和「宮永さん、変ですよ!」 (23)

咲「……何を言っているんですか?原村さん」

和「だって、最近は部室に来ても…なんだかおかしな麻雀を打つし」

咲「……私は色々と打ち方を試してるだけですよ。…調整しないといけないし」

和「嘘っ!…あの時、あの時から…そう」

それは、私達が特訓と称して行っていた…マンション麻雀での事。
あの時、私は狂ったように打っていた。そして勝っていた。勝った。勝った。勝った!

………けど、最後には負けた。………負けた。けど、強くなった気はした

私は実際、見る視点や全てが変わった気がした。…けど、それ以上に…私の……私の大切な……

咲「原村さん。私はどこも変じゃないよ!…ほら、いつもの私!」

嘘。…だって、かすかに…タバコのにおいがする。

マンション麻雀でいつも嗅いでいた、あの独特の臭い。
あの時は気にもしなかった。いや、心地よくも感じていた甘い臭い。

私も早く吸いたい。それで落ち着けるなら…。などとまやかしを覚えたが、今では冷静な判断が下せる。
寿命を縮めてまで麻雀を打つのは私は嫌だ。それなら麻雀を打つ。

和「宮永さん。…お願いします。正直に言ってください」

咲「しつこいなぁ。……でもね、ダーメ。……原村さんにはわからない。ううん、分からせない」

和「それってどういう…!?」

和「私を危険な目に遭わせない…って事…?」

あり得る。優しい彼女なら…そういう

咲「違うよ。……やっぱり、甘いんだね」

和「え!?」

咲「そんな甘さがあるから…負けたんだよ。原村さん。やっぱり今の原村さんには…教えられないなぁ」

和「そんな…」

一体、彼女を何が変えたの?私はそれを純粋に知りたいだけなのに…。
私はもう、宮永さんんを救えないのかな?私はただ、あなたを見ているだけ…なの?

和「お願い。…見せてくれるだけ、見せてくれるだけでいいから。ねえ!」

咲「……しつこい。……はぁ。まあ、いいよ。見てるだけなら」

和「ほ、ホント?」

よかった、よかった。よかった!!…私の言葉が、ようやく彼女の心に届いた!
私は彼女を救える。彼女は私しか救えない。そう、私が…宮永 咲を救う!

ねえ。だから、私に対してそんな目をしているんでしょう?
笑っているけど、まるで目の奥に闇を隠し持っているような。

まるで、そこには空虚な心しかないようで。お目当てのものは私じゃない。
そんな目をしてるけど…それは、私に助けてほしいからなんだよね?

ねえ、宮永さん…。お願い、輝いていた目に戻って。…お願い、怖い目をしないで

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咲「……打てますか?」

和「あの、宮永さんここ……」

そうだ、ここは…私は最近までここに来さされていた。いや、途中からここに来ることに快感を覚え
私はここに楽しくて仕方なくて…来ていた。金を積み上げる幸福に酔いしれて…。

マスター「もうちょっと待ってください。…あそこ、ワン欠けしそうですから」

咲「そう、ですか」

和「あ、あのだから宮永さん」

咲「原村さん」

和「え?」

咲「約束通り、見ておいてくださいね。……これが、私の麻雀です」

嫌な予感がする。…いや、ずっとしていた。ここに来てから。そして、卓に座っている一人の男を見ている時から…

黒服の男「…ツモ。終了ですね」

チャラい男「カーッ!きっついあがりかただなぁ…」

胡散臭い男「相変わらず…だな。マスター。言ってたとおり俺抜けるわ」

マスター「はい…それでは、どうぞ」

咲「…ありがとうございます。……では」

やめて……やめて……やめて……やめて……!そこに座らないで。そこに座っちゃダメ!
その人は…分かる。そう、その人は……駄目。それ以上は……

和「みや……」

咲「」ジッ

和「あ……」

なんて……なんて目なんだろう。あんな目…私は無理。怖くて、そして奥が見えない。

けど…彼女は楽しんでる。今を楽しんでる。………なんで、なんでなの?

チャラい男「…あれ?オッサン抜けんの!?」

胡散臭い男「まあな。…その前にはアンタにこっぴどくやられてんだ。今日はオケラだよ、オケラ」

チャラい男「そっかー。そりゃそうだよねー。…よし、オイラもそろそろぬけっかな」

マスター「抜け、ですか」

チャラい男「そそ。…マスターも見たでしょ、あのきっつ~いあがり。…それとも、代わりにマスター打ってくれる?」

マスター「遠慮しておきます…」

チャラい男「そーゆー事!それにオイラは今から大事な用事があるし…悪いね!」

咲「いいえ、大丈夫ですよ」

宮永さんはあんなチャラ男みてない。…見てるのは、対面の黒い服の男だけ。
知ってるはず…。あの男が、どれだけの男か。宮永さん、アナタ……知ってますよね?

眼鏡の男「じゃあ私も抜けようかな…。実は私も一回がギリだったし」

チャラい男「一回かー。…万札しか肌身につけたくないオイラだったら……今の状況なら……逃げてるわな」

マスター「困りましたね…。三人抜けですか」

咲「大丈夫ですよ。お客さんはすぐきますよ。…こういう日には」

マスター「はぁ」

マスターもよく分からないという顔をしている。そりゃそうだろう。…一体、何が分かるというの?宮永さん
そんなことよりも…私は逃げ出したいっていうのに…。どうして、アナタは平気なの?……

カランコロンカラン

老人「打てる……かな?」

マスター「少々お待ちしていただけましたら…」

この人、なんだろう。…普通のおじいちゃんって感じじゃないけど…。以前、私が打った人に…感じが似てる。
優しさの中に強さがあるっていうか…。なんだか…温かい

老人「普段はこういうところに来ないんだが…。なんだか勘が働いてね」

黒い服の男「………」

咲「……そう、ですか」

宮永さんは見ていない。あの人を…。どうして?どうして見ないの…?
どうして…対面の人ばかり。…いや、理由は分かってる。アナタが今、勝ちたい人。打ちたい人は…目の前の男。

老人「?……お嬢ちゃんは、打たないのかい?」

マスター「彼女は宮永さんの付き添いだそうです」

老人「そうか。…残念。結構いい線いってると思うんだが…」

咲「いい線か…フフ。そうですね、いい線いってると思いますよ、彼女」

老人「?」

咲「でも…決定的に足らない物がある。私にはあって、彼女にはない…ものが」

老人「ほー」

咲「それがわかれば…良いんですけどね」

どうしちゃったの?どうしちゃったの宮永さん…。どうして、どうしてそんな事…。怖い、怖いよ
嫌だ。まるで宮永さん…遠くにいっちゃってるみたいで、嫌だ!…お願い、誰か、誰か助けて…

カランコロンカラン

派手な男「……打てるかよ」

マスター「丁度…今から始まります。どうですか?」

派手な男「ほー…三人そろってんのかよ。それなら入らないわけにはいかねぇな」

マスター「ではどうぞ」

老人「お前さん…。派手な格好しとるな」

派手な男「仕事柄な。…そこの兄さんみたいに葬式ムードじゃないだけマシだろ」

葬式…か。確かにそうかもしれない。誰かを地獄に叩き落とす…葬式

咲「では…始めましょうか。…宮永です」

派手な男「自己紹介すんのかい。…俺は堂嶋ってんだ」

老人「自己紹介するのも礼儀。…新満だよ」

黒服の男「傀と呼ばれています。…はじめますね」

始まる。…地獄のように熱く。そして鋭い寒さが襲う夜が…

勝負は一瞬。その瞬間に、全て決まる…

宮永「……」チャキ

宮永(ここで2萬をツモってきた…。普段なら遠慮なしに捨てるけど…なんか、嫌だな)

堂嶋「……」

新満(お嬢ちゃんがさっそく何かを感じたのか。…さて、どうでるのかな)

咲「…」タッ

堂嶋「へぇ、強気に6筒か」

新満(強気…というよりも、回避というべきか)

堂嶋「…お。ツモ2000 4000だな」

咲(やはり…2萬はあたる。…しかも高目か)

どうしてだろう。…宮永さんだけじゃない、皆が牌を切るたびに…心臓の音が大きく聞こえる気がする。
なぜ?…なぜなんだろう。…私の心が、まるで何かを求めているみたいに

咲(…分かった?原村さん、これが…私の求め、そして手に入れたもの。…そう、アナタには無理よ)

誰も見ていないなら、適当に締めて寝ようかしら。ま、深夜だから人少ないよね…

咲(さっきツモったぐらいで…いい気になれるかしら?)

堂嶋「…よし、いい感じだ」

新満(この男…かなりの運を感じる。いや、それだけじゃない…この力)

咲(まるで傍若無人と言わんばかり…。けど、それじゃあ私にはかなわない)

タンッ

咲(さっさと…私のチートイで静まって)

チートイ。…前の宮永さんならあり得ない役。嶺上を愛する宮永さんなら…。
なのにどうして…何が変わったっていうの?宮永さん

堂嶋(…なんだ?この雰囲気。…そうか、そういう事か)

タンッ

新満(……なるほど、こいつはいい。…瞬といい勝負…いや、下手したらそれ以上かもしれん)

傀「………フ」タンッ

咲(傀からこぼれ出た…。でも、いけない。ここでリズムを崩すと…足元をすくわれる)

新満(あがらず…。なるほど、一点集中。…それは正解と言えるのか)

どうして?どうして傀からなのに!?どうしてあがらないの!?そんなの…おかしいよ!
そんな麻雀、宮永さんはしていないはず!…これが、アナタの見せたかったものなの?

堂嶋「…舐めてんじゃねーぞ」ボソッ

咲「え?」

堂嶋「…舐めてると、痛い目に遭うぜって言ってんだよ」

咲「…ふふ。初対面の人に、そんなこと言われても」

新満「兄ちゃん……」

堂嶋「まー……見てな」

咲「ふふ。…どうぞ勝手に。とにかく、私からあがってから言ってください」タンッ

堂嶋「じゃあ言うぜ」

パタンッ

堂嶋「ロン」

咲「……え?」

堂嶋「…嬢ちゃん。麻雀舐めてんじゃねぇよ」

…当たった。宮永さんが。当たった。…傀との勝負を楽しんでいる宮永さんが…他の人から

咲「…べ、別に私は舐めてなんて…!」

カラカラカラ

堂嶋「そうか?…さっき、この傀っていうニーちゃんからあがらなかったろ?」

咲「何を根拠に…!」

堂嶋「分かんだよ。俺はな…。お前、リズム作るためにわざと…だな」

咲「…く。私はそんな」タンッ

堂嶋「……言い訳だな。…そんなリズムだなんたら…。ちっちぇ遊びだな」

咲「な、なん……!これは私が今まで勝ってきた、確かな物なんです…」タンッ

堂嶋「そうかい。…なら俺には勝てねぇよ」

咲「…え?」

堂嶋「俺は今…麻雀やってんだよ、嬢ちゃん」

咲「な、何を言って…」タンッ

新満「ロン」

新満「……そうだな、確かに…麻雀をやっておる。ここにいる…最低でも三人はな」

咲「三人?…何を言って…」

新満「黒い服の兄ちゃんは種類が別しても…。この三人は麻雀をしておる。…だが嬢ちゃんはどうだ?」

咲「……つ、次の局。次の局です!」

堂嶋「この黒服の兄ちゃん倒すのに必死で…。まるで麻雀していねぇ。…それじゃあ死ぬぜ」

新満「そして、ここにいる三人は殺せんじゃろうて」

咲「く…な、何を。何を言って……!」タンッ

堂嶋「事実だよ。…今のアンタじゃ…俺達は殺せない」

咲「うるさい…うるさい。…私は全てを捨てたんだ。強く、強くなったんだ…」

宮永さんが…葛藤してる。…何が?どうしたの?

咲「私は…私は……」

堂嶋「麻雀のやり方…間違ってるぜ。なあ」

傀「ご無礼…ロンです」

咲「!……あ……つ…ついに…言わせてしまった……」

傀さんのご無礼。…それが出れば終わり。そう、宮永さんは終わったんだ。今、この瞬間に

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和「…ごめんなさい、宮永さん」

咲「……」

和「私が…見たいと言ったから…きっと、無理したんですよね」

咲「……ご………さ……」

和「…え?」

咲「……ごめんなさい。…ごめんなさい。…ごめなんなさい」

雨が降る帰り道。まだ札束がいくつもも入っている鞄を抱えている宮永さん。
そのかばんは雨だけではなく…。彼女の涙でぬれいていた。

彼女の札束は…彼女の涙でぬれていく。…その涙は、一体何の涙なんだろう。
悔しさ?みじめさ?悲しさ?それとも謝罪?うれし泣き?それとも……

でも分かった。これで、宮永さんは前の彼女に戻っている。…そんな気がした。
そんな気が、した

けど、私は知っている。決して、狂った夜は終わらない。
ギャンブルがある限り、麻雀がある限り…。終わりやしない。

私はそれを知りつつ、今日も麻雀を打つ。最高の親友たちと共に…。

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マスター「…いらっしゃりましたよ、どうぞ」

少年「ようやく面子がそろいましたか。…はじめましょう」

白髪の少年「…よろしく。アカギってもんだ」

少年「Kです。こちらこそ」

傀「傀…と呼ばれています」

和「原村…です。よろしく」

……そう、狂った夜は終わらない。そしていつどこで始まるかもわからない。私が麻雀を打つ限り…。

終わりです。なんか…ダラダラとすいませんでした
アイディアがなさすぎた…。すいません。もっと勉強しなおしてきます

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年09月25日 (水) 04:53:23   ID: SVWUx4C4

まーたdisってんのか咲さん
そんな主人公嫌いなら咲読むな

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