消失世界の『もしも』 (16)

キョン「……なんだって俺は、こんな辺鄙な所に来ちまったんだ?」

キョン「なんか、足が向いちまったんだよな……」

キョン「えー……と……文芸部室……か」

キョン「まあ、どうせ帰っても妹やシャミセンと遊ぶだけだしな」コンコン

「っ……は、はい……?」

キョン「誰かいるのか?お邪魔するぞ」ガチャ

長門「……あ……」

キョン「ん、一人か?ここ、文芸部室だよな?」

長門「そ、そう……だけど……」

キョン「あ、悪い。活動の邪魔になってたか?」

長門「そ、そんな事は……ない、けど……」

キョン「よかった。ああ、俺の事は気にしないでくれ」

長門「………」

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以前に総合スレで少しだけ書いたものです
突っ込まれる事はないと思うけど、一応、念の為

キョン(ふーん……文芸部に相応しいと言えばいいのか、本はたくさん置いてあるな)

キョン(だが、肝心の部員が一人しか見当たらない……他の部員はどうしたんだろうな)

長門「あ、あの……?」

キョン「ん?」

長門「ど、どうして、ここに……?」

キョン「ああ、いや、深い意味はない。えーと、だな……」

キョン(なんて答えたらいいんだ……?足が向いちまった、か……?)

長門「……?」

キョン「ちょ、ちょっと、な。この、えっと、文芸部に、興味があったから見学に来たんだ、そう」

長門「! ほ、本当に?」

キョン(なんか心なしか嬉しそう?)

キョン「あ、ああ、そうだぞ。こう見えて俺は、本を読むのが大好きなんだ」

長門「ええと、それじゃあ……」トテトテ

ガサゴソ

長門「あった。あの、これ、あげます」スッ

キョン(……入部届け、だと?)

長門「……えへへ」

キョン「あ、ああ、ありがとう。でも、まだ、入部すると決めたわけじゃあ……」

長門「っ……そ、そう、なんだ……」シュン

キョン(目に見えて落ち込んでやがる……)

長門「で、でも、それは一応持って行ってくれて、構わないから……」

キョン「お、おう。サンキュ……えっと」

長門「あ……1年6組の、長門……長門有希」

キョン「長門、な。サンキュ、長門」

長門「うん……」

キョン「それじゃ、俺はこれで帰るよ。邪魔したな、長門」

長門「邪魔じゃ……ないけど」

キョン「そうか?それなら、今後も気軽にここに来ていいってことだな」

長門「! も、もちろん!待ってる」

キョン「そうか、じゃあな長門」ガララ

長門「………」

長門「……えへへ……♪」

その日から、俺は毎日のように文芸部室にお邪魔するようになった。

特に、深い理由はない。本当に、ただ、なんとなくだ。

長門は嫌な顔もせずに迎え入れてくれるから、少しだけ気を良くしたのかもしれないな、俺は。

そんなわけで、少しだけ長門と親しくなった、ある日。


キョン「お邪魔するぞー」ガチャ

長門「! よ、ようこそ」

キョン「おう、長門。今日も一人か?」

長門「うん……今日も、って言うより、文芸部は元々わたし一人だから」

キョン「! ……そうなのか」

長門「うん」

キョン(なるほどなぁ……そりゃ、興味があるって奴が来たら喜ぶわけだ)

長門「………」ペラッ

キョン「いつも一人で、この部屋で本を読んでるのか?」

長門「うん。本を読むの、好きだから」

キョン「へぇ……一人なのに部活動をするってのはよっぽどの物好きじゃなきゃ出来なさそうだもんな」

長門「……」コクン

キョン「あ、いや、別に悪気があって言ったわけじゃないぞ?ただ、本当に好きなんだな、と、そう言いたかっただけなんだ」

長門「大丈夫、気にしてない。事実、その通りだし」

キョン「そ、そうか?なら、いいんだが……」

長門「………」ペラッ

キョン(……会話が途切れたな)

長門「……あ」

キョン「? どうかしたのか?」

長門「………」

キョン(壁に立てかけられてるパイプ椅子を持ったぞ……)

長門「………ん」

キョン(な、長門の隣に椅子を置いて、俺に視線を送っている……それは、あれか?隣、どうぞとか、そういった意味合いか?)

長門「………」ストン パラパラッ

キョン(当の本人はまた椅子に座って本を読み始めた……ま、まぁ、俺の為に用意してくれたのだろう。厚意に甘えて座らせてもらうとしようか)スタスタ ストン

長門「………」ペラッ

キョン(何も言わない……な、なんだ、この妙な緊張感は……)

長門「………」ペラッ

キョン(しかし長門の奴、本を読むスピードが速いな)

長門「………」ペラッ

キョン(隣に俺が座ってるのなんて全く気にしていないかのように読み進めて行く……見られてる事にも気付いてないのか?本当に本を読むのが好きなんだな)

長門「………!」

キョン「ど、どうかしたか、長門?」

長門「ど、どうかしたかは、こっちのセリフ……わ、わたしの顔に、何か付いてる?」

キョン「え、あ、いや……」

長門「……」オロオロ

キョン「いや、すまん、無粋だったな。ずいぶん真剣に読んでるなぁ、と関心しただけだ」

長門「そ、そう?いつも通りのつもりだったんだけど……」

キョン「そのいつも通りは俺は知らないからな。何度も言うようだが、本当に好きなんだな、読書」

長門「………」コクン

キョン「………」

長門「………」ペラッ

キョン「俺も、なんか本借りていいか?」

長門「うん。なんでもいいよ。この部屋にある本は、わたしは全部読んじゃったから」

キョン「えっ?」

長門「何か、おかしかった?」

キョン(この部屋にある本って……あのでかい本棚に並んでる小難しそうな本を全部って意味だよな……やっぱり)

長門「え、えっと……」

キョン「あ、あぁ、すまん。いや、そりゃそうだよな、うん。この部屋にある本くらい、既に読破済みだよな、は、ハハ……」

長門「ず、ずっとこの部屋で本を読んでたら、いつの間にか全部読んじゃってただけだから!じ、順番に読んだわけじゃないから、もしかしたらまだ読んでない本があるかもしれないし」

キョン「お、おう……?」(なんか焦ってる?)

長門「だ、だから、その……ごめん、なんでもない……」シュン

キョン(……もしかして、引かれたって思ってる?)

長門「………」ショボン

キョン「いや、別にいいことだと思うぞ、うん。ひとつの事を極めるってのはすごいことだもんな、ああ、そうだとも!」

長門「そう……かな?」

キョン「ああ、そうだ!決して本の虫だとか、ネクラだとか、そんなことは断じて思っちゃいないぞ!」

長門「…………」ショボーン

キョン(更に落ち込ませちまった!?よ、余計な事を言ったのか俺は!?)

長門「……………」ペラッ

キョン(………気まずい)ペラッ

長門「………」ペラッ

キョン「あ、あー、さて、俺はそろそろ帰ろうかな!」パタン

長門「!」イソイソ

キョン「ん?今日の活動はもう終わりか?」

長門「う、うん……もうすぐ下校時間だし、そろそろかなぁ、って」

キョン(……まさか、俺に気を遣って帰るに帰れなかったのか?だとしたら、悪い事をしたな……)

長門「あ、あの……あ、あんまりわたしの顔、見ないで……」

キョン「わ、悪い!……って、さっきもやったなこのやりとり」

長門「……クスッ」

キョン「! 今、笑ったか?」

長門「え、あ……」

キョン「よかった。今までこの部室に何度か来たが、お前が笑った顔を見た事は無かったような気がしたからな」

長門「………っ」カァァァ

キョン「ハハ、何言ってるんだろうな、俺。それじゃ、折角だし、途中まで一緒に帰ろうか?」

長門「……」コクッ

帰り道———

キョン「もうすっかり冬だな……まだ6時前だってのに、すっかり日が落ちてる」

長門「………」ギュッ

キョン「!」

長門「………」

キョン(服の端をつまんでる……?)

長門「………あっ、ご、ごめん」パッ

キョン「いや、気にしてないが……」

長門「………」オロオロ

キョン「どうかしたか?」

長門「こ、こんなに暗くなってから帰るのは、初めてだから……ちょっと、怖くって」

キョン「いつもはもっと早いのか?」

長門「……」コクン

長門「……?どうして、謝るの?」

キョン「いや、だって……」

長門「………?」ジッ

キョン(……本人は俺がいるから残ってたと自覚してないのか?)

長門「………」キョトン

キョン「いや、なんでもない。それじゃあ、折角だし家まで送るよ」

長門「! いいの?」

キョン「ああ。こんな暗い中を、か弱い女の子一人に歩かせるわけにはいかん!」グッ

長門「……クスッ」

キョン(また笑ってくれた)

キョン「まぁ、そういうわけでだ。俺の自己満足だが、付き合ってくれるか?」

長門「それじゃあ、よろしく」

キョン「おう!」

キョン「長門の家って、どの辺りなんだ?」

長門「駅の近くのマンションで、一人暮らしをしてるの」

キョン「一人暮らし?へぇ、高校生でねぇ。大変か?」

長門「大変は大変だけど……もう、慣れちゃった。朝倉さんも気に掛けてくれるし」

キョン「朝倉?って、もしかして朝倉涼子か?」

長門「うん」

キョン「へぇ……あいつ、長門と同じマンションに住んでるのか」

長門「あなたの話は、たまに朝倉さんから聞く。同じクラスで、大人しい人だって」

キョン「俺なんかの話をして何が面白いんだかねえ」

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