母「ハルヒちゃん、そろそろアニメは卒業したら?」(599)

母「明日はいよいよ入学式ね。準備は終わってるの?」

ハルヒ「うん(オムライスうま過ぎwww)」

母「………」

母「…ハルヒちゃん。もう高校生になるんだし、アニメとか卒業したら?」

ハルヒ「え…」

母「高校生になったら、もっと楽しいことがあるわよ。ね?」

ハルヒ「で、でも、これは我輩のライフワークだし。って、ライフワークってどんだけww」

母「変な言葉遣いしないで頂戴。…はぁ、時々ハルヒちゃんが遠くに感じちゃうわ」

ハルヒ「……」

母「せっかく素材がいいのに……そんなんじゃ彼氏なんかできないわよ?」

ハルヒ「あ、ありえないしw(男の子の前じゃキョドっちゃうもん)」

母「オタクをやめれば、すぐに出来るわよ。ハルヒちゃん、可愛いもの」

ハルヒ「……(どうみても親の贔屓目です。本当にありがとうございました)」

母「ハルヒちゃんは好きな男の子とかいないの?」

ハルヒ「えぇ~……………………キョンとか? なんつってwwww」

母「えぇっ!? お母さん、初耳! 中学のときの子?」

ハルヒ「い、いや………アニメの主人公……」

母「……はぁっ……」

ハルヒ「…………」

私の名前は涼宮ハルヒ。

そう、あの涼宮ハルヒと同姓同名だ。

縁を感じて、「涼宮ハルヒの憂鬱」を読んで、アニメも観たんだけど、めっちゃハマってしまった。

話も面白いし、キャラも萌えるし。

ちなみにキョン×ハルヒのNLオンリー派だ。※但しハルヒ×キョン子の百合は認める。

ちょっと痛いけど、ハルヒの髪型を真似したりもしてる。

あと、トップシークレットとして、受験のとき今の高校に決めたのは、涼宮ハルヒの制服と似ているからだったりもする。

しかも略すと『北高』になるし!

受験のとき、学校まで長い坂を登りながらうんざりしてた周りと違い、私は『ハルヒ』の世界と同じだとわくわくしていた。

そして今日も私は、ハルヒ関連のSSや画像を探してネットをしていた。

(うはw キョン子の4コマ更新キタ――――!!)

(ハルヒにセクハラされるキョン子とか、テラモエスwww)

(やっぱキョン子は貧乳ですよねー)

(新しいSS発見! うはw キョン×ハルヒじゃん。しかもちょっとエロそうwwww)

(これは夜更かししてでも最後まで読むしか!)

(ぱねぇw 明日は入学式なのに、私アホ過ぐるwwww)

(うはw やっぱり入学式でうたた寝しちゃった)

(でも悔いはなし!キリッ 昨日のSSも良かったなぁ。甘々で萌え転がっちゃったよ)

(やっぱキョン×ハルヒだよね)

(私は5組かー。ハルヒと一緒、ラッキーwww)

(あー、でもこれから自己紹介とかあるのか。気が重いなー)

(友達……できないだろうなぁ。人見知りだしなー)

(中学のときにつるんでたみっちゃんに彼氏は出来たのは痛かったな……)

(オタクやめちゃうみたいだし……)

(高校生になったら、一緒にコミケ行こうって約束してたのに……)

(私は自分の好きなものを捨ててまで彼氏なんていらないわ!キリッ)

(カッコヨスwwwww)

女子A「朝倉さん、中学のときとか、委員長してなかった?」

朝倉「えぇ~? なんでわかるの?」

女子A「雰囲気でわかるのね」

(!!!)

(朝倉……?)キョロ

(!!!!!!!!! 眉毛だし!!!!wwwwwww)

(本人?w 本人じゃね?wwwwwww 朝倉って名前で眉毛美少女とかww マジぱねぇ!wwww)

(…………………)

(でも、もう友達になってる子いるんだ……)

??「キョン!! また同じクラスだね」

(!!!!!!!!!!!!!!!!!)

??「国木田か。高校でもよろしくな」

(え? 嘘? キョン? 国木田? マジ? え? こんな偶然あるの?)

国木田「うん、こっちこそよろしく」

(しかもキョンってあだ名の男の子、私の前の席だし…)そぉ~

(!!!!!!!!! テライケメン!! 嘘嘘嘘嘘ぉ!!)

(背も高いし、もみあげも長いし……リアルキョン? リアルキョンじゃね?)

(ああぁ~~、真ん前の席じゃなきゃ、もっと堂々と見れるのにぃ~~)

国木田「僕、隣のヤツと仲良くなったんだ。谷口って言うんだけど」

キョン「へぇ、もうかよ。お前、人見知りしないもんな」

(ヤバイヤバイヤバイヤバイ。顔が熱くなって来た)

(声も似てるよぉ。ヤバイ。マジで惚れる)

(生きてて良かったwwwww)

朝倉「へぇ。キョン君って言うの? 変わったあだ名ね」

キョン「? …お、おう。妹につけられちまってな」

(! もう女の子に声かけられてる……。ですよねー。カッコイイもん……)

朝倉「私は朝倉涼子。よろしくね」

キョン「おう、よろしくな」

国木田「よろしく、朝倉さん」

(てか、彼のあだ名はやっぱり妹ちゃんにつけられたものだし、眉毛は涼子だし、何から驚けば!?)

朝倉「キョン君は何の部活に入る予定なの?」

(……たまには国木田君のことも思い出してあげてくださいww)

キョン「いや、帰宅部予定」

朝倉「そうなの? 背が高いのにもったいないね」

(うわぁ。キョンと朝倉涼子が会話しとるwwww ちなみに涼宮ハルヒはここですよーwwww)

(なんだろ、これ……)

(はっ! もしかして私、『涼宮ハルヒの憂鬱』の世界に来ちゃったとか!?)

(………………)

(妄想乙wwwwwwwww)

(うっはwww 担任の名前、岡部だってwww ハンドボールの話しとるwwww)

(やっぱり私、本物の涼宮ハルヒでした!wwwww なんつってwwww)

(じゃあ私は「あの」自己紹介をしなくちゃいけないのか………)

(って無理だしwww)

(………………)

(「しょっぱなの自己紹介のアレ、どのへんまで本気だったんだ?」)

(………………)

(うっは、言われてぇwww あの声で話し掛けられてぇwww)

(………………)

(いやいやいやいやいや、無理無理無理無理。恥かいて終わりだって)

(………………)

(……でも、もしホントにここが『涼宮ハルヒ』の世界なら……)

(……とっ、とりあえず、ちゅーまではしてもらえる…………///)

(……………)

(いやいやいやいや)

(……………)

(だから考えちゃ駄目! いやむしろ、らめぇ―――!!)

(うっは、余裕あるじゃん、私www)

ハルヒ「東中出身、涼宮はるひ。ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところまで来なさい。以上」

(やっちゃった、やっちゃったよ!! 頑張りすぎだろ、私!!)

(……しんとなってる。オワタ……)

女子A「ぷっ」

クラス一同「あははははははははは!!!」

(あ、あれ? う、うけた?)

キョン「お前、面白いな!」

ハルヒ「そ、そうすか? ふひっ」

(キャ――――――!! 声掛けられちゃった!!wwww)

(ヤバイ、ニヤける)

キョン「これからよろしくな。俺は宇宙人とかじゃないけどw」

ハルヒ「は、は、は、はい。こ、こっちこそ///」

(あばばばばばばばば)

(キョドる……こんなとき、どういう顔していいのかわからないの。って綾波か!)

(ヤバイ、マジでカッコイイ………すっ、好きになっちゃったかも……///)

??「お~、お前がキョンか」

国木田「キョン、こいつが谷口。谷口、こっちが僕と同じ中学出身のキョン」

キョン「よろしくな」

谷口「こっちこそよろしくな。WAWAWA忘れ物~♪」

(! 谷口君は知ってる?)

キョン「何だ、そりゃ?」

谷口「わかんなきゃいいって!」

(あ、こっち見た…)

谷口「涼宮! やってくれたな! お前ならやってくれると信じてたぜ!」

ハルヒ「ふひっ。えへへ…」

キョン「おう。さっきのはウケたな」

谷口「違うんだよ。『涼宮ハルヒの憂鬱』ってアニメがあるんだけど、さっきのはその涼宮ハルヒの有名なセリフなんだ」

ハルヒ「ふへへ…///」

キョン「へぇ、アニメの主人公と同姓同名か、すごいな」

ハルヒ「う、うん…(主人公はキョンだけど……いいか)」

キョン「でもさっきのはパクリだったのかよ。駄目じゃん、自分のネタで勝負しないと生き残れないぞ?」

ハルヒ「あばば。さ、サーセン///」

国木田「あはは。涼宮さんはお笑い芸人じゃないって、キョン」

谷口「ちなみに、さっきお前は涼宮ハルヒが主人公と言ったけど、正確には違う」

(あ、バラしちゃうんだ)

谷口「主人公は涼宮ハルヒの同級生の男なんだが、これが偶然にもキョンってあだ名なんだ」

キョン「お、俺か?」

谷口「おう」

キョン「こんなマヌケなあだ名なのは、俺だけじゃなかったのか…。なんかほっとしたよ」

国木田「凄い偶然だね」

谷口「それだけじゃないぞ。国木田、谷口、朝倉ってキャラも出てくる」

キョン「マジかよ。ちょっと観てみたいな、それ。今もやってるのか?」

谷口「いや、終わったけど、レンタル屋に行けばいいんじゃないか?」

国木田「へぇ。僕も借りてみようかな? その国木田は活躍するの?」

谷口「いや、ちょい役だ」

国木田「なんだ」

キョン「はははは」

ハルヒ「あ、あ、あの……///」

キョン「うん?」

ハルヒ「げ、原作の小説なら、今持ってますけど……」

キョン「マジ? 借りちゃっていいの?」

ハルヒ「は、はい…///」

キョン「へぇ。この表紙の女が涼宮ハルヒか? 似てるじゃん」

ハルヒ「あばばばば。わっ、私そんなに可愛くないし///」

キョン「でも髪型とか真似してるんだろ? よっぽど好きなんだな」

国木田「僕知ってるよ。それ、コスプレって言うんでしょ?」

ハルヒ「……///」

キョン「じゃ、遠慮なく借りるな。なるべく早く返すから」

ハルヒ「い、いつでもいいよ(私、3冊持ってるしwww)」

国木田「涼宮さん、僕もその後、借りていいかな?」

ハルヒ「う、うん。もちろん」

谷口「ちなみに俺は、みくる派だ」

キョン「いや、知らんし」

(巨乳好きか。さすが谷口wwwww)

朝倉「涼宮さん」

ハルヒ「は、はい」

(朝倉涼子に声かけられちゃったよ…)

朝倉「さっきの自己紹介、びっくりしちゃった」

女子A「あれ、ちょーウケたぁww」

ハルヒ「へ、ふへへ。楽しんでもらえて何よりっすw」

朝倉「阪中さん、随分ウケてたものね」

(うぇええ!? 阪中までいた!)

阪中「うん、これからよろしくね」

ハルヒ「あ、ありがと。こちらこそ」

朝倉「うふふ。私もよろしくね。私は地底人とかじゃないけど」

ハルヒ「よ、よろしく」

(あれ? なんか……なんだか……上手くいっちゃってる……?)

キョン「おはよう、涼宮」

ハルヒ「お、おはよう…///」

(うわ、うわー、男の子に朝の挨拶されちゃった。しかもキョン君に……。幸せ過ぐる///)

キョン「これ、返すよ。ありがとうな。スゲー面白かった」

ハルヒ「え? え? もう読んじゃったの?」

キョン「ああ、面白かったよ。これ凄いな。出てくるのは知り合いばっかだ」

ハルヒ「う、うん。私もこの学校に来てびっくりした…」

キョン「あ、いや、このクラスの奴だけじゃなくてな…」

国木田「キョン、涼宮さん、おはよう」

キョン「おう、国木田、おはよう」

ハルヒ「お、おはよう」

国木田「あ、それ、昨日の本だね。もう読んだの?」

キョン「面白かったぞ」

国木田「じゃあ、涼宮さん、次は僕が借りるね」

ハルヒ「は、はい。どうぞ」

キョン「そう言えば昨日のサッカー観たか?」

国木田「観た観た。最初のシュートだけど……」

(ああ、スポーツの話になっちゃった。もっとハルヒの話したかったなぁ)

(キョン君……何を言いかけたんだろ?)

キョン「おはよう、涼宮」

ハルヒ「お、おはよう……きょ///(うわ、無理だ)」

キョン「ああ、いいぞ、キョンで」

ハルヒ「う、うん。キョン……君(うへぇあ///)」

国木田「おはよう、2人とも」

キョン「おう」

ハルヒ「お、おはよう」

国木田「涼宮さん、これ面白かったよ。ありがとう」

ハルヒ「あ、う、うん」

国木田「びっくりしちゃったよ。キョンと国木田、中学からの同級生ってところも僕らと一緒なんだね」

キョン「ああ、俺も驚いた」

国木田「長門さんも出てくるしね」

ハルヒ「!!?」

キョン「ああ、そうだ。涼宮、長門ってのは、俺の幼馴染なんだ。しかもだな、やっぱり有希って名前なんだよ」

ハルヒ「へ、へぇ。凄い偶然だね」

(キョンとハルヒが幼馴染のSSは読んだっけ……。キョンと長門が幼馴染………その発想はなかった)

キョン「でな。悪いけど、その本、また貸してくれないか? そいつにも読ませたいんだ」

ハルヒ「う、うん。いいよ」

キョン「しっかし、お前が小説の涼宮ハルヒに似てんのは、見た目だけだな」

ハルヒ「あばばば、いやいやいやいや、あんなに可愛くないし…」

国木田「あははは。本当、中身は全然違うよね」

キョン「自己紹介のときは元気だったのにな」

ハルヒ「ご、ごめんなさい…」

(だってキョン君のせいで、緊張しちゃうし…///)

国木田「でも長門さんの方は本好だし、小説の長門と被るよね」

ハルヒ「え、嘘!? あ、会ってみたい!」

キョン「ああ、それいいかもな。じゃあ、本を渡しに行くとき、一緒に行くか。放課後でいいよな?」

ハルヒ「う、うん!」

(マジマジ!? ほ、ホントに長門そっくりだったらどうしよう……)

(クール美少女………お、拝んじゃうかもwww)

―放課後―

キョン「実はな、長門は今年文芸部に入ったんだが、今年の春に3年生が卒業して部員ゼロ。今は長門だけなんだ」

ハルヒ「!! それって…」

キョン「ああ。いらんところまで、あの小説と一緒みたいだ」

ハルヒ「そ、それじゃ、長門さん、落ち込んでるよね…」

キョン「そうだな。昨日会ったときにそのことを聞かされたんだが、ベソかいてたよ」

(ベソ……中身は長門じゃないみたい……って、んな場合じゃねー。なんか慰めの言葉とか……無理だし)

(ああ、コミュ力のない自分が恨めしい……)

キョン「おっと、ここか」

(文芸部………すご。ここにホントに長門がいるんだ……)

キョン「長門、いるか」コンコン ガチャ

(!!!!! 嘘っ!!!)

長門「!」

キョン「あれ? 昨日ベソかいてた癖に、今日は機嫌よくないか?」

長門「……」

(嘘? マジ? 髪の色以外、マジで長門じゃん。ちっちゃくて可愛いし、カーディガン着てるし、ハードカバー読んでるし)

(あ、あ~~~~、惜しい! メガネじゃない! メガネを外すのは朝倉との戦いの後なのに~~~)

(って、実はアホだろ、私wwww)


長門「ありがとう、ありがとう」

キョン「は? あの、えと、何がだ? 何でそんなに感激してる」

(凄い……無表情だよ……キョン君には分かってるみたいだけど……さすが幼馴染)

長門「入部希望者を連れて来てくれた…」

ハルヒ「へ?」

キョン「は?」

長門「……?」

(うはあっ、ちょこんと小首傾げたりしてテラカワユスなぁ、もう! って、違う)

ハルヒ「ち、ち、ち、ち、ちがっ」

長門「父がお世話になっています?」

ハルヒ「違うんです!!」

キョン「あー、すまん。ちょっとKYだったかもしれん」

…………………
…………………

キョン「と言う訳で、涼宮を連れて来たんだよ」

長門「…じゃあ、文芸部の入部希望者じゃ…」

キョン「ない」

長門「……」

(あれ? ほとんど表情が変わらないのに、物凄いがっかりしてるのがわかる…)

キョン「あー、なんと言うか、つまりその……すまん」

長門「そう、これが『涼宮ハルヒの憂鬱』…」

キョン「凄いぞ、俺達と同じ名前の登場人物がバシバシ出てくる」

長門「知ってる」

キョン「へ?」

長門「? アニメ化されてるし、とても有名」

キョン「そ、そうだったのか。すまん、俺はそういうのに疎くてな」

ハルヒ「な、長門さんも読んだことあったの?」

長門「まだ。でも機会があったら読んでみたいと思っていた」

キョン「涼宮がその本、貸してもいいってさ」

長門「いいの?」

ハルヒ「う、うん。それ、布教用だし」

長門「じゃ、借りる。ありがとう」

キョン「布教用?」

ハルヒ「あ、あの、えと、気に入った本とか、人に紹介するために持ち歩いたりするの。オタク用語です、ごめんなさい」

キョン「え? じゃあ同じ本を何冊も買ったりするのか?」

ハルヒ「う、うん」

長門「割と基本」

キョン「そ、そうなのか…」


キョン「じゃあ、俺達は帰るけど、長門はどうする?」

長門「下校時間まではいる。一応、入部希望者を待ってみる」

キョン「そうか、じゃあまたな」

長門「さよなら」

ハルヒ「それじゃ長門さん、またね」

キョン「……ちょっと変わった子だったろ?」

ハルヒ「え? あ、あの、凄く可愛い子だと思うよ、長門さん」

キョン「ふーん」

ハルヒ「そ、それじゃ私、鞄取りに教室戻るから。また明日」

キョン「え、何でだ? 途中まで一緒に帰ろうぜ」

ハルヒ「うぇええ!? あばばばば」

キョン「いや、待て。何でそこで驚く」

(お、男の子に縁の無い女は驚くよぉ~~)

キョン「じゃ、下駄箱で待ってるな」

ハルヒ「は、は、は、はい!」

(キョン君と下校、キョン君と下校、キョン君と下校……人生最大のイベントktkr)

ハルヒ「長門さんとは、いつからの知り合いなの?」

キョン「あれ? いつからだっけな。幼稚園かその前からか……もう昔過ぎてわからん」

ハルヒ「そ、そうなんだ。羨ましいなぁ…」

キョン「そうか?」

ハルヒ「そうだよ。異性の幼馴染がいる人って、神に選ばれし者だと思う」

キョン「そりゃまた、大袈裟だなw」

ハルヒ「あと、可愛い妹のいる男の人と、カッコイイお兄ちゃんのいる女の人も羨ましがられるよね」

キョン「そう言えば、自分の妹に恋するだのって映画あったっけ。正直、ちょっとキモいと思ったけどな」

ハルヒ「ふーん…」

(実際いる人って、こんなもんなのかな……夢がないなぁ……)

キョン「そう言えば、涼宮ってオタクなんだよな?」

ハルヒ「う、うん」

キョン「こんなこと訊いていいのかなぁ………」

ハルヒ「な、何?」

キョン「あのな……やっぱりお前も読むのか?」

ハルヒ「な、何を?」

キョン「その、あれだ……男同士がくんずほぐれつしてる本……」

(うほ!?)

ハルヒ「私もって……」

(長門さんが読んでるってこと? ……………うん、それはそれで萌えるwwww)

ハルヒ「私、NL専門なの」

キョン「NL?」

ハルヒ「えーと、ノーマル・ラブの略で、男女の恋愛ものってこと」

ハルヒ「それで、男の子同士のがボーイズ・ラブでBL、女の子同士のがガールズ・ラブでGLって言うの」

キョン「うん? 女が女同士の恋愛ものなんて読んで面白いのか?」

ハルヒ「流石にGL専門の人は少ないと思うけどね。でも末期のオタクになると、性差とか関係なしに萌えられるようになるから…」

キョン「そ、そうか。深いんだなぁ、はは…」

ハルヒ「あ、あはは…(うぅ~、余計なこと言っちゃったかも…)」

キョン「でも流石に、幼馴染がBLだっけ? を読んでるのはちょっと衝撃だったけどな」

ハルヒ「そう?(けっこうハードなの読んでたのかな?)」

キョン「お前だって、もし幼馴染の男がいたとして、そいつがエロ本読んでたらショックだろ?」

ハルヒ「え、何で? エロ本に興味ない男の人の方が怖いよ」

キョン「え…………言われてみれば、そうかも……」

キョン「じゃあ、俺、向こうだから」

ハルヒ「またね」

キョン「今日は変な話しちゃってゴメンな。なんか涼宮、話しやすくて遠慮すんの忘れてた」

ハルヒ「あはは」

(えー、なんかそれ、嬉しいかも///)

キョン「じゃあな」

(今日は新作SSあるかな~、あ、キョン×長門だ…)

(やっぱり長門、大人気だよね………)

(うーん、今なら長門萌えもわかるなぁ。マジで可愛かったもん…)

(ながもん、可愛いよ、ながもん)

(いや、長門さんはホントの長門じゃないんだけどさ…)


(…………なんか変………)

(最近、頭の中が女の子っぽくなってる気がする………)

(恋すると変わる、ってこういうことかな?)

(キョン君……)

(片思い乙wwwwwww)

(………………)ハァ

(そんなノリじゃないんだよね……)

阪中「ハルにゃん、おはよう!」

ハルヒ「うぇえ!? お、おはよう」

朝倉「おはよう、涼宮さん」

ハルヒ「あ、おはよう、朝倉さん」

朝倉「…ちょっと、訊きたいことあるんだけど、いいかしら?」

ハルヒ「はい?」

朝倉「昨日の放課後、キョン君と一緒に帰ったみたいだけど……」

ハルヒ「んぐっ」

朝倉「二人は仲がいいの?」

(や、ヤバイ……朝倉さん、キョン君に目をつけてたんだっけ……)

ハルヒ「あの、実は……」

…………………………
…………………………

ハルヒ「…と言うわけなの」

朝倉「そ、そう……彼の幼馴染……そんなことになってたの……」

阪中「ありゃりゃ。涼子、失恋しちゃったね」

朝倉「まだそんなんじゃなかったわよ!」

阪中「しっかし長門までいるとは……ハルにゃん、これはもうSOS団を作るしかないよ!」

ハルヒ「うぇえ!? 何でSOS団のこと!?」

阪中「うん、実は恥ずかしくてなかなかカミングアウトできなかったけど、実は私もオタクなの」

ハルヒ「お仲間!?」

阪中「お仲間です!」

阪中「ところでハルにゃんはやっぱ『ハルヒ』好きなんだよね?」

ハルヒ「うん、大好き!」

阪中「やっぱカプリングは古泉×キョンなの?」

ハルヒ「ぬふぇええ!?」

阪中「あ、キョン×古泉だったの? あるいは国木田辺りが…」

朝倉「…なんか疎外感を感じるんだけど……」

ハルヒ「わ、私はNL専門だから!」

阪中「そうなの? お子ちゃまなんだねー」

ハルヒ「うーん、そうなのかなー。中学のときの友達にも同じようなこと言われたのよね…」

阪中「やっぱヤヲイはこの道の華だもん! ハルにゃんもこっちに来なよ! それがハルにゃんの高校デビューだよ!」

朝倉「…疎外感を感じたままの方がいいような気がするのは何故かしら…?」

キョン「涼宮、おはよう」

ハルヒ「おはよう、キョン君」

キョン「お、なんか知らんが元気だな」

ハルヒ「そ、そうかな?」

キョン「ま、いいんじゃないか?」

ハルヒ「そうだ、キョン君。私、文芸部に入ろうと思うんだ」

キョン「え…? 涼宮、長門に同情してるんなら、気にしなくていいんだぞ」

ハルヒ「私が入りたいの。長門さんともっと仲良しになりたいし」

キョン「…そっか。ありがとうな」

(ふふ、キョン君がお礼言ってる……やっぱりいいなぁ、幼馴染)

(長門さんのことは、別にショックでもないかな?)

(まぁ、キョン君と付き合えるなんて、恐れ多いこと考えてなかったし)

(だから、心の中で片思いしてるだけなら、許してくれるよね?)

―放課後―

ハルヒ「長門さん、いる?」コンコン ガチャ

長門「いらっしゃい。本ならもう読み終わったから」

ハルヒ「どうだった?」

長門「ユニーク」

ハルヒ「あははは。ホントに長門っぽいね」

長門「今日の帰り、出ている分は全部買っていくつもり」

ハルヒ「!!」

(うわぁ、ホントに気に入ってくれたんだぁ)パァァ

ハルヒ「あのね、長門さん。私、文芸部に入ろうかと思うの」

長門「!!」ガクブル

ハルヒ「はれ? な、なんで怯えるの……?」

長門「SOS団………部室を奪われる………」ガクブル

ハルヒ「ち、違います!! 本当に文芸部に入りたいの!!」

長門「……………本当?」

ハルヒ「うん!」

長門「と、見せかけて実は?」

ハルヒ「本当です!!」

長門「歓迎する。これで部員が倍に増えた」

ハルヒ「う、うん。…ポジティブなのはいいことだよね」

長門「……」コク

ハルヒ「でも私、ラノベとかしか読まないけど、いいかなぁ?」

長門「構わない」

ハルヒ「後、小説とかも書けないけど…」

長門「文集には紀行文でも詩でも何でもいい。固く考える必要はない」

ハルヒ「ありがとう」

長門「…訊いてもいい?」

ハルヒ「何?」

長門「どうして文芸部に入ってくれたの?」

ハルヒ「あのね………長門さんと、お友達になりたいの///」

長門「!」

長門「友達…」

ハルヒ「うん」

長門「今日から私とあなたは友達…」

ハルヒ「うんっ!」

長門「それじゃ早速、連帯保証人になって」

ハルヒ「うん、もちろん! って、誰がなるか――――――――っ!!!」

長門「……」パチパチパチ

ハルヒ「やめて~。『見事なノリツッコミだった』みたいな顔で拍手しないでぇ///」

谷口「涼宮、お前いい加減にしろよ」

ハルヒ「はええっ!? なっ、何が!?」

キョン「何だ? 涼宮がなんかやったのか?」

国木田「涼宮さんはおとなしい人なんだし、谷口の勘違いだよ」

谷口「それは違うぞ。俺は涼宮が何かをやったから怒ってるんじゃない。何もしないから怒ってるんだ!」

ハルヒ「うぇええ!?」

キョン「…どういうことだ?」

谷口「涼宮、キョン、長門まで揃ってるってのに、何でSOS団を立ち上げないんだ! お前がSOS団を作ってくれなきゃ、いつまで経っても朝比奈みくるは現れんじゃないか!!」

ハルヒ「え……いや……だって………ふええ?」

キョン「…涼宮。聞いての通り、谷口は真性のアホだ。こいつの言うことを真に受けていちいち動揺するな」

国木田「時間の無駄だからね」

谷口「かーっ。お前ら、みくる萌えを理解できないってのか!?」

キョン「そう言う問題じゃねぇだろ…」


阪中「ハルにゃーん。呼び出しだよー」

ハルヒ「は、はーい(長門さんかな?)」

先輩A「凄いよ、みくる! ホントに涼宮ハルヒだよ!」

先輩B「なんなんですかー。ここどこですか~、何で私、連れてこられたんですか~?」ガクブル

ハルヒ「!!!!!!!!」

先輩B「なんちゃってねww」

(この2人……この2人……どうみても………)

阪中「ハルにゃん、びっくりしたでしょ!? アニ研の鶴屋先輩と朝比奈先輩」

ハルヒ「あばばばばばば。こ、ここここ、こんなことって!」

鶴屋「あはははは。こっちこそびっくりさね。阪中っちから涼宮ハルヒとキョンがクラスメートだって聞かされてね」

みくる「これはもう会うしかないと思って、かけつけたんですよぅ」

鶴屋「あと別なクラスに長門もいるんだって? これはもうSOS団を結成するしかないっしょ!」

ハルヒ「あばばばばばばば」

阪中「あははは。ハルにゃん、目がぐるぐるになってる!」

みくる「私のことはみくるちゃん、と呼んでください」

ハルヒ「え、え、えぇ!? いや、先輩にちゃん付けなんて……」

みくる「だーめーでーすぅ。涼宮さんにはやっぱりみくるちゃんと呼んでもらわないと、らしくならないじゃないですかぁ」

ハルヒ「でもやっぱり先輩のことを……」

みくる「いいから先輩の言うことはおとなしく聞けよ、な?」ギロ

ハルヒ「ひぃ、ゴトゥーザ様!?」ビクッ

みくる「みくるちゃん、ですよぉ」

ハルヒ「は、はひ。み、みくるちゃん」

みくる「はい、よくできました♪」

鶴屋「あはははは。それじゃ、キョン君も呼んでもらえるかいっ?」

みくる「涼宮さん、一緒にバニーガールになりませんか?」

ハルヒ「あばばばば、無理無理無理無理無理無理!!」

鶴屋「あははは。ハルにゃんとみくるがバニーの格好でうちのサークルの売り子やってくれると嬉しかったんだけどなぁ」

みくる「残念です♪」


キョン「……なんか、嵐のような人達だったな……」

阪中「あの2人、いっつもあんなハイテンションなの」

(SOS団って本気かなぁ? 冗談だよね?)

谷口「涼宮ぁ、何でバニーを着るって言ってくれなかったんだよぉ!」

ハルヒ「あばばばば、だって無理だし、やっぱり無理だし、本気で無理だからっ!!」

国木田「谷口、それ以上はセクハラになるよ」

(凄いなぁ、ホントにみくるちゃんまでいたなんて……)

(あの2人も、凄い似てたな……)

(やっぱり私、『涼宮ハルヒ』の世界に来ちゃったんじゃ……)

(って、中二病過ぎるwwwwww)


(あ、そう言えば朝比奈先輩、私よりちょっと背が高かった!)

(似てるようでちょっと違うんだ…………まぁ、朝比奈みくる(大)ってトコだけど……)

(あ、そうだ。原作読んでちょっと不自然に思ったんだっけ。高校生がそんなに身長伸びるかなあ、って……)

(んー。年齢不詳だし、作中で中学生みたいって言われてるし、みくるちゃん(小)はハルヒよりも年下って可能性もあるのか…)

(でもそうすると、中学生以下の癖にあんなけしからん乳をしてることになっちゃうし…)

ハルヒ「長門さん、こんにちは」

長門「こんにちは」

ハルヒ「早速なんだけど、部員募集のポスターは何枚貼ってるの?」

長門「………………あ」

はるひ「…もしかして忘れてたの?」

長門「……///」

(照れてる長門さんも萌える……って、違う!)

ハルヒ「じゃ、じゃあこれからポスター作ろうよ。先生に聞いて来たんだけど、部員募集のポスターを貼っていいのは中間テストの前までだって」

長門「わかった」

(やった、長門さんの役に立ててるよね、私)

バタンッ!


鶴屋「ハルにゃん! 遊びにきたにょろ――――――――!!」

ハルヒ「ぅきゃあぅっ!! 鶴屋先輩、朝比奈先輩!?」

みくる「あ゛? 先輩?」ギロ

ハルヒ「ひぃっ! み、みくるしゃん…」ガクブル

みくる「えへっ、こんにちはぁ♪」

鶴屋「さっきキョン君に聞いて来たっさ。ハルにゃん、文芸部に入ったんだって? 流石だね!」

ハルヒ「はい?」

鶴屋「やっぱりSOS団は文芸部から部室を奪わないとね!」

長門「!!」

ハルヒ「はいぃ!?」

長門「だ、騙された………」ガクブル

ハルヒ「ぎゃ―――――っ!! 長門さん、違う、違います、違うんです! 鶴屋さん、勝手なこと言わないでください!!」

鶴屋「あれ? ハルにゃんはホントに文芸部に入ったのかい?」

ハルヒ「あ、当たり前ですっ!」

鶴屋「なんだ、残念」

みくる「長門さんも雰囲気ありますよね」

鶴屋「ホントだね。有希っこって呼んでいいかいっ?」

長門「…構わない」

みくる「胸がぺったんこな所もそっくり!」

長門「……」ピク

みくる「ぺったんぺったん胸ぺったん♪」

長門「…………………」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ハルヒ「わ―――――っ!! 何言ってんですか、先輩!」

みくる「…先輩?」ギヌロ

ハルヒ「みみみみ、みくるちゃん!」

長門「…………しぼめ」ボソ

ハルヒ「わ――――――っ!!」

鶴屋「なるほどなるほど。ハルにゃんと有希っこは部員募集のポスターを作るトコだったんだ」

ハルヒ「は、はい」

鶴屋「絵は描くつもりかい? なんならアニ研の誰か貸すよ。みくるは幼稚園児並みの絵しか描けないから駄目だけど」

みくる「てへ☆」

(何でアニ研にいるんだろ……レイヤー専門もありなのかな?)

鶴屋「あ、クラスメートの阪中っちは? あの子、絵上手いよ。お耽美専門だけど」

ハルヒ「お耽美、ですか…」

(校内のポスターでそれはどうだろう?)

(薔薇を背景に上半身裸の男が血を流してる絵とか描かれても…)

ハルヒ「あの、ちょっとした動物のマスコットっぽい絵とかの方が」

鶴屋「あっはっは。そりゃそうだよね。そう言うのは谷口君が得意だよ」

ハルヒ「谷口君………ええっ、谷口君!?」

みくる「彼、アニ研の幽霊部員なってくれたんですよー」

ハルヒ「え? 幽霊部員なのに『なってくれた』って…」

鶴屋「そそそ。名前だけ貸してもらったのさ。実績のない部は、部員の数で予算が決まるからね」

長門「予算…」

ハルヒ「わ、私達も5人以上集めて顧問の先生を見つければ、多分予算をもらえるから!」

長門「予算……」コク

鶴屋「やっぱり文化祭で文集とか出すのかい?」

長門「できれば」

鶴屋「その時は私に声掛けてよ。表紙にミュシャ風のイラスト描いてあげるっさ」

ハルヒ「わぁ! それ凄くいいです!」

谷口「涼宮が朝比奈先輩とバニーの格好してくれるなら、描いてやってもいいぞ」

ハルヒ「うぅええっ!? 無理無理無理無理!!///」

キョン「よし、セクハラだ。涼宮、通報しろ」

国木田「谷口、差し入れはするから」

谷口「冗談だろ~、冗談! 気合を入れてだんごをいっぱい描いてやるよ」

ハルヒ「そんな……人生じゃないんだから」

国木田「こういうのは動物が定番だろ」

谷口「じゃあ、カコミスルを描いてやろう」

キョン「何でそんなマイナーな動物なんだ…」

朝倉「おはよう、何やってるの?」

ハルヒ「おはよう、文芸部の部員募集のポスターを谷口君に描いてもらってるの」

朝倉「ふーん、って、何よコレ、可愛い!!」

キョン「ほぉ、上手いもんだ」

谷口「だろう? ふふーん」

国木田「…そこで調子に乗らなきゃカッコイイんだけどなぁ…」

朝倉「………ねぇ、谷口君、ウチでもぬいぐるみのデザインとかやってくれないかしら?」

キョン「ウチ?」

朝倉「あ、えっと、私、手芸部に入ったの」

ハルヒ「そうだったんだ」

谷口「コホン……あー、手芸部ってのは、普通女ばっかりだよな?」

朝倉「? ウチもそうよ」

谷口「よし、引き受けよう」キリッ

国木田「輝いてるなぁ」

鶴屋「ようこそ、アニ研へ! 谷口君に描いてもらった絵はもってきたかい?」

ハルヒ「は、はい! これです」

長門「…これは何の動物?」

ハルヒ「えと、カコミスル、だっけ」

鶴屋「相変わらず萌え萌えな絵を描くなぁ、谷口君。じゃ、パソコンに取りこもうか」

ハルヒ「お願いします」

長門「……牛は?」

ハルヒ「牛とか言っちゃ駄目!」

鶴屋「にゃははは。みくるかいっ? みくるは毎日出てるわけじゃないっさ。レイヤーだしね」

(やっぱりレイヤーだったのかぁ。スタイルいいから色々似合うだろうなぁ)

鶴屋「ちなみに他の部員もGWのイベントが近いから帰ったさ」

ハルヒ「なるほど…」

(うわ、こっちのパソコンはモニターでっかい。プリンターも高そう。あ、液晶タブレットもある! さすが高校の部活、けっこう道具揃ってるんだ…)

ハルヒ「ウチもパソコン欲しいね」

長門「……」コクン

鶴屋「文芸部なら、そんなたいそうなソフト使わないし、中古で探せばいいにょろ」

ハルヒ「そうですね」

(部活の予算っていくらぐらい貰えるのかなぁ…)

鶴屋「ちなみに、去年の3年生は私物のパソコンを持ち込んでたみたいだよ」

ハルヒ「そう言う手もあるのかぁ」

長門「……」


鶴屋「さーて、仕上げにかかるよー。有希っこ、ハルにゃん、フォントを決めて欲しいにょろ」

ハルヒ「は、はいっ!」

ハルヒ「貼り終わったー」

長門「……」パチパチパチ

ハルヒ「出遅れちゃったけど、けっこういい場所残ってたね」

長門「ええ」

ハルヒ「谷口君と鶴屋さんのお陰で、すごい本格的なポスターになったし」

長門「これは期待」

ハルヒ「うんっ!」

長門「あなたにひとつ、言っておきたいことがある」

ハルヒ「な、何?」

長門「さっきのパソコンのこと。私としては、できれば私物を持ち込むのではなく、私達の代で部の備品として手に入れたい」

ハルヒ「そうなの?」

長門「後輩達に残してあげたい」

ハルヒ「!」

(長門さん……ちゃんと考えてるんだ……)

ハルヒ「うん、わかった! 頑張ろうね!」

キョン「よう、帰るところか?」

ハルヒ「きょ、きょ、きょ、キョン君!///」

長門「今帰り?」

キョン「教室で国木田達と遊んでたんだ」

長門「一緒に帰る?」

キョン「ああ」

(あわわわ、お、お邪魔にならないかな、私……)

キョン「ポスター貼ったんだな。なかなかいい出来じゃないか」

長門「全部、彼女のお陰」

ハルヒ「あばばば、違うよっ、谷口君と鶴屋さんのお陰なの!」

キョン「ははっ、そうか。しかし今までポスターも貼らずに、長門は部室で何を待ってたんだ?」

長門「……///」

ハルヒ「で、でも、まだまだこれからだしっ」

キョン「ああ、そうだな。まぁ、2人とも頑張れ」

長門「もちろん」

ハルヒ「うんっ!」


キョン「それじゃ、またな、涼宮」

長門「また明日」

ハルヒ「うん、さよなら」

(いいなぁ……あの2人………)

(いつか私にも………)

(いやいやいやいや、高望みしちゃ駄目!)

(高校入ってぼっちにならなかっただけでも、凄い奇跡なんだから!)

ハルヒ「こんにちは、長門さん」

長門「……」コク

(長門さんは今日もハードカバーか……)

(今日も入部希望者を待って下校時間までいるし、どうしようかな………ラノベは何冊か鞄に入ってるけど……ん?)

(あ、これ、文芸部歴代の文集だ!)

(これは読むしか!)ペラ…


コンコン

長門「!」

ハルヒ「!(入部希望者!?) は、はいっ!」

みくる「こんにちわ~、遊びに来ちゃいましたぁ~♪」ガチャ

長門「………」

ハルヒ「……」

みくる「あれっ? なんか空気が変ですぅ」

ハルヒ「あっ、ごごご、ごめんなさい、入部希望者かと期待しちゃったもので!」

みくる「うふふ、残念でした♪」

長門「……………しぼめ」ボソ

ハルヒ「わ――――――――っ!!」

みくる「ねぇねぇ、SOS団を作りませんか?」

長門「……」ピク

ハルヒ「ですから、私は文芸部に入ったんです。この部室は明け渡しませんからね」

みくる「そうじゃなくて、部活とか関係なしにやればいいじゃないですかぁ」ムギュ

(うわわわわわわ、う、後ろから抱きつかれて、特盛りがっ! 背中に特盛りがっ!)

みくる「私だってアニ研辞めるつもりはないですよー。なんて言うか、遊びグループの名前、みたいな?」ムギュギュ

(うわわっ、柔らかっ、特盛り柔らか過ぎっ!///)

(こ、これじゃ男の子はひとたまりもないっ…! ブラの上からでこれかっ…!)

(すげぇ、特盛りすげぇ!!)

みくる「ね? ね?」ムギュムギュ

長門「……」ゴゴゴゴ

ハルヒ「でっ、でも、SOS団を結成して、何をするんですか?」

みくる「んー、例えば、不思議探索の代わりに可愛いにゃんこを探索したり?」

ハルヒ「ぬこ!?」

長門「!」

(しまった、ちょっと楽しそう)

みくる「ああ、にゃんこの面白映像を撮影したりも楽しそう」

ハルヒ「……」ウズウズ

長門「……」ソワソワ

みくる「そうだ! それをようつべとかにうpするんです! これぞまさに『世界を(にゃんこによって)大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団』じゃないですか!!」

ハルヒ「た、確かに可愛いぬこ画像は世界を大いに盛り上げますからね……」ウズウズ

長門「それに関しては同意する…」ソワソワ

みくる「でしょー!? 私、頭良くないですかぁ!?」

ハルヒ「でも、キョン君は参加してくれないんじゃないかなぁ…」

みくる「あー、キョン君に参加して欲しいんですかぁ?」ニヤリ

ハルヒ「違っ、そ、そう言うわけじゃないです!///」

みくる「ふーん、ホントにハルヒみたい」ニヤニヤ

ハルヒ「だから違いますって///」

(わ――――、長門さんがいるのに――――!)

みくる「うふふ、あんまりからかっちゃ可哀想ですね。それじゃ、また来ますね」

長門「……」

ハルヒ「は、はい」


―パタン―

ハルヒ「ふぅ」

長門「………」ムギュ

ハルヒ「うわわ、長門さん!?」

(いきなり後ろから抱きつかれた!?)

長門「………」ムギュムギュ

ハルヒ「? 何?」

長門「何でもない…」ズーン

(なんか落ち込んでる…?)

ハルヒ「??????」

ハルヒ「帰る前に教室に寄っていい? 英語の辞書忘れちゃったの」

長門「構わない」

ハルヒ「ありがとう」


ハルヒ「あれ? 谷口君、まだいたの?」

谷口「よう……これを描いててな」

ハルヒ「? ……うわっ、可愛い!!」

長門「……萌え」

谷口「朝倉に頼まれてな、ぬいぐるみのデザイン画だ」

ハルヒ「こんなにいっぱい?」

谷口「ああ。俺、立体はやったことないからな。どういうデザインが立体化しやすいのかわからんから、数で勝負することにした」

ハルヒ「そうだったんだ。手芸部の人達、喜ぶと思うよ」

長門「カコミスル、マメジカ、ツチブタ、ヒメアルマジロ……センジュナマコ、メンダコ……ユニーク」

(相変わらずマイナーな動物ばっかりwww でも……女の子をランク分けしてる原作の谷口よりずっと素敵な人かも)

ハルヒ「私、読み専だから、何か出来る人って羨ましいな」

谷口「まぁまぁ、そう言うな。お前も文芸部に入ったんだろ? これを機会にSSぐらい書いてみたらどうだ?」

ハルヒ「え――――――――!? む、無理だよぉ! ネットでSSとか読んだことある? みんなめちゃくちゃ上手いんだよ? 私が書いたって恥晒しだよぉ」

谷口「書いたからって全部発表しなきゃならないって法はねーだろ。気に入ったのができるまで、人目に晒さなきゃいいんだって」

ハルヒ「そ、そっか。それなら……」


※支援ありがとうございます。
全然テンパりが治まらないです。
今度は最後まで投稿できますように。

ハルヒ「お母さん、電気ポットって使ってないのあったよね? もらい物のやつ」

母「物置に仕舞ってあるわよ。使うの?」

ハルヒ「部室に備品にしたいの。私が貰っちゃっていいかな?」

母「いいわよ。使うアテもないし」

ハルヒ「ありがとう」

母「……ハルヒちゃん、ちょっと変わった?」

ハルヒ「え?」

母「なんか明るくなった。今の高校に入って正解だったみたいね」

ハルヒ「え………う、うん……そうかも///」

母「ふふっ」

ハルヒ「てれれてってれ~♪ 電気ポット~」

長門「」パチパチパチ

ハルヒ「ティーバッグも持って来たよ。これで部室でお茶が飲めるね!」

長門「いいの?」

ハルヒ「うん、余ってたものだから、文芸部に提供するね!」

長門「ありがとう」

ハルヒ「それじゃ、早速、紅茶を淹れるね」

―バンッ―

みくる「あ~~~~~~、何やってるんですかぁ~~~~!」

みくる「はい、涼宮さん」

ハルヒ「あ、ありがとう…」

(メイド服にわざわざ着替えて………学校に置きっぱにしてあるのかな……?)

みくる「はい、長門さんも」

長門「……」コク


みくる「そう言えば、GWのイベントにアニ研のメンバーが参加するんですよぉ」

ハルヒ「ああ、鶴屋さんが言ってましたね」

みくる「お二人とも良かったら、私と一緒にハルヒのコスプレして売り子しませんか?」

ハルヒ「売り子……ですか」

(そのぐらいならいいかな…?)

(うん………そうだよね。GWに予定があるなんて、人生初のことだし……)

ハルヒ「わ、私は大丈夫ですよ」

みくる「わ♪ じゃ、長門さんは?」

長門「…コスプレするんじゃなければ行ける」

みくる「そんなこと言わずに長門さんもやりましょうよぉ」

ハルヒ「で、でも、長門さんはコスプレ用の衣装は持ってないだろうし」

長門「…」コク

みくる「大丈夫です! 髪は私が持ってる紫のウィッグを長門の髪型にすればいいし、私はメイド服を着ますから、制服の方は貸しますよぉ」

長門「……いいの?」

みくる「はいっ! でも、サイズがちょっと大きいですけどねー、特に胸の辺りとか☆」

長門「……」ゴゴゴゴ

ハルヒ「わ―――――っ! わ――――――っ!」

―帰り道―

ハルヒ「でもいいの? コスプレなんて初めてでしょう?」

長門「構わない。…私も少し、楽しそうだと思った///」

ハルヒ「長門さん……」

長門「私はこんな性格だから、誰かと遊びに行ったりとかしたことがなかった…」

ハルヒ「そ、そうなんだ…」

長門「だけど、あなたと友達になれてとても嬉しいと思っている///」

ハルヒ「な、長門さん…」

長門「あなたと一緒に色々なことをするのは、楽しいと思う」

ハルヒ「あ、ありがとう///」

キョン「涼宮、おはよう」

ハルヒ「きょ、キョン君、おはよー///」

(うはww 今日も朝の挨拶しちゃったww)

キョン「GW、長門と一緒にアニ研の集まりに参加するんだって?」

ハルヒ「う、うん。アニ研の集まりって言うか、イベントなんだけど……わかんないか。な、なんかごめんね。長門さんをオタクの世界に引っ張り込んじゃって」

キョン「いやぁ、あいつは元々だし、気にするな。いいんじゃないか? 長門も楽しそうだったし」

ハルヒ「う、うん。ありがと」

キョン「……いいよな、お前ら……」ボソ

ハルヒ「? 何が?」

キョン「いや、何でもない。忘れてくれ」

ハルヒ「????」

鶴屋「やあやあやあ、ハルにゃん!」

みくる「こんにちは、涼宮さん」

ハルヒ「鶴屋さん、みくるちゃん、こんにちは」

鶴屋「みくるから聞いたよっ! イベントで有希っこと一緒に売り子やってくれるんだって? ありがとっ!」

ハルヒ「あの、ポスターとかでお世話になっちゃったから、恩返しと思って…///」

鶴屋「あははっ! そんなの気にしなくていいのに。ハルにゃんは律儀だなぁっ!」

みくる「でもお陰で楽しくなりそう」

鶴屋「私もせっかくだから、イベントで『ハルヒ』4コマのコピー本を出すことにしたよっ!」

ハルヒ「わ、楽しみですっ!」

みくる「鶴屋さん、もうイベントはすぐですけど、進んでるんですかぁ?」

鶴屋「もちろん! 昨日は朝方までやって、レベルが50を超えたさっ! 隠れキャラも出したしね!」

みくる「ぬはwww 進んでるのはゲームの方でしたかぁww」

(ああ、なんか頼りになる感じだった鶴屋さんがいきなり駄目っぽい人に見える……)

キョン「よ、涼宮。今日は1人か?」

ハルヒ「きょ、キョン君/// うん、長門さんは用事があるから、先に帰ったよ」

キョン「そっか。じゃあ途中まで一緒に帰ろうぜ」

ハルヒ「う、うん…」


ハルヒ「きょ、キョン君はGWの予定とかあるの?」

キョン「ああ、国木田達と遊ぶ約束はしてる」

ハルヒ「ふーん」

キョン「あと、アニ研の集まりも、行かせてもらうかもしれん」

ハルヒ「え――――――っ!?」

キョン「谷口が行きたがってるからな。迷惑か?」

ハルヒ「そそそ、そんなことないけど…」

(ど、どういうトコか分かって来るのかな? わかってないよね……)

(ドン引きされそう…)ガクブル

キョン「…正直な、お前らが羨ましいとも思うんだ」

ハルヒ「え…?」

キョン「いや、俺、部活もやってないし、何かに夢中になれるものもないしな。このままじゃいかんとは思うんだが…」

ハルヒ「そうなんだ……」

キョン「それに谷口がさ、朝倉にぬいぐるみのデザイン頼まれてたろ。なんかな、こういうのは変かもしれんが、少し焦ったっつーか…」

ハルヒ「焦る?」

キョン「ああ。普段、アホなことばっかり言ってる谷口にも取り柄があって、人に頼られてる」

ハルヒ「わ、私だって別に取り柄なんて…」

キョン「でも涼宮だって長門だって、俺からは最近生き生きしてるように見えるぜ」

ハルヒ「そ、そう?」

キョン「ああ。アニ研の先輩達もそうだけどさ、みんな夢中になれるものがあって……なのに俺は何をやってるんだろうな、って思っちまったのさ」

ハルヒ「キョン君…」

キョン「はは。涼宮には変な話ばっかりしてるな、俺」

ハルヒ「う、ううん、いいよ。気にしないで」

キョン「ありがとな」

ハルヒ「う、うん。キョン君にも何か夢中になれるもの、見つかるといいね」

キョン「ああ」

(あー、そうじゃなくて、もっと気の利いたことを言いたいのに…)

キョン「じゃあな、涼宮」

ハルヒ「うん、また明日」

キョン「あ、そうだ。涼宮、俺の中学のときの同級生で、佐々木ってのがいるんだが、お前も知り合いなのか?」

ハルヒ「え? え? え? だ、誰?」

キョン「ええっ? 知らないのか?」

ハルヒ「う、うん」

(佐々木って、あの佐々木?)

(いやいやいやいや、だから現実とフィクションの区別はつけようよ、私)

キョン「おかしいな……この前偶然会ったとき、お前が元気にやってるか訊かれたんだが……」

ハルヒ「え? で、でも…」

キョン「うーん、あいつの方が勘違いしてるのかもな。変なこと言って悪かった」

(佐々木………キョン君の同級生にも佐々木っていたんだ………)

(私のこと知ってるって………塾が一緒の子かな……覚えてないけど)

(キョン君が学校以外でも私の話をしてくれてたのは嬉しいのに………普通に喜べない……)

(…………本当にこれは現実なのかな………なんか怖いよ……)



私はまだ知らなかった。
それが終焉への前奏曲(プレリュード)だったことに――――――



(って、中二病っぽいナレーションを入れてる場合じゃなくてwwww)

(本当に何だろ…)


(GW、楽しかったな……)

(イベントで売り子するのは緊張したけど……キョン君の私服見れちゃった///)

(カッコよかったなぁ)

(長門さんもコスプレ似合ってたなぁ……けっこうノリノリだったしw)

(マジ可愛いし、他にも色々やって欲しいなぁ)

(みくるちゃんはいつものメイド服でちょっと残念。別のコスプレ見たかったな)

(鶴屋さんの4コマ本も面白かったなぁ、絵も綺麗だったし……会場でもハルヒ本ゲットできたし、参加して本当に良かった)

(ホントは18禁のキョン×ハルヒ本も欲しかったけど………みんながいるトコじゃ買えないよね……)

(高校生になって、まさかこんなことになるとは思ってなかったな……)

(ぼっちになって、大人しく3年間過ごすんだと思ってた…)

(なんか、夢みたい……)

(学校がこんなに待ち遠しいものになるなんて…)

ハルヒ「そうだ、みっちゃんにメールしてみようかな…」

(彼氏できてリア充になっちゃったみっちゃん……私がイベントに行ったって言ったら、何て言うかな…………)

(うん。あんまり深く考えないで、元気にやってるってだけ送ろう)

ピッ ピッ ピッ

(………あれ?)

ピッ ピッ ピッ ピッ

(みっちゃんのアドレスがない………)

(嘘でしょ………なんで?)

ピッ ピッ ピッ

(待ってよ…………だって……………)


(みっちゃんって……………どんな子だったっけ…?)

阪中「ハルにゃん! 大変なのね!」

ハルヒ「あ、阪中さん、おはよう。どうしたの?」

阪中「9組に転校生が来るんだって!」

ハルヒ「へー、そうなんだ」

阪中「へーそうなんだー、じゃないのね! これは一大事だよ、ついにSOS団全員が揃うんだから!」

ハルヒ「うぇえええ!? て、転校生は古泉君って言うの!?」

阪中「いや、まだどんな人かわかんないけど」

ハルヒ「…………」

阪中「でもきっと古泉なのね! 二度あることは三度あるって言うじゃない!」

ハルヒ「いや、三度も四度も起こってるし、まさかそこまで偶然は続かないよぉ」

谷口「よぉ、何をそんなに騒いでるんだ?」

阪中「谷口君、9組に転校生が来るんだって!」

谷口「ほぉ、ついに古泉登場か。ホントはイケメンはいらんのだがなぁ」

ハルヒ「いやいやいやいや、そんな規定事項みたいに言われても! 女の子かもしれないでしょ?」

谷口「それなら大歓迎だ!」キリッ

阪中「ううん、きっと古泉なのね! 出来ればキョン君とイチャイチャするのを希望!」

谷口「いや、人の友達を勝手に妄想エンジンに組みこまんでくれ…」

ハルヒ「わ、私も嫌…」

(まさか……そんなことないよね?)

(でも………ホントに古泉一樹が転校してきたら………)

(あー、駄目駄目、厨くさい考えしか浮かんでこないよ)

(…………………)

(キョン君の元同級生の『佐々木』………何時の間にか思い出せなくなった友達の『みっちゃん』………)

(……不思議なことが起こってるのは確かなんだよね……)

(…………………)

(『消失』の世界………………)

(いやいやいやいや)

(第一、私、ジョン・スミスなんて知らないし、あんなことする度胸もないし……)

(あー、こういうときキモオタの自分が恨めしいよ)

(まともな考えがさっぱり浮かんでこない……)

―文芸部―

(今日は転校生が来る日だったな……結局、なんか怖くて確かめられなかったけど……)


―コンコン―


長門「!」

ハルヒ「!(今度こそ入部希望者!?) は、はい!!」

キョン「よう」

長門「………」

ハルヒ「あ、あれ? キョン君、どうしたの?」

キョン「え? お前も知らないのか? 朝比奈さんに呼ばれたんだが…」

長門・ハルヒ「???」

ハルヒ「はい、キョン君、お茶」

キョン「お、すまんな」

ハルヒ「みくるちゃん、何だろうね? 多分、SOS団のことだと思うんだけど」

キョン「ホントにやるのか? まあ、と言っても遊びの口実か…」

ハルヒ「うん」

キョン「今、長門に借りて続編を読んでるんだが、野球とか映画撮影とか面白そうだよな」

ハルヒ「あ、『退屈』まで読んだんだ。『消失』は?」

キョン「今読んでる最中……って、この話はしねぇぞ。ネタバレされたら嫌だからな」

ハルヒ「あはは。わかってるって」

みくる「みなさーん、期待の新人を連れてきましたよぉ~」

ハルヒ・長門・キョン「!!!!」

(嘘……嘘だよ……まさか、そんな…)

古泉「古泉一樹です。よろしくお願いします」

ハルヒ「…………」

長門「…………」

キョン「…………」

みくる「えへへ。びっくりしたでしょ~。私も阪中ちゃんから聞いてびっくりしたんですよぅ」

キョン「確かにこりゃ驚きだ」

古泉「驚いたのはむしろ僕の方ですよ。まさか僕が転校することによって、SOS団が勢ぞろいするなんてね」

ハルヒ「古泉君も『ハルヒ』知ってるんだ」

古泉「ええ。自分と同姓同名の人物が出てくるラノベがあるのをネットで知りまして。試しに読んでみて面白かったので出版されている分は全巻読了しました」

キョン「おっと、その話題はそこまでだ。俺はまだ全部は読んでないからな」

古泉「ふふ。わかりました」

みくる「ふぇー、みんな読んでるんですねー。私も読んでみようかな」

ハルヒ「あれ? みくるちゃんは読んでなかったの?」

みくる「はい。私はアニメを観ただけなんですよー」

古泉「アニメの方にハマったなら、是非読むことをお勧めいたします。面白いですよ」

みくる「そうしてみますね」

古泉「それで」

キョン「ん? なんだ?」

古泉「こちらのSOS団は何を目的としたクラブなのでしょう? やはり宇宙人や未来人や超能力者と遊ぶのを目的としてるのでしょうか?」

ハルヒ「ちょ、ちょっと待って! クラブじゃないよ! ここは文芸部なんだから、そこは譲れませんからね」

長門「……」

キョン「遊びの口実と言ったところだろ? 学校側に申請したって通るわけもないしな」

みくる「せっかくSOS団と同姓同名がこんなに集まったんだから、たまに集まって遊びたいなー、って。駄目ですかぁ」

古泉「なるほど。そういうことでしたら構いませんよ」

―帰り道―

キョン「朝比奈さんは?」

ハルヒ「鶴屋さんと一緒に帰ったよ」

キョン「じゃあ4人で帰るか」


キョン「古泉、どうだ? この学校は」

古泉「まだ1日目ですからね、まだ何とも言えませんが、少なくてもこの坂道には辟易させられそうです」

キョン「ははは、確かにな」

古泉「そう言えば『涼宮ハルヒの憂鬱』の世界でも、この長い坂は出てきますね」

ハルヒ「う、うん。実は受験のとき、嬉しかったんだ、えへへ」

古泉「嬉しい?」

キョン「ああ、こいつは前から『ハルヒ』のファンだったそうだからな」

古泉「なるほど。ではこの状況、涼宮さんにとって堪らないことでしょうね」

キョン「SOS団だけじゃないぞ。ウチのクラスには国木田、谷口、朝倉もいる。朝比奈さんの友達は鶴屋さんだ」

古泉「そうですか……………それで皆さん、これは本当に偶然だと思っているのですか?」

(!!!!!!!!!!)

キョン「はは、偶然じゃなかったら何だよ」

古泉「僕にはどうにも、これが偶然には思えないのですよ。僕たちは名前だけでなく、外見も性格も小説の人物と被ってます。むしろ、本人だとは考えられないでしょうか?」

キョン「………おい、お前は電波さんなのか?」

古泉「いえ、もちろん、自分がおかしなことを言ってるのは自覚しています。安心してください」

キョン「だったら…」

古泉「実は転校してくるちょっと前の話です。僕の携帯に知らない名前が登録されているのを見つけたのです」

ハルヒ「ま、まさか…」

古泉「ええ、知らない名前は4つもありました。―――新川、森、多丸兄、多丸弟―――の4つです」

長門「…………」

キョン「待てよ。お前が前にいた学校の友達の仕業じゃないのか? 誰か『ハルヒ』を知ってる奴が、お前が古泉一樹だからってイタズラしたとも考えられるだろ」

古泉「もちろん、その可能性は最初に考えましたよ。でも僕は、思いきってこれらの番号に掛けたことがあるのです」

ハルヒ「ええっ!? そ、それで?」

古泉「結果を言いますと、森さんは女性、その他の人達は男性でした。もちろん、全員大人の方です。彼らが『涼宮ハルヒの憂鬱』に出てくる人物だと言っても、不思議じゃない感じだったのですよ」

キョン「相手は? お前に覚えがあったのか?」

古泉「いえ、まったく覚えがないと言われてしまいました。しかし、彼らの携帯にも僕の番号は登録されていたそうです………」

ハルヒ「…………」

長門「…………」

キョン「……笑えないな。まったく笑えない。それじゃあ、この世界は何だってんだ?」

古泉「これは想像にしか過ぎませんが、今の世界は涼宮さんに改変されてしまった世界なのではないでしょうか?」

ハルヒ「そ、そんな……私……」ガクブル

キョン「おい、涼宮、本気にするな!」

ハルヒ「だって……だって……」

キョン「この世界が改変されたってんなら、改変される前の世界が『涼宮ハルヒの憂鬱』の世界だってのか?」

古泉「そうなるでしょうね」

キョン「馬鹿馬鹿しい。何で改変される前の世界が小説なんかになってるんだ?」

古泉「改変される前の世界を惜しんで、涼宮さんが伝記として残したいと願った。僕はそう解釈しています」

キョン「だがな、お前はさっき俺達がハルヒのキャラに似てると言ったが、肝心の涼宮が似てるのは見た目だけ、性格は全然違うぞ。俺が保証してやる」

ハルヒ「あ、あのっ、見た目もあんなに可愛くないしっ、それに勉強も運動も全然駄目だよっ。オイラーなんかも知らなかったしっ!」

古泉「涼宮さんがある程度、自分の願望を物語に織り込んだとしたら、その矛盾も解消されるんですよ」

ハルヒ「あ…」

(自分を超人主人公にするとか、むしろ、めっちゃ黒歴史じゃん…///)

キョン「もうひとつの可能性だってあるぜ。つまりお前が今、出鱈目を言ってる可能性だ!」

古泉「ふふ、そうですね。今の話を証明することはできません。例えば今、新川さん達に電話をしてみたところで、僕とグルでないと言う証明はできませんから」

キョン「…………」

ハルヒ「…………」

長門「…………」

古泉「ふふっ」

キョン・ハルヒ・長門「!?」

古泉「冗談、冗談ですよ。皆さんをからかっただけです」

キョン「あ、ああ。そりゃそうだよな。くそっ、騙されちまった」

キョン「まったく。悪趣味だぞ、お前」

古泉「もうしわけありませんでした」

ハルヒ「…………」

長門「…………」


古泉「では、僕はこちらですので」

キョン「ああ、またな」

ハルヒ「さよなら」

長門「…」

ハルヒ「……………」

キョン「おい、まだ気にしてるのか? あんなの古泉の出鱈目なんだから本気にするなよ」

長門「…………」

ハルヒ「……キョン君………ミヨキチって誰?」

キョン「は? 妹の友達のか? 何で涼宮が…」

ハルヒ「春休みにその子とデートした?」

キョン「おい、デートったって、相手は小学生だぞ。あれはミヨキチが子供だけで入りにくい映画とか茶店とかに俺を付き合わせただけであってだなぁ……」

ハルヒ「………」

長門「………」

キョン「……って、何でその話を知ってるんだ? まさか…」

ハルヒ「そのエピソードは8巻目『涼宮ハルヒの憤慨』に出てくるの……」

キョン「……………嘘だろ」

ハルヒ「…ずっとおかしいと思ってた。私、こんななのに高校でぼっちにもならずにイジメにも遭わずに、長門さんとか友達できて、みんなに親切にしてもらって……」


キョン「涼宮」

ハルヒ「当たり前だよね、自分の都合のいいように世界を改変しちゃったんだもん。自分のわがままで!」

キョン「まだ決まったわけじゃない!」

ハルヒ「そうに決まってるよ。じゃなかったら、私みたいに取り柄もないキモオタ、こんなに楽しい高校生活を送れてるわけない…」

キョン「ふざけんなよ。俺はお前と話してるのが楽しかったから一緒にいたんだ。世界の改変なんか知るかっ」

ハルヒ「だって……だって……」ヒック

長門「私も」

ハルヒ「長門さん…」ヒック

長門「私もあなたと一緒にいるのは楽しい。この気持ちは嘘じゃない」

ハルヒ「ふぇっ、ふええ」

キョン「朝比奈さんたちだって国木田たちだって同じだろうさ。あんまり自分を卑下するもんじゃない」

キョン「それじゃあな、涼宮。あんまり考え込むんじゃないぞ」

ハルヒ「うん…」

長門「待って」

キョン「どうした?」

長門「彼女と2人だけで話がしたい。先に帰って」

キョン「……わかったよ。それじゃあな、2人とも」

ハルヒ「うん、また明日」

長門「また明日」


長門「私の家に来て欲しい」

(でっかいマンション……)

長門「ここの708号室が私の部屋」

ハルヒ「708号室…(やっぱり…)」

長門「そしてここの505号室には、朝倉涼子がいる」

ハルヒ「……」


長門「上がって」

ハルヒ「おじゃまします」

(………こたつしかない………これじゃまるで……)

長門「私は親の顔さえ覚えていない」

ハルヒ「!?」

長門「もちろん、名前も。古泉一樹の話を聞く間でもなく、私はこの世界に違和感を持っていた」

ハルヒ「でも、キョン君とは幼馴染なんだよね?」

長門「そう。でも、そう思っているだけ。近所のわけでもないし、学校で一緒だった記憶もない」

ハルヒ「そっか…(キョン君も記憶が曖昧みたいだった…)」

長門「そもそも私は、高校に入る前の記憶がほとんどない」

ハルヒ「……じゃあ、やっぱり長門さんも、今の世界は改変された世界だと思ってるんだよね」

長門「…」コク

ハルヒ「私ね、高校に入ってからずっと幸せだった。いろんな人に巡り会えて、ずっと楽しかったの」

長門「そう」

ハルヒ「だからもし今、世界が改変されちゃったら、凄く悲しい。でも私は既にそれをやっちゃったかもしれないんだよ、自分のわがままで。それが凄く怖いよ」

長門「……あなたはもうひとつの可能性を忘れている」

ハルヒ「へ?」

長門「世界を改変したのは誰なのか……」

ハルヒ「……………あっ、『消失』!!」

長門「そう。この世界は確かにあなたにとって都合のいい世界なのかもしれない。けれど、私にとっても都合のいい世界」

ハルヒ「そうなの?」

長門「あなたと言う大切な友達ができた。彼とは幼馴染。そしてあなたたちを通じて、人の和の中にいることができている…」

ハルヒ「長門さん…」

長門「私も同じ。今がとても幸せだと感じている…」

ハルヒ「でっ、でも違うよ。長門さんが改変したわけない」

長門「? どうして?」

ハルヒ「だって……あれ? なんで絶対違うって確信持ったんだろ……あれ?」

長門「けれど小説とは違い、私たちの誰も改変前の世界を覚えてない。今となっては確かめるすべもない」

ハルヒ「…………あっ! 佐々木!!」

長門「?」

ハルヒ「キョン君の同級生の佐々木! 私が元気かって、キョン君に訊いたんだって!」

長門「佐々木………あの佐々木?」

ハルヒ「うー、でも男の子か女の子かも訊くの忘れてた。でもきっとそうだよ。明日キョン君に訊いてみよう!」

長門「あなたはその佐々木に覚えはないの?」

ハルヒ「うん、ないよ。中学でほとんど友達がいなかったのに、校外にまで知り合いを作れるわけないし」

長門「そう。なら、彼女が鍵である可能性が高い」

ハルヒ「うん」

長門「会うの?」

ハルヒ「だって私……自分の罪と向き合わなきゃいけないと思うの……今が幸せだから」

長門「そう………」ギュ

ハルヒ「長門さん…」

長門「絶対忘れないで。どんなときでも、私はあなたの味方」

ハルヒ「ふえ……ありがと…」ギュ

長門「?」

ハルヒ「キョン君の同級生の佐々木! 私が元気かって、キョン君に訊いたんだって!」

長門「佐々木………あの佐々木?」

ハルヒ「うー、でも男の子か女の子かも訊くの忘れてた。でもきっとそうだよ。明日キョン君に訊いてみよう!」

長門「あなたはその佐々木に覚えはないの?」

ハルヒ「うん、ないよ。中学でほとんど友達がいなかったのに、校外にまで知り合いを作れるわけないし」

長門「そう。なら、彼女が鍵である可能性が高い」

ハルヒ「うん」

長門「会うの?」

ハルヒ「だって私……自分の罪と向き合わなきゃいけないと思うの……今が幸せだから」

長門「そう………」ギュ

ハルヒ「長門さん…」

長門「絶対忘れないで。どんなときでも、私はあなたの味方」

ハルヒ「ふえ……ありがと…」ギュ

ハルヒ「キョン君、おはよう」

キョン「よう…………うん、元気みたいだな」

ハルヒ「へ?」

キョン「いや、昨日、古泉の奴が変なこと言ったせいで、落ち込んでるんじゃないかとな」

ハルヒ「うん、大丈夫」

(嘘吐き。キョン君だって、ホントかもしれないって思ってるくせに……)

ハルヒ「ありがとう」ボソ

キョン「ん? なんか言ったか?」

ハルヒ「う、ううん、何でも」

ハルヒ「それよりこの前言ってた佐々木さんのことなんだけど…」

キョン「ああ、やっぱり知り合いだったのか」

ハルヒ「見た目可愛いんだけど、男の子の前だと男言葉で話す佐々木さんだよね?」

キョン「ああ、合ってる」

ハルヒ「うん、懐かしいから連絡取りたいんだ。キョン君、佐々木さんの連絡先知ってる?」

キョン「そうだな、家に帰れば名簿があるはずだ。今日の夜に電話するよ」

ハルヒ「ありがとう」

(ケー番交換するほどの仲じゃなかったんだ……ちょっとほっとしたりしてw)

(でも今日会うのは無理だね…)

―放課後―

みくる「今日もお茶淹れにメイドさんが登場ですよー」

ハルヒ「みくるちゃん、こんにちは」

長門「…」コク

みくる「涼宮さん、何読んでるんですかー? 同人誌?」

ハルヒ「ううん。文芸部の歴代の文集です。5年前くらいの先輩が書いてるミステリーが凄く面白くて」

みくる「へぇ……はい、お茶」

ハルヒ「ありがとう」

(そう言えばみくるちゃんって、世界改変に巻き込まれたとしたら、今はどうなってるんだろう…)

(!!! もしかして……未来に帰れなくなっちゃってるとか……)

(私のせいで………)

ハルヒ「ねぇ、みくるちゃん…」

みくる「何ですかぁ?」

ハルヒ「実は私たちは、『涼宮ハルヒの憂鬱』に出てくるキャラの本人なんだ、って言ったらどうします?」

みくる「ふぇ」

長門「………」

ハルヒ「ご、ごめんなさい、いきなり電波なこと言い出して」

みくる「そうですねぇ………」





みくる「ついに気づいちゃいましたか、って言うと思います」

ハルヒ「ふぇえええ!?」

長門「!?」

みくる「急場しのぎだった、と言うか、あちこち矛盾を含んだままでの世界改変だったんです。いつかこの日が来るだろうな、と思ってました」

ハルヒ「やっぱり……」

長門「失念していた。『涼宮ハルヒ』の世界の人物とキャラクターが異なるもうひとり。それがあなた」

みくる「はい。前の世界のときより、ちょっぴり未来から来たみくるちゃんです♪」

ハルヒ「やっぱり私、世界を改変しちゃったんだ! 自分のわがままで!」

みくる「わがまま?」

ハルヒ「そうでしょう? この世界は私にとって都合よ過ぎるもん!」

みくる「なるほど。記憶が蘇ったわけではないんですね………わかりました、全部お話します」

みくる「確かに『涼宮ハルヒ』シリーズは、実際にあったことだけじゃなく、あちこち面白おかしく改変された話になっています」

みくる「でも、おおまかな事実はその通りなんです」

みくる「私は未来から、長門さんは情報統合思念体のインターフェイスとして、古泉君は機関から、それぞれ涼宮さんを観察するために集まりました」

みくる「前の世界でも、SOS団なんてものはありません。涼宮さんはやっぱり文芸部に入って、それを追って私たちも入部しました」

みくる「涼宮さんはアニオタで大人しくておどおどしてて、でもとっても可愛くってなんだかほっておけない、そんな感じの子でした」

みくる「それは今もかわらないですけど」

みくる「私たちは任務だからってだけじゃなく、涼宮さんともっと仲良くなりたいと願うようになりました」

みくる「それで、大人しい涼宮さんを――主に古泉君がですが――あちこち引っ張り回して楽しませるようになったんです」

みくる「涼宮さんは段々明るくなりました。今みたいにね」

みくる「そのうち、涼宮さんはクラスメイトの子に恋をするようになったんです」

みくる「そう、それがキョン君です」

みくる「私たちの根回しによって、キョン君を文芸部に引き入れることに成功しました」

みくる「彼と一緒にいる涼宮さんは微笑ましくて、私や古泉君はニヤニヤさせられましたよ」

みくる「そして色んなことが起こり、何時の間にか長門さんも彼を憎からず思うようになっていました」



みくる「そんなときあの事件は起こりました―――」

ハルヒ「何があったの…?」

みくる「藤原……彼を知ってますね?」

長門「もう1人の未来人。『陰謀』から登場」

ハルヒ「あれ? みくるちゃんは原作をまだ読んでないんじゃ」

みくる「嘘です、ごめんなさい。この世界の勉強のために、世界が改変されてからすぐ読みました」

ハルヒ「そうだったんだ……それで藤原が?」

みくる「私たちは、過去の出来事はすべて規定事項で、そこから外れないよう、時には過去に干渉することが未来を守ることだと思っています」

ハルヒ「うん」

みくる「でも彼はそうじゃない。もっと時間の流れは柔軟なものだと捉えています。そしてそれを証明するために、過去に来ていたんです」

長門「それで?」

みくる「彼が時間の流れを変えようと起こした事故――禁則事項なのでどんな事故か詳しくは話せないですけど――に巻き込まれて………私は死んでしまうんです、涼宮さんの目の前で」

ハルヒ「ええっ!?」

長門「!?」

みくる「涼宮さんはそのことを無かったことにしたいと無意識に強く願ってしまった。これが世界改変の原因だったのです」

長門「そのとき、時間を巻き戻した…」

みくる「そうです。私が死なないための世界にするために」

ハルヒ「……」

みくる「その強力な時空震に巻き込まれる形で、私は事故に遭う直前に引き戻され、未来に戻りました。そして知りました。あの事故さえも、規定事項だったことに」

ハルヒ「ええっ!? じゃあ、未来の人達は、みくるちゃんが事故に遭うのを知ってて放っておいたの? 酷い!」

みくる「仕方ないんです。私たちにとって、改変された今の世界こそが正史だったんですから」

ハルヒ「だからって……」

みくる「アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』はもちろん、私達の世界にもあります。私はてっきりキョン君が後に自伝を書いて、それがアニメ化されたものだと思ってましたけどね」

ハルヒ「そっか、キョン君の視点で書かれてるもんね……それじゃ私達は、これからどうなるの?」

みくる「それは禁則事項です♪」

ハルヒ「あ、そっか」

長門「この世界が、以前の世界と変わったのは何故? あなたを生き返らせるだけなら、そんなことは不要なはず」

みくる「涼宮さんはこの世界を作る前に、きっとその力ですべてを知ってしまったんだと思います。だから、改変のときに自分の願望も織り込んだのでしょうね」

ハルヒ「なんだ、やっぱり私が自分のわがままで世界を改変しちゃったことは変わらないじゃない…」

みくる「わがまま? そうですね、わがままです」

ハルヒ「……」

みくる「長門さんがキョン君を想ってることを知って、勝手に自分は身を引こうとキョン君と長門さんを幼馴染にしちゃいました」

ハルヒ「!」

長門「!」

みくる「時空改変能力は佐々木さんに譲ってます……ふふっ、涼宮さんは謙虚なんですね」

ハルヒ「そっか、だから佐々木さんは私のこと知ってたんだ……」

長門「藤原はどうなったの?」

みくる「藤原さんは、未来に戻って身柄を拘束されました。今回のことで、規定事項は覆せないってことがわかって、諦めてくれたみたい」

ハルヒ「!! あれが事実なら……キョン君が危ない!」

長門「! 朝倉涼子!」


―コンコン―


ハルヒ「は、はい!」

キョン「よう」

ハルヒ「! キョン君、どうしたの?」

キョン「いや、こいつが用事があるらしいんだ」

長門「! 朝倉涼子…」

朝倉「こんにちは。うふふ、どうやらだいぶ役者が揃ってきたみたいね」

ハルヒ「記憶が…あるのね…」

朝倉「そういうこと。さ、長門さん、私の手を握って」

長門「……」

朝倉「やだなぁ、そんなに警戒しないでよ」

長門「……」ギュ

朝倉「それじゃ、確かに渡したわね」

長門「!! あ……あ……あ……!!」ガクガク

ハルヒ「長門さん! 長門さん!! 朝倉さん、一体長門さんに何をしたの!?」

朝倉「待ってよ、酷いことしてるわけじゃないわ」

みくる「長門さん?」

長門「……問題ない。たった今、情報統合思念体とアクセスした」

朝倉「もう、傷ついちゃう」

みくる「あなたのやったことを考えたら、仕方ありませんよぅ」

朝倉「私は涼宮さんの情報爆発に巻き込まれる形で復活を遂げたの。でも情報統合思念体によって危険視されちゃってね、人間やインターフェイス相手に殺意を持った瞬間、情報連結が自動的に解除されるようにリプログラムされちゃったわ」

長門「あなたは危険な存在。そのぐらいの措置は妥当と思われる」

キョン「ちょっ、ちょっと待ってくれ! さっきから何を言ってるのかさっぱりわからん!」

ハルヒ「キョン君。キョン君もホントは気づいてるよね」

キョン「な、何がだ」

古泉「つまり、僕の仮説が正しかった。そういうことでよろしいでしょうか?」

キョン「古泉、いつの間に!?」

古泉「盗み聞きのような真似をしてもうしわけありません」

みくる「みんな、本当のことを知る権利があると思います。もう一度説明させてくださいね」

キョン「なんてこった…」

古泉「いやはや。事実は小説より奇なり、ですよ。まったく」

ハルヒ「ご、ごめんなさい……私のせいで……」

長門「あなたは何も悪くない」

キョン「その通り。自分を卑下するのはやめた方がいい」

ハルヒ「ありがとう……」

古泉「それで……佐々木さんに会いに行かれるのですか?」

ハルヒ「うん……よくわからないけど、そうすることが一番いいような気がするの。それで何か解決するわけじゃないけど…」

古泉「でも天蓋領域のイントルーダー、周防九曜でしたか。彼女も向こうにいるはずです。危険なのでは?」

朝倉「こっちはインターフェイスが3人よ。好きにやらせないわ」

キョン「おいおい、初めっからドンパチやるつもりで乗り込むのもどうかと思うぜ」

みくる「大丈夫、そんなに危険はないと思います。『雪山症候群』みたいなことはありませんでしたし、周防九曜と長門さんたちが争ったこともないと思います」

古泉「なるほど。そこも面白おかしく改変されてるってわけですか」

キョン「やれやれ、何だかややこしいな」

ハルヒ「ご、ごめんね」

キョン「大体だな、何でハルヒをあんな性格にしたんだ?」

ハルヒ「え、えっと、覚えてないからわかんない。自分で考えたのかもわかんないし………でも、ツンデレ萌えだからかなぁ?」

キョン「そんなの知るか」

ハルヒ「ご、ごめん」

みくる「涼宮さん、気にしないで。男共に萌えなんて高尚なものはわからないんですよぅ」

朝倉「そうね。男なんてせいぜいパンチラでハフハフ言ってるのがお似合いだものね」

キョン「悪かったな」

古泉「失礼。話が脱線しすぎてますよ」

長門「話を戻すべき」

ハルヒ「ご、ごめんなさい」

朝倉「ま、そんなわけでキョン君、佐々木とやらをちゃっちゃと呼び出しちゃってよ」

キョン「うーん、ま、いいんだが……さすがに俺からこんな話をするのは勇気がいるぜ。電波さんだと思われそうで」

古泉「しかし、話を聞いた限りでは、彼女もこの状況を理解しているはずです」

長門「あなたはただ、『涼宮ハルヒが会いたがってる』とだけ言えばいい。彼女はそれだけで理解するはず」

キョン「よしわかった。会う約束を取りつけたら、みんなに連絡するよ」

佐々木「はじめまして、涼宮さん。僕は君に会えるのを、一日千秋の思いで待っていたんだよ」

ハルヒ「は、はぁ」

橘「………」ムス

九曜「涼宮――――ハルヒ――――あなたは―――とても――――瞳がきれいね――――」

(わけわかめです。むしろ昆布ですが…)

古泉「さて。話をする前に、互いに自己紹介をしませんか?」

橘「白々しい。どうせあなた達も『涼宮ハルヒ』シリーズを読んでるんでしょう。自己紹介なんて今更だと思いますけど」

長門「………」

キョン「おい佐々木、何だってコイツはケンカ腰なんだ?」

佐々木「色々あるのさ」

橘「…………」

みくる「それで、佐々木さんは、どうして涼宮さんに会いたかったんですか?」

佐々木「それは簡単な話さ。僕は涼宮さんに返さなきゃいけないものがあるからね」

長門「…環境情報を操作する能力」

ハルヒ「うぇええ!? そ、そんな、いきなり返すって言われてもっ」

佐々木「酷いな。僕にはいきなり預けておいて」

ハルヒ「あ、そ、そっか。ごめんなさい…」

佐々木「いや、こんな言い方は卑怯だったかな。なにしろ、あのときの君は普通じゃなかったわけだからね」

ハルヒ「ごめんなさい、覚えてないです…」

橘「私は納得してないんですけどね」

佐々木「橘さん、このことは散々話し合ったはずだよ」

橘「…………」

古泉「佐々木さん、あなたは能力を涼宮さんに戻すことに納得されていると理解してよろしいのですね?」

佐々木「元々、初めから僕はこんな能力は望んじゃいなかったからね。それにこの力を持ってわかった。この力は涼宮さんのところに帰りたがっているんだよ」

ハルヒ「でも、その能力を私が持ったら、また世界を改変しちゃったり、閉鎖空間を作って神人を暴れさせちゃったりするんじゃ……」

九曜「それは―――同じこと―――誰が―――力を持っても―――」

ハルヒ「あれ? でも『分裂』の中で、佐々木さんの閉鎖空間には神人は出ないって……」

橘「………………」チッ

佐々木「キョンが前に僕の閉鎖空間を覗いたとき、僕はまだ力を持ってなかったからね。そういうことらしいよ」

キョン「今の俺は覚えてないがな」

佐々木「そういうわけさ、涼宮さん。この力を返させてもらえないだろうか?」

ハルヒ「うん…」

ハルヒ「ここが閉鎖空間……凄い、ホントに灰色だ」

佐々木「ふふ、私もここへ来たのは初めて」

(あ、口調が…)

佐々木「でも不思議ね。この力をどうやって返すのか、私は教わってないのに完璧に知ってるの」

ハルヒ「うん……ホントに、この力はなんだろうね?」

佐々木「さあ。でも、もし本当にあなたが神様じゃないのなら、いつかこの力は消えて行くものだと思うわ」

ハルヒ「そうなのかな…?」

佐々木「だってあなたには大切な仲間がいるんでしょ? そんな力なくたって、やって行けるハズよ」

ハルヒ「うん……うん……そうだね」

古泉「なるほどね。たった今、僕に能力が芽生えたのを感じました」

みくる「涼宮さんに力が戻ったからですね」


prrrr prrrr


古泉「……森さんからです。どうやら機関が創設されることになりそうですね。それじゃ僕はこれで」

ハルヒ「あのっ、古泉君!」

古泉「はい?」

ハルヒ「これからいっぱい迷惑かけちゃうかもしれないけど、ごめんねっ」

キョン「アホ。お前が謝ることじゃないだろうが」

古泉「その通り。気にしないでください。これは僕の使命なのですから」

ハルヒ「うん、ありがとう」

橘「使命、か……私はこれからどうすればいいんでしょう? 文字通り、神様に見捨てられた気分です」

佐々木「それは申しわけないけどね、神様に祭り上げられる方の身にもなって欲しいな」

みくる「橘さん、能力は能力です。あまり信仰じみた見方をするのは危険だと思いますよ」

キョン「あー、佐々木の友達として言わせてもらうがな、変な色眼鏡で見ないで、こいつと普通に友達になってやってくれないか?」

佐々木「そうだね。それなら大歓迎だ」

橘「キョンさん……佐々木さん……」

キョン「やれやれ、お前までその名で俺を呼ぶのか…」

―帰り道―

九曜「明日から―――よろしく――――」

ハルヒ「こちらこそよろしく。………って、何が?」

九曜「北高に―――転校―――する―――」

ハルヒ「あ、そっか…」

(これからみんなに観察されるんだ……なんか変な気持ち………)

(…………………………)

(………………はっ!)

(え、エロSS読んでるのとか、観察されたりしないよね………)

長門「周防九曜………あなたにひとつ、言っておく」

九曜「―――何―――?」

長門「彼女の観察は許可する。けれど、彼女は観察対象である前に私の大切な友達………彼女を傷つけたら許さない」

ハルヒ「な、長門さん…///」

みくる「もちろん、そうなったらみくるちゃんだって許しません!」

九曜「とも――だち―――私も―――なる―――」

キョン「フレンドリーだな」

(イメージと違い過ぐる……)

―数日後―

九曜「黒猫―――可愛い―――一番―――」

長門「あなたは何もわかってない。三毛猫こそが至高」

みくる「あーあ、キジトラの可愛さをわからないなんて、とんだド素人どもですぅ」

九曜「あなた―――は?」

ハルヒ「えーっとね、眉毛模様とか、変な模様の猫が好きなの。あとデブ猫とかブス猫とか」

九曜・長門・みくる「!!!」

みくる「そ、その答えは卑怯ですよぅ~」ウズウズ

長門「これは…認めざるを得ない」ソワソワ

九曜「デブ猫―――可愛い―――眉毛―――朝倉―――」

ハルヒ「それ本人に言っちゃ駄目だからね!」

―帰り道―

キョン「それで、SOS団の最初の活動は決まったのか?」

ハルヒ「うんっ」

みくる「変な猫探しです♪」

長門「デブ猫、ブス猫、変な模様の猫を探す」

九曜「映像記録も―――残す―――」

キョン「ははっ、変な猫か」

古泉「たいへん興味深いのですが、デブ猫は飼い猫じゃないとなかなかいないでしょうね」

みくる「太ってる子は、あんまり外出もしないでしょうしね」

ハルヒ「そっかぁ。デブ猫を抱っこするの、夢なんだけどなぁ」

キョン「そう言えば駅前で、頭に皿をかぶってるような模様の猫を見たぞ。アレは笑えるかもな」

長門「! 早速、情報が…」

古泉「では、待ち合わせは駅前でよろしいですね」

みくる「ふふっ、楽しみですぅ」

私の名前は涼宮ハルヒ。

そう、あの涼宮ハルヒと同姓同名だ。

ハルヒはいつも事件の中心にいるのに、同時にいつも蚊帳の外にいる。

前の世界のことは覚えてないけど、私も多分、同じだったのだと思う。

きっと私はそれが寂しくて、隠し事ができないように、『涼宮ハルヒの憂鬱』がアニメになってる世界を作ってしまったのだろう。

これからもしかしたら、色々事件があるのかもしれないけど、今の私はSOS団のみんながいてくれるから大丈夫だと思う。


キョン「それじゃ団長さん、これからもよろしく頼むぜ」

ハルヒ「うんっ!」


―fin―

支援ありがとうございました。
初めてSSを人目に晒すので、今でも緊張で動悸が凄いことになってます。
もう、早く最後まで投稿を終えたい、としか考えてませんでした。
途中、さるっちゃうし、こんなに時間がかかるとは…

私ももう寝ます。
読んでくれたみなさん、本当にありがとうございました。

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