五条「ククク… ここが学園都市ですか」(897)

誰か頼む

五条「よろしくお願いしますね…」

手短に今日から級友となる者達への挨拶を終える

中学生にしては異様に歳を過ぎるその風貌は、周囲の学生達の奇異の視線を集めるのに充分過ぎるものだった

五条(ククク…ここならばと思ったのですが…やはりどこも変わりはしませんね…)

担任より教室の最後尾窓際の席への着席を促され、興味のないホームルームをよそに、窓の外をぼんやりと眺め、小さくため息を吐いた

五条(……学園都市…ここも退屈そうです…)

「どうも、君には超能力の素質があるようだ」

帝国学園の学長にそう告げられたのはつい五日ほど前の事だ

五条「超能力ですか……ククク……今更特段驚きも出来ませんが……」

退屈な学園長の話によると
・自分は超能力の素質がある
・超能力を研究する都市がある
・そこに転校して欲しい
との事だった。

何のことはない、都合の良い戦力外通告だ。

アレイスター「グッ! ば、馬鹿な・・・!? この私が圧倒されるだと!?」

五条「ククク… どうしたのですか? まさかこれで終わりではないでしょう?」

アレイスター「やっやめろ! 助けてくれぇ!!」

五条「…はぁ 曲がりなりにも学園都市のトップがそのザマじゃあ些か拍子抜けですね」

アレイスター「頼む! 何でも言うことを聞く! 命だけは!!!」

五条「別に要求など有りませんよ ただ私の実力がどの程度なのか試したかっただけですし。 それでは御機嫌よう」



五条「ふぅ・・・ 退屈ですね ここにも私の敵となる相手はいなかったようです…」

テクテク

御坂「!?」

佐天「うわっ! 見ました今の人!? すっごいカッコイイ!!」

御坂「・・・」ポー

佐天「あれ? 御坂さん?」

御坂「なんだろ・・・全身に電撃が走ったようなこの感覚」

初春「御坂さん・・・それってもしかして一目惚れってやつじゃないですかー?」

五条(……サッカーの出来ない人間の座る席はありませんか……)

「行ってくれるね?五条君。何よりも君の為なんだよ」

五条「オレのためですか…クッ…クックック…アーハッハッハッハ!」

気がつけば、笑いを堪える事が出来なくなっていた
オレの為?超能力?馬鹿らしいにも程があります

五条「グフフ…オレが欲しいとは 其処は ヘンな街ですね。」

五条「判りました。行ってさしあげましょう。『学園都市』とやらに」

………「きりーつ!気をつけー!れーい!」

学園都市のとある中学校に転入してから、気がつけば二週間程が過ぎようとしていた
転入したばかりの頃は、先輩方の洗礼を浴びさせて頂いたり、級友の奇異の視線に晒され、あれやこれやと他愛の無い質問を浴びせられたりもしたが、
それももう随分と落ち着いてしまっていた

監獄の様な帝国学園を抜けて少しは色がつき始めたかに感じた視界が、また徐々に色を失っていく様な錯覚を覚える

五条(ククク……まぁ、サッカーも出来ない役立たずにはこの程度が良いのでしょうか…?)

一人でいつもの帰路を辿り、途中で夕食を買う為に家の側のコンビニに立ち寄る

五条(……今日はハンバーグ弁当にしますかね……?…?あれは?)

弁当をかごに入れ、お茶のペットボトルを買おうかと冷蔵棚に歩を進めようとした時
視界に一人の少女の姿が映った

キョロキョロと周囲を伺う少女

レジを打つ店員が気付いていない事を確認すると、手に持ったジュースのペットボトルを素早く学生カバンの中に滑らせる

……万引き…

五条(ククク……随分と愛らしい事を……)

少女がこちらに気付いていない事を確認し、手早くかごに入っていたハンバーグ弁当を商品棚に戻す
カバンを抱えた少女はレジを通る事無くコンビニを後にした
同様にコンビニを後にして、少し小さくなった少女の背中を追いかける

少女は、心なしか早く感じる足取りで次第に人気の少ない方面へ、やがて小さな公園へと足を踏み入れた

五条(さて……ここなら良いでしょう)

五条「待ちなさ」
『お待ちなさい!!』

ハンバーグ弁当とは五条さんかわいい

自分の声を遮る様に、聞きなれない女の声が公園に木霊した

反射的に追っていた少女に目を向ける
違う。彼女は声の主では無い

驚いた様な表情で中空に泳いでいる少女の目線を追う

……声の主は其処に居た

明かりの灯る街頭の上。凛とした空気を纏い、晩秋の月が浮かぶ夜空を背景に、二房の髪が風に踊っている。

『風紀委員です』
先の響きより随分と抑えられた調子で女が告げると同時に、その姿が消え、いつの間にか少女の脇に移動をしていた

『先にお持ち頂いた品、拝見させて頂いてもよろしくて?』

風紀委員。
目の前の女は確かにそう名乗った。
転入して間も無く、級友たちとの他愛ない雑談の中で耳にした事がある。
『厄介事が多いから、風紀委員には関わるな』と。

みるみる内に、視界に色が入っていくのが理解出来た。

ああ、そうだ オレが求めていたのは……

足元に転がる石を、少女に詰め寄る風紀委員目がけて軽く蹴りつける。
小さく風きり音がしたその先で、少女に詰め寄っていた風紀委員の瞳がこちらを向いた。

チッと小気味の良い音がして、風紀委員の頬を蹴った小石が掠める。

陶磁の様な白い肌に走る赤い線。

五条「クッ…クックック…当てるつもりだったんですがね」

『あらあら……とんだ曲者がお潜みだったみたいですわね』

頬に垂れる血を拭い、風紀委員が熱の篭った視線をこちらに投げてくる

五条「クククッ…。さぁ、お嬢さん、もう行きなさい。万引き等とつまらないまねは、もうしないで下さいね」

風紀委員から少女に視線を落とし、言葉を投げる。
呆然としていた少女はその言葉を聴くとハッとわれに返り、一目散に駆け出した。
これでもう、彼女は大丈夫だろう。

『…どういうおつもりですの?』

五条「クックック…いえ、私はまだここに転入したばかりでしてね」

『…?』

五条「欲しいな、と思いましてね…友人が…」

『なッ…!?』

五条「あぁ、何となくあなたの噂を思い出し始めましたよ。
   お名前をお伺いさせて頂けますか?
   確か…『心も体も切り刻んで再起不能にする最悪の腹黒空間移動能力者さん』」

『あら?人にお名前を尋ねるのでしたら、まず御自分から名乗るのが礼儀でなくて?』

五条「クッ…クックック…アーハッハッハッハ!これは失礼!」

再び風紀委員目がけ、足元の石を蹴りつける

五条「五条!オレは五条勝です!以後お見知りおきをッ!」

五条さんは「私」が一番しっくりきそう
まぁ原作が「オレ」ならしょうがないか

当たった。
どう避けようが、命中は免れない絶好のコースだ。

しかし風紀委員の女はフッと一瞬笑みを浮かべると、次の瞬間には忽然と視界から姿を消していた。

『白井黒子ですわ。もう会うことはございませんので、覚えておいて頂かなくて結構ですの』

気配を感じると同時に、脛に鋭い痛みが走る。

痛みの元を探ると、先刻までは何もなかった脛にから金属の棒が生えているのが判った。

あぁ、痛い。痛い痛い痛い痛い。

五条「クックック…アーハッハッハッハ!」

五条「あぁ痛い!これは痛いですよ!白井黒子さん!」

彼女の名を叫び、声がした方へ視線を投げる。

と、視界を塞いだのは革靴の裏だった。

黒子「遅いですわよ」

ゴッと小気味の良い音が頭に反響し、後ろへ倒れそうになる体を無理やり踏ん張らせる。

あぁ、メガネが、割れてしまいました。

五条「…結構なお手前ですね…ッ!」

顔に当たっている黒子の足を掴もうとする。
しかし、右手が空を切ったかと思うと彼女は既に数歩の間合いをテレポートしている。
テレポートを終えた黒子は右手に鉄の棒を持ったまま、声を吐き出した。

黒子「あら?もうおしまいですの?終わらせてもよろしくて?」

視線を上げると、得意げに微笑む黒子の表情が目線に入る。

黒子「メガネも割れてしまわれ……!?あなた、その目は!?」

自慢げな笑みが、瞬く間に恐怖の色に染まっていく。

あぁ、メガネが無かったのか。
なら、彼女も見てしまったのか。

五条「……?どうされたのですか?」

黒子から目線をを外して、脛に刺さった棒を引き抜く。
大怪我をさせる気は無かったのだろう。
浅く刺さった棒は、多少の傷みと流血と共にあっさりと引き抜けた。

黒子「わからない…!?わからないですわッ…!?どうしてわたくしはこんなに…!?」
憔悴しきった表情の彼女が、太ももからありったけの鉄棒を手に持ち、転移をしかける。

あぁ、あれが全部刺さったら、オレはきっとサボテンのでもなれるだろうな。

黒子「お眠りなさいませッ!!!」

カランカランカランッ……
冷たい金属音を響かせながら、いくつもの金属棒が五条の側から地面へと落ちて行った。

黒子「なッ……!?」

彼女の恐怖の表情は一層その度合いを強め、再度その手を攻撃へと走らせる。

カランカランカランッ……
再び五条の座標とは程遠いところから、地面へと落下していく無数の金属棒。

黒子「なんでッ…!?」

瞳にうっすらと涙を浮かべる黒子に向かい、一気に間合いを詰める。
呆然と立ち尽くす黒子の首に、呟いて手刀を落とした。

五条「狂ってしまっただけです……純粋に」

糸が切れた人形の様に倒れ掛かる黒子の体を支え、手近なベンチに横たえ、深く息を吐く。

五条(やれやれ…メガネを割られてしまうとは…オレもまだまだですね)

意識を無くしている黒子に学生服のブレザーをかけてやり、割れたメガネのスペアをかける。

五条(喉が乾きましたね……)

ふと視界の隅に頼りなさげな光を放つ自販機を見つけ、小銭を投げ入れた。
自販機に靴の跡があるが、随分と行儀の悪い輩も居るものだ。

五条(…ガっ!?ガラナ青汁だとッ…!?)

ひとしきりのカルチャーショックを受け終えてベンチに戻ると、黒子はまだすぅすぅと寝息を立てていた。

まるで、先の凛とした表情を張り付かせた風紀委員とは別人の様だ。

五条(ククク…愛らしい……しかし冷えますね……)

眠っている黒子の頬をプニプニとつついてみる。

黒子「うーん……お姉さまぁ……」

五条(……)

無言のまま、頬にホットの缶コーヒーを当てる。

黒子「…あぁッ!お姉さま…ようやく……黒子はシアワセですわあぁぁzzz…」

ヒョイとホットのジュースをどけ、アイスの缶コーヒーと置き換える。

黒子「ヒャっ!!」

寝耳に水、とはこの事だろうか。
彼女は大慌てで目を覚まし、辺りをキョロキョロと見回し始めた。

黒子「……あら?わたくしは……確か…ッ!!」

素早くベンチから飛びのき、敵意の満ちた瞳をこちらに向けてきた。
黒子「あなた……どういうおつもりでッ!?」

言いながら鉄棒を手に握る彼女。

五条「ククク…まずは落ち着きなさい…そして寒くなければブレザーを返して下さい…ヒヒヒ…」

黒子「……?」

不思議そうな顔をして、自身の肩にかかっているブレザーを見る。
数秒の間の後、慌ててブレザーを脱ぎ、こちらに放って来た。

黒子「……敵意は無いんですの?」

五条「ククク……どうだか…ところで白井さんは、ホットとアイスはどちらで?」

言って、黒子の前に缶コーヒーを二つ差し出した。

------------------

黒子「つまり、五条さんはただわたくしとサッカーをされたかっただけだと?」

五条「クックック…性格にはサッカーバトル、ですが…」

ほう、と白い吐息を一息吐いた後に大声で黒子が捲くし立てる

黒子「ッどぅおーーーーーこの世の中に頬が切れるパスを出されるサッカーがあるんですのおおおおおぅ!?」

五条「クックック…アーハッハッハッハ!あんなものまだ序の口です!」

それから黒子を説き伏せるのはとにかく大変だった。

五条「ククク…実際にあるのですよ……ペンギンやら、ラジコンやら……」
黒子「そんなッ!それはどう考えてもハンドですの!」
五条「ヒヒヒ……ビームですからね、あくまで……」

どれほど時間が経ったろうか。
不意に彼女は時計に目を落とすと慌てて立ち上がり、叫び声を上げた。

黒子「あぁーッ!マズイですわ!門限がッ!?」

五条「ククク……話過ぎたか……アーハッハッハッハ!」

黒子「笑いすぎですわ!申し訳ございません、わたくしはこれでお暇させて頂きますわ!」

五条「オレから逃げるのですか?ブザマですね。ヒヒヒヒ…」

黒子「お言いになりますわね……そうですわ、あなたは監視の必要性がありそうですし…」

即興だろうにクオリティ高すぎワロス

ずい、と目の前に黒子の携帯電話が差し出される。

黒子「サッカーをされたくなりましたら、呼んで下さいませ!それから、以後は見知らぬ人に唐突にサッカーバトルを仕掛けませぬよう!」

携帯電話を受け取り、ディスプレイに映る番号を自身の携帯電話で打ち、発信をする。
着信を確認してから、黒子に携帯電話を返した。

五条「ククク……努力しましょう……」

黒子「約束をして下さい!それでは……」

次の瞬間には、彼女はもう忽然と姿を消していた。
吹き抜ける風の冷たさが、つい数秒前までの時間を嘘の様に感じさせる。

五条「クッ…クックック…アーハッハッハッハ!!」

自分でもおかしくなり、腹を抱えて笑った。

五条「サッカー!?オレがサッカーですか!?…アーハッハッハッハ!!」

何故だかは理解出来ないが、サッカーを捨ててここに居る自分も、人を信じやすい風紀委員の少女との出会いも、妙に可笑しくて堪らなかった。

でも、ここは退屈しないで済みそうな場所だ。
何せあんなバケモノじみた少女が居るんだ
。きっとまだまだ楽しい事が沢山あるだろう。

ひとしきり笑った後に、来た道をコンビニへと向けて引き返し始める。

路肩に停まった車のハザードランプのオレンジ色が、妙に暖かく感じた。



……同日・同時刻、とある中学の女子寮……

『…?あれー?黒子なんか嬉しそうじゃん。どうかしたの?』

黒子「んふふ…別に何でもございませんわよ♪」

『電話なんかに向かってニヤニヤして…今日は一段と変ね、アンタ』

黒子「~♪」

-Fin-

熱い土日になりそうだ…

熱い土日になると思ったら日付変わってすぐに終了だと…

いや面白かったよ

もしもしから急ぎで書いたから誤字脱字は見逃して下さいサーセンwww

支援くれた方、本当にありがとうございます
書いてて自分の文章能力の無さに辟易したわ
私的にキリの悪いトコなんだけど、明日朝から仕事なんでお嬢に一票入れて寝ます

もし残ってたらまた続き書き来ますねー

五条さんの眼の伏線くらいは回収しておくれ。

すまんがいつ頃帰ってくるか教えてくれ、その方が保守しやすい

>>93
投げっぱなし嫌なんでしっかり回収しますwww

>>95

来れるとしたら明日の21時頃になると思います

五条『ヒヒッ…幻想ですって?お前が見ているのは現実そのものですよ』

五条『ベクトルなんかじゃ計れませんよ…サッカーはね…』

五条『ククク…お前が天使なら俺はペンギンですかね』


―――狂え、純粋に

五条×学園都市SS製品版
2010年11月20日発売

五条「ククク…なるほど貴方もオレと同じなのですね
上『条』先輩…」

ワンピースの「D」みたいに言うなwwwwwwww

          , ‐,ニヽ
         /: : /:::::Λ

          {: : :l:::::/┴ゝ、
    _  / _\:|::/ ‐‐- ._ \
    \У/  __`二 ___  \ ヽ _

     〈 / _ァ',ニ㍉  ィ,ニヽ  、}/
       V| ! ヒ_ノ  ,  ヒ_ノ }ヽ    お前が一位になるってなら
       >:|   , -‐―‐- 、   |V その幻想をブチ殺す!
      |_/l   V´ ̄ ̄`V  l::| /
    /⌒く⌒ヽ._\  /  Λ「
   /  / ̄ヽ __ノ_  ̄  _ イ
  ヽ    / >/|`  ´[ \
   \    ´ ):::\ /:::::/ ー-


てすてす

保守下さった皆さん、本当にありがとうございました

何にも考えずに書いた昨日のミスで、多少原作と設定の違う場面が出て来ますが、笑って許して頂ければ幸いです

以下、投下開始します



……夢を見ていた。

顔をみなくなってより、さして久しくない友人たちに囲まれて、フィールドを駆けている自分の夢を。

隣を走る友人の一人が、自分に微笑みかけてパスを出してくる。
ボールを受け取りドリブルをしながら自陣を駆け上がり、パスを出す友人を見定めようと周囲を見回す。

と、飛び込んでくる視線。視線。視線。

相手チームは元より、先の瞬間まで笑みを交わしながらプレーしていた友人までもが、
得体の知れない"何か"に対する恐怖を宿した眼差しを、自分に向けてくる。

五条『え……?』

視線。深く突き刺さる視線。

チームで最も信を置いていた、鋭い目をした友人が怪訝な視線のまま言葉を吐いた。

『……なぁ……おまえ誰だ……?』

体が大きく落下する様な感覚に瞼を開き、半ば錯乱した状態で慌てて上体を引き起こす。
視界に飛び込んでくる、薄暗い自分の部屋。

枕元のペットボトルに手を伸ばして、中の水分を一気に飲み下す。
夢か、あぁ、夢だったか。
深く息を吐いた後にブラインドを薄く開けると、季節に押される様に昇るのを逸る太陽が、東の空を茜色に染めている様に思わず目が細まった。

身なりを整え、幾分か通い慣れた道のりを、サッカーバッグを引提げながら歩を進る。
かれこれ半年以上も繰り返した、何という事のないいつもの朝だ。

『や……やめて下さい!』

登校の最中、不意に人通りの少ないわき道に目をやると気弱そうな中学生が数人の高校生に囲まれ、胸倉を掴まれているのが見えた。

五条(……ククク……朝の体操には丁度良いですね……)

『おい、ジャンプしろって、ほら早く!ジャ・ン・プwww』

『やめて下さい……やめて下さい』

『ヒャッハー!聞いた!?【やむぇてくださいー】だってよwwww』
『さっさと出さねぇt』

ゴゥッ!
轟音と共に、顔にサッカーボールを張り付かれながら、高校生の一人が吹き飛んだ。

『ッ!?』

五条「ククク……遅いですよ……」

慌てて向き直ってくる高校生に素早く駆け寄り、勢いを殺さずにその鼻先にローファーの底を押し付ける。

『野郎ッ!!』
五条「フヒッ!」

一番屈強そうな男が振り上げた拳を掻い潜り、その鳩尾に体重を乗せた拳を叩き込んだ。

『グァっっ!!』

盛大に胃液を吐き出した男を見下ろす。

『お……覚えてやがれ!』
げえげえとえづく男を放置したまま、残りの数人は背を向けて駆け出して行った。

五条「弱すぎですね、出直してきなさい。クッ…クックック…アーハッハッハッハ!」

昂ぶった感情のまま勝どきを上げていると、先刻まで胸倉を掴まれていた中学生がおずおずと傍に寄ってきて、こちらをちらちらと伺いながら口を開いた。

『あの……ありがとうございます……』

五条「ヒヒヒっ……構いませんよ……」

『じゃあぼk』
五条「あぁ、まだ行かないで下さいね……逃げたら怒りますよ……」

『!?』

少し驚いた表情の中学生をよそに、胸ポケットから携帯電話を取り出し、電話帳から一人の少女の電話をコールする。

五条「……ククク……おはようございます、ですかね。早速で済みませんがお仕事です…えぇ……いや、オレじゃあないですよ……ヒヒ……オレの座標は……」

携帯電話を耳に当てながら会話を続けていると、えづいていた男がよたよたと立ち上がろうとしているのが見えた。
電話を耳に当てたまま、よろける男のあご先に蹴りをいれ、意識を手放すのを確認する。
五条「……えぇ。待っていますよ。風紀委員さん……」

--------------------------

『どぅおおおしてアナタは毎回そうですのおおおッ!?』

テーブルを挟んで向かい側に座る少女が、金切り声を上げた。

五条「……まぁそう熱くならずに……イチゴサンデーで良いですか?……」
『…えぇ!よろしくって!』

五条「……クク……イチゴサンデーとアイスコーヒーを一つ……ミルクとガムシロはアリアリで……」

手早く注文を済ませ、甘味の名を聞いた途端に爛々と目を輝かせ席につく少女に目線を送る。

『~♪』

先の咆哮は一体なんだったのだろうか。
窓際の小さなテーブルで、左右に一房ずつ束ねた髪を午後の日差しに梳かせながら鼻歌を歌っている風紀委員の少女、白井黒子がそこに居た。

ころころとその豊かな表情を変える彼女の様は、実に見ていて飽きが来ない。

黒子「……って、誤魔化されませんわよ、わたくしは!」

あ、帰ってきた。

黒子「……いい加減にして下さいませ!あなたはこの学園都市に転入数ヶ月、ご自分で起こした暴力事件の数を覚えておいでですの!?」

五条『……ククク……五件…?』

黒子「そのざっと20倍ですわッ!」
黒子「事件を起こさない日の方が珍しく!多い日は一日に三件!四件!どこからも被害届が出ていないのが奇跡的な数値でしてよッ!」

五条『……そりゃあ……きっちり口は塞いでいますからね……ヒヒヒ……』

黒子「塞がないで下さいませッッ!!」

程なくして届いたコーヒーにミルクとガムシロップを加え、攪拌しながら彼女の言に耳を傾ける。

黒子「そもそも毎度後始末をさせられるわたくし達風紀委員の身のもなって下さいませ!
あなたの行動はやれお婆さんを苛めていたからだの、やれカツアゲをみかけたからだの、イチイチ筋が通り過ぎてなくて!?
自己主張以外にお説教の方法がありませんわよ!この間の銀行強盗も能力者でなかったからよかったものの…… 」

「と『の違いは何なんだ?

くどくどと言葉を吐く彼女に目線をやる。

黒子「あなたはもっと過剰防衛という言葉をご理解下さいm……」
五条「すみません……」

黒子「ッ……!?」
呆気にとられたのだろうか。目線がぶつかり、プイと目を逸らした彼女に言葉を続ける。

五条「……クク……本当にいつもすみません……反省はしていますよ……もちろん、感謝も……」

黒子「もう結構ですわッ!と・に・か・く!以後はご自重下さいませッ!」

絶好のタイミングでテーブルの上にサンデーが置かれた。
途端に彼女の表情から険がとれ、子どものような表情でサンデーのスプーンを握る。

朝の一件の侘びとしては、効果は覿面だった様だ。

五条「ククク……アーッハッハッハ!」
本当に、飽きない。

--------------------------

黒子「あの件、考えて頂けましたの?」

五条「……?あの件?」

黒子「先日お話しましたでしょう、風紀委員入りの件ですわ」

五条「……」

夕刻にはまだ遠い暑さの残る町並みを、白井と肩を並べて歩く。
不意に問われた質問の返答に困っていると、彼女は言葉を続けた。

黒子「貴方のポテンシャルの高さと、悪人ではないという人間性は重々承知しております。
モチベーションをぶつける場所がなく、過剰防衛に力を注いで正義に縋りたいお気持ちも理解致します。」

五条「ククク……」

彼女なりに正当な評価をくれているのだろう。少々むずがゆい。

黒子「ですので、我々風紀委員としましては、是非あなたの様な人材にこそ、お力を貸してほしいのですわ」

五条「……」

凛とした彼女の表情に、少し気持ちが揺らいだ。
きっとこの揺らぎは、世間一般の健常な男子ならば誰もが認めうるところだろう。

揺らぎを隠す様に、慌てて言葉を紡ぐ。

五条「……ヒヒヒ……集団行動は苦手です……」

黒子「はぁ……わかっておりましたけどね」

五条「すみません……」

黒子「まぁ、気長に貴方の心変わりを待ちま…!ッと、ごめんあそばせッ!」

五条「相変わらず忙しいですね」

黒子「……えぇ、おかげ様でッ!」

歩を止めて携帯電話を耳に当てた彼女を振り返らず、肩越しに手だけを掲げて別れを伝える。

『明日から夏休みですわよーッ!この街の治安も多少乱れますので、色々とご注意遊ばせーッ!』

少し遠くから、彼女が自分の背中に投げた声が響いた。

--------------------------

七月二十日 夏休み初日

夕闇の中を、一人で歩いていた。

昨晩の異常気象の影響で冷房の切れた部屋で目を覚まし、
着慣れた私服に着替え、何をするでもなく街に出る。

いつも通り、代わり映えの無い休日。

モノレールに揺られ、困っている人を探す。
人通りの少ない路地裏を歩き、声をかけてくれる相手を探す。

ガラの悪い連中が屯するコンビニエンスストアで、彼らに熱い視線を送る。

体の良いフラストレーションをぶつける相手を探して歩くも、いつもより心なしか熱を帯びた町並みは確たる遊び相手を提供してくれはしなかった。

五条(……まぁ、暇なものですね。良い事なのでしょうが……)

最寄の停車場でバスを降り、休日を無為に潰した多少の不満を抱えながら家路に着く。
途中コンビニに立ち寄り、夕食のハンバーグ弁当とお茶を購入し、家までの短い道のりを再び歩き出す。

不意に、視界の隅を赤い光が掠めた。
少し離れたところにある団地の一角で、夕闇に溶け込む様に炎が燃え上がっている。

五条(……火事、ですかね……?)

湿気の多い夏場に火事とは、随分とまぬけな輩もいるものだ。
早々に帰宅して睡眠不足気味の体を休めたいものだが、目にしてしまった以上、黙って立ち去ってしまっては些か寝つきが悪い。

五条(……行きますか)

コンビニの袋を片手に、駆け出す。
可能な限り最短のルートでマンションへの道を駆け、火の元が上がっていたフロアの踊り場へと飛び込む。

刹那

ごうごうと唸りを挙げ、目前の廊下を炎が埋め尽くした

五条(ッ……!?)

慌てて廊下から飛びのき、炎の頃合が収まった頃合を見て、廊下の様子を伺った。
鳥の巣の様な頭をした男子高校生と、背の高い赤紙長髪の男が対峙する様が見て取れた。

五条(ククク……能力者同士の戦いでしょうか……さて、悪人はどちらでしょうか…?)

『そうか、やっとわかったよ……歩く教会が誰に破壊されたのか……』

赤毛の男の呟きを受け、鳥の巣頭の高校生が静かに赤毛に歩み寄る。

『世界を構築する五大元素の一つ…』

男がなにやら呟き始めると、何も無かった空間より次々に炎が舞い上がりそれは男を中心に、渦を巻く描きながら徐々に収縮していった。

『顕現せよ!わが身を喰らいて力を成せ!!』

収束していった炎が、一気に爆ぜて人の形を形成した。
途端、熱気が周囲を包み、異常なまでの熱が一体を包む。
熱気の中心に平然と立つ赤毛の男が、役者を想起させる様な気取った口調で語り始めた。
『魔女狩りの王、イノケンティウス……その意味は…"必ず殺す"』

周囲の熱気を震わせながら、炎の巨人が高校生に襲い掛かる。

「邪魔だッ!」

巨人の一撃は、高校生の右手の一振りによって払われ、その姿もいずこかへと霧散
していた。
隙を見計らい高校生が歩を前へと進める。

再びその背後で燃え上がる炎。そして形を成し、高校生へ襲い掛かる魔女狩の王。

甲高い音と共に巨人の一撃を高校生が受け止め、拮抗した体制のままにらみ合いが始まった。

五条(あぁ……なんてッ……なんて楽しそうなッ……)

そろそろ飛び込むべきか、しかしどちらが悪人なのだろうと迷いながら両者の様子を見ていると、唐突に鉄火場にふさわしくない女の声が響いた。

『ルーン…神秘、秘密を指し示す24の文字にして……』

五条(……?女?)

よくよく場を伺い直してみると、炎の巨人を従える赤毛の男の脇に、白い修道服を纏った影が倒れていることに気がついた。

変わらずよく理解の出来ない何かを呟き続ける女性の様な影に赤毛の男が近づき、その頭を踏みつける。

一瞬で、停止する、女性の、呟き。

その時、耳の奥でキックオフのホイッスルが聞こえた。

--------------------------

『灰は灰に。』

赤毛の男の右手に、赤い炎が灯る。

『塵は塵に。』
『吸血殺しの紅十字ッ!』

二条の熱線が交差し、高校生に襲い掛かる。

慌ててこちらへ身をかわした高校生と一瞬目が合った。
互いに言葉を交わす余裕も無く、体を交差して入れ替わる様に熱線の前に躍り出る。

……懐かしい感覚だった。

足先に集約したエネルギーで、炎の塊を蹴り飛ばす。
衝突を起こした二つの熱量が、眩い光と共に轟音と豪風を巻き起こす。
後方に身を捻って赤毛の男と巨人の間に立ち、辺りを包む熱風と黒煙の中、高揚する自分を抑えきれず、呆気にとられる赤毛の男に向かい声を上げた

五条「ククク……アーッハッハッハ!イイ!貴方は最高にイイですよ!」

『なッ…!?何者だ!?』

五条「ククク…オレですか!?オレは五条勝!!旧帝国学園が五番にして、守りの要として蹴球に血涙を捧げた、ただの中学生ですッッ!
今から貴方を蹴り飛ばしますよ!
以後、お見知りおきをッッッ!」

表情に張り付いた狼狽の色を押し込め、平静を装いながら赤毛の男が名乗りを上げた。

『……まぁいい、ステイル=マグヌス Fortis931 だ!不幸な中学生ッ!』

いつの間にか背後の巨人が消失し、赤毛の男の名乗りと共に、自分の前に立ちふさがっていた。

五条「アーッハッハッハ!行きますよ!931さんッ!」

赤毛の男が、その手から火球を走らせる。
力を込めた足でその火球を蹴り飛ばし反動を殺さずに、炎の巨人の一撃を掻い潜る。
巨人の脇を抜けると同時に、男に向けて駆け出す。
瞬く間に背後の巨人が、男と自分の間を塞ぎ、熱気を迸らせる。
前髪から少したんぱく質が焦げる匂いがしたが、別に構わない。

五条「ヒヒヒヒヒ!随分とご主人様に過保護な巨人さんですね!」

ステイル「そうかいッ!」

再び猛然と襲い掛かりくる巨人の脇をすり抜け、ステイルへと肉薄する。
が、巨人の背に隠れて見えなかったステイルの両の手には、いつの間にか炎が灯っていた。
ステイル「吸血殺しの……」

五条(……ッ!!)

ステイル「紅十字!」

至近距離から、避ける間も無く五条の体を十字のの熱線が貫き、その影を赤く染め上げる。
灰も残らず五条の影が燃え尽きたのを確認してから、ステイルは紫煙を吐き出した。

ステイル「ふぅ……やり過ぎたかなぁ……残念だったね」

右手に灯った炎を握りつぶし、言葉を続ける。

ステイル「まそんな程度じゃ何回やっても勝てないt」
五条「歯を食いしばりなさい」

ゴっ
ステイルの鼻先を、五条の足が蹴り上げる。
体制を崩したステイルを追撃せずに、五条はバックステップで再度巨人とステイルの間に距離を置いた。

五条「分身の一つや二つも見破れないのですか?弱すぎですね、出直してきなさい。クッ…クックック…アーハッハッハッハ!」

分身できるわ時は止められるわ滅茶苦茶強いぞ流石だ五条さん!

数メートル程の距離を蹴り飛ばされたステイルを守る様、またも魔女狩の王が五条とステイルの間に現れる。
その背後でより一層の熱気を纏い、赤毛の魔術師が立ち上がった

ステイル「……許さない、このボクに傷を負わせたこと、三度消し炭にしても許しはしないぞッ!」

五条「あぁッッ!イイッッ!さぁ来なさいッ!全力で!全霊で!狂えッ!純粋にィィィィィッッ!」

…ざぁっ

正に互いが全力でぶつかりあわんとした刹那。
唐突に雨が辺り一面に降り注いだ。

……室内に雨?

急激に冷めた頭で、天上を見上げる。
辺り一面のスプリンクラーが、忙しそうに水を吐き出している。
意気を削がれたのは相手も同様なのだろうか、いつの間にかステイルを守っていた巨人は消失し、彼の纏っていた熱気もまた消えうせていた。

パシャッパシャッ

互いに呆けて見合う廊下。
室内に降る不思議な雨音に混じって、誰かの足音がこちらに近づいてくるのがわかった。
すうッと廊下の隅から先の高校生が姿を現した。
パシャパシャとこちらへと歩み寄ってくる高校生と、再度視線を交わす。

五条(随分と真剣ですね…あぁ、そういえば、もともとこれは彼のサッカーバトルでしたか)

先の怯えが消え失せて、覚悟に引き締まった表情をした高校生に向かい、高らかに右手の平を掲げてゆっくりと歩み寄る。

その様を見た高校生はこちらの意を介したのか、フっと軽く微笑むと、右手を挙げようとして一瞬の逡巡を見せ、左手を掲げた。

彼の行動は理解出来ないが、右手と左手では余りに不恰好が過ぎる。
彼に合わせて左手を掲げ、わずかに進路を変えて彼の左手を叩いた。

ぱぁーん!

互いに水に濡れているにも関わらず、合わせた手は存外に乾いた音を響かせた。

--------------------------

階下で待つこと数分。
あれだけの火災と爆発が起こっていたのだから至極当然の事ながら、階下には既に消防車が到着しようとしていた。

消防車と共に、アンチスキルらしい影もちらほらと見られる。

ほう、とため息を付いて回転灯を眺めていると、先の高校生が酷く慌てた様子で階段を駆け下りてきた。

『……ッ!っとアンタは…』

シスターを背負った高校生は、立ち止まり、こちらに言葉を投げてくる。

五条「ククク……オレは五条勝です……」

『そうか!オレは上条、上条刀麻!ゆっくり礼の一つでもしたいんだけど…』

五条「ヒヒヒ……それどころじゃあないですね…逆の階段から一階に下りると良い…
そこならばまだアンチスキルも居ませんよ……」

上条「ッ~~!本当にありがとうございますッ!」

五条「…フヒヒヒヒッ…きっと貴方とはまた会えそうですね……」

上条と名乗った高校生は深々と礼をすると、逆側の階段へと駆けていった。

五条さん中学生だと認識されてないなこれはwwwwwwwww

五条(さて、きっとここからが一番疲れるところですね…)
上条の背を見送り、自身はそのまま階段を下る。
一階まで下りきったところで、数名のアンチスキルが自分を囲んだ。

『君、今上の階に居たのかな?』

五条「…ククク…えぇ…【そうだ。】と行ったらどうされますか…ククク…」

アンチスキル達の顔に、途端に険がおりる。

『すまないけど、話を聞かせt『まあああああああたあなたですのおおおおお!?』』

数名のアンチスキルを掻き分けて、金切り声を上げながら見慣れたツインテールの少女が姿を現した。

五条「ククク……アーッハッハッハ!すみません!またオレですよ!…ククク…」

黒子「まったくっ……大変申し訳ありません皆様、彼は風紀委員の者ですの!」

五条「ヒヒヒ…」

『そうか……まったく、あまり現場をかき回さないでくれよ!』

黒子「オホホホ……以後留意しますわ。それでは……」

黒子に手を握られた次の瞬間、既に辺りの景色は雑踏を抜けた街路へとすりかわっていた。

五条「ククク……相変わらず便利な能力ですね……」

何度経験しても慣れない状況に感嘆しながら、握られた手を離そうと……否、握られた手が離れない。
彼女の手は段々と力を帯び始め、ギリギリと自分の手の骨が軋む感覚がする。

黒子「何があったかお話して下さいますわね?五条さん」

端正な顔に満面の笑顔を貼り付けたまま、彼女がこちらを向き直った。

五条「ククク……ヒ・ミ・ツぁ痛い!痛い!…ククククク……」

満面の笑みを一転し、鬼神の様な表情になった彼女の金切り声を浴びながら、あのどう見てもワケありにしか見えない連中をどう誤魔化したものだろうか、等と考えていた。

初日からこの調子ならば、きっと良い夏休みが送れるだろう。
明日が純粋に楽しみに感じるこの感覚は、何時以来のものだろうか。

黒子「ちょっと!聞いておられますの五条さん!」

唐突に大きくなった黒子の声で、我に返った。
視線を落とし、繋がれたままの右手を眺める。

黒子「……?どうされましたの?」

五条「ククク……意外と暖かいのですね、オマエの手は…ククぁ痛い!」

夜だと言うのに、夏を急ぐ蝉の声が辺りに響き渡っていた。

-fin-

乙!
保守は任せろ!

以上本日の投下分となります
支援&保守を頂いた皆様、お疲れ様でした、ありがとうございます

いやね、2日もありゃパパっとシメまで行けんだろーと思ってたんだけどもうgdgdですわ
上条さんファンには本当にごめんなさいですわ

一応シメまでの流れは決めてあるので明日一日書き貯めて、また夜からでも区切り毎に随時投下しようかと思います
お嬢に一票入れて寝ます

アンチスキルってなに?
おれ五条さんしか知らないから
そこだけわかんない。

保守時間目安 (休日用)
00:00-02:00 40分以内
02:00-04:00 90分以内
04:00-09:00 180分以内
09:00-16:00 80分以内
16:00-19:00 60分以内
19:00-00:00 30分以内

保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 60分以内
02:00-04:00 120分以内
04:00-09:00 210分以内
09:00-16:00 120分以内
16:00-19:00 60分以内
19:00-00:00 30分以内

>>321
ggrks

不良「五条勝?
憲法9条の条、「勝」つ?
けっ!
これからてめーを条勝!
ジョショって呼んでやるぜ!」
「コラ!さっさとぬがんかいッ!バスが来ちょったろがッ!チンタラしてっとそのキューピーみてーな頭もカリあげっど!」

五条「おい…先輩あんた…今おれのこの頭のことなんつった!」ユラリ

空条「なにッ!『スタンド』!」

保守頂いてる皆様、本当にありがとうございます

本日分の投下ですが22時頃から開始させて頂こうかと思いますので、よろしくお願いします

七月二十一日 夏休み二日目


『あんだテメーは!?あぁん!?』

五条「ククク……少々お尋ねしたい事がありましてね……」

『ハッ!能力を得た俺に勝てたら教えてy』
ゴシャッ

サッカーボールが、眼前の男の顔にのめり込み、体格の良い男が仰向けに倒れる。
駅からは随分と離れ、うらぶれた空き地の一角に、チンピラ風の男と向かい合う五条勝の姿があった。

倒れた男の顔を覗き込み、彼は言葉を投げる。

五条「……オレの勝ち、ですかね……さぁ、知っている事を話して下さい……」

五条「幻想御手(レベルアッパー)についてね……ヒヒヒ……」

--------------------------

五条「……幻想御手?ですか……?」

手元のアイスコーヒーを攪拌しながら、テーブルを挟んだ対面、凛とした表情で話を切り出したツインテールの空間移動能力者の少女に質問を投げかける。

黒子「えぇ。簡単に申し上げますと、無能力者は能力を得ることが、能力者は能力を強化する事が出来ると言われている、"何か"のことです。確証は無いのですけれども、これが原因で昏睡状態に陥ったり、暴力的事件を起こす学生が相次いでいるという少々厄介な代物ですの」

真剣な表情で話を続ける彼女。
珍しく彼女の方からの連絡を受けたので、昨晩の説教の続きを覚悟して喫茶店へと足を運んだつもりが、思わぬところから暇潰しの種が転がり込んできたものだ。

五条「ククク……確かに最近、攻撃的な学生が目に付く様になっている気がしましたが……随分と大事になっていたのですね……」

黒子「そこで、わたくし達風紀委員としましては、以下の三点を目標として事態に対処する運びとなりましたの。
一つ、昏睡状態に陥った学生の回復。
二つ、幻想御手の拡散の阻止
そして三つ、幻想御手を製作して流通させた方の、拘束」

五条「……ほう…」

黒子「ここまで伝えればおわかりになるかと思いますが、事態は相応に逼迫しておりますの……五条さん、あなたの手をお貸し下さいませ」

真剣な表情を崩さぬまま、黒子が頭を下げる。

五条「……あまり気乗りがs『もしご尽力頂けるのであれば!』」

言葉を紡ごうとした途端、被せる様に黒子の声が響く。
明らかに変化した声のトーンの元に目をやると、先の真剣な表情を一転させ、得意げな笑みを浮かべている腹黒空間移動能力者がそこに居た。

黒子「わたくし嬉しさのあまり、昨晩の火災現場で見たものを忘れてしまうかもしれませんの!」

いい終えると、フン、と得意げに彼女が鼻を鳴らす。

黒子「さて、お返事をお聞かせ下さいませ!」

勝ち誇った笑みのまま告げる彼女に、言葉を吐いた。

五条「……ククク……やりましょう……」

元より拒否する気のなかった格好の暇つぶしに、先の借りが帳消しになるおまけまで付いてきたのだから断る由は無い。

再び表情を変え、嬉しそうな笑みで密売人のアジトと思しき場所が記された地図の束を取り出し、それじゃあわたくしはこちらを、あなたはそちらを、合流はこちらの地点で…と話を続ける彼女の話を適当に聞き流しながら、今日の暇つぶしについて思いを馳せていた。

昨晩に続き、やはり幸先が良い。

黒子「どうかされましたの?」

彼女の声にふと我に返ると、地図に指を走らせたまま、上目遣いでこちらに視線を投げる彼女と目が合った。

少し、呆けていた様だ。

五条「…これは失礼、なんでもありませんよ…ククク……アーッハッh!」
『すみませんお客様…』

不意にウエイトレスに声をかけられる。

『他のお客様のご迷惑になられますので、あまり大声での談笑は…』

怒られてしまった。

--------------------------

五条「さて……話して下さいますね?幻想御手について……」

仰向けに倒れたままの男の鳩尾に足を置き、言葉を投げる。

『し……知らねぇ!俺は幻想御手なんてしらgっ!』

鳩尾に置いた足を少し浮かせ、体重を乗せて沈める。
苦しさで転げまわりそうになる男を足で押さえつけ続け、男が落ち着いた頃合を見て、再度言葉を投げる。

五条「……話して下さいますね?幻想御手について……」

男は慌ててズボンのポケットに手を突っ込み、一台の携帯音楽プレーヤーを取り出した。
『コレだ!これが幻想御手だっ!』

今一度鳩尾に置いた足を少し浮かせ、体重を乗せて沈める。
先と同じく苦しさで転げまわりそうになる男を足で押さえつけ続け、男が落ち着いた頃合を見て、三度言葉を投げる。

五条「……話して下さいますね?幻想御手について……」

『だ……だからコレが幻想御手だって……』

再び差し出されるプレーヤー。
プレーヤーを男の手から引ったくり、言葉を続ける。

五条「ヒヒヒ……本当だというのに苦しめてしまってすみませんね……で、売人の方はどちらですか?」

『言えねぇ!それだけはかんb「爪と肉の間にスチールブラシを入れるのはお好きですか?」』

--------------------------

……全力で駆けていた。
可能な限り最短距離を、早く、早く。

先に尋問を行なったチンピラ風の男が指し示した密売人達の居所。
それは奇しくも黒子と合流する予定地点のすぐ直近だった。

五条(由々しい事態ですね……)

単純な戦闘時間の違いを廃しても、徒歩で移動を行なっている自身より空間移動能力者の彼女の方が合流地点に早く到着するのが道理だ。
そして彼女の性質を考えると、最寄に密売人達の姿を見つけてしまった場合、自分の到着を待っているとは思えない。

行く手を塞ぐ金網に足をかけ、跳躍する。

五条(……)

黒子の能力を侮っているわけではない。
事実彼女の能力は、これまで数十回に渡り対峙をして来た低レベルの能力者のそれとは一線を画している。

しかし今日の彼女からは、明らかに普段以上の疲労が見て取れた。
ましてや、相手が密売に携わっている能力者ならば、通常の能力者より上位のレベルである可能性が高い。

それが複数の相手ならば、いかに彼女といえど危機に晒される可能性は充分過ぎる程だ。

差し掛かった大通りの歩行者用信号が赤なのが視界に入るが、行き交う車のリズムを読み、その隙を縫う様に一気に走り抜け、合流予定地点へ駆ける。

そこに、彼女の姿は見当たらなかった。

足を止めずに、直近の密売人の居所に向かい走り続ける。

次第に聞こえ始めた喧騒が、自身の直感が誤りでなかった事を認識させ、一段とその足を加速させる。

密売人が屯する廃ビルへの曲がり角を曲がった時、その光景が視界に飛び込んできた。

背の高い男が放つ回し蹴りをもろに受け、くの字に体を折り曲げながら、廃ビルのショーウィンドウへと吹き飛んで行く、白井、黒子。

がしゃあん、と言うガラスの破裂音は、試合開始のホイッスル代わりとしては充分過ぎるものだった。

--------------------------

『なぁにやってんだぁ?まさかもうテレポート出来ねぇってんじゃねぇだろうなぁ?』

黒子の放った金属棒が反れ、廃ビルの中へと男が足を進める。

『けどなぁ…こっちゃあまだ遊び足りねぇんだよ!』
「ククク……奇遇ですね……私も遊び足りなくて難儀していたのですよ……」

その男の背へ、声をかけた。

『誰だ!?』

「……ヒヒヒ……貴方に名乗る名はありませんよ!」

男へ向けて駆け寄り様に身を沈め、残像が残るほどの速度で、多数のスライディングキックを放つ。

間違いなく男に命中するはずであったその足は中空をかき分け、あらぬ方向から衝撃が襲い掛かってきた。

五条(ほう……)

男の蹴りをあばらに受けながらも勢いを殺さずに滑りぬけ、男と黒子の間に身を起こし、再び男と対峙する。

黒子「五条さん!?どうして来ましたの!?あの程度ならばわたくし一人で「白井さん」」

背を向けたまま、抗議の言葉を遮り黒子に言葉を吐く。

五条「……ビルの外でお待ち下さい……貴方には見られたくない…ククク…」

黒子「しかし!お二人の方が「黒子!」」
五条「ビルの外で待て……俺を、信じなさい」

一瞬驚いた表情を浮かべた彼女が、真剣な表情に戻り、こくりと頷くとその姿を消した。

『ハハハハハッ!オマエが変わりに遊んでくれるのか!?色男さんよぉ!』

叫ぶと同時に、男が遠間からナイフを投擲してくる。
男が立っている場所とは異なる地点より飛来するナイフ。

五条(…間違い無さそうですね……拍子抜けしました)

迫り来るナイフを右足で蹴り上げ、ため息をついた。
かつッと小気味の良い音が響き、ナイフが天井へと突き刺さる。

『……おおお!やるじゃねえか!…?どうした?まさか?ビビッっちゃt「少し黙りなさい」』

男の言葉を遮り、その目を強く見据える。
濁った瞳だ。何の光も宿してはいない。

五条「貴方には、お二つ罪状があります……」

五条「一つ目は……」

足元のガラス片を、先にナイフが飛んできた箇所へと蹴り飛ばす。
ピっと音がして、正面に居るはずの男の頬が切れた。

『なッ!?』

五条「光学迷彩…?の一種ですね、きっと…こんな瑣末な能力を私に披露して、私を期待させ、尚且つ裏切った。これが一つです」

五条から発せられる威圧感に、男は次第に狼狽していく。
目の前の、この悪魔の様な風貌の男は一体なんなのだ。
憔悴しきった表情の男を見ず、先にガラス片を蹴った場所を見据え、五条が言葉を続ける。

五条「残念です……能力如何では、貴方とは良い友達になれたかもしれないのに……」

右手を伸ばし、左手を目頭に沿え、大袈裟に嘆く様なジェスチャーを取り、静止する。

五条「そして二つ目は……」

メガネを外し、男が居るであろう中空を見据えた。
幻の男が霧消し、中空であった箇所に男の姿が現れる。

五条「……言うに、及びませんね……貴方は極刑です!…ククク……!」

『ひ……ひいいいいいいいい……!』

視線を投げると同時、叫び声と共に、男が地に両膝を付く。

五条「おや、腰が抜けてしまったのですか……ならば、【そんな腰はもう要りませんね】」

男に向かい歩を進めながら、再度言葉を紡いだ。

『ああああああああああああああああああああああ!!!』

男の股間が急激に濡れはじめた。

五条「おやおや……みっともない……さて、次は……」
『ああ!!なんなんだよオマエえええええ!!!くるな!くるなああああ!』

男が上半身のみで、再びナイフを投擲する。
五条とは検討違いの中空に向かって。

五条「そんな腕も…【もう要りませんね】」

『うわああああああああ!!!』

絶叫と同時に、男の腕が力なくだらんと垂れ下がる。

五条「次は…頭ですか?心臓?肺?眼窩の奥も捨てがたいですかねぇ…」
『あああああああああああああああ!!……』

男が白目を剥いて卒倒した。
……少々脅しが過ぎたかも知れない。
多少の頭痛を堪えてメガネをかけ直し、男の襟首を掴む。

男を引きずりビルを出る頃には、既に外にはスキルアウト達が到着していた。


--------------------------


黒子「……あの、五条さん?」

五条「……?どうかされましたか?ククク……」

スキルアウトに男の身柄を引き渡し、一部始終を追えて一息ついていると、傍らの黒子がおずおずと口を開いた。

黒子「五条さん……で間違いございませんわよね?」

五条「……ククク…変な事を言いますね…私は五条ですよ、五条勝です……」

黒子「……そうですわよね、わたくしったら…何を…」

五条「さて、お互いの報告をまとめましょうか……」

--------------------------

黒子「それじゃあ、わたくしは一度本部に戻りますわ、今日は本当にありがとうございました」

夕闇の中、ペコ、と頭を下げる黒子に右手を掲げて答える。

五条「ヒヒヒ……構いませんよ、いつもあなたには迷惑をかけている……」

黒子「それとこれとは話が別です!では…「あぁ、ちょっと待ちなさい!」!」
空間を転移しようとした黒子を呼びとめる。

黒子「何ですの?」

きょとんとした顔の彼女に、言葉を続けた。

五条「……あまり、無理をしないで下さい……ヒヒヒ……」

惚れた

黒子「ふぅ……バレてましたの?まぁ、お互い様ですわね、きっと」

ため息を付いた後、悪戯っぽく微笑んで彼女が続ける。

黒子「随分と息を切らしておりましたけど、現場まで走って来て下さったのですわね……嬉しかったですわ!」

言い終えて、彼女の姿が消える。

五条(ククク……)

少し痛む眼球に彼女の笑顔を焼きつけ、帰路に足を向けた。
随分と遠くまで来てしまったものだ。帰りには些か時間がかかりそうだ。

五条(……まぁ、それも悪くはないですね……)
駅から降りる階段の途中、半身を地平線へと投げ出す夕日が写った。

酷く美しく感じたそれに一時足を止め見入っていると、同じく帰路を急ぐ人並みの中の一人の肩がぶつかる。

五条「……おっと、すみません」

ぶつけた人間は返礼もせずに、再び人並みの中へと消えていった。


-fin-

乙!
今度はいつまで保守してればいいんだぜ?

以上、本日の投下分となります

支援&保守を頂いた皆様、ありがとうございました

まず第一に、思ったより長丁場になりそうで困惑しとります
1スレ使いきったらパー速に行った方が良いのか、またVIPに立てるかをもう考えたりしとります

次に×アンチスキル○スキルアウト
皆様のツッコミに、顔真っ赤です

次話以降に関しましては、同じく明日の21時頃の投下(まとまったらもう少し早くなるかもしれません)を予定しております

12時過ぎたら、お嬢に一票入れようと思います

保守頂いている皆様、本日もありがとうございます

私事にて申し訳ないですが、本日の投下を少し早めさせて頂き19時頃から始めさせて頂こうと思います

お時間がありましたら、よろしくお付き合い下さい

待ってた!

『五条勝……【過去の経歴は全て抹消済み】か……』

『……君自身も、影響を感じていた事があるのではないかね?』

光源らしい光源が一つしか存在しない部屋の中。
その光の源となっている、赤色の液体の満たされた円筒状の機器に逆さに浸かった長髪の人間が口を開く。

『端的に伝えよう。君の能力は使えない。いや、【使ってはいけない】』

『実に勿体の無い話だよ……君の原石としてのそれは、第七位の記録をも遥かに塗り替えているというのに……』

『……わかっているね?君の能力は、人の器にはあまりに過ぎてしまっている…もしも能力が乱用される様な事があれば』

『君は』

五条「……ッ!!」

七月二十四日 夏休み五日目

少し体を休めていただけのつもりが、いつの間にか眠りに落ちてしまっていた様だった。
耳元では、午睡を妨げた原因となった携帯電話が、ピリピリとけたたましい音を上げていた。
ディスプレイに写る名前を見て、ほぅ、と軽く息を吐き、通話ボタンを押す。

「……ククク……俺だ」
『五条さん!助けて……助けて下さいまし!お姉さまが!お姉さまが!!』

ただ事ではない様子でがなり立てる少女の声を耳にしながら冷蔵庫を開き、ミネラルウォーターのペットボトルを開き、一口飲み下す。

よく冷えた液体はたちまち乾いた身体に染み渡り、半ば悪夢の最中に置き去りにされていた意識を、無理やり現実へと引き戻してくれた。

五条「……落ち着きなさい。何が起こっているのですか……?」
……今日も、退屈しないで済みそうだ。

--------------------------

『ありゃま。お客さん、こっから通行止めだわ』

面倒そうに車を停車させるタクシーの運転手。
眼前には、検問を張っているアンチスキル達。

五条「……グフフ……こちらで結構です、ありがとうございました……」

運転手に礼を告げ、懐の財布から一万円札を取り出し、眼前に差し出した。

五条「おつりは要りません……コーヒーでもお飲み下さい……ククク…アーッハッハッハ!」

呆気に取られた表情の運転手を残し、タクシーを下車する。
眼前のアンチスキル達に、自身の名を告げると、わずかばかりの照会の時間を経て道が開かれた。

五条(さて……レベル5の方ですか……楽しみですね……ククク……)

毎度ながら、暇つぶしには格好の種を運んでくれる風紀委員、白井黒子の様子が、今日は随分と普段のそれとは異なっていた。

先の電話にて焦燥しきった彼女から伝えられた内容は以下の通り。

・ようやく幻想御手の開発者を特定したのだが、開発者が風紀委員の一人を人質にしたまま逃走した
・アンチスキルが居所を特定し、拿捕の為の作戦行動に出たが半ば壊滅。現状は捜査に協力をしてくれている学園都市第三位、"超電磁砲お姉さま"御坂美琴が開発者と交戦中。交戦途中にてカメラが破壊されモニタリングが不可能になった
・お願い!助けて下さいまし!お姉さまが!お姉さまが!!

電話の内容を再度頭の中で反芻しながら、誰も居ない高速道路を駆ける。
しばらく駆けると前方に先行していたらしきアンチスキルの一団とマズルフラッシュの火花が、そして対面に浮き上がる半透明の胎児らしき姿が見て取れた。

五条(ククク……正真正銘の化物ですか…面白い…)

胎児型の化物が触手を一薙ぎしアンチスキルの一団を吹き飛ばすと同時、背中に負ったサッカーバッグよりボールを取り出し、暫しの集中の後に化物に向かい蹴り飛ばす。

渾身の力にて蹴り出されたボールを護る様、五羽の企鵝(ペンギン)の幻影が乱れ飛ぶ。
更に速度を加えるべく射出されたボールに向かい全速力で距離を詰め、右側面と左側面より一蹴。

傍目からは分身したとも取れる程の加速度より蹴り出されたボールは大気との摩擦により赤く燃え上がり、黒鳥の幻影をを纏ったまま化物へと着弾すると大きく爆ぜ跳んだ。

化物が大きく体勢を崩した刹那、迸った電光が化物の触手を焼き払う。
電光の源へと視線を投げると、そこには常盤台中学校の制服に身を包んだショートカットの女子生徒が身構えていた。

五条(あぁ……彼女が……)

遍く雷光の使役者にして学園都市第三位の名を冠する少女、御坂美琴。

傍らのアンチスキルを担ぎ、化物の触手を跳躍して交わす少女。

その少女を追撃しようとする触手に駆け寄り、蹴り飛ばす。
鈍い音がして触手が爆ぜ収縮する。

収縮した先の化物は既に高速道路から離れ、ゆっくりと移動を開始していた。

五条「…ククク…御坂美琴……お姉さまですね?」

呆然とした表情でこちらを見ていた少女がハッと我に返り、言葉を吐き出した。

美琴「ちょっと!誰よあんたッ!?あんたにお姉さまなんて呼ばれる筋あ……お姉さま?……」

五条「……オレの名前は五条…五条勝…風紀委員白井黒子の依頼にて参りました…」

再び至近を漂っていた触手の先端に目玉が生え、こちらに向かってくる。
視認しないままパチン、と指を鳴らすと土中より先の企鵝が舞い、触手を喰らい再び土中へと消えた。

五条「……オマエの、味方ですよ…クク…」

美琴「……信じて構わないのね?」

五条「ご随意に……ヒヒヒ……」

『お二人さんさぁ……』

やり取りを終えるのを見計らい、傍らで倒れていたアンチスキルの一人が口を開いた。

『ゆっくり自己紹介するのも良いと思うけど……あんまり時間が無いんじゃん?』

そう言って指されたその先へと視線を投げる。
研究所の様な建築物が目に入り思案していると、アンチスキルが言葉を続けた。

『あれが何だかわかるか……?原子力実験炉じゃん』

御坂「マジ!?」
五条「何と……」

『なにやってんのあの娘!』

もう一人、メガネをかけたアンチスキルが唐突に大声を上げた。
高速道路の傍らに目線ををやると、頭に花飾りをつけた少女が高速道路の非常階段をこちらへ向けて駆け上がっている。

『あの娘…木山の人質になっていた…この混乱で逃げ遅れてるじゃん』

美琴「違う」

右手首を前後に慣らしながら美琴が言葉を続ける。

美琴「初春さんはもう、人質でも逃げ遅れてるんでもない」
美琴「頼みがあるの」

--------------------------

ゆっくりと原子力実験炉へ向かう化物の脚部に漆黒の線が走り、千切れ飛ぶ。
甲高い叫び声と共にすぐに足が再生し、化物がゆっくりと背後を振り返る。

美琴「あんたの相手はこの私よ!」

実験炉へと続く荒野の上に第三位の少女の姿があった。
その少女へ向け、化物の頭部より光弾が放たれる。

すんでのところで光弾を回避し、化物を睨み付ける少女を目掛けて次の光弾の準備にかかる化物。

美琴「ったく……少しは人の話を……」

充填されていた光弾が、突然爆ぜた。

美琴「!?やばッ!」

爆ぜて拡散した光弾の一筋は、美琴とは関係の無い方角へと飛んでいく。
非常階段を駆け上る、花の髪飾りを着けた風紀委員の少女 初春飾利の下へと。

初春「……ッ!」

不意に目を向けた先で自身に向かってくる光線を目の当たりにし、初春は反射的に目を閉じた。
終わりだ。結局私は皆の役には立てなかった。
真っ黒になった視界の中で死を覚悟し、皆への謝罪を心の中で述べる。

……

初春(……?)

しかし、覚悟をしていた衝撃は、一向に初春を襲うことはなかった。
『……目を開きなさい、お嬢さん』

聞きなれない声に目を開くと、そこには"5"の文字が刻まれたサッカーウェアに身を包む、一人の男の背中があった。

初春「あなたh「話は後です」」
再び飛来する光線を、男が明後日の方向へと蹴り飛ばす、

五条「ククク……光線の類を蹴り飛ばすのは慣れてましてねぇ……」
唖然とする初春に向けて、男が言葉を続けた。

五条「さぁ!早く行きなさい!貴方には、貴方にしか出来ないことがあるはずでしょう!」

次々と飛来する光線を蹴り飛ばしながら男が叫んだ。
初春「……はいッ!」

初春の表情が引き締まり、階段を駆け上る足が速くなったのを確認すると、男は地を蹴り、先より肥大化した化物へと駆け出した。

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すげぇ
多重能力者並みにポテンシャルが高すぎる

美琴「……ッ!」
一瞬の油断の隙に化物から伸びた触手に身体を絡みとられ、拘束される。

別の触手が攻撃を加えんと美琴に伸びた直前で、何処からか飛来したサッカーボールによって砕かれた。

そして再び飛来したボールが美琴を捕らえていた触手に直撃し、接続部が吹き飛ばされ御坂美琴は中空へと開放される。

足を下ろした地の傍らには、メガネをかけたサッカーウェアの男が立っていた。

美琴「助かったわッ!初春さんは!?」

五条「ククク……心配要りませんよ……」

美琴「そう……ッ!」

迫り来る触手から身を交わし、美琴が電撃を放つ。
電熱を受けて焼け爛れた化物の傷口へと、五条のボールが走る。
化物は一瞬悲鳴を上げたかと思うと、すぐにその傷口が塞がり、再度その触手を振り回して暴れ始めた。

五条「…ククク…自動再生ですか!?」

美琴「おかげ様で骨が折れるったらありゃしないわよッ!」

電撃が走り、ボールが肉を抉る。
砂鉄の刃が切り裂き、企鵝が啄ばむ。

幾度となく繰り返した二人の攻撃も化物はたちどころに再生し、次第に二人の表情に疲労の色が影を落とし始めた。

五条さんのスキャニングに期待

美琴「はぁ……はぁ……時々飛んでる…あの…カワイイの…あんたの能力…?」
五条「ク…クク…いえ……あれは…ただの技術…です…よ…」

美琴「……そ…そう……後で……ゆっくり…見せなさい…よね……」
五条「…ヒヒ…構いません…よッ!」

ぜいぜいと肩で息をしながら、五条がサッカーボールを蹴り出す。
化物の肉が抉れ、再生される。
砂鉄の刃を振り回し、御坂が切りかかる。
化物の頭部が切り離され再生される。

五条(……これはマズイですね……)

と、突然あたり一面に高周波の音楽が響き渡った。
五条(……?何の音でしょうか?)

傍らで砂鉄の刃を振り回していた御坂が、しめた、という表情になり化物の腕を切り飛ばした。

五条(再生が…止まっている!?)

御坂「巻き込まれるわ…少し下がってッ!」

美琴の言葉に五条は慌てて化物と距離を置いた刹那
御坂「悪いわね……これで、ゲームオーバーよッ!」

幾重もの稲光が美琴から迸り、化物の身体に纏わり付く。
大きく叫びを上げた化物は、その身体を電熱により赤く染め地へと倒れ伏せた。

美琴「間一髪ってやつ…?」

ふう、と息を吐いた美琴が五条に視線を送り、”どや!”と言いたげな笑顔を作る。

(……ククク…なかなかに愛らし『気を抜くな!まだ終っていない!』

いつの間にか、美琴の傍らに立っていた白衣の女性が大声で叫んでいた。

五条「オマエは…?何故こんなところに…?」

『ネットワークの破壊には成功しても、あれはAIM拡散力場が生んだ一万人の思念の塊!普通の生物の常識は通用しない!』

ゆっくりと、化物が立ち上がる。

美琴「話が違うじゃない!だったらどうしろって!」

『核が!力場を固定させている核の様なものがどこかにあるはずだ!それを破壊すれば……!』

立ち上がった化物は、身体中に眼球を出し、再び進行を開始する。

五条「核……ですね?」

美琴と化物の間に割って入った五条が、言葉を発した。

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五条「……細かい事はよくわかりませんが……俺がアレを足止めして、核の場所を特定します……止めは、お任せしますよ…それから…」

美琴に背を向けたまま眼鏡を外し、言葉を続けた。

五条「……今より一時、決して、オレの目を見ないで下さいね……」

相手は、一万の人間の思念の塊。
両の眼に力を込め、その居並ぶ眼球たちを見据える。
眼窩の奥が激しく痛み始めるが、奥歯をガチりと食いしばり、化物を見据え続ける。

一歩、二歩と歩んだところで、化物はその足を止めた。

美琴「なッ!?あんた何してんの!?」

五条(通りましたかッ…!…続いてッ…見るッ…!)

五条「核の部位を特定します!お姉さまは出力を上げて全力の一撃をッ!」

美琴「誰がお姉さまよッ!」

視界にスコープ状の幻影が走り、化物の全身を透過し、査察する。
赤い表示で"CLEAR"の文字が走り、核の場所がまざまざと浮かび上がった。

背後でバチバチと空中放電の音を交えながら美琴が何かを呟いているのが耳に入ったが、全ての神経を視覚に集中している為、何を言っているのか理解する事が出来ない。

頼もしすぎる
流石は五条さん……マジイカス


あと、関係ない話だけど
第3位の能力ってコイル(ポケモンの)と似てね?

五条「…ククク……そこですッ!」

手早く眼鏡をかけ、渾身の力で核目掛けてサッカーボールを蹴りつける。

美琴「こんな所で、くよくよしてないで……」
一枚の銀貨が、美琴の指に弾かれ中空を舞う。

美琴「自分で自分に嘘つかないで……!もう一度ッッ……!」

核へと向けて羽ばたく一羽の企鵝の後を追い、強烈な電磁力を纏った美琴の銀貨が飛ぶ。

銀貨は企鵝の体内へと消えると同時に大きく雷光を放ち、一羽の雷鳥の姿を象り化物の体内から核を抉り出し飛翔する。

幾万の鳥がさんざめく様な羽音を出す雷鳥が、核を噛み砕く。

がちぃんと言う音があたりに響き渡ると、一筋の稲光を残し、雷鳥は霧散していた。

雷鳥が羽ばたいた痕を残す化物もまた、次第にその色を黒く染め上げ、光を放ちながら消滅していった。


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美琴「やれやれ……懲りない先生だわ……」

黄昏が降りる中、事後処理を終え白衣の女性がアンチスキルに連行されるのを眺めていた傍らの少女が呟いた。

五条「ククク……少し疲れましたが……楽しかったですよ」

ポンポンと、サッカーウェアの埃を払いながら呟く。

ずきずきと眼窩の奥が痛むが、今はこの充実感の方がウェイトが大きいので、さして気にはならない。

美琴「あぁ、アンタ……しっかりお礼も言ってなかったわね、ありがとう」

言って、第三位の少女が右手を伸ばしてくる。

五条「…ヒヒヒ…こちらも良いものを見せて頂きました…あなたとは、本気でサッカーバトルしたくありませんね……」

右手を取り、返礼する。

『私もまだちゃんとお礼が出来てませんので……その……』

隣に立っていた、花の髪飾りをつけた少女が携帯電話を差し出してきた。

『初春飾利です。後日、ちゃんとお礼をさせてもらえますか?』

五条「グヒヒ……俺は、五条。五条勝です…よろしくお願いしますね…」

表示されている番号をコールする、と、再度視界を塞ぐ別の携帯電話。

五条(……?)

やっぱり仲間と協力してのサッカーバトルでこそ
魅力が際立つな      五条さん マジDF

携帯電話の先に目線をやると、明後日の方向を眺めながら、美琴が携帯電話を差し出して来ていた。

美琴「まっ……まぁ、こうして会ったのも何かの縁だし…アンタには借りが出来たしね……ペンギンも見たいし……だからその…」

ごにょごにょと何かを呟く美琴を放置し、携帯に表示されている番号をコールし、電話帳への登録を行なう。

五条「…ククク……お・ね・え・さ・まと…ククク…アーッハッハッハ!」

美琴「!?だぁーれがお姉さま『おねえええええさまああああああああ!!』」

唐突に一台のタクシーが滑り込んで来て、そのドアが開くと同時に、どこかで見たツインテールの少女が駆け下り、美琴に空間転送で抱きつき、倒れこむ。

黒子「お姉さまッ!黒子は心配しましたのよッ!心を痛めておりましたのよ!は、御髪に乱れがッ!お肌に無数の擦り傷がッ!どうやら電撃を放つ体力も残っていないご様子!」
呆気に取られてその様を見ていると、突然声のトーンが変わり、馬乗り状態のまま黒子が振り向いた。

黒子「と、初春。先ほど病院から連絡がありましたの。幻想御手の使用者が、次々と意識を取り戻していると」

嬉しそうに、わぁ、と初春は声を上げる。

黒子「貴方のおかげですわよ、初春…と、言うわけでおねえさ…!?」

言い終えて美琴に唇を寄せる黒子と視線が合った。

黒子「……五条さん!?」

五条「ククク……」
黒子「あらあらあら五条さん!いらしてましたの!?」

五条「……グヒヒ……オマエが俺にお姉さまを助けてくれといったのでしょう…」

黒子「あら……あらあらあらそうでしたわね!わたくしとした事がついうっかり……」

五条「ククク……構いませんよ……それと…」
黒子「…?」

五条「オマエは……レズビアンだったのですね…ククク…アーッハッハッハ!」

高笑いをあげると、慌てて黒子が美琴から飛びのき、両手をブンブンと振りながら言葉を並べ始める。

黒子「こッ…これは違いますのよッ!その…わたくしにとってお姉さまはお姉さまであり、お姉さま以上の何者でもなく変えがたく…決して邪な、ふしだらな気持ちでは…」

美琴「どう考えてもふしだらだろうがゴルアアアアアアアッッッ!」

さっきまでの戦いが嘘の様に、澄んだ夏の夕空に、笑い声が木霊していた。

--------------------------

五条(流石に……疲れましたね……)

先の戦闘の影響だろうか、異様にずきずきと痛む頭と身体を引きずりながら、駅の階段を降りる。

駅前のコンビニエンスストアでハンバーグ弁当を購入し、一刻も早く帰宅してゆっくり休養を取ろうと歩を進めていると、違和感に気が付いた。

やったー! 今夜こそハンバーグ弁当だ!

自分は、確かに駅前の雑踏を歩いていたはずだ。
その割に、いつの間にか辺りから人の気配が消えている。
まるで自分ひとりの世界に迷い込んでしまったかの様な錯覚を覚える。

コンビニの袋を片手に、周囲を伺いながら歩を進める。
幾ばくか歩いたところで、正面の交差点の真ん中に、二つの人影が見えた。

歩み寄りながら、次第に鮮明になるその様子確認をしてみると、一つの人影は四日前に火災現場で顔を合わせた高校生
上条当麻だった。
何があったのだろうか、力なく地面に倒れ付している彼からは意識が感じ取られない。
気絶、しているのだろうか。

彼の傍らに立つもう一つの影に視線を走らせる。

女。
長い黒髪を後頭部で束ね、乳房を覆う最低限の範囲に絞られたTシャツ。
左太ももを大胆に露出させたジーンズをローライズ気味にはき、肩でぜえぜえと息を吐きながら異様に長い刀に体重を預けている。

こちらの気配に気付いた女と、視線がぶつかった。
一瞬驚愕の表情を浮かべる女に、率直な言葉を投げる。

五条「……ククク……痴女ですk」
『七閃ッ!!』

ハンバーグ弁当の入ったビニール袋が、無残に千切れ飛んだ。

-fin-

凄いなぁ
両作品の世界観や雰囲気を崩さずこのクオリティ
このスレ開いて大正解だった マジ感謝 次回も期待

あと
友人の変わった性癖すらも
動じず受け入れる五条さん

懐深いマジ大人

この五条さんなら一方と仲良くなれるな

>>702
一緒に笑い合う親友になれるよ きっと

以上本日投下分となります
支援&保守を頂いた皆様、本当にありがとうございました
さて次回以降の投下予定ですが、ちょっと私事が忙しく二日ほど暇を貰います

順当に行けば木曜の21時頃に続きを投下出来るかと思いますので、保守は頂かなくて結構です

pcが規制で使用出来ないので木曜21時頃に『とある五条の蹴球闘技』というタイトルで代理スレ立てを頼もうと思いますので、
熱が冷めておりませんでしたらまたお付き合い頂ければと思います

日が変わったらお嬢に一票入れます

           ┌┬┐ スレ主へ 元気にしてますか
           ├┼┤ 無理せず 仕事頑張ってね
 J( 'ー`)し     └┴┘

  /っ日o-_。_-.、      母さん 待ってるからね
  (´   c(_ア )      おまえの好きなハンバーグ作って
  [i=======i]      待ってるからね

                いつでも待ってるからね

五条さんの立ち位置が風紀委員サイドで本当に良かった

暗部サイドやスキルアウト側だったら
今頃学園都市がヤバイ事になっていた

黒子の功績は大きい

五条さんはダッキの人肉ハンバーグ躊躇せずに食べそうだから困る

>>754
五条さん「クククっ、これが噂の人肉ハンバーグですか……私を満足させてくれるのでしょうねえ……?」


五条様「ふむ。55点といったところですね。出直して来なさい」

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