胡桃「あなたが例え、誰であろうと」 (1000)

「………生きてる?」

(―――………体中が、痛い)

「た、大変だよー!!け、警察!?救急車!?」

(―――………目が、霞む)

「お、落ち着いて!!あの、大丈夫ですか!?もしもし!?」

(―――………声も、出せない)

「メディーック!!メディーーーーーーック!!!」

(―――………耳も、遠くなってきた)

「落ち着くそこ!!とにかく、一度安全な場所に運ぼう!!」



(       オ     レ   ハ     )

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1380133249

※咲-Saki-の宮守・京太郎(?)SSになります。苦手な方はブラウザバック推奨です。
作者はSS速報でのSS初挑戦です。至らぬ点も数多くあるかと思いますが、
よろしくお願いします。

なお、いろいろと呼称がおかしかったり、キャラの行動に違和感があるかもしれませんが、
ご容赦ください。教えていただければ修正いたします。

比較的ゆっくりな投下になると思います。暇な方はお付き合いください。

【最後に】かなり厨二な描写ありです。ご注意を

12月某日。宮守高校 校庭

シロ「ダル………」

塞「おはよ……って朝一発目からそれか。せめて挨拶はしようよ」

シロ「寒くてだダルい」

胡桃「おはよう」

豊音「おはよーだよー!」

エイスリン「………!」カキカキッサッ(挨拶してる人間の絵)

塞「みんな、おはよー。いやー、今日もよく積もったねー」

胡桃「夜に降ったみたいだね。また雪かきだよ」

塞「うん、他の部活もいないし、せめて昇降口前の雪はどかさないと」

豊音「ちょー大変だよー」

シロ「ダル………一気に日差し強くなって解けないかな………」

エイスリン「ユキ!!トケタラ、コオル!!」

胡桃「そうなんだよねー………雪が溶けて水になって、それが凍ってそこに雪が降って………」

シロ「無限ループダル………」

豊音「でも、私のいた村よりは楽だよー。人手が足りないから、みんなであちこち駆け回るんだから」

胡桃「あー、だから雪かき一番慣れてるのか」

エイスリン「ユキカキ、ムズカシイ」

塞「エイスリンさんは仕方ないよ。私たちは毎年の恒例行事だけど」

エイスリン「デモ、ユキダルマ、スキ!!」

豊音「そうそう!!この前のミニ雪だるま、ちょーかわいかったよー!!」

胡桃「いや、かわいいのはいいんだけど、それを3ケタ近くまで量産するのはやめてほしい…」

塞「あれにはびっくりしたよね。しかも全部の雪だるまが同じ方向向いて並んでて………」

シロ「夢に出た」

豊音「私の村の人口より多くなっちゃったよー。………あれ?」

エイスリン「トヨネ、ドウシタノ?」

豊音「いや、昇降口前………」

胡桃「雪が………全部どけられてる?」

シロ「ダルくない………」

塞「ってことはまさか!!みんな、早く行こう!!この調子だと、また一人で全部やる気だ!!」

豊音「あわわわわ、またごめんなさいだよー!!」

胡桃「ああ、もう!!何度言っても一人でやるんだから!!自分で歩くそこ!!」

シロ「あーーーー」ズルズル

エイスリン「シロ、ツルツルスベッテル!!」

部室

塞「とうちゃーく………って、あったか!!」

胡桃「ストーブの準備まで………」

??「ああ、おはようございます。もう、すぐに打てる状態ですよ」

豊音「ご、ごめんなさいだよー。もっと早くくればよかった………」

??「いや、気にしないでください。たまたま早く起きただけですので」

胡桃「誤魔化さないそこ!!その「たまたま」、これで5回目!!」

シロ「目覚ましをいつも早くしてると見た」

??「あ、あはは。ま、まあいいじゃないですか」

塞「そうもいかないよ。いっつもこんな雑用ばっかりやらせてちゃ、さすがに悪いって」

エイスリン「」コクコクッ

塞「てなわけで、これからは早く来る必要はないんだからね?


                     京太君」

京太「わ、わかりました。じゃあ、たまーーーーに早く起きちゃったら」

胡桃「そこ!!さらっと流さない!!」

シロ「お茶が温かい………ダルくない」

豊音「外にいた後だと、身に染みるよー」

エイスリン「ゴゾーロップニ、シミワタル!!」

塞「エイスリンさん、どこで覚えたのそんな言葉!?」

エイスリン「インターハイ!!ツジガイトッテヒト、オシエテクレタ!!ニホンノ、カンドーノコトバ!!」

胡桃「変な影響うけないそこ!!」

京太「お茶、おかわりります?」

胡桃「だから、さらっと雑用係にならないそこ!!」

シロ「胡桃、ツッコミ絶好調………」

京太「あ、あはは。ついやっちゃうんですよね」

塞「………それにしても、もう二か月かぁ」

京太「何がです?」

シロ「京太が、ここに来てから」

京太「ああ………もうそんなに経つんですね」

胡桃「むしろ、あんな衝撃的な事件は忘れられないよ」

豊音「本当にびっくりしたよー」

エイスリン「サスペンス!!」

京太「本当に、なんてお礼したらいいのか………」

胡桃「だから、それはもういいって。それで………どう?」

京太「………………………」

塞「傷の具合と………」


塞「何か、思い出せた?」



京太「………」

京太「傷は、痛みはほとんど引いてきています。けど………」



京太「まだ、何も。自分が、本当に「京太」という名前なのかすら」

職員室

トシ「ええ、そうですか………ありがとうございます」

ガチャッ

トシ「………やれやれ。相変わらず、か」

トシ(本当に何者なんだろうねぇ、あの子は)

トシ(………………)

トシ(二か月前、あの子たちが帰り道で見つけた男の子)

トシ(幸い命に関わるようなことはなかったけど、酷い有様だった)

トシ(着ていた服はあちこち焦げていて、あちこち怪我だらけ。幸いというか、一番ひどかった顔の火傷はもうすぐガーゼの取れるころだけど………痕は、確実に残る)

トシ(幸い学生証らしきものは入っていたけど………やはり焼けていて、今呼んでる名前だってかろうじて読めた「京太」という文字からの暫定的なもの)

トシ(あとわかったことは………)

トシ「ポケットに入っていた、この麻雀牌………イーピン、だねぇ。溶けてるけど」

トシ(少なくとも、麻雀に関わっていた………?)

トシ(身元が分からないってことと、本人の同意の上でここに留まってるけど………いくらなんでもおかしい)

トシ(どこにどう聞いても、火災に巻き込まれた学生なんて話はないし、捜索願だのなんだのだって出されてない)

トシ(………君は、)

トシ「本当に………誰なんだい?京太君や………」

すみません、今日はここまでで切ります。
明日の夜くらいにまた書き溜めして投下します。

遅くなりました。
本日も少しずつ更新していきます。

塞「そっ、か………」

京太「皆さんにも、泊めていただいてる先生にも、本当に、迷惑ばかりかけて………」

胡桃「だから謝らないそこ!!一日何度も何度も、そんな卑屈になってちゃ戻る記憶も戻らないって!!」

京太「す、すみませ」

胡桃「だーーーかーーーらーーー!!」

シロ「謝罪病………」

塞「なにそれこわい」

豊音「でも、怪我がよくなってきただけでもよかったよー。ちゃんとガーゼ変えてる?」

京太「はい。最近は本当によくなってきて、この包帯とガーゼもそろそろとっていい時期になるって」

エイスリン「………!!」カキカキッサッ

京太「えと………元気な人に、×印?」

シロ「無理しちゃダメってことでしょ。雑用とか」

京太「あ、はい。気を付けます」

塞「さて、今日はしょっぱなから京太君にいろいろやらせちゃったしね。みんな、麻雀始めよう。京太君は休んでて」

京太「え!?い、いや。それは」

胡桃「いいから大人しくしてるそこ!!」

京太「う、うう………」

シロ「なんでそんなに休みたくないの………」

京太「か、体が動くようになってから、とにかく何かしてないと落ち着かなくって………」

塞「記憶がなくなっちゃう前の習慣かな」

豊音「これも立派なヒントだよー」

エイスリン「デモ、イマハダメ!!シッダウンッ!!」

京太「は、はい………」

胡桃「小動物かあんたは」

塞「胡桃が言うか」

胡桃「うるさいそこ!!」

------------------------------------------------------------------

シロ「ツモ。3000、6000」

塞「うわーー!!まくられたー!!」

豊音「今日、シロ絶好調だよー」

エイスリン「ノンストップ!!」

胡桃「いや、見ててもびっくりだよ。いつもより長く悩んだと思ったらこれかー」

京太「うわぁ………やっぱすご………」

塞「京太君もたまには入る?もうルールは覚えたんでしょ?」

胡桃「最初の安静中、やることなくてルールブックずっと読んでたんだっけ」

京太「そうなんですけど、なんだか見てるほうが楽しいんですよ。逆に自分が打ってるのはあんまり想像できないし、こっちのほうがいいかなって」

豊音「でも、ポケットに麻雀牌入ってたんだよね?」

シロ「記憶なくす前、少なくとも麻雀に関わってた………?」

京太「かも、しれないです。ただ、何度あの牌を見ても何もわからなくて………」

塞「鍵にはならなかったんだよね」

京太「残念ながら………っと、結構打ちましたし、お茶にしますか?」

胡桃「そうだね。休憩にしようか。けど………豊音!!」

ガバッ

豊音「確保だよー!!!」

京太「え!?うぇええ!?」

エイスリン「フリーズ!!」

胡桃「また隙を見てさらっっっと雑用モード入ろうとしたでしょ!!」

塞「お茶いれてくるねー」

京太「え、ええ!?そこまでですか!?」

シロ「動くと酷いことになるぞー」

エイスリン「ヒドイコト?」

シロ「逆水平チョップ」

塞「シロがプロレス技!?」

胡桃「やばい、ちょっと見たい」

京太「動かない!!絶対動きませんから!!」

シロ「この間テレビで見たから言ってみただけ………ダルいから」

塞「お茶入れたよー。豊音―、解放してあげてー」

豊音「はいだよー」

京太「あ、危なかった………」

塞「お茶菓子なんだけど、今日はこれ」

豊音「最中だよー!」

エイスリン「モナカ、スキ!!アマクテオイシイ!!」

塞「はい、京太君の分」

京太「ありがとうございます。いただきます」

胡桃「んー、やっぱり美味しい。これ、いつもの店の?」

塞「うん。この間は胡桃がもってきてくれてたし、今回は私がって」

京太「俺も何か用意できればいいんですけど………」

胡桃「怪我人は余計なことしない!!」

京太「あ、はい………でも、この顔の包帯取れたら、リハビリかねて少し体動かそうと思ってるんです」

豊音「え?スポーツかなにか?」

京太「いえ、熊倉先生の紹介で、簡単なバイトを」

塞「バイト?何するの?」

京太「喫茶『遠野物語』ってところです。最初は無理しないようにってことで、レジとか中心でとのことで」

シロ「あそこか………」

エイスリン「ヨク、イク!」

胡桃「そのくらいならかえっていいかもね。けど、無理な運動は禁物。ってことで、隙を見て雑用モード禁止だから」

京太「うぐ、とことん釘刺されますね………」

胡桃「見てないところで重いものでも持って、また体壊されても困るしね。もしやったら罰だから」

京太「ちょ、罰まで!?」

塞「そのくらいみんな心配してるの。あ、そうそう。今朝、先生きた?」

京太「いえ、職員室前ですれ違って挨拶くらいで」

塞「てことは、まだ職員室かな。じゃああとで………」

ガラッ

トシ「呼んだかい?」

胡桃「うわ、びっくりした!!」

豊音「おはようございますだよー」

エイスリン「グッモーニンッ!!」

トシ「おはよう。今日もそろってるね」

京太「おはようございます」

トシ「おはよう。傷はどうだい?」

京太「おかげさまで、かなり良くなってます」

トシ「ならよし。あんまり動き回らないようにね」

塞「あはは。ここでも言われてる」

京太「俺………そんなに落ち着きないですかね」


胡桃「えっ」

京太「えっ」


トシ「そうそう、みんな居てよかったよ。ちょいと手伝ってもらいたいことがあるんだけど、いいかね」

塞「雪かきか何かですか?」

シロ「うわ、ダル………」

ちょっと離れます。
今日の書き溜めだけは放出していこうと思うので、また戻ります

トシ「いや、そうじゃないんだよ。実はね、この学校のホームページで使う写真なんだけどね、この時期の写真が欲しいらしいんだ」

トシ「けど、この時期にうちの学校は部活も誰も来ないだろう?だから、麻雀部にその撮影を頼みたいらしいんだ」

胡桃「うちの学校、ホームページあったんだ………」

トシ「どうかね。頼めるかい?」

塞「まあ、そのくらいでしたら」

トシ「ありがとうね。じゃあ、これ。このデジカメで、このメモの箇所を数枚ずつ撮影しておくれ」

トシ「ああ、そうそう。ついでだ。みんなの写真でも撮ってみるといい」

豊音「わー!楽しみだよー!」

エイスリン「」コクコクッ

塞「二人はなんでも楽しみになっちゃうからすごいよね」

胡桃「塞だって楽しそうじゃん」

塞「まあ、実際、ね。みんなで集まって写真撮影なんて今までなかなかなかったし」

シロ「うわ、何か所もある………」

京太「じゃあ、行きましょうか。最初はどこです?」

塞「えっと、このメモだと1階教室からが早いか。校内全部撮ったら外にいこう」

胡桃「早く立つそこ!!」

エイスリン「ヨイショ!ヨイショ!」

シロ「うあー」ズルズル

豊音「シロ、いつもに増して動かないよー!」

パシャッ

塞「よしよし。こんな感じかなー」

シロ「ようやくあと少し………」

豊音「こうしてみると、知らなかった風景もいっぱいだよー」

京太「俺もそんな感じです」

胡桃「そっか、転校してきた豊音よりも京太のほうが短いんだね」

豊音「私、ちょっとだけ先輩だよー」

エイスリン「」カキカキカキカキカキカキ

京太「あの、エイスリンさんはさっきから何を一心不乱に………」

塞「ああ、スケッチだよ。写真もいいけど、エイスリンさんは絵を描くのも大好きだからね。自分でも自分なりの形で残したいんだって」

シロ「だからいつものマーカーだけじゃなくていろいろ画材が………」

京太「鉛筆と色鉛筆、消しゴムにパステル………」

胡桃「全部ベルトにつけてるし、もう何かの装備品だよねこれ」

エイスリン「カケタ!!」

豊音「エイスリンさん、後で見せてね!」

エイスリン「ウン!」

塞「さて、あとは学校の外観だけど………大部分を写すとなると、ここくらいしかないよね」

シロ「いつのまにか敷地の外へ………」

胡桃「でも、ここまでこないと全体像わからないもんね」

塞「さて、それでは………おっと?」

京太「どうしました?」

塞「ああ、いや。ちょっとこれ」

豊音「あれ………?ちょっと見えづらいよー」

胡桃「ものの見事に塀が邪魔してるね」

塞「そうなんだよね。もうちょっと高いところから写せればいいんだけど………」

豊音「あ、じゃあ私が………」

シロ「………」クイックイッ

豊音「?」

シロ「………(シーッ)」

塞「………そうだね(ニヤ)じゃあ………京太君、ちょっとしゃがんで」

京太「え?こ、こうですか?」

塞「そうそう。ちょっと失礼。よいしょっと」ヒョイ

胡桃「ちょ、何!?何々!?」ストンッ

塞「京太君、傷痛まなかったら、そのまま胡桃を肩車して。はい、胡桃。これカメラね」

胡桃「ちょ!!なんで私!?豊音にやってもらえば………」

豊音「エイスリンさん、バランス大丈夫?」

エイスリン「OK!!」カキカキ

塞「まあ、こんな感じで、乗ってるエイスリンさんがスケッチに夢中なわけで」

胡桃「本来の目的は!?ていうか、京太は怪我………」

京太「よいしょっと」ヒョイ

胡桃「うわわ!!」

京太「バランス大丈夫ですか?」

胡桃「いやむしろ、そっちの怪我が大丈夫なの!?」

京太「ですから、もうかなり平気なんですって。それにさっきからついてきてばっかりなんですし、これくらいさせてください」

京太「それに、これは塞さん公認ですからいいでしょう?」

胡桃「うぅ………わ、わかった。じゃあ、さっさと撮っちゃうね」

塞(ニヤニヤ)

胡桃「へ、変な笑い方しないそこ!」

京太「どうです?全体写りますかね」

胡桃「あー、これなら………うん。平気。ていうか、大丈夫?私重くない?」

塞「おい、喧嘩売ってるのか」

京太「全然。むしろ軽くてびっくりしちゃいましたよ」

胡桃「………………」

京太(やば!!また「ちびってことか!!」ってくる!?)

胡桃「………なら、いい」

京太「………?あ、はい」

シロ「寒い。ダルイ。けど、なんか暑い」

豊音「鹿倉さんかわいいよー」

エイスリン「ラブコメ!」

シロ「声大きい。ていうか、ホントにボキャブラリ偏ってきてるね………」

イッポ、ミギ!

リョウカイデス。

シロ「………………………ほんと、」

シロ(………ダル)ハァ

胡桃「よーし。あと2枚くらいでいいかな。ちょっと右に寄れる?」

京太「了解です。塞さん、誘導お願いします。ガーゼで視界狭いので」

塞「はいはい。オーライオーライ………ストップ。それ以上行くと田んぼだから気を付けて」

胡桃「じゃ、さっさとやるかな」

胡桃(ていうか、私が両手塞がってるから仕方ないけど………)

胡桃(手!!京太の手が………私の、足に………!!)

胡桃(うぁぁあああ………)

京太「………胡桃さん?大丈夫ですか?」

胡桃「だ、大丈夫!!すぐに終わらせるから!!」

京太「は、はあ………」

京太(にしても、胡桃さん本当に軽いな………言うと怒られるけど、本当にちゃんとご飯食べてるのかな)

京太(身長うんぬん以前に、ここまで軽々と持ち上げられるレベルだとさすがに心配に………)





ザ   ザザ    ザザザ   ザ


ザザザザ――――――――――ッ



京太(!?)

おい、犬!しっかり歩くじぇ!

うるせーな!てめーはチビのくせに見た目より重いんだよ!

んな!?乙女になんてこと言うかー!

いててててて!!!髪むしるな!!

やかましいこの駄犬が!!

なんだと、この―――



書き溜め尽きたので、本日はここで切らせていただきます。
明日また溜めて放出したいと考えてます。お暇な方は見ていただけると作者がのたうち回ります。

あと、もし改行や表記方法などで「こうした方がよかよ」というのがあれば教えていただけるとありがたいです。

ご覧いただき、ありがとうございました。




【独り言】腰が痛いよ、撫でてよ胡桃ちゃん

遅くなりましたが、本日も更新させていただきます。
胡桃ちゃんが腰を撫でに来てくれなかったけど、なんでだろう

>顔に火傷ありで喫茶店バイトとか大丈夫なのか
( ゚Д゚) ……………… (゚Д゚)

それでは、ゆっくり更新します

京太「ッ!!!!!!!」ズキッ



塞「ど、どうしたの京太君!?」

京太「い、………いや………」

胡桃「ちょっと!?傷痛んだの!?」

京太「いや、違、う、んです………傷は、何も………」

塞「豊音!!胡桃を下ろして!!京太君、そこの木に寄りかかって!!」

豊音「鹿倉さん、つかまって!!」

エイスリン「ダイジョウブ!?キュウキュウシャ!?」

塞「ごめん、やっぱり無理させちゃった!?」

シロ「………………」

京太「大丈、夫で、す。怪我は、何も………」

シロ「………何か思い出したの?」


全員『!?』

京太「………ほんの、一瞬、だけ」

塞「何かわかったの?汗、酷いけど………」

豊音「何か悪いこと思い出したの?」

京太「いえ………ただ、前にも、こんなことが………」

エイスリン「デジャブ?」

京太「は、い。前にも、こうやって誰かを肩車して、お互い、何か言ってて………それまでしか」

胡桃「………………ッ」

塞「それで十分だよ。いや、むしろストップ」

胡桃「それだけ思い出すだけでこんなに疲れてるんだから。無理に思い出したりしたら、京太が壊れちゃうよ」

京太「すみません………」

胡桃「だから、謝らなくていいって!!!………ばか」

京太郎「はい。馬鹿です」

塞「軽口叩けるくらいにはなってきたね。胡桃、写真は撮ったんだよね?」

胡桃「うん。大丈夫だと思う」

塞「そしたら、もう今日は荷物取りにいって解散しよう。もう対局するにしても微妙な時間だし、京太君をしっかり休ませないといけないし」

胡桃「それじゃあ、いったん部室まで戻ろうか」

エイスリン「タテル?」

京太「ええ。もう大丈夫です」

豊音「ふらついて、田んぼにおちないようにね」

シロ「………肩、貸す?」

全員『!!?』

シロ「………なにさ」

胡桃「シロが、自分から、肉体労働、を………?」

塞「シロ!?大丈夫!?どっか打った!?」

エイスリン「メディック!!メディーーーーック!!」

シロ「さすがに傷つくんだけど」

熊倉宅

トシ「二人とも、ここまでありがとうね。それじゃ、また」

塞「はい、失礼します。京太君、ゆっくり休んで」

京太「はい。ご迷惑おかけしm」

胡桃「だから!!謝らないそこ!!」

京太「ぁし………はい」

胡桃「それじゃ、また明日」

京太「はい。また明日」

-------------------------------------------------------------------------

塞「………あ。また雪」

胡桃「うわー、これはまた明日積もりなおすパターンだね」

塞「だね。また雪かき祭り開催かー」

胡桃「………」

塞「どうしたの?寒い?」

胡桃「寒いのはいつものことだよ。そうじゃなくて………


      何者なんだろうね。京太って」


塞「………………」

胡桃「記憶がないからって、目を覚ました時以前の過去がなかったことになるわけじゃない。今日思い出しかけたように、京太にも、過去がある」

胡桃「同じように肩車してたっていうのが誰かはわからないけど、京太は確かに、自分の居場所をもってたんだよね」

塞「………………胡桃」

胡桃「もし、さ。記憶が戻ったら………」


―――京太は、どっかにいっちゃうのかな


塞「………せい!」ボカッ

胡桃「いた!!」

塞「何をらしくもなくネガッてるのよ。まあ、わからないでもないけど」

胡桃「うう………塞に小突かれるのなんて何年振りだろ………」

塞「そりゃ………胡桃の言う通り、京太には記憶を失う前、失ってる記憶の間の過去があって、居場所があって」

塞「思い出したらどうするのかってなれば、やっぱりそこに帰るっていうのは順当だと思う。むしろ、9割そうじゃないかな」

胡桃「………………」

塞「けどさ。どっかに行っちゃう、ていうのはおかしいと思うよ」

胡桃「え?」

塞「だって、自分で言ってたでしょ?記憶がないからって、その間の過去のことがなかったことになるわけじゃないって」

塞「だったら逆もそうだよ。記憶を失っている間の出来事が、思い出した瞬間になかったことになるわけじゃないんだから」

塞「今は本人ですらわからない、京太っていう人物のことが全部わかったとしても」

塞「宮守高校麻雀部でみんなと過ごした京太は消えない。元の居場所に帰っても、またいつだって会えるんだから」

胡桃「………うん」

塞「ていうか、うわ。私今何言ってた?めちゃくちゃくさいこと言ってなかった?なんかこう、青臭い学園ものの小説みたいな」

胡桃「うん。ばっちり」

塞「うわわ、自分で思い出して恥ずかしくなってきた」

胡桃「でも、その通りだよ」

塞「………」

胡桃「そうだね。京太が全部思い出しても、私たちにとっては京太のままだ」

塞「………………そうそう。だからいつまでもネガらないで、いつもの通りの毒舌座敷童に戻りなさい」

胡桃「今なんて言った―――!!」

塞「ああ、ごめんごめん。今はラブコメ座敷童か」

胡桃「だからなん………え?」

塞「さっきの話、実はちょっと妬いてたのもあるんでしょ?『同じように肩車してたっていうのが誰か』………」

胡桃「うがー!!ち、違う!!勘違いしないそこ!!」

塞「お、ツンデレ座敷童にクラスチェンジ?」

胡桃「誰が!!座敷童だ――――――!!!」



ダレガザシキワラシダーーーーーーーーーー!!!

京太「うお!!?なんだ!?」

トシ「相変わらずかしましいねぇ」

------------------------------------------------------------------------------

翌朝。麻雀部部室

塞「………………………」

胡桃「………………………」

シロ「………………………」

豊音「お、おはようだよー」

エイスリン「グ、グッモーン………」

京太「おはようございます。今暖房つけたところですので………」

胡桃「確保」

塞「はいさ」ガシッ

京太「え?え?」

塞「まあ、ね?登校した時に昇降口前の雪がどけられてた時点で想像ついたけどさ」

シロ「ほんとに休むってことを知らないね」

京太「あ、あはは。昨日早く寝ちゃって、早く起きちゃって」

胡桃「言い訳しないそこ!」

京太「は、はい」

塞「さて。前日にすでに宣誓してあります通り」

胡桃「休めと言っても休まない悪い子には、お仕置きだね」

シロ「逆水平………」スッ

京太「ちょ、すみません!!どうしても落ち着かなくて………」

胡桃「ゴー」

シロ「どりゃー」ヒュッ






ドゴォ

ウボアァァァァァァァァァァァァァァァァァ

トシ「………案外、記憶戻らなくても上手くやっていけるんじゃないかね」

(注意:もちのロン、めちゃくちゃ手加減してあります。絶対に真似しないでください)

本日はここで切らせていただきます。

皆さんは怪我人には優しくしましょう。たとえば、
ヘルニア持ってて腰痛いって言ってるのにモップで突っついて来たり、
横になってる時に腰に犬乗せてダンスさせたり、
そういう酷い事はしないよういにしましょう。もう一度確認しますと、シロは滅茶苦茶手加減してやってます。絶対に真似しないでください。

明日以降は少し不定期になるかもしれないですが、できるだけ更新していこうと思います。
お暇な方はお付き合いください。



【独り言】寒くなってきたね。胡桃ちゃん、いっしょにコタツ入ろうか

遅くなりましたが、本日はちょっとだけ更新していきます。


>名前が京太郎になってたことは

( ゚Д゚) いやあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ごめんなさい!!脳内修正お願いします!!

数日後。臼沢家

塞「胡桃、エイスリンさんと豊音、もう着くって」

胡桃「わかった。じゃあ、お茶の用意しておくね」

シロ「………………」モゾモゾ

胡桃「コタツにこもらない、そこ!」

塞「けど、またずいぶん積もったなぁ………これ、明日もそうだけど帰り危ないよね」

胡桃「次は泊りにしようか。私とか大丈夫だけど、みんなは大変だし」

塞「そうだね。そのほうがゆっくりできるし」

シロ「真っ暗な中歩くの、ダルい………」

胡桃「うぐ、そこは否定できない………」

胡桃「………で、だ」


京太「できましたよー。もう後は火にかけるだけですから、先に火にかけちゃいましょうか?もうエイスリンさんたちも到着するとのことですし」


塞「………さらーーーーっと自然に調理担当に収まってるし」

胡桃「まあ、今回は喫茶店でバイト始める前の慣らしってことでって言うけど………」

シロ「まさか、全部やってしまうとは」

京太「なんかやりたくて仕方ないんですよ。特にこう、料理は」

塞「うわ、しかも滅茶苦茶手際いいんですけど………」

シロ「材料も全部大きさ揃えて切ってある………」

京太「具材の大きさバラバラだと日の通りも悪いですからね」

胡桃「実はどっかで料理人でもやってたんじゃないの?」

京太「さ、さあ。そこまでは………」

塞(この間読んでたマンガでそんなのあったよね)

シロ「信長のシェフ………」

京太「火にかけちゃいますねー」カチャ

胡桃「先生は?」

京太「あ、そろそろ来るはずですよ」

ピンポーーーン

コンバンハダヨー
キタヨー!
カサモッテキテヨカッタヨ

京太「あ、ちょうど揃ってきたみたいですね」

塞「はいはーい、いらっしゃーい」

エイスリン「ユキ、スゴイ!!」

胡桃「そんなに降ってた?」

豊音「帽子にちょっと積もっちゃったよー」

トシ「年寄りにはキツい季節だよ」

京太「お疲れ様です。今火にかけたので、温まって待っててください」

豊音「あれ?京太君が料理したの?」

塞「うん。ほら、喫茶店でバイトするのに、慣らしておきたいって。それにすっごい手際いいんだよね」

胡桃「………負けてなんかない」

シロ「けど、仕事はレジとかからじゃなかったっけ………」

京太「ええ。けど、慣れてきたら厨房もやってほしいといわれまして」

豊音「そっか。面接行ってきたって言ってたもんね」

胡桃「どんな感じだったの?」

京太「どんな感じって、えっと………………」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――


京太『初めまして。京太といいます』

店長『おお、トシさんからは話を聞いてるよ』ムキッ

京太『病み上がりの身ではありますが、お力になれるように精いっぱい努力させていただきます。よろしくお願いします』

店長『ははは、そんなに気張りなさんな』ムキムキッ

店長『まあ、聞いてるかもしれないがいきなり無理してもいけないからね。最初はレジ打ちなんかを中心にやってもらうよ』ムキムキムキッ

店長『ただ、慣れてきたら厨房にも入ってもらいたいんだが。もちろん、丁寧に教えていくつもりだがね』ミリミリミリッ

京太『はい、ぜひよろしくお願いします』

店長『まあ、いろいろ事情も込み合っていて大変だろうが、頑張ってくれ。これからよろしくな』ムキッムキムキッミリミリミリッ


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

京太「と、言った感じで」

全員『………………………………』

塞「あ、あの店長、ほんとにお達者というか………」

胡桃「ま、まあ無事決まったならよかったんじゃないかな」

京太「それじゃ、飲み物とか他用意してきますね」

豊音「あ、私たちがやるよー。全部まかせっきりにはできないし」

エイスリン「マカセテ!!ヤスンデテ!!」

京太「え、でも………」

塞「いいから座ってなさいって」

シロ「従順なように見えて、実は結構頑固だよね………」

京太「そ、そうですかね………よいしょっと」

トシ「ああ、それと。これは私からの差し入れだよ。みんなで飲んどくれ」

エイスリン「ジュース!!」

塞「わざわざありがとうございます」

トシ「いやいや、こうして鍋にお招きしていただいたんだ。当然さね」

京太「あ、じゃあグラスを………」

胡桃「………………」

グイッ

京太「およ?」ストンッ

胡桃「えいっ」ポスッ

京太「あ、あの。胡桃さん?」

シロ「………………充電?」

胡桃「こ、こうすれば、勝手に動けないでしょ?」

京太「は、はい………」


塞(にやにや)
豊音(によによ)
エイスリン(にこにこ)
シロ(ジーーー……)

胡桃「な、何さ!!」

塞「いやー?胡桃は可愛いなぁって」ニヤニヤ

豊音「かわいいよー」ニヨニヨ

エイスリン「キュート!!」ニコニコ

シロ「………」

胡桃「う、うがーーーー!!」

京太「く、胡桃さん!暴れないで!!」

トシ「仲がいいねえ。若いってのはいいことだよ」

豊音「あ、お茶回すよー」

塞「ありがと。じゃあ、この後先生にもらったジュース飲もうか」

トシ「そういえば、今日は何鍋にしたんだい?」

京太「あ、具材が結構いろいろあったので、普通に寄せ鍋にしました。スープは醤油ベースで」

エイスリン「ナベ、ハジメテタベル!」

胡桃「え?そうなの?」

豊音「そうなんだー。すっごい美味しいし、温まるよー」

エイスリン「アッタカーイノ?」

豊音「うん、温かいよー」

シロ「まだ、もう少しかかる………」

塞「そうだね。なんか、鍋って煮えるまでの時間がやけに長く感じるよね」

京太「ですね。その分、出来上がった時により美味しく感じますけど」

トシ「待つのも醍醐味。あんまりせかせかしてても、人間疲れるだけだよ」

エイスリン「イイニオイ………タノシミ!!」

シロ「………そんなに?」

豊音「私も楽しみだよー」

エイスリン「タノシミ!ダッテ、イマノウチ!」

胡桃「………………あっ」

塞「エイスリン、さん………」

エイスリン「ダッテ………………」


――――――――ライネンニハ、ワタシ、イナイカラ

『………………………』

エイスリン「ニュージーランド、ミンナ、イナイ。ダカラ………」

京太「エイスリン、さん………」

塞「………………私が、さ」

京太「?」

塞「インターハイ終わって、私たちは全員3年生だから、もう引退で………なのに、まだ部活で集まろうって言った時、さ」

塞「わかってはいたんだ。わかってたけど、だから、だから終わらせたくなかった」

塞「みんなでこうやって集まって、騒いで、笑って、楽しい時間………」

塞「それを終わらせたくなかった。だから―――」

胡桃「………塞」

シロ「来年の、卒業式の後………エイスリンは帰国。豊音は………」

豊音「うん………その後どうするかはわからないけど、一度村に帰らないと………」

塞「………だから、終わらせないように、してた」

塞「こうしていれば………みんなで、集まって………少しでも、そのことを考えないで済むから………」

豊音「………………」グスッ

エイスリン「………………」ウルウル

京太「………………………」

京太(俺は、みんなが過ごしたインターハイを知らない)

京太(何も言えない。けど………)

京太(なぜだろう。すごく、懐かしい空気)

京太(俺も………こんな友人がいたのか?)



ザザ

京太(!!?)



ザザッ


ザザザザザザッ

ザザザーーーーーーーーッ

今日で、私たちも引退、かぁ

あっという間でしたね

うう、まだ続けてたいじぇ………

本当に、みんなお疲れ様。俺………何もできなかったけどさ、みんなと3年間一緒に居れてよかったわ

うん、私もだよ。それに、また会おうと思えば会えるもんね

そうだじぇ!!またみんなで集まるって遊べるじぇ!!

そうですね………進む先が違っても、少し、寄り道するくらいは許されるでしょう

ああ。だから―――――――――

本日はこのあたりで切らせていただきます。

あまりに重大な誤字………うがが。精進します。

ちなみに、京太の顔の火傷に関しては、ブラックラグーンのバラライカを面積小さくして薄くした感じをイメージしていただければ。

フラグに関しては、今のところ後一名だけぶっこもうかと考えてますが、現時点でどうなるか私自身もわかりません。
ただ、ラストに関しては完全に決定してます。

それでは、皆さまよろしければ長い目でお付き合いいただけると幸いです。


【追記】喫茶『遠野物語』の店長の筋肉は、セルジオ・オリバで検索していただけるとたぶんそのイメージ通りです。




【独り言】最近冷えてきたね。一緒の布団で暖まろうか、胡桃ちゃん

こんばんは。最近冷え込んできて胡桃ちゃんを抱っこしたい作者です。

本日も少しずつ更新していきたいと思います。
お時間のある方はお付き合いいただければ幸いです

【緊急追記(てか書き忘れ】
今回、かなり糖分増量の可能性大です。イメージと違うかもしれませんが、ご容赦ください

京太「ッ!!!!???」ズキッ

胡桃「………京太?」

京太「………………あ」

塞「大丈夫?具合悪い?」

京太「い、いえ。大丈夫です。何でもないですよ」

シロ(………………………………………ふぅん)

シロ(………ま。本人がいいなら、何も言わないけど………)

京太「あ、あの………」

豊音「?」

京太「俺、皆さんが過ごした夏、インターハイの事を、その時の皆さんを知りません」

エイスリン「………」

京太「けど………」

京太「終わり、なんてことは無い、と思います」

塞「………終わりなんて、ない?」

京太「はい。だって、みんな卒業してバラバラになっても、もう二度と会えないわけじゃないんですから」

京太「この時代、車も電車も、それこそ飛行機だってある。会おうと思えば、大体どこにでも行ける」

京太「電話だってある。さみしければ、声を聴ける」

京太「だから、一度別れてさようならってことはない」

京太「俺は………そう信じたい。いや、信じてます」

京太「俺も――――――――」


みなさんといる時間が、好きですから



『………………………』

胡桃「………いいとこ、持っていかれちゃったなぁ」

京太「え?」

豊音「そうだね。今度からは、またいつでも会いに来ればいいんだよー」

エイスリン「モット、ニホンゴ、ベンキョウスル!!」

シロ「………私は、ここ離れることはないだろうしなぁ」

塞「ま、それは私もかな」

胡桃「私もだね。なーんだ。集まれるじゃん」

京太「………ええ、そうですね」

トシ「なら、今のうちなんてことはないさね。今は今だ。ゆっくり楽しめばいい」

トシ「若いうちに、青春はやりつくすくらいにやっておくものさ」

塞「クスッ それは、実体験ですか?」

トシ「何言ってんだい。私は生涯青春だよ」

シロ「………鍋、煮えてる」

豊音「あ、ほんとだ。蓋とるねー」

塞「ポン酢とかいろいろこっちに置いてあるから。あ、小皿分けるね」

エイスリン「イイニオイ………」

シロ「シイタケもらい」

豊音「私もだよー」

ちょっと席をはずします。すぐに戻ると思うので。

胡桃(………………そうだよね)

胡桃(別々の場所にいたって………また会えるんだ)

胡桃(会おうと思えば、いつだって)

胡桃「京太」

京太「?はい、なんでしょう」

胡桃「………ありがと」ニコッ

京太「………?あ、はい。どう、いたしまして?」

胡桃「………食べづらいだろうし、どくね。充電ありがと」

京太(………?動きを封じるためだったんじゃ………)

胡桃(………もったいなかったかな)

塞「そういえば、京太。傷、どうだったの?」

豊音「あ、そういえば今日の午前中に病院にいったんだっけ」

京太「あ、包帯はもう取っていいそうです。あとは寝る前に薬だけ塗れば」

胡桃「あれ?じゃあなんでとらないの?」

トシ「そういえばそうだね。すっかり忘れてたよ」

京太「あー………本当はすぐ取ろうかとも思ったんですけどね」

シロ「片目塞がってるのって、ダルくない?」

京太「まあ、見えづらいのは確かですけど。今日は鍋やるってわかってましたからね。食事中に見て気持ちのいいものでもないですし」

塞「ああ、そういうことか」

エイスリン「ミタイ!」

京太「え?」

エイスリン「キョータノカオ、ミタイ!」

トシ「ああ、そういえば。怪我してるところを運び込んだ時以来、素顔を見てないねぇ」

豊音「いつも右側が包帯で隠れてるもんねー」

塞「そうだね。最初の時はゆっくり見る余裕もなかったし。というか、速攻救急搬送へGOだったもんね」

シロ「………若干、見たいかも」

京太「え、ええ?少なくとも、食事中にお見せするようなものじゃ………」

胡桃「………見たい」

京太「」

胡桃「見たい」

京太「………わかりました。ただ、気分悪くなったらすぐ隠しますので、言ってくださいね」

シュルシュルッ

パサッ











胡桃「―――――――――ッ!!!」

塞「わあ」

シロ「………」

エイスリン「ワォ………」

豊音「かっこいいよー」

トシ「なんだい、随分男前じゃないか」

京太「あ、大丈夫です、か?」

トシ「言っただろ?何だい、そんな男前な顔をずっと隠してたのかい」

塞「あ、でもやっぱり結構痕残っちゃったね」

京太「こればっかりは仕方ないですよ。お見苦しいでしょうが、勘弁してください」

豊音「そんなことないよー。ワイルドでかっこいいよー!」

エイスリン「ハードボイルド!!」

京太「あ、ありがとうございます。………あれ?」

胡桃「………………!!!」

京太「く、胡桃さん?」

胡桃(え、何!?京太ってこんなにカッコよかったの!?)

胡桃(い、いや、!!それに関しては前からわかってたっていうか………で、でも。火傷痕すらかっこいいとか………!!)

胡桃(え、何!?両目で目が合うだけでこんなに違うの!?い、いや、片目でもその、かっこいいけど!!)

胡桃(あ、あの、えと、その………)

京太「く、胡桃さん!?」

胡桃「!!!?」ビビクンッ

京太「あ、あの、胡桃さん?大丈夫ですか?」

胡桃「あ、う、うん!!大丈夫!!だいじょうブイ!?」

京太「キャラ崩れてますよ!?本当に大丈夫ですか!?」

胡桃「だ、大丈夫だから!!大丈夫だからぁ!?」

胡桃(う、うあああぁぁぁぁぁ!!!じっと見つめるなぁ!!!)

塞「あー………これ、鍋無くても暑いねー」

豊音「ご飯が進むよー♪」

エイスリン「ツンデレ、ニホンブンカ!!」

塞(………そろっそろ、エイスリンさんに偏った日本語教える根源を探し出さないと)

トシ「いいねえ、青春だよ………そういえば大沼プロは元気かねぇ………」

シロ「………………………」

シロ(………なんだろ)

シロ(………鍋、美味しい。なのに………)


シロ(………なんか、ダル………)ムグムグ

本日は一旦ここで切らせていただきます。
が、少しずつ書き溜めしてるので、もしかしたら何回か更新するかもです。
それでは、本日もありがとうございました。


【独り言】
胡桃ちゃん、寒くなってきたね。添い寝しようか。さあ、布団においで

また日数が空いてしまった………
どうも、胡桃ちゃんに和服を着てほしいスレ主です。

本日も少しだけ更新したいと思います。よろしければお付き合いください。

なお、京太の顔の包帯に関しまして
巻き方としてはもこちゃんのように顔を斜めに隠すような感じですが、結構面積が広く
固定のために鼻を横切るような形で顔の真ん中も通ってます。
なので、顔は半分近く隠れた状態ではありますがミイラ男ではないです。

【注意】今回も糖分、というかキャラクター崩壊がより一層ひどいことになります。ご注意ください。

塞「うーん、やっぱり美味しい」ムグムグ

シロ「塞、シイタケとって………」

塞「はいはい………って、あんたシイタケ好きよね」

シロ「うまー」モグモグ

京太「鍋って、好きな具材結構分かれますよね」

塞「あ、わかる。私は白菜と豆腐かな」

京太「俺はやっぱり肉ですかね」

シロ「………」ツンツン

京太「ちょ、シロさん!?」

シロ「………肉食べてるから、こんなに筋肉つくのか」

塞「あ、確かに。京太君って細いように見えて結構筋肉ついてるよね。細マッチョだっけ?」

京太「そんなについてはいないと思いますが………ていうか、肉ばっかり食べてるわけでもないですし」

シロ「結構、マッチョ」

京太「で、ですかね」

塞「あれ?胡桃?なんかさっきから静かだけど………どうしたの?」

胡桃「………………」

シロ「………胡桃?」

京太「大丈夫ですか?体調でも………」

胡桃「………………な」

塞「は?」




胡桃「京太に!!しゃわるにゃそこぉ!!!!」




京白塞「「「!!!!!?」」」

胡桃「京太に!!しゃわるにゃ!!わたひのーーーー!!」ギューーーーーッ

京太「ちょ!!ちょぉーーーー!!!?く、胡桃さん!!?」

塞「ちょ、どうしたの胡桃!!あんたダイレクトになるにも………!!」

シロ「………………あ」

シロ「………………」ガサガサ

シロ「………うわぁ。これかぁ………」

塞「シロ?どうし………あ」

【いくのん印のフルーツカクテル!!これで気になるあの子の本音もバッチリ!!(ピーチ味)】


塞「………………ッ!!」ギロッ


トシ「………………」ヒック



京塞「「せんせえええええええええええええええええええ!!!!」」

トシ「ああ、まあいいんじゃないかい?どうせ2年3年したら経験することなんだ………ヒック」

塞「あなたそれでも教師ですか!!ちょ、胡桃しっかりしないさい!!」

シロ「………もう手遅れっぽいけど」

京太「え………?」


豊音「あははははははは!!エイスリンさんが6人いるよー!!!!」

エイスリン「#!@*+$%#%~&%&#%#=!!!!!??」


塞「」

京太「」

シロ「………うわぁ」

塞「ちょ、豊音!!エイスリンさん!!しっかりして!!」

豊音「あははー!!みんながいっぱいいるよー!!あはははははは!!」

エイスリン「#%&%&$%&()()%&%&##$’!!!?」

塞「だ、だめだこりゃ………ちょっと水もってくる!!京太君、胡桃押さえておいて!!」

京太「は、はい!!胡桃さん、大丈夫ですか?」

胡桃「らいじょぉぶ………きょーたぁ………」ギューーーーー

京太「」

シロ「………………」

胡桃「もっろ………じゅーでん………」

京太「あ、あのー………………」

シロ「………ダル」フイッ

京太(見捨てられた!!我、孤立セリ!?)

塞「ちょ、エイスリンさん!?エイスリンさーん!?………寝ちゃった。豊音もか………」

塞「京太君、ごめん。ちょっと二人の家に電話して、隣の部屋に運んでくる。さすがにこのまま帰せないよ」

京太「え?胡桃さんは?」

胡桃「………………………」ギューッ

塞「………………」

塞「しばし、そのまま!!」

京太「ちょっとぉ!?」

トシ「若いねぇ………」ヒック

塞「先生も、今日泊まっていってください。ていうかこんな事態、この場だけで収めないと………」

胡桃「………きょーた」

京太「は、はい。京太です」

胡桃「………………ぃで」

京太「え?」



胡桃「どこにも………いかないで」


京太「………………」

京太「………………胡桃さん」

京太「どこにも、いきませんよ」

胡桃「………………………」

京太「俺は、ここにいます」

胡桃「………………………………京太」

京太「ここにいます。だから………」

胡桃「………そっ、か」

シロ「………………………」

ひょい

胡桃「んあ?」ヒョイ

京太「あ、あれ?シロさん?」

シロ「………寝かせてくる。そろそろ寝れるくらいには疲れてきたでしょ」

胡桃「うなー……わたしは猫じゃないー………」プラプラ

京太(い、いくら小柄な胡桃さんとはいえ、指2本で………?シロさん、実は相当力あるんじゃ………)

シロ「さ、行くよ。さっさと寝て酔いを飛ばして。塞、先生は?」

塞「あ、う、うん。もう寝てるみたいだけど………」

シロ「じゃあ、胡桃も寝かせてくる」

塞「う、うん」

京太「お、お願いします」

シロ「ん」

パタンッ

京塞「「………………………」」

塞「し、シロってあんな行動力あったんだ………」

胡桃「うなー………」プラプラ

シロ「………………ほい」ポト

胡桃「いた!!おとふなーー!」

シロ「もういいんじゃない?」

胡桃「………………んあ?」

シロ「酔ったふり。とっくに醒めてるでしょ?」

胡桃「………………………………」

シロ「そもそも、本当に酔ってたのかもわからないけど………胡桃、そんなに弱くなかったもんね」

胡桃「………前にシロの家で二人で梅酒飲んでみたことなんて、塞には口が裂けても言えないけどね」

シロ「それで………すこしはすっきりした?」

胡桃「………少しは、ね」

胡桃「あんな状態でもないと、とてもじゃないけど言えないから」

シロ「それは、どっちのこと?」

胡桃「どっち?」

シロ「『どこにもいかないで』?それとも『京太に触るな 私の』って方?」

胡桃「!!!!!!????」

シロ「………ダルいから、深くは聞かないけど」

胡桃「~~~~~~~~~~///////!!!!」バンバンバンッ

シロ「………おやすみ」

パタンッ

胡桃「………………………」

シロ『『どこにもいかないで』?それとも『京太に触るな 私の』って方?』

胡桃「………決まってる」

胡桃「………そんなの、決まってる」



――――――どっちも、だ

シロ「………………」

シロ(………胡桃に、あそこまで言わせたんだ。そして、それに答えたんだ)

シロ(もし、勝手に姿なんか消したりしたら………)

シロ「………許さないから」

シロ(それと………)

胡桃『京太に!!しゃわるにゃ!!わたひのーーーー!!』




シロ「………………………………」




京太『どこにも、いきませんよ』






シロ「………別に」



――――――胡桃のものじゃ、ない

本日の更新はここまでになります。
途中から書き溜め尽きてたんですが、その場でキリがいいかな?という部分まで書いて投稿しました。

最初に「胡桃ちゃんに和服を着てほしい」と申し上げましたが、和服のほかにも
巫女服ナース服メイド服軍服巫女服スーツ胴着警察巫女服チャイナ服白衣甲冑エプロン巫女服割烹着ゴスロリ雨合羽巫女服
などなど、いろいろ着てほしいです

まあそれは置いておいて
これからまた不定期な更新になるとは思いますが、どうかお時間のある方はお付き合いいただけると嬉しいです。悶えます。

それでは、本日もありがとうございました。


【独り言】最近天気悪いね。お部屋でゆっくりしようか胡桃ちゃん、二人っきりで

車にロン(物理)されて休んでいた間、かなり時間が空いてしまいました。
大変申し訳ありません。お久しぶりです、スレ主です。

少なめになりますが、久しぶりに更新させていただきます。
お暇でしたら、お付き合いください

翌朝。

豊音「うう、頭痛いよー………」

エイスリン「―――――――――!!!」ズキズキズキ

胡桃「うわぁ………こりゃ酷い」

塞「まあ、あんな惨状になったわけだし………」

胡桃「京太とシロは?」

塞「あの後帰ったよ。京太に関しては、ご丁寧に片付けまで全部やって」

胡桃「うわぁ………悪いことしちゃったなぁ」

塞「まあ、結果的に悪いのは先生だから………ていうか、胡桃。あんた、結構ぴんぴんしてるけど」

胡桃「あ、まあ、残らない体質なんじゃないかな?」

塞「………まさか、前にも」

胡桃「あ、布団!!布団片づけるの手伝うよ!!」

塞「ちょ、胡桃!!まだ聞きたいことが………!!」


塞(けど、あの時本当にびっくりしたのは………)

――――――――――――――――――――――――――
前日

京太「それじゃあ、片付けしちゃいますか。洗い物持っていきますね」

塞「あ、いいよいいよ!!そのくらいやるってば!!」

京太「いえいえ、お邪魔してるのはこちらですから」テキパキ

塞「いや、手伝うってば!!」

シロ「………」

ヒョイ

塞「え?」

京太「シロさん?」

シロ「………………手伝う」



塞「」

シロ「三人でやれば………そこそこ早く終わるでしょ」

京太「あ、はい………じゃあ、すみません。お願いします」

塞「」

京太「塞さん?」

塞「あ、ご、ごめん。じゃ、じゃあさっさと片付けちゃおっか!!」

京太「はい。そうしましょう」

――――――――――――――――――――――――――――――――

塞(シロが………まさか、自発的に動くなんて)

塞(本当にただ早く帰りたかっただけ?………にしても、普段の、今までのシロじゃ考えられない)

塞(悪いけど、軽く異常事態だよね?)

塞(思い返してみれば………最近、シロがやたら行動力を見せる時があったような………)



塞「………どういう心境の変化なんだろうね」

シロ「何が?」

塞「なんでもない」


塞(………何かが、少しだけど)

塞(変わり始めてるのかな)

数日後。喫茶【遠野物語】

カランカランッ

京太「いらっしゃいませー」

塞「おお、やってるやってる」

胡桃「やっほー」

シロ「や」

京太「三名様ですね?おタバコはお吸いになられますか?」

シロ「す」

胡桃「吸うわけないでしょそこ!」

京太「はは、すみません。それでは、こちらへどうぞ」

胡桃「ありがと」

塞「………ねえ、シロ。今………」

シロ「何が?」

塞「………いや、何でもない。気のせいだった」

京太「ご注文お決まりになりましたらお呼びk」

胡塞白「「「いつもの」」」

京太「………畏まりました。マスター、抹茶ラテとカプチーノお願いします。キャラメルラテは自分がやりますので」

店長「はいよ。三人とも、いつもありがとうね」ムキッ

塞「いえいえ。こちらこそ」

胡桃「ていうか、結構厨房入るの早かったよね」

店長「おう、それな。こいつときたらジッとしてるって言葉を知らんようでね」ムキムキッ

店長「傷の様子とかも見て、ドリンク系から少しずつ教えてるんだが、どうにも呑み込みが早くてな。びっくりしてるんだ」ミリミリッ

京太「いえいえ、結構必死ですよ。それに、もともと傷はほとんど治ってるんですから」

塞「傷のせいで怖がられたりしてない?」

京太「あー………不安だったんですが、みなさんいい人ばっかりで。逆にびっくりしてます」

京太「っと、お待たせしました。キャラメルラテです」

胡桃「ありがと」

店長「おう、他もできたぞ。頼むわ」ミチミチッ

京太「はーい。………………お待たせしました。抹茶ラテとカプチーノです」

塞「ありがとう」

シロ「………ん。ありがと」

店長「京太、お前飯まだだろ。先に食べちまえ」ミリミリミリッ

京太「あ、わかりました。それじゃあ、お先にお昼いただきます」

店長「ああ、悪い。その前にこれ持って行ってくれ」ムキムキッ

京太「あ、はい。すみません、失礼します」コトッ

塞「え?これは?」

店長「サービスのサンドイッチだよ。お昼時だし、何より最近ずっと来てもらってるからな」

すみません、30分ほどですが一時離脱します。
少しにしておこうと思いましたが、今日はもうちょっと書きたいと思うので

胡桃「そんな、悪いですよ」

店長「構わんさ。それにこんな有能なバイト君連れてきてくれたお礼もあるしな」ムキムキッ

バンバンッ

京太「ぁ痛あ!!ま、マスター!!痛いです!!痛いですって!!」

店長「すまんすまん、はっはっは。ほれ、今日のまかないだ。どうせだ、胡桃ちゃんたちと食べてくるといいさ。今日は暇だしな」ミリミリッ

京太「え、いいんですか?一応仕事中じゃ………」

店長「三人とも、京太が同席してもいいかなー?」ムキムキムキッ

胡塞白「「「いいともー」」」

京太「………それじゃあ、失礼します」

すみません、先に本文書き込んでしまいましたが、帰還しました。
自分の肉体と相談しながら更新します。ご心配おかけして申し訳ない

塞「なんだか、まだ新人なのに随分仕事慣れてるよね」

胡桃「まあ、あの料理とか雑用の手際の良さから想像はしてたけど………」

シロ「それ、まかない?」

京太「ええ。タコスです」

胡桃「………メニューにあったっけ」

店長「それがよぉ………こいつに『得意料理はあるか?』って聞いてみたら、タコスとか言いだすもんで作らせてみたんだ」ミチミチッ

店長「そしたら、悔しいことに………タコスだけはこいつに勝てねえんだ。何度作り直しても、入って数日の新人に………」ムキッ

店長「飲食店一筋25年………こんな悔しいことはねえよ。だから最近必死こいて作って練習してるんだ」ミチッ

塞「そ、それは………」

胡桃「じゃあ、これもそのうち新メニューになるんですか?」

店長「こいつに勝てたらな。そうじゃなきゃ、恥ずかしくてとてもじゃねえがお客様に出せねえよ………」ピクピクッ

シロ「予想以上の才能………」

塞「ていうか、本気で何してた人なんだろうね」

胡桃「本当に料理人だったんじゃない?」

京太「そこはわからないですけど………ただ、何かしらしてないと落ち着かないんですよね。料理も好きみたいですし」

胡桃「そこはまあ、もうわかりきったことだけどね」

京太「そういえば、皆さんは部活帰りですか?」

塞「ううん。今日はみんなで胡桃の家に行ってたんだ。それで、ダラダラするのもいいけど遊びに出ようかって時に」

胡桃「どうせなら、京太の働いてるところ見に行くついでにお茶にしようかって」

シロ(………どっちがついでなんだか)

京太「エイスリンさんたちは?」

胡桃「二人とも用事があるんだって。一応誘ったんだけどね」

塞「エイスリンさんといえばさ」

京太「?」

塞「………最近、画材が本気で本格的になってきてない?」

京白胡「「「………あー」」」

胡桃「この間買ってたアレ、油絵の道具だよね」

京太「この前、イーゼル背負って歩いてましたよ………」

塞「以前の校内写真撮影の時もそうだったけど、画材を持ち歩くっていうかまるで特殊部隊みたいに画材を装備してるもんね………」

シロ「最初は二、三本のマーカーだったのにね」

塞「………10年20年後くらいに、本気で有名な画家になってたりして」

胡桃「あはは、そうなるかもね」

京太「そしたら是非個展を見に行きたいですね」

シロ「………んー………」

塞「シロ?何考えこんでるの?」

シロ「………たぶん、そうなるんじゃないかな」



塞胡「「………」」

京太「そうですね。エイスリンさん、何事にも熱心ですし」

シロ「………ん」


塞(シロが悩んで出した答え………てことはさ)ヒソヒソ

胡桃(………これは、本当にそう思っておいたほうが………)ヒソヒソ


京太「あ、そういえば。今度また皆さんで集まるときありましたら、その時はタコスを作らせていただけませんか?」

塞「え?いいの?」

京太「はい。なんだか、この料理は特に懐かしい気がして………みなさんにもよろしければと」

胡桃「う………食べてみたい」

シロ「むしろ、材料よく揃えたよね………タコスなんて特殊なものの」

京太「それに関しては俺もびっくりですよ。商店街の先にあるスーパーで『カッパ屋』ってあるじゃないですか」

塞「ああ、あそこやたら品揃えいいよね」

京太「ええ。でもまさかトルティーヤの材料まで売ってるとは………」

胡桃「あそこ、需要あるの?って疑問になるものまでおいてるからね」

塞(………………………)ニヤッ

塞「あ、じゃあさ。その時は胡桃の家で集まろうよ」

胡桃「!?」

塞「何度かみんなで集まってるけど、京太きてから胡桃の家に集まったことってないもんね」

胡桃「え、あの、その」

塞「それでいいかな、京太君」

京太「ええ、胡桃さんがよろしければ」

胡桃「あ、い、いいよ!!ぜひ来て!!」

胡桃(あわわわわ、塞何言い出だすの!?部屋の掃除、いつもよりしっかりやらないと………!!)

シロ(………なんだろ、考えてることがまるわかり)

シロ(………………………………ダル)

店長「しっかし、今日は本当に暇だな………」ミチミチッ

塞「確かにいつもより人少ないですね。普段ならこの時間だったら何組かいるのに」

店長「この時間でこれってことは、夕方も期待できそうにねえな………そうだな、ならいっそ………」ブツブツムキムキブツブツムキムキ

胡桃(ブツブツ言いながら筋肉動いてる)

店長「よっしゃ!!京太、今日はもう上がっていいぞ」ムキキッ

京太「え!?もうですか!?」

店長「ああ、安心しろ。勤退は予定通りにつけておく。どうせ人も来ねえみたいだしな。たまにはお嬢ちゃんたちと遊んで来い」ミリミリミリッ

京太「あ、じゃ、じゃあ、せめて洗い物だけでも………」

店長「だからいいって!!お前は仕事してねえと呼吸できない病気か何かか!?」ムキィッ

シロ「あー、ありそう」

京太「ちょっとぉ!?シロさん!?」

胡桃「反論はさせない」

塞「それでシロに逆水平チョップ食らったのは誰だっけ?」

京太「で、でも。自分のまかない分くらいは………」

店長「ほう………なら、今度は俺から逆水平を………」ミリミリミリミリミリッ

京太「」

店長「ッシャア!!ッシャア!!」ヒュゴォ!!ヒュゴォ!!

京太「お言葉に甘えさせていただきます!!ですからその物騒な風切音のする素振りをやめてください!!」

店長「よし、ゆっくり気晴らししてこい」ムキキッ

胡桃(本当に何者だこの人)

―――――――――――――――――――――――――――――――――

塞「てなわけで京太も加えて4人になったわけだけど、これからどうしようか」

胡桃「特に決めてなかったからねー。どうせならもうちょっと遊びたい」

シロ「お腹もいっぱい………」

塞「サンドイッチ、結構ボリュームあったもんね。今度お礼に何か差し入れ持っていこう」

京太「そういえば、皆さんって部活の時以外はどういった場所で遊んだりしてるんですか?」

胡桃「そうだねー。普段は誰かの家でだべってるか、お茶してるかだけど………」

胡桃「あ、でも。商店街のはずれに、すっっっごい小さいゲームセンターあるのわかる?」

京太「あ、なんか見たことあります」

胡桃「あそこで集まることもあるかな。せっかくだし、久々にみんなで行ってみる?」

塞「………………………ふっふっふ」

京太「!?」

塞「シロ!!そうと決まれば!!今日こそは負けないよ!!」

シロ「………どうせ私が勝つしなぁ」

塞「なんだとぉー!!?」

京太「さ、塞さんどうしたんですか。そんな胡桃さんみたいな声あげて」

胡桃「京太、あとでちょっと話し合おうか」

京太「」

胡桃「あー………塞はあるゲームでシロにボロクソに負けてるからね……割といつものことだから気にしないで」

京太「は、はあ」

胡桃「………………っ!!?」

【以下、胡桃の脳内】

え、ちょっと待って。これって、塞はシロと一騎討ち望んでて、シロもそれ受けてる。
ってことは、残った私と京太は?うん、別行動ってことはないよね?ない、よね?

ってことは、京太と二人きり!?え、いや別にだからどうこうってわけじゃないけど、
いやいやいや、私も嫌ってわけじゃないよ!?むしろうれしいよ!?

け、けどいきなりだと心の準備が………きょ、京太どういうゲームが好きなんだろ!?
そ、そもそもゲームやるのかな?こんな片田舎の小さいゲーセンで満足できるのかな?

て、ていうか!!京太は嫌じゃないかな!?みんなで来てるのに私なんかと二人きりって!!

い、嫌じゃ………ないよ、ね?大丈夫だよね?

ていうか、なんでこんなに焦ってるの私!!べべべべべ、別にデートってわけじゃ………




京太「あ、あの、胡桃さん?」

胡桃「ひゃい!!!!!????」

塞「さあ、ここだよ。まあ、見た目どおり小さい場所だけど………」

シロ「むしろこんな田舎で存在するのが奇跡」

塞「てなわけで、シロ!!いざ尋常に勝負!!」

シロ「………ダル」

京太「ふ、二人とも、すごい熱くなってますね………邪魔しないほうがいいかな」

胡桃「じゃ、じゃあさ」

京太「?」

胡桃「こ、こんな小さいゲーセンだけどさ。一緒に、その、回る?」

京太「ええ、そうしましょうか。お供します」

胡桃「そ、そっか!!じゃあ、私たち他行ってるから!!」

胡桃(よし!!ふ、不自然じゃなかったよね!!)

塞(………そっちも十分熱くなってるけどね)ニヤニヤ

シロ(………………………)ジトー

塞「?シロ、どうしたの?」

シロ「………塞。悪いけど」

塞「え?」

シロ「久々に、全力でいくから」

塞「」



胡桃「まあ、見てわかる通り………小さいだけじゃなく、ゲームも結構古かったりするんだよね。最新なんてわからないけど」

京太「それでもけっこうありますね」

胡桃「ゲームコーナーと呼ばれないくらいにはね。じゃ、なにからやろうか」

京太「そうですね………ちょっと迷います」

胡桃「ていうか、京太ってゲームやるの?そもそもそこが疑問なんだけど」

京太「あー、わからないっていうのが正しいですけど。けど、結構興味はありますよ」

胡桃「まあ男の子だもんね。結構来てたんじゃない?」

京太「ははっどうでしょうか………あ、これちょっとやってみてもいいですか?」

胡桃「これ?って、クレーンキャッチャー?」

京太「ええ、ちょっと取れそうな気がして」

胡桃(………こういうヌイグルミとか好きなのかな。見た目金髪で派手なのに………)

胡桃(………………アリかも)

京太「それじゃ………」チャリンッ

ウィーーーーーーーーーン………

胡桃「………………」ジー

京太「ここだ!!」ピタッ

ウィーーーーーーーン………

胡桃「!!?」

京太「よし」

胡桃(え!?一発!?一発で!?しかもこれ、結構クレーンの力弱い奴だよ!?)

胡桃(しかも何故に!?何故にそんなファンシーな子猫のヌイグルミを!?)

ウィーーーーーーーーーン………ポテッ

京太「よし、一発!!」

胡桃「」

京太「いや、なんか取れそうな位置でいい角度で置いてあったのでやってみたら、まさかの一発でしたよ」

胡桃「す、すごいね。やっぱ前に相当通ってたんじゃ………」

京太「あはは、どうなんでしょうね」




ザザザ



京太(!!?)


ザザザザ

ザザザザザザザザザ

ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ――――――!!

―――――――――――――――――――――――――

おい犬!!そんなの取ってどうするんだじぇ!!

うっせーな!!隣の取ろうと思ったらこっちに引っかかったんだよ!!

隣って………このパンダですか?

うっ………いいじゃねえか!!結果的に一発でとれたんだから!!

わぁ………かわいい

あ?欲しいのか?

い、いやそんなわけじゃ………!!

いいよ、ほら。俺が持ってても仕方ねえし

ふぇ!?………あ、ありがと


―――――――――――――――――――――――――

京太「!!!!!!!?」ズキッ

胡桃「きょ、京太?」

京太「………あ」

胡桃「ど、どうしたの?なんか、すごく苦しそうな顔してた」

京太「………………」

京太「なんでも、ないですよ」

胡桃「………………………」


胡桃(………いつもそうだ)

胡桃(本当に、無駄なところで、頑固)

胡桃(みんなのことは、まるで自分の事みたいに手助けしようとするくせに)

胡桃(………自分のことは、とことん――――)


京太「はい、胡桃さん」ポスッ

胡桃「え?」


京太「いえ、取れそうだと思って取ってみたはいいんですが………自分が持ってても仕方ないですし」

胡桃「え?いやいや、悪いって!!」

京太「それに」

胡桃?」

京太「胡桃さんに、似合いそうかなって」



胡桃「~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!????////////」





京太「もちろん、嫌じゃなければですg」

胡桃「あ、ありがとう!!」

京太「!?」

胡桃「あ、ありがとう………大事に、する」

京太「………………」

京太「ありがとうございます」

塞「」

シロ「や」

胡桃「あれ?もう終わったの?」

塞「」

京太「あの、塞さんが燃え尽きてますけど………」

塞「………………た」

胡桃「え?」

塞「………トキ使ってたのに、ジャギに負けた………しかもバスケされた………」

胡桃「」

京太「?」

シロ「………………」フンス

―――――――――――――――――――――――――――――

トシ「ふう、京太がいないとずいぶん寂しいものだね、この家も」

トシ「………にしても、やることがないねぇ」

トシ「掃除でもするかい。こういう時にでもやらないと、いつもなあなあになっちゃうからねぇ………」

トシ「それじゃあ、やるかね。ついでに京太の上着も埃はらって……」

ポトッ

トシ「ん?」

トシ「コートから何か………燃えカスかい?払ったつもりだったけど………」

トシ「――――――――――――――――――っ」

トシ「これは」





トシ「校章?」

本日はここにて終了させていただきます。
というか、最初に「少しだけ」とか言っておきながらこんなに書くとは自分でも想像してませんでした。
長々とすみません。

軽トラにロン(物理)されてしばらく来れませんでしたが、何とか体も言えてきたのでまた少しずつ更新していこうと思います。
皆さま、ご迷惑ご心配をおかけしました。

それでは、最近冷え込んできております。皆様もお体にお気をつけて。
次の更新まで、また。



【独り言】体中が痛いよ。胡桃ちゃん、看病して

軽トラ「ロン(物理)wwwハネ満っすwwwww」ドーン
主「うぼぁ-----!!」


こんなことからようやく復帰して体が癒えてきた主です。

今日も少し更新します。
今日はちょっと亀更新になるかもですが、よろしくお願いします。


【追記】みなさま、体に気を付けてコメントありがとうございます。用心いたします。

【追記2】
若干のステマ?と、キャラの稼業ねつ造が入ります。ご注意を

胡桃「それじゃあ、そろそろ行こうか」

京太「楽しかったですね」

塞「いや、こっちとしてはびっくりだよ………京太君、実はかなりゲーム得意だったんだ」

シロ「動きがアレだった」

京太「アレってなんですか!?」

胡桃「クレーンもそうだったけど、タイム○ライシスとかいきなり凄いスコアだしてなかった?」

塞「それもそうだけど、一番びっくりしたのは………」

京太「あ、アレはまぐれですって」

胡桃「ダウト」

塞「怒首領蜂はマグレでクリア目前まで行けるようなゲームじゃない。しかも大往生」

シロ「割とあと一歩だった………」

京太「は、ははは………」

胡桃「あ、そうだ。この後何も予定なかったら、ちょっと古本屋寄っていいかな」

塞「いいけど、何か買うの?」

胡桃「ちょっと最近、家にあるの読みつくした感があって。夜中読むのに何か買おうかなって」

京太「小説ですか?」

胡桃「うん、文庫サイズくらいの」

塞「夜中まで本読んで起きてるから背が伸びないのよ」

胡桃「うるさいそこ!!」

シロ「別にいいけど」

塞「それじゃあ、『文命堂』だよね?行こうか」

京太「古本屋もこの近くなんですか?」

胡桃「むしろこの商店街の近く以外になかったらないからね」

シロ「この近辺が、地元民の生命線」

塞「まあ、ド田舎だしね………京太君も何か探してみれば?」

京太「そうですね。そうします」

胡桃「じゃ、出発しよっか」

古本屋『文命堂』


シロ「久々に来た………」

塞「そもそもシロはあんまり自分から家出ないでしょうが……ここで本買いだめして引き籠るとかやめてよ?」

シロ「善処する」

胡桃「それやる気のない人間の返答!」

塞「まったく………あ、これ」

京太「知ってる本なんですか?」

塞「いや、もう持ってる本。この作者の作品好きなんだよね」

胡桃「何それ?………『麦の海に沈む果実』?」

塞「この作者なら他にも、『球形の季節』とか『ネバーランド』もおすすめかな。ちょっとホラーなら『六番目の小夜子』も」

胡桃「へえ、結構読んでるんだ………じゃあ、これ買ってみよ」

京太「あれ?シロさんは………」

シロ「………………」ジーッ

『実践 プロレス技読本 ~打撃技編~』

京太「」ガタガタガタガタ

京太「お、俺も何か見てみようかな!!」

胡桃「………?」

塞「胡桃はそれ一冊でいいの?」

胡桃「ううん、もうちょっと見てみようかと」

塞「そっか、じゃあ私も他見てくるから」

胡桃「うん………そしたら、どうしようかな。これ文庫にしてはボリュームありそうだし、適当にあと一冊………」

京太「えーっと………これは………」

胡桃「………」

京太「これは………ん?」

クイクイッ

京太「あの、胡桃さん?」

胡桃「………その、上の段」

京太「上、ですか?」

胡桃「うん。その本から右に4つ目」

京太「この本ですか?えっと、『ソロモンの犬』?」

胡桃「………それ、私が好きな本」

京太「へえ………」

胡桃「よかったら………その、読んでみて?」

京太「………ええ。ありがとうございます。帰ったらさっそく読ませていただきますね」

胡桃「………ん」

シロ「………………」ジーッ

塞「さて、私はこれだけ買おうかな。あれ?シロ、何か買うの?」

シロ「………ちょっと、ね」

塞「?」チラッ

『実践 プロレス技読本 ~打撃技編~』

塞「」

京太「あ、そちらも見終わりましたか?」

塞「う、うん」

胡桃「じゃあ会計しちゃおうか」

塞「………………京太君」

京太「はい」

塞「………生きて」

京太「?」

胡桃「よし、それじゃあ帰ろうか」

京太「あ、はい。それじゃあ今日はこのまま解散で?」

塞「そうだね。特にやることもないし、これから何かしようってなると遅くなっちゃうから」

胡桃「だね。じゃあ、このまま帰りながら流れで解散しようか」

シロ「………ん」

塞「京太君は明日も仕事?」

京太「そうですね。今日早上がりしてしまいましたから、頑張らないと」

胡桃「何度も言うけど、無茶しないようにね?」

京太「ええ。重々に」

シロ「その言葉、何度聞いたことか………」

――――――――――――――――――――

京太(………最近)

京太(あの、頭の割れるような痛みと一緒にくる記憶の断片………それが、頻度を増してきた)

京太(もちろん、それは記憶が戻りつつあるということ。それは望んでいたことだ)

京太(当然だ、記憶を取り戻したくないわけがない)

京太(だけど)

京太(なぜ、だろうか。最近………それが、とても怖い)

京太(理由はわからないけど、たぶん―――)

京太(何か、思い出すことを無意識に拒絶するような記憶―――おそらく、この火傷に関わること)

京太(それを思い出すのが、とても恐ろしい―――そして、)

京太(きっと―――嫌なんだ)

京太(この時間が―――)

『どこにも………いかないで』

京太(『京太』としての時間が、終わることが―――)


――――――――――――――――――――

すみません、ちょっと席を離れます。
20分30分くらいで帰還します。

帰還しました。

ちょっとずつ更新します

三日後

ザアアアアアアァァァァァァァァァァァ………

京太「………まいったなぁ」

京太(まさか、こんな大雨になるとは………天気予報はやっぱり大事だな)

京太(傘も持ってきてないし………ようやく雨宿りできたはいいものの、かなり濡れたな………)

京太(雨もやみそうにないし、これからどうすれば………)

「………ぃ」

京太(あれ?そういえば………)

「………い」

京太(ここって、確か………)

「おーい」

京太「!!!?」

シロ「………いらっしゃいませ?」

京太「そ、そうだった………ここ、シロさんの家のお店だった」

シロ「そう。………まあ、お客さんってなると問題があるけど」

京太「酒屋さんですもんね………どうも、すみません。ちょっと雨宿りを………」

シロ「見れば、わかる」

京太「ですよねー………すみません、ちょっと軒下お借りしてます」

シロ「別にいいけど………かなり、濡れてる」

京太「突然降られて走ってきたので。天気予報見てなかったので、傘持ってなかったんですよ」

シロ「………」

京太「まあ、少ししたら様子見て走っていきますよ。このくらいなら………」

シロ「こっち」

京太「へ?」

シロ「こっちきて。タオル、貸す」

京太「い、いえ。勝手に雨宿りしてて、そこまでしていただくには………」

シロ「雨、深夜までやまないよ。むしろ、強くなる」

京太「」

シロ「それに、ここから走って帰れば風邪ひくし」

京太「大丈夫ですって。体は………」

シロ「病み上がり」

京太「………うっ」

シロ「少し、休んでって。明日風邪ひいて寝込んでた、なんてなったら後味悪い」

京太「………す、すみません。お邪魔します」

シロ「はい、タオル」

京太「すみません、お借りします」

シロ「いちいち、謝らないで」

京太「は、はい………なんか、それ毎回言われてる気が………」

シロ「毎回誤ってるからでしょ………それに、その言葉が一つも社交辞令じゃないのがダルい」

京太「え?」

シロ「自分を卑下しすぎてる、ってこと………いちいち本気で罪悪感抱えてたら、心がもたない」

京太「す、すみまs」

シロ「それ」

京太「う………」

シロ「ダル………まあ、いいけど。今日、休みだっけ?」

京太「はい。それで買い物に出ようと思ったんですが………」

シロ「こうなったと」

京太「はい………ていうか、その………」

シロ「………?」

京太「お邪魔しておいてこういうこと言うのもなんですけど………シロさんって、結構喋るんですね」

シロ「………は?」

京太「い、いえあの。普段、もっと無口な方かと………」

シロ「………」

京太「あ、あの。生意気なこと言って、すみませn」

シロ「別にいい………」

京太「え?」

シロ「喋らないのは事実だし………けど、場合によっては喋る。これでも人間だから」

京太「は、はぁ」

シロ「はい、これ」コトッ

京太「これは………?」

シロ「この間、塞が持ってきてくれたお茶………寒いでしょ?」

京太「すみません、いただきます」

シロ「ん………」

京太「………」ズズッ

シロ「………」

京太(き、気まずい………)

シロ「そういえば、さ」クイッ

京太「は、はい」

シロ「最近、胡桃とは仲良くしてるの?」

京太「え?胡桃さん、ですか?ええ、よくお世話になってますが………」

シロ「………」クイッ

京太「胡桃さんが、どうしました?」

シロ「別に………胡桃、最近楽しそうだから」

京太「楽しそう………?」

シロ「胡桃、以前はあんなに表情多くなかったから」

京太「胡桃さんが?」

シロ「うん。もともと、笑顔ではあったけど………あそこまで喜怒哀楽の表情が増えたのは、京太が来てから」

京太「そ、そうなんですか?俺には分からないですけど………」

シロ「だから、問題なんだけどね………」

京太「?」

シロ「………ねえ、京太」

京太「はい」

シロ「………前に、塞の家で鍋やった時のこと」

京太「覚えてますよ。大変、でしたね………あはは」

シロ「あの時、胡桃に言った言葉」

京太「っ」

シロ「本当に、どこにもいかないつもり?」





京太「………………」

シロ「………そういうわけにもいかないでしょ?」

京太「………ええ、そうでしょう、ね」

シロ「けど、あの時京太は、胡桃に言った」

京太「………はい、言いました」


『どこにも、いきませんよ』

『俺は、ここにいます』


シロ「………記憶が戻ったら、そんなことは保証できないのにね」

京太「………」

シロ「………別に、説教するつもりはないけど」クイッ

京太「………」

シロ「ただ、約束だけしてほしい」

京太「約束、ですか?」

シロ「………そう」

シロ「胡桃だけじゃ、ないってこと」

京太「え?」




――――――私の前からも、だ。




シロ「………」

京太「………シロ、さん?」

シロ「………いいから、覚えておいて」

シロ「………」

京太「………シロ、さん?」

シロ「………いいから、覚えておいて」

京太「………」

シロ「………………」

京太「大丈夫ですよ」

シロ「?」

京太「俺は、いなくなりません」

シロ「………だから」

京太「もし、どこかに行っても」


――――――必ず、ここに帰ってきます


シロ「………」

京太「………生意気言いました。忘れてください」

シロ「忘れないよ」

京太「………」

シロ「一生覚えてやるから、覚悟しろ」クイッ

京太「………はい」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

シロ「こっぱずかしい奴め」

京太「うぐ、ご、ごめんなさい」

シロ「別にいいけど」クイッ

京太「………ところで、その」

シロ「?」

京太「シロさん………とてもお聞きし辛いのですが」

シロ「なに?」

京太「さっきからチビチビやってるそれは………その………」

シロ「うん」

京太「明らかに、お酒………ですよね」

シロ「梅酒」

京太「み、未成年ですよね?」

シロ「酒屋の娘の特権」

京太「いやいやいや!!まずいですよね!?」

シロ「ダル………別にいいでしょ。外で、店で飲んでるわけでもないし」

京太「で、でも………」

シロ「………………」

シロ「ふんす」ガシッ

京太「!!!!??」

シロ「そいやっさー」

京太「!!!!!?」ングッングッ

シロ「ほい」

京太「ッ!!??」プハァ

シロ「これで、同罪」

京太「ず、ずるいですよ………む、無理やり飲ませるとか」

京太(ていうか、やっぱ力つよ………)

シロ「誰もいないし」

京太「で、でも商品ですよね?」

シロ「これは自家用。自分の家で作ってるだけ」

京太「で、でも………」

シロ「美味しくなかった?」

京太「………美味しかったですけど」

シロ「なら、よし。少し飲んで、体暖めてって」

京太「………はあ、わかりました。いただきます。けど、酒飲んだことない………はずですから、無理はしませんよ?」

シロ「それでいい。むしろ、京太の無理をしないは信用ならない」

京太「………本当、俺信用無いですね」

シロ「その一点に限っては」

京太「………」

シロ「それとも、何?」

京太「え?」

シロ「酔ったら変な気でも起こす?」

京太「起こしませんよ!?」

シロ「………………………」

京太「………」

シロ「………………」チッ

京太「え?シロさん?」

シロ「なんでもない。さ、飲んで」コト

京太「え?」

シロ「一杯飲んだんだから、二杯も三杯も同じ」

京太「そ、そういうものですか?」

シロ「そういうもの」

京太「………シロさん、なんか飲みなれてません?」

シロ「………………」フイッ 

京太「それに、あの………」

シロ「………………」ギク

京太「その、胸元の………」

シロ「ジロジロ見てたんだ?」

京太「ち、違いますよ!?」

シロ「………………」

京太「その、胸ポケットの………それは、まさか………」

シロ「………………………」

京太「や、やっぱり………たばk」

シロ「今日、京太は何も見なかったし、誰にも会わなかった」

京太「え」

シロ「だから、誰に何も話すことはない。特に塞とか」

京太「………………………」

シロ「………………………」チラッ

つ 『実践 プロレス技読本 ~打撃技編~』

京太「ナニモミテマセン」

シロ「よし」

京太「………シロさん、実は結構豪胆ですよね」

シロ「知らない」

京太「実は行動力あるんじゃないですか?」

シロ「知らない。ダルいし」

京太「………わかりました。これ以上は何も言いません」

シロ「別にいいけど………私も、京太に聞きたいことあったし」

京太「聞きたいこと、ですか?」

シロ「そう。そういう意味だと、今日は丁度よかった、かな………あんまり、胡桃たちがいると言いづらいし」クイッ

京太「なんでしょうか。答えられることなら………」



シロ「記憶、どこまで戻ってる?」



京太「………っ」

シロ「何度か、頭押さえてたよね。すごい顔しながら」

京太「………シロさんって、本当によく見てますよね」

シロ「けど、あの写真撮影の時以降………一切そのことを言わなくなった」

京太「………」

シロ「答えて。返答次第じゃ、一発ひっぱたく」

シロ「胡桃を………」



シロ「私たちを、あまり心配させるな」



京太「………」

京太「正直、核心というか大切なことは、一切」

シロ「………ふーん」クイッ

京太「実際、あの時お話しした………誰かを肩車してたって話」

京太「あの時から、あと数人誰かと話してる風景が断片的に出てくるだけで、ほとんどわかりません」

シロ「名前とかは?」

京太「全く出てこないです。むしろ、その人物像すらおぼろげで、顔も出てこない」

京太「正直、怖いですよ。俺も」

シロ「怖い?」

京太「自分が何者なのかわからないって、こんなに怖いものだとは思いませんでした」

京太「だってそうでしょう?もしかしたら、とんでもない極悪人かもしれないし、記憶を取り戻した瞬間に、今までの俺とは全く変わってしまうかもしれない」

京太「どれだけ頭の中で『大丈夫だ』って言い聞かせても………そうじゃない保証なんてない」

シロ「………………」

京太「これだけ優しくしてくれてる皆さんを、傷つけるかもしれない」

京太「それが、とんでもなく、怖い。いっそ、どうにかなってしまいそうなくらいに」

京太「俺は――――――」



シロ「そいや」

ゴッ

京太「!!!!?



京太(え?脳天げんこつ!!?てか、痛!!!?痛ぁ!!?)

シロ「大馬鹿」

京太「え?え?」

シロ「こんなことされてやり返さないような奴が、極悪人なわけあるか」

京太「………………」

シロ「もっと、私を信じろ」

シロ「私たちを、信じろ」



シロ「そのくらい見抜けないほど、私たちは馬鹿じゃない」



京太「………」

シロ「………もう一杯」スッ

京太「………いただきます」

シロ「ん」

京太「シロさん」

シロ「何?」

京太「ありがとう、ございます」

シロ「………いいから飲んで。それでさっさと涙引っ込めて。ダルい」

京太「はい」

――――――――――――――――――――

ザアアアアァァァァァァァァァァァ―――――――――――――

京太「………………………」スゥ、スゥ

シロ「………………ええ、そういうわけです。疲れもあるみたいですし」

トシ『すまないねぇ。それじゃあ一晩、京太君を頼むよ』

シロ「こんな雨ですし………もう遅いし」

トシ『………まあ、深くは聞かないようにするよ』

シロ「………………………」

シロ(本当にこの人は油断できない)

トシ『私も、ちょっとやるべきことがあってね』

シロ「………………?」

トシ『その辺、丁度よかったよ』

シロ「………そうですか、では」

トシ『ああ、ありがとう。また』

ピッ

シロ「………………」チラッ

京太「………………」スゥ、スゥ

シロ(………最近、胡桃もべったりだったし)

シロ(このくらいは、許されると思うけど)

京太「………ん………んが………」

シロ「………」

シロ「………………」カチッ

シロ「………ふう」

シロ(何が極悪人だ。『京太』が………そんなに簡単に消えるわけない)

シロ(じゃなきゃ………)









シロ「―――惚れた甲斐が、ない」

――――――――――――――――――――


トシ「ええ、そうですか………それでは、はい。お手数をおかけしました」

ガチャッ

トシ「………………」

トシ「清澄、高校」

トシ(京太君の上着から出てきた燃えカス、そこに載っていた校章………そこから、その高校名は割り出せた)

トシ(清澄高校。夏のインターハイでうちを破って、優勝まで上り詰めた学校だ)

トシ(まさか、そんなに身近というか知った場所に手がかりがあったなんて思わなかったけど………)

トシ(これは、いったいどういうことなんだい?)






『ええ。やはり、我が校の在校生。それと一応過去二年間の卒業生も含めてなのですが………』




『当校―――清澄高校に、『京太』という名前、もしくはそれが使われている男子生徒は、存在しません』



トシ(………どうやら、一筋縄ではいかないようだねぇ………)


トシ「京太君や………君は、どこから来た?」

トシ「京太君や。君は、誰なんだい?」

トシ「京太君や―――」

トシ(君は――――――)

本日はここで終了になります。
相変わらず、少しとか言っておきながらどんだけ長々書いてるんだ私………

今回は少し胡桃ちゃんから離れて別視点からになりました。シロの家業については完全に妄想です。
お酒とかあれこれについては………ごめんなさい、許してください

今度はもっと書き溜めしてから更新するようにします。
長々とお付き合いいただきまして、ありがとうございます。

それでは、また次の更新まで。失礼いたします



【独り言】傷がまだ痛むよ。一緒に寝て頭撫でてよ胡桃ちゃん

遅レスだが
>>246
塞「怒首領蜂はマグレでクリア目前まで行けるようなゲームじゃない。しかも大往生」

シロ「割とあと一歩だった………」

嘘だろ…あれやったことあるけど相当むずいっていうのに

大変遅くなりました。最近不定期に拍車がかかってしまい申し訳ありません。

本日はいつもより少量になるかもしれませんが更新いたします。

また、薄々お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、
本作のシロは若干妙な設定・スペックになってます。ご容赦ください。

それでは、お時間のある方はお付き合いいただけると幸いです。

二日後。夕方   宮守高校麻雀部部室

胡桃「ロン!」

塞「うわ、ちょ!?そこ当たりなの!?」

シロ「塞、今日ボロボロ………」

塞「うー………調子悪いのかなぁ」

豊音「このオーラスでまくるよー」

塞「させないよ。さすがにここで上がらないとカッコ悪いし」

胡桃「それじゃあ、それを阻止させてもらおうかな」

エイスリン「サエ!!ガンバッテ!!」

塞「うう、エイスリンさんだけが味方だぁ………」

シロ「リーチ」

塞「」

胡桃「うわ、えぐ」

ガラッ

京太「遅くなりました」

胡桃「あれ?京太?」

豊音「バイト終わったのー?」

京太「ええ。全部終わって、まだいるかなって」

シロ「もうすぐ終わる」

胡桃「そうだねー」

塞「終わらせるもんか!!このラス親で稼いでやる!!」

胡桃「ロン」

塞「」

豊音「お、終わったよー」

シロ「良形のリーチだったんだけど………競り負けたか」

胡桃「早いうちにテンパイできたからねー。正直シロが怖かったけど、降りる準備もできてたし」

豊音「胡桃さんはダマテンばっかりだからすぐ降りられるのは利点だよねー」

塞「………」

京太「さ、塞さん大丈夫ですか?」

エイスリン「サエ!!ゲンキダシテ!!ガンバッタヨ!!」

塞「うう………さすがに情けない………」

京太「そんなことないですよ。塞さんだって言ってたじゃないですか。麻雀ほど確実がないものもないって」

塞「そうだけどさぁ………」

胡桃「どうする?もう一打つ?」

塞「いや、いいわ………さすがに心折れた。明日以降に逆襲するよ」

豊音「それじゃあ、片づけるよー」

胡桃「あれ?そういえば京太、その紙袋は?」

京太「ああ、そうでした。先生から渡されたんですが、皆さんへの差し入れだそうで」

塞「え?………わあ」

豊音「お菓子だよー!!」

エイスリン「スナック!!」

胡桃「え?でもこんなに!?」

シロ「………これ、どうしたの?」

京太「………………」

シロ「目をそらすな」

京太「えと、その………」

トシ『パチンコも久々に打ってみたら、案外出るものだねぇ。ああ、せっかくだからみんなに差し入れ買ってきたよ。みんなに渡しておくれ』




京太「………だそうで」

塞「………何してるんだあの人」

胡桃「本当に教師なのかな………」

シロ「………ダル」

京太「ま、まあまあ。せっかくのいただきものですし」

シロ(………この間の電話で、何かしてそうだったけど)

シロ(特にそういったことはないのかな………?)

豊音「あ、これ好きだよー!!」

塞「あ、とんがりコーン」

胡桃「うわ、蒲焼きさん太郎とか懐かしい」

シロ「干し梅、もらい」

エイスリン「コレ、タベル!!」

塞「ちょ、それ暴君ハバネロ!?」

胡桃「ちょ、ストップ!!それはやばい!!」

エイスリン「?」

京太「それじゃあ、お茶淹れてきますね」

シロ「………またそうやって雑用に走る」

京太「うぐ、い、いいじゃないですか。今ではバイトだってやってるんだし」

塞「まあ、もうそこまで口うるさく言うつもりはないよ」

胡桃「言っても無駄な部分もあるしねー」

京太「うう、酷い………」

豊音「京太君、何食べるのー?」

京太「あ、じゃあキノコの山お願いします」

豊音「了解だよー」

シロ「………この中でキノコ派とたけのこ派はry」

塞「おいやめろ」

胡桃「それ以上いけない」

シロ「………まあいいけど」

京太「お待たせしました」

塞「ありがと」

エイスリン「サンクス!!キョウタ、コレ!!」

京太「ああ、キノコの山ですか。ありがとうございます」

胡桃「京太、顔の傷の様子は?」

京太「問題ないですよ。最近は違和感もないですし。むしろ視界広がっていい感じです」

塞「最近素顔も見慣れてきたしね。やっぱり包帯は早々に取るべきだったかもね」

京太「とはいっても、周りの気分を害しかねないですからね」

シロ「平気だったじゃん」

京太「う………まあそれは結果論で………」

塞「前から思ってたけど、京太君は必要のない心配とか罪悪感ばっかり抱えるよね。そんなにいちいち抱えてたら、心がもたないよ?」

京太「………っ」

シロ「………………」ジト

京太「………そうですね、気を付けます」

塞「………?うん、ならいいや」

胡桃「………?」

豊音「あ、これ美味しいよー」

塞「何それ。あ、たけのこの里か」

シロ「京太VS豊音g」

胡桃「だからやめて。その話題はだめ。百年戦争になる」

ちょっと2,30分離脱します。

戻ったらすぐに投下再開いたします

ちょっと2,30分離脱します。

戻ったらすぐに投下再開いたします

なんで連投誤爆してるんだ私………

戻りましたので、再開いたします

塞「そういえばこういうスナック菓子食べたの久しぶりかも」

京太「え?そうなんですか?」

塞「普段はお煎餅とか最中とか、あとは芋羊羹とかかな」

胡桃「………………それって」

塞「胡桃、後で話しあるから」

胡桃「」



エイスリン「NOOOOOOOOOOOOoooooooooooo!!!!」



『!!!!!!!?』

エイスリン「カライ!!カライ!!カライ!!」

塞「ちょ、本当にハバネロ食べたの!?」

豊音「エイスリンさん、しっかりして!!」

エイスリン「~~~~~~~~~!!!!!!!」

京太「み、水もってきます!!」

胡桃「塞、大福あったよね!?」

塞「うん!!はい、エイスリンさん!!!これ食べて!!」

エイスリン「ングッングッ」

京太「水もってきました!!エイスリンさん、はい!!!」

エイスリン「………………………!!!」

エイスリン「ア、アリガト………ウウ………」

京太「大丈夫ですか?顔真っ赤ですけど………」

塞「元が白いから余計すごいね」

胡桃「これ、好きな人はとことん好きだけど、耐性無い人がいきなり食べたらまずいよ」

シロ「エイスリン、辛いの苦手なのに………」

エイスリン「イ、イチドタベテミタカッタ」

京太「わかる気もしますけど………」

エイスリン「モ、モウダイジョーブ。ノープロブレム!」

豊音「まだ顔真っ赤だよー………」

――――――――――――――――――――

塞「てなわけで、エイスリンさんも落ち着いたところで」

胡桃「何、急に改まって」

塞「いや、前々からいつ切り出そうか悩んでたんだけどね」

シロ「何?急に………」

塞「いや、ほら。カレンダー見てみて」

胡桃「………………あ!!」

シロ「もうすぐ………」

豊音「クリスマスだよー!!」

エイスリン「クリスマス!!」

塞「うん、それでさ。もしクリスマスにみんな時間あったら、どこかで集まれないかなって」

京太「いいですね。せっかくのクリスマスですし」

シロ「どこに?」

塞「うん、じゃあさ………―――」





胡桃(ちょ、塞何言ってくれてんの!?ちょ、待ってほんとに待って。これってあれ?クリスマスはみんなで集まって全部終わる形なの?ここ数日どうやって京太を誘い出して二人っきりになろうかとか考えてた私の目論見は?夜寝る暇も惜しんでずっと作戦練ってた私の苦労は!?え、何?私はただの夢見すぎな乙女でしたで終わるの?いや、それはダメ!!二人っきりになれる状況なんてそうそうないんだから、このチャンスを逃したら―――!!!)


塞「胡桃?」

胡桃「うひゃあ!?」

塞「ちょ、いきなり何奇声上げてるのよ………」

胡桃「な、なななななななな何でもない!!」

塞「ほんとに?なんかエイスリンさん顔負けで顔赤いんだけど………」

シロ(………やはり何か考えてたか)

塞「えと、それじゃあ話し戻すけど、クリスマス、胡桃の家に集まれる?」

胡桃「え?あ、ああ………大丈b………」


胡桃「え?」


塞「いや、え?じゃなくて。やっぱ聞いてなかったか」

京太「以前、俺が作るタコスを皆さんにご馳走したいってお話したじゃないですか」

胡桃「う、うん。それは覚えてるけど………」

シロ「その場所、胡桃の家にしようって言ったのも」

胡桃「覚えてる」

京太「えと、それで今度のクリスマスに、胡桃さんの家で集まることができれば、その時にクリスマスパーティーの一環で俺がタコス作らせていただければってことで話してたんですが」

胡桃「―――――――――――!!」

京太「あの、大丈夫ですか?体調がすぐれないようなら………」

胡桃「だ、大丈夫!!」

京太「うわ!!!」

塞「ほ、本当に大丈夫?さっきから上の空になったり叫んだり………」

胡桃「大丈夫!!うちで!!うちでやろう!!」

シロ「………………」

豊音「京太君の料理、楽しみだよー」

エイスリン「タノシミ!」

京太「あはは、これは張り切らないといけないですね」

シロ「じゃあ、胡桃の家に集合でいいの?」

胡桃「うん!それじゃあ、時間帯とかの相談だけど………」



シロ(………一瞬で元気になった)

シロ(………胡桃には悪いけど)

シロ(黙ってみてるつもりはないから)

塞「てなわけで、話はまとまったね」

豊音「ちょー楽しみだよー!!」

エイスリン「タノシミ!!タノシミ!!」

胡桃「そういえば、外国の人ってクリスマスすごく大事にするんだっけ」

エイスリン「クリスマス、ミンナデ!!ダイジ!!」

豊音「そうだねー。みんなで一緒に楽しむのは楽しいから!!」

胡桃「それじゃあ、また何か変更あったら話し合おうか」

塞「そうだね。じゃあ、今日はこれで解散で」

シロ「外、寒………ダル………」

京太「あ、それじゃあ………」

豊音「あ!!!そうだ!!!」

胡桃「ふぇ!?」

エイスリン「ビックリシタ!!」

塞「え?何?今は奇声上げるのがブームなの?」

豊音「みんなに言いたかったことがあったんだよー!!」

シロ「………何?」

胡桃「どうしたの?」

豊音「それがね――――」



―――――――――――――――――――――

翌日夕方。カラオケ店『ヒャッハー』


塞「てなわけで集まりました、宮守高校麻雀部メンバーINカラオケ」

豊音「わーい!!」

エイスリン「カラオケ!!ハジメテ!!」

胡桃「まさか、豊音がいきなり『カラオケ行きたい!』って言いだすなんて」

豊音「村だとなかったから、一度行きたかったんだよー!!」

京太「すみません、俺の都合で遅くなって」

胡桃「いいんだよ、バイト優先だし」

シロ「青年よ、勤労に励め」

京太「なんのフレーズですかそれ………ていうか、まあ、これでも飛び出したというか飛びだたされたというか」

豊音「何かあったの?」

京太「えっとですね………」

『あぁん!?宮守のみんなとカラオケ!?』ムキィッ

『そういうことは早く言え!!だったらシフト通りに残らせねえで早退させたんだぞ!!』ミチミチッ

『何が悪いんだ!!いいかぁ?青春ってのは一回限りなんだよ!!バイト漬けで潰していいものじゃねえんだ!!』ミリミリッ

『勤退の事なんか気にすんな!!従業員のプライベートも守れねえで、何が雇用主だ!!』ムキムキッ

『いいから早く行って来い!!女の子を待たせなんかしてみやがれ!!待たせた秒数×一種類、関節技極めてやるぞ!!』ミリミリミリミリッ



京太「………てな感じでして」

胡桃「………本当にあの人は、なんというか………」

塞「でも、このご時世なかなかいないよ?そういう雇用者」

シロ「ある意味貴重だよね」

エイスリン「ホワイトキギョー!!」

京太「ですよね。本当にありがたいです。恩を返すためにも、もっと頑張らないと」

塞「まあ、京太君の労働病はあとでつっこむとして」

京太「」

塞「今日はクリスマス前に、ちょっとみんなで騒ごうかって感じ。まあ、前夜祭?っていうのもおかしいけど」

塞「ちなみに、細かいルールはないから、みんな好きに楽しんで」

胡桃「とはいっても、カラオケなんてなかなか来ないからなぁ。何歌うか」

シロ「歌うのダル………」

豊音「えーっと、えーっと」

エイスリン「ウーーーーーン………」

京太(………そういえば、記憶あった頃はどういう曲聞いてたんだ俺)

京太(持ち物にミュージックプレイヤーとかもなかったし、あっても壊れてただろうしなぁ)

京太(となると、何か歌えそうな曲………)

京太(だめだ、なかなか思い浮かばない)

豊音「それじゃあ、一番いいかな?」

塞「お、豊音がいくか。じゃあ、どうぞ」

豊音「ありがとー。えへへ、なんか、緊張するよー」

『残酷な願いの中で』

豊音「諦めたーら、おーわーりー 気持ーちを、リセットしてー♪」

塞「おお、うまい」

胡桃「ほんとだね。カラオケ初めてって言ってたのに」

豊音「悲しみ受け止めるよ ここでやめられないと立ち上がる♪」

シロ「………豊音、昔はずっとテレビ見てたって言ってたし、実は一番音楽知ってるんじゃない?」

京太「あ、なるほど」

胡桃「そう考えると納得だね」

エイスリン「トヨネ、スゴイ!」

豊音「でも諦めたーら、終ーわーり、気持ーちをリセットしてー♪巡ーりあーいーはー、残酷すぎて、こーわーいー♪………………ふう、どうだった、かな?」

塞「すごいじゃん豊音、びっくりしたよ」

エイスリン「スゴイ、ジョウズダッタ!!」

豊音「ありがとうだよー!ちょーうれしいよー!」

胡桃「じゃあ、次はだれがいく?」

塞「そうだね、それじゃあ私いってもいい?」

シロ「ん」

豊音「はい、マイク」

塞「ありがと。じゃあ、私はこの曲で………」

『愛しさと切なさと心強さと』

胡桃「うわ、また懐かしいものを」

豊音「楽しみだよー」

シロ「………始まるよ」

塞「愛しさと、切なさと、心強さと―――♪」

エイスリン「!?」

胡桃「相変わらず、上手いんだよなぁ………」

豊音「すごいよー………」

シロ(そういえば、昔はよく塞の提案で、胡桃と三人、カラオケに来てたっけ………引っ張られて?うん、私ずっとダレてたし)

塞「遠い空を、あの日眺めていた やりかけの青春も、経験も、そのままで―――♪」

京太「おぉ………塞さん、歌上手なんですねぇ」

胡桃「………………」ピクッ

シロ「………………」ムッ

胡桃(………おのれ塞め、よくもハードルあげてくれて………)

シロ(………ダル)

塞「あやまちは恐れずに、進むあなたを 涙は見せないで、見つめていたいよ―――ふぅ、久しぶりだったけど、なんとか」

豊音「すごいよー!!びっくりしたよー!!」

エイスリン「サエ、スゴイ!!ビックリ!!」

塞「あ、ありがと。なんだか照れくさいね」

エイスリン「ツギ、ウタウ!!」

胡桃「お、ついにくるか」

塞「ある意味、一番選曲が気になるねー」

京太(やばい、まじでどうしよう)

京太(たぶん、俺も音楽を聴いてなかったなんてことはないと思うんだけど………思い出せない)

京太(さすがにカラオケに来て一曲も歌わないってことはマズイよな………?けど、どうする?歌える曲が、むしろ思い出せる曲が………)


ザザザ


京太(!!!!?)

シロ「………っ」



ザザザザザ

ザザ

ザザザザザザザザザザザザザザザザ

ザザザザザザザザザザザザザザザザザザ

ザーーーーーーーーーーーーーッ

―――――♪ ―――♪

おお、やっぱうめえなぁ

おい犬!!聞き惚れてないで、飲み物きめるじぇ!!

いや、さっききたばかり………って、もう飲んだのかよ!!

うぅ、恥ずかしいけど、これでよかったのかなぁ

いいじゃない、上手よ

歌うのは苦手とか言うとったが、これはむしろ上々じゃろ

次、入れたの誰ですか?

あ、俺だ。じゃあ―――

本日はこれにて終了させていただきます。

毎度毎度遅くなった上、いつもより内容薄くて申し訳ありません。

もっと精進したいとお思いますので、どうかよろしくお願いします。

また、どれだけ更新遅れようと、絶対に失踪だけはしないつもりです。
これからもお時間ある方、よろしくお願いします。



【独り言】助けて胡桃ちゃん、やることが多すぎて身動き取れないよ。頭撫でてよ、ねえ

【追記】
主不在時の雑談・考察は、ご自由にどうぞ。
ただ、あまりにも激しい論争・対立はご遠慮願えれば幸いです。

みなさま、これからもよろしくお願いします

一か月もの間、スレを放置してしまいました………
真に、申し訳ありません。

ようやく混沌とした多忙な期間が終わりましたので、これから少しずつですが更新を再開したいと思います。
おそらく、本日夜に少量ではありますが更新いたします。皆様、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

宣言いたしました通り、この作品は必ず完結までは進めたいと思っています。
かなりの不定期にはなりますが、どうかお付き合いいただければ幸いです

皆さま、大変遅くなりました。
大変久方ぶりの更新をさせていただきます。

最近身の回りが多忙を極め、生存報告すらせず申し訳ありません。

また、今回出てくる曲は割と趣味はいってます。イメージと違う、などあれば申し訳ありません。


それでは、少量ではありますが、投下いたします


京太「!!!!!?」ズキッ

京太(―――また、か。けど、まだ顔すら………)

シロ「………大丈夫?」ボソッ

京太「………は、はい」ボソッ

シロ「何か思い出せたの?」ボソッ

京太「………例のごとく、あんまりたいしたことは」ボソッ

シロ「………ふぅん。どんな?」ボソッ

京太「以前にも、誰かとカラオケに来てて………それだけでした」ボソッ

シロ「………そっか」

エイスリン「コレニスル!!コノ、ニホンノキョク、スキ!!」

塞「えっと………え」

『ふるさと』

エイスリン「ウーサーギーオーイシ、カーノーヤーマー♪」

全員『(ほっこり)』

――――――――――――――――――――――――――――――


エイスリン「ヤーマーハ、アーオーキ、フルーサァトー ミーズーハ、キーヨキ、フールーサートー♪」

塞「………ぐすっ」

エイスリン「WHY!?ドウシタノ、ミンナ!!」

胡桃「いや………すごい上手かったのもそうなんだけど。最初は、ほほえましいなって思ってたんだけど………」グスッ

京太「なんか、涙腺に………」ウウッ

エイスリン「………?」

塞(エイスリンさんが歌うと、破壊力が………)

シロ「………………………」グッ

塞「そういえば、京太はどうする?」

胡桃「あ、そうか。記憶ないってことは、歌える歌とか………」

京太「ああ、大丈夫です。何曲かだけなら」

シロ(………………)

豊音「うわー!気になるよー!」

胡桃「じゃあ、次京太いく?」

京太「ええ、それじゃあそうさせていただきます」

京太(………まあ、この曲なら差支えない、よな?)

ピピッ

『愛は勝つ』


豊音「わー、この曲知ってるよー」

エイスリン「テレビデ、キイタ!!」




塞「 ( ゚Д゚) 」

胡桃「 (  ゚ω゚) 」

シロ「 ( =Д=) 」

京太「心配ないからね  君の想いが  誰かに届く  明日がきっとある」

塞(う、上手!!?じゃなくて、ちょ!!これは!?)

シロ(………無自覚に、だろうけど。これは………)



胡桃「~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!」


京太「愛する切なさに  少し疲れても」


塞(メディック!!メディーック!!!胡桃が!!胡桃がぁ!!!)

シロ(よりによって、お前が歌うのかよって感じだけど………)


京太「夜空に流星を見つけるたびに  願いを託し  僕らはやってきた」


胡桃「――――――――――――!!」


京太「どんなに困難でくじけそうでも  信じることさ」













京太「必ず、最後に愛は勝つ―――」

胡桃(最後に、愛は勝つ――――――!!)








.

京太「………っと、ど、どうでし、た?」

胡桃「」ポケー

豊音「すごいよー!!びっくりするくらい上手だったよー!」

エイスリン「キョータ!!ナイス!!」

京太「ありがとうございます。正直、結構途中途中きつかったですけど」

豊音「でも、すごく声出てたし、はっきりしてて聞いてて気持ちよかったよー」



塞「胡桃、大丈夫?胡桃?」ボソボソ

胡桃「う、うん………不意打ちで結構ダメージ負ったけど」ボソボソ

シロ「………………」

シロ(話す相手が塞だからってのもあるだろうけど………隠そうとも、誤魔化そうともしなくなったあたり………)

シロ(………ちょっと、状況も動くかな………ダル)

塞「じゃあ、次は誰歌う?」

豊音「まだ鹿倉さんとシロが歌ってないよー」

胡桃(………歌ったことはない曲だし、正直自信はない。けど―――)

胡桃(無自覚で、あんな歌歌われて………黙ってられるわけがない!!)

胡桃「私、歌う!!」

エイスリン「クルミ、ドンナノウタウ?」

塞(………軽くネジ飛んでるみたいだし、暴走しないといいけど)

胡桃「………………………これ!!」


『より道』


塞(知らない曲………けど、胡桃の表情からして………)

シロ(内容は、たぶん………)

豊音「初めて聞く曲だよー」

京太「楽しみですね」

塞(ええい、火をつけた張本人がのんきなことを!)


胡桃「知ってる道に差し掛かる度  もう君との甘い旅も終わってしまう」

塞「」

シロ(………攻めてきたか)


胡桃「君のことを分かれるのなら  もう何も痛くはない」チラッ

京太「………………?」


胡桃「心に秘めたもの  破裂する日が来る」

塞(いやいやいや!!すでに!!すでに破裂しかけてるから!!)

胡桃「だからもう一度言うね」クルッ

京太「?」

胡桃「     君だけを愛してる     」





京太「!!!!?」ドキッ









塞「」


シロ「………………………ッ」

胡桃「深呼吸なのか溜息なのか  吐いた後は「逢いたい」と涙が出た」



京太(く、胡桃さん今こっちを見て………い、いや。流石に自意識過剰だって。思い上がるな、俺)


シロ(気づいてはいない、というか確信はしてないみたいだけど………流石にここまで表に出されれば、動揺もするか)

シロ(………ダル)


胡桃「わかってたこと  とっくの昔に 君を好きになっていた」


胡桃「君を失う悲しみに比べれば  想う苦しみなど   幸せなより道――――――」




胡桃「………ふぅ」

豊音「すごいよー!!かわいいし、上手だよー!!」

エイスリン「クルミ、カワイカッタ!」

胡桃(だ、大丈夫、だよね………?ちょいちょい京太の方見ちゃった感じあったけど………)

胡桃(う、うん。これくらいでどうこうは………)



京太「………………………」ドキドキ


胡桃(………え?)



塞(胡桃………それ至近弾だからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!)




胡桃(え、なんで?何?なんで京太顔赤くなってるの?え?つまりこれ、私暴走しすぎた?え、でもそこまでダイレクトには………いや、けど京太の方見たのって確か………うわああぁぁぁぁ!!!一番ヤバい部分で京太直視しちゃってるじゃん私ぃぃぃぃぃ!!!?ちょ、これ完全に京太気づいてる!?い、いやそれはない!!無いと、思う!!け、けど!!けどけどけどぉ!!!で、でも、引いてないってことは、嫌じゃ、ない、って、こと?そう、なの?い、いや!!!ここで勘違いして暴走するな私!!でも、だって!!!だってぇ!!!)


豊音(鹿倉さん、顔が赤くなったり青くなったりすごいことになってるよー………大丈夫かな?)

シロ「………………………」

シロ(あんな歌、無自覚で歌われたせいで暴走して、今頃気づいたか………)

シロ(………けど)

シロ(暴走しててもしてなくても、あの時の鍋の一件といい………胡桃は、覚悟を決め始めてる)

シロ(これが暴走じゃなく、正気のまま、自分の意志でやりだす日も近い、か………)

シロ(………………………)




シロ(私も、ちょっとは覚悟決めるか。ダル………くは、ない、かな)




塞「どーどー!!落ち着けって!!!」

胡桃「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」

胡桃(ぜ、絶対!!絶対に京太に変に思われたぁ!!ど、どうしよう!!頭が………頭がぁ!!)


京太「あ、あの。胡桃さん」

胡桃「ひゅい!!!??」

塞「うわ!!突然跳ねるな!!」


京太「その、とても、素敵でした」




胡桃「―――――――――――――――――ッ」



シロ(……………ッ)

京太「あ、あの。胡桃さん?」

胡桃「あ、へ?あ、あの………」



胡桃「あ、ありがと………………」



塞(………これ、は)

塞(一歩どころか、二歩くらい進んじゃった感じ、かな?)

塞(まあでも、結果的にはよかったのかな。よかったね、胡桃)

塞(………………ん?)


シロ「………………………………………………………………………………………………………………」


塞(え?え?あれ?あるぇ?)

塞(なんで?どうしてシロからものすっごい迫力が?)

塞(心なしか目が据わってるし………え?今のどこにそんな要素が………………………………あ)



シロ「………次。いれても、いい?」

豊音「え?シロ歌うの!?」

エイスリン「イガイ!!ウタワナイト オモッテタ!!」

シロ「………普段は、そうなんだけど」

ピピッ

シロ「ちょっと、そんな気分なんだ」


塞(待って。つまり、今の胡桃と京太のやりとり………ううん、もし、もしも)

塞(胡桃の暴走に対する、あの京太の反応を見てシロがこんな状態になったのだとしたら………)

塞(え?つまり、それってあれだよね?シロも………って、え?ええ?シロが?あのシロが?すべてに無気力なダルダル星人のシロが?)

塞(け、けど。この課程が正しいなら、それって………)




『こんなに近くで』




塞(三角関係確定だったああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?)

シロ「恋が切ないと すぐそばで 気づいたあの夜」

シロ「だって他の誰より あなたのことを知ってるから」


京太(………シロさん、なんでこっちをチラチラ………)


シロ「いつものさりげない優しささえ この胸を締め付けてく」





シロ(………………)ギリッ



シロ「こんなに こんなに 近くで見つめても」

シロ「どうして どうして ただの友達なの」

シロ「どんなに どんなに 強く想っていても」

シロ「伝えられない―――――――you don't understand.  I'm so in love with you.」



塞(………暴走してるのは)

塞(胡桃だけじゃなかった、か………………)

シロ「………………………………」

ピッ

豊音「あれ?消しちゃうの?」

シロ「疲れた………ダル」

エイスリン「シロ!!スゴイ!!ジョウズダッタ!!」

胡桃「確かに………むしろシロがこういう歌歌うって言うのが驚きっていうか」

塞(お前は気づいてないのかい!!)

シロ「………………で、どうだった?」

京太「え?」

シロ「人前で歌ったの、たぶん初めてなんだけど………」

京太「え、あ――――――はい。  すごく、よかったです」

シロ「………なら、よし」

胡桃「………………………?」

胡桃(………………………シロ?)

シロ(………負ける気は、ない)

シロ(胡桃が覚悟を決めるなら、私だって腹をくくる)

シロ(そのくらいは………許されてもいいはず)


胡桃「そういえば一周したけど、次誰が歌う?」

豊音「じゃあ次、いいかな?」

塞「いいよー。むしろ発案者なんだから、どんどんいきなって」

京太「俺もあと数曲なら………」

胡桃(………次からはラブソング系統は避けよう)

エイスリン「エイゴノウタ、イイ?」

シロ「いいと思う………楽しめればそれで」

塞(………思うところは、というか懸念事項はいろいろ増えたけど、私も楽しもうかな。次はどうしよう。Give a reasonとか………)

豊音「これにするよー」ピピッ


『圭子の夢は夜開く』



全員『』

「そうですか………やはり」

「つまり、しばらくは動けない、と?」

「ええ。今はまだとても不安定で、『糸』が安定するまでは手を出すのは危険ね。同時に、このことについて漏らすのも」

「じゃあ、まだしばらくは………」

「ええ………残酷なようだけど」

「ちょっと、心が痛いですよー………」

「それでも、私たちがやらねばならないこと。全部受け止めましょう」





「結果、彼女たちに憎まれることとなっても」


最後の>>379、場面転換の――――――を入れ忘れました………

どうも、皆様大変お久しぶりです。
仕事の関係でアッヒャァァァァしたり、ヘルニア爆弾炸裂でヒギィしたり、その他トラブルでアバババババババしたりしてましたが、ようやく帰ってこれましたスレ主です。

正直カラオケ回は一回入れたかったのですが、一般的な曲に詳しいわけでもなく趣味に走りました。すみません。
そうこうしてるうちに咲-Saki-新アニメ決定で、宮守もどんどん声優さんが決まって………

アニメで胡桃ちゃんが見れる → 主発狂 → 愛爆発 → 『自主規制』
となる未来が見え始めました。

それでは皆様、これから遅れを取り戻すように少しずつ更新していきたいと思います。
また不定期になりそうですが、よろしくお願いいたします。




【独り言】胡桃ちゃん、そろそろ年の瀬だね。みかんが山ほどあるから一緒にコタツで食べようか。膝においで

大変お久しぶりです、そして大変申し訳ございません。
終わったと思っていた多忙がまた押し寄せてきたので、手が付けられませんでした。
おそらく今までで一番短くはなりますが、僅かながら投下させていただきます。
何度も何度も姿を消して、申し訳ありませんでした

翌日。喫茶店【遠野物語】

京太「マスター、こっちの洗い物全部終わりました」

店長「おう、ありがとさん。今日のピークももう過ぎたな。ちょっとカップでも磨いておくか」ムキッ

京太「わかりました。じゃあ、この棚からでいいですか?」

店長「おう、頼むわ。俺はこっちから磨くからよ」ムキムキッ

京太「はい。それじゃあ………」

カランカランッ

店長「いらっしゃい!!………って、おお。京太ー。こっちやっておくから接客頼む」ミリミリッ

京太「??わかりました。いらっしゃいませ、何名様で………」

エイスリン「キョータ!!コンニチワ!!」




京太「エイスリンさん?おひとりですか?」

エイスリン「ウン。キョウハ、ヒトリ」

京太「そうですか………おっと、それでは、こちらのお席へどうぞ」

エイスリン「アリガト!!」

京太「ご注文お決まりになりましたら………」

エイスリン「イツモノ!!」

京太「………畏まりました。少々お待ちください」

店長「アイスキャラメルラテだな?俺がやるから、休憩がてらエイスリンちゃんと話でもしてな」ムキキッ

京太「………いつもこの展開ですね。ありがとうございます」

店長「素直になってきたじゃねえか」ミチチッ

京太「毎度逆水平チョップの素振りで脅されてますので」

エイスリン「?」

京太「エイスリンさん、今日は他の皆さんは?」

エイスリン「キョウハ、ミンナヨージ」

京太「エイスリンさんは………絵をかいてたんですか?」

エイスリン「ウン!!」

京太(最近、また画材の種類増えてるもんな………鞄から画材はみ出してるし。ていうか鞄どんどん大きくなってるし)

店長「お待たせしました、アイスキャラメルラテです。おう京太、お前もこれ飲んで少し休んでおけ」ミチチチチッ

京太「え、マスターそれはさすがに」

店長「今日のピークを支えてたのはお前だろうが。このくらいは遠慮してんじゃねえよ」ムキッ

京太「……ありがとうございます」

エイスリン「~~~~~♪」カキカキ

京太「?何描いてるんですか?」

エイスリン「ハイ、コレ!!」バッ

店長「おお、京太じゃねえか。こりゃ大したもんだ」ミリミリッ

京太「本当だ、ありがとうございます」

京太(ていうか、どんどん画力上がってる………初めて見せてもらった時はデフォルメ絵だったのに、完全にデッサンになってる)

エイスリン「テンチョーモ、カイタ!!」バッ

店長「おお!?マジか、ありがとうな。しかし、こりゃあちょっとダンディーすぎないかぃ?」ムキムキニヤァ

京太(筋肉が若干弛緩してる)

店長「よーしよし、ちょっと待ってな。サンドイッチサービスしてあげるよ」ムキムキデレェ

京太(毎回サービスしてて経営大丈夫なんだろうか………)





胡桃「あー、やっと終わったよ」

塞「早く終わった方だけどねー。それにしたってめんどくさかったけど」

胡桃「豊音とシロは別件でいないしね」

塞「まあ、二人でもこれだけ早く終わったからいいじゃん。この後、どうする?」

胡桃「んー………遠野物語行く?正直お腹すいた」

塞「そうだね、胡桃も京太に会いたいだろうし」

胡桃「んなぁ!?///」

塞「はいはい、テンプレテンプレ。まあ、最近は割と素直になってきた方だけど?」

胡桃「ぐぬ………最近、塞が意地悪くなってきてる………」

塞「何それ」

胡桃「と思ったら割と前からだった」

塞「身長さらにカットされたいか」

胡桃「カットできるような余剰はないから」

塞「………なんか、その、ごめん」

胡桃「謝らないそこ!!泣きたいのはこっちだから!!」

塞「お、おう………」

胡桃「………そういえばさ」

塞「?」

胡桃「最近、シロ変わったと思わない?」

塞「」ギクッ

胡桃「なんていうか、以前より全然行動力出たっていうか………京太が来て少ししてから、かな?少し変わった気がする」

塞「そ、そうだね。まあ、いい傾向だと思う、よ?」

塞(あれ?これやばい?でも京太への感情へは結びついてないみたいだし………修羅場とか、ない、よね?)

胡桃「まあ、ダルダル星人が少しでも動くならいいんだけどね」

塞(でも、割と時間の問題だよなぁ………どっちかが動けばその時点で、だし。胡桃もどんどん素直になってきてるし、どうなることやら………)

胡桃「あ、そうそう。クリスマスは6時に私の家でよかったんだっけ?」

塞「え?ああ、うん。直接集合が一番早いかなって。ただ、京太はタコスの材料とか持ってくるものあるから、行きがけに私が手伝ってくるよ」

胡桃「そっか。私も行こうか?」

塞「………行きたいの?」

胡桃「………」

塞「まあ、来るなら来るでいいけどさ。うつむいても耳赤いからバレバレだよ」

胡桃「んー………いや、他のみんな先についたら困るから、待ってるよ。塞、お願い」

塞「了解。さて、ついたね」

胡桃「ん?あれって………」






エイスリン「~~~~♪」クピクピ

京太「本当においしそうに飲みますよね、アイスキャラメルラテ。甘いもの好きですよね」

エイスリン「ウン!!」

店長「なんだったらサンドイッチじゃなくてパフェとかのほうがよかったか?」ムキムキッ

エイスリン「ウウン!!サンドイッチモ、ダイスキ!!テンチョー、アリガト!!」

店長「いやいや、いいってことよ。そういえば京太、お前クリスマスにみんなで集まるとか言ってたな?」ミリリッ

京太「え?はい、そうですが」

店長「ならよ、その時………」ミリリ




胡桃「エイスリンさん?」

塞「京太はバイト中なのはわかるけど、なんで一緒の席に………って、大方また店長か」

胡桃「そうだろうね。けど、何話してるんだろ………んー?」

店長「じゃ、そういう風にな」ミキキキキッ

京太「はい、了解です」

エイスリン「ナンノハナシ?」

京太「いえ、何でもないですよ」

エイスリン「?」

店長「おや?また一枚描いたのかい?」ムキキッ

エイスリン「ウン!!コレ!!」

京太「これは、俺と………」

店長「胡桃ちゃん?」モリッ





胡桃「ひゅい!?」

塞「ここからだとちょっと見えづらいけど………ほんとだ、京太君と胡桃のツーショットの絵だ」

胡桃「な、ななな、なんで………」

塞「んー………エイスリンさんのことだし、たぶんよく一緒に居るから~ってことで決めたんだと思うよ?多分他意はないだろうし」

胡桃「そ………そっかぁ」

塞(嬉しいような残念なような複雑な顔の胡桃。最近レアじゃなくなってきたなぁ……)

エイスリン「ヨク、イッショニイル!!」

京太「うわぁ………すごくよく描けてますね。本当にすごいや」

エイスリン「エッヘン!」

店長「しかし何だこりゃ?こりゃ、胡桃ちゃんがシロちゃんによくやってる充電ってやつだろ?お前もやってんのか?」

京太「ええ、まあ時々」





胡桃「くぁwwせdrftgyふじこlp;@:「」」

塞「エグい……ッ他意のない純粋な好意から始まった、当人不在の羞恥プレイッ………!!」




店長「ほーほー、そうかそうか、ほーう」モリモリッ

京太「な、なんですか筋肉波打たせて」

店長「いやなに、青春してんなぁと」ムキムキニヤァ

京太「なんですかそれ………」

京太(ていうか筋肉で感情表現はやめてほしい)

エイスリン「クルミ、イツモキョータニベッタリ!!」

京太「そうですかね?ああ、でも言われてみれば………」

店長「おうおうおう、なんだこの野郎。鈍感こじらせて死ぬぞ」モリリリリッ

京太「そんな病気あったら怖いですよ」

店長「安心しろ、今のところ患者はお前くらいだ。恐竜みてーな鈍感さでな」ミリッ

京太「恐竜!?どっからそんな例え出てきたんですか!?」

店長「知らねえのか?恐竜ってのは意外と痛覚に鈍感だったらしく………」ムキッムキッモリリッ

京太「いいですよそんな豆知識!!」

エイスリン「キョータザウルス!!」

京太「合成された!?」

京太「なんですかそれ………」

京太(ていうか筋肉で感情表現はやめてほしい)

エイスリン「クルミ、イツモキョータニベッタリ!!」

京太「そうですかね?ああ、でも言われてみれば………」

店長「おうおうおう、なんだこの野郎。鈍感こじらせて死ぬぞ」モリリリリッ

京太「そんな病気あったら怖いですよ」

店長「安心しろ、今のところ患者はお前くらいだ。恐竜みてーな鈍感さでな」ミリッ

京太「恐竜!?どっからそんな例え出てきたんですか!?」

店長「知らねえのか?恐竜ってのは意外と痛覚に鈍感だったらしく………」ムキッムキッモリリッ

京太「いいですよそんな豆知識!!」

エイスリン「キョータザウルス!!」

京太「合成された!?」

胡桃「」

塞「胡桃が、羞恥の余り真っ白に漂白されてる………」

塞(でもまあ、最近確かに充電頻度増えてるよね………京太君は今のところ意図に気づいてないみたいだけど)

塞(初代充電器のジト目にも気づいてないくらいだし………ああもう、戦乱の火種がどんどん大きく………)

塞「ていうか、京太君に充電してもらうのってそんなにいいの?充電マイスターとしては」

胡桃「う………そ、それは、その………」

塞「ここに至ってまだ恥ずかしがるか。もう捨てるものもないでしょうに」

胡桃「うるさいそこ!!………あー、その………………………………………ぃの」

塞「ん?ワンモア」

胡桃「………………………………………………」

胡桃「なんだか、ポカポカして………居心地よくて………あったかいの」ボソ






塞「………………………」

胡桃「~~~~~~~~~~~~~~////////」

塞(今日の注文はブラックコーヒーに決定かな………うっぷ)





エイスリン「ゴチソウサマデシタ!!」

店長「あいよ!!ありがとね。京太、この伝票で会計頼むわ」ミチチチチチチッ

京太「はい、わかりました。ありがとうございます、エイスリンさん」

エイスリン「ウウン、ワタシモ、アリガト!!」

京太「いえいえ。えーっと、お会計が………」

エイスリン「………………………」

京太「………になります。………エイスリンさん?」

エイスリン「………………………キョータ」

京太「はい?」



エイスリン「                」





京太「え?なんでしょ………………」

店長「ブッフォァアアアアァァァァ!!!!」ムキキキキキキキキキキキキキキッ

京太「ま、マスター!?」




塞「」

胡桃「今の、英語?なんて言ったんだろ………塞、英語得意でしょ。なんて………塞?」

塞「………………知らない方がいいよ」

胡桃「え?」

塞「今日、これ以上羞恥プレイされたら胡桃爆散しちゃう。だから、ね?知らないでおこ?」

胡桃「ちょ、ちょっと?」

塞「いいから!!きょ、今日はこのまま帰ろう!?い、いや、うちでお茶にしよ!?さ、早く!!!」

胡桃「ちょ!?塞、ひっぱんないでって!!」

塞(う、うっわぁぁぁぁぁぁ………これは、ある意味シロ以上に予想外というか………いや、修羅場確定じゃないだけまだいいけどさ!?)

塞(ってことはさっきの絵………って、ええ!?うそでしょ!?)

塞(エイスリンさん………………恐ろしい子!!!)






カランカランッ

京太「なんだったんですかね、最後の言葉………ていうか、マスター、今の英語わかったんですか?」

店長「こ、これでも昔、アメリカにちょいと居てな………つーか、おい、マジか」ミチィ

京太「あ、あの………」

店長「ダメだ。少なくとも今のお前にこれを聞かせるわけにはいかねえ」ムキッ

京太「え!?」

店長「つか、みんなから戦犯扱いされたくねえ。意味が知りたきゃ、その、まあ、いろいろ頑張れ?」モリィ?

京太「な、なんですかそれ!?気になるじゃないですか!!」

店長「うっせーうっせー!!!いいから気にするな!!」

京太「いや、気にしますって!!!マスター、お願いですから教えてくださry」

店長「口封じベアハッグウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」ムキムキムキムキモリモリモリモリミチミチミチミチ

京太「ぐごあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?」ミキミキミキミキ














エイスリン『クルミがあなたを好きになった理由、今ならよくわかるよ。ちょっとだけ、クルミに嫉妬しちゃう』

本日はここで終了させていただきます。
申し開きさせていただけるならば、完全に予定外の多忙とトラブルでした。身辺のあれこれの始末に手間がかかりすぎたのと、ヘルニアの悪化が主な原因です。
待っていてくださった皆様、本当に申し訳ありませんでした。
次からは時間を大きく開けないように、少しずつでも投下させていただきます。
お付き合いいただき、ありがとうございました。


『追伸』アニメが始まって、喋って動く胡桃ちゃんを生きて見れた私は最高の幸せ者です。


【独り言】腰が悪化してキツイよ胡桃ちゃん、一緒に布団に入って温めてよ

【ちょっとしたオマケ、というか蛇足】


京太「ていうかマスター、アメリカにいたんですね………いてててて」

店長「おう、一時期だけだがな。写真見るか?向こうの友人と撮ったもんだ」ムキキキッ

京太「どうも………って、うわ………」

店長「なんだその反応はよ。どいつもこいつもいい面構えだろ?」




京太(なんだろう、人力でコンボイ引っ張れそうな人とか殴りつけた鉄パイプが逆に曲がりそうな人とかがたくさん………店長、アメリカで何してたんだ………?)

お久しぶりです
ようやくプロットに沿った構想で少しずつ書くことができました。今のところできてる部分だけでも投下します

ただ、今回は少し急展開注意になります。特に豊音ちゃん好きな方はご注意ください
主は豊音ちゃん含む全咲キャラ好きです、誰かを好き嫌いで扱い変えることはしません(クルミチャンダイスキ

物語は少しだけ加速しますが、もうちょっと書いていきたい気持ちがあるので、もしよろしければお付き合いください

クリスマス前夜。熊倉家

京太「えーっと、トルティーヤの材料はこれでいいとして………野菜も揃ってるよな。で、肉は豚と牛とマトンと………」

トシ「京太君、まだ明日のチェックしてたのかい」

京太「あ、すみません。いや、どうしても漏れがないかどうか不安で」

トシ「あんたみたいな几帳面があれだけ事前に精査してたんだ。間違いなんてないよ」

京太「それでも、ミスってあるじゃないですか」

トシ「まったく、本当シロの言った通りだよ」

京太「え?」

トシ「従順なようで頑固ってこと」

京太「あ、あはは………」

トシ「まあ夜更かししてるわけでもないし。あんまり無理はしないようにね」

京太「すみません、お世話になってる身で………」

トシ「何言ってるんだい。バイトだって始めて、自立心の塊みたいな人間が」

京太「それでも、やはり………」

トシ「いいんだよ。それに借家とはいえ、この家は一人にはちょっと広すぎてねぇ」

京太「………?」

トシ「私はね。この歳で息子も娘もいない。昔はそれでいいなんて本気で思ってたんだけどねぇ。四十、うん、そのくらいだね」

京太「先生………?」

トシ「そのくらいから、ちょっとずつ寂しくなってきてね。友人には恵まれた。仕事仲間にだって恵まれたさ。けど、家に帰ってきて「ただいま」を言って、何も返事がないことがこんなに寂しいことだとは知らなかった」

トシ「気づいたときにはもう幾らか遅かったよ。仕方ない、自分が選んだ道だ、これはこれで悪くない、なんて中学生でもできるような言い訳して誤魔化して。でもそれが変わったのは、あんたが来てからだよ」

京太「俺が、ですか?」

トシ「そうだよ。子供もいない私が、こんな楽しい時間を貰えるだなんて思ってなかったさ。帰ったら誰かの声がする。こんなに暖かかったんだね」

京太「………」

トシ「あんたを、突拍子もない出来事で出会ったあんたを」

トシ「記憶すらない人間を、孫みたいな、孫のように想うことは悪いかい?」

京太「………………」

京太「悪いわけないじゃないですか」

京太「取り戻せてない記憶の先はどうであれ、今の俺には」

京太「『京太』には、これ以上暖かい世界はないです」

トシ「………ほら、また暖かくなった」

京太「?」

トシ「こっちの話さね。そういえば、本当にいいのかい?明日私が行っても」

京太「何言ってるんですか。みんな来てくださいって言ってますよ。ただ………」

トシ「あー、わかってるわかってる。もうお酒なんぞ持ち込まないよ」

京太「あはは、すみません」

トシ「もう塞から何度もお説教されて耳タコなんだ、勘弁してくれ。流石にあれはやりすぎたよ」

京太「まあ、流石にあと数年早いですから………」

京太「………って、そうだ!!」

トシ「おわ!?何だい、急に立ち上がって」

京太「今日、サラダ油とみりん切れてませんでした!?」

トシ「………ああ、そういえば。でもまあ、カップ麺の貯蔵もあるし………」

京太「だからダメですってそういう食生活!!ああ、もうこんな時間………よし!!カッパ屋まだ開いてますよね!?」

トシ「あ、ああ。まだ余裕はあるね」

京太「ちょっとひとっ走りいってきます!!ですからそのカップ麺仕舞ってください!!」

トシ「」ギクッ

京太「いってきまーす!!」

バタンッ

トシ「………慌ただしいねぇ」

トシ「………」チラッ

トシ「最近のカップ麺も、そう悪いもんじゃないんだけどねぇ………なんで京太君といい、大沼プロといい………」ブツブツ








商店街外れ



京太「よし、サラダ油とみりんと、全部買えた」

京太「流石に出過ぎたことかもしれないけど、先生の食生活考えると………なぁ」

京太「だって………」



トシ『ん?食事?何言ってるんだい、カップ麺がこんなにあるじゃないか』

トシ『栄養バランス?ほら、最近はコンビニでも生野菜売ってるだろ。あれで十分だよ』

トシ『カロリー?油分?そんなのは若い子が気にすればいいのさ。私らなんてとりあえず………』



京太「………うん、俺は間違ってない」

京太「さて、そしたら帰ろう………ん?」

――――――――――――――――♪

京太「これは………」

―――――――♪―――――――――――♬

京太「歌?」

京太「こんな時間に?それに、近いよな………こっちか?」

ガサガサ

―――♪――――――♪――――――♫

京太「この辺だよな………って、あれ………」



豊音「―――――――♪」

京太「豊音、さん?」

豊音「………え?あれ?京太君!?え!?ええ!?どうして!?」

京太「い、いえ。どうしても何も、買い物帰りなんですけど………」

豊音「う、うわ、うわわわわああああぁぁぁぁ!?は、恥ずかしいよ!!ちょー恥ずかしいところ見られちゃったよ―――!!」

京太「え、ちょっと?と、豊音さん?」

豊音「は、恥ずかしいよ――――――!!」

京太「ちょ、落ち着いてくださ――――――い!?」



豊音「ごめんだよー」

京太「「い、いえ。落ち着いていただけてよかったです」

豊音「うう、でも、まさか見られるなんて………」

京太「なんでそんなに慌ててるんですか?」

豊音「だ、だって恥ずかしいよー。夜、誰もいないところで歌ってるなんて………」

京太「そんなことないですよ。それにカラオケの時から思ってましたけど、豊音さん歌上手いじゃないですか」

豊音「あ、ありがと………けど、誰にも見られてないと思って歌ってたから、その………」

京太「ま、まあそれは俺も悪かったですけど」

豊音「悪くないよー!!むしろなんで京太君が謝るのー!?」

京太「いえ、だって俺が見に来たのが………」

豊音「なんでも自分のせいだと思わないそこ!!」

京太「」ビクッ

豊音「………………」

京太「………………」

京太「………胡桃さんの真似ですか?」

豊音「………うう、余計に恥ずかしくなったよー」

京太「あはは。けど、俺も何故かびくってしちゃいました」

豊音「………………」

京太「どうしました?」

豊音「やっぱり、胡桃さんは『トクベツ』なんだね」ボソッ

京太「え?なんて」

豊音「なんでもないよー」

京太「………?」

豊音「そういえば、京太君は明日は胡桃さんの家に直接現地集合?」

京太「ああ、明日ですか。そうですね。タコスの材料が結構あるので、塞さんが運ぶの手伝ってくれるそうですけど」

豊音「そっかー。楽しみなんだよー、京太君の作るタコス」

京太「でしたら、遠野物語で注文していただければ」

豊音「メニューに載ってないのにそれは悪いよー」

京太「でも、マスターもいいって」

豊音「それに、楽しみなんだよー」

京太「え?」

豊音「『みんな』で食べる、京太君の料理が」

京太「………ありがとうございます」

豊音「どういたしまして」

京太「………」

豊音「………………」

京太「………豊音さん、は」

豊音「ん?」

京太「絆って、どう思います?」






豊音「――――――」

京太「………………」

豊音「………聞いちゃうかー。私にそれをー」

京太「すみません」

豊音「ううん、いいよー」

豊音「けど、そうだねー」






私にとって、絆っていえるものはここに来ての全てなんだよー

ここにきて、ですか?

うん。私の村はちょっと、閉鎖的でねー。あんまり、外に出ることもなかったんだ

いや、できなかったっていうのかな

それ、は

監禁とか、そういうのはないよー。よくみんな誤解しちゃうけど、そんな怖いものじゃないの

けど、どうしても外が見たくなる。その時、私にあったのはテレビだったんだ

テレビ?

そう、テレビ。外の世界を『眺める』、私の唯一の手段

それはそれで楽しかったんだよー。けど、麻雀を知って、自分で勉強して

そこで、知っちゃったんだ

知っちゃった?

うん

私と同じ年の娘たちが、こんなに輝いてるってこと

京太「――――――」

豊音「それで、熊倉先生が私を見つけてくれた。宮守っていう、今まで知らなかった暖かい世界に連れて行ってくれた」

豊音「村が嫌だったわけじゃない。ちょっと閉鎖的で、ここに出てくるのにも苦労したけど」

豊音「私は――――ここに『来れた』」

京太「――――それ、は」

豊音「うん」



―――ここにあるものが『絆』なんだって、知ることができたんだよー



京太「………」

豊音「………記憶の事で、悩んでるんだよね」

京太「わかります?」

豊音「最近、来たばっかりの痛々しさは減ったけど、どこか踏み込んでこない部分はあるなーって」

京太「前の俺、そんなにひどかったですかね」

豊音「………正直に言っていい、かな?」

京太「………お願いします」

豊音「正直、いつ死んじゃうか不安だった」

京太「うぐ」

豊音「でも、最近はそういう感じも消えてきて、けど代わりに変な影がでてきたんだよー」

京太「影ですか?」

豊音「京太君、こんなこと考えてない?」



今幸せになることが、記憶を無くす前の自分への冒涜だって

京太「―――!?」

豊音「あたりだよー」

京太「豊音、さん?」

豊音「私も最初はねー。なんでそんなこと考えるのかわからなかったんだよー」

京太「ぁ」

豊音「けど、次第にわかってきたの」




記憶を無くす前にも、確かに自分自身がいて、

自分自身を愛してくれている人たちがいて

けど、自分はそれを無視して、

都合よく、関係ないところで幸せになろうとしてる

それが、本当に許されることなのか





京太「――――っが、」

豊音「だけど私は、この言葉を贈るしかできないんだ」

.












豊音「逃げるな」












ザザザ――――――――――――――

ザザ――――――――――――――――



ザザザザザザザザザ――――――――ザザザ――――――――――


ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ

逃げて                             助ける
                 こっちだ
     早く                   助ける

   お前は           逃

       助け              逃げ


  どこだ        なんで              君を
       それなら

      どうして                        声を
                   どこに





手をのばせ                           逃げて

京太「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

.









京太「――――――――――ぁ、あ?」

豊音「起きた?」

京太「ぁ、れ?なんで、俺――――」

豊音「話してる時に急に寝ちゃったんだよー。結構疲れてるでしょ?」

京太「ま、マジですか?すみみませn―――って、え?」

豊音「あはは。勝手だけど、ちょっとは寝やすいかと思って」

京太(え?これって――――――膝枕!?)

京太「すすすすすす、すみません!!」

豊音「いいんだよー。京太君が無理しすぎなのはみんな知ってるんだから、こういう時くらい」

豊音「胡桃さんには怒られちゃいそうだけど」ボソッ

京太「え?」

豊音「なんでもないよー。けど、無理し過ぎっていうのは確かだよー」

京太「いや………俺も最近は自重してるはずなんですけど………」

豊音「そう思ってるのは京太君だけだよー。みんな心配してるよー?」

京太「そ、そうですか………俺、迷惑かけてばかりですね」

豊音「………さっきの、話だけど」

京太「え?」

豊音「絆っていうのはさ




――――――迷惑かけてかけあって、できていくものだと思うよー?




京太「………えっと」

豊音「なんでもないよー」

京太「そ、そうですか………って、俺どのくらい寝てました!?」

豊音「んー、三十分………くらい?」

京太「す、すみません!!先生に買い物って言っただけで出てきてるので、帰らないと!!」ガバッ

豊音「そっかー、残念だよー。けど、また明日、ね?」

京太「ええ、明日は今日のお詫びに、特性タコスご馳走しますから」

豊音「んー、それも嬉しいけど、みんなと一緒が一番いいかなー」

京太「………本当に、優しい方ですね」

豊音「………そんなことないよー」

京太「それでは、また明日!!失礼しました!!」

豊音「またねだよー!!」



タタタタタタタ・・・・・・・・

豊音「………………………」

豊音「私、は」



優しくなんて、ないよー―――――――――――――



豊音「………帰ろっと」

豊音「………………歌、上手だって褒めてくれたよね」

豊音「私みたいな『トクシュ』に、笑いかけてくれたよね」

豊音「―――――――――――――――けど」



京太に!!しゃわるにゃ!!わたひのーーーー!!

どこにも、いきませんよ

必ず、最後に愛は勝つ―――



豊音「――――――――――私、ワルモノさんだよー………」




………………とーりゃんせ、とーりゃんせ――――――――――

こーこはどーこの細道じゃ――――――………

今回の更新はここで切らせていただきます。
先に言わせていただきました通り、特定のキャラを酷い扱いにしたり、嫌いなキャラどうこうというのはありません。
ただ、進行上どうしても豊音ちゃんにはこの役をやってもらう必要がありました。
豊音ちゃんファンの皆様にはお詫び申し上げます。

また、豊音ちゃんが「ワルモノ」と発言していますが、
本作において明確な「悪人」、もしくは「黒幕」といったものは
『いません』。

読んでいただいております皆さまの捉え方にもよるのでしょうが、作者としてはそのつもりで書いてます。


関係ないですけど、アニメ版全国で胡桃ちゃんの再登場まだですかね?



【独り言】胡桃ちゃんハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ

こんばんわ。檻のついた病院一歩手前らしいスレ主です
今日の更新はありませんが、少しだけ質問、というかアンケート的なものをさせてください。

実はこの後の流れはほぼ決まっていて、自分の中ではその大筋は変えないつもりです。
が、今まで胡桃ちゃん・シロはともかく、エイちゃん回と豊音回があるにも関わらず
塞さん回が予定に含まれていない事態に気づきました。
楽しみにしているという方もいらっしゃったので、それはまずいかと。

そこで、次にすぐというわけではないのですが、希望される方が多ければ塞さん回をねじ込みたいと思います。
どっちであっても、話の流れや結末に変動はありません。
皆さまは、どっちの方がいいでしょうか


【独り言】胡桃-Kurumi-の連載開始はまだですか!!宮守-Miyamori-でも可!!

皆さま、ご意見ありがとうございます。
どうやら希望される方が多数おられるようですので、一編ねじ込もうと思います。

近いうちに次回を投下させていただきます。
ありがとうございました



【独り言】私が胡桃ちゃんと結婚できる法案を強引に可決してくれる政治家募集

生存報告

申し訳ありません。身の回りのアレコレで、速報が落ちていたということにも気づけませんでした

できるだけ早く再開いたします。重ね重ね申し訳ありません

そういや、福山さん「愛は勝つ」をカバーして歌ってたんだね

宮守の子達の仲睦まじさを見ていればいるほど
映画の「スタンドバイミー」見た後に感じる切なさとか無常さを感じるんだよな
なまじここの>>1の話が琴線に触れるからどうしてもそんなこと考えてしまう
それこそ5人で会社を興したり事業を始めるのでもなければ確実に別れがやってくるわけで…
おとぎ話で言うとこの「いつまでも幸せに暮らしましたとさ」ってわけにもいかないしね
>>1はそういうこと考えたりしないかい?

大変お待たせいたしました
もう当に過ぎ去ったクリスマス編、開幕です
塞さん編は別途制作中です。クリスマス編終了後になります

それでは、短くはありますがお付き合いいただければ幸いです

クリスマス 鹿倉家前

胡桃「あー、寒い………あ、来た来た」

塞「おー、お待たせ」

京太「胡桃さん、お待たせしました。メリー………」

胡桃「ストップ」

京太「え?」

胡桃「その言葉は、みんな集まってからにしようよ。そういうわけで、まだ誰もその言葉発さないで待ってるんだからさ」

京太「はは、なるほど。わかりました」

塞「それじゃあ行こうか。みんな待たせるのも悪いし。それに、流石に重かった………」

胡桃「うわ、結構材料持ってきたんだね。それちょっと持つよ」

塞「あんがと」

京太「お邪魔します」

胡桃「いらっしゃい。さ、どうぞ」




豊音「あー!!京太君たち、きたよー!」

シロ「おつかれ………」

エイスリン「コンバンハ!サムクナカッタ!?」

京太「みなさん、どうもこんばんは」

塞「寒かったよー。雪降ることは予想してたけど、まあまさか家出た瞬間降り出すとは」

トシ「おつかれさま。荷物持ちくらい、私が手伝ったのに」

京太「いえいえ、むしろ一人で持てる量ですよこのくらい」

胡桃「だから無理しないそこ!!こんな量の荷物を一人で持てるわけないでしょ!!」

塞「持ってた」

胡桃「え」

塞「持ってたよ」チラ

京太「………………」ダラダラダラダラ

シロ「………塞、説明お願い」

塞「①私が先生の家に着いたのは、京太君との約束の時間の10分前
  ②京太君はすでに玄関を出ようとしていた
  ③明らかに一人で全部持って、私と合流する前に少しでも一人で運ぼうとしてた
                以上、説明終わり」

シロ「そいやー」ガシッ

京太「うぎゃあああああああああああああああ!!?」ミキミキミキ

シロ「まだ一人で全部やろうとするか、この愚か者がー」ギリギリ

エイスリン「ベアハッグ!!」

豊音「最近この光景も見慣れてきたよー」

京太「あががががが!!!し、シロさん!!ギブギブギブ!!」

京太(ていうか!!おもち!!おもち当たってる!!)

シロ「………………………………………そいやー」ギリリッ

京太「あばーーーーーーーーーーーーー!?」

塞「何やってんのほら!!さ、それじゃ準備するよ!!」

胡桃「ほら、離れてって!!」グイッ

シロ(チッ)

京太「あたたたた………す、すみません」

胡桃「………………」

胡桃(確実に意識してた………おのれ、この体にもうちょっとおもちがあれば………)

京太「すみません、胡桃さん。このカセットコンロ、ここに置いても大丈夫ですか?」

胡桃「え?あ、ああうん。え?まさかの実演しながら?」

京太「ええ。タコスって特殊というか、なかなか調理してるところが見れる料理じゃないですし」

塞「さっきそれに思い当ってねー。京太君に聞いてみたらやってくれるって言うから」

胡桃(塞ナイス!!)

京太「それじゃ、道具用意しますね」

塞「あ、それは私たちがやっておくから、材料の方やってきたら?このくらいはするよ」

胡桃「うん。別に大型の調理道具並べて店開くってわけでもないんだし」

エイスリン「ワタシタチモ、テツダウ!」

京太「あ、すみません。そしたら、ちょっと材料の下ごしらえしてきます。胡桃さん、キッチンお借りできますか?」

胡桃「もちろん。こっちだよー」テテテ

トシ「これは私からの差し入れだよ。好きなのを飲んでくれ」

塞「先生?」ギロッ

トシ「もうアルコールはもってきてないよ。そんな鬼みたいな目で睨まないでくれ」

シロ「………………」モソモソ

豊音「あれ?シロー?」

シロ「………これ、ここでいいのかな?」カチャカチャ

豊音「う、うん。たぶん………シロ、最近よく動くよー」

エイスリン「ビックリ!!」

シロ「………流石に傷つくんだけど」

塞「………………………」

塞「………」チラッ



ウワッ ザイリョウキルノ ハヤ!

ナレデスヨ アトハ、コレヲ・・・

塞(確実に、みんなは変わり始めてる)

塞(シロは、京太君絡み限定とはいえ今までじゃ考えられないくらい動くようになった)

塞(胡桃は、誤魔化さずに自分をぶつけ始めてきた)

塞(これからどうなるのかは知らないけど………)



トシ「ああ、これは確かいつも手元に置いてたね。ここでいいと思うよ」

豊音「ガス缶は危ないからこっちに置いておくよー」

エイスリン「デキタ!!キョータ、ジュンビ、オワッタヨ!!」

シロ「そっちは………?」

京太「はーい。こっちも今終わったので、持っていきますねー」

胡桃「ほとんど下ごしらえして持ってきてたんだね。あっさり終わったよ」



塞(きっと………この時間は、この世界は)

塞(崩れない。終わらないし、終わらせない)

塞(――――――私のわがままは、神様に聞き入れられたのかな―――)

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


京太「さて、それでは始めさせていただきます」キュッ

胡桃(バイト中とは違う、エプロン姿の京太………)ドキドキ

京太「と、その前に」

胡桃「あ、うん。じゃあ、塞」

塞「うん。じゃあ、発案者だし私が」

京太「飲み物、いきわたりました?」

シロ「ん」

塞「それじゃあ………みんな、今日は私のいきなり言いだしたことで集まってくれて、ありがと」

前にも言ったけど、私がインターハイ後もみんなで集まろうって言いだしたのは、みんなで集まれるこの時間が好きだったから

終わらせたくなかったからなんだ

けど、あれからしばらくして京太君が来て

こんなにも、我儘な願い事が叶うなんて思わなかった

あと数か月で、みんなそれぞれの道があるけど、

それでも、一生の別れなんてない

だから、今はただ、いつも通りに――――――――



塞「みんな、これからもよろしく!!」



『メリークリスマス!!!!!』








京太「―――――――――――!?」

シロ(!?)





ザザ






京太(嘘、だろ?こん、な   時に――――!?)










ザザ


ザザザザザザザザザザザザザザザザザザ

ザザザザ

ザザザ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――











メリークリスマース!

ほれ、ケーキ切り分けたから食いんしゃい

すみません、いただきます

あ、さっき作ってきたから揚げ、よかったらどうぞ

おー!!気がきくじぇ!!!

ありがとう、もらうね

















                        京ちゃん




ザザザザザザザザ―――――――――――――――――――――





京太「―――――――――――」

京太(………………あれ?)

シロ「………………………………」ジーッ

京太「………あ」

シロ(………また、何かきた?)クイッ

京太(………………はい、でも大丈夫です)コクッ クイッ

シロ「………………………ん」


京太(なんだ、今の)

京太(いつもだったら、今みたいに何かを思い出しかける時って………それこそ酷い頭痛が一緒にくるはずなのに)

京太(それが、ない。それに、今の記憶で――――――)


京ちゃん


京太(俺の、名前―――――――――?)

豊音(………………………)

豊音(少しずつでも、いい)

豊音(受け入れることが、今の京太君に必要な事)

豊音(それが)








豊音(終わりと、分岐の鍵になるんだよー――――――――――)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

京太「っと、それじゃあ、すみません。未熟者ではありますが、始めさせていただきます」

塞「その言葉、封印しときな?遠野物語の店長泣くよ?」

エイスリン「マッテタ!!タノシミ!!」

シロ「………ていうか、これ。なに?」

胡桃「鉄板二枚重ねる感じ、なのかな?ほんと初めて見る道具なんだけど」

京太「ええ。これがトルティーヤ………タコスの皮の部分ですね。それのタネになります」

豊音「小麦粉のお団子みたいだよー」

トシ「そうだね。けど、たぶんこれは………」

京太「ええ、たぶんご想像の通りです。これを薄く延ばして、この二枚の鉄板で挟み………………」

胡桃「あ、なるほど。これで伸ばすんだ」

京太「はい。それで、この薄くした生地を手早く、香ばしく焼いて………」

シューーーーーー………

エイスリン「ウウ、モウ、オイシソウ・・・」

シロ「クレープ生地みたいに、半分液状から伸ばして焼くのかと思ってた」

塞「あ、それ私も」


京太「で、焼き過ぎないようにして焼き上げて………さっきキッチンをお借りして火を通した具を、野菜とバランスよく挟めば………完成!!」

胡桃「うぅ!!に、匂いでお腹が………」

塞「こ、これはズルいよ………トルティーヤの香ばしい香りと、豚肉の香りが………」

京太「これが基本的なタコスですね。さ、どんどん焼いていきますので、みなさんどうぞ」

豊音「おいしそうだよー!!」

胡桃「ね、ねえ。最初、貰っていい?」

塞「ちょ、ズルい!!私だってお腹空いてるんだよ!?」

シロ「………」ソーッ

エイスリン「シロ!!コッソリズルイ!!」

トシ「それじゃあ、ここは私が………」

京太「ちょ、みなさん!!すぐ焼けますから待っててください!!次、ビーフタコスいきます!」




胡桃「あー………美味しかったぁ………」

塞「こ、これは卑怯だよ………うう、体重計に乗るのが怖い………」

トシ「野菜メインのタコスもいけるもんなんだね。あっさりしてて、食べやすかったよ」

京太「ありがとうございます。おそまつさまでした」

シロ「これ、店出せるんじゃない………?」

豊音「うんうん。商店街のところで出したら、毎日行列だよー」

エイスリン「キョータ、ニュージランドニ、オミセダシテ!!」

塞「まさかのエイスリンさんからの無茶振り!?」

京太「あはは、そこまではまだいけませんよ。もっと、もっと練習しないと」

胡桃「ていうか、エビタコスなんてあるんだ」

京太「実際、トルティーヤ自体がとてもシンプルなので野菜とバランスとれてればいろいろなものが合うんですよ。まだまだ、試してみたいものもありますし」

シロ「満腹………」ゴロン

胡桃「食べてすぐ寝ないそこ!!」

塞「まったくもう………それじゃあ、用意してたケーキいこうか」

エイスリン「デザート!!!」

シロ「体重計怖いんじゃなかったの?」

塞「うるさいそこ!!今日くらいは特別!!」

胡桃「真似しないそこ!!」

豊音「ケーキ持ってきたよー」

京太「あ、じゃあ切り分けますね」

トシ「ああ、そのくらいは私がやるよ。包丁貸しな」

京太「あ、すみません」









京太「………ふぅ、これでよし」キュッ

胡桃「お疲れ様。それと、ご馳走様」

京太「胡桃さん?みなさんと話してたんじゃ………」

胡桃「京太がキッチンに片付けに行ったの気づいてさ。手伝えることないかと思ってきてみたんだけど、相変わらず作業早いというか………」

京太「ははは。まあ、自分で使った調理道具ですから」

胡桃「まったくもう、譲らないところはとことん譲らないよね」

京太「みなさんは?」

胡桃「まだみんな盛り上がってる。何人かは泊まっていくと思うよ」

京太「相変わらず、皆さん仲がいいですね」

胡桃「んー、割とそこは自慢かな」

京太「………………………」




京ちゃん



京太(………あの記憶が、どこまで繋がってるのかはまだわからないけど)

京太(今はただ、この暖かい場所に――――)





胡桃「京太。ちょっと、時間ある?」





京太「え?あ、はい。もう片付けは終わりましたし………」

胡桃「………ちょっと、来て」

京太「………………?はい、わかりました」





シロ(………………)

胡桃「うぅー、やっぱ寒。雪まだ降ってるや」

京太「ですね。あ、上着取ってきましょうか?」

胡桃「ううん、十分着てるから大丈夫」

京太「それで、一体どうしたんです?みなさんと離れて――――――」

















胡桃「今、どこまで思い出してるの?」

本日の更新はここで終了です
これほどまで長い期間開けてしまったにも関わらず、まだお待ちいただけていたことに心からの感謝を

宮守メンバーの関係性も、だんだんと変化し始めています。が、まだ豊音のいう「カギ」は揃っていない状況です
ここから徐々に物語は加速していきます。亀もいいところな更新速度ですが、よろしければお付き合いくださいませ

(改行による演出に頼りすぎてしまった気がします。以後、気を付けます)


>>492
実はそこから展開のヒントを得た部分もあります。いい歌ですよね、あれ

>>495
その点は割と序盤に触れてはいますが、そうですね。そう簡単に割り切れるものでもないと思います
が、それも含めてこの物語で描けたらと思っています。どうか、よろしくお願いします





【独り言】胡桃ちゃん、お願い。ちゃんと換気するから、タバコ取り上げないで(´・ω・`)

申し訳ありません。
本日夜に再開いたします。長く放置、失礼しました

今追いついた
何となく展開が予想出来たけど当たってたら悲しい

お待たせしました。
ここから少しずつ、スローペースではありますが再開していきます

>>543
その予想がどうなるか……そのカギは、いくつか散りばめたつもりではあります

京太「――――――――――――――――――」

胡桃「ううん、もっと言えばさ。   さっき、何を思い出したの?」

京太「………………………胡桃、さん」

胡桃「ゲームセンター」

京太「え?」

胡桃「ゲームセンターで、京太がぬいぐるみ取ってくれた時。あの時、すっごい苦しそうな顔してたよね」

胡桃「薄々そうかなって思ってはいたんだけど、あの写真撮影の時から、時折フラッシュバック?ていうのかな。そうやって何かを思い出してたよね」

京太「………気づいてましたか」

胡桃「うん。さっきの乾杯の時も、一瞬我ここにあらずって感じだったから、『ああ、また何か思い出したんだ』って」

京太「………確かに、記憶が何度か戻りかけて、一部一部がフラッシュバックしたことはあります。けど………」

胡桃「あまり手がかりになるような、核心までは思い出せなかったんだよね?」

京太「どこまで御見通しなんですか」

胡桃「わかるよ。いっつも見てるんだから」

京太「はは、なんか恥ずかしいですね」

胡桃(………この鈍感め)

胡桃「けど、それだけじゃないでしょ?」

京太「………はい。おそらくご想像の通り、です」

胡桃「下手な心配かけないように、周りが気を揉まないように………そうやって、京太は隠してたんだよね」

胡桃「それは、十分わかってるよ。けどさ、それでも話してほしかった」

京太「すみません」

胡桃「わかってる?すごく、怖いんだよ?」

京太「え?」

胡桃「一人で溜め込んで、溜め込んで。その結果、空気を入れすぎた風船みたいに壊れちゃうんじゃないかって。京太が、限界を迎えちゃうんじゃないかって」

胡桃「そうなってほしくないから、少しでも手伝いたい。そう思うことはダメなのかな?」

京太「ダメなんて………そんな、申し訳ないくらいで………」

胡桃「その『申し訳ない』ってのも大っ嫌い」

京太「………………」

胡桃「それ言われるたびにさ。線、引かれてる気分になってイラッてなる」

京太「線、ですか?」

胡桃「そう。境界線。まるでさ、『ここから先、あなたたちは関係ありませんから』とか言われてる気分」

胡桃「そりゃ人のプライベートは尊重しないといけないし、京太の抱えてる事情だってある。けど、それ踏まえても哀しくなる」

京太「………俺は」

胡桃「そんなつもりなかった、でしょ。その言葉に嘘がないことも、その言葉を口にするたびに京太が本気で心痛めてるのだって知ってる」


胡桃(――――――ああ)


胡桃「ごめんね。我儘だから。まだ高校三年生の、子供だから。割り切れないから」


胡桃(嫌な女だなぁ、私)



京太「………本当に、何でも御見通しなんですね。胡桃さん、千里眼でも持ってるんですか?」

胡桃「もしそうだったらどれだけ楽なんだろうね」

京太「そうですね。………………………………胡桃さん」

胡桃「ん?」




京太「聞いてもらえますか?俺の抱えてる、俺だけの、俺にしか意味がないような、くだらない悩み」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

シロ「………………………」

豊音「シロー?どうしたの、こんなところで」

シロ「………豊音、シー」

豊音「………?あ、京太君と胡桃さんだね。何話してるのかな」

シロ「………知らない。けど、なんか邪魔しちゃいけない………そのくらい、わかる」

豊音「………」

シロ「………ダル」

豊音「シロ、最近よくしゃべるようになったねー」

シロ「………なにそれ」

豊音「ご、ごめんだよー!!べ、別に悪口のつもりじゃ………」

シロ「………この間、言われたばっかりなんだけど。それ」

豊音「え?」

シロ「『意外としゃべるんですね』、だって………みんな、私の事なんだと思ってるのさ……」

シロ「これでも人間………それなりには、喋る」

豊音「………………………」

豊音「そう、だねー」

シロ「………戻ろうか。塞とエイスリン、そろそろどこにいったーって探し出す………」

豊音「そうだねー。心配かけちゃいけないよー」

シロ「ん」

豊音「あ、けど、シロ」

シロ「………………?」





豊音「シロも、逃げてるよね」





シロ「――――――――――――――――っ!?」

豊音「うん。外から見てれば、余裕の表れにも見えるし、一歩引いた上で見守る………そう、保護者みたいな立場にも見えるよねー」

豊音「けど、それって実際は本来一番ベースになるべき『自分の意志』を殺してるってことだし………」

豊音「うん、シロは結局、『進む』ことを望む自分と『今』を続けることを望む自分と、板挟みなのかなー?」


シロ「………………とよ、ね?」


豊音「でも、そろそろ………うん、私の主観も入ってるよ?シロには、ううん、シロにももっともっと、踏み出してもらいたいとか、そういう気持ち」

豊音「あはは、けど、『ダル』って言われたらそこでお終いだけどねー」

豊音「けど、それを差し引いてもさ、




              もう、時間、ないよ?」




シロ「――――――――――――!?」

誰だ、お前


「歯車は、もう限界近くまで摩耗してる」


お前、どこの誰だ


「それは誰のせいでもない。抗えない、絶対のルール」


お前は、いったい誰なんだ


「この間やってた刑事ドラマの、時限爆弾みたいなもの」


私は、知らない


「制限時間はもうほとんどない。余裕なんて見せてたら、いつの間にか………だよ」


私は、『オマエ』を知らない


「だから、最期の忠告」


私は―――――――――――――




「『カミサマ』、そこまで待ってられないみたいだよ――――――?」





そんなに――――――哀しそうに、


今にも泣き出しそうな、痛々しい顔で笑う『豊音』を、



私は、知らない――――――











.

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

胡桃「――――――自分の素性を知りたいっていう気持ち、それを知ることへの恐怖」

胡桃「それに加えて、今をずっと続けていたいっていう気持ち………」

胡桃「なるほど、ね。うん、わかった」

京太「本当にくだらない話ですけどね………」

京太(いろいろ話せない事情も絡んでるし、シロさんに鉄拳説教されたことは黙っておこう………)

胡桃「けど、それは同じだよ」

京太「同じ、ですか?」

胡桃「特に最後の。今を終わらせたくないなんて、以前塞が言ってた、私たち全員の葛藤じゃん」

胡桃「あの時解決―――ていうか、それに対するいーーーーい意見出した張本人が、まさか同じことで悩んでるなんて」

京太「うぐ………じ、自分自身のことはまた、そうそう割り切れないと言いますか………」

胡桃「ふふ、言い訳するくらいには気は楽になったみたいだね」

京太「うっ」

胡桃「ごめんごめん。いきなり変な事言いだして、調子狂わせたのは私なのにね」

京太「いえ。その前に、自分自身がかなり揺れている部分はありましたから」

胡桃「そっか………ねえ、京太」

京太「はい」

胡桃「たとえば、京太の記憶が、全部戻ったとしてさ」

胡桃「うん、それこそ全部。家族のことも、友人のことも、全部思い出して、そこに帰ることになった」

京太「………………っ」

胡桃「けどさ



        そしたら、もう会いに来てくれないの?」



京太「え」

胡桃「いや、え、じゃなくて」

胡桃「記憶が戻ったら、岩手の、宮守のことはさーーーーっぱり忘れて、もう遊びにも来てくれないんだ?」

京太「い、いや!!ちょっと待ってください!!そんなわけないじゃないですか!!」


京太「確かに、俺にも故郷はあるはずですし!!そこに帰ることに、なるかもしれません!!」

京太「けど………みなさんのことを!!」



京太「胡桃さんのことを!!忘れるわけなんてないじゃないですか!!」




胡桃「――――――――――――――――――」

京太「胡桃、さん?」



胡桃(よし、よしよしよし。よーしよしよし。オーライ。思考をクリアに。あくまで鮮明に。落ち着け。落ち着け私。今の言葉はそんな意味で言ったわけじゃない。いつものだ。いつもの京太だ。塞も、シロも、豊音も、エイスリンさんも、みーんなひっくるめて、健全な意味での発言だ。だから私がここであたふたするようなことはない。だから落ち着け。沸騰しそうな頭を冷やせ。今にも湯気の出そうな顔を冷やせ。あーもう、このまま雪に顔突っ込んでしまおうかいやそれだと京太が怪しく思うかもいや待てこけたってことにすればこの鈍感魔人はいやでも変なところだけ鋭いからもしも待て待て落ち着けこんなこと考えてる時点で私は慌ててる。静まれ、心臓の音を平常に、体温、特に顔の熱を冷ませ――――!!)



胡桃「………ごめん、お待たせ」

京太「だ、大丈夫ですか?」

胡桃「うん。もう大丈夫」

京太(な、なにが『もう』なんだ………?)

胡桃「さっきの話の続きだけどさ」

京太「は、はい」

胡桃「京太は、記憶が戻っても、私………達の、ことを忘れないって断言した」

京太「………?は、はい。もちろんです」

胡桃「だよね。(よしセーーーーーーフ!!)じゃあさ、もし私たちがそっちに―――いや、どこかはわからないけど。京太の、『帰った』場所に遊びに行ったら?」

京太「え?観光にですか?」

胡桃「いや、まあ場所によってはそれもしてみたいけどさ………京太のところに、遊びに、だよ」

京太「………決まってるじゃないですか」

京太「覚悟してくださいよ?今日のタコス以上の、みなさんが忘れられなくなる料理をたくさん作って、嫌っていうほどおもてなしさせてもらいます」

胡桃(よし言質とった)

胡桃「だったら、いいんじゃない?」

京太「いい、ですか?」

胡桃「そんな、『次』が―――――――――――


     そんないつかが必ず、来る

           そうわかってるなら、いくらだって頑張れる


                 どんなもんだって胸を張って自慢できるような自分になれるように、

                     頑張りながら、待つことができる」



京太「――――――――――――――――――」






京太「ほん、と」



ザザ



京太「………かなわない、なぁ」





ザ――――――――――――――――――――――――――――――――――――






.

ねえ、京―――くん、これ、お願いできる?

ええ、いいですよ

まーた自分がめんどくさいもん押し付けおって………

私がやりましょうか?計算系は、得意分野ですし

いや、いいよ。俺もこの手の事、最近割と好きになってきたからさ

流石犬だじぇ!!………といいたいけど、最近まじでどうしたんだじぇ?

そろそろ本気で、自分の境遇に怒ってもええと思うんじゃが

ええ、主に部長に

ちょ、やめてよ!!………その、ご、ごめんね?

い、いや!!いいですって!!それより、―――の奴、まだですか?

お?逢引きか!?犬の癖にやるじぇ!!

ちげーよ!!こないだ言われた、節約で浮いた部費の余剰。その一部で、みんなが食えるようにってサンドイッチ作ったんだよ!!

お、そりゃあありがたい

なるほど、仲間外れはダメですね。それにしても、ありがとうございます

いいって。最近、楽しいんだこういうの………と、

あら?来たかしらね?


す、すみません!!日直で―――!!!

おう、―――――――!!部活前にこれ食っちまえ。お前待ってたんだからよ

わぁ!!ありがとう――――――     










                        京ちゃん!!

俺の、記憶が

頭が割れそうな、痛みを伴う、

忌々しかっただけのフラッシュバックが

ここまで暖かく思えるのも、



胡桃「ん?どうしたの。急に黙ってさ」



俺が、救われてきたからなんだ



胡桃「ちょっとー?」



皆に



彼女に

京太「胡桃さん」


胡桃「お、復活?どうしたの?」


京太「寒くないですか?」


胡桃「ふふーん。東北民なめないでよねー」


京太「これ、どうぞ」


胡桃「水筒?わ、温かい………いつのまに?」


京太「帰るときに飲みながら行こうかと思いまして。けど、話があるって言われたときに、これはいいって思って」


胡桃「ほんと、用意周到」


京太「ありがとうございます。それで―――――








          もう少しだけ、聞いてください。こんな俺の――――――記憶の断片を」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

塞「………あれ?シロ………いや、胡桃も?どこいったのかな」

エイスリン「トヨネモ、イナイ」

塞「ほんとだ。話し込んじゃいましたね………ちょっと探してきます」

トシ「いや、いいんじゃないか?どうせ出かけるような用事があれば言ってくるさ。なにせ、あの生真面目大魔王がいるんだからね」

塞「そ、それは確かにそうですが………」

トシ「それにしても、これは美味しいねぇ。私も最近漬物はやってないけど、これは絶品だ」

エイスリン「コレ、オイシイ!!ドンドンタベラレル!!!!!」

トシ「おやおやおや、ニュージーランド出身のエイスリンの味覚でも絶賛とは、これは相当なもんだ。塞、これ持ってきてくれたのは誰だい?お礼がしたいんだ。久々に、上物の漬物を口にしたよ」

塞「………………」

トシ「この味、ちょっとやそっとじゃ出せないってのはわかる。それこそ、何十年も漬物に慣れ親しんだ人間だけが出せる味だ。それこそ、みんなの祖母の代――――シロの家かね?いや、胡桃の家ってのも―――」

塞「………………………す」

トシ「え?」



塞「それ、漬けたの………私、です。」



トシ「」

エイスリン「?????」

胡桃「京ちゃん………そう呼ばれてた。つまりは、『京太』っていう名前はおそらく本名だってことまでは、思い出せたって事………?」

京太「いえ、そこまで確実には。ただ、『京太』っていうのが赤の他人の名前だったり、全く無関係ではないってくらいです。」

京太「もしかしたら、『京』がつく他の名前ってことも全然ありますから」

胡桃「まあ、そりゃあ………京介、京一、京一郎、京太郎、京二郎、京吾………いくらでもあるからねえ」

京太「それが、今日………この日に思い出したことです」

胡桃「………………………ほんと、なんでもっと早く言わないかなぁ」

京太「すみません。とはいっても、あの空気で言いだすのも………」

胡桃「まあそれはね。私でも無理だと思う。これは京太責められないよ」

胡桃「けど、その―――記憶が戻る度に来てた、頭痛は」

京太「ええ。原因は全くわからないんですが、今日の………それこそ、今話したこと全部含めて。それらが、なかったんです」

胡桃「………快方に向かってるってこと?」

京太「い、いえ………それに関してはまだなんとも………」

胡桃「………まあいいか。ねえ、京太。それならさ、一つ、約束してもらってもいいかな?」

京太「約束ですか?」

胡桃「うん。いや、別にさ。思い出したこと全部喋れーー!!なんて言わないよ?」

京太(正直覚悟してた)

胡桃「別に、たったひとつ。難しいことじゃないから」


スッ


京太(え)


フワッ


京太(胡桃、さん?なんで、俺の体に手を回し――――――)




胡桃「どこにも行くななんて、もう言わない」


胡桃「ずっとここにいてなんて、言わない」




胡桃「『思い出して』も、『忘れないで』」




私を


私たちを

京太(―――――――――――――――――――――――)


この時、


胡桃「京、太?」


彼女を抱きしめ返した、その理由を知るのは


胡桃「――――――………………ん」


随分、後のことになったけど


胡桃「………………………京太」

京太「はい」


それが間違いではなかったということだけは、断言できる



胡桃「どこにいる?」

京太「ここにいます」





たとえ、少しばかり










シロ「お前は、誰だ」


豊音「――――――――――姉帯豊音、だけど?」





歯車が悲鳴を上げていたことに、気づいていなくても
















豊音「            アハッ           」












.







京太「ただいま戻りました」

塞「あ、やっと帰ってきた。どこいってたの?」

京太「いえ、ちょっと話こんじゃいまして。あ、お借りした道具、今しまっちゃいますね。そろそろ乾いてるだろうし」

塞「ちょ!!こら、そのくらいやらせろ!!………ほんと、労働体質というか………」

エイスリン「ヒツジ!!」

塞「え?羊?今日のタコスの具にラム肉なんて………………あぁ、執事、ね。確かにそんな気がする………」

トシ「いっそ雇用契約を申し出たらどうだい?」

塞「いえ、私はどうせ沢庵から糠漬けまで一人でやるような自給自足おばあちゃん系女子高生ですから」

トシ「そ、そんなに拗ねないでおくれよぉ………」

塞(ていうか、マジですごいよね京太君。マジで黒●事とかハヤ●のごとくみたいな事情もった執事だったり………いや、前者はやばいから勘弁だけど………)

塞「………………………………で、だ」




胡桃「                    」プシュー


塞「そこのヤカン。話、聞かせてもらおうか?」

.











シロ「今は、何も聞かない」

豊音「うん」

シロ「けど、警戒だけは―――させてもらう」

豊音「あたりまえだよ、ね。それで、もしも―――」

豊音「胡桃さんと、京太君に―――ううん、誰かに危害を加えたら?」


シロ「許さない」


シロ「………たぶん、私は――――」

豊音「大丈夫だよー」


シロ(………だから)


豊音「私、『ワルモノ』さんだけど―――」


シロ(そんな、今にも泣きそうな顔をするな)




豊音「誰かを傷つけるような、『鬼』じゃないよー     アハッ   アハハ………」



シロ(―――――――――――何かがあっても、憎めなくなるだろうが――――)














.

ギギ


ギギギ



ギギギギギギギギ ギリリ ギギ   ギリリ

     ギリ  ギリギ  ギギギギギ    ギギ ギリリリリ












ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ




歯車は、回る。



                          軋んで、回る。          腐れ、爛れたように。





     私たちを                   馬鹿にして

                 嘲笑って                        見下して

      コケにして             騙くらかして


             
  えげつなく          無残に                   エゴ丸出しで







                              ナメたかのように



  ああ、



              まったく







                       ふ   ざ   け   る   な

本日の更新はここで終了させていただきます

いつの間にここまで放置ぶっかましてたんだ私は………
本当に申し訳ありません。この作品書き出してから何度皆様に謝罪したかもわからぬほどに謝罪を重ねてきましたが、
今回はその中でも特大級の罪業です。
正直、


「お、仕事の時間も開いたな。これでSS書けるし、さてどうすr」

上司「ちーーーーーーっすwwwこれ頼むわwwwwww」           自分「」
医者「ああ、ちょっと検査入院ですね」                    自分「」
友人「ちょっと愛知までなんだけど、助手席でナビ頼んでいい?」        自分「おk」
椎間板ヘルニア「なぁ………結婚しようやぁ………」              自分「こっちくんな」

コンナコトガアリマシタガ、それでもいくらなんでも放置しすぎました
今回の話で割といくつかの話の鍵は出せた感じにはなりましたが、それにしたって俺なにしてるよ………

今後は上記のようなことはないように努めますので(主に1番目と2番目と4番目)、物語の加速に合わせて書き進めていきます
もし、見捨てないでいただければ………どうか、どうぞよろしくお願いいたします

それでは、皆様。また次の話で

【緊急追記】
ちょっと前の話含め、今回の更新分についてですが
以前も申し上げまた通り、この作品において【悪人】は存在しません
なので、今回の豊音ちゃんの発言・行動につきましても、彼女を貶す・貶める・馬鹿にする そういった意図は一切ありません。
宮守に悪人なんていません。

彼女のことにつきましても、今後のストーリーで補完させていただきます。ご了承ください













【独り言】もうやだよ。腰は痛いし、上司的なナニカが無理言ってくるし。胡桃ちゃん、お願いだよ。癒して。ねえ癒して。ねえ癒してよ。お願いだよ胡桃ちゃん。もうやだよ、お願いだよ胡桃ちゃん。SAN値限界だよ。助けて胡桃ちゃんねえお願ry

[再追記]
今回のように、下手するとまたしばらく戻ってこれない可能性があります。
その間、ただ、あまりにも激しい論争・対立以外でしたら雑談・考察をお楽しみいただければ幸いです

遅くなりました。
本日の昼~夜に更新させていただきます
毎度申し訳ありません

大変遅くなりました。スレ主と書いてうつけ者と読む者です
久々ではありますが、更新を始めさせていただきます

.





塞「いやー、結構話したけど、まだ疲れないね。やっぱこういうのっていいねー、ほんと」

胡桃「けど、料理は結構食べちゃったね。あとは一品物がすこしと、お菓子か」

京太「あ、じゃあ空いたものから順次洗い始めますね」

胡桃「だから、その位手伝わせてって」

塞「おう逃げるなヤカン」

胡桃「う、ぐぅ………」

エイスリン「キョータ!!ワタシモ!!」

京太「あ、皆さんはそのまま休んでてください。もう少しだと思うので」

トシ「もう少し?何があるんだい?」

京太「それは内緒です。さて、ちょっとお皿回収します」

胡桃「って、ちょ………ほんと、最近うまくすり抜けるようになったなぁ」

塞「いったい何が京太君をそこまで雑用に駆り立てるのか………さて、胡桃はこっちで尋問の続きね」

胡桃「う、うああぁぁぁぁああああ………もう許してよぉ………」フルフル

エイスリン「クルミ、チワワミタイ!!」

塞(やばい、楽しいかも)

豊音「ただいまだよー」

塞「あ、おかえり。っていうかどこ行ってたの?こんな寒い中………」

生きとったんかワレェ

シロ「………………………」

塞「………………シロ?」

シロ「ん?」

塞「あ、いや………何でもない」

シロ「ん」

塞(………………今)

塞(シロが、京太君絡みのこととはまた、違った………なんか、ちょっと危なっかしい目をしてた気がするんだけど………)

塞(………気のせい、だよね)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

京太「………ふぅ、これでよしっと」

京太「借りたものは皿の一枚靴の一足でも、借りる前より綺麗にして返す………これ鉄則」



ppppppppppppp………………


胡桃「はい、もしもし………え?はい、いますけど………」

胡桃「あ、京太。電話だよー」



京太「あ、はい!!今行きます!!」





『こちらサンタ。トナカイ、応答せよ』

京太「こちらトナカイ。感度良好」

『了解。サンタは、想定外の事態なければ今より約15分後、ポイント[ウォールナット]に到着する。情報漏洩の有無を確認する』

京太「情報漏洩の可能性、2%以下と報告。打ち合わせの際に居合わせた対象【A】も一切疑念持たざると見える。ただし、全対象鑑みれば不確定要素多数。警戒せよ」

『サンタ了解。トナカイも警戒せよ。以上、交信を終わる』

京太「トナカイ了解。グッドラック」


ガチャッ


京太「………ここまでする必要あるのか?」

胡桃「京太ー、誰だったの?やけに声高い男の人だったけど」

京太「(裏声で対応したのか……)いえ、職場で知り合った人でした。忘れ物がどうとかで、マスターに取り次いでもらったとかで………」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

テンクウノ ホウオウハ オチヌ!!

ニゲラレンゾォ~!!


塞「………………………っ!!!」ガチャガチャガチャ

シロ「………………………」カチャチャチャチャチャチャ


テーレッテー

ドウダァ~!! クヤシイカァ~!!


塞「」

シロ「………」フンス

胡桃「………うん、なんか、割と読めてたこの光景」

エイスリン「ワァオ………」

塞「トキで3タテ………サウザーで5タテ………あはは、もう、どうしたらいいんだろ、私………」

胡桃「塞、安心して。塞に問題はない。シロがやばいだけ」

京太「………?どうしたんですか?」

胡桃「いや、なんでもないよ。ただ当たり前の惨劇が当たり前のように繰り広げられただけ」

京太「………………?」

トシ「シロ、次は私もやらせてくれないかい?」

シロ「………できるんですか?」

トシ「ははは、まあ少しはね」

京太「あ、これ、ちょっと軽くお菓子を作ってきましたので。皆さんでどうぞ」

胡桃「え!?………え!?これ、今さっき作ったの!?」

京太「ええ、洗い物やる前に少し仕込みしておきまして」

塞「うわ、なにこれおいしそう」

シロ「あ、復活した」

トシ「シロ、キャラ選びな」

シロ「……………………」カチャカチャ

京太「簡単なカップケーキですよ。余った材料で作りました」

胡桃「私、女子のプライドが役満直撃で持っていかれたんだけど」

塞「同じく。ダブル役満くらい持っていかれた」

塞(どーせ私はババ臭い漬物担当ですよーだ………)

豊音「わー………ふわふわだよー」

エイスリン「オイシソウ!!コレ、モラッテイイ?」

京太「ええ、お好きなものをどうぞ。大きな違いはないですし、せいぜい上に乗ってるナッツの種類くらいですから」

豊音「アーモンドもらうよー」

塞「あ、じゃあ私はこれ」

胡桃「私はこれかな?これは何乗ってるの?」

京太「あ、それはクルミです」

胡桃「………………………」


胡桃「ふぁ?」


京太「あ、す、すみません。クルミの実を使ってるってことです!紛らわしくてすみません」

胡桃「………………」




『あ、それはクルミです』

『クルミです』


『クルミ』


『胡桃』




胡桃(脳内再生とはいえ………呼び捨てキタァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!)


塞(だめだこの子、早く何とか………しなくてもいいか、割と)






ピンポーン








胡桃「あれ?こんな時間に、お客さん?」

京太「―――――――――――――――――――――!?」

胡桃「ちょっと出てくるね、誰だろ………」

京太「あ、お、俺が行きますよ!!」

胡桃「え?い、いや、一応この家の人間だし、いかないことには………」

京太「じゃ、じゃあ一緒に行きます!!さ、胡桃さん!!」

胡桃「ちょ、引っ張らないで――――――――――――――――」



塞「………なんだったんだろ?」

豊音「これ、美味しいよー!!!ふわふわで、甘くて、いい香りで!!」

エイスリン「………………………」

塞「え?………あ、ほんとだ!!これ美味しい!!ちょ、これはレシピきかないと………」




エイスリン(『………どうしよう。本気で美味しい。これ、忘れられないよ。何とかしてキョータをニュージーランドに………商店街に人間一人入るトランクケースは………あったけ………?』)

胡桃「ど、どうしたの京太?普通にお客さんなんだし、京太は休んでて………」

京太「胡桃さん」

胡桃「え?」

京太「今から見る光景は、多大な精神的ならびに視神経的な衝撃を伴います。どうか、我を失わないでください」

胡桃「あ、あの?京太?」

京太「大丈夫です。害はありません」

胡桃「いや、あの………」

京太「………きますよ」



ガララッ






京太「――――――――――――――」(目を覆う)

胡桃「     (   ゚ω゚ )   」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

シロ「………………………ッ!!!」ガチャチャチャチャチャ

トシ「―――――――――――――」ガチャチャチャチャチャチャチャチャ


シロ(なんだ、このシン………今まで外したことのないタイミングでも食らいついてくる………!?この人、いったい………!?)

トシ「………………………………」



テーレッテー

ドウダァ、クヤシイカァ~!!!




トシ「あー、負けてしまったか。流石に若い者には勝てないかね」

塞「」

トシ「いやー、年甲斐もなくはしゃいでしまったよ。やっぱり体にこたえるね、こういうゲームは」

塞(ワタシハ、イマ、ホントウニ、ニンゲンノ、ゲームヲ、ミテイタノ?)

シロ(………………この人、本当にいったい………………)












ドスドスドスドス・・・・・・・・・・

豊音「モフモフ………あれ?誰か来たよー?」

塞「………はっ!?あ、あぁ、胡桃と京太君じゃない?」

エイスリン「モフモフ………ンムゥ?」

豊音「でも、それにしては足音が………」





塞(この日、この時に見た『それ』を、私は生涯忘れない)

塞(この雪の降る中………………………)












店長「メルゥゥゥゥィィィィィイイイイイイイイィィィィ!!!クルゥイスムァアアアァァァァアアアアアアス!!!!」ムキムキムキムキムキムキムキムキムキムキムキムキムキムキムキミチミチミチミチミチミチミチミチミチミチミリミリミリミリミリミリミリミリ









.


シロ「」

豊音「」

エイスリン「」

トシ「」






塞(半そで半ズボンで、丸太のような筋肉をたくわえ、)


塞(露出した肌から湯気を立てながら聖夜を祝う言葉を咆哮する、)





店長「よい子のみんなにぃぃぃぃぃぃぃ!!!プレズェェェェェェントォォォォォォォ!!!!!!!」ムキムキムキムキムキムキムキムキムキムキムキムキムキムキムキミチミチミチミチミチミチミチミチミチミチミリミリミリミリミリミリミリミリムキムキムキムキムキムキムキムキムキムキムキムキムキムキムキミチミチミチミチミチミチミチミチミチミチミリミリミリミリミリミリミリミリ






塞(――――――――――――――サンタクロース、を)

店長「すみませんでした」ムキィビクンミキィビクン


塞「心臓………ッ止まるかと、思いましたよ………ッ」ゼーゼー

シロ(リアル蛇狼撃初めて見た………)

店長「お、俺は………ただ、クリスマスの………プレゼントを………」ミキィ

塞「登場の仕方を考えてください!!」

豊音「臼沢さん、こういう突然のことに弱いんだねー」

シロ「ドッキリとか、一番引っかかるタイプ………」

エイスリン「ビ、ビックリシタ………」

京太「マスター。確かに、最初に話を持ち掛けられた時に俺は頷きました。けど、ここまで過激な計画を練ってるなんて、俺は何一つ知りませんでした」

店長「お、おう」ムキ

京太「流石に反省願います」

店長「弟子よ………大きく、なりやがっ、て………」ムキムキガクゥ

塞「何が酷いって、酷くないところが一切ないのが酷いよね」

京太「申し開きの仕様もございません」

胡桃「ま、まあとりあえず、マスターも悪気があったんじゃないし」

店長「ぬぅん!!」ムキキキキキキキキキキッ

塞「ひゃあ!?」

胡桃「ぴゃ!!?」

京太「だから、気を付けてくださいって!!今のでまた全員ひいてますよ!?」

店長「せ、せめて………プレゼントだけはぁ………!!」ミチチチッ

京太「配ります!!配りますから!!」

店長「頼んだ、ぞ………」ムチチガクゥ

シロ「………今度こそ落ちたか」

エイスリン「ホラー………」

京太「え、えーと………すみません、お騒がせしました。とりあえず、マスターと俺で選んだプレゼントがありまして、それを皆さんにお渡ししたいのですが」

塞「え?京太君も選んだの?」

京太「ええ。隠密にということだったので、皆さんに相談することもできませんでしたからお気に召すかどうかわかりませんが」

胡桃(wktk)

シロ「………………」

豊音「クリスマスプレゼント!?」

京太「え、ええ。そうですけど」

豊音「年の近い友達から貰うの、初めてだよー」ホワァ

エイスリン「タノシミ!!ハヤク ミタイ!!」

京太「わかりました。それじゃあ、配りますね。えーっと、こちらが胡桃さん、これが塞さん。こっちはエイスリンさん、これがシロさん………はい、豊音さん。こちらが先生です」

トシ「おや、私もいいのかい」

京太「ええ。せっかくの聖夜ですから」

トシ「ありがたいねぇ。おっと、開けてもいいかい?」

京太「もちろんですよ。皆さんもどうぞ」

ガサガサ ゴソゴソ モソモソ

トシ「これは………おや、綺麗なスカーフじゃないか。ありがとうねぇ」

塞「うわ、すごい暖かそうな手袋!!」

シロ「………耳当て。ぽわぽわで、ダルくない………」

エイスリン「ワタシモ マフラー!!アッタカソウ!!」

豊音「帽子だよー!!すっごく嬉しいよー!!」

胡桃「マフラー………あ、ありがとう」

京太「マスターと一緒に結構吟味したんですが、どうでしたでしょうか」

豊音「嬉しいよー!!本当にありがとう!!」

シロ「………ぬくい」ポワポワ

塞「ありがとうね。なんていうか、申し訳ないくらい」

京太「そんなことないですよ。いつもお世話になってますし、気持ちです」

店長「そうそう。いつもありがとうな」ムキキッ

京太「いつ復活したんですか!?」


胡桃(………暖かい////)

―――――――――――――――――――――――――――――――――――






京太「それじゃあ、今日はありがとうございました」

塞「いやいや、こちらこそ。ほとんど全部任せちゃってごめんね」

京太「いや、好きでやってる事ですし」

塞「………今回ばかりは、何も言わないでおこうかな」

京太「すみません」

店長「それじゃあ、メリークリスマァス!!!!!!」ミチチチチチチチチチッ

京太(筋肉の上で雪が解けて湯気が立ってる)

豊音「胡桃さん、本当にいいの?」

胡桃「うん、雪も降ってるし、豊音の家離れてるでしょ?このダルダル星人も泊まっていくし、休んでいって」

シロ「ダル………寒い………」

エイスリン「ミンナ、オヤスミ!メリークリスマス!!」

塞「メリークリスマス!!あはは、今日これ何度言ったっけ」

京太「いいじゃないですか、何度だって。それじゃあ、俺も失礼します」

トシ「ああ、おやすみ」

京太「………え?」

胡桃「ああ、先生も今日泊まって行くって」

京太「ちょ、初耳ですよ!?」

塞「あははー。どうやら隠れてまたお酒をクピクピやってたらしくてねー。このまま寝たいんだってさー。あははははー」

トシ「ほ、他に勧めてないんだ。そんなおこらなくてもいいじゃないか………京太君、これ
鍵。悪いけど、今日は先に休んでいてくれないかね。流石に眠気が来たよ」

京太「わ、わかりました」

胡桃「………」

京太「それでは、失礼します」

胡桃「京太」

京太「?はい、なにか」

胡桃「途中まで送っていくよ」

シロ(………………………)



京太「え?い、いや。それはいいですよ。帰り道に一人になっちゃいますし」

胡桃「そんな遠くまではいかないよ。今日はお世話になっちゃったからさ」

京太「………は、はぁ。ありがとうございます」

胡桃「ん。じゃあ、ちょっと行ってくるね」

塞「はいはい。じゃあ、私はこれで。メリークリスマース」

シロ「………………ん」






豊音(………………………………)

京太「それにしても、予想以上でしたね」

胡桃「今日の盛り上がり?」

京太「はい。びっくりしましたよ」

胡桃「私もびっくりだったなぁ。ていうか、主に京太の料理が美味しすぎたのが悪い」

京太「あはは、それはすみません」

胡桃「ん、だいぶ流せるようになってきたね」

京太「そうですか?今でも結構恐縮しちゃいますけど」

胡桃「以前に比べたら全然マシ。それに、笑い方も自然だし」

京太「笑い方、ですか?」

胡桃「うん。前みたいに、まるで臣下の立場にでもいるみたいな笑みじゃなくなった」

京太「………俺、そんな感じでした?」

胡桃「正直、痛々しいくらいに」

京太「………すみません」

胡桃「だから、それがいけないんだって」

京太「………………………」

胡桃「………………………」



胡桃「また、遊ぼう」

京太「ええ。ぜひとも」





こんなやりとりをしながら、俺と胡桃さんは帰路に就いた

無意識に手を繋いじゃっていたことに気づいて二人で慌てたりしたけど、

この時はまだ、理解してなかった

「それじゃあ、―――日後に出発ね」

「正直、本当に気が重いですよー」

「仕方ない………けど、正直私だって、やりたくない」

「本当だったらこんな役目、やらなくて済めばそれでいいんだけどね………」

「………方法はないのでしょうか。こんな残酷な結末を、迎えないで済むような」

「残念だけど………私たちにできることはこれが全部。だから、それをせめて誠実に、誠意をもってこなすだけ」


「泣きたいのは、私だって同じだから」







砂時計が、もうほとんど残ってなかったことになんて

三日後   宮守高校 麻雀部部室


塞「この間までクリスマスで騒いだと思ったら」

豊音「すぐに年末だよー」

胡桃「なんでこんなにせわしないんだろうね」

京太「まあ、本来この国になかった風習取り入れ続けてこうなったわけですし」

エイスリン「カガミモチ、タノシミ!」

シロ「何故鏡餅」

エイスリン「カガミビラキ、テレビデミタ!タノシソウ!!」

塞「あー、なるほど。たしかにあんな光景は外国だとないか」

胡桃「最近だとやるところも減ってるけどね。うちは、たぶんやるかなぁ………って」

京太(………………)メモメモ

胡桃(まさか………鏡餅まで用意する気!?)

塞(執事………ッ 哀しいほどに、執事………ッ!!)

シロ「正月は、コタツで寝正月………」

塞「こら。それで去年、私と胡桃に引っ張り出されたのはどこの誰だ」

豊音「あははー。亀みたいになってるシロ、可愛いかもー」

胡桃「笑い事じゃないんだよね………シロ、コタツに籠るといつものダルさどこにいったレベルで抵抗するから」

京太(やっぱパワーあるよな、シロさん………)

塞「結局、去年は親御さんの許可貰ってコタツ自体を引っぺがして確保したんだっけ?」

京太(やばい、想像つく)

シロ「………………」ジーッ

京太(そしてバレてる!?)

エイスリン「キョータハ、ドースルノ?」

京太「え?」

エイスリン「オショーガツ!」

京太「ああ、正月ですか。何か問題でもなければ、先生の家でお雑煮とか作って過ごそうかと」

塞「………………」

胡桃「………………」

塞「………先生、京太君が来たせいでどんどんダメになってない?」

京太「え?いやいや、そんなことないですよ」

塞(だめだ。これ、対象を駄目にしてることに気づいてないパターンだ)

胡桃「っていうか、問題がなければって、もしかして商店街?」

京太「はい。年末商戦もあって、あちこちで人手が足りないらしくて。できる範囲でだけですけど手伝っていこうかなと」

豊音「アルバイト?」

京太「いえ、ただの手伝いです。なのにお惣菜とか野菜とかもらっちゃって、申し訳ないですけど」

塞「いやいや、対価なんだから。そこはありがたくいただいておこうよ」

エイスリン「キョータ、キヲツケテ。オーバーワーク、コワイ」

京太「あはは。そこはちゃんと気を付けてますよ」

胡桃(あ、これダウトだ。濃厚なダウトの匂いだ)

京太「それに、見回りも兼ねてるんですよ。この季節は乾燥してて、雪があるとはいえ火災が起こりやすいですから。その他にもいろいろ気を付けないと」

シロ(………最近、商店街の人と仲良くなっていろいろ手伝ってるのは知ってたけど)

塞(自分自身の社交能力でどんどん仕事増やすってどーよ。最近、本気で何でも屋化してる気がする)

胡桃「………無理、しないでね」

京太「あはは、しませんよ。必要な時に出るだけです」

塞(あ、これダメなやつだ)

胡桃(どれだけ「未定の予定」突っ込んでるか自覚してない奴だ。その上でそれ全部こなしちゃう奴だ)

豊音「ねえねえ。そういえば、みんなは初詣には行くの?」

塞「うん。去年一昨年と、シロと胡桃と一緒に行ってたんだ。よかったら今年はみんなで行く?」

エイスリン「ハツモーデ!!イキタイ、イキタイ!!」

豊音「うんうん!!ちょー楽しみだよー!!」

胡桃「京太は?どうする?」

京太「ええ、一応先生に確認してみますけど、よろしければ是非ご一緒させてください」

シロ「よし、強制連行」

京太「連行!?つい先ほどの意思の確認はいずこへ!?」

塞「行くんでしょ?」

京太「い、いきますけど………」

塞「まあ、行かないって言っても連れていくけど」

京太「本当に連行!?」

シロ「麻袋と、ガムテープと、ロープと………」

京太「違う!!これ違う!!これ連行じゃない、誘拐だ!!!」

エイスリン「ツッコミ!!」

豊音「息ピッタリだよー」

京太「芸人デビューしたつもりはないんですが………」

塞(これでよし。今日はどっかの座敷童が帰ったら着物のチェック始めること請け合いだねこれは)

胡桃「よし、じゃあみんなで行こうか。むしろ前日の夜に集まっちゃう?」

シロ「二年参り?」

胡桃「んー、それは寒いし大変だから、どっかで集まってさ。で、年越しした後にみんなで行こうかなって」

豊音「うんうん!!それいいね!!」

塞「おお、豊音のテンションが急上昇」

豊音「だってだって!!友達と一緒に年越しなんて初めてなんだよー!!いつも一人で紅白かゆく年くる年みてたんだもん!!」

胡桃「あー、なるほど」

京太「それじゃあ、何時くらいにどこで、までは決めちゃいましょうか」

シロ「10時くらいでいいんじゃない?」

塞「んー、そうだね。あんまり早く集まっても、どうせはしゃぐんだろうから体力切れでb寝ちゃったなんてことになりそうだし」

エイスリン「ウグ」

胡桃「さっそく自身ない子はっけーん」

エイスリン「ガ、ガンバル」

塞「「場所は………そうだね、部室でいいんじゃない?暖房もあるし、また年末に誰かの家に駆け込みってのもね」

京太「それじゃあ、10時に部室集合ということで」

塞「よし、決まりだね。また何かあったら各自連絡で」

シロ「ん………」

胡桃「じゃあ、数局打つ?」

豊音「うん!打とう!」

京太「じゃあお茶淹れてきますね」

塞「もはや何も言うまい」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




塞「鍵閉め、よーし」

胡桃「それじゃあまた明日」

豊音「いっぱい打ったねー」

シロ「疲れた………ダル」

エイスリン「マタアシタ!!」

京太「お疲れ様でしたー」

シロ「………?京太、帰らないの?」

京太「、ちょっとだけ用事がありまして。皆さん、先に帰っててください」

塞「え?鍵しまってるのに?」

京太「いえ、別に校舎内に用事じゃないので。送れなくってすみません」

胡桃「ううん、いいよいいよ。それじゃあ、また」

京太「ええ。また明日」




シロ「………………………?」

.

校舎裏



京太「………………」

京太(あれから、いろいろ思い出した)

京太(それこそ、まだまだ全然だけど、それでもピースは揃ってきた。パズルの絵柄は、見え始めてる)

京太(今までに思い出したことを少しずつ整理してみた)

京太(きっと、俺は学生だったんだろう。そして、少なくとも『京』の文字が入っている名前………おそらくだけど、『京太』というのは本当にこの名前、もしくはその一部だ)

京太(ただ、わからないのは――――この傷)

京太(これが骨折とか切り傷の類だったらまだ分かる。それこそ、車にでも撥ね飛ばされたとか考えれば一応納得はできる)

京太(火傷………それも、結構重度の)

京太(近辺での火災はなかったと聞いた。こんな傷、いったいどこで………)

京太(暴力団にでも絡まれてリンチを………?考えたくないけど、むしろそんな理由くらいしか可能性が………)

京太(やっぱり、どれだけ考えてもわからない。最近はフラッシュバックもないし、依然としてパズルは歪なまま)

京太(俺がどういう人間だったのか。どこに住み、どうやって暮らし、どんな人たちと共にあったのか………ぼっちだったとは考えたくない)

京太(わからない。けど―――――――――――――)




――――――――――――――京太っ




京太「『京太』は、ここにいる」




京太「『俺』は――――――ここにいるんだ」











塞「………なーに、夜の校舎裏で枕顔埋めバタバタもののポエムを口走ってるんだか」



京太「ふぇいぁ!!!!!!!!!!???」

.



塞「いやー、忘れ物して慌てて取りに戻ったら、校舎裏で何か気配がしてさ」

京太「………………………」

塞「冬眠から間違って目覚めた熊でも出たかと思ったら、まさかのポエム朗読を聞いてしまうとは」

京太「………………………………………」

塞「この臼沢塞の眼をもってしても―――」




京太「あの、すみません。そろそろ虐めるのやめてください。お願いしますもうSAN値ハコテンです」ドヨンド




塞「あははは、ごめんごめん。いや、それにしたって何してたのさ。真っ暗な中でその金髪が浮かび上がっててびっくりしたよ」

京太「あー、いえ………ちょっと、まぁ」

塞「やっぱ、自作のオサレなポエムを朗読しry」

京太「違います」キッパリ

塞「じゃああれ?外宇宙からの電波を受信して………」

京太「塞さん?塞さんは俺をどこへ持っていきたいんですか!?」

塞「ごめんって。………ただのオサレポエム朗読で、あんな顔できるわけないもんね」

京太「………………………」

塞「また何か一人で抱え込んでたんでしょ?」

京太「また一人でってのは、正解です。ただ、今回は抱え込んでたわけじゃありませんよ。今まで思い出したことを、すり合わせてしてました」

塞「へぇ………結果は?」

京太「実際、あんまり進展はありませんでしたけどね。ただ有意義ではありました」

塞「まあ、揃ってるものを適当にぶん投げて置くんじゃなくて、ちゃんと棚に並べて整理して。それも大事だよ」

京太「そうですね、すっきりはしましたよ」

塞「………そっか。んっと………」ゴソゴソ

塞「あ、あったあった。はい、これ」

京太「え?これは、水筒?」

塞「うん。寒いでしょ?出る前に部室でお茶淹れてさ、持ってきたんだ。帰りに飲もうかと思ってたんだけどね」

京太「へえ………って、寒いのは塞さんだって一緒じゃないですか。塞さんがどうぞ」

塞「うん、その返答はぶっちゃけ予想がついたよ。いいのいいの、ほら」

京太「で、でも………」

塞「あーもう。じゃあ、二人で分けて飲めばいいでしょ?それに、これは情報料」

京太「情報?え、何か………」

塞「………ちょっとだけ。聞きたいことがあってさ」

校舎裏    ベンチ




塞「はい、モナカ。余ってたの持っててよかった」

京太「ありがとうございます。こんなところにベンチあったんですね」

塞「京太君は部室以外ほとんど回らないからね。それに以前の写真撮影でもここは来なかったし」

京太「それで………聞きたいことというのは?」

塞「うん。………胡桃のことなんだけどさ」

京太「胡桃さんの、こと?」

塞「うん。ほら、京太君が来てからさ。あの子、本当にいろんな顔をするようになったんだ」

塞「それはきっと、京太君のおかげだと思ってる。だから、そのお礼って言うのが一つだね。本当に、ありがとう」

京太「そんな。俺の方がいつもお世話になって、お礼言わないといけないのはこっちですよ」

塞「ん。ありがと。………もう一つはシロ」

京太「シロさん?」

塞「そう。ほら、あの子基本的にダルダル星人で、自分から本当に動かなかったのに、それが最近変わり始めてるんだよ。それも、きっと京太君のおかげ」

塞(こっちもこっちで別な事情もあるけど、それは流石に口チャック。リアル一撃されかねない)

京太(本当は部内で一番パワーあると思うけど………口は災いの元。シャラップ俺)

塞「それだけじゃないんだ。ほら、私が以前………そうそう、鍋との時。弱音はいたことあったじゃん。引退後も、こうして集まってる理由………って」

京太「ああ………ありましたね」

塞「本当に、ありが 京太「ストップ」

塞「………え?」

京太「すみません。今は、少なくとも今は。そのことについて………その言葉は」

塞「………ははーん」

塞「つまり、記憶を整理する理由、何か他にあったな?」

京太「………もう隠したりしませんよ。ポエマー扱い広められても困りますし」

塞(あ、意外と根に持った)

京太「ちょっとだけ。まだ迷ってるんです」

京太「だけど………選択肢を残すことにしました」

塞「選択肢?」

京太「ええ。これから先、記憶が戻って―――










     それでも、まだここにいる。その選択肢を」

『………ええ。それでは、そのように』

「………………………………」

『………あなたには、申し訳なく思っています。このような役目を、押し付ける形になって』

『ですが――――――この手の話を、誰それと押し付けるわけにはいかなかった』

『そちらの皆様で一番、【こちら側】に近いのは、あなたしかいn』

「やめて」

『………………………』

「二度と、その言葉を口にしないで」

『………申し訳ありません』

「………………ん」

『………話を、戻します。私たちは先ほどお伝えしました日付けに、そちらへ参ります』

『お忙しい時期に、無礼ではありますが―――何分、時間がありません』

「わかってる」

『その時に【彼】がどこまで達しているのかはわかりませんが―――無念な事ではありますが、待ち、手段を選ぶ余裕が、すでに失われつつあります』

『この手段すら失われれば。それはもう取り返しがつかない』

「わかってる」

『………それでは、失礼いたします』

ガチャッ     ツー、ツー―――――――――――


「………………………」

「………………………ぇん、―――よ」



ポタッ





「本当に――――――うえっ、ぐ………………ごめん、だよー………………」







うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん――――――――――――

今回の更新はここで終了になります

最早そろそろ存在を忘却されても焼き土下座するしかないレベルですが、更新を続けることができました
物語はどんどん加速してます。当初はおまけ的にねじ込むつもりだった塞さん編、普通にねじ込むことにしました

胡桃ちゃんはもっと愛されるべきです。愛されるべきなんです
その思いは今でも変わってません。てなわけでちょっと攫って来ようと思います

それでは、いつになるかわからないレベルですが、また次の更新でお会いしましょう
ありがとうございます。もう一度、ありがとうございます
それでは、また



【独り言】幸せな時間って、突然終わるものですよね


追記


流石に更新にかけた時間が長すぎました。すみません



>>596さん、生きてました。すみません

長らくお待たせしました。
本日夜に更新予定になります

大変お待たせしました
遅くにはなりましたが、ゆっくり更新させていただきます

塞「―――――――それ、は」

京太「もちろん、まだ決めたわけではないです」

京太「俺の素性やその事情によっては、問答無用で戻らざるを得なくなるかもしれない」

京太「それに、どうであれ一度は戻らないといけないと思います」

京太「だけど………自分がかつていた場所に帰って。その後………再び、ここに帰ってくる。その選択肢を、強く考え始めてます」

塞「………………」

京太「まだわかりませんけどね。まあ、それこそ素性によってはすぐにとんぼ返りしてくるかもですし。ははっ」

塞「いや、だから自分が何者だと思ってるのさ………これで実はどこぞの超巨大財閥の御曹司で、そこから自由を求めて逃げ出してきたー、なんてラノベみたいな展開あったらこっちもびっくりだよ」

京太「いや、それは自分もびっくりですよ」

塞「………………まあ、私としてはさ」

塞「それこそ、京太君がここに帰ってくるって言うなら、大歓迎だよ。きっとみんなも喜ぶ。シロも―――胡桃も」

塞「でも、それって割と重い選択だよね」

京太「………ええ」

塞「『今まで積み上げてきた自分』より、『京太』を選ぶってことだもん」

京太「………そうですね。別に今までの自分を消すわけじゃない、なんて言い訳したところで、自分自身が今まで接してきた人々からしてみればそうとしか映らないでしょうし」

京太「それに、場合によっては裏切りとしてとらえられるかもしれない」

塞「それでも、ここに戻ってくる選択肢は消さないんだね」

京太「ええ。俺は―――――――――」



『京太』を、捨てたくありませんから

塞「―――ん。わかった」

京太「そういえば、聞きたいことって言ってませんでした?」

塞「ああ、それね。もう大丈夫だから」

京太「………?はあ」

塞「ま、それは今度また。十分安心させてもらったよ」

京太「安心、ですか?」

塞「うん、安心」



塞(………自分の素性についてまーだ不安がってるみたいだけど)

塞(こんなに真面目に、苦しみながら迷ってる人が悪人なわけないよ。だから、胡桃を託せるんだから)

塞「そういえば、京太君の素性で一つだけ気になることが」

京太「なんでしょうか。あんまり、悪人だったとは思いたくないですけど」

塞「んー、いやいや。そんなことじゃないよ。ちょーっと、下世話かもしれないけどねー」ニヨニヨ

京太(あ、これマズイ。人をおもちゃにして楽しむ人の顔だ)

塞「いやいや、記憶を失う前にさー」




塞「彼女とか、いたのかなーって」





京太「フェ!?」

塞「いや、だってさ。無いわけじゃないじゃん。もしかしたら、京太君には故郷で将来を誓い合った、かっわいい女の子がいるのかもしれないし………」

京太「い、いやそんなことは………!!」



京ちゃん



京太「………ない、ですよ」

塞「………………」

ガシッ

京太「」



塞「詳しく聞こうか」ニッコリ

京太「………………………………………………………」

塞「つまり、京太君の記憶のフラッシュバックの中に、ほぼ必ずと言っていいほどその女の子が出てきて、『京ちゃん』と、親しげに愛情をこめて慈しむように呼んでくると………」

京太「い、いや。そこまでは言ってませんけど………」

塞「でも、少なくとも親しげではあるんでしょ?」

京太「………まあ、少なくと嫌われてはいないはずですが………」

塞「………………………そっか………」



塞(あれ?これ若干まずいんじゃないかな。今の反応からして、このことは胡桃も知らない可能性が高い。シロもそのはず。ってことは、二人どころか京太君も思い出せないレベルで恋敵、それも割と強力な子が存在してる可能性がある………事と次第によっては若干修羅場る可能世だってある。………そうだ、エイスリンさんもいた。あれ?これ、もしかして私相当強烈な火種を知っちゃった?これ下手に漏らしたりしたらヤバい代物だよね?)



京太「あ、あの………」

塞「………そっか。そっかそっか」

京太(なんだろう。すっごく不安だ)

塞「まあ、とりあえずはいいか………ごめんね、長々付き合わせちゃって」

京太「あ、いえ。もう遅いですし、途中まで送っていきますよ」

塞「んーん。いいよいいよ。考え事しながらふらふらと帰るから」

京太「考え事しながらは危ないですよ」

塞「あははっ、そうかもね」

京太「それでは、また」

塞「うん。あんまり無理して体壊さないようにしてね」

京太「何度言われることになるんですかそれ………」

塞「言われるようなことしてるのはどこの誰かな?」

京太「さ、最近はしてませんよ」

塞「ほう………商店街は?」

京太「む、無理は一切………」

塞「………まあ、いいや。ここで弾劾始めると数時間かかるだろうし」

京太(そんなにかかるのか!?)

塞「ま、ほんとに気を付けてね。胡桃たちが悲しむよ?」

京太「ええ、もちろんです。みなさんに会えないのは俺も辛いですから。

     胡桃さんや、シロさん、エイスリンさん、豊音さん、

                 もちろん、塞さんにも」

塞「………………」

京太「………?」

塞「天然たらしめ」ボソッ

京太「え?何か………」

塞「いや、何でもない。まあとりあえず明日。明日はお茶菓子にお団子持っていくから」

京太「わかりました。楽しみにさせていただきますね。では」

塞「ん」




塞「………ふぅ」

塞「………胡桃やシロ、エイスリンさん………次々に落とされるわけだよ」

塞「あーんなこっぱずかしい台詞を平然と、当然のようによくもまぁ………」



塞「危なく惚れるところだぞ、このやろー」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


京太「………ふう、やっぱり寒いな………塞さん、大丈夫かな………」

京太「って、それどころじゃないか。早く帰らないと先生が心配するし………」

京太(………心配してくれる誰かがいるって、本当にありがたいことだよな)

京太「無理はしないように、か」

京太「さて、早く帰ってお正月の構想を練りますか」




ギギ


ギギギ





















                                         カチリッ

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





12月30日  部室

塞「てなわけで。明日はもうお大晦日、みんな準備とか予定は大丈夫?」

胡桃「ん。あとはチェックだけだね」

塞(何をチェックするのかはあえて聞かないでおこう)

シロ「ん………10時に部室に来ればいいんでしょ?」

エリスリン「サエ、ホントウニ イイノ?」

塞「ああ、気にしないで気にしないで」

豊音「え?エイスリンさん、何かあるの?」

塞「ん、それは当日のお楽しみで」

京太「みなさん、お茶どうぞ」

胡桃「あ、ありがとう。………いやー、すっかり誰も突っ込まなくなってきたね、この執事モード」

京太「あ、あはは………まあ、無理なくやってますので」

シロ「下手に抑え込むと、逆に意固地になるってわかってきたからね………」

京太(俺、信用されてるのかされてないのか………)

豊音「う~~~~~、今から楽しみだよー、じっとしてられないよー」

トシ「その元気は明日の10時までとっておきな。さて、まあ今年も早かったけど、大きな事故もなく過ごせて本当によかったよ」

胡桃「うんうん。今年は本当に早くて―――本当に、いろいろなことがあったぁ………」

塞「そうだね………」

豊音「みんなに会えて、全国大会まで行って、京太君が来て………」

シロ「来たというか、落ちてた………」

京太「俺は犬か猫ですか?」

胡桃「犬だね。おもに忠犬的な意味で」

京太「胡桃さん!?」

胡桃「ただ、しつけがきっちりしすぎてて困ることがあるけど」

京太「俺何かしました!?」

塞「え?胡桃、そういうのが好きなの?首輪買ってくる?」

胡桃「変な解釈しない、そこ!!!」

シロ(胡桃も大概、犬系だと思うけど………)

塞(シロの考えてることがよくわかる。だからこそ、お前もなとツッコミたい)

胡桃「そ、それよりも。京太、バイトは大丈夫なの?あそこ年末休業だっけ」

京太「ああ、遠野物語でしたら夕方6時までの営業になるそうです。その後片付けやっても全然余裕もって行動できますから」

塞「そっか、ならよかったよ」

京太「というか、なんかマスターも用事があるそうでして」

豊音「やっぱり初詣行くのかな?」

塞「いつもお世話になってるんだし、もしそうだったら誘ってみれば?迷惑じゃなければだけど」

京太「いや、なんか初詣も行くには行くらしいんですが………」

トシ「何かあるのかい?まあ、年末は忙しいからねぇ」

京太「と、いうよりは………」

回想





2日前 喫茶「遠野物語」


店長「―――――――――――――――――――――」ムキキキキッ

京太(さっきから随分長電話だな、珍しい………ていうか、ずっと英語だから何言ってるのか………)

ガチャッ

店長「おお、京太………すまんな、任せきりで」ミリミリッ

京太「いえ、洗い物だけですから。それよりも、英語で電話って、昔のご友人ですか?」

店長「………………………………」ミキッ

京太「店長?」

店長「京太。大晦日なんだが、店は6時までだ」ミチチッ

京太「え?はい、わかりました。何かあったんですか?」

店長「友が、訪ねてくる」ミリリリッ



店長「あの青春を駆け抜けた、戦友(とも)が、俺を呼んでいる………!!!!」ミキキキキキキキキキミチチチチチチチチ







回想   了

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


京太「とかなんとか」

『………………………………………』

塞「あ、あの人、ほんとに何やってたんだろ………」

胡桃「考えてみると、割と謎なんだよねあの人も」

トシ「………………まあ、深くは考えないでおこうか。さて、明日もある。今日は打ち納めになるからね、きっちりいきな」

豊音「はーい!!私、打ちたい!!」

塞「じゃあ私は最初は見学に回るね」

シロ「ん」

胡桃「今年最後、勝って終わろうか」

エイスリン「マケナイ!!ショーブ!!」

.













京太「………………」

京太(………この人たちに会えて、本当によかった)

京太(やっぱり、俺は失いたくない。ここから、離れたくない)

京太(どうなるかはわからないけど………)



京太(俺は――――――――ずっと、ここに―――――――――)









「本当に、ごめん」






京太「え?」

胡桃「ん?どーかした?」

京太「い、いえ。今、誰か何か言いました?」

塞「いや、みんな黙々と打ってたけど………」

シロ「幻聴とか、やばくない………?」

エイスリン「キョータ、ツカレテルノ?」

京太「違いますから!!気のせいですから!!そんな目で見ないでください!!」




豊音(………………………………)







塞「ふー、終わった終わった。よかった、一応勝てた」

胡桃「ぐぬぬ、あの待ちは卑怯でしょ………」

シロ「流石にアレ予測できたらおかしい………事故以外の何物でもない」

豊音「楽しかったよー」

エイスリン「ウン!!スッゴクタノシカッタ!!」

塞「明日も、新年を気持ちよく迎えられそうだね」

京太「みなさん、お疲れ様です」

胡桃「あ、そうだ。京太、洗い物とかは?今年最後くらい私たちにやらせてよ」

京太「あ、すみません。もう終わっちゃいました」

塞「早ぁ!?」

シロ「どんどん上がっていくスキル………」

トシ「まあ、今年の部活はこれでおしまいだ。あとは少し念入りに掃除して帰ろうか」

塞「ですね。大掃除は特にやってはいないけど………」

胡桃「どっかの誰かさんが頑張りすぎてて、特にやるところが………」

京太「まあ、皆さんが麻雀やる場所ですし。気持ちよく打ってもらいたいじゃないですか」

シロ「コタツ導入希望」

塞「却下」

胡桃「誰がひきこもりの手伝いするか。さ、掃除するよー」

シロ「うなー」ズルズル

京太「窓拭く雑巾持ってきますねー」

豊音「窓は私がやるよー」

エイスリン「ホーキ!!モッテキタ!」

トシ「じゃあ、やるかい」




塞「やっぱ、京太君が普段からやってくれてるから綺麗なもんだね」

胡桃「感覚麻痺しかけてたけど、毎日が大掃除直後みたいなものだよね。京太、ホントありがと」

京太「ですから、大したことはしてませんって。あ、水道回り綺麗にしてきます」

豊音「あ、お願い。窓は終わらせておくからー」

胡桃「あ、私もちょっと水道いってくるね」


塞「ん。ついでに、水道の石鹸減ってたら補充しておいてもらってもいい?」

胡桃「わかった。行ってくるね」

京太「じゃあ、行きますか」






京太「あー。やっぱ減ってますね」

胡桃「休みの間もここに来ること多かったからねー。ていうかほぼ毎日来てたし」

京太「俺たちが使ったものですし、綺麗にして返しましょう」

胡桃「だね。残ってる石鹸使っちゃって、水道回り綺麗に洗っちゃおうか」

京太「了解です。はい、たわしです」

胡桃「ありがと。さあ、ちゃっちゃとやっちゃおう」

京太「ええ」


ゴシゴシゴシゴシ………

















胡桃「本当にありがとね」

京太「え?」

胡桃「私たちと、一緒に居てくれて」

京太「………それは、こちらのセリフですよ」

京太「俺を見つけてくれて、俺と一緒にいてくれて。本当にありがとうございます」

胡桃「………もし、さ」

京太「はい」

胡桃「記憶が戻って、その後―――もう一度、ここに戻ってきたら」

京太「………はい」























胡桃「最初に、私に会いに来てくれたりする?」

京太「………」

胡桃「………なーに言ってるんだろ、私。さ、掃除しちゃお」

京太「胡桃さん」

胡桃「ん?」

京太「約束しますよ」

胡桃「え」





京太「真っ先に――――――胡桃さんに会いに来て、『ただいま』を言います」











やめなよ。それ、勘違いさせるよ


勘違いですか


そ、女の子を変に期待させない方がいいよ


期待は、してくれるんですか?


………そっちは?


期待してもいいんですか?








胡桃「………ばーか」

京太「はい、馬鹿です」










この時、触れ合った手を


俺は               私は



忘れない

.








塞「随分長い水道掃除で」

胡桃「………………………………………………………………」

京太「………………………………………………………………」

塞「………ま、あえて聞かないけど」

胡桃(あとで問い詰められるパターンだ………)

塞「そうだ京太君。アレ、どこにあったっけ」

京太「あれ?」

塞「えっと、ほら………水付けてこするだけで汚れの落ちる、あの………」

京太「あ、激落○くんですか。ロッカーのここに………ああ、ありました」

塞「あ、ありがとう」

京太「あれ?それ使わないといけないような汚れありました?」

塞「いや、そういうわけじゃないんだ。ただ、さ………」

豊音「………うん」

エイスリン「アリガトー、ッテ」

シロ「私たちの、相棒………」






京太「あ………」

胡桃「麻雀牌、か………」




塞「お世話に、なったよね」

シロ「これからも、麻雀は続けるにしても………」

豊音「卒業したら、この子とはお別れだもん」

エイスリン「ワタシ、コノハイガ サイショノ マージャンハイ」

胡桃「………丁寧に、磨いてあげよう。来年、麻雀部が続いたら―――その時に、胸を張って託せるように」

京太「………お手伝いしても、いいですか?」

塞「もちろん」


塞「………今まで」





胡桃「本当に、ありがとう」

胡桃「………全部、終わったね」

塞「だね。一年間、本当にお世話になった部室、牌、卓―――全部、終わった」

トシ「………みんな、整列」


トシ「塞。号令を」

塞「はい」
























塞「お世話に、なりましたっ!!!」



『お世話に、なりましたっ!!!!!!!!!!!!』

本日の更新は、ここで終了になります
いつもいつも、長い期間が空いてしまって申し訳ありません



ここから、物語は収束して、終幕へ加速します。
胡桃ちゃんの想い、シロの想い、エイスリンの想い

そして、塞の願い。豊音の涙。

京太の過去が明らかになるのは、もう間近です。

その時、皆様がその結末をどうか「幸福」であると思えるように、がんばります


それでは、次の更新にて






【独り言】
胡桃ちゃん、絶対に幸せにするから

遅くなりました

少しだけ、更新いたします

麻雀を、仲間を愛した少女たちがいました

多くの努力と、固い絆で、ただ一度だけの栄光を目指した少女たち

惜しくも夢破れた少女たちは、ある秋の日。一人の青年と出会います

過去も、居場所も、名前すらも失っていた青年

彼は、いつの間にか少女たちにとってかけがえのない存在となり、

少女たちも、彼の事をかけがえのない存在として、心から愛しく思いました

ある者は恋慕を

ある者は友情を

想いは膨らみ、成長し、時には軋んで時には切なく

その物語がずっと続くことを誰もが望んでいた、冬




かみさまは、せかいは、それをゆるしませんでした

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


塞「じゃあ、明日また部室で。寒くなるから、どんな形であっても防寒対策はしっかりね」

胡桃「うん。じゃあ、また明日」

トシ「それじゃあ、帰り道に気を付けてね」

シロ「寒………」

エイスリン「マタネ!!」

豊音「また明日だよー」

京太「では、また明日。先生、いきますか」

トシ「そうだね」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


京太「それにしても、本当に早かったですね………」

トシ「そうだねぇ………毎年思うことではあるけど、宮守に赴任して、京太君が来てからはさらに早く感じたよ」

京太「俺としては、すごく不思議な気分なんですけどね」

トシ「ほう?」

京太「だって記憶がない時点で、俺の今の起点はあの日―――皆さんに救われた日なんですよ」

トシ「………そういえば、そうだったね」

京太「だから、俺からしてみれば本当に早かったです」

トシ「私からしてもそうさ。私もここに赴任してまだ1年。宮守で過ごした時間は本当に短い。塞たちからしてみれば、また時間の感覚が変わってくるんだろうね」

京太「それもそうですね………エイスリンさんや豊音さんも変わってくるでしょうし」

トシ「そうだね。けど、本当にいい一年を過ごさせてもらってるよ、私は」

京太「俺もです」

トシ「さて、帰ったら早々にゴハンにしようかね」

京太「あ、実は仕込んであります」

トシ「それは楽しみだ。いつもありがとうねぇ」

京太「いえ、好きでやらせていただいてるので」




トシ「じゃあ、帰ろうか」


京太「ええ、帰りましょう」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


胡桃「ねえ、塞」

塞「んー?」

胡桃「本当に早かったね、この一年は」

塞「そうだね………特に、インターハイ。あの時、私たちの居た場所はとても輝いてた。そして―――あの日、京太君を見つけた時」

胡桃「うん。あの日から、本当に毎日が早かった」

塞「最初はどうなる事かと思ったけどね。記憶を無くした男の人を、まさか匿うことになるなんて」

胡桃「けど、そのおかげでこの毎日を貰えたんだよね」

塞「もらえた………うん、そうだね。きっと、本来ならばありえない出会いだったんだと思う」

胡桃「だからこそ、輝いてた。温かかった」

塞「………胡桃」

胡桃「ん?」

塞「これは、さ。一切からかったりとかそういう意味は無く。ただ、純粋に聞きたいことだけど」

胡桃「何?」

塞「答えたくないなら、答えないでいいから」







塞「京太君の事、好きだよね?」



胡桃「うん」






塞「………断言できるレベルで、自覚したか」

胡桃「自覚はもっと前から。もう、隠すつもりが無くなっただけ」

塞「そっか」

胡桃「正直、最初は自信がなかったんだ」

塞「自信?」

胡桃「うん。あれの類似品じゃないかって。えっと、なんとか効果………」

塞「吊り橋効果ね」

胡桃「うん。状況が特殊だったし、それかもしれないっておもってこともあったよ。けど、そうじゃなかった」

塞「それは、なんで?」

胡桃「時間を経るごとに―――あの笑みが。あの優しさが。あのお人よしが、どんどん好きになっていった」

胡桃「だから、一つだけ決めたことがあるんだ」

塞「決めたこと?」

胡桃「うん………ほら、京太は、素性によっては問答無用で帰らないといけないかもでしょ?」

塞(本人が気にしてたこと―――か。あの事は、今は言わない方がいいか)

胡桃「もし、そうなったとしたら。私は、決めたんだ」





それなら、私が追いかけてやる





塞「―――――――――――――――――」

胡桃「もちろん、京太が私をどう思ってるかははっきりわからないけど」

胡桃「記憶を全部なくして、右も左もわからない土地で―――京太は、全部自分で積み上げてきた」

胡桃「全部手探りの中で、自分にできることを全部やって、その上で自分自身の居場所を作ろうと頑張ってきたんだ」

胡桃「だから。私だって負けてやるものか」



私にできること、全部してやる



胡桃「―――――――――――それが、私の決めたこと」

塞「………ん、わかった」

胡桃「ごめんね、こんなこと言いだして」

塞「ううん。もしそうなったら胡桃が岩手を去っちゃうことにはなるけど、それこそ京太君の言ってた通りだもんね」

胡桃「うん。会えなくなるなんて、ないんだ」

塞「逢おうと思えば、いつでも逢える」

胡桃「もちろん、今のこの時間、この世界はとても暖かいし、ずっと続けたい。だけど、それを守ろうとすればどんどん世界は閉じていって、いずれ自分自身で何一つ動けなくなる」

塞「だから、歩くんだね」

胡桃「うん。一歩踏み出して、その上で何一つ捨ててなんかやらない。塞たちと過ごしたこの土地が私の帰る場所であることは、一切変わらないんだから」






塞「じゃあ、また明日」

胡桃「ん。また明日」

シロ「………………………」

シュボッ    カチンッ

シロ「………ふぅ」


シロ(正直――――――楽しみでもあり、不安)

シロ(京太の記憶が戻るのは、もちろん悪いことなんてない。それが本来もっとも喜ばしいことなんだから)

シロ(けど―――――――――――――――)







もう、時間、ないよ?




シロ(―――――――――――間違いない)

シロ(豊音は、何か――――とてつもなく重大なナニカを、知ってる)

シロ(その上で、あの顔―――――――――――――今にも泣きだしそうな、笑顔)

シロ(あとになって考えてみれば、あれは豊音のSOSだ)

シロ(自分で何か企んで何かしようとしてる人間が、あんな顔できるわけがないんだから)

シロ(自分自身ではもう、何一つどうこうできないような………そんなことを抱え込んで)

シロ(その上で、それを自分自身の責だと背負い込んで、耐え切れなくてSOS信号が漏れてる)

シロ(豊音は―――何かを知ってる。けど、知ってるだけで、自分自身ではどうにもできない状況に陥ってる)

シロ(そして、それはまず間違いなく、京太に関すること)

シロ(………ダル)











シロ「相談すら、できないのか」







あまり、心配させるな              親友

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


エイスリン「キョータ、ダイジョーブカナ」

豊音「え?なんで?」

エイスリン「ズツー」

豊音「―――ああ、頭痛かぁ。最近は随分よくなってるっていってたし、大丈夫じゃないかなぁ」

エイスリン「シンパイ」

豊音「エイスリンさんはやさしいねー」





豊音(――――本来なら、私はこんなふうに笑ってちゃいけないんだ)

豊音(京太君がそうしたように。胡桃がそうし始めたように)

豊音(自分にできることを形振り構わず為して、足掻かないといけない)

豊音(―――それすら、しない私は―――――――――――――)













エイスリン「ヤサシイノハ、トヨネ」

豊音「え?」

エイスリン「トヨネ、イツモ ヤサシイ」

エイスリン「コマッテルトキ カナアシイトキ」

エイスリン「イツモ、トヨネガ ヤサシクシテクレテタ」

豊音「――――そん、な」

エイスリン「ダカラ、ナカナイデ」

豊音「………………泣いてなんか」

エイスリン「………………………………………………」






エイスリン「                」





英語なんてできない私が


彼女のその言葉、その意味だけは理解できたのは



いじわるなかみさまの、ちょっとしたやさしさだとおもう







『豊音は、ワルモノなんかじゃないって、私たちが一番知ってる』


















カチリッ

カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカ………………………………………………


ガチャッ

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




それでは、出発します」

「うー、絶対私たち悪者ですよー、これ」

「うん。でも、行かないと」

「………どうにか、できないのでしょうか」

「正直、辛い」

「けど―――放置すれば、それが一番望まない結末となってしまう」

「わかっては、いるのですが………」

「哀しいですが………いきましょう





                          彼を、救うために」

本日はここまでです

そろそろ終幕へ近づいてきました。
幸せに終わらせる構想ではありますが、その前に通らなければいけないターニングポイントがすぐそこです。
正直、そろそろ物語の真相に若干感づいてる方もいるのではないでしょうか。

さて、札は全て出そろいました。あとはそれを一枚一枚裏返して、その絵柄を見ていくだけです。
毎度のごとく遅い更新ではありますが、どうかお付き合いいただければ幸いです





【独り言】胡桃ちゃん、なんで俺の身の回りってトラブルしか起きないの?もう嫌だよ、胡桃ちゃんと一緒にコタツに引きこもりたいよ

遅くなりましたが、更新を行わせていただきます

12月31日   宮守高校麻雀部部室


シロ「おまたせ………」

塞「あ、来た来た。もう全員揃ってるよ」

胡桃「遅刻はしてないからいいけどねー」

豊音「寒かったでしょー?」

シロ「ん………」

エイスリン「シロ、ストーブ、アル!」

シロ「ん、ありがと………って、エイスリン、その格好………」

エイスリン「ニアウ?」

塞「可愛いでしょー、振袖」

豊音「エイスリンさん、本当に可愛いよー」

胡桃「なんか相談してると思ったら、塞に振袖借りるとはねー」

塞「エイスリンさん、前に雑誌で振袖見て凄く目をキラキラさせてたから。私は毎年だし、今年はいいかなぁって思ってたしね」

エイスリン「サエ、アリガトウ!!」

京太「みなさん、出かける前に少し温まりませんか?」

胡桃「あ、いい匂い」

豊音「コーヒー?」

京太「はい。お砂糖とミルクはお好みでどうぞ」

シロ「ん、ありがと………」

トシ「おや?このコーヒー、もしかして………」

京太「はい。マスターが、少し持って行けって豆を持たせてくれたんです。外は冷えるから暖まってからいけと」

豊音「遠野物語のコーヒーなんだー。美味しそうだよー」

塞「………ん、美味しい」

胡桃「京太、すっかりコーヒー淹れるのにも慣れてきたじゃん」

京太「まだまだですよ。こればっかりは、全然修行が足りませんから」

エイスリン「アッタカーイ!」

トシ「それじゃあ、これを飲んだら出かけようか。部室には戻らないから、忘れ物とか無いようにね」

塞「わかりました。今のうちに体暖めておこう」

胡桃「ん。そうだね」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




塞「さて、全員出た?忘れ物はない?」

胡桃「大丈夫だと思うよ。シロも引っ張ってきたし」

シロ「うあー………」

エイスリン「キモノ、アッタカイ!」

トシ「和服は見た目以上に防寒能力があるからね。着てみて初めて分かることだよ」

豊音「私も着物、村から持ってくればよかったよー」

京太「戸締り確認しました。じゃあ、行きましょうか」

胡桃「ん。じゃあ、行こう」




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

塞「そういえばさ、今日これが終わった後はみんな何か予定はあるの?」

シロ「寝る」

塞「よし、予定はないね。他は?」

胡桃「特にはないかな。何?何かあるの?」

塞「んー、そういうわけじゃないんだけどさ。やっぱお正月だから各家庭で早く戻ってこいとかあるかなと思って。それと、もし時間があるなら神社で少しゆっくりしようかなって」

豊音「神社に何かあるの?」

胡桃「あ、そうか。えっとね、毎年神社の境内で、お汁粉の振る舞いがあるの。だから、それを楽しみながら少しゆっくりできるんだよね」

エイスリン「オシルコ!!」

シロ「エイスリン、目が輝いてる………」

京太「へえ、いいですね。俺も新年は休日になりますし、先生の方で何かご予定は?」

トシ「特にないよ。そうだね、寒い中でのお汁粉、味わっていこうかい」

豊音「うわー、楽しみが増えたよー」

塞「よし、じゃあ決定ね」

シロ「………寒い」

京太「………とことん自分のペースですね、本当に」

胡桃「んー、まあ毎年のこととはいえ、慣れたら寒くなくなるわけじゃないしね」

京太「周りは畑で、遮蔽物もないですし風が直に来ますからね」

シロ「あそこ………休憩しない?」

豊音「あそこ?………あ、本当だ。何かやってるね」

トシ「本当だね。焚火かい?」

塞「ああ、あれは毎年、ここで焚火をしてるんですよ。初詣の人間が大体ここを通るので、ああやって畑の脇で焚火をして暖まれるようにしてるんです。この雪だと、車もバイクも使えませんから」

胡桃「そもそも神社の前に駐車スペースがないもんね。じゃあ、そこで少し休憩しようか。ほら、そこまで自分で歩く」ズルズル

シロ「うあー」ズルズル

塞(………ここ最近、シロの性格に変化があったから忘れてたけど、そうだよね。これが本来のシロだよね)

エイスリン「シロ、トケテル」

豊音「夏場のアイスみたいだよー」

京太「ほらほら、行きますよ」

シロ「うなー………」

胡桃「あーもう。水筒にお茶でも入れて持ってくればよかった」

トシ「そうだねぇ。ほら、ついたよシロ」

老人「おや、熊倉先生。それに塞ちゃんに胡桃ちゃん、麻雀部のみんなと初詣かい」

塞「はい。すみませんが、少し火に当たらせてください。シロがいつもの通りなので………」

老人「あっはっは、白望ちゃんは本当に変わらんねぇ。ほら、みなさん温まって。缶のものだけど、温めたお茶もあるから」

胡桃「すみません、ありがとうございます」

エイスリン「アリガトウゴザイマス!」

豊音「ありがとうございますだよー」

老人「いやー、それにしても麻雀部は相変わらず可愛い子ばっかりだね。うちの孫も、もう少し可愛げがあればなぁ………お、京太君」

京太「どうも、お疲れ様です」

胡桃「あれ?知り合いなの?」

老人「この前、畑の作物運ぶの手伝ってもらってから随分手を貸してもらっててなぁ………いいねぇ、この色男。こんな美人に囲まれて」

京太「あ、あはは………」

胡桃「………………」

シロ「うぁー………寒い………」

シロ「うぁー………寒い………」

京太「シロさん………ほら、焚火ですよ。暖まってくださ       
















あ  」





パチリ、パチリと

火の粉を、はじけさせる焚火


その、火が

その赤が

その――――――――――――熱が







その『疵』を               焼くかのように





忘れさせないかの                              ように








ガガ

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ







ガギャガギギギギギギギギガガガガガガガガガガガガガギギガガガギャリリガガガガガガガガガガガガガガガガッガアガガガガガギギギャリリリガギャギャギャギャギャガガガガガギャガガガガガガガガガギャガギギギギギギギギガガガガガガガガガガガガガギギガガガギャリリガガガガガガガガガガガガガガガガッガアガガガガガギギギャリリリガギャギャギャギャギャガガガガガギャガガガガガガガガガギャガギギギギギギギギガガガガガガガガガガガガガギギガガガギャリリガガガガガガガガガガガガガガガガッガアガガガガガギギギャリリリガギャギャギャギャギャガガガガガギャガガガガガガガガガギャガギギギギギギギギガガガガガガガガガガガガガギギガガガギャリリガガガガガガガガガガガガガガガガッガアガガガガガギギギャリリリガギャギャギャギャギャガガガガガギャガガガガガガガガガギャガギギギギギギギギガガガガガガガガガガガガガギギガガガギャリリガガガガガガガガガガガガガガガガッガアガガガガガギギギャリリリガギャギャギャギャギャガガガガガギャガガガガガガガガ








何かが、割れた音がした

――――――――――――うちゃん!!ダメ!!ダメ!!


手を伸ばせぇ!!―――たちはもう――――――げた!!――――えだけだ!!


ここ―――ら、――――で―――――――れちゃう!!


駄目――――――――だろ!!―――――――っていってるんだ!!


逃げ―――――――――――――、も――――から!!





















逃げて、京ちゃぁあん!!!!!!!!








ガチッ






京太「う、          

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

胡桃「!?きょ、京太!?」

塞「ちょ、どうしたの!?京太君!?」

老人「お、おい!!大丈夫か!?」

シロ「―――――――――――――――――! 塞!!」

塞「!!」ビクッ

シロ「京太を、火から遠ざけて!!」

塞「え………わ、わかった!!」

胡桃「京太!!しっかりして!!京太ぁ!!」

老人「お、おい!!大丈夫か!?救急車を………!!」

豊音「………………いいえ、たぶん、大丈夫です」

トシ「………豊音?」

豊音「京太君、聞こえる?私、豊音だよ」

京太「………あ………」

シロ「………ごめん。うかつだった」

エイスリン「エ?ドウイウコト?キョータ、ダイジョウブナノ!?」

シロ「………火だ」

塞「………しまった………そうだ。私も失念してた」

トシ「………そういうことかい」

胡桃「………ごめん、京太。京太の【疵】の事、すっかり忘れてた」

老人「えっと………どういう、ことなんだい?」

豊音「………京太君、記憶はまだ戻ってないけど………私たちが発見した時に、すでに大火傷を負ってたから―――」

老人「………………あ!!」

シロ「………何かを思い出した―――いや、フラッシュバックしたんだと、思う。この火傷を、負うきっかけを………」

胡桃「京太っ………!!」

京太「………み、ません」

胡桃「!!!」

塞「京太君、大丈夫なの?立てる?」

豊音(―――――――――――――――――………)

京太「ええ………すみません。今年最後に、こんな醜態、さらしちゃって………」

トシ「そんなこと言ってる場合かい!!引き返すよ、みんな」

京太「大丈夫、です。一瞬、凄く頭に刺激がきました、けど。火から離れたら、落ち着きましたから」

老人「大丈夫なのかい?なんだったら、すぐそこがワシの家だから休んでいけばいい」

京太「いえ、大丈夫です。もう、何ともないですから」




シロ(………たぶん)

シロ(普段から、料理とかやってても火に拒絶反応が出なかったのに、突然こんなフラッシュバック………大きめの焚火っていう、大きな熱に触れてフラッシュバックした………?)

シロ(ってことは、やっぱり京太は………少なくとも、自分自身が直接――――――――――『火災』っていう、大規模な火に襲われた―――?)

シロ(………あんまり、気は進まないけど――――)



シロ「京太―――――――辛いなら、答えなくていい」

胡桃「………?シロ?」




シロ「何か、思い出した?」

京太「………………」

塞「し、シロ!!いくらなんでも性急すぎじゃ………!!」

京太「断片的、ではありますが」


全員『!!!!!』


























京太「思い出したの、は



燃え盛ってる、建物の中で




誰かを、助けようとしてる、自分自身でした」

.





胡桃「………やっぱり、京太は………」

京太「ええ。何故、いつ、どこで………まではわかりませんでしたが。俺自身が、火災現場に………当事者として居合わせたのは、間違いないみたいです」

豊音(――――――――――――――――)

シロ「ごめん………問いただすみたいなことして」

京太「いえ、自分からお話しするつもりでしたから………」

塞「どうする?辛いようなら、本当に一度引き返そうか?」

京太「ですから、もう大丈夫ですよ。こういう、焚火みたいな大きな火に近づかなければどうってことないみたいですし………」

エイスリン「キョータ………」

トシ「………わかった。その代り、また何かあったらすぐに連れ戻すよ。いいね」

京太「ええ。ご迷惑、おかけしてすみません」

トシ「何が迷惑なもんかい。さ、立てるかい?」



豊音(………これが、【あの人たち】が言ってた、京太君の【真実】なの………?だと、したら………)

老人「ほれ」

京太「………?え、これは………」

老人「茶だ。これ飲んで、温まってから行け。火がダメなら、これがあるだろ」

京太「………ありがとう、ございます」

老人「………京太君。お前さんが、どんな過去があるのかはワシぁ知らんがね」

京太「………」

老人「ワシは、そろそろ八十も半ばになるが………生きていれば、それこそ山のように辛いことがある。だからと言って、お前さんが経験したことを軽く語るつもりはない」

老人「だが、これだけは覚えておいてくれ。どれだけ辛いことがあったとしてもだ………」



老人「人間が、自分自身を………自ら破滅させていい理由なんて、何一つないんだ

   記憶が戻って、それがどんな事であろうと………自分を、軽々しく投げ出さないでくれ」



京太「………肝に、銘じます」

老人「………ありがとうな」

京太「………………………」ズズッ

塞「………京太君。落ち着いた?」

京太「ええ。もう、大丈夫です」

塞「じゃあ、神社に向かおうか。何かまたおかしくなったらすぐに言ってね」

京太「ええ、もちろん………」

シロ「………………………」

胡桃「………………………」




ゴスッ!!     ガスッ!!




京太「っ!?ったぁ!?」

エイスリン「!?What‘s!?」

豊音「ちょ!?し、シロ!?胡桃!?何してるの!?」

塞「あ、あんたら何を血迷って………!!」




シロ「………心配、かけるな………馬鹿………!!」

胡桃「心配、したんだからぁ………………!!」

京太「………………………………!!」

シロ「………ごめん、取り乱した………」

胡桃「………本当に、ごめん」

京太「………………………」

京太「いえ………………           すみません。それと、





                ありがとうございます」




塞(………胡桃だけじゃ、なくて。シロまで――――あんな、涙浮かべて………)


塞(………この、大馬鹿。あんたは………京太っていう人間は………)





塞(こんなに、愛されてるってことにそろそろ気づいてよ………馬鹿)


















塞「ところで、さっきのありがとうございますって」

京太「………?はい」

塞「マゾ的な意味じゃないよね?」

京太「違いますよ!?」

本日の更新はここで終了になります
いつもお付き合いいただいてます皆様、まことにありがとうございます


なお次回の更新分にて、【京太】という存在の正体、その出自が明らかになる予定です
ぶっちゃけ、今回の更新分であらかた想像ついた方も多いと思いますが………というか、方向性は結構皆さん感づいてるかもしれないですね

もう一度宣言します。この作品において明確な「悪人」「悪者」「敵」は存在しません
ですが、京太という存在がこうなった原因は存在します。なので、あえて言えば「壁」は存在します

あと、2回。多くても3回程の更新でこの物語の幕を閉じるつもりではいますが、最早皆様ご存じのとおり、
まともに時間もとれない有様のスレ主ですので、どうか、どうか気長にお付き合いいただければと………

それでは、次の更新にて。胡桃ちゃんたちに幸あれ




【独り言】胡桃ちゃん、そろそろ寒くなってきたからコタツ出すね。ほら、膝の上においで。ほら、ほらほらほらほらほらほらほらほらほらほらry

私に出来ること、全部してやる


この台詞で零崎人識思い出した人挙手

アニサキスって怖いですね。
病院のベッドの上で腹の痛みに悶え、それがヘルニアの痛みに連鎖してビクンビクンと汚く跳ねてたうつけは私です

11日か12日の夜に更新したいと思っております。
いつも長々とお待たせしてしまっていますが、よろしければお付き合いください


>>744
それって京太が決定的な決別した後に橙色に腹ぶち抜かれるパターンじゃないですかヤダー!

>>745
橙色に腹ぶち抜かれずにその後も生きてて、再会したときにギクシャクしたけど仲直りした。というIFの同人誌があってだね...。
あれは好きだった。

申し訳ありません。予定が狂って本日更新できません
また後日更新いたします

>>748
なにそれホスィ

またもや長い事姿を消してしまいました。申し訳ありません。
全てをブラック化させてた元凶がようやく駆逐されてくれたので、これからはもう少し時間が取れそうです。

本日夜~翌日早朝を目途に少量の更新を行おうと思っております。
いつもいつも、このような>>1で申し訳ございません。それでは


【独り言】胡桃ちゃん、異常な状況が正常に戻っただけでこんなに幸福感感じる俺はもう末期なのかな。ぽんぽんに顔埋めさせて、癒して、お願い

遅くなりました。他人のミスからのデスマーチマジファッキュー

ゆっくり、少量だけではありますが更新を始めます

神社  境内



塞「とうちゃーく」

胡桃「京太、体調は?」

京太「ええ、問題ありませんよ。それにしても、結構人がいるんですね」

塞「まあ、この辺で初詣って言うと大抵ここに集まるからねぇ」

シロ「寒………ダル………」

エイスリン「シロ、ジブンデ アルク!」

豊音「ねえねえ、そこで甘酒あるよ!飲んでいこうよー!」

胡桃「うん、けど先に一度目のお参り済ませちゃおうか。そのあと、ゆっくり飲みながら年越しを待つ方がいいでしょ」

トシ「そうだねぇ。それじゃあ、先に一度目のお参りだ。お賽銭用の小銭はあるかい?」

京太「ええ。ぬかりなく」

塞「それじゃ、一回目は今年一年の締めってことで、お参りというか感謝かな?」

胡桃「それでいいんじゃない?じゃあ、行こうか」

豊音「うん!ほら、シロー、いくよー!」

シロ「うなー」ズルズル

エイスリン「ドンドン、ウゴカナクナッテル!」

塞「ええい、こんなところで冬眠準備しないでよ!」

京太「俺、担ぎましょうか?」

胡桃「甘やかさない、そこ!」

シロ「………」チッ

塞(………おいおい)

豊音「そろそろつくよー!ほら!」

京太「………普通に混雑する大きな神社とか、絶対いけないですね」

トシ「少なくとも、シロが人の波に流されてどこかに輸送されてる光景は目に浮かぶよ」

エイスリン「トーキョーキューコー?」

胡桃「また変な日本語を………ほら、ついたよ!」

塞「さ、まずは一回目」

豊音「えっと、小銭、小銭………」


カラン、カランッ

.







塞(今年はいろいろあったけど………来年も、どうかこのメンバーで―――)


――――――――――――――――――――――――――カチッ


エイスリン(この国で出会った皆と、どうか、これからも――――)


カチッ           カチチッ


シロ(………今の毎日は、そんなにダルくないから―――このまま―――)


カチリ       キキキキキキキキキ


豊音(――――――――――――――――――――――………)


キリリリリリリリリリリリリリリ         カキッ


胡桃(どうか、これから先も―――このみんなと――――京太と――――)


カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ              ギギッ





京太(―――俺を、ここに連れてきてくれて。本当に、ありがとう。

      願わくば、これからも――――――――――――



                     みんなと、

                              胡桃さんと)












               カチャリ

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




塞「さて、まずは一回目のお参りも終わったし、甘酒でも飲んで温まろうか」

豊音「うんうん!!はやく、はやく!!」

シロ「ん………塞、塞」

塞「何?おんぶはしないよ?」

シロ「あれ………」

エイスリン「ン?………………ナンカ、イイニオイ!」

胡桃「あれって………豚汁の屋台?あんなのできたんだ」

京太「丁度いいですね。向こうにも行ってみましょうか」

トシ「いいね。年とったせいか最近あんまり重いものが食べられないけど、豚汁なら美味しく食べられそうだ」

京太「ですから、カップ麺ばっかり食べないでくださいって!」

胡桃「そうですよ。せっかく京太が料理作ってるのに」

胡桃(ていうかうらやましい)

塞(アレ?私いつの間に読心術を)

エイスリン「ハヤク、ハヤク!」

胡桃「はいはい。じゃ、いこうか」



ズズズズッ………

シロ「………うまー」

エイスリン「ン~!!オイシイ!!」

塞「ほんと、体の芯までしみわたるわぁ………」

胡桃「豚汁って、地方によって結構具が違ったりするんだっけ?」

京太「そうですね。まあ、味噌汁や雑煮ほどの差異はないですけど」

豊音「それもそうだけど、なんで豚汁って、寒い外で食べるとこんなに美味しく感じるんだろうねー」

シロ「一理ある」

塞「確かに………美味しいのもそうだけど、なんか、こう、安心感って言うか………」

トシ「寒い時に暖かいものはとにかく安心感があるものさね」

京太「それに、缶コーヒーとかと違って豚汁は空腹が満たされますからね。これは結構大きい理由じゃないですか?」

胡桃「あ、確かに。ただ温かいだけなら極論お湯でいいわけだし」

塞「いや、それはどうよ………」

エイスリン「サトイモ、ホクホク!」

豊音「うん!ちょっと熱いけど美味しいよー」

シロ「エイスリン、サトイモ好きだよね………」

塞「外国の人的に、サトイモって受けいいのかな?」

京太「それは………どうでしょう」

シロ「………お国柄によるんじゃない?例えば、何でも濃い味の紳士の国ry」

塞「そこまで」

京太「うなぎゼリーはいけない」

豊音「甘酒も美味しいよー」

胡桃「私、昔甘酒って駄目だったんだよねー」

エイスリン「ソウナノ?」

胡桃「うん。味もそうなんだけど、ほら、この粒々がさ」

塞「あー………わからんでもない」

豊音「私は好きだったなー」

胡桃「今は平気なんだけどね。ただ、今でも粒なしあればそっち飲むかも」

シロ「………そもそも、甘酒ってそんなに飲む機会無いよね」

トシ「そりゃそうさね。作るのだって手間だ」

京太「スーパーなんかで缶も売ってますけどね」

塞「ただ、喉が渇いてる時にそれを選ぶかと言われるとね」

シロ「普通に、お茶の方がいい」

京太「確かに………あ、胡桃さん」

胡桃「んぅ?」

京太「口の脇、なんかついてますよ」

胡桃「うわ、まじ?どこ?」

京太「ちょっと失礼しますね」



スッ   



胡桃「」




シロ「………」


エイスリン(………いいなぁ)


豊音「わぁ………」


塞「」

京太「はい、とれましたよ………胡桃さん?」

塞「………えっと、京太君」

京太「………はい?」

塞「ちょっと、自分の脳内で自分の行動をリピートしてみようか」

京太「………………?」



京太「………………………あ」



胡桃(京太の手が、わ、私の………うん、今のは頬。ほっぺた。ほっぺだよ。うん、唇には触れてない。むしろ唇に触れても、き、キキキキ、キスじゃないんだから問題はなし。ただ、ちょっと触れ方が優しくてドキッとしたのと、そのまま手を添えられたらなぁなんて考えちゃっただけで―――――――)


塞(あ、これ脳内でも支離滅裂なパターンだ)

シロ「………そろそろ、年明けじゃない?」

塞「………あ、本当だ」

胡桃「」プシュー

京太「え、えと………あの、その………」

シロ「胡桃。意識をしっかり」

胡桃「………はっ!」

豊音「シロが訂正側って珍しいよー」

エイスリン「モウチョット!モウチョットデ シンネン!」

京太「そ、そうですね。準備、しましょう!」

トシ「何のだい?」

京太「………か、カウントダウン?」

塞(こっちもテンパってるか………)

シロ「………あと、10分?」

豊音「………うん。

『あと10分』、だよー」


シロ「………………………?」

豊音「………………………………………」

シロ「………………豊音」



シロ「何が起きるの?」

豊音「………………」

シロ「………みんなには、聞こえてない。ただ、何かがあるなら―――」

豊音「分岐点」

シロ「―――――――――――――――――?」



胡桃「京太、今年はありがとう」

京太「いえ―――俺こそ、本当にありがとうございます」



豊音「これからどうなるかはわからない。けど、『彼女たち』は『分岐点』はここだって言ってた」

シロ「………ちょっと、待て」



胡桃「これからも、よろしくね」

京太「こちらこそ、よろしくおねがいします」



豊音「『彼女たち』の話を、いちばん理解できるのは―――村にいた時の私が、一番『あちら側』に近かったから」

シロ「誰だ、それ」

「到着しましたね」

「うぅ………寒いですよー。それに、この雪のせいで………」

「うん。電車の関係で、到着が結構遅れちゃった………本当なら、年明け前に余裕持った方が理想だったんだけど」

「年明け、数分前………けど、こればっかりは、仕方ない」

「ど、どうしましょう。皆さん、今はどこに………」

「わかりません………『彼女』との連絡も取れませんし」

「………相当、嫌われてませんか?」

「少なくとも、私たちの存在は好意的には受け止められないでしょう。それしかできないとはいえ、情報を小出しにしてしまいましたし」

「『彼』に危害を加える可能性もある、なんて思われても仕方ないですよねー」

「ですが、これしかできません。私たちに、いえ、どうしようとも『彼』を救う方法はこれしかないのですから」

「………悪役も、仕方ない」

「うぅ………泣きそうですよ」

「仕方有りません。まずは、あそこを訪ねるしかないでしょう」

「そうですね。何をするにも、そこをお借りするしかありませんし、ご挨拶は必要かと」

「お話自体は通してあるんでしたっけ?」

「ええ。私たちが万全に事を為すにあたって、どうしてもあの場所はお借りする必要があります。先に参りましょう――――」



「―――――――この近辺、唯一の―――――――あの、神社に」

塞「さ、カウントダウンだ」

エイスリン「ミンナ、ライネンモ、ヨロシクネ!」

京太「ええ。こちらこそ」

シロ「………ん」

豊音「………………………」

胡桃「始まるよ、10秒前………7………」




トシ「6」

エイスリン「5!」

シロ「4………」

豊音「3………」

胡桃「2」




京太「1」



「「「「「「あけまして、おめでとう!」」」」」






カリカリカリカリカリカリ


カキンッ







京太「             え         」

―――――逃げてぇ!!京ちゃん!!

―――――見捨てねえ!!見捨てねえぞ!!

―――――ダメ!!もう、こっちは………………!!

―――――部長たちは逃げた!!あとはお前だけだ!!今行くから、諦めんなぁ!!

―――――ダメ!!そこは―――――――――――


ガラッ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


―――――っ!!!?




京ちゃぁぁぁぁああああああああああああああん!!!!!!!!!!!!!





足場が無くなって          宙を舞う、感覚


叩きつけられた背中から伝わる、熱


顔を焼く、激痛にも似た、熱




俺は―――――――あいつの、手を


     宮―――――の手を、





             宮永咲を、助けられなかった


                   それどころか、







                            オレハ

京太「あ         あ


     あ、ああああ

           ああ    ぁ   ぁあ





               あああああぁぁぁぁぁぁああああ







うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」












シロ「―――――――――――――――――――!?」

豊音「―――――――――――――――――――――っ!!!!」

エイスリン「!!!?」

塞「………………………………………!?」


胡桃「京太!!!?」

京太「――――――――――――――――――――――――」





胡桃「京太!!しっかりして!!」

塞「京太君!?ちょ、大丈夫!?聞こえる!?」

エイスリン「キョータ!?キョータ!!!!!」

トシ「しっかりしな!!!私たちの声が聞こえるかい!?」

豊音「京太君!!京太君!!」

シロ「――――――――――――――――――――――ッ!!!」






京太「―――――――――あ」






塞「京太君!?大丈夫なの!?」

豊音「すみません!!テントの下を――――――」

京太「そう、だったんだ」

エイスリン「………キョータ?」

京太「そういう、ことだった、んだ」

シロ「………京太、いったい―――」

京太「俺―――――――俺は――――――――」

胡桃「………京、太?」

                                     .
















京太「俺、あの時             死んだんだ」
















                                     .

胡桃「………え」

塞「京太、くん?」

エイスリン「シン、デ………?」

豊音「………それ、は」

シロ「いったい、どういう――――――――」









「失礼いたします」









豊音「――――――――――ッ!!!!!!」

シロ「………………………え」

胡桃「あ、あなたたちは………」

「今さら、と言われればそれまでではありますが――――――改めまして、ご挨拶申し上げます」










「永水女子高校――――――いえ、

             霧島神鏡の、石戸霞と申します」











あの夏に出会い

あれほど楽しい日を過ごした、決して忘れられぬ思い出

その、最高の『友人たち』

なのに、なぜだろう





その彼女たちが


彼女たちを見た瞬間、


ここまで、背筋が凍ったのは

本日の更新はここまでです

相変わらず肉体は膝どころか全身に矢を受けたレベルで、メンタルは「みんな死ぬしかないじゃない!」な時のあの人程度にはボロボロですが、何とか更新にこれました

もう佳境ですね。ここまで来るのに、ずいぶん長い事かかってしまった・・・・・
今までお付き合いしていただいてる皆様にはもう頭が上がりません。頭下げ過ぎて一回転して奇怪生物になりそうな勢いで感謝です

さて、京太の発言ですが、これの意味する真実は次回明かされます。
もう少し、もう少しですので、できればお付き合いください。それでは、また



【独り言】胡桃ちゃん、いろいろ殺意モリモリマッチョメンレベルのトラブルばっかり起きるのは何でなの?物理的にも心も寒いよ、暖めて(ヌギヌギ

大変遅くなってしまって申し訳ありません

明日の夜に少しだけではありますが投下を予定しております

大変お待たせいたしました。

ゆっくり、少しだけ投下いたします

熊倉宅


霞「………まずは、新年あけて間もなく、このような訪問となってしまいました非礼を深く、お詫びいたします」

巴「それと共に………姉帯豊音さん」

豊音「………………」

巴「事情があったとはいえ、多くをお教えすることもなく、このような―――内偵のようなことをさせてしまいましたことを――――――」



塞(………あの後)

塞(京太は、すぐに立ち上がって、普段の通りに動けるようになった)

塞(だけど―――――――)

塞(突然現れた永水高校の皆さん―――――彼女たちは、間違いなく………)



京太「――――――――――――………」



塞(京太君について………何か、知っている)

初美「えっと………まずは、なんですが。京太さん、でしたっけ。おからだの方は………」

京太「………ええ。もう、大丈夫です」

霞「………その、『大丈夫』というのは―――――」

京太「ええ」










京太「すべて、思い出しました。名前も、自分自身の過去も。そして――――


                   自分が、あの日、あの時に
                                死んだことも」

胡桃「――――――京、太」

シロ「さっきも言ってた―――その、死んだって」

塞「だって、ここは確かに、その、いわゆる『この世』で………」

エイスリン「キョータ、イキテル」

巴「………そのことについても、これからお話させていただく形になります」

春「でも、先に一つだけ訂正させて………京太くん」

霞「あなたは、決して『死んでいません』」

京太「………………………」

豊音「………よく、わからないよー」

小蒔「えっと………それを説明する前に、どうしてもお聞きしないといけないことがあるんです」

京太「それは、俺の記憶の事ですか」

小蒔「はい………実際、私たちにわかっていることは、あなたが『どういった存在』で、どういう原理で『ここに来た』のか。それだけなんです」

塞「えっと………それって、つまりどういうこと?」

トシ「………京太が『どういう存在』で『どうやって来た』のかはわかるけれど、京太という人物が『どういう人間なのか』はわからない、ってことかい」

シロ「それに………今の言い方だと、『ここに来るまでの経緯』がわからないとどうしようもないってこと?」

春「どうしようもないというか………それによって、細かく話が変わってくるから」

京太「………わかりました」

胡桃「京太、大丈夫なの?」

京太「ええ………全部思い出してから、それをもう一度思い返すことへの頭痛や苦しみは、もうありませんから」

霞「………では」

京太「ええ。すべてお話します」

京太「胡桃さんにも………皆さんにも、聞いておいてほしい」





京太「これは、『宮守の京太』ではなく、


            長野県―――『清澄高校の須賀京太郎』の話です」














京太郎『さて、準備としてはこんなもんか?』

咲『うん。いいと思うよ。あとは、みんな集まるのを待つだけだね』

優希『部長たちはいつ来るんだじぇ?』

和『先ほど、あと30分前後で到着するとの連絡がありましたが………優希。まだ竹井先輩の事を部長と呼ぶ癖が抜けないんですね』

優希『うぐ………な、なぜか全く治らないんだじぇ………』

咲『あはは、でもわかるなぁ。現部長の和ちゃんには悪いけど、あの一年ですっかりイメージ固まっちゃってるのかな』

京太郎『あ、俺も未だに部長って呼んじゃうな。去年も去年で、染谷先輩も苦笑いしてたし』

咲『あの一年が一番せわしなくって、それにいろいろなことがあったからね』

和『ふふっ………そうですね。では、そろそろ出迎えの準備に入りましょうか』

咲『そうだね。部長たち含めて、あの時のみんなで集まって、引退パーティ………言い方はちょっとアレだけど、うん。楽しみだよ』

京太郎『よーし、じゃあ飲み物も用意しておくぜー』













胡桃「………須賀、京太郎―――――それが、京太の――――」

京太「はい。それが、俺の――――記憶を失う前の、名前です」

塞「そっか………えっと」

京太「京太、です」

塞「………………」

京太「今、ここにいる俺は―――『須賀京太郎』ではなく、『京太』です」

胡桃「………そっか」

胡桃(………嫌だなぁ、私………。今の一言に、安心してる)

豊音「京太君、あの清澄の人達と一緒のところだったんだー………」

塞「世間は思ったより狭いって言うか………」

トシ「………………ん?」

京太「………でも。わからないことがあるんです」

シロ「わからないこと?」

巴「それは、どういうことでしょうか」

京太「………上手く、説明できないんですが………俺は、清澄高校の『1年生』の時に、皆さんと咲―――清澄高校のメンバーが試合しているのを、この目で見ました」

霞「ふんふむ………あら?」

塞「………あ、れ?」

エイスリン「??ドウイウコト?」

豊音「私………そんなに清澄の人達の事を知ってるわけじゃ、ないけど………












                    清澄高校に、男子部員っていた?」

塞「………わからない。けど、いなかったと思う」

胡桃「私、聞いたんだ。あの清澄の部長が言ってたけど、清澄も私たちと同じ………『5人』ギリギリの部員で、ここまで来たって」

シロ「………男子部員については?」

胡桃「何も言ってなかった」

小蒔「あ、あの。私、聞いたんですけど………」



『せっかくの共学なんだから、せめて男子の部員も欲しかったわねー。いや、今が嫌なわけじゃないのよ?ただ、ねぇ』



小蒔「あの部長さんは、そういってました」

京太「………ですが、俺の記憶には確かにあります」

初美「あなたの記憶を疑うわけじゃないですよー。ただ、そうなると………」

トシ「………それは、ありえないよ」

胡桃「………先生?」

エイスリン「ナンデ?ダッテ、キョータガ………」

トシ「私はね。しばらく前に、こんなものを見つけたんだ」スッ

シロ「………焦げてるけど、これ………校章?」

トシ「初めに京太君の着ていたコートから出てきたものなんだ。これを見た時に、清澄高校の事は思い出したんだよ」

京太「――――――――――――――!?」

胡桃「………っ!!ちょっと待ってください!!なんでそんなことを今まで………!!」

シロ「………っ」

トシ「すまないね。ただ、私だってただ黙ってたわけじゃない。すぐに、清澄高校に連絡を取ったさ」

塞「………それで」

トシ「そう睨まないでくれ。唯一わかる部分………『京太』という名前が使われている生徒が在籍していないか、もしくは在籍していないか………在校生だけじゃなく、過去二年間の生徒も含めて調査してもらったんだ」

初美「―――何も言わなかったということは、つまり――――」

トシ「お察しの通りさ。清澄高校には―――――――



『ええ。やはり、我が校の在校生。それと一応過去二年間の卒業生も含めてなのですが………』

『当校―――清澄高校に、『京太』という名前、もしくはそれが使われている男子生徒は、存在しません』



との、返答だった」

胡桃「………そんな」

京太「………それに、もうひとつ」

シロ「………なにか、あるの?」

京太「俺が一番わからないのは、ここなんです」

豊音「………?」

京太「俺の記憶、その全部を辿っていくと………どうしても、ここだけは説明がつかない」

塞「………あ」

胡桃「塞、どうし………     あ」

エイスリン「………サッキノ、ハナシ」

シロ「………待って。さっき、京太が少しだけ話してくれた、昔の記憶………」

豊音「………おかしいよ。これ、どういうこと?」

霞(………やはり、というべきでしょうか。それすらも………『超えてきた』のですね)






京太「俺は――――記憶の、最期の俺は――――――




今から二年後………清澄高校の、三年生だったはずなんです」

初美「………え」

春「………それって、つまり………」

京太「ええ………そもそもの話、俺の記憶と、今この状況………『時系列』の時点で、つじつまが合わないんです」

胡桃「さっきの話だと………もう、あの部長さんや次鋒の人達は卒業してて」

豊音「清澄の大将………宮永さんたちと、京太君は3年生。それで、部活を引退しての打ち上げの準備中………」

エイスリン「マダ、サキノハナシ!!」

塞「そうだよ。だって、それは今から二年も後のことにならないといけないわけで………ああ、だんだんこんがらがってきた………」

京太「………続き、いいですか?」

トシ「………ん」

京太「いろいろ話したいことはたくさんあるんですけど………一度、それは割愛します」

京太「先に話さないといけないのは………俺の、思い出した記憶の一番最後………」スッ



京太「この火傷を、負った時の記憶なんです」





久『ゲホッ!!ちょっと………!!ここまでもう煙が………!!』

まこ『いかん!!もう廊下の向こうまで火が回っとる!!』

京太郎『先輩方!!こっちにきてください!!ここから出て、真っ直ぐ行けば外にいけます!!』

久『須賀君!!他のみんなは!?』

和『ケホッ………わ、私はここです!!』

優希『私も………ゲホッ!!いるじぇ………!!なんで、校舎に火が………!!』

久『わからないわ………けど、まずは外に出ないと!!火の勢いがどんどん強くなってる!!』

和『わかりました………!!!』

まこ『もう向こうの廊下は完全に燃え上がっとる!!口にハンカチか何か当てぇ!!』

和『………!!咲さん!!?』

京太郎『え………!?』

久『咲!!!咲はどこに行ったの!?』

優希『………!!そういえば、咲ちゃん………お手洗い行くって言って外に………!!』

まこ『お手洗いって………まさか!!』

京太郎『まさか………廊下の向こう………あの火の向こうに………!?』

京太「それは、突然の事でした………引退パーティーと銘打って集まって、みんなで楽しんでいるときに………突然、一階から火の手が上がったんです

その勢いは凄まじくて………一気に上階まで立ち上って、燃え移りました

今になって考えてみれば、あの下の階には家庭科部なんかが使う調理室があった………そこから出火したんだと思います

気が付いたときには相当火の勢いが強く………ただ、俺たちのいた場所からは外に出るための道がまだありました

先輩たちとそこに向かおうとしたとき………咲が………宮永咲が、いないことに気が付いたんです

咲の奴は、火に包まれた廊下の向こう側………完全に、火に取り囲まれた場所にいました」




京太郎『咲ぃ!!どこだ、咲!!返事しろぉ!!!』

――――――――ちゃん!!

京太郎『!!』

咲『京ちゃん!!』

京太郎『咲!!無事か!!』

咲『ダメ!!こっちに来ちゃダメ!!』

京太郎『何言ってんだ!!今行くから、そこを動くな!!』

咲『ダメ!!そこ―――か―――ら!!』

京太郎『聞こえねえよ!!いいから、そこを動くんじゃねえ!!絶対に助けてやるから!!』

咲『逃げてぇ!!京ちゃん!!』

京太郎『見捨てねえ!!見捨てねえぞ!!』

咲『ダメ!!もう、こっちは………………!!』

京太郎『部長たちは逃げた!!あとはお前だけだ!!今行くから、諦めんなぁ!!』

咲『ダメ!!そこは―――――――――――』




京太「俺は、多少無理やりではありましたが、先輩たちに先に逃げてもらって、咲のいるであろう方に向かいました

羽織ってたコートで火を防ぐようにして、必死で走って―――その先に、あいつはいた

あいつは、廊下の先………その空き教室に逃げ込んだところで、動けなくなってたんです

多分、火のない方に逃げていったら、その先がすでに火の手に囲まれてて、挟まれてしまったんだと思います

それで、俺はまた火の中を一気に走り抜けて、あいつのいる場所に行こうとして―――

………火の勢いと、気が立ちすぎてて………あいつの必死に叫んでた警告が、聞こえなかった








ガラッ






京太郎『           あ             』

体が、宙を舞った

真下から集中的に加熱され続けた廊下が、その高温に耐えられなくなったのだと思う

自分の足元を支えていた物が無くなって、そのまま、自分自身が重力に従って落下する

俺の方からは、炎で見えなかったし、咲の方だけを見てた。けど、今になって思えば

あの時―――咲の方からは、これが見えていたのだろう

俺一人………人間一人分の重量すら支えきれないほどに炭化し、朽ち果てようとするその床の姿が

そのまま、俺の体は―――真下の、一階に落ちる



叩きつけられた背中から、凄まじい熱が伝わる

声をあげる間もなく、顔に凄まじい痛みと衝撃を感じた

焼けた残骸、だったのだろう。それなりに質量のあるそれが、俺の顔を焼き焦がし、痛みとも苦しみともつかない苦痛を俺に叩きつける

焼けた空気が人体を蝕む黒煙と共に喉を焼き、既に叫び声は声になっていない

おかしなことだとは思う―――が。焼けつき、熱が体中を包んでいる中で、頭はやけに冷えていた

冷えた頭は冷静に結論を導き出す

―――――――これは、助からない

その結論を受け入れるのもまた早かった。そもそも、火災の中に消防隊員でもない人間が飛び込むなど、正気の沙汰ではない

それでも―――それでも、だ

一つだけ、受け入れられなかったその事実




俺は   咲を助けられなかった


あいつを  目の前にまで迫って、救えなかった



あいつを――――――――――――死なせてしまう、のか






ふざけるな



そんなこと―――――――できるわけがない



このまま焼かれ、炭に、灰になるのは構わない。それは自身のまいた種で、そんな可能性も考慮しないで飛び込むほどに考えなしでもなかったつもりだ

もちろん――――無念でないはずがない

誰が好き好んで死ぬものか。誰が進んで死にたがるものか

生きたい。もっと、生きていたい

可能性があるのならいくらでも足掻いてやる。それにかみついてやる

だけど、それよりも―――――



あいつを、死なせなんかするものか





「          死ねるか          」

声にもなってない、そんな一言―――――――――――

その、執念という執念を押し固めたかのような一言を絞り出した瞬間



俺の意識は途絶え――――――――――――――



薄らと、しかしはっきりと記憶に焼け付いたあの記憶へと


宮守麻雀部のみんなを、地に倒れ伏した俺が見上げている


あの始まりの記憶へと、繋がる

胡桃「………………………」

塞「………じゃあ、京太君は―――――――」

京太「ええ………間違いなく、あの時に死んだはず――――だったんです」

シロ「………けど、現実に京太は生きて、ここにいて」

豊音「それも、事故の直後………長野の、清澄高校の火災の中にいたはずなのに宮守の近くに倒れてて」

エイスリン「ンー………ムズカシイ」

トシ「………さて」

霞「………」

トシ「私は―――あなたたち永水高校の………いや、霧島神鏡の方々が、その答えを持っているかもしれない………なんて期待してるんだがねぇ」

霞「………そうですね。ご期待に沿える答えかどうかは、わかりませんが」

京太「………知っているんですね」

小蒔「ええ………前例がないわけでは、ないので」

シロ「………前例?」

霞「ええ………まあ、その詳細についてはまたの御機会とさせていただきます。重要なのは、その前例となった方と、彼はほぼ間違いなく同じ理由で【此方】に来たということです」

塞「同じ理由、っていうのは?」

巴「えっと………まず、それについて説明する前にですね。その前提となることをお話しさせていただかないといけません」

小蒔「そうですね………そうでなければ、始めることができません」

京太「お願いします」

霞「………そうですね。では、まずは全ての前提となる―――――それこそお伽噺、いえ与太話か妄想かと言われてしまいそうな話ですが、そこからお話ししましょう」












霞「平行世界、という言葉をご存じですか?」

エイスリン「………?」

塞「………えっと、なんだっけ。シロだか胡桃だかがもってきたアニメのDVDか何かで、そんな単語が………」

シロ「………荒唐無稽、だよね。こんな状況じゃなければ」

胡桃「えっと………なんだっけ。確か、世界は一つじゃなくて、いくつもの流れの違う世界がいくつも存在してる、だっけ?」

霞「おおよそ、それであっています。言ってしまえば、平行世界というのもある程度認知度のある言葉を選んだだけですので、実際にそういったものなのかは判断できかねますが」

春「神隠しの正体とか、いろいろ言われてはいるけど………」

初美「もっと言えば、定義的には『可能性と存在による分岐』なのですよー」

胡桃「………ん?結局、どういうこと?」

京太「………………………………」

巴「まずは、そういった世界、『似通ってるようで違う世界』が存在しているということだけご理解いただければと」

霞「単刀直入に申しますと、須賀………いえ。京太さんは、『其方側』からいらっしゃいました」

塞「………はい?」

シロ「………それって、つまりさ」

春「ん」

胡桃「京太は………『別世界の人間』ってこと?」

小蒔「………肯定します」

京太「………世界の壁、とでもいえばいいんですかね。つまり、俺は火災現場からそれを越えてここに来たと」

霞「ええ。そこで重要なのが、世界の相違点なのです」

エイスリン「ソーイテン?」

巴「えっと………この世界と、京太さんがいらっしゃった元の世界。そこに、どういった違いがあるかということです」

霞「皆さんもお気づきでしょうが、京太さんのお話を聞く限りでは………二つの世界は、とても似通った歴史をたどっています。いえ、ほぼ同一と言ってもいいかもしれませんね」

豊音「インターハイの流れも、全部私たちが知ってるそれと同じだったもんね」

初美「じゃあ、何が違うか。それについては、さきほど答えが出たかと思います」

京太「ええ」

胡桃「………そうだよね。唯一と言っていい、相違点って………」



京太「俺がいない、ってことですよね?」



小蒔「………その、とおりです」

霞「平行世界とは、可能性の分岐です。例えばいつもの通学路で右に曲がるところをもし左に曲がっていたら、といった小さなものから、織田信長が本能寺で暗殺されなかったら、第二次世界大戦が無かったらといったような大きなものまで存在します」

春「極端に言っちゃえば、そもそも人間がいなくて恐竜が滅んでなかったら、なんてこともある」

京太「この世界はつまり、俺の世界から見て『須賀京太郎が存在しなかった世界』ってことですよね」

霞「ええ。それも、今のこの世界の時間軸ともずれています。未来がその通りになるかまではわかりませんが、あなたがいない世界ということは間違いありません」

トシ「………それは」

小蒔「はい」

トシ「京太君が、この世界に飛ばされた理由と関係があるのかい?」

春「飛ばされた理由というよりは、何故無限に等しく存在する世界の中で『この世界に飛ばされたのか』ということ」

塞「………あ。それについては、ちょっとだけ想像ついたかも」

胡桃「うん。ドラえもん、だっけ?なんか、そんなの見た覚えがある」

シロ「タイムパラドックス………だっけ。それと同じこと?」

霞「ええ………そろそろ、纏めに入りましょうか」

豊音「お願い」

巴「………姉帯、さん」

豊音「私は、今でも辛いから」

小蒔「………本当に、辛い役目を押し付けてしまって申し訳ありません」

霞「………では纏めます」





霞「須賀京太郎さんがこの世界にたどり着いたのは、『須賀京太郎が存在している世界』を選択肢から排除した上で選ばれた、もしくは無作為に放り込まれたのでしょう

同一人物が同じ世界に二人存在する、という矛盾を、世界は許しません

また、そのきっかけになったのは………ここまで来るともはや推測にすぎませんが、先ほど語られた火災現場での最後、『死ぬわけにはいかない』という強い意志でしょう

先ほども申しあげました通り、こういったことには前例が存在します

そう多いケースではないので何とも言えないのですが………同じように、強い意志が、強い未練が、強い後悔が―――――――爆発的な、何かを『求める』感情が、引き金になっている傾向が見られます

須賀京太郎さんは、元いた世界で死に瀕した時、死ぬわけにはいかない―――という爆発的な意思を発しました

そして――――――――扉が開いた、と表現すればいいのでしょうか。平行世界へととばされる………詳細は分かりませんが、その意志以外にも条件や状況を整えてしまった

その結果、同一人物の同時存在のような大きすぎる矛盾を防ぎ、なおかつその当人がその世界に対して大きすぎる異物となることを、世界が避けた結果、この世界に来たのでしょう

平成の太平の世に生まれた人間を、戦国時代が終わらなかった世界等に放り込んだりしたら大変ですから

その結果ですが、貴方はこの世界にたどり着いた

ですが――――最小限にその影響をとどめたとはいえ、その存在がその世界に対しての『異物』であることには変わりはありません




限界が、来ているのです

京太「………限界、ですか」

霞「ええ。平行世界への移動が、世界がとる救済措置なのか、それとも、緊急避難にすぎないのか………それはわかりません」

巴「ですが、どうやらその当人が元いた世界と違う世界が、他の世界の存在を受け入れていられるのには………例外はあれど、限界があるようなのです」

胡桃「その………限界を」

小蒔「………」




胡桃「その限界を、越えちゃったらどうなるの?」




春「………さっきも言った通り、前例があるとはいえ、ケースが少なすぎてはっきりしたことは言えない」

初美「もっと言えば、それを確かめられる状況になってたら、今こうしていられたかすらわからないのですよ」

シロ「………どういうこと」

小蒔「その影響には、大小様々あると思われます。ですが、そのどれもが―――」



霞「最小のもので、世界による修正の結果の当人の死亡、もしくは消失………大きすぎるものになれば、その世界自体の崩壊といったものもありえます」

胡桃「………そん、な」

京太「………………………………」

シロ「………ふざ、けるな」

豊音「………じゃあ、なんで世界は――――京太君を、ここに」

巴「わからないのです。私たちも、断片的な情報からもっとも確率の高いものを推測しているのに過ぎないので」

初美「それを少しでも、限界まで見定めようと思っていたのですが………もう、その限界は相当近づいているようなのです」

京太「これ以上、俺がここにとどまれば―――何が起きてもおかしくはない、と」

小蒔「………………はい」

霞「もう少し大丈夫か、などと楽観視していましたが、どうやらもう無駄のようです。おそらく、本年度三が日開けまでが、ギリギリかと」

春「だから、貴方はここで選ばないといけない」

胡桃「………………えら、ぶ?」







霞「この世界を巻き込む覚悟でこの場にとどまるか


                   元の世界に、帰るのかを」






京太「―――――――――――――――!?」

塞「ちょ、ちょっと待って!!か、帰れるの?帰る手段が、あるの!?」

シロ「………!?」

霞「ええ。これが、『別の世界に行きたいから頼む』、といったことでしたら無理でしたが」

初美「トンネルの問題なのですよー」

シロ「………トンネル?」

巴「世界の壁は、本来我々人間がどうこうできる存在ではありません。普通でしたら、どうしようもないんですよ」

初美「ですが、元いた世界に帰りたい――――ということでしたら、無理ではないのです」

霞「世界の壁を普通に越えようとするならば、その世界への道を作らねばなりません。それは人間の手に余る、神の、世界の所業です。しかし、『元いた世界からこちらに来た』というのであれば別なのです」

シロ「………なるほど。それで、トンネル………」

小蒔「ええ。それでしたら、そもそもこちらに来る時に通ってきた因果、道があるわけです。そこを戻ればいいのですから」

霞「下手に道を開けて世界を繋げたところで、どこにつながるかなどわかりませんから」

胡桃「そっか………そもそもここに来る時にその道ができてるわけだから、ただ戻ればいいんだ」

霞「ええ。ですが―――問題も、もちろんあります」

京太「………ええ。大体ですが、理解したつもりです」

胡桃「え」

京太「トンネル………その、通ってきた道を戻るということは、こちらから行って、出る場所は来る時と同じになる。それも、寸分たがわず」

春「………ん」

小蒔「大変、申し上げ辛いのですが――――――――」





小蒔「帰れば、あなたはあの火災現場に戻され――――――――間違いなく、その命を失ういことになるでしょう」



本日の更新はここまでです
次回、遂に完結編となります


………ええ。長すぎますね、間隔。しかも今気づいたら誤字してやがる………
本当に、申し訳ありません。転職してから時間がなかったという言い訳だけをさせていただきます

さて、便利キャラ、もとい巫女さん軍団が真相に切り込んだところで、あとは真相究明ではなく『選択』となります
その結果どうなるかは、次回になります。                                                    バッドエンド?認めねえよ?

それでは、もうあと少しだけお付き合いいただけると幸いです。次回、またお会いしましょう




【独り言】
胡桃ちゃん………養豚業って、興味ない?

大変遅くなりました
豚さんが言うこと聞いてくれなくて、生傷作りながら毎日ヒャッハーしてる1です

明日、は少しきついのですが、また数日中に更新いたします。大変お待たせしておりますが、お付き合いいただければ幸いです




【独り言】胡桃ちゃんブヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ

ご報告いたします

明日、というかもう今日ですね

5月12日の夜、おそらく10時前後・・・だと思うのですが、更新させていただきます

少々お待ちくださいませ

こんばんわ、豚さんに数年ぶりに体重が50キロ超えた>>1です


若干遅刻しましたが、投下を開始します

翌日       宮守高校 麻雀部部室

胡桃「………………」

塞「………胡桃」

シロ「………………」

塞(………あれから、一晩が明けた)



霞『いずれにせよ、もう時間はありません。酷な事とは重々承知しておりますが………それでも、早急にご決断いただかなくてはなりません』



塞(あの後、一度解散して………先生の話だと、京太君は朝早くから出かけたって聞いた)

塞(決断したのかどうか、それすらもわからない。けど………)

胡桃「どの道、どうなっても」

塞「!」

胡桃「京太はもう………ここには、いられないんだよね」

塞「………」

シロ「あの人達が悪いわけじゃないのは、わかってる………けど」

エイスリン「シロ………」

シロ「恨みもしないし、八つ当たりだってしたくない。けど、それでも………『決断』なんて言っても、どの道京太に選択肢なんてないじゃんか………」

豊音「京太君がここにとどまろうとすれば………その結果、最低でも京太君自身が、最悪の場合は私たちも巻き込んで………だったよね?」

胡桃「うん、そういってた………」

豊音「………ずるいよね」



小蒔『本当に………申し訳、ありません………』



豊音「あんな………罪悪感で死んじゃいそうな顔で言われたら、何も言えるわけないよ………」

シロ「………恨みさえさせてくれないなんて………ずるい、よ」

エイスリン「キョータ、ドコニイッタンダロ………」

塞「わからない。けど………京太君なら、短気は起こさないよ」

胡桃「待とう」

シロ「………胡桃」

胡桃「京太が、自分で選んだことを………自分から、告げてくれるのを」

シロ「………ん」

エイスリン「ソウ、ダネ………」

豊音「………うん」

塞「………………………」

塞(まったく………こんないい女たち待たせて、心配させて………)




塞(早く戻ってこないと、許さないぞコノヤロー)

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

喫茶「遠野物語」


店長「………そうか」ムキキッ

京太「ええ………こんな時期に、本当に突然で申し訳ありません………」

店長「構わんさ。詳しくは聞かないが………本当に、大切な決意なんだな?」ミチチチッ

京太「はい」

京太「本当に………なんて言ったらいいのか」

店長「………優秀なバイトを、簡単に手放すほど俺は愚かじゃねえぞ」ムキッ

京太「………え」

店長「ましてや、タコス。俺はまだリベンジできてねえんだ。勝ち逃げなんぞ許さねえからな」ムキキキキッ

京太「マスター………?」

店長「いいか、テメエの出してきたこの辞表」ミチチチチチッ

ビリリリリッ

京太「………………!?」



店長「今は受け取らねえ。休職扱いだ馬鹿野郎。さっさと、全部片づけて戻ってこい」ムキィ



京太「………マスター」

店長「わかったか」ムキッ

京太「………はい!」

店長「なら、行って来い。それで、全部終わらせて戻ってきて、その時に全部決めろ」ムキキッ

店長「それで、俺のところなんかより………お嬢ちゃんたちに、しっかり『ただいま』を言ってやれ」ミチチッ

京太「………行ってきます」

店長「ああ、行って来い」ムキムキッ

ガチャッ

店長「………しばらく」ミリリリリッ

店長「カウンター、広くなっちまうな………」ムキィ

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

トシ「………こうしてみると、本当に物をもたない子だったんだねぇ」

京太「自分でもびっくりしてます。本当に必要な物だけ揃えたとはいっても、ポケットだけで事足りちゃうんですからね」

トシ「思い返せば、自分自身の欲で何かが欲しいって言ったことが一度もなかったねぇ。自分で必要な物も、バイトで稼いだお金で全部賄って………」

京太「それでも、相当ご迷惑おかけしてしまいましたけどね」

トシ「何が迷惑なものかい………前にも言っただろう?」

京太「………?」


トシ「私はね………あんたを孫の様に、いや………孫だと、思ってるんだよ?」

トシ「孫に頼られることの、何が迷惑なもんかい」


京太「………ありがとうございます」

トシ「帰ってくるんだろ?」

京太「………そのつもりです」

トシ「だったら、その時は………もっと、私を………周りを頼りな」

トシ「あんたは少し、自分で抱え込みすぎてて不安になるよ………だから、必ず………」

京太「………ええ。帰って、きます」

トシ「………」

トシ(………ああ。我ながら、最低だよ)



トシ(この子は………自分が、帰ってこれない事なんて………覚悟、してるのに)

トシ(こんな、言葉を投げつけるなんて………本当に………)

トシ「………『向こう』に戻ったら、火の中なんだろう?」

京太「ええ」

トシ「だったら、防火対策くらいしていってもいいんじゃないのかい?」

京太「それも、考えました。ですが………永水の皆さんの話によると、できないんだそうです」

トシ「できない?」

京太「ええ。こちらに来る時に道がもともとできているから帰ること自体はできても………世界間の移動ということ自体が、相当な力技であることには変わりはないとのことで」

京太「『向こう側』に渡る際、できる限りこちら側の物は所持しない方がいい、というか………」

トシ「もし無理に物を持ち込もうとすれば、ということかい?」

京太「ええ。何が起きるかわからないし、最悪、帰るべき場所への座標がずれかねないと」

トシ「………世界はどこまでも、融通が利かない石頭なようだね」

京太「ははっそうですね」

トシ「………火の中から、どうするつもりなんだい」

京太「生きてみせます」

トシ「………?」

京太「正直、気休め以外の何物でもないですけど………状況が最悪でも、突然の事態で混乱してる時より、はじめからわかってれば動きも少しは変えられるはずですから」

トシ「それで、なんとか抜け出すっていうことかい」

京太「ええ。そして、駆けつけます」

トシ「………ん?駆け、つける?」

京太「ええ。………だって、俺が『向こう側』に戻るのは、ただ………俺と、この世界のためだけじゃない」





京太「絶対に助けたい奴を、今度こそ………助け出すためなんですから」





トシ「………京太君」

京太「同じ時間に戻れるっていっても………随分、待たせちゃってますからね」



トシ(………なんて、馬鹿な子だろうね)

トシ(火災現場、それも燃え上がってる瓦礫の中から………自分が助かるかどうかすら怪しいっていうのに)

トシ(………まだ、誰かの事を考えてる)

トシ(自分だけで助かる気が、初めからない………なんて)

トシ(なんて、真っ直ぐすぎて―――――――危うくて――――――――

                  カッコいい、男の子だよ)

トシ「………だったら、いってきな。その代り、絶対にその子を助けてくるんだよ、ヒーロー」

京太「ヒーローなんて、柄じゃないんですけどね」

トシ「女の子を命がけで助けようとする男の子が、ヒーローじゃなくて何なんだい。その代り、だ」

京太「え?」

トシ「ヒーローの条件、忘れるんじゃないよ」

京太「………条件?」

トシ「ヒーローっていうのは、負けないものなんだろう?」



トシ「あんた自身も、生きて帰ってこなきゃ意味がないんだ。必ず、生き抜くんだよ」



京太「………肝に銘じます」

トシ「あんたは頑固だからねぇ。何十本釘刺しても足りないくらいだよ」

京太「藁人形じゃないんですから………」

トシ「まあ、とにかく………必ず、生きて帰ってきな」

京太「ええ」

トシ「そして、あの子たちに………ちゃんとおかえりを、言ってあげな」

京太「ええ………そして」

トシ「ん?」

京太「また、この玄関を開けて………ただいまを、言います」










ガシッ

京太「っ、ちょ、先生!?」

トシ「………無理は、するんじゃないよ………」

京太「………」

トシ「………帰って、おいでね」

京太「………必ず」



京太「この家に、『帰って』きます」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


宮守高校  麻雀部部室




京太「………まだ、皆さん残ってらしたんですね。夜なのに」

シロ「絶対、ここに来るって踏んでたから………待ち伏せ?」

京太「はは、読まれてますね」

塞「そのくらい、誰だってわかるよ。私だって、ここには寄ったと思うし」

エイスリン「バレバレ!!」

豊音「………その格好」

京太「………はい」

豊音「初めて、ここに来た時の格好をしてるってことは………」

京太「………ええ」





京太「行ってきますを、言いに来ました」

塞「………もう一晩くらい、ここにいたって罰は当たらないだろうにねぇ」

京太「はい………けど、俺はそこまで強くもないですから」

シロ「………………それは?」

京太「これ以上、『もう少し位』『まだもうちょっと』って続けてたら………決心が、鈍ってしまいそうで」

エイスリン「………………………」

エイスリン(耳が、痛いなぁ………)

京太「だから、ここで行ってきます。商店街の皆さんや、先生、マスターには既にごあいさつを済ませましたし………永水の皆さんにも、すでに連絡は取ってありますから」

京太「本当は、ここで当直の方に電話借りて皆さんにご連絡しようと思ったんですけどね」

シロ「ここで、行くの?」

京太「少しだけ、移動します。例のトンネルの例えじゃないですけど、出入口はできるだけ同じ方がいいそうですので」

豊音「つまり、始めて京太君を見つけたあの帰り道の土手っていうこと?」

京太「ええ。その通りで………」












胡桃「京太」

京太「………胡桃さん」

塞「………胡桃」

シロ「………胡桃」



胡桃「ちゃんと、帰ってくるんだよね?」

京太「………ええ」

胡桃「嘘、ついたら許さないから」

京太「………はい」

胡桃「約束」

京太「………………………」

胡桃「大掃除の時の約束。忘れて、ないよね?」

京太「………はい」



京太『真っ先に――――――胡桃さんに会いに来て、『ただいま』を言います』



京太「必ず………果たさせていただきます」

胡桃「………よろしい」

京太「………胡桃さん」

胡桃「あんまり、待たせないでよ」

京太「レディーを待たせるのは、男としてダメですからね」

胡桃「キザな台詞言わない、そこ」

京太「………………」

胡桃「………………」




京太「行ってきます」


胡桃「いってらっしゃい」

シロ「いってらっしゃい」

塞「いってらっしゃい」

エイスリン「イッテラッシャイ」

豊音「いってらっしゃい」











またね

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京太「………寒い中、お待たせしてすみません」

小蒔「いえ。こちらも、儀式の準備は今終わったところです」

塞「思ってたより、小規模………というか」

初美「力技とはいえ、結局前にも言ったようにトンネルを戻るだけですからねー。やること自体は単純ですから、そこまで複雑なシステムはいらないんですよー」

シロ「………忘れ物、してないよね」

京太「はは、シロさんに言われるとは………」

シロ「………言うようになったじゃん」

京太「成長、させていただきましたから」

シロ「………ばーか」

グイッ

京太「うわっ!?」

シロ「………帰ってきたら、一杯付き合ってもらうから」ボソッ

京太「………はは、お手柔らかにお願いしますよ」

シロ「どうだか」

シロ「………だから、早く帰ってこい」

京太「………必ず」

.






エイスリン「キョータ」

京太「はい」

エイスリン「カエッテキタラ・・・ミンナノ、エ、カク」

京太「………絵、ですか」

エイスリン「ワタシ、ズット、ココニハ・・・・イラレナイカラ」

京太「………」

エイスリン「ハヤク、カエッテキテネ」

京太「………はい。急ぎます」

エイスリン「………………」

エイスリン『さよなら、私の初恋』

京太「え?」

エイスリン「ンーン、ナンデモナイ!」

塞(………エイスリンさん)

.





豊音「………京太、くん」

京太「豊音さん」

豊音「………本当に、ごめんね」

京太「………だから言ってるじゃないですか。豊音さんに責任なんて、何一つありません」

京太「こうやって戻るのだって、俺の意志ですから」

豊音「けど!!」

京太「………じゃあ、一つ。お願いしてもいいですか?」

豊音「………え?」

京太「帰ってきたら………豊音さんの村を、案内してください」

豊音「私の、村を?」

京太「ええ。俺だけじゃなくて、みんなで」


京太「姉帯豊音さんの友人です………って、自己紹介させてもらうために」


豊音「………うん」

京太「いいですか?」

豊音「………うん!!うん!!」

豊音「待ってる!!待ってるから!!」

京太「………はい」

.






塞「最後まで、女泣かせなんだからねぇ」

京太「ちょ、なんで………」

塞「それすら自覚できないような人には教えてあげませーん」

京太「ちょ、そんな」

塞「まあ、自分で整理してみれば?恥ずかしいポエムで」

京太「うぐっ」

塞「ごめんって。………どーせ、帰ってきても無傷じゃすまないんでしょ?」

京太「………でしょうね。なんせ、火の中ですから」

塞「ま、最初のハグと拳骨は胡桃とシロに譲ってあげる」

京太「え?拳骨前提ですか?」

塞「女の子待たせてどっかいっちゃうんだから、当たり前でしょ?」

京太「………うぐぅ」

塞「私は、救急箱一式揃えておくからさ」

京太「………え?」

塞「最初の手当てくらいは、私にやらせなさいね?」

京太「………ええ。是非、お願いします」

塞「思いっきり沁みる消毒液で目、覚まさせてあげるから」

京太「はは………それは、辛いや」

.






胡桃「京太」

京太「はい」

胡桃「挨拶は、もう済ませたから」

京太「………はい」

胡桃「帰ってきたら、また―――あのタコス、お願いね」

京太「はい」

胡桃「ゲーセンも行こう」

京太「はい」

胡桃「カラオケも、またいこう」

京太「ええ」

胡桃「………いつものメニューの作り方、忘れてないでよ」

京太「しっかり、覚えてますよ」

胡桃「麻雀、今度は一緒に打ってもらうから」

京太「手加減してくださいよ」

胡桃「や。ちゃんと、覚えてもらうから」

京太「………わかりました」











胡桃「これは、この一言だけは、忘れないで」





京太「はい」

.













胡桃「大好き」













.

京太「………俺

胡桃「ストップ」

京太「………」

胡桃「返事、待ってるから………必ず、さっさと帰ってきて」

胡桃「女の子を、待たせるな」

京太「………ええ」

胡桃「私を――――――――私たちを、忘れないで」












京太「絶対に、忘れません」

霞「………それでは、儀式を始めます」

巴「おそらく、完遂まで2分から3分………この陣の中から、出ないようにお願いします」

春「あまり、連続ではできない儀式だから………」

京太「わかりました」

小蒔「………あの」

京太「はい」

小蒔「何を、申していいのかわかりませんが」

京太「………十分ですよ。道を示してくれて、ありがとうございます」

小蒔「………はじめ、ます」




光が、舞う

草も何一つなびいていないというのに、温かい風のようなものを、感じる

あるべきものを………あるべきものへと、正すかのように

シロ「京太」



少しずつ、薄れる意識



塞「京太君」



怖くはない。これから、踏み出すための最初の一歩なんだから



エイスリン「キョータ」



だけど、この期に及んで――――――俺は、弱い



豊音「京太君」



――――帰ってこられなかったら、なんて思ってしまうんだから







だから、この一言を抑えられなかった











胡桃「      京太ぁ!!!      」
















愛してます。胡桃さん

.









小蒔「………儀式は、滞りなく終了………しました」

初美「座標も狂ってないはずです、よー………」

胡桃「………………………」

シロ「………胡桃」

胡桃「馬鹿」

塞「………胡桃」

胡桃「返事は………帰ってきてからって、いったじゃん」

エイスリン「………………………」

胡桃「帰ってくるから、その時にって、言ったじゃん」

豊音「………………………っ」




胡桃「馬鹿」


胡桃「馬鹿………京太の、馬鹿」



胡桃「馬鹿………馬鹿………大馬鹿京太………馬鹿………」




胡桃「京太………京、太………………ぁ………」





胡桃「う、ぁ………あ………


うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………………!!!


京太………京太ああぁぁ!!!」





この日――――『京太』は


宮守高校、麻雀部のメンバーの前から


姿を、消した

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              世界を隔てた、『向こう側』

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京太郎「………っが、あああぁぁあ!!!!」


顔を灼く、記憶にあるその焦熱

戻って、来た――――――――俺は



京太郎「………ぐ、        がぁ!!!!」


ならば、動け

一秒、刹那の間でも、俺に時間はない


ここから先は、『京太』じゃない―――――――――――――


『須賀京太郎』が、為さなければいけないことだ――――――――!!


『京太』が、誓ったことだ―――――――!!

京太郎「………ッ、咲ぃ!!!!」


瓦礫を力任せに跳ね除け、立ち上がり―――わずかに残っていた隙間を縫うように、その場を離れる

あの時は落下の衝撃でそれどころではなかった柱も、なんとか押しのけられた

階下に落ちてしまった………ということは、咲を助けるには、一度上に上がらなければいけない


どの道、俺が来た方の道は今の崩落で進めるような状況じゃない。なら、まずはこのまままっすぐ進んで、咲の裏側から回り込むように進むしかない


京太郎「咲ぃ!!待ってろ、絶対に助けてやる!!」


あの、宮守で過ごした毎日で


大切な人たちができた

大切な世界ができた


最愛の人が、できた


だけど、今は――――――――


京太郎「くそ………!!間に合え!!」


『須賀京太郎』にとって、絶対に守るべき者を………

かけがえのない、あの少女を助け出すために―――――――!!

京太郎「あと、少しっ………………………!!!」



皮膚が焼ける

髪が焦げる嫌な臭いが鼻をつく

喉が、叫ぶなとでもいうかのように熱く、痛い



それでも、足をとめないのは………











京太郎「咲!!」

咲「………!?京、ちゃん!!」











この少女を救うという、ただ一つの救いのために

咲「京ちゃん!!無事、だったの!?」

京太郎「ああ、無事だ!!足だってついてる!!いいから、早く来い!!脱出するぞ!!」

咲「………う、うん!!」


咲の手を引いて、走り出す。できるだけ、できるだけ火の手と煙のない方に

だが、今この場から移動できる場所は―――思ったより、限られていた


京太郎「くそっ!!こっから、どういけば………!!」

咲「………っ?京ちゃん、窓の外!!声が聞こえる!!」

京太郎「!?どっちだ!!」

咲「こっち!!」


今度は逆に、咲に手を引かれて走る

その窓の下には、先に脱出したはずの和たちが集まっていた

それだけじゃない。轟々と燃え盛る炎の中で気づけなかったが、幾台もの消防車がすでに到着していた

窓の下を見れば………そこには、赤いマット。この高さから落ちても助かることを確信させてくれる、分厚いものだ







久「咲!!須賀君!!早く飛び降りて!!」

まこ「もう両脇は燃え上がってて動けん!!はよう!!」

和「窓が狭い………一人ずつ、飛び降りてください!!」

優希「時間がないじぇ!!」


………皆………………………っ

言う通りだ。窓は狭く、二人一気に飛び降りるのはきつい

いや、それ以上に二人一緒に飛び降りたら、重なり合って怪我をしかねない―――


咲「京ちゃん!!先に行って!!」

京太郎「は!?お前、そんなことができるはずが………」

咲「京ちゃん、怪我してるでしょ!!?早く、私もすぐに降りるから!!」


どこまでも………どこまでも、自分を優先しないんだな――――お前は


ああ、今になってわかった―――胡桃さんが―――みんなが、俺を危ういって、言ってたその訳が



けど



京太郎「………どっせい!!」

咲「きゃ!?」


咲を、抱え上げる






京太郎「………女の子を助けるから、男なんだろうがぁ!!!」

そのまま、咲をマットに向けて落とす

手荒だが………こうでもしないと、あの文学少女は意地でも動かないだろうから、な


下を見れば、咲は無事にマットに落下して、消防隊や他のメンバーの手を借りずに自力で立ち上がる

ああ、よかった………ちと、手荒だったからな


咲「京ちゃん!!私は大丈夫!!だから、京ちゃんも早く………!!」

京太郎「ああ!!今――――――――――――――――」


















肩に走る、熱を伴う、覚えのある衝撃

















――――嗚呼、なんだよ

咲が助かるまで………待っててくれたのか






久「………!!そん、な………!!」

和「須賀君!!!」

まこ「須賀!!!」

優希「………ッ京太郎ぉ!!!!」

崩れ落ちる瓦礫に、俺の視界は塞がれる

あの時とは比較にならない――――熱と重量と、実感する、その死の気配



咲「京ちゃあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」



はは………………

また………女の子を、泣かせちまった


やっぱ、俺は………ヒーローには、なれねえなぁ………



けど――――それでも


助けたい奴だけは―――助けられた




胡桃『     京太     』




胡桃さん



みんな





京太「すみません」

.











この日


清澄高校で発生した、火災によって





一人の男子生徒が――――――――死亡した

これで………………いいよな?

→NO
 いいえ
 否
 駄目



………というところで、本日の更新は終了になります
次回、最終回です。ええ、長すぎですね色々と。本当に申し訳ありません

最終回はもう一本道で頭の中にあるので、できるだけ早く書き進めるつもりです
そのためにも、言うこと聞かない豚さんたちと戦って勝利を収めてきます。そして連休勝ち取ります(フラグ)
それでは、よろしければもう少し、あと一度、お付き合いくださいませ



【独り言】
胡桃ちゃん       (ボロン

こんばんは
友人に「ほのぼのしててニヤニヤできるような、優しい雰囲気のエロゲない?」と言われたので、「車輪の国、向日葵の少女」を渡したら友人に哀しみを背負わせた>>1です
同じような感じでほのぼの日常アニメを求めた時にエルフェンリート渡された過去から学ばなかった彼が悪い。>>1は悪くねぇ!!

さて、早ければ明日………というか、今晩ですね。18日夜に。遅くとも明日の夜には最終回、というか事実上のエピローグを投下したいと思ってます
1スレ分にこんなに長々と時間をかけてしまったにも関わらず、お付き合いいただきました皆さまには本当に頭が上がりません。
本当に、ありがとうございます

次の投下で本編が完結した後なのですが、需要があれば書きだめ無しで行ける程度の長さの後日談的短編をぽつぽつ投下しようかななんて考えてます
その際には、リクエストをとらせていただくかもしれません。よろしければ、お付き合い頂ければ幸いです

それでは、また今晩か明日の夜に




【独り言】胡桃ちゃん―――――――君を悲しませたままになんて、させない。
     消えさせたりだなんて、しない
     進もう。そして、勝とう
     俺がもう一度………………………君をその場に立たせてあげる
     胡桃ちゃん――――――――――――俺たち、これで終わりじゃないよね――――?

こんばんは

独り言の内容がシリアスとか言われてしまって、実はこれ某エロゲの改変セリフなんだよな………とか言いだせない>>1です
ついでに、車輪の国で目が死んでしまった友人に「いつか降る雪」を渡したらどうなるのかと、今から愉悦が止まらない>>1です

この後、最終回投下を開始いたします。23:30前後に開始したいと思っておりますので、少々お待ちください

更新、開始いたします

一か月後

宮守高校  麻雀部部室


塞「ロン」

エイスリン「ア、ソッチ・・・・」

シロ「………半チャン、終了だね」

豊音「………やっぱり、だめかぁ」

塞(………あれから、一か月)

塞(京太君の抜けた穴は………思ったよりも、大きかったんだろうなぁ)



塞(本当なら、受験とか就活とか………こんなことやってる場合じゃないのに、私たちはいつもみたいにここに集まってて)

塞(しかも、肝心の麻雀にすら身が入らない………さっきからみんな、らしくない打ち筋ばっかりでグダグダだしね)

塞(ほんとなら、もっとしっかりしないといけないんだろうけど………先生も、最近目に見えて溜息の数が増えてる)

塞(遠野物語のマスターも、味こそ落ちないものの………少しばかり元気がなくって、筋肉の動きが鈍いって話)

塞(………その判断方法もどうかと思うけど)

塞(………それに、一番は………)

胡桃「………………」

塞「………ほら、交代だよ」

胡桃「………あ、ご、ごめん。じゃあ、始めよっか」

シロ「………ん」

塞(………早く帰ってこい、この………女泣かせ)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





巴「………え?」

初美「それ、本当なんですかー?」

小蒔「ええ。霞ちゃんとも話し合ったんですが………ほぼ、間違いないかと」

春「………正直、呆れた」ポリポリ

霞「ええ、まあ正直私もびっくりなのだけど………なんでしょうかね、世界を越えちゃうような人って、頑固な人が多いのかしら………」

初美「自分で言ってたじゃないですかー。爆発的な、強い執念なんかが引き金になるって」

霞「ええ、けど流石にこれはびっくりよ………『あの人』も、大概そうだったけど」

小蒔「………例の、『前例』の方ですよね」

霞「ええ。彼は………あの人は、私たちが宮守の皆さんに『不可能』と断じたことを、可能にしてしまうほど爆発的な後悔を抱えていましたから」

巴「………須賀京太郎さんは、『助けに戻る』でしたが」

初美「あの人は………『助けられなかった』後悔の念で、押しつぶされそうになってましたからねー………」

霞「ええ………」

.







『頼む………!!俺を、あの少女を失うその前に、送ってくれ………!!!』

『すべてがゼロに戻ってもいい………!!初めからやり直しでも構わない!!』

『この身が砕けても、俺自身が消えてもいい!!』

『俺は、あの子を………あの少女を、救いたいんだ!!!』








.

霞「………あの人は、自身にとって大切な少女を………救うことができなかった」

春「どう聞いても、あの人のせいじゃないのにね………」ポリポリ

霞「ええ。ですが、須賀京太郎さん然り………だからこそ、それを許せない人だからこそ、なのかもしれませんね」

巴「自分のせいじゃない、自分の責任はない………という免罪符が、許せないんでしょうね」

小蒔「無理だ、不可能だと何度諭しても………あの方は諦めませんでした」

霞「だからこそ、私たちはダメもとで、あの方を………『入ってきたトンネルの入り口』ではなく、『それ以前の時と場所』に、トンネルを繋ぐ試みを行った」

初美「まさか、本当に成功するなんて思ってもいませんでしたけどねー」

霞「ええ。ですが、その結果私たちは、それがいかに世界に負担をかける行為かを実感することになった」

春「次同じ事をしたら、どうなるかわからない………ん、どうあがいても悪いことにしかならないのが、わかっちゃったから」

巴「だからこそ、須賀京太郎さんがそれを望んでも………それを許容できなかったんですよね」

小蒔「………悔しいです。あの人にも、それが必要だったのに………」

霞「………そうね。けど………」

初美「まさかすぎますよー………これ、ある意味一番の力技なんじゃないですかー?」

霞「そうねえ………あの人………萩原さん、だったかしら。あの人以上の、奇跡を起こしちゃった感じはあるわね」

巴「………あの人も、元気なんですかねぇ………」

小蒔「………きっと、大丈夫ですよ。今度こそ………救いたかった人を救い出してますよ」

春「………滞在してた時の黒糖料理、美味しかった………」

巴「もう、またそんな………けど、あの人のスキル、ホント色々凄かったですね………」

初美「平行世界広しといえど、あんな人はそうそういないんじゃないですか?」

霞「うふふ、かもね」

初美「………ていうか、ちょっと脱線しましたですよー。前のことはともかく、今回のことについてちゃんと説明してくださいよー」

巴「そうですよ。流石に、説明がないと納得できません」

霞「………ええ。そうね、じゃあ………」

シロ「………はぁ、寒………」

胡桃「雪、凄いね………」

塞「どうする?どっか寄る?」

豊音「………んー、今日は、いいかな………」

エイスリン「………ン」

胡桃「………そうだね」

塞「………………………」

シロ「………死んでるなんて、欠片も思えないからこそ」

胡桃「………シロ」

シロ「………どうしてるんだろうな、って」

豊音「………何度言っても、無茶しちゃうから………」

塞「ほんと………元気にしてくれてれば、それでいいんだけど」

胡桃「………私、贅沢なのかな」

塞「………?」















胡桃「やっぱり、会いたいよ」











.

エイスリン「………ワタシモ」

シロ「………さっさと帰ってきてもらわないと、困る」

豊音「………そうだね」

塞「まあ、帰ってき時………私たちが、こんな状態じゃ京太君も呆れちゃうよね」

胡桃「うん………だから、早く―――――え」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



霞「一言でいうとね。それこそ、『トンネル』なのよ」

初美「………?一度道ができたから、ですか?それでも………」

霞「ええ。それだけでは、世界は【異物】の存在を許容できない。けど、それはあくまで【双方の世界】にその人間の存在が『ある』場合、ね」

巴「つまり、どちらか片方の世界でその人間が『いない』ことになってしまえば、ということですか?」

春「けど………本来いないはずの人間が、そこにいるという矛盾は」

小蒔「もちろん、これだけではその矛盾を解決することはできません。ですが………前例となったあの方と、今回の件では―――大きく違う部分があるんです」

初美「………?あ………そうか、そういうこと、ですか」

巴「………確かに、それは大きく違う………」

霞「そう………渡ってきた世界においての行動が、大きく違うの」

小蒔「もっと言えば、前提から大きく違ってるんですが………前回は記憶喪失といった事態もなく、あの方は終始世界をもう一度渡る事のみに腐心されていました」

春「………けど、今回は違う」

小蒔「ええ。須賀京太郎さんは………そのご自身の性格と、記憶を失ったことによって自身のすべきことが一切不明だったのも相まって、この世界にきてから―――その周囲の人物と、非常に積極的に交流をもたれました」

霞「それも、その悉くで信頼を得るような形でね。聞き及んだところによると、宮守の皆さんたちだけではなく、近所の方、商店街の方、と………かなり広範囲で交流を持っていたそうよ。アルバイトで喫茶店にいたというのも、大きいでしょうね」

初美「あの宮守高校の皆さんとの交流は特別相当深かったでしょうからねー。その中でも、あの………鹿倉胡桃さんとは」

巴「………正直、最期のあのやりとり見せられて、本気で土下座の一つでもしたくなりましたよ。今でも思い出すたびに気が重くなるんですから」

春「………つまり、纏めると」

霞「ええ………そうね、つまり―――――――――――――」







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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



胡桃「ねえ、なんか―――――――焦げ臭くない?」

塞「え?………ほんとだ、なんか………」

エイスリン「アレ!!アソコ!!」

豊音「どうしたの、エイスリンさ………あ!!」

シロ「………なにこれ」

塞「雪が、ここだけ溶けて………草が、焦げ付いてる?」

豊音「火はもうついてないみたいだよー」

胡桃「………見て。なんか、引きずったみたいな跡がある」

シロ「向こうの………神社の方に、向かってる?」

胡桃「………………………………」

塞「胡桃?」

胡桃「行ってくる!!」

塞「あ、ちょっと………!!!」





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




霞「あの人は………もう、本来であればどうしようもなかったの」

巴「それは………どういう意味で?」

霞「一言でいえば、あの人はどうあがいても、その死の運命からは逃れられなかった」

小蒔「この世界にとどまっていれば、自身の消滅か死………最悪は世界を巻き込んで。そして、元の世界へと戻ってしまえば言うまでもなく」

霞「どのような道筋を辿ろうと、その結末は同じだった」

初美「………?じゃあ、どうしてですか?」

霞「それが、さっき言った【此方側で作った縁】なのよ。むしろ、巴ちゃんがすでに答えを言ってるのだけど」

巴「え?………あ、そうか………」

春「つまり………向こう側で【死亡】という事実が発生してしまえば、ということ?」

小蒔「ちょっと、違うんです。本当の意味で【死亡】しなくとも、その存在が【死亡と認識される】、ということなんです」

霞「ご遺体が発見されなくても、生存がまず望めない状況というのがあるでしょう?航空機の墜落とか、潜水艦の沈没………または」

初美「………大火災が発生した建造物からの、逃げ遅れ………」

霞「それも、建造物の中にいることがはっきりと確認された上で、ね」

小蒔「そうなってしまえば、その人物と、その世界の【因果】は非常に希薄なものとなります。本来でしたら、その時点で望みは無くなってしまうのですが………二つの要素が、【それ】を為します」

霞「この世界に来た時と同じ………【爆発的な意思】。そして――――――その導きとなる、【縁】」

初美「えっと………向こう側で死亡と判断するしかないような状況になって、その人物の世界との因果が希薄になったところで、」

巴「世界間を移動する事象の引き金となる、爆発的な、何かへの執着と意思………」

春「………それを確実にするのは、すでに自身が開いた【トンネル】と、それを辿る道しるべとなる、【此方側】との縁………」

小蒔「そして、本来この世界に存在しない人物、他の世界との因果がある人物の存在を認められないという世界の矛盾は、片方の世界との縁がトンネルを通った際に完全に断ち切れることで消滅します」

霞「さらに………この世界に【過去】がない人物が、この世界にとどまるために必要な物は、一つ」

初美「つまりそれが………」

霞「ええ………この世界において、『京太』という存在を定義し固着するに足る、この世界の人物との因果と縁、そして―――――」







霞「双方が、双方を求める―――――想い」



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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



胡桃「はっはっはっ………ぜぇ、ぜぇ」

塞「ちょっと、胡桃………」

胡桃「わからない………」

塞「え………?」

胡桃「わからない、けど………もしか、したら」

シロ「………行こう」

豊音「………まさか」

エイスリン「クルミ、シロ………」

胡桃「早く、行かなくちゃ………!!!」





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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



巴「………なるほど。すべて、納得しました」

小蒔「それでも、奇跡であることには変わりはないんですが………どれか一つでも欠けてしまったら、為し得なかったことですから」

霞「加えて、彼の『向こう側』との因果は完全に切れてしまった以上………もう、世界間の移動は望めない。それは、彼が支払った代償といえるでしょうね」

初美「完全なハッピーエンド、ではないですもんねー………」

霞「ええ。彼は、これからずっと罪の意識を背負っていくことになる。自身が生まれ育った世界の大切な人たちに、自身の生を伝えることも許されず、本当のことを伝えることもできず、結果的に大きな嘘を塗りたくってしまったことを」

小蒔「人間が一人である以上、どちらかを選ばないといけなかったとはいえ………それは、あの優しい方にはとても重い罪業として残るでしょうから………」

巴「………それでも、こちらに戻ってこれたのは」

春「………両想いの相手ができるくらいこの世界と因果を作ってたこと、もう一度、この世界へ………って思いがあったから、か」

巴「………彼に、彼女たちに。改めて謝罪とご挨拶に伺わないといけませんね」

霞「そうね………うふふ」

初美「………………………………あれ?」

小蒔「どうしました?」

初美「………いや、あの………さっきから小難しく色々理屈並べてて、それで納得はもちろんできたんですが………いや、つまりそれって………」

巴「はっちゃん、どうしたの?」

初美「いや………さっきからずらーーーーっと並べ立ててた理屈って、つまるところ一言で纏めると………」

巴「………あ」

春「………………うわぁ」

小蒔「あ、あはは………いいんじゃないでしょうか。世界のルール云々とかより、ずっと素敵だと思いますよ?」

初美「う、うわぁ………………流石に、顔が赤くなりますよー………」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

塞「………これ、血………!?」

豊音「………ねえ、あそこ!!」

シロ「どこ………!?」

エイスリン「アソコ!!キノ、シタ!!」

塞「………誰か、木にもたれ………………………………」












胡桃「――――――――――――――あ」



















霞「いいんじゃないかしら?」

霞「小蒔ちゃんの言う通り、理屈っぽく説明するよりも、こんなロマンチックな言葉でいいと思うわよ」

霞「うふふ………ほらだって、王道でしょう?前に、はっちゃんが歌ってた歌にもあったじゃない」

.





霞「必ず、最期に愛は勝つ――――――――――ってね」





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.












京太「―――――――――遅く、なりました」







胡桃「京太ぁ!!!!!」












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シロ「………京、太………?」

京太「――――はい、京太、です」

塞「ほんとに………帰って、きて………………」

京太「あ、あはは………本当に、死んだと思ったんですがね………」

豊音「どうし、て………………」

京太「………諦めきれなかった、んですよ」

エイスリン「………………エ?」

京太「最後………また、瓦礫に埋まってしまって………今度こそダメだと、思った時に………………往生際悪く、思っちゃったんです」






京太「   『帰りたい』   って   」

豊音「―――――京太、くん」

京太「神様って、もしいるなら………そんなに、意地が悪くもないのかもしれないなぁ、なんて………あ、あはは」

塞「………って、ちょっと!!酷い怪我!!!」

京太「約束………さっそくですね」

塞「え?―――――――――――――――あ」

京太「………お世話、おかけ………します」

塞「………馬鹿たれ!!すぐに救急箱持ってくるから待ってな!!約束通り、すっっっっっっっごく傷に染みる消毒液で、目ぇ覚まさせてあげるから!!!」

京太「あ、あはは………お手柔らかにお願いします」

.



シロ「………ん」

京太「………シロ、さん」

シロ「………この一言を言うべきなのは、私じゃないみたいだから」

京太「………………?」

シロ「正直、悔しいけど」

京太「シロさん?」

シロ「………約束、果たしてもらうから」

京太「………ええ。それは、もちろん」

シロ「思いっきり、度数高いの用意してた甲斐があった」

京太「え、あの………その………て、手加減を」

シロ「却下」

京太「あ………あ、あはは………」

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エイスリン「キョータ!!」

京太「エイスリン、さん」

エイスリン「………キョータ、マニアッテ、クレタンダ」

京太「そのようですね………間に合って、よかった」

エイスリン「ワタシ、エ、タクサンカクカラ」

京太「………楽しみにしてます」

エイスリン「イッパイ、イッパイカクカラ」

京太「………はい」

エイスリン「ダカラ………ダカラ!!」

京太「………………エイスリンさん」

エイスリン「………ワタシガ、クニニ、カエッテモ………マタ、カエッテクルマデ………」

京太「ええ………待ってます」

エイスリン「!!」

京太「随分、お待たせしちゃったみたいです、から………今度は、俺が………ずっと、待ってます」

エイスリン「………ヤクソク、モウイッコ」

京太「ええ。こちらも………しっかり、守りますから」

エイスリン(………ありがとう。私の、好きな人)

.



豊音「………京太君」

京太「………豊音さん」

豊音「怪我、増えちゃったね………」

京太「ええ………たぶん、またしばらく顔に包帯かと」

豊音「………本当に、無理するんだから」

京太「ああ、それについては………少し、学びました」

豊音「………?」

京太「自重できるかはわからないですけどね………はは。自分の事度外視して他人のことしか見えなくなるってのが、傍から見ててどれだけ危なっかしいか見せつけられましたし」

豊音「………よくわからないけど、その傷………どのくらいかかるかな」

京太「………そうですね。約束のためにも………さっさと治さないといけませんからね」

豊音「ふふ、じゃあもっと無理は禁止だよー」

京太「………その口癖、久々に聞けた気がします」

豊音「………私も、久々に言えたかもー………」

京太「………楽しみにしてますから」

豊音「うん………みんなで、ね」

京太「はい」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



霞「かくして、物語は幕を下ろす」


霞「最善か、そうじゃないかはわからないけれど………」



霞「一途な男の子と、一途な女の子が幸せになる物語があるのなら」



霞「そんな物語があるから―――――――――数多存在する世界を、私たちは愛せるのだから」



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胡桃「京太」

京太「はい、胡桃さん」

胡桃「………返事、なんであんなタイミングで返してくるかなぁ」

京太「………すみません。我慢、できませんでした」

胡桃「馬鹿」

京太「ええ、馬鹿です」

胡桃「あんなの、許さないから」

京太「………どうすれば、許してもらえますか?」

胡桃「仕切り直し。ちゃんと、もう一度、目を見て」

京太「はい」

胡桃「ちゃんと、返して」

京太「………はい」

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胡桃「大好き」




京太「俺も――――――――貴女が大好きです。


                愛してます、胡桃さん」















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胡桃「おかえりなさい」





京太「―――――――――――ただいま」
















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エンディングイメージソング  Baroque/pigstar  https://www.youtube.com/watch?v=PlG1GjBbGxg


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提供

>>1

>>1を蝕み続けた椎間板ヘルニア

>>1をロン(物理)した軽トラ

>>1に時間をくれなかった仕事と上司

>>1に愉悦をくれた友人という名の被害者

>>1に書く勢いをくれたアルコール




スペシャルサンクス

本日まで、長い間お付き合いいただいた皆様





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                     槓





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………というわけで。

胡桃「あなたが例え、誰であろうと」、本編完結となります


ええ。なんで1スレ分の作品にこんなに時間がかかったのか
本当に申し訳ないと共に、お付き合いいただきました皆様、本当に、本当にありがとうございました

またどこかでお目にかかることがございましたら、その時は「ああ、またこいつか」と思っていただければ幸いです


それでは、最期にもう一度。  本当に、ありがとうございました






【独り言】………終わった。さて、胡桃ちゃん。ちょっとそこのハイエースでお疲れ様のドライブといこうか

【追記】

もし需要があれば、この場で短編リクエスト3本ほど取ろうかと思います
書くのは明日以降になってしまいますが、それでもよろしければ

では、リクエストをとらせていただきます
なお、このリクエストの結果は明日、職場とか言うグラズヘイムから帰宅したのちに確認し、書く作業に入らせていただきます

※極度にアハーンなネタや特定キャラへのヘイトが溜まるネタなどはご遠慮ください

では、


>>921 >>922 >>923 で


それでは、今日はおやすみなさい                                                                            胡桃ちゃん攫ってくる

近すぎた


>>923 >>924 >>925  でお願いします

提供で台無しだよちくしょう乙でしたこの畜生が!

あ、リクは豊音との約束事で

他の人との再会編プリーズ

咲ちゃんの後日談で

完結乙でした

リクは京太達の後日談を

こんばんは
仕事が詰まりまくってるせいで、変な渇望で永劫破壊か太極でも習得できそうな>>1です
ついでに、鬱が苦手な友人に無理やりミスミソウ読ませたら心躍る光景が見られるだろうなぁと愉悦が欲しくなった>>1です。いつか降る雪はいろいろ騙くらかして投げつけてきました。楽しみ

お疲れ様という言葉、そしてリクありがとうございます

リクは短編として投下する予定でしたが、このままリクの内容をうまく纏めることができたなら、リクを内包した一本のエピローグとして書いてみようかとも思ってるのですが、どうでしょうか………?

なお、要望のあるシロルートですが………実は考えてました
けどここのシロさん、ダルダル星人はそのままにどこか肉食獣の一面もあるので、そのルートはいると多分京太が元の世界に帰還直前に性的な意味で食べられてしまう可能性が大なので………エロハカケナイ
なお、他の妄想ではエイスリンルートでは家族計画の中国娘ルートの如く京太がニュージーランドまで追いかけたり(もしくはエイスリン暴走によってお持ち帰り)、
塞さんルートだと塞さんが京太帰還の際に無理やり手を掴んで塞さんまで【須賀京太郎】の世界に飛んでたりしました
豊音ルートは、若干歪んだ形で「この人だけは守り抜く」とか決めちゃった京太が閉鎖的な村の風習と争った後、本編以上に傷増やして老人の様に豊音と緩やかな時間を過ごしたり。書かなくても妄想は自由ですよね


長くなりましたが、ちょっと最悪でも週末には投下したいと思います
それでは、失礼します


【独り言】嗚呼………仕事がんばってるからかなぁ。胡桃ちゃんが、胡桃ちゃんが見えてきた………ああ、楽園(ぱらいぞ)はここにあった………(白目

申し訳ありません。
少々立て込んでしまい、本日更新ができません

明日以降に、少しずつ投下致します

また………遅くなってしまいました

ひとまず、>>923>>925のリクエストを複合したものを投下致します

.









あれから、5日










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店長「………ったく。どこの戦地から帰ってきたんだ、お前は」ミチチチチチッ

京太「あ、あはは………確かに、そうとも見えますね」




京太(あれから………少し経って)

京太(傷がある程度落ち着き始めたのを機に、宮守の皆さん以外の方々に挨拶と報告に来たのはいいけど………)

京太(あれからさらに増えた傷に、どこでも驚かれるか呆れられるかで………正直、本当に申し訳なくなってくる)

京太(マスターも、まあ予想通りというか筋肉を震わせて呆れてるし………)




店長「………で、だ。どうなんだ?」ムキキッ

京太「え、あ、はい。傷は………まあ、もう少しかかりそうですけど、後遺症とかは一切ないとのことです。傷跡は残りまくるでしょうけど………」

店長「そうか………どのくらいで平常通り動けるんだ?」ミリリリリリリリリッ

京太「診断だと、おそらく1週間程とは聞きました」

店長「そうか………なら、忙しくなる時期には間に合いそうだな」ムキキッ

京太「え?」

店長「馬鹿野郎。もうすぐバレンタインがあるだろうが………これでもその時期には菓子の注文で混雑するんだ。忙しい時期に人手が欲しいのは当然だろうが」ムリリリリリッ

京太「………マスター」







店長「辞表は破り捨てただろうが。さっさと復職してこい、馬鹿野郎」ムキィ







京太「………早急に」

店長「それでいい。それと、タコス対決の再戦も忘れんなよ?」ミチチィ

京太「や、やる気ですね」

店長「たりめーだ。てめえがいねー間もずっと練習は怠らなかったんだ。今度は勝つぞこの野郎」ムキキキキキキキキキキキッ

京太「………負けませんから」

店長「お、なかなかいい感じの眼するようになったじゃねえか」ミリッ

京太「ええ。散々心配かけたあげく………カッコ悪いところなんて、見せられないですからね」

店長「………はっ。コーヒー、俺のおごりだ。飲んで、さっさと味を思い出せ」ムキキッ

京太「………いただきます」

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トシ「………そうかい。すべて………決めたんだね」

京太「ええ。だから、俺はここに帰ってきました」

トシ「そうかい………京太君」

京太「はい」

トシ「後悔はしてないのかい?」

京太「………未練がない、といえば嘘としか言えないですけど。少なくとも、後悔だけはしてないつもりですよ」

トシ「………なら、いいさね。で、みんなは?」

京太「ええ。今日はこの後、胡桃さんの家に集合ということになってます」

トシ「なら、ゆっくりしてきな。傷がいえるには、もう少し時間が必要だ」

京太「大袈裟ですよ。あと一週間ほどで、とのことでしたし」

トシ「心の方さね」

京太「………」

トシ「影は、隠しても隠し切れないものさ。自覚してる部分と、自覚できてない部分を含めてね」

京太「………そんなに、表に出てましたか?」

トシ「ほんの少し、ここに来たばかりのあんたが見えた気がしたよ。選択するということは、そういうことだろう?」

京太「………後悔は、してませんよ」

トシ「後悔と傷心はまた別の物さね。急ぐ必要はない、時間をかけて癒していくものさ。年寄のこういう言葉は聞いておくものだよ」

京太「………ありがとうございます」

トシ「ん………それじゃあ、京太君」

京太「はい」



トシ「これからも、よろしく頼むよ」



京太「………ええ。よろしくお願いします。それと……………………ただいま」


トシ「おかえり」

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鹿倉家



胡桃「………そろそろかなぁ」

豊音「それ、さっきも言ってたよー」

エイスリン「ゴフン、タッテナイ」

豊音「本当に京太君が待ち遠しいんだねー」

胡桃「うぐっ………ま、まあ今更否定は、その、しないけど………」

エイスリン「カオ、マッカ!!」

胡桃「うるさいそこ!!………不安なのも、あるんだよね」

豊音「………不安?」

胡桃「また………気づかないところで、ボロボロになってないかとか。勝手にどっかいっちゃってないか、とか」

エイスリン「………………………クルミ」

エイスリン(………それは私だって一緒だよ、胡桃)

胡桃「まぁ………それでも、約束したからね」

豊音「………そうだねー」

胡桃「ちゃんと、帰ってきてくれるよ………で」





塞「………………くそっこのっ」キカンナァ

シロ「………………………………」ニゲラレンゾォ





胡桃「そこの二人はいつまで世紀末してるんだろうかねー」

豊音「あ、あはは………」

塞「あっやば………!!」テンクウノホウオウハオチヌ!

シロ「………終わり」

テーレッテー ドウダァ!!クヤシイカァ!!

塞「」マッシロ

シロ「………ふんす」

胡桃「はい、塞おつかれー」

エイスリン「サエ、マッシロ・・・・・」

塞「トキで五連敗………サウザーで8連敗………ジャギ相手に、こんなのって………」

胡桃「クロススパイダー綺麗に決まってたよね」

シロ「いい練習になった………」

塞「うがー!!練習だとぉ!!もう一度!!もう一度!!今度はユダでいく!!」

胡桃「その辺にしてきなって。そろそろ京太も帰ってくるよ?」

塞「ぐぬぬぬぬぬぬぬ………」

シロ「………ねえ。そういえば、京太はこの後、どうするんだっけ?」

塞「この後?合流するんでしょ?」

シロ「そうじゃなくって………京太は、こちらの世界にいることを選んだんでしょ?」

豊音「………あ」

シロ「となると、戸籍………は難しいかもしれないけど。この世界で、仕事を見つけて、生きていくことになる」

胡桃「今のところ、先生が京太をそのまま住ませるって方針らしいけどね………京太が、それに甘えっぱなしとは思えないけど」

エイスリン「タブン、ジブンデ、ハタラキバショモ、イエモサガス」

塞「あー………働き場所に関しては、マスターが手放す気はさらさらないって感じだったけどね。正直、これからしばらくの間は全然今まで通りで固定でいいのかも」

豊音「この世界に帰ってくることができた理由の一つ………京太君の、この世界における居場所………だよね」

シロ「京太が、自分で作り上げてきた………京太の、存在する証」

胡桃「それでも足りないっていうなら、私が―――私たちが、もっとたくさん、居場所をあげればいいだけ。そして、私たちももらえばいいだけ」

シロ「………ん。ダルく、ない」

胡桃(………ま、いざとなれば………)

シロ「内縁?」

胡桃「そうそう、内縁の………って、     え     」

塞「………いや、なんとなく私にも読めたよ。今考えてたことくらいは」

胡桃「え    え?」

豊音「あ、あわわ………なんか、怪しい雰囲気の言葉だよー………」

エイスリン「インモラル!!」

胡桃「え………え?」

シロ(それなら、2号って手も………)

塞(………シロの考えてる事も手に取るようにわかる。そんな自分が、果てしなくいやだ………)

エイスリン(………2号でも、3号でもいいか、な?)

塞(………もう一名から同様の電波受信。神様、いるならこの状況何とかしてください………)





ガララッ

ゴメンクダサーイ・・・・・・・・・・





胡桃「!!」ダッ

シロ「きた………ってか、胡桃はや」

豊音「私たちもお迎えに行くよー」

エイスリン「ウン!」

塞「………はぁ。ま、いろいろ言いたいことはあるけど………まずは、だね」

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胡桃「おかえり!京太!!」





京太「ただいま、胡桃さん」











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              世界を隔てた、『向こう側』

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霞「………本当に、よろしいのですね」

「はい………お願いします」

初美「………前代未聞、ですよー。そういった現象が起きていたことはこちらでも把握してましたけど………」

巴「不可能ではありません。いえ、普通無理なんですけど………」

春「………今回は、それを可能にする条件が揃いすぎてる」

小蒔「ですが、できて数日………といったところでしょうか。いえ、それすらもたないかもしれません」

霞「あなたを信用しないわけではありません。ですが………極めて嫌な言い方となりますが、こちらからあなたを引っ張れる【首輪】は付けさせていただくことになります」

巴「そうしなければ、万が一の時………あなたがリミットを過ぎて【此方】に戻られない場合、【此方】もどうなるかわからないのです」

初美「そして、【彼方】についた際には、すべてを【彼方側】の【私たち】に説明していただくことになります。よろしいですかー?」

「はい。それでも………私は、行かないと」

霞「………【道】は、通常ではありえないほどに安定しています」

巴「それも、その方が本来であればあり得ないほどの………陳腐な言い方ですが、奇跡のようなことを続けざまに行ったからとしか言えないのですが」

小蒔「それにくわえて………媒体、というと言い方が悪いかもしれませんが………【道標】となる………」

「………………………」











小蒔「その………【彼】がもっていたとされる、麻雀牌があります」

「………火災現場で見つかった、この焼けて、溶けかけた麻雀牌が………私を、連れていってくれる。そう、思うんです」

春「………間違ってはないと思う。それを、直感で理解する当たり逆に怖いけど………」

小蒔「それでは………話を詰めましょう」

「お願いします。私は――――どうしても、伝えないといけない事があります。そして………」

春「………そして?」







「………一発くらい、引っ叩かせてもらいます。そのくらいは、許してもらえるはずですから」







初美「………わぁお」

巴「………若干、同情しますよ」

春「自業自得………違う、彼が付けないといけない………最後の、ケジメ」

「ええ。それさえさせないで逃がしたりなんて、しませんから」

霞「………くどいようですが。これが、最期の確認です」

.












霞「行かれるのですね――――――――――――――宮永、咲さん」









咲「はい。京ちゃんに………………届けないといけない、言葉と想いが、ありますから」




















.

………ということで。

遅くなってしまいましたが、>>923 >>924 >>925 の方々のリクエストを複合したお話を投下させていただきました

で、この最後の咲さんの事を書いてて、頂きましたリクの他にもいろいろ書きたくなった、というのがありまして………



アティルト
Atziluth ―――――
 流出

胡桃「あなたが例え、誰であろうと」 京太「俺が例え、誰であろうと」
胡桃「あなたが例え、誰であろうと」 京太「俺が例え、誰であろうと」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1433699656/l50)



ということで、もう少しだけ物語を紡げたら、と思います



このスレは埋めてしまっていただいても、残ってたら依頼出すかこちらで使用いたします


毎度のごとく冨樫もかくやの更新ペースですが、もしよろしければお付き合いください



【独り言】胡桃ちゃん、豚さんが容赦ないよ。助けてよ、いいこいいこしてよ………

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年07月12日 (土) 22:29:02   ID: sIYTsidT

おかえりなさい。

今後も期待して楽しみにしてますー

2 :  SS好きの774さん   2014年08月30日 (土) 04:55:45   ID: rXaiNQzn

次の更新楽しみにしてます(^-^)/

3 :  SS好きの774さん   2015年06月11日 (木) 15:34:15   ID: By4ma5py

すげえいい話だった

続きも期待

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