唯「平行世界の私達!?」(467)

いつも通りの朝。

憂「お姉ちゃーん!そろそろ起きないと、遅刻するよー!」

唯「ん、ふぁ…う~ん」

普段と何も違わない、平凡で平和な一日が今日もまた始まる。
授業をうけて、放課後は軽音部のみんなとお茶して、ギー太もいっぱい弾いて――いつもと変わらない、だけど楽しい一日が始まる。

唯「いい天気だなぁ~」

憂「お姉ちゃーん?」

唯「今行くよー!」

あんな光景を目にするまでは、そう思っていた。

憂「明日からはもう少し早く起きようね、お姉ちゃん」

唯「申し訳ございません」

憂「うふふ――あ、梓ちゃん」

憂が前方を見て声を上げ、唯もその視線を追う。名前を呼ばれてちょうど振り返った梓と目が合い、唯はにっこりと笑った。

梓「おはよう憂。おはようございます、唯先輩」

唯「おはよーあずにゃん♪」ダキッ

梓「わっ!朝からやめてくださいよ先輩!」

憂「梓ちゃんも一緒に行こっか」

梓「うん」

他愛もない会話をしつつ、三人は校門をくぐる。

と、生徒たちが次々玄関へと向かう中、一人立ち止まってきょろきょろしている律の姿が目に入った。

梓「何してるんでしょうね、律先輩」

唯「さぁ…?聞いてみるのが一番だよっ」

唯「おーい!りっちゃーん!」

律「ん…?あっ唯!やっと見つけたぞ!」

唯「あれ?もしかして私に用だったの?」

律「用も何も、お前が急に走り出すから…って、あれ――もう大丈夫になったのか?」

唯「…え?」

律「いや、なんか様子がいつもと全然違ってたからさ」

律の言葉の意味がわからず固まる唯。憂と梓も駆け寄ってくる。

憂「おはようございます、律さん」

律「おはよ、憂ちゃん。ってあれ…その格好――」

梓「律先輩、おはようございます」

口を開きかけていた律に、梓が挨拶する。その彼女の顔を見た律の顔に、困惑の表情が浮かんだ。

律「ん?あ、あぁ、おはよう。えーっと…」

そして、耳を疑う言葉を口にした。

律「憂ちゃんのお友達?」

梓「え――な、何言ってるんですか?私ですよ、梓です」

律「梓ちゃんっていうのか。えっと、どこかで会ったかな?ってか、先輩って?私まだ高一だけど」

唯「り、りっちゃん、さっきから何言ってるの?なんか変だよ、今日のりっちゃん」

律「そ、そうか?んー、やっぱ私変なのかな」

梓「認めちゃうあたり余計に変ですよ」

律「うはっ、案外きついな梓ちゃん」

梓「…やっぱりおかしいです。まるで私のこと…知らないみたいに…」

律「ご、ごめんな。私、おかしいみたいだからさ」

憂「一体どうしたんですか?」

律「うーん、なんていうか…昨日までは普通だったんだけどさ。朝目が覚めたら、学校近くの公園に倒れてた」

一同「えぇ!?」

梓「あの…それ、本当ですか?」

律「あぁ。自分でもびっくりしたよ。恰好もパジャマじゃなくて制服だし」

唯「え、えー…」

周りの生徒の数が少なくなってきた。唯はちらりと時計を見た。まだ予鈴までには少し時間がある。

律「混乱してとりあえずベンチに座って落ち着こうとしてたら――」

律「お前がニコニコしながらやって来た」

唯「…わ、私…?」

憂「あの、お姉ちゃんなら朝は私とずっと一緒でしたよ?」

律「マジで?いやでもあれは絶対に唯だったぜ?…ちょっと変わってたけど」

唯「変わってた?」

次から次へと出てくる意味不明な律の言葉に唯が眉をひそめた、その時だった。

律「ひゃー、危ない危ない。遅刻するところだったぜ!」

梓「律、先輩…?」

律「よう梓!…なんだよそのお化けでも見たような目」

梓だけじゃない。唯と憂も同じような顔をしていた。無理もない。

律が二人いる。異常な光景だ。

律「今の声、まさか――」

律「…ん?」

律達「ええええええええええええええええぇ!!?」

律「な、なん、な…えええええええええええぇ!?」

律?「どういうことなんだ…!?――やっぱり、私がおかしい…?」

憂「」

唯「りっちゃんが…二人!?」

あいた口がふさがらない一同。だが、そこに追い打ちをかけるかのごとく、彼女はやってきた。


「あ!えへ!りちゃあああああああああああ!」

梓「!?」

憂「」

唯「…嘘…」

「あはっwwりちゃ!あははwwwwいたぁ!!」

唯「――わ、たし…?」

奇声に近い笑い声をあげながら律に駆け寄る彼女は、唯そのものだった。
しかし、雰囲気は全くことなるもので、どこか異常さが垣間見える。

律?「こいつだ…公園にいた私を見つけたの」

唯「…ふぇ?」

律「あ、あわわわわ…私だけじゃなくて、ゆ、唯まで…」

唯?「がっこ!りちゃ!がっこ!」

律?「あぁ、学校だよ。そうか、お前早くここに来たくて走り出したんだな」

皆が呆然とする中、どうも様子がおかしい方の律は、はしゃぐ唯にやさしく尋ねた。

律?「なぁ唯。お前、今日朝なんで公園に来たんだ?」

唯?「りっちゃ、いた」

律?「あぁそうだな。でも、お前の家から遠いだろ?」

唯?「ああぁ!いえ!りっちゃ!ゆい、ぽいされた!?」

先ほどのはしゃぎ様が嘘だったかのように、唯はボロボロ泣き始めた。

律?「ぽい…?」

唯?「おきたらういいないの。川なの」

首をかしげる律。だが、唯には何となく理解できた。

唯「――りっちゃんと同じように、朝起きたら家じゃなかったんじゃないかな?川岸にいたんじゃない?」

唯?「ああああぁ!えへ!そっくり!!」

唯「そうだね~(確かに変わってるなこの私」

予鈴のチャイムが鳴り響く。ポカンとしていた梓たちは、ハッと正気に戻った。

梓「え、えと、とりあえず…どうしますか?」

律?「私とこの唯は授業が終わるまでどこかに隠れてるよ。同じヤツが二人もいちゃ、みんなパニックだろ」

律「あ、あぁ、そうだな。何がどうなってんのかさっぱりだけど、とりあえず放課後もう一度話し合おう。音楽準備室、来てくれるか?」

律?「わかった。唯、私が一緒にいるから、しばらく大人しくしてような?」

唯?「りっちゃ!いっしょ!あはっ!」

唯「それじゃ、また後で。――憂!しっかり!もう予鈴なっちゃったよ!」

憂「はっ!あ、え、うん!そうだね!お姉ちゃんが二人で幸せだね!」

唯「憂、しっかり!!」

授業中

唯(私がもう一人…。まだ寝ぼけてるのかな、私)

律「」

唯(りっちゃんもずっとあんな調子だしなぁ…)

ため息をつきながら、窓の外へと目をやる唯。と、

唯「――ん…?」

校庭に佇む、見慣れない女性の姿が目に入り、唯は目を疑った。

薄汚れた作業服を身にまとい、深くかぶった帽子がその顔を隠している。長い黒髪と豊満な胸が、その人が女性だという唯一の手がかりだった。

唯(何してるんだろ、あの人。不審者かな…)

先生「こら、平沢。授業中だぞ。よそ見するな」

唯「は、はい!」

校舎裏

律?「暇だなぁ、唯」

唯?「あいす!おいし!」

律?「そっか、そりゃよかった。金があって助かったよ」

唯?「りっちゃ、どーぞ」

律?「いいのか?――ん、おいしい」

唯?「おいしwwwおいしwwww」

律?(しっかし…一体何がどうなってるんだ?私がもう一人。私のことを先輩と呼ぶ梓ちゃんの存在。知らないうちに外にいた。もうめちゃくちゃだ)

律?(どうやら唯も知らないうちに、変な場所にいたみたいだし)

律?(――ここは本当に、私の知ってる町なのか…?)

「こんなところで何やってるんですか、唯先輩に律先輩」

律?「!?」

唯?「あああぁ!あずにゃ!」

梓「授業サボってアイス食べてるんですか?…そんな人たちだとは思いませんでした」

律?「あ、梓ちゃん!?何でここに…そっちこそ授業はどうしたんだよ!」

梓「梓、ちゃん?何ですか気持ち悪い。――私は気づいたらここにいたんです。意味わかんなくて迷ってたら、先輩方がこんなところでサボってるのが見えたから――」

律?「気づいたらここに…?まさか…。梓ちゃん、私たち朝校庭で出会ったよな?」

梓「だからなんでちゃん付けなんですか?それに、今日律先輩に出会ったのは今が初めてですよ」

律?「…やっぱり」

梓?「今日の律先輩はどうも変ですね。とにかく、私は授業に出てきますので。先輩方も早く戻った方がいいですよ」

律?「駄目だ、梓ちゃん。――ここにいるんだ」

梓?「な、何言って――」

律?「いいから」

放課後

紬「二人とも何かあったの?元気ないみたいだけど…」

律「あぁ、うん。何ていうか、ドッペルさんに出会っちゃったっていうか…」

紬「…え?」

律「いや、何でもない。実際に見てもらった方がわかるだろ」

唯「説明しても信じてもらえないだろうしね」

紬「え、えーと…」

律「あぁ、澪掃除当番だから遅れるってさ」

唯「澪ちゃんびっくりするだろうね~」

律「気絶するんじゃないか?現に私だって気が遠くなったし」

紬「…?」

律「とにかく、早く準備室に入ろう。いろいろと厄介なことになると面倒だし」

そう言いつつ、律は鞄から準備室の鍵を取り出すと、小走りで階段を駆け上がっていく。

唯「あ、待ってよりっちゃん」

紬「厄介…?面倒…?」

ちんぷんかんぷんな様子の紬の背を押しつつ、唯も後を追って駆ける。と、

律「うわああああああああああああぁ!!」

上から律の悲鳴が聞こえてきて、二人は仰天した。慌てて駆け上がると、準備室の前で腰を抜かしている律の姿が目に入った。

唯「どうしたの、りっちゃん!」

紬「何があったの!?」

律「ム、ムムム…」

律の視線を追って、二人は声を失った。

律「ムギが…もう一人…!」

紬?「ご、ごめんなさい!ビックリさせちゃった?」

愕然とする唯。抜け殻のようになっている紬。

それもそうだろう。そこにいたのは、関取のように体格のよい、今にも制服が張り裂けそうな状態の紬だった。

律「ふ、二人とも、とにかく中に入ろう。運良く今の悲鳴は誰も聞いてなかったみたいだ。騒ぎを起こしちゃややこしいからさ、な?」

唯「う、うん」

紬「」

紬?「本当にごめんなさい。驚かすつもりはなかったの…って、わ、私…!?」

律「私と唯に続いてムギまでか…。ホント、何がどうなってるんだ?」

唯「ムギちゃん、いつからここにいたの?」

紬?「それが、よく覚えてないの。気が付いたらそこのソファで横になってて…」

唯「二人と一緒だね…」

律「ってか、その、随分体格いいな、このムギは」

紬?「そうかしら?」

唯「正直かなりすごいね…」

紬?「確かに立ってるのつらいわ。よいしょ」ギシッ

グシャバキドーン!!

唯「ソファアアアアアアアアアアアア!!」

紬?「さっきまで横になってたからかしら…。ごめんなさい」

紬「」

律「ムギの反応が新鮮に感じてきたよ…」

唯「一気に非現実的なことを目にしたから、早速感覚が麻痺してきたね私たち」

律?「なんか今すごい落としたぞ?」ガチャ

唯?「えへwwwどーん!!!あは!!」

ずっと待機していた二人が、ようやく部室へとやってきた。

律「おぉ、来たか」

唯「入って入って」

紬?「え、えぇえ!!?唯ちゃんに、りっちゃんまで二人…!!」

紬「」フラッ

律?「おっと」ガシッ

律「これが普通の反応なんだろうな」

唯「この出来事に慣れちゃってる自分が怖いよ」

梓?「お邪魔しまーす」

唯「あぁ、あずにゃん聞いてよ。もう一人のムギちゃんまで現れたよ。気が付いたらここにいたんだってさ」

梓?「こっちの律先輩から話は聞きました。どうやら私ももう一人いるそうですね。…というか、この場合は私が“もう一人の梓”なんでしょうね」

唯「へ?」

律「ま、まさか…」

律?「そのまさかだよ。知らないうちに校舎裏に倒れてたんだってさ。この梓ちゃん」

唯「あずにゃんまで…」

紬?「え?え?話が読めないんだけど…」

梓?「私たちもあなたと一緒で、気が付いたら家じゃない場所で寝てたんですよ」

唯?「むぎちゃ!おきて!むぎちゃ!えへっww」

紬「う、う~ん…。今のは夢…?」

唯?「おごwwwむぎちゃ、おきたwww」

律?「お、よかった。気が付いたか」

紬?「大丈夫?」

紬「…さぁ、練習を飲みましょう。お掃除ちゃん澪してるっていうから、キーボードでも食べて待ってましょうね」

唯「ムギちゃあああああああああん!!」

律「ムギがここまで混乱してるのは初めて見るな…」

梓?「そのうち感覚が麻痺して、何でも受け入れるようになりますよ」

律「私らはもうそうなっちまったよ」

梓「唯先輩、律先輩、二人は来ましたk――」ガチャ

梓「なんか増えとる!!!」

梓?「どうもです」

紬?「お邪魔してま~す」

梓(えっなにあの関取)

唯「なんだか厄介な感じになってきたね…」

律「もう一人の私が出てきた時点で十分厄介だよ」

紬?「とりあえず、お茶でも飲んで落ち着かない?私が用意するわ」

紬「いえ、大丈夫よ…。ちょっと落ち着いてきたから。私が用意するから、みんなとりあえず座って」

律?「椅子足りるか?」

律「ソファを移動させよう。壊れてないヤツな」

紬?「私は椅子に座るわ。またソファ壊しちゃいけないし…」

唯「え、ちょ、ちょっと待ってムギちゃ――」

紬?「んっ、あら?肘掛けがつっかえて…ふんっふんっ」

梓「む、無理しないで…」

紬?「よいしょっ」バキベキボキ

紬の腹の肉に耐えきれなくなった肘掛けがへし折れる。

唯「いすうううううううううううううう!!!」

唯?「いwwwすwwwwww」

紬?「うん。これでよし」

紬「」

律「さて、ムギも落ち着いたところで、もう一回状況を整理してみるか」

唯「四人とも、気が付いたら全然訳がわからない所で寝ていたと」

梓「ワープ?する前の生活の記憶があるということは、四人とも何らかの超現象で突然生まれたとか、私たちから分裂したとかいう訳ではないですよね」

紬?「凄く現実味がない話ね、それ」

梓「すでに十分現実味がない状況なんで、突拍子もないことを考えるしかないんですよ」

梓?「やっぱり分裂って、突拍子もない話だよね…」

梓「え?」

梓?「や、何でもない」

律?「となると考えられるのは…平行世界ってヤツか?」

唯「へーこーせかい?」

梓「パラレルワールドってやつですよ。今私たちが生きているこの世界に並行して、別次元にも同じような世界がたくさん存在しているっていうお話、聞いたことないですか?」

唯「へぇ~…知らなかった」

律?「あくまで作り話…だと思ってたけど、どうもそれが一番正しい気がする」

おちんちんはえるン?

唯?「あー!あー!りっちゃ!!」

律?「そうだな、難しい話だから暇だよな。ちょっと我慢しててくれよ?」

もう一人の律に甘えるようにすがりつくもう一人の唯。律は優しくなだめる。

唯「じゃあ、みんなはここじゃない別世界の私たちっていうこと…?」

紬?「たぶんそうじゃないかな?昨日まで私がいた部室と雰囲気がちょっと違う気がするわ」

律?「それに、私は梓ちゃんをしらない。というか、まだ私は高一なんだ。後輩なんて、中学のときのヤツしかいないよ」

梓「マ、マジですか…」

梓?「でもその梓ちゃんっていうのやめてもらえませんか?なんだか気持ち悪いです」

律「私らは今高三だから…こりゃいよいよ平行世界説が濃くなってきたな」

紬「異世界…なんだか素敵…」

梓「ようやくこの異常な状況に慣れてきましたね。っていうか、楽しんできてますね」

>>29
生えないヨ


紬がうっとりとした表情をしていると、部室の入り口の扉が開いた。

澪「ごめん、みんな!遅くなった――…」

その音に振り返った一同と目が合う澪。その顔は、笑顔のまま停止した。

律「やべ…」

澪「――うん。ホコリでも目に入ったのかな?人数が多く見える」ゴシゴシ

唯?「あーっ!!みおちゃ!!」

澪「唯、なんだかご機嫌だな」

唯「み、澪ちゃん…とりあえず中に…」

澪「おいおい唯。何も機嫌がいいからって、増えなくてもいいだr――」

澪「」

急に真顔になった澪は、その場に卒倒した。

律?「澪おおおおおおおぉ!!」

律「――と、いう訳なんだ」

澪「」

梓「聞こえてないんじゃないですか?」

律「無理矢理にでも理解させないと、誰かがこの状況を見るたび発狂してたら話が進まないよ」

澪「あ…うふふ…今ならファンタスティックな歌詞が書けそうだぞ…」

律「おーい、帰ってこーい」

唯「りっちゃん、ここはガツンと一発気付けのビンタだよ」

律「なっ…それはさすがに可哀想じゃないか?」

唯「このまま澪ちゃんがずっと妖精さんとお花畑で駆け続けていても構わないっていうの?」

律「いや、でもさ…」

紬?「ここは私の出番ね」ブンブン

澪「わー!!わー!!もうしっかり理解できて自分でもビックリ!!信じられないぐらい今落ち着いてる私!!」

唯「さて、澪ちゃんもようやく理解できたところで…これからどうする?」

律「みんなが平行世界の住民だったとしても、ここに来た原因がわかんない以上、帰る方法もわからないだろうしなぁ」

頭を抱える一同。長い沈黙を、梓が破った。

梓「とにかく今は異世界の私たちとこの世界の私たちを区別する方法が欲しいですね。ムギ先輩と唯先輩ははっきりわかりますけど、私と律先輩は区別しにくいですよ」

澪「そ、そうだな。そっちの二人は何か自分しか持ってない特徴みたいなのないのか?」

梓?「私はあるっちゃあるんですけど…あまり披露したくないです。収集がつきにくいし、きっと皆さんも気味悪いと思いますので…」

唯「えぇ~、気になるなあ…」

梓?「すみません。もう少しだけ、考えさせてください。今は私のことは梓2号と呼んでいただいて構いませんから」

そう言いつつ、梓2号はタイをほどきポケットにしまった。区別をつけるためだ。

紬?「そっか。区別がつかないなら、作っちゃえばいいのよね」

律?「あ、じゃあ私たちもタイ取っとくか」

律「ま、良い機会だし、平行世界の私たちがどんなことしてるのか聞いてみたいな。もしかしたら、そこから解決策が生まれるかもしれない」

唯「じゃあ次は私――」

唯はもう一人の自分へと目をやる。が、クッキーをぼろぼろこぼしながらあうあう言っているその姿を見て、口を閉ざした。

唯「…は、聞いても無駄っぽいね」

律「じゃあ、私にお願いしようかな。なんか思い出深い話とか、特徴的なこととかないのか?」

律?「私?あー…私もあんまり披露するようなもんじゃないと思うんだけどな」

ガシガシと頭を掻きながら、もう一人の律はちらりと澪を見る。

澪「…?」

律?「…まぁいっか。こっちの澪は知らないだろうし。トラウマほじくり返すことにはならないだろ」

小さく息をつくと、彼女はブレザーを脱ぎ捨て、ブラウスの裾をたくし上げた。引き締まった腹がそこから覗く。

そこには、いやでも目につく傷跡が刻まれていた。

澪「ひ、ひいぃ!!」

律「な、なんだそれ…盲腸の痕か?」

律?「知らないってことは、やっぱここは違う運命をたどってる平行世界なんだな。――これ、ナイフで刺された痕なんだ」

唯「うぇ!?」

律?「こっちの世界の澪が、ストーカーに襲われてさ。助けに行ったらもうボッコボコにされて。挙げ句の果てには刺されちゃったってワケ」

律「」

律?「いやーあん時はやばかったなぁ。生死の境を彷徨ったってヤツ?相当危ない状態だったらしい」

律?「でも、みんなが助けに来てくれて、ずっと傍にいてくれたから、今の私があるんだろうな」

律?「大変な事件だったけど、やっぱ軽音部は最高だって再認識できた出来事だったよ」

律(予想以上に壮絶な人生を送ってらっしゃるこの人)

澪「み、見えない聞こえない見えない聞こえない・・・」

紬「そっちの世界の澪ちゃんは無事だったの?」

最高律「おう、怪我一つ負ってないぜ。でも、アイツが男五人に囲まれてる時はさすがに私も足がすくんじゃったよ。澪も相当心には傷を負っちゃったんじゃないかな…」

梓「ご、五人も相手に、よく突っ込んで行けましたね…」

最高律「そりゃ怖かったけど、あの時は澪を助けなきゃって必死だったからな。何の作戦もなかったから私はやられ放題だったけど、澪は助けられたからまぁ良かったよ。この傷跡も名誉の負傷ってヤツだな」

律「何ていうか、すげぇな…。こっちは腐るほど平和だぞ」

唯「うっぐすっ…えぇ話やのぉ」

最高律「なんか恥ずかしいなこれ」

紬「それじゃあ、次は私のお話を――」

紬?「えぇ!?私、りっちゃんみたいな凄い経験、あまりないんだけど…」

唯「何でも良いんだよ?私たちの世界は本当に平々凡々で変わったことなんて全然ないからさ」

紬?「う~ん…いろんな記憶はあるんだけど…あんまり言って良いことじゃない気がする」

澪「なんかみんなそんな感じだな」

梓「大丈夫ですよ。どんな変わったことでも、気にしませんから」

紬?「そうねぇ。印象深かった思い出と言えば、軽音部のみんなが丸々と太っちゃった事件かしら」

梓「…はい?」

紬?「一年生の時のことなんだけど、唯ちゃん以外みんな太っちゃったのよね。特に澪ちゃんは今の私より酷かったわ。こふーこふー言ってたもの」

澪「」

紬?「あまりに肥大化していた澪ちゃんの体に、当時ダイエットに成功していた私は見事に押しつぶされ、生死の境を彷徨ったこともあったわ」

唯(えっなに、何で異世界の私たちそんな波瀾万丈なの?)

律(何だろう、同じ命の危機でも全く違うこの感じ)

最高律「それ、十分凄い出来事だと思うんだけど…」

紬?「なぜかわからないけど、あっという間に回復したわ。そして、あっという間にまた太ったわ」

唯?「あはwwむぎちゃ、でぶwwwwでぶむぎちゃwww」

紬?「」

デブ紬「た、ただのデブじゃないもん!とっておきの、凄い特技があるんだから!」グスッ

梓2号「凄い特技?何ですか、それ」

デブ紬「下のお口の破壊力は抜群なのよ!!」フンス

紬「」

デブ紬「こっちの世界の唯ちゃんの指を根こそぎいっちゃったこともあるわ!」

一同「」

梓2号(唯先輩、何ヤってたんですか!?)

唯「下のお口?って何のこと…?」

律「下あごのことか?ってことは、唯の指を食いちぎったってのか…!?」

澪「き、聞こえない聞こえない聞こえない…」

梓2号(あぁ…純粋というか、無知というか…)

最高律(下のお口って…ア、アソコのことだよな…。何で恥ずかしげもなく大声であんなこと言えるんだ…?)カアァ

デブ紬「それだけじゃないのよ!」

紬(ごめんなさい、もうやめて)

デブ紬「私の下のお口はダイヤモンドを生み出すこともできるんだから!」

一同「」

梓2号(駄目だコイツ…早く、何とかしないと…)

デブ紬「何なら今ここでやってあげても――」

梓「み、皆さんの凄い秘密もわかったところで、そろそろ別なことしませんか!!?」

紬「そうね!ありがとう、もういいわ!」

立ち上がってスカートに手をやっていたデブ紬を、紬は笑顔で強引に押さえつけた。

律「でも、一体どうすりゃいいんだろうな」

梓2号「結局そこに戻るんですよね。みんなここに来るまでに何があったかわからないんですから」

腕を組んでうなる一同。と、唯があれ?と声を出して澪を見た。

唯「そういや、平行世界の澪ちゃんは現れてないよね」

澪「…ホントだな。まあ、そのほうがいいよ。いたらややこしいし――なんかいろいろ凄い人が多いし、平行世界って…」

デブ紬「何で私の方を見て言うの?」

梓2号「いやでも、そういう人に限って後から凄いのが出てきたりするんですよ」

澪「なっ!へ、変なフラグを立てないでくれ!そんなことないって、絶対」

律「へっへっへ…わかんねぇぞぉ?今にもその扉がガチャッと開いて――」

ガチャッ

澪?「おいお前ら!何で私をおいて勝手にお茶してるんだよ!そんなに私を除け者にしたいのか!!だいたいお前たちは(中略)謝罪と賠償を要求するニダ!!」ファビョーン

澪「」

律「マジか」

梓「これまた凄いのが来ましたね」

澪?「な…何だよ?何で私がいるんだよ!何でみんなそんないっぱいいるんだよ!…わかったぞ。またみんなして私をはめようとしてるんだな!ムギの財力でクローンを作って、私を馬鹿にしようってつもりだろ!」

梓2号「いやいや…そんなことして何になるんですか」

紬「さすがにうちの会社でクローンを作ったりはできないわ。みんなあなたと同じで平行世界からやってきたのよ」

澪?「何わけのわかんないこといってるんだよ!?私が宇宙人だとでも言いたいのか!?」

澪?「わかった…お前たちがそんな態度をとるなら、私にも考えがある。もうここで死んでやる!」

最高律「なんでそうなるんだよ!?」

澪?「止めても無駄だぞ!もう決めたからな!屋上から飛び降りてやるからな!」

唯「なんていうか、凄いの一言に尽きるね…」

梓「…現れてそうそう死ぬなんて言い出す人ってなかなかいませんよ」

澪?「止めても無駄だからな!絶対に死んでやる!お前たちが私を必要としていないのがよくわかったよ!さよなら!お世話してやったな!」ダッ

凄い勢いで現れたもう一人の澪は、凄い勢いで去っていった。

最高律「あっ!おい!!」

デブ紬「ど、どうしたらいいのかな…」

澪「」

律「とりあえず、こっちの澪を起こしてやらなきゃ」

唯「澪ちゃん、澪ちゃん!」

デブ紬「よーし、ちょっと待ってて」ブンブン

澪「ハッ!目が覚めた!覚醒した!!だから殴らないで!!」

律「よし、気が付いたみたいだな」

最高律「それじゃ急いでもう一人の澪の方に――」

澪が気付いたのを確認して、皆屋上へ向かおうとした。

が、扉の向こうから大きな足音が響いてきて、再び荒々しく扉が開かれた。

澪?「何で誰も追いかけてきてくれないんだよ!?」

梓2号(戻ってくるの早っ!!)

澪?「私は死ぬって言ってるんだぞ!もう絶対に死ぬって言ってるんだぞ!何で誰も心配しないんだ!!」

律「いや…じゃあ、何で戻ってきたんだよ?」

顔を真っ赤にして怒鳴り散らしていたもう一人の澪は、ぴたりと口を閉ざした。

澪?「それは、あの、えっと…――り、律は、そんなに私に死んで欲しいの…?」グスッ

紬(すごく、面倒くさいです…)

律「そういうわけじゃなくて――」

澪?「そうだよな…。もう一人私がいるんだものな。もう私は必要ないよな。グスッわかった、もう消えるよ。今までありがとうな、律」

澪「あ、あの…」

肩を落として、ゆっくりと開いたままの扉へと足を進めるもう一人の澪。

最高律「お、おい、ちょっと待ってて――」

澪?「ねぇ律、覚えてる?…小学校の頃、友達がいなくて一人読書してた私に、初めて声をかけてくれたのが律だったんだよね」ピタッ

唯(まだ出て行かないんだ…)

澪?「本当にありがとう、律。お前がいたからここまで生きてこれたんだ。大好きだぞ」

律「澪…」

扉に手をかけ、ゆっくりと閉めていく。が、完全に閉まる直前、ぴたりとそれは止まった。

一同「」

澪? 扉?ω・`)チラッ

一同(め、めんどくさい…)

皆が固まる中、もう一人の唯だけが、ケラケラ笑いながらもう一人の澪に走り寄った。

唯?「みおちゃ!いかないで!みおちゃ、すき!」

澪?「ゆ、唯・・・?」

唯?「みおちゃ、いっしょwww」ギュッ

律(お、こりゃもしかして良い感じか…?)

澪?「うわっやめろよ!…なんだお前、とうとう池沼になったのか?」

律「」

澪?「触るなよ気持ち悪い!」ゲシッ

池沼唯「う、うえええええええええええええぇえ!!」

蹴飛ばされて床に倒れ込み、大声で泣き始める唯。それを見て、とうとう最高律がキレた。

最高律「いい加減にしろ!!」

澪?「ひっ」ビクッ

最高律「今お前、最低なことしたんだぞ…。わかってるのか!?」

澪?「な、何なんだよ…。何で私が怒鳴られなくちゃならないんだ!」

唯「さすがに私も今のは許せない…」

澪「…同じ自分だとは思えないよ…」

池沼唯「ああああああああああああぁ!!うわあああああああああああああ!!」

律「痛かったよな?もう大丈夫だぞ?だから落ち着こう、な?」

澪?「何で唯の味方するんだ!!池沼なんだぞ!!何でそんなヤツの方が私より大事にされるんだ!!」

澪「もうやめろ!!」

澪?「あひぃっ」ビクッ

澪「出て行って。今すぐに」

澪?「なんなんだよ…なんなんだよおおおおおおおぉおおおおお!!」ダッ

奇声をを上げながら走り去る澪。さすがに誰も彼女をフォローしようとはしなかった。と、

ガチャッ

澪?「お菓子もらうの忘れてた」ヒョイパク

澪?「うんうまい。貰って帰るわ」

ガチャッ

一同「」

梓2号「これは酷い。あまりにも酷い」

澪「正直ものすごいショックなんだけど…」

唯「でも、これで全員一人ずつ平行世界の自分が現れたね」

紬「どうにかして解決策を見つけないと、こんな調子でどんどん平行世界の私たちが増えてくるのかしら」

梓「洒落になりませんね…」

律「とりあえず、和とかさわちゃんにも相談してみるべきじゃないか?」

唯「憂にも改めて説明しとかなきゃいけないね」

デブ紬「また一から説明していかなきゃいけないわね」

澪「状況が状況だから…。さすがの和もビックリすると思うよ」

そんな話をしていると、再び扉が開いた。

和「お邪魔するわよ」

澪「噂をすれば…」

和「な、何これ…!?どういう状況!?唯が二人!?」

唯「…ん?私だけじゃなくて、他にも――」

和「他のみんなが二人三人いようとどうでもいいのよ!あぁ…唯が二人にも増えてしまったら、私はどちらを愛していけばいいの…?」

唯「なん…だと…」

律「おい、まさか――」

和「まぁいいわ。どちらも愛すればいいのよね。そういうことだから唯、今日は何色のパンツを履いているの?教えなさい」

唯「違う!絶対この人和ちゃんじゃない!!」

和?「何言ってるのよ。あなたの運命の人、真鍋和その人よ?」

池沼唯「あー!のどかちゃー!!」トテトテ

和?「見切った!」ファサ

無邪気に駆け寄ってきた池沼唯のスカートを、和はためらうことなくめくった。

和?「白…」

最高律「な、何やってんだよ和!」

ガチャッ

和「呼んだかしら?っていうか、何騒いで――」

和「」

唯「の、和ちゃんまで!!」

和?「これは…。どうやら唯と愛を語り合うのは少し後回しにするべきのようね…」

唯「語り合ったりしないよ!!」

梓「こっちの和先輩からは想像できないぐらいの変態っぷりですね」

律「失礼しまーす」

職員室へと足を踏み入れていく軽音部の五人と和。律の声に顔をあげたさわ子は、彼女を見て眉をひそめた。

さわ子「あら?りっちゃんにムギちゃん…」

律「何でそんな変な顔するのさ?来ちゃ駄目だった?」

さわ子「そうじゃないけど…さっき帰ったんじゃなかったの?」

一同「へ?」

全員の声が重なった。律と紬ならもう一人も含めて、今までずっと部室にいたのだ。

唯「りっちゃん達ならずっと私たちと一緒だったよ?」

さわ子「あらそう?さっき二人とも一緒に校庭ウロウロしてたじゃない。てっきりもう帰るのかと思ってたわ」

澪「それって…まさか…」

律「――梓、和。さわちゃんに説明頼む。私たちは校庭に行くから」

和「わ、わかったわ」

校庭。

唯「さわちゃん先生が見たのって…もしかして、平行世界のムギちゃんとりっちゃんなのかな?」

澪「まだいたって言うのか?一人に一人ずつじゃないの?」

律「そう決まったワケじゃあないだろ?もしかしたら、ムギが言ったみたいに――」

紬「放っておいたらどんどん増えてくるかもしれないってこと…?」

澪「な、なんで私たちばっかり…」

唯「わかんないよ?もしかしたら周りの人たちも増えてるのかも。そしていつのまにかこの世界は平行世界の住民達に溢れ――」

澪「き、聞こえない聞こえない…」

律「はいはい、馬鹿やってないでまじめに探すぞ」

紬「さわ子先生の話だと、見かけたのはついさっきだって言ってたから、もしかしたらまだ校庭内にいるかもしれないわね」

手分けして探すことになった五人。唯は正面玄関付近をウロウロしていると、憂と純に出くわした。

唯「あ、憂!と純ちゃん!」

憂「お姉ちゃんどうしたの?何か探し物?」

唯「えっと、りっちゃんとムギちゃんを捜してるんだけど…二人は見てないかな?」

純「律先輩と紬先輩のことですか?その二人なら唯先輩みたいにあっちの方で何か探し物してましたけど…」

唯「他には見てない?」

純「…はい?」

憂「お、お姉ちゃん?まさか、律さんとおねえちゃんだけじゃなくて紬さんまで?」

唯「えっと…軽音部全員増えちゃいました」

憂「」

純(話が理解できない)

支援ぬ

一方、律は。

律「ややこしいことになる前に早く見つけないと…」

生焼けGirl1「あれ、律?何でこんな所にいるの?」

律「へ?――わ、私を見たのか!?どこで!?」

生焼けGirl1「え、え?えっとさっきあっちで、講堂の方に歩いて行ってたよね?」

生焼けGirl2「う、うん。だから、何でこんな所にいるのかなって…」

律「講堂だな!ありがとう!!」

生焼けGirls「…?」

律は首をひねる二人を尻目に駆け出しながら携帯を取りだし、メールを手早く打った。

『みんな、講堂に来てくれ!』

講堂。

唯「い、いた!」

唯が指した指の先、ステージをぼんやりと眺めている律と紬がいた。最高律とデブ紬は部室で待っているはずだ。

ということは、この二人はさらに違う世界からきた二人なのだろう。
唯の声に、二人は振り返り目を見張った。

紬?「なっ…」

律?「お前ら…誰だ…!?」

唯「説明お願い、ムギちゃん」

紬「かくかくしかじか」

紬?「平行世界…。じゃあここは、私たちが知ってる世界じゃないのね」

律?「どーりでなんか話がかみ合わなかったり、知らないうちに変なとこにいたりするわけだ」

澪(便利な表現だなぁ…)

サンジュ澪と池沼唯はたくさんいすぎてわかんねえwww

>>61
元ネタたくさんあるヤツは一つにまとめてます
デブ紬とか


律「二人は同じ世界の住人なのか?」

紬?「えぇ、こっちのりっちゃんは私が知っているりっちゃんよ」

律?「気付いたら同じ所にいたしな」

唯「…」

唯は律の質問に答える二人を見つめていた。なぜだろうか、この二人…何か雰囲気が今までの皆とは違う感じがする。

見た感じはこの世界の二人とほとんど変わりないのだが、どこかやつれているし、感情の起伏が乏しい。

視線を感じたのか、もう一人の律は唯と目を合わせると、小さく笑った。

律?「なぁ唯…部活、楽しいか?」

唯「え?えと…うん、もちろんだよ!」

律?「…そっか」

笑顔で答えた唯を見て、もう一人の律は少し悲しげに微笑んだような気がした。と、その時だった。

梓「せんぱーい!どうでしたか-!!」

律「やっぱ軽音部は最高だぜ!」
唯「早くしね!」
和「おはよう唯。パンツ何色?」

これしか分からん、デブムギはなんだ

澪「梓!和!」

和「先生に説明は済ませたわ。信じてなかったけど、部室に連れて行ったら呆然としてた」

梓「とりあえず協力はお願いしました。平行世界の私たちだと思われる人達を見つけ次第、すぐ保護してくださるみたいです。それにしても…やっぱりまだいたんですね」

困ったようにため息をつく梓。唯は二人に視線を戻す。瞬間、背筋に悪寒が走った。

何故だかははっきりわからなかった。ただ、梓を見た二人の様子から何かいやなものを感じたのだ。

唯(気のせい、だよね…)

紬?「梓、ちゃん…」

律?「…」

紬「で、どうしよう?」

和「さわ子先生の助言では、今日はもう様子を見てみるしかないと思うって。このまま平行世界の私たちが次々現れて、その中に原因を知ってる人がいるかもしれないから」

澪「いるのかな…」

律「ほいじゃ、二人もとりあえず部室に来てもらおうか。この後のこともあるし」

紬?「…いえ、ごめんなさい。ちょっと二人で話したいことがあるから…いいかしら?明日には戻るから」

律?「…あぁ。うまく人目につかないように行動するからさ。準備室にいればいいだろ?」

澪「で、でも、夜はどうするんだ?とりあえずみんな、各家に振り分けて泊まってもらうつもりだったんだけど」

紬?「大丈夫よ、気にしないで。良いところ見つけて適当に済ますから」

梓「大丈夫、なんですか?」

律?「…悪い、そういうことだから。じゃあな」

皆が口を開く前にそそくさと二人は講堂から出て行ってしまった。

梓「…なんだか私、あの二人に避けられてる気がします…」

紬「そう?そんな風には見えなかったけど」

唯「…」

唯は開いたままの扉を、ただ黙って見つめた。

六人が講堂から出ると、すでに二人の姿は消えていた。

二人を信じてそっとしておこうという律の提案に皆賛成し、部室に戻ろうとしたときだった。

唯「…あ!」

思わず声を上げた唯を皆が振り返る。その視線の先には、薄汚い作業服を着た女性がぼんやりと突っ立っていた。

紬「…唯ちゃん、知り合い?」

唯「ううん。でも、今日授業中もあの人校庭にいたんだ。なんか不思議な雰囲気がするから気になったんだけど――」

和「不審者かしら…」

こそこそと話す声に気が付いたのか、女性は帽子の下からちらりと唯達の方を見る。と、わずかに見えるその口元が、驚きに開くのが見えた。

女「――…妖精の、お姉さん…?」

唯「は、はい?」

>妖精の、お姉さん

澪(今日も流れてくる瓶に傷が付いてないか確認する仕事頑張るぞ)ですねわかります

おぼつかない足取りで、女性は唯達に歩み寄る。少し離れたところで様子を見ていた律が、不審に思って前に出た。

律「アンタ…何なんですか?」

途端、女性が息をのむのがわかった。

女「…り、つ?」

律「…何で私の名前――をっ!?」

女性は突然駆け出したかと思うと、律の体を抱きしめた。豊満な胸に顔を押しつけられ、律は声にならない呻き声をあげる。

女「律だ…律だ…若いけど…律だ!」

律「ちょ、ぐるし…――!」

澪「あ!!」

女性の帽子が地面に落ちる。その下から現れた顔は、澪にそっくりだった。

澪「まさか…大人の私…!?」

澪?「――!?…私?…若い頃の私…!?」

律「――…さて、とりあえず落ち着きました?」

澪?「…」コクッ

梓「確認ですけど、あなたは知らないうちにこの校庭にいて…この学校に見覚えはない、と」

澪?「…」コクッ

和「学校に見覚えがないんだとしたら、この世界の澪の未来の姿、っていうワケじゃあないわよね」

唯「また平行世界からのお客さんなんだね」

澪?「…?」

澪「ムギ、説明お願い」

紬「かくかくしかじか」

澪?「…異世界…。――でも、嬉しい。私が知ってる律じゃない。けど、また律に会えた」

律「あの、何でそんな私が恋しいんですか?そっちの世界じゃ幼なじみ同士一緒に出かけたりとかないんですか?」

澪?「幼なじみ…?私は職場で初めて律と出会った。私の人生を変えてくれた、かけがえのない人」

澪「そうなんだ…全然違う運命だな。ちなみにどんなお仕事を?」

澪?「流れてくる瓶に傷がついてないか確認する仕事」

澪「」

律「そ、そうですか。でも、職場が一緒なら会う機会多いんじゃ…。そんな寂しがる必要ないですよね?」

瓶澪「――律、数年前に車に轢かれそうになった子供を庇って…亡くなった」

律「」

梓(…こう言っちゃ不謹慎ですけど…)

唯(りっちゃんそんなのばっかりだね…)

律(将来が不安になってきた…)

瓶澪「…律と幼なじみ…羨ましい。律は本当に良い人だった。この世界の律も、良い人のはず」

澪「あ、えと…は、はい、良いヤツだと思います」

律「おいよせよ恥ずかしいなっ」

瓶澪「きっとどの世界でもそう。運命が違っても、性格が違っても、心の奥にある本当の姿は変わらないと思う」

唯「意外にファンタジックなことを言うんだね」

紬「でも、確かにそういう所はこの世界の澪ちゃんも変わらないね」

澪(あのめんどくさい私にも同じところがあるとは思いたくないなぁ…)

瓶澪「…」

唯「なんだか全然違う世界みたいだし一応こっちの関係説明しとこっか」

瓶澪「私も…こっちの世界のこと、説明する」

和「私と梓ちゃんは出会ったことがない、と」

梓「こうなると存在してるのかどうかもわかりませんね」

瓶澪「軽音部…ベース…」

律「全く知らないって感じの顔だな…」

唯「自殺を考えていた大人の澪ちゃんを救ったのが私…なんか凄い!」

紬「澪さんから見れば、確かに妖精に見えたのかもね」

瓶澪の話を要約すると、コミュニケーションが苦手で職場でもいつも一人だった彼女に明るく話しかけ初めて友人になってくれたのが律で、律の死後後を追って自殺しようとしていた彼女を引き留めてくれたのが唯らしい。

その後頑張って生きていくことを決心した彼女が、初めて自分から親しくなれた相手が紬で、梓と和の二人には出会ったことはないそうだ。

律「――えっと、どうしようか。澪さんにもついて来てもらうか?家の割り当て考えなきゃいけないし」

瓶澪「いい。私、もう少しウロウロしてみたい。私が知っているようで、知らない町」

澪「えっ、でも…宿泊場所とかは…」

瓶澪「さすがに大人の私が泊まらせてもらうわけにはいかない。お金もある」

澪「そ、それじゃあ…また明日、これぐらいの時間にここに来てくれませんか?私達待ってますから。戻る方法をみんなで話し合いたいし」

瓶澪「…」コクン

瓶澪と別れ、皆は異世界の自分たちが待つ準備室へと戻ってきた。

デブ紬「おかえりなさい」

梓2号「なんだかまた律先輩とムギ先輩が現れたそうですね」

澪「あぁ。でも、ちょっと二人きりになりたいって言ってどこかに行っちゃったよ。あと、私ももう一人現れた」

最高律「おいおい…マジでどうなってるんだ?」

唯「さっぱりわけがわかんないよぉ」

和「とりあえず、もう下校時刻も近いから家の割り当てしちゃいましょう」

変態和「家の割り当て?」

律「お前らみんなここに寝泊まりするわけにはいかないだろ?だから、私達の家にうまく振り分けて泊まってもらうことにしたんだ。親には泊まりに来たっていってなんとかごまかして」

梓「親同士話すようなことになったら厄介ですけど…これぐらいしか方法がなくて」

変態和「そうなんだ。じゃあ私、唯の家にお嫁に行くね」

和「おい」

晩飯支度してきます
元ネタ様は最後に紹介しますんで

その後、家の割り当てを終えた唯達は、できるだけ人に会わないようにしながら一組ずつ下校した。

唯の家

唯「あがってあがって~」

池沼唯「いえ!いえ!ゆいのいえ!」

デブ紬「ほら唯ちゃん、靴脱ごうね」

憂「お姉ちゃんお帰――うわ!!」

デブ紬「お邪魔します、憂ちゃん」

池沼唯「あ!ういーうーいー!」

唯「あ、憂。あのね、今日泊まってもらうことになったんだ。憂も朝出会ったもう一人の私と、部室にいたもう一人のムギちゃんだよ」

憂(なんだか凄く濃いメンバーだなぁ…)

唯「お父さんとお母さんまだ出張中だから、他のみんなの家にお泊まりしたらちょっと厄介なことになりそうな二人を呼んだんだー」

デブ紬「突然ごめんね?家具を破壊しないように気をつけるから、今晩はよろしくね♪」

憂(破壊…?)

ムギの家

斉藤「お帰りなさいませ、紬お嬢様。いらっしゃいませ、律さん」

最高律「ど、どうも。すみません、急にお邪魔して」

斉藤「ご遠慮なさらず。お嬢様のお友達ならいつでも歓迎いたします。今日はごゆっくりくつろぎになってください」

ぺこりとお辞儀をして去っていく斉藤の後ろ姿を眺めながら、最高律ははーっと息を吐いた。

最高律「やっぱムギん家ってすげーよなぁ。めちゃくちゃ広いし、執事さんもお出迎えしてくれるし」

紬「そうかしら?」

最高律「私の世界のムギん家も凄かったからさ。家は見たことないけど、その、例の事件の時に犯人グループ捕まえるのに、ムギのお父さんがビックリするぐらい大勢の警備員さん連れて現れたらしいし」

紬「お、お父様…。でも、りっちゃんも凄い。澪ちゃんを救ったんだし」

最高律「澪は大切な親友だからな。守らないわけにはいかないだろ?」

紬(ちょっと不謹慎かもしれないけど…このりっちゃんのヒーローっぷりと向こうの澪ちゃんのヒロインっぷり…素敵だわぁ)ホゥ

最高律「ムギ?どした?なんか顔赤いぞ?」

さるくらった…
結構長くなったからチャッチャと投下したいんだけどな

律の家

変態和「…」

律「テンション低いな」

変態和「当たり前じゃない…。唯の家に乗り込むチャンスだったのに…。履いていたパンツをいただいて、着ていたシャツをクンカクンカスーハーして、お風呂にry」

律「やめてくれ。私の中の和像が音を立てて崩れちゃうから」

玄関で靴を脱ぎながら会話を続ける律達。と、二階からドタバタと慌ただしい足音が聞こえてきた。

律「…?聡、何暴れてんだー!?」

聡「ねーちゃーん!助けて-!!」

律「っ!?どうした!?」

急いで階段を駆け上がり、聡の部屋のドアを開ける。と、

聡「ね、姉ちゃん、これ、どういうことなの…?」

律「…マジかよ」

聡?「あっ姉ちゃんおっかえりー。うへへwwあれ?後ろの美人さん、お友達!?(今晩のおかずktkr!)」

変態和「まさかの展開ね」

さる ってよく聞くが何なんだ
VIP四年ほど見てるが最近になってよく聞き始めた

>>85
バイバイさるさん。同じヤツが短時間に連投してたら書き込めなくなる


澪の家

澪「そういえば、梓はどうして自分のことを私達に教えてくれないんだ?」

梓2号「え?あ、えーと…私、ちょっと異常なんです」

澪「異常?――それって、どういうことなんだ?」

梓2号「私、ちょっと特別なんです」

澪「いや、大して意味は変わってないような気がするぞ」

梓2号「何でもないですよ、私達の世界は。この世界と同じぐらい平和です。でも、私はちょっと違うんです」

澪「梓だけが…?」

梓2号「あ、うーん…確か唯先輩も同じような感じでしたね」

澪「唯も?ますます意味がわかんなくなってきたぞ」

梓2号「まぁ、いずれお見せすると思いますから、そのときまで待ってください」

そのころ、薄暗い街中をふらふらと歩き回る、部室を追い出されてしまった澪は。

澪?「ちっ…なんだよみんな急にキレてさ。そんなに私を差別したいのかよ。これだからチョッパリは」

紬『みんなあなたと同じで平行世界からやってきたのよ』

澪?「…何意味わかんないこと言ってんだあの沢庵。前からずれたヤツだとは思ってたけど、とうとうおかしくなったのか?」

澪?(平行世界…?じゃあここは私の住んでた世界じゃないってことなのか…!?)

澪?「――ん?」

紬の言葉に思考を巡らせていた澪?の目に入ったのは、怪しげな路地裏へと入っていく律と紬の姿。

澪?(何やってるんだあの二人?また私を置いて何か楽しもうっていうのか?…つけてやれ)



二人が入っていったのは路地の奥にあった廃工場だった。澪?も二人に気付かれないように工場内に侵入すると、積まれたドラム缶の陰に身を隠す。

澪?(文句の一つや二つ言ってやろうと思ったけど…なんだこの雰囲気。す、少し様子を見てやることにするか)

紬?「…」

律?「梓が・・・いたな」

澪?がつけていたのは、この世界の唯達に同行するのを断った律と紬だった。無論、澪?はそんなこと知らないが。

律?「ムギ、顔色悪いぞ。大丈夫なのか?」

紬?「りっちゃんだって…ホントは気分悪いんでしょ?だって、私達の目の前で死んで、私達がこの手でバラして、挙げ句の果てには食――」

律?「やめてくれ。…やめて、それ以上…言わないで」

澪?には話の筋が全く見えなかった。ただ、恐ろしく物騒な言葉が飛び出したことには気が付いた。

紬?「…この世界のみんなは、もしかしたら平行世界の住民はもっと増えるかもしれないっていってたよね」

律?「…あぁ」

紬?「私達の世界の唯ちゃん…」

律?「あぁ、私も思ったよ。アイツがこの世界に来てるかどうかわかんないし、来てなかったとしてもこれから来るかもしれない。そうなったとき…梓――」

紬?「絶対に会わせられないわ。今の唯ちゃんにとって、梓ちゃんの姿は精神を破壊する爆弾でしかない。あれ以上壊れた唯ちゃんなんて…見たくない。何があっても絶対に、唯ちゃんと梓ちゃんは会わせちゃいけない…!」

律?「…それは…また、梓を処分しなくちゃいけないってことだよな?」

澪?「!?!?」

紬?「りっちゃん…」

律?「ダメだよな、私。もう疲れ果ててるんだよ。ずっと更生のために刑務所の中にいたってのに、やっぱりこんな選択しかできなくなってる」

紬?「私も、おんなじことを思ってた。ただ言葉にするのが恐ろしかったの…。ごめん、りっちゃんにばっかりこんな思いをさせて…」

律?「ムギが誤る必要ないよ。誰も悪くない。悪いのはこんな運命にしてくれた神さんだよ」

やつれた笑みを浮かべる律?の顔を見て、紬?は足下に置いていた袋から包みを取り出して開く。

中から出てきたのは立派なノコギリ。暗い工場の中でも鈍い光を放つそれは、澪?の目にもしっかりと焼き付いた。

澪?(ひ、ひいぃい!!)

律?「…もうこいつだけは目にしたくなかったな。いつの間に買ってたんだ?さっきトイレ探しに行ったときか」

紬?「――私ね、もう完全に麻痺しちゃってるみたい。もう一度梓ちゃんを殺さなきゃいけないっていうのに…何の罪悪感も感じないの」

律?「私は梓の死体をバラしたあの日からすでに壊れてるよ」

澪?(何こいつら何て話をしてるんだ!やばい逃げなきゃ…口封じに私まで殺される!う、動け私の足!!)ガクガク

律?「一本しかないのか?」

紬?「あの日の思いを生々しく思い出すのは私だけで十分よ」

律?「何言ってんだ。ムギだけにそんなことさせないぞ」

?「じゃあこれ使えば?」

突然聞こえてきた緊張感のない声とともに、一本のノコギリが律の足下へ放られた。

澪?「!!!!」

律?「誰だ!!」

?「そんな怖い顔しないでよりっちゃん。私だよわ・た・し」

紬?「唯ちゃん…?」

工場の入り口で、にやにやと笑みを浮かべているのは、まぎれもなく唯だった。

唯?「あぁ、心配しないでね。私、この世界の私でも二人の世界の私でもないからね」

紬?「今の話…聞いていたの?」

いぶかしげな表情をする二人。唯?は軽い足取りで廃工場へと足を踏み入れる。

唯?「うん。だから、二人に協力したいなぁと思って。だって、この世界のあずにゃんを二人の世界の私だけのために消しちゃおうっていうんでしょ?愛されてるよー私」

唯?「でもね、他の世界からもあずにゃんは来てるし、ここの世界の私達はきっと二人の計画の上では非常に面倒な存在になると思うんだよね。それを二人だけで対処できる自信はあるの?」

律?「…」

唯?「あぁわかるよ。覚悟なんかはもとからないんでしょ?二人はもう最初から人殺しに対して罪悪感はない。たとえ、今日会話して親近感を覚えた相手でも。ただ、明らかに力不足だよね、二人だけじゃ」

紬?「…えぇ」

唯?「だから、手伝ってあげようかなって話。――ねぇ、澪ちゃんはどうするの?」

澪?「――!!?」ドキィッ

律?・紬?「!?」

唯?「話聞いてたよね?」

ドラム缶の山に近づくとその裏をのぞき込みにっこり微笑む唯?。思わず澪?は後退りしてしまった。

律?「澪…?」

澪?「は、ははは…ち、違うんだ!わ、私も協力しようと思ってさ!でも、いつ話しかけたらいいのかわからなかったんだ!私も平行世界から来たんだけど、この世界のみんなにめちゃくちゃ酷い目に遭わされて…」

紬?「酷い目…?」

澪?「そうなんだよ!なんで私だけこんな目に遭ったんだろう…。私、何も悪いことしてないのにいきなり怒鳴られたり、出ていけって言われたり、除け者にされたり…」

律?「ひでぇ…ここのやつら、そんなやつらだったのか…」

澪?「だから、もう二人しかいないんだよぉ。お願い、私を見捨てないで…。血生臭いことでもなんでも手伝うから…」

紬?「わかったわ。大丈夫よ、澪ちゃん。私達は澪ちゃんの味方だから、ね?」

律?「――でも、澪に手伝わせるわけには…」

澪?「頼む、手伝わせてくれ律!私、二人の役に立ちたい!二人にだけは認めてもらいたい!」

律?「澪…。――わかった、好きにしろよ」

澪?「あ、ありがとう律!」
澪?(よ、よし!これで私の身は安全だ!絶対殺されなくてすむ!)

律?にすがりつく澪?を見て、唯?は小さくふーんと呟き、口を開いた。

唯?「…これでこっち側は四人になったね。まぁ、念には念を入れといた方が良いと思うから、もう一人助っ人を呼ぶことにするよ」

紬?「助っ人って?」

唯?「絶対役に立つと思うよ~。でも、こっちに呼ぶのちょっと時間かかるんだ。明日の放課後ぐらいになっちゃうかな?」

澪?「…こっち?」

唯?「あぁ、こっちの話。とにかく、その助っ人のことも考えて計画を立てよう」

生き生きとした笑顔で話す唯?を見て、律?は少し不快げに眉をひそめた。

この唯はなんだ

狂った奴らが意外と多くて困る

さ る さ ん 自 重 し ろ


翌日、梓達の教室。

律「失礼しまーす」

憂「おはようございます、律さん。珍しいですね、この教室に来るなんて」

律「おはよ憂ちゃん。ちょっと梓に用があってさ」

梓「あ、律先輩!言わなきゃいけないことがあるんです!」タタタ

律「おう梓。私もみんなに伝えて回ってることがあるんだ」

梓「じゃあ先にどうぞ…って、ここじゃまずいですよね。ちょっと出ましょうか」

純「梓ーどこ行くのー?」

梓「あ、えーっとちょっと大事な話があって」

憂「邪魔しちゃダメだよ純ちゃん。ほら、二人で待ってよ?」

純「むう…いいなぁ梓、あの格好いい先輩と二人きりなんてさ」

梓「で、何があったんですか?もうだいたい予想はつくんですけど…」

律「あぁ、また平行世界からのお客さんが現れた。今度は私の弟だったよ」

梓「ま、また微妙なところが来ましたね…。ってか、大丈夫だったんですか?親御さんとか」

律「一応大丈夫だったぜ。なんかもう一人の弟は自分のことをエネファーム聡とか名乗る変態野郎で、突然和の胸に触るもんだからさ――」


変態和『何をするだあああああああ!!!許さんっ!!!』ブンッ

変態聡『びゅおっ!!』ゴッ

どさっ

変態和『私の体に手を出して良いのは唯だけよ』ゴゴゴ…


律「っつー感じでぶちのめされて、一晩中気絶してたからな。和とこっちの世界の弟二人がかりで縛り上げて口ふさいでクローゼットに閉じ込めてたから、とりあえず見つからないだろ」

梓「なんていうか…お疲れ様です」

律「で、そっちは何だったんだ?」

梓「あ、そうでした。ホントは皆さんそろってからお話しようと思ってたんですけど…。朝さわ子先生に出会ったときに聞いた話なんですが、さわ子先生の家にも平行世界の人が出たそうです」

律「マジか…。こりゃ本当にやばくなってきたんじゃないか?」

梓「帰宅したさわ子先生を、唯先輩と澪先輩とムギ先輩が出迎えてくれたそうです。妙なテンションで」

律「妙なテンション?」

梓「えっと…ふうううううぅ!!って叫びながらズイズイと近寄ってきたそうです」

律「こえーよ」

梓「他にも仕方ないから一緒に夕食食べてたら――」


澪?『あ、ニンジン…。――…唯、パス!』コロン

唯?『ムギちゃんパス!』コロン

紬?『先生パス!』コロン

唯澪紬?『ナイイイイイシュウウウゥゥゥゥウウウウ!!』

さわ子『…うん』

梓「ずっとこんな感じだったそうですよ」

律「そりゃきついな…」

梓「三人を見た瞬間平行世界の人達だって気付いたので面倒見てくださったみたいですけど、正直頭おかしくなりそうだったって言ってました」

律「なんかさわちゃんに悪いことした感じがするよ」

梓「とりあえず家の外…というか、もう部屋の外に出ないようにガチガチに監禁してきたそうです」

律「…しっかしどうすっかな。みんなにはまた準備室に待機してもらってるけどさ、これ以上平行世界の私達が増えてくると、どうなるかわかったもんじゃないぞ」

うなる律を見て、梓はハッとしたように顔を上げた。

梓「…そういえば、昨日講堂にいた律先輩とムギ先輩は?」

律「それが、帰ってきてないんだ。準備室にいると思ったんだけどな…」

梓「ちょっと心配ですね。帰ってくるって言ってたのに」

律「あの二人だけもとの世界に戻れたっていう可能性はあんまりないだろうし…。まぁ、ちょっと様子を見ようぜ」

「よく見てろよ」のやつか

放課後、部室。

池沼唯「むにゃ…すーすー…」

変態和「ハァハァ…唯可愛いわハァハァ…」

梓2号「膝枕だけですよ。変なことしたら先輩方に言いつけますからね」

デブ紬「あらあらうふふ」ニヤニヤ

ガチャッ

唯「やっほー」

澪「うーん…やっぱりまだあの二人は来てないか…」

梓「変なことに巻き込まれたりしてないですよね?」

紬「何か用があるんじゃないのかな?あれほど二人きりになりたいっていってたし…」

椅子に座って黙っていた最高律が立ち上がる。

裏不無wwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

最高律「私、ちょっと探してくるよ」

律「手伝おうか?って、私が行っちゃまずいな」

和「じゃあ私が一緒に行くわ」

澪「わざわざ悪いな」

最高律「気にするなよ、ちょっと街を見て回りたかったんだ。ついカッとなって怒鳴っちゃったけど、出て行っちゃったもう一人の澪のことも気になるし」

澪「あー…アイツか…」

梓(あの人はいない方が話が進んでいい気がするんですけど…)

最高律「ほいじゃ行ってくる」

和「すぐ帰ってくるわ。何かあったら携帯に連絡お願いね」

二人が部室を出るのを見送り、残りのメンバーは手がかりのない所から戻る方法を考えるというもどかしい作業を続けることにした。

和と最高律の二人が、階段を下りている時だった。

最高律「ん…?なぁ和。あそこ…なんか人だかりできてないか?」

和「え?」

彼女が指さす先には、入り口に人混みができた自分たちの教室があった。

和「あそこ…私達の教室だわ」

最高律「なーんか嫌な予感しかしないぞ…」

和「私もよ。とりあえず様子を見に――っと…アンタ、クラスメイトの名前わからないわよね」

最高律「あ、あぁそうだな。話しかけられるとボロが出ちゃいそうだ」

和「…じゃあこうしましょう。私があの教室の様子見てくるから、律は先に捜索に行っててくれないかしら。何も問題なければ後から追いかけるから」

最高律「了解。じゃあ、そっち頼むな」

和「まかせといて」

最高律と別れ、和は人だかりへと足を運ぶ。

和「…何やってるの?」

慶子「あ!真鍋さん、ちょうど良かった!」

潮「軽音部のみんなと真鍋さん、HRが終わったらすぐ出て行っちゃったでしょ?でも、そのあとすぐに平沢さんが戻ってきてさ。でも・・・なんていうか、変、でさ」

和「…唯が?変?」

唯ならずっと自分たちと一緒にいた。つまり、やはり嫌な予感は的中したということだ。

和「ちょっとごめん。入らせて」

人混みを割って教室内へと入る和。そこにいた唯を見て、言葉を失った。
             ______
            /          ナ
          / /X/|  |\    \
          | | /へ \|へ \  | |

          | |/  ●  ●  |  /  |    
          | "  \___/  /,,/  \ 
          | \    \/   | 、/V/ ̄
          /,,― -ー  、 , -‐ 、

          (   , -‐ '"      )
           `;ー" ` ー-ー -ー'
            l           l
            l           l
和「」


まさかの「石ころさえもいとおしい」

石ころきたwww

唯?「やぁ、和ちゃん」

和(どうしよう…何とか話をごまかして部室に連れて行かないと…。それにしてもこの唯、変とかいうレベルじゃないと思うんだけど…)

唯?「酷いよ和ちゃん、無視するなんてさ」

和「あ、あぁごめんなさい。それよりアンタ、こんなとこで何してるの。もうみんな部室で待ってるわよ?」

唯?「知らないうちにこの教室の前にいてさ」

和「知らないうちに…(やっぱり同じね)」
             ______
            /          ナ
          / /X/|  |\    \
          | | /へ \|へ \  | |

          | |/  ●  ●  |  /  |     君への愛が
          | "  \___/  /,,/  \      私を知らぬ間に動かした
          | \    \/   | 、/V/ ̄
          /,,― -ー  、 , -‐ 、

          (   , -‐ '"      )
           `;ー" ` ー-ー -ー'
            l           l
            l           l

和「うん、そういうのいらないから」

和「もう一人の私といいアンタといい…愛だとかなんとかそんなのばっかね…」

唯?「何の話か知らないけれど、私にとっては石ころさえもいとおしい」(AAry

和「もういいからちょっと来なさい」

石ころ唯「もう、和ちゃんは強引だね」

石ころ唯の腕をとる和。と、そこへクラスメイト達をかき分けてさわ子がやってきた。

さわ子「あなたたちどうしたの、騒がしいわよ。もうHRは終わったでしょう?」

和「さわ子先生!」

和が連れる石ころ唯の姿を見て、さわ子はすぐに状況を理解した。微妙に表情をしかめ、クラスメイト達に解散するように指示しようとする。だが――

「よく見てろよ!!」

一同「!?」

「ふううううううううううぅう!!」

                 ___
                ´:::::::::::::::::::`丶、_ノ
          /::::::::::::::::::::::::::::::\:::\
        /::::::::::/::::: |:::/\:::::::::::ヽ::::ヽ

          /::::::::::::i::::::/|:::Lノ \i:::::人:::::::
       ′ ::::::: |:::: | |:::|     |/V }::::::|     / | ∩
.       | :::::::::::: |:::: | ∨=ニミ   =ミ∧|    ./  | ∪
       :::::/::::::八:: |   {{___}}⌒ト='{     /   .|
       ∨::::::(⌒l八 "  ̄r=::::、      /

       厶イ:::::\      、:::_ノ  /       _
         \::::::::::T^丶       /       ̄, / 
         ∠:::::r┴-    Tニ         /
          _ >{    \/ }       _
         ´   \   /大_厂 \     _,,,,,
      /       \_,// ハ.\  }    ̄

      {    ヽ    〈__ノ し ) |    ・
      ;        /  //   「|  |   ・         
      }     ∨   〈/   0 ||_|  ・
      |     │    ,. 7/ヨ((二@∈=―

      l/| ̄ ゙̄`ト|     ''"三リ⊇ |
.       T|    「   /   ニン  |

奇声とともにそこに現れたのは澪、紬、そして――唯。そう、昨晩さわ子宅に現れた三人だった。

さわ子(ええええええええぇ!?どうやって出てきたのよアンタ達いいいいいぃいい!!)

和「――…ハッ!しまった!!」

石ころ唯「ん?」

よく見て唯「んん」

姫子「あ、あ…あぁ…!」

佐々木「ひ、平沢さんが二人!!?」

「え、な、何?どういうこと!?」「っていうか、秋山さんと琴吹さんあんなキャラだったの?」ザワザワ
「ドッペルゲンガーってやつ!?」「お、お化け!?」ザワザワ

シーーン…

一同「いやあああああああああああああああああああぁ!!!」

さわ子「ちょ、あなたたち!落ち着いて!!」

和「これはもう…取り返しがつかないわ…」

一方、街中を走っていた最高律は、とある場所で立ち止まっていた。

最高律「町並みも…一緒なのな」

そこは商店街。ある路地を見つめ、最高律は小さく呟いた。彼女の世界にもあるこの路地を抜けると、きっと廃工場があるだろう。

最高律(澪が連れ込まれた…あの廃工場が…)

最高律「…」

最高律(あの時もこうやって澪を探してて、あの廃工場に行ったんだっけ…)

状況が似ているからか、過去の事件と今を重ねてしまう最高律。

最高律「――…一応、見に行ってみるか」

二人が事件に巻き込まれていないことを祈りつつ、彼女は路地に向かって足を進めた。

――そんな彼女の姿を眺める人がいた。

宿泊場から出て、街をあちこちふらつきながら学校を目指していた瓶澪だった。

しえん

最高律「…」タッタッタッ

瓶澪「…?律…?」

路地裏へと駆けていく最高律の姿を、瓶澪は視界にとらえた。

しかし彼女は最高律の存在を知らない。

故に、授業中であるはずのこの世界の律がこんな街中にいることに疑問を持つ。

瓶澪(こんなところで…何してるの…?)

瓶澪「…」

瓶澪「…」タッタッタッ

気になった瓶澪は、彼女の後を追った。

瓶澪「…」タッタッタッ

瓶澪「…」ピタッ

瓶澪「…」キョロキョロ

瓶澪「あ、空き瓶がいっぱい…」ヒョイヒョイ

瓶澪「…傷発見」ポイッ

瓶澪「…」タッタッタッ

瓶澪「…」ピタッ

瓶澪「…」

瓶澪「…迷った」

複雑に入り組む迷路のような路地の中、腕の中に綺麗な空き瓶を抱えた瓶澪は、一人ぽつんと佇んでいた。

ゲロは出すなよ!

そのころ学校では。

梓2号「…何だか騒がしくないですか?」

澪「そうか?」

デブ紬「うん、確かに何か聞こえてくる…。――悲鳴?」

律「何かあったのか?」

池沼唯「あうー」

眠っていた池沼唯も騒動に気付いたのか目を覚ます。と、そこへ和が息を荒げて戻ってきた。

紬「あれ?和ちゃん、街に行ったんじゃ――」

和「それが、大変なの。2組のみんなに異変がばれたわ」

梓「はい?」

和「今混乱してるみんなにさわ子先生が状況を説明してるわ」

律「おいおいマジかよ!?」

澪「確実に私達変な目で見られるんじゃないか?」

閉められたドアの向こうから、階段を駆け上がる足音が聞こえてくる。

春子「真鍋ー!さわちゃん先生が軽音部連れて来いって――」ガチャッ

春子「」

唯「おぉ…春子ちゃんが固まってる」

和「連れて来いって…平行世界のみんなもかしら」

春子「…へっ?あ、あぁ!そうみたいだよ。しっかし――本当に凄いなこれ。どうなってんの?」

律「それがわかれば苦労しないんだけどね」

春子「あれ?田井中と秋山は一人なの?」

律「うんにゃ。今ちょっと不在なだけ」

春子「へぇ~。どんなやつどんなやつ?琴吹みたいに見た目も全然違うわけ?なぁなぁ!」

律「何もうこの状況楽しんでんだよ!適応能力高すぎるだろお前!」

和「さわ子先生、連れてきました」

教室へぞろぞろと入っていく軽音部と平行世界のメンバーを見て、クラスメイト達は目を丸くする。

信代「ホントにいっぱいいる…」

さわ子「これで信じてくれるかしら?私がふざけているのではなくて、大まじめだということを」

信代「は、はい…」

唯「わー見て見て!私がいっぱいだよー!!」

よく見て唯「ん」

石ころ唯「おぉこれは凄いね。平凡な日々に退屈した神サマのお遊びってやつかな」

池沼唯「あー!いっぱいそっくり!」

変態和「何これパラダイス?」

さわ子「それにしても…どうしてあなたたちだけこんなことに…」

澪「こっちが聞きたいですよ…」

暗い子「…!…!!」

褐色な子(やっぱりオカルト研はこういうの好きだよね…)

ちらり、と紬が時計へ目をやった。

紬「あの、そろそろ澪さんが帰ってくるんじゃないかな?迎えに行かなきゃ」

律「あぁ、そうだったな」

さわ子「澪さんって?」

澪「平行世界から来た、大人の私です。昨日は町を見て回りたいって言ったので、今日の放課後学校に戻ってきてくれるようにお願いしたんです」

佐々木(大人の秋山さん見たい!!すっごい見たい!!)

律「じゃあ校庭で待ってよっか」

さわ子「って、あなたたち全員で外に出るつもり!?」

唯「なんかもう隠してても次々出てくるから意味ないなぁって思いまして」

さわ子「い、いや、でも他のクラスや他学年の子達は何も知らないのよ!?」

唯「でも、ここのみんなみたいにもし私達の知らないところで他のみんなが同じ人間がいっぱいいるところ見ちゃったら余計ややこしいし…」

さわ子「…どうしようもないわね。でも、本当に良いの?確実に変な目で見られるわよ、あなたたち」

律「こうやってクラスメイトにもばれちゃった今となってはもう人の目なんて気にならないよ」

さわ子(悟り開いてきたわねこの子達…)

同時刻、最高律は嫌な思い出の場所、廃工場の前に来ていた。

最高律「…やっぱ同じか」

最高律(何となく流れできちゃったけど…人いそうにないな。こんな人気のない場所にいたらそれはそれで怪しいし。仕方ない、他をあたって――)

「…コ…ギ……ギ……」ボソボソ

最高律(――!!声…?誰かいるのか!?)

開放されたままの入り口から、かすかに声が聞こえてきて、最高律はその入り口の近くにあった物陰に息を潜めた。

律?「――…ギコギコギコギコ…さっきからずっと頭の中に響いてる…。勘弁してくれよ…」

紬?「私も…。でも、我慢しなきゃ…。唯ちゃんのためだもの」

最高律(――!あの二人、こんな所にいたのか。何だ、びびって損した――)

少しやつれた表情をしていると唯から聞いていたのですぐに探していた二人だとわかり、最高律は安堵して立ち上がろうとした。

が、その視界に物騒な輝きを放つノコギリが飛び込んできて、彼女は思わず足を止めた。

ギコ律「あぁ、わかってる。私達の唯のために…梓を殺す。もう躊躇わないぜ」

最高律「――!!?」

いつ終わる予定?

ザッ

ギコ律・紬「!?」

最高律「お前ら…一体どういう話してるんだ…?」

ギコ律「ちっ……唯の予想通りか」ボソッ

ギコ紬「まさかとは思ったけど、本当に来るなんて…。じゃあ、作戦変更ね…」ボソッ

最高律「ぼそぼそ言ってないで私の質問に答えろ!!」

ギコ紬「っ!!」ダッ

ノコギリを手に、突如肉薄してくるギコ紬。最高律は驚き、思わず身を引いた。そんな彼女の横を素通りし、ギコ紬は廃工場を後にする。

最高律「お、おい!待――」

ギコ律「…っ!」ブンッ

最高律「!うわっ!!」

ギコ紬を追おうとして最高律は、背後に感じた気配に考える前に動いた。身をひねった彼女の脇を、振り下ろされたノコギリが通過する。

最高律「ちょ…お前ら正気かよ!?何でこんな…」

ギコ律「悪い。こっちの唯のためなんだ。抵抗しないなら殺しはしない」

>>157
今折り返しぐらい
8割書き溜めできてるから、さるくらわなかったらスムーズにいけると思う


最高律「殺すだとかそのノコギリとか…そういう物騒なのはやめにしようぜ。何か事情があるなら相談に乗るからさ」

ギコ律「相談してどうにかなる話じゃないからこういう手段取ってるのがわかんねぇのかよ」

最高律「訳わかんないぞ!何で唯のために梓を殺さなきゃいけないんだよ!?」

ギコ律「説明できる話じゃないし、説明したところでお前には理解できないよ」

最高律「…そうかよ。じゃあ私にできるのは何故か知らないけど馬鹿みたいな行動取ろうとしてるお前を止めることだけみたいだな」

ギコ律「あっそう。邪魔するんだ?…なら、行動不能になるまでボコるしかなさそうだな」

最高律「やれるもんならやってみな。伊達に大人の男達相手に戦ってないぜ」

身構える最高律を見て、ギコ律は積まれたドラム缶の傍へと歩いて行く。

ギコ律「これ見てもそんなに強気でいられるか?」

そして、ドラム缶の陰へ手を伸ばし、思い切り引いた。たたらを踏みながら現れたのは、捕縛された澪だった。

最高律「!?み、澪…!!」

澪?「りつー!たすけてー!!しにたくないよー!!」

あからさまにうろたえる最高律。ギコ律は捕縛した澪?の肩に手を置いて、昨晩の会話を思い出していた。

唯?『まず必ず戻るって約束していた二人が帰ってこなかったら、私達は絶対心配になると思うんだよね』

ギコ律『そんなもんなのか?』

唯?『うん。りっちゃんとか和ちゃんあたりは責任感強いからね。きっと探そうとか言い出すんじゃない?』

唯?『特に、平行世界からきたりっちゃんは澪ちゃんに――正確にはサンジュちゃんだっけ?――きついこと言っちゃったんでしょ?絶対罪悪感を覚えてると思うな。一番に探し出そうとすると思うよ』

サンジュ『は、はは…』

唯?『しかもうまい具合にここはあのりっちゃんの思い出の地でもあるわけだからね。もしかしたら来るかもしれないね、ここ』

ギコ紬『そうなの…?凄く詳しいのね、唯ちゃん』

唯?『私に不可能はないのです!ま、そういうことだけど…とりあえず三人は私が助っ人連れてくるまでここで待機しててよ。仮に私が来るまでに誰かに見つかるようなことがあったら…』

ギコ紬『その時は分散しましょう。私は学校に一足早く向かうわ。りっちゃんは探しに来た人の足止めお願いできる?』

ギコ律『あぁ、任せとけ。――澪はどうする?』

唯?『あ、サンジュちゃんにはとっても重要な役があるよ!まぁ、見つかったときしか出番ないんだけど…』

サンジュ『な、何したら良いんだ?』

唯?『ひ・と・じ・ち・や・く!』

なんで10割書き溜めなかったんだ

カルア唯か

>>163
今日投下したかったんだ…


最高律「ひ、卑怯だぞ!」

ギコ律(ビックリするぐらい頭の切れる唯だな…。こりゃ完璧だわ。絶対手出してこないぞ、アイツ。――同じ自分だからよくわかるよ)

サンジュ「りつーりつー!」

ギコ律「ま、言いたいことはわかるよな?抵抗したら澪は…。そうなったらお前が悪いんだからな。コイツが私らの所にノコノコやってきたのも、お前らが追い出しちまったのが原因なんだから」

最高律「…っ…」

ギコ律「そういうことだから、とりあえず…」スタスタ

ドカッ

最高律「痛っ…!」

ギコ律「動けないようにしますか。殺すのは気分の良いもんじゃないし…」バキッ

最高律「ぐ…澪は、関係ないだろ…!放してやれよ!!うあっ!!」ゴッ

ギコ律「関係あるとかないとか以前に、放しちゃったらお前抵抗するじゃんか。自分の性格は自分が一番知ってるんだよ」ドゴッ

サンジュ(わ、私は悪くないぞ…。勝手にやってきたアイツが悪いんだからな…!)

場面変わって学校では。

唯「んー…澪さんも遅いね」

律「なんかこうも次々現れないと不安になってくるな…」

梓2号「もしかして本当に元の世界に帰れたんでしょうか?」

佐々木「見たかったなぁ…大人な秋山さん」

和「…っていうか、なんで2組のみんなまで一緒について来てるわけ?」

春子「この状況を見た他の生徒の混乱を押さえるために簡単な事情説明に回っているだけであって、決して面白いから野次馬しているだけというわけじゃないからな!」

和「おもしろがってるだけでしょ…」

さわ子「でもまぁ、実質みんなのおかげで混乱は最小限に抑えられてる訳だし、悪くないと思うわ」

澪「抑えられてるというか、呆然としてる感じですね」

デブ紬「やけに視線を感じるわ」

変態和「ね、ねぇ唯四人衆。ちょっとお願いがあるの…」

唯「何?」

池沼唯「あうー」

石ころ唯「私は人の願いを叶えるために生まれてきた」

よく見て唯「へぇ」

変態和「四人でこう…私を包み込んでくれないかしら。ちょっとでいいから」

唯四人衆「これでいいの?」ギュッ

変態和「ヘヴンッ!!!!!!!!!!!1!!!!!!11!!!!」ブバッ

梓「唯先輩達から謎のスプラッタが!!」

澪「ひいいいいいいいいいいいいい!!」

律「こんなときに訳のわかんないことすんな」

廃工場では、ずっと暴行に堪え続けてきた最高律がギコ律の蹴りを腹部にもらい、くぐもった呻き声を上げて崩れ落ちていた。

ギコ律「かなり頑張ってたけど今のは効いただろ」

最高律「っ…げほっげほげほっ!!」

ギコ律「やっぱ腹が一番辛いよなっと」ドボッ

最高律「かはっ」

サンジュ「ひっ…」

追撃とばかりに、手をついて咳き込んでいた最高律の腹を蹴り上げるギコ律。思わずサンジュは目をそらした。

ギコ律「…ん?」

腹を蹴り上げた足の白ソックスに、赤いシミが付いた。苦しげに肩で息をしている最高律に目をやると、手で押さえている下からブラウスに浮いた赤が覗いていた。

ギコ律「何だお前…そこ怪我でもしてたわけ?」

最高律「はっ…はあっ…はあっ…。――…澪を、離してくれ…」

サンジュ(何だよ…何なんだよアイツ…頭おかしいだろ!!)

ギコ律「はぁ…もういいよお前。これで最後な」

足首を入念に回して、ギコ律は最高律に歩み寄っていく。その時だった。

ガシャアアアァン

ガラスが砕けるような音が入り口から響き、工場内の三人は視線をそちらへ向ける。

壁に叩き付けたのだろう、下半分が粉々に砕け落ちた空き瓶を握りしめ、珍しく怒りの表情をあらわにしている瓶澪が立っていた。

最高律(あの人…みんなが言ってた大人の澪か…?)

ギコ律「アンタ…もしかして、澪か…?何でこんな所に…」

瓶澪は答えず割れた瓶を捨てると、脇に抱えていた新しい瓶に持ち替え、また壁を殴る。激しい音が響いた。

ギコ律「――よくわかんないけど、アンタがめちゃくちゃ怒ってるのはわかったよ」

瓶澪「そう、怒ってる。あなたにも怒ってるし、そこの私にも怒ってる」

サンジュ「へ?」

瓶澪「さっきそこふらふらしてたらムギさんと妖精さんが話してた。――人質役の澪ちゃんもいるから大丈夫だろうって」

サンジュ「!!」

最高律「なん、だって…?――グルだったのかよ…お前ら…」

>>169
俺が>>124に貼ったブログにギコ、最高、瓶とかはまとめられてるはず。携帯用になってたらすまん。

小さく舌打ちを打つギコ律。瓶澪は最高律の所へと駆け出す。

ギコ律はそれを阻もうとしたが、割れた瓶を突き出され、ノコギリを手放していた彼女は下がらざるをえなかった。

瓶澪「律…!酷い…!!」

最高律「いてて…へーきへーき…。ボコられるのは…慣れてますから…なんて」

開いてしまった傷を押さえつつ、がくがくの足で何とか立ち上がる最高律。ギコ律は無言でノコギリを拾い上げた。

瓶澪「…怒ってて何も考えてなかった…。私喧嘩できない…」

最高律「正直私も…もう限界近いんですよね…」

ギコ律「威勢良く入ってきたと思ったら後は二人そろって後退りかよ。拍子抜けだな」

最高律「ちくしょ…ん?」ガッ

積まれたがらくたの壁に追いやられた二人。最高律の踵に何かがあたってカランと音を立てた。

最高律「…へへ…なんてデジャヴだよ…。――でも、これなら…」

震える手を伸ばし、それを拾い上げる。最高律は歯を食いしばると足を踏みしめ、それを――鉄パイプを構えた。

最高律「…いける気がしてきたぜ」

>>179
なんかアクセスしようとしたらトップページに戻されちゃうんだけど
俺だけなのかな


学校組はいつまでたっても現れない瓶澪を心配すると同時に、帰りが遅い最高律にも不安を募らせていた。

澪「遅いな…」

和「どこまで行ったのかしら…」

梓「やっぱり街中に何か平行世界に関するものがあるんですかね?」

律「みんなで街に出てみるか?」

梓2号「学校内はともかくさすがに街の人達にこの光景を見せるのはどうかと思いますよ?」

澪「でも、もし平行世界の私達が増えつつあるんだったら、もう街中にもけっこういるんじゃ…」

唸る軽音部員達。と、

池沼唯「あー!!むぎちゃ!」

嬉しそうに声を上げる池沼唯が指さす先に、ナイロン袋を携えたギコ紬が立っていた。

さいごのがらすをぶちやぶれー

やはり最高律だな

唯「ムギちゃん!心配してたんだよ?」

相変わらずどこか生気の抜けた目をした紬に、唯は内心嫌な感情を覚えながらも声をかける。

ギコ紬「ごめんね、唯ちゃん」

律「あれ?連れの私はどうしたんだ?」

ギコ紬「あ、えっと…ちょっと別行動中で…たぶんすぐに来るから…」

歯切れの悪い笑顔を浮かべ、ギコ紬は軽音部の集団へと歩み寄っていく。

和「もう一人別の律に会わなかったかしら?あなたたちを捜しに行ってくれたんだけど」

ギコ紬「そうだったの?ごめんね、見てないわ。というか…凄い野次馬ね」

石ころ唯「慣れてしまえばむしろ心地よい私のために注がれるこの視線」

よく見て唯「ん」

梓「とにかく、ムギ先輩に何もなくて安心しました。律先輩達も大丈夫そうですし」

ギコ紬「――…そうね」

梓の姿を見て足を止めるギコ紬。ナイロン袋から飛び出したノコギリの柄を、何気ない所作で掴む。

律「どうした、ムギ?」

梓「…あの、気になってたんですけどそのナイロン袋何ですか?結構大きなもの入ってそうですけど、持つの手伝いましょうか?」

まさか自分の命を奪うためのノコギリが入っているなんて思いもしない梓は、何の警戒心もなくギコ紬に近づいていく。

ギコ紬「…」

梓「…せ、先輩?あの…どうしたんです――」

池沼唯「ああああああああ!!あずなああああああ!!うわああああああああ!!」

梓・ギコ紬「!?」

ギコ紬がナイロン袋を取り払ってノコギリを振りかぶろうとしたのと同時に、池沼唯が奇声を上げながら梓を引っ張って抱きついた。

唯「え、何!?どうしたの!?」

梓「ちょ…唯先輩――え!?」

>>179
携帯用になってるよ

無茶しやがって

遠巻きに見ていたクラスメイト達から悲鳴が上がり、梓は目の前でギコ紬がノコギリを自分に向けていることにようやく気付く。

ギコ紬「ゆ、唯ちゃんどけて!」

池沼唯「あずにゃあああああああむぎちゃああああああああいやああああああ」

梓「え…あ……え?」

澪「ひいいいいいいいい!の、ノコギリ!?」

律「お、おいムギ!何してるんだ!?」

さわ子「ちょっとムギちゃん!そんな危ないものどうしたの!?」

さすがに先生をやっているさわ子は、皆が混乱に陥る中いち早く落ち着きを取り戻し、ギコ紬に近寄ろうとする。だが、ギコ紬はそんな彼女にその刃を向けた。

ギコ紬「来ないでください!」

紬「ど、どうして!?何するつもりなの!?」

ギコ紬「おとなしく梓ちゃんをこっちに引き渡してください。二人ともよ。そうしたら他のみんなは傷つけないから…」

梓・梓2号「え!?」

廃工場組は、睨み合いが続いていた。

ギコ律「はっ…そんなフラフラでいける気がするってか」

最高律「はぁ…はぁ…へへっ。この場所、この状況――モチベーションがあがってしかたないね」

最高律はギコ律を睨んだまま瓶澪に囁く。

最高律「…向こうの澪の方、お願いできますか?」

瓶澪「…」コクン

ギコ律「覚悟はできたかよっ!」ダッ

ギコ律が迫る。振り下ろされたノコギリを、最高律が鉄パイプで受け、その隙に瓶澪は捕縛されたままのサンジュの元へと駆けた。

最高律(いってぇ…。衝撃で全身に馬鹿みたいな痛みが走るな…。できれば一撃で沈めたいけど…)ギリギリ

ギコ律「おら頑張れよ。もう後ろはないから逃げられないぜ!」ギンッ

最高律「っ!」ドンッ

弾かれて背中を積まれた木材に打ち付け、最高律は一瞬息がつまった。ノコギリを振り上げるギコ律。

最高律(――!そうか!!)

ギコ律「うらああああぁ!!」ブンッ

ガスッ!!

携帯でぐぐるからキーワード教えてくれ

>>197
>>1から嫁

ギコ律「!?」

最高律の脳天めがけて振り下ろされたノコギリの刃は、無理矢理身をひねってそれを回避した彼女の背後の木材に突き刺さった。

ギコ律「ちっ…」

引っかかった刃をギコ律が引き抜こうとするその一瞬前に。

最高律「これで…どうだ!!」ガキッ

ギコ律「なっ!?」

最高律の鉄パイプが上からノコギリを殴りつけ、その刃はさらに深く木材へと食い込んだ。押しても引いても持ち上げようとしても、ぴくりとも動かぬほどに。

ギコ律「くそっ…抜けろよ!」グイッグイッ

最高律「――ここに残ったのがお前で良かったよ」

ブンッ!ガッ!!

ギコ律「ぐあっ……!!」ドサッ

最高律「ムギだったら気が引けるけど…同じ私なら…遠慮なしにぶん殴れるからな」カラン

首筋に一撃をたたき込み、ギコ律が気絶したのを確認すると、最高律もその場に崩れ落ちた

サンジュ「あ…律…!」

ギコ律が倒れたことのを見てどうしたらよいのかわからぬ様子のサンジュ。

瓶澪は大股でズイズイ彼女に近づき、割れた瓶でロープを切って解放し、自分の方を向かせた。

サンジュ「あ、あ…」

瓶澪「…」パンッ

サンジュ「痛い!」

瓶澪「…」パンッ

問答無用でビンタを続ける瓶澪。サンジュはびーびー泣き始めた。

サンジュ「うああああああああああん痛いよおおおおおおおおおおお!!オモニいいいいいいい!!」

瓶澪「律はもっと痛かった」

サンジュ「ひっ…」

瓶澪「あなたを助けるために泣くのも我慢して必死に堪えてた。もう一人の律も人を傷つける罪を背負う羽目になった」

サンジュ「あ…う…」

PC用
http://blog.livedoor.jp/keionss/

瓶澪「何で止めなかったの?何で黙ってたの?」

サンジュ「だ、だって…」

瓶澪「あなたの世界でも律はあなたのこと守ってくれていたんじゃないの?」

サンジュ「あ――」

そう、どんなに自分が煙たがられようと、律だけはいつも彼女の傍にいてくれた。こんな性格の自分に文句一つ言わずに。

サンジュ「う、うぅ…」グスッ

瓶澪「やっと自分が間違ってたことに気が付いた?」

サンジュ「うー…うぅう…ヒグッ」

瓶澪「泣いてるだけじゃわからない」

最高律「――もういいですよ…。私なら平気ですから…」

サンジュ「りつうううぅ…」

瓶澪「…」

サンジュ「グスッ…うえぇ…」

瓶澪「律が許すって言ってるから、もう責めない。でも、これだけは言わせて」

瓶澪「もうこんなことに荷担するような真似はやめて」

サンジュ「わかったよぉ…。もうこんなことしないからぁ…。ちゃんとみんなの役に立てるように頑張るからぁ…」ズビッ

瓶澪「約束できる?」

サンジュ「します、しますよ…」スンッ

瓶澪「良い子」

そう言って瓶澪はサンジュを抱きしめた。初めて感じるぬくもりに、サンジュは顔を赤くする。

それは吹き抜ける風がちょっとキムチ臭いある晴れた日の出来事だった。

元ネタの題名教えてくれ

唯?(ありゃ…聞かれちゃってたんだ。まぁいいや、面白いもの見れたし)

廃工場の外では、唯?がギコ紬との会話を思い出しつつ中を眺めていた。

唯?『ムギちゃん、やっぱり作戦変更?』

ギコ紬『唯ちゃん!?なんでここに…助っ人を呼びに行ってたんじゃ…』

唯?『うん、今ちょっと私のアシスタントさんにお願いしてる。もうちょっと時間かかりそうって伝えに来たんだけど…』

ギコ紬『じゃあ、私先に学校に行ってるわね。できるだけ早く梓ちゃんを処分したいから。りっちゃんも、もう一人のりっちゃんを始末してから来ると思う』

唯?『まぁ人質役の澪ちゃんがいるから大丈夫だろうね。手出しできずにのされちゃっておしまいだよ』

ギコ紬『それじゃ、頼んだわよ唯ちゃん』ダッ

唯?「――…さーて、アシスタントさんに連絡だー」ピッ

唯?「――あ、そっちどう?…へぇ、そんなに観客が?うん、じゃあ校庭を監視できる場所に…そうだなぁみんな校庭にいるなら…部室にこもってて」

携帯から聞こえてくる声に耳を傾け、唯?は無邪気に笑う。

唯?「もう最高だったよ、りっちゃんVSりっちゃん。画的にも内容も。そっちももっといろいろ楽しめるように今からちょっと呼ぶね。それが終わったら私もそっちに行くよ。――くれぐれもその助っ人さんの制御には気をつけてね」

工場を後にしながら唯?は笑う。

唯?「――下手したらみんな死んじゃうよ」

>>209
最後にまとめて紹介します


最高律「急いで学校に戻んなきゃ…。ムギが何しでかすかわからないぞ…!」

サンジュ「そうは言ってもその怪我じゃ走るわけにはいかないし…」

焦る最高律にサンジュが肩を貸し、瓶澪は捕縛した気絶しているギコ律を背負って学校へと急ぐ。

瓶澪(運動、しておくんだった…。もうキツイ…)ハァハァ

最高律「この路地抜けたら商店街だから…人目に付かないうちに学校の方に抜けるぞ」

サンジュ「律は片方おんぶしてるし、私と澪さんはよく見なきゃわからないだろうから同じ顔がいっぱいいることは気付かれにくいだろうけど…」

瓶澪「律の怪我に気付かれたらいろいろ厄介」

最高律「そういうこった。悪いね。…よし、行くぞ!」ダッ

人通りが少ないことを確認して路地を飛び出す三人。が、タイミング良くそこへ歩いてきた二人組に正面衝突した。

瓶澪(お約束すぎる)

サンジュ「おいどこ見て歩いてるんだ危ないな!!謝罪と賠償ry」

最高律「おいやめろ!何もわかってないのなお前!」ヒソヒソ

純「あいたたたた…」

憂「ごめんなさい、大丈夫でしたか?」

最高律「こちらこそすみません急いでたんでそれじゃ――って…憂ちゃん!」

憂「あれ?律さんに澪さん?どうしてこんな所に…」

三人がぶつかった相手は、学校帰りに商店街へ立ち寄っていた憂と純だった。

瓶澪「知り合い?」

最高律「あぁ…この子は唯の妹さんだよ。」

純「あれ?軽音部の皆さんだったんだ」

サンジュ「こっちの子は…?」

最高律「ごめん…知らない」

純「」

憂「もしかして皆さん平行世界の――ていうか…律さんその怪我、どうしたんですか!?」

純「ひっ、ホントだ!結構血が出てまムゴッ」

最高律「シーッ!できるだけ…人目に付かないうちに、学校に戻りたいんだ。心配してくれるのは嬉しいけど…今はそっとしといてくれよ?」ヒソヒソ

純(あっ…格好いい先輩に耳元で囁かれてる私…なんか幸せ)

最高律「憂ちゃんの想像通り、私達はみんな平行世界から来たメンバーだよ。私は昨日の朝校庭で話した律だ」

憂「やっぱりそうだったんですか…。もしかしてそちらのお姉さんも澪さん、なんですか…?」

瓶澪「…」コクリ

純「ん?へ?え?意味がわかんないんですけど」

最高律「詳しい事情は後で話すからさ…ちょっと手を貸してくれないかな?とにかく急いで学校に行きたいんだけど…思うように体が動かなくて…」

瓶澪「この律運ぶの手伝って欲しい…」ハァハァ

純「え、あれ?律先輩が二人…え?」

一方緊迫した空気が流れる校庭。唯がおそるおそるギコ紬に話しかけた。

唯「ムギちゃん…?あずにゃん達に、何するの…?」

ギコ紬「…」

梓2号「ノコギリ…ってことは…嫌な予感しかしないんですけど」

律「おいおいまさか…」

梓「何でですか…?何か私に、恨みでも…」

ギコ紬「恨みはない…のかしら。自分でもわからないわ。あれは梓ちゃんのせいでも、唯ちゃんのせいでも、誰のせいでもないのだから…」

和「何の話…?」

ギコ紬「あれは事故だったのよ…。そう、誰も悪くないの…。でも、梓ちゃんの姿を見たら唯ちゃんはきっとあの事件を鮮明に思い出してしまう。それだけは避けなきゃ…。唯ちゃんを守るためにも…唯ちゃんのためにも…」ブツブツ

よく見て紬「くるってやがる」

よく見て澪「コイツはまずいぜ」

ギコ紬「ごめんね梓ちゃん。そういうことだから、もう一度死んでね」

梓「!?唯先輩!ちょ…逃げてください!」

池沼唯「やあああああああああああああ!!」ビエェ

ギコ紬「はぁ…はぁ…」ブンッ

泣きわめいて立ち上がろうとしない池沼唯に足を取られる梓。ギコ紬は目を血走らせてノコギリを振り回しながら近づいてくる。

よく見て唯「テンション上がってきた!」

律「おい待て何だこの展開!?」

澪「」

紬「澪ちゃん!失神してる暇ないわよ!」

唯「とにかくあずにゃんを守らなきゃ!ほんでもってムギちゃんを止めなきゃ!」

律「わかってるけどどうすりゃ…あれ?もうひとりの梓は!?」

デブ紬「…あっ!」

目を見開いたデブ紬の視線の先には、動けぬ梓達と荒れるギコ紬の間へ駆けていく梓2号の姿。

さわ子「梓ちゃん!」

梓「…!嘘!?」

梓2号「ムギ先輩!私が相手です!この世界の私を狙うなら、まず私から始末しやがれです!」

ギコ紬「どっちが先でもいいわ。とにかく梓ちゃんにはいなくなってもらわないと困るの」

ノコギリを構え、梓2号に突進するギコ紬。丸腰の梓2号は、退け腰になりながらも身構えた。

梓2号「や、やってやるです!」

律「馬鹿!やめろ梓!戻ってこい!」

律の警告もむなしく、勝負は一瞬で付いた。ノコギリの一撃は避けたものの、目の前でヒラついていた長いツインテールを引っ掴まれ、梓2号はギコ紬に捕まってしまった。

梓「2号!」

ノコギリが振りかぶられて、クラスメイトが、澪が、甲高い悲鳴を上げる。そんな中、梓2号は――勝ち誇った笑みを浮かべた。

梓2号「かかりましたね…」

ポン!とはじけるような音と共に梓2号の姿は白い煙に包まれた。

ギコ紬「えっ!?い、いない!?」

チチチ…
ニャーニャー
カサカサカサカサ

梓「――!?なんかいっぱいおる!!」

ギコ紬の足下に、小さな梓が五人集まって胸を張っていた。

梓達「ミニマムあずにゃんずです!!!!!」バーン

唯「何あれ欲しい」

ミニマム梓1号「突撃!」

3号「にゃー」ダッ

4号「ふみゃ」ダッ

5号「チチチチ」テテテッ

ギコ紬「あ!?な、何を!!ちょっ…やっ!!」

ミニマム梓1号の号令に3,4,5号がギコ紬の服の中へと突入する。

2号「何リーダーぶってんのかなぁ~?命令とか聞いてられないね~」カサカサカサ

グオオォンザクッ!!!

一人別行動を始める2号の目の前に、くすぐりに身をよじったギコ紬のノコギリが振り下ろされた。

2号「Oh…」

1号「死にたくないでしょ?」

2号「ちぇ。しゃくだけど命は惜しいもんね」カサカサ

1号と2号もギコ紬の服の中へ侵入した。ギコ紬はくすぐったさに足が震え、うまく身動きが取れずにいる。

ギコ紬「ちょ…やめっ…んっ!!」

律「なんかわかんないけどチャンスだ!今のうちにムギを止めるぞ!」

デブ紬「任せて!」

ノコギリを奪おうと駆ける軽音部のメンバー(澪除く)。だが、ギコ紬の方もなんとかノコギリを振るって、皆の接近を拒む。

デブ紬「くっ…せめて一瞬でも隙が作れれば…」

1号「ごめんなさいこれ以上未開の地へ進むのは私も胸が痛いです」

ギコ紬の服の中からくぐもった声が聞こえてくる。

紬「でも状況が状況だから――」

梓(許可するつもりですか!?なんか私が気まずくなっちゃいますよ!?)

唯「――ハッ!そうか!ひらめいたよ!」

まじまじとギコ紬を観察して何か頷いていた変態和の腕を引く唯。そして、他の唯達へのアイコンタクト。

変態和「へ?」

唯四人衆「そおい!!」ギュッ

変態和「いとをかしっ!!!!!!!!!!!!!!!11!!!!1!!!!!!!!」ブシャアアアァッ

ギコ紬「な、何!?」ビクッ

デブ紬「マンボッ!!」ブンッ

ギコ紬「も゛っ!!!!!」デュクシッ

ギコ紬は恐ろしい勢いで吹っ飛んで動かなくなった。

さわ子「見事に気絶してるわ」

律「何という恐ろしいコンビネーション…」

紬・和(…何だか凄く複雑な気分)

梓「ちょっと待ってください。あのムギ先輩には2号達が…」

ミニマム梓1号「心配にはおよばないよ」キリッ

唯「あー!ちっちゃいあずにゃんだぁ!!おいでおいでー」

3号・4号「にゃー」

澪「特別って…こういう意味だったのか」

1号「はい…さすがに異様な光景だから気味悪がられるかと思ってたんですけど、それ以上に異常な出来事が起きましたから、思い切って解禁しました」

梓「っていうか、いつのまに復活してたんですか澪先輩」

さわ子「あのー…梓ちゃん一人潰れてたわよ…?」

ギコ紬を拘束したさわ子が、ミニマム梓の一人をつまんで持ってきた。

2号「」

1号「あぁ、2号なら平気ですよ。生命力異常ですから」

さわ子「それにしても…どうしてムギちゃんはこんな真似を…。野次馬もビックリしすぎて固まっちゃってるし」

梓「もう一度死んでくれって言われました…」

律「もう一度って…」

紬「じ、じゃああの私は…もしかして、梓ちゃんを…?」ガクガク

1号「――ありえなくもないですよ…。平行世界は無限にあるんです。私みたいなのもいるんですから…」

紬「…」ウルッ

梓「ム、ムギ先輩がそんなに気にすることないですよ!」

唯「そうだよムギちゃん!この世界のムギちゃんはおっとりぽわぽわで優しいムギちゃん、それは間違いないんだもん!!」

よく見て澪「イイハナシダナー」

かなりショックを受けてしまった様子の紬を慰める皆。そこへ――

憂「皆さん!」

憂が校門から息を切らせて走ってきた。

唯「あ、憂ー!」

憂「お姉ちゃん、大丈夫?どこか怪我してない?皆さんも…ノコギリを持った紬さんに出会ったりしませんでした?」

梓「あ、あー…そのムギ先輩ならついさっきみなさんの活躍で取り押さえたよ。でも、何で憂がそのことを?」

憂「そっか…なんとかなったみたいだね。私と純ちゃん商店街に寄ってたんだけど、そこで平行世界の律さん達に会って…。
  事情を聞いたら、律さん達もノコギリを持ったもう一人の律さんといざこざがあったそうなんです」

和「もしかしてムギ達を探しに行ってくれた律かしら?でも、達って言うのは――」

憂「澪さんと、大人の澪さんです。何とか律さんも取り押さえたられたみたいですけど、もう一人の律さん結構怪我しちゃってて…。
  逃げ出した紬さんの事が気になってて急いでこっちに向かってたんですけど、だいぶ無理してたみたいで途中で倒れちゃったんです」

律「お、おいおいマジかよ…」

澪(大人の私って…澪さんだよな。もう一人の私は…もしかしてあの追い出しちゃったヤツかな)

憂「あと、大人の澪さんも取り押さえた律さんをずっと背負ってたんですけど、体力が持たなかったみたいで動けなくなっちゃって…。
  それでもこっちの様子が気になるから、私が一足先に状況を見に来たんです。皆さん無事そうで安心しました」

紬「向こうは結構大変だったのね…」

和(こっちの解決の仕方が馬鹿みたいね…)

純「お~い…」

憂「噂をすれば――こっちの方は大丈夫だったみたいですよ!」

純とサンジュが最高律と瓶澪、そしてギコ律をほとんど引きずるような形でヨロヨロと姿を現した。

梓「ホントにみなさんボロボロって感じですね…」

サンジュ「…澪さん重いんですけど」ハァハァ

瓶澪「…大人の女は肉付きがいいの」

純「何で私が…こんな目に…」ハァハァ

最高律「――ごめんな…迷惑かけて…」ハァハァ

純「あ、いや、その、全然平気です!もっと耳元で囁いてください!」

最高律「…ん?」

池沼唯「あーりっちゃ!あー!」ダキッ

最高律「いつつ…おーどうした唯…心配してくれてたのか?」

澪「――!ひいぃ!ち、血が!血が出てる!」ガクブル

最高律「あー、気にしないで。例の傷が…ちょっと開いちゃっただけだからさ」

律「いやそれけっこう大事だぞ…。病院行くか?」

最高律「だーいじょぶだいじょぶ。そんなことより…おい、早く来いよ」

最高律に招かれて、サンジュがおずおずと皆の前へ出る。

梓「やっぱり、昨日の澪先輩だったんですね…」

最高律「いろいろ迷惑かけちゃったこと、謝りたいんだってさ」

サンジュ「…」

瓶澪「ほら」

サンジュ「……ミ、ミアネ……」

一同「?」

最高律「えっと…?」

サンジュ「ごめんって意味だよ…!恥ずかしいから言わせるな…!」

瓶澪「素直じゃないの」

サンジュ「うるさいな!」

澪「でもまぁ、反省してるみたいだし…昨日の一件は目を瞑るって事で」

サンジュ「あ、ありがと…」

律「さて一段落ついたところで、お互いいろいろあったことだし情報交換でもしといて。私はこいつを一応保健室に連れて行くから」

最高律「いてててて…引っ張らないでくれよ」

唯「うん、わかった。って…うん?」

律が最高律を連れて校舎の方へと向かう中、池沼唯が唯に急にしがみつき、ガクガク震えだした。視線は校門の外へと注がれている。

唯「どうしたの?」

池沼唯「…いやああああああぁぁ…」

唯(この子、ムギちゃんの時に思ったけど異変に敏感なのかな…?だとしたらまだ何か――)

律「はいはいどいたどいたー。通してくれよー」

姫子「あの、田井中さん。保健室、今日先生出張で閉まってるよ?」

律「なんと!」

最高律「う…応急処置できないってわかったら急にめまいが…」ハァハァ

律「うおおぉい!しっかりしろお!!」

池沼唯の異変に気付かない周りは至って平和(?)だったが、唯は非常に嫌な予感を感じていた。

ミニマム梓「唯先輩?どうかしましたか?」

2号が復活したため合体して再び元の姿に戻ったミニマム梓が、唯達の様子に気が付き声をかけた、その時だった。

澪?「…うううぅ…」

和「――!?また澪が現れたわ!」

澪「ま、また?これで何人目だよ…」

校門からふらり、ふらりと俯いたまま校庭に入ってきたのは、まぎれもなく澪だった。だが、

唯(何だろう、この嫌な感じ…)

池沼唯「やあああああああああああああぁ!!」

突然池沼唯が甲高い悲鳴を上げだし、さっきよりときつく唯にしがみつく。その場にいた全員が驚き、彼女に目をやった。

唯「え、え、え!?ちょ…どうしたの?大丈夫?」

澪?「あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

すると今度は今し方現れたばかりの澪が狂ったように吠えながら、顔を上げた。まるで別人――いや、人とは思えないほどに狂った表情だった。

澪?「ああああああああぁああああゲロ吐いちゃうよおおおおおおおおおおおおぉ!!」

一同「!?!?」

澪「」

さわ子「今度は何なのよ一体!?」

呆然としていたサンジュが、思い出したように呟く。

サンジュ「そうか…す、助っ人だ…。唯が呼んだ助っ人だ!!」

唯「私?」

サンジュ「違う」

池沼唯「あう?」

サンジュ「違う!」

石ころ唯「私だ」

サンジュ「違う!!」

よく見て唯「なんだ、お前だったのk」

サンジュ「違うっつってんだろおおおがあああああああああああ!!!アイツはばけもんなんだぞおおおおおおおおおお!!!」

スケットげろかよwwww

最高律「な、何だあれ…一体何がどうなって…」ハァハァ

サンジュ「そこで気絶してる律とムギの助っ人なんだよ!すっかり忘れてた!」

律「そんな大事なこと忘れてんじゃねー!…つーか、これファンクラブの人には結構衝撃的な光景だと思うんだけど――」

佐々木「大人の秋山さんも美人で素敵だけど…あの秋山さんはワイルドで新しいわ…」

律「ありなのかよ」

そんなのはごく一部で、異様な雰囲気を放つゲロ澪に野次馬達は悲鳴をあげる。それに反応した彼女は、近くにいたクラスメイト達の所へ駆け出した。

あかね・エリ「ひっ!!」

エリ「い、嫌…逃げ――」

ゲロ澪「あああああぅうううう」ギロリ

ゲロ澪の人とは思えない異常な狂気に光る目つきに、思わず足がすくんでその場に腰を抜かしてしまう二人。その二人にゆっくり近づいていくゲロ澪。

梓「わ、私が狙いじゃないんですか!?」

サンジュ「アイツは目に入った人誰でも殺しちゃうようなヤツだって聞いた」

澪(どういうことなの)

ゲロ澪「あああああああ吐いちゃうよおおおおおおおおおおお」

エリ「こ、来ないで!来ないで!!」

梓「っていうかやばいですよ!このままじゃ――」

クラスメイト達は恐怖に身がすくんでどうしようもない。それは軽音部員達も同じだった。だが、その中で一人若干暴走気味な人がいた。

律(――傷持ちの私も体を張って梓を殺そうとしてた私を止めた・・・!澪さんの世界の私も命をかけて人を救った・・・!)

律「異世界の私ができて、私にできないはずがない!」

姫子「た、田井中さん?」

律「そっちの私のこと頼んだ!救急箱でも取ってきて手当てしてやってくれ!!」ダッ

一人猛ダッシュする律。そして、ゲロ澪に後ろからしがみついて動きを封じた。

エリ「田井中さん!!」

律「コイツは私が押さえてるから今のうちに逃げろ!」

唯(りっちゃんそれ死亡フラグううううぅ!!)

梓(やっぱり律先輩ってそういう運命をたどる人なんですね・・・)

デブ紬と紬が慌ててエリ達に駆け寄る。デブ紬はそのまま、ゲロ澪を律と共に押さえ込むことに努めた。

紬「大丈夫二人とも!?早く今のうちに!」

あかね「う、うん」

紬の手を借りて立ち上がり、その場から逃げ出す二人。

ゲロ澪「ああああああああゲロ吐いちゃうゲロ吐いちゃうよおおおおおおお」

律「コイツ力が半端じゃ――うわっ!!」ドサッ

デブ紬「りっちゃん!軽々とりっちゃんを吹っ飛ばすなんて・・・。よし、こうなったら――」

ゲロ澪「あああああああ吐いty」

デブ紬「どすこい!!」ブンッ

どごぉっ!!

ギコ紬の意識を一瞬で奪った鉄拳が、ゲロ澪の腹部にめり込む。

デブ紬「これでどう!?」

ゲロ澪「・・・うぶっ」

デブ紬「あ☆」

よく見て唯「映像が乱れております。しばらくお待ちください」

よく見て澪「ちゃらりらりらりらら~♪」

よく見て紬「澪ちゃん作曲のセンスない」

よく見て澪「ふうううううううううううぅぅぅぅ!!」

よく見て唯・澪・紬「ふううううううううううぅぅぅぅ!!!」

デブ紬「」

変態和「大変よ!ムギが汚物にまみれて瀕死状態だわ!」

澪「」

梓2号「こっちにも余波を受けて瀕死状態の人が!!」

ゲロ澪「ううううううううううぅぅぅ」

デブ紬「」

サンジュ「あの威力で殴られたのにぴんぴんしてるぞ・・・」

唯「む、ムギちゃんを助けなきゃ!」

律「助けたいのは山々なんだけど・・・」

さわ子「近づくのには勇気がいるわね、いろんな意味で」

ゲロ澪「ああああああああああああああ」

唯「ムギちゃんがピンチだよぉ!」

変態和「いくら愛する唯の頼みといえど、生理的に無理があるわ。ごめんなさい、ムギ」

ゲロ澪が放心状態のデブ紬の腕をつかみかけた、その時!

ヒュー・・・ズドーン!!ズドーン!!

ゲロ澪「ああああああああああああ」

デブ紬「」

どこからともなく飛んできた火炎球がゲロ澪に直撃した。デブ紬も爆発に巻き込まれて唯達の前に転がってくる。

デブ紬「」プスプス

唯「む、ムギちゃああああああああん!!」

梓「おぉ・・・見事に汚物が消毒されてます」

池沼唯「焼き豚」

澪「というか、何だ今の!?」

ゲロ澪「ううううううううぅうう痛いよおおおおおおお」

ふらふらと立ち上がるゲロ澪。そこへ、校門から閃光のごとく走り寄る影があった。それは――

「はぁ!!」ビシッ

ゲロ澪「うううううううううぅう」

和「わた、し・・・?」

鞘に入ったままの日本刀を振るいゲロ澪をひるませたのは、和にそっくりな大人の女性だった。身にまとったジャケットには、S.T.A.R.S.の文字が刻まれている。

和?「バイオハザードに巻き込まれたわけでもなさそうなのに・・・何て人間離れした顔をしてるの」

バイハザ律と梓がくれば安心なのに

さわ子「えっと・・・どちら様でしょうか?」

バイハザ和「話は聞いてます。ここは平行世界らしいですね。あまり信じられなかったんですけど・・・この光景見て理解できました」

和「え、あ、はい。って・・・誰からそのことを?」

ゲロ澪「うあああああああのどがあああああああああああああああああああああああ」

バイハザ和「ごめんなさい、あまりのんびり話してる暇もなさそうね。あの澪は私達が押さえます」

澪「達・・・?」

バイハザ和「さっきの火炎球見たでしょ?さすがの私もあんな常識外れの技は使えないわ」

梓「じゃ、じゃあ一体誰が――」

「私だよ」

ゲロ澪の咆哮が響く中聞こえてくる声。校門から姿を現したのは、律だった。その姿はこの世界の彼女と変わらない。

律「・・・へ?」

ぽかんとする一同を尻目に、懐からドラムスティックを取り出し、器用にそれらを回す律?。するとどうだろうか。いきなりスティックが炎を上げ――双剣へと姿を変えた。

律?「――『裏不無』」

なおき来い

律「」

裏不無律「いくぞ・・・澪おおおおおおおお!!」

双剣から炎をまき散らしながら裏不無律はゲロ澪に飛びかかっていった。バイハザ和もそれに加勢する。

律「もう笑うしかない」

梓「平行世界って…広いんですね…」

石ころ唯「世界は広い。それ故に美しい」

よく見て紬「けいおん!は本来ほのぼのとした日常を描いたアニメです!」

よく見て澪「一体何を言ってるんだムギ?」

よく見て紬「言わなきゃいけない気がしたの!」

最高律の介抱をしつつ遠巻きに事の成り行きを見守るクラスメイト達も、皆があっけにとられて呆然としていた。

腰巻き「何この展開。私頭おかしくなってないよね」

最高律(体はって男達から澪を守った私の努力はなんだったんだろう)ハァハァ

たまねぎ頭(かっこいいいいいいいいいいいいいぃいい!!!)

石ころ唯に毎回笑うwwwwwww

ゲロ澪の咆哮、裏不無律の爆炎、クラスメイト達の悲鳴。

さわ子「何これ地獄絵図?」

校長「山中先生!!何ですかこの騒ぎは!?」

さわ子「こ、校長先生…」

唯「あ、あの!これは、映画の撮影なんです!」

校長「…は?」

唯「アポなしでのサプライズ収録なんです!りありてぃを求める監督のアイデアなんです!」

律「唯が暴走してるぞ」

和「そりゃパニックにもなるわよ。私は逆に何か笑えてきたわ。ビックリするほど冷静よ」

律「奇遇だな、私もだ。――しっかし、あんなめちゃくちゃなこと言ってごまかせるわけないよな。どうするよ?」

校長「なるほどそれは面白い!!ちょっととっておきの一張羅に着替えてくる!」

律「マジか」

和「今の校長は自分が目立つことしか頭にないみたいね。私に頼み込んでくるぐらい出番に飢えていたから」

梓「…あれが私達の学校の長ですか。泣けてきますね」

ズガッ!!

ゲロ澪「吐いちゃうよおおおおおおおおおおおおおお」

バイハザ和「くっ…!!化け物並の存在とはいえ澪…下手に傷付けられないからキツイわね…」

裏不無律「あぁ…。気絶させようにもなかなか隙ができないな」

ミニマム梓「苦戦してますね…」

変態和「とにかく…あの二人が時間稼ぎをしてくれてるうちに対策を練らないと」

紬「ねぇ澪ちゃん、あの澪ちゃんは助っ人だって言ってたわよね?何か知ってるんじゃない?止める方法とか」

サンジュ「あ、え、えーっと…」

澪「というか、アイツを助っ人として呼んだ唯っていうのは何者なんだ?どこにいるんだ?」

サンジュ「あーもうそんな次々言われたら混乱するじゃないか!!」

瓶澪「二人に荷担したあなたにも責任はある。あなたはみんなの役に立てるように頑張るって言った。今がその時」

サンジュ「わ、わかってるよ…!えっと、アイツを呼んだ唯は昨日梓を狙うための作戦を練っていた律とムギのところに急に現れたんだ。
      何か異様な雰囲気を放ってたな。何ていうか…支配者的な感じ?」

よく見て唯「支配者のポーズ!!」ガバッ

サンジュ「あ、そう言えば…アイツ自分は平行世界から来たって自分で名乗ってた!」

和「それはおかしいわね…。平行世界から来たみんなは、私達に出会うまで自分たちは平行世界に来たんだって気付いてなかったのに」

律「この一連の騒動について何か知ってるかもしれないな…。今その唯はどこにいるんだ!?」

サンジュ「そ、そんなのわかるわけ――」

その時、サンジュの脳内に昨晩の唯?の言葉がよみがえる。

唯?『助っ人ちゃんは目に入った人誰でも殺しに行っちゃうような危険人物だからね。ちゃんと監視して制御しないと私達まで危なくなっちゃうほどに』

サンジュ「あ」

ミニマム梓「なんですか?」

サンジュ「すっかり忘れてたわ。もしかしたらアイツ、近くにいるかもしれない。あの暴れ回ってる私は監視してなきゃ危ないって言ってたから」

律「だからなんでそんな重要なこと忘れてるんだよ!」

梓「でも、もしそれが本当ならその唯先輩を捕まえれば、あの澪先輩も抑えられるって事ですよね」

澪「よ、よし!じゃあみんなで手分けして探そう!」

律「そういうことだけど、二人とももう少し頑張ってくれるか!?」

バイハザ和「S.T.A.R.S.の狼をなめてもらっちゃ困るわね」

裏不無律「こっちはこの力を遠慮なく解放したくてうずうずしてたんだ。派手にやらせてもらうぜ」

さわ子「派手にやるのは構わないけどお願いだから校舎破壊したりしないでね」

石ころ唯「力あるものは周囲の人間の捉え方次第で正義にもなり悪にもなりうる」

各自分かれて校庭内を散策し始める軽音部員達と憂、和、純。しかしこの広い校庭内から唯?を見つけ出すのは骨が折れる。

唯(でも、早く見つけなきゃ…!少しでも何か手がかりになることがあれば…!!)

唯は特に捜索に力を入れていた。平行世界の者とはいえ、同じ自分がこの騒動の原因かもしれないからだ。

そのせいで、周りへの注意を怠ってしまう。

ゲロ澪「ううううううぅぅぅぅううう…」ピタッ

バイハザ和(何…?攻撃をやめた…?)

裏不無律(どういうつもりだ?)

風子「…大人しくなったね、秋山さん」

慶子「降参でもするのかな」

最高律「…」ハァハァ

そうだったらどれほど幸せだっただろうか。ゲロ澪は、バイハザ和と裏不無律の執拗な攻撃に苛立っていたのだ。抵抗しても、素早い動きに翻弄されるだけ。

この怒りを、どうすればよいのだろうか。

ゲロ澪「ああああああぁぁぁぁ…」

裏不無律「これってチャンスなのか?一撃入れてみる?」ゴォッ

バイハザ和「何を考えてるのかさっぱり読み取れないから…どうしたらいいものか」

二人が作戦を練ることで、一瞬ゲロ澪から気が逸れる。

ゲロ澪「ああああああああ」ギロリ

最高律「…!」

その一瞬、ゲロ澪は一人で校庭を駆ける唯の姿を視界に捉えた。彼女をずっと見つめていた最高律がいち早くそれに気が付く。

最高律「やばい…!!」

姫子「え?」

ゲロ澪「あああああああああああああああああ吐いちゃうよおおおおおおおおおおおおゲロ吐いちゃうううううううううううう」ダッ

バイハザ和「!しまった!!」

最高律「唯!!後ろ!!」

唯「え――」

これまで見せなかった尋常じゃない速さでゲロ澪は唯に迫り、一気に押し倒した。

唯「ひっ…うわっ!!」

裏不無律「くそっ」ゴオオッ

バイハザ和「駄目よ!唯が巻き込まれる!」

デブ紬(…あれ?私は?)プスプス

最高律「くっそ――いつつ…!」ガクッ

春子「だ、駄目だって田井中!」

一番近い距離にいる最高律は動けない。バイハザ和と裏不無律も駆けるが、距離がある。唯には何も抵抗する術がない。

ゲロ澪「うへへへへへへへゆうううういいいいいいいい」

唯「あ…」

ゲロ澪の手が唯の首に伸びる。誰もが最悪の結末を予期した。と、

ゲロ澪「!!」ビクッ

突如ゲロ澪が大きく震え、唯から離れた。その目は、校舎の方を睨んでいる。皆がその方へ目をやる中、玄関から姿を見せたのは――

憂?「お姉ちゃんに何してるんですか…澪さん?」

でたよ

唯「う、憂…?」

最高律「っ…!」ゾクッ

普段と変わらぬ姿の憂だったが、何故か彼女を見た途端最高律の背中に戦慄が走った。平行世界の憂であろうことがすぐにわかった。

クラスメイト達も皆口を閉ざして身を寄せ合っている。裏不無律も双剣を構え、バイハザ和に至ってはゲロ澪を傷付けないよう鞘に入れたままだった刀を抜刀していた。

そのうえ、痛みや恐れをまるで感じない様子だったゲロ澪が、本能的に危険を察知して唯から退いたということもあり、誰もがこの憂?が異常な存在であることを感じていた。

憂?「ねえ、澪さん。質問に答えてくださいよ。私の大切な大切な大切な大切な大切な大切な大切な大切な大切な大切な大切な大切なお姉ちゃんに何するつもりだったんですか?」

ゲロ澪「あ、ああああああ、ああああああああああぁぁあああ」

バイハザ和(精神を病んでいるの…?目が正常な人間のものじゃないわね)

ヤンデレ憂「答えないんですね。まぁ答えても何も変わらないですけどね」ギラッ

自分に刃を向けているバイハザ和と裏不無律には目もくれず、ヤンデレ憂はゲロ澪に歩み寄っていき、懐から包丁を取り出した。

ヤンデレ憂「私のお姉ちゃんを傷付ける人は、問答無用で三枚に下ろしてあげますからね」

どのヤンデレだ

唯「」

律「おい!どうした唯!大丈夫か!?」タタタッ

純「ってあれ?憂?」

憂「え?私はここにいるよ?」

ゲロ澪「うああああああああああ吐いちゃうよおおおおおおおお」ダッ

ヤンデレ憂「なら吐けばいいじゃないですか!!なんなら腹かっさばいてぶちまけてあげましょうか!?あはははははははは!!」ブンッ

憂「」

澪「」フラッ

律「澪ぉ!!」ガシッ

和「気絶してばっかりね」

純(純粋でできた子な憂のイメージが…)

梓(何で平行世界の私達ってまともなのがほとんどいないんだろう)

さわ子「唯ちゃんは見つかったの?」

変態和「全然姿を見せてくれないんです。私がこんなに愛を振りまいているのに。本当にいるんですかね?」

大怪獣も真っ青の激闘を繰り広げるゲロ澪とヤンデレ憂。バイハザ和と裏不無律も一応ヤンデレ憂の援護に入っている。

紬「このままじゃ犠牲者がでてもおかしくないわ…。早くどうにかしないと」

焦りの表情を浮かべ始める皆の所へ、最高律が信代の肩を借りてやってきた。

最高律「…なぁみんな。あの憂ちゃん、さっき校舎の中から出てきたんだ。もし澪の言うようにその唯が平行世界からこの世界へ私達を送り込んでるんだとしたら…」

ミニマム梓「もしかして…校舎の中に唯先輩が!?」

律「その可能性は高いな!よし、探しに行こう!!」ダッ

軽音部員+αは校舎へと突入していく。校庭には大激闘に呆然としているクラスメイト達と、最高律、さわ子、そしてデブ紬が残された。

デブ紬「…」プスプス

最高律「…あの、あそこで完全に忘れられてるムギも手当してやってくれないかな?」

信代「いやぁ…丸焦げになったとはいえ、アレにまみれた人に近付くのはちょっと…」

澪「また手分けして探すか?この学校、校舎馬鹿みたいに広いし」

梓「そうですね。見つけたら携帯に連絡――」

池沼唯「あーーーーーー!!あずにゃ!!」

突然叫び声を上げる池沼唯。その目は誰もいない廊下へと向けられていた。

唯「どうしたの?」

池沼唯「あずなん!!あずにゃ!!あーー!!」テテテッ

和「あっ唯!」

紬「どうしよう?」

よく見て紬「どうする!アイフ●!?」

よく見て唯「古い!」

よく見て澪「ひいいいいいいいいはああああああああああああ!!」

律「追おう!あの唯は一人にしてたら何するかわかんないし」

意外とすばしっこい池沼唯は、何を追いかけるように一心不乱に駆けていく。その後を追う軽音部員+α。ようやく彼女に追いついたのは部室の前だった。

池沼唯「あずにゃ!!」

梓?「離してくださいよ」

澪「梓!?」

梓?「あ~、ほら。見つかっちゃったじゃないですか。せっかく皆さんの目を盗んで間近であの騒動を観戦しようと思ってたのに」

律「観戦って…不謹慎なヤツだな。こっちは苦労してるのに。つーか、何で私らの目を盗む必要があったんだ?」

梓?「私の存在が皆さんにばれるといろいろ面倒でしたので。まぁ、もういいでしょう。そろそろ潮時だと思ってましたし」

梓「何言ってるの?どういうこと?」

梓?「まぁ、とりあえず部室に入りましょうよ」ガチャッ

梓?が準備室の扉を開ける。そこには、今までずっと探してきた唯が椅子に腰掛けて笑っていた。

唯?「待ってたよみんな。疲れたでしょ?これでも飲む?」

コトン、と机の上に湯気を放つカップを置いて笑う唯。

唯「――ホットカルーアミルクだよっ!」

>>166

書き溜めが尽きたでござる
とりあえず最後まで書いてからまた投下する

ミニマム梓とかバイハザ和とかカルア唯とか、おまいらの予測怖いほど的確すぎてワロタ

┌┴┐┌┴┐┌┴┐ -┼-  ̄Tフ ̄Tフ __ / /
  _ノ   _ノ   _ノ ヽ/|    ノ    ノ       。。

       /\___/ヽ
    /ノヽ       ヽ、
    / ⌒''ヽ,,,)ii(,,,r'''''' :::ヘ
    | ン(○),ン <、(○)<::|  |`ヽ、
    |  `⌒,,ノ(、_, )ヽ⌒´ ::l  |::::ヽl  
.   ヽ ヽ il´トェェェイ`li r ;/  .|:::::i |
   /ヽ  !l |,r-r-| l!   /ヽ  |:::::l |
  /  |^|ヽ、 `ニニ´一/|^|`,r-|:「 ̄

  /   | .|           | .| ,U(ニ 、)ヽ
 /    | .|           | .|人(_(ニ、ノノ

もうこっからカルーアスレにしちゃえよ保守

>>345
それだけはやめてくれww
カルア唯達だしたけど、あのスレの雰囲気はどうも好きになれないし…

嫌なんだよね、形式がどうのとか
面白ければ何でもいいもん

やっと終わった
投下していきます

サンジュ「ゆ、唯…」

カルア唯「やぁ澪ちゃん。面白かったよ澪ちゃんの行動。あっちに付いたりこっちに付いたり自分に有利な道を必死に探してたね」

サンジュ「う…」

カルア唯「ファビョんなくなったのは成長だね。瓶澪さんにしかられたのと、最高りっちゃんに守ってもらったのが胸に響いたのかな」

サンジュ「う、う…」

カルア梓「先輩、それ以上いじめちゃったら本当にファビョっちゃいますよ」

律「下で暴れ回ってる澪を連れてきたのはおまえらなのか?」

カルア唯「そだよー。凄いでしょ?あの大バトル!予想以上だったよ」

唯「な、何でそんなことするの?みんな危ない目にあったんだよ!?」

カルア唯「そんな怒んないでよ。バイハザ和さんや裏不無使いのりっちゃんも派遣してあげたのは私だよ?」

サンジュ「そ、そうだったのか!?何でそんな――律やムギに協力するような事言ってたのに」

カルア唯「それは、あの二人に協力したら面白いものが見れそうだったからだよっ」

サンジュ「は?」

カルア梓「本気で協力しちゃったら、私の命まで危なくなっちゃうじゃないですか」

カルア唯「せっかく面白い話のネタを作りに来たのに、死んじゃったら元も子もないもんねぇ」

和「あ、アンタ達…何言ってるの?」

カルア唯「いや~ごめんね?みんなには大変な目に合わせちゃったね」

カルア梓「全部私達の計画だったんですよ」

澪「何だって…!?」

梓「何となく予想はできてましたけど…一体何の目的で?」

カルア唯「説明してあげても良いけど、いいの?下の人達は放置で」

紬「そ、それは駄目よ」

律「そうだな、まずはあの澪を止めるのが最優先だ!」

あまり乗り気でないカルア唯とカルア梓を引きずるようにして、皆は校庭まで戻ってきた。

最高律「…!見つけたのか!?」

律「ようやくこの騒動の犯人にたどり着いたぜ」

唯「さぁ、早く澪ちゃんを止めて!あと一緒に憂も!できるよね?」

カルア唯「ちぇー…せっかく面白いバトルを観戦できると思ったのにな」

カルア梓「仕方ないですよ。死人を出すわけにはいかないですし」

カルア唯「ほいほい…。――ゲロ澪ちゃーん、憂ー、帰って良いよー」

そう言うと、カルア唯は先ほどまでカルーアミルクを注いでいたカップを二人に向けた。途端、

ゲロ澪「あああああああああぁぁぁ」

ヤンデレ憂「うわあああああぁぁ」

まるでランプに戻る魔神のように、二人はカップの中へと吸い込まれ、その姿を消した。

一同「!?」

さわ子「何ていうか…もう何でもありね」

カルア唯「そう。何でもありなんだよ、私達は。世界を創成する者の象徴的な存在だからね」

サンジュ「はっ、よく言うよ。神サマみたいな存在だとでも言うのか?」

カルア梓「えぇ。まあそうですね」

サンジュ「」

よく見て唯「あカミサマーーー!!」

カルア唯「ほっほっほ、控えおろう」

石ころ唯「彼女が神。すなわち私も神。そうか、私は神だったんだね」

池沼唯「あうあうあー」

変態和「まぁ私から見たら唯は神様を超えた存在だものね」

唯(どうしよう、頭が痛くなってきた)

梓「どうなってるんですかそのマグカップ…」

カルア唯「各平行世界をつなごうとしたら、何故かこのカップにつながっちゃったんだよね。タイムマシンが机の引き出しに繋がった的な?」

カルア梓「つなぐのは世界によってとても難しい所もあるんですけど、一度繋がっちゃったら行き来は簡単ですからね。だからゲロ澪先輩は呼ぶのが大変だったんです」

サンジュ「な、なるほど…」

律「で、どういう目的でこんな真似をしたんだ?」

カルア唯「早い話がインスピレーションを求めてたんだよ。新しい世界を作りたかったんだけど最近マンネリ化しちゃっててさ」

最高律(マジで神様なのかよ…)

カルア唯「新しい刺激が欲しいなーってあずにゃんに相談したら、なら世界をクロスさせてみたらどうですかって言ってくれたんだ」

カルア梓「ご覧の通り個性派が多いですからね。面白い出来事が起こるのは目に見えてましたから」

カルア唯「いやー予想以上に良かったよ。すっごい面白かった。勉強になったよぉ」

よく見て唯「つまりこれは暇をもてあました」

よく見て澪「神々の」

よく見て紬「遊び」

よく見て唯・澪・紬「ふううううううううううううううううぅぅぅ!!!」

カルア唯「帰って良いよ」

よく見て唯・澪・紬「ああああああああれえええええええ」スポッ

最高律「お前らに踊らされてたって訳か…私達は…」

カルア唯「ごめんねりっちゃん。ちゃんと帰すときに怪我元通りにしてあげるからね」

最高律「そういう問題じゃねーっての…」

唯「そうだよ!本当に大変だったんだからね!」

カルア唯「まぁまぁ…でもさ、正直に言ってみてよ。何気に楽しかったでしょ?」

一同「…」

律「ま、まぁ…それなりに…」

梓「私は命を狙われましたけどね」

カルア唯「さーて、十分アイデアをもらったことだし。みんなを元の世界に帰すとしますか!」

裏不無律「調子の良いヤツだな」

デブ紬「本当。私なんて汚物まみれになったあげく黒こげになって放置されていたのに」

カルア梓「だから、それは本当にすみませんでしたって」

サンジュ「謝る気あるのかよ」

カルア唯「あははは、あんまりしつこいと存在自体消しちゃうよ~」

サンジュ「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

ミニマム梓(何て傲慢で自分中心的な人達なんだろう…)

石ころ唯「所詮人間は神の作り上げた運命に逆らうことはできない。ただその運命の中で輝く努力は可能である」

変態和「あぁ…もうその言葉明日から座右の銘にして生きていくわ」

カルア唯「とりあえず気絶してるギコりっちゃんとムギちゃんを」スポッ

カルア梓「じゃあ、私は裏不無律先輩が壊しまくってくれた校庭でも直しますかね」

澪「人間がカップの中に吸い込まれていくのって凄くシュールな光景だな…」

カルア唯「よーし、後は一気に行っちゃうよー」

律「ふぅ…やっとこさ解決だな…」

最高律「なんかいろいろ迷惑かけちゃったな…」

紬「ううん…確かに大変だったけど…あの唯ちゃんの言うとおり、ちょっと楽しかった」

デブ紬「私は最後の方は全然楽しくなかったわ」

裏不無律「悪かったよムギ。確認もせずにエクスプロージョン撃っちゃってさ」

池沼唯「りっちゃ」

最高律「あぁ、もうお別れみたいだぜ。みんなにもさよなら言っときな」

池沼唯「あーうーばいばい!」

唯「バイバイ」

サンジュ「…お世話になったな」

澪「お世話してやったな、じゃないんだな」

サンジュ「うるさい!人が素直に感謝の言葉述べてるんだから茶化すな!」

瓶澪(明日からも流れてくる瓶に傷がついてないか調べる仕事頑張るぞ)

ミニマム梓「何ていうか、異常なのは私だけじゃないってわかって安心したよ」

梓「むしろまだ可愛いほうだったね」

純「憂なんて酷かったからね」

憂「」

バイハザ和「まぁ、クラスメイトに怪我人がいなくて本当に良かったわ。呼ばれた甲斐があった」

和「本当に助かりました。何されてるのかよくわからないですけど…これからも頑張ってください」

カルア唯「お別れの挨拶は済ませたかな?ほいじゃいくよー」

さる氏ね。マジで氏ね



カップを掲げるカルア唯。平行世界のみんなは、まるで流れ星のようにカップに吸い込まれ、消えていった。

梓「なんか感慨深いものがありまs」

変態聡「――……ぁぁぁぁあああああああああああああ!!!」スポッ

梓「うわっキモッ!何今のぐるぐる巻き!」

律(あ…すっかり忘れてた…。まぁいっか)

カルア唯・梓「はい、一丁あがり!」

唯「なんだか…寂しくなっちゃったね」

澪「なんだかんだ言って、凄いにぎやかだったからなぁ」

梓「まぁ私は死にかけたんですけどね」

カルア唯「さて、私達もいこうか、あずにゃん」

カルア梓「そうですね」

唯「平行世界のみんなとお話しできたのは良かったけど、もうあんなめちゃくちゃなことするのだけはやめてよ?」

カルア唯「さぁ…またアイデア不足になったら同じ事するかもしれないね」

律「全く反省してないのな」

カルア唯「まぁ、こうやっていろんな世界の自分たちと関わったことで、自分たちの世界がいかに平和か理解できたでしょ」

澪「あぁ、ものすごく平和だよ、私達の世界は」

紬「でも、みんながいろんな特徴を持ってたみたいにそれが私達の特徴なのかもね」

梓「…そうだといいですね」

唯「うん。平凡だけど平和。それが私達の世界の取り柄だよ」

カルア梓「…それじゃ、行きましょうか」

カルア唯「うん。じゃあね」

カルア唯とカルア梓を飲み込んだカップは、地面に落下して粉々に砕け散った。

唯「行っちゃったね」

律「ある意味一番お騒がせなやつらだったな」

澪「…また、どこかであの二人が作った世界が生まれるんだろうな」

紬「会ってみたいわね。その世界の私達にも」

梓「どうも懲りてなかったみたいだし、また同じような出来事があるかもしれませんね」

和「…正直もうあの変態な私には来て欲しくないわね」

憂「私もあの私にももう会いたくないです…」

純・さわ子(私も平行世界の自分に会ってみたいなぁ…)

律「ほいじゃ、久しぶりに演奏でもしますか!」

唯・澪・紬・梓「オー!!」



校長「着替えてきた!さて、私も映画撮影に参加させて…あれ?」


おしまい。

元ネタ様一覧(※はマジキチ注意)

池沼唯…各池沼唯ネタSS様から
石ころ唯…唯「石ころさえもいとおしい」から

最高律…律「やっぱ軽音部は最高だぜ!」から
裏不無律…唯「リツムギ戦!」から(裏不無の元ネタは律「え?唯ももう経験済みなんだ」※)

サンジュ…各サンジュネタSS様から
瓶澪…澪(今日も流れてくる瓶に傷がついてないか確認する仕事頑張るぞ)から
ゲロ澪…澪「ああああゲロ吐いちゃうゲロ吐いちゃうよおおおおおお」※から

デブ紬…唯「ムギちゃん肩幅広くない?」※
    唯「あれ?りっちゃんちょっと太ったんじゃない?」律「え?」から

ミニマム梓…梓「ミニマムあずにゃんずです」から

変態和…和「おはよう唯。パンツ何色?」から
バイハザ和…唯「バイハザ!」シリーズから

よく見て唯・澪・紬…律「よく見てろよ」※から
カルア唯・梓…唯「ホットカルーアミルクだよ!」シリーズ?から

変態聡…各変態聡ネタSS様から

はい、つーことで一応おしまいです

基本古株の有名SS様から引用させていただきました
だいたい去年の今頃かな?全盛期と言っても過言じゃない気がするww
懐かしいなぁと思っていただけたなら嬉しいです
あと、勝手にネタ使っちゃってすいませんでした>元ネタ書き手様
できるだけ、そのSSの性格らしさをだせるように頑張ったつもりです
石ころとよく見て難しすぎて泣いた
律VS律は書いててすげぇ楽しかったです

もっといろいろ出したいSSあったんですけど、物語の都合上使えませんでした
まだまだ昔の面白いSSは眠っているので、たまに保管ブログとか読みあさってみるのも楽しいですよ
またこういうの書いてみたいな
それじゃ、乙でした

>>1乙GJ
だけど、ギコギコ紹介忘れてね?

>>426
ギコギコの人なんじゃね?

>>426
おっわあああああやってもたああああああ
自分でもたくさん出し過ぎて本編書いてる途中も誰か忘れてないか気をつけてたのに…

というわけで追加

ギコ律・紬…唯「ギコギコギコギコギコ」 から  でした

>>427
違う違うww俺にはあんな推理的な文は書けない
SS書くのは初めてだったけど、楽しかったよ

そいじゃそろそろ寝るかな
もし質問とかあったら明日答えられたら答えたいけど、スレ落ちてたら無理なんで
そこんところはご了承ください

元ネタ様に修正点が結構あったので訂正しておきますorz


元ネタ様一覧(※はマジキチ注意)

池沼唯…各池沼唯ネタSS様から
石ころ唯…唯「石ころさえもいとおしい」から

最高律…律「やっぱ軽音部は最高だぜ!」から
裏不無律…唯「そろそろ誰が一番強いか決めようよ」シリーズから(裏不無の元ネタは律「え?唯ももう経験済みなんだ」※)

サンジュ…各サンジュネタSS様から
瓶澪…澪(今日も流れてくる瓶に傷がついてないか確認する仕事頑張るぞ)から
ゲロ澪…澪「ああああゲロ吐いちゃうゲロ吐いちゃうよおおおおおお」※から

デブ紬…唯「ムギちゃん肩幅広くない?」※
      唯「あれ?りっちゃんちょっと太ったんじゃない?」律「え?」などから

ミニマム梓…梓「ミニマムあずにゃんずです」シリーズから

変態和…和「おはよう唯。パンツ何色?」などから
バイハザ和…唯「バイハザ!」シリーズから

ヤンデレ憂…各ヤンデレ憂ネタSS様から

よく見て唯・澪・紬…律「よく見てろよ」※から
ギコ律・紬…唯「ギコギコギコギコギコ」 から(グロ注意)
カルア唯・梓…唯「ホットカルーアミルクだよ!」シリーズ?から

変態聡…各変態聡ネタSS様から

うは、一気に読んじまった。超面白かった、乙!!


が、途中まで…

唯「えっ、けいおん世界に危機が!?」

律「その危機を救うには軽音部の勇者、10人が力を合わせる…って…」

澪「軽音部は5人しかいないぞ!?」

梓「そ、そうか、元の世界の私たち5人…」

紬「そして、平行世界から来た私たちの5人を合わせると…」

唯「ゆ、勇者が10人揃っちゃったよー!!」

ババァァァアン!!!

こんなのを想像してたwwwww

>>457
ドラえもんにそんなのあったなww

>>458
いや、まさにそれwwww見てない人は見たほうがいい鳥肌物だ。ただし旧ドラ。チンカラホイは新ドラな

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