侍「鬼見つけたり」鬼「不法侵入ですよ」 (46)

あまり長くはならないと思います。

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侍「思ってたよりも小柄だが、赤い肌にその角! 噂に相違ない。覚悟せよ! 都に害なす鬼め」


鬼「……とりあえず履物脱いでくれません? うち土足禁止なんで」


侍「なんと! 人のような物言い!」


鬼「大声も近所迷惑なんで……」


侍「鬼の集落か! これは好都合。ハッハッハッ!」


鬼「はぁ……何この人」

侍「おい! 履物も脱いだし、人の家で兜すら外さないとか教養ないんですか? って言うから兜も脱いだ! さぁ斬られよ!」


鬼「変なとこは素直に聞いてくれるんですね」


侍「さぁさぁ!」


鬼「無理ですよ。斬られる理由ないですから」


侍「あるだろうが! 都の姫を食ったろう」


鬼「人なんて食べないですよ。白米と鶏肉と野菜とかです」


侍「は、白米だと!? 贅沢なやつめ! それも貴族達から盗んだのであろう!」


鬼「失礼な。一から育てましたよ。 ちょっと神通力はつかいましたけど」

侍「ええぃ、主ら鬼はその神通力という物で雷を操り、空を飛び、畜生を使役し、人間に変化する。そして人里に害をもたらすのだ!」


鬼「あー、祖父さんまでは使えたらしいですけどね」


侍「やはり!」


鬼「でも雷なんてうるさいし、空飛ぶと鳥たちとぶつかる。畜生扱うと餌が馬鹿にならない。人間に変化すると、皆が胸見てくるのが気持ち悪いから今は使えないですよ」


侍「……」


侍(聞いていた話しと色々食い違うな)


鬼「あーこれくらいなら出来ますよ。えいっ」


侍「なんと! ふんどしがほどけた!」

侍「おのれぇ!!」アセアセ


鬼「私にはこれと変化くらいしか出来ませんよ。人間から逃げるにはこれくらいで十分ですが」


侍「変化! 変化で人をたぶらかすのであろう!?」


鬼「無理ですよ。私下手なので」


侍「見せてみよ!」


鬼「無害だとわかったら帰ってくれます? そもそも貴方、なぜこの里に? ここは普通にはたどり着かない場所のはず」


侍(……用を足してたら鬼退治の一団からはぐれて迷ったとは言えぬ)


侍「黙れ黙れ! さっさと変化を見せよ! さもなくば斬るぞ!」チャキッ


鬼「はぁ……」ドロンッ


侍「こ、これは……」

侍「……主、美人には化けれぬのか?」


鬼「だから下手なんですって」


侍(あやかしが人をたぶらかすのは美男美女と相場が決まっているはず)


侍(しかし、目も細くなく頬もしもぶくれはなく体型も細い。なんと貧相な……しかし)


鬼「なぜ人は胸ばかり見るんですかね?」


侍「いやいや! 見ておらぬ! 少しも見ておらぬぞ!」


鬼「これで無害なのはわかってもらえましたか?」


侍「あー、まぁ……都人はたぶらかせそうにないな」


鬼「なら帰ってください。朝早いんで」


侍「そうはいかぬ! そうはいかぬぞ!!」


鬼(めんどくさい……)

鬼「怒りますよ? 本気で怒ったら雷くらい喚べますよ?」


侍「主は、変化と珍妙な技しか使えぬと言うたではないか」


鬼「言葉の綾です。貴方めんどくさそうだったんで」


侍「ならやはり主は人を食い、害を成すのだな!?」


鬼「それはありません。なんでちょっと元気なんですか」


侍「それは……」


侍(御上からは、人食いで恐ろしく、人間には残虐非道な生き物だと聞かされていたからな)


鬼「なんですか?」


侍「……黙れ! しばらく主も他の鬼も監視する!」


鬼「え—……居座る気ですか?」


侍「当然じゃ! それから主を斬るか決めようぞ」


鬼「お好きにどうぞ。朝早いんで寝ます」


侍「お……おう。承知した」


ここまで。書き溜めたら投下します。

待ってる

乙でした

読んで頂いてありがとうございます。投下していきます。

〜〜翌朝〜〜


侍「む……いつの間にか鬼の家で寝てしまっていたか。なんたる不覚」


侍「これは? 着物の掛けてくれたのか。薄いのにとても暖かい。鬼の細工品か? 面妖な」


侍「鬼は……おらぬ。枕元に何かあるな」


《食べたら昨日のことを考え直して早く去ってください》


侍「内容はともかく、字は綺麗だな。なんと! 白米のむすびではないか! 海苔や魚まで!」


侍「……美味いな」


侍(良い鬼なのか? いやまてよ? わざと挑発して食べさせ我を肥えさせる算段か!)


侍(おのれ!!)


侍「しかし美味い。あっ、茶も美味い」


<ナァナァ、ホントウニニンゲンガイルゾ


<ホントウダ。ツノナイケドオレラトカワリナイナァ


侍「ん? なんじゃ?」


<ヤベッ! コッチミタ!


<ニゲルゾ!!


侍「はて……?」

侍「少し、散策してみるか」


侍「おお、陽が出て明るくなってみるとこのようになっておったか」


侍「空もあり、山もある。畑が広がりのどかな農村にしか見えぬな」


侍「格差社会と行き倒れ、死臭に満ちた都とは違って空気が澄んでおる」


<スゲー! アレヨロイダロ?

<ダナ、カッコイイ!


侍(あれは先程の童子か? 角はあるが都の童子よりふくよかだな。食べるものがある証拠か)


侍(鎧が珍しいのだろうか、この時世なら皆が嫌悪する瞳でみるものなのにな)

鬼「はぁ……まだ居たんですか」


侍「おわっ!! お主その手の鎌はなんだ!! それで我が首をかっ切るつもりだな!? ついに本性を現したか!」


鬼「……人間は農作業しないんですか?」


侍「? するぞ? 貴族はせぬだろうが」


鬼「鎌で野菜の収穫とついでに雑草苅ってたんですよ」


侍「あっ……そ、そんなことわかっておったわ! 洒落じゃ! ハッハッハッ」


鬼「はぁ……」


侍(発想が飛躍しすぎたな……)

要するに鬼が変化した姿は現代の美人ってことかな

鬼「どうしても帰らないんですか?」


侍「しばらくは居座る。ただ飯喰いが困るなら野草でも食い野にも寝よう」


鬼「そういう意味じゃないです。食事も困ってません。ただ」


侍「なんじゃ?」


鬼「村の子供が鎧や刀に興味を持つのが嫌なのです」


鬼「子供らの好奇心は大切ですが、知らずとも良いことはあります」


侍「なるほど。一理ある。しかし、それは大人の教え方にもよろう」


鬼「……そうですね」


鬼「ですが、この村はこれまでも、これからも平和でいたい。それを崩そうとするなら」


鬼「私は……貴方を手にかけることも辞さない」


鬼「それだけは胸に留めておいてください」


侍「……承知した」

〜〜数日後〜〜


侍「おかしい。本当に何もないのか……」


侍「鬼が雷を喚べば、作物をよく育ませる為と言われ、鳥を使役しては害虫を駆除するのだと言われた)


侍(数日身を置いてわかったのは、鬼の食事はとても美味く、村は静かに時が流れ……人のそれと何ら変わり無い)


侍(いや、むしろ……)


童子「ねぇねぇ、人間さん?」


侍「む、我になにか用か?」


童子「貴方は外から来たの? なんで神子様のお宿にいるの?」


侍「外? 都からということか? それより神子とは誰のことじゃ」


童子「神子様は神子様だよ? ほら」


侍「なんじゃ、そなたが指差す先には鬼しかおらぬぞ」


童子「だから神子様だよ」


侍「はて……? どういうことじゃ」

期待

こういうの多いけど大好き

————
——



侍「一つ、尋ねてもよいか?」


鬼「なにか」


侍(いつになく気が立っておるな……なにかあったのか)


鬼「なんですか?」


侍「いや、やはりよい」


鬼「そうですか」


侍「すまぬ。大したことではなかったと思い直してな」


鬼「はい」


鬼「食べたら置いといてください。私は少し用事で家を空けますので」


侍「陽も落ちきって辺りが暗いのにか?」


鬼「はい」


侍「そうか、承知した」

〜〜夜道〜〜


侍(思わず後を追ってきてしまった)


侍(灯りも無しに随分と軽やかなものだ。鬼は夜目も優れているのか)


侍(おっと……いきなり振り返るとは……危ない。ばれてはおらぬようだ)


侍(随分大きな建物、見方によっては寺にも見えるな。庭に潜むか)


————

——




侍(話し声?)


「あの人間はまだいるのか」


「はい」


「早くどうにか外の世界にお帰り願いなさい」


「努力はしてます」


「人間は恐ろしい……そなたの心の乱れが招き入れてしまったのだぞ」


「わかっています……どうにかします」


侍(人間を恐る? なぜだ? おっといかん! 戻らねば)

〜〜さらに数週〜〜


侍(例の夜から別段変わった様子はない)


侍(村の童子達は普通に話しかけてくるが、年配の者は遠巻きに我を見てくるだけ)


侍(人間を恐る理由を尋ねてみたい気もするが……)


————

——




〜〜鬼の家〜〜


鬼「貴方に家族という存在はいないのですか?」


侍「唐突だな」


鬼「いえ、ずっとここに居たらその方々が心配されるかと」


侍「屋敷には使用人がおる。しかし嫁も親もおらぬ。早くに流行り病でこの世を去った」


鬼「……そうでしたか」


侍(そろそろ良いか。我はどうやら、噂に毒されておったようだ。村を去る時期が来たのだろう)

一区切り、ここから最後まで行きます。

また書き溜めて投下します。


読んで頂いてありがとうございます。

>>15 その解釈です。

おつー

乙でした

投下します。

〜〜翌日〜〜


侍(相変わらず鬼は朝が早いな。しかし、いつもの様に枕元にはそれがある。この味も今日でお別れか)


侍(黙って去ろう)


侍「山はあちらのほうへ行けば都へいつかは辿り着けるかの」


————
——



〜〜村の入口〜〜


侍(これは夢だったのかも知らんな。一歩踏み出せばまどろみから醒めるだろうか)


老婆「もし、人間の方」


侍「む、心配せずとも今去ろうとしていたところだ」


老婆「いえ、少しだけお話を聞いていただきたいのです」


侍「話しとな?」

〜〜山道〜〜


侍「ここは……迷った場所と目と鼻の先」


侍(不思議なもので足がかってに動いていくな)


————
——



〜〜都・侍家前〜〜


使用人「おぉ! 主人様じゃ! 主人様がお帰りじゃ!!」


侍「暫くぶりだな。変わり無いか」


使用人「はい! 皆主人様のお帰りを心底お待ちしておりました」


侍「そうか、すまぬが少し部屋で横になる」


使用人「承知致しました!」

侍(帰ってきたが……あまり嬉しくもないな)


侍(寝れば少しは変わろう)


————
——



使用人「主人様、失礼いたします」


侍「……ん、何用か」


使用人「はぁ、何やら御客人がお見えです」


侍(仰々しいと思えば、内裏に呼び出しとは何事か)

——内裏——


侍(外も内も異様な匂いだらけで胸焼けしそうじゃ)


陰陽師「帝に代わり、本日は私がいくつか質問を。そう身構えず、ありのままを答えていただければ結構」


侍「承知」


陰陽師「貴方、鬼の里にいましたね?」


侍「……はて?」


陰陽師「お惚けか?」


侍「いえいえ、私のような一介の人間がそのような恐ろしいきところへなど」


陰陽師「鬼退治に出陣した全員のお髪に、所在がわかるよう術をかけていたのですよ」


侍(なんと……)


陰陽師「そしてそれが、突然消えてまた現れた。貴方のものがね」


侍(くっ……)


陰陽師「場所は大体わかっていますが……鬼の里から無事に帰った、稀有な存在である貴方に、一つ、道案内をしてもらおうかと」


陰陽師「もちろん。貴方のお立場で逆らうならば、屋敷の方も含め全員の処罰を考えますが、ね」


侍「姑息な……」


陰陽師「相手は鬼ですよ? 何をためらう必要が?」


侍「……」


陰陽師「では、急ですが、明日案内をお願いします」


侍「……承知」

〜〜その夜〜〜


侍(陰陽師か。宮仕えで貴族達の評判もよい存在。様々な術や式神を使役するとは言えど)


侍(綺麗なだけの存在にはとても思えぬ)


侍「……知らせるしかない」


侍「あの村の者たちの手は何かを育てる為にある。血生臭いことに染めさせはせぬ!」


————
——



〜〜鬼の村〜〜


鬼「まったく。最初から最後まで本当に自分勝手な人でしたね」


鬼「婆様に伝言だけとか……人間はそんななんですかね」


鬼「……家が、広い」

鬼は恐いもんね、人を襲うもんね、仕方ないね

〜〜山中〜〜


侍「ハァ……ハァ……さすがに鎧でこの距離は」


侍「ええぃ! 何をだらしない! 確かあと少し、あと少しなのだ!!」


————
——



侍「ハァハァ……わからぬ……やはりダメなのか」


侍「開けよ! 村の者に伝えねばならぬのだ!!」


————


鬼「声……? まさかね」


鬼「でも確かに……結界の外? すぐそこにいる?」


鬼「少しだけ、確かめるだけ……」

侍「これは……村が見える? 結界が薄れたのか?」


鬼「やっぱり、幻じゃない。そこにいる!」


陰陽師「なんと、これは手間が省けましたね。もう結構です。あの侍を射てください」


侍「なに!? ぐぅっ!!!!」

鬼「なぜ……なんで?」


陰陽師「何って、鬼退治ですよ」


鬼「そんな……」


陰陽師「おっと! 結ッ!! 暫く動きを封じます」


陰陽師「そして、式神空を照らし出せ」


侍大将「おお! 一変して昼間のようじゃ。これならば村の鬼も退治しやすい」

侍「陰陽師なぜ……」


陰陽師「あまり動かないほうが賢明ですよ? 矢が刺さった腹で無理をすると死にますからね」


侍「ハァ……ハァ……見てみよ。この、のどかで青々とした田畑を……この地に人食いの鬼も、害なす鬼もおらぬ」


陰陽師「知ってますよ? ですが、その方が大衆受けが良いでしょう? 異形の者のせいにすれば何事も上手くやりやすい」


侍「そんな……貴様こそ鬼ではないか……」


陰陽師「都にとって利用価値がある存在ではあるのですから、安心してください。殺しませんよ」


侍「鬼は……物ではない……」


侍「物ではないのだ!!」

陰陽師「ちっ! 死に損ないが!! 私にしがみついて何がしたいのですか!」


陰陽師「ご覧なさい! 兵によって老若男女の鬼たちが捕らえられ、この地の作物も我ら人間のもの。貴方は精々哀れに死ぬだけ」


侍「……我には守れずとも、この地を護れるものは居る!!」


陰陽師「しまっ……術が」


侍「鬼!! 今じゃ早く結界を!! 我ら人間とこの村を完全に絶つのじゃ」

鬼「でも……二度と」


侍「早くせぬか! それでも神子か!!」


陰陽師「ごちゃごちゃと……式神、この者の首を撥ねよ」


侍「まだ死ねぬ! ぐあああああ!!」


鬼「腕が……腕が斬られ……」


鬼「……その人をこれ以上傷つけさせない、貴方は私が殺す……」


陰陽師「それが本性か、恐ろしいものだ。稲光すら喚びよせるとは」


侍「馬鹿者が!! 主の手は、そんなことの為にあるのではない。頼む……我の言葉を聞いてくれ……」


陰陽師「おや、限界ですか。汚ならしい下流階級の血でよく足掻きましたね」


鬼「何も出来なくてごめんなさい」


鬼「……侍さん、さようなら。貴方の想いは忘れない」


陰陽師「させない! 式神あの鬼を殺れ!!」


鬼「司地神司空神境界理永久絶封」


陰陽師「くっ! 間に合わぬか!!」

————
——


侍(……空は暗い。霞んだ目では何もわからぬな)


陰陽師「失敗か……何もかもこの裏切り者のせい」


陰陽師「その者の首を斬り落とし、野の獣の餌になさい」


侍(耳が、もう無理か)


侍(流血でこやつらの顔が紅く染まり、まさに鬼じゃ。可笑しいのう)


侍「は、ハッハッハッ……はは……」


陰陽師「気でもふれたか。やれ」


————
——

書き忘れてた……終わりです。

後日談は、後日談的なモノはないのですか・・・っ

おい

おい

え…

え…?
救いは無いんですか(絶望)

あるんだろ……?あるんだろ……!救い……!

せめて魂だけでも…

>>1です

思っていたよりレス頂けて嬉しいです。後日談はスレタイの不法侵入という言葉と絡めて、転生したのち未来で出会うという解釈で考えました。


依頼も出してしまったので、また短く転生後のを書けたら書きます。


読んで頂いてありがとうございました。

鬼という字の元々の読みがモノであること等含めて考えるとなんとも深いな

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