シャットアウラSS (63)


注意事項

・映画ネタバレ
・原作レイプ
・口調がおかしいかもしれない
・SSどころか小説すらはじめてなのでいろいろ至らない点はご容赦ください


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・鳴護アリサ

 高校一年生。レベル0で歌うことが大好きな少女。
 3年前からの記憶が無い。
 その正体は、オリオン号事件の際にシャットアウラの祈りが奇跡として具現化したもの。

 魔術サイドの連中からは「聖人」あるいはそれと同等の力を持っているとされ、監視されていた。

 「ARISA」として歌手活動をしており、路上ライブ時代から話題になっていたが、正式な歌手デビューともに人気が爆発。またたく間に時の人となった。

 エンデュミオンの事件の際、シャットアウラと融合している。

 当麻に対し慕情を抱いていた。

・シャットアウラ=セクウェンツィア

 学園都市に数ある私設治安維持特殊部隊の一つ、「黒鴉部隊」の隊長を務めている少女。
 能力はレベル4の「希土拡張(アースパレット)」。その能力のめずらしさから、霧が丘女学院に在籍している。

 身体強化のための処理が施されたボディースーツを常に着用していた。

 秩序を何よりも重んじる性格。
 オリオン号事件の被害者の一人で、その際に「音の高低とリズムを認識する機能」を損失してしまい、以来音楽は耳を汚す醜悪なノイズとして嫌っていた。

 父はディダロス=セクウェンツィア。オリオン号事件唯一の犠牲者。当時飛行機に乗っていた乗員乗客88名で、ディダロスが死亡したことにより正確な生存者は87名であったが、墜落途中に生まれたアリサが88人目として数えられてしまったため、勘違いした報道が先走り、世間が賑わっている中、「奇跡」という文句のため彼の存在はひた隠しにされてしまった。それにより、シャットアウラは「奇跡」という言葉を嫌悪している。

 エンデュミオンの事件の際、オリオン号事件の時の記憶を思い出し、アリサと再び一つに戻ることによって起こした歪曲で、「エンデュミオン崩壊が回避される」という奇跡を引き起こした。

 その後、彼女の行方は不明であったが、実は冥土返しの病院で保護されていた。

 年齢は、同一人物であるアリサが高校一年生であるため、おそらくそれと同一。


 学園都市を震撼させたエンデュミオンの一件から、十日が過ぎた。
 ここはとある病院の一室。
 黒髪の少女は、長い眠りから目を覚ました。

 彼女の名前はシャットアウラ=セクウェンツィア。
 学園都市に数ある私設治安維持特殊部隊の一つ、「黒鴉部隊」の隊長を務めていた。

「私は……助かったのか?」

 エンデュミオンは崩壊していない。窓の外の様子を見るに、それは明らかだった。
 さらに、自分までも助かってしまうとは、まさに——

「まさに奇跡だな」

 ハハ、と自嘲気味にシャットアウラは言った。
 「奇跡」という言葉は、シャットアウラが最も嫌悪する言葉だったのだ。
 しかし、あの日あの人達のお陰で、今は信じてもいいと思えるようになっている。

「——は、そうだ、今世界はどうなっている? エンデュミオン崩壊は回避できたみたいだが、レディリーは? 黒鴉部隊は? そして……上条当麻は?」

 次々に疑問が沸き起こった。
 シャットアウラは重い体を無理やり起こし、点滴スタンドにしがみつきながら、立ち上がった。
 体がこんなに重いなんて、と愚痴をこぼしながらも、その足は懸命に前へ踏み出していった。
 そして、扉の取っ手に手をかけようとした時、不意に扉が開いた。


「おやおや、目が覚めたんだね?」

 その正体は、カエル顔の医者だった。
 シャットアウラでさえ彼のことを知っている。「冥土帰し」の異名をとる、凄腕の医者だ。以前に隊員が世話になったが、その技術は眼を見張るものがあった。
 シャットアウラは冥土帰し止められ、後退していく。

「気持ちはわかるがね、君はあれから十日間も眠っていたんだよ。無理をしてはいけない」
「な、十日?!」

 シャットアウラは愕然とした。

「世界は平和だよ。あれから大覇星祭も無事に行われた。あの一件はまさに、奇跡、だったね」
「そ、そう……ですか……」
「少し待ってなさい。今食事を用意させよう。そして、リハビリだ」

 そういって冥土帰しはシャットアウラをベッドに座らせたあと、退室していった。

「そうか……十日も眠っていたのか……、通りで体が重いはずだ」

 シャットアウラの体は、痩せていた。もともと細身ではあったが、それでも見てわかるほどに。

「これでは仕事に支障が……」

 と言いかけた所で、はたと気づいた。
 あれだけのことがあったのだ。黒鴉部隊が現在も機能していると思えない。
 私達を雇っていたオービット・ポータルも、もう終わりだろう。
 隊員たちがどうなったかは気になるが、今は連絡の手段がない。


 しばらくして、食事を持った看護婦が現れた。
 シャットアウラは礼を言い、看護婦が退室するのを見届けると、思わずがっついてしまう。
 なにせ腹が減っていたのだ。久々の食事。ついつい行儀を忘れてしまう。
 もう食べ終わってしまった。病院食でもとても美味しく感じた。
 思えば三年前のあの日以来、食事をまともに取っていなかった。いつも片手間だった。
 もう、戦わなくていいのか。これからは、普通の女の子として生きていけるのだろうか。
 いろんなことを考えていると、どこからか音楽が聞こえた。ピアノの音だ。今は、音楽を認識できるようになったらしい。
 それを聴きながら、シャットアウラの目からは涙がこぼれていた。

「ああ、音楽とは、素晴らしいものなんだな」

 シャットアウラは、その音楽が途切れるまで、目を閉じて、聴きいっていた。



 あのあと、リハビリを済ませた。
 もともと鍛えていた甲斐あってか、すぐに日常に支障がない程度には回復した。
 もう退院しても問題無いだろうが、冥土帰しのすすめで、今日は病院に泊まることになった。

 夜。病室に一人。久しぶりにシャワーを浴びたシャットアウラはベッドに横たわり、天井を見つめていた。
 明日には退院する。それからどうしようか。やはり、上条当麻のもとへ出向かって、改めて謝罪と礼を言うべきか。
 そんなことを考えていると、ふいに声が聞こえた。まるで頭のなかに直接話しかけているような、テレパスのような感覚だった。

(誰だ?)

 シャットアウラはテレパスの使い手ではないが、思考内で話しかけてみる。
 声は段々鮮明になっていき、聞き取れるようになった。
 この声、覚えがある。シャットアウラはさらに問うた。

(お前……まさか鳴護アリサか?)

 鳴護アリサ。エンデュミオンの一件の際に、シャットアウラと融合した少女。
 その正体は三年前のオリオン号事件の際、シャットアウラの祈りが奇跡として具現化した存在であり、あの日、すべてを思い出した二人は、再び一つとなっていた。

(やっと……やっと話せたね)
(な、なぜ、どういうことだ?)

 シャットアウラは困惑した。

(ずっと話しかけてたんだよ。気づいてもらえたのは、さっきみたいだけど)
(ずっと? そうか、すまない。あれから常に何か考えてたからな気が回らなかった)
(ううん、いいの。わたしこそ、勝手にシャットアウラちゃんの体に居座っちゃってごめんね)
(な、何を言うか。お前は私なんだ。謝ることじゃない)
(ふふ、ありがとう。シャットアウラちゃんて、思ってたよりずっと優しい人だったんだね)
「な……!」

 シャットアウラはいきなり褒められて恥ずかしさのあまり赤面して声を上げてしまう。

(本当は、このまま黙っていようかなと思ってたんだけど、もう一度だけ当麻くんに会いたくて……)
(当麻……上条当麻か)
(お話できないっていうのはわかってるんだけど、あれから無事なのか、一目だけでも見たくて)
(そうか……分かった。私も近々会いに行こうと思っていたんだ。どうせやることもないし、明日にでも行こう)
(……いいの?)
(何を遠慮することがあるか。お前は私なんだ)
(シャットアウラちゃん、さっきとおんなじ事言ってる)
(う、うるさい、ほら、さっさと寝るぞ)
(ふふふ、はぁい、おやすみなさい)
(ああ、おやすみ)

 それから意識が閉じるまで、シャットアウラはこの現象についてずっと考えていた。
 そしてこう推測した。
 おそらく、元々は一人の人間とはいえ、三年近くも別々に過ごしていたんだ。その自我が、残ってしまっているのだろう、と。
 だがシャットアウラは、むしろ感謝していた。本当は、とても不安だったのだ。そんなときに、誰かが一緒にいてくれることのなんと幸福なことか。
 シャットアウラは穏やかな笑みを浮かべながら、眠りについた。

今回はここまでです。2,3日に一回ずつくらいで投下していきます。良かったら見てください


シャットアウラは好きなキャラだし期待してる

こんばんわ。結構溜まったので投下していきます。


「はあ?! イタリア?!」

 翌日、シャットアウラは上条の所在を聞いて、声をあげていた。

「間が悪かったね、ちょうど昨日からだよ」
「そんな……」

 おもわず唖然としてしまう。

(し、しかたないよ、シャットアウラちゃん。また今度にしよう?)

 自分の中の鳴護アリサがそう語りかけた。その声はやはり、落胆しているようだった。
 が、こればかりは仕方ない。

 シャットアウラは退院許可を得て、一旦自宅に帰ることにした。

 久しぶりに入る家は、少し埃臭かった。
 ベッドにテーブル、テレビ、パソコン。必要最低限なものしか揃えていない殺風景な部屋だが、やはり言い知れぬ安心感があった。

(わあ、ここがシャットアウラちゃんの部屋かあ)
(あ、あまり言及しないでくれ。寂しい感じなのはわかってる)
(べつに、そんなつもりはないんだけど……)
(それで、このあとはどうしようか)
(このあと?)
(上条当麻にも会えなくなったからな。どこか行きたいところがあるなら、連れて行ってもいい)
(ほんと? うーん、どうしよっかなあ)

 アリサはしばらく考えにふけり、シャットアウラはテレビの画面をぼうっと見ていた。
 数分後、アリサは「あ!」と何かひらめいたように声を上げた。
 テレパスのような感覚とはいえ、いきなり声を上げられると驚いてしまう。
 シャットアウラは平静を保ちつつも、アリサの声に意識を向けた。

(な、なんだ? 何か思いついたのか?)
(うん、あのね、カラオケとかどうかな!)
(……は?)
(シャットアウラちゃん、この前一緒に歌った時とっても上手だったもの)
(い、いや、私は歌は……それに音楽はあまり好きじゃないというか)
(嘘。昨日ピアノ聴いて泣いてたじゃない)
「む?! ゴホ、ゴホ……」

 恥ずかしいところを持ち上げられて、思わずむせこんでしまった。

(お、お前見てたのか?!)
(見ていたっていうか、わたしはあなたなんだよ?)
(うぐ……)

 シャットアウラは恥ずかしさに耐え切れずしばらく悶えるが、しばらくして覚悟を決めたように言った。

(わ、分かった。行こう、カラオケに)
(ほんと?!)
(ああ、行きたいところがあるなら連れて行ってやると言ったしな)
(わぁい、ありがとうシャットアウラちゃん!)
(あ、でも持ち合わせがないな。まずは金を下ろしに行こう)


(わ、わぁ?! すごい金額!)

 ATMに表示されている銀行残高を見て、アリサは驚愕の声を上げた。

(そうか? あまり使ってないしな。ところで、カラオケというのはいくら位かかるんだ?)
(うーん、一人なら千円あれば十分だと思うけど)
(随分安いな。まあ、いくらか余分に持っていったほうが無難か)

 ATMを操作してお金を取り出し、銀行を後に。
 第七学区を出歩くことがあまりないシャットアウラは、アリサの案内を頼りに、街を歩いた。
 闇に近い側に身を寄せていたシャットアウラにとって、街はあまりにも平和だった。
 あれはなんの店だろう、あれはどういった食べ物なんだろう、そんなふうに一面を眺めながら、そういえばあの日まではこうして店を眺めて歩くことすらしていなかったな、と思いふけっていた。

(シャットアウラちゃん、ここだよ!)

 ふいにアリサに呼ばれて、シャットアウラは我に返った。
 危うくカラオケ店を通り過ぎるところだった。
 随分視覚的にうるさい店だな、と思いながら、店に入る。

「いらっしゃいませ。ご利用はお一人様ですか?」
「あ、ああ」
「プランはいかが致しましょう」
「プラン?」

 シャットアウラはカラオケ店に入るのが初めてなため、何もわからずに困惑してしまっていた。
 そこに、アリサがフォローを入れる。

(シャットアウラちゃん、二時間ドリンクバーでいいんじゃないかな?)
「じゃあそれで」
「はい?」
「あっ、いや、二時間ドリンクバーで」
「かしこまりました。それでは、お部屋は17番になります」
「ど,どうも……」

 店員から伝票とマイクが入ったかご、ドリンクのコップを受け取ると、適当な飲み物を入れて、そそくさと17番部屋に入っていった。

 部屋はいかにも少人数用の手狭い感じだった。
 なんとなく気恥ずかしいので、ドアから覗かれない位置にシャットアウラは座った。

(それで、どうすればいいんだ?)
(そこにある機械で歌いたい曲を選択して送信するんだよ)
(こ、こうか)

 慣れない手つきで機械を操作して、とりあえず記憶に残っている曲を選択した。

(も、もりのくまさんってシャットアウラちゃん……)
(し、仕方ないだろう! 思いつくのがこれしかなかったんだ! 慣らしだ、慣らし)

 皆無といっていいほど歌に触れて来なかったシャットアウラには、歌に関する知識は殆ど無い。
 そして、経験も——。

 データが送信されると画面が切り替わり、可愛らしい音楽が流れる。
 それに相反して繰り出される強烈な歌声は、もちろん、シャットアウラのものだった。

「あるうぅひいい! もりのぉなかああ! くまさんにぃいいい! であああったああ!」
(ちょ、シャットアウラちゃんストー—ップ!)
「はなさああ……なんだ」
(なんだじゃないでしょ! 言っちゃ悪いけど、音痴なんてレベルじゃないよ!?)
「」
(リズムも走り過ぎだし! ほら、画面に写ってる字幕の色が変わっていくでしょ? あれに合わせて歌うの!)
「あ、ああ」
(わたしも一緒に歌うから、さんはい!)
「くまさあんんのお」
(音量ももっと抑えて!)
「……ゆうこーとーにゃ、おじょーおーさーん、おにげーなーさい」
(そうそう、上手上手)
「そ、そうか?」
(うん、その調子でいこ!)

 その後なんとか歌いきり、カラオケの採点機能で表示された結果を見たシャットアウラは椅子に手をついた。

 『採点結果:30点。全体的にリズムと音程が合っていません。頑張りましょう』

(す、すごい、30点なんて初めて見たよ……この機会、どんなに適当に歌ってたって60点はもらえちゃうのに……)
「もう……帰りたい……」
(ま、まだまだこれからだよ! 頑張って練習したらすぐ上手くなれるって! わたしも教えてあげるから!)
「どうせ私には才能が無いんだ……」
(そ、それにしてもおかしいなあ。あの時はあんなに上手く歌えてたのに)
「あの歌は、私が作ったものでもあるし、お前に合わせて歌っていたから……」
(……もしかして! シャットアウラちゃん、「ARISA」で歌手検索してみてよ!)
「ARISA……? わ、わかった」

 言われるがまま、機械を操作して検索をかける。
 ヒットした歌手候補を見て、アリサは嬉しそうな声を上げた。

(わたしの歌がはいってる! すごい! カラオケで歌えるようになってるなんて!)
「ああ、そういえばお前、歌手をやっていたんだったか」
(すごーい、ほんとにプロって感じ! あ、でも5曲しか入ってないんだ。まあ、OVERは歌詞発表してなかったしね)
「……で、どうしろと」
(あ、だからね、わたしの歌ならシャットアウラちゃん歌えるんじゃないかな? あの時と一緒で)
「……そうか、なるほど」

 とりあえず、適当に選曲してみる。
 マイクを手に取って立ち上がると、画面が切り替わり曲が始まろうとしている
 すると、シャットアウラの雰囲気が変わった。

上げたほうがいいかな

「今夜は星が綺麗ね だからきっと——」

 いける! シャットアウラは確かな手応えを感じていた。
 アリサも、わぁ、と声を漏らす。

「届く————!」

 それから、無我夢中で歌った。音の高低やリズムどころではない、歌ったことがないはずなのに、歌詞でさえも自然に浮かんで発している。エンデュミオンであの時アリサと歌った時の感覚と同じだった。
 アリサすらも聴き入っていた。ドアの外で、立ち聞きしている人もいた。
 シャットアウラの歌声は、アリサにも劣らぬ、まさしく「奇跡の歌声」だった。

 『採点結果:98点。堂々たる素晴らしい歌いっぷりです』

 歌い終わって採点結果を見たシャットアウラは、そのまま椅子に崩れた。
 まさに全身全霊で歌っていたのだ。

(すごいよシャットアウラちゃん! あんなに歌えるなんて!)
「自分でも驚いている」

 シャットアウラはいまいち放心状態であった。
 テーブルに置いてあるジュースを一気に飲み干して落ち着くと、なにやら外が騒がしいのに気づいた。
 シャットアウラはドアを開けて様子を覗くと、部屋の前に人集りができていた。
 その人達はシャットアウラにむかって称賛の拍手を送っていた。

 シャットアウラは恥ずかしくなって勢いよくドアを閉めた。


 シャットアウラはいまいち放心状態であった。
 テーブルに置いてあるジュースを一気に飲み干して落ち着くと、なにやら外が騒がしいのに気づいた。
 シャットアウラはドアを開けて様子を覗くと、部屋の前に人集りができていた。
 その人達はシャットアウラにむかって称賛の拍手を送っていた。

 シャットアウラは恥ずかしくなって勢いよくドアを閉めた。しかし、内心まんざらでもなかった。

(これだよ)
「?」
(歌に想いを乗せて一生懸命歌うとね、それがみんなに届いて、みんなが感動してくれて、今みたいに心からの拍手と歓声を送ってくれるの。これがわたし、やめられなくって歌ってたんだよね)
「……ああ、分かる気がするよ」
(シャットアウラちゃん)
「なんだ?」
(歌って、いいものでしょ?)
「……そうだな」

 シャットアウラは再びドアを開くと、観衆に頭を下げて礼を言った。
 それからもしばらく拍手は止まなかったが、やがて次第に騒ぎは収まり、皆それぞれの部屋へと戻っていった。

「……さ、歌おうか!」

 ドアを閉めて、シャットアウラは再びマイクを取ると、残りの曲を片っ端から送信して、夢中で歌った。
 結局、二時間の予定を返上して、日が暮れるまで時間延長を繰り返していた。


 携帯の着信に気がついたのは、カラオケ店を出てからだった。
 相手は病院……つまり冥土帰しからである。
 シャットアウラは急いで電話をかけ、冥土帰しに出てもらうように頼んだ。

「ああ、もしもし、私だよ。なんだか随分ひどい声をしているね。カラオケにでも行ってたのかい?」
「ああ、いえ……それでなんの要件で私に?」
「そうそう、上条当麻くんだがね、日本に帰ってきているよ。本当は昼のうちに帰ってきていたんだがね。君に連絡がつかなかったんだ」

 ぐあ、とシャットアウラは衝撃を受けた。
 まさかカラオケをして連絡を逃すなんて。

「今日はもう遅いから会うのは明日にしなさい。それじゃあ、忙しいので切るよ」
「はい、ありがとうございました」

 連絡を切り、携帯をしまうと、シャットアウラは所在無さげにアリサに話しかけた。

(すまない、せっかく会えそうだったのに、チャンスを潰してしまった)
(いいのいいの。当麻くんには明日にだって会えるし、シャットアウラちゃんが歌を気に入ってくれて嬉しいよ。それにしてもよく何時間もわたしの曲ばかり歌ってたね)
(まぁ、他に知ってる曲もなかったしな。それに……)
(それに?)
(とてもいい曲だったから)
(シャットアウラちゃん……)
(さ、今日は帰ろう。あ、その前に夜食を買わなくては)
(せっかくだから外食にしようよ—。わたし、Joseph'sのカルボナーラが食べたいな)
(お前、食事できるのか?)
(私はシャットアウラちゃんだから、シャットアウラちゃんが口にしたものの味が伝わるんだよ。まだ病院食しか食べてないじゃない。もっと美味しいものが食べたいな)
(それって、私が食べたいものを食べられないじゃないか。……ま、いいか。特に好きなものがあるわけじゃないし)
(やった! シャットアウラちゃん大好き!)

 こうしてふたりは、その後ファミレスで食事を済ませた後、帰宅して眠りについた。

今日はここまで。春休みで結構暇なので今週中には完結しちゃうかもです。おやすみなさい。

乙?この調子早く投稿してくれ?舞ってる

>>8 >>20 >>21 >>22
ありがとうございます。ちなみに僕はアリサ派です。

これは期待!
シャットアウラ派だなぁ 俺は アリサも可愛かったけど

超期待!
黒鴉部隊の描写もあるのかなぁ

こんにちは。投下します。

>>24 >>25 >>26 ありがとうございます。 シャットアウラも好きです。一発では本当に惜しいの で無理やり原作に絡ませたいと思って書いてます。 黒鴉部隊の描写は……ないかなあ。。。

問題が起きたのは昼ごろだった。 シャットアウラは昼食を済ませ、いざ当麻の家 に行こうとした所で、アリサにストップを止めら れたのだ。

(ちょ、ちょっと、その服、昨日の着回しじゃな い!) (問題無いだろう。夜のうちに洗濯と乾燥をかけ ておいたし)

シャットアウラは、私服を持っていない。 今までは身体強化用のスーツか下着、それと学 校の制服やジャージしかなかったのだ。 今着ている服は病院側が用意してくれたジーパ ンと半袖のシャツだった。

(ヘイヘイ、フーリッシュガール。仮にも年頃の 女の子が、男の子に会いに行くっていうのに、そ んな調子じゃだめでしょう?) (そんなこと言ったって……他に服とか持ってない し) (そーれーに、声も昨日からガラガラじゃない) 「そんなこと……あるかな」 (会いに行くのは明日に延期しましょう! 今日 はシャットアウラちゃんをかわいくして、喉も休 ませないと) (だ、だけど、会いに行きたいと言ったのはお前 の) (だーめ、そんな状態で当麻くんのところに行か せられるもんですか。さ、買い物に行こう?) (お、おい……)

シャットアウラはアリサの言動に置いてきぼり にされつつも、姉妹がいたらこんなかんじかな、 と、大人しく従うことにするのであった。

なんかProxy規制? に引っかかってますとか言われてパソコンから書き込めないのでスマホからコピペで書き込んでみたんですが、おかしいですね。
パソコン初心者なのでちょっと時間かかるかもしれませんが治るようにググってみます。すみませんが今回はこれで。次回また上げ直します

下敷きネタできたか(笑)
パソコン直るといいですね

乙 舞ってるぜぃ!

>>1です。
どうやらk5が暴れて一時的に焼かれているようです。
解除まで待てとのことなので、時間はかかりそうですがしばらくお待ちください。
このスレは落とさないでいてくれると助かります。

あげるべ

早く直せよ!
舞ってるぜぃ!

>>30 >>31 >>33 >>34
ありがとうございます。
同じプロバイダを使ってる荒らしの規制に巻き込まれたようでパソコンから投稿できなかったのですが、いつまでたっても規制解除されないのですこし手間ですがスマホから投稿します。大変お待たせいたしました。

 問題が起きたのは昼ごろだった。
 シャットアウラは昼食を済ませ、いざ当麻の家に行こうとした所で、アリサに止められたのだ。

(ちょ、ちょっと、その服、昨日の着回しじゃない!)
(問題無いだろう。夜のうちに洗濯と乾燥をかけ ておいたし)

 シャットアウラは、私服を持っていない。
 今までは身体強化用のスーツか下着、それと学校の制服やジャージしかなかったのだ。
 今着ている服は病院側が用意してくれたジーパンと半袖のシャツだった。

(ヘイヘイ、フーリッシュガール。仮にも年頃の 女の子が、男の子に会いに行くっていうのに、そんな調子じゃだめでしょう?)
(そんなこと言ったって……他に服とか持ってないし)
(そーれーに、声も昨日からガラガラじゃない)
「そんなこと……あるかな」
(会いに行くのは明日に延期しましょう! 今日 はシャットアウラちゃんをかわいくして、喉も休ませないと)
(だ、だけど、会いに行きたいと言ったのはお前の)
(だーめ、そんな状態で当麻くんのところに行かせられるもんですか。さ、買い物に行こう?)
(お、おい……)

 シャットアウラはアリサの言動に置いてきぼりにされつつも、姉妹がいたらこんなかんじかな、 と、大人しく従うことにするのであった。

第七学区・商店街

 シャットアウラは洋服店に来ていた。
 アリサの言うとおりに服を手に取っていくが、明らかに女の子然とした服で、シャットアウラが躊躇するものばか りだった。

(も、もっと大人しめの服を選んでくれ。あと出来れば暗色系で)
(えー、シャットアウラちゃんかわいいからいいと思 うんだけど……あ、あのスカートとか良い感じだと思うんだけど!)
(ス、スカート?! ダメダメ、絶対却下だ!)
(ぜったい似合うと思うんだけどなぁ)

 その後色々と悶着あったものの、数通りの服を買い揃え、喫茶店で一息ついていた。

(こんなに買い物をしたのは初めてだ……)
(シャットアウラちゃんが着てるとこ、早く見てみたいなあ)
(そ、そんなに大したものじゃないから期待はするな)

 出されたコーヒーを啜りつつ時計を確かめる。針は二時に差し掛かっていた。
 シャットアウラとしてはこのまま当麻に会いに行ってしまいたいところだが、アリサがそうさせない。
 シャットアウラは、別に服装や声くらいどうってことないだろうに、女というのはわからない、と思っていた。

(シャットアウラちゃん、これからどうしよっか)
(特にやることもないが)
(このままおうちに帰っちゃってもつまらないでしょ?)
(そうだな……その辺を少し歩いてみるか)

洋服が入ってる少し大きめな紙袋を持って、喫茶店を発った。

 シャットアウラにとって第七学区は新鮮だった。
 自分の在籍する霧が丘女学院が構える第十八学区でさえそうそう出歩かないのだ。しかもここはあそこと違っていろいろな物がある。
 ぶらぶらと街を歩いていると、シャットアウラの目にとまるものがあった。

(なあ、あんなところに銃が置いてあるが)
(えっ?!……ああ、あれはゲームだよ。次々に現れていく敵を倒していくの)
(へえ、ではやってみようか)

 シャットアウラはその筐体に歩み寄り、ポケットから小銭を取り出して投入する。
 難易度選択が表示されるが、即座に最高難度を撃ち抜いた。

「リロードは画面の外に向かってトリガーを引く、危なくなったらこのペダルを踏んで隠れる……なるほど」
(シャットアウラちゃん、頑張って!)
(任せろ)

 カウントダウンが開始され、シャットアウラは静かにその時を待った。
 『Ready Go!!』の掛け声がかかるとともに、画面の あちこちから敵が現れた。
 ——が、それらはものの数秒で撃たれ、斃れる。

「飛び出してから構え始めるとは随分悠長だな。その程度では私に傷ひとつ与えられんぞ」
(シャ、シャットアウラちゃん?)
「あいにくハンドガンは私の最も得意な武器だ。貴様らにはここで死んでもらう」
(シャットアウラちゃん?! こ、これゲームだからそんなにムキにならなくても……)
(話しかけるな!!)
(ごめんなさいっ!)

 戦いは一方的だった。
 マシンガンを装備したひときわ丈夫そうな大男は眉間を狙って瞬殺。
 もはやドットの点にしか見えないスナイパーの銃撃をかわし、寸分違わずそれを撃ち抜いた。
 湧き出てくる雑魚は言わずもがな。 このままシャットアウラの優位に運ぶかと思われた。

 しかし、

「な、なんだこれは?!」
(特殊アイテムみたい。ハンドガンが一時的にマシンガンみたく連射できたりとか)
(そんな銃があるか!!)

 そこは最高難度、一瞬の動揺が命取り。
 瞬く間にシャットアウラのヒットポイントは無くなり、『GAME OVER』の文字が表示された。


「っく……」
(ど、どんまいシャットアウラちゃん……他のゲームとかもやってみようよ)
(ああ……)

 シャットアウラはあたりを見回し、気になるゲームがないか探ってみる。
 すると、ひとつ興味を引くものを見つけた。

(UFOキャッチャー?)
(あのアームで景品を取るんだよ)
(ふぅん)
(わたし、こう見えて結構得意だったんだよ。教えてあげるからやってみよ?)
(分かった)

 小銭を筐体に入れて、アリサの指示を待った。

(まずは一つ目のボタン。これでアームを横移動させるんだよ。あのぬいぐるみに合うところまで持って行ってみて)
(こ、こうか)
(うまいうまい。そしたら二つ目のボタン。これで今度は縦に動かすんだよ)
(おお、そうしてぬいぐるみの頭上まで持っていくのか)
(そう、そして三つ目。アームが回転するから、ぬいぐるみに合わせてとりやすい角度で止めるんだけど…… 今!)
「!」

 アリサの掛け声に反応してボタンを押した。
 アームはぬいぐるみの両脇に入り込み、景品口までぬいぐるみを運んでいく。

(おお……こうして景品を得るのか)
(やったね!)
(それにしてもこの熊、小さいとはいえ妙にリアルだな……)
(そう? わたし本物の熊見たことないからわかんないけど)
(えっ)
(えっ)
「おねーちゃん、上手だったね—!」

 ふいに後ろから声がして、シャットアウラは振り返った。
 そこでは、小さな女の子がきらきらと目を輝かせて、シャットアウラを見あげていた。


(わぁ、可愛い女の子)
(まあ、そうだな)

シャットアウラは屈んで女の子に視線を合わせると、持っていたぬいぐるみを差し出した。

「やろう」
「いいの?!」
「ああ、私が持っていても仕方ないしな」
「ありがとうおねえちゃん!」

 屈託のない笑顔に、つい顔がほころぶ。

(シャットアウラちゃん、撫でてみたらどうかな?)
(ええっ、それはちょっと……)
(大丈夫だよ。それにほら、こんなにかわいい)
(……)

 シャットアウラは女の子の頭に手を伸ばしてみる。 ぽんぽん、とふれて、少し撫でてみる。

「えへへ〜」
(! ……か、かわいい)
(でしょ?)

 髪が乱れないように優しく撫でた。
 シャットアウラは、子供も悪くないかな、と思った。

 あれから他の子供達にもねだられて、戸惑いながらも、アリサの補助を受けてみんなに取ってあげた。
 めんどくさそうな素振りを見せていたが、きっちり全員分の頭を撫でていたのは内緒だ。


帰り道、シャットアウラとアリサは夕日を見ながら 歩いていた。

(シャットアウラちゃん、保母さんになればいいのに)
(じょ、冗談じゃない、あんな子どもたちの面倒を毎日見てられるか)
(そう? シャットアウラちゃん、すごく楽しそうだったけど)
(う、うるさい、さっさと帰るぞ。ほら、今日の晩御 飯は何がいい?ついでに明日の朝と昼の食事も考えなきゃな……)
(明日の昼……そうだ!)
(な、なんだ?悪い予感しかしないんだが)
(明日は当麻くんにお弁当を作っていこう!)
(断るっ!!)
(そ、即答……)
(いいいくらなんでも、そこまでしてやる義理はないだろう!! それに私は、料理なんてできない)
(レシピを見てやれば、シャットアウラちゃんなら大丈夫だよ! おにぎりくらいは作れるでしょ?)
(し、しかしあいつが食べてくれるかどうか……)
(当麻くんなら、たとえお腹いっぱいだって食べてくれるよ。それにインデックスちゃんもいるし)
(インデックス?)
(私の友達。すごくよく食べる子なんだよ)
(そうか……しかし、うーん、まあ)
(ダメ?)
(……そんな風に言われたら、断る私が悪いみたいじゃ ないか。はぁ、わかったよ。作ればいいんだろ)
(ふふ、じゃあ食材を買いに行こうか。やっぱり、定番と言ったら卵焼きだよね……)
(……たこさんウィンナーとか)
(たこさんって、結構かわいい趣味してるね)
(ううううるさい! なんとなく言ってみただけだ)

今回はここまでです。
今日からバイト三連勤なのでペース落ちるかもです……。
よろしければ、お待ちください。

おつ!
シャットアウラかわええ

乙!
シャットアウラがヤバい(笑) 可愛い(笑)
バイト頑張るんだぜぃ!

にゅ〜
乙ぅ〜
シャットアウラかぁわいぃ〜

こんにちは、投下します。文がかなり駆け足になりますが、ラストまで上げます。

>>42 >>43 >>44
ありがとうございます!

(し、シャットアウラちゃん……)
「これは……」

 スーパーマーケットで食材を買ってから帰宅後、ふたりは練習がてらに晩御飯を作っていた。が、その結果は散々であった。

 卵焼き、黒焦げ。
 ハンバーグ、全壊。
 おにぎりは強く握られすぎて崩れているし、たこさんウィンナーは、もはやたこではなかった。

「やはり私には向いてないんじゃ……」
(は、初めてなんだから仕方ないよ!! もっと頑張ろ?)
「もうやだ……」

 若干泣き顔のシャットアウラを必至に慰めるアリサ。

(た、食べてみようよ! もしかしたら、美味しいか もしれないよ?)
「こ、これをか……?」

 卵焼きをひとつとって口に運ぶ。

「甘っ!!」
(やっぱり砂糖入れすぎたかな……)
「こ、こんなので大丈夫なのか……?」
(もう一回練習してみよっか……)
「ええっ、これもう一回やるのか?」
(それとも、当麻くんに食べさせる? 黒焦げ弁当)
「……練習します」

 その後、ふたりの奮闘は深夜まで続くのだった……。

 時計の針は十二時に差し掛かっていた。寝坊である。
 あの後深夜まで練習して、なんとか食べさせられるレベルまで上達したシャットアウラは、疲れのあまり寝過ぎてしまったのだ。

(だ、大丈夫? 明日にしちゃう?)
「いや、今日行こう」

 まず台所に立って米を炊いた。
 その後シャットアウラは、昨日シャワーを浴びてないことに気づいて、風呂場に向かった。

 シャツとズボンを脱いで洗濯機に放り込む。
 次にタオルと下着を取り出し、適当なところへ置いておく。

(シャットアウラちゃん、もっとかわいい下着つければいいのに)
「う、うるさい!」

 給湯温度を熱めに設定して、ボタンを押した。

「ひゃっ」

 初めは冷たい水が出てくるのを失念していた。
 不意の攻撃に思わず声を出してしまう。

「ん……」

 徐々に水が温かくなっていって、心地良い感覚に包まれる。

(シャットアウラちゃんって、綺麗な髪してるよね)
「そうか?」
(なにかしてるの?)
「いや、特に何も。ほったらかしてるせいで量も長さも尋常じゃないが」
(えーうらやましい! わたしくせっ毛だから大変なんだよね……)
「む、胸はお前のほうが大きかったじゃないか……」
(ん? なにか言った?)
「なんでもないっ!」

 手短にシャワーを済ませて、体を拭いた。
パネルを操作して、ドライヤーをかける。
あらかた乾いたところで、下着をはいて台所に向かう。

 急速炊飯に設定していたが、それでも後十五分はかかるらしい。
 先におかずを作ってしまうことにする。レシピは暗記していた。
 一晩とは思えないほどの上達ぶりを見せ、手際よく 弁当箱の詰めていく。

「こんなものか」
(上達したね—)
「覚えてしまえば簡単だ」

 その後炊きあがった米でおにぎりを作り、弁当を手頃なミニトートに入れる。
 昨日アリサに選んでもらった服を着て、準備を終えた。

(やっぱりかわいい!!)
「そう……かな」
(うん! すごく似合ってるよ!)

 鏡に向かってもう一度身だしなみを確認し、家をあとにする。

 バスに乗って第七学区に降り立った。

(さて、上条当麻の家へ向かうわけだが)
(うん)
(……うん、じゃなくてだな)
(?)
(奴の家を知っているのはお前だけだろう!)
(あ、そうだったね! ごめんごめん)
(まったく、しっかりしてくれ……)
(……)
(どうした?)
(当麻くんの家って、どうやっていくんだったっけ)
(……は?)

 当麻の住む第七学区は、学園都市トップレベルの広さを誇る。
 もともとこの辺りの地理に詳しくないアリサは、当麻の家への道順を忘れてしまっていた。

(あの医者なら知ってるかもしれないっと思ったが、 連絡がつかないな……)
(ご、ごめんね……)
(いや、事前に確認しなかった私にも落ち度はある。 こうなったらお前の記憶を頼りに探してみよう)
(う、うん)

 こうして二人は、しばらく第七学区を練り歩いて見 ることとなった。

        *

「つ、ついた……」

 アリサのわずかな記憶を頼りに、シャットアウラはついに目的地へとたどり着いた。

「三時を回ってるじゃないか……」
(本当にごめんね、シャットアウラちゃん……)
「いい、気にするな。それより、この部屋で合ってるんだな?」
(うん、ほら、表札にも「上条」ってあるし)
「いよいよだな……」

 緊張の面持ちで、シャットアウラはインターホンを押した。

「…………。……?」
(あ、もしかして)

 もう一度インターホンを押すが、応答はない。

(留守……?)
「はぁあ……」

 シャットアウラはついに座り込んでしまった。
  ここまでの苦労が、全て無駄になったのである。

「もう帰りたい……」
「お前、この家に何か用かー?」
「?」

 落ち込んでふさぎかかっていると、後ろから声をかけられた。
 振り返って見るとそこにいたのは、清掃ロボットにのってくるくると回転しているメイド姿の少女だった。

「ここの家主なら今は留守だぞー? あのシスターと二人揃って出かけてるってことは、多分遅くなるかもなー」
「そ、そうか……」
「なんならあたしの部屋で待つかー? いや、正確には兄貴の部屋だけどなー」
「いや、いい。しばらく時間を潰してからまた来よう」
「そうかー」

 それだけ言い残すとメイド姿の少女は去っていってしまった。

「さて、どこかファミレスにでもいくか」
(うん……本当にごめんね)
(だから謝る必要はないと言っただろう。なにも会えないと決まったわけじゃない。しばらくしてまた来てみればいい)
(うん、ありがとう)

 数時間後、やはり上条宅に人の気配はなかった。

「もう今日は帰ろうか」
(う、うん……)

 シャットアウラは半分諦めていたのか、あっさりと帰宅を選んだ。

(明日あの医者にでも電話して上条当麻の携帯番号を 聞き出そう。というか、はじめからそうすればよかったんだが)
(そうだね……わたしもさすがに覚えてないし)

 夕暮れ頃、シャットアウラは帰路についたのであった。


 自宅に着いたのはもうすっかり暗くなった頃。
  弁当をテーブルに置くと、シャットアウラはソファに座り込んだ。
 テレビをつけてぼうっと眺める。 すると、

『現在、学園都市内部で、侵入者騒動が起こっているようです。それに伴い、学園都市各地でも、被害が拡大しているとのことです。……あっ、映像が入りまし た!』

 そこに映ったのは、黄色い服を来た女性らしき人影と、倒れている数人の警備員だった。
 しかしそれも数秒で切り替わり、「しばらくお待ちください」と出る。

(な、なんだろうね……)
(さあ……問題が大きくなれば、私の部隊にも要請が……あ)

 そこまで言ってシャットアウラは、現在自分の部隊が活動していないことを思い出す。

 しばらくしても画面が変化しない様子を見てチャンネルを変えると、

『現在、突発的に意識を失う人が出ているという報告 が、全国のあちこちから届いています。警察では、原因の特定を急いでいますが、日本のみならず、海外の 一部にも被害が及んでいるとの報告も——』

「海外まで……?」
(なんだか怖いね……)
「よし、動こう」
(え?)
「部隊は機能していないかもしれないが、兵器は残っているだろう」

 言って、シャットアウラは服を脱ぎ、クローゼットに閉まってあるボディスーツに着替えた。

(ま、まって、シャットアウラちゃんまで危険な目に遭いに……)
「なんだか」
(?)
「こういう事態にはあの男が絡んでいそうな気がする。なにか、力になれるかもしれない。いや、なりたい」
(……そう)

 シャットアウラは急いで家を出て、部隊基地へと向かった。

 部隊基地内は整然としていた。
 オービット・ポータル社が壊滅して、この中もどうなっているかと思っていたが、中身はシャットアウラが知るそのままだった。

「こんなに綺麗に残っているとは……」
「誰だ?!」
「!」

 シャットアウラは武器を持っていなかった。
 不意に声をかけられ思わず身構えるも、相手が武器を有していれば圧倒的に不利な状況だった。
 しかし、

「隊長?」
「ん?」
「隊長! ご無事だったのですか!」
「お前は……」

 その正体は、部隊員だった。隊員No.7(クロウセブン)。主にシャットアウラの右腕として活躍していた男だ。

「なぜここに……?」
「あれから部隊は活動していませんが、いつでも復帰 できるように準備は整えていました。他の部隊員も、招集すればすぐに集まります。隊長は、やはり今回の侵入者騒動の件でここに?」
「ああ。だが今回は私一人だけでいく。貴様はここを頼む」
「し、しかし」
「これは私情が絡んでいる。お前たちを巻き込む訳にはいかない」
「……わかりました。隊長の機体はあちらに。あと、これを」

 クロウセブンよりハンドガンとナイフ、それからレアアースペレットを打ち出す小銃を受け取って、自分の機体に搭乗する。

「すまない、助かる」
「はっ、それでは、ご武運を」
「ああ」

 ハッチを閉め、動力を起動する。

(久しぶりだ……)
(シャットアウラちゃん、頑張って)
(ああ)

 動力を起動して機体を動かした。操作は体が覚えている。
 シャットアウラは、できうる限りのスピードで、再び第七学区へと急いだ。

 ビルからビルへと飛び回り、最短のルートで急ぐ。その途中、突如眩い閃光とともに突風が吹いた。

「今度はなんだ?!」
(シャットアウラちゃん、あれ!!)
「!?」

 シャットアウラの目に映ったのは、翼のように見て取れる光の束だった。
 それらは次々に放出され、空を覆うようにうねる。
 ——と、 突如光の波動が街を襲った。
 まるでヒーローアニメに登場する怪獣の光線のように、学園都市を襲っていく。

「不味いな、被害が大きい。……?!」

 不意に光の波がシャットアウラの或るビルに向かってきた。
 左右に飛び移ろうにも手頃な高さの建物がない、シャットアウラは機体を操りとっさにビルを下るも、倒壊によって落ちてくる瓦礫は避けられそうになかった。

(シャットアウラちゃん!)
「くっ!」

 しかしシャットアウラはありったけのレアアースペレットを射出し、
 それを爆破する事によって瓦礫を吹き飛ばして難を逃れる。
 細かい破片は当たったが、その程度ではどうということはない。
 だが、

「ペレットを使いきってしまった……」

 もともと不足気味だったのも要因で、レアアースペレットはすべて撃ち尽くしてしまった。
 これ以降シャットアウラの武器は白兵戦用の小さなペレットとナイフ、ハンドガンとなってしまう。

「だが、止まっている暇はない。急ぐぞ」
(うん!)

 シャットアウラは光の元へと向かって再び出発した。

 光の翼の近くまで来て、念のためステルス迷彩をかけた。
 慎重に接近して光の発生源を見ると、そこには少女がいた。
 メガネをかけている長い茶髪の女の子で、一見どこにでもいそうな感じではあるが、頭に浮かぶ輪と背中から翼のように広がる光は、その異常さを物語ってい た。

(この人……どうなっているの……?)
(わからない。だが……ん?)

シャットアウラ宛に通信が入った。送り主は、隊員だった。

『隊長、この女が今回の騒ぎの中心、侵入者です』

 画面には、先ほどテレビで一瞬だけ見かけた黄色い服の女が映った。

『なにやら特殊な超能力を持っているとのことなの で、注意、して、く……』
「どうした?」

 突如隊員の応答が途絶える。 しばらく呼びかけても反応がない。

「くそっ、どうなっている? まさかこの女に襲撃を……、?!」
(シャットアウラちゃん? シャットアウラちゃん!!)
「なん、だ……急に意識が……」

 今度はシャットアウラまでも意識を閉ざしてしまった。
 アリサの呼びかけも虚しく、シャットアウラは眠りについた。

 次にシャットアウラが目を覚ました時には、上条当麻が黄色い服の女と交戦していた。

「私はなにを……うぐっ」
(シャットアウラちゃん、大丈夫?)
(頭が痛む……まるで酸欠にでもなったかのような痛みだ)
(無理しないで!)
(ああ……ところで、これは……)

 シャットアウラは、ハッチ内に漂う不思議な力に気がついた。

(これ、わたしが歌を歌っている時に出る力みたい。 前に比べて、弱くなっちゃったけど……)
(これのお陰で意識が戻ったのか……? しかし、当分は動けそうにないな……)

 なおも痛む頭を抱えながら、必至に前を向いた。そこでは、当麻が何やら説教をしているようだった。
 しかし、相手の女は、風の超能力らしき技でそれを黙らせる。
 さらに、手にしている十字架を地面に打ち付けて衝撃波をおこし、攻撃する。
  その攻撃は建物へとあたり、建物は崩壊を始めてい た。

(いけない、あの建物崩れそうだよ!)
「下にいるのは……民間人?!」
(どうしよう……)
「お前の歌の力で守れないのか?」
(わからない……けど、やってみる!)

(あの日の 涙は 祈りの 流星……)

 アリサは心をこめて歌を歌った。
 しかし、あの大きな倒壊をどうにかする程の力は出なかった。

(どうしよう、足りないよ!)
(私も一緒に歌うから、続けろ!)

 頭痛をこらえ、声を出してシャットアウラも歌った。

「(過去と 未来で 開かれた ドア……)」

 ふたりは、救いを願って、懸命に歌った。
 が、やはり大きな力は出なかった。

「くっ、これでもダメなのか!」
(そんな……!)

{……つ、続けて、ください……}

「?!」
(だ、だれ?)

 不意に声が聞こえた。アリサほど鮮明ではないが、 脳内に直接語りかけられるようだった。

{あなた達の力を……借ります……}

 瞬間、歌の力が広がるように感じた。

(もしかしてあの天使みたいな人……)
「とりあえず、歌を続けるぞ!」
(うん!)

 今度こそ手応えを感じた。
 ふたりは歌う。

「(呼び合う心に 響いたアリアは 悲嘆包んで 紡ぐハーモニー)」

 歌いながら、シャットアウラは当麻に目を向ける。
 奇跡の力のお陰で建物倒壊から民間人が無事だったことに安堵とともに驚愕しながら、天使の少女を見た。

「……はは、あっはは! たまんないな!」

 それから、喜びを表すように大きく笑って言った。

「日頃から不幸不幸って言ってるけど、これだけあれば、十分に幸せじゃねーか! なぁ!」
「な、なにを……なんのこと言ってんのよアンタ」
「……待ってろよ、風切!」

 周りを気にしないで済むようになったおかげか、当麻は思い切って戦っていた。
 シャットアウラとアリサは、当麻が戦いに集中できるように、高らかに歌い続けた。

「(痛みへの 鎮魂歌 悲しみと引き換えに 明日を 呼べるなら……)」

 攻防激しく、上条と女は全力で戦った。

「(わたしはうたおう いま光をあつめて 無限へ 還った愛を 静かに眠らせて……)」

 しかし女は能力の副作用か、攻撃の手を止め、吐血 した。 その隙を当麻は逃さなかった。 ヴェントの元へと踏み込み、ありったけの力を込めた拳を振り切った。

「あなたへうたおう もう何も失わず 誰もが笑顔になれる 確かな日々がずっと 続くように……)」

 勝負は決した。女は倒れ、気を失った。当麻の勝利だ。

(よかった……勝てたん……だ)

 しかし、アリサの様子がおかしかった。 声も聞き取りづらくなっている。

(……どうした?)
(あはは、シャットアウラちゃんの中に残るための奇跡の力を、さっき使いきっちゃったみたい……)
(まて、どういうことだ)
(もうすぐ、わたしは消えちゃう、ってことかな……)
(な……バカ! なぜもっと早く言わなかった?!)
(でも、これでよかったんだよ。シャットアウラちゃんの体に、私がいるのがおかしいし……)

 次第に、声は薄くなっていく。

(頼む、消えないでくれ、……そうだ、まだ上条当麻に挨拶を済ませてないだろう? 弁当も食べてもらってないし、それに、服もお前に選んでもらわないと、私 はそういうセンスが無いし、あと、またカラオケやゲームセンターで遊びたい! 今度は上条当麻に、インデックスとか言うお前の友だちを誘ってさ、みんなで行こう、なぁ!)
(ありがと……シャットアウラちゃん……ごめんね……)
(……せっかく)
(……?)
(せっかく仲良くなれたのに……、妹がいたらこんな感 じかな、って、悪くないなって、思えたのに……)
(シャットアウラちゃん……大丈夫、わたしは消えてしまうけど、シャットアウラちゃんの心に還るだけだから)
(嫌だ、消えないでくれ……アリサ!)
(あ……やっと名前で呼んでくれた……えへへ、うれ し、いな……)
(アリサ、アリサ! 何度だって呼ぶから! お願いだから……)

 しかし、シャットアウラの願いは虚しく、やがてその時が来る。

(……そろそろ限界みたい……じゃあね、シャットアウラちゃん、わたし、すっごく楽しかったよ……)

 その言葉を最後に、完全にアリサの気配は消えてしまった。

「アリサ? ……うっ、ぐっ……」

 シャットアウラはうずくまって泣きじゃくった。アリサと過ごした日々を思い出しながら、涙を流した。
 やがて気持ちが落ち着くと、乱暴に涙を拭った。

「きっと今の私はすごい顔なんだろうな。たぶん、上条当麻に会おうとしたらまたアリサに止められそうだ」

 シャットアウラは上条の方を見た。 翼と輪が消えた天使をの女の子と話している様子が見えた。

「……借りは返したぞ、上条当麻。色々後始末をしなくてはならないが、それが終わったらいつか……」

 シャットアウラは通信機をオンにして部隊員を呼び出した。

「こちらクロウリーダーよりクロウセブンへ」
『こちらクロウセブン。……すみません、どうやら突然意識を失っていたようで……』
「そうか、今はなんともないか?」
『はい。それで、何でしょうか』
「これよりそちらへ戻る。部隊員を招集しておいてくれ。会議を開く」
『会議、ですか?』
「ああ、黒鴉部隊やオービット・ポータル社のこれからについて。急がせてくれ」
『分かりました。お気をつけてお帰りください』
「ああ」

 通信を切って、当麻たちを一瞥してその場を去った。
 シャットアウラは闇の中を駆け、これからに向けて 進み始めた。

終わりです。
小説を書くことすら初めてだったので読み辛い文でしたが、楽しかったです。見てくれた方、ありがとうございました。
これ書いてる途中に思いついたネタがあるので、今度は台本形式で書きたいと思います。三人称むずかしい……。
ありがとうございました


なんか打ち切り展開ぽい……
あとヴェント許すまじ!

なんだか切ない…(涙)
弁当わたせなかったんだな…

またSS書き始めたら教えて下さい 見に行きます^ ^

おつかれ〜
つか
×風切
○風斬

おつかれさまでした!

乙!

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