暦「ジュースでいいか八九寺?」火憐「精神科いこうよ兄ちゃん…」(949)


たのんだぜ

暦「おいおい火憐ちゃんせっかく僕の友達を紹介してるのにそれはないだろ」
暦「いてえ!おい噛むなよ八九寺!噛むなっておい・・・こらおい!!」
暦「ふぅ・・・我ながらいいDDTだったな・・・・・・ん?わざとだろ!お前今またわざと間違えたろ!!」

月日「もしもし・・・精神科ですか・・・」

>>3

月日ちゃんが…泣いている?

撫子「暦おにいちゃん・・・なでことセックスしてくれる?」
阿良々木「セックスってなんだ?」
撫子「知らないの?こよみおにいちゃん」
阿良々木「ああ、なんだ?ゲームのタイトルか?」
撫子「ちがうよ。ううん、知らないなら仕方ないね。なでこが教えてあげる、その身体に」

撫子「っていうのはどうだろう」
火憐「いやぁ流石にうちのバカアニキでも無理があるんじゃないかな」
撫子「でももうなでこ我慢できないよ」
火憐「それじゃあさ」
撫子「?」
火憐「歯磨きさ!」

火憐は撫子知らないんじゃね

>>12
えっ

月火の友達だったんじゃなかったか?

>>14
今原作確認しようとしたけど、ららちゃん云々のくだりが
見つからなくて諦めた。でも月火と知り合いってことは
同時に火憐とも知り合いと考えてもよさそうだが・・・

神原「おや、阿良々木先輩ではないか、こんな道端で阿良々木先輩に会えるとはなんという僥倖…今日一日私よりも幸せな人はこの世界にいな     いであろうな」

「お前にとって僕に会う事はそんなに良いことなのか」

神原「それはもちろん、鴉や黒猫を見たときと同じくらい良い事が起こりそうな気がするぞ」

「僕を不吉の代名詞と並べるな!」

神原「ところで阿良々木先輩はこんな所で何をしておられたのだ?」

「ちょっと八九寺と話してたんだよ…ってあれ?そういえばお前って八九寺にあったことあったけ?」

神原「話…八九寺…?何を言っておられるのか私には判りかねるが…」

神原「阿良々木先輩が小学生にしては発育がいい女の子にイタズラをしているところなんて見えなかったぞ」

「最初から見てたのかよ!?それならさも偶然を装った用に現れるんじゃねえ!」

神原「これは失礼した、メタ発言は私のキャラでは無かったな」

八九寺「これはどうも。ごちそうになります、おぼろ気さん」

暦「僕はそんな抽象的な存在じゃない。でも半分吸血鬼な僕だから当たらずとも遠からずでちょっと気にしちゃうぞ」

八九寺「失礼。噛みました」

暦「違う。わざとだ」

八九寺「髪切りました?」

暦「なんで会話しづらい相手にふる話題みたいなことするんだよ! お前と仲良くしてるつもりなのは片思いだったのか!?」

八九寺「阿LaLa木さん、ほんと私のこと好きですよねー」

暦「さりげなく少女漫画になってるぞ、僕」



火憐「……ああ、一人ツッコミの練習なんだ、きっとそうだ」

八九寺「でも阿良々木さん、私達距離を置いた方がいいと思うんですよ」

暦「え……なに、ちょっと待って、距離を置くってどういうことだ?」

八九寺「ほら、戦場ヶ原さんとお付き合いしているわけですし、他のヒロインも囲ってらっしゃるじゃないですか」

暦「なんだか僕が女誑しみたいだな」

八九寺「戦場ヶ原さんとのエロシーンもないのに、私とばかり乳繰りあっているというのも、ねえ」

暦「その言い方は僕のイメージを著しく下降させる恐れがある」

八九寺「イエスロリータ、ノータッチの志もないなんて、阿良々木さんはロリコン失格ですね」

暦「僕はロリコンじゃねえよ!」

八九寺「とにかく、もうあの夜のことは忘れてください。あの日はどうかしてました」

暦「お前は僕の愛人かなにかなのか……?」

八九寺「てゆーかー。真面目な話、今世間の風当たりが強いじゃないですか。ほら、例の東京都の」

暦「ああ、あの条例いつの間にか話題になってたよな。前から動いてたってニュースで聞いたけど、僕は気づいたら決まってたみたいな感じだな」

八九寺「映画も決まりましたし、アニメシリーズを続けるために、阿良々木さんの存在が今ネックになってるんですよね」

暦「主人公なのに!?」

八九寺「この間Pとも話したんですけど、さすがに従来のセクハラはゴーサインが出せないんだそうです」

暦「なんだと!? それじゃあ八九寺との楽しみが89%はなくなる!」

八九寺「だから阿良々木さんは降板ということで、どうか」

暦「うおおおぉぉ、いやだあああぁぁッッ!! 羽川ぁーっ!」

暦「しかし、羽川とは違う意味でお前は色々知ってるな」

八九寺「色々は知りません、ツイッターで話題になったことだけです」

暦「ツイッターやってるのかよ小学生!?」

八九寺「まあアカウント持ってなくて、トゥギャッターだけ見てるんですけど」

暦「アクチュアルなのかそうじゃないのか、わからないな。僕だったらお前のことフォローするぜ」

八九寺「ブロックしておきますね」

暦「まだ何も言ってないよ! なんだなんだ、今日は本当に冷たいな」

八九寺「まあ私もですね、最近異性を意識するステージに移行しまして」

暦「なんかその言い方は痛いな」

八九寺「あの、あるじゃないですか、小学校のこの時期男女分かれて指導する時間が」

暦「あーあったあった。当時は訳もわからず、『俺達男はスケベな生き物だ』とかって先生の話が始まってさ」

八九寺「うんうん」

暦「ちょうどその頃は辞書でエロワードを探したりしてさ、振り返ってみればあのタイミングってすごく納得いくな」

八九寺「阿良々木さんのことです、きっとオーラルセックスとかクンニリングスとか調べて有頂天になっていたんでしょう」

暦「それは少し先走ってないか!?」

八九寺「嫌ですねえ、何が先走るんでしょう。それに小学生に眼窩セックスとか言わせて鼻の下伸ばしてるなんて、阿良々木さん幻滅です」

暦「言わせてねえよ! おませ小学生!」

八九寺「というわけで、私達距離を置いた方がいいという話なんですが」

八九寺「彼女の目もあるし世間の目もあるし、私としましても男性の視線が気になるので、私達別れましょう」

暦「待ってくれよ! まだ僕達始まってさえいないだろ?」

八九寺「始まるものがあるんですかね?」

暦「ほら、一応僕とお前は男と女だし」

八九寺「ナチュラルに小学生女子を異性の対象として見てる、阿良々木さんヤバいですよ」

暦「てか、考えたらお前幽霊じゃん。下手したら僕よりも年上の可能性があるぞ」

八九寺「そうですかね、私の最初の記憶は家のテレビで東京オリンピックを見てる場面なんですが」

暦「下手したら僕のお祖母ちゃん世代じゃないか!」

八九寺「だとすると一転して無問題ですね。これからは目次ページに注意書を出しましょうよ。『この作品に登場する人物はすべて18歳以上です』」

暦「それだと千石とか、僕の妹がダメになるじゃないか」

八九寺「え、ほら私達の世界では中学生は18歳からなんですよね?」

暦「ザルすぎだよ注意書!」

八九寺「しかし今一つ問題が発覚しました。熟成ロリとしてこれからやっていこうと考えたんですが」

暦「ああ、たまに聞くなロリババアってやつ」

八九寺「あ、阿良々木さんと戦場ヶ原さんてどっちが背が高いんでしたっけ?」

暦「僕の方がチビです! 悪かったよ!」

八九寺「既に熟成ロリは忍さんがいるんですよねえ」

暦「確かにな。でも忍こそ口調とかまさにロリババアだぜ」

八九寺「だからといって、ここで私が『暦お兄ちゃ~ん♪ もうっ、いっつもセクハラばっかしてると、まよい、お兄ちゃんのこと嫌いになるんだからねっ! ぷんぷん!』」

暦「……」

八九寺「とか始めても、千石さんとか妹さんとも被るんですよね。ん、どうしました?」

暦「いや……冗談でもお前に嫌いとか言われると予想以上にショックだわ……なあ、さっきの冗談だよな?」

八九寺「『セクハラばっかしてると』までは冗談ですね」

暦「ですよねーって嫌いにならないでよお願いだからっ!」

暦「本当さ、頼むよ、僕お前に会えなくなったら生きていけるけど、間違いなく人生の楽しみの過半数がなくなる」

八九寺「それはちょっと重いですよ。蟹に憑かれてるんじゃないですか?」

暦「なあ、僕、どうしたらいい? どうしたらいいの?」

八九寺「そうですね、メルブラで武内崇を出現させたら考えてもいいです」

暦「あのシステムはまだあるのか!? けど、それでいいんだったら指が剥けるまでプレイしてやるよ。それでいいか?」

八九寺「でもそんなんじゃだーめ♪」

暦「ぐおおおおっっ小悪魔めええぇぇっっ!!」

八九寺「そういえば私のOPも最初は作画がいいって褒められてたんですよ」

暦「ああ、お前が無限増殖するやつか。あれよく見るとけっこう不気味だよな」

八九寺「失礼な。アニメーターさんのおかげで素晴らしい仕上がりにしていただけましたよ。そのあとスネイク編で一気に忘れられましたけど」

暦「かわいいよな~あれは~。僕、最初見たとき思わずリピートしたもん」

八九寺「私のはしなかったんですか」

暦「八九寺の? あーリピートはしなかった」

八九寺「そら見たことか! これはアニメではまだ十分に私の魅力が発揮されていないことの証明ではないですか」

暦「そうか~? お前後半も出てくるじゃん」

八九寺「ですから! これから再び私にスポットが当たる回が控えているわけですから、ここで私のキャラをアッピールする必要があるんですよ!」

暦「お前はもう十分キャラ立ってると思うぞ。メタ発言も多いし」

八九寺「よう、主人公。ってこれは別作品でしたね。もうメタとかいいから積極的に作品に関わりたいんですよー」

暦「だからやったじゃん」

八九寺「あれですよ、もっとミステリちっくなのがいいんですよ。私は関口くんになりたい」

暦「じゃあ、僕は榎さんか? 半分人間じゃないし」

八九寺「あ、阿良々木さんは『魍魎』の最初に出てくる駅員さんで」

暦「モブかよっ!」

八九寺「まあそれは冗談として、ぶっちゃけ忍さんのポジションかなり羨ましいですよ。いいですよねー異能コンビ」

暦「なるほど。それはいいな。それならお前と風呂に入れるし、シャンプーもしてあげられるわけだ」

八九寺「おまわりさん、この人ですっ!」

暦「ちぃっ、でかい声出すんじゃねえこのっ!」

八九寺「きゃあああ! きゃあああああ!」

暦「ふはははは! どーれ、幼木がどれほど育ったか見てくれよう!」

八九寺「ぎゃああああああああああああ!!」

暦「ヒーヒヒヒヒヒッ!」

暦「……」

八九寺「……」


……もう、こんなことも出来なくなっちゃうのかな、これからの世の中、ロリコンには厳しすぎるぜ。。。


八九寺「とか考えてます?」

暦「考えてねえよ、疲れたよ。楽しいけど」

八九寺「……きっと、その『余計な一言』で女性陣の心を掴んでいるんでしょうね、バサラ木さんは」

暦「僕はシリーズ唯一戦わないバルキリーに乗るロックバンドのボーカリストじゃない。最近流行りのゲームの方でもない。僕はアバラ木あっやべ噛んだ」

八九寺「ではアラサー木さん」

暦「リアルにロリコンっぽい!?」

八九寺「失礼。噛みました」

暦「違う。わざとだ」

八九寺「はみ出しました」

暦「道をっ!?」

八九寺「ところで阿良々木さんはいつも何かの途中で私と会うことが多いわけですが、今日のご予定は?」

暦「ん。いや、コンビニに行こうかと思ってフラフラしてただけなんだよ」

八九寺「ほうほう、コンビにいこうと。私と阿良々木さんならオール阪神巨人を超えられる気がします」

暦「コンビじゃないし、そのコンビも僕ら世代には伝わらないよ。お前がマジで僕のお祖母ちゃん世代だったとしたら心配になってきたよ」

八九寺「今日はここでお別れしましょうか。私達の会話を切り上げる難しさは、長電話を切るタイミングに似ていますね」

暦「ああ、あれってたぶんお互い切るタイミングに困ってるんじゃないかと思うんだが」

八九寺「と、ここでまた話が始まってしまうので。ではまたお会いしましょう」

暦「おう。じゃあまたな」


暦「こうして別れたが、あいつはこのあとどこに行くんだろう?」

忍「ふん、あの娘は苦手じゃ」

暦「起きてたのか」

忍「お前様とあの娘の話が長いうえにうるさくてのう」

暦「それは悪かったな」

忍「かかっ、しかしなんじゃな」

暦「あ?」

忍「エロシーンがないとあの娘は言っておったが、スキップされただけだと気づかぬとは、たいしたことないのう」

暦「は、はぁっ!?」

忍「『ん……ああ……阿良々木くん……いいわ』」

暦「待て待て待て待て!!」

忍「『ふぇ……そんなの口に入れたことなんて……ん、むぐうぅっ!?』」

暦「やめろぉ! 僕だけの彼女の姿を全国区に広めるなああぁぁ!!」

忍「初めてじゃというのに、お前様があそこまで鬼畜だとは思わなんだ」

暦「おい、まさかアレまで見ていたっていうのか?」

忍「んー。これ以上は騒ぎになるからやめとこっ!」

暦「プライベートの概念はないのかお前!!」

忍「プライベートォ? 何を言っておる。お前様と儂は運命共同一蓮托生。私生活が公生活になるのは当然じゃろう。もっとも儂とお前様だけじゃがな」

暦「くっそぉ。甘美な思い出に独り浸ることもできないのか」

忍「ま、諦めることじゃな。地獄先生ぬ~べ~でもそうだったじゃろ」

暦「まさかここで往年のジャンプ主人公に共感するとは……」

忍「しかしのう、お前様の言う共感とやらを覚えたつもりはないが、あの娘を見ていたときは儂も切なくなったというかなんというか。かかっ」

暦「……おい、なに急に大人モードになってんだ」

忍「儂とお前様のフラグが立つ……などという日が来ることがあるのだろうかと、少し考えてな」

暦「……フラグもクソもあるか。さっき自分で言ったじゃないか。僕らは運命共同一蓮托生。これは強くてニューゲームみたいなもんだ」

忍「くくくっ……儂はお前様が大好きじゃからなあ。殺してやりたいくらいに」

暦「ただいまー」

火憐「兄ちゃん……」

暦「あれ、珍しいな。火憐ちゃんが家にいるなんて」

火憐「兄ちゃんさ、その、最近調子どうよ?」

暦「ラッパーかお前は」

火憐「ワサップ! じゃなくて! 学校のこととか体調こととか精神的なこととか、あと精神的なこととか、それから精神的なこととか、やっぱり精神的なこととか」

暦「僕はそんなにサイコか?」

火憐「いいや兄ちゃんはサイコーだぜひゃっほー!」

暦「そうか。それじゃあな」

火憐「ま、待って待って! ちゃう、今のちゃう!」

暦「なんだよもー。お前の方が心配になってくるぞ」

火憐「いや、あたしは大丈夫なんだけど兄ちゃんが心配というか……だーっ! 兄ちゃんなんか悩みあるだろぶっちゃけ病んでるだろ遠慮せず私に相談しろー!」

暦「なんなんだ一体……」

月火「なんかーお兄ちゃんが外で独り言言ってるの見て心配になっちゃったんだって、火憐ちゃん」

暦「月火ちゃん」

月火「その独り言がブツブツというより、ワイワイというかギャアギャアしてるもんだから、あれは何か精神的な病気とかそういうのじゃないかって」

暦(八九寺との会話を聞かれたのか。まあ一般人には見えてないんだもんな。戦場ヶ原なんか最初ひいてたわけだし)

火憐「兄ちゃん、精神科行こうよ」

暦「いや、あのね火憐ちゃん。もしかしたら変なとこ見たかもしれないけど、僕は支障なく生活できてるよ」

火憐「……兄ちゃんさ、少女趣味とかねーよな?」

暦「はあっ!? おいどこからそんな話が出てくるんだ!?」

火憐「さっき、たまたま兄ちゃんを外で見たんだけど、それが独りでロリコンだとかなんとかって」

暦「ちょ、ちょーっと待って! それはたぶんオリコンの間違いだと思うなあー。僕は最近のヒットチャートを憂いているからなあー」

月火「……私前におっぱい揉まれまくった」

暦「いや、あれは確認したいことがあって」

火憐「そういえばあたしキスされた。あと局部押し付けられた」

月火「あ、私もキスされた」

暦「え、え?」

火憐「……」

月火「……」

暦「な、なんだ二人とも。その軽蔑するかのような眼差しは」

火憐「家族そろってから話そうか」

月火「そうだね」

暦「おい、どこ行くんだ」

火憐「どこ? 家の中なんだから部屋に決まってるじゃんか」

月火「流れも読めないお兄ちゃんプラチナむかつく」

暦「お、おい! ちょっ、待てよっ」

火憐「え……今のもしかしてモノマネ?」

月火「むかつくわー。普通にむかつくわー」

暦「……」

暦「心配されていたはずがひかれてしまった……」

prrrr…

暦「誰だよ……お、千石か」

撫子「もしもし? 暦お兄ちゃん?」

暦「……」

撫子「あ、あれ? 暦お兄ちゃん? あの……」

暦「……すまん、千石、もう一度僕のこと呼んでくれないか」

撫子「え、暦お兄ちゃん、だよね?」

暦「ああそうだ。なんていうか、お兄ちゃんって呼ばれてこんなに救われた気分になったのは初めてだ。ありがとう千石」

撫子「なんだかよくわからないけど、どういたしまして、なのかな?」

暦「で、どうしたんだ?」

撫子「え、ええっと、こういう聞き方していいのかな」

暦「うん? 遠慮せずに言えよ。僕と千石の(兄妹みたいな)仲なんだし」

撫子「はっ、じゃっ、じゃあ言うね。あの、暦お兄ちゃん、今日体空いてる?」

暦(うーん、遠回しな誘い文句のようだが、ここは純粋に遊びに誘ってるんだな)

暦「うん、暇だよ。またお前の家に行こうか?」

撫子「あ、今日はちょっと、一緒に外、歩きたいかな」

暦「わかったー。じゃあ、とりあえず千石の家まで行くよ」

千石「むっ、迎えに来てくれるの?」

暦「待ち合わせでもいいけど」

千石「ううん、ううんっ、迎えに来てください」

暦「しかし、出かけるって言ってもまるで反応がなかったな妹達。ゴールデンウィーク前後に逆戻りだ……」

prrr…

暦「おいおい、今度は誰だ」

神原「神原駿河だ。最近職業は青魔導師だ」

暦「開口一番のセリフじゃねえよ! お前の電話はもはやテロだよ!」

神原「む、どうやら阿良々木先輩の携帯に繋がったようだな」

暦「なあ、ひょっとして適当にかけるとかそういう迷惑な遊びなのか?」

神原「私の携帯には阿良々木先輩と戦場ヶ原先輩のアドレスしか入っていない。だから他の人の迷惑にはならないからその点は安心してくれ」

暦「友達作れよ! 僕に言えた義理じゃないけど! ああもういくらでも僕に迷惑をかけろ!」

神原「おお、さすがは阿良々木先輩。人類史上かつてない慈愛に満ちた人だ。やはり阿良々木先輩が私の宗教だな。さっきもアドレス帳のあ行を見ながらお祈りしていたのだ」

暦「信者独りのカルトかよ!」

暦「これから千石と遊ぶんだけど、もうお前も来いよ。輪を広げようぜ」

神原「千石ちゃん……阿良々木先輩、どうして戦場ヶ原先輩と遊ばないのだ?」

暦「いや、遊ん……だことないなアイツとは。いつも勉強して終わりだからな」

神原「それか肉欲に溺れると」

暦「オイ」

神原「うらやましいなあー二人はそういう時どんな顔して何話すのかなー」

暦「お前は女の子ではないのか?」

神原「阿良々木先輩、それは一歩間違えると差別発言だぞ。社会的に抑圧されているとはいえ、女性にだって性欲はある。身を持って知っただろう?」

暦「……まぁ」

神原「だから私はここで羨望と劣情に狂うことにする。あぁーいいなぁー」

暦「まあとにかく。お前暇してるんだったら一緒に遊ぼうぜ。千石の番号教えてもらえよ」

神原「さっきはああ言ったが、既に千石ちゃんのアドレスは入手済みだ。たまにガールズトークを交わしている」

暦「千石はともかく、お前にガールズトークの素養があったのか?」

神原「当たり前だ。千石ちゃんとは実に有意義な百合談義をさせてもらっている」

暦「千石と百合トーク!? あ、あいつ漫画好きだったっっけ」

神原「毎月、百合姫をチェックしていないとわからないような話題にも返してくれるのでとても楽しいぞ」

暦「うわ、超気になるっ!」

神原「まあそれは置いてだな。私としても千石ちゃんは友人の一人なのでとても大切におもっているがアニメで微増量したバストとか」

暦「欲望が溢れてるぞ」

神原「しかし阿良々木先輩、戦場ヶ原先輩御両人に幸せになってもらいたいと願っているのも事実だ。まあ要は女性関係は少し控えてもらいたいという話だな」

暦「女性関係ったって、千石なんて妹みたいなもんだぜ?」

神原「……これは阿良々木先輩の性格上仕方ないことなのか」

暦「はあ?」

神原「私からこの話を進めてしまうのも悪くて出来ないし」

暦「よくわかんないけど、女性関係? お前の心配するようなことにはならねえよ」

神原「現行で気がかりなのだが」

神原「阿良々木先輩が千石ちゃんと遊ぶというならば、私にそれを止めることはできない。息を吸うなと言われるようなものだ」

暦「僕は空気なのか。存在感なさそうだな」

神原「なにを言う。この世のありとあらゆる空間に阿良々木先輩を感じられるなんて、フットーしそうだよオォー!!」

暦「つながってる!?」

神原「しかし今回は戦場ヶ原先輩につくとしよう。あの人のことだ、私が遊びに行けば阿良々木先輩と他所の女の逢瀬を途端に察知するだろう」

暦「怖っ! ガハラさんのスパイ怖っ!」

暦「僕はまだ死にたくないんだ。ここは僕を助けてくれよ」

神原「さっき阿良々木先輩を空気に例えたが、私は空気が読めないのだ」

暦「自分で言っちゃった!」

神原「だから私はいつも阿良々木先輩を探し求めている。I miss you」

暦「バラードの歌詞みたいでカッコいい!(しかも何気にガハラさんの告白を彷彿させるしっ)」

神原「相手を恋い焦がれるとは相手の姿を目の前にすることができないからこそだ。私は今も電話の向こうの阿良々木先輩を想っている。では」

暦「……僕告られてね?」

暦「やっぱり、あの後輩カッコよすぎだろ」

暦「でもあいつ、このあとガハラさんにチクりに行くんだよな」

暦「千石と遊べるのも今日で最後かも」

暦「……死んだら、八九寺と地縛霊になれないかな」






撫子「いらっしゃい、暦お兄ちゃん」

暦「おう」

撫子「お迎え、ありがとう」

暦(……今日の千石はニーソックスだ)

暦(ガハラさんは普段制服姿以外で生足を見せてくれることなんてほとんどないのだけれど)

暦(いやさ、八九寺のヒョロっとした幼女レッグとか神原の健康的で引き締まった足とかしょっちゅう見てるよ)

暦(別に最近気が高ぶってるつもりはないし、だからなんというか、今みたいに千石の華奢だけど、どこかエロティックな足を見て心がざわついても僕の年齢を考えればごく自然というか)

暦(別に欲情したとかじゃないんだな。うん)

暦「じゃあ、どこ行こうか?」

撫子「えっと、あの、あんまり人が多いところは嫌、かな」

暦「そうか、じゃあカラオケでも行くか?」

暦(しかし絶対領域っいいなあ)

撫子「か、かか、カラオケ!? だ、だめだよ、撫子、歌へただし……あ、でも暦お兄ちゃんが歌ってるところは見たいな」

暦「いや、僕もあんまり褒められたもんじゃないけど。でも千石の声って僕好きだぜ」

暦(しかし黒のニーソックスってやっぱいいもんだなあ)

撫子「へえっ!? す、すすすっ、好きって!?」

暦「僕、声フェチっぽいところがあるんだけどさ、千石の声って声優の花澤香菜にそっくりでいいよ。あ、ひくなよー」

撫子「ひっ、ひいてないおふっ!?」

暦(噛んだか)

暦「じゃあ、歌がだめならラップはどうだ? 最近はけっこうマニアックな歌が入ってる機種が多いらしいぜ」

撫子「暦お兄ちゃん、ラップだってすごく技術がいるんだよ。ただしゃべってるだけじゃないんだよ」

暦「へえ、そうなのか」

撫子「そうだよ、ラッパーの人はみんな毎夜フリースタイルバトルを繰り返して、スキルを磨いて、ついにゲットーから飛び出してきたんだよ」

暦「まさか千石にラップについて諭されるとは」

撫子「あ、ご、ごめんなさい、偉そうに喋っちゃって……」

暦「いや、いいんだよ。でもますます千石のラップが聴きたくなってきたなあ」

撫子「……どっ、どうしても暦お兄ちゃんが聴きたいって言うなら、撫子、いいよ」

暦「えっ、マジで! やったー!」

撫子「じゃあ、いくよ?」

暦「どうぞ」

撫子「暦お兄ちゃん、見ててね。撫子のこと、ちゃんと見ててね」

暦「まかせとけって」

撫子「……せーのっ」


撫子「電気ビリビリデジタルDG」

撫子「今だに生身じゃ恥ずかしい、君の」

撫子「頭の中にはICあるか、俺の頭にゃLSI」

撫子「頭もピッカリLED、ヒューズもぶっとぶ高圧電流」

撫子「DG自慢のリズムマシーンは、消費電力7000わっと!」

撫子「ふうっ……どうかな?」

暦「電気グルーヴの電気ビリビリかよ! 僕はてっきりHALCALIみたいなかわいいやつとか、ゴツいギャングスタラップを想像してたよ!」

暦(えーと。一応解説すると、ヒットする以前の電気グルーヴの初期の曲で、まだこの時期はヒップホップと分類されることが多かったんだよな。実はちょっとしたアンチTKな歌詞だったりするのだ)

撫子「ライブで篠原ともえさんともデュエットしたこともあるんだよ」

暦「よく知ってるな千石! もう僕がピエール瀧やるから二人で歌おうぜ! 富士山とかも!」

撫子「でも、石野卓球さんがいないよ……」

暦(卓球派だった。レイヴ娘千石)

火憐「火憐だぜ!」

月火「月火じゃないよ!」

火憐「じゃああたしの隣にいるのは誰!?」

月火「てなわけで、お兄ちゃんの後をつけてきたんだけど」

火憐「兄ちゃんは心を患っているからな。誰かを不幸にしないか心配になったんだぜ」

月火「それにしても、せんちゃんがせっかくアタックしてるのに、お兄ちゃんまるで気にしてないみたいね」

火憐「私達妹を苛めるような鬼畜兄だからなー。きっと脳の中の恋愛を司る中脳ってやつに異変が起こってるんだ」

月火「ドーパミンが分泌されるとかねー。でも体の中の化学反応が恋愛の正体だなんて、ロマンチックとは言えないねー」

火憐「結局、恋愛なんて勘違い! いわば偽物なんだぜ」

月火「おお! なんか醒めちゃってる大人な意見! なんかあったの火憐ちゃん?」

火憐「兄ちゃんのせいで、彼とギクシャク。気分は毎日介錯だよ!」

月火「お怨みいたしますー!」

火憐「おっ、移動するみたいだぜ」

月火「結局カラオケに行くのかな。せんちゃんがんばれー」

火憐「よしよし。そう、そこだ! そこで腕をまわすんだ!」

月火「『ご、ごめんね。でも、こうしないと自転車から落ちて危ないし。二人乗りだし……』かな?」

火憐「おお、読唇術」

月火「ほらほら、火憐ちゃん。私達も移動しよ」

火憐「うーん。兄ちゃんと最後に2ケツとかいつだったっけ」

月火「火憐ちゃんさー。けっこう、ブラコンだよね」

火憐「おいおい、私より5センチも背が低い兄ちゃんだぜ? 兄妹として心配はするけど、度を超えた感情はない」

月火「だって前にヤる寸前だったしー」

火憐「いや、あれは違うんだよ、differentだよ。あれは歯磨きしてたらああなるよ。自然だよ」

火憐「カラオケじゃなくて、漫喫に来たか」

月火「まあ私達学生が手軽に二人きりになれるところってここしかないよね。ホテルって高いし」

火憐「えっ、ちょっと待って。今日そこまでいくの?」

月火「当たり前じゃあん。いくよ、いくよ、イキまくりだよー」

火憐「うわあーっ! 月火ちゃんが下ネタにいっちゃったー!」

月火「火憐ちゃん、二人が入った隣の部屋、空いてたよ」

火憐「うぅ、妹がスレてしまった」

月火「自分だってお兄ちゃんにズコズコシャコシャコやられて、アヘアへしてたくせに」

火憐「ねえ、だからあれは違うんだって。月火ちゃんも一度やってもらうといいよ」

月火「今の火憐ちゃんはキャラ違うよ」

火憐「ありのまま起こったことを話すぜ。あたしは歯を磨いてもらっていたはずが、実の兄に押し倒されていた……」

火憐「何を言ってるかわからねーとは思うが、あたしも何をされたのかわからなかった……」

火憐「吸血鬼とかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」

暦「普段あんまり来ないけど、二人入るとけっこう狭いな」

撫子「な、撫子、もっとつめるから、暦お兄ちゃんもっとくつろいでいいよ」

暦「いいよいいよ。ところで千石。お前漫画好きだったよな。今日も何か目当てのものがあるのか?」

撫子「そんなに読んでないよ。私、普段は文庫本読むことのほうが多いし。昨日は柄谷行人を読んでたよ」

暦「へえ、だから千石は博学なのかー」

暦(とはいえ、今の千石に妙な知識人アピール、もっといえば「私、できる女なの」的なものを感じてしまうのはなぜだろう)

暦(うーん、僕の卑屈な部分がそう思わせているんだろうな)

暦(なんたって、友達の兄貴からの遊びの誘いにのってくれるような、いい子だからな)

撫子「暦お兄ちゃん、映画、見よ」

暦「ああ、いいよ。何の映画だ?」

撫子「これ」

暦(と言って千石が差し出したのは、フランスのなんとかってミュージシャンが主演してる映画で、女優の奥さんがヒロイン役の夫婦共演作品だった)

暦(ギャングの男とアメリカから遊びに来た女が知り合い恋に落ちたあげくの逃走劇)

暦(全体的に退廃的なムードが漂っていて、僕は正直この手の気取った映画は苦手)

暦(それでも眠らずに見続けられたのはとにかくよくラブシーンがあったからだ)

暦(いや、僕を責めないでほしい。思春期の男子高校生としてはここがピンポイントなのだ。隣で見てる千石が気になったけど……)

暦(なんかさっきから視線を感じるんだよな)

暦(千石はさっきから妙に太もものあたりをモジモジさせているが、トイレに行きたいのだろうか)

火憐「隣の部屋が確保できたのはいいけど、静かだな」

月火「ずっと会話もないってことは映画見てるのかな。って火憐ちゃんちゃっかり漫画読んじゃってるね」

火憐「兄ちゃん、ゾンビ屋れい子売っちゃったじゃん。あたし最後まで読んでなかったんだよ」

月火「あー。ちょうどあの頃、家でまったく口聞いてなかったよね」

火憐「だって兄ちゃん、『貴様らと言葉を交わすと、口頭器官がメルトダウンを起こす』とか言うほど中2病真っ盛りだったんだぜ」

月火「やばかったよねー。あれは」

火憐「貴様ら、だぜ? どんだけー」

撫子「あっ、ご、ごめん暦お兄ちゃん!」

火姉妹「おっ?」

撫子「けほっ、けほっ。ごめん、ごめんなさい……」

暦「いや、僕はいいけど千石大丈夫か?」

暦(むせたのかな。しかし、千石の吐き出したコーラが僕の股間にかかってしまった)

暦「慣れないとこ(漫喫)だから、緊張したのか。なんてな、ははっ」

撫子「ごめんなさい……びしゃびしゃに、なっちゃったね」

暦「あー。とりあえず早く拭かないとちょっと臭いかもな」

暦(衣類に水をこぼすと、いかにもな臭いがしちゃうんだよなぁ)

撫子「な、撫子が、きれいにしてあげるね……」

月火「せんちゃん、咳き込んでる……」

暦『慣れないとこだから緊張したのか。なんてな、ははっ』

撫子『ごめんなさい……びしゃびしゃに、なっちゃったね』

火憐「おい、ちょっと待て。隣の部屋で一体何のオリエンテーリングが始まったんだ。びしゃびしゃって何が?」

月火「お兄ちゃんの『ははっ』って笑い、めちゃめちゃ腹立つんだけど」

撫子『撫子が、きれいにしてあげるね』

火憐「ヘイヘイヘイちょっと待てよブラザーズアンドシスターズ!」

月火「きつい! 予想以上に身内の情事きつい!」

撫子『んっ……よいしょ……』ゴシゴシ

火憐「ひいいいいい! やめろおおーやめてくれえぇーっっ!!」

暦「ちょ、千石、待って……うっ」

月火「うげぼおおおおおげろげろげろ」

撫子『きれいになった、かなぁ』

暦『うまいなぁ、千石(染み抜きが)』

火憐「クソッ……壁殴っちまった」

月火「あきまへん! あきまへんでええ!」

暦『これなら、洗濯のプロになれるぜ』

火憐「ソープか! ソープなのか!」

月火「イアン・ソープ復帰! イアン・ソープ復帰! これはメダルきたでええ!」

暦『あ、おまえも少しかかってるぞ。今、とるから』

撫子『ふえっ、お、おまえって、おまえって……ふぁ、あああ……』

火憐「壁殴り代行始めました! 火憐ちゃんは壁殴り代行始めました!」

月火「ああ、不死鳥が見える……」

暦「あ、そろそろ時間だな」

撫子「あ……」シュン

暦「ん。どうしたんだ千石?」

撫子「ううん、なんでもないよ」

暦「漫喫も案外面白いな。ジュースおかわりできるし、漫画・映画もあるし。その点ファミレスより有意義にすごせる気がする」

撫子「今度は、撫子、もう少し広くて長く休めるところがいいなぁ。ベッドもあったりして」

暦「うーん、そんなに都合いい場所あるかなー」

撫子「そこにはね、カラオケもゲームもあるんだよ」

暦「なんだって! まるで天国じゃないか!」

撫子「今度、撫子が連れてってあげるね。その天国へ……」

暦「わぁ、千石といると楽しいことばかりだなぁ」

暦「千石、ちょっとトイレに行ってくるよ。外で待っててくれ」

撫子「うん。撫子、待つよ。いつまでも待つよ」

暦「(いつまでも?)おう」

暦「あ、すいません、トイレってどこですか?」

ひたぎ「そちらの突き当たりにございまーす」

暦「……」

ひたぎ「ご利用ありがとうございましたー」

暦「……」

暦「……どうもー。さーて、トイレトイレっと」

暦「うぅ、大、大」ガチャ

暦「ふぅー……」

暦「……」

暦「おい待てよどうなってんだよなんでガハラさんがここにいるんだよ」

暦「まさか神原の密告を聞きつけて僕を抹殺に」

暦「……いやーないない。ないでしょー。だって僕ガハラさんの彼氏ですよー」

暦「もう、僕らAもBもC抜きでZまでいっちゃった? みたいな?」

暦「それがなーんで抹殺なんてされるんだよー」

暦「きっとさーあれだよー。さっきの子も他人の空似だよー。みーまーちーがーい」

暦「カギカッコの前に『ひたぎ』って書いてあった気もするけど、あれも『ふたぎ』の読み間違いだな、うん」

暦「あははははー。よみまつがい! バイ・糸井重里」

暦「あれ、紙がない……」

ひたぎ「青い紙がいい? 赤い紙がいい?」

暦「うわあああああああああああああああああ!!」

ひたぎ「どうしたの、阿良々木くん。まるで映画『シャイニング』でジャック・ニコルソンに追い詰められたみたいな顔して」

ひたぎ「それとも、私が男子トイレの個室のドアによじ登って、あなたを覗きこんでいることに驚いているのかしら」

暦「ははっ……ガハラさん、なんで漫喫にいるんだ?」

ひたぎ「あら、言ってなかったかしら。私、3時間14分23秒前からここの新人アルバイトなの。以後よろしく」

暦「ちょうど僕らが入店した時間からですね……」

ひたぎ「僕ら。僕らねえ」

ひたぎ「あの子、なんていったかしら。ま、どうでもいいことだけれど」

暦「ガハラさん! 頼む!あいつは見逃してやってくれ! あいつは無関係なんだ!」

ひたぎ「安心なさいな。既に神原が回収して、今頃東京湾に沈んでいるわ」

暦「神原! クソッ、あいつただじゃおかないからな!」

ひたぎ「そのセリフは改めて本人に直接言うといいわ。あの子、喜ぶから。ところで、私そっちにお邪魔してもいいかしら阿良々木くん? お邪魔するわね」

暦「今の質問意味なくね?」

ひたぎ「よっこいしょ。ふぅ」

ひたぎ「あぁ、どこかの馬鹿のおかげで無駄な時間と体力を奪われたわ」

暦「あの、一応僕の意見を言いたいんだが」

ひたぎ「阿良々木くん、私、おにぎり作ってきたの。ほら」

暦「なぜここでおにぎり?」

ひたぎ「今日、午後から一緒に勉強したあと、食べようと思って。食べさせてあげる」

暦(見た目は安全そうだが……)

ひたぎ「あっ、落っことしちゃったー」ボトッ

暦「おい、わざとだろ。わざと落としただろ」

ひたぎ「いっけね! てへっ♪」

暦「活字詐欺やめて! てへって顔じゃないもん! ♪マークつくような声じゃないもん!」

ひたぎ「あらあら、せっかくのおにぎりをトイレの床に落としてしまったわ。でも問題ないわね。はい」

暦「おい、待て、やめろ、まさか」

ひたぎ「めしあがれ」グイグイ

暦「ふぐううぅぅ!?」

ひたぎ「ほら、阿良々木くんの好きな便所味のおにぎりよ。バイ・家なき子」グイグイ

暦「ひどいよぉ……もうおにぎり食べられないよぉ」

ひたぎ「あらあら、私のおにぎり以外もう食べられないですって。うれしいわ。レパートリーを増やさなくっちゃ」

暦「悪かった……僕が悪かったから」

ひたぎ「阿良々木くんがなぜ自責の念にかられているのかわからないわ。ところで、さっきまで私ここで映画を見ていたの」

暦「バイト初日からサボりかよ!」

ひたぎ「とても久しぶりに恋愛映画を見たわ。泣けた。私、大感動。ヒロインに共感しました」

暦「なんだその試写感想のテンプレは……ちなみに何を見たんだ?」

ひたぎ「猟奇的な彼女」

暦「そりゃ共感するだろうよ!」

ひたぎ「やったぱり本場にはかなわないわね」

暦「僕はお前以上に猟奇的な彼女知らないよ!」

ひたぎ「ひどいことを言ってくれるわね。偏見よ、それ。私はこれ以上ないくらい模範的な淑女であると自負しているのに」

暦「お前が自負と偏見って感じだよ」

ひたぎ「ひたぎちゃんの淑女アピ~ル。ばふぱふぱふ^^」

暦「なあ、活字詐欺やめて。^^ってキャラじゃないじゃん」

ひたぎ「阿良々木くん、江戸川乱歩の『芋虫』は読んだかしら」

暦「ああ、大昔に一度読んだよ」

ひたぎ「芋虫というのは両手両足がなく、床をのたうちまわることしかできない男のこと。彼は戦争帰還兵なの」

暦「あ、なんか思い出してきた」

ひたぎ「おまけに顔もつぶれて会話もままならない。彼の妻は夫への愛憎そのままに介護をし、生活を送るわけ」

暦「最後がけっこうブラックなんだよなー」

ひたぎ「何が言いたいかというと、私は阿良々木くんが芋虫になろうとも添い遂げる覚悟があるということ」

暦「とりあえず、ありがとう」

ひたぎ「いえいえ。えっと、じゃあ、とりあえず右腕からきりましょうか」

暦「ちょっと重い愛の告白じゃなかったの!?」

ひたぎ「えっ、だって今のうちに保険をかけておいたほうが、後々楽でしょう?」

暦「お前は保険の意味を調べ直せ」

ひたぎ「どうせ芋虫になるならんだし、だったら、先に斬っちゃおっかな、て……」

暦「僕が芋虫になるのはもう規定事項なんですか?」

ひたぎ「うるさいわね。ウジ虫のくせに」

暦「どこに行った淑女ー!」

ひたぎ「大人しく私に解体されなさいよ。ウジ虫の解体新書なんて今さら価値があるとは思えないけど、笑い話くらいにはなるわよ^^」

暦「僕の価値ってそんなもん!?」

ひたぎ「はいはい、上腕と肩を出す出すー」

暦「いやだああああ! こんな高坂先生ー!」

ひたぎ「でーもそれって、僕の愛なのー」

暦「いらないよそんな彼女の異常な愛情!」

暦「ほんと、すみませんでした。勘弁してください。僕を傷つけないでください」

ひたぎ「私は既に傷つけられたわ」

暦「……」

ひたぎ「安心して、阿良々木くん。腕の一本や二本なくても平気よ。SFちっくになりつつある原作に沿っていけば改造手術してもらえるから」

暦「いよいよ人間じゃなくなるのか!?」

ひたぎ「ロボコップみたいなサイボーグになったりしてね。そうするとCVも変更かしら。シュワちゃんの声が聴けるなんて、アフレコが楽しみだわ」

暦「この年と見た目であの激渋声はきつい……」

ひたぎ「私達の生活についても杞憂よ。きっとブレードランナー的な人と機械の恋愛話になっちゃって全国の袖を濡らすわ。あーマジ泣けるー」

暦「本当にごめんなさい。もうガハラさんが傷つくようなことは二度としません」

ひたぎ「別に二人の問題で傷つくのは構わないわ。だけど、今回はちょっと許せなかっただけ。ここは譲れないところなのよ」

ひたぎ「阿良々木くん、私の人生はあなたと共に歩むためのもの。これは今年の春からあなたと過ごした数ヶ月の間に可決されたの。規定事項よ」

ひたぎ「私は、あなたの命、人生が欲しいの。私のライフと等価交換でね」

暦「お前、ここでハガレン読んだろ」

ひたぎ「あら、わかった? ま、とにかくそういうこと」

暦「僕だって……お前とうまくやっていきたいと思ってるよ」

ひたぎ「うまくやっていきたい、少し曖昧にして逃げられた気もするけど。まあ、いいわ」

暦「じゃあ、ここを出たら、一緒に受験生になろうぜ」

ひたぎ「ところで阿良々木くん、その汚ならしいものをずっと露出させてるという自覚はあるのかしら?」

暦(はっ!? そうだった! しかもまだ紙で拭いてもいないじゃん!)

暦「ガハラさん、悪いんだけど、紙、取ってきてくれる?」

ひたぎ「ひたぎちゃんクイズ~。ばふぱふぱふ」

暦「実はお気に入りのネタなのか?」

ひたぎ「さて、私の左手には紙がありますが、右手には何もありません。けど、この右手はそれはそれは献身的で、10秒であなたを天国に連れていってくれます」

暦「そ、それって……」

ひたぎ「ちなみにどちらか一つしか選べません。さあ、今夜のご注文はどっち?」

暦「……右で」

ひたぎ「おお、勇者よ、紙を選ばないとは情けない。お前は欲に負けたのだ」

暦「僕の欲しいのはそっちだからな」

ひたぎ「そう。それじゃあ、右を選んだあなたに天国への階段を。せいぜいいい顔見せて頂戴、私のウジ虫くん」

ひたぎ「そうそう、ウジ虫って傷の治療に使われるって知ってたかしら。マゴットセラピーというのだけれど」

暦「あはっ、ただいまぁー」

火憐「……」

月火「……」

暦「あれあれえー。二人ともぉ、元気がないゾ!」

火憐「うぜえ……」

月火「お兄ちゃん、せんちゃんどうだった?」

暦「あ? 千石? あぁ……あー。一緒に映画見たぜ」

火憐「おい、兄ちゃんなんかくさいぞ」

暦「あはっ、僕、紙じゃなくて天国への階段選んじゃったからさぁ。臭いのはめんごめんご! めーんーご!」

火憐「くさいし、うざい! くさうざい!」

月火「なんなの? 腹立つんだけど。ねえ、わざと? それわざと?」

暦「さーって! 神原にTelしなくっちゃあ!」ピューン

神原「神原駿河だ。私は阿良々木先輩の言いなりだ」

暦「お前、あのあと千石をどうした」

神原「その声は阿良々木先輩か。昼間よりも高圧的に感じる。ふふ、いいぞ、私の被虐心が震えている!」

暦「いいから早く話せよ」

神原「千石ちゃんだが、阿良々木先輩を待っているところを半ば強制的に彼女の自宅まで運んだ」

暦(きっと本当に運送って感じだったんだろうな)

神原「しかし罪なお方だ。戦場ヶ原先輩のお怒りなど承知の上で千石ちゃんとカップル喫茶にしけこむとは」

暦「カップル喫茶じゃなくて満喫だよ。なんで僕と千石でそんな欲望解放空間に行くんだよ」

神原「しかし、近頃の満喫の利用客はそれが目当てのものたちも多いのだろう?」

暦「そうかもしれないけど、僕と千石の間には何もなかったよ」

神原「満喫なのに。マン、キツ」

暦「お前ただ下ネタ言いたいだけだろ!」

神原「その戦場ヶ原先輩だが、さっき電話があった。うまくいったようでなによりだ」

暦「あの……僕のこと何か言ってた?」

神原「天国への階段を7秒で駆け抜けたと言っていた」

暦「あ、そですか……」

神原「私もはやい男は嫌だな」

暦「えーっ。な、なにィ、やっぱり自分の足のほうが自信あるって意味かいィ?」

神原「ふっ」

暦(嘲笑された)

神原「戦場ヶ原先輩は強い人だ。問題が起こればそれを解決するために尽力する。まあ歪んだやり方であることが多いとは思うが」

暦(まあ、こいつなんか無視されてたわけだしなあ)

神原「一方で千石ちゃんだが、実はかなりあやふやな言い訳で連れ去ってしまったのだ。後で阿良々木先輩からもフォローしておいてほしい」

暦「ああ、わかったよ」

神原「あれは泣いてたなぁ」

暦「ぐっ、気が重くなる。しかし、実際のところ戦場ヶ原には千石についてどうしろって言われたんだ?」

神原「ん、猿ぐつわにして山に埋めてこいと言われた」

暦「本気で消すつもりだったのかあいつ!! なんで僕はまだ無事なのか逆に怖くなってきたよ!!」

神原「だから千石ちゃんが無事だと戦場ヶ原先輩に知られたら、私は死ぬかもしれないな。アッハッハッハッ」

暦「笑えねえ……」

神原「しかし、恐らく阿良々木先輩も同罪だぞ。なにせ逢い引きしていた相手が生きていたのだ。不倫疑惑が再浮上する」

暦「なにその泥沼劇」

神原「つまりだ。私、阿良々木先輩、千石ちゃんの3人は戦場ヶ原先輩から身を守るための同盟、一種の運命共同体なわけだ!」

暦「あいつ、僕の彼女のはずなのになんかもうターミネーターとかそういう扱いだよな。さっきまでヘヴン状態だったのに」

神原「そこで、私が戦場ヶ原先輩に密告しないかわりに、阿良々木先輩にお願いがあるのだ」

暦「あっ、テメッ、そうくるか! お前だって死の危険に曝されるんだぞ!」

神原「私は戦場ヶ原先輩に殺されるなら構わない」

暦「うわああー! 怖いよー戦場ヶ原体制!」

神原「しかし、今すぐ死ぬのは惜しい。だから、阿良々木先輩が私とカップル喫茶に行くという条件で手を打とう」

暦「嫌だよ! ノーモア泥沼!」

神原「ほんのお猪口くらいの愛を私に恵んでくれればいいと言っている。一緒にマンキツを満喫しようではないか」

暦「うわああああ! 女怖いよおおお!」

神原「まあ、早い話が私とも遊んでほしいということだ」

暦「なんか急にシンプルかつ日常的になったな」

神原「さらに早い話、天国への階段からこぼれた3分を私に譲ってくれればいい」

暦「ば、馬鹿にするなぁー! 早さじゃねえんだよ男は!! たぶん」

神原「ところで、私の敬愛する女性ラッパー、ミッシー・エリオットにワン・ミニット・マンという曲があるのだ」

暦「BLで百合のお前にそんな嗜好があるとは意外だな」

神原「サビがとてもいい」

暦「へえ、どんなの?」

神原「早漏男はいらない」

暦「うるせえよ! お前らにはわかんないんだ! この辛さが!」

神原「明日あたり迎えに行くから、綺麗な下着を穿いて待機していてくれ」

暦「ちくしょう。覚悟しとけよ神原後輩」

神原「おお、くわばらくわばら。それではまた、阿良々木先輩、もとい顔見ぬ君へ」

暦「……けど、僕は一部吸血鬼なんだし、絶倫とかそういうステータスはないのか?」

忍「ふむ、保健の時間じゃな」

暦「おい、そこんとこどうなんだ?」

忍「その前に。お前様、あれは超情けなかったぞ」

暦「忍お前もか! この世に僕の味方はいないのか!?」

忍「お前様が早漏なわけか……」

暦「せんせー。早く授業進めてくださーい。僕、遅いの嫌いなんでー。早漏だから」

忍「かかかっ、まあそうふてくされるな。そうさな、お前様は吸血鬼がなぜ怪異の頂についておるか、考えたことはあるか?」

暦「吸血鬼が事実上、最強の怪異だからだろ?」

忍「そこじゃ。なぜ吸血鬼は他の怪異を凌げる?」

暦「あー……」

忍「それは、生き残る力じゃよ」

忍「知っての通り、儂ら吸血鬼は他の存在から命を吸い取るもの。我以外の生命から生きる力を奪い、押し退け、頂点に立つ。儂らの生存権は特権なのじゃ」

忍「吸血鬼は生き残ることに貪欲に出来ておる。生きたくて、生きたくて、仕方ない。儂らの長寿もそういうことじゃ」

忍「ふん、誰がこの仕組みにしたかは知らんがな。そもそも誰もいないのかもしれん」

暦(そういえば、こいつは元自殺志願者だったな……)

忍「吸血鬼はキング・オブ・アウトサイダーであり、キング・オブ・サヴァイヴァーなのじゃよ」

暦(お前はアウトサイダー・オブ・アウトサイダーズってわけか……)

忍「そして、お前様の早漏じゃが、恐らくこれも吸血鬼の生き残る力の影響があるのじゃろう」

暦「はい」

忍「はい、お前様」

暦「なんとなく、吸血鬼パワーで精力がつくっていうか、そんなイメージがあるんだけど」

忍「半分正解じゃな。お前様よ、種が生き残る条件はなんじゃ?」

暦「あー。子孫を残すこと」

忍「そう。それから、身の安全じゃ」

忍「種をつけることが目的なのじゃから、さっさと発射できるにこしたことはない。弾の発射に30秒かかるピストルで生き残れるか?」

忍「それから身の安全。いかなるものであろうともも安全が解除される瞬間がある。それはいつだと思う?」

暦「……その、出たら」

忍「そうじゃ。さすがに先ほど達したときにあの娘に毒づかれておるから、わかるか。お前様は何も言い返せず、ヒイヒイ言っておったな」

暦(あれは半分そういうプレイだと思ってたけどな)

忍「生存欲の強い吸血鬼としては命の危険に曝される瞬間はなるべくなくし、種をつけたい。ゆえに、お前様は早漏というわけじゃな」

暦「くそ、予想以上にロジカルな仕組みだった僕の早漏。普通、精神的なものとか言われるのに……」

忍「かかっ、その気になれば次元大介ばりのスピードで発射できるぞ」

暦「マジで!? それは試したくなる!」

忍「しかし、絶倫になれないわけではないぞ」

暦「何か方法があるのか?」

忍「ひたすら発射する」

暦「枯れちゃうぅっ!」

忍「かかっ、まあそうしたくなったら儂に血を吸わせてからヤることじゃな。吸血鬼の体力がないと、この手は使えん」

暦「……」

忍「どうした、今の話を聞いて体が昂ってきたか」

暦「……いや」

忍「それにしても、あのツンデレ娘。床ではずいぶんしおらしくなっておったのう」

暦「……」

忍「今、またあの娘に、種をつけたいと思ったじゃろ?」

忍「なあに、あの体はお前様のものじゃ。あの娘の口と手が少々おいたをしたら、夜には同じだけ返してやれ。あの娘の奥にたんと注ぎこんでやれ」

暦「……」

忍「恥じることはない。お前様を今捉えている情は人間ならば極普通のことだろう? もちろん吸血鬼にとっても、な」

暦「……やめろよ」

忍「あの娘に種付けを、産めや増やせや、同胞を」

暦「やめろって」

忍「ほれ、この間の晩、あの娘御は、こおんな顔をしておったかのう」

暦(これは……幻だ。忍の物質創造スキルの)

忍「阿良々木くん、こっちへいらっしゃいな」

暦(こいつは、怪異なんだ)

忍「上手、上手、ぼうずはおいたが上手」

暦「ガハラさぁん……」

忍「お仕事、お仕事、締めの一発、くりゃれ」

暦「……ってうおおおい! なんで僕忍を押し倒してんだ!?」

忍「チッ」

暦「しかもなんででっかくなってるんだよお前!」

忍「なんじゃい、つまらんのー」

暦「うわああー! 危なかったーマジで危なかったー!」

忍「おう、お前様、ちょ、DS投げて、こっち」

暦「DSじゃねーよ! なんのつもりだ!」

忍「んー。暇つぶし、かな」

暦「そんな尻軽に育てた覚えはないぞ!」

忍「うっざいのー。お前様にカンケーねえし」

暦「ぐ、グレた! 忍がグレた!」

忍「早くミスタードーナツ買ってこんかいボケがぁ!」

暦「痛いっ! 殴らないでよ!」

忍「あー10秒以内にポンデ・チョコ買ってこないと、お前様、ドロップキックの刑な」

暦「買ってくるから! 暴力はやめてちょうだい!」

忍「さっさと行けってんだよ! マジうざいのー!」

ネタが下か屁理屈ばかりだな
むずかしい……
ルーマニア

暦(ミスタードーナツを買いに行く。けど忍は常に僕の影にいるから、結局一緒に行くことになるんだよなあ)

暦「そうだ。千石に電話しとかなきゃな」

暦「もしもし、千石?」

撫子「……」

暦「あれ、おーい。千石?」

撫子「……うぅ、ひっく……ふっ……」

暦(袖を濡らしていらっしゃった)

撫子「はひ……もひもひ? 暦お兄ちゃん? な、撫子、だよ。へへ……」

暦(こんなときも僕のことをお兄ちゃんと呼んでくれた。マジでいい子だった)

暦「せ、千石? 泣いて、るんだよな。すまん……」

撫子「な、なんで、暦お兄ちゃんが、謝るの。な、撫子、うぅ……わっ、わかんないなぁ」

暦(良心がっ! 呵責の念があぁっ!)

暦「ごめんな。結果的に、置いていっちゃったな」

撫子「で、でもっ、でもね。うちまで連れてってくれたから、ひっく、がんばるさんが」

暦(まあ、努力家ではあるが)

暦「トイレから出て、偶然クラスメイトに捕まっちゃってさ。って、言い訳だな」

撫子「……その人、女の人?」

暦「え、うん」

撫子「その人……暦お兄ちゃんの、彼女?」

暦「えっ、いい、いやー。違うよ?」

暦(あれ、なんで僕は今否定したんだろう。ガハラさんは僕の正真正銘、彼女なのに)

暦(いや、だってさ。なんか感じ悪くないか。千石は放り出して彼女とデレデレしてたなんてさ。いや、半分はギスギスしてたけど)

暦(そうだ。これは気遣いだよ。ささやかな嘘。うん)

撫子「そっかぁ」

暦「いやぁ、そいつがまたひどいからみ方でさー。参っちゃったよ。ははっ」

撫子「暦お兄ちゃん、つきあってる人、いないの?」

暦「えーと。うん、まーいない、かな?」

暦(まあ、これくらい罪にはならないだろ。千石が僕に彼女がいないと知ったところで、どうにかなるもんじゃないしな)

撫子「そっかぁ」

暦「お、もう泣き止んだな」

撫子「うん。もう平気だよ」

暦「ところで千石。おまえさ」

撫子「なっ、なにっ!? あなた!?」

暦(相変わらず妙なところでヴィヴィッドに反応するな)

暦「神原と仲良くしてるって聞いたんだけど。電話とかしてるのか?」

撫子「あ、神原さん? 神原さん、うん……」

暦(なんか、自分の期待した話題じゃなかったみたいな落胆ぶりだな)

撫子「神原さん、たまにお話するよ」

暦「へえ。でもあいつ年上だし、話しづらかったりしないか?」

撫子「ううん、そんなことないよ。撫子の話、なんでも返してくれるし。村崎百郎とか」

暦「村崎百郎!? 神原はともかくお前鬼畜趣味があったのか!?」

暦(そういえば千石は臆病にも関わらず蛇を斬っていた前科があったな。暦お兄ちゃんは心配になってきたぞ!)

暦「ぼ、僕はもうちょっとマイルドな話題だと聞いたんだけどなー。ほら、百合とか」

撫子「あー」

暦「神原はむしろそっちが専門だからな」

撫子「でも、撫子、正直最近の百合事情はついていけないかな。ほら、百合姫も昔は逆袋とじやってたけど、ああいう面白さのほうが反応しちゃうなぁ」

撫子「BLも、24年組みたいなオールドスクールのほうが好き、かも。萩尾望都の『残酷な神が支配する』とか怖いよ」

暦「お前はサブカル女子だったのか?」

暦「でも安心したよ。最近の千石、楽しそうだからな」

撫子「えっ、だ、だってそれは、今暦お兄ちゃんが撫子に電話してくれてるから……ごにょごにょ」

暦「え、なに? ごめん、今のよく聞こえなかった」

撫子「ううんっ、なんでもないよ」

暦「はぁ? まあ、もう一度言うけど今日はごめんな」

撫子「いいの。だって、今日は暦お兄ちゃんと遊べて、とても楽しかったから」

暦(聞いたか、我が家の愚妹たち。これが本来あるべき妹の姿じゃないのかね)

撫子「でっ、でも、一緒におでかけするなんて、おつきあいしてるみたいだよね。へ、変だよね、撫子と暦お兄ちゃんは兄妹みたいなものなのに」

暦「そうだなー。ははっ」

暦(うちの妹は一緒に満喫なんて絶対行かないからなー。うんうん、こっちが本物の妹だったらいいのに)

暦(とまあ、千石ともうまくいき、ミスタードーナツを買いにきたわけだが)

羽川「あれー。、阿良々木くん。こんばんは」

暦(ちゃんとこんばんはの挨拶ができる委員長・オブ・委員長、羽川翼だった)

羽川「阿良々木くん、そこの独白っていわゆる意識の流れなのかな。それともただの状況説明?」

暦「お前までとうとうメタ発言をするキャラになったのか!?」

羽川「そもそも、意識の流れ自体メタ的だしね。一般的に三人称の小説で挿入されて、語り手とキャラクターの境界が曖昧になるものだけど。とりあえず、さっきの語り手は阿良々木くんだね」

暦「もう既に僕はついていけねえや」

羽川「あはは。めんどくさいからここまで。阿良々木くん、忍ちゃんとお買い物?」

暦「ああ。このヤンキー吸血鬼がドーナツをご所望だからさ」

羽川「ヤンキー? ああ、確かに忍ちゃん金髪だよね。きれいなロングで」

暦「それとはちょっと違うんだけどな……」

羽川「ヤンキーってそもそもアメリカ人を指す言葉だけど、忍ちゃんアメリカ人なのかな」

暦「あー。こいつの国籍なんて考えたことなかったなぁ。まあ、見た目はなんとなくイギリス人かなって思うけど」

羽川「ドラキュラっていう小説を書いたブラム・ストーカーはアイルランドの人だけど、モデルになったドラキュラ伯爵はルーマニアの人なんだよね。ここで既に多国籍な感じもあるけど」

暦「ああ、でもアイルランドはイギリスに支配されてたんだっけ? じゃああながちイギリス人で間違いでもないのか?」

羽川「お、えらい! ちゃんと世界史勉強してるー」

暦(羽川に褒められると、いい気分だ。褒めて伸ばす)

羽川「あと、中国のキョンシーとかも吸血鬼の一種みたい。世界中にヴァリエーションがあるんだよ」

暦「忍、お前、国際的だったんだなぁ」





羽川むずい
あと猫と傾読んでないんだよな

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保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 40分以内
02:00-04:00 90分以内
04:00-09:00 180分以内
09:00-16:00 80分以内
16:00-19:00 60分以内
19:00-00:00 30分以内

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暦「ゴールデンチョコレート、オールドファッション、フレンチクルーラー、ポンデチョコ、抹茶リングetc」

翼「いっぱい買ったね。あ、火憐ちゃん月火ちゃんにも?」

暦「嫌だと言っても、忍が一人でたいらげちまうよ。ついでに僕の財布の中身もな」

翼「あらまー」

暦「なあ、羽川。少しいいか?」

翼「いいですよ?」

暦「ああ……じゃあ、ちょっとそこ座ろうぜ」

翼「でもなあに? 私をカップル公園に引き込むつもりなの?」

暦「なんだそれは!?」

翼「ちょうど今くらいの時間になると、吐息まみれの男女で埋め尽くされるって、もっぱら噂だよ」

暦「まさか!? ここは八九寺と初めて会った集合住宅地前にあるアニメだと実は洒落た遊具が配置されたオサレ空間だと発覚した普通の公園のはずだ!」

暦(それともなにか。この隙間を凝らした解放感あるレイアウトが却って若者の欲望を解放してるのか。禁止禁止! 下品禁止ですぅ!)

翼「もっぱらとおっぱいの響きって似てると思うんだけど、阿良々木くんはどう思う?」

暦「お前は神原か! 髪切って捨てちゃいけない部分もカットしちゃったのか!?」

来たか支援

暦「まあ、おひとつどうぞ」

翼「ポン・デ・リング? でもこれ忍ちゃん用じゃないの?」

暦「僕とお前に買ったんだよ」

翼「えー。悪いよー」

暦「悪くない。僕が羽川とポン・デ・リング食べたいなぁと思ったから買ったんだ。別に貸し借りじゃなくて、文字通りごちそうだよ」

翼「そう? じゃあ遠慮なくいただきます。私、ドーナツ久しぶりだなー」

暦「んあっ……え、なんだその食べ方」

暦(羽川はポケットティッシュを一枚膝の上に広げて、そこでポン・デ・リングの球を一つ一つちぎって食べていた)

暦「そんな食べ方してるやつ初めて見たぞ」

翼「せっかく数珠状になってるんだし、それを一つずつ食べたくならない? それともこれは女子的な食べ方なのかな」

暦(ちなみに。うちのでっかい妹、忍は共にばくばく豪快に食べる派。下の妹はドーナツを口にくわえたまま数十分はぼーっとしてるダラダラ派)

暦「ふうむ」

翼「阿良々木くんもかなり独特だよね。一ヶ所先に食べてポン・デ・リングを引き伸ばしたあとに、先からちまちま食べてる男の人もなかなかいないんじゃないかな」

暦「え、普通だろ? 男子的に」

暦(このほうが長く楽しめる気がするし。あと口から長いものがブラブラしていてドキドキするのだ)

暦(なんだかなぁ)

翼「……」

暦(羽川の食べ方が気になる。いや、ちぎるとかはもういいんだけど。諸動作というか)

暦(ちぎったポン・デ・リングのつまみ方とか、口許への運び方とか)

暦(あむっ……とそれを口に放りこむところとか)

暦(伏し目がちな表情で食しているところが妙に色っぽくて様になっている)

暦(羽川って、まつ毛、長いんだなぁ。今までメガネだったから気づかなかったけど)

暦(イインチョーキング、羽川翼。そのポン・デ・リングを食べることでさえ、他と一線を隠していた)

暦(だってさあ、すごいよ、この絵)

暦(ここまで艶やかにポン・デ・リングを食べる女がいるだろうか。いや、いない。羽川翼、恐ろしい子っ)

翼「おいしいね」

暦「……」

翼「あ……あー。やっぱり、手がベトベトになっちゃった」

暦「……」

翼「ちょっと、水道で手洗ってくるね」

暦「……」

翼「お待たせー。じゃあ、続きをしましょうか」

暦「うん。さっき羽川、おっぱいが八杯とか言ってたけど、エロキャラいけると思うよ」

翼「どこからその認知に至ったの!? あとおっぱいが八杯なんて言ってない!」

暦「だって、ねえ、みなさん?」

翼「どこのみなさん!?」

暦「だっていちいち動作がエロいんだよ」

翼「ただポン・デ・リング食べてただけだよ。手に砂糖がついちゃったから洗いにいって」

暦「羽川、ドーナツ食べたら喉かわいたろ。はい、コーヒー」

翼「ありがとう。いただくね……んっ……んっんっ……ぷはぁ」

暦「ほらやっぱりエロキャラだよ。なー。みんなも見たよなー」

翼「先ほどのセリフには私の意図とは違うものに改竄されていますっ! 即刻訂正をお願いしますっ!」

暦「なにもお前のエロさは行動に限ったことじゃないんだぜ。ヴィジュアルもだ」

翼「阿良々木、女の子の容姿についてそういう言い方するのは立派なセクハラよ」

暦「みんなには見えないかもしれないが、実は今羽川は超キワキワのスーツを着ている。フィフス・エレメントのやつ」

翼「私には制服にしか見えないよ!?」

暦「オレンジ色のショートカットでカラーコンタクトをしています」

翼「確かにショートにしたけどっ! コンタクト入れてるけどもっ!」

翼「阿良々木くん、私を苛めて楽しい?」

暦「お前を苛めるのが楽しいんじゃない。羽川と性的な話をするのが楽しい!―――僕はドヤ顔でそう言った」

暦(なんてたって、僕と最初におっぱいトークをした女子(実務込:失敗)だからな!)

翼「ふぅーん。そうですかそうですか。阿良々木くんは私をそういう目で見ていたんですか。じゃあ、私も色々解放しちゃおうかな」

暦「解放?」

翼「まず、手始めに、見知らぬおじさん誘惑しようかな」

暦「なっ、なにぃっ!?」

翼「そうだなー。ブルース・ウィリスみたいに禿げたおじさんがいいな。そこさえクリアすれば誰でもOK」

暦「はやまるな羽川! その条件では大多数の日本のおじさんが当てはまってしまう!」

翼「一緒にプリクラ撮ったりして恋人気分を味わってさ」

暦「それは10年前のテレクラだ!」

翼「そしてホテルへ行き……私はそのブルース・ウィリスに体を捧げるのです」

暦「ぐああああー! どうしても名前だけブルース・ウィリスの日本のサラリーマンしか浮かばねえええ!」

翼「さよならー私の純潔ー…………私はルララ宇宙の風にのる」

暦「ふっふっふっ……初めてですよ。僕をここまで追い詰めた羽川さんは」

翼「フルパワーまで出させないでね。これ以上言ったら、阿良々木くんがどれだけ傷つくのか私にもわかわないんだから」

暦「まだ……上があるのか」

暦(これ以上されたら、明日から羽川と目が合わせられなくなりそうだった)

暦(僕の中のアニマが羽川の放つ言葉のRPGで破壊されたビルのように粉々に砕けちってしまうぜ。イマジンブレイカー、羽川翼)

翼「まったく。阿良々木くんが余計な話するから、本題に入れないよ」

暦「だって! だって! 羽川がおっぱいとか言うんだもん! 始めにおっぱい言ったのだーれだ。羽川だ! 僕は悪くないやい!」

翼「言ってないよ」

暦「いーや! 言った、いったね! 見ろ>>343を!」

翼「あーほんとだ」

暦「羽川、さしつかえなければ教えてほしい。裁判で悪いようにはしない」

翼「私、何か悪いことしたかな……」

暦(そう言うが、羽川の胸はゴールデンウィーク以来第一級犯罪モノだと思っている僕。クリミナル・ワン。いや、あるから2つツーか?)

翼「それは……お恥ずかしながら、私もちょっと気が緩んでいたというか」

暦「んん?」

翼「その……私も、思春期ですので、体を持て余すこともあるのです、はい」

暦「ほうほう」

翼「それで、つい、口がすべって……もぉ、こんなこと言わせないでよぉ」

暦(と言って顔を真っ赤にし、しおれる羽川。正直、萌える)

暦(しかし、羽川が気が緩んでいた? どういうことだろう。いくらかの変革を経たとはいえ、羽川がそんなミスをするだろうか)

翼「もう、いいでしょうか?」

暦「ああ、楽にしてくれていい」

翼「もうっ。話があるんじゃなかったんですかー」

暦「ああ。忘れてた。おっぱいで」

翼「話がズレすぎだよ!」

暦「ほら、ボインボインって擬音があるじゃないか。話の軸が左右に揺さぶられたんだな」

翼「もーやだよーおっぱい談義ー」

暦「まあ、目が離せないっていうか」

翼「ねえ、今私のどこ見てるの」

暦「ノドボトケ」

翼「女の子にはないよ」

暦「ああ、突起物だから錯覚しちゃった。それに二つあるな」

翼「私そろそろ怒っていいと思うんだ!」

翼「はいはい、本番いきまーす」

暦「チッ、強制的におっぱいトークを中断するつもりか」

翼「サン、ニイ、イチ!」

暦「今日の昼間なんだけどさ」

翼「うん」

暦「妹の友達と遊んでたんだけどさ」

翼「うん」

暦「まあ、昔から知ってるし、もうひとりの妹みたいなもんだけど」

翼「うん?」

暦「それで、そいつが『彼女いるの?』って聞いてきたんだ」

翼「……」

暦「それで、僕は『いない』って答えちゃったんだ」

暦「いるのにさ」

翼「……」

暦「なぁ、これってどういう心理なんだと思う?」

翼「……」

暦「……」

暦(あの、さ。ちょっと前に怖い絵って流行ったじゃん。綺麗なんだけど見てると不安になってきたり、絵の内容が実は恐ろしい場面だったり)

暦(今の羽川はそんな感じだった)

暦(聞く側としての表情、姿勢は共にいつもの心強い、唯一無二、シンクタンクのスタンドプレー、僕の恩人羽川翼ではある)

暦(怒った顔じゃないんだよ? でも、なんていうか……)

暦(ギャルゲーをやったことのない女子が、深夜たまたまアニメ化作品を見てしまい、主人公のあまりの節操のなさに空いた口が塞がらないほど呆れ怒り)

暦(部屋中のクッションを引きちぎり、腹いせに友達に空メール100件送り、真夜中の住宅街で主人公への罵詈雑言を朝までぶちまける)

暦(といえばこの怖さが伝わるだろうか)

暦(怖い羽川だった)

暦「なあ……」

翼「いやいやねーから」

暦「羽川!?」

翼「阿良々木くん、まず、妹の友達ってことはその子は火憐ちゃん月火ちゃんと同い年だよね」

暦「あ、ああ……」

翼「次に、妹の友達と遊ぶ。まあ少数派だとは思うけどそういう人もいるだろうね」

翼「だけど阿良々木くんは戦場ヶ原さんという彼女がいる。恋人のいる男の人が妹の友達の中学生と遊ぶ。これはさっき以上に少数派だれうし、周りから見たら異常だろうね」

暦「い、異常……」

翼「そして、その子から『彼女いないの?』と聞かれる。阿良々木くんの答え、『いないよ(キリッ』」

暦「……」

翼「おかしいね。戦場ヶ原さんはどこにいったのかな。何かがあって破局? それともボリス・ヴィアンみたいに肺に花が生えて死んじゃったのかな? それなら本当に悲しいよね」

暦「そ、そのう……」

翼「阿良々木くん。不思議なことに阿良々木くんの周りにはたくさん女の子が集まってくるけど、こういう不誠実なことはしない人だって、私、信じてたんだ」

暦「あ……あ……」

翼「もうさ、幻滅、だよ。信頼がた落ち。リーマンショックレベルだよ」

暦「ご、ごめ……ごめんなしゃい、ひっく……」

翼「私に泣いて謝るのはちがうでしょう?」

翼「戦場ヶ原さんがどんな思いをすると思う?」

暦「が、ガハラさんはぁ……怒ってたけどぉ……うぅ」

翼「阿良々木くん、情けない泣き声出さないで。ちゃんとしてよ。出来損ないの萌えキャラみたいだよ?」

暦「うっ……ううぅー」

翼「繰り返すけど、ホントに幻滅だよね。イマジンブレイク。わたしのげんそうはぶちころされましたー」

暦「羽川! お願いだからもうやめてくれ! 僕はお前に見捨てられたら生きていけないよ!」

翼「どーせ他の女の子にも似たようなセリフ言ってるんだろうね。最低だよね。底が深すぎて深淵って感じ。私に這い寄ってこないでね」

翼「あーあ、こんなこと聞く前までは『私のいやらしいおっぱいをモミモミしてください・アゲイン!』を発動しようと思ってたのになぁー」

暦「うそ……」

翼「ほんと。阿良々木くんがあまりにもおっぱいに飢えてるみたいだったからさ」

暦「クソッ! クソッ! ばかっ! 僕のばかっ!」

翼「だいたいさー。いくら私が寛容だからってタダでおっぱい談義につきあうわけないじゃん。女の子からのサイン、見逃してるよ。あ、でも中学生からのサインには敏いのかな。やだ、ロリコン?」

暦「やめろ……そんな蔑むような目は……」

翼「そっかー。そういうことだったんだー。じゃあ私みたいないやらしいおっぱいよりも、そりゃあ未成熟発展途上がいいよねー。キモッ」

暦「ぐあああああああああ!!」

翼「これから二度と話しかけないでね。私、あなたのことが嫌いです。バイバイ、あらりるれろくん」

暦「ぼくの……名前は……ラ行じゃなあい……」

翼「失礼。あなたの心を噛みました。にゃーんて。にゃはははははははははははは」

暦「……にゃ?」

翼「ははははははは! はっ! やべやべ」

暦「……おい、矢沢あいの漫画を言ってみろ」

翼「にゃ、にゃにゃ?」

暦「紅白に出場した声優は?」

翼「水樹にゃにゃ」

暦「風の谷の?」

翼「にゃうしか」

暦「……」

翼「……」

暦「いつからだ」

猫「あれ、人間!? 久しぶりだにゃあ。最近マジどうしてたにゃ?」

暦「てめ、ふざけんなよ? てめ、ふざけんなよ?」

猫「と、とばっちりだにゃあ。俺、今来たとこだし。ほら、名前の表記もご主人から猫になってるにゃあ」

暦「は? は? は?」

猫「うっ、ど、どつかないでほしいにゃ……」

暦「だいたいさ、怪しかったんだよ、最初から」

猫「そのわりにはマジでショック受けてたにゃあ」

暦「やっぱりお前の仕業じゃねーか!」

猫「あっ、ちょ、やめてほしいにゃ、一応体は人間の女の子のわけで。ご主人の……い、痛い、痛い」

暦「痛い? 僕の方が光倍痛かったんですけど。マジ辛すぎて失明しかけたんだけど」

猫「彼女でもねーのに大げさだにゃあ」

暦「なんか文句あんのかよ、なあなあなあ」

猫「あっ、痛っ……」

暦「もうさ、殴っていい? 今度ばかりはちょっと僕キレたわ」

猫「ふん、お、お前みたいなヘタレチキンにご主人の顔を殴れるわけないにゃ」

暦「忍、こいつ喋れなくなるまで食べていいぞ」

猫「ややや、やめるにゃあ! 俺はもう前に弱体化されたし、これ以上やったらご主人がサナトリウム生きだにゃ! そ、それでもいいのか!?」

暦「弱体化? じゃあ大人しく引っ込んでろよ。てか、羽川から出ていけよ」

猫「それは無理だにゃあ。俺はご主人からは離れられない、お前らと同じ運命共同体だにゃ。人に歴史ありというように、ご主人に俺がいるんだにゃあ」

暦「何賢そうに語ってんだよ」

猫「う……と、とにかく。今すぐ出てけと言われて、縄張りを譲る猫はいないのにゃ!」

暦「ほう。なら僕にも考えがあるぞ、猫」

猫「けーっ! 人間の浅知恵なんてたかが知れてるにゃあ!」

暦「こいつを見てもその大口がたたけるかな」スッ

猫「にゃ、にゃにィ!? そいつは……ッッ!!」

暦(猫じゃらしだった)

暦(正しくはエノコログサ。ご存知のようにそこら中に生えてる雑草だ。先のフサフサした部分を猫の前で振ってやると……)

猫「こんなっ……もので……にゃっ……俺が……釣られるわけ……にゃっ!」

暦(こうかはばつぐんだ!)

暦(ククク、馬鹿め。猫(見た目は白髪の女子高生)のやつ、まんまと引っ掛かってやがるぜ)

翼「にゃっ! にゃあ! こいつ、フワフワホワホワのへんちくりんめ! 大人しく捕まるにゃっ!」

暦(何かに似てるなと思ったら、蚊を叩こうとしてうまくいかない図に見えるな)

暦「ふははははは! いい格好だな猫! 人間の浅知恵にお前はまるで手が届かないじゃないか! バーカ!」

猫「くっ、くっそおおお! にゃあにやあにゃあ!」

猫「ぜーっ、ぜーっ、ぜーっ。お、おい、人間。き、今日のところはこのくらいで勘弁しといてやるにゃあ」

暦「おいおい。『怪異が肩で息をしている』じゃあないか。ははっ、障り猫とやらもたいしたことないなァーッ」

猫「だまれ!」

暦「ンッン~♪ 実に! スガスガしい気分だッ! 歌でもひとつ歌いたいようなイイ気分だ~!」

猫「くそっ……くっそぉ……」

暦「あれがデネブアルタイルベガ~♪」

猫「ちくしょおおおおおおお」

暦「おいおい。まさか、『完全体にさえなれば』とか言い出すんじゃないだろうな」

猫「ひっく……ひっく……ず、ずりゅい! ずりゅいぞ人間のくそばかぁ!」

暦「あーはいはい。泣き真似とか無駄無駄無駄」

猫「にゃんだよそれ! その、フワフワゆらゆらしたへんなの! あんなの使われたら無視出来ないにきまってるでしょ!」

暦「はー? 何言ってんのお前。猫の事情なんて知ったことか」

猫「うるさい! もういやにゃあああああああ」

暦「お、おい。まさかマジで」

猫「うわああああああああああああんんん」

暦(まさかのマジ泣きだった)

暦(あのいつも挑発的で、上から目線の障り猫が、だ)

暦(いやさぁ、最近忍が駄々こねるから、まあ怪異も色々だなとは思ってたけどさ)

暦(こいつは泣いちゃ、ダメだろ)

猫「うわああああああああああああ」

暦(止まることなく泣き続ける猫である)

暦(銀髪だけど、見た目羽川が大泣きしてる格好なんだよな)

暦(ちなみに現在、世間は夕食の時間。夜の公園で、男子高校生が女子高生を泣かせていると駆けつけてくる人もいるかもしれない)

暦(痴話喧嘩の仲裁なんかされたくないし、だいたいこいつとは後半分の喧嘩だけの間柄なのだ)

暦(ひとまず泣き止んでもらおう)

暦「な、なあ、もう泣き止めよー」

猫「びゃああああああああああああ!!!」

暦「そうだ! ほら、これやるから、猫じゃらし。な!」

猫「……壁紙もつけてくれる?」

暦「壁紙?」

猫「ひっかくやつだにゃあ」

暦「あー壁紙な。後でホームセンターで適当なの買おうな」

猫「スーパーで売ってるやつじゃなくて、ちゃんとしたししゃもも欲しいにゃ」

暦「ぐっ……あーわかったわかった。買ってやるから」

猫「まんじゅう」

暦「まんじゅう? うーん、猫にはカロリー高いがまあいいだろう」

猫「マグロ」

暦「もちろん釣れたてだな!」

猫「海外旅行」

暦「お前もう思いつきで言ってるだけだろ!」

猫「うぅ……体力を激しく消耗してしまったにゃあ……」

暦「僕も疲れたよ……」

暦(まあ実際の疲労は少ないんだけど。考えたら一日中誰かと会話してるんだ。脳がせわしなく動いて騒々しい気がする)

暦「あー疲れた。座っちゃお」

猫「……」

暦「なんだよ」

猫「ちょうど寝心地がよさそうな場所があるにゃあ」

暦「は? っておい!」

暦(寝心地がよさそう)

暦(そう言って猫が僕の膝に頭を降ろし横になった。膝枕ってやつだ)

暦「……いやいやいや」

暦(異性に膝枕をしてもらう。これは未だガハラさんでさえ果たされない異性間交流における僕の夢だ)

暦(それが、今、叶ってしまった。思ってたのと違うけど)

暦「これ、男女逆だろ」

暦(女の子の膝に頭を横たえる。きっと太ももの感触が楽しめたり、頭撫でてもらったり、目と鼻の先の局部にドキドキしたり)

暦(そういうものじゃないのか。ほら、相手は羽川だぜ!?)

暦(隠れ巨乳だったみたいにさぁ、太ももが意外にむちむちしてて、それをちょっと気にしてむず痒そうな羽川とか!)

暦(やっぱ見たいって思うじゃん!)

猫「……」

暦(目が上下している。本当に眠いんだな。瞼が上に行ったり、下に行ったり……)

暦「……おい、馬鹿猫」

猫「……うるさいにゃ、人間」

暦「今日羽川に会ったときからお前が演技してたんだろ」

翼「違うにゃあ。俺は初めは出てなかったにゃ。まあ、ご主人をつっつくくらいはしてたけどにゃ」

暦「つっつく?」

猫「なんだかんだ、ご主人も最後には引いてしまうところがあるにゃあ。だからご主人の行動にノイズを起こして誘導するのが狙い。ADのカンペみたいなものだにゃあ」

暦(猫にギャグを言えと指示されたら羽川がギャグをやってくれるんだろうか)

猫「といってもご主人と俺は立場が決まってるから限界はあるけどにゃ」

暦「じゃあ、結局お前僕をディスるために出てきたのかよ」

猫「あー。ちょっと違うにゃ」

猫「初めからおっぱいの話。このあたりまではまずまずだったにゃ」

暦(まだそのへんはいつも通りだったな)

猫「そこに、人間、お前のチンケな相談だにゃ」

暦「僕はけっこう勇気出して話したんだぞ。だから最初長く脱線してたんだし。でも他に話せそうな相手がいなかったしな」

猫「まったく。お前の無遠慮、無神経、無差別の相談にご主人の体は天変地異が起こったみたいだったにゃあ」

猫「おかげで回路がいかれちまって、ご主人の表層意識と深層意識が滅茶苦茶になりかけるし、核が破裂しかけた。ま、すぐに立ち直ったところはさすがご主人だけどな」

翼「けど、時間が足りなくてレイアウトがずれた。俺が普段いるべき場所ではなく、急にステージ袖に移動させられたりしてな」

猫「結果として、アウトプットがご主人と俺が混じってしまったにゃ」

暦「……要するに、僕が悪いってことか」

猫「しゃべりは俺がやったが、感情的なクラスタはぶっちゃけ100%ご主人のものだったにゃあ」

暦「本気で怒ってたのか」

猫「ざまあないにゃ。ま、普段からこれくらいぶっちゃけてもらったほうがご主人のためにゃんだけどな。人間、お前、ご主人のストレスになったんだにゃ」

暦「僕が……羽川のストレス」

猫「お、深刻そうな顔だにゃ。いい気分だにゃあ。歌でもひとつ歌いたい気分だにゃあ」

暦「やっぱり、僕はばかだった……」

猫「説明したらまた眠くなってきたにゃあ……」

暦「おい、羽川はちゃんと元に戻るのか」

猫「今……復旧作業中……俺は優秀なのにゃ……」

暦「復旧作業? それで羽川のレイアウトとかは治るのか」

翼「そう……ああ、本棚が多くてたいへん……やっぱり体育館倉庫も見なきゃ……」

暦(寝かけてやがる……言ってることも寝言っぽくなってきたな)

暦(けど……そうか。ストレス……)

猫「にゃ~……」

暦(羽川がそこまで怒った理由は正直わからない)

暦(とりあえず、羽川が戻ったら謝ろう)

暦(もし、許してもらえなかったら、僕は……)

猫「……めざし」

暦「……猫ってアゴを撫でると喜ぶっていうよな。まあ、こんなの点数稼ぎにもならないだろうけど」コショコショ

猫「……ふにゃっ!」

暦(そういえば昔、お祖母ちゃんの家の猫をこうしたっけ)

猫「なっ……なにを……してるの、にゃ」

暦「アゴ撫でてるんだよ」

猫「あ、あごってっ……あ、ああっ」

暦「おー。身体をくねらせている。さっきの猫じゃらしといい、お前普通に猫だな」

猫「やっ……これ……やんっ!」

暦「気持ちいいか?実際猫的にどうなんだ?」

猫「き、気持ちよくなんかっ……う、ああっ、ああん!」

暦「そうか。やっぱり人間側の勝手な解釈だったんだな」

猫「はぁはぁ……あ、だめ!」

暦「僕もさ、羽川ならきっといい答えを返してくれるって都合よく考えてたんだよな」

猫「やっ! はぁん、いやっ、いやらっ、なにこれっ、なにこれぇ!」

暦「だいたいさ、羽川を完璧超人みたいにみんな言うけど、そんなはずないよな」

猫「はぁっ! ふぁっ! やら、なんらのっ、ああっ、ひゃあ!」

暦「わかってたはずなのになぁ」

猫「にゃ、は、うう、にゃぎ、も、もう、やめ、やめやめ、やんっ!」

暦(そうだ。あいつはいつだって自分の限界を言葉にしていたじゃないか)

翼「いやっ、やん、へぁ、あ、う、くぅぅ……」

暦(『何でもは知らない。知っていることだけ』)

猫「やらああ! もうらめっ、きゃん! あっ、あっ、あっ、あっ」

暦「僕は今までなにを聞いてたんだろう」

猫「あっあっあっあっあっあっあっあっ」

暦(ちゃんと謝ろう。そして、自分が知らなくちゃいけないことを確かめなくちゃ)

猫「あっ、ひあっ! あっ……ッッ!」

猫「はぁ……はぁ……はぁ……」

暦「お前ぶるぶる震えてるぞ。それに何でそんなに息が荒いんだよ」

猫「はぁ……はぁ……」

暦(その表情一目で、普通の状態じゃないことに気づく)

暦(潤んだ瞳、絶えず息を吐く口、垂涎、熱でもあるみたいな真っ赤な顔。銀髪のせいで赤が目立つ)

暦(体の方に目を遣ると、猫の腰辺りのベンチが何かでぐっしょり濡れている。ベンチを濡らしたそれは地面に向かい、糸を引いていた)

暦「……は?」

翼「阿良々木くん……」

暦(呼ばれてそちらを向くと、猫の銀髪は黒髪に戻っいた。つまり、羽川だった)

翼「はぁ……はぁ……」

暦(荒い息の羽川。今彼女は僕の膝を枕にしていて、顔を覗くと毛穴が見えそうなほど(目立つものはないけど)近くにあるわけで)

翼「阿良々木くん……」

暦(前にどこかで同じようなシチュエーションを経験した気がする)

暦「まさか……」

羽川「おねがい……」

暦(羽川のお願いは何でも聞きたい僕だけども! そんな陶酔した表情で言われても!)

暦「……えっと」

翼「……」

暦(リアクションのとれない僕をじれったく思ったのか、羽川はゆっくり起き上がり、自分の腰辺りを一瞥して)

暦「えっと……」

翼「……」

暦(羽川はベンチに横たわり、右足を少しずつ開いて僕の視線を誘導した。確かにベンチを濡らした源がそこにあった)

暦(羽川と、視線があった)

翼「きて……」

暦(僕は、逃げた)

暦(どうやって逃げてきたのかは覚えていない)

暦(何か言ったのか、無言だったのか。ただ絶対に振り返らなかったのだけは覚えている)

暦「もしかしたら羽川も意識がはっきりしてなかったかもしれない。猫が僕をからかおうとしたのかもしれない)

暦(けど、僕は女の子のお願いを、断る以前に、放棄し、逃げ出してしまった)
暦「僕はきっと世界最高峰のチキン、ワールドレコードのヘタレだ」

暦(しかも、相手が羽川なのは初めてじゃないのだ)

暦(もう、ガハラさんに殺されるのが一番楽かも、とか考えてたら、家の玄関だった)




出先で金がとんだから猫(黒)だけ買ったこれから読む

        ∨ |'::: |:  / ::/ : ::/ ,./ : ::::/|   ||:::::::::|:: : : :/     この感じ・・・・ 
          \|、/j;/_j::;;イ : ::/ // .:::;/ |  :||:::::::::|_:_:<_         
           ,ノ:|:::∧ィチテ弐|::;/ '´ ,ノ;ィチ弐マァ| .:||:::::::::|  | ̄       ミスドかの・・・・
 _____ / ::|::::::;ハヽ弋::j,'"     '´ 、弋:::ン゛| ..::||::::::::リ  | __人,、__________
   ̄ ̄ ̄ ̄/  ::|::::/ ハ⊂⊃  ノ         ⊂,ノ;/||::::::/  | ̄ ̄`^'` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         /   :|:::|.  ハ    、        '"/'´::||:::/\  .|
       /   ,ィ|:::|   {:{ヽ、   __     ,.イ'/ . :||::::|   \.|
       /   / |:::|  ,|:|  `ヽ、  U  ,.イ //. : ::||::::|   ハ

『つきひフェニックス』2009年3月発売予定
吸血鬼をも凌駕する聖域の怪異をその身に取り込んだ彼女が実行する、
あるまじき、しかし燃え盛るような正義とは――?
「こんな偽物だらけの世界は滅んじゃっていいと思うんだよね、お兄ちゃん」

↑これはちょっと嘘すぎる。こっちの方がいい↓

『しのぶドーナツ』2009年3月発売予定
ミスタードーナツが全品百円セール、そんな情報を入手した彼女が実行する、
あるまじき、しかし燃え盛るような正義とは――?
「圧巻じゃ!ぱないの!お前様よ、これ、全部食べてもよいのか!」

暦(一度玄関まで来たものの、なんとなくまだ家族と顔をあわせたくなかったから(特に妹達とテンションのギャップを感じてしまうだろう。それがイヤ)、数回家のあるブロックを回った)

暦(いつまでもこんな反抗期の中学生みたいなことはできないな)

暦(かわいい妹達が待つ家だ。さあ、その門をくぐり……)

真宵「おや。はわわ木さんじゃないですか」

暦「……僕は常に涙目でおどおどしたアニメヒロインじゃない。阿良々木だ。出来損ないの萌えキャラといわれた僕だが真面目にキャスト変更を考えるか」

真宵「失礼。かみむめも」

暦「言えてないっ!?」

真宵「再び失礼。お名前を失念してしまって」

暦「ならばもう一度言うが、僕の名前は阿良々木だ。表札にも書いてあるだろ」

真宵「えーなになに。C、U、B、E。キューブさん。外国の方であられましたか」

暦「そっちは僕ん家の車だ!」

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  |    /     ノ   /l: : :| ̄ ̄ヽ.(j:::>〃 f::(_ハ`     V:: ::リ ,'  " :r´ |       |  | |   /
  \.  ┬    __/  |: ::/ ロ   | |:;∧ヽ弋::.:リ      ‐- "  ハ l' ,ノ       |  ‐′  |
  ,ノ'\. ┴   /       |: ::|  リ  | |´ ∧ ゛-‐  '     /l// ,r|::|'´         |   ̄|   /
| ̄   | ┬   /      |:::/  コ  |. ヽ、_,ハ /// ,-─v、    ,.イ‐|ノ─-、      〈 _ ̄  /__
| ロ  .| ┴  .|       |::|  ン   |.  /:/ ヽ、   ヽ::_,ノ   / .|ニ、‐- 、_  ̄`ー-l| __,ノ  \  `ヽ
| リ   | エ   | /´,〉.    |:|  ! !  /,r‐'〈:/ ̄  >:...、 _  ..::´,'  ヽ/   ,〉─r-、_|:| //   /
| コ   |    | |,ィ´ ̄,ノ |:|____//     .,.イ ̄´〈:: `ヽ  /  ,/ _/:|  |  |:| ゚ ゚  /:|
| ン   | / / / ノ ,∠´_ |: : : : :|/|    .::/l 〈_  \ `   /   〉:::|  |  |   |::\_/::::|
| !!   | ゚ ゚ / / '´ ___`>: :: ::|  |  ::/  :|   〈     \ /   /::::::|  | /  |: : : : ::|l:::::|


暦「なんでこのタイミングでお前なんだ?」

真宵「特定の条件が揃ったようでしたので。エンカウント率が高くなるんですよ」

暦「FF7のチョコボみたいなやつだな」

暦(まあ、家に帰るのを渋っていたしね)

真宵「ここが阿良々木さんのお宅ですか。へー」

暦「ああ、お前家は初めて見たのか」

真宵「はい。ここで寝食をとってるんですねー」

暦「その言い方だとここが仮の住まいみたいだ」

真宵「え、だってニートは許さんって、阿良々木さん追い出されたんでしょう?」

暦「僕はまだ高校生だよ!」

真宵「けど、私が出てきちゃいましたからね。ニートは違うにしても、どうしました、また妹さんに虐待されましたか? ストレスは適度に発散してください。最近は家族殺しも多いですからね」

暦「僕に現代社会の闇を背負わせるは控えていただきたい」

暦(吸血鬼だから、闇の世界の住人ではあるけど)

     j。 。゙L゙i     rニ二`ヽ.     /.::::::::::::::::::::::::::::::::ハ   . -‐…‐-. .
 r-=、 l≦ ノ6)_   l_,.、ヾ;r、゙t..  イ:::从::ゝ:::::::::::::::::::,>:'": : : : : : : : : : :`ヽ
 `゙ゝヽ、`ー! ノ::::::`ヽ、 L、゚゙ tノ`ゾ`ー从リヒハ:::::::::::::ー=彡. : : : : : : : : : : : : : : :ハ

  にー `ヾヽ'":::::::::::: ィ"^゙iフ  _,,ノ ,  く ノハノハ::// . : : : : : : : : : : : : : : : : : :.
 ,.、 `~iヽ、. `~`''"´ ゙t (,, ̄, frノ  人Yヽ   ///: !: : :从: : : : : i: : : : : : : :.}
 ゝヽ、__l::::ヽ`iー- '''"´゙i, ヽ ._     ハ二∠..ィ'/ 从: :/≦\: : ハ: : :i : : : ノ  キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
 W..,,」:::::::::,->ヽi''"´::::ノ-ゝ / ヽ }_  /  {∧ハ/厶イヒV´ じ'ヽ X: : : : ハ: : :ト、
    ̄r==ミ__ィ'{-‐ニ二...,i _ヽソー'〉ノ V 〈 /ヽ/ iく  `=''厶ィノjノ ノ: :N \
    lミ、  / f´  r'';;;;;; | ーく ノ   ヽ 〈,/  _∧、_      , }: :N厂 ̄ \
    ! ヾ .il  l  l;;;;;;;;  |  ノ〈_    ∧ /  「 ヽ ∨__)     イ ノ⌒/     ヽ
.    l   ハ. l  l;;;;; _,,.: ヽ  / \‐一' く_/ー-  ゝニ .<\,/ //     ハ
   人 ヾニ゙i ヽ.l  yt,;ヽ. ゙vV/    \_,∠./    ,xく`ヽ/`{トニ二.ィ∨ _      i

真宵「案外、普通のお宅でしたね」

暦「もはや僕と漫才的に事実婚関係にあるお前の期待に沿えなかったようで、悪かったな」

真宵「いえ、今日からここでお世話になるのかと思うと、胸が熱くなります」

暦「ほう。えらく殊勝じゃないか」

真宵「はい。これまで厳しい花嫁修行に耐えてきた甲斐があるというものです」

暦「ああ。今までよくついてきてくれたな」

真宵「明日からさっそく阿良々木一家にパラサイトさせていただきます」

暦「嫁に来たんじゃないのかよ!」

真宵「ほらー。私、蝸牛じゃないですかー。新しい宿がちょうど欲しかったんですよねー」

暦「それはヤドカリだ」

真宵「リュックサックに一式詰めてきたんですけどね」

暦「そういえば、お前のそのバカでっかいリュックに何入ってんだ? 生前そのままに宿泊セットとか?」

真宵「あー……」

暦(しまった。これは失言だったか)

真宵「今はPS3とXboxが入ってますね。あとソフトが10本ほど」

暦「どこに遊びに行く気だよ! それでそんなパンパンなのかよ!」

真宵「ほら、昔田舎に遊びに行くときゲームがなくて退屈じゃなかったですか? 阿良々木さんのお宅もきっとそうだろうと思って」

暦「退屈で悪かったな!」

暦(ゲーム少しやるけどその二つのハードは持ってない)

暦「八九寺、お前いつから家族に失礼を言う子になっちゃったんだ? お前がいくら僕に好き放題暴言を吐いても、そこは譲らないところだと思ってたよ」

真宵「ふむ。今シリーズ一冊目を読み返すと、私、語尾に『っ』が必ず付いててやたらハキハキ喋る子なんですよね。これはCV.野中藍といわれても仕方ない」

暦「な、なんだその『あの頃の私は』みたいな冷静な回想は……まるで4年は経ってるみたいな……」

真宵「まあ、私もね、年取ったんですよ。あの頃はアニメ化するなんて思ってませんでしたねえ」

暦「やだー! 八九寺から年取ったとか聞きたくないー!」

八九寺「なのでこれは老婆心から言うんですが、荒巻さん」

暦「僕は公安9課のサル親父じゃない。阿良々木だ」

真宵「失礼。噛みました」

暦「違う。わざとだ」

真宵「歯磨きしました?」

暦「おいっすぅ! まだだよ!」

真宵「歯磨きは歯周病予防にもなるし、放っておくと臭いの元ですよ」

暦「ああ。歯磨きは大事だな」

真宵「おや、吸血鬼の牙がありませんね? 虫歯になって抜いちゃいました?」

暦「牙頼りなさすぎだろ!」

暦(最強の怪異の牙なのに!)

暦「牙なくなっちゃったんだよ。前はあったけどね」

真宵「今の絶対にキリッて入ってますよね。うざいなー」

暦(どうも……女性陣は僕がちょっとでも威張ると叩く傾向にあるらしい)

暦「で、ロリババ様が老婆心に何を教えてくれるんですか」

真宵「なんか風の谷にいそうですね。まあ、あれですよ。先ほどの家族への失礼の話ですけどね。人間感情があるんだから、思うのは仕方ないってことですよ」

暦「ふむ」

真宵「愛だけが家族関係をつなぐものじゃないってことですよ。ムカつくことも不満に思うこともあるでしょう」

暦(確かに。妹のことわ考えれば頷くほかない僕である)

真宵「田舎にゲームがないのが不満でも、田舎に罪はないと私は思います。対立は起こるかもしれませんが、人間関係の多くはトレードですからね」

暦「悟りすぎだろ、小学生」

真宵「まあ、伊達に昭和生まれじゃないですよ。ていうか実際は私が小学生のころはこんなハイスペックなゲームはありませんでしたけどね。ナゴヤ撃ちはよくやりましたが」

暦「お前の口からリアルな昭和は聞きたくねえ!」

暦(八九寺真宵、ロリババア説)

真宵「新しいもの好きでして。連日通いつめたものです」

暦「幽霊のくせに俗っぽいやだなー。いや、俗世に未練があるから幽霊なのか?」

真宵「そうそう。新しいものといえば、とうとう家に光回線が入ったんですよ」

暦「それはやや遅れてるぞ」

真宵「いやぁ、スムーズにネットが出来るっていいですねー。私、早いの好きなんですよ」

暦「あ、そ、そう? そうなんだ、へー」

真宵「母は三擦り半はやめておけと口を酸っぱくして言っていましたが」

暦「うるせえよ!」

真宵「で、毎日ネット漬けの日々なんですが。昼夜逆転しそうですよ~」

暦「それは幽霊的にむしろ正しくないか?」

真宵「本当に新しい可能性を感じますね。ネットは広大です。ソーシャル・ネットワーク!」

暦「僕としては幼女が昼夜逆転するほどネット中毒になっているのは憂慮すべき事態だな」

真宵「そうでしょうか。今時小学生のネット使いなんてザラにいますよ。阿良々木さん、Facebookって知ってます?」

暦「くっ……これがリテラシー格差か」

真宵「このあいだ阿良々木さんの名前でググッてみたんですよ」

暦「おいおい、怖いことしてくれるなよ」

真宵「そしたらウィキペディアにお名前が載っていたんですよ。よっ、有名人!」

暦「えー本当かよー(個人情報が漏洩している恐れはあるが、ちょっと嬉しいぞ!)」

真宵「えっとですね、『化物語』っていうアダルト・ゲームの主人公なんだそうです」

暦「それはアンサイクロペディアのほうだ!」

真宵「いやはや驚きました。阿良々木さんはギャルゲーの主人公っぽいと評価した私ですが、で、どうなんです? 誰のルートで行くんでしょう」

暦「ルートもなにも。僕は戦場ヶ原とつきあってるんだぞ」

真宵「確かにガハラさん呼ばわりするほど進めてますもんね。でも、案外最後に選ぶのは忍さんなんじゃないかと思うんですが。リンツでしょ、あの人」

暦「たっ、確かに最近喋ってくれるようになったし、フラグ立ててるような……」

暦(ていうか、設定的に忍の可能性は大有りだ)

真宵「うーん。でもせっかくここまで築き上げた阿良々木ハーレムから一人に絞るというのも惜しいですよね。YUーNOみたいにザッピングを取り入れましょうか」

暦「えっ、それアリなのか!?」

暦(YUーNOはヒロインを平行して攻略できるシステムがあって、最終的に父親探しのゴールを目指すんだけど。これからまた新キャラ登場か!?)

真宵「最近はけっこうハーレムでもOKなとこあるじゃないですか。To Loveるとか、アマガミのアニメとか」

暦「後者はまた違う気もするが。だけど、えー、いいのかなぁ、そんな贅沢しちゃって~」

真宵「イヤらしい顔ですねー。みなさんにも見てもらいたいです」



暦(待てよ。ハーレムってことは、八九寺も立派な攻略対象だってことだよな)

暦(そうだ! だから僕がこれから八九寺の胸や尻や足を揉みしだいても物語上まったく問題ないということだ!)

暦(規制なんて知ったことじゃないぜ! これからは目次に『登場人物は18歳以上です』の注意書が貼られるんだからなぁ)

暦(さて。そうと決まればさっそく)

真宵「?」

暦(カカカカッ。純粋無垢な振りをして、そのロリバディで僕を誘惑するお前が悪いのさカワイコちゃん)

暦(手始めに、正面から抱き締めて、そのまま尻にマイハンドを沈めてやるとするか)

暦(ターゲット、ロックオン。ヴァーチェ、目標を拘束する)

暦(行くぞっ!)

暦「はっちく」

火憐「どーーーん!!」

暦「グフッ!?」

暦(なんだっ!? バカなっ!? 一体何がっ!?)

火憐「よう、家の前でぶつぶつと独り言をつぶやく精神病の兄貴よ! この火憐様が来たからにはもう砂糖の過剰摂取は控えてもらうぜっ!」

暦「不意討ちに鉄山鋼とは卑怯な! だか悲しいかな、お前言ってるのは成人病だっ!」

暦(現在は生活習慣病。ん。独り言をぶつぶつ? そうか、火憐には見えてないんだったな)

火憐「へっ、そんな小さなこと気にしてるからチビなんだぜ」

暦「常識と僕の身長は関係ねえ!」

火憐「兄ちゃん、最近兄ちゃんと話すこと多いけど、あたしはそれはいいことだと思ってるんだ。せっかく兄妹関係がうまくいきそうなのに兄ちゃんが発狂しちまったら美談が台無しだぜ」

暦「お前が余計なことをしなければ、僕は僕の輝かしい物語を始められたんだ! それをっ!」

火憐「争いは、避けられない、か……」

暦「そうだ。すべてはシナリオ通り」

火憐「その自分勝手な計画もろとも修正してやるーっ!」

暦「やってみるがいい! この兄に対してッ!」

暦(結果から言うと、僕が勝った。一応、兄の体裁は守れたわけです。でも去年の僕だったら絶対に勝利の栄光は向こうのものだったろう)

火憐「ちくしょう……まさかあたしの尻にシャイニングフィンガーを繰り出すとは」

暦「そこまではしてねえよ!」

暦(ちなみに、戦闘中八九寺は管理人さん見たいに『がんばってくださいね』と言ってくれることは当然なく)

暦(むしろ、僕がウィンした瞬間舌打ちしたくらいだった)

暦(仲間だと思ってたら敵だった、カテジナさんって感じ)

暦「火憐ちゃん。断っておくが、僕はまともだ」

暦(ん? なんで『ねーよ』って声が聞こえるんだろう。忍が呟いたのかな)

火憐「それはないぜ。兄ちゃん。今さらあの歯磨きの夜を忘れたとは言わせないぜ」

暦「グッ!? あの夜は……どうかしてたんだ」

火憐「へへっ。そっちが忘れても、こっちにはあの時の傷が残ってるんだぜ……」

火憐「ほへへほいいほあえへひうはっ!」

暦(と言って口に指を突っ込み、内を見せる火憐ちゃん)

暦(ホッチキスの傷がなくなっている、なんてことはもちろんなく)

暦(歯茎に一ヶ所、他よりも濃い赤色になったところがある)

暦(この間、耐久歯磨きプレイをしていた際に、やりすぎて歯茎に傷をつけてしまったのだ)

暦(しかし、度を越えたマゾである火憐はその瞬間、最高の声を聴かせてくれたのは言うまでもない)

火憐「こんなことされたら、誰だって思うぜ。この人は、狂っている」

暦「火憐ちゃん、そこまで言うか。所詮、誰一人この僕の強さにはついてこれないというわけだ」

暦(もう、一人で国盗り始めようかな)

火憐「もし仲間に入れてもらえるなら、十本刀の席は空けておいてくれ」

暦「まあいいだろう」

火憐「方治かっけぇよなぁ……」

暦「いや、お前に頭脳派はどう考えても無理だろ」

暦(こいつは安慈だろ。二重の極みとかリアルにできそうだし)

暦(ちなみに、僕が好きなのは宇水さんだ。シンパシーを覚えてしまう)

火憐「あー。体動かしたら腹減ったー。兄ちゃん、早く家入って、飯にしようぜ」

暦「そうだな。僕は一体いつまで玄関前にいるんだ」

火憐「ただいまー」

月火「あれ、お兄ちゃん帰ってきちゃったの?」

暦「その言い方は地味に傷つくぞ……」

暦(あ、そうだ)

暦「おい、八九寺」

暦(別れの挨拶をと思ったら、もうスタスタと行っちまってる……)

暦「おい!」

真宵「なんですかぁ、阿良々木さん、まだ私に手を出すんですかー?」

暦「人を常習犯みたいに言うな。何も言わずに帰ろうとするなよ。まあ、お茶でもというわけにはいかないだろうけど」

真宵「これは失礼。それでは阿良々木さん」


真宵「さようなら」

暦(夕食も終わり、便も快調)

暦「なんか急に日常だなー」

火憐「うおっ!? な、なんだ兄ちゃんか」

暦「……」

暦(自分のパンツを写メってやがる……)

暦(しかもあれは洗濯カゴにあった使用済みのやつじゃないか?)

暦(馬鹿な妹だとは思っていたが、ここまでとは。人のこと言えねえじゃねえか)

暦(もしかして彼氏にメールで送るつもりじゃなかろうな。その場合、彼氏を抹殺し携帯電話及び所持しているだろうパソコン、USBその他を破壊する必要がある)

暦「おい、ウンコした手洗うからどけよ」

火憐「きたねーなー。エンガチョ!」

暦「なんなんだ、あのでっかいのは」

月火「お兄ちゃんって何なの?」

暦「僕はお前と血が同じ年長者だよ」

月火「あれだよね、なんでお兄ちゃんをお兄ちゃんって呼ばなきゃいけないんだろ。外国だと兄弟とかでも名前で呼ぶじゃん。日本のこの習慣は無意識のうちに家族内封建制を作ってるよ。プラチナむかつく」

暦「まあ、民主主義に倣えばお前の言い分もわからなけはない」

月火「うちはこれからリベラルな兄妹関係を築くために名前で呼ぶことにしようよ。はい、はじめー」

暦「月火ちゃん」

月火「なに、ヨミー」

暦「なんだその幽遊白書に出てきそうな名前は!?」

月火「外国だとエリザベスをベスって呼んだりするじゃん。今からヨミーけってーい」

暦「ビミョ~……」

火憐「兄ちゃん、兄ちゃん」

暦「あ? なんだよ、これから僕、家の中だとヨミーだぞ」

火憐「なんだそれ?」

月火「この変態をこれ以上のさばらせないための秘策」

暦「おい僕が変態とはどういうことだ」

火憐「ますますわからん。兄ちゃん、あのさ」

暦「は?」

火憐「あ、あ、あたしとミッドナイトわんわんしようぜっ!」

暦「……なんだって?」

火憐「あ、もういい。うん。そんじゃ」

暦「なんだあいつは」

月火「気を遣われてるのに気づかないかなーこの愚か者は」

暦「気を遣う? ああいうのは気が狂うっていうんだ」

月火「ヨミーさぁ、さっき玄関で話してたちっちゃい子、誰?」

暦「え」

暦(さっきのって……八九寺のことか)

暦(月火には見えてたのか? 火憐は見えなかったけど)

暦「ちっちゃい子?」

月火「ツインテールで大きなリュック背負った女の子と喋ってたじゃん。とうとう誘拐してきたのかと思って戦慄したよ、私」

暦(完璧に見えてるな、こりゃ。まあ、当然、か)

月火「……もしかして、あれが前に言ってた彼女?」

暦「どいつもこいつも。僕をそんなにロリコンにしたいのか」

暦(僕は、八九寺が好きなのであって、決して小学生が好きなわけではない)

暦(だいたいさ、無垢な小学生を襲うロリコンとか言うけど、実際の小学生ってかなりむかつくと思うんだよな。うるさいし、我が儘だし。現実が見えてないのは連中じゃないのかね。おっと脱線)

暦「あれはだな、八九寺真宵ちゃんといって近所をよく歩き回ってる子なんだが、とても仲良くさせてもらってる。友達なんだ」

月火「え、もしかして素で言ってんの? めちゃくちゃ怖いんだけど」

暦(むう)

暦「ハハハ、無理解とはこのことだな。子供はいいぞー。いつも僕のイマジネーションにインスパイアしてくれるんだ」

暦(会話だけなら、ぶっちゃけ羽川よりも一緒にいて楽しいからな)

月火「お兄ちゃん、やっぱり病院いこうか」

暦(素で言っている……ヨミーはどうしたヨミーは)

暦「いやいや、何も捕って食おうっていうんじゃないぜ。対等な友人として付き合っている。宮崎駿だってきっと同調してくれるぞ」

月火「宮崎監督みたいな人とお兄ちゃんみたいなただの変態を並べても、比較にならないよ」

暦「お前は馬鹿なんですねぇー。少女の素晴らしさも理解できないとは」

月火「うわぁ……」

火憐「兄ちゃん兄ちゃん」

暦「また来たのか」

月火「火憐ちゃん、近づかないほうがいいよー。歯ブラシで処女膜貫通されちゃうよー」

暦「いくら僕でもそこはわきまえているつもりなんだが」

暦(さすがに妹の処女はねぇ)

火憐「いや、それよりさ。ちょ、いい? いい?」

暦「なんだよ、今度は」

火憐「びっくりするほどユートピア! びっくりするほどユートピア!」

暦(とあらん限りの声を出しながら、火憐ちゃんが謎の踊りを始めた)

暦(かれんは、ふしぎなおどりをはじめた!というウィンドウが表示されそうだ)

暦(しかし、効果は何もなく、ただリビングにいる僕達三人を沈黙が覆った)

暦「……どうかしたのか?」

火憐「うーん……ちょっと失敗したなぁ~」

暦(再び部屋に帰る火憐。あれか、歩かなくてもエンカウントするシステムになったのか?)

暦「月火ちゃん、僕よりも火憐ちゃんを早く病院に連れて行くべきだ。とうとう相楽左之助並の頭脳になったらしい」

月火「斬左って剣心と闘う前にわざわざ京都まで行って調査してるじゃん。あれ、ほとんどホームズだよ。頭は悪くないんだよ」

暦(どうやら後期のアホキャラには目を瞑っているらしい。月火ちゃんの部屋に左之×剣心とかあるんだろうか……)

月火「あ、むしろ斎藤×左之だね。この場合は左之は阿呆じゃないとね。ニヒルガイにお馬鹿が落とされちゃうっていうのに萌えるんだよー」

暦「独白を読むな! 実際にお前のBL嗜好なんて知りたくないよ!」

暦(腐ってただけでもショックなのに!)

月火「ちなみに、幽白だと木戸×ドクター」

暦「この2011年にマイノリティもいいとこだよ!」

月火「あの新房演出で二人にビビッ!ときたをだよねー」

暦「そういう意図の演出じゃなかったぞ!? いや、もうBLはいいんだよ! 火憐ちゃんだよ火憐ちゃん!」

暦(このまま腐女子100%中100%になられても困る)

月火「火憐ちゃん、たぶん安価やってるんじゃないかなぁ」

暦「安価?」

月火「vipだよ、vip。2ちゃんねる。スレ立ててみんなに行動を指示してもらってるんだよ」

暦「2ちゃんねるはわかるけど、スレってなんだ?」

暦(友達のいなかった(泣)僕だが、2ちゃんねるには行かなかった。どうも誹謗中傷などのネットの暗黒文化は苦手なのだ)

月火「きっと、『兄が精神を病んでるんだが』ってかんじのスレタイで立ててるよ」

暦(そう言って、月火は携帯でiモードに繋ぎ、そのvipとやらのページを開いた)

月火「ほら、あったよ」

暦(『兄が精神を病んでるんだが』……ズバリじゃねえか)

月火「けっこう伸びてるなぁ」

暦「パンツうp……月火ちゃん、うpって何?」

月火「アップ。画像貼れってこと」

暦「……そういえばあいつ、さっき自分のパンツ写メってたな」

月火「あ、火憐ちゃんのパンツだ。あらーご丁寧にシミがよく見えるように撮ってる」

暦「これってさ、不特定多数が見てるわけだろ?」

月火「そうだね。火憐ちゃんの黄色のシミ付きパンツが白日ならぬネットの元に晒されているんだよ」

暦「たいへんだ。僕は今から日本人を手当たり次第殺さないといけなくなった」

暦(いや、世界中かな。忍に血を吸ってもらわなきゃ。うーん、朝までに帰ってこれるかなー)

月火「お、お兄ちゃん? ゼルエル戦の初号機みたいな顔になってるよ?」

暦「ハァーッ、ハァーッ」

月火「だ、大丈夫大丈夫。顔出しはしてないから特定されないし、こんなのよくあるデザインだよ。火憐ちゃん以外にもこれつけてる人いっぱいいるって」

暦「ウオオオオォォーーーンン」

月火「ほ、ほらっ、幕張に出てくるちえちゃんが同じパンツで、ここにうpしてるとしたらどう?」

暦「……」

月火「ね? 大丈夫でしょ」

暦「げろげろげろげろげろげろげろげろげろげろ」

火憐「兄ちゃん兄ちゃん。あ? なんでゲロまみれになってんだ?」

暦「お前……幕張の鈴木智恵子のパンツ見たら、どう思う?」

火憐「げろげろげろげろげろげろげろげろげろげろ」

月火「汚いなぁー」

暦(『火憐ちゃんなりに心配だったんでしょー』、とさっき月火は言った)

暦(火憐は、『兄貴を助けたい。知恵を貸してくれ』とスレに書いていた)

暦(兄をなんとか救いたい、救い出したい)

暦(そのためなら自分のパンツの一枚や二枚世間に晒すことになろうとかまうものか)

暦(まったく、足りない頭使って、やるのがふしぎなおどりかよ。カッコよすぎて涙が出ちゃうぜ。ドMはすげえよ)

暦(……言っとくけど、これは皮肉で言ってるんだからね。変な勘違いしないでよね)

暦「あーひどいものを想像してしまった……うっ。また」

暦(なんとかこらえる。せっかく今風呂に入ってきたのが台無しになるからな。ちなみに現在火憐が入浴中)

暦「お前人の部屋に勝手に入るなよー」

月火「うんー」

暦「それに、勝手に漫画読むな」

月火「うんー」

暦「ったく、何読んで」

暦(隠しておいたはずの、エロ本だった)

暦「これこそ何勝手に読んでるんだよっ!」

月火「お兄ちゃんさー、鳴子ハナハル特集号もいいけど、エロ本が二次元ばっかりというのも、妹としてはいささか心配なんだよ」

暦「そ、そんなわけないっ! フィフティ・フィフティの理想的なバランス配分のはずだっ!」

月火「お兄ちゃん、女子が彼氏の部屋で見つけて引いたものNo.1は萌え系イラストだよ。快楽天なんて論外だよ」

暦「腐女子のお前に言われたくないっ! 人の趣味嗜好の自由は保障されるべきだぁっ!」

暦(でも……ガハラさんはこういうの許容範囲内なのかな。想定の範囲内ではありそうだけど)

月火「前から不思議なんだけどさー。こういうエロ本で4Pとか始まったときに、女子同士の絡みはあるのに、なんで男子は絡まないんだろう」

暦「それは、本のターゲットがヘテロの男だからじゃないのか」

暦(けど、こういう話を中2の妹としていいのかなぁ。兄貴のベッドでエロ本読む妹ってどうなんだろう)

暦「おい、ベッドからどけよたれぱんだ」

月火「うんー」

暦「どけよ、スライム肌」

月火「うんー」

暦「ぷにぷにぷに」

月火「うざーい」

暦「早くベッドから降りないとおっぱい揉むぞ」

月火「殺すぞ」

暦(相変わらずこいつ、家っ人の目気にしないのな。浴衣めくれてパンツ丸見えだぞ。白)

月火「お兄ちゃん、最近臭ってきたよ」

暦「突然言われるとドキッとするじゃないか!」

暦(まさか!? 加齢臭ってやつか!? おい忍、どうなってんだよっ!?)

暦(あーやだよー臭いとかもうマジ最悪だよー。香水買ってこようかしら)

月火「すんすん。うはっ、枕臭う」

暦「臭いフェチかお前」

月火「うおおーっ! くせーっ! お兄ちゃんくせーっ!)

暦(僕の枕にぐりぐりと顔を埋める月火。正直、こんな妹、萌えません)

暦(うーん、ゲームだと姉とか妹とかあるけど、こいつとか火憐も攻略対象なのかな。でも、今までフラグらしいフラグもなかったし、いたって普通の兄妹やってるし)

暦(月火はというと、まだ僕のベッドを占領していて、猫みたいにゴロゴロしている。両儀式(映画のね)みたいなやつだ)

暦「……」

月火「……」

暦(ばふっ、と布団を被り隠れてしまった)

暦「おらあああ! 出てこいこいつー!」

月火「ぎゃあ! ちょっ、ばかっ、乗っかるなっ、重っ、ぐえっ」

暦(目標、完全に沈黙……)

暦「すごい。使徒を倒したぞ」

暦(布団を捲ると月火が死んだ振りをしている。ちゃんと白目を剥いて、口から舌が出ている。なかなかの役者だ)

暦(月火の顔から絶望的な最後が容易に想像できる。絶望、死に至る病、そして、僕は月火の胸を触った)

月火「ぎゃああああー!」

暦「ああ、ダミーだったのか」

暦(だから、僕は徹底的にこの目標を倒すことにした)

暦「い~つまでも~たえる~ことなく~」

月火「ぎゃああああー! ぎゃああああー!」

暦「と~もだちで~いよう~」

月火「妹に馬乗りになって何をしている! やめんか! ちょ!」

暦「きょう~のひは~さよ~なら~」

月火「止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれぇ……ガクッ」

暦「ま~た~あう~ひまで~」

月火「殺してやる……殺してやる……殺してやる……」

月火「もうお兄ちゃん、妹のおっぱい触り過ぎっ!」

暦「それ、既にお前の決めせるふだよな。よかったな、もうキャラ薄いとか心配しなくてすむぞ」

月火「どんなキャラよ! 決めせるふってなんだよ!」

暦「そのままだろ。自分をキメるんだよ。もう一度言ってみ?」

月火「誰が言うか!」

暦「ぷよぷよ」

月火「もうお兄ちゃん、妹のおっぱい触り過ぎっ!」

暦(―――月火はキメ顔でそう言った)

暦「ほらな。ビシッと決まったろ? ただでさえお前ふにゃふにゃしてんだから決めせるふくらいしないとな~」

月火「どこが決まっている! 私のキャラが誤解されるだけだ!」

暦(恐らく誤解どころか、正解に伝わったと思う。月火は、馬鹿だった。二回も言っちゃってる辺りがもう馬鹿。おかしい、どうしてこうなった)

暦(僕の妹がこんな馬鹿なわけがない)

暦「ところで、インなんとかさん」

月火「私は井口裕香さんが声を当ててるシスターじゃない」

暦「失礼。噛みました」

月火「私はお兄ちゃんの犯罪を垣間見た」

暦(むう。返してくるとは。ただの馬鹿じゃないらしい)

暦「はあ、何のことだよ」

月火「今、私のおっぱいを108回触ったこと。ファーストキス強奪など以前からの理不尽」

暦(数えていたのか。しかし、108回触っても煩悩が捨てられないなんて、やっぱり妹はノーカンなんだな)

暦「まあ、確かに触った気もする、ような?」

月火「とぼけるんじゃない! 私と火憐ちゃんの分を合わせて損害賠償を要求する!」

暦(いきなり裁判沙汰になった。そんなに大物を触ったつもりはないのに、大事になってしまった)

暦「子供のくせに生意気だなー。損害賠償だぁ? いくらだよ」

月火「5千億兆円」

暦「……」

暦(あー。まあ、ね。中学生だし、普段そんな大金見たことあるわけないし。なんていうか)

暦「やっぱり、馬鹿だな、月火ちゃん」

月火「なっ!?」

きょう~のひは~さよ~なら~
また~あう~ひまで~

猫(黒)、よみ、まし、たー
おもし、ろかた、です

暦(月火ちゃんは『汗かいた、汗かいた』と言いながら風呂へ。別に前レスとの間に何かあったわけではないのであしからず)

暦(月火ちゃんは代謝がいいのだ。あー僕のベッドちょっとシミになっちゃってるじゃないかー)

暦(世話のやける妹め。仕方ない、僕が舐めとってやるか)

火憐「兄ちゃん、兄ちゃっ……何やってるんだ?」

暦「何って、月火ちゃんの汗を舐めとってるんだけど」

火憐「いや、ナチュラルに言われても」

暦「塩分3%だな」

火憐「え、月火ちゃんの血って海水なの!?」

暦「ここで月火味の塩むすびが作りたい」

火憐「月火ちゃんの縁が結べないよ!」

暦「縁結びねぇ。あいつもいつかは嫁に行っちゃうのかー」

暦(火憐ちゃんも月火ちゃんも、僕と結婚するって言ってたのになぁ)

火憐「安心しろ、兄ちゃん。兄ちゃんの面倒はあたしが見てやる」

暦「おお、頼もしいな火憐ちゃん。それって僕と結婚するってこと」

火憐「兄ちゃんが孤独死しないように、毎日オムツを交換しに来てやるからな」

暦「僕は結婚できないのか!?」

暦(ハーレムはあるのに孤独な人生が待ってるなんて!)

火憐「これが本当の尻拭いさ」

暦「うるせえ! ちくしょう、絶対に会話の楽しい嫁と結婚してやるからな!」

暦(八九寺とかな!)

火憐「そんなこと言う前に兄ちゃん、彼女つくれよ」

暦「お前には言ってなかったか。僕、彼女いるから(ドヤッ」

火憐「……」

暦(口をあんぐり開ける火憐ちゃん。ふはは、これでようやく兄の立場を理解できただろう)

火憐「ああ、ラブプラスね」

暦「僕の彼女はゲームじゃねえよ」

火憐「あ、あー、びっくりしたー。ラプラスか」

暦「そいつの彼氏って僕どんだけメタよ!」

暦(ラプラスの悪魔。あー説明は省く! ていうか無理!)

火憐「おいおい、冗談きついぜ兄ちゃん。とうとう二次と三次の区別がつかなくなったのか」

暦「そこまで言うか。僕がそんなに甲斐性ない男だと」

火憐「てか、兄ちゃんに女とか無理だろ」

暦「おい!」

暦「お前、言ってること矛盾してるぞ」

火憐「いや、ほら、彼女以前に友達もできないくせにあたし達にはちょっかい出す兄ちゃんだから、将来的にあたし達が世話するのかと思ってたから……」

暦「本気で言わないでくれ。僕は今ショックだ」

暦(妹達からそういう評価だったとは……)

火憐「お年玉は毎年、暦通帳に入れてたんだぜ。貯めて、後で兄ちゃんのために使おうと思って……」

暦「そこまで準備してるのかよ!」

暦(僕が妹生活をするための、妹から送られる年金。妹保障)

火憐「確かに兄ちゃんと結婚するとか子供じみたこと言ったこともあったけどさ」

暦「子供じみてますか」

暦(今は大人だってか。クソッ、あんなにかわいかったのに。大人になんてならなきゃいいのに)

火憐「けど、あたしと月火ちゃんは気づいたわけだ。あ、兄ちゃんと結婚無理だわー、って」

暦「スレちまいやがって」

火憐「で、その頃あたしらがリア充化していく横で、兄ちゃんはどんどん非リア充化していった。家に来た妹の友達と遊ぶ以外は、見事にぼっちだった。その頃、理由を聞いたらなんて答えたっけ?」

暦「人間強度が、下がるから」

火憐「痛いよな。目に入れても痛くないどころか、目も当てられない兄ちゃんだった」

暦(なんか……僕、すごいダメなやつみたいじゃね?)

火憐「このままあたしらが見捨てたら兄ちゃんは生きていけなくなってしまう。そこで、あたしと月火ちゃんは暦通帳を作った」

火憐「あたしらが直接支えてやることはできなくなるかもしれない。そんなときのために、お金を貯めようと思いついた。お小遣いから少しずつ、お駄賃から少しずつ、お年玉から……」

火憐「とまあ、こういうわけで、兄ちゃんの生活はある程度保障されてるんだぜ」

暦「泣ける話だけど、兄ちゃん、複雑だよ……」

暦(妹にそこまでされる僕って……忍野が聴いたら笑い転げるだろう)

暦(火憐ちゃんがそこまでシステマティックに考えられるわけないから、きっと発案は月火ちゃんだろうな)

火憐「今ではけっこうな額になったんだぜぇ、暦通帳」

暦「ちなみにどれくらい?」

火憐「うーん、まあ贅沢しなけりゃ十五年は生きていけるんじゃねーか?」

暦「うわっ、リアルな数字!」

暦「繰り返すが、兄ちゃんには彼女がいる。お前たちに心配されるほど落ちぶれてもいねーよ」

火憐「もしかして、彼女って、神原先輩か?」

暦「神原ぅ?」

暦(まあ、あいつ僕のこと大好きだし、僕も好きだが)

暦「あいつじゃねー」

火憐「ちぇっ、なぁーんだ」

暦「ああ、お前神原に憧れてるんだったな」

火憐「神原先輩と、姉妹になれる、と思ったのになぁ」

暦(なんか今頬を赤くした火憐がスール的なことを言った気がするが、スルーだ)

火憐「あ、わかったわかった! 翼さんだ! あたりだろー」

暦「羽川……」

暦(うっ……変なこと思い出した……)

火憐「翼さんが兄ちゃんと結婚したらさー、あたし嬉しいぜ。たぶん月火ちゃんもそう言うぜ」

暦(どうやら委員長だけでなく、お嫁さんとしても一流らしい。お嫁さんにしたいキャラ第一位、羽川翼。いや、知らんけど)

暦「羽川、じゃあない」

火憐「えー。じゃあ、なにか、兄ちゃん空気とつきあってんのか?」

暦「他の女子だっつーんだよっ!」

暦(こらっ! 誰だ最近のガハラさんが空気ヒロインだと言ったのは!)

風呂ロローーンwwwwwwwww

火憐「本当かよ……これは今年最初の、いや人生最後のサプライズだぜ」

暦「ねえ、馬鹿なの? 死ぬの?」

暦(僕に彼女ができてそんなに驚天動地か)

暦「ちなみに月火ちゃんにはもう言った」

火憐「なに!? あたしだけ仲間外れだったのか!」

暦「まだまだ甘いな、ファイアーシスターズの実戦担当よ」

火憐「おーい、月火ちゃーん!」

暦(とでっかい妹はちっちゃい妹のところへドカドカと音を立てながら向かった。あーやっと静かになった)

忍「……」

暦(と思ったら今度はこいつか。名前通り僕の影に潜んでりゃいいのに)

忍「お前様、ミスタードーナツは?」

暦「ミスタードーナツ?」

暦(そういえば買いに行きましたね。しかし、はて、ドーナツは何処へ?)

暦「あ、羽川と会ったあと、公園に置いてきちゃった」

忍「……すまんが、よく聞こえんかった」

暦「お、置いてきちゃった」

忍「……」

暦「失礼イタ飯ました! あ、噛みました! えへっ!」

忍「このたわけがぁーっ!!」

忍「詫びにイタ飯を食わせるならともかくよくもまあつまらぬ洒落をぉーっ!!」

暦「し、忍の……新しい能力ッッ!!」

暦(別にバイツァ・ダストが発動したわけではなく(それならそれで解決だが)、忍が僕にスパイラルパイルドライバーを決めた)

暦(たまにチビの投げキャラがいるが、グラ的にありえんだろと僕は常々思っていた、のだが)

暦「いてえええええええええええええっっ!!」

忍「この、馬鹿、馬鹿!」

暦(まさかゲーム通りこの小さな体躯に見事キメられてしまうとは思わなかった)

暦「痛いっ、ちょ、ギブギブギブギブ!」

忍「ギブ!? 欲しいのは儂のほうじゃ! ギブ・ミー・ドーナツ!!」

忍「おい、今すぐミスタードーナツまで行って買ってこい」

暦「こ、この時間はもう閉まってるんだよっ、首が痛いよっ! なんか折れてるみたいだしィッ!? ヒィッ、パキパキいってるゥゥ!」

暦(再生するからって容赦ないなこいつ!)

忍「そのくらいなんとかせんか! でなければ恋愛トーク番組に出演してお前様の悪行を電波に乗せてやるぞっ!」

暦「そっ、そんなことしてもお前が自滅するだけだぁ!」

暦(怪異的に。中の人的に)

忍「ええい、あるじ様のくせに使えんのう! 早漏にして無能とは!」

暦「僕の男性機能が低いみたいじゃないか! がっ、ぐげぐがはっ!」

暦(知らなかった。首が一回転すると、こんな感じなんだ)

暦「イヒーッ! イヒーッ!」

暦(なんかもうまともな声も出なかった。これ大丈夫なんだろうな)

忍「イヒ? ほうほう、この作品のタイトルコールか! 早漏無能だが腐っても主人公じゃのう! 待たせたな、皆のもの!」

暦「イヒーーーッッ!!」

暦(違えよ! それは化だろ! くそっ、これじゃツッコミもままならねえ!)

忍「いいことを思いついたぞ、お前様よ! 次期アニメのEDではお前様がイヒの型をやるがよい! 前期はダンスができなかったからのう! アートで勝負じゃ!」

暦「イヒーーー!!?」

暦(それどう見ても僕二つに分かれてるじゃねえか!?)

忍「アートじゃからのう! 村上隆も腰を抜かすぞ!」

暦(高校生で人間オブジェは嫌だ! そういうのは奈須きのこに任せとけばいいんだ!)

月火「お兄ちゃーん」

月火「冷蔵庫にハーゲンダッツがあるから食べる―――」

暦「……」

忍「……」

月火「……」

暦(そこにあるのはイヒの型の人間オブジェ―――否、金髪幼女にスクリューパイルドライバーをキメられた彼女の兄だった)

暦「イヒっ!」

暦(笑ってみようとしたのではない―――驚くべき事態に体が『反射』しただけだ)

忍(旭化成は今もあるのかのう)

暦(独白に絡むんじゃない。ごめんなさい旭化成)

月火「……うーん」

暦(妹は―――――去った)

月火「お兄ちゃーん」

暦「なんだよ」

月火「あれ? さっきまでここに金髪の女の子と変なオブジェがあったんだけど」

暦「はぁー?なんだよそれ」

暦(月火ちゃん。君が握りしめているソレは何のために持ってきたんだい。それ、庭用の芝刈機じゃないのかい)

暦(その先端の回転式刃をどこに向けるつもり? あ、ちょ、ONの手前で親指を遊ばせないで)

月火「見間違い、だったのかなぁ。お兄ちゃんずっとここにいたの?」

暦「ここは僕の部屋だ。僕以外のやつがいるわけないだろ」

月火「ふうむ。まあ、いっか。早く来ないとストロベリー食べちゃうよ」

暦「はいよ」

暦「はぁ……」

忍「おい、お前様よ。儂はあの妹御は無害じゃと言ったかもしれんが撤回するぞ」

暦(割りとマジにビビる忍。よく漫画・アニメにあるパターンとはいえ、月火相手に吸血鬼を隠すのは命懸けらしい)

忍「ブ、ブリーチみたいに正体晒して仲良くなってくれんかのう」

暦「黒点の目に滝の汗を流しながらその台詞を言うな。お前のキャラ崩壊の恐れがある」

暦(しかし、既に自らマスコットキャラクターに成り下がったんだよな)

忍「お前様、それは違うぞ。成り上がったのじゃ」

暦「お前はもうこれから普通に僕の心を読むのか?」

忍「一応、お前様の心を読むことくらい、設定的に可能じゃわい」

暦「まあ、一蓮托生だしなぁ」

忍「鉄血にして熱血にして冷血でも、かわいくないと受けが悪いからの」

暦(時代のニーズに優しい怪異の王だった)

忍「儂は乳製品も好きじゃからな」

暦「それはチーズだ」

暦(お詫び。ではないけど、ハーゲンダッツは忍にやろうと思い、僕はリビングで妹達と食べず、すぐに部屋に戻った)

忍「ほう。ミスタードーナツに劣らずういやつじゃ。なに、ストロベリー? なるほど得心がいった!」

忍「それにしても、この赤! まさに儂に食べられるために生まれてきたようだのう。あーなんで今まで気づかなかったんじゃろー」

忍「この匙で食うのか。そーれ。あ? なんじゃ、全然掬えぬぞ! お前様、どうなってるんじゃ!? こやつ、固すぎて匙が効かぬ!」

暦「そんな不安の表情で報告するな。僕は今いささかガッカリしてるんだ」

暦(なんか、もう、普通に萌えキャラになってるよ。口から刀出したときとかカッコよかったのになぁ……)

忍「ふん。それがどうした。昨今の萌えなど飲み込むほどの気概があればどうということはない。それよりはやくー」

暦「はいはい」

暦(僕はまだカチンカチンに凍ったハーゲンダッツをスプーンでガリガリと削り取る)

暦(参考までに、佐々木倫子先生の動物のお医者さんに類似シーンがあるので、お手元にある方はあんな感じだと想像してほしい)

火憐「兄ちゃん、兄ちゃん」

暦「またかよ……」

暦(忍は火憐にも見えてしまうので隠れた。結局ハーゲンダッツ、未だに食えず。忍、哀れなやつ)

暦「今度はなんだよ」

暦(もしかして、まだこいつ安価とやらをやってるんじゃないだろうな)

火憐「えーとさ、へへっ、あのー……そのだな」

暦「お前はいつから千石になったんだ。早く言え。僕はもう寝たい」

暦(今日色々あったしな……まるで5日くらいに感じる1日だったぜ)

火憐「あ、それそれ! あっ、いやいや。私と一緒に寝よっ、お兄ちゃん!」

暦「……」

暦(以前なら)

暦(はーふざけんなどうかしてるんじゃないのかおまえ気持ち悪い)

暦(くらいは言っただろうが、僕は最近このでっかい妹とけっこう仲がいいのだ。二日に一回歯磨きをしてやるくらいには)

暦「あ……ああ。いいぞ。じゃあ、ね、寝よっか。一緒に」

火憐「ほ、ほんとに? やっ、やったぁ! う、うれしいなぁ」

暦(安価とったやつGJ! あ、ハーゲンダッツどうしよう)

暦(ハーゲンダッツは冷蔵庫にしまい、また後日食べることにした。なんか忍がうるさかったけど)

暦(認識してしまったせいか、忍の心も僕にわかるようになってしまったようで、あれこれけっこう重要なとこじゃね?)

暦(しかし、今はそんな些細なことよりも、火憐ちゃんと一緒に寝ることのほうが大事だ)

暦(火憐ちゃんはハーゲンダッツを片付けに行き、僕の部屋に帰ってくると見たことのないピンクのパジャマを着ていた)

火憐「月火ちゃんに借りた」

暦(……勝手に借りたとなると後が怖いが、今はどうでもいい)

暦(ああ、なんてスタイルがいいんだろう。胸とかエロエロだよ。もう僕がかれんビー状態って感じだ)

火憐「じゃ、じゃあ、電気、消すよ?」

暦(僕の部屋が夜の世界に包まれる。これからは怪異の時間だ)

暦(僕のベッドに火憐が近づく。掛け布団をめくり、体を滑り込ませる。シュッという衣擦れの音が僕を悩ませる)

暦(そして火憐は、僕の隣に、横になった……)

暦「……お、おやすみ、火憐ちゃん」

火憐「……お、おやすみ、兄ちゃん。あっ、お兄ちゃん」

暦(どうやら僕を『お兄ちゃん』と呼ぶのも安価の指定らしい。ますますGJだ)

暦(ギャップ萌え、とはまさにこのことだな)

暦(さて。健康な兄妹だったら、ここでそのまま何事もなく、それこそ吉良吉影のようにぐっすりと熟睡するのだろう)

暦(しかし、僕は誰だ)

暦(戦場ヶ原ひたぎとつきあい、羽川翼を愛し、神原駿河、千石撫子とも遊び、でも結婚するなら八九寺真宵)

暦(そして今、血を分けた妹である阿良々木火憐の隣に寝ている僕は誰だ! 僕の名前を言ってみろッ!)

暦(……ン~?)

暦(そう、そうだ、僕は阿良々木暦だッ!ザッツライッ! よく当てたなッ!)

暦(良~~~~しよしよしよしよしよしよしよしよしよしッ!!)

暦(もちろん、この僕には『これから起こること』推測できている。いや、予測というべきかな)

暦(しかしまだ慌てるような時間じゃない)

暦「……」

火憐「……」

暦(もし……ヤツが『あのこと』を安価されているなら……僕はここで『待つ』ッッ! それが最善なのだッ)

暦(ここはしばらくジッと耐えるのだ。周りをブンブン飛んでいる蜂が巣に帰るのを待つようにな……)

暦「……」

火憐「……」

火憐「お、お兄ちゃん……起きてる?」

暦(『来た』ッッ!!)

暦「ああ……起きてる。なんだよ、寝付けないのか」

火憐「う、うん。いつもは10秒で寝れるんだけどな。なんでだろ。お、お兄ちゃんと寝てるからかな」

暦「ははっ……なんだそれ。き、緊張してんのか」

火憐「そっ、そうかもなっ。おかしいなっ」

暦「な、何言ってるんだよ火憐ちゃん~。き、緊張する理由でも、あるのか?」

暦(これは……『エサ』だ……ヤツの狙いがもし『あのこと』なら必ず食いつくッ)

火憐「あっ……」

暦「あ……?」

火憐「ある、よ……」

暦(『釣れた』ッッ!!)

暦(火憐は体を起こし、僕の方を睨む)

暦(部屋は真っ暗だが、僕の吸血鬼の目は火憐が今どんなに恥ずかしそうな顔をし、それから何か決意をした表情に移り変わる様を見せた)

火憐「おっ、お兄ちゃん……」

暦「な、なんぞ、妹」

火憐「そ、そのう……うにゅう……」

暦「あなや! これ、どうした!?」

暦(火憐はぶるぶる震えながら、僕の上に跨がった)

暦(なんか僕が変なしゃべり方なのは許してほしい。僕だって緊張しているのだ)

暦(火憐のあまりの震えにブンブンと音が聴こえそうだった。蜂の羽音のような音が。僕は萎縮したように身動きがとれなくなってしまう)

暦「か、かかかかか」

火憐「アシュラマン……?」

暦(なんとここでボケるとは。いざという時男よりも女のほうが度胸があるというのは本当らしい)

暦「か、火憐ちゃん、まっ、マッサージでもしてくれる、のかな」

火憐「ま、マッサージか……いっ、いいよ」

暦(と、僕の胸の辺りに両手を持ってくる火憐)

暦(僕の視点からは騎乗位にしか見えない。なんで僕が騎乗位男性視点を知ってるかとか今は聞くな)

火憐「はぁ……ま、マッサージ、するよ、お兄ちゃん……」

暦(火憐が文字通りマッサージを始めた)

暦(僕の胸筋、肩、腕、それから腹筋)

火憐「ふっ、ふっ……ふうっ、はっ」

暦「うっ、うまいよ、火憐ちゃん……」

暦(実際、これが気持ちいいのだ)

暦(神原ほどではないにせよ、運動全般のエキスパートの火憐だ。きっと普段からマッサージもしているのだろう。僕の筋肉を的確に押さえ、解していく)

火憐「ほんと? お兄ちゃん、うれしい……」

暦「あ、ああ……すごく気持ちいい……そのまま続けてくれ……」

火憐「ふっ、ふっ、ふっ……よいしょ……ふうっ」

火憐「はぁはぁ……ふっ、うんっ」

暦(火憐の顔から汗が滴る)

暦(本気でやってくれているし、夜中の暗室という空間が沈黙と緊張を強要しているのだ)

暦(息が荒くなるのも無理はない)

火憐「はぁ……はぁ……」

暦「つ、疲れた? そろそろ……」

火憐「ううん、まだできるよ、もっと、しよう?」

暦「じゃ、じゃあ、頼む……」

火憐「ふぅ、ふぅ」

暦「……う、ひゃっ」

火憐「ど、どうしたの、お兄ちゃん……はぁはぁ……まるで女の子みたいな声出して」

暦「いや、なんでも……うあっ! ああぁ……っ」

暦(なんだ、これは。さっきまでと段違いに気持ちいい)

暦「ああっ! ひあっ、ああーっ」

火憐「あはは、いい声出たね……お兄ちゃん……はぁ……はぁ」

暦(快感、エクスタシィだった)

暦「か、火憐ちゃん……うあっ!」

火憐「お兄ちゃん、もっと、声出しなよ……お兄ちゃんの声聞きたいな……」

暦「火憐ちゃぁん……ふあっ」

暦(なんてことだ。僕は今まで阿良々木火憐はMだと思っていた。それもドがつくほどの)

暦(しかし、この火憐の恍惚とした表情はどうだろう。彼女は明らかに僕が声をあげることに快感を感じている)

暦(肉体的にも精神的にも今上位にいる火憐。僕は彼女のSの部分を目覚めさせてしまったようだ)

火憐「あはっ! お兄ちゃん、いい声だよっ、お兄ちゃん! お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん……」

暦(ああ、火憐。なんて楽しそうなんだ。女性上位時代、きたり)

暦「うっ、くっ、そろそろ、交代しようぜっ」

火憐「えっ? わっ、わっ、ひゃあ!」

暦(僕は吸血鬼の力で(でなければ勝てない)火憐に反逆を試みた)

火憐「きゃん!」

暦(反転。逆転。裏返し。今度は僕がマウントポジションをとった)

暦「さあて……今までよくもやってくれたな。覚悟しろよ」

火憐「に、兄ちゃん……」

暦(素に戻った火憐。女王蜂の顔から一気にかつては『ちっちゃい妹』だったそれになる)

火憐「兄ちゃん……」

暦「くち、開けろ……わかってんだろ。いつものやつだよ」

火憐「んっ……」

暦(火憐は素直に従い口を開けた。歯は虫歯一つなく、舌は元気なピンクだった)

暦「入れるぞ……」

火憐「んあ……」

暦(僕は火憐の口の中に指を突っ込んだ)

暦(僕はまず、ゆっくりと舌をなぞってやり、それから上顎を人差し指で擦り始めた)

火憐「ああっ、ふあっ、ひゃあーっ!」

暦「おいおい、まだ始めたばかりだぞ。すぐにへばるなよ」

暦(とは言ったものの、指は初めてだったので僕も不安だった。これはいつもの歯磨きとは違う)

暦(なにせ加減がわからないのだ。念のためよく涎をつけたが。最初に舌を撫でたのはそういう訳だ)

火憐「うぅ……くっ、ふっ、ふううぅぅ……」

暦(スタートから最高の反応を見せてくれた火憐だが、右の奥歯を触るととよほど刺激なのか、さらに顔を紅潮させ息をもらした)

火憐「ひゅっ、ぐっ……ひうっ! うぅ……」

暦(ひたすら快感に耐える一方それを実感に盛る火憐。そして僕も、生の感触を楽しんでいた)

暦(僕も色々限界だった。火憐の左下顎の外の歯茎に指を入れ、素早くピストル運動をする)

火憐「ひぁ! にいひゃんっ! にいひゃんっ! にいひゃんっ!」

暦「火憐ちゃん! 火憐ちゃん! あぁっ!」

火憐「にいひゃん! あうっ、ほれっ、いいろっ! はぁん! いいろっ、いいろーっ!」

暦「かっ、火憐ちゃん! 僕っ、そろそろっ」

火憐「もっほ! おれないっ、もっほ! にいひゃんぁんっっ」

暦「うおおお! いくぞおお!」

火憐「きへっ! にいひゃんきへえええっっっ!!」

月火「おみゃーら、なにしとるだぎゃっ!!」

あ、ピストル運動じゃねえや

暦(にこちゃん大王があらわれた。ていうか、月火だった)

月火「何をしていたと聞いている」

暦「いや、えっと……その……」

火憐「いや、えっと……その……」

暦「か、火憐ちゃんは僕にマッサージをっ。そ、それにしてもあれやりすぎじゃない火憐ちゃん?」

火憐「に、兄ちゃんはあたしにゆびがきを」

月火「ゆびがきとは何だ」

火憐「そ、それにしてもあれやりすぎじゃない兄ちゃん?」

暦「もう火憐ちゃん、兄のおっぱい触り過ぎっ!」

火憐「もう兄ちゃん、妹の歯磨きすぎっ!」

月火「……二人とも、ちょっとそのままの姿勢でいてくれるかな? すぐにコンビニに並べてあげるから」

暦(そう言う月火が取り出したのは出刃包丁だった。今回は予め用意してきたようだ)

火憐「月火ちゃん! コンビニに人の切り身はないよっ!!」

暦(ボケもなく火憐も必死だった)

月火「大丈夫なんだよ、私、三枚に下ろすの得意なんだよ」

暦「ひいいいいいいいっっ!!」

火憐「ひいいいいいいいっっ!!」

暦(僕と火憐は互いを抱きしめ、震えるしかなかった。阿良々木家はとんでもないレザーフェイスを生み出したらしい)

暦(僕ら二人はコンビに移行。明日からデッド・オール阪神巨人として全国のファミリーマート・ローソンに展示されるだろう)

暦「ごめん。八九寺。お前と結婚できそうにないや」

ザシュッ
グチャグチャ
僕は死んだ
ロリコン(笑)

Koyomi Harlem 'BAD END'?

火憐「火憐だぜ!」
月火「月火だよ!」
火憐「さーて月火ちゃんに殺されちゃったあたしと兄ちゃんですが!」
月火「火憐ちゃんとお兄ちゃんを殺しちゃった私ですが!」
火憐「独りになってしまった月火ちゃん! これからどうするー?」
月火「自業自得だね私! これからどうしよー!」
火憐「世紀末、一人のアロハシャツのおっさんに月火ちゃんは出会った」
月火「おお、それが次回の出だし?」
火憐「おっさんから龍の玉を七つ揃えるとなんと願いが叶うって伝説を聞き出した!」
月火「どっかで聞いたことあるけどまあいっか! それでどうする私!」
火憐「諸国を旅し、ついに龍の玉を揃える月火ちゃん!」
月火「やったね火憐ちゃん!」
火憐「しかし、そこに待っていたのは……うおおおーっ!」
月火「あれ、もしかして初めてまともな次回予告やっちゃった?」

月火憐「次回! こよみハーレム・其の6!」

火憐「カマッ!」
月火「キリッ!」

暦「ジュースでいいか? 八九寺」

真宵「これはどうも。ごちそうになりますです、師匠」

暦「ぼくは師匠じゃない。阿良々木だ」

真宵「失礼。間違えました」

暦「まあいいけど」

真宵「それにしても、師匠は天才カメラマンだったですね!?」

暦「それはアラーキーだ!」

真宵「わあっ、師匠ってばパンクですっ!」

暦「アナーキー・イン・ザ・UKェェーーッッ!!」

暦(ん? なんだろう。このやりとりは以前にもやったような……)

真宵「師匠、今日はもうこーこーは終わりですか? 真宵ちゃんに宿題を教えてほしいです」

暦「高校?」

暦(そういえばぼくは高校生だった。見たところ制服を着たままだし、今は午後だ。下校中かな?)

暦「ああ。宿題。宿題ねぇ……うん、じゃあやろっか。小学校はどこまで進んでるんだ?」

真宵「わぁい!」

暦(月刊男の娘みたいな返事をする真宵ちゃん。実に嬉しそうだ)

真宵「えーとですねー、今日は分数のワニ算をやったですよー」

暦「それはぼくも教授願いたいな……」

暦(割らずに丸飲みって感じだ)

暦(しかし、なんかひっかかるなぁ……)

暦(四階建ての学習塾。廃墟だけど。ここが真宵ちゃんの予備校だ。先生はぼく)

忍野「やあ、阿良々木くん。そろそろ来るころだと思ってたよ。今日も変わらずその幼女ちゃんにお勉強を教えるのかい?」

暦「幼女ちゃんいうな」

忍野「まったく、阿良々木くんの運命的な女運には羨望を禁じ得ないね。おこぼれに与りたいくらいだよ」

暦「ぼくをギャルゲーの主人公みたいに。だいたい、確かに女の子の友達はできたけどいい展開になったことなんて一度もないぞ」

忍野「そうかい? そこの選択肢は幼女ちゃんとの将来を三択で示しているみたいだけど」

>>勉強を教える
>>パンツを脱がす
>>殺す

暦「うおおーっ! なんだこれーっ!?」

忍野「ほうほう。パンツを脱がす。もうエッチシーンにいくのかい? そいつは気が早すぎやしないか」

暦「なんでその選択肢前提なんだよ! ふざけてんのかこの三択! 勉強以外の二つはロクなのがないじゃないか!?」

忍野「はっはー、阿良々木くん、随分と元気がいいねえ。何かいいことでもあったのかい?」

暦「初っぱなから鬼畜なルートがあることに憤ってんだよ!」

忍野「クロノトリガーを思い出してごらんよ。リーネ広場からラヴォスのところへひとっ飛びだったろう?」

暦「ぼくは過程を楽しみたいんだっ!」

忍野「規制が猛威を奮う今、あえて幼女ルートを選び、自ら犠牲になるとは恐れいった。じゃあ、阿良々木、まあがんばってね」

暦(というわけで選択肢は勉強)

真宵「もんだい、かっこ、いち」

暦(しかし、選択肢に『殺す』があったな。ひどいギャルゲーがあったもんだ。いや、ぼくにはこれが現実なんだけど)

真宵「さんぶんのに、わる、ごぶんのいち。師匠、もうわかりませんっ」

暦「学校で公式習っただろー? それの通りにやればいいんだよ」

真宵「ハム式?」

暦「そこを崩してくるのかっ!?」

暦(なんだ、今までのやつとは違うぞ!? ん、今まで?)

真宵「じゃあ、ハムエ犬ですか?」

暦「公式を割ってどうするんだよっ! 割れたら使えなくなっちゃうじゃないかっ!」

暦(くそ、こんなに脆いものだとはぼくは習わなかったぞ! 教科書に『割れ物注意』って貼っとけ!)

真宵「うぅー、さんすう、むずかしいです」

暦「ぼくにはお前の発想が難解だよ」

真宵「じゃあ、もんだい、かっこ、に。ひゃくぶんのいち、わる、ひゃく。師匠ー」

暦「だから、後の分数をひっくり返して、かけりゃいいんだよ」

真宵「ひゃくはひっくり返らないですっ」

暦「100は100/1だから、こいつをひっくり返してやるんだよ」

真宵「ふぉー……」

暦「あとはわかるだろ?」

真宵「けど、相手に合わせてまで答えを出さなくちゃいけないんでしょうか。割りきれないですね……」

暦(算数が人付き合いの話になっていた……)

真宵「しーしょー」

暦「なんだよ。まだ宿題終わってないだろ。あと、ぼくは師匠じゃない、阿良々木だ」

真宵「失礼。間違えました。もう、遊びましょうよ。真宵ちゃん、退屈です」

暦「大方の人間には学校の勉強は退屈なもんなんだよ。でも、やってこないと明日先生に怒られるんだろー」

真宵「先生は女、又は心」

暦「おお、なんか生徒を思いやってあえて怒る、いい先生みたいに聞こえるな。金八先生みたいだ」

真宵「真宵ちゃんの先生、金髪先生ですよ」

暦「DQN教師かよっ!? 理不尽な暴力とか振るわれてないだろうな!?」

真宵「いいえー。でも七三なんです」

暦(……意外と、いい先生なのかもしれない。でも、なんか複雑……)

暦「割りきれねえ……」

暦(結局、宿題はほとんどぼくが答えを教え、真宵ちゃんがそれを書き込んでいった。まあ、わかっちゃいたけど……)

真宵「師匠、遊びましょうよー」

忍野「阿良々木くん、遊ぼうよー」

暦「真宵ちゃんはいいとして、気持ち悪いんだよオッサン!」

忍野「連れないねー、阿良々木くん。数少ない僕ら男子。仲良くやろうじゃないか。ま、一杯どうだい?」

暦「ティーカップにこっそり小便を入れるな」

忍野「はっはー、古来から杯を交わすのは友情の証だと言うけどね。飲み交わす、つまり相手の体液を飲むことはセックスのメタファーなんだぜ」

暦「その薄気味悪い解説は何のメタファーなんだ」

忍野「男二人、仲良くやろうと言っているんだよ。女性ファンもつく」

暦「その人達の目当ては僕らの絡みじゃないかっ!」

忍野「そんなことないぜ。なぜか小太りだと思われていた僕だが、アニメ化で女性ファン急増さ。チビの君は知らないが」

暦「うるせえよ! なんでやや毒舌なんだ!」

忍野「いやー、役者がまだ揃ってないからさ。差し出がましいが僕が代理役を仰せつかったのさ」

暦「誰からだよ」

真宵「おじさん、うるさいです。師匠は真宵ちゃんと遊ぶですよっ」

忍野「ほー、君も女だねえ、幼女ちゃん。何かいいことでもあったのかい?」

暦「なんでその幼女と張り合おうとしてるんだよ。涙目のルカさんみたいな顔して」

忍野「だっ、だって、阿良々木くんが、かまってくれないから……」

暦「拗ねるなよっ! キモいよっ! おい、もう一度最初からやり直しさせろーっ!」

忍野「やり直しは効かないけど、この幼女ちゃんルートを進めることはできるぜ。あ、なんなら僕のルートも」

暦「いや、いい、結構だ。No Thank You」

忍野「そうかい。ま、いいさ。思い出なんかいらないよ」

真宵「しーしょー」

暦「真宵ちゃんと遊ぶか」

何する?>>765

sex

>>765

忍野「大当たりーっ!」

暦「おい! おいっ!」

忍野「いやー、さすが阿良々木くんだねえ、一発命中だ」

暦「だめに決まってるだろこんなの!」

忍野「幼女ちゃんは心も体も準備オッケーみたいだけど?」

真宵「……///」モジモジ

暦「真宵ちゃーんっ! ぼくそこまでフラグ立ててたっけーっ!?」

忍野「阿良々木くん、レディに恥をかかせるもんじゃあないぜ」

真宵「真宵ちゃん、18歳以上ですから……」

忍野「ほらっ、ああ言ってることだし」

暦「なあ、誰だキングクリムゾンったの!?」

忍野「僕はしばらく、外に出てるよ」

暦「気ィ遣ってんじゃねーよっ! え、なに、ヤる流れなのこれ?」

忍野「はっはー、まっ、なかなかうまくいかないかもしれないけど、阿良々木くん。信じてるぜ」

暦「ま、待て、忍野! 今お前が行ってしまったら僕は―――」

暦(なぜかこのタイミングでBLくさい台詞であった。いや、問題は……)

真宵「師匠……」

暦(瞳を濡らす真宵ちゃん。恨むぞ、>>765よ)

真宵「師匠……お願いしますです」

暦「ま、真宵ちゃん……わかった。こっちおいで」

暦(僕たちは教室の真ん中に腰を下ろし、向かい合った)

暦(しばらくお互いを見つめる。これから自分とひとつになる相手の頭から爪先までを焼き付ける)

暦「じゃ、じゃあ、その、やろっか」

暦(まずった。今のは我ながらなんと色気のない)

真宵「は、はい……」

暦(えーと、まずは何をしたらいいんだ。あー……そうだ、キスだ)

暦(僕は真宵ちゃんの頬を包み、ゆっくり唇を近づけた)

暦(年上だからと余裕を見せたかったが、触れる直前に僕はきゅっと目を閉じた。まあ、結果的にはセオリー通りだ)

暦(そして、真宵ちゃんとのキス。彼女の唇は若く、潤っていた)

暦「だ、大丈夫か……」

真宵「ぷっ……師匠、大丈夫かって……ぜーんぜんなのですよっ! それに、聞き方が違うですよっ」

暦「え……」

真宵「こーゆーときは好きだぜっ、とかっ! 愛してるっ、とかっ! ゆーですよー」

暦(好きだ。愛してる)

暦(普段のぼくには縁遠い言葉だ。それに、この子に対してそれは適切なんだろうか)

暦(頬を撫でてやると、真宵ちゃんはくすぐったそうにする)

暦「……真宵ちゃん。好きだ」

真宵「真宵ちゃんもっ、師匠がだーいっ好きですっ!」

暦(急に真宵ちゃんにそう言ってやるのが正しい気がした)

暦(なぜかはわからないが、今、ぼくがここでこの子に適切な愛を与えてやるべきだと、了解し、誤解し、そして正解した)

体を清めてまいります

暦(真宵ちゃんは震える手でスカートを脱ぎ、ボタンを一つ一つはずしてブラウスを脱ぎ、ささっと胸の前を両腕で隠した)

真宵「んっ……で、できまし、たぁ……」

暦「あ、あぁ……」

暦(僕は真宵ちゃんにキスをしてから、首、肩、乳房へと降りていく)

暦「真宵ちゃん、意外にあるな」

真宵「なぁっ!? 意外と!?」

暦「いや、けして悪い意味じゃ」

真宵「なかなか女性心理的にガガーリンきます……」

暦「それはもしかしてガックリと言いたいのか?」

暦(でも、超小学生級とまではいかなくとも、魅力ある胸であった)

真宵「はっ、恥ずかしいですよぉ……」

暦(いつもツインテール、カチューシャ装着の真宵ちゃんであるが、せっかくの裸のつきあいの機会なので取ってみた)

暦「おぉ……新鮮」

真宵「師匠は初めてですか」

暦「ああ。こう言っちゃあれだが、お人形みたいだ」

真宵「ヒトガタじゃなくて、真宵ちゃんは立派な人間なのですよ」

暦「ごめんごめん」

暦(真宵ちゃんの真っ直ぐな髪を一房すくってみる。匂い嗅いでみたりして)

暦「いい匂い」

真宵「毎日シャンプーしてますからっ!」

暦(さて、どうしようかな)

暦(ぼくの学ランを床に敷いて真宵ちゃんを寝かせた。その上にぼくも体を沈める)

暦「重くない?」

真宵「は、はいっ」

暦(ゆっくりと真宵ちゃんの体を愛撫していく)

暦(当然だが性的反応はない。真宵ちゃんはただただ恥ずかしそうに顔を隠していた)

暦(さっきからの続き、腹、へそを舌でなぞっていき、たまに右腕で乳房を触る)

真宵「はずっ、かしい……し、師匠? どうです?」

暦「かわいいよ」

暦(普段、真宵ちゃんは頭が悪く、なのに時々うまい掛け合いをぼくとこなす、友達のような親戚のような子だった)

暦(今は、圧力があったとはいえ、ぼくに身を任せる健気でいじらしい少女だった)

暦(ぼくはいよいよ、パンツに手をかけた)

暦「ちょっ」

真宵「むっ……うぅ~」

暦(脱がそうとするのを阻止する真宵ちゃん)

暦「そうされると、パンツが脱がせにくいじゃないか」

真宵「わかってますっ、わかってますですけどぉ……」

暦「仕方ないな、真宵ちゃん、ぼくの顔を見ろ」

真宵「し、師匠っ、顔近いですっ」

暦(そう。ほとんどキスできるくらいまで近づいた。そしてこのまま、右手をパンツの中に忍ばせる)

真宵「わひゃっ!? あっ、やややっ、そこは……っ」

暦「下を向くなよ」

暦(なんとか、彼女の秘部に触れた)

暦(どうやら真宵ちゃんはここの成長はまだらしい。皮膚に直接触れている。ぼくはゆっくりとそこに沿って指を這わせる)

真宵「ししょおぉ……なんかこれ、すごくエッチっぽいですよぉ……」

暦(羞恥心からだろうが、真宵ちゃんの息があがってきた)

真宵「ふぁ……ふぅ……」

暦「痛くないか?」

真宵「ないです、よ……師匠の顔すっごくちっかいし、師匠の体ずしってくるし、なんだかうれしいです」

暦「うん。下はどう?」

真宵「いっ……な、なんか、へんっ、な感じぃ……です」

暦(そう言ったとき、ぼくの指に少し水気があった)

真宵「ふぅ、ふぅ」

暦「真宵ちゃん、パンツ脱がせていいか?」

真宵「……いい」

暦(お許しが出たので、ぼくは真宵ちゃんの体から降りて、彼女の白い下着を取った)

暦(それを、目の当たりにする)

暦(真宵ちゃんのそこは濡れ、光り、ぼくを誘った)

暦(頭のどこかでは自分が倒錯していると評したが、ぼくは動物的に、機械的に、運命的に、人間的にそこにくちづけた)

真宵「あっ」

暦(驚いたような、小さい悲鳴)

真宵「し、師匠、師匠? 師匠……」

暦(真宵ちゃんがぶるぶる震えだした)

暦(一方ぼくはお構いなしに真宵ちゃんの足を開き、目をつむりながら蜜を吸った)

真宵「あ……あ……あれェ?」

暦「んー」

真宵「どっ、どうなってるんでせうか? どうなってるんで……は、や、やや、にゃ」

暦「む」

暦(震えから痙攣に変わった。真宵ちゃんの体がだいぶ慣れてきたようだ。口を離し、指で触ってみる)

暦「真宵ちゃん、どうだ?」

真宵「なっ、なんて言ったらいいか……真宵ちゃん馬鹿なんでしょうか」

暦「そんなことないぞ。宿題は毎日やるし、言いたいことはちゃんと言うし。いい二の腕をしている」

真宵「に、にのうでぇ?」

暦「様式美……いや、形式美? とにかくいい二の腕だ」

真宵「はぁ……んっ、んん」

暦「もういいかな」

真宵「ん……んっ……」

暦「真宵ちゃん、そろそろ……入れるな」

暦(うんっ、と首をふる真宵ちゃん)

暦(ところで。今彼女は裸に靴下だけはいた状態であるが、とても扇情的だった。この格好がぼくを一押ししてくれたのは蛇足)

暦「えーと」

真宵「うわあっ!? なんだそれなんだそれ!?」

暦「いや、これからこれが入るんですが」

真宵「へっ、蛇の足みたいですっ」

暦「……」

暦(まあ、ぼくのペニスが余計なものであるという意味とは違うと受け止めておこう。この子も緊張してるからな、うん)

暦「いや、亀なんだけどね」

真宵「うわぁ、うわぁ、うわぁ」

暦「真宵ちゃんいくよー?」

暦(当たり前だけど、全然入らん……)

真宵「んっ、ぎ、ぐ、いっ、いたい……」

暦(歯を食いしばる姿に申し訳なく感じてしまい、はやく入ってくれと心の中で祈った)

真宵「い、た、いっ、痛い痛い痛い痛いっ!!」

真宵「痛いですっ、師匠、すっごく痛いですよっ!!」

暦「あと少しだからなっ」

暦(とはいえ、快楽を得るためにこれほど苦痛を感じなければならないとは不便なものだ)

暦(世の中には苦痛を快楽とする嗜好の人がいることは承知しているけれど、さっさと彼女からこの痛みが去ってほしいとばかりぼくは考えていた)

暦「入ったよ、真宵ちゃん」

真宵「はまりました、師匠……」

暦(泣きながらどうやら初めての感触を報告してくれたらしい。つながった部分を見ると血が流れていた)

真宵「し、師匠? キス、してくれますか? 何かしないと痛くて……」

暦「あ、ああ」

真宵「あっ」

暦(キスをすると真宵ちゃんは、いいなあこれ、と呟いた)

真宵「なっ、なんかー。今までにない新感覚ですっ」

暦「スナック菓子の感想かよ」

真宵「で、でもっ、サクサク進みませんでしたねっ」

暦「じゃあ、ここからは軽くスナック感覚でいこうか。ちょっと動くよ」

真宵「わぁ、しっ、しんっ、しんしょか、新ショッカー!」

暦(たぶん新食感って言いたかったんだと思う)

真宵「うっ、ふうっ、う、うんっ、ふにゅ、ゆーっ、ふゅっ!」

暦「真宵ちゃん……真宵ちゃん……」

暦(真宵ちゃんの痛みやスナック感覚など忘れ、ぼくはぼくが擦れるたびに感じる快楽に夢中になっていた)

真宵「しっ、師匠っ? あのっ、ふっ!」

暦「ぼくは師匠じゃない。阿良々木だ」

真宵「……阿良々木、さん」

暦「なに、真宵ちゃん」

真宵「阿良々木さん、ふっ、真宵ちゃん、ちょっと、んっ、思い出してたですよ、うぁっ」

暦「何を?」

真宵「あ、阿良々木さんと初めての会った……ひゃ、日のことっ」

暦(ぼくと八九寺真宵の出会い)

真宵「覚えてる、ですか?」

真宵「昔々のその昔――というほどじゃありません。ごく最近のことです」

真宵「私はお母さんの家に行くところでした。お母さんはお父さんと暮らせなくなったので、少し遠いところにいるのです」

真宵「ひとりでお母さんの家に行くのは初めてでした。普段お父さんはひとりで行くのは危ないからダメだと言っていました」

真宵「でもその日。学校で今日は母の日ですと先生に教えられて、お母さんに会いに行こうと決めました」

真宵「お花を買っていければよかったけどバス代がいくらになりかもわかりません」

真宵「だから一言おめでとうと言いに行きたかったのです」

真宵「何かがあったときのために、リュックにはたくさん荷物を詰めました」

真宵「初めてひとりでバスに乗った私は得意になりました」

真宵「けど元気だったのはそこまで。そのあとが大変だったのです。だってバス停からお母さんの家まではすごく道が長かったのです」

真宵「私は迷子になってしまいました」

真宵「地図は持ってきましたが、使ったことがないのでよくわかりません」

真宵「バス停や公園にある地図と比べてみても、書き方が違うしどこがどこなのか」

真宵「そのうち、空も赤くなってきて、私は不安になりました」

真宵「でも、きっと泣いたら絶対にお母さんの家にたどり着けないと思っていたので、私は地図と道を一生懸命見ました」

真宵「そしたら、男の人が声をかけてきました」

真宵「どうした。道にでも迷ったのか」

真宵「私は男の人が怖くて、口をききませんでした」

真宵「知らんぷりをしていると、男の人がすごく落ち込んでいるみたいでした」

真宵「男の人が怒るところは見たことありました。でもがっかりしてるところは初めてでした」

真宵「なんだかかわいそう。なんだかかわいい」

真宵「私は勇気を出して、男の人に道を聞きました」

真宵「残念なことに男の人も私のお母さんの家はわかりませんでした」

真宵「けど、一緒に探してくれると言いました」

真宵「それから、二人で赤い空が暗い空になるまでお母さんの家を探しました」

真宵「男の人はじゅけんせいとかで、毎日したくもない勉強をしていると言いました」

真宵「私も、勉強ができないのに毎日宿題をやっていると答えました」

真宵「その男の人と、h仲良くなることができました」

真宵「初めにお母さんの家をひとりで探していたときは本当は怖くて怖くてたまりませんでした」

真宵「お母さんの家につかない。自分が今どこにいるのかわからない」

真宵「でも、もう怖い気持ちはありませんでした」

真宵「お母さんの家についたのはもう夜ご飯の時間でした」

真宵「お母さんは私が来たことにとってもとってもびっくりしていましたが、玄関で私を抱き締めてくれました」

真宵「男の人は、よかったな、と言いました」

真宵「私とお母さんは男の人の人にお礼を言って、お見送りしました」

真宵「家に入るとお母さんとたくさんおしゃべりしました。でも、私は半分くらいあの男の人のことを考えていました」

真宵「名前は教えてもらいましたが、言いづらくて舌を噛みそうでした」

真宵「だから、私は心の中で師匠と呼びました。先生みたいだけど学校の先生じゃないからです」

真宵「私が迷子にならないように一緒に道を探してくれた師匠」

真宵「また、会いたいな、と私は思いました」

暦(その後、八九寺真宵は浮遊霊みたいにあちこち歩き、また迷子になっているところぼくと再会した)

真宵「だっ、だから、真宵ちゃん、うあっ、阿良々木さんにまた会えて、う、嬉しくて」

暦「ぼくも、嬉しいよ」

真宵「すきっ、阿良々木さん、だいすきっ!」

暦(ぼくは何の気遣いもなく動いていた。真宵ちゃんを小さいお友達ではなく、どこまでも純粋にぼくへの愛を向けてくるひとりの女として見ていた)

真宵「う、あぁ、あっ、なんかっ、ふあっ、キモチイイ……ッ!」

暦「真宵ちゃん、真宵ちゃん」

暦(ぼくは射精した)

暦(ポケットティッシュで体液を拭き取り、服を着た。その合間にぼくらは何度もキスをした)

真宵「……阿良々木さん」

暦「なんだ?」

真宵「アララララララララ木さぁーんっ!」

暦「ぼくはそんなウェカピポな名前じゃないっ!」

真宵「失礼。噛みました」

暦「本当かよ」

真宵「はにかみましたっ。 えへっ!」

暦「可愛すぎるっ!」

真宵「大好きっ、歯並びさんっ」

暦「まあ、歪んではいないようだな……」

暦(愛が重い人とかいるみたいだからな)

暦(帰ってお風呂に入りたいということで、真宵ちゃんは帰ることになった。お父さんと二人で暮らす家へ)

暦「でも、まだ帰ってきてないんだろ?」

真宵「はい。でも、お腹全体がだるいし、ちょっとベッドで寝たいですよ」

暦(ぼくは余韻に浸っていたが、真宵ちゃんは既に現実に帰っていた)

暦「そっか。送っていこうか」

真宵「いえ、大丈夫です。それに、帰り道にひとりで余韻に浸りたいのです」

暦「あ、そうなんだ」

真宵「それから、今日はもう家に人がいるのですよ」

暦「それじゃあ、もしかして」

真宵「えへへっ。今日はいいことが二つもあって、真宵ちゃん嬉しいですっ!」

真宵「それではっ。真宵ちゃんは帰り道を行きますっ! アナル木さんっ!」

暦「下ネタはやめろ!」

真宵「失礼。噛みました」

暦「わざとじゃないだろうな……」

真宵「アナルナルナル~」

暦「サクラテツ対話篇は読んじゃいけませんっ」

真宵「あははっ」

暦「ううむ、やはりジャンプは基本的にオゲレツだからなぁ」

忍野「その通り。勝利・友情・努力だけじゃない、エロ・グロ・ナンセンスもまたジャンプにおいて真なり、だからね。阿良々木くん、お楽しみだったねえ」

暦「旅館の仲居みたいなこと言うな!」

忍野「はっはー、阿良々木くん、随分元気だねえ」

暦「いいことあったからな」

忍野「元気があるなら二回戦いけばいいのに。あの子、帰しちゃうのかい」

暦「一応、初めてなんだぞ」

忍野「これはこれは僕としたことが無粋だったね。でも、阿良々木くん、後戯のない男は嫌われるぜ。アフターケアが大事なんだ」

暦「……わかったよ」

暦(ここでぼくの携帯が鳴った。妹の月火からだった)

月火「お兄ちゃん? 私のジョア飲んだでしょ!?」

暦(何か大きい音がして、月火の声が聞こえなかった)

暦「あ? なんだって!?」

月火「だーかーらー、ジョア!」

忍野「ああー、あれじゃあ即死だなぁ」

暦(ノンキに言う忍野)

暦(音が聞こえた方を見た)

暦(どうしてでしょう。どうしてでしょう。本当に、どうしてなんでしょう)

信号は、確かに、青色だったのに――

暦(真宵ちゃんだったものが、地面に散らばっていた)

暦「ま――――――真宵ちゃんッッ!!」

忍野「まあ、待ちなよ、阿良々木くん」

暦「離せよっ、忍野っ!」

忍野「はっはー、阿良々木くん、本当に元気がいいね。でも、やっぱりちょっと元気よすぎ?」

暦「何言ってんだよっ!! はやくっ」

忍野「幼女ちゃんの元に駆けつけるかい? それとも救急車を呼ぶのかな。それならやめといた方がいい。無駄だから。ほら、ごらんよ」

忍野「ここから見ても血の池地獄だ。少し離れたところにあるあれ、右腕じゃないか。あらら、千切れて飛んじゃったんだなぁ」

忍野「ううん、体のほうは真っ赤かでよく見えないがペシャンコだね。内臓から脳は全部飛び出てるだろうし、骨なんか粉々だろう」

忍野「おや、リュックサックは比較的潰れてないね。ぬいぐるみが入ってるからかな。はは、なんとも不思議な絵だな」

暦(僕は言葉が出なかった。忍野がいくら詳細に描写しても、口から嗚咽しか出てこない)

暦(八九寺真宵。迷子の少女。その最後)

暦(僕はようやく、次の言葉を呟くことができた)

暦「――なんで?」

忍野「だって、あの子まだ死んでなかったろう?」

Lost Child. Fake Mai Mai DEAD END

火憐「火憐だぜ!」
月火「月火だよ!」
月火憐「二人合わせてファイアーシスターズ!」
月火「でもさーただの横文字だといまいちキマらないよねー。当て字がほしいよー」
火憐「死線の蒼とか、傷んだ赤とかな!」
月火「だから私達も当て字を考えたいっ!」
火憐「閃きたいっ!」
月火「炎の転校生とか炎の矢とかー!」
火憐「うんうん!」
月火「炎のチャレンジャーとか炎のマテリアとかー!」
火憐「シスターズ関係ねー!」
月火「ではここで予告編クイズー!」
火憐「クイズー!」
月火「ヤクルトは体内環境4000億の乳酸菌を育てますが!」
火憐「ますが!」
月火「4000億ってどんだけだよ」
火憐「いや菌につっこまれても」
月火「私破裂しないか心配だよ」
火憐「いや菌につっこまれても」

月火憐「次回! こよみハーレム・其の7!」

火憐「もうスレ終わりそうだな」
月火「ご利用は計画的にね」

ひたぎ「羽川さん?」

暦「は?」

ひたぎ「羽川さんが、どうかしたの?」

暦「どうかっつうか――」

暦(あれえ……なんか、このやりとり前にもやったような……)

暦「――まあ、なんか、気になって」

ひたぎ「ふうん」

暦「ほら、何か、羽川翼だなんて、響きがいいじゃん」

ひたぎ「そうかしら」

暦「はねか『わ』とつば『さ』で韻踏んでるし、羽と翼ってどんだけ空飛びたいんだよ、みたいな」

ひたぎ「空は飛べど鳥にあらず。羽だけなのね、不気味」

暦「きつい言い方だな。戦場ヶ原が他人にそんな言い方する……のはいつも通りか」

ひたぎ「愉快なことを言われた気がするわ」

暦「今のが誉め言葉かよ」

ひたぎ「もしくは嘗め言葉」

暦「僕って濃い味付け!?」

ひたぎ「失礼。ナメました」

暦「僕以外もだろ」

ひたぎ「失礼。舐めました」ペロン

暦「ひあっ!?」ビクン

ひたぎ「失礼。ハメました」

暦「いやあああらめえええ!!」

暦「うう……お婿にいけない……」

ひたぎ「さて、阿良々木くんの童貞なんて何の価値もないけれど」

暦「童貞を馬鹿にするな」

ひたぎ「阿良々木くんの道程なんて何の価値もないけれど」

暦「これまでの僕の人生全否定!?」

ひたぎ「羽川さん、だったかしら」

暦「そうだよ」

ひたぎ「珍しいわね。阿良々木くんが他人に興味を持つなんて」

暦「別に興味っていうか。あいつ、嫌でも目立つじゃないか」

ひたぎ「成績優秀……成績特秀かしら? 学校一の頭脳。試験問題は羽川さんではなく試験が試される。あれ、本当に人間かしら」

暦「言うな。戦場ヶ原、羽川嫌いなのか」

ひたぎ「嫌いね。大嫌い。車に轢かれて死ねばいいのに」

暦「うお……」

ひたぎ「とでも言えれば少しは満足できるんでしょうけど。そんなことすら言えないくらい得体が知れないわね。羽川さんを蔑む隙がないのだから」

暦「まあ、あいつ話すと感じいいもんな」

ひたぎ「あいつ。話す」

暦「あ、いや……」

ひたぎ「ふうん……阿良々木くん。手を握りましょう」

暦「おい、やめろ、その電動鉛筆削りを何に使うつもりだっ、よせっ!」

ひたぎ「阿良々木くん、爪が伸びているわ。切ってあげる」

暦「いや、いい、いい、結構だっ、今日帰ったら自分で切るからっ!」

ひたぎ「鉛筆削りって便利ね。削りカスがちゃんとごみ箱にいく仕組みなんだから。これ、持って帰ろうかしら」

暦「その削りカスをどうするつもりだーっ!? ひぃっ!」

ひたぎ「ところで私、阿良々木くんが家に来るたびに、あなたの髪の毛を採集しているのだけれど」

暦「あのコロコロは掃除用じゃないのかよっ!」

ひたぎ「きちんと長さを測ってノートに綴じているわ。恥ずかしくて見せられないのが残念だけど」

暦「シュンって顔するなっ、残念なのはお前の趣味だよ!」

ひたぎ「この間私が阿良々木くんの前で着替えをした日があったでしょう。あの日なんか30センチはあった。私、興奮したわ」

暦「それはたぶんお前の髪の毛だよっ!」

ひたぎ「助平なことを考えると髪が伸びるって言うじゃない。私の体がそんなに刺激的だったのかしら。自信ついちゃった。女子力アップ~」

暦「どんな女子力!?」

ひたぎ「ちなみに、その日の日記に『絶好調!! 誰もわたしをとめることはできない』って書き留めておいたわ」

暦「殺人の調子じゃないだろうなっ!?」

暦「なんだよ、今日はいつもよりイライラして……あ、ちょ、ゆびっ、ゆびっ」

ひたぎ「まったく、ストレスなんて人生から完全になくなればとは思わないけど」

暦「ね、ねえ、戦場ヶ原さん、ぼ、僕の、ゆびっ」

ひたぎ「100戦0勝100敗。我ながら泣けるわね。名字、変えようかしら。焼け野原ひたぎ。どう」

暦「どーーっ! どーーっ!」

ひたぎ「平均律の練習? それとも持続低温かしら?」

暦「羽川の、話は、二度と、しないからっ!」

ひたぎ「どうして羽川さんが出てくるのよ。ねえ、私将来の夢は推理作家なんだけどこれって殺害方法にならないかしら」

暦「戦場ヶ原ほど知識があれば何の問題もないからっ! 指があああああああああああ!!」

暦「はーっ、はーっ……」

ひたぎ「惜しかったわね。ジョセフみたいになれたかもしれないのに」

暦「僕は……承太郎派だ……」

ひたぎ「ふん」

暦「せ、戦場ヶ原、悪いんだけど、僕、このあと用事が」

ひたぎ「色にかまける暇はあるのに文化祭実行委員の仕事をする暇はないのかしら」

暦「いっ、妹がさ、呼び出しがあって」

暦(ここで僕にメールがくる)

ひたぎ「『彼女』……からかしら」

暦「いや、妹、ほんとほんと」

月火『お兄ちゃん、私のジョア飲んだでしょ!? 草々』

ひたぎ「草を生やしてるけど」

暦「あははー! うちの妹が馬鹿でさー」

ひたぎ「……行けば。時間は待ってくれないわよ」

うんこしてから風呂に入ってもよかったです?

暦「今日はとうとう傷害沙汰になるかと思った……」

暦(再び僕の携帯が鳴る。月火から)

月火「お兄ちゃん、私のジョア飲んだでしょ!?」

暦「ああ、飲んだ飲んでやったわ! はははははは!」

月火「なっ!? 殺されたいのかきさ」

暦(携帯を切った。馬鹿な妹にこれ以上時間を割けられない)

暦(戦場ヶ原ひたぎ――――――)

暦(彼女は僕の大切な友達であり、一点を除きあらゆることを打ち明けられる唯一の人間である)

暦(学校のこと、進路のこと、他愛ないこと、とか)

暦(僕はそれで十分だった。しかし、彼女はそれでは足りなかった)

暦(それ以上を、求めていた)

暦「僕には彼女に与えることはできない。僕はこれから羽川の家へ行く」

暦「あれ?」

翼「……今日はいつもより遅いんだね、阿良々木くん」

暦(羽川翼が、いた。よく考えてみれば、彼女にとって自分の家は寝るだけの場所なのだ)

暦「戦場ヶ原に捕まっちゃってさ」

翼「ああ、戦場ヶ原さん……」

暦(羽川が苦虫を潰したような表情をする。お前があいつを気にする必要はないのに)

暦「おい、羽川」

翼「うん、なに?」

暦「耳、出てるぞ」

翼「……やだなぁ」

暦(羽川の頭に、猫耳が、あった)

暦「……ストレス」

翼「当たり前だよ、今日このあとのこと考えたら」

暦「そうかもな」

暦(普通であろうとする羽川。きっと『普通ならば』、今頃泣いているかもしれない戦場ヶ原を思いやるだろう)

暦(本人は『同情なんていらない』って言うだろうけどな)

翼「言っとくけど、私、阿良々木くんに怒ってるんだよ。ううん、違う。嫌いになった」

暦「わかってる」

翼「目先の欲に囚われちゃうなんて」

暦「人間だもの」

翼「阿良々木くんは鬼だよ。鬼畜」

翼「戦場ヶ原さんに殺されちゃえばいいんだ」

暦「えー……」

翼「えーじゃないよ。阿良々木くんなんて死んじゃえ死んじゃえー」

暦(なんてことない雑談のように言う羽川。たぶん、本心なんだろう)

翼「死ね」

暦「死なないっ!」

翼「えーそこは死んでおこうよー」

暦「おこうよって言われても」

暦「羽川、そろそろ……」

翼「あ、うん……」

暦「……」

翼「……」

暦「じゃあな」

翼「バイバイ」

翼「……死んじゃえ」





暦(そして、僕は羽川の家にたどり着く)

暦「こんにちはー」

暦(羽川の母親がドアを開け、僕を中に招き入れる)

暦(玄関で直ぐ様抱き合い、互いの舌を吸い上げる)

暦(僕は羽川の母親を廊下に押し倒し、尚も深い深い口づけを続ける。息は荒く、くちゃくちゃという音と喘ぎが響く)

暦「すみません、遅れて」

暦(首を横に降り、構わないという意思表示する羽川母)

暦(僕はもう、彼女がいじらしくて、その胸をまさぐった)

暦(淫らな女の声が家中に行き渡る)

暦(ああ、はやく入れたい)

暦(寝室に場所を移そうといわれ、僕らはキスをしながらふらふらとこれから情事を繰り広げるステージに向かった)

暦(僕と羽川母は見つめあいながら、裸になった)

暦(そして、また十秒ほど見つめあい、互いが相手に欲情しているのを確認した。羽川母の瞳は濡れ、首から上は紅潮していた)

暦(性器に触れる)

暦(羽川母は既に濡れ、僕の右手はあっという間に水浸しになった)

暦(一方、羽川母も僕のペニスをしごいた。まずは撫でるように始まり、それから五本の指を使い刺激した)

暦「奥さん、すごいですよ」

暦(聞けば、さっきまで僕が来るまでに耐えきれず、自慰をしていたという。僕はさらに駆り立てられた)

羽川母「っ!」

暦(僕は指を羽川母のヴァギナの奥まで入れ、ピストンした。水飲み場のように液が溢れてきた)

暦(いつもは前戯にフェラチオ、クンニリングスをしていたが、僕はもうそんな回りくどいことをする余裕はなかった)

暦「奥さん、奥さんっ」

暦(僕はペニスをヴァギナに入れ、直ちに腰を振った)

暦(彼女のヴァギナはあたたかく、まるであたためたバター・クリームみたいだった)

暦「奥さん! 奥さん! 奥さん!」

羽川母「ああっ、いいの! いいの!」

暦「奥さんっ、奥さんっ! ああっ、奥さんっ!」

羽川母「ああ、いいっ、いいぞっ、お前様っ!」

暦「間男を夫のように呼んでもらえて、嬉しいですっ、奥さんっ!」パンパン

羽川母「ああっ! 始めはここも出来損ないの世界じゃと思ったが、ふあっ、これはっ、もうけじゃのうっ! あんっ!」

暦「はいっ! よくわかりませんが奥さんに喜んでもらえて嬉しいですっ!」パンパン

羽川母「わ、儂も嬉しいっ! まっ、前は小僧の真似したり、にゃ、やっ、あの娘の母親役などうんざりしたが、ああっ」

暦「奥さんっ、ああっ、奥さんっ!」パンパン

羽川母「こっ、これならっ、やり直しなどせんでも、かっっっ、構わぬっ! うあっ、あっああああっ!」

暦「奥さんっ! 今日はまだいけそうですっ」パンパン

羽川母「ぎょうっ、こうじゃあ! ぱないのー! ああっ、お前様っ、そこいいっ! そこいいのっ!」

暦「あーっ! そ、そんなにしめつけられるとっ!」プルプル

羽川母「ええい! 早漏くらいなんとかならなかったのか!? ここで何回目だと思っているっ! 気合いで耐えよっ!」

暦「も、もうダメです奥さーーーんっっ!!」パンパン

羽川母「ば、馬鹿お前様っ、あ、ひゃっ、へあっ、うあんっ! きゃっ、にゃにゃっ、はぁん!」

翼「阿良々木くん! お母さん! もうやめてよ! これは普通じゃない!」バァァーン

暦「は、羽川……?」

羽川母「やかましい!! 今いいところだったんじゃーっ!」

ひたぎ「阿良々木くん」スゥ

暦「せっ、戦場ヶ原っ!?」

羽川母「うつけものどもっ!! うぬら空気が読めんのかっ!」

ひたぎ「年増は黙ってなさい」

羽川母「とっ! とっ! としっ!?」

ひたぎ「さっき、私ananを読んでいたのだけれど。笑えるわね、阿良々木くんがアンアンしているときに」

暦「……いや、あの、バカでかいハサミ片手に言われても笑えないんですけど」

ひたぎ「自分に正直に生きるのも恋の道だと書いてあったわ。女子力もアップするし。だから今、自分に正直になろうと思うわ」

暦「や、やめろ……シザーマンかおまえばあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッ!!」

羽川母「お前様ーーーーーッッッ!!!!」

忍「むう、また失敗してしまったか」

暦「おい。僕、殺されたぞ」

忍「自業自得じゃろ」

暦「どうなってるんだこれ。説明してくれよ」

忍「説明か。お前様に話すのはもう少し先だと思ったが。まあ、いいか」

暦「で?」

忍「お前様、死んだだろう」

暦「ガハラさんに刺されてな」

忍「いや、>>706で」

暦「あれ!? 僕月火ちゃんに殺されてるっ!?」

忍「そうじゃ。あれは儂の不手際。頭を下げよう」

暦「……」

忍「なぜ、頭を撫でる」

暦「いや、なんとなく」

忍「……ふ、ふん! 続きを話すぞ」

忍「吸血鬼は本来出刃包丁で刺されようがロードローラーに潰されようが死なぬ。だが、今回は加害者がお前様の妹御じゃった。そこで何かバイアスがかかったようじゃな」

暦「つまり、僕は当たり前に死んだのか」

忍「そう、人間のように死におった。儂はすぐさまお前様とでっかい妹御に血を与えた。だが効かなかった」

暦(吸血鬼の血。それは治癒力がある。しかし、それが効かないって――)

忍「儂は非常識というものを生まれて初めて経験した。当然と思っていたことが打ち砕かれるというのは……なかなかセンセーショナルだったぞ」

暦(忍は怪異の王。500年のうちそのプライドが傷つけられるなんて、他は春休みのあの一件くらいだろう)

忍「挫折か。かかっ、ついついあのときは膝をついたわ」

忍「そう。挫折。儂は悔しくて、悔しくてなあ」

暦「だろうな」

忍「勘違いするなよ。別にお前様を死なせてしまったことを悔いているんじゃないんじゃからな」

忍「吸血鬼である儂の尊厳にヒビを入れられたことに憤ってるんじゃからな」

忍「お前様が死んじまって、どうしたらいいかわからなくなって茫然自失になってたりするわけがないんじゃからな」

暦「ツンデレはいいから」

忍「そ、そうか……」

暦(落ち込むなよ……そんなお前見てたら僕も落ち込むなよ……)

忍「で、ではハイテンションでいこうかの」

暦「心読みやがった」

忍「最初はぼんやりとした考えじゃった」

――これは嘘、現実ではない。

忍「しかし、次第に理性が湧き、目前に迫られた」

――あるじ様が死んだ。

忍「治癒も望めない」

――もう動かない。

忍「受け入れたくなかった」

――いやだ、いやだ。

忍「頭がひしゃげるほどかきむしり、舌を噛み千切りながら両目両耳を裂いた」

――嘘だ、嘘だ。

忍「しかし、本当」

忍「傷つけた我が身もすぐさま元通り」

――元の通りに戻る。元に戻す?

忍「はじめは時間を巻き戻せばいいのかと思った」

――しかし針が動かせない。

忍「すると、本当になぜか偶然、儂の頭にいくつかのイメージが湧いた」

――圧縮? 創造、破壊、再創造? 縫合、接着……

忍「間を飛び越し、前後を繋ぎ合わせるかんじ」

――なあんだ。

忍「そのとき、儂はこの宇宙の進路のようなものを認識した」

忍「お前様よ、宇宙とはどうなっていると思う?」

暦「えーと、確か楕円形だとは聞いたことがある。それから膨張したり、あと、なんか縮んだりもするんだっけ?」

忍「ふむ、では違う質問をしよう。今、この宇宙は何回目だと思う?」

暦「何回目って……」

暦(そりゃあ、子供心にそんな妄想したことはある。けど……おい、なにニヤニヤしてるんだ忍)

忍「あとこれだけ聞こう。宇宙が死に、また宇宙が生まれたとき、その内容は以前と違えると思うか?」

忍「例えば――吸血鬼に会うた人間が、新たな宇宙においても、そっくり同じ歴史を繰り返す、か」

暦「……は?」

暦(忍が言っているのはこうだ。僕が今生きているこの宇宙。これが何億年だか知らないがいつか消滅し、また新たに宇宙が生まれ――)

暦(太陽系、地球、生命、そして人間が再び生まれる)

暦(そして、歴史。キリストがまた生まれ、源頼朝がやっぱり1192作り、吸血鬼なんかもちゃっかり出現し、僕もやがてとある夫婦の子として誕生)

暦(その『阿良々木暦』は大きくなり、妹もでき、小学~中学を経て高校生になり)

暦(あの宿命的運命的春休みに『キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード』と遭遇する)

暦(そのあとは……)

忍「どうじゃ?」

暦「いや~ないでしょ~」

忍「なにがじゃ」

暦「だぁって、これができちゃったら、ちょっとスケールでかすぎっていうか、チートがすぎるっていうかー。てか、お前時をかける幼女じゃん」

忍「儂が時間移動できるかどうかはまた別の話じゃが、今回は視点がひとつズレておるからな」

暦「まさか……」

忍「ん~? なに、なに?」

暦「……僕からは、ちょっと言えない」

忍「あれー!? でもその口振りはひょっとしてお前様わかっちゃったー!?」

暦「いや、忍、話してほしい」

忍「はーなーしーてーほーしーいー? えーでもどうしよっかなー儂も実はよくわかんないしー」

暦(うぜえ……こいつ、なんだ、この自信は……いや、ハイになっている……)

忍「キングクリムゾン――――――じゃあ、ないぞ」

忍「体感的には確かに時間をぶっ飛ばした」

忍「しかし、儂が実際にやったのは前の宇宙のある地点と、後の宇宙のある地点をつないだ、と言ったほうが正解じゃ」

忍「儂が最初にコレをやったときはお前様が妹御に殺されたあとと、お前様と風呂に入った時をつないだ。気づいたら平然と生前のお前様が儂の髪を洗っておったのでかなり驚いたがな」

忍「そうじゃな、『時間跳躍(タイム・リープ)』とは違う、『時空縫合(カット・アップ)』という感じじゃ」

忍「どうじゃ! 儂、すごくね? てか、無敵じゃね? ヒューホホホホホッ!!」

暦(反則だ。いくらなんでもチートすぎる。いやチートですらない)

忍「きゃっほーっ! 儂、てんさーいっ!」

暦(これじゃ、ほとんど神様じゃないか)

忍「勧誘はあったがのう! 自力でなってしまったわっ! ヒューホホホホホッ!!」

暦「その新しい能力(バァァアアーンッッはわかったが、さっきガハラさんに刺されたときみたいな世界をお前は経験してるわけだな」

忍「時間移動ができぬ以上、時空縫合でお前様を復活させるしかなかったからな。まあ、しかし、宇宙が再誕しても歴史はまったく同じというわけではない、という事実には手を焼いているがな」

暦「じゃあ、別の世界でも僕は死んだりしてるのか!?」

忍「あー、あのツインテールの娘」

暦「八九寺のことか」

忍「あの娘が生身で死んだとき、お前様も自害して逝ってしまったことがあった」

暦「八九寺死んでんの!? それは僕自殺するわ!」

忍「それから、あの蛇の娘」

暦「ま、まさか千石まで」

忍「お前様が孕ませおったから儂がお前様を殺した」

暦「元に戻すんじゃないのかよ!」

忍「いや、次があるからいいかなって」

暦(味をしめてる! だいたいなんで忍に殺されなきゃいけないんだ!)

忍「あとはだな、泳ぎが覚えられず溺死とか、エロ娘と結婚とか携帯食と駆け落ちとかツンデレ娘から臓器移植を受けたでっかい妹御と同棲とかうがああーっ!!」

忍「まったくっ、ろくな世界がなかったわっ!!」

暦「うーん、なかなか興味深い内容だな」

忍「うるさいうるさいうるさい! わ・し・は! 妹御に殺されたお前様が出てくるのを待ってるんじゃっ!」

暦「最初とそっくりそのままの僕をまってるのか? 察するにそれは猫にシェイクスピアうんぬんの話に近そうだぞ」

忍「だから今現在手を焼いていると言っている」

暦「ちなみに、何回つないだんだ?」

忍「……え~と~」

忍「……8回」ボソ

暦「ん?」

忍「……15498回」

暦「Wow」

暦(いや、今のはボケとかではなく。素で出たのに僕もびっくりだ)

暦(ていうか、えー……)

暦「それ、お前が僕を殺した回数とかじゃないだろうな」

忍「違うわ、たわけっ! 儂がお前様を殺した回数は3万は下らんわ」

暦(エンドレスエイトっていうより、終わらない夏休みって感じだった)

暦「それだけやってたら絶対どっか取り零しあるだろぉ……」

忍「儂の目を疑うのか」

暦「だって僕殺しまくってるし。撲殺天使かおまえは」

忍「な~ん~で~もできちゃう妖刀~」

暦「ちょなにするやめ゛め゛め゛め゛め゛め゛ッ!!」

忍「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ~」

暦「……はっ! あぁ、なんだ夢か」

忍「という具合にだな。儂が進化してしまったので、お前様との主従関係も歪んでしまったようじゃ。普通に殺せてるし」

暦「ああ、一応僕が上だったのか。すっかり忘れてた」

忍「しかしのう、まあ儂、今、最強? だけど?」

暦「うぜえ」

忍「どの世界でも皆キャラ設定に大小の変化があったんじゃが、一部ほとんど影響を受けないものがいるようじゃ」

暦「生身の八九寺とか、ガハラさんとかじゃなくて?」

忍「いいかげん知恵も回らなくなりそうじゃが、もしかしたらそのへんにヒントがあるやもしれん」

暦「話変わるけど、時間をつないだとはいえ、お前数万年分年とったんだな」

忍「ほう、レディに年齢の話題とは見上げた度胸」

暦「だって500歳だったんだろ?」

忍「いや、あれは肌年齢」

暦「お若いですねえ!?」

暦「よくもまあ」

忍「なんじゃ、文句あんのかよ」

暦「頑張ってくれて、ありがとな」

忍「……勘違いするな」

暦「そういえば僕はどうなの? 何回目かの僕なのか?」

忍「いいや。お前様は当然本物でもないし、ましてや偽物でもない。儂のスキルで作った影じゃよ。もう、消えてよいぞ」

暦「あ」ホワン

忍「さて、休憩は終わりじゃ」

忍「もーひと踏ん張り、するかのー」

忍「しかし、ここまでしちゃう儂、マジぱないの」

Skit.
Happy End of the World

火憐「火憐だぜ!」
月火「月火だよ!」
火憐「ここで予告編クイズー!」
月火「ここで出すのかクイズー!」
火憐「このスレは終わるのでしょーかー」
月火「あと100もないのに無茶を言うねー」
火憐「お茶がなけりゃへそで茶を沸かせ!」
月火「隠れ傑作少女漫画は『へそで茶をわかす』!」
火憐「もうねむい」
月火「あらら」

月火憐「次回!」

月火憐「……ッ……ッ……」

月火憐「~~~~ッッッ!!!!」

火憐「マカロニほうれん荘みたいに終われないな」
月火「たまりませんわん」

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