少女「ホタテいかがですか!ホタテいかがですか!」 (204)

少女「あの、ホタテいかがですか!」

紳士「ごめんねお嬢さん、ホタテはいらないんだ」

少女「そうですか……」

  スタスタスタ

少女「ホタテ、ホタテいかがですか!ホタテいかがですか!」

ババア「ちょっと!臭いんだけど!」

少女「ごめんなさい……」

ババア「フンッ!」

  スタスタスタ

少女「どうしよう、またひとつも売れない……」

少女「お父さん怒るかなあ……」

少女「……」

少女「叩かれるの、いやだなあ……」

少女「お酒買って来いって言ってたけど……」

  チャリン

少女「40円じゃジュースも買えないよ……」

婦警「お嬢ちゃん、どうしたの?」

少女「……!?」

少女「ごめんなさい!ごめんなさい!」

  ダッ

婦警「あっ、コラ、待ちなさい!」

  ……

少女「ハァ……ハァ……」

少女「危なかった……捕まったら帰れなくなっちゃうよ……」

少女「……あれ?」

  チョコーン

少女「ホタテ……」

少女「……どうしよう、バケツごと置いてきちゃった……」

少女「さっきの怖い人に盗られちゃったかなあ……」

少女「でも……取りに行かなきゃ……」

  ……

少女「……あ、バケツちゃんとある……」

少女「だけど……」

少女「怖い人が増えてる……どうしよう……」

婦警「……!」

少女「!!」

少女「み、見つかっちゃった……!」

婦警「待ちなさーい!」

少女「ご、ごめんなさい!」

  ダッ

  ……

少女「ハァ……ハァ……」

少女「どうしよう、もう取り返せないよ……」

少女「……!」

婦警「あの子、どこ行ったの……」

少女「……」

婦警「なんで逃げるのかしら……もう!」

少女「……」

少女「……行ったかな……」

ジジイ「どうしたんだいお嬢ちゃん」

少女「……!!!?」

少女「あ……あの……」

ジジイ「おっと、驚かせてしまったかな、ごめんよ」

少女「あ……ここ、お爺さんの家の……お庭?」

少女「ご、ごめんなさい……」

ジジイ「別に、怒ってるわけじゃないからね」

ジジイ「可愛いお客さんには、ご挨拶をしておこうと思ってね」

少女「それでも、勝手にお庭に入ってごめんなさい」

ジジイ「大丈夫、私は一向に構わないから、そんな顔しないでおくれ」

少女「ありがとう……」

ジジイ「それで、さっきはやけに真剣な顔をしてたけれど……」

少女「怖い人が追いかけてきて……」

ジジイ「ああ、さっきの婦警さんかい?」

少女「うん……」

ジジイ「ははあ、さてはお嬢ちゃん意外と悪い子なのかな?」

少女「違うよ!悪い事してないけど、でも……」

少女「あの……ホタテを取りにいけなくて……」

ジジイ「ホタテ?」

少女「お父さんに怒られちゃう……」

ジジイ「なるほど、それは困ったなあ」

少女「……」

ジジイ「そうだなあ、何か私に手伝えることはないかい?」

少女「助けて、くれるの?」

ジジイ「そうとも、困ったときはお互い様だからね」

少女「ありがとう……」

ジジイ「ただ、何もかもというわけにはいかないよ」

ジジイ「おじいちゃんは、ただ手伝うだけだからね」

少女「うん……」

ジジイ「さあ、何をすればいいかな?」

少女「じゃあ……」

少女「あの、お金、貸してください……」

これはゲスな展開が来るで
君のアワビ云々が来るで

ジジイ「……お金かあー……」

少女「お金があれば、お父さんに怒られないと思うの」

ジジイ「うーん……」

少女「……あの、ごめんなさい……」

ジジイ「ん、何がだい?」

少女「ワガママ言って、ごめんなさい……」

ジジイ「そうだなあ、なかなか難しいお願いをしたね」

少女「ごめんなさい、やっぱりいいです……」

ジジイ「……いや、お金はあげよう」

少女「えっ」

ジジイ「私のお願いを聞いてくれたら、だがね」

っていうか、なんで婦警から逃げたんや?
何も後ろめたいことなんてないやろ

  ……
  
ジジイ「さあ、よく見せてごらん」

少女「でも……」

  モジモジ
  
ジジイ「ほら、手で隠してちゃ見えないよ」

少女「あの、やっぱり……」

ジジイ「お父さんに、怒られてもいいのかい?」

少女「……」

  スッ

ジジイ「ああ、いい子だね」

ジジイ「……ん?」

ジジイ「……」

ジジイ「……んん!!?」

ジジイ「な、なぜ貝ブラ……下もか!!?」

少女「違うの……あの……」

ジジイ「違うも何もどう見てもホタテの貝殻じゃないか!」

少女「あの、だから違うの……」

ジジイ「ハァ……ほら、いい子だからそれも取っておくれ」

ジジイ「私は君のおっぱいが見たいんだよ」

少女「ううん、だから……」

ジジイ「何度も言いたくはないんだが、お父さんに怒られてもいいのかい?」

少女「それは……」

ジジイ「ほら、手伝ってあげるからゆっくり外そうね」

  グイ

少女「……ッ!!」

少女「痛い!!」

ジジイ「こら、暴れるんじゃない!」

少女「やめて、引っ張らないで!痛い!」

ジジイ「くそ、どんな構造なんだこれ、取れないぞ!」

少女「痛い、痛いの!くっついてるから、取れないの!」

ジジイ「そんなわけあるかー!」

少女「――ッ!!」

  ドゴッ
  
少女「ハァ……ハァ……」

少女「……」

少女「……ご、ごめんなさい……」

少女「あ……」

少女「あの……お願いは聞いたから……」

少女「お金、もらっていくから……」

少女「……」

少女「えっと……」

少女「ご……5000円もらっていくから……」

少女「……」

少女「ご、ごめんなさい……」

  ガチャ

  ……
  
少女「……ただいま」

父「遅かったじゃねえか……ん、バケツはどうした」

少女「あの……あのね」

少女「……バケツごと売れたよ」

父「……なっ……!?」

少女「これ、お酒と……あとお金」

父「な……なんだ、お前もやればできるんじゃねえか」

父「さすがは俺の娘ってところだな」

少女「うん……」

父「しかしなあ、その辛気臭いところはなんとかならねえのか」

少女「ごめんなさい……」

父「ったく、またそれか」

少女「……ごめんなさい……」

父「……ったく、ダメだ、お前を見てるとあいつのツラを思い出す」

少女「あいつ……?」

父「……なんでもねえよ」

父「お前が普通じゃないのは、俺のせいじゃねえからな」

父「……あいつが悪いんだ」

少女「……どうして?」

父「んな事知るかよ!ついにはお前だけ置いて消えやがった!」

父「俺にこんなガキを押し付けやがって!」

少女「……ごめんなさい……」

父「その顔、やめろっつってんだろ!」

  バシッ

自分、服着ていいっスか?

  ……
  
少女「お父さん、寝ちゃった……」

少女「お母さんの話、聞きたかったな……」

  ガチャ
  
少女「……さむい」

少女「お母さん、私のこと捨てたのかな……」

少女「お母さんが居なくならなければ、お父さんももっと優しくなってたのかな……」

少女「……お母さん、どこに居るのかな……」

少女「……」

少女「ほっぺ、痛いな……」

>>91

         ____      Г\

         (\ ∞ ノ     三|8  )             ミ
         彡ヽ)_ノ       Lノ               Г\
                                     |8  )
               ノ~ヽ      ミ_____     Lノ
 へ∧_∧彡     (_∞_)       (\  ∞ ノ
 し( ・∀・) 彡   彡           \ヽ  /
  /  _⊂ノ彡                  ヽ)⌒ノ

/ / し´
(_)

  ……
  
少女「ホタテいかがですか!ホタテいかがですか!」

幼女「ほたて?」

少女「そうだよ、おいしいよ」

母親「あっ……ごめんなさいね」

少女「あの、ホタテいかがですか?」

母親「ううん、遠慮しておくわ。ほら、お姉ちゃんにバイバイして」

幼女「ばいばーい」

少女「バイバイ、またね」

  スタスタスタ

少女「……はあ……」

犬「なあ」

少女「……あ、ホタテいかがですか」

犬「……」

少女「……」

犬「……」

少女「支払いは現金のみでお願いします」

犬「見ればわかんだろ、持ってねえよ」

少女「……犬がしゃべった」

犬「反応がおせえよ」

このスレはどういう方向に向かうのか

そしていつになったら終わるのか

犬「お嬢ちゃん、疲れた顔してんな」

少女「……そうかもしれません」

犬「まだ若ぇのに、苦労してんだな」

少女「……はぁ」

犬「気のない返事が板についてやがる」

少女「……ごめんなさい……」

犬「責めちゃいねえよ」

少女「ごめんなさい……」

犬「いやだから……」

少女「ごめ……」

犬「しつこいッ!!」

  ガブッ

  ……
  
犬「すまん、ちょっとやりすぎた」

少女「痛い……」

犬「……とにかく、俺の話を聞いてくれ」

少女「はぁ……」

犬「知り合いに頼まれてよ、お前さんに会いたい人が居るんだと」

少女「私に、ですか?」

犬「俺は又聞きだから、詳しく知らねえが……」

少女「……私に知り合いなんて、居ないよ」

犬「あ?そんな事は無いだろう、心当たり無いのか」

少女「……あっ」

犬「何か思い当たったか」

少女「……お母さん」

犬「母ちゃんか、一緒に住んでないのか」

少女「会ったことない」

犬「それはまた複雑な感じだなあ」

少女「どこにいけば会えるの?」

犬「悪いがそれは知らねえな」

少女「そう……」

犬「言っただろ又聞きだって、知り合いのトコまで案内してやっから、そいつに聞け」

少女「あの、でもこれ売らないと……」

犬「ホタテか?」

少女「うん……」

犬「丁度いい、そいつの好物はホタテだ、ついでに売りつけてやれ」

  ……
  
少女「海に行くの?」

犬「まあな」

少女「まだ歩くの?」

犬「もうちょっとの辛抱だ、ほら、潮の香りがしてきただろ」

少女「ずっとホタテ臭いからわかんない」

犬「それもそうだな」

  テクテクテク

少女「……ちゃんと帰れるかなあ……」

  ……

犬「ホラ、ついたぞ」

少女「え……ただの砂浜だよ?」

犬「ちょっと待ってろ、呼ぶから」

少女「うん……」

犬「おーい、連れてきたぞー、出てこいやー」

少女「……」

犬「……」

少女「……」

犬「……」

少女「……」

犬「……場所間違えたか……」

少女「えっ」

なかなかカオスやな( ´・ω・`;)

  ザバザバザバ
  
犬「あ、出てきた」

少女「はぁ」

犬「よう、ヒトデ男」

少女「えっ」

ヒトデ男「出会い頭に『えっ』とは何事かクソガキめ」

少女「ごめんなさい……」

犬「ほら、お前の言ってたあの女の子だよ」

ヒトデ男「ああ、例の」

少女「あの、お母さんを知ってるんですか……?」

ヒトデ男「ああ」

ヒトデ男「全く知らんが」

少女「えっ」

ヒトデ男「なんだ、最近のクソガキは本当にクソガキだなあ」

少女「ごめんなさい……」

犬「そう言ってやるなよ、こう見えて色々苦労してるみたいだぜ」

ヒトデ男「苦労したからといって立派な人間になれると思ったら大間違いだ」

ヒトデ男「俺を見ろ、立派なヒトデ男になってしまった」

犬「そうだな」

少女「ヒトデ男さんは、人間じゃないんですか?」

ヒトデ男「ああ、ヒトデ男だ」

少女「……あの……ヒトデ男って、何ですか?」

ヒトデ男「俺だ」

少女「……」

ヒトデ男「……」

犬「会話スキルねえなこいつら」

ヒトデ男「ところで、先ほどから気になっていたのだが」

ヒトデ男「そのバケツの中身なんだが」

少女「ホタテですが」

ヒトデ男「……おお、素晴らしい……!」

犬「ほら、お前好きだろ?買ってやれよ」

少女「あの……お願いします」

ヒトデ男「……金を、取るのか」

少女「え?」

ヒトデ男「……そうか……」

犬「……あれ、お前金持ってねえのかよ」

ヒトデ男「金とは流動的なものであってだな……」

犬「じゃあ俺が預けといた5万は?貸しといてやるからそれで……」

ヒトデ男「……金とは、流動的なものであってだな……」

犬「てめえッ!!」

  ……
  
ヒトデ男「やめたまえ親友だろ俺達は!」

犬「金を使い込む親友がいるか!!」

  ブチィッ

少女「!!?」
  
ヒトデ男「ひいっ!腕がっ!」

犬「こんなもんじゃ済まねえぞ!」

  ブチィッ
  
ヒトデ男「ひぎいッ!」

犬「オラァッ!!」

  ブチィッ

少女「あ……あの!!」

犬「何だよ」

少女「あの……や、やりすぎだと思います……」

ヒトデ男「おお……なんと心優しい娘なんだ……!」

犬「お前は黙ってろ!」

  ブチィッ

ヒトデ男「ひぎッ!!?」

少女「だから、その……」

犬「……ったく、わかったよ」

ヒトデ男「ああ、痛かった」

少女「……大丈夫ですか、ヒトデ男さん」

ヒトデ男「何が」

少女「その、腕とか千切られ……」

ヒトデ男「腕ならさっき生えたが」

少女「……あれ?」

犬「ひとまず、この件は後回しにしよう」

ヒトデ男「散々暴力を働いてから言う台詞か」

犬「うるせえミンチにすんぞ」

ヒトデ男「うぐっ……」

犬「この子の件の話をいい加減進めたいんだが」

少女「あ……」

ヒトデ男「ああ、そういえばそんな話もあったな」

犬「で、この子に会いたがってるのは誰なんだよ」

ヒトデ男「知らんが」

犬「知らんって何だよ」

ヒトデ男「やれやれ、順を追って説明する必要があるな」

ヒトデ男「ええと、そうだ、ボトルメールを拾ったのだ『娘に会いたい』という内容のな」

少女「娘……?」

  ガサガサ

ヒトデ男「ああ、そう書いてある」

犬「もったいぶっといてそれだけかよ」

ヒトデ男「まだあるぞ、その娘は『両の乳房がホタテ貝で覆われている』のが特徴だそうだ」

犬「お前、そうなのか?」

少女「……うん」

ヒトデ男「しかしこれはまた変わった体をしているなあ、難儀なことだ」

犬「お前が言うか」

少女「……あれ……?」

少女「あの、気になったんだけど……」

ヒトデ男「俺も先ほどからそのバケツの中身が気になって……」

犬「お前はちょっと黙ってろ」

少女「犬さんは、なんでその娘が私だって思ったの?」

犬「いや、俺はこいつから『ホタテを売り歩いてる娘だ』って聞いてたからな」

少女「じゃあ、ヒトデ男さんはなんでその娘が、私だと思ったの?」

ヒトデ男「俺のジジイが血眼になって探してたからな、特徴は知ってた」

少女「えっ」

犬「あのロリコンジジイか……まさかお前、知り合いなのか?」

少女「その……ちょっと……」

ヒトデ男「ヒトデを孕ませるくらいだから、あのジジイは小さければなんでもいいのかもしらんな」

犬「本当に人間かどうかすら疑わしいなあのクソジジイ……」

少女「あの、ごめんなさい……」

犬「何でまた謝るんだ」

少女「私、あのお爺さんを蹴飛ばして、それで……お金を盗ったの」

ヒトデ男「何故トドメを刺さなかった」

少女「えっ」

犬「ゲスとは奴のためにある言葉だと断言してもいい」

ヒトデ男「俺のような不幸なヒトデ男が生まれたのは100%アイツのせいだ」

ヒトデ男「今まで常に運命を呪い、一体何度命を絶とうとしたかわからない」

犬「じゃあ今死ねよ」

ヒトデ男「断る」

少女「でも、私……謝らなきゃ……」

犬「むう……」

犬「……少し危険だが、お前がそう言うなら……」

ヒトデ男「あまり推奨はできないがな」

少女「……あ、どうしよう……」

犬「どうした?」

少女「盗ったお金、もう無い……」

ヒトデ男「金とは流動的で……」

犬「いいからお前は黙ってろ」

少女「悪い事したんだもん、返さなきゃいけないよね……」

犬「とりあえず、そのホタテを売ればなんとかなるか」

少女「でも、今までほとんど売れたことないんだよ……?」

ヒトデ男「ふふふ、ならば致し方ない」

ヒトデ男「……ここはひとつ、私に任せてみなさい」

犬「……とか言ってホタテ食う気だろ」

ヒトデ男「……いや、その」

少女「それじゃあ、お金が返せなくなっちゃう……」

ヒトデ男「まあ待て、ちゃんとなんとかしてみせる、うちのジジイに誓ってもいい」

犬「あのゲスジジイに誓ってどうすんだよ」

少女「……何をするの?」

ヒトデ男「なあに、丁度いい儲け話があるんでな」

犬「またろくでもない話か」

ヒトデ男「今回は違う、確実に手に入るいい話だ」

ヒトデ男「条件もすでにクリアー済み、あとはブツを渡して金を受け取るだけだ」

犬「お前にしては珍しいな」

犬「で、ブツってなんだよ」

ヒトデ男「この子」

少女「えっ」

ヒトデ男「この子をジジイに引き渡すと5万貰える算段になっている」

犬「お前はふざけてるのか」

少女「引き渡されたら……どうなるの?」

ヒトデ男「それはもう、さぞ桃色な展開に」

犬「駄目だ、やっぱりあのジジイの所に行かせるわけにはいかないな」

少女「……うん……」

ヒトデ男「まあ、それが一番いいだろう」

ヒトデ男「ところで、だ」

少女「?」

ヒトデ男「結局の所、君はこの手紙の差出人に会いたいのかね?」

少女「……」

少女「うん、会いたい」

ヒトデ男「それを聞けて何よりだ、さあ、行こうか」

犬「そんなすぐ行ける距離なのかよ」

ヒトデ男「なんと、ヒトデ男の足でも15分圏内だ」

少女「そんなに近いの?」

ヒトデ男「おそらくこの辺の海に流したボトルメールがそのまま戻ってきたのだろうな」

犬「なんだか切ないな……」

少女「でも良かった、こんなすぐ近くに居たなんて」

犬「そうだな」

ヒトデ男「まあ、差出人が君の母親と決まったわけではないからな」

ヒトデ男「君に関してももしかしたら他人の空似というやつかもしれん」

犬「乳房がホタテ貝に覆われた娘なんてそうそういないと思うが」

  ……

少女「なんかここ、通ったことあるかも」

犬「いつ頃だ?」

少女「つい最近だと思うんだけど、よく覚えてないみたい」

ヒトデ男「……ああそうだ、差出人はどうやら犬が苦手らしくてな」

犬「そうなのか」

ヒトデ男「悪いが、犬はここでお別れということで」

少女「そっか……」

犬「……仕方ないな、うまくやれよ」

少女「うん、今までありがとう」

ヒトデ男「安心しなさい、万事私に任せたまえ」

  ……

少女「……やっぱり見たことあるなあ……」

ヒトデ男「地図によると……こっちだな」

  ペタペタペタペタ

少女「……」

ヒトデ男「ここを曲がって……」

少女「……あれ?」

ヒトデ男「この道をまっすぐ」

ヒトデ男「で、ここに入る、と」

少女「……!!!?」

ヒトデ男「よう、ジジイ」

ジジイ「……遅いぞ、ヒトデ男」

  ……

ヒトデ男「おい、約束と違うぞ、3万しかない」

ジジイ「遅れておいてよく言う、お前のせいでどれだけ庭先で待った事か」

ヒトデ男「突っ立ってただけじゃないかクソジジイ」

ジジイ「わかったわかった、もう1万くれてやるから失せろ」

ヒトデ男「まったく、今回だけだぞ」

  ペタペタペタ

ジジイ「……さて、と……」

少女「……」

ジジイ「人の財布からお金を盗るなんて、悪いことをしたね?」

少女「ご、ごめんなさい……」

ジジイ「いいんだよ、私は怒ってなんかいないよ」

ジジイ「ただちょっと……寂しくなっただけさ」

少女「ごめんなさい……今は持ってないけど、お金は返すから……」

ジジイ「そんなものはいいんだよ、いくらでもあげるよ」

少女「ううん、返します、返しますから……」

ジジイ「わからない子だね、お金の問題じゃないんだよ?」

ジジイ「いいじゃないか、私は寂しさが紛れる、お嬢ちゃんはお父さんに怒られなくて済む」

ジジイ「ね、みんなが得をするんだよ?」

少女「ち……違うと……思います……」

ジジイ「いいからほら、お爺さんのそばにおいで」

  グイッ
  
少女「や、やめて……!」

ジジイ「いいね、おじいちゃんはそういうのも好きだよ」

少女「犬さん……犬さん、助けて!!」

ジジイ「!!?」

  ……

犬「てめえら!何してやがる!」

  ザクッザクッ

子犬A「穴を掘ってるんだよ」

子犬B「お父さんも一緒にやる?」

犬「お前らなあ、そういう事は寝床以外でやれって何度も……お?」

  ザクッザクッ
  
子犬A「お父さん凄い!」

子犬B「あっという間に穴が大きくなったよ!」

犬「いいかお前ら、穴はこうやって掘るんだ!どうだ!」

子犬B「お父さんカッコいい!」

子犬A「さすが僕らのお父さん!」

犬「ははは!そうか!お父さんカッコいいか!ははは!!」

  ……

  ……

ジジイ「……お、驚かせないでほしいなあ……」

ジジイ「お爺さんはあの犬が苦手なんだよ……はあ、興が逸れてしまった……」

少女「……」

ジジイ「おい、ヒトデ男いるか」

ヒトデ男「なんだクソジジイ、お前の指図は受けんぞ」

ジジイ「1万やる、しばらくこの子を見張っておけ」

ヒトデ男「そういう事ならば致し方ない」

少女「……」

少女「……ヒトデ男さん」

ヒトデ男「何か悩み事か?俺で良ければ相談に乗ろう」

少女「……」

少女「ヒトデ男さんは……お母さん居ますか?」

ヒトデ男「さすがの私も自然発生はできないな、母親はちゃんと居るよ」

少女「そうですか……」

ヒトデ男「言っておくが、俺を恨んではいけないよ」

ヒトデ男「人の世とは、つまり金なのだ」

ヒトデ男「これでも俺は3/4は人間なのだ、人の世で無ければ生きてはいけない」

ヒトデ男「俺には取り柄という物が無い、だから心を切り売りしているのだ」

少女「……腕とか、生えたりするじゃないですか」

ヒトデ男「腕が生えたからなんだというのだ、私の肉は不味くて売り物にはならん」

ヒトデ男「子供の頃は、近所の悪ガキによく千切られたものだ」

ヒトデ男「本当に疎ましい能力だよ、これも全てジジイのせいだ」

少女「……あの」

ヒトデ男「なんだい?」

少女「おトイレどこですか」

  ……

ジジイ「おいヒトデ男、あの子はどうした」

ヒトデ男「トイレに居るはずだが」

ジジイ「ところで、お前はそこで何をやっているのだ」

ヒトデ男「見てわからないのかこのクソジジイ」

ジジイ「いいから、何をやっているのかと聞いている」

ヒトデ男「まったくこれだから低脳というものは困る」

  テーッテッテレテーン テーンテテテテーン

ヒトデ男「俺はズイロード走るのに忙しいんだよ!!!」

  ドカッ
  
ヒトデ男「俺のDSがッ!!」

ジジイ「このド低能がぁッ!!」

  ……
  
少女「ハァ……ハァ……」

少女「……お手紙、盗んじゃった……」

少女「でも、いいよね……お母さんのお手紙なんだし……」

  ガサッ
  
『今月最後の生鮮特売!

 サンマ一尾98円!ホタテ一枚198円!

 以下略』
 
少女「……」

少女「暗号文とかかな……」

  ……
  
父「……あいつ、どこで油売ってやがる」

父「いや、ホタテか……」

  ピンポーン
  
父「!!?」

  ピンポーン
  
  ピンポーン

父「(しつけえな……)」

  ピンポーン
  
父「……」

父「……」

父「……行ったか」

  ガタッ
  
  ドンドンドンドンドンドンドコドン

父「なッ!!?」

  ……
 
少女「あ、犬さん……」

犬「よう、どうだった?」

少女「それが……あのおじいさんの家に連れて行かれて……」

犬「なんだと……!!?」

少女「それでその、なんとか逃げ出してきました」

犬「そうか、それは良かった……」

犬「しかしあの野郎、そこまで腐りきってたとはな……スマン、俺が気付いていれば……」

少女「……犬さんは悪くないです」

犬「お前、これからどうするよ」

少女「今日は……おうちに帰ります」

少女「きっと怒られるけど……私のおうちです」

犬「そうか……俺でよければいつでも相談に乗るぞ」

少女「……ありがとうございます」

  ……
  
少女「……ただいま」

父「……」

少女「あのね……今日はひとつも……」

父「もういい」

少女「……えっ?」

父「もう、ホタテは売らなくていい」

少女「……お父さん、どうしたの?」

父「母さんの話、聞きたがってたよな」

少女「……うん」

父「お前の母さんな、実は、ホタテだ」

少女「……大体、そんなとこだろうとは思ってました」

父「……そうか」

少女「でも、なんで急に……?」

父「……」

少女「お父さん……?」

父「俺はもう、お父さんなんかじゃねえよ」

少女「……?」

父「俺はもう、お前の父親なんかじゃない」

少女「何を言っているの、お父さん」

父「お前の母さんの親戚がな、さっき来た」

父「俺への援助を打ち切ることに決めたんだ」

父「……明日、そいつらがお前を迎えに来る」

少女「援助……?」

父「お前、俺がどこから大量にホタテを仕入れてくるか不思議に思わなかったのか」

少女「ああ、言われてみれば」

父「お前はもう俺の娘じゃない」

少女「やっぱりよくわからないよ、お父さん」

父「明日からはお前は人間じゃなく、ホタテとして生きるんだ」

少女「……!!?」

父「人間の中でもド底辺の俺と、人間として生きる必要はなくなった」

父「良かったな、きっとみんな優しくしてくれるだろうよ」

少女「私は、ホタテじゃないです」

父「半分ホタテなんだよ」

少女「でも、ホタテじゃないです」

父「人間だって言うのか?」

少女「……うん」

父「まあいい、もう決まったことだ」

父「……さっさと寝ろ」

少女「……」

  ……
  
少女「犬さん」

犬「なんだ、こんな夜中に」

少女「私、ホタテ人間でした」

犬「そうか」

少女「明日からホタテ界で暮らすことになりました」

犬「……そうか」

少女「ホタテ界って、何するところなんですかね……」

犬「そりゃお前……ホタテするんじゃないかな……」

少女「そうですか……」

少女「……ホタテって、暇そうですね……」

犬「……ヒトデ男には食われないようにしろよ」

少女「気をつけます……」

  ……
  
婦警「ちょっとあなた、こんな夜中に何を……」

少女「グスッ……」

婦警「……どうしたの?」

少女「明日から……ホタテになるって言われて……」

少女「だんだん、どうすればいいかわからなくなって……」

婦警「……そう」

少女「ホタテって、幸せなのかな……」

婦警「ホタテの気持ちは、ホタテにしかわからないわ」

少女「私は、半分ホタテだから……」

婦警「じゃあ、ホタテの気持ちがわかるの?」

少女「……」

少女「……わからない」

婦警「じゃあ、あなたはホタテじゃないのね」

少女「……うん」

婦警「じゃあ、あなたは自分が何だと思う?」

少女「……人間……?」

婦警「そう、よくわかってるじゃない」

婦警「少なくとも私から見る限り、あなたは立派な人間よ」

婦警「……ちょっと小さいけどね!」

少女「これから、大きくなるから……」

婦警「よし、今日は特別に見逃してあげる」

少女「お姉さん、それ、職務怠慢ってやつ?」

婦警「難しい言葉知ってるわね!そう、それよ!」

少女「……ありがとう」

婦警「どういたしまして!」

  ……

父「……お前、どこに行っていた」

少女「……ごめんなさい」

父「……疲れるだけだぞ」

少女「お父さん、あのね」

父「だからもうお父さんじゃねえって」

少女「ううん、私ね、ホタテになりたくない」

父「……」

少女「ホタテになってもね、食べられるだけだよ」

少女「ホタテの気持ちはわからないけど、食べられるのはいやだよ」

父「そうか」

少女「……お母さんは、どうなったの?」

父「目を離した隙に……バター焼きにされた」

少女「それは、いやだなあ……」

  ピンポーン

父「……来たか」

少女「ホタテの人?」

父「いや、正真正銘のホタテだ」

少女「ホタテにはなりたくないよ」

父「……」

少女「刺身もバター焼きもいやだな」

父「天ぷらもいいぞ」

少女「いやだよ」

父「すまん」

少女「……」

少女「お父さんが謝ったのはじめてかも」

父「そうかもな」

  ガチャ

ホタテ「ご準備はよろしいですかな、お迎えにあがりました」

少女「ホタテがしゃべった」

ホタテ「あなただってホタテではないか」

少女「人間だよ」

ホタテ「見かけだけですよ」

父「……いや、俺の娘は人間だ」

ホタテ「は?」

父「だから、そっちには行かせないことにしたんだ」

ホタテ「父親失格者が何を言うか、どうせ今頃になって手放すのが惜しくなったのでしょう」

ホタテ「これだから人間はクソだと言うのだ」

ホタテ「だけどご心配なく、ホタテ界は万物に平等でありますから」

少女「さっき人間はクソだって言ってたよ?」

ホタテ「いやまあそれはその」

父「そういう事だから、帰ってくれ」

ホタテ「そんな理屈が通るとお思いか!」

少女「私がいやだ、って言ってるの」

ホタテ「ぐぐぐ……!」

父「いい加減にしねえと、食っちまうぞ」

ホタテ「こ、この事はホタテキングへと報告させていただく!」

父「好きにしろ」

少女「平等なのに王様が居るんだ」

ホタテ「……言われてみれば確かに」

父「いいからさっさと帰れ」

ホタテ「け、決定は覆らないからなー!」

  ガチャン

父「しかし、やっぱり俺は父親には向いてないと思う」

少女「うん」

父「……」

父「贅沢を言えば、否定してほしかったんだが……」

少女「贅沢は敵だよ、お父さん」

父「そうか……」

少女「いいよ、別に今までどおりでも」

少女「慣れちゃったもん、私は大丈夫」

父「……」

少女「でも、売り歩くホタテが無くなっちゃったね」

少女「このおうちからも、出て行かなきゃ……」

父「……問題ない」

父「俺が、働けば済む話だ」

  ……

ジジイ「ついにあの子の家を見つけたぞ……」

ヒトデ男「探したのは俺だがな」

ホタテ「やめ、やめてくれ……!」

  ボリボリボリ
  
ヒトデ男「うむ、うまい」

ジジイ「まったく、お前が逃がさなければ済む話だったろうに……」

犬「おいお前ら」

ジジイ&ヒトデ男「!!!?」

子犬達「おまえらー!!」

  ……

おしまい

VIPPER「これで良いんだろ・・・・・・・」

神「ああ・・・・・あれが少女の幸せだ・・・・・・」


                           第一部 完

                  |  | └┐ ┌-┘  | |    ヽ
                    | l  | |    l |     |
                   | | _,,,ニニ,,_   | |     l
                  〉-ァカ  |. ヽ ヽヾ``'、,,j    |
                   /l { | ト、\ヽゝ弋ド、ヽヽ\  j'  っ
            ⊂  { | .iト|r=ミ、 ヽトゞチラヌ\ i |∨
                 ヘ、レミ! トハ      トッj:}ヒj リ { !   ⊃
    ,___    _,. -'' ´⌒`}. ゞ-'     `ー"//λ !.i
   (__, `ヽ /        ヘ"" ’r-、 ""u//彡ハ.l !   こ、これは>>1乙じゃなくてホイミンちゃんの
     / / /   ○     `ト、  '  ,.イ./r=ミ、i.l l   足なんだから…。変な勘違いしないでよね!
    / /  {.    r-...__ ○ ヾ`,ア´.ラ,〃  } ! !.|
  / ∠,____,.ゝ.    i    ア    八三彡イ/  /} リ.l
  ゝ.,____,,,.->、._ ゝ、_ノ  (^くr' └i /  .//ノノ j

         Z,. -'' /`7'''┬(二` `ハ'´ヾム  /彡イ /
       /  ,. -''| {ヽ ヽ(二   ,  j   //丿.ノ
       `ー'   ヘ ヽヽ--'`j=-^ヽ、_ノ-ー'〈 

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