P「白と黒のうさぎ」 (37)

そろそろ仕事が終わるという時に声をかけられた

「あなた様」

「プロデューサー」

二人同時に、だ

「貴音に響か、どうしたんだ?」

うちの事務所でも特に仲が良い二人

「えっ? ……うぅ」

「ふふふっ」

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何やら恥ずかしそうな響

貴音は楽しそうな笑みをこちらに向けている

「ちょっとした趣向を考えてみたのです」

趣向……?

「そ、そうだぞ! プロデューサーは自分たちのために頑張ってくれてるから……」

もごもごと口ごもる響

「どうした、響?」

顔を覗き込むと赤くなっていた

「うぎゃー! 顔が近すぎるぞプロデューサー!!」

そう言うと、バックスステップをして貴音の後ろに隠れてしまった

何とキレがある動き、流石は響だな

「うぅ……貴音ぇ」

貴音の服をちょこんと掴み上目づかい

思わず笑ってしまいそうになるのを堪える

こいつ、なかなかやりやがる

俺をノックアウトさせる気か

「もう、あなた様も響も落ち着いてください」

響の頭を優しく撫でながら微笑む貴音

おっと、ついつい悪乗りしてしまった

からかいすぎてしまったようだ

「悪い悪い、ところで趣向ってのは?」

そう、二人が思いついたらしい趣向

「よろしいですか、響?」

「うん」

二人が視線を交わし、こくりと頷く

「プロデューサー、今日は十五夜なんだ」

仲秋の名月ってやつかな

十五夜か、もうそんな時期だったのか

「そこで、今宵は月見と洒落こもうと思いまして」

貴音が続ける

「響がどうしてもあなた様をお誘いしたいと」

へぇ、嬉しいこと言ってくれる

「あー、ずるいぞ貴音! 貴音だって誘いたいって言ってたじゃないか」

「はて……私、身に覚えがありませんね」

面白いやつらだな

見ていて全く飽きない

「月見か、風情があって良いじゃないか」

優しく夜空を照らす月

たまにはこういうのも悪くない

返事を返すと、二人はにこりと微笑んだ

「貴音、じゃあ準備しなくちゃ!」

「そうですね、では急ぎましょう、響」

準備か、俺も手伝うとするか

「俺も手伝うよ、もう少しだけ待っててもらえるか?」

男手も必要だろうし……

「駄目!」

響からの拒絶の言葉

「えっ?」

思わず変な声をだしてしまう

「あ……違うんだプロデューサー! これには訳があって……」

響の焦っている声

「いや、大丈夫だ。気にしなくてもいいぞ」

手伝われると何か困ることでもあるのだろう

「申し訳ありません、あなた様。今はまだお教えすることはできませんが……」

貴音も困ったような表情をしている

ふぅ、まったく……

「二人してそんな顔をするなって、俺は待っていればいいんだろ?」

二人に悪気がないことなんてわかっているのだから

「ありがとう、プロデューサー!」

顔を上げて笑顔を見せる響

うんうん、お前にはその表情が一番似合うよ

「ではあなた様、一時間後に屋上にてお待ちしております」

仕事を終わらせて、一服したら丁度いい時間かな

「わかった、くれぐれも変なことはしないように」

「心得ております。では参りましょう、響」

「うん、またねプロデューサー」

貴音と響が事務所から出るのを見送って、自分のデスクへと座る

残りの仕事を片づけてしまわないと

しかし、さっきはびっくりしたな

響にあんなに強く言われたのは初めてかもしれない

貴音にもはぐらかされたし……

何をたくらんでいるのやら

まぁいい

今は仕事に集中してとっとと終わらせてしまおう

月の中にはうさぎが餅をついている

日本人ならこう教わるだろう

ちなみに俺もそう教わった

しかし、だ

今は自分自身の前にうさぎがいる

白と黒のうさぎが

どちらも特徴的で、どちらもとても美しい

スカウトできるならしたいぐらいだ

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