麗奈「南条のことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!!」 (35)

     【9月 12日】

―――――PM 9:00

麗奈「学校の宿題をやりーの」

―――――PM 10:00

麗奈「ドラマの台本を読み返しーの」

―――――PM 11:00

麗奈「明日 南条の奴に渡すプレゼントを考えーの」




     【9月 13日】

―――――AM 5:00

麗奈「………」「ダメだ、結局決まらなかったわ………」

麗奈「あいつに何て言って、何渡せばいいのよぉぉぉ……!」ジタバタ ジタバタ

 アタシは小関麗奈。芸能界に名だたる 世紀の超究極的最強アイドル・レイナサマ

 なんの弱点も短所もなくて 完全無敵なんだけど、気に入らない奴が1人いる

同じ事務所でアイドルをやってる 南条光。アイツのことは、なんていうか スッゴく苦手

 大嫌いでもなくて ましてや全然好きなんかじゃなくて……とにかくワケ分かんない奴

いつからそう思うようになったかは忘れたけど、まぁ アタシみたいな大物は細かいことを気にしないの



麗奈「あれ、こっちの方がいいかしら? もっと明るめにしたら……」

麗奈「いや、このスカートに合わせるんだったら やっぱりそっちの方が……?」



 ………いや、これは大事な悩みよ? 今日1日履いていく靴下の色は 慎重に選ぶべきよね

 別に今日がアイツの誕生日だからって 自分のオシャレにビビってるわけでも、変に気合入れてるわけでもないの。ホントだから!
 これ、細かいことじゃないのよ! スッゴく大事だから!

 正義の味方だか ヒーローだかで、この世のよい子代表みたいな顔しちゃって

麗奈『ったく、なんでこのレイナサマに わざわざ挨拶回りなんてさせるのよ……』

光『そんなこと言うなよー。大事なことだし、ちょっと緊張するけど 楽しいだろ!』




 全然よい子じゃないアタシにも、分け隔てなく優しくて あたたかくて

光『―――とまぁ、こんな風に考えれば この問題もそんなに難しくないんだ』

麗奈『知ってた』

光『なんでアタシに質問したんだ!?』




 アイツはいつだって アタシの反対にいるような……そのくせ 一番近くにいるような、よく分からない奴

麗奈『許せないわね。ライバルアイドルですって? 奴らの控え室にバードミサイルをぶち込んでやるわ!』

光『待て!』

麗奈『止めるんじゃないわよ 南条!』

 
 
 
 
 
 とにかく扱いに困って うっとうしくて 好きになれない奴だけど、


 1年に一度だし……誕生日くらいは 祝ってあげないこともないわ

 
 
 
 
 

 
―――――事務所にて



麗奈(今日はオフなのに来ちゃった)

麗奈(めっちゃくちゃ寝不足のまま来ちゃった)メガトローン




P「おはよう。どうした麗奈、元気じゃなさそうだな」

麗奈「おはよ……別に、普通だけど」

P「寝不足か? 目がトローンてなってるけど、最近頑張らせすぎたか?」

麗奈「平気よ。別に仕事でこうなったわけじゃないし」

P「そうか、何ともないならいいんだが……」

 
 

 
P「ところで 今日はお前オフなのに、事務所来るなんて珍しいな。今日は何かあるのか?」

麗奈「なんにも」

P「疲れてるなら仮眠室つかっていいんだぞ。休日はゆっくりした方がいい」

麗奈「そうね」

P「さっきから生返事ばかりだな。ちょっと心配になるぞ……」

麗奈「あー……」

P(心ここにあらずだな。大丈夫か、麗奈)



P「んじゃ 俺はちょっと出てくる……ちひろさんも留守番してくれてるから、麗奈は楽にしてていいんだぞ?」

麗奈「わかってるわよ」

 
 

 
 
 
P「あぁ、光なら 遅くても夕方の5時には仕事終わって、事務所に戻ってくるはずだから」


P「お祝いの仕方は人それぞれだけど、あんまりおどかしちゃダメだぞ」




麗奈「」

P「行ってきまーす」





麗奈「あっ」「『南条は関係ない』って反論し損ねた……」

 
 
 

 
 
―――――仮眠室にて


麗奈「あいつのいいなりになるのはシャクだけど、レイナサマには休みも必要よね」

麗奈「今日は久々に 1日まるごとオフだったのに。それもこれも南条のせいよ」



麗奈「そう、問題は南条に何をしてやるかだわ」

麗奈「一応ここに来る前にケーキのひとつくらいは買っておいたけど」ガサゴソ

麗奈「プレゼントが決まらないのよね。夕方までになんとか選んでやるわ」

麗奈「んんーーーーー……」

 
 
 

 
 
麗奈「レッスンも仕事も、アイツはいつだって一生懸命よね。手編みのタオルなんかでねぎらってやるのは……」


麗奈「ちょっと無理ね。一朝一夕じゃ完成しないわ」

麗奈「じゃあ、その辺で買ったようなのを渡す?」

麗奈「それは冷たいわね。温かみに欠けるというか、まごころがないって思われるかも」

麗奈「………………」




麗奈「いや、別にまごころとかないから! アタシはアイツに優しくなんてしないし、親愛度とかカンペキに0だし!」ジタバタ

麗奈「そもそもねぎらうって何!? まるでアイツのことを認めてるとか、応援してるみたいな言い方じゃない! 誰よ、そんなこと言い出したの!」ジタバタ

麗奈「そう考えたらタオルなんて却下ね! 絶対にアタシの柄じゃない! ちゃんちゃらおかしいわ!」ジタバタ

麗奈「………じゃあ、他に何がいいの?」

 
 

 
 
麗奈「アイツの喜ぶもの、好きなもの……」


麗奈「……やっぱり ヒーロー関係のなにか?」

麗奈「ヒーローグッズは喜ぶだろうけど、アイツのことだから 並大抵のものならすでに持ってるわよね」

麗奈「っていうか、わざわざ買いに行くのも恥ずかしいし! 中学生にもなってヒーローとか! バッカじゃなかろうか!」

麗奈「もっとこう……プレゼントのチョイスに困らないような、何か別の趣味を持ちなさいよ あのバカ!」




麗奈「はぁーーーーー……」バタッ

麗奈「ダメだわ。何をどう考えてもまとまらない……」

 
 
 

 
 
麗奈(徹夜なんて生まれて初めてだけど、結構キツイのね これ……)


麗奈(目とか頭だけじゃなくて、疲れが腰にも来るんだわ。中学生のみそらで こんなことするんじゃなかった)

麗奈(……南条も、徹夜とかするのかしら?)

麗奈(アイツもアイドルの仕事で忙しいのよね。このレイナサマほどじゃないけど、結構売れっ子だし)

麗奈(今日だって 朝から夕方までお仕事で……)

麗奈(もし予定が変わって、今日のうちに アイツに会えなかったらどうしよう?)

 
 

 
 
麗奈(う…う~~~~~ん、そうなったら…どうするの?)


麗奈(いや、きっと南条は来てくれるはずよ)

麗奈(6月のドリフの時は たまたま南条とユニットを組んで、アタシを助けてくれた……きっとアタシとアイツは 運命の糸で結ばれているから組んだのよ)

麗奈(南条はきっとアタシのことを好きになってくれる)

麗奈(ヒーローヴァ―サスを結成したのも南条よ! だから今頃、アイツもアタシに会いたがってるはずよ)




麗奈(早く南条が帰ってこないかしら……) 足パタパタ

麗奈(もうすぐ来るはず……会いたいな……もうちょっと待ってあげるわ) 足パタパタ

 
 

 
 
 
 
――――――――事務所内の時間は いつまで経っても同じように流れ……


――――――――そのうち麗奈は 待つことと 起きていることをやめた



麗奈「んんぅ………」zzz

麗奈「なんじょぉぉ……」zzz




―――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――

 
 
 

 
 
 
麗奈『今日はいよいよ 南条の誕生日前日。新しいガチャが発表される日よ』


麗奈『いよいよ満を持して、アイツの新Rだか新SRだかが現れるはず!』

麗奈『来ていたのね! 新ガチャ!』

運営『くっくくくくく……ふっふはははははは………!』

麗奈『っ!!?』



運営『 な ぁ ~ ん ち ゃ っ て ♪ 』

運営『くっひひひひ……! 可笑しくって腹痛いわぁ……♪』



麗奈『う、運営、何言って……?』

運営『面白い奴だな、お前。本当に南条のことを……』

運営『なら 見せてやろうかぁ!? もっと面白いものをよォ!!!』

 
 
 

 
 
運営『うおおおおおおぉぉぉぉぉ! 新ガチャ・発表ェェェ!!』


運営『麗奈ぁぁぁああああああああ!!』



       【新・制服コレクション 2013】



麗奈『アンタ、過去のガチャを出したの!?』

麗奈『それじゃあちょっと、本物の新ガチャはどこよ!?』

運営『本物? 何それ? これ、復刻』 『鈍いなぁ。これが新ガチャだよ!』

麗奈『そんな馬鹿な! だってさっきまで、みんなは南条の誕生日前日に期待してた!』 『6月だって、アタシとユニットを組んでドリフを……』

運営『まだ分からないのかよ? ドリフで仲良くしたのも、さっきまで期待してたのも! 俺が封印したモバマスの汚点だよ!』

運営『本物の南条は、【小さな英雄】の一枚っきりでお払い箱ってわけだ!』



運営『ジャンジャジャーーーーン!! 今明かされる衝撃の真実ぅ~~~~~♪』

 
 
 

 
 
 
運営『いやぁ、本っ当に苦労したぜぇ……マヌケなヒーローオタクを演じさせて、つまらねえ背景イラストの差し替えまでしてさぁ』


麗奈『そ、そんな……』

P『光の新録が来ない!?』

東映『姑息な手を……』

円谷『ふん……』



運営『しかしお前らは単純だよなぁ! 南条Pたちの口から出た憶測を、全部信じちまうんだからなぁ! うっふふふふふふふ……♪』

運営『みんなに夢と希望を届けるぅ~~~?? スーパーお仕事タイムぅぅ~~~~???』

運営『うっっっふははははははははぁ!! 楽しかっただろぉ!? あいつとの特撮ごっこぉぉ!!』

運営『わざわざ期待してくれて、ご苦労さん、レイナサマ♪』

運営『うっひゃはははふふはははは……!』

 
 
 

 
 
 
麗奈『ふ、ふざけないでよ……南条が再登場しないわけがないわ!』 『あいつは……あいつはファンの期待を裏切るような奴じゃないんだから!』


運営『じゃあ言ってやる! 南条に興味のないPの贈り物には、Paアイドルとの親愛度の証・あいつのSRが眠ってんだろぉ!?』

麗奈『ハッ!!?』

P『なんだと!?』 『麗奈、まさかお前は知っていたのか!? 光が事実上 永久追放されていることを!』

麗奈『P……それは………』

運営『使わないよなぁ。発揮値・特技のインフレに負けた お手軽なSR……時代遅れのアイドルだもんなぁ~!!』

運営『ふっひひひひひひひ……! ひぁっははははははははははは!!』




運営『ありがとうよ。あいつとの絆を育んで、あいつの相棒になっ て く れ て いて よ ぉ ! 』

運営『ふわぁははははははは! ひゃっ、ひゃはははははははは!! へはははははははは!!』

 
 
 

 
 
 
運営『さぁてぇ……』 『麗奈ぁ、誕生日が来たってこと以外なんの音沙汰もないザマであいつをどうするつもりだぁ~~~~??』


運営『せいぜい祝ってみせろやぁ!!』

運営『どの道 あいつの新録はどこにもねえんだから……』

運営『それもこれも 南条! あいつの背景が招いた結果なんだよ!』 『応援してくれるファンまで巻き込んでなぁ』

運営『あいつにしてみりゃあ…… よ か れ と 思 っ て やったんだろうけどなぁぁ!!?』

運営『あっはっはっはははははははは!! ひゃーーははははははははは!!』

 
 
 

 
 
 
 
光『麗奈……お前はいいよなぁ……』


光『新Rが出たかと思いきや、すぐさまSRが復刻だもんな』

光『ドヤ顔もいいけど、正座させられてる麗奈は 一層可愛いもんな』

光『どうせアタシなんか……』



光『絶望しました。人間やめて ファントムになります』

 
 
 
 
 

 
 
――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――


麗奈「………………」

光「あ、起きたな麗奈。おはよう」 「って言っても、もう夕方だけどな」

麗奈「…………?」

光「なにか悪い夢でも見てたのかな? 麗奈はかなりうなされてたんだぞ」

麗奈「夢……」

麗奈「じゃあ あれは全部夢だったの?」 「現実のアンタは売れっ子アイドルで、みんなの人気者で、夢を与えるスーパーヒーローの南条光なの?」

光「えっ?」

麗奈「いや、なんでもないわ。よかった……」

麗奈(………あの世界線はなかったことにしよう)

 
 
 

 
 
 
光「スッゴく苦しそうに寝てたんだけどなぁ。でも、うかつに起こすのも悪いかと思ってさ」


光「麗奈が自分で起きてくれてよかった。もしかしたら、あのまま目が覚めないんじゃないかと心配だったよ」

麗奈「……夢はただの夢よ。ほんのちょっと疲れてただけ」

光「そうか。でも 戦いに疲れたヒーローが『ちょっとひと眠り』っていうのは、鉄板死亡フラグだからな」

麗奈「は?」


   ???『ねぇ じいや、眠ってもいいかな……』

   ???『浩二……コーヒーを、頼む』

   ???『世界中の洗濯物が真っ白になるみたいに、みんなが幸せになりますように』


光「主人公だって命を落とすんだぞ。洒落にならないよ」

麗奈「どの物語もフィクションでしょ」

 
 
 

 
 
 
麗奈「もう夕方……5時を回ったのね」


麗奈「アンタ、誕生日パーティーとか……やったの? もう終わった?」

光「いや、パーティーはまた今度。日を改めて開いてくれるってさ」

光「今日はアタシもPさんも 他のみんなも忙しかったからな」 「麗奈も、あまり元気じゃないみたいだし」

麗奈「アタシは、別に、その……フツーよ。全然いつも通りだし」

光「そうか? Pさんから『寝不足っぽい』って証言があったんだけど」

光「なにか悩んでるなら、相談に乗るからな。遠慮なく言ってくれ!」

麗奈(私が眠れないのは どう考えてもアンタが悪い)

光「あーあー、もしアタシがヒーローだったら 悲しみを近づけやしないのになー」チラッ チラッ

麗奈(露骨に解決したがってる……)

 
 
 

 
 
麗奈「パーティーしないならそれでいいけど、アンタ 帰らないの?」


光「麗奈こそ、今日はオフだったのに わざわざ事務所に来てるじゃないか。帰らないのか?」

麗奈「アタシは……その、まだ帰らないから」

光「アタシは『Pさんが帰ってきたら送ってもらう』って約束してるんだ」

光「何なら 麗奈もそうしてもらえばいいよ。それくらい許してくれるって」

麗奈「そーね」

光「じゃあ、Pさんが帰ってくるまで もうちょっと一緒にいよう!」

麗奈「ふーん」

光「え、嫌とか言わないよな……?」

麗奈「………」 「あー、イヤイヤ。もうたまらなくイヤだわ。はい、イヤ。モーレツにイヤ。イヤったらイヤ。マジでイヤ。200%くらいイヤだわ」

光「あからさまだな、もうー!」

 
 

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