紬「みんなを助ける夢だったの」(246)

紬「ここは…どこなの?」

気が付くと私は真っ暗闇の中にいた
何が起こったのかさっぱりわからない私は、とりあえず人を探した

紬「だれか~、いませんか~?」

紬「斉藤~?みんな~?」

私の声はただただ闇に吸いこまれていった
私はそのまま闇の中に座り込んだ

しばらくボーっとしていると、遠くに光の粒のようなものが見えた
私がそれに気が付いた瞬間にそれは巨大化し、辺りを真っ白に染めてしまった

紬「きゃ…」

私は眩しさのあまり目を瞑ってしまった

光は段々と弱まっていき、やがて私も目を開く
そこには街らしき風景が広がっていた

崩れたビル、赤い空、砂埃で汚れた空気
景色の全てが破滅的な印象を私に与えようとしていた

紬「ここは…桜ケ丘ではないみたい…」

この辺りを探索してみたが、私の知っている場所はなかった
もしかするとここだけボロボロなだけで
他は大丈夫なのかもしれない、という安心感が少し生まれた

しばらく探索を続ける
どこかで騒がしい音がする

紬「人…?誰か~!いるん…」

しかし気付いてしまった
その音の正体は、銃声、謎の生物の奇声…
私は声を押し殺すことにした

銃声は止んだ
怪物の悲鳴のような声が聞こえたので、恐らく怪物が負けたのだろう

しかし、銃を撃っていたのが人間とも限らない
私は慎重に騒音の場所に近づいた

砂煙の中、人のシルエットが見えた
その瞬間私はホッとした

?「まだ人が生きてたのか!?」

私はその声に驚いてしまった
なぜならその声の主は…

紬「りっちゃん!」

律「ムギ!生きてたのか!」

彼女は田井中律、私の親友
砂煙から現れた彼女は両手に銃を持っていた

律「ムギ…お前…武器は?」

紬「え…私は来たばかりで…」

お互いに事情が呑み込めなかったので、説明しあうことにした

律「ふむふむ…突然ここにいた…か」

紬「宇宙人に世界が侵略されている…」

律「とりあえずここは危ない、ムギは戦いに慣れてないからな、安全な場所に移ろうぜ」

りっちゃんは銃をしまい、私の手を引っ張って歩き出した
しばらく歩くと小さめの廃墟が姿を現した

律「ここが人間の最後の砦だ、文字どおりの意味でな、ははは」

今のは彼女なりのギャグだったようだ
しかし、残念ながら状況を呑み込めていない私には笑うことはできなかった

廃墟の中は意外と広く、銃がたくさん置いてあった
恐らくりっちゃんが集めてきたのだろう

律「ムギはここで待機しててくれ、私はもうちょっと奴らを狩ってくる」

紬「私も…頑張る!」

このまま私は助けられているわけにはいかない
私は大きめの銃を手にした

律「そうか…助かるぜ!」

大きめの銃を手にしたのは、りっちゃんが小さい銃だったからだ
銃には詳しくないが、役割分担をしたほうがいいと思ったのだ

律「んじゃ、行くぜ!紬隊員!」

紬「がってんです!りっちゃん隊長!」

私は一心不乱に銃を撃ち続けた
不思議と銃は初めてとは思えないほど自由に扱うことができた

また、生物を殺すことへの罪悪感は湧いては来なかった
殺さなければ殺されるから、なのだろう

紬「これで最後!」

律「やったな!ムギも初めてにしちゃあよくやるぜ!」

紬「うふふ♪」

律「んじゃ、早速食料集めだな」

りっちゃんの説明によると、この世界の食料は大変長持ちするそうだ

律「うーん…ここはないな」

私達は廃墟の中から食料を見つけようとしているが、なかなか見つからない

律「んじゃあ次はあっちの建物だ!行くぞ!隊員!」

と、りっちゃんの背後に突然宇宙人が現れた

紬「りっちゃん!伏せて!」

私が宇宙人に一発お見舞いする
クリーンヒットしたようで宇宙人は倒れた

律「ありがとうな、ムギ…お前がいなかったら私死んでたぜ」

紬「今度からは気をつけてね、律隊長♪」

律「ここは天国ですか!?」

この廃墟には食料がたくさんあった
私にはとてもおいしそうには見えなかったけど、食べ物というものが貴重なのだろう

律「水もあるぞ~!ムギ、さっそく食べるか!」

紬「うん!」

私達はクッキーのような保存食を手に取った

紬律「いただきまーす」

保存食を口にした瞬間、景色が変わった

ここは私の部屋…
そうか、今のは夢だったのか

紬「夢だとわかると面白かったな~」

なにより、夢とはいえりっちゃんの役に立てて嬉しかった

律「…でな~、そこでババババーって~」

澪「なんだよそれ…」

教室にはすでにりっちゃんと澪ちゃんがいた
二人は何かを話していたらしい

紬「何の話してたの~?」

澪「おはようムギ、律が夢で銃撃戦をしたって…」

律「宇宙人に支配された世界でさー、私が生き残りでさー」

律「あ、そういえばムギもいたんだぜ~」

私の今日見た夢みたい

澪「律も子供じゃないんだからそういう夢見るなよ」

律「だって見ちゃうんだもん、しゃーねーじゃん」

紬「私も同じ夢を見たわ」

律「ほらー、私が子供っぽいわけじゃねーんだよー」

私とりっちゃんはお互いの夢のストーリーを話していたが、全く同じだった

澪「さすがにここまで同じだと気持ち悪いな…」

唯「おはよーみんなー、何の話?」

唯ちゃんはいつも通りちょっと遅れてきた

律「私の夢とムギの夢が同じだったって話~」

唯「ふむふむ…」

唯「それはソウシソウアイですな!」

律「…なんだよそれ!」

澪「そ、そんな!違うだろそれは!」

紬「うふふ///」

澪「ムギも頬を染めるな!」

唯「お互いのことを想っていたら、お互いが夢に出るって言うよ」

律「でもそれは夢の内容が同じっていうのとは違うだろ~」

唯「うーん…確かに」

唯「夢と言えば人によっては白黒の夢を見るっていうよね~」

澪「え…白黒じゃないの!?」

律「私はフルカラーだぜ」

紬「私も~」

唯「私もだよ~」

澪「う、嘘だ…そうだ!和は?」

和「え…ごめん、全く聞いてなかったんだけど…」

和「私は白黒よ」

澪「やっぱり和が大好きだ~!」

律「そんなに一人ぼっちが嫌かよ…」

和「でも二人の夢が同じって言うのはおかしな話ね」

澪「きっと同じ映画でも見てたんじゃないか?」

律「確かに私は昨日見た映画のまんまだな…」

紬「…でも私はそういうの見たことないわ」

澪「うーん…」

この話は放課後まで続いた

梓「不思議なこともあるもんですね」

律「そういえば梓の夢ってどんな感じなんだ?」

梓「え…私はー…言えません!」

律「ほうほう…言えないような夢ですか~」

梓「私のは…色々すぎて言葉にできないだけです!」

律「ホントかぁ~?」

梓「…うぐ…」

澪「もうやめてやれ」ポカッ

律「すみませんでした」

唯「私も知りたいな、あずにゃんの夢」

梓「唯先輩でもダメです!」

律「その発言が言いたくないだけってことを現してるよな…」

私も梓ちゃんの夢には興味があったけど、梓ちゃんが嫌そうだったからやめた

紬「そんなことよりお茶淹れたわよ~」

唯「はーい!」

その日はそれ以上夢の話はしなかった

紬「梓ちゃんの夢、興味あるな~」

今日は梓ちゃんと同じ夢が見れれば、梓ちゃんの夢も分かるのに…

紬「おやすみなさい…」

────────
────

気が付くと私は真っ暗闇の中にいた
昨日と全く同じシチュエーション

紬「これも…夢よね」

場面が変わるのを待っていると、昨日と同じように光が現れた
光は大きくなり、やがて辺り一面を包み込む

瞑ってしまった目を開けると、目の前にはみんながいて、遊園地があった

梓「みなさん、あずにゃんランドへようこそ!」

唯「すごいねー!本当に建てちゃったんだ!」

梓「ふふーん!」

律「でもあずにゃんランドはねーよな」

梓「そんなことないです!」

澪「でも何で遊園地なんだ?」

梓「遊園地は楽しいですから!」

私達はどうやら梓ちゃんの作った遊園地に来ているらしい

律「で、もちろんタダにしてくれるんだろーな!」

梓「ダメです!先輩だからといって特別扱いはできません!」

律「ちぇー、ケチー…」

唯「早く入ろうよ~!」

澪「そうだな、中に入ってからでも話はできるし」

とりあえずみんなの動きに合わせたほうが良さそうだ

梓「こっちが鯛焼き屋さんです、オススメはクリーム鯛焼きです!」

唯「鯛焼き~♪」

鯛焼き屋さんがたくさん並んでいる
他の食べ物屋さんはないみたいだ

律「鯛焼きばっかりじゃ飽きそうだな…」

梓「私は飽きませんから!」

澪「となりはネコミミ屋さんか…」

梓「さすが澪先輩、お目が高い!このネコミミは…」

澪「…わかった、後で紹介してくれ…」

梓ちゃんのテンションがおかしい気がするけど、それも面白い

梓「ここがあずにゃんランド最大級のアトラクション、あずにゃんコースターです!」

唯「すごーい!」

澪「いきなり最大級か…」

梓「私は先輩方と違って常に全力ですから!」

律「それってちょっと全力のベクトルが違う気がするぞ…」

梓「ムギ先輩はどうですか?」

紬「私は良いと思うわよ~」

梓「でしょうでしょう!」

梓ちゃんはただ褒められたいだけなのかもしれない

律「じゃあ早速みんなで乗ろうぜ~」

澪「ジェットコースターは…怖い…」

唯「楽しそうだよね~」

紬「さ、乗りましょう、澪ちゃん♪」

梓「じゃあ行ってらっしゃいです」

律「ん?梓は乗らないのか?」

梓「一応オーナーですから!」

私達4人は貸し切り状態のジェットコースターに乗りこんだ

梓「それでは、いってらっしゃーい!」

ジェットコースターがゆっくり動きだす
しかし、何か違和感がある…

唯「あれ…?これ…ペラペラ~ってしてない?…」

律「え?…ってわーーー!これ段ボールじゃねーか!」

澪「あわわ…私達…死ぬの?」

梓「そ、そんなはずないです!ちゃんと頼んで作ってもらったです!」

ジェットコースターはガタガタになってきている
しかし、それは上昇をやめることはなかった

唯「高くてもう降りれないよ~…」

澪「ガタガタ…」

律「おい、梓!助けを呼んでくれ!」

梓「無理です!ここは近くに何もないです!」

みんなが慌てている
私だけはこれが夢だと知っているから余裕がある

でも…せっかく夢なんだからこの事態を解決しちゃおうか

紬「とう!」

私は高さ10mから飛び下りた
私の体はふわっと落下し、安全に着地することができた

律「えええ!ムギ、大丈夫か!?」

紬「うん、みんなもやってみたら?」

律「…このままでもダメそうだし…よし!」

りっちゃんも飛び降りた
夢だと認識しているのは私だけだからダメかも、と思ってたがりっちゃんも無事着地した

律「やればできるもんだな…」

唯「私もいくよ~」

唯ちゃんは着地に失敗したが、お尻をちょっと痛めただけだった
あとは澪ちゃんだけ…

澪「コワイヨー…ムリダヨー…」

律「おい澪!何やってんだ!大丈夫だって!」

澪「トビオリラレルワケガナイ…」

唯「早くしないとジェットコースターバラバラになっちゃうよ~」

澪「ヒィ!…モウダメダー…」

澪ちゃんは全然飛び降りることができない
ここは私が助けてみよう

紬「とう!」

私は高くジャンプした
どこまでも高く飛ぶことができる

澪「ムギ!」

紬「澪ちゃん、掴まって」

澪ちゃんは私の手を握る
私はそのまま澪ちゃんと一緒に飛び降りる

澪「きゃああああああ!」

私達はみんな無事に脱出することができた
私と澪ちゃんが着地した瞬間にジェットコースターはバラバラになった

梓「あ…あの…みなさん…」

律「まぁ梓が悪いわけじゃ…」

梓「うわあああああん!すみませえええええん!」

唯「あ、あずにゃん!よしよ~し…」

梓「うああああああああん!」

唯「どうしよう…泣きやまない…」

澪「」

梓ちゃんは泣きやまず、澪ちゃんは気絶したままで、大変な状態になった

紬「梓ちゃん、大丈夫よ」

梓「ぐすっ、全然大丈夫じゃないです!」

紬「遊園地を作った会社は私がどうにかするわ♪」

梓「!」

紬「改修工事のお金は出してもらえばいいし、まだお客さんも私達しか来てないし…」

紬「あと、改修工事はうちの系列の会社を紹介するわ♪」

梓「むぎせんぱ~い…」ダキッ

紬「あらあら♪」

梓「お礼に…ゴールドパスを差し上げます!」

紬「私は別に…」

梓「これです!」

ゴールドパス…それは黄金のネコミミだった

梓「これをつけて入ると全て無料になります、ムギ先輩には似合うと思いますよ」

紬「じゃあさっそく…」

黄金のネコミミをつけようとした瞬間、目が覚めた

紬「やっぱり夢だったのね」

紬「これは誰の夢だったのかな」

今日も学校へ行くのが楽しみだ

寝ます。夢の中にムギちゃんが出てくれることはないと思いますが。
書き溜めはあるので落ちたら立て直します。

放課後、私は探りを入れてみることにした

紬「今日ね、私梓ちゃんの作った遊園地に行く夢を見たの♪素敵だったわ~♪」

律「どんな夢だよ…」

澪「お前が言えることじゃないだろ」

唯「遊園地か~、行きたいな~」

梓「…」オドオド

どうやら梓ちゃんで間違いないようだ

紬「それでね~、鯛焼き屋さんが…」

梓「ムギ先輩!そんな話より練習しましょう、練習!」

唯「えー、もっとその話聞きた~い」

律「練習したくな~い」

澪「お前ら…」

紬「ごめんね、梓ちゃんで勝手に妄想しちゃって、この夢の話はもうやめるわ」

誰の夢だったかを知ることができればそれでいい
これ以上言って梓ちゃんを傷つけるわけにもいかない

紬「その夢になる前に…昨日と同じ夢を見たの」

律「…廃墟から突然遊園地になったのか?」

紬「あ、そういうことじゃなくて…私が真っ暗な部屋にいて、突然光に包まれて、
  気が付いたら別の夢になってるの、
  それのおかげで今回は初めから夢だってわかったわ」

澪「明晰夢ってやつか」

唯「メイセキム?」

澪「夢の中でこれが夢だって自覚がある夢のことだよ」

唯「あ、それ私なったことある!」

律「えー、なんだよそれ、それじゃあ夢を楽しめないじゃねーか」

澪「明晰夢は夢の内容を自分の思い通りにできて、空を飛んだりとかもできるらしいよ」
律「え!マジで!唯、ムギ、飛んだの!?」

紬「ええ、ジャンプしただけで10mとか」

梓「!」

唯「私は~…と、飛んだよ!びゅーんって!」

律「二人ともうらやましいな~」

唯「…」

律「そういえば同じ夢見たって言ってたよな」

紬「ええ」

律「同じ夢を見るって言えば『猿夢』って知ってるか~」

唯「お猿さんの夢?」

律「猿夢っていうのはな~…」

私は、夢をみていました。
昔から私は夢をみている時に、たまに自分は今、
夢をみているんだと自覚する事がありました。

この時もそうです。何故か私は薄暗い無人駅に一人いました。
ずいぶん陰気臭いを夢だなぁと思いました。

すると急に駅に精気の無い男の人の声でアナウンスが流れました。
それは「まもなく、電車が来ます。
その電車に乗るとあなたは恐い目に遇いますよ~」
と意味不明なものでした。

まもなく駅に電車が入ってきました。
それは電車というより、
よく遊園地などにあるお猿さん電車のようなもので
数人の顔色の悪い男女が一列に座ってました。
私はどうも変な夢だなと思いつつも、
自分の夢がどれだけ自分自身に恐怖心を与えられるか
試してみたくなりその電車に乗る事に決めました。
本当に恐くて堪られなければ、目を覚ませばいいと思ったからです。
私は自分が夢をみていると自覚している時に限って、
自由に夢から覚める事が出来ました。

私は電車の後ろから3番目の席に座りました。
辺りには生温かい空気が流れていて、
本当に夢なのかと疑うぐらいリアルな臨場感がありました。

「出発します~」とアナウンスが流れ、電車は動き始めました。

これから何が起こるのだろうと私は
不安と期待でどきどきしていました。

電車はホームを出るとすぐにトンネルに入りました。
紫色ぽっい明かりがトンネルの中を怪しく照らしていました。

私は思いました。(このトンネルの景色は子供の頃に遊園地で乗った、
スリラーカーの景色だ。この電車だってお猿さん電車だし
結局過去の私の記憶にある映像を持ってきているだけで
ちっとも恐くなんかないな。)とその時、
またアナウンスが流れました。

「次は活けづくり~活けづくりです。」
活けづくり?魚の?などと考えていると、
急に後ろからけたたましい悲鳴が聞こえてきました。

振り向くと、電車の一番後ろに座っていた男の人の周りに
四人のぼろきれのような物をまとった小人がむらがっていました。
よく見ると、男は刃物で体を裂かれ、
本当に魚の活けづくりの様になっていました。
強烈な臭気が辺りをつつみ、耳が痛くなるほどの大声で
男は悲鳴をあげつづけました。
男の体からは次々と内臓がとり出され
血まみれの臓器が散らばっています。

私のすぐ後ろには髪の長い顔色の悪い女性が座っていましたが、
彼女はすぐ後で大騒ぎしているのに黙って前をを向いたまま
気にも止めていない様子でした。

私はさすがに、想像を超える展開に驚き、
本当にこれは夢なのかと思いはじめ
恐くなりもう少し様子をみてから目を覚まそうと思いました。

気が付くと、一番後ろの席の男はいなくなっていました。
しかし赤黒い、血と肉の固まりのようなものは残っていました。
うしろの女性は相変わらず、無表情に一点をみつめていました。

「次はえぐり出し~えぐり出しです。」とアナウンスが流れました。

すると今度は二人の小人が現れ、ぎざぎざスプーンの様な物で
うしろの女性の目をえぐり出し始めました。
さっきまで、無表情だった彼女の顔は、
痛みの為ものすごい形相に変わり、
私のすぐ後ろで鼓膜が破れるぐらい大きな声で悲鳴をあげました。
眼かから眼球が飛び出しています。血と汗の匂いがたまりません。
私は恐くなり震えながら、前を向き体をかがめていました。

ここらが潮時だと思いました。
これ以上付き合いきれません。
しかも、順番からいくと次は3番目に座っている私の番です。
私は夢から覚めようとしましたが、
自分には一体どんなアナウンスが流れるのだろうと思い、
それを確認してからその場から逃げる事にしました。

「次は挽肉~挽肉です~」とアナウンスが流れました。

最悪です。どうなるか、容易に想像が出来たので神経を集中させ、
夢から覚めようとしました。
(夢よ覚めろ、覚めろ、覚めろ)
いつもはこう強く念じる事で成功します。

急に「ウイーン」という機会の音が聞こえてきました。
今度は小人が私の膝に乗り変な機会みたいな物を近づけてきました。

たぶん私をミンチにする道具だと思うと恐くなり、
(夢よ覚めろ、覚めろ、覚めろ)
と目を固くつぶり一生懸命に念じました。

「ウイーン」という音がだんだんと大きくなってきて、
顔に風圧を感じ、もうだめだと思った瞬間に静かになりました。
なんとか、悪夢から抜け出す事ができました。

全身汗でびしょびしょになっていて、目からは涙が流れていました。 私は、寝床から台所に向、水を大量に飲んだところで、
やっと落ち着いてきました。
恐ろしくリアルだったけど所詮は夢だったのだからと
自分に言い聞かせました。

次の日、学校で会う友達全員にこの夢の話をしました。
でも皆は面白がるだけでした。所詮は夢だからです。

それから4年間が過ぎました。

大学生になった私はすっかりこの出来事を忘れ
バイトなんぞに勤しんでいました。

そしてある晩、急に始まったのです。
「次はえぐり出し~えぐり出しです。」

あの場面からでした。
私はあっ、あの夢だとすぐに思いだしました。
すると前回と全く同じで二人の小人が
あの女性の眼球をえぐり出しています。

やばいと思い
(夢よ覚めろ、覚めろ、覚めろ)
とすぐに念じ始めました今回はなかなか目が覚めません。
(夢よ覚めろ、覚めろ、覚めろ)
「次は挽肉~挽肉です~」
いよいよやばくなってきました。
「ウイーン」と近づいてきます。
(夢よ覚めろ、覚めろ、覚めろ、覚めてくれ)
ふっと静かになりました。
どうやら何とか逃げられたと思い、目をあけようとしたその時
「また逃げるんですか~次に来た時は最後ですよ~」
とあのアナウンスの声がはっきりと聞こえました。
目を開けるとやはり、もう夢からは完全に覚めており
自分の部屋にいました。

最後に聞いたアナウンスは絶対に夢ではありません。
現実の世界で確かに聞きました。
私がいったい何をしたと言うのでしょうか?
それから、現在までまだあの夢は見ていませんが
次に見た時にはきっと心臓麻痺か何かで死ぬと覚悟しています。
こっちの世界では心臓麻痺でも、あっちの世界は挽肉です。

律「…と、こういう話だ!」

澪「キコエナイキコエナイ…」

唯「うわー、今日はその夢見ちゃいそうだね…」

澪「ミタクナイミタクナイ…」

梓「私その話聞いたことあります」

律「お、梓は怖い話とか好きなのかぁ?」

梓「違います、たまたま見かけただけです」

梓「ほら、澪先輩大丈夫ですよ、練習してこんな話忘れましょう」

澪「うん…」

実際は梓ちゃんが忘れたい話があるからだろう
でもここは澪ちゃんを泣き止ませる梓ちゃんが見れたし、黙っておこう

今日の練習はボロボロだ

ケーキ不足でヘナヘナな唯ちゃん
いつも通りに走り気味なりっちゃん
怖い話を忘れられず手が震える澪ちゃん
なんだかヤケクソな梓ちゃん

まぁ、たまにはこういう日もあるだろう
それより今日は誰の夢に行けるのかなぁ…

澪「おいムギ、手が止まってるぞ!」

紬「あ、ごめんなさい」

二日連続で他人の夢を見ることができたのだから、きっと今日もいけるだろう
その期待が逆に私を寝かせてはくれなかった

でも寝ないわけにはいかない
仕方がないので斉藤に言って睡眠導入剤を服用した

これで今日も…

────────
────

真っ暗な空間
初めは恐怖の対象だったが、今ではまるで夢のハブ空港のように思える

私は光が出るのを待った
私が待ち遠しく感じているからか、光はなかなか姿を見せない

退屈になり、私は目を瞑った
光は探さなくても勝手に私を包んでくれるのだ
眩しくなる前に瞑っておいてしまおうと思ったのだ

目を瞑っても同じ世界
真っ暗で何もない

と、音が聞こえた
ガタンゴトン、ガタンゴトン

電車?光が来なくても人の夢に行けるのだろうか
私はゆっくり目を開いた

「 次は活けづくり~活けづくりです。」

私は電車の座席に座っていた
後ろを振り向くと一番後ろの男性が活けづくりのようになっていた
景色は白黒だったので、あまり気持ち悪くはなかった

私は後ろから4番目…3番目は…

紬「澪ちゃん!」

澪「…うぁ…ムギィ…私殺されるよぅ…挽肉にされちゃう…」

そうか、これは澪ちゃんの夢
でもあの話の再現度が高すぎる、それだけ深く心に残ってしまったのだろう

紬「大丈夫、私がいるから!」

「大丈夫」に根拠はないが、昨日のように明晰夢の力で押し切れると思ったのだ

澪「ありがとう…ムギ…」

澪ちゃんが私を頼ってくれている顔はとても可愛らしい
写真に収めたいぐらいだが、生憎ここは夢の中である

「 次はえぐり出し~えぐり出しです。」

紬「やめなさい!そこの小人さん!」

私はアナウンスと同時に威勢よく立ち上がり、怒鳴りつけた
しかし小人は、いや、標的の女性さえも私の声に気付いてはいないようだった

紬「仕方ないわね…」

私はりっちゃんの夢に出てきた銃を思い浮かべた
すると、私の手元にその銃が現れた

紬「喰らいなさい!」

しかし小人には全然効いていない
小人は私の銃撃を無視して女性の目をえぐり出し始めてしまった

澪「いやああああああああああ!!やっぱり無理なんだよ!私は死んじゃうんだ!」

そうか、これは澪ちゃんの悪夢
澪ちゃんが「この小人には敵わない」と思っている限りは倒すことができない

紬「澪ちゃん、落ち着いて!今は澪ちゃんの協力が必要なの!」

澪「わ、私なんか役に立たないまま死んじゃう…」

紬「澪ちゃんはとにかく私を信じて!小人は倒せるって信じて!」

澪「うん…わかった…」

紬「今度こそ…」

私は銃を乱射する
女性はすでに死んでいたので気兼ねなく撃つことができる

小人は気持ち悪い奇声をあげて倒れる
二度と復活しないように、原型を留めなくなるまで撃ち続けた

小人を全滅させると、電車は停車した

澪「あ…か、勝ったのか!?」

紬「ええ、もう大丈夫よ♪」

澪「お礼に何か…」

紬「じゃあ、私のこと叩いてほしいの♪」

澪「え…?」

紬「私、叩かれるのが夢だったの♪」

澪「じゃ、じゃあいくぞ…」

澪ちゃんが腕を振り上げて、それを私に向けて落とす
その手が私の目の前にきた瞬間、私は目が覚めた

紬「いつもいいところで終わっちゃうのね…」

澪「…だけどな、ムギがいてな…」

学校へ行くと、またりっちゃんと澪ちゃんが二人で話していた

紬「二人とも、何のお話してるの~?」

律「澪がさ~、昨日の怖い話の夢見ちゃったらしいんだけど…」

澪「ムギが銃でババババーって小人をやっつけてくれたんだ!」

律「どんな夢だよって…」

紬「実はそれ…」

唯「みんなー、おはよー!」

澪「おはよう唯、今日は早いな」

唯「で、みんななんの話してたの?」

一瞬話が逸れてしまうかと思ったが、唯ちゃんが好奇心旺盛で助かった

澪「私が昨日の怖い夢見ちゃったんだけど~…」

唯「へ?怖い夢?」

律「猿夢って話てたろ~」

唯「あ~…お猿さんの夢ね!」

澪「それでさ!」

澪ちゃんが一通り話し終わったとき、私は言いたかった事を言った

紬「実はその夢、私も見たの♪」

律「ええ!2回目!?」

紬「たぶん3回目だと思うわ、昨日のはきっと梓ちゃんの夢だもの♪」

唯「じゃああずにゃんの夢の内容知ってるの?教えて!ここだけのヒミツで…」

紬「ダメよ、梓ちゃんがダメって言ってるんだから」

唯「ぶー」

ちょっと昼食行ってくるです。

澪「でもみんなムギに夢の中で救われてるんだな」

律「あとは軽音部の中では唯だけか」

唯「私は…いいよ~…」

律「そんな水臭いこと言うなよ~、どうせお前の夢なんて食べ物の話なんだろ?」

唯「う…そんなんじゃないもん!」

律「じゃあどんな夢だって言うんだよぅ」

唯「え…と…あ!ギー太の夢とか…?」

澪「ほとんど食べ物と変わらないな…」

唯ちゃんの夢か…唯ちゃんから夢の話を聞いたこともあまりないし興味がある

律「梓~、お前の夢はムギから聞いたぞ~」

梓「にゃ!?そ、そんな…」

りっちゃんは梓ちゃんに鎌をかけて夢の内容を聞き出そうとしていた

律「まぁ誤解されるようなシーンとかあったし~
  お前の口から言ったほうがいいんじゃないかな~?」

梓「く…仕方がないです…」

りっちゃんは口がうまい
梓ちゃんは夢の内容を正確に話した
嘘がつけないのは私がいるからだろう

梓「…という感じです」

律「今のであってたか?」

紬「うん、全く同じよ♪」

梓「騙したんですね!?律先輩!」

律「ひゃあ、お助けを~」

澪「唯?元気ないぞ」

唯「へ…?あ、私は超元気だよ!」

そういえば私の夢の話をしてから唯ちゃんの元気がない
唯ちゃんは夢を見られたくないのだろうか

まぁ、普通の人だったら当然だろう
でもあの唯ちゃんが他人に夢を見られるのを恥ずかしがるとは思わなかった

紬「ごめんね唯ちゃん、できるだけ唯ちゃんの夢には行かないように努力するわ」

他人の夢に勝手に入って楽しんでいたのは、反省すべきだろう

紬「みんなもごめんね、勝手に夢の中に入っちゃって…」

律「あー私は別にいいけどな」

澪「私は助けてもらったし…」

梓「私は助けてもらいましたけど、恥ずかしい思いをしたんでトントンです!」

唯「そうか…助けてくれるなら…」ボソ

紬「え?何か言った?」

唯「ん!?いや、何でもないよ!」

やっぱり唯ちゃんの様子はちょっとおかしい
ああは言ったけどやっぱり唯ちゃんを夢で助けたほうがいいのだろうか

────────
────

真っ暗な空間
もう4回目にもなる、大分見慣れたものだ
見慣れた、というには何も見えてはいないので適切ではないかもしれないが

昨日のように光がない場合もあるので、私はすぐに目を瞑った
しかし、何も聞こえない
目を開けても真っ暗なまま

おかしい
こういうときはどうすればいいのだろう…

紬「唯ちゃ~ん!どこにいるの~?」

私は暗闇に向かって叫んだ

唯「ムギちゃん、来ちゃったんだ…」

暗闇から唯ちゃんの声が聞こえた

紬「ごめんね、でも悩んでるみたいだったから」

唯「私の夢は最近いっつもこんな感じで真っ暗なんだ」

唯「でもね、時間が経つと光が出てきてね、別の世界に行けるの」

唯ちゃんも私と同じ夢を見ていたのだろうか

唯「ある時は私は宇宙人だったんだ」

唯「私は夢だって分かってたからあんまり侵略とか気が進まなかったんだ」

唯「それで現地の人に声をかけようとしたら」

唯「撃たれちゃったんだ」

紬「…」

これは…りっちゃんの夢の宇宙人?

唯「あと私は遊園地作ってたよ」

唯「頑張って作ったんだけどその遊園地に欠陥が見つかって」

唯「借金地獄になって自殺しちゃうんだ」

唯「小人さんだったこともあるかな」

唯「おいしい料理をお友達と作っている最中に」

唯「射殺されちゃうんだ」

唯ちゃんの夢は…全部私が倒してきたモノ達…
私は夢でみんなを助けてきたつもりだった
でも実際は夢で唯ちゃんを殺し続けてきただけだったのか

唯「こんな私を…助けてくれる?」

今まで知らなかったとはいえ唯ちゃんを殺し続けてきた私が、唯ちゃんを助けられる気はしない

唯「…そうだよね、こんなわけのわからない夢じゃあ助けようもないよね」

紬「違うの…」

唯「あ…光…」

唯ちゃんの声と同時に、私の視界は真っ白く染まった

────────
────

気が付くと…私は自分のベッドで寝ていた

紬「まだ…唯ちゃんを助けてないのに…」

時間はまだ3時、もう一回寝れば…

紬「!!これは…金縛り!?」

私は起きてはいなかった
夢の中で金縛りにあっている

もしかしてこれが今日の唯ちゃんの夢…
私を唯ちゃんが殺そうとする夢…?

唯「ムギちゃん…どこなの…」

唯ちゃんの声…でも声は出せない
だいたい金縛りでなくても殺されるかもしれないのだ
声が出せるわけがない

唯「こっちかな?」

隣の部屋の扉が開く

唯「こっちにもいない…」

心臓の音が激しくなる
次はこの部屋…

ガチャ
とうとうこの部屋のドアが開いた

唯「ムギちゃん…やっと見つけた!」

唯「助けに来たよ!ムギちゃん!」

紬「…」

唯「ああ、ムギちゃんは金縛りにあってたんだ」

唯「じゃあ私がおぶっていってあげるよ!」フンス

もしかして唯ちゃんは私を助けに来てくれたんだろうか
どの道今は動けないので唯ちゃんを信じるしかなかった

唯「もう少しでおばけがやってきてムギちゃんを食べちゃうところだったんだよ」

唯「この家を出れば…金縛りも解けるはずだよ!」

唯ちゃんは私をおぶりながら家の中を走り続けた
唯ちゃんにこんな力があるとは思わなかった
これも夢だから?

唯「出口が見えた!」

紬「…体が動く…話せる…」

唯「ふー、良かった良かった」

紬「私が助けてもらうとは思わなかったわ…」

唯「私もやる時はやるんだよ」

紬「…お礼に私の沢庵を食べて!」

唯「たく…え…?」

紬「私のまゆ毛は沢庵なの♪おいしいから是非食べて♪」

唯「そこまで言うなら…いただきまーす」

────
────────

律「おいムギ、結局今日は唯の夢を見たのかよ」

紬「ええ、見たわよ♪」

澪「どんな夢だった?」

唯「私がムギちゃんを助ける夢だったんだけど、結果的にムギちゃんが私を助けてくれたんだよ」

梓「…意味が分かりません」

紬「実はね…」

────────

沢庵を口に運んだ瞬間、目が覚めた

紬「…私…唯ちゃんになって私を助けてたの?」

あれは唯ちゃんの夢だったのか、私の夢だったのか

紬「それにしても沢庵って…唯ちゃん…」

唯「おはよームギちゃん!」

紬「あら、唯ちゃんと登校中に会うなんて珍しいわ」

唯「遅刻まですいません」

紬「うふふ♪」

唯「そういえば今日はありがとうね」

唯「見事な私っぷりだったよ!」

紬「うふふ♪唯ちゃんも見事に私だったわよ♪」

紬「唯ちゃん、沢庵食べる?」

唯「え…もしかして本当に!?」

紬「まゆ毛は沢庵じゃないわよ♪」

唯「あはは、それはそうだよね!」

────────

澪「なるほど、唯がムギになって金縛りにあって」

律「ムギが唯になってムギになった唯を助けた、と」

梓「なんでそんな紛らわしいことに…」

紬「多分、唯ちゃんは他人の夢で死んじゃうっていう悪夢を見てて」

唯「ムギちゃんは他人の夢で人を助ける夢だったからかな~」

梓「…さっぱりです、つまりどういうことなんですか」

紬「つまり…」

紬「みんなを助ける夢だったの♪」


おわり

読んでくださってありがとうございます。

ところで和編とかって需要あります?

じゃあ可能な限りやってみます。
書き溜めるんでちょっと待っててください。

おまけ

ガラッ

唯「あ、和ちゃん」

澪「どうしてここに?」

和「講堂の使用許可書、もう締め切り過ぎてるわよ!」

律「おーそれなら…今から書くから大丈夫!」

澪「今からかよ!」ポカ

和「そういえばみんな何騒いでたの?」

唯「ムギちゃんが私達の夢に日替わりで来て、助けてくれたんだ~」

律「ほい書いた~!」

和「そうなんだ、じゃあ私生徒会行くね」

和「…夢の中で助けてもらう…か…」

和「私最近良い夢とか見たかなぁ…」

和「早く…仕事を…片付け…ないと…」

和「zzz…」

紬「!」

澪「どうした?ムギ」

紬「急に眠気が…」

律「きっとみんなを夢で助けてばっかだったからちゃんと眠れてなかったんだな」

唯「練習は一旦休んで寝ていいよ!」

紬「…ありがと…う…」

梓「ムギ先輩、また誰かの夢に行くんでしょうか」

────────
────

もう見ることもないと思っていた真っ暗な空間…
唯ちゃんも助けたし、もう唯ちゃんを殺さなくていいのかな?
それともまた別な人?

私は光に包まれる
今日はいったい誰の夢?

目を開けるとそこは白黒の世界
ここは…生徒会室?

和「違う…こうじゃない…」

紬「和ちゃん?」

和ちゃんが一人机でうつむいている

和「ムギ…見られたくないところを見られちゃったわね…」

紬「和ちゃん…どうしたの?」

和「何度計算しても予算が合わないのよ」

和ちゃんは夢の中でも仕事してるんだ

紬「ちょっと見せて…」

そこには予算なんかじゃなく、苦しい、助けて、などといった言葉がびっしり書かれていた

紬「!?」

和「どうしたの?ムギ、とんでもない間違いでもあったの?」

これは本人に言うべきだろうか
いや、言っても信じてはくれない気がする

紬「いえ、なんでもないわ」

和「うーん、じゃあどうして…」

ガラッ
生徒会室の扉が開いた

「生徒会長!どういうことですか!」

和「え…何のことでしょうか?」

「私達の部の書類、また紛失したんですってね!」

和「そんなはずは…」

「生徒会の子がまた問題起こしたみたいじゃない、そこんとこ会長様はどう思ってるんですか」

和「…知らない…」

「知らない!?責任者はあなたでしょ!自覚ないの!?」

和「…すみません」

生徒たちが和ちゃんに罵声を浴びせ続ける

紬「みなさん!言いすぎじゃないですか!?」

「軽音部になんか言われたくないわよ」

「生徒会長と仲がいいからって優遇されちゃって…」

「だいたいあんたみたいなお嬢様が常識を覆しちゃうから悪いのよ!」

怒りの矛先が私に移った
これで和ちゃんはとりあえず大丈夫なはずだ

その後罵声は1時間にも及んだ
といっても夢の中の時間なので、実際はどれぐらいだったのだろう

言いたいことを言い終わると、生徒たちは帰って行った

紬「大丈夫?和ちゃん」

和「…ムギこそ大丈夫なの?」

紬「私はこういうのは大丈夫だから」

和「ごめんね」

紬「本当に…知らないの?」

和「うん、そんなミスした覚えはないんだけど…」

和ちゃんによると、生徒達が言っていたことは身に覚えが無いらしい
おそらく、脅迫観念が夢で現れたのだろう

和「…私も軽音部だったらもっと楽しい高校生活だったのかな」

紬「…」

和「みんな楽しそうだし、それなのに他の人も楽しませることができて…」

和「そもそもこの程度で弱音を吐くようじゃ、元から向いてなかったのかな?」

和ちゃんは弱弱しく愚痴を語りだした

紬「そんな弱気じゃダメ、自分を責め過ぎないで」

紬「私達は軽音部で、和ちゃんは生徒会だけど…」

紬「みんな友達じゃない!」

和「ムギ…」

紬「辛いことがあったら音楽室まで来てお茶しましょう」

紬「そしてみんなに話してくれれば、きっとなんとかなる!」

和「…」

和「…そうね、そうしてみる…ありがとう」

和「じゃあお礼に…」

お礼をもらうのは恒例なのだろうか

和「このメガネをプレゼントするわ」

和「きっと似合うわ」

紬「あ、ありがとう…」

メガネをかけようとした瞬間、例のごとく目が覚めた

紬「…う~ん」

律「おー、目が覚めたか」

澪「ずいぶんうなされてたけど、また誰かの夢に行ってたのか?」

紬「うん…和ちゃんの…」

唯「和ちゃん…今仕事中なのに寝てたんだ…」

澪「授業中いっつも寝てるお前が言うな」

唯「えへへ~」

梓「で、どうでした?」

紬「もちろん…」

ガラッ

唯「あ、和ちゃん!どうしたの?」

和「お茶させてもらうわ」

澪「…?珍しいな」

和「みんなに愚痴りたいことがあってね」

律「ほうほう~」

和「一回ぐらい提出期限守りなさい!」


和編おわり

良い感じの話ができないのでしばらく休みます。
できた時にもし残ってたら書きます。
が、あんまり期待しないでくださいね。

おまけ2

こんにちは、平沢憂です
今日は私のヒミツについて話したいと思います

実は私、他人の夢に入ることができるんです
といっても必ず入れるわけじゃあないんですけどね

最近はお姉ちゃんの夢に入れないので、今日はたまには梓ちゃんの夢にでも入ろうかな

────────
────

梓「あずにゃんランドへようこそ!」

純「本当に作ったんだ~」

憂「うふふ♪」

梓ちゃんの夢ってなんか可愛いな

梓「ふふん!このあずにゃんランドは実は改装済みで完璧になったんだ!」

純「で、その完璧なあずにゃんランドには今まで何人来たの?」

梓「…この間できたばっかりだからまだ…」

憂「じゃあ私達が最初のお客さんってことだね!」

梓「うん、ふ、二人のために他の人は入れないでおいたんだよ!」

憂「じゃあ早速入ろうか」

純「で、タダにしてくれるんでしょ」

梓「ダメ!友達だからってひいきしないんだから!」

純「梓のケチ~」

憂「早く入ろ!」

梓「こっちが鯛焼き屋さんだよ、オススメは抹茶餡鯛焼き!」

純「鯛焼き屋さんしかないじゃん…」

梓「いいじゃん!私鯛焼き大好きだし!」

憂「あっちは…ネコミミ屋さん?」

梓「さすが憂、お目が高い、あれはね…」

憂「お土産は最後に買うから~…」

梓「それもそうだね、じゃあ早速アトラクションを紹介するから」

梓ちゃんのキャラってこんなだっけ…?
お客さんが来てテンションが上がってるのかな?

梓「ここがあずにゃんランド最大級のアトラクション、あずにゃんコースターGだよ!」

純「いきなり最大級?」

梓「私は常に全力がいいからね!」

純「それって違う気がする…」

憂「すご~い!」

梓「でしょでしょ!」

憂「梓ちゃんは乗らないの?」

梓「私はオーナーだから!」

純「なにそれ…」

梓「それじゃあ、いってらっしゃーい!」

ジェットコースターがゆっくり動きだす
しかし、何か違和感がある…

純「あれ、これ…段ボール!?」

憂「え、これはどういうこと?梓ちゃん」

純「梓がいない!?」

ジェットコースターはガタガタになってきている
しかし、それは上昇をやめることはなかった

純「このままじゃ死んじゃう…」

でもこれは梓ちゃんの夢だから、純は死んでも問題ない
私は落ちる直前にでも目がさめればいいよね

そんなことを考えていると、とうとうジェットコースターはバラバラになった

純「きゃああああああああああ!」

梓「楽しかった?」

純「はあ…死ぬかと思った…」

憂「まさかわざと壊して怖くするなんて…すごいね梓ちゃん!」

梓「えへへ、怪我の功名って奴かな?」

憂「?」

あずにゃんコースターGは頂上でコースターを壊して恐怖感を増すことで楽しむものらしい
まぁ、夢ならではなアトラクションなのかな?

梓「じゃあ次は猫屋敷!」

憂「おもしろいアトラクションばっかりだね!」

梓「ふふふ、憂は褒めるのうまいね」

梓「ひいきはしないって言ってたけどやっぱり二人には1回無料券をあげるよ」

純「え!いいの!?」

梓「ただし、今回は使えないよ!」

純「ケチ~」

梓「はい、無料券」

憂「これって…ネコミミ?」

梓「うん、それをつけて入場するとタダになるんだよ」

梓「試しにつけてみなよ」

憂「うん…」

純「どう?似合う?」

梓「似合わない!」

純「ひどーい!」

私もつけなきゃダメなのかな…
いいか、どうせ夢だし

ネコミミをつけようとした瞬間…

ピピピピピピピピ
目覚まし時計の音とともに見慣れた天井が映る

憂「朝…まぁ結果的にネコミミつけなくて済んだし…」

憂「ご飯作らなきゃ」

梓「憂おはよー」

憂「梓ちゃんおはよう」

純「ふたりともおはよー」

なんてことはない普通の朝
私が梓ちゃんの夢の中にいたことは秘密

憂「そうだ、今週末空いてる?」

梓「私は大丈夫」

純「私もー」

憂「じゃあ三人で遊園地行こう!」


憂編おわり

それではおやすみなさい。
みなさん良い夢を。

あと、寝る前に>>81-86辺りを見ないように気をつけてくださいね。

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