり他の委員会だったり部活だったり……全部人助けみたい」

霧切「……そう、話してくれてありがとう」

石丸「花壇を荒らされたっていうのは本当かい!? 僕も修復を手伝おう!」

石丸「こら、君たち! 廊下を走るんじゃない!」

石丸「実に重そうな荷物だ! 僕が半分持とう!」

石丸「む……この辺り、汚れているな。まったく……掃除しておかなければ」

石丸「これが飼育小屋に来た新しいウサギか! ハッハッハ、可愛いじゃないか!」トウゼンダ…コノオレガジキジキニツレテキタノダカラナ

石丸「窓の戸締りオーケー! 扉の戸締りオーケー!」

石丸「完全下校時間まで後30分だ! 皆遅れないように!」

校門前


石丸「さようなら! もう暗いから気を付けるように!」

生徒G「さようならー」

石丸「さようなら! 買い食いはしちゃ駄目だぞ!」

生徒H「へーい、さようなら」

石丸「さようなら! 道草食わずにまっすぐ帰宅するように!」

生徒I「分かってるってば石丸くん」

石丸「さようなら!」

澪田「あっ、いつも元気な人! さよならっス!」

石丸「さようなら……って何だそのトゲトゲしいピアスは!? 待ちたまえっ!」ダッ

澪田「うわっ、唯吹待てないっ! 待てないっス!」ダダダ

苗木「放課後も色んなところに顔を出してたね」

霧切「えぇ、とても忙しそうだったわ」

苗木「……分からないな」

霧切「何が?」

苗木「誰かに頼まれたわけでもないのに、どうしてあんな人が嫌がることを率先してやるんだろう」

霧切「それは……言うまでも無く」

霧切「彼が超高校級の風紀委員だから、じゃないかしら」

苗木「…………」

霧切「苗木くん、あなたに言っておきたいことがあるの」

苗木「何だい」

霧切「あなたは自分の才能である超高校級の幸運……それにコンプレックスを感じてるんじゃない?」

苗木「…………」

苗木「うん、そうだよ」

苗木「だって普通そうだろ!? 皆は生まれた時から天に与えられた才能があるっていうのにさ!」

苗木「僕は今まで普通に生きてきて、普通に暮らしてきて……それでいきなり超高校級の幸運だとか訳の分からない才能をつけられて!」

苗木「劣等感がないわけないじゃないか! 何で僕だけ……何で僕だけこんな才能なんだよ……!?」

苗木「本当は石丸クンのことだって認めてるさ、超高校級の才能を持つ超高校級の生徒なんだって!」

苗木「本当の意味で超高校級の生徒じゃないのは……紛れもないこの僕なんだよ! お門違いにも程があるよこんなの!!」

苗木「こんなに苦しい思いをするなら……最初からこんな学園に来なければよかったんだ」

霧切「苗木くん……」

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           ,   :l   |  L」LL_」 、 |\_人_ト.ノ       「それは違うわ!」
           ′ |I⌒|  | 斗===ミ. ー┘-ィ行ハ 7ニコ
            リ 八 |  | 弋zノ     ヒソノ/,<\
           / ′ ヽ|  |             / l  `ヽ\
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.  ヽ::\:::ー/:::::::::/仁==|:.|  |====ヽ Y'⌒¨| マニ∧ ',=- 、
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.   /  / / ̄ ̄´、ニ=ニニニ|  |====\=∧::::::::::}|ニニ/} }=l尨 ヽ

苗木「え……?」

霧切「まったく、本当に苗木くんにはまったくほとほとまったくね」

苗木「ど、どういうこと?」

霧切「別に私も他の皆も……苗木くんがどんな才能を持っているかなんてこれっぽっちも気にしてないわ」

苗木「嘘だ! 霧切さんだって本当は僕のことを見下してるんでしょ!?」

霧切「そんなことないわ。見下してなんかいたら、そもそもあなたと一緒に行動なんてしないわよ」

苗木「じゃあどうして!?」

霧切「それはあなたが仲間だからよ」

苗木「な、仲間……?」

霧切「ええ、クラスメイト、友達、親友……そうとも言い換えられるかしら」

霧切「私達は人を才能だけで判断なんかしないわよ」

苗木「……う」

霧切「私達は超高校級の苗木くんでもない、それ以前の苗木くんでもない……同じクラスメイトとしての今の苗木誠を好いているの。分からないかしら?」

苗木「…………」

桑田「苗木、俺とバンド組もうぜ!」

舞園「あ、苗木くん! おはようございます!」

大和田「苗木、ちょっとツラ貸せよ。オメェにちょっと相談したいことがあるんだがよ……」

不二咲「見て苗木くん! ゲーム作ってみたんだけどプレイしてくれないかな?」

セレス「苗木くん、これが本場の餃子の味ですわ」

石丸「前から疑問に思っていたんだが、そのアンテナはどうなっているのだ?」

山田「フフフ……これが新刊ですぞ、苗木誠殿! ……え、いらない?」

大神「苗木……中々筋があるな。鍛えれば良い線に行くと思うのだが」

戦刃「……えぇ!? レーションくれるの!?」

十神「苗木、次はお前の番だぞ。お前以外だとチェスの相手も務まらん……」

葉隠「こう、どうにかして楽に稼げる話はないっぺか、苗木っち!」

腐川「な、苗木! 私にもチェスのルール教えなさいよ!!」

朝比奈「はい、これ苗木の分のドーナツだよ!」

江ノ島「え? 何々? 苗木ってば残姉ちゃんのこと好きなの!?」チョ、ジュンコチャンッ

霧切「苗木くん、着いてきなさい」

霧切「……何言ってるの、あなたを助手として認めてるからに決まってるでしょう」

霧切「ほら、行くわよ」

苗木「……僕は……」

霧切「苗木くん、あなたは苗木くんでは駄目なの?」

苗木「…………」

霧切「誰かに誇れるような超高校級の才能を持っていようがいまいが……あなたは私達の苗木くんであることに変わりはないのよ」

苗木「……霧切さん」

霧切「それに……あなたがいなかったら、私がこの気持ちに気付くことだって――」

苗木「え?」

霧切「……いいえ、何でもないわ」

霧切「それより苗木くん、色々と言うことがあるんじゃないの?」

苗木「……うん。本人の前ではないとは言え、石丸クンに随分酷いことを言ってしまった」

苗木「僕、謝って来るよ! それで、また心を入れ替えてやり直そうと思うんだ」

霧切「ええ、そうするのがいいと思うわ」

苗木「じゃあ僕行ってくるよ!」

霧切「行ってらっしゃい」ニコリ

苗木(そうだ、僕には……僕を僕として認めてくれる大切な仲間達がいるんだ)

苗木(肩書きとかそんなんじゃない、ちゃんと中身を見てくれる掛け替えのない仲間達が……)

苗木(この仲間達と一緒なら、例えどんなに困難で恐ろしい絶望だって打ち破れる!)

苗木(……そんな気がするんだ)

苗木「おーい、石丸クン! ちょっと待ってよ!」



おわり

くぅー疲
なんで石丸くんが女性人気あるのか分からないので書いてみました
でもその理由は結局分かりませんでした

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