上条「ん…? サイレンの音?」(870)

  上条 当麻 / 5:54:44

 目覚まし時計が鳴った。
 上条当麻は時計を叩きながら起き上り、しばらくぼーっと部屋の壁をみつめる。

上条(あー、何か全然寝足りねーな。やっぱ夏場は暑くて駄目だ、エアコン買おうかな……)
    ……うちのエンゲル係数がもう少し下がってくれればな……)

 横目で、大喰らいの居候の寝床を覗き込む。しかし。

上条「…あれ? インデックス? どこだ?」

 居るはずの女の子が居なかった。
 昨晩は確かにそこで寝ていたのを確認したのだが、今は布団以外に寝そべっているものは無い。

上条「おかしいな、この時間ならまだアイツは寝てるはずなんだが……って、あらら?」

 時間を確認しようと目覚まし時計に手を伸ばす。
 時計が示している時間は、6時前だった。目覚まし時計は普段7時にセットしているはずなのだが。

上条「ってかよく見たらまだアラーム鳴ってねーじゃん。
   ……んー?」

 上条は顎に手を当てて、少し考え込んだ。
 その時。

―――ォォォォォォォォ―――

 音が聞こえた。

書き直し?

上条「ん…? サイレンの音?」

 地の底から響いてくるような音だった。
 サイレンのような音。さっきはこれをアラームと勘違いしたのだろうか。

上条「何だ? 能力者が暴れてんのか?
    ってかそれならインデックスが……!」

 上条は慌てて寝床から飛び出して、服を着替え、外に飛び出した。


 雨が降っている。
 インデックスは見当たらない。
 サイレンの音は止まらない。

上条(ったく、アイツ一体どこに……)

 そこまで考えて、上条は僅かな異変に気がついた。

上条(……頭痛?)

>>2
ごめん、自分は初めてなんだけど、まさか被ってた?
だとしたら見逃してくれ……

>>4
いや
どっかでみたことあるような気がしただけ

―――オオオォォォォン―――

 サイレンの音に共鳴するように、頭の奥から痛みが響いてくる。

上条(ク…ソッ…何なんだよ、この音…!)

 上条は頭痛をこらえながら、アパートの階段を駆け降りる。
 街路を見渡しても、やはりインデックスの姿は無い。
 インデックスが、早朝のこの時間に、上条に一言も告げずに外出するなどということは、今までに一度も無かったことだ。

上条(まさか、また魔術師関係の事件に巻き込まれたのか?)

 とりあえず、いったん部屋に戻って知り合いに連絡を取ってみよう、と考えた上条だったが、


 直後、銃声が響いた。

上条「……ッ!」

>>5
そうか、ありがとう
知ってる限りでは見たことなかったから書いてみようと思ったので
まあ多少被ってても仕方ない

 銃声はかなり遠くから聞こえてきたが、恐らくは第七学区内であろうと思われる程度の距離だった。
 続け様に、更なる銃声と爆発音のようなモノまで聞こえてくる。

上条(何だ!? 警備員(アンチスキル)が誰かと戦ってんのか!?)

 上条の背筋が強張る。
 以前、学園都市に魔術師が侵入したことは幾度かある。
 勿論、それらの多くは隠密行動に長け、学園都市との正面衝突を回避していた。
 学園都市の防衛機構は、並大抵の国家軍ならば退けることが出来るとさえ言われているほどだ。
 が。それにも例外はある。

 前方のヴェント。後方のアックア。
 この二人は、学園都市のセキュリティと警備網を、文字通り正面から力ずくでぶち破った。
 そのことを、上条は思い出していた。

 インデックスが消えた。
 街には銃声が響いている。
 この二つが無関係だと言い切る事が出来ない程度に、上条は非日常に慣れていた。

上条(くそ、どうする…!
    インデックスが家を出たのがいつなのか分からない以上、あまり遠くを探してもマズイ場合もある。
    まずは学区の中をを探すか…!?)

>>15
1、学区外へ出て探す
2、まずは第七学区の中を探す
3、その他

2


        終了条件2:『フード』の発見

上条(アイツは走るのもそこまで速くねーし、交通機関の使い方も分かってない。
    まだそこまで遠くには行って無い筈だ……!)

 上条は走り始めた。
 同時に、ズボンのポケットから年季の入った携帯電話を取り出して、アドレス帳を開く。

上条(まずは誰かに連絡を……とりあえず、土御門にしとくか)

 元魔術師にして、現無能力者(レベル0)の隣人。
 土御門元春に電話をかける。

 無機質なコール音が、絶えず響いてくる銃声にかき消される。
 いつの間にか、サイレンの音と謎の頭痛は止んでいた。

 十数回目のコール音。

 『こちら、○○お留守番電話センターです……』

上条「クソッ! まさかアイツもどっかで巻き込まれてんのか!?」

 いったん通話を切って、再びアドレス帳をめくる。

上条(誰か、力になってくれそうなヤツは……)


 瞬間。
 上条の右手に持っていた携帯が、見えない『何か』に押し潰されるように、粉々に砕け散った。

上条「ッ!!」

 バギン、と『何か』が砕ける音。
 『何か』は、携帯を潰し、上条の体も潰そうとしたところで、上条の右手によって砕かれた。
 異能の力を問答無用で打ち砕く、幻想殺し(イマジンブレイカー)によって。

上条「念動力(サイコキネシス)か……!?」
上条(っつーか俺の携帯……もう新しく買い替える金が……不幸だー……)

 上条は前方を見る。
 携帯電話を眼前に掲げていたため、周囲への注意が疎かになっていた。
 そのおかげで、壊されるのは携帯だけで済んだのだが。


 上条の前には、制服姿の少年が立っていた。
 年の程は15,6だろうか。上条と同年代か、更に下。
 顔に見覚えは無い。
 というよりも、見覚えがあっても、分からないはずだ。

 少年の顔から、赤い液体が噴き出していた。

 目から、鼻から、口の端から、挙句には耳からも。
 赤い、赤い、血が噴き出しているようだった。

上条「……っ」

 上条は思わず息を呑む。
 あまりの異常さと恐怖に、体が動かなかった。
 声を掛けようにも、舌が引き攣って声も出せない。

 少年は、ゆっくり、近付いてくる。
 のそり、のそりと。
 ゾンビ映画のゾンビ達のように、脚を引きずることはない。
 日常生活を送る人間のように、ごく普通に、上条に向かって歩いてくる。

上条(……?)

 しかし、上条は、少年の右手に握られているものに気がついた。

 見覚えのある、白い『フード』。

どっちが面白いやら…

上条「……サイレン?」
上条「……サイレン?」 - SSまとめ速報
(http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1267072151/l50)

 白いフードは、少年の腕から零れる血で、赤く染まっていた。

 ぎちり、と拳を握る音。
 上条の体は、もう動く。

 元より、怖がることなど何もない。
 異常は飽きるほどに見てきた。恐怖は慣れるほど感じてきた。
 その全てを、右手一本でぶち壊してきた。

上条「おい、お前、そのフードをどこで手に入れた?」

 上条の質問を聞いて、少年は笑った。
 口の端から血が零れ落ちるのも気に掛けず、口が裂けるくらい、にっこりと。

 少年は、静かに右手を上条に向けた。

>>24
そっちってジャンプの超能力漫画じゃん
個人的にはPSYRENも大好きだけど、こっちはSIRENの方ね!

 念動力(サイコキネシス)。

上条「ッッ!」

 バギン!
 飛来した念動力を、突き出した右手で迎え撃つ。

上条「やっぱ誰かに操られてるみてーだな……!」

 念動力の塊を打ち消したと同時、上条は少年目がけて走り出す。
 少年は尚も同じ体勢で念動力を撃ち出しているが、全て幻想殺し(イマジンブレイカー)によってかき消されていった。

 元々10メートルも無かった二人の距離は、あっという間に縮まった。

上条(とりあえず操ってる魔術を打ち消してから、話聞かせてもらおうか!)

 少年の右腕を払いのけ、上条の掌底が、少年の頭を打ち抜いた。


 しかし。

少年「あ゛、あ゛、あ゛ー?」

上条「!?」

 少年の両腕が、今度は上条の喉を捉えた。
 少年は、何も変わっていない。顔から血を垂れ流し、虚ろな表情を浮かべている。

上条「が、ふっ…!」

 少年の両手に力が入る。人間とは思えないほどの力だった。
 ミシミシと音を立てているのは、上条の喉笛だけではない。
 少年の両腕が、過剰な力に耐えかねるように、軋んでいる。

上条(やべ、今の状態で念動力(サイコキネシス)を使われたら……!!)

上条「が、ああああっっ!!」

 上条は目一杯の力を込めて、少年の体を蹴りつけた。
 蹴る場所は、心臓。

少年「がう゛っ!?」

 少年の口から、呻きと共に血が漏れる。
 腕から力が抜ける瞬間を見計らって、上条は少年を突き飛ばし、距離を取った。

上条「が、はっ、げほっ、ごほっ」

 心臓部に外部から強い圧迫を加えると、心原性の失神を誘発する。
 これは頭部に打撃を加える場合よりも、遥かに確率が高いことを、上条は知っていた。

 少年は、言葉も無く崩れ落ちた。どうやら、上手くいったらしい。

上条「とっさにやっちまったけど……死んだりしてないよな……?」

ちょっと外出てくる
ごめん……

できれば予めまとめてもらって、安価とかは極力少なくしてくれると嬉しいな
変なのが出てきたりして再安価云々でgdgdになったりするし

うお、よかったまだあった!
今から書きますちょっと待ってて

屍人相手にセロリが無双する展開に期待

 倒れた少年は、体を丸めてうずくまっている。ピクリとも動かない。

 右手を払いのけた時、一緒に地面に落ちた、白いフード。
 上条は改めてそのフードを見た。

上条(…やっぱり、インデックスの『歩く教会』……!)

 禁書目録の頭脳を保護する為にあてがわれた、大聖堂級の結界能力を持つと言われる個人用防御礼装、『歩く教会』。
 しかし、上条の幻想殺し(イマジンブレイカー)によって破壊され、今は何の防御能力も持たない布切れだ。

上条(インデックスは、まだ近くにいるのか……?)

 上条は、うずくまった少年をジロリと睨む。
 当然のことだが、何の反応も無い。

 しかし、上条はある事に気がついた。

上条(この制服……長点上機の制服か?)

 長点上機学園。
 学園都市内でもトップクラスのエリート開発校だ。
 学園都市内の高レベル能力者のほとんどが所属、またはかつて所属していたとも言われる。

上条(でも、それにしては、能力の使い方がお粗末だったな……
   いや、それは操られてるから……というか、魔術で操られてるってんなら、俺の右手で……ん?)

 様々な疑問が頭の中で渦を巻く。
 居なくなったインデックス。サイレンのような音。戦闘音。顔から血を流す少年。右手を使っても戻らない意識。

 そもそもこの状況、今何が起こっているのか、上条に判明していることはほとんどない。
 確かな事は、インデックスが居ない事。学園都市に異変が起きている事。


上条「……黙って突っ立ってるだけじゃ、何も変わらねぇ」

 上条は再び走り始める。
 ひとまずは、第七学区内を見て回り、インデックスを探す。
 もし見つからなかった場合は、第十八学区を探す。

 長点上機学園の生徒ならば、十八学区が主な活動エリアのはずだ。
 長点上機には寮もある。少年は十八学区で何者かの攻撃を受け、その後で第七学区に来た可能性もある。

 手掛かりになるようなものは一つもない。
 だから、走れるだけ走らなければならない。

 上条は走った。


        終了条件2達成(ミッションコンプリート)


        アーカイブ:『歩く教会の一部』

>>50
ごめん、安価は入れるつもりです
終了条件と物語のループを絡めた感じで展開しようと思ってるので、
安価があるとより分かりやすいと思って
gdgdになりそうな安価は避けたいと思うので、すいません

(・∀・)イイヨイイヨー

てかここで疑問
シリーズ中どの話なの?

>69からだと1っぽいけど

  御坂 美琴 / 7:00:11

美琴「んー……黒子のヤツ、朝っぱらからどこ行ったのかしら」

 制服のブレザーを羽織りながら、御坂美琴は溜息をついた。

 朝起きると、ルームメイトである白井黒子の姿が無い。
 元々、風紀委員(ジャッジメント)の仕事で忙しい身ではあったが、流石に早朝から出かけるということはまず無かった。

美琴「……ま、アイツにもプライベートとか、色々あるわよね。
   単に風紀委員(ジャッジメント)の緊急呼び出しなのかも知れないし」

 更に、御坂を心底慕っている白井が、何も言わずに早朝の部屋から抜け出すということも、前例が無かった。
 その疑問を無理矢理納得して、御坂は身支度を整えていく。

 いつも通り、登校する為に。

>>71
一応1ベースの話です
霊関連はとりあえず出てきません
NTの設定なんかも入れれたら入れたいかも


 寮を出る。
 妙に静かな外の空気。
 いや、妙に静か、どころの話ではない。

美琴「……?」

 誰もいない。辺りに人の気配が無い。
 部屋を出てから今まで、寮の中でも、街路に出てからも、誰にも会っていないのだ。

美琴(……今日って、もしかして日曜日!?)

 慌てて携帯電話で日付を確認するが、そういうわけでもなかった。
 金曜日。祝日でもない、平日だった。

美琴(何よこれ……何で誰もいないの……?)


 そして。

 銃声。

 更に、悲鳴。
 空気を裂くような、女性の悲鳴。

美琴「ッ!!!」

 御坂の脚は、無意識の内に、銃声と悲鳴が聞こえた方向に駆けだしていた。
 やがて、御坂の意思で、脚は更に速さを増す。

美琴(事件!? 能力者が暴れてるのかしら!)

 普段は事件と聞けば好奇心と興味本位で首を突っ込む性格の御坂だったが、
 今回は流石に訳が違った。

 女性の悲鳴。それも、恐怖に怯えた必死の絶叫。
 それを見過ごせない程度には、超能力者(レベル5)第三位、『超電磁砲(レールガン)』はお人好しだっただけの話。

保守


 走る。
 音はかなり近かった。学区内であるのは間違いないし、精々数百メートルの距離だろう。
 更に走る。
 学園都市内で僅か7人しかいない、超能力者(レベル5)。
 最新鋭の陸軍一個大隊とも肩を並べる、一人の人間。
 走る。
 ふと路面をみると、うっすら濡れている。雨が降っているのだろうか。
 科学技術による気候管理すら可能な学園都市で、雨は珍しい。
 空はうっすらと雲がかかっていた。


 御坂の予想通り、現場はすぐ近くだった。

美琴「警備員(アンチスキル)……誰かと、戦ってる……?」

 教職員達による学園都市の自衛組織、警備員(アンチスキル)の面々が、『何か』と銃撃戦を行っている。
 大仰な重火器もちらほら見えており、相当厄介な相手らしい。

 御坂は辺りを見回した。
 先ほどの悲鳴の主を探そうとしたのだが、一般人らしき人影は見当たらない。
 警備員(アンチスキル)の悲鳴だったのだろうか。


 ジャリ。

 唐突に。
 御坂の背後で、靴を踏み締める音がした。

 御坂は、振り向かない。

美琴(……接近に気付かなかった?
    いや、違う。今、コイツは、『何もない場所から突然現れた』……!)

 御坂は、体から無意識的に発せられるAIM拡散力場(電磁波のような形態をしている)により、
 レーダー探知のような能力を発揮出来る。
 その御坂が、不意の接近に気付かないはずはない。

 そして、学園都市には、三次元上の移動制約を無視して、空間を跳躍出来る能力者も存在する。
 空間移動能力者(テレポーター)と呼ばれる能力者だが、希少価値も高く、学園全体でも58人しか存在しない。

美琴「動かないで。変な真似したら、シビレるくらいじゃ済まないわよ」

 銃撃戦を覗く御坂の背後に空間移動(テレポート)してくる不審者。
 当然、警戒しないはずもない。

美琴「まず、名前を名乗りなさい。あなたは誰?」

 御坂は振り向かないまま、背後の人間に問う。

 背後の人間は、動かない。
 しかし、返答はあった。


 ――――おねえさま。


 小声だったが、よく知った声だった。
 その呼び方も、その声も、御坂には馴染みのあるものだ。
 御坂の体から緊張が解ける。

御坂「なーんだ、黒子。やっぱりアンタ風紀委員(ジャッジメント)の仕事で―――」

 御坂は振り向いて、



白井「お゛ね え さ ま゛ぁー」


 ――――絶句、した。

 血。赤い液体。赤い水が。
 目から。鼻から。口から。
 血が。血が、噴き出して。

 白井黒子の。馴染みの後輩の。
 引き攣った笑顔を。満面の笑みを。赤く染めていた。

御坂「―――ヒ、ッ」

 心臓が止まるかと思うほど、実際に一瞬止まるほど、その光景は、残酷だった。
 控えめに見ても十分可愛らしいと言える白井黒子の顔は、完全に人間以外のソレに変わっていた。
 傷は付いていない。相変わらずの白い肌と、大きな瞳。
 けれどそれ以上に、その壊れた笑みと、顔を流れる赤い液体が、御坂に恐怖と吐き気を催した。


 軍隊とも互角以上に戦える超能力者。
 音速を超える弾丸を作り出す発電能力者(エレクトロマスター)。

 しかし、御坂美琴は、中学生だった。
 14歳の、子供だった。

 仲の良い後輩の、変わり果てた顔を見て、何も思わない訳が、ない。

御坂「――ぁ――ぅ――っ」

 口をぱくぱく動かしても、呼吸が出来ない。息が吸えない。
 頭の中は真っ白で、何も考えられない。
 動き出した心臓も、いつまた止まるか分からなかった。

 白井は、ゆっくりと御坂に近付いていく。
 いつも通りの、足取りで。


白井「 お ね え゛ さ まぁー ?」

 白井の手には、細い、鉄の矢が―――

美琴「―――ッ!!」

 瞬間、御坂が動いたのは、恐怖からだったのか、もしくはAIM拡散力場の揺らぎを感じ取ったのか。
 思いっきり地面を蹴って、体を横にずらす。

 そのずらした体の右肩を、鉄の矢が抉り抜いた。

美琴「アアアアアァァ―――ッ!!」

 激痛に頭が揺れる。
 しかし、横に跳ぶ前に肩があった場所には、首があった。
 テレポートで『跳躍』した物体は、その場にあったモノを押しのけて移動する。
 動いていなければ、確実に御坂の首に穴が空いていただろう。

ごめん、10分少々飯食べてくる

 無様に地面に転がる御坂。
 鉄矢は細いとは言え、完全に貫通している。右肩はとても動かせそうにない。

美琴「く……ろ、こ……」

白井「うふ」

 御坂の呼びかけに、僅かに反応する白井。

白井「うふふふ」

 しかし。

白井「うふふへふへふうふううふううううううああああアアアアア――――」

 白井は、完全に人でなくなっていた。

 御坂には、何が起きているのか、全く分からない。
 これが何者かの『能力』によるものなのか、と考えたが、こんな能力は見たことも聞いたことも無い。
 まして、魔術(オカルト)の世界を知らない御坂に、この事態を理解しろと言うのは無理だろう。

御坂「ぅ、ぅ、ぅっ、うっ」

 御坂の両目に、涙が溜まる。
 突然異常な世界に放り込まれた恐怖と絶望が、御坂の心を深く傷つけていた。

 白井の手に、再び鉄矢が握られる。
 今度は、三本。

白井「い゛ぃっしょに゛ぃー、な゛ぁりましょお゛ー」

 防御は不可能。
 空間上の制約を無視して、直接御坂の体に打ちこまれる攻撃には、磁力の盾も効果を成さない。

御坂「……っんじゃ…わょ…」

 御坂は頭を垂れて、白井を見ていない。
 白井は、満面の笑みを浮かべて、御坂を見つめている。


御坂「ふざけんじゃないわよッ!!」

 白井の手から鉄矢が消えるよりも早く、御坂と白井の間に、黒い壁が現れた。


 砂鉄。
 周囲の地面の土壌部分から膨大な量の砂鉄を巻き上げ、壁にした。
 電気を操る御坂の能力は、同時に強大な磁力をも生み出せる。

 だが勿論、それでテレポートが止められる訳もない。
 いくら硬く大きな壁があろうと、それを乗り越えるのが空間移動(テレポート)なのだから。

 白井の手から、三本の矢が消える。
 御坂の居た場所へと、空間を飛び越えて。


 カラン。カランカラン。

 乾いた音。鉄矢が、地面に落ちる音。
 砂鉄の壁が崩れ落ちた時、そこに御坂はいなかった。
 ただ、御坂の持ち物が入った通学バッグと、『御坂が居た場所』にテレポートした三本の鉄矢が残るだけ。

そういや美琴の終了目的は?

 空間移動(テレポート)能力は、十一次元上の座標軸を元に演算し、空間を飛び越える。
 無論、演算さえ出来るならば、能力者本人の目の届かない場所でも正確に移動することが可能である。

 しかし、それは『目標物』が無い場合の話。
 目標物に重ねて移動させようとした場合、しかも目標物が視界の外にあり、更に動くモノだった場合。
 正確に目標物目がけて空間移動させるのは、非常に困難である。

 御坂は、そのことを知っている。
 見えない場所への正確な空間移動(テレポート)がどれだけ困難であることか、知っている。
 だから、砂鉄のカーテンを作り、白井の狙いを外させた。

 後に残された白井は。

白井「お  ね゛ え さ゛まぁ」

 御坂の通学用バッグを引っ掴むと、一心不乱に内容物を漁り始めた。



御坂「……はっ、はっ、はっ」

 御坂は、また走っていた。
 今度は、逃げる為に。
 どうしてこんなことになったのか。白井はどうなってしまったのか。
 何も分からない。分からないけれど、逃げ続けた。

>>112
終了条件はある場合と無い場合があります
ある場合は直前に安価して、条件1と条件2へ分岐しようと思います

  ステイル・マグヌス / 5:32:42


 ステイル・マグヌスは、第三学区内外部来客用ホテルの一室で目を覚ました。

ステイル「……何だ、この感じ」

 ステイルはイギリス清教内でもトップクラスの魔術師である。
 故に『異変』に気がつくのも早かった。

ステイル(生温い……どろどろとしたものに包まれてるような空気だな……)

 手早く普段の装束に着替え、部屋を出る。
 ホテルをチェックアウトしようと、フロントへ行き、自動精算機にカードキーとマネーカードを通す。

 そこまでの道のりに人の気配が全くなかったが、ステイルは別段気にする事も無かった。
 機械化が進んだホテル内に従業員の数はさほど必要ない。
 加えて、学園都市の来客というのも、あまり多くは無い。
 それゆえ、昨夜チェックインした際も、ほとんど他人の顔を見る事は無かった。

 チェックアウトを済まして、外へ出る。
 少し雨が降っているようだったが、気になるほどではない。
 ステイルは、大人しく濡れておくことにした。

ステイル(しかし、何だ? このおかしな雰囲気……)

 違和感。それも、明らかな。
 何かが、この周囲一帯を包みこんでいるような。

ステイル(……とりあえず、神裂にでも連絡を取ってみるか)

 神裂もステイルと同様、今は学園都市に滞在しているはずだ。
 ステイルはコートのポケットから携帯電話を取り出して、神裂に電話をかける。


 …

 …

 出ない。
 コール音だけが空しく響く。

ステイル(まさか寝ている訳じゃあるまいな……)

 神裂も魔術師の1人。それも、世界に20人しかいない『聖人』の1人でもある。
 まさかこの異変に気づいていないとは考え辛いが……

ステイル(しかし、時々大ポカをやらかすからな……)


 ステイルが諦めてコールを切り、携帯を再びコートにしまおうとした時。

 自動小銃の弾丸が、豪雨の様にステイル目掛けて飛来した。

ステイル「……っ!」

 速度1500m/sを超える弾丸は、しかしステイルに当たる直前に全て防がれた。
 ステイルのコートに編まれたルーン魔術による障壁と、両手から噴き出した炎の壁によって、当たる前に全て蒸発したのだ。

ステイル「いきなり銃撃とはご挨拶だね……
      この街の警備員は悪即殺がモットーなのかな?」

 弾丸を撃ち込んだ人物は、いつのまにかステイルの目の前に立っていた警備員(アンチスキル)。
 しかし、その顔からは、赤い液体―――恐らくは血液が、だらだらと流れ出している。

ステイル「キミ、話は出来るかい?」

警備員「うひ、ウヒヒヒ、うひひひーぃ」

ステイル「……そうか」

サイレンらしさと禁書目録らしさがいい具合だww

ステイル(魔術で操られているのか、はたまた何かの『超能力』なのか……
      どちらにしても、困ったことになったな)

 世界は、『魔術(オカルト)』の世界と『科学(テクノロジー)』の世界に分けられていて、
 お互いの領分を維持しよう、拡大しようと、せめぎ合っている。
 勿論、不可侵協定(のようなモノ)は存在するが、裏ではドロドロとした攻防が日夜繰り広げられている。

 そして、ステイルは『魔術』側の人間であり、学園都市は『科学』側の世界である。
 ステイルが下手に学園都市の一般人を殺してしまえば、それはステイルだけを処罰して済む問題ではない。

ステイル(……まぁ、今更そんな体裁を気にしても仕方ないか。
      どっかの芸術バカとか、黄ガッパ女とか、好き放題やってくれやがったし……)

 満面の笑みを湛えた警備員(アンチスキル)が、再び小銃をステイルに向けようとした。

 が、その小銃が、音を立てて爆発する。
 その爆発と銃の破片をまともに喰らった警備員(アンチスキル)は、叫び声をあげてうずくまった。

ステイル「まぁ、命までは取らないよ。しばらく、じっとしててくれ」

>137
映画と
原作ゲームは
全然違う…('A`)

SIREN関係の設定とか、禁書関係の設定は必要最低限は後で説明台詞が入ると思うので、
分からなかったら分からないまま読み進めてくださって良いです
SIRENの世界観は登場人物も知らないので、そっちの方が登場人物に感情移入出来る……のかな……?

ステイル「さて…と…」

 うずくまる警備員(アンチスキル)を尻目に、ステイルは歩き始める。
 明らかに、異常だ。
 この血を流す人間と、おかしな雰囲気。無関係ではないだろう。

 だとすると、この『異常』は、一体どれくらいの範囲に及んでいるのだろうか、とステイルは考えた。

ステイル(確か、学園都市は23区に区分けされていたな……
      ここは第三学区、だったか)

 この学区内だけがおかしくなっているのか、それとも学園都市全体か。
 或いは、もっと広範囲に。

ステイル(ひとまず状況を確認しないと……イギリスにも、後で連絡を入れてみるか)

ステイル「……と思ったら……まったく次から次へと、ゾンビ映画みたいだね」

 誰も居なかった周囲が、喧しくなり始める。
 一般人と思われる学生、親子連れ、小学生くらいの子供も姿を現し始めた。
 いつも通りの日常の風景だった。

 その全てが、顔から赤い血を流していることを除いて。

ステイル「やれやれ、流石にこの数の人間を殺さずに行動不能にするってのは、難しいな。
      元々、殺すのが専門なんだよね……」

 軽口を叩きながら溜息を吐くステイル。

 その視界の端に、ふと、見知った何かが映った気がした。

ステイル「……!?」

最終的には鬱々しいエンドになりそう

期待保守

ステイル「あれは……『歩く教会』……!?」

 斜め前方に100メートルほど。
 15,6歳と思われる、一人の学生が歩いている。
 その学生の右手には、白いフードが握られていた。

ステイル「待……」

???「あ゛ーっ」

???「あ゛あ゛あ゛ー!!」

 ステイルが学生に近付こうとした時、周囲の人間(?)達が一斉に雄叫びをあげ、ステイルの元へ殺到した。

ステイル「クソ! 邪魔だ、どけ!」

???「あ゛あ゛ーっ!!」

 少年は背中を向けて、ずんずんと歩いていく。
 ステイルは必死に近付こうとするが、人間(?)達の抵抗が激しく、全く脚が進まない。
 脚が進まないどころか、異常な腕力で殴られ、締められ、体力がどんどんと奪われていく。

ステイル(クソッ、クソがッ!!
      アレは確かにインデックスの『歩く教会』……!
      どういうことだ、インデックスが巻き込まれてるのか! あのバカは、上条当麻は何をしている!!)

 禁書目録。
 かつて、ステイルが友と呼んでいた、一人の少女。
 彼女の為なら、ステイルは神にでも反逆する。

ステイル(……どうする……!?)


1、ひとまず退いて、ゆっくり見つからないように、少年の後を追う
2、邪魔なものは全て燃やし尽くして、少年の後を追う

しかも屍人から見ると
こっちが屍人に見えるという

ごめん

>>180

1、ひとまず退いて、ゆっくり見つからないように、少年の後を追う
2、邪魔なものは全て燃やし尽くして、少年の後を追う

2

工エエェェ(´゚д゚`)ェェエエ工

なんで1にした!!

        終了条件1:『第七学区』への到達

ステイル(余計な犠牲を出すわけにはいかない……!
      ひとまず退いて、それからあの少年を追うんだ!)

 ステイルは懐からルーンの描かれたカードを出し、一言、呟いた。

ステイル「―――」

 途端、カードから放たれた光が辺りを覆い尽くす。
 ステイルの周囲に群がっていた人間(?)達は、まともにその光を浴びて、目を押さえて呻きながらうずくまった。



ステイル(……何とか、脱出出来たか)

 ステイルは一旦建物の陰に身を隠し、機を伺った。
 しかし、少年が向かった方向は覚えているが、どこへ向かったのかは分からない。
 あまり時間をかけ過ぎると、少年を見失ってしまう。

ステイル(急がないとな……
      ……っ……なん、だ……?)


―――ォォォオォォ―――


 音が、聞こえる。
 動物の唸り声かと思ったが、違う。地響きでもない。

 まるで。サイレンのような。

―――ォォォォオオオォォォォ――――

ステイル「……が…ッ!?」

 頭痛。
 突如、割れるような強烈な頭痛が、ステイルを襲った。

ステイル(ぐ…っ、なん、だ、これは……!?)

 ステイルの脳裏に、奇妙な映像が流れる。
 映像。
 というより。
 誰かの、視界。

 自分以外の、誰かの中から、見ているような。

―――ォォオォオオオオオオォォォォ―――

ステイル「が、アアアア―――ッ!?」

 更に頭痛が激しくなる。
 しかし、頭痛が激しくなるにつれて、頭の中の映像はクリアになっていく。

ステイル(これは……何だ? 誰かの、他の誰かの、視界?)





すいません、ちょっと風呂入ってきます
多分今日中にもうちょっと続き書きます

いてらさい

よく考えると、
・上条シナリオ
・ステイルシナリオ
・神裂シナリオ
・一方通行シナリオ
・御坂シナリオ
があるし、書き溜めても無いから、かなり時間かかるかも。っつーか下手したら完結前に落ちるかも。
それでも良かったら、どうぞ見てください。

まさかのNTのループ的な?

謎が謎を呼ぶねぇww

ちょっとだけ帰還

とりあえずこのSS内の設定で、今後語らなさそうな設定だけ書いてみる
・屍人化しても能力は使える、けど知性的に退行してる(知恵の実の喪失)から、演算能力も低下
 威力とか精度はかなり劣化してる
・ってか空は別に赤くなってなかったよね?空赤いのは2のラストの方だけじゃなかったっけ

屍人化と幻想殺しはその内SSの中で書くはず
まあ要するに屍人化の原因は赤い水なので、屍人に直接触れてもダメ、ってだけ
何か質問とかございましたら、適宜答えます

>>250
やっぱ学園都市は異界に閉じ込められてるの?

>>254
閉じ込められてます
異界化・屍人化の設定は神裂シナリオで語ってくれるはず

とりあえず今からステイル①の残りと、出来れば御坂②もついでに書いときます


 歩いている。
 ゆっくりと、歩いている。
 息遣いも聞こえる。体の揺れも感じる。全て分かる。

 『誰か』の中から、外を覗いているような感覚。

―――ォォォォ―――

ステイル「―――ッ」

 サイレンのような音が止むにつれて、頭痛も引いていく。
 そして幻視の感覚も消えていく。

ステイル(何だったんだ……? いや、今はあの少年を追わなければ!)

 幸い、先ほどの呻きも、変異してしまった人間たちに聞こえてはいなかったようだ。
 ステイルは建物の影から影へ忍び足で移動しながら、先ほど少年が向かっていた方向へ進んでいく。

ステイル(クソ、しかし随分時間を無駄にした……あの少年は今どこにいるのか……)

 思わぬ失態に、目を瞑り顔をしかめるステイル。

ステイル(…っ!?)

 ステイルは、何気なく目を瞑っただけだった。
 だが、その頭の中に、今までの視界とは違う『映像』が流れ込む。

ステイル(これは…っ!)

 それは、先刻と同じ。
 誰かの視界のようだった。

 驚いて目を開けると、『映像』はすぐにステイル自身の視界に切り替わる。

ステイル「参ったな……『超能力』……なのか? これは」

 学園都市は、『超能力』を開発する為の教育機関である。
 しかし勿論、能力開発というものはそう簡単に為せる業でもない。

 脳髄に電極を挿し、あらゆる投薬を繰り返し、脳の構造を人為的に作り変え、
 『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』を画定し、世界の法則を書き換える術を身につける。
 そこまでして初めて、超能力という異能の力を得られるのである。

ステイル(まあ、こんなあからさまに怪しいチカラを疑いなく使うほど馬鹿じゃないさ。
      でも……見えてしまったモノは、仕方無い)

 今、一瞬覗き見た視界の中に、あの少年が映っていた。
 右手に白いフードを持った少年が。

ステイル「ちょっと、都合が良すぎる気もするけどね……まあ、いいさ。
      何かが仕組んだ罠だって言うんなら―――叩き壊して進むまで、だ」

 視界に写された景色はよく見たことのあるモノだった。
 かつて、この学園都市に初めて訪れた時にも見た風景。
 今でも、時折同じ風景を目にしなければならないことも多い。

ステイル「―――第七学区、か」

 そこは、幻想殺しの少年と、禁書目録の少女が住む場所。

 ステイルは、静かに、けれど全力に近い速さで走り出す。
 知りたいことは山ほどある。でもそれは全て後回し。
 何よりもまず、あの少女の安否を確認しなければならない。
 迷っている暇も、戸惑っている暇も、無い。


        終了条件1達成(ミッションコンプリート)

すいません、御坂書けませんでした。超遅筆です。
続きはまた明日で……
一応プロットというか、話の流れは考えているので、そこそこ手早く書けるとは思うんですが…

大体時間軸通りに書こうと思ってますが、時々前後することもあります
分かりにくかったら時間軸順のまとめとかも書いてあるので、言ってくだされば載せます

御坂②だけ書けたので投下
投下したらまたちょっと外行ってきます、すいません


  御坂 美琴 / 8:29:19

美琴「はっ、はっ、はっ、はっ」

 御坂は、まだ走っていた。
 白井から逃げ出して、およそ10分。
 街のあちこちからは、絶えず銃声や悲鳴が飛び交っている。

美琴(何よこれ……一体、どうなっちゃったの……?)

 街の様子は、明らかにおかしい。
 かつて、宗教テロによって学園都市が滅茶苦茶に攻撃されるという事態もあったが、
 それでもここまで非常識なモノではなかった。

 顔馴染みの知り合いが顔から血を流して襲いかかってくる、なんてモノではなかった。

美琴(黒子……)

 あの後輩の顔を思い出す。
 いつでも少し高慢で、生意気で、でも根は優しくて、自分を慕ってくれていた、白井黒子。
 どうしようもなく変わってしまっていた、白井黒子。

 御坂の脚が止まる。
 10分以上、見えない敵を気にしながらの逃走は、14歳の女子の身体には厳しかった。
 まして、右肩の痛みは消えない。血は止まっているようだが……

 ちょうどその時、御坂の前方から二つの人影が走ってくるのが見えた。
 それもまた、馴染みの深い顔だった。

初春「はぁっ、はぁっ、はぁっ、あうっ!」

 二人の内の片方、頭に大きな花飾り(?)をつけた少女が、躓いて地面に倒れる。
 それを、慌ててもう片方の少女が抱きかかえて立ち上がらせた。

佐天「初春!? 大丈夫、立てる!?」

 初春飾利、佐天涙子。

美琴「……!」

 御坂の身体に緊張が走る。
 顔馴染みの二人。
 もしも、あの二人まで白井のように変わってしまっていたら―――

初春「あ、あれ、御坂さんじゃないですか!?」

佐天「ほ、ホントだ! 良かった、御坂さん、無事だったんだ!」

 しかし、二人の顔には変化はない。
 二人の間でしっかりと会話が通じている。
 どうやら、この二人は無事だったようだ、と御坂は胸を撫で下ろした。

美琴「初春さん! 佐天さん! 二人とも無事だったのね!?」

 二人の元へ駆け寄って、声をかける。
 先ほどの絶望感もあってか、安堵の気持ちが大きかった。

佐天「はい……って御坂さん、その肩……」

美琴「ああ、コレね。大丈夫よ、もう血は止まってるみたいだし、痛みもちょっとずつ薄れてきたし」

初春「大丈夫なワケないですよ! そんな大きなモノが刺さって……」

美琴「もう、大丈夫だってば。それより、佐天さんたちは、大丈夫だった?」

佐天「……街の人たちの様子がおかしくて……」

 佐天は急に泣き出しそうな表情で、うつむいた。
 恐らく、ここに来る前に、先刻の御坂と同じような状況に遭遇したのだろう。

初春「今、この街で何が起こってるのか……御坂さん、分かりますか?」

美琴「……ごめんなさい、私も、全然分からないの。
    さっきだって、急に黒子が……」

 御坂はそこまで言って、慌てて口を塞いだ。
 しかし、どうやら遅かったようで、初春と佐天は目を大きく開いて、みるみる青ざめていく。

初春「そん……な……白井さんが……」

佐天「………っ…」

 初春は、はっとした表情で御坂の肩に刺さった鉄矢を見る。
 それは、白井黒子が好んで使う武器だったはずだ。
 そんなはずはない、そんなはずはない、と初春は自分自身に言い聞かせているようだった。

初春「白井さんが、白井さんが、どうしたんですか!? 誰かに襲われたんですか!? そうですよね!?
    でも白井さんだって大能力者(レベル4)だし、その辺の人に襲われたくらいじゃ……」

美琴「……」

 御坂は唇を噛みしめた。
 確かに、白井黒子は学園都市でも数少ない、大能力者(レベル4)にして、空間移動能力者(テレポーター)。
 並大抵の能力者では、比にならない戦闘能力を持っている。

 しかし、現に白井は……

 御坂は、両拳を強く握り締める。

美琴「初春さん、佐天さん。ただ街路を走って逃げてるだけじゃ危ないわ。
    これから言う場所に、誰も使ってない廃ビルがあるの。そこに二人で隠れてて。」

佐天「!? 何言ってるんですか、御坂さん!」

美琴「大丈夫よ。そこ、普通に入ろうとしてもバリケードがあるから、抜け道を知ってないと入れないの

    それに中は複雑な作りだから、もし誰か入ってきても、隠れてやり過ごし易いわ
    抜け道を知ってるのも―――」

 私と、黒子だけ。
 そう言おうとして、止めた。

美琴「私だけ、だから」

佐天「そういう意味じゃないです! それに、二人で、って御坂さんはどうするつもりなんですか!?」

美琴「私はもう少し、辺りを見て回ってくるわ。大丈夫よ、あんなゾンビみたいな連中に、私は負けない」

初春「でも、でも……そうだ、警備員(アンチスキル)の人もおかしくなってたんですよ!?
    銃器を持って、同じ警備員(アンチスキル)の人達と……っ……」

 初春は、何かをこらえるような顔で、懸命に御坂を引きとめる。
 しかし、御坂は譲らなかった。

美琴「だーいじょうぶだって! そんじょそこらの兵器じゃ私の能力には敵わないわよ。
    ……大丈夫、絶対、何とかする方法を見つけてみるから」

 御坂は努めて明るい声で返事を返す。
 初春と佐天を、少しでも元気づけようとしているのだろう。

佐天「……」

美琴「ある程度見て回ったら、私もその廃ビルに行くわ。
    それで、もっと安全なところに一緒に避難しましょう」

 そして、御坂は二人に廃ビルの場所、抜け道への入り方を教えた。
 二人は最後まで何かを言いたそうな顔をしていたが、御坂は敢えてそれを無視していた。

美琴「それじゃ、どうか無事でね、二人とも」

佐天「……はい、御坂さんも、無事でいてくださいね」

 二人は御坂に背を向けて駆けだした。
 その背中を見ながら、御坂は静かにポケットに手を入れる。
 ポケットの中には、大量のコインが入っている。よく行くゲームセンターで使う、何の変哲もないコイン。
 しかし、それを御坂が使えば、音速を超える弾丸に変貌する。

御坂「……黒子、アンタは、私が必ず助けてみせる」

 御坂はコインを取り出し、強く握り締めた。

佐天涙子 / 8:31:21

佐天「」



俺には無理だ。書けない

と、言いつつもコレだけ書いてみる


黄泉川愛穂 / 6:12:59

黄泉川「」


台詞?書けねぇよ!

>>403-404
まず何日目の出来ごとなのか書けてない。

>>1からの伝統さ…
一日目と思ってくれ

神裂火織 / 1日目 4:58:24

神裂「」

俺にもわからん

スキルアウト「ウヒ、ウヒヒヒヒ・・」

御坂「化け物になっても、無能は無能ね」

御坂「あ、佐天さんは別よ」

佐天「み゛さ゛か゛さ゛~~ん゛」

保守

スキルアウト「ウヒ、ウヒヒヒヒ・・」

御坂「化け物になっても、無能は無能ね」

佐天「う゛わ゛~じぶんに゛い゛わ゛れ゛で゛る゛み゛だ~~い゛

御坂「え?佐天さんは違うよ?」

佐天「み゛さ゛か゛さ゛~~ん゛」

保守

遅れましてすいません
そろそろ上条②投下します

物語は一日で終わらせる予定なので、日付表示は無しにしてます
一方通行と神裂はそろそろ出てきます

書き溜めてから、板変えて立て直した方が良いですかね……?
ちょっと考えてみます


  上条 当麻 / 8:23:52


 学園都市内での『成績』は、主に能力の強度、学力、その他の特殊技能等を元にして掲出される。
 中でも重要なのは、言わずもがな、脳開発で得た超能力の強大さ。
 より強力で、より特殊な能力を持つ学生が、『成績優秀』として評価されるのである。

 当然ながら、その『成績優秀者』を集めたエリート校も存在する。
 例えば、御坂美琴の通う『常盤台中学』や、学園都市の5本指にも数えられる『長点上機学園』、『霧ヶ丘女学院』など。
 そして、それらエリート校が集中して本拠を構えるのが、第十八学区。
 現在、上条当麻が走り回っている学区である。

上条「ぜっ、ぜっ……ぐ、のっ、結局、知り合いにゃ、誰一人、会わなかったな……」

 上条が大きく息を切らしているのは、自宅のある第七学区からここまで、走り通しでやってきたからだ。
 初めは公共の交通機関を使おうとも思ったのだが、電車もバスもタクシーも、全く運行していなかった。
 学園都市内の公共交通機関はほとんど機械化されているため、運転手などの業務員は必要ない。
 システム自体に何らかの異常が起きているか、学園都市側が強制的にストップさせたか、どちらかである。

上条「……にしても、一体、皆どうなっちまってんだよ……?」

 上条は、第七学区から第十八学区まで来る間に、フードを持っていた少年のように、顔から血を流して虚ろな目をした人間を何人も見かけた。
 というより、見かけた人が全て、そうだった。
 なるべく見つからないように、時には物陰に隠れてやり過ごし、時には正面から全力疾走で振り切って、ここまでやってきた。

 更に言えば、強力な銃器を持った警備員(アンチスキル)までもが、おかしくなっていた。
 上条の右手は、異能の力にしか効果を持たない。
 銃器を使って襲ってくる人間には、絶対に勝ち目はない。

 そうまでして、必死の思いで辿り着いた十八学区だが、インデックスに関する手掛かりも、今の状況を理解する手掛かりも、何も得られていなかった。

上条「くそっ!」

 上条は思わず舌打ちをして、近くの電柱に拳を打ちつける。
 右拳。あらゆる異能を打ち消す、幻想殺し(イマジンブレイカー)。
 けれど、今の状況を打開する為に、この右拳で、一体何を殴ればいいのだろうか。


上条「………ん?」

 その時、上条の数十メートル先の道路を、よく知った姿が横切るのが見えた。

上条「あれは、美琴!」

 御坂美琴。
 『超能力者(レベル5)』の一人、『超電磁砲(レールガン)』の能力者。
 上条とは、とある『実験』に関する事件を経て、親しい付き合いをしている(と上条は思っている)。

上条(そうか。常盤台中学も十八学区の学校だったっけ。
    何か、必死に走ってる感じだったな……
    それに今アイツ、右肩を押さえながら走ってたような……)

 上条は考える。
 周囲には、顔から血を流す警備員(アンチスキル)が増えてきている。
 加えて、第十八学区は『エリート』の集まる学区だ。
 当然、能力の強さも、低くて強能力者(レベル3)、下手をすれば超能力者(レベル5)すら出てくる可能性もある。

 安全を考えて、インデックスの手掛かりを効率よく探るなら、なるべくこの学区は離れた方が良いのではないだろうか。

上条(……)

>>444
1、御坂の後を追いかける
2、御坂は放っといて、学区外へ出る

1


        終了条件2:『青髪ピアス』を倒す

 考える。
 御坂美琴は、電気を操り、雷さえも呼び起こす力を持った能力者だ。
 たった一人で、最新装備の軍隊一個大隊と渡り合えるほどの力を持った、学園都市第三位の能力者。

 ―――でも、たった十四歳の、女の子でもある。

上条(……もしかしてアイツ、誰かに襲われて怪我でもしてるんじゃ……)

 走っていた御坂の表情は、離れていた上条には分からない。
 本当に怪我をしているのかどうかも分からない。
 でも、もし、御坂美琴が誰かに突然襲われて、負傷して、必死に逃げ回ってる途中なのだとしたら。
 『あの時』と同じように。誰かの助けを待ってるんだとしたら。

 上条当麻は、そんなことは見逃せない。

 上条は、街中に消えていった御坂の後を追って走り始めた。

上条(まあ、無事なら無事でいいんだし、それに美琴もインデックスとは知り合いだから、もしかしたらどっかで見かけてるかもしれねーしな!)

 勿論、あまり大声で呼びかけたりすると、周りの『操られている』人たちに気付かれてしまう。
 なるべく他人に見つからないように、それでも出来る限り速く。
 上条は走った。

上条(ってか大覇星祭の時も思ったけど、アイツ走るの速くねー?
    ……って、どこいった!? やべ、見失った!)

 いくら自分も疲れているからとは言え、十四歳の女子中学生(もしかしたら怪我人)に走り負けるという事実を、
 上条は認められない。

上条(ぐ……ちくしょ、こっちに行ったのは分かってんだ、思いっきり走れば見つかるだろ!)

 上条は疲れた体に鞭打って、無理矢理速度を上げる。
 とっくに息は切れ、脚もフラフラするが、しかし上条にとってこんなことは日常茶飯事でもある。

 それでも、上条は気がつくべきだった。
 背後から近付いてくる足音に。

  ごがっ

上条「!?」

 軽い音がして、上条の身体が前方に強く押し飛ばされる。
 前傾姿勢で疾走していた上条は、当然姿勢を保てる訳もなく、地面に叩きつけられて、ごろごろ転がっていく。

上条「っ、なん、だ!?」

 辛うじて受け身を取れたお陰で、怪我はほとんど無かったが、背中にまだ衝撃の余韻が残っている。
 誰かから攻撃を受けた、と考えるまでもなく、上条は立ち上がり、背後へ向き直った。


上条「―――――お、まえ」

 そこに居たのは、これまたよく見知った顔だった。

 ただでさえ大した能力も無い人間を集めた上条の高校のクラスの中で、
 更に上条と並んで『クラスの三バカ(デルタフォース)』と称される、落ちこぼれの一人。

 漫画のような青髪に、不良ぶったピアス。
 人のよさそうな笑顔と、線の細い体。
 関西人が聞いたら耳に障りそうなエセ関西弁。

 その『アイツ』が、そこにいた。

青ピ「かぁーみ、やぁーん♪」

 顔から、ドロドロと、血を流して。


上条「――――」

 上条は、何も言えなかった。
 あの少年を見たときもそうだったが、今度はそれ以上に。

 『一般人が』『操られている』。上条は、先ほどそう考えた。
 ならば、上条の知り合いもまた、同様に操られている可能性があるのは、自明の事だ。
 この、青髪ピアスのように。

上条「――――ぁ、て」

青ピ「へ、へへへへ、かみやぁぁ~~~ん♪
   かみ、かみ、かみ、かぁみやんんんんん♪」

 青髪ピアスは、楽しそうに笑いながら、上条に歩み寄る。

 そういえばコイツは、肉体強化能力の無能力者(レベル0)だったっけ。
 だから、後ろから俺に追いついてきたのか。
 多分、走ってきて、そのままドロップキックでもしたんだろう。

 上条の頭は、そんな無為な思考で埋め尽くされ、十分に機能していない。

青ピ「へ、へへへ、へへへへへへへへへへへ」

 青髪ピアスは笑っている。楽しそうに笑っている。

青ピ「かみやぁーん♪」

 楽しそうに、幸せそうに、笑いながら、言った。


青ピ「    た の  し   い な   ぁ   ♪      」


上条「――――ッ」

 上条は、何も言わず、背中を向けて、逃げ出した。

上条(そんな、そんなそんなそんなやめろやめろよやめてくれなんだよそれなんなんだよこれ!)

 吐き気を抑えて。疲れも忘れて。走った。
 走って走って、逃げて逃げて、そのままどこかへ行ってしまおうと。

 でも、もう一度、背中に衝撃。
 もう一度、地面に転がる。

青ピ「かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

    みぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ
    やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
    ん????????????」

 さっきと同じ。走っていて、追いつかれて、蹴り飛ばされた。
 じゃあ、走って逃げられる筈が無い。

上条「……っ……っ」

 上条は立ち上がれない。
 今度は、蹴り飛ばされて転がされるだけでなく、そのままマウントポジションにもちこまれていた。
 青髪ピアスの腕が、上条の首に伸びる。

あおぴいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい

 万力のような力で、上条の首が締めつけられる。
 あの少年の時と同じく、人間とは思えない力。

 操られている人は、どうやら力も多少強くなっているようだ。
 いや、青髪ピアスは肉体強化を使っているからだろうか。

 上条の思考は脱線する。
 何も考えたくなかった。


 昨日まで、普通に学校に行って、普通に馬鹿騒ぎをして、普通に遊んでいた、友人。
 いつも三バカ三バカと呼ばれて、何かと一緒につるんでいることが多かった。
 昨日も、夜遅くまで、担任の教師の自宅で、三人並んで特別補習を受けた。

 その友人が今、自分の首を容赦なく締めつけている。

だれかああああ男のひと呼んでえええええええ

上条「……が……っ……ぁ」

 名前を呼ぼうとするが、声が出ない。
 精神的にではなく、肉体的に、直接喉を締められているのだから。

 青髪ピアスは、笑っている。
 上条の首を締めながら、笑っている。

 ふと、目から流れる血の筋が、上条には涙を流しているようにも見えた。
 それでも、腕の力は緩まることなく、上条の意識を削っていく。

上条(………ぁ)

 そこで、上条はふと思った。


 御坂美琴。
 大の大人が100人まとめてかかっても敵わないであろう、『超電磁砲(レールガン)』の少女。
 彼女が、本当に怪我をしていたのだとしたら、その理由は何だったのだろう。

 警備員(アンチスキル)の銃器も、磁力の壁は突き破れない。
 学園都市第三位を傷付けられる能力者も、そうはいない。
 そもそも、銃器や能力を前にすれば、御坂美琴も警戒するし、それなりの防御行動はとるだろう。

 でも、もし。彼女が攻撃されたのが、彼女の友人だったなら。
 今、この瞬間の上条と同じように、親しい友人が、顔から血を流して襲ってきたのなら。

 御坂美琴は、学園都市第三位の超能力者。
 電気を操る、最強の電撃使い(エレクトロマスター)。

 ―――でも、たった十四歳の、女の子。


 上条の拳に力が入る。

 上条の勘違いなのかもしれない。勘違いであってほしい。
 それでも、一度考えてしまうと、上条にはそれが許せないことに思われた。

 それは御坂美琴でなくともいい。学園都市に住む、ごく普通の学生、教師、その他の一般人でも構わない。
 親しい友人、家族、先生、生徒から、突然攻撃を受ける。
 殴られ、蹴られ、首を絞められる。
 それが、どれだけ惨いことなのか。どれだけ悲しいことなのか。

 そう考えるだけで、上条の拳は、硬く、硬く握り締められていた。

上条「……ぃ」

青ピ「?」


 硬く握った右拳を、青髪ピアスの頬にブチ込む。
 容赦はしない。できない。

 突然の反撃を受けた青髪ピアスの腕から、僅かに力が抜ける。
 それを見逃さす、左腕で青髪の右腕を掴んで引き剥がす。

上条「ごほぉっ! が、はっ、げほっ、げほっ!」

 呼吸が戻る。急な酸素供給で頭が揺れる。
 それに怯んでいる暇はない。
 頬を殴った右拳で、そのまま青髪の耳を掴み、目一杯引っ張る。

青ピ「アアァァァ~!?」

 耳を引っ張り、体勢を崩し、マウントの体勢から脚を抜く。
 そのまま脚に力を込めて、青髪の身体をひっくり返すように立ち上がる。

 そしてそのまま、今度は上条が上になって、マウントポジションを取った。
 肉体強化とは言えど、所詮無能力者(レベル0)。
 完全にマウントを取ってしまえば、そうそう崩せはしない。

 上条は、再び右拳に力を込める。

上条「……悪い、必ず、俺が元に戻して見せる。
    だから、今はちょっと我慢してくれ」

 青髪の顔面を殴っても、耳を引っ張っても、やはり『何か』を破壊出来た感覚は無かった。
 人を操っている『何か』は、直接身体を触っても破壊出来ない類のモノなのだろう。

青ピ「 ア ァー」

 青髪は、一声呻いてから、

青ピ「    さ すガ は カ ミヤ  ン や ネ  」 

 ―――確かに、そう言って、笑っていた。


 上条は迷わない。

 全力を込めた右拳で、青髪の顔面を、真上から叩き伏せた。
 硬いコンクリートの路面に、青髪の後頭部を叩きつけるようにして。

 冗談みたいに、小さく、軽い音がして、青髪ピアスの少年は、動かなくなった。



        終了条件2(ミッションコンプリート)

一方通行「木ィィィィィィ原クゥゥゥゥゥゥン!! 一緒に遊びましょう!!」

一方は逆切れの方がつえーんだよタイプじゃね?

  神裂 火織 / 9:31:27 / 第二学区

神裂「…………」

 神裂火織は、第二学区内にある送電塔の頂上に立っていた。
 学園都市における電力供給は、都市内の風力発電・地熱発電・原子力発電等によって賄われており、
 能力研究や開発、230万人の人々の生活に必要な膨大な需要量に応えるだけの、膨大な供給量を誇っている。

 インフラ設備は非常に発達しており、電力供給のケーブルは主に地下を通ってはいるが、
 その中核を為す送電塔も僅かながら存在し、第二学区の中では、その送電塔が最も高い建造物となっている。

 神裂が今、その送電塔の頂上で立ち尽くしているのは、学園都市を見渡す為である。

 神裂火織は、イギリス清教でも5本の指に入るほどの凄腕魔術師であり、また、世界に20人程度しかいない『聖人』の1人でもある。
 ジーンズの片方を太腿上まで切断し、シャツの袖も片方だけを切り取り、髪をポニーテールにまとめ、腰には身の丈以上の長さがある大刀を差すという、
 極めて奇抜な恰好をしているが、全て魔術術式の構成に必要な要素を服装に取り入れた結果である。

 『聖人』である神裂は、通常の人間とは一線を画す身体能力を発揮出来る。
 何事もないように、地上高100m以上ある送電塔に上っているのも、そこから学園都市の端を見渡すことが出来るのも、この能力の恩恵を受けている部分が大きい。

神裂「やはり、外界とは断絶されているのですね」

 神裂は、一人、呟いた。



 今朝、神裂は、えも言えぬ不穏な空気に目を覚ました。
 何か得体の知れないモノが、学園都市を包み込んでいるような錯覚さえ感じる、不穏な空気。
 実際、街に出てみると、明らかな異常が見て取れた。

 人間が、人間以外のモノに、変わっている。
 顔から赤い液体を垂れ流し、人を襲う化け物に。

 しかし今にしてみれば、街に異常が起きたというよりは、『街が異界に変わった』、という言い方の方が正しいのかもしれない。
 ここはもう、昨日までの学園都市ではない。学園都市に似た全く別の世界なのか、学園都市が丸ごと別の世界へ飛ばされたのかは分からないが、
 とにかく、今、ここは『異界』である。

 通信魔術を用いて本国(イギリス)や学園都市内の同僚と連絡を取ろうとしてみたが、それも通じなかた。
 魔術的な通信ラインが、この異界の空気に妨害されているのかもしれない。


神裂「こんなことになるなら、意地でも携帯電話を持ってくるべきだったでしょうか……」

 神裂は、携帯電話を所持していた。が、今回日本にやってくる折に、たまたま英国に忘れてきてしまっていた。
 もしかすると、今頃同僚のステイル・マグヌスなどは、英国のイギリス清教女子寮に置き去られているであろう携帯電話に、必死にコールを掛けているかもしれない。

神裂「……とにかく、現状をしっかりと確認しておかなければ。
    そして何より……」

 一人の少女。一人の少年。
 神裂の頭に、二人の人物が浮かんだ。

 一人は、神裂の同僚。そして、元親友。
 10万3000冊の魔道書をその頭脳に収めた、禁書目録(インデックス)と呼ばれる少女。

 もう一人は、神裂の恩人。そして、元宿敵。
 あらゆる幻想を殺し尽くす右手を宿す、上条当麻という少年。

神裂「……」

 彼らの身に、危機が降りかかっているかもしれない。
 そう考えるだけで、神裂は背筋が寒くなる。

 ―――あの二人には、絶対に手を出させない。

神裂「この事態を引き起こしたのが一体誰なのか、分かりませんが―――」

 神裂は、腰に差した刀の柄を握り、感触を確かめる。
 聖人の力を以てこの刀を振るえば、比喩でなく、神でさえも斬り裂ける。

神裂「―――私の友達を傷付けるというのなら、この幻想は、私のこの手でぶち殺す――――!」

 そう呟いた神裂の胸中には、一つの黒い疑念が渦巻いていた。
 しかし、神裂はそれを押し殺す。
 そして、送電塔から勢いよく飛び降り、街の中へと消えていった。


 神裂が見つめていた学園都市の景色。
 僅かに霧のかかった街。しとしとと降り続く雨。
 あちこちからあがる火の手。聞こえてくる銃声。


 そして、大きな外壁の外側には―――――赤い、赤い、深紅に染まった海が広がっていた。

青ピ「子萌ちゃんのニオイがするよ」

羽屍人ですね


  御坂 美琴 / 11:21:33 / 第十八学区


 雨が激しくアスファルトの路面を叩く。
 霧雨程度だったはずが、次第に雨脚を強め、今や土砂降りと言っても過言ではないくらいに降りしきっている。
 しかし、御坂美琴には、そんな激しい雨ですらも、意識の外だった。

 御坂美琴は、立ち尽くしている。
 傷だらけで地面に倒れている白井黒子に、右掌を向けたまま、立ち尽くしている。
 右肩の傷は既に塞がっていて、痛みもないようだ。

美琴「……黒子……」

 かすかに呟いた声は、雨音にかき消されて、白井の耳には届かない。



 初春と佐天の二人組と別れた後、御坂は周囲の『変わってしまった』人間達を片っ端から電撃で昏倒させていった。
 決して死なない程度に、しかし人間を気絶させるには十分な威力の電撃。
 御坂にとっては、全く難しくない範囲の能力行使である。

 暫くして、白井が御坂の目の前に現れた。
 空間移動(テレポート)を使ったのだろう、御坂から約20メートルほど離れた場所に、前触れもなく出現した。

 その姿を見て、御坂は一瞬ぎょっとした。
 手に、顔に、身体に、制服に、あらゆる場所に、御坂の私物がこれみよがしに飾り付けられていたのだ。
 先ほど落としてきた通学用のバッグの中に入っていた物だろう。

 しかし、御坂がひるんだのも一瞬の事。
 白井が更に空間移動(テレポート)を使用して、御坂に攻撃を仕掛けてくる前に、
 御坂は、手に持っていたコインを、白井の近くの地面目掛けて撃ち放った。


 『超電磁砲(レールガン)』。
 御坂美琴の異名にもなっている、十八番の攻撃能力である。
 電位差のある2本の電磁レールを作り出し、弾丸を打ち出す事によって、レールと弾丸の間に生まれる磁場の力で弾丸を超加速させる。
 初速ならば音速すら超え、コイン程度の物体でも、人間1人程度なら『消し飛ばす』ことさえ出来る。

 その超電磁砲(レールガン)が、アスファルトの地面に放たれる。
 言うまでも無く、地面は爆音と共に砕け、アスファルトは瞬間的に溶解して周囲に飛散する。
 その衝撃と飛礫が、白井を襲う。


 その結果が、今の状態。
 御坂は無傷で白井の前に立ち、白井はボロボロで地に伏せている。

美琴「黒子―――」

 御坂は、もう一度、白井に呼び掛ける。
 聞こえていないだろう、と分かっていても。

美琴「―――絶対に、元に戻してあげるから。少し、待ってなさい」

 そう言って、御坂は笑った。
 子供に言い聞かせるように、安心させるように、微笑みかけた。


 そして御坂は、白井の傍に屈みこみ、頭に掌を当て、軽い電流を――――


美琴「―――え?」


 御坂の身体が、崩れ落ちる。

美琴「――――」

 何よコレ、と言おうとしても、喉が動かない。
 頭が。頭が、割れるように痛い。
 胸が苦しい。体中が焼けるように熱い。

美琴「――――」

 おかしい。何が起こっているのか、よく分からない。
 身体はどこも悪いところはなかったはずだ。
 病気なんてしていない。
 右肩の怪我だって、今はもう治っている。

美琴「―――?」

 治っている。
 右肩の、怪我。
 鉄矢が完全に貫通していた、右肩が?

 それは、おかしくないだろうか。
 怪我をしたのはいつだ。ほんの、数時間前ではなかったか。
 白井に肩を貫かれて、それからろくに治療も止血もせずに、ひたすら逃げ続けた。

 いつのまにか痛みが引いていたから、そのままにしていた。
 そのまま。
 鉄矢だって、抜いた覚えもない。

 でも、今、右肩には、鉄矢どころか、傷跡すらない。
 完全に、治っている。

 何故?

 それは、多分――――





白井「            お ねエ   サ マ 」


長期に渡ってやるなら酉付けた方がいいんじゃないか

ブレインにだけはなって欲しくないなw

ちょっと一旦止めときます、小出し小出しになってすいません
もしスレ使い切ったり途中で落ちたりしたら、今度こそ書き溜めて、一気に投下しようと思います
VIPになるかどうかは分かりませんが…

>>509さんの通り、鶏付けてみました

誰かサイレンのストーリー解説してくれ。
乙式とか言われても完全に訳ワカメだ。

>>544
1、NTの世界での「屍人」
堕辰子と呼ばれる神の体液を吸ったことで、
「神もどき」となった人間。
基本的に不死身。

2での「屍人」
屍霊が人間の死体にとりついて、
とりあえずは動けるようになった状態。
屍霊が抜けると死体に戻る。

2での「闇人」
人間に「闇霊」がとりついて、動けるようになった状態。
屍人より著しく知能が発達し、言葉もしゃべる。
光にめっぽう弱い。

甲式
男性の闇人が変形した姿。
上半身は顔の無い人間の体をしており、
下半身は巨大な人間の頭に手の指が生えた形状をしている。

乙式
女性の闇人が変形した姿。
巨大な顔に鳥のような足、
下半身は人間に近い姿をしている。

こんなもん。

上条さんは乙式ならなんとか倒せるような気がするけど
甲式相手にすると前見えなくなるしなぁ。

そういえば今でも疑問なんだけど、血を受け継いだはずなのに、その後もゲームオーバーになるSDKとは何なのか

触れた瞬間朽ち出すんじゃね?

>>576
かつてSIRENスレに張り付いてた頃に考えた解釈。

神代の呪いは精神性の不死(ミヤコの霊体化、肉体が死んでも精神が死ねない牧野等)で、
堕辰子(赤い水)の呪いが肉体性の不死(屍人の永久再生)。
神代の人間は、ある程度の再生能力はあるかもしれないけど、肉体的には完全な不死じゃない(ミヤコも生贄時に肉体的には死亡)。
屍人は肉体的には完全に不死(うりえん除く)だけど、精神的には既に死んでる状態。

だから、神代の呪いを受けたSDKは、
精神的な不死(異界ジェノサイダーとして永久に彷徨)と、傷もある程度回復する不完全な肉体性の不死を得ている。
でも屍人ではないので、肉体性の不死には限界があり、屍人にボッコボコにされると、
ミヤコみたいに幽霊になるか、牧野みたいに身体は死んでるけど心は死んでない状態→ゲームオーバーになる。

というのが、自分の解釈です。
……なんかどうでもいい長文語ってすいません。そろそろ御坂ラスト投下します。



  御坂 美琴 / 11:53:46 / 第十八学区


 初春飾利と佐天涙子は、廃ビル二階の片隅で、恐怖と疲弊に耐えていた。

佐天「大丈夫だよ、初春……学園都市には強い人も一杯いるしさ、警備員(アンチスキル)だって、皆が皆ああなってるわけじゃないし……
    それに、ほら、御坂さんだって絶対戻ってくるってば!」

 自身もセミロングの黒髪を震わせながら、佐天は初春を懸命に励ます。

初春「……っ、っ……」

 初春はそんな佐天の言葉を聞きながら、何とか涙を流すまいと堪えていた。

初春(そうだ……御坂さんも、白井さんも、私なんかとは比べ物にならないくらい強い人たちなんだから、きっと大丈夫。
    だから、あの二人ともう一度会えるまで、私も何とか頑張らなくちゃ……!)

初春「佐天さんっ!」

佐天「えう!? ど、どしたの初春」

初春「……頑張りましょう! きっと、すぐに御坂さんたちが来てくれますよ!」

 そう言って、初春は佐天の片手を、自分の両手で強く握った。
 佐天の手は、震えている。
 でもそれ以上に、初春の手も震えていた。

佐天「……ぷ」

 その様子を見て、

佐天「あは、アハハハハ!」

 佐天は、口を開けて笑った。
 大きな笑い声が廃ビルの中に反響する。

初春「な、何がおかしいんですか佐天さん! というか、声大きいです、ボリューム下げてくださいっ!」

 初春は慌てて佐天の口を手で塞ぐ。
 それでも、佐天は初春の手の中で、尚も笑いを止めようとしない。

佐天「うくくくく、いやいや、ごめんね初春。なんかおかしくなっちゃってさ。
    ……うん、そうだよね。きっと、御坂さんも、白井さんも、来てくれるよね」

初春「……はい!」

 そして、初春と佐天はお互いの手を、一層強く握った。
 手の震えは、止まっている。



 カツン、と誰かの足音が、ビル内に反響した。


初春「!」
佐天「!」

 二人の身体が緊張で凝固する。

 カツン、カツン。
 高い音。女子中学生の二人がよく耳にする、革靴の足音だ。

初春「佐天さん、これって……」

佐天「シッ! 静かにっ」

 足音は段々と、階段を上って近付いてくる。
 二人は、いつでも逃げ出せるよう、立ち上がって構えておく。

 足音は、階段を登りきって、二階へやってきた。
 そして、フロア部分の入口で立ち止まる。


 沈黙。静寂。

 そして。


美琴「佐天さぁーん、うーいはーるさーん?」


初春「……ぁ、御坂、さんだ」

 二人の身体から、一気にこわばりが抜けた。
 初春は安堵のあまり、泣き出しそうな顔で腰を抜かしている。
 佐天は、すぐさま足音の元へ駆けていった。

佐天「御坂さんっ! 無事だったんで―――」


美琴「    ア゛ は ♪」


 そこで佐天が見た、御坂の顔は――――


かみやん・禁書→SDK・美耶子
美琴→恩田美奈(姉)
かみやん→宮田センセ
佐天・ういちゃ→
魔術赤髪(スなんたら)→
神裂→
一方通行→
土御門→
このりん→
黄泉川→

役はこんな感じかな?
空白は各自埋めてくれ。書き忘れがあれば追加の方向で。

八尾比沙子と堕辰子は考えられない。

黄泉川サン→高遠先生
鉄装→春海

鉄装の春海は違和感あるけど、黄泉川サンは妥当かと。
黄泉川LOVEな俺としてはキツイが…

そして久慈は異界に取り込まれた…

固法美偉 / 12:31:54 / 風紀委員一七七支部

ソファーから落ちて目が覚めた。
寝ぼけながらソファーに座る。

固法(また泊まってしまったわ。今何時かしら?みんな、まだ来ていないけど。)
固法(もうこんな時間!みんなどうしたのかしら?)

ガタ!!

固法「誰っ!」

??「このりせんぱぁーい?」
固法「初春さん?」 

どうみても違いますよ。>>1が来るまでの余興です。

固法「よかった。起きたら誰も居なくて…何かあったの?」
初春「えぇ、ちょっと…」

固法「とりあえず電気付けてちょうだい。」

パチッ、電気が付く。暗闇に慣れていたせいか、電気が眩しい。光に慣れてきた固法の目に入ったのは…

初春「アハッ♪このーりせぇーんぱぁぁいん あぁそぉびぃましょぉぉお」

固法「うい…はる…さん?」

終了条件1 一七七支部からの脱出

あくまでも時間つぶしです。>>1とは関係ないので悪しからず。悪いね

終了条件1:『一七七支部』からの脱出

目、鼻、口の顔の穴という穴から赤い液体が出ている。頭の花飾りは何処かに落としたようだ。

固法「うい…はる…さん…いったい…それ…」

初春「ア゛ハハッ♪」

楽しそうにしている初春さんの手には何処で手に入れたのか、警備員用の自動小銃が握られていた。
初春「う゛ふふふっアハハハッ」
パンッ
乾いた音が部屋に響く。
固法「初春さん!」

初春さんは手を休めることなく銃を打ち続ける。
一瞬の隙を突いて、初春さんに体当たりをする。

初春「ウガッッ」

固法「初春さんっ、目を覚ましなさい!」

腕力には自信がある方だった。
そのはずなのに腕が押し退けられそうになる。

初春「せんぱぁ~い、なにするんですかぁ~?」

バシッ

形勢が逆転された。銃を構える初春さん
固法(もう駄目っ)

そう思ったとき、
ドゴッ

初春「ア゛ア゛ァァ」

 

目を開けるとアサルトライフルを構えている黄泉川さんが居た。

黄泉川「大丈夫じゃん?」

固法「えぇ、ありがとうございます。一体、何があったんですか?」

黄泉川「私にもよくわかんないじゃん。とりあえず、ここから出るじゃん。この感じだとまだまだ居るじゃん。」

固法「でも、初春さんが…」

初春「ウ゛ゥ~」

黄泉川「!?早くするじゃん!詳しい話は後じゃん!」

私の手を引き、一七七支部を出る黄泉川さん。
その姿をもがきながら見る初春さんが居る

固法(一体この街で何がおこってるの…)

終了条件達成 ミッションコンプリート

とりあえず余興終了。
早く>>1が帰ってこないと困るじゃん。

>>1
次スレ立てた方がいいんじゃないかな。

いつの間にか鯖復帰してた
とりあえず、一方通行編(安価まで書き溜め)をどうぞ


  一方通行 / 8:12:02 / 第七学区

打ち止め「ねぇ起きてぇ、ってミサカはミサカは人妻っぽく旦那の起床を促してみる」

 第七学区のとあるマンションの一室。
 十歳ほどのあどけない少女が、必死にベッドを揺さぶっていた。
 正確には、ベッドの上で布団を被って寝転がっている、白髪の少年を。

打ち止め「ねぇねぇってばぁん、ってミサカはミサカはいやらしい声でいやらしく旦那の起床を……」

一方通行「それ以上喋ったら廃棄処分されたダッチワイフみてェな体にしてやンぞ」

 教育上に多分の問題がありそうな言葉を吐きながら、白髪の少年が起き上った。
 ボサボサの髪の毛と、気だるそうな表情で、不良のような雰囲気を出している。
 目つきは非常に悪く、その瞳は、血のように赤い。

打ち止め「あっ、やっと起きたんだね!ってミサカはミサカは嬉しそうに叫んでみたり!」

一方通行「とっくに起きてたけどな。いつまで経ってもてめェがやかましいから二度寝もできねェ」

打ち止め「えええっ!? それはいくらなんでも酷過ぎない!? ってミサカはミサカは涙目になってみたり!」

 少女の方は、喋り方こそ独特ではあるが、振舞いそのものは理性的で、子供らしい可愛らしさも残している。

一方通行「っつーか何なんだよ何なんですか朝っぱらからグダグダとやかましいなテメェは。
       久し振りにココに帰ってきたっつーのによォ」

打ち止め「あ、そうだよそうそう! なんか外の様子がおかしいんだよ!
       ってミサカはミサカは玄関の方を指さしながら訴えてみる」

一方通行「あン?」

 白髪の少年―――通称『一方通行(アクセラレータ)』と呼ばれている―――は、
 相変わらずやる気のない顔で、部屋の玄関に視線を向ける。
 しかし、その赤い瞳には僅かな力が宿っていた。

一方通行「……何が、どうおかしいって?」

打ち止め「うーん、なんかね、空気がピリピリしてるっていうか、雰囲気がおかしいっていうか……
       ってミサカはミサカは煮え切らない返答を返してみる」

 幼い少女―――こちらは『打ち止め(ラストオーダー)』と呼ばれる―――は、
 『強能力者(レベル3)』相当の発電系能力者(エレクトロマスター)である。
 空気中の静電気、電磁波等を感じ取ることも可能で、そういった『雰囲気』の変化には敏感なのだ。

一方通行「自分で分かってんならもうちょいマシな事言えよ……」


 一方通行はようやくベッドから立ち上がり、寝衣のまま玄関へと向かう。
 そして、ドアノブに手を掛けた。

打ち止め「あ、それと、こっちの方が重要なことなのかも知れないけど……」

 打ち止めの声に、手を止めて振り返る一方通行。

一方通行「?」

打ち止め「学園都市外の『妹達(シスターズ)』が全てミサカネットワークから分断、

       加えて学園都市内に居る『妹達』も、ネットワークには繋がっているものの通信に応答してくれない個体が増えてきてるの、
       ってミサカはミサカは困った顔で現状を説明してみる」

 ミサカネットワーク。
 それは、学園都市第三位の超能力者(レベル5)『超電磁砲(レールガン)』のDNAを元に製造されたクローン軍団、『妹達』が、
 脳波リンクによって作り出すネットワークのことである。
 本来なら20000人存在した『妹達』だが、とある『実験』により現在は約10000人ほどしか残っていない。

 『打ち止め』とは、製造番号20001番の『妹達』に与えられた呼び名。
 『妹達』の上位個体であり、ミサカネットワークの管理者でもある。

 そして白髪の少年、一方通行も、それらの『妹達』とは決して無関係ではない。

一方通行「……なンだと?」

 それはどういうことだ、と一方通行がその疑問を口にする前に。


 玄関のドアが、サブマシンガンの銃撃によって、粉々に破壊された。


打ち止め「っ!?」

 打ち止めは、慌てて身を隠す。
 突然の銃声にも対応出来るあたり、場馴れしていると言うべきか。

 破壊されたドアの向こうには、一人の警備員(アンチスキル)が立っていた。
 腰まで届く長い黒髪に、モデルのような長身とスタイル、口に咥えた煙草。
 そして―――顔から流れる、大量の赤い液体。

 打ち止めは、遠目に見るその警備員の顔に、見覚えがあった。

打ち止め「―――っ、ヨミ、カワ?」

 黄泉川愛穂。
 第七学区の高校教師兼警備員。
 そして、この部屋の持ち主で、打ち止めの現保護者でもある。

黄泉川「………アー?」

 普段は利発で凛々しい顔をしている妙齢の女性だが、今の彼女にその面影はない。
 顔色は酷く青褪めていて、目は虚ろで、口は半開き。その両方から、赤い液体がダラダラと流れるままになっている。

 黄泉川は、僅かに呻いてから、両手に持ったサブマシンガンを構えた。
 学園都市謹製の、最新鋭の短機関銃。
 それを向ける相手は―――


一方通行「―――オイオイオイオイ、ヨミカワァ……
       だから言っただろうが。炊飯器で作ったエビフライなんざ食ったら頭おかしくなるぞっつってなァ!」


 ―――粉々になったドアの前に毅然と君臨する、一方通行。


 一方通行。それは、学園都市内の者ならほとんどの人間が耳にした事がある名前だ。
 たった一人で軍隊と肩を張る化物達の中の、更に群を抜く化物。

 学園都市の誇る超能力者(レベル5)、序列第一位。

 体に触れた『ベクトル』を自在に操作する能力。その能力名が、『一方通行(アクセラレータ)』。
 核爆弾の直撃をも防ぎ切り、地球の自転を丸ごと相手にぶつけることすら出来る、最強の超能力者。
 サブマシンガンなど、彼にとっては子供の玩具にすら匹敵しない。

 現在、彼はとある事件の負傷でその能力の大半を失っているが、
 首に着けたチョーカー型の電極で能力を補填している為、電極のバッテリーが続く限りは、最強の能力を行使出来る。
 マシンガンの弾丸がドアを突き破る直前、一方通行は電極のスイッチを咄嗟に切り替えていた。

一方通行「……」

 一方通行は、誰にも聞こえないように舌打ちした。
 先ほどサブマシンガンから放たれた弾丸は全て、ベクトルを奪われて玄関の床に転がっている。

 本来なら、一方通行の体を覆うベクトル操作膜は『反射』に設定されている。
 一方通行に撃たれた弾丸は、攻撃者へとそのまま反射される、はずだった。
 しかし、一方通行は、電極を能力行使モードへ切り替えた際に、反射設定を解除し、静止させるように能力を再設定したのだ。

 理由は、言うまでもない。そのまま弾丸を反射すれば、玄関のドアと同じように、目の前の攻撃者がバラバラになっていた。
 かつての一方通行なら、暴君のような一方通行だったなら、わざわざ能力の再設定などしなかっただろうが。
 今の彼は、違う。かつて10000人の『妹達』を虐殺した彼とは、違うのだ。


一方通行「ヨミカワァ……てめェ顔からトマトジュース流してガキビビらせて悦に浸ってんじゃねェぞ。
       それとも、アレか? たかが警備員の分際で調子に乗ってっから、どっかの悪ガキに脳ミソいじられて肉奴隷にでもされちまったのかァ?」

 皮肉った笑みを浮かべながら、赤い瞳が煌々と黄泉川を睨みつける。

 警備員という役割を担う以上、犯罪者からの恨みを買うことは大いに考えられる。
 加えて、学園都市第一位の元保護者、10000人以上のクローン軍団統率者の現保護者という立場の黄泉川は、非常に『利用価値』のある人間でもある。

 犯罪者の誰かが、黄泉川愛穂を操り、一方通行、或いは打ち止めを襲撃させた。
 一方通行は、煮えくり返りそうな腹の内で、そんな推測を立てていた。

一方通行「……チッ」

 一方通行は、怒っている。
 黄泉川を操り利用した事。打ち止めを危険にさらした事。その両方に。


 黄泉川は、サブマシンガンを一方通行に向けたまま、引き金を引こうとはしない。
 引こうとしないと言うよりは、一方通行の気配に圧されて、引く事が出来ない、と言った方が正しいだろう。

 しかし、その背後に、複数の警備員の姿が現れる。
 全員、手には様々な種類の火器を携え、同様に顔から血のようなものを流している。

一方通行「……にしても、てめェに命令くれたご主人様は随分ユルいアタマの持ち主みてーだなァ。

       ―――たかが警備員ごとき、60億人集めても、この一方通行サマに敵うと思ってンのか?」


>>845
1、打ち止めを護る事を優先する
2、警備員を倒す事を優先する


         終了条件1:『打ち止め』を連れて第七学区を脱出

一方通行「打ち止め(ラストオーダー)! てめェはそこで布団被ってじっとしてろ!」

 一方通行は打ち止めにそう釘を差してから、警備員達の顔を見る。
 見知った顔は黄泉川だけだ。遠慮はいらない。手加減は、必要だろうが。

一方通行(ったく……マシンガンまでぶっ放されてんのに殺さずに済ます、
       なんざどう考えてもオレのキャラじゃねーよなァ)

 自嘲するように、少しだけ笑みを浮かべる一方通行。
 しかし、すぐにその笑みも消える。

 そして、一方的な攻撃が始まった。

 一方通行の身体が、消える。
 消えたように見えるほどの、高速移動。

 触れるベクトルを自在に操る一方通行には、『床を蹴る』だけでも、爆発的な推進力を生み出す事が出来る。
 警備員達の目には、その動きが捉えきれない。

 まずは、先頭に立っていた黄泉川愛穂。
 その頭を右手で鷲掴む。
 黄泉川は抵抗するように一方通行の身体を銃撃するが、その弾丸は全て静止して、一方通行には届かない。

 黄泉川の体内循環のベクトルを、僅かに乱し、脳血流の低下を促す。
 簡単な話だった。脳血流が低下すれば、人間は失神する。
 それを狙っての攻撃、だったのだが……

黄泉川「   ア ァー?」

一方通行「!?」

 黄泉川は、失神しなかった。
 ベクトル操作を誤ったか、と一方通行は焦ったが、やがて本当の理由に気がついた。

一方通行(何だ、コイツの頭の中に流れてンのは……血液じゃ、ないだとォ!?)

 黄泉川の体内に流れている液体は、血液ではなかった。
 その中には人間の血液も混ざってはいるものの、大半は別の液体だ。

 『血液によく似た何か』。それも、一方通行の知識にも無い、未知の液体。
 それは、血液の代わりに、黄泉川の体内を循環しているようだ。

一方通行(コレがコイツらを操ってるモンの正体か?

       ならコイツを抜き出してちまえば……いやァ、駄目だな。
       コイツを抜いちまうと、残りの血液じゃ全然足りてねェ。単純に貧血で死んじまう)

 一方通行は高速で思考を展開させ、一秒もしない間に、結論に至った。

一方通行「メンドくせェ、直接アタマぶん殴ればいいだけだろォが!」

 そして、黄泉川の頭を、玄関のドア枠にぶち当てた。
 考えが正しかったと言えるのかは分からないが、黄泉川は何も言えずに気絶した。

 ハッとなって黄泉川を見るが、恐らく死んではいないだろう、と適当に辺りをつけて、
 一方通行は残った警備員達を睨む。

 警備員は、明らかに怯えていた。
 その行動に怯えたのか、一方通行が纏うオーラに怯えているのかは分からない。

一方通行「……」

 一方通行は何かを言おうとしたが、すぐに思い直して、口を噤む。
 さっさと気絶させた方が良い、と直感していた。

 手当たり次第に近くの警備員の首根っこを引っ掴み、
 ある者はマンションの外へ放り投げ、ある者は地面に叩きつけ、ある者は直接頭を殴打して、
 一方通行は次々と警備員達の意識を奪っていく。

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