やよい「もう疲れちゃいました……」 (142)


※アイドルマスターの高槻やよいちゃんのSSです。

※キャラ崩壊上等。そういうのが嫌な人は回れ右、いろんなやよいちゃんが見たい人はそのままどうぞ。

※書き溜め完結済みですが、まったり不定期投下。

※不親切な心情描写を多くしてますので、意味の分からなかった伏線や描写などの質問は最後に受け付けます。

※たぶん結構長いです。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1379262317



P(765プロのマスコットと言っても過言ではない、事務所きっての元気っ子、高槻やよい)

P(仕事に学業に家事にと、過酷なスケジュールの中でも笑顔を絶やさない)

P(そんな彼女が、最近なにかおかしい)



―――事務所―――


P「……ん?」

小鳥「どうかしましたか、プロデューサーさん?」

P「いえ、埃が」

小鳥「ホコリ?」

P(いつもは掃除をかって出てくれるやよいのおかげで、事務所は常に清潔なんだが……)

小鳥「そういえば最近、やよいちゃんがお掃除しているところを見ていませんね」

P「たまには俺がやろうかな」ガサゴソ

小鳥「ええ!? プロデューサーさんはお仕事があるんですから、私がやります!」

P「それは音無さんも一緒でしょう。……じゃあ一緒にやりましょう。2人でやればすぐに終わりますよ」

小鳥「そうですね。わかりました、2人でやりましょう」ガサゴソ



やよい「……おはようございます」ガチャ

P「まずは上の方から埃を落としていきましょう」

小鳥「じゃあ窓を開けますね。あれ、でもホコリが舞っちゃうといけないから、開けない方がいいんでしたっけ?」

P「多分開けた方がいいんじゃないですか? あ、マスク着けましょうか」

小鳥「そうですね。ハウスダストって結構きついんです、私」

P「えっと、マスクってどこにあったかな…………うわっ!?」

小鳥「どうしました………きゃっ!?」

やよい「…………」ポケー



P「な、なんだ来てたのかやよい。ぴっくりしたよ」

やよい「……え? あ、はい。おはようございます」

小鳥「おはよう、やよいちゃん」

P「おはよう。何してたんだ?」

やよい「なにって、ソファに座ってただけですよ?」

P「そ、そうか。これからちょっと埃っぽくなるけど、ここにいるか?」

やよい「じゃあ応接室にいってます」

P「ああ、わかった。ごめんな」

やよい「…………」スタスタ



小鳥「……プロデューサーさん」ボソッ

P「ええ。どうしたんでしょうね、やよい」

小鳥「最近いつもじゃないですか? なんていうか、生気がないっていうか……」

P「普段のやよいなら、俺たちが掃除しようとしてたら真っ先に手伝おうとしますよね。いや、手伝ってほしかったってわけじゃないんですが」

小鳥「ですよねぇ。なにかあったんでしょうか?」

P「心配ですね……掃除が終わったら、それとなく聞いてみます」

小鳥「お願いします。あ、でも女の子ならではの理由かもしれませんから、深追いは禁物ですからね」

P「さすがに弁えてますよ」



―――応接室―――


やよい「…………」ポケー

P「やよい」ガチャ

やよい「……はい?」

P(目がトロンとしてる……なんだか常に眠そうだな)

P「疲れてるのか? ちゃんと眠れてるか?」

やよい「はい、まあ、たぶん」

P「多分? まあそれならいいんだが。最近学校はどうだ?」

やよい「ふつうです」

P「……そうか、普通か」

P(いつものやよいなら、「すっごく楽しいですーっ!!」くらい言いそうなもんだが)

P「仕事、辛くないか?」

やよい「つらくはないです」

P「家族のみんなは元気にしてるか?」

やよい「すごく元気で、楽しそうです」

P「……」

やよい「……」



P(どうしたもんかな……。なにか辛いことがあるなら、相談してきそうなもんだが。それとも相談したって無駄だと思ってるのか?)

P「やよい」

やよい「はい?」

P「もしも。もしも願い事が1つだけ叶うんなら……なにがいい?」

やよい「……はい?」

P「ちなみに俺は、自分の分身が10人ほしいぞ。これでみんなのことを付きっきりでプロデュースできるからな!」

やよい「……いいですね、それ。私もほしいかもです」

P「そうか? 何人くらいほしい?」

やよい「1人でいいです。それで十分かなーって……」

P「そうなのか? 5人でも10人でもいいんだぞ?」

やよい「いいえ……1人もらえれば、いいんです」

P(そこまで疲れてるってわけじゃないのか……?)

P「じゃあ、他に願い事はあるか?」

やよい「……そうですね」

P(―――ほとんど唇を動かさずに喋るやよいは、そう呟きながら窓辺に視線を移して、物憂げな表情でこう呟いた)



やよい「……末っ子に……なりたいです」



今日はここまでで。


書いてから思いましたが、765プロに応接室ってありましたっけ……?

まあ、あるってことでお願いします!



―――事務所―――


小鳥「ははあ、なるほど」

P「やよいの悩みはつまり、仕事とか学業とか家事のどれかじゃなくって、その全部が嫌になったってことなんでしょうか?」

小鳥「……どう、なんでしょうか。私には違うように思います」

P「え? どういうことですか?」

小鳥「ですからつまり―――」

亜美「おっはろー!」ガチャ

真美「おはおはー!」



P「ああ、おはよう亜美、真美。なんで髪型入れ替えてるんだ? 亜美のそれはズラか?」

亜美「がーん! い、一瞬で見抜かれるなんて……!!」

真美「兄ちゃんさてはニュータイプ!?」

P「亜美、この前買ってやったネックレス、つけっぱなしだぞ」

亜美「あっ!!」

真美「え、ちょっと待って亜美! なにそれ、買ってもらったってどゆこと!?」

亜美「うあうあ→! なんにも聞こえなーい!!」ダッ

真美「待てー! 兄ちゃん独占法違反容疑で逮捕するー!!」ダッ

P「こら二人とも、事務所の中を走り回るな!」

小鳥「あ、応接室には今……!!」

亜美「逃っげろー!」ガチャ

真美「待てー! ……あれ、やよいっち?」

やよい「……おはよう、亜美、真美」ポケー



亜美「どったのやよいっち、元気ないじゃーん! うりうり→!」

やよい「……やめて、真美。痛いよ……」

真美「真美はこっちだよー。って、入れ替わってるんだった」

亜美「見分けがつかないなんて、やよいっちにはお仕置きですな!」

真美「んっふっふ→。どうしてくれようか!」

やよい「……2人とも、やめて」

亜美「あれあれ、本格的にどったのやよいっち?」

真美「どっか痛いの?」

P「亜美、真美。やよいは今疲れてるんだ、俺が遊んでやるからこっちに来い」

亜美「はーい」

真美「ごめんねやよいっち、また今度ね」



P「ったくお前らってやつは」グリグリ

亜美「うあうあ→! 兄ちゃんグリグリはダメだってー!」

真美「暴力反対だよ! DVDだよー!!」

P「それを言うならディーブイ…………やよい!? どうしたんだ!?」

やよい「…………え?」ポロポロ

亜美「えーっ!? なんで!?」

真美「や、やっぱどっか痛いの!?」

やよい「な、なんでもないっ!!」ダッ

亜美・真美「「やよいっち!?」」

P「……やよい」

P(いったいどうしたんだ……?)



―――後日、事務所―――


P「ただいま戻りました」ガチャ

小鳥「あ、プロデューサーさん! やよいちゃんが……!」

P「え?」



やよい「……」グスッ

響「だ、大丈夫だぞ、やよい。自分だって、ときどき調子が悪いときはあるぞ。だからやよいも、これくらいなんくるないさー!」

春香「そうだ、クッキー食べる? 甘いもの食べるとね、いやーな気分がどっかに行っちゃうんだから!」

響「そ、そうだな! あ、ほら、ハム蔵を貸してあげるぞ!」

やよい「……ごべんなざい」グスッ



やよい「……」グスッ

響「だ、大丈夫だぞ、やよい。自分だって、ときどき調子が悪いときはあるぞ。だからやよいも、これくらいなんくるないさー!」

春香「そうだ、クッキー食べる? 甘いもの食べるとね、いやーな気分がどっかに行っちゃうんだから!」

響「そ、そうだな! あ、ほら、ハム蔵を貸してあげるぞ!」

やよい「……ごべんなざい」グスッ



P「いったいどうしたんですか……?」

小鳥「それが、午前のダンスレッスンが全然うまくいかなかったらしくって……事務所に戻ってきてからずっとあの調子なんです」

P「……」

小鳥「他の2人のレッスンを邪魔しちゃったって思ってるみたいで……」

P(……)

P「春香、響。もう昼だ、そろそろご飯でも食べて来い」

春香「で、でもプロデューサーさん……」

響「! ……春香、この前言ってた喫茶店に行こう!」

春香「え、でも私今日お弁t」

響「いいから行くさー!!」グイッ

春香「ちょ、ちょっとー!?」

P(……ありがとな、響)

P「やよい。お弁当食べるなら、応接室使ってもいいぞ」

やよい「……」スタスタ ガチャ

小鳥「……そういうことですか」

P「こういう時は下手に励ますより、1人で心の整理をつける方がいいと思います。……あんまり長いこと1人にするのも危険ですが」

小鳥「それにしてもやよいちゃん、いったいどうしちゃったのかしら……」

P「……」



―――高槻家―――


ピンポーン♪


長介「はーい!」ガラッ

P「やあ、長介くん」

長介「えっ、プロデューサーの兄ちゃん?」

P「今、ご両親はいらっしゃるかな?」

長介「ううん、いないよ」

P「そっか。……単刀直入に聞くよ。キミたちのお姉ちゃんが、最近元気ないんだが……その理由を知らないかな?」

長介「やよい姉ちゃんが……?」

P「ああ。目に見えておかしい」

長介「たしかに、さいきんはなんか元気ないけど……べつにケンカもしてないし、疲れてるのかなって思ってた……」

P「下の子たちとか、ご両親とも、なにか問題はないかな? もしくは、やよいが何か気になることを言っていたとか。ほんの些細なことでもいいんだ、なにか……」



長介「ない……と思うけど。ねえプロデューサーの兄ちゃん、やよい姉ちゃん、そんなにやばいの?」

P「普段があれだけ元気だから気になるだけかもしれないが、少なくとも俺には異常に見えたんだ」

長介「……そっか。父ちゃんたちもけっこうマジで心配してたから、まさかとは思ってたんだけど……」

P「ご両親が?」

長介「やよい姉ちゃん、ここんところ、休みの日はお昼まで寝てることもあるし……お風呂入らないでそのまま寝ちゃうこともあって、すごく疲れてるのかなって」

P「……。ありがとう、助かったよ長介くん。家でのやよいのこと、頼んだよ」

長介「うん、わかった。姉ちゃんのこと、よろしくおねがいします」ペコッ

P「任せてくれ。それじゃ」スタスタ

長介「…………あっ!」

P「なにか?」

長介「そういえばやよい姉ちゃん、こんなこと呟いてたよ」



―――後日、事務所―――


やよい「…………」ポケー



小鳥「なんだかやよいちゃん、日に日に口数が減っていってますよね……。最近、やよいちゃんの声をほとんど聞いてません」

P「……はい」

小鳥「結局、原因はわからずじまいですね……」

P(いや、なんとなくだけど、原因はわかっている。でも……)

小鳥「なにか私たちにできることはないんでしょうか」

P「……できたとしても、それを俺たちがやってしまってもいいんでしょうか?」

小鳥「え? どういうことですか?」

P「多分ですが、やよいの元気がないのは家庭の事情が大いに絡んでいると思います。そんなデリケートな問題を、他人である俺たちが……」

小鳥「た、他人なんかじゃありませんっ!」

P「っ!?」



小鳥「あ、す、すみません……。でも、どうしてそんなこと言うんですか。たしかに私たちはやよいちゃんのご家族ではありませんけど……それでも、765プロの大切な仲間じゃないですか!」

P「……仲間」

小鳥「もし私たちにできることがあるのなら、躊躇なんてしないで実践すべきです! ……まあ、実践できることがあれば、なんですけど」

P(…………。)

P「音無さん。今日、早めに上がってもいいですか?」

小鳥「え?」

P「お願いします!」ペコッ

小鳥「……」

小鳥「なにか、できることがあるんですね?」

P「はい」

小鳥「そうですか。ふふ、それなら……」

小鳥「お仕事はぜーんぶ、任せてください!」ニコッ



―――事務所―――


P「やよい、お疲れ様」

やよい「……おつかれさまです」

P「それじゃ、そろそろ帰ろうか。車に乗ってくれ」

やよい「……いえ……いいです」

P「いやいや、やよいの家に送っていくわけじゃないぞ?」

やよい「……?」

P「まあとにかく乗ってくれ。話はそれからだ」



・・・・・・


P「こっちだ。車から降りて、ついて来てくれ」

やよい「……」

P「やよい、言ってたよな。もしも願い事が1つだけ叶うんなら、末っ子になりたいって。家でも呟いてたくらいだもんな」

やよい「……え?」

P「末っ子はいいよな。特に歳の離れた兄弟とかだと、すごくいい。どれだけワガママ言っても許されるし、思いっきり猫っ可愛がりされたりするしな」

やよい「あの……」

P「まあ今日はお試しキャンペーンってことで、本日1日だけ特別に、やよいは俺の妹だ! つまり末っ子だ! そういうわけで」ガチャ


P「ようこそ我が家へ! そして今日だけは、やよいの家でもあるぞ」




―――P宅―――


P「ほら、上がって上がって」

やよい「……今日は、お母さん……おうちにいなくって……」

P「今日はやよいのお母さん、早めに帰ってくれるそうだ。だから家事の心配はいらないよ。今日は、家のことは考えなくていい」

やよい「……」

P「ご家族にはもう話を通してあるんだ、とりあえず上がってくれ」

やよい「……」

P「ほら」グイッ

やよい「あ……」


―――リビング―――


P「我が家に代々伝わる、秘伝のビーフシチューだ」コトッ

やよい「……」

P「どうした? もしかしてビーフシチュー嫌いだったか?」

やよい「……」

P「そっか、それなら違うのも用意してるぞ! これも我が家に代々伝わる、秘伝のチャーハンだ!」コトッ

やよい「……」

P「これもダメか? じゃあデザートにと思って用意しておいた、特製シャーベットを食べようか!」

やよい「……あの」

P「どうした?」

やよい「食欲、ないです」

P「……そうか。よし、じゃあご飯はやめて、テレビでも見ようか!」

やよい「……」

P(うーん、ちょっと思い切ってみるか)

P「ほら、おいで」ヒョイッ

やよい「あっ……」



『キャッピピピピーン!!』


P「あはは! 真は相変わらずだなぁ。雪歩もちょっと引いちゃってるじゃないか」

やよい「……」

P「……」

P(勢いでやよいを俺の膝に乗っけてみたはいいものの……やよいの体がすごく強張ってるな。さすがに嫌だったか)

P「すまん、やっぱり下ろすな」ヒョイ

やよい「……」

『ウッウー!』

P「あ、やよいが映ってるぞ!」

やよい「チャンネルかえてください」

P「……ああ、わかった」ピッ

『アオイートリー』

やよい「……」

P「お、この前収録した歌番組か。じつはこの時、千早は……」

やよい「テレビけしてください」

P「……わかった」ピッ

やよい「……」

P「……」



P「やよいの家から、着替えとかと一緒に勉強道具も持ってきてるから、勉強を教えようか?」

やよい「……いいです」

P「そっか。まあ勉強の好きな中学生なんて、あんまりいないよなぁ」

やよい「……」

P「やよい、なにかしたいことはあるか?」

やよい「……ないです」

P「うーん、そうか」

やよい「なんにも、したいと思わないんです……」

P「…………。じゃあ、寝るか!」

やよい「……いいんですか?」

P「ああ。この家にいるときは、やよいのしたくないことは何もしなくていい。したいことしかしなくていいし、したいことがないなら寝てしまえばいい」

やよい「……それじゃ、だめな子になっちゃいますよ……?」

P「やよいがどんなにだめな子になっても、俺が面倒見てやる。この家にいる時は、俺がやよいの兄ちゃんだからな!」

やよい「……お兄ちゃん……?」

P「そしてやよいは妹だ。末っ子だ。だからどんなワガママでも言っていいんだぞ?」

やよい「……」

P「シーツとか枕カバーは全部取り替えてあるから、やよいは俺のベッドで寝てくれ。寝室はこっちだ、案内するよ」

やよい「……」

P「やよい?」

やよい「プロデューサー……抱っこ……してください」

P「ああ、いいぞ」ヒョイ

やよい「……」ギュッ



―――寝室―――


P「じゃあ、俺は風呂に入ってくるから」

やよい「……」

P「しっかり寝るんだぞ」ナデナデ

やよい「……プロデューサーは、どこで寝るんですか」

P「ん? 俺は……まあどこでも寝れるさ。……じゃあ、おやすみ」パチッ ガララッ

やよい「……」



―――浴室―――


シャァァァ…


P(失敗、かもしれない)

P(いやそれは流石に早計すぎるか。頭の悪いヤツほど、短いスパンでしか物事を見れない)

P(これを続けていけば、もしかしたらやよいが心を開いてくれる日が来るかもしれない。それがいつになるかはわからないが)

P(もっとやよいの自由にさせるべきなのか、あるいはやよいのように面倒見のいい感じで接するべきなのか)

P(今やよいが求めているのは自由だ……そう思って、この路線で行くことにしたんだが……どうしたものかな)

P(やっぱり俺なんかが出しゃばるよりも、あずささんか音無さんにでもお願いするのが最善策だったんじゃないか?)

P(くそ、俺が弱気になってどうする。不安がやよいに伝わってしまう)

P(これで行くと決めた以上、迷っていてはダメなんだ)

P(反省会は終わりにして、そろそろ体を洗うとしよう)スッ

やよい「……おじゃまします」ガララッ

P「うおおおおおおおおおっ!?」ガッシャーンッ!!



やよい「……だいじょうぶですか?」

P「大丈夫だけど、大丈夫じゃない! なんで風呂に……っていうか、服着ろ!!」

やよい「……私、浩司とか浩三を、お風呂にいれてあげます」

P「そ、そうか」

やよい「はい」

P「……」

やよい「……」

P(え、マジで?)



P「かゆいところはないか?」ワシャワシャ

やよい「……はい」

P「髪が長いと、洗うのも大変なんだな」ワシャワシャ

やよい「……」

P「俺、姉ちゃんしかいなかったから人の髪洗ったことないんだけど、痛くないか?」ワシャワシャ

やよい「……はい」

P「ん。そうか」ワシャワシャ

やよい「……」

P「流すぞ」シャァァァ

やよい「……」

P「よし、じゃあ」

やよい「……からだも」

P「いやいや……それは流石に問題じゃないか?」

やよい「妹だから……じゃだめですか?」

P「うーん……」

やよい「……」

P「いや、やよいがしてほしいんなら、俺はそれに従おう! よし、洗うぞ!」

やよい「……」コクッ



―――――――――

――――――

―――


P「よし、じゃあ次は俺が体を洗うから、やよいは湯船に浸かってていいぞ」

やよい「……」チャプ

P「なんかごめんな、安物のシャンプーとかで。リンスもないし」ゴシゴシ

やよい「……」

P「まあ、今日1日だけの辛抱だからさ」ゴシゴシ

やよい「……」

P(な、なんかものすごい見られてる。落ち着かないな)

やよい「……プロデューサー」

P「ん? どうした?」

やよい「……私、すごくいやな子です」

P「なんだ、急に。やよいは良い子だぞ?」

やよい「いい子じゃないです」フルフル

P「やよい……?」

やよい「……ぜんぜん、いい子なんかじゃないです……」



―――――――――

――――――

―――


P「よっと。さすがに狭いな」チャプ

やよい「……」

P(あれっきり、やよいは俺と目を合わせてくれない。だから後ろから抱きかかえるみたいな恰好になっちゃってるけど、これいいのかな……美希とかだったら完全にアウトなんだが)

P(それにしても、どうしてやよいが風呂場に乱入してきたのか、まったくわからない。1つだけ確かなことは、結局やよいとの間に会話はないし、今もやよいは口を閉ざしたままだってことだけ)

P(さっきは強がったが、やっぱり失敗を認めざるを得ない……か)

P「……ごめんな」

やよい「え?」

P「今日のことは、良かれと思ってやったんだ。でも、こんな空気になっちゃって、ごめん」

やよい「……」

P「俺はプロデューサーとしては成果を上げられても、それだけのヤツだったみたいだ」

やよい「……」

P「だ、だけど、俺や事務所のみんな、やよいの家族が、やよいのことを本当に大切に思ってて、心配してるってことはわかってほしい。……その、だから……力になれることがあったら、言ってくれ。今すぐじゃなくていいからさ」

やよい「……」

P「はは……余計変な感じになっちゃったな。そろそろ上がろうか」ザバッ

やよい「……」

P「体を拭いてあげるから、こっちにおいで」

やよい「……」ザバッ



―――洗面所―――


P「ドライヤー、熱くないか?」ブォーン

やよい「……」コクッ

P「やっぱり長い髪は大変だな。女の子はすごいよ、ほんと」

やよい「……」

P「今日は本当にごめんな。明日からは、今まで通りだ。……まあその、なんだ。仕事の量とか種類を調整してみるよ。やっぱり俺は、兄ちゃんとかじゃなくてプロデューサーとして支えるのが合ってたみたいだ」

やよい「……」

P「ん、こんなもんかな。よし、じゃあ次は歯磨きだな。自分でやるか?」

やよい「……」

P「じゃ、俺がやっちゃうぞ。ちょうど買い置きの新品があるんだ。口開けて」

やよい「……」

P「こういうのも初めてだから、くすぐったかったら言ってくれ」シャコシャコ

やよい「……」

P(なんだかこれ、世話ってより介護に近いかもな)



―――寝室―――


P「よっこらせっと」ポスッ

やよい「……」

P「電気は完全に消してもいいか?」

やよい「……」コクッ

P「じゃあ、消すぞ」パチッ

やよい「……」

P「おやすみ、やよい」ガララッ

やよい「……」

やよい「……」


やよい「……」




―――リビング―――


P「……」カタカタッターンッ

P「ま、こんなとこかな」

P(今日の分を音無さんに押し付けた分、明日の事務は俺も負担しないとな)

P「ふわぁ……もう1時か。今日はいろいろ疲れたし、もう休むかな」ゴロン

P(……結局、何一つ進展はなかったな。くそ、音無さんにあんな大見得を切ったのに、情けない)

P(ちくしょう、どうすればよかったんだ)

P「…………」



―――――――――

――――――

―――


P(……ん?)

ムニュッ

P(なんか……なんだこの感触)

モゾモゾ

P(隣に何かいる? 暗くてよく見えない……)

P(あれ、俺、リビングの電気消したっけ?)

P(もしかして……)

P「やよいか?」

やよい「っ」ビクッ

P「ここフローリングだぞ。こんなところで寝たら、体が痛くなるだろ。それに風邪ひくかもしれないし」

やよい「……」

P「ほら、ちゃんとベッドで寝るんだ」

やよい「……」ギュッ

P「やよい」

やよい「……」ギュゥゥ

P「……はぁ」ムクッ

P「ほら、いくぞ」ヒョイ

やよい「……」



―――寝室―――


P「やよい、ベッドに着いたぞ。離してくれないか?」

やよい「……」ギュゥゥ

P「うーん……」

モゾモゾ

P「しょうがない、一緒に寝ようか」

やよい「……」キュッ

P「怖い夢でも見たか? それとも、枕が違うから眠れなかったか?」

やよい「……プロデューサー」

P「うん?」

やよい「私たちがトップアイドルになったら、プロデューサーはどうするんですか?」

P「どうって、どうもしないさ。今まで通り、プロデュースを続けるだけだよ」

やよい「でも、今までとは、ぜんぜんちがいますよね」

P「ああ。それぞれの分野に特化したプロデュースになるだろうし、それはきっと、今までとはまったく違う、新しいアプローチの仕方になるだろう」

やよい「あたらしいプロデューサーをやとったり、自分でプロデュースしたり、するかもですか?」



P「そうして欲しいと、アイドル自身が言うのなら、俺はそれに従うよ。でもそうじゃない限りは、俺は他人なんかに大切なアイドルたちを任せたりなんて絶対にしたくない。セルフプロデュースにしたって、心配だから極力させたくないな」

やよい「プロデュースが必要じゃないアイドルは、どうするんですか?」

P「その子の必要としてる形で、最後まで寄り添っていくよ。これまでみたいに、二人三脚でさ」

やよい「……」

P「それがずっと気になってたのか?」

やよい「……ほんとに」

P「え?」

やよい「ほんとに……プロデューサーがいっぱいいたら、いいのに……」

P「新しいプロデューサーを雇いたいってことか? なんだ、さっきの質問はそういう意味だったのか。わかった、明日辺り社長に……」

やよい「ばかっ!!」

P「!?」

やよい「おやすみなさいっ」クルッ

P「あ、ああ……おやすみ、やよい」

やよい「……」グスッ



―――――――――

――――――

―――


―――翌朝、寝室―――


P「やよいー。やーよーいー!」ペチペチ

やよい「……ぅ」パチッ

P「お、やっと起きたか。長介くんの言う通り、寝ぼすけさんみたいだな」

やよい「……」ポケー

P「朝食の準備ができたから、そろそろ起きてくれ」

やよい「……ぁぃ」ポケー

P(心ここにあらずって感じだな)



―――リビング―――


やよい「……」

P「大丈夫か、やよい?」

P(やよいは低血圧なのかな……)

P「朝は食べるの辛いと思って、食べやすいように雑炊にしてみたよ。お腹がビックリするといけないから、まずはホットミルクでも飲んでてくれ」コトッ

やよい「……はい」チビチビ

P「ふんふんふーん♪」カチャカチャ

やよい「……プロデューサー、お料理得意なんですか?」

P「まあな。高校から1人暮らし始めたから、結構1人暮らし歴は長いんだ。家事全般得意だぞ」

やよい「……」

P「それに家事できた方がモテるって聞くから、大学時代にかなり修行したんだ。と言っても、こんな仕事してるからそもそも出会いが皆無なんだけどさ。はは……」

やよい「……」

P「誰かのために料理作るのって、すごく楽しいんだな。この歳で初めて知ったよ。やよいが本当に妹になってくれればいいのに」

やよい「……プロd」

P「さあ、雑炊ができたぞ。召し上がれ」コトッ

やよい「……」



P「うーん、やっぱり野郎の手料理じゃ食欲湧かないか? 一応、買い置きのサンドイッチとかもあるけど……」

やよい「……プロデューサー」

P「ん?」

やよい「昨日のビーフシチューとかは……どうしたんですか?」

P「冷蔵庫に入れてあるよ。今日の夜にでも食べようかな」

やよい「……」

P「それがどうかしたか?」

やよい「いえ……雑炊、いただきます」パクッ

P「どうだ?」

やよい「おいしいです……すごく」

P「それはよかった。作っても食べるのはいつも自分だけだからさ、本当に美味しい料理なのかどうかわからなかったんだよ」

やよい「ほんとに、おいしいです」

やよい「…………毎日でも、食べたいくらい」



―――玄関―――


P「さて、朝の用も済んだし、そろそろ事務所に出発しようか」

やよい「……はい」

P「おいおい、そんなあからさまに暗い顔しないでくれ」

やよい「……」

P「そこの玄関が境界線だな。そこから外に出たら、俺たちは兄妹じゃなくなる。……急に勝手なことをして、全く力になれなかったのは本当に申し訳なかったが」

やよい「……」

P「えっと……ほら、今日1日頑張ったら、何かご褒美でもあげるからさ!」

やよい「……ご褒美?」

P「ああ。なんでも好きなものを言ってくれ。現実的に可能な範囲で叶えてみせるよ」

やよい「……いいんですか?」

P「それで元気なやよいが帰ってくるなら、安いもんだよ」

やよい「……」

P(これでやよいが元気を取り戻すきっかけになってくれれば良し、そうでなくとも、やよいが要求するご褒美で、やよいの悩みが逆算できるかもしれない)

やよい「…………」



―――――――――

――――――

―――


―――事務所前―――


P「着いたな」

やよい「……」

P(車内でのやよいはずっと窓の外を見ていて、一言も口をきかなかった。何をそんなに熱心に見ていたのかは知らないが……)

P「やよい。別にいきなり元気いっぱいになれとは言わない。無理せずゆっくり、自然に元の自分に戻っていけばいいんだ」

やよい「……」

P「よし、じゃあ今日も1日頑張るぞ!」

やよい「……」

P「おはようございます!!」ガチャ

小鳥「あ、プロデューサーさん。それにやよいちゃんも。おはようございます」

春香「おはようございます!」

響「おはよう!」



やよい「うっうー! おはようございまーっす!!」ガルーン!!



P「―――ッ!?」




春香「あれ、やよい! 今日は元気いっぱいだね!」

響「なにかいいことでもあったのか?」

P(……えっ……は? どういう、ことだ……?)

やよい「えへへ、今日も1日がんばりますよー! 春香さん、響さん! はい、ターッチ!」スッ

やよい・春香・響「イェイ!」パチンッ

P「……」ポカーン

小鳥「プロデューサーさん、すごいじゃないですか!」ヒソヒソ

P「……え?」

小鳥「昨日、なんだか秘策ありげに早退したと思ったら、たった1日でやよいちゃんを完全復活させちゃうなんて!」

P「い、いや……俺は、何も……」

小鳥「またまたぁ! さっすが敏腕プロデューサーですね! このこのぉ!」ウリウリ

P(……違う……俺は、本当に何も……)


今朝はここまでで。

続きは夜にでも。



応接室の件、ありがとうございます!

いろいろボロが出ると思いますが、そこは脳内補完でお願いします。。。



―――事務所―――


やよい「プロデューサー、お茶どうぞっ!」コトッ

P「……あ、ありがとう」

やよい「小鳥さんと律子さんもどうぞ!」コトッ

小鳥「あら、ありがとうやよいちゃん」

律子「ありがと、やよい」

やよい「ひさしぶりに事務所のおそうじ、がんばっちゃいますよー! うっうー!」トテテ



律子「ホントにやよい、元気になったんですね」

小鳥「ええ、我らが敏腕プロデューサーさんのおかげで!」

P「……」

律子「やっぱりプロデューサー殿の求心力というのは侮れませんね。うちも最近伊織が元気ないので、どうやったのか教えてほしいくらいですよ」

P「いや、何もやってないんだ……」

小鳥「プロデューサーさんったら、今朝からずっとそう言って謙遜するんですよ」

律子「ふーん。まさか人に言えないような方法とかじゃありませんよね?」

P「はは、まさか……」

P(女子中学生を家に連れ込んで、混浴したり同衾したり……あれ、これダメじゃないか?)

律子「ま、なんにせよ、やよいが元気になってくれたのなら安心ですよね」

小鳥「ええ! やよいちゃんが元気だと、なんだか事務所も一気に明るくなったみたいに感じます」

P「……そう、ですね……」

P(理由はわからなくても、昔のやよいが帰って来てくれたのなら、それはよかった……のか?)

P(…………本当に?)


P(……本当にあれは、やよいなのか……?)




―――事務所―――


春香「プロデューサーさん、やよいってばすっかり元気になりましたね!」

響「ホントだぞ! 自分、やよいが2人いるんじゃないかって思ったくらいだもん」

P「……ああ。俺もビックリだよ」

春香「ビックリって、プロデューサーさんがなんとかしてくれたって小鳥さんから聞きましたよ?」

P「俺は、別に何も……。ただ一緒にいただけなんだが」

響「そうなのか? じゃあ、やよいは誰かと一緒にいたかったのかな?」

春香「でもやよいは大家族だし、寂しいとかはないんじゃない?」

響「うーん、でもいっぱい人に囲まれてると、余計に寂しく感じちゃうことってあると思うぞ」



春香「それか逆に、たまには少人数でのびのびしたかったのかもね」

響「あ、きっとそれだぞ! 自分もたまーに1日くらい、家族のみんなと離れて、1人で温泉にでも行きたくなることあるからね!」

春香「それで2日目にはもう、みんなに会いたくなってるんだよね」

響「そうそう! やっぱりうちが一番だなーって思って、家族の大切さを噛みしめるんだぞ!」

春香「元気のかたまりみたいなやよいでも、なにかでストレスを発散できないと、パンクしちゃうよね」

響「自分の場合、パーっと運動でもすれば、辛いこともすぐに忘れちゃうぞ。休みの日に真を誘ったりしてさ」

春香「私はお菓子作りかなぁ。やっぱりおいしいものが作れたりすると嬉しいし、みんながおいしいって言ってくれると、ヤなこともどっかに行っちゃうもん」

響「やよいは、なにか発散できることがあるのかな?」

春香「どうなんだろうね」

P「…………」



―――バラエティ収録現場―――


やよい「えっと……なめくじひょーげん、ですか?」

司会「えーーっと……多分やけど比喩表現って書いてあったのかなぁ?」

やよい「はわっ!? ごめんなさい! ひゆひょーげん!」

タレント「逆に高度な間違え方ですね」

芸人「なんでやよいちゃんが言うただけで、こんなに可愛い言葉みたいになるんでしょうねぇ」

司会「ほんまやで! 芸人お前「育毛剤」って言うてみ!」

芸人「そこは比喩表現でいいでしょ! 俺がソレ言うたら悲壮感しか出ませんよ!!」

やよい「えっと、芸人さんがんばってください!」

芸人「やめて! 素直な応援が痛い!!」

司会「ヒャーッ!!」



―――楽屋―――


司会「やよいちゃんお疲れさん!」

やよい「おつかれさまですー!」ガルーン

司会「なんや最近元気無かったから心配しとったでほんま!」

やよい「ごめーわくおかけしました! でも、もう元気いっぱいですよっ!」ピョンッ

司会「今日もいきなり飛ばしてたしな! すごい良かったで!」

やよい「ありがとうございますっ!」ガルーン



P「やよい、収録お疲れ」

やよい「えへへ、司会さんに褒められちゃいました!」

P「そりゃすごいな。俺から見ても、今日のやよいはすごく良かったよ。これからもこの調子で行こう」

やよい「はい! がんばります!」

P「よし、それじゃ今日の仕事はここまでだ。家まで送るよ」

やよい「おねがいしまーす!」

P「さっきそこで、春香も拾ったんだ。きっとお菓子を貰えるぞ」

やよい「うっうー! 春香さんのお菓子、たのしみですーっ!」

P「それじゃあ駐車場に向かおう」



―――車内―――


春香「あ、やよい! おつかれさま!」

やよい「春香さんも、おつかれさまです!」

P「ここからだとやよいの方が家が近いな。まずやよいを降ろしてから、春香を家まで送っていこう。それでいいか、2人とも?」

やよい「え?」

P(……?)

春香「うぇえ!? だ、だいじょうぶですよ、プロデューサーさん! さすがに私の家は遠すぎますから、駅まで送ってくれれば……」

P「そうか? まあ何にせよ、やよいの家が先だな。それでいいか、やよい?」

やよい「   はい! だいじょうぶです!」ニコッ

P「じゃあ出発するから、シートベルトを締めてくれ」

春香「はい!」パチッ

やよい「はいっ!」パチッ



春香「どうかな、このプチケーキ?」

やよい「おいしいですっ!」

春香「ほんと? えへへー、じつは自信作なんだぁ」

やよい「春香さんはすごいです!」

春香「ありがと、やよい。でもやよいだって料理上手で、すごいと思うなぁ」

やよい「ありがとうございます!」

春香「今日は疲れたでしょ? ゆっくり休まなきゃだめだよ?」

やよい「はいっ!」

春香「やよいの笑顔は癒されるなぁ……。うぅ、やよいみたいな妹がほしかったな」

やよい「えへへっ」



春香「あっ! そういえば、今日帰ったら学校の宿題があるんだった……!」

やよい「それは大変です……」

春香「でも、やよいと違って家事とかあるわけじゃないんだし、これくらいでへこたれてちゃダメだよねっ!」

やよい「春香さん、ファイトです!」

春香「ありがとね、やよい! やよいも学校の課題とかは大丈夫?」

やよい「たぶん、だいじょうぶです!」

春香「あはは、たぶんかぁ……。一応、私も高校生だから、なにかわからないことがあったらいつでも聞いてね?」

やよい「ありがとうございますっ!」

春香「うんうん! 春香お姉ちゃんに、どーんと任せなさい!」

P(…………)


P(俺が神経質なだけか? それで今日は、こんな穿ったようなものの考え方になってしまうのか?)

P(なんだか今の会話……すごく“気持ち悪い”)

P(俺が過敏になってるだけ……なのか?)



―――高槻家前―――


やよい「プロデューサー、ありがとうございましたっ!」

P「ああ。それじゃあ、また明日な」

春香「おやすみ、やよい!」フリフリ

やよい「   おやすみなさい!」

P「ゆっくり休むんだぞ」ブロロン


P(―――やよいの家の前から離れて、車が角を曲がるまで……ルームミラー越しに見えたやよいは、その場から1歩も動かずに棒立ちで、俺たちを見送っていた)



―――車内―――


春香「やよい、元気になってよかったですね!」

P「……そう、だな」

春香「あれ? プロデューサーさん、浮かない顔ですね」

P「いや、別に……。春香は、やよいと話してて、何か変な感じにならなかったか?」

春香「変な感じ、ですか? いえ、特には……」

P「そう……か」

P(……やっぱり、俺の考えすぎか。きっと昨日の一件で、緊張してたやよいの心が上手いことほぐれてくれたのかな)

P「いや、気のせいだな。やよいは元気になってくれたんだろう」

春香「ようやく765プロも元通りですね!」



P「やよいの元気がなくなったことで、ここのところ事務所の雰囲気も沈んでたからな」

春香「やよいは765プロのお日様ですからね」

P「お日様か……。それなら、たまには沈んでもおかしくはないな」

春香「……」

P「……」

春香「あーっ! プロデューサーさんがダジャレ言った! めずらしいですね!」

P「や、やめてくれよ! 違う、そういうつもりで言ったんじゃない! 断じて違うぞ!!」

春香「またまたぁ! プロデューサーさんの渾身のダジャレ、千早ちゃんにメールしちゃおうっと!」ポチポチ

P「おいおい、勘弁してくれ……」

春香「ふふふっ!」

P「あははっ」

P(765プロには、やっぱりこういうやり取りが一番似合っているよな)

P(よし、明日からは元通りの765プロで頑張っていくぞ!)



―――事務所―――


P「戻りました」ガチャ

小鳥「あ、お疲れ様です。やよいちゃんのお仕事の様子はどうでしたか?」

P「絶好調って感じですね。いつもの元気いっぱいなやよいが戻ってきて、共演者の方たちも安心されてました」

小鳥「それは素晴らしいですね。一時はどうなることかと思いましたが、すっかり元のやよいちゃんに戻って安心しました」

P「……そうですね。最初は、なんだか急に戻ったものだから逆に怖かったんですけど、今日1日の様子を見るに、無理してるって感じもしませんでしたし、俺も一安心です」

小鳥「しっかりしてるから忘れがちですけど、やよいちゃんもまだ中学生なんですよね」

P「今が一番多感な時期ですし、今回のことも思春期特有のものだったのかもしれませんね」

小鳥「それじゃあ、昨日プロデューサーさんの分まで頑張った私にもご褒美があってもいいと思います!」ピヨピヨ

P「じゃあ翌日がオフの日にでも、飲みに誘わせてもらっていいですか?」

小鳥「ふふ、楽しみにしてますね」



―――P宅前―――


P「はぁ……」

P(音無さんの事務仕事を手伝ってたら、もう9時か)

P(あれだけの仕事を毎日1人でこなしてるなんて、本当に有能な人なんだな)

P(でも、どれだけたくさんの仕事に追われても、それが誰かの役に立っているのなら頑張り甲斐があるってもんだよな)

P(俺の仕事にしたって、うちのアイドルたちが輝くための礎になっていると思えば頑張れるし、辛いとも思わない)

P(……でもまあ疲れるものは疲れる。幸い今日は作り置きの飯があるし、さっさと食べて、さっさと寝てしまおう)

P「ん?」

P(うちの前に、何か置いてある……)

P(いや違う……!)

P(あれは物じゃない!!)



P「なにやってるんだ、やよいっ!?」



やよい「あ、おかえりなさい、プロデューサー!」ニコッ




P「お、おかえりって……お前、どうやってここに……」

やよい「今日の朝、車でプロデューサーのおうちから事務所までの道をおぼえましたから! いったん事務所までいって、そこからあるいてきました!」

P「歩いたって……事務所からだと1時間以上はかかるだろ!! というか、いつからここにいたんだ!?」

やよい「えっと、どれくらいだろ……。ぜんぶ家事おわらせてから、6時にはうちを出たんですけど」

P「はぁ!? 6時だって!? じゃあ1時間以上もここでこうやって……!!」

やよい「もぉ、そんなことよりプロデューサー! 約束、わすれてないですよね?」

P「や、約束……?」

やよい「ご褒美、です」

P「……あ、あぁ……もちろん忘れちゃいないが」

やよい「えへ。私の家の前で、まるで今日はもう、お別れみたいなこと言ってたので、忘れちゃってるのかなーって思ってましたっ!」ニコニコ

P「……」



やよい「それじゃあ、おうちにいれてください」ニコッ

P「……なあ、やよい。もしかして、嘘だったのか?」

やよい「うそ?」

P「今日のやよいは……元気いっぱいなやよいは、“フリ”をしてたのか?」

やよい「なに言ってるんですか、プロデューサー?」

P「……」

やよい「私、もうおなかぺこぺこです。プロデューサー、いじわるしないで、はやく中にいれてください。鍵を、あけてください」スッ

 ガチャガチャガチャガチャッ!!

P「!」ゾクッ

P(やよい……お前は一体、何を考えているんだ……?)

 カチャッ

P「……あ、開けたぞ」

やよい「それじゃあ、中に入りましょう!」ニコッ



―――P宅―――


バタン

カチッ ガチャッ


P「何もチェーンまで掛けなくても……」

やよい「っ」ダキッ

P「……やよい?」

やよい「……」ギュゥゥ

P「!」


P『そこの玄関が境界線だな。そこから外に出たら、俺たちは兄妹じゃなくなる。』


P「……中に戻ってきたから、今は兄妹ってことか? やよい」

やよい「……」ギュゥゥ

P「わかったよ。今日はすごく頑張ってくれたもんな。ご褒美に、好きなだけ甘えて良いからな」ナデナデ

やよい「……」コクッ



―――リビング―――


P「我が家秘伝のビーフシチュー。お披露目は2回目になるかな」コトッ

やよい「……」

P「どうした? やっぱり食欲ないか?」

やよい「あーん」アー

P「やよい? 口開けてどうした?」

やよい「あーんっ!」アー

P「……。フー、フー。ほら、あーん」

やよい「……」パクッ

P「どうだ? 口に合うかな?」

やよい「……おいひいれふ」モキュモキュ

P「そっか。たくさんあるからな」

やよい「……あーん」アー



TV『ナニシテンネン! ヒャーッ!!』


P「なぁやよい。俺の膝なんかよりも、ソファの方が断然座り心地がいいと思うぞ?」

やよい「……」スッ

P(膝から降りて、俺の隣に座った……)

やよい「……」キュッ

P(でも俺の袖は離さないんだな)

P「別に俺が嫌だったって訳じゃなくて、やよいの体が痛くならないかなって思っただけだからな?」

やよい「……」ポフッ

P(俺の膝に戻ってきた……)

P「こうした方がバランス取りやすいかな」ギュッ

やよい「……」パタパタ

P(足をパタパタしてるから、どうやらご機嫌みたいだ)



P(昨日は体が強張ってたけど、今日はすごくリラックスしてるみたいだな)

やよい「……」

P(それにしても、昨日は俺と同じシャンプーを使ったはずなのに、どうしてこんなに良い匂いがするんだろう)スンスン

やよい「!」ビクッ

P「ん?」

やよい「……く、くさい、ですか……?」

P「いや、すごくいい匂いがするなって。急にごめんな、さすがに今のはデリカシーがなかったよ。ごめん」

やよい「……」

P「でもアイドルが俺なんかと同じ石鹸使ってたら、いつか変なことにならないか心配だな。こんな時間だが家まで送ろうか? というか、ご家族はこのことを知ってるのか?」

やよい「……」

P「やよい?」



やよい「……私は、いやな子です」

P「え?」

やよい「プロデューサー、この家にいるときは、したくないことはしなくていいって言いました」

P「あ、ああ、そうだな。確かに言ったよ」

やよい「だから、ぜったい帰りません」

P「……」

やよい「そ、それに、1日がんばったらご褒美をくれるって言いました。だから私、これから毎日がんばって、そのご褒美で、プロデューサーのおうちに入れてもらうんです」

P「……」

やよい「私は、いやな子ですから。だから、プロデューサーにすっごく迷惑だってわかってるけど、やめません」

P「……」

やよい「……プ、プロデューサーが、私を、きらいになっても……ぜったい、やめないんです。もう……きめたんですっ!」ジワッ

P「……」



やよい「……っ」ポロポロ

P「」スクッ

やよい「!」

P「」スタスタ

やよい「?」

P「えっと……確かこの引き出しに……あれ、こっちだっけ…………あぁ、あったあった」スタスタ

やよい「あの……」

P「今日1日頑張ったやよいに、ご褒美としてこれをあげよう」チャリッ

やよい「……これ……カギ、ですか?」

P「この家の合鍵だ」

やよい「っ!?」

P「まあこの家は、事務所からもやよいの家からも遠いし、俺が車で送迎することになるだろうから、その合鍵を使うことはないだろうけどな」

やよい「えっ、あ、あの、これ……!?」

P「やよいのことを迷惑だと思うわけないし、やよいのことを嫌いになるなんてこともありえないよ。好きな時にうちに来て、好きなだけ甘えてくれればいい。そういう意味で、それをやよいに預けるよ」



やよい「……」

P「あ、でも他の子には絶対に内緒だぞ? じつは俺の家を知ってるのは社長か音無さんくらいなんだから。とっぷしぃくれっとってやつだな」

やよい「……か」

P「?」

やよい「……家宝にしますっ!!」///

P「えっと……まあ大事に保管してくれると嬉しいかな。はは」

やよい「うぅ、うぁあああああああんっ!!」ギュゥゥ

P「よしよし、怖かったな。気持ちを正直に打ち明けてくれて、ありがとう」ナデナデ

やよい「うっ……ヒック……ぐしゅ……」ギュゥゥ

P「まったく、やよいはもうちょっとくらい嫌な子になってもいいと思うよ」


ちょっと休憩します!

いろいろ書き溜めを書き変えながら書いてます。一体何のための書き溜めなのか……ばかなのか……

ところで高槻家のPに対する呼称って、公式設定ありますか……? 調べても出ないので……特になければ、適当に書いていきます。



トラブルがなければ、今夜中に投下し終えるつもりです。

今の時点で、だいたい6割くらいです。



―――――――――

――――――

―――


―――後日、事務所―――


亜美「兄ちゃん、今度はあのゲーム持ってくるね!」

真美「兄ちゃん、真美たち鬼強いからカクゴしてよね!」

P「はいはい」

やよい「…………」ジー

亜美「どったのやよいっち?」

真美「さっきから真美たちのことじーっと見て」

やよい「……なんで2人はプロデューサーのこと、兄ちゃんってよぶの?」

亜美「え? だって、兄ちゃんは兄ちゃんだし」

真美「兄ちゃんはみんなの兄ちゃんだもんね!」

やよい「……ちがうもん」ボソッ



響「プロデューサー、このプリン食べていいか?」

P「賞味期限大丈夫か? だったらいいぞ」

響「ぎりぎり大丈夫だぞ! いただきまーす!」

やよい「……」ジー

響「ん? やよい、どうした? やよいも食べたいのか?」

やよい「響さんって、どうしてプロデューサーに敬語つかわないんですか?」

響「……え? な、なんだ、急に。そんなの今さらだぞ。結構みんな使ってないし……」

P「言われてみれば、高校生以上でタメ口なのは響だけだよな」

響「!?」

P「逆に、中学生以下で敬語なのはやよいだけか」

やよい「!?」

P「まあ、俺は気にしてないけどさ」

響「……じ、自分はプロデューサーのこと、家族同然に思ってるからな! この事務所のみんなが家族なんだ! だ、だから良いんだ! うん!!」アセアセ

P「そっか、じゃあ響が俺の妹か」

響「えへへ、にぃに!」

P「はは、こいつめ」ワシャワシャ

やよい「…………ちがうもん」ボソッ



―――P宅―――


P「ふんふんふ~ん♪」ジャブジャブ

やよい「……」ジー

P(やよいの熱視線が強烈すぎて、皿洗いに集中できない)

P「やよい、どうかしたのか?」

やよい「……」

P「何かあったら言ってくれよ?」

やよい「……」

P「ふんふんふ~ん♪」カチャカチャ

やよい「……お」



やよい「お兄ちゃんっ!」



P「……?」クルッ

やよい「……っ」///

P(そっか、昼のことを気にして……)

P「なんだ、やよい?」ニコッ

やよい「!!」

やよい「えへへ、なんでもないっ!」ニコニコ

P「そっか」クスッ



―――後日、事務所―――


亜美「兄ちゃん兄ちゃん、遊ぼーよ!」

真美「兄ちゃん兄ちゃん、構ってよ!」

P「んー、はいはい。また今度な」カタカタ

亜美「兄ちゃん、パソコンばっか見てると目が悪くなっちゃうよ?」

真美「お仕事は1日1時間までだよ、兄ちゃん!」

P「んー、はいはい、また今度な」カタカタ

亜美「全然聞いちゃいないね、これ」ヤレヤレ

真美「こうなったら例のとっておきで……」ンッフッフ

やよい「こら、亜美、真美!」ガシッ

亜美「や、やよいっち……?」

真美「ど、どったの……?」

やよい「プロデューサーのお仕事のじゃましちゃダメでしょ! こっちに来なさい!!」グイッ

亜美「なんか最近、やよいっちの律っちゃん化が進んでるYO!」ズルズル

真美「鬼軍曹やよいっちの誕生も近いYO!」ズルズル

やよい「まったくもう! あっちで遊んであげるから、お仕事のじゃまはしないようにね!!」

亜美・真美「「はーい」」



律子「誰が鬼軍曹よ、誰が……」

小鳥「ふふ。やよいちゃんったら、張り切ってますね」

律子「なんだか急に一皮剥けたというか、大人になったっていうか……」

小鳥「生き生きしてますよね。これもプロデューサーさんのおかげですかね」

P「いやぁ、ははは。どうでしょうか」

律子「……ちゃんと声は聞こえてたんですね」

小鳥「プロデューサーさんも、やよいちゃんが立派になったと思いませんか?」

P「ええ、確かに。以前よりもずっと事務所のことや俺たちの手伝いを、率先してやってくれるようになりましたね」

律子「ですね。おかげですごく助かってますよ」

小鳥「すっかり頼れるお姉ちゃんですよね」

P(……頼れるお姉ちゃん、か)



―――P宅―――


やよい「……」ギュー

P「なぁやよい。15分だけ離れてくれないかなぁ……やよいの良い匂いで集中できないんだよ」カタカタ

やよい「だめだもん」ギュー

P「そっか、駄目かぁ」

やよい「……」ギュー

P(家に帰るなり、やよいが俺と向かい合うような形でがっちりホールドして離してくれない)

やよい「……」スリスリ

P「なぁやよい、それ楽しいか?」

やよい「しあわせだよ?」

P「うーん……やよいが幸せなら、それでいいか」ナデナデ

やよい「♪」スリスリ

P(昼間の姉やよいはどこに行ったんだろうなぁ)

P(……まあ、誰にも相談できずに、破裂寸前まで溜め込んだ感情を、ゆっくり消化していってるところなんだろう)

P(これくらいでやよいの助けになるのなら、喜んでってところだな)



―――後日、事務所―――


P「戻りましたー」ガチャ

やよい「っ!!」ゴシゴシ

やよい「ごめんなさい、先、帰りますっ!!」ダッ

春香「あっ、やよい!?」

P「……?」

響「大丈夫かな、やよい……心配だぞ」

P「やよい、どうかしたのか?」

春香「また、例のダンスがうまくいかなくって……」

響「プロデューサーが来るまで、ずっと泣いてたんだぞ」

P「……」

春香「この後お仕事もないし、家に帰ったのかな?」

響「そうだと思う、けど……。最近せっかく元気だったのに……またいつかみたいになっちゃったりしない、よな……?」

春香「それは……」

P「大丈夫だ」

春香「プロデューサーさん?」

P「俺もいろいろと手を尽くす。お前たちはやよいを信じて、レッスンで支えてやってくれ」

響「……うん! お願いね、プロデューサー!」

春香「やよいをお願いします、プロデューサーさん!」

P「ああ!」



―――高槻家―――


ピンポーン♪


かすみ「は、はい……」ガラッ

P「やあ、かすみちゃん」

かすみ「あれ……プロデューサーのお兄ちゃん?」

P「急にごめんね」

かすみ「あの、お姉ちゃんがいつもおせわになってます」ペコッ

P「毎晩お姉ちゃんを借りちゃってごめんね」

かすみ「いえ……プロデューサーのお兄ちゃんのおかげで、さいきんお姉ちゃん、笑ってくれるようになりました……ありがとうございます」

P「それで、そのやよいとお話したいんだけど」

かすみ「お姉ちゃん、今日は帰ってすぐにお部屋にこもって、出てこないんです。……あの、お姉ちゃん、なにかあったんですか?」

P「ちょっと上手くいかないことがあって、それで凹んでるんだ。今日はご両親は?」

かすみ「遅くまで帰ってきません」

P「そうか……。もうご飯は食べた?」

かすみ「いえ、お姉ちゃんが疲れてるみたいだったから、わたしと長介でなんとかしようかって……」

P「それはちょっと……危ないんじゃないか」

かすみ「……でも」

P「良ければ、俺に作らせてくれないか? 晩御飯」



―――居間―――


浩司「おいしー!!!」キラキラ

浩太郎「プロデューサー兄ちゃんって料理人さんなの!?」

P「はは、そんなわけないだろ。ただのプロデューサーさ」

かすみ「でも、ほんとにおいしいです」

長介「……すげー」

P(この子たち、高級料理店とか連れて行ったら、旨すぎて泣き出しそうな勢いだな)

P「他の家事も手伝おうよ。いつもやよいにお世話になってるお礼だから、遠慮せずこき使ってくれ」

長介「……やよい姉ちゃん、大丈夫なの?」

P「とりあえずキミたちのことが終わったら、やよいとお話してみるよ」

長介「お願い、します……さいきんのやよい姉ちゃん、なんか、びみょうに俺の話を聞いてくれなくって……」

P(それは……俺のせい、なのかな……。やよいの元気を取り戻すために、少し荒療治すぎたのかもしれない)

浩太郎「やよい姉ちゃん、ずっとプロデューサープロデューサー言ってるもんね!」

長介「……プロデューサーの兄ちゃんは、なんていうか……麻薬みたいだね」

P「……お、おいおい、勘弁してくれ」



―――寝室―――


P「やよい、入っていいかな?」

「……」

P「入るよ」ガララッ

「……」

P(頭から布団被ってる……)

P「どうしたんだ、今日はうちに来ないのか?」

「……グスッ……だめなんです」

P「なにが駄目なんだ?」

「だって……今日は、ダンスで失敗しちゃったし……元気いっぱいでも、なかったです……」

P「確かにな。春香と響が心配してたぞ」

「……ごめんなさい」

P「それは明日、2人に直接言ってやってくれ」

「……」

P「でも今日は、頑張ったやよいのために出張サービスデーなんだ。だからここに来た」

「……がんばって、ないです」

P「頑張ったさ。結果的に上手くいかなかっただけで、やよいが頑張ってダンスをやってたことには変わりないだろ? それとも手を抜いて踊ってたのか?」

「……いえ」

P「頑張ったなら、ご褒美が必要だよな」ペラッ

やよい「あっ……」

P(こんなに目が腫れて……)



P「やよい、よく頑張ったな」ナデナデ

やよい「……っ!」ウルッ

P「やよいは頑張り屋さんだから、きっともうすぐ踊れるようになるよ。コツがわかったらすぐさ。だから焦ることなんてない」

やよい「うぅぅ……グスッ……」ギュッ

P「やよいは優しいからな。2人に気を遣っちゃうのもわかるけど……でも、あの2人がやよいに怒ると思うか? やよいが一生懸命踊ってるのを見て、なんだコイツちゃんとやれよ、とか考えてると思うか?」

やよい「……」フルフル

P「だろ? やよいが飛び出して、2人ともすごく心配してたぞ。自分たちがやよいを追い詰めてるんじゃないかって」

やよい「……そんなこと、ぜったい、ないです……」

P「ならそれも、明日言ってやらなきゃな。ダンスでミスをして最初からやる時も、迷惑かけてるだなんて考えて焦ってたらまたミスしちゃうからな。だから2人を信じて、リラックスして踊りに集中するんだ。いいな?」

やよい「はいっ」

P「良い返事だ。それじゃあ今日はもう疲れてるだろ。ゆっくりおやすみ」

やよい「……お兄ちゃん……あの……いっしょに寝てくれる?」

P「ああ、もちろんいいぞ」

やよい「……えへ」ギュッ

P「まったく、手のかかる妹だよ」

やよい「……ごめんなさい」

P「いいさ、こんなに可愛い妹の世話ができるならな」

やよい「か、かわいい……」ギュゥゥ

P「どうした?」

やよい「な、なんか、おなか……ジンジンする。なんだろ、これ……」

P「具合が悪いのか? 今日は疲れてるだろうからな、もう寝た方がいい」

やよい「うん。ありがと、お兄ちゃん。おやすみっ!」

P「おやすみ、やよい」



―――後日、事務所―――


P(……くそ、この企画はお断りしたいが、そうすると先方の顔を立てるためにあの企画を……ああ、くそっ)イライラ

P(そもそもこんな急にスケジュール捻じ込んでくるなよな、ったく……今度遠まわしに文句を言ってやろう)

やよい「プロデューサーーー!!」バーンッ!!

P「おはよう、やよい。事務所のドアはもっと静かに開けような」

やよい「おはようございます!」

響「やよいー、嬉しいのはわかるけど落ち着いたほうがいいぞ!」ガチャ

春香「はぁ、はぁ……ふ、2人とも、足はやすぎ……」ゼェゼェ

やよい「プロデューサー、私、ついにあのダンスを踊れるようになったんですよ!!」

P「おお、そうなのか! 偉いぞやよい」

やよい「……あ、はい!」

P「……」

やよい「……」

P「……?」

やよい「ありがとうございます……」トボトボ



春香「あれ、どうしたのかな、やよい……あんなに舞い上がってたのに、急に元気なくなっちゃった」

響「……自分、なんとなく気持ちがわかるぞ……」

P「どういうことだ?」

響「やよい、あのダンスを踊れるようになるまで必死に頑張ったんだぞ。それなのに、プロデューサーの反応があっさりしすぎてたから……」

春香「あー……わかるかも、それ」

P「え!? そんなに淡泊だったか、今?」

響「あとで、もうちょっと褒めてあげないとダメだぞ、プロデューサー」

P「……そっか。そうだな。ありがとう、響」

響「うん!」

春香「私も褒めてくれてもいいんですよ、プロデューサーさん!」

P「さて、やよいはどこ行ったかな」スタスタ

春香「無視ですか、そうですか!」

P「はは、嘘だよ。2人とも、やよいを支えてくれてありがとな」

春香「同じ765プロの仲間ですから!」

響「そうだぞ、当然のことをしたまでだよ!」

P(……この子たちを担当できて、俺は幸せ者だな)



―――給湯室―――


P(響にはああ言ったものの、タイミングを外してから褒め直すのってすごく照れくさいんだよなぁ……)

やよい「……」イジイジ

P「やよい」

やよい「あ……プロデューサー」

P「さっきはやよいの気持ちも考えずに、淡泊な反応しちゃってごめんな」

やよい「べ、べつに、だいじょうぶです」イジイジ

P「家に帰ったら、今日はいつもより特別なご褒美をあげるからな」

やよい「……え?」

P「何がいいか、帰るまでに考えといてくれ。じゃ、えっと……そういうことだから」スタスタ

やよい「あっ……」

P(これで大丈夫かな……機嫌直してくれるといいんだが)

やよい「と、トクベツ……あぅ……」///



―――P宅―――


P「……これを飲めばいいのか?」

やよい「うん」

P「これ、市販のペットボトルの水だろ?」

やよい「うん。買ったの」

P「これを飲むのが、ダンスのご褒美になるのか?」

やよい「半分だけ! のむのは半分だけだよ、お兄ちゃん!」

P「……よくわからんが……まあ従うよ」グビッ

やよい「……」ジー

P「……」ゴクゴク

やよい「す、すとっぷ!」

P「ぷはっ。……なぁ、これ、どういう意味があるんだ?」

やよい「そ、それちょーだい!」

P「……ほら」

やよい「ありがとっ!」///

やよい「ぜ、ぜったいのぞいちゃだめだからね!」ガララッ

P(飲みかけのペットボトルをひったくって、寝室に引っ込んでしまった……)

P「……どういうことなんだろう。今度、響にでも聞いてみるか……」




―――――――――

――――――

―――



―――事務所、会議室―――



やよい「―――え?」

P「俺も律子経由で知らされて驚いたんだが……ほんと、こういうのはどこから嗅ぎ付けてくるんだろうな」

やよい「や、えっと、あの……」

P「中学生くらいなら問題ないと個人的に思ってたんだが、やよいはアイドルだからな。普通の中学生と並べて考えちゃいけなかったのかもしれない」

やよい「あの……」

P「疚しいところはない……つもりだが。けどそれで好き勝手書かれても困るし、そういう不安の芽は摘んでおいた方がいい」

やよい「あのっ!」

P「……」

やよい「ま、まさかとは、思いますけど……兄妹を、やめる……なんて言いませんよね……?」

P「……」

やよい「う、うそ。ですよね……? そうですよね? もうおうちに来るなだなんて、言いませんよね……!?」

P「……すまん、やよい……そこは聞き分けてくれ。やよいのアイドル活動のためなんだ」



やよい「……や……」

やよい「やだっ! うぅぅ……ぜ、ぜったいやだもん! やだぁ!」

P「……やよい」

やよい「そんなの聞かないもん! お兄ちゃんのばかっ!!」ダッ

P「やよい!!」

律子「……」ガチャ

P「律子……」

律子「どうしようもありませんよ、こればっかりは……。まだ写真は撮られていないようですし、警戒しておとなしくさえしていれば、いつかマークは外れます。それまでの辛抱ですよ」

P「…………」



P「……」ガチャ

やよい「……グスッ……」ギュゥゥ

春香「あの、プロデューサーさん。いきなりやよいが会議室から飛び出してきたと思ったら抱き付いてきたんですけど、これは……」

響「いったいなに言ったんだ、プロデューサー!?」

P「……アイドルとプロデューサーとして、これから頑張っていこうってな」

春香「へ?」

響「それって、当たり前じゃないか?」

やよい「当たり前じゃないもん!!」

春香「!?」

響「!?」

P「やよい。2人に当たっても仕方ないだろう」

やよい「でもぉ……!」

P「遅かれ早かれ、いつかこうなっていたことでもあるんだ。やよいが精神的に自立するまでは続けるつもりだったが……」

やよい「私はずっと続けるつもりだもん。だって、私たちにプロデュースがいらなくなっても、ずっといっしょにいてくれるって言ったよね!?」

P「それは……」

やよい「うそつき!! お兄ちゃんなんてきらい!!」

春香「へっ? ……お、お兄ちゃん?」

響「プロデューサーとやよいって、兄妹だったのか!?」

P「いや、じつはな……」



―――――――――

――――――

―――


響「そういうことだったのか……」

春香「な、なんかすごい羨ましいことしてたんだね、やよい……」

やよい「……」

P「どうしても嫌なのか、やよい」

やよい「……」コクッ

春香「それなら、良い解決方法がありますよ!」

P「?」

やよい「?」

春香「今日から私が春香お姉ちゃんになればいいんです! そうすれば家に泊めたって、アイドル同士だから問題ありませんし! さっ、やよい! 春香お姉ちゃんって呼んでいいんだよっ!!」

やよい「春香さん、いま、そういうのいいですから」

響「さすがにないぞ……」

P「春香、給湯室にお菓子あるから食べてきてもいいぞ」

春香「あ、あれぇ!? これ以上ないくらいまともな意見だったと思うんですけど!?」

やよい「……お兄ちゃぁん」ギュッ

P「やよい……」

響「……」

響「もうこうなったら、これしかないぞ」

P「?」

響「木を隠すなら、森の中作戦だ!」

やよい「??」



―――P宅―――


P「狭いところだけど、上がってくれ」

浩太郎「おじゃましまーす!!」ドタドタ

やよい「あっ、浩t」

P「浩太郎っ!」

浩太郎「!?」ピタッ

長介「おぉ……」

P「まずは、手洗いうがいからだ。洗面所はこっちな」

浩太郎「はーい!」

浩司「あーい!」

P「よしよし」



かすみ「……なんかいいなぁ、こういうの」

長介「でもプロデューサーの兄ちゃん、大変じゃないの?」

P「毎日ってわけでもないから、全然大丈夫だよ。でもアパートだから、あんまり騒がれると困るけどな」

長介「夜泣きする浩三は家だし、だいじょうぶじゃないかな」

P「だからこそ、今日みたいなのは君たちのお母さんが家にいる時しかできないんだがな」

浩太郎「プロデューサー兄ちゃん手洗ったー!」

P「よし、ご飯出来てるからリビングで待っててくれ」

浩司「ごはーん!」トテテ

浩太郎「プロデューサー兄ちゃんのごはん、やばいからな!」ドタドタ

長介「こら、走るなってば」テクテク

かすみ「長介、手洗って」

長介「……わ、わかってるよ」



P「……賑やかでいいな。ほんとに家族ができたみたいだ」

やよい「お兄ちゃん」キュッ

P「ん?」

やよい「あの……」モジモジ

P「わかってるよ。でもご飯食べ終わって、2人っきりになったらな」ナデナデ

やよい「うんっ」



―――リビング―――


浩太郎「げぷっ……もう食えない」

やよい「……」チラッ

かすみ「浩太郎、お行儀わるいよ」

P「はは、そんなになるまで食べてもらえると気持ちいいな。今日はあり合わせじゃなくて、材料からこだわったからな」

長介「プロデューサー兄ちゃんって何者……?」

浩司「……」ウトウト

P「浩司がもう眠そうだな。みんな、学校の宿題とかは大丈夫なのか?」

長介「家で終わらせといたよ」

P「そっか。じゃあお風呂に入ろう。長介、浩太郎。浩司をお風呂に入れてきてやってくれるか?」

長介「うん、いいよ。ほら浩司」グイッ

浩司「んー……」ウトウト

浩太郎「プロデューサー兄ちゃんも入ろうよ!」

P「うちの風呂は狭いから、さすがに4人はキツイかな」

長介「浩太郎、はやく」

浩太郎「はーい」



P「3人の着替え出してくるから、やよいとかすみはテレビでも見ててくれ」ピッ

かすみ「はい」

やよい「……」コクッ

P「ジュースとか飲んでてもいいからな」スタスタ



―――脱衣所―――


P(この作戦を響が言い出した時は、何を言い出すんだと驚いたもんだが……)

P(俺にとっても悪くない、かな。……くそ、なんかすごい結婚したくなってきたぞ。お見合いしようかな)ガチャ

P「着替え、ここに置いとくからなー」

長介「あの、プロデューサーの兄ちゃん。これ、ガスどうやってつけるの……?」

P「あ、悪い。このスイッチ押せばいいんだよ。それでお湯が出る」ピッ

浩太郎「すげー、ハイテクだー!」キラキラ

P「俺もこういうタイプのを見た時は驚いたよ。あと、お湯だけ出せばお湯が出るからな。水を一緒に出さなくても、ちょうどいい温度のお湯が出るから」シャァァァ

浩司「おぉー!」キラキラ

長介「どうりで、シャワーの水圧強すぎると思った……」

P「風呂出る時はガスつけたままでいいからな」ガチャ



P「……ん?」

やよい「……」コソッ

P(やよいが寝室から半分だけ顔を出してる)

P「わかったよ。でも、ちょっとだけだぞ」

やよい「……」コクッ



―――寝室―――


やよい「……よかった」ギュゥゥ

P「毎日は無理になっちゃったけどな」

やよい「ううん、じゅうぶん……」

P「春香や響に感謝だな」

やよい「うん」

P「……これからは、事務所で2人っきりの時も甘えて良いぞ」

やよい「ほんとっ!?」パァ

P「良い子にしてればな」

やよい「うんっ! いいこにしてるっ!!」ギュッ

P「よしよし」ナデナデ

P「……」チラッ

かすみ「!」ビクッ

P「」シー

かすみ「」コクッ



―――リビング―――


P「風呂あがった人から、アイス食ってもいいぞ」

浩太郎「まじで!?」

長介「やった!」

浩司「ピノ! ピノ!」

P「わかった。浩司はピノで、長介と浩太郎は、俺の手作り特製シャーベットな」

浩司「!?」

P「嘘だよ。3人分持ってくるな」

長介「プロデューサーの兄ちゃん、まじで何者……?」

P「やよいとかすみは風呂入っておいで。着替えもちゃんと持っていくんだぞ」

やよい「……うん」

かすみ「え、えっと……1人で入ってもいいですか?」

P「え? まあ、いいけど」

かすみ「じゃあお姉ちゃん、さきに入っちゃうね」トテテ

やよい「かすみ……」

P(……出来た子だなぁ)



浩司「あーっ……」キーン

浩太郎「頭が……」キーン

長介「そんないっきに食べるなよ」モグモグ

P「すぐ無くなっちゃったな」

浩司「もっとないの?」

P「人数分しかないよ。食べ過ぎてお腹痛くなっても困るからさ」

かすみ『おにーちゃーん!』

P「ん? どうしたー?」

かすみ『お湯がつめたいですー!』

長介「はは、オレたちと同じことやってる」

P「あ、しまった……かすみには伝え忘れてた」

浩司「……アイス」チラッ

やよい「っ!! 浩z」

浩司「おにーちゃん、ちょーだい!」パクッ

長介「あ! こらっ!」ポカッ

浩太郎「!」

やよい「!」

P「!」

長介「……あ」

浩司「―――。」



浩司「うあぁぁあああんっ!」




P「あー……」チラッ

やよい「……」

浩司「おにーちゃんがぶったぁあああっ!!」ポロポロ

長介「……くっ」チラッ

やよい「……」

長介「わ、わるかったよっ! ごめん! ほら、俺の食えばいいだろ!」スッ

浩司「ヒック……ぐすっ……」

長介「……くそ」ジワッ

やよい「長介、私のぶん食べていいよ」

長介「えっ? いや、オレは……」

やよい「私はたくさん食べたことあるから、いいよ。お兄ちゃんだからって、こんなことでガマンすることないよ」

長介「……やよい姉ちゃん……」

P「……」



P(浩司、浩司)ヒソヒソ

浩司「?」グスッ

P(明日の朝ごはん、ホットケーキなんだが……今アイスをやめとけば、明日のホットケーキにバニラアイスを乗っけてあげるぞ)ヒソヒソ

浩司「!!」

P(それとも今、食べかけのアイスなんて食べるか? どうする? 今はやめとくか?)ヒソヒソ

浩司(うん!)コクッ

P「よし良い子だ」

長介「?」

P「浩司、浩太郎。歯磨きするからこっちにおいで。長介も、それ食べ終わったら洗面所に来てくれ」

長介「え、あ、うん……」

P「ほら浩司」ヒョイ

浩司「うん」ギュッ

浩太郎「……なんか、プロデューサー兄ちゃんとやよい姉ちゃん、父ちゃんと母ちゃんみたい」

やよい「っ!!」

かすみ『おにーちゃーん! さむいよー!』

P「うわ、しまった! 今行くよ!!」ダッ

やよい「…………」


―――――――――

――――――

―――


やよい「さっきはありがとうございました」

P「……やよい?」

やよい「長介を、たすけてくれて」

P「大袈裟だな。それに助けたのは……」

やよい「私、ですよね?」

P「……ああ。長介くんに、長男だからって我慢しなくても良いなんて言って、自分が長女らしく我慢してどうするんだ。ここにいる時は、やよいは末っ子でいいんだよ」

やよい「……今日はずっと、私が長女らしくしなくていいように、しててくれましたよね」

P「それは長介くんや、かすみちゃんも協力してくれただろ。本当に、良い弟妹を持ったな」

やよい「えへへ。自慢の弟妹たちです」

P「うん。……ところで、その口調はどうしたんだ? 今は2人っきりだぞ?」

やよい「いいんです。やっと気づきましたから」

P「……何に?」

やよい「私がほんとになりたかったのは、末っ子じゃなかったんだって」

P「え?」



やよい「いいえ、あのときはそうだったのかもしれませんけど、今はちがうんです」

P「そうか……じゃあ今は、何になりたいんだ?」

やよい「ヒミツです!」

P「秘密か」

やよい「はいっ! ……けど、1つだけおねがいしてもいいですか?」

P「ああ、いいぞ」

やよい「……これからはプロデューサーのことを、お兄ちゃんじゃなくって、Pさんって呼ばせてください!」

P「……いいけど、事務所とか外ではやめてくれよ?」

やよい「ありがとうございますっ!! えへへ、じゃあ次は、私がPさんの体を洗いますね!」

P「えっ、やよいが?」

やよい「なりたいものが、末っ子から変わりましたから!」

P「末っ子じゃない、なりたいもの……か。よしわかった、じゃあ背中をお願いするよ」

やよい「はいっ!」



―――寝室―――


P「よし、じゃあ電気消すぞー。浩司、布団に戻れー。浩太郎はズボン履けー。かすみもマンガ読むのやめろー」カチッ

浩司「ふぁーい」ウトウト

浩太郎「まだねむくないよー」

P「これは俺が大学生の時、実際に体験したことなんだが……」

浩太郎「おやすみなさいっ!!」バッ

かすみ「おやすみなさいっ」バッ

浩司「」

長介「……」バッ

P「さて、俺も寝るか」モゾモゾ

やよい「……」ギュッ


―――――――――

――――――

―――


やよい「Pさん……ねちゃいましたか?」ボソッ

P「まだ起きてたのか、やよい」

やよい「はい。なんだかどきどきしちゃって、ねむれません」

P「……そうか」

P(それは肘から伝わってくる、やよいの鼓動でわかってるよ……)

やよい「今日は、ほんとうにありがとうございました」

P「それは言いっこなしだって。やよいのためなら、これくらいするさ」

やよい「それは私が、担当アイドルだから……ですか?」

P「……」

やよい「えへへ、今はそれでいいです。けどいつか、トクベツになってみせます」

P「……すっかり元気になってくれたみたいだな、やよい」

やよい「はい、おかげさまでっ」

P「それでも今日みたいに、いつでもウチに来て良いからな。やよいも甘えていいんだ」

やよい「はい。これからはずっと、Pさんに甘えちゃいます」

P「おやすみ、やよい」

やよい「おやすみなさい」



―――――――――

――――――

―――



やよい「ねましたか……?」

P「……」

やよい「……」



やよい「大好きです、Pさん」ボソッ



P「……」

やよい「おやすみなさい」ギュッ

P「……」



P(……羊を数えよう)




―――――――――

――――――

―――


―――翌朝―――


やよい「Pさん、起きてください」ユサユサ

P「……ん? やよい?」

やよい「おはようございます。朝ごはんの支度しましたから、リビングに来てください」

P「あれ、なんで目覚まし鳴らなかったんだ?」

やよい「私がとめちゃいました。えへへ、私がPさんを起こすのって、はじめてですねっ」

P「ああ……なんかいいな、こういうの。新婚みたいだ」

やよい「う、うれしいですっ」

P「今日も頑張れるか、やよい?」

やよい「はいっ!」






やよい「うっうー! 高槻やよい、今日も1日、がんばりまーっす!」










おわり。


ここまで読んでいただいた方、ありがとうございます!

お目汚し申し訳ございません!



それでは明日辺り、HTML依頼を出そうと思います!

もし質問などございましたらお答えします。



ひとまず今日のところはおやすみなさい!



修正前は鬱伊織とか妬き美希が登場してたので、微妙にその名残がありますね……



以下蛇足。やよいが怖いのが嫌だ、という方だけ読み進んでください。



★病よいが怖いとの意見がありましたので、フォローのために、少しやよいの内情を書かせてください。


鬱病の代表的な症状

●精神運動抑制→ポケーっとする。思考力が低下。人の話に相槌しか打てない。掃除したり風呂に入ったりなどができない。

●睡眠障害→運動能力・注意力が低下。ダンスなどが困難に。ようやく寝れても、今度は逆に起きられなかったり。

●食欲不振

●マイナス思考→自分の将来は暗い、自分は劣っていて迷惑をかける、大切な人に捨てられると思い込み、焦ったり怯える。
 →焦って必死になるため余裕がなくなり、異常な行動に出る。

・気を遣う人の場合、追い詰められると庇護者以外に対して躁状態で応対し、鬱を隠そうとするケースも。
 →(鬱状態の素と、躁状態の素を使い分けているだけなので、“演技”ではない)



やよいの心理状態

序盤「もう何もかもどうでもいい」→「たすけて!」

中盤「元気になったら捨てられる、元気じゃないと嫌われる」→「この人なら自分を捨てない(かも)」

終盤「偽物(兄妹ごっこ)でもいいからつながりがほしい」→「本物のつながりがほしい」



それでは、HTML化依頼を出してきます。

ありがとうございました!

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