イタリア「ヴェー、学園都市に来たよ〜」 (151)

・とある魔術の禁書目録×ヘタリア
・オールキャラ予定
・つまりクロスSS
・SS書くのは久々なので何かあったらご容赦ください
・シリアスのようでシリアスでないちょっとシリアス基本掛け合い
・そのうち魔術サイドも出るよ
更新間隔はバラバラかも

では始めます

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1363753109

学園都市。
日本にありながらもはや別の国のように振る舞い、それが許されている場所。
当然、構成する学生も日本人が大半を占めるそんな都市へ、奇妙な外国人の、しかも大人の一団が飛空場へ降り立った。

「わあ!これが学園都市!?すごーい…!さすが日本の中心部……!」
「まあ実際は日本政府と対立していて治外法権もいいとこなのですが……。喜んでもらえてよかったです」
「おい、あんまりはしゃぐなよ。」
「ヴェー…わかったよー」
「あんな所に自販機が!呼べばこっちに走ってくるなんてなかなかにハイテクじゃないか!」
「はんっ、あれくらいはお前のとこでもあるだろ。」
「い、今あそこで学生の口から炎が出たあるよ!?何事あるか!あんなに若いのに奇術師か魔術師あるか!?」
「中国にもあんなのいるだろ。ちなみにあれ超能力者っていうらしいな。俺らにはまだ魔術の方が馴染み深いがねえ」
「正確には能力者らしいねえ。ウフフ、超能力者はこないだ僕や君のとこで暴れまわった子だよね?」
「HAHAHA!そういえばバケージでは大統領がクレイジーなビリビリ女子中学生やもやしみたいなのが助けてくれたとか言ってたな!
 まったく!俺だってちょっと見てみたかったぞ!」
「わー!学園都市の女の子もかわいいー!」
「おひゃあ!?あんまり行ったら警備員に捕まっちゃいますよ!いくら学園都市への招待客(ゲスト)とはいえ気をつけないと……」
「そうそう。俺もさっき爆竹ならしたらツインテール中学生に職質された的な」
「多少なら黙認されるらしいここでいったい何やったんだよお前……」






団体ツアー客にしては格好も人種もバラバラ。
だがはしゃぎようも明らかに旅行者そのもの。
学生ばかりが集まるこの学園都市では明らかに浮く面子だ。
しかし、通りがかる学生達は気にしもしない。
普段からこのように外部の人間が自由に出入り出来る訳ではないが、祭の時は学園都市も解放され外部の客が来る為に学生達も慣れているからだ。
警備員すら、彼らの持つIDカードを確認した後は構いもしない。

では、そんな待遇をもつ彼らはなんなのか。



先程から人一倍騒がしい金髪で眼鏡の青年が、先程から先頭を歩く黒髪で和服を着込んだ青年に言った。

「日本、この後学園都市を自由に観光出きるんだよな?」と。



――彼らは『国』だ。
ある種の精霊とも言えるかもしれない。
国と興亡を共にする存在。
そんな、科学で説明がつくか分からないような、馬鹿げたようなありえない存在だった。


「とある国家の存在理由(レーゾンデートル)」




日「観光してもいいらしいですが、この端末の地図の赤い部分のみ、という事です」
そう言って問われた日本は抱えていた鞄から全員へ、国旗が刻印された端末を各々へ渡す。

羅「へえ〜、これ持ち主が手に持っただけでロック解除されるんだー。」

勃「便利なものだなー」

波「えわっリトこれやばいって!マジヤバくね!?俺のだけマジピンク仕様!かっこよくね!?」

氷「通話、ネット、メール……一通りは出きるんだ」ピピッ

普「ふーん、学園都市は学区ごとに分かれてて、でもって特定の学区には行くなってか」

日「ええ、なんでも不良がたまりやすい場所があるとか……」

などなど彼らは喋りながら貸切バスに分かれて乗り込み、目的の場所へと向かう。
目的の場所は、会議所ではない。
今回は彼らに代わって政府の役人が学園都市内の別の場所で会議をする。
彼らが呼ばれたのはおまけ、学園都市側からしたら学園都市の技術力を見せつける為に呼んだのだ。

南伊「ところで、日本のパスタはパスタじゃねぇが、そこんとこどうなんだ」

日「ああ、そこはご安心を。
  プロのその国々のシェフのレストランも、先程の端末で検索出来ます」

仏「へえー。お兄さんを納得させられる所はあるかなっと?」

丁「おっ!北欧のレストランを見つけたっぺ!」

諾「……あんこんとことといっしょくたにされてんのが腹立つ」

蘭「……おい日本、金かかんのか?」ノッソリ

日「ある程度は……といっても使い切るのは到底無理でしょうが、電子マネーが支給されてるそうです」

墺「……、随分な額ですねこれ……」

瑞「むむむ……」

リヒ「お兄様、一緒においしいものがたくさん食べれますね」

瑞「ばっ、何を言うであるか!我が輩は別に支給されたものだからって遠慮せず使うなどとはそんな事は……!」

香「どうやら料理に関する新技術の実験もかねてるみたいだし遠慮はいらない的な」

韓「うげ本当だ、実験的な料理屋もかなりあるんだぜ……プラスチックから食料を作るって一体何なんだぜ……」

越「SFかなにかしゃあるまいし……」

台「そ、それはおいしくて安全でもさすがに食べるのに勇気がいるネ……
  あっでも先生は平気あるよね〜〜」パアアア

中「おいそれどういう意味あるか!?」ガタッ

澳「ああなるほど、そういう事ですね。
  ミスター、よかったですね誉められてますよ」

中「いいやっあれの流れは誉めてねーあるよ!?」

米「わあ!ハンバーガーもあるんだな!よし!もちろん俺はビッグサイズを食べるぞ!」

加「わぁああ……メイプル料理とかあるかな……」


思い思いの事を言い合いながら、彼らは自動制御された無人バスで学園都市内の他の学区へ移動する。


冷蔵庫が空になったから買い物に出かけたのに、途中に御坂に遭い、買い物どころではなかった上条当麻はインデックスを連れて近くの安い定食屋に行く事になった。
本当ならそこらのハンバーガーショップでもいいのだが、最近インデックスが舞夏経由から情報を得たらしいインデックスが行ってみたいと迫ってきたのだ。
予想外の出費ではあるが、最近出来たというそこは評判もいい為に気になってはいたのだ、と自分の中で折り合いをつける。
……そういえば、鳴護アリサと出会ったのもこの流れだったか、と思いつつ。

と、途中で上条は知り合いの少女を見かけた。

上条「おお、姫神。どうしたんだ?」

イン「あいさだー!」タタタッ

姫神「あ。二人こそ。どうしたの」

上条「いや、俺は昼を食べに行く所だけど……姫神は?」

姫神「私は。定期的な血液検査。病院まですこし」

上条「あ、そっか。あれは終わったとはいえ……大変だな」


――吸血殺し(ディープブラッド)。
見えないはずの吸血鬼を[ピーーー]その能力のせいで、姫神は様々な事件に巻き込まれた。
故郷を灰に帰し、この学園都市では錬金術師に利用されかけたのだ。

姫神「ううん。それに。この子のくれた歩く教会おかげで大丈夫だから」

そう言って姫神は、胸元からゴツゴツとした十字架を見せる。

イン「一番いいのは、魔術か何かであいさの能力自体を永続的に封印する事、だけど……」

姫神「こればかりは仕方ない。それにこの検査も。今じゃ健康診断みたいなものだから」



そう言って、三人は再び一人と二人に別れた。

―――

彼らに対するオリエンテーションは形式だけだった。
途中でイタリアがアメリカの大統領の名を絶叫したり、オーストリアが道に迷ったり、プロイセンといつの間にか紛れ込んだシーランドが「今ある国じゃないから」と締め出されたりしたが、特に何の問題もなく。
これからは数日に渡る観光しか残ってなかった。


日「皆さーん、ちゃんと端末を見て危ないところには近づかないようにしてくださいねー!」

独「まったく、保育園の先生だな……大変だろう」

日「ええまあ……でも私は何度か来てるのでまだわかる方ですから。
それに、皆さんが何かしたり何かされない限りは大丈夫だとは思ってますし」

北伊「あっかわいい女の子だー!チャオー!」

独「って、言ってるそばから!まてイタリアーッ!」

日(ドイツさんの方がどうかんがえても保護者ですね……)

―――
11:24。

日も高く、昼前で一番混雑する時間帯だ。
今日は休日なのもあり学生達で辺りがごった返している。
そんな中、どこで昼餉をとろうかと探索を兼ねて歩く国々。


羅「なあーブルガリア、おいらあの店なんかやだ」

勃「ただのにんにく料理屋だろうが」


瑞「どこがいいであるか、リヒテンシュタイン」

リヒ「私はお兄様とゆっくり食べれるならどこでも」


西「うーん、トマト料理が充実しててええなあー」

南伊「いや、日本人向けにしちゃまあまあだが、やっぱまだまだだな」

白耳「とかいいながらちゃっかり次の料理頼んでるあたり素直ちゃうんやなぁー」ニコニコ


土「本格的なトルコ料理!へえ、どんなもんかみてやろうじゃねえか!」

希「な、なんで俺まで……ぐわーっ」

そして。




とある高校にわりと近い、安さとおいしい事が売りな定食料理屋では――。

よく知らないけどこの人たちは別に異能力で出来ているわけじゃないよね?

狭い訳ではないのだが、休日の為に混雑する店内。
迷った末に立ち寄ったイギリスがようやく見つけた空いてる席は、見知った男との相席だった。

英「おいフランス、お前もここなのかよ」

仏「そういうイギリスもここなんだろ?なに?お兄さんの後でも追ってきた訳?」

英「お、俺は日本の定食料理ってのが食べたくてだな!」

仏「反対したい所だけど、お兄さんも悲しい事に同意見。
  まあ、街の料理レベルをみるなら安い所をみた方がはやいからね。
  それと近いし」

英「……そういや、普通の学生ばかりだな……」

仏「そうそう。学園都市には学園都市のブランドや流行があるみたいだけど、それでも俺みたいなのが見たら分かる。
皆の着てる服は少なくとも高級品ではないってことくらいはね」

フランスはそう言って既に運ばれてきた定食を――といってもこの定食屋の中では一番高いものを食べ始めた。

仏「お前もなんか選んだら?お兄さんのオススメはこの水って奴なんだけど」

英「俺には水の味しかわかんねえとか言いたいのか!?」

仏「いやー、イギリスに味なんてわかる訳ないだろ?」

英「だろ?じゃねぇ!」


そう言い合ってると、隣のテーブル席からも声が聞こえてきた。

「とうま!私この刺身っての食べたい!」

「ダメ!高いからダメだ!せめてこのカレーにしなさいっ!」

思わずイギリスとフランスがつられて声の方を見ると、そこには。


ツンツン頭の黒髪の少年と。
高級な紅茶のティーカップのような、純白の修道服を金で装飾したような格好の、銀髪碧眼の少女がいた。

――

吹寄制理は、珍しい団体をみた。

白人の、警察のような軍人のような数人の団体。
彼らのリーダー格らしい男が何処かと連絡をとっていた。
英語以外の言語らしいので当然何事なのか分からなかったが、どうやら何かを探してるような感じだ。
別に外人自体は珍しくない。
このような同一の格好をした団体も、何かの使節団だとしたら普通だ。
なのに、吹寄が何故か彼らに限って印象強く覚えていた訳は。
彼らが皆、ヨーロッパにありがちななにかの紋章をつけていたからだろうか。
……それが、何の紋章なのかは分からなかったが。

――

今回はここまで。
禁書サイドが少ないですがヘタリアもヘタリアでキャラが多いのが仕方ない。
ちなみにローマじいちゃんも羅馬だけど、羅馬尼亜→ルーマニアで、羅はルーマニアです。

>>7 ヘタリア本家ではそこらへんは書かれてないのでなんとも言えないけど、
このSSの設定では鳴護アリサみたいな感じだと思ってくれたら。
人々の祈りというか国家への思いでできてるという設定で。



イン「とうまー、刺身刺身ー!」

上条「まってくださいインデックスさん!上条さんにはお金がないんです!」

片方の少女――禁書目録には見覚えがあるが、もう片方の少年の方は知らない。
……話に聞いていた禁書目録の保護者という男だろうか。
どうやらその件の少年が金銭的に困ってるらしい、と判断したイギリスは手を貸す事にし、店員を呼び止める。

英「注文だ。そこの女の子と俺にサシミを一つづつ頼む」

その注文内容に驚いたのはとうの言い争っていた二人だ。

イン「え……?」

上条「え、あの、え…?」

二人はイギリスを見、顔を見合わせる。そして。

「「あ、ありがとうございます!」」

英「いいんだ、気にしないでくれ。お金ならあるしな!」

そう制すと、ますます感動したのかインデックスが顔を輝かせる。

イン「ほ、本物の英国紳士なんだよ!」

英「えっ、あっ、……そそそうだろ!俺は英国紳士だからな!」

イギリスは真っ赤に照れ、

仏「ブーッ!」

何故かフランスが吹き出した。


女子高生向けの通り

瑞「……む、女性しかいない場所に出てしまったであるな。
  まあ、気にされてはないようであるが……
  ……と、どうしたであるか、リヒテンシュタイン」

列「……」じーっ

瑞「リヒテンシュタイン?」

列「あっ!い、いや、なんでもありません!お兄様!
  さ、行きましょう!」

瑞「……? 別に目的地は現状ないも同じであるし、何か欲しいなら買ってきてもよいのだぞ?」

列「い、いや、大丈夫ですお兄様!」

瑞「と、言いながら端末の地図アプリにチェックを入れてるようであるが」

列「ひゃ!? き、気にしないでくださいまし!」

瑞「わ、分かったのである」

列(……胸が大きく見せられるブラが売ってあったのを見てたなんて言えません……)


同時刻、同現場

美琴「……」じーっ

黒子「お姉さま? どうしましたの?」

美琴「い、いや!?な、なんでもないわよ!?」

黒子「胸が大きくみえるブラ……?」

美琴「な、何もみてないったら!!!」



台「おおー!見てみてベトナム!Cawaii服が売ってあるヨ!
  ベトナムもはやく着てみるネ〜〜」

越南「わ、私が着るような服じゃなくてこれ若者向けだし……」

台「そんな事言わずに!ささ、着てみるネー!」

越南「う、うわああああ!!」(試着室に投げ込まれる)

韓「なるべく早く買うように頼むんだぜ……」

香「ここらは女子高生しかいないから俺達浮きまくり的な」


その依頼が来たのは、まだ第三次世界大戦の戦後処理で忙しかった時だった。
学園都市の勝利。
ロシアを筆頭に、学園都市の言いなりにされる羽目になった国々はいくらでもあった。
あのロシア「ですら」ライフラインを握られた。

当の学園都市を有する日本ですら、学園都市の発言権の増大にいい顔をしてなかったくらいだ。

だが、それでも。
それでも、彼らを変えなかった。

ポーランドなんて見てみろ、何度解体されたか。何度辛苦を味わされたか。
それでも復活して今は笑っている。

歴史の中では些細な事。
よくある事。
裏切り、裏切られ、支配し、支配され。
皆がやる事だ。


だが、自分が知ってしまった話はどうだろうか。

国連の負の遺産とも呼べるもの。



下手な核兵器や、大規模魔術結社よりはるかに恐ろしい。

それが、余波とはいえ自らに向かうかもしれない。

そうなれば、自分という国は歴史から消されるかもしれない。



ならば、やるしかなかった。

自らを助ける為。
自らの国を守る力を得る為。

国が、国の為に動いて何が悪い。



そして、依頼を受けた。
例えそれが、『負の遺産』よりもひどい結果を引き起こす可能性があったとしても。
それが、かつての大災害よりもひどい事になろうとも。

投下してから気づく 16と17の間を あけるのを 忘れていたなどと
書き溜め分はもうちょっとあるんですがキリが悪いのでここまでにします。
支援ありがとうございます。リヒテンシュタインはもうちょっと出るよ!


ヘタリアアニメから入ろうと思うけどどこまで見ればいい?
五分だから他に比べれば楽かな

しかも16と17じゃない 17と18だったorz

>>20 アニメは確か4巻だか5巻だかの内容からやっているけど、
作画もいいし一話で枢軸ちゃんと出て性格がわかりやすいので今やってるbeautiful worldのでもいいと思う
ニコニコとかでも一話は無料だった気がするし。テンポもいいし原作改変もあんまりないからオススメ。

ただアニメは韓国がいないので
本家(http://www.geocities.jp/himaruya/)をおいおい見ていただけたらと思う。
バルヨナやきたこーもおもしろいよ!

―――


独「イタリアーッ!いい加減にしろー!」

伊「うわわーっ!ごめんなさいー!」

ドイツに腰を抱えられ米俵のように扱われるイタリア。
それを見たオーストリアは呆れたように呟いた。

墺「いい加減に学習なさい、お馬鹿さんが……」

独「いや、お前もそろそろ学習してほしんだがな。
  なんで丁寧な地図アプリがあるのに迷うんだ……」

墺「な!無茶を言わないでください!」

独「無茶なのか!?」

芬「でもドイツさんもこの間カーナビ過信して突っ込んでませんでしたっけ……」

独「う……」

抱えられたままイタリアは辺りをキョロキョロ見回し二人に尋ねた。

伊「ヴェ……ところでプロイセンは?さっきまでいたよね?」

独墺「「……あっ」」

芬「さっきそこでルーマニアさんとハンガリーさんが険悪だったので、止めに行ったじゃないんでしょうか?」

独「……兄さんもだが……くそ、あのふたりとも……何やってんだ……」


はぁ、とついた本日何度目かのため息だった。

――

ルーマニアとハンガリーと遭遇し、お互い険悪な雰囲気になった所を仲裁しに入ったプロイセンは既に一仕事終えたような雰囲気でカフェにつく。
銀髪赤目という風貌のせいか、周りからじろじろと見られているようだ。

普(やっぱ俺様の溢れ出るかっこよさに惹かれてるんだな!)
など思いつつ。

そこへ、騒がしい一団がカフェに入ってきた。
見覚えのある子供一人に子供二人に保護者らしい女。

シー「あっ!プロイセンの野郎がいるのですよ!」

打ち「あれは貴方の友達なの?
   ってミサカはミサカはもやしみたいなこの人に目が似ている軍人さんを指差してみたり!」

一方「おいてめェら静かにしろ!つーかなンだもやしって!」

黄泉「はははっ、事実じゃんよー」

シーランドがプロイセンのいる席の近くに陣取った為、残りの見知らぬ三人も近くに座る。

普「おいシーランド、こいつらなんだ?」

シー「ふふふ、僕の素晴らしい外交能力で出来た同盟国なのですよ!」

普「……亡国の俺が言うのも何だが、俺はこんな国知らねえぞ」

一方「俺も国だのなんだのになった覚えはねェから安心しろ」

そう言って、コーヒーを注文した一方通行――学園都市の最強の能力者だが、今はその力は使っていない文字通りもやしだが――が、プロイセンの隣に座る。

一方「お前はあのセーラー服のガキンちょの保護者か?」

普「いや、違う。だが似たようなもんだ。わりぃな、関係なさそうなのに巻き込んだみたいで」

一方「むしろ絡んだのは俺ンとこのガキだ。気にすンな。
    ……ところで、どォいう事だ。国だのなんだのは」

普「そこまで話してたのか、シーランドの奴」

プロイセンは少し驚いたが、フランスもパリでは存在が知られていたし自分も軍では隠してなかった事を思い出すと人の事を言えないので黙る。

すると、ギァアンという音と共に周りの声が全てカットされる。
一方通行が能力を発動させたのだ。

普「話には聞いてるぜ。超能力って奴か?」

一方「そォだ。これで声は周りに伝わンねェ。正直に答えろ。俺達の敵か?」

普「……んな訳ねえだろ。何でそう思った?」

一方「プロイセンにシーランド。今時魔術師でも裏家業でも国名を名乗る奴がいてもおかしくねェ」

普「おいおい、観光に来ただけで随分物騒な話に巻き込むんじゃねえよ。
  これはコードネームでもなんでもない、俺達を表す名前だ」

一方「はン、そっちの方が怪しいがな」

一方通行はコーヒーを啜りながらプロイセンを見据える。
筋肉や呼吸から心理状態を推測する。どうやら嘘はついてないようだ。

一方通行の赤く鋭い目がプロイセンを射抜く。
……が、一方通行の方が折れた。


一方「……こンな所で争う事はねェ、か。なンかあったら連絡があるはずだしな。……あのガキ連れて帰ってくれ」

普「考えなおしてくれたようでなによりだぜ。
  任せとけ、保護者のスウェーデンかイギリスかの所に連れて行ってやっとく」



―――

―――


カフェから出た後。
打ち止めは相変わらず騒がしいし黄泉川はそんな打ち止めを微笑ましそうに眺め、度を越した行動をしようとすると止めに入ってた。

一方(プロイセン、シーランド、ルーマニア、ハンガリー、それにイギリスとスウェーデンか)

一方通行は思案する。
彼らは、魔術かなにかで国民の思念でも練り上げ国家単位で作った人工精霊か何かではないか、と。
しかしすると、まず第一にプロイセンとシーランドがいる理由にはならないのだ。
片や滅亡した国。片や国ですらない。

一方(……まァいい。明らかに怪しいがまだ害を為すと決まった訳じゃねェ。
    ……ただ、敵対したら潰すだけだ)

あんなに楽しそうにしていた打ち止めの友人を[ピーーー]可能性に至り、ほんの少しだけ憐れみを感じたが、すぐ打ち消した。



―――


―――

13:00

米「おーい、日本ー!」

日「あ、アメリカさん。どうしましたか」

米「ジャパーニーズウィザードことオンミョージってのが学園都市にいるって聞いたんだぞ!
  どうやったら会えるんだい?!」

日「あー……土御門君の事でしょうかね。
  会えるとは思いますが、その、アメリカさんの期待通りじゃないと思います……」

米「? どういう事かわからないけど、会えるんだな!?」

日「あ、会えますけど、えと、その……ま、まずは本人に時間をとれるか確認しないと!」


――

またNGワード回避を忘れてた……
いままでのNGワード扱いされてるところには殺すが入ります。
夜か明日にまた投下します。

もうあんなヘマしない!と誓ったはいいものの殺すなんて単語が出る部分が当分見当たらない……だと……
ついでに挿絵みたいなものも置きつつ投下しますね
http://uploda.cc/img/img514ab14be2121.png

――

英「……大変だなぁ、トーマ?も」

上条「いやいや……と、というか先ほどはありがとうございますデスでございます!」

仏「おいおい大丈夫か?テンパりすぎて言葉が崩壊してるぞ?
  まぁ、こんな太眉の目つき悪い男に奢られたら誰だってコワイよねー」

英「へ!?お、俺そんな目つき悪いか!?
  と、というか眉毛って……!」

イン「奢ってもらってるからあんまり言いたくないけど、確かにこの眉毛はすごいかも……」

英「そ、そうか……」ズーン

禁書目録にまでそう言われるなんて俺ってほんとマユゲ……と落ち込むマユゲ(外見年齢23歳くらい)
を見てさすがに上条も申し訳なく思った。確かに立派な眉毛だと感心したが。

上条「ち、違うんです!?ほ、ほらインデックスさんも奢ってくれた人にそんな事言わない!」

英「い、いや本当におごった事については別にいいから!お、俺はアレだ!英国紳士だから当然なんだ!」

仏「イギリスもテンパってツンデレが崩壊してるなぁ」

フランスの言葉に、上条が反応する。

上条「イギリス? ……お前はイギリスっていうのか?へー、随分変わった名前だな」

イン「イギリス?私の母国の……?」

上条は軽く流したものの、インデックスもインデックスで、イギリスという単語に反応する。
それも、随分神妙に。

英「あー…っと、どう説明すればいいのか……」

上条「とりあえず、こんな所で立ち話もなんだからどこかへ行かないか……じゃなかった、行きませんか?」

イン「じゃあご飯も食べたし、とうまの部屋にもどろ!
   そしたらゆっくり話せるかも!」

英「お、学園都市の学生の部屋か……。
  うん、俺は別に構わないぞ」

仏「イギリスには反対だけど、インデックスちゃんの言うことには賛成♪」

英「どっちだよ!?」

――

――

インデックスはイギリスにいろんな質問をしていた。
その様子を、フランスと上条はついていきながら見ていた。

上条「すぐ懐いちまった……」

仏「あれ?おたくの子って人見知りなの?」

上条「いや、そういう訳じゃねぇな……。
   よく考えたらすぐ友達が増えてた気がする。
   ……でも男にすぐなつくのは……初めて見たかもしれねぇな」

仏「ま、ああみえてあいつ悪い奴じゃあないからね。
  いい奴でもないけどね」

上条「……あんたとあいつはどういう関係なんだ?」

仏「え?腐れ縁って所かな。
  まぁお兄さんの方がはるかに大人だけどね」

――

――

とある寮

上条「ええーと、汚い所ですが……」

英「へぇ、案外普通だな……もっと学園都市ならではの機器でもあるのかと思ったけど」

イン「あまり多いと私も使えないしこれぐらいがちょうどいいんだよ」

仏「……ていうか、お嬢ちゃん、彼とふたり暮らしなの?」

英「……えっ?そ、それって、お、おい!お前!禁書目録に手を出して――!?」

上条「い、いやいやいや!これには深いふかーい訳がありましてですね!!」

英「……いや、最大主教から話には聞いてたんだ。
  禁書目録が学園都市の男子高生に引き取られたって話は。
  ……でもまさか同棲なんて、そんな」

上条「ぶっ?!あ、アークビショップを何で……、というかなんでインデックスを知って……」

英「あー……だからそれは今から説明する。
  説明するからテンパるな」


そしてイギリスは説明した。
自分たちが「国」という存在そのものであることを。
自分たちがはるか昔から存在するという事を。
あとついでにアークビショップとの関係も。

ーー

ーー
イン「つまり、あーさーは魔術的象徴として生み出された、って事?」

説明を終えられたインデックスが、開口一番にそう尋ねた。

英「……いや、違うな。
  俺達が先にいた。後から魔術的な意味合いを付加されたんだ」

仏「そういえばアメリカも建国前からいたしな」

上条「?」

上条が首をひねる。さすがに魔術的な事は専門家には劣るのだ。
……といっても、魔術の専門家だったとしても。
彼らの話についていくにはそれこそ彼らと同じような存在でなければわからないだろうが。

英「気にしないでくれ。別に俺は禁書目録を今更返せとかどうしようって訳じゃねぇんだ」

仏「あれ、いいの?お前んとこの虎の子じゃなかったの?」

英「だから話はしただろ。大体第三次世界大戦で……。
  ……いや、ここで話す内容じゃない。
  俺達はただの観光客なんだからな」




イン「……でも、これで納得したんだよ」

インデックスは、隣に座っていた上条に聞こえるか聞こえないかくらいの大きさで呟いた。

上条「? 何が?」

イン「このまゆげの人、一緒にいたら落ち着くの。
   覚えてないけど、懐かしい匂いがするからだね。
   薔薇と、紅茶と、あと雨の匂い。
   ……私の記憶は何度も消されてるけど。
   それは覚えているのかも」

上条「……そう、か」



――

――
ある洋風の屋敷に、イギリスという国を治める派閥のトップの二人がいた。

ローラ「……まったく、いくら招待客とはいえ、大丈夫なの?
    万が一の事があればこちらも動かざるえないというのに」

女王「まぁ、あいつなら大丈夫だろう。
   なんだ?魔術部とかいう楽しそうな部活をしてるそうじゃないか。
   聞いた話によると、戦前にはロシアを召喚したとかいう話も聞いたぞ」

ローラ「そういえばそんな事も……あの時は大変であった事よ。
    ……追い返すのに。」

女王「はは!あいつらしいといえばあいつらしいじゃないか」

ローラ「……で、本当に大丈夫なのかしら?
    国家規模の魔術の象徴として組み込まれているあやつを送っても」

女王「確かに、イングランドという四角のうちの一つが抜けるのは手痛い。
   ……が、なぁに、今まで何度もあったんだろう?」

ローラ「まったく、アフリカにいったりかと思えば学校に行ったり、
    アメリカを弟扱いしたりフランスとは裸の付き合い(薔薇的な意味で)したり、
    何がしたいのか分かりかねりけるわ」

女王「いいじゃないか。人らしくて」

ローラ「……それが演技なのか素なのかは腹を割いて見ぬことには、あのアレイスターも分かろうもなけれどね」


【イングランド:UKを代表としてのイギリス。
         男四兄弟の四男坊であり、残りはスコットランドさん、ウェールズさん、北アイルランドさん。
         詳しくは2010年8月4日のキタユメ。内の日記参照                          】

―――
とある寮


インデックスとイギリスとフランス(さすがに人前で国名で呼ぶのはアレなので人名で呼ぶとしたらアーサーとフランシスと呼んでくれ、らしい)の話が弾んでいるのを残し、
話が弾めば食料はなくなる。
上条は近くのコンビニまでつまみ的な物を買いに出かける事になった。
さすがに申し訳なく思われたのか、お金はこれで払ってくれ、とロックを解除した端末をフランスから借りているのだが。

部屋を出ると隣室に住む土御門と鉢合わせた。


土御門「よぉー上やん。女の子の次は男まで連れ込むのかにゃー」

上条「げっ土御門……ってこれは違う!というかそれどういう意味だ!?」

土御門「やー冗談冗談。
    ……俺も話は聞いてるから誰が何かくらいはわかってる」

上条「ん? ……もしかして、魔術サイドに関わる存在なのか?
   確かにイギリスは禁書目録の事を知っていたが……」

土御門「あー、まだ説明されてないのか?
    あいつら……まぁ国だな。数十人かそれくらいか。
    今日から数日間か一週間か、ずっと学園都市で観光しているらしい。
    もちろん来てない国もいくらかあるみたいだけどにゃー」

上条「じゃああいつら以外にもいる訳?
   ……というかやっぱり本物なのか」

土御門「上やんは偽物か本物か分からないおっさん二人を連れ込んだのかにゃー?!」

上条「い、いや……まぁ奢ってもらったし……」

土御門「???
    ……まぁ何もないとは思うが、失礼のないようにするんだぜい?
    外交問題にでもなったら困るしにゃー」

上条「……うーん、そうだよな、失礼の内容にしないといけないよな……。
   やっぱコンビニじゃなくてちゃんとした所で何か買うか……
   いや、つまみじゃオッサンみたいだよな、ここはやっぱりベルギーチョコレートとかそういう」

土御門「そういう問題じゃないと思うんだぜい、上やん……」

土御門「というか、いくら身元?もちゃんとわかってるとはいえ、
    インデックスをおっさん二人のとこに置いといて大丈夫なのかい上やん?」

上条「お前もいるし、何より隣には舞夏もいるだろ?」

土御門「ま、確かに舞夏もいるが……。
    残念ながら頼りにされてる俺は今からちょっくら野暮用で外出する所だぜい」

上条「なんかあったのか?」

土御門「いやぁ、アメリカのお偉いさん……というかアメリカそのものに熱烈に会見を希望されちまったんだぜい」

上条「……お前みたいなアロハ男を?」

土御門「いやだって、俺一応陰陽師ですたい?しかもすごく強い」

上条「あ、そっか。……でも失望されるんじゃねーの?その、アメリカ?って奴に」

土御門「……やっぱここは陰陽師の服を着るべきか……
     京極堂みたいな服を着てった方が……」

上条「きょ、京極堂……?って髪の毛がど金髪な時点でアウトじゃね……?」


――
上条部屋


英「……というか、本当に覚えてないんだな。
  ……最大主教から話は聞いてたが」

イン「……一年ごとに記憶を消されてるし、
   あなたの事はどこにも書かれてなかったからね」

英「まぁ……いくら人民に知られてても公的な存在じゃないからな」

イン「あなた達の存在そのものが、私には分からないかも。
   数千年も生きて、国とともにある、なんて事が。
   ……あなた達は一体」

インデックスが沈痛な面持ちで尋ねた時、フランスが笑いながら言った。

仏「繰り返すけどさ、俺達は船みたいなものだよ。
  国民は風、政府は帆。時代は波だ。
  マストがきちんとして、風がちゃんと吹いてりゃ俺達はありつづけるのさ」

イン「……ルートヴィヒ・ベルネの言葉だね」

仏「お、本当に分かるんだ?」

イン「でも、……それで辛くなかったの?
   何度も戦争を見て、何度も裏切りを見て、
   ……人が死ぬのを何度も見て」


記憶を何度も消されて、何度もリセットされたインデックスは。

全てを抱えたまま生きてきた彼らに問うた。


英「……確かに辛いし裏切りはあるし働かなきゃいけないし飯はマズイって他国にバカにされるし、大変だけどな」

そこで区切って、苦笑いしながら言った。

英「馬鹿やって騒いだり、いい奴と会えたり……。
  ……いい事もあるんだよ」

イン「……そう、いうものなのかな」

英「そういうもんさ」





仏「ま、その馬鹿やるってのが悪酔いして全裸にエプロンつけた状態で走り回ったりする事だけどね?
  騙されたらダメだよお嬢ちゃん?」

英「……テメーだって全裸に股関に薔薇の格好してただろーがあああ!!」クワッ

イン「わわっ!英国紳士がまるで海賊のようになったんだよ!」アタフタ

仏「ぶっwwwww海賊紳士wwwww」

英「笑うんじゃねぇ!何で笑うんだ!」ガタッ


―――
学園都市外

日『あの、ほんと、ほんとはやく来てくださいね?』

印「うんにゃ、それはわかっとよー」

日『というか、そもそもどうしてそんな場所に……』

印「いやいや、便を間違えてしもうてね〜」

日『はぁ……。あ、あの……気をつけてくださいね?
  そこ、不良高校ありますし……』

印「あー、大丈夫大丈夫。じゃあ切るけんねー」

日『あっちょっと!』ブツン!

印「……さてと、とんでもない所に来てしまったばい。
  ……計画通りっちゃ計画通り、とですが」

インドは、荒れに荒れた今も喧騒が聞こえる校舎を見上げた。


バルヨナ海青水産高校。
「シモンバルヨナ あなたは幸いだ」という聖書の一節から校名をとった、
創立91年を迎え、元は教会もある由緒あるカトリック系高校だったが、
10年前に浜市水産高と合併して不良校になってしまった高校だ。



印「……さてと、せっかく学園都市観光ば行くのを遅らすけんね。
  あの目的の物をはやいとこ見つけるばい」

印「じゃあ、神裂さん、建宮さん、五和さん、行くばい」

神裂「……言われなくとも」

建宮「さっさと行くのよな」

五和「……はい」

天草式十字凄教。その内から、聖人含め三人がインドの後方にいた。
そして建宮の手に握られているのは、かつてのクーデターで使われたあの「スキーズブラズニル」……の複製品。


印「はよう日本を、んにゃ世界を揺るがすもんをのさらんとあかんばい」

書き溜め分をさっさと消化していきたい感じでどんどん投下していってます……。
やっぱりヘタリアと禁書をどっちも知ってる人よりも禁書のみ?を知ってる人が多いみたいなので、
バルヨナシーンはザックリカットしていくかもしれないです。知らない人多そうなので。
今回はここまで。

寧ろヘタリアとかバルヨナのほうが好きな俺涙目

挿絵は新訳5巻と同じ構図か。面子はスイス、ハンガリー、フランスで合ってる?

なんでこのインドさんばいばいばいしか言ってないんだろう。がばいばあちゃんか何かなんだろうか……。
ちなみに最後のセリフののさらんと〜は手に入れないと〜です。

>>40 バルヨナ好きがいるという事実だけで嬉しいです。
バルヨナ知ってる人がいるならやっぱ出したい……。あとちびさんデイトとかヘビオブも小ネタで出したいですね。

>>41 というかそれのトレスです……絵はまともに描いた事ないんだ……。
    むぎのんのとこはリヒテンなんだ、わかりにくくてすまないです。

投下はまた明日やります。
次回は上条とイタリア回になるかもです。なにかありましたらご自由にどうぞ。
ヘタリア関連で分からなさそうな所あったら勝手に解説とか突っ込んでますけど今のでいいかとかの意見とかでも。

――

建宮以外の三人は皆バルヨナの制服を着ていた。
……女子物の制服を探すのに苦労した、とは建宮の談である。


印「ばってん、そちらさんから言ってきたとはいえすまんばい」

神裂「いえ、いいんです。そもそも封印の解除には私達十字教の知識を持った人間でないと不可能でしょう。
   それに、我々も貴方方が持ってきた話を知らなければ動く事すら出来なかった」

印「……勇んでフィンランドから引き受けたのに、まだまだがめんちょろたい、私も」

五和「が、がめんちょろ……?」

建宮「半人前って意味よな」

五和「あ、なるほど」

印「さて、じゃあせっかくそちらさんが用意してくれはったこの学生服でさっそく潜入ばい」

五和(……絶対目立つと思うんですよね……)

神裂(まぁこの高校自体女子がいませんしね……インドさん?も浅黒で目立ちますし……)

五和(私達は囮ですから、これでいいんでしょうけど……)

建宮(それよりなんでインドが九州弁を喋ってるかの方が俺は気になるのよな。
   カタコトや英語、あちらさんの公用語とかならともかく)

五和(……通訳術式のエラーなのでしょうか……)

神裂(まさか最大主教みたいなアホな理由ではないと思いたいですが)

印「?」

――
上条「……買うもん買ったし、帰るか」

上条が来たのは第七学区の寮近くにあるコンビニだ。
……ふと、後ろに騒がしい声が聞こえ振り向くと、見覚えのある男と金髪の男女、それに黒髪の青年がなにやら話していた。

上条「……って、あれは青髪ピアスじゃねぇか」

青ピ「あっ!上やん!」

上条「どうしたどうした」

青髪ピアスに気づかれた上条は友人がいるその集団に近づく。
日本人かと思ってた黒髪の青年の方もよく見なくても欧米の……スラブ系のようだった。
上条の耳元に青髪ピアスが近寄り、小声で話しかけた。

青ピ(上やん見てくれボクとうとう金髪貧乳お嬢様と知り合いになったんやで)

上条(ただでさえ分からないお前の置かれてる状況がますますわからなくなったぞ!?
   というかそれを自慢する為に呼び止めたのかよお前)

瑞「……貴様はこの青髪の学生の知り合いであるか?」

こそこそと話す上条達を不審がったのか、金髪の青年が話しかけてきた。
その目つきは獲物を射抜く程鋭い。

上条「あ、はい!この青髪ピアスがなんか失礼な事したなら代わって謝りますです!」

瑞「いや、別に失礼な事はされてないではあるが……」

青ピ「上やん、まるでボクが女の子と出会うとなにかしでかすような物言いやん……」

上条「今年入って職務質問40回越えしてる友人を信頼出来るか!?」

青ピ「あっえっせやね」

悲しい事に事実であった。

――

上条「というかこの……女の子と知り合いになったってどういう……」

上条がまるでお嬢様のような浮世離れならぬ学園都市離れした少女を指さした。

列「それはですね……あ、まだ名乗ってませんでした。私は……リヒテンシュタイン、と申します」

上条「あ、リヒテンシュタイン……?貴族みたいな名前だな。えと、俺は上条当麻だ。よろしく」

瑞「……我輩達も名乗っておくか。我輩はスイ……いや、バッシュ・ツヴィンクリと名乗っておこう」

上条(あれ? ……二人は兄妹に見えたけど、リヒテンシュタインは苗字だし……違うのか?)

ここでもし上条に知識があれば、リヒテンシュタインというのが国の名前だと分かったはずだ。
上条は不審に思ったが、とりあえず手を差し出す。
バッシュ・ツヴィンクリと名乗った青年(スイス)はほんの少しの間手を見下ろした後、応えた。

勃「あーいいなぁー俺も用意しとくべきだったわ、人名……
  んー、俺の事はヨーグルトの妖精とでも呼んでくれたら嬉しいわー」

上条「よ、ヨーグルトの妖精……?」

すると、ポケットからピピピという音が聞こえた。
どうやらフランスから借りていた端末が鳴っているらしい。

青ピ「あれ?上やんの携帯、そんな着信音やっけ?」

上条「や、これは借り物……っと、イギ……アーサーから連絡か」

端末を取り出し、電話に出ようとした。
すると、バッシュが驚いたように目を見開き、上条の胸ぐらを掴んだ。

瑞「貴様……それはフランスの……!
  まさかフランスから奪ったのであるか!?貴様!?」

上条「へ?あんたフランスと知り合いなのか!?
   って、違っ!これは借りたものであって……!」

青ピ「フランス?上やんまさかフランスの女性と知り合いになったん?」シレー

勃「まぁまぁ……ふたりとも落ち着くんだわ、ほら、リヒテンシュタインも怯えてるし」

ヨーグルトの妖精(自称)がいつの間にか両手に液状のヨーグルトが入ったヨーグルトを取り出し、二人に渡そうとする。

瑞「学園都市……やはりこれだから外国は……!
  我輩たちを分散させて何かをしでかす気では……!」

上条「と、とにかく電話に出ればわかるから!な!落ち着けって!
   ……って、うわわっ!」

バッシュに押され、そのままバランスを崩した上条がヨーグルトの妖精の方に倒れこむ。

勃「ぐわっ!ちょっ……!こぼれ……!」

バシャーン!

そのままヨーグルトがリヒテンシュタインとヨーグルトの妖精にかかる。

青ピ(上やん、今回ばかりはナイス!)グッ

勃「あー……」

列「……え、えっと……その……」ヨーグルトーン

瑞西「……」

瑞西「……貴様……」

上条「えっあっはい!」

瑞「 覚 悟 は で き て る の で あ ろ う な ?」

上条「あっえっあっごめんなさいひいぃいいい!!」ドゲザッ

そもそもスイスが上条の話を聞いて落ち着いていればこんな事にはならなかったのだが、
不幸体質だと自覚し、インデックスに襲われるのが習慣になってしまった為日本の秘技ドゲザを路上で外国人相手に発動させる上条。
それを見てさすがに正気を取り戻したスイス。

瑞「……はぁ。さすがにこんな所で一般人相手に発砲する気はない。謝るなら、我輩じゃなくてリヒテンシュタインとブルガリアに謝れ」

上条「え、あ、あぁ……そうだった……す、すまん……」

上条「……ってブルガリア?どこかで聞いたような……?」

勃「俺の事だよ俺。……というか知らないの?ちょっとショックだわー……ってはやく電話に出なよ少年」

列「そ、そうですね、早く出て上げてくださいまし。私達に着替えはあるので大丈夫ですから……」


上条「あ、後で俺の部屋で着替えてっていいから……本当……ごめんなさい……
   ……と、えっと、イギリスか?」

英『随分出るのが遅かったな。何か会ったか?』

上条「いや、友人にあって色々あって……って、何の用だ?ま、まさかインデックスに何かあったとか……?」

英『は?……いや、今はヒゲ野郎が禁書目録に料理を振舞ってやってる。予想以上に大食いだなあいつ。
  ……それで冷蔵庫の中身を了承なく使っちまったし、晩の用意もあるだろ?すまないが、そのヒゲの端末使って好きに材料を買い込んでくれ』

上条「いや、インデックスに食べさせてくれるならこちらとしてもありがたいし別に……
   ……でも上条さんちの家計は火の車なので使わせて頂きたいのですが本当によろしいでございますでせうか……?」

英『いいよいいよ。……と、フランスがちょっと代わりたいそうだ。代わるぞ』

仏『やっほー世界のお兄さんだよー。いやー、素直においしいおいしいって言いながらたくさん食べてくれる子はかわいいねー。
  お兄さんとしても作り甲斐があるよ』

インデックスの「これすごいおいしいんだよふらんす!もっと欲しいかも!」という嬉しそうな声が聞こえてくる。

上条「……でも冷蔵庫には余り物しかなかったような……。中身ほとんど空っぽすぎてあそこの店に行ったくらいなのに……」

仏『あー、お兄さんが持ってた材料も使ったけどね。お兄さんくらいの料理人になると余り物でもなんとかしちゃうの。
  ま、イギリスのあのヤローには一生無理だろうけどな♪』

上条「は、はぁ……」

上条が薄々「あれ?クーデターの時も思ったけどやっぱりイギリスとフランスって仲悪い存在なのか?」と思い至り始めた時、
スイスが端末を貸すようにジェスチャーした。
先ほどの反応からも知り合いだと判断し、ぽんと手渡した。

瑞「代わった。その声はフランスであるか」

仏『あれ?スイスじゃねーの。どうしてカミジョーと知り合いなの?』

瑞「……色々あったのである……。そんなことより、貴様こそ何故こやつと……」

仏『イギリスの野郎の知り合いが彼の知り合いでね』

瑞「?そ、そうであるか。ふーむ……信頼に値出来るかは未だ分からないが、貴様らがそういうなら……。
  ……カミジョー、と言ったか。返すである」

上条「話し終わったか?よっと」

再びフランスの端末が上条に手渡される。

勃「……話してる所、悪いんだがな。そろそろ着替えないと俺ら風邪ひくかもしれないんだわ」

列「そ、そこまでびしょ濡れという訳ではないですけど、さすがに……」

上条「あ、あぁ!そうだった!……近くにどこかいいとこがあればいいんだが、見当たらないし……。
   俺の寮の部屋でよければすぐ近くだしどうだ?」

瑞「……本来なら断っていた所であるが、フランスもイギリスもいるようであるし、
  何よりリヒテンシュタインにこんな姿をさせつづけるのは申し訳ない。その言葉に甘えさせてもらおうか」

先ほどの険悪な様子よりはいく分かマシになったようでホッとする上条。
だが一人、上条の後ろから三大テノールもびっくりな、ドスの聞いた声で恨めしげに声を振り絞るように言う。

青ピ「……上やん、ちゃっかりボクよりもいいポジションゲットしとるで!部屋にあがっていただくなんてそんな!そんなこと!」

上条「な、なんだよ青髪ピアス!黙ってろよ!というかあの子のぞいたら男ばかりだぞ!?」

――
上条の部屋


瑞「邪魔するのである」

列「お、おじゃまします……」

勃「失礼します、と。おー、これが学園都市の学生の寮の部屋かー」

英「あれ?お前らも来たのか?」

仏「お、本当だ。どうする?まだ早いけどお兄さんの料理食べてく?」

イン「あっ!とうまがまた女の子を連れ込んで!……女の子を……あれ?男の方が多いかも……」

入ってきた四人を出迎える三人。フランスは料理を、イギリスとインデックスは学園都市用ニュースチャンネルを見ていた。

上条「あ、狭いとこだけどどうぞ中に……ってほんとに狭っ!さすがに7人はきついな!」

イン「七人じゃないんだよ、スフィンクスもいるんだよ!」

インデックスがむっとした顔をして胸元から子猫を取り出す。

列「あ、かわいい……」

おずおずとスフィンクスを見ようと近寄るリヒテンシュタイン。

イン「? スフィンクスの事を触りたいなら触ってもいいんだよ?」

スフィンクスもインデックスの手から抜け出し「こんなかわいいお嬢さんなら触られるのも大歓迎だぜ」といった様子でリヒテンシュタインに近づく。

列「あ、ありがとうございます!」モフモフ

上条「さっそく仲良くなっちまった……」

瑞西「……まぁ、リヒテンシュタインが嬉しいならよいである」

勃「あ、じゃあ俺先に着替えてくるわー。少年、ちょっと風呂場借りるな」

上条「あ、どうぞー」

英「……なぁスイス。なんでリヒテンシュタインとブルガリアがヨーグルトまみれなんだ?」

瑞西「……色々あったのである」

仏「おーいみんなー。お兄さん特性簡単プリンアラモード出来たけど食べる?」

イン「!!た、食べたいんだよ!フランスの料理はとってもおいしいかも!」ガバッ

上条「あ、出来たら俺の分もあると嬉しいな……ってインデックス!いきなり複数口に詰め込まない!」

英「おいブルガリアの分も残しとけよ。あいつ泣くぞ」

仏「まぁまぁ。カミジョーが買ってきた材料があればお兄さんいくらでも作れるから安心して食べていいよ」

イン「フ、フランスはこの世に舞い降りた天使なんだよ……!」

英「母国の俺よりも敬われてやがるッ!?」

――
勃「着替えたぞーっていつの間にかパーティ始まってるし……」

風呂場から出てきたブルガリアは、今までの地味な緑の軍服とは一転、鮮やかな民族衣装に身を包んでいた。
入れ替わりにリヒテンシュタインがそそくさと着替え用の衣服(ゲルマン系の民族衣装だね、とインデックスが上条に囁いた)を持って行った。

上条「……そういや、もしかしなくてもお前らも国なのか?」

瑞西「そうである。……というか気づかなかったのであるか」

上条「いや、まぁ……。
   それにブルガリアなんてヨーグルトの冠詞のイメージしかなくて……」

勃「ちくしょう誰がモブルガリアだちくしょう」グスッ

イン「よしよし、なんだよ」サスサス

勃「悪いな嬢ちゃん……。この心ない少年におれんとこの知識を詰め込んどいてあげてくれ……」

上条「そ、それは悪かったって!」


瑞「……おいイギリス。これが貴様の知り合いか?」

英「あぁ。俺んとこの……っつても清教派か。あそこの図書館だ」

瑞「……この少女が、であるか」

英「さすがに詳細までは教えねーけどな」

瑞「……わかってるのである」フン


勃「おい少年、俺んちの有名なものちゃんと言えるか!?なぁ言えるか!?」ユサユサ

上条「え?ヨーグルトじゃ……」ガクガク

勃「確かにヨーグルトも有名だけど!ほら!他にもあるだろ!」ユサユサ

上条「…… ……すんませんギブです!」ドゲザァッ

勃「薔薇!薔薇だよ!香油用の薔薇生産世界一!
  まったくなんで学園都市に来てまでこんな辛い思いしなきゃいけないんだわ!」

列「あ、あの着替えました……」

リヒテンシュタインはディアンドルという民族衣装を着ていた。
簡素なものだが生地が高価なものでできているらしく、刺繍なども施されている。

上条「わ……、これ、民族衣装って奴か?」

仏「おー、さすがリヒテンシュタイン。似合うね〜」

英「へぇ、悪くはないな……これ、ドイツんとこにもある奴だっけ」

瑞「うむ。バイエルンからオーストリアにかけてのものである」

イン「すっごいかわいいんだよ!いいなぁ……私もあんなの着てみたいかも!」

勃「おいお前ら俺の時はスルーだったのにリヒテンシュタインの時は反応するんだな」

英「そりゃ突っ込みどころのある衣装じゃないと褒めにくいからな」

イン「わ、私はわかってるんだよ!確かロドピの方の民族衣装だよね?」

勃「インデックス!俺の事をわかってくれるのはお前だけだわ!」ガシィッ

イン(……どうしようとうま。
   実際はトラキア……ブルガリア系術式の知識から逆算した、なんていえないんだよ……)

上条(言わぬが花だ、インデックス)

――
風紀委員支部。
パイプ椅子に座らせられた成人男性(くるんつき)と彼を見下ろす風紀委員のツインテール。


伊「なんで俺、こんなところにいるのかな」

黒子「自分の胸に手をあててよく考えてみなさいな」

伊「確か俺はドイツとはぐれて、かわいい女の子みつけたから声かけて……
  ……それだけだよ」

黒子「それ!それが原因ですの!」ビシィッ!

伊「えぇっ!?ドイツとはぐれたのが!?そ、そんな!そんなのしょっちゅうだよ?!」

黒子「違いますの!!声かけ!ナンパ!そっちがアウトだっつてんですのよ!」

伊「えぇっ!?俺からナンパをとったらあとはパスタとピッツァとルネサンスくらいしか……!」

黒子「けっこうのこってますわよね!?」


初春「……白井さん、大変そうですねー」カタカタ

固法「そう思うなら助けてあげればいいのに」カタカタ

初春「えー 正直、真正面から『君かわいいね!俺とお茶しない?』って聞いてくるイタリア人に対処する方法なんてしりませんよ」

固法「まぁ、そうね」

初春「……にしても、変な話ですよね。部外者かと思って捕まえたら、第一級の招待客権限を持ってて……」

固法「しかも名前が『イタリア=ヴェネチアーノ』で登録されてるのよね」

初春「……佐天さんがいってた『土地神が年月を経て国の守護神になった存在』ってやつですかね」

固法「さぁねぇ。世界会議の付き人で、国名部分はあくまでわかりやすくする為じゃない?」

初春「……だったらいいんですけど」


黒子「ええい!もうッ!何なのですの!イタリアイタリアって!イタリアは貴方の物じゃありませんのよ!」

伊「えー…俺イタリアなんだけどなぁ。イタリア=ヴェネチアーノ」


初春「……とりあえず保護者が来るまで待ちます?」

固法「学園都市には保護者なんていないわよ」

初春「ですよねぇ」


その時、ガラァッという強引にドアを開ける音とともに、見覚えのない金髪オールバックムキムキ男が入ってきた。

独「イタリアあああっ!貴様、いないと思ったら何故風紀委員に捕まってんだぁああっ!」

伊「ど、ドイツー?!」

初春「……保護者だ」

固法「保護者ね」

黒子「どうみても保護者ですの」

彼の後ろからひょっこりと黒髪の少女が顔を出した。

佐天「やぁやぁ初春ー。なんかこの人ここに用事があるみたいだから連れて来ちゃった」

初春「佐天さんー!」


黒子「……なんですの、この金髪……知り合いですの?」

伊「ヴェー、ドイツだよ!良かった!来てくれたんだ……!」

独「あー…すまない、俺のつれが迷惑をかけたようで……」

初春「い、いや別に……迷惑といっても……」

固法「一応不審者だから連れて来られただけだから、だしねぇ」

御坂さんにおいてかれてイライラした白井さんにあっちゃっただけですし、とも付け加えられる。


黒子「……うーん……」

黒子は頭を抱えた。

独「……イタリア、だからあれだけナンパの類は自重しろ、と言ったろ……」

伊「ヴェ……違うよ、俺怪しい人を見つけたから気になって声をかけただけで」

独「いいか!この中では!お前が!一番!怪しい!」

伊「ヴェー……」

伊「っでも、本当怪しい人だったんだよ……目立ってなかったみたいだけど。爺ちゃんの時代の古い衣装を着た女の子がいて、つい」

独「は?」

黒子「……、一端展覧会でもないのにそんな格好を?それはそれで怪しいですけど」

佐天「よく、って程じゃないけどたまに見ますよね、そういうコスプレーみたいなのしてる人」

初春「そうそう青髪にピアスつけた高校生とか、よく職務質問されてますよね」

黒子「あぁ、あれは特級レベルの警戒対象ですの」

――

学園都市でも、自転車というのは未だに交通手段として使われてる。
それらが外の自転車とかなりおかしくとも、駐輪場というものは必要だった。

そのいくつかある駐輪場の中でも、人々から忘れられ大量に錆びた自転車が放置されている駐輪場。

鉄屑が散乱する無人の地帯に、一人の少女がいた。
三つ編みにした黒髪に灰色の目。細めの目にきっちりと結んだ口元というきつめの表情をした、10代後半の少女だ。
身は欧州にありがちな刺繍と鮮やかな布を用いた民族衣装を着込んでいる。
少女は鉄屑の一つに腰を下ろし、何かを待っているようだった。
そこに、魔術的な通信が入る。

『アンドレイ、首尾は上々か?』

「……えぇ、『マラムレシュ』。こちらも学園都市に潜入出来たわ」

『ならいい。……ただ、気になる事がある。事前調査で調べた地脈の配置がずれているようだ』

「……? 何それ。学園都市による建物の乱造のせいかしら?」

『いや、多分魔術的な、しかもつい最近の改変だと思う。もしかしたら他の敵対勢力が紛れ込んでる可能性もある』

「わかったわ」

通信を切断し、空を見上げる。
日は沈みかけ、空は鮮やかな夕焼け色に変わろうとしていた。

――

――
18:00

露「ねぇベラルーシ……いい加減、僕から離れて行動してみたらどうかな?」オドオド

ベラ「兄さんと離れて行動なんてありえない」

露「そ、そうそう!ぼ、僕今から美術展行こうと思うんだ……『ナンケッタに渡った日本人画家 千賀星治展』っての!」

露「その、……だ、だから、多分ベラルーシにはつまらないと思うんだけど、なぁ〜」オドオド

ベラ「兄さんが行く場所ならどこでも楽しいから大丈夫よ兄さん」

露「ぼ、ボクも一人で行動したいなー〜って思ってるんだけど……」

ベラ「こんな敵だらけの場所で一人なんて危険よにいさん!」ガシッ

露「ぼ、僕は大丈夫だよ!だ、だからベラルーシも一人でいろんな見てくるといいと思うなー……」



中「大変そうあるね……」

澳「仲がいいのはいい事ですよ」

中「あれで仲がいいなら、英国と美国も仲がいい事になるあるよ……」

――

今回はここまで。
ちなみにバッシュ・ツヴィンクリやフランシス、アーサーなどの呼び名は「もしキャラクターたちに人間風の名前を付けるとしたら?」の回答の奴だよ!


プーと一方さんのアルビノ同士の遭遇は俺得だった
悪友トリオとデルタフォースの組み合わせとか見たいな

学園都市ってことで勝手に学ヘタの衣装を想像してたんだけど
もしかしてヘタキャラって皆軍服?

空が濃紺と夕焼け色のグラデーションをみせる頃。
上条の部屋では相変わらず騒がしい様子だった。



仏「さぁーてと、お兄さんの簡単ご家庭でも作れるフルコース、どうぞー」

上条「ペロ……すげぇ!なにこれ!姫神にも負けず劣らず、ていうか姫神よりすげぇ!」バクバク

イン「さすがフランスなんだよ!ずっとこの家でご飯作って欲しいかも!」バクバク

上条「俺の意味って……ってなるけど確かにそれくらいはオイシイ!」バクバク

瑞西「……なかなかであるな」ムシャムシャ

リヒ「お、おいひいれす」モグモグ

勃「ま、少し早い晩だけど、確かにうめぇわな。あ、食後の飲むヨーグルト、ブルガリア直送なのあるけど飲む?」

英「ブルガリア直送……あぁ手渡しって意味か」ハハハカンパーイ

勃「まぁそういう事になるけど」ハハハカンパーイ


舞夏「おー、本当にすごいな……フランス料理に関してはさすがの出来栄え、といったところかー」

隣の部屋からいつの間にか来ていつの間にか馴染んでいた舞夏が、フランスの作ったフランス料理に感嘆する。
人数分以上の料理が並んでいた為、インデックスとイギリスの間に入り込みむしゃむしゃ食べ始めていた。


上条「……ところで、泊まる場所どうするんだ?さ、さすがに上条さんの部屋は無理でせうけど……」

英「近くのホテルに泊まれるからな。そこは大丈夫だ」

リヒ「第一級招待客権限をもっていると、ホテルやそこの付属のサービス、および交通機関はタダになるようですし」

上条「えっなにそれちょうほしい」

仏「まぁ、そういう訳でお兄さんも宿探しに行かないといけない訳で。なので料理しおわったら出て行くからね」

イン「えー!明日も作って欲しいんだよ、フランス!」

仏「あはは、それは嬉しいけど無理なの。……まぁよく食べてくれる子はかわいいし、近くにホテルとれたらまた来てあげてもいいよ。
  ……きてもいいかい?カミジョー?」

上条「あー、俺としてはインデックスが喜んでくれるし、実際おいしいからそうしてくれたら嬉しいっちゃ嬉しいけど……
   ……でもフランスも観光があるだろ?さすがに……」

英「ま、確かに学園都市全部回ろうと思ったら一日一学区だとしても一ヶ月はほしいよな」ペロン

イン「わ、私もまだ学園都市全部回れてないかも……」

仏「んじゃ、またどこかで会ったらその時はよろしく、って事で。多分次はこの眉毛ボーイが奢ってくれるだろうね?」

英「誰が眉毛ボーイだコラ」

――

――

日も沈み、街灯があたりをポツポツと照らす。
一般の学生はもう既に寮に帰ったりする時刻で、ゲームセンターで夜遊びするちょいワル学生やガチワル不良などが跋扈する時間帯。

誰もいない公園に、10代〜20代程度の五人の男がいた。


芬「……そういう訳なんです。お願いします、協力してください、ターさん、スーさん、アイス君、ノル君」

フィンランドはそう言って、四人を見据えた。



丁「……ま、頼まれたからには協力しない訳にはいかねぇっぺ!」

典「ん、なくしたもん取り戻す訳だべ、断る理由もねぇ」

諾「おめがそういうなら仕方ね」

氷「……言ってる意味がほんっとわかんない。けど、余程の事なら、仕方ないから手伝うよ」


芬「……! あ、ありがとうございます!」ペコリ

諾「それより、どうすんだべ? 向こうは一応プロなんだろ?」

芬「はい、それなんですが……」

そう言って、フィンランドは端末に予めインストールした地図をホログラムで表示させる。
表示された目的地は、第一〇学区――学園都市でも治安がとくに悪い学区――の、ある廃墟となった研究施設だった。





【芬蘭→フィンランド、瑞典→スウェーデン、諾威→ノルウェー、丁抹→あんこ、氷島→アイスランド】

――


日はもうとっくに沈み、あたりをわずかな星々と月明かりが照らす。
普通の学生は寝静まり、そうでない学生もそろそろ帰ろうかという時間帯。

「まったく、ふざけた話じゃないか」

ここの住人ですらないステイル=マグヌスは、学園都市の高層ビルの屋上にいた。
その声色はくだらないとでも言いたげだ。

『そうですね、実にふざけた話です』

神裂火織はそう言った。その声は自分でも信じられないとでもいうような声だ。

『まさかあんなものがあるなんて。私も精査するまで信用出来ませんでした』

「だろうね。あれがその学校内にあるなんて、しかも誰にも知られずに、だ」

『あの文書が公になれば、世界が――少なくとも、かつての「あの枠組み」の人々は皆驚愕するでしょう』

「あぁ、枠組みの外である最大主教ですら明言したからね。『あれは危険だ、はやく潰せ』と」

『……縮図巡礼で学園都市近くまで飛びます。そしてあの霊装で『彼』に渡します』

「そこまできたらさっさと幻想殺しによって破壊させてしまいたいね」

『……ですが、日本政府が許さないでしょうね。仮にも公的文書です。』

「解除してから政府に送りつけてやるくらいしかない、か。しかも神道と十字教、仏教を組み合わせた代物ときてる」

『十字教や仏教の結界もあの子なら解除できるはずです。……土御門もいますし』

「僕らはその間の護衛って訳か」

『私としては、彼らに囮になっていただくのは心苦しいのですが、ね……』

通信が切れる。

ステイルは煙草に火をつけた。
その火は彼の指元を、ほんのわずかに照らした。



「きちんと動けば世界の破滅。放置するにも危険。かといって破壊するのも許されない。……まるで不発弾じゃないか」

――

翌日。とある水産高校。



首尾よく偽装書類を用意し、転校生として紛れ込んだ五和、インド、神裂の三人。
彼らの教室は一年海洋技術科だ。
教室の外は久々の、しかも胸のでかい女生徒を一目みようと不良の生徒でごった返していた。

「おー!すげー!胸でかい!」

「ちょっ……ほんまや!というかあのインド人なに!?インドからの留学生!?」

「あ、通らせて欲しいのでござる」

「あぁっ!いたい!な、なんで自分ばかりこんな目にあうんやろか……」

「すげー!あいつらも放送部にいれてやろうかなー!」

……なんか喋るてるてる坊主みたいなのが見えたがきっと気のせいだ。
神裂や五和はそう思い込むことにした。

神裂(そ、そもそも建宮が早い所あの文書を手に入れればいいだけなんです……それまでの陽動です)

五和(いざとなったら素手でもいけるだろうけど、やっぱりこういうところは……)

印度(楽しそうな人ばかりですたい)



つこみ「お!あのボインの姉ちゃんと席が近いで!」

カロ「わあ……あのインドの人すごいカレーの匂いがしてはりますなぁ」

ノマル「……なんかお腹すいてくるな……ちくしょう」



――

建宮「にしても、まったく結界がないのはどういう事なのよ?」

三人が囮になっている頃、建宮は校舎内の誰も立ち寄らない場所にいた。
神裂の場合は相手方の警備への牽制の意味を込めていたのだが――どうやら、それは無駄だったようだ。
結界一つないどころか、日常生活に魔術的意味を込める天草式から見ても『おかしい所がない』。
そういう風に見せかける術式もない事はないのだが、それでも聖人クラスが立ち寄れば何らかの反応を示すはずだが……
そう疑問を抱きながらも、無人の教室への扉を、開ける。

建宮「……この部屋に、あの文書が……」

その時。

??「おい、そこのあんた」
                、、、、、、、、
気づかれないはずなのに、後ろから声をかけられた。



 「そっだどこで何してんですか」


振り返る。

うさぎを肩にのせた、不機嫌そうな学生。

建宮も事前調査で知っている。

会津誉。
このバルヨナの生徒会長が、そこに立っていた。

時間は少しだけ遡る。

学園都市内の観光客向けホテル『カリブンクルス』
交通の便も他よりよく、最新技術(もちろん観光客が満足するような)をふんだんに用いたサービスが売りだ。
朝食をとりに食堂にきたところたまたま鉢合わせした『招待客』が四人。

米「Oh....なんてこったい、ジャパニーズウィザードがまさかアロハだったなんて」

日「寝てもまだあの衝撃から癒えてないんですか、アメリカさん……」

中「大体日本は我のものでもなんか変な感じにしがちあるよ。拉麺とか」

日「あ、中国さん……もう別物別物って何度も言われましたね……って陰陽師は一応私のとこの」

韓「まぁ……兄貴や日本がどう言おうと、すべての起源は俺に通ずるんだぜ?」

日「別に全ての道はローマに通ずる訳じゃないんですよ……」

米「なぁ日本、ローマってどこだい」

日「えっあぁ……えっ!?知らないんですか? ……ローマはイタリアの首都ですよ……この場合はローマ帝国ですが」

米「んー、そういえばローマ帝国ってすごい広いんだったけ?どのくらいなんだい?」

韓「俺もさすがにその時代はよく覚えてないですね。……兄貴は知ってるんだぜ?」

中「あー……あの時は凄まじかったあるよ。ゲルマンの侵入でひどく弱体化するまで、本当に栄華を極めていたあるからね。」

日「あぁ、4000年の歴史とやらは伊達じゃないんですね……伊達じゃ……」

中「まるで嘘吐きみてーな目で見んじゃねぇある」

韓「まぁ全部俺が起源なんですけどね」ビョンホン☆

中「ビョンホンスマイルこんな所で使うんじゃね―ある!」


米「で、どのくらい大きかったんだい?教えてくれ!」

中「歴史書にでも書いてあるが……。英國から西班牙から北非州、徳國に南東欧に土耳古に埃及……世界を牛耳ったも同然の版図あるよ」

米「ヨーロッパだけじゃないっていうのか!すごいなローマ帝国!」

中「……ま、しかし孫の意大利は全然似てねーあるよ。ヘタレもヘタレあるな」

米「ああみえてアフリカ戦線だとイギリスは翻弄されまくりだったそうだけど、そうか、あの時はイギリスがダメダメだったんだな!」



――

別のホテル


英「くしゅん!……うぅ、アメリカの野郎また俺に悪口言ってんな」

仏「お前分かるの?」

塞「さすがイギリスさんですねー。その眉毛がセンサーなんですか?」

英「んなわけねーだろ!」



【意大利→イタリア、西班牙→スペイン、徳國→ドイツ、塞舌爾→セーシェル】

――
問題。
学校に行く前に自販機で飲み物を買っていこうと考えて自販機に近づいた所、軍服を着たなんかこわい銀髪赤目のお兄さんがいた。
この場合はどうするべきか?配点15点。

青髪ピアスの解答。


青ピ「……あの」

普「……」

青「……」

普「……」

青ピ(……うわーこれめっちゃ自販機で集中しとるで。もう学校で買お)

普「……なぁ」

青ピ「ひぃいいっ!?ボク悪い事しとらんで!?」ビクゥウウウ

普「いや、何の話だ? ……まぁいいや、一ついいか」

青ピ「は、はい?」

普「この『ガラナ青汁』とか『いちごおでん』ってなんなんだ?」

青ピ「あー……お兄さん観光客? それは学園都市の『商品』の『実地テスト』の商品で……」

青ピ(……なんや、別に怖い人やのうて学園都市のゲテモノに戸惑ってただけやん)

青髪ピアスは内心怖がってたのを恥じながらも、ほっと息をついた。

普「はぁ。イギリスやアメリカもびっくりなもんばかりなのはそういう訳か……」

青ピ「イギ……? まぁ、とにかく初心者ならヤシの実サイダーとかきなこ練乳がオススメやで」

普「なるほどな」

銀髪赤目の厨二スタイルのプロイセンはそういって、端末の電子マネーをつかいきなこ練乳を購入する。
そして掴みとるやいなや、プルタブを開け一気に飲み干した。

普「くぅー!すごい甘いなこれ……。お、ありがとな、学生」

青ピ「いやいや別に。探せばちゃんとしたもんもある訳やし、お兄さんも楽しんでってなー」


青髪ピアスは返答もそこそこに遅刻しないようにと学校へと向かった。
一人残されたプロイセンは、空になった缶の成分表を見て呟いた。


普「……しっかし、人体実験場みてーなもんだな、ここ。まだドイツじゃ認可されてねー成分がしれっと混じってやがる」

もちろん安全性は確認してあるのだろーけどな、とも付け加えて。

今回の投下分終了。書き溜め分全部使い切ったのでペースが幾分かおちると思います。

>>62 日本以外は基本軍服ですねー。ブルガリア、リヒテンは今は民族衣装だけど。
    基本的に韓国や台湾あたりは普通に民族衣装着てる感じです。

――
上条「という訳で、いってくるぜ」

イン「うん、分かったー。いってらっしゃい、とうま」








――『第一〇学区にて、放棄された研究施設が破壊される事件が起きました』

――『能力者とスキルアウトの抗争があったとみて、警備員は近々付近のパトロールを開始するとともに、原因解明を急いでます……』



――『次のニュースです…… ここ数日、体調を急に崩す学生が増加……
   いずれも感知系能力者や自然系能力者である事から、環境の変化によるものとみられています……』

――

――

とある高校。
上条のような不幸体質でもない青髪ピアスは普通に予鈴前には教室にたどり着いていた。
その上条とはいうと遅刻こそしてないが投稿中に段差に五回も躓いて内一回は人に派手にぶつかったそうだ。

土御門「カミやんさすがだぜい」

上条「やめてください……上条さんのライフポイントはゼロですことよ?」

青ピ「はぁ!?昨日美少女金髪貧乳お嬢様(となんかよくわからんヨーグルトと軍人)を部屋にあげたカミやんが言えるセリフやないで!?」

上条「まぁ確かに昨日はいい日だったけどさ……奢ってもらえたり手作り料理振舞ってもらったり」

青ピ「えええ!?あの女の子の手作り料理!?ぼ、ボクが受けるはずだったその幸運を!」ムナグラガシッ

上条「おおおおちつけ青髪ピアス!手作り料理の方はおっさん!おっさんに作ってもらったの!」

土御門「あぁそういえば、舞夏がはなしてたな。超本格フランス料理人を見た!……ってにゃー」

青ピ「それはそれでええなぁ……」


上条「そういうお前はあの後なんにもなかったのか?」

青ピ「いや、そういえば今日変な人は見たで」

上条「? へぇ、どんな奴だったんだ?」

上条(……もしかしたらフランスやイギリスの同類かもしれないな)

青ピ「なんかこう……白髪か銀髪かようわからん髪で、ツンツンしてて、赤い目ドギツイ目をした兄ちゃん」

上条「…………」

土御門「…………」

青ピ「なんで黙るん」

土御門(……一方通行、なんで俺の通ってる高校の近くに……)

上条(……一方通行、出歩けるようになったんだな……よかったな……)

青ピ「二人してなんでコソコソしとるん」

青ピ(うーん、そないにあの兄ちゃん有名なんかな、あの外人の軍人みたいな兄ちゃん……)

――

騒がしい昼休み。

姫神秋沙は自前の弁当を食べようとしていた所、なぜだか自分と似たような雰囲気を感じ取った。


姫神「……この感覚。まさか。私と同類……!」

吹寄「? どうしたの?」

姫神「い。いや。なんでもない」





加「どこでご飯食べようか、クマ三郎さん」

ク「知るか。めしよこせー」




吹寄「? そう。 あ、お弁当食べるところ?」

姫神「うん。隣いい?」

吹寄「いいわよー。……あ、そういえば、昨日変な集団見たのよね」

姫神「変な集団?」モグモグ

吹寄「そう、同じような衣装きてて、同じような紋章つけててさ。不気味だったわね」

姫神(……私を見つけたイギリスの騎士派も。そんな格好してた。もしかして魔術師かも……。)

姫神「で。その人達どうしたの。詳しく教えて。」チカヨル

吹寄「え?あ、あぁ。どこかと連絡とってみたいだけど、すぐどっかいっちゃったわね」

姫神(なんらかの。下準備をしている段階……?)

吹寄「そうそう、リーダーみたいな人もいたわね」

姫神「どんな人?」

吹寄「そうねぇ」

吹寄制理は思い出そうと、箸を持ったまま天井を軽く見上げる。
2秒ほどして、思い出したようで姫神をまっすぐ見て言った。

吹寄「思い出した、その人はね――」






      「赤い目をしてたわ」





――

14:00


学園都市といえばなんといっても超能力だ。
超能力といえば超能力者だ!

という訳で。
第一〇学区にある中規模のスタジアムを借りきり、学園都市の超能力者に、学園都市ダヨ!全員集合!した各国の前でデモンストレーションをやってもらう事になっている。

しかし、人格破綻者の集まりとも称されるレベルファイブでそんな事を頼める人間なんてそうそういる訳がなく。



美琴「……なんで私とアンタが」

削板「頼まれたからには断る訳には行かないからな!」

美琴「……あっそ」



最近は日常生活を送っておりかなり丸くなったとはいえ病人同然の一方通行。
暗部も暗部の上もはや人なのかどうかすら分からない上に翼くらいしか見栄えがないメルヘンと第一位に言われた垣根帝督。
例に漏れず人格破綻している上に危険すぎる麦野沈利。
精神を操り情報漏洩させられる可能性がある事からそもそも各国の重鎮から「近づくな!」と釘をさされた食蜂操祈。
そもそもどこにいるかもわからない第六位。

そこから差し引いた結果が、これだ。


御坂美琴は頭を抱えた。
詳しい話は知らないが、どうやら今からのデモンストレーションを見る観客は各国の重鎮中の重鎮らしい。
100名を超える国籍も衣装もバラバラ(しかも大抵は軍服で男が多め)の集団を前に、この男とデモンストレーションをしなければならない。
……失敗せず、うまくいくだろうか心配だった。
別にこの削板に怪我をさせるかどうかが心配という訳ではなく。


削板「とりあえずお前が俺に超電磁砲を撃って、俺が根性で受け止める!次に俺のすごいパンチで……」

美琴「……いや、やらないわよ!? あの時はたまたま止められたのかもしれないけど、さすがに危険でしょ」

削板「んなもん根性でなんとかなるだろ!」

美琴「あんたじゃなくて!みるひとがっ!よ!」

削板「根性があれば!なんとかなるっ!」

美琴「あっても無理だから!根性でなんとかなる程この世界は甘くないわよっ!」





日(しかし、いくらメインイベントですし事前に連絡済みとはいえ、自由に来てくださいといったのに……)

日本はあたりを見回した。
ずらりと並んだ地域を問わず集まった彼らを見て、思わず笑いがこぼれてしまった。
皆、超能力というのがなんだかんだいって気になるらしい。
……そこに技術を盗もうとする意図や、単に面白そうだからという考えがどの程度あるのかはともかく。

日(大遅刻なインドさんを除いて、全員が来ているじゃないですか……)





米「ま、まだ始まらないのかい!?」

英「おい落ち着けよアメリカ……ったく、俺の魔術の方がすごいんだけどな!でも参考までに見てやらんことも」ソワソワ

北伊「日本のとこのエスパーってどんなのか楽しみだね!兄ちゃん!」ヴェッヴェッ

南伊「……ふん、俺はこんな子供だましに騙されねーぞちくしょう」ソワソワ

普「……あぁ、ダメだ、どうしてもどんな兵器に転用できるか考えちまうぜ」

独「……兄さんは戦い詰めばかりだったしな……

北伊「ヴェー……俺は超能力をどう使ったらモテるかとか考えちゃうよ……」

日「……なんか怪しい組織にはモテそうですね……」




烏「うーん、そういえば第一〇学区ってここよね?朝、ニュースで事件があったって聞いたけど……」

立「第一〇学区って治安悪いんでしょ?確か不良がいっぱいいるって……。こわいなぁ」

波「でも能力者と不良の戦いって聞くとすっごいかっこよくね? 俺も見てみたかったしー!」

立「俺ならパスだなぁ……」


拉「でも一〇学区でも、ロシアさんがいたらきっとだいじょうぶですよね。だってロシアさんの方が不良よりも何倍もこわいですもんね」アハハ

愛「……ちょ、ら、らと……」


露「ん〜〜、何か言ったかなぁ?ラトビア〜〜〜?」ゴゴゴゴ


拉「……へ?ロシアさん、どうしたんで」

その次の瞬間、ラトビアがアイアンクローを決められるのを数多くの国々が目撃したという。


愛・立「っ、ラトビアアアアアアアアアアッ!!!!!」


そして、リトアニアとエストニアの絶叫が響き渡り、デモンストレーション前の超能力者を驚かせたとかなんとか。

―――


時は遡って、夜明け前。
第一〇学区、廃棄された研究施設内。

内部は荒れ果てており、なんらかの薬品で焼け焦げたらしい実験器具やまぎれこんだ小動物に齧られたコードなどが散乱していた。
そんな中、割れた蛍光灯などの光源によって、北欧諸国の五人が、闇からからかろうじて浮き上がっている。
目の前には、ボロボロのコードでぐるぐるに縛られた上で気絶している中学生くらいの少年と30代くらいの男性。
ここに侵入した際、少年の方はヨハネと名乗り、大人の方はミシェルと名乗っていたか、とフィンランドは思い返す。


「まったく、手間ばかりかけさせる奴だべ」

といっても、名前と所属を名乗った瞬間にノルウェーが召喚したトロールの一発でのびてしまったのだが。

ノルウェーはそう言いながら、あたりの様子を見渡す。
闇で覆われていて視認しづらいが、そこには「無理やりつなぎ合わせられた子羊の死骸」「丘の写真」などが散乱している。
中には「花を咲かせる花」や「果実を実らせる果実」などという到底理解できないものまであった。

研究施設には不揃いなそれらの物品の配置で描かれたサークルの中央に、「角笛」がある。


「あ!アレだっペな!あの角笛!」

「ん……これが」

スウェーデンはそれを拾い上げる。
ギャラルホルン。ラグナロクの始まりを告げる角笛である。

「スーさん、僕は、北欧神話圏じゃないのでわからないんですけど……本物ですか?」

「ん。間違いねぇ。……模造品だったとしても、何かの力を持ってる事は確かだない」

そうですか、とフィンランドは言ったあと、周りの不可解な物品を一瞥した。

「……これも、なにかの儀式に必要なものなんでしょうか」


アイスランドが屈んでそれらをよく観察する。

「……7つ目に7つ角の子羊。これは黙示録の仔羊を表してるつもりなのかな、ノーレ」

「……この花を咲かせた花、もしかしてインド神話のカリ・ユガを表してるつもりだべか?」

「なぁ、この写真に写ってる丘、もしかしなくてもメギドの丘っちゅーやつじゃないッペか?」

観察すればする程、円を描いた物品の共通点が見つかる。
それは、

「……『終末』に関する物ばかり、だない」


「……そういえば、さっき気絶させちゃった魔術師さん……ヨハネにミシェルって、ヨハネの黙示録とノストラダムスの名前を名乗ってましたね」

「偽名だろが、それを意識してるのは間違いないだべな。……そもそも名乗った所属が『瓦解する世界の牽引』か。怪しいも怪しいべ」

フィンランドが口に手をあて、思案する。

「……ギャラルホルンを中央に据え、終末に関する象徴物品を片っ端から集めて……何かの儀式を……?」

フィンランドが独り言を呟いて周りを見ると、一様に暗い表情をした四人がいた。
暗い中のせいか、表情がよりはっきりと見える。
あのデンマークですら、何かを考えている様子だ。

「……って、僕は魔術師でもなんでもないので全然わかんないんですけどね。大体こんな子供騙しで世界が終わる訳が……」

魔術師なんて僕もそんなに会ったりしませんけど、もっと本格的な儀式場を作ってましたし、と付け加える。
そう言って笑って繕うも、その表情はどこか硬いままだった。


「だけどもよ」

デンマークが顔をあげて、フィンランドを見た。

「イギリスはその『子供騙し』でロシアを召喚するなんてバカな事やったんだっぺよ?」

未だに語り継がれる第二次世界大戦時の英國ロシア召喚事件。
語られる方はたまったもんではないが、実際に『国家を召喚』したのは事実だ。

「……それに、俺はあの第二次世界大戦の時、イギリスに亡命してたからわかっけどよ……」

ノルウェーが続ける。

「アレイスター=クロウリーが、イギリス中の魔女を集めて儀式を行ったんだべ」

アレイスター=クロウリー。
自らが十字教を終わらせる存在だと名乗った男。
そして、

「……伝説の魔術師、でしたっけ」

「そだ。……そいつの儀式。どんな効果があったかわがっか?」

無言になったフィンランドの代わりに、アイスランドが控えめに答える。

「……、確か、ヒトラーのイギリス上陸を防いだ、って……」

「そ。もちろんあの時のドイツにそんな余裕がながったからと言えばそうなるべが」

本当はどうなのかは、今では既に検証不可。
だが、実際に本土上陸を防いだ。



「……でも、だからといって、こんな稚拙な魔法陣なんてありえませんよ、だって、宗教もバラバラで」

「んだ。……だけんちょも」

スウェーデンがフィンランドに、ギャラルホルンをみせる。

「本物か、それと同等のもんがここにあった以上、そう言い切れる訳でねぇ」

「……で、でも、だからって!」

フィンランドは否定出来る材料を探す。
自分で頼み、四人をここに連れてきて『ギャラルホルン』の取り返しを手伝ってもらった。
だが、こんな「ふざけた事」があるなんて知らなかった。


「俺はな、多分それ本物だと思うっぺよ」

デンマークが笑いながら、それでもどこかつらそうに、言った。

「こないだ、イギリスでカーテナっちゅー戴冠の剣の本物が見つかったし、それに……それ、見覚えがあるっぺ」

「……ターさん」

「……」

「……だけどもまぁ!安心すっぺよ!」

急に表情を崩し、がはは、という音が似合う勢いで明るげに笑いながら言い切る。

「大体、その儀式に必要な魔法陣は今俺やおめぇがぐちゃぐちゃにした上に、術者もぶっくらしたっぺよ?
 これで発動すん訳もねぇっぺ!」

その言葉に、四人は少し安堵したような顔になる。

「……それもそだな」

「だない」

「……そうか、それも、そうだよね」

「……そ、そうですよね、あは、あはは……」















「もう遅いと思うよ」





聞き覚えのある声に、五人が振り向く。
そこには。


「……効果が発揮されるまでには時間はかかる。でも、もう、術式は発動してる」


暗闇でも目立つような赤いコートに、肩にかかるかかからないくらいのくすんだ金髪。
ヨーロッパでも、今でも魔術が色濃く残る、吸血鬼で有名な元枢軸国家。
イギリスとともに、W学園では魔術部所属にしている青年の姿をした存在。



「……もっと早く、実行すべきだった」

彼だけにしか分からない独り言を呟いて。



ルーマニアが、肩で息をしながらそこにいた。









ペースというか投下する分量が減った感じが……。

今日の投下分でした。

――
それは、学園都市に観光に行く事が決まる前のこと。

フィンランドがその怪しげなメッセージを見たのは、いわゆる「上の人」に呼ばれた時だった。
豪奢とまではいかないものの、確かに高級だと分かる部屋に、人払いまでして大統領とふたりきり。
普段ならそこまで緊張しないだろうが、大統領の緊迫した雰囲気に飲まれて、身体が硬くなってしまう。

そして、フィンランドは一枚のコピー用紙を手渡された。

「……これは、なんですか」

「犯行声明、というには些か現実味がないかな」

「……これが」

フィンランドはコピーされたその手紙を見る。
本物は魔術的な暗号がかけられているらしく、それを解読しようと政府の秘密裏の魔術部門が躍起になっているそうだ。

「……」


フィンランドはざっと読む。
乱雑な、筆記体で書かれた英文で、豪英語に米英語、イギリス英語にとあらゆる文体が混じっていて読みにくい事この上ない。
無理やり訳すとしたら、こうだろうか。



『枠組みのあなたたちへ』

『私達はあなたがたに鉄槌を下す力を持つ組織です』

『我々は妥協しない。決して枠組みのあなたがたを許さない』

『我々の力を以ってすれば、半年もしない内にあなたがたは世界から孤立させられます』



『パリでの誓いを忘れるな』





「……大統領、これは一体、それにパリでの誓いって……」

「現在調査中だ、としか言いようがない」

「……でもこんなの与太話じゃ」

「だがその手紙を届ける為に、奴らはフィンランドでテロを行ったんだ。……今まで言うのが遅れたが、これがあの日にこれが届けられたんだ」

「テロって、まさかこないだのヘルシンキでの爆発事故ですか?」

「そうだ。……公式発表ではただの事故になっている、アレだ」

ヘルシンキ爆発事故。第三次世界大戦が終了して平和になったと浮かれているところに起きた惨事だった。
工場の謎の爆発、街なかでの突然の車の爆発……未だに解明されてないところも多い事件。
第一、犯人が未だに見つかっていないという事件だ。



「……大統領、ちょっとまってください、これ『あなたたち』って事は複数人に」

「そのようだ。その証拠に、我が国以外にもこれを受け取った国があったそうだ」

「……本当なんですか?」

「しかも、我々も同じ手紙を手に入れたと知るやいなや協力を呼びかけてくれた」


大統領が指を鳴らした。
フィンランドが入ってきた扉から、見覚えのある男が静かに入ってきた。
見覚えはあるが、明らかにここでは浮いている男が。
浅黒に茶色がかった黒髪。イギリスの影響を受けたのか少し太い眉毛。

大統領が紹介する前に、フィンランドは思わずその名を呼んでしまう。


「……インド、さん?」


インドは軽い笑顔で、応えた。

「……よろしくお願いすっとね、フィンランド」














同日。




スウェーデン国立美術館から、ある重要な「霊装」が奪われた。


その事を、たまたま会議で来ていたデンマークから聞く事になる。




―――

14:21
第一〇学区、佐志原スタジアム。


美琴「……じゃあ行くわよ、っと」

削板「よし!はやくこい!」

結局、超電磁砲を撃ち、それを削板が受け止める事になった。

美琴「いっくわよ……」

美琴がゲーセンのコインを指で上に弾く。そして、狙いを定め――

美琴「超電磁砲ッ!」

雷撃の暴力的な光の爆破とともに、ゴッ、ガアアアアアア!という激しい音が響き、衝撃波が離れた観客席まで伝わる。それによる周りの土が人工芝ごと舞い上がった


米「……すごいな、あれが超電磁砲……!」

英「おい、もう一人の方は無事なのか?」

日「本人が「一度やった事があるから大丈夫だ」といってましたけど……心配ですね」


西「あんなもんがあったら軍隊も一薙やなぁ」

蘭「……人件費一人分で師団一つ分の力……お得な……」ジーッ

白耳「お、おにいちゃーん? なんでこんなとこでもそないな事考えとん?」

南伊「やっぱりケチじゃねぇかこのやろう」


夏「でも相手の少年は……?」

土「レベルファイブ同士たっけか?まさかあれを受けて無事なんて思えねぇがなぁ」


砂埃がはれる。

そこには。


削板「やるじゃねぇか」

焼け焦げたコインを、人差し指と中指で挟んで掴みとり、まったく無傷の削板がたっていた。



米「……!スゴイんだぞ!えっ今何やったんだい!?」

仏「電撃を無効にする絶縁系の能力者か何かか?」

独「いや待て、それだとここまで伝わった衝撃波に耐えられた理由が」

中「もしかしてあの奇怪な衣装に何かの機能があるんじゃねぇ―あるか?」

普「まてまて、それよりもあの光速のコインを止めたって事は動体視力を強化する能力とかじゃねぇのか」

愛「いや、念動力で壁を作ったのかもしれませんよ」


削板「ちっちっち! 違うな!」

削板はそう断言した。
そして、周りの注目を集めてから、たからかに言い切った。


削板「俺の能力はな……」

「根性だ!!!」

「「「「「……え?」」」」」


日本が「だからまだ解明されてない上にそれじゃあ説明になりませんっていうか非科学的ですよ……」と小声で呟いたのを聞き取れた国は、残念ながらいなかった。

――

フィンランドは寝不足で、このデモンストレーションも集中して見る事が出来てなかった。

芬(昨日のあれも気になるけど……どうして、あの場にルーマニア君が……)

芬(しかも、僕らが離れた後にあの研究所は破壊されていた……どういう事なんだろう……)

うつらうつらと、考え事をしていると突然肩をポンポンと叩かれた。

芬「わっ!? ……って、アイス君」

氷「大丈夫? 僕や他の三人より、ずっと気に病んでるみたいだけど……」

芬「あ、あはは…… うん、大丈夫だよ、ただ申し訳ないなーって思ってるけど」

諾「フィン、あんま気にすんでねーど。」

フィンランドの隣に、ノルウェーが座り、小声で話しかけた。

芬「ノル君……」

諾「あのルーマニアも言ってたでねぇか、まだ発動までは時間があるってな」

諾「……なら、それまでになんとかすればいいだけだべ」

芬「……えぇ、それまでにそうすればいいんです、けど」

氷「けど?」

芬「僕、気になる事があるんです。……どうしてあの場にルーマニア君がいたのかって」

諾「……確かに、不思議だべな。あの場に立ち寄る理由が見当たんね。大体あん時は深夜だったない」

氷「……屋台尖塔とかいう名所はあるらしいけど、基本的に治安も悪いっていうし……」

芬「もしかして、彼、何か知ってるんじゃ……。……そ、それにあの後の爆破事件も不自然ですよ!まるで、まるで――!」

諾「……おめ、ヘルシンキのテロと同一だと思ってんのか?」

芬「! そ、そういう訳じゃ……、……」

……そうかもしれない、とフィンランドは内省する。
未だに解読されていない「あの手紙」。
あの手紙が届けられた日も、あんな不可解な事件があった日だった。

芬(……そういえば、あの手紙に会った『枠組み』……。あれってなんだったんだろう)

少なくとも、「インド」と「フィンランド」はその枠組みに入ってるようだ。
そのインドはというと、何らかの情報を掴んだのか、わざわざ別行動に出てまで、関連するという「文書」を回収しに行った。
……どこから協力を取り付けたのか、かの「ネセサリウス」とともに。


芬(……インドさんがあれを奪取したら、イギリス清教が複製した『大船の鞄(スキーズブラズニル)』でこちらに回してくれるはず)

芬(そしたら、この街にいるというい禁書目録に連絡をとって、解読してもらえれば……少なくとも、敵の目的が……)


その文書さえ解読すれば、なんらかの対抗策も事前に練れるだろう。
そうすれば、そうすれば。
それだけで、終わるはずだったのだ。

少なくとも。
北欧諸国の中で、自分だけがこんな悩みを抱え続ける事はなくなるはずだった。


芬(……なのに、なんで、なんであんなものが)

学園都市にギャラルホルンがある。
インドからそう伝えられた情報と、フィンランド側の魔術師の探査により場所が発覚した。
そして学園都市に来たのだからとギャラルホルンを取り返した。

それ、だけなのに。
なのに、あんなふざけた儀式が。

――

――
17:00


無事デモンストレーションも終わり、国々も勝手に解散。
また、学校も終わり放課後という時間帯。

上条当麻はインデックスに晩飯を作らなければ、と思いながら寮に帰ろうとしていた。

だが。
いつもの帰り道だというのに、この時間帯だというのに。
――気づけば、人が、いなかった。
上条当麻はこの状況に見覚えがあった。人払いに違いない。
またステイルかだれかだろうか、と思ったが、まず最初に目についた人間は赤髪でもなければ長身でもなかった。

鷲の紋章をつけ、民族衣装をまとった少女。
その黒髪は三つ編みで後ろにまとめられ、その灰色の目は上条当麻を見据えていた。
彼女は外国語で――少なくとも上条には英語以外に聞こえた――で上条に語りかける。

『ごきげんよう、幻想殺し』

「……お前、何者だ」

当然上条当麻には伝わる訳もなく。

『おや、わからないのかしら』

『うむ、私の国の言葉が伝わらないというのは、とても悲しい事ね』

『……私の国を否定されてるみたいだわ』

「……あ、あの……俺に何か用なのか?」

口元に手をあててずっと独り言をつぶやく少女に気をそがれる上条。
だが、それでも警戒を緩める訳にはいかない。
あの出で立ち、そしてこの状況で上条当麻に話しかけたという事は、十中八九魔術師だろう。

(……ヨーロッパあたりの魔術師か?)

そう思い、いつ攻撃がきてもいいように軽く右手を構える。
……その途端、少女の声が二重になる。
正確には、元々の外国語の音声に日本語の吹き替えが同時に流されるような感じに。

「……と、これで分かるかしら」

「あぁ、よくわかるぜ。……もう一度聞く。お前は何者だ」

「アンドレイ。魔術師よ」

アンドレイという名前は男の名前じゃないのか、と少し違和を感じたが、今はそれどころじゃないと流す。

「……なぁ。わざわざ俺に会いに来たって事は何か企んでるのか?」

「企み、うん、そう言えるかもね」

少女はそう言って、手に持っていた自転車のフレームだったろう棒を構える。
その言葉はあまり乗り気でないように聞こえる。

「でもね、幻想殺し。私はここであなたを潰さないといけない。あなた、計画の邪魔だから」

「……目的は俺の右腕じゃねぇ、か。……それでもろくでもねぇ事なんだろな」

上条がそう言い切るとその発言が、逆鱗に触れたのか、アンドレイの纏う雰囲気が一変した。
その灰色の目はより細く、鋭くなり、眉間に皺がよる。

「あなたに何が分かるっていうの……。私の、私の国が、滅びるかもしれないっていうのに」

「……それ、どういう、」



「黙れッ!――我が栄光は母国の為に(gloria107)!」



その瞬間、道路から大量の杭が上条を狙って勢い良く生えてくる。
上条を串刺しにするつもりのようだ。

(ッ、魔法名を名乗った!?)

魔法名を名乗られた段階で後ろに回避する事に成功するも、杭は次々に突き出てきている。
筍のようだ、と言えば笑えるかもしれないが、アスファルトを砕き、一気に10mまで空まで伸びる杭はもはや兵器だ。

上条が杭を打ち消そうと、進路を遮る出てきたばかりの杭に右手で触れる、が。

「ぐ、アアアアアアアアアア!!!!!」

「馬鹿め、その杭は魔術的な物ではないのよ!」

触れた瞬間に消えない事を認知し、手をひっこめなければ右手に穴が空いていただろう。
しかし、それでも右手は杭に引っかかった際に傷つき、血まみれになっている。

(杭は、本物か? なら、地中になんらかの方法でテレポートさせておいて、一気に、発射させた……!?)

少女を殴りとばせば済むのだろうが、あいにく彼女の周りには大量の杭が柵のように厳重に囲っていた。
どの範囲まで杭が埋まってるのかは分からないが、彼女の周りは杭がいつでも出せるようにしてあるに違いない。

(このままじゃジリ貧じゃねぇか、かといって逃げる訳にも……クソ……!)



だが、その状況が一変した。


リリィン、と鈴が鳴るような音がした。
すると、少女が攻撃の手をやめ、鉄の棒をアンテナのように空へ向けて立てた。

「……何よ、マラムレシュ。 ……え?戻れ? あの人がきてる? ……分かったわよ、戻るわ」

何らかの通信を受けたアンドレイは、通信を切断するなり、鉄の棒を両手で持って、――勢い良く地面に突き立てた。

「『貴なる者をも貫く杭よ、その役目は終わった』」

少女がそう言った途端、物理的に存在していたはずの杭は、砂の城のように風に融けて消えた。

「運がいいわね、幻想殺し。……黒鷲の騎士に感謝なさい」

少女は上条の返事も待たず、そのまま10m以上も一気に飛び跳ねてどこかへ消えた。
あたりはまだ人払いが効いてるらしく、人の姿はない。

「……何が、あったんだ……?」


杭がひっかかり、少しえぐれてしまい血まみれになった右手を左手で押さえながら、上条は少女が消えた空を眺めた。
無人無音の一帯にいる中、しばらくそうしていたが、後ろから足音が聞こえ、ゆっくりと振り返る。



目の前にいたのは、銀髪に赤目の男だった。

その目つきは鋭く、その身は紺の軍服で覆われていた。


その男は、上条の右手を見ると驚いたような顔になった。
そして、駆け寄ってきた。


「おい、お前ッ!なんだこの右手、何かあったのか!?」


明らかに外国人も外国人、というか白人の見た目をしていたがなめらかな日本語で話しかけてきた。
傷の具合を確かめると、自らのシャツの一部を裂いて包帯にし、ぐるぐると巻きつけた。

「なんか道路もボコボコしてるしよぉ、何か能力者同士の喧嘩でもあったのか?」

「……そういう訳じゃないけど、似たようなもんかな」

もしかしたら昨日あったフランスやイギリスと同じ、『国』の観光客なのかもしれない。
なら、不用意に巻き込むわけにはいかない……と、はぐらかしておく。
その手つきはやたらと手馴れていて、すぐさまぎゅっと結んで簡単な止血の手当を完了させてしまった。



「……あ、ありがとう。……あんたは一体?」


「ん、俺か?」


赤目の男は、名を尋ねられたのが嬉しかったのか、ケセセと子供のような笑みを浮かべて、名乗った。




「俺は――プロイセンだ」





上条の部屋




上条「という事があったんだよ」

イン「とうまって、女性にもモテるけど魔術師にもモテるんだね」

ステ「しかも今回は少女の魔術師、か。まったく君らしいや」

上条「いや、なんでそこばかり取り上げる訳!?」

ステ「しかしよかったじゃないか。魔法名を名乗った人間から逃げられるなんてね」

イン「不幸不幸っていうわりには、悪運は強いんだよとうま」

上条「もう二人して上条さんをいじめるのはやめてください……」


上条「……って、なんでステイルがいるんだよ!?」

ステ「……今気づいたのかい? 盛大なノリツッコミって奴だね」

上条「あまりに自然すぎて気づかなかったぞ……!」

ステ「今回は狂言誘拐じゃないよ。インデックスに仕事の依頼だ」

イン「とうまが来る前に説明は終わってるんだよ。要約すると、暗号解読なんだよ」

上条「暗号解読? また何かの魔導書か何かか?」

ステ「ま、似たようなものだね。現物がまだ届いてないから始められないけど」

上条「……インデックスに危険は」

ステ「ないようにする為に僕が来てるんだろ。それに、後から神裂も来る」

上条「あ、そうか……」

イン「という訳で、とうま。今日はすているのおごりなんだって」

上条「え?マジで?」

ステ「正確には、土御門ともう一人の依頼人との打ち合わせに行くだけさ。
   ……まぁ君はその手の様子だと病院に行ってもらうけどね」

ステ「……というか、大体その右手で料理が出来る訳がないだろう?
   大方、この子に料理を作らないとという思いで帰ってきたんだろうけど」

まったくもってその通りだったので、応えずに苦笑いで返す。


イン「とうま。化膿したりしたらどうするの?ちゃんと診てもらわないと……私には科学的な治療法はわからないけど」

上条「……そうだな、そうするよ。……じゃあステイル、インデックスを頼んでいいか?」

ステ「もちろん。君と一緒にいさせるよりは危険にさせないよ」

上条「それどういう意味だよ……」

ステ「言葉通りの意味さ。その様子だと、君を邪魔だと認識して襲ってきたんだろ。……なら」

上条「……あぁ、そうか。俺がいたらインデックスも巻き込まれるかもしれないし、か。……あ、でも病院が」

ステ「多分人混みで戦う事は慣れてないんだろうね。わざわざ人払いをはっているところから見るに」

イン「人払いも万能じゃなくて、あくまで人に『ここに行く気をなくさせる』ものだから、施設の人員には効きにくいんだよ」

上条「……あぁ、そうか、行きたくなくてもそこに行かなきゃいけないから」

ステ「そういう事だ。安心して君は手を治してくるといい。……君の出番はないはずだからね」

―――

日は沈み、夕焼けの赤も空の端に追いやられた頃。


外部の日本人以外の人間向け宿泊施設、『藍奏』。
周りから浮いた外観からしてもサービス内容からしても、いかにも『THE・和風』が売りなのが見てとれる。
学園都市特有の最新技術によって環境から遮断し施設内の環境を自由に変えていたり食品も全部得体の知れない方法で製造していたりするものの、
日本人からしても『和』『理想の日本像』を感じられるといえる程の雰囲気を誇っている。
……だが、肝心の日本からすれば「学園都市の最新設備まみれでこれっていうのはちょっとやっぱり……」というものらしい。

そんな旅館の待合室で、最新型マッサージチェアに肩を揉まれる男が三人。


勃「あー……これいかんわー口からヨーグルト出るくらい気持ちいわ……」

伊「今ならオリーブオイルが出そう……ヴェー……」

羅「じゃあおいらは石油が出そうなくらい気持ちいい、って事で……」

完全にリラックスした様子で、身体をチェアにまかせて振動に揺さぶられていた。


西「みんな変なもん垂れ流しとるなぁー」

その様子を横目に見ながら、近くの自販機で購入した『いちごおでん 〜北欧の味 エストニアRemix〜』という得体の知れない何かをおいしそうに飲むスペイン。
隣には南イタリア、イタリア=ロマーノが『抹茶トマト カメルーン味』というゲテモノを飲んでいる。

南伊「おい弟、そのマッサージチェア三台しかないんだからな。次変われよ」

北伊「ヴェーわかったよ兄ちゃん……はああ気持ちいい……」

西「しっかし、温泉も気持ちよかっなぁー、ほんま観光満喫って感じやねん」

南伊「……ま、飯も不味くはなかったしな」

北伊「ヴェー…でも温泉入ってる時に女湯から茶髪のお姉さんが飛び込んできて男湯にいた人を連れ去った時はさすがにびっくりしたよー」

羅「しかもどさくさにまぎれてブルガリアがイタリアを叩いてたりとかねぇ。おいらびっくりしたよ」

勃「でもさ、なんかこいつ叩きたくなる顔してない?」

羅「あー、分かる分かる。ハンガリーみてると叩きたくなるよね」

伊「ヴェー…ふたりともやめようよー」

西「俺は叩きたいとかは思わへんけど、でもこのロマーノやイタちゃんのくるくるした奴はめっちゃ弄りたくなるねん!」

南伊「!? 触るなよ!絶対触るなよ!」

西「え〜 ええやんけ〜〜」ジリジリ

南伊「ヤメローヤメロー!」




別室

浜面「麦野さまやめてくださいいいい!」

麦野「はーまづらぁ……お前なんでここにいる訳ぇ?」ギリギリ

絹旗「まさか私達の裸を見たくて来たとかだったら超きもいですよ」

滝壺「……はまづら……そうなの?」

浜面「違う違う違う違うってばー!って、ぐわああああああ!!」


昨日得た臨時収入を元に日頃の疲れを癒しに温泉に浸かりにきたところ、偶然ここにきていた麦野達に見つかってしまいその上ヘッドロックをかまされるという不幸少年もびっくりな不幸を味わう浜面仕上であった。
――

キリが悪いですがここらへんで。結局14kb近く書いてるような……?
そろそろ誰があれであれが誰で枠組みは何かってのがバレそうですが、あんまり考察をかかれない方がそれはとってもありがたいなって。
あと夏はカメルーンです。

――
こってり絞り上げられた浜面がぐえーという呻き声を出していた。
他の三人はもうどこかへ行ってしまったようだ。

浜面(……待合室のマッサージチェアでもつかうか……)

そう思い待合室に行くと、見覚えのある人影がひとつ。


羅「あ、運転士」

浜「えっと……ルーマニア、さん?」


伊「あれ?ふたりとも知り合いなの?」

ヴェッヴェッと言いながらヴェネチアーノが近づく。

浜(なんか最近外国人が多いなぁ……)

羅「知り合いっていうか、おいらが昨日ヤボ用で雇った運転士だよ」

西「? ここって無人バスとかごっつ走っとるやん?わざわざ雇う程の事なんかいな?」

羅「あー……まぁあの時は深夜だったし、いい交通手段がなくてさあー」

勃「いい交通手段ってか、自動送迎もしてくれるレンタルカーサービスとかもあっただろ……」

その時は思いつかなかったんだよーあははーとごまかす。

浜(野暮用、ねぇ)

浜面は思い出す。
その釣り目がやたら鋭く、口は真一文字で、まるで何か大きな事件を抱えた刑事のような表情をしていたあの時を。

浜(車の運転してたら急に呼び止められて、金はあるからって頼まれて……
  ……しかも、行き先は第十学区の、廃棄された研究施設。
  しかもしかも、だ。しばらくそこにいろと言われて、戻ってきた時には人数増えてたし)

髪の毛がサイヤ人みたいなロングコートの男とかメガネとかセーラー服とか高校生とかおひゃあとか。

明らかに怪しい上にこの他の仲間達?にごまかそうとするこの態度。

浜面(……怪しい)

実際浜面に危険は及ばなかったし、ちゃんと料金は電子マネーの形でけっこう頂いているのだが。
やっぱりというかどうしてもというか。
暗部と関わり続けたせいか、元々スキルアウトだったせいか。
こういう危なさそうな事については、一般の学生よりは察知してしまうのであった。
だが、

浜面(まぁ、わざわざ危険な橋を渡る事はないけどな、うん)

どこぞのヒーローのようになんでもかんでも首を突っ込むほど、お人好しにはなれなかった。



それでも。


南伊「ところで話してるところ悪いんだがよ、なんか睨んでくる人がいるんだが……」

北伊「わー、美人ー……ヴェヴェッ!? ちょ、なんかバチバチいってるよぉ!」

西「わー、ここの学生さんかいな?めっちゃ強そうでかっこいいねんな〜」



浜面仕上が振り返る。
そこには。




怒気を放つ、クルクルウェーブした頭の、女性。


浜面「……わー、ムギノサーン? ナンデオレガココニイルダケデソンナニオコッテンノカナー?」

鉄拳制裁もしくはメルダウ制裁が来るなこりゃーと構える。
だが、予想に反してそれはこなかった。
否、雰囲気が違った。

麦野「……で、あんたが」

浜面「? 」

麦野「なんであんたがそいつらと関わってるのよ!!」

7人しかいない、学園都市の本物の『超能力者』。
「原子崩し」麦野沈利の能力が発動した。

曖昧なままで固定されたとどまった電子を、強制的に動かして。
視認出来る程度の小さな球状の何かを作り出し。
射出した。

ただし。     、、、、、、、、、
浜面仕上ではなく、隣にいた彼らを狙った。

反射的に浜面は隣にいたルーマニア、イタリアに体当たりし、スペインはロマーノを床に伏せさせた。
直後、轟!という音とともに彼らがいた付近の旅館の壁に穴があく。

浜面「おい、どういう事だ!」

立ち上がった浜面が叫ぶ。

麦野「どういう事も何もないわよ……」

何かがあると思ったのか、麦野の後ろから滝壺や絹旗もやってきた。
だが、警備員や旅館の従業員は来なかった。怖気づいたのか、暗部に関わる案件だから動けないのかは分からないが。

滝壺「……はまづらは、まだ知らないだけだから」

そう言って滝壺が浜面をかばう。
知らない?知らないとはなにがだ?浜面は疑問に思った。

麦野「……あぁ、そうだった。私達も昨日知ったばっかね」

絹旗「……しかし、その一日でまさか浜面が超その案件の関係者に関わるなんて超予想外でしたね」

浜面「関係者? た、確かに昨日変な事頼まれたりしたけど……こいつらがなんだっていうんだ?」

麦野「……そいつはね」

スペインに支えられ、ロマーノが起き上がる。
イタリアが麦野を恐れを抱きながら見つめた。

そして。





麦野「――この学園都市をこの国ごと潰すつもりらしいわよ。負け組の分際で」





その時、エントランスからキキィーッという急ブレーキをかける音が聞こえてきた。

勃「おいお前ら!早くこっち来い!」


羅「みんな、早く行って!ここはおいらが!」

四人を先に行かせながら、ルーマニアは懐から地味な杖を取り出す。
まるで魔法使いの杖のような、何かの枝でできた杖を。

麦野「……あん? 何?魔法使いのつもり?」

羅「……魔法使い、ね。あながち間違ってないかもしれない」

そう言ってルーマニアはにやり、と勝ち誇った笑みを浮かべた。

羅「おいら達魔術部の活動内容は――額に雷傷の少年のマネをする事もあるんだよっ!」

そして杖を麦野に指し示す。

羅「エクスペクト・パトローナム!!」

麦野「……は、」

最初、麦野はあまりの馬鹿馬鹿しさに呆れた。
B級映画ばかり見る絹旗や、行動的ではない滝壺も名前くらいは知ってるあの映画の呪文を唱える男を、呆れた顔で見た。
フィクションもフィクション。存在するわけがない――

だが、人型の青白く輝く何かが実際に召喚された時、麦野達は驚愕した。

麦野「ッ、何をやったかしらないけど! 一捻りにしてくれる!」

原子崩しで旅館ごとなぎ払う。
一瞬にして消えてしまった。が、……ルーマニアはその間に消えていた。

麦野「……ちっ」

絹旗「……なんだったんですかあれ」

麦野「どうだっていいわよ、「まほうつかい」だとかどうだとかは。滝壺、あいつは追跡出来る?」

滝壺は、ううん、と首をふる。足元を見ながら、おずおずと言った。

滝壺「……できない。……でも、多分、あのまま車に乗って移動したのならはまづらも一緒にいるはず」

絹旗「あの超ばかづら、あとでお仕置きが必要みたいですね」

麦野「ったく……。一緒にいようといまいと、どっちにしろ浜面は捕まえるわよ」



―――

麦野達に連絡が入ったのは、昨日だった。

「やっほー。突然だけどすんごい重要案件持って来ちゃったよー☆」

……即座に通信を切ってやろうかと思ったのはここだけの話だ。


「何よ」

「んもう☆ ツレないなぁ〜」

そう馬鹿にしたような事を言いながら、「上」が伝えたのは実にシンプルで実に突拍子もない事だった。



「国の精霊って都市伝説って知ってるかしら?」

「国の発展とともに成長し、国の滅亡とともに死ぬ存在ね」

「今、学園都市でも有名なのよね―。ちなみにこれホント」

「あー、でも見た目や言動は一般人と変わらないの」

「ただ、死なない。国が滅びない限り、多分死なないだろうって言われてるの。ま、怪我はするけど」

「あ、今すぐ分からなくてもいいわよ?」

「重要なのはここから」

「死なない上に戸籍もないけど国家の重鎮で、だけど非公式で誰も咎められない」

「それってさ、すごい使いやすいと思わない?」



「スパイに、テロに、戦争のきっかけを引き起こすのに、さ」



「第三次世界大戦。これで辛苦を舐めた国はいくらでもある」

「そして、今日はそんなヤツらが『学園都市に賓客として』やって来てしまうのよねぇ」



そして、アイテム残党は浜面と合流する前に、ある任務に従事する事となる。


―――

―――
車内

勃「いやー、俺のとっさの機転がなかったら今頃このアホ毛の腹に穴あいてたわなー」

羅「やー、おいらもまさか召喚がうまくいくとは思わなかったなー。イギリス部長のいうこともやってみるもんだね」

伊「ヴェー……こわかったよう」

南「い、いくら美人でもあんな化け物はこわすぎるぞチクショー……」

西「ははは、大丈夫やで。今度は親分がちゃーんと守ってやるさかいな!」


浜面「……それはいいけどさー」

伊「ヴェ?どしたのハマヅラ?」

浜面「なんで俺まで巻き込まれてんの!? 俺自体は逃げる必要なかったよね!?」

スペイン達にええじゃないかええじゃないかと連れ込まれたあげく。
ブルガリアと運転を交代させられたせいで。
多分さらなるお仕置きをされる事がカクテイしてしまった浜面が車内で叫んだ。


羅「あー……」

西「あー……」

南「あー……」

北「ヴェー…」




勃「……ま、いいじゃないか!」

浜面「よくねぇよ!」

羅「そいや、イタリアが温泉入ってる時に見つかったて言ってたけど、予知能力でも使って察知してんの?あの茶髪」

浜面「あれぇっ!?流す!?いきなり俺の魂の叫び流しちゃう!?
   ……って、んな訳ねーよ、あいつの能力は攻撃特化だよ!しかもこの学園都市随一のな!」

西「んー、やっぱこの学園都市でも予知とか予言とか無理なんかいなぁ」

勃「能力に頼らなくてもすごいスパコンみたいなツリーダイアグラムとかいうのがあったろ?」

南伊「予知、予言……そんなのなかったか?……マ、マタイの……」

北伊「ヴェー、マラキの予言、だね」

浜面「? なんだそりゃ」

北伊「十字教……って知ってるよね? あれ公認の預言書なんだよ」

勃「一部じゃ偽書って話もあるみたいだけどな」

浜面「預言書? 胡散臭いな、それ当たるのか?」

北伊「うーん、そもそも文面が曖昧だからなんとも言えないけど……」

南伊「大体ありゃ魔術器具じゃなかったか?俺もよく知らねーけどよ」

西「あぁあぁ、確かに魔術器具やったなぁ。めっちゃ本の形しとったねんけど」

北伊「うん、仕組みは単純で、上位の魔術師とかが作ってたような」

浜面「魔術、ねぇ」

北伊「……やっぱ、信じられない?」

浜面「いや、俺も第三次世界大戦で色々あったし……信じるよ」

浜面(大体、滝壺を助けたのもその魔術って奴だったしな)

北伊「飲み込みはやいねぇ君!俺なんて飲み込み遅すぎてドイツに怒られっぱなしだよ!」

浜面「い、いやそんなところで褒められても!? と、というか、それどんな仕組みなんだ?」

北伊「うん、仕組みはね単純だよ〜。『周囲の情報を10年前に送れ』って命令文を書き込むだけなんだ」

浜面「た、単純すぎね!?それ!?」

動揺して一瞬、運転が荒くなってしまう。

浜面「大体それなら預言書まみれになってそうなんだが……」

北伊「んー、だけどね。さっきの例だと『まず10年間保管』しないと使えないんだよー」

浜面「へー、万能じゃねぇんだな。……それってさ、逆に『10年後の未来に今の状況を送れ』って書いたらどうなんの?」

北伊「ヴェ? ……それは考えた事なかったなぁ」

南伊「どうにもなんねぇんじゃね?」

北伊「うーん自動筆記してくれるのはあくまで『予兆』。もちろん悪い結果なら悪い結果って分かるくらいの予兆なんだけど……」

羅「んー、単に10年前の情報を提示するだけになりそうな気がするよ、おいらは」

勃「つかそれなら日記帳に書いた方がいつでも見返せて便利な気がするわな」

浜面「……聞いておいてなんだけど、俺もそんな気がする」




浜面「……でさ、どこに行けばいいんだ?」

西「考えてなかったで」

勃「俺も勢いで借りてきちまったわ」

羅「おいらも勢いで逃げてきたし」

浜面「もうやだ!もうやだこいつら!」


――

イタリア達が夜の学園都市ドライブを敢行してる頃。

大衆レストラン、「」


ミサカ妹「はぁ、どうしましょうか、とミサカは料理が来るまでの長い待ち時間の暇をもてあましてる事をミサカネットワークに放流します」

露ミサカ「さっさと寝ないとお肌に悪いですよ、とミサカは時差のずれてる北の国から警告してあげます」

ミサカ妹「ですが一般的には湿潤な日本の気候にいる事自体が肌にいいらしいですしとミサカは反論を行います。むしろロシアは乾燥して……」

露ミサカ「う、うるさいうるさい!とミサカは10032号を黙らせます!!!」

伊ミサカ「……そもそも学園都市なんてどこでも冷暖房調節されてそうで乾燥してそうですが……」

ミサカ妹「学園都市くらいになるとちゃんと加湿もしてますから大丈夫です!とミサカは自らの環境の素晴らしさを自慢します」

伊ミサカ「じゃあ日本がどーたらこーたらは引き合いに出す必要ないじゃないですかとミサカはイタリアでピッツァを食べながら諭します」

ミサカ妹「……このやろうわざわざ触覚データや画像データは送ってきて味覚データだけ送信しないなんて生殺しじゃないですかとミサカは味覚データの提出も要求します」

露ミサカ「ミサカ的には味覚データなんてただの化学物質の割合の数値よりもやはり食べ物そのものを雰囲気ごと味わうのが一番ですとミサカは主張します」

ミサカ妹「というかそもそも今お腹すいてるんですよ何してくれるんですかとミサカは――」




フィン「……」

フィンランドの視線はちらちらと隣のボックス席に一人で座る中学生に注がれていた。
別にロリコンだとかそういうのではなく、純粋に目立つ行動をしていたからだ。


イン「どうしたのフィンランド?」

フィン「あ、や、なんでもないです!」

ステイ「……お隣かい? 学園都市ではよくある事だ、無視していいよ」

土御門「浮いてる具合だと俺らの方が上だしにゃー」

フィン「あ、はい、……そう、そうですよね……」

フィン(……あの子、携帯電話もないのにひたすら何かを力説していたような――?)

フィンランドは、「きっと学園都市製の本人以外には画面が見えないプライバシー重視な携帯」でもあるんだろうと考えておく事にした。


はじめ、フィンランドは驚愕した。
必要悪の教会――イギリス清教所属の魔術師であり協力してくれる彼らが、皆子供だったからだ。
神裂という「聖人」の女性は18らしいが、それでもフィンランドからすれば――子供だった。

顔をあわせた時、フィンランドは少し戸惑った。
しかし、ここで巻き込むことを恐れて立ち止まる訳にはいかない。

土御門が折り紙をテーブルの上に置いた。なにやらマジックで一筆書きに何かが書かれている。
おそらく、ルーン文字のようなものだろうとフィンランドはあたりをつけた。
そしてステイルがそれを受け取り、「何か」を行った。
実際、魔術部でもないフィンランドには何をやったのかまでは判別できなかったが、何をやったのは分かる。

そして、ステイルがその折り紙をテーブルの中央に戻すと周りの音が遮断された。


イン「……これで周りに声は聞こえない」

フィン「こ、こんな簡単なもので……?」

土御門「俺を誰だと思ってるんだ、この国随一の陰陽師サマだぜい?」

フィン「……こんなにアロハ着てるのに、すごいですね……」

土御門「あ、やっぱりそこ気にされるのかにゃー!?」

ステイ「ったく、君は……。それより、本題にさっさと入るよ。君のアロハを論題にするためにあの術式を発動させてやった訳じゃないんだから」

ステイルがうながす。フィンランドが、三人を見据える。

フィン「……では、インデックスさん。土御門さん、ステイルさん」





どうしてあんなものが今まで発見されずに済んだのかは分からない。

どうしてあんなものが今まであんな高校に放置されたのかも分からない。

ただ。

今も学園都市へと向かっているであろうインドと、その発見に立ち会った天草式十字凄教の三人は明言した。

あれは本物の条約とは違う、と。

もはやそれ自体が魔導書のようになってしまった文書だと。



その文書の名を。

フィンランドは、言う。







「『エネミークラージス』……あれの解除を、お願いします」







――
黄泉川家



一方「……」

打止「ねぇ」

一方「……」

打止「ねーぇー」

一方「……」

打止「ねぇー!ってミサカはミサカはあなたの腕に寄りかかってみる!」

一方「なンだよクソガキ……用もねェのにこっちくンな」ハァ

打止「用はあるもん!ってミサカはミサカは正当性を主張してみたり!」

一方「なンだよ」

打止「こないだ会ったセーラー服の子に明日一緒に遊ばないかって誘われたの、ってミサカはミサカは携帯の画面を見せてみたり」

一方「勝手にし……、……いや、やっぱ行くな」

打止「えぇー!?ってミサカはミサカはあなたらしくない意見の翻しに戸惑ってみたり!」

一方「お前が外に出ると大抵厄介事を連れてくるってのは経験でわかンんだよ」

そういえばカブトムシ05の時とかもそうだったらしいじゃねェかと追求する。

打止「も、もう迷子になったりしないもん!ってミサカはミサカは成長の姿をみせつけてみたり!」

一方「クソガキは何時まで経ってもクソガキだァ」

打止「じゃ、じゃあ一緒にきてミサカを見てればいいんじゃないかな!?ってミサカはミサカは逆上してみたり!」

一方「逆上は明言するこたァねェだろバカが……」

打止「ていうか、黄泉川達にももう許可とってるしミサカを止められるものはないのだーって勝ち誇ってみたり」

一方「じゃあなンで今更俺に聞くンだよ!

打止「ふん、だ!なんでわかってくれないのかなってミサカはミサカは暗にあなたと一緒に行きたい事をほのめかしてみたり!」

一方「仄めかすって単語の意味わかってねェだろてめェ!」ガバッ

黄泉川「もうー、二人でいってやればいいじゃん?」

一方「なンだよ!二人してなンなンですかァ!?」


一方通行が安らぎを得る日は遠そうだ。

今回の分の投下終了です。次は三馬鹿回になりそうです。

そういえばアメリカ冒頭のあと全然でてきてない?

      r ‐、
      | ○ |         r‐‐、
     _,;ト - イ、      ∧l☆│∧  良い子の諸君!

    (⌒`    ⌒ヽ   /,、,,ト.-イ/,、 l 
    |ヽ  ~~⌒γ⌒) r'⌒ `!´ `⌒) 
   │ ヽー―'^ー-' ( ⌒γ⌒~~ /|  txtのバックアップをとるのはいいが

   │  〉    |│  |`ー^ー― r' |  古いのを投下するととても頭を壁にぶつけたくなるぞ!
   │ /───| |  |/ |  l  ト、 |

   |  irー-、 ー ,} |    /     i
   | /   `X´ ヽ    /   入  |
>>107 土御門の話以降出てないですね……馬鹿ばっか回では出ます。

―――

昔、昔。


あるところに英雄がいました。

その英雄は、とある物語のせいで化け物扱いされました。


独立の英雄を。

自分たちの英雄を。

たったひとつの物語と、それに派生する物語のせいで。

化け物にされました。




そして、ぽつんとあった自分たちの国は。



言葉も違う、周りの国の「おとぎばなし」の化け物が住み着いてしまったのです。




―――

―――


上条がカエル顔の医者に手を診てもらい手をグルグル巻きにされて帰ると、先に帰っていたインデックスがちょうどお風呂からあがって服を着ている所に遭遇して噛まれたりなどという事があった後、翌日。



とある高校の、HRが始まるまでのわずかな時間。

上条「おう、ふたりともおはよう」

土御「珍しいんだぜい、カミやんが遅刻ギリギリじゃないなんてにゃー」

上条「昨日帰宅直後に噛まれた分で不幸は勘弁してくださいぃ……」

青ピ「カミやんー、どないしたんその手。包帯ぐるぐるやけど……」

上条「あー……えと、だからそのさっき言ったとおり、ちょっとネコに噛まれて」

青ピ「 そういやカミやん猫飼っとるんやっけ?ええなぁ」

上条「そういえば下宿先がパン屋だから猫飼えないんだっけ?」

青ピ「そういう訳やのうて、単に飼っとらんだけやけどなー」

土御「おや? 姫神がいないんだぜい」

上条「へ? あ、本当だ。どうしたんだろ」

上条が土御門の視線をたどると、いつもはこの時間に姫神がいるはずの席が、空席だった。

吹寄「あぁ、今日は病院に行って遅れるんだって。大変よね」

上条「あぁ、そういえば定期的な検査があるとか言ってたっけな……」

あの日、フランスやイギリスに出会う前に会った姫神を思い出す。

青ピ「へー、女の子は大変やねぇ」

土御(……ま、姫神の場合はちょーっと事情が違うんだけどにゃー)


小萌「みなさーん!ホームルームを始めるのですよ―!席についてくださーい!」




小萌「今日は皆さんに、グッドでビッグなニュースがあるのですよ!」

小萌先生の言葉に、途端にざわつく教室。すわ、転校生か何かかと隣人と話しだすクラスメイト達。

小萌「喜べ女子ども悲しむな男子ども!本場の金髪アメリカ人が今日だけ英語の時間を担当してくれるのですよ!」

オワーッ!と盛り上がる女子。エエーっと途端にテンションダウンする男子。

小萌「さっそく紹介するのですよ……来てくださーい!アルフレッドさーん!」

そう小萌先生が廊下へ呼ぶと、教室の引き戸がガラリと勢い良く開き、金髪碧眼眼鏡の青年がやってきた。
図体もオーラもでかいが、年齢は大体19歳くらいだろうか、と上条アイは判断する。

米「やぁ皆!俺はアルフレッド・F・ジョーンズだ!ヒーローだから困った事があったら気軽に呼んでくれ!」

米「好きなものはハンバーガーとアイス!きらいなものはイギリスだ!よろしくな!」

吹き替え映画にありがちなやたら流暢な日本語を話しながら決めポーズをとる青年を見て、女子はもとより男子までもが異様に盛り上がった。
……扱いが完全におもしろ外人枠になっているが。

小萌「今日の四時間目の英語の授業はアルフレッド先生にやっていただくのですよー、皆さんちゃーんと勉強してくださいねー」

そう言って小萌先生が授業を担当する他のクラスへ行く。







四時間目。



ドン、と教壇に手をついてアルフレッド――アメリカはクラスを見渡す。
皆は息を呑み本場のアメリカ人が教える英語を楽しみにしていた。
……ALTが廊下で「私の時はこんなに期待されないのに」とハンカチを噛んでるのも知らずに。

米「よし、まずは今日から使える帰りに眉毛が太いイギリス人に会った時の対処法を教えるぞ!」

米「そしてこれが終わったら……昼だしな!皆でハンバーガーを食べにいこうじゃないか!」

ホワアアアアアアア!!と別ベクトルでの歓喜を含んだ大歓声があがる。
授業は始まったばかりだというのに既に席を立ち買いに行こうとしてる男子もいた。


……案の定クラスで学校を飛び出そうとした所災誤先生に見つかりアルフレッド(アメリカ)がキン肉バスターを決められていたのだが、これはまた別の話。

――
学園都市 とあるカフェ

学園都市の珍しい雑貨が気になり、北欧家具で有名な国としては黙っちゃいられねぇっぺ!とばかりにデンマークが雑貨や家具を買い込み、スウェーデンやノルウェーがそれに朝から付き合わされ、アイスランドはアイスランドでシーランドのなにかに付き合わされて個別行動になってしまった。
スウェーデンとはまたあとで一緒に昼御飯を食べる事を約束し、待ち合わせ場所と時間を決めて別れた。

学園都市内でも学生が合法的に猟銃が扱えるというスポーツ施設で少し息抜きした後、待ち合わせのカフェに座る。


芬(学園都市の最新技術ってすごいなぁ。CGで的を作るのはともかく、本当に臨場感が……)

昼時なせいか、予想以上に混んだカフェの中で、空いてそうな席を探し、ようやく見つけた。

芬「と、すいません相席しますね……ってあれ、いつの間に来てたんですか?」

印「一日あったら水産高校からここまで来るくらい余裕ですたい」

芬「……まるでイタリア君みたいですね……」

印「あぁ、あのイタリアのアフリカでの逃走劇の事ですと?あれは聞いた時冗談か何かと……」



芬「でも……本当に大丈夫ですかね、あの、この間の」

印「大丈夫ばい、そもそも、そげんな事起こすのにあげな杜撰な儀式で発動する訳がないですたい」

芬「……でも、少なくともスーさんのとこにあった『ギャラルホルン』はあった訳ですよ?」

印「世界を終わらすってだけなら、私のとこの神話の術式を使えばいい話ばい」

芬「?」

印「維持神ヴィシュヌが保った世界を破壊する神シヴァ――さらにいえばそれの大本であるルドラ」

芬「……インド神話、ですか」

印「そう。私が言うのもなんでしょが、インド神話は規模だけなら――そこらの神話よりはるかに大きいばい」

芬「……でも、たまたまインド神話に関する、核に出来るような霊装が手に入らなかったって可能性も」

印「あげな大規模な事するのに準備段階でちゃくい事する訳がない」

芬「え?」

印「シヴァ神の破壊は大規模すぎる。……ばってん、北欧神話はリーヴとリーヴスラシルは生き残れたばい」

芬「……じゃあ、世界を焼き払って自分達だけ生き延びるつもりだった、と?」

印「もしそうなら……っと、フィンランド、あんたの待ち人が来たばい」

芬「え? おひゃああ!スーさん!」

典「……ん。随分待たせない」

芬「いやいや、そんなに待ってないですよー。あ、インドさん、じゃあまた

印「じゃあまた」



印(……早く、あの『瓦解する世界の牽引』魔術結社は私ばとこで活動してた団体って言うべきですたい)

印(……まさか、「インド神話系術式を使わない事でインド神話系魔術結社とバレないようにする」なんてのがフィンランドに通用するとは、万が一にも思わなかったが……)

印(国営の調査隊が偶然見つけた不穏な動きをする団体……がさ入れをしたら見つかったフィンランドと同じあの手紙……)

印(ばってん、今更そげな事を言えば国際的信頼や資本ば失うとね)

印(ロシア正教がローマ正教と組んで戦争ば仕掛けたせいで、ロシアのライフラインが学園都市に握られたように)

印(それに第一、元枢軸国家にあれが配られてるとしたら……)

印(……まだ、やりそうな国はないことはないとね)

印(……リスクを犯しても活動できる国、もしくは個人)

印(……どうして一人だけ浮かぶのか、……まったく、こんな自分が嫌になるばい)





印「……仮装大会の時、一緒に踊った仲だっていうのに」



芬「というか、スーさん大丈夫ですか? 僕が見た時点で、けっこう家具買い込んでましたけど」

典「……全部あいつが一人で持って行ってたべ……」

スウェーデンが明後日の方向を見る。
おそらく彼の目には、今にも大量の家具を一人で抱えるデンマークが見えるのだろう。

芬「えぇ!? な、何やってるんですかターさん……。らしいといえばらしいですけど」

典「……まあ、ノルウェーもいる、心配する必要ねーぞい。だけんじょも、シーランドが心配だない」

芬「アイス君が一緒についていってくれてるから大丈夫だとは思いますけどね……でも、こないだできたお友達に会いに行くって言ってましたしね。いい事ですよ」

典「……だない」

スウェーデンの顔が、少しだけほころんだ。


氷「あぁ!もう!なんで僕が!」

海「なんでって……アイスランドもこの僕と同じ売られた国同士なのですよ?」

氷「はぁっ!?意味わかんない……大体あれは……って、誰か来たよ」

海「あ!ラストオーダーにアクセラレータの野郎なのですよ!」



一方「ったくよォ、なンで俺が……」

打止「なんでって言われても、ちゃんとヨミカワが説明してたじゃんってミサカはミサカは健忘症のあなたに思い出させてみたり!」

一方「誰が健忘症だァ!? ったく、ンな事いったらお前だってよォ……」

打止「あー!あの時のことは別枠だもん!下位個体のバックアップがあったし!ってミサカはミサカは口を抑えてみる!」

一方「ぐむむン……って、おい、あそこにいンの、お前のオトモダチじゃねェの?」

打止「あ!シーランドに知らないお兄さんだ!ってミサカはミサカは駆け寄ってみたり!」


海「ラストオーダー!」

打止「シーランド!」

タタタ、とお互いがかけより、笑顔で「「いえーい!」」とハイタッチを行う子供二人(内一人は四十代)。
この場にスウェーデンや黄泉川がいれば「微笑ましいな」とでも言うのだろうが。

氷「……何が楽しいんだか」

一方「ったく、上位個体だなンだ偉ぶってもガキはガキのままだなァ」

生憎この場にいたのはその手の事を思いもしない若造だけだった。


氷「……というか、誰?」

一方「あのクソアホ毛の保護者だ。……てめェこそ誰だ。俺が見た時はもっと銀髪で赤目の奴が一緒にいたが」

氷「え?プロイセンのこと? ……僕も彼も別にシーランドの保護者なんかじゃないよ」

一方「ふゥン、大変だなァ」

氷「スヴィー……実質の保護者かな、彼に頼まれたから仕方なく来てあげてるだけ。そういう君だって興味なさそうじゃん」

一方「俺もあのクソガキの実質の保護者に頼まれてなァ。お互い大変だな」

氷「……だね」


打止「で、どこに行く?やっぱオススメはマンガ肉とかも食べられる屋台尖塔ってとこなんだけどってミサカはミサカはフレメアと一緒にいった事を思い出しながら薦めてみたり!」

海「ふ、ふふん!シー君は偉いのですからね!ラストオーダーが薦める所に行って上げるのですよ!」

打止「あらあらあらー?あの人みたいに素直じゃないんだねってミサカはミサカは行きたそうにウズウズしてるのを指摘してみたり!」

海「ぐ、こ、これは違うのですよ!た、ただお腹が空いてるだけであって!」

打止「素直になったほうがいいよ〜?ってミサカはミサカはお姉様(オリジナル)のあの様を思い出しながら助言してみたり!」

海「何を!そもそもツンデレはあの眉毛だけで十分なのですよ!僕は大人だから空気が読めるのですよ!」

氷「……あのアホ毛の子と大して変わらないじゃん」

海「な!ア、アイスランド!お前何を言うのですか!?僕のほうが大人ですよ!」

打止「えー!?大人なら大人の証拠をみせやがれーってミサカはミサカはミサカの方が大人な事を暗に示してみたり!」フフン!

一方「暗に、じゃねェよ駄々漏れだよ馬鹿」

海「ふ、ふん!僕は知ってるのですよ!……サ、サンタさんが実はぼくんち、の兵士だって事、くらい、……ぐす……」

クリスマスの時に、領土に一人しかいない兵士のせいで大人の階段を登った事を思い出したのか、喋りながら泣き出すシーランド。

氷「えっちょっ、何いきなり泣きだしてるの意味分かんない」

打止「え、えぇー!?そ、そんな……!サンタが、サンタが兵士……?って、ミサカはミサカは……」

一方「てめェも何わなわなと震えてンだ……?」

打止「べ、別に震えてないもん!ってミサカはミサカは平常心を保ってみせたり!」

動揺を隠そうとしながらも、震えがとまらず目が泳いでしまうラストオーダー。

氷「あーもう!二人とも何今更サンタがどうのこうので衝撃受けてるの?サンタならフィンランドに頼めば本物が来るでしょ!」


海「あ……」

打止「えっ!?」

しびれを切らしたアイスランドが呆れ半分馬鹿にしてる半分の声色で言うと、二人の顔色がパアアと明るくなる。

海「そ、そうなのですよ!!フィンランドに頼めば!本物が!プレゼントを!」

打止「フィンランドってサンタが住んでるって有名な国が!?って事はミサカのところにもサンタさんがくるの!?」

氷「……え? あ、あぁ、し、知らないよ!頼めばくれるんじゃないの?」







芬「……スーさん、なんだか僕ちょっと呼ばれてる気がするんです……」

典「ん、気にする事ねぇべ」

実質10kbくらいでしょうか。ある程度書きためてから投下すると時間がかかりますね。
三馬鹿と悪友のあれそれとかはもうちょっと先で……。
今回の投下分終了でした。

――

昔、隠密官が吸血鬼を利用しようとしたらしい。

無尽蔵の魔力源として。



理解は出来なかった。


ただ、彼が吸血鬼をおびき出す為に利用とした少女。

彼女には、利用価値がありそうな気がした。


――

――

午後から授業に出ようとして、学校へ向かっていた。
まだ日も高く、病院内で買った学園都市製のブロック状の御飯を食べながら向かっていた。

いつもは。
この時間帯の為に人は少ないが、大学生などがいるためか寂しいというほどでもないはずの通り。
別に不良がたむろしているとかそういう事もないはずの通り。


その通りから。
いつの間にか、学生や職員らしい人間が消えていた。


動くものといえば、もの寂しげに風に吹かれて飛んでいく新聞だけだった。


気づけば。
一様に同じ服を着た男達と、一人の少女が自分たちを包囲している。

「こんにちは、吸血殺し」

本来の音声と吹き替えとを重ねて再生してるかのような声が響く。

「私はアンドレイ。魔術結社ルチャーフルの人間よ。
 ……といっても、あなたには言う必要ないかしら」

姫神秋沙は、声が出なかった。
何故だろう。

彼女は自転車のフレームから取り出したような、鉄パイプを構えた。
軍服らしきものを着た男たちは彼女が話すその間も、微動だにしなかった。
無表情のまま、姫神を見つめている。


「こんな大掛かりな事してるけど、怯えないでね。
 私達はあなたに協力してもらいたいの」


身体が固まり、口も動かせない。
逃げればいいのに。逃げて、誰かに助けを求めればいいのに。
だけど、動けなかった。
ただ、思考だけが、回る。


あぁ、そうか。


「ここにはただ人払いをしているだけ。 
 うん、殺してなんかはないから安心して。ただ――」


軍服の男達のあの無表情さは、三沢塾のあの生徒たちを思いださせるのか。

なら、彼女のいうことは――



「あなたの力を貸してほしいの。私の国のために」



かつて、彼女に希望を見せた、

――あの錬金術師を思いださせるのか。





―――


―――

その日。


姫神秋沙は学校に来なかった。


―――


学園都市にも公園はある。
緑が溢れ、見るものを癒すようなそんな公園が。
……もちろん、公園の植物は全て学園都市の最新技術で管理されているのだが。
そこの木製……にみえるベンチに腰掛けている和服の男。

この学園都市がある国、日本という存在だ。

日「……」

各国の案内役を仰せつかったはいいが、彼自身も学園都市にさほど詳しくない。
そもそも、日本自身も
ラテン国家達のように気楽にやればこんなに疲れなかったのだろうが、そんな事が出来る性格ではなかった。

日(ふぅ、老体にはきついですね……)

そんな事を思いながら休んでいると、ざく、と芝生を踏む音が聞こえた。
視線を少し上げると、そこにはアメリカがいた。

米「やあ日本。一体どうしたんだい、そんな顔して!」

日(……貴方達の案内に気を張りすぎてつかれた、なんて言えませんしね……)

日「あぁ、アメリカさん。私は……ええと、まあ、少し歩き疲れたので今ちょっと休んでるんですよ」

米「確かに学園都市は見る物が多すぎて歩いても歩いても回り切れないしな!」

そう言うと、許可もとらずに隣に座った。
アメリカという国はこういう青年なのだ、とはわかっているが……どうも自分と若い国との差を感じずにはいられない。

米「さっきまで高校で英語の教師をやってきたんだぞ!いやあ、飛び入りで言ってみるもんだな!」

日「へぇ、それはお疲れ様です。……あれ、学園都市の英語は米国式でよかったんでしたっけ……?」

米「?」

日「い、いやなんでもありません」

米「ん?そうかい」

日「……午後からはどうされるつもりですか?一応、フリータイムという事にはなってますが」

米「そうだなぁ……。イギリスにちょっかいを出すのもいいけど、やっぱり一人で色んなものを見に行きたいってのもあるし」

日「そういえば、イギリスさんに会いましたけど、探されてましたよ」

米「え?そうなのかい? まあ授業中はこの端末の電源もオフにしてたのもあるんだろうけどな」

日「アメリカさんなら大丈夫かもしれませんが、何かあったら大変ですので、いつでも連絡が出来るようにしてください……」

日(……おかしいですね、電源がオフでもGPSは使えるように設定されてるはずなのですが……)

米「あぁ、わかってるよ」

日「……おねがいしますね」


しばし会話が途切れた。
学園都市内とは思えない程の静けさ。
時折吹く風が木の葉を揺らし、鳥が囀る声が聞こえる。

米「……しかし、まさかあの日本がここまでになるとは思わなかったんだぞ」

日「……学園都市の事ですか?」

米「あぁ、それもある。……俺もイギリスから見ればそうらしいけど、戦後、ここまで復興できるなんて俺だって思わなかったんだぞ」

日「……学園都市に関しては、完全に日本政府が従属せざるをえない程の発展ぶりですけどね」

米「学園都市だけじゃないさ、全部だよ全部。それに学園都市だって日本のものだろ?」

日「……お褒めいただきありがとうございます。でも…」

米「ほら、日本はまた「でも」とか「ですが」とか!そうやって否定語ばかり使う!」

米「……日本の謙虚さを見習えとはイギリスやフランスに言われるけど、それにしたって日本は謙虚すぎるんだぞ」

日「事実ですよ。……この学園都市自体、私だってどうして生まれたのかわかってないんですし……」

米「……?」

日「私は理事長の正体だって分かってないんですよ……。……と、メールですね」

米「日本に?誰だい?」

日「……ドイツさんからですね。ええっと、……オーストリアさんが迷子?」

米「……毎度思うんだが、ドイツはオーストリアとイタリアの保護者なのかい?」

日「……。……どうでしょうね」

少なくともイタリアくんはドイツさんが保護者だと思いますよ、なんて口がさけても言えるはずもなく。


―――
とある建設予定地の空き地。
だだっ広く、誰もいないそこでドイツと、後から合流したハンガリーがハンズフリーの通話をしている。


独「……ったく、なんで迷子になるんだ!?今どこだ!?」

墺『そ、そんな事言ったって!しょうがないでしょう!』

洪「まぁまぁ。とりあえず場所はGPSあたりで分かるはずだから……」


独「……それが出来ないんだ」

洪「へ? 通話は出来るのに?」

独「わからん。今も通話出来る。……だが出来ないんだ。ハンガリーもやってみてくれ」

ハンガリーが端末からリストからオーストリアを選択し、現在位置を参照しようとした。
……すると、通信エラーという旨のエラーメッセージがハンガリー語で表示された。

洪「……あれ、本当ね」

墺『……いっておきますが、私は本当に何もしてませんからね。機械音痴じゃないんですから』

独「わかってる。わかってるが……大体迷子にならなければ……!」

墺『地図アプリとやらも開こうにも通信エラーで開けませんし、これは一体なんなのですg――』

独「通信エラーかなにかか?常時GPS接続が必要だなんて聞いてないぞ?」





側面に巨大なモニターを持った硬式飛行船が浮かんでいた。
そこでは「衛生からの通信に障害?学園都市内でのみ発生の模様」という速報が映されていた。

今日はこれまで。随分間があいてすいません。終わりは決めててその間の展開を考えるのが難産すぎます。
イタリアはちゃんと活躍するよ!

安西先生……昨日発売した禁書7巻を最後まで読みたいです……。

―――

洪「……通信障害?」

独「……他国や大国でならともかく、この学園都市で?」

ドイツは訝しんだ。
……まさか、何かの陰謀が?と少しばかり考えたが。

独(……それはない、はずだ。今回のはあくまで第三次世界大戦に関する後始末の会議であって……。
  ……いや、まてよ? その「後始末」に不満を持つテロ集団が、という可能性も……?)

例えば。
ライフラインを握られてしまったロシアなど。


墺『ちょっとドイツ、話を聞いてるのですか?』

独「あ、あぁ。」

オーストリアの声に、不穏な思考を断つ。

洪「とにかく、オーストリアさんを探しましょ。スキルアウトなんかに絡まれたら……!」

ハンガリーが両手で握りこぶしを作り、胸の前でぎゅっとした。

独「そう、だな……」

その時はスキルアウトが八つ裂きになってそうだがな、とどこかの刀のような言葉を抑えこみ、二人はオーストリアを探しに行く。



独(……にしても、何故衛星がピンポイントで、なんだ?)

独(確かに、天文学などなら影響は大きいはずだが、学園都市なら内輪だけで完結したシステムもあるはずだ。
  それなら、直接学園都市内の電波に干渉した方が早いはずだ……)


――


――

普「おっ、フランスじゃねぇか。ちょうどいいところに」

仏「ん?プロイセンどうしt……って何大量に抱えてる訳?美しくねぇな」

フランスに指摘されたとおり、プロイセンは大量の何か――もとい、缶ジュースを持っていた。

仏「……お前、それどうするつもり? 全部飲むの? 持ち帰りとかするつもりか?」

普「しねぇよ! ていうかこんな飲まねぇよ!?」

仏「はぁ? じゃあお前、いらないのに買ったの?」

普「違うっていってるだろ!」


プロイセンの話をまとめるとこうだ。

たまたま使った自販機が金だけ飲み込んで商品を出さない不良品の自販機だった。
いくら金は支給されているとはいえ、ただ札を飲まれたままではしまりがわるい。
仕方なくそこで数分間ほど格闘してると、たまたま通りがかった女子中学生(レベル5)がちぇいさー!と蹴りを入れたのだ。

普「……そしたら、料金分以上の缶ジュースが出てきてだな……」

その後中学生はどっか行くしドラム缶には追いかけられるし全体的に白いチャラ男に職質食らうしよぉ……と不憫っぷりを発揮した話を続ける。

仏「ははは……。そりゃ、災難だったな」

普「だろ?だからこれ飲んでくれよ! くそ不味いのもあるけど多分毒ねぇから!」

仏「は!? ヤだよ! お兄さんグルメだもん! 学園都市のよりによってゲテモノなんて飲みたくないね!?」

普「頼む!俺を救うと思って!こんな大量の缶ジュース捨てる訳にもいかねぇしかといってヴェストにみられたくねぇし!」

仏「え!?俺ならいいの!?」



そこへ。



「ん? どしたんふたりともー。喧嘩なんかして物騒やな〜」

後光た常に指して見えるような、欧州随一の楽観的な男がやってきた。

――


――


海「フィーンランドー!フィーンランドー!」

打止「そのふぃんらんどって人を呼ぶのだ!ってミサカはミサカは目をキラキラさせながら銀髪のお兄ちゃんにねだってみたり!」

子供二人が足元で裾を掴んで前後に激しく揺する。

氷「ちょっ、ふたりともやめてよ!」

一方「……おい、打止め。いい加減やめとけ」

一方通行がチョーカーに手をやり、能力をほんの数秒間発動させて打ち止めを引き離す。
……悲しい哉、今の一方通行には素手ではしがみつく幼女すらどかせないのだ。

氷「ありがと。
  ……シーランド、大体君が連絡すればいいじゃない。僕がやる必要なんて」

海「……は!そうだったのですよ!」

氷「もしかしなくても馬鹿?」

海「ばっ!ばかなんかじゃないのですよ!ばかっていうほうが……ムグッ!?」

打止「あ!そ、それ以上言っちゃ駄目!馬鹿っていうほうが馬鹿なんて言ったら両方馬鹿になっちゃうんだよ!ってミサカはミサカは口を抑えて静止してみたり!」

一方「てめェが言ったらどうしようもねェよな!?」

氷「……訂正、二人とも馬鹿だよね?」

打止海「「違う(のですよ!)(んだよ!ってミサカはミサカは否定をしてみる!)」」


一方(……馬鹿ばっかだなァ)

一方通行は直前に買った缶ジュースを握りしめたまま、そう確信した。


展開が遅い、一度に投下する量が少ない、の二重苦ですいません……。
一ヶ月も間あかないようにはしたいとおもいます。今回はここまで。

――

土御門「……通信障害、か。確かにそう、だな。うまい隠し方だ」

土御門元春が空を見上げる。
全く変わったところは見られないが、もしもインデックスレベルの解析に長けた魔術師が空を見上げたらすぐに分かるだろう。
バチカン程まではいかなくとも、空から幾重にも渡る何らかの結界が張られている事に。

ちょうど、衛星通信を阻害するように。

土御門「学園都市の通信技術は何も衛星に頼ってる訳じゃあ決して無い。逆に言えばそれ以外が生きているから表面上は問題ないって訳だぜい」

ステイル「それは知ってる。……まったく、恐ろしい街だよ」

土御門「……しかし、得体の知れない事ばかり起きるな。ま、「国」が来た時を狙ってるんだろうから当然だが」

ステイル「これは敵国条項(エネミークラージス)による物じゃあ……ないね。という事は、衛星通信の阻害を狙ったものじゃあない、と」

土御門「学園都市の攻撃には見えないな。第一、そんな事をすれば学園都市自体が何か動きを見せるはずだ」

ステイル「学園都市も何も分かってないんじゃないか? ネセサリウスでもまだ調査中なくらいだ」

土御門「そうかもしれない。が、……」

ステイル「……?」

土御門「俺には、あの壁は…… 逆に、学園都市から宇宙に在る何かを守る障壁に見える」

ステイル「……何か、ねぇ」

ステイル「……まさか、宇宙規模の術式でも用意してるっていうのか?」

土御門「前例がある以上、ないとは言い切れないな」

ステイル「エンデュミオン、か。……しかし、エンデュミオンもそうだが……そんなものを秘匿したまま建造出来るのかというのには疑問が残るね」

土御門「確かに、上空に怪しい建造物を作らせる程、学園都市が馬鹿だとは思えない」

ステイル「……まさかとは思うが、学園都市が出来る前に建造したとか?」

土御門「……さぁて。証拠が何もない以上、なんとも言えないな」




――


――


姫神秋沙が学校を休んだその日。
学園都市が夕日に染まる時間帯。

空港近くには、学園都市の外部客向けのお土産屋が並んでいた。
普段は閑散……とまでは行かなくても、学生向けの店よりは静かな一帯だった。

そのはずだったのだが。
その時に限って、お土産を買い漁る男女数人の喧騒があたりに響いてた。


韓「兄貴は兄貴だから俺の代わりに荷物持っててくれますよね?」

香「確かにそれは道理が通ってる的な。先生頼む的な?」

台「あ!先生〜!コレもお願いするネ!」

マカオ「ミスター、これもちょっと持ってて頂いてよろしいですか?」

中「テメーら我を何だと思ってるあるか!?っていうか荷物バンバン投げて渡してくるんじゃねーある!」

越「……」

中「越南も笑いをこらえてねーで助けるか止めるかするよろし!!!!」

台「んもー、だいたい先生が言い出したネ〜 『早めにお土産を買い込んでおくよろし!』って」

香「『滞在最終日に買い込んで時間が間に合わなくなるのはもーコリゴリある!』とも言ってた的な」

中「我は確かにそう言ったあるが、てめーらの荷物まで持ってやるなんて一言も言ってね―ある!」

韓「兄貴なのに!?」

香「先生……見損なった的な」

マカオ「ミスター……」

台「先生……心が狭いあるね」

中「はぁっ!? なんで我がこんな理不尽なしうちを受けなければいけねーあるか!?」

越「……!」

中「そこっ!笑いこらえてるんじゃねーある!!」




おみやげ屋から少し離れた、その展示品の美しさから「美術館」とも称される兵器展示場、その入口前の階段に腰掛ける少女二人。




フレメア「にゃあ。あの人達いっぱいお土産買い込んでる。外国人かな?話しかけても大体大丈夫かな?」

絹旗「……どーみてもアジア系の人間を白人で見た目も典型的「外国人」筆頭のあんたが言うと超ビミョーなきもちになりますね……」

フレメア「典型的? ……あっ!そういえば、きぬはたは今何してるの?」

絹旗「ああいう奴らを超見張るあくどい仕事ですよ。で、フレメアはなんでついてきたんですか?」

フレメア「んー、なんだか大体楽しそうだから!」

絹旗「楽しそうだからって理由でついてこられると超困りますよ……まったく」

その言葉に、フレメアが手に提げている鞄にキーホルダーのようにぶら下がる白いカブトムシが答えた。

カブ5『ご安心ください。彼女は私が何としても守りますので』

絹旗「……ま、未元物質に任せられるなら私よりは超安心っちゃ安心ですけどね。一番いいのは戻ってもらう事なんですけど」

フレメア「にゃあ! やだ!私もいる!こくさいこーりゅーする!」

絹旗「……なんですなんです?まーた学校で『これからは国際交流の時代!英語をしっかり覚えよう!外国人と話そう!』みたいなのでも超やったんですか?」

フレメア「ギクッ!」

絹旗「というか、フレンダにフレメアってどーみても英語かフランス語かは超喋れそうな名前なんですけど……」

フレメア「わ、悪いか! うまく話せなくて悪いか!にゃあ!」

でも話せるもん話せるもんオルヴォワールくらい言えるもん!と力説するフレメアに、カブトムシ05こと垣根帝督がおそるおそる言葉をかけた。

カブ5『……一ついいですか? そもそも、あの方々達……使用言語や衣装から推測するに、中国人や朝鮮人、又ベトナム人のはずです』

フレメア「? つまり?」

カブ5『……仮にあなたがフランス語だかドイツ語だかを話せても、それで交流出来る確率は低いです』

フレメア「――ッ!?」

衝撃を受け固まるフレメアを見、ため息を吐く絹旗。

絹旗「……そもそも、フランス語だか英語だかを話せたとして、あんた、超何を話すつもりだったんですか……」



―――


―――

上条の部屋


上条「あー……。材料をナントカ買ったはいいが、やっぱ、右手が手が動かねぇと料理作りにくいよなぁ……」

上条(……結局、姫神は学校に来なかったなあ。魔術師絡みじゃねぇといいんだが……風邪なだけかな?)

イン「とうまー、ご飯まだー?」

上条「……すまん、インデックス……。俺の右手が今こんなんで動かないから、手伝ってくれないか?」

イン「……あ、そっか、右手……。……いいけど、私、電子レンジとか使うのは無理なんだよ」

上条「……そうだよなぁ……。かといってコンロを壊したらそれこそ火事になって俺の命の危機だしな……」

どんなに腐っても学園都市の学生寮である。外の世界とは遜色ない程度の、家庭用の設備くらいは揃っている。
……逆に、それがインデックスにとって危ないのだが。

上条「……そうだ、ダメ元でフランスを呼んでみるか?」

上条が左手で携帯を取り出す。

イン「え!?フランス!?フランスの手料理がまた食べられるの!?」

途端に目をキラキラさせるインデックス。

上条「まあ無理だったら、土御門に土下座して頼むけどな……っと」

そう言ってから教えてもらったフランスの電話番号にかける。

……3コール程して、相手が電話に出た。


仏『やっほーお兄さんだよー。どーしたカミジョー?』

電話に出たのは、数日前に聞いた覚えのある声の男だった。
……が、どうも、ノイズが混じっている。
いや、ノイズというより、やたら騒がしい人の声が。

上条「あっフランス……さん? もしかして何かの用事中だったりするのか?」

仏『ん?いや?別に何もないよ?強いて言うなら……』

上条「強いていうなら?」

仏『今……俺達が……プロイセンの持ってきた……大量の缶飲料を飲まされてるって事かな』

上条「……えっと?」

仏『そうだ!カミジョーさえよければ今から缶ジュース全部あげてもいいよ!というか一部もらってくれないか!?』

上条「えっ……?」



フランスとその仲間たちが缶飲料を今から持ってくる事になった。



上条「……なあインデックス。ゲテモノ飲料好きか? 」

イン「すべての食物は神様の恵みなんだよ。とうまが踏んづけたパンでも神様の恵みなんだよ」

上条「お、おう……? な、ならいいんだ、うん……」


今回はここまで。

―――


土御門「……動きがあるまでは下手に動けない、か。ステイル、お前はどうする?」

ステイル「僕はあの子の周りを見はっておく。……魔術関連である以上、彼女が狙われないという保証はないからね」

土御門「……ま、確かにカミやんだけじゃ心許ないにゃー。……じゃ、俺もカミやんの所に戻るぜい」

ステイル「……君の場合は義妹に会う為だろ?」

土御門「ギクッ……そういうステイルもインデックス目当てじゃ――」

ステイル「な に か 言 っ た か い ?」ニコッ

土御門「なんで土御門サンの足元にルーンカードをバラまいてるのかにゃー!?」

―――

――

寮、上条の部屋

仏「おー、カミジョー。……って、どうしたんだその右手!」

先頭にいたらしいフランスが最初に玄関に入った途端、手に重そうなビニール袋を下げたフランスが驚いたように目を見張る。
上条はどう説明しようかと迷い、あー…と言いながら考えてると、フランスの後ろにいた人間と目が合う。

上条「……って、あれ!? お前、あん時の……!」

普「ん? ああ、あの時の右手怪我した奴じゃねーか。うん、化膿してなさそうで安心したぜ、ケセセ!」

仏「お前ら知り合いだったのかよーなんだよーチェー」

普「カミジョーっていうのか、そうか、あの時聞かなかったけどこれでようやく名前が分かったぜ」

うんうんと納得するプロイセン。その後ろからさらに声が聞こえる。

西「なー二人共さっさと入ってくれへん?俺、いつまでたっても入れへんのやけど……」

上条「ああ、三人で来てたのか! じゃ、じゃあ早く入ってくれ、ください」


部屋へと上がる三人。
スフィンクスを洗ってきたインデックスが、彼を抱えながらリビングにやってくる。

イン「あれ、知らない人が二人いるんだよ」

さすがに気圧されたのか、おずおずと上条の後ろに隠れるインデックス。

仏「お、イギリスんとこのお嬢ちゃんじゃないか。 じゃあ紹介しとくか。こっちの方がスペイン、で、こっちがプロイセンだよ」

西「俺はどっちもはじめましてやろなー。さっき言われた通り、俺はスペインやでー。気軽に親分、て呼んでくれてもええからな!」

普「俺はプロイセンだ。ああーっと、そっちのカミジョーとは先に怪我してる所に会った……って感じだな」

上条「あ、あの時は本当どうも……」

普「いいっていいって」


打ち解けた様子をみて、背後からインデックスが出てきて自己紹介を始めた。

イン「……私はインデックス。イギリス清教の魔術図書館なんだよ」

西「へー、そうなん? でも図書館って言う割には本もっとらんで? あ!もしかして全部覚えとるとか!すごいなー嬢ちゃん!」ナデナデ

イン「わわ、速攻バレちゃったんだよ! とうまの時はもっとぐずぐずだったのに!私を裸にしてきたのに!」

上条「いやそれ絶対適当に言ってるんじゃ……ちょっとまてどういう事だそれ!?」

仏「裸? このお嬢ちゃんの? へぇ、なかなか大胆な……」

上条「ち、違いますことよ!? 上条さんはイギリスさんの大事な大事な預かり者であり大事な同居人にそんな手を出すようなケダモノじゃないですことよ!?」

普「ケッセッセ! なんだたまってんのか? よし、ヴェストコレクションから俺様オススメの一品を……」

上条「え?ヴェストコレクションって何!? というかたまるとかなんとかそういう事は――」

土御「っはーい!カミやーん! 随分楽しそうな所失礼するんだぜ―いー!」バーン!

上条「まったくもって唐突すぎる登場だな!? というかえっそこベランダだぞ!おい!?」

西「わー!ベランダから人が来たで!さすが学園都市やなー テレポート能力って奴なん?」

上条「ちがっ!あいつはただの隣人だからね!?」

土御「んなことよりカミやんまーた大勢連れ込んで……女に飽きたらず男にまで……ううっカミやんとうとうそこまで……。
   そんなにアレなら俺が今度年上モノを見繕って貸してあげるんだぜい……」

上条「妹モノ好きのお前にそこまで言われるって何!?俺を何だって事にしたいの!?」

イン「……とうまって……」

上条「え?え!? 何その冷めた目!?」

仏「まあ、男なら色々あるよな」ポンッ

上条「やめて!?その同情したような顔で肩をたたかないで!」

西「そんな事よりジュース飲まん?」

上条「そう! 本題はそれですことよ!!!?」

普「んー、しかし運ぶ途中でちょっとぬるくなっちまったな……少しだけ冷蔵庫に入れとくか」

仏「どうせいくつか置いて帰らせてもらうし今のうちにいれとくか」

西「いちごおでんおいしいで〜」

イン「じゃあ、私、冷えたらこのメロンヴルストミックスってのを飲んでみたいかも」

普「ヴルストにメロン……?は……?」

上条「何その絶対まずそうなジュース……」


――


夜だというのに、ざわざわと騒がしい上階を地上から見つめる三人組の少女達。


「……あの人たちでいいの?」

滝壺が麦野へゆるりと視線を向けた。
麦野は目標地点を見上げたまま答えた。

「……全員を狙うより、まずは怪しそうな奴らから。……例えば、亡国なんてしがらみなしで動けそうじゃない?」

「つまり、超あの白髪頭が怪しいって事ですね」

「そういう事。……じゃ、さっさと拷問するなり自白剤打つなりして吐かすわよ。どうせ人権なんてないんだから」

彼女のもつスマートフォンの煌々と明るい液晶画面には、銀髪赤目の青年がどや顔をした写真が表示されている。
――液晶画面の下部には、プロイセンと書かれていた。
そう、亡国の国名が。


「じゃ、まずは私から超攻めますね……っと」

絹旗最愛が能力を発動させる。
周りの窒素を、体表に集め、強固な鎧へ。

「私が義眼からのクラックで予め通報装置は一時的に停止させてある。……出来ればあまり騒動なしで片付けたいけどね」

「超了解です。なあに、超速効で昏倒させれば済む事ですから」

絹旗最愛は、音もなく壁面を素早く登って行った。



――――


話は遡る。



建宮「……お前さん、なんで俺の事が分かったのよな?」

会津「そっだこと、単純です。俺の兎が気づいただけです」

肩にのったうさぎがひくひくと鼻を動かした。
動物は常人よりも感覚が鋭い事がままある、とはいうが。まさか。

建宮「……今は授業中じゃ?」

会津「……この学校で、まともに授業受けてる生徒が一体どれほどいることですかね」

自虐的に言う彼を、建宮は気を緩める事なく問う。

建宮「俺をどうするつもりなのよな?」

会津「警備員に不審者がいる、とでも言えばいいんでしょーけど。」

そこで、言葉を切る生徒会長。

会津「なしてその部屋に入ろうとしてるのか、俺も気になりますからね」

そう言って扉の方に目を向ける。

会津「そこさ随分前から立入禁止のはずですが。……前の放送部が出来たあたりから」

建宮「お前さんに言っても、きっと分からないのよな。この世を左右させるオカルトなものがあるなんて言っても」

昏倒術式の用意をそれとなく行う建宮。
今回バレた事もたまたまだろう。なら気づかれる事もなく、すぐ発動できるはずだ。
だが――

会津「……幽霊ば信じないかって言われたら俺ぁ信じますけど」

建宮「……、」

会津「許可さえ俺にとってくれれば、「ついでに」見せてやっでもよがったんですがね」

会津誉の言う意味がわからないとばかりに建宮は目を見開く。
その間も術式の構築は続ける。前後の記憶が消えるような、健忘を引き起こす術式を。

そう言って誉はじゃらり、とキーの束を見せる。

会津「泥棒さん。あんたどーする」

建宮「……お前さん、何が目的で……、いや、何故ここに」

会津「放送部に頼まれたんですよ。ここにふるーい機材があるから、持ってきてくれってね」

会津誉はその放送部の事を思い出し――かすかに笑ったように見えた。

建宮「……俺を突き出さないのか?」

会津「大人で怪しい不審人物。しかも怪しい事を言う人間。ふ、信用出来る要素さ一切ねぇのも珍しいですね」

会津「でも俺はそこの立入禁止の扉ばはよ開けて持ってかないといけない。   ……あんたも見たいじゃないんですか?」

建宮「……そうだな」

完成した術式を保持したまま、建宮は扉から退く。
入れ違いに会津が扉に錆びた鍵を突き刺し、ぐるりとドアノブを回す。

会津「……あんた、生きて帰れますかね」

建宮「どういう意味なのよな?」

会津「ここの奴ら無駄に縄張り意識高い事でも有名なんですよ。多分、ここで俺倒して行ってもそこでぶちのめされますよ。
   ……特に、何か備品を持って学校さ出ようとなんてしたら」

振り返った誉がにやり、と笑った。

建宮「……ああ」

今まで術式の構築や会話に集中していて聞こえなかったが、耳を澄ませば学生の声が授業中だというのにやけに聞こえる。
なるほど、自分を信頼してる訳ではなくどうせ何かしたら不良にボコボコにされると――そういう意味で信頼していたらしいのだ、学校を。

会津「……それに、昼までに持って来いと言われてますからね。おっさん通報して警備員きて手間取ったら俺が困る訳でして」

建宮「……そっちが本音か。 お前さん、面倒事嫌いそうだし、納得よな」

会津「そこまでめんどくさがりって訳じゃねぇけども……」

言いながら、ドアを開ける。


部屋は随分締め切られていたようで、一歩入った瞬間埃がもわ、と立ち上がる。
中は物が所構わず適当に置かれた倉庫のようになっていた。
黴の匂いもし、決して快適ではない部屋だ。
部屋の奥にある窓から陽光がさしていて、ある種神々しい雰囲気を少しばかり醸すだすが――それ以上の事はなかった。
窓含めあらゆる所に蜘蛛の巣(巣だけがある)があり、本も黄色く変色している。


会津「……ん、俺の目的の物は……っと」

誉は言いながら、一つの本を取り出した。
学校作成のいつかの文集らしい、黄色く変色した古い本だ。

建宮「……それが必要な機材?」

会津「あんときは機材なんて言っちまったけども、これにノウハウが詰まってるそうなんですよ」


建宮「ふーん……」

そう言いながら建宮は目をこらす。
放送部に関するノウハウというからには、放送に関する技術指南でも書いてあるのだろう、とちらりと考えた。



会津「おっさん、気が済みましたか?」

誉が文集の一冊を脇に抱えたまま尋ねてくる。

会津「さすがに部外者には備品を持ちださせる訳には行かないんですよ。OBだっていうなら事務室に行ってからまた来てくれれば……」

そういって退出を促す誉へ、


建宮「……そうなのよな、だったら、こうするしかない訳よな!」

会津「……っ、ぐぁ……!?」

建宮が思い切り腕で首を締め、気絶させた。

力が抜け、ぶらりと腕を垂らす誉を床に寝かせ、前後の事を忘れさせる魔術をかける。
心配そうに飼い主の顔を見つめるうさぎを置いといて、建宮はひとりごとを漏らした。

建宮「……質の悪い泥棒に侵入された事にすればいい」

仮に、彼が協力して備品の持ち出しを許可しても、こうするつもりだった。
なぜなら、民間人を巻き込む訳には行かないからだ。
誉が幽霊を信じると言い切ったのが気になったが――それについてとやかく考える暇はない。
おそらく不良が気づくにはまだ時間があるだろう。

……探しものはすぐ見つかった。
封筒に数枚綴りで入れられた文書の形態をしていた。

乱雑に扱われていたらしく、戸棚の上の方に無造作に置かれていた。
おかげで封筒が日に焼けてるが、まあ支障はなかったのだろう。


建宮「……保管場所としては最悪。だが、それゆえに誰にも気づかれなかったって訳か」

情報提供したインドがどうやって知ったのか気になったが……それについてはあとで考えるべきだ。


今は、この文書を学園都市に届けねばならない。

今回はここまで。また間が空いてしまった……。

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