モバP「天才と名月」 (41)

・モバマスSS
・池袋晶葉、古澤頼子
・月が綺麗ですね

それでは、よろしくお願いします。



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ブロロロロ……


P「んー……打ち合わせに挨拶に、時間かかったな……」


P「だが、どうにかスケジュールの最終調整も終わった。ずっと前から打診した甲斐があったもんだ」


P「……もうこんな時間か。事務所に着くのは10時頃かな」




prrrr! prrrr!


P「ん、電話だ。どこか路駐できそうなところは……あそこでいいか」




ピッ


P「もしもし」


??『もしもし……Pよ、事務所に戻るまでどれほどかかりそうだ?』


P「ん、晶葉か。着くのはだいたい10時頃じゃないか?」


池袋晶葉『そうか。事務所に着いたら屋上まで来るように』


P「屋上?」


晶葉『ああ、ちひろに頼んで開けてもらった。問題ないぞ』


P「そうか、分かったよ」


晶葉『……運転中にすまなかったな。では、待っているよ』


ブロロロロ……


P「屋上か……何かあったかな?」


P「……まあいいか。面白そうだし、着いてから考えよう」


P「あー、軽く飯食っておくか……丁度いい、そこにコンビニが……」




バタン


P「……にしても」


P「今日はいい天気だな。こんな都会の夜空でも――」




P「――月が、綺麗じゃないか」


――事務所


晶葉「……」カチャカチャ


古澤頼子「……」ペラッ


晶葉「……」チラッ


晶葉「むぅ……」ショボン


頼子「……?」ペラッ




頼子「……晶葉ちゃん?」


晶葉「ど、どうした、頼子」


頼子「さっきから……時間、気にしてるのかな、って」


晶葉「そ、そうか……?」


千川ちひろ「そんなに気にしてても、プロデューサーはすぐには帰ってこれませんよ?」


ちひろ「打ち合わせにスケジュール調整で、かなり長引いてるみたいですから」


晶葉「……うむむ……」


晶葉「……そうだな。よし、今日のためのロボの様子でも見てこよう」



バタン



ちひろ「気になって仕方がないみたいですね」


頼子「……晶葉ちゃんとPさんは、仲良しですから」ペラッ


ちひろ「ええ、事務所のソファで添い寝するくらいには」


頼子「ふふっ……あれは、微笑ましかったですね……」


ちひろ「でも、私が言ったのは頼子ちゃんのことだったんですけどね」


頼子「えっ……?」


ちひろ「頼子ちゃんもプロデューサーさんや晶葉ちゃんと仲良しですからねぇ」


ちひろ「それくらい、私にだって分かりますよ」


頼子「え、えっと、その……」カァァァ


ちひろ「ふふっ、それでは私はこの辺で。三人で楽しんでくださいね」


頼子「……ちひろさん、いいんですか……?」


ちひろ「ええ。アイドルのために空気を読むのも、事務員の仕事です。戸締まりだけは気を付けてくださいねー」




頼子「……ふふっ、そうですね……」


頼子「楽しい夜に、なりますように……」


――事務所研究室


晶葉「……スイッチ、オン」




ガタガタガタ……


ゴゥンゴゥンゴゥン……




晶葉「……ふむ、動作に異常なし」


晶葉「生産も……ばっちりだな」


晶葉「……」




ヒョイッ


パクッ


晶葉「……問題ない。問題ない、けど」


晶葉「あんまり、おいしくない……」


――事務所


P「はぁ、やっと着いた……」


P「かなりかっ飛ばしてきたからな、時間は……9時40分か」




ガチャ


P「お疲れ様です、ただいま戻りましたー」


頼子「……お疲れ様です、Pさん。予定より、早かったですね」


P「ああ、なるべく早く帰れるようにかっ飛ばしてきたからな」


頼子「危険な運転は……やめてくださいね?」


P「ははは、気を付けるよ。ちひろさんは?」


頼子「ちひろさんは……私達のために、空気を読むと言って……帰りました」


頼子「そうだ、プロデューサーさん……晶葉ちゃんを、呼んできてください」


P「晶葉?屋上か?」


頼子「いえ……研究室で、ロボの様子を見ているはずです……」


P「そうか、ありがとな。それじゃ、行ってきますかね」


――研究室


ガチャッ


P「ただいまー。晶葉、帰ってきたぞー」




晶葉「……んぅ……P、まだ……?」スヤスヤ


P(……また机に突っ伏して寝てるのか)


ペラッ


P「何か落ちた……ん、メモか?」ピラッ


P「ふむ……」


P「なるほどな。よいしょっ」ヒョイッ




P「全く、寝る時は仮眠室に行けって言ってるのにな……」


晶葉「んっ……あれ……?」パチッ


P「ん?起きたか?」


晶葉「あれ、P……はっ!?な、何故君がここに……!?」カァァァ


P「屋上に来いって言っといて、帰ってきたら寝てるもんだからな」


晶葉「おっ、降ろせ!やめろ、恥ずかしいじゃないか!」ジタバタ


P「ほーら、あんまり暴れるなって。コーヒーでも飲むか?」


晶葉「だからっ!降ろせって言ってるじゃないか……!!」アタフタ


P「一名様ごあんないー」


頼子「……ふふっ。おはよう、晶葉ちゃん」


晶葉「こ、このっ……!!」




P「あーはいはい。悪かった悪かった」


晶葉「馬鹿者っ!!私が寝ているからって、お、お姫様抱っこで運ぶやつがどこにいる!!」


P「ここに」


晶葉「君というやつは……!私の気持ちくらい知りたまえ、どんなに待ちくたびれたことか……!!」


P「へぇ、そんなに待っててくれたのか。ありがとう、晶葉」


晶葉「あ……っ!!」カァァァ




頼子「……微笑ましいです。ふふっ」


晶葉「よ、頼子も笑うんじゃない!」


晶葉「ふん……まあいい。君が早く帰って来れたのは嬉しい誤算だ」


P「そうか。屋上って言ってたが……何をするんだ?」


晶葉「なんと。P、君は今日が何の日か知らないのか?」


P「アナスタシアとキャシーの誕生日」


晶葉「……プロデューサーの鑑だな」


P「担当が違うから、軽く挨拶したくらいだけどな」


晶葉「確かにそうだが……そうじゃない」


頼子「あの、Pさん……帰られる途中で、月は見ましたか?」


P「月?見たぞ、今日は満月だったな――ああ、そういうことか」


頼子「ええ……今宵は、仲秋の名月……ですから」


晶葉「そういうことだ。Pよ、先に屋上に向かっていてくれ」


P「了解。ある程度こっちでも準備しとくよ」


晶葉「ああ、頼んだぞ」


頼子「それでは……私達も、準備しましょう」


――屋上


P「レジャーシートと、防寒対策くらいかな」


バサッ


P「これでよし、と。あとは……これだな」


P「コップとお茶も用意したし……」


P「んー、二人とも成人ならお神酒と称して持ってきたんだがなぁ……」



ゴロンッ



P「まあいいか。一人お先に、月でも堪能するかな」




P「飲みたくなるが……我慢だな」


P「誰か大人がいれば飲んでただろうが……たまにはこういうのも、乙だろう」


――事務所研究室


晶葉「うむ。量もばっちりだ、これならいけるだろう」


晶葉「といっても、こっちは飾るための団子だがな……まあいい」


晶葉「ウサちゃんロボ!これを屋上まで運びたまえ!」バッ


ヒョイッ


ガシャンガシャン……





晶葉「おっと、大事なものを忘れていた……うむ、私にしては上出来だ」


ヒョイッ


パクッ


晶葉「……うむ。おいしい」


晶葉「少し、不格好だがな」


晶葉「おや、頼子。それは薄か」


頼子「ええ……懐かしいな、昔はお母さんと一緒に、取りに行ってたの……」


晶葉「そうなのか……」


頼子「晶葉ちゃん……?」


晶葉「……いや、なんでもない。それより急ごう、Pが待っているからな」


頼子「ええ……」




ガシャンガシャン……


頼子(ウサちゃんロボ……晶葉ちゃんのお手伝いをして、偉いなぁ)


ヒョイッ


パクッ


頼子「!?」


晶葉「どうした、頼子?」


頼子「……ウサちゃんロボが、つまみ食いを……?」


晶葉「なんだ、そんなことか。どうだった、ウサちゃんロボ」


ビシッ


晶葉「うむ。ウサちゃんロボお墨付きの味だそうだ」


頼子「……どういうこと、ですか……?」


晶葉「味見機能を搭載したんだが……そんなにおかしかったか?」


――屋上


晶葉「待たせたな、P」


頼子「お団子と薄……持ってきました」


ガシャンガシャン……


P「ウサちゃんロボは偉いな。そいつは泳がないのか?」


晶葉「彼は料理担当ウサちゃんロボだからな。泳げないが、ひと通りの料理なら作れるぞ」


P「ははは……ウサちゃんロボは、どれくらいいるんだ?」


晶葉「正確な数は私でも把握していないからな……ざっと数百はいるんじゃないか?」


頼子「……やっぱり晶葉ちゃん、凄いなぁ……」


P「凄いけど、把握していないのは製作者としてどうなんだ」


晶葉「ぱっと閃いたらその場で機能を追加して作っていたからな。思いつきの産物だ、仕方がない」


P「二人とも、コップは持ったか?」


晶葉「……ああ。大丈夫だ」


P「それじゃ……って、一体何に乾杯するんだ?そもそも乾杯でいいのか?」


頼子「ふふっ……乾杯、でもいいかもしれませんね……」


頼子「それでは……美しい月に、乾杯」




晶葉「偶にはこういうのも、いいものだな」


P「ああ。大勢でやると、何故だか騒がしくなるからな」


頼子「ふふっ……みんなで楽しむのもいいですが、こうして静かに楽しむのも……素敵です」


P「そうだな。普段はもっと人がいるから、賑やかになるのも仕方ない」


晶葉「ああ、確かにな」


P「『あの月に向かって、ダッシュです!!』とか、『シャドームーン、俺はお前を許さん!!』とか……」


頼子「……誰だか、とても鮮明にわかりますね……ふふっ」


晶葉「そうだな、私にも分かるぞ。そういうのも好きだが……三人だけというのも、私は好きだぞ」


晶葉「こうしてお月見をするのは……初めてだな」


P「ん?去年もやっただろう」


晶葉「いや、確かにそうだが……あの時は、私達は仕事で忙しかったからな」


頼子「そうですね……でも、あのお仕事があったからこそ……こうして、晶葉ちゃんと仲良くなれました」


晶葉「ああ、今では頼子は……私の親友だ。欠かせない大切な友人だよ」


晶葉「去年も去年で、楽しい月見だったが……こうして、のんびりと月を見るのも、悪くないな」


P「そうだな」


晶葉「……なあ、P、頼子。聞いてくれるか」


P「ああ、いいぞ」


頼子「……うん」


晶葉「……Pは知っているだろうが……私の家は、根っからの研究者の血筋でな」


晶葉「両親も工学者で……毎日、忙しい生活を送っている。今でもだ」


晶葉「だから……去年が、初めてだったんだ。お月見自体が」


晶葉「……今年は、去年とは違う。お月見のLiveも仕事もない」


晶葉「こうして、のんびりと月を見ていられる……なんとも表現しがたいが、ずっとこうしていたいと、私は思うんだ」




頼子「私も……三人で、いつまでも月を見ていたいです……」


頼子「……今宵は、月が綺麗……ですからね」


P「それは、どっちに向かって言ってるんだ?」


頼子「二人とも……です。私だって……ふふっ、偶には欲張りですから」


晶葉「……?」


晶葉「確かに月は綺麗だが……どういうことだ?」


頼子「夏目漱石の、逸話です……。"I love you"の、意訳ですよ」


P「本当に言ったかどうかは定かではないが……まあ、そんな話があるって程度に思ってくれ」


晶葉「回りくどいな……単に『私は君を愛している』などでよかったではないか」


P「日本人らしい表現ってことさ。はっきり言わなくても、それだけで伝わるからな」


晶葉「難しいな……いくら聞いても、月の美しさを表現しているようにしか思えん」


頼子「晶葉ちゃんも……いつか、わかるよ」


晶葉「そうか……?言いたいことは、素直に言えばいいと私は思うぞ」


P「お前がそれを言うか、晶葉」


晶葉「な、なんだと!?」


P「はいはい、あーよしよし」ナデナデ


晶葉「だから……!私は子供じゃないぞっ!」


P「14歳は子供だっての」


頼子「……」ジーッ


P「ん、どうした頼子」


頼子「……Pさん、私も子供……ですか?」


P「ああ、17歳は子供だな」


頼子「……」ジーッ


P「よしよし」ナデナデ


頼子「ふふっ……ありがとうございます……えへへ」




晶葉「むっ……」


P「んー、どうした晶葉」


晶葉「な、なんでもないぞっ!」プイッ


P「そうか。なんでもないなら、いいんだけどな」


晶葉「むぅ……」ショボン




P「よしよし」ナデナデ


晶葉「あっ……なんだ、その。……ありがとう、P」


晶葉「――っ」カァァァ


P「素直でよろしい」


晶葉「なあ……先程、頼子はその、つ、月が綺麗だ……と言ったが」


頼子「……?」


晶葉「そ、それはどういう……」


頼子「……Pさんは、とても大切な人……」


晶葉「……っ」


頼子「まるで私の、お兄さんみたいな……ふふっ」


晶葉「……え?」


P「まあ、兄でいいんなら、それでいいんじゃないか。俺は嬉しいぞ」


晶葉「よ、頼子、それはつまり、どういう……」


頼子「だって……Pさんは、晶葉ちゃんの助手……ですから」


頼子「だから、私は……こうやって、時々外の世界に連れ出してもらえるだけで……十分だよ」


晶葉「むぅ……頼子も冗談を言うようになったのか……」


頼子「……ふふっ」ナデナデ


晶葉「な、撫でるんじゃないっ」アタフタ


晶葉「……こうして、三人で月を見られるのもいいものだな」


P「ああ、本当だな」


頼子「ええ……これも、晶葉ちゃんと、Pさんと一緒にいるから……」


P「誰かと一緒にいるってだけで、物の見方も何も、変わってしまうからな」


晶葉「……誰かと一緒、か……」




晶葉「二人とも、これを見てくれないか」


頼子「あら……月見団子?でも、そこにも飾っていますけど……」


P(……ああ、そういうことか)


P「美味そうだな。もらっていいか?」


晶葉「ま、待てP!あっ……」


ヒョイッ


パクッ


P「うん。美味いよ」


晶葉「……!!」


P「これ、晶葉の手作りだろ?」


晶葉「そうだが……どうして?」


P「ウサちゃんロボの団子はほぼ完全な球体だからな。というか、あれどうやってんだ」


晶葉「特殊技術だ。なかなか頑張ったぞ。三日はかかった」


頼子「……お団子自身の重さで、変形してしまうはずでは?」


晶葉「特殊技術だからな。食感はそのままに数日は形を保てるぞ」


P「それでだが……まあ、そこにいい例があるからな。見た目に手作りってのはわかるよ」


晶葉「……まあ、上手く丸められなかったのは認めよう」


P「それに、晶葉が寝てた時に、レシピのメモがあったのを見たからな」


晶葉「なっ!?」


頼子「……つまり、最初から知っていたのですね……?」


P「そういうこと。すまなかったな、見るつもりはなかったんだが……」


晶葉「うぅ……まあいい、いいんだ」


P「晶葉が料理するのは、珍しいなって思ったんだが」


晶葉「……作ってみたかったんだ。ロボと同じだよ、誰かが喜んでくれたり、誰かの役に立てばと思っただけだ」


頼子「……そのために、事務所の皆さんの元に、レシピを聞きに行っていたんですね」


晶葉「よ、頼子!?見てたのか」


頼子「ふふっ……偶然、ですけどね」


晶葉「……誰かの為に作るのも悪くない、ということだな。ロボも、団子も」


晶葉「皆に聞きに行って……分かったよ」


P「そうか。頑張ったな」


晶葉「ロボと違うのは……Pが最後に締めるためのネジがないことだな」


P「流石にネジ入りは食いたくないぞ」


頼子「そういうことでは……ない、と思いますが」


P「ははは。まあ、料理もそんなに出来ないからな。手伝えることが少ないから、仕方ないさ」


頼子「でも……最後のネジがないから、いいんじゃないかな、って……」


晶葉「む?どういうことだ?」


頼子「……晶葉ちゃんが一人で作ったから、その分……思いがこもっているんじゃないかな、って……」


晶葉「なっ……」カァァァ


頼子「非科学的……かな?」


P「いや、いいんじゃないか。この世界は0と1だけじゃないからな」


晶葉「そ、そうだ!さあ、頼子も食べてくれ!」サッ


頼子「……私、少食ですから。ふふっ」


P「おっ、それじゃあ全部もらおうかな」


晶葉「ま、待て!た、確かにPのためだったが……うっ……」カァァァ


頼子「ふふ……冗談、でしたけど……本当に食べていいのかな……?」


P「そうしてやってくれ。その方が、晶葉も気が楽だろう」


晶葉「いざとなると、こんなに恥かしいとはな……」モジモジ


頼子「ふふふ、晶葉ちゃん、かわいいなぁ……」ナデナデ


P「そりゃあ、晶葉だからな」ナデナデ


晶葉「な、撫でるんじゃないっ……うぅ……」カァァァ


パクッ


頼子「うん……美味しいね、晶葉ちゃん……」


晶葉「そ、そうか……?」


頼子「これも、みんなで食べるから……かな?」


晶葉「……ああ、そうだな。Pと、頼子がいるからだな……」


晶葉「実感したよ。やはり……一人では美味しいものも美味しいと感じられなくなるのだな」




晶葉「それに……ロボの大量生産よりも、自分で作ったほうが……美味しい、かもしれないしな」




P「……そうか」


晶葉「しかし!手作りのほうが美味しいと思えるのは……工学者として負けた気分だ!」


晶葉「手作りよりも美味しく作れるよう、料理担当のロボは明日からアップデートだ!!」


頼子「……ふふっ」


P「頑張れよー。ネジ締めくらいなら手伝うぞ」


晶葉「ああ、ロボもPも、覚悟したまえ!」



ビシッ


頼子「あら……ウサちゃんロボも、本気なんですね」


P「流石に、肌寒くなってきたな……」


晶葉「……ん、そろそろ、12時か……ふぁぁ……」


P「どうした?眠たいか、晶葉?」


晶葉「いや、眠くは……うむ、さすがに、眠たいな……」


頼子「……私達も、Pさんも、明日は早いですから……お開きにしましょう」


P「そうだな。晶葉は事務所でゆっくりしてていいぞ、後は俺と頼子で片付けておくから」


晶葉「それは……さすが、に……んぅ……」ポワー


P「あー、段々まどろんでるな。頼子、先に片付けててくれ。晶葉を寝せてから、俺も手伝う」


頼子「分かりました……ふふっ、お休みなさい、晶葉ちゃん……」


P「よいしょっ」ヒョイッ


頼子「……お姫様抱っこ、ですか」


P「頼子もしてほしいか?」


頼子「今日は……晶葉ちゃんに、譲ります。いつか、その時には……お願いします」


P「分かったよ」


――事務所



P「ひとまずソファでいいか……」


晶葉「ん……Pか……?」


P「あー、起こしちゃったか?寝てていいぞ、晶葉」


晶葉「……ここからでも、月、見えるんだな……」


P「……本当だな。丁度、ビルの隙間から見える」


晶葉「ふふふ、なあ、P……」




晶葉「月が……きれい、だな……」




P「……ああ」


P「はっはっは、嬉しいもんだね。プロデューサーとして」


P「……もう少しだけ、待っててくれ。片付けてくるからな」


晶葉「ん……すぅ……」


――屋上


P「頼子、遅くなった……あれ?」


頼子「あら、Pさん……」


P「片付け終わってる……どうしたんだ」


頼子「……Pさんが晶葉ちゃんを連れて行った後……ウサちゃんロボが、自分でやる、って……」


P「そうだったのか」




ガシャンガシャン……


P「お、帰ってきた」


ビシッ


頼子「これは……?」


ガシャンガシャンガシャン……


P「……敬礼して、帰って行った」


頼子「ふふっ、素敵な紳士ですね……誰に、似たんでしょう」


P「さあな。ネジを締める程度で親と呼べるかは微妙だ」


頼子「……Pさん、もう少しだけ……月を見ていても、いいですか?」


P「ん?いいぞ」


頼子「ありがとうございます……今日は、なんて素敵な日……」





頼子「だって……月がとっても、青いから……ふふっ……」





P「……ありがとな。プロデューサーとして、光栄に思うよ」


頼子「それでは……Pさん、もう少しだけ、こちらへ……」


頼子「これからも、一緒ですよ……もちろん、晶葉ちゃんと……三人で」


P「ああ、そうだな」


頼子「ふふっ……こんなに嬉しいことはありません……もちろん、アイドルとして、ですよ……?」


P「俺だって、プロデューサーとしてな」


頼子「ええ……そろそろ、帰りましょうか。晶葉ちゃんも、待っていますし……」


P「ああ。送っていくから、少し待っていてくれ」


P「起きてた大人組に連絡入れたからな。それじゃ、晶葉を頼むぞ」


頼子「ええ……分かりました」


P「想像は付いていたが……女子寮でも月見をしていたらしい」


P「……まあ、なんとなくは分かるよな?」


頼子「そう、ですね……でも、その方が、らしいと思いますよ……?」


P「ああ。レッスンや仕事にさえ響かなければだが」


頼子「ふふっ……想像も、難しくないですね……」





P「……ん、頼子か。ちゃんと部屋まで送ってきたのか?」


頼子「はい……大丈夫です。皆さんにも、手伝ってもらいました」


P「そうか、ありがとな。……で、見てきたのか?」


頼子「……明日のレッスンは、厳しくなりそうですね……ふふっ」


P「ははは、それも仕方ないだろうさ」


頼子「ええ……明日が、楽しみです」


P「俺もだ。……それじゃ、お疲れ様」


頼子「……ええ、おやすみなさい、Pさん……」


P「おやすみ、頼子」


――翌日、事務所


ちひろ「おはようございます、プロデューサーさん……眠そうですね?」


P「いえ、昨日はなんとなく眠れなかったもので……二人を送った後に、月見酒を少々」


ちひろ「大丈夫ですか?無理そうなら仮眠室ですよ」


P「ははは、身から出た錆ですから。お気遣いありがとうございます」



ガチャッ



頼子「おはようございます、Pさん、ちひろさん……」


ちひろ「おはようございます、頼子ちゃん」


P「おはよう、頼子……ふぁぁ……」ノビー


頼子「あら、Pさん……」


P「ああ、大丈夫だぞ、頼子。夜更かししただけだ」


ちひろ「プロデューサーさんったら、頼子ちゃんと晶葉ちゃんを送った後、月見酒をしていたそうですよ」


P「なんとなく月を見ていたら……二人のことが浮かんだだけさ」


頼子「……ふふっ」




頼子「――名月や 池をめぐりて 夜もすがら」




頼子「……ですね」


P「ん?どういう意味だ……?」


頼子「池はなくとも、晶葉ちゃんが……ふふっ、まるで、楓さんみたい……」


頼子「それじゃあ……晶葉ちゃんに映る月は……私で、いいのかな……?」


P「おいおい……流石に俳句までは詳しくないぞ?」


頼子「ええ……そうですよね、忘れてください」



ガチャッ



晶葉「おはよう……ん、どうしたんだ?」


頼子「おはよう、晶葉ちゃん……ふふっ、なんでもないよ……?」


P「おはよう、晶葉。なんでもないから忘れてくれ……ああ、それより」


P「今日の夜は空けておくように。仕事もレッスンも、ちゃんと調整済みだからな」


晶葉「……?まあいい、わかった」


prrrr! prrrr!


晶葉「む……私の携帯か……っ!」


P「ん、どうしたー?」


晶葉「いや、なんでもない……ちょっと、失礼する」



バタンッ



P「はっはっは、時には俺だって、粋なことをしたいものさ」


頼子「……?」


ちひろ「プロデューサーさん、晶葉ちゃんのご両親のスケジュールまで、上手く調整したそうです」


P「どうにも当日には出来なかったが……一日遅れでも、まあいいだろう」


頼子「なるほど……十六夜もさぞ、素敵でしょう……今宵もちゃんと、晴れるそうですから……」


頼子「流石は……Pさんですね。かっこいい、助手さんです」


P「ははは。出来ると思ったから、やっただけさ」




ガチャッ



晶葉「……ふふんっ」ニコッ


頼子「どう……だったの?」


晶葉「積もる話もあるし、見せたいロボも、会わせたい助手もいるからな……」


晶葉「たまには家族で、というのも……悪くない」




晶葉「何よりこれも……また、初めてのお月見だからな……!」





晶葉「P、君ってやつは……本当に、本当に……流石だな」


P「一日遅れでも、趣があっていいんじゃないか?団子はちゃんと手作りするんだぞ」




晶葉「ああ、もちろんだ……ありがとう、P。やはり君は最高の――」


P「なんたって、俺は晶葉の――」






「――助手だからな」










おわり。



月が綺麗だったので。

それでは、ありがとうございました。

池袋晶葉(14)
http://i.imgur.com/Y9B4epj.jpg
http://i.imgur.com/AOZZaCT.jpg

古澤頼子(17)
http://i.imgur.com/DPsnBcS.jpg
http://i.imgur.com/yFPasmD.jpg

ウサちゃんロボが泳げるかどうかを尋ねると言うことは、前にプール行ったSS書いた人か



ロボ可愛いよ、ロボ

>>37

過去に書いた、

モバP「幸福な天才」
モバP「天才とプール」

の設定を引き継いではいますが……ただのフレーバーとして考えていただければ。

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