モブ女「マルコが好き」(8)

モブ女しか出てきません。
どこに投下したら良いのかわからなくて、ここにしました。至らないところが多いと思うので、指摘してくれると嬉しいです

私はいたって平凡な人間です。
駐屯兵団の父と母、それと姉がいて、私が訓練兵になるのは当然の事でした。特にやりたい仕事もなく、生半可な覚悟で兵士になりました。

初めてマルコさんを見たとき、野暮ったい人と悪い印象を覚えました。
よく騒ぎを起こす友人と一緒にいる彼は、見ようとしなくても目に入り...気が付いたら目で追うようになっていました。

優しく笑う、穏やかなマルコさん。でもたまに見せる覚悟を決めたような、熱く鋭い瞳が素敵で

それは自然と、当たり前のように恋に落ちました。

私がマルコさんと深く関わったのは一度だけです。それは雪山での訓練です
遭難したり等、危険なことはなく無事に訓練を終えたのですが、訓練を終えたあとの夜は嬉しくて眠れませんでした。マルコさんと近くで話せてすごく嬉しかった。

雪山での会話で印象的なものは...休憩中、初めて会話した時です。

どもり気味の私はマルコさんと上手く会話ができなくて、マルコさんの前で...恥ずかしさで泣いてしまったんです。
マルコさんはとても驚いた様子で、顔を真っ赤にして嘔吐く私の背中を優しく撫でてくれました。
涙が収まり、泣いた理由を話しました。マルコさんに嫌われてしまった、と絶望している私に充てられた返事は

「僕も昔、君のように泣いてしまった事があるんだ」

マルコさんは自分の子供の頃の話を一通りしたあと私に向かい

「可愛げがあって、素敵だと思うよ」

と、優しく笑って

ハートを射抜かれた、とでもいいましょうか。愛しくて、恋しくてたまらなくて...それからの訓練も、ずっと私はマルコさんの事ばかり考えていました。

しかしマルコさんは憲兵団希望。私は成績10位以内なんて入れない。話しかけるのは疎か、会えなくなってしまうのです。
とても切ない気分でした。でも見つめていられるだけで幸せ、憲兵団に行ってしまってもまた、いつか会える、そう思ってずっと見つめていました。

そんな私に届いた知らせ、マルコさんが戦士を遂げた...と。

もう見つめる事すら叶わない
軽やかに飛ぶ姿、靡く黒髪、真剣な眼差し、あれもこれも全部、あの優しい笑みでさえ
もう見ることはできない。

体の力が抜けていくようでした。私の青春が、私の知らないうちに散ってしまった。
マルコさんだけでない、大切な友人も全て...食べられてしまった、なんて

巨人が憎い
そう思い、突発的に調査兵団に入団してしまいました。
巨人を全部やっつけてやる、とやけになって必死になっていました。巨人を殺した所でマルコさんが帰ってくるわけではないのに、馬鹿な考えだと思います。

憎しみに燃えていた私の瞳は、壁外調査で凍りつきました。
なぜこんなにも簡単な事がわからなかったのでしょうか...巨人になんて、勝てない

あの苦しみを痛いほど味わったのに
仲間が食われていく苦しみを、私は憎しみで忘れようとしていたのです。

足がすくみ、体が全く動きませんでした。街に巨人が侵入してきた時と同じ、胸の動悸。
太く、肉づいた指が私に絡みつきました。なぜかその時は冷静で...死ぬんだなと諦めてしまいました。
刃を降ろし戦いを放棄したときに、ふらりと写り出たマルコさんの優しい微笑み

体のどこから湧いているのかわからない力がふつふつと込み上げてきました。刃を力いっぱい握り、食ってみろ!腹の中から三枚に卸してやる!!そう叫ぶと巨人は私を粘着く口に放り込みました。
せめてもの抵抗、顎を切り刻んでやっても、巨人はぴくりともしませんでした。

調査兵団への入団を止めてくれていたお母さん、ごめんなさい
調査兵団への入団を受け止めてくれたお父さん、ごめんなさい
調査兵団への入団を誇りに思うと笑ってくれたお姉さん、ごめんなさい

私は、最後の最後まで兵士でいられました。こんな、コンプレックスだらけの自分が好きになれました。
出来の悪い私だけど、褒めてやりたい。

マルコさんのおかげで、私は兵士のまま死ぬ事ができます。
素敵な恋をありがとうございました。マルコさんは最後まで、私に笑いかけてくれました。もし来世があるのなら、また...その笑顔を見つめていたいです。そして、またあなたに恋をしたいです。

調査兵団所属、マルコに恋した乙女

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