杏子「愛と勇気が勝つストーリーってのにしてやろうじゃねーか!」(449)

先日VIPで立てたのですが
人気無さに落ちてしまいました。
勝手ですが、ここで再挑戦させていただきます

本作はシリアスSSです
長くて申し訳ありません

さやか「誰かの幸せを祈った分…他の誰かを呪わずにはいられない…」
さやか「私達魔法少女って、そういう仕組みだったんだね」
さやか「あたしって…ほんと馬鹿…」
ゴゴゴゴゴ…

杏子「さやかぁぁっ!!」
シュイン!

オクタヴィア「キャァァァァァァァァ!!」

杏子「なんなんだよ…!てめぇ一体なんなんだっ!さやかに何をしやがった!!」

ほむら「下がって…」

キンッ! ドカーン!!

ほむら「つかまって…」
杏子「何を?」
ほむら「いいから…!」

ギュッ…
カシャ!

杏子「こ、こいつは…」
ほむら「私から手を離したら、あなたの時間も止まってしまう…気をつけて」
トコトコトコ
杏子「どうなってるんだよ!?あの魔女は何なんだよ!?」
ほむら「かつて『美樹さやか』だったものよ…あなた、見届けたんでしょ」
杏子「逃げるんか…」
ほむら「嫌ならその余計な荷物を捨てて…今すぐあの魔女を殺しましょ、できる?」
杏子「ふざけるなっ!」
ほむら「今のあなたは足手まといにしかならない、一旦引くわ」
杏子「っ…」

~見滝原市内某駅車両置場~

スタスタ…
まどか「!」
まどか「さやかちゃん!さやかちゃん!!どうしたの!?ねぇ、ソウルジェムは!?さやかちゃんはどうしたの!?」
ほむら「彼女のソウルジェムはグリーフシードに変化した後、魔女を産んで消滅したわ」
まどか「えっ……嘘…だよね…」
ほむら「事実よ、それがソウルジェムの最後の秘密、この宝石が濁りきって黒く染まるとき…私達はグリーフシードとなり、魔女として生まれ変わる…」
ほむら「それが…魔法少女になったものの逃れられない運命…」
まどか「嘘よ…嘘よね…ねえっ…!」
まどか「そんな…どうして!さやかちゃん、魔女から人を守りたいって、正義の見方になりたいって、そう思って魔法少女になったんだよ…なのに…!」
ほむら「その祈りに見合うだけの呪いを背負い込んだまでのこと…あの子は誰かを救った分だけ、これからは誰かを祟りながら生きていく」
杏子「……」
グッ!
杏子「てめぇは…何様のつもりだ…!事情通ですって自慢したいのか!?なんでそう得意気に喋ってられるんだ…!こいつは…さやかの!さやかの…親友なんだぞ…っ!」
ほむら「今度こそ理解できたわね、あたなが憧れていたものの正体が、どういうものか…」
ほむら「わざわざ死体を持ってきた以上、扱いには気をつけて、迂闊な場所に置き去りにすると後々厄介なことになるわ…」
杏子「てめぇそれでも人間か!」
ほむら「もちろん違うわ…あなたもね」
杏子「っ…」

その後
  ~ほむらの家~

杏子「…」


ほむら「どうしたの?入らないの?」

杏子「!」

杏子「気付いてやがったか…」

ほむら「…何をしにきたの?」

杏子「ちょっと話があるんだ、顔貸してくれる?」

ほむら「とりあえず、中で話しましょう」

杏子「悪いが…アンタとは手を組めない、ワルプルギスの夜には一緒に戦えない」

ほむら「今更何を言っているの?ワルプルギスの夜が来たら嫌でも戦わなくてはならない…」

杏子「確かにそうかもしれない、だが今のアンタをアタシは許せない」

ほむら「…美樹さやかのこと?」

杏子「そうだ…アンタがあんな奴だとは思わなかったよ…」

ほむら「私は魔法少女の事実をありのままに伝えただけ…」

ほむら「ああでもしなければ、あの子は契約してしまうところだった…」

杏子「さやかの親友のことか」

ほむら「…あなたには関係のないことよ」

杏子「ほんとに手の内が読めねー奴だな、前にも言ったけど、そんなことじゃいつまで経っても共闘なんて無理だよ」

ほむら「別にいいわ、あなたが戦わないなら私が一人で戦うだけ」

杏子「そうかよ、好きにしな」

ほむら「……」

ほむら「そんなことを言いにわざわざここまで来たの?」

ほむら「以外だわ…」

杏子「…よく気付いたな、本題はこれからさ」

ほむら「…?」

杏子「さっきの時間停止の能力、こないだのワルプルギスの話でアンタが言ってた『統計』って言葉、そして、いつも使うあの妙な技…」

杏子「これから察するに、アンタの能力は時間操作だろ?」

ほむら「!!」

杏子「アタシが馬鹿だとでも思ったかい?これでも学校行ってた時は成績良かったんだぜ」

ほむら「それで…?」

ほむら「私の能力がわかったところで、どうするつもり?」

杏子「……」

杏子「アンタの能力がどの程度かわからないが、もし過去に戻れるなら…アタシはさやかを助けたい…」

ほむら「!」

杏子「アタシを…アタシを過去に戻してくれっ…!さやかが魔女になる前にっ…!」

ほむら「そんなこと……」

杏子「頼むっ!本当に頼む!アタシはアイツを助けてやりたいんだっ!」

ほむら「あなた…そこまで、美樹さやかのことを…」

杏子「…バカと思うかもしれないけど、アタシはね、本当に助けられないのかどうか、それを確かめるまで、諦めたくない」

ほむら「ならはっきり教えてあげる、残念だけど…私の能力は時間操作じゃないわ」

杏子「ち、違うのか!?」

ほむら「近いものだけど、あなたが思っているほど便利なものではないの」

杏子「どういうことだ…」

ほむら「……」

ほむら「私が最初、この街に来たとき、鹿目まどかに会った、あの子は始め、この街で魔法少女をしていたわ」

杏子「……」

ほむら「そして私はあの子に命を救われた、それからずっとあの子の魔女退治に付き合ってきた、もちろん契約はせずに…」

ほむら「そうして、この街にワルプルギスの夜がやってきて、巴マミが死に、あの子は私を救う為にワルプルギスの夜に立ち向かい死んだわ」

ほむら「私は助けられてばかりで何も出来なかった自分を悔いた、私は自分なんかよりあの子に生きててほしかった」

ほむら「その時にQBが言ったの『その言葉は本当かい?』って」

ほむら「私は鹿目まどかとの出会いをやり直すことを条件に魔法少女になった…」

杏子「!」

杏子「つ、つまり、てめえは…何度も過去をやり直してきたわけか、そいつを助けるために」

ほむら「ええ…何度もあの子の運命を変えようと…」

杏子「だからてめえはイレギュラーだったわけか…」

杏子「ふーん…じゃあ、アンタはその、『まどか』って奴と会う前の時間までは戻れるわけだな」

ほむら「…そうね」

ほむら「戻ろうと思えば…」

杏子「なら決まりだ、今度はアタシも連れて行け、その時間なら、さやかを助けてやれる」

ほむら「…さっきも言ったわよね…あなたが思ってるほど便利な能力ではない…って」

杏子「…?」

杏子「過去に戻れるんだろ?だったら…!」

ほむら「…時間遡行の発動には条件があるの…私の盾の砂時計の砂が完全に落ち切らなければ、時間停止は出来ても、過去に戻ることはできない…」

杏子「!」

杏子「…つ、つまり今からは戻れないのか…?」

ほむら「ええ」

ほむら「ごめんなさい、力になれなくて…」

杏子「……」

杏子「わかったよ、ならもうアンタには頼らない、さやかはアタシが助ける」

ほむら「…?」

ほむら「何をするつもり?」

杏子「…さあな、まだわからねえ、言ったろ、アタシは助けられないのかどうかわかるまで諦めるつもりはねえ」

ほむら「……」

ほむら「…無理よ」ボソ

杏子「あ…?」

ほむら「…無理よ、魔女化してしまった魔法少女を元に戻すことは…出来ないわ」

杏子「んなこと!やってみなきゃわかんねーじゃねーか!!」

ほむら「…私は過去に見てきたの、どんなに呼びかけても反応すらしてくれなかった」

杏子「…っ!」

杏子「じゃ…じゃあどうすりゃいいんだよ…っ!?」

ほむら「…美樹さやかのことは諦めなさい」

杏子「……」
杏子「んなこと…できるわけねえだろ…っ!」

杏子「どうにかならねーのか…」

ほむら「……」
ほむら「あなたの言った通り、今から2人で過去に戻れたらいいけれど、そんな都合のいいこと、この世界にありはしないわ」

ほむら「…試してもいいけど、どうせダメに決まっている」

杏子「じゃあ、試してみよーじゃんかよ」

ほむら「え…!?」

杏子「アタシの魔力だってあるんだ、2人分の魔力なら今から戻れるかも知れないだろ?」

ほむら「……」

杏子「もしかして2人で戻れれば、さやかと、そいつ2人とも助けてハッピーエンドになるかもしれない」

杏子「そういうもんじゃん?最後に愛と勇気が勝つストーリー、ってのは」

ほむら「……」

杏子「アタシだって、考えてみたらそういうのに憧れて魔法少女になったんだよね」

杏子「すっかり忘れてたけど、さやかはそれを思い出させてくれた」

杏子「…だからどうしても助けてやりたいんだ」

ほむら「……」

ほむら「あなた…本気なの?」

ほむら「失敗すれば、何が起こるかわからないわ、膨大な魔力の消費で魔女になってしまう可能性だってあるのよ」

杏子「アタシは本気さ、それに失敗のリスクはアタシたちにはもう関係ないじゃん、どうせいつかは魔女になんだろ?」

ほむら「……」

ほむら「…経験したから言うけど、過去に戻ったからといっていい結果になるとは限らない」

ほむら「むしろ悪い結果になる可能性のほうが高いってことを忘れないで、それでもいいの?」

杏子「仮にそうなったとしても、アタシはやれるだけのことをやってから後悔したい、アンタだってそうしてきたんだろ」

杏子「まだ、そいつを助けれるって信じてるんだろ?」

ほむら「!」

ほむら「…まず2人で過去に行ければの話ね…」

杏子「ふん、行ってやるさ…」

QB「2人とも何を話しているんだい?」
スッ

杏子「どの面下げて出てきやがったテメェ…!」
チャキン!

QB「やれやれ、招かれざる客ってわけかい」

ほむら「ええ、お前には関係のないことよ、QB…」

QB「」
スタスタ…

ほむら「じゃあいいわね…」

杏子「おう」

杏子「2人で愛と勇気が勝つストーリーってのにしてやろうじゃねーか!」

ほむら「……」


ほむら「つかまって…」

杏子「ああ」
…ギュッ


カシャ!
シュイーン…!

_________

 ~ほむら病室~


ほむら「…こ、ここは」

ほむら「はっ!」

ほむら「杏子…?」

杏子「…なんだよ、ここにいるよ」

ほむら「本当に戻れたの…!?」

杏子「さあな、アタシに聞かれてもわかるかよ、ただ気付いたらここにいただけさ」

ほむら「…本当に戻ってこれたのね、2人で…」

杏子「そうなのか?なら良かった、なっ?やってみなきゃわかんねえことだって世の中あんだよ」

ほむら「…そうね」

杏子「…ところでアンタ、心臓の病気だったのか」

ほむら「…そうよ」

杏子「…ふーん…」

ほむら「もう来てしまった以上、あの未来には戻れない」

杏子「…ああ、わかってるよ、今はいつ頃になるんだ?」

ほむら「私が転校する前だから、あれから一ヶ月くらい前ね」

杏子「一ヶ月も前なら…!」

ほむら「でも迂闊に鹿目まどかには手を出さないでちょうだい、あの子が契約してしまうような事になったら私はまた過去に戻る」

杏子「わかってるよ、アンタはそいつを、アタシはさやかを契約させなければいい話だろ」

ほむら「ええ、理解が早くて助かるわ」

杏子「病人のくせにピーピーしゃべりやがって、じゃあアタシはそろそろ行くよ、後は勝手にやらせてもらう」

ほむら「もう病人じゃないわ、それと状況把握の為に何か変化があったら逐次報告しなさい」

杏子「はあ…めんどくせぇなあ」

ほむら「誰のおかげでここに戻れたと思ってるの?」

杏子「ちっ…」

杏子「…わかったよ、なんかあったらアンタんとこに行くよ」

ほむら「なら行っていいわ、後は好きにしなさい、くれぐれもまどかに手を出したら許さない」

杏子「はいはい、じゃあな、お互い頑張ろうじゃねーか」

ほむら「ええ」

ほむら「……」


ほむら「…あっ」

ほむら(ソウルジェムがいつもよりも濁っている…それもそうね…今回は2人で戻ったんですもの、魔力も二倍消費してるはず)

ほむら(早いとこ魔女を倒して浄化しておこうかしら…)

ほむら(杏子と2人で戻ることが出来た…この時間軸なら…必ず…まどかを…!)

数日後
   ~教室~

先生「はいっ、じゃあ自己紹介いってみよっ」
ほむら「暁美ほむらです、よろしくお願いします。」

~~~

まどか「あ、暁美さん?」
ほむら「ほむらでいいわ…」
まどか「ほむらちゃん?」
ほむら「何かしら?」
まどか「えっと、その…変わった名前だよね、いや…だから、あのね、変な意味じゃなくてね、その、カッコいいなって!!」
ほむら「鹿目まどか、あなたは自分の人生が尊いと思う?家族や友達を大切にしてる?」
まどか「えっ、えっと…わた…しは、大切だよ、家族も、友達のみんなも、大好きで、とっても大事な人たちだよ」
ほむら「本当に?」
まどか「本当だよ、嘘なわけないよ」
ほむら「そう…もしそれが本当なら今とは違う自分になろうだなんて絶対に思わないことね」
ほむら「…さもなければ全てを失うことになる」
まどか「えっ」
ほむら「あなたは『鹿目まどか』のままでいればいい、今まで通り、これからも…」
まどか「…」

 放課後
~見滝原市某デパート~

さやか「ええ!?何それ?」
まどか「わけわかんないよね…」
さやか「文武両道で才色兼備かと思いきや実はサイコな電波さん!くー!どこまでキャラ立てすりゃあ気が済むんだ?あの転校生は!?萌えか?そこが萌えなのかあ!?」
仁美「まどかさん、本当に暁美さんとは初対面ですの?」
まどか「うん…常識的にはそうなんだけど…」
さやか「何それ?非常識なところで心当たりがあると?」
まどか「あのね…昨夜、あの子と夢の中で会った…ような…」
さやか「あははは、すげー、まどかまでキャラが立ち始めたよ」
まどか「ひどいよぅ、私真面目に悩んでるのに」
さやか「あー、もう決まりだ、それ前世の因果だわ、あんた達、時空を超えて巡り合った運命の仲間なんだわぁ!」
仁美「夢って、どんな夢でしたの?」

~~~~

~~~

QB「助けて…助けて…まどか」
まどか「ええ?誰?誰なの?」
まどか「どこにいるの?あなた誰?」
QB「助けて…」

ドーン!
ガシャーン!

まどか「あなたなの?」
QB「助けて…」

ガチャーン!

まどか「ほむらちゃん…」
ほむら「そいつから離れて…」
まどか「だって、この子怪我してる…だ、ダメだよ、酷いことしないで!」
ほむら「あなたには関係ない」
まどか「だってこの子、私を呼んでた、聞こえたんだもん!助けてって!」
ほむら「そう…」
まどか「……」
ほむら「……」

ブシュー!
さやか「まどか!こっち!」

ブウオオン…

ほむら「こんなときに…」

マミ「危なかったわね、でももう大丈夫」

マミ「私は巴マミ」
マミ「あなたたちと同じ、見滝原中の3年生」
マミ「そして」
マミ「キュゥべえと契約した、魔法少女よ」

~~~~

マミ「魔女は逃げたわ」
ほむら「私が用があるのは…」
マミ「飲み込みが悪いのね、見逃してあげるって言ってるの」
ほむら「」
マミ「お互い余計なトラブルとは無縁でいたいと思わない?」

~~~~

さやか「なんで私たちの名前を?」
まどか「お願い?」
QB「僕と契約して魔法少女になってよ」

その日の夜
 ~ほむらの家~


ほむら「……」

ほむら(またもQBをまどかたちと接触させてしまった、杏子がいれば、まだ手はあったかも知れないのに、全く…何をやっているのかしら?あの子は…)

ピンポーン
ほむら「杏子?」

杏子「ああ、遅れて悪い、入っていいか?」

ほむら「入って」

ほむら「それで…一体今まで何をしていたの?あなたは美樹さやかを救いたいんでしょ?目を離してていいの?」

杏子「そりゃそうだが、アタシは一応、風見野の魔法少女なんだからあっちの魔女や使い魔も倒さなきゃいけないだろ…放っておけば人を襲うんだぜ」

ほむら「本当に変わったわね…あなた」

杏子「アタシはさやかに会って魔法少女になりたてだったときの気持ちを思い出したんだ、正義の為とかってわけじゃないけど、出来ることはやりたい…って思ってな」

ほむら「そう」

杏子「でも、それだけじゃないんだぜ…ほらよ!」
ゴロゴロロ…

ほむら「これは…!」

杏子「何しろこの時の風見野には魔法少女はアタシしかいなかったからな、すげー数のグリーフシードが手に入った」

ほむら「あるに越したことはないわ」

ほむら「それより、QBが鹿目まどかと美樹さやかに接触したわ」

杏子「何!?もちろん契約はまだだよな?」

ほむら「ええ、でも接触してしまった以上、魔法少女になる選択肢を選ぶ可能性がゼロではなくなった」

杏子「……」

ほむら「あなたが早くから見滝原に来ていればこんなことにはならなかったわ」

杏子「アタシのせいだって言うのか?」

ほむら「そうよ、あなたのせいよ」

杏子「…まだ契約はしてないんだろ?それにアンタが今まで行ってきた過去で接触を止めれたときはあったのかよ」

ほむら「…そ、それは」

ほむら「…でも今回はあなたがいたのに接触を阻止できなかった」

杏子「どうせアイツ殺ったってすぐに代わりがぽんぽん出てくんだろ、なら遅かれ早かれそうなったんじゃないか?」

ほむら「……」
ほむら「そうね…」

杏子「だろ?なら仕方ないさ、契約したわけじゃないんだ、アタシたちが頑張るのはこれからだろ」

ほむら「……」
ほむら「それと巴マミとも接触したわ…しかも巴マミは、あの2人を魔法少女に誘導している」

杏子「…!!」

ほむら「あなた…昔、巴マミと接点があるわね」

杏子「…どうして、それを」

ほむら「いつの時間軸だったか…巴マミが私に打ち明けたことがあったわ…自分は魔法少女の友達がほしかったって」

ほむら「過去に弟子にしてほしいと言ってきた子がいた、でも自分はその子の先輩でありながら、その子を助けることができなかったって」

ほむら「ワルプルギスの夜の前日だったかしら、自分は今でもそれが後悔してるって…」

杏子「……」

ほむら「…あなたのことでしょ?」

杏子「だったら…何だってんだよ」

ほむら「あなたがどうしようと勝手だけど、この先、美樹さやかを救う為にあの子たちに接触するなら巴マミとも間違いなく接触することになるわ」

杏子「……」

ほむら「それに私が経験した過去の歴史では、巴マミは近いうちに戦うお菓子の魔女と戦って死ぬことになる」

杏子「!」

ほむら「どうするの?」

杏子「…ど、どうするって、別に…」

ほむら「おそらく私じゃ助けられないわ、前回、巴マミを助けようとしたけれど、彼女はそれを断った、それに彼女は私のことを良く思っていないようだし…」

ほむら「もし、また同じ歴史が繰り返されるのなら、助けられるのはあなたしかいない」

ほむら「私としてもワルプルギスの夜の為に一人でも魔法少女の戦力がほしい…それに巴マミが死ぬことで、後輩である美樹さやかが責任を感じ、契約を急ぐ過去もあった」

ほむら「だから助けて損は無いと思……」

杏子「……わかったよ」

杏子「…助けりゃいんだろ」

ほむら「そう…」

ほむら「歴史が変わらないなら、数日後、見滝原の病院に結界が現れる、もちろん私も向かうけど、多分私は途中で足止めさせられるわ」

杏子「わかったよ」

ほむら「それと、これからはこの街にいなさい」

杏子「はあ?」

ほむら「神出鬼没では私が困るわ、情報の交換もまともに行えない、これからは極力、私と一緒に行動してもらうわ」

杏子「はあ、ふざけんなよ」

ほむら「この家も自由に使っていいのよ、それにあなたの為にロッキーが買ってあるわ」

杏子「てめぇ…」

ほむら「…」

杏子「よし乗った!」

ほむら「良かったわ…あなたが単純で」

杏子「てめえ…殺すぞ…」ポキッ

~見滝原市内某所廃ビル前~

女性「ここ…あれ、私は?やっやだ、私、なんで、そんな、どうして、あんな、ことを…!」
マミ「大丈夫。もう大丈夫です、ちょっと、悪い夢を見てただけですよ」
さやか「一件落着、って感じかな」
まどか「うん」


まどか「叶えたい願いごととか、私には難しすぎて、すぐには決められないけれど」
まどか「でも、人助けのためにがんばるマミさんの姿は、とても素敵で」
まどか「こんな私でも、あんな風に誰かの役に立てるとしたら、それは、とっても嬉しいなって、思ってしまうのでした」

数日後
 ~見滝原市内病院付近魔女結界内部~


マミ「これなら魔女を取り逃がす心配も…」
まどか「え?あっ…」
マミ「言ったはずよね…二度と会いたくないって」
ほむら「今回の獲物は私が狩る、あなたたちは手を引いて」
マミ「そうもいかないわ…美樹さんとQBを迎えに行かないと」
ほむら「その2人の安全は保障するわ」
マミ「信用すると思って?」
シュキーン…
ガシッ!
ほむら「ば、馬鹿…こんなこと…やってる場合じゃ…!」
マミ「もちろんケガさせるつもりはないけど、あんまり暴れたら保障しかねるわ」
ほむら「今度の魔女はこれまでの奴らとはわけがちがう…!」
マミ「大人しくしていれば帰りにちゃんとに解放してあげる」
マミ「行きましょう…鹿目さん」
まどか「はい…」
ほむら「待っ……くっ」

~~~

杏子「だせぇなぁ、もうマミに足止め食らったのか?」

ほむら「……」

杏子「ったくよ」
ザシュッ

ほむら「……」
スタッ

杏子「ほら、一緒に行くぞ」

ほむら「あなたが一人で行って」

杏子「なんでだよ、てめえも行ったほうがいいだろ」

ほむら「いえ、あなた一人の方がいい、あなたがいれば負けることはないでしょうし」

杏子「……わかったよ、すぐ終わらせて来る、ここで待ってろ」

ほむら「遅れたら意味が無いわ、急いで」

杏子「おう」

~~~~

まどか「ふぇぇ…あの、マミさん…?」
マミ「なあに?」
まどか「願い事、私なりに色々考えてみたんですけど…」
マミ「決まりそうなの?」
まどか「はい…」
まどか「でも、あの…もしかしたらマミさんには考えが甘いって怒られそうで…」
マミ「どんな夢を叶えるつもり?」
まどか「私って昔から得意な学科とか、人に自慢できる才能とか何もなくて、きっとこれから先ずっと誰の役にも立てないまま、迷惑ばかりかけていくのかなって、それが嫌でしょうがなかったんです」
マミ「…」
まどか「でもマミさんと会って、誰かを助けるために戦ってるの…見せてもらって、同じことが私にもできるかもしれないって言われて、何よりも嬉しかったのはそのことで」
まどか「だから…私、魔法少女になれたらそれで願い事は叶っちゃうんです!こんな自分でも誰かの役に立てるんだって胸を張って生きていけたら、それが…一番の夢だから…」
マミ「…大変だよ、ケガもするし、恋したり遊んだりしてる暇も無くなっちゃうよ…」
まどか「でも、それでも頑張ってるマミさんに私、憧れてるんです!」

マミ「…憧れるほどのもじゃないわよ…私…」
マミ「無理してカッコつけてるだけで、怖くても辛くても誰にも相談できないし、一人ぼっちで泣いてばかり…いいものじゃないわよ?魔法少女なんて」
まどか「マミさんはもう一人ぼっちなんかじゃないです」
マミ「…そうね…そうなんだよね」
マミ「本当に、これから私と一緒に戦ってくれるの?そばにいてくれるの?」
まどか「…はい、私なんかで良ければ…」
マミ「…まいったな…っ…まだまだちゃんと先輩ぶってなきゃいけないのにな…やっぱり私ダメな子だ…っ…」
まどか「マミさん…」

~~~~

マミ「今日という今日はソッコーで片付けるわよ!」
マミ(体が軽い、こんな幸せな気持ちで戦うなんてはじめて、もう何も怖くない、私ひとりぼっちじゃないもの)
マミ「せっかくのとこ悪いけど…」
マミ「一気に決めさせて…」
マミ「もらうわよ!」

さやか「やったぁ!」

マミ「ティロ・フィナーレ!!」
ドーン!



マミ「あ」
まどか「あっ、あっ」
さやか「あぁ!」

ザシュッ!!

お菓子の魔女「!!」

マミ「え」

??「ったく、何やってんだよ…先輩のくせに」

まどか「えっ?」

さやか「え?何?」

??「後輩の前で死にゃ世話ねえってか、マミ先輩」

マミ「さ、佐倉さん!?」

杏子「間に合ったか、久しぶりだな…マミ先輩」
スタッ…

マミ「佐倉さん…どうして…」

まどか「だ、誰…?」

さやか「てかマミ先輩って…」

杏子「説明は後だ、今はとりあえず、アイツを…」
バッ!

お菓子の魔女「グォォォォ!!」

杏子「久しぶりだから出来るかわからねーけどやってみるか、マミ先輩の前だし」

杏子「言いたくねーけど……」

杏子「ロッソ・ファンタズマ!!」
シュイン!シュイン!シュイン!シュイン!

杏子「おお…すげえ!出来た!」

お菓子の魔女「ガプッ!」

杏子「残念!そっちはニセモノさっ!」
ザシュッ!

杏子「菓子はアタシに食べられるもんだろーが、菓子が人食ってどうすんだよ!」
ズババッ!

お菓子の魔女「グォォォ……」
ドドーン…

さやか「か、カッコイイ…!」

まどか「す、すごい!」

杏子「菓子は菓子らしく食われてろよ!」
ポキッ

ブオォォン…


杏子「ふー…」

マミ「佐倉さん…どうして…」

杏子「…先輩のピンチに後輩が駆けつけなくてどうするのさ」

マミ「あなたはもう…私とはやってけないって…」

杏子「あの時は……」

杏子「…でもアタシ改心したんだ…だからもう一度マミ先輩と一緒に戦いたいって、一緒にこの街救ってた時の気持ち思い出したんだ」

杏子「もちろん無理にとはいわねえ、今更図々しいのも承知だし、アタシからマミ先輩とは縁を切ったんだ、アタシは嫌われて当たり前の事を……」

マミ「っ…嫌いになんてなってない!」

杏子「…!」

マミ「…あなたが…あなたがいなくなってどれだけ寂しかったことか…あなたのことがどれだけ心配だったことかっ…!」

マミ「あなたは、私にとって魔法少女として志を共にできる初めての親友だった…でも…でもっ!私は…あなたを助けてやれなかった!だから…だからっ…その事だけが…っ!」

杏子「悪かった…ホントに」
ギュッ…

マミ「…!」

杏子「だから、これからまた頑張ろうぜ…なっ?」

マミ「っ…やっぱり私先輩失格だ、もう泣かないって決めたのに…ぐすっ…」

杏子「…よしよし…ほらよ」

マミ「グリーフシード…でもこれはあなたが…」

杏子「何言ってんだよ、昔みたいに…ほら、ソウルジェム出せって」

マミ「う、うん…」シュルル

まどか「なんだかよくわからないけど…」

さやか「感動の再会…ってやつ?」

まどか「うん、そうなのかな、マミさん…すごく嬉しそう」

さやか「なんかすごくいいコンビみたいだなあ、あの2人」


マミ「で、でも、どうして私が危ないってわかったの?」

杏子「ああ、それはこいつのおかげさ、こいつが教えてくれたのさ」

中身は面白い

がしかし
読みにくい

台詞くらいは改行してくれ

スッ…
ほむら「私は何も…」

さやか「げっ!転校生!」

まどか「ほむらちゃん…!」

マミ「あなたは…暁美さん…」

杏子「こいつはなんだかんだでマミ先輩のこと心配してたのさ」

ほむら「杏子…何を…」

マミ「…本当に?」

ほむら「…私はただ、あなたに死んでもらっては困るだけ…」

杏子「な?つまりマミ先輩のこと心配してるんだよ」

マミ「そうなの…今まで誤解していたわ…ごめんなさい、暁美さん…」

ほむら「私は別に…」

杏子「これでわかったろ、こいつはマミ先輩に敵対心があるわけじゃないってことだな」

マミ「気付けなくて…ごめんなさい」

マミ「そうだ…良かったらあなたもこの街で一緒に戦いましょ?暁美さん」

>>44
原作通りの台詞は差別化のために改行やめてたんですが
読み難いようなので廃止します。すいません

ほむら「私は……」

杏子「おい、うなずけよ、仲良くしといて損はないんだろ?」コソコソ

ほむら「……」コク

マミ「ありがとう、暁美さん」

マミ「じゃあ、そうと決まれば今日は魔法少女コンビ再結成記念パーティーよ」

杏子「えっ!」

さやか「い、今からですか?」

まどか「うんうん、ほむらちゃんとも仲良くなれそうだし」

ほむら「まどか…」

マミ「じゃあ今から私の家に!私が腕を揮ってご馳走作るから!」

マミ「私は準備あるから先に帰っとくわ!」

杏子「あ、お、おい!」

杏子「さっきまでの涙はどこいったんだよ…」


さやか「あんなに嬉しそうなマミさん、初めてみたね」

まどか「そうだね、あの子と会えたのがすごく嬉しいんだね」

ほむら「……」

まどか「何やってるの、ほむらちゃんもいこっ!」
ギュッ
ほむら「あっ…うん」

言い忘れてましたが本作は5編構成になっています。

ここまでが『マミ救出編』です

これからが『日常編』となります

~マミの家~


マミ「じゃあこれから魔法少女コンビ再結成記念パーティーを開催します!遠慮なく食べてください」

杏子「おお!すげぇ!やっぱマミ先輩の料理は最高だぜ」パクパク

マミ「佐倉さんは行儀良く食べなさい、あなたたちも遠慮しないで食べて」

さやか「あ、はい」

まどか「いただきま~す、どれもおいしそう!」

さやか「てか、あたしたちまでお邪魔して良かったんですか?あたしたちまだ魔法少女じゃないですし…」コソコソ

マミ「いいのよ、パーティーなんだから人は多いほうがいいでしょ?」

さやか「そうですか…なら、遠慮なくいただきます!」

マミ「ええ、あなたもね、暁美さん」

ほむら「……」モグモグ

ほむら「おいし…」

マミ「それは良かったわ…そう言えば2人はまだ知らなかったわね、佐倉さんのこと」

マミ「佐倉さん、2人に自己紹介してあげて」

杏子「ええ、まだ食ってる途中だぜ…」モグモグ

マミ「いいから、しなさい」

さやか(この2人、ホントに先輩と後輩みたいだなー)

杏子「…佐倉杏子だ、隣町の風見野で魔法少女をしてる、マミ先輩の一番弟子ってとこだな、よろしくね」

まどか「よろしくー、杏子ちゃんって呼ぶね」

さやか「マミさんの一番弟子なんですか!?」

杏子「……」ジー(さやか…)

さやか「あ、あのー…?」

杏子「あっ…ああ、そうだな、ただアタシよりも前に弟子がいないってことだから、アタシが一番弟子だな」

マミ「佐倉さんが私に弟子にしてださいって言ってきたのよね」

杏子「おい、もう昔の話はいいだろ」

マミ「ふふっ、そうね、そしてこの2人が私の中学の後輩、鹿目まどかさんと美樹さやかさんよ」

杏子「ああ、よろしく、こいつらもQBに選ばれたってわけなのか?マミ先輩」

マミ「ええ、そうね、鹿目さんはQBの声が聞こえたらしいわ」

QB「僕が助けてって呼んだら聞こえたんだ、まどかに、もちろんさやかのことも知っていたよ」

杏子「そうか…で、どうするんだ?2人とも」

ほむら「」チラッ

さやか「私たちはまだ…保留って言うか…なんていうか…ね、ねぇ?まどか」

まどか「う、うん、私もケーキで魔法少女にはちょっと…やっぱり…」

さやか「え?ケーキって何の話??」

まどか「えへへ…いや、なんでもないよ~ねえ?マミさん」

マミ「え、ええ…ま、まあ私たち2人の秘密ってことで、ね?鹿目さん」

さやか「ええっ~何さ、2人だけの秘密って~ずるい~不公平だあ~あたしにも教えろよ~」

ほむら「……」

杏子「…そうか」

杏子「そうだな、魔法少女になんてなるもんじゃないよ…絶対にな…」

まどか「えっ…」

さやか「……」

マミ「佐倉さん……」

杏子「アンタらみたいに幸せな連中が命までかけて魔女なんかと戦う必要はねーってことさ」

さやか「幸せって…」

まどか「そう言えば…杏子ちゃんはどうして魔法少女に…?」

まどか「あっ、言いたくないなら無理には…」

杏子「…いいさ、だがちょっとばかり辛気臭いし、長い話になる、それでもいいってんなら話すよ…」

まどか「うん、私、ぜひ聞きたいの、杏子ちゃんが魔法少女になった理由、それに魔法少女になるなっていう理由も…」

杏子「…ったく、変な奴だな、アンタ」

杏子「……」

杏子「アタシの親父はね牧師だった、正直過ぎて、優し過ぎる人だった、毎朝、新聞を読む度に涙を浮かべて真剣に悩んでるような人でさ」

杏子「新しい時代を救うには、新しい信仰が必要だって、それが親父の言い分だった」

杏子「だからある時、教義にないことまで信者に説教するようになった」

杏子「もちろん、信者の足はパッタリ途絶えたよ、本部からも破門された、誰も親父の話を聞こうとしなかった」

杏子「当然だよね、傍から見れば胡散臭い新興宗教さ、どんなに正しいこと、当たり前のことを話そうとしても、世間じゃただの鼻つまみ者さ」

杏子「アタシたちは一家揃って、食う物にも事欠く有様だった」

杏子「納得できなかったよ、親父は間違ったことなんて言ってなかった、ただ、人と違うことを話しただけだ」

杏子「5分でいい、ちゃんと耳を傾けてくれれば、正しいこと言ってるって誰にでもわかったはずなんだ」

杏子「なのに、誰も相手をしてくれなかった、悔しかった、許せなかった、誰もあの人のことわかってくれないのがアタシには我慢できなかった」

杏子「だから、QBに頼んだんだよ、みんなが親父の話を真面目に聞いてくれますように、って」

杏子「翌朝には、親父の教会は押しかける人でごった返していた」

杏子「毎日おっかなくなるほどの勢いで信者は増えていった」

杏子「アタシはアタシで、晴れて魔法少女の仲間入りさ」

杏子「いくら親父の説法が正しくったって、それで魔女が退治できるわけじゃない」

杏子「だからそこはアタシの出番だって、バカみたいに意気込んでいたよ」

杏子「アタシと親父で、表と裏からこの世界を救うんだって」

杏子「…でもね、ある時カラクリが親父にバレた」

杏子「大勢の信者が、ただ信仰のためじゃなく、魔法の力で集まってきたんだと知った時、親父はブチ切れたよ」

杏子「娘のアタシを、人の心を惑わす『魔女』だって罵った」

杏子「笑っちゃうよね、アタシは毎晩、本物の魔女と戦い続けてたってのに」

杏子「それで親父は壊れちまった」

杏子「最後は惨めだったよ」

杏子「酒に溺れて、頭がイカれて、とうとう家族を道連れに無理心中さ」

杏子「アタシ一人を、置き去りにしてね」

杏子「アタシの祈りが、家族を壊しちまったんだ」

杏子「他人の都合を知りもせず、勝手な願いごとをしたせいで、結局誰もが不幸になった」

杏子「奇跡ってのはタダじゃないんだ、希望を祈れば、それと同じ分だけの絶望が撒き散らされる」

杏子「そうやって差し引きをゼロにして、世の中のバランスは成り立ってるんだ」

杏子「でもアタシは後悔しなかった、それは自業自得だってわかってたからだ、だからアタシはこれからも自業自得の人生を生きていこうと割り切ってるのさ」

マミ「……」

さやか「……」

まどか「……」

ほむら「……」

杏子「こんな風にして魔法少女になったアタシだから言うけど」

杏子「毎日美味いもん食って、幸せ家族に囲まれて、そんな何不自由ない暮らしをしてる奴がさ」

杏子「たった一つの奇跡の為に魔法少女になろうとするんなら、そんなのアタシが許さない、いの一番にぶっ潰してやるさ」

杏子「命を危険に晒すってのはな、そうするしか他に仕方ない奴だけがやることさ、そうじゃない奴が首を突っ込むのはただのお遊びだ、おふざけだ」

杏子「アンタらだっていつかは、否が応でも命懸けで戦わなきゃならない時が来るかもしれない、その時になって考えればいいんだよ。だろ、マミ先輩?」

マミ「……確かにそうかもね…佐倉さんの言う通り、魔法少女はそうするしか他に仕方ない人がなるものかもね…私もその一人だから」

杏子「…そう言えばそうだったな、マミ先輩も」

マミ「さっきはあんなこと言ったけど、あなた達にはきちんと選ぶ余地があるわ、もう一度よく考えて」

マミ「これからは佐倉さんと暁美さんが一緒に戦ってくれるから、私ももう一人じゃない」

マミ「もちろんあなたの気持ちもすごく嬉しいわ、鹿目さん、でも今はその気持ちだけ受け取っとくわね」

まどか「…はい、私もまだ願いごと決まってなかったですし、えへへ」

さやか「……そうだよね、やっぱり簡単じゃないよね」

杏子「アタシはさ、自分のエゴを叶えて魔法少女になった、でもそのエゴを叶えた分、アタシの前から消えていったものの方が大きかった」

杏子「もちろんアタシはそれを割り切ってる、誰のせいでもない自分のせいだって」

杏子「でも中には、憧れや自惚れで魔法少女になった奴も見てきた、人の幸せを願ったのに報われずあっけなく死んだ奴だって見てきた」

杏子「そんな奴らを見るとアタシは虫唾が走るんだ、なんでてめーらが魔法少女になったんだって」

杏子「アタシよりも幸せな癖に何と引き換えに魔法少女になったんだって、こんな役を担うのはアタシみたいな奴でいいって」

杏子「いくらアンタらがQBに選ばれたからって契約しようなんて考える必要はない、なっちまったんなら仕方ないけど、なる前ならまだ後戻りは出来る」

マミ「そうね…なってしまったらもう後戻りはできないわ…あなたたちに任せたいけど、今の所はやっぱり……」

マミ「それに今はこの街に、私たち三人も魔法少女がいるんだし、いざって時に考えれば、それでいいと思うの」

QB「僕としては契約してくれたがいいんだけどなぁ、まぁ僕の立場からどうこうも言うのもルール違反になるからね」

マミ「ダメよ、QB」

杏子「QB…てめぇ…!」

さやか「そっかぁ…やっぱり考えが甘かったね…あたしたち」

まどか「うん…やっぱりさやかちゃんが言うとおり私たち幸せ馬鹿なのかもね…」

さやか「かもね…」

まどか「でもありがと、杏子ちゃんも私たちのこと心配してくれてるんだねっ」

さやか「うん、うん!ありがとうございます!杏子先輩!」

杏子「別にそんなわけじゃ、てか杏子先輩って…」

マミ「とりあえず今のところは考えなくていいわ、二人とも」

まどさや「はーい!」

マミ「さぁさぁ、せっかくなんだし、みんなで楽しい話をしましょう!」

さやか「いえーい!」

ガヤガヤ
____

さやか「あんたのこと、あたしも誤解してた、ごめん」ボソ…

ほむら「いいのよ…別に私なんか」

さやか「…あんたはさ、どんな願いで魔法少女に?」

ほむら「……」

さやか「あ、ごめん…言いたくなかった?」

ほむら「……友達を助けるために…それだけ」

さやか「…そうなんだ」

さやか「教えてくれてありがと」

~~~

マミ「今日はありがとう!またいつでもいらっしゃいね、みんな」

まどか「いえいえ、こちらこそありがとうございました!」ペコッ

さやか「ありがとうございました!」ペコッ

ほむら「…楽しかったわ」

マミ「それは良かったわ、暁美さん、これからもよろしくね」

ほむら「…」コクッ

さやか「あれ?杏子先輩はぁ?」

マミ「佐倉さんは疲れて寝ちゃったみたい、今日はここで休ませてあげるわ」

さやか「そっかぁ、じゃあみんな~また学校で~」

まどか「バイバーイ」

マミ「また学校でね」

バタン…

マミ「佐倉さん、ホントに寝ちゃった」


杏子「マミは…アタシが助けるうぅ…ふにゃ…ふにゃ」


マミ「あらあら、寝言言っちゃって」

杏子「zzz」スゥースゥー

マミ「…ありがとうね、佐倉さん」



マミ「後片付けしなきゃ」

翌日
 ~学校~

まどか「おはよ~さやかちゃん、仁美ちゃん」
さやか「おお、まどか!おっはよ~」
仁美「おはようございます、まどかさん」
____

 授業中

まどか(杏子ちゃん昨日どうしたんだろうねぇ?さやかちゃん)

さやか(爆睡してたみたいだし、泊まってったんじゃない?マミさんとこに)

マミ (ええ、佐倉さんなら朝から私と一緒に出て行ったわ、夕方には帰ってきなさいと言ったのだけど…)

まどか(あ、マミさん)

さやか(おはようございます)

マミ (今日は夕方から魔女退治に行くわよ、みんないいわね?今日は遅くならないようにするから)

まどか(わかりました)

さやか(了解ですっ)

マミ (暁美さんもいいわね?)

ほむら(了解…)

放課後
 ~見滝原市内~

マミ「では行きましょうか」

まどさや「はーい!」

ほむら「……」コク

さやか「杏子先輩は?」

マミ「ここで待ち合わせのはずなんだけど…」

杏子「おーい!遅れてわりぃ」

マミ「どこ行ってたの?佐倉さん」

杏子「いやぁ、悪い、ちょっと野暮用でな」

マミ「まぁいいわ、これで全員揃ったわね、ではいざ魔女退治に出発よ」

スタスタ
さやか「なんかマミさん気合入ってますね~」

マミ「だってみんなといると楽しいんですもん」

まどか「なんか放課後こうしてると部活みたいだよね~」

マミ「そうね、魔法少女部ね、でも危険なことしてるって意識は忘れちゃダメよ」

まどさや「はあーいっ!」

杏子「全く、調子いい奴らだぜ」

ほむら「……」

 ~見滝原市内魔女結界入口~

マミ「この辺りに反応があるわ、行くわよ、みんな」

さやか「やっぱ緊張するね…何度来ても」

まどか「…うん」

杏子「」シュイン

ほむら「」シュイン

マミ「ここね…結界だわ」シュイン

マミ「行くわよ」

魔女「ギャハハハハハハハハ」


マミ「私が牽制しつつ、敵の懐に近づくわ、佐倉さんは近距離から適当に攻撃を仕掛けて」

マミ「暁美さんは遠距離から私と佐倉さんのバックアップをよろしくね」

杏子「オーライ」

ほむら「……」コク

マミ「ソッコーで片付けるわよ」
バッ!


マミ「……」
ズキュン!
ズギュン!

杏子「動きが鈍いんだよ!」
ザシュッ!
ズシュッ!

ほむら「……」
ドガガガガガガ! 
バシュー!ドガン!

魔女「ギャアァァァァァァ」

さやか「すごいよ…やっぱりあの三人…」

まどか「うん」


魔女「ギャアァァァ……」

ブオォォン…

マミ「みんなお疲れさまっ、やっぱり三人でやると仕事が早いわね」

杏子「だな」

ほむら「……」

マミ「じゃあ2人ともソウルジェム出して」

杏子「」スッ

ほむら「私はいい、あなたたちだけで浄化して」

マミ「あなたも戦ったんだから、ちゃんと出さなきゃダメよ、暁美さん」

ほむら「……」スッ

マミ「それじゃあ私も」スッ 
シュルル…

マミ「QB」
ヒョイッ

QB「使用済みは回収するよ」

さやか「いやぁ、やっぱすごいっすね~、みんな~」

まどか「うん、あんなに早く魔女倒せたの初めてだよね」

マミ「こうやってみんなで戦えば、魔力の消費だって少なく済むし、一人で戦うよりリスクも減るわ、まぁその分浄化も少ししか出来ないんだけどね」

マミ「でも一人で戦うより、みんなで戦った方が絶対いいと思うの、縄張り争いなんてするものじゃないわね」

杏子「ああ」

ほむら「……」

マミ「あなたたちとこうして戦えて本当に嬉しいわ、これからもよろしくね」ギュッ

杏子「当たり前だろ、マミ先輩っ」

マミ「あなたもね、暁美さん」ギュッ

ほむら「……」コク

マミ「じゃあ今日も私の家で…」

さやか「いっ!?」

杏子「おいおい、さすがに今日は…」

まどか「そ、そうですよ、マミさんも大変でしょうし…準備とか」

マミ「何よ、まだ最後まで言ってないじゃない、そんなに私の家に来るのが嫌なの?」シュン…

さやか「い、いえいえ!別にそういう意味じゃなく…」

まどか「そ、そうですよ!また行きたいなぁ、ね、ねぇ?ほむらちゃん?」

ほむら「……」

杏子「……」(マミってこんなめんどくせぇ性格だったっけか…)

マミ「冗談よ、さすがに今日はいいわ」

まどさや(はあ…良かった…)

マミ「そうね、じゃあ代わりと言っては何だけど、魔女に遭遇した時の為にも全員の連絡先交換しときましょうか!」

まどか「あ、いいですね、それ」

さやか「いいですよ!」

まどか「ほむらちゃんもいいよね?」

ほむら「まどかの連絡先が聞けるなら…」

まどか「私のもちゃんと教えるよ~」

杏子(やべ、携帯とか持ってねぇ)

さやか「あれ?杏子先輩、携帯は?」

杏子「も、持ってない…」

さやか「そうなんすか!?じゃあ…」

マミ「あら、そう…それじゃあ連絡どうしましょうか」

杏子「と、とりあえず魔女とか使い魔見つけたときは、QB使って伝えるよ、アタシ以外はみんな携帯あるわけだし」

杏子「アタシが見つけた時は誰かに連絡して、そいつが全員に連絡すれば済むだろ?」

マミ「そうね、それが一番いいわね、抜け駆けも一人で戦うのもダメよ」

マミ「じゃあ、私たちだけで」

まどさや「はーい」
ピッ
ピッ
まどか「あ、あれ?ほむらちゃんの携帯、もう私の連絡先あるよ?」

ほむら「えっ…あ、あ…これは…その…」

まどか「あれ、いつか交換してたっけ~?」

ほむら「え…ええ、まどかは忘れっぽいから忘れてるだけよ、会ってすぐに交換したじゃない?」

まどか「そうだったかな、ほむらちゃん、えへへ」

さやか「ええ~なになに?まどかは転校生と会ってすぐ交換したの~?ひどい~あたしにも教えろよ~まどかあ~」

まどか「ごめんごめん、さやかちゃん、今からほむらちゃんの連絡先送るね」
ピッ
ピッ

その日の夜
 ~ほむらの家~

ほむら「……」
ピンポーン


ほむら「入って」

杏子「おいおい、誰か聞かなくていいのかよ?」

ほむら「あなただってすぐにわかったわ」

杏子「…で、どうすんだ、これから」

ほむら「さあ、それは私にもわからない…」

杏子「はあ?なんだよそれ」

ほむら「私が知ってる歴史とは既に大きく変わってしまったわ、これから先は何が起こるか予想もつかない…」

杏子「なるほどね、でもそれっていいことなんじゃないのか?」

杏子「何をどう見たって、少なくとも悪いようには進んでないだろ、アタシたちはみんな何の誤解も無く仲良くなれたし、魔女退治に不満もリスクもない」

ほむら「そうね…あなただってやけに巴マミと仲良くしていたようだし」

杏子「うるせぇ…ペコペコしてたのはてめえもだろ、それにマミは難しい性格なんだよ、正義のヒーローぶって人前じゃ強気だけど、ホントはすげー寂しがりなんだよ」

ほむら「あら、そう…どこかの誰かさんと性格までそっくりね…やっぱり先輩と後輩では性格まで似るのかしら」

杏子「誰のこと言ってるんだよ、てめぇは」

ほむら「でもこれで少なくともワルプギスの夜に対処できる戦力が増えたわ」

杏子「…やっぱりワルプルギスの夜だけは確実にこの街に来るのかい?」

ほむら「ええ…私が見てきた過去では全ての時間軸において来たわ…歴史が大きく変わった今回でもそれは多分変わらないでしょうね…」

杏子「そうか…つか、てめえがもう少し素直にしてマミと仲良くしてりゃ、アタシがあんな仲介することもなかったのに、感謝しろよ」

ほむら「そうね…その事に関しては感謝しているわ」

杏子「その事だけかよっ!」

ほむら「…それより、これからはあの2人の動向によって歴史が変わってくる…」

杏子「さやかとまどかか…」

ほむら「でも、あなたがいくら説得しても、美樹さやかが契約する可能性は高いことを忘れないで」

杏子「……」

ほむら「あなた、美樹さやかが過去に契約した理由…知っているでしょう…」

杏子「…っ!」

ほむら「美樹さやかが契約しない、ということはあの少年の腕は治らない」

杏子「わかってるさ…でもそれだけはどうしようもできねえ、アタシがいくらアイツに言ったって、契約しちまえばそこまでだ」

杏子「どんな無理強いしたって、アイツは多分、自分で決めちまったら契約しちまうだろーな、それだけはどうしようもねーかもしれねぇ」

ほむら「……」

杏子「だからアタシは忠告したんだ、アタシみたいになるから絶対契約するなって、アイツらも真剣な顔で聞いてたから、そう簡単に契約したりしねーだろ」

杏子「万が一、そうなっちまった時はアタシがアイツを守る、アタシよりも先に魔女なんかにゃ絶対させねえ…」

ほむら「そう…なら良かったわ、これからは小さな出来事でも気をつけて…美樹さやかを絶望から救いたいなら」

杏子「どういう意味だ?」

ほむら「これから先はどんなことが起こるか予想できない、だからどんな小さな出来事の変化も見落とせないってことよ」

杏子「なるほどな…まっ、まだあの2人は大丈夫だろ、なんとかなるさ、アタシら2人とマミもついてるんだ、なんとかなるって信じようぜ」

ほむら「そうね……」

数日後
 ~屋上 昼休み~


さやか「ねぇ、QB、やっぱり魔法少女って大変なの?」

QB「それは僕の口からは何とも言えないよ、さやかがマミやほむらや杏子を見て判断することじゃないかな?」

まどか「さやかちゃん、まさか…」

さやか「え?いやいや、少し気になってね、まだあたしは命かけれるようなこと見つかんないし…」

まどか「だよね、マミさんにはあんなこと言っちゃったけど…私も今のとこは全然いいかなって感じかな…」

QB「君たちがそう言うならそれでいいんじゃないかな、また契約したいって思った時はいつでも呼んでよ、僕がすぐにでも願いを叶えてあげるから」

まどか「うん、そうするね」

さやか「ごめんね、QB」

QB「こっちこそ、巻き込んで済まなかった」

QB「お別れだね、僕はまた、僕との契約を必要としてる子を探しに行かないと」

まどか「え?」

さやか「会えなくなるの?」

QB「大丈夫、マミと一緒にいるから、マミの家に来ればいつでも僕はいるよ、だから契約したくなったらいつでも呼んで」

さやか「…仕方ないよね、とりあえず今は」

まどか「…うん」

さやか「あ、そうだ、まどか、放課後CD屋いい?」

まどか「いいよ、また上条君の?」

さやか「まあね」
___

放課後
 ~見滝原市内病院~

 
さやか「じゃあ恭介に渡してくるね、ごめん、ちょっと待ってて」

まどか「うん」

~同病院内上条恭介病室~

さやか「何を聴いてるの?」

恭介「……『亜麻色の髪の乙女』」

さやか「ああ、ドビュッシー?素敵な曲だよね」

さやか「あ、あたしってほら、こんなだからさ、クラシックなんて聴く柄じゃないだろってみんなが思うみたいでさぁ、たまに曲名とか言い当てたら、すごい驚かれるんだよね。」

さやか「意外すぎて尊敬されたりしてさ、恭介が教えてくれたから、でなきゃあたし、こういう音楽ちゃんと聴こうと思うきっかけなんて、多分一生なかっただろうし」

恭介「さやかはさぁ…」

さやか「なーに?」

恭介「さやかは、僕を苛めてるのかい?」

さやか「え?」

恭介「何で今でもまだ、僕に音楽なんか聴かせるんだ…嫌がらせのつもりなのか?」

さやか「だって恭介、音楽好きだから…」

恭介「もう聴きたくなんかないんだよ!」

恭介「自分で弾けもしない曲、ただ聴いてるだけなんて!」

恭介「動かないんだ…もう、痛みさえ感じない、こんな手なんてっ」

さやか「大丈夫だよ、きっと何とかなるよ、諦めなければきっと、いつか…」

恭介「諦めろって言われたのさ」

恭介「もう演奏は諦めろってさ、先生から直々に言われたよ…今の医学じゃ無理だって」

さやか「……」

恭介「うっ…うっ…ごめん…さやか、怒鳴ったりして…っ」

さやか「え…あ…あたしは…別に」

恭介「せっかく来てくれたのに…今日は一人にしてくれないか…さやか」

さやか「あ、う、うん、わかった…ごめん」

さやか「し、CD買ってきといたから、ここ置いとくね…」

恭介「……」

さやか「じゃ…じゃあ、あたしもう帰るね…」

恭介「…ごめん、さやか」

まどか「あ、おかえり、どうだった?」

さやか「う、うん、少し元気なかったかな…恭介」

まどか「そうなの?」

さやか「…うん」

~~~

まどか「じゃあまた明日学校でね~」
さやか「うん、またね~」

~~~

さやか「……」

同時刻
 ~見滝原市内~

ザシュッ!
ドガガガガガッ!
ズキュン!
ズキュンン!

使い魔「ギャアアアア…」

ブオォォン…


杏子「今日も魔女退治完了だな!」

マミ「ええ、完璧だったわ」

ほむら「…」

杏子「使い魔か…」

マミ「使い魔でもちゃんと倒さないと」

杏子「ああ、わかってるよ、あれ、さやかたちは?」

マミ「今日は2人ともお休みしたいって」

杏子「ふーん、そうなんか、まぁ、あの2人は魔法少女じゃないしな」

マミ「そうね、一応後輩にはなるんだけど…」

杏子「いいじゃねーか、この街にはアタシたちがいるんだし、なあ?」

ほむら「……」

マミ「そうね、私たちがいれば最強だわ」

杏子「ああ」

ほむら「…」

マミ「じゃあ今日も私の家で今後の魔女対策と戦略について反省会しましょうか」

杏子(またかよ…まぁ食費浮くからいいか…)

ほむら「……」

マミ「2人とも来てくれないのね…」シュン…

杏子「な、何言ってんだよ、いくって!なぁ!?」

ほむら「……」コク

マミ「良かったわ、じゃあ準備しなきゃ、先に行っとくから!」

杏子「…ったく、相変わらずだなあ…マミの奴」

ほむら「そうね、あなたに助けられてからまるで人が変わったみたいだわ」

杏子「…こんな日がずっと続けばいいのにな…」

ほむら「…?」

杏子「こんな風にアタシたち三人で魔女退治してさ」

杏子「たまにマミの家にさやかとまどかも集まって、五人でパーティしてさ…すげー楽しかったんだ、アタシ」

杏子「だからさ、こんな日が毎日続けばいいなぁ…って思ってな」

ほむら「そんなこと言うなんて、本当に変わったわね…あなた」

ほむら「でも……」

ほむら「…その通りだわ」

その後
 ~まどかの家~

まどか「ただいま~」

……

知久「あはは、こんなこともあったねえ」

詢子「あった!あった!この時は大変だったんだよなあ」

タツヤ「こえ、おねえちゃんなお?」

詢子「そおだぞ~」



まどか「あれ、ママもう帰ってるの、ていうかみんなで何騒いでるんだろぉ…」

ガチャ…
まどか「ただいま~、ってみんなで何みてるの?」

詢子「おお、まどか、おかえり~」

知久「おかえり、まどか」

タツヤ「おねえちゃん、おかえい~」

まどか「って、これ私のアルバム!?」

詢子「おお、久しぶりに早く帰ってこれたからさ、掃除してたらちょうど出てきて、みんなで見てたんだよ」

詢子「ほら!これなんて生まれてすぐにアタシら三人で写ってるやつ!」

まどか「もう~、なんか今見ると恥ずかしいよぉ~」カアァァ

詢子「あはは、まどかにもこんな時代があったってことさあ」

詢子「ほら!これとか、小学校入学ん時の、こん時はまどかすごい恥ずかしがって、大変だったんだぜえ」

まどか「うう~ちゃんと憶えてるよお~もういいでしょ~早くしまって~」

詢子「あはは、わかった、わかった、もう少し見たら直すよ」

その日の夜
 ~まどかの家~


詢子「…ふ~」

知久「…僕も一杯いいかな」

詢子「お、珍しいね」

\カン/


詢子「ぷ…ぷははははっ」

知久「ど、どうしたのっ?」

詢子「いいや、さっきのアルバム思い出してさ、まどかにもあんな時代があったんだなあって思うと、なんか笑えてきて…っぷ、ははは!」

知久「ああ、まどかも大きくなったねえ」

詢子「ああ、アタシの自慢の娘だ!世界一の!いや宇宙一の!!」

知久「もしかして、もう酔ってる?」

詢子「まだまだあ、こんなこと話すのもあれだけどさ」

詢子「アタシさ、あの子が生まれて、初めて看護婦から渡された時にさ、すげー重かったって覚えてるんだ」

詢子「今でもあの重みは忘れない、そして、その瞬間にこいつは絶対にアタシが守ってやるんだって思ったんだ」

知久「ふふ…ママらしいね」

詢子「そんなアイツがさ、もうあんなにも大きくなって、最近大人になってくような気がすんだ…それが少し寂しいって言うかさあ…」

詢子「もちろん親としては喜ぶべきとこなんだけどさ、でも、どんなに大きくなっても、アイツはアタシの娘なんだなって…」

詢子「まあ、きちんといい子に育ってるし、子供としてはもう合格だからいいんだけどさあ」

知久「そうだね、まどかはいい子に育ったと僕も思うよ」

詢子「だろ?何しろアタシの自慢の娘だ!世界一の…ふにゃふにゃ…宇宙一の…ふにゃ…」

詢子「ふにゃ…zzz」

知久「あらら、酔いつぶれちゃったか…」

知久「…よいしょっ!」

知久「…やっぱり一人じゃ無理かあ…」

スタスタ
知久「まどか、起きてるか?」

まどか「うん、どうしたの?」


詢子「うーぐ、まどかあ…大人になんかなるなあ…」

まどか「はぁ~、またかあ、どうしたの?」

知久「いや、一杯やってたらちょっと酔いがまわっちゃったみたいでね」

詢子「…うう、まどかあ…」

まどか「はいはい、私はここにいますよ~」

詢子「でへぇい…ふあああ…つははは、まどかは自慢の娘だあ、聞いてる?ふふふう…」

~~~

まどか「ふ~」

知久「ありがとう、ココアでも淹れようか」

まどか「うん、おねがい」
_

まどか「何の話してたの?私が自慢の娘だあ、とかなんとか言ってたけど…」

知久「ああ、ははは、今日ちょうど、まどかのアルバムを見てただろう?そのことでママがまどかの思い出話をしてたのさ」

まどか「ああ、そうなんだ」

知久「まどかは自慢の娘に育ったって、宇宙一の娘だって言ってたよ」

まどか「そ、そんなこと言ってたんだ、ママ…」

知久「うん、僕もそう思うよ、まどか」

まどか「え、う、うん、ありがと、きゅ、急にほめられるとなんか照れるよ…」

知久「あははは、まどかは本当にいい子だよ、パパにとっても自慢の娘だ」

まどか「んもう~パパったら~」

ここまでが『日常編』となります

_『仁美編』_


数日後
 ~見滝原市内ビル屋上~



QB(この街には既に三人も魔法少女がいる、それでも僕の願いを必要としてくれてる子はいるのかな?少しでも因果の大きな子がいればいいんだけど…)

QB(僕としてもあと一人魔法少女がほしいところだ)



~~~~~~~~~~~~~~~

~仁美の家~


仁美「はぁ…上条君の事、どうしましょう…やはり、さやかさんには伝えるべきでしょうか…」オロオロ

仁美「あら?こんなぬいぐるみ、私の部屋にあったかしら?」

QB(この子なら、因果も普通の子より大きいし、願い事もまとまってるみたいだね、この子に声をかけてみよう)


コンコン…
執事「仁美お嬢様、御夕飯の準備が整いました」

仁美「わかりました、すぐ行きます」
スタスタ

_夕食後_


仁美「…はあ…上条君…」

QB「君の願いは本当かい?」

仁美「え…?空耳ですの?」

QB「君のその願い、僕が叶えてあげよう」

仁美「えっ!?誰ですの?誰かおられますの!?」

QB「ここだよ、仁美、君がさっきぬいぐるみと間違えた…」

仁美「えっ、あなたなの?」

QB「そうだよ、僕の名前はキュウベぇ、僕と契約して魔法少女になってよ!」

仁美「はあ…私、疲れていますのね、幻覚が見えるなんて…上条君の事考えすぎかしら…」

QB「僕は、君の願いごとをなんでもひとつ叶えてあげる」

仁美「…今日は早めに休みますわ」

QB「なんだってかまわない、どんな奇跡だって起こしてあげられるよ」

QB「って、おーい、仁美!起きて、これは夢なんかじゃないよ」

仁美「じゃあ、あなたがなんでも叶えてくれるっていうんですの?」

QB「そうだよ、どんな奇跡だって起こしてあげられる、さぁ君の願いを言ってごらん」

仁美「……」

QB「僕を信じてないみたいだね…仕方ないなぁ、魔法の力を見せてあげよう」

仁美「そうですわ、見せてくれれば信じますわ」

QB「全く、君たち人間ってのは」
ピキーン!

仁美「…!?」

仁美「か、体が…う、う…浮いて…!」
フワフワ

QB「今、君の体を持ち上げているのは僕だよ」

仁美「わ、わわ、わかりましたわ…降ろしてくださいます?」

QB「……」
…バタン

QB「これで信じてくれるかい?」

仁美「と、とりあえず…し、信じますわ…」

QB「良かったよ、僕は別に君に危害を加えようという気はないよ、むしろさっきも言った通り君の願いをなんでも一つ叶えてあげる」

仁美「本当…ですの?」

QB「だから僕と契約して魔法少女になってよ」

仁美「??」
仁美「願いを叶える…と言うのは…」

QB「だから仁美が願いを叶えて、魔法少女になるんだよ、それが契約さ」

仁美「魔法少女って…なんですの?」

QB「魔法少女になって、魔女と戦うのさ」

仁美「?」
仁美「では、魔女って何ですの、魔法少女とは違うんですの?」

QB「願いから産まれるのが魔法少女だとすれば、魔女は呪いから産まれた存在なんだ」

QB「魔法少女が希望を振りまくように、魔女は絶望を蒔き散らす」

QB「不安や猜疑心、過剰な怒りや憎しみ、そういう災いの種を世界にもたらしているんだ」

仁美「そ、そんな方がいたら、誰か気付くのではなくて?」

QB「魔女は常に結界の奥に隠れ潜んで、決して人前には姿を現さないからね」

QB「結界は様々な場所にある、この街にだって魔女はたくさん潜んでるんだよ」

仁美「つまり、どんな願いでも叶えてくれる代わりにその魔女ってのと戦えばいいんですのね?」

QB「うん、そうだよ、でも時には命がけになる時もある」

仁美「えぇ!?死ぬこともありますの!?」

QB「もちろん、魔法少女は常に死と隣り合わせさ」

仁美「……」

QB「でも大丈夫、僕の見立てでは契約すれば君は並の魔法少女よりも強い魔法少女になれる、僕が保障するよ!」

仁美「本当ですの?」

QB「本当だよ、君は普通の子よりも因果が大きいからね、だから、そう簡単に魔女に負けたりはしないよ、大丈夫さ」

仁美「……すぐに決めなければなりませんの?」

QB「ううん、いつでもいいよ、決まったら呼んでくれれば」

仁美「わかりましたわ、では、気持ちの整理がついたらご報告しますわ」

QB「うん、いい返事を待ってるよ」

仁美「……」

~翌日~
 
QB「おはよう、仁美、気持ちの整理ができたかい?」

仁美「やっぱり、夢じゃないんですのね…」

__________

同日
 ~放課後~

仁美「さやかさん今から少しいいかしら?」

さやか「えっ?あたし?うん、いいよ、まどかも呼ぶ?」

仁美「いえ、あなたに話があるんですの、さやかさん…」

さやか「え?う、うん、わかった」

その後
~見滝原市内デパート~


さやか「それで…話って何?」

仁美「恋の相談ですわ」

さやか「……」

仁美 「私ね、前からさやかさんやまどかさんに秘密にしてきたことがあるんです」

さやか「え…?」

仁美「ずっと前から…私…上条恭介君のこと、お慕いしてましたの」

さやか「そ、そうなんだ」

さやか「あはは…まさか仁美がねえ…あ、なーんだ、恭介の奴、隅に置けないなあ」

仁美「さやかさんは、上条君とは幼馴染でしたわね」

さやか「あーまあ、その…腐れ縁って言うか、何て言うか」

仁美「本当にそれだけ?」

仁美「私、決めたんですの、もう自分に嘘はつかないって」

仁美「あなたはどうですか?さやかさん、あなた自身の本当の気持ちと向き合えますか?」

さやか「な、何の話をしてるのさ」

仁美「あなたは私の大切なお友達ですわ、だから、抜け駆けも横取りするようなこともしたくないんですの」

仁美「上条君のことを見つめていた時間は、私よりさやかさんの方が上ですわ」

仁美「だから、あなたには私の先を越す権利があるべきです」

さやか「仁美…」

仁美「私、明後日に上条君に告白します」

仁美 「明日、一日だけお待ちしますわ、さやかさんは後悔なさらないよう決めてください、上条君に気持ちを伝えるべきかどうか」

さやか「あ、あたしは…」


___________


仁美「……」
仁美(本当にこれで良かったのかしら?明日中にさやかさんが上条君に告白されたのなら私は大人しく手を引きますわ…)

その日の夜
 ~さやかの家~


さやか(どうしよう、このままじゃ恭介、仁美に取られちゃうよーっ、でも仁美だって友達だし、私が恭介に告白すれば、仁美は…っ)

さやか(まどか…あたし、どうしよう…)
ピッポッパッ
プルルルル
プルルルル
ガチャ
まどか「もしもし~?さやかちゃん?」

さやか「そうだよ、ごめん、まどか、今からちょっといい?」

まどか「え?今から?別にいいけど…あんまり遅くなるとパパに怒られるから…」

さやか「大丈夫、少し会って話がしたいだけだから」

まどか「じゃあ、近くの公園でいいかな?」

さやか「うん、ごめんね、わかった」

~見滝原市内公園~


まどか「さやかちゃん、遅れてごめん」

さやか「いいよ、あたしの方こそこんな時間にごめん…」

まどか「ううん…話って?」

さやか「うん、あのさ…仁美のことなんだけど…」

まどか「仁美ちゃん?」

さやか「うん、仁美がね…その、恭介のこと…好きなんだって…明後日に告白するんだって…で、でもあたしが恭介の幼馴染だからって、その…」

さやか「あはは…なんて言ったらいいのかなあ…告白するの、ためらってるって言うか…あたしのこと気にしてるって言うか…そんな感じの事、放課後言われて…」

まどか「…うん」

さやか「あたし、どうしたらいいのかな…って」

さやか「あたしってほんと馬鹿…仁美が恭介に告白したら…あ、あたしなんかに、恭介が構ってくれるわけないって…あたし…どうしたら…っ」

さやか「ぐすっ…仁美に恭介を取られちゃうよ~っ!でも仁美も友達だから傷つけたくないよっ…どうしようもできないよ~っ!」
ダキッ!

まどか「……さやかちゃん」

さやか「うっ…ひくっ…ごめん、まどかにこんな事言っても始まらないよね、自分で決めなきゃ」

さやか「…少しスッキリした…ありがと、まどか」

まどか「ううん、私は誰かのことまだ好きになったことないからよくわからないけど、仁美ちゃんもさやかちゃんのことを思ってその事をちゃんと事前に伝えたんだと思うよ」

まどか「だから、さやかちゃんも後悔がないようにそれに答えるべきなんじゃないかな…」

さやか「そう…かな、やっぱり」

まどか「うん、これ以上のことはさやかちゃん自身が決めることだよ」

さやか「だよね、あたしが決めなきゃね、ありがと、まどか、やっぱりまどかはあたしの最高の友達だよ!」

まどか「もう~さやかちゃん」

さやか「遅くまでごめんね」

まどか「ううん、さやかちゃんの力になれたなら良かったよ」

さやか「ごめん、ありがと、じゃあまた明日学校で」

まどか「うん、また明日ねっ」

____



さやか「……」
さやか「やっぱりあたしも自分に嘘つきたくない」

同時刻
 ~仁美の家~


仁美「はぁ…」

仁美(もしも、さやかさんが明日までに上条君に告白しなければ、私は契約で上条君と…)

QB「願いごとは決まったのかい?」

仁美「そうですわね…決まっていますわ」

QB「ならどうして今すぐにでも契約しないんだい?」

仁美「そ、それは……私だって今すぐ願いを叶えたいですわ、でも…」

QB「何か理由があるんだね、僕はいつでもいいよ、待ってるからね、じゃあ決まったらまた呼んでね」
スッ

___

仁美「……私…嫌な子ですわ…」

次の日
 ~通学路~


さやか「おはよ~」

まどか「さやかちゃん、おはよ~」

さやか「あ、あれ?仁美は?」

まどか「…うん、仁美ちゃん、今日は先に行っとくって…」

さやか「そ、そっか」

まどか「さやかちゃん」

さやか「ん?…何?まどか?」

まどか「さやかちゃん、やっぱり上条君に…」

さやか「う、うん、放課後告白するつもり、やっぱりあたしも後悔したくないからさあ」

まどか「そっか、さやかちゃんがそう決めたなら頑張って」

さやか「…うん」

同日放課後


さやか「お願い!まどか、病院までついてきてくれない?」

まどか「ごめんっ、ついていってあげたいんだけど、今日パパがいないから早く帰ってこいってママに言われてるんだ」

さやか「えぇ~まどかぁ~」

まどか「ほんとにごめんねっ、でも大丈夫だよ、さやかちゃんなら、絶対大丈夫だよ」

さやか「うう……わかったよ、一人で行って来る」

まどか「うん、頑張ってね」

さやか「じゃ、行って来るね」

まどか「うん、いい返事待ってるよ、じゃあね」

スタスタ
さやか(でも、本当にあたしなんかが恭介に告白していいのかな…仁美の方がよっぽど恭介に相応しいと思う…)
    
さやか(…ああ!ダメだ、ダメだ!あたしだって後悔しないように告白するんだ、こんな事考えちゃ……)

___

 ~見滝原市内病院前~


さやか「はぁ、やっとついた…」

さやか「ん?…って、あれって…ま、まさか!!」

さやか「なんで…また…こんなところに…グリーフシードが…!!」

さやか(そ、そうだ、見なかったことにしよう…今はこんな事に構ってる時間は…)

さやか(で…でも…っ)

さやか(うっ……そ、そうだ!携帯でマミさんかほむらに!)

さやか「あ、あれ?」
アタフタ

さやか「あ、まずった…携帯忘れた…」

さやか(ど、どうしよ~っ!!このまま見なかったふりして、もし魔女が孵化すれば、この病院だけじゃなくて恭介まで…)

さやか(でも誰かを呼びにいけば、もう今日の面会時間には間に合わないっ…!!)

さやか「……」
さやか「うっ…ひくっ…!」

さやか(後悔しない道を選ぶなら……あたしは…あたしは……っ!)
ダダダダッ…

~マミの家~

ピンポーン

マミ「どなた?」

さやか「はあ、はあ、マミさん!魔女が!…グリーフシードが…病院に…はぁ、はあ…っ」

マミ「ど、どうしたの!?そんなに急いで、美樹さん!」

さやか「とりあえず、早く病院に!」

マミ「え、う、うん、わかったわ!」

~~~

ザシュッ…

魔女「ギャアアアア…」

ブオォォン…


杏子「ふう、なんとか間に合ったな」

マミ「ええ、そうね、美樹さんが教えてくれなければ大変なことになっていたわ」

ほむら「…」

杏子「お前のおかげで魔女を倒せたんだぜ、さやかっ」

杏子「ってあれ?さやかは?」

マミ「あれ?さっきまでいたんだけど…」

ほむら「美樹さやかなら走ってどこかに行ったわ」

杏子「何急いでんだ…アイツ…」

~見滝原市内病院受付~


さやか「あ、あの、今日の面会は……」

受付「申し訳ございません…本日の面会時間は終了いたしました。明日の面会時間は午前……」

さやか「で…ですよね…すいませんでした」
__


さやか「…ぐすっ…っ…ひっく…っ」ポロポロ



さやか「……」

プルルル
プル
ガチャ
まどか「もしもし、さやかちゃん?」

さやか「…うん、ま、まどか…実は…っ」

翌日
 ~見滝原市内病院上条恭介病室~


恭介「……」


ガララ…

恭介「あれ?志筑さん?」

仁美「お久しぶりですわ、上条君」

恭介「久しぶりだね」

恭介「でも、いくら土曜日だからって、こんな朝早くから僕のお見舞いに?」

仁美「ちょうど近くに用事がありましたので…」

恭介「そうなんだ、ありがとう」

仁美「…お礼されるほどのことはありませんわ」

恭介「でも、ありがたいよ、最近はお見舞いに来てくれる人も少なくてね」

仁美「そうなんですの?…でも…さやかさんはよく……」

恭介「ああ、さやかはよく来てくれるよ、いつもCD買ってきてくれて、すごくありがたいんだ」

仁美「そ、そうですの…昨日も行くって言われてましたわ…」

恭介「え…?昨日?昨日は誰も来てないけどなぁ…」

仁美「え!そうなんですの!?」

恭介「うん、昨日は誰も来てないよ」

仁美「……ちょ、ちょっと用事を思い出しましたわ、済ませてきます、また戻って来ますわ」

恭介「え、うん」



仁美「……」

仁美(どういうことですの、さやかさんは昨日上条君に気持ちをお伝えしたものと思っていましたわ…昨日ここに来られてないのなら、さやかさんは…)

仁美「少し外の風に当たって考えますわ…」

~同病院屋上~


仁美「……」

仁美(わけがわかりませんわ……さやかさんは諦められたのでしょうか…)

仁美(それなら私が契約して、上条君と恋仲になっても……どうせ命をかけるんですわ…それだけのことをするなら…っ)


スウッ…
QB「どうやら決まったようだね」

仁美「本当に、どんな願いでも叶いますのね?」

QB「大丈夫、君の祈りは間違いなく遂げられる」

QB「じゃあ、いいんだね?」

仁美「…いいですわ」

QB「君の願いはなんだい?言ってごらん」

仁美「私と…私と上条恭介君を恋仲にしてもらえます」

QB「その願いは君にとって命を掛けるに足るものかい?」

仁美「…も、もちろんですわ」

QB「契約は成立だ、君の祈りは、エントロピーを凌駕した」

仁美「ううっ…」

QB「さあ、受け取るといい、それが君の運命だ」
シュイーン…


~見滝原市内病院上条恭介病室~


恭介「……」

ガララ…

仁美「お待たせして申し訳ありませんわ、本当は私、今日は上条君に用事があって来たんですの…」

恭介「僕に用事?」

仁美「ええ…私…ずっと前から上条君のこと…お慕いしてましたの」

恭介「ええ!?それって…」

仁美「上条君、私とお付き合いしてもらえませんか…」

恭介「……」

恭介「…嬉しいよ…でも、僕の腕はもう動かないし、こんな僕と付き合っても志筑さんを落胆させるだけだよ…」

仁美「私はそんなこと関係ないですわ!私は上条君にずっとついていきますわ…そう決めたんですの」


恭介「え…!…本…当?」

仁美「本当ですわ」

恭介「……」

恭介「こ、こんな僕で良ければ…」

仁美「私とお付き合いしてくれますの!?」

恭介「うん…」


その日の夜
 ~仁美の家~


仁美「上条君と恋仲になれましたわ!」

QB「言ったろ?君の祈りは間違えなく遂げられるって」

仁美「それと、この宝石のようなものはなんですの?」

QB「これはソウルジェムだよ、魔法少女の魔力の源であり、魔法少女の証でもあるんだ」

仁美「あ、私、魔法少女になったんでしたわね、すっかり忘れてましたわ」

QB「忘れちゃ困るよ、君はこれから命をかけて魔女と戦わなければならないんだから」

仁美「わ、わかってますわ!」

QB「せっかくだし、このまま魔女退治に出かけよう」

仁美「い、今からですの?」

QB「そうだよ、君はまだ魔女との戦い方も魔法の使い方も何も知らないだろ?僕が教えてあげるから今から魔女退治に行くよ」

仁美「わ、わかりましたわ…」


QB「まずは君が戦う上で必要な武器があると助かるね」

仁美「武器…そんなものありませんわ…」

QB「魔法の使い方次第ではなんでも武器になるよ、出来れば最初から武器のものを使った方がいいけど」

仁美「あ、そういえば…」

___


仁美「こんなものでもいいんですの?」


QB「これは……こんなものがあるなら先に教えてくれれば良かったのに」

仁美「これは私のひいお爺様が戦争中に使われていた銃ですわ、こんな古いものでもいいんですの?」

QB「十分だよ、十分すぎるくらいさ、これを使っていいのかい?」

仁美「それはわからないですけど、とりあえず今日だけ使わせていただきますわ」
ガシッ


執事「ひ、仁美お嬢様!な、何をされているのですか?」

執事「おやめください、これは大変危険なものですよ」

仁美「見つかってしまいましたわ…」

執事「夜も遅いですし、お部屋にお戻りください」

仁美「……」


 ~仁美の部屋~


仁美「どうしましょう…」

QB「今日は仕方ないね、でもあんな武器があるなら使わない手はないよ」

QB「とりあえず、今日は休もう」

仁美「そうですわね」

同時刻
 ~さやかの家~



さやか「……恭介…」

翌日
 ~仁美の家~


QB「おはよう、仁美」

仁美「おはようございます」

QB「魔女を倒しに行こうよ、仁美」

仁美「こんな朝早くからですの?それに今日は日曜日ですわ…」

QB「」

仁美「…わ、わかりましたわ」

QB「あの銃をうまく使えるようになれば君は最強の魔法少女さ」

仁美「でもその銃をどうやって持ちだすんですの?」

QB「君の魔法を使って、偽物を作るのさ」

QB「そうだなー、あ、これでいいよ」

仁美「それはただのシャープペンシルですわ、どうするんですの?」

QB「君の魔力を使って、僕が偽物を作るから仁美は本物とすり替えて」

仁美「わかりましたわ」

~~~~

QB「ようやく使えるね」

仁美「重いかと思ったら意外と軽いですわ」

QB「それは君の魔力を使っているからさ」

QB「それに君の魔力でこの武器は普通の人には見えないようにもなってるんだよ」

仁美「そうなんですの」

QB「じゃあ魔女倒しに出発だ」

QB「ソウルジェムを見て、ゆっくり点滅しているだろ、これは魔女の居場所を教えてくれるアイテムでもあるんだ」

仁美「近くに魔女がいるんですの?」

QB「みたいだね」

QB「こっちだ」

~見滝原市内魔女結界付近~


仁美「な、なんですの、これは!」

QB「これが結界の入り口さ」

QB「魔女はこの中の最深部にいる、それを今から倒しにいくのさ」

仁美「む、無理ですわ!そんなの!」

QB「君はもう魔法少女だろう、これは背負わなければならない運命なんだよ」

仁美「……っ」

QB「君の祈りは確かに叶っただろ?それだけの覚悟で君は契約したんだ」

QB「大丈夫、うまく魔法をつかいこなせれば君は誰にも負けない魔法少女になれる」

仁美「本当ですのね…」

QB「もちろんさ、さぁ、だから変身してごらん」

仁美「ど、どうやって変身するんですの…?」

QB「君がそう思えばいいんだよ」

仁美「……」
シュイン!

QB「出来たじゃないか」

仁美「こ…これが…魔法少女なんですのね」

QB「そうさ、じゃあ結界の中に行くよ」

仁美「……」
バッ

~魔女結界内部~


仁美「こ、ここは一体なんですの~!!」

QB「ここは魔女の結界の中さ」

QB「怖いかい?」

仁美「あ、当たり前ですわ!」

QB「でも君はこの結界に入ってしまった以上魔女を倒さない限り二度と元の世界には戻れないよ」

仁美「ええっ、そうなんですの!?」

QB「命がけだって僕は言ったはずだよ」

仁美「た、戦いますわ…私だって、やっと上条君とお付き合いできましたのに死んでは意味がないですわ!」


~~~~

QB「魔女には気をつけて」

魔女「キャハハハハハハ」

仁美「きゃっ!」

QB「大丈夫だ、仁美、魔法をうまく使うんだ」

仁美「私だって……!」

魔女「?」

仁美「負けるわけには行きませんわ!」
ガチャ…ズギューン!
ガチャ…ズギューン!


魔女「ギャアアアア…」


ブオォォン…

仁美「元の景色に戻りましたわ」

QB「君が魔女を倒したからさ」

QB「それを拾って」

仁美「これは、なんですの?」

QB「これはグリーフシードと言って、たまに魔女を倒すと落とすんだ」

仁美「グリーフシード…」

QB「君のソウルジェムを見せてくれるかい?」

仁美「え?これがどうか…あっ」

QB「さっきよりも黒く濁ってるだろ?」

QB「これにグリーフシールドを近づけると…」
シュルル


仁美「あ、色が戻りましたわ」

QB「これで今まで消費した君の魔力も元通りってわけさ」

仁美「つまり魔法を使うためには魔女を倒して、これをいつも綺麗にしとかなくてはいけないんですのね」

QB「うん、さらに言えばこれがたくさんあれば、魔法を出し惜しみすることなく使えるってことさ」

仁美「…もう魔女はもうこの近くにはいないんですのね?」

QB「そうだね、近くにはもういないみたい、帰るかい?」

仁美「ええ、そうですわね」

QB「少しは魔法の使い方も戦い方もわかったみたいだね」

仁美「なんとなく…ですわ」

QB「君は才能がある、すぐに強くなるよ」

その日の夜
 ~仁美の家~


仁美「……はあ」

仁美(やはり、さやかさんには上条君とお付き合いしたこと、ちゃんと言わなくてはなりませんよね…)

QB「何を考えこんでるんだい?」

仁美「…なんでもありませんわ」

翌日
 ~教室~


ガヤガヤ…

仁美「…さやかさん、少しよろしいかしら…?」

さやか「えっ、ひ、仁美…う、うん、いいよ」


______

 ~屋上~


仁美「さやかさん、率直に言いますわ…」

仁美「ごめんなさい……私、上条君と……」


さやか「な、何を謝ってるのさ~、良かったじゃん…おめでとう」

仁美「さ、さやかさん…っ」

さやか「いやあ、恭介も仁美と付き合えて幸せものだよねえ~」

さやか「ま、まあこれであたしももうお見舞い行かなくて済むし~、ちょうど良かったよ~、あはは」

仁美「さやかさん、私……っ!」

さやか「いいんだよ…あたしは…恭介に何もしてあげれなかったんだし…だから、だから仁美は…恭介のそばにいてあげて…」

仁美「……っ…さやかさんっ!」

さやか「泣かないで、仁美、あたしのことは気にしないでいいんだよ…あたしは後悔なんてしてないんだからさ…」

仁美「ごめんなさい…っ…さやかさん…ごめんなさいっ…っ!」


放課後
 ~見滝原市内~


まどか「さやかちゃん…本当に上条君のこと…」

さやか「…ホント言うとね、あたしも恭介の事好きだったよ、はっきり気持ちの整理はつかなかったけど…でもあたしは後悔してない」

さやか「あの時のグリーフシードを見て見ぬふりしなかったことを…多分、あの時気付かないふりしてた方がきっと今、後悔してる」

まどか「さやかちゃん…」

さやか「それにあたしだって、今までチャンスが無かったわけじゃないしね…やっぱり恭介には仁美がお似合いだよ、幸せになって…くれるよね」

まどか「…うん」

さやか「さぁ、気分切り替えて今日も魔女退治に出発だあ!気合入れて行こう!」


まどか「うん、この辺りが集合場所のはずだよ」

杏子「おーい!お前ら~!こっちこっち!」

まどか「あ、杏子ちゃん、マミさんにほむらちゃんも!」

さやか「遅れてごめんっ」

杏子「気にすんなって」

ほむら「……」

マミ「じゃあ今日も魔女退治に出発しましょ」


同時刻
 ~同市内~


QB「今日は魔女退治に行かないのかい?」

仁美「今日は日本舞踊のお稽古ですわ」

QB「魔女退治は毎日行った方が君のためにもなると思うけど」

仁美「…でもお稽古事をサボるわけにはいきませんわ」

QB「ソウルジェムを見て、ちょうどすぐ近くに魔女がいるみたいだよ」

仁美「……仕方ないですわね…すぐに終わればいいんですけど…」


~見滝原市内結界内部~


使い魔「キャハハハハハ」

ガチャ…ズギューン!
ガチャ…ズギューン!

仁美「……」

QB「だいぶ慣れてきたみたいだね、仁美」


~同結界入口~


マミ「ここね…」

杏子「!」

ほむら「!」

杏子「…ま、まさか、け、結界が歪んでやがる…!」

マミ「本当だわ、まさか…!」

ほむら「これは…」

マミ「みんな急いでいくわよ!」
バッ!

さやか「え?何?」

まどか「何かあったのかな」

マミ「暁美さんは美樹さんと鹿目さんについててあげて!私たちは先に行ってるから」

ほむら「」コク…


~同結界内部~


杏子「ちっ!」

杏子(どういうことだ、結界が歪んでるってことは奥で既に誰かが戦ってるってことだ…だが、アタシたちは全員外にいた…ってことは…!!)

マミ「佐倉さん、奥にどんな魔法少女がいても敵意を剥き出しにしてはダメよ…」

杏子「っ」

ダダダダッ


______

仁美「これで終わりですわ!」
ガチャ!ズギューン!
ザシュッ!!

使い魔「ギィイイイイ……」


仁美「はあ…終わりましたわ」
スタッ…


ブオォォン…

杏子「!!」

マミ「!!」


仁美「えっ、ど、どなたですの…!?」


杏子「…て、てめーは…どこの魔法少女だ!」

仁美「えっ、わ、私は…この街の」

マミ「ちょ、ちょっと佐倉さん」

杏子「この街のだと……まさかQBと契約したのか」

仁美「そ、そうですわ!あ、あなたちこそなんですのっ」

マミ「私たちはこの街で魔法少女をしているの、あなたの敵じゃないわ、あなたも見た所、見滝原中の制服をしているけれど…」


さやか「おーい、マミさ~ん、杏子せんぱ~い~!」


仁美「!!」

仁美「こ、この声は…」

マミ「あ、美樹さんに鹿目さん、暁美さんも」
ダダダダッ

さやか「ふー、やっと追いついたよ、急に飛び出していっちゃうんだからあ」

さやか「って、ひ、仁美!?ど、どうして仁美がここに!?」

まどか「えっ??仁美ちゃん?」

仁美「さ、さやかさんにまどかさん…」

杏子「こいつが使い魔を倒しやがったんだ」

ほむら「!」

さやか「ええ!…ひ、仁美が…なんで魔法少女に…」

杏子「どういうことだ、おい、知り合いか?さやか」

仁美「ごめんなさい、さやかさん…」

ダダダダダッ!

さやか「…仁美…」

杏子「おい!待てよ!」
ダダッ…

マミ「待って、佐倉さん!」

杏子「っ」
ピタッ…

マミ「どういうことなの?美樹さん、鹿目さん、さっきの子とは知り合いなの?」

まどか「……」

さやか「……」

ほむら「この2人は言いにくいでしょうから、私から言うわ…さっきの子は私たちのクラスメイトよ」


杏子「なんだと…!!」

マミ「本当なの?2人とも」

まどか「う、うん…」

さやか「でも…どうして、仁美が……」

さやか(ま、まさか…)

ほむら「それと、本当に彼女は魔法少女で、使い魔を倒したの?」

杏子「ああ、間違いない…はっきり見たし、アイツは自分でQBと契約したと言いやがった…」

ほむら「!」

マミ「どういうことなの…新しい魔法少女なのかしら…」


………

さやか「……」

さやか「あ、あの!あ、あたしみんなにちょっと話しておきたいことがあるんだ!」

まどか「さやかちゃん…」

マミ「…?」

杏子「さやか…」

ほむら「……」

その後
 ~マミの家~


ズズ…
カチャ…

マミ「…それで話しておきたいことって」

さやか「うん、さっきの仁美って子のことなんだけど…」

さやか「仁美はあたしたちの小学生の頃からの親友なんだ」

さやか「でね、この間、仁美からちょっと話があるって呼ばれたんだけど、そしたら恋の相談で、あたしの幼馴染で『恭介』っているんだけど、その恭介のこと仁美が好きらしくて」

さやか「でも、仁美は恭介とあたしが幼馴染だからって、その事気にしちゃったみたいで、あたしに一日だけ時間くれたんだ」

さやか「あたしも色々考えたんだけど、やっぱり後悔したくなかったから、恭介に告白しようと思ったんだけど…恭介のいる病院についたら、グリーフシード見つけて…」

マミ「だからあの時…」

杏子「……なるほどな」

さやか「あたし、そんな日に限って携帯家に忘れてきちゃって、でも見逃しちゃえば、恭介が巻き込まれてたかもしれないし…だから後悔はしてないんだ」

さやか「それで、今日、仁美が恭介と付き合ったって教えてくれてね…でも仁美が魔法少女になってて、もしかしたらって思って…こんなこと考えたくないんだけど…」

さやか「ひ、仁美が魔法少女になっちゃったってことは、もしかしたら恭介と付き合うことを願って契約したんじゃないかな…って」

マミ「ま、まさか…」

杏子「!!」

ほむら「……」


さやか「だ、だからね、理由はまだはっきりわからないよ、こんなことあったけど仁美はホントいい子だし、あたしたちの友達だし、だから…その…助けてあげてほしいんだ」

さやか「もちろん、マミさんたちにも無理承知だってわかってる、それにもしもホントに仁美が恭介と付き合うこと理由に魔法少女になってるなら…杏子先輩は多分、嫌いなタイプだろうし」

さやか「それでも、もし危ないときは助けてあげてほしいんだ、できれば仲良くしてあげてほしいんだ…」

マミ「美樹さん…」

まどか「さやかちゃん…」

杏子「ふーん…つまり、そいつはさやかの親友でありながら、さやかの惚れた男を奪ったわけか」

さやか「ち、違うよ!杏子先輩、そういうわけじゃ…」

杏子「…どこが違うんだよ!」

マミ「佐倉さん、落ち着いて…」


さやか「まだ決まったわけじゃないから、こんな話をするあたしも最悪なんだけど…でも、もしそれが事実でもあたしはマミさんたちに頼んでるよ…」

さやか「だって、あたしはさ、少なくとも仁美よりも先に契約できる立場だったんだよ、あたしが決心できてれば恭介と付き合うことだって出来たし、恭介の腕を治してあげることだってできた…」

さやか「…でも、あたしにはそれだけの覚悟がなかったんだよ、だけど、仁美は違った…仁美は自分の命をかけてまで恭介と付き合うことを願ったってことでしょ」

さやか「それって、やっぱり…あたしよりも恭介のそばにいる人として相応しいってことじゃないかな…」

さやか「だからね、あたしは仁美に何かあって、悲しむ恭介の顔も見たくないんだ、あの2人には幸せになってもらいたいんだ…」

まどか「……」

マミ「……」

杏子「……」

ほむら「……」


さやか「仁美に何かあったら助けてあげて、仲良くしてあげてください…お願いします」
ペコ

杏子「……さやか、お前はどこまで…他人のために…」

マミ「と、とりあえず私情は抜きにしても、新しい魔法少女がいるってことは、私としても仲良くした方がいいと思うの…」

杏子「っ…」

ほむら「……」

マミ「美樹さん、あなたのことも考えて明日、私が志筑さんと直接話してみるわ…」

さやか「あ、ありがとうございます、マミさん」


その後
 ~ほむらの家~


杏子「どういうことだよ!わけわかんねーぞ!」
ダン!

ほむら「私に言われても困るわ…」

ほむら「…まさかこんなことになるとは、私も初めてだわ…私たち5人以外の人間が契約するなんて」

杏子「…っ!」

ほむら「でも、これで美樹さやかが契約することは完全になくなったんじゃないかしら」

杏子「…確かにそうかもしれねぇ、でもアタシにゃ、その仁美って奴がどうしても許せねぇ…」

ほむら「美樹さやかを契約させない目的は達成されたはずよ、何がそんなに不満なの?」

杏子「まだ、はっきりわかんねーけど、その仁美って奴が、さやかの惚れた男を奪うことで契約したかどうかだ…」

ほむら「別にいいじゃない、美樹さやかだって後悔してるわけではないようだし」

杏子「…アイツはいつも他人のことばかり考えすぎなんだよ…」


ほむら「あなたがどう思ってるかは知らないけど、志筑仁美にも迂闊に手は出さないで」

杏子「なんでだよ!」

ほむら「これからはその子次第で歴史が変わってくるわ」

杏子「今更、何がどう変わるってのさ、このままワルプルギスだろ?」

ほむら「…そう甘くない、私だって何度戻ったと思ってるの、間違いなく何かが起こる、それもほんの些細なことがきっかけで…」

ほむら「こんなことになったのが初めてだからこそ、何が起こるかわからないの…軽率な行動は謹しんでもらいたいわ」

杏子「っ…じゃあ、どうすりゃいいんだよ!」

ほむら「現状では、わからないことが多すぎる、その子が何を願って契約したのかも、その子に才能があったのかも」

ほむら「そして…私たちと結託する気があるのかどうかも…ね」

ほむら「今は少しでも情報がほしいところね…つまり待つしかないわ、明日、巴マミがその子と接触するようだし」

杏子「…っ」


翌日
 ~学校 屋上~


マミ「いきなり呼び出したりしてごめんね…」

仁美「い、いえ、大丈夫ですわ」

マミ「私は三年生の巴マミ、早速で悪いんだけど…志筑さん、あなた本当に魔法少女なの?」

仁美「…そ、そうですわ」

マミ「そう…なら私たちの仲間ね、私もこの街で魔法少女しているわ」

仁美「そうだったんですの…だからあの時…えっ…と、ということはさやかさんもまどかさんも契約しているんですの!?」

マミ「彼女たちはまだよ、あくまでまだ候補ってところね、ただ暁美さんは私たちと一緒に戦っているわ、それと赤い髪をした子もね」

仁美「そうなんですの……」

マミ「そこでね、ものは相談なんだけど、あなたも私たちと一緒にこの街で魔女と戦わない?」

マミ「一人で戦うよりリスクは少ないし、グリーフシードも確実に確保できるわ、あなたのためにも絶対いいと思うの」

仁美「……」

マミ「そうよね…すぐには決まらないものよね…」

仁美「わ…私は…」


仁美「…私は、自分で契約することを決めました…それは、やはり自分で背負っていかなくてはならないものだと思いますわ…」

マミ「……」

仁美「先輩方は悪い人ではありませんわ、それはわかっております。ですが、私は自分で決めたことなので魔女とも自分で戦いますわ…」

仁美「私はそれだけの覚悟を決めて自分の叶えたいことを叶えました、だからその代償も私一人で払いたいんですの…いえ、私一人で払うべきだと思うんですの」

マミ「そ、そう…」

仁美「…せっかくのお誘いなのに申し訳ありませんわ…」

マミ「い、いえ、いいのよ…でも何かあったら私たちを頼っていいのよ、すぐにでも助けてあげるし、私たちはいつでも待ってるから」

仁美「ありがとうございます、何かあればお願いするかもしれませんわ…では、私はこれで…」

マミ「……」


まどか「どうだった?マミさん」

マミ「今のところはなんともね…やっぱり自分のことだから自分でなんとかしたいって…でもだからって私たちと対立するって感じでもないわ…」

さやか「……」

マミ「美樹さん、聞いてきたけど、やっぱり自分の願いを叶えた代償は自分で払うから、一緒には…って感じだったわ」

マミ「志筑さんの願ったことまでは聞いてないけど…私たちにも頼っていいのよ、っては言ってきたから…」

マミ「それにしても…あの子、とてもしっかりしてる子ね」

さやか「…そっか…やっぱり仁美は…そうだよね…」

まどか「さやかちゃん…」

さやか「わざわざ手間かけさせちゃってすいません、マミさん…」

マミ「ううん、私は全然いいのよ…」

さやか「でも、もし仁美が危なくなったら助けてあげてください」

マミ「それはもちろんよ、ねえ、暁美さん」

ほむら「……」コク

さやか「ほむらもありがと、杏子先輩は大丈夫かな…」

マミ「大丈夫、佐倉さんにもちゃんと私から言い聞かせとくから」


その日の夜
 ~ほむらの家~

杏子「で、どうだったんだ?聞いてきたんだろ」

ほむら「…やはり志筑仁美は私たちと一緒に戦う気はないようね」

杏子「何?…結託する気は無いってか」

ほむら「でもその理由は自分の願いを叶えた代償は自分で払うべきだからっていう理由よ」

杏子「はあ、なんだよ、その説明書通りみてーな答えは…アイツはさやかの気遣いを無視するつもりか…」

ほむら「これがその子の出した答えなんだから仕方ないわ…」

杏子「で、このままワルプルギスの夜が来たとして、そいつはどうすんだよ、超ド級の大物魔女が来るから一緒に戦ってほしいって頼むんか」

ほむら「そんなことしなくても、私と巴マミ、そしてあなたが全力を尽くせばワルプルギスの夜は倒せるはずよ」

杏子「ふーん、てことはそいつは用無しか、んじゃ後は勝手にやっていいんだな」

ほむら「…あなた、何をするつもりなの」


杏子「おっと、大事なこと聞き忘れたぜ、そいつの契約の理由は結局何だったんだ?」

ほむら「そこまでは聞いていないわ…」

杏子「…そうかよ、ならアタシは用事ができた、ちょっと行ってくる」

ほむら「あなた、まさか…」

ほむら「待って、馬鹿なことはやめて、そんなことをして美樹さやかが喜ぶの?」

杏子「…なーに、ちょっと話をしてくるだけだ、手出しゃしねーよ、アタシだってさやかの親友襲うほど馬鹿じゃないさ」

ほむら「……」


~見滝原市内~


仁美「はあ…お稽古事ですっかり遅くなってしまいましたわ…」
スタスタ

杏子(いやがったか…)

杏子「よう、ちょっと話がある、顔貸してくれる?」

仁美「あ、あなたは……」


杏子「…率直に聞くぞ」

杏子「なんでアタシたちと戦うのを断ったんだ?」

仁美「そ、それは…」

仁美「…私が叶えた願いごとですわ、だから、その代償も私一人が負うものですわ」

杏子「アンタの契約の願いってのは…あんまり大きな声で言えるもんじゃねーんだな…?」

仁美「!!」

仁美「そ…それは…っ」

杏子「ふん、まあアタシにとっちゃ別にどうでもいいけどさ…」

仁美「……」

杏子「アンタに頼みたいことがある」

仁美「えっ…」


杏子「頼む、この街で魔法少女をやるのをやめてくれないか?」

仁美「ええっ…どういうことですの?」

杏子「アタシはアンタがどうしても許せない…でもアンタが悪い奴じゃないってこともわかってる、だから魔女退治は他所でやってくれないか」

杏子「さやかだってアンタにいつまでも気つかっちまうし、アタシだって魔女倒してるときにアンタと鉢合わせすりゃ、手出さない保障はねぇ…」

杏子「だから頼む…魔女退治の時だけ他所でやってくれないか、隣り街の風見野なら今は誰も…」

仁美「そ、そんなこと私の勝手ですわ…それにさやかさんとは…」

杏子「さやかはなぁ、てめーの為にどんなことしてきたか……」

仁美「あ、あなたには関係ないですわ!それにさやかさんとはもう和解しましたの」

杏子「…関係ない…だと…」

仁美「そ、それより、あなたはさやかさんの何ですの?私よりもさやかさんと仲がよろしくて?」

杏子「…んだと…てめぇ…!」


仁美「私は私の信念がありますわ…だから私は…」

杏子「もうわかった…それがアンタの答えだな…」

仁美「…そうですわ」

杏子「なら…!」シュイン!

仁美「な、何をするつもりですの!?」

杏子「言って聞かせてもわからねーなら、後はわかるだろ!」

仁美「…戦うんですのね…わかりました、私も売られた以上は逃げる気はありませんわ!」シュイン!


杏子「新人のクセに口だけは達者だな!」
バッ!!

仁美「巴先輩はいい人だったのに、あなたとは仲良くできそうにありませんわね!」
ガチャ!
ズギューン!

杏子「そんなバカ長いライフル当たるわきゃねーだろ!」
ヒュッ!

杏子「遅せーよ!!」
ガキンッ!

仁美「きゃっ…!」
ドタッ…

杏子「ふん、トーシローが、調子乗るからだろ」

仁美「っ…」

仁美(私は普通の魔法少女よりも素質があるんじゃないんですの…これじゃ戦うことすら出来ませんわ…QBの言ってたことは嘘だったんですの…)


フッ…
QB(嘘なんかじゃないよ、仁美、君はまだ願いによって発現する本来の力を使ってないじゃないか)

QB(その力さえうまく使えれば君は杏子なんかに負けない魔法少女になれる)

仁美「…私の本来の力…?」

QB(教えてあげよう、君の本来の力はね……)



仁美「くっ…ま、まだですわ…」

杏子「おっかしいなぁ、全治1ヶ月ってぐらいにはかましてやったはずなんだけど」

仁美「…このくらいの傷なんてことないですわ」シュイン!

杏子「!」

杏子(回復魔法!こいつなりたてのクセにもうそんな魔法使えるのか…!)


仁美「それにしても…あなたのその武器…便利ですのね」

杏子「ああ?こいつかい、こいつは…」

杏子「な、何!?」

仁美「ふふ…」
チャキ…

杏子「てめー!いつの間に!」

杏子「はっ!どんな手品使ったか知らないけどさ、たかが槍の一本くらいすぐにっ…!」

シュインッ…
パアァッン!

杏子「な、何!?」


杏子「クソッ!!」

シュインッ…
パアァッン!

杏子「ど、どうなってやがんだ…」

杏子「槍が出せねえ…!」

QB「無理だよ、杏子、だって君の武器は今、仁美が使っているんだから」

杏子「どういう意味だ…!?」

QB「教えてあげよう、彼女の魔法の属性は『奪略』だよ」


杏子「奪略…だと…!?」

仁美「あなたの武器は私がいただきましたわ、これであなたは戦えませんわね、おとなしくしてくださる?」

杏子「はっ!笑わせんな!アタシから武器を取り上げたくらいで、勝った気なのかい?なめられたもんだね」

仁美「!」

仁美「まだ何か…ありますの…!?」

杏子「てめえに属性があるんなら、アタシもあるに決まってんだろ!」
グッ…
シュイン!シュイン!シュイン!シュイン!

仁美「こ、これは…!」

杏子「さーて、どれが本物のアタシかな」


仁美「…ぜ、全部まとめて片付けますわ!」
サシュッ!
ザシュッ!

杏子「残念!そっちはハズレだよ!」
ドフッ!

仁美「きゃっ」
ドタッ…
ガラン…ガラン!

杏子「ふんっ、どんな能力かと思えば、ただの泥棒かよっ」

仁美「……」

杏子「返してもらうぜ、こいつは…」
…ガシャ

仁美「……いいですわ、それはお返ししますわ、代わりに…」

杏子「?」


仁美「あなたのその能力いただきますわ!」

杏子「な、何!?」
フワッ フワッ フワッ フワッ…

杏子「しまった!…分身が…!!」

シュイン!シュイン!シュイン!シュイン!
仁美「…さて、本物の私はどれでしょうか?」

杏子「…くっ!!」

杏子(こ、こいつ…武器だけじゃなく、能力まで奪えるのか!?)


杏子「じ、実力の差がわからねぇ奴だな、新人、てめーが何人いようが、アタシにゃ勝てないんだよ!!」
ザシュッ!!

仁美「それはニセモノですわ」
ガチャ!
ズギューン!

杏子「一人ずつ潰していきゃ…!!」
ザシュッ!ザシュッ!

仁美「では…これならどうですの?」
ザッ ザッ ザッ ザッ…

杏子「し、しまった…!!」


仁美「これであなたは逃げられませんわ…もう一度お聞きします、おとなしくしてくださる?」

杏子「っ…!」

杏子「ふざけんなよ…」

仁美「そうですの、では…」
ガチャ
ガチャ
ガチャ
ガチャ
ガチャ…

仁美「これで終わりですわ!」

杏子「…くっ!」



………

キン!
ドゴーン!


杏子「な、何っ!?」

仁美「な、なんですの!?」

……

ほむら「…馬鹿なことはしないでと言ったはずよ、杏子、あなた…何をしているかわかってるの?」

杏子「…助けに来たのかよ」

ほむら「勘違いしないで、前にも言ったわ、私は冷静な人の味方で、無駄な争いをする馬鹿の敵」

杏子「…ちっ」

仁美「あ、あなたは、暁美さん…?あなた、その子の味方なんですの?」

ほむら「違うわ、私は無駄な争いを止めに来ただけ、あなたに敵意はないわ」

仁美「…でも私にはその子を助けたようにしか見えませんわ」

ほむら「…あなたがどう思おうと勝手だけど、魔力の無駄な消費はお互いにいいことじゃないわ、あなたもわかっているでしょう」

仁美「…っ」


仁美「…し、仕掛けてきたのはその子ですわ!」

ほむら「ごめんなさい、その事はこの子に代わって謝るわ、だから今日のところは手を引いてくれないかしら」

仁美「……」

仁美「…わ、わかりましたわ」

ほむら「…あなたが冷静な人でよかった」

仁美「……」
スタスタ


ほむら「なんてことをしてくれたの?」

杏子「はっ、別に大したことねえだろ、このくらい」

ほむら「約束したはずよ、手は出さないって」

杏子「アイツが、アタシにてめーはさやかの何なんだって言ってきたんだ、そりゃブチ切れるってもんさ」

ほむら「理由はどうでもいいわ、今後一切こんなことはしないで」

杏子「…ちっ」

ほむら「約束できないの?」

杏子「わかったよ!手出さなきゃいんだろっ」


スタスタ
仁美「…それにしてもあの子、一体なんなんですの」

QB「杏子も悪気があったわけじゃないさ」

仁美「……」

仁美「そういえば、私の能力って『奪略』ですのね」

QB「そうだよ、君の能力は相手から武器を奪ったり、能力を奪ったりできるんだ」

QB「武器か能力、どちらかしか奪うことはできないけど、奪われた相手は奪われてる間、それを一切使えなくなる」

QB「これをうまく使えれば君は他のどんな魔法少女にも負けない」

QB「ベテランの杏子をあれだけ追い詰めるとはやっぱり僕の見たては正しかったみたいだね」

仁美「……」


翌日 放課後
 ~見滝原市内病院上条恭介病室~


恭介「やあ」

仁美「遅れて申し訳ありませんわ…」

恭介「いいんだよ、そんなの、来てくれただけでありがたいよ、仁美」

仁美「な、名前で呼ばれると変な感じがしますわ」

恭介「そう?いい名前だと思うよ」

仁美「私はあんまり好きじゃありませんわ、普通過ぎて…」

恭介「いい名前だよ、僕はすごく好きな名前だなぁ」

仁美「か、上條君にそう言ってもらえると大変嬉しいですわ」

恭介「僕のことも名前で呼んでいいんだよ」

仁美「え、えっ…そ、それは…」

仁美「きょ、きょ…恭介…でいいんですの?」

恭介「うん、なんか仁美って意外と恥ずかしがりなんだね」


仁美「そ、そんなことありませんわ!恭介だって恥ずかしがりなとこありますわ!」

恭介「普通に呼べたじゃないか、ありがと、仁美」

仁美「あっ…い、今のは勝手に…」

恭介「でも、ごめんね…せっかく来てくれたのに、こうして話くらいしかできないなんて…」

仁美「いいんですの、私は恭介と話せるだけで嬉しいですわ」

恭介「それなら良かったけど…」

仁美「……そう言えば、最近…」

恭介「…ん?」

仁美「さ、さやかさんはお見舞いに来られますか?」

恭介「さやか?ああ、そういえば最近は来てくれないなぁ…何してるんだろ…」

仁美「……」


同時刻
 ~マミの家~


マミ「……仁美さんのことなんだけど…私はもちろん全力でサポートしてあげたいわ」

ほむら「……」

杏子「アタシは反対だな」

まどか「杏子ちゃん…」

さやか「杏子先輩…やっぱりダメかな…」

マミ「確かに佐倉さんの言いたいこともわかるわ…」

マミ「特に美樹さんとのことを知っていれば尚更助けたいなんて気持ちにはならないでしょうけど…」

マミ「契約の理由はどうであれ仁美さんも私たちと同じ魔法少女に変わりはないわ…」

マミ「だから一緒に戦うことを断られても、助けてあげたいの」


杏子「じゃあマミ先輩たちで好きにすればいい…」

マミ「佐倉さん…」

さやか「お願いっ、杏子先輩!仁美のこともわかってあげて…」

杏子「さやか……てめーは…っ」

マミ「それに仁美さんは鹿目さんと美樹さんの親友なのよ?」

杏子「アイツはさやかの気遣いさえ無視したんだぞ!」

杏子「アタシにゃそれが許せない、もちろん助ける気なんかない」

杏子「まあ、アイツがアタシに土下座までして『助けてください』って言ったら考えるかもな」

マミ「いい加減にして、佐倉さん、あなただって美樹さんの気遣いを無視するつもり?」

杏子「さやか、お前は優しすぎるんだよ…」

杏子「まあアタシだってそんな鬼じゃないさ、アイツが危なくなりゃ、どう出るかわかんねえしな」

杏子「グリーフシードいただく代わりに助けてやるかもな」


マミ「私は佐倉さんを信じているわ、だってあなたは本当はいい子ですもん、私のことだって助けてくれたんだし」

さやか「うん!あたしも杏子先輩はなんだかんだでいい人だって信じてる」

杏子「お、おい、お前ら何言ってるんだよ、アタシは今んとこそんな気ねえって」

まどか「やっぱり杏子ちゃんはいい人だよー」

杏子「はあ、ふざけんな」

ほむら「……」

マミ「とにかく、私たちは仁美さんをサポートしていくから、安心して美樹さん、鹿目さん」

まどか「はい、ありがとうございます」

さやか「ありがとうございます、マミさん、杏子先輩、ほむら」

杏子「だから、アタシはまだわかんねえって言ってるだろっ」


その後
 ~ほむらの家~


杏子「ったく、アイツらアタシのこと勘違いしてやがんぜ、なあ?」

ほむら「いいえ、あなたは本当に美樹さやかのことも言えないくらいのお人よしよ」

杏子「何言ってんだよ!ついこの間までアタシはさやかと殺し合いしてたんだぞ!」

ほむら「歴史を変えるってそういうことよ…それより志筑仁美のことだけど…」

ほむら「本当に何があっても助けないつもり?」

杏子「…アタシは」

杏子「…そういう状況になってみねーことにはわからねーな…」

ほむら「そう…」

杏子「このまま何もなけりゃいいんだがな…」

ほむら「……そうね」

ここまでが『仁美編』となります

残りは
『さやか編』
『ワルプルギスの夜編』
と続きますが、少し休憩します。
すいません

再開がてらに挿絵程度に描いた本作のイラストを数枚うpします
下手ですいません

①扉絵をイメージしました
②マミ救出編のシーン
③さやかがまどかに相談するシーン
④仁美魔法少女姿

ID変わりましたが>>1です
再開します


_さやか編_

数日後
 ~見滝原市内~

スタスタ
杏子「ん…?ありゃあ…」

杏子「よう、久しぶりだな」

仁美「あ、あなたは!」

仁美「な、なんですの??また戦うんですの!?」

杏子「そう身構えんなよ、もうそんな気ねーよ」

仁美「…なら何の用ですの?」

杏子「ひょっと、みかけてな、ほえはけただけだろ…これ、食うかい?」モグモグ

仁美「い、いりませんわ」


杏子「なあ…やっぱりあの話、ダメか?」

仁美「この街から出でいけって話ですか、そんなの無理ですわ!」

杏子「何も出て行けって言ってるわけじゃないさ、ただ魔女退治を他所でやってくれって言ってるだけだ」

仁美「…そんなこと」

杏子「さやかだってアンタのこと心配してんだよ、でもだからって、そう気軽に話せる仲じゃないだろ?」

仁美「……」

杏子「いくら和解したっつってもお互い気使ってるのみえみえなんだよ」

仁美「あ、あなたには関係ないですわ…」


杏子「確かにそうかもしれねえし、お前らの間に立ち入る気はねえよ…」

杏子「ただ、さやかのことを本当に思ってるなら…アタシの言うとおり他所で魔女退治をしてくれ…」

仁美「何度も言ってますが、私は既にさやかさんとは和解していますわ!」

仁美「今日だって学校で一緒にお話しましたし、あなたには関係ありませんわ!」

杏子「…お前は本当のことを何も知らないからそんなことが言えるんだよ」

仁美「私はさやかさんのことも考えて…」

杏子「そうじゃねえ!!」

仁美「……」

杏子「さやかはな、ホントは自分に嘘つきたくないって…気持ち伝えようとしたんだよ…!」


仁美「!!」

仁美「っま、まさか…そ、そんなの…う、嘘ですわ!」

杏子「嘘なんかじゃねーよ!けど、さやかは病院でグリーフシード見つけちまって」

杏子「惚れた男助けるために自分の気持ち犠牲にして、アタシたちを呼びにいったのさ」

仁美「そ、そんな!…私は…さやかさんは…諦められたのかと…」

杏子「その上アイツは…契約してまで惚れた男奪ったてめーを嫌いにならず、むしろ助けてやってくれってアタシたちに頼んできたんだよ」

仁美「!!」

仁美「そ、そんな……」

杏子「…だがてめーはそのさやかの気持ちさえ裏切った」

杏子「いくらてめーが事情知らないからって言っても、アタシはそんなお前が許せなかったのさ…」

仁美「わ、私っ…私っ…っ…ごめんなさいっ…さやかさん、ごめんなさい…っ…」

杏子「もういくら泣いたっておせーよ、てめーは…」


翌日
 ~学校~


ガヤガヤ

まどか「仁美ちゃん、今日学校お休みかな?」

さやか「うん…そうなんじゃないか、珍しいね、仁美が休むなんて」





 ~仁美の家~


仁美「…うっ…ひっく…」

コンコン
執事「本日の学校はどうなさるのですか?お嬢様」

仁美「ひっ、一人にしてください!」

執事「も、申し訳ありません!学校には連絡しておきます、ゆっくりお休みください」


仁美「……」


仁美「私は…私は…っ…」

QB「どうしたんだい?仁美」

仁美「……やっぱり契約なんてするんじゃなかったですわ…」

QB「今更そんなこと言われてもなぁ」

仁美「私を元に戻してくださる?こんな力なんてもういりませんわ!」

QB「そんなの無理に決まってるじゃないか、それは時間を戻してくれと同じことを言っているよ」

QB「君はもう契約してしまったんだ、それを今更元には戻せないよ」

仁美「……っ」


QB「君がどんなに否定しようが魔法少女なのは絶対変わらないよ」

QB「君の願い事は間違いなく叶ったじゃないか、これはその代償だよ」

仁美「…契約なんてした私が馬鹿でしたわ…こんな力っ…こんな力っ…」

仁美「ごめんなさいっ…ごめんなさいっ…さやかさん……」

QB「それより君は杏子と戦って以来魔女を倒していないね、早くグリーフシードで穢れを浄化しないと…」

仁美「そんなこと、もう知りませんわ!私はもうこんな力いりませんの」

QB「大変なことになるのは君自身なんだけど…」

仁美「…ぐすっ…ひっく…っ…さやかさんっ!」


その日の放課後
 ~マミの家~


マミ「今日も無事魔女退治出来たしお茶にしましょう」

まどさや「はーい!」

杏子「……」パクパク

ほむら「……」モグモグ

まどか「あ、そういえば今日、仁美ちゃん学校休みだったんだ」

さやか「そうそう、仁美が休むなんて珍しいなあと思って」

杏子「っ!」

杏子「ごっほ、ごっほ!」

まどか「え?どうしたの、杏子ちゃん?」

杏子「い、いやなんでもねぇよ…」

ほむら「…」チラ


マミ「そうなの、大丈夫かしらね…志筑さん」

さやか「先生もただの風邪だって言ってたし、大丈夫でしょ」

マミ「そう…ならいいんだけど…」

マミ「少し心配ね…」

さやか「てか、QBに聞いたら?仁美がどうしてるか、わかるんじゃないの?」

マミ「それがQB、ここ最近家に帰ってこないのよ」

さやか「え、そうなんすか」

ほむら「……」
ほむら(あいつが姿を現さないときは必ず何かを企んでいる)

~~~

マミ「今日もありがと、みんな」

さやか「いえいえ、ご馳走さまでした!」

まどか「ご馳走さまでした!」

ほむら「…」

杏子「……」

マミ「また明日学校で」

さやか「ばいば~い」

__


杏子「……」

ほむら「…ちょっといいかしら、杏子」


その後
 ~ほむらの家~

杏子「…なんだよ」

ほむら「…あなた、志筑仁美に何をしたの?」

杏子「!」

杏子「…何もしてねーよ」

ほむら「嘘をつかないで…あなたは何か知っている」

杏子「……」

杏子「昨日、アイツに会ったんだよ、偶然な」

杏子「そして話をしたんだ、もちろん手はだしてねーぞ」

杏子「ただ、さやかのことを話したんだ」

ほむら「…美樹さやかの何を話したの?」


杏子「全部だよ…アイツの惚れてた男のことも、ホントは気持ち伝えたかったってことも」

ほむら「……」

杏子「アタシだって最初はアイツに頼んだんだ、さやかのこともあるから、それが落ち着くまで魔女退治は他所でやってくれないかって」

杏子「だけど、アイツはそれに耳を貸さねーで、その上さやかの気遣いさえ無視した」

杏子「だから本当のこと教えてやったのさ」

ほむら「……」

ほむら「あなたがどう思おうと勝手だけど、苛立ちを理由に馬鹿な真似はしないでちょうだい」

杏子「ああ、わかってるよ、もうアイツにゃ会う気はねーよ、顔もみたくねえ」

ほむら「私たちの目的を忘れないで、あなたは美樹さやかだけを見てればいい…」

杏子「わかってるよ、それは…」

ほむら「そう…ならいいのだけど」

ほむら「QBが姿を現さないのも気になるわ、些細なことでも気をつけたがいいかも知れない」

杏子「ああ…わかってる」


翌日
 ~学校~

ガヤガヤ


まどか「仁美ちゃん、今日も来てないね」

さやか「うん…なんかホントに大丈夫かなあ、仁美」

まどか「電話してみよっか」

さやか「うん」

プルルルル…
プルルルル…
プルルルル…
プルルルル…
プルルルル…
プルルルル…
プルルルル…

まどか「あ、あれ出ない…」


プルルルル…
プルルルル…
プルルルル…

さやか「まだ出ない?」

まどか「う、うん…」

プルルルル…
プルルルル…

まどか「う~ん…」

プツッ

まどか「出ないよ…仁美ちゃん」

さやか「大丈夫かなぁ…」

まどか「そうだ!放課後、仁美ちゃんの家まで行ってみよっ」

さやか「うん」


放課後
 ~仁美の家~

ピンポーン

まどか「仁美ちゃ~ん」

さやか「仁美~?大丈夫なの?」


~インターホン通信~

執事「仁美お嬢様のお友達の方ですか?」

さやか「あ、はい、そうですけど、仁美さんは…?」

執事「仁美お嬢様は体調を崩されており…面会はできないかと…」

さやか「そ、そうですか……お大事にって仁美に伝えといてくださいっ、じゃああたしたちはこれで…」

執事「せっかく来てくださったのに申し訳ありません、お嬢様にはお伝えしておきます」


~仁美の部屋~


執事「……本当に良かったのですか?お嬢様」

執事「お嬢様のこと、大変心配されて来られたようですが…」

仁美「ええ…もういいの…」




仁美「もういいんですの…なにもかも…」


翌日
 ~仁美の家~


仁美「……」
ガチャ…
キョロキョロ…
スタスタスタ…

~~~~~~~~~~


コンコン
執事「お嬢様、体調はもうよろしいですか?」

……

執事「お嬢様…??」

……

執事「…入りますよ?お嬢様」
ガチャ…

執事「お、お嬢様…?」

~見滝原市内病院上条恭介病室~


恭介「やあ」

恭介「こんな時間に来るなんて珍しいね、あれ、今日は学校休みなの?」

仁美「……」

恭介「どうかしたの?仁美?」

仁美「…い…今までありがとうございました…上条君…っ」

恭介「えっ」

仁美「そして、ごめんなさい…」
バッ!
ダダダダッ…


恭介「ま、待ってよ!仁美!どうしたの!?」

恭介「……仁美…」


同時刻
 ~学校~

さやか「仁美…今日も…」

まどか「昨日家に行ったんだから、大丈夫じゃないかな…」

さやか「…うん」


放課後
 ~マミの家~
 

マミ「…そう、仁美さん、まだ学校休んでるの…」 

まどか「昨日、家には行ったんですけど…門前払いっていうか…」

さやか「大丈夫ですよね?マミさん」

マミ「そう思うけど……昨日、仁美さんの家に行った時は会えなかったの?」

さやか「体調悪いから今は会えないって言われて…」

杏子「んなら大丈夫だろ、ただ休んでるだけだろうし」モグモグ

マミ「そうね…家の方がそう言ったのなら…それを信じるしかないわね…」

ほむら「……」

さやか「……」

まどか「大丈夫だよ、さやかちゃん」


マミ「じゃあ、もし明日も志筑さんが学校休んだら私たち全員でお見舞いに行きましょ」

さやか「本当!?でもいいの?みんな」

マミ「いいわよね?暁美さん、佐倉さん」

ほむら「……私は別に…」

杏子「アタシはいかねーぞ」

マミ「佐倉さんも来なさい」

杏子「誰が行くかよ」

マミ「いいから、絶対来なさい」

杏子「誰が行くかって…」

さやか「あはは…ごめんね、杏子先輩、でもあたしからもお願いします」

杏子「っ……さやかが言うなら…仕方ねーなあ…」

マミ「じゃあ決まりね」

翌日
 ~学校~


まどか「やっぱり今日も…」

さやか「うん…」


 
~放課後~


マミ「全員揃ったわね、じゃあ行きましょう」

杏子「でも、もしまた門前払いだったらどうするんだよ」

さやか「その時はその時だよ、それはそれで、ただ体調が悪いってだけで済むから」

マミ「美樹さん…」

まどか「……」

ほむら「……」


~仁美の家~

ピンポーン!


~インターホン通信~

執事「仁美お嬢様のお友達の方ですか?」

マミ「はい、あの、仁美さんは…」

執事「仁美お嬢様は……現在外出中でして…」

マミ「あ、そうなんですか…わかりました、では出直してきます」

執事「……」


マミ「外出中ですって…病院かしらね?」

さやか「……」

まどか「……」

杏子「んだよ、せっかく来てやったのに」

ほむら「……」

マミ「大丈夫よ、美樹さん、志筑さんは簡単に魔女なんかに負ける人ではないわ」

さやか「……」

杏子「いねーんなら、アタシは帰るぜ、どうせただの風邪とかだろーし」

マミ「あっ、待ちなさいっ、佐倉さ…」
ガチャ!!

執事「お、お待ちください!」

全員「!」

執事「中にお入りください…お話したいことがあります…」

 ~仁美の家 応接間~


執事「申し訳ありません、お帰りになられるところを…」

マミ「い、いえ、私たちこそ上がらせてもらって…」

執事「じ、実は…」

執事「…ひ、仁美お嬢様は、昨日の午前中より…ご帰宅なされていないのです…」

全員「!」

まどか「そ、そんな…!!」

さやか「う、嘘ですよね!?」

杏子「嘘…だろ…」

ほむら「!」


マミ「落ち着いて、みんな」

執事「私たちも本来は内密にすべきことなのですが、貴女たちが仁美お嬢様のことを大変心配されているようでしたので…」

執事「私の独断でお話いたしました」

執事「…それにあなたたちならお嬢様の居場所か、何か事情を知っておられるのかと…思ったのですが…」

マミ「……」

さやか「そんな…ひ、仁美…!」

まどか「仁美ちゃん…!」

マミ「…申し訳ありませんが、私たちも仁美さんのことが心配で、こうして訪ねてきたので…」


執事「そうですか…こちらから何度も連絡してるのですが、電話も出られないようで…警察にはもう少ししてから連絡しようと…」

執事「我々としても、すぐに事を大きくするわけには…可能な限り穏便にと…」

マミ「…あの、仁美さんのご両親は…?」

執事「ご当主様と奥様はお二人とも現在海外出張中でして…我々がこうして仁美お嬢様のお世話をさせていただいているのです…」

マミ「…そうなんですか」

執事「こんな事態になってしまって…私たちも面目ありません…」

マミ「私たちも全力で仁美さんを探します!」

執事「…ご迷惑かけて申し訳ありません、お願いします」

~~~

マミ「いい?みんな、まだ仁美さんが魔女に負けたと決まったわけではないわ、全員全力で探しましょ!」

マミ「三手に別れましょ、見つけたらすぐにみんなに連絡して!」

マミ「私は市内の中央区を探すから、美樹さんと鹿目さんは東地区を、佐倉さんと暁美さんは西地区をお願い!」



~見滝原市内各部~

さやか「仁美~!!」

まどか「仁美ちゃ~ん!!」


マミ「志筑さ~ん!!」



杏子「ったく、なんでアタシがあんな奴探さなきゃならないのさ」

ほむら「…なら今からでも巴マミに連絡して『もう帰る』とでも言う?」

杏子「ちっ…」


杏子「……アイツ、ホントに魔女に負けたんか」

ほむら「……」

ほむら「巴マミの言う通り、彼女はそれなりの魔力の素質を持っていたわ、戦いにも慣れていたようだし…そう簡単に魔女に負けるとは思えない」

杏子「…だよな」

杏子「だったら、アイツはなんで家出なんてしたんだ、あんな豪華な家持ってるのに」

ほむら「……」

ほむら「…もしかしたら」

杏子「あぁ?」

ほむら「あなた、志筑仁美に美樹さやかのことを全て話したと言っていたわね」

杏子「ああ、それがなんかあんのか?」


ほむら「もしかしたら、志筑仁美はそれを聞いて絶望したのかも知れない」

杏子「はあ!?意味わかんねーって、なんで絶望するんだよ?」

ほむら「それは……詳しくはわからないけど…あの2人の間に何かあったとすれば」

ほむら「美樹さやかを裏切り、あの少年と付き合うことを理由に契約した自分を後悔している」

杏子「……」

ほむら「…もしかしたら…彼女は既に…」

杏子「お、おい!まさか!前のさやかみたいに魔女になったって言うのかよ!?」

杏子「ふざけたこと言ってんじゃねーぞ!!」グッ!

ほむら「ふざけてなどいないわ…これは現時点で考えられるもっとも納得のいく仮説よ」

杏子「…くっ!」

杏子「こうしちゃいられねー、マジでアイツを探さねーと!」
ダダダダッ…

眠いので寝ます
明日再開します
すいません

>>1です
再開します

~見滝原市内西地区某所~


杏子「魔女の反応は!?」

ほむら「ないわ…」

杏子「くそ!アイツどこにいやがるんだ…!」

ほむら「……」

………

杏子「…もう街の外れまできちまった…」

ほむら「…」

杏子「…どこにいやがんだよ…!」

ほむら「!」

ほむら「…ソウルジェムに反応が…!」

杏子「何!?」

杏子「こっちか!」
ダダダダダッ!

~見滝原市内西地区某所魔女結界内部~


杏子「…コイツはまさか、アイツの…?」

ほむら「いえ、おそらく違う…」

杏子「なんでわかんだよ」

ほむら「…この魔女はかつて戦ったことがあるわ…」

杏子「ふーん、つまり前にもいた奴ってことか」

ほむら「…そうね」

杏子「じゃあ、まだアイツは魔女になってねーってことだな」

ほむら「…おそらくは…」

杏子「ならさっさとコイツ片付けて、アイツを探さねーと…!」
バッ!

……

魔女「ギャアアア……」


ブオォォン…


杏子「ふー」

ほむら「……」

杏子「さあて、捜索続行だな」

ほむら「ええ」


~~~~



杏子「ん…?」

杏子「あ!あれは…!」
ダダダダッ


杏子「おい!何してんだよ!こんなとこで」

仁美「あなたは……お久しぶりですわね…」

杏子「てめぇ…」

杏子「アンタのこと許せないなんて言って悪かった、謝るよ」

仁美「何を謝ってるんですの?私はもういいんですの……」

杏子「おい、ふざけたこと言ってんじゃねえ、さやかだってお前のこと…」

仁美「さやかさんとはもうお友達ではありませんわ…私は自分のことばかり考えてさやかさんのことを考えてなかった…」

仁美「…私のせいでさやかさんは……」

杏子「てめえ…ソ、ソウルジェムが…!」


杏子「理由はもうどうでもいい、今は穢れを浄化しろ、じゃねーと…てめえは魔女に…」

仁美「何を言ってるんですの…私はもう…魔女みたいなものですわ…」

仁美「魔法の力に頼って上条君と付き合って、さやかさんの気持ちさえ知らずに裏切って…」

仁美「そんな私を助けようとした最後のさやかさんの気遣いさえ裏切ったのです、もう立派な魔女ですわ…」

杏子「ふざけたこと言ってんじゃねえ!」

杏子「どんな願いで魔法少女になろーが、それは自分で決めたことだろ!誰のせいでもない!」

杏子「さやかだって、てめーのこと大事に思ってるんだ、だからあの坊やと幸せになること願ってんだ!」

杏子「それがわかってんなら、馬鹿なこと考えるのはやめろ!」

仁美「…」

仁美「…あなたって、ホントはとても優しい人だったんですわね…っ」

仁美「それにも気付けなかった…私…ほんと嫌な子ですわ……」

パキッ…パキキ…パキン…!


ゴゴゴゴゴゴゴ…


杏子「!!」

ほむら「!!」

杏子「クソがっ!!」
ダンッ!

杏子「…これじゃ、さやかと一緒じゃねーか…っ!」


仁美魔女「キャァァァァァァ!!」


杏子「くっ!」

ほむら「一旦引くわ」

杏子「い、いいのかよ!?」

ほむら「じゃあ、あの魔女を倒すの?あなたには倒せるの?」

杏子「っ!」


同時刻
 ~仁美の家~


執事部下「今日もお帰りになりませんね…仁美お嬢様…」

執事「…やむを得ない、警察に連絡しよう…」

執事部下「し、しかし、それでは今回の一件が公に…!」

執事「もう、そんなことを言っている場合ではない!」

執事部下「わ、わかりました…」


~見滝原市内~


杏子「畜生!どうすりゃいいんだよ!」

ほむら「落ち着いて…取り合えず巴マミも含めてあの子たちには教えないでちょうだい」

杏子「わかってるよ!んなことは」

杏子「どうにかできねーのか!なあ!?」

ほむら「私が知っている限り…魔女になった魔法少女を戻す方法はないわ…」

杏子「…クソがっ!」

ほむら「…ところで彼女の死体はどうしたの?」

杏子「しまった……!」

杏子「いや…結界の中にあるはずだ…だから人目には…」

ほむら「…この状況では見つかると厄介ね」

ダダダダッ
マミ「仁美さんは!?佐倉さん、暁美さん」

ほむら「私たちが探した限りはいなかったわ…」

マミ「…そう」

ほむら「…それと、捜索している時に魔女を倒したわ」

ほむら「後、一度くらいは使えるはず…」スッ

マミ「そう、ありがとう、ごめんなさいね、2人に任せちゃって」

ほむら「…別にいいわ、それよりもそっちも見つからなかったの…?」

マミ「…ええ」

まどか「…うっ…ぐすっ…仁美ちゃん…!」

さやか「…仁美…っ…仁美…っ!」

マミ「これだけ探してもいないなんて…」

杏子「…っ」

マミ「…取り合えず今日はもう遅いわ…明日は学校だけど、みんないいわね…?」

さやか「…学校なんていってる場合じゃないよ…」

まどか「……うん」

ほむら「……」

その後
 ~ほむらの家~


ほむら「ちょっといいかしら…」

杏子「なんだよ…」

ほむら「…志筑仁美が魔女になったことは事実よ、あなたがどう思ったって何も変わらない…」

杏子「んなことわかってるよっ」

ほむら「…志筑仁美が魔女になったのはあなたのせいじゃないわ」

杏子「……」

ほむら「それと…言い忘れてたけど、もうワルプルギスの夜まであまり時間がないわ」

杏子「…いつごろなんだ?」

ほむら「私の予想だと、早ければ明日…長く見積もっても一週間以内ね」

杏子「……」

ほむら「…そこで提案があるのだけれど」

杏子「提案だぁ…?」

ほむら「…志筑仁美のことをあの三人に全て話してはどうかしら」

杏子「な、何言ってんだよ、てめーは…!」

ほむら「まどかと美樹さやかがそれを知れば、魔女になることを知った上で契約なんてこの先も絶対にしないはず…」

ほむら「そして、後は私たち三人がワルプルギスの夜を倒せば、それで全て丸く収まるわ」

杏子「て…てめえ…!」

杏子「…つ、つまり、魔女なっちまったアイツのことは諦めて、アイツを見せしめに、さやかとまどかの契約を止めるってことか…?」

ほむら「ええ、そうね」

杏子「…アタシにはなんでそんな考えが頭ん中で廻るのかわからねえ」

杏子「てめーそれでも人間かっ!」
グッ!!


杏子「さやかが魔女になったときもそうだったよな…」

杏子「てめーはさやかの死体を目の前にして泣く、まどかの前で自慢気に話してやがった…!」

杏子「…なんでそんなことができるんだ…!」

ほむら「そうね…もう人間やめちゃってるからかしらね」

杏子「…っ」

ほむら「魔女になってしまった魔法少女を元に戻すことはできない」

ほむら「…だったら、諦めるしかないでしょう、それであの2人の契約を完全に阻止できるのなら…」

杏子「…てめーはどうかしてる」

ほむら「そうね…それは否定しない…」


ほむら「でも、あなただってここまできた理由を忘れているわ、あなたがここまで来たのは美樹さやかのためでしょう」

ほむら「美樹さやかの契約さえ阻止できればいいんでしょう」

杏子「…忘れてなんかいねーよ…ああ、そうさ、アタシはさやかを救いたい」

杏子「でも…!」

杏子「でも、だからって…!魔女になっちまったアイツは諦めるんか!?」

ほむら「諦める以外に方法はないわ」

杏子「…っ!」

ほむら「…前に言っていたわよね、この世界の希望と絶望は差し引きゼロだって」


ほむら「それは誰かを助けるときも同じじゃない?誰かを助けたければ、他の誰かが犠牲になるしかない…」

ほむら「そうやって世界のバランスは成り立っているんでしょう」

ほむら「…美樹さやかを救った、だから代わりに志筑仁美が犠牲になった…それでは足りないの?」

杏子「……」

杏子「てめーは大事なもんを落っことしてきちまってるよ…どっかの時間に…」

ほむら「……」

ほむら「私だって…最初はみんなを助けたかった、でも誰かを助ければ他の誰かが必ず死んだ…何度も何度も繰り返したけど、それは変わらなかった…」

ほむら「だから私はまどかを助けることだけに専念した、だからあなたも美樹さやかだけを助ければいい…」

ほむら「この世界は何もかもが差し引きゼロなのよ…あなたの言う通り…」


翌日
 ~見滝原市内病院上条恭介病室~


キャスター「…次のニュースです、見滝原在住の中学校2年生、志筑仁美さんが12日午前より行方がわからないとの通報があり、警察が捜査を開始しました」

キャスター「関係者によりますと、仁美さんは10日より体調不良を理由に学校を休んでおり、その間に行方がわからなくなったのではないかということです。」

キャスター「警察では、事件と事故の両面で捜査を進めています」

キャスター「続いてのニュースです。見滝原気象台によりますと、これから数日の間に見滝原市内で、まれに起こる突発異常気象である」

キャスター「『スーパーセル』が発生する可能性があると示唆しており、万が一発生した場合の市民の避難経路、避難場所の確認など、事態に備えています」

キャスター「専門家によりますと『スーパーセル』とは……」


恭介「え…」

恭介「ひ、仁美が…行方…不明…」

恭介「…ひ、人違いだよね…」
ガサガサ
ピポパ

プルルルルル
プルルルルル
プルルルルル
プルルルルル
プルルルルル
ガチャ

恭介「あ!仁美!!今何やって……」

自動音声「おかけになった電話番号は、現在電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないため、かかりません。」

恭介「え…」


…プツ

恭介「……」

恭介「ひ、仁美…!」

恭介「…うっ…っ…仁美っ…なんで…っ!」

恭介「…仁美!仁美!僕が…僕が探しにいかなくちゃ…!!」

ガチャーン!

恭介「うっ!」

看護婦「な、何をされているのですか!危険ですからベッドに戻ってください!」

恭介「僕は!僕は仁美を…!!」

看護婦「やめてください!危険です!」

看護婦「誰か!誰か手を貸してください!」


~見滝原市内~


マミ「行きましょう、みんな…」

マミ「絶対に大丈夫よ!」

マミ「信じましょう…仁美さんを」

さやか「……」

まどか「……」

杏子「んじゃ、アタシはこいつと探す、ほら、行くぞ」

ほむら「……」

マミ「じゃあ、美樹さんと鹿目さんは私と一緒に来てもらっていい?」

さやか「…うん」

まどか「うん」

マミ「大丈夫よ、志筑さんは」


~見滝原市内~


杏子「…で、いつ話すんだよ?」

ほむら「…まだよ、時期が来たら話すわ」

杏子「……」

ほむら「…それと、巴マミはおそらく、その絶望に耐えられない」

杏子「…どういうことだ?」

ほむら「私が見てきた今までの過去では魔法少女の魔女化を知った巴マミは私たちと心中を図った」

杏子「はぁ!?なんでマミがそんなことしなきゃならないんだ!」

ほむら「…私が見てきた過去の話よ、だから今回も恐らく彼女はその事実に耐えられず、私たちと心中を図る可能性がある」

ほむら「しかも、最初に殺されるのはあなた…」

杏子「!」


杏子「わけわかんねーよ…なんでどいつもこいつもそんな簡単に死にたがるんだ…!」

杏子「どんな絶望が待ってようが…それまで割り切って生きてりゃいいじゃねーかよ…なんで死にたがるんだよ…っ」

ほむら「……」

杏子「みんなを殺して、最後に自分も死ぬなんて…そんなのアタシが許さない…!!」

ほむら「だからこそ、あなたに頼んだのよ、恐らく巴マミは私を拘束して、あなたのソウルジェムを撃ち抜くはずだわ」

ほむら「あながそれを許さないというなら、あなたが阻止する以外にない」

杏子「ああ…絶対にそんなことさせねえ」

ほむら「もし止めれたなら、後は私が巴マミをどうにか説得する」

杏子「……」


杏子「もう、そのことをアイツらに話さないって選択肢はないんだな…」

ほむら「…ええ、それはないわ」

杏子「マミにだけ話さないわけにはいかないのか?」

ほむら「もちろん、それでもいいわ」

ほむら「でも、それだと巴マミはこのまま、死ぬまでQBに騙され続けることになる…あなたはいいの?それで」

杏子「……っ」

杏子「…わかったよ、話そう…全員に」

杏子「心中なんて絶対させねえ…もうこれ以上は…絶対に!」

~見滝原市内~


マミ「志筑さ~ん!!」

まどか「仁美ちゃ~ん!!」


さやか「……仁美」

さやか「あ…そうだ…!」
ダダダダッ…


まどか「え?さやかちゃん?どうしたの?」

マミ「美樹さん??」

さやか「ごめん~!ちょっと待ってて!」

まどか「え?さやかちゃ~ん!」




さやか(恭介のところになら!きっと仁美だって!それに、もし仁美がいなくても、恭介なら何か仁美のこと知ってるかも!)

さやか「あ…」

さやか(で、でもあたしが恭介のとこに行っていいのかな……ううん!今はそんなこと考えてる場合じゃない!)

さやか(早く仁美を探さないと!恭介の為にも!)


~見滝原市内病院~


さやか「はあ、はあ、はあ…やっと着いた」

ガチャーン…

さやか「え?なんだろ…恭介の病室のほうから…」


~同病院上条恭介病室~



看護婦「落ち着いて、落ち着いてください!」

恭介「…僕は!僕は仁美を!!」

ガチャーン
ガシャーン!


さやか「きょ、恭介!何やってんの!」

恭介「さ、さやか…」

看護婦「あ、あなたは…よく来てくれてた…」


恭介「ごめん…さやか、恥ずかしいところ見られちゃったね…」

さやか「ううん…」

恭介「……うっ…ひっくっ…ひ、仁美…っ…!」

さやか「恭介……」

さやか「…仁美のこと何か知らない…かな…恭介…」

恭介「…仁美は…最後に僕に会いにきたんだ…」

さやか「えっ…?」

恭介「三日前の朝に僕のところに来たから、なんかおかしいと思ったんだ…」

恭介「僕は…!僕は…!あの時、止めるべきだったんだっ!」

恭介「…ぅっ…っ…」

さやか「……」

恭介「こんな僕でもついきてくれるって言った仁美がっ…!」


恭介「…もう僕はどうすればいいんだよ…こんな!こんな!動かない腕しかない僕はっ…!」
ドン!

さやか「恭介っ!」

恭介「っ……仁美…っ!」

さやか「……」

さやか「そ、そっか…恭介は仁美のことすごく大事なんだね…わかった…」

恭介「え…?」

さやか「…だったら、あたしは絶対仁美を見つけてくるよ」

さやか「絶対、仁美を見つけてくる…」

恭介「さやか……」


~見滝原市内~


マミ「…美樹さん、遅いわね…」

杏子「どこ行ったんだよ、さやかの奴は」

まどか「急に走っていっちゃったんだよ」

杏子「はあ?」


ダダダダダッ

さやか「お~い!」

まどか「あ、さやかちゃん」

さやか「はあ、はあ、仁美は?」

マミ「…まだ見つからないわ」

さやか「そっか…絶対に…絶対に見つけないと」


マミ「もちろんよ、どこに行ってたの?美樹さん」

さやか「えっ…う、うん…ちょっと…恭介のところにね…もしかして仁美のこと…何か、知ってるんじゃないか…って…思って…」

マミ「そうなの…何か、わかった…?」

さやか「い、いえ…特には…」

マミ「…そう」

マミ「とりあえず、また今からみんなで探しましょう」

さやか「…はい」

まどか「…うん」

杏子「……」

ほむら「……」


ヒョイ

QB「ちょっといいかい?近くに魔女がいるよ、みんな」


マミ「QB!今までどこに行ってたの?」

ほむら「!」

杏子「!」

QB「ちょっと野暮用でね、それより近くに魔女の反応があるよ」

マミ「ホントだわ…ソウルジェムが!」

ほむら「!」

杏子「ま、待て…!今はアイツを探す方が…!」

マミ「でも、魔女を放っておくわけにかいかないわ」

マミ「それに、魔女のとこになら仁美さんも向かうかもしれないし」

さやか「…うん」

マミ「行くわよ!みんな!」


杏子「お、おい!どうすんだよ!」コソコソ

ほむら「…仕方ないわ…今から事実を伝えたとしても信じないでしょうし…」

ほむら「…でもこの魔力のパターンは…まさか…」



…………

~見滝原市内某所廃墟ビル内~


マミ「…ここね」

マミ「鹿目さんと美樹さんは、ここで待っててもらっていいかしら」

マミ「もしかしたら、仁美さんが来るかもしれないわ」

さやか「あ、そうですね」

まどか「はい」

マミ「じゃあ、佐倉さん、暁美さん、行くわよ…」

杏子「……」

ほむら「……」

バッ!


~魔女結界内部~



ほむら「!」

杏子「クソが!やっぱりか!」



ズギューン!
ズギューン!

マミ「仁美さんを探さなくちゃいけないわ!ソッコーで片付けるわよ!」


杏子「お、おい…マミ、ちょっと待て…」

ほむら「…どうするつもり?」

杏子「どうって…止めるしかないだろ…!」

ほむら「止めてどうするの?」

ほむら「それに…なんて説明するつもり?あの魔女は志筑仁美だって言うつもりなの?」

ほむら「この状況でそんなことを言っても誰も信じないわ」

杏子「…っ!」

杏子「クソ!!」
ダンッ!

杏子「……どうしようも…できねーじゃねーか…!」

ほむら「……ちょうど良い機会だわ…このまま見届けましょう…」

杏子「…てめえっ!」
グッ…

ほむら「…なに、この状況で、あなたには何かできるの…?」

杏子「っ…!」

ほむら「……私には思いつかないわ…この状況で、できることが…」



ズキューン!
ズギューン!

マミ「どうしたのかしら…暁美さん、佐倉さんも」


仁美魔女「ギャアアアア!」


マミ「まあいいわ、私一人でも大丈夫そうだし…」

マミ「2人には前回の借りもあるしね!」



ズギューン!
ズギューン!



杏子「マ…マミ…っや、やめろ…」

ほむら「……」



マミ「そろそろ決めるわよ!」


杏子「おい…やめろ…やめろ…!」


マミ「ティロ・フィナーレ!!」


杏子「やめろおぉぉーッ!!」

ほむら「!」



ドーン!


仁美魔女「ギャアアアア…」



ブオォォン…


マミ「…え」

さやか「あっ、あ…」

まどか「ねぇ…あ、あれ…あそこに倒れてるのって…」

さやか「仁美!!!!」
ダダダダ!

さやか「ねぇ!仁美!仁美!!」

さやか「ねえっ!!仁美…起きてよ!!仁美!!」

さやか「ねぇっ!!仁美!!」

まどか「っ…うっ…仁美ちゃん…起きて!」


マミ「ど、どういうこと…」

杏子「…っ」

ほむら「…彼女は魔女になってしまったのよ」

マミ「!!」

さやか「!!」

まどか「!!」

マミ「え…う、嘘よ!そんなの出鱈目よ!なんで魔法少女が、魔女に…!」

ほむら「事実よ、それがソウルジェムの秘密」

ほむら「この宝石が濁りきって黒く染まる時、私達はグリーフシードになり、そして魔女として生まれ変わる」

ほむら「それが、魔法少女になった者の、逃れられない運命…」

マミ「そ、そんな…っ!!」


ほむら「……」

マミ「なんで…!どうして…!」

マミ「どうして今まで教えてくれなかったのよ…!」

ほむら「…途中で話したとしてあなたは信じてくれたの?」

マミ「…っ!」

マミ「嘘よ…私は信じないわ…そんなの嘘よ…ねぇ…?QB……」

QB「本来、君達に与えるべき情報ではなかった」

QB「でも、ほむらの言っていることは訂正するほど間違ってはいないよ」

QB「なぜ君がその情報を知っていたのかは気になるけどね」

QB「この国では、成長途中の女性のことを、少女って呼ぶんだろう?」

QB「だったら、やがて魔女になる君たちのことは、魔法少女と呼ぶべきだよね」


マミ「……」
クラッ…
ドタッ…

杏子「お、おい!マミ、大丈夫か!」


まどか「うっ…仁美ちゃん…!ひっく…ぐすっ…!」

さやか「…うっ…ひっく…ひ…っ…仁美…っ」

さやか「……えせよ…仁美を返してよ!!」

QB「そんなこと言われても僕にはどうしようもできないなぁ」

QB「彼女は自分の意思で僕と契約を交わしたんだ、そして、その願いは確かに叶えられた」

QB「僕はただ彼女の願いを叶えたに過ぎない」

まどか「…ひっ…ぐすっ…」

まどか「ひどいよ…こんなの絶対おかしいよ…っ…!」



ズギューン!

まさ杏ほ「!!」


ヒョイッ

QB「危ないなぁ」

QB「何をするんだい?マミ」

マミ「…私たちを騙してたのね…QB…」


QB「それは誤解だなぁ、何も僕たちは君たちに悪意があったわけじゃない」

QB「君たちの願いを叶えた正当な対価さ」

マミ「…っ」


シュイーン…!
シュルル…!

ほむら「杏子!」

杏子「ああ!」


マミ「ソウルジェムが魔女を産むなら、みんな死ぬしかないじゃない!!」

マミ「あなたも…!私も…!」
ガチャ…
ズギューン!


ヒュッ!
ガキン!!

カシャ…
カチッ…


ガシッ!


ほむら「…馬鹿な真似はやめてちょうだい…巴マミ…」

杏子「…何やってんだよ…マミ、アタシを殺す気か…」

マミ「…っ…だって…だってっ!…魔女になるしか…ないのよ!…だったらもう…私たち…っ…」

ほむら「ふざけたこと言わないで」

ほむら「どんな絶望が待っていようと、どんな理由で契約しようと、魔女と戦い、希望を生むのが私たち魔法少女のはずよ」

ほむら「形は違えど…私たちはそんなあなたを中心に集まった…」


ほむら「あなたは私たちのリーダーなのよ」

マミ「…!」

ほむら「絶望を知ったからって、みんなで死ぬの?」

ほむら「そんなこと私たちが絶対許さない…」

杏子「お、お前…」

マミ「…うっ……っ…みんな……みんなっ…っ…!」

さやか「……うっ…ひっく…っ」

まどか「…うっ…うっ…ひくっ…」


ほむら「今まで起きたことは全て事実よ…どんなに嘆いてもそれが変わることはない」

ほむら「もうすぐ、この街にワルプルギスの夜がやってくる」

ほむら「私たちはその絶望も倒さなくてはならない」


ほむら「…伝えるだけのことは伝えたわ…あなたがこの街を守りたいというなら一緒に戦って、巴マミ」

マミ「……」


ほむら「それと、死体がある以上扱いには気をつけて…下手に見つかると後々厄介なことになる」

杏子「……こいつの亡骸はアタシがなんとかする」

ほむら「…今日はもう遅いわ…あなたたちも落ち着くまで家にいなさい…」

マミ「……」

さやか「……」

まどか「っ…っ…」


その日の夜
 ~ほむらの家~


ほむら「……」

ほむら「何を隠れているの?そこにいるのはわかっているわ」

QB「ばれていたとは、さすがだね、ほむら」

ほむら「何の用?」

QB「君に聞いておきたいことがあってね」

QB「どうやって魔女化の秘密を手に入れたんだい?それにワルプルギスの夜の情報も」

ほむら「お前には関係ないわ」

QB「……」

QB「まあ、だいだいの察しはついてるんだけどね」

ほむら「……」

ほむら「私からも一つ聞きたいことがある…」

ほむら「…なぜ志筑仁美を契約させたの?」


QB「それは彼女がそう望んだからだよ」

ほむら「……」

ほむら「魔法少女が同じ街に三人もいれば、もう必要ないはずよ」

ほむら「それをわかった上で志筑仁美を契約させたの?」

QB「僕は契約を促したというだけで、最後は彼女自身が望んで契約したんだ」

QB「確かに君の言う通り、同じ街に三人も魔法少女がいれば十分だ」

QB「僕も無駄になるとわかっていたならこれ以上契約なんかしなかっただろう、でも仁美の契約は無駄じゃなかったんだ」

ほむら「…?」

QB「簡単なことさ、君たち三人じゃ効率が悪い、ただそれだけの話だよ」


ほむら「!!」

QB「君のその様子だと僕たちの本当の目的も知っているようだね、それなら『効率が悪い』って意味もわかるはずだ」

QB「普通、同じ街に複数の魔法少女が存在すれば対立や競争になるのは当たり前のこと」

QB「争いが起これば、どうしてもグリーフシードを取りこぼす者が現れる、そして取りこぼした者は魔女になる」

QB「そうやって僕たちはどんな街でも効率良くエネルギーを回収できた」

QB「だが、君たちは違った」

QB「君たちは三人で、魔女だろうと使い魔だろうと対処した、その上グリーフシードを綺麗に分け合い、誰一人抜けがけするものもいなかった」

QB「僕も驚いたよ、もちろん今までそのスタンスが存在しなかったわけではない、むしろ友達同士で契約し、同じ街の魔法少女になった子たちはみんなそのスタンスを貫いた」

QB「でもね」

QB「このスタンスには大きな欠点があるんだよ、それも君たち特有の『感情』がもたらす欠点がね」

QB「そのスタンスを貫こうとした魔法少女たちは皆、最後は『競争心』という感情に駆られて自ら魔女になった」


ほむら「!」

QB「つまり、わかりやすく言うと、君たち人間の中に最初からある『競争心』と言う感情が、友達なんていう陳腐な建前など壊した、という話さ」

QB「どんなに仲の良い友達同士でも、同じ街で契約し魔法少女となれば、それは競争心となり、最後は他と同じ結果になる」

QB「ただ君達はそのスタンスを貫きながらも全員でグリーフシードを分け、魔力の消費量と穢れの浄化量が見事に釣り合った」

QB「それに君たちの三人の望むことが全て叶っていたから、絶望する理由が一切無かったこともあげられる」

QB「それは僕にとって最悪の状態だった、エネルギーが回収できないだけじゃない、三人で戦っている分、誰かが死ぬこともまず、ない」

QB「つまり、君達は友達を信じ、誰も絶望を見ることなく、希望を持ち続けてきたから魔女化に至るほどソウルジェムが濁らなかったんだよ」

ほむら「……」


QB「だから僕はこの街に新たに別の魔法少女を契約させることで対処することにした」

QB「最初はまどかとさやかでも良かった、でも彼女たちは君と杏子がしっかり守っていたようだったからね、だから僕はすぐに見切りをつけた」

ほむら「……」

QB「僕は他の子に目をつけた、そうして見つけたのが仁美だったんだよ」


QB「でも、これでようやくそのスタンスも崩れたようだね、今、君たちの前にあるのは絶望だ」

ほむら「…お前の思い通りになんてさせない」

QB「確かに、ワルプルギスの夜に対処できる魔法少女がいるのは残念だし、鹿目まどかを契約させたかったんだけど…」

QB「まだこれから何が起こるかわからないよ、ほむら」

ほむら「……」


QB「それと…君の存在が鹿目まどかの信じられないような魔力係数にも納得できる答えを出してくれた」

QB「君の能力は時間操作だろう」

ほむら「…」

QB「魔法少女に本来与えられる魔法の属性は叶えた願いの内容と直結する」

QB「君のその能力から考察できる願いの内容は……」

ほむら「!」

QB「やっぱりね…僕の予想通りだ」

QB「過去の可能性を切り替えることで、幾多の並行世界を横断し、君が望む結末を求めて、この一ヶ月間を繰り返してきたんだね」

QB「君の存在が、その疑問に答えを出してくれた」


QB「今なら納得いく仮説が立てられる」

ほむら「…?」

QB「魔法少女としての潜在力はね、背負い込んだ因果の量で決まってくる」

QB「一国の女王や救世主ならともかく、ごく平凡な人生だけを与えられてきたまどかに、どうしてあれほど膨大な因果の糸が集中してしまったのか不可解だった」

QB「だが……ねえ、ほむら」

QB「ひょっとしてまどかは、君が同じ時間を繰り返す毎に、強力な魔法少女になっていったんじゃないのかい」

ほむら「…っ」

QB「やっぱりね」

QB「原因は君にあったんだ」

QB「正しくは、君の魔法の副作用?と言うべきかな」

ほむら「…どういうことよ?」


QB「君が時間を巻き戻してきた理由はただ一つ、鹿目まどかの安否だ」

QB「同じ理由と目的で、何度も時間を遡るうちに、君は幾つもの並行世界を、螺旋状に束ねてしまったんだろう、鹿目まどかの存在を中心軸にしてね」

QB「その結果、決して絡まるはずのなかった平行世界の因果線が、全て今の時間軸のまどかに連結されてしまったとしたら、彼女の、あの途方もない魔力係数にも納得がいく」

QB「君が繰り返してきた時間…その中で循環した因果の全てが、巡り巡って、今の鹿目まどかに繋がってしまったんだ」

QB「あらゆる出来事の元凶としてね」

QB「お手柄だよ、ほむら」

QB「君がまどかを最強の魔女に育ててくれたんだ」

ほむら「……」

ほむら「聞くだけのことは聞いたわ…消えなさい」

QB「」
スタスタスタ

ほむら「…絶対あいつの思い通りになんてさせない」

ほむら「……」


____

ピンポーン


ほむら「…杏子?」


ほむら「……誰?」

ガチャ…


さやか「……」

ほむら「美樹さやか…」


ほむら「何の用かしら…あなたが来るなんて…」

さやか「……仁美のことなんだけど…」

ほむら「諦めなさいと言ったはずよ」

さやか「…うっ…っ…そんなこと…できるわけない…っ!」

さやか「…あ、あんた、マミさんより魔法少女のこと知ってるんでしょ…っ」

ほむら「……」

さやか「ねえっ!知ってるんでしょっ!?」

ほむら「……」

さやか「だったらさ…っ、どうにか助ける方法…ないの…?」

ほむら「ないわ」

さやか「そ、そんな…っ…っ」

ほむら「……」


さやか「そ、そうだ…!」

さやか「…あ、あたしが契約すれば…」

ほむら「!」

ほむら「馬鹿なことを考えるのはやめて」

さやか「ば、馬鹿なことって…!」

さやか「…あ、あんただって友達助けるために契約したんでしょっ!」

ほむら「!!」

ほむら「そ、それは……」

さやか「だったらあたしだって…っ!」

ほむら「それに契約したからと言って、志筑仁美を元に戻せる保障はないわ」

さやか「…そうなの?」


スッ…
QB「それは違うね」


ほむら「!!」

さやか「!!」

QB「君が契約すれば仁美を元に戻してあげることだって出来るよ、さやか」

さやか「本当…?」

QB「ああ、本当さ、奇跡は起こせるよ、君が契約さえしてくれれば、僕が……」


バギューン!!

バタ…


さやか「!」

さやか「な、何すんの!」

ほむら「あなたを契約させるわけにはいかない…」

さやか「……」

さやか「っ!」

さやか「もういいっ!」


バタンッ!

ダダダダダッ!


ほむら「……っ」

ほむら「このままじゃ美樹さやかは……」


QB「わかってるくせに、意味無いって、もったいないんだよ、何度も殺してくれちゃ」
パクパクパクパク

QB「きゅっぷ…」

QB「さやかが契約してくれそうだね、これで完全に君たちのスタンスは崩壊した」

QB「止めなくていいのかい?美樹さやかを」

ほむら「私はまどかの契約を阻止したいだけ、あの子には杏子がついてる…」

QB「」
スタスタスタ…


ほむら「……」

ほむら「私の誤算だったわ…美樹さやかは事実を知ったところで契約を恐れるような子じゃない」

ほむら「ごめんなさい…杏子」



ほむら「……」

ほむら「…黙って見過ごすわけにもいかないわね」


~見滝原市内~


さやか(絶対…絶対に助けなきゃ!仁美を!約束したんだ!恭介と…)

スッ…
QB「さっきの話は本当だよ、さやか」

さやか「えっ?」

さやか「QB、なんで…?」

さやか「無事なの?QB…」

QB「僕は大丈夫だよ」

さやか「今はあんたの顔なんて見たくないけど…」

さやか「…さっきの話は本当なの?」

QB「本当だよ」

QB「君が望むなら、仁美を元に戻す願いで僕と契約すればいい」

さやか「……」


さやか「…あ、あたしが契約…すれば…」


~見滝原市内某ホテル一室~


杏子「……」
シュイーーン…

杏子「…これで一時は大丈夫なはずだ」

杏子「しっかし…てめーも馬鹿な奴だ…あんな願いで契約しやがって…」

杏子「でも…こいつがさやかの代わりに…犠牲になった…なんて……っ」

杏子「とりあえずこの部屋に寝かせてれば、そのうち誰かに見つかるだろ…」

杏子「……っ」

杏子「…悪かったな、助けてやれなくて…っ」

杏子「…じゃあ、アタシはもう行くぜ…仁美…」


ガキーン!
ガシャーン!!

…スタッ


杏子「…な、なんだ!?」


ほむら「…ここにいたのね」

ほむら「あなたが魔力を使ってくれたから早く見つけることができたわ」

杏子「はあ?何の話だ?」

ほむら「美樹さやかが危ない…彼女は契約しようとしている」

杏子「!」

杏子「んだと!!」

~見滝原市内~


杏子「どういうことだ!?説明しろっ!」

ほむら「さっき彼女が私の家に来たわ…そして志筑仁美を助ける方法を聞いてきたの」

ほむら「もちろん私は諦めなさいと言ったわ…そしたらあいつが…!」

杏子「QBか!!?」

ほむら「…ええ、彼女を唆している…」

杏子「クソ!!アイツ!ぜってー許せねーっ!!」

ほむら「でも、美樹さやかの覚悟も相当なものよ…彼女は自分を犠牲にしてまで志筑仁美を救おうとしている…」

ほむら「私も誤算だったわ、魔法少女の事実を知れば絶対に契約なんてしないはずだと思っていたのだけど…」

ほむら「…それ以上に彼女の志筑仁美を助けたいって意思は大きかったってことね」

杏子「ったく!どいつもこいつも!!」


杏子「…とりあえず、さやかを契約させるわけにはいかねー」

ほむら「おそらく…もうQBは接触しているはずよ…」

杏子「どこにいんだよ!アイツらは!!」

ほむら「わからないわ、急に飛び出していって…」

杏子「なんで止めなかったんだよっ」

ほむら「…そ、それは」

杏子「まあ、いいさ、アンタばっかに頼ってたアタシが悪いってのもあるからな」

ほむら「……」

杏子「畜生!どこにいやがるんだっ!!」

杏子「さやかぁああああ!!」


~見滝原市内某所~


QB「じゃあいいんだね、さやか」

さやか「う、うん…やって」

QB「君の願いはなんだい?言ってごらん」

さやか「あ、あたしは…仁美が元に戻って恭介と幸せになってほしい…」

QB「その願いは君にとって命を掛けるに……」


……ザシュ!

バタン…

さやか「!!」


杏子「……間に合ったか!」

さやか「きょ…杏子先輩…」

杏子「…さやか」

さやか「どうして……」

さやか「ねぇ!どうして!!あたしの願い叶えさせてよ!…ねぇ…どうして…止めるの…っ…」

杏子「……」

さやか「っ…っ…あたしなんか…あたしなんか…っ」

さやか「あたしは仁美助けたいんだよっ…恭介と幸せになってほしいんだよっ…」


杏子「…っ」

ほむら「……」

杏子「さやか!てめーはっ……」

QB「全く、君たちはどうしてそう、僕の邪魔ばかりするのかなぁ」

杏子「!!」

パクパクパク
QB「きゅっぷ…」

QB「せっかく願いを叶えたがっていたさやかが可哀想じゃないか」

杏子「てんめぇ…いい加減に……!!」

バッ


杏子「!」

さやか「QBを殺すなら、あたしを殺してからにして」


さやか「あたしの覚悟は本物だよ」

杏子「わかってんのか!!さやか!!」

さやか「わかってる…覚悟もしてる…後悔なんて、あるわけない…」

杏子「…そうやってお前は後悔したんだよ…」

さやか「…あたしは後悔なんかしない…だってほむらも言ってたでしょ?」

さやか「どんな願いで契約しようと、どんな絶望が待ってようと…希望を信じて戦うのが魔法少女だって…」

さやか「杏子先輩だってそうでしょ?」

さやか「これはね…あたしが叶える最初の希望なんだよ」

ほむら「っ…」


杏子「……やっぱりてめーはその道を選ぶのか…」

さやか「…うん、ごめん…杏子先輩…」

さやか「…やって…QB」



ほむら「…いいの?杏子」

杏子「…いいわけねえだろ!」

杏子「でも…もう、さやかはアタシたちじゃあ止められねぇ……」

杏子「前にも言っただろう、アイツは自分で決めたことは…絶対に曲げねえよ…」


さやか「あ、あたしは…仁美が元に戻って恭介と幸せになってほしい…」

QB「その願いは君にとって命を掛けるに足るものかい?」

さやか「…うん」

QB「契約は成立だ、君の祈りは、エントロピーを凌駕した」

さやか「うっ…」

QB「さあ、受け取るといい、それが君の運命だ」


シュイーン
……


……

杏子「…さやか」

さやか「…ごめん…杏子先輩…あたしのこと考えてくれてたのに」

杏子「……」

杏子「約束してほしいことがある…さやか」

さやか「…」

杏子「…絶対に希望を見失うなよ」

さやか「うん…わかってる」

ほむら「……」

ここまでが『さやか編』となります

長い割につまらなくて大変申し訳ないですが
読んでくれてる人がいるだけで大変気が楽になります

>>1です
大変遅れて申し訳ないです
再開します

_ワルプルギスの夜編_




翌日
~見滝原市内某ホテル一室~


仁美「……あ」

仁美「……こ、ここは…どこなんですの…??」


仁美「…私は、一体……」


~仁美の家~


ドタタタタッ!
執事部下「はぁ!…はあ!…はぁ!」

執事「…どうした?こんな朝早くから、騒々しい」

執事部下「お、お嬢様がお見えになりました!!」


執事「何を言っているんだ…そんなはずは……」



スタスタスタ
仁美「…ご迷惑おかけしました」


執事「!!」

執事「お、お嬢様??」

執事「本当に仁美お嬢様なのですか!?」

仁美「とても迷惑をかけてしまったようで…」

執事「ご無事だったんですね!!」

執事「良かった!良かった!本当に良かった…」

執事「…ところで…今まで何を?」

仁美「それが…私もあまり覚えていなくて…」

執事「……」

執事「とりあえず…本当に良かった…ご無事で!」

執事「ご当主様と奥様も現在帰国中ですので、もうすぐ元気なお嬢様のお顔が見れるとご連絡しておきます」

執事「…それと一応、検査の為に病院へ」

~見滝原市内病院~


仁美「…私はなんともありませんわ」

執事「一応です、何かあったかもしれませんから」

仁美「……」

仁美(…そういえば、この病院には上条君が…)


ダダダダダッ

執事「あっ!」

執事「お、お嬢様!どこへ行かれるんですか!!」

~同病院内上条恭介病室~


ガララ…

仁美「はあ、はあ、はあ…」

恭介「え」

恭介「ひ…仁美??」

仁美「か、上条君…」

恭介「ひ、仁美!!無事だったんだ!!」

恭介「良かった!良かった!…っ…ほんとに…っ…良かった…」

仁美「……上条君」

恭介「…うっ…ひくっ…行方不明だってっ…聞いてから…どれだけ心配だったことかっ…っ」

仁美「…ごめんなさい…上条君…」

恭介「…もういなくなったりしないで…仁美っ…っ」

仁美「ずっとそばにいますわ…上条君…」

恭介「……うっ…ありがとう…ありがとう…っほんとにありがとうっ…仁美…!」


~病室前~


執事「ま、まさか…お嬢様…あの少年と…」コソコソ


さやか「良かった…願い…ちゃんと叶ったんだ」

さやか「…幸せになってね…恭介…仁美」



執事(あ、あの子は確か仁美お嬢様のお友達の…)


さやか「あ…」チラ
ダダダダダッ


執事「あ!ちょっ…待って…!」


~マミの家~


マミ「……うっ…ひくっ…!」

マミ「…私…私っ…!」



~回想~
ほむら『あなたは私たちのリーダーなのよ』



マミ「私…」

マミ「…どうすればいいの?…パパ…ママ…」

マミ「…ひくっ…どうすれば…っ」


~まどかの家~


まどか「……」

QB「入っていいかい? 話があるんだ」

まどか「……」

まどか「昨日の話、本当なの?」

QB「昨日も言ったじゃないか、訂正するほど間違ってはいないよ」

まどか「じゃあ、あなたはみんなを魔女にするために、魔法少女に?」

QB「勘違いしないでほしいんだが、僕らは何も、人類に対して悪意を持っている訳じゃない」

QB「全ては、この宇宙の寿命を伸ばすためなんだ」

QB「まどか、君はエントロピーっていう言葉を知ってるかい?」

QB「簡単に例えると、焚き火で得られる熱エネルギーは、木を育てる労力と釣り合わないってことさ」

QB「エネルギーは形を変換する毎にロスが生じる」


QB「宇宙全体のエネルギーは、目減りしていく一方なんだ」

QB「だから僕たちは、熱力学の法則に縛られないエネルギーを探し求めて来た」

QB「そうして見つけたのが、魔法少女の魔力だよ」

まどか「あなたは…一体…?」

QB「僕たちの文明は、知的生命体の感情を、エネルギーに変換するテクノロジーを発明した」

QB「ところが生憎、当の僕らが感情というものを持ち合わせていなかった」

QB「そこで、この宇宙の様々な異種族を調査し、君たち人類を見出したんだ」

QB「人類の個体数と繁殖力を鑑みれば、一人の人間が生み出す感情エネルギーは、その個体が誕生し、成長するまでに要したエネルギーを凌駕する」

QB「君たちの魂は、エントロピーを覆す、エネルギー源たりうるんだよ」

QB「とりわけ最も効率がいいのは、第二次性徴期の少女の、希望と絶望の相転移だ」

QB「ソウルジェムになった君たちの魂は、燃え尽きてグリーフシードへと変わるその瞬間に、膨大なエネルギーを発生させる」

QB「それを回収するのが、僕たち、インキュベーターの役割だ」


まどか「私たち…消耗品なの?あなたたちのために…死ねって言うの?」

QB「この宇宙にどれだけの文明がひしめき合い、一瞬ごとにどれ程のエネルギーを消耗しているのか分かるかい?」

QB「君たち人類だって、いずれはこの星を離れて、僕たちの仲間入りをするだろう」

QB「その時になって、枯れ果てた宇宙を引き渡されても困るよね?」

QB「長い目で見れば、これは君たちにとっても、得になる取引のはずだよ?」

まどか「バカ言わないで、そんなわけのわからない理由で、仁美ちゃんが死んで、あんまりだよ…酷過ぎるよ」

QB「僕たちはあくまで君たちの合意を前提に契約しているんだよ?」

QB「それだけでも充分に良心的なはずなんだが」

まどか「みんな騙されてただけじゃないっ!」


QB「騙すという行為自体、僕たちには理解できない」

QB「認識の相違から生じた判断ミスを後悔する時、何故か人間は、他者を憎悪するんだよね」

まどか「あなたの言ってること、ついていけない、全然納得できない」

QB「君たち人類の価値基準こそ、僕らは理解に苦しむなあ」

QB「今現在で70億人、しかも、4秒に10人づつ増え続けている君たちが、どうして単一個体の生き死ににそこまで大騒ぎするんだい?」

まどか「そんな風に思ってるなら、やっぱりあなた、私たちの敵なんだね」

QB「これでも弁解に来たつもりだったんだよ?」

QB「君たちの犠牲が、どれだけ素晴らしい物をもたらすか、理解して貰いたかったんだが、どうやら無理みたいだね」

まどか「当たり前でしょ?」


QB「まあ、それでも魔法少女になりたがる子はいたんだけどね」

まどか「えぇ?」

QB「さやかは仁美を元に戻すことを条件に契約したんだよ、まだ聞いてなかったのかい?」

QB「だから仁美は死んでないんだよ」

まどか「…嘘…だよね?」

QB「本当だよ、確かめてみたら?」

まどか「」

QB「まどか」

QB「いつか君も、最高の魔法少女になり、そして最悪の魔女になるだろう」

QB「その時僕らは、かつて無い程大量のエネルギーを手に入れるはずだ」

QB「この宇宙のために死んでくれる気になったら、いつでも声をかけて、待ってるからね」
スゥ…


まどか「…さやかちゃん」


~ほむらの家~


ほむら「……」

杏子「……」


ほむら「…そろそろいいかしら?」

杏子「何がだよ?」

ほむら「あなたが落ち着いたかどうか聞いてるの」

杏子「……落ち着いてるよ」

ほむら「美樹さやかは仕方なかったと諦めるしかないわ」

杏子「…諦めてねーよ、契約は仕方なかったかもしれねーけど…」

杏子「アイツはアタシが絶対守る…ワルプルギスの夜との戦いには絶対出るなって念を押しといたからな、それに予備のグリーフシードも渡してきた」


杏子「アタシらだけでも勝てるんだろ?」

ほむら「なりたての美樹さやかになど頼らないわ」

ほむら「そうね…私たちだけで十分のはずだけど、巴マミは大丈夫なの?」

杏子「…っ」

ほむら「彼女は今、絶望の淵にいる」

杏子「だったら…アタシが…!」

ほむら「馬鹿なことはやめて…もうできるだけのことはやったわ」

ほむら「…後は巴マミを信じるしかない」

杏子「…」


ほむら「どうなるかはわからない…わからないからこそ、今のうちに作戦を練るわよ」

杏子「いざとなりゃアタシたち2人でどうにかするぜ」

ほむら「ええ、そのためにも作戦が必要ね」

ほむら「まずワルプルギスの出現予測ポイントはこの付近」

杏子「……」

ほむら「作戦としては、あなたに低空にいる魔女の手下を殲滅、一掃してほしい」

杏子「アタシは下っぱの相手かよ」


ほむら「私は多数の重火器を用いて奴に挑む、だからあなたにはその邪魔をする手下を一掃してほしいの」

杏子「けっ、本命はやれせてくれねーのか?」

ほむら「そして奴が弱ってきたら次はあなたが直接攻撃をしかける」

ほむら「私があなたの援護をするわ」

杏子「ふーん、止めはアタシがもらっていいんだな」

ほむら「ええ、好きにしなさい、奴を倒せればの話だけど」

ほむら「巴マミが参加した場合は武器の特性上、私と一緒に戦ってもらう事になるけど異論はないわね?」

杏子「ああ」


ピンポーン


杏子「誰か呼んだのか?」

ほむら「…いえ、誰も呼んでないわ」



ほむら「……」

ガチャ…


まどか「あ、ほむらちゃん、ちょっといいかな?話があるんだけど……」

ほむら「まどか…」

ほむら「…入って」


スタスタ…

まどか「あ、杏子ちゃんもいたんだ」

杏子「ああ、気にしなくていいよ、アタシはもう帰るからさ、コイツに話があって来たんだろ?」

まどか「あ、ううん、気にしなくていいよ、杏子ちゃんっ」

杏子「いいって、いいって、丁度話も一段落ついたとこだしさ、なあ?」

ほむら「……」コク

まどか「…そうなの…なんかごめんね…杏子ちゃん」

杏子「気にすんなって、じゃあ、またな」

まどか「うん、またねっ、杏子ちゃん」


まどか「わ、わぁ、この天井の絵とか数字は何!?」

ほむら「まどかには関係ないわ、魔法少女の資料よ…」

まどか「そ、そうなんだ…」

ほむら「…それで、話って?」

まどか「その…あのね…QBに聞いたんだけど、さやかちゃんが契約したって…」

ほむら「……」

まどか「…ほんとうなのかな…と思って」

ほむら「そうね、事実よ」


まどか「…仁美ちゃんを助けるために契約したの?」

ほむら「ええ」

まどか「そ、そうなんだ…」

ほむら「…」

まどか「うっ…ひっ…くっ…いくら…仁美ちゃんのためでもっ…さやかちゃんまでっ…契約しちゃうなんて…っ!」

ほむら「…彼女はそこまでの覚悟があって志筑仁美を助けたのよ」

まどか「でも、でも、魔女になっちゃうんでしょ…?」

まどか「ううっ…ひくっ…どうしてっ…そこまで…してっ……っ」

ほむら「……」


ほむら「自分自身の希望を叶えるために彼女は魔法少女になった…この先の運命を知っても、彼女は魔法少女になることを選んだのよ」

ほむら「私も、杏子も、巴マミも、美樹さやかも、志筑仁美も皆、そういう契約で、私達はこの力を手に入れたの」

ほむら「誰のためでもない、自分自身の希望のために、戦い続けるのよ」

まどか「そんな…」

まどか「…他に仁美ちゃんを助ける方法は無かったの…?」

ほむら「無かったわ、魔女になった魔法少女を元に戻すことは他の誰かが契約するしかない」

ほむら「だから今回は仕方なかった…あなたが責任を感じる必要は無いわ」

まどか「…う、うん…責任っていうか…なんて言うか…」


ほむら「……」

まどか「…でも、みんな自分を犠牲にして、希望を叶えて戦うなんて、すごいなって思って…」

まどか「…なんか私だけ…何もできなくて…何もしてなくて…このままでいいのかな…って」

ほむら「っ…」

ほむら「あなたは何もしなくていいの、魔法少女になる必要なんてない」

ほむら「あなたは、『鹿目まどか』のままでいればいい」

まどか「……」


まどか「私ね、最初はマミさんに助けられて、悩んだんだけど、契約するつもりだったの…」

ほむら「……」

まどか「私ってね、昔から得意な学科とか、人に自慢できる才能とか何もなくて」

まどか「きっとこれから先もずっと、誰の役にも立てないまま、迷惑ばかりかけていくのかなって」

まどか「そんな風に思ってて、それが嫌でしょうがなかったの…」

まどか「でもマミさんと会って、誰かを助けるために戦ってるの、見せてもらって」

まどか「同じことが、私にもできるかもしれないって言われて、何よりも嬉しかったの…そのことが」

まどか「だから私ね、魔法少女になれたらそれで願いごとは叶っちゃうなって思ってた…」

まどか「だけど、マミさんが杏子ちゃんに助けられて、あの時、杏子ちゃんが来てなかったらって思うと、考えたくもないし」

まどか「それに杏子ちゃんは魔法少女に絶対になるなって私たちに忠告してくれて、ほむらちゃんはもっと前から忠告してくれてたんだよね」


まどか「だから私も一時は契約はいいかなって思ってたんだけど…さやかちゃんも契約しちゃって…」

まどか「私、これからもこのままでいいのかな…って、もちろん、契約はよくないことだってわかってるんだけど…」

まどか「私自身が自分の本当の気持ちがわからなくなって……どうしたらいいんだろ…って」

ほむら「……」

ほむら「…っ!」

ほむら「本当の気持ちなんて、伝えられるわけないのよ」

まどか「ほむらちゃん?」


ほむら「だって、だって私は…私はまどかとは、違う時間を生きてるんだもの!」
スタスタ…
ダキッ

まどか「えっ…?」

ほむら「…私ね、未来から来たんだよ、何度も何度もまどかと出会って、それと同じ回数だけ、あなたが死ぬところを見てきたの」

ほむら「どうすればあなたが助かるのか、どうすれば運命を変えられるのか、その答えだけを探して、何度も始めからやり直して」

まどか「それって…えぇ?」

ほむら「ごめんね、わけわかんないよね…気持ち悪いよね」



ほむら「まどかにとっての私は、出会ってからまだ1ヶ月も経ってない転校生でしかないものね」

ほむら「だけど私は…私にとってのあなたは…」

ほむら「繰り返せば繰り返すほど、あなたと私が過ごした時間はずれていく、気持ちもずれて、言葉も通じなくなっていく、多分私は、もうとっくに迷子になっちゃってたんだと思う」

まどか「ほむら…ちゃん…」

ほむら「あなたを救う、それが私の最初の気持ち…それが私の願い、今となっては…たった一つだけ最後に残った、道しるべ」

ほむら「わからなくてもいい、何も伝わらなくてもいい、それでもどうか、お願いだから、あなたを私に守らせて」


その後
~見滝原市内~


まどか「あ、さやかちゃん」

さやか「まどか~、なになに、こんなとこに呼び出して」

まどか「さやかちゃん…魔法少女になったって本当なの?」

さやか「誰から聞いたの?」

まどか「…ほむらちゃん」

さやか「あはは…そっかあ…ばれちゃ、しょうがないかあ…」

さやか「じゃじゃーん!」

まどか「…さやかちゃん…っ!」

まどか「…やだよっ…さやかちゃんもっ…魔女になっちゃう…なんて…っ」


さやか「お、おいおい…まどか~?あたしはまだ魔法少女だぞ~っ」

まどか「…い、いくら…仁美ちゃんのため…だからっ…て…っ」

さやか「……」

さやか「あたしはさあ…恭介の悲しむ顔見たくなかったんだ…」

さやか「恭介の奴…本気で仁美のこと心配してたみたいだったからさ…」

さやか「いいんだ、あたしはこれで!後悔なんてしてないし」

さやか「あの2人が幸せになってくれることがあたし自身の希望にもつながるからさ」

さやか「…いいんだよ」

まどか「……」


さやか「なーに、心配すんなって~!杏子先輩からの教えもちゃんと胸に刻んであるんだからっ」

まどか「…ぐすっ…さやかちゃんは魔女になったりしない…?」

さやか「当たり前じゃん!」

さやか「…あたしは希望を見失わない…杏子先輩の言いつけ絶対守るんだ」

まどか「うん…絶対だよ」


その後
 ~まどかの家~


まどか「……」

まどか「さやかちゃんも契約しちゃった…」

QB「意外な展開ではないよ」

まどか「どうでもいいって言うの?」

QB「はあ」

QB「例えば君は、家畜に対して引け目を感じたりするかい?」

QB「彼らがどういうプロセスで、君たちの食卓に並ぶのか」

まどか「あっ…やめてよ!」


QB「その反応は理不尽だ」

QB「この光景を残酷と思うなら、君には本質が全く見えていない」

まどか「…?」

QB「彼らは人間の糧になることを前提に、生存競争から保護され、淘汰されることなく繁殖している」

QB「牛も豚も鶏も、他の野生動物に比べれば、種としての繁殖ぶりは圧倒的だ」

QB「君たちは皆、理想的な共栄関係にあるじゃないか」

まどか「同じだって言いたいの?」

QB「寧ろ僕らは、人類が家畜を扱うよりも、ずっと君たちに対して譲歩しているよ?」

QB「曲がりなりにも、知的生命体と認めた上で交渉しているんだしね」

QB「信じられないのかい?」

QB「それなら、見せてあげようか、インキュベイターと人類が、共に歩んできた歴史を」

まどか「!」


QB「僕たちはね、有史以前から君たちの文明に干渉してきた」

QB「数え切れないほど大勢の少女が、インキュベーターと契約し、希望を叶え、そして絶望に身を委ねていった」

まどか「!」

QB「祈りから始まり、呪いで終わる――これまで、数多の魔法少女たちが繰り返してきたサイクルだ」

QB「中には、歴史に転機をもたらし、社会を新しいステージへと導いた子もいた」

まどか「もうやめて…!みんな、みんな信じてたの…!信じてたのに裏切られたの」

QB「彼女たちを裏切ったのは僕たちではなく、寧ろ自分自身の祈りだよ」

QB「どんな希望も、それが条理にそぐわないものである限り、必ず何らかの歪みを生み出すことになる」

QB「やがてそこから災厄が生じるのは当然の節理だ」

QB「そんな当たり前の結末を裏切りだと言うなら、そもそも、願い事なんてすること自体が間違いなのさ」

QB「でも、愚かとは言わないよ」


QB「彼女たちの犠牲によって、人の歴史が紡がれてきたことも、また事実だし」

QB「そうやって過去に流された全ての涙を礎にして、今の君たちの暮らしは成り立っているんだよ」

QB「それを正しく認識するなら、どうして今更、たかだか数人の運命だけを特別視できるんだい?」

まどか「ずっとあの子たちを見守りながら、あなたは何も感じなかったの?みんながどんなに辛かったか、わかってあげようとしなかったの?」

QB「それが僕たちに理解できたなら、わざわざこんな惑星まで来なくても済んだんだけどね」

QB「僕たちの文明では、感情という現象は、極めて稀な精神疾患でしかなかった」

QB「だから君たち人類を発見した時は驚いたよ」

QB「全ての個体が、別個に感情を持ちながら共存している世界なんて、想像だにしなかったからね」

まどか「もしも…あなたたちがこの星に来てなかったら」

QB「君たちは今でも、裸でほらあなに住んでたんじゃないかな」


____翌日




ゴゴゴゴゴゴゴゴ



研究員「雷雲がとんでもない勢いで分裂と回転を起こしています、明らかにスーパーセルの前兆です、直ちに避難指示の発令を」

広報車「本日午前7時、突発的異常気象に伴い避難指示が発令されました」

広報車「付近にお住いの皆さんは、速やかに最寄りの避難場所への移動をお願いします、こちらは見滝原市役所広報車です」

広報車「繰り返します、本日午前7時……」


~見滝原市内避難所~


ガヤガヤ…
ザワザワ…


タツヤ「今日はお泊り~?キャンプなの~?」

知久「ああ、そうだよ、今日はみんなで一緒にキャンプだぁ~」

タツヤ「やったぁ、キャンプ~お肉焼くの~?」

まどか「……」


まどか「あ、さやかちゃん!」

さやか「おお、まどか~!」

まどか「さやかちゃんもここに?」

さやか「うん、なんかやばそうだったからさあ」

まどか「そっか…」

さやか「これって…多分…杏子先輩が言ってた…」

まどか「え?」


さやか「そっか…まどかは知らないのか…『ワルプルギスの夜』って言う超でかい魔女らしいよ」

まどか「ええ!?大丈夫なの??」

さやか「うん…杏子先輩はあたしはまだなりたてだし、自分たちだけで十分だから絶対に戦いには参加するなって」

まどか「えっ、じゃ、じゃあ…ほむらちゃんも…?」

さやか「うん、多分ほむらもいると思う、一人では手強い魔女だって言ってたから、2人で戦うつもりだと思う…」

まどか「だ、大丈夫かなあ…ほむらちゃんたち……」

さやか「……」


~見滝原市内~
~ワルプルギスの夜出現予測ポイント付近~


杏子「…結局、集まったのはアタシらだけか」

ほむら「そうね」

杏子「おっと、忘れてたぜ、これ、アタシはもう浄化したからさ、残りのグリーフシードだ、使えよ」
ヒョイッ

ほむら「…いいの?もう私にグリーフシードのストックは無いわ、恩返しは期待できないわよ」

杏子「ああ、今までの借りの分だと思え、気にすんな」

ほむら「……」シュルル

杏子「…これで残りは一個だけだ、大丈夫か?」

ほむら「ええ、これだけ浄化出来てれば十分よ」


杏子「…今までありがとな」

ほむら「…?」

杏子「…これがどんなに結果になろうと、アタシはアンタと過去に戻れたこと、後悔してないぜ」

ほむら「……」

ほむら「…本当に…あなたらしくないわね」

杏子「…それ、もう聞き飽きたよ」

杏子「さあって…んじゃ、アタシたちで『最後は愛と勇気が勝つストーリー』って奴にしてやろーじゃねーか!!」

ほむら「ええ…もちろん…そのつもりよ!」
バッ!
バッ!



ゴゴゴゴゴゴゴゴ…


舞台装置の魔女「キャハハハハハハハ」


杏子「!!」

杏子「んだよ…あの馬鹿でけーのは!?」

ほむら「あれが『ワルプルギスの夜よ』」

杏子「はあ!?てめぇあんなのに一人で戦ってたのか!?」

ほむら「無駄口を叩いてる暇はないわ」


ほむら(今度こそ…決着をつけてやる!)

ガガガガガガガガガガガガガ!!

カシャッ…

カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!
カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!
カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!
カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!カチャ!ズギューン!

…カチッ

ヒューヒューヒューヒューヒュー…

ドドドドドドドドドドドガン!!


杏子「す、すげぇ…アイツ…」

杏子「アタシも負けてらんねーな!!」

グッ!
シュイーン!シュイーン!シュイーン!シュイーン!シュイーン!シュイーン!シュイーン!シュイーン!シュイーン!

杏子「これで戦力は十倍だぜ!」

ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!
ズババッ!
ズババッ!


杏子「安心しろ、てめーの邪魔はさせねーよ…」



魔女手下「キャハハハハ」

ザシュッ!ザシュッ!



 「キャハハハハハハ」

ほむら「……」


カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ

ドドドドドドドドドドドドドドガアアアン!!


ズズズズ……

舞台装置の魔女「フフフフフフフフ」


ほむら「…」

ポチ

ピー!!

ドドーン!!!!

ほむら「杏子!今よ!直接攻撃を!!」

杏子「おう、待ってたぜ!!」


舞台装置の魔女「フフフフフフフフ…キャハハハ」


シュインシュインシュインシュインシュイン!!

杏子「喰らえぇぇっ!!」

ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!!


ゴゴゴゴゴゴ…

杏子「…これで終わりだろ」


バシュー!

杏子「!」
ガギーン!

魔女手下「キャハハハハ」

杏子「くっ!」

杏子「…ま、まだピンピンしてやがんのか…!?」


ほむら「くっ!」


~見滝原市内避難所~


さやか「…杏子先輩たち…やっぱり戦ってるみたい」

まどか「……」

さやか「あたし…ここにいていいのかな…」

まどか「…でも、杏子ちゃんに言われたんでしょ?戦っちゃダメだって…」

さやか「…う、うん…そうだけど…」

まどか「そう言えばマミさん、どうしてるんだろう…マミさんも戦ってるのかな…」

さやか「…うーん、あの時も相当ダメージ受けてたみたいだからなあ…」


 ~マミの家~


~~~~~~~~


マミ『……パパ?ママ?どこにいるの?』

スゥゥ…

マミ父母『マミ…』

マミ『ママ!パパ!』

マミ『わ、私ね…もうそっちにいきたくなっちゃった…すごく寂しくて…もう、疲れちゃったの…』

マミ父母『……』

マミ『ママ…パパ…』


マミ母『…マミ、あなたにはまだしなきゃならないことがあるはずよ』

マミ『え?』

マミ父『マミは私たちの分まで頑張らなきゃならないことがあるよ』

マミ『パパ……』

マミ母『…大事な人と一緒にいたいって気持ちは誰でも同じなのよ…マミ』

マミ『…う、うん』

マミ母『…あなたの今するべきことは何?マミ…よく考えて』

マミ母『あなにならできる、あなたにしかできないことがあるはずよ、みんなを助けてあげて…』

マミ『あ!ママ…パパ…待ってよ…待ってよ!』

マミ『……』

…スゥ

~~~~~~~~

___

マミ「はっ!」

マミ「…ゆ、夢……?」


ドドーン…
ドーン…

マミ「…何かしら?」


マミ「!!」

マミ「あ、あれは…!」

マミ「……暁美さんと佐倉さんが戦ってる…?」

マミ「わ…私は……っ」


~回想~
ほむら『あなたは私たちのリーダーなのよ』


マミ「……私が…みんなの……」


~見滝原市内中心部~
~ワルプルギスの夜出現予測ポイント付近~


舞台装置の魔女「キャハハハハハ」


杏子「ったく…なんて野郎だ…」

杏子「おい!まだ大丈夫か!?」

ほむら「ええ」


杏子「よし…んじゃ第二波と行くか…」

ほむら「……」


バシュー!
バシュー!
魔女手下「キャハハハハ」

ほむら「!」

杏子「!」
ガキーン!
ガキーン!

杏子「クソっ!!…なめ…やがって…!」

ほむら「くっ!」
ガキン!

杏子「あの野郎…本気になりやがったってことか…!」


バシューン!
ガギン!

ほむら「このまま…この攻撃が続けば…耐えきれない…!」


バシュー!
魔女手下「キャハハハ!」

杏子「しまった!!」



…ズギューン!
魔女手下「ギャッ!」

ドガーン!


ほむら「!!」

杏子「な!なんだ!?」


??「ティロ・リチェルカーレ!!」

ドドドドドカーン!!

ズズズズ…


杏子「こ、こいつは…!」

杏子「マミ!!」

マミ「良かったわ、間に合って」

ほむら「戦う覚悟を決めたのね…巴マミ」

マミ「ええ、もちろんよ…」

マミ「だって私はみんなのリーダーですもの」


杏子「マミ!これを使え!最後の一個だ!」
ヒュッ

パシッ
マミ「グリーフシード…」

杏子「マミまで魔女になっちゃ、かなわねーからな」


マミ「いいの?佐倉さん」

杏子「ああ、アタシたちは大丈夫だ、その代わり、きちんと援護頼むぜ」

マミ「もちろんよ、任せて」
シュルル



杏子「さぁて…んじゃこっちも反撃と行こうぜ!」


ガガガガガガガガ
ザシュッ!ザシュッ!
ズバババババ!
ズギューン!ズギューン!ズギューン!ズギューン!


舞台装置の魔女「キャハハハハ」


杏子「なんてタフな野郎だ…」

ほむら「効いてないはずはないわ」

バシューン!


杏子「くっ!!」
ガキーン!!
ガキ…ガキ…キ…

杏子「…っ!」

マミ「佐倉さん!後ろ!!」

杏子「何っ!?」


ザザシュッ!!


杏子「ぐはっ…!」

マミ「佐倉さん!!」
シュイン!
シュルルル!


ほむら「…杏子!」

杏子「くっ…なんとか大丈夫だ……!」

杏子「はあ、はあ、はあ…」

マミ「大丈夫なはずないわ…ケガしてるじゃない…!」

マミ「私が治してあげる」

杏子「ま、待て…大したケガじゃない…アタシでもこんぐらいなら治せるさ、マミたちは先にアイツを…!」

マミ「そんなわけにはいかないわ!」

杏子「…アイツを倒さねえと意味がねえ…アタシは大丈夫だ…行け!」

マミ「佐倉さん…」

マミ「行くわよ!暁美さん!」

ほむら「…」コクッ
バッ!
バッ!


杏子「くっ…ははっ…ち、ちょっと強がっちまったかな…」


魔女手下「キャハハハハ!」

杏子「!」

杏子「て、てめーら…いつの間に…!」

杏子(ク、クソ…このケガじゃ…!!)


~見滝原市内避難所~


ゴゴゴゴゴ…


さやか「……」

まどか「……」

さやか「やっぱあたし…ちょっと様子見てくる」

まどか「えぇ…ダメだよ、さやかちゃん…杏子ちゃんに…」

さやか「でも…!杏子先輩たちがもしも…!」

まどか「…っ」

さやか「あたし…」

さやか「…杏子先輩を…恭介を…仁美を…みんなを守らないと…!」

まどか「待ってよお…ダメだよ…杏子ちゃんに…」


さやか「で、でも…」

まどか「……QB、杏子ちゃんやほむらちゃんは本当に戦ってるの?」

QB「もちろんさ」

QB「さっきグリーフシードの回収がてら見てきたけど今はマミも参加しているよ」

さやか「マミさんも戦ってるの!?」

QB「マミも戦う決意を固めたみたいだね」

まどか「も、もちろん…勝てるんだよね…?」

QB「あれだけの手勢だからね、負けることは無いと思うけど、ワルプルギスの夜の力は僕にも計り知れない」

QB「でも、諦めたらそこでお終いだ、彼女たちにとっては希望を持って前に進むことも、立ち止まることも、目を伏せることも、全て同じことなのさ」

QB「どうせその先にあるのは…」

まどか「もう!やめてよっ!」

まどか「やめてよ…ひっ…ぐすっ…」


さやか「……」

さやか「ねぇQB、やっぱりあたしが出ても杏子先輩たちの役には立てないのかな…?」

QB「そんなことはないよ、さやか」

QB「君は自分の魂を犠牲にしてまで仁美を助けた、すなわちそれは最高の癒しの力を手に入れたということだ」

QB「君の魔法の属性は『癒し』それもただの癒しなんてレベルじゃない、最高の癒しの力だよ」

QB「だから君の回復力は人一倍、いや、それ以上だ」

さやか「本当…!?」

さやか「あたしの力で杏子先輩やマミさんたちの力になれるの?」

QB「もちろんだよ」

さやか「……あたし」

さやか「…やっぱり行かなくっちゃ」

さやか「みんなを守らなくっちゃ…杏子先輩たち助けなくちゃ…!」


まどか「さやかちゃんっ!!」

さやか「…まどか、あたしは必ず戻ってくるよ、約束したんだから希望を見失わないって…」

まどか「さやかちゃんっ…ひっ…ぐすっ…」

さやか「大丈夫、あんたは絶対に来ちゃダメだよ」

さやか「待っててね…まどか…」

さやか「…さよならは言わないよ」

まどか「うっ…うん…っ…絶対だよ…っ…さやかちゃん…っ…」


バッ!!


~見滝原市内中心部~
~ワルプルギスの夜出現予測ポイント付近~


杏子「て、てめーら…!!」

魔女手下「キャハハハハ」

魔女手下「フフフフフフ」

杏子「く、クソっ!!」



ガガガガガガ
ドゴーン!ドゴーン!
ズギューン!ズギューン!

マミ「佐倉さんが危ないわ!」

ほむら「!」
バッ!

ほむら(お願い…間に合って!)


バシューン!
ほむら「!!」

魔女手下「キャハハハハ」
ガンッ!

ほむら「っ…!!きゃっ…!…ぐふっ!」
ドタッ!
ズササー

マミ「暁美さん!!」


ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュッ!

ザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュ!!


魔女手下「ギャッ!」

魔女手下「グフッ!」
ドガーン!


マミ「こ、これは…」

ほむら「…はぁ、はぁ…何?」

杏子「……ん?」


杏子「さ…さやか…!?」

さやか「…ごめん、杏子先輩」

杏子「おい!出てくるなって…!」

さやか「…もう、こんな状態でよくそんなこと言えるね」

さやか「あたしが来なきゃ今頃どうなってたと思う?」

杏子「…っ」

さやか「今、傷治すよ」
シュイーン…


杏子「さやか…」

さやか「あたしだって…自分の力で守りたいものがあるんだよ…だからその為に手伝わせて」

杏子「…っ」

杏子「…下手打つんじゃねーぞ…絶対な…!」

さやか「うん」


マミ「ど、どうして美樹さんが!?」

杏子「…そうか、マミは知らなかったんだな」

杏子「まっ、理由はアレだ、こいつを倒してからのお楽しみって奴だな」

さやか「…そうだね、あたしたちには帰る場所も、待ってる人もいる、こいつを倒して終わらせようよ」

マミ「そうね…わかったわ、話は後でゆっくりお茶でも飲みながら聞きましょうか」

さやか「ほむらも大丈夫?」

ほむら「ええ…それよりもいいの?」

さやか「何が?」

ほむら「戦う覚悟はあるの?」

さやか「うん…もちろん、だから来たんだよ」


ゴゴゴゴゴゴゴ…

舞台装置の魔女「キャハハハハハハ」


杏子「さあって…役者は揃ったな…」

さやか「うん…絶対に勝って…帰るんだ…みんなで…!」

マミ「もちろんよ…絶対にね…!」

ほむら「……」コク



ヒュッ!ヒュッ!
ザシュッ!ザシュッ!
ズババッ!
ドガガガガガガ!
スギューン!ズギューン!


ズズーン…

下手ですがこの場面の挿絵上げときます


舞台装置の魔女「!!」

舞台装置の魔女「ひゃひゃ…ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」

ゴゴゴゴゴ



杏子「んだ?様子がおかしいぞ」

ほむら「攻撃が利いてるのよ…確実に…」

さやか「あ!まずい!避難所の方に向かってる!」

マミ「!!」

ほむら「これ以上先には…」

杏子「いかせねえ!!」
バッ!!


マミ「先行しすぎよ!佐倉さん!」

ほむら「杏子!」

杏子「大丈夫だ!アタシが奴の動きを止める、その間に攻撃を!」


舞台装置の魔女「ひゃひゃひゃひゃ…」

杏子「おい、これ以上は行かせねえ…」
グッ…
ズズズズス…゙
シュイーン!!
ガキン!ガキン!ガキン!


杏子「これで先には進めねーぞ!」

杏子「おうりゃあああ!!」
ガキン!
ガキキ!!

杏子「今だ!!」


舞台装置の魔女「ひゃひゃ…ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」

さやか「任せて!」
ヒュヒュヒュヒュヒュヒュッヒュッ!

ほむら「……」
ドガガガガガガガガガ!!

マミ「ティロ・フィナーレ!!」
ドガーン!



ドコオオーン!!


舞台装置の魔女「!!」

ズズズズズズ…


杏子「ふー…これでようやく……」


…ザシュ!!

杏子「!!」

杏子「ごはっ…!!」

魔女手下「フフフフフフフ」

杏子「ど、どこに隠れてやがったん…だ…っ!!」

杏子「く、クソ…っ!!」

杏子「っ……」
ドタッ…



舞台装置の魔女「ヒャハハ…ヒャヒャヒャヒャヒャ」


さやか「やったよ!杏子先輩!効いてるよ!」

さやか「あ、あれ?杏子先輩?」


杏子「……」

さやか「杏子先輩!!」
バッ!

さやか「こ…こんなに血が…っ!」

さやか「ねぇ!!杏子先輩!!もうすぐ倒せそうだよ!だから起きてよっ!!」

杏子「」

さやか「あたしが…あたしが治さなきゃ…!!」
シュイーン…


魔女手下「フフフフフフ」


さやか「今はあんたに構ってる暇はないの!」

さやか「早く…杏子先輩助けないと…!!」
シュイーン…



ズギューン!

魔女手下「ギャッ!」
ドーン


さやか「!」

マミ「気をつけて、美樹さん!どこに手下が隠れているかわからないわ」

マミ「って、佐倉さんっ!!」
バッ!


マミ「だ、大丈夫なの!?」

さやか「絶対、あたしが治してみせます!」

ほむら「…杏子!」

さやか「早く…早く…起きて…杏子先輩…!」
シュイーン…


杏子「」


~見滝原市内避難所~


ゴゴゴゴゴ…


まどか「……」

まどか「みんなが勝てるっていうのは、ホント?」

QB「それを否定したとして、君は僕の言葉を信じるかい?」

QB「彼女たちは今、最大の絶望に打ち勝とうとしている」

QB「でも、それに勝ったところであくまでも小休憩にしかならない」

QB「どんな希望を持って信じていようと、遅かれ早かれ彼女たちは皆そうなる」


まどか「希望を持つ限り、救われないって言うの?」

QB「そうさ」

QB「過去の全ての魔法少女たちと同じだよ」

QB「まどか、君だって一緒にみただろう?」

まどか「うぅ…っ…っ」

まどか「…でも、でも。でもっ!」


スタスタスタ…


詢子「どこ行こうってんだ?オイ」

まどか「ママ…」

まどか「私、友達を助けに行かないと」

詢子「消防署に任せろ、素人が動くな」

まどか「私でなきゃダメなの!」

パシッ…

詢子「テメェ一人のための命じゃねぇんだ!あのなぁ、そういう勝手やらかして、周りがどれだけ…っ」

まどか「わかってる、私にもよくわかる」

まどか「私だってママのことパパのこと、大好きだから、どんなに大切にしてもらってるか知ってるから、自分を粗末にしちゃいけないの…わかる」

まどか「だから違うの、みんな大事で、絶対に守らなきゃいけないから、そのためにも、私今すぐ行かなきゃいけないところがあるの!」

詢子「理由は説明できねぇってか」

詢子「なら…アタシも連れていけ」

まどか「ダメ、ママはパパやタツヤの傍にいて、二人を安心させてあげて」


まどか「ママはさ、私がいい子に育ったって、言ってくれたんでしょ?パパから聞いたよ、世界一の自慢の娘だって」

まどか「今でもそう信じてくれる?私を正しいと思ってくれる?」

詢子「……」

詢子「絶対に下手打ったりしないな?誰かの嘘に踊らされてねぇな?」

まどか「…うん」

トンッ…
まどか「ありがとう、ママ」


~見滝原市内中心部~
~ワルプルギスの夜出現予測ポイント付近~


シュイーン…
さやか「お願い!!杏子先輩!!起きて!!」

杏子「」


スッ…
QB「無理だよ、さやか」

さやか「え?」

QB「いくら君の癒しの力がすごくても、回復対象のソウルジェムの穢れが限界に達していては、どうしようもできない」

さやか「え……」

マミ「!!」

ほむら「!!」


さやか「…どういうこと」

QB「どんなに杏子の体を治しても、杏子自身のソウルジェムが魔力の大量消費により穢れを溜め込みすぎている」

QB「これじゃ、体が治っても意識が戻らないはずさ」

QB「君の癒しの力はすごいけど、ソウルジェムの浄化まではできないからね」

さやか「…どうすれば…いいの?」

QB「簡単なことさ、グリーフシードを使って穢れを浄化すればいいだけのことだよ」

QB「グリーフシードが無いなら、杏子は魔女になるのを待つしかない」

マミ「そ、そんな…!!」


ほむら「グリーフシードは!?」

さやか「そ、そうだ!!」

さやか「あたしが杏子先輩もらった分があるんだ…!」

さやか「杏子先輩は絶対に非常時以外使うなって言ってたけど…今がその時…だよね」
スッ

さやか「お願い…杏子先輩、魔女なんかにならないで…」
シュルル…


杏子「」


杏子「…っ、さ…やか…?」

さやか「杏子先輩っ!」ダキッ

さやか「よかったあ~」

杏子「お前、アタシなんかの為に…ま、まさか…グリーフシードを…!」

さやか「うん…杏子先輩を魔女なんかに絶対させないよ」

杏子「さやか……」

マミ「良かったわ…佐倉さん」

ほむら「杏子…」

杏子「アタシなんかのために…さやか」

さやか「約束したでしょ?絶対みんなで帰るって」

マミ「…そうよ、みんなで帰るのよ」


舞台装置の魔女「キャアアアアアアアアア!!」

バラ…バラバラ…ラ


全員「!!」


ほむら「…奴が悲鳴を…上げている…!」

マミ「攻撃がだいぶ効いてるようね」

さやか「もう後、ひと頑張りみたいだね、杏子先輩」

杏子「ああ、終わらせてやる」


マミ「みんな!魔力はもう残り少ないでしょうけど、次の一撃に賭けるわ!!」

ほむら「奴が弱っているわ、チャンスは今しかない」

マミ「用意はいい?みんな!」

さやか「いつでもOK!」

杏子「ああ!!」

ほむら「…」コクッ



マミ「全員で四方から囲んで一斉攻撃よ!」
バッ!
バッ!
バッ!


マミ「せーのっ!」


マミ「ベリタ・ティロ・フィナーレ!!」

ガチャ!!
ズギューン!!
ズズズズズ…
ヒュッ!
キュイーン…

ドドドオオォォーン!!


舞台装置の魔女「!!!」

舞台装置の魔女「ヒャヒャハハヤヤ…」

バラ…バラ…ラ

舞台装置の魔女「ひゃ…ひゃ…ひゃはは…」
ズズズ…
ドゴーン…


マミ「や、やった!!崩れていくわ!!」

ほむら「はぁ…!はぁ…!はぁ…!」

ほむら「か…勝ったの…?」
グラッ…

マミ「だ、大丈夫!?暁美さん!」


ほむら「はぁ…!はぁ…!少し…疲れたわ…」



さやか「はぁ…!はぁ…!あ、あたしもかも…っ」
グラッ

杏子「お、おい!さやか…大丈夫か!?」


さやか「…大丈夫、杏子先輩…ちょっと疲れただけ…だから…」

杏子「お、おい…さやか…」

さやか「それより…あ、あたしたち…ほんとに勝ったの…?」

杏子「ああ!お前のお陰だよ」

さやか「ううん…あたしだけじゃないよ…みんなで勝ったんだよ…」



まどか「みんな~!!」
ダダダダッ


マミ「鹿目さん!」

ほむら「まど…か…」


まどか「大丈夫なの!?みんな」

マミ「うん、なんとかね…暁美さんと美樹さんが少し心配だけど…」

まどか「そっか…ぐすっ…良かったっ…みんな無事でっ…ほんとによかった…っ」






ドタッ…


杏子「え」



杏子「って!おい!さやか!大丈夫か!?」

まどか「さやかちゃん!大丈夫!?」

マミ「美樹さん!!」

さやか「ご、ごめん…も、もう立ってるのも…キツイ…かも」

杏子「お、おい…と、とりあえずここで休め…」

さやか「う、うん…ごめんね…杏子先輩…」


さやか「ふう…」


さやか「うっ!!」

さやか「うっ…!…む、胸がっ…くっ…くる…苦しっ…!!」

まどか「えっ!大丈夫!!さやかちゃん!?」

杏子「お、おい!!さやか!!大丈夫か!!」

杏子「ま…まさか…!!おまえ…」

杏子「!!!」

杏子「ソ…ソウルジェムが……!!」


ほむら「!!!」

マミ「!!!」

杏子「ち!ちきしょー!!なんでだよ…っ!!」

杏子「ワルプルギス倒したのに…っ!」

杏子「おいっ!!誰か!!グリーフシードは!!」

杏子「誰かグリーフシードは持ってねえのか!!?」

杏子「おいっ!!」

マミ「…うっ…ひくっ…!」

ほむら「…っ」

さやか「あ、あはは…グリーフシードはさっきので…最後だよっ…うっ…!」


杏子「っ!!」

さやか「ちょ、ちょっと…魔力、使いすぎちゃったかなっ…っ」

さやか「ご、ごめん…み、みんな…約束…守れないかもっ…うっ!…」

まどか「ううっ…ひくっ…やだよぉ…さやかちゃんっ…さやかちゃんっ…!」

杏子「なんでだよ!!!!」
ダンッ!!

杏子「くっ…!!…ううっ!!」

さやか「ごめんっ…杏子先輩っ…あたしの為に…あんなに頑張ってくれてたのに…っ」

杏子「…うっ……!!」


さやか「泣くなんて杏子先輩らしくないよ…まどかもごめん…ほんとにごめん…みんなっ…うっ…!」

さやか「ごめんっ…杏子先輩…最後に…頼みたいことがあるんだ…っ」

さやか「あ、あたしね…魔女なんかに…なりたくない……っ」

さやか「…みんなを傷つけたくない…ううっ…だから、お願いっ…!」

杏子「!!」

ほむら「!!」

マミ「そんなっ…ううっ…美樹さんっ…!!」

ほむら「っ…こんなこと…!」

マミ「美樹さんっ…ダメよ…っ!」

杏子「…ひくっ…!さやか…っ!」

 
まどか「さやかちゃんっ!…ううっ…いやだよっ!…絶対やだよっ…っ!」

まどか「こんなのひどいよっ…どうして…!ひっ…ぐすっ…さやかちゃん…っ!!」

さやか「…ごめんねっ…うっ!…みんな…お願いっ…杏子先輩っ…!」


杏子「…はっ…ぅ、ぐっ……うぅ………うう゛ううううう゛う゛うっ!!」




ザシュッ…
ガキン…


杏子「で、っ…できるわけっ…ねーだろ…っ!」

ほむら「杏子…ダメよ…後悔するわ…くっ…だから…だから今のうちに…っ!」

マミ「ううっ…ひくっ…!」

まどか「いやだよぉっ…こんなのって…ひっ…ひどいよっ…!」


杏子「っ…で、できるわけねーだろおおぉぉぉっ!!」

さやか「…そ、そっか…やっぱ杏子先輩は…ほんとに優しいや…っ」

さやか「ごめん…杏子先輩…ごめん、まどか…ごめん…マミさん、ごめん、ほむら…」

さやか「…みんな…ほんとにごめん…っ」

さやか「うっ…ううっ…っ!!」


パキッ…パキキ…キン…!


ゴゴゴゴゴゴゴゴ…


杏子「っ!!」

ほむら「……遅かったわ」

マミ「!!」

まどか「…そんな…どうしてっ…ぐすっ…さやかちゃん!!」



オクタヴィア「キャアァァァァァ!!」


まどか「さやかちゃんっ!…やだよっ!さやかちゃんっ!!」

杏子「っ…ちきしょう…!ちきしょう!!ちきしょう!!ちきしょう!!ちきしょおぉっ!!!」
ダン!!!

杏子「っ…ううっ…さやか…っ」

杏子「…んでだよ…なんでなんだよぉぉ!!!!」



オクタヴィア「キャアアアアア!!」
ブンッ…

ほむら「杏子!避けて!!」

マミ「!!」
バッ!


ザシュッ!!


マミ「うっ!!」


杏子「マ!マミ!!」

杏子「お、お前…!!」

マミ「さ…佐倉さん…今度は…私があなたを助ける番ね…良かったわ…無事で…」

マミ「ひくっ…美樹さんに…これ以上誰も傷つけさせないで…ううっ…お願いっ…っう…佐倉さんっ……お願いっ!!」



パキ…パキキ…パリンッ…!


ドタッ…


まどか「マミさん!!」

まどか「マミさんっ…!!マミさん…!!」

まどか「…もう…やめてよっ…もういやだよぉ…っ…こんなの…っ」

杏子「マミぃっ!!!」

杏子「くっ…!!うっ…!!…ううっ!!」

杏子「アタシのせいだ…全部アタシの…っ!!」

杏子「クソがあああああ!!!」

杏子「うあああああああ!!!」
バッ!


ほむら「杏子っ!」


杏子「目を覚ませよ!!!さやか!!!いい加減にしてくれよっ!!!」


ザシュ!!



オクタヴィア「キャアアアアアア!」




杏子「そ、そうだ!!」

杏子「ほむら!!」
バッ!


杏子「もう一度、過去に行かせろ、やり直させろ!!」

ほむら「!」

杏子「いいから行かせろ!!」

杏子「こんなの許せねーよ!!こんな未来あるかよ!!」

杏子「許せねーよ…っ!!こんな未来…!!」


ほむら「…」

ほむら(このまま、またこの時間を無為にすれば、まどかの因果が増える…でも、杏子だって…さやかを助けたい気持ちは同じはず…っ…)

ほむら(…杏子がいたからここまで来れた…でも…!!私は…まどかを…!!)


杏子「おい!!」


ほむら「……」

ほむら「……捕まって」
ギュ

杏子「……」


カシャ!


………



カシャ!

カシャ!


杏子「ん…どうした?」

ほむら「……あ」

ほむら「あ、ああ…」

杏子「おいっ!」

ほむら「…も、もう魔力が残ってないわ…戻れるだけの…」

ほむら「はあ!!?」

杏子「ッ!」

杏子「んだよそれ!!!」

杏子「て、てめーが望んだのはこんな未来だったのかよ…!ふざけんなよっ!!」

ほむら「…違うわっ…!でもっ…私まで諦めたら…それは…っ!」

杏子「ふざけんなよ……!」

杏子「ふざけんなよおぉっ!!!」


オクタヴィア「キャアアアアアア!!」
ブン…


ほむら「杏子!!後ろ!!!」


杏子「くっ!!」

ガン!

ドガッ!


ほむら「痛っ!!」


…ザシュッ!!


まどか「そんなっ…杏子ちゃん…っ!?」

杏子「はぁ…はぁ…はぁ…さやか…」

ほむら「杏子!!」

ほむら「わ、私を庇って…」


杏子「…わ、悪かったな…アタシの馬鹿に付き合わせちまって…ほむら…」

ほむら「杏子…!!!」

杏子「…てめーらといれた時間は少なかったかもしれねーけど…楽しかった…」

杏子「てめーは…ただ一つだけ、守りたいものを最後まで守り通せばいい…守れなかった…アタシの代わりにさ…」

杏子「一人なら…戻れるかもしれねーだろ?…まだ…諦めんなよ…」

ほむら「…ひっ…ううっ…杏子…っ!!」


杏子「さやか…」


杏子(いつぞやのお返しとはいわねーよ…さやか…てめーはいいことしかしてねーのに…みんなの幸せ願ったのに…)

杏子(なんで魔女になんなきゃいけねーんだよ……)

杏子(なぁ、神様、ほんとにいるならさ…こんな人生だったんだ…最後くらい、幸せな夢見させてやれよ……)


杏子「助けてやれなくて、ほんと…ごめんな…」


…パキッ…キキキッ…キン…



ほむら「杏子ッ!!!」


まどか「もうやだよ~っ!!こんなのやだよ~…ううっ…ひくっ!」

まどか「…ぐすっ…ひっくっ…!」

まどか「…もう誰も殺さないで…っ!…もう誰も死なないで…っ!…さやかちゃんっ…マミさんっ…杏子ちゃんっ…!」

ほむら「…まどか」



まどか「…私」

まどか「…私…決めたよ…っ…もう誰も悲しませない…誰にも絶望を知ってほしくない…」

ほむら「…!?」


オクタヴィア「キャアアアアア」


まどか「もういい…もういいんだよ…さやかちゃん、もう誰も傷つけなくていい…」

ほむら「まどか…?」

ほむら「まどか…まさか…!?」

まどか「ほむらちゃん、ごめんね」

まどか「私、魔法少女になる」


ほむら「まどか…そんな…」

まどか「私、やっとわかったの、叶えたい願いごと見つけたの、だからそのために、この命を使うね」

ほむら「やめてっ!」

ほむら「それじゃ…それじゃ私は…杏子は…何のために…っ!」

ほむら「ひっ…くっうぅ…!」

まどか「ごめん、ホントにごめん、これまでずっと、ずっとずっと、ほむらちゃんに守られて、みんなに守られて、望まれてきたから、今の私があるんだと思う」

まどか「ホントにごめん」

まどか「そんな私が、やっと見つけ出した答えなの…信じて」

まどか「絶対に、今日までのほむらちゃんを…みんなを…無駄にしたりしないから」

ほむら「まどか…」


QB「数多の世界の運命を束ね、因果の特異点となった君なら、どんな途方もない望みだろうと、叶えられるだろう」

まどか「本当だね?」

QB「さあ、鹿目まどか、その魂を代価にして、君は何を願う?」

まどか「私…」

まどか「はぁ…ふぅ…」

まどか「全ての魔女を、生まれる前に消し去りたい、全ての宇宙、過去と未来の全ての魔女を、この手で」

QB「!」

QB「その祈りは……そんな祈りが叶うとすれば、それは時間干渉なんてレベルじゃない!」

QB「因果律そのものに対する反逆だ!」


QB「!」

QB「……君は、本当に神になるつもりかい?」

まどか「神様でも何でもいい」

まどか「今日まで魔女と戦ってきたみんなを、希望を信じた魔法少女を、私は泣かせたくない、最後まで笑顔でいてほしい」

まどか「それを邪魔するルールなんて、壊してみせる、変えてみせる」

まどか「これが私の祈り、私の願い」

まどか「さあ!叶えてよ、インキュベーター!!」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~


マミ「鹿目さん、それがどんなに恐ろしい願いかわかっているの?」

まどか「たぶん…」

マミ「未来と過去と、全ての時間で、あなたは永遠に戦い続けることになるのよ」

マミ「そうなればきっと、あなたはあなたという個体を保てなくなる」

マミ「死ぬなんて生易しいものじゃない、未来永劫に終わりなく、魔女を滅ぼす概念として、この宇宙に固定されてしまうわ」

まどか「いいんです、そのつもりです」

まどか「希望を抱くのが間違いだなんて言われたら、私、そんなのは違うって、何度でもそう言い返せます、きっといつまでも言い張れます」


杏子「いいんじゃねぇの」

杏子「やれるもんならやってみなよ」モグモグ

杏子「戦う理由、見つけたんだろ?逃げないって自分で決めたんだろ?なら仕方ないじゃん、後はもう、とことん突っ走るしかねぇんだからさ」

まどか「うん、ありがとう、杏子ちゃん」

マミ「じゃあ、預かっていた物を返さないとね」

マミ「はいコレ」

まどか「えへへ…」

マミ「あなたは希望を叶えるんじゃない、あなた自身が希望になるのよ、私達、全ての希望に」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~


まどか「あなた達の祈りを、絶望で終わらせたりしない」

まどか「あなた達は誰も呪わない、祟らない、因果はすべて、私が受け止める、だからお願い、最後まで、自分を信じて…」



まどか「もういいの」

まどか「もう…いいんだよ」

まどか「もう誰も恨まなくていいの、誰も、呪わなくていいんだよ、そんな姿になる前に、私が受け止めてあげるから」


_______


ほむら「…!?」

ほむら「…ここは…?」

QB「まどかがもたらした新しい法則に基づいて、宇宙が再編されているんだよ」

QB「そうか…君もまた、時間を越える魔法の使い手だったね」

QB「じゃあ一緒に見届けようか、『鹿目まどか』という、存在の結末を」


ゴゴゴゴゴゴ…


QB「あれが、彼女の祈りがもたらしたソウルジェムだ」

ほむら「そんな…」

QB「その壮大過ぎる祈りを叶えた対価に、まどかが背負うことになる呪いの量が分かるかい?」

QB「一つの宇宙を作り出すに等しい希望が遂げられた」

QB「それは即ち、一つの宇宙を終わらせるほどの絶望をもたらすことを意味する」

QB「当然だよね?」



アルティメットまどか「ううん…大丈夫」

アルティメットまどか「私の願いは、全ての魔女を消し去ること」

アルティメットまどか「本当にそれが叶ったんだとしたら、私だって、もう絶望する必要なんて、ない!!」


QB「まどか」

QB「これで君の人生は始まりも、終わりもなくなった」

QB「この世界に生きた証も、その記憶も、もう何処にも残されていない」

QB「君という存在は、一つ上の領域にシフトして、ただの概念に成り果ててしまった」

QB「もう誰も君を認識できないし、君もまた、誰にも干渉できない」

QB「君はこの宇宙の一員では、なくなった」




ほむら「何よそれ…」

ほむら「これがまどかの望んだ結末だって言うの?こんな終わり方で、まどかは報われるの!?冗談じゃないわ!!」

ほむら「これじゃ、死ぬよりも…もっとひどい…ひどい…」


まどか「ううん…違うよ、ほむらちゃん」

まどか「今の私にはね、過去と未来の全てが見えるの、かつてあったかもしれない宇宙も、いつかあり得るかもしれない宇宙も、みんな」

ほむら「まどか…」

まどか「だからね、全部わかったよ…いくつもの時間で、ほむらちゃんが、私のためにがんばってくれたこと、何もかも」

まどか「何度も泣いて、傷だらけになりながら、それでも私のために」

まどか「ずっと気づけなくてごめん…ごめんね」

ほむら「う…っ…ぅううう…っ」

まどか「今の私になったから、本当のあなたを知ることができた、私には、こんなにも大切な友達がいてくれたんだって、だから嬉しいよ」

まどか「ほむらちゃん、ありがとう」

まどか「あなたは私の、最高の友達だったんだね」

ほむら「だからって、あなたはこのまま、帰る場所もなくなって、大好きな人たちとも離れ離れになって、こんな場所に、一人ぼっちで永遠に取り残されるって言うの?」


まどか「んふっ、一人じゃないよ」

まどか「みんな、みんないつまでも私と一緒だよ」

まどか「これからの私はね、いつでもどこにでもいるの、だから見えなくても聞こえなくても、私はほむらちゃんの傍にいるよ」

ほむら「まどかは…それでもいいの?私はあなたを忘れちゃうのに?まどかのこと、もう二度と感じ取ることさえできなくなっちゃうのに!?」

まどか「ううん、諦めるのはまだ早いよ、ほむらちゃんはこんな場所まで付いて来てくれたんだもん」

まどか「だから、元の世界に戻っても、もしかしたら私のこと、忘れずにいてくれるかも」

まどか「大丈夫、きっと大丈夫、信じようよ」

ほむら「まどか…」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


___創り変わった世界で___いつかの未来で____




司会「それでは新郎新婦の入場です!みなさん拍手でお迎えください!!」
ワーワー
パチパチパチ!!

司会「改めまして、新郎の上条恭介さん、新婦の仁美さんです!!」

恭介「…///」

仁美「…///」

ワーワー
パチパチパチパチ
ワーワー


___

さやか「…何か、手間かけさせちゃったね」

まどか「ううん、こっちこそごめん」

まどか「さやかちゃんを救うには、何もかもなかったことにするしかなくて」

まどか「そしたら、この未来も消えてなくなっちゃうの」

まどか「でも、それはたぶん、さやかちゃんが望む形じゃないんだろうなって」

まどか「さやかちゃんが祈ったことも、そのためにがんばってきたことも、とっても大切で、絶対…無意味じゃなかったと思うの」

まどか「だから…」


さやか「…うん…これでいいよ」

さやか「そうだよ、あたしはただ、仁美とアイツに幸せになってほしかっただけなんだ…ヴァイオリンが弾けなくなったあいつのこと支えてくれる人が必要だったんだ」

さやか「幸せになってくれたら、十分だよ、もう何の後悔もない」

さやか「まあ、そりゃ…ちょっぴり悔しいけどさ、仁美じゃ仕方ないや、恭介にはもったいないくらいいい子だし…絶対幸せになって…くれるよね」

まどか「…うん」

まどか「…じゃ、いこっか」

さやか「うん」

まどか「あ、杏子ちゃんがね、さやかちゃんとお話したいんだって」

さやか「…いいの?」

まどか「大丈夫だよ」


~~~~

杏子「……」

さやか「杏子先輩…まどかから聞いたよ、あたしを助けるために、ほむらに無理言って…ここまで来たんでしょ?」

杏子「……」

さやか「…ごめん」

杏子「っ…うっ…っ!」

杏子「さやかあっ!!」ダキッ!

さやか「杏子先輩…」

杏子「も…もう、会えないのか…っ?」

さやか「…うん、そうなるかも…ごめんね…っ」


杏子「やだやだやだっ!!そんなの絶対やだっ!!」

さやか「もう、何言ってんの…子供じゃないんだから」

さやか「それに先輩なんだよ、あたしの」

杏子「っ…ううっ…さやかっ…っ!」

さやか「泣いてる杏子先輩なんて杏子先輩らしくないって」

杏子「うっ…ぐすっ…っ!」

さやか「ほーら、顔上げて、元気だしなって」

さやか「あたしはさあ、後悔してないよ…みんなといれて、杏子先輩に会えて楽しかった」

さやか「だから、いいんだよ…これで…」

さやか「まどかも言ってたよ、ひょっとしたら、本当の奇跡があるかも知れないって」


さやか「いつも希望を信じて戦うのが魔法少女でしょ?」

さやか「そうやって戦ってたのも、それを教えてくれたのも杏子先輩だったんだから」

杏子「っ…うっ…ううっ…さやか…っ!」

さやか「だからさ、奇跡を信じようよ、これ…」

さやか「あげるからさ」

杏子「…うっ…ひっ…ぐすっ…っう、うん…っ」


さやか「そろそろ…いかなくちゃ…」

杏子「いくな!!さやかあっ!!」

さやか「ダメだよ、杏子先輩、あたしなんかのことで立ち止まってちゃ…」

杏子「あ…アタシはぜってーさやかのこと忘れない…っ!…いつまでも…っ!絶対に…っ!!」

さやか「うん、ありがとっ…やっぱり杏子先輩は、あたしの最高の先輩だよ…っ」

さやか「あたしは杏子先輩といつも一緒だよ…」

さやか「大丈夫、きっと大丈夫、奇跡も魔法もあるんだよっ!杏子先輩っ」

杏子「さやかあぁぁぁッ!!」



________________________
________________________

~見滝原市内~

ゴゴゴゴ…


ほむら「…!?」

杏子「…!?」

杏子「…さやかは?」

マミ「いってしまったわ…円環の理に導かれて」

マミ「美樹さん…さっきのあの一撃に、全ての力を使ってしまったのね」

杏子「…ううっ…さやかっ…!」

マミ「それが魔法少女の運命よ、この力を手に入れた時からわかっていたはずでしょ」

マミ「希望を求めた因果が、この世に呪いをもたらす前に、私達はああやって消え去るしかないのよ」


ほむら「まどか…」

杏子「さやか…」

マミ「……」


~見滝原市内~


ほむら「……」
スタスタスタ…


タツヤ「まどか、まどかぁ!」

ほむら「うん、そうだね、そっくりだよ」

知久「コラ、ダメじゃないかタツヤ、女の人の髪を引っ張るのはダメ」

タツヤ「まどかまどか!まどかぁ!まどかぁはは、まどかぁ、あはは」

詢子「すみません、大丈夫でしたか?」

ほむら「いえ、こちらこそお邪魔してしまって」

ほむら「まどか…だね」

タツヤ「はあい!」


タツヤ「行くよ~」

知久「さぁ来い~、よっと」



詢子「まぁその…あの子が一人遊びする時の見えないお友達ってやつ?子供の頃にはよくあることなんだけどねぇ」

ほむら「ええ、私にも覚えがあります」

詢子「まどか…ってさ、あなたも知ってるの?アニメか何かのキャラとか?」

ほむら「さあ…どうだったか、聞き覚えがあるような、ないような」

詢子「…そっか、アタシもどっかでタツヤと一緒に見たのかなぁ」

詢子「たまにね…すっごく懐かしい響きだなって思うことがあるんだよね…まどか…」

ほむら「…そうですか」

詢子「お?そのリボン、すごくかわいいね、アタシの好みにド直球だわぁ、ちょっとビックリしたくらい」

ほむら「差し上げましょうか?」

詢子「あははは、こんなおばさんには似合わないって、まあ娘とかいたら?付けさせたかもしれないね」


~見滝原市内ビル屋上~


QB「ふうん、なるほどね」

QB「確かに君の話は、一つの仮説としては成り立つね」

ほむら「仮説じゃなくて、本当のことよ」

QB「だとしても、証明しようがないよ」

QB「君が言うように、宇宙のルールが書き換えられてしまったのだとすれば、今の僕らにそれを確かめる手段なんてない訳だし」

QB「君だけがその記憶を持ち越しているのだとしても、それは、君の頭の中にしかない夢物語と区別がつかない」

ほむら「私だけじゃないわ、杏子もこの記憶を持ち越しているはずよ」


QB「だとしても、君たち2人だけの記憶じゃ、証明できるだけの証拠にはならない」

ほむら「ふん」

QB「まあ確かに、浄化しきれなくなったソウルジェムが、何故消滅してしまうのか、その原理は僕たちでも解明できてない」

QB「その点、君の話にあった『魔女』の概念は、中々興味深くはある」

QB「人間の感情エネルギーを収集する方法としては、確かに魅力的だ」

QB「そんな上手い方法があるなら、僕たちインキュベイターの戦略も、もっと違ったものになっただろうね」

ほむら「そうね、あなたたちはそういう奴らよね」

QB「君が言う、『魔女』のいた世界では、今僕らが戦っているような魔獣なんて、存在しなかったんだろう?」

QB「呪いを集める方法としては、余程手っ取り早いじゃないか」

ほむら「そう簡単じゃなかったわ、あなたたちとの関係だって、かなり険悪だったし」

QB「ふうん」

QB「やっぱり理解できないなあ、人間の価値観は」


ほむら(たとえ、魔女が生まれなくなった世界でも、それで人の世の呪いが消え失せるわけではない)

ほむら(世界の歪みは形を変えて、今も闇の底から人々を狙っている)


QB「今夜はつくづく瘴気が濃いね」

QB「魔獣どもも、次から次へと湧いてくる、幾ら倒してもキリがない」

ほむら「ボヤいたって仕方ないわ、さあ、行くわよ」



ほむら(悲しみと憎しみばかりを繰り返す、救いようのない世界だけれど)

ほむら(だとしてもここは、かつてあの子が守ろうとした場所なんだ)

ほむら(それを…覚えてる)

ほむら(決して、忘れたりしない)

ほむら(だから私は…戦い続ける)



Epilogue___

~見滝原市内~



杏子「よう、久しぶりだな」

ほむら「!」

ほむら「杏子!」

杏子「へえ、なかなか似合ってんじゃねーか、まどかのリボン」

ほむら「そう?ありがとう」

ほむら「あなたこそ、その髪留め似合っているわ、さやかそっくりね」

杏子「う、うるせぇっ///」


杏子「…マミは最近どうしてるんだ?」

ほむら「彼女は相変わらずかしら、最近は学校の友達ともうまくやっているわ」

杏子「そうか…」

杏子「しっかし、こうして2人で会うと、あの時のことを思い出すな」

ほむら「そうね、あの時は大変だったわ」

ほむら「……また戻ってみる?」

杏子「はあ!?何言ってんだよ」

ほむら「ふふっ…冗談よ」

杏子「へ、へえー、てめえも冗談が言えるようになったとはなぁ」


ほむら「……懐かしいわね」

杏子「ああ、アンタのやってきたことにようやく答えが出たんだ」

ほむら「そうね…私だけじゃないわ、あなたもよ」

杏子「アタシは手伝っただけだよ、逆にアタシはアンタに助けられた」

ほむら「そうかしら?まあお互い様ね」

杏子「…アタシたちはもう一人じゃない」

ほむら「ええ」

杏子「…アタシたちはいつもみんな一緒だ」

ほむら「ええ、もちろんよ」



以上で終わりです
つまらない作品にお付き合いいただきありがとうございました

最後まで読んでいただいた方、本当にありがとうございました。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年09月17日 (火) 18:15:27   ID: 4i-F3pAf

時間軸を繰り返すことから原作とかぶる部分はあっても、違うシチュエーションを描く以上、丸移しすると繋がりが不自然になると思う。説明的部分を書くには難しいけど自分で投下しながら「つまらない」って思うのはそれが原因じゃないかな。逆にオリジナルな部分は原作を素直に解釈したいいssだ。構造的に立場が入れ替わってて面白いし

2 :  SS好きの774さん   2014年02月01日 (土) 18:32:45   ID: P0wPgyAJ

ここから叛逆に繋がればまた展開が変わったはずだ・・・

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