リヴァイ「……」 ミカサ「……」(85)


リヴァイ「……」

ミカサ「……」

リヴァイ「……腹が減った」

ミカサ「……ここにひとつの野戦糧食がある」

リヴァイ「……」


ミカサ「これは全兵士に5日分支給されているもの」

ミカサ「作戦に出発して一週間がたった」

ミカサ「ので」

ミカサ「普通に食べていれば当然なくなる」

ミカサ「では、なぜ、ここにひとつ余っているのか?」


リヴァイ「……」

ミカサ「シンキングタイム、スタート」

リヴァイ「……それは俺に考えろと言っているのか」

ミカサ「暇つぶしになるかと」

リヴァイ「チッ。んなもん考えてもしょうがねーだろうが。重要なのはそれをこれからどうやって食べるかだろ」

リヴァイ「最後の食糧だ。無駄にはできない」

リヴァイ「俺達が生きて壁に辿り着けるかどうかがそれにかかってる」

ミカサ「達?」

リヴァイ「あ?」


ミカサ「これは私が大事に大事にとっておいたもの」

ミカサ「もしかしたらエレンが見つかるかもしれない。そのときにお腹が減っていてはかわいそうなので」

リヴァイ「エレンのためにとっておいてるのか」

ミカサ「そう。つまり、あなたは普通に一日分ずつ食べた。私は我慢した」

リヴァイ「……」

ミカサ「私は常日頃からあなたに報復することばかり考えている」

ミカサ「今ここで、丸二日なにも口にしていなくて極限まで空腹状態のあなたの目の前で、ゆっくりじっくり食べているところを見せ付けるとする」

ミカサ「これは、立派な報復。違わない?」

リヴァイ「……」

リヴァイ「ああそうだろうな」ハァ


ミカサ「……」グッ

リヴァイ「なんだそのよしって顔は」

ミカサ「今のあなたの顔で今日も野戦糧食がおいしい」

リヴァイ「……仮に今ここが壁の中で、巨人共が汚ねぇ口を大きく開いて下で待っている巨大樹の上でなかったら、てめぇのうなじを綺麗に削いでやったのにな」

ミカサ「遠慮しておく」

ミカサ「私の方がきれいに削げる、と思う」

リヴァイ「バカ言え、それに関しちゃオレの右に出る者はいないはずだ」

ミカサ「ぐぬぬ」

リヴァイ「ふん、ガキが」


ミカサ「確かに、あなたは強い」

ミカサ「人類で一番強かったはず」

ミカサ「私は同期の新兵の中では一番強かった」

ミカサ「……同期の新兵、なおかつ人類、の中では」

リヴァイ「ああ、そこは訂正しておかなきゃな」

リヴァイ「敵だろうが味方だろうが、知性巨人にはお前じゃ歯が立たなかった」

ミカサ「…」

リヴァイ「お前の同期は変なやつばっかりだった」

ミカサ「ええ。ほんとうに」


リヴァイ「巨人化するやつはごろごろいるわ、壁教の秘密を握る女はいるわ、エルヴィン並みの知将がいるわ」

リヴァイ「……新兵のくせにやけに態度がでかくて、バキバキに腹筋割れてる女もいるしな」

ミカサ「もちろん、こんな態度なのはあなたの前だけ。他の上官方にはこんな失礼な真似をしない」

リヴァイ「一応俺は兵士長なんだがな。まあどうでもいいが」

ミカサ「腹筋については、兵士なので……褒められるならまだしもけなされる筋合いはない」

リヴァイ「別に色気がないとは言っていないだろ」

ミカサ「?」

ミカサ「それは私に色気があるということ?」

リヴァイ「……」

ミカサ「2週間前のことなら、セクハラで訴える準備は整っている」

リヴァイ「あ?」


ミカサ「部下を酒で酔わせて部屋に連れ込む人類最強の兵士長」

リヴァイ「いい加減にしろよ」

リヴァイ「なにが『私は自分を完全にコントロールできる』だ?」

リヴァイ「酒に弱ぇくせに見え張って飲んで、しまいにゃあんな道端で眠りこけやがって。俺が拾ってやんなきゃてめぇは今頃見世物小屋だ」

ミカサ「……」

リヴァイ「まあ、今となってはそっちの方がマシだったかもしれねェが」


ミカサ「…でも手を出すことはなかった」

リヴァイ「出してねえよ」

ミカサ「目を覚ましたら服を着ていなかった」

リヴァイ「汚ぇから洗濯してやったんだろうが」

ミカサ「脱がせたのに変わりはない」

リヴァイ「ガキの裸なんか見て何がおもしれえんだよ」

ミカサ「今見たと自白した」

リヴァイ「……まあ、確かに、よく鍛えてんなとは思った。あとで褒めてやる」


ミカサ「……もっと別のことで名前を挙げてほしかった」

ミカサ「並の兵士100人分の実力があるとか」

ミカサ「逸材とか」

ミカサ「失うと人類にとって大きな損失だとか」

リヴァイ「…そんなのは全部俺で間に合ってる」

リヴァイ「そういう意味ではお前は俺の下位互換でしかない」

ミカサ「深く傷ついた。謝罪を要求する」

リヴァイ「事実だろうが」

ミカサ「やっぱり軍法会議ものの案件」


ミカサ「わかった」

リヴァイ「?」

ミカサ「あなたはいつか私に抜かされるんじゃないかと思ってびくびくしているに違いない」

ミカサ「人類最強の座を私に明け渡すのが怖い」

ミカサ「違う?」

リヴァイ「…この状況でよくそんなことが言えたもんだ」

リヴァイ「おめでたい頭をしてるんだな」

ミカサ「……」

ミカサ「私は本気でそれを目指している」

リヴァイ「……人類最強になること、か?」

ミカサ「そう」

ミカサ「あなたよりもっと多く、すばやく、正確に、巨人を削ぐ。あなたより頼られる存在になる。あなたよりもっと心強い、人類にとっての希望になる」


リヴァイ「そんなもん目指すな」

ミカサ「なぜ?」

リヴァイ「お前には向いてねえよ」

ミカサ「…」

リヴァイ「お前はエレンさえよければそれでいいと思っているだろう。作戦の成功とか、人類の勝利とか、そんなものはどうでもいいんだ」

ミカサ「…そんなことは」

リヴァイ「ないとは言えねぇよな? お前はエレンのためなら自分の命だって平気で投げ捨てようとするだろう」

リヴァイ「兵士として失格だ。そんなやつが人類の希望になんてなれるはずがない」

ミカサ「……」


リヴァイ「それにしても、お前がそんなことを考えてるとは」

ミカサ「別に、それくらい目指したっていいと思う。むしろ褒められるべき」

リヴァイ「全然しっくりこねぇな」

ミカサ「……」

ミカサ「……強くなりたいのは本当。エレンを守るには、今の私の力だけでは足りない。人類最強と言われるあなたぐらいに強くなれば、エレンを守れると思った」

ミカサ「エレンはあなたを尊敬している。あなたを本当に頼りにしている。それがうらやましい」


リヴァイ「……」

リヴァイ「お前には、本当にエレンしかないのか」

ミカサ「はい」

リヴァイ「それが一週間考えて出た答えか」

ミカサ「はい」

リヴァイ「じゃあ、お前はこれからどうするんだ? 目的を失って。生きていけるのか」

ミカサ「? どういうこと?」

リヴァイ「…だめだ。おまえ、それじゃあ帰れない。だめだ」

リヴァイ「ミカサ。エレンはもういない」

リヴァイ「お前もちゃんと見ただろう? エレンは死んだ」

ミカサ「……」


ミカサ「ひどい」

ミカサ「エレンが死んだなんて、どうしてそんなことを言うの?」

リヴァイ「ミカサ」

ミカサ「確かに、巨人化したエレンの周りに、巨人たちが集まっていってエレンを食べていた。私はエレンの右手の中にいた。抜け出して、巨人を削ごうとしていたはず。エレンの協力があれば簡単だった。それに、だめだったら私がエレンのうなじを削いで本体を連れて逃げるつもりだった。それなのに、兵長がエレンの右手を切り落として、手の中にいた私を抱えて飛んだ」

ミカサ「空の上から見た。右手のないエレンは、巨人たちに食い尽くされていた。エレン本体は確認できていない。もしかしたら、アニみたいに、立体起動で逃げてるかも」

ミカサ「そうだとしたら、私たちがここにいる意味はなくなる」

ミカサ「帰りましょう兵長。エレンの下に」


リヴァイ「バカか。てめぇは」

リヴァイ「エレンは死んだ。巨人化を解いた後のエレンの体力の消耗は知っているだろ? 再生能力もどんどん落ちて行って、最近では1週間は意識不明の状態だった。いくら立体起動装置をつけていようと、あの状況で助かるわけがない。それこそ、誰かが助けたのでもなければ」

リヴァイ「それに、もうあれはエレンに戻れなかった。お前はエレンに食われる寸前だった」

ミカサ「……」

リヴァイ「認めろミカサ。ちゃんと向き合え」

ミカサ「……もうこの話はしないと約束したはず」

リヴァイ「お前がちっとも帰って生き延びようという気にならねえからだろうが」

リヴァイ「やはりあの件はここで解決しねえとダメだ」


~一週間前~

巨大樹の上

リヴァイ『チッ、ここまでか…!』

ミカサ『エレンを助けに行く!』

リヴァイ『いい加減にしろ!てめぇも見ただろうが!エレンはもう死んだ』

ミカサ『なぜ…!』

リヴァイ『落ち着くんだミカサ。今考えるべきはどうやって俺たちが生き延びるかだ』

ミカサ『……私は冷静』

リヴァイ『どこがだ。ブレードをしまえ。俺を殺したところでどうなる?エレンは帰ってこないだろう』

ミカサ『……』


ミカサ『……』

ミカサ『……なぜ、誰も残っていないのですか』

リヴァイ『お前は撤退命令を聞いていなかったのか? いったい何を考えてんだ』

ミカサ『なぜ、撤退せずにあなたはここにいるのですか』

リヴァイ『てめぇが戻らねえからだろうが』

ミカサ『私のことはほっておいてくれればよかったのに』

リヴァイ『あ?』

ミカサ『エレンを目の前で死なせてしまった。私もあそこで死ぬべきだった』

リヴァイ『……』

リヴァイ『何を言っても無駄だな』

リヴァイ『もういい。勝手にしろ。死にたきゃ死ね』

ミカサ『……あなたはどうするの。馬がないし帰れないはず』

リヴァイ『チッ。そんなことはわかってんだよ』


リヴァイ「あれから一週間もたった」

リヴァイ「十分頭を冷やす時間はあったはずだ」

リヴァイ「お前が今思っていることを全部吐き出せ」

ミカサ「……」

ミカサ「なぜ、あのとき撤退しなければならなかったの」

リヴァイ「巨人化し、暴走したエレンを残して撤退するというエルヴィンの判断は正しい」

ミカサ「正しくない」

リヴァイ「お前らの幼馴染のアルミンが進言したんだ。もうエレンはだめだと」

ミカサ「アルミンは間違っている。帰ったら話し合わないと」


リヴァイ「……それがお前が一週間考えた結論か? 撤退命令が間違っていたと」

ミカサ「……エレンはちゃんとエレンだった。私のエレンだった。姿は巨人でも、中身はエレンのままだった」

リヴァイ「ちゃんと現実を見ろ。お前はエレンに食われるところだったんだ」

ミカサ「ちがう」

リヴァイ「エレンは巨人化を繰り返すことによって、徐々に巨人に近づいて行った」

リヴァイ「今回は特にひどかった。自分を制御できずに、勝手に巨人化し、仲間を何人か食った」

ミカサ「ちがう」

リヴァイ「もう限界だった」

ミカサ「ちがう!」


ミカサ「もうやめて。これ以上エレンを愚弄するというのなら私はあなたを殺してしまうだろう」

リヴァイ「できるもんならやってみろ」

リヴァイ「それに、エレンを愚弄しているのはてめぇの方だ」

リヴァイ「エレンは苦しんでいた」

リヴァイ「出発する前に全員の前で言っていただろう。『暴走したらどうかオレを殺してくれ』と」

リヴァイ「あいつはちゃんと自分のことがわかっていた。分かったうえで、人類の脅威になる前に自分の命を自分で切り捨てた。どうしてちゃんと認めてやらない?」


ミカサ「……それでも」

ミカサ「あなたほど腕のある人物なら、エレンをうなじから切り取ることができたはず」

ミカサ「エレンを連れて帰って、もう巨人化させないようにすることだってできた!生きていれば、きっと、なんだって方法があった!」

ミカサ「なにもエレンがあの場で、巨人のまま、巨人に食われて死ぬことはなかった!」

リヴァイ「……全部俺のせいにするのか」

ミカサ「あなたのせいにしないとこの感情をどうしたらいいのかわからない」

ミカサ「あなたのせいだと思ってあなたを憎んでいないと私は私のままでいられない」


リヴァイ「聞け。ミカサ」

リヴァイ「あの数の巨人を全部殺して、しかも暴走したエレンから本体を切り取るのは、俺一人では無理だ」

ミカサ「私だっていた」

ミカサ「私がエレンに食われている間に、あなたがエレンを切り取ればよかった」

リヴァイ「無茶言うな」

リヴァイ「俺はお前を死なせたくない」

ミカサ「なぜ?」


ミカサ「あなたにとっても、兵団にとっても、人類にとっても。私よりエレンの方がよっぽど価値がある」

ミカサ「私は暴走するし、あなたの言うことを聞かない。巨人化できるわけでもないしあなたほど腕もたたない。人類最強なんてほど遠い、口先だけの新兵のはず」

リヴァイ「…そうだな。エレンは見所のある大事な部下だった。人類にとっても貴重な人材だった。エレンをなくしたのは惜しい」


リヴァイ「……」

リヴァイ「ミカサ。お前は俺が死んででもエレンを助けるべきだったと思うか?」

ミカサ「…それは」

リヴァイ「あるいは、お前が死ぬのも厭わずに、エレンを助けることを最優先にするべきだったか?」

ミカサ「…私はそうしてほしかった」

ミカサ「でも、あなたは人類の希望だから死ぬべきではない、と思う」


リヴァイ「そうだ……俺は生きなければならなかった」

リヴァイ「巨人との戦いは何も終わっちゃいねえし、人類の勝利のために、俺はもっとたくさん巨人を殺さなきゃならない」

リヴァイ「エレンの代わりもいねぇが、俺の代わりもいない」

ミカサ「……」

リヴァイ「俺の死ぬべき場所はあそこじゃなかった。そう判断して、お前を連れて帰ることを選んだ」

リヴァイ「そうだ」

リヴァイ「俺もそうだが、お前の死ぬ場所もあそこじゃない」


ミカサ「…でも」

ミカサ「私はエレンがいないと生きていけない」

ミカサ「そばにいないと早死にするのはエレンではなく、私の方だった。ちゃんとわかっていた」

ミカサ「エレンがいないと私は何もできない」

ミカサ「戦えない、役立たず」

ミカサ「だったら、私はエレンと同じ場所で死にたかった」

ミカサ「どうしてあなたが私の死ぬ場所を決めるの?」

リヴァイ「……」

ミカサ「……」

リヴァイ「……今までにもお前のような部下は何人もいた。若くて、優秀で、巨人殺しが上手い。もちろん、助けられる奴は助けたし、どうしても助けられなかった奴もいた」

リヴァイ「わかるか?」

ミカサ「……いいえ」

リヴァイ「……生きていてほしいんだよミカサ」


リヴァイ「お前が特別なんじゃない。俺は、今まで助けられなかった仲間全員に生きていてほしかった」

ミカサ「……」

リヴァイ「エレンは助けられないが、ミカサは助けられる。あのとき、俺はそう判断した」

リヴァイ「それだけのことだ」


リヴァイ「お前が特別なんじゃない。俺は、今まで助けられなかった仲間全員に生きていてほしかった」

ミカサ「……」

リヴァイ「エレンは助けられないが、ミカサは助けられる。あのとき、俺はそう判断した」

リヴァイ「それだけのことだ」


ミカサ「……」

ミカサ「あなたは私のことなんて、どうでもいいのだと思っていました」

リヴァイ「そんなわけあるか。お前は並の兵士100人分の実力を持っていて、失えば人類にとって大損害の逸材」

リヴァイ「俺と並ぶことができる可能性を持った将来有望な新兵だ……クソ生意気だが」

ミカサ「……」

リヴァイ「これからじっくり躾けてやろうと思っていたんだ」

ミカサ「……」

リヴァイ「こういえばわかるのか?」

リヴァイ「お前に死なれたら俺が困る。楽しみが減るからな」

同じの連投してた。ごめんなさい

続き


ミカサ「……」ポロポロ

リヴァイ「……」

ミカサ「……」ポロポロ

リヴァイ「……いつまで泣いてるつもりだ」

ミカサ「……ごめんなさい」ポロポロ


ミカサ「あなたの気持ちを全く考えていなかった」ポロポロ

ミカサ「一週間もあったのに」ポロポロ

ミカサ「酷いことを言ってしまった。私はあなたになんといえばいいかわからない」

リヴァイ「俺のことはどうでもいいんだよ」

ミカサ「っ……うわああん」


リヴァイ「……チッ、泣く暇があったらどうやって壁まで戻るか考えろ。もうすぐ日が暮れる。巨人共が動けなくなるいい機会だ」

ミカサ「……でも、私はどうすればいいかわからない。エレンを失ってしまったのは事実」ポロポロ

ミカサ「とても寒い」

ミカサ「寒くて、生きていくのは辛い」

リヴァイ「……」

ミカサ「ので」

リヴァイ「……ので?」


ミカサ「……」

リヴァイ「てめえ、ここまで言わせておいて死ぬなんて言うなよ? 本当に削ぐぞ」

ミカサ「……」

ミカサ「少しだけ、あたためてほしい」

リヴァイ「…はぁ?」


ミカサ「エレンがいなくても、この世界は美しくて暖かいことを実感したい。そうでなければ本当に私は死んでしまう」

リヴァイ「どういう理屈だよそりゃ」

ミカサ「生きていられなくなって、死んでしまうの」

リヴァイ「……まあ、そういうことにしておいてやる」


ミカサ「やっとわかった気がする」

リヴァイ「?」

ミカサ「あなたに何と言えばいいのかを」

リヴァイ「……」

ミカサ「リヴァイ兵長」

ミカサ「あなたが二度も命を助けてくれた。だから、私はまだ死にたくない」

リヴァイ「……!」

リヴァイ「この、クソガキ」


ギュッ

寝落ちしてた。ごめん。続き↓

ミカサ「……」ポロポロ

リヴァイ「……チッ」

ミカサ「……兵長、あったかい」

リヴァイ「こうすればお前は生きていられるのか」

ミカサ「そんな気がする……。兵長の心臓の音が聞こえる。とても、安心する」

リヴァイ「…てめえは赤ん坊か。もう死に急ぐんじゃねえぞ」

ミカサ「はい」

リヴァイ「わかりゃそれでいいんだよ」頭ワシャワシャ


ミカサ「……」

ミカサ「……どうも、ありがとうございました」

リヴァイ「……おい、その手はなんだ」

ミカサ「小さくてちょうどなでやすい」頭ナデナデ

リヴァイ「あ?」

ミカサ「……あなたは一人で頑張りすぎている」

ミカサ「私ではあなたの力になれない?」

リヴァイ「……そりゃどーいう意味だ」

ミカサ「…いえ、なんでも」

リヴァイ「……いい加減なでるのをやめろ」

ミカサ「子供みたいで意外とかわいいなと」ナデナデ

リヴァイ「随分死にてえらしいな」ジャキ


ミカサ「ごめんなさい。これを半分あげるから許してほしい」つ野戦糧食

リヴァイ「あ? 随分素直じゃねえか」

ミカサ「もともとこれはエレンのもの。エレンはあなたを尊敬していたから許してくれるだろう」

リヴァイ「なら半分と言わず全部寄越せ」

ミカサ「鬼」

リヴァイ「当たり前だ、てめぇのために俺がどれだけ骨を折ったと思ってやがる」


リヴァイ「」バリバリ

ミカサ「・・・」

リヴァイ「」バリバリ

ミカサ「・・・」

ミカサ「・・・本当に全部食べるとは」

リヴァイ「あ? てめぇがよこしたんだろーが」

ミカサ「かわいい部下を思いやる気持ちはないのか」

リヴァイ「かわいい・・・?どこが?」

ミカサ「・・・・・・」

ミカサ「やっぱりセクハラとパワハラで訴訟を起こす。アルミンに手伝ってもらおう」

リヴァイ「この期に及んでまだそんなことを・・・まあいい」ハァ

リヴァイ「その前にまずアルミンに会う方法を考えろ」


ミカサ「…」

ミカサ「あなたを死なせたくない団長あたりが馬に乗って助けに来るとか」

リヴァイ「ねえな」

リヴァイ「もう一週間経ってる。死んでいると思われてるだろう」

ミカサ「…じゃあ、生きて帰ったらきっとみんなびっくりする」

リヴァイ「だろうな」

ミカサ「よかった。最近驚かされることばかりだったので、驚かす側にまわれるのはうれしい」

リヴァイ「そうか。そりゃよかったな」

ミカサ「…」

リヴァイ「…」


ミカサ「……どうしよう。どうするべき?」

リヴァイ「……」

ミカサ「アルミンなら正しい答えを導き出せるはず。アルミンに会わないと…」

ミカサ「あ」

ミカサ「…そうだった。アルミンに会うには壁に戻らないといけない…でも戻る手段はない…」

ミカサ「どうすれば戻れる?」オロオロ

リヴァイ「……」


リヴァイ「落ち着け。落ち着いたところでどうにもならねぇが」ハァ

ミカサ「はい…」

リヴァイ「……お前は本当に色々と残念だな」

ミカサ「……」

リヴァイ「顔は整ってるくせに体はちっとも女らしくねえし、実力はあっても中身が全く備わっちゃいねえし」

ミカサ「…自覚している。でも、あなたに言われるのは心外」


ミカサ「私だって、あなたのことは残念だと思っている」

リヴァイ「あ?」

ミカサ「小さいころ、はじめてあなたを見たとき、エレンがあなたをヒーローのように褒めていた。ので、私もそう思っていた。エレンがそういうから」

ミカサ「それなのに、あなたはとても暴力的で、性格もいいとは言えなくて、おまけにチビだった」

ミカサ「とてもヒーローとは思えない」

リヴァイ「……訴訟と言わず今ここで決着つけてやってもいいんだぞ」

ミカサ「そういうところも、すごく子供のよう。エレン並」

ミカサ「非常に残念」


リヴァイ「てめぇがいちいちケンカ売ってくるからだろうが」

リヴァイ「…大体さっきのあのしおらしい態度はどうした」

ミカサ「……」

ミカサ「…あれは、その…」


ミカサ「私らしくなかった。冷静じゃなかった。よりによってあなたの前であんな醜態をさらすなんて」

ミカサ「恥ずかしい。とてもとても、恥ずかしい」

ミカサ「……だから、そのせいでもある。ケンカを売りたくなるのは恥じらいのせい」

ミカサ「つまり、あなたのせい。どうにかして」

リヴァイ「……」

リヴァイ「…あのなぁ」


リヴァイ「だったら、おとなしく恥らってろ」

リヴァイ「噛み付くばかりじゃなくて、少しはかわいげがあるところも見せてみるんだな」

ミカサ「…そうするメリットは?」

リヴァイ「俺が楽しい。お前が恥らっている姿は面白い」

ミカサ「よし、表でろ」

リヴァイ「もう出てる」

ミカサ「チッ」

遅くなってすみません。待っててくださった方ありがとうございます。
続き↓


ミカサ「もういい。疲れた」

リヴァイ「そりゃこっちのセリフだ」

ミカサ「……」

リヴァイ「……」

ミカサ「そろそろ迎えに来てくれてもいいんじゃ」

リヴァイ「だから、来ねえっつってんだろ」


ミカサ「…兵長、ガスはあとどれくらい?」

リヴァイ「あ?んなもんほとんど残ってねえよ。てめぇもだろ」

ミカサ「ええ」

リヴァイ「第一、あっても馬がなきゃ帰れねえ」

ミカサ「巨人の上に乗って移動するとか…」

リヴァイ「ほう、なかなか面白いことを言うじゃねえか。やってみろ。俺は止めない」

ミカサ「ごめんなさい」

?「――おーい」

リヴァイ「…おい」

ミカサ「……」

リヴァイ「なにかきこえねえか」

ミカサ「……聞こえるような気もする」

?「――サ!」

ミカサ「…あ!」


アルミン「ミカサ!」

ハンジ「おーい!生きてるー?」


ミカサ「っ、アルミン!」

リヴァイ「なっ」

ハンジ「待ってて!今そっちに行くから!」


アルミン「よかった…ミカサが無事で」

ミカサ「アルミン。会いたかった」ギュウウウ

ハンジ「リヴァイー!よかったー生きてるうう」ギュウウウ

リヴァイ「!?」

リヴァイ「…馬鹿野郎、きたねえ、抱き着くな!」

ハンジ「どう考えても一週間木の上にいたあなたの方が汚いっつの!」

リヴァイ「!」

リヴァイ「そうだ…最悪だ……風呂入りてえ」

リヴァイ(そういえばさっきも風呂入ってねえミカサのこと抱きしめちまった)

リヴァイ(あのガキが妙なこと言いやがるから)チラ

ミカサ「アルミンアルミン。あったかいアルミン。世界はとてもとても美しい」

アルミン「はは…苦しいよミカサ」

リヴァイ「……チッ」


リヴァイ「……」

ハンジ「信じられないって顔してるね」

リヴァイ「ああ…なぜここまで来た」

ハンジ「ま、みんなあなたを失いたくなかったってとこかな。もちろんミカサもね」

リヴァイ「……」

ハンジ「さ、早く帰ろう。巨人が目を覚まさないうちに」



ハンジ「あーそれにしても、本当によかったよかった。遅くなってごめんね」

ハンジ「エルヴィンの目を盗んでいろいろ準備するのに手間取っちゃって」

ハンジ「アルミンがいろいろ考えてくれたんだよ~」

ハンジ「いやね?エルヴィンだって何も君たちを助けたくなかったわけじゃなくて、いろいろ立場ってもんがあって」

リヴァイ(頭いてえ。よく馬に乗った状態でぺらぺら喋れるな)

ハンジ「でも、リヴァイが撤退命令無視してミカサを助けに行ったんだろ? 帰ったら大目玉かもね――って聞いてる?」

リヴァイ「ああ。お前のそのふざけた声がもう一度聞けてよかった」

ハンジ「!」

ハンジ「…ったく。変わってなくて安心したよ」

アルミン「……本当によかった。エレンとミカサを同時に失ったかと思ったよ」

アルミン「ジャンが、君のことが心配で毎晩一時間おきに僕に『ミカサは大丈夫かな』って話しかけてくるから、おかげで寝不足だ」

アルミン「あのサシャもね? 君の分のパンを大事に大事にとっているよ。カビが生えるよってみんなで言ってるんだけど。帰ったらいっぱいパンを食べなきゃだね、ミカサ」

ミカサ「…」

アルミン「クリスタもコニーも、君の班の先輩方も。みんな君が生きているのを願ってる。もちろん僕も」

アルミン「もうあんなことしないって約束してほしい。ミカサ。もっと君自身のために生きてくれ」

ミカサ「…うん。ごめんなさい、アルミン」

ミカサ「助けてくれてありがとう」




ハンジ「お、そろそろ壁だ」

アルミン「ちょうどよかった。日が出る前に戻って来れましたね」



ミカサ「あの。リヴァイ兵長」

リヴァイ「なんだ」

ミカサ「生きてますね、私たち」

リヴァイ「そうだな」

ミカサ「……アルミンにも会えたことだし、訴訟は起こそうと思う。ので、覚悟しててください」

リヴァイ「ああ。期待しとく」

ミカサ「……冗談。です」

リヴァイ「お前、つまらない冗談はもうやめろよ。本当に。次はないと思え」

ミカサ「ごめんなさい」


ミカサ「…すごい。生きられるんですね。これからも」

リヴァイ「ああ。もうお前の命はエレンだけのものじゃねえぞ。俺と、それからアルミンとハンジ、エルヴィンにお前の同期に――」

ミカサ「もうそれは十分わかった」

リヴァイ「本当か?」

ミカサ「はい」


ミカサ「勝てば生きる。戦わなければ、勝てない」

ミカサ「私はもっともっと強くなる。戦いに勝って、生きるために。いつかあなたに並ぶくらい」

リヴァイ「……」

ミカサ「ので、そのときは本当に覚悟しておくといい。私はあなたの座を脅かすつもりでいく」

リヴァイ「……ほう。期待しないで待っておいてやる」


ミカサ「……兵長」

リヴァイ「……なんだ」

ミカサ「ありがとう、ございました」ニコ

リヴァイ「……」

リヴァイ「…ずっと笑ってりゃいいのに。つくづく残念な女だ」ボソ

ミカサ「?」



ハンジ「あらら。随分仲良くなったみたいだね?」ヒソヒソ

アルミン「最強タッグの結成ですかね」ヒソヒソ

ハンジ「そりゃ、心強い。これからもいっぱい活躍してもらわなきゃね――」






おわり


当初予定していたのとどんどん変わって行ってしまったのですが、なんとか終わらせられてほっとしました。
久々に来て、スレが残っていてびっくりしたのと同時に嬉しかったです。
ありがとうございました。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年09月30日 (月) 17:57:23   ID: BIYcXilk

よかったっっ…!!

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