ロールシャッハ「……救いのヒーロー、か……」 (206)

http://elephant.2chblog.jp/archives/52038587.html
http://elephant.2chblog.jp/archives/52049807.html

これらの続きになります。

ロールシャッハが南極で分解され再構成されたのち
ハンターになり念を修得しカスカベに向かうというすちゃらかな内容です。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1379244863

SSというのは上記二作しか書いたことないもので、
こういうクロスが許されるのかもわかりませんので、恐る恐る投下していきます。

前二作は完結後に投下しましたが、今回はまだ書き上がってはいないこともお伝えしておきます。

期待してます

カスカベってことは今回はクレしんとのクロスかw?

キター!前二作面白かったです!
期待してます

日誌 ロールシャッハ記

2000年 6月18日

俺が祖国と離別してから、一年半ほどが経つ。

ヨークシンの治安は、俺が来たころと比べると良好になったと言える。
組織犯罪は壊滅しつつあり、警察どもとマフィアの癒着も
断ち切れたと言って差し支えない。

もう俺があそこにとどまる必要はない。
俺のせねばならないことは、まだ無数にある。

キメラアントという危険生物が増殖している。

俺も二度ほど、その末端と交戦した。
雑兵ですら充分に人間を凌駕している。

人間以外の手による、こうした脅威を目にするのは初めてだ。
奴らを悪と見なすべきかどうか、俺にはわからない。
アリどもはアリどもで、ただ己の腹を満たしているだけなのかも知れない。

ただし、これだけははっきりと言える。
どのような状況においても、喰われる者は最大限の抵抗と逆襲をする。
たとえその結果、ともに息絶えることになろうと。

協会を通じて、この事態の収束に小型の核が使われかねないとの情報が入った。
アリどもの現在の拠点は、東ゴルトー共和国。
その地で核が使われることとなれば、報復装置が作動するとの情報も。

アリどもにそれがわかるはずもない。
この争いの果てにあるのは、放射能に汚染された大地でしかない.


だが希望はある。少なくとも、屍だけの未来を回避できる希望が。
報復装置は停止させられる。
外部からの操作によって。
それに不可欠となる、コンピュータ・ウィルスというものがあるという。
ジャポンという島国にだ。
それがどんなものか、俺には想像もつかない。

不確かな情報だ。
鉄の義足で糸の橋を渡るかのような希望だ。

だが、誰かがやらねばならない。
そして、それをすべきなのは誰かなどではない。


今置かれたこの状況は、あのときの米ソと変わらない。

Dr.マンハッタンはここを無限の地球のひとつだと言ったが、
どの地球においても最終的に直面する問題というのはどこも大差ないらしい。

人々の死と、それによってもたらされる終末。

終わりなど何物にもない。
Dr.マンハッタンは、きっとそう言うだろう。

そうとも。
終わることなどない。
俺たちが抗う限り、よりよき世界は必ず来る。
たとえ俺たちの時代では無理だとしても、次の世代にはきっと。


.┓┏.


ロールシャッハ「Dr.オオブクロ……」

       「記録にある最後の在住地は……カスカベシティ」

       「KAS……カスカベ。ここか」

ロールシャッハ(やはりサムライの国とよく似ている……もっとも、詳しくはない。行ったこともない)

       (あの国はまぎれもなく被爆国であったが)

       (こちらは実に平和そうだ。指を折ってもよさそうな奴が見当たらん)

ロールシャッハ(地道に聞くより他なさそうだな)

ロールシャッハ(携帯電話に翻訳機能があると聞いたが……)

ロールシャッハ(……これだ、間違いない。ケーブルを繋いで口元に……マイクロフォンのように使えばいいのか……)

ロールシャッハ「すまない、道をたずねたいのだが」


「え、なにこの人、コスプレ?」
「キャーッ、不審者!」


ロールシャッハ(ダメだ。どいつもこいつも話にならん)

警官「あのー、ちょっと職務質問、いいですかあ?」

ロールシャッハ「警察か……」

ロールシャッハ「HUNH」

警官「とりあえず、マスク取ってもらっていいですか」

ロールシャッハ「断る」

警官「いや、あのね。こっちはそうしてもらいたいんですよ!」

ロールシャッハ「だから断ると言っている」

警官「困ったなあ……」

警官「なにか、身分証は?」

ロールシャッハ「これで充分か」スッ

警官「ん……ハンターライセンス!?」

警官(すげえ! ホンモノ! 初めて見た!)

警官「は、はい、確認できましたのでお返しします。
   でも、ちょっと、そのマスクは……」

ロールシャッハ「活動に欠かせないものだ」

警官「ええと、あの、どういったお仕事で?」

ロールシャッハ「お前が知る必要はない」

ロールシャッハ「仕事の邪魔だ、俺はもう行く」

警官「あ、その、失礼しました!」

ロールシャッハ「HUNH」

ロールシャッハ(さて……)

       (とりあえず記録上の、最後の所在地に向かおう)

       (なにか手がかりがあるかも知れん)

       (地図を買わなくては)

       (ん……見知った顔がある……あいつは……)

ロールシャッハ(あのハゲは……)

ハンゾー「おいおいおいおいおい! ロールシャッハか!?
     なんでこんなとこにいんだよ! クッソ奇遇じゃねえか!」

ロールシャッハ(ニンジャだ……)

ハンゾー「いやほんとなにしてんの? バカンス?
     なんだってこんなとこに、観光名所なら他にいくらでも」

ロールシャッハ「観光ではない。Dr.オオブクロという男を探している」

ハンゾー「大袋ォ? 知らねえなあ」

ハンゾー「そーそー、前にお前に話したサムライっつうのが、
     どうもここいらにいたらしくてなー」

ロールシャッハ(この饒舌ぶりも変わっていない)

ロールシャッハ「お前はなにをしてるんだ、そんなジャージ姿で。あのニンジャ装束はどうした?」

ハンゾー「ああ、これか? 忍者ってえのは忍ぶ者だからな。
     この街であれじゃ、目立ってしょーがねーのよ。
     今地元警察と協力してモルヒーネ・ファミリーって連中の残党を追っかけてんだが」


ロールシャッハ(モルヒーネ・ファミリー……ふざけた名前だ)

ロールシャッハ(俺が関わる必要はない。このニンジャなら苦労はしないだろう)

ロールシャッハ(だが、捜査情報をこうもベラベラしゃべるあたり、
       こいつにそうした仕事は向かないのではないか……?)

ハンゾー「――ってなわけでよ。大変なんだこれが」

ロールシャッハ「そうか」

ハンゾー「あとお前な、この国は相当治安のいい方だから、
     下手に怪我させたり死なせたりしたらまずやばいぜ。
     大事な仕事だってんなら、なおさらやめとけ」

ロールシャッハ「HURM」

ハンゾー「俺もここにいんのはあと数日ってとこだけどよ、大袋だっけ?
     なんかわかったら連絡するぜ!」


ロールシャッハ(ああはいうものの、ニンジャの情報を待ってはいられない)

       (以前のようにネット上で賞金をかけるという手も……
       いやダメだ、あのとき俺は任せっきりで、そのやり方を知らない)

       (通行人はどいつもこいつも俺を避ける)

       (……子供か。情報の入手は望み薄だが、話は聞いてもらえるだろう)

ロールシャッハ(ちょうどそこに、坊主頭の子供がいる……)

ロールシャッハ「そこの坊や」

マサオ「え、僕?」

ロールシャッハ「そうだ」

マサオ(なんだろこの人……なんかこわい……)

ロールシャッハ「Dr.オオブクロという男を探している。
        なんでもいい。なにか知っていれば――」

マサオ「大袋……大袋博士?……」

マサオ「あ!」

ロールシャッハ「どうした」

マサオ「う、ううん、知らない知らない、なんにも知らない!」

ロールシャッハ「……嘘をつくな」

マサオ「知りません知りません、わああっ」ダッ

ロールシャッハ(行ってしまった)

ロールシャッハ(だがあの子供はなにか知っている……幸運だ……)

ロールシャッハ(あとをつけよう)

公園

風間「それじゃ、今日のかすかべ防衛隊の活動は……」

ネネ「リアルおままごと!」

風間「ネネちゃん、それじゃ防衛にならないよ……」

ネネ「あら? 家庭の平和を守るのも立派な務めじゃなくって?」

しんのすけ「じゃあオラ、がんばっておうちの防衛しよーっと」

ボー「……自宅警備員」

風間「だからそんなんじゃなくってさ!」

風間「……あれ、マサオくんどうしたの? 震えてるけど」

しんのすけ「ウンチなら我慢しない方がいいよ」

風間「黙ってろよ!」

マサオ「……さっき、変な人見たんだ」

マサオ「帽子とコートと、白黒のマスクつけてて」

しんのすけ「ふーむ、それはなかなか危ういですなあ」

風間「怪しい、だろ」

ネネ「その人とお話したの?」

マサオ「うん、大袋博士について知らないか、って」

しんのすけ「玉袋博士? なんだかヒワイなお名前だゾ」

風間「おおぶくろ!」

ネネ「大袋博士って……」

ボー「香港に行ったときの、あのおじいさん」

マサオ「なんだかわかんないけど……あの人、きっと悪い人だよ!」

ネネ「じゃあ、今日はその人を探して正体を突き止める、ってのはどう?」

風間「危ないよネネちゃん! そういうことは大人の人に」

しんのすけ「風間くん!」

風間「っ! な、なんだよ」

しんのすけ「おしっこ行ってくる」

風間「……黙って行けよ」

公園 トイレ

しんのすけ「なんだか今日はいつもと違うにおいがいたしますなあ」

しんのすけ「芳香剤変えた?」

しんのすけ「ふーんふふーん」ジョロロ

しんのすけ「お?」

ロールシャッハ「…………」

ロールシャッハ「あの坊主の子供と知り合いらしいな」

しんのすけ「マサオくんのこと? まあそんなに深い仲じゃないけど」

しんのすけ「オラ野原しんのすけ。あんただれ」

ロールシャッハ「名乗る義務はない」

しんのすけ「挨拶できない人はろくな大人じゃないってかーちゃん言ってたゾ」

ロールシャッハ「HURM」

ロールシャッハ「……ロールシャッハ。これで充分か」

しんのすけ「ろーる……?」

公園

風間「じゃあその人を見つけ次第、交番へ行ってお巡りさんに通報しよう!」

マサオ「僕も、それがいいと思う……」

ネネ「でもそんな人、ほんとにいたらもう捕まってるんじゃないの?」

ボー「うん。覆面してると、普通、怪しまれる」

しんのすけ「おまたせおまたせー」

風間「おしっこにどんだけ時間かけてんだよ……ん? その後ろの人は?」

ロールシャッハ「……」

マサオ「あ、あ!」

風間「え、もしかしてこの人!?」

しんのすけ「この人、マサオくんに用があるんだってー」

しんのすけ「ほらマサオくん、ちゃんとご挨拶しないと」グイ

マサオ「ちょっとしんちゃんやめてよ!」

ロールシャッハ「Dr.オオブクロについて知っているな。話を聞かせてもらおう」

ネネ「ちょっとあんた! いきなり出てきて子供相手になにしようって言うの!?」

ロールシャッハ「……」ジロ

ネネ「ひっ……!」

ロールシャッハ「……用があるのはこいつだけだ。お前らにはない」

ロールシャッハ「危害は加えない。安心しろ」

しんのすけ「このおじさんもそうおっしゃってますし、
      オラたちは大人しく帰りましょうか。二人の時間を邪魔しちゃ悪いしィー」

マサオ「待ってよ一人にしないでよ!」

風間「待ってください、確かに大袋博士とは以前会いましたけど、
   でもそれっきりだし、住所もなにも知らないんです!」

ロールシャッハ「……本当か」

しんのすけ「本当!?」

風間「なんでお前が聞くんだよ!」

ロールシャッハ(…………)

ロールシャッハ(詳しい話を求めたところ、この子供たちは過去に
       “ブタのヒヅメ”という組織に拉致されたことがあるという)

       (Dr.オオブクロもその組織に捕えられていた。
       俺の求めるコンピュータ・ウィルスをそこで製造していたと)

       (ただしその組織は、今はもう壊滅している)

       (子供たちは帰った。面倒になるので交番には行かぬよう言っておいた)

ロールシャッハ(帰らなかったのはこいつだけだ。確か、シンノスケとかいったか)

しんのすけとロールシャッハ、土手を歩いている。

しんのすけ「おじさん、そのお面、なに?」

ロールシャッハ「お面ではない。俺の顔だ」

しんのすけ「いい歳してヒーローごっこ?」

ロールシャッハ「ごっこではない」

しんのすけ「じゃあホンモノのヒーロー? 全然そうは見えないけど」

しんのすけ「誰と闘うの? メケメケ団? 秘密結社ミッドナイト?」

ロールシャッハ「答える義務はない」

しんのすけ「ははーん。きぎょうひみつというヤツですな」

ロールシャッハ「……ませたガキだな」

しんのすけ「いやあ、それほどでも」

ロールシャッハ「誉めてなどいない

ロールシャッハ(見渡す限り、カスカベは平和だ。
       俺がここにいる意味が微塵も感じられない)


ロールシャッハ(平和だ。気が狂いそうなほどに)


「やだ、誘拐?」ヒソヒソ
「変質者じゃねえの」ヒソヒソ
「警察呼んどく?」ヒソヒソ
「関わらないようにしよ」ヒソヒソ

しんのすけ「なんか道行く人がウワサしてるゾ」

しんのすけ「おじさん、誘拐犯?」

ロールシャッハ「勝手についてきたのはお前だ」

しんのすけ「おお、そうだった」

ロールシャッハ「……なぜ俺についてくる?」

しんのすけ「んー、なんとなく」

ロールシャッハ「…………」

しんのすけ「おじさん、足短いね」

ロールシャッハ「それがどうした」

しんのすけ、ロールシャッハの前へ回る。立ち止まるロールシャッハ。

コンコン
しんのすけ「ほほーう。誰にも気づかれず背が高くなる魔法のおクツですな」

ロールシャッハ「…………」

しんのすけ「……図星?」

ロールシャッハ「そうだ」

しんのすけ「んもーう、相変わらず無愛想なんだからあん」

ロールシャッハ「お前に愛想を使う義理などない」

しんのすけ「……やりにくいゾこのおじさん」

ロールシャッハ「……なんだ、あのガキどもは。喧嘩か?」

土手を見下ろすロールシャッハ。

庄和町黒トカゲ団、長瀞川下り団、KSB48、
武里チェリーボーイズらが乱闘している。

そしてその横に隠れる埼玉紅さそり隊。

しんのすけ「お? 師匠!」

ロールシャッハ(マスターだと? この子供はすでに不良の道を進もうとしているのか?)

しんのすけ「おーい! ししょー!」

竜子「げ! ジャガイモ小僧!」

しんのすけ「ねえねえ、これなんのオーディション?」

竜子「オーディションじゃねえ! 引っこんでろ!」

ロールシャッハ「ではなんだ?」

竜子「そりゃ見てのとおりカスカベの覇権をかけて……」

竜子「って誰だよオメーは!?」

お銀「え、ホントに誰こいつ?」

マリー「カスカベにこんな奴いたっけ?」


しんのすけ「で、どうすんの?」

しんのすけ「はけん、っての取りに行かなくていいの?」

竜子「いや、それはだな……」

しんのすけ「あ、そうか。最後に残った人に勝てばいいんだね」

竜子「ば、バカ、あたいらがそんな戦法使うかよ!」

お銀「でもちょっとその気だったでしょ」

マリー「そうでもしないとウチらが勝てるわけないもんねえ」

ロールシャッハ「…………」

ロールシャッハ、乱闘の中に飛び込んでいく。

竜子「なんなんだあいつ?」

しんのすけ「んーとねー、ロールキャベツのおじさん」

しんのすけ「あれ? 蝋職人だったかな?」

竜子・お銀・マリー「???」

「なんだこいつ、急に割り込んできて、ぐふっ!」
「つええ! まずい、退け、退け!」

数分後、ロールシャッハとしんのすけ、紅さそり隊を残して、
他のグループは逃げ去った。

ロールシャッハ(加減はしておいた)

ロールシャッハ(この程度じゃ更生も望めないが)

お銀「リーダー、なんかあいつやばいっすよ!」

マリー「ただのコスプレ野郎かと思ったけど……」

竜子「ちっ、な、なかなかやるじゃねーか……」

ロールシャッハ「お前たち」

竜子・お銀・マリー「!」ビクッ

ロールシャッハ「そこの、シンノスケと関わりがあるようだが、
        こんな子供になにをさせている?」

竜子「そ、そいつは! 勝手にあたいらに付きまとってるだけで!」

ロールシャッハ「ほう」

ロールシャッハ「それで、お前らは?」

ロールシャッハ「徒党を組んで、一体なにをしている?」

竜子「……お、お前ら、ここはガツンと決めるぞ」

お銀・マリー「え」

竜子「ふかづめ竜子!」

お銀「う、魚の目お銀!」

マリー「ふ、吹き出物マリー!」

竜子・お銀・マリー「三人そろって!」

         「埼玉紅さそり隊!」

ロールシャッハ「…………」

ロールシャッハ「HEH」

しんのすけ「おお! すごいゾ師匠! ロールキャベツのおじさんが笑ったゾ!」

竜子「だからあたいらはお笑いやってんじゃねーつーの!」

お銀「……あれ鼻で笑ったんだよな」

マリー「……うん。どー考えても」

ロールシャッハ「HURM」

ロールシャッハ「フカヅメにウオノメにフキデモノか」

竜子「そっちを取るんじゃねえ!」

しんのすけ「なるほどおじさんもなかなかだゾ」

しんのすけ「んー、でも玉さすり隊は、
      とりあえずオーディション勝ち抜けたんだよね」

竜子「オーディションでもねえし、
   あたいらは紅さそり隊だ、べ・に・さ・そ・り!」

ロールシャッハ「玉さすり?」

ロールシャッハ「お前らは淫売か?」

竜子「話をちゃんと聞け!」

お銀「淫売って……」

マリー「お笑いの方がまだ救いがあるよな……」

ロールシャッハ「活動目的が今一つわからんが、」

ロールシャッハ「お前らが無害だということはわかった」


竜子「んだとこの!」

殴りかかる竜子。難なくかわすロールシャッハ。


しんのすけ「おお、今日はクマさんおパンツですな」

竜子「見るな!」

ロールシャッハ「クマのパンツ?」

竜子「オメーはなんでそこに反応してんだよ!」

お銀「やっぱ変質者だよあいつ!」

マリー「リーダー、もう帰ろうよ!」


ロールシャッハ(…………)

ロールシャッハ(……ブレア・ロッシュ……)

ロールシャッハ(生きてさえいれば、いずれこの娘たちのように……)


竜子「放せよクソ! あいつ許さねえ!」

お銀「敵うわけないよ、リーダー、ね、帰ろ!」

マリー「ね、落ち着いて!」

ロールシャッハ(…………)

ロールシャッハ(陽が落ちていく)

ロールシャッハ(子供たちが走っていく)

ロールシャッハ(家へ帰るのだろう。母の待つ家に)


ロールシャッハ「……お前も、もう帰るべきではないのか」

しんのすけ「おじさんはどうするの?」

ロールシャッハ「どこか宿を探す。なければ野宿だ」

しんのすけ「おじさんホームレス?」

ロールシャッハ「似たようなものだ」

しんのすけ「かすかべにはどのくらいいるの?」

ロールシャッハ「わからん。できる限り、長居はしないつもりだ」

しんのすけ「ならオラ、いいところ知ってるゾ!」

日誌 ロールシャッハ記

2000年 6月21日

カスカベはいい街だ。
俺がここにいることに、自分でも違和感を覚えるほどに。

ただし、住人は奇怪な連中が多い。

そろいの服で俺を撮影する男女。
手旗信号でサインを送る本屋。
ゴリラのような筋肉の女。
派手な化粧をして、ローラースケートをする大男。

どいつもこいつも、狂っているとしか思えない。
平和に浮かれている証拠だ。
その平和の中で、一見無意味な反発をする者がいる。
あの奇妙な少女たちのように。

ただしそれはきっと、奴らなりに抗おうとする意志の表れだ。
じきにそれを過ちと気づくか、あるいは大きな力の流れを生むだろう。

そのどちらに転ぼうとも、そうした形で生まれるものこそ、
人間が紡いできた歴史であると俺は信じる……

シンノスケという子供に、宿を紹介してもらった。
マタズレ荘という。

大家はかつての俺の家の者と似たような、偏屈そうな中年の女だ。
大家という人種はどこもそうなのだろうか。

俺を目にしてしばし怪しんでいたが、
ライセンスを見せると部屋を貸すことに承諾した。

これは本当に便利なものだ。
俺がどこへ行こうとも、その先で必ず手助けをしてくれる……

Dr.オオブクロの所在は未だわからない。存命かどうかすらも。

とりあえず今日はこの辺にしときます。

それと言い忘れましたが、
前二作はほとんど原作をなぞる内容だったのに対して、
今回はほとんど俺のでっちあげた話になります。


クレしんは原作わからんが期待してる


劇場版ならともかく本編でのしんちゃん世界じゃ
シャッハさんただの痛い中年オヤジだからなwww>自分の存在に違和感

シャッハさん基本的に善人には無害だからな

平和な世界の方が気が狂いそうって悲しいねシャッハさん

ひろしの靴下とシャッハさんのコート、臭いのはどっちだw?

鼻がおかしくなるのは確定だけど

前作も見たけど面白い

期待

前作読んできた、面白かった
こっちも期待

ウォッチメンまた観たくなってきたけど、せめてディレクターズカット版を国内でも売ってくれないかねえ…

今作も面白そうだ
期待しています
ところでロールシャッハは脳内麻薬を分泌する強化系能力なの?

今作も面白そうだ
期待しています
ところでロールシャッハは脳内麻薬を分泌する強化系能力なの?

>>43
そんなところです

今回も一応使わせるつもりですので、
一般人が頑張るぜ感がより軽薄になってます

ふたば幼稚園

風間「でさ、昨日のあの人のことなんだけど……」

マサオ「またその話!? やめようよもォ……」

しんのすけ「えー、なになに、どの話?」

ネネ「昨日の変なマスク被ったおじさんよ!」

ボー「なにか、陰謀を感じる……

しんのすけ「インポを感じる?」

ネネ「陰謀よ、い・ん・ぼ・う!」

マサオ「やっぱりあの人、なにか悪だくみを……」

風間「待って待って! 話を聞いてよ!」

風間「あのあと、うちに帰って考えたんだ」

風間「あの人、『ザ・クエスチョン』っていうコミックの主人公とそっくりなんだよ」

しんのすけ「うーむ、貧乏を感じますなあ」

風間「陰謀な」

マサオ「じゃ、じゃあ、あの人悪い人じゃないってことかな……?」

ネネ「えー! ネネは絶対認めないわよ! あの人、悪い人に決まってる!」

しんのすけ「お?」

しんのすけ「おーい、こっちこっちー!」

マサオ「おーい、って、え!?」

ロールシャッハ「HUNH」

しんのすけ「キャベツのおじさーん」

フェンス越しに、ロールシャッハへ歩み寄るしんのすけ。

風間「キャベツ……?」

ロールシャッハ「シンノスケか」

しんのすけ「おじさんなにしてんの? 昼間から幼稚園の周りをうろつく不審者ごっこ?」

ロールシャッハ「Dr.オオブクロの最後の所在地を突き止め、そこへ向かった」

しんのすけ「ふんふん、それで?」

ロールシャッハ「駐車場になってた」

風間「おいしんのすけ! お前、いつのまにそんなに仲良くなったんだ?」

しんのすけ「あらー風間くん、嫉妬?」

マサオ「やっぱり、怖い人じゃないってこと?」

ボー「人は、見かけによらない」

あい(しん様が、どこの馬の骨とも知れぬ輩と……)

ネネ「あら、あんたも嫉妬?」

あい「そんなのじゃありませんわ! 黒磯!」

黒磯「はっ!」

あい「あの汚らしい男を、追い払ってきなさい!」

黒磯「は、はあ……」

ロールシャッハ「……なんだ?」

黒磯「いやー、その、不躾なことを言うようですが、
   あいお嬢様が早いところ、あなたにここを離れていただくようにと……」

ロールシャッハ「HURM」

ロールシャッハ(Dr.オオブクロとの唯一の接点は、今はこの子供たちしかいない)

ロールシャッハ「シンノスケ。園が終わるのは何時だ?」

しんのすけ「えー、うーんとねー……」

あい(まあ! しん様とアフターのお約束を!?)

あい「黒磯! 力づくで帰らせなさい!」

黒磯「ええ!? は、はい!」

フェンスを飛び越える黒磯。

ロールシャッハ「なんのつもりだ」

黒磯「……見ず知らずのあなたには申し訳ありませんが、あいお嬢様のご命令ですので」

ロールシャッハ「HURM」

拳を交わすロールシャッハと黒磯。

ロールシャッハ(この男も、なかなかの手練のようだ)

マサオ「うわ、すっごい! カンフー映画みたい!」

ボー「間近で見ると、ド迫力」

しんのすけ「ふーむ、これが黒磯さんの本気か……」

風間「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!」


ロールシャッハ(マフィアンコミュニティーの用心棒どもと同程度……
       いや、それよりもいくらか上か)

ネネ「ちょっと、なんとかしなさいよ! あんたがけしかけたんでしょ!」

あい「あの男の方がいけないんですわ」

じきにロールシャッハが優勢となり、黒磯は背後から押さえつけられる。

ロールシャッハ「……まだやるか」

黒磯(ま……参った……)

あい「!」

あい「……黒磯! この役立たず!」

黒磯「も、申し訳ありません、あいお嬢様……」

ロールシャッハ「お前はあそこの偉そうなガキのお守りか」

ロールシャッハ「それだけの体がありながら、ただ腐らせてしまうばかりだな」

黒磯「な、なにを言う!」

ロールシャッハ「今俺がお前の腕をへし折っても、あのガキはお前を用済みにするだけだ」

ロールシャッハ「金と地位は、人間の傲慢を助長させる」

ロールシャッハ「あのガキも、じきに醜く歪むだろう」

黒磯「…………」

しんのすけ「あの二人、なんの話してるの?」

マサオ「大人の話、じゃないかな」

ボー「男の、話」

ネネ「リアルおままごとの参考になるわ……
   いや、ハードボイルド・おままごとってところね」

風間「ハードボイルドとおままごとは、ちょっと結びつかないんじゃないかな……」

あい「……ふんっ!」

よしなが「ちょっと、黒磯さん大丈夫!?」

しんのすけ「おお、今ごろ出てきた」

まつざか「不審者よ! 警察呼んで!」

上尾「は、はははは、ハイィ!」

上尾(不審者……不審者……)ドキドキ

ロールシャッハ「おい」

上尾「!」ビクゥ

ロールシャッハ「通報などやめておけ。ややこしくなる」

園長「あのー、すみませんがうちの園児にどういった御用でしょうか……?」

ロールシャッハ「あんたは?」

園長「ああ、私はここの――」

しんのすけ「組長!」

ロールシャッハ(組長?……ドンか。確かに、ただものではない顔つきだが……)

ロールシャッハ「HURM……ここは、健全な施設ではないらしいな」

ロールシャッハ「カスカベは平和な街だと思っていたが……どうやらそれは上っ面のようだ……」

よしなが「しんちゃん! 誤解を招くようなこと言わないの!」

しんのすけ「なんで?」

ロールシャッハ「なるほどな。お前のような男の元では、
        確かにあのようなガキが増長するわけだ」

園長「いや、私はほんとにただの園長なんですってば!」

黒磯「うう……あいお嬢様が……危ない……」

まつざか「ちょっと、警察まだ来ないの!?」

上尾「ええっ、だって今、やめておけ、って……」

まつざか「んもう! なに言いなりになってんのよ!」

上尾「あ、スイマセン、スイマセン!」

ネネ「ちょっとしんちゃん、なんとかしてよ!」

マサオ「園長先生、ボコボコにされちゃうよ!」

ボー「ボコボコじゃ、済まないかも……」

しんのすけ「えー、もー、しょうがないなー」

上尾「え、しんちゃん、ちょっと」

しんのすけ「そんじゃ、ほい!」

ロールシャッハ(なんだ? あの女、メガネが外れた瞬間から異様な殺気を……)

上尾「おいおいおいてめェ!」

黒磯「上尾先生! 危ない!」

ロールシャッハ「なんだ」

上尾「いい歳した大人が保育士でもねーのに昼間っからガキと遊びてえってか!?
   なに考えてんだ? ロリコンかてめえは!」

ロールシャッハ「おいちょっと待て」

ロールシャッハ(ひと悶着……いや、それ以上のことがあったが、)

       (ハンターライセンスを見せることで収まった)

       (本当に便利だ)

       (ここの園長と名乗る男……タカクラブンタも、話を聞く限りでは善人のようだ)

ロールシャッハ(もっとも、それがこうも顔に表れないのは滑稽だが)


園長「お仕事大変でしょうが、しかしうちの園児をそのような危険に巻き込むわけには……」

ロールシャッハ「HURM」

       「そうだな。あんたの言うとおりだ」

ロールシャッハ(俺は少し、焦っているのかも知れん)


ロールシャッハ(だが、こうしているあいだにも、こいつらの知らぬところで核は起動しようとしている)

黒磯「……あ、あの、」

ロールシャッハ「……なんだ?」

黒磯「……頑張ってください」

ロールシャッハ「なんのつもりだ?」

黒磯「他意はありません……ただ」

黒磯「実は私もかつて、ハンターを目指していたものでして……」

ロールシャッハ「そうか」

ロールシャッハ「今からでも、お前なら遅くはないぞ」

黒磯「いえ」

黒磯「今の私には、あいお嬢様と、ふたば幼稚園の皆さまがいらっしゃいますので」

ロールシャッハ「…………」

黒磯「あなたには、きっと理解しがたいこととは思いますが」


ロールシャッハ「…………そうだな。俺には永遠にわからん」

ロールシャッハ「だが、俺も別にハンターという肩書を求めたわけではない」

ロールシャッハ「なすべきことに、この板切れが必要なだけだ」


あい「黒磯! どこなの? 黒磯!?」

ロールシャッハ「……呼ばれているぞ。行って来るがいい」

ロールシャッハ「ただし、甘やかしはほどほどにな」

黒磯「……はい!」

ロリコン呼ばわりワロタ

日誌 ロールシャッハ記

2000年 6月26日


路地裏の奥に“カスカベ座”という映画館を見つけた。
ニューヨークのものと比べると、あまりにも小規模でみすぼらしい劇場だ。

それが今は、廃墟であることを差し引いても。

おそらく立地条件や土地の権利などの都合上、
未だ取り壊されずに残っているのだろう。

壁にはロビー・カードの剥がされた跡が、差し込む陽に焼けて消えかけていた。
廃墟となったのは、最近のことではないらしい……


埃の積もったガラスケースがあった。
その上を撫でると、色褪せた小さなブロマイド写真が顔を出した。
知らない映画ばかりだ。

俺の知る映画といえば、『独裁者』に『ゴジラ』、
『ベン・ハー』、ジェームス・ディーンの主演作、
それからタイトルはなんと言ったか、サリー・ジュピターの伝記…………

どれも、観たことは一度もない。

カードの中に、一枚だけ、西部劇らしきものを見つけた。

この映画が存在したということは、
かつての祖国の先人と似たような文化や歴史をたどった時代が、
この星のどこかにあったということだ――もしくは単なる創作か。

だがタイトルは書かれていない。
この一枚からだけでは、この映画がなんなのかはまるでわからない。

カードには典型的な白人のガンマンと――
どういうわけか、東洋人の少女の姿が写っている。
ジュニア・ハイの生徒ほどの年齢だ。インディアンではない。

しばらくそれを眺めたあとで、
ケースを割って、その一枚を拾うことに決めた。

このカードには、これから日誌の栞として働いてもらおう。

スナック たまゆら


ジャーク「…………」

ジャーク「なァ―――んか、」

ジャーク「いやな予感がするわ」

ローズ「便秘?」

ラベンダー「肌荒れ?」

レモン「加齢臭?」

サタケ「うちの経営の未来に影が?」

ジャーク「そんなんじゃないわよっ!」

ジャーク「魔神としての勘」

ラベンダー「元、でしょ」

ジャーク「今はただのオカマでも、わかることがあるのよ」

ジャーク「なんか、すっごいやばいこと起きそー」

ジャーク「てゆーかいろいろメチャクチャにひっかきまわす奴が来た、みたいな」

世界のドブドロ見続けてそれでも尚ロマンチストなんだよなこのオッサン

レモン「そうは言ってもねェ……」

ローズ「オカマの言うことだしねェ」

ラベンダー「信じらんないわねー」

サタケ「お前らもオカマだろうが」

サタケ「大体、ジャーク、それでお前はなにができるんだ?」

ジャーク「なんにもないわよ、ただのオカマだもーん」

ジャーク「ただあんたたちも腹くくっといた方がいいかも、って話」

レモン「くくる腹ねェ」

ローズ「オカマになると決めたときから、人生腹くくってるようなもんだしねェ」

ラベンダー「お兄たまはコルセットでくくった方がいいかもね」

ローズ「え」

サタケ「いらっしゃいませー、ご新規様二名、ご案内いたしまーす!」

チバ県警 ナリタ東西署

よね「ちっくしょー、表彰されたわりにまたここに戻されるとは……」

  「はあ……」

  「やっぱり私、刑事向いてないのかな……」

  「…………」

よね「…………やめちゃおうかな……」

プルルルル
ガチャ

よね「はい、凶悪犯罪特別分室(資料室)……」

  「はいっ……えっ……はい、はいっ、わかりました!」

  「よし……これはきっと、もう一度世界を揺るがす大事件の予兆……」

よね「……もういっちょやるか!」

ザ・クエスチョンはこの世界にもあるのか

>>60
このSSだと、前回のラストで「ヨークシンで活躍するロールシャッハ」が
モデルに成って作られたコミックヒーローって設定
本来の設定からするとなんとも皮肉な話

すいません飯喰ってました

>>61
遊びのつもりだったんですが、皮肉でしたかね……
知名度や人気が派生>元ネタの作品やキャラクターって、逆よりはずっと少ないのでしょうが
それでも元ネタのファンからしたらやっぱり苦々しいことには変わりませんかね。

「ロールシャッハはクソだ」がそこから生まれたなら愉快な話ですが

どこかの刑務所


サイレンの中、看守を殴り倒していく男女。

マホ「おらおら! 邪魔だよ、どきな!」

ヘクソン「……マホ。無駄な体力を使うな」

ヘクソン「今は逃げおおせればいい」


パラダイスキング「よォう、あんたら、派手にやってるなあ」

マホ「? 誰だ、お前」

パラダイスキング「ほう、いかすネエちゃんだな。俺はパラダイスキング」

マホ「ケッ、本名かよ、それ」

パラダイスキング「んなことはどうだっていい」

パラダイスキング「あんた、そう、あんただ」

ヘクソン「なんだ」

パラダイスキング「あんた、特別収容棟にいた奴だろ?」

ヘクソン「そうだが……どうした」

パラダイスキング「このタイミングで同時に脱獄したのも、なんかの縁だと思ってね……」


ヘクソン「……お前の元にも、あのオカマどもが来たようだな」

パラダイスキング「当たりだ。最初は夢かと思ったんだが、
         あんたもそうだってェなら、ありゃマジだったらしいな」

マホ「ってことは、あたしらと同族ってわけかい」

パラダイスキング「そうなるかもなあ。よろしく頼むぜェ、ネエちゃん」

パラダイスキング「それより聞いたぜ、あんた、超能力が使えるんだって?」

ヘクソン「…………」

パラダイスキング「ずゥっと思ってたのよ……
         ジャングルで鍛えた俺の闘技と、お前の超能力……どっちが上かってな」

ヘクソン「…………」

ヘクソン「アクション仮面こと、郷剛太郎……それと野原しんのすけ……」

パラダイスキング「ほう!」

ヘクソン「お前の心は、その二人に対する憎悪でいっぱいだな」

ヘクソン「それに比べれば、俺など些細な興味の対象でしかない」

パラダイスキング「心が読めんのか。そりゃすげえや」

パラダイスキング「だが、そんなもんで俺に勝てるなんて、ふざけたことは思っちゃいねえよな」

ヘクソン「俺はそんなことに興味はない」

ヘクソン「俺もお前も、官憲以下だ」

パラダイスキング「へっ、それを言っちゃあおしめェよ」

ヘクソン「俺にはそれよりもさらに上の力がいる」

ヘクソン「お前も、そうは思わないか?」

パラダイスキング「……フッ……」

パラダイスキング「……ク――ルだぜェ」

暗闇の中に立つ、二人のオカマ。


マカオ「――――脱獄には成功したみたいね」

ジョマ「でもあんな強引なやり方だなんて、ゾクゾクしちゃう」

マカオ「クレイGやチョキリーヌたちより役に立ちそうね」

ジョマ「でも手駒は多い方がいい」

マカオ「そうね……」

マカオとジョマのあいだに、ブタを模した茶色の壺が浮かび上がる。

>>62
投下中で申し訳ないけど、不快とか思えるほどのファンじゃありません
単に元ネタが逆転してるってのが皮肉というかジョークと言えると思っただけです

野原家

むさえ「ちょっと、姉ちゃん、ねえちゃあーん!」

みさえ「どうしたのよむさえ! こんな時間に」

むさえ「隣に越して来た人がなんか怖いんだって!」

みさえ「はあ?」


ひろし「で、その隣の人が夜中じゅうずっと起きたまま、ガリガリ物音立てたり……」

みさえ「ドアの隙間からからコバエがぶんぶん……」

みさえ「でもそれってあんたと一緒で、ものぐさなだけなんじゃないの?」

むさえ「違う違う、レベルが違うのよ! 一回顔合わせたことあるんだけど、
    なんかどーも見るからに偏屈っていうか、なんか……人殺してそうな顔なの」

ひろし「人殺しって、まさかそんな」

むさえ「義兄さんはあいつを見たことないからそんなこと言えるのよ!」

むさえ「壁一枚隔てた向こうに殺人鬼がいると思うと……」

むさえ「ねえ、今晩だけ! 今晩だけ、泊めさせて!」

みさえ「もう、あんたって子は。でもそれだけじゃ解決にならないから、
    明日大家さんに相談するのよ」

TV「あの20世紀博が、パワーアップして帰ってきた!
 『21世紀博』オープンに合わせて――」

むさえ「へー、なんかカンカンやってると思ったら、こんなのできるんだ」

みさえ「ちなみに明日は、この家空っぽになるから、留守番お願いね」

むさえ「え! なんで?」

むさえ「もしかして21世紀博に行くってんじゃ……」

ひろし「オープン初日にアクション仮面が来るんだとさ」

むさえ「あ、どーりでしんのすけよく寝てるわけだわ」

むさえ「えー、いーなーいーなーあたしも行きたーい!」

みさえ「あんたは子供じゃないんだから! 駄々こねたってダメ!」

・追記

20世紀博ができたのは作中でも2001年中のことなのですが、
どうかこのSSでは20世紀中にできたということにしといてください。
20世紀が終わらないうちに建てるのも気が早いなとは思いますが。

>>66
そういうことでしたか。
ウォッチメンでもヴェイト社がロールシャッハたちのフィギュアを出そうとして
オジマンディアスに却下されてましたが、
試作品の写真もあったので、多分同じようなことするんじゃないかなー、
と勝手に妄想してました。

翌日 21世紀博

しんのすけ「とーちゃん、かーちゃん、早く早くー!」

ひろし「こらこらしんのすけ、ショーまでまだ時間はあるんだから」

ひまわり「た、たやい!」

みさえ「ひまちゃんは、ママたちと一緒にゆっくり行きましょうねー」

みさえ「で、なんであんたもついてくるの」

むさえ「えへへー」

むさえ「いいじゃんいいじゃん、こーいうのはみんなで行く方が楽しいって」

みさえ「ほんっとに、もー……」

みさえ「迷子にだけはなんないでよね」

むさえ「そこまで子供じゃないって!」

ひろし「20世紀博が帰ってきたなんていうから、最初はうさんくせえと思ったけど」

ひろし「『20世紀の僕らが見た21世紀』か、やっぱりいいねえ」

しんのすけ「どうしても歳をとるとエクスタシーになるんだね」

ひろし「ノスタルジーだ!」

ひろし「でもな、見ろよ、海底都市に月面基地!
    スーパーロボットに宇宙大怪獣……今でも追いつけないくらい、すごい未来が描かれてるだろ?」

ひろし「ガラス越しに小松崎茂の絵を見て思いを馳せ、家に帰って箱を開けたとき」

ひろし「ボール紙とセメダインのにおいが、俺を宇宙へ連れてってくれたもんさ」

しんのすけ「ほうほう。語るね父ちゃん」

ひろし「おうよ! なんつっても、父ちゃんはSF初段だからな」

マサオ「あれ、しんちゃんも来てたの?」

しんのすけ「お、マサオくん!」

ひろし「風間くん、ネネちゃん、ボーちゃんまで」

風間「こんにちは!」

ネネ「もうすぐアクション仮面ショー、始まるわよ!」

ボー「早く行かないと、前の席、埋まっちゃう」

しんのすけ「おお、いけないいけない!」

ひろし「こらこら、走るな、転ぶぞ……いてっ!」

21世紀博 中庭


『アクション仮面ショー ―未来は僕らの手の中編―』


ミミ子「助けてー! アクション仮面!」

アクション仮面「くそう、メケメケZめ! 過去から蘇るとは、往生際の悪い奴だ!」

アクション仮面「だがそれもここまでだ! 悪の栄えた試しはないぞ!」

メケメケZ「それはどうかなアクション仮面。
     今の今までお前が勝ち続けるとは、それもそれでなかなか不公平なものではないかね?」

アクション仮面「黙れ! この先の未来は、お前のような奴が触れていいものではない!」

「がんばれー! アクション仮面!」
「がんばれー! アクション仮面!」

ひろし「すごい人だかりだなー」

みさえ「アクション仮面は21世紀になっても、ずっと人気ってことかもね」

しんのすけ「がんばれー! アクション仮面!」

21世紀博 屋上のどこか


パラダイスキング「がんばれー、アクション仮面、か……」

        「ガキの声で勝てると思ったら大間違いだぜ」

        「でも残念ながら、シナリオっつうもんがある」

        「メケメケZは倒されて、今日もアクション仮面はみんなの笑顔を守りましたと、さ」


パラダイスキング「毎回これじゃ、食あたり起こしちまうと思わねーか?」

振り向くパラダイスキング。

パラダイスキング「ええ? 刑事さんよ」

よね「動くな……少しでも動いたら、撃つ」

パラダイスキング「相棒に聞いて知ってるぜェ……
         あんたに持たせた銃ほど、信用できねえもんはねえってな」

よね「そうだね……あんたの脳天、ぶち抜くかも知れないよ」


パラダイスキング「ま、いいか。飛び道具はハンデってことで」シュッ

よね(飛んだ!? 速いっ……)

パラダイスキング「後ろだよ」

よねの後頭部に、パラダイスキングの拳が一発。

パラダイスキング「あっけねーなァ、
         こんな雑魚どもの集団に捕まってたかと思うと、情けなくなるぜ」

ロールシャッハ「俺なら文句はないか」
ボッ
パラダイスキング「!」

ロールシャッハの拳を、跳躍してかわすパラダイスキング。

パラダイスキング(いつのまに……)

ロールシャッハ(脱獄したというのはコイツだな……目を光らせておいて、正解だ)

ロールシャッハ(あと二人、いると聞いたが)

パラダイスキング「へっ」

パラダイスキング「お前も相当だな。警察じゃあなさそーだが」

パラダイスキング「だがお前を倒しても、俺の心は満たされねえ」

ロールシャッハ「なら、地獄で獄吏でも相手にするがいい」

パラダイスキング「おっかねえこと言うのな、おっさん」

パラダイスキング「でもこれならどうだ?」

ロールシャッハ「!」

失神したよねの手を握り、端からぶら下げるパラダイスキング。

ロールシャッハ「……やめろ。そいつは関係ない」

パラダイスキング「じゃ、無視できんのかよ?」パ

ロールシャッハ(!……)

手を放すパラダイスキング。よねの体が落ちて行く。
それを追い、飛び降りるロールシャッハ。

パラダイスキング「ヒーュッ、クールだぜ」

ロールシャッハ(この女は受け止めたが……フック銃が間に合わない……)


ロールシャッハ(仕方がない……この街で使うことになるとは思わなかったが……)


ロールシャッハ(『廃墟の街(ザ・ハート・アタック・マシーン)』)


よねの体を抱え、アスファルトに着地するロールシャッハ。

「えー、なにあれー」
「ショーの一部?」
「凝った演出だなー」


ひろし「わっ、なんだなんだ!?」

しんのすけ「おお、ロールスロイスのおじさん!」

マサオ「わ、ほんとだ!」

ネネ「女の人抱えてる……」

風間「も、もしかしてほんとに……」

ボー「スーパー・ヒーロー……」

むさえ「ねーちゃん、あれだよあれ! 絶対間違いないって! 隣の奴!」

みさえ「あんたねー、なに寝ぼけたこと言ってんの!」

窓枠や木々を伝って降りてくるパラダイスキング。

パラダイスキング「ヒュウッ、あんたも超能力者かァ?」

ネネ「あ、見て、あれ!」

しんのすけ「爆発頭!」

パラダイスキング「また会ったなジャガイモ小僧。
         これはアフロだ。いい加減覚えとけ!」

アクション仮面「みなさん! これはショーじゃない!」

アクション仮面「ミミ子くん! 今すぐみんなの避難を!」

ミミ子「わかったわ!」

逃げ惑う群衆。

風間「しんのすけー!」

マサオ「しんちゃーん!」

しんのすけはひとり逆方向に走り、アクション仮面の元へと向かう。

アクション仮面「……しんのすけくん! こっちに来ちゃ危ない!」

しんのすけ「大丈夫だよね、アクション仮面!
      あいつなんかすぐまたやっつけられるよね?」

アクション仮面「ああ、大丈夫だしんのすけくん。今すぐ――――ぐっ!」

ミミ子「郷さん!」

パラダイスキング「おいおい、俺よりもガキへのアピールが優先か?」

ロールシャッハ「おい。俺を忘れるな」

パラダイスキング「だからお前の相手はしてらんねーって言ったろうが」スッ

ロールシャッハ(あれは……ダイナマイト!?)

パラダイスキング「ほらよ。こいつにじゃれついてな」ポイ

ロールシャッハ(投げ……、ダメだ、間に合わん!)

ダイナマイトの上に覆いかぶさるロールシャッハ。
直後、彼の腹の下から爆風が漏れる。

ロールシャッハ(UUUK……)

ロールシャッハ(臓器にダメージはなさそうだが……しかし、クソ、立ち上がれん……)

アクション仮面「君! 大丈夫なのか!?」

パラダイスキング「てめーの相手はこっちだ、おらっ」ボッ

アクション仮面「くう……くく」

パラダイスキング「安心しな、お前にはあんな小道具は使わん」

パラダイスキング「こいつはな」

警備員「おい、なにしてる!?」

警備員「なんだ、なにか投げて……ダイナマイトだ!」

パラダイスキング「あーいううるせえハエどもに使うことにした」

アクション仮面「やめろ!」

ひろし「しんのすけー、どこだー!?」

みさえ「しんちゃーん!」

ひまわり「うええええん、うええええん」

むさえ「しんのすけー! しんのすけえ!」

アクション仮面「パラダイスキング……ここはジャングルではないぞ……」

パラダイスキング「コンクリート・ジャングル。なんつって」ニカ

パラダイスキング「お前のために作られたステージはよォ、」

パラダイスキング「俺にとっちゃちょうどいいジャングルジムだぜェ」

ステージの上を飛び交いながら、アクション仮面を殴りつけていくパラダイスキング。

アクション仮面は、もうそこから離れることもできない。

しんのすけ「が、」

しんのすけ「がんばれアクションかめえええん!」

パラダイスキング「うるせえ! すっこんでろ!」

しんのすけ「うるさい! お前なんかオラとアクション仮面に
      コテンパンにやられたくせに!」

ロールシャッハ(ダメだ……回復が……)

パラダイスキング「そうだなあ、あれは本当に忌々しい記憶だったぜ。この俺様が……」

パラダイスキング「おめェみてーなクソガキにコケにされるなんてな!」

しんのすけ「ひィッ……」

パラダイスキング「だが残念だったな。あのお話の結末は……」

パラダイスキング「このパラダイスキングの鮮やかなリターンマッチで幕を閉じるんだ」

パラダイスキング「ヘイ、相棒!」


ヘクソンの乗る小型ヘリが、ハシゴを垂らす。
アクション仮面を抱え、宙へと去るパラダイスキング。


ヘクソン「さっさと乗れ。お前の遊びに付き合えるのは、ここまでだ」

パラダイスキング「じゃーな、坊主。俺はお前らがどんなに駄々こねても手に入らねえ、
         本物のアクション仮面フィギュアで、じっくり遊ばせてもらうぜえ!」

しんのすけ「あ、あ、」

しんのすけ「アクション……仮面……」

野原家

みさえ「……しんちゃん、さっさとゴハン食べちゃいなさい」

しんのすけ「……オラ、いい」

みさえ「なに言ってるの! 片付かないでしょうが!」

ひろし「しんのすけ、アクション仮面のことが心配なのか?」

しんのすけ「……」

しんのすけ「心配なんかじゃないもん!
      アクション仮面はあんな奴に負けたりなんかしないもん!」

しんのすけ「とーちゃんもかーちゃんも見たでしょ!
      アクション仮面があいつをやっつけるの!」

ひまわり「う、うええ」

みさえ「大きな声出さないで、ひまわりが驚くじゃない」

ひろし「……そうだ、しんのすけ、アクション仮面が負けるわけなんかない」

ひろし「だから今は、アクション仮面が帰るのを大人しく待って、
    そんでゴハン食べるんだ」

しんのすけ「……」

日誌 ロールシャッハ記

2000年 6月28日

なにかが動いている。

それも、俺のまるで知らないところで、巨大ななにかが。

あのテーマパークで、舞台を襲った怪人物。

刑事を名乗る女から、奴らの情報を得た。
奴らは重犯罪者で、ともに脱獄を謀ったという。
ともに、というのが非常に奇妙だ。

奴らも狡猾さに長けてこそいるのだろうが、
きっとそれだけではない……奴らを解き放った者がいる。

なぜこの地に?
なんの目的で?

考えうる限りの最悪のパターンは、俺の探し求めるものと、
奴らのそれが重なるというものだ。
そうなれば、なんとしても先に入手せねばならない。

だがその場合、逆に好機とも言える。
俺の求めるコンピュータ・ウィルスが、
この地に眠っているということでもあるからだ……


21世紀博。

あのテーマパークは、そう銘打たれていた。

21世紀……ニューヨークでは迎えることのなかった時代。
あのショーのセリフのとおりだ。
どす黒い血に染められた手に触れさせてはならない。

その時代が、前世紀より強き世界となるために。

今回はここまでになります。
また書きため次第、投下していきます。
これまでの展開がご期待に沿えているならば幸いです。

乙!


かっこいい

乙。ウォッチメンとクレしんがここまで合うとは……


なんだかアメコミの映画を見ている気分だ

映画だとかなりシリアスだし
戦闘力が敵>味方とかよくあるからな

俺がみたかぎりハートで勝つような終わりしてたはず

オモスレー(^ω^ )

まだかな

ちょっとだけ続き載せます

またずれ荘


ロールシャッハ「それで、グロリアと言ったか」

よね「え?」

ロールシャッハ「グロリア」

よね「え、ええ」

よね(自分で言っといて実際に呼ばれると恥ずかしいな)

ロールシャッハ「刑事と聞いたが、あの二人の行方は? 捜査情報はなにも入ってこないのか?」

よね「それが……全然……」

ロールシャッハ「使えぬ女だ」

よね「っ……」

よね「あんただって、ハンターなんでしょ! カスカベには他にいないの?」

ロールシャッハ「協会は東ゴルドーの現場にしか目が行ってない」

ロールシャッハ「こんな島国のことは気にも留めていないだろう」

よね「あんたも使えないじゃない!」

ロールシャッハ「HURM……」

よね「コンピュータ・ウィルスだっけ?」

よね「それだって、本当にあるかどうかわかんないんでしょ?」

ロールシャッハ「確かに、協会から得た情報ではない」

ロールシャッハ「だが、核戦争というのは俺たちのあずかり知らぬところで、勝手に進んでいくものだ」

ロールシャッハ「目を反らせば、気づいたころにはもう灰になってしまう」

ロールシャッハ「お前の追っていたヘクソンという男……」

ロールシャッハ「かつて、呪術を用いてこの世に手をかけようとしたとか」

よね「確かにそうだけど……信じるの? そんな話」

よね「警視庁の誰も信じなかったのに」

ロールシャッハ「ああ。信じるとも」

ロールシャッハ「生きていると、信じられないものの存在に出会うことがたびたびある」

ロールシャッハ「今さらそんなもの、驚く気にもなれん」

よね「ま、確かにね」

よね「あんたもダイナマイトに覆いかぶさって、死ななかったっていうし……」

ロールシャッハ「だがおそらく……この先には、さらに驚くべきものが待ち受けている」

ロールシャッハ「頼りとなるのは、目を反らさぬ者だけだ」

ロールシャッハ「パラダイスキング……アクション仮面なる特撮番組の主人公を倒すことに執着した偏執狂……」

       「こちらは無視していい。
        そのアクション仮面が拉致されたにしろ、奴自身の目的は一つ果たされた」

       「目立った動きはしないだろう。難敵ではあるがな」

       「パラダイスキングはアクション仮面が目的だった。
        彼を演じる郷剛太郎本人が出演するショーのためにここへ来た」

       「問題はヘクソンだ。それだけの野望を持った男が、
        くだらぬ逆恨みにただ手を貸したとは思えん」

ロールシャッハ「奴の目的が、以前と変わらぬものだとすれば……」

よね「!」

よね「……コンピュータ・ウィルス!」

ロールシャッハ「そうだ。核ミサイルの報復装置……
        それを止められるならば、逆にそいつの気分ひとつで、発射されるともならない」

ロールシャッハ「ヘクソンは超能力者と言ったな。遠く離れた他人の心を読むことができると」


ロールシャッハ「Dr.オオブクロ本人か、あるいは関わりのある人物に対し、その力を使ったなら……」

ロールシャッハ「カスカベにそのウィルスがあると見ているのだろう」

よね「……こうしちゃいられない!」

またずれ荘 廊下

むさえ「…………」

むさえ「……なにしてんの?」

しんのすけ「しーっ!」

風間「このあいだアクション仮面ショーに乱入したっていう人が、
   ここに住んでるんです!」

むさえ「うん、知ってる」

ネネ「私たち、カスカベ防衛隊の隊員として、
   重大な事件を見逃すわけには行かないんです」

むさえ「いや、別にいーだろそれは……」

マサオ「でもやっぱり怖いよ……アクション仮面だって、負けちゃったんだし……」

ボー「マサオくん!」

マサオ「あ、ご、ごごゴメン!」

しんのすけ「……」

しんのすけ「……オラたちカスカベ防衛隊が、
      もう一度アクション仮面をお助けに行くんだゾ!」

むさえ「あのねえ」

むさえ「アクション仮面がどうだか知らないけど、
    五歳児に脱獄犯の相手が務まるわけないでしょ。ほら、帰んな帰んな」

しんのすけ「大丈夫だゾ! キャベツのおじさんがいるもん!」

むさえ「キャベツ?」

むさえ「ああ、隣の人? あのあとおまわりさんたちとなんか話してたから、
    悪い人じゃないとは思うけど」

むさえ「だからって子供が関わることじゃ――」

部屋の戸が開く。

ロールシャッハ「騒がしいぞ」

むさえ「いいっ!?」

しんのすけ「おじさん!」

ロールシャッハ「……シンノスケたちか」

しんのすけ「おじさんヒーローなんでしょ! 風間くんも言ってたゾ!」

風間「お、おい、しんのすけ……」

ロールシャッハ「……HURM」

ロールシャッハ「とりあえず入れ。人目につく……」

しんのすけ「ん」

しんのすけ「なんでむさえちゃんも入ってくるの」

むさえ「いーじゃんいーじゃん、入れって言ってるんだし」

むさえ「部屋の中見たら安心できそうだしねー」

よね「ロールシャッハ、だっけ、ねえ、どうしたって――」

しんのすけ「おお! 東松山よねさん!」

ネネ「あーっ、あの女の人!」

よね「あんた、なんでここに!?」

ロールシャッハ「グロリア、シンノスケを知ってるのか?」

しんのすけ「相変わらずグロリアって呼ばせてるの?」

よね「うるさいな! いいだろ、別に!」

ネネ「キャー、グロリアだって!」

ネネ「ハードボイルドねえ!」

風間「ネネちゃん、あの人のこと悪い人だと思ってたんじゃないの?」

ネネ「ううん、女の人助けたところ、すっごくかっこよかったあ!」

ボー「女心と、秋の空」

風間「ちょっと違うんじゃないかな……」

しんのすけ「ところでこの部屋、汚いね」

むさえ「うんうん、あたしの倍は汚いかな」

むさえ「この短期間でここまで汚すとは……」

しんのすけ「感心するとこじゃないでしょ」

よね「せ、せまい……」



ロールシャッハ「――それで、このシンノスケはかつてお前とともに、
        タマヨミ一族と闘った、と」

よね「うん。巻き込まれたって言う方が正しいけど」

ロールシャッハ「そして、この五人の子供は“ブタのヒヅメ”なる組織に拉致され、
        Dr.オオブクロと接触した経験がある」

ロールシャッハ「HURM……少しは頼りになるか……」

マサオ「見て見て、このフック銃!」

マサオ「かっこいいなあー」

風間「なんか、角砂糖いっぱい転がってるな」

しんのすけ「あむ、ガリ、ガリ、ガリ」

風間「喰うなよ!」

しんのすけ「ただひたすらあまーい」

ネネ「当り前でしょ」

ボー「日誌……読めない……」

よね「頼りって……この子たちをこの事件にも巻き込む気なの?」

ロールシャッハ「危険な目に合わせるつもりはない」

       「俺から援助を求める気もない」

       「ただし彼らの意志を、ここで断たせる気もない」

ロールシャッハ「子供に助けられることは、初めてではないしな」


しんのすけ「は、そうだった!」

しんのすけ「おじさん! オラたちおじさんに協力しに来たんだゾ」

しんのすけ「そんでもって、アクション仮面をお助けするんだゾ!」

よね(はあ……)

よね(正義の味方、か)

しんのすけ「キャベツのおじさん」

しんのすけ「オラたちなにすればいいの?」

ロールシャッハ「シンノスケ」

ロールシャッハ「気になっていたが、キャベツとはなんのことだ?」

しんのすけ「野菜」

ロールシャッハ「それはわかる」

風間「なんだ、やっぱりしんのすけが勝手につけたあだ名か」

ネネ「でもなんでキャベツなの?」

むさえ「スーパーの特売でキャベツ大量に買ってったとか……」

マサオ「おすそ分けしてもらったとか……」

ボー「実家がキャベツ農家、とか」

しんのすけ「やだなーおじさんが自分で言ったんじゃない。
      ロールキャベ……あれ? ロールクラッシャーだったかな」

ロールシャッハ「……ロールシャッハだ」

ロールシャッハ(同じ相手に二度も名乗るのは初めてだ……)

風間「全然違うじゃないか!」


しんのすけ「ろーるしゃっは……」

しんのすけ「じゃ、シャッちゃんだね」

むさえ「ちゃんをつけるか普通」

よね「プ、ククク……」

ロールシャッハ「グロリア。なにがおかしい」

風間「それで、僕たちにお手伝いできることってありませんか?」

ロールシャッハ「そうだな……」

ロールシャッハ「Dr.オオブクロの居場所がわかるのが一番いいのだが、それは知らないのだな」

ロールシャッハ「HURM……」

       「とにかく、市内をシラミ潰しに当たろう」

       「お前たちは必ず、五人そろって行動すること」

       「それらしい場所や、あの二人組を見たら、必ずその時点で俺に連絡を入れること」

ロールシャッハ「それ以上はするな。それだけ、必ず約束しろ」

しんのすけ「ブ・ラジャー!」

しんのすけ「よーし、カスカベ防衛隊、ファイヤー!」

風間・ネネ・マサオ・ボー「ファイヤー!」


むさえ「おっ、四畳半に集まった七人の正義の味方!」

むさえ「うーん、でも、背景がちょっとな―」




アクション仮面「…………」

       「…………」

       「……はっ……」

アクション仮面「ここはどこだ……私は、あのあと……」

アクション仮面「むっ……手がっ」

暗闇の中、目を覚ますアクション仮面。
両手を天井から吊るされ、両足も鎖で巻かれている。

トッペマ「気がついたのね。アクション仮面、だったかしら」

アクション仮面「! 人形……!?」

トッペマ「私はトッペマ。トッペマ・マペットよ」

アクション仮面「……喋る人形だと?」

トッペマ「うーん、人形だけど人形じゃないっていうか……」

アクション仮面「君も拘束されているところを見ると、
        私と同じように捕まったということか?」

トッペマ「ええ」

トッペマ「……驚くのも無理はないと思うけど、よく聞いて」

突如、BGMが流れ出す。

ウォウウォウウォ――――
      ウォウウォウウォ――――

アクション仮面「!? トッペマ、よく聞けって、これのことか?」

トッペマ「え、いや、ちが……」

エビバディワズカンフーファイティンッ

パラダイスキング「よーやくお目覚めかい? 待ちくたびれたぜ」

トッペマ「!」

アクション仮面「パラダイスキング……!」

アクション仮面「これは一体なんの真似だ!」

パラダイスキング「お前にはこれからずゥーっと、
         俺様のサンドバックになってもらうことにした」

エビバディワズカンフーファイティンッ

パラダイスキング「ハッ!」ボッ

アクション仮面「うぐっ!」

ゾーズキッワーファスァズラァイニン

パラダイスキング「ハッ!」ボッ

アクション仮面「ぬおっ……」

トッペマ「ちょっと、なにするの!?」

ウォウウォウウォ――――
      ウォウウォウウォ――――

パラダイスキング「うーん、登場はやはり、この曲に限る」

パラダイスキング「おらおらおら!」

拘束されたアクション仮面を、一方的に打ちのめすパラダイスキング。

トッペマ「やめて!」

パラダイスキング「うるせえな、ねじまき人形が生意気に口きいてんじゃねえ!」

アクション仮面「く、くく……」

パラダイスキング「アクション仮面。お前が起きるまでずっと待ってたんだ」

パラダイスキング「そう簡単に寝られちゃ困るぜ」

マホ「まずなにをするのかと思えば、ガキのヒーローごっこかよ」

パラダイスキング「ああん?」

マホ「そんなことのために脱獄したって?」

パラダイスキング「おいネエちゃん。おめェ、もしかしてケンカ売ってんのか?」

マホ「そんなコスプレヒーローに負けたってんじゃ、あたしの相手にはなんねーよ」

ヘクソン「やめろ。二人とも」

ヘクソン「そんなくだらぬことで揉めるのはあとだ」

アクション仮面(この男がリーダーか?……しかし、一体なにを……)

すると、暗闇の奥からマカオとジョマが現れる。

マカオ「みんな、そろったみたいね」

ジョマ「人生ほんと、めでたしめでたしとはいかないものねえ」

マカオ「栄えるのはいつだって悪賢い者たち」

ジョマ「正義の味方が勝って終わりじゃ、そのうち廃業しちゃうものね」

アクション仮面「何者だ? あのオカマどもは……」

トッペマ「奴らが、オカマ魔女のマカオとジョマよ。私のいた世界を、再び――」

マホ「べらべらおしゃべりしてんじゃねーよ!」シュルッ

リボンが飛び、トッペマの体に傷をつける。

トッペマ「うっ!」

アクション仮面「トッペマ! おい、やめろ!」

パラダイスキング「お前は自分のことを心配しやがれ」ボッ

アクション仮面「ぐ……はァッ……」

ジョマ「パーっと前祝いしたいところだけど、そうも言ってらんないから話を進めるわ」

マカオ「ヘクソン。Dr.オオブクロの研究施設は?」

ヘクソン「見つかった。山中に隠してある。これから、俺とパラダイスキングで向かおう」

マカオ「あら、ずいぶん張り切ってるのね」

ヘクソン「お前たちの顔を、これ以上見たくないだけだ」

ジョマ「連れないのね」

マカオ「ほんと。いい男なのに」

ヘクソン「オカマに、あまりいい思い出がないのでな」

ジョマ「このあいだ、そこのオモチャを連れ帰るときに乱入した奴ってのは?」

ヘクソン「奴についてもわかった。ロールシャッハ。プロのハンターだ」

マホ「ハンター? なんだってそんな奴が、こんなところに?」

ヘクソン「狙いは我々と同じだ」

マカオ「厄介ね」

ジョマ「マホ。あんた行って、始末してきなさい」

マホ「ちっ。オカマってのはホント、女づかいが荒いぜ」

ヘクソン「待て。マホひとりでは危険だ。奴も俺と似た超能力を持っている」

マカオ「なるほど。でも心配はいらないわよ」

ジョマ「あんたたちの、新しいお仲間を紹介するわ」

マカオ・ジョマ「アナコンダ! Mr.ハブ!」

カスカベ市 市内

ロールシャッハ「それで結局、あの二人は完全に行方が途絶えている、と」

よね「そうみたい。空へ逃げたって言ったって、普通ならそれだけで人目につくって言うのに」

ロールシャッハ「HURM……」

ロールシャッハ「後手に回るというのは、望ましくはないが……」

ロールシャッハ「向こうがこちらに出向くことを期待する、か」

よね「確証はあるの?」

ロールシャッハ「ヘクソンの持つ力で、俺たちの動きを察知できるというなら、
        俺が何者かであるということも、すでに知れているだろう」

よね「ってことは、先に始末しよう……って?」

ロールシャッハ「そうだ。それに賭ける」

よね「でもあいつ、メチャクチャ強いのよ?
   あんただってそりゃ強いんだろうけど、勝てる見込みはあるの?」

ロールシャッハ「さあな」

よね「さあな、って!」

ロールシャッハ「他に道がないのだ、今はそれしかない」

ロールシャッハ「いちいち敵を探ってなどいられない」

ロールシャッハ「奴らを倒して、それで終わりじゃないんだ」

よね「……それより、さっきからどこに向かってるの?
   どんどん路地裏に入っていくけど……」

ロールシャッハ「奴らを招待する場だ。
        このあたりなら、躊躇なく襲えるだろう」

よね「襲えるだろう、って……」

ロールシャッハ「……来るぞ」

よね「……マジ?」

二人の前方に現れる、長身の男。

ロールシャッハ「……あれがヘクソンか? 白人だが、見せられた写真とは顔が違う……」

よね「いや、あいつじゃない……」

ハブ「……お初にお目にかかるな。俺はMr.ハブ」

ロールシャッハ「自分でMr.と名乗るとは、傲慢な男だな」

ハブ「そう呼びたくなるさ。俺は偉大なるアナコンダ様の忠実な部下……」

ハブ「その戦列に、じきにお前たち愚民どもが加わるのだからな」

ロールシャッハ「……笑わせるな」

マホ「――どこかで見たと思ったら、あのヘボ刑事か」

よね「!」

よね「挟まれた……!」

ロールシャッハ「……HURM」

ロールシャッハ「後ろは頼む、グロリア」

ハブへ飛びかかるロールシャッハ。

よね(頼むって……ええい、クソ!)

よね(確かこいつのリボン……刃物以上の切れ味が……)

よね「動くな! 一歩でも動いたら撃つ!」

マホ「お前の銃の腕前なんかわかってんだよ!」

よね(リラックス、リラックス……!)

マホ「遅い!」

リボンが飛び、よねの腕を切りつける。

よね「っい、ってェー!」

マホ「その手じゃ銃も撃てないだろ? むしろその方がいいかも知れないけど」

よね、警棒を抜く。

よね「クッソ! チバ県警舐めんなよ!」

ロールシャッハ(この男……)

ロールシャッハとハブ、一進一退の攻防が続く。

そのさなか、カウンター気味にロールシャッハの拳がハブの顔面に命中する。

ハブ「むむっ……」

ロールシャッハ(……加減はしなかった)

ハブ「ふん」

ロールシャッハ(だが、なぜまだ闘える?)

回転しながら蹴りを放つハブ。

ロールシャッハ(ただの人間ではない……)

       (念能力者? いや……)

       (違う。何者かの力を受けている)

       (それもヘクソンによるものか?)

ロールシャッハ(それとも、別の誰かが……)

暗闇から、路地裏の光景を見るマカオとジョマ。

マカオ「あんたの部下もなかなかやるわね」

ジョマ「ヘクソンよりタイプかも、あたし」

アナコンダ「ンフフ。これでも、魔人の力は健在なのでな」

マカオ「でも忘れないことね。あたしたちが壺を呼び起こさなきゃ、
    あなたたちは地球の終わりまで海の底だったんだから」

アナコンダ「だが、その終わりももうすぐ来るのだろう?」

ジョマ「ええ」

マカオ「すぐに」

ジョマ「そして新しい時代が始まる……」

マカオ「そう。21世紀がね」

カスカベ市 路地裏

ハブ「どうした。さっきから攻めて来ないようだが」

ハブの蹴りが、ロールシャッハの胸に命中する。

ロールシャッハ「UUK」

       「KUFF,KUFF」

ロールシャッハ(やはりだ……)

ロールシャッハ(この男は、人間ではない)


ハブ「久しぶりに外に出たのでな……遊んでいたいところだが」

ハブ「アナコンダ様の命令だ。早く済ませろとな」

ロールシャッハ(……だが問題ではない……)


よね「! ロールシャッハ! 避けて!」

ロールシャッハ「!?」

ザクッ

マホ「相棒を恨むなよ? そいつも結構頑張ったからな」

ロールシャッハの腹を、リボンがつらぬいている。

ロールシャッハ「UUU……KK,KK」

引き抜かれるリボン。吹き出る血。

よね「ロールシャッハ!」

マホ「トドメをどうぞ、Mr.ハブ」

ハブ「ふむ」

ロールシャッハ(出血を……止めねば)

ロールシャッハ「グロリア、一度退くぞ」

よね「退くって、どこへ!?」

よねの腕をつかみ、引き寄せるロールシャッハ。

ロールシャッハ「上だ」

フック銃を抜き、ビルへ向けて撃つ。

ワイヤーを巻きながら、左右の壁を蹴って上昇するロールシャッハ。

マホ「野郎!」

ハブ「……逃がさん」

ハブの右腕に装着された爪が飛び出す。

よね「なにあれ!?」

二人に向けて射出される爪。

ロールシャッハ「!」

ロールシャッハ(まずい……奴も、似たような装備を……)

迫る爪。
だが、それに銃弾がぶち当たり、爪は軌道を逸れて落ちる。

ロールシャッハ(なんだ、今度は……)

続けて、数度の銃声。

マホ「まだ仲間がいたのか!?」

ハブ「仕方ない……こちらも引き上げだ」

ビルの屋上へ降り立つロールシャッハとよね。

そこにもう一人、銃を携えた女が立っている。

「――――大丈夫ですか?」

ロールシャッハ「……ああ」

よね「大丈夫じゃないだろそのケガ!」

ロールシャッハ「とにかく助かった。あんたは?」

ルル「ルル・ル・ルル。ブリブリ王国親衛隊少佐です」


ロールシャッハ「るるるるる?」

よね「ブリブリ王国ゥ?」

ルル「それよりお二人とも、血まみれ……?」

よね「ああ、私のはこの人の血がかかっただけだから」

よね「そうだ、病院!」

ロールシャッハ「いや、いい」

ロールシャッハ「相当な切れ味だった。爆風より治癒はたやすい」

ロールシャッハ「いくらか休めば、じきに傷はふさがる」

よね「ふさがるって……」

よね「まあでも、ダイナマイト受け止めた人間だし、平気……なのか?」

ロールシャッハ「平気だ」

ロールシャッハ「それで、その、ブリブリ王国とやらの人間がなんの用だ」

ルル「少々、わけあって来日しているのです……」

よね「その銃は?」

ルル「申請は通してあります」


ロールシャッハ「そこまでしてカスカベに来たということは……」

       「わけを聞かぬわけにはいくまい」

話が全然進みませんが、今回はここまでです。

見ての通り劇場版のキャラクターがばんばん出てくるので、
クレヨンしんちゃんを知らない方は劇場版だけでも見ておくとわかりやすいと思います。


こうしてみると劇場版の敵ってアメコミのヴィランと大して変わらないんだな

乙でした
劇場版の敵は割とガチな奴ら多かったんだと再認識


ワクワクする展開だな

>>123
パラダイスキングを偏執狂としたのは、やっぱりバットマンのヴィランが好きなので。
バットマンのキャラクターはジョーカーはもちろんのこと、
トゥーフェイスやベントリロクエストみたいに人物造型に魅力があるなあと思います。
あと創作上のものとして、狂人というモチーフが好きなのです。

>>124
最近のクレしん映画がいまいち面白くないなー、と感じてしまうのは、
オカマがどうこうという話ではなく、
ブリブリ王国~カスカベボーイズあたりは悪役に魅力があったからだなと思います。
ブロリーとかクウラみたいに再度登場させてほしいくらいに。
空中戦や兵器の描写とかもハードでよかったなと。

黄金のスパイの、シャイニングのパロディは腹抱えて笑いましたが。


オールスター感がたまらん

こんな俺得スレいつ出来てたんだ。全然気付かなかった
支援

支援
関係ないけどラストは原作より映画のほうが好きだ
ダニエルがロールシャッハの死を悲しんでるし

ハイグレ魔王は出るんですか!?

まだかね

続きが楽しみ

クレしんの映画の敵キャラって意外とチートキャラばっかだよなよくしんのすけって勝てたね

パラダイスキングとか懐かしいな。

映画のタイトルは忘れたけどアフロで猿の親分なアイツだってことは覚えてる。

思ったんだけど、ブタのひずめのあのハゲって、ヒューゴ・ストレンジに似てない?

クレしん映画随一の強さを誇ったブレードは登場するんだろうか。何かブレードてアメコミに居そうだよな。

大分長いこと間が空きました。

が、残念ながらまだ全然書けてませんので、今回もほんとにちょろっとの投稿になります。
あれこれ考えながら書いてる現状ですが、このスレを見ていただいている皆さんのご期待に添えるかどうか、
俺としてもはなはだ疑問な状況であることをご容赦ください。


それと、>>45>>46のあいだに載せ忘れた部分があることに気づいたので、
恐れながらそちらも投下させていただきます。


ネネ「『ザ・クエスチョン』? 聞いたことないわねー」

マサオ「僕も知らない。『漫画アクション』? それとも『まんがタウン』の奴?」

風間「違うんだ、これは」

しんのすけ「おやおや風間くん。
     『漫画なんてお子様向けのものは趣味じゃないね』なんていつも言ってる風間くんが、
      そんなマニアしか知らないような漫画を知ってるなんておかしいですなあ」

風間「人の話を最後まで聞けよ!」

風間「外国の漫画なんだ。パパがお土産に買ってきてくれて」

しんのすけ「それでついハマっちゃってブリスター入りのフィギュアのコレクションも始めたんだー」

風間「そうそう! バリアントがまた渋いセレクトで泣かせる……って、なに言わすんだよ!」

風間「と、とにかく、その漫画、いつも『この漫画は、実在の人物を元にしたフィクションです』って書いてあるんだ」

ネネ「なに言ってんのよ、そんなのウソに決まってんじゃない」

風間「僕もそう思ったんだけど……その漫画、それを大きなキャッチフレーズにしてるみたいで」

ボー「つまり、その主人公のモデルが、あの人」

>>130
個人的にはコミックの方も好きなんですよ。
あそこのセックスのシーンが一番重要な濡れ場なんじゃないか、
と感じていたもので
映画版に文句を言うとしたら、俺としてはイカでもなんでもなく
アーチーの濡れ場のじっくり描写です

>>131
残念ながら出ません。アクション仮面を出したいなと思ったとき、
ハイグレ魔王のいる別次元をどう結ぼうか考えたのですが、
うまい案が出なかったのでやめましたすいません

>>136
ハゲにメガネはマッドサイエンティストのステロタイプでしょうから、
別段意識したわけでもないと思います。
余談ながらマイフェイバリットハゲ&メガネマッドサイエンティストは
実写版『ドグラ・マグラ』の桂枝雀演じる正木博士です。
個人的には『ウォッチメン』と並ぶ実写版の良作だと思ってます

>>137
残念ながらこちらも出ません。
SMLが『本部をニューヨークに置く』という設定だったので、
ブタのヒヅメともどもあれこれ考えた結果出さないことに決めました。
ママに喰われて出番少なかったけど、危なさでもクレしん随一ではないでしょうか

あと「スナック たまゆら」とかテキトーなこと書いてましたが、
ホントは「スウィングボール」でした。
暗黒タマタマは何度も見たというのに書いたあとに知りましたすいません



カスカベ市 喫茶店

竜子「いらっしゃいませェ……げ!」

竜子(こないだの覆面野郎!)

竜子(顔見られないようにしよ……)

ロールシャッハ「なんだフカヅメか」

竜子「竜子だ!」

ロールシャッハ「やはりか」

竜子(墓穴掘った……)

よね「あなた、高校生?」

竜子「あー、え、ええ、まあ」

竜子(ああもう、なんでこんなときに会わなきゃなんねえんだよ、クソ!)

よね「見かけによらないじゃん、女子高生の知り合いがいるなんて」

ロールシャッハ「知り合いなどというほどのものではない」

竜子「ああそうかよ! あたいだってテメーのそのきたねーマスクなんざ見たくもねえよ!」

ルル「コーヒー三つで。いいですか?」

ロールシャッハ「ああ。角砂糖をつけろ。個別包装の奴だ」

竜子(注文が多いなちくしょー)

竜子「か、かしこまりましたあ……」

竜子(女はべらせてサテンかよ、いい御身分だなァあいつも)

竜子(夏場にコートなんか着込みやがって)

竜子(ん? あれ、血か……?)

ロールシャッハ(ルル・ル・ルル)

ロールシャッハ(ブリブリ王国など聞いたこともないが、敵ではなさそうだ)

ロールシャッハ(軍人のようだが、ミス・ジュピター並みの体術を持っている)

ロールシャッハ(コメディアンと似たような経緯があるのだろうか? それは聞かなかった)

よね「ブリブリ魔人……ブリブリの壺……」

よね「……とか言われてもなー」

ロールシャッハ「グロリア。お前も、ジャークなる魔人を見たのではなかったか?」

よね「いや、でもあれはただのオカマだったし……」

ルル「信じていただけないのは承知しています……しかし、あなた方を襲った、額に逆三角の男……」

ルル「あの男こそ、以前壺に封じ込められたMr.ハブなのです」

ロールシャッハ(なぜMr.をつける?)

よね「それともうひとり、アナコンダ伯爵、ねえ」

ルル「私たちは、Mr.ハブを追って来日したのです」

ルル「彼が解き放たれたということは、
   つまり魔人の力を手にしたアナコンダもまたどこかに潜伏しているはず……」

ルル「……ともに、非常に危険な存在です」

ロールシャッハ「ハブという男……生身の人間ではないと思っていたが……」

ロールシャッハ「その、アナコンダの妖術を受けていたということか……」

ルル「ロールシャッハさん、でしたね? ハンターというあなたの力を見込んで、
   どうか、壺の捜索に力を貸していただけないでしょうか?」

ロールシャッハ「断る」

ルル「え」

よね「ちょっと、仮にも助けてもらっておいて、即答はねーだろ!」

ロールシャッハ「ならどうしろと?」

よね「そこは少し考えた上で、
  『いやちょっと今回はご遠慮させていただきます』とかそういう返し方を」

ロールシャッハ「どの道同じだろう」

よね「あんたホントに社交辞令ってのがないのね……」

ロールシャッハ「かつてそれを学ぶ場に向かったのだが、初日で崩壊したからな」

よね「あんたのせいだったんじゃないの?」


ルル「……ほ、報酬はもちろん用意いたしますよ」

ルル「宮殿にもご招待いたしますし、王への謁見も」

よね「うへー、王国に招待だなんて、そうそうある話じゃ……」

よね「って、ロールシャッハ、聞いてんの?」

ロールシャッハ「……」

ルル「ああ、そうだ! 美しい女性もそれはそれはたくさん――」

ロールシャッハ「くどいぞ。俺は興味ない。お前の使える王も、金も、女もだ」

ルル(女でもダメか……)

ロールシャッハ「ブリブリ王国の秘宝の奪還など、俺には関係ない」

よね「あんた、一体なに考えて生きてんの?」

ロールシャッハ「お前に理解されるつもりはない」

ルル「……そうですか、残念ですが、仕方がありませんね」

ロールシャッハ「待て」

ルル「?」

ロールシャッハ「お前に聞きたいことはまだある」

よね「なんかずーずーしいな……」

ロールシャッハ「アナコンダとハブは壺の力を得ようとし、そして封じ込められた」

ロールシャッハ「お前の話では、その壺は海の底に沈み……
        二度と陽の光を浴びることはない、はずだった」

ロールシャッハ「誰か、解き放った奴がいる……」

よね「あんたの同業者がトレジャーハントして、ここまで流れて来たんじゃないの?」

ロールシャッハ「本当に鈍い女だな、グロリア」

よね「なっ……」

ロールシャッハ「ハブとともに現れた女がいただろう」

ロールシャッハ「ヘクソン、パラダイスキングとともに脱獄した奴だ」

ロールシャッハ「ブリブリ魔人とやらがどの程度の力を持つのか定かではないが、
        いずれ俺たちの前に姿を現すことになる」

ルル「……!」

よね「じゃあ、結局それも例のコンピュータ・ウィルスを狙いに?」

ロールシャッハ「そう考えるのが妥当だろう。でなければ、このような一都市に拘泥する必要もあるまい」
 
       「ならば、魔人の力とは核の破壊力には匹敵しないか――」

       「もしくは、誰にも核を使わせることなく、世界を手中に収める気か」

ロールシャッハ「滅びた大地の支配者になっても、なんの意味もないからな」

竜子(……なんかすげーレベルの話してんな)

竜子(マスクも、あのコートの血も……思ってたより相当やばい奴なんじゃ……)

ルル「待ってください、ではあなた方は……やはり我々に協力していただけると?」

ロールシャッハ「勘違いするな」

       「事態はブリブリ王国だけの問題ではないのだ」

ロールシャッハ「ともかく、このまま行けば」

       「……カスカベは戦場になるかも知れない」

竜子「あ、あのー」

ロールシャッハ「なんだ」ジロ

竜子「ああ、いや、その」

竜子(やっぱおっかねー!)

よね「ちょっと、怖がってるじゃない」

ルル「どうかなさいました?」

竜子「いやー、なんか、核がどうとかカスカベが戦場とか……」

よね「ああ、いやいやっ、私たちは別に関係ないのよ!?
   テロリストとかそんなんじゃないから」

ロールシャッハ「フカヅメ」

竜子「いっ……」

ロールシャッハ「やはりただのバカではなかったようだな」

ロールシャッハ「これは関係のないことなどではない。俺も、お前にもな」

ロールシャッハ「目に見えないものから、目を背けるな」

竜子「は、はあ……」

竜子(あれ?……誉められたのか?)

カスカベ市郊外 山中


『ひみつのいりぐち』


パラダイスキング「…………」

パラダイスキング「ったく、なんてわかりやすいんだ」

パラダイスキング「罠じゃねーのか?」

ヘクソン「いや、罠ではない。大袋とその助手アンジェラ青梅のセンスの問題だ」

パラダイスキング「奴らの心を探ってここまで来たって?」

ヘクソン「そうだ」

ヘクソン「二人は今、ブリブリ王国なる南の国でバカンスをしている……」

パラダイスキング「旅先のセンスも疑うな」

ヘクソン「ともかく、コンピュータ・ウィルスはこの中にある」

ヘクソン「先を急ぐぞ」

パラダイスキング「へえへえ」

風間「あれだ! 絶対間違いない」

しんのすけ「あの入り口も、前とおんなじですな」

ネネ「シロ連れてきてよかったわね」

シロ「アン!」

マサオ「えらいねえ、シロ」

マサオ「じゃ、早く連絡しようよ。見つけたら連絡しろって、あの人言ってたでしょ?」

ボー「うん。それがいい」

しんのすけ「で、どうやってするの? 連絡」

風間・ネネ・マサオ・ボー「あ……」

シロ「……クゥーン」

風間「しまったァ! 僕としたことが!」

風間「携帯電話なんて持ってないし、公衆電話もない!」

しんのすけ「他にできそうなことと言えば……」

マサオ「矢文!」
ネネ「狼煙!」
ボー「伝書鳩!」

風間「……どれもできるわけないじゃんかー!」

しんのすけ「じゃあさ、こっそりあの中入ってみれば?」

風間「え?」

しんのすけ「電話くらい貸してもらえるかもよ?」


大袋博士の秘密(違法)研究所

パラダイスキング「なんだよなんだよ、ガラクタばっかじゃねえか」

パラダイスキング「スリッパコレクションって……」

パラダイスキング「それから、この尻のトルソーはなんなんだ?」

ヘクソン「大袋の趣味のようだ。
     女性は尻しか興味がなく、スリッパを人類最高の発明だと称している」

パラダイスキング「学者ってのは、やっぱ頭おかしいんだな」


「何者だ。ここへなにをしに来た」

パラダイスキング「?」

足元の床が一部開く。小さなディスクの中から、立体映像が現れる。

ぶりぶりざえもん「大袋は現在留守だ。御用の方はピーという音のあとに用件を」

パラダイスキング「なんだこりゃ。音声案内か? 警備システムか?」

ぶりぶりざえもん「ぴいいいいいい」

パラダイスキング「お前が言うのか」

ぶりぶりざえもん「さ。さっさと用件を言え」

パラダイスキング「ブタのくせに、いい声してんな。ついでに態度がでかい」

ぶりぶりざえもん「私をブタと呼ぶな!」

パラダイスキング「ブタじゃなきゃてめーはなんだっつうんだよ!」

ヘクソン「コンピュータ・ウィルスだ」

パラダイスキング「はあ?」

ヘクソン「ぶろぶりざえもんMk-2。これがそのウィルスだ」

ぶりぶりざえもん「いかにも。今は留守番の身に甘んじているがな」

パラダイスキング「プログラムごときが、生意気に口を利くのか?」

ヘクソン「電子生命体と言った方が正しい。このブタの映像は、意志を持つ」

風間「! コンピュータ・ウィルスって、まさかとは思ったけど」

ボー「やっぱり、ぶりぶりざえもん」

しんのすけ「ぶりぶりざえもん!」

風間「静かにしろよ! 見つかっちゃうだろ!」

ネネ「あれも、しんちゃんのぶりぶりざえもんじゃないのよ」

しんのすけ「オラのでもなんでも、関係ないゾ!」

しんのすけ「アクション仮面もぶりぶりざえもんも、オラのヒーローだもん!」

パラダイスキング「電子生命体ねェ。なんだかわかんねーが、まあいい」

パラダイスキング「おいブタ公。俺たちと来いよ」

ぶりぶりざえもん「私に命令するな!」

パラダイスキング「……ほんと態度のでけーブタだぜ」

ヘクソン「ぶりぶりざえもん。俺たちとともに来れば、こんなところで留守番などしなくていい」

ヘクソン「この世のすべてが手に入る。俺たちの好きなように、世界を動かせるのだ」

パラダイスキング「そうだぜ、お前だって好き放題できる」

ぶりぶりざえもん「ほう」


しんのすけ「待てー!」

パラダイスキング「ああん?」

パラダイスキング「……なんだよ、またジャガイモ小僧か」

風間「しんのすけ!」

マサオ「しんちゃん!」

パラダイスキング「お友達も、みィんな一緒か」

パラダイスキング「なるほどな。お前ら、またアクション仮面を助けるとかなんとか言って、
         俺たちをつけてきたんだな」

しんのすけ「そうだゾ! 爆発頭!」

パラダイスキング「アフロだ、ア・フ・ロ!」

ヘクソン「ガキに構うな」

パラダイスキング「いーのかァ? 実はあんたも、このガキにしてやられたことがあるんじゃねえか?」

ヘクソン「…………」

パラダイスキング「図星だな」

ヘクソン「他人に心を読まれるのは初めてだ……」

パラダイスキング「あんたのとはちと違うな。俺のは野生の勘って奴さ」

しんのすけ「ぶりぶりざえもん! そんな奴らについてっちゃダメだゾ!」

ぶりぶりざえもん「……しんのすけか」

しんのすけ「!」

しんのすけ「オラのこと、覚えてるの?」

ぶりぶりざえもん「少しだけな」

しんのすけ「あいつら悪い奴なんだよ、ぶりぶりざえもん、」

ぶりぶりざえもん「悪い奴?」

パラダイスキング「んなガキに構ってんじゃあねえぞこのブタッ!」

ぶりぶりざえもん「私をブタと呼ぶな!」

ぶりぶりざえもん「よし決めた」

パラダイスキング「?」

ぶりぶりざえもん「私をブタ呼ばわりする奴に貸す手はない」


パラダイスキング「……おい、相棒。こいつの心は読めるのか?」

ヘクソン「さっきから試みてはいるが、やはり生身でない以上不可能のようだ」

パラダイスキング「なら強硬手段しかねえな」

床からディスクを抜くパラダイスキング。
その手のひらの上に立つ形となったぶりぶりざえもん。

ぶりぶりざえもん「なにをする気だ」

パラダイスキング「従わねえってんなら今すぐ握り潰すぜ」

ヘクソン「パラダイスキング。バックアップはないぞ」

パラダイスキング「なら好都合さ」

パラダイスキング「死ぬってわかるか? 俺がこの手にちょいと力を入れりゃ、お前は死ぬ」

ぶりぶりざえもん「従おう」

パラダイスキング「いやに素直だな」

ぶりぶりざえもん「私は常に、強い者の味方だ」

パラダイスキング「……そう来なくっちゃな」

パラダイスキング「おいガキ」

しんのすけ「ひっ……」

しんのすけ「お、オラのこと……?」

パラダイスキング「そーだよ、し・ん・の・す・け」

しんのすけの体を抱え上げるパラダイスキング。

風間「や、やめろー!」

ネネ「しんちゃんになにするの!」

マサオ「放してよ放してよう!」

ボー「児童誘拐の罪は、重い!」

シロ「アン!アン!」

しんのすけ「やめろなにすんだ放せこのおバカーっ!」

パラダイスキング「びいびいうるせーぞガキども! 用があんのはこいつだけだ」

ヘクソン「なんのつもりだ」

パラダイスキング「もう一度逢わせてやんのさ。アクション仮面にな」


ぶりぶりざえもん「しんのすけ」

しんのすけ「ぶりぶりざえもん!」

ぶりぶりざえもん「今回は、」

ぶりぶりざえもん「あきらめろ」

しんのすけ「」ポワーン


しんのすけ「いやだいやだ放せおバカー!」

ヘクソン「オカマども。扉を開けろ」

ヘクソンたちの前に、暗闇の塊が現れる。

パラダイスキング「じゃーな。このガキの教育が終わったら、また遊ばしてやるぜ」

風間「し、」

風間「しんのすけェーっ!」

カスカベ市 市内

よね「それで……これから、どうするの?」

ロールシャッハ「子供たちと合流しよう」

ロールシャッハ「あのルルという女の助けがあるならば、退かせた方が安全だ」

ロールシャッハ「……手遅れになっていないといいのだがな」

ロールシャッハ、雑踏の中を歩く子供の姿を目にする。

ロールシャッハ「ん……シンノスケ?」

よね「いや、でも格好が……」

追おうとするロールシャッハ。だがそのとき、電気屋のテレビに臨時ニュースが流れる。


団「番組の途中ですが、ここで臨時ニュースをお伝えします。」

団「サイタマ県カスカベ市にて、現在凶悪犯が潜伏中との情報が入りました」

画面に映し出されるロールシャッハの姿。

団「凶悪犯は本名不詳、年齢不詳、『ロールシャッハ』という通称のみ知られており――」


よね「はあ!?」

よね「あんたなんかやらかしたの!?」

ロールシャッハ「……覚えがない」

よね(それはウソだろ……)

団「罪状は騒擾、騒乱、傷害、器物損壊、
  および異臭物陳列罪――身長170センチ弱、
  一年を通してトレンチコートを着用、顔に白黒のマスクを被っており……」

周囲の人々の足が止まり、徐々に離れていく。

よね「ちょ、ちょっと、誤解だって!」

ロールシャッハ「……HURM.」

今回はここまでになります。

次回はこれほど開きはないと思います。

ああ、ヤキニクロードの指名手配か…

なるほどな、これは結構やっかいだぜ

おつー
面白い

マカオとジョマが魔法の力でハイグレ魔王を呼んで来そうな気もするけど

>>160
sageろ

一気に読んだ

ロールシャッハはいいよなー
現実いたら困るけど

年内にもう一回読めたらなー・・・

年内無理だったな

まってる

遅くなりました。

次こそはこれほど開きません、などとはもう言えませんが、
少しでも「読んでよかった」と思えるお話にしたいと思います。
それすらも実現できるのか、みなさんは疑わしいことと思いますが。

また、続きを書くうちに、前回以上に長くなってしまうことがわかってきました。

多分本当にこのSSが最後になると思います。
ロールシャッハでやりたかったことを全部出し切るかと思います。
これまで、書き終えたあとに「続きが読みたい」と言ってくださったのはとても嬉しいです。
けれど今回はそれも言わせないほどに、
読んでくださるみなさんをお腹いっぱいにできたらいいな、などと考えてます。

どうか、もうしばしお付き合いください。





余談ながら、『ビフォア・ウォッチメン コメディアン/ロールシャッハ』、買いました。
ちょっとだけ感想を書きます。
ややネタばれ気味なので、未読の方はすっ飛ばしてください。






コメディアンはともかく、ロールシャッハ、ページが足りてねえ。

日誌 ロールシャッハ記
2000年 6月29日

状況が一転した。俺が追われる身となっている。
警察だけではない。煽動された市民もともに……

なぜメディアは俺を嗅ぎつけたのか?
この国がそもそも、俺がいることをよしとしないのか。

違う。
考えられる原因は――コンピュータ・ウィルスだ。
俺の携帯電話も、グロリアのものも、
すべて一様に機能していないのも、それが一因だろう。

つまり……敵の手に渡ってしまった。
シンノスケたちが心配だ。すぐに安否を確認せねば。
そしてこの電波ジャックは、俺を消そうという魂胆であることは疑いを持たない。

カスカベ一帯の人間が、俺の敵に仕立て上げられている……
頼りとなるのはグロリアと、シンノスケたち、それとルルという――

いや。それも違う。
頼りになる者など誰ひとりとしていない。
俺は腑抜けていたのかも知れない。
その甘えがこの事態をもたらしたとも言える。

俺が頼れる者は、俺だけだ。

カスカベ市 

よね「ダメ、どこの交番も、あんたの手配書張ってるよ」

よね「有力な情報には懸賞金だって」

よね「ほんと、こーいうことだけは早いんだから……」

よね「で、この先どうするの?」

ロールシャッハ「まずは……」

ロールシャッハ「シンノスケたちを捜す」

ロールシャッハ「それしか今は……できることはない」


カスカベ市 どこかの公園

スンノケシ「ルルともはぐれちゃったし、なぜか電話も使えない……」

スンノケシ「せっかくカスカベに行くんだから、しんちゃんにも逢えると思ってたのに……」

スンノケシ「お腹空いたな……はあ」

風間「! しんのすけ! しんのすけじゃないか!」

マサオ「しんちゃん! 無事だったの!?」

ネネ「帰してもらえたのね!」

風間「……心配させやがって、このおバカ!」

スンノケシ「え? ええと、その」

スンノケシ(このコたち……ボクのことしんちゃんだと勘違いしてるんだ)

風間「その格好はなんだよ? アラブの石油王ごっこか?」

マサオ「どうやって帰って来れたの? ぶりぶりざえもんは?」

スンノケシ「ええと、ボク、その」

シロ「クンクン」「……ウーッ」

ネネ「シロ? どうしたの?」

シロ「アン!アン!」

スンノケシ(やっぱり、犬はわかるんだ)

スンノケシ「でも、怖がらなくて大丈夫だよ」ナデナデ

シロ「! クーン」

スンノケシ「うん、よしよし」

ボー「みんな、あまり、騒がない方がいい。しんちゃん、きっと怖い思いして、ショック受けてる」

風間「そうだね、よし、送ってってやるよ!」

スンノケシ「あ、あの!」

スンノケシ「ボクはしんちゃんじゃなくて、ブリブリ王国王子のスンノケシで……」

マサオ「またまたあ、いくらなんでもおふざけが過ぎるよ」

風間「そうだぞしんのすけ。みんな心配してたんだから……」

ボー「……」グッ

ネネ「ちょっと、どうしたのよボーちゃん!」

スンノケシ(どうしたんだろう……なんか話し込んでるけど)

マサオ「ボーちゃん、急に襟首つかまないでよ!」

ボー「……ごめん」

風間「それでなにがどうしたってのさ!」

ボー「もしかしたら……」

ボー「しんちゃん、あの人たちに、洗脳されちゃったのかも知れない」

マサオ「せ、洗脳?」

ボー「うん。パラダイスキング、しんちゃんを恨んでる。
   だから、あの暗闇に吸いこんで、しんちゃんの人格を消して、とか……」

風間「そ、そんなバカな……」

スンノケシ「あ、あのう……」

マサオ「ひいいい! し、しんちゃん!」

ネネ「でも一理あるかも知れないわね。見てよあの目。
    いつものごっこ遊びのしんちゃんの目じゃないわ。役になりきってる……」

風間「ど、どうしたらいいのかな」

ボー「とりあえず、あまり刺激しないように、お家まで送ってあげないと」

マサオ「そ、そうだね、し、しんちゃん、早く帰ろう」

ネネ「ママも心配してるわよ」

スンノケシ「いや、だからボクは……」

スンノケシ(あ、でもこのままならしんちゃんの家には行けるのか……)

スンノケシ(電話も貸してもらえるかも……)

野原家

風間「じゃ、じゃあな、しんのすけ!」

マサオ「また、また明日ね!」

ネネ「今日はゆっくり休むのよ」

ボー「……それじゃ」

スンノケシ「う、うん……」

シロ「クゥーン」

スンノケシ(結局勘違いしたままだった……)

むさえ「おうしんのすけー、奇遇じゃん、今帰ったとこ?」

スンノケシ(しんちゃんの……お母さん?)

スンノケシ(こんな若かったっけな……)

スンノケシ「ここ、野原しんのすけくんのお家ですよね? ボクはブリブリ王国王子の――」

むさえ「なにそれ、そういう遊び流行ってんの?」

スンノケシ「いえ、遊びではなく」

むさえ「はいはい、お家に入ろうねー」

スンノケシ「あの、ちょっと」

むさえ「鍵……郵便受けに……ああ、あったあった」

むさえ「それがさーテレビ観た? やっぱりあの覆面指名手配されてるとか、
    もう誰を信じていいのやらこの国はどうなっちゃうのやら」

むさえ「ってなわけでまたしばらく厄介になるけどー」

むさえ「ほらほらそんな暑苦しいのとっとと脱いじゃいな!」

スンノケシ(この人を説得するのは相当大変そうだな……)

スンノケシ(しんちゃんのお父さんが来るまで、待っていよう……)

カスカベ市 日の暮れる市内

風間「しんのすけ……大丈夫かな」

ネネ「記憶が戻らなかったりとか、するのかしら……」

マサオ「そうなったら……どうなっちゃうの?」

ボー「精神……病……院」

風間「そんな、まさか!」

電気屋の前を通る一行。

TV「繰り返しお伝えします。凶悪犯・ロールシャッハは、
  依然としてカスカベ市内に潜伏していると見られ……」

マサオ「ね、ねえねえ!」

風間「ん? このニュース……!」

ネネ「あの人、凶悪犯って……」

マサオ「僕たち、やっぱり勘違いしてたのかな」

マサオ「もしかして、この人も秘密基地の人もみんな悪い人ばかりで」

ネネ「しんちゃんがああなったのも……」

風間「そんなことないよ! きっと……」

ネネ「きっと、なんだってのよ」

風間「わ、わかんないけど……」

ボー「……」

ボー「ぶりぶりざえもんの、仕業」

ボー「あのコンピュータ・ウィルスで、ウソのニュースを流してる」

風間「ボーちゃん、それ本当!?」

ボー「……かも知れない」

すると、路地裏から声がする。

よね「君たち、こっち、こっち!」

路地裏へ入っていく四人。

ネネ「おねーさん、あのマスクの人は!?」

よね「大丈夫、安心して……って、どっちを信じていいかわかんないか」

よね「あいつなら無事よ。で、ニュースは嘘っぱち……ってあたしもそう信じてるんだけどね」

風間「あのおじさんは、今どちらに?」

よね「……誰かにばらしたりしないって、約束できる?」

カスカベ市 カスカベ座 ロビー

ロールシャッハ(……しばらくはここが拠点だ)

         (市民には見つかるまい。俺ですら、再びここに来るまで苦労したほどだからな)

         (しかし、不思議だ)

         (この映画館だけ……カスカベから切り離されているような……)


ロールシャッハ(まるで…………)

ロールシャッハ(まるで、俺のようだ)


マサオ「あれ? ここ……」

ネネ「カスカベ座じゃない? カスカベ座!」

ボー「いつのまに」

風間「ほんとにいつのまに…………こんな道だったかな?」


ロールシャッハ「遅かったな」

よね「だって、道が全ッ然わかんねーもん。来るたびに奇跡起きてるんじゃないかってくらい」

ロールシャッハ「まあいい……シンノスケは?」



ロールシャッハ(コンピュータ・ウィルス“ぶりぶりざえもん”)

         (それが確かに、奴らの手に渡ったとのことだ)

         (シンノスケを伴って、暗闇……ブラックホールのような空間に消えた……と)

         (異空間を操る……そのような念があることは知っているが……)

         (ヘクソンだろうか? アナコンダという男か?)

ロールシャッハ(それとも……まだ他の奴が……)

         (シンノスケは拉致され、そして戻ってきた)

         (精神に異常をきたしていた、と彼らは語ったが……)

ロールシャッハ(……ブリブリ王国、という言葉が出たのが気になる)

         (ルルとは連絡が取れない。電波ジャックは依然として続いており、市内は混沌の入り口にいる)

ロールシャッハ(あのデタラメのニュースが、不安をあおり続けている……)

野原家


みさえ「しんちゃーん? 帰ってたの?」

みさえ「手洗いうがいは――って、むさえ! あんたなにしてんの!」

むさえ「やだなーねーちゃんテレビ観てないのー? あたしんちの隣の奴、やっぱり凶悪犯だったよきょーあくはん」

みさえ「前にもそんなこと言って! あんたそれを理由にうちでゴロゴロしたいだけでしょうが!」

むさえ「ねーちゃん! ねーちゃんはかわいい妹が凶悪犯になにされてもいいっていうの?」

みさえ「んなこと言ってるうちはなんにもされないって。ところで、しんのすけは?」

むさえ「風呂―!」

みさえ「あ、あらしんちゃん、今上がったの?」

スンノケシ「あ……」

みさえ「偉いわね、ママ帰ってくる前にお風呂入ってるなんて」


スンノケシ「すみません、お風呂までいただいてしまって」

スンノケシ(!? さっきより老けた!?)

みさえ「なに言ってんの、あんたの家でしょ」

スンノケシ「いやですからボクは」

ひまわり「たや?」

ひまわり「うー、うー!」

スンノケシ「あれ?」

みさえ「なーに、ひまちゃん。お兄ちゃんと遊びたいの?」

ひまわり「んー、んーうー」

ひまわり「たやい!」


スンノケシ(そうか、しんちゃんのうち……家族が増えたんだ)

みさえ「じゃ、しんちゃん、悪いけどひまわりのことあやしててもらえる?」

スンノケシにひまわりを抱かせるみさえ。

ひまわり「たやい!」

スンノケシ(ひまわり……女の子かな)


スンノケシ「わ……赤ちゃん……思ったより重い……!」

みさえ「どーしたのかしらねー、今日はいつもよりお兄ちゃんがハンサムに見えるの?」

スンノケシ「ええと、その、ですから」

ひまわり「たやいたやい!」「いーい」

スンノケシ「わわ、ちょっと」



むさえ「ねーちゃーん。次あたしお風呂入っていーい?」

スンノケシ「!?」

スンノケシ(……しんちゃんのママ……二人?)

みさえ「いーけど、今日家の人帰り早いって言ってたから、ぶつかんないよーにね」

むさえ「はいはーい」

スンノケシ「あの……しんちゃんのお母さん?」

みさえ「なにおバカなこと言ってんの」

スンノケシ「ボクです、覚えてませんか!? ブリブリ王国で逢った」

みさえ「しんのすけー? いくらあんたがあの王子様に似てるからって、
    そういうウソはいけません。大人がやったら捕まっちゃうのよ!」


スンノケシ「本当なん……むっ!」

ひまわり「えひひひひひ。た!」

スンノケシ(誰か……助けて……)


ロールシャッハ「……シンノスケの家はどこだ」

マサオ「え、しんちゃんの家に行くの?」

ロールシャッハ「そうだ。確認しなければならん」

風間「でも、待ってください。今街中から狙われてるんでしょう?」

ネネ「そうよ! 家につく前に捕まっちゃうわ!」

ボー「危険、すぎる」

ロールシャッハ「俺のことはいい」

ロールシャッハ「早く案内しろ」

よね「あんた、その前にそのマスク」

よね「ってちょっと! 人の話――」


マサオを抱えるロールシャッハ。

マサオ「ひっ!」

ロールシャッハ「案内しろ」

マサオ「なんでボク!?」

走り出すロールシャッハ。

よね「ちっ……」

風間「僕らも追い駆けよう!」

ネネ・ボー「うん!」



マサオ「降ろしてよう降ろしてよう!」

ロールシャッハ「ダメだ。時が惜しい」

「いたぞ!」「子供を抱えてる!」

「誘拐だわ!」

市民のあいだを走るロールシャッハ。

「とっ捕まえてやれ!」

ロールシャッハの足元へ差し出される誰かのつま先。

ロールシャッハ、それを踏みつける。

「ってェ!」

「おう、待てよおっさんぶっ!」

つかみかかる者を、片端から殴り飛ばしていくロールシャッハ。

ロールシャッハ(歩道じゃ遅い)

マサオ「え、待って待って! 車!」

車道に飛び出し、ボンネットを飛び越えるロールシャッハ。

「警察! なにやってんだよ、早くしろ!」
「おい来た来た、見ろよ!」

ロールシャッハ「!」

輸送車がサイレンを鳴らして前方に躍り出る。降りてくる機動隊員。

隊員「街ん中で、こうも暴れられるとはな」

ずらり、行く手に盾が並ぶ。


ロールシャッハ「飛ぶぞ」

マサオ「どこへ!?」

フック銃を抜くロールシャッハ。
機動隊の背後のビルへ向けて撃ち、ワイヤーを巻き取り、車を踏み走り、跳ぶ。


「なんだおい、あれ!」

マサオ「ひいいいいいいい!」



よね「あいつ、どこに……」

ネネ「見て、あっち!」

ボー「……飛んでる」

風間「やっぱり、ホンモノのクエスチョン!?」

よね「ごめん、通して!」

すると、よねの肩をつかむ男。

「おい、なんだよあんた、ケーサツか? それともあいつの知り合いかよ、いてて」
男は顔を押さえている。

「どうしてくれんだこのコブ!」

よね「せーとーぼーえー、だろっ!」

よね、男を殴り飛ばす。



マサオ「ひいいいいいいい」

ロールシャッハ、アーケードを縫うように水平に飛び、追手をまく。

ロールシャッハ「道はどっちだ。目を開けろ」

ロールシャッハ「開けるんだ」

フックがビルの屋上の手すりにかかり、もう一度大きな跳躍。

マサオ「ひいいい……ムリムリムリムリ、あ、今浮いた! 風でムリ!」

ロールシャッハ「早くしろ。お前の友達が、取り返しのつかないことになる」



マサオ「ムリムリ……ムリ……」


ロールシャッハ「下を見ても落ちはしない」

マサオ「……ひいいい……」

マサオ(……こわいよ、こわいよ……)

    (…………)

    (……ムリだよ、しんちゃんでもないのに……)

    (…………)

マサオ(……しんちゃんなら、笑ってるんだろうな)

マサオ「フゥー……フゥー……」

    (…………)

マサオ(……し、しんちゃん!)


マサオ、目を開ける。

マサオ「!」

マサオ「す、すごいすごい、ボク飛んでる!」

ロールシャッハ「そうだ。だから早くしろ」

マサオ「……うん、わかった!」

カスカベ市 ひろしの家路


ひろし「ふー、今日はきっちり定時で帰れるなー」

ひろし「しんのすけに土産も買ったし!」

ひろし「アクション仮面とカンタムロボ、
    今のあいつにどっちがいいかわかんないから……どっちも買っちまったけど……」

ひろし「いいさ。少しは気が晴れるよな」

ひろし「でもなんだって、こんな騒がしいんだ……?」


野原家

ひろし「たーだいまーっ! しんのすけ、いるかーっ!」

みさえ「あらあなた、お帰りなさい。ごめんね、今またむさえが来てて、お風呂空いてないんだけど……」

ひろし「いーのいーの、風呂なんかあとあと!」

スンノケシ「あ、しんちゃんのお父さん!」


ひろし「おみやげだぞ、しんのすけ!」

紙袋をテーブルに置くひろし。

スンノケシ「あの、ボクはブリブリ王国の!」

ひろし「また懐かしい話出しやがって、冗談もあとあと!」


みさえ「ちょっと、あなた……」

ひろし「ん?」

みさえ「今日のしんちゃん、なんだか様子がおかしいの」

みさえ「すごくいい子っていうか……シロの餌もあげてあったし、服もたたんで……」

ひろし「いいことじゃねーか。それがどうした?」

みさえ「それでね、あたし思ったのよ……もしかして、ずっと21世紀博のこと……」

みさえ「いい子にしてれば、アクション仮面が帰ってくるとか……
    あの子、そう思ってるんじゃないかしら」

ひろし「…………」


テーブルに登ろうとするひまわり。

ひまわり「た、たやっ」

みさえ「ダメよ、ひま、これはお兄ちゃんの」

スンノケシ「よく聞いてください、ボクはブリブリ王国の」

ひろし「いい加減にしろ!」

みさえ「あなた……!」

ひろし「しんのすけ。無理にいい子になろうとするな。そんなことしなくていいんだよ。
    父ちゃんと母ちゃんはな、そんなお前は見たくないんだ」

スンノケシ「……」

ひろし「……しんのすけ、開けないのか」

スンノケシ「いえ、これは…………」

スンノケシ(しんちゃん……)

スンノケシ(一体……)



マサオ「そこ! そこの赤い屋根の家!」

ロールシャッハ「あれか」

シロ「!」

シロ「アン! アン!」


ロールシャッハ「……」ジロ

シロ「!……クウン」


ロールシャッハ、玄関をこじ開け、土足で上がり込む。

むさえ「はー、いいお湯だった!」

ロールシャッハ(!……あの女……)

むさえ「って、いいいいいい!?」

むさえ「ちょっと、来ないでよ、このストーカー!」

ロールシャッハ(……忙しい女だ)



スンノケシ(今の騒ぎ……ルル?)

みさえ「ちょっと、なに!?」

ひろし「うわわ、なんなんだあんた一体!」

マサオ「ごめんなさいおじさん! しんちゃんに逢わせて!」

ひろし「マサオくん……!? どういう――」


ひろし「おお、おい、お前! 警察呼ぶぞ!」

みさえ「あなた! 一体なんなのよコレ!」

ひろし「こっちが聞きてえよ!」


スンノケシ「ルル!?」


マサオ「いた! しんちゃん!」

ロールシャッハ「シンノスケ!」


スンノケシ(……なんだこの人!?)


ロールシャッハの腕から抜け落ちるマサオ。

マサオ「しんちゃん!?」

マサオ「ホントにしんちゃんだよね!?」

スンノケシ「ごめんなさい……でも、ボクは!」

スンノケシ「しんちゃんじゃありません! なにかの間違いです!」

マサオ「ウソだ! しんちゃんだよ! どこかおかしくなってるだけだよ!」

マサオ「お願いだから、しんちゃんって言ってよ!」


ロールシャッハ「……待て」

ロールシャッハ「……俺はてっきり、
          奴らがシンノスケに似た何者かを送り込んだと……そうにらんでいた」

ロールシャッハ「だが、違うと自ら言い張るなら……」


スンノケシ「そうです、人違いです!」

みさえ「ちょっと、本当にどういうこと!? 説明しなさいよ!」

むさえ「ねえちゃん、刺激しちゃダメだよ、凶悪犯だよ凶悪犯!」

みさえ「だからなに!」

みさえ「うちの子になにかしたっていうの!?」



そのとき、野原家の前に数台の車が止まる。

シロ「アン! アン!」

車から降りた者たちが植え込みへ侵入し、窓ガラスへ向かう。


ひろし「おいおい今度はなんなんだよもう!」

スンノケシ「……ルル!」

ロールシャッハ「!」

マサオ「え、あのお姉さん、しんちゃんのお知り合い?」

スンノケシ「ボクは――」

ルル「――ブリブリ王国現王子、スンノケシ様です」

ルルと数名の兵士、縁側に立っている。

スンノケシ「ルル!」

みさえ「ルル……って」

ひろし「ルル……さん?」

ひまわり「たや?」

むさえ「王子……マジなの?」

ルル「王子! よかった……一時はどうなることかと……」

スンノケシ「でも、どうやってわかったの?」

ルル「王子に持たせておいた発信機を辿ってきました。
    ジャミングがあったおかげで、少々手間取りましたが」

スンノケシ「ルル!」

ルル「王子!」

マサオ「どうなってんの……?」

ルル、ロールシャッハをにらみ、腰の銃を抜く。

みさえ「うわ、なになに!」

ひろし「ルルさん! そんな物騒なものはしまって! 早く!」

ロールシャッハ「……」

ルル「貴様……ハンターという肩書に、騙されるところだったわ」

ルル「王子へ接触して、なにを企んでいた? 言いなさい」


ロールシャッハ「俺が捜していたのはそいつじゃない」

ロールシャッハ「シンノスケだ」

「――全員動くな!」

ルル「!?」

みさえ「なになに、まだなんかあんの!?」

ひろし「……ああーっ! あのときの刑事!」

みさえ「…………ああーっ!」

ひまわり「たっ!」

ロールシャッハ「……グロリア」


よね(土足)、ルルへ銃を向けている。

よね「はーっ、はーっ……」

ルル「……あなたもそうなの?」

よね「……なんかわかんねーけど、そいつを下ろしなよ」

ルル「……数ならこっちが上よ」

よね「ケガしたきゃどーぞ!……私の弾、どこに飛んでくかわからないわよ」

みさえ「止めてよね人んちで!」

ルル「……」

風間・ネネ・ボー「お、おじゃまします!」

マサオ「みんな!」

風間「なにこれ……どういう状況……?」

ネネ「すっごい、映画みたい」

ボー「膠着、状態」

ロールシャッハ「……グロリア、銃を下ろせ」

よね「でも!」

ロールシャッハ「下ろせ!」

よね「断る!」

ルル「……」

よね「……ダメ。今、下ろせない」


ひまわり「……う、う」

ひまわり「うええええええええええん!」

みさえ「ああ、ひまちゃん、ダメ、泣かないで」


ひろし「……お前ら一体」

むさえ「ダメよ! 義兄さんまで怒らないで!」

ひろし「これが怒らずにいられるかよ!」


スンノケシ「あ、あの!」

スンノケシ「ボクは! 今、手違いでここにいます!」

スンノケシ「一度、落ちついてください!
       それから、みんなの話をそれぞれ、聞き合うべきだと思います!」

ルル「王子……」

風間「しんのすけ……?」

ロールシャッハ(スンノケシ……とやらの言葉で、最悪の状況はまぬがれた)

よね「き、緊張したあー……」

よね「腰抜けそう……」

ロールシャッハにもたれるグロリア。

ロールシャッハ「触るな」グイ

よね「うえ!」


ネネ「やーだ、いつもは女に優しくはないのね。ちょっと幻滅」

むさえ「いや、だってあいつすげーもてなさそうじゃん」




ルル「とにかく……申し訳ありません……」

ルル「こちらの不注意で……こんな状況を作ってしまって」

だん!
テーブルを叩くひろし。

ひろし「コンピュータ・ウィルスとか……蟻とか……核とか……」


ひろし「そうじゃねえだろうが!」

みさえ「あなた……」


ひろし「うちの息子は一体、どこに行っちまったってんだよ!」

ひろし「なあ」

立ち上がり、ロールシャッハの胸倉をつかむひろし。

よね「ちょっと……」

ひろし「うるせえ!」

ひろし「なあ、おい、あんたか? あんたのせいでしんのすけは連れ去られたってのかよ?」

ひろし「おい! おい! 答えろ!」

ロールシャッハ「お前は……シンノスケの」

ひろし「“父親”だよ!」

ロールシャッハを殴りつけるひろし。

みさえ「あなた……」

むさえ「義兄さん!」

マサオ「おじさん!」



ひろし「おい、おい、そこのテーブルの包みを見てくれよ、おい」

ひろし「誰があれを、開けてくれるんだ?」

ひろし「俺はあいつの喜ぶ顔が見たくて!」

ひろし「……いつもみたいに、玄関開けたんだよ」

ひろし「……おかしいのか、それって?」

ひろし「そんなに叶わねえ話なのかよ!?」

もう一度殴るひろし。
無抵抗のロールシャッハ。もう一度。

スンノケシ「いけません、それ以上は……!」

ひろし「…………」
ひろしの目に、大粒の涙が浮かぶ。

ロールシャッハ「…………」スッ

起き上がり、ひろしの肩をつかむロールシャッハ。


ロールシャッハ「…………」


ロールシャッハ「…………必ず」

         「必ず無事に連れ戻す」


マサオ「…………」


マサオ「……おじさん!」

ネネ「……マサオくん、どうしたの?」


マサオ「おじさん、本当のヒーローなんだよね?」

マサオ「あんなにびゅんびゅん、空、飛んだもんね?」

ロールシャッハ「…………」


風間「マサオくん、ダメだ――」

風間の腕をつかむボー。首を振り、

ボー「言わせて、あげて」


マサオ「ボクは、おじさんのこと信じるからね!」

マサオ「誰になんて言われても、絶対に疑わないからね!」

マサオ「だからおじさん!」

マサオ「絶対にしんちゃんを助けて、悪い奴らをやっつけてね!」

ロールシャッハ「…………」

スンノケシ「ボクたちも、最大限の協力をいたします」

スンノケシ「お話を聞けてよかったです。ボクらの目的はすべて、いっしょなのですから!」


ロールシャッハ「…………」

「おい、ここだぞ、ここに逃げ込んだ、間違いねえ!」


よね「まずい、街のみんなが……」

いつのまにか、暴徒と化した市民が家を囲んでいる。

シロ「アン! アンアン! アン!」

ヨシリン「初めて見たときから、ずーっと怪しいと思ってたんだよねえ!」

ヨシリン「おまけに野原さんたちとまで繋がってるなんて!」

ミッチー「冴えてるう、ヨシリンッ」

ヨシリン「それほどでもないさ、ミッチー」


ひろし「くっそ、あいつら……焚きつけやがったな……」

みさえ「あなたちとにかく……お願い、早くここを、離れてもらえないかしら」

ルル「いけません。野原さんたちもいっしょに」

みさえ「どうしてよ!」

ルル「暴徒となった民衆は、標的の見境なく攻撃するものです」

ルル「特に今のような状況では、誰ひとり確固たる目的で動いてはいないでしょう」

よね「それも、あのデマばっかのニュースのせい?」

ルル「おそらくは」

ルル「私たちが道を開けます。みなさん、早く二階へ!」

むさえ「……二階?」


屋根を伝う一行。

ルル「ロープを下ろします。仲間が正面で引きつけているあいだに、裏から――」

みさえ「ひいいいいい!」

マサオ「大丈夫、おばさん! ボクから行くよ!」

ネネ「マサオくん、かっこいー!」


ロールシャッハ「……前は俺が行く。グロリア、お前はルルと後ろを固めておけ」

塀と塀の隙間を抜け、暴徒から逃れるロールシャッハ、よね、ルルとスンノケシ、むさえ、

そしてしんのすけのいない野原家とカスカベ防衛隊。


ロールシャッハ(混沌だ)

         (街が飲み込まれていく)

         (来たばかりのころは……あんなにも穏やかだったこのカスカベが)

         (いや……)

         (もたらしたのは、俺だ)


ロールシャッハ(“必ず無事に連れ戻す”)


ロールシャッハ(今度こそは)


         (今度こそは)

今回ここまでです。

相変わらず話そのものはあまり進んでません。


次も楽しみにしてる

乙乙

乙でした

更新きてた!
続き楽しみ

必ず無事に連れ戻す、か
ロールシャッハが言うと重く感じるな

乙乙

やばい……ここまで面白いのは初めて読んだ。映画のキャラたちが垣根を越えて集まるのが凄い興奮する
そして、マサオくんの台詞で泣きそうになったわ。これはもうロールシャッハ負けないな

乙です。
続きが読めるなんて、こんなに嬉しいことはない・・・


ビフォアウォッチメンが出るって聞いた時は、あーあ、やっぱり出したのかって思った。
アラン・ムーアは、オレの目の黒いウチは許さんぞッ!って言ってたらしいけど、
向こうのコミック事情を考えたら致し方ないよね。
でもアラン・ムーアが関わってないウォッチメンを読むのはちょっと抵抗あるなぁ。

続き待ってる

俺にとってロールシャッハは真のヒーローだけど、原作の世界ではダニエル以外には信じてもらえなかった。
でも今度は、そのロールシャッハを信じてくれて、ヒーローと言ってくれる人がいるって思うと涙が出るわ

いい感じだな
ロールシャッハはどうなるか
そういえばハンター×ハンターのキャラが全く出てないな

保守

保守

どうした?

追いついた
ハイグレ大魔王がいない=アクションビームを出すことはないと思うとちっと寂しいな
でも、続きを待つために保守

保守
                        保守>
保守

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