P「やよいって苦手なんですよね……」 (23)

【事務所・給湯室】

やよい(え……?)

小鳥『どうしてですか?あんなにいい子はそうそう居ないと思いますけど……』

P『いえその……いい子なのは理解してるんです』

P『でも、あれぐらいの年の子ってテンション高いというか、元気というか……』

P『とにかく、俺にはついていけないんですよね……』

小鳥『……プロデューサーさんでついていけなかったら私は何ですか?周回遅れですか?』

P『い、いえっ!そんなつもりじゃ……』

小鳥『まあいいです。何にしても、やよいちゃんを悲しませる事だけはしないでくださいね?』

P『善処します……』

小鳥『政治家みたいな事を言わない』

P『す、すみません!』

やよい(……私、プロデューサーから迷惑に思われてたんだ)

やよい(どうしよう……あ、小鳥さんに訊いてみようかな)

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【事務所】

P「じゃあ、営業に行ってきますね」

小鳥「はい、行ってらっしゃい」

バタン……

小鳥「さて、私も仕事しないと――」

やよい「あの、小鳥さん!」

小鳥「やよいちゃん?どうしたの?」

やよい「ちょっと相談が……」

小鳥「そう……あれ、聞こえちゃってたのね……」

やよい「はい……それで、プロデューサーと仲良くなるにはどうしたらいいかなーって」

小鳥(こんなにいい子を……あの人、本当に駄目ね……)

やよい「何かいいアイデア、ありませんか?」

小鳥「そうね……あ、そういえば」

やよい「何ですか?」

小鳥「プロデューサーさんは、『千早みたいな子がいいんだ』って言っていたわね」

小鳥「何でも、あまり干渉してこないと気が楽なんだとか」

やよい「じゃあ、千早さんみたいにすればいいって事ですか?」

小鳥「多分ね。後は……そう。自分と好みが似てると落ち着くんですって」

やよい「分かりました!早速やってみます!」

小鳥「頑張ってね、応援してるわ」

やよい「はいっ!」

【プロデューサーが戻ってきた後、事務所】

P「ふぅ……喉が渇いたな……」

やよい「プロデューサー、コーヒーどうぞ」

P「お、ありがとう。やよいが淹れてくれるなんて――」

やよい「話しかけないでください」

やよい(千早さんって、こんな感じだったかな……?)

P「え?あ、ごめん……」

P(ちょっと待って?何でこんな事になってるんだ?)

P(話しかけないでって……じゃあコーヒー淹れてくれたのは一体……?)

やよい(プロデューサー、黙っちゃいました……いや、黙らせたのは私ですけど……)

やよい(これで合ってるのかなぁ……)

P「…………」

ズズッ……

やよい「…………」

チビッ……

やよい(苦っ!え?コーヒーってこんなに苦いの!?)

やよい(お砂糖とミルク――は、取りに行けない……)

小鳥『自分と好みが似てると落ち着くんですって』

やよい(うぅ……苦いよ……)

P(やよいが物凄い顔でコーヒーを飲んでる……)

P(もうなんか、般若のような顔で……)

P(苦いのかな……?いや、それなら砂糖とか足せばいい話だし……)

P(どうして足さないんだ……?)

P(もしかして、俺に気を遣って……?だとしたら――)

P「あ、あー……何だか今日は砂糖とミルクが――」

やよい「喋らないでください」

P「ごめん……」

やよい(ごめんなさいプロデューサー……でも、気を遣わせる訳にはいかないんです……)

やよい(仕事から帰ってきて疲れてるのに、私と話すのなんてしんどいですよね……)

P(あ、やよいがこっち見た)

P(嫌われてるような感じはしないな……やっぱり気を遣わせてるのかな?)

P(自分だけ砂糖とかミルクを入れるのは悪いと思っているとか……?)

スクッ

P「…………」

スタスタ……←給湯室へ

P(砂糖とミルクは……あった)

P(これをコーヒーに入れて……)

スタスタ……ギシッ

スッ……←砂糖とミルクをやよいの方へ

P「ああ、たまにはカフェオレもいいなー」

やよい「…………」

ポチャポチャポチャ……ドボッ

P(角砂糖三個にミルクどっさり……もはやカフェオレかどうかも怪しいな……)

チビッ……

やよい(あ、美味しいです!)

P(すっげぇ笑顔……まるでおたふくさんみたいな顔してる……よっぽど苦かったのか……)

P「…………」

やよい「…………」

P(俺はいつまで黙っていればいいのだろう……)

やよい(無言って、思ったよりも居心地悪いかもです……)

やよい(確か、プロデューサーはテンション高いのが苦手って言ってました……)

やよい(じゃあ、テンション下げて話しかけてみようかな……)

やよい「あの、プロデューサー……」

P「え?あ、何だ……?」

やよい「ダルいです……」

P「そ、そうなのか……それはその、お大事に?」

P(いや、何これ?俺と一緒に居るのはダルいって事なの?)

P(なのに何で一緒に居るの?もう訳分からん……)

やよい(プロデューサー、あんまり喜んでくれてないです……)

やよい(はっ!?ダルいって、よく考えたらそんなにいい言葉じゃなかったかも……!)

やよい(うぅ……反省です……)

やよい「あのっ!」

P「うぇっ!?ど、どうした?」

やよい「さっきの『ダルい』はなかった事に……」

P「え?ああ、うん。それはよかった」

やよい「…………」

P「…………」

やよい(会話が……)

P(続かない……)

やよい(ダルい以外で何か……こう、疲れてる感じで……)

やよい「私、疲れちゃいました……」

P「えぇっ!?」

やよい(あ、驚いてます。これって手ごたえアリなのかな)

P(疲れてる?やよいが?何に?)

P(もしや人生に!?それは不味い!)

P「やよい!今すぐ病院に行こう!」

やよい「え!?何でですか!?」

P「何でもだ!いいから早く準備を――」

やよい「私、別にどこも悪くないですよ?」

P「いや、身体のどこかというか……さっき、疲れてるって言っただろう?」

やよい「あれは収録で疲れただけですけど……どうしましたか?」

P「え?あ、そうなのか……すまん、取り乱した……」

やよい「いえ……」

やよいはかわいいなぁ

やよい(私はどこも悪くないのに、病院に行こうって事は……)

やよい(もしかして、プロデューサーが病院に行きたかったとか……?)

やよい(私と一緒なのは、一人だと心細いからで……)

やよい(そういえば、プロデューサーはブラックが好きでしたね……)

やよい(どうしてあんなに苦いのが好きなんでしょう……甘い方が美味しいのに……)

やよい(なのに苦いブラックが好き――ううん、苦いブラックしか飲めないとしたら……)

やよい(まさか、プロデューサーは糖尿病!?大変!すぐ病院に行かないと!)

やよい「プロデューサー!病院に行きましょう!」

P「え!?何で!?」

やよい「いいから早く!プロデューサーは病気なんですっ!」

P「いや、俺は至って健康なんだけど……」

やよい「糖尿病じゃないんですか!?」

P「何で俺が糖尿病なんだ!?この歳でそんなのになってたまるか!」

やよい「あぅ……ごめんなさい……」

P「あ、ああ……すまん、俺も強く言いすぎたみたいだ……」

P(しかし、どうしてやよいは俺の事を糖尿病だと思ったんだ……?)

P(まさか、お父さんが糖尿病なのか……?)

P「なあ、やよい」

やよい「何ですか?」

P「やよいのお父さん、元気か?」

やよい「お父さんですか?元気ですよ」

P「何ともないのか?」

やよい「何が訊きたいのか分かりませんけど……普通に元気ですよ?」

P「そ、そうか……」

P(普通に元気……それを言葉通りに受け止めていいのだろうか……?)

P(確かに、健康だから元気……という解釈もできるが……)

P(逆に、糖尿病だけど普通に元気なように振る舞ってます……という風にも考えられる……)

P(いや、家庭の事情に他人が踏み込むのはよくない……考えるのは止めにしよう)

やよい(プロデューサー、何だか難しい顔してます……)

やよい(やっぱり、私と居てもつまらないですよね……)

やよい(どうにかして――あ)

やよい(そういえば、前に貴音さんとラーメン食べに行った時……)

――――――――――――――――――――
【回想】

貴音「いいですか、やよい」

貴音「人は、一から十まで教えられるだけでは……それを実行するだけでは駄目なのです」

貴音「一を聞いて十を知る事……それこそが、真の知性と言うもの……」

貴音「わたくしがらぁめんのすぅぷを一口飲んで、その材料を全て当てるように……」

貴音「貴女も、そんな素晴らしい人間になるのですよ……」

――――――――――――――――――――

やよい(貴音さんの言葉から分かるのは……)

やよい(小鳥さんは、私にそういう事を求めていたんじゃないかな……って事)

やよい(多分、千早さんみたいに振る舞うとか、好きな物を合わせるとか……大事なのは、そこじゃなくて)

やよい(プロデューサーが本当にして欲しい事を、そこから考える事……)

やよい(だから、私が本当にしないといけないのは――)

やよい(仕事以外では誰にも構って欲しくない疲れきったサラリーマンの気持ちになりきる事!)

やよい(私、プロデューサーみたいになります!)

やよい(でも、プロデューサーってどんな事を考えてるんだろ?)

やよい(今に対する不満?誰かの悪口とか……?ううん、悪口なんて駄目……)

やよい(それでも、何か不満をぶつけるとしたら……)

やよい「最近は不況で、ホントやんなっちゃいますよね」

P「え?ああ、うん……そうだな……」

P(不況!?やよいが不況って言ったの!?)

P(いや待て、落ち着くんだ俺……もしかしたら、仕事のギャラに不満があったのかもしれないじゃないか)

P(いや有り得ないけど……でも万が一って事もあるし……)

P「あーその……もしあれだったら、もうちょっと割のいい仕事に絞っても……」

やよい「でも、仕事を選ぶ余裕なんてありませんよね……部下が上司を選べないみたいに……」

やよい(確か、ドラマのセリフでこんなのあったよね?)

P「うん、その通りなんだけど……」

P(何なの?この日々の仕事で疲れきったサラリーマンみたいなやよいは……)

P(いや、もしや――中二病か!?患ってしまったのか!?)

P(確かにやよいは中二だけども!そんなのからは一番遠い子だって思ってたのに……)

P(しかし、誰もが通る道と思えば叱る事も憚られる……どうしたものか)

やよい(あれ?プロデューサー、黙っちゃいました……)

やよい(と思ったらこっち見てます……あの目は――)

やよい(綺麗に咲いていた花が枯れていくのを見つめるような……そんな慈愛と憐憫が混ざり合ったような目をしてます……)

やよい(でもでも、私はプロデューサーになりきらないと!)

やよい(後は……お金が大事、とか言えばいいのかな……ドラマでもそんな事を言ってたし……)

やよい「はぁ……」

P「やよい?どうしたんだ?」

やよい「いえ……この世は結局、お金が全てなんだなーって……」

P「え」

P(やよいってこんなキャラだっけ?違うよね?患ってるからだよね?)

P「そんな事はなんじゃないかな……ほら、お金で買えないものとかたくさんあるしさ」

やよい「それって何ですか?」

やよい「寝ても一日で抜けきらない疲れが取れる方法とかですか?」

P「やよいぃ!?一体どうしたんだ!?」

やよい「たいむいずまねー……時は金なり、ですか」

やよい「なんですか『なり』って。変な語尾つけないでください」

P「違うから!『なり』は口癖とかじゃないから!」

P「やよい、本当にどうしたんだ?今日は何だかおかしいぞ?」

やよい「おかしい……ですか?」

P「うん。お金が全てとか、いつもだったら言わないだろう?」

やよい「そう……ですね。だって、違いますもんね……」

P「え?」

やよい「買えないもの……あります」

P「あ、ああ。ほら、世界の平和とか――」

やよい「そんなの要りません!私が欲しいのは、プロデューサーの笑顔なんです!」

P「ど、どういう事だ……?」

やよい「私、聞いたんです。プロデューサーが、私の事を『苦手だ』って言ってた事」

やよい「でも、私はプロデューサーと仲良くしたくて……それで……」

P「もしかして……今日のおかしなやよいは、俺に気を遣って……?」

やよい「はい……でも、上手くいきませんでした。こんなだから、プロデューサーに嫌われるんです……」

やよい「ごめんなさい……もう、話しかけたりしませんから……」

やよい「だから、嫌わないでくださいっ……!」

P「やよい……」

P「ごめんな。仕事に追われるばっかりで、ちょっと疲れてたんだ」

P「俺がやよいを嫌う事なんてないから、安心してくれ」

やよい「本当……ですかぁ?」

P「ああ、本当だ。辛い思いをさせて、すまなかった」

P「普通は、俺が年下に合わせてあげるべきだったのにな……」

P「なのに、年下の子に合わせて貰うなんて……プロデューサー失格だ」

P「だけど、今回の事で目が覚めたよ。俺は、ちゃんとやよいに向き合う」

P「だから……これで仲直りしよう――」

P「うっうー!やよいちゃん!はい、たーっち!」

やよい「……プロデューサー、気持ち悪いです」

P「ごめん……」


――END――

やよいが難しい言葉を使ってる………だと?


やよい可愛いな

以上で完結となります。お楽しみ頂ければ幸いです

何と言うか、思いつきです。なので酷いです。申し訳ありません
一応ギャグにしたかったような感じです。そんな感じでお願いします

やよかわ


貴音さんすごすぎだろ…

かわいい

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