佐天「上条さん、か……クリスマスはどうするんだろ?」(659)

佐天「上条さん、か……別に格好良いって訳じゃないのになぁ」
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↑のクリスマス編

佐天×上条が苦手な人、ヤン○レ耐性が無い人などは見ることをお勧めしない

前作読んでくれてる方が色々わかりよいけど、別にもうどっちでもいいです

ゆっくり投下するんでクリスマス暇なら読んで

諸事情によりこっからもしもし投下


…………………
12月22日
天気・晴れ
降水確率・0%
……………………

外は、快晴

気温は、最低

12月の寒さが、こんなに厳しいものだとは思わなかった

雪は降っていない

ここ最近も降るとしてもぱらつく程度だ

まぁ、別に降らなくていいけど…

…それにしても

この寒さだけでも気が滅入ってるのに

私は別のことにも気が滅入っている

…ああ、まったく…



・学校・

~昼休み~


佐天「…うぅ、寒い」

初春「ですね…」

佐天「…どうして冬が来るんだろう…」

初春「それは地球に聞いてください…」

佐天「…どうして秋はすぐに過ぎ去ってしまうんだろう…」

初春「飽きちゃったんじゃないですか?…秋だけに」

佐天「…どうして春はまだ来ないんだろう…」

初春「初めに春と書いて初春という名前の私がヒントです」

佐天「…夏は……暑いなぁ」

初春「そうですね…」


佐天「…季節が巡る度に訪れるこの哀愁は、一体何なんだろう…」

初春「さぁ、何なんでしょうか」

佐天「……」

初春「……」

佐天「……」

初春「…ねぇ、佐天さん」

佐天「……」

初春「…それで?」

佐天「……」

初春「…ご予定は?」

佐天「……」

初春「…クリスマスのご予定は?」

佐天「……」


初春「…もう決まってますよね?」

佐天「……」

初春「…あれだけ私に『クリスマスは絶対予定あるからっ!』って言っといて、まさかね…」

佐天「……」

初春「………え?」

佐天「……」

初春「…ちょっと、えっ、ちょっと待ってください。…あの、えっ?佐天さん?」

佐天「……」

初春「まさか佐天さん…まさかまさか…」

佐天「……っ」

初春「まだ…誘ってないんですか?」

佐天「…………………うん」


初春「…ヘタレ過ぎでしょおおおおお!!」

佐天「…うるさぁああああい!!」ムシリッムシリッ!

初春「うわぁぁん!花への理不尽な暴力ぅううう!!」

佐天「私だって!私だってねぇ!…うぅ…」

初春「わっ、わかりましたから!私が悪かったですから!とりあえず落ち着きましょう!落ち着いて頭の花から手をどけましょう!」

佐天「…うぅ…。どうせ…どうせ私はヘタレな女ですよ…」

初春「いや、あの、そんなに落ち込まないでください。…でも、なんでまだ誘ってないんですか?」

佐天「…だ、だって…」

初春「だって?」

佐天「…は、恥ずかしいんだもん…」カァァァ

初春「…うわぁ~、付き合ってるのに恥ずかしいとかないですぅ~」


佐天「うるさいぃぃぃぃ!!!」ムシリッ!

初春「ぎゃああああ!!私の頭の初春さん踏ん張ってぇぇえ!!」

佐天「…だって、恥ずかしいもんは恥ずかしいんだよ!…例え、その…こ、こ、こ、こい…」

初春「…恋人でしょう?」

佐天「…!」ボッ

初春「…はぁ、まったく」

初春「せっかく上条さんと恋人同士になったんですから、しっかりイベントはクリアしていかないとダメじゃないですか~」

佐天「そ、それはそうだけど…」

初春「まぁ、上条さんも上条さんですけどね。普通は彼氏の方から誘うものだと思うんですけど…」

佐天「…そ、そうなのかな…?」

初春「いや、私もそういう話には疎いんですけど…。多分、そうなんだと思います」


佐天「う、うーん。確かに、普段は上条さんの方から何気なくご飯とか誘われたりするけど…」

初春「…と言っても、本当にご飯食べるだけですもんね」

佐天「『だけ』ってなによ!そ、それ以外に、ななな何をしろと…!?」カァァァ

初春「あ、いえ、あの、変な想像はしないでください。別にそういう意味じゃな…」

佐天「…た、確かに、もう付き合って少し経つけど…なんというか、も、物事には順序というものが……いや、でも、恋人だし、そういうのもオッケー?…あわわ、私は何を考えて…いや、でも…」カァァァ

初春「…あの佐天さん。いい加減、妄想は頭の中でやってもらえないですかね…?」

佐天「…はっ。…あ、ごめん」カァ


初春「まぁまぁ、関係の方は良好なようで何よりです」

佐天「…う、うん。」

初春「さぁ、とりあえず…」

初春「まずは、上条さんにクリスマスのご予定を聞いてみましょう!」

佐天「だっ、だからそれが出来なくて…」

初春「出来ないんじゃないです!やるかやらないかですよ!…ほらほら、携帯出してください」

佐天「…いや、ちょ、まだいいって…」

初春「まだって、もうすぐクリスマス来ちゃうじゃないですか。ぐずぐずしてたら他の人に取られちゃいますよ?」


佐天「…うぅ…でもなぁ…」

初春「……佐天さん」

佐天「…?」

初春「…上条さんのこと狙ってる人、まだ居ることぐらい知ってますよね?」

佐天「…うっ」

初春「…御坂さん、クリスマスは誰と過ごすのかなぁ…」

佐天「わわわわかったわよ!!連絡するわよっ!」

初春「…ふぅ、わかってもらえれば…いいです」

佐天「……」


…笑えない、冗談だなぁ

特に御坂さんのことは…


佐天「…初春」

初春「…はい?」

佐天「…ごめんね。ありがとう」

初春「…ふふっ、いいですよ。気にしないでください」ニコ

佐天「……うん」


…そう

ぐずぐずなんて、してられないんだ

…あれから1ヵ月

特に何も進展がないまま、クリスマスという一大イベントを迎えようとしていた


私は一ヶ月前、御坂さんと一悶着の末、上条さんと付き合うことになった

別に今、上条さんとの関係が悪いわけじゃない

良いと言えば、良い

ただ、お互いにそれ以上の進展に対する欲がないというか…

私なんかも、ただ隣で彼がそばに居てくれるだけで満足してしまっている部分がある(…妄想は別にして)

…上条さん、どう思ってるんだろう…

…やっぱり、私なんかより…上条さんには…御坂さんが…


…ううん

弱気になっちゃダメだ


…一歩

一歩、踏み出そう

佐天「…よし、電話してみよう…!」


――夕方

~帰宅時~


佐天「……と、決心したのに…」

なんで私は連絡出来ずにいる~!!

普通のメールだったら出来るのに…

いや、だったら恋人にクリスマスの誘いぐらい普通…だし…

うん、出来る出来る!普通だし!

多分、上条さんもなんだかんだでクリスマスは私とって思ってる…はず…だし…


佐天「…えっと、上条さんの電話番号は…」

佐天「……」

佐天「…………」

佐天「…………………」


…ああああ、押せないー!

…っていう、やり取りをさっきから私は何回繰り返してんだー!!


簡単なことなのに…

なんで出来ないんだろ…

番号を押そうと思うと胸がドキドキして…


ピリリリリ


佐天「うわっ!!!」ビクッ

で、で、電話!?

だ、誰から…

ピッ

黒子『あ、もしもし佐天さん?こんにちわ』

佐天「あっ、し、白井さん?」

黒子『…どうしたんですの?何か動揺しているようですが』

佐天「い、いえいえ!何でもないです!(な、なんだ白井さんかぁ…)」

黒子『?…まぁ、いいですわ。それより佐天さん、初春はご存知ありませんか?』

佐天「え、初春ですか?…えーっと確か仕事に行くって…」


黒子『むぅ、おかしいですわね。まだこちらには来てな……あ、今来ましたわ。…初春!何をやっていましたの!遅刻ですわよ!』

佐天「あ、あはは」

黒子『…まったく。…あ、すみませんね佐天さん。用はこれだけですの。失礼しましたわ』

佐天「あ、いえいえ。…それじゃあ、失礼します…」

黒子『ええ。…あっ、ところで佐天さん?』

佐天「はい?何でしょうか?」

黒子『…クリスマスのご予定はしっかりとお決まりで?』

佐天「うぇっ!?あ、あの、え、えーっと…それは…」


黒子『…もちろんもう決まっていますわよね?あの殿方と一緒にお過ごしになられるんでしょう?』

佐天「…え、えっと、そ、そう…ですね。そ、その…つもりです…」

黒子『ふふふっ、やはりそうでしたか。安心しましたわ』

佐天「え?」

黒子『…あなた方が上手くいってないなんてことになったら、お姉さまがどう思うか…。とても心配でしたのよ?』

佐天「…あ…」


…そっか。そうだよね


佐天「…すみません、白井さん。わざわざありがとうございます」

黒子『いえいえ、とんでもございませんわ』


黒子『……それに』

佐天「…?」

黒子『…傷心のお姉さまをお慰めする役は、この黒子が文字通り全身全霊をかけまして御奉仕しますので、全く心配はございませんことよ!!うふふふふっ…』

佐天「…あ、はぁ…(そっちの意味もあるのか…)」

黒子『ふふっ、では、失礼致します』

佐天「…はい、それじゃあ」

ピッ、パタン

佐天「…ふぅ」



…そうだよ

私、一人の力で上条さんと付き合ってるわけじゃないんだもんね

周りの人が支えてくれたから

今があるんだもんね…


佐天「…よしっ!」

与えてくれたチャンスは

物にしないとね!


ポンポン


佐天「…ん?」


「…あの、お腹が空いたの」


佐天「!…あなたは…」


――同刻

~ジャッジメント支部~


ガチャ!


初春「おっ、遅れましたぁー!」

黒子「…あ、今来ましたわ…初春!何をやっていましたの!遅刻ですわよ!」

初春「すっ、すみませーん…」

黒子「…まったく。あ、佐天さん…」

初春「…(電話中ですか…相手は佐天さんかな?)」


ニャー


初春「…うわっ」

黒子「……ですか?ええ……」

初春「(よ、良かった。気付かれてないみたい…)」

初春「(この猫ちゃん、お腹空かせてたみたいだし)」

初春「(何か食べさせてあげないと…)」コソコソ

初春「(…えーっと、確かここに何かがあったはず…)」コソコソ

黒子「…初春」

初春「…!」ビグッ

黒子「何をしていますの?」

ちと犬の散歩いてくる


初春「…あ、えっ、と、いやぁ~…ははぁ…」

黒子「…?」


ニャー


初春「うわっ、ちょっと、ダメだって……あ……」

黒子「……」

初春「……」


ニャーン


黒子「……」

初春「…にゃ、にゃあ~」

黒子「…初春!!!!」

おかえり


初春「ひゃいぃぃ!!」

黒子「…この猫は何ですの?」

初春「…え、えっと…、可愛い、猫さんですね…」

黒子「ふふっ、そうですわねー」

初春「あ、あははは」

黒子「ふふふふっ」

初春「あははっ…えっと、じゃあ、ちょっと私はトイレに…」

黒子「初春!!!」

初春「はひぃぃい!!」

黒子「…いつまでも冗談を言ってる場合じゃありませんわ」

初春「…あ、はい…」


黒子「…何故ここに猫がいますの?」

初春「…え、えっと、何ででしょう…」

黒子「ほぅ。あくまでもとぼけるおつもりですのね?…では、今日の仕事量は2倍にして差し上げますわね」

初春「あわわわわ~!す、すみません!言います!言いますからぁ~!」

黒子「…はぁ。それで?何ゆえ仕事場に猫を連れてきたので?」

初春「…えっと、実は…」

>>32 ただいま


『―…そうですか…うーん、たこ焼きは猫さんが食べたら体に悪そうですし…―』

『―…よし、支部に行って何か食べさせてあげましょう!…―』

『―…ニャー…―』


初春「…というわけなんですよ」

黒子「…あなたという人は…」

黒子「…この猫がお腹が空いているとしても、支部に持ち帰ってくる理由がないでしょう?」


初春「…うーん、そうなんですけど、でも仕事には行かなくちゃ行けませんし……あ、牛乳あった」

黒子「…それはそうですが…。それならそうと何故連絡しなかったんです?…あ、牛乳はダメですよ。こちらにした方がよろしいですわ」

初春「…いや、だって『猫持ってきてもいいですか?』って言ったら、白井さん絶対反対するじゃないですか。…あっ、そうなんですか!ありがとうございます」

ニャーン

黒子「…はぁ。まったく」

黒子「とりあえず、ここには猫に与えられるものは水くらいしかありませんし、別のところで餌を買ってあげた方がよろしいですわ」

初春「…うーん、そうですよね…。確かに、その方がよさそうですね…」シュン


黒子「……」

初春「……」

黒子「…あ、そうですわ」

初春「…?」

黒子「初春。あなたに、ある件の調査に行っていただきますわ」

初春「うぇ?わ、わたしがですか…?」

黒子「えぇ。それがちょうど○×地区のこの辺になるんですが…」

初春「…えっ、でも、私一人で…」

黒子「私はここに残ってやらなければならない仕事がありますの。…たこ焼きを食べたり、猫の世話をしたりする時間はありませんの」

初春「…あ…は、はい。すみません」


黒子「…それに…」

黒子「確かこの辺りに、ペットショップがあったはずですわ」

初春「…!」

黒子「…まぁ、少しぐらいならそこに寄っても構わないですわ」

初春「あっ、ありがとうございます!」

黒子「勘違いしないでくださいな。あなたは、し・ご・と・に行くんですわよ?」

初春「あ、はい!わかってます!」

黒子「…はぁ。それじゃあ、お願いしますわね?」

初春「はい!行ってきます!」

ニャーン


タタタタッ


黒子「…まったく」


あの子も困った子ですわねぇ…

優しい子なのは確かですけれど

…まぁ、そういところが、あの子の良いところなんでしょうね


それにしても、まったく

捨て猫なんか拾ってきて…


…捨て…猫…


………。


黒子「…気のせいですわね」


…それより

初春に向かわせた場所

あまり大した件ではないですが…

あの子、ちゃんと調査できるでしょうか…


~公園~

「とってもとっても美味しい!って、ミサカはミサカはちょっと感激してみる」

佐天「ふふっ、良かった。でも、たこ焼きは熱いかもしれないから気を付けて食べてね?」

打止「うん!最初はちょっと熱かったりして食べれなかった!でも、ふぅふぅして食べたら大丈夫だった!って、ミサカはミサカは得意気に言ってみる」

佐天「あはは。そっか、ミサカちゃん、猫舌だったんだ」

打止「猫?ミサカは猫じゃないよ?って、ミサカはミサカは…でも猫は可愛いって思ってたりする」

佐天「そうだね、うん。ミサカちゃんは猫じゃないよね」


打止「それとも猫みたいに可愛いっていうことなのかしら?ってミサカはミサカはちょっと自惚れてみたり…ふふっ」

佐天「あはは。でもミサカちゃんは猫よりも可愛いよ?」ナデナデ

打止「ふわぁ、くすぐったいー」ゴロゴロ

佐天「ふふっ」


…いきなり声かけられたと思ったら、なんか小さな御坂さんがいて本気でびっくりした

でも、話し方からして、たぶん御坂さんの妹さんの妹さん?かな、と思った

それに可愛いし…いやぁ、もう、可愛いしさ

うっかりたこ焼きなんか買ってあげちゃったよ


打止「ねぇねぇ」

佐天「うん?」

打止「あなたはここで何をしてたの?って、ミサカはミサカは興味があるから聞いてみたりする」

佐天「…えっ。あ、えーっと…」

打止「たこ焼きを食べに来たの?」

佐天「あ…っと、うん、そうだよ?ここのたこ焼き美味しいからさぁ~」

打止「やっぱりそうなの?ふふ、あなたも食いしん坊さんだねって、ミサカはミサカは言ってみたりする」

佐天「…あ、ははは…(言えないよねぇ…)」


佐天「あっ、ミサカちゃんはどうしてこんなとこに?」

打止「…うーん、どうしてかなぁ。特に理由は無いけど…」

佐天「誰かと遊んでたの?」

打止「うぅん。遊んでないよ?ただ…ミサカはちょっと喧嘩してしまったり…」

佐天「あ、そうなんだ。…お友達と喧嘩しちゃったんだね」

打止「…うーん、お友達というか、そうじゃないような…ってミサカはミサカは……」

佐天「えっと、まぁ、早く仲直り出来ると良いね!(なんか事情があるのかな…?)」


打止「…うんっ、そうかも。……はっ、…クチュン…」

佐天「…あ、大丈夫?ミサカちゃん」

打止「グスッ…うん、大丈夫なの…ってミサカはミサカは強がってみたり…」ブルブル

佐天「(やっぱり、寒いもんね…)」

打止「…グスッ…それより、今日はありがとう!とっても美味しかった!って、ミサカはミサカは無邪気に言ってみたり」

佐天「あ、うん!…でも、もう行っちゃうの?」

打止「うん!…あんまり遅いと怒られちゃうから…」


佐天「そっか…お母さんが心配するもんね」

打止「ううん、お母さんじゃないの…ってミサカはミサカは……うーん……」

佐天「…?そう、なんだ…(…色々と事情があるのかな…)」

打止「…うん、だから、今日は帰るね!さようなら!ってミサカはミサカは可愛く言ってみたり」

佐天「うん!また会えたら…暖かい物、一緒に食べようね?」

打止「大歓迎なの!とっても嬉しい…ってミサカはミサカは今度は何を食べさせてもらえるのか期待してみたり」

佐天「ふふっ、わかった!期待してて!」

打止「うん!それじゃあね!…」


佐天「…あっ、ミサカちゃん!」


打止「…?」

佐天「…これ…付けたらいいよ」

打止「…?マフラー?」

佐天「……うん。…よいしょっと、これでよしっ」

打止「…わぁ、とってもあったかい…ってミサカはミサカは感動してみる」

佐天「…これで…少しはマシかな?」

打止「ありがとう!」

佐天「…うん!」

打止「今日はあなたから、暖かいもの、たくさん貰ったの!ホントにありがとう!ってミサカはミサカはとっても感謝してみる」


佐天「ううん、私もミサカちゃんと話せてとても楽しかったよ。ありがとう!…それは、今日のお礼だと思ってね」

打止「えへへ、大事にするね!ってミサカはミサカは可愛く約束してみたり」

佐天「うん。…大事に…してね」

打止「うん!それじゃあ、もう行くね!」

佐天「もう良い時間だね、それじゃあ、気を付けて帰ってね」

打止「うん、さようなら!」

佐天「うん、ばいばい」


タタタタッ…


佐天「……」


佐天「……あげちゃった」

マフラー、あげちゃったな…

なんで、あげちゃったんだろ…

あんなに大事な物なのに……

でも、不思議と良かった気がする

なんでだろう…


……ああ、そうか

私が上条さんにマフラーを貰った時と、似てたんだ

上条さんも、私にあのマフラーを渡した時は…

こんな気持ちだったのかな…


…上条さんが私にくれたマフラー

一ヶ月前の事件で、少し先っちょが焦げてしまったマフラー

確かな温もりが、首元にあって

ずっとそれを感じることができた

…でも

もう、形だけの証だけじゃない

一ヶ月前、確かに感じた見えない絆

私と彼を繋ぐ、目に見えない大切な絆

それを、私は持っている

…だから…

…今は、これでいいんだ


佐天「……ふぅ」


…よしっ


…上条さんに、連絡しよう

クリスマスを、一緒に過ごすために


ピッ

私は携帯の番号を押す

プルルル

一回目のコール

プルルル

二回目のコール


ガチャ


…繋がった先に待つ声が聞きたくて


佐天「…もしもし」

私は、話しかける



『…こちら、留守番電話サービスです。ピーッという発信音の後に…』


佐天「…」

佐天「…………」

佐天「……………………」


留守電かいっ!!!!


―夕暮れ―


―○×地区・ペットショップ前


初春「さぁ、ご飯ですよ~」

ニャーン

初春「たーんと食べてくださいね」

ニャーン ガツガツ

初春「ふふっ、良い食べっぷりだなぁ~」

ガツガツ

初春「そんなに慌てて食べなくても…」

ガツガツ

初春「…」


ガツガツ

初春「………」

ガツガツ

初春「………………」ジーッ

ガツガツ

初春「…猫の餌って」

ガツガツ…ピクッ

初春「…どんな味がするんでしょう」

…モグモグ…ジーッ

初春「…ひ、一口だけ…」

シャーッ!!

初春「ひゃあ!!す、すみません!嘘です!冗談ですぅ!」

フンッ…モグモグ


初春「…はぁ…」

初春「…お腹空いたなぁ…」


…ペットショップに来れたのは良いし

仕事をサボる良い口実になりましたけど…

なんというか、特に何もないところですね…

…それに…

初春「…白井さんに任された調査の資料を見る限り…」

どう考えても問題はすぐそこにあるような…


だって、「この付近を通る人が、夜中に猫の鳴き声がたくさん聞こえて気味が悪い」

…って

そんなのペットショップがあるからに決まってるじゃないですか


はぁーあ…まったく


調査する必要は無いのは良いですけど

ファミレス一つも無いなんて…


初春「…暇ですね…」


ニャー!ニャー!

初春「ん?猫さん、食べ終わったんですか…?」


ニャー!…タタタタッ


初春「うぇっ!?ちょ、ちょっと、どこ行くんですかー!」

タタタタッ


………


初春「…はぁ…はぁ…」

初春「お、おーい!猫さーん!どこですかー!」

ニャーン

初春「…あっ、いた!」

初春「もう、こんな暗いところに入って…」


ニャーン

「………」

初春「……?」

ニャーン

初春「…だ、誰…?」

「………」

初春「…あれ…あなたは…」

「………」


初春「……御坂…さん?」

御坂「…?初春さん…?」

初春「…ど、どうしたんですか?こんなところで…」

御坂「私は……」

…………


―夜―

・佐天自宅付近・


佐天「…はぁ」


結局、電話繋がんないし…

一応、留守電にメッセージも入れといたけど…

たぶんあれ、今手元に携帯を持ってないって感じだよね…

…あーあぁ…


佐天「……ホント、ついてないなぁ」


…ついてない


『…不幸だ…』


…彼がよく言う口癖

いつでも何かしら運の悪いことに遭遇してしまうらしい

そんなことを、私に話していたことがある


『―…朝飯食おうと思ったら冷蔵庫の電源抜けて中身腐ってるし…―』

『―…横断歩道で重たい荷物持ったばあちゃん助けようとしたら…―』

『―…空き缶に躓いて、自分がトラックにひかれそうになるし…―』

『―…そんなこんなしてたら授業に遅刻するし…―』

『―…補習は増えるしで、今日も散々だったぜ…―』

彼はうんざりした様子で話すけど

それを聞いてる私は、私が知らない上条さんのことが聞けて

なんだか、とても嬉しかった


『―…はぁ……もう…本当に……―』


そして最後に彼は


いつものようにあの口癖を


『…不幸』
「…不幸だ」


…あれ?

私、今声に出したっけ…?


「いやぁ、わりぃわりぃ」

「家に携帯忘れちまっててな、連絡できなかったわ」


振り向いたらそこに、上条さんがいた

…って、えぇ!?

佐天「か、上条さん??」

上条「おう。あなたの心のパートナー、上条当麻とは俺のことですよ」

佐天「なっ、なんで、ここに…?」

上条「いや、だからさ」

上条「携帯忘れちまってて、外に居る間は連絡出来なかったんだよ」


上条「んで、帰って携帯見てみたらメッセージ入ってて」

上条「なんか夕方あたりから鬼のように佐天さんから着信入ってるし」

上条「うわぁ、やべーって思って、連絡するより先にここに来たってわけ」

佐天「…あっ、そ、そうだったんですか…」

…てか、私

無意識に何回も電話かけてたんだ…

やば、恥ずかしい…

上条「…まぁ、そういうわけで」

上条「…わるかった」

深々と頭を下げる上条さん


佐天「…あ、いえ、そんな…」

わざわざこんなところまで来てもらっておいて

なんだか悪い気がした

…でも

少しだけ、意地悪したくなった

だって、こんな上条さん見るの、初めてだったから


佐天「…ま、まぁ、許してあげないことも…な、ないですけど…」

…うわ、ドキドキしてちゃんと言えてない…

上条「はははっ、それは参ったなこりゃ」


佐天「も、もぅ…ちゃんと、反省してるんですか…?」

上条「へいへい、してますしておりますって」

佐天「…な、何か誠意が感じられないなぁ~」

何言っちゃってるんだ私ー!

上条「誠意ねぇ…。それじゃあさ、佐天さん」

佐天「…?」

上条「クリスマスに、お詫びさせてくれよ」

佐天「…!!!」ドキィ

上条「まぁ、ホントは最初からそれが言いたくて来たんだけどな」

佐天「…ほ、ホント…ですか…?」


上条「ああ、ホントだぜ。嘘だったらわざわざこんな時間に来ないだろ?」

佐天「そ、そうですね…えへへ…」

上条「…そんじゃま、クリスマスは予定空けといてくれよな」

佐天「あ、ははははい!!ぜ、絶対空けときますっ!」

上条「ははっ。んな気合い入れて返事しなくても」

佐天「…あっ、は、はい…」カァァァ

上条「もっと気楽に行こうぜ。なんせまぁ……付き合ってるんだし?」

佐天「!!…は、はい!…ふふっ」

上条「…まぁ改めて口に出すと恥ずかしいけどな。ははっ」

佐天「…えへへ。そうですね…」


上条「…っと、それじゃあ俺はこの辺で帰るわ」

佐天「あ、はい。あの、お気を付けて…」

上条「ああ、ありがとな……って、あれ?」

佐天「…?」

上条「…佐天さん、マフラーはどうしたんだ?」

佐天「…えっ…あっ!…え、えーっと、実は…」

上条「もしかして捨てちまったか?確かにちょいと汚れちまってたしな。あーあーでもショックだなぁー」

佐天「あっ、あっ、ち、違います!違うんです!そ、その、これにはちゃんとした…その…何ていうか…あああ…」

上条「…ふっ、ははははっ。いやいや、冗談だって」

佐天「え?」


上条「わーってるよ。佐天さんがあのマフラー、大事にしてくれてたことぐらい」

佐天「…!」

上条「何か事情があんだろ?なら、別にいいさ」

佐天「…あ…それは…」

上条「…俺だって」

上条「俺だって、あの時、あのタイミングで渡そうと思ったわけじゃないんだ」

佐天「…え…?」

上条「ただ、『その時』が来ただけ」

上条「ちゃんとした理由は確かにあったけど、渡した時は…ああ、ここで渡しちまって良かったのかなーなんて思ったりな」

佐天「…上条さん…」

上条「…でも、全く後悔は無かったな。なんでか知らねーけど、あそこで渡して良かった気がしたんだ」

佐天「…(私も…同じだ…)」


上条「…まぁ、そういうこった。だから、あんま深く考えなくていいぜ」

佐天「…はい」

上条「ん。…それじゃ、俺は帰るな」

佐天「あ、はい!それじゃあ、また…」

上条「ああ、また…クリスマス、よろしくな」

佐天「は、はい!楽しみにしてます!」

上条「ははっ、それじゃ」

……

ああ、行っちゃった…

連絡してくれたら…私の方から行くのに…


佐天「…」


…あの時


…私はミサカちゃんにマフラーを渡した

…ただ、彼女が寒そうだったからマフラーを首に巻いてあげた

…理由といえば、ただそれだけ

…でも、『その時』だったという感覚

…その感覚は私も感じた

後悔はしなかった

恐らく、その時一番私が大事にしていたものを、あんなに簡単に手放してしまったというのに…

後悔は、なかった

名残惜しい気持ちはあった

でも、不思議と、良かった気がする


…上条さんも同じだったんだ

上条さんが私にマフラーをくれた時と、私がミサカちゃんにマフラーを渡した時

それは、同じだった

嬉しい。なんだかとても、嬉しい

たったそれだけのことだけど、私にとってはそれで十分だ

…じゃあ

あのマフラーを渡したときの御坂さんは、どういう気持ちだったんだろう…?

そもそも、なんでマフラーなんか…

……。

………まぁ、そんなこと考えなくてもいいか。もう、過ぎたことだし……

佐天「それより…」

クリスマスのこと、初春に連絡しよっ!!

………

・○×地区・

~路地~

ニャー
ニャーン

初春「へぇ~。そうだったんですか。猫の世話を…」

御坂「うん。この子達、みんな捨てられちゃった猫みたいでさ。可哀想だったから、私がここで世話してたのよ」

初春「ふえ~、御坂さんえらいですね!」

御坂「そんな…別に大したことじゃないわよ」

初春「いえいえ、凄いと思います!猫さん達もきっと喜んでますよ!」

御坂「そうかな?まぁ、それならいいけど」

初春「…ふふっ。でも、意外ですね」

御坂「…?」


初春「御坂さんが捨て猫の世話をするなんて」

御坂「…そう?」

初春「だって、あんまりそんなイメージありませんでしたから」

御坂「…そう、かな。私、結構動物好きなんだけど」

初春「それは知ってますよ?でも、あんまり、普段も自分から言いませんもんね、御坂さん」

御坂「…ふふっ。そうね」

初春「いやぁ、でも、わかりますよー。可愛いですもんね、猫さん」

ニャーン

御坂「そうね。…こんなに可愛いのにね…」

ニャーン

御坂「…捨てられちゃうんだもんね」

初春「……そう、ですね。可哀想…ですよね」

ニャー


御坂「勝手だよね。自分達の都合で、捨てちゃうなんてさ…」

初春「…はい」

ニャー

御坂「…ねぇ、初春さん」

初春「…はい?」

御坂「…このことさ、誰にも言わないでくれる?」

初春「…え?」

御坂「…いや、やっぱりさ、恥ずかしいんだよね。私が猫の世話…それもこんなにたくさんの猫を世話してるなんてさ、みんなに知られたら…恥ずかしいし」

初春「あ…そうですか。ふふっ、わかりました」

御坂「ありがとう、初春さん」

初春「はい…あ、だからこんな人目の付かないところで世話してるんですか?」

御坂「…ええ、そうなの。それに、ここならペットショップも近くにあるしね」


初春「そうですね!餌とかには困らないですもんね!」

御坂「ええ。…でも、あのペットショップって不思議よね」

初春「え?どうしてですか?」

御坂「たくさん動物を売ってるのに…」

御坂「…猫は一匹もいないんだもんね」

初春「…え?」

御坂「犬もたくさん居るし、他の動物もたくさんいるんだけど、なんでか猫は売ってないのよ、あの店。…どうしてかしらね?」

初春「…そう、だったんですか…(え、じゃあ…)」

御坂「まぁ、餌は売ってるし、問題ないんだけどね」

初春「あはは…そうですね…(…それじゃあ)」


それじゃ…夜中に猫の声が聞こえるのって…

ペットショップのせいじゃなかったんだ…

…本当は……御坂さんが……

御坂「………ねぇ、初春さん」

初春「あっ…はい?なんですか?」


御坂「……この路地の奥にさ―――」


プルルルッ プルルルッ


初春「うわっ、電話…?」

御坂「……」


初春「…はい、もしもし?…あ、佐天さんですか?…」

御坂「……」

初春「…ええ……おおぅ!それは良かったですね!やるじゃないですか佐天さん!」

御坂「……」

初春「…ふふっ、わかりました……それじゃあ、また明日!」

ピッ

初春「あ、すみません。えっと、何でしたっけ?」

御坂「…ううん、何でもないわ」

初春「そうですか。…あ、じゃあ、私はこの辺で帰りますね!」

御坂「…ええ。またね、初春さん」

初春「はい!それじゃあ、また!」

御坂「…あ、初春さん」


初春「…はい?」

御坂「…もし良かったらさ」

御坂「…明日もこの子達に会いに来てくれないかな?」

初春「え?」

御坂「この子達も、初春さんにはなついてるみたいだし……どうかな?」

初春「…ふふっ。ええ、わかりました!」

御坂「…そう、良かった」

初春「私も猫さん達に会いに来たいですし、それに御坂さん一人じゃ、世話するのも大変ですよね!」

御坂「…ええ、そうね。ありがとう」

初春「いえいえ。それじゃ、また明日!」

御坂「ええ……また、明日」

タタタタッ…

………


・佐天宅・

…ピッ

パタン

佐天「…ふぅ」

クリスマスの予定も決まったことだし…

万事…おっけー!

あとはクリスマスを待つだけだな…

うわぁ、なんか、決まったら決まったらで待ち遠しくなってきた……

…上条さんとクリスマスかぁ…

前までなら、考えられなかったな…

…や、やばい。すっごいドキドキしてきた


思えば、そういうイベントらしいイベントに一緒に行ったことなかったんだった…

…ぉおお!ど、どうしたらいいんだろっ!

私、一人、パニック!!

……。

いや、でも、普段通りでいいのかな

あんまり考えすぎても、ダメな気がする

…まぁ、そういうことはまた明日、初春に相談してみよう

佐天「…それにしても」

…上条さんは気にしてないって言ってたけど…

…マフラーが無いと、なんか私が落ち着かないなぁ…

…首元が、なんか寂しいんだよなぁ…

…でも

あれで良かったんだよね

…きっと、間違ってなかった

佐天「…って、私はすぐにマフラーのことばっか考えてるー!」

軽率だったかなぁ…

いやいやでも…

ああもう、やめよう

今日はもう遅いし、寝よ…


ニャーン


佐天「?」


猫の鳴き声…?


佐天「…ふふっ、猫もクリスマスが待ち遠しのかな?」

…おやすみ、猫さん

………


・とあるコンビニ前・


一方「…で?」

打止「…だ、だから…」

一方「だからなンだ?」

打止「この猫……やっぱり飼っちゃダメなの?ってミサカはミサカは言ってるの!」

ニャーン

一方「まだ言ってやがンのかてめェは…」

打止「あなたがいいと言うまで私はお願いするのをやめない。ってミサカはミサカは格好よくいってみたり」キリッ

ニャーン

一方「黙れクソガキ。くだらねェモン連れていく趣味は俺にはねェ」


打止「だからミサカが連れていけば良いんでしょう?」

一方「てめェ一人でも連れててウンザリしてンのに、これ以上余計なモン増やされてたまるかよ」

打止「ぶーっ。心が狭すぎるのは良くないと思うの、ってミサカはミサカは言ってみたり」

一方「クソガキがなま言ってンじゃねぇ」

打止「…ふんっ、いいもん。ミサカはミサカは勝手に連れていくから!」

一方「…はぁ。このクソガキ………あ?」


一方「…おい、おまえそのマフラーは何だ?」

打止「…!」

一方「まぁ、どうでもいいがよ」

打止「これは大事な大事なミサカの、ミサカの友達がくれたの!どうでもよくない!」

一方「…あぁ?友達だぁ?…はっ、てめぇに友達なンてモンが居たとは驚きだな」

打止「失礼なの!あなただって友達いないくせにっ」

一方「はっ、居なくて結構。そんなモン、できたところで面倒なだけだ」


打止「むぅ…。とにかく、このマフラーは大事なものなの!」

一方「どうでもいい」

打止「あなたから聞いてきたくせにー!」

一方「あー、めんどくせぇ……何で俺はこんなガキ連れてンだまったく…」


ニャーン


打止「……あっ…」

一方「…あ?なンだ?」

打止「……」

一方「…?おい、何黙ってンだ」

打止「…うるさいの」

一方「あァ?何言って…」


打止「…少し」

一方「…?」

打止「…少し…嫌な予感が、したの」

一方「……?」

打止「…胸が…少しだけ…ざわついてるの…」

一方「…おまえ…」


ニャー…


打止「…なーんちゃって!ってミサカはミサカはとぼけてみたりー!」

一方「…はァ!?…テメェ、何言って…」

打止「それよりお腹空いたー!何か食べたいの!ってミサカはミサカはおねだりしてみる!」

一方「さっき食ったばっかだろォがてめェは!」


打止「全然足りないのー。あんなのでミサカがミサカが満足できると思ってるの?」

ニャーン

打止「ほらほら、この子もお腹空かしてるの!ってミサカはミサカは…」

一方「知るか」

打止「ひどいのぉ~」

一方「…面倒くせェ。俺はもう行くからな」

打止「あ!待ってー。どこいくの?ミサカはミサカはお腹空いたって言ってるのー!」

一方「知らねェーってンだろォが!…ったく」

スタスタスタ…


打止「ああ、…もぉ」

ニャーン

打止「…けちな人だね、あの人。ってミサカはミサカの猫ちゃんに言ってみる」

ニャー

打止「ふふっ…」

打止「……」

……ホントに

少しだけ

少しだけ、嫌な予感がしただけなの…

だから、大丈夫だと思う…

打止「…大丈夫…だよね…」

…きっと…

………


~美琴・黒子宅~


黒子「それにしても、お姉さま」

御坂「ん?どうしたの黒子」

黒子「私、思うことがありますの」

御坂「?…何がよ?」

黒子「…そろそろ、私達の仲も進展しても良い頃合いではないかと…?」

御坂「はぁ…またあんたは…」

黒子「むしろ今までが不思議ですわ!」

黒子「私がこのように風呂上がりの色気を毎晩アピールしているというのに…」

黒子「…お姉様はまったく私を押し倒そうとしてこないではありませんか!」

御坂「…なんで私があんたを押し倒さなきゃいけないのよ…」


黒子「ああ!それです!それですわお姉さま!!そのお姉さまの黒子に対する独占欲の無さ!それが私達の関係の進展を妨げているのです!」

御坂「あっ、もうこんな時間…おやすみぃ…」

黒子「おねぇぇさまぁああ!!」

御坂「ああもう!うるさいっ!眠いのよ私は!」

黒子「うっ…ひどいですわお姉さま…。黒子はこんなにもお姉さまを愛していますのに…」

御坂「うん、ごめんごめん。じゃ、おやす…」

黒子「おねぇぇさまぁああ!」

御坂「…なによもぅ…」

黒子「…仕方ありませんわね」


黒子「こうなったら…実力行使ですわ…ぶふっ!」

御坂「パターンは読めてんのよ!まったく…」

黒子「ひどいですわお姉さま…枕を投げつけるなんて…。いや、しかし、これも愛の鞭なのですね!耐えます!黒子は耐えてみせますわ!」

御坂「…何が愛よ…まったく…うるさいわね…」

黒子「………………」ジーッ

御坂「…?」

黒子「…お姉さま」

御坂「…なによ」


黒子「…あの殿方のこと」

黒子「まだ、引きずっていらっしゃるのですか?」

御坂「…!」

黒子「はぁ。…お姉さまの考えていることなんて、お見通しですわ」

御坂「……」

黒子「…ここ最近も、ずっと元気がない様子でしたし…」

黒子「たまに上の空になるのも、黒子はわかっていましてよ?」

御坂「………別に…」

黒子「私と二人で居るときぐらい、素直になってはいかがですが?」

御坂「…」


黒子「…あの、マフラー」

黒子「ずっと、編んでいましたものね」

御坂「……」

黒子「お姉さまのお気持ちは、お姉さまにしかわからないと思います」

黒子「ですから黒子は、これ以上は何も言うつもりはありませんわ」

御坂「…黒子…」

黒子「…ええ、もう何も心配入りません」

御坂「…へ?」

黒子「そんなお姉さまの心の傷は…黒子が全身全霊で癒して差し上げますことよぉーー!私の体を持ってぇーはぶっ!」

御坂「結局それかあんたは!」


黒子「うぅぅ…。申し訳ございませんわ」

御坂「……はぁ、まったく」

御坂「…そりゃあ、引きずってないって言ったら嘘になるけどさ…」

御坂「…私だって、一応あの事には自分の中で決着つけたつもりよ」

黒子「…」

御坂「だからもう…いいのよ。あいつの事は…」

黒子「……そうですか」

御坂「…もういいでしょ?私はもう寝るわよ?」

黒子「ええ、すみませんでした…おやすみなさいませ」

御坂「…おやすみ」


黒子「…あ、お姉さま」

御坂「…何?」

黒子「1つだけ、お聞かせ願いますか?」

御坂「…何よ?」

黒子「どうして…」

黒子「どうしてあの方に『マフラー』をあげようと思ったのですか…?」

御坂「……」

黒子「…何か理由がございますの?」

御坂「…別に」

御坂「…ただ」


言われたのよ


『マフラーをプレゼントしてあげたら、男の人は喜ぶと思いますよ』って


――同刻

―路地裏―


ニャー ニャー

御坂「…」

御坂「…また、明日…か…」

ニャー
ニャーン

御坂「…良かったね」

御坂「明日も初春さん、来てくれるって」

ニャーン

御坂「……」サワッ

ニャーン!タタタタッ

御坂「あっ……」

御坂「…やっぱり、逃げちゃう…か」

ニャーン

御坂「…困るわよね」

御坂「…猫の鳴き声がうるさいんですって」

ニャーン

御坂「…こんなに、可愛いのに、ね…」

ニャーン
ニャー

御坂「…さて」

御坂「そろそろ」


「お姉様の真似をするのは疲れてきましたね」

「と、ミサカはため息をつきます」

ニャーン

御坂妹「…猫を拾った女生徒がこちらに向かっていると情報が入ったので…」

御坂妹「…折角、準備してお待ちしておりましたが…」

御坂妹「…まさか『あっち』の方だとは思いませんでした…」

御坂妹「…と、ミサカは少し残念に思います」


…でも

おかげでこちらの方が面白くなりそうです

本当は今日だったのですが、それはもう、諦めましょう

…しかし、予想外に

とても面白い方向に行きそうです

御坂妹「…と、ミサカは内心、笑います」


とてもとても、楽しみになってきました

とてもとても、面白くなってきました

とてもとても、待ち遠しくなってきました

あなたにお会いする日が


御坂妹「…佐天、涙子様」


…クリスマスは彼と二人で過ごすそうですね


それはそれは


ご冗談を


せっかくのクリスマスです

『みんな』で、楽しみましょう

きっと、楽しくなりますから

…と、

御坂妹「…ミサカは、予告します…」


あなたに


クリスマスまであと3日
……………

今から夜勤だ

クリスマスって暇だな

また続き帰ってから投下する

無理に保守しなくてもいいです

それじゃあ

>>1
の前作ってどうやって見ればいいんだ?

残業とかマジ勘弁

保守ありがとう

続き投下するけど、途中で確実に寝落ちすると思う


>>154
>>1に書いてある前作のスレタイでググってみてくれ

……………
12月23日
天気・晴れ
降水確率20%
………………

佐天「…と、いうわけで」

佐天「晴れてクリスマスの予定をゲットしたわけよ!」

初春「イェーイ!」パチパチパチパチ

佐天「はっはっはっは!昨日までのヘタレな私、さようならー!」

初春「オーイェーイ!…あ、でも結局、上条さんから誘われたんですよね?」

佐天「うっ…まぁ、結果的にはそうだけど…。細かいことはよいのだよ初春くん!!」

初春「はい!佐天隊長!結果が全てでありますね!」


佐天「うむ!これも我々の日々の努力の成果と言えよう!」

初春「はい!番号を押そうとする度に震える手とはこれでさよならですね!」

佐天「まだ誘ってもいないのに頭の中で幸せなクリスマスを妄想するのも終わりだ!」

初春「電話ができないからって手紙をポストに投函しようとしなくて済みますね!」

佐天「テストの答案に上条さんの電話番号を書いてしまうこともない!」

初春「えっ…マジですか?」

佐天「…うん、マジ」

初春「………」

佐天「………」


初春「…と、とにかく、おめでとうございまーす」

佐天「う、うん、あの、頑張る…」

初春「まぁ、楽しいクリスマスにしてください。応援してますよっ」

佐天「…ありがと、初春」

初春「いえいえ。ま、本番はこれからですけどね!」

佐天「うん!そうだ…何かイベントとかやってないか調べこっ!」

初春「あはは…」

佐天「…♪」

初春「……それにしてもまぁ、なんというか…」

佐天「…?」

初春「……うぅ……」

佐天「…えっ!?なんで泣き出すの?」


初春「…いや、応援するって言っといてアレですが、自分の身近な友達が彼氏とクリスマス過ごすってなると、やはり少し憂鬱になります……うぅ…」

佐天「…あ…えと…」

初春「…まぁ、佐天さんと上条さんが楽しい時間を過ごしてる間、私は一人でこたつに入ってみかんでも食べてますよ…」

佐天「えっ…あの、えーっと、その…ごめん…」

初春「いや、別にいいですよ。…どうせ私には一緒に過ごしてくれる男の人なんていないんですから……うっ…」

佐天「いや、えーっと……う、初春なら大丈夫だって!きっとすぐいい人見つかるって!」


初春「いい人って…どんな人ですか?」

佐天「えーっと……や、優しくて…頼りになるようなそんな人が…」

初春「そんな人、周りにいませんよぅ!それに、私には見向きもしないですよぉ!」

佐天「いや、でも、ほら、初春…可愛いしさぁ」

初春「…佐天さんよりもですか?」

佐天「…えっ?…あ、えっと、うん!もちろん!初春の方が可愛いよ!」

初春「…じゃあ、上条さんを私に譲ってくださいますか?」

佐天「それはダメ!」

初春「早っ!いや、冗談ですよ冗談」


佐天「ガルルルッ」

初春「あははは……す、すみません。…あ、そうだ!」

佐天「…なに?」

初春「そういえば佐天さん、クリスマスプレゼントはもう買ってますよね?」

佐天「………」

初春「え………?」

佐天「………」

初春「明日…イブなんですけど…?」

佐天「………」

初春「あ、一緒に買いにいこうと思ってるとか?」

佐天「………え?」

初春「…ダメだこりゃ」


佐天「な、なんだよ、うるさいなぁ…」

初春「はぁ……ていうか佐天さん。もしかしてプレゼントのこと忘れてませんでした?」

佐天「…!…わ、忘れて……ない…」

初春「一緒に過ごせるっていうので舞い上がってて忘れてたわけですか…」

佐天「そっ、そんなこと!…な、ない……という可能性もなきにしもあらず…」

初春「わけわかんないですよそれ」

佐天「いや、で、でも、まだ今日買いに行っても…間に合うよね?」

初春「そりゃあ、今日買えば間に合いますけど…」

佐天「…じ、じゃあ問題無いじゃん!大丈夫大丈夫!」


初春「いや、ですから、今日買えたらですよ?」

佐天「え?いや、だから、買いに行けばいいんでしょ?今日」

初春「…本当に買えるんですか?上条さんへのプレゼント」

佐天「だから何よさっきから!」

初春「いや、佐天さんのことですから…上条さんへのプレゼント、何にするか決めてないんじゃないかと」

佐天「…………」

初春「…マジ…ですか…」

佐天「いいいいや、大丈夫よ!何件かお店回っていったら絶対何かあるって!」

初春「…ホントですかぁ~?」

佐天「…うっ…」


初春「…ああ、見えます。見えますよぉ~。いつまで経ってもプレゼントが決まらずに夜遅くまでお店を渡り歩いてる佐天さんが…!!」

佐天「…うぅ…」

初春「…次の日も、またその次の日も探しに行きますが、未だにプレゼントが決まりません…」

佐天「…あぁ…」

初春「…そして」

初春「何も買えないまま彼と過ごすクリスマスが来てしまったぁぁぁあ!!!」

佐天「きゃああああ!!」

初春「…と、いうように。そんな事態になりかねないんじゃないかと、私は危惧しているんです」

佐天「……うわぁ……」


初春「まぁ、なんでしたら上条さんに何が欲しいか聞いてみたらどうですか?」

佐天「そ、それは…ダメ!なんか…サプライズ的な何かじゃないと…!」

初春「…そんな余裕かましてる時なんですか…?」

佐天「…うぅ…で、でも…」

初春「それじゃあもう、当日にお互いのプレゼントを一緒に買いに行くとか!普通にありだと思いますけど?」

佐天「で、でも…もう上条さんが既にプレゼントを用意してたら…?」

初春「ですから、そうならないように連絡しておけばいいじゃないですか」


佐天「…む、無理。なんか、恥ずかしい」

初春「わぁ~、めんどくさいです~この人ぉ~」

佐天「………」ムシリッ

初春「すみません、黙って花をむしるのやめてもらえますか!?」

佐天「…なんか初春の花をむしってると落ち着く」

初春「ダメだこの人。早くなんとかしないと私の花が危ない」

佐天「ダメダメ言うなぁ!私だって…昨日は勇気出して電話したし…」


初春「いや、だから、それが普通なんですよ」

佐天「…ふっ、普通の恋愛に興味はありません!」

初春「(プルルル)…あ、上条さんですか?初春です。はい、なんか佐天さんクリスマスは予定があるそうなので上条さんとは過ごせな…」

佐天「初春ー!!私が悪かったー!!それだけはやめてー!!」

初春「…はぁ。いやまぁ冗談ですけど」

佐天「…はぁ…はぁ…。もう…」

初春「…とにかく、どうするんですか?」

佐天「…プレゼント、買いに行く…」


初春「そうですか。まぁ、早めに決まることをお祈りします」

佐天「…うん」

初春「ふふっ…それじゃあ、ご健闘を」

佐天「…あ、あのさっ」

初春「はい?」

佐天「…初春も一緒に買い物付いてきてくれない?」

初春「ああ、別に良い……」


『―…明日も来てくれないかな?…―』


初春「あっ……」

佐天「?」


初春「…すみません佐天さん。ちょっと私、今日は用事があるんです」

佐天「用事?」

初春「まぁ、仕事なんですけどね。白井さんに任されているんです」

佐天「へぇ、そうなんだ。」

初春「はい、そういわけで、すみません」

佐天「ううん。…まぁ、ちょっと心細いけど、自分で頑張ってみる!」

初春「ふふっ、その意気です!ファイト佐天さん!」

佐天「おう!」


プレゼントかぁ……

上条さん、何を買ったら喜んでくれるんだろう…

…とにかく

探しにいこう!


……

―夕方―

帰宅時


黒子「…はぁ」

御坂「…?どうしたのよ黒子」

黒子「…いえいえ、ちょっと…」

御坂「…なんかあんたが元気ないと調子狂うわね」

黒子「……うっ…うぅ…」

御坂「…えっ?」

黒子「……おねぇぇさまぁああ!!」ガバッ

御坂「うわっ、ちょっ、こんなとこで抱き付くな!」


黒子「うぅ…黒子は…黒子は…」

御坂「…はぁ。一体どうしたっていうのよ?」

黒子「…黒子は…悲しいのでございます」

御坂「だから、どうしたのよ?」

黒子「…うっ…お姉さま…いいですか?」

御坂「何がよ?」

黒子「……世は……」

黒子「…年に一度の…」

黒子「大イベントを迎えようとしていますの!」

御坂「…大イベント?…ああ、クリスマスのこと?」


黒子「そうでございます!恋人達が歓喜に満ち溢れるイベント、クリスマス!!」

御坂「いや、そんな強調しなくても…」

黒子「そんな…そんな……私たちのためにあるようなイベントの日に……」

黒子「…どうして仕事があるんですかぁぁああああああ!!!うわぁぁぁん!!」

御坂「…あー…えーっと…」

黒子「悲しい!悲しすぎますわお姉さま!年に一度しかないイベントなのに…愛しのお姉さまと一緒に過ごせないなんて……!!」

御坂「あー、よしよし。お仕事頑張ってねー」ナデナデ


黒子「…うぅ……運命は残酷ですわ…。このように二人の愛を引き裂こうとするなんて…!」

御坂「何言ってんのよ、まったく…。」


佐天「…あっ、御坂さんと白井さんだー!」

初春「あ、こんにちわー!」

黒子「あら、佐天さんと初春ではありませんの」

御坂「あ、やっほー」

佐天「こんにちわー!今帰りですか?」


御坂「うんっ、そんなとこ。佐天さん達は?」

佐天「私は帰るとこです。初春は仕事みたいですけど」

初春「あ、はい!…そうなんです……仕事で……」チラッ

御坂「…?」

黒子「そういえば、初春。昨日はどうでしたの?」

初春「え…」

黒子「ちゃんと調査できましたの?あのペットショッ…」

初春「わわわわぁーっと!!」

佐天「…?どうしたの初春」

御坂「…さぁ」


初春「いやいや別に何でもないですっ!ちゃ、ちゃんと調査はしてきましたよ!」

黒子「…?それで、何かわかりましたか?」

初春「…いやぁ、あの、それがまだ…ちょっとよくわかんなくて~」

黒子「…どっちなんですの?」

初春「と、とにかく、もう一度調査してから、また報告します!」

黒子「…はぁ。まぁ、いいですわ。しかし私はあの件の原因は近くにあるペットショッ…」

初春「ペットショーット!!ナイスショーット!!」

佐天「…初春、何言ってんの?」

御坂「さぁ…」


黒子「…ま、なんでもいいですが、私は今日も支部の方で仕事がございますので、何かあったら報告しますのよ初春?」

初春「あっ、は、はい!頑張りますー!」

佐天「それじゃあ、私はこれで!」

御坂「あ、じゃあ私も帰ろっかな」

黒子「おねぇさまぁ!帰ってしまわれますの…?」

御坂「…いや、そりゃ帰るわよ。特にやることもないしね」

黒子「うぅ…」

初春「…(や、やっぱり御坂さん、白井さんにも内緒にしてるんだぁ…)」

佐天「…?」


御坂「それじゃあ、またねー」

初春「あ、はい……また」

黒子「はぁ……。せめてクリスマスだけでも仕事が無ければ…」

佐天「クリスマスも仕事があるんですか?」

黒子「ええ…。もう、憂鬱の極みですわ…」

佐天「ははは…」

御坂「まだ言ってんのあんたは…。クリスマスぐらいでそんなに騒ぐんじゃないわよ」

御坂「……ね、佐天さん?」

佐天「えっ!?あ、えっと……そっ、そうですよね…」

…な、なんで私に、このタイミングで、その話題…!?


御坂「あー、でも黒子がいないってことは私はクリスマス一人かぁ…」

佐天「…え…えっと」

初春「あ、あのぉ……み、御坂さん…」

黒子「お、お姉さま…あの…」

御坂「………ふふっ」

佐天「…?」

御坂「あははっ、ごめんごめん。ちょっと、からかってみたくなっただけ」

黒子「…も、もう…お姉さまったら…ははは」

初春「あははは(…こ、怖かった…)」

佐天「ははっ…(ホッ…)」

御坂「…ん、じゃあ私はいい加減行くわ」

初春「あ、はい」


黒子「…さて、私たちは仕事に行きますか」

佐天「いつもお疲れ様です。じゃあ、また明日~」

御坂「…あ、佐天さん」

佐天「はい?」

御坂「途中まで一緒に帰らない?」

佐天「あ、はい、そうしましょうか」

初春「じゃあ、私もこれで…」

佐天「うん、じゃあまたね初春…………っ…!?」


―――ドクンッ


………!?


………何………?


初春「…?佐天さん?」

佐天「………」

――何…?何だろう…この感じ…

よくわからないけど……でも……何かの『予感』

この感覚………どこかで……

…わからない…わからない

…でも…

佐天「…っ……初春!!」

初春「うぇっ?は、はい?どうしたんですか佐天さん?」

佐天「……初春も」

佐天「…今日は私と一緒に帰ろう」


初春「えっ!?で、でも私…仕事が…」

佐天「いいから!お願い…!!」

初春「で、でも…」

黒子「…どうしましたの佐天さん?」

佐天「いえ…あの…なんというか…」

…初春を

一人にさせちゃいけない気がする……

御坂「ふふっ、まぁ、別にいいんじゃない?今日ぐらい、寄り道してもさ」

初春「御坂さん…」

黒子「まぁ…お姉さまがそうおっしゃるなら…」


初春「…じゃあ、今日は一緒に帰ります!」

佐天「…うん!」

御坂「それじゃあ、帰りましょ。…もう暗くなってきたし」

佐天「はい!それじゃあ、白井さん、また明日」

黒子「ええ、ごきげんよう」

御坂「じゃあねー」

初春「また明日!」


スタスタスタ…


黒子「………」


……違和感

ちょっとした違和。

ただの予感、ですが……

黒子「…ふぅ」


気のせいであって欲しいものですね

………

ごめん

体力的にちょっと限界なんだ

今日も仕事だし、今からちょい寝て、行く前にまた投下しく感じでもいい?

今起きた

保守ありがと

30分ぐらいに投下再開する

再開

………


・とある公園前・


一方「あー、めンどくせェ」

…ったく

猫を買いたいだ、腹が減っただ

昨日はあれだけぐだぐだ言ってきやがったくせに…

一方「…どこに行きやがったあのクソガキ…」

あいつが行きそうな場所はテキトーにまわったが…

どこにも居やしねぇ…

…ったく、どこまでも手間かけさせやがるガキだ…


早く見つけねぇーと…


……。

一方「…って、なンで俺があいつを探さなきゃいけねぇーンだ!!」

元はといやァ、あいつが勝手に付いてきてるだけじゃねーか!

…あー、イライラする

馬鹿馬鹿しい…クソみてェな話だ…

あーやめだやめだ

あいつを探すのはやめ…


一方「………」


『―…少し…―』

『―…少しだけ…嫌な予感がしたの…―』


一方「……」


……何だってんだ

…わけわかんねぇこと言いやがって…


『―…胸が騒ぐの…―』


一方「………」


…何が…何がだよ

わけわかんねぇ…

腹が立つ…


一方「……チッ」


…仕方ねぇ

…別の場所に行くか……


……ザッ……


一方「…?」


人の気配…?

…なんだ…この…

…気配は…


一方「…誰だ」


「……」


一方「……!…おまえ」


「…何やってんだおまえ」


一方「…はんっ、テメェか…」

通りで…

胡散臭ぇ気配がしたと思ったぜ…

そして…


上条「公園の前で一人で………おまえ、友達居ないのか?」


…相変わらず、いけすかねェ野郎だ

………

…………


・夕暮れ・


スタスタ…


初春「…」

初春「(御坂さん…一度帰ってから行くのかな…?)」

佐天「…初春」コソッ

初春「…え?あ、はい?」

佐天「…ごめんね、わがまま言って」

初春「ああ…いえいえ。全然良いですよ?」

佐天「…ありがと」

初春「ふふっ、そんなに私とプレゼントを一緒に買いに行きたかったんですか?」

佐天「…え……う、うん!ま、まぁ、そ、そんなとこよ!」


初春「仕方ありませんねぇ、まったく。…ふふっ」

佐天「…えへへ」

…まぁ、嘘ではない…かな…

初春には付いてきて欲しかったし…

…でも、ホントは…

佐天「(…考えすぎ…かな…)」

御坂「なーに?クリスマスプレゼントの話?」

佐天「…あ、はい!今から買いに行こうかなぁなんて…」

御坂「そうなんだぁ。…じゃあ、やっぱり、あいつに?」

佐天「…あ、えっと…はい」


御坂「…そっか…」

初春「…えっと、あの…み、御坂さんもどうですか?」

御坂「…私も?」

初春「いや、ほら……私も…御坂さんや普段からお世話になってる人にプレゼント買いたいですし…。だから、御坂さんもどうかなって…」

御坂「……」

佐天「……」

初春「……」


佐天「(…初春ー!!いいの?言って良かったの!?)」コソッ

初春「(いやいやいや、だってこれ以上のフォローできないでしょ!!)」コソッ

佐天「(できる!君ならできるよ初春くん!日頃のスカートめくりの成果を今ここで!)」コソッ

初春「(何の成果も出せませんよ!!)」コソッ

御坂「あー、えーっと…」

佐天「…あ、どうします?」


御坂「…私は…いいや」

初春「そ、そうですか…」

佐天「何か…この後用事とかあるんですか…?」

御坂「…ううん、特に無いけど…。ただまぁ、プレゼントは…またの機会でいいや」

佐天「そ、そうですか…」

初春「…(…猫の世話のこと…佐天さんにも言いたくないのかな…?)」

初春「あ、あの…私、ちょっとお手洗いに行ってきますね!」

御坂「ええ、行ってらっしゃい」

初春「…そ、それじゃ…」

タタタタッ

佐天「(初春めぇ…逃げたな…)」

御坂「あ、佐天さん?」

佐天「は、はい?」


御坂「あのさ…あんま気を使わなくていいよ?」

佐天「え…?」

御坂「…いや、ほら…やっぱさ、確かに…あんなことがあったし…完璧に元の通りの関係に戻るのは無理かもしれないけどさ…」

御坂「…でも、私は…もう、大丈夫だから。あいつのことはもう…区切り、ついたから」

佐天「…御坂さん…」

御坂「…佐天さんや初春さんにも、ひどいことしちゃったしね…。今更、後悔しても…遅いんだけど…」

佐天「……」

御坂「…ま、そういうわけだからさ!私のことは気にせず、あいつになんか買ってやりなよ」

佐天「…はい」

御坂「うん、それでいい。…それじゃ、うまくやんなさいよ?」

佐天「はい!」

御坂「よし…それじゃ…私は帰るね!バイバイ!」

佐天「あっ…御坂さん…!」


タタタタッ…

佐天「…い、行っちゃった…」

佐天「…」

…この一ヶ月、その話題には極力触れないようにしてきた

…いつかは、こういう話をするとは思ってたけど…

…でも、珍しいな…

いつもの御坂さんなら、もっと強気なはずなのに…

あのとき『諦めないから!』って、私に言ってたのに……

……まぁ、いいか

とりあえず、初春と買い物に………

佐天「…ていうか、まだ帰ってこないのかあいつは……」

…まぁ、仕方ない

その辺の公園のトイレにでも行ったんだろうし

迎えに行ってやるか…

――夜


・とある公園・


一方「…で?」

上条「いやぁ、コーヒー美味いなぁ。暖まる」

一方「…おい」

上条「しかしなんだこの寒さは。…冬ってのはあなどれねーな」

一方「…おい!」

上条「そういやぁ最近、鍋とか食ってねーなー。久しぶりにやるかな」

一方「…おいコラッ!!」

上条「…なんだようるせーなぁ…。人がせっかく晩飯の献立を考えてる時に…」

一方「ンなことはどーでもいいんだよ!さっきから一人でベラベラ喋りやがって!」

上条「何言ってんだよ。心の優しい上条さんが、せっかく友達が居なさそうなおまえの話し相手になってやってんのに…」

一方「余計なお世話なんだよ!…チッ…くっだらねェ」


上条「とか言って、買ってやったコーヒーはちゃんと飲んでんじゃねーか」

一方「それとこれとは話が別だ。コーヒーは飲まれるためにあンだよ」

上条「素直に『買ってもらえて嬉しいです上条たん♪』って言えよ」

一方「殺すぞ」

上条「ははっ、わりぃわりぃ。じゃあ『コーヒー美味しいよ上条お兄ちゃん♪』って言え」

一方「…よーし、わかった。今からテメェの脳内の血脈逆戻しにしてやっから頭出せ」

上条「ははっ、やってみたまえクソ野郎」

一方「…チッ」

胸糞わりィ…

何で俺はこんなとこで、こんな野郎と二人でコーヒーなんか飲んでんだ…


上条「……で?」

一方「…あァ?」

上条「おまえ、こんなとこで何やってたんだ?」


一方「…はっ、テメェには関係ねェことだ」

上条「まさか……一人でブランコ乗りに来たのか……?……可哀想な子…」

一方「いい加減、本気で殺すぞテメェ」

上条「やめとけ。一人でブランコなんてトラウマ抱えたまま成長したら、ろくな大人になれねーぞ」

一方「おい、誰かこいつの口をホッチキスで止めろ」

上条「心配すんな。そんなトラウマは幻想だ。俺がぶち壊」

一方「もういいから死ねよテメェ!」

上条「…あーあー、うるせーなぁ…。んで、何でこんなとこにいんだよ?」

一方「だから、テメェには関係ねーんだよ」

上条「…はぁ。そうかい」

一方「…テメェは」

上条「…ん?」

一方「テメェはここに何しにきたんだ」


上条「…おいおい、自分は話さねぇくせに、人には聞いてくんだな」

一方「…チッ」

上条「…まぁ、いいか」

一方「…」

上条「いやぁ、なんでだろうな…。この公園に来るのは久しぶりなんだが…」

上条「…なんか、来たくなってな」

一方「…はァ?」

上条「…人に聞いといて何だその言いぐさは」

一方「…いや、テメェこそこの公園にトラウマでも持ってんのかと」

上条「…んー、まぁ、あながち間違っちゃいねーっていうか…」

一方「…あァ?」

上条「まぁ、大切な場所でもあるんだけどな…」

一方「何だそりャ…。わけわかんねー奴だ」

上条「…そうだな。自分でもよくわかんねぇって時もある」


一方「…」

上条「ただまぁ、色々あったんだよ。この公園で…」

一方「…なんだおまえ、ここでゴジラとでも戦ったのか?もしそうなら笑ってやるよ」

上条「…」

一方「…?」

上条「………ぷっ」

一方「…あ?」

上条「…あははははっ!」

一方「…おい、何でテメェが笑ってんだよ」

上条「い、いや、ははっ、なんつーか…ははははっ」

一方「やべェ、キレそう」

上条「あー、わりぃわりぃ……いやぁ、あまりにもおまえの言ってることが的を射ててな」

一方「…は?」

上条「…確かに、戦ったよ………ゴジラと」


一方「……はァ?」

上条「…はい、俺の話はこれで終わり」

上条「おまえの番だぞ」

一方「……チッ」

一方「…人を探している」

上条「…人?」

一方「正確に言やァ、ガキだ。女のガキ。テメェもよく知ってるクローンの…」

上条「おまわりさーん!ここにロリコンがいます!ロリコンが幼女を狙ってますー!」

一方「おい死ねテメェ!!いや、殺す!」

上条「…はぁ、ったく。冗談の通じねぇ奴だな」

一方「通じねぇよバカ野郎。……で、昨日まで一緒だったんだが……朝になったら居なかったンだよ」

上条「…へぇ。なんか特徴とかは?」


一方「…あー、強いて言うなら…」

上条「強いて言うなら?」

一方「…アホ毛」

上条「…はぁ。アホ毛ねぇ…」

一方「ま、テメェには関係ねェことだけどな…」

上条「…んなこたぁねーさ」

一方「は?」


上条「…関係ねェ、って思ってることが、案外自分に関係あったりすんだよ……っと…」

スタスタスタ

上条「じゃあな。その子に会ったら、白髪のロリコンが探してるって言っといてやるよ」

一方「おい待てコラ。とりあえずここで俺に殺されていけ」

上条「そいつぁ結構だ。生憎、これからやることがあるんでね」

一方「…あァ?」

上条「…ほら、もう明後日クリスマスだろ?」


買いに行くんだよ、プレゼント

…………

………

―街―


佐天「…いない」

一通りこの辺りをまわったけど…

居ない

…まったく、一体どこのトイレに行ってるのよ…

佐天「………」


…嫌だな

あんまり意識しないようにしてきたけど

やっぱり、嫌な想像をしてしまう

そんなわけないって思ってても

ふと、頭をよぎる

一ヶ月前の…初春に起こったこと


―――ドクンッ


…心臓が、鳴る

未知の世界からの、警告の鐘のように


―――ドクンッ


脈打つ

…予感が…確信に変わろうとしているように


佐天「………初春」


…大丈夫、だよね?

戻ってくるよね?初春

今から、買い物に付き合ってくれるんでしょう?

なら…早く…戻ってきて

これ以上、私に嫌な予感をさせないで……


佐天「…どこ……初春…?」


…どこに…いるの?

――――
・とあるビル屋上・


御坂妹「…」


……ここは、寒いですね

しかし雪は降りませんか…

…20%の降水確率じゃ、そう簡単には降らなさそうですね

…と、ミサカは思います


真っ白な雪、というものに

私は少し興味があります

純粋なその白さは

黒く染まることなく地上に舞い落ちる

そう、染まることなく…


御坂妹「…私は、染まってしまいましたか」


この…

感じたことのない…得体の知らない黒い何か

それが私の胸の奥から沸きだしては、黒く染めていく

私はこの感情を知りません

感情とは…なんだったか

それを教えてくれたあの方は

私ではなく、お姉さまでもなく…

…あの女を選びました

…わかります。わかりますお姉さま

あなたも感じたのでしょう?

この余すことなく黒一色に染まった渦を

どうしようも出来ない、この『感情』というものを


御坂妹「……」


だから、お姉さまは狂ってしまわれたんですよね。一ヶ月前に

しかし…

…お姉さまは

…お姉さまは、優しすぎました

優しいからこそ、先に自分が壊れてしまった

ですから、失敗してしまったんです

御坂妹「…と、ミサカは断言します」

…大変、申し訳ございません

お詫び申し上げます


ミサカは…


優しくありません


まったく、手を抜く気がございません


利用できるものは利用し

利用できないものは排除します

私は…お姉さまほど甘くありません


私の中にあるこのどす黒い物が

私を突き動かすのです


女を排除し、彼を奪い返せと

――――

・公園・

一方「……はぁ」

…なんか…余計疲れたな

あの野郎と話すのがこんなに疲れるとは…

一方「…アイツ、いつか殺してやる」

…とりあえず

今はあいつのことはどうでもいい

…問題は…

あの、クソガキ

どこ行きやがったあのバカ

昨日まではギャーギャーうるさかったのに

クリスマスがどうだのこうだのって…

…これだからガキは…


一方「…」


『もうすぐ、クリスマスなの!』

『だから、ミサカはミサカはプレゼントが欲しいなって、可愛くお願いしてみたり』

『もぉー!なんで無視するのー?ミサカはミサカは真剣に言ってるのにー!』

『クリスマスって、何か美味しいものを食べる日なんだよね?』

『ミサカはミサカはとっても楽しみなの!』


一方「……」


……チッ


何が…クリスマスだよ

…友達もいねェくせに…誰と祝おうってんだテメェは…

…寝言は寝てから言いやがれ…クソガキ…


一方「……仕方ねェ」


テメェ一人じゃ可哀想だから

俺が一緒に過ごしてやる


……だから


早く出てきやがれ…クソガキ

――――――

………

―?―


打止「…………」


…暗い

…とても、暗い

何も見えない

起きたらここに居て

手と足が縛られていて

身動きがとれない

ここは…どこ…?

どうして…こうなってるの…?

打止「………」

誰か…いないのかな…


昨日まで、一緒にいたあの人は…今は側に居ない

…いつもは……何も感じないのに…

今は、寂しい

意地悪だし、ケチだし、口悪いし、髪の毛白いし…

…猫も、飼っちゃダメって言うし…

…凄く嫌な奴なのに…

今はとっても

とっても……声が聞きたい


打止「………お腹、すいたの」


…たこ焼き

…たこ焼き…食べたいな

…あの黒くて長い髪の女の人が、食べさせてくれた…

美味しかったなぁ…


また食べさせてくれるって、言ってたし…

…暖かいもの、たくさん貰ったの…

打止「……マフラー、暖かいの…」

首元に巻いてあるマフラー

あの人のマフラー

これだけが、まだ…暖かさがある…

この暖かさに…ミサカはミサカは……救われてる


大丈夫

きっと大丈夫

まだ希望はあるの…


打止「ミサカの……」


ミサカのクリスマスは…きっと来るの

――夜


・路地裏・


佐天「…初春ー!!」

私の声だけが、暗い路地裏に響く

さっきからずっと声を出しすぎて

喉が枯れそうだ…

でも…

…ここに、初春が…いる…

―――――――――――

…数十分前

佐天「……初春が、いないんです!」

黒子『…!…初春が…?』

佐天「…白井さん!私……何か嫌な予感が…してたんです」


佐天「初春を…一人にしちゃいけないような気がしてたんです!」

黒子『……佐天さん…』

佐天「前に感じたような…何か嫌な…そんな…」

黒子『…わかりますわ、佐天さん』

佐天「…え?」

黒子『…私も同じでしたの』

黒子『…最近、違和感を感じるようになりました』

佐天「…違和感…?」

黒子『ええ、まるで…』

黒子『ずっと誰かに監視されているような…』

黒子『私たちの日常を、覗き見されているような…そんな感覚』

佐天「…!」


黒子『…いえ、もう今はそれどころじゃありませんわね』

黒子『…佐天さん、今から私が言うところに向かっていただけますか?』

佐天「…あ、はい!」

黒子『…おそらく、初春のいる場所は―――です』

佐天「…はい」

黒子『私も今からすぐにそこに向かいますわ』

佐天「…わかりました」

黒子『では、後程…』

―――――――――――


佐天「…」


初春は仕事で…昨日ここに来ていたらしい

昨日ここで…何か…あったの?

…いや、今はそれよりも…


佐天「…初春ー!」

呼び掛け続けるしかない…!

佐天「初春ー!!」


…ガサッ


佐天「…!」


…ニャーン


佐天「…ね、猫…?」


ニャーン


佐天「……なんだ猫か……初春じゃないのか……」


「私がどうかしましたか?」


佐天「………え?」


初春「こんなとこで何やってるんですか?佐天さん」


……え……?


佐天「…初……春…?」

初春「…はい?」


佐天「…あんた…今まで何を…」

初春「何って…仕事ですよぉ~」

佐天「…え…?」

初春「いやぁ、昨日白井さんに任されてた仕事がありまして、まだ報告するには調査が必要だったんで、今日もここに来てたんですよ」

佐天「…で、でも、初春…私たちと帰ってるときに…トイレに行くって…」

初春「ああ、すみません。やっぱり時間的にも仕事に間に合わないと思いまして、抜けさせてもらいました」

佐天「…それじゃあ、なんで、連絡してこないのよ!?」

初春「すみません、携帯の電池が切れちゃってまして…。連絡できませんでした」

佐天「…そんなの…」

…おかしい…

絶対におかしい…

初春がそんなことするわけ…!


初春「ホントにすみません、佐天さん。一緒に買い物に行けなくて」

佐天「…そ、それは…いいけど…!」

初春「また明日、一緒に行きましょう?明日ならきっと仕事も大丈夫でしょうし」

佐天「………」

…違う

私が話したいのはそんなことじゃない…


初春「…?どうしたんですか佐天さん。まだ怒って…」

佐天「…初春!!」

初春「は、はい!?」

佐天「…正直に話して」

初春「…な、何をですか?」

佐天「…仕事とか…買い物とか…そんなんじゃないの…」

佐天「嫌な予感がしてたの!前みたいに、あんたが傷ついてしまうって!!」


初春「…佐天…さん…」

佐天「ねぇ、お願い初春。私、もう二度とあんな思いはさせたくないの!だから…」

佐天「だから正直に言って!何かあったんでしょう!?」

初春「……」

佐天「…初春!」

初春「…ふふっ」

佐天「………え?」

初春「あはははっ。もう、何言ってるんですか佐天さん」

佐天「初春………?」

初春「別に、本当に何もなかったですよ?」

佐天「…でも!」

初春「…わかりました……。そんなに疑うんなら…これだけは言わせてください」

佐天「……?」


初春「…佐天さん、私はあの日から…」

初春「…何かあったら絶対に佐天さんや白井さんに相談するって、決めてたんです」

佐天「…え…」

初春「1人で抱え込んだら…逆に迷惑になりますから…」

初春「だから、佐天さんにも心配かけないように気を付けていたんですが…」

初春「…でも、今日は心配かけさせてしまったみたいですね…」

佐天「…初春…」

初春「…ホントに、ごめんなさい。もう、佐天さんを心配させるような事は、しませんから…」

佐天「…ホント…?」

初春「はい、約束します!絶対に…裏切ったりしません!」


佐天「……」

初春「…あれ、佐天さん?」

佐天「……」

初春「…まだ、納得…できないですか…?」

佐天「……えい」ファサ

初春「…えっ………なっ…」

佐天「今日は…水玉…かぁ」

初春「なななにするんですか!こんなところでー!」カァァァ

佐天「…だって今日、パンツ確認してなかったから」

初春「だ、だからって…こんなとこでスカートめくらなくていいですー!…もぉ…」カァァァ

佐天「…ふふっ」

初春「…?」

佐天「…良かった、いつもの初春だ」

初春「…ふふっ…そうですよ、佐天さん。当たり前じゃないですか」


佐天「…そうだね、初春」

初春「…はい、佐天さん」

佐天「……うっ…ぐすっ……初春!」ダキッ

初春「わっ、ちょっと佐天さん?」

佐天「…バカッ…本当に心配したじゃない……もう…ぐすっ…」

初春「…ごめんなさい、佐天さん」

佐天「…うっ……次にこんなことしたら…うぅ…許さないんだから……」

初春「…はい、もうしません。ずっと……佐天さんの傍にいます…」

佐天「…うぅ…」


良かった……

初春が…無事で…


…あんな予感は…気のせいだったんだよね?

良かった…初春が…私の手の届くところにいる…

これだけで…もう、十分だ……


――この後

白井さんが来て、色々と初春に問い詰めていたけど

最後はなんだかんだで納得したみたいだった

…私としては、何もなかったに越したことはない

本当に…良かった…


―――――――――

―――同刻

・とあるビル屋上・


御坂妹「…さて」


上手く、いきそうですね

なかなか手こずりましたが…

何とかクリスマスには間に合いそうです


御坂妹「…」


皆様は、ご存知でしょうか?

…人というものは

心という、不便で曖昧でぎこちないものを持っています


しかし、そんなものを

人は大事に抱え、一生を生きていこうとするのです


――それが、一番の弱点になるとわかっていても


御坂妹「…なら」


その弱点を突かない訳にはいきません


それはそれは

とてもとても

壊すことがあまりにも簡単で

直すことがあまりにも難しい

そんな、不便な物

しかし今の私にとっては

とても便利なもの


それでは、利用させていただきましょう

遠慮なく、利用させていただきましょう

私の便利な便利な『駒』として

役に立っていただきましょう

それはとても…

服従させやすい

『完全支配』してしまうことも、容易い


…ああ、そういえば


…どうやら

来ていたようですね、彼女が

一体、何をしにあの路地裏に来たのでしょうか?


なんて―――今更

もう、手遅れだというのに

…少し

少し、来るのが遅すぎましたね


…佐天様


御坂妹「…と、ミサカは…哀れみます」


――クリスマスまであと2日

仕事行くわ

支援ありがと

また明日残ってたら投下しにくるよ

保守ありがとう

寝る前にちょいとだけ投下していくわ

ホントすまん

………………
12月24日
天気・晴れ
降水確率0%
………………

―美琴・黒子宅―


黒子「おはようございます、お姉さま」

御坂「…ん?…ああ、おはよう」

黒子「では、さっそくですがお姉さま…」

御坂「…んー?…へ?」

黒子「今日はクリスマスイブなので朝から激しいスキンシップをぐはぁっ!!」

御坂「…いきなり何しようとしてんのあんたは!」

黒子「…ああ、ひどいですわお姉さま…。今日は聖夜だと言うのに…黒子は仕事で遅くなるのですよ…?」

御坂「いや、それは確かに可哀想だと思うけど…」

黒子「明日も仕事なんですのよ!?」


御坂「…そりゃあ、忙しいから仕方ないんじゃ…」

黒子「ならば今しかないでしょう!さぁ、お姉さま!登校のお時間まで黒子と…ぶはっ」

御坂「だから…やんないって言ってんでしょうが!」

黒子「うぅ…」

御坂「…まったく…。あんたのその変態ぶりはいつになったら治るのよ…」

黒子「お姉さまが黒子を受け入れてくださるその日まで!」

御坂「あ、もうこんな時間だ。早く行かないと…」

黒子「おねぇぇさまぁああ!」

御坂「うるさいっ!早くあんたも着替えなさいよ!」

黒子「うぅ…冷たいですわお姉さま…」


御坂「…はぁ。また休みの日にでも一緒に出かけてあげるから。今は早く支度しなさい」

黒子「…!お、お姉さまと…デート!?」

御坂「あーもう、なんでもいいわよ。やばっ…時間が…」

黒子「お姉さまと…デート…ぐふっ、うふふふふ」

御坂「…あー、私先いくからねー」

黒子「はっ……あ、お姉さま!」


ガチャ…タン

黒子「…うぅ…黒子を置いていくなんて…」

黒子「………まったく」


黒子「…さて…」


…そろそろ、私も準備をしましょうか

今日は一度、確認しなければならないことがあります


黒子「…はぁ」


…イブの日にまた…

面倒な仕事になりそうですわね…


―学校―

・教室・


佐天「…待ちに待った…」

初春「クリスマスイブ!」

佐天「いやぁ、聖夜だよ初春ー」

初春「そうですね。佐天さんは上条さんと過ごさないんですか?」

佐天「うん、なんか上条さん用事があるらしくってさ」

初春「へぇー。…まぁ、どうせクリスマスは一緒だから良いですよね」

佐天「まぁね」

初春「あ、それで…プレゼントはもう決まりましたか?」

佐天「…うーん、まぁ、なんとなく…」

初春「そうですか。とりあえず、間に合うといいですね」


佐天「うん…。でもさぁ」

初春「どうしました?」

佐天「プレゼントを買えたとして……何かこう…イベント的なものに行きたいのよね。やっぱクリスマスだし…」

初春「なるほど…」

佐天「昨日、調べてみようと思ったんだけどさ、疲れて寝ちゃったんだよね…」

初春「ふふふふふ…」

佐天「…?な、なに、その不気味な笑いは…」

初春「やはり、そんなことだろうと思っていました」

佐天「何が…?」

初春「佐天さんのために…私が調べておきました!」

佐天「な、なんだとー!」


初春「とりあえず、見ていただきたい物があるんですよ……えーっと………あった!」

佐天「…?」

初春「じゃじゃーん!」

『恋人達よ!巨大クリスマスツリーの元に集まれ!』

佐天「……巨大……クリスマスツリー?」

初春「『クリスマスツリーに願いを書いた星形のカードを吊るして、二人の願いを叶えよう!』」

佐天「………」

初春「っていう、イベントがあるみたいなんですよ」

佐天「なんか…七夕と間違えてない?」

初春「うーん、確かにその要素はありますね」


初春「ええ。じゃあ、私はちょっと支部の方に行きますね」

佐天「うん…でも、あんまり仕事頑張り過ぎないでね?」

初春「…なんか佐天さん、夫を心配する妻みたいなこと言いますね」

佐天「なっ、別にそんなつもりじゃ…」

初春「ふふっ、今度はツンデレの奥さん」

佐天「だ、誰がツンデレだぁー!」カァ

初春「それがツンデレだぁー!」ニヤニヤ

佐天「もう!さっさと行きなさいよっ!」

初春「はーい、行ってきまーす!」ニヤニヤ


タタタタッ


佐天「…もう」

…なんか上条さんと付き合うようになってから

初春に会話の主導権握られること多くなったような気がする…

…むぅ、なんか…悔しい

…まぁ、別に悪い気はしないけど

…さて、とりあえず

イベントのことを上条さんに…っと

――――

―?―


打止「……」

…また、この場所だ

…まだ、この場所だ

一度目を瞑って、開いてみても

そこに広がるのは真っ暗な世界

一筋の光もない


打止「…」


昨日、誰かが

私に食べ物を食べさせてくれた

手も足も縛られたままだったから

口に何かスプーンのような物を無理矢理押し込まれる感じで食べさせられた


あんまり美味しくなかった

でも、お腹が空いていたから、夢中で食べた

その時に、少しだけ光が入っていたから

誰が私に食べさせてくれているのかがわかった

わかってしまったの

何故、私が捕えられているのかも、なんとなく、わかってしまった

でも、わかったところでどうしようもないの…

…今のミサカには、何もできない

…それともうひとつ、わかったことがある


私以外にも、捕まってる人がいる

でも、誰なのかがわからない

呼び掛けても返事がない

というより、返事ができない状態なの…?

とにかく…

今は助けを待つしか…ないの…

――――

―――――

・支部・

初春「こんにちわー」

黒子「ああ、初春。こんにちわ」

初春「白井さん1人ですか?」

黒子「…ええ。固法さんは来ていません」

初春「そうですか…」

黒子「……」

初春「それで、白井さん」

初春「…話って、なんですか?」

黒子「…ええ」

黒子「…初春、昨日の調査の件、報告していただけますか?」

初春「ああ、それなら…えーっとですね…」ゴソゴソ

初春「あった……えっと、調査課題は『騒音被害の原因調査』ですよね?猫の声がたくさん聞こえるっていう」


黒子「ええ」

初春「最初は、近くにあるペットショップが原因だと思っていたんですが…」

初春「…偶然、あの路地の裏に私が連れていった猫さんが入っていってしまいまして…」

初春「…そしたらそこに、たくさんの捨て猫がいたんです」

黒子「……」

初春「どこから来たのかわからない猫さんばかりでしたが…」

初春「…昨日、夜にもう一度確かめに行ったところ、やはり猫さん達が集会を開いていましたので」

初春「あの場で解散していただいていました」

黒子「……」

初春「…以上です」

黒子「…なるほど」

初春「…いかがですか?何か…疑問な点とかありますか?」

黒子「…いえ。特にありませんわ」


初春「よかったぁ…。でも正直、1人で調査するのは心細かったです」

黒子「ふふっ、でも今回は比較的楽な調査だったと思いますが?」

初春「それでも一人は寂しいですぅ~」

黒子「少しは慣れてくださいな。…まぁ、とにかく報告ご苦労様ですわ」

初春「はい!……それじゃあ、私はこれで失礼しますね…」

黒子「…初春」

初春「…あ、はい?」

黒子「もう少し、お時間をいただけますか?」

初春「…えっと、昼休みが終わるまでなら」

黒子「そうですか…では、もう少しあなたに聞きたいことがあります」

初春「はい、何でしょうか?」


初春「はい、何でしょうか?」

黒子「……昨日、あの調査の件以外で」

黒子「…あなたは、何か別の物を発見しましたか?」

初春「…え?…うーん…いや、特には……」

黒子「…そうですか」

初春「あ…でも」

黒子「なんですか?」

初春「そういえば、ペットショップには…猫がいませんでした」

黒子「……」

初春「他の動物はたくさんいました。でも、猫さんだけは一匹も売っていませんでした」

黒子「…そうですか」

初春「…はい。他に気になったことは…無かったですね」


黒子「わかりました。…では……」

黒子「…もう少し…質問を変えて聞きましょう」

初春「…?」

黒子「…あなたは昨日」


黒子「――誰かに会いましたね?」

初春「―――え―――」


カーンコーン


初春「……あ、すみません」

黒子「……」

初春「もう、昼休み終わっちゃうので…私はこれで…」


黒子「…ええ。引き止めてすみませんでしたわ」

初春「いえいえ。それじゃあ、また…」

黒子「…初春」

初春「……はい?」

黒子「…私は」

黒子「…私たちは、あなたを信頼しています」

初春「……!」

黒子「あなたはとても純粋で、優しい。そんなあなたを、私たちは信頼し、そして……」

黒子「…そんなあなたを絶対に裏切るような真似はしない」

初春「……」


黒子「…だから初春」

黒子「あなたも……『私たち』を信頼してください」

黒子「何かあったら……頼ってください」

黒子「…いいですね?初春」

初春「……はい。わかって…います」

黒子「…長く引き止めてすみませんね。私からはそれだけですわ」

初春「はい……それでは…」

ガチャ…パタン

黒子「……」

…あの子は、本当に、優しい子ですね

おかげで、『予感』が『確信』に変わりました

…さて……私にはまだやるべきことがありますね

行きましょうか仕事に…

…本当に…骨が折れそうな仕事に…

続きまた投下しに来る

保守・支援ありがとう

わるいがちょいと休む

わるい、投下1時頃になる

そっから朝にかけて投下していく

保守してもらっといてすまん

すまん 30分までは時間あるからそれまで続き投下する

・教室・


佐天「えーっと、なんだっけ…」

巨大クリスマスツリー…だっけ?

『検索』っと

えーっと……あ、あった。これかぁ…

へぇ……今年からやるんだ……

出店も結構たくさんある…

なんか、完全にお祭りって感じだなぁ

てかクリスマスツリー、大きい!

これ、画像いじってないよね?

さすが、巨大クリスマスツリーと言われるだけあるな……


……ここに、二人で願い事を吊るして……

……願い事…

願い事かぁ……

何を願おうかな……


先生「…授業中にクリスマスのイベント検索とは、度胸があるな佐天」

佐天「…え……あっ、す、すみません!!」

先生「…まったく。…では、授業を続けるぞ」


佐天「…(びっくりしたぁ…)」

…チャイムの音、聞こえなかった…

授業始まってたんだ…


…でもやっぱ、上条さんに連絡する前に、下調べはしておきたかったし…

と言っても…

ほとんど初春に聞いた内容ばっかりだったな…まぁ、いっか

…あれ…そういえば

初春……まだ戻ってきてない…

何してるんだろ…?


・学校―外


タタタタッ…


初春「…はぁ、はぁ…はぁ…」

…なんで

なんで私、走ってるんだろう…


白井さんの言葉を聞いたら

頭が痛くなって…

初春「はぁ…はぁ…んっ…」

痛い…

頭が痛い…

頭………だけじゃない…

胸が……痛い……

なんで、こんなに……


『―…明日も…―』


………っ……


『―…この場所に…―』


…っ………嫌っ……


『―…来てくれるよね…―』


……思い出したく………ない……!


『―…来てくれるって…―』


……やめ………て……


『―…言ってたのに…―』


………や………め……


『―…どうして来てくれなかったの?…―』


…違う!!!


初春「…はぁ………。……」


違う…

私は……私は………

悪く……ない…

だって………関係ない…もの

私は…………いつも巻き込まれているだけ

佐天さんの側にいるだけで………

佐天さんは…幸せなのに…

私は…不幸で……

…おかしい…そんなの、おかしい…

…そう、だから…

仕返ししなきゃいけないんだ

佐天さんに


初春「……忘れるところでした」

…あなただけが幸せで

…わたしだけが不幸なんて

とても不公平だと思うんです

…だから、私は…


あなたを…不幸に導びかないと

―――――


――夕方

・街・


上条「さぁてと…」

上条「ケーキも買ったし……家帰るかな」

上条「…ったく、インデックスの奴…」

上条「ケーキ食べたい食べたいって朝からうるせーっての」

上条「…誰のせいで、ケーキ買うのも躊躇うほど財布の経済状況が悪いと思ってんだ…」

上条「…ホント、不幸だ…」


「そうでもありません」


上条「…?」


「メリークリスマスイブ」


上条「…め、メリークリスマス…イブ…?」

御坂妹「…と、サンタのコスプレをしたミサカはあなたにイブの挨拶をします」

上条「……何してんだ御坂妹」

御坂妹「サンタクロースレディです。と、ミサカは簡潔に答えます」

上条「レディ?…何、バイトか何かか?」

御坂妹「いえ、私の趣味です」

上条「……」

御坂妹「…冗談です」

上条「…いや、別にいいけどさ」

御坂妹「そんなことより、あなたはこれから何か予定がお有りですか?と、ミサカは尋ねます」

上条「…ああ、有るには有るな。ちょっと家に帰らないといけねーんだ」

御坂妹「…そうですか」

上条「ああ、悪いな」

再開するけど、時間かかるから寝る人は寝てくれ



御坂妹「いえ…構いません。大した用事はありませんでしたから。と、ミサカは申し上げます」

上条「そうか?…んじゃあ、俺はそろそろ行くわ」

御坂妹「…」

上条「またな!あと、そんな格好して風邪ひくなよ~」

御坂妹「…あなたは」

上条「…?」

御坂妹「…あなたは…今の彼女様に、どれぐらい満足していらっしゃいますか?」

上条「え?…って、おまえ、知ってたのかよ?」

御坂妹「はい、把握しております。とミサカは答えます」

上条「…はぁ、参ったなぁおい」

御坂妹「……」

上条「んで…なんだっけ…どれぐらい満足してるか、だったか?」


御坂妹「……はい」

上条「んなこと聞いてどうするんだおまえは?」

御坂妹「…ただの興味本位です。と、ミサカは答えます」

上条「…はぁ…」

上条「くだらねぇ質問だな」

御坂妹「…?」

上条「…恋人なんてもんは、お互いが100%満足することなんてありえねーんだよ」

御坂妹「…」


上条「お互いにどこかちょっとした不満があって、足りないところがあって、噛み合わないところがあって…」

上条「…それでも、相手のことが好きだって言えるのが恋人なんだよ」

御坂妹「…」

上条「どれだけ満足してるかだって?俺にわかるわけないだろ」

上条「なんせ…そんなこと考えて付き合ったって、楽しくないからな」

御坂妹「……」

上条「ま、俺も付き合って間もないし、んなこと言っても説得力ねぇかもしれねーけど…」

御坂妹「…いえ、よくわかりました。ありがとうございます」


上条「おう。…もう用はないか?」

御坂妹「はい、聞きたいことはそれだけです…と、ミサカは答えます」

上条「ん、じゃあまたな」

御坂妹「はい…それでは」

上条「おう」


スタスタスタ…


御坂妹「…」

そんなのわかるわけない……ですか

貴方らしい、お答えですね


と、ミサカは思います

今日は、明日のための確認に来たのですが…

…やはり、あなたの心はもう決まってしまっているのですね

御坂妹「……仕方ありませんね…」


…クリスマスの準備をしましょう…

――――

―――夕暮れ

・街・


佐天「さぁて、何買おっかなぁ…」

初春「あれ、何となく買うもの決めてるって言ってませんでしたっけ?」

佐天「いや、うん、何となくは…決めてたんだけどね…」

初春「じゃあ、それを見に行きましょうよ」

佐天「うーん……そ、そうだね…」

初春「……あの、佐天さん」

佐天「な、なに?初春」

初春「…もしかして、ホントは買うもの決まってないんじゃないですか?」

佐天「……」

初春「…ダメだこりゃ」

佐天「だ、だって!色々考えてたら…わかんなくなってきて…」


初春「はぁ。…佐天さん、明日ですよ?明日までに買わなくちゃ意味無いんですよ?」

佐天「わ、わかってるわよ!…わかってるけど…」

初春「だから言ったじゃないですかぁ。早めに買っといた方がいいって」

佐天「…うぅ」

初春「次の日も…また次の日もプレゼントが見つからない…」

初春「…私の予言、大当たりじゃないですか」

佐天「…確かに」

初春「確かに、じゃないですよ。早く何にするか決めちゃわないと」

佐天「う、うん……でもなぁ……上条さんて、何あげたら喜ぶんだろう…」


初春「うーん、佐天さんがここ1ヶ月上条さんと一緒に居て、何か思い当たることとかないんですか?」

佐天「…うーん、思い当たること、かぁ……」

初春「何か欲しいとか言ってませんでした?それか、何か無くて困ってるとか」

佐天「ああ、それならある!」

初春「おぉ!それですよそれ!何て言ってました?」

佐天「お金がなくて困ってるって言ってた!」

初春「…それは、あの…なんか違うと思います」

佐天「え?でも、無くて困ってるって…」

初春「…佐天さん、クリスマスプレゼントに現金あげるつもりなんですか?」

佐天「…い、いや……それはさすがに…ない」

初春「でしょう?…ですから、それ以外で何か他にないですか?」


佐天「……うーん、あとは…」

初春「なんでもいいんですよ?一言何か欲しいとか」

佐天「…あ、そういえば…」

佐天「たまには甘いものが食べたいって…」

初春「あ、じゃあケーキでも…」

佐天「…と言って、ファミレスに入ってパフェを食べたことがある」

初春「解決済じゃないですか!」

佐天「あはは…ごめんごめん」

初春「…もう、真剣に考えないなら、私はもう帰っちゃいますよ?」

佐天「わわ、ごめん初春!ちゃんと考えるからもう少し一緒に居てぇ~!」

初春「はぁ…。じゃあ、何にするんですか?」

佐天「うーん、わからないけど……あ、初春」

初春「…はい?」


佐天「ちょっと私、そこの店に入って見てくる!何か買いたいもの見つかるかもしれないし」

初春「あ、はい……というか、結局何も買わずじまいで帰ってくるような気がするんですが」

佐天「大丈夫だよ!絶対買ってくるから!」

初春「はいはい。では、いってらっしゃい」

佐天「うん!行ってきまーす!」


初春「……」

楽しそうな佐天さん

恋人へのプレゼント選び、とても幸せそうです

…こっちの気も知らないで


よくもまぁ、私の前でそんな幸せそうに振る舞えますね

あなたの存在がどれほど人に迷惑をかけているか、わかっているんですか?

私が、あなたのせいでどれだけ苦しんで…


『私たちは、あなたを信頼しています』

……苦しんで…

『決して裏切ったりしません』

……そんな…言葉……

『だから…』

……嘘です…そんなのっ…

『…あなたも私たちを信頼してください』

…信頼……なんて……できるわけ……


初春「…うぅっ……!」


佐天「おまたせー初春!」

初春「……あ、佐天…さん?」

佐天「…?どうかしたの初春?なんか、顔色悪いよ…?」

初春「あっ、い、いえ…なんでも…ないですよ!ははっ…」

佐天「…まぁ、調子悪いなら言ってよ?」

初春「いえいえ…大丈夫ですから。…あ、それより、プレゼントは買えたんですか?」

佐天「あ……うん、買えたよ!」

初春「良かったじゃないですかぁ。これで明日もばっちりですね!」

佐天「あ、いやぁ、実はさ…」

初春「…?」


佐天「…上条さんのプレゼントはまだ、買えてないのよね…」

初春「…え?それってどういう…」

佐天「…はい、初春。これ…」

初春「え………手袋?」

佐天「うん。それ、初春に似合いそうだったから…買ってきたの」

初春「…私に…?」

佐天「いつも、初春にはお世話になってるからさ。なんていうかその…クリスマスプレゼント」

初春「…プレゼント…?……私に…?」


佐天「初春とは、これからも…仲良くしたいし」

佐天「だから、それは私の親友で居てくれる初春への感謝の気持ち」

初春「………」

佐天「…って、なんか、恥ずかしいな。面と向かって言うと…あははは」

初春「…ありがとう、ございます」

佐天「ううん、私こそ…いつも、ありがとう初春」

初春「………はい」

佐天「それじゃ…今日はもう、帰ろっか?」

初春「…え?いいんですか、その、上条さんのプレゼントを買わなくて…」

佐天「…うん、もういいの。…決まらないならもう、仕方ないし……何か別の形で考えてみる」

初春「…そうですか」


佐天「うん。…初春、今日はありがとね!付き合ってくれて」

初春「いえ…全然、いいですよ」

佐天「また、こうやって二人で買い物行こうね!」

初春「はい……あ、あの」

佐天「ん?」

初春「私、これから家でやることがあるんで……ここで、先に失礼します」

佐天「そっかぁ。…わかった」

初春「はい…ちょっと急ぎますので、それじゃ!」

佐天「あ、初春…」


タタタタッ…


佐天「…」

…いつもの、初春だよね

何も、変わってない

…そうであってほしい

…気のせいであってほしい

佐天「…気に…しちゃいけない…」

初春を…信じよう…

―――


初春「………」

私は…私は…被害者

佐天さんのせいで…私が苦しむんだ…

だから…だから…絶対…

初春「…」

こんな…こんな手袋…

あったかく…ない

貰って嬉しいなんて…思ってない…

思ってない…

思って…


『ありがとう初春』


…っ………

―――胸が、痛い――――

――夜


・ビル屋上・


…冬の夜は、相変わらず冷えますね

サンタクロースの衣装、着たのはいいですが…

…スカートが短くて足が寒いですね

と、ミサカは寒さに少し震えます


御坂妹「…それにしてもどうやら…」

初春様の心が少し揺れたようですね

…まぁ、大丈夫でしょう

あれだけやったんですから…


御坂妹「…さて」

どうやら、お客様がいらしたようですね…


「こんばんわ」


御坂妹「……こんばんわ」

黒子「聖夜だというのに…こんなところで何をなさっているのですか?…『お姉さま』」

御坂妹「あなたも今日は仕事だったのではないのですか?…『黒子』」

黒子「…ええ、仕事の真っ最中なんです。とっても個人的な」

御坂妹「…それは大変ですね。さぞかし苦労なさっているんでしょうね」

黒子「それはもう…今朝もたいそう凝った演技をなさっていたので、感服いたしましたわ」

御坂妹「…そうですか。…いつからお気付きに?」

黒子「…違和感を感じ始めたのが22日の朝。疑い始めたのは21日の夜ですわね」

御坂妹「…そうですか。よくわかりましたね。気づかれないように気を配っていたんですが…」

黒子「…ふふっ…それにしても随分と大胆なやり方をなさいますのね」


黒子「…お姉さまのふりをして私たちに接していれば…」

黒子「…それはそれは楽に私たちを監視できたことでしょうね」

御坂妹「……」

黒子「…21日の夜に、私は帰りの遅いお姉さまを探しに出掛けました」

御坂妹「…」

黒子「そして、お姉さまらしき人を見かけ、声を掛けようと思ったのですが…」

黒子「…そのお姉さまらしき人は、猫を連れていました」

御坂妹「…」


黒子「意地っ張りで素直になれないお姉さまのことです」

黒子「私がそこで姿を現せば、きっと慌てふためいて顔を真っ赤にして、猫を連れていることを否定するだろうと思いました」

御坂妹「…」

黒子「お姉さまが動物好きなのはわかっていましたから、内緒で猫を可愛がっているのだと思い…」

黒子「…私はその時声をかけませんでした」

御坂妹「…」

黒子「…そして次の日、22日の朝」

黒子「いつものようにお姉さまは隣のベッドにいて、いつもと変わらない様子で家をでました」

黒子「しかし、それはとても些細でしたが……何か違和感を感じました」

御坂妹「…」


黒子「そしてその日、私の元に、ある件について調査して欲しいという要請が届きました」

御坂妹「…騒音…ですか?」

黒子「ええ、その通りです」

黒子「私自身が調査に行けば良かったのですが、生憎、他に片付けなければいけない仕事がたくさんありましたし…」

黒子「…何より、その件の場所は、私が昨夜お姉さまを見かけた場所でした」

黒子「…となると、猫による騒音の原因はもしかしたらお姉さまが世話をしている猫が原因なのではと思い、私が行くのは躊躇われました…」

御坂妹「…なるほど」


黒子「…しかしそこへ、初春が遅刻して支部に来ました」

黒子「…猫を連れて」

御坂妹「…」

黒子「…私はそこで、初春ならお姉さまの秘密がバレたとしても、何とかなるのではないかと思い…」

黒子「…初春を、あの場所の調査に向かわせました」

黒子「…それが、私の最大のミスだとも気付かずに…」

御坂妹「……」

黒子「…おかしいとは思っていたんです」

黒子「…捨て猫なんて、何処にでも居そうなものです…」

黒子「…それが何故、騒音被害に繋がるほどの物になるのか」


御坂妹「…ペットショップが原因だとは思わなかったのですか?」

黒子「…ええ、最初はその説も考えましたが…」

黒子「…今日、初春に調査の報告を聞いて、それはあり得ないことが判明しましたわ」

御坂妹「…」

黒子「…初春は私にこう言いました…『あのペットショップには猫が売っていませんでした』…と」

黒子「しかしそれは、間違いなのですよ」

御坂妹「…」

黒子「…私は、初春にあの件についての資料を渡しましたが…」

黒子「…その資料には一切、ペットショップの事は書かれていません」

御坂妹「…」


黒子「そこでどんな動物が売られていて、どんな動物が売られていないかなどは…書いていないんです」

御坂妹「…」

黒子「…私は、昨日の夜……例のペットショップの近くにある路地で…初春を見つけた後…」

黒子「そのペットショップに行って、店主の方に聞いてみたのです」

黒子「『ここに猫は売っていますか』と」

御坂妹「…」

黒子「すると……ちゃんと見せてくれました」

黒子「ペットショップの中に、猫が売られているところを」

御坂妹「…」

黒子「……これで、『猫が売られていない』という初春の報告は嘘になります」

黒子「…また、同時に…」

黒子「…何故、初春は『猫が売られていない』と私に報告したのか、という疑問が生まれました」

御坂妹「…」


黒子「ああ、その前に騒音被害の件がペットショップが原因ではないことも一応言っておきます」

黒子「…騒音による苦情が出始めたのは、一週間ほど前からだそうです」

黒子「対して、あのペットショップはオープンして2年」

黒子「…そして何より、ペットショップなのですから、『猫』の鳴き声だけが聞こえるのはおかしい…」

黒子「…『他の動物達』の声が聞こえないとおかしいんです」

黒子「ですから、ペットショップから『猫』の騒音の苦情が来るはずがない」

御坂妹「…」

黒子「…さて、先ほどの話に戻りますが…」

黒子「初春が私に『猫が売られていない』と報告したことについての疑問」

御坂妹「…」


黒子「…それは、何者かに嘘の情報を教えられたということになります」

黒子「…当然、そうなると初春にそんなことを教えた人物は『お姉さま』しかいません」

黒子「でも、何故お姉さまがそんな嘘を初春に言ったのか。それが私には理解できませんでした…」

御坂妹「…」

黒子「…しかし、思い出したのです」

黒子「ここ最近のお姉さまとの会話の中で、一番違和感を感じていたところを…」

御坂妹「…」

黒子「…22日の夜、私はお姉さまに『あの殿方』のことを、まだ引きずっていらっしゃるのですかと聞きました」

黒子「するとお姉さまは、『あいつのことはもう、私の中で決着がついた』と、私に言いました」

御坂妹「…」


黒子「…おかしいんですよ」

黒子「私の知っている『お姉さま』が、あんな弱気なことを言うはずがないんですよ」

御坂妹「…」

黒子「…なんせ、数日前までお姉さまは…」

黒子「…佐天さんを出し抜こうと、必死で雑誌をめくって彼へのプレゼントを考えていましたからね」

御坂妹「…」

黒子「…なのに、最近のお姉さまは雑誌に触れないどころか、クリスマスの話もろくにしようとしない」

黒子「…一体、どんな心境の変化があったらこうなるのか…」

御坂妹「…」

黒子「随分とお姉さまのことを観察なさって、勉強なさっていたようですが…」

黒子「そこまでは、わかっていらっしゃってなかったようですわね」


御坂妹「…」

黒子「…初春の嘘、弱気なお姉さま、会話する度にどんどん濃度が濃くなっていく違和感…」

黒子「気付くのが遅すぎましたわ…お姉さまではないということに」

御坂妹「…そこまで気付いていたなら、もっと早くに私のところに現れては良かったのではないですか?」

黒子「ふふっ、痛いところですわね。私、あまり推論で物事を判断したくありませんのよ。……それに……」

黒子「…信じたくありませんでしたからね。同じ部屋で寝ている…私の愛する『お姉さま』が『お姉さま』ではないということを」

御坂妹「……」

黒子「それともう一つ」


黒子「昨夜…私達が駆けつけるまで…いや、佐天さんがあの路地裏に駆け付けるまでの、初春の『空白の1時間』」

黒子「正確に言えば…佐天さんと初春が別れ、佐天さんが私に電話を掛けてから、そこに駆け付けるまで…ですかね」


御坂妹「…なぜ、そこまで知っておられるのですか?」

黒子「白々しいですね…どうせお気付きになられていたんでしょう?」

黒子「初春に発信器を付けていたこと」

御坂妹「ああ、確かに…付けていらっしゃいましたね」

黒子「…私は支部にいる間、ずっと初春がどこにいるのかを見ていました…」

黒子「…最初、初春は街の方を歩いていた。おそらく、佐天さんとショッピングにでも行こうと思っていたんでしょうね」

御坂妹「…」


黒子「…しかし、途中でどこか別の道に外れ…」

黒子「一瞬、止まってから路地の方向に向かいました」

黒子「私はその時、初春が仕事に行ったものだと思い、静観していたのですが…」

黒子「佐天さんから電話がありましてね」

黒子「…初春が『いなくなった』と」

御坂妹「…」

黒子「そしてまもなくして…発信器の信号が消えました」

黒子「…おそらく、壊された…いや、壊したのでしょう?あなたが」

御坂妹「…」

黒子「…そして私と佐天さんが駆けつけると…初春はなにくわぬ顔で私たちを迎えました」

黒子「…発信器が壊れるような調査をしていたのにも関わらず」


御坂妹「…」

黒子「あの時、初春には目立った外傷はなく…」

黒子「制服にも特に汚れのようなものも見受けられませんでした」

御坂妹「…」

黒子「…発信器を壊したことが、裏目にでましたね」

御坂妹「…お見事です」

黒子「お褒めにあずかり、光栄ですわ」

御坂妹「あなたの頭の良さには、脱帽させられますね。と、ミサカはサンタ帽子を脱いでお辞儀します」

黒子「いえいえ…。それより…」

黒子「さっさと答えていただけますか?」

御坂妹「…」

黒子「あの日、初春に何をしたのか…そして…」


黒子「――私の『お姉さま』を……どこにやったのか!!!」

――――


―?―


打止「クリスマス…イブ…」

たぶん今日は、クリスマスイブなの

ここに来てから、朝か夜かもよくわからないから

どれぐらい時間が経っているのかもわからないけど…

たぶん、イブなの


打止「…暇だなぁ…」


クリスマスイブって、もっと楽しいものだと思ってた

楽しくない……寂しい…


誰か…早く来てくれないかな…

マフラーも…冷たくなってしまったの

あんなに、暖かかったのに…


打止「…はぁ。どうしたら…いいの…?」


わからない

ミサカは…ミサカには、どうすることもできないの…


…ガサッ


ガサッ


打止「…!」


な、なに…?


「……う……んっ…」


誰…?

あ、もしかして…

この部屋に閉じ込められてるもう一人の人…?


打止「あ、あの―――――」

―――――

――――

・ビル屋上・


御坂妹「…どこへやったか、ですか?」

黒子「そう言いました。聞こえませんでしたか?」

御坂妹「ええ、もちろん聞こえております」

黒子「…この…!!」

御坂妹「そんなに怒らないでくださいよ、白井様」

黒子「……」

御坂妹「…もし、私がその要求を断ると言ったら?」

黒子「もちろん、力ずくでも…綺麗さっぱり吐いていただきますわ」

御坂妹「そうですか…。でも…」

御坂妹「…果たしてあなたにそれができますか?」


黒子「…っ、何を言って…!?」

御坂妹「…あなたは、とても聡明です」

ゾワッ…ゾワッ…

黒子「…!?(人の気配…?)」

御坂妹「あなたが今言っていた話は、ほとんど正解です」

ゾワゾワゾワッ…

黒子「…(この…気配は……!?……数が…多すぎる…!!)」

御坂妹「しかし、果たして…」

黒子「…!!」

御坂妹「あなたがここ数日過ごした『お姉さま』は…」

御坂妹「この中の誰だったんでしょうか?」

御坂妹「と、ミサカはあなたに尋ねます」


黒子「……っ!!」

御坂妹「あなたの説明はとてもわかりやすく、素敵でした」

御坂妹「しかし…」

御坂妹「それだと、いくつか時間軸が合わない所があるんですよ」

御坂妹「…私が『一人である』と仮定した場合」

黒子「……あなたのその後ろにいるたくさんの姉妹が…それぞれ別々のところで『お姉さま』を演じていた、と?」

御坂妹「ええ。…私たちは、常に情報を共有できるのですよ」

御坂妹「ですから、私と同じように…あの子達があなたの『お姉さま』を演じるのは容易い」


黒子「……」

御坂妹「…ああ、それと…」

御坂妹「もう一つの方の答えは…少しだけお答えしましょう」

御坂妹「…あなたの後輩の初春様の、空白の1時間について」

黒子「…!」


ガシャガシャガシャガシャ

黒子「…!!!」

御坂妹「…いかがですか?あなたのお姉さまと同じ容姿の人達に…」

御坂妹「…一斉に銃器を自分に向けられる気持ちは」

黒子「…っ!」


御坂妹「さて、少しだけ…お話しましょう…」

御坂妹「昨夜…初春様に何をしたか…」

―――――

……―――――

・昨夜・

――佐天が訪れる約1時間前――


―路地裏―


初春「……ん……うーん……」

…頭が…ぼんやり、する…

視界がはっきりしない…

…ここは…どこ…?

あれ…私…

確か…佐天さんと…御坂さんと一緒に帰ってて…

…途中でお手洗いに…


ニャー


…?…猫?


「おはよう、初春さん」


…!?


「お目覚めはいかが?」


…だれ……?


「あれ、私がわからない?」

「さっきまで一緒に居たじゃない」


……え…?


「御坂よ」


…御坂…さん…?


「ひどいわよね、初春さんたら」

「今日も来てくれるって言ってたのに…」

「…佐天さんと買い物に行こうとしてるんだもん」


………嘘、だ


「約束したじゃない」

「猫の世話、一緒に手伝ってくれるって」


………嘘、だ……こんなの……

…御坂さんが…


「だから待ってたのに…」


「そう、『私達』みんなで待ってたのに…」


………嘘、だ……


御坂さんが

御坂さんが……


御坂妹「ひどいですよ、初春さん」

御坂妹2「『私達』を待たせるなんて」


『二人』いるなんて……嘘、だ………


御坂妹「不正解です。初春さん」


……え?


御坂妹2「私達は…二人ではない」



……何を……言って


「3人でもありません」

「4人でもありません」


………何………これ…


「10人でもありません」

「20人でもありません」


……どんどん……視界に……御坂さんが……増えて……


「ましてや100人でも…」

「…1000人でもない…」


…なんで……みんな………同じ…顔で……


「…大体ですが…」


…なんで…


「10000人です」


……みんな、銃器を……持ってるの……?


「と」

御坂妹「…ミサカは、申し上げます」

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…あ、ああ………


御坂妹「…今日はお話があります」


………え……?


御坂妹「…まぁ、楽しんで行ってくださいね」


…初春さん

―――――

――――

・ビル屋上・

御坂妹「…と、ミサカは昨夜を少しだけ思い出します」

黒子「……この………なんて…ことをっ……!」

御坂妹「結構妄想が激しい方なんですか?今の話だけで初春様に何かあったかお分かりで?」

黒子「…そういう問題じゃ……ない!!」

御坂妹「………お怒りする理由はお察しいたしますが…」

御坂妹「…それで?」

御坂妹「あなたは、どうするおつもりですか?」

黒子「…っ…初春を…助けに…」

御坂妹「…その初春様の心は…私たちが握っているのに、ですか?」

黒子「……」

御坂妹「それに…」


御坂妹「あなたがこれから何か変な真似をしようものなら…」

御坂妹「…あなたの愛する『お姉さま』を…」

御坂妹「…私はどうにかしてしまうかもしれませんよ?」

黒子「…っ!!」

御坂妹「…結局、あなたには何もできないのですよ」

御坂妹「残念、でしたね」

黒子「……あなたの…」

御坂妹「…?」

黒子「…あなたの……目的は、何ですの…?」

御坂妹「…」

黒子「…初春を苦しめ……お姉さまを…拐かし…」

黒子「…そんなことをして……あなたに何の得があるというのです!?」

御坂妹「…」


黒子「答えなさい!」


御坂妹「…ふふふ」

黒子「…!?」

御坂妹「…ふふふふ、ははは…」

黒子「……な、何が…可笑しいのです…?」

御坂妹「ふふっ……はぁ、こんなに笑ったのは…生まれて初めてですね。と、ミサカは初めての経験に興奮します」

黒子「…何を言って…」

御坂妹「…まったく、あなたという人は…」

御坂妹「そんなことも知らずに、一人で奮闘なさっていらっしゃったのですか?」

黒子「……どうでもいいことです!答えなさい!」

御坂妹「そんなに怒鳴らなくても…聞こえていますよ」

御坂妹「…はぁ…私の目的、ですか」

黒子「…」


御坂妹「それでは…白井様」

黒子「…?」

御坂妹「何かあなたに欲しいものがあるとします」

御坂妹「…あなたは、どうやってそれを手に入れようと思いますか?」

黒子「……それは、それを得るために…様々な努力をいたしますわ」

御坂妹「…そうですか。つまり、あなたは…」

御坂妹「…その『努力』を代価にして、欲しいものを得ようということですね?」

黒子「……」

御坂妹「私もそれと同じですよ」

黒子「……」

御坂妹「…私は……」

御坂妹「…全てを犠牲にしてでも、得たい物がある」

黒子「……」


御坂妹「私は、その目的を果たすためなら…」

御坂妹「どんなものでも利用し、排除し、その亡骸を踏みつけ…」

御坂妹「…登っていく覚悟があります」

黒子「………」

御坂妹「…具体的には…まぁ、いずれわかるでしょう」

御坂妹「…その時が、くれば」


黒子「…ふざけた考えですわ」

御坂妹「…」

黒子「…あなたの目的がどんなものか…それはもう、この際どうでもいいですわ」


黒子「…あなたが私の周りの人間を傷つけ続けると言うなら…」

黒子「…私は…」

黒子「…みんなを守る、盾となりましょう―――」


――シュン


御坂妹「…(テレポート…ですか)」

御坂妹「…まぁ、いいでしょう」

あの人は、そこまで害になることはないでしょう

…お姉さまの居場所も、簡単には突き止められないでしょうしね

御坂妹「…さて、帰りましょうか」

…明日が、楽しみです

――――――…………

―――――

―?―


打止「あ、あの!あなた、だ、大丈夫なの…!?」


「……ん………え…?」


打止「あなたも捕まってるの!?」


「………捕まって……る…??」


打止「自分がどうなってるかわからないの?…え、えっと…でも、ミサカもミサカも…よく…わからなくて…」


「…?…ミサカ…?」


打止「…うん!ミサカはミサカは…ミサカだよ!」


「……ミサカ…ちゃん?」

打止「うん!…あなたは何ていう名前なの?」


「………そっか…ミサカちゃん…か…」


打止「…?」


「…私は……」


美琴「…私は…美琴っていうの…」


―――明日、クリスマス

クリスマスイブ、投下終了
時間かかりすぎワロタ

遅いのに支援・保守ありがとう

いつもより規制かかりにくかったのはおまえらのおかげ 感謝

明日、スレ残ってたらクリスマス投下しにくるわぁ~

今日はありがとう

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