マンボウ「あの、私、ただの魚なんですけど……」(922)

~とある砂浜~

マンボウ(日向ぼっこをしている途中に海に打ち上げられてから、早一時間……)

マンボウ(私は、何故か生きているわ……)

マンボウ(普通なら、このまま死んでてもおかしくないのに……)

マンボウ(一体、何がどうなっているのかしら?……)

ザザーーン、ザザーーン……

マンボウ(とりあえず、早く海に戻らないと……)

マンボウ(今はまだ、何故か奇跡的に生きている……)

マンボウ(下手したら、誰かに捕まっちゃう……)

マンボウ(地元の漁師さんに、捌かれちゃう……)

マンボウ(けど、どうして私は砂浜に?……)

マンボウ(ちょっと、居眠りしている間に陸に上がっちゃってた……)

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、ピタッ……

マンボウ「……?」

エルフ「ねぇ、お母様。あれ何かしら?……」

エルフ「何か、変な形をしたものが打ち上げられてるんだけど……」

エルフ母「あら、本当だわ」

エルフ母「かなり、奇妙な形をした生き物ね」

マンボウ「……」ドキッ

エルフ「でも、あれはあれで、かなり不気味なんだけど……」

エルフ「あそこに倒れてるの、まさか、人じゃないんだよね?……」

マンボウ「え?」

エルフ母「ああ、あれは明らかに人だわ……」

エルフ母「あの分じゃ、もう助からないわね……」

マンボウ「……」

エルフ母「でも、あの不思議な魚みたいのは持って帰りましょう……」

エルフ母「あの魚、ウチに持って帰って解体してみたい……」

マンボウ「!?」

エルフ「え? お母様、人助けしないの?……」

エルフ「普通なら、人命救助を優先すると思うんだけど……」

マンボウ「……」ドキドキッ

エルフ母「いいえ、私はそんな事しないわ!」

エルフ母「以前、何度か人間を助けてみたけど、ろくな事はなかったから!」

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ「でも、あんな不気味みたいな魚を私は持った帰りたくはないわ……」

エルフ「あれ、明らかにモンスターじゃない?……」

エルフ「普通、魚ならあんな不気味な形はいないはず……」

エルフ「あれは、確実にモンスターよ……」

エルフ母「え~~~~っ?」

マンボウ「……」ドキドキッ

エルフ母「なら、直接あの魚に聞いてみる?」

エルフ母「見た所、何故かあの魚の方だけ生体反応があるんだけど」

マンボウ「!?」ビクッ

エルフ母「あっ、今の私達の会話にあの魚が反応した!?」

エルフ母「あの魚、絶対に捕まえて解体するわ!」

マンボウ「――――――――っ!?」ガーーン

エルフ「けど、攻撃してきたらどうするの!?」

エルフ「あんな魚、絶対に持ち帰りたくない!」

マンボウ「……」ドキドキッ

エルフ母「ああ、もう煩いわね!」

エルフ母「私は、あの魚を持ち帰るの!」

エルフ母「持ち帰った後、必ず解体するの!」

エルフ「嫌! 私は絶対に嫌!」

エルフ「あんな不気味な魚、絶対に持ち帰りたくない!」

エルフ「あんな魚を持ち帰るくらいなら、この場で焼いて捨てる!」

エルフ「そして、そのまま海に流してあげる!」

エルフ母「何ですって!?」

マンボウ「……」ドキドキッ

日向ぼっこもマンボウの死因の一つ。

海でマンボウが日向ぼっこをしている時にマンボウが眠ってしまい、気がついたら砂浜に打ち上げられて死亡。

日向ぼっこをしている時に、海鳥がマンボウの上にとまったり、つついたりしてその傷が原因で死亡。

日向ぼっこをしている時に、漁師さんに見つかって捕獲され死亡。

マンボウは、産卵期に3億の子孫を残すが、生き残るのはたった数匹。

ほぼ直進にしか泳げず、岩にぶつかって死亡。

他にも、沢山の死因があるらしい。

漁師「おい! あんたら、早く逃げろ!」

漁師「そこに打ち上げられているのは、モンスターだぞ!」

エルフ母子「!?」

漁師「生憎、今はまだ奴は動けない!」

漁師「早く逃げないと、取り返しのつかない事になるぞ!」

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ「なら、私がここでトドメを刺してあげるわ!」

エルフ「私の火炎魔法を受けてみなさい!」

マンボウ「!?」ビクッ

漁師「おい、あんた無茶するな!」

漁師「早く逃げて、騎士団を呼んでくるんだ!」

マンボウ「……」ドキドキッ

エルフ母「いや、大丈夫だわ」

エルフ母「あんな魚、私達の敵ではないわ!」

エルフ母「娘、そのまま焼くなら骨も残らない様にしなさい!」

エルフ母「あの魚、かなり大きい!」

エルフ母「あんな独特な形をした魚、今まで全く見た事がないわ!」

エルフ「うん!」

マンボウ「ちょ、ちょっと待った!」

マンボウ「ちょっと待った、ちょっと待った!」

エルフ母子「!?」

マンボウ「あの、私、ただのお魚なんですけど……」

マンボウ「気がついたら、ここに打ち上げられていただけなんですけど……」

エルフ母子「……」

マンボウ「ですから、私の事を今すぐ焼くのだけは止めて下さい……」

マンボウ「私は、本当にただのお魚なんです……」

マンボウ「とりあえず、私の事を海に戻して頂けませんか?……」

マンボウ「絶対に、私は貴女達には危害を加えません……」

マンボウ「だから、早く私の事を海に戻して下さい……」

マンボウ「お願いします、お願いします……」ウルウル

エルフ「……」

エルフ母「……」

漁師「……」

水死体「……」

マンボウ「……」ウルウル

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ「ねぇ、お母様。どうする?……」

エルフ「あれ、海に戻しちゃう?……」

マンボウ「……」ウルウル

エルフ「なんか、向こうは私達に対して何もしないって言っているけど、あまり信じられない……」

エルフ「あの魚、見た目からしてかなり不気味……」

エルフ「あれは、やっぱり魚の形をしたモンスターなのよ……」

漁師「ああ、そうだな……」

漁師「そこにいるお嬢ちゃんの言う通りだ……」

漁師「普通、魚は人間の言葉を話したりはしない……」

漁師「魚の癖に、人間の言葉を話せるのはモンスターだけ……」

漁師「だから、今すぐ焼いてやるのが世の中の為だ……」

マンボウ「!?」ガーーン

エルフ「とりあえず、私が今から焼いてあげるわ!」

エルフ「ここで、貴方が打ち上げられていたのが運の尽き!」

エルフ「もし仮に、恨むのなら自分自身の運の無さを恨みなさい!」

エルフ「私はただ、貴方を焼くだけでに集中してればいいんだから!」

エルフ母「ええ、そうね!」

マンボウ「いやああああああああ――――――――っ!?」ガーーン

マンボウ「ちょっと、貴女達、私の話を聞いてましたか!?」

マンボウ「私、本当にただのお魚なんです!」ウルウル

エルフ母子「……」

マンボウ「ですから、今すぐ私の事を焼き捨てるなんて止めて下さい!」

マンボウ「一体、私が貴女達に対して、何をしたって言うのですか!?」

マンボウ「私はただ、ここに打ち上げられていただけでしょうが!」ウルウル

エルフ「もう煩いわね……」

エルフ「本当に、魚の癖に煩いんだから……」

エルフ「それで、あんたどこから来たの?……」

エルフ「あんた、本当にお魚なの?……」

エルフ「さっさと、答えなさい!……」

ザザーーン、ザザーーン……

普通ならもう死んでます。
でも、魔法とか出てくるんでマンボウも強化されてます。

マンボウ「私、ここより遠くの海に住むマンボウと言います……」

マンボウ「偶々、海で日向ぼっこをしていたら、ここに打ち上げられていました……」

マンボウ「後、貴女達の事を攻撃しようにも、本当に私は何も出来ません……」

マンボウ「私は、海に住むお魚の中でも少し変わった種類……」

マンボウ「ただ単に、ゆったりと海を泳いでいるだけのお魚なんです……」

マンボウ「だから、何も心配はありません……」ウルウル

エルフ「なら、何で人間の言葉を話せるの?」

エルフ「普通、魚なんかが人間の言葉なんて話せる訳がないんだけど」

マンボウ「……え?」ウルウル

エルフ母「あんた、本当にかなり怪しいわ!」

エルフ母「今ここで焼くのだけは勘弁してあげるけど、解体はさせなさい!」

マンボウ「!?」ガーーン

エルフ母「ほらっ、どうしたの?」

エルフ母「早く、何か言いなさいよ!」

マンボウ「……」ウルウル

エルフ母「じゃないと、今からあんたの体を捌く!」

エルフ母「それが嫌なら、さっさと答えなさい!」

マンボウ「……はい」ウルウル

マンボウ「実は、私がこうして人間の言葉を話せるのは、寄生虫さん達のおかげなんです……」

マンボウ「その寄生虫さん達のおかげで、こうして人間の言葉を話せるんです……」ウルウル

エルフ母「続けて」

マンボウ「今の私の体の内外には、かなりの数の寄生虫さん達がいます……」

マンボウ「私の体重の3分の1は、寄生虫さん達の重さ……」

マンボウ「早く言えば、生きた寄生虫さん達の住み処みたいなものなんですよね……」ウルウル

エルフ母「へぇ、そうなの」

エルフ母「それで、今のあんたは人間の言葉を話せるの」

エルフ母「まぁ、詳しい話は後で聞くわ」

エルフ母「娘、この魚を連れて帰るわよ」

エルフ母「私、かなり面白い事を考えついちゃった♪」ニッコリ

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ「え? お母様、何するの?……」

エルフ「何度も言うけど、こんな不気味な形をした魚なんて、私持ち帰りたくない!」

マンボウ「……」ウルウル

エルフ母「あんた、何誤解してるのよ♪」

エルフ母「この魚、どこの海から来たかをただ調べるだけよ♪」ニコニコ

エルフ「え?」

エルフ母「とりあえず、この魚だけは持ち帰りましょう♪」

エルフ母「なんか、やけにそこに倒れてる人間の手形がくっきりと残っちゃってるけど♪」ニコニコ

マンボウ「……」ウルウル

エルフ母「まぁ、そう言う訳だから、あんたは私達と一緒に来なさい♪」

エルフ母「私達エルフに見つかってしまったのが、本当に運の尽き♪」

エルフ母「今ここにいるあんたの事を、徹底的に調べてあげるんだからね♪」ニコニコ

スッ、フワッ……

フワワッ、フワワッ……

マンボウ「!?」ウルウル

漁師「おおっ……」

エルフ母「娘、行くわよ♪」

エルフ母「そこの水死体は、その辺に放置しときなさい♪」ニコニコ

マンボウ「あの、本当に私の事を連れてくんですか……」

マンボウ「私、本当に海に戻れるんですか?……」ウルウル

エルフ母「ええ♪」ニコニコ

マンボウ「なら、早く私の事を海に戻して下さい……」

マンボウ「私、早く海に帰りたいです……」

マンボウ「私なんか調べても、全くもって意味なんかありませんよ……」ウルウル

エルフ母「まぁまぁ、落ち着きなさい♪」

エルフ母「あんたの事、ちゃんと調べてあげるから♪」ニコニコ

マンボウ「……」ビクッ

エルフ母「漁師さん。私達は、これで失礼します」

エルフ母「そこに倒れてる水死体の処理、宜しくお願いしますね♪」

ザザーーン、ザザーーン……

地域によって、市場に出てる所はあるみたいですからね。
台湾では、よく食べられているみたいですが

自分は食べた事はないですが、美味しいみたいですね

漁師「ああ、了解した」

漁師「この水死体は、こっちで片付けとく」

漁師「しかし、あんた達も物好きだな」

漁師「そんなモンスター、持ち帰ってどうするんだい?」

漁師「それ持ち帰るくらいなら、市場で新鮮な魚を買っていった方が良いと思うんだが」

マンボウ「……」ウルウル

エルフ母「ええ、そうでしょうね」

エルフ母「普通は、その方が良いんでしょうけどね」

エルフ母「でも、この魚はかなり珍しいと思うんですよ!」

エルフ母「私の生まれ故郷には、こんな魚は全くいませんでした!」

エルフ母「それに、この魚は人間の言葉を話してる!」

エルフ母「だから、この魚を持ち帰って色々と調べる事にしたんですよ!」ニコニコ

漁師「ふ~~ん。そうか」

漁師「エルフの里には、こいつがいねぇのか」

漁師「なら、他にこいつが流れついた時には、あんたにすぐ引き渡すとするよ」

漁師「以前にも、たまにこいつが網に引っ掛かる時があるんだ」

漁師「皆、こいつを見てかなり不気味がってる」

漁師「今ここにいるこいつみたいに、人間の言葉を話す奴がいたみたいだからな」

エルフ母「ええ、分かりました」

エルフ母「その時は、漁師さんのお言葉に甘えさせて頂きます」

エルフ母「もし何かあれば、この近くにある宿屋にご連絡下さい」

エルフ母「今私達は、そこに宿泊をしておりますので」ペコッ

漁師「ああ、了解した」

マンボウ「……」ウルウル

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

漁師「さて、この水死体の処理をするか」

漁師「まずは、騎士団を呼ばないとな」

水死体「……」

ザザーーン、ザザーーン……

~とある漁港・水揚場~

漁師2「あんた、さすがにこれ無理だわ……」

漁師2「いきなり、こんな化け物持ち込まれても困るんだけど……」

マンボウ「……」

漁師2「こいつ、一体、どこで捕まえたんだい?……」

漁師2「残念だが、こいつを入れれる木桶はウチにはねぇよ……」

エルフ母「ああ、そうですか」

エルフ母「やっぱり、この子を入れる木桶はありませんか」ニコニコ

マンボウ「……」

漁師2「普通、こんな化け物好き好んで持って帰る奴なんて、なかなかいない……」

漁師2「本当に、あんたらエルフって変わってんだな……」

組合長「……」

マンボウ(あれから、さらに数十分……)

マンボウ(私は、エルフ達によって近くにある漁港にまで連れてこられた……)

マンボウ(その間、私にとってはかなりの生き地獄……)

マンボウ(ここに来て早々、地元の漁師さん達はすぐさま絶句しだす……)

マンボウ(それと同時に、かなり息苦しい……)

マンボウ(早く、私を海に戻してほしい……)

マンボウ(皆、私の事を奇怪な目でじっと見つめてきた……)

マンボウ(私の事を大層気味悪がっていた……)

マンボウ(でも、もう少ししたら、私は海に帰れる……)

マンボウ(私は、ようやく解放される……)

マンボウ(けど、今の私の視界の先にあるのは、地元の漁師さん達によって水揚げされた大量のお魚……)

マンボウ(その中に、さりげなく私の仲間まで紛れ込んでいる……)

マンボウ(ああ、早く海に戻りたい……)

マンボウ(そろそろ、呼吸が限界……)

マンボウ(お願い、神様……)

マンボウ(早く、私を海に戻して……)

マンボウ(お願い……お願い……)ウルウル

ザザーーン、ザザーーン……

組合長「それで、君はこれをどうするつもりかね?」

組合長「これ、本当にエルフの里まで持ち帰るつもりかね?」

マンボウ「……?」

エルフ母「ええ、そのつもりですけど」

エルフ母「うちの娘が、是非とも連れて帰りたいと聞かなくてですね」クイクイッ

エルフ「え?」

組合長「ほぅ、この子が……」

組合長「そりゃあ、大した度胸の持ち主だ……」チラッ

エルフ「……?」

組合長「でも、こいつはモンスターだぞ?」

組合長「お嬢ちゃん。いくら何でも無理があると思うんだがね」ニッコリ

エルフ「……」ハッ

エルフ母「ええ、そうなんですよ」

エルフ母「この子、一度言い出したら、なかなか聞かない子ですし」ニコニコ

エルフ「……」ギロッ

エルフ母「ですから、他にもこれと同じ様な魚が水揚げされていたら、私達に売って頂きたい」

エルフ母「そう思って、今日はこちらに伺ったと言う訳です」ニコニコ

組合長「う~~む」

漁師2「組合長。ここは、いっそ買い取って頂ければ?」

漁師2「この魚は、不気味でなかなか買い手がつきません」

漁師2「たとえ、水揚げしたとしてもすぐに腐り出します」

漁師2「せっかく、先方が買い取りたいとおっしゃっていますし」

漁師2「ここは、今日ある分だけでも買い取って貰うべきです!」

マンボウ「……」

組合長「漁師3、お前の意見は?」

組合長「お前も、同じ意見なのか?」

漁師3「はい!」

組合長「こいつは、見ての通りになかなか買い手のつかない魚だ」

組合長「なるべく、ここの領主様にはバレない様にしたいからな」

ザザーーン、ザザーーン……

組合長「なら、君達はいくら出す?」

組合長「こいつ一匹辺りに、いくら出すつもりかね?」

組合長「なるべく、ここの領主様にはバレない様にしたい!」

組合長「領主様からも、モンスターの死骸類は全て焼き捨てる様に言われてるからな!」

マンボウ「……」

エルフ「……お母様?」

エルフ母「大体、一匹辺り10000Gで」

エルフ母「領主様には、全て安全な場所でモンスターの死骸を処分して貰うとお伝え下さい」ニコニコ

組合長「ほぅ……」

領主2「なら、交渉は成立だな」

領主2「組合長。宜しいですか?」

組合長「うむ」

組合長「漁師3。これと似た様な魚を全て集めろ!」

組合長「漁師2は、騎士団に連絡!」

組合長「それと、他の漁師達も今日水揚げした魚を全て調べろ!」

組合長「この方達は、とても優良な顧客だ!」

組合長「さぁ、ぐずくずするな! 掛かれ!」

漁師達「お~~~~~~~~っ!」

ダダダダダダダダッ、ダダダダダダダダッ……

ダダダダダダダダッ、ダダダダダダダダッ……

マンボウ「……」

カチャカチャカチャ、カチャカチャカチャ……

カチャカチャカチャ、カチャカチャカチャ……

マンボウ「……」ガクッ

エルフ「あっ、マンボウが目を瞑った……」

エルフ「これって、もう死んじゃったのかしら?……」

エルフ母「え?」

組合長「お嬢ちゃん。ここに水揚げされた魚はもう既に死んでる」

組合長「いくらこいつが化け物でも、皆、最終的には死んでしまうんだよ」

ザザーーン、ザザーーン……

瞼はあります。
しかも、左右に動きます。

エルフ「へぇ~っ、そうなんだ……」

エルフ「モンスターでも、最終的には皆死んじゃうんだ……」

エルフ「でも、今から蘇生したらまだ間に合うかな?」

エルフ「私、このマンボウでまだ遊んでないんだけど」

エルフ「今から、蘇生したら間に合うと思う?」

組合長「う~~む」

エルフ「ねぇ、お母様。一度裁いた魚は、蘇生する事は可能かしら?」

エルフ「私、蘇生出来るんなら蘇生させてあげたい」

エルフ「私、このマンボウでまだ遊んでない」

組合長「……」

エルフ母「う~~ん。分からないわ」

エルフ母「だって私、今までに魚なんて蘇生した事は一度もないんだもの」

組合長「いや、可能だ!」

組合長「たとえ、裁いた後で蘇生したとしても可能なんだが!」

エルフ母子「!?」

組合長「以前、私の父もこれと同じ魚を裁いた」

組合長「そしたら、そいつの体内からかなりの寄生虫らしき物が沢山出てきてな」

組合長「体中が寄生虫だらけで、すぐに焼き捨ててやったが」

エルフ母「組合長。以前、これと同じ魚を裁いた事があるんですか?」

エルフ母「骨格とか、どんな感じでしたか?」クイクイッ

マンボウ「……」

組合長「骨格? そりゃあ、普通の魚とは少し違った」

組合長「こいつは、他の魚と違って尾びれと腹びれがない」

組合長「背びれと尻びれを使って、海をゆっくり泳いでるようなんだ」

エルフ母「他に、特徴とかは?」

エルフ母「この魚は、食べられるんでしょうか?」

マンボウ「……」

組合長「いや、止めとけ!」

組合長「さすがに、寄生虫が多いから止めといた方が良い!」

ザザーーン、ザザーーン……

組合長「まぁ、どうしても食いたいんだったら専門の調理師にでも頼め!」

組合長「こいつは、体の3分の1は寄生虫に犯されてる!」

組合長「鮮度が落ちれば、臭みが出てかなり不味い!」

組合長「私の父も、それが原因で腹を壊した!」

組合長「こいつを裁いて食うのなら、それなりの専門知識等がいるみたいだからな!」

マンボウ「……」

エルフ母「はい。分かりました」

エルフ母「さすがに、食べるのは止めといた方が良いみたいですね」

組合長「……」

エルフ母「でも、何でこの魚はそんなにも寄生虫まみれなんでしょうか?」

エルフ母「普通は、寄生虫に犯される魚はなかなかいないと思うんですが」

組合長「さぁ、解らんね」

エルフ「ねぇ、組合長さん……」

エルフ「なんか、向こうにもとても不気味な魚がいるんだけど……」

エルフ「あれ、もしかして人間の手足らしき物がはみ出てない?……」

エルフ「さすがに、あれはあれでとても危ないとおもうんだけど」

サメ「……」

半魚人「……」

組合長「ああ、あれかい?」

組合長「あれは、今日水揚げされたばかりの魚だぞ」

組合長「あそこの手足生えてないのが、普通のサメだ」

組合長「どうやら、水揚げされる前に人を食ってたらしくてな」

組合長「網に掛かった時、ついでに半魚人も一緒に捕まえたんだ」

エルフ「……」

組合長「ちなみに、蘇生させるんならあのサメは止めとけ」

組合長「下手したら、お嬢ちゃんまであのサメの餌食になる」

組合長「お嬢ちゃん。まだ小さいのにあのサメに食われたいのか?」

組合長「あいつは、かなり見た目からして狂暴だ!」

組合長「だから、もし仮に蘇生させるんなら、せめてペットくらいにしとくんだな」

ザザーーン、ザザーーン……

「組合長。集計終わりました!」

「今現在、モンスターらしき魚は計10匹!」

「その内、持ち込まれた魚と全く同じ魚は計三匹います!」

組合長「……」

「組合長。この半魚人は如何致しますか?」

「この半魚人達も、引き取って頂きますか?」

組合長「うむ。そうだな!」

組合長「奥さん。あの半魚人達も引き取ってくれないか?」

エルフ母「え?」

エルフ「お母様。あの半魚人達も買い取っておこうよ?」

エルフ「あの半魚人、何かあの魚の事で知ってるはず」

エルフ「後で、お母様の好きにして良いからさ」

エルフ母「ええ、分かりました」

エルフ母「あの半魚人達も、一緒に買い取らせて頂きます」

エルフ母「後、お支払についてですが、全部で10万Gで宜しいですか?」

エルフ母「この子も、かなり喜んでいるみたいですし」

エルフ母「あの魚達を入れる木箱とかも頂きたいのですが」ニコニコ

組合長「ああ、構わんが」

「組合長。これ、いつ出荷ですか?」

「まだ出荷出来ないのなら、冷凍保存しなくちゃいけませんが」

エルフ母「……冷凍保存?」

組合長「奥さん。あんた出立はいつだ?」

組合長「いつ、ここを出るんだ?」

エルフ母「え? 明日ですけど」

組合長「なら、これは冷凍保存が必要だな」

組合長「あんたらは知ってるかどうか知らないが、今は遠くの町や村までに出荷する魚を全て氷付けにしてる」

組合長「そのおかげで、他の町や村にまでここで取れた魚は出荷されてるんだ」

組合長「明日の朝、また再びあんたらはここに来てくれ」

組合長「それまでは、ウチで預かっておく」

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ母「ええ、分かりました」

エルフ母「それでは、お支払の方に入りましょう」

エルフ母「娘。ちょっと、ここで待っててね」

エルフ母「私は、向こうでお支払をしてくるから」

エルフ「は~~い」

マンボウ「……」

組合長「では、奥さんはこっちへ」

組合長「皆の邪魔にならない様に、ちゃんと大人しくしとくんだよ」

エルフ「……」コクン

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

エルフ「……」

エルフ「ねぇ、マンボウ。まだ生きてる?」

エルフ「それとも、本当にもう死んじゃってる?」チラッ

マンボウ「……」

エルフ「その様子だと、本当にもう死んでしまっているみたいね」

エルフ「結局、海に帰る事が出来ずに捌かれちゃうんだ」

マンボウ「……」

エルフ「それで、あんた本当に何者なの?」

エルフ「なんか、勝手に自己再生とか始めちゃってるけど」

マンボウ「……」

エルフ「もしかして、マンボウの中に住む寄生虫がそもそもの原因?」

エルフ「それが原因で、今のあんたは自己再生とか始めちゃってる訳?」

マンボウ「……」ピクッ

エルフ「あっ、今反応した……」

エルフ「あんた、まさか本当に生き返っちゃったとか?……」

マンボウ「……」

エルフ「でも、それもすぐに終わり!」

エルフ「今から、あんたは冷凍保存されるんだからね!」

ザザーーン、ザザーーン……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、ピタッ……

漁師2「お嬢ちゃん。そろそろ、これも持ってくね」

漁師2「明日の朝、またこいつと会えるから」

マンボウ「……」

エルフ「うん。分かった」

エルフ「おじさん達、この子の事お願いね」

マンボウ「……」

漁師2「それで、君のお母さんは?」

漁師2「もしかして、向こうにある小屋の中に入っていったのかい?」

エルフ「うん。そうだけど」

漁師3「じゃあ、これはこっちで持ってくな」

漁師3「お嬢ちゃん。もう暫くここで大人しくしとくんだよ」

エルフ「は~~い」

漁師2「漁師3。今日は俺が浮かす」

漁師2「こいつ、体の内外が寄生虫ばかりだから、あんま触りたくないからな」

漁師3「ああ、了解した」

スッ、フワッ……

フワワッ、フワワッ……

マンボウ「……」

フワワッ、フワワッ……

フワワッ、フワワッ……

エルフ「……」

漁師2「よし、そこで良い!」

漁師2「今から、氷魔法を使う!」

漁師2「漁師4。早速、こいつらを凍らせてくれ!」

漁師2「こいつが済んだら、次は半魚人だからな!」

漁師4「おう!」

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ(あの子、これからどうなるのかしら?)

エルフ(あのまま、本当にお母様に捌かれちゃうのかしら?)

漁師4「……」ブツブツ

エルフ(でも、ついさっきあの子の体からごく微量だけど生体反応を感知)

エルフ(あの子の体の内外にいる寄生虫達が、あの子の体を自己再生をし始めている)

漁師4「……」ブツブツ

エルフ(一体、何がどうなっているの?)

エルフ(あの子は、やっぱりモンスターなの?)

漁師4「はっ!」ボウッ

エルフ(けど、今の私には何も出来ない)

エルフ(あの子の事を、お母様が何かする前に焼いてあげるぐらいしか何も出来ない)

ゴオオオオッ、ゴオオオオッ……

エルフ(ああ、なんか憂鬱だわ……)

エルフ(お母様、早く戻ってこないかしら……)

ゴオオオオッ、ゴオオオオッ……

エルフ(と言うか、何で私があの子を欲しがっていると言う事になってんのよ!?)

エルフ(どっちかと言えば、お母様の方が私よりも欲しがっている癖に!)

ゴオオオオッ、ゴオオオオッ……

エルフ(気がついた時には、もう凍ってる……)

エルフ(あの子、まるで何かの彫刻みたい……)

ゴオオオオッ、シュン……

漁師4「漁師2。終わったぞ」

漁師4「今度は、木箱に押し込んでくれ」

漁師2「おう!」

エルフ(結局、今の私が子供だから、皆そう見えちゃうのね……)

エルフ(私、本当はあんな魚なんかほしくないのに……)

エルフ(一体、何でこうなったのかしら?)

エルフ(相変わらず、お母様は我が儘なんだから……)

エルフ(はぁ……)

ザザーーン、ザザーーン……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、ピタッ……

エルフ母「娘、おまたせ」

エルフ母「さぁ、もう宿屋に戻るわよ」

エルフ「え?」ビクッ

エルフ母「ん? どうかしたの?」

エルフ母「あんた、何ぼーっとしてんのよ?」

エルフ「……」

エルフ母「もしかして、はしゃぎすりちゃった?」

エルフ母「そりゃあ、あんな大物持って帰るんだから、はしゃぎ過ぎるのも無理はないわね」ニッコリ

エルフ「……」

クルッ……

エルフ母「それじゃあ、私達はこれで」

エルフ母「色々と、ご迷惑をお掛けして本当に申し訳ありませんでした」ペコッ

エルフ「……」ペコッ

組合長「はははっ、そんな事はないぞ!」

組合長「こっちも、色々と儲けさせて頂いたからな!」ニコニコ

組合長「お嬢ちゃん。明日の朝、またここに取りにおいで」

組合長「奥さん。また機会があれば、ウチを宜しくお願いします」

組合長「ウチは、よく新鮮な魚が取れるもんでね」

組合長「その時は、また宜しくお願いしますよ」ニコニコ

エルフ母「はい。分かりました」ニコニコ

エルフ「……」ペコッ

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

組合長「ふふっ、今日は久し振りに皆で飲みに行くか」

組合長「あの奥さん。やけに羽振りが良かったし」

組合長「ありゃあ、どっかの金持ちのお嬢さんみたいだな」ニヤニヤ

ザザーーン、ザザーーン……

漁師4「組合長。いくら儲かりました?」

漁師4「あの奥さん。一体、いくら出したんです?」ニヤニヤ

マンボウ「……」カチコチッ

組合長「お前、そんなに気になるか?」

組合長「まだ、作業の途中だろ」

組合長「さっさと、他の魚も氷漬けにしろよ」ニヤニヤ

漁師4「でも、あの奥さんは羽振りが良かったんでしょ?」

漁師4「普通、あんな化け物なんかに大金なんか出しませんよ」ニヤニヤ

漁師3「ああ、そうだな」ニヤニヤ

漁師4「俺の予想だと、化け物10匹で10万越えてますよね?」

漁師4「箱台入れても、かなり値段が張ってると思うんですが」ニヤニヤ

漁師2「……」ニヤニヤ

組合長「ああ、全部で11万Gだ」

組合長「しかも、箱に関しても高値で買って頂いた」ニヤニヤ

漁師達「!?」

組合長「とりあえず、今日は皆で飲みに行くぞ!」

組合長「さっさと、お前らも作業終わらせろ!」ニヤニヤ

漁師「はっ!」ニヤニヤ

組合長「それと、騎士団にはちゃんと連絡したか?」

組合長「つうか、まだ誰も連絡すらしてはいないみたいだな」ニヤニヤ

漁師4「ええ、その様です」ニヤニヤ

組合長「漁師2。今度こそ、ちゃんと騎士団に連絡して来い!」

組合長「じゃないと、騎士団から変な探りを入れられちまうぞ!」ニヤニヤ

漁師2「はい。すいません!」ニヤニヤ

組合長「さぁ、皆、サボってないでさっさとやれや!」

組合長「ちゃんと、給金も倍にしてやる!」

組合長「皆、あの奥さん達に感謝しろよ!」

組合長「あの奥さん達がここに来なかったら、無駄なコストばかり掛かってたんだからな!」

漁師達「はっ!」

ザザーーン、ザザーーン……

~とある酒場~

その日の夜――

ガヤガヤガヤッ、ガヤガヤガヤッ……

ガヤガヤガヤッ、ガヤガヤガヤッ……

老剣士(何か、今日は騒がしいな……)

老剣士(一体、何があった……)

老剣士(ああ、もう酒は無くなっちまった)

老剣士(おまけに、もうつまみすらない)

老剣士(それに、今夜はどこに泊まるか?)

老剣士(今の俺には、宿屋に泊まるだけの金すらない)

老剣士(相変わらず、室内が騒がしい)

老剣士(一体、何を騒いどるのだ?)

漁師「組合長。本当に、今日は儲かりましたね」

漁師「あの奥さん。一体、何者なんですか?」

老剣士「……」

組合長「さぁ、何も知らんな」

組合長「ありゃあ、どっかの金持ちのお嬢さんか何かじゃないか?」

老剣士「……」

漁師「でも、あの水死体は誰なんでしょう?」

漁師「騎士団の話じゃ、この島の人間じゃありません」

漁師「どうやら、騎士団はウチが水揚げしたサメと関係があると見ています」

漁師「あの奥さん。その水死体も発見してますしね」

漁師「まぁ、そのおかげでウチも儲かったって言う話なんですが」

老剣士「……」

漁師2「お前、あの奥さんと会った事があるのか?」

漁師2「俺達が会ったのは、若い子連れのエルフだったんだが」

老剣士「!?」

漁師「ああ、あるさ」

漁師「俺が船で砂浜に乗り上げた時に、ちょっとな」

漁師「ここいらでは全く見ない、とても美人でナイスバディな奥さんだった」

組合長「ああ、そうだな!」

組合長「あの奥さん。本当に、どっかの金持ちかもな!」

組合長「そのおかげで、今の俺達は儲かったんだ!」

組合長「だから、今日はとことん飲むぞ!」

漁師達「お――――っ!」

老剣士「……」

老剣士(あいつら、地元の漁師達か)

老剣士(今の俺と違って、本当に景気が良いな)

老剣士(なら、少しくらい俺に分けてくれたって良いと思う)

老剣士(こっちは、ずっと苦労してきたんだ)

老剣士(それくらいしたって、別に良いだろう)

老剣士(あの奥さん達、大層な金持ちの様だからな)ニヤッ

老剣士(しかし、これからどうする?)

老剣士(エルフを狙うか、漁師達の金を狙うか)

老剣士(だが、今の漁師達は酔ってる)

老剣士(こりゃあ、漁師達の方が狙った方が良いかもしれないな)ニヤニヤ

スッ、コトッ……

店主「おやっ、起きたのかい?」

老剣士「ママ、会計はいくらだ?」

老剣士「今日は、もう良い」ムクッ

店主「ええっと、ちょっと待ってね」

店員「お客さん。全部で1000Gです」

店員「もう二時間も、カウンターで眠ってらっしゃいましたよ」

老剣士「うむ。そうか」ポリポリ

組合長「ママ、ワインの追加頼む!」

組合長「それと、スープとジャーキーも全員分な!」

店主「はい。かしこまりました!」

スッ、ジャラジャラッ……

ジャラジャラッ、コトッ……

店員「はい。確かに」

店員「お客さん。一人で帰られますか?」

店員「よければ、私が宿屋にまでお送り致しますが」

老剣士「いや、構わん」フラフラッ

店員「けど、今のお客さんはふらふらですよ」

店員「まだ、ゆっくりしといた方が良いんでは」

店主「ええ、そうね」

老剣士「いや、何も心配はいらんよ」

老剣士「俺は、まだまだ大丈夫だよ」

老剣士「後、少し聞いて良いか?」

老剣士「あそこの漁師さん達、地元の人達か?」フラフラッ

店員「ええ、そうですよ」

店主「それが何か?」

老剣士「いや、特には」

老剣士「このご時世、やけに景気が良かったからな」フラフラッ

店主「……」

老剣士「ママ。お手数を掛けたな」

老剣士「また、ここ利用させて貰う」フラフラッ

スッ、スチャ……

スタスタスタッ、フラフラフラッ……

スタスタスタッ、フラフラフラッ……

ピタッ、フララッ

老剣士「おっと」

ガチャ、ギギィーーーーッ……

スタスタスタッ、バタン……

店主「店員。あそこの漁師さん達にワインを」

店主「私は、騎士団本部にまで行ってくる」

店主「あのお客さん。かなり怪しかったし」

店主「ありゃあ、どっか盗みに入るはね」

店員「はい。かしこまりました」

スッ、カチャカチャ……

「あれ、ママどっか行くの?」

「俺達のワイン、まだ?」

店主「はい。ただいま」

店員「店員2、漁師さん達にワインを」

店員「今、私がつまみを作ってくるから、先にワインを持ってって」

店員2「は~~い」

「後、追加でニシンとイワシ焼いて」

「今日、ママがウチの魚を仕入れてくれてたから」

「それに、今日は色々と儲かってな」

「なんたって、物凄く珍しく組合長の奢りだからよ!」

店員「え!?」ビクッ

店員2「そうなんですか!?」キョトン

店主「あんた達、何も聞いてなかったの?」

店主「今日は、組合長さんの奢りなのよ」

店員達「……」

店主「漁師さん。少し、私は店を空けるわ」

店主「さっき出ていったお客さんがやけに酔っててね」

店主「ちょっと心配になって、すぐそこまで見てくるから」

兵士長「なら、俺も付いていくよ」

兵士長「あの爺さん。やけに酔っていたからな」

店主「ええ、お願いするわ」

店員「ママ、行ってらっしゃい」

店員「店の事は、私達に任せて下さい」

店員「ええ、了解したわ」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、ピタッ……

ガチャ、ギギィーーーーッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

バタン……

~とある道~

兵士「おい、爺さん。大丈夫か?」

兵士「このまま、一人で帰れるのか?」

老剣士「ああ、大丈夫だ」フラフラッ

兵士「その割りには、結構フラフラだな」

兵士「本当に、一人で大丈夫なのか?」

老剣士「ああ、まあな」フラフラッ

兵士「それで、あんた宿はどこだ?」

兵士「仕方ねぇから、宿屋にまで送ってってやる」

老剣士「何?」

兵士「あんた、ここの住民じゃねぇだろ?」

兵士「この町に来た賞金稼ぎか何かなんだろ?」

老剣士「ああ、そうだが」フラフラッ

兵士「それで、あんたの宿は?」

兵士「こっから、遠いのか?」

老剣士「ああ、まあな」フラフラッ

兵士「爺さん。早く教えろよ」

兵士「そうじゃなきゃ、こっちが困るんだが」

老剣士「……」

「おいっ、どうかしたのか?」

「何か、事件でもあったのか?」

兵士「む? 誰だ?」

老剣士「……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ

ピタッ、ピタッ……

兵士長「兵士、どうした?」

兵士長「何か、事件でもあったのか?」

老剣士「……」フラフラッ

兵士「失礼しました兵士長」

兵士「この爺さんが、かなり酔ってましてね」

兵士「なかなか、自分の宿を言おうとしないんです」

兵士長「あんた、さっき酒場にいたな?」

兵士長「自分で、宿屋にまで戻れるのか?」

老剣士「ああ、大丈夫だが」フラフラッ

兵士長「一応、あんたの身元だけでも確認させて貰う」

兵士長「あんたは、この町の人間じゃない」

兵士長「その持っている剣とかも、一応は調べさせて貰う」

スッ、シュルシュル……

カチャ、カチャ……

老剣士「ほれ」スッ

兵士長「……」ガシッ

兵士長「……」

スチャ、スラァン……

兵士長「あんた、これちゃんと手入れしろよ……」

兵士長「結構、錆びちまってるぞ……」

兵士「……」

兵士長「つうか、何やったらこうなるんだ?……」

兵士長「普通、ここまで錆びてたら、かなり使いにくいと思うんだが……」

兵士「ええ、そうですね……」

老剣士「まぁ、その剣は護身用みたいな物だ」

老剣士「明日の朝、武器屋に出す代物だ」

兵士長「……」

老剣士「そこに、俺の身分書いてないか?」

老剣士「俺にとっては、これが身分証の様な物だ」

兵士長「ふむ、どれどれ……」ジーーッ

兵士長「すまん。錆び過ぎて読めん……」

兵士長「これ、なんて書いてあるんだ?」

兵士「……」

老剣士「む? 読めんか」

老剣士「なら、こっちの紙を渡そう」

スッ、パサッ……

兵士長「爺さん。最初から、それ出せよ……」

兵士長「見た所、傭兵登録証みたいだな……」

老剣士「……」

兵士長「ええっと、あんたの名前はXXX」

兵士長「生まれは、XX地方のXX村か」

老剣士「ああ、そうじゃが」

兵士長「なぁ、爺さん。ちょっと良いか?」

兵士長「あんた、何でこんな遠くにまで来たんだ?」

兵士長「この町、見た通りのただの平凡とした町だ」

兵士長「ここでは、あんたの仕事はない」

兵士長「もし仮に、今のあんたが仕事を探してるんなら、もっと大きな町まで行った方が良いぞ」

店主「ええ、そうね」

老剣士「いや、そうではないんだ」

老剣士「この町には、とても珍しい魚が打ち上げられたと聞いて、それを見に来たんだが」

兵士長「……?」

兵士「ああ、ここ数日の間に打ち上げられてたモンスターの事か」

兵士「あれなら、もう既にそれ専門の人に引き渡したぞ」

老剣士「!?」ガーーン

兵士長「あんた、もしかしてそれを見に来たのか?」

兵士長「あれなら、もう既に処分される事になった」

老剣士「……」ガクッ

兵士長「偶々、この町にエルフの里からの来客があってな」

兵士長「向こうでの研究目的として、全て引き渡したんだが」

店主「あら、まぁ……」

店主「じゃあ、もう既にそのお魚はないと?」

店主「せっかく、こうして遠くからいらしてたのに」

老剣士「……」

兵士長「まぁ、そう言う事だ」

兵士長「だから、もう諦めて生まれ故郷に帰るんだな」

老剣士「……」

兵士長「おい、兵士。この爺さんを宿まで」

兵士長「早く、宿の場所を聞いて送って来い」

兵士「はっ!」

兵士長「それで、あんたの宿は?」

兵士長「まさか、まだ宿を決めてないとか?」

店主「……」

老剣士「いや、もう決めてあるが」

老剣士「この近くにあるXXXXと言う宿だ」

兵士長「うむ、そうか」

兵士「なら、俺が送ってってやる」

兵士「俺の後を、しっかりとついてきてくれ」

老剣士「ああ、了解した」

兵士「では、兵士長、失礼します」

兵士「ママも、夜道は気を付けて」

店主「ええ、おやすみなさい」

老剣士「……」

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

店主「あのお客さん、どうやら酔いが覚めたみたいね」

店主「ついさっきと比べて、足取りがしっかりとしているわ」

兵士長「ああ、そうだな」

店主「とりあえず、私達も戻りましょ」

店主「一応、部下に命じて警戒だけはさせといてね」

兵士「ああ、了解した」

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スッ、スタッ……

老剣士(うむ。上手く行った……)

老剣士(後は、漁師達の金を頂くだけだな……)

ダッ……

~とある漁港・保管倉庫~

マンボウ「……」

マンボウ2「……」

マンボウ3「……」

マンボウ4「……」

ザザーーン、ザザーーン……

半魚人「……」

サメ「……」

マグロ「……」

クラーケンA「……」

クラーケンB「……」

老剣士「……」

老剣士(何やら、ここにはモンスター達ばかりいるな……)

老剣士(これらが、ここ数日の間に打ち上げられていたモンスター達か……)

モンスター達「……」

老剣士(これだけでも、かなりの値が張る)

老剣士(とくに、この二体のクラーケン)

老剣士(イカとタコを、二つも揃えてたか……)

老剣士(しかし、これらをどう運ぶ?)

老剣士(あのエルフ達は、一体どうやってこれらを運ぶと言うのだ?)

老剣士(それに、この不思議な形をした魚)

老剣士(やけに、妙な造形をしているな)

老剣士(この魚は、誰がどう見てもモンスターで間違いない)

老剣士(それを四匹も集めるとは、本当に大した腕だ……)

「お前さん。ここに、何しに来た?」

「まさか、ここに盗みにでも来たと言うのか?」

老剣士「!?」ビクッ

「それなら、少し私に手を貸してほしい」

「今の私は、早いとこここを出たいからな」

老剣士「……」キョロキョロ

老剣士「お主、一体何者だ?」

老剣士「誰か、ここにいるのか?」

「ああ、そうじゃ」

老剣士「なら、俺の前に姿を現せ」

老剣士「それくらい、そなたにも出来るだろ」

ザザーーン、ザザーーン……

「ああ、分かった」

「今そっちに行く」

「それと、久しぶりじゃなXXX」

「こうして、そなたと会うのは何年ぶりじゃったかな」

スッ、スタッ……

老剣士「!?」ハッ

老剣士「……」

老騎士「……」

老剣士「……」

老騎士「……」

老剣士「あんた、何でここに?」

老剣士「一体、何故こんな場所にいるのだ?」

老騎士「久しぶりじゃのぅ、XXX」

老騎士「相変わらず、お主は盗みを働いておるか」

老剣士「……」

老騎士「そなたの狙いは、ここの魚か?」

老騎士「それとも、事務室の金庫の中にある現金なのか?」

老剣士「……」

老騎士「だが、ここで盗みを働くのなら止めておけ!」

老騎士「ここは、とても一人で盗みに入れる様な場所ではない!」

老騎士「ここは、私の部下が何名も命を落とした場所じゃ!」

老騎士「昨日も、サメに食われてまた一人部下を失ってしまった!」

老騎士「おまけに、今の私もこの通り老いてのぅ!」

老騎士「だから、こうして今のそなたに手を貸してほしいのじゃ!」

老剣士「……」

老騎士「……」

老剣士「……」

老騎士「それで、返事は?」

老騎士「今のそなたは、私の事を手助けしてくれるのか?」

ザザーーン、ザザーーン……

老剣士「ああ、了解した」

老剣士「さすがに、この量だと俺一人では確実に無理だ」

老騎士「……」

老剣士「だが、今の俺はまだ納得はしていない……」

老剣士「一体、あんたの身に何があった?……」

老剣士「何故、あんたまで俺の様な盗賊まがいの事をする様になってしまったのだ?……」

老剣士「……」

老騎士「……」

老剣士「……」

老騎士「……」

老剣士「そんなに、言いたくはないのか?」

老剣士「あんた、まだ仮にも騎士の端くれだろ?」

老騎士「XXX、今はその話はなしじゃ!」

老騎士「まずは、ここを出なくてはならない!」

老剣士「……」

老騎士「ここは、さっきも言った通りに危険な場所じゃ!」

老騎士「そなたこそ、まだこんな所では決して死にたくはないじゃろう?」

老剣士「ああ、まあな……」

老騎士「とりあえず、そこに保管されているマンボウを使おう!」

老騎士「そいつは、以前私が海で遭難した時も役に立った!」

老騎士「それを使って、海に出るぞ!」

老騎士「XXX。さぁ、お前も木箱の中にある不思議な魚を取り出すんじゃ!」

老騎士「この際、そのマンボウ二匹を奪って行くぞ!」

老剣士「ああ、了解した」

スッ、カチャカチャ……

カチャカチャ、カチャカチャ……

老剣士「……」

老騎士「……」

ストン、ストン……

ザザーーン、ザザーーン……

老騎士「XXX。そなた、魔法は使えるか?」

老騎士「もし仮に、そなたが魔法を使えるのなら、この二匹のマンボウを浮かしてはくれんか?」

マンボウ「……」

老剣士「浮かす?」

老剣士「それは、どう言う事だ?」

老剣士「これ、そんなにも重かったのか?」

老騎士「ああ、そうじゃ!」

老騎士「こいつは、かなり重いのじゃ!」

老騎士「それが原因で、私や私の部下は腰を痛めた!」

老騎士「軽く、こいつの重さは2t近くある」

老剣士「!?」

マンボウ「……」

老剣士「ああ、了解した」

老剣士「少しばかり、俺も魔法は使える」

老剣士「だが、そんなに長くは使えないぞ」

老剣士「俺の魔法は、つい最近になって会得出来た」

老剣士「だから、そんなに長くは使えないのだ」

老騎士「……」

老騎士「うむ。分かった!」

老騎士「XXX。早速、浮かしてくれ!」

老騎士「ちなみに、ここの金庫の中にあった金は私が回収した!」

老騎士「後で、そなたにもしっかりと分けてやる!」

老騎士「だから、早めにここから出ていくぞ!」

老剣士「ああ、了解した」

老剣士「……」ブツブツ

老剣士「……」ブツブツ

老剣士「はっ!」ビシッ

マンボウ「……」フワッ

フワワッ、フワワッ……

ザザーーン、ザザーーン……

老騎士「XXX。それを海にまで運べ!」

老騎士「なるべく、早くにな!」

老剣士「ああ、分かってる!」

マンボウ「……」

老騎士「しかし、神も時には残酷な事をするな……」

老騎士「まさか、ここでそなたと再び巡り会わせるとは……」

老剣士「騎士XX。それは、こっちのセリフだよ」

老剣士「何で、あんたとこんな場所で再会をするんだか」

老騎士「……」

老剣士「それで、こいつを海に落とせば良いんだな?」

老剣士「と言うか、こいつは本当に役立つのか?」

マンボウ「……」

老騎士「ああ、そうじゃよ!」

老騎士「こいつは、海で遭難をした時には本当に役立つのじゃぞ!」

老騎士「そなたは、海で遭難をした事はないか?」

老騎士「私は、ついこの間海で遭難した!」

老騎士「その時、本当にこいつにはお世話になった!」

マンボウ「……」

老剣士「けど、今の俺にはこんな奴は価値はないな!」

老剣士「こいつは、本当にただのモンスターだ!」

老剣士「今まで、大勢のモンスターを見てきたが、こいつ程不気味な姿をした魚はいない!」

老剣士「あんたも、こんな不気味な魚を買い被るのは止めろ!」

老剣士「所詮、モンスターはモンスター!」

老剣士「それ以上でも、それ以下でもない!」

老騎士「XXX。そなたは相変わらず石頭じゃな!」

老騎士「後で、本当に泣きを見ても知らんぞ!」

老騎士「そろそろ、そいつをここから出せ!」

老騎士「それが終わったら、今度は二匹目だ!」

老騎士「なるべく、早くにここから出すんじゃ!」

ザザーーン、ザザーーン……

老剣士「ああ、分かった分かった。すぐにしてやるよ」

老剣士「とりあえず、あんたはドアを開けてくれ」

老剣士「外に、誰もいないよな?」

老剣士「ついさっきから、ずっと大声出してしまってたけど大丈夫だろうか?」

老騎士「さぁ、解らんな」

老剣士「……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ガチャ、ギギィーーーーッ……

ダン、ピタッ……

老剣士「……」

老騎士「……」

マンボウ「……」

老騎士「XXX。誰もいないぞ!」

老騎士「さぁ、早くそいつを海に落としてくれ!」

老剣士「ああ、了解した!」

マンボウ「……」

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

シュン、ドボン……

老騎士「うむ。良くやった!」

マンボウ「……」シューーッ

マンボウ「……」プカプカッ

老騎士「XXX。この調子でもう一匹マンボウを出せ」

老騎士「それと、そなたに今回の分の取り分を渡しておこう」スッ

老騎士「ここに、10万G入ってる」

老騎士「どうやら、金庫の中には何故か10万Gしかなかった」

老騎士「これが、そなたに渡す取り分じゃ!」

ザザーーン、ザザーーン……

老剣士「騎士XX。本当に、金庫の中には10万Gしかなかったのか?」

老剣士「それだと、あんたの分の取り分がないじゃないか」

マンボウ「……」プカプカッ

老騎士「ああ、そうじゃよ!」

老騎士「今の私には、あそこに浮かぶマンボウがおる!」

老騎士「だから、そなたにはこの現金を渡しておこう!」

老剣士「ああ、了解した」

老剣士「なら、俺は陸路で戻るとする」

老剣士「その前に、その布袋に入った中身を見せろ」

老剣士「その中身は、本当に金貨なのだな?」

老騎士「ああ、そうじゃ!」

スッ、シュルシュル……

スッ、ジャラジャラ……

ジャラジャラ、ジャラジャラ……

老剣士「……うむ。確かに」

老騎士「とりあえず、私はあのマンボウを使って海を渡る!」

老騎士「私は、ついこの間から、この近くの島に私は居を構えた!」

老騎士「そなたが良ければ、そこまで案内してやるが、どう致す?」

老剣士「いや、それには及ばん」

老剣士「俺は、まだこの町でやる事がある」

老剣士「騎士XX。達者でな」

老剣士「いつか、また会おうぞ!」

老騎士「ああ、了解した!」

マンボウ「……」プカプカッ

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ダッ、ジャボン……

老騎士「……」

マンボウ「……」

ザザーーン、ザザーーン……

老剣士(騎士XX。行ったか……)

老剣士(まさか、再びこの様な場所で出会えるは……)

老剣士(それにしても、何故この様な事に……)

老剣士(俺には、全くその事についてが解らない……)

老剣士(とりあえず、ここの現金は頂いた)

老剣士(後は、分身がどう動いておるか)

シュピン……

老剣士(む? 分身からの連絡)

老剣士(我、本日の宿を取得なり)

老剣士(直ちに、指定された宿にまで帰還せよ……か)

老剣士(あ奴、本当に役に立つな……)

老剣士(こんな事なら、もう少し早くに魔法も覚えておくべきだった……)

老剣士(さて、我も宿に行くとするか……)

老剣士(今夜は、久しぶりに宿で眠れそうだからな……)

老剣士(しかし、やはり分からん……)

老剣士(一体、騎士XXは何を恐れておったのだ?……)

老剣士(ここは、ごくごく普通のただの漁港……)

老剣士(今まで、多くの場所で盗みも働いてきたが、ここも対して他と違わない様な気もするが……)

「おいっ、何故か保管庫のドアが開いているぞ!?」

「一体、何があった!?」

老剣士「!?」ハッ

「皆、周囲をよく調べろ!」

「まだ、侵入者はこの近くにいるかもしれない!」

老剣士(くっ、気づかれたか……)サッ

スッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

老剣士「……」

「おいっ、何故ここの室内には松明が灯ってる?」

「まさか、侵入者はここに盗みに入っていたのか?」

ザザーーン、ザザーーン……

「隊長。どう致しますか?」

「騎士団本部に、応援を要請致しましょうか?」

老剣士「……」

「いや、それには及ばん!」

「ここは、我らだけでも十分だ!」

老剣士「……」

「隊長。ですが、万が一の事がございます!」

「もしかしたら、酒場のママからの通報があった例の老人が、ここへと侵入!」

「我々の監視をすり抜け、ここに盗みに入った可能性があります!」

「もしそれが事実なら、我々の責任問題にもなりかねません!」

「我々は、完全に領主様から解雇されてしまうのですよ!」

老剣士「……」

「分隊長。そう焦るな!」

「奴は、まだこの漁港の中にいる!」

「それに、ここで盗みがあった事実を隠匿すれば良いだけの事!」

「そうすれば、領主様にもバレずに俺達も解雇されずに済む!」

「しかし!」

老剣士「……」

「隊長。被害総額が判明しました!」

「被害総額が、現金で10万G!」

「後、そこに保管されているマンボウが一匹盗まれております!」

老剣士「!?」ギクッ

「ん? たったそれだけか?」

「それ以外に、何も被害はなかったのか?」

「ええ、そうみたいです!」

「それ以外に、被害は全く出ておりません!」

老剣士「……」

「なら、早く被害にあった痕跡を全て消せ!」

「もう少しで、ここの漁師達が戻ってくる!」

ザザーーン、ザザーーン……

「隊長。一体、何をお考えなのですか?」

「そんな事をして、本当にバレないとお思いなのですか?」

老剣士「……」

「ああ、大丈夫だ!」

「だから、早く被害自体を無かった事にする!」

「だから、さっさと作業に取り掛かれ!」

「隊長。このマンボウを、今から増殖させます!」

「少し、時間が掛かりますが宜しいでしょうか?」

「ああ、構わんが!」

「なら、被害に遭った現金はどう致しますか?」

「これは、そのまま金庫に戻しておきましょうか?」

「ああ、頼む!」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、ピタッ……

「隊長。第二分隊、捜索完了!」

「付近に、侵入者の影なし!」

「第三分隊も、同じ模様です!」

老剣士「……」

「くそっ、この周囲にはいないのか?」

「奴は、一体どこに隠れたのだ?」

老剣士「……」

「なら、第四分隊と第五分隊は?」

「そこからは、まだ報告はないのか?」

「はい。その様です!」

「隊長。ここの室内の捜索はどうしますか?」

「一応、中身全てをひっくり返しましょうか?」

老剣士「!?」ビクッ

「いや、その必要はないな!」

「それだと、ここの漁師に勘づかれちまう!」

ザザーーン、ザザーーン……

「隊長。一応、漁師達を足止めしますか?」

「万が一の事を考え、足止めしとく必要があると思いますが」

老剣士「……」

「ああ、そうだな」

「それを、一応はしといた方が良さそうだ」

「後は、奪われたマンボウがいつ増殖出来るかだな」

シュッ、シューーーーッ……

シューーーーッ、シューーーーッ……

シューーーーッ、シューーーーッ……

老剣士「……」

「おっ、始まったか」

「やはり、魔法が使えるのは良いもんだ!」

シューーーーッ、シューーーーッ……

シューーーーッ、シューーーーッ……

シューーーーッ、シュン……

老剣士「……」

「隊長。完了しました!」

「マンボウの増殖完了です!」

「ん? 予定より、早かったな」

「これなら、足止めする必要はないな」

老剣士「……」

「隊長。第四、第五分隊を呼び戻しますか?」

「今、第四、第五分隊は海の方を捜索しています」

老剣士「!?」

「ああ、そうだな!」

「第四、第五分隊をすぐに呼び戻せ!」

「総員、速やかにこの場から撤収!」

「不審者捜索は、全て打ち切りとする!」

「はっ!」

ザザーーン、ザザーーン……

シュピン……

「隊長。第四分隊から通信です!」

「海上にて、不審者を発見! 指示を願う!」

老剣士「!?」

「うむ。現在地は?」

「まだ、不審者はこの近くにいるのか?」

「ええ、その様です!」

「第四分隊が、不審者一名を発見!」

「その不審者は、マンボウらしき物にしがみつきながら、海面をゆっくりと漂流!」

「小舟による包囲を敷いている状態です!」

「うむ。そうか」

老剣士(騎士XX……)

「隊長。如何致しますか?」

「その不審者、捕縛致しますか?」

老剣士「……」

「いや、ほっとけ!」

「どうせ、今回の被害自体が無かった事になるんだ!」

「だから、その不審者も捕縛する必要すらない!」

シュピン……

「隊長。第五分隊より通信!」

「第四分隊と共に、不審者を包囲中!」

「早急に、指示を願う!」

「ああ、またか……」

老剣士「……」

「魔術師。第四、第五分隊にこう伝えろ!」

「今回の被害自体は、全て揉み消した!」

「不審者を、そのまま見逃した上で駐屯地にまで帰還!」

「騎士団本部には、適当にごまかしとく!」

「だから、早急に帰還せよとな!」

ザザーーン、ザザーーン……

「はっ、了解致しました!」

「至急、第四、第五分隊に連絡を入れます!」

「うむ。よろしい!」

「隊長。この金、すぐに戻してきます!」

「後は、ここの松明を消して、ここを施錠するだけです!」

「ああ、了解した!」

「お前ら、早く出ろ!」

「ちゃんと、全ての松明も消しておけ!」

「はっ!」

老剣士「……」

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

シュッ、シュッ、シュッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

シュッ、シュッ、シュッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

シュッ、シュッ、シュッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

「ん? 何で、こんなに松明が多いんだ?」

「こんなに、ここの倉庫は広かったのか?」

老剣士「……」

「隊長。ここは、魔法による室内管理が施されている場所です!」

「その為、ここの松明も通常に比べてかなり多いのですよ!」

「ああ、そうなのか」

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ガチャ、ギギィーーーーッ……

ダン、カチャ……

カチャ、カチャ、カシャン……

ザザーーン、ザザーーン……

「隊長。施錠完了致しました!」

「後は、金庫の方です!」

「……」

シュピン……

「隊長。第四、第五分隊より通信!」

「これより、帰還するとの事です!」

「ああ、了解した」

「事務室の方は、どうなんだ?」

「いえ、まだです!」

「事務室の方は、今魔術師殿が向かっております!」

「ああ、そうか」

老剣士「……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、ピタッ……

「隊長。事務室の方も完了致しました!」

「後は、第四、第五分隊の帰還を待つだけです!」

老剣士「……」

シュピン……

「隊長。第六分隊より通信!」

「例の老人は、市内にある宿屋にて発見!」

「所持金の方も、僅か一泊分の現金のみ!」

「特に、変わった様子は見られない様です!」

「ああ、そうか」

「なら、例の老人は関係ないと言う事か?」

「あの老人、見た目からしてかなり怪しいらしいが」

「ええ、その様です」

「全く、あの老人は何をやってんだか……」

「てっきり、ここに盗みに来たと思っていたんだがな……」

ザザーーン、ザザーーン……

「魔術師。第四、第五分隊の位置は?」

「まだ、時間が掛かるのか?」

「はい」

「なら、第六から第九分隊は?」

「そろそろ、騎士団本部も勘づいてくるだろう」

老剣士「……?」

「隊長。どうします?」

「騎士団本部には、どう言い訳をしときましょうか?」

老剣士「……」

「そうだな……」

「適当に、上手くごまかしておく……」

「と言うか、今の俺は駐屯地にいる副隊長の方が心配だな……」

「副隊長。どうかされたのですか?」

「駐屯地に、一体何があるのですか?」

「……」

「魔術師殿。ここは、もう撤収しましょう!」

「各分隊も、すぐに撤収をするんだ!」

「はっ!」

「仕方ない。先に、戻るか……」

「各分隊も、すぐに撤収をしろ!」

「はっ!」

「魔術師。早く、撤収をするぞ!」

「総員、速やかに駐屯地にまで帰還だ!」

老剣士「……」

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ザザーーン、ザザーーン……

老剣士(あ奴等、俺に気づいてなかったのか?)

老剣士(それとも、敢えて知ってて無視していたのか?)

老剣士(まぁ良い……)

老剣士(俺に、気づいていないのならば、もう良い……)

老剣士(だが、ついうっかり金を回収し忘れた……)

老剣士(そればかりが、かなりの不覚だった……)ハァ……

老剣士(だが、どうする?)

老剣士(この場から、どうやって脱出をする?)

老剣士(あ奴等、ここの鍵を閉めていった)

老剣士(出入り口は、完全に封鎖されてしまっている)

老剣士(おまけに、室内は真っ暗)

老剣士(あまりにも暗すぎて、回りがよく見えない)

老剣士(しかし、ここの魚はどうなっているのだ?)

老剣士(今は、塩漬けでなく凍り漬けにして出荷しているのか?)

老剣士(保管している割には、魚が全く溶けていない)

老剣士(普通、魚を凍り漬けにしたとしても、ここまで凍るのか?)

老剣士(以前は、魚を塩漬けにしていたのだが……)

老剣士(本当に、時代は変わるものだな……)

シュピン……

老剣士(む? 分身からの通信?)

老剣士(宿屋に、兵士が所在確認に来た)

老剣士(外は、兵士が多数巡回中)

老剣士(周囲をよく警戒されたし……か)

老剣士(相変わらず、俺の分身は優秀なんだな)

老剣士(あっ、そう言えば俺も魔法使えたんだった……)

老剣士(転移魔法は、まだ使った事がなかったんだったな……)

老剣士(一か八か、転移魔法を使ってみるか?……)

老剣士(この暗さだと、回りがよく見えない……)

老剣士(まだ、あの騎士XXがここを恐れていた理由は掴めてない……)

ザザーーン、ザザーーン……

老剣士(いや、ここは早めに逃げた方が良いかもしれないな……)

老剣士(また、多数の兵士達がここに来るかもしれん……)

老剣士(その割には、今の俺はかなり優柔不断……)

老剣士(相変わらず、決断が遅い……)

老剣士(今の俺は、流浪の身のはずなのに……)

老剣士(はぁ……)

老剣士「……」

半魚人「……」

マンボウB「……」

マンボウC「……」

マンボウD「……」

マンボウE「……」

老剣士「……」

サメ「……」

マグロ「……」

クラーケンA「……」

クラーケンB「……」

老剣士「ふぅ……」

老剣士「とりあえず、宿屋にでも行くか……」

老剣士「ずっと、宿屋に分身を置いたまんまだったし……」

スッ、カチャ……

スラァン、カチャ……

老剣士「……」ブツブツ

老剣士「……」ブツブツ

老剣士「……」

老剣士「……」

老剣士「……」

老剣士「……」

シューーーーッ、シュン……

ザザーーン、ザザーーン……

~とある城門前~

翌朝――

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

「止まれ!」

ピタピタピタピタッ、ピタピタピタピタッ……

兵士「失礼。警備隊の者です」

兵士「荷台の中身を確認したいのですが」

兵士長「……」

スッ、スタッ……

従者A「ええ、構いませんよ」

従者A「少々、お待ち下さいませ」

従者A「おい、従者B。検問だ!」

従者A「従者C、従者D。荷台の方を開けてくれ!」

従者B「あいよ!」

スッ、スタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、パカッ……

スッ、スタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、パカッ……

従者C「従者A、終わったぞ!」

従者D「こっちもだ!」

従者A「ああ、了解した!」

従者A「兵士さん。荷台を開けました」

従者A「領主様からの許可証も、お見せ致しましょうか?」

兵士「ええ、お願い致します」

兵士長「兵士2~5、荷台を確認しろ!」

兵士長「他の残りは、そのまま他の通行人を調べるんだ!」

兵士達「はっ!」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタピタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタピタッ……

スッ、シュタッ……

兵士達「……」

従者A「兵士さん。これが許可証です」

従者A「積み荷は、昨日許可を取ったモンスターの死骸です」スッ

兵士「……」スッ

シュルシュル、パサッ……

兵士「……」

兵士「……うむ。確かに」

兵士長「それで、若いエルフの母子はどうした?」

兵士長「今、その荷台に乗っているのか?」

従者A「いえ、乗っていませんが」

兵士長「なら、その若い母子はどこに?」

兵士長「まだ、我々は姿を確認はしてないのだが」

兵士達「……」

従者A「奥様なら、すぐここに来られます」

従者A「今さっき、変な老人に絡まれましてね」

従者A「お嬢様と一緒に、それを撃退している最中です」

兵士長「は?」

従者A「まだ、少し時間が掛かるんじゃないですか?」

従者A「あの老人、かなりしぶとかったですから」

兵士長「それで、その老人の特徴は?」

兵士長「今、奥さんはどの辺にいるんだ?」

従者A「ええっと、ちょっと待って下さいね」チラッ

従者B「確か、市場の付近じゃないか?」

従者B「そこで、あの老人がやけにお嬢様に絡み出していたから」

従者A「あれっ、そうだったっけ?」

従者B「お前、ちゃんと見とけよ……」

従者B「あの老人、かなり怪しかったろ……」

従者A「ああ、そうだったな……」

兵士長「とりあえず、渋滞になるから門の外で待て!」

兵士長「兵士2~5、この馬車荷台を誘導するんだ!」

兵士達「はっ!」

兵士2「それじゃあ、今確認が終わった馬車は外へ出ろ!」

兵士2「馬車を外へ出し終わった後、誰か一人ここに残れ!」

従者A「あっ、はい……」

兵士2「ほらっ、さっさと出ろ!」

兵士2「後ろに、結構な列が出来始めているぞ!」

従者A「げっ!?」

従者B「従者A。さっさと乗れ!」

従者B「他の皆も、今から移動するぞ!」

従者D「ああ、了解した!」

スッ、パカッ……

パカパカッ、パカパカッ……

スッ、ギュッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

兵士「兵士長。馬車が移動しました」

兵士「他の者達も、そのまま通していきます」

兵士長「うむ。宜しい」

「兵士長。例のエルフと思われる親子がこちらに接近」

「例の老人に関しては、第七分隊が確保したそうです」

兵士長「……」

兵士「魔術師殿、了解した」

兵士「例の積み荷に関しても、異常はありませんでしたか?」

「ええ、全く」

兵士長「なら、奥さん達も速やかに通せ!」

兵士長「勿論、他の通行人達もな!」

兵士長「はっ!」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタピタッ……

エルフ「あの、すみません」

エルフ「つい先程、エルフの里の紋章が入った荷馬車二台がここに来ませんでしたか?」

エルフ「その荷台に、エルフの里に送るモンスターの死骸が積まれていたはずなんですが」

兵士長「ああ、今さっき来たぞ」

兵士長「おいっ、兵士。許可証を奥さんに返してやれ」

兵士「はっ!」

スッ、シュルシュル……

スッ、スッ……

エルフ「……」

エルフ母「それで、その荷馬車は今どこに?」

エルフ母「今はまだ、検査中か何かなのでしょうか?」

兵士「ええ、そうです」

エルフ母「ああ、そうなんですか」

エルフ母「やっぱり、あれを積んでいたら、すぐには通れませんからね」

エルフ「……」

兵士長「奥さん。一応、奥さん達の荷馬車を検査させて貰っている!」

兵士長「つい先日、とても怪しげな老人がこの町に忍び込んだ!」

兵士長「その為、いつもより検問を強化させて貰ってる!」

兵士長「だから、奥さん達もご協力願う!」

エルフ母「ええ、構いませんが」

シュピン……

「兵士長。駐屯地から入電!」

「例の老人の身柄は、第六分隊が確保した!」

「その老人と争っていたエルフ母子に関しては、そのまま速やかに帰郷させよ!」

「あの老人は、かなり手強い!」

「見掛けによらず、剣の腕だけは確かだった様だ!……との事です」

兵士長「……」

「兵士長。如何致しますか?」

「どの様に、駐屯地には返信致しましょうか?」

エルフ母「……」

兵士長「ああ、了解した!」

兵士長「エルフ母子は、これから速やかに帰郷させる!」

兵士長「駐屯地にも、そう伝えるんだ!」

「はっ! 了解致しました!」

「駐屯地には、そう伝えておきます!」

「それと、本当にあの荷馬車を外に出しても宜しかったのですか?」

「子供とは言え、二種類のクラーケン死体が混じっていたのですが……」

兵士長「ああ、構わん!」

兵士「何も、問題はないみたいですよ!」

「ああ、そうなんですか……」

「そのクラーケン、一体何に使われるんですか?」

エルフ母「……」

兵士長「許可証には、エルフの里での研究目的とある!」

兵士長「領主様からも、色々な許可が出た!」

兵士長「だから、何も心配はいらんぞ!」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタピタッ……

従者A「奥様。荷馬車の検査が終わりました!」

従者A「後は、出発をするだけです!」

兵士2「……」

エルフ母「あら、そうなの」

エルフ母「そろそろ、私達もおいとましましょうか?」

エルフ「……」コクン

兵士長「奥さん。お気を付けて!」

兵士長「お嬢ちゃんも、道中気を付けてな!」

エルフ「は~~い」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

兵士長「……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

兵士達「……」

スッ、シュタッ……

魔術師「……」

魔術師「……」

魔術師(あのエルフ、どこかで?)

魔術師(以前、どこかで見かけた様な?)

兵士長「……」

~とある生け簀~

マンボウ「……」

マンボウ「……」

マンボウ「……」

マンボウ「……」

ザザーーン、ザザーーン……

マンボウ「……」

マンボウ「……」

マンボウ「……」

マンボウ「……」

マンボウ「……」パチッ

マンボウ「……」シャキン

マンボウ「……」

マンボウ「……」

マンボウ「……」

マンボウ「……」

マンボウ「ここどこ?……」

マンボウ「何で私、こんな場所にいるの?……」

マンボウ「……」

マンボウ「……」

マンボウ「……」

マンボウ「……」

マンボウ「ああ、なんか懐かしい……」

マンボウ「ようやく、海に戻れた感じ……」

マンボウ「でも、ここは一体どこなのよ?」

マンボウ「何で私、こんな所に入れられてるの?」

小魚「……」スイスイ

マンボウ「ねぇ、そこのあなた……」

マンボウ「ここは、一体どこなの?……」

マンボウ「私、ちゃんと海に戻ってこれたの?……」

マンボウ「ちょっと、あなた何か言ってよ……」

マンボウ「ここ、一体どこの海なのよ……」

小魚「……」スイスイ

マンボウ「一体、ここはどこなの?……」

マンボウ「私、これからどうなっちゃうの?……」

ザザーーン、ザザーーン……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ……

マンボウ「……?」

「なんだ、もう起きちゃってたんだ」

「てっきり、まだ眠っちゃってると思ってたよ」ニッコリ

マンボウ「あなた、一体何者?……」

マンボウ「私の事、どうするつもりなの?……」

「!?」

マンボウ「お願い。あなたの目的を教えて……」

マンボウ「私は、どこにでもいるただのお魚なのよ……」

「……」

「……君、言葉話せるの?」

「なんだか、悪い夢を見ている様な気分だよ……」

マンボウ「……」

「ボクの名前は、XXXX」

「主に、この島で魔法使いをやってるんだ」ニッコリ

マンボウ「……」

魔法使い「それで、君の名前は?」

魔法使い「人間の言葉を話せるんだから、君にも名前くらいあるんだよね?」ニコニコ

マンボウ「……」

魔法使い「あれ? どうしたの?」

魔法使い「まさか、君には名前すらないの?」ニコニコ

マンボウ「ええ、そうよ」

魔法使い「じゃあ、普段は何て名乗ってるの?」

魔法使い「人間の言葉を話せるんだから、適当に名前くらいは名乗ってるんだよね?」ニコニコ

マンボウ「……マンボウ」

魔法使い「え?」

マンボウ「マンボウ。それが、私の種族の名前なのよ!」イラッ

ザザーーン、ザザーーン……

魔法使い「……マンボウ?」

魔法使い「君、変わった名前だね……」

マンボウ「……」

魔法使い「それ、今考えたの?」

魔法使い「それとも、君の種族の名前?」

マンボウ「ええ、そうよ……」

魔法使い「マンボウ……」

魔法使い「聞いた事ないなぁ……」

魔法使い「君、一体どこから来たの?……」

魔法使い「と言うか、正面から見たら君はかなり不細工……」

魔法使い「本当に、正面から見たら不細工な顔をしているね……」

マンボウ「……」ムカッ

魔法使い「まぁ、そんな事は置いといて、早速本題に入るとするよ」

魔法使い「君、性別はメスだよね?」

魔法使い「間違ってるのなら、すぐ謝るけど」

マンボウ「……ええ、そうだけど」

魔法使い「なら、今すぐここで卵産んで!」

魔法使い「その為に、ボクは君をここに連れてきたんだから!」ニッコリ

マンボウ「……ごめんなさい。もう一度言ってくれる?」

マンボウ「今、あなたは何て言ったの?……」

マンボウ「ついさっきの、私の聞き間違いかしら?……」

小魚「……」スイスイ

魔法使い「君に、今ここで卵を産んでほしい!」

魔法使い「その為に、ボクは君をここに呼んだんだよ!」ニコニコ

マンボウ「……」

魔法使い「……」ニコニコ

マンボウ「……」

魔法使い「それで、返事は?」

魔法使い「君は、ボクの為に卵を産んでくれるのかな?」ニコニコ

ザザーーン、ザザーーン……

マンボウ「あなた、それ本気で言ってるの!?」

マンボウ「と言うか、そんな事をしたら私死んじゃうでしょうが!」ムカムカッ

魔法使い「……」

マンボウ「一体、私の事をなんだと思っているの!?」

マンボウ「私、本当にただのお魚なのよ!」

マンボウ「だから、早くここから出して!」ムカムカッ

マンボウ「それで、ここは一体どこ!?」

マンボウ「私、早く海に帰りたいんだけど!」ムカムカッ

魔法使い「……」

マンボウ「私、早く海に戻りたい!」

マンボウ「こんな場所に閉じ込められているくらいなら、まだ死んだ方がマシよ!」

マンボウ「一体、何なのよ? この摩訶不思議な入れ物は!?」ムカムカッ

魔法使い「そんなに、君はここを出たいの?」

魔法使い「今はまだ、海に戻らない方が良いよ!」

マンボウ「何故!?」ムカムカッ

魔法使い「実は、君を捕獲する時にモンスターに襲われたんだ!」

魔法使い「君と一緒にいたお爺さんが、そのモンスターによって惨殺されちゃったんだ!」

マンボウ「!?」

魔法使い「だから、君はまだ海に戻らない方が良いよ!」

魔法使い「海では、未だにクラーケンニ体が暴れ回っているから!」

マンボウ「……」

魔法使い「それに加えて、サメやら半魚人やらが大量に発生!」

魔法使い「今、君が海に戻るのは、はっきり言って自殺行為!」

魔法使い「だから、ここでまだ大人しくしといた方が良いよ!」

マンボウ「……今の話、本当なの?」

マンボウ「本当に、まだ海に出ない方が良いの?」

魔法使い「うん。そうだけど」

マンボウ「なら、せめてここがどこだか教えて!」

マンボウ「それくらいなら、まだ良いでしょ?」

ザザーーン、ザザーーン……

魔法使い「そんなに、知りたいの?」

魔法使い「それを知った所で、今の君に何の得があるの?」

マンボウ「……」

魔法使い「君は、まだここからは出る事が出来ない!」

魔法使い「まだ、君に卵すら産んで貰ってないからね!」ニッコリ

マンボウ「……」

マンボウ「あなた、本当に何なのよ?……」

マンボウ「何で、そんなに卵産ませたいの?……」

魔法使い「……」ニコニコ

マンボウ「私、卵産んだら死んでしまうわよ……」

マンボウ「普通、魚は卵産んだら確実に死ぬんだけど……」

魔法使い「それが何?」ニコニコ

マンボウ「まさか、私をずっとここに?……」ハッ

マンボウ「あなた、絶対に私をここから出す気ないでしょ!?」アセアセッ

魔法使い「……あっ、バレた?」ニコニコ

マンボウ「私、まだ死にたくはない!」

マンボウ「まだ、海でゆったりと泳いでいたい!」アセアセッ

魔法使い「……」ニコニコ

魔法使い「残念だけど、それはまだ無理だね!」

魔法使い「君は、まだここから出る事は出来ないよ!」ニコニコ

マンボウ「……」

魔法使い「とりあえず、君は何も言わずに卵を産んで!」

魔法使い「それさえしてくれたら、君をすぐさま解放してあげるよ!」ニコニコ

マンボウ「……」ムカッ

マンボウ「でも、私はあなたなんかの為に卵を産みたくはないわ!」

マンボウ「第一、相手すらいないでしょ?」ムカムカッ

魔法使い「……あ」

マンボウ「だから、早く私を無条件で解放して!」

マンボウ「私は、本当にただただゆったりと泳いでいたいだけなんだから!」ムカムカッ

ザザーーン、ザザーーン……

魔法使い「……そんなに、嫌?」

魔法使い「ここで、卵を産むのはそんなに嫌?」

マンボウ「ええ、絶対に!」ムカムカッ

魔法使い「なら、君の仲間を捕まえてこようか?」

魔法使い「そしたら、君も卵を産んでくれると思うけど」

マンボウ「しつこい!」ムカッ

魔法使い「君、メスなんだよね?」

魔法使い「普通、メスなら卵くらいは産もうと思うんだけど」

魔法使い「何で、そんなに嫌がるの?」

マンボウ「……」ムカムカッ

魔法使い「君って、本当にメス?」

魔法使い「普通は、卵くらいは産みたいと思うはずなんだけどなぁ……」

マンボウ「……あなた、私の話ちゃんと聞いてた?」

マンボウ「さっきから、私が嫌だと言っている事を、何でそこまで強要しようとしてくる訳?」ムカムカッ

魔法使い「……」

マンボウ「私、卵なんて産みたくない!」

マンボウ「今すぐ、海に帰りたい!」

マンボウ「だから、早くここから出して!」ムカムカッ

魔法使い「ごめん。それ無理!」

魔法使い「何度も言うようだけど、それだけは絶対に無理なんだよ!」

魔法使い「今はまだ、海はかなり荒れてる!」

魔法使い「モンスターが、そこらじゅうにうようよいる!」

魔法使い「だから、絶対に止めといた方が良いって!」アセアセッ

マンボウ「……」ムカムカッ

マンボウ「あなた、それ本当なの?」

マンボウ「私からしてみたら、なんか嘘みたいな話に思えてくるんだけど?」

マンボウ「もしかして、あなたあの性悪エルフ達の仲間?」

マンボウ「そのエルフ達に言われて、私をここに閉じ込めている訳?」ムカムカッ

魔法使い「……は?」

ザザーーン、ザザーーン……

マンボウ「それで、あなたどうなのよ?」

マンボウ「あなたは、あの性悪エルフ達の仲間なの?」

魔法使い「……」

マンボウ「そう言えば、あの性悪エルフ達はどこに?」

マンボウ「なんか漁港に連れられた後、まるっきり姿を見てないんだけど」キョロキョロ

魔法使い「……」

魔法使い「……君、もしかして連れがいるの?」

魔法使い「今は、種族の垣根を越えてパーティーを組むのが、そんなに流行っているの?」

マンボウ「は?」

魔法使い「以前、ボクはあるパーティーをこの付近で見かけたんだ」

魔法使い「珍しく、エルフが人間と手を組んでいてね」

魔法使い「しかも、そのエルフが子供連れだったからね」

マンボウ「あなた、そのエルフどこで見かけた?……」

マンボウ「その子連れのエルフってのは、この私を捌こうとしたエルフ達なんだけど……」

魔法使い「え? そうなの?」

魔法使い「今日の昼、またここを訪れる予定なんだけど」

マンボウ「!?」ガーーン

魔法使い「……」ハッ

魔法使い「もしかして、まずかった?」

魔法使い「その様子だと、かなりまずいみたいだね」

マンボウ「ええ、そうね……」

魔法使い「まぁ、そう言う事だから、もう諦めなよ……」

魔法使い「君、ここからはもう逃げれないんだよ……」

マンボウ「……」ウルウル

魔法使い「とりあえず、そのエルフさん達に今から連絡を……」

魔法使い「ここ最近、魔法や魔術等が著しく進歩しててね……」

魔法使い「だから、君はもう逃げられない……」

魔法使い「あのエルフさん達にロックオンされたからには、絶対に逃げられないんだからね……」

マンボウ「……」ウルウル

ザザーーン、ザザーーン……

マンボウ(まずい、まずいわ……)

マンボウ(このままだと、本当に私捌かれちゃうわ……)

マンボウ(あのエルフ、まだ私の事を諦めてないのね……)

マンボウ(仲間に命じて、私をこんな場所に監禁するなんて……)ウルウル

魔法使い「……」

スッ、カシャン……

マンボウ(でも、こっからどう出るの?……)

マンボウ(何で、今の私はまだ生きているの?……)ウルウル

マンボウ(確か、あの時に死んだはず……)

マンボウ(あの漁港で、私は死んだはずなんだけど……)ウルウル

魔法使い「……」ブツブツ

魔法使い「……」ブツブツ

マンボウ(あっ、そうだ……)

マンボウ(このまま、ジャンプしてみたらどうなるのかしら?……)

マンボウ(そしたら、ここから出られるはず……)

マンボウ(ここは一つ、ジャンプでもしてみようかしら?……)ウルウル

魔法使い「……」ブツブツ

魔法使い「……」ブツブツ

マンボウ「ねぇ、そこのあなた……」

マンボウ「まだ、話中か何かかしら?……」ウルウル

魔法使い「……」ブツブツ

マンボウ「どうやら、まだ話中か何かみたいね……」

マンボウ「一体、あなた誰と話しているの?……」ウルウル

魔法使い「……」ブツブツ

マンボウ(まぁ、今はそんな事はどうでも良いか……)

マンボウ(ここから、脱出出来たらそれで良いんだから……)

マンボウ(まずは、私がジャンプする……)

マンボウ(そしたら、私は海に帰れる……)

マンボウ(あの性悪エルフ達に、裁かれずに済む……)

ザザーーン、ザザーーン……

マンボウ(しかし、ここ狭いわね……)

マンボウ(あまり、私が上手く動けない……)

マンボウ(ああ、なんか小魚が泳いできた……)

マンボウ(ついさっきと比べて、なんか数がかなり増え出してきた……)

小魚の群れ「……」スイスイ

小魚の群れ「……」スイスイ

マンボウ(もしかして、ここどこかと繋がっている?)

マンボウ(こんなに、小魚の数が増えてきたんだから、どこかと繋がっているのよね?)

マンボウ(でも、一体どこと?)

マンボウ(たとえ、どこかと繋がっていたとしても、この私の体で通れるのかしら?)

小魚の群れ「……」スイスイ

小魚の群れ「……」スイスイ

魔法使い「ふぅ、終わった……」

魔法使い「なんとか、全部伝え終わった……」

マンボウ「……」

魔法使い「ん? 小魚が増えてる……」

魔法使い「地下にある穴から、上がってきたのかな?」

マンボウ「!?」

マンボウ「ねぇ、今のどう言う事?」

マンボウ「ここ、もしかしてどこかと繋がっているの?」

魔法使い「うん。そうだけど」

マンボウ「なら、一体どこの海?」

マンボウ「この入れ物、一体何なのよ?」

魔法使い「……」

魔法使い「もしかして、この仕組み気づいた?」

魔法使い「君、やっぱりただの魚じゃないみたいだね!」ニッコリ

マンボウ「……」

魔法使い「でも、今の君ではここから出る事が出来ないよ!」

魔法使い「だって、その今の君の大きさじゃあ、とてもここから出る事が出来ないからさ!」ニコニコ

ザザーーン、ザザーーン……

マンボウ「つまり、ここはどこかの海と繋がっていると言う訳ね?」

マンボウ「そうする事によって、今の私はなんとか生き永らえている」

魔法使い「うん。そうだけど!」ニコニコ

マンボウ「まさか、これはあなたが仕掛けた魔法によるもの?」

マンボウ「それで、今の私はここに閉じ込められていると言う訳?」

魔法使い「うん。よく気づいたね!」ニコニコ

マンボウ「なら、私はここを出る事にするわ!」

マンボウ「今の私にも、少なからずは希望の光が見えてきたから!」

魔法使い「え?」

マンボウ「お願い。寄生虫さん、私に力を貸して!」

マンボウ「寄生虫さん達の力で、私をここから出して!」

魔法使い「……」

マンボウ「あら? どうしたの?」

マンボウ「寄生虫さん達、何で誰も返事とかしないのよ?」

魔法使い「……」

マンボウ「まさか、これもあなたが?」

マンボウ「私の体にいる寄生虫さん達、全て滅ぼしちゃったとか?」

魔法使い「……え? ボク、何もしてないけど……」

マンボウ「だったら、何で寄生虫さん達からの返事がないのよ!?」

マンボウ「普段から、私の体に好き勝手に住み着いている癖に!」

魔法使い「!?」

マンボウ「あっ、まさかあの時……」

マンボウ「あの時に、寄生虫さん達が一匹残らず全滅しちゃったのかしら?……」

魔法使い「……」

魔法使い「ごめん。さっきから何の話してるの?……」

魔法使い「君の体は、寄生虫の住み処なの?……」

マンボウ「……ええ、そうよ」

魔法使い「なら、ついさっき入れといたアレの所為かな?……」

魔法使い「君の体に寄生虫とか付いてたら危ないから、それを全て除去する薬を入れといたんだけど……」

ザザーーン、ザザーーン……

マンボウ「ちょっと、あなた何て事をしてくれんの!?」

マンボウ「あなたのおかげで、私の計画が完全にパーよ!」ムカッ

魔法使い「え?」

マンボウ「おかげで、私の周りに沢山の小魚達が群がってきた!」

マンボウ「このままだと、皆窒息する!」

マンボウ「早く、この状況を何とかしなさいよ!」ムカムカッ

魔法使い「ごめん。どう言う事?」

魔法使い「魚でも、窒息死とかあるの?」

小魚の群れ「……」スイスイ

魔法使い「ああ、なんか小魚達がやけに増え出してきた……」

魔法使い「君の周りに、沢山の小魚達が群れだしてきたんだけど……」

小魚の群れ「……」スイスイ

マンボウ「とりあえず、早くこの状況を何とかして!」

マンボウ「じゃないと、皆が窒息死する!」

マンボウ「私達魚も、人間と同様に息してるの!」

マンボウ「だから、早くこの状況を何とかして!」

マンボウ「じゃないと、皆窒息死してしまいそうだから!」

魔法使い「うん。分かった!」アセアセッ

スッ、カシャン……

魔法使い「……」ブツブツ

魔法使い「……」ブツブツ

魔法使い「……」ブツブツ

魔法使い「……」ブツブツ

小魚の群れ「……」スイスイ

魔法使い「……」ブツブツ

魔法使い「……」ブツブツ

魔法使い「……」ブツブツ

魔法使い「……」ブツブツ

魔法使い「はっ!」ボワッ

ザザーーン、ザザーーン……

数分後――

魔法使い「ふぅ、これなら文句ないよね?」

魔法使い「君の入っている生け簀、大幅に拡張したよ」

マンボウ「……」

魔法使い「と言うか、君の体が大きすぎるよ」

魔法使い「君の種族は、皆大きいの?」

マンボウ「ええ、そうだけど」

マンボウ「私の種族は、皆大きいわよ」

魔法使い「……」

マンボウ「確か、最大で3mぐらい」

マンボウ「私はメスだけど、皆それくらい大きくなっていくわ」

魔法使い「!?」

マンボウ「あなた、お魚とか捕まえた事はないの?」

マンボウ「これだけ大きな入れ物を作れるんなら、以前にも作った事はあるんでしょ?」

小魚の群れ「……」スイスイ

魔法使い「うん。作った事はあるよ」

魔法使い「でも、君の様な大型種は捕まえた事がなかったんだよね」

小魚の群れ「……」スイスイ

マンボウ「そう。なら、早く私をここから出してくれる?」

マンボウ「私、早く海に戻りたいんだけど」

小魚の群れ「……」スイスイ

魔法使い「何度も言うけど、それは無理かな!」

魔法使い「君と一緒にいたお爺さんが、海でモンスター達に惨殺されちゃったから!」

マンボウ「……」

マンボウ「それでも、私は海に戻りたいわ!」

マンボウ「だって、私は海で産まれたんだから!」

魔法使い「……」

マンボウ「あたなって、本当に物好きね!」

マンボウ「私みたいな魚に、そこまで肩入れしてくるなんて!」

ザザーーン、ザザーーン……

魔法使い「君、何でそんなに海に戻りたいの?」

魔法使い「ここで、暫く休むと言う選択枠はないの?」

マンボウ「……」

魔法使い「今は、まだ君に海に戻ってほしくない!」

魔法使い「ボクが君を見つけた時、君は死にかけだった!」

魔法使い「君の体には、はっきりと誰かにしがみつかれた様な跡が、確かにあったからさ!」

マンボウ「残念だけど、それは無理だわ!」

マンボウ「私達魚は、海の中でないと生きる事が出来ないから!」

マンボウ「それくらい、今のあなたでも分かるでしょ?」

マンボウ「だから、早く私を海に帰して!」

マンボウ「その辺にいる釣り人達でさえ、今の私が言った様な事をしてくるわよ!」

マンボウ「ここで私を引き留めて、一体どうしようと言うの?」

魔法使い「ごめん。それさっきも説明した!」

魔法使い「君、よっぽど頭が悪いんだね!」イライラッ

マンボウ「!?」

魔法使い「ボクは、君の事が心配だからこそ、ここに収容してるんだよ!」

魔法使い「そのついでに、君に卵を産んで貰う!」

魔法使い「それくらいしてくれたって、別に良いと思うんだけど!」イライラッ

マンボウ「だから、私はあなたの為なんかに卵を産みたくはないわ!」

マンボウ「私達魚は、それをしたら死んじゃうんだから!」ムカムカッ

魔法使い「……」イライラッ

マンボウ「もし仮に、私がここで卵を産んだとして何をするの?」

マンボウ「私が産んだ子達、ここでずっと囚われの身にでもなるの?」ムカムカッ

魔法使い「……」イライラッ

マンボウ「やっぱり、今の私はあなたの事が信用出来ない!」

マンボウ「今のあなた、私を最初から解放するつもりはない!」

マンボウ「だから、もういい加減に諦めて!」

マンボウ「私は、本当にただのお魚なの!」

マンボウ「何で、そんな事すら今のあなたは分かってはくれないの?」ムカムカッ

ザザーーン、ザザーーン……

魔法使い「ああ、もう、煩い煩い!」

魔法使い「君、少し黙っててくれる?」

魔法使い「せっかく、こっちが人助けしてあげているのに!」

魔法使い「何で、そんな態度を取るの!?」

魔法使い「と言うか、何で魚の癖に人間の言葉が話せるの!?」イライラッ

マンボウ「それ今、関係ない!」ムカムカッ

魔法使い「じゃあ、どうしろって言うの?」

魔法使い「このまま、君を海に返せと言うの?」イライラッ

マンボウ「ええ、そうよ!」ムカムカッ

魔法使い「でも、それだけは絶対に無理!」

魔法使い「文句があるのなら、今も海の中にいるモンスター達に文句言ってよ!」

魔法使い「それくらい、今の君でも解ってるんでしょ!?」イライラッ

マンボウ「ええ、分かってるわ!」

マンボウ「それでも、私は海に戻りたいの!」

マンボウ「ここにいたら、あの性悪エルフ達に捌かれる!」

マンボウ「今私の目の前にいるあなたにも、無理矢理卵を産まされる!」

マンボウ「だから、私は早くここから出たいのよ!」

マンボウ「いい加減に、私を早くここから出して!」ムカムカッ

魔法使い「そんなに、この生け簀から出たいの?」

魔法使い「今の君、また死んじゃうよ!」イライラッ

マンボウ「ええ、構わないわ!」ムカムカッ

魔法使い「なら、ここから出してあげる!」

魔法使い「君、結構重たいから今から君に魔法を掛けてくね!」イライラッ

マンボウ「!?」

マンボウ「あなた、本当に出してくれるの?」

マンボウ「そう言って、私を騙したりはしないわよね?」ムカムカッ

魔法使い「うん。大丈夫だけど?」

マンボウ「なら、早く掛けてくれる?」

マンボウ「私、早く海に戻りたい!」

ザザーーン、ザザーーン……

魔法使い「うん。分かった!」

魔法使い「ちょっと、待っててね!」

魔法使い「今から、魔法を掛けるから!」

魔法使い「少し、時間かかるから大人しくね!」

魔法使い「本当に、君は口煩い………」

魔法使い「何で、魚の癖にこんなにも口煩いんだろうか?……」イライラッ

魔法使い「……」ブツブツ

魔法使い「……」ブツブツ

魔法使い「……」ブツブツ

魔法使い「……」ブツブツ

魔法使い「はっ!」ボワッ

マンボウ「!?」

魔法使い「……」ブツブツ

魔法使い「……」ブツブツ

魔法使い「……」ブツブツ

魔法使い「……」ブツブツ

魔法使い「はっ!」ボワッ

マンボウ「……」ガクッ

魔法使い「ふぅ、これで静かになった……」

魔法使い「本当に、この魚は口煩い生き物だった……」

マンボウ「……」

魔法使い「もしかして、この子は珍しい生き物?……」

魔法使い「実際の所は、モンスターだったりとか?……」

マンボウ「……」

魔法使い「とりあえず、エルフさん達にまた連絡を……」

魔法使い「この魚、本当の所はモンスターの可能性がある……」

魔法使い「確か、あのエルフさん達はモンスターの死骸を集めてたよね?……」

魔法使い「この子を、エルフさんに差し出したら引き取ってくれるのかな?……」

マンボウ「……」

ザザーーン、ザザーーン……

~とある民家前~

その日の昼――

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

ピタピタピタピタッ、ピタピタピタピタッ……

スッ、スタッ……

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ……

従者A「……」

トントン、トントン……

「はい」

従者A「すみません。つい先日お尋ねしたエルフの里の者です」

従者A「魔法使いのXXXXさんは、いらっしゃいますでしょうか?」

「はい」

スッ、ガチャ……

魔法使い「……」

従者A「……」ペコッ

魔法使い「いらっしゃい。従者Aさん」

魔法使い「本日は、どう言った御用で?」

スッ、スタッ……

従者A「あら? 連絡の方はいっておりませんでしたか?」

従者A「本日のお昼に、こちらへお伺いすると言う約束であったはずですが」

魔法使い「ああ、そうでしたね」

魔法使い「それで、エルフさん達は?」

魔法使い「もう、お着きなのですか?」

従者A「いいえ」

従者B「奥様は、後少ししたらお着きになります」

従者B「ここに来る途中に、山賊と出くわしましてね」

従者B「只今、従兵達と共に山賊退治の真っ最中でございます」

魔法使い「は? 山賊?」

魔法使い「この辺、山賊とか出るんですか?」

魔法使い「長いこと、この地に住んでいますが、山賊が出るなんて聞いた事ありませんよ」

魔法使い「それ、何かの間違いじゃないんですか?」

魔法使い「と言うか、エルフさん達を置いてきて、本当に大丈夫なんですか?」

従者A「……」

従者A「ええ、ご心配なく!」

従者A「奥様は、常日頃からヒステリックでヴァイオレンスなお方です!」

従者A「つい先日も、お嬢様と共に向かい来る盗賊騎士達を殲滅を致しました!」

従者A「その際に、相手方の盗賊騎士は全て奥様によって、皆殺しにされてしまいましてね!」

従者A「辺り一面が、すぐさま血の海になっていたみたいですよ!」

魔法使い「……」

従者A「まぁ、奥様は幼き頃からあんな感じでしたから!」

従者A「若い頃は、よくそれが原因で周囲に敵ばかり作っておりました!」

魔法使い「……」

従者A「ですが、ああ見えても良家の一人娘でしてね!」

従者A「お嬢様をお産みになってから、奥様もかなり丸くなられた様です!」

魔法使い「……」

従者A「とりあえず、後もう少しで奥様達がお着きになります!」

従者A「それまで、どうかあなた様も気長にお待ち下さいませ!」ペコッ

従者B「……」ペコッ

魔法使い「……はぁ、分かりました」

魔法使い「本当に、噂通りのお方なんですね……」

従者達「……」

従者A「ちなみに、その噂と言うのは?……」

従者A「ウチの奥様、何て噂されているんですか?……」ドキドキッ

従者B「……」

従者A「出来れば、遠慮なくお願い致します……」

従者A「まだ、奥様達はここに着いておりませんから……」ドキドキッ

魔法使い「……はい」

魔法使い「実は、ボクが知人から聞いた話だと、かなり危ない方だとか……」

魔法使い「しかも、行く先々で良くトラブルに巻き込まれる……」

魔法使い「おまけに、向かい来る敵をすぐさま殲滅……」

魔法使い「これまで、あの方に戦いを挑んで生きて帰ってきた者は、一度もなし……」

魔法使い「見た目とは反して、かなり危険で凶暴な子持ちのエルフだとか……」タジタジッ

従者達「……」ガクッ

魔法使い「ああ、今の話は間違ってましたか?……」

魔法使い「つい先日、ボクは知人から聞いた話なんで……」タジタジッ

スッ、スタッ……

従者C「いや、合ってる……」

従者C「あんたの話、大体合ってるよ……」

従者D「ああ、そうだな……」グスン

魔法使い「でも、それは人が言うただの噂でしょ?……」

魔法使い「実際の所、ボクはその現場を見た事がありませんから……」タジタジッ

スッ、スタッ……

従者D「いや、あんたは間違ってない……」

従者D「ウチの奥様は、本当にヒステリックでバイオレンスだ……」ポロポロッ

魔法使い「……」タジタジッ

従者D「それと、従者A……」

従者D「お前、さっき単語間違っていたぞ……」

従者D「正しくは、ヴァイオレンスじゃなくてバイオレンスだ……」

従者D「そろそろ、お前も歳を食ったか?……」

従者D「奥様が、幼少の頃から仕えてるからな……」ポロポロッ

従者A「ああ、そうかもな……」グスン

魔法使い「あの、失礼ですが、皆さんもエルフなんですか?……」

魔法使い「ここへ来る前と、なんだかメンバーがガラリと変わってるみたいですが……」タジタジッ

従者A「え?」キョトン

従者B「ああ、そうですよ」

従者B「俺達も、奥様やお嬢様達と全く同じ純粋なエルフ」

従者B「あなたが前に会ったメンバーは、全てついこの間殉職されました」

魔法使い「そっ、そうなんですか……」

魔法使い「あの方達は、全て殉職されたんですか……」

魔法使い「一体、あの方達の身に何があったのですか?……」

魔法使い「まさか、今回と全く同じ様に山賊に襲われて?……」タジタジッ

従者B「……」チラッ

従者C「……」コクン

従者B「残念ですが、それはお答え出来ません!」

従者B「それをあなたがお聞きになったら、一生後悔するからです!」キッパリ

魔法使い「!?」ビクッ

従者「ですから、あなたは何も聞かない方が良い!」

従者「もうこれ以上、若い命を無惨に散らしたくはない!」ドン

魔法使い「……」ダラダラッ

シュピン……

従者D「皆、奥様から連絡が入った……」

従者D「たった今、山賊退治が終わったから、そっちに行く……」

従者D「その間、魔法使い殿に私達が手に入れたモンスターの死骸を見せといて……」

従者D「すぐ、そっちに向かうから……」フキフキ

従者C「ああ、了解した」

従者C「とりあえず、魔法使い殿はこちらに」

従者C「奥様達が到着するまで、奥様達が手に入れた獲物をごゆっくりご鑑賞下さい」

魔法使い「あっ、はい……」

従者D「……」フキフキ

魔法使い(ボク、連絡する相手を間違えたかな?……)

魔法使い(なんだか、急に物凄く怖くなってきたよ……)ビクビクッ

しばらくして――

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

魔法使い「!?」

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

ピタピタピタピタッ、ピタピタピタピタッ……

ピタピタピタピタッ、ピタピタピタピタッ……

スッ、スタッ……

従兵「失礼。魔法使いのXXXXさんですね」

従兵「我々は、エルフの里の者です」

従兵「少し、お時間の方を宜しいでしょうか?」

魔法使い「え?」

魔法使い「ああ、はぁ……」

魔法使い「それで、御用件とは?……」

魔法使い「と言うか、何でこんなにも重武装なんですか?……」

従者達「……」

従兵「実は、つい先程ご連絡頂いた件で参りました」

従兵「昨日、あなたが捕まえたマンボウと名乗る魚は、モンスターの一種です」

従兵「ですから、そのマンボウと名乗るモンスターを引き取りに参りました」

魔法使い「ああ、そうなんですか……」

魔法使い「それで、こんなにも重武装なんですか……」

従兵達「……」

魔法使い「あの、エルフさんは?……」

魔法使い「つい先日、ボクがお会いしたエルフさんは、どうなされたんですか?……」

スッ、スタッ……

エルフ母「ああ、お待たせして申し訳ありません」

エルフ母「少し、この近くで山賊と出くわしましてね」

エルフ母「その山賊達と戦闘をしていた所為で、少しばかり遅れてしまいましたわ」ニコニコ

魔法使い「……」

従者A「あの、奥様。例の山賊達は?」

従者A「例の山賊達は、どうなされたのですか?」

エルフ母「ああ、あの山賊達?」

エルフ母「それなら、全て一人残らず殲滅をしてきたわよ!」

エルフ母「どうやら、あの山賊達はどこかの騎士崩れらしくってね」

エルフ母「一人残らず、私が殲滅しといた!」

エルフ母「わざわざ、私の娘が出る程でもなかったと言う訳よ!」ニコニコ

魔法使い「!?」ビクッ

従者A「ああ、そうですか……」

従者A「相変わらず、奥様はお転婆なお方だ……」

従者A「てっきり、お嬢様をお産みになってからは、少しくらいはまともになられたと思ったのに……」

従者A「亡くなられた先代やお母上達も、大層お嘆きの事でしょう……」

従者A「本当に、どうしてこうなってしまったのか?……」グスッ

エルフ母「は?」ギロッ

エルフ「従者A。それは言い過ぎよ!」

エルフ「お母様も、好きでそうなった訳じゃないんだから!」

従者A「しかし……」グスッ

エルフ「お母様は、昔からこんな感じだった!」

エルフ「あの時の戦いも、お母様はこんな感じだったんだし!」

エルフ「今更、とやかく言っても無駄なだけよ!」

エルフ母「ええ、そうね」

エルフ母「今更、そんな事を言われてもね」

エルフ母「私、お父様の事は未だに大嫌い!」

エルフ母「私や娘を、100年もの間苦しめ続ける土台を築いていたお父様の事なんて、大嫌い!」ムカッ

従者A「……」ガクッ

エルフ「お母様……」

従者B「ですが、せめてお墓参りくらいはしてあげましょうよ」

従者B「あれから、ずっと行ってないんでしょ?」

エルフ母「ええ、まあね……」ムカムカッ

エルフ「でも、叔父様とお婆様のお墓参りには、ちゃんと行っているわ!」

エルフ「私は、生前の叔父様には、本当に色々とお世話になった!」

エルフ「あんな最低最悪なお祖父様のお墓参りなんて、私も絶対に行かないわ!」

従者A「お嬢様。お嬢様もですか?……」

従者A「せめて、お嬢様くらいはまともに育ってほしかった……」

エルフ「は?」ムカッ

従者B「従者A。もう諦めろ!」

従者B「さすがは、奥様の一人娘!」

従者B「この母にして、この娘ありなんだ!」ウルウルッ

エルフ母「あんた、それどう言う意味よ?」

エルフ母「私の教育方針が、全て間違っているとでも言うの?」ムカムカッ

従兵B「はい!」ウルウルッ

エルフ母「本当に、あんた達はいい度胸してるわね!」

エルフ母「この私の大事な大事な一人娘に、文句つけてくるなんて!」ムカムカッ

従兵B「……」ウルウルッ

エルフ母「と言うか、今はお墓参りとか関係ないでしょ?」

エルフ母「ついさっきから、大事なお客様をずっと待たせたままなんだし!」ムカムカッ

魔法使い「……」

エルフ母「とりあえず、あんた達従者は少し黙ってて!」

エルフ母「今から、私は今そこにいる魔法使いのXXXXさんと、話があるから!」

従者達「……はっ、かしこまりました」グスッ

クルッ……

エルフ母「ああ、すいませんね。長らくお待たせして」

エルフ母「早速、例の件のお話に入りましょうか?」ニッコリ

魔法使い「……」

エルフ母「それで、例のモンスターは?」

エルフ母「今は、どちらに保管されてるんでしょうか?」ニコニコ

魔法使い「あのモンスターなら、ボクの所有している生け簀の中にいます……」

魔法使い「あの子、やたらと口煩くてですね……」

魔法使い「とことん性格が悪いです……」

魔法使い「まるで、本当にどこかの誰かさんみたいに……」

魔法使い「一応、ボクはエルフ語も解るんで、つい先程の皆さんのお話が丸聞こえだったんですが……」タジタジッ

エルフ母「……」ピキッ

エルフ「へぇ、そうなんだ」

エルフ「お兄さん。エルフ語解るんだ」ジーーッ

エルフ母「……」ジーーッ

エルフ「なら、話は早いわ」

エルフ「早速、そのモンスターのいる生け簀にまで連れてってくれる?」ニッコリ

魔法使い「え? 良いけど……」ドキッ

エルフ母「じゃあ、そろそろ行きましょうか?」

エルフ母「XXXXさんは、案内の方を頼みます」ニッコリ

エルフ母「従者達、付いてきて」

エルフ母「勿論、従兵達もね」ニコニコ

従者達「はっ、かしこまりました!」

魔法使い「……すぅ、はぁ……」

魔法使い「では、皆さん。ボクに付いてきて下さい!」

魔法使い「これから、ボクの所有している生け簀にまでご案内しますので!」

エルフ達「……」

魔法使い「後、生け簀近くにはいくつか崖があります!」

魔法使い「皆さん。足元に注意して下さい!」

エルフ「は~~い」ニコニコ

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

従兵「奥様。荷馬車の警備は私達が」

従兵「奥様達は、お嬢様と共にごゆっくりお過ごし下さいませ!」

エルフ母「ええ、お願いするわ」

エルフ「うん。お願いね」ニコニコ

~とある生け簀~

マンボウ「……」

マンボウ「……」

マンボウ「……」

マンボウ「……」

ザザーーン、ザザーーン……

マンボウ「……」

マンボウ「……」

マンボウ「……」

マンボウ「……」

マンボウ「……」パチッ

マンボウ「……」シャキン

マンボウ「……」

マンボウ「……」

マンボウ「……」

マンボウ「……」

マンボウ「……あら、あの子は?」

マンボウ「私、また気づいたら眠っちゃってた……」

マンボウ(それにしても、お腹空いたわね……)

マンボウ(思えば、ここ数日何も食べてない……)

小魚の群れ「……」スイスイ

マンボウ(う~~ん。早く海に戻りたいわ……)

マンボウ(ここ、何故かイカとかエビとかクラゲがいないんだもの……)

小魚の群れ「……」スイスイ

マンボウ「ねぇ、そこの小魚さん達……」

マンボウ「まだ、この辺にプランクトンいない?……」

小魚の群れ「……」スイスイ

マンボウ「まさか、私が眠っている間に全部食べちゃったとか?……」

マンボウ「そんなに、数が多いんだから食べちゃったみたいね……」

小魚の群れ「……」スイスイ

マンボウ「ああ、もう最悪だわ……」

マンボウ「早く、ここから出してほしい……」

小魚の群れ「……」スイスイ

マンボウ「出来れば、今すぐにでも……」

マンボウ「早く海に戻って、ゆったりとただただ海を泳いでいたいわ……」

ザザーーン、ザザーーン……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

マンボウ「……ん?」

マンボウ「何かしら? この音?……」

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

マンボウ「何かが、こっちに来る……」

マンボウ「まさか、もう、あの性悪エルフ達が?……」

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

ピタピタピタピタッ、ピタピタピタピタッ……

マンボウ「!?」ビクッ

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

ピタピタピタピタッ、ピタピタピタピタッ……

マンボウ「……あっ、ああああっ……」ビクビクッ

マンボウ「ねぇ、神様。私、何かした?……」

マンボウ「私が、何かしたから、こんな目に遭うの?……」ビクビクッ

小魚の群れ「……」スイスイ

マンボウ「お願い。今すぐ、私を助けて……」

マンボウ「お願い、お願い!……」ビクビクッ

ザザーーン、ザザーーン……

スッ、スタッ……

従者A「……」

マンボウ「……」ビクビクッ

スッ、スタッ……

従者B「……」

従者A「……」キョロキョロ

従者C「おい、従者A。その水槽何だ?」

従者C「それが、例のモンスターがいる水槽じゃないのか?」

マンボウ「……」ビクビクッ

従者B「ああ、その様だな」

従者B「従者Aの奴、目も悪くした様だ」

マンボウ「……」ビクビクッ

従者A「従者B。今の余計だ!」

従者A「俺はまだ、現役のつもりだよ!」

マンボウ「……」ビクビクッ

従者C「その割りには、目が悪いみたいだな」

従者C「後で、転移魔法を使って医者に診て貰えよ」

マンボウ「……」ビクビクッ

従者A「ああ、そうさせて貰う……」

従者A「ここ最近、体の自由が利かなくなってきたからな……」

従者C「……」

従者B「あんた、そんなに悪いのか?」

従者B「全く、そんな風には見えなかったんだが」

スッ、スタスタッ……

従者A「だが、すぐに俺は奥様の元に戻る!」

従者A「俺は、奥様が幼少の頃から仕えてるんだ!」

従者B「!?」ビクッ

従者A「あの時、今は亡き先代の言いつけを破ってまで、奥様のお側に付くべきだった!」

従者A「もう俺は、あの頃の様に奥様の事を見殺しにする訳には行かないんだ!」

ザザーーン、ザザーーン……

従者D「従者A。まずは、自分の体を整えろ」

従者D「奥様の側から、今のお前は離れたくないんだろ?」

従者A「ああ、そうだ!」

従者D「なら、まずは自分の体をちゃんと直してこい!」

従者D「奥様にはバレない様に、上手く誤魔化しといてやるからさ!」

従者A「……」

従者C「それで、あんたはどこが悪いんだ?」

従者C「昨日までは、全くそんな風には見えなかったが」

従者B「……」

従者D「従者A。早く言ってくれ」

従者D「奥様達が、もう少しで着く」

従者A「……」

従者B「そんなに、あんたの口からは言えない事なのか?……」

従者B「まさか、かなりあんたの体は悪いのか?……」

従者A「……」

従者C「頼む。早く、教えてくれ!」

従者C「じゃないと、奥様達には言い訳の仕様がない!」

従者A「……」

従者A「皆、そう騒ぐな!」

従者A「俺はまだ、そう簡単には死んだりはしない!」

従者C「……」

従者A「実は、ちょっとした老人特有の病気だ!」

従者A「その所為で、少し体を悪くしただけの事だ!」

従者B「……」

従者A「とりあえず、お嬢様達がもう着く!」

従者A「相変わらず、寄り道がお好きなお方達だ!」

従者A「奥様には、俺から適当に病状を伝えておく!」

従者A「皆は、いつも通りに奥様達の相手をしていてくれ!」

従者D「ああ、了解した」

ザザーーン、ザザーーン……

マンボウ(何か、あのエルフ達は煩いわね……)

マンボウ(私の事、完全に放置するなんて……)

マンボウ(私、本当に何かしたかしら?……)

マンボウ(何で、私はこんな目に遭っているのかしら?……)ビクビクッ

小魚の群れ「……」スイスイ

マンボウ「……ん?」

マンボウ(あら、何かついさっきと違うわ?……)

マンボウ(前より、一段とここ広くなってない?……)

マンボウ(相変わらず、ここの小魚さん達は自由で羨ましい……)

マンボウ(私の体も、あれぐらい小さかったら楽にあそこを通り抜けれたのに……)

小魚の群れ「……」スイスイ

小魚の群れ「……」スイスイ

マンボウ(あっ……)

マンボウ(また、向こうのエルフが騒がしくなった……)

マンボウ(何で、あの性悪エルフ達は、あんなにも不思議な魚を手に入れているのかしら?……)

小魚の群れ「……」スイスイ

マンボウ(アレ、どうするの?……)

マンボウ(まさか、ここに入れちゃうの?……)

マンボウ(と言うか、アレは私のお仲間じゃない!?)ハッ

マンボウ(私のお仲間、まさか、あそこで全て買い取っていたとか!?)ガーーン

小魚の群れ「……」スイスイ

マンボウ(ああ、なんて最悪な……)

マンボウ(あの魔法使いも、今の私に卵産ます事すら全く諦めていなかった……)

小魚の群れ「……」スイスイ

マンボウ(おまけに、あの性悪親子がここに辿り着いた……)

マンボウ(しかも、あの魔法使いとも一緒にいる……)

マンボウ(ここは、もう腹をくくるしかないみたいね……)

マンボウ(せめて、最後くらいは海の中で泳ぎたかった……)

マンボウ「はぁ……」

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ「あら、もう起きてたの?」

エルフ「てっきり、まだ眠ってると思ってた」ニコニコ

マンボウ「……」

エルフ「今から、あなたのお仲間をここに入れるわ」

エルフ「それで、あなたも寂しくはないでしょ?」ニコニコ

マンボウ「……」

エルフ「あれ? 今日は何も話さないの?」

エルフ「昨日は、よく私達とお話してたのに」

マンボウ「……」

エルフ「お母様。このマンボウ、今日は無口みたいね」

エルフ「そんなに、私達の事が嫌いなのかしら?」

エルフ母「ええ、そのまさかね」ニコニコ

魔法使い「あの、エルフさん達……」

魔法使い「これから、一体何をどうするんですか?……」

魔法使い「ボク、かなり怖いんですけど……」

魔法使い「あのマンボウは、回収するって聞いてるんですけど……」

魔法使い「このボクの持ってる水槽を使って、一体何をするんですか?……」

エルフ母「……」

エルフ「ねぇ、お兄さん。ちょっと良い?」

エルフ「私、お兄さんに用事があるんだけど」

エルフ「ちょっと、良いかな?」ニッコリ

魔法使い「え? 何かな?……」キョトン

エルフ「……ちょっと、ここでは言いづらいの」

エルフ「だから、向こうで少しお話しない?」ジーーッ

魔法使い「ごめん。ちょっと、無理かな?……」

魔法使い「このままだと、ボクの水槽が何をされるか解らないから……」

エルフ「……」

魔法使い「だから、ちょっと無理かな」

魔法使い「ボク、ここを離れる訳にはいかないから」

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ「そう、残念だね」

エルフ「私、お兄さんと色々とお話がしたかったんだけどなぁ」シュン

魔法使い「……」ドキッ

エルフ「まぁ、今からお母様がする事には気になるよね?」

エルフ「お母様。ちょっと、今から色々とするみたいだし」

エルフ母「……」

魔法使い「それで、君のお母さんは何をするつもりなの?……」

魔法使い「ボクの水槽、大丈夫なんだよね?……」

エルフ母「……」

エルフ「うん。大丈夫だよ!」

エルフ「ちょっと、そこのマンボウに卵を産ませるだけだから!」ニッコリ

マンボウ「!?」ビクッ

魔法使い「え? 今のどう言う事?……」

魔法使い「まさか、ここであの子に卵を産ますと言うの?……」

エルフ「うん!」ニコニコ

マンボウ「……」

魔法使い「でも、それをして大丈夫なの?……」

魔法使い「あの子は、モンスターじゃなかったの?……」

エルフ母「ええ、あのマンボウはモンスターよ!」

エルフ母「これも、エルフの里での研究の一つなのよ!」ニコニコ

魔法使い「……」

エルフ母「だから、XXXXさんは私達にご協力を!」

エルフ母「せっかく、今の私達はマンボウのオスとメスを集めてるんですし!」

エルフ母「それを、今から使ってみたいとは思いませんか?」ニコニコ

エルフ「……」ニコニコ

エルフ母「……」ニコニコ

マンボウ「……」ビクビクッ

エルフ「それで、返事は?」

エルフ「お兄さんは、私達に協力をしてくれる?」ニコニコ

ザザーーン、ザザーーン……

魔法使い「分かった。君達に協力をしてあげるよ」

魔法使い「それで良い?」

エルフ「うん!」ニコニコ

エルフ母「XXXXさん。ご協力ありがとうございます!」

エルフ母「おかげで、助かりました!」ニコニコ

魔法使い「いえいえ」ニッコリ

エルフ「それで、あの四体はもう入れるの?」

エルフ「私、早くあの四体を入れたい」

エルフ母「ええ、ちょっと待ってね」ニコニコ

魔法使い「……?」

エルフ母「XXXXさん。これから、私達が捕獲した四体をこの水槽の中に入れます!」

エルフ母「XXXXさんは、すぐそこで待機していて下さい!」ニコニコ

魔法使い「ええ、分かりました」

魔法使い「ここで、ボクは待機してたら良いんですか?」ニコニコ

エルフ母「はい。そうです」ニコニコ

魔法使い「一応、この水槽の中には、寄生虫除去の為の薬を入れてあります」

魔法使い「あの子も、発見された当時は寄生虫まみれでした」

魔法使い「本人も、やたらとそれに苦労していた様です」ニコニコ

エルフ「ふぅ~~ん。そうなの」

エルフ「やっぱり、寄生虫に苦しんでたの」チラッ

マンボウ「……」ビクビクッ

エルフ「ねぇ、お母様。早く入れよ」

エルフ「私、早く入れたい」

エルフ「早く、色々とあの子の為にしてあげたい」

エルフ母「はいはい。分かったわよ」

エルフ母「本当に、あんたは子供なんだから」

エルフ母「娘、今から魔法であの四体を浮かせて」

エルフ母「水槽に入れる時は、なるべくゆっくりとね」ニコニコ

エルフ「は~~い」ニコニコ

ザザーーン、ザザーーン……

マンボウ(あのエルフ達、本気なの?……)

マンボウ(本気で、私の事を孕ませるつもりなの?……)

マンボウ(私、まだ初めてなのに……)

マンボウ(こんな形で、私の初めてを奪われるなんて……)

エルフ「……」スッ

エルフ「……」ブツブツ

マンボウ(出来れば、子供なんて産みたくはないわ……)

マンボウ(私、まだ海の中で自由に泳いでいたい……)

マンボウ(だけど、この状況じゃあ、それも無理みたいね……)

マンボウ(今の私、囚われの身なんですもの……)

エルフ「……」ブツブツ

マンボウの群れ「……」

マンボウ(でも、ここで諦める訳には行かないわ……)

マンボウ(なんとしても、ここから早く脱出しないと……)

マンボウ(試しに、このままジャンプしてみる?……)

マンボウ(それとも、私の体でこの不思議な入れ物を破壊しちゃう?……)

エルフ「……」ブツブツ

マンボウの群れ「……」フワッ

マンボウ(試しに、私がこの不思議な入れ物に体当たりしてみようかしら?……)

マンボウ(そしたら、ここの海水と一緒に私も海に戻れる……)

マンボウ(試しに、私が体当たりしてみよう……)

マンボウ(まずは、今からここに入れられるお仲間達の回復を待つだけね……)

エルフ「……」ブツブツ

マンボウの群れ「……」フワワッ

エルフ母「娘。その調子で、あの入れ物の中に入れて」

エルフ母「ついさっきも言ったけど、ちゃんとゆっくりとね」

エルフ「うん」

マンボウの群れ「……」フワワッ……

魔法使い「……」

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ母「娘、早く移動させて」

エルフ母「じゃないと、あんたの魔力が切れちゃうわよ」

エルフ「……」

マンボウの群れ「……」フワワッ

魔法使い「……」

マンボウ「……?」

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

エルフ母「そう、その調子よ」

エルフ母「後、もう少しよ」

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

エルフ母「娘、そのままゆっくりとね」

エルフ母「間違っても、一気に落としちゃ駄目よ」

エルフ(ああ、もう煩いなぁ……)

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

チャプン、チャプン、チャプン、チャプン……

魚の群れ「……」スイスイ

魚の群れ「……」スイスイ

マンボウの群れ「……」ピキッ

魚の群れ「……」スイスイ

魚の群れ「……」スイスイ

マンボウの群れ「……」シューーッ

マンボウ(ああ、私のお仲間達が入ってきた……)

マンボウ(これで、私にもチャンスが回ってきた……)

マンボウの群れ「……」シューーッ

マンボウ(後は、お仲間達の回復を待つだけ……)

マンボウ(これで、ようやく私も海に戻れるわ……)

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ母「娘。お疲れさま」

エルフ母「あんた、火炎魔法以外にもちゃんと使えてるのね」

エルフ母「普段、あんた火炎魔法しか使ってなかったから」

エルフ母「昔みたいに、ちゃんと加減出来てるから安心したわ」ニッコリ

エルフ「……」フゥ……

スッ、ストン……

エルフ母「それで、今の感想は?」

エルフ母「久し振りに、火炎魔法以外を使った感想はどうかしら?」ニコニコ

エルフ「……」

エルフ母「ちょっと、何か言ってよ」

エルフ母「まだ、あんた昨日の事を根に持っている訳?」ニコニコ

エルフ「……」プイッ

エルフ母「ああ、こりゃあ完全に根に持ってる顔だわ……」

エルフ母「そんなに、あんたは子供扱いされるのが嫌な訳?……」

エルフ「……」

エルフ母「そりゃあ、今のあんたは子供でしょ!」

エルフ母「どう見たって、大人には絶対には見えないでしょ?」

エルフ「……」

エルフ母「とりあえず、あんたは早く立って」

エルフ母「じゃないと、あのマンボウ達を一匹残らず解体しちゃうわよ」ニッコリ

エルフ「え?」チラッ

魔法使い「!?」ビクッ

エルフ母「あんた、あのマンボウの事が心配なんでしょ?」

エルフ母「あんたがそんな感じだと、あのマンボウも一緒に解体しちゃうわよ」ニコニコ

スッ、スタッ…

パンパン、パンパン……

エルフ「……」

エルフ母「娘。次は、あのマンボウ達の事を蘇生させて」

エルフ母「それが終わったら、今後は卵を産ませちゃうから!」ニコニコ

ザザーーン、ザザーーン……

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

エルフ「……」

魔法使い「……」

エルフ母「娘、あんたどこ行くの?」

エルフ母「そっち、ただの崖でしょうが」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

エルフ「……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、ストン……

エルフ母「娘、あんた何してるの?」

エルフ母「早く、こっち戻ってきて」

エルフ「……」スッ

エルフ母「あんた、そこで何してるの?」

エルフ母「呪文唱えるのなら、こっちでしなさい!」

エルフ「……」イラッ

エルフ「もう、煩いなぁ!」クルッ

エルフ「私は、あのマンボウ達が逃げない様に、今からネット張っるの…!」

エルフ「それ先にしとかないと、あのマンボウ達が逃げてしまう!」

エルフ「以前、私がちょっと大きめな生け簀に魚を入れて飼ってた時も、同じ様な事が起きたじゃない!」イライラッ

エルフ母「……あ」ハッ

マンボウ「!?」ガーーン

魔法使い「ネット?」

魔法使い「そんなのする必要なんかないけど?」

魔法使い「ボクの持ってる水槽は、子供のクラーケンでも余裕で収容出来る!」

魔法使い「だから、わざわざネットなんて張る必要なんかないよ!」キョトン

マンボウ「ええ――――――――っ!?」ガーーン

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ母「あら? 何か今悲鳴が聞こえた?」

エルフ母「今の声、一体誰のかしら?」キョロキョロ

マンボウ「……」ズーーン

魔法使い「いや、ボクじゃないですけど」

魔法使い「今のは、確実に女性の声でしたよね?」

マンボウ「……」ズーーン

エルフ「でも、一応はネット張っといた方が良いんじゃない?」

エルフ「以前、私が海ガメを捕まえた時なんかも、余裕で抜けられちゃった」

エルフ「思えば、エルフの里に住む魚は凶暴だからね」

エルフ「皆、生け簀を作る時には何重にもネットを張っちゃうから」

魔法使い「……」

マンボウ「……」ズーーン

エルフ母「いや、そんな事ないから……」

エルフ母「私、長年エルフの里に住んでるけど、そんな話は聞いた事ないから……」

魔法使い「え?」

エルフ母「今の話、どう考えてもあんたの勘違いでしょ?……」

エルフ母「ウチの里には、そんな凶暴な魚はいないんだけど……」

魔法使い「……」

エルフ「いや、居たから……」

エルフ「どっかの性悪な族長の生け簀の中には、そんなのがうじゃうじゃ居たから……」ムカッ

エルフ母「……」ハッ

エルフ「私、前に頼まれたもん……」

エルフ「あの性悪な族長に、なんとかしてほしいって頼まれた事があるから……」プリプリッ

エルフ母「……あ?」ムカッ

エルフ母「あんた、それいつの話よ?……」

エルフ母「あの性悪女に、また何かされてるの?……」ブワッ

魔法使い「!?」ビクッ

エルフ母「あの性悪女、まだ懲りてなかったんだ……」

エルフ母「まだ、私の知らない所で人の娘に余計な事をさせてたんだ……」ムカッ

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ母「と言うか、何であんたはあの性悪女に使われてんのよ!?」

エルフ母「あんたまだ成人してないでしょ!?」ムカムカッ

エルフ「……」ムカムカッ

エルフ母「こんな事なら、あの性悪女の族長再任を認めるんじゃなかった!」

エルフ母「あの性悪女、あのまま息の根を止めとけば良かった!」ムカムカッ

魔法使い「……」ビクビクッ

エルフ「でも、あの性悪な族長のおかげで、外交問題とかになってないでしょ?」

エルフ「普通なら、今頃お母様は確実に捕まってしまってるわ!」ムカムカッ

エルフ母「あ?」ムカムカッ

エルフ「それに、私は色々と族長に頼んどいたから!」

エルフ「お母様が、各地で問題を起こしたとしても、罪に問われない様にして貰っといたから!」

エルフ母「……」ムカムカッ

エルフ「とりあえず、お母様はあの性悪な族長には、少なからずは感謝しといてよね!」

エルフ「あの族長の娘さん、全く何をやらせても使えないんだから!」

エルフ「ついでに、あの性悪な族長が今度旅行する時に、お土産を買ってきてって!」

エルフ「出来れば、海に住んでる珍しい魚!」

エルフ「例えば、今そこにいるマンボウとか!」ムカムカッ

マンボウ「……」ズーーン

エルフ母「あんた、それであの性悪女に媚売ってる訳?……」

エルフ母「私、まだあの性悪女の事を完全に赦せてないんだけど……」ムカムカッ

エルフ「……」ムカムカッ

エルフ母「と言うか、あのマンボウ達は、あの性悪女のお土産なの?……」

エルフ母「あんた最初の頃、“今すぐ焼いて捨てる!”とか、言ってなかったっけ?……」ムカムカッ

エルフ「……」ムカムカッ

エルフ「でも、どうせ増やすんだから、別に良くない?」ムカムカッ

エルフ「エルフの里の方にも、もう既に連絡の方をしてあるんだし!」ムカムカッ

エルフ母「……」ムカムカッ

エルフ「お母様。お母様も、少しは軟化しようよ……」

エルフ「私の中では、もうあの時全てが終わったんだから!……」ムカムカッ

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ「……」ムカムカッ

エルフ母「……」ムカムカッ

魔法使い「……」ビクビクッ

マンボウ「……」ズーーン

マンボウの群れ「……」シューーッ

魚の群れ「……」スイスイ

従者A「……」

従者B「……」

従者C「……」

従者D「……」

エルフ母「……」

エルフ母「はぁ……」ムカムカッ

エルフ母「全く、あんたは優し過ぎるんだから……」

エルフ母「あんな性悪な女でも、あんたの中では赦せてちゃうんだから……」ムカムカッ

エルフ「……」ムカムカッ

エルフ母「あんた、本当に終わったの?……」

エルフ母「あんたの中では、あれが本当に終わったとでも言うの?……」

エルフ「うん。そうだけど……」ムカムカッ

エルフ母「はぁ……」

エルフ母「相変わらず、あんたもバカだわ……」

エルフ母「結局、あんたもあの性悪女に上手く利用されちゃってるんだ……」ムカムカッ

エルフ「……」ムカムカッ

エルフ母「それで、あんたどうするの?……」

エルフ母「あんた、一生あの性悪女の言いなりになっておくの?……」ムカムカッ

エルフ「まぁ、それも良いかな……」

エルフ「それでも、お母様と一緒にあの里の中で平和に暮らせるのなら……」ムカムカッ

エルフ母「!?」

エルフ「時期に、お母様にも重要なポストが用意される……」

エルフ「あの性悪な族長よりはいくつか下の地位だけど、里の中では重要なポストを頂けるんだけど……」ムカムカッ

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ母「あんた、一体何企んでるの?……」

エルフ母「まさか、あの島にいた時みたいな事を、今まさにしてしまってるの?……」

エルフ「……」ピクッ

エルフ母「まさか、あんた本当にやっちゃってるとか?……」

エルフ母「その為に、今のあんたはあの性悪女の言いなりだとか!?……」

エルフ「……うん!」ニッコリ

エルフ母「あんた、本当に何考えてんのよ!?」

エルフ母「今、あんたが企んでいる事、私以上に遥かにたちが悪いわよ!?」アセアセッ

エルフ「……」ニコニコ

エルフ母「あんた、今すぐ全オペレーションを止めなさい!」

エルフ母「今すぐ、あの性悪女にも中止を伝えなさい!」アセアセッ

エルフ「え~~っ?」ニコニコ

エルフ「別に、人間なんてどうなっても良いじゃん!」

エルフ「特に、私達エルフを性的な目的で拉致監禁してしまう人達とか!」ニコニコ

魔法使い「!?」ガーーン

エルフ「私、あの性悪な族長に言っといたもん!」

エルフ「“実は、前世の記憶や能力等を完全に引き継いでる!”」

エルフ「“今度は、未だに世界各地で性的被害を受け続けているエルフ達の為に行動をする!”って……」ニコニコ

エルフ「だから、今更もう止められないわよ!」

エルフ「あの性悪な族長ですら、即承諾してくれたもん!」ニコニコ

エルフ母「!?」ガーーン

エルフ「今頃、各国に届いてる頃じゃない?」

エルフ「“今度は、あなた達の国がターゲットだって!”」ニコニコ

エルフ母「……」アセアセッ

エルフ「じゃなきゃ、一緒に私がお母様と旅なんかしてないわよ!」

エルフ「これで、各国も迂闊にエルフを誘拐出来ないんだもの!」

エルフ「後は、また以前みたいに各国に条約等を結ばせるだけ!」

エルフ「それが無理なら、お母様が軍を率いて攻め込めば良いんだからさぁ!」ニコニコ

エルフ母「……」ガクッ

ザザーーン、ザザーーン……

マンボウ(なんか、向こうは仲間割れをしているわね……)

マンボウ(私達の事、完全に無視してる……)

マンボウ(今の内に、逃げれるかしら?……)

マンボウ(まだ、私のお仲間達は完全に蘇生されていないんだけど……)チラッ

マンボウの群れ「……」

小魚の群れ「……」パクパク

マンボウ(出来れば、早くしてほしい……)

マンボウ(早く、私のお仲間達を蘇生してほしい……)

マンボウ(このまま、私も食べられるのかしら?……)

マンボウ(ついさっきから、小魚さん達が食事を開始したんだけど……)

小魚の群れ「……」パクパク

魚の群れ「……」パクパク

マンボウ(ああ、他の魚の群れも来ちゃった……)

マンボウ(皆、私のお仲間達を食べていく……)

マンボウ(あれ、もう助からないわね……)

マンボウ(あんな感じでも、魔法で蘇生出来たりするものなの?……)

マンボウの群れ「……」

小魚の群れ「……」パクパク

マンボウ(けど、私だって蘇生されたんだから、蘇生出来るのよね?……)

マンボウ(今は、魔法もかなり発達してるし、蘇生だって出来る……)

マンボウ(でも、あんな今のお仲間達の姿見たくないわ……)

マンボウ(ここは、私が出てお仲間達の事を食べられない様にしなきゃ……)

小魚の群れ「……」パクパク

魚の群れ「……」パクパク

魔法使い「あっ、マンボウ達が食べられてる!?」

魔法使い「ちょっと、何で皆はマンボウ達を食べてしまってるの!?」ガーーン

エルフ母子「!?」ガーーン

魔法使い「早く、早くマンボウを助けなきゃ!」

魔法使い「エルフさん達、早く来て下さい!」アセアセッ

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ母「え? ちょっと、何で食べられてるのよ!?」

エルフ母「何で、誰も見てなかったのよ!?」アセアセッ

小魚の群れ「……」パクパク

エルフ母「このままだと、マンボウが全て食べられちゃう!」

エルフ母「早くなんとかしないと、皆、食べられてしまうわよ!」アセアセッ

魚の群れ「……」パクパク

魔法使い「エルフさん。どうしますか?……」

魔法使い「このまま、蘇生って出来るんでしょうか?……」アセアセッ

魚の群れ「……」パクパク

エルフ母「まずは、あの水槽内にいる小魚達をなんとかして!」

エルフ母「その間に、マンボウを全て水槽内から出すわ!」アセアセッ

魚の群れ「……」パクパク

魔法使い「エルフさん。今から、ボクが小魚達をなんとかします!」

魔法使い「早く、その間にマンボウ達を!」アセアセッ

エルフ母「ええ、了解したわ!」アセアセッ

魔法使い「それと、この水槽の下からは地下海水を汲み上げています!」

魔法使い「そうしないと、この水槽内の魚達が全て死滅!」

魔法使い「ボクの持つ水槽は、少し違うタイプなんで!」アセアセッ

魔法使い「……」スッ

魔法使い「……」ブツブツ

魔法使い「……」ブツブツ

エルフ母「……」スッ

エルフ母「……」ブツブツ

エルフ母「……」ブツブツ

魔法使い「……」ブツブツ

魔法使い「……」ブツブツ

魔法使い「はっ!」ブワッ

エルフ母「……」ブツブツ

エルフ母「……」ブツブツ

エルフ母「はっ!」ブワッ

小魚の群れ「……」パクパク

小魚の群れ「……」パクパク

小魚の群れ「……」ピタッ

マンボウの群れ「……」

小魚の群れ「……」クルッ

小魚の群れ「……」スイスイ

魚の群れ「……」パクパク

魚の群れ「……」パクパク

魚の群れ「……」ピタッ

マンボウの群れ「……」

小魚の群れ「……」クルッ

小魚の群れ「……」スイスイ

マンボウ(あっ、小魚さん達の動きが止まった……)

マンボウ(あの魔法使い達、すぐに対処した様ね……)

マンボウ(でも、私のお仲間は結構食べられているわよ……)

マンボウ(あれ、本当に蘇生出来るのかしら?……)

マンボウの群れ「……」

マンボウ「……」

エルフ母「あら? 一匹だけ無事だわ……」

エルフ母「あのマンボウ、ひょっとしてまだ生きているの?……」

マンボウ「……」

エルフ母「その様子だと、まだ生きているみたいね……」

エルフ母「てっきり、皆食べられちゃってると思ってた……」

魔法使い「……ええ、そうですね」

エルフ母「でも、他の四匹は結構食べられたわね……」

エルフ母「これ、ちゃんと蘇生出来るかしら?……」

魔法使い「……」

エルフ母「一応、このままやってみる?……」

エルフ母「それが無理なら、まだ一匹だけ残ったマンボウを使えば良いんだし……」

ザザーーン、ザザーーン……

魔法使い「ええ、そうですね……」

魔法使い「それが無理なら、また一匹捕獲してきたら良いだけですし……」

マンボウ「!?」ガーーン

魔法使い「でも、この子性格悪いですよ……」

魔法使い「相手のオスが、嫌がらなければいいんですけど……」

マンボウ「……」ムカッ

エルフ母「でも、それしか方法がないでしょ?……」

エルフ母「現に、マンボウが四匹も食べられたんだし……」

魔法使い「……」

エルフ母「と言うか、これどこで捕まえるの?……」

エルフ母「適当に、海の中を探していたら見つかるのかしら?……」

魔法使い「さぁ?……」

「お母様。ちょっと、来て!」

「なんか、海に沢山のマンボウ達がいる!」

「私の仕掛けたネットに、マンボウが沢山掛かっちゃった!」

エルフ母「え?」クルッ

魔法使い「は?」クルッ

マンボウ「……」

「おおっ、これは大漁ですなぁ!」

「これなら、エルフの里にも持ち帰れますなぁ!」

エルフ母「……」

「ああっ、この子かなり大きい!」

「もしかして、子持ちの子だったのかしら?」

魔法使い「……」

「とりあえず、お母様達は水槽の中にある残骸はすぐに捨てて!」

「今から、私が新しい子達を入れる!」

「なんか、今日は大漁みたいだからね!」

「このままだと、そこの水槽の中で産卵出来ちゃうわ!」

エルフ母「……そう。了解したわ」ガクッ

ザザーーン、ザザーーン……

~とある生け簀2~

その日の夕方――

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ……

魔法使い「……」

マンボウ「……」プカプカッ

マンボウ「……」プカプカッ

魔法使い「……」

マンボウ「……」プカプカッ

マンボウ「……」プカプカッ

魔法使い「……」

魔法使い「もうすぐ、日が落ちるね」

魔法使い「つい最近までは、遅かったのに」

マンボウ「……」プカプカッ

魔法使い「そろそろ、日向ぼっこを止めたら?」

魔法使い「君も、もうすぐ寝る時間なんでしょ?」

マンボウ「……」プカプカッ

魔法使い「君、もしかして寝てる?」

魔法使い「それとも、卵を産めなかったのがそんなに悔しかったの?」

マンボウ「……」プカプカッ

魔法使い「やっぱり、あんなの見せられたら交尾出来ないよね……」

魔法使い「向こうにある生け簀の中では、多数のカップルが出来ちゃってたんだから……」

マンボウ「……」ムカッ、クルン

マンボウ「あなた、さっきから煩いわよ!……」

マンボウ「私、全然悔しくはないもん!……」ムカムカッ

魔法使い「……」

マンボウ「私、早く海に戻りたいの!」

マンボウ「と言うか、何でこんな海から遠くの生け簀に入れちゃうのよ!」

魔法使い「……」

マンボウ「あなた、やっぱり私の事を騙してたのね!」

マンボウ「私の事、最初から体目的だったんだ!」ムカムカッ

魔法使い「……」

マンボウ「それで、私の事をどうするの?」

マンボウ「あの性悪なエルフ達みたいに、私の事を弄ぶの?」ムカムカッ

魔法使い「……」

マンボウ「私、ここにいるだけでもかなりのストレスだわ!」

マンボウ「私の種族は、かなりデリケートなの!」

魔法使い「……」

マンボウ「早く、早く私の事を海に戻して!」

マンボウ「私は、早く海に戻りたい!」

魔法使い「……」

魔法使い「そんなに、嫌?」

魔法使い「ここでしばらく大人しくしとくのは、そんなに嫌?」

マンボウ「ええ、そうよ!」ムカムカッ

魔法使い「けど、まだ君はここにいた方が良いよ!」

魔法使い「エルフさん達、ついさっきから海でなんかしてるから!」

マンボウ「!?」

マンボウ「ねぇ、ちょっと、今のどう言う事よ!?」

マンボウ「あのエルフ達、一体何をしてしまってるのよ!?」アセアセッ

魔法使い「……」

マンボウ「あなたは、何か知ってるの!?」

マンボウ「私のお仲間達、一体どうなるの!?」アセアセッ

魔法使い「……」

魔法使い「ごめん。何も言えないかな!」

魔法使い「エルフさん達、結構凄い事してるから!」

マンボウ「!?」ピタッ

魔法使い「だから、君はまだここにいた方が良い!」

魔法使い「今、海に向かったら、すぐさま君までエルフさん達の餌食になるよ!」

マンボウ「……」ダラダラッ

魔法使い「とりあえず、君はまだ居て!」

魔法使い「エルフさん達、かなり凄い事をしちゃってる!」

魔法使い「今行ったら、確実に君まで産卵しちゃうかな?」

魔法使い「本当に、エルフさん達ってある意味で凄い人!」

魔法使い「繁殖時期が分からなかったから、魔法ですぐさま繁殖時期にしちゃってるから!」

マンボウ「……」ダラダラッ

マンボウ「……ちょっと、今の冗談でしょ?」

マンボウ「あのエルフ達、本気で卵を産ませてるの?……」ダラダラッ

魔法使い「うん!」

マンボウ「そんな事をしてたら、卵自体が食べられちゃう!」

マンボウ「私達の卵は、そのまま海に垂れ流ししてるのよ!」ダラダラッ

魔法使い「!?」

魔法使い「え? そうなの?」

魔法使い「君の種族は、卵を垂れ流ししてるの!?」

マンボウ「何か悪い?」ムカッ

魔法使い「そんな事をしてたら、卵が食べられちゃう!」

魔法使い「いくらあっても、すぐに卵がなくなっちゃうじゃん!」

マンボウ「ええ、そうよ!」ムカムカッ

マンボウ「あなた、何も知らなかったの?」

マンボウ「私達は、人間と違うのよ!」ムカムカッ

魔法使い「……」

マンボウ「あのエルフ、かなり厄介だわ……」

マンボウ「こんな浅い場所でやったら、すぐに全滅してしまうわ……」ムカムカッ

魔法使い「……」

マンボウ「はぁ、最悪……」

マンボウ「もう最悪だわ……」

マンボウ「一体、あのエルフ達は何を企んでいるのよ?……」

マンボウ「私達の事、本当にどうしたいのよ?……」

マンボウ「ああ、イライラする……」ムカムカッ

魔法使い「……」

マンボウ「それで、あなたはここに何しに来たの?」

マンボウ「私の事、あのエルフ達に言われて監視しに来たの?」ムカムカッ

魔法使い「……」コクン

マンボウ「私、あなたの事も嫌いだわ!」

マンボウ「私のお仲間、目の前で四匹も殺されちゃったから!」ムカムカッ

魔法使い「……」

魔法使い「君、あまりストレスを溜めない方が良いよ!」

魔法使い「ついさっきから、ずっと怒ってばっかじゃん!」

マンボウ「……」ムカムカッ

魔法使い「ボクは、君の為に君の事を保護してるんだよ!」

魔法使い「少しは、君も態度を軟化させてよ!」

マンボウ「……」ムカムカッ

マンボウ「ごめんなさい。それ無理かも!」

マンボウ「私、本当に性格が悪いもの!」

マンボウ「早く、あなたは私の事を解放してくれる!」

マンボウ「今すぐにとは言わないけど、早くここから出たい!」ムカムカッ

魔法使い「……」

シュピン……

魔法使い「ん? エルフさんからの通信……」

魔法使い「マンボウ達が、海で産卵を開始した……」

魔法使い「その卵の数が、とても尋常じゃない……」

魔法使い「海一面が、卵に覆い尽くされている?……」

魔法使い「だから、早く戻ってきて……」

マンボウ「!?」ガーーン

魔法使い「それに加えて、ウチの娘がまた余計な事をした……」

魔法使い「ウチの馬鹿娘は、20匹のマンボウを一気に産卵させた……」

魔法使い「その結果、海にマンボウの卵が多数流出……」

魔法使い「その卵が、波に流されて遠くにまで拡散……」

魔法使い「おまけに、ウチの馬鹿娘は卵自体を強化してしまっていた……」

マンボウ「……」

魔法使い「だから、早くこっちに戻ってきて……」

魔法使い「このままだと、海にマンボウが溢れ返ってしまう……」

魔法使い「あの子、本当に何を考えているかが分からない……」

魔法使い「早く、あなたもこっちに戻ってきて……」

魔法使い「そうしないと、世界中にマンボウが拡散しちゃうわよ……」

マンボウ「……」

魔法使い「これ、何かの冗談だよね?……」

魔法使い「エルフさん。ボクに冗談を言っているんだよね?……」ダラダラッ

マンボウ「……」

魔法使い「まさか、エルフさんの言っている事が本当だとか?……」

魔法使い「君の種族は、多産系なのかな?……」ダラダラッ

マンボウ「ええ、そうよ……」

魔法使い「じゃあ、このまま無事に成長しちゃったら?……」

魔法使い「このまま、卵が無事に成長しちゃったらどうなるの?……」ダラダラッ

マンボウ「……」

魔法使い「君、何で黙ってるの?……」

魔法使い「出来れば、ついさっきまでみたいに何か喋ってほしい……」ダラダラッ

マンボウ「……」

マンボウ「あのまま、私の種族は大量に増殖するわ……」

マンボウ「普通は、運良く生き残ったとしても、僅か数匹しか無理なのに……」

魔法使い「……」ダラダラッ

マンボウ「あのエルフ、一体どの辺りを強化したの?……」

マンボウ「そんな事したら、この世界の生態系すら大きく乱れちゃうわよ……」

魔法使い「!?」ガーーン

マンボウ「大体、20匹だから30億くらいね……」

マンボウ「私達の種族は、一匹につき3億産むの……」

マンボウ「でも、私達の卵はすぐに食べられるわ……」

マンボウ「今はまだ、尋常じゃない数が流出しちゃったけど……」

マンボウ「卵自体が受精してなかったら、大した問題じゃない……」

魔法使い「……」ダラダラッ

マンボウ「とりあえず、あなたは早くエルフ達の元に戻って……」

マンボウ「私は、仕方なくここで大人しくしてる……」

マンボウ「本当に、何でこうなったのかしらね?……」

マンボウ「私はただ、ゆっくりと海を漂っていたかったのになぁ……」

マンボウ「はぁ……」

魔法使い「……」ダラダラッ

~とある砂浜2~

エルフ「はぁ、疲れた……」

エルフ「あれだけの量を相手するのは、さすがの私も疲れるわ……」

エルフ「思えば、あのマンボウ達、卵沢山産むのね……」

エルフ「今まで、結構長く生きてきたけど、あんな多くの卵を産む生物は見た事がないわ……」

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ「それで、お母様……」

エルフ「どうして、私は縛られているの?……」

エルフ「私、何も悪い事なんてしてないわよ……」

エルフ母「……」ニコニコ

エルフ「出来れば、今すぐ縄をほどいてほしい……」

エルフ「私、本当に何も悪い事なんてしてないんだから……」

エルフ母「あんた、それ本気で言っているの?」

エルフ母「だったら、何で卵全部海に流すのよ?」ニコニコ

エルフ「……」

エルフ母「私、あんたに言ったわよね?」

エルフ母「“あんたは、大人しく良い子にしてなさい!”」

エルフ母「“あんたが何かする度に、結構な被害が出てきちゃうんだから!”」ニコニコ

エルフ「いや、そんな事ないかな……」

エルフ「私、何も余計な事なんてしてないから……」

エルフ母「……」ニコニコ

エルフ「ちょっと、あのマンボウ達を見てたら懐かしくなってね……」

エルフ「“昔は、私もあんな風だった”……」

エルフ「“ああやって、ただただ無惨に簡単に死んでしまうんだったって”……」

エルフ母「それで、あんたはあんな事をしたの?」

エルフ母「あの子達の事を、どれくらい強化したの?」ニコニコ

エルフ「……」

エルフ母「出来れば、ちゃんと正直に答えてほしいなぁ」

エルフ母「私、あんたの事をこのまま海に流したくはないなぁ」ニコニコ

エルフ「!?」ビクッ

エルフ母「だから、あんたは早く正直に全てを話してくれる?」

エルフ母「じゃなきゃ、あんたをサメの餌にするわよ!」

エルフ母「あんたのその綺麗な体、あの老騎士達みたいにずたずたにするわよ!」ニコニコ

エルフ「……」ビクビク

エルフ母「……」ニコニコ

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ母「さぁ、早く答えて!」

エルフ母「じゃないと、サメだけじゃなく、クラーケンもつけるわよ!」

エルフ母「あんた、結構そう簡単には死なないし!」

エルフ母「このまま、無事にエルフの里に戻れると本気で思っている訳?」ニコニコ

エルフ「……」ビクビク

エルフ母「……」ニコニコ

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、ピタッ……

魔法使い「……」

従者A「奥様。魔法使いのXXXXさんがお見えです」

従者A「かなり、今回の事には大変驚かれているご様子ですが」

エルフ母「ああ、いらっしゃい。XXXXさん……」

エルフ母「見ての通り、物凄く最悪な事態が起きてしまっていますわ……」クルッ

魔法使い「……」

エルフ母「従者A。作業に戻って」

エルフ母「ここは、私達のみでも大丈夫だから」

従者A「はい。かしこまりました」

エルフ母「それと、今晩はこの近くに夜営するわ!」

エルフ母「従兵隊にも、夜営の準備をすぐにさせといて!」

従兵A「はい。かしこまりました!」ペコッ

魔法使い「……」

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

エルフ「……」ビクビク

エルフ母「……」

魔法使い「……」

マンボウの群れ「……」プカプカッ

カァカァカァ、カァカァカァ……

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ母「さて、XXXXさんも揃った事だし、早く話してくれる?」

エルフ母「今のあんた、かなりまずい事をしてるわよ!」

エルフ母「あのマンボウ達の事を、一体どうするつもりなの?」ニッコリ

エルフ「……」ビクビク

魔法使い「……」ジーーッ

マンボウの群れ「……」プカプカッ

エルフ母「あんた、もしかして何も話さない気?」

エルフ母「さすがに、それはかなりまずいんじゃない?」ニコニコ

エルフ「……」ビクビク

エルフ母「はぁ、仕方ないわね……」

エルフ母「あんたがそう言う態度に出るんなら、今すぐあんたの事を海に沈めるわ!」ニコニコ

エルフ「!?」ガーーン

エルフ母「……」スッ

エルフ母「……」ブツブツ

エルフ母「……」ブツブツ

エルフ母「……」ブツブツ

エルフ母「……」ブツブツ

エルフ「……まっ、待って!」ビクビク

エルフ母「……」ブツブツ

エルフ母「……」ブツブツ

エルフ母「……」ブツブツ

エルフ母「……」ブツブツ

エルフ母「はっ!」ブワッ

エルフ「お母様。止めて!」フワワッ

エルフ母「なら、早く答えなさい!」

エルフ母「じゃないと、あんたの事をサメの餌にする!」イラッ

魔法使い「!?」ガーーン

エルフ母「今のあんた、かなりいい度胸してるわ!」

エルフ母「自然を守るはずのエルフが、自分で自然を破壊してしまってるから!」イライラッ

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ母「相変わらず、あんたは本当に馬鹿なんだから!」

エルフ母「あんな、性悪女の事すら本当に赦せちゃうんだから!」

エルフ母「とりあえず、早く答えて!」

エルフ母「私、この手で実の娘を殺したくはないわ!」

エルフ母「だから、早くあんたは全て正直に白状をしなさい!」イライラッ

フワワッ、フワワッ……

エルフ「ただ単に、マンボウを増殖させてみたかったから……」

エルフ「お母様は気づいてたかどうか知らないけど、私達の持っているマンボウが一匹不自然だったから……」フワワッ

エルフ母「……は?」

魔法使い「どう言う事?」キョトン

エルフ「その様子だと、何も気づいてなかったみたいね……」

エルフ「お母様は、私よりも遥かにまともだから……」フワワッ

エルフ母「それで、そのマンボウがどうしたの?」

エルフ母「あんた、一体何に気づいてたの?」

魔法使い「……」

エルフ「実は、私達の持っていたマンボウの一匹は、魔法によって増やされていたの……」

エルフ「蘇生したら一発でバレるけど、あれは明らかに魔法によって増やされていたマンボウだった……」フワワッ

エルフ母「!?」

エルフ「普通、魚なんか蘇生する人って、なかなかいないよね?……」

エルフ「あのマンボウは、魔法によって増やされていたから魂がない……」

エルフ「おまけに、今そこにいるお兄さんが捕獲したマンボウは、あの漁港から逃げ出したと思われるマンボウ……」

エルフ「私は、それにすぐ気づいて色々と対策をしたわ……」

エルフ「あのマンボウ、明らかに何らかの力を備え持っている……」フワワッ

エルフ母「……」

エルフ「だから、私はあのマンボウが気になって仕方ないの!……」

エルフ「あのマンボウは、死んですぐあの漁港で自己再生を開始していたの!……」

エルフ「どの道、海に流れた数多くの卵はすぐに孵るわ!……」

エルフ「私が、色々と魔法で強化しといたし!……」

エルフ「あのマンボウ達も、そう簡単にはすぐには死ねないのかもね!……」フワワッ

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ「……」

エルフ母「……」

魔法使い「……」

マンボウの群れ「……」プカプカッ

エルフ母「……」スッ

フワワッ、フワワッ……

エルフ「あの、お母様……」

エルフ「何で、海に近くなったの?……」

エルフ「私、ちゃんと理由を話したじゃない……」フワワッ

魔法使い「……」

エルフ「だから、早く降ろしてほしいなぁ……」

エルフ「私、このまま海に沈みたくない……」フワワッ

エルフ母「ごめん。それ無理かも」

エルフ母「今の私、まだ聞きたい事があるの」ニッコリ

エルフ「!?」ビクッ

エルフ母「あのマンボウ達、どうやったら死ぬの?」

エルフ母「今の私は、すぐに処理しなきゃいけないんだけど」ニコニコ

マンボウの群れ「……」プカプカッ

エルフ母「まさか、あんた卵も増やしたとか?」

エルフ母「卵も増やして、海に全部ばら蒔いたとか?」ニコニコ

エルフ「……」フルフル

エルフ母「なら、何であんなに卵産むの?」

エルフ母「あれ、元からそうだったって言いたいの?」ニコニコ

エルフ「……」コクン

エルフ母「ねぇ、XXXXさん。それ本当かしら?」クルッ

エルフ母「私、あんまりこの子の言う事は信じられないの」

魔法使い「……」ビクッ

エルフ母「やっぱり、この子嘘ついてるわよね?」

エルフ母「普通、あんな大量の卵を一度に海に垂れ流す魚が、どこにいるのよね?」ニッコリ

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ「お母様。私、嘘なんて言ってないわ……」

エルフ「本当に、あの子達は自分で産んだ卵を垂れ流しているの……」フワワッ

エルフ母「……」クルッ

エルフ「それに加えて、オスのマンボウは海中に精〇を大量に放出した……」

エルフ「海中に漂う多数の精〇が、メスの産んだ卵に向かって泳いでいくの……」フワワッ

エルフ母「……」スッ

エルフ「だから、私の事を海に突き落とさないでくれる?……」

エルフ「さりげなく、私の近くにサメを配置しないでくれる?……」

エルフ「せめて、殺されるのならお母様の胸の中で死にたい……」

エルフ「前世では、ろくに一緒の時間が取れなかったんだし……」

エルフ「どうせ死ぬのなら、お母様の胸の中で死にたいなぁ……」フワワッ

エルフ母「……XXXXXX」

エルフ「……」フワワッ

エルフ母「……」

魔法使い「……」

マンボウの群れ「……」プカプカッ

エルフ「……」ジーーッ

魔法使い「……」ジーーッ

エルフ母「……」スッ

フワワッ、フワワッ……

フワワッ、フワワッ……

スッ、スタッ……

エルフ「ふぅ……」

魔法使い「ほっ……」

エルフ母「……」スッ

エルフ母「……」ブツブツ

エルフ母「……」ブツブツ

エルフ母「はっ!」ブワッ

エルフ「!?」ビクッ

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ「おっ、お母様。何するの?……」

エルフ「私の体、完全に動かないんだけど……」

魔法使い「……」

エルフ母「あんたの望み通りに、私の胸の中で死なせてあげる!」

エルフ母「だから、あんたはそこでじっとしてなさい!」ニッコリ

エルフ母「!?」ガーーン

エルフ母「あら? どうしたの?」

エルフ母「あんた、私の胸の中で死にたかったんでしょ?」ニコニコ

エルフ「……」

エルフ母「だから、今から私の胸の中で死なせてあげるの!」

エルフ母「今度は、絶対にあんたの事を離さないんだからね!」ニコニコ

エルフ「……」ガクッ

エルフ母「まぁ、今はそんな事より、あのマンボウ達が垂れ流した卵の方が先よ!」

エルフ母「XXXXさん、船はお持ちで?」

エルフ母「もし仮に、船をお持ちでしたら、少しの間お借りしたいのですが」クルッ

魔法使い「……え? あっ、はい……」

エルフ母「なら、少しの間お借りしますね!」

エルフ母「あのマンボウ達の卵、すぐに処分しなくてはなりませんから!」ニッコリ

魔法使い「いや、大丈夫ですよ……」

魔法使い「あの子が言うには、すぐに全滅するみたいなんですけど……」

エルフ母「え?」キョトン

エルフ「!?」ガーーン

魔法使い「どうやら、あの子の種族は、かなりデリケートらしいんです……」

魔法使い「たとえ、あれだけ多くの卵を産んだとしても、実際に生き残るのは僅か数匹みたいですから……」

エルフ母「娘、あんたそれ知ってた?」

エルフ母「あのマンボウ達、そんなにすぐ全滅するものなの?」チラッ

エルフ「……」フルフル

エルフ母「ちなみに、それ本当なの?」

エルフ母「何で、もっと早くにそれを言わなかったの?」イラッ

ザザーーン、ザザーーン……

魔法使い「すみません。エルフさん……」

魔法使い「なんか、すぐには言い出せなくて……」

エルフ母「……」ギロッ

魔法使い「ボク、あまりにもエルフさん達のする事が珍しくて……」

魔法使い「さすがに、すぐには言い出せなかったんです……」

エルフ母「……」イライラッ

エルフ母「じゃあ、あのマンボウ達はすぐに死ぬの?」

エルフ母「私が、わざわざ殲滅しに行かなくても済むと言うの?」イライラッ

魔法使い「はっ、はい……」

エルフ母「なら、大体どれくらいで?」

エルフ母「その辺についても、ちゃんと聞いて来てるのよね?」イライラッ

エルフ「……」ジーーッ

魔法使い「確か、あの子が言うには、大半が卵の状態でなんです……」

魔法使い「たとえ、卵が成長出来たとしても、ストレスにかなり弱い……」

魔法使い「あの子の体の中には、かなり寄生虫がいましたからね……」

魔法使い「自然と、その体の内外に寄生している虫達によって、すぐに死亡してしまいます……」

魔法使い「あの子達の種族は、ちょっとした事でもすぐに死でしまうそうなんです……」

エルフ母「……は?」

エルフ「なら、何であの子はまだ生きてるの?……」

エルフ「あの子、もしかして突然変異なの?……」

魔法使い「……」

エルフ「やっぱり、あの子はただのマンボウじゃないんだ……」

エルフ「あの子は、お魚に擬態したモンスターなんだ……」

魔法使い「……」

エルフ母「とりあえず、後で詳しい話を聞くわ……」

エルフ母「もう、今日は日が暮れてきたし……」

エルフ母「あのマンボウ達の卵、見かけによらずすぐ死ぬみたいね……」

エルフ母「何で、ウチの馬鹿娘はそんなのにも肩入れするんだか……」

エルフ母「はぁ……」ガクッ

ザザーーン、ザザーーン……

そうです。

~とある民家前~

シューーーーーーーーッ、シュタッ

魔術師「……」

魔術師「……」パチッ

魔術師「……」キョロキョロ

魔術師「……」キョロキョロ

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ……

トントン、トントン……

魔術師「XXXX君、いる?」

魔術師「XXXXXだけど、ちょっと良いかな?」

魔術師「……」

魔術師「……」

魔術師「……?」

トントン、トントン……

魔術師「XXXX君、いる?」

魔術師「もしかして、今はいないのかな?」

魔術師「……」

魔術師「……」

魔術師「……」

魔術師「これ、明らかにいないよね……」

魔術師「全く、XXXX君はどこ行ったんだか……」

魔術師「はぁ……」ガクッ

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、ピタッ……

「あれ? XXXXXじゃない……」

「君、まだ仕事中じゃなかったの?……」

魔術師「!?」クルッ

魔術師「あっ、XXXX君いた」

魔術師「一体、今までどこに行っていたの?」

魔法使い「……」

魔術師「と言うか、その人誰?……」

魔術師「なんか、どっかで見た様な気がするんだけど……」ムカッ

エルフ母「……」

魔法使い「ああ、この人?」

魔法使い「この人は、エルフの里から来たXXXXXXさん」

魔法使い「つい昨日、すぐそこの海に流れついた不思議な生き物の件で、ここにいらしててね」

魔法使い「今は、ボクと行動を共にしてもらっている訳」

エルフ母「……」ペコッ

魔術師「……」ムカムカッ

魔術師「ふぅ~~ん。そうなんだ……」

魔術師「もう私は、XXXX君の側にいちゃいけないんだ……」ムカムカッ

魔法使い「え?」

魔術師「私、信じてたのに……」

魔術師「XXXX君、人間の女の子よりもエルフの方を取るんだ……」ムカムカッ

魔法使い「……XXXXX?」

魔術師「XXXX君。もしかして、浮気してた?」

魔術師「私の事を捨てて、その人に乗り換えちゃったとか?」ギリッ

魔法使い「は?」

エルフ母「……」ニヤッ

魔術師「私、信じてたのに!」

魔術師「私の初めて、XXXX君に捧げたのに!」ギリギリッ

魔法使い「ごめん。何の話してるの?……」

魔法使い「ボク、君と交わった覚えすらないんだけど……」

魔術師「!?」ガーーン

魔法使い「と言うか、何でここにいるの?……」

魔法使い「君、まだ仕事中なんじゃ……」

エルフ母「……」ニヤニヤ

魔術師「いや、まだ終わってないかな……」

魔術師「私、今日は仕事でここに来たの……」

魔術師「なんか、この辺りで巨大なモンスターが多数暴れてるって知らせが来てね……」

魔術師「XXXX君がこの付近に住んでいたから、それで協力をお願いしようと思って来たの……」ズーーン

魔法使い「あっ……」ギクッ

エルフ母「……」ニヤニヤ

魔術師「ねぇ、XXXX君。何か知ってる?」

魔術師「君は、一体何を隠しているの?」ギリッ

魔法使い「……」ビクッ

魔術師「私、少しショックかな……」

魔術師「XXXX君は、私の体しか興味なかったみたいだから……」ギリギリッ

魔法使い「ちっ、違うけど……」ビクビクッ

エルフ母「なら、今ここではっきりさせてあげたら、どうかしら?」

エルフ母「XXXXさん。本当に、ただの女たらしみたいですからね」ニヤニヤ

魔術師「あんっ!?」ギリギリッ

魔法使い「……」ビクビクッ

魔術師「貴女、何か知ってるの?……」

魔術師「私の彼に、一体何をしたと言うの!?」ギリギリッ

エルフ母「私、実を言うと、彼に体を要求されました」

エルフ母「つい先日、彼は何度も何度も私の体を貪る様に求め続けていました」ニヤニヤ

魔法使い「!?」ビクビクッ

魔術師「――――――――っ!?」ガーーン

エルフ母「おまけに、私の娘にまで……」

エルフ母「親子共々、XXXXさんに食べられてしまいましたわ……」ニヤニヤ

魔術師「……XXXX君、今の冗談だよね?」

魔術師「今更、私の事を捨てたりはしないよね?……」ニッコリ

魔法使い「……」ビクビクッ

魔術師「私、XXXX君の事を信じてるから!」

魔術師「いくら顔や体が良くたって、こんなおばさんに負けたって信じたくないから!」ニコニコ

エルフ母「……」ピキッ

エルフ母「……おばさん?」

エルフ母「確かに、今の私はおばさんと言われても仕方ないですよ」

エルフ母「ですが、XXXXさんが私の体を貪る様に求めていたのは、確たる事実」

エルフ母「しかも、私だけでは飽き足らずに娘にまで手を出していましてね」

エルフ母「私の娘も、彼に手を出されました」

エルフ母「ついさっきも、私達親子は彼のお相手をしておりましたわ」ニッコリ

魔術師「……ごめん。XXXX君」

魔術師「私、もう帰るわ……」

魔術師「XXXX君の事、本気で見損なっちゃった……」ウルウル

魔法使い「!?」

魔術師「XXXX君にとって、私は体しか価値がないんだね……」

魔術師「私の事、ただただ好き放題弄んでいただけなんだ……」ウルウル

魔法使い「ごめん。ついさっきから何の話してるの?……」

魔法使い「ボク、そんなつもりで君と付き合っていた訳じゃないんだけど……」ビクビクッ

魔術師「!?」ピカァッ

魔法使い「そもそも、ボクはエルフさんともしてないよ……」

魔法使い「エルフさん達とは、つい最近になって知り合ったばかりなんだけど……」ビクビクッ

魔術師「……っ!」ポロポロッ

魔法使い「だから、君は変に誤解とかしないでくれる?……」

魔法使い「ボク達、ただのクラスメイトじゃないか……」ビクビクッ

魔術師「――――――――っ!?」ガーーン

魔法使い「だから、君も変に誤解とかしないで……」

魔法使い「ボク達は、ずっとこれからも、ただのクラスメイトなんだよ……」ビクビクッ

魔術師「……」ポロポロッ

魔法使い「後、エルフさんも変に悪ノリをしないで下さい……」

魔法使い「今日だけでも、色々とあったんですし……」

魔法使い「早く、あの子に話を聞かないと……」

魔法使い「じゃないと、また大変な事になりそうですからね……」ビクビクッ

エルフ母「ええ、了解したわ」ニヤニヤ

魔術師「……」ポロポロッ

魔術師「……」ポロポロッ

魔術師「……」ポロポロッ

魔術師「……」ポロポロッ

魔術師「……」ポロポロッ

魔術師「……」ポロポロッ

魔術師「……」ポロポロッ

魔術師「……」ポロポロッ

魔術師「……」ポロポロッ

魔術師「……」ポロポロッ

魔術師「……」ポロポロッ

魔術師「……」ポロポロッ

魔術師「……」ポロポロッ

エルフ母「XXXXさん。宜しいのですか?」

エルフ母「あなたの彼女、ずっと泣かせたままですが」

魔術師「……」ピクッ

魔法使い「いや、大丈夫ですよ……」

魔法使い「彼女、ああ見えて結構頑丈なんで……」ビクビクッ

魔術師「……」ガクッ

エルフ母「でも、彼女を泣かせたのはあなたですよ」

エルフ母「彼女は、今からあなたと行動を共にするんですよ」

魔術師「……」ピクッ

魔法使い「えっ!?」ガーーン

エルフ母「……」

魔術師「……」ポロポロッ

魔術師「そんなに、嫌?……」

魔術師「私と一緒は、そんなに嫌?……」ギロッ

魔法使い「!?」ブンブン

魔術師「なら、私は君と一緒にいても良いんだよね?……」

魔術師「私と一緒に、モンスター退治をしてくれる?……」ポロポロッ

魔法使い「……」コクンコクン

魔術師「後、私は来月から、君より上の立場だから!……」

魔術師「もう既に、君と結婚するって周囲に報告してるから!……」ポロポロッ

魔法使い「――――――――っ!?」ガーーン

魔術師「だから、もう無駄だよ!……」

魔術師「いくら、君が否定したとしても、もう無駄なんだよ!……」ポロポロッ

魔法使い「……そ、そんな……」ビクビクッ

魔術師「だから、絶対に逃げないでね、XXXX君!……」

魔術師「私の事、ちゃんと愛してね、XXXX君!……」

魔術師「私、君の事を愛してるから!……」

魔術師「君は、何も覚えていないかもしれないけど……」

魔術師「私、ついこの間、君の寝込みを襲って交わってしまってる!……」ポロポロッ

魔法使い「……」ビクビクッ

魔術師「それに、今度、君が私の住む町に来たら、神父様を呼ばないとね……」

魔術師「私のお腹の中には、君との子供がいるんだよ……」

魔術師「本当は、かなりいけない事なんだけど……」

魔術師「もう既に、私の住む町では、皆が知っている事実なんだからね……」ポロポロッ

魔法使い「……」ビクビクッ

エルフ母「……」ニヤニヤ

魔術師「……」ポロポロッ

魔術師「……」ポロポロッ

魔法使い「……」ビクビクッ

魔術師「……」ポロポロッ

魔術師「……」ポロポロッ

魔法使い「……」ガクッ

魔術師「ああ、ちょっとやり過ぎちゃったかな……」ポロポロッ

魔術師「本当は、そんな事実(肉体関係+婚約)は無いんだけど……」ポロポロッ

魔法使い「……」

魔術師「私、何も悪くないもん……」スッ

魔術師「全て悪いのは、XXXX君なんだからね……」フキフキ

エルフ母「……」ニヤニヤ

エルフ母「うふふっ……」

エルフ母「よほど、あなたはXXXXさんの事がお好きみたいですね……」

エルフ母「そのまま、本当に結婚してしまえば良いのに……」

エルフ母「今のあなたが遠慮する必要は、一体どこにあるんですか?」

エルフ母「早くしないと、本当に誰かに取られてしまいますよ」ニヤニヤ

魔術師「……」ピクッ

魔術師「あなた、一体何者?……」

魔術師「あなたと私、昔どこかで会った事ある?……」

エルフ母「……」

魔術師「私、あなたの事をどこかで見かけたの……」

魔術師「それが、本当にいつどこでかについてが、全く思い出せていない……」

エルフ母「……」

魔術師「それで、あなたは一体何者なの?……」

魔術師「ここで、一体何をしているの?……」

エルフ母「……」

魔術師「確か、つい数日前から私の住む町に来ていたのよね?……」

魔術師「あれだけの数のモンスターの死骸、一体何に使うと言うの?……」

エルフ母「……」

エルフ母「そんなに、おかしいのですか?」

エルフ母「私はただ、各地で珍しい物を見つけては、それを持ち帰っているだけなんですが」

魔術師「……」

エルフ母「後、私には娘が一人いましてね」

エルフ母「今回は、私の娘が海を見たいって言うから、ここに来たと言う訳なんです」ニッコリ

魔術師「……」

魔術師「じゃあ、今そこにいるXXXX君との関係は?」

魔術師「物凄く器用に、立ったまま気絶してしまってますけど」

魔法使い「……」

エルフ母「彼とは、ついこの間に知り合いました」

エルフ母「彼もまた、珍しい魚をいくつもお持ちの様でしてね」

エルフ母「それを見に、ここまで出向いてきたと言う訳です」ニコニコ

魔術師「……そう。そうなの」

魔術師「それじゃあ、あなたはXXXX君とは肉体関係とかはないの……」

魔術師「その割りには、やけに色々と生々しかったわね……」

魔術師「てっきり、私は本当にXXXX君があなたに食べられたと思ってしまってたわ……」ホッ

エルフ母「……」

魔法使い「……」

魔術師「後、この辺で何か巨大なモンスターは見なかった?」

魔術師「私は、それを退治しにここまで来たんだけど」

エルフ母「いいえ、何も見てませんが」

魔術師「なら、あなたが昨日購入したモンスターの同型種かな?」

魔術師「この辺は、よく巨大なモンスターが出るみたいだし」

魔術師「XXXX君も、早くここから転居してほしいのよね」ハァ……

「いや、それは違うと思うけど……」

「確か、そこにいるお兄さんが、昨夜複数体のクラーケンを見たって……」

魔術師「え?」

エルフ母「……」クルッ

スッ、スタッ……

エルフ「……」

エルフ母「あんた、何でここにいるの?」

エルフ母「私、向こうで大人しくしときなさいって、言ったよね?」

魔術師「……?」

魔法使い「……」

エルフ「別に、そんな事は今は良いじゃん」

エルフ「今は、複数体のクラーケンを始末しないといけないんだし」

エルフ母「それで、そのクラーケンの情報は?」

エルフ母「あんた、彼から何か聞いているの?」

魔術師「……?」

エルフ「確か、この近くの海かな」

エルフ「あのお兄さんが捕獲したマンボウ、その複数体のクラーケンにも襲われていたみたいだから」

エルフ母「……」

魔術師「あの、エルフさん。こちらの方は?……」

魔術師「もしかして、この子があなたの言っていた娘さんですか?……」ジーーッ

エルフ「……」

エルフ母「ええ、そうですよ」

エルフ母「この子は、私の大事な一人娘なんです」

魔術師「……ああっ、やっぱり」

エルフ母「娘。どうしたの?」

エルフ母「あなた、向こうで魚を見てたんじゃなかったの?」ニッコリ

エルフ「……」ビクッ

エルフ母「もしかして、もう飽きちゃったとか?」

エルフ母「それで、こっちに来ちゃったのかしら?」ニコニコ

エルフ「うん。そうだけど……」

魔術師「この子、人間の言葉も話せるんですか?」

魔術師「まだ、こんなにも小さいのに」

エルフ「……」

エルフ母「ええ、そうなんですよ」

エルフ母「人間の言葉は、私がよく解るんでこの子にも教えておきましたわ」

魔術師「へぇ~~っ」

エルフ「あっ、あの……」

エルフ「何で、魔法使いのお兄さんは固まっているの?……」

エルフ「一体、何があったって言うの?……」

魔法使い「……」

エルフ「まさか、お母様がまた何かしたとか?……」

エルフ「ここ最近、お母様は欲求不満だったから、何かしちゃったったとか?……」

エルフ母「……あんた、普段から私の事をどう思ってるのよ」

エルフ母「私、欲求どころか、ストレスばっか溜まってるんだけど」ニッコリ

エルフ「!?」ビクッ

エルフ母「あんた、今から海に行きたい?」

エルフ母「それで、複数体のクラーケンを、すぐさま殲滅してきたい?」ニコニコ

エルフ「……」ブンブン

エルフ母「あら? そうなの?」

エルフ母「てっきり、今のあんたならやってくれると思ってた」

エルフ母「私、昔から性格とか色々と悪いし……」

エルフ母「それで、今のあんたは、もう既に幼児特有の嫌々期の真っ盛りと言う訳ね……」ニコニコ

エルフ「……」ビクビクッ

魔術師「……?」

エルフ母「XXXXXX。あんた、今からクラーケンを殲滅してきなさい!」

エルフ母「それが終わるまで、私の前にあんたは姿を見せちゃ駄目!」イラッ

エルフ「――――――――っ!?」ガーーン

エルフ母「今のあんた、かなり生意気だから!」

エルフ母「ついさっきから、本当にいい度胸をしてしまってるから!」イライラッ

エルフ「……そ、そんな……」ビクビクッ

エルフ母「とりあえず、明日の朝までね!」

エルフ母「明日の朝までに、必ず複数体のクラーケンを狩ってきなさい!」

エルフ母「それが出来なければ、あんたはエルフの里には戻る事が出来ない!」

エルフ母「今のあんた、“この世界の自然を守るエルフ”と言う自覚が、一切ないわ!」

エルフ母「だから、さっさと早く複数体のクラーケンを、今から狩ってきなさい!」イライラッ

エルフ「……はっ、はい……」ビクビクッ

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

魔術師「……」

魔法使い「……」

エルフ母「……」

シューーーーーーーーッ、シュン……

エルフ母「全く、何でこんな所まで似ちゃったんだか……」

エルフ母「本当に、神様も残酷な事をするわね……」

エルフ母「はぁ……」ガクッ

魔法使い「……」

魔術師「……」

魔術師「……?」ポリポリ

魔術師「あの、宜しかったんですか?」

魔術師「娘さん。また、一人でどこかに行ってしまいましたが」

エルフ母「……」

魔術師「もしかして、あの子何かしたんですか?」

魔術師「ついさっきのエルフさん、かなりヒステリックになられてましたが」

魔法使い「……」ハッ

エルフ母「いえ、大丈夫ですよ」

エルフ母「少し、あの子にお散歩してくる様に伝えただけですよ」ニッコリ

魔術師「……」

エルフ母「あの子、ついさっきも我が儘を言いましてね」

エルフ母「ここ最近、よく我が儘を言ってばかり」

エルフ母「それで、ついつい私は、あの子に対してあんな風に怒鳴っていたんです」ニコニコ

魔術師「ああ、そうなんですか」

魔術師「娘さん。まだ小さいですからね」

魔法使い「……」

魔術師「でも、あの娘さんを放っておいて良いんですか?」

魔術師「あの子、また何かするんじゃないんですか?」

魔法使い「うん。そうだね……」

魔術師「あっ、XXXX君が復活した!」

魔術師「もう、どこも悪くはないの?」

魔法使い「え? うん。大丈夫だけど」

魔術師「なら、これからXXXX君は私と一緒にモンスター退治だね!」

魔術師「今回のは、私一人じゃ確実に無理みたいだし!」

魔術師「XXXX君も、今から手伝ってよね!」ニッコリ

魔法使い「ごめん。それ無理かな」

魔法使い「ボク、これから用があるんだけど」

魔術師「!?」ガーーン

魔法使い「と言うか、何でここにいるの?」

魔法使い「君、いつこっちに来たの?」

魔術師「……」

エルフ母「もしかして、何も覚えていないんですか?」

エルフ母「ついさっきまで、仲良くお二人でお話されてたじゃないですか」

魔法使い「え?」キョトン

エルフ母「その様子だと、全く何も覚えていないみたいですね」

エルフ母「ああ、なんて可哀想な彼女さん」

エルフ母「本当に、あなたは罪な人ですね」ジーーッ

魔法使い「え? そうなの?」

魔法使い「ボク、君と仲良くついさっきまで会話していたの?」

魔術師「うん。そうだけど……」

魔法使い「ごめん。全然、何も覚えてない!」

魔法使い「ボク達、そんなに親しい関係だったっけ?」

魔術師「――――――――っ!?」ガーーン

エルフ母「とりあえず、XXXXさん……」

エルフ母「私は、あの子の元に行ってきます……」

エルフ母「XXXXさんは、ここで彼女さんと待機……」

エルフ母「何やら、色々と彼女さんの方はあなたにお話があるみたいですからね……」

エルフ母「例の件につきましては、私達の方にお任せ下さいませ……」

魔法使い「あっ、はい」

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

魔法使い「……」

魔術師「……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

魔術師「XXXX君。少し、中でお話良い?」

魔術師「今日の私は、仕事でここに来たの」

魔術師「とりあえず、ここじゃなんだし、中で話そうよ」

魔術師「もう日も暮れ始めてきたし」

魔術師「この辺、やけにモンスターが多いからさ」ニッコリ

魔法使い「うん。分かった」

~とある砂浜2~

翌朝――

エルフ母「ふぅん。ちゃんと、狩ってきたんだ……」

エルフ母「さすがは、私の大事な大事な一人娘……」

エルフ母「相変わらず、あんたは予測つかない事をしてくれるわね……」

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ母「それで、これはどこで狩って来たの?……」

エルフ母「あんた、かなり色々と疲れきっているみたいだけど……」

魔法使い「……」

エルフ「確か、ここより少し遠い海でかな?……」

エルフ「偶々、そこで複数体のクラーケンを発見してね……」

エルフ「上手く、私の魔法で片付けてきた訳……」

エルフ母「そう。そうなの……」

エルフ母「ここより、少し遠い海って、一体どこよ?……」

エルフ母「まぁ、ちゃんと複数体のクラーケンを狩って来たから、別に良いわ……」

エルフ母「私、今のあんたが本当にクラーケンを狩ってくるとは思わなくてね……」

エルフ母「てっきり、翌朝になったら、泣きながら謝罪してくるとばかり思っていたわ……」

魔術師「……」

エルフ「ねぇ、お母様……」

エルフ「これで、私の事を許してくれる?……」

エルフ「私、ちゃんとエルフの里に戻れるんだよね?……」ウルウル

魔法使い「……」

エルフ「ええ、別に構わないわよ」

エルフ「少しは、あんたも反省をしたみたいだし」ニッコリ

エルフ「そう。良かった……」

エルフ「死ぬ気で、必死にクラーケンを狩ってきた甲斐があった……」

エルフ「私、何度か向こうで本気で死に掛けたから……」

エルフ「さすがに、複数体のクラーケンを同時に相手するのは、かなり無理があったから……」ウルウル

魔法使い「!?」ガーーン

魔術師「なん……ですって……!?」ガーーン

エルフ母「とりあえず、少しあんたは休んでなさい!」

エルフ母「後は、私の方で上手くやっておくから!」

エルフ母「それと、そろそろあのマンボウ達を海に帰さないとね!」

エルフ母「あんた、あの子の事が心配なんでしょ?」

エルフ母「そうじゃなきゃ、あんな私の無茶な命令聞いてなかったんでしょ?」ニコニコ

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ「うん。そうだけど……」

エルフ「私、もう疲れて動けない……」

魔法使い「……」

エルフ母「従者A。昨夜、冷凍したマンボウ達をここに」

エルフ母「マンボウ達を荷台から出して、すぐに解凍と蘇生を行って」

従者A「はっ!」

エルフ母「それと、残りの従者達は従者Aの手伝い」

エルフ母「従兵隊の方は、ウチの娘が狩ってきたクラーケン達の処理をやってきて」

エルフ母「これで、少しは海に帰しやすくなったわ」

エルフ母「あの口煩い子も、これで満足するんじゃないかしら?」

従兵隊長「はっ、了解しました!」ビシッ

従者達「しかと、承りました!」ペコッ

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

従者A「よし、お前ら、マンボウを荷台から出せ!」

従者A「そのまま持ったら、腰をすぐに痛める!」

従者A「皆、魔法を使ってマンボウを荷台から出すんだ!」

従者B「あいよ!」

「隊長。これ、かなり大きいです!」

「とても、人力では運びきれません!」

魔法使い「……」

「なら、さっさと魔法を使え!」

「貴様ら、頭あるのか?」

「はっ!」

エルフ「お母様。私、着替えたい……」

エルフ「さすがに、こんな格好はもう嫌……」

エルフ「出来れば、もうクラーケンはたくさん……」

エルフ「この世に再び生を受け、今までの中では一番の修羅場だったから……」ウルウル

エルフ母「はいはい」

ザザーーン、ザザーーン……

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

魔法使い「……」

魔術師「……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

魔術師「ねぇ、XXXX君……」

魔術師「あの人達って、一体何者なの?……」

魔術師「何で、いとも簡単にクラーケン数体倒してきたの?……」

魔法使い「……」

魔術師「私、まだ信じられないかな……」

魔術師「特に、目の前で繰り広げられている現実とか……」

魔法使い「ボクだって、君と同じだよ……」

魔法使い「全くもって、エルフさん達の事が分からない……」

魔術師「……」

魔法使い「ただ一つ、子の場で分かっているとしたら、ボクらよりも断然強い……」

魔法使い「例えば、あのクラーケン以上とか……」

魔法使い「あの小さな女の子一人で、複数体のクラーケンをすぐに退治出来る程の力があるみたいだからね……」

魔術師「でも、何であんな小さな子にそんな力があるの?……」

魔術師「エルフの里って、そんなに進んでるの?……」

魔法使い「……」

魔術師「私、一体どう報告したら良いの?……」

魔術師「これ、誰か一人でも信じてくれる?……」

魔法使い「……」

魔術師「多分、私の勘では誰も信じてはくれないだろうね……」

魔術師「そう、それも私と君が婚約をしたと言う嘘の様に……」

魔術師「多分と言うか、確実に嘘だと言われちゃう!……」

魔術師「それ程、今の私達にはとても信じられない事みたいだからね!……」

魔法使い「うん。そうだね……」

ザザーーン、ザザーーン……

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

「オーライ、オーライ!」

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

「オーライ、オーライ!」

「隊長。とても、無理です!」

「これ、かなり大き過ぎますよ!」

「何!?」

「隊長。これは、確実に我々だけでは無理です!」

「明らかに、我々の手には負えません!」

クラーケンC「……」

「なら、すぐ近くで暇そうな魔術師達に応援を頼もう!」

「おいっ! そこの魔術師達二人!」

「手が空いているのなら、こっちを手伝ってくれ!」

「これは、確実に我々だけでは無理だ!」

「まだ、もう一体砂浜に打ち上げられたままなんだ!」

クラーケンD「……」

魔術師「ええ、分かりました!」

魔術師「今から、そっちに向かいます!」

魔術師「XXXX君、行こう!」

魔術師「アレなんとかしないと、後で色々と厄介みたいだからね!」

魔法使い「……うん。分かった」

海鳥A「……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

海鳥B「……」

ザザーーン、ザザーーン……

~とある砂浜2・乗用馬車内~

エルフ母「あら? 傷一つない……」

エルフ母「てっきり、傷の一つや二つはつけてきたと思ってたけど……」

エルフ母「まさか、あれだけの難題に対して、この結果だとは……」

エルフ母「本当に、あんたってよく分からないわね……」

エルフ「……」ヌギヌギ

エルフ母「それで、次はどうするの?」

エルフ母「あんた、次は何をするつもりなの?」

エルフ「……秘密」ヌギヌギ

エルフ母「は? 何言ってんの?」

エルフ母「あんたの事だから、また何か企んでんじゃないの?」

エルフ「……」ギクッ

エルフ母「あんた、次は何する気?」

エルフ母「今度は、クラーケン以外がいい?」ニッコリ

エルフ「……」ピタッ

エルフ母「私、あんたの事を殺したくない」

エルフ母「可愛い可愛い大事な大事な一人娘を、これ以上不幸な目に遭わせたくはない」ニコニコ

エルフ「……」パサッ

エルフ母「それで、今度はどうするの?」

エルフ母「次は、私に一体何をさせるつもりなの?」ニコニコ

エルフ「……」クルッ

エルフ母「出来れば、早く答えてほしいわ!」

エルフ母「じゃないと、今のあんたをそのまま突き落とす!」ニコニコ

エルフ「……うん。分かった」

エルフ「その前に、先に着替えさせて……」

エルフ「それから、お母様に話して良い?……」

エルフ母「……」ニコニコ

エルフ「私、少しばかりあのマンボウ達に細工しただけだから……」

エルフ「あのマンボウ達は、もう既に増殖し終えた後だからさ……」

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ母「増殖?」

エルフ母「あんた、あれ増殖したの?」

エルフ母「あのマンボウ達、全部海に返すんじゃなかったの?」ニコニコ

エルフ「……うん。そうだけど」

エルフ母「なら、何でそんな事をするの?」

エルフ母「私、あんたのしてる事がよく分からない」ニコニコ

エルフ「実は、私が増殖させたマンボウ達は、もう既にエルフの里に転送してあるの」

エルフ「昨夜の内に、私は全てそれを送った」

エルフ「そしたら、あの性悪女がかなり喜んでね」

エルフ「今度は、クラーケンが見たい」

エルフ「そのまま、クラーケンも持って帰ってきてって、あの性悪女に言われたの」

エルフ母「……」ピキッ

エルフ「それで、私はすぐにあの性悪女に冷凍しといたクラーケンの子供を差し出したわ」

エルフ「そしたら、あの性悪女の娘さんが本気でブチギレてた」

エルフ「その後、私はあの性悪女に大層感謝されてね」

エルフ「私がしでかしたマンボウの件は、全て揉み消して貰った」

エルフ「その分、色々と貢ぎ物(冷凍しといたサメやマグロ等)も献上しといたわ」

エルフ母「……」ピキピキッ

エルフ「まぁ、今はあんな性悪女の事は後で良いわ」

エルフ「今の私、先に着替えたいから」

エルフ母「……」

エルフ「ねぇ、お母様。私の着替えは?」

エルフ「私の着替え、早く渡してくれる?」

エルフ母「……」スッ

エルフ「……ああ、それしかないんだ」

エルフ「それ、あまり好きじゃないんだけどな……」

エルフ母「……」

エルフ「私、この色は好きじゃなの」

エルフ「これ、結構派手な衣装じゃない?」

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ母「あんた、私の選んだ服に文句言わないの……」

エルフ母「もう既に、今の私には怒る気力すらないわ……」ハァ……

エルフ「……」

エルフ母「一体、私はどこを間違えたんだろ?……」

エルフ母「何で、こんな訳の分からない子に育っちゃったんだろう?……」ガクッ

エルフ「……」

エルフ母「あんた、本当にしぶといわね……」

エルフ母「今のあんた、自分がエルフだって自覚とかある?……」

エルフ「うん。あるけど」

エルフ母「なら、もう少しエルフらしく振る舞って……」

エルフ母「エルフならエルフらしく、自然を大切にして……」

エルフ「うん。分かった」

シュピン、シュピン……

エルフ「誰?」

「すいません、エルフさん。魔術師のXXXXXです」

「少し、お時間の方を宜しいでしょうか?」

エルフ「ええ、構いませんが」

エルフ母「何なの? 一体?……」

「実は、あの二体のクラーケンの件でお話が……」

「あの二体のクラーケン、どうなさいますか?……」

「エルフさん達、そのまま持ち帰られるのですか?……」

エルフ「……」チラッ

エルフ母「……」チラッ

エルフ「いえ、持ち帰りませんけど」

「なら、あれはウチで引き取らせて貰っても宜しいですか?」

「私の住む町で、討伐の依頼が出てましたから」

エルフ母「ええ。どうぞ」

「そのついでに、私の住む町にまで転送をお願いします」

「場所は、漁港近くの砂浜にまでお願いをしたいんですが」

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ母「ええ、分かりました」

エルフ母「でも、先にあそこの組合長さんには話を着けておく必要がありますね」

エルフ母「XXXXXさん。あなた、あそこの組合長さんにお会いした事は?」

エルフ母「私は、何度かお会いした事があります」

エルフ母「先に、あそこの組合長さんに話をつけといた方が宜しいですよ」

エルフ母「じゃないと、後で厄介な事になりますから」

「ああ、やっぱりですか……」

「あそこの組合長、私苦手なんですよね……」

エルフ「……」

エルフ母「なら、あの町にまで送るのは止めておきましょ」

エルフ母「ちょうど、ここにXXXXさんがお住まいですし」

エルフ母「後で、討伐の依頼を出した方に確認をして貰えば良いと思いますよ」

「でしたら、私どう報告しましょうか?……」

「私、その事でも今悩んでいるんです……」

エルフ母「う~~ん」

エルフ「ただ単に、モンスター同士で戦って死んだで良くない?」

エルフ「それなら、皆が納得をするはず」

エルフ「もう、それで行った方が良いと思うけど」

エルフ母「ええ、それで良いわ!」

エルフ母「XXXXXさん。今回の件は、“モンスター同士での戦いの成れの果て”と言う事でお願いします!」

エルフ母「そうすれば、皆が納得をするはず!」

エルフ母「町の皆さんには、そうお伝え下さい!」

「はい。かしこまりました」

エルフ「……」

「それじゃあ、私はこれで」

「エルフさん達も、道中をお気を付けて」

エルフ母「ええ、さようなら」

エルフ「お姉さん。またね」

「うん。またね」

ザザーーン、ザザーーン……

「あっ、それと、XXXX君には手を出さないで下さいね!」

「彼は、永遠に私だけのものですし!」

「エルフさんが相手だと、全く今の私に勝ち目ないですからね!」

エルフ母「ええ、分かってます……」

エルフ「大丈夫だよ。お姉さん……」

「そう。それじゃあね!」

エルフ母「……」

エルフ母「……」

エルフ「……」スッ

エルフ母「……」

エルフ母「……」

エルフ「……」シュッシュッ

エルフ母「とりあえず、あんたが着替え終わったら、あの子の元に行きましょ」

エルフ母「まだあの子、あそこに入れられたままなんでしょ?」

エルフ「うん。そうだけど」

エルフ母「それに、どうせあんたの事だから何かしてるんでしょ?」

エルフ母「じゃなきゃ、あんたがそう簡単にあの子を返すはずがない」

エルフ母「相変わらず、あんたはよく分からない子だわ」ハァ……

エルフ「ねぇ、お母様。新しい靴は?」

エルフ「私の靴、新しくしないの?」

エルフ母「……」スッ

エルフ「ああ、またお母様の趣味なんだ……」

エルフ「私、そんな子供みたいな靴嫌かな……」

エルフ母「……」ニッコリ

エルフ母「XXXXXX。早く履きなさい」

エルフ母「私の決めた服に文句を言わない」ニコニコ

エルフ「え~~っ」

エルフ母「文句言うなら、あんたの事を海に突き落とす!」

エルフ母「また、あんた私にお仕置きされたいの?」ニコニコ

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ「別に、私はお母様の事が嫌いな訳じゃない」

エルフ「でも、この靴はなんか嫌」プイッ

エルフ母「……」ニコニコ

エルフ「お母様。私の事を子供扱いしてる?」

エルフ「私、無駄に精神年齢だけは高くないのよ」

エルフ母「……」ニコニコ

エルフ「ねぇ、お母様。何でニコニコしたまんまなの?」

エルフ「私、そっちの方が遥かに怖いんだけど」チラッ

エルフ母「……」ニコニコ

エルフ「やっぱり、この靴は嫌」

エルフ「今着てる服も合わせて、全部子供っぽい」

エルフ母「……」ニコニコ

エルフ母「とりあえず、早くそれ着ないと海に投げ飛ばすから!」

エルフ母「今後は、クラーケン二体じゃ済まないから!」ニコニコ

エルフ「!?」ガーーン

エルフ母「だから、早くあんたはその靴を履きなさい!」

エルフ母「そうじゃなきゃ、今後はアレ以上の奴を複数体召喚しちゃうからね!」ニコニコ

エルフ「……はっ、はい……」ビクビクッ

エルフ母「……」

エルフ母「……」

エルフ「……」スッ

エルフ母「……」

エルフ母「……」

エルフ「……」シュルシュル

エルフ母(全く、本当にこんな所までそっくりなんだから……)

エルフ母(今更ながらも、お母様には本当に悪い事をしてしまったわ……)

エルフ母(相変わらず、この子はどっか一人で動き回っちゃうし……)

エルフ母(出来る限り、以前みたいな事だけは絶対に避けたいからね……)

エルフ「……」シュルシュル

ザザーーン、ザザーーン……

~とある生け簀2~

マンボウ「……」

マンボウ「……」

マンボウ「……」パチッ

マンボウ「……」シャキン

海鳥C「……」

マンボウ「……」

マンボウ「……」

海鳥C「……」

マンボウ「……」

マンボウ「……」

海鳥C「……」

マンボウ「ああ、よく寝た……」

マンボウ「今日は、海鳥さんがここに来てくれたのね……」

海鳥C「……」

マンボウ「生憎だけど、今の私の体に寄生虫さん達はいないわ……」

マンボウ「ついこの間、全部除去されちゃったから……」

海鳥C「……」

マンボウ「でも、海の方に行けば私のお仲間達がいるわよ……」

マンボウ「早く、あなたもそこに行って来たらどうかしら?……」

海鳥C「……」

マンボウ「もしかして、あなたも私の体目当て?」

マンボウ「本当に、全てが嫌になっちゃうわ……」ハァ……

海鳥C「……」

マンボウ「……」

マンボウ「……」

海鳥C「……」

マンボウ「……」

マンボウ「……」

海鳥C「……」

マンボウ「……」

マンボウ「……」

海鳥C「……」

マンボウ「……」

マンボウ「……」

海鳥C「……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

マンボウ「あっ……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、ピタッ……

エルフ母「あら? もう起きてたの?」

エルフ母「あんた、魚の癖に早起きね」

エルフ母「てっきり、まだ眠ってるとばかり思ってた」

マンボウ「……」

エルフ母「相変わらず、あんたは変な顔をしてるわ」

エルフ母「本当に、あんたはただのお魚なの?」

マンボウ「ええ、そうよ!」

マンボウ「私、ただのお魚なのよ!」ムカッ

エルフ母「……」

マンボウ「何回、同じ事をあなた達に説明したら分かるの?」

マンボウ「今日は一体、何しに来たの?」ムカムカッ

エルフ「……」

エルフ母「何って? あんたの事を解放する為」

エルフ母「その為に、私達はここに来たんだけど」

マンボウ「!?」

エルフ母「もしかして、ここが気に入っちゃった?」

エルフ母「ここなら、外敵とかはいないから安心しちゃったとか?」

マンボウ「……」ムカッ

エルフ「とりあえず、あなたの事をここから出してあげるわ!」

エルフ「あなたの代わりは、他のマンボウ達が全てやってくれたから!」

マンボウ「!?」ガーーン

エルフ「だから、あなたの事を今から解放してあける!」

エルフ「今日で、あなたも晴れて無事に自由の身なのよ!」

マンボウ「……」

エルフ「ああっ、やっぱり急過ぎたかな?」

エルフ「いきなり、私達にこんな事を言われても、今のあなたは信用すら出来ないのよね?」

マンボウ「……」

エルフ「相変わらず、あなたは無口ね」

エルフ「無口の時もあれば口煩い時もあって、なかなか大変なのね」

マンボウ「……」ムカッ

マンボウ「それで、言いたい事はそれだけ?」

マンボウ「あなた達、今の私に対して謝罪の言葉とかないの?」ムカムカッ

エルフ「え?」

マンボウ「思えば、私ずっと海に帰れないままだったわ……」

マンボウ「何度お願いしたとしても、誰一人として私を海に帰してはくれなかった……」ムカムカッ

エルフ「……」

マンボウ「その癖、用件が済めばすぐにお払い箱!」

マンボウ「おまけに、謝罪の言葉すらない!」ムカムカッ

エルフ「……」

マンボウ「今の私、あなた達に対して謝罪を要求するわ!」

マンボウ「私を、何度も何度も苦しめた罪、この場で今すぐ償って!」ムカムカッ

エルフ「……」

マンボウ「ほら、どうしたのよ?」

マンボウ「早く、私に謝罪くらいはしてよ!」

マンボウ「私、ずっと海に戻れず苦しかったのよ!」

マンボウ「ここに、無理矢理あなた達は閉じ込めといて、その癖謝罪の言葉すらないの?」ムカムカッ

エルフ「……」ハッ

エルフ母「……」チラッ

エルフ母「別に、こっちがあんたに謝罪する必要なんかない」

エルフ母「むしろ、今のあんたに感謝してほしいくらいね」

マンボウ「え?」

エルフ母「まぁ、そんな冗談はさて置き、今のあんたには申し訳ない事をしたわ」

エルフ母「もう二度と、あんたの事を捕獲する様な事もないから」

マンボウ「……」

エルフ「ああ、ごめんなさいね」

エルフ「なんか、あなたに会う度に喧嘩腰になっちゃって」

エルフ「ウチの母は、昔からこうだから」

エルフ「なんと言うか、無駄に歳を食ったエルフは常に上から目線で傲慢だから」

エルフ母「あ?」ギロッ

マンボウ「……」クスッ

エルフ「それと、あなたのお仲間達も全て蘇生させておいたわ」

エルフ「あなたが到着次第で、すぐ海に放流されるから」

マンボウ「……」

エルフ「本当に、ウチの母が非常識でごめんなさい」

エルフ「あなたには、本当に申し訳ない事をしたわ」ペコッ

エルフ母「……」ジーーッ

エルフ母「とりあえず、私達からの謝罪も終わった事だし、さっさと移送させるわ」

エルフ母「娘。今度は文句言わずに、ちゃんとゆっくりとね」

エルフ母「今のあんた、まだまだ子供なんだから」

エルフ母「まだまだ完全に、エルフの魔法や魔術等を扱いきれてないんだからね」

エルフ「はいはい」

マンボウ「……」

マンボウ「それで、私はどこに行くの?」

マンボウ「皆、今どこにいるの?」

エルフ「……」スッ

マンボウ「まさか、もう既にあの世だとか?」

マンボウ「あなた達、私の事を騙してる訳じゃないのよね?」

エルフ母「ええ、そうよ」

マンボウ「なら、私の事を解放する気になったきっかけは?」

マンボウ「やっぱり、私はあなた達の事が信用出来ない!」

エルフ「……」ブツブツ

マンボウ「相変わらず、自己中でわがままなのね!」

マンボウ「本当に、エルフって常に傲慢で上から目線で困っちゃうわ!」

エルフ「……」ブツブツ

エルフ「そんなに、知りたいの?」

エルフ「今のあなた、そんなに知りたいの?」

マンボウ「……?」

エルフ「遥か昔に、今の私もあなたと全く同じ立場だったからよ」

エルフ「私も、遥か昔は、あなた同様に全く自由がない生活をしてしまってたから」

マンボウ「え?」キョトン

マンボウ「ちょっと、今のどう言う事?」

マンボウ「あなたも昔、今の私と全く同じ様な存在だったと言うの?」

エルフ「……」コクン

マンボウ「まぁ、こんな母親なら仕方ないわね!」

マンボウ「あなたも色々と、影で苦労してるみたいね!」

エルフ「ええ、本当に」クスッ

エルフ母「XXXXXX。早く、呪文を唱えなさい」

エルフ母「今は、無駄話なんかしてる時間なんかないわ」

エルフ「……」ブツブツ

エルフ母「全く、あんたはいつもこうなんだから」

エルフ母「どうせ私は、ヒステリックでバイオレンスな母親だわよ!」

エルフ「……」ブツブツ

エルフ「お母様。少し黙って」

エルフ「気が散って、私集中できないの」

エルフ「お母様の愚痴は、後でゆっくりと聞いてあげる」

エルフ「今はまず、この子を先に海に帰す事が先決なの」

エルフ母「はいはい」

マンボウ「……」

エルフ「……」ブツブツ

エルフ「……」ブツブツ

エルフ母「……」

エルフ「……」ブツブツ

エルフ「……」ブツブツ

マンボウ「!?」フワッ

エルフ「……」ブツブツ

エルフ「……」ブツブツ

マンボウ「……」フワワッ

エルフ「……」ブツブツ

エルフ「……」ブツブツ

エルフ「はっ!」ブワッ

マンボウ「……」フワワッ

マンボウ「……」フワワッ

ザバーーーーッ……

マンボウ「……」フワワッ

マンボウ「……」フワワッ

ポタポタッ、ポタポタッ……

エルフ母「娘。ご苦労様」

エルフ母「さぁ、早く海にまで行きましょう」

エルフ母「この先、少し急な坂道とかあるけど」

エルフ母「なるべく、あんたが怪我しない様に慎重にね」

エルフ「はいはい」

マンボウ「……」フワワッ

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

~とある砂浜2~

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

ザザーーン、ザザーーン……

従兵「隊長。移動完了致しました!」

従兵「後は、転送するだけです!」

従兵隊長「うむ。ご苦労!」

従兵「隊長。これは、どうなさるおつもりですか?」

従兵「これもまた、エルフの里に転送されるのでしょうか?」

従兵隊長「さぁ、分からん」

「ああ、すいません!」

「それは、ウチで引き取るやつなんです!」

「それは、そこに置いといて下さい!」

従兵隊長「ああ、了解した!」

「後で、私の仲間が転送を致します!」

「今は、まだそこに置いといて下さい!」

従者B「従者A。こんな感じか?」

従者B「お嬢様が捕獲したマンボウ達、全て解凍して並べといたぞ」

従者A「ああ、そんな感じだ」

従者B「でも、なんでまた急にこんな事を?」

従者B「お嬢様、やっぱりこの魚は気持ち悪くて止めたのだろうか?」

従者A「さぁ、分からんな」

従者C「おいっ、お嬢様達が戻ってきた!」

従者C「とっとと、早く蘇生魔法を掛けろ!」

従者B「!?」クルッ

従者C「相変わらず、お嬢様はパワフルだな」

従者C「また、あの奥様の事を振り回してる」

従者D「ああ、そうみたいだな……」

従者A「さすがは、あの奥様の一人娘だ……」

従者A「こう言った所も、実の母親似か……」

従者A「思えば、奥様がご幼少の頃もこんな感じだったし……」

従者A「本当に、こう言った所まで似てしまうんだな……」

マンボウの群れ「……」

ザザーーン、ザザーーン……

従者C「あっ、奥様に気づかれた……」

従者C「すっげーっ顔して、俺達の事を睨んでる……」

従者C「相変わらず、奥様は地獄耳だ……」

従者C「こりゃあ、後で始末書書かされるな……」

従者B「ああ、そうみたいだな……」

従者A「……」ガクッ

従者C「とりあえず、早く蘇生させるぞ!」

従者C「奥様、また不機嫌な顔してる!」

従者B「多分、またお嬢様が余計な事を言ったんじゃないか?」

従者B「ここ最近、ずっとお嬢様も不機嫌だったし」

従者D「ああ、そうかもな」

従者A「……」スッ

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

ピタッ、ピタッ……

マンボウ「……」フワワッ

エルフ母「ふぅ、皆、ただいま」

エルフ母「今回は、始末書以外が良い?」ニッコリ

従者達「!?」ガーーン

エルフ母「私が不機嫌な理由は、欲求不満だから」

エルフ母「ここ最近、ずっと男とやってなくて、私の体がうずうずしているの」ニコニコ

従者達「……」ビクッ

エルフ母「まぁ、そんな冗談はさておき、早く蘇生させて」

エルフ母「今から、この子達を全て海に帰すから」

エルフ母「相変わらず、ウチの馬鹿娘は自己中で我が儘でね!」

エルフ母「本当に、可哀想なくらいなまでに、この私に酷く似ちゃったから!」ニコニコ

従者達「……」ビクビクッ

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ「ねぇ、お母様。これどうする?」

エルフ「先に、海に流しとく?」

マンボウ「……」フワワッ

エルフ「やっぱり、皆が一緒の方が良いかな?」

エルフ「そしたら、この子も安心出来ちゃうのかな?」

マンボウ「……」フワワッ

エルフ母「従者A。早く蘇生させて」

エルフ母「早くしないと、あんた達四人を食べてしまうわよ」ニコニコ

従者達「……」ビクビクッ

エルフ母「今の私、物凄く最低な母親だから」

エルフ母「やっぱり、蛙の子は蛙と言う事かしら?」ニコニコ

エルフ「……」ピキッ

エルフ母「あら? どうしたの?」

エルフ母「早く、あのマンボウ達を蘇生させてほしいんだけど」

エルフ母「やっぱり、私みたいなおばさんは嫌?」

エルフ母「私みたいな淫乱な女は、母親としては失格と言う事かしら?」ニコニコ

従者達「……」

マンボウ「……」フワワッ

エルフ「従者A。早く蘇生させて」

エルフ「お母様の言う事、無視しといて良い」

従者A「はっ!」

エルフ母「……」ピキッ

エルフ「それと、お母様もふざけない」

エルフ「後で、ゆっくりと話し相手になってあげるから」

従者A「とりあえず、今から蘇生するぞ」

従者A「おいっ、お前ら早く呪文唱えろ!」クルッ

従者達「あいよ」ビシッ

従者A「お嬢様。暫しお待ちを!」

従者「すぐ済ませますので!」ニッコリ

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ母「全く、ウチの男達は……」

エルフ母「相変わらず、ただの馬鹿なんだから……」

エルフ「……」ニヤリ

エルフ母「今後、本当に四人とも食べてあげようかしら?」

エルフ母「味付けは、何が合うかしらね?」

エルフ「え?」キョトン

エルフ「あの、お母様……」

エルフ「今の、どう言う事?……」

エルフ「出来れば、冗談だって言ってほしいんだけど……」

エルフ母「……」

エルフ「やっぱり、ついさっきのは聞き違いなのよね?……」

エルフ「出来れば、そう言ってくれた方が物凄く嬉しいなぁ……」ジーーッ

従者A「……」ブツブツ

従者B「……」ブツブツ

従者C「……」ブツブツ

従者D「……」ブツブツ

エルフ「……」ジーーッ

エルフ母「……」

従者A「……」ブツブツ

従者B「……」ブツブツ

従者C「……」ブツブツ

従者D「……」ブツブツ

エルフ「……」ジーーッ

エルフ母「……」ニッコリ

「あっ、エルフさん達お帰りなさい!」

「もう、あの子を連れてきたんですか?」

エルフ母「……」クルッ

「エルフさん。おかえりなさい!」

「こっちはこっちで、なんとかなりそうです!」

ザザーーン、ザザーーン……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、ピタッ……

魔法使い「……」

魔術師「……」

従者達「……」ブツブツ

魔術師「それで、今は何をなされてるんですか?」

魔術師「何故か、不気味な魚が沢山並んでいますけど」

マンボウの群れ「……」

魔術師「これ、確か私の住んでる町の漁港から買い取ってた魚達ですよね?」

魔術師「一体、今から何をなさるおつもりなんですか?」

マンボウ「……」フワワッ

魔法使い「ああ、これ?」

魔法使い「これは、今から海に帰す魚達だよ」

魔法使い「なんか、君の住む町の漁港でモンスターと間違えられていてね」

魔法使い「それで、この魚自体は何も問題はなかったから、今から海に帰すとこなんだ」

魔術師「え?」

マンボウの群れ「……」

魔術師「あの、それって大丈夫なの?……」

魔術師「モンスターを、今から海にばら蒔くと言う訳じゃないんだよね?……」

魔法使い「うん。そうだけど」

魔術師「なら、何でこの魚達はモンスター扱いされたの?……」

魔術師「やっぱり、見た目自体が不気味だったから?……」

マンボウ「……」ムカッ

エルフ母「ええ、そうなんですよ」

エルフ母「ウチの娘が、“早く海に戻したい!”って聞かなくて」ニッコリ

エルフ「……」

魔術師「ああ、そうなんですか」

魔術師「やっぱり、小さいお子さんを持つと大変ですからね」ニッコリ

エルフ「……」ムカッ

魔術師「でも、これって確かモンスター扱いされてますよね?」

魔術師「普通は、これはいけない事だと思うんですけど」

エルフ母「……」

魔法使い「だが、この子達はモンスターじゃなかった」

魔法使い「だから、ボク達の手で自然に返してあげても、何も問題なんかないよ」

魔術師「……だけど」

エルフ母「XXXXXさん。大丈夫ですよ!」

エルフ母「今回の事を黙っててくれたら、XXXXさんがあなたと結婚してくださるそうですから!」ニッコリ

魔術師「え?」

魔法使い「!?」

エルフ母「彼、こんなんだけど、あなたの事を愛しているみたいですから!」

エルフ母「そうじゃなきゃ、彼が私に手を出さないのも納得がいきますよ!」ニコニコ

魔術師「XXXX君。今の本当なの?……」

魔術師「私の事、本気で愛してくれているの?……」チラッ

魔法使い「……」ビクッ

魔術師「そうか。やっと効果出たんだ……」

魔術師「毎日、“XXXXX君と結ばれます様に!”って、呪文とか唱えといて正解だった!……」ウルウルッ

魔法使い「!?」ガーーン

エルフ母「とりあえず、今回の事は黙ってて下さいますよね?」

エルフ母「その代わりに、私がXXXXXさんと結婚させてあげますから」ニコニコ

魔術師「はいっ!」ニッコリ

魔法使い「――――――――っ!?」ガーーン

エルフ母「ちなみに、ウチの里のはかなり強力ですよ!」

エルフ母「今なら、特別にXXXXXさんにサービスしときます!」ニコニコ

魔術師「なら、後で色々とサポートの方をお願い致します!」

魔術師「私、ずっと夢に見てきましたからね!」

魔術師「XXXX君と結婚して、二人で仲良く暮らす事!」

魔術師「勿論、私の住む町で!」ウルウルッ

魔法使い「……」ビクビクッ

ザザーーン、ザザーーン……

従者「お嬢様。蘇生完了しました!」

従者「いつでも、海に戻せます!」

マンボウの群れ「……」ピチピチッ

エルフ「お母様。蘇生出来たって!」

エルフ「今から私、マンボウ達を海に帰すから!」

エルフ母「ええ、了解したわ!」ニコニコ

エルフ母「XXXXさん。その話は、後にしましょ!」

エルフ母「今は、マンボウ達を海に帰す事が先決です!」

エルフ母「私の乗ってきた荷馬車に、エルフの里特製の惚れ薬があります!」

エルフ母「それ、かなり強力でしてね!」

エルフ母「後で、彼に飲ませたらOKですから!」ニッコリ

魔術師「はい。かしこまりました!」ウルウルッ

エルフ「従者A。今後は浮かして」

エルフ「マンボウ達を浮かした後、海にゆっくりと入れてあげて」

従者A「はっ!」

エルフ「後、私が今浮かしてるのは、私が入れるわ」

エルフ「この子、かなり厄介でね」

エルフ「ついさっきも、かなり暴れてたから」

従者A「よし、皆浮かせ!」

従者A「一斉に、今後は浮かしていくぞ!」

従者達「お――っ!」

従者A「皆、お嬢様の為に慎重にな!」

従者A「せめて、お嬢様だけでもまともに育て上げるんだ!」

従者達「お――っ!」ビシッ

エルフ母「うふふっ、まともか……」

エルフ母「それに関してだけは、激しく同意するわ……」

エルフ母「後で、ゆっくりとあんた達の事を相手してあげる……」

エルフ母「主に、拳でね!」ニコニコ

エルフ「……」ビクッ

ザザーーン、ザザーーン……

従者A「……」ブツブツ

従者B「……」ブツブツ

従者C「……」ブツブツ

従者D「……」ブツブツ

マンボウ「……」フワワッ

マンボウの群れ「……」

従者A「……」ブツブツ

従者B「……」ブツブツ

従者C「……」ブツブツ

従者D「……」ブツブツ

マンボウ「……」フワワッ

マンボウの群れ「……」ポワン

マンボウ(なんか、よく分からないけど、私浮いているみたいね……)

マンボウ(私のお仲間達、一体どうなるのかしら?……)フワワッ

従者A「……」ブツブツ

マンボウ(ああ、なんか危なくなってきた……)

マンボウ(そろそろ私、海に戻りたいなぁ……)フワワッ

従者B「……」ブツブツ

マンボウ(早く、早く海に戻して……)

マンボウ(私、かなり呼吸が危なくなってきたんだけど……)フワワッ

従者C「……」ブツブツ

マンボウ(ああ、なんか目の前が暗くなってきた……)

マンボウ(私、とうとう死んでしまうのかしら?……)フワワッ

従者D「……」ブツブツ

マンボウ(あら? 私の視界が戻った……)

マンボウ(それもどう言う訳か、私の呼吸もよくなってきてる……)

マンボウ(一体、何がどうなっているの?……)

マンボウ(私の体、本当にどうなっているの?)

エルフ「……」ブツブツ

ザザーーン、ザザーーン……

マンボウ(ああっ、なんか私のお仲間達も変化してきた……)

マンボウ(私のお仲間達もまた、私同様に活力に満ちていく……)

マンボウ(おまけに、皆が浮き出してきたわね……)

マンボウ(このまま、私達は本当に海に戻されるのかしら?……)

従者達「……」スッ

従者達「はっ!」ボワッ

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

従者達「くっ……」プルプルッ

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

従者A「なんて、重さだ……」プルプルッ

従者A「よしっ、皆浮いたな!」

従者A「ゆっくりと、そのまま海に入れていけ!」プルプルッ

マンボウの群れ「……」フワワッ

従者A「皆、マンボウ達が死なないうちに早くな!」

従者A「そろそろ、マンボウ達の呼吸がヤバくなってきたぞ!」プルプルッ

従者C「あいよ!」プルプルッ

従者C「従者A。これ重すぎるぞ!」

従者C「いくらなんでも、これ無理っぽくないか!」プルプルッ

マンボウの群れ「……」フワワッ

従者A「だが、これもお嬢様の為だ!」

従者A「せめて、お嬢様だけでもまともに育てあげるんだ!」プルプルッ

マンボウの群れ「……」フワワッ

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

ジャボジャボジャボッ、ジャボジャボジャボッ……

ザザーーン、ザザーーン……

しばらくして――

従者A「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」

従者B「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」

従者C「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」

従者D「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」

マンボウの群れ「……」プカプカ

従者A「お嬢様。海に戻しました……」

従者A「次は、どうなさいますか?……」

マンボウ「……」フワワッ

エルフ「そうね。次は、私が投下するわ」

エルフ「あなた達は、しばらくそこで休んでなさい」

従者A「はっ、かしこまりました……」

エルフ母「娘。早く、投下してよね?」

エルフ母「私、早く次の事をやりたいんだけど」

マンボウの群れ「……」プカプカ

エルフ母「私、早く次の事をしたいわ」

エルフ母「だから、早く投下してよね」

エルフ「はいはい」

エルフ「さて、次はあなたの番ね」

エルフ「これで、あなたはようやく海に戻れる」

エルフ「毎回、誰かに会う度に“海に返せって!”って、煩さかったからね」

エルフ「これで、あなたも少しは機嫌を治してくれるのかしら?」ニッコリ

マンボウ「……」フワワッ

魔術師「……?」

エルフ「あら? どうしたの?」

エルフ「あなたの口、全く聞けなくなってしまったの?」

マンボウ「……」フワワッ

エルフ「もしかして、早く海に戻りたいの?」

エルフ「せめて、最後くらいは見送りとかしたいなぁ」

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ母「娘。早く入れて」

エルフ母「じゃないと、先にこっちは放流しちゃうわよ」

エルフ母「今のあんた、かなり馬鹿だわ」

エルフ母「なんで、こんな魚にそこまで肩入れするんだか」

マンボウ「……」フワワッ

マンボウの群れ「……」プカプカ

エルフ「はいはい。わかりましたよ」

エルフ「今すぐ、海に入れれば良いんでしょ?」

エルフ「全く、お母様はいつもこうなんだから」

エルフ「私が何に興味を示そうが、それは私の勝手でしょ?」

エルフ母「なんですって?」ムカッ

魔法使い「……」

エルフ母「XXXXXX。早く、それを海に入れなさい!」

エルフ母「何で、あんたは私の言う事を聞かないの?」

エルフ母「一体、何でここまでそっくりなのよ!」

エルフ母「今更ながらも、それに腹立ってきた!」

エルフ母「本当に、神様も残酷な事をしてくれるわ!」ムカムカッ

従者達「……」コクン

エルフ「さよなら、マンボウ!」

エルフ「またいつか、どこかの海で会えるといいね!」

エルフ「その時は、いつになるかな?」

エルフ「また、あなたの事だから、その辺の砂浜に打ち上げられてる可能性があるかもしれないけど!」

エルフ「また、私が旅をする機会があれば、また会いましょうね!」ニッコリ

マンボウ「……」フワワッ

エルフ「私、あなた達の事を忘れないから!」

エルフ「今度は、確実に観賞用として捕獲してあげるから!」

マンボウ「!?」フワワッ

エルフ「私、あなた達の事を食べたりはしないし!」

エルフ「お母様と違って、あなた達の種族には乱暴をしたりしないからね!」

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ母「あんた、本当にいい度胸してるわ……」

エルフ母「この私を、完全に無視しちゃうとか……」

エルフ母「やっぱり、子育てってかなり難しいわね……」

エルフ母「本当に、幼い頃の私にそっくり……」

エルフ母「お母様。よく、それにずっと耐え続けていたわよね……」

従者A(ええ、全くです……)

エルフ「さぁ、今から海に戻りましょうか?」

エルフ「あなたは、そのまま海に戻って」

エルフ「あなたが海に戻ってすぐ、あなたの仲間達も解放されるから」

エルフ「後は、自分達で泳いでどこへでも好きな所にまでいってらっしゃい」

エルフ「今度は、なるべくお母様みたいな人には捕まらない様にね!」ニコニコ

マンボウ「……」

従者A「お嬢様。そろそろ、お時間です」

従者A「そろそろ、マンボウを海にお戻し下さい」

エルフ「ええ、了解したわ」ニコニコ

エルフ「……」スッ

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

エルフ「さよなら。マンボウ!」

エルフ「いつかまた、本当に会いましょう!」

マンボウ「……」フワワッ

エルフ「今度、あなたと会う時には、観賞用として捕獲してあげる!」

エルフ「だから、それまであなたは生き延びて!」

エルフ「私、あなたが必ず生き残ってくれるって、信じてるから!」ニコニコ

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

フワワッ、フワワッ、フワワッ……

スッ、ジャボン……

マンボウ「……」

マンボウの群れ「……」プカプカ

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ「お母様。もう良いわよ」

エルフ「もう、マンボウ達を動かしても構わないから」チラッ

エルフ母「……」ニッコリ

エルフ「後は、マンボウ達を遠くまで誘導するだけ」

エルフ「あのマンボウ達、かなり長い時間待たせちゃってたから」

エルフ「だから、早く泳がせてあげて!」ニコニコ

エルフ母「ええ、了解したわ」

エルフ母「早速、あのマンボウ達を動かしてあげる」

エルフ母「以前から、魚を自由自在にコントロールしてみたかったからね」

エルフ母「一体、この子達はどんな風に動いてくれるのかしら?」ニコニコ

魔術師「え?」

魔術師「は?」

エルフ「お母様。今のマンボウ達、まだ意識はあるわ」

エルフ「今は、私が魔法で体力等を定期的に回復させてる」

エルフ「けれど、それもそろそろ切れそう」

エルフ「だから、マンボウ達を早く動かしてあげて」

エルフ母「はいはい」

マンボウの群れ「……」プカプカ

エルフ母「……」スッ

マンボウの群れ「……」クルッ

マンボウの群れ「……」パチッ

マンボウの群れ「……」シャキン

マンボウの群れ「……」

マンボウの群れ「……」

エルフ母「……」スッ

マンボウの群れ「……」スイスイ

マンボウの群れ「……」スイスイ

マンボウの群れ「……」スイスイ

マンボウの群れ「……」スイスイ

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ「……」

エルフ母「……」

魔法使い「……」

魔術師「……」

従者達「……」

海鳥達「……」

エルフ母「皆、ご苦労様」

エルフ母「後は、ここから撤収するだけね」クルッ

従者達「……」ムクッ

エルフ母「XXXXさん、XXXXXさん。ご協力ありがとうございました」

エルフ母「短い間でしたが、ウチの者達がご迷惑をお掛けして誠に申し訳ありません」ペコッ

従者達「……」クルッ

魔法使い「こちらこそ、貴重な体験を有り難うございます」

魔法使い「これで、ボクの研究も一層捗ることになります」

魔法使い「特に、娘さんの使用する魔法等は大変興味深い」

魔法使い「また、いつかあなた達と共に何かを成し遂げてみたいです」ニッコリ

魔術師「……」ペコッ

エルフ「……」

魔術師「エルフさん。本当に、今日はありがとうございました」

魔術師「これで私は、XXXX君と二人仲良く結ばれる事が出来ます」

魔術師「早速、その件についても進めてもらえませんか?」

魔術師「私、早くXXXX君と早く結婚したい!」

魔術師「神父様とかにも、すぐに報告をしたいんで!」ニッコリ

魔法使い「!?」ハッ

エルフ母「ええ、わかりました」

エルフ母「早速、そちらの件も取りかからせて頂きます」

エルフ母「XXXXさん。逃げたら駄目ですよ!」

エルフ母「もし仮に、XXXXさんが逃げたら命の保証はありませんので!」ニコニコ

魔術師「やった!」ピカァ

ザザーーン、ザザーーン……

エルフ母「従者A。今すぐ撤収用意!」

エルフ母「それを終えたら、すぐにここを発つわ!」

エルフ母「XXXXXXは、馬車で大人しくしてる事!」

エルフ母「今度は、ちゃんと私の言う事を聞いといてね!」ニコニコ

従者達「はっ!」

エルフ「はいはい」

魔法使い「あの、エルフさん……」

魔法使い「今の冗談ですよね?……」

魔法使い「どうして、ボクは彼女と結婚しなきゃいけないんですか?……」

魔法使い「ボク達、まだ成人したばっかなんですけど……」

魔法使い「それでも、ボク達は結婚しなきゃいけないんですか?……」ビクビクッ

エルフ母「はい。そうです!」ニコニコ

魔法使い「でも、ボクは彼女と結婚する気はありませんよ……」

魔法使い「ボクと彼女は、そんなに親しくはないんですけど……」ビクビクッ

魔術師「……」ギロッ

魔法使い「ひいっ!?」ビクビクッ

魔術師「XXXX君。何か言った?」

魔術師「私達、生まれる前から恋人同士じゃない!」ニッコリ

魔法使い「いや、そんな事はないから……」

魔法使い「ボク達、偶々町の学校で知り合っただけのはずだけど……」

魔法使い「一体、どこをどうしたら、そんな理屈になるの?……」

魔法使い「ボク、もし仮に結婚をするなら、君以外が良い?」ビクビクッ

魔術師「……」スッ

魔法使い「!?」ビクビクッ

エルフ母「従者A。早く行って」

エルフ母「私、まだここでXXXXXさんとお話があるから」

従者A「はっ!」

エルフ母「XXXXさん。もう逃げられませんよ!」

エルフ母「今のあなたは、まな板の上の鯉なんですから!」ニコニコ

ザザーーン、ザザーーン……

魔法使い「エ、エルフさん……」

魔法使い「そんな、あまりにも酷い事を言わないで下さいよ……」

魔法使い「XXXXXも、冗談で言ってるんだよね?……」

魔法使い「ボク、まだ結婚とかしたくない……」

魔法使い「出来れば、全て冗談であってほしい……」

魔術師「……」

エルフ母「XXXXXさん。もう諦めて下さい!」

エルフ母「あなたは、もう彼女と結婚をする運命なんです!」

エルフ母「本当は、あなたも彼女と結婚したいんでしょ?」

エルフ母「あなたも、そろそろ自分に正直になって下さい!」ニコニコ

魔術師「……」ジーーッ

魔法使い「……」ビクビクッ

魔術師「XXXX君。少し休もうか?」

魔術師「さすがに、今のXXXX君じゃ私の想いを受け入れてくれないから」

魔法使い「え?」ビクビクッ

魔術師「少しの間、XXXX君は眠っててくれる?」

魔術師「次に、XXXX君が目を覚ました時には、私と結ばれた後だから!」ニッコリ

魔法使い「――――――――っ!?」ガーーン

魔術師「……」ブツブツ

魔術師「……」ブツブツ

魔術師「……」ブツブツ

魔術師「……」ブツブツ

魔法使い「……」ビクビクッ
エルフ母「……」ニコニコ

魔術師「……」ブツブツ

魔術師「……」ブツブツ

魔術師「……」ブツブツ

魔術師「……」ブツブツ

魔術師「はっ!」ボワッ

魔法使い「!?」ガクッ

エルフ「……」

エルフ母「……」

魔法使い「……」

魔術師「……」

従者達「……」

海鳥達「……」

エルフ母「XXXXXさん。ご苦労様」

エルフ母「後は、アレを飲ますだけですね」ニッコリ

魔法使い「……」

エルフ母「全く、彼は強情なんだから」

エルフ母「いくら逃げても、それが全て無駄だと言うのに!」ニコニコ

魔術師「ええ、そうですね」ニッコリ

エルフ「お母様。マンボウ達はもういなくなったわ」

エルフ「そろそろ、ここを離れましょ」

エルフ母「ええ、そうね」ニコニコ

エルフ「まだ、お母様達は時間かかる?」

エルフ「先に、私はおやつ食べながら待っとくから」

エルフ母「ええ、了解したわ」ニコニコ

エルフ母「では、XXXXXさんはこちらに」

エルフ母「今から、例の薬を彼に飲ませますので」ニコニコ

魔術師「……」

エルフ母「娘。おやつ、控えめにね!」

エルフ母「それ、全部食べちゃ駄目よ!」ニコニコ

エルフ「は~~い」

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

魔法使い「……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ザザーーン、ザザーーン……

~とある海~

その頃――

マンボウ(ふぅ、ようやく海に戻れた……)

マンボウ(本当に、何もかもが懐かしいわ……)

マンボウ(私のお仲間達も全員無事みたいね……)

マンボウ(このまま、何もなければ良いんだけど……)スイスイ

マンボウ(でも、ここは今どの辺りの海なのかしら?……)

マンボウ(私、もしかして道に迷っちゃったとか?……)

マンボウ(けど、今は私のお仲間達も一緒にいる……)

マンボウ(私のお仲間達、ここが今どの辺りか分かるのかしら?……)スイスイ

魚の群れ「……」スイスイ

寄生虫の群れ「……」

マンボウ(あら? なんか懐かしい顔が……)

マンボウ(なんともまぁ、また大群でいらしたこと……)スイスイ

寄生虫の群れ「……」

マンボウ(もしかして、私達の事を狙ってる?……)

マンボウ(もしかしなくても、私達の事を狙ってるのよね?……)スイスイ

寄生虫の群れ「……」

マンボウ(とにかく、早くここから逃げなきゃ……)

マンボウ(そうしないと、また私の体に寄生虫さん達が来る……)スイスイ

寄生虫の群れ「……」

マンボウ(本当に、何で私達なんかに?……)

マンボウ(海に戻って早々、寄生虫さん達と再会するなんてね……)スイスイ

寄生虫の群れ「……」

マンボウB「げっ、寄生虫の群れだ!」

マンボウB「皆、逃げろ!」スイスイ

寄生虫の群れ「……」

マンボウB「皆、早く方向を変えろ!」

マンボウB「また、俺達の体に寄生虫が着くぞ!」スイスイ

寄生虫の群れ「……」

マンボウC「ぐっ、寄生虫が……」

マンボウC「また、俺達は寄生虫に住み着かれてしまうのか?……」スイスイ

寄生虫の群れ「……」

マンボウC「本当に、何でこんな事に……」

マンボウC「今の俺達、とことんついてねぇな……」スイスイ

マンボウD「うっ……!?」ピタッ

マンボウF「おいっ、どうした?……」

マンボウF「大丈夫か? マンボウD……」スイスイ

マンボウD「……」ズーーン

マンボウE「ぐっ、ぐはっ……」ピタッ

マンボウG「ぐはっ……」ピタッ

マンボウH「ぐはっ……」ピタッ

マンボウJ「ちょっと、皆どうしたのよ!?」

マンボウJ「何で、急に皆がバタバタ倒れていくの!?」スイスイ

マンボウ「!?」ガーーン

マンボウJ「皆、一体どうしたのよ!?」

マンボウJ「お願い、皆、目を覚まして!」スイスイ

マンボウ「……」スイスイ

マンボウC「くっ、この寄生虫が!」

マンボウC「てめぇら、絶対に許さねぇ!」スイスイ

寄生虫の群れ「……」

マンボウB「皆、早く方向を変えろ!」

マンボウB「じゃないと、俺達まで奴等の餌食になるぞ!」スイスイ

マンボウの死骸「……」ズーーン

マンボウJ「けど、どうやって!?」

マンボウJ「私達、そう簡単に方向転換なんて出来ないわよ!?」スイスイ

寄生虫の群れ「……」

マンボウI「わあっ、寄生虫が!?」

マンボウI「お願い、こっちに来ないで!?」スイスイ

マンボウJ「うっ!?」ピタッ

マンボウB「くっ、仕方ない……」

マンボウB「皆、このまま全速力で突っ切れ!」

寄生虫の群れ「……」

マンボウB「皆、必ず生きて戻るんだ!」

マンボウB「寄生虫ごときに、また負けてたまるか!」スイスイ

マンボウJ「……」ズーーン

マンボウ(ああ、なんか嫌だわ……)

マンボウ(また、私達の体に寄生虫さんが入るんだ……)スイスイ

寄生虫の群れ「……」

マンボウ(他の皆は、バタバタと死んでいっちゃうし……)

マンボウ(本当に、もう最悪だわ……)スイスイ

マンボウK「……」ピタッ

マンボウの群れ「……」スイスイ

魚の群れ「……」スイスイ

寄生虫の群れ「……」

マンボウの群れ「……」スイスイ

魚の群れ「……」スイスイ

寄生虫の群れ「……」

マンボウの群れ「……」スイスイ

魚の群れ「……」スイスイ

寄生虫の群れ「……」

マンボウの群れ「……」スイスイ

魚の群れ「……」スイスイ

寄生虫の群れ「……」

マンボウ(ふぅ、なんとか突っ切れたわ……)

マンボウ(皆も、なんとか逃げ切れた様ね……)スイスイ

マンボウB「……」スイスイ

マンボウ(相変わらず、私達の種族はストレスに弱い……)

マンボウ(本当に、どうして皆がバタバタと死んでいくのかしら?……)スイスイ

マンボウC「……」スイスイ

マンボウB「よしっ、皆逃げ切れたか?」

マンボウB「一体、今何匹生き残れてる?」スイスイ

マンボウ「……」スイスイ

マンボウL「大体、俺達合わせて18匹だ……」

マンボウL「皆、さっきの寄生虫で大分やられたな……」ギュウン

マンボウB「そっ、そうか……」

マンボウL「それで、どうする?」

マンボウL「俺達、このままどこに行くんだよ?」スイスイ

マンボウ「……」スイスイ

マンボウL「このまま、泳いでいてもいずれは寄生虫にやられる!」

マンボウL「だから、早く目的地を決めといた方が良い!」スイスイ

マンボウ「……」スイスイ

マンボウN「けど、一体どこへ?」

マンボウN「私達、一体どこに行けば良いのよ?」スイスイ

マンボウ「……」スイスイ

マンボウN「また、このままだと皆殺されちゃう……」

マンボウN「私達、またあの寄生虫達に殺されちゃうわよ……」スイスイ

マンボウN「うっ……」ピタッ

マンボウW「おいっ、どうした!?」

マンボウW「また、一匹やられたぞ!」スイスイ

マンボウN「……」ズーーン

マンボウW「皆、早く逃げろ!」

マンボウW「ここにも、奴等の仲間がいる!」スイスイ

マンボウV「うっ、ぐはっ……」ピタッ

マンボウB「ぐっ、ぐはっ……」ピタッ

マンボウC「うっ、ぐぇっ……」ピタッ

マンボウ「!?」ガーーン

マンボウU「ぐっ、ぐはっ……」ピタッ

マンボウT「ぶばっ……」ピタッ

マンボウ「……」スイスイ

マンボウ「ちょっと、一体何なのよ!?」

マンボウ「何で、海に戻って早々こんな目に遭うの!?」スイスイ

マンボウW「……」ズーーン

マンボウ「皆、なんとか生き延びて!」

マンボウ「また、私一人なんて絶対に嫌よ!」スイスイ

マンボウV「……」ズーーン

マンボウO「落ち着け。マンボウA」

マンボウO「皆、必死に逃げ切ろうとしてる!」スイスイ

マンボウ「……」スイスイ

マンボウO「皆、早くここから逃げるんだ!」

マンボウO「じゃないと、俺達まで奴等に殺されるんだぞ!」スイスイ

マンボウM「ぐっ!?」ピタッ

マンボウR「ぐっ、うぇっ……」ピタッ

マンボウX「うっ、ぐはっ……」ピタッ

マンボウ「……」スイスイ

マンボウQ「ぐっ、ぐはっ……」ピタッ

マンボウP「ぶばっ、ぶはっ……」ピタッ

マンボウ「あっ、ああっ……」スイスイ

マンボウS「皆、あれを見ろ!」

マンボウS「今度は、巨大な網が来た!」スイスイ

マンボウ「!?」ガーーン

マンボウS「このままだと、皆捕まる!」

マンボウS「早く逃げろ!」スイスイ

マンボウ「……」スイスイ

マンボウ(くっ、どうしたら?……)

マンボウ(私達、また捕まっちゃうの?……)スイスイ

マンボウE「うげゃ……」ピタッ

マンボウ(ああっ、また私のお仲間が倒れた……)

マンボウ(これ、もう全滅とかしちゃってるんじゃない?……)スイスイ

マンボウS「ぼこっ……」ピタッ

マンボウ(とりあえず、どうしよう?……)

マンボウ(皆、そう簡単に死にすぎでしょう……)

マンボウE「……」ズーーン

マンボウ(その割りには、何故か私は生きている……)

マンボウ(一体、何がどうなっているのかしら?……)

マンボウS「……」ズーーン

マンボウF「マンボウA。大丈夫か?」

マンボウF「今の所、俺達三匹だけだ!」スイスイ

マンボウ「……」スイスイ

マンボウI「私達、大丈夫なのよね?……」

マンボウI「このまま、私達は網に掛かっちゃうのかしら?……」スイスイ

マンボウ「……」スイスイ

マンボウ「いっその事、このまま捕まってしまうのもよくない?」

マンボウ「つい最近まで、私達捕まったんだし」スイスイ

マンボウI「!?」ガーーン

マンボウF「ああ、それもありかもな」

マンボウF「今丁度、俺達は網の中に入り掛けているんだし」スイスイ

マンボウ「……」スイスイ

マンボウ「とりあえず、このまま入るわよ」

マンボウ「こんな所で死ぬくらいなら、地元の漁師さん達に捕まった方が楽よ」スイスイ

マンボウF「ああ、同感だな」スイスイ

マンボウ「マンボウI、そのまま私達に着いてきて」

マンボウ「まだ、網に掛かってた方が遥かにマシみたいだから」スイスイ

マンボウI「……!?」ピタッ

マンボウF「おっ、おいっ……」

マンボウF「一体、どうしたんだ?……」

マンボウI「……」ズーーン

マンボウF「くそっ、マンボウIがやられた!」

マンボウF「マンボウIまでやられたぞ!」

マンボウF「うっ……!?」ピタッ

マンボウ(あっ、私達のお仲間達が全滅した……)

マンボウ(結局、皆、死んじゃうんだ……)スイスイ

マンボウF「……」ズーーン

マンボウ(このまま、私は網に掛かる……)

マンボウ(また、誰かに私は捕獲されちゃうんだ……)スイスイ

マンボウI「……」ズーーン

マンボウ(とりあえず、このまま網に入るのだけは止めとこ……)

マンボウ(と言うか、この網穴開いてるわよ……)スイスイ

網「……」

マンボウ(今の内に、ここを抜けよう……)

マンボウ(本当に、無駄に私は悪運だけは、かなり強いのね……)スイスイ

網「……」

~とある砂浜2~

魔法使い「ぶっ、ぶはっ……」

魔法使い「ぶはっ、おえっ……」ゲロロッ

魔術師「……」

エルフ母「……」

ザザーーン、ザザーーン……

魔法使い「ぐっ、ぐはっ……」

魔法使い「ぶははっ、うっ、おえっ……」ゲロロッ

魔術師「……」

魔法使い「おおっ、おえっ……」

魔法使い「おえっ、おおえっ……」ゲロロッ

エルフ母「……」

魔法使い「……」

魔法使い「……」

魔術師「……」

魔法使い「……」

魔法使い「……」

エルフ母「……」

魔法使い「……」

魔法使い「……」バタッ

魔術師「……」

魔法使い「……」

魔法使い「……」ガクッ

エルフ母「……」

魔術師「ふふっ、これでXXXX君は私のモノになった!」

魔術師「後は、XXXX君と結婚するだけね!」ニヤニヤ

魔法使い「……」

魔術師「本当に、エルフの里の惚れ薬は凄い!」

魔術師「これ、大体どれくらいの効果があるんですか?」ニヤニヤ

魔法使い「……」

エルフ母「薬の効果が切れるのは、XXXXさんが死ぬまでです」

エルフ母「XXXXさんが自力でそれを解いたとしても、既に無駄」

エルフ母「たとえ、XXXXさんが婚姻の無効を訴えたとしても、誰の手元には証拠はない」

エルフ母「離婚に関しては、そう簡単にはすぐには出来ません」

エルフ母「何故なら、法がそうなっているんですからね」ニヤニヤ

ザザーーン、ザザーーン……

魔術師「エルフさん。本当にありがとうございました!」

魔術師「これで、ようやく私の悲願が叶います!」

魔術師「もし仮に、エルフさんがまたここを訪れる機会がありましたら、会いに来て下さい!」

魔術師「XXXX君も、エルフさん達の事を歓迎してくれますから!」ニコニコ

エルフ母「はい、かしこまりました!」ニコニコ

魔法使い「……」

エルフ母「それじゃあ、私達はこれで」

エルフ母「XXXXさんとお幸せに」ペコッ

魔術師「はい。さようなら!」ペコッ

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ……

従者A「奥様。出立の用意が出来ました!」

従者A「いつでも、出立が出来ます!」

魔術師「……」

エルフ母「ええ、分かったわ」

エルフ母「娘は、ちょっと大人しくしてるのよね?」

従者A「はい。大丈夫です」

エルフ母「総員。これから、エルフの里に戻るわ!」

エルフ母「さぁ、早く進みなさい!」

従者達「はっ!」

従兵隊長「第一分隊、前へ!」

従兵隊長「進め!」

パカパカパカッ、パカパカパカッ……

スッ、ガチャ……

スタッ、スタッ……

スッ、バタン……

常用馬車「……」

クルッ、スタスタスタッ……

ザザーーン、ザザーーン……

従者B「従者A。早くしろ!」

従者B「次の馬車が出せないだろ!」

従者A「ああ、すまんすまん」

従者隊長「第二分隊、前へ!」

従者隊長「第一分隊との距離をある程度離して、進め!」

パカパカパカッ、パカパカパカッ……

スッ、スタッ……

スッ、ムギュッ……

従者A「奥様。これより、馬車を動かします」

従者A「少し、馬車が揺れると思いますが、どうかご容赦を」

「ええ、了解したわ」

従者A「……」パシン

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

魔術師「……」

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

魔法使い「……」

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

魔術師「……」

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

魔法使い「……」

魔術師「さよなら。エルフさん!」

魔術師「また、機会があったらここに来て下さいね!」ニコニコ

魔法使い「……」

魔術師「次に、お会いする時には、必ず子供が生まれていると思います!」

魔術師「多分、私似のとても可愛い可愛い娘が生まれているでしょうね!」ニコニコ

ザザーーン、ザザーーン……

魔術師「エルフさん。本当に、色々と有り難うございました!」

魔術師「これからは、XXXX君と共に二人で幸せな家庭を築いていきます!」ニコニコ

パカパカパカッ、パカパカパカッ……

魔法使い「本当に、色々とお世話になりました!」

魔法使い「短い間でしたが、エルフさん達の事は一生忘れません!」ニコニコ

パカパカパカッ、パカパカパカッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

魔術師「……」

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

魔法使い「……」

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

魔術師「……」

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

パカパカパカッ、ガラガラガラッ……

魔法使い「……」

魔術師「さてっ、私達も戻ろうか?」

魔術師「これから、うんと忙しくなるんだし!」クルッ

魔法使い「……」

魔術師「XXXX君。もう逃げないでね!」

魔術師「今夜は、一緒に生まれたままの姿になろうよ!」ニコニコ

魔法使い「……」

魔術師「XXXX君。私、初めてだから優しくしてね!」

魔術師「あまり、乱暴に動いたりはしないでね!」

魔術師「まぁ、次に目を覚ました時には、もう既にXXXX君は私だけのモノなんだし!」

魔術師「たとえ、XXXX君がどこへ逃げようとも、私はどこまでも追いかけて行くからね!」ニコニコ

魔法使い「……」

ザザーーン、ザザーーン……

~とある漁港~

数年後――

漁師「組合長。また駄目です!」

漁師「全ての網が、完全に破られています!」

漁師「ここ最近、ろくに魚が取れていません!」

漁師「俺達、このままやっていけるんでしょうか?」アセアセッ

漁師B「組合長。俺達どうなるんですか?」

漁師B「俺達、本当に生活出来るんですか?」

漁師B「俺、つい最近になって結婚したばかりなんです!」

漁師B「このままだと、妻に実家に帰られるかもしれないんですよ!」アセアセッ

組合長「……」

漁師「……」アセアセッ

漁師C「組合長。自分とこもです!」

漁師C「このままだと、今後の生活に大きく支障が出てきます!」

漁師C「今度、給金が滞ったら妻に出ていかれます!」

漁師C「自宅の家賃も、大家さんに事情を説明して待って貰っているんです!」アセアセッ

組合長「……」

漁師達「……」アセアセッ

漁師「組合長。なんとかして下さい!」

漁師「町の商人達は、他所で魚を仕入れ出しております!」

漁師「このままだと、本当に廃業ですよ!」

漁師「一体、領主様は何をされているんですか?」

組合長「……」

漁師達「……」アセアセッ

漁師「組合長。これ以上は、もう無理です!」

漁師「魚が取れない以上、俺達の仕事はもうお終いです!」

漁師「なんとか、あの時の子持ちのエルフさんに連絡をつけられないんですか?」

漁師「あの人さえ来てくだされば、全ての問題を解決してくれそうな気がするんです!」アセアセッ

組合長「……」

ザザーーン、ザザーーン……

漁師B「組合長。あの子持ちのエルフさんの連絡先は?」

漁師B「エルフの里には、もう連絡をしたのですか?」アセアセッ

組合長「……」

漁師B「俺達、このままだと本当にお終いです!」

漁師B「今度は、一体どうやって生活をしていけばいいんだ!」アセアセッ

漁師達「……」アセアセッ

漁師F「組合長。自分とこもです!」

漁師F「このままだと、今後の生活に大きく支障が出てきます!」

漁師F「ただ唯一、自分が捕獲したのは巨大なモンスター一体のみ!」

漁師F「そう、それも、“自分はただの魚”だと何度も何度も言い張っております!」

組合長「!?」

漁師「なっ!?」

組合長「漁師F。どう言う事だ?」

組合長「そのモンスター、本当に人間の言葉が話せるのか?」

漁師F「はい」

組合長「なら、そのモンスターは今どこにいる?」

組合長「まだ、そのモンスターを殺したりはしてないよな?」

漁師F「ええ、大丈夫ですが」

組合長「漁師F。至急、そのモンスターを保管している所にまで案内しろ!」

組合長「お前、確か新人だったな?」

組合長「新人の割りにはよくやってくれた!」

組合長「本当に、お前はよくやってくれたぞ!」ピカァ

漁師「ええ、そうですね!」ピカァ

漁師F「……?」

漁師「あの、今のどう言う事ですか?」

漁師「自分が捕獲したモンスターは、そんなに価値があるんですか?」

組合長「ああ、そうだ!」ニヤニヤ

漁師「と言う事は、俺達このままやっていける!」

漁師「組合の尽き掛けていた予算や月々の給金の問題等も、全てそのモンスターが解決をしてくれると言う訳だ!」ニヤニヤ

ザザーーン、ザザーーン……

漁師F「でも、それはただのモンスターですよ!」

漁師F「今回は、偶々珍しい形をしていたから、捕獲しただけなんですけど!」

漁師F「あのモンスターって、誰か買い取ってくれるのですか?」

漁師F「あんな形をした魚の様なモンスター、今まで一度も見た事がないんですが?」

組合長「ああ、まあな」ニヤニヤ

漁師「最初は、皆そう言うんだよ」ニヤニヤ

漁師B「とりあえず、お前は組合長をそのモンスターが保管されている所に案内しろ!」

漁師B「後は、俺達で上手くやっておく!」

漁師B「以前、俺達はある方と取引をした!」

漁師B「その方とは、珍しい魚が水揚げをされた時には、その魚をすぐに引き渡す!」

漁師B「実際、ただの研究目的なら別に良いんだ!」

漁師B「まぁ、たとえ現金で取引したとしても、領主様にバレなきゃ別に良いんだよ!」ニヤニヤ

漁師F「……はい。分かりました」

漁師F「早速、組合長をご案内致します」

漁師F「今、そのモンスターは魔法使いのXXXXさんの所に」

漁師F「以前から、XXXXさんはそのモンスターを何度も何度も目撃をされていましてね」

漁師F「つい最近、出産を終えた奥様と研究をなされている様です」

組合長「ほう」ニヤニヤ

漁師B「よしっ、漁師F。組合長を頼むぞ!」

漁師B「他の皆は、引き続き漁や出荷の準備等を頼む!」

漁師B「後、新人の漁師Dと漁師Eは、出荷等の手伝い!」

漁師B「さぁ、皆すぐに取りかかるんだ!」

漁師達「お――っ!」

組合長「……」

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

組合長「……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ザザーーン、ザザーーン……

漁師F「組合長。行きましょう」

漁師F「今から、自分がご案内致します」

組合長「うむ。頼む」

漁師「あのモンスター、あのまま捕獲しておいて良かったですね」

漁師「あのモンスターがいなければ、俺達の給金すら入らなかったんですから」ニヤニヤ

組合長「ああ、そうだな」ニヤリ

組合長「けど、お前よく取れたな?」

組合長「あれ、結構重くなかったか?」

漁師F「ええ、大丈夫でした」

漁師「とりあえず、早く行くぞ」

漁師「さっさと確認して、領主様に出荷の許可を取らなくちゃいけねぇんだから」

漁師F「はい。かしこまりました」

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

漁師D「……」テキパキ

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

漁師C「……」テキパキ

漁師B「漁師E。網確認しろ!」

漁師B「それ確認し終えたら、破れた網をすぐ処分するんだ!」

漁師E「はい!」

漁師B「漁師D。お前も手伝ってやれ!」

漁師B「次は、ちゃんと破れない様にしとくんだそ!」

漁師E「はっ!」

漁師C(まさか、再びあのモンスターと出会えるとはな……)

漁師C(あの後、必死に願っておいた甲斐があった……)

漁師C(これで、全ての問題が解決するみたいだし……)

漁師C(本当に、あのモンスターには感謝しないとな……)

漁師C「……」ニヤリ

ザザーーン、ザザーーン……

~とある民家2~

赤ん坊「おぎゃーーっ、おぎゃーーっ、おぎゃーーっ!」

赤ん坊「おぎゃーーっ、おぎゃーーっ、おぎゃーーっ!」ポロポロッ

魔法使い「……」カキカキ

赤ん坊「おぎゃーーっ、おぎゃーーっ、おぎゃーーっ!」

赤ん坊「おぎゃーーっ、おぎゃーーっ、おぎゃーーっ!」ポロポロッ

赤ん坊「おぎゃーーっ、おぎゃーーっ、おぎゃーーっ!」

赤ん坊「おぎゃーーっ、おぎゃーーっ、おぎゃーーっ!」ポロポロッ

魔法使い「……」カキカキ

赤ん坊「おぎゃーーっ、おぎゃーーっ、おぎゃーーっ!」

赤ん坊「おぎゃーーっ、おぎゃーーっ、おぎゃーーっ!」ポロポロッ

スッ、ガチャ……

魔術師「ああ、ごめんなさいね」

魔術師「そろそろ、ミルクの時間帯だったかしら?」ニッコリ

赤ん坊「おぎゃーーっ、おぎゃーーっ、おぎゃーーっ!」

赤ん坊「おぎゃーーっ、おぎゃーーっ、おぎゃーーっ!」ポロポロッ

魔術師「はいはい。今からミルクあげるから」

魔術師「そこで、ちょっと待っていてね」ニコニコ

魔法使い「XXXXX。お帰り」

魔法使い「今、泣き出した所だよ」ピタッ

赤ん坊「おぎゃーーっ、おぎゃーーっ、おぎゃーーっ!」

赤ん坊「おぎゃーーっ、おぎゃーーっ、おぎゃーーっ!」ポロポロッ

魔法使い「赤ん坊って、よく泣くんだね」クルッ

魔法使い「ボク達も、昔はこんなんだったのかな?」ニッコリ

魔術師「ええ、そうなんでしょうね」

魔術師「この子を見てたら、自分達の親の苦労が見て取れるわ」

魔術師「ねぇ、XXXX。また、あのモンスターを手に入れたの?」

魔術師「今日は、また一段と大きなモンスターを手に入れたみたいだけど」ニコニコ

赤ん坊「おぎゃーーっ、おぎゃーーっ、おぎゃーーっ!」

赤ん坊「おぎゃーーっ、おぎゃーーっ、おぎゃーーっ!」ポロポロッ

魔法使い「うん。そうだよ」

魔法使い「あれ、ちょっと預かってるだけなんだけど」

魔法使い「なんか、つい最近入った新人さんが捕獲したみたいでね」

魔法使い「それで、あの魚をボクが預かっていると言う訳」ニコニコ

赤ん坊「おぎゃーーっ、おぎゃーーっ、おぎゃーーっ!」

赤ん坊「おぎゃーーっ、おぎゃーーっ、おぎゃーーっ!」ポロポロッ

魔術師「へぇ、そうなんだ」

魔術師「だから、アレがまた増えたんだ」

魔術師「ここ最近、よくアレを捕まえているわね」

魔術師「やっぱり、あの時のアレがまだ影響をしているのかしら?」ニコニコ

魔法使い「うん。多分ね」ニコニコ

スッ、バタン……

赤ん坊「おぎゃーーっ、おぎゃーーっ、おぎゃーーっ!」

赤ん坊「おぎゃーーっ、おぎゃーーっ、おぎゃーーっ!」ポロポロッ

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

赤ん坊「おぎゃーーっ、おぎゃーーっ、おぎゃーーっ!」

赤ん坊「おぎゃーーっ、おぎゃーーっ、おぎゃーーっ!」ポロポロッ

スタスタスタッ、ピタッ……

スッ、パチッ……

パチッ、パチッ……

スッ、シュルシュル……

魔術師「……」

魔法使い「……」

赤ん坊「……」ピクッ

スッ、ムギュッ……

チューーッ、チューーッ……

チューーッ、チューーッ……

赤ん坊「……」

チューーッ、チューーッ……

チューーッ、チューーッ……

魔法使い「ああ、泣き止んだね」

魔法使い「そんなに、ママと離れるのは嫌だったのかな?」ニコニコ

チューーッ、チューーッ……

魔法使い「次は、ボクが君のミルクを飲みたい!」

魔法使い「娘が飲むの終わったら、今度はボクが君のミルクを飲みたいなぁ!」ニコニコ

チューーッ、チューーッ……

魔術師「XXXX。駄目!」

魔術師「そんな事をしたら、XXXの分がないでしょ?」

魔術師「ミルクが飲みたいのなら、近くにある牧場にでも行ってきたら?」

魔術師「そこでなら、絞り立てのミルクを飲ませてくれると思うけど」ニコニコ

魔法使い「ええ~~っ!」

トントン、トントン……

「すみません。魔法使いのXXXXさん」

「漁師組合の漁師Fです。ご在宅ですか?」

魔法使い「ん?」クルッ

トントン、トントン……

「XXXXさん。ご在宅でしょうか?」

「ついさっき預けたモンスターの件なんですが!」

スッ、ムクッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ピタッ、クルッ……

スッ、ガチャ……

魔法使い「……」

漁師F「……」ペコッ

漁師F「XXXXさん。おはようございます」

漁師「少し、お時間の方は宜しいでしょうか?」ニッコリ

魔法使い「ええ、構いませんが」

漁師「今日は、朝早くから誠に申し訳ありません!」

漁師「今朝預けたモンスターの件で、お伺いをさせて頂きました!」

組合長「……」

魔法使い「それで、そのモンスターの件とは?」

魔法使い「もう、お預かりをしなくても宜しいのですか?」

魔術師「……」

漁師「ええ、実はアレをこれから出荷する事になりました!」

漁師「それで、あのモンスターをすぐにお返し願いたいのですが!」

組合長「……」

魔法使い「ええ、それは構いませんよ」

魔法使い「しかしまた、急な話ですね」

魔術師「……」

組合長「実は、とあるお方からの出荷の依頼がありましてな!」

組合長「それで、今回はこうして失礼を承知でお伺いをしたと言う訳です!」

魔法使い「は、はぁ……」

組合長「それで、あのモンスターは今どこに?」

組合長「今は、生け簀の中で飼育されておられるのですか?」

魔法使い「ええ、そうです」

組合長「なら、早速そのモンスターの元まで案内して頂きたい!」

組合長「こっちも、急な出荷で大忙しなんです!」

漁師F「……」

魔法使い「分かりました。ご案内致します」

魔法使い「XXXXX。ちょっと、出掛けてくるね」クルッ

魔法使い「すぐに、また戻ってくるから」

魔法使い「君は、ここで娘と共に待っていて」ニッコリ

魔術師「ええ、了解したわ」ニッコリ

組合長「……」

組合長「では、早速参りましょう」

組合長「本当に、今日は色々とご迷惑をお掛けして誠に申し訳ない」ペコッ

漁師F「……」ペコッ

魔法使い「いえいえ」

クルッ、スタスタスタッ……

スッ、バタン……

魔術師「あら? もう良いの?」

魔術師「もう、ミルクは飲みたくないの?」

赤ん坊「……」ニコニコ

魔術師「それじゃあ、またゆっくりとお昼寝しようね」

魔術師「今はパパもママも、お仕事が忙しいから」ニッコリ

赤ん坊「たぁや……」ニコニコ

魔術師(けど、何で急にあのモンスターを?)

魔術師(あのモンスターって、そんなに需要とかあるの?)

魔術師(まぁ、今はそんな事を気にする必要はないみたいだし)

魔術師(今の私には、この子とXXXXがいるからね!)ニコニコ

赤ん坊「……」ニコニコ

魔術師「♪~~♪~~♪」ニコニコ

~どこかの砂浜~

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

娘「……」

母「……」

ザザーーン、ザザーーン……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

娘「……」

母「……」

娘「あっ……」

ピタッ、ピタッ……

娘「ねぇ、お母様……」

娘「あれ、何かしら?……」

娘「なんか、あそこに何かが打ち上げられているんだけど……」

マンボウ「……」

母「ああ、本当だわ」

母「一体、何が打ち上げられているのかしら?」

娘「とりあえず、近づいてみる?……」

娘「私、アレ物凄くきになっちゃったんだけど……」

マンボウ「……」

母「いや、それは止めといた方がいいんじゃない?」

母「アレ、もしかしたらモンスターかもしれないから」

娘「え?」

老剣士「おいっ、あんたらそこから離れろ!」

老剣士「あそこに打ち上げられているのは、モンスターだぞ!」ヌッ

母子「!?」ガーーン

老剣士「今、俺の仲間が兵士を呼びに行った!」

老剣士「だから、早く逃げるんだ!」

スッ、スタッ……

母「ああ、アレやっぱりモンスターなんだ!」

母「娘、早くここから離れるわよ!」グイッ

娘「……」

母「娘。私の言う事を聞きなさい!」

母「あんたも、お父さんみたいにモンスターに食べられたいの!」クルッ

ザザーーン、ザザーーン……

老剣士「早く、早くあんたらも逃げるんだ!」

老剣士「あのモンスターは、何故か人間の言葉を話せる!」

老剣士「今さっき、それが発覚して兵士を呼びに行った!」

老剣士「だから、あんたらも早く逃げるんだ!」

母子「……」

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

マンボウ(もう、失礼しちゃうわね……)

マンボウ(私、本当にただのお魚なのに……)

マンボウ(また、私ったら居眠りをしちゃってたわ……)

マンボウ(このままだと、確実に息の根を止められてしまうわ……)ウルウル

老剣士「……」

スチャ、スラァン……

マンボウ(ああ、なんかあの老剣士が剣を抜いた……)

マンボウ(私、あの剣で止めを刺されちゃうんだ……)ウルウル

老剣士「……」ジリジリッ

マンボウ(私、まだ泳ぎ足りてないのに……)

マンボウ(まだまだ、ゆったりと海を自由に泳いでいたいのに……)ウルウル

老剣士「……」ジリジリッ

マンボウ(出来れば、また奇跡が起きて欲しいなぁ……)

マンボウ(また、私は海を自由に泳げないかしら?……)ウルウル

老剣士「……」ジリジリッ

マンボウ(どうやら、それは無理みたいね……)

マンボウ(今の私、絶対絶命のピンチみたいだし……)ウルウル

老剣士「……」ジリジリッ

マンボウ(とりあえず、もう寝ようかしら?……)

マンボウ(私は、もう駄目みたいだし……)

マンボウ(ああ、なんか息が苦しくなってきた……)

マンボウ(もう私、完全に駄目みたいね……)ウルウル

老剣士「……」ピタッ

ザザーーン、ザザーーン……

老剣士「おいっ、そこのお前。まだ息はあるのか?」

老剣士「そのまま、一人で死ねるか?」

マンボウ「……?」ウルウル

老剣士「もし仮に、それが無理なら俺が止めを刺してやる!」

老剣士「今のお前、完全に死にかけみたいだからな!」

マンボウ「……」ウルウル

マンボウ「出来れば、まだ死にたくはないわ……」

マンボウ「私、まだ海を自由に泳いでいたい……」ウルウル

老剣士「!?」

マンボウ「ねぇ、そこのあなた、少しお願いがあるの……」

マンボウ「このまま、私を海に戻して……」

マンボウ「お願い……」ウルウル

老剣士「お前、海に戻りたいのか?」

老剣士「モンスターでも、郷愁とか言うものがあるんだな」

マンボウ「……」ウルウル

老剣士「前にも、俺はお前と似た様なモンスターと出会った」

老剣士「まぁ、そいつは“ただの女の見苦しいハーフエルフだった”がな」

マンボウ「……」ウルウル

老剣士「なら、お前にも問う?」

老剣士「何故、そこまでして生きたいのだ?」

老剣士「どうして、お前はそこまで生きる事にこだわるのだ?」スッ

マンボウ「……」ウルウル

老剣士「今の俺からしてみれば、お前等生きる価値はない!」

老剣士「モンスターは、全てこの世から殲滅されるべきなのだ!」

老剣士「まぁ、今のお前に何も言っても分からぬか」

老剣士「結局、騎士XXはお前の仲間に殺されたのだからな」

老剣士「この世に、お前は生まれてきた事だけを恨め!」

老剣士「今のお前は、本当に生きる価値すらないんだからな!」

マンボウ「!?」ガーーン

ザザーーン、ザザーーン……

スッ、グサッ……

プシューーーーッ……

マンボウ「――――――――っ!?」ウルウル

グサッ、グサッ……

グサッ、グサッ……

プシューーーーッ……

マンボウ「はぁ、はぁ……」

マンボウ「はぁ、はぁ……」ウルウル

ポタポタポタッ、ポタポタポタッ……

マンボウ「はぁ、はぁ……」

マンボウ「はぁ、はぁ……」ウルウル

ポタポタポタッ、ポタポタポタッ……

マンボウ「……」

マンボウ「……」

ポタポタポタッ、ポタポタポタッ……

マンボウ「……」

マンボウ「……」ガクッ

スッ、カシャン……

老剣士「……」ブツブツ

老剣士「……」ブツブツ

老剣士「……」ブツブツ

老剣士「……」ブツブツ

老剣士「はっ!」ボワッ

ゴゴゴゴッ、ゴゴゴゴッ……

老剣士「さらばだ。名も無きモンスター!」

老剣士「お前も、そこで安らかに眠れ!」

老剣士「恨むなら、お前の運の無さを恨め!」

老剣士「所詮、お前はただのモンスター!」

老剣士「モンスターは、全てこの世から殲滅されるべきなのだ!」

ザザーーン、ザザーーン……

老剣士「これで、また一匹モンスターが減ったな!」

老剣士「後は、各地に増殖した同種のモンスターを討伐するだけか!」

老剣士「騎士XX。必ず、貴殿の仇を討ってやる!」

老剣士「それが、今の俺に出来るせめてもの供養なのだからな!」

マンボウ「……」

ゴゴゴゴッ、ゴゴゴゴッ……

クルッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

ゴゴゴゴッ、ゴゴゴゴッ……

スタスタスタッ、スタスタスタッ……

スタスタスタッ、ピタッ……

ゴゴゴゴッ、ゴゴゴゴッ……

老剣士「……」ブツブツ

老剣士「……」ブツブツ

ゴゴゴゴッ、ゴゴゴゴッ……

老剣士「……」ブツブツ

老剣士「……」ブツブツ

シューーーーッ、シュン……

マンボウ「……」

マンボウ「……」

ゴゴゴゴッ、ゴゴゴゴッ……

マンボウ「……」

マンボウ「……」

ゴゴゴゴッ、ゴゴゴゴッ……

マンボウ「……」

マンボウ「……」

ゴゴゴゴッ、ゴゴゴゴッ……

マンボウ「……」

マンボウ「……」

ザザーーン、ザザーーン……

マンボウ「あの、私、ただの魚なんですけど……」/完

これで、このお話は終わりです。

このお話を読んで頂き、本当にありがとうございました。

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