お話をいくつか(6)

哀しい魔物

遠い遠い世界のお話
あるところに悲しい世界がありました。
そも世界では悲しいことがたくさんあって、人々は毎日悲しく過ごしていました。

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そんな悲しい思い出から魔物が一匹生まれました。

魔物はとても小さくて弱くて、
思い出の国の姫様はそんな魔物を優しく見守っていました。

魔物は悲しい思い出が大好きで、
幸いにも世界には悲しい思い出が溢れていましたから
悲しい思い出をたくさん食べてどんどん大きくなりました。

やがて、世界はほんの少し悲しくなくなりました。
それは、世界が落ち着いたからなのか、魔物がたくさん思い出を食べたからなのか、わかりません。
思い出の国の姫様も赤い水晶の従者たちも、みんなみんな喜びました。

魔物以外は。

お腹が空いた

だから魔物はもう一度世界を悲しくしようとしました。
姫様は言います。“ラモエ、いけません。あなたはそんなことをするために生まれてきたのではありません”
魔物は答えます。“ミオ様、お腹が空いたのです。どおしても、お腹が空いたのです”

姫様はとめようとしたけれど、
魔物はもう大きくて強くて、とめることができません。

魔物は悲しい思い出から、たくさんのマモノを生み出して世界中にばらまきました。
そうやって、世界は前よりももっと悲しくなくなりました。

そうやって哀しい魔物になりました。

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