女子校生「ミチズレンアイ」 (25)

A「うちの生徒だよね。傘ないの?」

B「一人にさせてください」

A「公園のど真ん中で傘も差さず、びしょ濡れになってる女の子を、ほっとくことは流石にできないよ」

B「頭冷やしたいんです」

A「それならこんな都会の酸性雨じゃなくて、うちのシャワーで冷やしていきなよ」

A「ここがあたしの部屋」

B「寮生だったんですね」

A「うん、まあね」

B「すみません、いいんですか?」

A「お湯勿体無いからあたしも浴びるけどね」

B「え?あの……」

A「別に、女の子同士だし問題ないでしょ。恥ずかしいの?」

B「それは大丈夫なんですけど、いや、大丈夫じゃないといいますか…」

A「襲われるとおもった?」

B「!」

A「いや、ジョークジョーク」

A「髪綺麗だねー」

B「いや、そんなこと」

A「雨で痛んじゃうのは良くないよ」

B「……はい」

A「肌も白い!羨ましい!」

B「あの、先輩…」

A「Aでいいよ」

B「じゃあ、Aさん」

A「んー?」

B「耳くすぐったいです」

A「我慢。シャンプーってそういうもんだから」

B「Aさん、やっぱり大丈夫じゃないです」

A「シャンプーされるの嫌い?」

B「いや、そうじゃなくて。私、あの」

A「?」

B「私、レズ、なんです」

A「あー、モーマンタイ」

B「え?」

A「あたしもレズなんで、よろしく」

B「それって、全然大丈夫じゃないんですけど」

A「聞かれなかっただけで騙したわけじゃないよ」

B「あ、あのっ」

A「だから、襲ったりしないって。そこまで節操がないわけじゃない」

B「これ以上優しくしないでください」

A「なんでー?」

B「と、とりあえず離れてください」

A「ちぇー。つれないでやんの」

B「そういうことじゃなくてですね…」

A「じゃあ、どういうことか聞かせてよ」

B「とりあえず私出ます」

A「ちょい待ち、まだ泡ついてる。慌てないの」

A「じゃー、聞かせてもらおっか諸々」

B「……私、ある人にフられたんです」

A「告白して?」

B「いや、付き合ってはいたんですが」

A「それであんな思い切った行動を?」

B「はい。なんだか空っぽになっちゃったような気がして」

A「……あー、なるほどなるほど。そういうことかー。照れるなあ」

B「Aさん?」

A「優しくしないでくださいって、つまりそういうことでしょ?」

B「心を埋めてくれるなら、誰でも好きになってしまいそうで怖いんです」

A「いいよ。好きになっても。君みたいに可愛い子ならいつでもウェルカム」

B「でも……」

A「そんな顔赤くしてたら、何言っても無駄だよ」

B「Aさん、私」

A「ねえ、目を閉じて」

B「……」

A「可愛い唇」

Bは夜になると帰って行った。
一人になった部屋で私は、なんて馬鹿なことをしてしまったんだと、自責と後悔に苛まれた。
Bの淋しさにつけこんで、その身体を貪ったことは紛れもない事実だ。己の寂しさを満たすように、である。

私も寂しかった。
この気持ちを誰かと分かち合いたかった。
だからこそ、彼女と出会ったのかもしれない。
孤独を紛らわせるため雨音の中を歩く私が、同じだけひとりぼっちなBと巡り合うことは必然だったのかもしれない。

何となく似ているとは思った。
でもあの子は、ほとんど私だった。話を聞くうちに分かった。
誰かの道連れにされて、取り残されたもの同士だ。

だからって抱いてしまうのは、どう考えても最低だ。

これでは、私を道づれにしたあいつと一緒だ。
そう思うと自己嫌悪の誘爆が止まらなくなる。
枕に顔をうずめた。
Bの匂いがすることがこんなにも悔しい。

そう、あいつは自分を半ば正当化していた。

あいつによればこうだ。
愛というものが存在するならそれは機能である。
愛という機能は子孫を残すためにあって
子を成さない、つまり生物の本懐に逆らう自分たちが
同性に抱く感情は、自分たちが生物として欠陥であることを証明している。

そんなのは不公平だ。
だから、皆道連れにしてしまいたい。

だなんて、我儘にもほどがる。

でも私だって同じだ。

あいつに捨てられた寂しさを埋め合わせるためにBとセックスした。

ああ、道連れは連鎖する。

おしまい
スレタイミスった
道連れと一途と道ズレをかけたってことにしといて

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