切歌「調、ちょっとキスしてもいいデスか?」 (60)

調「いいよ、切ちゃん」

切歌「やったデース!」

調「はい……んー」

切歌「んちゅー」

調「おはよう」

切歌「朝一はやっぱりキスに限るデスね!」

調「そうだね、米国暮らしは伊達じゃない」

切歌「あっ、マリアおはようデース」

調「おはようマリア」

マリア「二人ともはやいわね」

マリア「今日の朝食は何かしら?」

切歌「あたしも気になるデース!」

調「今日は198円」

マリア「なかなか豪勢ね」

切歌「朝からそんなに良い物食べれるなんて幸せデース!」

調「最近は二桁ばっかりだったからちょっとはね」

マリア「調に台所を任せておけば安心だわ」

切歌「さっすが調デース!」

マム「……」

マリア「マムッ!」

マム「三人ともおはようございます」

調「おはようマム」

切歌「おはようデス、マム」

マム「今日の朝食は……」

マリア「聞いてマム! 今日は198円なのよ!」

マム「……ええ、それは聞きました」

調「とっておきたいとっておき、たまには出すべきだと思ったから」

マム「大したしたり顔ですね、調」

切歌「ここで出さなきゃ女が廃るデース!」

マム「意味を理解しているのですか、切歌?」

マム(私はこの子たちの教育を間違えてしまった……)

マリア「料理上手な調、いつ嫁に出しても恥ずかしくないわ」

切歌「デェエエエエエエッス!」

マム(それも全部私が料理を出来ないせい……)

調「うん、出したい味が出た……みんなご飯できたよ」

マリア「朝食にしましょう、マム!」

切歌「涎が止まらないデース」

マム「いただきましょう」

調「召し上がれ」

マム「……まあ、出来合いのものも悪く無いかもしれませんね……」

調「美味しい……」

マム「……と、今朝は思ったもののやはりこのままではいけませんね」

調「みんな、夕飯買ってきたよ」

マム「調、少しよろしいですか?」

調「どうしたのマム?」

マム「ええ、実は――」

切歌「あああ! 今日はお弁当デース!」

マリア「本当なの!? 切歌!」

切歌「本当デス! しかも……なんといくらが乗ってるデース!」

マリア「そ、そんな……半額になるまでいくら弁当が残ってるなんて……」

切歌「しかも缶まで買ってきて、奇跡デース! 流石調デス!」

調「ぶいッ」

マム「……」

調「それで……何の話、マム?」

マム「調……いえ、みんなに大切なお話があります」

マム「これからの大切なお話が」

マリア「改まってどうしたの、マム?」

マム「あなた達の中で料理が得意な方はいますか?」

マリア「全く出来ないわッ!」

マム「この場合は狼狽えてもいいのですよ、マリア」

切歌「出来ないデスッ! 出来る気もしないデスッ!」

マム「そうだろうとは思っていました」

調「私は得意」

マム「……」

マリア「それがどうしたの、マム!」

切歌「早くいくらが食べたいデース!」

マム「よく聞いてください」

調「なに?」

マム「あなた達がいくらと思っているそれは……数の子なのです」

マリア「何を言うのマムッ!?」

マム「そして、それも……トロではありません」

切歌「トロじゃないって……だったら何だっていうんデスか!?」

マム「それはツナ缶なのですよ」

調「ツナ……缶……? こんなにマイルドなのに?」

マム「そういう製法なのです、流石は日本製と言ったところですね」

マリア「そんな……私の信じていたものは……いったい」

マム「現実はこうも残忍で残酷なのです」

マリア「セレナ……セレナァ……」

切歌「そんな……そんな真実を突きつけられてッ! 今更あたしたちはどうすればいいんデスか!」

調「落ち着いて……切ちゃん……」

マリア「セレナ……セレナ……」

マム「調も……あなたのしていることは料理ではありません」

調「……え?」

マム「一般的に、インスタントは調理とは言えないのですよ」

調「う……そ……」

切歌「調……」

マリア「セレナ……セレニャ……」

マム「私に提案があります」

調「いまさら……私たちに何が出来るっていうの……?」

マム「日本には客の前で調理してくれるお店が多数あると聞きます」

切歌「それがどうしたデスか?」

マム「町へ出向いてその料理術を盗んで来るのですよ」

調「どうして……そんなこと」

マム「花嫁修業……と言ったところでしょうか」

調「花嫁……修業……」

切歌「どうしたデスか、調? そんなに見つめられると照れちゃうデスよ///」

調「わかったマム、私やる」

マリア「せれにゃ……せれ……ぐすっ」

調「行ってくるね」

マム「はい」

切歌「行っちゃうデスか」

調「うん」

マム「……切歌、調一人ではいささか心配です、付いていってあげなさい」

調「ッ!」

切歌「いいんデスか?」

調「ありがとう、マム」

マリア「頑張りなさい、調」

調「うん」

切歌「どこに行くデスか?」

調「この前町に行った時、良さそうなお店があった」

切歌「ああ、あの時の」

調「とりあえず覗いてみる」

切歌「あたし、ふらわーっていう店が気になってたデスよ」

調「私も」

切歌「お花を見てると心が和むデス」

調「うん」

切歌「いつか、お花に包まれた場所でゆっくり休みたいデスね」

調「そうだね、二人で一緒に」

切歌「デエエエエエエエッス!」

未来「響、あーん」

響「あーん……もぐもぐ、うーん美味しい!」

未来「うふふ」

響「未来も、はいあーん」

未来「あーん」

響「美味しい?」

未来「響が食べさせてくれたからずっと美味しく感じるよ」

未来「響、あーん」

おばちゃん「人の三倍手を動かさなくちゃいけなくて大変ね」

未来「でも、人の三倍幸せです」

おばちゃん「まあっ、そうかい」

未来「はいッ!」

調「……すごくいい匂い」

切歌「デース!」

おばちゃん「いらっしゃい」

響「ッ!?」

切歌「融合症例第一号!」

響「今日はいったい何しにッ!?」

切歌「ここであったが――ッ!」

調「待って切ちゃん、今日は戦うために来たんじゃない」

未来「どういうこと?」

調「食べに来た……これ、ええと」

未来「お好み焼き?」

調「そう、それ焼き」

響「じゃあ、戦わなくてもいいってこと?」

調「端的に言えば」

切歌「そう、なるんデスかね?」

おばちゃん「はい、お水……お嬢ちゃんご注文は?」

調「お好み焼き一つ」

おばちゃん「そっちのお嬢ちゃんは?」

切歌「二人で食べるデース」

おばちゃん「あら、仲いいのねえ」

調「うん」

未来「本当に戦いに来たんじゃないんだ」

調「私たちの今の任務は食べることだから」

響「ふーんそうなんだ、おばちゃん私も次の焼いてー!」

おばちゃん「はいよ」

調「じー」

切歌「ふへー、お好み焼きってこうやって作るデスね」

未来「響、ソース付いてる」

響「え、ほんと?」ゴシゴシ

調「じー」

未来「そっちじゃないよ、こっち」チュ

切歌「!?」

調「切ちゃん? どうかした?」

切歌「なな、なんでもないデスッ!」

調「……そう?」

響「えへへ、ありがと未来」

未来「どういたしまして」

切歌(な、なんて慈愛に満ちたキス……なんデスか……)

調「じー」

響「どうしたの? 調ちゃん」

調「じー」

切歌「邪魔するなデス!」

響「ええ!? どうして怒られたの?」

調「じー」

おばちゃん「ふふ……もしかして、技を盗みにでも来たのかい?」

調「……どうしてわかったの」

おばちゃん「伊達に年食ってないからねえ」

調「なら話は早い、作り方を教えてもらう」

おばちゃん「だーめ、企業秘密だよ」

調「残念」

おばちゃん「はいお待ちどお様」

未来「ありがとう、おばちゃん」

調「美味しそう」

切歌「いい匂いデース!」

響「うーん、香ばしいソースの匂いが食欲をそそるね」

未来「響、あーん」

響「あーん」

未来「美味しい?」

響「うんッ!」

切歌「わあ……」

調「切ちゃん、あーん」

切歌「うええ!?」

調「?」

切歌「どど、どうしたデスか、藪から棒に!?」

調「別に藪でも棒でもないけど」

切歌「突然過ぎデスよ!」

調「あっちの二人もやってる」

切歌「影響されてるデスか!?」

調「私もやってみたい」

切歌「ええ!?」

未来「また付いてる」

響「とってとって」

未来「甘えん坊だね響は」

切歌「ちょっと覚悟がいるデスよ……」

調「?」

調「あーん」

切歌「あ……あーん///」

調「美味しい?」

切歌「美味しい、デス」

調「よかった」

切歌(何なんデスかこれは……とろけちゃいそうデス///)

調「切ちゃんもやって」

切歌「あたしからもデスか!?」

調「だめ?」

切歌「そんな切なそうな顔しないでほしいデスよ……」

未来「じー」

響「じー」

切歌「そこッ! ニヤニヤするなデスッ!」

切歌「あ、あーんデス調」

調「あーん……うん、おいひい」

切歌(調の朗らかな表情……あたしまで嬉しくなってくるデス)

調「? どうしたの切ちゃん?」

切歌「な、なんでもないデスよ」

調「変な切ちゃん」

切歌(ほんと……今のあたしは変デス)

切歌(いつも見ている調と何も変わらないのに……こんなに胸がポカポカするデス)

切歌(あっちの二人も、もしかしてあたしと同じ気持ちだったりするんデスかね……?)

未来「響」

響「なに未来?」

未来「ふふ、呼んでみただけ」

切歌「ってえ! あたし達があんなバカップルなわけねーデス!」

切歌(って……カップル? あれ? じゃああたしは……)

調「ごちそうさま」

おばちゃん「お粗末さま」

調「結局、美味しいお好み焼きを食べただけだった」

未来「ねえ」

調「なに?」

未来「お料理、私が教えようか?」

調「ッ! どうしてそのことを?」

未来「わかるよ、女の子だもの好きな子の為に美味しい料理を作ってあげたい気持ち」

調「……///」

響「なになに? 何の話?」

未来「どうする?」

調「私は……今の私の任務は、料理を出来るようになること……うん、決めた」

調「ねえ切ちゃん……って、どうしたの切ちゃん、顔真っ赤」

調「切ちゃんどうしたの?」

切歌「え、え? なななんの話だったデスかね!?」

調「そんなことより大丈夫切ちゃん、顔赤いよ風邪引いたんじゃ?」

切歌「風邪って、そんな大丈夫デスよ大丈夫! 平気デース!」

響「へいきへっちゃら?」

切歌「融合症例第一号に言われなくても大丈夫に決まってるデース!」

調「じゃあ決まり、あなたに料理を教えてもらう」

切歌「って、えええ!? 何言ってるデスか! 敵陣に突っ込むようなものデスよ!?」

調「切ちゃんも大丈夫って……」

切歌「そんなことに大丈夫って言った覚えはないデス!」

未来「安心して、今の私は特異災害対策機動部二課所属じゃなくて、響に恋するただの女の子だから」

切歌「何言ってるか全然わからないデース!」

響「プライベートってことだよ、たぶんッ!」

切歌「なんやかんやで付いてきてしまったデス……」

未来「いらっしゃい」

調「お邪魔します」

響「ようこそ、私たちの愛の巣に」

調「愛の巣?」

切歌「し、調は気にしなくていいデス」

調「……うん」

未来「それで、何か作りたいものとかあるかな?」

調「お好み焼き……作れるようになりたい」

響「いいね!」

未来「うん大丈夫、材料はあるみたい」

切歌「またお好み焼きデスか」

調「ダメだった?」

切歌「もっと食べたいと思ってたところデス!」

未来「それで、材料を切ってまとめておきます」

調「なるほど」

響「ねえ切歌ちゃん」

切歌「む、何デスか?」

響「そんなに警戒しないでよ」

切歌「敵同士なのに警戒するなっていうほうが無理あるデスよ」

響「今は敵じゃないでしょ? ご飯ができるのを待ってるだけなんだから」

切歌「確かにそうデスけど」

響「漂ってくる匂いに戦意なんて飛んでっちゃうよ」

切歌「……ごくり」

響「未来の作るご飯って本当に美味しいんだあ」

切歌「そう、なんデスか……」

未来「あっ」

調「どうしたの?」

未来「ごめん、響の好きな味にしちゃった」

調「気にしない」

未来「料理って、食べてほしい人のことを考えながらするものだから」

調「食べてほしい人?」

未来「うん、私の料理を食べてくれた響が喜んでくれるかなとか」

未来「美味しいって私に微笑みかけてくれるかなとか考えて」

調「そっか……そうなんだ」

未来「一番のコツはそこかな」

調「よくわかった」

響「見て切歌ちゃん」

切歌「なんデスか?」

響「料理している二人の姿」

切歌「それがどうしたデス?」

響「いつもとは違う感じがしない?」

切歌「いつもと……?」

響「料理している時の未来ってとっても綺麗で、輝いて見えるんだ」

響「まあそれはいつもなんだけど、それでも私に愛情のたーっぷりこもった料理を作ってくれる」

響「それだけで私もすごく嬉しい、ねえ切歌ちゃんもそう思わない?」

切歌「調の料理姿……デスか」

切歌(確かに何か……感じるものがあるデス)

切歌(額に薄っすらと滲む汗が、眩しいデスよ)

調「ふう、出来た」

切歌「出来たデスか!」

未来「初めてにしては上出来だよ」

響「美味しそう」

切歌「融合症例第一号はまだ食べるデスか!?」

響「未来の作ってくれた料理なら別腹だよ」

切歌「さいデスか」

調「切ちゃん、あーん」

切歌「あ、あーん///」

調「どう?」

切歌「美味しいデスよ、調のお好み焼き」

調「そっか、嬉しい」

切歌「調……」ドキッ

切歌「食べ終わったら追い出されちゃったデスね」

調「どうしたんだろ」

切歌「なんだか変な空気だったデス」

調「嫌な感じじゃなかったけど」

切歌「調もそうだったデスか、あたしはちょっぴり羨ましいかったデス」

調「どういうこと?」

切歌「な、なんでもないデスッ! 忘れるデスよ!」

調「うん、そろそろ帰ろうか、切ちゃん」

切歌「そうデスね、買い物してから帰るデスよ」

調「マリアとマムにもお好み焼き焼いてあげるんだ」

切歌「小麦粉をたっぷり買ってくデース!」

調「お好み焼き用の粉があるらしい」

切歌「!?」

切歌「昨日の調は本当に嬉しそうだったデス」

切歌「ただお湯が沸くのを待ってるだけじゃなくて」

切歌「手を動かして体を使って汗を流しながら料理する調は、綺麗……っていう奴だったデス」

調「切ちゃん、おはよう」

切歌「調、ちょっとキスしてもいいデスか?」

調「いいよ、切ちゃん」

切歌「やったデー……ス」

調「どうしたの?」

切歌「まま、待つデスよ」

調「?」

切歌(いつもしているはずデスのに、キスって言葉にした途端、あの時の二人の姿が――)

調「切ちゃん、また顔真っ赤……熱が出たんじゃ?」コツン

切歌「ッ、おっオデコ!?」

調「大丈夫、熱は無いみたい」スッ

切歌「ま、待つデス、そのまま離れないでほしいデス」

調「? いいけど」

切歌「調の顔が、こんなに近いデス」

調「う、うん……」

切歌「調……ちょっと、キス……してもいいデスか?」

調「いい……よ、切ちゃん」

切歌「……ん」チュ

調「……ふ、ん」チュ

切歌「あたし、調のこと大好きデスけど……昨日のことでもっと大好きになったデス」

調「よかった……私、切ちゃんにもっと大好きになってもらいたくて頑張ったから」

切歌「そ、そうだったデスか!?」

調「うん、だからもっと長いキスがほしい」

切歌「……調、目を瞑るデス」

マリア「マム! 見て!」

マム「何を狼狽えているのですか、マリア」

マリア「調と切歌がッ!」

マム「……こんなはずでは」

二人「「台所で何を莫迦なことをッ!」」

おしまい

半額弁当
F.I.S.の生命線である
『早い安い美味いをモットーとする当スーパーでは毎日PM六時からお弁当が半額となっております』
広告を拾ったマリアは歓喜しナスターシャたちの所へ持ち帰った
浮かれる切歌と静かに喜ぶ調、そしてどこか物憂い表情のナスターシャ
ナスターシャの憂いに三人は気付くことが出来ずにいたが買ってきた食料にナスターシャも満足していたのは確かであった
主な表示がお弁当○○円であるなど曖昧であった事が誤解の始まりである

ウェルの動向
最後の調整と言って仮設基地を出て行ったきりしばらく戻って来ていない
その動向はネフィリムのリンカーの人体実験のために民間人を襲撃することであった
人の身に制御が可能になるまで実験、処分を繰り返す

立花響と小日向未来
二人でお好み焼きを食べた日はすることに決まっている
パブロフの犬の如く響と未来はお好み焼きを食べさせあう度に体が火照っていく
我慢の限界に達した二人は調と切歌を丁重にお返しし
ベッドで体をもつれ合わせるのだった

緊急φ式が狂おしいほど好き
誰かシンフォギアSS書けよ書きにくいのはわかるけど

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