小萌先生「転校生の横島忠夫くんです」(247)

in妙神山

横島「嫌やあああ! 異世界なんて行きたくなああああい!」

美神「往生際が悪いわよ横島クン、ほらさっさと番台から手を離しなさい」

横島「だって戻れないかもしれないんスよ!? 見知らぬ世界で一生なんて俺は!」

美神「もう小竜姫サマから前金貰っちゃってんのよ、いいからとっとと行きなさい!」

横島「その前金の100分の1も俺には回ってこないんでしょおおがあああ!」

美神「無事に仕事終わったらホッぺにキスしてあげる」

横島「不肖横島忠夫行ってまいりますうっしゃあああああああ!!」

……


小萌「えーみなさん、転校生の横島忠夫君です。仲良くしてあげてくださいね」

横島(高校の女教師と言ったらムチムチグラマーだろ普通……なんだこれ……)

横島「ウッス! 横島ッス!」

小萌「えーとそれじゃあ、上条ちゃんの隣が空いてますね」

横島「上条?」

小萌「あそこのツンツン頭の生徒なのです」

横島(なんだ……ピートと似たような嫌な感じがする……)


横島「ちわっす」

上条「おう、よろしくな」

青ピ「なんや転校生って聞いて胸膨らませとったんに男かいなツマラン。まあいっても、女子やったらどうせカミやんに奪われるんやけどな」

横島「あん?」

青ピ「そこのカミやんはもうすごいんよ、会う女会う女を根こそぎ落としてハーレムを築かんばかりの……」

上条「おい青ピ、いい加減なこと言うのは」


横島「いてかませこのスケコマシ野郎う――っ!」

上条「ぐおあっ!?」

青ピ「おおっ! 転校生がカミやんに頭突きかましたで!」

土御門「いい音がしたにゃー」

上条「いきなり何しやがんだてめえ!」

横島「どうもくそもあるかこのボケェー! 富の偏在をどうにかせんかあああああ!」

 ルシオラはどうした。
 先ずはそこからだ。


小萌「ああっ! 二人ともやめるのです」

吹寄「おい上条当麻! いきなり転校生と揉めるとは何事だ!」

上条「ちげえよ、こいつがいきなり」

横島「こんにちわっ! ボク横島っ! 今のはコイツが挑発してきて全部コイツが悪いんです!」

上条「何言ってんだてめえ!」

横島「うっせーてめえみたいなクソ野郎の好感度は片っぱしから地に落としてやるわあ!」

>>7 既に死後

青ピ「なんや君も関西出身やったんかあ」

横島「おう」

土御門「ていうかなんだにゃーその弁当は、パンの耳だけとかさもしすぎるぜい」

横島「バイトの時給が……」

青ピ「あ、でもカミやんも似たようなもんやで。しばらく前から昼食がパンの耳や」

上条 モグモグ

土御門「同棲してる女の子の食費がハンパないらしいにゃー」

横島「ああ?」


横島「高校生の身分で同棲……?」

青ピ「おお、それ本当かにゃー?」

土御門「小萌先生には内緒だぜい、カミやんが退学になりかねんからな」

横島「フフフ……フハハ!!」

青ピ「横やん? どうした?」

横島「何甘いこと言ってんだ! 学校中の生徒に満遍なく広報してリンチ・好感度爆下げにした後退学のフルコースを味わわせてやるわー!! ふはははははは!!」


青ピ「ちょ、横やん。さすがにそれは」

横島「いけすかねえと思ってたらやっぱりそうだ! ピートとか西条のオーラにそっくりだ! 殺してもバチはあたらねええー!」

土御門「ちょっと落ち着くんだぜい」

ドスッ

横島「ぐえっ」

青ピ「延髄はまずいんやないか?」

土御門「なあに、ちょっと気絶するだけ……」

横島「放送室はどこやああああああああ!!」



土御門「効いてないぜい」


青ピ「まずい! 教室の外に出てったで!」

土御門「カミやん! あいつを止めろ! 同棲の件を暴露されて退学になるぞ!」

上条「はあ!?」

土御門「いいから追え!」

上条「わ、分かった!」


横島「あった放送室! ああくそ鍵が! 文珠ぅー!」

『解』

横島「っしゃあ鍵開いたあ! マイクは……」

上条「ちょっと待ったああ!!」

横島「くっそ! 何しに来やがった!」

                       ヘ(^o^)ヘ いいぜ
                         |∧  
                     /  /

                 (^o^)/ てめえがもてないから
                /(  )    俺に八つ当たりするってんなら
       (^o^) 三  / / >

 \     (\\ 三
 (/o^)  < \ 三 
 ( /

 / く  まずはそのふざけた
       嫉妬をぶち殺す


上条「くらええええええええ!!!」

そげぶ!

横島「ぐはあっ!」

上条「いいか、あれは青ピと土御門のガセだ。俺は決してもてるような男じゃない」

横島「嘘やあああっ! お前の背後から西条臭いオーラがぷんぷんするんじゃあ! 2日に1回は女とっかえひっかえしてるやろうがワレー!」

上条「してねえよ!」


横島「……まあ西条ほど鼻につく感じじゃないしな、信じてやるか」

上条「分かってくれたか」

土御門「おう、一件落着したみたいだにゃー」

上条「お前、ややこしくなるようなこと吹き込んでんじゃねえよ」

土御門「ミスは誰にでもあるもんだぜい」


土御門「ところで、横やんだったかにゃー?」

横島「ん?」

土御門「この学区に来る前は、どの学区に住んでいた?」

横島「えっ……? えーと十五とかどこかそのあたりだったような……忘れたうはは!!」

土御門「そうかにゃー。んじゃ、学校名は?」

横島「まあ細かいことは置いといて昼飯に戻ろうじゃないかうはは!!」


横島(あっぶねー、ヒャクメが改竄してくれたデータ覚えてなかった。後でちゃんと見とこ)

上条「どうした横島?」

横島「あーいや、昼飯がパンの耳ってのはやっぱりきついなと思って」

上条「だよなあ……」

―放課後

横島「えっと、小竜姫サマからの依頼は……。『人工的に神族を作る計画の阻止』か」

横島「……」

横島「そんな大それたことやるアホなんか俺一人でどうこうできるわけないやんかあああ!! 美神さはーん!!」

横島「ええっと何々? 霊力に似た力場を集合……ワカンネ」

横島「つまりこの演算装置を壊せばいいんだな。まあそれだけなら」

横島「でもやっぱ怖えええっ! くっそー美神さーん!! 薄情ケバケバ年増女あー!」


横島「そもそも演算装置ってどこにあるんやあー! ヒャクメー! 調査が足りんぞー!」

?「もしもし、そこのあなた」

横島「ん?」

ミサカ10020号「猫が逃げるので静かにしていただけますか、とミサカは若干の怒りを内包しながら頼みこみます」

横島「すいませんこんにちわボク横島っ! そのゴーグルとてもイカしてると思います!」

横島(……ってよく見たらまだ中学生くらい……いやでも結構発育はいい。ストライクゾーンいける!)

横島「ねえお詫びにそこのカフェでお茶でもどうっ!?」

ミサカ10020号「注意したら余計うるさくなったのでミサカはこりゃだめだと呆れてみます」


ミサカ10020号「こうなれば。ちょっとお手を拝借、とミサカは嫌悪感に震えながらあなたの手をとります」

横島「ああ……最近の若い子って積極的……」

ミサカ10020号「とりあえず5万ボルトほどで静かにさせましょう、とミサカは鎮魂の念を込めます」

横島「え……? ってぎゃあああああああああああああ!!!」

ミサカ10020号「またつまらぬものを痺れさせてしまった、とミサカは」

横島「さあ行こうか映画館とカフェと遊園地どこがいい!?」

ミサカ10020号「まるで効いちゃいねーよ、とミサカは自分の能力にやや自信をなくします」


ミサカ10020号「もとより行く気もありませんが、これよりミサカも用事があるのです。とミサカは多忙な身に感謝します」

横島「ああっ、マイハニー!」

ミサカ10020号「いまどきハニーはねーよ、とミサカはあなたのセンスに疑問を抱きます」

ミサカ10020号「そしてお別れですね、とミサカは名残惜しそうに逃げつつある猫をなでます」

横島(おおっ……しゃがんだ拍子し縞パンが……っ! 霊力が高まるっ……!)


ミサカ10020号「では、とミサカは後ろでを猫ちゃんに振りつつ去ります」

横島「……異世界でも結局もてないのはもてないんかあああっ!」

横島「仕方ない帰るか……」

横島「ん?」

横島「あっちの公園でさっきの子と上条が何か話してるだと……?」

横島「チクショー!! 俺には用事があるとか言っておきながらモテ男クンには結局なびくんですかああ! これだから若い女はあああ!」

横島「あれ、でもゴーグルねえな。どうしたんだ」


横島「ヒャクメが寮の部屋を取っててくれたのはいいが……」

上条「なんでお前が隣の部屋にいるんだよ……」

土御門「もう片方の隣室は俺だぜい」

上条「そしてなんで俺んちで歓迎パーティーなんかをやるんだよ!」

横島「そーだ俺もこいつに歓迎されたいとなんか思っちゃいないぞそしてなんだそこに女とは言えないくらいにちっちゃいシスターみたいなのがいるぞ!」

禁書「失礼なんだよ! こう見えても私は立派なレディなんだよ!」

横島「そうですかモテ男君は同世代に飽き足らずこんな幼女にまで手を出すんですか死んでしまえええええ!!」

上条「土御門! もうこいつ叩き出してパーティー中止にするぞ!」

土御門「せっかく企画してやったのにそりゃないぜい」


横島「タダ飯だからしゃーない……」

上条「まあ、土御門が鍋の具材買ってきてくれたからな……」

禁書「ひさびさにお肉があるんだよ!」

土御門「さーて、じゃあいただくとするかにゃー」


土御門「そういえば俺とカミやんは無能力者なんだけどにゃー」

土御門「横やんはどんな能力があるんだぜい?」

横島「こらうまいっ! こらうまいっ!」

禁書「あ! それ私が狙ってたやつなんだよ!」

横島「知らんわ! 食事は戦争じゃあー!」

禁書「とーま! この人どうにかしてほしいかも!」

上条「俺の分をとっておいてくれればどうでもいい」

横島「こらうまいっ! こらうまいっ!」

土御門「だめだこりゃ」 


横島「あー食った食った。サンキュー、グラサンアロハ」

土御門「土御門だぜい」

横島「おう土御門。……そういや上条、昼間中学生のかわいこちゃんをたぶらかしてたよなあ? あ?」

上条「はあ? あれは電撃浴びせかけられていろいろ大変だったんだよ」

横島「騙されんぞ! 騙されんぞおおお! どうせてめーみたいなモテ男クンはこれからこのちっちゃいシスターを寝かしつけた後夜の街に繰り出してチンポの渇く暇もないような絶倫ライフを送るんやあああ!」

上条「その幻想をぶち壊す!」

そげぶ!

横島「ぐふっ!」

禁書「やった! これでこの人の分のデザートを私がいただけるんだよ!」

――夕食後、横島自室

横島「騙されんぞ……騙されんぞお……」

横島「尾行して現場写真おさえて社会的に殺してやるわあああ!!」

横島「まずはこの壁に『栄光の手』の指先で穴を空ける……よし」

横島「これで奴が部屋を出れば動向が分かる、完璧だ」


横島「お……、動いた。動き出したぞ」

横島「くそ、タイガーとかも協力してくれれば物理的にも殺せそうなのに」

横島「言ってもしょうがねえ、追うか。フヒヒ……」


――常盤台中学女子寮前

横島「なっ、あいつこともあろうに女子寮だと……? しかもこの街有数のお嬢様学校じゃねーかああ! クソ! あの人非人が! ぶち殺す!」

トントン

横島「誰やあこの風雲急を告げる時にっ!」

ミサカ10020号「あなたこそ何ストーカーじみたことをしているのですか、とミサカは閉口します」

横島「あそこのスケコマシが悪いんやあああっ! 見ろ! 女子寮に侵入しようとしてる変態やぞおおっ!」

ミサカ10020号「……あそこは私たちのお姉さまがいるところのようですね、とミサカはうなずいてみます」

横島「あんたのお姉さんが毒牙にかかるかもしれへんのやぞおお! もっと危機感を持ちなさい!」


ミサカ10020号「いえ。私自身はお姉さまとはお会いしたことがありませんので。9982号は面識があったようですが」

横島「うん?」

ミサカ10020号「それよりも、ようやく準備が終わって用事に向かうところなのでここで失礼します。あなたも家に帰った方がよいですよ、とミサカは懇切丁寧に帰宅を促します」

横島「うっさいわー! あいつを地獄に叩き落としてやるまでは意地でも帰らん!」

ミサカ10020号「ではあなたがお縄につくのを若干ながら祈っておきます、とミサカは不吉に手を合わせます」


横島「ん? そういえばアンタみたいなうら若き乙女がこんな時間にほっつき歩いて何やってんだああ! まさか男か! 男といやらしくも素晴らしい情事に耽るつもりなのかああ!」

ミサカ10020号「去り際に卑猥なことをガンガン喚き散らすとは、童貞の権現のような方ですねとミサカはもう物も言えません」

横島「くっそおおお! 中学生に馬鹿にされるだなんて!」

ミサカ10020号「まあご心配なく。いやらしくも素晴らしくもない単なる実験です、とミサカはあなたを安心させてみます」

横島「ヴァージンを散らす女は皆そう言ってから家を出ていくんやああ! お父さんは許さあああん! ほらその背負ってる馬鹿長いケースも三角木馬とかいやらしいものなんやろうがあ!」

ミサカ10020号「これですか? とミサカはケースを背中からおろします」

横島「そうそれ!」


ミサカ10020号「みだりに見せるものでもありませんが、そのようなグッズと勘違いされては我々のコケンにかかわりますので」

横島「うわああっ! そんな禍々しいエログッズを見せんでええっ!」

ミサカ10020号「ほら見てください、ただの長銃です」

横島「なんだ、ただの銃か」

ミサカ10020号「誤解は解けたようですね。では行ってきます。あなたもつかまらないように」

横島「ああ、なーんだ。アダルトグッズじゃなかったのか、それなら安心だ」



横島「ん?」


横島「ちょっと待たんかああああああっ!」

ミサカ10020号「チッ、うっせーな。とミサカはいい加減うんざりした気分であなたに向きなおります」

横島「美神さんじゃあるまいし! 少なくともアンタみたいな堅気のうら若き乙女が持ってるもんやないやろうがあああっ!」

ミサカ10020号「その美神という方は知りませんが、戦う以上は必要かと」

横島「美神さんっていうのは俺の雇い主でヤクザから武器を巻き上げたり金の亡者だったりそんでもってイイ女で……」


横島「そんで戦うって、除霊とか?」

ミサカ10020号「除霊?」

横島「亡霊をこう、ぐあーって」

ミサカ10020号「亡霊とか、そんな非科学的なもんねーよ、とミサカはオカルトマニアなあなたにどん引きです」

横島「でも他に戦時中でもないのにそんな武器なんかありえへんやろうがあっ!」

ミサカ10020号「すいません、もう時間ギリギリですので失礼します。とミサカはせいせいしながら別れを告げます」

横島「またんかあああっ!」

ミサカ10020号「そこ、さっきのモテ男クンとやらが出てきましたよ」

横島「えっ! どこどこっ?」

ミサカ10020号 サッ


横島「ねえいないんだけどっ! いないけどってくっそおおおお逃げられたあああああっ!」

横島「おちょくりおってあの小娘えー! どうせあの銃も偽モンで実は巨大バイブとかなんやろうが騙されんぞおおっ!」

横島「そして夜通しでいやらしいことにぐわあああああっ!」

横島「させんぞ! させんぞおおおっ!」


寮入口

上条(何だ? 横島かアレ? って今はそんな場合じゃねえ、ビリビリを探さねえと……)

―河原

ミサカ10020号「利用できる障害物の少ない場所での戦闘パターン、上記での実験をこれより開始します」

一方通行「へェ、まァた殺されるためにノコノコ来たわけかァ」

ミサカ10020号「それが私たちの作られた理由ですから」

一方通行「どォだ? 命乞いでもしてみねェのか? あァン?」

ミサカ10020号「あと30秒で実験開始です、とミサカは時間を確認します」

一方通行「チッ……」


ミサカ10020号「開始10秒前です、とミサカは短く言います」

ミサカは背中の長銃を両腕に抱え、一方通行に構える。

一方通行「さっさと来ィよ。まァたぐっちゃぐちゃにして殺してやっからよォ」

ミサカ「はじめ」

同時、一方通行の額を目掛けて弾丸が飛ぶ。
直線軌道で突き刺さったそれは、しかし対象を貫くことはなかった。

そしてミサカが反応もできぬうちに、跳ね返った弾丸は銃口へと吸い込まれ、爆ぜた。


一方通行「おォ、小型の炸裂弾かァ。怖ェ怖ェ」

爆ぜ散った金属片に顔を傷つけたミサカは、使い物にならなくなった銃を一方通行に投躑する。
無論、それもあっけなく弾かれる。

ミサカ10020号「くっ……」

唯一の武器は既に失せた。
残るは能力、欠陥電気のみ。レベルはせいぜい3といったところか。

一方通行「なンだァ? もう諦めたのかァ?」


バックステップを踏み、ミサカが下がる。
追うように踏み込んだ一方通行に、間髪いれず電撃が飛ぶ。空中に走る青白い放電。

一方通行「その程度でどうにかなると思ってんのかァ?」

言葉通りであった。
かわす素振りも見せず、一方通行は正面から電撃の槍に突っ込む。
次の瞬間、全力で放電を続けるミサカの目前に一方通行が現れた。

一方通行「学習能力のねェ馬鹿どもめ。ちったァ研究したらどうだァ?」

腹部に猛烈な蹴りを見舞われ、ミサカはボールのように地を弾んだ。


一方通行「つまんねェな……ンじゃ、そろそろ終わりにすっか……」

倒れ伏し、僅かにしか動けないミサカに一方通行の手が迫る。
触れれば血管を爆破され、もはや生きてはいられない。

ミサカ10020号「ここまで、ですか」

一方通行「あァ、終わりだ」



横島「オラァそこちょっと待てコラあああ! 河原で青姦なんかしてんじゃねえぞおおおっ!」


一方通行「あァん? なんだコイツ?」

横島「許さんぞ! 中学生相手にこんな河原で嬉し恥ずかし羞恥プレイに臨むなど……」

ミサカ10020号「……あなたの童貞思考には、未だについていけませんとミサカは……」

一方通行「なァてめェ? 俺がコイツを今からアヘアへさせるとでも思ってンのかァ?」

一方通行が、横たわるミサカを足蹴にする。

横島「え……? あのー……まさかその手のハードなプレイを?」

ミサカ10020号「そんなわけがないでしょう、とミサカは」

一方通行「てめェは黙ってろよ」

能力を発動させ、一方通行が再びミサカを蹴り飛ばす。うめき声とともに吹っ飛んだミサカは、地面を削りながらようやく止まる。


横島「おい! いくらSMでも今のはやりすぎだぞ!」

一方通行「ハァ? これがそンなのに見えンのかァ?」

横島「え? 違うの?」

一方通行「大違ェだ。俺はな、今からアイツを殺すんだよォ。血管と心臓を潰して、いや肺を潰して窒息させンのも面白ェかもなァ。ま、これも一種のSMかァ?」

横島「……あ?」

一方通行「おォ? なんだァ? 文句でもあんのかァ?」


横島がミサカの元へ駆け寄る。右手を光らせ、一つの玉を出現させる。

横島「大丈夫か? ってーか、今のはそういう設定のプレイとかじゃないんだな?」

ミサカ10020号「ようやく理解しましたか、それなら下がっていてください。とミサカは退去を促します」

ミサカ10020号「あなたがここにいても死ぬだけです、とミサカは」

横島「いいから怪我人は寝てろ」

横島の手で文珠が光る。その中には『癒』の一文字。

横島「これ、あくまで応急だからな。あんまり動くなよ」

光が発せられるのと同時、ミサカの傷が目に見えて消えていく。


一方通行「なンだてめェ? 治癒能力かァ?」

横島「語ることなんかねえよ。この白髪モヤシ」

一方通行「あァ?」

横島「要はお前の代わりにこいつを倒しちまえばいいんだろ?」

ミサカ10020号「それは無理です、とミサカは首を振ります。彼に勝てる能力者などこの都市には」

横島「ああ大丈夫、俺よそ者だから。それに美神さんに毎日殺されかけてるしへーきへーき」


一方通行「いいねェ、正義のヒーロー気取っちゃってよォ? でもなァ、ここで負けたら最高にカッコ悪ィの理解してっかァ?」

一方通行が地面を一踏みする。ベクトル操作で威力を増された一撃は、小規模な地割れを起こすまでだった。

横島「どーせ俺は勝ってもカッコ良くない担当だからな。ピートとかに手柄持ってかれるんだよ」

横島の右手が変貌し、異形の姿となる。
収束した霊気で作られた変幻自在の刀、『栄光の手』である

一方通行(治癒系統の能力じゃねェのか……?)


一方通行が横島の手に見入る間に、ゴキブリのような素早さで横島が間合いを詰める。

一方通行「ン?」

横島「サイキック猫騙しぃっ!!」

パン、と横島の両手が一方通行の眼前で叩かれる。
一斉に放射された霊気は閃光と化し、一時的に一方通行の視界をくらます。

横島「っしゃあ今のうちに食らえオラあああー!!」

正々堂々も糞もない。
一方通行が目をくらませている隙に、最大出力の霊波刀を脳天に叩きつけた。

そして、逆流した霊波に横島は吹っ飛んだ


横島「ぎゃああーっ! 手首がっ! 手首が一瞬ありえない方向に曲がったあああっ!」

一方通行(なンだ今の? 反射した感じが妙だなァ……)

横島「ええいっ、ならば伸びろ!」

近接での戦闘を諦めた横島が、手の形状に変化させた栄光の手を伸ばす。
メートル級の長さに伸びた五本の指がそれぞれ違う角度から、握り潰すかのように一方通行に迫る。
横島の手が、握りこぶしを作る。

横島「いっけえええええええっ!」

全部の指が見事に弾かれた。


栄光の手を収めた横島が、これまたゴキブリのように素早くミサカに駆け寄る。

横島「あれって何なんだよおおおっ! 俺の攻撃が効かねえじゃねえかあああっ!」

ミサカ10020号「だから言ったじゃないですか、今からでも土下座してさっさと逃げた方がよいとミサカは提案します」

横島「なるほど」

ミサカ10020号「え?」

横島がミサカを両手に抱え、凄まじい速さで逃げ出す。

横島「あーばよーこの変質者ーっ! おしりぺーんぺーんっ!」

ミサカ10020号「待ってください、私を連れていては奴が追ってくるはずです。とミサカは置き去りを要求します」

横島「大丈夫っ! 逃げ脚には自信あるからっ!」

抱えながら、また文珠を一つ出す。刻む字は『速』


一方通行「この一方通行サマから逃げられるとでも……あァン?」

ベクトル操作で一気に詰め寄ろうとした一方通行は、閃光から戻ったばかりの視力を疑った。
ミサカを抱えたまま、横島がとんでもない速度で走っているのだ。
自動車というたとえでは生ぬるい、いうなればリニアモーター並みの速度。

横島「うおおおおおおっ! 空気抵抗で目がいてええええええええっ!」

ミサカ10020号「ゴーグルは貸しませんよ、とミサカは自分の目の安全にぬくぬくしながら抱えられます」


一方通行「まァ、無駄だがなァ」

操作を開始。踏み出す一歩目のエネルギー量を数千倍に、足にかかる反動も推進力へ。
文字通り、一方通行が『射出』された。
空気抵抗を操作し、宙を自在に駆ける。その速度は横島を遥かに凌ぎ――

横島「ぐえっ!」

後頭部に強烈なドロップキックを浴びせた。


一方通行「おォ、脳漿ぶちまけるくらいに加速したつもりだったんだけどよォ。破裂はしてねェか」

しかし、脳細胞がグチャグチャに潰れて死んだろう。
そのくらいの威力は確実にあったはずだ。

だというのに

横島「あー、死ぬかと思った」

横島は血を流しながらピンピンしていた。むしろ、ショックで地を転がったミサカの方がいくらかダメージが大きそうだ

一方通行「今度は肉体強化かァ? ったく、まさか多重能力とでも言うンじゃねェだろうなァ?」

横島「うっせーこんなもん美神さんの風呂覗いて3階の窓からパイルドライバーかけられつつアスファルトに叩き落とされたときに比べりゃ大したことないわー!」


一方通行「そォか、んじゃコイツはどゥだァ?」

一方通行が足元に転がっていた石を持ちあげる。
振りかぶり、横を流れる川に向かって放る。

凄まじい轟音とともに、川の底が見えるまでに水が吹き飛んだ。

一方通行「ベクトルを操作してよォ、投躑の威力を上げてやりゃァこんなモンだ」

慄く横島をよそに、一方通行は平然ともう一個石ころを拾い上げる。

一方通行「綺麗に心臓を撃ち抜いてやらァ」

横島が、応ずるように右手を前に構える。光る右手には、六角形の盾

衝突。


一方通行「あァ……?」

戦車の砲撃を軽く凌ぐほどの威力を持たせたはずの一発が、薄い盾一枚で受け止められている。
ベクトルの力を吐きだした石は横島の足元に転がり落ち、粉々に砕けた。

横島「おおおおっ!」

お返しとばかりに横島が振りかぶり、六角形の盾を一方通行に向かって放つ。

横島「スペシャル・ファイアー・サンダー・ヨコシマ・サイキック・ソーサー!!!!」

横島「フハハ! 栄光の手はガードできてもこのサイキックソーサーの威力はどうだあっ!」

跳ね返ってきたサイキックソーサーが、横島の顔面に直撃した。


一方通行「てめェ、あいつらの親玉か何かかァ? 学習能力ねェとこがそっくりじゃねェか」

うんざりした様子の一方通行が、新たな石礫を手に横島を見下す。

横島「く……鼻血が……」

一方通行「ンじゃまァ、そろそろ終わりにすっかァ?」

横島(こうなれば文珠で……っ! って出ねええええっ!! しまった今日使いすぎたっ! 早く!早くでろ次の文珠! 死ぬっ! 死んでしまうっ!)

横島の指の間で、収束する霊気が文珠を生み出そうとうごめく。しかし集中の散った横島に、上手く霊力は集まらない。

一方通行「死ね」

横島「ちょっ! タンマっ――」

横島が慌てて振り向いたとき、そこには青白い電撃に包まれる一方通行の姿があった。


ミサカ10020号「長らくお待たせしました。実験対象はこの私です、とミサカは不意打ちをかけつつ報告します」

一方通行「……やってくれるじゃねェか」

やはり、一方通行にダメージはない。だが、電撃の閃光で石礫は狙いを外され、横島の1mほど横に着弾していた

横島「助かった……」

ミサカ10020号「御苦労でした、ですがあなたはもう逃げたほうがいいかと。さっきの足の速さなら、一人でなら余裕でしょう」

一方通行「ペラペラしゃべってる余裕なンてあンのかァ?」

一歩でミサカに詰め寄った一方通行が、ベクトルで強化された拳を撃ちかます。
ミサカの口から赤く濁った唾が漏れ、その場に崩れ落ちた。

一方通行「ま、てめェが逃げるのは自由だけどよォ。こィつが死ぬぜェ?」

一方通行が横島の方を向いてミサカを指差そうとした時、その場に横島はいなかった。
しばし硬直して足元のミサカに視線を落とすと、こちらも消えていた。

周囲を見渡すと、50mほど先にミサカを抱えてダッシュしている横島がいた。


一方通行「あンの野郎……性懲りもなく逃げ回りやがって……」


横島「くっそおおおおっ! あんなのにどうやって勝てっちゅーんじゃー! 美神さはーん!」

ミサカ「いいから私を置いて逃げてください、とミサカは」

横島「それができたら苦労せんわああああああっ!」

横島がちらと背後を見ると、足を踏みならしている一方通行がいた。
猶予はない、あと10秒もすればまたドロップキックが飛んでくる。

横島は覚悟した。
立ち止まる。

横島「そういえばまだ名前も聞いてなかったけど一つ頼みがある」

ミサカ「何でしょう、とミサカはかつてなく真剣な表情のあなたに少しドキリとします」

横島「おっぱいとケツを触らせてくれ」


一方通行は混乱していた。
逃げる横島に追いついて、今度こそ致命的な一撃を喰らわせようとしていた時、突如として横島が足をとめたのだ。
そしてあろうことか、目を血走らせてミサカに言うも憚られる行為をしている。
死に際にいい思いをしたいということであろうか。

一方通行「……まァ、お楽しみもこれで終わりだ」

興が削がれた気分になりつつも、一方通行は地を蹴った。
先よりも速く、威力は強い。いくら横島が頑丈といえど、今度こそ頭蓋をたたき割れるはずだ。

横島「煩悩充填120%おおおおおおおおおおおおおっ!!!」

が、しかし。
獣のような叫びと同時、一方通行の蹴りは六角形の盾で受け止められた。


横島「まだ終わらんぞおおおおっ!」

一方通行を振り払った横島は、サイキック・ソーサーを消して新たな文珠を生み出す。

横島「とりあえずてめえの能力を教えて貰うぜええええっ!」

『模』

発動。
横島の体が貧弱なモヤシ体系になった。


ミサカ10020号「とてもアンバランスな生き物の誕生に、ミサカは心底気持ち悪いという感情を吐露してみます」

横島「相手の思考読むにはこれが一番手っとり早いんじゃああー!!」

一方通行「なンだてめェ? その格好は、おちょくってんのかァ?」

横島「うっせーてめえの格好にてめえの姿だよ! 自分のセンスを疑えあとちょっと体鍛えろモヤシ!」

距離を置いた一方通行は「そォかよ」と吐き捨て、またも石礫を超速で弾きだした。
狙うは横島の脳天。

それは見事に反射され、一方通行の体に跳ね返り、砕け散った。


横島「へー、ベクトル操作って能力か。便利だなこれ」

一方通行「……てめェッ!?」

横島「そんであんたは一方通行で、好きなタイプは小学生以下。缶コーヒーが好物で、おー貯金の額すげえ」

ミサカ10020号「小学生以下はひくわー、とミサカは全力バリバリに引いてみます」

一方通行「てンめええええええええええええええええっ!!!」

好きなタイプの指摘が逆鱗に触れ、一方通行は横島に飛びかかる。
その拳は、横島の手であっさりと止められた。


横島「双方のベクトル操作が真逆に打ち消しあって、差し引きゼロだ」

一方通行の拳を握りしめたまま、勝ち誇ったように笑う横島。

横島「そうなりゃてめえみたいなモヤシ怖くねええええっ! 喰らえ愛と正義のヨコシマ・パーンチっ!!!」

一方通行の頬に、横島(モヤシモード)全力の一撃が決まる。

一方通行「ぐッ!」

横島「ぐほっ!」

そして、横島の頬にも同じ攻撃が決まる


一方通行「なンだてめェ……? ハハァ、その能力、俺の状態をコピーでもしてンだなァ?」

一方通行「だからダメージも一緒に来る、そうだろォ?」

横島「ああそうだ!! しかし他の方法で文珠を使おうにも、霊気まで反射されるんじゃ手の施しようがねえ!」

横島「だから耐久戦だ! かかってこいモヤシ!」

一方通行「分かって言ってんのかァ? てめェのダメージは俺の倍になンだぞォ?」

横島「美神さんに鍛えられたタフネスなめんじゃねえぇぇええええ!!」


モヤシ同士の壮絶なる殴り合いが始まり、はや1時間ほどが過ぎた。
はじめのうちは援護がわりに電撃を飛ばしていたミサカも無駄だと気付くや諦め、横になって眺めている。
文珠の効果時間が切れそうになるたび、横島は距離を置いて素早く文珠で『模』を作りなおしている。

一方通行「てンめェ……いい加減気絶したらどうだァ……」

横島「こちとら大気圏に生身で突入したことだってあんだよ! モヤシとの喧嘩ごときで負けてられっか!」

石礫も風力操作もプラズマも、間接攻撃は何の役にも立たない。
ひたすらモヤシ同士が殴りあうだけ。

学園都市最強の能力同士がぶつかり合う様は、ひどく地味であった。


ミサカ10020号「いい加減もうどっちかが倒れて欲しいですね、とミサカは退屈にうずもれてみます」

横島「他人事みたいに言うなボケー! こっちゃ半分お前のためにやっとんのやぞー!」

一方通行「オラァ!」

一方通行の不格好な蹴り、横島は難なくかわす。
モヤシ体系で体力は落ちたものの、事務所で行われるバイオレンスな業務で鍛えた回避能力は健在だ。

体勢を崩した一方通行の腹部に、横島の右ストレートが吸い込まれる。

向かい合ったモヤシが、同時にうめいた。


モヤシ同士の殴り合いに、もはや言葉はなくなっていた。
ひたすら殴り、蹴り、時に投げる。
ミサカは河原でぐうすかとイビキをたて始め、横島も一方通行も本来の目的を忘れて拳を振るっている。

横島「やるじゃねえかモヤシ野郎」

一方通行「てめェもな、三下」

横島「俺がここでてめえを倒せば実験は終わるんだろ? お望み通りぶっ倒してやる」

一方通行「へ、さすがにNo.1のプライドもあンだよォ」

そこに駆けこんでくる、乱入者の影。

?「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

上条「一方通行! 歯ァ食い縛りやがれえええ!」

横島「上条!? どうしてここに――」

上条の強烈な幻想殺しが、一方通行の顎を突き飛ばした。一瞬にして脳を揺さぶられ、一方通行は意識を手放す

横島も気絶した


横島「あれ? ここどこだ?」

ミサカ10020号「どうもおはようございます、とミサカは横のベッドから朝の挨拶をします」

横島「ああ、無事だったんだな……」

ミサカ10020号「はいおかげさまで。しかし、重傷の後に応急処置だけで川辺に寝っ転がったせいでそこそこに体の調子が悪いようです」

横島「何か俺も全身痛い……」

ガラッ

上条「よーっす横島、いや悪いな。横からぶんどったみたいになっちまって」

横島「てんめええええええええっ!! 俺がせっかく格好いいポジションだったのに最後の最後で奪いやがってコラああああっ!!」

上条「だって仕方ねーだろ、てっきりお前がやられてんのかと思って」

横島「互角だったんだよ一応!」


ミサカ10020号「まあどうあれ皆助かったのだからそれでいいじゃないですか、とミサカは差し入れのフルーツを勝手にいただきながら仲裁します」

横島「お前もお前やああ! 決闘の最中にゴロ寝なんぞしおって! もうちょっと危機感くらい持たんかああ!」

ミサカ10020号「おっぱい、ケツ」

横島「う」

上条「?」

ミサカ10020号「あそこまで激しくああされては、さすがのミサカも体力的に」

横島「もういい分かった責めないからもう寝ろいや寝てくださいお願いします!!!」

ミサカ10020号「ぐー」


上条「まあそのなんだ、治ったらちゃんと学校戻ってこいよ」

横島「うっせーてめえがさっさと帰りやがれー! モテ男がいるだけで空気が淀むんじゃー!」

上条「分かったよ、すまんかった。じゃあな」

横島「このチンポ濡れ濡れとっかえひっかえ野郎があああー!」

ミサカ10020号「一応レディーもいるのですからそういう発言は控えてほしい、とミサカは文句を垂れてみます」

横島「ぐ」

ミサカ10020号「まあでも」

横島「ん?」

ミサカ10020号「あなたもそれなりにもてていると思いますよ、多分。とミサカは頬を赤らめ言ってみます」


さて眠いしキリがいいからここらへんで終わり
最初の当たりで横島の任務とかあったけど投げっぱなしジャーマン

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