ゴキブリ英雄伝 (20)

俺は流離のクロゴキブリ
『風来坊のクロゴキ』たあ俺の事よ

旅した地は数知れず
アメリカ、カナダといった北アメリカ大陸
ブラジル、チリといった南アメリカ大陸
他にも中国、モンゴル、インドといったユーラシアは勿論、アフリカ大陸だって行った事がある
果ては南極大陸まで制覇したゴキブリだ

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そんな俺は久しぶりに故郷である日本に戻って来ていた
家族に会える喜びってものあるが、何よりの楽しみは残飯だ!

かなりのグルメな俺だがやはり日本の残飯が1番だった
早く食い散らかしたいぜ!

まあ取り敢えず家族に一言ぐれえ挨拶に言っとくか
兄弟たちもきっと俺の冒険話を楽しみにしているだろうからな

言葉が出てこなかった
嘗ての我が家は無残にもゴキジェットプロやバルサン、更には見た事もない最新の殺戮兵器がそこかしこにばら撒かれていやがった
当然ながら家族は皆息絶え、巣も完全に取り除かれていた

「糞おおおお! 俺らが何をしたってんだよおお!」

ようやく振り絞った声はそれだけだ
他にも色々浮かびはしたのだが、口に出す事が出来なかった

――どれだけ泣いただろうか
時間の感覚が解らなくなるほど喚いた俺はゆっくりと立ち上がる
そして俺は逃げるようにそこから立ち去った

見ていたくなかった
思い出してしまうから

感じていたくなかった
涙が零れてしまうから

きっと傍から見たらその様子は無様だろう、滑稽だろう
普段格好つけ野郎の俺では考えられない姿かもしれない
だが悲しみでいっぱいだった俺にはそんな事を気にする余裕は無かった

嘗て俺がよく食い漁っていた食品工場の廃棄場
そこで俺は憤怒の炎を滾らせていた

「俺の家族を殺した奴らを――殺してやる……、絶対にだ!」

しかし俺も所詮はゴキブリ
そこらのゴキブリより遥かに戦闘力が高いとはいえ、大勢の人間に襲われれば勝ち目はないだろう

「まずは同志を集めるか……」

そこら辺にうろついている低級のゴキブリを幾ら寄せ集めた所で、奴らの殺戮兵器には到底かなわないだろう
ならば――それに対抗できる強い耐性を持ったゴキブリを集めなくてはならない

思い立った俺は早速探し始めていた
そして情報屋を使っては強いゴキブリを探しては戦う


「手前が最近暴れ回っている野郎か」
「噂はかねがね聞いてるぜ、だが……それもここまでだ!」
「生きて帰れると思うなよ!」


多くの者は威勢よくかかってきた
しかし――どいつもこいつも俺の足元に及ばなかった


殺虫外套(イミプロトリン・オーバー)を纏った俺には

抗体を持たない雑魚には用は無かった
だからこそこの外套を纏い戦ったのだが――

「くそっ! 少しも耐性をもった奴はいないのかよ!?」

俺の足元は愚か、誰一人としてこの殺虫能力に耐えうる者はいなかった

――しかしそんな俺の前に突然現れた雄がいた

「強え奴を探してんだってな……」

いきなり現れたそいつは不敵な笑みを浮かべながら俺に近づいてくる
勿論強い奴なら願ったりかなったりだ
そう思いながら軽く構え――

俺は地に伏した

最初は何が起きたか解らなかった
しかし背中からの激しい痛みから、背後に回られ蹴られたんだと気付く

「おいおい、あの有名な『風来坊のクロゴキ』がその程度なのかよ」

這いつくばる俺に対し、嘲笑うかのように踏みつけてくる
どうやら最近怠けていた様だ

「悪い悪い、あまりに良い蹴りを貰っちまってコケちまった」

泥を払いながら立ち上がる

「詫びと言っちゃん何だが本気で行かせてもらうぜ」

俺はそう言い放つと殺虫外套を纏う

「そうこなくっちゃなあ」

それに対し、奴も何かを装着した

「名前を聞こう」

「俺の名前か?」

2人の距離はおよそ2m
実力が解らない以上、出し惜しみは無しだ

「オレに勝てたら教えてやるよ!」

そして俺達は激突した

「中々やるじゃないか!」

「貴様もなあ!」

お互いの実力は拮抗していた
だからこそ僅かに気を抜けばそれが命取りになる

「そろそろか……」

「……?」

奴が小さく呟いた気がしたが構わず攻撃を続ける
が、しかし――徐々に俺の動きが鈍くなってきてしまう

「くっ、何故だ!? この程度で疲労するなど!」

「ククク……、気付いていなかったのか? 己の体の異変に」

「何?」

「所詮はオレらは虫だからな。仕方ない、教えてやる」

敵は攻撃の手を休めぬまま、嘲笑する

「俺が使った武器はこれだ」

「ま、まさかそれは……凍える害虫駆除(ブリザード・ジェット)!」

驚愕する俺を楽しむかのように眺めてくる
だがあれは――!

「それは自らにも危険性が高いため自主回収(リコール)されたはずじゃ!?」

「だがその危険性を除けば俺は無敵って事だ。何せ虫は冷たさが解らねえからな」

「くっ――!」

確かに言われるまで寒いと気付かなかった
奴は危険を冒してまで勝とうと言うのか!?

「それにこれは人間を殺す為でもある……」

「なにぃ!」

「虫用の毒じゃせいぜい病気にするぐれえが関の山だろう。だが氷殺はどうだ!? これで人間の急所を狙えば間違いなく殺せるんだ!」

俺は奴に感嘆せざるを得なかった
正直俺は心の何処かで人間には勝てないと思っていたのかもしれない――いや、事実思っていたんだろう
だから殺虫剤に耐性を付けるなんていう生き延びる事を考えていたんだ

「お前の言葉で目が覚めたぜ」

そう言って俺は懐から嘗て旅に出るときに渡された物を取り出す

「何をするつもりか知らねえが、もうお前に勝ち目はねえぜ」

「それはどうかな?」

俺は厳重に包装されたソレを破り、解き放った

「なっ! それは――!」

「そう、これが俺の切り札――回避不可の魔籠城(ゴキブリホイホイ)だ!」

「待てっ! そんなものを解き放ったらお前だってタダじゃすまないぞ!」

「もう一度言おう、それはどうかな?」

引き攣った表情の敵に今度は俺が不敵に微笑む
流石の奴もこれには恐怖している様子だ

「今ならまだ負けを認めてやれば、解放を止めてやってもいいが……どうする?」

「自爆するつもりか……? その程度のハッタリでオレが止まると――」

「そうか、なら見せてやるよ!」

奴の言葉を待たずに解き放つ

「や、止めろおおおお! かか身体が勝手にいいいいい!」

驚愕の表情を浮かべる敵
考えとは裏腹に寄って行ってしまうのがこの魔籠城の恐ろしさだ
だが俺は涼しい顔で眺めているだけだ

「死ぬ前に教えてやる。俺の一族はこの魔籠城には途轍もない耐性を持っているんだよ!」

何せ俺の先祖は散々これに辛酸を舐めさせられた
だがお蔭でより強い抗体を得られたのだ

「ま、まて! 解った。ま、負けを認める! だからあっ!」

それを聞いた俺は素早くそれを折り畳み封印する

「――ッ! ふぅ……」

幾ら慣れたと言っても長時間は俺もきついのだ

「はぁはぁ、まさかそんな危険なものを使うとはな……」

「お前の人間に対する思いに感銘してな。俺も半端な覚悟じゃ駄目だともとっただけさ」

「……完敗だ。これからはお前に従おう」

「そんなに畏まらなくて良い。これから共に戦う同士なんだから」

「そうか、ではオレの名はガイアナオオゴキブリ。アメリカじゃオレに敵うものはいないぜ」

固く握手をする俺達
こうして俺は新たな仲間と共に旅を続けるのだった

ルートダブルを書かずに余計なものを書いてしまったwww
筆が乗ってついつい

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ルートダブルの応援宜しくねえw
ルートダブル -Before Crime * After Days-【√Crazy】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1379149398/)

どうでもいいけどゴキブリ用の殺虫剤で変わったものってあるのだろうか?
まあ次書くか解らんけど

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