妹「お兄ちゃん……お願いだから部屋から出てきて……」(799)

ほら、妹だってこう言ってるんだ

な?

妹「兄貴ァ、腕はどんなだ?」
兄「こっちに来て確かめろ!」

てす

てす

男「嫌だ」

妹「…なんで?」

男「何度も言ってるじゃん、部屋にいるだけで生きていけるから」

妹「……。」

男「俺、お前になにか迷惑でもかけてるか?」

妹「……。」

男「分かったら、もう俺に構うなよ」

妹「…お兄ちゃん」

男「なんだよ」

妹「…ううん、なんでもない」

妹「晩ご飯、ここに置いとくね」

男「おう」

妹「……。」

男「……。」カタカタ

妹「…うー」
妹「お願いだから…出てきてよぉ」

男「…ふう」

ピコン♪

男「…ん?」

tomo:男

男「……。」

カタカタ

刹那戦士:どうした?

tomo:今日、また妹さんが相談に来たぞ

刹那戦士:俺を部屋から出そうってか?

tomo:そう

刹那戦士:ちょうど今、俺にも説得に来たよ

男「……。」

男「……。」

男「…ん、返事が来なくなった」

ピコン♪

男「あ、来た」

tomo:だからか

刹那戦士:あ?

tomo:今、電話が来た

刹那戦士:妹から?

tomo:おう

tomo:泣いてた

男「……。」

カタカタ

刹那戦士:たく、あの野郎

刹那戦士:迷惑かけて悪いな、いつも

tomo:別に、迷惑なんかじゃないけれども

tomo:誰のせいでこうなってると思うんだ?

男「…はあ」

カタカタ

刹那戦士:俺のせいだけど?

tomo:このやろう…

刹那戦士:でも、俺、あいつになにも迷惑かけてねえし、放っておいて欲しい

tomo:お前が引きこもってるっていう状況がすでに迷惑なんだよ

男「……。」

刹那戦士:俺なんていないと思ってくれればいいのに

刹那戦士:そうすれば、あいつはいらない心配をしなくて済むし

カタカタ

刹那戦士:なにより、俺も余計なことを考えなくて済む

男「…また、返事が止まった」


tomo:無理だろ、そんなの

刹那戦士:なんで?

tomo:分かってるくせに

tomo:お前らが、兄妹だから、気にかけるに決まってる。気に病むに…決まってるだろ

男「…はあ、いつもこれだ」

カタカタ

刹那戦士:やめよう、毎回不毛な言い争い、飽き飽き

tomo:不毛じゃねえ

tomo:第一、誰のためにみんな頭抱えて悩んでると思ってるんだか

男「……。」

刹那戦士:誰も悩んでくれなんて言ってない

tomo:

刹那戦士:どうした?白紙で送られても、俺には行間を読む繊細さなんて無いぞ?

刹那戦士:なんせ、社会生活不適応者だからな、自分本位にしか物事が考えられねえ

刹那戦士:おい、どうした?言い争いしようじゃねえか、不毛じゃない議論、しようぜ

刹那戦士:誰かさんのために悩んでくれてるんだもんな、俺にはなにも言い返す権利なんかないだろうけどな

tomo:分かった!悪かったから、キレるなよ駄々っ子

男「駄々っ子って…こいつ、話を収める気ゼロだな」

男「…俺も調子乗って書きすぎたけど」

tomo:悪かったよ、俺の言い方が悪かった。ちょっと恩着せがましかったな、気に障ったよな?

刹那戦士:聞くんじゃねえよアホ…お前わざと煽ってるだろ?

tomo:あ、ばれた?

刹那戦士:このやろう…

tomo:はは

tomo:スキンシップスキンシップ

男「…はあ」

tomo:でも、撤回はしないからな

tomo:俺も、妹さんも、お前のために、悩んでる

tomo:いくらお前がやめろって言ってもな

tomo:分かってるとは思うけど

男「……。」

tomo:さてと、じゃあそろそろ妹さんを宥めてくるよ

刹那戦士:すまん

tomo:気にするな、友達に遠慮は無用

tomo:またなんかあったら報告する

刹那戦士:おう

tomo:あと、明日お前んち行くから

刹那戦士:部屋汚いぞ?

tomo:なにを今更

刹那戦士:はは、じゃあな

tomo:ノ

[tomoさんが、退室しました]

男「…ふう」

男「……。」

男「この、終わった後の静けさってのがなんともいけない」

男「繋がりが切られたこの感じ、この虚しさ」

もっと他人と繋がっていたい
孤独は、感じたくない

男「…ひきこもりってのは精神が強くないとやっていけねえなぁ」

男「…さ、寝るか」

『男君、この問題教えてよ』

『すげえな、お前。俺にはなにやってるかさっぱりだぜ』

『じゃあ、そうだな…男、お前なら分かるだろ?この問題、黒板で解いてくれ』

『やっぱり、男君はあの高校受けるの?』

『男君だったら絶対受かるよねー』

『羨ましい、俺にも勉強教えてくれよ』

『男君がいてくれて良かった、こんなに分かりやすく教えてくれる人、そうそういないよ』


男「……。」


『…え、落ちた?』

『滑り止めも?全部落ちたの?』

『なんていうか、その…そういうことも、あるんだな…』

『で、でも大丈夫だよ。男君なら一年つまずくくらいどうってことないし』

『そうそう、来年もう一回受けて入れば余裕余裕』


男「……。」

『2年連続で落ちるって…』

『男君…どうしたの?』

『高校受験2浪って…』

『…あ、いや、なんでもないけどさ』

『……。』

『……。』

『…あ、俺用事あるからさ』

『男君、これからどうするの?』

『挫けちゃだめだぞ、応援してるからな』

『男君、頑張れ』

『高校、楽しいところだぞ、2年も足踏みしてんじゃねえよ』

『頑張れ、男君』

『男君』

『男君』

『…駄目だな、こいつ』

ピピピピピピピピ

男「……。」

ピピピピピピピピ

男「……。」

ピピピピピピ カチッ

男「……。」

男「…なんだこれ」

男「……。」

男「……。」

男「…おい」

妹「……。」ビク

男「おい、妹」

妹「…わ、わたしですか?」

男「そうだよ、お前だよ」

妹「う、うー…」

男「ひとつ、聞いて良いか?」

妹「は…はいな」

男「この目覚まし時計、なに?」

妹「と、友ちゃんが…『駄目人間を更正させるにはまず早起きをさせるべし』って」

男「……。」

妹「だから、目覚まし時計で起こそうと思って」

男「ん、理解した」

妹「…うー」

男「あいつ…嫌がらせの仕方が陰湿だな」

妹「ご、ごめんなさい」

男「いや、妹は悪くない」

妹「…朝ご飯、作ってあるけど」

男「…ん?」

妹「持ってこようか?」

男「…いらね、もう一回寝る」

妹「…分かった」

妹「起こしちゃってごめんね、お兄ちゃん…じゃあ」

男「妹」

妹「なあに?」

男「寝ぐせ」

妹「え?」

男「酷いぞ、ここ」

妹「え、あ…ほんとだ」

男「ちゃんと直してから学校行けよ」

妹「恥ずかしい」

男「なに言ってんだか、今更」

妹「うー…やぁ」

バタン

男「…はあ」

男「まだ6時前かよ…」

男「妹だって普段こんな時間に起きないだろ」

男「……。」

男「……。」

男「…俺のため、か?」

男「男友の言葉を真に受けて?」

男「……。」

男「……。」

男「寝ぐせ直す前に、朝ご飯作って…」

男「……。」

男「……。」

男「…いい迷惑だな、たく」

男「二度寝しよう」

男友「ちーっす」

男「ノックくらいしろ」

男友「やましいことしてるわけでもあるまいし」

男「マスかいてるかもしれねえだろ」

女「……。」

男「…え?」

女「最低」

男友「お前、女の前でよくそんなこと言えるな…」

男「来てるなら言えよ!」

男友「今日は女も一緒だぞ」

男「今言うなよ…」

女「別に私、妹ちゃんと遊びに来ただけだし、じゃあ」

男友「あーあー…」

男「…このやろう」

男友「俺のせいじゃないだろ…」

男友「相変わらず、きたねえ部屋」

男「このほうが便利だって最近気づいた」

男友「それに、イカ臭い」

男「しょうがねえだろ、それは」

男友「しょうがなくねえよ…ティッシュが散乱してるのがもう生々しくて」

男「片付け手伝う?」

男友「触りたくもねえ」

男「だろうな」

男友「女が来るってのによくこんな部屋見せれたな」

男「来るって知ったの、さっきだからな…」

男友「…なんだ、その…悪かった」

男「いや、良いよ。今更なにを知られても、評価はなにも変わらないだろう」

男友「……。」

男「なんだ?」

男友「いや…なにも」

男友「こんな部屋、妹さんがよく許すなー」

男「許さねえよ?」

男友「へ?」

男「毎週日曜日は、あいつが俺の部屋を掃除する日」

男友「……。」

男「ん?」

男友「毎週?」

男「うん、毎週」

男友「今日は木曜日だから…お前、4日間でここまで部屋を汚くするのか」

男「他の奴らとは部屋に依存してる時間が違うからな」

男友「ティッシュとかも妹さんが片付けてるのか?」

男「おう」

男友「あそこにあるエロ本とかAVの整理も?」

男「おう、あいつは俺が持ってる物も俺の趣味嗜好もすべて把握している」

男友「…制服フェチのロリコンだってバレてるのか」

男友「なんか、引きこもってから神経図太くなったな、お前」

男「じゃないと引きこもりなんてやっていけない」

男友「それと、前言撤回しろ」

男「は?」

男友「妹さんに迷惑かけてないってやつ、お前これ以上無いくらい迷惑かけてんじゃねえか」

男「…でも誰も頼んでな――」

男友「頼まれなくても、自分の家に不潔な場所があったら掃除したくなるわ」

男「……。」

男友「…はあ、可哀想に」

男「これからは少し、気をつける」

男友「あと、4日間でマスかきすぎだろ…どんだけティッシュ散乱してんだよ」

男「それは男友も引きこもってみれば分かる」

男友「あ?」

男「暇だと、自慰くらいしかやることがない」

男友「……。」

女「……。」

男「…ん?」

男友「お、どうした女」

女「二人して、なんの話してるかと思ったら…」

男「女も入る?猥談」

男友「おお…こいつ、開き直って女を誘いに入りやがった」

女「妹ちゃん、いないんだけど」

男「いないよ、買い物に行ってるし」

女「……。」

男「ん?」

女「先に言えっ!」ブンッ

男「おわっ!危ねえ!」

男友「…なんだそれ?」

女「…ママから男に。寒いから、あげるって」

男「…手袋?」

男友「なんだ?手作り?」

女「…へ、下手くそなのは許してあげて、ママ不器用だから」

男「俺、別に外出ないし寒くないんだけど」

女「外くらい出なさいよ」

男「…引きこもりという前提を根本から覆す発言だな」

女「こんな不潔な部屋にいても健康に悪いだけじゃん」

男友「俺もそれに異論はない」

男「……。」

女「まず、この臭いが耐えられないし…」

男友「なんの臭いか教えてやろうか?」

女「いいです!」

男「……。」

女「とにかく…一人が嫌なら私も付き合ってあげてもいいし」

男「……。」

女「ど、どうしてもって言うならね!私が暇なときに、す、少しくらいなら…だから…」

男友「だってさ、男」

男「…ん、ありがとな、女」

女「お、お礼ならママに言ってよ。私は届けただけだし」

男「ここ、ほつれてるけど」

女「え、嘘!私ちゃんと――」

男「嘘だよ」

女「……。」

男「ありがと、女」

女「…ふん、馬鹿」

男友「…俺、お邪魔?」

女「へ、変なこと言うな!」

ガチャ

男「お、妹が帰ってきたな」

女「ふう、やっとこの汚い部屋から出て遊べる…妹ちゃんー」

男「……。」

妹「あ、先輩来てたんですかー!」

女「うん、久しぶりにちょっとねー」

妹「お兄ちゃんの為にわざわざありがとうございます」ペコ

女「だ、誰があんな奴のためなんか!妹ちゃんと遊ぶために来たんだよ」

妹「え?あ…でも私今から晩ご飯作らないと…うー」

女「あ、じゃあ私も手伝うよー」

妹「そんな悪いですよ」

女「遠慮しないのー」

妹「あ…じゃあ、お願いします」

女「この家のキッチンでご飯作るのも久し振りだなー…ふふ、男の嫌いな物ばっかり入れてやる」

男「……。」

男友「……。」

男「女も変わってねえな」

男友「ああ…懐かしいか?」

男「まあな」

男友「あいつも、お前のことをいつも気にかけてるからな」

男「そっか」

男友「……。」

男「……。」

男友「…はあ」

男友「なあ、男」

男「なんだ?」

男友「お前、女と寄り戻せよ」

男「…は?」

男友「そのほうが、きっと良い」

男「今の、どこからそういう話になったんだ」

男友「俺の頭の中で」

男「……。」

男友「お前もそのほうが良いと思わないか?」

男「……。」

男「…俺の意志なんて関係ねえよ」

男友「……。」

男「一般常識として、引きこもりと付き合いたいと思う馬鹿なんていねえだろ」

男友「引きこもりに一般常識が通用するとは思わなかったが」

男「てめえ――」

男友「それに」

男友「別れたのは、お前の意志だろ?女の意志じゃねえ」

男「……。」

男友「そうだろ?」

男「…それは」

男友「それは?」

男「あいつは、優しいから」

男友「…ん?」

男「……。」

妹「お兄ちゃーん」

男「ん、どした?」

妹「先輩がカレーとシチュー、どっちがいい?だって」

男「シチュー」

妹「わっ」

男「なんだ?」

妹「ううん、先輩の言ったとおりだったから」

男「…?」

妹「『あいつ絶対にシチューって即答するから』って」

男「……。」

妹「やっぱり先輩はお兄ちゃんのことなんでも分かって――」

女「よ、余計な話はしなくていいからさっさと戻ってきなさい!」

妹「は、はーい」

トットット

男友「…な?」

男「なにが、『な?』だよ…」

                           __,,:::========:::,,__
                        ...‐''゙ .  ` ´ ´、 ゝ   ''‐...
                      ..‐´      ゙          `‐..
                    /                   \

         .................;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::´                      ヽ.:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.................
    .......;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙      .'                            ヽ      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;......
  ;;;;;;゙゙゙゙゙            /                           ゙:               ゙゙゙゙゙;;;;;;
  ゙゙゙゙゙;;;;;;;;............        ;゙                             ゙;       .............;;;;;;;;゙゙゙゙゙
      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;.......;.............................              ................................;.......;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙
                ゙゙゙゙ i;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;l゙゙゙゙゙
              ノi|lli; i . .;, 、    .,,            ` ; 、  .; ´ ;,il||iγ
                 /゙||lii|li||,;,.il|i;, ; . ., ,li   ' ;   .` .;    il,.;;.:||i .i| :;il|l||;(゙
                `;;i|l|li||lll|||il;i:ii,..,.i||l´i,,.;,.. .il `,   ,i|;.,l;;:`ii||iil||il||il||l||i|lii゙ゝ
                 ゙゙´`´゙ -;il||||il|||li||i||iiii;ilii;lili;||i;;;,,|i;,:,i|liil||ill|||ilill|||ii||lli゙ /`゙
                    ´゙`゙⌒ゞ;iill|||lli|llii:;゙i|||||l||ilil||i|llii;|;_゙ι´

男友「…まあ良いや、ちょっかいはこれくらいにしとこう」

男「ちょっかいって、やっぱりからかってただけだったのか」

男友「いやいや大真面目よ…さてと」

男「帰るのか?」

男友「不衛生なこの部屋にもっといろってか?」

男「人の部屋を汚い汚い言いすぎだ」

男友「事実だろ…また来るよ」

男「週始めに来るのをお薦めするよ」

男友「そうらしいな」

男「じゃあな」

男友「おう」

男「…そうだ、男友」

男友「あ?」

男「早く妹に告白しろよ」

男友「…馬鹿言え」

保守
御飯食べてます

保守

妹「私がどうかした?お兄ちゃん」

男友「おわっ!」

男「なんだよ、またなんか用か?」

妹「うん、友ちゃんも食べていくか聞いてだって」

男友「俺?いいよ、もう帰るところだし」

妹「もう帰っちゃうの?」

男友「誰かさんと違っていつまでも暇なわけじゃないからなー」

男「……。」

妹「…そっか、帰っちゃうのかぁ」

男「ほら、可愛い妹ちゃんが寂しがってるぞ」

男友「な、なに言ってんだ!」

妹「べ、別に寂しいわけじゃ…ないけど」

男友「……。」

男「おーい、男友がショック受けてるぞ」

妹「あ、ううん、違うよ!勿論寂しくもなるけどね…その…」

妹「友ちゃんがいると…お兄ちゃん、明るいから」

男「……。」

男友「……。」

妹「それ見てるとね、私、嬉しいの」

男友「…だってよ、男」

男「いや、お前に言ってんだよ」

男友「お前、普段どんだけ妹さん心配させるような生活してるんだよ」

男「…別に、変わらないけどな」

妹「……。」

男友「いや、食べたいのは山々なんだけど、家にももうご飯があるからなぁ」

妹「あ、そっか…」

男友「んー」

男友「…それじゃあ、こうしよう。今度みんなで外食でもしようぜ」

男友「な、それでいいだろ?妹さん」

男「…だから、俺ってば絶賛引きこもり中なんだけど」

妹「…うん、覚えとく」

男友「よし、じゃあ今日のところはお暇するよ」

男「…無視かよ」

妹「またね、友ちゃん」

男友「おう」

男友「あ、あとなー」

妹「…?」

男友「女は食ってくんだろ?じゃあ男、明るいから大丈夫」

男「……。」

妹「あ、そうかも」

男友「なんだったら妹さんは途中で席を外してさ、二人っきりに――」

男「いらんこと言うな」

男友「おっと、じゃあな妹さん」

妹「うん、またいつでも来てね」

男「…たく」

女「あれ、男友帰っちゃった?」

男「今丁度な」

女「…じゃあ、私も帰ろうかな」

妹「え、なんでですか?」

女「いやいや、私だけ晩ご飯いただくのはなんか図々しいし」

妹「そ、そんなことないですよー、一緒に食べましょうよ」

女「でも、ねー」

妹「作ってくれたのほとんど先輩ですし」

女「妹ちゃんを手伝っただけだよ?」

妹「で、でもぉ…」

女「…うん?」

男「…よく分かんねえけど、妹が食べていって欲しそうだし、食ってけよ女」

女「え…男?」

男「うん、どした?」

女「…う、ううん、あんたがそういうとは思わなかったから」

男「妹、一人で食うの寂しいんだ、きっと」

女「…一人?」

男「ん?」

女「あんたは?」

男「俺は自分の部屋で食うから」

妹「……。」

女「いつもそうなの?妹ちゃん」

妹「はい…」

女「…はあ」

男「なんだよ」

女「なんでもないわよ…妹ちゃん、晩ご飯の用意するから一緒に来て」

妹「は、はい…えっと、一緒に食べてくれるんですか?」

女「うん、お邪魔になるね」

妹「いえいえ、喜んで」

男「…?」

女は俺が貰ってやるから男は引きこもっとけよ

男「…で」

女「美味しいねー妹ちゃん」

妹「はい、そうですねー!」

男「…なんで俺の部屋で食べてるんだ、お前ら」

女「な、なんでって…妹ちゃんがあんたと一緒に食べたそうにしてたから」

男「……。」

女「どうせ、一緒にリビングで食べようって言っても来なさそうだし」

男「だからって、俺の部屋で食べるなよ…」

女「こ、こっちだって我慢してるのよ?誰が好き好んでこんな不潔で不衛生で不摂生な部屋で食べようなんて…」

男「いや、じゃあ出てけよ」

女「いやよ」

男「なんでだよ」

女「あんたが出てけば?」

男「なんでそうなるんだよ!支離滅裂すぎんだろお前」

妹「…ふふ」

男「…妹?」

妹「お兄ちゃんも先輩も、楽しそう」

男「どこが」

女「…ふん、妹ちゃんと食べれて嬉しいくせに、可愛くない」

男「可愛くなくて結構。それに、別に嬉しくもねえよ」

女「ちょっとじゃがいも入れすぎちゃったかな、妹ちゃん」

男「聞けよ、おい」

妹「えへへ、嬉しいなぁ」

男「……。」

女「…妹ちゃん」

妹「お兄ちゃんと一緒にご飯が食べれるなんて…私、ちょっと泣いちゃいそう」

男「…なにをそんな大げさな」

女「そんなこと思わせるくらいに妹ちゃんを追い込んでたってことでしょ、馬鹿」

男「……。」

女「あんたの自己チュー具合はよーく知ってるけどさ…妹に心配かけさせないくらいにはきちんとお兄ちゃんの役目、努めなさいよ」

男「……。」

女「返事は?」

男「…するかアホ」

女「空気読め、バカぁ!」

妹「…お兄ちゃんと先輩って、ほんとに仲が良いですね」

女「どこが!」

男「どこがだ…って、返事早いな女」

女「誤解は早めに解かないと」

男「お、なるほど」

妹「ふふ、息もぴったりだし」

女「……。」

男「どこがだよ…って、今度は突っ込まないのかよ」

女「……。」

男「…女?」

女「…ま、こいつと私、ずっと一緒にいたからね。息だって合っちゃうよ、どうしても」

男「……。」

妹「先輩…」

女「…そ、それと、仲の良さは別だけど!誤解しないでよねッ!」

男「…はは」

女「私、あんたのこと嫌いだし!」

男「…わざわざ言われなくても、そうでしょうね」

妹「…え…え?」

女「……。」

男「分かってるよ、それくらい」

女「~~ッ!?」

男「ん、どした?」

女「…あんたの、そういうところが特に嫌いなの!」

妹「…あ…先輩…お兄ちゃん」

男「…なんだよ」

女「……。」

男「……。」

妹「…あう…うー」

女「…やめよう、妹ちゃんもいるし」

男「…ああ、シチューも冷めちゃう」

妹「…うっ…うっ」

女「ごめんね、妹ちゃん、驚かしちゃったね」

男「こんなん、いつものことだったからな。気にするな」

妹「…喧嘩は、嫌ぁ」

女「はいはい、もう仲直りしたから。ほら男、あーん」

男「なっ!?なんだそれ、誰がそんなこと…むぐっ」

女「ほら見て、こんなに仲良し!だからもう大丈夫だよ?」

妹「…ほんとに?」

女「ほんとほんと、ね、男?」

男「…ああ」

男「まあ、手が出なかった分、今日の女は大人しかっ…だっ!」

女「あ、ごめん、狭いから足が当たっちゃった」

男「…この野郎」

妹「お兄ちゃん?」

男「あ、いや、なんでもない」

女「…とにかく、これからは妹ちゃんと一緒に食べるようにしなさいよ?」

男「気が向いたらな」

女「……。」

男「……。」

女「……。」

男「…努力するよ」

女「よろしい」

妹「ほんとに?お兄ちゃん、一緒に食べてくれるの?」

男「…お前がこの部屋で食うならな」

妹「わぁ…うん!絶対食べるよ!えへへ、嬉しい」

女「…でも、どうなのよこの部屋」

男「うん?」

女「乙女と一緒に食事をして良い部屋じゃないでしょ、これ」

男「乙女?…って痛え!」

女「言うと思った…じゃなくてね、この…なんていうか、少しは隠しなさいよ」

男「…スルーしてくれよ、お前が来るって分からなかったんだから」

女「私が来るかどうかじゃなくて…妹がいる身としてどうなのよ、これは」

男「どうって言われても…だって、なあ?」

妹「……。」

女「なによ」

男「…今更、隠したってもう遅いというか」

女「…?」

男「たぶん妹のほうがなにがあるかとか把握してるだろうし」

妹「そ、そんなことないよッ!」

女「…へ?」

女「…片付けさせてる…なによそれ」

男「頼んでないのに、妹が勝手…に゛ぃ!?」ゲシッ

女「そういう問題じゃない」

妹「…でも、ほんとに私が勝手に片付けてるだけですし」

女「こんな奴の部屋なんてどうなろうと放っておけばいいのよ」

男「人のこと指差すなよ」

女「男みたいな人は放っておいて一度病気とかになったほうが懲りると思うし」

妹「お兄ちゃんが病気になるのは、嫌ぁ」

女「…はあ」

女「妹ちゃんはこんなにいい子なのに」

男「…なんだよ」

女「なんでもない」

妹「お兄ちゃんのためだから、なにも嫌なことはないですよ?」

女「…んー」

寝たらスレ落ちるよね…

寝ます…朝、いや、昼ごはんまえには来ます
最近完結するまえに落ちちゃうから完結したいな…

保守時間目安 (休日用)
00:00-02:00 40分以内
02:00-04:00 90分以内
04:00-09:00 180分以内
09:00-16:00 80分以内
16:00-19:00 60分以内
19:00-00:00 30分以内

保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 60分以内
02:00-04:00 120分以内
04:00-09:00 210分以内
09:00-16:00 120分以内
16:00-19:00 60分以内
19:00-00:00 30分以内

保守ありがとうございます
書きます

男「…なんでお前がそんな真剣に考えてるんだよ」

女「可愛い後輩が過酷な労働強いられてるからに決まってるでしょ!」

男「だから別に強制させてるわけじゃ――」

女「喋んなバカ」

男「なんでだよ!」

妹「…私、お兄ちゃんのお部屋掃除するの楽しいですよ?」

女「妹ちゃんも、出来ればもう少し嫌がって…」

妹「…?」

女「妹ちゃん、普通の女の子はね?こういう本とか、こういうDVDとかね…えっと…その…そ、そう!汚いから触っちゃいけないの!」

男「説明がざっくりしてるな…」

女「デリケートな問題だから」

妹「…なんでですか?」

女「第一、こういうの持ってる男の人って、変でしょ?」

妹「友ちゃんが、男子は仕方ないって…」

女「…あいつー、男を庇ったな」

男「いや、おかしくねえし、男子はだいたいそんなもん」

女「嘘つくな」

男「嘘じゃねえって。みんな何かしら持ってるって、人間だもの」

妹「……。」

女「……。」

男「な、お前も納得だろ?」

女「……。」

男「…ん?」

女「…普通の男子は」

男「…?」

女「…普通の男子は、こんな風にランドセルをしょった女の子とかを、そんな目で見ない」

男「だあ、見るなぁ!」

女「羞恥心があるなら、片付けなさいって」

男「だから、お前が来るなんて全然…」

女「妹ちゃんの前でもだってば!」

男「……。」

女「……。」

妹「…喧嘩…ですか?」

女「ち、違う違う」

男「…この話はおーわり」

女「あ、逃げる気?」

妹「…うー」

女「…あー、はいはい。おしまいね、おしまい」

男「そんなことより、女」

女「なに?」

男「お前の近況、聞かせろよ」

女「え…」

男「久し振りなんだから」

女「…うん!…あ、違う!そ、そうね、教えてあげてもいいわよ?」

妹「ふふ」

男「ごちそうさま」

妹「ごちそうさまでしたー」

女「……。」

男「…なんだ、人の顔見て」

女「美味しかった?」

男「ん?」

女「シチュー…美味しかった?」

男「……。」

女「……。」

男「…まあま――」ゲシッ

女「言うと思った」

男「褒め言葉を強要するんじゃねえよ!」

女「ニヤニヤしながら言うからよ」

妹「……。」

妹「…うん!」

男「ん、どした?」

妹「先輩!私、見てもらいたいものがあるんですけど」

女「私に?なになにー?」

妹「あ…えっと、自分の部屋にあるので取ってきますね」

男「…?」

女「重くない物?私が見に行こうか?」

妹「だ、大丈夫ですから!お兄ちゃんと一緒に待っててください」

女「う、うん…?」

妹「失礼しますッ!」

ガチャ

女「…妹ちゃんの部屋、久し振りに見たかったんだけどなぁ」

男「プライバシーだろ?察せよ、デリカシー無いな」

女「あんたにだけは言われたくないッ!」

男「…声がいちいちうるせえ」

男「……。」

女「……。」

男「…?」

女「妹ちゃん、遅いね」

男「だな」

女「やっぱり重たいものなのかな」

男「見せたい物、ねー…そもそも、どことなく不審な態度だったけど」

女「うん、なんか思いついた!みたいな」

男「…ん」

女「ん?」

男「……。」

男友『なんだったら妹さんは途中で席を外してさ、二人っきりに――』

男「…はあ」

女「なに?どうしたの?」

男「いや、たぶんな、男友の入れ知恵というか」

女「入れ知恵?」

男「あれだ、気を利かせてるんだよ」

女「…?」

男「…お前、勘鋭いんだから察せよ」

女「なっ…分からないものは分からないんだからしょうがないじゃない!」

男「だから、俺とお前の二人にしようって、変な気を遣ってるんだよ!」

女「……。」

男「…理解したか?」

女「…ん」

男「…なら良かった」

女「……。」

男「……。」

男「はは、こんなことされても、困るけどな」

女「……。」

男「……。」

女「……。」

男「…ん、じゃあそろそろ妹呼んでくるよ」

女「……。」

男「余計なことしやがって、たく…」

女「…男」

男「なんだよ」

女「なんで、引きこもりなんて、してるの?」

男「……。」

女「……。」

男「なんでって…」

女「……。」

男「理由なんて…ねえよ」

女「……。」

男「つまずいて、落ちこぼれて、落ち込んだら、こうなるしか…ないだろ」

女「そんなこと…ないでしょ」

男「……。」

女「そんなこと、ないよ」

男「…ま」

男「単純な理由だよ」

女「……。」

男「一番楽だから、これが」

男「自分の殻に閉じこもってれば、良いんだもん」

女「……。」

男「理由なんて、あるとしたら、それだけだよ」

女「…そっか」

男「…なあ、女。俺さ、お前が今考えてること分かるぞ」

女「うん」

男「それを踏まえた上で言うけどさ」

男「…お前、もう俺に関わるなよ」

女「……。」

男「今日、久し振りに会えて良かったよ…だからさ」

男「もう、良いよ。俺のこと気にしなくても、忘れてくれよ」

女「……。」

男「そのほうが、良いだろ?」

女「…良いだろって…誰にとって?誰に向かって、聞いてるのさ」

男「お前だよ、女」

女「……。」

男「……。」

ガラッ

妹「先輩!これ、わたしが書いた絵なんですけど、どうです…かあ…あ、あれ?」

男「……。」

女「……。」

妹「…どうした…の?」

男「いや、なんでもない」

女「…う、うん、なんでもないよ?」

妹「なんか、二人とも怖い顔してた…」

女「そんなことないって!…じゃあ、長いことお邪魔になっちゃったし、私は食器を洗って帰ろうかなーっと」

妹「え…あ…もう帰っちゃうんですか?」

女「もうって、わたしが来てから結構経ってるよ?」

妹「そ、そうですけどぉ…」

女「さ、食器洗っちゃいましょー」

妹「あ、食器はわたしが洗いますよ」

女「良いから良いから」

妹「申し訳ないですよー…あ、じゃあ私も手伝います」

女「お、助かる」

女「男は…手伝わないよねー」

男「なんだよその目は…」

女「ううん、なんでも…じゃあ、またね、男」

男「……。」

女「またね?」

男「…はいはい、じゃあな」

女「ん、行こう、妹ちゃん」

妹「はいなー」

男「…女」

女「なによ」

男「シチュー、美味かった」

女「…な、なにさ急に!」

男「なんとなくだよ」

女「…ふん、その気まぐれ具合も、嫌いなの!」

男「はいはい」

バタン

女「……。」

妹「ふふ、お兄ちゃん、シチュー美味しかったって。良かったですね先輩」

女「……。」

妹「先輩?」

女「……。」

女「あんたの好みなんて、まる分かりだっての、馬鹿…」

男「……。」カタカタ

男「……。」

男「……。」カタカタ

男「……。」

男「……。」カタカタ

男「……。」


女『…馬鹿』


男「……。」

男「…あー」

バンッ

男「……。」

男「…今日は、疲れた」

ピコン♪

男「…ん」

tomo:今日の首尾は、どうだった?

男「……。」

カタカタ

刹那戦士:バッチリだ

tomo:お、それは良かった!

tomo: ……。

tomo:ちょい待ち

tomo:お前がそんなプラスな発言をするのはおかしい

tomo:なにがあった

男「…流石だな、こいつ」

刹那戦士:とりあえず

刹那戦士:これから女はもう、俺の家には来ないな

tomo:

男「……。」

男「…考えてる考えてる」

ピコン♪

tomo:それは、俺の持ってる情報とは違うな

男「…ん?」

刹那戦士:なにが?

tomo:いや、もうすぐ分かると思うけど

刹那戦士:?

tomo:あ、あいつ、やりかた分かったって

男「…は?」

刹那戦士:やりかたって、なんの?

tomo:ん?

tomo:なんのって


tomo:チャット


ピコン♪
[nyaonさんが入室しました]

男「……。」

男「…まさかな」

刹那戦士:なに、こいつ

nyaon:shine

刹那戦士:シャイン?なに、急に輝くとか言い始めたけど、大丈夫この人?

tomo:半角/全角ってとこ押して

男「……。」

nyaon:死ね

男「…おい」

カタカタ

刹那戦士:手袋ありがとう、暖かいよ

nyaon:な、なによ急に!バカ!わざとらしいのよ、あんたの褒め言葉は!

男「……。」

男「…女だ、こいつ、間違いない」

tomo:教えてって言われたから、チャットのやりかた教えた

刹那戦士:このやろう…

nyaon:べ、別にあんたとチャットがしたいとか、そういうことじゃないんだからね!

刹那戦士:はいはい

男「……。」

男「…関わるなって言ったのに」

nyaon:私だってさ、暇じゃないからね!でもあんたが寂しくしてたら可哀想だし?

nyaon:そういう時にかまって欲しかったら、チャットくらいなら相手してあげても良いかなーって

男「人の話をまったく聞いちゃいない」

nyaon:ねえ、聞いてるの?あんた

nyaon:これじゃあ私がかまって欲しいみたいじゃない

nyaon:返事しろ、バカ

男「うるせえし」

刹那戦士:男友、強制退室のさせ方ってどうやるんだっけ?

nyaon:な、なにしようとしてんのよ!人がせっかく相手してあげようって言ってるのに!

男「おせっかいだし」

刹那戦士:そもそも、そのnyaonってなんだ?猫かよ、お前、カワイ子ぶりやがって

nyaon:な、人の勝手でしょうが!

tomo:「刹那戦士」には言われたくないと思う…

男「すぐ怒るし」

nyaon:うー、叩きたくても叩けないから、チャットって不便

刹那戦士:なに不穏当なこと言ってんだ…

男「おまけにすぐ手が出るし」

nyaon:ね、二人とも

刹那戦士:ん?

nyaon:こう言うのも変だけど…これから、よろしくね

tomo:よろしく

男「……。」

男「…でも」

妹「でも…なあに?お兄ちゃん」

男「うわっ!」

妹「きゃッ!」

男「びっくりした…」

妹「私もびっくりしたよぉ」

男「…いつからいた?」

妹「ん?いま来たところだよ?」

男「そ、そっか…なんか用?」

妹「あ、うん、瓶の蓋が開けられなくて…」

男「その瓶は?」

妹「あ、持ってくるの忘れちゃった…台所ー」

男「ん、開けてやるよ」

妹「うん、じゃあ持ってくる」

男「いや、台所に行くよ」

妹「え…?」

男「ん?」

妹「…お兄ちゃん、機嫌いい?」

男「なんで?」

妹「う、ううん、なんでもない」

男「…?」

妹「えへへ、行こう、お兄ちゃん」

男「おう…あ、ちょい待ち」

妹「はいな」


nyaon:男、見てる?寝ちゃった?

tomo:改めてよろしくって言うのが恥ずかしいんだ、きっと

男「…適当なこと言ってんじゃねえよ」

カタカタ

男「…よし、行くか」

妹「うん!」


構うなって言っても構ってきて
人の話を聞かなくて
うるさくて
おせっかいで
すぐ怒って
おまけにすぐ手が出る

でも

男「…好きなんだよなぁ」

妹「はい?」

男「ひとりごと」

妹「…?」


刹那戦士:よろしく、女


第1話 女  おわり

ピピピピピピピピ

男「……。」

ピピピピピピピピ

男「……。」

ピピピピピピピピ

男「…何故だ」

ピピピピピピピピ

男「…あー、くそ」カチッ

男「……。」

男「…6時前」

男「…昨日妹に返すの、忘れてたのか」

男「……。」

男「……。」

男「しょうがない、寝坊されても困るし…返しに行こう」


第2話 妹

妹「~~♪」

妹友「おはよう、妹」

妹「あ、妹友ちゃん!おはよー」

妹友「朝から機嫌いいね。どうしたの?」

妹「……。」

妹友「…うい?」

妹「…えへへー」

妹友「え、えー…」

妹「分かる?」

妹友「う、うん、分かるよ、そりゃ…鼻歌うたってましたし」

妹「実はね…」

妹友「うん」

妹「今日の朝ね、お兄ちゃんが私の部屋に来てくれたの!」

妹友「……。」

妹「…あれ?」

お風呂とご飯行ってきます
楽しいって言ってくれて嬉しい

保守

妹友「えっと…なんだろう、詳しく聞いて良い?」

妹「詳しくって?」

妹友「妹のお兄さんが部屋に来たことと、妹の機嫌が良いことがね、わたしの中で結びつかないんだけど」

妹「うーん…今日の朝ね、お兄ちゃんが私の部屋に来てね」

妹友「うん」

妹「『お前、昨日俺の部屋に目覚まし忘れていっただろ』って」

妹友「うん」

妹「『そのせいで二日連続早起きしちまったじゃねえか』ってね、怒られたの」

妹友「うん」

妹「だから、嬉しくて」

妹友「うん…え?」

妹「え?」

妹友「いや、最後迷子になった」

妹「ん?」

妹友「ん?じゃなくて」

妹友「お兄さんって、前から妹の話に出てきてた引きこもりのお兄さんだよね?」

妹「……。」

妹友「ん?」

妹「お兄ちゃんは、お兄ちゃん」

妹友「あ、ごめん…」

妹「うん」

妹友「それで…妹って、ブラコン?」

妹「ぶらこんって?」

妹友「んー…お兄ちゃん大好きー、みたいな」

妹「うん、お兄ちゃん大好きだよ?」

妹友「…あー、ならちょっと理解できたかも」

妹「理解?」

妹友「機嫌がいい理由」

妹「だから、部屋に来てくれたから」

妹友「あ、うん、なるほどねー」

妹「お兄ちゃん、昨日はご飯も一緒に食べてくれたし…だから今すごく幸せなの」

妹友「…うーん」

妹「どうしたの?」

妹友「なんか、難しい話だね」

妹「なにが?」

妹友「思春期の子どもの扱いに悩むお母さんみたい」

妹「…?」

妹友「あ、分かんないなら良いんだけど」

妹「ごめんね、お母さんもお父さんもいないから、よく分からない」

妹友「え?」

妹「あ、えっとね…仕事でほとんど帰って来ないから」

妹友「あ、あー、なるほど」

キーンコーン…

妹「あ、予鈴だ!」

妹友「ほんとだ、急がないと!」

妹友「妹、走るよ」ダッ

妹「え、走るの…やぁ」

妹友「もお、置いてくぞー」

妹「それも嫌だよー」

妹友「じゃあ走れー」

妹「…うー」

タッタッタ

妹友「先生、遅刻にうるさいからなー…」

妹「……。」

タッタッタ

妹「……。」

タッタッタ

妹「……。」

ピタッ

妹「……。」

妹「……。」

妹「…引きこもり」


妹友『お兄さんって、前から妹の話に出てきてた引きこもりのお兄さんだよね?』


妹「思春期の…子ども」


妹友『思春期の子どもの扱いに悩むお母さんみたい』


妹「……。」

妹「……。」

妹「……。」









妹「お兄ちゃんのこと、なんにも知らないくせに、勝手なこと、言うな」

寝ます…

話はシンプルだけど表現力も複線の張り方もうまいなぁ・・かなりの良スレだけど実力でこれなら
将来神スレってレベルのSSスレ出しまくりそうだな・・久しぶりに凄いSS作者見つけた
終わった後でいいので過去のも作品のURLも見せて貰えれば嬉しさのあまり嬉ション&脱噴します

>>186
コピペなのかしらんが、マジレスするぞ

[67]以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>
2011/01/15(土) 12:31:24.06 ID:/L/Ej4fM0
保守

>>62
妹「私?サンタからのプレゼントだけど」
で読める

稀に見るハッピーエンドで気持ち良かったな
待ってる間暇な人は読めば良いと思うよ

保守ありがとうございます
書きます

妹『お兄ちゃんお兄ちゃん!』

男『ん、なんだ?』

妹『…お勉強中?』

男『そうだよ、今年から俺も受験生だからな』

妹『…受験?』

男『そうそう、ちゃんと勉強しないと高校生になれないからなー』

妹『お兄ちゃんでも?』

男『誰だってそうだよ』

妹『…友ちゃんは勉強しなくてもラクショーって、遊んでたよ?』

男『あー…』

妹『…?』

男『なんていうか…俺はさ、入るのが難しいところに行きたいなーって』

妹『んー…』

男『お母さん病気で、お父さん一人だと生活頼りないだろ?だから俺がいいところに入ってさ…って、妹にこんな話しても分かんねえか』

妹『…んー』

妹友「だからさー、そこで友達がね」

妹「うんうん…あ!友ちゃーん!」

男友「…妹さん?」

妹「こんなところで会うのは珍しいね!」

男友「だな」

妹友「…彼氏さん?」

妹「え、違うよー」

男友「はは…」

妹「お兄ちゃんのお友達だよ」

妹友「…ふーん」

男友「……。」

妹友「友ちゃーんなんて呼んでるから、凄く仲がいいんだね」

妹「うん!だってずっと前からお兄ちゃんの大事な友達だもん」

妹友「ふふーん、友ちゃんねー」

男友「はは…なんだこの状況」

男友「妹友さん、ね」

妹友「どうも」

男友「あ、こちらこそどうも」

妹「あ、私お買い物あるからこっちー」

男友「晩飯?」

妹「うん!今日はご馳走です」

男友「ん、なんか良いことあったんだ?」

妹「えへへ、今日からお兄ちゃんと一緒にご飯が食べれるんだぁ」

男友「ほほう…どして?」

妹「昨日先輩がね、お兄ちゃんにお願いしてくれたの」

男友「…ふーん」

妹友「先輩?」

妹「お兄ちゃんのお友達」

妹友「…よく分からないけど、込み入った話ですなー」

男友「まあ、はたから見たらよくわからない話だろうな…」

妹「またねー!」

男友「おう」

妹友「また月曜日ー」

タッタッタ

男友「…ふう」

妹友「晩ご飯、妹が作ってるんですねー」

男友「ん?そうだな…男は料理できないだろうし」

妹友「男?」

男友「妹のお兄ちゃんの名前」

妹友「あー、妹が大好きなですねー」

男友「……。」

妹友「あれ、知りませんでした?」

男友「…ん、知ってるよ」

妹友「ですよねー」

男友「……。」

妹友「妹も大変ですねー、両親がどっちも仕事してるだなんて」

男友「え?」

妹友「はい?」

男友「あ、いや…あー、そっか、そういうことにしてるのか」

妹友「…?」

男友「…もう誤魔化してもしょうがないから言うけど」

男友「あいつらの母親、病気で亡くなってるんだ」

妹友「あ…」

男友「…でもまあ、共働きってことにしといてくれよ」

妹友「は、はい」

男友「父親の方はめったに見ないし…本当に仕事が忙しいみたいだから、妹さんが大変なのは変わらないけどな」

妹友「そう…ですね」

男友「あ、じゃあ俺もこれで」

妹友「はい、さようならー」

男友「…妹友さん」

妹友「はい、なんですか?」

男友「……。」

男友「妹さんのことだけど…」

妹友「はい」

男友「…あー」

妹友「…?」

男友「やっぱ、なんでもない」

妹友「はい?」

男友「…妹さんとさ、仲良くしてくれや」

妹友「は、はあ…」

男友「じゃあ、ばいばい」

妹友「あ、はい、さようならー」


男友「……。」

父『男ぉ、いい加減部屋から出てきてくれや』

妹『……。』

父『分かるよ、お前の気持ちも…だけどよー、長男だろ?お前』

父『もうちょっとしっかりしてくれないと、困るんだよ』

父『俺も、妹も』

妹『……。』

父『……。』

父『…なあ、おい、聞いてんのか?』

ドンッ!

妹『……ッ!』ビクッ

父『おいこら、出てこいやって言ってんだよ!』

ドゴッ!

妹『……。』

父『…頼むよ…お願いだからよぉ』

妹『……。』

妹「お兄ちゃんー」

男「…ん、どした?」カタカタ

妹「なにしてるの?」

男「チャットだよ」

妹「チャット?」

男「えっとな…男友と女と、話してる」

妹「…んー」

男「メールみたいなもんだよ」

妹「あ、分かった!」

男「おう…で、なんの用だ」

妹「晩ご飯だよー」

男「…もうそんな時間か…ん、そこ置いといて」

妹「……。」

男「…ん?」

妹「…一緒に食べよ?」

男「あ、昨日そんな話したな…」

妹「…だめ?」

男「……。」

妹「うー…」

男「…持って来いよ」

妹「わあ!やったぁ!も、持ってくるー」

トットット

男「…はあ」

ピコン♪

nyaon:男ー?寝ちゃった?

男「…せっかちだな、こいつは」

刹那戦士:わり、晩飯食うわ

tomo:お、妹さんと食べるんだって?

刹那戦士:そうそう

nyaon:ちゃんと一緒に食べるんだー、偉い偉い

お風呂とご飯行ってきます
書くの遅くてごめんなさい・・・

男「…なんか量多くない?」

妹「えへへ、はりきっちゃったぁ」

男「こんなに誰が食べるんだよ」

妹「え…あう…」

妹「の、残していいよ?余ったのは明日私がお弁当で持って行くから」

男「明日土曜日だから学校休みだろ」

妹「……。」

男「…たく、ほら、頑張って食うぞ」

妹「は、はいな」

男「いただきます」

妹「いただきまーす」

男「ん…」

妹「……。」ジー

男「うまい」

妹「…えへへ」

男『……。』

カリカリ

妹『…お兄ちゃん』

男『……。』

妹『お兄ちゃん…お顔、怖いよ?』

男『……。』

カリカリ

妹『ねえ、お兄ちゃん…寝てないよね…大丈夫?』

男『…俺が』

妹『……。』

男『…俺が、頑張らないと…母さんは、もう、いないんだから』

男『俺が、支えないと、みんなを…だからな…勉強して…良い学校に入って…そして』

妹『……。』

男『だから…俺が…』

妹『……。』

プルルルルルルル…

ピッ

男友『はいよ』

妹「あ、友ちゃんー」

男友『…どうかしたのか?』

妹「ううん、なんとなく電話したくなったの」

男友『そっか』

妹「うん!お話しよ?」

男友『晩ご飯、一緒に食べたんだろ?どうだった?』

妹「えー?」

男友「え?」

妹「…えへへー」

男友『あー、良かったのね…』

妹「うん、あのねあのね!たくさん作っちゃったんだけどね、全部食べてくれたの!」

男友『そっか』

妹「一緒にご飯が食べれるなんて、夢みたい」

男友『そんな大げさな…』

妹「ううん、ほんとに、それくらい嬉しかったから」

妹「だから先輩がお願いしてくれて良かった」

男友『はは…お願い、ねえ…だいたいどんな感じか想像付くけど』

妹「んー?」

男友『なんでもない』

妹「先輩を連れてきてくれてありがとうね、友ちゃん」

男友『……。』

妹「お兄ちゃんもすごく嬉しそうだったし」

男友『…おうよ』

妹「いきなり連れてきたからびっくりしちゃったけどねー」

男友『それは、悪かった』

妹「ふふ、良いよー…あ、そういえばね――」

女『んー…』

男『……。』

女『ふふふ…』

男『悪いな、いつも俺の部屋で勉強するだけで』

女『えー?いいよー』ゴロン

男『お、おい…』

女『一緒にいるだけで、幸せー』

男『わ、分かったから、どけって』

女『気にしないで勉強してて良いよ?』

男『いや、そうじゃなくてだな…』

妹『お茶をお持ちしまし…あ、あれ…』

女『わ、わわッ!』ササッ

妹『ご、ごめんなさいッ!』ダッ

女『あ、ううん!大丈夫だから、逃げないでー!』

男『…はあ』

妹「じゃじゃーん!」

男「ん…あー、今日って日曜日か」

妹「お掃除の時間だよー」

男「はいよ」

妹「お兄ちゃんは寝てていいからね」

男「…そうする」

妹「ふんふーん」

男「……。」

妹「ふふ、らんらーん」

男「……。」

妹「わ、なんだこれー」

男「どした?」

妹「ううん、なんか出てきたー」

男「わあ…良く分かんねえから、捨てといて」

妹「はいなー」

妹「とりゃー」

男「……。」

妹「ふ、ふんぬッ!」

男「……。」

妹「えっと、これは…あそこにあったやつだよねー」

男「……。」

妹「んしょ…よし、ここは完りょー」

男「……。」

妹「次はー…本の整理かなー」

男「…妹」

妹「なあに?…あ、うるさかったかな」

男「いやいや、そうじゃなくて…手伝おうか?」

妹「…なんで?」

男「あ、いや…男友とか女に、妹にやらせるなって怒られたし」

妹「……。」

妹「良いよー、お兄ちゃんは」

男「ん、良いのか?」

妹「楽しいもん、お掃除!」

男「…そっか」

妹「私に全部おまかせー」

男「悪いな」

妹「ふふ、お兄ちゃんはゴロゴロしててね」

男「ん、分かった」

妹「できるだけ静かにするから」

男「良いよ、そんなことは気にしないで」

妹「……。」

男「…ん?」

妹「お兄ちゃん、最近優しい?」

男「え、なにその聞き方…」

妹「…えへへ、なんでもなーい」

妹「終わったぁ」

男「お疲れ様」

妹「えへへ、お粗末様でした」

男「…ん?」

妹「あれ、なんか違ったかな…」

男「…まあ良いや」

妹「お部屋、綺麗になったでしょ?」

男「おう、ありがと」

妹「うん!」

男「男友には、今怒られたけど」

妹「え?…なんだっけ、ちゃ…ちゃっと?」

男「それそれ」

妹「いいんだよー、私が嬉しくてやってるんだから」

男「…そうだよな、妹がそういうんだから、良いんだよな」

妹「そうそう」

妹『お兄ちゃーん』

男『……。』

妹『お兄ちゃん』

男『…んー?』

妹『大丈夫?』

男『…ん、なにが?』

妹『今、幸せ?』

男『…どうかな…幸せだと、思うよ』

妹『…そっかぁ』

男『これで、いいのかな』

妹『大丈夫、私がいるから』

男『…そっか』

妹『なにも考えなくて、良いよ』

男『…ん』

妹『えへへ、お兄ちゃん――』

妹「お兄ちゃん、ご飯だよー」

妹「お兄ちゃん、頼まれた電池買ってきたよ」

妹「お兄ちゃん、これ、男友さんからー」

妹「お兄ちゃん、今日寒いから、寝るとき気を付けてね」

妹「お兄ちゃん、大丈夫?」


妹「お兄ちゃん、幸せ?」


妹「お兄ちゃん」

妹「お兄ちゃん」

妹「お兄ちゃん、お兄ちゃん」

妹「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん」


妹「ねえ、お兄ちゃん」



妹「大好き」

第2話 妹  おわり

男友「……。」

カタカタ

tomo:そろそろ寝るわー

刹那戦士:おうよ

nyaon:男も、夜更かししないで寝なさいよ?

刹那戦士:余計なお世話だよ!

[nyaonさんが退室しました]

刹那戦士:あの野郎…

tomo:はは、じゃあおやすみ、男

刹那戦士:おやすみ

[tomoさんが退室しました]

男友「…ふう」

男友「……。」

男友「…そろそろか」

プルルルルルルル…

男友「……。」

ピッ

男友「はいよー」

妹『こんばんはー友ちゃん』

男友「チャット、ちょうど終わったところだよ」

妹『知ってるよー』

男友「…そっか」

妹『お兄ちゃんがパソコン打つ音、聞こえなくなったからね』

男友「……。」

妹『それで、友ちゃん――』





妹『今日のお兄ちゃん、どうだった?』

男友「……。」


第3話 男友

『彼ら』が変わったのはいつからだっただろうか?

成績優秀、真面目で妹思いな男

可愛くて、大人しい、兄思いな妹

俺はそんな二人の友達でいられることが嬉しかったし

俺と男と妹と、それに男の彼女だった女と、4人で遊ぶことがとても楽しかった


男友「…別に、いつも通りだったよ」

妹『そっかぁ』

男友「普通に、他愛のない話をして…それだけ」

妹『分かった、ありがとうね』

男友「…ん」

妹『また、なにか変わったら教えてね?』

妹『…これからも、変わらずに、接してあげてね?』

男友「……。」


でも、そんな日々が変わったのは、いつからだっただろうか?

男友「お前、最近疲れてないか?」

男「ん?…んー、そうだな、寝不足気味かも」

男友「受験勉強も良いけど、無理すんな」

男「受験勉強してないやつに言われても…」

男友「うるせー」

男「はは、まあ、気をつけるよ」

男友「…ほんとかよ」

はじめの変化は、男

高校受験のための、勉強

真面目な男は、その勉強に精を出していた

その理由はきっと、彼の家族事情にも関係があったと思う

男「出来るだけ、良い高校に入らないといけないからな」

男友「……。」

男「俺が、頑張らないと」

彼の母親は、病気で長い間、入院をしていた

すいません、寝ます…

あとこれと最終話「男」で終わりです
明日中には終らせたいです
書くの遅くてごめんなさい
みなさんのレスで元気貰ってます

おやすみなさい

保守ありがとうございます
書きます

ttp://vippic.mine.nu/up/img/vp28330.jpg
現時点でのイメージ、隔離された感覚

>>1がんばれ!

すみません、もう少し用事が

保守

女「…男友」

男友「ん?」

女「私、どうすれば良いのかなぁ…」

男友「……。」

男友「…分かんね」

女「…ん」

父親の事は、よく知らない

それでも、妹さんや男の態度から察すると、あまり、良い父親ではないのかもしれなかった

それがまた、男にのしかかるように、なにかを積み立て

同時に、なにかを急き立てていた

妹「……。」

男友「妹さん…」

男を見る妹さんの顔も、日に日に不安を宿していく

そんな姿を見るのが、俺にはとても、辛かった

男友「…男、欠席?」

女「…うん」

男友「なんでだ?」

女「……。」

男友「…女?」

女「……。」

そんな、矢先


男友「――え」


彼らの母親が、亡くなった

男友「……。」

女「……。」

高校入試を、二ヶ月前に控えた頃だった

男友「……。」

それから男は、しばらく学校に来なかった

男「……。」

男友「男…」

男「お、おーっす、久し振り」

男友「お、おう…久し振り」

男「なんだよー、どうかしたか?」

男友「…あ、いや」

男「物珍しい物でも見るような顔だなー」

男友「…えっと、その…大丈夫なのか?」

男「ん、大丈夫」

男友「……。」

男「おいおい、お前のほうが大丈夫そうじゃないぞ」

男友「…はは、悪い悪い」

男「はは」

男友「……。」

妹「……。」

男友「…妹さん」

妹「あ、友ちゃん」

男友「久し振りだな」

妹「えへへ、そうだねー」

男友「…あ…なんて言えば良いか分かんないけど…その」

妹「え…あ、大丈夫だよ?そんなに気を遣わないでよー」

男友「あ、おう、ごめん…」

妹「このとおり、私は変わらず元気だよッ!」

男友「…そうみたいだな」

妹「心配してくれてありがとうね」

男友「…ん」


1ヶ月ぶりに見た彼らは、それでもまだ、変わらなかった

少なくとも、俺が接している限りでは

色んなことを受け止めようと頑張っているように、見えたんだ

しかし

そんな彼らを、現実は、救わない

男「……。」

男友「……。」

女「……。」

女「…しょ、しょうがないよ、男」

男友「そうだよ、色々、あったんだから」

女「もう一年、頑張ろう?」

男友「適当なこと言ってくるやつらは気にすんな、事情もなにも考えてねえよ、あいつら」

男「……。」

それらは決して彼らのせいでは無いのに

それでも彼らは、一身に背負わなければいけなかった

男「……。」

男「…そうだな、俺、頑張らないといけないんだよな」

女「私に出来ることだったら、なんでもするから」

男友「ああ、そうだよ、男」

男「…おう」

その時の彼の返事は、掴みどころがなくて

俺の言葉が届いているのかも、定かではなかったけれど

男「……。」

女「…男」

男友「……。」

けれども

男「なあ、男友」

男友「…ん」

彼がこの時言った言葉は、今でも強く、覚えている


男「俺、最近…なんで頑張ってるのか、よく分からないんだ」

そして、男は部屋にこもって勉強を始めた

俺と女、それと妹さんがそれを見守っていた

男「……。」

カリカリ

男「……。」

カリカリ

男友「……。」

女「……。」

妹「……。」

男友「…じゃ、そろそろ帰るわ」

男「…ん、悪いな、折角遊びに来てくれてるのに」

男友「気にすんなよ、邪魔しに来てるだけだよ」

男「はは」

女「……。」

妹「……。」

男は努力していた

頑張っていた

一心不乱に、苦心して

身を削りながら

精神をすり減らしながら

男は、勉強をしていた

男「……。」

無理をしていることは一目瞭然だったし

それを見ていることが、とても辛かった

男友「……。」

男友「無理するな、気負うなよ、程々にしろ…違う」

男友「もう、やめちゃえよ…これも、違う…」

男友「……。」

俺の言葉は、どれも男に届きそうもなくて

日に日に追い詰められていく男を、後ろから見ていることしか出来なかった

妹「お父さんがね、お兄ちゃんを責めるの」

男友「……。」

妹「お兄ちゃん、頑張ってるのに…もっともっとって、責めるの」

男友「…妹さん」

妹「…うっ…うっ」

男友「…妹…さん」

妹「お兄ちゃんが…お兄ちゃんがぁ…」

男友「うん…うん」

妹「私、お兄ちゃんが頑張ってるの…見てられないよぉ」

男友「……。」

妹「私、どうすれば良い?どうしたら、お兄ちゃんを助けてあげられる?」

男友「……。」

妹「ねえ…友ちゃん」

男友「……。」


そして、妹さんも――

男友「…側にいてあげよう、男の」

妹「……。」

男友「俺には、それくらいしか…」

妹「……。」


……。


女「…悔しいよ」

男友「女…」

女「男ね…最近、笑わないの」

男友「……。」

女「私、悔しいよ…男の彼女なのに、何もしてあげられてない」

男友「……。」


……。

男「……。」

カリカリ

男「……。」

カリカリ

男友「…男」


……。


妹「……。」

男友「…妹さん」

妹「……。」

男友「…妹…さん?」

妹「……。」


……。

ああ、そうだ

このときだったっけ、『彼ら』が変わったのは――

男友「ちーっす」

男「おっす、男友」

男友「……。」

男「お?どうした?」

男友「…休憩中?」

男「ん?」

男友「今日は勉強してないんだな」

男「まあなー」

男友「……。」

男「だから、どうしたよ」

男友「…いや、なにも」

男「…?」

その日の男は、憑き物が取れたかのように、穏やかな表情で

まるで、以前の自分を思い出したかのように笑っていて

男友「……。」

それでもひとつ、以前と違ったのは

男「黙るなよ、気持ち悪いなー」


その目から、光はなくなっていた


男友「……。」

ああ

死んだ魚のような目ってのは、こういうことをいうのかなと

頭の片隅で考えながら

男の前で必死に、涙を流すことだけは、我慢した


この日から彼は、家から出ることが無くなった

ご飯とお風呂に行ってきます
第3話もう少し…

>>311の元ネタを教えてもらえると嬉しいです
このSSのテーマそのままなので

>>347
このSSみたままのイメージを描いたので、元ネタはないですよ

>>351
わざわざ書いてくれたんですか
ありがとうございます、嬉しいです

きっと彼は、なにかを諦めてしまって

あるいは、外れて

あるいは、辞めて

あるいは、忘れて

あるいは、止めて

あるいは、堕ちて

あるいは、消して

あるいは、捨てて

あるいは、爆ぜて

あるいは、埋めて

あるいは、隠して

あるいは、歪めて

あるいは、殺して


男友「……・。」

そしてきっと彼は、なにかが壊れてしまったのだ

妹「友ちゃん」

男友「妹…さん」

そして、彼女も同じように

男友「男…どこか、変わったな」

妹「友ちゃんに、お願いがあるの」

男友「……。」

妹「お願いが、あるの」

その目は、異様に輝いて

妹「お願い、聞いてくれるよね?」

話す視線は、どこか遠くを向いて

妹「あのね、ずっと、お兄ちゃんの友達でいて欲しいんだぁ」

妹「ずっと、ずっと、友達に…ね」

男友「……。」

妹「友ちゃんなら、大丈夫だよね?」

この日から、心に何かを、宿していた

女「別れる…なん…で?」

男「……。」

女「私のこと、嫌になったの?」

男「……。」

女「なんか言ってくれないと…納得出来ないよ」

男「……。」

女「ねえ、男!」

彼らも、彼らを取り巻く環境も、少しずつ変わっていって

男友「親父さんがいなくなった?」

男「いなくなったというか、ほとんど家に帰ってこなくなった」

男友「仕事のせいか?」

男「分かんねえ」

男友「そっか」

男「まあ、分かんなくても別に良いし」

男友「……。」

妹「友ちゃんー、お兄ちゃんと仲良くしてくれてありがとね」

男友「…おう」

妹「これからも、仲良くしてね?」

男友「……。」

妹「ね?」

男友「…勿論、だよ」

俺は、どうすれば良いのか分からなくて

彼らに、なにがしてあげられるのか分からなくて

男友「チャット?」

男「そう、チャット」

男友「まあ、やり方を教えてくれるなら出来るだろうよ」

男「簡単だから楽勝だろ」

男友「教えてみろよ」

男「まず、名前を決めるんだけどな――」

男友「女…あのな」

女「……。」

男友「男も、考えてのことだと思うんだ」

男友「お前のことを想ったからこそさ――」

女「分かってるよ!」

男友「……。」

女「分かってるから、余計に悲しいんだよ」

男友「…女」

女「…男の、バカ」

なにも出来ないまま、時間は流れて

男友「……。」

男「はは、落ちこぼれだなー」

男友「……。」

男の二回目の高校受験

彼はどこの高校も、受験しなかった

……………………

…………

……

男友「……。」

カタカタ

tomo:そういえば、今日は掃除の日じゃねえのか?

刹那戦士:今やってる

tomo:チャットしてんじゃん

刹那戦士:俺じゃなくて、妹が

男友「……。」

tomo:だから妹さんに迷惑かけんなって

刹那戦士:だってよ、妹が良いって言うからさ

tomo:この野郎、何度言わせるつもりだ…

刹那戦士:俺だって何度も言ってるだろうが

男友「……。」

tomo:あーはいはい、分かった分かった

刹那戦士:なんか適当に返事してねえか?

tomo:気のせいだ

刹那戦士:なら良いけど

男友「……。」

カタカタ

tomo:じゃあ、俺も今から部屋片付けるわ

刹那戦士:はいよ

tomo:またな

刹那戦士:おう

[tomoさんが退室しました]

男友「……。」

男友「…男」

このままじゃ、駄目ということも

男友「……。」

今のままじゃ、間違っているということも

男友「……。」

それは全部、分かっているんだ

男友「……。」

痛いほどに、苦しいほどに、彼らはそれを、訴えている

男友「……。」

だけど俺は、どうして良いのか分からなくて

男友「……。」

助けることも、見捨てることも、出来なくて

男友「……。」

狂ったように、違った日々を

続けることしか、出来なくて

プルルルルルルルル…

男友「……。」

それを責めるように鳴るベルを、止めたくて

プルルルルルルルル…

男友「……。」

助けてくれと叫ぶように鳴るベルから、逃げたくて

プルルルルルルルル…

男友「……。」

ピッ

俺は今日も、その電話を取るんだ

妹「あ、友ちゃん」





妹「今日のお兄ちゃん、どうだった?」

第3話 男友  おわり

コンコン

妹『…んー、むにゃ』

男『妹、開けるぞ』

ガチャ

妹『ふにー…』

男『妹、目覚まし時計返しに…って、寝てるな』

妹『…おにい…ちゃん…ふふ』

男『…寝言?』

妹『えへへー…』

男『…はあ、しょうがない。これだけ置いてくか』

妹『……。』ゴロン

男『あ、ベッドから落ち――』

ゴチン

妹『ふぎゃッ!』

男『……。』

妹『痛いー…』

男『大丈夫か?』

妹『…ふえ?…お兄ちゃん?』

男『目覚まし時計、俺の部屋に置きっぱなしだったろ。返しに来たぞ』

妹『……。』

男『…?』

妹『夢?』

男『なにが』

妹『……。』

男『…おーい』

妹『…なんでお兄ちゃんが私の部屋にいるの?』

男『人の話聞けよ、おい』

妹『お兄ちゃん…』

男『寝ぼけてるな、こいつ』

妹『…んしょ』

ポフッ

男『ん、また寝るのか?』

妹『…お兄ちゃん、手』

男『手?』

妹『手、貸して』

男『ん?…ほれ』

グイッ

男『わっ!』

ドサッ

妹『えへへ』

男『…危ねえな』

妹『お兄ちゃんが私の部屋に来るの、久しぶりー』

男『…だな』

妹『えへへ、嬉しいなぁ』

男『…ま、いつも妹がこっち来るからな』

妹『お兄ちゃん、好きぃ』

ギュー

男『……。』

妹『ねえねえ、お兄ちゃん』


妹『えっちぃこと、しよ?』


男『……。』

妹『朝からねー…ふふ、時間もあるし』

男『……。』




男『いいよ、しようか』




最終話 男

最終話に入れた…
寝ます、すいません…

おやすみなさい

妹「ふんふーん」

トントントントン…

グツグツ…

妹「お兄ちゃんとご飯ー♪」

トントントントン…

グツグツ…ゴボゴボ…

妹「お兄ちゃんと、ご飯だって…えへへ」

ゴボゴボ…

妹「…さてとー、あとは、煮詰まったら味見して…って、わっ!わっ!」

ゴボゴボ…

妹「吹き出てる、わー!火、火を止めないと…きゃうッ!」

ガンッ!

妹「い、痛いー…」

妹「…じゃなくて、火だってばぁ!」

ドタドタ…

男「…なんの音だよ」

カタカタ

刹那戦士:嫌な予感がする

nyaon:なにが?

刹那戦士:妹が下で騒いでる

tomo:? なんだろうな

妹「ふ、ふきんー!」ドタドタ

男「……。」

刹那戦士:ま、大したことないと思うけど

tomo:ほんとかよ…

nyaon:見に行ってあげなよー

刹那戦士:はいはい

男「…たく」

男「妹、どうした?」

妹「お兄ちゃん!?…な、なんでもないよー」

男「…まあ、この状況見て大体分かったけど」

妹「…ご、ごめんなさい」

男「珍しいな、妹が料理失敗するのは」

妹「うー…」

男「ボーッとでもしてたか?」

妹「……。」

男「ん?」

妹「お兄ちゃんのこと、考えてて…」

男「……。」

妹「てへへ」

男「…ほら、片付けるぞ」

妹「あ…わ、私がやるから大丈夫だよー!」

刹那戦士:てな感じだったから大丈夫だった

nyaon:妹ちゃん、火傷とかしてない?

tomo:大丈夫なら良いんだけど

刹那戦士:火傷もしてないみたいだな

nyaon:なら良かったー

刹那戦士:ま、そんなわけで晩飯出来たみたいだから食べる

tomo:おうよ

nyaon:またね

[刹那戦士さんが退室しました]

男友「…ふう」

カタカタ

tomo:じゃ、俺らも退室するか

男友「……。」

男友「…ん?」

男友「返事が来ないな…」

ピコン♪

男友「ん、来た」

nyaon:聞きたいことが、あるんだけど…

男友「……。」

男友「…ん」

カチッ

[tomoさんが退室しました]

男友「…それでっと」

プルルルルルルルル…

男友「……。」

ピッ

女『もしもし』

男友「悪いな、急に退室して」

女『うん、大丈夫だよ』

男友「チャットって、後からでも閲覧出来るからさ」

女『…うん』

男友「男には聞かれたくない話…だろ?」

女『……。』

男友「言ってみろよ」

女『……。』

男友「……。」

男友「分かるよ…男に内緒でこういうことするのが、気分悪いことは」

女『…ん』

男友「俺もずっと、そうだから」

女『……。』

女『…なんで』

女『なんで、男は引きこもり…してるのかな』

男友「……。」

女『男が苦しかったの、分かるよ、とっても…隣にいた私だって胸が痛くなるくらいだったから…』

男友「…うん」

女『でも、でもね?なんで、こうなっちゃったのかな…』

男友「……。」

女『なんで、なんで…男は…』

男友『……。』

女『どうして…どうしてなのさぁ…ひっぐ…』

男友「女…」

女『うー…うっ…うっ…』

男友「……。」

男友「…しょうがないんだよ、きっと」

女『しょうがなくなんか…ない』

男友「……。」

女『あのね…男も言ったんだ…しょうがないって』

男友「それって…男にも聞いたってことか?」

女『うん…この前、聞いた』

男友「……。」

女『男もね、しょうがないんだって…落ちこぼれたら、こうなるしかないだろって』

男友「……。」

女『自分の殻に閉じこもっておくのが、一番楽だからって…そう言ってた』

男友「殻に…閉じこもる、か」

女『……。』

男友「…女?」

女『…でもね、そう言ってる男の目がね…どこも見てなくて』

男友「……。」

女『目がね、濁って…表情もなくて…私、男のことが怖いって思っちゃって』

男友「……。」

女『それで、その顔で私に言ったんだ』

女『…もう、俺に関わるなって』

男友「……。」

女『……。』

男友「……。」

女『…ねえ、男友』

女『男はどうして、引きこもりをしてるのかな』

男友「……。」

女『……。』

男友「…分かってるんだろ、もう」

女『…私のせい、かな』

男友「それは、ないよ」

女『私がもっと、男の為になにか…出来てたらね』

男友「違う、そうじゃないよ、女」

女『もっと私が、男にとって…それで、男のことを…考えてたらね』

女『こんなことに、なってなかったのかなぁ…』

男友「……。」

男友「…落ち着いて、女。お願いだから」

女『…うん』

男友「聞けよ、女。お前のせいなんかじゃ、ないよ」

女『……。』

男友「誰のせいでもないから…そうやって悩むのは、駄目だ」

女『……。』

男友「大丈夫か?」

女『…うん、もう大丈夫…ありがと、男友』

男友「おう」

女『…でもね、しょうがないことなんかでも、ないんだよ?』

男友「…ん」

女『少なくても、今、男がこのままでいることはね、絶対に…』

男友「分かってる」

女『……。』

男友「それは…分かってるから」

女『そっか』

男友「……。」

女『…ね、男友。今のままじゃ、いけないよね』

男友「うん」

女『このままなのは、間違ってるよね』

男友「うん」

女『…ん、だったら』

女『ここまでなにも変わらなかったのは…それは、私達のせいだよね』

男友「……。」

女『男になにもしてあげないでここまで来ちゃったのは…変えようとしなかった、私達のせいだよね』

男友「……。」

男友「分かってるよ、それも」

女『…そっか』

男友「……。」

女『ね、男友』

女『私ね、逃げてたんだ、男から』

男友「……。」

女『男にね、振られて、突き放されて。それで私、逃げちゃってた』

女『男の気持ち、分かってたのに。それが余計に悔しくて、悲しくて…』

男友「……。」

女『ふふ、いつか逃げちゃうこと後悔するって、分かってたのにね…』

女『でもね、その後悔は、今したから…だから、もう逃げないよ』

男友「……。」

女『男友は?』

男友「……。」

女『男友は、どうなのかな』

女『まだそうやって、変えようとしないで、逃げるのかな』

男友「……。」

女『……。』

男友「…俺は」

女『……。』

男友「俺は…俺は…」

女『……。』

男友「でも、だって…しょうがないだろ?」

男友「男のあんな姿見たら…なにも言えないじゃんか」

女『……。』

男友「あいつ、なにも悪くないんだぞ?ちょっと背負う物が、大き過ぎただけで…あいつはなにも悪くないのに!」

男友「それでもあいつ…潰されちゃったんだ、抱える物が重過ぎて、積もり積もって…心が、折られちゃったんだ」

男友「…あいつ、頑張ってたのに。本当に限界まで、耐えようとしてたのに!」

男友「そんな姿を見てるのに…もう一回それ背負って立ち上がれなんて、言えるわけねえじゃんかよぉ…」

女『……。』

男友「今のあいつ…幸せそうに見えるだろ?」

男友「色んな物抱えてた時より、ずっとずっと楽しそうだろ?」

男友「そんなあいつに…俺は、これ以上苦しめなんて言えねえよ」

女『それが、間違ってても?』

男友「……。」

女『…男友』

女『私、今の男が幸せそうになんて…見えないよ?』

男友「……。」

女『……。』

男友「…でも…俺は」

女『……。』

女『…支えてあげれば、良いだけじゃない』

女『男友は、立ち上がろうって苦しんでる男が見たくないだけでしょ?その辛さを背負いたくないだけでしょ?』

男友「……。」

女『一緒に支えてあげようよ。じゃないと男…ずっとこのままだよぉ…』

男友「……。」

女『……。』

男友「…どうすれば、いいかな」

女『……。』

男友「俺、あいつの為に、どうすればいい?」

女『…まずは、向き合うことかな』

男友「なにと?」

女『気持ちと』

男友「自分の気持ち…か?」

女『そう、男への気持ちと…』

女『あと、男友は…妹ちゃんへの気持ちだね』

男友「……。」

女『男友、妹ちゃんのこと、好きだもんね』

男友「…女、妹さんのこと…分かってる?」

女『ん?…んー、まあ、予想は大体』

女『…男が引きこもったきっかけは妹ちゃんだろうねってことは』

男友「…そっか」

女『……。』

男友「……。」

女『……。』

男友「…ん」

女『終わった?』

男友「女」

女『はい』

男友「俺ももう、逃げないよ」

女『うん』

男友「決めたから」

女『うん』

男友「…ありがとな、女」

女『ありがとうはおかしいよ』

男友「いや、俺このままずっと続けるところだった」

女『……。』

男友「だから、ありがとう」

女『…うん』

男友「やることが出来た」

女『うん、私も』

男友「……。」

女『…また、みんなで遊べたら良いね』

男友「だな」

女『頑張ろうね』

男友「おう」

妹『お兄ちゃん…お兄ちゃん』

男『……。』

妹『部屋から出てきてよ…お兄ちゃん』

男『……。』

妹『…うー』

妹『お願いだから…出てきてよぉ…』

男『……。』

妹『お兄ちゃん…お兄ちゃん…お兄ちゃん』

妹『お兄ちゃんってばぁ…』

男『……。』

妹『なんで…なのかなぁ…』

男『……。』

妹『なんで…お兄ちゃん…ひっぐ…』

男『……。』

ガチャ

妹『…お兄ちゃん?』

男『…妹』

妹『お兄ちゃん!』

ギュー

妹『えへへ、お兄ちゃんー』

男『……。』

妹『お兄ちゃん、好きぃ』

男『……。』

妹『…ね、えっちぃこと…する?』

男『……。』

男『いいよ、しよっか』

……………………

…………

……

妹『お兄ちゃん、今、幸せ?』

男『…幸せ、だよ』

妹『そっかぁ、良かった』

男『うん』

妹『大丈夫だからね、お兄ちゃん』

男『うん』

妹『私がいるからね』

男『うん』

妹『全部、私が、するから』

男『うん』

妹『全部、全部、私が――』

妹友「やっと一日が終わったー…」

妹「終わったねー」

妹友「まったく、勉強ってなんの為にするのかな」

妹「…んー」

妹友「大人になっても数学なんて使わないっつーの」

妹「…んー」

妹友「…あ、そんな真剣に考えなくても良いってば!」

妹「あ、あれ…」

妹友「ふふ、妹って可愛いなー」

妹「…?」

妹友「なんでもないよ、帰ろう、妹」

妹「はいなー」

妹友「それでね、その番組の最後でさー」

妹「……。」

妹友「…妹、聞いてる?」

妹「…あ、なあに?」

妹友「妹、最近ボーッとしてること多いよ?」

妹「え、あ…ごめんなさい…」

妹友「別に良いけどね、寝不足?」

妹「えへへ、実は夜なかなか眠れなかったり」

妹友「あー、あるあるそういうこと」

妹「そう?」

妹友「…ずばり、恋?」

妹「…?」

妹友「あ、そういうことじゃないのね…」

妹「あ、私こっちー」

妹友「晩ご飯のお買い物?」

妹「そうだよー」

妹友「ご苦労なことで」

妹「お兄ちゃんが美味しいって言ってくれるから嬉しいの」

妹友「でたでた、お兄ちゃん」

妹「…?」

妹友「なんでもないよ、じゃあまた明日ね」

妹「うん、ばいばいー」

妹友「ばいば…ん、あの人、男友さんじゃない?」

妹「え、友ちゃん?」

男友「……。」

妹「ほんとだ!友ちゃーん!」

男友「…妹さん」

妹「どうしたのー?こんなところで」

男友「……。」

妹「誰かと待ち合わせかな?」

男友「君を、待ってた」

妹「…ふえ?」

妹友「…ふふ、これって、もしかして」

妹「私?電話で話してくれたら良いのにー」

男友「……。」

妹友「あー、ほら妹。話聞いてあげなさいよ」

妹「へ?あ、うん、聞くよー」

妹友「では、私はこれで帰りますねー」

妹「妹友、帰っちゃうの?」

妹友「ふふ、また明日どうなったか聞かせてね」

妹「…?」

妹「ばいばーい」

妹友「また明日ー」

男友「……。」

妹「…妹友、なんで笑ってたのかな?」

男友「……。」

妹「えへへ、まあ良いやー」

妹「…それで、友ちゃん」

妹「……。」

妹「……。」


妹「なんの用かな?」


男友「……。」

妹「私は友ちゃんに話すこと、別にないんだけどなぁ」

男友「妹…さん」

妹「お兄ちゃんのことかな?」

妹「友ちゃんの用事って、お兄ちゃんのことかなぁ?」

男友「……。」

妹「あれ、友ちゃんどうしたの?」

妹「顔色、悪いよ?」

妹「お家に帰ったほうが良いんじゃないかな」

妹「ねえ、友ちゃん」

妹「別にその用事、今聞かなくても、良いんじゃないかな?」

男友「……。」

妹「どうしたの、友ちゃん」

妹「お家に、帰る?」

妹「良いよ、お家に帰っても」

妹「私もね、これからお買い物に行かなくちゃいけないから」

妹「だから、ね――」

男友「妹さん、男のことで聞きたいことがあるんだ」

妹「……。」

男友「妹さんの言う通りだよ。男のことで、聞きたいことがある」

妹「……。」

男友「今まで、聞かなかったこと」

男友「今まで、聞けなかったこと」

男友「目を背けてたことが、あるから、だから――」

妹「だったら!」

男友「……。」

妹「だったら…今更聞かなくても、良いんじゃないのかな?」

妹「…今まで聞かなかったなら、別にもう聞かなくても良いんじゃないのかなぁ!」

男友「駄目だよ」

妹「……。」

男友「ねえ、妹さん」

男友「男に、なにをした?」

妹「……。」

男友「ううん、ごめん…言い方が悪かった」

妹「……。」

男友「妹さんを責めてるわけじゃ、ないよ」

男友「でも、男が『あんな風に』なったのは…なにかきっかけがあったと思うんだ」

妹「……。」

男友「俺はそれが知りたい」

男友「…それは妹さんに関係があるんだろう?」

妹「……。」

男友「お願いだから、聞かせてくれ」

妹「…なんで」

妹「なんで今更…そんなこと、言うのかなぁ」

男友「……。」

妹「……。」

妹「…友ちゃん、それを聞いて、どうするの?」

男友「分からない」

妹「……。」

男友「でも、それを聞かないと先に進めないから」

妹「先って、なに?」

男友「今じゃない、なにかだよ」

妹「意味が分からないよ」

男友「妹さんは、今の男が正しいと思うか?」

妹「…どんな質問か、分からない」

男友「今の妹さんが、正しいと思うか?」

妹「分からない、なにを言ってるのかなぁ、友ちゃん」

男友「俺達は、今のままで、このままで正しいと思うのか?」

妹「聞いてる?友ちゃん、私、友ちゃんがなにを言ってるのか理解出来ない」

男友「妹さん」

妹「聞こえない、友ちゃん。分からない、分からない、分からない」

男友「聞いてくれ、妹さん。じゃないと…」

妹「分からない、聞こえない、分からない分からない分からない…」

男友「聞いて、妹さん。お願いだから、逃げないでちゃんと話を――」

妹「だから!」

妹「…聞きたくないよぉ、友ちゃん」

男友「……。」

妹「そんなこと、聞きたくなんて…なかったよぉ…」

男友「……。」

妹「…知らない振りを、していて欲しかった」

男友「……。」

妹「……。」

男友「…無理だよ、妹さん」

妹「……。」

男友「もう、ここまで、来ちゃったんだ」

妹「……。」

男友「俺達が、現実から逃げるのも、ここまで」

妹「……。」

男友「やっぱり、駄目だよ。俺達がずっとこのままじゃ」

男友「ねえ、妹さん」

妹「……。」

妹「…このままで、良かったのに」

男友「…妹さん」

妹「私はこのままでも、良かったのになぁ…」

男友「……。」

妹「……。」

男友「……。」

妹「…ふふ」

男友「妹さん?」

妹「友ちゃん、こんなこと聞いても、きっとどうにもならないよ?」

男友「……。」

妹「きっと、とても気持ち悪い話だよ?」

男友「……。」

妹「それでも…聞きたいのかな?」

男友「うん」

妹「……。」

妹「…えへへ、そっかぁ」

男友「……。」

妹「そうだよ、友ちゃん」


妹「お兄ちゃんがあんな風になったのはきっと、私のせい」

……………………

…………

……

妹『お兄ちゃんがお勉強をしてるのは、お母さんのため?』

男『あれ、そんなこと言ったっけ?』

妹『ううん、前はね、生活がどうとかって言ってた』

男『…だよな、生活の為って言った気がする』

妹『でもね、本当はお母さんのためでしょ?』

男『……。』

妹『お兄ちゃん、治療費とか頑張って調べてるの、前見ちゃった』

男『…見てたのか』

妹『えへへ、ごめんなさい』

男『…まあ、全部自分の生活の為に繋がってくるのかもしれないけどな』

男『でも、そうだよ。全部、母さんの為』

男『別に自分の生活なんてどうでも良いんだ、俺は』

妹『…んー』

男『いや勿論、出来れば裕福な方が良いけど』

妹『私はみんなで一緒なら、なんでも良いー』

男『…はは、そうだな』

妹『ん…なでなで好きぃ』

男『…でも、貧乏な生活を送ってさ、母さんに余計な心配させたくないからさ』

妹『余計な心配?』

男『んー、母さんの病院代が高いせいで貧乏なんだ、とかさ』

妹『…んー』

男『はは、分かんないなら良いよ』

妹『お母さんのせいじゃないでしょ?』

男『そうだよ。でもそう思わせないようにさ、俺が勉強してちゃんとしたところに就職して…』

妹『……。』

男『…ああ、うん。妹には難しい話だな』

男『要はさ、俺がお金持ちになって母さんの面倒なんて軽く見ちゃってさ』

男『そしたら母さん…きっと悲しい顔なんて、しないだろうから』

妹『…悲しい顔?』

男『…前お見舞いに行ったときな、母さん、泣いてたから』

妹『……。』

男『迷惑かけてごめんねって、遊んであげられなくてごめんねって』

妹『……。』

男『だからな、俺は母さんにそんな顔させないように、頑張るんだ』

妹『…うん』

男『はは、妹よく分かってないだろ』

妹『…えへへー』

男『いいよ、お前はそうやって笑ってるだけで』

妹『……。』

男『じゃあ、勉強するかな』

妹『はいなー』

男『……。』

カリカリ

妹『お兄ちゃん、無理しちゃダメだよ?』

男『無理するくらいがちょうど良いんだよ』

妹『…んー』

男『大丈夫だって』

妹『ほんと?』

男『母さんの為だしな』

妹『むー…』

男『ほら、笑って』

妹『…えへへ』

男『よしよし』

妹『…やぁ//』

男『……。』

カリカリ

妹『お兄ちゃん、ちゃんと寝てる?』

男『寝てるよ』

妹『ほんと?』

男『…それなりに』

妹『むー…』

男『過去問がなかなか難しくてね』

妹『無理したら…』

男『はいはい』

妹『…もお』

男『……。』

カリカリ

妹『お兄ちゃん、クマが出来てる』

男『へ?』

妹『寝てないでしょ?』

男『テスト勉強がなー、忙しくて』

妹『…むー』

男『内申点も受験に大事だからな』

妹『…お、お兄ちゃん』

男『なんだ?』

妹『私に出来ること、ない?』

男『笑って』

妹『そればっかり…』

男『それだけで、十分だから、ほら』ナデナデ

妹『…えへへ』

男『……。』

カリカリ

妹『お兄ちゃん』

男『……。』

カリカリ

妹『…お兄ちゃん?』

男『…あ、悪い。どうした?』

妹『大丈夫?』

男『大丈夫だよ』

妹『ほんとに?』

男『心配性だなー』

妹『だって…』

男『母さんが今日な、頑張ってって言ってくれたんだ。だから俺、もっと頑張ろうと思って』

妹『……。』

男『……。』

カリカリ

妹『お兄ちゃん』

男『……。』

カリカリ

妹『…ねえ、お兄ちゃん』

男『今さ、勉強中だから。後でな』

妹『…はあい』

男『……。』

妹『…お兄ちゃん』

男『……。』

男『……。』

カリカリ

妹『お兄ちゃん』

男『あー、もう…また間違えた』

妹『…大丈夫?』

男『大丈夫だよ』

妹『今日お母さんがね、お兄ちゃんが無理しすぎちゃいそうで心配だって』

男『心配させないために勉強してるんだよ』

妹『…そうだけどぉ』

男『俺が良い高校受かってさ、母さんが喜ぶところがみたいんだ』

妹『……。』

男『……。』

カリカリ

妹『お兄ちゃん…』

男『……。』

カリカリ

妹『お兄ちゃん』

男『……。』

カリカリ

妹『……。』

男『…母さん』

カリカリ

妹『……。』

男『…母さん、待ってて』

カリカリ

妹『……。』

男『頑張ってるから、俺』

妹『……。』

男『……。』

カリカリ

妹『お兄ちゃん』

男『……。』

カリカリ

妹『…うー』

プルルルルルルルル…

妹『あ、電話…』

妹『はい、もしもし』

妹『……。』

妹『……。』

妹『……。』

妹『……。』




妹『…え』

男『母さんっ!』

妹『お母さん!』


男『…かあ…さん…?』

妹『……。』


男『…夢…嘘…だよ…ね?』

妹『ひぐっ…おかあさぁん…うわぁん!』


男『母さん?…ねえ、母さん…起きてよ…』

妹『おかあさん!おかあさん!おかあ…うっぐ…おかあさぁん!』


男『笑って…ねえ母さん?ねえ…ねえってば…俺、母さん喜ばそうって…うっ…が、頑張ってるんだぞ?』

妹『おかあさん…おかあさん…おかあさん!』


男『起きてよ、母さん…お願いだから…ねえ…それだけで、良いからさ…ずっと俺、母さんの面倒見てやるからさ…だから…』

妹『うー…おかあさん…』

男『…なんでだよぉ』

男『……。』

妹『……。』

男『……。』

妹『…お兄ちゃん』

男『……。』

妹『学校…』

男『……。』

妹『…行かない、よね』

男『……。』

妹『…うん、私も、行かない』

男『……。』

妹『……。』

男『…母さん』

妹『……。』

男『……。』

妹『……。』

男『……。』

妹『…お兄ちゃん、学校』

男『……。』

妹『…うん、分かった』

男『……。』

妹『私もね、ずっとお兄ちゃんの隣にいるからね』

男『……。』

妹『…ね、寂しくないでしょ』

男『…ん』

妹『お兄ちゃん』

男『ありがと、妹』

妹『…うん!』

男『……。』

妹『……。』

男『……。』

妹『…お兄ちゃん、見て』

男『…ん』

妹『えへへー』

男『…妹』

妹『私が笑ってたら、お兄ちゃん元気出るんだよね』

男『……。』

妹『私、笑うよ。だから…元気出して、お兄ちゃん』

男『…ありがと』

妹『あう…撫でられるのは恥ずかしいよぉ』

男『でも、好きだろ』

妹『…えへへ』

男『…ん』

妹『お兄ちゃん?』

男『学校、行こう』

妹『…うん』

男『ごめんな、妹』

妹『ううん、なんにも』

男『受験生だしな、俺。学校行かないとな』

妹『……。』

男『勉強もしないと…それで…』

男『…それで?』

妹『……。』

男『……。』

妹『…お兄ちゃん』

男『…ううん、学校、行かないと』

妹『……。』

男『……。』

カリカリ

妹『…お兄ちゃん』

男『ん…どした?』

妹『大丈夫?』

男『大丈夫もなにも、しばらくサボっちゃったからな』

妹『……。』

男『受験まで一ヶ月もないし…私立の申請期間も終わっちゃったし』

妹『……。』

男『…頑張らないとな、俺』

妹『……。』

男『頑張って…それで…』

男『……。』

妹『お兄ちゃん…』

男『……。』

カリカリ

妹『お兄ちゃん』

男『……。』

カリカリ

妹『……。』

男『……。』

妹『…お父さんの言うこと、気にしちゃダメだよ』

男『いや、言ってることは正しいよ』

男『勉強しろって…まあ、そうだよな、勉強しないと』

妹『…うー』

男『大丈夫だよ、あと少しだから』

男『もう少しだけ、無理してみるよ…だからほら』

妹『…えへへ』

男『ん、ありがと』

男『……。』

妹『……。』

男『……。』

妹『……。』

男『……。』

妹『……。』

男『……。』

男『…はははははは』

妹『…お兄ちゃん』

男『なんでかな…はは』

男『頑張りが、足りなかったか?サボったのが、いけなかったか?…はは、そうだよな』

妹『……。』

男『もう一年、頑張れ…か?…そうだよな、頑張らないとな…ああ』

男『頑張らないと、もう一年…そうだな…』

妹『……。』

男『……。』

カリカリ

妹『お兄ちゃん、休憩』

男『…あ?』

妹『休憩、しよう?』

男『…いいよ、もう少し、やる』

妹『…でも』

男『父さんに、怒られちゃうしな』

妹『……。』

男『頑張るよ…俺…ああ』

妹『……。』

男『……。』

カリカリ

男『……。』

カリカリ

妹『お兄ちゃん』

男『…ん』

妹『もう、良い子は寝る時間だよ?』

男『寝ろよ、妹』

妹『お兄ちゃんは?』

男『俺は、まだやる』

妹『……。』

男『おやすみ、妹』

妹『…ううん、まだ起きてる』

男『無理すんな、眠そうだぞ』

妹『お兄ちゃんだって』

男『俺は、頑張らないと』

妹『……。』

男『……。』

カリカリ

妹『お兄ちゃん』

男『……。』

カリカリ

妹『…ねえ、お兄ちゃん』

男『はは、厳しいなー、父さんは』

妹『……。』

男『もっと頑張れ、か…うん』

妹『……。』

男『…そうだよな、俺、高校落ちたんだもんな』

男『だから、頑張らないと』

妹『……。』

男『……。』

カリカリ

妹『…お兄ちゃん』

男『勉強中』

妹『……。』

男『……。』

妹『……。』

男『……。』

妹『……。』

男『…なあ、妹』

妹『なあに、お兄ちゃん』

男『……。』

妹『……。』

男『…なんでもない』

妹『……。』

男『……。』

カリカリ

妹『お兄ちゃん、頑張ってるね』

男『……。』

妹『…ね、お兄ちゃん。聞きたいこと、なんだった?』

男『……。』

妹『……。』

男『…妹』

妹『うん』

男『俺、頑張ってるか?』

妹『うん』

男『…そっか…じゃあ、俺』

男『なんのために、頑張ってるのかな』

妹『……。』

男『…母さんの為、だったんだけどなぁ』

妹『…うん』

男『…じゃあ、今の俺は、なんの為なんだろう』

妹『お兄ちゃん…』

男『なんだか、分かんなくなっちゃった』

妹『…だったら』

男『でも、頑張らないと』

妹『……。』

男『高校、また落ちたら、駄目だもんな』

妹『……。』

男『……。』

カキカキ

妹『…なんで』

男『……。』

カキカキ

妹『……。』

男『はは…ははは…』

男『あと、九ヶ月か』

妹『……。』

男『あはは…笑っちゃうよ…』

男『俺、そんなに駄目な奴かな…』

妹『……。』

男『駄目な奴は、ここまで頑張らないと、しょうがないのかなー』

妹『……。』

男『あは、ははは』

男『あははは…』

妹『…お、お兄ちゃん、見て』

男『あ?』

妹『え、えへへー』

男『……。』

妹『…お兄ちゃん』

男『…あはは』

妹『こっち、見てよ…お兄ちゃん』

男『もっと、頑張らないとなー…はは』

妹『……。』

妹『…こんなの』

妹『こんなのもう…見てられないよぉ…』

妹『うっ…うっ…』

妹『…お兄ちゃん…お兄ちゃん』

妹『私、お兄ちゃんのために、なにか出来ないのかなぁ…』

妹『もう、見てるだけじゃ…つらいよぉ…』

妹『なんでもするのに…お兄ちゃんのためだったら、なんだってするのに…』

妹『お兄ちゃん、お兄ちゃん…』

妹『もう、苦しそうにしてるお兄ちゃん…いやだよぉ…限界だよぉ…』

妹『なんにもしなくて良いよぉ…休んでよぉ…』

妹『もう十分だよぉ…ねえ、お兄ちゃん…』

妹『…お兄ちゃん…おにいちゃん』

妹『おにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃん…』

妹『……。』

妹『……。』

妹『……。』

妹『……。』

妹『……。』

妹『……。』

妹『……。』

妹『もうやめてよおにいちゃん…』

妹『…うん…やめて…おにいちゃん…くるしまないでおにいちゃん…おにいちゃんおにいちゃん』

妹『そうだよおにいちゃんなにもおにいちゃんががんばるひつようはないんだよ…そうだおにいちゃん』

妹『ぜんぶわたしがやってあげるから…おにいちゃん…だからおにいちゃんはもうがんばらないで』

妹『なんでもわたしがやってあげるからぜんぶわたしがしてあげるだからおにいちゃんはもうやすんでね』

妹『そうだねなんでいままでかんがえなかったのかなぁばかだなぁわたし…おにいちゃんひとりがんばらせてほんとうにだめないもうと』

妹『でもねおにいちゃんもうだいじょうぶだからおにいちゃんぜんぶわたしがやってあげるぜんぶわたしにまかせておにいちゃん』

妹『だからね、おにいちゃん、まっててね』

妹『おにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃん…』






妹『わたしがらくにしてあげる』

男『……。』

カキカキ

ガチャ

妹『……。』

男『……。』

妹『お兄ちゃん、お兄ちゃん』

男『……。』

妹『こっち向いて、お兄ちゃん』

男『……。』

妹『ねえってば』

男『…なんだよ』

男『……。』

妹『えへへー』

男『…なんで、タオル巻いてるんだ…妹?』

妹『ふふ、なんででしょー』

男『…ふざけてないで、服着て来いよ』

妹『ふざけてないよお兄ちゃん』

男『…は?』

妹『……。』

パサッ

男『お…おい』

妹『ねえ、お兄ちゃん』

男『ど、どうしたんだよ、妹。寝ぼけてるのか?』

妹『ねえ、お兄ちゃん。どうして勉強なんて、頑張ってるの?』

男『…は?なに言って…服着ろよ、早く』

妹『ねえ、お兄ちゃんってば』

男『だから、早く服を…』

妹『そんなことは、良いから』

男『…そんなことって』

男『妹…どうした、なんか…おかしいぞ?』

妹『おかしいのはお兄ちゃんの方だよ』

妹『お兄ちゃんこの前、なんで頑張ってるか分かんないって言ったよね』

妹『じゃあ、なんでまだ頑張ってるの?』

男『……。』

妹『こっち見てよ、お兄ちゃん』

男『だってお前、裸…』

妹『……。』

男『やっぱお前、おかしいって…落ち着けよ』

妹『……。』

男『落ち着いたら、服着て来い…な?』

妹『…でしょ』

男『え?』

妹『私をこんな風にしたのは、お兄ちゃんでしょ?』

男『…妹?』

グイッ

男『わっ』

ドサッ

妹『…んしょ』

妹『これで逃げれないね、お兄ちゃん』

男『…どいて、妹』

妹『どかないよ』

男『……。』

妹『えへへ、やっとこっち、見てくれた』

男『…なにが、したいんだ?』

妹『私は、お兄ちゃんの言葉が聞きたいだけだよ?』

男『……。』

妹『なんでそんなになるまで頑張ってるのかなぁ、お兄ちゃん』

妹『……。』

男『…そんなの…俺は』

妹『……。』

男『…俺は』

妹『答えられないの?お兄ちゃん』

男『……。』

妹『はじめは、お母さんのためだったのにね』

妹『でも今はもう、いないから』

男『……。』

妹『だからもう、頑張る必要も、ないんじゃないかなぁ』

男『…でも、高校に…行かないと』

妹『なんで?』

男『……。』

妹『そんなに、壊れそうになるくらいまで無理して、行かないといけないの?』

男『……。』

妹『…お兄ちゃん、私のおっぱい、触って』

男『…は?』

妹『……。』スッ

男『お、おい…』

妹『ん…お兄ちゃんの手、冷たい』

男『……。』

妹『ん、ふふ、くすぐったいな』

男『……。』

妹『手、どかさないんだね』

男『え?』

妹『私に無理矢理押さえ付けられてても、力を入れたらどかせられるよね?』

男『……。』

妹『女の子のおっぱい触るの、初めて?…それとも、女さんに触らせて貰ったことくらいあるよね』

男『……。』

妹『ん…私今、お兄ちゃんに恥ずかしいところ、触られてるんだよね?』

妹『あ…ちょっと気持ち良くなってきちゃったよぉ…』モゾッ

男『…くっ』

妹『…お兄ちゃん、反応した?』

男『……。』

妹『ここ…固くなってるよ?妹の裸見て、おっぱい触って…興奮しちゃった?』

男『…どこで、そんなこと覚えて…妹』

妹『ごめんね、お兄ちゃんが隠してた本とか、見ちゃったの』

男『……。』

妹『今日のためにね、色々お勉強しちゃった』

男『……。』

妹『こんなえっちな妹になっちゃって、ごめんね?』

男『…妹』

妹『もっと先のこともね、知ってるよ?お兄ちゃん』

男『……。』

妹『…ふふ、今、期待した?』

男『……。』

妹『良いんだよ、お兄ちゃん』

妹『お兄ちゃんが思ってる通り、今の私、おかしいから』

妹『だからね、お兄ちゃんも普通に考えたら、ダメだよ』

妹『私を、見て』

妹『私の声だけ、聞いて』

妹『もうなにも、考えないで』

男『……。』

妹『ね、お兄ちゃん』

妹『もっとえっちぃこと、しよっか?』

男『……。』

妹『良いよ、なにも答えなくて。もうお兄ちゃんは、逃げられないんだから』

スルッ

妹『やぁ…お兄ちゃんの、見ちゃったぁ…』

男『……。』

妹『ふふ、妹に大きくなったこれ、見せちゃったね』

妹『なんでこんなに、固くなっちゃってるのかなぁ』

男『……。』

妹『んしょ…』

ニチャ…

妹『え…や、だめぇッ//聞かないでぇ!』

男『……。』

妹『変な音…聞こえちゃったね…恥ずかしい…』

妹『…私、濡れちゃってるんだぁ…やぁ』

男『…う』


妹『……。』

男『……。』

妹『お兄ちゃん、なんで目、つぶってるの?』

男『……。』

妹『我慢、してるの?』

男『……。』

妹『…いつまで我慢、してるの?』

男『……。』

妹『お兄ちゃんは、いつもそうだね…ん』ペロッ

男『…ッ!』

妹『ふふ、耳舐められて、ぞくってした?…こうやって、耳元で喋られるのもこそばゆいよね』

男『…妹』

妹『お兄ちゃんはいつもそうやって、苦しそうで、辛そうで』

妹『もう、私見ていられないよ』

妹『だからね、お兄ちゃん、聞いて?』

男『…妹』

妹『聞いて、お兄ちゃん』

妹『我慢しないで』

妹『なにも考えないで』

妹『もう、なにもしなくて良いから』

妹『ね、今はなにもかもおかしいでしょう?』

妹『だからね、もう全部忘れて』

妹『全部、捨てて』

妹『いいよ、お兄ちゃんずっと頑張ってたもん』

妹『だからもう、良いの』

妹『私が許すから』

妹『お兄ちゃんはなにもしなくて良い』

妹『もう苦しまないで』

妹『勉強なんて、忘れて』

男『…いも…うと?』

妹『ほら、なにも考えないで』

妹『私を見て』

妹『辛いことなんてないよ』

妹『全部私が、引き受けるから』

妹『お兄ちゃんは、考えないで』

妹『全部私がやるよ、ほら』

妹『なにもかも、私にまかせて』

妹『もうお兄ちゃんは、苦しまないで良い』

妹『考えないで』

妹『しょうがないんだよ』

妹『なにもおかしくなんて、ない』

妹『ただなにも、しなくていいだけ』

妹『まちがってることなんかないよ』

妹『わたしがいるから』

妹『ねえ、おにいちゃん』

男『いもうと…いもうと…』

ニュルッ

妹『んんっ!』

男『もう…なにも…』

妹『そうだよ、おにいちゃん』

妹『はいってるの、わかる?』

妹『おにいちゃんの、わたしのなかに、はいってるよ?』

妹『なにもかんがえないで』

妹『それだけ、かんじて?』

男『…う』

妹『なにもしなくていいよ』

妹『わたしがいるから』

妹『ね、きもちいい?』

妹『がんばって、うごかすから』

妹『かんじて…それだけでいいんだよ?』

妹『おにいちゃん…おにいちゃん』

男『いも…うと』

妹『おにいちゃん、きもちいい?』

男『…うん』

妹『おにいちゃん、おにいちゃん、おにいちゃん』

男『…あ…あ』

妹『でちゃう?おにいちゃん、しろいのだしちゃうの?』

男『いもうと…あ…いもうと』

妹『いいよ、おにいちゃん。ぜんぶわすれて、きもちよくなって』

男『あ…あー…』

妹『のぼって、なにもかんがえないで、そのまま、だして』

男『あ、いもうと…いもうと』

妹『だしておにいちゃん!すきだよ、だから、ぜんぶ!わたしのなかで、だしてぇ!』

男『…んっ!』

妹『ひゃうっ!…あ…ん』

男『はあ…はあ…』

妹『……。』

男『はあ…はあ…』

妹『……。』

男『はあ…』

妹『……。』

男『……。』

妹『……。』

男『…妹』

妹『いいんだよ』

男『……。』

妹『わたしが、ゆるしてあげる』

男『……。』

妹『らくに、なって』

男『……。』

妹『ね、おにいちゃん』

男『……。』

妹『……。』

男『うん』

妹『……。』

男『……。』

妹『……。』

男『……。』

妹『…ん』

パンッ!

男『ッ!』ビクッ

妹『えへへ、びっくりした?』

男『…ん』

妹『これで、おしまい』

妹『お兄ちゃーん』

男『……。』

妹『お兄ちゃん』

男『…んー?』

妹『大丈夫?』

男『…ん、なにが?』

妹『今、幸せ?』

男『…どうかな…幸せだと、思うよ』

妹『…そっかぁ』

男『これで、いいのかな』

妹『大丈夫、私がいるから』

男『…そっか』

妹『なにも考えなくて、良いよ』

男『…ん』

妹『えへへ、お兄ちゃん――』

……………………

…………

……


男友「……。」

妹「……。」

男友「……。」

妹「もっと、聞く?」

男友「……。」

妹「もっと…聞きますか?」

男友「……。」

妹「それからもね、何度も、してるんだよ?」

男友「……。」

妹「お兄ちゃんがね、なにか考えそうになるたびに」

妹「苦しそうにするたびに、思い出そうとする度に、何度も…何度も…それでね」

男友「もう…いいよ、妹さん」

妹「……。」

男友「……。」

妹「…幻滅した?」

男友「いや、してないよ」

妹「ふふ、友ちゃんは優しいね」

男友「……。」

妹「それで、この話を聞いて、なにか変わったのかな?」

男友「……。」

妹「話を聞いて、どうしたかったのかな?」

男友「それは…」

妹「……。」

男友「…分かったことが、あった」

妹「分かったことって、なに?」

男友「妹さんは、なにも悪くない」

妹「……。」

妹「なに…言ってるの?」

男友「だって、妹さんは――」

妹「うるさい!」

男友「妹さん」

妹「思ってもいないこと、口にしないでよ!私はそんなこと、求めてなんかない」

男友「いや、俺は本当に…」

妹「分かってるよ?私のしてることが間違ってることくらい」

妹「だから、慰めるようなことを…言うなぁ!懐柔させようなんて、しないで!」

男友「違う、聞いて、妹さん」

妹「嫌だ、聞かない!私はもう全部、決めたんだもん!」

妹「お兄ちゃんのためだったらなんだってするって!もうお兄ちゃんに苦しめるようなことなんてさせないって!」

妹「なんだってするって決めたんだ!全部、お兄ちゃんのために!だから、私は…ぁ…」

クラッ

男友「妹さんっ!?」

妹「…ん」

男友「大丈夫?」

妹「大丈夫…だから…触らないで」

男友「……。」

妹「…ごめんね、友ちゃん」

男友「…妹さん、俺は」

妹「他にもう」

男友「……。」

妹「他に、聞きたいことはもう、ないよね?」

男友「……。」

妹「だったら私、お買い物あるから、行くね」

男友「妹さん!」

妹「ねえ、友ちゃん」

男友「……。」

妹「ずっとお兄ちゃんのお友達で、いてあげてね?」

男友「……。」

妹「じゃあね、友ちゃん」

男友「妹さん!」

タッタッタ

男友「……。」

男友「……。」

男友「…妹さん」


男友「…それで、それきり、話してない」

女『そっか…ごめんね?』

男友「なにが?」

女『辛いこと、させちゃったね…男友にも、妹ちゃんにも』

男友「なんで女が謝るんだよ」

女『うー…そうだけどさ』

男友「…なあ、女。どうすれば、良いのかな」

女『…ん』

男友「俺、話して分かったんだ。妹さんも、苦しんでる」

女『…うん』

男友「なんとかしてあげたいんだよ…俺」

女『うん』

男友「笑ってて欲しいんだ、ずっと」

女『うん』

男友「…俺には、なにが出来る?」

女『私にも、分からないよ』

男友「……。」

女『もしかしたら、なにもないのかもしれない』

女『男たちが、決めることだもん…どうするかなんて、私たちが言って良いことじゃない』

男友「……。」

女『でも!なにもしないなんて、嫌だから』

男友「…女」

女『だから、出来ることを探そう?』

男友「おう」

女『…私今度、男に会いに行ってくるね』

男友「……。」

男友「女、あんな話聞いて、なんとも思わないのか?」

女『え?』

男友「…男と、妹さんが…その」

女『勿論、大丈夫なわけないじゃんか』

男友「…だよな」

女『…うー、あいつめ…私とだって、してないのに』

男友「…へ?」

女『…男友』

男友「おう」

女『今の言葉は…忘れてぇ』

男友「…ん」

女『……。』

男友「忘れたぞ?女」

女『勿論、ショックだよ…泣きたいくらいだよ?』

男友「…うん」

女『でもやっぱりね、男に…妹ちゃんに、そこまでさせないといけないくらいに追い詰めちゃった自分のことが、悔しくて』

男友「…お前のせいじゃないって」

女『でも、私、男のためになにも出来なかったから!』

女『それがね、なによりも…悲しかったから』

男友「…ん」

女『…ま、今度会ったら二、三回蹴るかもしれないけどね?』

男友「はは、そうしろ」

女『とりあえず、会ってくるよ、私』

男友「…変なこと聞いてごめんな」

女『良いよ』

ピコン♪

[刹那戦士さんが入室しました]

男友「お、来たな」

女『じゃあ、男友』

男友「おう、切るぞ」

女『またチャットで』

男友「ん」

ピッ

刹那戦士:なんだ、もう二人ともいるのか

妹「ふんふーん」

トントントントン

グツグツ

妹「お料理お料理ー」

トントントントン

妹「お兄ちゃんと晩ご飯ー」

妹「えへへ、幸せだなー」

トントントントン

妹「幸せ」

トントントントン

妹「そうだよ、幸せだよ」

妹「幸せだもん」

妹「……。」

グツグツ

妹「……。」

妹「……。」

男友『妹さんは、今の男が正しいと思うか?』

妹「……。」

男友『今の妹さんが、正しいと思うか?』

妹「うるさい」

男友『俺達は、今のままで、このままで正しいと思うのか?』

妹「うるさい、うるさいうるさい!」

男友『俺達が、現実から逃げるのも、ここまで』

妹「うるさいうるさいうるさい!喋るなぁ!」

男友『やっぱり、駄目だよ。俺達がずっとこのままじゃ』

妹「うるさああああああい!!!」

バンッ!

妹「はあ…はあ…」

妹「…はあ…あ」

クラッ

妹「…ん」フルフル

妹「…お兄ちゃん」

妹「……。」

妹『お兄ちゃん…お願いだから部屋から出てきて…』

妹「……。」

妹「…はあ…はあ」

妹「…分かってるよぉ…そんなこと」

ブクブク…

妹「……。」

妹「…火、止めなきゃ」

妹「……。」

カチッ

妹「……。」

妹「…でも」

妹「しょうがないじゃんかぁ…」

男「……。」

カタカタ

男「……。」

ピンポーン

男「……。」

ピンポーン

男「……。」

ピンポーン ピンポーン ピンポーン

男「う、うるせえ…」

男「妹ー!…あ」

男「妹、買い物か…たく」

ピンポーン

男「…しつこい」

ピンポーン ピンポーン ピンポーン ピンポーン ピンポーン

男「…ああ、はいはい!分かりましたよー!」

ピンポーン

男「……。」

ピンポーン

男「…ふう」

ガチャ

女「すぐ出ろ、バカ」

男「……。」

女「…にゃ?」

男「……。

バタン

女「お、おいこら閉めるなー!」

男「……。」

ピンポンピンポンピンポーン

女「開けろー!」

男「…はあ」

女「あ、部屋きれいー」

男「……。」

女「月曜日だもんね、ふふ、今日にして良かった」

男「……。」

女「んー…あ、あった。この座布団が良いんだよねー」

男「……。」

女「そうだ、飲み物持ってこよーっと。男はなに飲みたい?」

男「おい」

女「なに?」

男「なんでそんな我が物顔で俺んち出入りしてんだ」

女「それは、何回も来てるおうちですし」

男「……。」

女「…んに?」

男「かわいこぶっても化けの皮は既に、痛えっ!」

女「失礼なこと言うな」

男「妹なら買い物行ってるからいないぞ?」

女「そうみたいだねー」

男「……。」

女「なに?」

男「いや、だからまたあとで来いよ」

女「誰も妹さんに用事だなんて言ってないじゃない」

男「…いや、だからさ」

女「ん?」

男「……。」

女「……。」

男「…あー、くそ!だったらストレートに言うぞ?」

女「なによ」

男「お前、もう来んなよ」

女「……。」

男「前も言ったよな、これ」

女「……。」

男「…あー、そんな顔すんなよ」

女「本気で、思ってないくせに」

男「は?」

女「だったら、玄関で追い返せばよかったでしょ?」

男「いや、お前それで帰るような奴じゃないだろ…」

女「よく分かってるじゃん」

男「そりゃあな」

女「そりゃあ…なに?」

男「……。」

男「…長い、付き合いだから」

女「にひひ」

男「なんだその笑い方」

女「ジュース取ってくるー」

男「だから人の話聞けよ!」

女「おまたせー」

男「待ってねえ」

女「はい、男」

男「……。」

女「そんな顔してないで、受け取って」

男「…ああ、もう」

女「ん、よく出来ましたー」

ペシッ

女「痛い」

男「自業自得だ!なんだ、よく出来ましたって!」

女「えへへ」

男「…な、なんで笑ってんだ」

女「男に叩かれるの久し振りだったから」

男「や、やめろよその誤解受けそうな発言…」

女「…今のは、私もちょっと恥ずかしい」

兄「妹よ」兄「なに」 のスレって落ちた?
携帯で頑張ってる>>1が凄かったんだが

男「…駄目だ、お前が来ると色々疲れる」

女「男がそんなに突っかかってくるからでしょ」

男「だってなあ」

女「はい、ストップ」

男「…う」

女「座って、落ち着きましょう」

男「……。」

女「…二人で喋ること、久し振りなんだからさ」

男「この前、喋ったじゃねえか」

女「あれは喋ったうちに入らないよ」

男「……。」

女「ね、折角なんだから喋ろうよ」

男「…どうせ、喋るまで帰らないんだろ?」

女「よくご存知で」

男「はあ…」

>>746
無事に>>1000までいって落ちましたー

女「ふふ、そうこなくっちゃ」

男「つっても、俺はお前と話したいことなんてないけど」

女「…むー」

男「なんだよ」

女「…なんでそんなに、冷たくするのさぁ」

男「……。」

女「そんなに、私のこと嫌い?」

男「……。」

女「違うなら、もう少し普通に話してくれても良いと思うんだけど」

男「お前と話すと、嫌な気分になるんだよ」

女「……。」

男「分かったら、さっさと話したいことだけ話して…帰れよ」

女「昔のことを思い出すから?」

男「……。」

女「嫌な気分になるのは、引きこもりになる前のことを思い出しちゃうから?」

男「……。」

女「そうなの?男」

男「お前…本当に、なにしに来たんだよ」

女「ただ男と話したいだけだよ」

男「…俺は…お前と、話したくない」

女「私は話したい」

男「帰れよ…お願いだから」

女「男と話をしたら帰るよ」

男「今すぐ帰れよ」

女「嫌だよ」

男「聞け、女。帰れ!」

女「……。」

女「私が帰って…どうするの?」

男「……。」

女「帰って、それで男はどうするの?」

男「……。」

女「私が来たことを、なかったことにするの?」

女「私が今日言ったことを忘れるの?」

男「…なに言って」

女「それとも」

女「妹ちゃんに全部、忘れさせてもらうの?」

男「なっ!?…な…んで」

女「……。」

男「…なんで…女」

女「ねえ、男」


女「私、全部もう…知ってるんだよ」

妹「今日のご飯はなににしようかなー」

妹「お兄ちゃんになにが食べたいか聞いてくれば良かったかな」

妹「…えへへ、お兄ちゃんの好きな物たくさん買って帰ろうーっと!」

妹「……。」

妹「……。」

妹「……。」

妹「…なんで」

妹「なんで、そんなところにいるの?」

男友「…会えて、良かった」

妹「…私は、会いたくなかったよ…友ちゃん」

男友「…ごめん」

妹「私を、待ってたの?」

男友「そうだよ、君を待ってた」

妹「……。」

妹「…なんの、用かな」

男友「この前ちゃんと言えなかったことを、言いに来た」

妹「…なに、それ」

男友「分かってほしいんだ、妹さんに」

妹「この前のことって…あの慰みの言葉のことかな?」

妹「そんなことを言うために…わざわざ、また待ち伏せなんかして…」

妹「また、私を責めようとしに来たの?」

男友「違う!違うんだ、妹さん」

妹「放っておいてよ!」

男友「……。」

妹「私たちのこと…もう、放っておいてよぉ…」

男友「…妹さん」

妹「嫌だよぉ…友ちゃんにこんなこと言うの、嫌なのにぃ…」

男友「……。」

妹「…うっ…うっ」

男友「…ちょっとで良いから、俺と話をして欲しい」

妹「……。」

男友「お願いだ、妹さん」

妹「……。」

男友「……。」

妹「…お兄ちゃんが」

男友「……。」

妹「お兄ちゃんが引きこもりをするようになったのは、私のせいでしょう?」

男友「違うよ」

妹「……。」

男友「それは違うよ、妹さん。君のせいなんかじゃ、ない」

妹「……。」

妹「……。」

男友「……。」

妹「…嘘だ、そんなこと、思ってない」

男友「ほんとだよ」

妹「嘘だ!」

男友「だって!」

男友「君だって…男にあんな風に閉じこもってほしいだなんて、思ってなかっただろう?」

妹「……。」

男友「妹さんは、男が苦しんでる姿を見たくなかっただけ…そうだろ?」

男友「みんなで遊んで、辛いことなんて考えないで笑っていて欲しいって…それだけだろ?」

男友「だって、妹さんはあんなにも…」

妹『お兄ちゃん…なんでお部屋から出てくれないのかなぁ…』

男友「あんなにも、悩んでたじゃんか」

妹「……。」

男友「だから妹さんは、なにも悪くなんか、ない」

妹「……。」

男友「……。」

妹「それでも、私がお兄ちゃんを部屋に閉じ込めちゃったことは変わらないよ」

男友「……。」

妹「お兄ちゃんは『あの日』から…家を出なくなった」

妹「それは私がお兄ちゃんに『あの日』…あんなことをしたからでしょう?」

男友「……。」

妹「私がお兄ちゃんを部屋に縛り付けた…それはもう、変わらないことでしょ?」

妹「…それでも友ちゃんは私のせいじゃないって、言うのかな」

男友「……。」

妹「ねえ、答えてよ」

男友「…妹さんは、なんて答えて欲しいんだ?」

男友「妹さんのせいって…言って欲しいのか?」

妹「……。」

妹「…答えて、友ちゃん」

男友「……。」

妹「答えてよ…友ちゃん」

男友「…誰のせいでも、ない」

妹「……。」

男友「誰のせいでもないよ、妹さん」

妹「…そんなの、納得出来ない」

男友「……。」

妹「だってお兄ちゃんは、私がお兄ちゃんにあんなことをしたから!」

男友「それが、原因かもしれない」

妹「だから!」

男友「そして、相談に乗れなかった俺が原因かもしれない」

妹「…え?」

男友「助けになれなかった女が原因かもしれない」

妹「…なにを」

男友「そうなるまで追い詰めた親父さんが原因かもしれない」

男友「心ないことを言ったクラスメートが原因かもしれない」

男友「勉強を強いた受験が原因かもしれない」

妹「なに言って…」

男友「訃報からの立ち直りに尽力出来なかった先生のせいかもしれない」

男友「お袋さんを助けられなかった病院が原因かもしれない」

男友「それに、現実に耐え切れなかった男が原因かもしれない」

妹「…なに言ってるのさ、友ちゃん」

妹「話をはぐらかすつもり?屁理屈を言ってごまかすつもり?」

妹「責任転嫁して私を慰めるつもり?そんなこと言われたって、私は――」

男友「違う!そんなことを言ってるんじゃない」

妹「じゃあなにを言ってるのさぁ!」

男友「原因は、沢山あるんだ。色んなものが折り重なって起こってるんだ」

男友「みんながみんな関係を持って、それらが全部積み重なっただけなんだ」

男友「だから…それらを全部一人で背負い込もうなんて、しなくて良いって言ってるんだよ!」

男友「そうなるまで追い詰めた親父さんが原因かもしれない」

男友「心ないことを言ったクラスメートが原因かもしれない」

男友「勉強を強いた受験が原因かもしれない」

妹「なに言って…」

男友「訃報からの立ち直りに尽力出来なかった先生が原因かもしれない」

男友「お袋さんを助けられなかった病院が原因かもしれない」

男友「それに、現実に耐え切れなかった男が原因かもしれない」

妹「…なに言ってるのさ、友ちゃん」

妹「話をはぐらかすつもり?屁理屈を言ってごまかすつもり?」

妹「責任転嫁して私を慰めるつもり?そんなこと言われたって、私は――」

男友「違う!そんなことを言ってるんじゃない」

妹「じゃあなにを言ってるのさぁ!」

男友「原因は、沢山あるんだ。色んなものが折り重なって起こってるんだ」

男友「みんながみんな関係を持って、それらが全部積み重なっただけなんだ」

男友「だから…それらを全部一人で背負い込もうなんて、しなくて良いって言ってるんだよ!」

妹「……。」

男友「妹さん一人で、背負い込まないで」

男友「だってそれは、妹さんだけの物じゃ…ないんだから」

妹「……。」

男友「…やっと…言いたいことが、言えた」

妹「……。」

男友「…妹さん」

妹「…それで」

妹「それを言って…どうしたいの?友ちゃん」

男友「……。」

妹「私にそんなこと言って…なにか意味でもあるのかなぁ?」

男友「……。」

男友「…妹さん」


男友「男を…閉じこもった殻からもう一度、出してあげようよ」

男「……。」

女「……。」

男「…そっか」

女「……。」

男「…だから、言っただろ?」

女「え?」

男「俺と、もう関わるなって」

女「……。」

男「そのほうが良いって、俺、言ったろ」

女「…それは、これが知られたくなかったから関わるなって言ってたってこと?」

男「……。」

女「秘密にしておきたかったから、そう言ったってことなの?」

男「…そうだよ」

女「……。」

男「……。」

女「…馬鹿」

男「…うん」

女「そんな嘘、私にきくわけないじゃんか」

男「……。」

女「男、前に言ったよね。私の気持ちが分かるって」

女「私も、あんたの気持ちぐらい…全部分かるわよ、馬鹿」

男「……。」

女「男は、優し過ぎるんだよ…それで私に冷たくしてるつもりなの?」

女「それで、自分の気持ちを隠せてると思ってるの?」

男「…女」

女「男、私のことならなんでも…知ってるじゃない」

女「私が男のことならなんでも分かっちゃうってことくらい…知ってるじゃない」

女「どれだけ付き合ってると思ってるのさぁ!」

男「……。」

妹「……。」

男友「男が外のことを拒絶するのは、現実を見たくないから」

男友「そして、男が女と別れたのは、女が優しいって知ってるから」

男友「…このまま付き合っていたら、女が自分のことをいくらでも犠牲にして男の為になろうとするってことを、知ってるから」

妹「……。」

男友「まあ、あいつのことだから、他にもいらない気をまわしてるんだと思うけど…」

男友「…とにかく、これらから言いたいことは」

男友「男が、今の自分は間違ってるんだってことが、分かってるってこと」

妹「……。」

男友「分かってるからこそ、閉じこもるし」

男友「分かってるからこそ、女にはそんな自分の側にいてほしくない」

妹「……。」

男友「そういうことだろ?妹さん」

妹「……。」

ごめんなさい、時間…
あともう少しだから、次書くときに終わりです

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