春香「海賊王に私はなる!」 (34)

~海~

千早「泣かないで春香。大丈夫、大丈夫だから」

春香「だって千早ちゃん……胸が!」

千早「安いものよ、胸の二つくらい。無事で良かった」

春香「うっ……うあああああああああああああっ!!!」

春香(食べると能力を得られる代償に海に嫌われる悪魔の実を食べてカナヅチになったのにうっかり海にダイビンした私を助けるために海に飛び込んだ千早ちゃんは、海王類に襲われて胸を抉られてしまいました)

春香(その日から数日後……海賊である千早ちゃんはしばらく拠点としていた私の島を出ることに)

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春香「私、海賊になる!いつか海に出て、千早ちゃんに負けないくらいすっごい海賊になってやる!」

千早「へぇ、私たちを超えるのね。じゃあ……」スッ

千早「このリボンを、春香に預けるわ」ギュッ

春香「!」

千早「いつか返してね。立派な海賊になって……」

春香「うん……うん……!」

10年後

春香「出た、海王類! 10年鍛えた私の技を見せてやる!」

春香「ゴムゴムのピストル!」ドン

春香「やったー倒したー!千早ちゃんの胸の恨み、晴らしたよ!」

春香「よーし……この調子で……」

春香「海賊王に私はなる!」ドン

~とある船~

船員A「なんだァ雑用?この樽は」

雪歩「あっ、その、流れてたのを、引き上げまして……えへへ」

船員B「ほーうでかした。きっと中身は酒かなんかだぜ」

船員A「お前の手柄は俺らのもんだ。分かるよな?」

雪歩「はいぃ……私は何も見てませぇん……うう」

船員B「分かりゃあいいんだよっへへ……さあて中身を拝見するとするか」

パカッ

春香「私マーメイ♪」

船員A「」
船員B「」

春香「いやぁ助かったよ。小舟で海に出たのが間違いだったのかな?遭難しちゃって渦潮に巻き込まれて」

春香「どうにか樽に身を潜めて生き延びたんだけど、拾ってもらえて本当にラッキー!」

船員A「おいお前……ここが何の船か分かってんだろうな?」

春香「はい?」のワの

船員B「ここはあの大海賊レディー・小鳥様の海賊船だぞ!無事に帰れると思ってんだろうなぁ?」

船員A「こいつ地味に可愛いぜ。身包みはいでやろうぜ」

ドカッバキッ

春香「弱っ」

雪歩(強い……!)

春香「……ふーん、雪歩っていうんだ。よろしくね、私春香」

雪歩「春香さん、つ、強いんですね。男の人二人を簡単に倒しちゃうなんて」

春香「あはは、そりゃ強いよ。だって私……海賊王になるんだから」

雪歩「!? か、海賊王!? 無理無理!絶対無理ですぅ!」

ゴンッ

春香「雪歩は黙ってて」

雪歩「うぅ……酷いですぅ」

春香「確かに無謀かもしれないけど、それでも海賊王は私の夢だから」

雪歩「……それを目指して、し、死んじゃった人もいっぱいいるんですよ?」

春香「いいんだ。それでも」

雪歩「えっ?」

春香「できれば死にたくないけど……でももしダメでも、夢のために死ぬんなら本望かなって」

雪歩「なんて……人なの……」

春香「雪歩はさ、なんてこんな船に乗ってるの?海賊船だよね?」

雪歩「……釣り船に乗ろうと思って、間違えて乗っちゃったのが運のツキで。船長の小鳥様に捕まっちゃって雑用三昧の日々……」

雪歩「こんなドジでダメダメな私は、穴掘って埋まってますぅ~」

春香「ちょっ、こんなとこで穴掘ったら雪歩だけじゃなくてみんな沈んじゃうよ!」

春香「……その小鳥ってのが、そんなに怖いの?」

雪歩「怖いですよぉ!あのおばさんすごく強いし、逆らったらクソみたいな同人誌のネタにされたり……」

???「何か言った?」

雪歩「え?」クルッ

雪歩「ひっ!!!」

小鳥「雪歩ちゃん。この世で一番美しいのは誰?」

雪歩「そそ、それはもちろん小鳥様ですぅ!」

春香(ふーん、これが小鳥、かぁ)

小鳥「あれ?見ない顔ね。新入り?」

雪歩「こ、この人は……!」

春香「私は天海春香ですよ、おばさん!」

小鳥「!?」

雪歩「ちょっ!?」

小鳥「……き、聞き間違いかしらねぇ?」

春香「おばさん、小舟くれません?私自分の船なくなっちゃって困ってるんですよ~」

小鳥「……誰が」

小鳥「誰が結婚適齢期とうに過ぎてるのに未だ独身彼氏いたことなしですってぇぇええええ!!!」

雪歩「ひぃ!は、春香さん、謝って!」

春香「なんで?この人悪い人なんでしょ?」

雪歩「あわわわ……あわわ……」

小鳥「もう許さないんだから!うわああああん!!」ブルォウウウウウ

雪歩「! 小鳥様のバイブ攻撃!逃げて春香ちゃん!」

ドッ

雪歩「春香さぁん!!」

小鳥「……ん?」

春香「えへへ、効かないよ。ゴムだもん」

小鳥「なっ……まさか、能力者!?」

雪歩「す……すごい……」

春香「雪歩、あなたはこんなクソみたいなおばさんの船で媚びへつらいながら一生を終えるつもりなの?」

雪歩「! わ……私は……」

小鳥「またしてもおばさんと……雪歩ォ!このコに教えてやりなさい!私はこの世で一番……」

雪歩「私は……自分を……」

小鳥「雪歩ォ!」

 雪歩『お母さん……私、自分を変えるんだ』ギュッ

雪歩「……ッ!」

小鳥「さぁ、言ってやりなさい!」

雪歩「春香さん……この人は……」

雪歩「この人は……この世で一番……」ガクガク

雪歩「一番いかつい、クソババアですぅ!」

小鳥「!?」

春香「あははっ、よく言った、雪歩!」

小鳥「殺す、殺してやるう!!」

春香「無駄だよおばさん。ゴムゴムの……ピストル!」

ドゴォーーーン

小鳥「ピヨオオオオオオオ!!!」

雪歩「すごい……あの金バイブの小鳥を、倒しちゃうなんて」

春香「雪歩、これからどうするの?良かったらさ、私と一緒に海賊やらない?」

雪歩「……春香さんみたいな、強い意志があったら」

春香「? 雪歩?」

雪歩「私にも……なれるかな……」

春香「うん、なれるなれる!一緒に海賊……」

雪歩「私みたいなひんそーでちんちくりんなダメな子でも……」

雪歩「海軍に!入れるかな!?」

春香「!」

雪歩「春香さんとは……敵になっちゃうかもしれないけど……でも」

雪歩「夢、なんです。私……いつか海軍に入って、ダメな自分を変えたいんです……!」

春香「……そっか」

春香「がんばろ、お互いに!」

雪歩「ところで春香さん、海賊なんですよね?」

春香「えへへ、まだ私一人だし、船もないけどね」

雪歩「だったら……この先にシェルズタウンって街があるんですけど、一緒に行きませんか?」

雪歩「ここの小舟をいただいて」

春香「シェルズタウン?」

雪歩「そこには海軍基地があるんですけど、美希って剣士が捕まってて……すごく強いらしいですし、仲間に誘ってみたらどうですか?」

春香「いいね!剣士!そしてついでに雪歩はそこで海軍に入隊!ってね」

雪歩「あはは……私にとってはそっちがメインなんですけど」

春香「じゃあ、航海は任せちゃおっかな。私そのへんからっきしだから」

雪歩「か、海賊王目指してるのにそんなんでいいのかなぁ?」

春香「大丈夫!航海士もそのうち仲間にするから!」

~シェルズタウン~

雪歩「着きましたぁ」

春香「まっすぐここまで来れたね。やっぱり雪歩うちで航海士やらない?」

雪歩「これくらい普通ですよぉ。それよりまずは情報を集めなくっちゃ」

春香「そうだね……あ、通行人」

冬馬「この街は高木っていう海軍の大佐が仕切ってる。向こうで美希が捕まってるぜ」

春香「ありがとう」

雪歩「行ってみよう」

~海軍基地~

美希「もう9日もここで縛られてるの……限界……なにか食べ物……」


春香「あ、いた。すごいげっそりしてるね」

雪歩「そのわりには抜群のプロポーションですぅ」

春香「……あれ?女の子が近づいてくよ?」


女の子「あの、これ……」

美希「おにぎりなの!!ちょーだい!」


春香「いいのかな?あれ」

雪歩「いいわけないですよ。海軍の人に見つかっちゃったら……」


???「おい、何をしてる」

美希「! あなた……」

高木「私は大佐の高木のいとこの高木だ」

美希「知ってるの!美希、あなたのせいで捕まったの!」

高木「そんなのはどうだっていい。それよりそこの女の子。何だねそのおにぎりは」

女の子「えっと……その……」

高木「あぁ、もしかして私への差し入れかい?ありがとうね。どれ一口」ヒョイパク

高木「ぶええっ!なんだこれは!ぶええっ!ぶええっ!塩の代わりに砂糖が入ってるじゃないか!こんなもの食えんよキミィ!」

女の子「だって……甘い方が美味しいと思って……うう」

高木「こんなおにぎり!」グシャグシャ

春香「うわあ……捨てた上に靴でぐっしゃぐしゃに踏んでるよ」

雪歩「ひどい……」

高木「だいたいここは立ち入り禁止だぞ!おい海兵1、こいつを兵の外に投げ捨てろ!」

海兵1「えっ……は、はい」

女の子「きゃああああ!」

春香「よっと」バシィッ

雪歩「春香さん、ナイスキャッチですぅ」

女の子「いたた……」

春香「大丈夫?」

女の子「私は、平気だよ。でも美希さんが……美希さんが……!」

雪歩「ねぇ、なんで助けようとしたの?美希って人、悪い人なんだよね?だから捕まってるんでしょ?」

女の子「違う!美希さんは高木の飼ってる狼を斬っただけなの。それもその狼が私を襲ってきたのを助けるために……」

雪歩「あれ?悪くない……よね?」

女の子「でも、この街は高木には誰も逆らえないから……だから美希さんは、誰からも援護されずに一人で苦しんでるの」

雪歩「そんな……あれ、春香さんは?」

春香「や、美希。さっきのおじさんたちは今はいないみたいだね」

美希「馴れ馴れしいの。誰?」

春香「私は天海春香です!いぇいトレードマークは頭のリボ」

美希「あーもういいの。春香ね。さっきの見てたんならわかるでしょ?ミキのことなんてほっといて帰った方が」

春香「美希、もし私があなたをここから助けてあげたらさ……私の仲間になってくれる?海賊なんだけど」

美希「ヤなの。ミキ、こーみえて海賊狩りって呼ばれてるんだよ?海賊になったら賞金稼ぎできなくなるって思うな」

春香「でもこのまま死ぬよりいいでしょ?」

美希「死なないもん。ミキ、あと何日か我慢したら解放してもらえるんだよ。高木のおじさんと約束したもん」

春香「ありゃ、そうなの?じゃあ日を改めて来よっかな……」

美希「……あ、待ってなの」

春香「ん?」

美希「それ、拾ってほしいな」

春香「これって……おにぎり?もはや泥の塊だよ?」

美希「いいから!」

美希「ぐっ……おげぇぇぇえ!うぇっぷ、げほっげほっ」

春香「言わんこっちゃない。いくら腹減ってるとはいえこんなの……」

美希「はぁはぁ……あの、女の子に、伝えてなの」

美希「おいしかった。ごちそーさまでした……って」

春香「!」

~街中~

春香「……だってさ」

女の子「ほんと!?」

雪歩「やっぱり美希ちゃん、いい人なんだ……」

春香「決めたよ雪歩、私絶対美希を仲間にする」

雪歩「ええ、でもどうやって助けるか……」

春香「そこは大丈夫。あと何日かで解放されるんだって」

冬馬「いやーしかし独り言だが、あの美希の処刑が明日とはな」

春香「!?」

春香「今、なんて?」

冬馬「だから美希が……しっ、高木がくる」

高木「私が道を通るよ。高木のいとこのこの高木が」スタスタ

春香「ねぇ高木さん」

高木「ん?誰だか知らんがどうしたのかね?」

春香「美希の処刑が明日って、ほんと?」

高木「ああ、もちろんだとも」

春香「あと何日かで解放するんじゃ……約束したんじゃ……」

高木「はっはっは、なんでそんなのを知っとるのか知らんが、犯罪者との約束を律儀に守る必要などないだろう?」

春香「ッ……!」

バキイッ

高木「いたぁい!」

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