ライナー「壁内人類を一人残らず駆逐してやる!」(109)

???「君たち4名に、任務を与える。ベリック、ライナー、ベルトルト、アニ、覚悟はいいな?」
ベリック「はい、俺は戦士です。絶対に任務を完遂すると誓います!」
ライナー「右に同じく!」
ベルトルト「は、はい、僕も誓います」
アニ「……誓います」
???「よし、では貴様らの作戦内容を読み上げる。二度と同じことは言わないので、心して聞け」
4人「「「「はい!」」」」
???「目標は敵勢力の駆逐だ!!敵の数はおよそ250万人の壁内人類!!」

ベルトルト「にひゃくごじゅうまん……」
ライナー「しっベルトルト、黙れ。命令が終わるまで喋るなよ」
???「友軍はここにいる4名のみ!!支援はなし、一旦任務に入ったら特別な条件が発生しない限り中止は許されない。何を持っても任務の遂行を最優先せよ」
4人「「「「はい!」」」」
???「壁内進入時に壁外の武器を全て破棄すること。巨人の力を除いて、一切の技術情報を壁内へ持ち込むことを禁ずる。壁内人類にこちらの技術が露呈することは許されない。万が一、巨人の力を含め情報が敵に渡る危機に遭遇した場合は……自ら自決する覚悟で対応せよ」
アニ「」ゴクリ
???「必要な資源は現地で調達すること。繰り返すが、任務を中止することはできない。万が一、隊員に欠員が出た際にもこちらから救援が送られることは無いと思え」
ライナー(まじかよ……やべぇ)ギュッ
???「リーダーはベリックが努めろ、補佐はライナー、斥候はアニ、破壊工作は最も大きい巨人の力を持つベルトルトがライナーと連携して行え。一人の戦士も失わないよう、お互いがお互いを守りフォローすることに努めろ」
4人「「「「はい!」」」」
???「以上、他に質問はあるか?」
ベリック「はい!質問してもよろしいでしょうか?」
???「何だベリック、言ってみろ」
ベリック「先ほど、特別な条件が揃わない限り任務の中止はありえないとおっしゃいましたが、特別な条件とは何ですか?」
???「ベリック、それは作戦要項に詳細を記載したはずだ!」
ベリック「」ビクッ
???「が、確認の意味も込めて答えてやろう。“座標”の発見だ」
ベルトルト「座標……」
???「それさえあれば、我々は壁内人類を全滅させずとも、危機を回避することができる。万が一にも“座標”を発見することができた場合は特例で任務を中断し、“座標”の獲得を最優先で行え。わかったか!」
4人「「「「はい!」」」」
???「ならば行け!お前たちの肩に人類の未来がかかっていることをゆめゆめ忘れるなよ!」
4人「「「「はい!」」」」

ヒヒーンパカラッパカラッ
ベルトルト「ぐすっうっ……うっ」
ライナー「うっせーなぁ、いつまで泣いてんだよベルトルト。村から出てずっととかよぉ、いい加減にしろよ」
ベルトルト「だ、だって、もう故郷に帰れないかもって思ったら」
ライナー「バカだなぁ、俺達ゃ戦士だ。壁内人類なんてちゃちゃーってやっつけてすぐ帰れるって。んな心配すんなよ」
ベルトルト「ほんとうに?」
アニ「そんな簡単に行くとは思えない。ライナーは適当に言ってるだけだよ」
ライナー「馬鹿っアニ、もう少しでベルトルトが泣き止みそうだったのに、何でチャチャいれんだよ。空気読めねぇなぁ」
アニ「嘘はよくないよ。私達は、これからずっと嘘をつき続けることになるのだから、私達の中では嘘をつかない方がいい」
ライナー「わかってるよ。でもベルトルトはお前や俺と違って気が弱いんだ。少しは気遣ってやれよ」
アニ「それがよくないんだよ、ライナーがベルトルトを甘やかすからコイツは……」
ベリック「はいはい、そこまでにしとけよ。今度はお前らのおっかない顔みてベルトルトが泣き出すぞ」
ベルトルト「ぐすっごめっごめんなさい」
ベリック「いいさ、もう故郷に帰れなくなるかもしれないんだ。泣きたい気持ちはわかる。ライナーやアニだって本当は、不安なんだろ?だからイライラしている」
ライナー・アニ「……」
ベリック「俺も不安だ。だけど、やるしかないだろ。俺たちがやらないと故郷がなくなっちまうかもしれないんだからよ」
ベルトルト「なくな……うぐっうっ……ううぅ」
ライナー「泣くな、ベルトルト!故郷は無くならない!俺たちが使命を果たして故郷に帰るからだ」
ベルトルト「できるかなぁ……」
ライナー「できる!俺たちなら絶対にできる。だから、泣くな。俺たち絶対故郷に帰れるんだからな」
ベルトルト「ライナー……ありがとう、僕も頑張るよ」
ベリック「さぁ、三人とも。目的地のデカい木が見えたぞ、何とか朝日が出る前に辿りつけたな」
ライナー「巨人が起きる前に間に合ってよかったぜ」
アニ「もうくたくた、早く寝たい。私、一番上の太い枝、もらったから」
ライナー「あ、アニずりぃ。俺だってあの枝で安定して寝たい」
アニ「もう遅い」
ベルトルト「みんな待ってよー僕だけ離れた枝は嫌だよ~」
ベリック「お前等、馬を繋げるのを忘れるなよ、待て!俺だっていい枝で寝たいんだよ」


ズンッズンッドンッドン
ライナー「んあーうっせぇなぁ、毎日毎日、太陽が出ると攻めてきやがって。今日も木の根が見えなくなるぐらいびっしり巨人が群がってんな」
ベリック「なんだ、ライナー。もう目が覚めたのか?」
ライナー「ああ、まだ夕方かぁ。もう少し寝とけばよかった。夜通し馬で行くのに、こんな所で寝るから、体がバッキバキだよ。ベリックは?」
ベリック「俺もお前と同じで目が覚めちまった。にしてもだ、あの二人はこの揺れでよく寝れるな」
ライナー「神経図太いよなぁ。てか、ベルトルト何だあの体制は。木にしがみついてる。ロープで縛ってあるんだから、あんなにがっちり掴まなくてもいいのに」
ベリック「まぁ不安なんだろう。万が一、この下に落ちたらひとたまりも無いからな」
巨人「おおぉぉお」ニヤニヤ
ライナー「うるせー!もうすぐ夜なんだ、とっとと寝ちまえ!」
ベリック「ははっそれで寝てくれれば楽で良いんだけどなぁ」
ライナー「まったくだ。早く夜になんねぇかな。まぁ夜になったらなったで、狼とか、そこら辺の野生動物が心配なんだけどな」
ベリック「だな、今のところ群れに遭遇しないで済んでいるけれどイノシシや狼に出会ったら、人型の俺らじゃひとたまりもない」
ライナー「武器も多少なら備えがあるから余裕だろ」カチャ
ベリック「銃を仕舞え。今はいいが壁に近づいたら使えなくなるぞ。外から銃声が聞こえたら壁内人類に何て思われるか。どのみち注意する癖をつけないと」
ライナー「わかってるって、ベリックは心配性だよなぁ」
ベリック「ライナーは、もう少し注意しろ。もし万が一、俺に何かあったら、補佐のお前が俺の代わりを務めることになるんだからな」
ライナー「俺がぁ!?なんでだよーてかベリックに何か起きるわけがないじゃん。やめろよーそういう不吉なこと言うの」
ベリック「真剣に聞けライナー。ここは“故郷”じゃないんだ、何が起きてもおかしくない」
ライナー「だとしてもよ、俺じゃなくてもいいだろう。ベルトルトのが頭はいいんだしよー」
ベリック「だが、決断力がない。危機にひんして迷っている間に、お前らが死んだら元も子もない」
ライナー「じゃあ、アニ。アニのが格闘術は上だぜ?あいつだったらその場で機転を利かせて判断するのもうめぇ」
ベリック「だけど、優しすぎる。誰かに命令されれば残酷なこともできるが、自分の判断じゃベルトルトと同じようにギリギリまで迷っちまう。誰かがアイツの分の責任もとって決断してやらなきゃ、あいつは壊れてしまう」
ライナー「俺なら大丈夫だっていうのかよ?」

ベリック「ああ、お前ならできるよライナー。お前は立派な戦士だ。状況を見極めて正しい判断ができる。迷ったりしない、そうだろう?」
ライナー「無理だ。俺はベリックが思うほど強くない。俺は……ベルトルトに強がったけど、実のところ、俺が一番の怖がりだと思う。笑って、恐いのを誤魔化してるだけなんだ。本当は壁なんて行きたくない。故郷に帰りたい」ウッグスグス
ベリック「それでいい。恐くても、それを下のやつらにバレないように隠すのが大事なんだ。それがバレたら、みんな不安になっちまうからな。これは俺とお前だけの秘密だぞ?」
ライナー「何?」
ベリック「実は俺も恐い」
ライナー「ベリックが?」
ベリック「内緒だぞ、バレたらアニとベルトルトが泣いちまうからな。二人の秘密だ」
ライナー「うん、誰にも言わないよ。でも、でもやっぱり、俺はリーダーなんて無理だ。ベリックいなくなるなんてそんなの、想像したら、うおおおおおおお」
ベリック「おい、泣くなよ!ばかっライナーうわっ鼻水たらしたまま抱きつくんじゃねぇよ!仮定の話だっつーの、俺はいなくならねーから、だからやめろって」
ベルトルト「ううぅ……なに……?あ、ライナーが泣いてる!何、なんでどうしたの、うああああん、何があったんだよおおお」
ベリック「あっ馬鹿、ベルトルトも貰い泣きしてんじゃねぇよ。何でもない、何でもないから!」
アニ「何なんだい、コレはいったいなにが起きたの?」
ベリック「色々あって……アニ、お前、ああお前まで泣くな、もうっ俺まで泣きたくなるだろうがーやめろよぉ……」

改行

ライナー「」

アニ「」

ベリック「ようやく、シガンシナ付近に辿り着いたな。シガンシナの壁とウォール・マリアの破壊作戦は、明日朝に決行する。お前ら準備は良いか?」
3人「「「おう!」」」
ベリック「じゃあ、明日に備えて、今日は早めに寝よう」
アニ「一番いい枝、私もーらい!」
ベルトルト「アニ、待ってよー!」
ライナー「お前らケンカすんな、ちゃんと交代でいいとこで寝ろー」
ベリック「まったく、あいつら遠足じゃねぇんだぞ……俺も早く寝よう」

4人「ZZZZzzzzzz」

ズンッズンッ

ベリック「むぅっうるせぇなぁ……ZZZZzzzzzz」
ガリッガリガリガリガリ
ベリック(いつもと、違う……音?)バッ
ガリガリガリガリ
ベリック「な、木を登ってやがる。何だあの巨人!?オイ、お前ら起きろ!」
ベルトルト「ふぁっベリックどうし……うああああああ、何だあの巨人」
ライナー「あぁ?何だ、あいつ、すげー動きが早い。木を登ってやがる。起きろ、アニ!」
アニ「んんっひゃっやだ。なんで木の上に?奇行種!?」
ベリック「お前ら、木から降りて逃げろ!早く、馬に乗るんだ!」

パカラッパラカッヒヒーン
ベリック「3人とも、振り返るな!!行けるだけ先にいけ!」
ライナー「ベリック、あ、あいつ、あの変な巨人。俺たちを狙って動いてる。ヤバイ、足が速いアニならいざしらず、このままじゃ俺たち追いつかれる!」
ベルトルト「ライナー、ベリック、恐いよぉお、どうすればいいの?どうすればいいの?」
ライナー「ベリック!巨人化して戦おう、俺の鎧の巨人なら、あんなチビ巨人、すぐ倒せる!」
ベリック「だめだ!!!」
ベルトルト「なんでだよ、ベリック!」
ベリック「ここで巨人化したら、変身の時の光が壁内に見えちまう。そしたら侵入前に壁内人類に警戒される」
ライナー「そんなの構うもんか!壁内人類なんて俺たちの力があれば簡単に殺せる!見つかったって」
ベリック「馬鹿野郎!250万人だぞ?無知性巨人だって俺たちの味方じゃねぇんだ。そいつらが全員、武器をもってお前らにたかったらいずれはやられるんだ!俺たちの力は無限じゃねぇんだ!最小で最大の力を発揮しなきゃならねぇ、今はその時じゃねぇ」
ライナー「くそっじゃあこの状況をどうすればい……」
ウガアアアアア
ベルトルト「ひっジャンプした!うあああああ」
ヒヒーン
ライナー「いっつ・・・・・・くそっ、馬は、馬は、ああ、くそっ、逃げてやがる。あの巨人は」
ガアアアアアアアアア
ライナー「うっあああああああああああくるなあああああ」
ベリック「ライナァァァァァァ!そこをどけええええ」
ウガアアアアア

ベリック「ぐっうがっ」
ライナー「ベリック!そんな!」
ベリック「ライナー……俺が言ったことを覚えているな!お前が、俺の……」
ガリッバキュボキュ
ベルトルト「うあああああああああ!」
ライナー「ベルトルト!置いてかないでくれ、うああああ、ベリック!どうすれば、俺どうすればいいんだよ!」
ベリック「うがああああああ!やめろおぉ!やめてくれええええ!いやだあああいだい、いだいいいい」
ライナー「ベリックうううう!!」
ライナー(今すぐ、巨人化してアイツをぶっ殺して、ベリックを・・・・・・)
ガッ
ライナー(待てよ。もし、万が一、ここでこいつと戦って、俺が死んだら。アニとベルトルトはどうなる?シガンシナに穴を開けても、硬化能力が一部しかできないアニにローゼを突破することは不可能だ。ベルトルトの巨人じゃ、シガンシナからローゼに行くまで歩けないから、門が閉じられる恐れがある。シガンシナからローゼに逃げ遅れたら、巨人達の中に取り残されてしまう)
ベリック「・・・・・・」
ライナー(叫び声が止まった、もう、ダメだ、ベリックはもう・・・・・・)
バリッムシャッムシャムシャ
ライナー(こいつはベリックを食べるのに集中している。今なら逃げられる。それに、俺はベリックに言われたじゃないか、もしものことあったらベリックの代わりに、二人を助けるように。そうだ、逃げなきゃ、俺はベリックの代わりをしなきゃいけないんだ)
バッ
ライナー(後ろを振り返るな、早く逃げろ!早く)
ベリック「た・・・・・・す・・・・・・け、て・・・・・・」
ライナー「えっ!?」
ライナー(今、助けてって。ベリックはまだ生きて・・・・・・)
バリッポロッ
ライナー「首が・・・・・・」

ダッ
ライナー(逃げなきゃ、逃げなきゃ、俺はベリックに託されたんだ。何で、何であの時、早く巨人にならなかった、そうすればベリックは助けられた。逃げなきゃ。戦っちゃいけない、俺にはアニとベルトルトを、あんな小型の巨人ぐらい倒せたはずだ。ベリックが言っていた、ここで巨人化したら壁内の人類に怪しまれる。問題なかった可能性だってある、どうしてベリックを助けなかった。そうだ、本当は怖かったんだ。俺はあの巨人が怖かった死にたくなかった。だから逃げ出した、逃げてるんだ。俺は、最低だ。戦士なんかじゃない、俺は、俺は・・・・・・)
ベルトルト・アニ「「ライナー!!」」
ライナー「アニ、ベルトルト?」
アニ「こっち、木の上だよ」
ベルトルト「ライナー大丈夫?」
ライナー「あ、ああ大丈夫だ。あの巨人の足音も聞こえない、もう俺たちを追いかけるつもりは無いらしい」
アニ「ベリックは?ベリックはどうしたの?」
ベルトルト「」ビクッ
アニ「なんだいベルトルト、なんで、そんな顔、今にも死にそうな、ライナー!ベリックはどうしたんだい?」
ライナー「ベリックは・・・・・・死んだ、俺を庇って」
アニ「そんな・・・・・・嘘でしょ」
ライナー「本当だ」
アニ「な、何で、どうして、どうして巨人化しなかったの、何で戦わなかったの?何で、何で助けなかったの!」
ベルトルト「うっううううああああああああああ、もうやだよぉお家に帰りたい、こんな所いやだああああ」
アニ「ベルトルトうるさいよ!あんただけじゃない、私だって家に帰りたいんだ!でも・・・・・・でも・・・・・・私らがやらなきゃ、その家がなくなって、うっううっ」

ライナー(アニもベルトルトも泣いている。俺も気がゆるんだら泣き出してしまいそうだ。そんな資格ないのに、俺はベリックを見捨てたのに)
アニ「ベリックが死んじゃったなんて、これから、あたし達どうすればいいんだい?」
ベルトルト「もう、任務なんて投げ出して、家に帰ろう。きっと許してくれるよ、ベリックが死んじゃったんだ。任務なんてできないよ」
ライナー(家に帰りたい・・・・・・でも、帰ってどうする?全てを無駄にするのか?すぐそこまで、壁は近づいているのに、ベリックがここまで連れてきてくれたのに?)
ベルトルト「ライナー・・・・・・?」
ライナー(俺は、ベリックを見捨てた上に、ベリックの努力を無駄にする気なのか?そんなことしていいわけがない。俺が何とかしなきゃならないんだ。そのために、ベリックは俺を助けたんだ。一番強い硬化能力を持って、扉を打ち破れる俺を。任務を遂行するために、自分の命さえ賭けて)
アニ「ライナーどうしたんだ、ライナー?」
ライナー「ベルトルト、アニ。任務を続行するぞ」

ベルトルト「な、何言ってるんだライナー。もうベリックはいないんだよ、誰が指揮をとるんだよ」
ライナー「俺が指揮を取る。元々、俺はベリックの補佐だった。どうやるかはわかってるんだ」
アニ「だけど、私たち三人だけでシガンシナとマリアの壁を突破できると思うのかい?」
ライナー(わからない、ベリックがいなくなったことで、どれだけ計画が難しくなったのか予想もつかない、だが)
ライナー「問題ない。俺が何とかする、絶対任務を成功させて故郷に帰る。ベリックの死を無駄にはしない。俺を信じてくれ」
ベルトルト・アニ「・・・・・・」
ライナー(まったく自信は無い。俺だって帰りたい。でも、不安や恐怖をこいつらに気づかせちゃいけない。そうだな、ベリック)
アニ「あたしは、ライナーに賛成する」
ベルトルト「アニ!?」
アニ「ここから故郷に戻っても、また巨人に襲われるかもしれない。馬も一匹しかいないし。何もしないで死ぬなんて嫌だ、故郷に帰っても、もう一回ここに追い返されるかも知れない。だったら、あたしは任務を果たして、生きて帰りたい」
ベルトルト「アニ・・・・・・」
アニ「言っても、アンタがいなきゃどうしようもないけどね。ベルトルトあんたはどうする気なの。一人で故郷に帰るのかい。あたしの馬をやろうか?」
ベルトルト「僕は・・・・・・僕は・・・・・・二人が行くなら、僕も行く、一人は嫌だよ・・・・・・どうすればいいか、わからないんだもん」
ライナー「二人とも・・・・・・」
ライナー(よかった、これで何とか・・・・・・任務は遂行出来る)

よ・み・づ・ら・い!

アニ「それで、どうするのさライナー」
ライナー「当初の予定通り、アニが無知性巨人を誘導し、ベルトルトがシガンシナの壁を破壊。頃合いを見て、俺がマリアの出入り口を破壊する。本来ならベリックがお前らをローゼ前の避難所まで誘導する予定だったが、それは変更する。ベルトルトは破壊が終わったら巨人化を解いて、俺と一緒に巨人化したアニと移動する。アニはマリア付近で俺を降ろしてから巨人化をといてベルトルトと共に高台へ。俺がマリアを突破したら他の巨人達に追いつかれる前にローゼへの避難船に乗り込むんだ。地図は頭に入ってるな?ベルトルト」
ベルトルト「あ、ああ。古い情報だけど・・・・・・川の位置はわかってる。工事をしてなければ、きっと連絡船はそこを通る。50m上から一応、確認はするけど・・・・・・でも変更を覚えられるか」
ライナー「大丈夫だ、ベルトルト。お前は頭がいい、お前なら絶対覚えられる」
ベルトルト「そ、そんなこと」
ライナー「ベルトルト、俺もアニもお前が頼りなんだ。お前だけが壁を壊し、誰も知ら無い壁の中の情報を確認することができるんだ」
ベルトルト「僕、だけが・・・・・・僕が、やらなきゃ。そうだ、僕がやれば、できるんだよね。任務を達成して故郷に帰れるんだよね?」
ライナー「そうだ、お前ならできる。故郷に帰れるんだ、故郷に帰ろう!ベルトルト!」
ベルトルト「うん、僕やるよライナー」
アニ「あたしもやる。あたしだって、故郷に帰って、お父さんに会いたいんだ」

>>13
すまない、初めてなものでもう少し文を短くまとめてみる

シガンシナ壁前

ベルトルト「と、とうとう辿り着いた」
アニ「ああああえええええおおお」
ライナー「アニ、巨人に囲まれて、追い払うのが大変なのはわかるが、そんなにせかすな。」

ライナー「ベルトルト、やれるか?」
ベルトルト「う、うん。訓練したとおりに、目的を定めて、考えながら、痛みで刺激して巨人化する・・・・・・」

ガリッ

ベルトルト「あ、あれ」

ガリッガリッ

ベルトルト「巨人化、できない、なんで」
アニ「あああえええおお」
ライナー「ベルトルト、まさか、この後に及んでビビッてんじゃねぇだろうな?」
ベルトルト「そ、それは・・・・・・」

ライナー「もうここまで来ちまってんだぞ、無知性巨人もアニがこんなに大量に呼び寄せたんだ。
このまま、お前が巨人化できなきゃ、任務どころか、俺等がこいつらに食い殺される!」

ベルトルト「や、やってるよ!やってるけど、でも・・・・・・でも怖いんだよ!」
ライナー「ベルトルト!!!」

ベルトルト「だってそうだろ!僕らたった三人で、250万もの人類を殺し尽くすなんて不可能としか思えないよ!!!」

ベルトルト「僕はデカくて力が強いだけで自分で歩くこともできない大型の巨人しか出せない!
アニは部分結晶化しかできない。
ライナーは硬化しているせいで早く走れないから巨人に取り囲まれたらおしまいだ!
長期戦に持ち込まれたら、僕らは消耗して・・・・・・あの悪魔の末裔の方が、数は多いんだよ!!」

ライナー「そんなこと、故郷を出る前からわかってただろう。わかってたけど、来たんだろ!?ここまで!」

ベルトルト「僕はやりたくなかった!!!
でも誰かがやらなきゃいけなかったから、僕ができるようになってしまったから!こんな所に・・・・・・」

ライナー(そうだ、俺だって来たくなかった。ベリックだって、でも誰かがやらなきゃならねぇから・・・・・・)
ライナー「誰かがやなきゃいけねぇんだ、わかってんだろ?ベルトルト」
ベルトルト「そう・・・・・・だね、そうだ。誰かがやらなきゃならないんだ、その誰かが僕だった・・・・・・」
ライナー「大丈夫だ、何があってもお前だけは死なせない。俺がお前を守ってやる」
ベルトルト「ライナー・・・・・・」
ライナー(俺がベリックに守ってもらったように、今度は俺がベルトルトを守る。こいつがいなきゃ、任務は達成できないのだから)
ライナー「だから・・・・・・お前はお前がやるべきことをやれ!」
ベルトルト「ああ・・・・・・そうだな」

ドオオオオオオオオオオンンンンンンンンン

ベルトルト「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・ライナー、アニ、ぼ、僕ちゃんと、で、できたよね?」
ライナー「ああ、ちゃんとできた。ベルトルト、お前は立派な戦士として活躍したよ」
アニ「あうあえあ」
ライナー「アニも、お前のこと誉めてる」
ベルトルト「よ、よかった・・・・・・僕でもちゃんとできたんだよね。いつも泣いてばかりで弱虫の僕でも、いつかライナーみたいになれるかな」
ライナー「お前は弱虫なんかじゃない・・・・・・」
ライナー(俺こそ、弱い。嘘吐きだ・・・・・・)
ライナー「アニ、俺達を口に入れてマリアの近くまで運んでくれ、頼む」
アニ「あうあい」

ドシッドシッドシッドシッ

シガンシナ住人「きゃあああああああ」「いやだあああ助けてくれうああああ」

ライナー「よし、ようやく辿り着いた。
ちゃんとマリアの付近だな。周りにまだ巨人も少ない。アニ、巨人化を解いていいぞ」

シュワアアアアア

ライナー「それじゃあ、アニとベルトルトは俺の後をついてきてくれ。
マリアを破ったらローゼへの避難船までの誘導はベルトルト、頼んだぞ」
ベルトルト「うん、ちゃんと地形は把握したよ、任せて」
アニ「ねぇ、ライナー・・・・・・」
ライナー「なんだ、アニ」
アニ「壁の中の住人は悪魔の末裔なんだよね」
ライナー「そうだ」
アニ「なんで、アタシらと同じ姿をしてるの?」
ライナー「は?そりゃ、だってあいつらも壁内とはいえ人類なんだから、形が似てるのは当たり前だろ」
アニ「悪魔の所行をしたんだよね、とてつもない酷い奴らなんだよね?」
ライナー「何が言いたいんだ、アニ」
アニ「なんで泣いて命乞いしてるの?私達と同じように怖がってるの?」
ライナー「えっ・・・・・・」


ライナー(何を言ってるんだこいつ等は、だってそりゃ怖いだろ。
巨人に囲まれて喰われれば誰だって・・・・・・
ああ、今も見える地面に転がって這いつくばって喰われて、泣いてる。
小さい子供が喰われて、母親が泣きながら一緒に喰われて・・・・・・)

シガンシナ住人「おかああああさあああんん」

ベルトルト「僕、何でか知らないけれど、壁内人類は僕らとは違う姿をしてると思ってた・・・・・・」

シガンシナ住人「坊やああああ!やめてええええ」
バキッパリパリッブシャッ

アニ「あたし達と同じで、赤い血を流すんだね・・・・・・」
ライナー(俺達は、敵を倒すために鍛えられて、力を与えられてここまで送られてきた。
だけど・・・・・・実のところ、敵について何も知ろうとしなかった・・・・・・もしかして敵は俺達とまったく同じ・・・・・・)

>>15
そうじゃなくて改行をしろよ!

>>21
すまない、改行してるつもりなんだが反映されてないかな?
それとも、もっと短く区切って改行した方が良い?

ライナー「っ・・・・・・!考えてる暇は無い。俺達は任務を受けたんだ。
こいつ等を一人残らず駆逐するっていう任務をな!」

ライナー(ダメだ、俺がびびってたり、迷ってる姿をこいつ等に見せちゃいけねぇんだ!
ベリックが言ってたじゃねえか!)

ベルトルト「それは、そうだけど・・・・・・」

ライナー「だったら、やるしかねぇだろ。
もう取り返しはつかねぇんだ!後ろを振り返ってる暇なんてねぇ、
前に進むしかねぇんだ!俺は行くぞ!お前らも逃げ遅れるなよ」

ガリッ
ドオオオオオオオオオオンンンンンンンンン

駐屯兵団「閉門しろ!!急げ!!」

駐屯兵団「巨人が門に突っ込んで来るぞ!!」

駐屯兵団「阻止しろ!」

駐屯兵団「なんだこいつ!?武器がきかない!」

ドオオオオオオオオンン


>>21
ようやく勘違いに気がついた、こういうことかな?

ライナー(やった!ウォールマリアを、突破した!これで、人類は大幅に減らせる!)

巨人「あああううううあああ」

ウォールマリア住人「うあああああ巨人があああ、巨人が入ってきたあ」

ウォールマリア住人「誰か助けてえええ」

ライナー(この調子で行けば、250万人でも、俺達3人で駆逐できる。
こいつら全員!早く、変身を解いて、ローゼに!)

ベチャ

ライナー(っとアブねぇ、何か踏んだな。足を滑らす所だった・・・・・・
いったい何を踏んだんだ?赤黒い固まり?黒い髪の毛の小さい・・・・・・男の・・・・・・
子供、こいつベリックに似て・・・・・・)

シュワアアアアア

ライナー「おえええええぐえっぐうえっうえっ」
ライナー(何でだよ、何で壁内人類は、俺達と同じ姿してんだよ。
こんなんじゃ、まるで俺がただの殺人鬼みたいじゃねぇか)

ベルトルト・アニ「「ライナー!」」
ライナー(あいつらの声、ダメだ、こんな弱ってる所を見られたら。
俺が弱い所を見せてどうする、俺がちゃんとしなきゃ、あいつらは不安になっちまう)

ベルトルト「ライナー大丈夫?顔が真っ青だよ」

ライナー「ああ、別に何ともない、何も起きてない。俺は大丈夫だ」

アニ「?巨人化で疲れてるかと思ったんだけど
あんたのは特に硬化能力を使うから辛いかと思って」

ライナー「ああ、そうだったな。大丈夫だ、じきによくなる。
そんなことより早く行こう。ここも巨人で充満する。その前に、ローゼに逃げこまなきゃな」

ベルトルト「そうだ、ライナー向こうに馬小屋を見つけて、馬を奪ってきたんだ」

ライナー「元の持ち主は?」

ベルトルト「みんな巨人に喰われた後だったよ?これで他の人よりは早く、ローゼに行けると思うんだ、どうかな?」

ライナー「よくやったベルトルト、二人とも、行くぞ」

パカラッパカラッパカラッ

アニ「ねぇ、ライナー・・・・・・」

ライナー「何だ、アニ」

アニ「このままローゼまでいって、もう一度門破りをやっちゃえば、もっと人類の数、減らせるんじゃないかな。そしたらすぐに任務を終わらせられる」

ベルトルト「そ、そうだよ。少し疲れたけど、また木の上で休めばすぐ巨人化できるよ。早く終わらせよう!」

ライナー(確かに、体力はキツイが、手間は省ける、だが・・・・・・)

ライナー「ダメだ、巨人の数が足りない。門は一つしか開いてないから、入れる巨人の量も極僅かだ。
ウォール・マリアからローゼまで距離もある。ばらけると、いくら巨人の数が多くても駆逐するのが面倒になっちまう。
その間に対策とられたら、やりにくい。壁内は安全だと思って、狭いカゴん中に収まってくれてる方が効率がいい。
それぐらい、お前にだってわかるだろベルトルト」

ベルトルト「う、うん・・・・・・ごめん。早く、終わらせて、故郷に帰りたくて、
つい意味無いこと言っちゃったね・・・・・・気をつけるよ」

ライナー(そうだ、俺だってもう頭がグチャグチャなんだよ。本当はこんなの投げ出して帰りたいんだ。
だけど、ここでヤメテどーなる?もう俺達は始めちまったんだ。
ここで辞めたら、ベリックも喰われてったやつらも全てが無駄で、意味のないものになっちまうんだ)

ライナー「いいんだベルトルト。俺達は今、敵のまっただ中にいて仲間は3人きりなんだ。
言いたいことは言い合おう。俺が間違うこともある。俺がダメになりそうだったら、お前が助けてくれよ、ベルトルト」

ベルトルト「う・・・・・・うん!!!わかったよライナー」

ベルトルト(もう、あの時みたいに見捨てない・・・・・・ベリックみたいにライナーを失ったら
僕は、僕はもう何もできなくなる。こんな敵の真ん中で、それだけは絶対嫌だ!!!)

ベルトルト「君に何かあったら、絶対僕が助けるよ!」

ベルトルト(僕は、こんな所で死にたくない。故郷に帰るんだ
そのためにはリーダーが、ライナーの指示が必要なんだ!!!)

アニ「ライナー・・・・・・無理しないでよ」

ライナー「無理?何がだ?」

アニ「だって・・・・・・あんた、うまくいえないけど、なんか・・・・・・」

ライナー「俺は大丈夫だ!お前が不安に思う必要は何も無い」

アニ「っ・・・・・・そう、アンタがそう言うなら、いい・・・・・・何でも無い」

巨人「うがあああああ」

ライナー「もうこんな所まで!」

ベルトルト「どうする!?ライナー!」

ライナー(ここで巨人化するか?しかし、こんな町中で変身する所を見られたら・・・・・・目撃者を殺すのが大変だ)

駐屯兵団「そこの子供達!!」

3人「!!??」

アニ「何なの、あいつら、変なロープで飛んでる、きゃっ」

ベルトルト「アニー!!!!うわっや、やめろ!!!」

ライナー「何するんだっやめっ」

ライナー(くそっもうバレたのか?どうなる?俺達は殺されるのか?こんな所で)

駐屯兵団「危ない所だったね、もう大丈夫だ。今、ローゼ行きの船まで連れて行くからね」

ライナー「え?」

駐屯兵団「しかし、君ら、どこから来たんだ?見ない服だな、田舎から来たのか?」

ベルトルト「え、えと・・・・・・」

ライナー「そうです、俺達山奥の方から来ました!」

駐屯兵団「そうか、確かに南東の方の服に似ているな。しかし幸いだったな。
街にいたおかげで、すぐに避難所に行けるぞ、ほらっ」

アニ「壁を昇ってる・・・・・・!」

ライナー(この男が使ってる装置は何だ。凄く早く動けるし、壁も昇れる!この装置が使えれば
壁の中心にも行きやすくなるかもしれない!)

ライナー「かっこいいなぁ、俺も将来、それ使ってみたい」

駐屯兵団「立体機動装置か?そうだな、君らが兵士になれば使えるようになるよ」

ライナー「兵士・・・・・・」

駐屯兵団「ただ、こんな巨人共と戦わなきゃいけなくなるのに
なりたいと思えるか・・・・・・」

ライナー「いいえ・・・・・・なりますよ・・・・・・俺はきっと兵士になる」

ローゼ内

ベルトルト「お腹減ったね・・・・・・」

ライナー「ああ、壁内は故郷と違って外敵の心配がないから、もっと食料が潤沢にあると思ってたんだが」

アニ「パンの配給があったから貰ってきたよ」

ライナー「アニ!流石だな、よくやった!」

モグモグッ

ベルトルト「全然足りないよぉ、もっと食べたい」

ライナー「仕方無いだろ、我慢しろ」

アニ「結構な数が壁内に逃げ混んだから備蓄が足りないと言っていた」

ライナー「そうか、やっぱり人類側の動きが迅速だからな。この調子だと、次も半分まで減らせないかもしれない・・・・・・何か対策を立てないとな」

グウゥウ~

アニ「くっくくっあんた真面目な顔して、腹鳴らしてちゃわけないね」

ベルトルト「はははっやっぱりライナーもお腹減ってたんじゃ無いか」

ライナー「お前らぁ」カアアアァァ

???「君達、お腹空かせているのかい?」

ライナー「あ、な、なんですか?」

ライナー(何だ、このジジイいきなり話しかけて来て。俺達の会話を聞いてたのか?)

おじいさん「いや、お腹を鳴らしている音がここまで聞こえたもんでね。良かったら、これをあげるよ」

ベルトルト「パンだ!」

アニ「ちょっと、ベルトルト!」

ライナー「そんな、大事な食料です。貰う理由が、わかりません」

おじいさん「いやね、私にも似た年頃の孫がいたからね。腹を空かせているのを見て、黙っていられなくて。
幸い、私はもういい年だから、それほど食べなくても問題は無いんだ。さぁおあがり」

ライナー(とりあえず、巨人って疑われてるわけじゃないみたいだ。
そりゃそうだよな、こっちの人類は人間が巨人化できることも知らないんだから)

ライナー「あ、ありがとうございます」

ライナー(今は受け取っておこう、少しでも腹ごなししないと後がキツイ)

ライナー「ほら、ベルトルト、アニ、分けるから、コレ」

ベルトルト「わーい」

アムアムアグッ

アニ「ライナーあんたの欠片が一番小さいじゃないか、私はそんなにいらない。ほら、この半分はあんたにあげるよ」


ライナー「そういえば、おじいさんの孫は?そちらにあげた方がいいんじゃ」

おじいさん「ああ、死んだよ。巨人に喰われちまったんだ」
なんで、こんな老いぼれだけ生き残っちまったんだろうねぇ・・・・・・」

おじいさん「ああすまないね、湿っぽい雰囲気にしてしまった。気にしないでくれ
家族を亡くしたのは私だけじゃない、君らも見たところ親がいなくて大変なんだろう?」

ライナー「えと、はい、そうなんです」

おじいさん「何か困ったことがあったら、聞いてくれ。この老いぼれにできる範囲で手伝おう」

ライナー(なんだ、なんでなんでこんなに優しくするんだ。やめろよ、俺達は、俺達は)

ベルトルト・アニ「・・・・・・」

ライナー「あ、ありがとう、ございます」

ベルトルト「あのおじいさん、良い人だったね・・・・・・」

アニ「パンくれたね・・・・・・」

ライナー「でも俺達の敵だ」

ベルトルト「で、でもさ、250万人も死ぬんだよ?一人ぐらいなら、生き残ってても
バレないんじゃないかな?」

アニ「あんた、あのおじいさんだけ助けるつもり?」

ベルトルト「そ、そんなこと考えてないよ、ただ別に死ななくてもいいんじゃないかなって
凄くいい人だし。おじいさんだけ悪魔の末裔じゃないかも・・・・・・」

ライナー「ベルトルト!!!」

ベルトルト「ひっごめんなさい!!」

ライナー「余計なことは考えるな。あのおじいさんがどうなるかなんて
俺達が考えることじゃない」

ベルトルト「う、うん・・・・・・わかったよライナー」

ライナー(でも、壁内人類の中では、あのじいさんに一番長生きして欲しいな・・・・・・)

数日後

役人「えー先日ウォール・マリアから避難してきた難民に移動勧告を行います。
30歳以下の者は北の大地へ行き開拓事業に関わってもらうことになりました」

ライナー(北か、日照時間が少なくて巨人が少ない。あそこじゃやりづらいな、どうにかして移動を避けるか?)

難民「北の開拓事業なんて地獄だ!俺は絶対嫌だ。訓練兵になる!」

難民「何言ってるんだ、訓練兵になったら、いずれ兵士になって巨人と戦わなきゃいけなくなるんだよ?

難民「だけど、北に行くよりマシだ!俺は絶対憲兵団に入って、壁の一番奥、内地で安全な暮らしをする!」

ライナー「アニ、ベルトルト」

ベルトルト「うん、内地に行く一番最短のルートは、それしかないみたいだね。
普通の平民じゃ、どうやってもウォール・シーナに入れないし」

アニ「一番内側に入り込めれば、外の門を壊すのもやりやすい」

ライナー「何より壁に近づいても不審に思われない。ここ数週間観察したが、兵士というやつらは
壁に昇ってなんやかんややってる。外側で巨人化するのにもってこいの仕事だ」

役人「つづいて、30歳以上の難民ですが、貴方には尊い任務が課せられます。
ウォール・マリアの奪還作戦に参加してもらいます!!!」

アニ「ウォール・マリア奪還!?そんなことできるの!?

ライナー(まずい、そんなことされたら計画が長期化しちまう。俺達が巨人になれる回数は
限りがあるっていうのに・・・・・・。人類側にはどんな秘策があるんだ!?)


難民「30歳以上って、そんなの、ただの口減らしじゃないか!!!」

難民「そうだ、そんな訓練もしてないが巨人に勝てるわけがない」

難民「大体、立体機動装置も数が足りないだろう」

ガシッ

憲兵団「役人さんに手ぇ出すなよぉ?殺されたくなきゃな」

役人「これは決定稿です。貴方に拒否する権利はありません。
拒否するものは、ろくな装備を与えずに放り出すことも我々には可能なのですよ」ニィ

ベルトルト「悪魔だ・・・・・・」

アニ「仲間を見殺しにするなんて、信じられない」

ライナー(やっぱり、悪魔の末裔は同じ形をしていても悪魔なんだ)

おじいさん「君達・・・・・・」

ライナー「じいさん!」

おじいさん「見ての通り、私も奪還作戦に参加することになったんでね
最後のお別れを言いにきた」

ベルトルト「おじいさん・・・・・・」

おじいさん「短い間だったけれど、君らと一緒にいられたおかげで
私の心も随分安らかだった」

アニ「そんなこと、私達は何も」

おじさん「もう、パンを分けてはあげられないけれど。
どうか開拓地へ行っても元気でやってくれ」

ライナー「いっちまった・・・・・・」

ベルトルト「僕ら・・・・・・のせいかな」

アニ「私達がマリアを破ったから」

ライナー「違う、俺達のせいじゃない。悪魔だ・・・・・・悪魔の末裔がやったんだ
弱い者を食い物にして自分だけのうのうと良い思いをする。あいつらの服を見ただろう」

ベルトルト「上等な服を着ていた」

アニ「太っていた」

ライナー「あいつらは、俺達の祖先にしたように、今でもそうやって弱いヤツから
奪って生きているんだ。だから、俺達はあいつらを駆逐しなければならないんだ
じいさんの分まで」

ベルトルト「そ、そうか、そうだね!」コクコク

ライナー(違うだろ、本当は俺達が悪いんだ。俺達が侵入してこなければ
じいさんは孫と楽しく過ごして安らかな最後を迎えられただろう。
だけど、そんなことを言ってどうなる?)

アニ「そう・・・・・・だね、あんたがそう言うなら」

ライナー(アニはもう気がついている。でも口に出さない
そう、俺と同じだ。信じたいから、信じ込まないとやってられないんだ。
だって俺達は、もうやってしまった後なんだ、とんでもないことをやってしまった)

ベルトルト「アニ?どうしたの?気分が悪そうだよ?」

アニ「何でも無い、ほっといて」

ライナー(願わくば、作戦の要であるベルトルトには一生気づかないでいてもらいたいものだ)

ライナー「行くぞ、アニ、ベルトルト。俺達の任務を果たそう」

数年後

キース「貴様は何者だ!!」

ライナー(くだらない、この程度の訓練。故郷で受けたもののほうがよほどキツかった)チラッ

ライナー(アニめ、あからさまにつまらなそうな顔をして。普通にしていろと言ったのに
これから他人同士ということで気軽に話せなくなるのに大丈夫なのかアイツ)

~回想~

アニ「他人のフリをする?なんでさ?」

ライナー「リスクの回避だ。もし、俺達の誰かがバレて捕まった時、芋ズル式にバレたら
意味がないだろう。だから訓練兵の時は他人のふりをしよう」

ベルトルト「僕は、ちゃんとやれる自信がないよ・・・・・・そ、それに悪魔の末裔達と何年も一緒に暮らすなんて」

アニ「確かに、ベルトルトを一人にしたら面倒そうだ。それに、ベルトルトからバレた時にすぐに守れないのは
危険だと思う」

ライナー「むぅ・・・・・・そうか、確かにそれは問題だな」

アニ「だから、他人のふりをするのは私だけでいい」

ベルトルト「え?」

アニ「あんた達は同郷ってことでツルんで、ベルトルトに何かあったらライナーが助ければ良い。
私に何かあったら、その時は自分で何とかする」

ライナー「だが、お前は女だぞ、一人には」

アニ「大丈夫だよ。何かあったら、後であんた達が助けに来てくれるんだろ?
そのために他人のふりをするってことじゃないのかい」

ライナー「そうだな。じゃあ、明日からは俺達は他人同士だ」

ベルトルト「う、うん頑張る、で、でもたまには話しかけていいんだよね?」

アニ「他人としてならね。親しげに話しかけて来たら無視するから」

ベルトルト「そんな・・・・・・アニは寂しくないの。敵の真ん中で味方はアニとライナーしかいないのに」

ライナー「定期的に落ち合うようにすればいいだろう。
そこでは俺達は仲間だ。好きに喋れば良い」

アニ「寂しくなんか無いさ。そんなことより
壁内人類と普通に喋らなきゃいけないことの方が苦痛だよ。」

ライナー「そうだな、変なことを言ってしまわないように気をつけなければな」

アニ「アタシは喋らないことにするよ。無口な人間を装う。
あんたやベルトルトほど器用じゃないからね」

ベルトルト「アニが無口なんて、変な感じ。お喋りなのに」

アニ「仲間に会うときだけは喋るさ。覚悟しな」

ベルトルト「うわぁ・・・・・・怖いなぁ」

ライナー「ああ、覚悟しておくよ」

ライナー(まぁ元々、女と男は部屋が割れるから妥当な選択だったな。
それにしても、ここにいるやつらは何だ不抜けたガキばっかじゃねぇか。
こんなやつらが、立派な兵士になれるのか?)

訓練兵「ウォール・マリアを破った鎧の巨人は!?」

エレン「それも見た」

ライナー(何だ、あの集まりは、中心にいるヤツは、シガンシナのヤツか)

エレン「オレの目には普通の巨人に見えたな」

ライナー(あいつ、俺を見たのか・・・・・・やっかいだな。顔つきが似ていることに
気づかれなきゃいいが。今のうちに事故にみせかけて殺しておくか?)

エレン「この世から巨人を駆逐してやる!」

ライナー(ただの馬鹿っぽいな。立体機動装置のベルトに細工をして訓練を
受けられないようにすればいいか・・・・・・訓練兵になれなければ会うこともないだろう)

訓練後

エレン「頼む、二人とも凄くうまいって聞いたぞ!」

ライナー「すまん、ぶら下がるのにコツがいるとは思えん」

ライナー(訓練兵になる前から、立体機動装置を盗んで練習していたからな。
それで上手く行けば訓練兵にならずにローゼの破壊も考えたが
やはり正規ルートから学ぶのが何より一番だ)

ベルトルト「二人はシガンシナの出身・・・・・・だよね?」

ライナー(ベルトルト?何だいきなり)

ベルトルト「巨人の恐ろしさも知ってるはずだ。なのにどうして兵士を目指すの?」

アルミン「僕は、あんなめちゃくちゃな奪還作戦を強行した王政が・・・・・・」

ライナー(俺達も信じられなかったよ、仲間にあんなことをするなんてな)

ベルトルト「そ そっか・・・・・・」

アルミン「二人はどこの出身なの?」

ベルトルト「!?」チラッ

ライナー(ここに来る前に綿密に設定を練って練習しただろう)ギロッ

ベルトルト「僕とライナーは・・・・・・」

ライナー(よし、ちゃんと言えているようだな)

ベルトルト「明け方だった・・・・・・やけに家畜が騒がしくて」

ライナー(何を言ってるんだ、ベルトルト!それは言わなくてもいいだろう、だってそれは)

~回想~

父「ライナー逃げろ!アイツらが来た」

母「こっちよ、シェルターに逃げるのよ!」

父「俺は戦士だ、来い!お前等を倒してやる」

ガッ
ドオオオオオオン

ライナー「父さん!」

母「お父さんが巨人を倒してくれるわ!だから、ライナーあなたは早くシェルターに」

シェルター内

ドシンッドシンッ

ベルトルト「ライナー、よかった無事で」

ライナー「だ、だけどお父さんがううっ、母さん、畑もぐちゃぐちゃに、母さんどうして!?
どうして、俺達こんな目に合わなきゃいけないの?」

母「悪魔の末裔のせいよ!!!あいつらが、あいつらが私達から壁を奪ったから・・・・・・」

ドシンッドシンッドシン

ベルトルト「うっううう、やだよぉ、もうこんなのやだよ」

母「静かになったわ・・・・・・きっとお父さんが巨人を倒したのよ。行きましょう!」

ライナー「お父さん!」

父「ううっライナー・・・・・・」

母「あなた!融合が・・・・・・」

父「俺は、もうだめだ・・・・・・何度も巨人化したツケがとうとう来た」

ライナー「いやだ・・・・・・父さん、そんな・・・・・・」

父「ライナー!泣くんじゃ無い、これからは、お前が俺の代わりに戦士にならなきゃいけないんだ」

母「いやよ、いやっ・・・・・・あなた!」

父「いいから、あの注射をライナーに打て!」

ライナー「何いってるの父さん」

父「いいか、ライナーこれから起こることは必要なことだ。受け入れろ、決して後悔するな」

ライナー「父さん?」

父「ライナー、お前は戦士になれ、そして俺の代わりにこの故郷を守るんだ!」

母「ライナー、ごめんなさい、ごめんなさい」

ライナー「痛い、痛い、ああああつい、なんだこれ、父さん!母さん!」

ベルトルト「後は、君達も同じだろ?」

ライナー「」ハッ

ライナー「まったく、お前は何だって突然そんな話をするんだよ」

ライナー(よかった、ベルトルトの話におかしな所はなかった・・・・・・これならきっと壁内の話に聞こえるだろう)

ベルトルト「つまり、僕が言いたかったのは君達は彼等とは違うだろう?」

エレン「彼等?」

ライナー(ベルトルトはいったいどうしたんだ?)

ベルトルト「臆病なのは僕も彼等と同じだ」

ベルトルト「僕には自分の意志がない。羨ましいよ、自分の命より大事なものがあるなんて」

ライナー(ああ、大勢の壁内人類に会って酔ってるんだな。まるで自分とそっくりだなんて共感してしまっている。
感受性が高すぎるのも考え物だな。今後はあまり訓練生に話しかけないよう注意しなければ)

エレン「俺なんか壁壊される前から調査兵団になりたいとか言って・・・・・・」

ライナー「ってことは巨人と遭遇した後も、その考えは変わらなかったってことか?」

エレン「殺さなきゃなんねぇと思ったんだよ、やつらを一匹残らずな」

ライナー(ああ、そうだな。俺も同じ考えだよ。この世から壁内人類を一匹残らず殺さなきゃならないと思ったよ。
そうでなきゃ、また故郷の惨劇が繰り返される)

ライナー「俺にも絶対曲がらないモノがある。帰れなくなった故郷に帰る、俺の中にあるのはこれだけだ。
絶対に、なんとしてもだ」

ライナー(エレン、俺とお前は似たもの同士だ・・・・・・
だからいずれ、絶望するぞ、真実を知ったら。いや知れば良いんだ、俺達の感じた絶望を)

ライナー「ベルトの調整から見直してみろ、明日はうまくいく」

ライナー(何せ、ベルトに細工をしてあるんだからな。せいぜい足掻いて絶望しろ、壁内人類め)

数日後、集合の日

ライナー「アニ、誰にも見つけられなかったか?」

アニ「当たり前だろ、それにしても木の上に集合だなんて昔を思い出すね。
まぁ、ここなら葉に隠れて顔も見えないし、悪くないね」

ライナー「昔と違って、今はいささか窮屈だがな。枝も折れないか心配だ」

アニ「ベルトルト、どうかしたのかい?顔色が優れないけれど」

ベルトルト「え・・・・・・あ・・・・・・うん」

ライナー「そういえば、お前、夜に訓練兵で話をしてからずっと様子がおかしいな。
どうかしたのか?」

ベルトルト「えと、その・・・・・・」

アニ「ベルトルト、あたしらの間では嘘は無しだって言ったよね?」

ベルトルト「ごめん、エレンの話が忘れられなくて・・・・・・」

ライナー「エレンの話?」

ベルトルト「彼の母親、僕が蹴った扉の石の下敷きになって、身動きがとれなくなったんだ」

ライナー「ああ、そう言ってたな。それがどうかしたか?」

ベルトルト「それで巨人に喰われて死んだ。彼は、凄く、凄く、僕のことを大型巨人を憎んでた」

アニ「ベルトルト・・・・・・」

ベルトルト「うっ・・・・・・ううっ僕は怖い・・・・・・、いつ僕が大型巨人だってバレて、エレンにうなじを削がれるか
それを考えると、夜も眠れないんだ・・・・・・エレンには顔も見られている、気づかれたら・・・・・・」

ライナー「エレンはどう見ても超がつく鈍感野郎だ、気がつくわけがないだろう」

ベルトルト「でも、もしものことを考えたら・・・・・・ううっもう嫌だ。北の開拓地の方が良かった
ここでは僕らを殺そうとしている人間ばかりが集まっているんだよ!怖くて・・・・・・怖くて」

ライナー「今後はあまりエレンと話をするな。そうだな、ジャンやマルコあたりと話をすればいい。
あいつらは憲兵団志望だ、そうすればエレンみたいに憎しみの声を聞かなくて済むだろう」

ベルトルト「でも・・・・・・エレンの母親を殺したのは、僕なんだ。エレンが巨人を憎むようになったのは
僕が原因で・・・・・・僕は・・・・・・僕は・・・・・・」

ライナー「ベルトルト!!!」

ベルトルト「」ビクッ

ライナー「なら、今更どうするんだ?エレンに謝るか?お前の母親を殺したのは俺だから許せって言うのか?」

ベルトルト「それ・・・・・・は、怖いよ・・・・・・嫌だよ」

ライナー「もう何をしても取り返すことはできない。こっちの奴らに優しくしても、もうお前は許されることはない
お前だけじゃない、俺もアニも」

アニ「ふっ・・・・・・あいつの母親を喰った巨人は私が呼び出したかもしれないしね」

ベルトルト「あ・・・・・・」

ライナー「だから、この人類のことは忘れろ。俺達のことを祝福してくれる、故郷の人間のことだけを考えるんだ」

ベルトルト「そうだ・・・・・・僕らは、もう許されないことをしでかしたんだ。許されることなんて、ない」

ライナー「だから、迷うな。お前の道は、もう決まっているだろう?」

ベルトルト「壁内人類を駆逐する、一人残らず」

ライナー「そうだ、それでいい、全員死ねば。お前を責めるやつもいなくなる」

ベルトルト「そうだね、全員死ねば・・・・・・故郷に帰れる・・・・・・早く帰りたい。
僕は早く故郷に帰りたいんだ。それだけなのに・・・・・・ううっ」

ライナー「ベルトルト・・・・・・泣くな、と言いたいところだが、ここでは泣いた方が良い」

アニ「あたし達の前でだけは弱音を吐いていいんだよ、ベルトルト。あたしらは仲間なんだから」

ベルトルト「アニ・・・・・・ライナー・・・・・・」

数日後、体術訓練

ライナー「イテテ、次はお前がならず者をやる番だ」

ライナー(まったく、こいつのせいでベルトルトは不安定になるし。
何とか痛い目に合わせてやりたいもんだ。
だが、訓練であまり圧倒的に強い所を見せてもな、疑われてしまうからな手加減しなければ)

エレン「そもそも獲物に素手で対処しようなんて馬鹿がやることだ・・・・・・」

ライナー「じゃあどう対処すれば良い」

エレン「逃げりゃいいんだそんなもん」

ライナー(こいつ・・・・・・逃げられたら苦労はしないんだ。
こっちは逃げられない状況に常に追い詰められてるっていうのに暢気なもんだぜ)

エレン「ガキの戯れとは違うん」

ライナー「お前の言いたいことはわかった、でもな、それじゃあやっぱり無責任だと思うぞ」

ライナー「俺達は兵士だろ?」
ライナー(俺達は戦士だ)

ライナー「いくら不利な状況でも逃げてはいけない時がある」
ライナー(250万の壁内人間に3人で向かわなければならないんだぞ)

ライナー「守る対象が驚異に晒された時、その間に入って盾にならなければならない」
ライナー(故郷やベルトルト、アニが危機に晒されたら俺は盾になって守らなけりゃならないんだ)

ライナー「相手が何であろうと、だ。俺達は大砲でも格闘術でも使いこなして力をつけなきゃならん」
ライナー(例え俺達と似た姿をしていても、憎いお前らの技術でも学んで自分の力にしなければならない)

ライナー「それが・・・・・・力を持つ兵士としての責任だと思う」
ライナー(それが戦士としての、俺の責任だ。故郷を救わなきゃいけない、俺の)

エレン「・・・・・・」

ライナー(何やってるんだ俺は、コイツに何でこんなこと言っちまったんだ。
コイツは敵なのに)

ライナー「うわぁ、なんか偉そうに説教なんかしちまった。訓練に戻ろうか・・・・・・ん?」

ライナー(アニのやつ、適当に訓練をサボってやがる。なるべく壁内人類の技術も
学んでおけとあれほど言ったのに。
そうだ、思いついた、あいつにエレンをけしかけて痛い目に合わせてやるか。
多少目立ったところで、あいつなら上手くかわすだろう)

ライナー「あの不真面目なやつにも説教だ」

ライナー「それ以上、身長を縮めたくなかったら、ここに来た時のことを思い出して
真面目にやるんだな」

ライナー(最初に悪口を入れたし、それほど仲良くは見えなかっただろう。
アニ、ちゃんと最初の頃を思い出して訓練に集中しろよ)

エレン「いッ!?」

アニ「もう行っていいかい?」

ライナー「まだだ、短刀をとりあげるまでが訓練だ!」

ライナー(うおお、えげつないぐらい強烈な蹴りだな。ああ取り上げた
まぁ少しはスカッとしたかな)

アニ「はい」

ライナー(なぜ、俺に短刀を渡す!?)

アニ「次はあんたが私を襲う番だね」
アニ(身長のことを話題に出したね、許さない・・・・・・!覚悟しな!)

ライナー「い、いや、俺は・・・・・・」

エレン「やれよ、ライナー。兵士としての責任を教えてやるんだろ?」

ライナー(くそっああいった手前・・・・・・引きにくい!くそっエレン、覚えていろよ!)

アニ「なぜ、この世界では巨人に対抗する力を高めたものほど巨人から離れられる、どうしてこんな茶番になると思う?」

ライナー(アニ・・・・・・?)

アニ「それが人の本質だからでは?」

ライナー(悪魔の末裔だからだ。上ばかり守り、下の者は搾取される)

アニ「私は、この下らない世界で兵士ごっこに興じられるほどバカになれない」

ライナー(いずれ駆逐する人類、その技術やルールを学ぶなんて馬鹿馬鹿しいという気持ちはわかる。だが)

ライナー「お前は兵士にとことん向かんようだな」

ライナー(だがやってもらわなければ困るんだ。俺達は内地に行って、壁を壊さなければならないんだから)

数年後

「訓練兵団解散式を終える!・・・・・・以上!」

ライナー「」チラッ
ライナー(いつもの所で集合だ)

アニ「」チラッ
アニ(わかってるよ)



アニ「遅れたね」

ベルトルト「ううん、女子は色々と大変だろうから、いいよ」ジッ

アニ「なんだい、じっと見て」

ベルトルト「い、いや別に、最近、アニ変わったなぁって」

ライナー(色気づきやがって、まぁ仕方が無いな。気を許せる女なんて
アニしかいないんだから年頃からしておかしくはない。俺はそれどころじゃないが)

アニ「はぁ?それはアタシに嫌味言ってるのかい?身長が伸びないって」

ベルトルト「そ、そういう意味じゃ無くて!」

アニ「じゃあ、どういう意味だっていうんだい」

ライナー「いい加減にしろ、いつになったら俺達は作戦会議が開けるんだ?」

アニ「ベルトルトのせいだよ、アタシは知らないね」

ベルトルト「ご、ごめん」

ライナー「まぁいい、始めよう。わかっていると思うが、明日が作戦決行日だ」

ベルトルト・アニ「・・・・・・」

ライナー「明日は、調査兵団がマリア奪還ルートを求めて出兵しているから守りは手薄だ。
加えて、俺達は駐屯団の研修のために壁上へ昇る。
ベルトルトは隙を見て、壁外へ下りて巨人化し、出入り口を破壊しろ、できるな?」

ベルトルト「うん、同じ班の人間にバレないといいけど・・・・・・」

ライナー「変身時は俺もついて、細心の注意を払うが、班のやつらにバレそうになったらアイツらを殺す」

ベルトルト「!?」

ライナー「何を驚いているんだ?何年も前から決まっていただろうが、アイツらは殺すと」

ベルトルト「そ、そうだったね・・・・・・殺されなきゃ、僕らが殺される、もんね」

ライナー「そうだ。それから、お前は壁の上にある砲台もはたき落とせ、あれがあると
巨人が侵入する妨げになる。利用できる巨人は一匹でも多い方が良い」

ベルトルト「わかった、一つ残らずはたき落とすよ・・・・・・」

アニ「そういえば・・・・・・」

ライナー「何だ、アニ」

アニ「エレン達の班も、砲台だったなって・・・・・・別にいいんだ、どうせ明日には死ぬんだから」

ライナー(こいつ、格闘術の一件から随分エレンと親交を深めていたな。余計なことをした)

ライナー「アニ、今回は巨人の呼び込みをしなくてもいい。しなくても、もう充分マリアの中には巨人が溜まっているからな
その代わり、俺達と一緒に行動して俺が鎧の巨人になった時はフォローをしてくれ」

アニ「ああ、わかった。今度はローゼの門をぶち壊すんだね?」

ライナー「今回は前と違って、巨人がいる町中をウロウロしても悪目立ちがしないからな。
壁の中に巨人が満たされた所を見計らって、巨人を討伐するふりをして集団に突入。その後、ウォールローゼの門を破壊する」

ベルトルト「で、でも憲兵団とか駐屯兵団とかが残っているよ?応戦されたら怖い、ミカサやエレンもいる」

ライナー「俺の硬化した肌をあの刃が通らないから、問題無い。安心しろ、ベルトルト、お前は何があっても俺が守る」

アニ「ちょっと、か弱い乙女のアタシのことも思い出してよ」

ライナー「もちろん、お前も守るさ。あまり必要なさそうだけどな」

アニ「余計な一言が多い!」

ライナー「いつっ!本気で蹴るのは辞めろよ、お前の蹴りは相当痛いんだからな!」

アニ「蹴られたくなきゃ、もっと乙女は大事にするんだね」

ライナー「わかったよ・・・・・・まったく締まらないな。明日重要な一歩を踏むってぇのに」

ベルトルト「重要な一歩?」

ライナー「何だ、わかってないのか?明日、ローゼを崩せば、残りはシーナだけだぞ」

ベルトルト「そうか・・・・・・僕らは成績上位者だから」

ライナー「あぁ、憲兵団としてシーナに潜り込める、それどころか王都の城塞まで行ける」

アニ「ローゼの中に巨人が充満したら、壁を壊して」

ライナー「任務は終わりだ!後は放ってほいても、壁内人類は滅ぶ、俺達は故郷に帰れるんだ」

ベルトルト「ほんとに、ほんとに、僕ら帰れるんだね!」

ライナー「ああ、それも3人で250万人の敵を倒した英雄として!」

アニ「英雄・・・・・・お父さんに会える・・・・・・」

ライナー(こいつらの不安と罪悪感が入り交じった顔が晴れたな、よかった。
そんな気持ちをもって、明日に挑まれたら困るんだ。
俺は、任務を果たして、こいつらを故郷に連れ帰るんだ。
そのためには、どんな言葉でも言ってやる)

ライナー「そうとわかったら、もう寄宿舎に戻って寝るぞ!
明日は沢山働くからな、とてつもなく疲れるだろう、鋭気を養っておけよ」

ベルトルト「うん」

アニ「ああ、わかったよ」

翌日


マルコ「今日も穏やかだなぁ、明日からようやく王都に行けると思うと嬉しい反面
何だかトロスト区が名残惜しくもなるね」

ベルトルト「そ、そうだね・・・・・・」

マルコ「ベルトルト、何だか顔色が悪いけど大丈夫?」

ベルトルト「え・・・・・・いや、その・・・・・・」

ライナー「ベルトルトークソしてぇならはっきり言えよ!」

ベルトルト「えっ!?」

マルコ「ああ、腹が痛いのか。まぁ壁の上は冷えるからなぁ、トイレに行ってきていいよ
ここは僕が適当に誤魔化すからさ」

ベルトルト「あ、ああうん、ありがとう!」

ライナー「俺もついでにいってくるわ」

マルコ「ライナーも?まぁいいけど、教官にバレないうちに戻ってきてくれよ」

ライナー「わかってんよ」

タッタッタッタッガッ

ライナー「ベルトルト、緊張した顔を見せるな」ボソッ

ベルトルト「ごめん、で、でもどうしても、今から殺す人々のそばにいると思うと・・・・・・
変な話だけど、僕、少しの間だけ忘れてたんだ」

ライナー「何を?」

ベルトルト「彼等を殺さなきゃいけないこと、僕は壁内人類で本当に壁を守るんじゃないかって
そんな気持ちになる時があって・・・・・・おかしいよな、僕は、壊して殺してきたのに」

ライナー「・・・・・・」

ベルトルト「ご、ごめんねライナー!変な事言って」

ライナー「3年は・・・・・・長すぎたな」

ベルトルト「ライナー?」

ライナー「おかしくなるには充分な期間だった。わかるよベルトルト、お前の気持ちが」

ベルトルト「ライナー・・・・・・」

ライナー「だが、それも今日でお終いだベルトルト。壊し尽くそう、思い出も
間違った記憶も、この街も。全て壊せば、もう思い出さなくて済む」

ベルトルト「あ・・・・・・ああ」

ライナー「俺達に必要なのは故郷の記憶だけだ、そうだろ?たった3年のことのために
長く過ごした故郷を忘れるのか?」

ベルトルト「そんなわけない!!」

ライナー「だったら、ベルトルト、わかるな?」

ベルトルト「ああ、わかるよ。僕はもうあの時みたいに迷ったりしない、行くよライナー」

ヒュッ

ドオオオオオオオオオオオオンンンンン

訓練兵「大型巨人だあああああああああ!!!」



ベルトルト(砲弾を全て落として、門を破壊しなければ)

エレン「五年ぶりだな・・・・・・」

ベルトルト(エレン!?)

ベルトルト(くそ、エレンが体にアンカーを刺した。早く振り落とさなければ・・・・・・!
でも僕の巨人は動きが鈍いから、間に合わない。エレンは立体機動の成績がいいんだ)

ベルトルト(エレンがうなじに辿り着く前に砲台を全て破壊しなきゃ!少しでも巨人の数を多く確保しないと
ライナーが巨人化できない!故郷が遠のく)

ベルトルト(エレンが、うなじにアンカーを・・・・・・くそっ蒸気を出してあっちに行け!ああ砲台は、もう充分倒した
もう良いだろう、戻ろう!)

シュウウウウウウウウウ

ライナー「よし、うまく蒸気に紛れて戻ってきたな」

ベルトルト「ああ、何とか。エレンにうなじにつかれたときは、どうしようかと思ったけど」

ライナー「エレンか・・・・・・あいつは何かとしぶといな」

マルコ「ライナー!ベルトルト!無事か!?」

ライナー「ああ、こっちは無事だ」

マルコ「良かった、作戦本部から伝令が来た。僕らも作戦に参加しろとのことだ」

ライナー(予想の範囲内だな。調査兵団がいない今、駐屯兵団だけでは足りないから
訓練兵の腕を借りるしか無い)

本部

ジャン「何で今日なんだ!明日から内地にいけたっていうのに!!」
ベルトルト(内地に行ってからじゃローゼの壁の上に昇る機会がなくなるからだ・・・・・・
ジャン、君には悪いと思うけどね。僕らも必死なんだ、君らを殺さなきゃ僕らが滅びる・・・・・・)

ライナー「おい、ベルトルト行くぞ。俺達は中衛部だ」
ベルトルト「ああ、今行くよ」

トロスト区市街

「うああああああ、助けてくれええええ」
「死にたくないよ、死にたくないよおおお」
「お母さん、おかあああさんんん」

ライナー(こんな時に母親を呼んでどうするんだ?
母親だってお前を助けることなんてできないだろう。誰も俺達を救ってはくれない)

カンカンカンカン

ベルトルト「一時撤退の鐘だ」
ライナー「追い詰められてきたみたいだな」

ライナー(順調に巨人達が侵入してきている。訓練兵達が壁を昇って向こうにいったら出遅れたフリをして
巨人化してローゼの門を突破するか)

ライナー「ん、なんだお前等。なんで壁を昇ろうとしない?」

ジャン「補給塔が任務放棄したんだよ。俺達はガス切れ・・・・・・こりゃお手上げだ、ちくしょう・・・・・・」

ライナー(アイツらが撤退すれば、死に様を見なくて済むと思ったんだが・・・・・・)

ライナー「くそっ」ガッ

ベルトルト「ら、ライナー?」

ライナー(俺は何を考えているんだ?これから殺すやつらの死に様を見なくて済む?だと
そんなのは欺瞞でしかないじゃないか、どうせ、俺の手で殺すっていうのに)

アニ「ライナー・・・どうする?」

アニ(予定が変わっちまった、ガス欠じゃああんまり遠くに行けない。でもライナーが巨人化しないと
ローゼは壊せない)

ライナー「まだだ、やるなら集まってからだ」

ライナー(ここに居る訓練兵を餌に集まってきた巨人達で偽装して巨人化しよう。
どうせ、こいつらは食い殺されるとはいえ、あまり見られるのは得策じゃない。
遠くに行くとガスも無くなるしな)

ミカサ「アルミン!エレンはどこ?」

アルミン「僕たち・・・・・・訓練兵34班・・・・・・壮絶な戦死を遂げました・・・・・・」

ライナー(34班がアルミン以外、死んだ?
トーマスは調子者だったが、周りを和ませる良い奴だった。
ミーナは笑い上戸で、アニにも話しかけていて、
それから良い奴が他にも揃っていて
エレン・・・・・・あいつは、最初はあんなバカ嫌いだった。
だけど、あいつは俺を慕って、よく話を聞きに来たり・・・・・・
あいつらが死んだのか・・・・・・)

ベルトルト「ライナー・・・・・・?」

ライナー「」ハッ

ライナー(何を考えてるんだ。さっきベルトルトにも言っただろうが
全てを殺すんだ。俺は、全てを殺すためにここにいる。
故郷を救うという大事な使命のためなら仕方が無いんだ。
どれだけ大きな犠牲を払っても、俺は使命を果たさなければならない。
そのためには心を鬼にして、昨日まで笑い合っていたやつらを殺しても
仕方が無いんだ)

ミカサ「今は感傷的になっている場合じゃ無い。本部の巨人を倒して、ガスの補給そすればみんな壁を上れる」

マルコ「しかし、いくらお前がいても、あれだけの数がいたら」

ミカサ「できる」

ライナー(ミカサならあるいは、できるだろう。ミカサは大きな障害だ・・・・・・
できるなら戦いたくない。違う感傷的な気分からじゃない。
なんとか、できるなら巨人に喰われて死んでくれるか
もしくは、ガスを補給してローゼで危険にも気づかず待機してもらいたい)

ジャン「オイ!!俺達は仲間に一人で戦わせろと学んだか!?本当に腰抜けになっちまうぞ」

ライナー「そいつは心外だな・・・・・・」

アニ・ベルトルト「!?」

ライナー(ここでついていかないと、おかしく思われる。行くぞ)チラッ

アニ・ベルトルト「・・・・・・」

ライナー(いっそ、補給所の中で巨人化して全員殺すのもアリかもしれない。
そうすれば、面倒は減るし、街の中に残った兵士達の帰還も妨害できる)

補給所内

ジャン「ソレを何とかするのがお前らの仕事だろうが!!」

ライナー「伏せろ!」

ライナー(アニとベルトルトは・・・・・・無事だな。
どうやら、俺が手を下すまでもないな。巨人にとりかこまれて、ここはさしずめ人間バイキングだ
どうせ無駄だ、お前等は全員死ぬんだ。俺達の故郷のために・・・・・・)

エレン巨人「アアアアアアアアア!」

ジャン「はぁ・・・・・・ありゃ、なんだ?」

ライナー(巨人を倒す・・・・・・巨人!?)

ベルトルト(まさか・・・・・・あれって)

アニ(座標!?)

ライナー「コニー!お前ら、あの巨人についてどこまで知ってる!?」

コニー「助かってからでいいだろ、そんなもん」

ライナー「そうだな・・・・・・まず助かってからだ」

ライナー(とりあえず補給所を確保して、話しはそれから聞き出せば良い。あれが座標ならローゼの壁を壊さずとも故郷に帰れる)

ベルトルト(もうシーナも壊さなくて済む)

アニ(これ以上、知り合いの死を見なくて済むんだ)

作戦中

マルコ「サシャとコニーだ!」
ジャン「急げ!援護を!」

アニ「ぐっ!」

コニー「アニ!すまねぇな・・・・・・」

アニ「どうも・・・・・・」
アニ(何やってるんだ、私、怪我したら大変だって言うのに。
でもあれが座標なら、もう誰も傷つけないで済むんだ
みんな助けられる)

ライナー「オイオイオイ、危なかったなアニ!
怪我をしなくてよかったぜ、本当に」

ライナー(アニは大事な仲間なんだ、こんなところでいなくなったら)

ベルトルト(何やってるんだよアニ、あいつらは殺すべき敵なのに
どうしてそんな肩入れを・・・・・・まさか君も・・・・・・)

ミカサ「共食いしている・・・・・・」

ライナー・アニ・ベルトルト「!?」

ライナー(やっぱりアレは・・・・・・)

アニ(座標なのか!?)

ベルトルト(あいつがいれば、故郷に帰れる!)

ミカサ「この絶望的な現状を打開する、きっかけになったかもしれないのに・・・・・・」

ライナー「同感だ!俺達で延命させよう」

ジャン「正気かライナー!!」

アニ(ここで、こいつが喰われたら、また任務が続くことになる・・・・・・全員殺さなきゃいけなくなる)

アニ「たとえば、あの巨人が味方になる可能性があるとしたら、どう?どんな大砲よりも強力な武器になると思わない?」

アニ(そう、とても強い武器になる。私は知ってる、その力を持っているから)

ミカサ「あ・・・・・・!!」

ジャン「さすがに力尽きたみたいだな・・・・・・
あんな化け物が味方なわけがない。巨人は巨人なんだ」

ライナー(いや違う・・・・・・限界に達したから、射出されるだけだ)

アニ(うなじが割れた、誰!?中に誰が入っているんだ?)

ベルトルト(ぼくらを故郷に帰してくれる人間、誰なんだ!?)


ライナー「エレン・・・・・・だと?」

ライナー(俺達をこの世で一番憎んでいる男が、座標、だと?)

ベルトルト(正体を明かしたら、間違い無く、僕は殺される。
巨人の力を持ったら、間違い無く・・・・・・僕は・・・・・・)

アニ(エレン・・・・・・どうしてアンタなんだ!)

~ローゼ内休憩所~

ライナー(駐屯兵団に発見され、隔離されたが・・・・・・どうする?)

ベルトルト(あそこで抵抗して、エレンを連れ去ることも可能ではあった
でも・・・・・・上手くいっただろうか?駐屯兵団に追われたら?
そもそも装備も整ってないのに、故郷まで遠征できただろうか?)

アニ(それに、まだエレンが座標だという確証は無い・・・・・・
一度エレンを捕まえてみないことには・・・・・・)

ドオオオオオオオオンンンンン

訓練兵「まさか!?巨人の水蒸気!?」

ジャン「ライナー!?」

ライナー(くそっ!まさか駐屯兵団の野郎に殺されたんじゃないだろうな!?
こんなことならやっぱり、あの時、あいつを連れて行けばよかった!)

ライナー「どうなってるんだコレは」

ライナー(くそっ剥きだしの巨人の骨格、煙でよく見えない。エレンは無事なのか!?)

アニ(嘘だろ、バカじゃないのか!?座標を殺すなんて。アレを失ったら、あんた達はまた、あたし達と殺し合いをすることになるんだよ!)

ベルトルト(煙が晴れた・・・・・・エレンは!?よかった、生きてる。アルミンが前に出てる、何をする気だ?)

ライナー(どちらにしろ、もう一度砲弾を当てたら)

アニ(ここにいる奴ら、全員殺してでもエレンを救い出す)

ベルトルト(故郷に帰る最短ルートを、こんな所で失いたくない)

アルミン「彼の戦術価値を説きます!」

ピクシス「ふむ、あの者等の話しを聞いた方がええ気がするのぉ」

~ピクシス演説後~

ベルトルト「穴を塞ぐ・・・・・・」

ライナー「ベルトルト・・・・・・」

ベルトルト「なぁ・・・・・・ライナー・・・・・・」

ライナー「なんだ・・・・・・」

ベルトルト「もし、エレンが座標だとしてさ」

ライナー「おい、ベルトルト!そんなこと、ここで」

ベルトルト「どうせ誰も聞いていないよ、みんな自分のことと、これからの任務で頭がいっぱいいっぱいだ」

ライナー「ああ、まぁそうだな」

ベルトルト「もしエレンが座標だとしたらさ、今日大型巨人が殺した人間は全員無駄死にだったことになるね」

ライナー「!!??」

ライナー「!!??」

ベルトルト「僕、いつも思っていたんだ・・・・・・何があっても故郷のため、故郷に帰るためなら仕方が無いって」

ライナー(俺だって、同じことを思っていた)

ベルトルト「だけど、エレンが故郷に帰る最短ルートだったなら、今日のは故郷のためじゃなくて
単純に僕らの失敗だったということに・・・・・・」

ライナー「ベルトルト!!!」

ベルトルト「」ビクッ

ライナー「だとしても、それはお前のせいじゃねぇ。お前にやれって言ったのは俺だ。
失敗したのは俺であってお前じゃねぇ、だから気に病むな」

ベルトルト「ライナー・・・・・・だけど」

ライナー「今は、エレンをどうやったら確保できるか、それだけを考えていろ」

ベルトルト「わかったよ、ライナー」


ライナー(今日死んだ奴らは、みんな無駄死に・・・・・・トーマスもミーナも全部
俺が、俺のせいで、俺の失敗で死んだ・・・・・・!)

ライナー「ぐっ」

ライナー(余計なことは考えるな、知らなかったんだ仕方が無い。でもエレンを手に入れれば
もうこれ以上は失敗を重ねなくて済む、エレンさえ手に入れれば)


アルミン「赤い煙弾・・・・・・失敗だったのか?」

ライナー(くそっエレンめ、どうせまだ巨人の体の扱いに慣れてないんだろう。
余計なことをして手間をかけやがって)

ベルトルト(死ぬ前に、どうにかして救助しないと)

ライナー「行くぞ、ベルトルト」

ベルトルト「ああ!」

上官「おい!お前等どこにいく!そっちは門の方だぞ!」

ライナー(どこだ、エレン!穴を塞ぐなんて息巻きやがって。いた!)

ベルトルト「岩・・・・・・持ち上げている」

ライナー「ああ、穴に向かってる」

ライナー(その下で大量の人間が死んでいる。俺が穴をあけさせたせいで・・・・・・)

ベルトルト「やめろ・・・・・・やめてくれよ。だって穴を塞いだら、本当に僕たちは意味の無いことを・・・・・・」

ドオオオオオオオオオ

ライナー「塞がっ・・・・・・た」

ベルトルト「ああ・・・・・・・・・可哀想に、みんな無駄死にだ。無駄に死んだんだ!僕らのせいで」

ライナー「やめろ、ベルトルト・・・・・・きっと、きっと死んだやつらは、そんなことは思わない」

ベルトルト「じゃあ、何て思うんだよ・・・・・・」

ライナー「何も知らないんだ、きっと・・・・・・人類の栄光のために尽くしたと思うさ。最高の死に方をしたと」

ベルトルト「はっ・・・・・・笑えないよ・・・・・・ライナー・・・・・・バカみたいじゃないか、そんなの」

ライナー(ああ、笑えない・・・・・・俺達は、命だけじゃなくて心情まで踏みにじったんだ。
最低のクソ野郎だよ・・・・・・)

ベルトルト「最初からやり直しだ・・・・・・調査兵団までもどってきた。これでエレンが座標じゃなかったら・・・・・・」

ライナー「だったら、今日の死は無駄にならないだろう。優秀な兵士を減らせたんだ、俺達はよくやった」

ベルトルト「不思議だよ。座標であってくれ、早く故郷に返してくれっていう気持ちしか湧かないと思ったのに。
今は、少し座標で無ければいいのにって思ってる。そうすれば、僕らの何年間の苦労が水の泡にならなくて済むからね」

ライナー「ベルトルト・・・・・・」

マルコ「ベルトルト!ライナー!こんな所にいたのか!」

ライナー「マルコとアニか、どうした?」

アニ「訓練兵は継続して残留した巨人の討伐を行えって指令がでた」

マルコ「本当は伝令なんて僕、一人でもよかったんだけど
ジャンが立体機動装置を壊して立ち往生していたし、念のためアニについてきて貰ったんだ」

ライナー「ありがとう、マルコ。それじゃあ、俺達は一度、補給に戻って・・・・・・」

マルコ「あのさぁ、二人とも怒らないで聞いて欲しいんだけど」

ライナー「どうした、マルコ突然改まって」

マルコ「もしかして、巨人について何か知ってるのか?」

ベルトルト「」ビクッ

ライナー「どうして、そう思った?」

マルコ「ただの勘だけど、エレンのこととか・・・・・・いやに熱心でまるで何か知ってる風だったからさ」

ライナー「ああ知ってるぜ」

ベルトルト・マルコ「!?」

ライナー「だが、お前よりとはいかねぇな。座学の成績はお前の方が優秀だからな」

マルコ「ライナー・・・・・・驚かすなよ。そうだよなぁ、そんなわけないよなぁ」

ベルトルト「そうだよ、そんなわけないじゃないか!僕らが何かを知ってるなんて」

マルコ「だよなぁ。いや馬鹿げた妄想なんだけどね、エレンが巨人の中から出てきただろ?
それで僕、もしかしたら大型巨人の中にも人が入ってるんじゃないかと思っちゃったんだ」

ライナー「へぇ・・・・・・それがどう、俺達に繋がるんだ?」

マルコ「妄想だよ?聞く価値なんてないよ」

ライナー「マルコ、俺達働きづめで疲れてるんだ。馬鹿げた話しでも聞いてリラックスしたいんだよ」

マルコ「じゃあ言うけど。もし中に人間が入ってるとして、何でよりにもよって今日来たんだろうって考えたら
もしかして、エレンと同じ訓練生だったからなのかなって思って。だって僕ら、明日には所属が決まるだろう」

ベルトルト「そうだね・・・・・・」

マルコ「壁の上に乗れる最後の日が昨日だっただろ。それで、門の上から壁外に出れたのは誰かって考えたら・・・・・・」

ライナー「考えたら・・・・・・?」

マルコ「あの時、二人でトイレに行ってたベルトルトとライナーじゃないのかって思って、いや馬鹿げてるよな、こんなのって・・・・・・」

ライナー「ああ、とんでもなく馬鹿げてるな」

マルコ「ライナー・・・・・・?なんで、こんな近くに?おい・・・・・・なんでそんな怖い顔を」

ライナー「生憎、この顔は生まれつきなんでね・・・・・・」

マルコ「なぁ、笑ってくれよ。馬鹿話でリラックス、したかったんだろ?」

ライナー「いや、あんまり面白くなかったな、マルコ。馬鹿な話じゃなかったんでね」

ベルトルト「ライナー・・・・・・!やるのか・・・・・・マルコだぞ!?」

ライナー「マルコ、お前はいつか今の馬鹿な話をジャンあたりにしちまうだろう。そしてジャンもまた誰かに
そこで、もし、万が一、頭の良い奴が、それを本気に受け取ったら、俺達は非常に困るんだ。
わかるな?マルコ」

マルコ「ま、さか、ライナー、ベルトルト、君ら・・・・・・!逃げるぞ!アニっ!」ダッ

アニ「マルコ・・・・・・!」バシュッ

マルコ「立体機動装置のベルトが・・・・・・!何をするんだ、アニ!返せよ、それがなきゃ、逃げられない!」

アニ「アンタは、もしベルトルトとライナーが犯人だったら、腕の立つアタシに助けてもらうつもりだったんだろうね」

マルコ「アニ・・・・・・まさか、君・・・・・・だって君ら、ほとんど話したことなんて仲の良いそぶりなんてなかったのに!」

アニ「マルコ・・・・・・何でアタシを選んだんだ、あんた本当に運が悪いよ」

ベルトルト「僕らには不幸中の幸いだけど・・・・・・」

マルコ「こ、このことは誰にも言わない、だから、お願いだから・・・・・・」

ベルトルト「ライナー、どうする・・・・・・?」

アニ「ライナー・・・・・・」

ライナー(エレンが座標か解らない今、真実を知ったマルコを生かし続ければ必ず俺達の障壁になる。
そして事情を話して、許して貰えるとも思えない)

ライナー「マルコ・・・・・・」ポンッ

マルコ「肩に・・・・・・手?ど、どういう意味だい、ライナー・・・・・・僕のこと、許してくれるってことか?」

ライナー「許しを乞うのは俺の方だ、すまないなマルコ」トンッ

マルコ「えっ・・・・・・嘘、だろ」

ヒュオオオオオオ

ドサッ

巨人「あああがああああああああ」

マルコ「やめろおおおお、嫌だ!ライナー!アニ!ベルトルト!助けてくれ!お願いだ!」

巨人「あうあうあー」

マルコ「お願いだ、立体機動装置を返してくれ!アニー!!!」

アニ「マルコ・・・・・・ごめんよ、本当に・・・・・・」

ボキッパキ

マルコ「うああああ、ベルトルト、お願いだ。誰にも言わないから助けてくれ!
僕ら、仲が良かったじゃないかああああああ」

ベルトルト「ううっうううううううっいやだあああああもう早く死んでくれよおおお
嫌だ、嫌だ、嫌だあああああああ」

ライナー「耳を塞いでいろ、ベルトルト」

マルコ「ライナー君は、君はみんなに尊敬される兵士だったじゃないか!どうして
どうして、こんな裏切りを・・・・・・あれは全部嘘だったのか!!!君は全部、騙してたのか!みんなを」

ダンッ

ライナー「全部嘘だったら、こんなに苦しいわけねぇだろ!!!くそくそくそくそくそ!!!!
俺だって、全部嘘であって欲しかったよ!楽しかった気持ちも、兵士としての充実も、
お前等に感じた友情も!!!全部嘘だったら、俺は・・・・・・俺は・・・・・・!!!!!」

ボキュッ

マルコ「うっ・・・・・・あ・・・・・・」ドサッ

ライナー「何で、嘘じゃないんだよ。楽しい気持ちも、殺さなきゃいけない現実も全部本物なんだ・・・・・・」

アニ「・・・・・・」

ベルトルト「ライナー、アニ、行こう。ずっとここにいたら怪しまれる」

バシュッ、バシュッ

バシュッ、バシュッ

ライナー(どうしてこうなったんだ?俺達は、故郷を守るために栄誉ある仕事についたハズだ。
何も、後悔することなんて、そんなこと無いハズなのに
なんで、俺はこんなに後悔しているんだ・・・・・・)

アニ(もうわかるんだ、アタシは故郷に戻っても英雄として笑顔を振りまくことなんてできない。
きっとずっとこの日のことを思い出して、後悔して泣きたいような気持ちで一生を過ごすことになる)

ベルトルト(僕に残ったのは故郷に帰ることだけ、でも故郷に帰ったら僕はどうするんだろうか?
アニに告白して、笑顔をふりまいて今まで通りの生活を送る?トーマスやミーナが送るはずだったような
そんな生活を?できやしない、できるわけがないんだ。
もう楽しい生活には全て、僕が殺した人々が繋がっているだ。そして僕を引きずり降ろす、後悔へと)


ライナー(ああ、もう何もかも忘れてしまいたい。何もかも忘れれば、楽になれるだろう)

スチャッ

アニ「そういえば、ライナー。マルコの立体機動装置。これどうしよう」

ライナー「何のことだ?」

ベルトルト「え?」

ライナー「そういえば、マルコはどこに行ったんだ?立体機動装置をほっぽって行くなんて」

アニ「ライナー?あんたどうしたんだい?」

ライナー「どうしたって?何か変なこと言ったか?兵士が立体機動装置を忘れるなんて由々しき事態だろう。おい、マルコー!どこにいる!」

ベルトルト「ライナー!!!さっき何があったのか忘れたの!?」

ライナー「さっき?エレンが、穴を塞いで、俺達は巨人を引きつけて。そうだ、人類の大勝利だ!やったな!アニ!ベルトルト!」

アニ「ライナー!?ねえ嘘でしょ、ライナー!」

ベルトルト「ライナー正気に戻ってくれ、君は、僕らのリーダーだろ?」

ライナー「おい、やめろよ。班長はマルコじゃないか、そんなこと言ったらマルコが悲しむぞ」

ベルトルト「違うよ!ライナー君は戦士だろ!僕らを率いる戦士のリーダーだ!」

ライナー「あっ・・・・・・ああ、あれ、すまない、俺はいったい」

アニ「ライナー、少し疲れているだけだよね?今日は色々、ありすぎたから」

ベルトルト「そうだよ、ライナー、君は僕たちを勝利に導いてくれる戦士なんだ。そうだろ?ライナー!」

ライナー「あ、ああそうだな・・・・・・」

アニ「アタシは、コレを隠しに行くから。ベルトルト、ライナーのこと、よく見ていて、お願いだよ」

ベルトルト「あ、ああ」

ライナー「・・・・・・」

ベルトルト「ライナー・・・・・・?」

ライナー「ベルトルト、見ろよ。夕日が綺麗だ」

ベルトルト「そ、そうだね」

ライナー「だけど、何かが足りない気がするんだ。俺は昔、もっと綺麗な夕日を見たことがある気がする。地平線に沈む美しい夕日を
おかしいよな、壁が邪魔で見えるはずないのに」

ベルトルト「ライナー!」

ライナー「早く、本部に戻らないと。沢山の兵が死んだんだ、きっと訓練兵の手でも借りたいはずだ」

ベルトルト「ライナー!待って!君は・・・・・・」

ライナー... でも仕方ないこいつはこうなっても仕方ない

ベルトルト(ライナー、君は見たんだよ。本当に地平線の向こうに沈む美しい夕日を僕と、アニとベリックとで)

コニー「ライナーどこ行ってたんだよ!お前らいないから生きてるか心配してたんだぞ!」

サシャ「良かったぁ~死んだかと思って心配してたんですよぉー!」

ベルトルト「あっ・・・・・・!」

ライナー「どうした?ベルトルト、何か言いたそうな顔をして」

ベルトルト(ライナー・・・・・・なんて笑顔で笑うんだ。なんて幸せな、そんな風に何もかも忘れたら僕も笑えるのか?
そんな風に・・・・・・君はここで、壁内人類と一緒に死んだ方が幸せなのか?)

ライナー「ベルトルトーいくぞー」

ベルトルト(だけど、ダメだよライナー。君がいなければ、僕らはエレンを、座標を手に入れられない。君の指示と力が無ければ
僕らは故郷に帰れないんだ・・・・・・僕らはたった3人で、この何百万人も敵がいる壁の中から、巨人に変化するエレンを連れ出さなければならないんだ)

ベルトルト「ライナー耳を貸してくれ」

ライナー「何だ?内緒話か?いいぞ」

ベルトルト「ライナー、僕らは戦士だ」

ライナー「!」

ベルトルト「たった3人の戦士だ、何が起きても救援は来ない。だけど任務は絶対中止できない。僕らが死ぬまで、死んでも」

ライナー「お、俺は・・・・・・」

ベルトルト「ベリックはもういない・・・・・・君まで失ったら、僕らはどうすればいいんだ?」

ライナー「悪かった・・・・・・ベルトルト、もう、もう大丈夫だ、きっと」

ベルトルト「いいんだライナー、いいんだ、君を助けるのが僕の仕事だから。だからライナー
ちゃんと僕を守ってくれよ」

ライナー「ああ、守るさ・・・・・・何が何でもお前とアニを守る。守って故郷に帰るんだ」

ライナー(これから、何が起ころうと。任務は続く・・・・・・俺達が座標を得るか、壁内人類が死ぬか、俺達が死ぬまでずっと)


ライナー(俺は・・・・・・)

ベルトルト(僕たちは)

アニ(いったいどこに帰ろうとしているんだろう・・・・・・)


Fin

まさか書き終わるのにこんなに時間がかかるとは思わなかったです。
当初の予定では49話ぐらいまで書くつもりでしたが体力的な問題でもう無理・・・・・・

最後までつき合ってくださった >>93 さん!ありがとうございました!!


すごい感動したんだけど、もしかしてこれってネタバレ?
俺はコミック11巻までしか読んでないんで…
まぁ面白かったから良いけど

>>101
あっ!ベリックの名前は確かにネタバレかもしれない。すまない
だが、それ以外は大体11巻以内の内容でしか書いていないはず・・・・・・

sageと名前入れるの忘れた・・・・・・すまない

>>102
ってことはこのストーリーはオリジナルなのか
作戦やライナーが狂っていく様はオリジナルなんだな
あんた凄いな!
本当に感動したし面白かったぞ!
良い物を読めた、ありがとう

>>105
ありがとうございます!
そこまで言って頂けると、とても嬉しいです。

次に書くSSの励みにします!

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