女騎士「私は女であることなど捨てたのだ」(632)

騎士「くっ……」

魔物「くはは、兜を外してみれば、まさか貴様が女だったとはな」

騎士「黙れ」

魔物「女の貴様が! 私に敵うとでも思っているのか!!」

騎士「ええい、黙れ!!」

 ブチブチブチッ

魔物「!! 貴様、自分の髪を…!!」

騎士「つァ!!」

 ザシュッ

魔物「あ゛……」

騎士「っ、…姫、お怪我は」

姫「…馬鹿! どうして来たの!」

騎士「姫をお守りするのが兵としての役目です」

姫「そんな事…! 貴女まで死んだらどうするのですかっ」

騎士「貴女の為ならば、私の命など」

姫「…ばかっ…」

姫「……ごめんなさい、私の為に、大切な髪が」

騎士「髪など良いのです」

騎士「私は、女であることは捨てたのですから」

姫「…そんな事言わないで」

姫「…また、髪、伸ばして。 貴女の髪、とても綺麗だから」

騎士「……」

騎士「姫がそう、仰るのなら」

騎士「うっ……」

姫「! 怪我を…鎧を脱いで」

騎士「、それは出来ません。 この鎧こそが騎士としての誇り。 それを脱ぐなど…」

姫「いいからっ」

騎士「あっ」

 パチン パチン ガシャ

姫「大変、血が」

騎士「この程度、かすり傷です」

騎士「姫、触るのはお止め下さい。 汚れて…ッ、」

姫「動かないで」

 ビリビリッ

騎士「姫! 何を、お召し物が……」

姫「私の服なんかより、今は貴女の血を止める事が大切」

姫「ほら、じっとして」

 ぎゅっ

騎士「……」

兵士A「姫! 姫様!!」

騎士「…やっと来たか。 おい、ここだ」

兵士A「! ここに居られましたか。 お怪我は」

姫「私は大丈夫です、それより……」

騎士「…大丈夫だ。 …姫を安全な所に」

兵士A「はっ」

兵士B「隊長、魔物は?」

騎士「急所は刺したつもりだが…魔物の生命力は侮れん、首を落としておけ」

多分ここまでをいつもの女騎士スレで書いてた
騎士騎士と言いつつ仕事とかただの傭兵だし女兵士として見た方がいいかもしれn


騎士「…っつ…」

医師「あーあー、まーた傷増やしちまって」

騎士「己が醜くなろうが、守るべき者が守られればそれで良いのだ」

医師「案外深いぞ、これ。 こっちも肋骨も2本イっちまってるしよ」

医師「しばらく任務控えた方がいいんじゃねえか」

騎士「この程度どうと言うことではない」

医師「はぁ……無理すんなよ」

医師「…髪、切ったのか」

騎士「魔物に髪をつかまれた」

医師「そりゃ兜取られりゃそうなるわな。 …これからも短くするのか?」

騎士「……いや」

騎士「…伸ばす、と思う」

医師「ふーん…はい、縫合終わり。 包帯を…」

騎士「いらん」

医師「なら固定帯だけでも持ってけ、肺に刺さるぞ」

騎士「…じゃあな」

 バタン

姫「あ…」

騎士「! ひ、姫? なぜここに」

姫「貴女が心配で。 …今、怪我がひどいと……」

騎士「姫が心配なさることではございません。 それにこの程度すぐに治ります」

姫「そう…でも、無理はしないで」

騎士「はは、分かっておりますよ」


使い「ああ、姫様、騎士殿。 ここに居られましたか」

騎士「む、どうした」

使い「お二方とも、国王様がお呼びです。 玉座の間にお越しください」

姫「私も?」

使い「はい」

騎士「分かった。 鎧を着たら行こう」


騎士「国王様、お呼びで」 スッ

国王「うむ。 娘も居るな」

姫「はい」

国王「騎士、先刻は我が娘を救ってくれたようだな。 感謝するぞ」

騎士「恐れ入ります」

国王「今回の事や、今までの実績を見て……
    お前を娘の、専属の身辺警護役になってもらいたい」

騎士「!」

国王「娘も成長し、また近頃は魔物も増え、周りに危険も多い」

国王「娘の命、お前に任せたい。 どうだ、やってくれるか?」

騎士「はい、喜んで。 お任せ下さい」

国王「娘も良いな?」

姫「はい! お父様、ありがとう御座います!」

国王「フフ。 では娘の誕生日祭と共に式を行う。 二人とも、下がってよいぞ」

騎士「姫。 私などで良かったのでしょうか?」

姫「ええ。 私近衛になったのが貴女で、とても嬉しい」

騎士「そう仰って下さるとこちらも嬉しいです」

姫「ふふふ。 これからよろしく、ええと……」

騎士「…騎士、とお呼び下さい」

姫「よろしくね、騎士」

騎士「はい」

騎士(ここが姫のお部屋……)

姫「騎士、そこに座って」

騎士「? はい」

姫「…やっぱり、綺麗な髪ね」

騎士「勿体ないお言葉です」

姫「昨日切ってそのままでしょう? 私が整えてあげる」

騎士「いえ、髪は理髪師が…それに姫が刃物を扱うなど」

姫「もう、そこまで子供じゃないの! いいから、座って」

騎士「あ、あ、」


騎士「……」

医師「姫様の近衛兵隊長か、お前も偉くなったもんだ」

医師「姫様は日に日に美しくなられるな…それに比べてお前と来たら」

騎士「うるさい」

医師「髪、姫様に整えてもらったんだって?」

騎士「姫様は少し…いや、かなり強引なところがあるな」

医師「やっぱ女性の髪は女性が整えた方が綺麗になるんだな、うん」

騎士「私は女では……ぁ、く…」

騎士「お前、もう少し丁寧に…っ」

医師「抜糸程度で騎士様が音を上げるな」

騎士「…お前の荒療治では治るもんも治らんわ」 ガスッ

医師「痛っ殴るな! …じゃあもう来ないように頑張るこったな」

騎士「出来るなら是非ともそうしたいものだ」

医師「姫様に心配されちまうもんな」

騎士「お前の顔も見なくて済む」

医師「ああそうかい」

姫「あ、騎士。 怪我はどう?」

騎士「!! 姫! 何をしておられるのですか!」

姫「貴女の鎧を着てみたのだけど……随分重いのね、上だけで精一杯」

騎士「お召し物が汚れてしまいます、お脱ぎください!」

姫「そうする、これでは歩くことすら……きゃっ!」 ふらっ

騎士「姫!」 ガバッ

姫「……あ…、騎士、ありがとう」

騎士「いえ…」

 パチン パチン

騎士「とにかく…もう鎧を着るのはやめてください、また転ばれては危険です」

姫「はーい…」

姫「…どうして騎士はそんなに重い鎧を着ていられるの?」

騎士「もう着なれてしまいました」

騎士「美しく淑やかな女性である姫には鎧など似合いませんよ」

姫「もう。 騎士だって女じゃない」

騎士「さ、そろそろお休みになる時間ですよ」

姫「子ども扱いしないでってば」

――

兵士「いやァ…姫様も今日で14、ずいぶんと大きくなったものだ」

兵士「ああ。 美しく成長されたものだ」

兵士「まったくだ、今の王妃様も美しい方だが…きっとそれ以上に美しくなられるだろう」

兵士「はは、王妃様が耳にされたらお前、首が飛んじまうぞ」

兵士「違ェねえ、ははは!」

騎士「貴様等、私語は慎まんか!」

兵士「隊長! し、失礼しました」

騎士「…ま、まぁ、姫が美しいのは、当然だがな、うむ」

兵士「……」

騎士「ところで姫を見なかったか?」

兵士A「姫ですか? 確か中庭にいらっしゃったかと」

騎士「中庭か……」

騎士「またそんな処で…」

兵士A「隊長も目を離されるから…」

騎士「……」

兵士A「ごめんなさい」

騎士「姫! 探しました」

姫「騎士」

騎士「そろそろ臣従礼が行われます。 急ぎませんと」

姫「面倒だな、話を聞くだけなんだもの」

騎士「そう仰らず」

姫「でも…やっと騎士が正式に私の近衛として認められるのね」

騎士「はい」

姫「ふふ、嬉しい」


姫「――汝、我が臣下となるを心から希望するや」 スッ

騎士「我、かく望む」 ぎゅ

――誓いの口付を

騎士「我、今よりのち、姫君に忠実を尽くし」

騎士「他の何人でもなく、ひたすら姫のみに対する忠誠の誓いを、
    誠心誠意、偽りなく全うする事を、信仰にかけて誓うものなり」

騎士「生命と身体に懸けて信義を―――」


姫「…はぁ、疲れた」

騎士「お疲れ様です」

姫「臣従礼は初めてで緊張しました。 いつもああやって?」

騎士「はい。 差し出された手を包み、口付を。
    古来より変わらぬ手法です。 それ故言葉も当時の物で、少々覚え辛いですね」

姫「私は一言だけだったけど」

姫(…手に、口付を……)

姫「…ふふふ」

騎士「?」

――

騎士「そろそろ習い事の時間です」

姫「えー、また?」

騎士「そう仰らず…」

騎士「今日はは王妃様も見にいらっしゃるとか」

姫「お母様が? だったら頑張らないと!」

姫「お母様はとても素敵な方です。 美しくて優しくて…」

騎士「姫も負けず劣らず、優しく美しいではありませんか」

姫「もう、騎士ったら」


騎士「姫、湯浴みの時間です」

姫「はーい」


騎士(はぁ…この時間は苦手だ)

騎士(着替え時ですら直視できぬというのに…)

姫「ねぇ騎士」

騎士「は、はい」

姫「一緒に入らない?」

騎士(うぉあああああああ!?)

騎士「…私は姫がお休みになった後に入るので」

姫「一人じゃ寂しい」

騎士「では侍女と…何も私でなくとも」

姫「侍女には今日は来なくて良いと言ってあります」

騎士「なななんてことを!」

姫「騎士が私に就いてからもう2ヶ月、ずーっとこの調子じゃない」

騎士「私の役目は貴女を守る事なので」

姫「騎士のカタブツ。 ほら、いいじゃない」

騎士「わ、わ、」

姫「何を恥ずかしがっているの、女同士じゃない!」

騎士「姫、や、やめ、」

姫「ほらっ脱ぎなさいっ! この鎧っ!」

騎士「う、うわ! 姫っ!! やめっ…あっ」

騎士「分かりました、脱ぎます、脱ぎますからっ!!」


兵士B「覗きてぇ…」

兵士A「やめとけ、殺されるぞ」

 かぽーん

騎士(また姫のペースに流されてしまった……)

姫「ねぇ、騎士。 髪を洗って」

騎士「あ、はい」

騎士(…傷一つ無い…ああ、何と白く美しい肌か)

騎士(そして柔らかな髪…私が触ってしまっても良いのだろうか)

騎士「……ここまで髪が長いと、手入れするのが大変でしょう」

姫「手入れは侍女がしてくれるけどね」

姫「騎士の髪が伸びたら、私が手入れをしてあげる」

騎士「はは、それは楽しみです」

騎士(見てはいけない見てはいけない見てはいけない見てはいけない…)

姫「何言ってるの?」

騎士「い、いえ、何でも」

騎士「…この浴室に入ったのは初めてですが…とても広いのですね」

姫「騎士はいつもどんなところで?」

騎士「まず浴槽はありません」

騎士「バケツ一杯の湯が支給され、布で身体を拭くだけです。 外では川の水を」

姫「うそっ…それで疲れがとれるの?」

騎士「汗や汚れを落とすことだけが目的なので。 それにゆっくりしている時間もありません」

姫「…大変なんだ」

騎士「こんなものです、兵なんて」

姫「…ところで、なんで服を着ているの? お風呂なのに」

騎士「今日は飽くまで侍女の代りです」

姫「……傷を見せたくないから?」

騎士「え」

姫「捲った腕も傷だらけ。 …痛くないの?」

騎士「塞がってしまえば」

姫「…傷ついてまで、守らなきゃいけないの?」

騎士「己の命を懸けてでも」

姫「……騎士が私の為に死ぬのなんて、嫌です」

騎士「姫は優しいのですね」

騎士「…さ、そろそろ上がりましょう。 逆上せてしまいます」

騎士(なにより姫の白い身体は私には眩しすぎる)

百合は射程範囲なので支援します

 パチン パチン

姫「…鎧着ちゃうの?」

騎士「はい」

姫「えー…」

騎士「勤務中ですから、……」

姫「…? ねぇ、何か聴こえない?」

騎士「確かに。 歌、でしょうか。 広間の方から…」

姫「行こ!」

騎士「姫! …あぁ、もう」


王妃「―― ―――…」

姫「お母様」

王妃「あら、姫。 …それと騎士、と言いましたか」

騎士「……」 スッ

姫「歌声が聴こえたものですから」

王妃「そう…ごめんなさいね、うるさかったかしら?」

姫「いえ、そんなことは。 とても美しい歌声で…魅かれてしまいました」

王妃「ふふ、貴女の声も澄んでいて、とても美しくてよ」

王妃「歌の稽古では頑張っていらしたものね」

姫「ありがとうございます」

姫「お母様、また歌、歌って下さいませんか?」

王妃「ええ、もちろんです」


騎士「心にも響きわたる、美しい歌声でしたね」

姫「ええ。 私もお母様のようになりたい」

騎士「ふふ、姫なら必ずなれますよ」

姫「ありがとう」

騎士「…あの詩は、王妃様が作られたものでしょうか」

姫「そう。 お母様は作詞の才にも優れているの」

騎士「……でも」

騎士「…悲しい詩ですね」

姫「…そう」

――

兵士A「おおおお!!」

 ガキィンッッ

兵士A「うわっ」

騎士「踏み込みが甘い! 次!」

姫「騎士ー! 頑張ってー!」

騎士「!? 姫…うおあっ!」

 ガシャッ

兵士B「あ、すみません」

騎士「いや、よそ見した私が悪い……」

騎士「…姫! 何故ここに」

姫「抜け出してきたの」

騎士「訓練場は危険だから近づいてはいけないと前言ったでしょう」

姫「いいじゃない、離れていれば安全でしょう?」

騎士「問題はそこでなく……はぁ」

騎士「…私は姫を送り届けるから…各自励むように」

兵たち「はっ」

姫「騎士のけち」 むすっ

騎士「離れていても危険なのですよ、剣や槍だけでなく
    別の隊では弓も扱っていて、いつ飛んでくるやも分かりません」

姫「それは前聞きましたー」

騎士「だったら守って下さらないと。 怪我をされては大変です」

姫「訓練で怪我する人なんていっぱい居るじゃない」

騎士「我々騎士や兵士はそれで良いのです」

騎士「…さ、姫も稽古に戻ってください」

姫「もう。 じゃ、また後でね」

騎士「もう抜け出してはいけませんよ」


姫「あ、騎士。 おかえりなさい」

騎士「刺繍ですか?」

姫「そ! 一人でタピストリー作るのは初めてだけど…お母様に差し上げようと思って」

騎士「王妃様もお喜びになりますよ」

姫「いつ完成するかわからないけどね」

姫「お母様には内緒よ?」

騎士「もちろんです」

姫「…肩、凝ってきちゃった。 散歩に行きましょう」

騎士「はい」

医師「お」

騎士「む」

姫「ええと、騎士専属のお医者さん」

医師「いや専属ってわけではないんですがね。 お散歩ですか?」

姫「そう。 今日は天気がいいから」

医師「美しい花々、姫様にお似合いですよ」

姫「騎士にも言ってあげて」

医師「と仰ってるが」

騎士「いらん」

姫「もう。 騎士だって女なんだから…」

医師「何を言っても無駄ですよ、このアマゾネスには」

騎士「アマゾネスと呼ぶなと前から言っているだろうヤブ医者めが」

医師「んだとコラ」

騎士「だいたい何故貴様が植物園に居るのだ、花なぞ貴様に似合わんぞ」

医師「俺は奥の薬草に用があんだよ」

医師「では姫様。 ごゆっくり」

姫「はい。 …クスクス」

騎士「? なにを笑って…」

姫「仲いいなぁ、って」

騎士「…御冗談を」

姫「騎士の髪にはこの色の花が似合いそう」

騎士「はは、鎧姿の私に花など似合いませんよ」

姫「だったら脱ぎなさいっ」

騎士「わ、やめてください」

 キャッキャウフフ ワーワー


医師「……」

医師「仲良いねぇ…」 ボソ

騎士「姫、お休みの時間です」

姫「はーい」


姫「…ねぇ騎士。 アマゾネスって?」

騎士「……」 ピクッ

騎士(くそあのヤブ医者め余計な事を言いおって!)

騎士「えー…と、…聞きたいですか?」

姫「とても」

騎士「…アマゾネスと言うのは古代の神話に出てくる、女戦士の一族です」

姫「女戦士」

騎士「そう。 彼女らは戦いの邪魔になるため、乳房を切除していたと言われています」

姫「む、む、胸を…。 でも、戦いのため、なんて。 騎士もそういう所はあるんじゃない?」

騎士「…私は切除まではできませんでしたよ、邪魔だとは思いますが。
    胸は脂肪のため、思ってた以上に傷も塞がりにくいので…もうやろうとも思いません」

姫「…えっ」

騎士「え、あ……ま、まぁ、10年程前の事です。 話を戻しましょう」

騎士「くっ……」

魔物「くはは、兜を外してみれば、まさか貴様が女だったとはな」

騎士「黙れ」

魔物「女の貴様が! 私に敵うとでも思っているのか!!」

騎士「ええい、黙れ!!」

 ビリビリビリ

魔物「グヘヘヘヘ、貴様の体を覆うものはもう何もない」

騎士「あァ!!」

 クンクン

魔物「あ゛……」

魔物「女であることを捨てたってそこくらい洗うだろjk・・・ガクッ」

騎士「失礼な!!!」

騎士「何より…彼女らは自らが女であることを誇りに思っています」

騎士「生まれた子が男であった場合、その場で殺害したという説もあります」

姫「…騎士は違うの?」

騎士「私は騎士として女であることに劣等感すら抱いています」

騎士「戦場においても女だからと甘く見られ手を抜かれ…」

騎士「幼少のころから思っていました、何故自分は女になってしまったのかと」

姫「男に生まれたかったんだ」

騎士「まぁ」

姫「…でも、騎士が男だったら…嫌だな」 ボソ

騎士「? 何か?」

姫「何でもありません。 おやすみー」

騎士「…じゃ、夜の番は任せるぞ」

兵士C「はい」

兵士D「あ、隊長! 医師殿が来とります」

騎士「なっ」

医師「よ」

騎士「……チッ」

医師「んな嫌そうな顔すんなよ」 ヘラヘラ

騎士「貴様の顔を見ただけで反吐が出るわ」


騎士「…で、何の用だ」

医師「いや用は無いんだが…チェスしながら酒でもどうだ」

騎士「ここは医務室だが」

医師「細かいこと気にすんな、俺の部屋は本で足の踏み場もない」

騎士「そんなだから女が寄って来んのだ」

医師「うるせ」

騎士「賭け金は」

医師「無し」

騎士「根性無しめが」

医師「…姫様、お前にべったりじゃないか」

騎士「うむ、まぁ」

医師「満更でもなさそうだな。 まぁ愛しの姫様だし…」

騎士「……」

医師「…否定しない…だと…」

医師「おいおい女同士か、俺は認めんぞ!」

騎士「何でそうなる、それに貴様になど認められんでも良い」

騎士「それに姫は優しいお方だ。 私でなくともあのように接して下さる」

騎士「…だいたい姫は王妃様を愛しておられる」

医師「家族愛と普通恋愛は方向が違うだろ」

騎士「そうなのか?」

医師「いや知らんが」

騎士「…私がどれだけ姫を愛していようと、王妃様には適いはしない」

騎士「とにかく…姫さえ守られさえすればよい、それが私の使命だ。 チェック」

医師「あ!? えー、あー…」

騎士「誘っておいて負けるとは、情けない」

医師「……賭けなくて良かった」

騎士「医者なら結構貰えるだろう、けちな奴だな」

医師「医師長なら貰えるだろうが、俺らは騎士様にゃ及ばんよ」

騎士「…金など貯まっていくだけなんだがな」

医師「ならくれよ」

騎士「私が死んだらくれてやってもいいぞ」

医師「この腐れアマゾネスが戦死しますように!」

騎士「このヤブ医者が感染症に罹りますように」

――

騎士「姫、此処に居てください」

騎士「お前たち、絶対に姫から離れるな。
    いざとなったら姫を連れて逃げろ、そこの壁、抜けられるようになっている」

兵士A「はっ」

姫「騎士は?」

騎士「私は通路の魔物共を――」

魔物「ギイイィィィィィーッッ!!」

騎士「!」

 ガリッ グチュッ

魔物「ギッ………」 どさ

騎士(此処は隠し部屋のはず、何故ばれた…?)

騎士「…姫を任せたぞ」

兵士A「はっ」

姫「騎士っ」

兵士B「姫様ご安心を、我らが必ずお守りします」

姫「騎士が…」

兵士A「あの方はお強い、大丈夫です」

騎士「貴様等、目的はなんだ?」

魔物「ヒヒッ…コロサレルト ワカッテ ダレガ オシエr」

 ドスッ

魔物「 」

騎士(……雑魚ばかりではないか、外塁は何をやっている)

騎士(…ま、空を飛ぶ相手に外で挑むのも難しいか)

兵士「騎士殿! 魔物共が撤退したそうです」

騎士「ん、そうか。 報告ご苦労」

兵士「…一人でこれ全部相手にしたのですか」

騎士「この狭く低い天井の通路では魔物の方が不利だからな」

騎士「…返り血を浴びすぎたな、洗っておくか。 代わりに姫を迎えに行ってくれ」

兵士「はっ」


がばっ

姫「お母様っ!」

王妃「ああ、良かった、生きてたの……」

姫「お母様も、無事で、良かった…!」


騎士「…損害は」

兵士「我が隊は死亡ゼロ、負傷3名」

兵士「全体では死亡4名、負傷42名です」

騎士「そうか、分かった」

騎士「…前の襲撃よりは減ったか」

騎士(隠し部屋…そこに繋がる地下通路の入り口すら、見つけるのは容易ではない)

騎士(城でも知らぬ者がいるほどだ)

騎士(匂いで追うにしても、それを紛らわす香が城の至る所で焚かれている)

騎士「……」

姫「騎士? どうしたの、難しい顔をして」

騎士「いえ、何も」

姫「部屋に戻りましょ」

騎士「はい」

騎士「…荒らされてしまいましたね。 タピストリーは大丈夫でしたか?」

姫「うん、平気」

姫「それより…騎士、怪我しなかった?」

騎士「ええ、全く」

姫「そう…良かった。 また私の為に騎士が傷つくなんて嫌だもの」

騎士「ありがとうございます。 …見苦しいものをお見せしてしまいました」

姫「気にしないで。 …もう、たくさん見てきたから」

騎士「……」

姫「…前もそう。 魔物が来て、城を守るために殺して、殺されて」

姫「私を守る為にも、私が攫われて助ける為にも……」

姫「目の前でたくさんの人が傷つき、死んでいった」

騎士「姫…」

姫「私のせいで…たくさんの人が死んでいるの」

姫「…そんなの、もう嫌」

姫「私なんて、居ない方が、いいんじゃないのかと、思う……」

騎士「そんな事を言ってはなりません」

姫「だって、だって…っ」 ぽろぽろ

騎士「私には…この国には、貴女が必要なのです。
    どうか、どうかその様な悲しい事、言わないでください」

姫「う、ぅ、あぁぁぁ……っ」 ぎゅうう

騎士「……姫」 ぎゅ


姫「…スー…スー…」

騎士「……」

騎士(……まだまだ子供だな)

騎士(……かく言う私も、慰めることすらできない…駄目なやつだ、まったく)

兵士C「隊長」

騎士「…む、もう時間か」

兵士C「いえ…ですがお疲れでしょう。 少し早いですが、交代しましょう」

騎士「悪いな。 …就寝中に襲撃があってお前たちも…」

兵士D「兵舎への襲撃はありませんでしたよ。 気にせんでください」

騎士「? …そう、か。 では、頼んだ」


姫「騎士、おはよう」

騎士「おはようございます」

姫「えっと、その…昨日は、ごめんなさい」

騎士「? 何を謝る事が」

姫「弱音を吐いてしまって。 ごめん」

騎士「…彼らは皆、姫を、国を守るために死んでいったのです
    悔いなどありません。 むしろ誇りに思っていることでしょう」

騎士「姫は優しいお方です。 謝る事などないのです」

姫「…うん」

姫「でも…騎士は、死なないでね」 ぎゅ

騎士「……ふふ」 ぎゅ

騎士「姫は抱擁がお好きですね」

姫「そう。 お母様が毎日やってくれたの」

姫「優しくて、安心感があって、温かくて。 とても好き」

姫「だから騎士、鎧を脱いで。 固くて冷たい」

騎士「勤務時間中脱げるのはマントと兜までです」

姫「けち」


兵士A「いやぁ朝からお熱いですなぁ」

兵士B「全くだ」

――

姫「今日は騎士、お休みなの?」

兵士A「はい、上からの休暇です」

姫「…あぁ、順番に休んでいく奴ね。 騎士もお出かけするのかな」

兵士A「いえ、兵舎の方で休んでいるかと」

姫「そうなの?」

兵士B「買い物とかをする人ではないんでね、隊長は」

姫「へー。 でも家に帰ったりとかは」

兵士A「それも無いでしょう。 隊長も孤児院の出で帰るべき家もありませんし、
     頂いた土地などにもほとんど手を出されていないようなので」

姫「へー…」

姫「…ね、騎士の部屋に行ってみたい」

兵士AB「「…はい?」


兵士A「いやいや、いくら姫様でもいけませんって」

姫「騎士の部屋はここ?」

兵士B「そうですが…いけませんよ、入っては」

姫「騎士、いるかな」

兵士A「話を聞いてください!」

騎士「何だ人が寝ている時に騒々しい!」 ガチャッ

兵士AB「「!!」」

姫「あ、騎士。 おはよう」

騎士「!!? 姫!? 何故、え、今はミサの時間では、あ、今日は休みの日…」

騎士「え、と、とりあえず廊下で話すのも何ですから、汚くて狭いですが中へ」

姫「ふふ、お邪魔します。 …本当に狭いのね」

騎士「まぁ、寝るためだけの部屋ですから」

兵士B「俺ら下っ端は同じ広さを4人で使ってるんですがね」

騎士「ところで兵士Aは何をやっているんだ、上官に目を合わせんとは失礼な」

兵士A「隊長お願いですから服を着てください目のやり場に困ります」

騎士「着てるじゃないか」

兵士A「タンクトップを服とは言いません下着です!」

姫(兵士Aさんってシャイなんだ)

兵士B(童貞乙)

姫「騎士、寝てたの? 寝癖が」

騎士「恥ずかしながら… 休みだからと昨夜少々酒が過ぎたようで」

騎士「ところで、何故ここに?」

姫「うん? 騎士に会いたかったの」

騎士「なっ…!」

兵士A(ああ、あんなに顔を赤くして)

姫「それと、」

 ぎゅっ

騎士「くぁwせdrftgyふじこlp;@」

騎士「な、なっ!?」

姫「ほら、前勤務中は鎧を脱げないって言っていたでしょう? だから」

姫「騎士、すごく温かい」 ぎゅぅぅ

騎士(うおおおおおひひひ姫の体温ががが伝わって伝わって伝わっttうおおおお)

騎士(あああ、なんと美しく良い匂いの髪か、抱き抱えて口付けてしまいたい)

騎士(って何を考えているのだ! 私は姫に仕える騎士、そんなことが許されるはずがない!)

騎士(落ち着け! 落ち着け!! 素数を数えろ!!)

兵士A(あんなに取り乱される隊長も珍しい…)

姫「でもやっぱり、堅い。 筋肉かな」

騎士「はぁ、まぁ、鍛えていますから…」

姫「ここは柔らかいけど」 ぷに

騎士「わ、へ、変なところ突かないで下さい!」

兵士AB((うおォン))


姫「それでね、お母様がね――」

姫「そしたらお母様が――」

姫「お母様はいつも――」

騎士「ははは」

騎士「……」

騎士(今夜もまた酒を飲み過ぎそうだな…)

姫「それで、お父様が――」

 カァーン カァーン カァーン カァーン カァーン カァーン!

姫兵士AB「「!!」」

騎士「鐘の音…魔物が現れたか!」

騎士「6回ということは南西、此処とは逆方向
    魔物が来る前に姫を最近避難地へ、装備し次第私も行く」

兵士AB「「はっ!」」

騎士(ちっ…選りによってこんな日にか!)

騎士(上空背後物影…魔物の気配はない、よし)

 ズ ズ ズ ・ ・ ・

騎士「…!? 兵士A、兵士B! どうした!?」

姫「騎士っ!」

騎士「! 姫、御無事で…」

姫「来ちゃ駄目っ!!」

騎士「なっ―――!?」 バッ

 ズガシャァァンッ

騎士「がっ…!」 ミシミシッ

姫「騎士!!」

魔物「まーた邪魔増えた、マンドクセ」

騎士「ゴホッ…、魔物…!」

騎士(なんという怪力…鎧すら変形してしまった)

騎士(ちっ…左肩、外れたか)

騎士「…貴様どうしてこの場所が分かった」

魔物「うはwwwwwww女の声wwwwwwwwwww」

騎士「……真面目に答えろ」

魔物「サーセンwwwwwww」

魔物「あっちの雑魚、囮wwwww 反対からオレが姿消して侵入wwwwwwwww」

魔物「んで、こーっそり姫様ストーキングwwwwwwwwwwwテラ策士wwwwwwwww」

騎士「いちいち頭に来る喋り方だな」

騎士「…とにかく貴様だけを倒せばいいのだな」

魔物「え?wwwwwオレ殺そうっての?wwwwwwwマジぱねえっすwwwwwwwwww」

魔物「でもどーすんのwwwwwww片腕動かないんでしょ?wwwwでしょ?wwwwww」

騎士「……」

魔物「しかもwwwwwwwwwおwwwwんwwwwwなwwwwwwwwww」

騎士「……」

魔物「人間の、しかも女がwwwwwwwオレに勝てるとでも思ってんのwwwwwww?」

魔物「フヒヒwwwwwwぐっちゅぐちゅに潰してやんよwwwwwwwwwwwwwww」

騎士「…姫、少々お見苦しい場面になると思いますので、目と耳を塞いでいて頂けますか」

魔物「何何wwwwwww自分の死ぬ姿見せたくないってのwwwwwww?」

騎士「…目的は何だ」

魔物「うはwwwwwwwwwスルーwwwwwwwwwww」

魔物「お姫様ヌッ殺す事wwwwwww でも国王とか王妃とかはイラネ」

騎士「何故姫だけを」

魔物「教えねwwwwwwwwwwwwwww」

騎士「……」

騎士(…姫だけを狙って魔物側にメリットがあるのか?
    後継ぎが居なくなったとしても、有能な部下や養子を作りそれにすることはできる)

騎士(国王、王妃両方を潰したほうが、城は揺らぎ確実に国は不安定になる)

騎士(…何が目的だ)

騎士「……」

魔物「考え事してる余裕なんかあんのwwwwwwwwww?」 ぶおっ

騎士「…」 ひょい

 スパッ

魔物「ちょwwwwwwww痛えwwwwwwwwwwwww」

騎士「…その腕落としてやろうと思ったのだがな」

騎士(強靭な筋肉だ…断つどころか骨にすら届かなかったか)

騎士「…この襲撃は貴様の意志か?」

魔物「まさかwwwwwww上の命令wwwwwwオレは帰って寝たいwwwwww」

騎士「それは誰だ、どこに居る」

魔物「誰が教えるかwwwwww口が裂けても言えねーよwwwwwwwwwwwww」

騎士「そうか」

騎士「なら貴様はもう用済みだ、その煩い口ももういらない」

魔物「あ? やんのか? お? 片腕の女の分際で? バロッシュwwwwwwwwwwwwwww」

魔物「しね」 ぶおんっ

騎士「…力任せで隙だらけ」 ひょい

騎士「下ががら空きだ!」 カツンッ

魔物「!!」 ぐらっ

 グシュゥゥッ

魔物「お゛っ……ご…あ゛ッ!!」 ドサッ

騎士「ハッ、口の中は随分と柔らかいのだな。 どれ、もっと深く刺してやろうか」

 ズブ ブシュゥ

魔物「……! ……ッ!! ―――」

魔物「 」 ピクッ ビクンッ

騎士(死んだか……雑魚め)

騎士(む…やはり見苦しいな、死体にはマントでも掛けておくか) バサッ


騎士「おい、兵士A、兵士B、大丈夫か」

騎士「……」 パチン パチン

騎士「…呼吸もある、目立つ外傷も無い…軽い脳震盪か」


騎士「…姫、もう大丈夫です」

姫「…騎士? いいの?」

騎士「はい」

姫「騎士、大丈夫? あの二人も」

騎士「大丈夫です
    あっちも気絶しているだけですので直に目が覚めるでしょう」

姫「…お母様やお父様も、……」

騎士「心配ありません。 私よりも屈強な兵が就いておりますので」

騎士(…姫だけが狙われていたと知ったら、どう思われるだろうか……)

騎士「今は魔物撤退の報告があるまで待ちましょう」

姫「うん」

姫「……っ」

騎士(…手が震えている)

騎士「…安心してください、姫」

姫「……うん」


医師「呼吸は楽になったか」 ぐにぐに

騎士「うむ、まぁ……あだだっ」

医師「…結局俺の世話になってんな、騎士さんよ」 ぐっ ぐっ

騎士「黙って治せ…っつ」 コキンッ

医師「うっし、肩入ったな」

医師「…鎧へこむほどの怪力とか、どんなだよ…よく勝てたな片腕で」

騎士「力任せな奴は弱いと決まっている。 …背後を取られたのは不覚だった」

医師「前の魔物にしたって、爪が鎧を貫通してたろ。 鎧の意味あんのかよ」

騎士「無かったら無かったで一瞬で殺されてしまうのだがな…」

騎士「まぁ、いつ死んでもおかしくはないか。 魔物の相手をする以上」

医師「……」

医師「…折角治った肋骨も見事に折りやがって……」

医師「……触った感じ、折れ方も芳しいとは言えん」

医師「しばらく休めよ。 肩も罅入ってそうだし二週間ぐらいは固定してろ」

騎士「ふざけるな、そんな暇ない」

医師「俺は医者として言ってるんだ。 休め。 命令」

騎士「……」

医師「兵士Aも兵士Bもお前の部下だけあって有能じゃないか」

医師「…今回はアレだったが」

騎士「それは私も同じだな…」

書き溜めてるのか
いい心がけだ
でも投下速度速すぎてもだめだぞ

医師「とにかく、今回は休むこと。 明日から三週間だ」

医師「痛みが無ければ腕の固定具は外していいが、激しく動かさないこと。 筋トレはゆっくり」

騎士「……」

医師「不服か」

騎士「当然だ」

医師「自分の部下ぐらい信用してやれ」

騎士「そうじゃない」

騎士「…戦えない自分が腹立たしい」

医師「……」

医師「…なぁ、もう…やめないか」

騎士「何をだ」

医師「戦う事をだよ」

騎士「…はぁ?」

医師「戦い続けたら本当に、身体が壊れちまう」

騎士「主を守り戦いの中で死ねるのなら本望だ」

医師「俺はお前がこれ以上傷つくのを見たくねえんだよ」

騎士「……」

騎士「…阿呆か。 私は兵士でお前は医者だ」

騎士「医者は黙って治せばいい。 腑抜けたことを言っているな」

医師「……」

騎士「…それに私から戦う事を取ったら何が残るというのだ」

騎士「何も残らん、死んでいるのと同じだ」

騎士「私はもう、兵士として、戦いの中でしか生きていけないのだ」

騎士「……三週間は休む。 また戦うためにな」

騎士「では」

 バタン


医師「……」

医師「女として、生きることはできないのかよ……」


騎士(…休むとは言ったものの)

騎士(正直やることがない。 今朝も無駄に早く起きてしまった…)

騎士「……とりあえず飯か」

 ガチャ

兵士A「おはようございます」

騎士「ぬお、お、おはよう。 調子はどうだ」

兵士A「快調です」

兵士A「…昨日はすみませんでした、俺が不甲斐無いばかりに」

騎士「私も同じだ、過ぎたことを気にするな。 姫も無事だったのだ」

騎士「…が、今後同じような事の無いように」

兵士A「はっ」

騎士「では飯でも食いに行くか」

兵士A「…姫様、随分と心配しておりましたよ」

騎士「そうか…」

騎士「…一ヶ月近く。 任せたぞ」

兵士A「はい。 …あ、飲み物何にしますか。 隊長の分も取ります」

騎士「そうか。 なら山羊乳」

兵士A「分かりました」

料理人「おや騎士殿、どうされました左腕」

騎士「脱臼と罅」

料理人「脱臼ねぇ。 脱臼甘く見たらいかんですよ、俺みたいに腕上がらなくなるんで」

騎士「うむ、気をつけよう。 パンを」

料理人「はいよ」

これは医者×騎士フラグか・・・

兵士A「で、おそらく…と言うか必ず、ミサが終わり次第姫様が隊長を訪ねるかと」 ムッシムッシ

騎士「そうか」 ズズ…

兵士A「宜しいでしょうか」

騎士「宜しいも何も、姫の事だ。 駄目と言ってもいらっしゃるだろう」

兵士A「はは、そうですね」

騎士(ミサの後か……それまでは稽古場の見学でもしているか) モサモサ

 カーン キィーン キィーン ウォオオオ!

騎士「……うーむ」

騎士(…だめだ、見ていると体を動かしたくなる)

 シュッ  パァン!  シュッ …あ、危ねぇ!

騎士「はぁ…右腕だけでは参加はさせてもらえないか」 パキンッ

弓兵「…あ、騎士殿! すみません、こちらに矢が…」

騎士「これか」

弓兵「あ、これです。 …え? 折れて…え?」

騎士「両陛下や姫だったらどうする。 気をつけろ」

弓兵「は、はっ!」

弓兵(さ、流石は騎士殿… 飛んでいる矢をも切り落とすとは)

>>122
ないだろう、このてのタイプはよくある幼なじみと同じだな
メインヒロイン以外の幼なじみキャラってのは基本結ばれないのが定石
医者はどちらかといえば騎士の兄みたいだし、

姫「騎士っ!」

騎士「おはようございます」

姫「本当に、大丈夫なの…?」

騎士「見た目ほどひどいものではありませんよ。 この通り動かすことはできるので」

姫「うん……」


姫「騎士、髪伸びたね」

騎士「え…あぁ、そう言われてみれば」

姫「整えてあげる」

騎士「な、せっかく伸びたのにですか」

姫「整えるのと切るのは違います。 髪には長さに応じてその人に似合った――」 クドクド

騎士「は、はぁ」

騎士(だめだ話についていけん)

>>126
なるほどそのルートもあるな

姫「で、その時お母様が――」 チョキチョキ

姫「お父様もそうだったけど、やっぱり――」 チョキチョキ

騎士「……」

姫「お母様の持っている――」 チョキチョキ

騎士(――あぁ)

姫「お母様の歌は――」 サッサッ

騎士(――私は、王妃様に…)

姫「それでね、――」 チョキチョキ

騎士(…妬いているのか……)



騎士「…さて、今日は何をするか」

騎士(昨日の様に訓練所へ行ったところで、邪魔になるばかり)

騎士「……」

騎士(…町へ…行ってみるか、うむ)

騎士(剣さえあれば良いだろう。 紋章の入っていないマントはあっただろうか…)



 ワイワイ ガヤガヤ

騎士(町には久々に来たな…特に昼間になど)

騎士(賑やかなものだ。 この町には魔物の襲撃はないのだろうな)

騎士(…すぐ傍の城は何度もあっているというのに)

 ドンッ

騎士「っ、おや失礼」

町人「いやこちらこそ、すまんな」

騎士「うむ。 ……ところで…この腕はなにかな?」 グイッ

町人「……!」 バッ

騎士「…はぁ」 ひょい

町人「うお!」 コケッ

 ズザーーッ  バラバラッ

騎士「ふむ、私以外の財布も随分と持っているようだが?」

町人「ご、ごめんなさいごめんなさい、許して下さい」

騎士「貴様の事情など知るか下郎め。 おい、誰かこいつをしょっ引け」


 どっぷり

騎士「くそ……もう真っ暗ではないか」

騎士(スリの後も酔っ払い同士の喧嘩やら何やらでこんな時間になってしまった)

騎士(昔の癖か、ああいうのを見逃せんのは…)

騎士(だいたい何故昼間からあんな喧嘩事が多いのだ!)

騎士「……」

騎士(流石にもう門は開いていないし開けてもくれんだろうな…)

騎士(…かなり遠回りになるが裏口から入るしかないか…)

騎士(やはりここら辺は見張りが少ないのだな…)

騎士(夜間に魔物の襲撃があったらどうするのだろうか)

騎士(今度会議で言ってみるか…)


騎士「……」

騎士「……?」

騎士(…何か聴こえたな…)

??「―― ―――」

騎士(話声か? こっちから……)

騎士「……」

騎士(…あれは……)


医師「…どうした、こんな朝っぱらから」

騎士「出かける」

医師「は?」

騎士「しばらく出かける。 その分の痛み止めが欲しいのだが」

医師「それは構ねぇが……昨日も町行ってたんじゃないのか」

騎士「すぐそこだったからな。 二週間ほどいろいろと回ってみようと」

医師「ふーん、珍しいな。 調合終わったら持って行く」

騎士「出来るだけ早くな」

医師「はいはい」

医師「お待ちどうさん」

騎士「遅い」

医師「おや姫様もいらっしゃいましたか。 おはようございます」

姫「おはよう、医師さん」

医師「腕は痛くなかったら動かしてもいいが、激しく動かさないこと」

医師「あと振動が響くからあまり速く走らせないこと。 落馬しないこと」

騎士「落馬は馬鹿にし過ぎだ」

騎士「では、そろそろ」

姫「騎士、行ってらっしゃい」

騎士「はい。 また二週間後に帰って参りますので」

姫「うん。 気をつけてね」

医師「お待ちどうさん」

騎士「遅い」

だが>>1の投下は早い

姫「…行っちゃった」


兵士B「……寂しいですか?」

姫「えっ、え、えーと」

兵士A「ははは、まぁ隊長にとっては久々の長い休みです。 ゆっくり待ちましょう」

姫「う、うん」

姫「……」

姫「あ、お母様のタピストリーも進めておかないと…」


兵士A「しかし隊長が出かけるとはまた珍しい」

兵士B「だな。 どこへ行くんだか」

兵士A「……武器屋巡り?」

兵士B「隊長ならそれでも不思議じゃないから困る」

兵士A「女らしさを微塵も感じさせないからな」

兵士B「それは隊長を貶しているのか?」

兵士A「心の底から褒めているつもりだ」

兵士B「まぁ男らしいからな」

兵士B「……良い乳をしていたが」

兵士A「ぅおらァ!」 ガスッ

兵士B「へぐっ」

兵士A「お前は恥と言うもんを知らんのか!」

腐男子さんようこそ!

>>149
腐女子と腐男子ってどっちが上なんだ?

兵士B「隊長といや、医師さんとはどういう関係だ? 仲良いみたいだが」

兵士A「同じ孤児院出身だそうだ」

兵士B「なん…だと…」

兵士B「…じゃああれか、そういう関係でも不思議じゃないっていう……」

兵士A「おいおい、隊長だぞ。 隊長は姫を…」

兵士B「……それもそうか」

兵士A「だいたい医師さんだって隊長をどう思っているのやら」

兵士A「医者と兵士ってのも微妙な関係だよ」


姫「二人とも、何を話しているの?」

兵士B「ああ、はは、お気になさらず」



―――そんなこんなで二週間―――

 

姫「騎士、おかえり!」

騎士「姫。 わざわざお出迎えありがとうございます」

姫「もう腕は大丈夫なの?」

騎士「ええ。 痛みもないので明日から本格的に鍛え直そうかと」

姫「頑張ってね」

姫「ねぇ、どんな所に行ってきたの? 話、聞かせて」

騎士「そうですね。 では馬を置いて来てから――」

兵士A「姫、そろそろ夕食のお時間です。 また明日にしてはどうでしょう」

姫「えー」

騎士「お前……」

兵士B「隊長、お疲れでしょう。 ゆっくり休んで、また明日」 ボソ

騎士「…! ……すまんな」 ボソ

騎士(……疲れが顔に出てしまったか?)

 パカッ パカッ パカッ パカッ

騎士「…それとも、お前を見てああ言ったのかもな」

騎士「お前もありがとうな。 今日はゆっくり休め」

騎士「……またいずれ、走ってもらう事になる」

馬「ヒヒン」 ハミハミ

騎士「はは、なんだくすぐったいな」

医師「微笑ましいねぇ」

騎士「……」

医師「おかえりさん」

騎士「……何故貴様がここに居るのだ」

医師「けっ、ひどい言われようだなわざわざ会いに来てやったのに」

騎士「…まぁ良い、どうせそっちには行くつもりだった」

医師「ん、明日からリハビリか?」

騎士「ああ」

医師「はいよ。 なら準備しとく」

医師「…左腕、無理に動かしたりとかしてないだろうな」

騎士「もちろんだ。 左腕は使ってない」

医師「……左腕は、ねぇ。 右腕は何だ、魔物か?」

騎士「どうでもいいだろう、そんな事」

医師「よくはない。 …まぁお前に何言っても無駄か」

騎士「ふん」


騎士「……」 グググ…

騎士「……ッ」

騎士「……はぁ」 ぶらん

騎士(いかんな…予想以上に筋力が落ちている)


姫「騎士、居る?」 ひょこっ

兵(患者)たち「!! 姫様っ!」 ビシッ

姫「わ、わ。 皆、そんなに畏まらなくてもいいのに」

騎士「姫! いかがなさいましたか」

姫「うん、えっと。 クッキーを焼いてきたの。 食べて!」

騎士「なんと、姫が。 宜しいのですか?」

姫「うん! 皆も食べて!」

騎士(ちっ…こいつらも食うのか)

兵士A(今隊長の舌打ちが聞こえた気がした……いや気のせいでも無いだろうが)

医師「これは何とも……大変おいしゅうございます」

騎士「甘さもちょうどいいですね、香りも……これは紅茶でしょうか?」

姫「そう。 出し殻を乾燥させて入れてみたの」

騎士「なるほど。 ……王妃様にはもう?」

姫「うん。 とても美味しいと言って下さいましたっ」

姫「次は何にしようかなー」

騎士「そうですね……」

騎士「……」

雑兵「しかし姫様がいらっしゃるだけで、このむさ苦しい場所が一気に華やかになりますな」

医師「はは、まったくだ。 紅一点だな」

姫「騎士が居るじゃない」

医師「こいつはメスですが女ではありませんよ」

姫「??」

兵士A「…生物上は雌として分類されますが、精神的には男、ということでしょう」

姫「なにそれひどい。 騎士も言い返したらいいのに」

騎士「私は気にしませんよ」

姫「騎士も女でしょ!」 むにゅっ

騎士「だ、だからやめてくださいっ!」

雑兵「ちょっくら便所いってくる」

雑兵ナニをしにいった!wwww

それとも空気読んだのかwwww


 ギィン キンッ  カァンッ

騎士「!」

兵士B(今ッ!) ぶおっ

騎士(大振り!) コツッ

 くんっ

兵士B「おっ…!?」 ビリビリッ ぽろっ

騎士「…」 パシッ

 グイッ  ガシャアァンッッ

騎士「……」 ギリリ…

兵士B「あだだだだ! ギブ! ギブギブ!」

兵士B「っはー……隊長、相変わらずで」

兵士B「今日から復帰、ですか。 おめでとうございます」

騎士「うむ」

兵士B「姫様も随分と楽しみにしていらしてましたよ」

騎士「! …そ、そうか」


兵士「隊長、次は私の相手をお願いします」

騎士「うむ、よし」

兵士「では」


騎士「姫、おはようございます」

姫「騎士! おかえり!」

騎士「はは、毎日のように会っていたのにですか?」

姫「私が行くのでなく、騎士が来てくれるのが嬉しい」

騎士「ありがとうございます」

姫「…やっぱり、騎士は鎧を着ていたほうが騎士らしいかな」

騎士「ふふ、そう言って頂けるととても嬉しいです」

姫「それで。 じゃんっ」

騎士「……これは」

姫「お祝い! 騎士が復活した記念に! パイ焼いてみましたっ」

騎士「……私の為に、…ですか?」

姫「うん、そう」

騎士「あ、あ、ありがたき幸せッ!」

姫「ふふふー。 あ、でも今仕事中だし、夜にまた」

騎士「いえ、せっかく出来たてなので、今頂きますよ」

姫「いいの?」

騎士「ええ。 今日は特別です」

姫「特別? なら、鎧も……」

騎士「それは無理です」

姫「けち」

姫「あ、兵士Bさんも一緒にどう?」

兵士B「え、あー…」 チラ

騎士「……」

兵士B(勿体無いが、食ったら殺されるなこれは…)

兵士B「…俺は、遠慮しておきます。 隊長の為のものなので」

姫「そう?」



姫「見てっ! タピストリー、完成したの!」

騎士「ほー…私はこういったものはよく分からないのですが、素晴らしいと思います」

騎士「細部も丁寧に施されていて……まさか初めての物だとは誰も思わないでしょう」

姫「うふふー。 時間掛ったから」

姫「今、包むものを侍女に用意してもらっているから…」

姫「包んだら、お母様に持って行こうと」

騎士「…王妃様、ですか」

騎士「大変喜ばれることでしょう」

姫「だといいなー」

姫「ふふふ」 ぎゅっ

騎士「ああ、皺になってしまいますよ」

姫「あっ」

王妃の近衛「王妃様は現在来客に応じておられます」

姫「えっ、そんな」

姫「…じゃあ、お客様が御帰りになられてから…」

近衛「本日、王妃様は一日中接客の予定が入っておりますので、そのような暇は…」

姫「うーん」

近衛「伝言であれば、合間に伝えることは可能ですが…」

騎士「…姫、また明日の機会に…」

姫「ううん、いい。 …近衛さん、これをお母様に渡しておいてもらえる?」

近衛「これをですか? 承知いたしました」

騎士「……宜しかったのですか?」

姫「何が?」

騎士「直接お渡ししなくて」

姫「うん、いい。 …お母様だって忙しいし」

姫「…それに、直接渡すのってなんか恥ずかしいかなって」

騎士「…そう、ですか」

騎士「しかし、―――…」 ピク

騎士「…………」

姫「…? どうしたの、騎士」

騎士「…………いえ…、」

騎士「…何でも、…ありません」

騎士「……渡す、と言えば」

騎士「先日休みを頂いたときに訪れた町で、姫にお土産を買ったのです」

姫「!」

騎士「渡しそびれていました。 少々遅れてしまいましたが、受け取って頂けますか?」

姫「もちろんっ」

騎士「それは私の部屋にあるのですが…」

姫「私も行きます」

騎士「はは、では、行きましょうか」

騎士「…兵士A、兵士B。 お前たちも来い」

兵士B「え、部屋に行く程度なら…」

騎士「いいから、来いと言っている」

兵士A「…どうされたんだ、隊長」 ボソ

兵士B「分からん。 姫様となら、むしろ二人きりになりたいはずだが」 ボソ

兵士A「……二人きりではいけない事があるのか?」 ボソ

兵士B「俺に訊くな俺に」 ボソ

兵士A「……」

兵士A(…どことなく、隊長の顔色が優れん気がする)

兵士A「……」

騎士「こちらです」 コトン

姫「開けていい?」

騎士「もちろんです」

姫「……わぁ…! 指輪!」

姫「は、はめてもても、いいかな」

騎士「ふふ。 私がして差し上げましょう」 ス

姫「…素敵……」

姫「ね、ねぇ。 これ、本当にもらっていいの?」

騎士「ええ、もちろんです。 姫の為に用意したものですから」

姫「嬉しいっ! ありがとう、騎士っ!」

姫「? ねぇこれ、内側に文字のようなものが彫ってある」

騎士「ああ、それは魔法が刻まれているんだそうです」

姫「魔法?」

騎士「そう。 持ち主を守る魔法を」

姫「私を守ってくれるんだ」

騎士「店主曰く、ですがね」

姫「へー。 …騎士みたいに?」

騎士「え、あー、はは。 どうでしょうか」

姫「ふふふ。 とにかく、ありがとう! 大切にするっ」

騎士「ありがとうございます」

兵士B「あー、あの指輪見たことあんな。 前嫁さんにねだられた」

兵士A「なんだ、じゃあ姫様とおそろいか? 幸せじゃねえか」

兵士B「馬鹿言うな、買ってない。 ……あれが、俺が見たものと同じだとしたら、だ」

兵士B「……金貨10枚は下らんぞ」

兵士A「じゅっ…!?」

兵士B「バッカお前、声がでかい」

兵士A「待て、金だぞ、銀じゃないんだぞ。 …そこまで価値があるようには見えんが」

兵士B「……話によれば、あれは隣国から流れてきたもんなんだそうだ」

兵士B「あと俺の嫁さんは魔法は使えんが、魔力を感じることができる、らしい」

兵士B「曰く、守護の魔法は本物だし魔力もすさまじい、と……」

兵士A「……」

兵士A「…よく分からんが、とにかく金貨10枚以上の価値がある、と」

兵士A「……お前の嫁さんはそんな物をねだったのか。 恐ろしいな」

兵士B「“貴方が居なかったら誰が私を守ってくれるのっ!”」

兵士A「のろけかよクソが」

兵士A「……しかしまぁ、それを惜しげなくポンと渡す隊長も恐ろしいな」

兵士B「値段じゃないんだろ。 それだけ姫様を愛しているってこった」

兵士A「叶わぬものと分かっているのにな。 …辛いな」


 カァーン カァーン!   カァーン カァーン!

兵士A「!」

兵士B「またか…!」

兵士A「隊長! 魔物です!」

騎士「ああ、分かっている」

兵士B「すぐに避難所へ――」

騎士「待て!」

騎士「避難所は恐らく危険……このまま、この部屋にいた方がいい」

姫「えっ」

兵士A「隊長、何を――」

騎士「いいから! お前たちは姫から離れるな!」

姫「騎士は! 騎士はどこに行くの!?」

騎士「離れたところでおびき寄せます。 では」

姫「あっ――」

 バタンッ

兵士A「どういうことだ…」

兵士B「分からん。 分からんが、隊長の命令だ。 姫様はここでお守りする」

兵士A「……ああ」


姫「……っ」

姫「騎士……」 ギュッ

姫(…主よ――)

姫(どうか、騎士をお守りください――)



魔物「ガアァァアアアアア!!」

騎士「フッ!」 ビュオッ

 ギチギチギチッ ブバァッ

魔物「 」 どしゃ

騎士「―――ふぅ」

騎士「……」


「魔物が撤退したぞォォ!!」

「「ウオオォォオオオオオッ!!」」


騎士「……チッ」

騎士「……戻るか」 グイッ


 ガチャ

騎士「姫」

姫「…! 騎士!」

騎士「魔物は撤退しました。 お怪我はありませんか」

姫「平気。 …騎士は?」

騎士「いえ、大丈夫です」

姫「……兜をはずして」

騎士「え、いや…」

姫「はずして」

騎士「……」 カパ

姫「…ばか。 血が出てる。 ばか」

騎士「……」

王妃「! 姫」

姫「お母様! ご無事でしたか」

王妃「ええ。 貴女も無事みたいで良かった」

王妃「それより…」

王妃「近衛に貴女からの荷物を受け取りました」

王妃「けど……開ける前に、魔物に焼かれてしまいましてね」

姫「…! そんな…」

王妃「…何か、大切なものでしたかしら?」

姫「……っ、…いえ、……」

姫「大した物でもなかったので。 それより、お母様が無事で安心しました」

王妃「そう……ごめんなさいね」

王妃「では、私はまたお客様がいらっしゃるので、これで」


 カツ カツ カツ カツ

兵士A「部屋に魔物は現れませんでした」

騎士「そうか」

兵士B「…今回は姫様がご無事であったから良かったものの、
     万が一部屋に魔物が現れていたら……」

騎士「分かっている。 私だけの責任だ、咎めは受ける」

兵士B「……」 チラ

兵士B(…避難所の入り口付近、かなり荒らされていたな)

兵士B(避難所に行っていたとしたら、また遭遇していたかもしれない)

兵士A「……」

王妃「! 姫」

姫「お母様! ご無事でしたか」

王妃「ええ。 貴女も無事みたいで良かった」

王妃「それより…」

王妃「近衛に貴女からの荷物を受け取りました」

王妃「けど……開ける前に、魔物に焼かれてしまいましてね」

姫「…! そんな…」

王妃「…何か、大切なものでしたかしら?」

姫「……っ、…いえ、……」

姫「大した物でもなかったので。 それより、お母様が無事で安心しました」

王妃「そう……ごめんなさいね」

王妃「では、私はまたお客様がいらっしゃるので、これで」


姫「…………」

騎士「姫…」

姫「……魔物だから…仕方ないよ」

姫「お母様が無事だったんだから、それだけでっ…」

騎士「姫…」

姫「ほら、それに。 タピストリーはまた作れるし」

騎士「姫」

姫「大丈夫だよ」

騎士「姫…っ」 ぎゅ

姫「……あ」 ぽろぽろ

姫「…ぅ…」 ぎゅっ


兵士A「…隊長、姫は」

騎士「あのままお休みになられた」

騎士「…兵士C、兵士D。 少し早いが、代わってくれるか」

兵士C「ええ、構いませんよ」

兵士D「今から始めるのも大差ありませんし。 どうぞお休みください」

騎士「ありがとう」


騎士「…兵士A、兵士B」

兵士A「はい」

兵士B「うい」

騎士「…話がある。 少し付き合え」


姫「…うーん…」 パチ

姫「……あれ、朝…」

姫(…昨日は、騎士に抱きついたまま…寝てしまった)

姫(これで2回目。 ああ、恥ずかしい……)

侍女「あら、姫様。 おはようございます、今ちょうど起こそうと」

姫「うん、おはよ…」

侍女「お着替えはこちらに。 ミサが始まります」

姫「うん。 ……眠い…」

侍女「…? 姫様、ベッドに指輪があるのですが」

姫「え、あ…それ、私の。 抜けちゃったみたい」

侍女「素敵な指輪ですね」

姫「騎士がくれたの」

侍女「騎士様が? へぇ…」

侍女「でも、姫様には少し大きいようですね。
    どうでしょう、紐を通して首から掛けてみては」

姫「あ、それいいね」

侍女「では、用意しておきます」

侍女「姫、こちらに。 髪を整えます」


神父「――、――――」

神父「――――、――――!」

神父「―――――――――――」

神父「―――、――」

姫(眠い……)



侍女「ミルクをお持ちしました」

姫「ありがとう」

姫「ん……」

姫「今日のミルクは濃厚で美味しい。 パンにつけるには最適」


姫「――― ―――――」

教師「声は喉からでなく、腹部の底から」

姫「――――― ――――」

教師「“が”ではありません。 “か゚”ですよ」

姫「―――…うぇぇ、喉が渇いた…」

教師「こちらにお飲物を」



姫「……はぁ。 疲れた」

姫(騎士が来るまで……あと半刻程度)

姫(…少し、寝ようかな…)


姫「…スー…スー……」

姫「……ん」 パチ

騎士「あ、ひ、姫」

姫「あ。 騎士! おはよう」

騎士「ふふ、もうお昼ですよ。 おはようございます」

姫「あ、あれ? 寝すぎちゃったかな」

姫「起こしてくれればよかったのに」

騎士「姫があまりにも気持ちよさそうに眠っていらっしゃったので」

姫「もう」

騎士「今日は小春日和です。 無理もありません」


姫「騎士はさ。 どうして騎士になったの?」

騎士「騎士になった理由ですか? …特別な理由なんかはありませんよ」

騎士「物心ついたときには既に剣を握っていましたね。 ただの棒きれでしたが」

騎士「働ける年になってから下働きをしたり傭兵をしたり」

騎士「それで、現団長殿にお誘いいただき、今に至ります」

姫「今の団長さんが? へー」

姫「でも、そこから騎士階級に成り上がるなんて。 すごい」

騎士「ただ闘うことが好きなだけです」

騎士(……ですが、今は)

騎士(…貴女を守るために――)



姫「騎士、おやすみー」

騎士「はい、おやすみなさい」

騎士「……」

騎士「……姫」

姫「? どうしたの?」

騎士「……いえ」

騎士「……私はもう行きます」

姫「うん。 お疲れ様」

騎士「……」


騎士「…さようなら」

兵士A「隊長」

騎士「ああ」

騎士「……私は王妃様に謁見することになっている」

兵士C「このような時間にですか?」

騎士「昼間はなかなか時間がとれないからな」

騎士「…お前たち」

騎士「後は任せたぞ」

兵士CD「「はっ」」

兵士B「……」

兵士A「……」


姫「……」

姫(眠れない)

姫(お昼寝しちゃったから当然なんだけど)

姫「……」

――さようなら

姫「……」

姫(騎士、いつもあんなこと言わないのに)

姫「……」

姫(……なんだか胸騒ぎがする)


 カツン コツン カツン コツン

騎士「……王妃様」

王妃「騎士ね。 頭を上げて」

騎士「……」 スッ

騎士「…夜分に時間をとらせてしまい申し訳ございません」

王妃「構いませんよ。 ……それで、話というのは」

騎士「はい」







騎士「貴女を、殺しに」

兵士C「? 姫様どこへ」

姫「うん、ちょっと」

兵士D「明かりも無しだと危険ですよ、今用意…」

 タタタッ

兵士D「ああ! お待ちください!」

兵士C「しかも裸足で…! 追いかけるぞ!」


 ペタペタペタペタ

姫「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」

姫(すごく悪い予感がする)

姫「……お母様……、騎士…!」


姫「ハァ、ハァ…………!」

姫「…人が倒れて……」

姫「……扉があいている」

姫「…………」 ギィ

姫「…衛兵さんたち、皆……ひどい、誰がこんな…っ」

姫「!!」

姫「……騎士…?」

騎士「!」

 ズルッ… ドシャッ

姫「…!! お母様…!?」

騎士「姫……」

姫「なに…、…なんなの……」

姫「騎士が、やったの……?」

騎士「……」

姫「騎士が、お母様を、その剣で……!?」

騎士「……」

姫「……否定、しないの……?」

姫「どうしてッ……どうしてお母様を!!」

騎士「……」

騎士「…何を言っても……言い訳にしかならないでしょう」

姫「何で、何で、何で……!! 答えてよ、騎士!!!」

騎士「……」

兵士C「姫様どう……うわ!? 何だこの有様ッ」

兵士D「!! 王妃様!!」

騎士「……チッ」 ダッ

 パリー―――ン

兵士C「隊ty…ッ、窓から逃げた…!! 兵士D、外の者に連絡を!」

兵士D「ああ!」

兵士C「姫様、お怪我は!」

姫「うゥ、う、あぁあああ…お母様っ…お母様ぁ…」

姫「お母様ッ……」

姫「お母様ぁあああぁぁあああああッ!!」




 

――

「……姫様、あれからずっと部屋に閉じこもって……」

「…無理もないさ、最愛の王妃様が亡くなられたんだ」

「しかも、まさか騎士殿が……」

「…殿、なんかつけたら駄目だろ、もう」

兵士A「……」

「殺してすぐに逃げたんだろう? 結構経つがまだ捕まってないのか」

「どこに隠れているのやら、有名だから町中で見かけたらすぐ知らせがあると思うが」

「何で騎士様、いや騎士は王妃様を」

「ほらあれだ…騎士殿…騎士は姫様を好いてて、王妃様に妬いていたとか」

「なっ……そんな事でか!?」

「独占欲ってやつかね」

兵士B「……」

「はっ…おっそろしいねぇ…」



「女の嫉妬」


侍女「姫様」

侍女「夕食のお時間ですが……」

姫「いらない」

侍女「……はい」

姫「……」

姫「……ッ」

姫「……こんな指輪っ」 ブチィッ

姫「……ぅ…っ」

姫「お母様…っ」



兵士a「ここか、魔物があふれ出した洞窟ってのは」

兵士b「ああ。 地図にあるとおりだな」

兵士a「…この地図どこで見つけたんだろうな、やけに正確じゃないか」

兵士b「知らん。 魔物の住処の場所なんてな……
    こんなのがあったなら、もっと早く魔物対策できたんじゃないのか」

兵士a「この地図発見も最近だし、魔物は危ないからと王妃様が止めていたんだろう。
    亡くなってからは国王様が解禁した、と……」

兵士b「おいおい、大丈夫なのか俺らで」

兵士a「任せられたんだ、やるしかあるめぇよ」

兵士b「かーっ…これからこんな任務増えるのか。 嫌になるよ」

兵士b「……ここ本当に魔物の住処なのか? 全く現れんが」

兵士a「うーむ、地図通り…なんだがな。 確かに、おかしいな」

兵士b「ありがたいと言えばありがたいんだけどな、魔物がいなけりゃ」

兵士a「あふれ出して、ここに何もいないってのは……逃げ出したってことか?」

兵士b「知らね……うわ! 魔物!!」

兵士a「ビビりすぎだ馬鹿、死体だ死体」

兵士b「なんだ死体か……うへ、こっちにもある。 進むにつれて増えてるな」

兵士a「うーむ……本当に逃げ出したのかもしれんな」

兵士a「…行き止まり……最深部、か」

兵士b「げぇ、でっけぇ魔物…これも死んでんのか」

兵士a「…! おい、あれ……人間じゃないか」 タタッ

兵士b「死んでるのか?」

兵士a「……いや、呼吸はある、が……瀕死だぞ、もう」

兵士a「ん? …おい、これ…騎士殿、じゃないか…?」

兵士b「!? 騎士って……王妃様を殺した、か!?」

兵士a「……とにかく城に連れて行くぞ」


兵士A「姫様」 コンコン

姫「……」

兵士A「隊…、騎士が、発見されたようです」

姫「…!」

 ガチャ

兵士A(……随分とやつれてしまわれている)

姫「どこに」

兵士A「はっ …ご案内致します」

姫「……」

姫「……生きているの?」

医師「はい。 なんとか、一命は……」

姫「……どうして生きているの」

姫「どうしてっ…どうして、お母様を殺したくせに…!」

姫「よくもよくも!!」

姫「よくもお母様をぉぉおおおお!!」

兵士B「姫様ッ!」 ガシッ

姫「っ、放してっ!!」

兵士B「姫様、落ち着いて下さいっ」

姫「私は! 騎士を、騎士を――」

国王「騎士を、どうするというのだ」

姫「っ!」

兵士AB「「国王様ッ!」」 ビシッ

国王「姫。 騎士をどうすのだ。 殺すか? その手で」

姫「だって、騎士は、お母様を」

国王「だから何だという。

    相手が何人であろうと殺人に手を染めたならその騎士と同じであろう
    ましてや一国の王妃となるであろう人間がそのような事」

姫「…っ」

国王「…気持ちは分からんでもない」

国王「…この者はかなり腕が立つ。 本来なら隣国へ魔王討伐に向かわせるのだがな。
    ……処置は公開処刑とする。 罪人の処刑は執行人の仕事だ。 異議はないだろう」

姫「……はい」


姫「……」

姫(私は……騎士を信じていた)

姫(信じていた、のに)

姫(お母様を)

姫(信じていたのに)

姫「……裏切り者」

姫「裏切者裏切者裏切者っ」

ーと

――

「おい! 騎士の処刑今日だってよ!」

「あの騎士様がねぇ……信じられないわ」

「ふん、王妃様を殺したんだ。 当然の報いだ」


『これより――大罪人 王立兵士団 王女身辺警護隊隊長 騎士の公開処刑を行う』

『この女、騎士は――騎士という身分でありながら、自らの騎士道から背き――』

『主 王妃陛下に刃を向け死に至らしめた。 また、同胞であったその衛兵らをも死傷させた』

『我が国への反逆であるこの罪は万死に値する』

『よって大罪人 騎士を斬首の刑に処する』

騎士「……」

死刑執行人「どうよォ、テメェが昔必死こいて守ってた庶民どもは」

騎士「……」

執行人「恩も知らずにテメェの処刑を楽しんでやがる」

騎士「……」

 ゴッ

騎士「ぅ、……」


「うは!見ろ! オレの投げた石、左目に当たったぞ!」

「左目なんか無いみたいだけどな」

騎士「……」

執行人「まったく、クズみてぇな人間どもだ」

執行人「……ま、王妃殺したお前はもっとクズだがな」

執行人「それを殺す俺も」

騎士「……」

騎士「……姫は…来ておられるのか」

執行人「来てるわけねぇだろ。 国王は来てるが」

騎士「…そうか」

執行人「あ、姫といえば、言伝。 “裏切り者”だとさ」

騎士「……そう、か」

( ゚Д゚)<ょぅι゙ょ!ぬくぬく!ょぅι゙ょ!帝国!

執行人「さて、と。 クズ共ももう待ちきれんような顔してやがる」

執行人「……そろそろ終わりにしようや」

執行人「…最後に言いたいことは」

騎士「……」

騎士「……私は」

騎士「…反省も、後悔もしていない」

執行人「……」

執行人「はっ」

執行人「命乞いじゃない点は評価してやる」

執行人「そんじゃ」

騎士「……」

執行人(……笑ってやがる)


騎士(―――姫)



騎士(私は、貴女を―――)



 ザンッ
 



姫「…お母様のお部屋」

姫「お母様のベッド」

姫「……」

姫(お母様の香り)

姫(…お母様は……普段どんなお気持で過ごしてきたのだろう)

姫「……」

姫(これは……)

姫「…お母様の日記」 ペラ

--年--月--日
ついに我が子が産まれた
元気に泣く可愛い子を、姫と名付ける
抱き上げると、小さな手で指を力強く握った
生まれてきてくれてありがとう

姫「……」 ペラ

--年--月--日
ついに言葉を話した
確かに、"ママ"と言った!
悔しがる夫を尻目に、何度も何度も言ってくれた
ああ、なんと喜ばしい事だろうか!

姫「…ふふ、お母様……」

 コンコン

医師「…姫様」

姫「医師さん」

姫「…何の用?」

医師「…手紙を、届けに。 …騎士からです」

姫「いらない。 帰って」

医師「しかし」

姫「そんな名前耳にしたくもない!! 帰って!!」

医師「…ここに置いておきます」

医師「…それは、王妃様の日記でしょうか。 ……あまり読まれない方が良いかと」

医師「では、失礼します」

姫「……」

姫(…意味が分からない、そんなこと、私の勝手でしょう) ペラペラ

 --年--月--日
 小さかった娘も、もう10になる
 月日は早い
 少しわがままな一面もあるが、とても優しく成長した
 その笑顔はまるで天使のようだ

 --年--月--日
 家族で花畑に行った
 遠くで姫がはしゃぐのを見て夫が
 昔のお前を見ているようだ、と言った
 昔か…城に嫁いでから、随分経ったものだ

医師「……お前らは止めないのか、姫様を」

兵士B「……」

兵士A「……止めるべき、なのは分かってますよ」

兵士A「ですが……何故でしょうね」

兵士B「……あんたも同じでしょう、止めようと思えば本を奪うなりできたはずだ」

医師「……そうだな」

医師「…誰の為に、何をすればいいのやら」

兵士B「…どれを選んでも誰の為にもなりませんよ、結局」


 --年--月--日
 姫を抱きしめるたびに思う
 弾力があり、肌理の細かい美しい肌
 私がいつの間にか無くした肌 若さ
 うらやましい

 --年--月--日
 姫は日に日に美しくなっていく
 かねてより絶世の美女と言われている私の娘なのだから
 当然と言えばそうであるが
 いつか抜かされるとなると
 恐ろしい

姫「?」

 --年--月--日
 姫は美しくなった
 私の娘、美しい女
 同じ女として
 妬ましい
 妬ましい
 妬ましい

姫「……?」

 --年--月--日
 憎い憎い憎い憎い
 憎い憎い憎い憎い
 かつて愛した我が子が
 憎い
 殺してしまいたいほどに

姫「…お母、様……?」

 --年--月--日
 城に魔物の襲撃があった
 娘も殺されれば良かったのに
 残党を見逃す代わりに契約を交わした
 娘を魔物に殺させる、と

姫「な、に…?」

 --年--月--日
 3回目の襲撃
 娘も誘拐し、あと一歩の所だったが
 結局失敗した
 何をやっているんだ、魔物は

姫「何なの、これ…っ」

 --年--月--日
 また、失敗した
 あの近衛兵め、また余計な事を
 女のくせに 女のくせに

 --年--月--日
 魔物との交渉の最中
 何者かの気配を感じた
 気のせいだと願いたい

 --年--月--日
 娘からと受け取った物の中身は
 娘の手作りらしいタピストリーだった
 こんなもので、私の気を惹けるとでも
 下らない
 破り捨て、魔物のせいにした

 --年--月--日
 夜、あの女騎士が話をしたいとのこと
 あの女とは関わりたくない
 …もし、前の話を聞いていたのがこいつだったとしたら
 ……

 日記はここでおわっている

 バサッ

姫「…何、これ…っ」

姫「嘘、でしょう……?」

姫「嘘、嘘、嘘…! こんな、こんなこと…!!」

姫「お母様が、私をっ……」

姫「お母様…っ!!」

姫「……じゃあ、騎士は」

姫「騎士は、騎士は、」

姫「騎士は、騎士は、騎士は…っ!」

姫「……ッ」 ポタ ポタ

姫「…ひどい事を」

姫「私は、騎士に、ひどい事を…っ!!」

姫「騎士は、私の為に…!」

姫「あぁ、騎士……」

姫「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…!」

姫「騎士…」

姫「騎士ィ……ッ!」

―愛しの姫

この手紙を姫様がお読みになる頃には、私は既に存在しないでしょう

私は、王妃様を、貴女の愛する母君を、殺めます

この罪、決して許されるものでは御座いません

もちろん、許してほしいとも存じておりません

どうか、優しかった母君を、一生愛し続けてください

願わくば、その一生のうち、恨むならば他の何者でもない、

私一人のみを恨んでください

貴女の清く白い心を、これ以上黒く染めないように

どうか どうか

幸せになってください

                    ――騎士

脳が溶けそうです
すごく言いにくいけど寝たい、保守頼んでいいか……

ここが一番区切りがいいから、ここまで起きてたんだがwwww
いや、もう、ほんとすまん
午前中には再開したい

レス数的に…数えてないから分からんが100程度かね
正直これから100も貼り続ける元気が無い

あ、あと
このスレで終わらせるつもりだから、もし落ちたら書かない、立て直さない
次スレとか簡便
みんな乙、おやすみ

敵の幼女魔女はまだでつか?


――――時は遡る


騎士(…あれは……王妃?)

騎士(誰と話して……)


王妃「…もう何度目の失敗ですか」

魔物「すんません、邪魔が入ったようで」


騎士「……!?」

騎士(王妃が…魔物と!?)

王妃「邪魔……あの騎士の事ですか」

魔物「それさえなきゃ、ちゃんと殺せてたんだ」

王妃「あの女……わざわざ非番の日に襲わせたと言うのに」

王妃「しかし、あれも怪我をし、しばらくは動けまい」

王妃「すぐにでも始末をしてもらいたいのですが」

魔物「そら無理な話だ、こっちだって暇じゃないんでね」

魔物「少なくとも1ヵ月以上は先になる」

王妃「……次の事はまた今度話しましょう」

王妃「夜はあまり外に出れないのでね」


騎士(…どういう事だ…王妃が姫を…)

騎士(王妃が魔物を仕向けていただと!?)

騎士(こんな事があってたまるか…!!)

騎士(どうする…城中に広めるか?)

騎士(…いや、それはだめだ。 姫の耳にも入ってしまう)

騎士(愛する母親に狙われていたなどと知られてはいけない…!!)

騎士(しかし、このまま放っておくわけにもいかない)

騎士(どうすれば…)

騎士「…………」


姫「騎士、行ってらっしゃい」

騎士「はい。 また二週間後に帰って参りますので」

姫「うん。 気をつけてね」


騎士(魔物たちも一ヶ月は攻めてきたりはしない)

騎士(私も同じ程戦うことはできない……ならば)

騎士(その間に魔物の巣を見つけ出す)

騎士(そして、復帰次第――…)

――

盗賊a「ずびばぜん、ずびばぜん…! 許じで下ざい…!!」

盗賊b「ぬ、盗んだものは、返しますから…!!」

騎士「別に私は盗品を奪還しに来たわけではない」

騎士「訊きたいことがある
    魔物の住処を知っていたら教えろ、盗賊なら国中を走り回っているだろう」

盗賊a「へ、へぇ。 ち、地図を……」 ペラッ

盗賊a「こ、ここらへん…俺ら盗賊の間で、絶対に通ってはいけないと…」

盗賊a「洞窟…ま、魔物のでかい巣があるから、近づいてはいけないと……」

騎士「ふむ…」

騎士(ここなら魔物が城に襲撃に来る方向や旅人の噂とも一致する)

盗賊a「……」チラ

盗賊a(盗賊b、今だやれ―――!)

 ガキィィンッ

盗賊b「あ、あ……」 ポロ

騎士「私は貴様等を殺すつもりはないんだが…
    望むのなら殺してやってもいいぞ、私は躊躇しないからな」

盗賊b「ひ、ひぃぃ……」

盗賊a「お…女のくせに…女のくせに……ッ!」

騎士「……」 スッ

 ゴキンッ

盗賊a「があああああああッッ!! 腕がッ腕がぁぁああああ!!!」

村長「あ、ありがとうございました。 盗賊を捕まえて下さって」

村長「御蔭で家宝の壷も無事に返ってこれました」

村長「何かお礼を。 村人も皆歓迎するでしょう」

騎士「ありがとう御座います、しかし生憎時間がないので…」

騎士「そうだ、周辺の村などからの、魔物に関する噂があれば是非」

村長「そ、そんなもので宜しいのでしょうか」

騎士「はい」

村長「分かりました。 ええと――」


騎士(次はこの村……時間的にも最後になりそうだな)

騎士「Go,go」

馬「ブルルフッ」 パカラッ

騎士「…済まないな、もう少しだ。 帰ったらゆっくり休ませてやるからな」


騎士(国内の魔物の住処は大きく分けて5ヵ所……)

騎士(城に襲撃に来た魔物の形態はその内最も勢力を持つ所)

騎士(前に姫を攫った魔物もそこからの派生だった。 場所もそう遠くはない)

騎士「……」

――

兵士A「魔物…!」

兵士B「姫様、すぐに避難所へ――」

騎士「待て!」

騎士「避難所は恐らく危険……このまま、この部屋にいた方がいい」

姫「えっ」

兵士A「隊長、何を――」

騎士「いいから! お前たちは姫から離れるな!」

姫「騎士は! 騎士はどこに行くの!?」

騎士「離れたところでおびき寄せます。 では」

姫「あっ――」

 タタタタタッ

騎士(避難所の場所…王妃ならすべて把握していてもおかしくはない)

騎士(魔物側にその場所が知れ渡っていたとしたら、下手に動かない方が得策)

騎士(何度も襲撃の邪魔をした私ももちろん狙われていることだろう)

騎士(私が常に姫の傍にいると思っているとしたら、危険……)

騎士(一緒に居てはいけない――!)

騎士「ぉらァ!」

 ドシュッ

魔物「ヒ……」 ドサ

騎士(今すべきは、この襲撃に乗じて王妃を――)

騎士「…!!」

 ザッ…

魔物「…お前は姫の女近衛兵。 姫はどこだ」

騎士「邪魔だ。 退け」

魔物「姫の場所まで案内してくれんなら退いてやる」

騎士「ふん……ふざけたことを!」 バッ

 ヒュッッ ギリギリギリギリッ

魔物「…っぶねぇ!」

騎士「時間が惜しい、邪魔をするな!」


「魔物が撤退したぞォォ!!」

「「ウオオォォオオオオオッ!!」」


騎士「……チッ」

騎士(間に合わなかったか)

騎士「……む」 ツツー

騎士(血…、かすったか。 選りによって頭、隠せないな…)

騎士(……また姫に叱られる)

騎士「……戻るか」 グイッ


王妃「近衛に貴女からの荷物を受け取りました」

王妃「けど……開ける前に、魔物に焼かれてしまいましてね」

姫「…! そんな…」

騎士「…!!」

騎士(……こいつ)

騎士(嘘だ)

騎士(あの見下すような、氷のように冷たい目)

騎士(この女、自分の手で)

騎士(姫の、愛情の籠った贈り物を)

騎士(それを分かって)

騎士(姫を泣かせた)

騎士(……誰が許すものか)

騎士「…兵士A、兵士B」

兵士A「はい」

兵士B「うい」

騎士「…話がある。 少し付き合え」


兵士A「話とは」

騎士「……ここは些か静かすぎる」

騎士「移動するぞ」

兵士B(…他人には聞かれちゃ困る話ってわけか)

騎士「おい、今空いてるか」

医師「ん、騎士か。 俺の分の患者は終わって他のに手をだそうとしてたんだが」

騎士「なら丁度いい、私を診ろ」

医師「あ? そんな悪そうには見えんが……まぁいいや鎧脱げ」

兵士B「えーと隊長、俺ら外で待ってましょうか」

騎士「いい、部屋に入ってろ、このまま話す」

兵士B「はぁ」

兵士A(衛生面を考え医療塔は石造りであり、声が外に漏れにくい)

兵士A(加えて今日の魔物の襲撃の為怪我人が多く、紛れやすい……)

兵士A「……それで、話とは」

騎士「……そうだな、…単刀直入に言えば」

騎士「明日、王妃を殺しに行く」

兵士AB「「…………は?」」

医師「……おいおい騎士さんよ、そりゃ冗談でも許されんレベルだぞ」

騎士「冗談ではない」

兵士B「だったら何故」

騎士「……姫は王妃を愛しておられる」

医師「…私怨か?」

騎士「それも無いとは言えん。 が、」

騎士「……王妃は姫を愛してなどいない」

医師「なっ、…だからって」

騎士「…今までの魔物の襲撃……全て王妃の企てだ」

兵士AB「「!?」」

騎士「私が怪我をし、最初に町に行った帰り……魔物と王妃が会話するのを見た」

兵士A「…見間違いということは」

騎士「一応でも主である者の顔と声を間違える配下があるか。 夜目も効く」

騎士「次の日からは国の魔物の住処の正確な位置を調べて回った」

騎士「魔物の住処の調査は王妃が禁止していたのは知ってのとおりだ」

騎士「そして今日、魔物の襲撃」

兵士A「……分かっていた、と言うのですか」

騎士「正確な日時を把握していたわけではない。
    その為に、姫に土産を買い、いつでも私の部屋に誘えるようにした」

兵士B「意図的に、姫を兵舎に…」

騎士「……襲撃に乗じて王妃を狙いに行ったが、行く道行く道で魔物に邪魔されたのだ」

騎士「王妃を守るように、な」

兵士A「……」

騎士「おかしな話だ、魔物のくせに人の多い兵舎も医療塔も襲わんのだ」

騎士「……王妃の、姫だけを狙った企てだ」

騎士「だから明日、正面から、この手で」

兵士A「……」

兵士B「……」

兵士A「…だったら、魔物だけを殺せば」

騎士「魔物など世界中にいる。
    根絶やしにでもしない限り、王妃はまた別の魔物に話を持ちかけるだろう」

兵士A「……」

兵士B「王妃の事を国中に知らせるのは」

騎士「愛されていないなど、姫が知って幸せになれるとでも言うのか」

兵士B「それは…」

騎士「姫が王妃を愛し、また愛されていると……
    "優しい母"としての王妃を、姫の中に残すことが…姫にとって一番の選択だ」

騎士「だから、私が」

兵士A「…しかし、王妃様を殺めるなど…自ら死にに行くようなものです」

騎士「構わない。 姫の為なら、私の命など」

兵士A「…ッ」

兵士B「…だったら、俺が行きますよ」

騎士「阿呆か。 お前には妻子がいるだろう」

兵士A「でしたら!」

騎士「駄目だ。 私の後任には別の兵が来るだろう、が、姫はお前に任せたい」

兵士A「……ッ」

騎士「…私の持っていた土地。 それもお前らにやる。
    書類はあとお前らの印を押すだけだ、昼間のうちにに提出しておけ」

騎士「あと、明日……護衛が終わり次第王妃の処へ向かう。
    それまでに、昔使っていた古い方の裏口に馬をつないでおいてくれ。 あそこは警備が手薄だ」

騎士「最後に、この件が終わった後、事情を訊かれると思うが……」

騎士「お前たちは関わっていないと。 知らぬ存ぜぬを決め通せ」

騎士「……これは上官としての最後の命令だ」

騎士「…話は以上。 お前たち、部屋に戻っていいぞ」

 バタン

騎士「……」

騎士「…よく出来た部下たちだ」

医師「……本気なのか」

騎士「ん、ああ」

医師「死ぬんだぞ」

騎士「分かっている。 王妃を殺し、兵から逃げ切れても、
    魔物の住処に行き、まぁできる限りのことはするが、当然生きては帰れんだろうな」

騎士「…っと、そう言えば死んだら私の金はお前にやると言っていたな」

騎士「休み中に半分を施設に寄付しておいたからその残りを――」

医師「んなもんいらねえよ!!!」

騎士「……だったら兵士Cや兵士Dにでも」

医師「そういう意味じゃねえ!」

医師「俺は! お前に死んでほしくないんだよ!!」

騎士「……」

騎士「…何を言うかと思えば」

騎士「もう決めたことだ。 土地もやった、金もやる」

騎士「あとは王妃を殺し魔物も殺し殺される、それだけだ」

騎士「もう何も残ら―――んっ!?」

騎士「…っ、……んっ…ふ……!!」

騎士・・・(´;ω;`)

騎士「……ッ、…ぷ、は……ッ!」 ドンッ

騎士「はっ、はっ…! …き、貴様!! 何をする!!」

医師「俺はずっとお前のことが――!!」

 ドスッ

医師「うぐっ、」

騎士「……ッ」

騎士「…10年前も言っただろう」

騎士「それには、……応えられない」

医師「、待っ――――」

 バタン

医師「……くそっ…」

医師(…馬鹿か俺は)

医師(あんなこと言ってもあいつを苦しめるだけじゃないか)

医師「……」

医師(…10年前、か)

医師(まだ、そんなこと覚えていたのか)


騎士「……」

騎士「……いいんだ、これで」


いつも通りの朝
まだ日も昇らぬ時間に起き、軽く口をすすいでから兵用食堂に降りる

兵士Aと兵士Bに会うと、浮かぬ顔で何かを言いたそうだった
それを無視し、空いてる席を探す

今日のミルクは味が濃いな、と思いつつ
寝ぼけた顔の兵士たちが出入りするのをぼうっと見ていた

朝食を済ませると、手早く鎧を装備し、訓練所へ向かう
聖堂から僅かに漏れる讃美歌を耳にしながら、点呼を取り号令をし、隊に分かれ訓練を始める

訓練用の刃引きした剣を交える
兵士Aの剣にはまだ迷いが見えた、が、兵士Bは、いつもより力強く思えた
所帯を持つ分、心持は兵士Bの方が強いのかもしれない


訓練が終わると、男たちは汗を流す
その間に書類や報告など雑務をこなす

裸の男の集団の中に女の自分一人が入ると姦淫される危険があるからと止められている
こんな筋肉と傷に覆われた身体のどこに色気があるのかと疑問に思う

そんな物好きほとんど居ないだろうな、と思ったが、新米のころにあったことを思い出した
結局返り討ちにしたそいつは、確か3年前の内乱鎮圧の時に目の前で串刺しになり死んでいった


汗を流し、一足遅れて姫の部屋に着く、と、姫はソファに腰かけ眠っていた
小さな寝息に合わせ肩が上下する

ふと見ると、先日渡した指輪が革紐で首から掛けられていた
やはり大きかったかと少し反省する

足音を立てぬよう静かに、姫に歩み寄る
兵士Aと兵士Bは部屋の外、侍女は奥の寝室で掃除をしていた

――今なら……

姫の白く肌理細やかな頬を撫でる
そっと指を滑らし、桃色の柔らかな唇に触れる

――奪って、しまおうか

ゆっくりと顔を近づける
が、姫の息が直に感じるところで、ぴたりと止まった

昨夜、医師に無理やり口付されたのを思い出したからである

――あれと同じではないか

軽く自分の頭を小突く

それに、自分に姫を触る資格などないのだろう
今までも、そしてこれからも殺しを続ける自分に


姫が起きると、またいつも通りの他愛のない話をする

王妃の話をするときの姫は
まるで天使がほほ笑んでいるかのように愛らしかった

この笑顔は自分に向けられているのでなく
王妃に向けられている

その王妃も、この笑顔を受け入れようとはしないのだろう

それでも
姫が王妃を愛しているのなら

その王妃のままで


夕食と湯浴みを済ませた姫はベッドに入る
蝋燭一本の明かりの中、また他愛のない話を始める

入団当初の事を訊かれた
そう言えば、入団してから8年か

"もう"と言うべきか"まだ"と言うべきかは分からないが
それも今日で終わり

おやすみなさい、とだけ言えばいいのだ
それなのに、躊躇してしまった

――馬鹿か

もう迷っても遅い

兵士A「隊長」

部屋を出ると、兵士Aが言った
それに続く、馬の準備ができました、とは口にはしなかった

後は任せたと言い、その場を後にする

長く暗い廊下を歩く
その足音は静かな廊下によく響いた

謁見することになっている広間に入ると、そこはとても明るかった
揺れる蝋の炎に一瞬目がくらむ

―― 5、10、……20人、か

物陰に、少なくともそれだけの王妃の衛兵が居る、気配がする
奥にはまだ居るだろう

広間に王妃が姿を現すと、跪き、頭を下げる

王妃「頭を上げて」

改めて見ると、なるほどやはり美しい顔立ちをしているな、と思った
絶世の美女、と呼ばれるのも不思議ではない

王妃「……それで、話というのは」

大きく息をを吐く
そして、王妃を真直ぐに見る

騎士「貴方を、殺しに」



広間には殺気が立ち込めた

王妃「……それは、どうして?」

騎士「貴方が魔物に、姫を襲わせるからです」

王妃「……そう」

王妃「……やはり、知っていたのね」

騎士「…何故、姫を。 姫は王妃、貴女の子ではないのですか」

王妃「そう。 違いなく、私が腹を痛めて産んだ子」

王妃「だからこそ。 姫は、美しい王妃になれたでしょうね」

王妃「私はそれを許すことができない」

王妃「私は姫が、あの女が、私より美しくなるのを許せない」

騎士「……」

王妃「心底あの女を殺したいと思っていた。
    だけど、王妃という立場である私が子殺しなんて出来る筈もない」

王妃「だから魔物の残党を誘った。
    まさか、私と魔物に繋がりがあるなど誰も思いもしないでしょう」

王妃「邪魔なのはあの女だけ。

    だから怪我人の多い医療塔も休む兵の多い兵舎も襲わせなかった。
    有能な兵を殺しても、国の力が弱くなるだけですものね」

王妃「そして貴女も」

騎士「……」

騎士「魔物が、何故そこまで動くのか……金ですか?土地ですか?」

王妃「……ふふ」

王妃「……国民の」

王妃「 命 」

騎士「!?」

王妃「もし、あの女を殺すことができたら」

王妃「町を襲ってもかまわない。 派兵もさせない」

王妃「私の権限で、ね」

騎士「……貴様」

王妃「あちら、喜んで承諾されたわ」

騎士「貴様、己の嫉妬の為に無関係な国民を巻き込むのか!? 民の命を何だと思っている!!」

王妃「安い代償。
    ……貴女、誰に向かって言っているの。 王妃の前よ、慎みなさい」

騎士「…もう貴様を王妃だとは思わん!!
    嫉妬に溺れた醜い女め、私がその首飛ばしてくれる!!」

王妃「私が醜い? …戦いに埋もれた惨めな女が、ふざけた事を!!」

王妃「兵士どもッ!! この女を殺せッ!! 殺すのだ!!!」



 ガチュン ズルズル   ドシャッ

王妃「……」

王妃「……な、」

騎士「……」

王妃「何故、だ……、兵、が…!!」


広間は静まり返っていた
横たわる40の兵

立っているのは、血まみれの鎧の女と
その場にそぐわない、ドレスを着た女だけだった

王妃の近衛兵隊はこんなものか、と呟き、歩み寄る

王妃「ひっ……!」

顔をゆがめ、後ずさる
剣を拾い上げ、震える手で刃を向けてきた

騎士「……剣を握るのは、初めてですか?」

そう言い、王妃の剣を軽く弾き飛ばす
カラン、と虚しく、乾いた音が響いた

王妃「…あ、…あ……」

騎士「……」

騎士「なんと惨めで醜い姿か、王妃よ」

王妃「……、わ、私は、」

王妃「私は、私は、」

王妃「私は私は私はぁああああああああああああああああああああああ!!!!!」


王妃「―――あ゛」

発狂した王妃の心臓"付近"を貫く
剣を抜くと、じわりじわりとドレスを赤く染めていった

どうだ、王妃
苦しかろう
苦しめ
痛みを味わえ
存分に

血を噴き出し、崩れ落ちるように倒れる
うめき声をあげながら、空に向かって手を伸ばした

その手は、何を掴むでもなく

ぱたり、と力尽きた


姫「……騎士…?」

騎士「!」

――何故、姫がここに

姫には見られたくなかった
この血だらけの醜い有様を、見られたくなかった

兵士C「姫様どう……うわ!? 何だこの有様ッ」

兵士D「!! 王妃様!!」

運が無いな、と心底思った

窓を突き破り、庭を駆ける
兵士Aが用意してくれているであろう馬の所まで

――これで、いいんだ

――これで

姫の、泣き叫ぶ声が
脳に、何度も何度も響き渡った


「王妃様がお亡くなりになったらしい」

立ち寄った村の住民の間ではそんな話がされていた

「マジかよ。 病気か?」
「いや、殺されたらしい」

「誰に」
「知るかよ……だが、衛兵もやられたらしいしな…」

「強いんだろうな。 きっとデカくてガッチガチなやつだ」
「おっかねー」

騎士「……」

城からかなり離れている、というわけではないが、噂というのは早く伝わるのだなと思った
城の使いがここまで来るのも時間の問題である


パキン、と燃える枝が弾けた

炎の明かりの下、地図を開き目的地の方向を確認する
あと二日もあれば到着するだろう

走り疲れ、既に眠っている愛馬の頭を撫でる

騎士に叙任されたときに譲り受けた馬
共に戦場をくぐり抜けてきた友

だが、これ以上巻き込むわけにもいかない
明日にでも手放さなければ

――これは、私の闘いなのだから

揺れる炎を見つめ、酒をぐいと胃に流し込んだ



その日は霧雨が降っていた

騎士「……」

目の前の大穴からは、人ならざるもの、魔物の気配が漂ってくる
嫌な匂いがした

魔物「おぉ? 何でこんな所に人間がいるんだよ」

魔物「わざわざ喰わr」

 ズム    プシャァァアアアアアア

魔物「……な」

魔物「テメェ!!」

 ガチュン

崩れる魔物を尻目に、剣についた血を振る
深く、深く、深呼吸をし、邪魔なマントを払いのける

――さあ

足を、ゆっくり、確実に、進めていった

「ギャアアアアアアアアアアア」

「畜生ゥ、この野郎ぅぅぁあああああ!!」

「 」

立ちはだかる魔物をなぎ払う
目を潰し、手足を断ち、腹を刺し、首を飛ばす

身体はすぐに、赤くない血の色で染まった


騎士「……此処は」

しばらく歩くと、広まったところに着いた
天井は吹き抜け、外からの光が頼りなく射しこんでいた

後ろから襲いかかってきた魔物の頭蓋を貫き、辺りを見回す

嫌に、静かだ

魔物「女の兵士……お前さん、騎士か」

騎士「! ……」

魔物「話は聞いてんぞ、王妃を殺したそうじゃないか」

騎士「……」

魔物「ま、全然構わねえがな。 あの女、勘違いしてやがってイラついてたところだ」

魔物「町なんかすぐに潰せるのになぁ、人間なんか。
    まぁ、邪魔が無いのに越したことは無いからちょいと遊んでいたが」

魔物「あれも死んだことだ、次からはちゃんと兵舎も狙わねぇとなぁ、ははは」

魔物「……お前さん。 随分とオレの部下を殺してくれたじゃないか」

魔物「ま、弱くて勝手に死んだ奴らが悪いんだけどな……
    一応上に立つ者として、お前さんを殺さなけりゃならんわけだ」

魔物「何より、お前さんがオレも殺そうとしてるからな」

騎士「……」

脂汗のねっとりとした感触が背中から伝わってくる
そこらの魔物とは違う、明らかに違う

じり、と間合いを詰める
それを察したかのように、魔物もゆっくりと立ち上がり、ずかずかと近づいてくる

魔物「……闘うことが好きってわけじゃねぇのよ。 オレは――」

騎士「!?」

騎士(消え――――!!)


魔物「殺すことが好きなんだよ」


騎士「あ」

 ぐちゃり

騎士「あ゛あ゛ああああああああああああッッ!!!」

魔物「…ありゃ、中々いい反応するんだなぁ。 殺したつもりだったんだが」

騎士「うあ、あが、あぁああッ…」

魔物「…避けたばっかりに……はは、余計苦しんでるじゃねぇか!
    どうだ! どうだ腕が潰れた感触は!! はは! いい顔してるなぁオイ!!」

魔物「ははは!! いい顔だ!! 苦痛にゆがむその顔!! 目!!」

騎士「うゥ、く……ッ!!」

潰れて原形を留めていない左腕
骨は飛び出し、肉は赤黒く変色し、どす黒い血が滴る

少しの振動でも全身に激痛が走る
気絶できたら、どれだけ楽だっただろうか

魔物「お? っはは! そうかそうかまだ立ち上がるか!!」

剣を握る腕が、地面を踏み締める脚が、がくがくと震える

騎士「…ぁああアアアッ!!」

魔物に切り込む、が、それもひらりと避けられる
すれ違いざまに腹を魔物の拳にとらえられ、壁に強く叩きつけられた

騎士「がっ……」

目が霞む
視界の中に、魔物が見下ろす姿が映った

魔物「はは、まだ生きてやがる。 ……よし、決めた」

伸びた髪を左手で鷲掴み、目線まで高々と上げる

魔物「腕、ぐしゃぐしゃじゃねぇか。 エェ?」

そう言い、潰れた左腕に、魔物は手を伸ばす

魔物「オレが治してやるよ」

 ぎちっ めきょめきょ  ブづン

騎士「があああああッ!!!」

魔物「ほぉら、元通り真直ぐ! はは!はははは!!」

騎士「うぅ、う、ぁ……、」

魔物「オレが直々に甚振ってやる! さて、次はどうしてくれようかねェ」

ぶらん、と力なくぶら下がる身体を舐めまわすように見る
店に並ぶ商品を見るように、子供のように、楽しそうに

騎士「……、……」

魔物「そうだなぁ、それじゃあ」

 ずぷっ

尖った爪が、左目を突刺した

騎士「きああああああああああああああああああああああ!!!!」

魔物「ははははは!! いいいいいいい!! いい声だ!その声!! その高い声!!」

眼球を繰り抜き、口の中に放り込む
ころころと舌の上で弄び、噛み砕くと、ぱきゅ、と小さな破裂音が響いた
中から溢れるどろっとした液体の独特な味と匂いが、魔物の口内に広がった

騎士「ぁ、あ、あっ……」

魔物「もっと楽しませてくれよォ、おい」

騎士「……」

魔物「……? おい、死んだかぁ? おーい」


何をしているんだろうな、と思った

目の前の魔物はまた、髪を掴んだまま
次はどこにしようか、何をしようかと見まわしている

騎士(私は、何をしに来たんだ)

魔物は爪を尖らせ、そっと脚に添えた

騎士(私は、何のために来たんだ)

ゆっくり、ゆっくり、力を込め、脚の肉に爪を、一本ずつ、食いこませる

騎士(私は)

騎士(私は)

騎士(私は)


騎士(姫を―――)


騎士「……の……に、……わ…」

魔物「お? 生きてたか!」

騎士「私の……に、……るな…」

魔物「あぁ?」

騎士「私の髪に!! 触るなァァアアアアアアアア!!!」

魔物「ぬおっ―――」


 バシュッ


 





 

ようじょ!ようじょの桃色おぱんちゅ!

ああああああああああああああああああああごめん誤爆


―――……

騎士「…………」

騎士(……どこだ、ここは)

身体を動かそうとすると、全身に激痛が走る
思わずうめき声をあげた

騎士「……っ」

医師「よお」

騎士「!」

聞き覚えのある声
目をあけると、鉄格子の向こうには医師が居た

騎士「…………私は」

医師「……生きてるよ」


話によれば、魔物の調査が解禁され、退治の任務に来た兵により発見されたらしい
魔物は両腕と首を落とされ、胴は真二つに分かれていたそうだ

また、目覚めてより2週間後、公開処刑が行われることも聞いた
刑は斬首刑、苦しみは少なそうだな、と思った


医師「……正直、生き返るとは思わなかった」

騎士「……本当は、あのまま……死んでいれば、よかったのだが、な……」

医師「……」

医師「左腕は落とさせてもらった。 治る見込みどころか腐敗が進行するからな」

そういえば、と思い左腕を見ようとしたが、真っ暗な世界が広がっているだけだった
ああそうか、左目も魔物に喰われていたな、と右手で眼球があった場所を撫でた

騎士「……本当に、無いんだな……」

医師「……」

医師「おい、看守。 …しばらく……二人きりにしてくれないか」 ピンッ

看守「そんな事許されるはず……む」 パシッ

看守(…! ……金貨…)

看守「……少しだけだ、逃がすなよ」

医師「わかってるよ、逃がす技術も体力もない」


医師「……お前の馬も、発見されたそうだ」

騎士「…! なっ……、村で、引き取ってもらったはず……」

医師「脱走して、お前を追ったんだろうな。
    洞窟からお前を運び出したときにどこからか現て、寄り添ってきたそうだ」

医師「主人思いのいい馬じゃないか」

騎士「……」

騎士「……姫は」

医師「……」

騎士「……王妃を殺されて……さぞ悲しんだろうな……」

医師「……」

医師「……お前が担ぎこまれた日に、来てったよ」

医師「首、絞められそうになったぞ。 なんで生きているんだってな」

騎士「……」

医師「お前は姫様に人殺しさせるのを望んだのか?」

騎士「……」

医師「……」

騎士「……本当は」

騎士「…姫の為でなく」

騎士「……全部、自分の為」

騎士「自己満足の為に…やってきたんだろうな」

騎士「王妃を殺したのも、…その命令を聞く魔物を殺したのも」

騎士「それが」

騎士「姫を悲しませ…」

騎士「それどころか、殺人まで犯させようとしてしまった」

騎士「……最低な、……女、だな、私は」

医師「……」

騎士「……」

騎士「……はは、…っ」

騎士「目など、無くとも……涙は出るのだな……」

医師「……」

医師「……もう、寝ろ」

騎士「……、……」

医師「……」

騎士「……っ、……」


兵士B「…お、医師さん」

医師「ん、兵士B…と、兵士Aも居るのか」

医師「……あいつ、目、覚めたぞ」

兵士B「!」

兵士A「ほ、本当ですか」

医師「ああ、だが……しばらく、一人にしてやってくれ」

兵士A「……」

医師「…お前ら、今仕事終わったところだろ。 酒でも飲もう」



看守「ほれ、飯だ」

騎士「……死刑囚なのに、飯はあたるのだな」

看守「処刑の日までは生かさなきゃなんねぇからな。 どうだ、不味いだろう」

騎士「……その辺の草ほどには旨いな」

看守「底辺だな」

騎士「…マシなもんだ」

騎士「……北の国境戦が思ったより長引いて、その帰途…吹雪に見舞われてな
    何日も何日も、ろくに動けない日が続いた。 草木も殆どない土地で、食料もすぐ底をついた」

騎士「雪や氷を食べて空腹を誤魔化していたがな、ついに死人が出た。
    それを拍子に何人も死んでいった。 次は自分だと思ったよ」

騎士「だからな。 食ったんだよ。 死んだ同僚の肉を。 食わなければ死ぬのだから」

看守「……」

騎士「旨かった。 干した鯨肉のように旨かった。 少しでもそう思ってしまった自分を殺したくなった」

騎士「結局生きて帰ったのは6人。 私と兵士A以外は兵団から抜けた」

騎士「……それに比べれば、草なんかずいぶんマシなもんだ」

看守「…やだねぇ、全く。 俺一生看守でいいわ」

騎士「ああ、それがいいだろうな」



医師「立てるか? 歩けるか?」

騎士「…ああ。 まだ痛むがまぁ、処刑台に自力で登る程度はできる」

医師「……もう、明後日か」

騎士「そうだな。 もう飯もあたらん」

医師「……」

兵士A「……隊長」

騎士「だから、もうお前の隊長ではないと言っただろう」

兵士A「……俺は、……」

騎士「……」

騎士「明日は、面会禁止……だったな」

騎士「兵士A。 お前はさっさと結婚しろ。 所帯を持って嫁さんを幸せにしてやれ」

騎士「兵士B。 お前も。 家族を大切にしろよ。 子供の面倒もよく見ろ。 絶対に捨てたりするな」

騎士「医師は……」

看守「おい、面会終了だ」

騎士「……チッ」

医師「空気読めよお前」

看守「時間は時間ですよ」

騎士「……」

騎士「…姫を、頼む」

兵士AB「「……はっ」」

医師「……そんじゃ、俺も、これで」

騎士「……待て、」

医師「なん、……ぅむ」

騎士「……」

唇と唇が触れる程度の、軽い口付
最初で最後の、自分からのそれは、どこかぎこちなかった

騎士「……世話になった。 …私のことは忘れて、他の女を見つけろ」

医師「……」

看守(……気まずい)

看守「ほ、ほら。 さっさと出て行け」

騎士「…っはー……」

看守「……お熱いねえ」

騎士「…家族とキスをするのがおかしいか」

看守「家族ぅ?」

騎士「物心ついたときから、院で共に暮らしていたんだ。 兄弟みたいにな」

看守「……医師さんは、そうは思ってないだろうな。 あんたを一人の女として…」

騎士「……知ってるさ」

看守「…他の女見つけろ、か。 よく言えたもんだ」

騎士「……」


看守「…いよいよ今日なわけだが。 気分はどうだ」

騎士「清々しいな」

看守「そりゃよかった。
    …手錠、をしたいところだが、片腕しかないんでね。 身体ごと縛らせてもらうぞ」

騎士「うむ」

騎士「…うっ、つ……」

看守「うお、すまん、痛かったか」

騎士「…これから首を切り落とされる相手に何を心配している」

看守「…えー、あー……」

看守「よし、と。 …あとは他の奴が迎えに来るから、それまで待機」

騎士「……」

看守「……今なら、逃げられるぞ」

騎士「……ふん」

騎士「阿呆か。 私は、騎士だ。 逃げなどせん」

看守「…そうかい」

看守「……死ぬには惜しい命だ。 王妃殺しは大罪だが、な」

騎士「……」

騎士「……世話に、なったな。 本来、面会中の会話は全て記録されるはずだが」

看守「さてね、なんのことやら」


久々に見た空は、やけに眩しかった

階段をゆっくり登り、台に立つと、広場に集まっている民衆がやけに小さく見えた
死ね、よくも王妃様を、など、様々な罵倒がとんでくる

跪き、頭を差し出すような格好をとる
と、投げられた石が、無い左目に命中した

思わず呻き声を上げる
しかし、不思議と怒りは湧きおこらなかった

見まわし、これから首を落とす死刑執行人に尋ねる

騎士「……姫は…来ておられるのか」

執行人「来てるわけねぇだろ。 国王は来てるが」

騎士「…そうか」

執行人「あ、姫といえば、言伝。 "裏切り者"だとさ」

騎士「……そう、か」

裏切り者、か。 そうだろうな。 当然だろう
愛した母を殺したのだから

それでいい

執行人「…最後に言いたいことは」

騎士「……」

騎士「……私は」

大きく息を吸い、そして吐く

騎士「…反省も、後悔もしていない」

執行人「……」

執行人「はっ」

執行人「命乞いじゃない点は評価してやる」

執行人「そんじゃ」

目を、堅く瞑る


――我、騎士

他の何人でもなく

ひたすら姫のみに

生命と身体に懸け

誠心誠意、偽りなく全うする事を――


――我、騎士


姫君にのみ、忠実を尽くす者なり


 









首が落とされ、歓声が巻き起こった


fin.

とりあえず、全部投稿した、多分抜けてない。はず。
支援してくれた人、保守してくれた人、読んでくれた人全てに感謝

おぱんちゅ発言は記憶から抹消してくれると嬉しいな!

>金貨の価値
細かい事考えてないけど10万ぐらいかね

>他のSS
このスレに関係ないし、あっても言うつもりはない

>続編・番外
とりあえず、処刑後晒しものにされてた騎士の遺体を、姫が“母を殺した輩の死体がいつまでもあるなんて”と撤去、
その後埋葬、見晴らしの良い綺麗な丘に折れた騎士の剣と共に眠りに就いた、まで考えた
けどSSとしてはもう終わってるから書かないし思いつかない

うっ(´;ω;`)ぱんつ

( ゚Д゚)<ょぅι゙ょ!ぬくぬく!ょぅι゙ょ!帝国!

幼女妹欲しい

( ゚( ゚Д( ゚Д゚( ゚Д゚)<ょょぅょぅιょぅι゙ょぅι゙ょ!
( ゚( ゚Д( ゚Д゚( ゚Д゚)<ぬぬくぬくぬぬくぬく!
( ゚( ゚Д( ゚Д゚( ゚Д゚)<ょょぅょぅιょぅι゙ょぅι゙ょ!
( ゚( ゚Д( ゚Д゚( ゚Д゚)<ててて帝国!

かゆ うま

アッー!

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom