幼「男ー」男「よ」 (236)


放課後

幼「男ー」

男「よ」

幼「今日、家行って良い?」

男「良いよ。何かあった?」



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幼「何かないとだめなの?」

男「ううん」

幼「久しぶりに一緒に帰ろ」

男「土手よってく?」

幼「うん。通ってこ」

男「分かった」


土手
テクテク


男「お、野球やってんじゃん」

幼「元気だね」

男「あれは俺らとタメかな」

幼「たぶん。…なんか高校球児って、ずっと年上な感じする」

男「うん」


幼「いつごろ追い抜けるのかな」

男「さぁ。追い抜きたい?」

幼「というより年相応になりたい」

男「なら今のままでいいんじゃない?」

幼「そうかな」

男「うん。どうして?」


幼「何か、小さい頃の高校生ってもっと大人な感じしたよ」

男「うん」

幼「もっと色んな経験しててさ、迷いなく道を進んでる感じ」

男「他には?」


幼「もっと余裕があって、大人びてる感じ」

男「今よりもっともっと、って感じ?」

幼「うん」

男「それが将来の幼かもね」


幼「どうして?」

男「そうなりたいんでしょ?」

幼「そりゃそうだけど…今そうじゃなきゃ」

男「焦ってるの?」

幼「焦るし、何か自分に残念」

男「そうなってないから?」


幼「そう。もっと出来るんだけど、何か出来ない」

男「焦ってるからじゃない?」

幼「焦らなきゃ。もっと成長するために」

男「それ逆効果じゃないかな」


幼「どうして?」

男「今の自分、好き?」

幼「…あんまり」

男「そっか…嫌いなんだ?」


幼「嫌いっていうか…もっと出来るのにって」

男「そのままを受け入れられない?」

幼「いや、もっと本気出せるのに、出せない感じだよ」

男「それは辛そうだな……本気出せてない自分が嫌なんだ?」


幼「…うん」

男「出せない自分に焦って、自分を嫌いになってるのか」

幼「…少し」

男「けどいつも本気だと疲れそう」

幼「疲れる」


男「…出せないのには何か理由があるの?」

幼「…分からない…でもとにかく焦ってる」

男「うん」

幼「怖いの」

男「何が怖い?」


幼「このままじゃだめだから、成長してないのが」

男「どうしてこのままじゃだめなの?」

幼「えっと…みんなに置いてかれるから」

男「成長を実感し続けていないと、みんなに置いていかれるの?」


幼「みんながどんどん先に行くから」

男「自分は成長できてないと感じる?」

幼「…そんなこともないけど」


男「どういうときに成長してるって感じる?」

幼「…何の気なしに相手へ優しく出来た時とか」

男「うん」

幼「誰かを思いっきり笑わせることができたときとか」


男「うん」

幼「1人でも大丈夫になれたときとか」

男「うん」

幼「苦手な教科のテストが良かった時とか」


男「うん」

幼「誰かにほめられた時とか」

男「うん」

幼「1日、イライラしないでいられたときとか」

男「うん」


幼「あとは、あと、まだある」

男「うん」

幼「話してもいい?」

男「良いよ」


幼「誰にも怒られないで過ごせた時とか」

男「うん」

幼「ずっと心が真ん中にある時とか」

男「うん」


幼「…」

男「?」


幼「…みんなってどうしてるんだろ?」

男「?」

幼「ここまで言って、気になったけど」

男「うん」


幼「みんなって、こういうときどうしてるんだろ?」

男「どう思う?」

幼「…分からない…人に話したり?」

男「そうだろうね」

幼「あとは?」


男「好きなことに熱中したり、好きなだけ食べたりとか」

幼「それで解決するの?」

男「たぶんね。幼は?」


幼「私は…話したい」

男「うん」

幼「誰かに自分を話すって、すっきりする」

男「そうだね」

幼「男は?」


男「?」

幼「誰かに話せる相手いる?」

男「俺はあんまり話さない」

幼「どうして?」


男「いや、自分では話してるつもりなんだけど」

幼「うん」

男「まわりから言わせると、全然喋らないらしい」


幼「確かに、昔から無口だもんね。悩みとか、ないの?」

男「考えないようにしてる。手を出さないようにしてる」

幼「それって…逃げてるの?」


男「どこにも行かないよ。置いといてる。頭空っぽにして」

幼「空っぽに?」

男「うん。悩みは尽きないみたいだから、そのままにしてる」

幼「それで解決するの?」


男「するものもあるよ。気づいたらなくなってるものも」

幼「解決しないものは?」

男「解決しそうだなぁって感じるまで、放っておく」

幼「そのあと解決する?」


男「タイミングが大事みたい。解決する時は分かるし、きちんと行動する気になる」

幼「何だか…受け身だね」

男「勢い良く飛び込んでいくのって、あんまりないな」

幼「それで大丈夫なの?」


男「今のところね」

幼「そっか」

男「焦らないことが大事なんだと思う。遠回りしても」

幼「うん」

男「そんな感じ」


幼「…何か”のんびり”な印象」

男「うん。幼は違う?」

幼「私は…もう少しアクティブな感じでいたい」

男「うん」


幼「あ、もう着くね」

男「だね」

幼「着替えてから行くよ」

男「分かった」


男 部屋

ガチャ
幼「おじゃましまーす」

男「はい」

ベッド パタン
幼「はぁー今日も頑張った~」


男「いまお茶もってくるよ」

幼「ありがとー」

ガチャ パタン

ゴロゴロ
幼「…///」


幼「…(男の匂いがする…そらそうか)」

幼「…(何か久しぶりな感じ。昔は毎日来てたなぁ)」

幼「…(…ねちゃいそう…)」


幼「…(まずい)」

幼「…(めっちゃくちゃ眠い…)」

幼「…(……)…」

幼「…(zzz…)…」


ガチャ
男「おまたs…あらら」

幼「zzz…」

男「この寝相…変わらないなあ」

毛布 スッ


幼「…zzz…」

男「(宿題でもするか)」


カキカキ

幼「…zzz…おとこ…」

男「?…(寝言か)」


カキカキ

幼「…ん…」

男「?…」

幼「…あ…」

幼「あー…」


男「起きた?」

幼「んー…寝ちゃってたぁ」

男「気持ち良さそうだったよ」


幼「ごめんー」クア

男「もう遅いから、夕飯食べてけば?」

幼「いいの?」

男「母ちゃん、嬉しそうだったよ」


幼「え、嬉しいな」

男「久しぶりだしな」

幼「えへへ。いただきまーす」ノビー

男「うん」


ガチャ
トイレ帰り

幼「ふぃー」

男「化粧、落とせば?」


幼「良い?」

男「どうぞ。洗面台の使っていいから」

幼「ありがとーって言っても、ほとんどしてないけどね~」

パタン


男「(いつのまにか)」

男「(あいつと接することが少なくなったな)」

男「…なんでだろ…」


男「(この感じ、すごく懐かしい)」

男「…不思議なもんだ」


ガチャ
幼「じゃーん」

男「?」

幼「ザ・すっぴん」


男「ちゃんと落とした?」

幼「失礼ね」

男「それくらい変わってない」

幼「まぁ、そっか」


男「幼は濃くするより、薄い方が似合うね」

幼「そうかな?」

男「うん。濃いと描きすぎてる感じ」

幼「っていうか濃いときある?」


男「昔。中学のとき」

幼「ああ。そういうこと」

男「うん」

幼「あ。明日って何か予定ある?」


男「?ないけど」

幼「じゃあ買い物付き合って」

男「また荷物持ち?」

幼「そんなに買わないよ」


男「そうかなぁ」

幼「なんでよ」

男「ずっとそうだから」

幼「ずっとって、いつ?」


男「昔から変わってないよ」

幼「何が?」

男「言ったことと逆のことする」


幼「んー、そうかもねぇ」

男「言われてみれば?」

幼「うん。じゃあ行かない?」


男「めちゃくちゃ買い物する気で行くなら良いよ」

幼「逆に?」

男「うん。強い思考は現実を変えるから」


幼「なにそれ?」

男「手に入れたいものを強く想うんじゃなくて、強く考えると手に入らなくなる」

幼「頭でっかちになるとってこと?」


男「うん」

幼「それなら何となく分かるな」

男「だから超買い物する気なら行くよ」

幼「そんなにヤなのー?」


男「まあね。じょーだんだけど」

幼「なんだ。あのね最近、アウトレットできたでしょ?1度行きたいの」

男「良いよ」


幼「じゃあ散歩の感じで行こうよ」

男「だと良いねー」

幼「あ、信じてない」


男「五分五分」

幼「行ってくれる?」

男「分かった」


幼「ほんとに?」

男「二言はナシ」

幼「ふふっ、ありがと」


男「夕飯食おうぜ」

幼「食べるー!」


男「げんきいいな」

幼「お腹空いちゃった♪」


男「ん」

幼「んー」

スッ スッ


男「そういや、今日は鍋だって言ってたな」

幼「今秋、初鍋だー」

男「かぼすか、すだちか」

ガチャ


幼「いや、ゆずぽんで」

男「好きだなー」

パタン



友達以上
恋人未満

おしまい


男 部屋

ガチャ

幼「ふぅ~お腹一杯♪」

男「ああ。いただきました」

幼「幸せだね」

男「ん、さっきのお茶持ってくる」

幼「あ、うん、ありがとう」


ガチャ


スッ

幼「…///」

幼「(気持ちいいなぁ~)」

幼「ふぃ~」ノビー

幼「…(…ポカポカしてきた…)//」


幼「…」

幼「…(幼馴染って、女側の方が不利な感じ…)」

幼「…(男は新鮮味がないのかなぁ)」

幼「…(…そういえば幼友……)」


幼「…(…いや……考えない…)」

幼「…(…どうしたら…あ)」

幼「…(…別のこと考えてみよう………)」


スッ

幼「…(…男…)」

幼「…(…そっか、毎朝この天井を見てるんだ…)」

幼「…(…カメラ…撮ろっかな)」


スッ
パチリ

幼「…(撮っちゃった)」

キョロ

幼「…(…いつも整頓されてる…)」



ガチャ


幼「!」ビクッ

男「?」

幼「…」

男「どうしたの?」


幼「ううん、なんでもない…速かったね」

男「二番煎じだからね」

幼「そっか」

男「?」


幼「なんでもないってば」

男「ん」


トクトクトク

スッ

男「はい」

幼「ありがと」


男「乾杯。…ってのも違うな」

幼「あはは。ううん、乾杯」

男「ん」

幼「いただきます」


ズズーッ

幼「はぁー美味しい」

男「ふぅ」


ズーッ

幼「ふー」

男「…」

幼「…」


男「幼」

幼「なに?」

男「何かあった?」

幼「えっ?」


男「なんとなく」

幼「なんで?」

男「そういう顔してる」


幼「どんな?」

男「何となく、浮かない顔」

幼「…」

男「…」

幼「…どうして?」


男「…たぶん…生まれてから、ずっと一緒だから」

幼「…顔に…出てる?」

男「いや、まわりは分かってないと思うけど」


幼「…」

男「何となくね」

幼「…そっか」

男「…言いたくないなら良いよ」


幼「…」

男「…」


幼「…言ってもいい?」

男「うん」


幼「…」

男「…」


幼「…幼友のことなんだけどさ」

男「ああ」

幼「?」

男「いや―」


男「―2人のやりとりを見てれば分かるよ」

幼「見てたの?」

男「それとなく」


幼「男は昔から、そういうの敏感だよね」

男「気づける範囲なら。…それで、どうしたの?」


幼「…ん…あのね…」

男「うん」

幼「…最近さ、幼友とよく喋るんだけど」


幼「…何だか自分の話ばっかりで」

男「うん」

幼「こっちの話は、聞いてくれなくて」

男「…」


幼「…喋っても否定されるんだ」

男「否定?」

幼「うん…『それはダメだよ』とかってさ」

男「うん」

幼「私は別にね、アドバイスがほしいわけじゃなくて」


幼「ただ話を聞いて、賛同してほしいだけなの。それも、形だけで良いの」

男「うん」

幼「…でも、何を言っても『それは、こうこうこうだからこうなのよ』って返されるから」

男「…」

幼「疲れちゃって」


男「プラスな気分がマイナスになる?」

幼「そう」

男「うん」

幼「…確かに、私は経験が浅いけど」


幼「だからって、幼友の意見が全てじゃないと思うから」

男「うん」

幼「…そういう人はさ」


幼「…相手を否定することで」

男「…」

幼「相手から自信を奪ってるのかなって」

男「?」

幼「自分に自信が無いから、相手から自信を奪うのかなって。相手を否定することで」

男「ああ。うん」


幼「それを自分のものにして生きてるのかなって思うの。もともと相手のものを」

男「そうだね」

幼「…だから喋るのも嫌になっちゃって」


幼「…距離を置きたいの。昔からの親友だけどさ」

男「うん」

幼「距離を置かないと、今のままだと関係がダメになっていくばかりで」

男「それは、幼が犠牲を感じてるから?」

幼「うん、そうなの」


男「関係に”休憩”を入れたい。っていう感じ?」

幼「うん」

男「その、距離の取り方が難しいの?」

幼「うん。幼友は”白”か”黒”かで、灰色が無いから」

男「うん」


幼「地雷を踏まないようにするのも疲れるの。こっちは自由に喋りたいし」

男「うん」


幼「でもね、距離を置くのも残酷だなって思ったりして」

男「それは、幼友に余裕を感じられないから?」

幼「そう。私に話したいだけ話してる姿を見ると」

男「うん」

幼「そんなに溜まってるんだ、ってかわいそうにもなるの」


幼「でも私はカウンセラーじゃないし、ディスポーザーでもない」

男「生ゴミ処理機か。感情は生ものだから」


幼「そう。だから、どこまで犠牲になるべきなのか、分からなくなる時があって」

男「うん」

幼「今はそれを悩んでる」

男「そうなんだ」


幼「…男は、どう思う?」

男「…今の感じだと、かなり悩んで考えて、答えを出そうとしてるんだね」

幼「…うん」

男「大変だったろうな、って感じた。1人でここまで考えられるのは、すごいと思う」

幼「…ありがとう……そもそも…さ、”犠牲愛”なんて、ない、のかな?」


男「うん。ないよ」

幼「あ……献身的なら、”犠牲になってる”って感じないから?」

男「うん」

幼「そうだよね」

男「うん」


幼「…もっと自分を大事にするべきかな」

男「そう思う」

幼「いったん、距離を置くべきかな。相手の悩みを背負うことなく」

男「うん」


幼「元々は、幼友が背負いきれずに外へ吐き出してるから」

男「うん」

幼「それを引き受けなくてもいいのかな」

男「うん。カウンセラーじゃないから」


幼「もともと『相手の』問題だし、背負い込むことないのかな」

男「うん」

幼「適当に流していいの?」

男「俺は良いと思う」


幼「自分を守るために?」

男「うん」

幼「…うん。そうなんだね」


男「?」

幼「ううん、なんか、それ聞いて安心した」

男「そう?」

幼「うん。私が感じたままだったし、それでいいんだって思えたから」

男「うん」


幼「…距離を置く、ね」

男「…」

幼「それは、やっぱり本音は言わない方がいいのかな?」

男「ただ誘いを断る分には言わない方が」

幼「良いか。逆効果だからかな」

男「うん」


幼「相手が聞いてきたら言えば良いの?」

男「そう思う」

幼「…でも、残酷じゃないかな?」

男「そう感じる?」

幼「…うん。傷つけたくないな」


男「幼友に『話の聞き方』を理解してほしいね」

幼「そう。ほんとにそう思う」

男「待つ?」


幼「うん…距離を置いて。でも」

男「?」


幼「上手にできるかな。断れるかな」

男「考えなくて良いよ」

幼「あ…そうだった」

男「…不安?」

幼「ううん。考えないようにしてみる」

男「うん」


幼「…」

男「…」

幼「…実際起こるまで、どうなるか分からないから―」

男「…」


幼「―どうこう考えてもしょうがないのかな」

男「そうだね」

幼「…なら、止めるか、別のこと、考えるようにしてみる」


男「解決しそう?」

幼「ん…時間がかかるかもしれないけど」

男「うん」


幼「ありがとう。話したら、スッキリした」

男「俺は聞いてただけだよ」


幼「ううん。聞いてくれるから」

男「力になれたなら何より」

幼「ありがとう」

男「ん」




幼「今日は何か、たくさん喋ったね」

男「うん。最近は、なかった」

幼「ね、また今度聞いてくれる?」

男「良いよ」


幼「ありがとう。でも話す前に、バレちゃうのかな」

男「どうかな。心を読めるわけじゃない」

幼「でも私のは分かりやすい?」

男「…きっと、幼い頃から知ってるから、違うと分かるんだと思う」


幼「そっか…どんな感じで分かるの?」

男「…何か普段と違うな、って」

幼「顔が違う?」

男「うん。それに雰囲気や態度も」


幼「態度?」

男「ちょっと、よそよそしかったり、繕ってる感じ」

幼「…そっか。やっぱり分かっちゃうんだね」

男「でも、まわりは気付いてないよ」


幼「…そうかな?」

男「うん。心配しなくて良いよ。気になる?」

幼「…少し」

男「どんな風に気になる?」


幼「…嫌われないかなって」

男「嫌われたくない?」

幼「うん。嫌われたくない」

男「それは…こわいから?」


幼「うん…こわいし、不快にさせたくない」

男「幼が曇ってると、誰かが不快になるの?」

幼「…たぶん…。いつも明るくいたいの」

男「そっか」


幼「?」

男「いや…幼そのままでいいのにな、って」

幼「そのまま?」

男「うん。曇っていても、暗くてもさ」

幼「どうして?」


男「それを嫌う人もいるかもしれないけど」

幼「…」


男「嫌わない人も、ちゃんといるよ」

幼「あ……うん…」


幼「…男は…?」

男「嫌いになんて、ならない」

幼「……良かった」

男「…」

幼「…何か…安心した」

男「ん…」


幼「…」

男「…疲れた?」

幼「…ん…力抜けた感じ」

男「…うん」

幼「…けど、心が真ん中にある感じする」


男「心地いい?」

幼「うん。すごく軽くて」

男「重かった?」

幼「少し…でも…あ」

男「?」


幼「頑張ってないからだ、いま」

男「うん」

幼「だから気が楽なんだ」

男「ん」


幼「…ずっと、この感じでいたいな」

男「いられるさ」

幼「どうやって?」

男「それは幼にしか分からないけど」

幼「うーん…」


男「一緒に居る時は、頑張らないでみたら?」

幼「…いいの?」

男「許可いらないよ」


幼「あ…うん」

男「ん…」

幼「…男、ありがとね」

男「ん」




幼「じゃあ、そろそろ帰るよ」

男「分かった」

幼「今日はありがとう」

男「いいよ」


幼「明日さ、散歩するのもいいかもね」

男「どこがいい?」

幼「行きたいところある?」

男「良い所がある。連れて行きたい」


幼「え、どこ?」

男「それは明日のお楽しみ」

幼「えー気になるー」

男「いま知りたい?それとも明日の朝がいい?」


幼「…ううん。明日の朝でいい、その方がワクワクする」

男「分かった」

幼「ん。行くね」


男「玄関まで送るよ」

幼「あ。ありがと」


スッ スッ

幼「どこかなー」

男「やっぱ気になってる」

幼「そりゃあそうだよー」

男「いま聞く?」



ガチャ

幼「ううん。明日の楽しみにする♪」

男「分かった」


パタン


友達以上
恋人手前

おしまい


深夜
男の部屋


ベッド


男「(……)」

ガバッ

男「ふぅ…」

男「眠れないな」

男「(……)」


ブーッ

男「…ん?」

男「(…幼からメール)」

幼『あした、楽しみにしてるね』


男「…」

男『うん。…眠れないとか?』

幼『どうして分かるの?』


男『なんとなく。うちでも寝てたから。』

幼『うん。眠れない。』

男『俺も眠れないんだ。』

幼『男もなんだ。何してるの?』


男『幼とメールしてる。幼は?』

幼『確かに笑 なんにもだよ。』

男『何したい気分?』


幼『何にもしたくない気分かな。』

男『そらそうか。考えごとも?』

幼『できればしたくない。』

男『じゃあ、2人で何かしよう。』


幼『何?』

男『夜の散歩。』

幼『行く!20分後に家の前ね。』

男『分かった。』


家の前

男「(…夜はさらに冷えるな)」

ガチャ

幼「お待たせ」


男「ん」

幼「寒いのにごめんね」

男「誘ったのは俺だよ。行こう」

幼「ん。」


テクテク

男「どこに?」

幼「こっち」

男「ん」


幼「もう冬だね」

男「ああ。秋は短い」

幼「ね。好きなんだけどな」


男「どんなところが?」

幼「秋の、匂いが好き」

男「ああ。分かる」


幼「男も?」

男「うん。好きなのは、どんな匂い?」

幼「秋が始まるときの匂い。1番好き」

男「どんな?」


幼「…夏の間に蓄えた熱を、色んなものが発散してる匂い…だと思う」

男「キンモクセイの匂いとかじゃないんだ?」

幼「うん。キンモクセイが香る前に、色んなものが、夏の熱を発散させてる匂い」

男「色んなもの?」


幼「そう。木とかコンクリートとか、家屋や人や動物も、いろんなものが熱を発散させてて」

男「うん」

幼「それが北と南の、寒くて暖かい風と混ざって、初秋の匂いになる。っていう感じ」


男「特定の匂いっていうより、熱の匂い?」

幼「うん。熱が、それぞれ独自の匂いと、一緒に出されるから」

男「うん」

幼「いろんな匂いが混ざって、あの香りになるんだと思う」


男「さみしくなる?」

幼「なるね」

男「でも好きなんだ?」

幼「うん。儚い感じが、切なくて好き」


男「幼は会いたくて震えるタイプ?」

幼「あはは。なにそれ」

男「会えないことに憧れる?」


幼「ううん、きちんと会うよ」

男「うん。分かる、秋のその感じ。俺も好きだから」

幼「え?」

男「秋の香り。幼が言うのも何となく分かるよ」


幼「あ…うん」

男「…」

幼「…男、こっち」

男「…ん、ああ」


テクテク


男「…そういえば昔さ」

幼「うん」

男「2人で海、見に行ったことあったよな」


幼「覚えてるんだ?」

男「ああ。あれは冒険だった」

幼「うん」

男「小学1年の夏だ」


幼「2人だけで電車乗ったね」

男「あの頃は俺らだけで乗るなんて、考えられなかったよな」

幼「うん。でもあの時の男、今でも覚えてるよ」


男「何を?」

幼「お巡りさんに質問されてるのにさ」

男「ああ。そのことか」

幼「手を引っ張って走って」


男「ヤバいと思った。このままじゃ戻されるって」

幼「うん。でも結局、捕まっちゃったんだよね」

男「そう。何だか、あのときの両親は少し嬉しそうだった。それが印象的だったな」


幼「もっと怒られると思ったのにね」

男「ああ。父親は、幼のお父さんに謝ってたみたいだけど」

幼「うん」

男「幼のお父さん、笑ってたから」


幼「うん」

男「それで救われた気がした」

幼「うん。お母さんも嬉しそうだったし」

男「不思議だよな。危ない目に遭ってたかもしれないのに」


幼「安心してたんじゃないかな」

男「安心?」

幼「うん。私が海に行きたいってダダをこねてさ」

男「うん」


幼「そしたら男は本当に連れてってくれたでしょ?」

男「ん」

幼「だから」

男「?」


幼「あの歳で、あれくらいの行動力がある男なら、大丈夫だろうって」

男「にしても幼過ぎないか?」

幼「…実は、あのときお父さんがね、後ろからついてきてたの」

男「え、そうなのか?」


幼「うん。後で知ったんだけどね」

男「そっか」

幼「でも私が内緒にしてた」

男「なんで?」


幼「あの日からしばらく、男の顔が凛々しくなったから」

男「そうなの?」

幼「うん。私はそれを…ずっと見てたかったから」

男「…俺はまだまだだな」


幼「ううん。男はすごいよ」

男「そうか?」

幼「うん。連れて行ってくれたとき、先頭でずっと堂々としてたでしょ?」

男「とにかく、何が何でもって感じだった」


幼「帰り道、謝ってくれたのも覚えてる」

男「叶えてあげられなかったから」

幼「ううん」


男「あのとき…こわくなかったのは」

幼「うん」

男「嬉しかったからなんだ。俺でも、幼の役に立ててる気がして…着けなかったけど」


幼「…ん」

男「でも、胸を張れた。俺はあのとき、強くなれた」

幼「…うん」


男「あのときの『守り抜く』っていう感じは、今も、ずっと残ってる」

幼「…うん…」

男「…」

幼「…」


男「…喋りすぎだな」

幼「そんなこと…ないよ」

男「…」

幼「言わないと伝わらないことも、あるでしょ?」


男「ん」

幼「…」

男「態度や接し方で分かるものもある?」

幼「うん。ちゃんと、伝わってるかな」


男「…俺も知りたい」

幼「…ん」

男「…」

幼「…」


幼「…ね」

男「ん?」

幼「試しにさ」

男「ん」


幼「今日だけの、今だけの、お試しで良いから」

男「…」

幼「あのとき見たいにさ…手、つないでみよっ…か」


男「…」

幼「…」

男「ん」スッ


幼「…ん」ス

ピト

幼「あったかい」

男「手、冷たいな。」ス

幼「あ」


男「…」サ ポケットイン

幼「…ありがと…あったかい」

男「…」

幼「…」


テクテク

幼「…」

男「さむい?」

幼「ううん」

男「…」


テクテク

幼「…ねえ」

男「ん?」

幼「あのさ」

男「うん」


幼「…ううん。何でもない」

男「…ん」

幼「…」

男「…」


幼「…」

男「…」

幼「…そんなに悪くない、ね」

男「思った」

幼「ん…。他には、何か思った?」

男「…あのとき泣いてた顔」


幼「もう、泣かないよ?」

男「泣かせたくない」

幼「うん」

男「…」


幼「…」

男「…」

幼「…」

男「なあ」

幼「?」


男「…これって」

幼「?」

男「そんなに悪くないんじゃなくて」

幼「ん」


男「…今までで1番悪くない…って感じじゃない…か…?」

幼「…えへへ。うん、そうだね」

男「…ああ」


テクテク

幼「…」

男「…」

幼「…」

男「…」

幼「…じゃあさ」


男「ん?」

幼「…明日もさ」

男「…」

幼「…手、つないでいい?」


男「…良いよ」

幼「…じゃあ…明後日も…いい?」

男「…ん」


幼「…月曜も?」

男「…そうだな」


幼「…来年、も?」

男「ああ」


幼「…ずっと、いいの?」

男「ん」


幼「…」

男「…」

幼「…」

男「俺は、胸を張るよ。これからも」


幼「ん…」

男「…俺は」

幼「…」

男「…俺は」


男「…幼が、好きだから」


幼「あ…」

男「…」


幼「…」

男「…やっと、言えた」

幼「…」


男「…」

幼「…私も」

男「…」

幼「…私も、好き。男が好きだよ」


男「…ん」

幼「…」


男「…」

幼「…」


男「…今度は連れて行く。必ず」ギュ

幼「ん…」


男「…」

幼「…ついてく」


男「ん」

幼「…ありがと」ギュウ










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おわり

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