しんのすけ「いい所に、おでかけだゾ!」 (529)

以前投稿し、未完のまま放置していた話です。

遅くなりましたが、続き書きましたんで、よろしくお願いします。


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-日曜日-

みさえ「しんのすけー。いい加減起きなさーい」

しんのすけ「うーん…なに言ってるんだよ、母ちゃん」

しんのすけ「今日は日曜だぞ?」

みさえ「忘れた?今日はみんなでお出かけするって言ったでしょ?」

しんのすけ「おお!すっかり忘れてたぞ!」

しんのすけ「で?どこにお出かけするんだぞ?」

みさえ「…いい所よ」

しんのすけ「いい所ー?」

みさえ「ええ、とーってもね」

ひろし「お!おはようしんのすけ。やっと起きたか」

ひまわり「たゆたー!」

しんのすけ「おはよう父ちゃん、ひま」

ひろし「はは、口の周りにヨダレの痕がついているぞ。顔洗ってさっぱりして来い」

しんのすけ「ほーい」

すまん書いてないと思ってた

しんのすけ「あ!」

ひろし「何だ?」

しんのすけ「今日はどこにお出かけに行くんだ?」

ひろし「ヒミツだ」

しんのすけ「母ちゃんはいい所だって、言ってたぞ?」

ひろし「…」

>>7

別にいい。

レス、どうも。

ひろし「みさえがそう言ったのか?」

しんのすけ「うん」

ひろし「…そうか…うん。そうだな」

ひろし「いい所だぞ?」

ジャーーー…

しんのすけ(お出かけか。久しぶりだなあ)パシャパシャ

しんのすけ(最近ずっと父ちゃんも母ちゃんも怖い顔をしてたけど、今日は何か違うな)パシャパシャ

キュッ

しんのすけ「…いい所に行くからかなあ?」

しんのすけ(いい所ってどこだろう?)

ひろし「おお!さっぱりとして、俺みたいな男前になったな」

しんのすけ「父ちゃんみたいなって言うのは、余計だぞ」

ひろし「なにをーこいつ。父ちゃんは男前だぞ?泣かせた女は数知れず、東北の裕次郎とは俺の事だ」

みさえ「なーに馬鹿な事、言ってるの」

みさえ「それより準備は出来てるの?」ジッ

ひろし「うっ…出来てるよ。朝早く、車に積んだよ」

しんのすけ「積んだって、なにを?」

ひろし「…」

みさえ「いいから、あんたはご飯食べちゃって。食べたら、車に乗るからね?」

しんのすけ「ほーい!」

しんのすけ「おお!朝からご馳走だぞ!」

みさえ「ご馳走って…ただのパンとハムエッグでしょ?」

しんのすけ「でも最近は朝ごはんもなしの日が多かったぞ」

みさえ「…そうだったわね。ごめんね」

しんのすけ「!」

しんのすけ「で、でもオラはまだ子供だから、あんまり食べなくても平気だったぞ!」

みさえ「もう、無理しなくて良いのよ」

みさえ「これからはお腹いっぱい食べられるんだから」

しんのすけ「?」

みさえ「しんのすけ、早く行くわよ」

しんのすけ「ほーい!」

しんのすけ(今気付いたけど、母ちゃんにしては念入りに部屋を掃除したな)

しんのすけ(それに今は朝の6時、お出かけするには随分早い出発だぞ)

しんのすけ(秋田のじいちゃん家か、九州のじいちゃん家に行くのかな?)

しんのすけ(でも、そうなら何で隠すんだ?)

バタンッ

しんのすけ「おまたせ」

みさえ「鍵閉めるから、しんのすけは先に車に乗ってて」

しんのすけ「ほほーい!」タタッ

ガチャ

しんのすけ「おお!クーラー!生き返るー!」バタンッ

ひろし「みさえは?」

しんのすけ「母ちゃんは鍵閉めてる」

ガチャ

みさえ「おまたせ」バタンッ

しんのすけ「もー母ちゃん遅いー」

みさえ「誰の所為よ。もう」

しんのすけ「お!何だこれは?」

みさえ・ひろし「!」

しんのすけ「変なの。もしかしてバーベキューでもするの?」

ひろし「…」

みさえ「そうかもね」

しんのすけ「当たり?はずれ?」

みさえ「さあね?」

しんのすけ「母ちゃんのおケチ」

みさえ「何とでも言いなさい」

しんのすけ「うー…母ちゃんの出べそ、ケツデカおばば、皺クチャおば…」

みさえ「……」ガシッ

しんのすけ「!!」

みさえ「だーれーがー皺クチャおばばですってー?」グリグリグリ

しんのすけ「おうふぅ…いだだだだ…母ちゃん許してー」

ひろし「…おーい、お前ら出発するぞー」

みさえ「日曜なのに思ったより空いてるわね」

ひろし「どこも不景気だからなー」

みさえ「…他人事みたいに言うのね」

ひろし「おいおい、今日くらいそういう話はよしてくれよ」

しんのすけ(父ちゃんと母ちゃん、また喧嘩し始めた…)

しんのすけ「母ちゃん母ちゃん!」

みさえ「あら?なによ」

しんのすけ「オラ、喉渇いたぞ」

しんのすけ「ほら、ひまもお腹減ったって?」

ひまわり「たゆー?」

しんのすけ「さっき、鞄にジュース入れてたの見たぞ?」

みさえ「……」

しんのすけ「母ちゃん?」ドキドキ

みさえ「もう、目敏いわね」ゴソゴソ

みさえ「はい」

しんのすけ「サンキュー母ちゃん」

ひまわり「たゆうっ」

みさえ「はいはい。しんちゃん、ひまにも渡してあげて」

しんのすけ「ほーい!」

しんのすけ「ごくごくごく…ぷはあーっ」

しんのすけ「うん、この一杯の為に生きてるんだぞ」

みさえ「また、どこでそんな言葉覚えてくるんだか」クスクス

しんのすけ「いやあ、それほどでもー」///

みさえ「褒めてない褒めてない」クスクス

しんのすけ「父ちゃんも一口飲む?」

ひろし「え?えっと…俺は…」

みさえ「大丈夫よ、しんちゃん。パパにはコーヒーがあるから」

ひろし「あ!そうだな。うん。しんのすけ、ありがとな」

ひろし「でも運転中眠くなったら困るから、父ちゃんはコーヒーを飲む」

しんのすけ「母ちゃんは?」

みさえ「ありがとう。でも私はダイエット中だからいらないわ」

しんのすけ「その割には効果が…」

みさえ「」ギロッ

しんのすけ「!」

しんのすけ「や、やっぱりかー。いやあ、最近母ちゃんはスリムビューティになったような気がしてたんだー」

みさえ「おほほほほ、やっぱりー?」

ブロロロロロ…

しんのすけ「」スースー

ひまわり「」スースー

ひろし「…寝たか?」

みさえ「…寝たわ」

ひろし「しかしいい所、ね」

ひろし「お前、案外ロマンチストなんだな」

みさえ「だって、此処よりはマシよ」

ひろし「…悪い」

ひろし「俺が…借金の保証人になったばかりに」

みさえ「…ごめんなさい。言い過ぎたわ」

ひろし「いや、良いんだ。事実だし」

ひろし「これから俺達が行く、天国って所はきっといい所さ」

しんのすけ「ん…んん…」

みさえ・ひろし「!」

しんのすけ「むにゃむにゃ」

ひろし「…はあ…焦った。一瞬、起きたかと思ったよ」

みさえ「起きる筈なんてないわ。ジュースとミルクに睡眠薬を入れたから」

ひろし「しかしこいつらも可哀想だなあ」

みさえ「可哀想ですって?!二人だけ残す方が可哀想だって、あれだけ話し合ったじゃない!」

ひろし「そ、そうだけど…」

みさえ「もう後戻りは出来ないのよ。変な事は言わないで」

ひろし「ごめん…」

みさえ「ちゃんと、必要な物は積んでるんでしょうね?」

ひろし「ああ…何だったら確認してくれ」

みさえ「ええ」ゴソゴソ

みさえ「これはさっき、しんのすけが見つけた練炭ね」

ひろし「どうしてあいつはこれを見て、バーベキューとか言ったんだろう?」

みさえ「バーベキュー用の木炭と間違えたんじゃないの?」

みさえ「まあ、これでバーベキューが出来ないわけでもないけど」

ひろし「ああ、なるほど」

みさえ「他はガムテープ」

みさえ「睡眠薬」

みさえ「それから、遺書ね」

ひろし「…ああ」

ひろし「見えてきたな」

みさえ「懐かしいわ。あの森、ひまわりが生まれる前にカブトムシを捕りに来た事があったわよね?」

ひろし「そんな事もあったな」

みさえ「あの頃は良かったわね」

ひろし「…」


>ひろし「しかしいい所、ね」

>ひろし「お前、案外ロマンチストなんだな」

ワロタ

ブウウウン……

ひろし「車で来られるのは、此処が限界か」

みさえ「そうね。此処で良いんじゃないかしら?」

ひろし「ああ、エンジン切るぞ」

みさえ「…」

ひろし「…」

みさえ「…」

ひろし「…みさえ」

みさえ「…何よ?」

ひろし「いや、呼んだだけ」

みさえ「何よそれ…」

ひろし「…何だか、決心が鈍りそう」

みさえ「…じゃあ、どうするの?」

ひろし「いや…」

みさえ「どうするのって、言うの?」

ひろし「…悪い」

みさえ「…」

みさえ「ガムテープを取って」

ひろし「あ…もう?」

みさえ「…こんな苦しい世の中に未練でもあるの?」

ひろし「…まさか」

ベリベリベリベリ

みさえ「ガムテープの目張りってこんな感じで良いかしら?」

ひろし「良いんじゃないか?」

ひろし「それより、暑いなあ。なあ、クーラーつけて涼しくしてから、練炭に火をつけないか?」

みさえ「…ふう、そうしましょうか」

ガアー…

みさえ・ひろし「はぁ…」

ひろし「涼しいー…」

みさえ「あ!そう言えば、この風の出る所も塞がなくちゃダメかしら?」

ひろし「あー…多分、そうだな」

ひろし「…あのさ、こんな事言ったら、怒ると思うけどさ」

みさえ「……なに?」

ひろし「こうやって、金以外の事で二人で喋って何かするのって、久しぶりじゃないか?」

みさえ「…そうね」

みさえ「最近は喧嘩ばかりで、この子達…しんのすけとひまわりに心配かけちゃったわね」

ひろし「…俺、久しぶりにこうやって、みさえと話せて楽しいって思ってるんだ」

みさえ「!」

ひろし「昔みたいでさ。今日は朝から楽しかったな」

ひろし「あ、未練とかそういうのじゃないぞ?ただ、それだけは言いたかった」

みさえ「…」







カシュ

みさえ「全部に火がついたわね」

ひろし「ああ」

みさえ「じゃあクーラーを消して…私はこっちをガムテープで塞ぐから、あなたはそっちを塞いで」

ひろし「分かった」

ひろし「睡眠薬は?」

みさえ「はい」

ひろし「じゃあ、飲み物を…お?」

みさえ「ふふふ」

ひろし「ビールじゃないか?太っ腹だな」

みさえ「今日くらいわね?」

ひろし「じゃあ、みさえ。俺達の良い旅立ちを祈って…乾杯」

みさえ「乾杯」

プシュッ!

ゴク、ゴクゴクゴク…

みさえ「…」

みさえ(睡眠薬とビールを1缶飲んだけど、そんなに直ぐは眠くならないのね)

みさえ(ああ、どうしてこうなってしまったんだろう)

ひろし「……」

みさえ(彼はだらしなくてスケベで、でもとっても優しくて責任感のある人…)

みさえ(だからきっとこうなってしまったのね)

ひろし(俺は後輩、川口の借金の保証人になってしまった)

ひろし(俺は馬鹿だった)

ひろし(川口がどこからいくら借りているかも分からずに、保証人になった)

ひろし(そして、川口が失踪し、事の重大さを理解した)

みさえ(初めは電話だった。単なるいたずら電話だと思った)

みさえ(それがどんどんエスカレートして、彼の実家にも取り立てが行った)

みさえ(家に張られた貼り紙、取り立て屋の怒鳴り声…)

みさえ(ご近所には白い目で見られて、しんのすけも暗くなっていった)

ひろし(川口はヤバイ所から、かなりの金額を借りていた)

ひろし(うちの親父にも、義父母にも頼れる金額を超えていた)

ひろし(俺の保険金でも足りない)

みさえ(彼の保険金では足りない。私の保険金でも足りない)

みさえ(退職したばかりの父にも迷惑をかけたくなかった)

みさえ(これは私達の問題だ)

みさえ(他人に頼らず、私達で解決したかった)

ひろし(はじめ離婚してから、俺だけ死のうと考えた)

ひろし(しかしみさえは頑として首を縦には振らなかった)

ひろし(家族でしょう?一人で抱え込まないでと、主張するみさえとは何度も言い合いになった)

ひろし(それでもみさえは譲らず、結局はみんなで仲良く心中という事になった)

ひろし(でも、これで良いのか?)

みさえ(みんなで心中が、一番良いのよ)

みさえ(きっと天国はいい所)

みさえ(しんちゃんも昔の様に自由に遊べて、ひまわりもお腹を空かせる事がない)

みさえ(彼も余計な心配はせず、私はそんな彼や子供達を見守りながら、心穏やかに過ごせるだろう)

みさえ「…あなた?」

ひろし「…」

みさえ(寝たか…)

ゴロッ

みさえ「私も、楽しかったわ。今日は」

みさえ(目的が心中じゃなかったら、また来たいくらいよ)ウトウト…









しんのすけ「母ちゃん…」

みさえ「!」

しんのすけ「…」

みさえ「しん、ちゃん?」

しんのすけ「すーすー…」

みさえ「…そんな訳ないわよね」

みさえ(苦しまないように睡眠薬多めに入れたし、起きる筈がないわ)

みさえ(でもこうして見ると、しんのすけも大きくなったわね)

みさえ(この森に初めて来たのはひまわりが生まれる前)

みさえ(トイレを我慢してたら、お漏らししちゃって、ズボンもパンツも濡らしちゃったわね)クスクス

みさえ(あの時は凄く怒っちゃったけど、今思えば、気付いてあげられなかった私が悪かったのよね)

みさえ(そんなしんのすけがいつの間にか、ひまわりの面倒も見られるお兄ちゃんになったのね)

みさえ(本当に月日って早いわ…)

みさえ(ひまわりが、しんのすけと同じ年の頃にはどうなってるのかしら?)

みさえ(ううん…馬鹿な事を考えないの、みさえ)

みさえ(しんのすけもひまわりも、大人にはなれないの)

みさえ(…本当に、これで良かったのかしら?)

みさえ(でも他にどうしようもないもの。この子達だけ置いていけない…)

みさえ(だからって、この子達を道連れにしなくちゃいけないのは…)

みさえ(でもやっぱり、親無しに何て…だって、この子達は私の大事な…)

みさえ「そうよ…この子達は私の大事な子供…だから!!」

みさえ(やっぱり…しんのすけとひまわりを道連れには、出来ない!)

ガチャガチャ

みさえ(開かない?!)

みさえ(どうして?力が入らない…今頃、睡眠薬が効いてきたの?)

みさえ(いや!いやよ!)

みさえ(どうして死ぬしか考えなかったの?!)

みさえ(お父さんやお母さんに迷惑かけたって、泥水を啜ったって、何をしたって…)

みさえ(生きていた方がずっと良いじゃない!!)

ドンドンッ!

みさえ「い…やあ…」

みさえ「誰か…開けてー!!!」

ドンッ!

ひろし「く…眠い…」

みさえ「あ、あなた?寝てた筈じゃ…」

ひろし「大事な女房のピンチだぞ?寝ていられるか」

みさえ「あなた!」

ひろし「いいから!今は一緒にドアを開けて、急いで換気するぞ!」

みさえ「ええ!」







みさえ・ひろし「はあ、はあ…」

みさえ「何とか、換気、出来たわね」

ひろし「ああ、もう限界だ…寝る…」バタッ

ブウウウン…ガチャ

しんのすけ「ん…んん…」パチッ

しんのすけ「此処、どこだ?」

みさえ「お家よ」

いい話だな

しんのすけ「…いい所は?行くんじゃなかったのか?」

みさえ「ちょっと予定変更になったのよ。しんちゃんもずっと寝てたし」

しんのすけ「おお!お空が暗いぞ!いつの間に夜になったんだ?」

ひろし「ひまわりは俺が連れて行くから、お前としんのすけは先に家に戻ってろ」

みさえ「はーい。じゃあ、あなたお願いね」

しんのすけ「…」じぃ

ガチャ

みさえ「どうしたの?しんのすけ、そんなにじっと見て」

しんのすけ「母ちゃんと父ちゃん、仲直りした?」

みさえ「!」

しんのすけ「何か、起きたら二人とも仲良しで、オラ嬉しいぞ」

しんのすけ「オラ達が寝てる間に、何かあったの?」

みさえ「…さあね?」

しんのすけ「またそう言うー」

バタンッ

ひまわり「ぶうぅ!たゆたああ!」

ひろし「おー、よしよし」

みさえ「あら?寝起きで、ご機嫌悪いのかしら?ひま、おいで」

ひまわり「たああ♪」

ひろし「いんや。ママが良かったんだってさ」

みさえ「あらあら」クスクス

ひまわり「たあゆっ♪」

ひろし「あー…何か傷つく」

みさえ「なによ、これくらいで傷付くなんて?これから大きくなったら、もっと嫌われるのよ?」

ひろし「ぐっ…怖い事言うなよ」

みさえ「ふふ」

ひろし「…ははっ」

みさえ「あなた、これからも宜しくね」

ひろし「…お前は、こんな俺でも一緒にいてくれるのか?」

みさえ「勿論、じゃなくきゃ一緒に死のうなんて考えないわよ」

ひろし「みさえ…」///

みさえ「あなた…」///

みさえ・ひろし「」///

しんのすけ「お熱いこって」

ひまわり「てっ」

みさえ「な!いつから」///

しんのすけ「二人で見つめ合って、ちゅーしようとするところからだぞ」

ひろし「だろ?父ちゃんと母ちゃんはアツアツのラブラブだからなあ」

みさえ「もうっあなた」///

ひろし「よし、今日は久しぶりに出前を取ろう」

みさえ「そうね。今日くらいはね」

しんのすけ「え?本当?やったああ!!オラ、ピザがいいぞ!」

ひろし「なんだ?ピザで良いのか?」

みさえ「じゃあ電話するわね」

しんのすけ「オラ、耳までチーズがぎっしり詰まった奴がいい!」

みさえ「はいはい」

ピンポーン

配達員「ピザハットでーす」

しんのすけ「オラが出るー!」

みさえ「あんたは座って待ってなさい。はーい!今行きまーす!」

ドタドタドタ…







配達員(おかしいな?)

配達員(出て来ない…)

ピンポーン

配達員「すみませーん。野原さーん?」

シーン…

配達員(やっぱり変だ)

配達員(さっきは声がしたのに)

配達員(でもこの家、夜なのに電気をついていないし、庭も荒れ放題だし…)

ドンドンッ

配達員「すみませーん。野原さん、いらっしゃいますかー?」

隣のおばさん「あら、お兄さん。そこで何をしてるの?」

配達員「え?いえ、僕はピザの配達に来た者です。野原さんから注文を受けたのですが…」

配達員「さっきチャイムを鳴らして、返事があったんですけど、なかなか出ていらっしゃらなくて」

隣のおばさん「…あんた、地元の人じゃないね?」

配達員「え?」

配達員「どういう事ですか?」

隣のおばさん「この家からは注文を受けても、無視しなくちゃいけないの」

配達員「あの、どうしてでしょうか?」

隣のおばさん「…この家はもう何年も前から空き家だよ」

配達員「!」

隣のおばさん「もう何年も前の話よ。ここには笑いの絶えない明るい家族が住んでいたわ」

隣のおばさん「でもご主人が借金の連帯保証人になっちゃって、それを苦に家族と心中したの」

隣のおばさん「その日の朝の事はよく覚えているわ」

隣のおばさん「久しぶりに笑い声がしたから、窓から外を覗くと、車に乗ってじゃれ合う母子が見えてね」

隣のおばさん「そして夜遅くに帰ってきた。わいわいがやがやと、楽しそうにして」

隣のおばさん「ああ、これでこの家族は大丈夫だなって思ったのよ」

隣のおばさん「そして、ピザの配達が来たわ」

隣のおばさん「でも配達員が帰る様子がないから、今みたいに外に出てきた」

隣のおばさん「そうしたら、一家が乗ってきた筈の車がなかったの」

隣のおばさん「私は一家が隠していた合鍵を使って、家に入り、テーブルの上にあった遺書を見つけた」

配達員「そ、それで?」ゴクリ

隣のおばさん「次の日、一家は森の中で発見されたわ」

隣のおばさん「奥さんは……多分、最後に死ぬのが怖くなったのかもしれないわね」

隣のおばさん「ドアを開けようと、取っ手にしがみついたまま亡くなっていたそうよ」

配達員「つまり…幽霊がピザの注文をしていたって事?」

隣のおばさん「ええ、毎年ね。時々、あんたみたいな余所から来た人が知らずに届けに来ちゃうんだけどね」

配達員「だって…そんな、ありえない…」ガタガタ

隣のおばさん「どっちにしろ、届ける相手はいないわよ?」

隣のおばさん「今回は、私が代わりに貰ってあげるわ。いくらかしら?」

ブロロロロロ…

隣のおばさん「全く、余計な出費が増えちゃったわ」

隣のおばさん「一人でこんなに食べられないし」

コトッ

隣のおばさん「…お裾分けよ」

みさえ「みんなー、ピザが届いたわよー」

しんのすけ「やったー!ピッザー!!」

ひまわり「たたあ!」

ひろし「あはは、二人ともテンション高いな」

みさえ「はいはい、飲み物用意するから、座って待ってなさい」

ひろし「俺にビールは?」

みさえ「もうないわよ」

ひろし「ちぇー…」

しんのすけ「父ちゃん、母ちゃん」

みさえ「なに?」

ひろし「何だ?」

しんのすけ「楽しいな!きっとここよりいい所はないぞ!」

みさえ・ひろし「!」

みさえ「ええ、そうね!」

ひろし「ああ!俺もそう思うぞ!」

ひまわり「たあ!」

しんのすけ「じゃあ、お久しぶりに…野原一家、ファイヤー!」

みさえ・ひろし「ファイヤー!!」

ひまわり「たゆたー!」

しんのすけ「えへへ。お久しぶりだから、照れるぞ」///

ひまわり「えへへへ」///

みさえ「うふふ…」

ひろし「あはははは!」










終わり。

まだ続きます。

一気に全部投下しようと思ったが、眠気が酷いんで寝る。

今日は休みだから、可能なら朝から投下します。

おやすみ。

用足ししてたら、遅くなった。

続き始めます。

-月曜日-

チュンチュンチュンチュン…

しんのすけ「う…うーん…」

しんのすけ「…今日は…何曜日だったっけ………あ?!」ガバッ

しんのすけ「大変だ!!」

ドタドタドタ

しんのすけ「このままじゃ、幼稚園に遅刻しちゃうぞ!」

しんのすけ「母ちゃん!」

しんのすけ「どうして起こしてくれないんだ!」

みさえ「」ブツブツブツ…

ひまわり「うえぇぇん!」

しんのすけ「…」

しんのすけ「母ちゃん…その、幼稚園…」

みさえ「」ブツブツブツ…

しんのすけ「…」

しんのすけ「お、オラ、幼稚園に今日はお休みするって、お電話するぞっ」

プルルップルルッ

園長『はい。ふたば幼稚園、園長の高倉です』

しんのすけ「おお、組長か。オラ、ちょっとお休みするぞ」

園長『?』

園長『あの、もしもし?』

しんのすけ「じゃ」

ガチャン

園長「…切れた?」

まつざか「園長、どうかされたんですか?」

園長「いえ、ただの無言電話ですよ」

まつざか「…この時期になると、多いですね」

園長「…まあ、夏休みですからね。きっと暇な小学生の仕業でしょう」

しんのすけ「ふう…お電話終わったぞ」

ひまわり「うえぇぇん!」

しんのすけ「じゃあ、母ちゃん。オラ、ひまわり連れてお出かけするぞ」

みさえ「」ブツブツブツ…

バタンッ

ひまわり「うえぇぇん」

しんのすけ(ひま、昨日から何も食べてない)

しんのすけ「」ぐぅ

しんのすけ(オラも、だけど)

しんのすけ「こんな時にはあそこだぞ」

ウィーン

店員「いらっしゃいませー…あれ?」

しんのすけ「試食♪試食♪」

店員「…誰もいないのに、自動ドアが開いた?」

【スーパー】

じゅうう…

しんのすけ「おお!ウインナーだ!」ヒョイ

しんのすけ「うーん。うまい。なかなかのお味で…」モグモグ

アルバイト「そう?美味しい?」

しんのすけ「うん、うまいぞ」

アルバイト「じゃあ、良かったら、もっと食べて」

しんのすけ「お兄さん、太っ腹だな」

ひまわり「うえぇぇん!」

しんのすけ「うお?ひまわりごめん。忘れてた」

しんのすけ「おーよちよち。ウインナー、ひまにもあげるから」

アルバイト「…妹さんには、これ」

しんのすけ「お!ミルク?いいのか?」

アルバイト「あまり良くないから、内緒にしといて」

しんのすけ「ぶっラジャー!」

ひまわり「」チューチュー

しんのすけ「良かったな、ひま」

アルバイト「…」

しんのすけ「お兄さん、親切だな」

しんのすけ「そう言えば、オラ達どこかでお会いした?」

アルバイト「会った、かもしれない」

しんのすけ「ふぅん、もっと食べて良い?」

アルバイト「好きなだけ、どうぞ」







しんのすけ「げぷっ、ごちそうさま」

アルバイト「お粗末さま、でした」

アルバイト「明日も試食、あるから」

しんのすけ「分かった。ありがとう」タタッ









アルバイト「…しんちゃん」

ピリリリリッピリリリリッ…ピッ

風間「はい、もしもし?」

アルバイト『風間、君?』

風間「あれ?もしかしてボーちゃん?」

ボーちゃん『久しぶり』

風間「久しぶり!どうしたの?」

風間「ボーちゃんって、今留学中なんだよね?」

ボーちゃん『今は、日本にいる。あともう暫くは、いるつもり』

風間「そっか。僕も夏休み中で、こっちに戻ってるんだ」

ボーちゃん『折角だから、会わない?』

風間「いいね!留学先の話、聞かせてよ!」

ボーちゃん『うん』

ボーちゃん『話し変わるけど、しんちゃんの事、覚えてる?』

風間「…15年前、だよな?本当に可哀想だったな…」

ボーちゃん『今、僕、スーパーでアルバイトしてるんだ』

風間「そうなんだ?」

ボーちゃん『そこで、しんちゃんに会った』

風間「!」

風間「ボーちゃん、言っていい冗談と悪い冗談が…」

ボーちゃん『冗談じゃない。去年の今頃もしんちゃんに会ったよ』

ボーちゃん『しんちゃんは、しんちゃん達は多分、繰り返してる』

ボーちゃん『何度も、死ぬ前の一週間を』

ボーちゃん『僕は、去年、それを止めようとした』

ボーちゃん『でも、しんちゃんは自分が死んだ事を信じない』

ボーちゃん『しんちゃんのお母さんに至っては、話が通じない』

風間「…」

ボーちゃん『このままだと、今年もまた一家心中すると思う』

ボーちゃん『僕は助けたい。だから、手伝って欲しい』

風間「…分かった。ボーちゃんの言ってる事、信じるよ」

ボーちゃん『ありがとう…』

風間「丁度、マサオ君やネネちゃんも帰ってきてるみたいだし、連絡取ってみるから」

ボーちゃん『うん。よろしく』

風間「じゃあね」

ピッ

風間(しんのすけが、毎年、一家心中している)

風間(とてもじゃないが、信じられる話じゃないけど…ボーちゃんが嘘をつく筈ない。なら、)

風間「…僕だって、しんのすけを助けたい」

-火曜日-

しんのすけ「おお!また会ったな。お兄さん」

ひまわり「たあ!」

ボーちゃん「今日は肉野菜炒め」

しんのすけ「うまそう!」

ボーちゃん「はい」ヒョイ

しんのすけ「うっ…ピーマンはいらないぞ」

ボーちゃん「どう?」

しんのすけ「うまいぞ」モグモグ

ボーちゃん「そう。じゃあ、次は甘い物食べたくない?」

しんのすけ「食べたいぞ」モグモグ

ボーちゃん「じゃあ、もう直ぐバイト終わるから、ちょっと待っててね」

しんのすけ「ほーい」






【公園】

ボーちゃん「はい、どうぞ」

しんのすけ「おお!チョコビだ!」

ボーちゃん「しんのすけ君、好きだったよね?」

しんのすけ「そうだぞ!オラ、チョコビ大好き!」

しんのすけ「?」

しんのすけ「お兄さん。どうして、オラのお名前知ってるんだ?」

ボーちゃん「知ってるから」

しんのすけ「オラ達、やっぱり知り合い?」

ボーちゃん「そうだよ。しんのすけ君は覚えてない?」

しんのすけ「…」じぃ…

しんのすけ「うーん…分かんないぞ」

ボーちゃん「そう」

しんのすけ「お兄さん、がっかりした?」

ボーちゃん「いや。もし分かったら、ビックリしたけどね」

ボーちゃん「しんのすけ君、チョコビ全部食べないの?」

しんのすけ「うん。帰ったら、母ちゃんにもあげるんだ」

ボーちゃん「しんのすけ君、5歳だよね?幼稚園は行ってないの?」

しんのすけ「幼稚園はお休みの日だぞ」

ボーちゃん「お父さんとお母さんは何してるの?」

しんのすけ「父ちゃんは仕事。母ちゃんは家にいるぞ」

ボーちゃん「ご飯はちゃんと食べてる?」

しんのすけ「!」

ボーちゃん「しんのすけ君、今幸せ?」

しんのすけ「お兄さんが何を言ってるか分からないぞ!」

しんのすけ「オラはちゃんとご飯も食べてるし、幸せだぞ!」

ボーちゃん「本当に?」

しんのすけ「本当だぞ。他に話がないなら、オラ帰るぞ」

ボーちゃん「変な事聞いて、ごめん」

しんのすけ「…」

しんのすけ「じゃあ」タタッ

ボーちゃん「あ!しんのすけ君!」

しんのすけ「?」ピタッ

ボーちゃん「明日も試食やってるから。良かったら、来て欲しい」

しんのすけ「…しょうがないなぁ。分かった。明日も行ってあげるぞ」タタタ…

ボーちゃん「みんな、もういいよ」

ガサッ

風間「ふぅ…見えない相手から隠れるってのも、変な感じだな」

ネネ「ボーちゃん、今一人で喋ってた…訳じゃないのよね?」

マサオ「本当にしんちゃんがいたの?」

ボーちゃん「…いたよ」

【野原家】

バタンッ

しんのすけ「ただいマンモスイカメ!」

みさえ「」ブツブツブツ…

しんのすけ「母ちゃん?ただいま…」

みさえ「」ブツブツブツ…

しんのすけ(そうだ!)

しんのすけ「母ちゃん!見て!」

しんのすけ「チョコビ!」バッ

みさえ「」ブツブツブツ…

しんのすけ「母ちゃん、おなか減ってるでしょ?」

みさえ「」ブツブツブツ…

みさえ「!」

しんのすけ「母ちゃん?」










バチンッ!

しんのすけ「母ちゃん、痛い…どうして叩く…」

みさえ「あんた!これ、どこから盗ってきたの?!」

しんのすけ「違うよ!」

みさえ「嘘おっしゃい!そんな子に育てた覚えはありません!」バシッ

しんのすけ「痛い…違うよ。オラ、盗ってない…」

みさえ「うぅっ…うああああああ!!」バシバシッ







ひろし「…ただいま」

バタンッ

みさえ「うっうぅぅ…うぅぅ…」

ひろし「みさえ?何かあったのか?」

みさえ「何か…あったですって?」

みさえ「全部、あなたの所為じゃない!」

ひろし「だから、何がだよ…」

ひろし「俺は疲れてるんだ…」

みさえ「私の方が疲れてるわよ!」

ひろし「何だよ、お前ずっと家にいるじゃないか」

みさえ「家にいたくているんじゃなくて、外に出られないの!」

ひろし「みさえ…」

ひろし「子供達の前だ…これ以上は…」

みさえ「あ…」

しんのすけ「母ちゃん…」

しんのすけ「母ちゃん。オラ、盗ってない」

しんのすけ「命を賭けてもいいぞ…」

みさえ「しん、のすけ…」

みさえ「しんちゃん、ごめんね!叩いてごめんね!ダメなママでごめんね!」

しんのすけ(母ちゃんが…ダメなのはとっくに知ってるぞ)

しんのすけ(だけど、母ちゃんは…何にも悪くないぞ)

【ファミレス】

ピンポーン

店員「はい。お伺いします」ニコッ

ボーちゃん「ポテト2つとドリンクバー4つ」

店員「はい、かしこまりました。ドリンクバーはセルフサービスとなっております」

店員「ご自由にどうぞ」

ネネ「ボーちゃん、本当にしんちゃんが見えてるの?」

ボーちゃん「見える」

風間「僕はボーちゃんを信じるよ」

風間「あの時、僕らは何も出来ない子供だったけど、今は違う」

風間「僕も、しんのすけを助けたいと思っている」

マサオ「でも、ボーちゃん。去年助けようとしたけど、できなかったんでしょ?」

ボーちゃん「うん。それにしんちゃんは、去年の事を覚えていないみたいだ」

マサオ「それに、僕らには見えないし、話しも出来ないよね?」

ボーちゃん「そう」

ネネ「去年はどうやって助けようとしたの?」

ボーちゃん「声をかけたり、構ったり…最後は警戒されて失敗した」

マサオ「今年はどうするつもりなの?」

ボーちゃん「…まだ分からない。去年、しんちゃん以外は、話も通じなかったし」

ボーちゃん「だから、みんなの力を貸して欲しい」

マサオ「力って言っても…」

ネネ「…また、誰も死なないようにすれば良いのよね?」

マサオ「でも、死のうとしてる人…じゃない、幽霊を止められるの?」

ネネ「じゃあ、本当の事をしんちゃんに言ったら、どう?」

風間「それは、もうやったんだってさ」

風間「それで、ボーちゃんは完全に警戒された」

ボーちゃん「…タイミングが悪かった」

マサオ「じゃあ…力付くで止めるとか」

風間「日曜日に外出しない様に、ボーちゃんが家の周りに盛り塩をしたらしいけど…」

ボーちゃん「効果はなかった…」

マサオ「ええ?でも、幽霊なんでしょ?」

ボーちゃん「盛り塩の部分だけ、15年前の空間を通ったんだと、思う」

マサオ「…どういう事?」

ボーちゃん「しんちゃん達は現在と15年前の空間を跨ぐように存在しているんだと、思う」

ボーちゃん「例えば橋が壊れて渡れなくなっていた場合、僕らは渡れないけど、しんちゃん達には壊れて見えないし、普通に渡る事も出来る」

マサオ「意味が分からないよ」

ネネ「…しんちゃん達が、15年前に見た事も渡った事もない橋でも?」

ボーちゃん「多分、その場合はしんちゃん達が渡る必要があるかによる」

ネネ「その、15年前の空間を通れないようにする事は、出来るの?」

ボーちゃん「出来ない」

ネネ「…」

ネネ「じゃあ、自主的に死ぬのを止めて貰う他、ないのかしら…」

マサオ「生きたくないくらい追い詰められた人間を、止める事なんて出来るのかな?」

風間「!」

ネネ「それでも止めるのよ!」

風間「そうだよ。生きたくないくらい追い詰められた人間を、止められる訳がない!」

ネネ「風間君!あんた!」

ボーちゃん「そうか…そう言う事か」

風間「そうだよ!」

マサオ「え?どういう事?」

ボーちゃん「生きていたくないなら、生きる気力を与えれば、良い」

ネネ「!」

マサオ「え…でも、相手は幽霊だし…生きる気力って…」

ネネ「しんちゃん達に生きる気力を与える方法、何か思い付いたの?大丈夫なの?」

ボーちゃん「うん。多分、不可能じゃない」

マサオ「でもどうやって?話が通じないんでしょ?」

ボーちゃん「そう。それが一番困ってる」

風間「僕に考えがある」

ネネ「なに?」

風間「みんな、耳を貸してくれ」

ちょっと休む。

続き始めます。

-水曜日-

ボーちゃん「しんのすけ君、何かあった?」

しんのすけ「…別に」

ボーちゃん「お母さんに、チョコビを盗んだって思われた?」

しんのすけ「何でそれを…」

ボーちゃん(やっぱり、去年と同じだ…)

ボーちゃん(去年は慰めるしか出来なかったけど、今年は違う…)

ボーちゃん「しんのすけ君?」

しんのすけ「なに?」

ボーちゃん「僕が、お母さんに言ってあげるよ」

しんのすけ「本当?」

しんのすけ「あ、でも…知らない人を家に上げたら、母ちゃんに…」

ボーちゃん「大丈夫。しんのすけ君のママなら、知り合いだから」

しんのすけ「本当?大丈夫なの?」

ボーちゃん「大丈夫」

ボーちゃん「もう直ぐ、バイト終わるから、そうしたら一緒に行こう?」

しんのすけ「うん!」







しんのすけ「」コソコソ…

しんのすけ「」キョロキョロ…

ボーちゃん「…どうしてコソコソしてるの?」

しんのすけ「悪い人に、見つからないようにだぞ」

ボーちゃん「悪い人?」

しんのすけ「大きな声を出して母ちゃんやひまを苛める奴ら。オラも蹴られた」

しんのすけ「オラは蹴られるのも殴られるのも平気なのに、母ちゃんはそれを見てもっと泣く」

にゃああお…

しんのすけ「」ビクッ!

ボーちゃん「…猫だよ」

しんのすけ「別にビックリしてなんかないぞ!」

しんのすけ「家の近くに隠れてるかも…」

しんのすけ「母ちゃんを家に一人にしちゃったし…」

しんのすけ「母ちゃんを、お助けしなくちゃいけないのに…」

ボーちゃん「…分かった」

ボーちゃん「僕が見てくるよ」

しんのすけ「そんな事したら、お兄さんが…」

ボーちゃん「大丈夫。僕は、強い」

しんのすけ「…」

ボーちゃん「大人を、頼りなさい」

ボーちゃん(…相変わらず、荒れ放題)

ボーちゃん(暴走族が肝試しに来ないのが、不思議なくらいだ)

ボーちゃん(…じゃあ、不動産屋から借りた鍵で)ガチャリ

ボーちゃん「しんのすけくーん!誰もいないよ」

しんのすけ「!」

たたたた…

しんのすけ「本当だ、誰もいない…」ホッ

ボーちゃん「じゃあ、お邪魔するよ」

しんのすけ「どうぞ」

しんのすけ「母ちゃん…ただいま?」

みさえ「」ブツブツブツ…

みさえ「どうして…私達がこんな目に…」ブツブツ

みさえ「何をしたって言うの?」ブツブツ

みさえ「あの男…川口…殺してやる…」ブツブツ

みさえ「借金取り共々…地獄に堕ちろ…」ブツブツ

みさえ「主人の世話になった癖に…」ブツブツ

みさえ「今日もご飯が出せなかった…」ブツブツ

みさえ「子供達がお腹を空かしている…」ブツブツ

みさえ「彼に当たり散らした…彼だって大変なのに…」ブツブツ

みさえ「私は…妻も母親も…失格…」ブツブツ

ボーちゃん(やっぱり去年と同じ…)

ボーちゃん(でも…去年は鍵を持っていなかったから、窓越しにしか見られなかったけど、今年は…)

ボーちゃん「…すみません?」

みさえ「」ブツブツブツ…

しんのすけ「母ちゃん?」

みさえ「」ブツブツブツ…

しんのすけ「母ちゃん…」

ボーちゃん「…」

しんのすけ「ごめん。やっぱり母ちゃん、疲れてるみたい…」

ボーちゃん「しんのすけ君、ちょっと耳を貸して?」コソッ

しんのすけ「ん?お?うん…」

ボーちゃん「出来る?」

しんのすけ「…うん!」

しんのすけ「母ちゃん!」

みさえ「」ブツブツブツ…

しんのすけ「いい加減にするんだぞ!」

みさえ「」ブツブツブツ…

しんのすけ「う…」

しんのすけ「け、ケツだけ星人~ぶりぶり~!」

みさえ「」ブツブツブツ…

しんのすけ「母ちゃんの口紅でイタズラ…ほら、オラのゾウさんに目と耳を書いたぞ?」

みさえ「」ブツブツブツ…

しんのすけ「ぞーさん、ぞーさん♪」プラプラ…

みさえ「」ブツブツブツ…

しんのすけ「おーはなが♪」プラプラ…

みさえ「」ブツブツブツ…

しんのすけ「…」

しんのすけ「…お兄さん」

ボーちゃん「仕方がない…奥の手…」

しんのすけ「奥の手?」

ボーちゃん「…しんのすけ君、ごめん」スッ…

しんのすけ「?」

パチンッ

しんのすけ「…」

ボーちゃん「…」

しんのすけ「…何で」

みさえ「な、何をするのぉ?!」バッ

しんのすけ「かあ…」

みさえ「私の子供に手を出さないで!!」

ボーちゃん「…」

みさえ「叩くなら、私を叩きなさい!!」

しんのすけ「母ちゃん…」

ボーちゃん「…しんのすけ君、叩いてごめん。蚊が…」

しんのすけ「蚊?」

ボーちゃん「そう、蚊」

しんのすけ「そうだったのかー、ビックリしたぞ」

みさえ「……え?」

みさえ「…しんちゃん?その人は?」

しんのすけ「オラの友達。昨日、チョコビくれた人」

みさえ「え?」

ボーちゃん「初めまして、夜分遅くに失礼します」ペコリ

みさえ「まあ!」

みさえ「此方こそ…早とちりをしてしまって…どうもすみませんでした」ペコペコ

ボーちゃん「いえ、子供を叩かれたなら当然ですよ」

しんのすけ「もう、母ちゃんはおっちょこちょいだなー」

みさえ「あんたねぇ…はあ、まあ良いわ。しんのすけが無事で良かった…」

しんのすけ「…母ちゃん」

ボーちゃん「あの、ご夕飯の支度はまだですよね?もし良ければこれから一緒にどうですか?」

みさえ「え?でも…その…」

ボーちゃん「しんのすけ君を叩いちゃったお詫びをさせて下さい」

みさえ「いいんです…蚊を叩いたんですし…」

ボーちゃん「いや、でも貴女を驚かせてしまいましたし…ああ、ミルクもありますから」

みさえ「でも…」

しんのすけ「」ぐー

みさえ「…しんちゃん?」

しんのすけ「オラ、腹減ったぞ」

みさえ「あのね、そう簡単によそ様に奢って貰う訳には…」ぐー

しんのすけ「…」

ボーちゃん「…」

みさえ「も、もうしんちゃんったら…そんなにお腹減ってたの?」///

しんのすけ「今のは、母ちゃ…もがっ」

みさえ「おほほほ…では、お言葉に甘えさせて頂きます」

【ファミレス】

ボーちゃん「どうぞ、遠慮せず、召しあがって下さい」

しんのすけ「もぐもぐもぐ…」

ひまわり「ごくごくごく…」

みさえ「ガツガツガツ…」







しんのすけ「オラ、もうお腹いっぱい…」

ひまわり「たあゆー」

みさえ「ふう…良いんですか?本当にこんなにご馳走になってしまって…」

ボーちゃん「良いんです。ファミレスの優待券が沢山余ってますから」

しんのすけ「で?その人、誰?」

ネネ「初めまして」ペコッ

みさえ「あ、初めまして」ペコッ

しんのすけ「おー、初めまし天心甘栗…」

ひまわり「たゆう?」

しんのすけ「お姉さん?どっちに向かって頭下げてるんだ?」

ボーちゃん「このお姉さんはね…目が見えないんだ」

しんのすけ「目が?」

みさえ「あ…そうでしたの」

ボーちゃん「それに耳も聞こえない」

しんのすけ「じゃあ、どうして二人は普通に話してるんだぞ?」

ボーちゃん「それは…愛の、力」

ネネ「?!」

みさえ「え?じゃあ、お二人はお付き合いされてるの?!」

ボーちゃん「ええ。大事な、人です」

みさえ「まあ…」

しんのすけ「ひゅーひゅー、お熱いこってー」

ボーちゃん「そろそろ、ご主人が戻られる時間ではないですか?」

みさえ「あ…いけない」

ボーちゃん「行きましょうか?帰りも送りますよ」

みさえ「でも…」

ボーちゃん「僕みたいな図体のデカイ男がいれば、少しは安心でしょう?」

みさえ「あ…あの?」

ボーちゃん「しんのすけ君に、聞きました」

みさえ「…」

しんのすけ「母ちゃん…ごめん…」

ボーちゃん「僕が無理に聞き出したんです。しんのすけ君を怒らないであげて下さい」

みさえ「…怒りませんよ。私達が悪いんですから」

ボーちゃん「会計は済ませてあります。後、これ…」

みさえ「え?テイクアウトの袋?」

ボーちゃん「差し出がましいようですが、ご主人に…」

みさえ「」ピクッ

しんのすけ「母ちゃん…貰っておこう?」

みさえ「…」

ボーちゃん「…すみません。捨てて頂いても構いませんから、貰って下さい」ペコリ

ネネ「お願いします」ペコリ

ひまわり「うー、たあ?」

みさえ「……ありがとうございます」

カランカラン…

ボーちゃん「ご馳走様」

しんのすけ「美味しかったぞー!」

店員「ありがとうございましたー」ペコッ

バタンッ

店員「…」

店員「今の、見た?」

店員「見た見た。二人なのに、五人ですって言うし。凄く沢山頼んだのに残すし…」

店員「しかも誰もいない所に向かって、話してたわよ?」

店員「…」

店員「こわー…」ブルッ

ブロロロロ…

ネネ「着いたわよ?」

ボーちゃん「家の周りにも、誰もいないようですね」

みさえ「何から何まで、ありがとうございます…」

ボーちゃん「いえいえ、困った時はお互い様ですから」

みさえ「それと…」

みさえ「彼女さん、運転してませんか?」

しんのすけ「母ちゃん、見れば分かるだろ?第一、彼女さんは車でファミレスまで来たんだぞ?」

みさえ「耳と目が不自由って、言ってたじゃない?」

しんのすけ「はあ…母ちゃん?」

しんのすけ「愛の力だぞ?」

みさえ「…」

ボーちゃん「愛の力は、偉大…」

みさえ「あ…そう…ね?」

ネネ(何、話してんだろう?)

しんのすけ「じゃあ!」

みさえ「本当にありがとうございました」

ひまわり「たあ!」

ボーちゃん「いえ、では失礼します」

みさえ「お二人も気を付けて」

しんのすけ「ばいばーい!」

ネネ「じゃあね」

ブロロロロ…

みさえ「…」

しんのすけ「行っちゃった」

みさえ「しんちゃん?」

しんのすけ「何だぞ?」

みさえ「昨日はごめんね…」

しんのすけ「…」

しんのすけ「オラ、よく覚えてない!」

みさえ「!」

しんのすけ「それより早く家に入ろう!」

みさえ「…うん」グスッ

ひろし「お前ら、そんな所で何やってるんだ?」

みさえ「あなた?」

しんのすけ「おお!父ちゃん、ただいま!」

みさえ「クスッ…お帰りでしょう?」

ひろし「?」

ひろし「何だやけに元気じゃないか?何かあったのか?」

みさえ「話せば長くなるけど…」

ひろし「しかも、良い匂いが…ああ!何これ?弁当?」

しんのすけ「ファミレスのテイクアウトだぞ!」

ひまわり「たあ!たあ!」

ひろし「どうしたんだ?」

みさえ「実はね…」






ピンポーン

風間ママ「はーい…あら?」

ボーちゃん「こんばんは、風間君いますか?」

ネネ「こんばんは」

風間ママ「あら、二人とも久しぶりね…聞いたわよ、ボーちゃんは留学したんですってね?」

バタバタ…

風間「ちょっと!ママ…じゃない、母さん!」

風間ママ「あら、トオルちゃん」

風間「二人が来たら、直ぐに通してって言ったじゃないか!」

風間ママ「だって、懐かしいんですもの。ネネちゃんも綺麗になったわね」

ネネ「そんな事ないですよ…」///

風間ママ「もう恋人とかもいらっしゃるの?うちのトオルちゃんはいつまで経っても、アニメの女の子に夢中でね?」

風間「ちょっと!ママ!!」

ネネ「…」

ボーちゃん「…」

【トオルの部屋】

風間ママ「後で紅茶とお菓子もって行きますからねえ」

風間「いら、ない、から!」バタンッ

ボーちゃん「…風間君、反抗期?」

ネネ「というか、アニメの女の子って…」

風間「違う違う!ママが勘違いしてるだけで…」

マサオ「あの…」

マサオ「えっと、取り込み中に悪いけど…どうだったの?」

ボーちゃん「ブイ」

ネネ「取り合えず、第一段階成功よ」

マサオ「やったあ!」

ボーちゃん「名付けて『胃袋を掴め』作戦」

マサオ「まんまだし、幽霊に胃袋はないけどね」

ネネ「煩いわよ、オニギリ頭」

マサオ「酷いよ。もう僕、おにぎりじゃないのに…」

ボーちゃん「お腹が減ってると、苛々するし、生きる気力もなくなるからね」

風間「しんのすけのおばさんと、話が出来たんだね?」

ボーちゃん「風間君の、案のお陰」

マサオ「じゃあ、この調子で生きる気力を回復させて、気持ちに余裕が出てきたら、しんちゃんを助けられるね!」

ボーちゃん「だと、良いんだけど」

風間「…何か、引っ掛かる事でもあるの?」

~数時間前~

みさえ「どうしたの、しんちゃん?早く車に乗って」

しんのすけの「オラ、ウンコ」

みさえ「もう…」

ボーちゃん「じゃあ僕も一緒に行きます」

ネネ「え?」

ボーちゃん「ネネちゃん、直ぐ戻るから」

ネネ「え、あ…ちょっと!」

バタンッ

しんのすけの「お兄さんも、ウンコ?」

ボーちゃん「うん、ウンコ」

しんのすけの「お揃いだな」

ボーちゃん「お揃いだね」

カランカラン

店員「いらっしゃい…ひっ」

ボーちゃん「トイレ、貸して下さい」

店員「は…はい。どうぞ」ビクビク…

しんのすけ「ふう、スッキリスッキリ」

ボーちゃん「それは、良かった」

しんのすけ「…」じぃ…

ボーちゃん「…どうしたの?」

しんのすけ「お兄さんなら、言っても良いかな?」

しんのすけ「オラ達、日曜日にお出かけするんだぞ」

ボーちゃん「!」

しんのすけ「でも母ちゃんは誰にも言うなって、絶対に秘密だぞ?」

ボーちゃん「…何処に行くの?」

しんのすけ「いい所」

ボーちゃん「!」

ボーちゃん「いい…所って?」

しんのすけ「ん?いい所って?」

ボーちゃん「今、しんのすけ君がそう言って…」

しんのすけ「オラ、何処に行くか『知らない』って答えたぞ?」

ボーちゃん「…そっか。僕の聞き間違え」

しんのすけ「全く、若いんだからしっかりするんだぞ?」

~~~~~~~~~~

しんのすけの口調がちょくちょくおかしい
何でもかんでも無理矢理「~ぞ」を着ける必要ない
「しっかりするんだぞ?」→「しっかりしてよね~」


でも面白い

>>238

マジか。

参考にするが、クレしん見ないから、口調直せないと思う。

ボーちゃん「という事が、あった」

ネネ「何で、そういう大事な話を先に言わないの!」

風間「どういう事だ?しんのすけは、覚えてないんだろ?」

ボーちゃん「覚えてない…筈」

ネネ「筈って、何よ!」

風間「…今日は前回と違かったんだろ?」

ボーちゃん「違う。何もかもが」

風間「なのに、また…死にに行くのかよ!」

ボーちゃん「…うん、もしかしたら」

ネネ「何でよ?!」

今更指摘するがsaga sageになってるけど投稿する時はsage無い方がいいと思う

ネネ「今日、お腹いっぱい食べたじゃない?助けてくれる人がいるって、支えが出来たじゃない?!」

ネネ「なのに…またしんちゃんが、怖くて苦しい思いを…しなくちゃいけないの?」グスッ…

ボーちゃん「…」

風間「…」

マサオ「…あの」

>>243

どうも。

迷ったが、このままにしとく。

ネネ「何よ?!」ギロッ

マサオ「ひぃっ?!」

風間「ネネちゃん、落ち着いて」

ボーちゃん「マサオ君、なに?」

マサオ「えっと…僕が思うに…しんちゃんは怖くて苦しい思いなんか、してないんだよ」

ネネ「…あんた!」

風間「ネネちゃん…最後まで話を聞こう」

マサオ「…みんな、噂は聞いた事あるよね?日曜日に掛かってくる、出前の電話の話」

ボーちゃん「しんちゃん達の住所に届ける様に言う、電話の話だよね?」

風間「この町では、誰かのいたずらって事になってるけど」

マサオ「うん。今でこそ、届けにいく人は滅多にいないけど…前に知り合いのお兄さんが間違えて届けに行ったんだってさ」

マサオ「でね、届けに行ったお兄さんの話では、家から凄く楽しそうな声がしたんだって」

ネネ「…」

マサオ「多分、車で自殺の場所に行く時か…死んで家に帰って来る時なのかな?」

マサオ「月曜日からの一週間の辛さなんか目じゃないくらい、楽しかったんじゃないのかな…て、思うんだけど…」

風間「…」

ボーちゃん「…」

風間「じゃあ、しんのすけ達が望んで、繰り返してるって事か?」

マサオ「ま、間違ってるかもしれないけど…」

ボーちゃん「いや、多分そうだ」

ボーちゃん「僕もしんちゃん達が…死んだ家族が帰って来る話は知ってた筈なのに…」

ボーちゃん「最後の楽しみの為に…敢えて繰り返しているとは思ってもみなかった」

ネネ「…じゃあ、どうするの?」

ボーちゃん「止めるよ」

ボーちゃん「やっぱりこんなのは、間違ってる」

風間「じゃあ、作戦を練り直す必要があるな?」

ボーちゃん「そうだね」

マサオ「…」

ネネ「…」

トントン

風間ママ「トオルちゃん、紅茶とお茶お持ちしましたよー」

風間「ママ!だからいらないって、言っただろ!」

ちょっと休む。

-金曜日-

しんのすけ「お!お兄さん!」タタッ

ボーちゃん「しんのすけ君、おはよう。お出かけ?」

しんのすけ「おう、今からお兄さんのスーパーに行こうと思ってた所」

ボーちゃん「そう?僕は今日、お休みなんだ」

しんのすけ「えー、お休みなのー?」

ボーちゃん「ひまわりちゃんは?」

しんのすけ「今日は、母ちゃんと家」

ボーちゃん(去年、同じ事をしんちゃんに聞いた時、しんちゃんは言い難そうにして答えなかった…)

ボーちゃん(今年はみんながいる…だから、大丈夫。絶対、助けるんだ…)

しんのすけ「お兄さん?」

ボーちゃん「あ、ごめん。ちょっと、ボーッとしてた」

ボーちゃん「僕、これからデートなんだ」

しんのすけ「ほうほう?昨日のお姉さんと?」

ボーちゃん「そう。しんのすけ君も来る?」

しんのすけ「えー、どうしてもって言うなら」

ボーちゃん「どうしても」

しんのすけ「…あ、じゃあ…そこまで言うなら」

テクテクテクテク…

しんのすけ「デートって、何処でするんだ?」

ボーちゃん「着いてからの、お楽しみ」

しんのすけ「お兄さんがどうしてもって言うから、ついて行くけど、大丈夫なの?デートなんだよね?」

ボーちゃん「大丈夫」

ネネ「しんちゃん、おはよう」ニコッ

しんのすけ「おはようなぎ!そしてお姉さん、オラはこっちだぞ」

ボーちゃん「じゃあ、中に入ろうか」

しんのすけ「もしかして、此処でデートするの?」

ボーちゃん「そう」

しんのすけ「言っとくけど、此処は幼稚園だぞ?」

ボーちゃん「幼稚園で、デートなんだ。ナウなヤングの間で、流行ってる」

しんのすけ「ほうほう」

ボーちゃん「来ないの?」

しんのすけ「だって、オラ、今日お休みのお電話したから…」

ボーちゃん「此処、しんのすけ君の幼稚園?」

しんのすけ「うん」

【アクション幼稚園】

しんのすけ「おはよう!組長!」

園長「あ、ボーちゃんとネネちゃん…」

しんのすけ「ボーちゃんとネネちゃん?いないぞ?」キョロキョロ

ボーちゃん「先生…」

園長「え?ああ…いるんですか?」

ボーちゃん「はい、此処に」

しんのすけ「?」

園長「えっと…おはようございます、しんのすけ君」

しんのすけ「組長、少し見ない間に老けた?」

ボーちゃん「部屋、お借りします」

園長「ええ…『前の』ひまわり組の教室ですよね?他の二人は、もう中で待ってますよ」

ボーちゃん「ありがとうございます」

しんのすけ「組長、ボーちゃんとネネちゃんが何処にいたんだぞ?」

ボーちゃん「来て、しんのすけ君」ぐいっ

しんのすけ「ああ、もう…強引なんだから」

【元ひまわり組教室】

ガラッ

しんのすけ「みんなーおひさしぶ、りー…」

風間「…」

マサオ「」ビクッ

しんのすけ「…あれ?」

しんのすけ「おっかしいな…お休みじゃないのに、何でみんないないんだ?教室、間違っちゃった?」

ボーちゃん「此処はひまわり組だよ。『元』だけどね」

しんのすけ「元?」

風間「ボーちゃん、その…しんのすけ、今いるのか?」

ボーちゃん「此処」ポンッ

しんのすけ「?」

マサオ「う…やっぱり何か怖い…」

ネネ「しんちゃんなんだから、怖い訳ないでしょ!」

しんのすけ「お兄さん、みんなは何処?風間君、マサオ君、ネネちゃん、ボーちゃん、吉永先生は何処に行ったの?」

ボーちゃん「風間君は、あのお兄さん」

しんのすけ「!」

ボーちゃん「マサオ君はその隣のお兄さん、ネネちゃんはこのお姉さん」

しんのすけ「え?」

ボーちゃん「そして僕が、ボーちゃん」

しんのすけ「あは…はははは…笑えない冗談だぞ」

ボーちゃん「冗談じゃ、ない」

しんのすけ「だ、だって!みんな、オラと同じで5歳だぞ?お兄さん達は大人じゃないか!」

ボーちゃん「本当だよ」

しんのすけ「違う…」

しんのすけ「お兄さんの嘘つき!!信じてたのに!!」

ボーちゃん「嘘じゃ、ない」

しんのすけ「酷いよ!『また』嘘をついた!」

ボーちゃん「!」

ボーちゃん「…また?しんのすけ君、今、『また』嘘をついたって言った?」

しんのすけ「言ってないぞ!誤魔化すな!オラ、帰るぞ!」

ボーちゃん「待って!」ぎゅう

しんのすけ「放せ!放すんだぞ!」

ボーちゃん「…」

ボーちゃん「聞いて、しんのすけ君」

しんのすけ「嫌だ!オラ、何も聞きたくないー!」

ボーちゃん「しんのすけ君、君はもう死んでいる」

しんのすけ「!」

しんのすけ「ちが、違う!オラは生きてる!まだ、生きてるもん!」

ボーちゃん「やっぱり死んでからの事、少しは覚えてるんだ…」

風間「え?覚えてるって?」

ボーちゃん「本人は気づいてないけど、深層意識で覚えてる」

しんのすけ「何言ってるか、意味分かんないぞ!」

ボーちゃん「去年、僕らは会ってる」

しんのすけ「会ってない!」

ボーちゃん「去年、しんのすけ君に同じ話をした時も、そう言ったね」

しんのすけ「オラは何にも知らない!」

風間「いい加減にしろ!!」

風間「しんのすけ!聞け、お前は15年前に死んだんだ」

しんのすけ「!」

風間「車で、家族みんなで死んだ…死んじゃったんだ…」

しんのすけ「…風間、くん?」

ネネ「どうせ信じられなくてゴネてるんでしょうけど、聞きなさい!私達は、しんちゃんを助けたいの!」

マサオ「そ、そうだよ!お願いだから、信じてよ…」

しんのすけ「…ネネちゃんと、マサオ君?」

ボーちゃん「しんちゃん…」

しんのすけ「!」

しんのすけ「…ボーちゃん?」

ボーちゃん「うん」

しんのすけ「本当に、ボーちゃんなの?」

ボーちゃん「…本当」

しんのすけ「…」

しんのすけ「…オカシイと思ってた」

ボーちゃん「しんちゃん…」

しんのすけ「何だ。オラ、死んじゃったのか」

ボーちゃん「そう、15年前に」

しんのすけ「…家の周りに居た、怖い人達は?」

ボーちゃん「もういない」

しんのすけ「そっか。良かった」

ボーちゃん「…」

しんのすけ「しかし、みーんな変わっちゃったぞ」

しんのすけ「ボーちゃんは、眼鏡かけてるし、風間君は今時の大学生だし、マサオ君は頭に海苔が生えたし、ネネちゃんは…何か、ネネちゃんのママにそっくりになったぞ」

風間「どう、ボーちゃん?しんのすけの説得は出来た?」

ボーちゃん「うん」

しんのすけ「?」

テクテクテクテク…

しんのすけ「…」じぃ…

ネネ「そっかぁ、良かった」

マサオ「これでしんちゃんを救えるね!」

しんのすけ「…ボーちゃん。みんな、オラが見えないの?」

ボーちゃん「うん」

ボーちゃん「それに言ってる事も、聞こえない」

しんのすけ「オラが、死んじゃってるから?」

ボーちゃん「そう」

しんのすけ「ボーちゃんは、何で聞こえるの?」

ボーちゃん「分からないけど、何年か前から聞こえて見えるようになった」

しんのすけ「ほう…大変だな」

ボーちゃん「しんちゃん、覚えてないかもしれないけど。15年前から、毎年同じ時期に同じ一週間を繰り返してるんだよ」

しんのすけ「…最後は、凄く楽しいんだぞ?」

ボーちゃん「思い出したの?」

しんのすけ「…死んでるって言われてから、少しだけ」

しんのすけ「朝からみんな仲良しで、まあ、ちょっと夫婦喧嘩はあったけど。で、帰って来て、みんなでご馳走食べていっぱいいっぱい笑うんだ」

しんのすけ「それで凄く…幸せだなって、思うんだぞ」

ボーちゃん「…」

しんのすけ「でも、それじゃいけないんだよね?」

ボーちゃん「うん…」

ボーちゃん「僕らは、しんちゃん達を助けたい。今度こそ」

しんのすけ「…オラは、何をすれば良いの?」

【野原家】

みさえ「だから言ってるでしょ!」

みさえ「一人で死ぬなんて!」

ひろし「でも、子供達が…」

みさえ「親を失った子が、どれだけ惨めな想いをすると思ってるの?!」

ひろし「でも…」

みさえ「でもじゃないわよ!何でも勝手に決めないでよ!」

がチャリ

しんのすけ「ただいまー」

みさえ「しんちゃん?」

ひろし「…お前、まだ帰ってなかったのか?」

しんのすけ「ちょっと幼稚園に行ってた」

みさえ「お馬鹿!何でこんな時間まで幼稚園にいるのよ!」

しんのすけ「!」

しんのすけ(いつもは金曜日に遅く帰って来た時…母ちゃんには無視されたのに)ドキドキ

しんのすけ(…いつも?)

みさえ「しんちゃん!聞いてるの?!」

ひろし「まあまあ、みさえ…落ち着けって」

しんのすけ(本当に…オラ達は繰り返してたんだ…)

しんのすけ(でも…母ちゃんは、オラの事を見た)

しんのすけ(オラの事を、怒ってくれた…まだ日曜日じゃないのに)グスッ

ひろし「あ…」

みさえ「ええ?」

ひろし「しんのすけが泣くなんて…お前、キツく叱り過ぎだぞ」

みさえ「普通よ!普通に叱ってたでしょ!」

しんのすけ「違う…オラ、嬉しかった」

しんのすけ「母ちゃん、父ちゃん…心配してくれて、ありがとう…」

ひろし「…お前、どうしたんだ?」

みさえ「悪い物でも食べたの?」

しんのすけ「ううん…オラも、父ちゃんと母ちゃんとひまわりを…お助けしたい」

みさえ「…」

ひろし「…」

みさえ「じゃあ、パパとママは大事な話をしてるから、隣の部屋でひまと遊んでて?」

しんのすけ「ほーい…」テクテク…

ひろし「…あいつ、本当にどうしたんだろう」

みさえ「もしかして幼稚園で、家の事で何か言われたんじゃないかしら…」

ひろし「…」

【隣の部屋】

しんのすけ「ひまわり?」

ひまわり「たあ」

しんのすけ「オラ達、死んじゃってるんだって」

ひまわり「てぇ?」

しんのすけ「そう。しかも何回も繰り返し死んでるんだぞ」

しんのすけ「日曜日はいつも、楽しいけど…もうオラは繰り返したくない」

しんのすけ「もう終わりにしなくちゃいけない」

ひまわり「うう?」

しんのすけ「だから、オラはやるぞ!」

続きは明日の夜辺りにする。

おやすみ。

ミスった。

>>259>>260の間に

ボーちゃん「大丈夫。しんのすけ君が来てくれた方が、みんな喜ぶよ」

しんのすけ「!」

ボーちゃん「だから、一緒に行こう」

しんのすけ「…うん!」

が、入る。

-土曜日-

ひろし「…今日、例の物を買ってくる」

みさえ「…ええ、お願い…気を付けてね?」

ひろし「ああ…」

しんのすけ「オラもお出かけするから」

みさえ「あ…ええ…」

ピンポーン

みさえ・ひろし「」ビクッ

ピンポーンピンポーン

しんのすけ「ほーい」タタッ

みさえ「駄目!借金取りかもしれないでしょ!」

しんのすけ「だーいじょーぶ」

ガチャ

しんのすけ「ほら、この間のお兄さんだぞ」

ボーちゃん「…」

みさえ「あ…この間は…どうも」ペコリ

ひろし「え?誰?」

みさえ「ほら、話したでしょ?例の、ファミレスの」

ひろし「あ…ああ…その節は…」ペコリ

ボーちゃん「…」

しんのすけ「で?こんな朝早くからどうしたの?」

ボーちゃん「…しんのすけ君」ぐいっ

しんのすけ「!」

しんのすけ「何すんだぞ!苦しいぞ!」ジタバタ

ひろし「何すんだ!」

ボーちゃん「動くな…」ぎゅう…

みさえ「!」

ボーちゃん「動くと、この坊主の命はない…」

ひろし「な、何だよ!いい人だって、言ったじゃないか!」

みさえ「…あ!そう言えば、この人『前』に家の庭をウロウロしていた事がある!」

ひろし「何でそういう事、早く言わないんだよ!」

みさえ「だって、忘れてたんだもの!」

ボーちゃん「…」

ひろし「お前…あの闇金の奴か?」

ボーちゃん「…」

ひろし「答えろ!」

ボーちゃん「だったら、なに?」ジロッ

ひろし「く…」

ひろし「悪いのは俺だ!俺が、連帯保証人だ!妻と子供には手を出すな!」

みさえ「!」

ボーちゃん「…」

みさえ「わ、私はどうなっても構わない!だから、子供にも主人にも酷い事をしないで…」ガクガク…

ひろし「!」

ボーちゃん「…明日、無理心中する両親の言葉とは、思えない」

みさえ「何でそれを…」

ボーちゃん「おい、お前ら」

マサオ「へい、兄貴」ササッ

風間「く、車の準備は出来てます」ササッ

ボーちゃん「ガキが大事なら、着いて来い…娘も連れて」

しんのすけ「父ちゃん、母ちゃん…」

みさえ「ひ…人でなし!」

ひろし「仕方ない…」

みさえ「でも、あなた…」

ひろし「…流石に、子供達には酷い事はしないよ」

みさえ「本当に?」

ひろし「…」

ボーちゃん「ああ、子供達には手を出さない。お前らが、着いて来るならな」

ひろし「…分かった」

みさえ「ひまわり連れてくる」

ボーちゃん「警察に連絡するつもりなら、無駄だぞ。電話線は切ってるし、裏では若い者が見張ってる」

みさえ「…分かってるわよ」

ひろし「…本当に、子供達には手出しをしないんだろうな?」

ボーちゃん「だから、お前ら夫婦次第だ」

ひろし「…クソ」

ボーちゃん「…」

ひまわり「うえぇ!」

みさえ「よしよし…ひま、静かにして?」

ボーちゃん「じゃあ、揃ったな。此処に乗れ」

ギイ…

ひろし「トラックの、荷台?こんな所に乗れってか?」

ボーちゃん「安心しろ、俺も一緒に乗る」







【隣の家】

隣のおばさん「何だろう?隣が騒がしいね」

隣のおばさん「空き家だからって、たちの悪い連中が来てるんじゃないだろうね…」

隣のおばさん「…何だい?どうして隣にトラックが?」

「しゅっぱーつ、おしんこー!」

隣のおばさん「!」

バタバタバタバタ…

バタンッ!

隣のおばさん「!」

しんのすけ「…お?」

ブロロロロ…

隣のおばさん「…しんちゃん?」

>>316

訂正↓

ボーちゃん「じゃあ、揃ったな。此処に乗れ」

ギイ…

みさえ「…此処って」

ひろし「トラックの、荷台?こんな所に乗れってか?」

ボーちゃん「安心しろ、俺も一緒に乗る」

【トラック・運転席】

しんのすけ「今の、隣のおばさんかな?」

しんのすけ「すっかり老けて…隣のお婆さんになってたぞ…」

しんのすけ「…」

しんのすけ「それにしても、マサオ君の舎弟1号っぷりは板についてたぞ?」

しんのすけ「風間君は、変に照れてる感じだったけど」

マサオ「…ボーちゃん、大丈夫かな?」

風間「大丈夫だって、相手は幽霊だし…今回はしんのすけも味方につけたんだし…」

しんのすけ「そっか…オラの声も姿も分からないんだっけ」

しんのすけ「…」

風間「しんのすけ、今此処に居るんだよな?」

マサオ「…うん、多分」

風間「…そっちの言葉分かんないから、こっちから適当に話すぞ」

風間「最初に一つ、お前に謝らなくちゃいけない事がある」

風間「覚えてるか?お前が幼稚園に来なくなった日の、前の週の事」

風間「僕、お前と遊ばないって、言っただろ?」

風間「母さんに遊ぶなって言われても、無視してれば良かったのに…」

マサオ「僕も、お袋に言われたからって…こんな事になって後悔してるよ」

マサオ「本当はしんちゃんと遊ぶの、凄く好きだったのに」

風間「謝られても、ただの押し付けがましい自己満足だよな…」

風間「でも、しんのすけ。お前が今此処にいるなら、謝らせて欲しい…意地悪してごめん…」

マサオ「本当に、ごめんなさい」

しんのすけ「ぶりぶりーぶりぶりー♪」

しんのすけ「風間君とマサオ君、こんなに近くでケツだけ星人しても、全然気が付かないぞw」

しんのすけ「ぶりぶりーぶりぶりー♪」ぷぅ…

しんのすけ「…」

しんのすけ「おっと、マサオ君のお顔の前で、おならが出てしまったぞ…」

風間「ごめん…」

マサオ「ごめんね…しんちゃん」

しんのすけ「ほっ…良かった。見えない聞こえないだけじゃなくて、臭わないんだな」

【トラック・荷台】

ブロロロロ…

ひろし「…」

みさえ「…」

ボーちゃん「…」

ひまわり「たあ♪」

ひろし「何で、借金取りがひまわり抱いてんだよ?」コソッ

みさえ「しょうがないでしょ?取り上げられたんだから!」コソッ

ひろし「しかも、何か懐いてるし!」コソッ

みさえ「知らないわよ!」コソッ

ボーちゃん「…」







みさえ「…」ちらっ

ひろし「…」コクッ

みさえ「あ、あの…」

ボーちゃん「何だ?」

みさえ「こ、子供好きなんですか?」

ボーちゃん「…普通」

みさえ「普通、ですか?でも…しんのすけにも随分、親切にしてくれましたよね?」

ボーちゃん「普通。見ていられないくらい、可哀想だっただけ」

みさえ「…」

ボーちゃん「どうして、息子に辛く当たった?」

みさえ「…しんのすけが…能天気に、幼稚園に通ってるから…」

ボーちゃん「能天気?」

みさえ「そうよ…息子を幼稚園に送り出した後、ずーっとあんた達が家の前をうろついていたから」

みさえ「何度もドアを叩いて…ご近所さんにも変な噂が立つし…なのに、あの子は!」

みさえ「のーてんきな顔して、母ちゃんただいま…苛々すると小じわが増えるぞって!」

みさえ「あんたが!あんたが!楽しくしている間に…私が、どれだけ大変な目に遭ってるかあ!!」

ひろし「み…みさえ…」

みさえ「ひまわりは泣くしかしないし…もう…腹が立って腹が立って!」

ボーちゃん「だから、子供達に当たった?」

みさえ「だって!だって!貴方には分からないわよ!」

みさえ「子供もいないでしょ?それに借金取りには、返済を迫られる側の、生活を脅かされる側の気持ちなんか、分からないでしょお!!」

ボーちゃん「…」

ボーちゃん「しんちゃんは、決して能天気なんかじゃなかった」

みさえ「!」

ボーちゃん「幼稚園で普通にお馬鹿してた。でも、やっぱり普通じゃなかった」

ボーちゃん「何だか、怯えてた。ずっとお母さんや妹を心配してた」

みさえ「…」

ボーちゃん「それは、当時の担任の吉永先生が手紙にして、直接貴女に手渡した筈」

みさえ「何で…手紙の事…」

ボーちゃん「その話ぶりじゃ、手紙は読まずに捨てたんだね?」

ひろし「おいおい、今の言葉どういう意味だ?『当時の担任』って?」

ボーちゃん「言葉通りの、意味」

みさえ「…貴方…一体」

ブウウウン…

ボーちゃん「…着いたみたいだ」

切り悪いが、ちょっと休む。

もうちょい、続ける。

ガチャ…バーン!

しんのすけ「父ちゃん!母ちゃん!ひま!」

みさえ「し、しんのすけ!」タタッ

ひろし「しんのすけ!」タタッ

みさえ「大丈夫?痛い事、されてない?」

ひろし「すまない。俺の所為で、怖い目に遭わせてしまって」

しんのすけ「ご心配なく!オラ、大丈夫だぞ」

ネネ「早かったわね」

みさえ「あ、あの時の彼女さん…」

ひろし「あの見えない聞こえないって人?とてもそうには見えないけど…」

みさえ「多分、嘘だったのよ」

ひろし「しかし、何でそんな雑な嘘をつく必要があるんだよ」

ひろし「いや、それより…此処って?」

しんのすけ「旅館だぞ」

みさえ「!」

みさえ「旅館って…どうして?」

ひろし「港の倉庫と間違えたんじゃ…」

ボーちゃん「間違えじゃありませんよ」

しんのすけ「お兄さん達は、オラ達を借金取りから逃がしてくれたんだぞ」

みさえ・ひろし「!」

~前日~

しんのすけ「夜逃げ…て、なに?」

ボーちゃん「こっそり誰にも知られない様に、いなくなる事」

しんのすけ「朝にするんだよね?」

ボーちゃん「そう」

しんのすけ「それって、朝逃げじゃない?」

ボーちゃん「…確かに」

ネネ「ちょっと、まどろっこしいけどね」

ボーちゃん「ただ、普通に夜逃げに協力するって言っても、多分拒否されると思う」

風間「親戚の家に、迷惑をかけたくないから、だっけ?」

ボーちゃん「遺書には、そう書いてあった」

ボーちゃん「だから、夜逃げは促すんじゃなくて…あくまで強制的に」

マサオ「でも、借金取りに化けて、しんちゃんを人質にするんでしょ?」

ボーちゃん「うん」

マサオ「それで、しんちゃんの両親がいう事を聞かなかったら?」

ネネ「この、オニギリ野郎!何て事言うの!此処にはしんちゃんもいるのに!」

しんのすけ「…大丈夫だぞ、マサオ君」

しんのすけ「父ちゃんも母ちゃんも、ちゃんと言う事を聞く」

ボーちゃん「そう。これは『賭け』じゃない」

マサオ「…ごめん」

ネネ「あ、メール来た!」

訂正

しんのすけ「…大丈夫だぞ、マサオ君」

しんのすけ「父ちゃんも母ちゃんも、ちゃんと言う事を聞く」

ボーちゃん「そう。これは『賭け』じゃない」

マサオ「…ごめん」

♪~♪~

ネネ「あ、メール来た!」

ネネ「うん…よっしゃあー!」

ボーちゃん「大丈夫そう?」

ネネ「ばっちりよ。まさか、こんないい所に泊まれるなんて…」

しんのすけ「いい所?」

ボーちゃん「夜逃げ先の旅館」

風間「何処?」

ネネ「此処よ!」

風間「…嘘だろ?」

ネネ「本当よ」

マサオ「…わあ…流石だなあ」

しんのすけ「ねぇ、一体どんな場所?」

ボーちゃん「一年先も予約埋まってる、老舗の旅館」

しんのすけ「いつ予約したの?」

ボーちゃん「昨日、ネネちゃんが」

ネネ「ただ聞いただけよ?」

ネネ「土曜から泊まれる、ちょっと良い旅館はないかって。愛に」

しんのすけ「あ、愛って…あの、愛ちゃん?」

ボーちゃん「その、愛ちゃん」

しんのすけ「今のオラの事…知ってるの?」

ボーちゃん「それは言ってない」

ボーちゃん「愛ちゃんは、しんちゃんの家が大変になる前に、外国へ行ってしまったからね」

ボーちゃん「しんちゃんは『事故』で死んだって、聞いてるらしいよ」

しんのすけ「…なら、良かった」

風間「でも分からないものだよね?あんなに仲が悪かったネネちゃんと愛ちゃんが、ペンフレンドになるなんて」

マサオ「愛ちゃんの引っ越しが決まった時、ネネちゃんこっそり手紙渡してたもんね…僕も、手紙渡したんだけどな…」ボソッ

しんのすけ「おう、そうなのか?」

ネネ「今回の事も、詳しくは言ってないけど…愛は理由を聞かずに、旅館を融通してくれたわ」

ボーちゃん「大きな旅館なら、借金取りも入り難いイメージだし、丁度良かった」

しんのすけ「みんな、オラ達の為に…」

ボーちゃん「…みんなで助かろう」

しんのすけ「うん!」

~~~~~~~~~~

ひろし「え…夜逃げって事かよ?」

みさえ「朝だけど…ああ、もう夜ね。しかし夜逃げ先が旅館って」

ボーちゃん「逆に此処なら、ガラの悪い人達も入って来れないから、安心」

みさえ「…夜逃げなら、夜逃げって、どうして最初に言ってくれないんですか?」

ボーちゃん「言って、素直に着いてきてくれましたか?」

みさえ「それは…」

ボーちゃん「ずっと、此処にいても迷惑になります。中へ入りましょうか」

しんのすけ「父ちゃん!母ちゃん!早く!」タタッ

みさえ「あ、しんのすけ!」タタッ

ひろし「先行くなよ!」タタッ

続きは明日の夜辺りにする。

>>345

訂正↓

ネネ「ちょっと、ややこしいけどね」

ボーちゃん「ただ、普通に夜逃げに協力するって言っても、多分拒否されると思う」

風間「親戚の家に、迷惑をかけたくないから、だっけ?」

ボーちゃん「遺書には、そう書いてあった」

【旅館の部屋】

仲居「では、失礼いたします…」パタン

ひろし「…これは」

みさえ「…嘘でしょ」

しんのすけ「おお!ご馳走ご馳走!」

ひまわり「たあ!」

みさえ「こんな大きな伊勢海老、見た事ない…」

ひろし「こっちの酒は…超希少酒じゃねえか!」

みさえ「…これって、後で請求されないわよね?」コソッ

ひろし「借金が、また増えるのか…」コソッ

ボーちゃん「心配しなくても、お代は頂きません」

みさえ「え…でも、流石にそれは…」

ボーちゃん「ある人の好意で、今回はタダで寝食提供して貰える事になりました」

ひろし「ある人?」

ボーちゃん「…」

しんのすけ「いただきます!」

みさえ「しんちゃん!」

しんのすけ「もぐもぐ、ぱくぱく…うー…美味い!!」

みさえ「!」

しんのすけ「美味しいぞ!二人とも、食べなくちゃ勿体ないぞ!」

ひろし「…でも」

みさえ「い、いただきます!」パクッ

みさえ「おっいしい!」

ひろし「え…じゃあ、俺もいただきます…」パクッ

ひろし「…うめえ!こんな美味い物、初めて食った!」

ボーちゃん「お酒はどれにしますか?」

ひろし「えっと、じゃあ…取り敢えずビールで」

みさえ「取り敢えずって…良いお酒もあるのに?」

ひろし「良いんだ。サラリーマンは、取り敢えず最初はビールなの!」







ひろし「はあ…食った食った…」

みさえ「ふう…」

ひまわり「げふっ」

しんのすけ「…うまかった」

ボーちゃん「そう、良かった」

ひろし「世の中には、こんなに美味い物が沢山あるんだな…」

みさえ「そうね…」

ひろし「何か、生きてて良かったって感じだな」

みさえ「ええ」

ボーちゃん「…」

ボーちゃん「それから…この部屋ですが、露天風呂付きになってますから、そっちに入って下さい」

みさえ「え?大きいお風呂は駄目なの?」

ボーちゃん「駄目です」

みさえ「あ…そう?」

ひろし「いいだろ、別に風呂くらい。しかしプライベート露天風呂なんて、贅沢だなあ」

みさえ「別に、嫌って言った訳じゃないんだけど…」

ボーちゃん「お風呂に入るなら、僕らは退出しますが」

ひろし「ああ、半日以上も荷台にいたし…入るか?」

みさえ「えー!入るかって…みんなで?」

ひろし「良いじゃないか。家族水入らずで」

しんのすけ「どうせ一緒に入るなら、綺麗なお姉さんの方がいいけどね」

ひろし「まあ、それが出来ればな」

しんのすけ「あはは」

ひろし「あははは」

みさえ「…」

ゴン!ゴン!

みさえ「このっ、碌でなしどもが…」

ひまわり「たあ!たあ!」

ひろし「…すんません」ジンジン…

しんのすけ「いつもの母ちゃんだ…」ジンジン…

ボーちゃん「じゃあ、僕らは隣の部屋に居ますから。部屋から出たい時は、内線で呼んで下さい」

みさえ「あ…はい…」

ひろし「あの…ありがとうございます」ペコリ

みさえ「ありがとうございます」ペコリ

ボーちゃん「…どういたしまして」

【廊下】

マサオ「しんちゃん達の様子って、どうだった?」

ボーちゃん「喜んでる」

ネネ「じゃあ、楽しそうなの?」

ボーちゃん「少なくとも、借金の心配をしている様には、見えない」

風間「…でも、完全に安心って訳でもないよな?」

マサオ「…ちょっと聞きたいんだけど」

風間「なに?」

マサオ「いや、明日の日曜日、何事もなく過ぎたらどうなるの?」

風間「どうって…」

ネネ「あ…」

ボーちゃん「…」

マサオ「心中しなければ、それでその…成仏って言うのかな?そういうの、するの?」

ボーちゃん「…しないと、思う」

風間「やっぱりおばさん達にも、今の状況を分かって貰わなくちゃ駄目か…」

ネネ「でも、漸く生きる気力が湧いてきたんでしょ?貴方達は死んでますなんて、言うのは…」

風間「それは…」

ボーちゃん「仕方ない」

ボーちゃん「事実は、変えられない」

マサオ「どうやって伝える気?」

ボーちゃん「…」

【露天風呂】

しんのすけ「ふう、極楽極楽…」

ひろし「お、見事な満月だ…山も見えるな…今度は紅葉の季節に来てみたいぜ」

みさえ「何言ってんだか。此処、いくらすると思ってるの?」

ひろし「良いだろ。夢くらい見させろよ」

ひまわり「よお」

みさえ「しんちゃん?」

しんのすけ「ん?」

みさえ「さっきのお兄さんとどういう関係なの?」

ひろし「あ、そうだ…トラックで拉致…夜逃げをさせて、タダでこんな旅館を用意してくれたし。一体、何者なんだよ?」

しんのすけ「お友達だぞ」

ひろし「友達って…相手は大人だろ?何処で知り合ったんだ?」

しんのすけ「幼稚園」

ひろし「幼稚園って…実習生とか?」

しんのすけ「違う。先生じゃなくって、友達だぞ。父ちゃんも会った事あるんだぞ?」

ひろし「へ?」

みさえ「そうなの?」

しんのすけ「母ちゃんもだぞ。あのお兄さんだけじゃなくて、お姉さんや舎弟の人も、家に遊びに来た事だってあるんだぞ?」

ひろし「…覚えてないな。みさえ、庭で見た事あるって言ったよな?」

みさえ「え?ええ…」

ひろし「知ってたか?」

みさえ「知ってる訳ないじゃない…」

ひろし「だよなぁ…」

しんのすけ「オラ、嘘ついてないからな!」

ひろし「分かった。ごめん、俺達、思い出せないよ」

みさえ「…」

~~~~~~~~~~

ガンガンッ!

ガンガンッ!

ボーちゃん「おばさん!おばさん!」ガンガンッ

ボーちゃん「こんなに叩いても窓が割れないなんて…どうなってる…」

ボーちゃん「おばさん!聞いて下さい!」

ボーちゃん「正気に戻って下さい。おばさん」

ボーちゃん「これ以上、しんちゃんを苦しめないで」

ボーちゃん「貴女はもう…死んでいるんです!!」

~~~~~~~~~~

みさえ「!!」

ひろし「ん?どうした、みさえ?」

みさえ「え…いや、何かしら?寒気?」

ひろし「何だよ、夏風邪か?」

みさえ「違うわよ。そんなんじゃないけど…」ちらっ

しんのすけ「いーい湯ーだなっ。アハハ♪」

みさえ「…まさかね」







しんのすけ「良い湯だった」

ひろし「確かにな」

しんのすけ「喉も渇いたぞ」

ひろし「そうだな、自販機にでも行くか…て、ない」

しんのすけ「ないって?」

ひろし「財布だよ」

みさえ「えー!」

みさえ「どうして忘れてくるの!」

ひろし「だって、急いで出てきた訳だし…みさえは持ってるのかよ?」

みさえ「私は…嫌だ。持って来てない…」

ひろし「ほら見ろ」

しんのすけ「まあまあ、お兄さんが奢ってくれるから」

ひろし「だから、あの男は何者なんだって?資産家か?」

しんのすけ「だから、友達だってば」

みさえ「…」

しんのすけ「ほら、父ちゃん。行くぞ」

みさえ「あ、その前に内線で、と…」ピッポパッ

【隣の部屋】

ボーちゃん「はい」

みさえ『あ…その、しんのすけが自販機に行きたいと言ってるんですが…』

ボーちゃん「分かりました。今、行きます」ガチャン

ネネ「なに?」

ボーちゃん「自販機に行くんだって」

風間「ボーちゃんがついて行くんだよね?」

ボーちゃん「僕しか、しんちゃん達と会話できないからね」

ボーちゃん「じゃあ、行ってくる」

マサオ「待って!部屋に残った他の人が、用事あった場合は?」

風間「さっき確認しただろ?内線を取って、折り返す事を伝えたら、直ぐにボーちゃんに連絡だよ」

マサオ「そうじゃなくって…僕らに黙って、何処かに行った場合。見えないし聞こえなくちゃ分からないでしょ?」

風間「それは…」

ボーちゃん「気配」

ボーちゃん「しんちゃん達は気配が分かりやすいから、それを便りに動いて」

マサオ「え…気配って?」

ボーちゃん「風もないのに不自然に揺れる水溜まり、誰もいない筈なのに聞こえる息遣い」

ボーちゃん「そういった、気配」

マサオ「う…」

風間「分かった。注意してみるよ」

ボーちゃん「頼んだ」

【廊下】

ボーちゃん「しんちゃん」

ガラッ

しんのすけ「おお、お待たせ!因みに父ちゃんも母ちゃんも、財布は家に置いて来たって」

ひろし「すみません…」

ボーちゃん「気にしないで下さい」

しんのすけ「ジュース!ジュース!」

ひろし「あのー…」

ボーちゃん「何ですか?」

ひろし「しんのすけとは…友達、なんですよね?」

ボーちゃん「友達ですよ」

ひろし「幼稚園で会ったとか」

ボーちゃん「そうですね」

ひろし「家にも来た事があるとか」

ボーちゃん「そうですよ」

ひろし「…俺と何処かで、お会いした事ありましたか?」

ボーちゃん「何度も」

ひろし「そ、そうですか…」

ひろし(…まーったく思い出せん!)

ひろし(イメチェンしたとか?いや…それでもこんな年上の友達がいるなんて聞いた事もないし…)

ひろし(待てよ?しんのすけを使って、俺らをおちょくってるだけかも…)

しんのすけ「自販機だ!サイダーあるかな?」タタッ

ひろし「こらこら、走るなよ」

ボーちゃん「しんちゃん、ボタン押して」

しんのすけ「よしっ、君に決めた!」ピッ…ガタンッ

しんのすけ「ほ、冷たいぞ」

ひろし「ありがとうございます。しんのすけも、お礼」

しんのすけ「お!ありがとうございます!」

ボーちゃん「どういたしまして」

ひろし「…」

ひろし(でもやっぱり、違うのか?)

ひろし(長年の友達というか、幼馴染みのような気安さがあるんだよな…)

子供「ママー!」

母親「なあに?」

子供「あのお兄ちゃん、へーん!」

ひろし「?」

子供「自動販売機の前で、『一人で』喋ってるー」

母親「しー!見ちゃ駄目よ」

子供「え?でも変なんだもん」

母親「駄目なの。早く部屋に戻るわよ」

ひろし「…え?」

【旅館の部屋】

みさえ「う…何これ…頭が、痛い…」

~~~~~~~~~~

みさえ(どうして?力が入らない…今頃、睡眠薬が効いてきたの?)

みさえ(いや!いやよ!)

みさえ(どうして死ぬしか考えなかったの?!)

みさえ(お父さんやお母さんに迷惑かけたって、泥水を啜ったって、何をしたって…)

みさえ(生きていた方がずっと良いじゃない!!)

ドンドンッ!

みさえ「い…やあ…」

みさえ「誰か…開けて…」

ドン…

みさえ「たすけて…」

みさえ「お、願いよ…こども、たちを…うぅっ…」

みさえ(誰か…あなた…)









みさえ(死にたく、ない…)

みさえ「違う!」

みさえ「違うわ!ドアは主人と破って、換気をして」

みさえ「家族で家に帰った!」

みさえ「…帰った?」

みさえ「…」

みさえ「違う…心中は明日するつもりだった。まだ、してない…」

みさえ「なのに、何でこんな事を思い出すの…」

ひまわり「…うぅ?」

みさえ「ごめんね。ひま…何でもないわよ?」

ひまわり「たあゆう?」

みさえ「…そう言えば、ひまわりのオムツも持って来なかったわ」

みさえ「内線、かけてみましょうか」ピッポパッ

【隣の部屋】

プルルルルッ

マサオ「来た!誰が出る?」

ネネ「風間君!」

風間「分かってる…はい?」

みさえ『あの、娘のオムツを買いに行きたいのですけど』

風間「すみません。今、立て込んでいますので、また折り返します」

みさえ『え?ちょっと…』

風間「失礼します」ガチャン

マサオ「…今ので、良かったの?」

風間「他に言いようがないだろ?何言ってるか、分からないんだし」

【旅館の部屋】

みさえ「…オムツの話も出来ないくらい立て込んでるのかしら?」

ひまわり「たあ」

みさえ「じゃあ、こっちからしんのすけ達の所に行きましょうか?」

ちょっと休む。

訂正↓

>>404
みさえ「たすけて…」

みさえ「お、願いよ…こども、たちを…うぅっ…」

みさえ(誰か…あなた…)









みさえ(死にたく、ない…)

~~~~~~~~~~







【旅館の部屋】

しんのすけ「母ちゃん!サイダー買ってきた!」バタバタ

ひろし「あんまり振ると、飲むときヤバイぞ」

しんのすけ「母ちゃーん!」キョロキョロ

ボーちゃん「?」

しんのすけ「…母ちゃん?」

しーん…

ボーちゃん「ひまわりちゃんも、いないね」

プルルルルッ

しんのすけ「お、電話だ」

ボーちゃん「僕が取る」

風間『では、只今そちらに行きますので、少々お待ち下さ…』

ボーちゃん「風間君!」

風間『え?ボーちゃん?さっき電話したばかりなのに、早いね』

ボーちゃん「こっちに向かってた所だったから…」

風間『…どうしたの?』

ボーちゃん「おばさんとひまわりちゃんが、いない」

風間『ええ?!』

風間『いないって…ちゃんと探したの?』

ボーちゃん「少なくとも、部屋にはいない。この部屋から変わった気配とか、なかった?」

風間『ごめん。分からなかった…』

ボーちゃん「…大丈夫。僕らで探す…でも、無言電話がかかってきたら、知らせて」

風間『分かった!』

ガチャン

しんのすけ「…母ちゃん、待ってろって言われたのに。何処に行っちゃったんだ?」

ボーちゃん「じゃあ、僕としんちゃんで手分けして探します」

ひろし「ちょっと、待った!」

ひろし「お前ら、俺に何か隠してるだろ!」

ボーちゃん「…後で、話します」

ひろし「待てよ!逃げるつもりなのか!」

ボーちゃん「違います。今はおばさんを探す事が先決です」

ひろし「…俺は、死んでるのか?」

しんのすけ「!」

しんのすけ「どうして、父ちゃんがそれを…」

ひろし「しんのすけは知ってたのか…」

しんのすけ「昨日、知ったばかりだけど」

ひろし「そうか…」

ボーちゃん「思い出したんですか?」

ひろし「いや…頭の中に霞がかかってて、よく思い出せねえんだが、何となく、死んだ気がする」

ボーちゃん「ええ…15年前に」

ひろし「15年?成程…じゃあ、君はえっと…誰だっけ?」

しんのすけ「ボーちゃんだぞ」

ひろし「え?あの?ボーッとした?」

しんのすけ「その、ボーちゃん」

ひろし「でかくなったし、眼鏡も掛けてるし…全然分かんないな」

しんのすけ「その…ショックじゃないの?」

ひろし「いんや」

ひろし「ショックがない訳じゃない…けど、三ヶ月前に後輩の川口に裏切られて、多額の借金背負わされた時よりは、全然ショックじゃない」

しんのすけ「ほう…感覚が麻痺してるって事ですな」

ボーちゃん「死んでると分かってくれるなら、話は早い…しんちゃん?」

しんのすけ「ほい!」

ボーちゃん「やっぱりしんちゃんは此処で待機。おばさんが来たら、この携帯で知らせて」

しんのすけ「ぶ、ラジャー!」

【廊下】

風間「僕らも手分けして探すよ!」

ネネ「私達には見えないし聞こえないけど、しんちゃんのママからは分かるんでしょ?」

マサオ「呼びかけて歩けば、おばさんには分かって貰えるもんね。僕は、念の為に部屋に残るけど」

ボーちゃん「…みんな」

ひろし「へえ?」

ひろし「もしかして、風間君とネネちゃんとマサオ君?いやあ、大きくなったなあ」

ボーちゃん「おじさん。心中した割には、メンタル強いですね」

風間「え?もしかして今、しんのすけのおじさんいるのか?」

ボーちゃん「死んだ事を、思い出したんだって」

ひろし「いやいや、皆さん。お手数お掛けしました」ペコリ

ボーちゃん「言っておくけど、僕以外には見えてないし、聞こえない」

ひろし「え…へ、へえ…」ニヤニヤ

ボーちゃん「今はいやらしい妄想をしている場合じゃ、ありませんよ」

ひろし「ば、違うよ!そういう事を考えた訳じゃ…」

ネネ「最低…」

風間「まあ、しんのすけの父親だしな」

ひろし「な、違うって!死者を冒涜するなよ!」

ボーちゃん「じゃあ、僕とおじさんは左。風間君達は右を探して」

風間「え?ボーちゃんとおじさんは別々の方が良いんじゃない?おばさんと話が出来るのは二人だけだろ?」

ボーちゃん「いや、確かにそうだけど…僕らは右から来た時、おばさんと会わなかった。多分、左に向かったんだ…僕達と鉢合わせたくなくて」

風間「じゃあ、まさかおばさんも…」

ボーちゃん「死んでると、気付いたのかもしれない」

ひろし「!」

ボーちゃん「もし、禍々しい気配を感じたら、近寄ったら駄目だからね」

風間「分からないかもしれないけど、気を付けるよ」

ボーちゃん「じゃあ」クルッ

ひろし「ま、禍々しいって、何だよ!」タタッ

ボーちゃん「あの家で最も精神的に不安定だったのは…おばさんだった」

ひろし「精神的にって…」

ボーちゃん「…死ぬ寸前の感情が影響してるんだと思うけど」

ひろし「死ぬ寸前?あ、俺どうやって死んだんだ?」

ボーちゃん「練炭による、無理心中」

ひろし「!」

ひろし「え…あれは、未遂じゃなかったか?」

ボーちゃん「換気して仲良く帰って…来られなかった」

ひろし「…」

ボーちゃん「睡眠薬を飲んで、そのまま。みんな死んだ」

~~~~~~~~~~

ひろし(はじめ離婚してから、俺だけ死のうと考えた)

ひろし(しかしみさえは頑として首を縦には振らなかった)

ひろし(家族でしょう?一人で抱え込まないでと、主張するみさえとは何度も言い合いになった)

ひろし(それでもみさえは譲らず、結局はみんなで仲良く心中という事になった)

ひろし(でも、これで良いのか?)

ひろし「…」

ひろし(良いんだ…大した人生じゃなかったし)

ひろし「…」

ひろし(酒を飲んで気が大きくなってるんだろうか?)

ひろし(不思議と死ぬのが怖くない…)

みさえ「…あなた?」

ひろし(…みさえ)

みさえ「…」

ひろし(すまなかった…)

ひろし(もう、嫌な目に遭わせないから)

ひろし(次、また会える時があったら…絶対に、お前のピンチを救え……)

ひろし(愛し………)







(…あなた)

ひろし「!」ぱちっ

~~~~~~~~~~

ひろし「ああ…あの時か…あの時に俺は死んでたのか…」

ひろし「あの時は、格好良く助けたつもりだったんだけどな…そうか」

ひろし「車から出られずに、死んだのか」

ボーちゃん「…」

ひろし「…ボーちゃん、悪いな」

ボーちゃん「何がです?」

ひろし「さっきから、敢えて厳しい事を言ってたのは、現実を直視させようとしてたからなんだろ?」

ボーちゃん「!」

ひろし「へへ、当たりか?そんな奴じゃなきゃ、死んだ俺らを助けようと思わないもんな」

ボーちゃん「…おじさん」

ひろし「よし、仲良く成仏する為に、とっととみさえを見つけ出すぞ!」

ボーちゃん「…はい!」

【旅館の部屋】

しんのすけ「…暇だぞ」

しんのすけ「オラ、しんのすけだけど、ヒマだぞ」

しんのすけ「…」

しんのすけ「何処行ったのかな、母ちゃん」

しんのすけ「ボーちゃんも父ちゃんもいるし、そんなに心配ないと思うけど…」

しんのすけ「むう…暇だぞ…」

プルルルルッ

しんのすけ「お、お電話お電話ー♪」

しんのすけ「もしもーし、オラしんのすけだぞー」

みさえ『…しんちゃん?』

しんのすけ「」ガタッ

しんのすけ「母ちゃん!今、何処にいるんだ!」

みさえ『…』

しんのすけ「みんな心配して、探してるんだぞ?!」

みさえ『…』

しんのすけ「…母ちゃん!」

みさえ『…ごめんね』

しんのすけ「!」

みさえ『ごめんね…』

しんのすけ「母ちゃん!何言ってるんだ!」

みさえ『…ずっと苦しい思いをさせて、ごめんね』

しんのすけ「!」

しんのすけ「違う!母ちゃんは何にも悪くない!」

しんのすけ「母ちゃん、何処にいるんだ!」

しんのすけ「あのお兄さんが、オラ達を助けてくれるんだよ!」

しんのすけ「もう、大丈夫。何にも心配ないんだぞ?」

みさえ『…』

みさえ『大丈夫…多分これはね、私への罰なの…』

しんのすけ「!」

みさえ『私、自分で選んだ癖に…死ぬのが怖くなったから…』

しんのすけ「違う!そんな事言うな!」

みさえ『…しんちゃん』

みさえ『…悪いママでごめんね』

しんのすけ「母ちゃん!ちが…」

ツー、ツー、ツー…

しんのすけ「違うんだぞ…」

【廊下】

♪~♪~

ピッ

ボーちゃん「しんちゃん?」

しんのすけ『母ちゃんから電話が来た!』

ボーちゃん「いつ?」

しんのすけ『さっき…何かヤバかったぞ』

ボーちゃん「何て、言ってたの?」

しんのすけ『いっぱい謝ってた。悪いママでごめんねとか、罰だとか…』

しんのすけ『母ちゃんも死んでるなら、大丈夫だよね?これ以上、悪くならない?!』

ボーちゃん「…分からない。電話中に何か聞こえなかった?」

しんのすけ『何か?』

ボーちゃん「何でも良い。水の音とか風の音とか…誰かの声とか…」

しんのすけ『あ…それなら』

しんのすけ『声が響いてた。それだけだけど…』

ボーちゃん「…分かった」

しんのすけ『何処にいるか分かったの?オラにも教えろ!オラも行くぞ!』

ボーちゃん「多分…西側の非常階段だよ」

しんのすけ『おお!母ちゃん!今行くぞお!』ドタドタドタ…

ボーちゃん「…」ピッ

ひろし「西側の非常階段?どうしてそこだと思うんだよ」

ボーちゃん「僕らの向かっている先にある左…西の非常階段には、非常用の電話が設置されている」

ボーちゃん「それに旅館に着いた時、入口から見上げると、西側に崖に面した屋上があるのが見えた」

ボーちゃん「おばさんは、一人で自殺をする事で…繰り返す事を止めようとしているのかも…」

ひろし「!」

ひろし「そんな!」

ボーちゃん「だから止めなくっちゃ…」

ひろし「みさえ!」タタタッ

ボーちゃん「風間君達に、連絡しないと…」ピッ







【西側非常階段】

ひろし「はあ…はあ…」

ボーちゃん「!」

ひろし「今、行くぞ…待っててくれよ、みさえ…」

ボーちゃん「僕は、行けない」

ひろし「はあ?」

ひろし「何でだよ!」

ボーちゃん「この先が、荷物で塞がれてる」

ひろし「荷物?荷物なんて、どこにあるんだよ?」

ボーちゃん「15年前にはなくて、自由に屋上にも出入りが出来たんですね」

ひろし「はあ?どういう事だよ」

ボーちゃん「理解しなくても、結構です。それより先に行って下さい」

ボーちゃん「準備出来次第、僕も直ぐに向かいます」

ひろし「分かった!」

タタタタ…

ボーちゃん「荷物は乗り越えられると…」

ボーちゃん「鍵が掛かってれば、風間君達の到着を待たなくちゃ…」

【屋上】

しんのすけ「母ちゃん!やめて!」

ひまわり「たゆう!」

みさえ「…」

ひろし「みさえ?」

みさえ「…あなた」

しんのすけ「父ちゃん!母ちゃんを止めてくれ!このままじゃ、落っこちちゃう!」

みさえ「あなた…お願い。しんのすけとひまわりに、私から手を放す様に言って」

ひろし「!」

みさえ「私が、私一人だけが死ねばいい。そうすればきっと、みんな助かるのよ!」

しんのすけ「うおお!全然何言ってるか、分かんないぞ!」

みさえ「お願い、あなた…子供達を…」

ひろし「!」

みさえ「私の、最後のお願いだから…」

しんのすけ「父ちゃん、早くぅ!」

ひまわり「たああああ!」

びゅおおおお!!

しんのすけ「お…」ふわっ

ひまわり「う?」

みさえ「…」

しんのすけ「落…ち……」

ひろし「馬鹿野郎!たかだか5歳児と0歳児の力で、みさえを支えきれると思ったか!」がしっ

しんのすけ「父ちゃん!見損なったぞ!」

ひろし「見直しただろ!」

みさえ「私はいいから…子供達を…」

ひろし「みさえ…」

ひろし「大事な女房のピンチだぞ?今度こそ、助けさせてくれ…」

みさえ「あなた…」

ひろし「…愛してる」

しんのすけ「そういうの、今はいいから!早く引き上げてくれー!」

ひろし「とは、言ったものの…三人だと重くて…」ブルブル…

しんのすけ「…母ちゃん、太った?」

みさえ「いや、もう死んでるし…それより死ぬ直前は、かなり痩せた筈よ!」

ひろし「うぅ…」

しんのすけ「父ちゃん、ファイトー…散髪ー!」

ひろし「それを言うなら、一発だあ!一々力が抜ける事言うな!」ブルブル…

がしゃーん!

ボーちゃん「おじさん!」タタッ

がしっ

ひろし「ボーちゃん!」

マサオ「はあはあ…エア綱引き?」

ボーちゃん「違う!しんちゃん達が落ちそう!」ぐっ…

風間「ボーちゃん!」がしっ

ネネ「私達には見えないんだから、ボーちゃんがしっかり掴んでてね!」がしっ

マサオ「あ、僕もー!」







みさえ「ふう…ふう…」

ひろし「はあ…はあ…」

しんのすけ「ああ、もう…助かったから良かったものの…」

しんのすけ「母ちゃん!思い詰め過ぎ!」

みさえ「!」

しんのすけ「オラは、まだ5歳だ。だけど5歳なりに、色々考えてるつもりだぞ」

しんのすけ「全然頼りにならないかもしれないけど、ちょっとは相談しろ!何でも自分で決めるなあ!」

みさえ「…しんちゃん」

ひろし「あー…」

ひろし「しんのすけに今、俺が言いたい事の殆ど言われちまったけど」

ひろし「…頼むから、自分が悪いとか思うのは止してくれ」

みさえ「…」

ひろし「俺が悪いんだ。本当に、馬鹿だった」

ボーちゃん「違いますよ」

ボーちゃん「悪いのは、その借金を押し付けて逃げた奴と、闇金業者」

ネネ「そうよ!現代じゃ、過払い請求も当たり前なんだから!」

マサオ「法務ワンとかね」

風間「…しかし、屋上の鍵借りられて良かったね」

ボーちゃん「うん、思ったより早かったし」

ネネ「本当に、愛ちゃん様々ね」

みさえ「…愛ちゃん?」

ボーちゃん「酢乙女愛ちゃんです。ほら、外国に引っ越したら、しんちゃんを好きだった女の子」

みさえ「…ああ」

ネネ「愛からね、『この人達の行動言動全て受け入れ従いなさい』って、旅館にお達しが出てたんだって」

風間「流石、愛ちゃん…」

ひろし「そうか…じゃあ、この旅館に泊まれたも」

ボーちゃん「愛ちゃんの、お陰。でも愛ちゃんはしんちゃん達の、今の状況は知らない」

みさえ「…お礼を伝えてくれるかしら?」

ボーちゃん「はい。必ず」

みさえ「しんちゃん?」

しんのすけ「ん?」

みさえ「素敵なお嬢さんに、好かれてたのね?」

しんのすけ「…うん」

みさえ「そっか、そっか…貴方達がひまわり組の子達だなんて…」

みさえ「みんな、すっかり大人になっちゃって…あれから15年なら、もう二十歳ね」ちらっ

しんのすけ「ん?」

みさえ「…大人になったしんのすけって、どんな男の人になってたのかしら」

しんのすけ「母ちゃん」

ボーちゃん「多分、しんちゃんは大人になっても変わらない」

ネネ「ええ、女好きで」

風間「トラブルメーカーで」

マサオ「でもいるだけで、その場が明るくなる様な」

ボーちゃん「どっしりした大木みたいな男になってたと、思う」

しんのすけ「いやあ。じゃあ、今と変わらんですな」///

みさえ「あんた、後半しか聞いてなかったでしょ?」

しんのすけ「でも、オラは父ちゃんと母ちゃんとひまわりと…みんな、一緒で良かった」

みさえ「しんちゃん…」

ひろし「しんのすけ…」

しんのすけ「これからも、ずっとずっと一緒にいよう」

ピー、ピー、ピー、ピー…

ピー、ピー、ピー、ピー…

ピー、ピー、ピー、ピー…

風間「携帯?」

ネネ「誰?」

マサオ「僕じゃないよ」

ボーちゃん「僕だ」

ボーちゃん「時計だよ。12時にアラームをセットしてるんだ」

マサオ「何でまた12時に?」

ボーちゃん「こうしないと、寝るのを忘れちゃうから」

風間「確かに…」

マサオ「いや、何も確かにじゃないよ」

しんのすけ「と、言う事は?」

しんのすけ「今日は日曜日…お出かけする日だぞ!」

ボーちゃん「!」



-日曜日-

みさえ「…そうね。何処へ行きましょう?」

ひろし「そうだな。俺は何処でも良いぞ?お前達と一緒なら」

みさえ「私だって」

ひまわり「たゆたー」

みさえ・ひろし「しんちゃん(しんのすけ)は?」

しんのすけ「…」

しんのすけ「うーん、遊園地も良いな。ゲームセンターも良いし、公園も良いし…」

ひろし「迷うか?」

しんのすけ「レストランも良いし、玩具屋さんも良いけど…」

みさえ「けど?」

しんのすけ「オラもみんな一緒なら、何処でも良い」

ひまわり「たたあ!」

しんのすけ「ん?ひま、上に何かあるのか?」じっ

パアアアアア…

しんのすけ「お?お月様から、光が降りてくる…」

みさえ「え?眩しい…」

ひろし「何だこれ!」

ひまわり「たたたたた!」

しんのすけ「ん…?」ぱちっ

しんのすけ「…お…おお!」

しんのすけ「オラ、浮いてるぞ!」ふわっ

マサオ「ひいいいい!!」

風間「なっ…」

ネネ「嘘?!」

しんのすけ「どうしたんだぞ?マサオ君?幽霊でも見た様な顔して」ふわっ

マサオ「ひいいい!なんまんだぶなんまんだぶ!」

しんのすけ「?」ふわふわ…

ボーちゃん「もしかして…みんな、見える?」

風間「ああ、見える」

ネネ「しかも聞こえる…」

しんのすけ「ああ!父ちゃん!母ちゃん!何で先に上に行ってるんだぞ!」

ひろし「あ…」ふわふわ…

みさえ「あれ?」ふわふわ…

しんのすけ「ボーッとしちゃって、どうしたんだ?」

ひろし「いや、何だか体が浮いたら…こう、肩の力が抜けたと言うか…」

みさえ「気が楽になったと言うか…」

しんのすけ「オラ、別に変わらないぞ?」

ひまわり「たああ?」ふわふわ…

しんのすけ「でも、ちょっと…いい気分かも…」ふわふわ…

ボーちゃん「しんちゃん…行くの?」

しんのすけ「…うん」

しんのすけ「…風間君、マサオ君、ネネちゃん、ボーちゃん」

しんのすけ「あと、此処にいないけど…愛ちゃん。みんな、本当にありがとう」

みさえ「本当にありがとうございます…」ふわふわ…

ひろし「お陰様で、本来行くべき所へ漸く行けます…」ふわふわ…

しんのすけ「遠ざかりながら言う台詞じゃないぞ。もう仕方ないなあ」

風間「しんのすけー!お供え物に沢山チョコビ持ってくからなー!」

マサオ「僕も、しんちゃんが好きだった物!玩具とか、持っていくねー!」

しんのすけ「風間君、マサオ君…」

ネネ「迷子にならないように、ちゃんとお父さんとお母さんと一緒にいなさいね!」

しんのすけ「ネネちゃん…所帯染みた?」

ネネ「うっさいわよ!」グスッ

しんのすけ「ほら、ひまも。ばいばーいって」ふわふわ…

ひまわり「わいわーい」ふわふわ…

ボーちゃん「しんちゃんっ!」

風間「しんのすけー!」

マサオ「しんちゃーん!」

ネネ「しんちゃんー!」

しんのすけ「みんなー!元気でいるんだぞ!」ふわふわ…

しんのすけ「ばいばーい!またねー!」すううう…

ひまわり「たたえー!」すううう…







-月曜日-

少年「ああ!俺のチョコビ!」

ボーちゃん「…シンのじゃない。これは『しんちゃん』の」

少年「俺だって、シンちゃんって呼ばれるのに」むすっ

ボーちゃん「お供え終わったら、あげるから」

少年「いやっほー!」ピョンピョン

ボーちゃん「…」

ボーちゃん「シンは、チョコビ好きだね?」

少年「うん!お菓子の中で、一番好き!」

ボーちゃん「そっか…」

少年「『しんちゃん』もチョコビが好きだったんだよね?」

ボーちゃん「うん…」

少年「じゃあ、俺と気が合ったかも!」

ボーちゃん「そうだね。多分、仲のいい友達になれたと思う」

少年「父さんとしんちゃんみたいに?」

ボーちゃん「そう。僕としんちゃんみたいに」

女「じゃあ、シン?そろそろ車に戻りましょうか?」

少年「母さん、俺もう少し此処にいたいー」

女「シン?」

女「お父さんを、お友達と二人きりにさせてあげましょう?」コソッ

少年「えー…もう、分かったよー」

女「私達は車に戻ってますね」

ボーちゃん「すまない」

女「お気になさらないで?積もる話もあるでしょうし、ゆっくりしていて下さいね」

ボーちゃん「ありがとう…」

しんのすけ「ボーちゃんの奥さんは相変わらずお綺麗ですな」ボリボリ…

ボーちゃん「…チョコビ、美味しい?」

しんのすけ「うん、うまいぞとそれにシンもチョコビ好きとはお目が高い」ムシャムシャ…

ボーちゃん「…しんちゃん、元気だった?」

しんのすけ「元気だぞ!」

しんのすけ「お盆だから、母ちゃんとひまわりは九州のじいちゃん家。父ちゃんは秋田のじいちゃん家に行ってるけどな」

しんのすけ「あ、シロはむさえちゃん家に行ったぞ。オラ達が死んじゃった後、むさえちゃん達に飼われてたんだって」

しんのすけ「オラは迷ったけど…今なら、此処にいればお供え物はみーんな独り占めー」

ボーちゃん「…」

しんのすけ「あ、少し前にネネちゃんが来たぞ」

ボーちゃん「…」

しんのすけ「お腹がこんなに大きくて…」

しんのすけ「昨日は風間君が来た。色々自慢ばっかりして、約束通りお土産たんまり持って来てるぞ」

しんのすけ「マサオ君も来て…トラック運転手になったって。マサオ君運転すると人が変わるから、運転時間が長くなった分人相も悪くなったけど、やっぱりマサオ君だったぞ」

しんのすけ「吉永先生は何と、孫を連れてきたぞ!」

ボーちゃん「…」

しんのすけ「そう!それからそれから組長も来たし、隣のおばさんも来たし…愛ちゃんも、ななこお姉さんも…色んな人が、来てくれるぞ」

ボーちゃん「しんちゃんのいる所はどんな所って、言ってたっけ?」

しんのすけ「えっと…」

しんのすけ「何となーく、幸せな感じで、いい所だぞ!」

しんのすけ「そうだ!母ちゃんが…」

ボーちゃん「…そうだ。ネネちゃん、もう直ぐ子供生まれるんだって」

ボーちゃん「風間君は独立して、小さい頃からの夢だった社長になったよ」

ボーちゃん「マサオ君はトラックで日本全国走り回ってるし」

しんのすけ「…」

ボーちゃん「でも、みんな墓参りに来てるから、しんちゃんの方が詳しいかな?」

しんのすけ「…ボーちゃん」

しんのすけ「ボーちゃん」

ボーちゃん「しんちゃん…いるよね?」

しんのすけ「…此処にいるぞ」

しんのすけ「…ボーちゃんは、シンが生まれてからすっかりオラの事が分からなくなっちゃったぞ」

しんのすけ「風間君とネネちゃんとマサオ君も、誰もオラの事が分からない…」

しんのすけ「折角、会いに来てくれてるのにな…」

ボーちゃん「そう言えば、シンがね?」クスッ

しんのすけ「なになに?シンがどうしたの?」






ボーちゃん「あ、そろそろ行かなくっちゃ。悪いけど、チョコビは持って帰るから」

しんのすけ「う…置いておくと、カラスとかが荒らしに来るから…持ってけ!泥棒!」

ボーちゃん「では、遠慮なく」

しんのすけ「ああ、あん…」

ボーちゃん「じゃあね。しんちゃん」

しんのすけ「あ、シンに、チョコビは残さず食べる事って言っといてねー」

【車】

女「あら、思ったより早かったんですね?」

ボーちゃん「これ以上、妻子を車に放置する気にはなれないよ…シン、ほら」

少年「チョーコービー♪」

女「ふふ、本当にチョコビが好きね」

ボーちゃん「しんちゃんから貰ったんだから、大事に食べなさい」

少年「言われなくても、粉まで食べる…あれ?」

ボーちゃん「?」

女「どうしたの?」

少年「いや、だって、あれ…いいの?」

少年「墓石の上で、小さい男の子が…手を振ってるよ?」

ボーちゃん「!」

しんのすけ「それでは皆さんお達者でー!」

しんのすけ「まったねー!」









終わり。

引っ越しでゴタゴタして、今まで放置してました。

続けた結果、ありきたりな話になったが、最後まで書けたんで良かったです。

レス、支援、ありがとうございました。

最後に訂正↓

>>493

しんのすけ「うん、うまいぞとそれにシンもチョコビ好きとはお目が高い」ムシャムシャ…←×

しんのすけ「うん、うまいぞ。それにシンもチョコビ好きとはお目が高い」ムシャムシャ…←

このSSまとめへのコメント

1 :  ジャギィ   2014年10月11日 (土) 12:28:31   ID: fWqr-cY6

野原家でありそうな予感・・・・・・・・・・・・・

2 :  SS好きの774さん   2014年10月13日 (月) 22:49:51   ID: ayPhgXD4

すごいもんだね

3 :  ジャギィ   2014年10月19日 (日) 17:13:29   ID: Eph0lAcO

これクレヨンしんちゃんの最終回出すならこれを映画化してみたらいいと思う。

4 :  ジャギィ   2014年10月20日 (月) 12:16:28   ID: IMyHFe4z

すううって消えるところが俺的にいいと思うな〜

5 :  SS好きの774さん   2015年02月21日 (土) 22:33:40   ID: fnhCJizX

これを映画化すれば良いなぁ

6 :  SS好きの774さん   2015年03月17日 (火) 22:57:04   ID: HLsM6jEn

感動した

7 :  SS好きの774さん   2015年11月17日 (火) 02:18:12   ID: KlnpXZVE

亡くなった作者はけっこうブラックなネタもやるから
こういうのもアニメ化しない番外編としてありえそうに思える

7 :  SS好きの774さん   2015年11月17日 (火) 02:18:12   ID: KlnpXZVE

亡くなった作者はけっこうブラックなネタもやるから
こういうのもアニメ化しない番外編としてありえそうに思える

8 :  SS好きの774さん   2016年03月02日 (水) 22:10:10   ID: Qt2iE2bG

俺の鬱耐性と感動耐性を貫通するとは、俺もまだまだ人間だな。

9 :  SS好きの774さん   2016年06月11日 (土) 08:45:24   ID: kvSSqkVz

10 :  SS好きの774さん   2018年08月20日 (月) 12:50:05   ID: LQQ0EqCC

いい話だった

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