桃太郎「きび団子うめぇ」 (106)

桃太郎「小腹空いたから少しかじってみたら何だこれ、ほっぺた落ちる」

桃太郎「手が止まらないんですけど、超美味しくて涙出る」

桃太郎「え、マジでウソでしょこれ?誰が作ったの?」

桃太郎「一口噛めば笑顔が自然に零れてくる。美味しい美味しいよ悔しいぐらい美味いもの」

桃太郎「意外にジューシーでもあるし……何だろう? 後味も心地いいのね」

桃太郎「猪肉よりイケるじゃん。むしろ肉なんて食べるぐらいなら きび団子の方が嬉しい」

犬「あ、あああ……」

桃太郎「でもこのきび団子って残念な事に他では簡単に手に入らないんだよな。特別性っていうのかな。そこが悔しいところよ」

桃太郎「あーやべ、やべぇー…このままじゃ手が止まらず全部ここで消費しちゃうし」

桃太郎「まったく罪作りなきび団子で困るよ。うめぇ」

犬「…桃太郎さん、桃太郎さん!お腰につけたきび団子一つ私にくださいな!」

桃太郎「んん?いま何て言ったの?欲しいのかな?お腰のきび団子を?」

犬「是非とも!!」ヨダレプシャー

犬「最近村人たちが私へ餌を恵んでくれないのです。哀れでしょう?そう思うのでしたらきび団子をお分けください」

桃太郎「あいにく畜生にホイホイ与えられる食べ物じゃないんだよね~」

犬「私はチワワです。ある日、飼い主が私が大きくなったら可愛がらなくなり、私は野道へ捨てられたのです」

犬「ですから、私は人間をとても憎く思っているのです……あなたも私へ冷たくしますか?餓えたチワワを放っておくのですか?」

桃太郎「俺はハスキーとかのが好きなんだ。だからお前の事なんぞ微塵も可愛らしいとは思えないのだ」

桃太郎「きび団子……美味しいなぁ。誰か俺を止めてくれよ。このままじゃ俺、きび団子のあまりの美味さに殺されちゃうかも」

桃太郎「あー!あー!! きび団子にまた手が伸びてしまう!! あー!!」

犬「あー!!……負けました、桃太郎さん」

犬「私があなたのお供になってあげましょう。そのきび団子を食べさせていただければ」

桃太郎「えぇ?犬のお供がいるとかくっそ惨めなんですけど?何が悲しくて鬼退治に犬の散歩連れてかなきゃいけないの?」

桃太郎「お前に食わすきび団子はないのだよ、犬」

犬「ですが桃太郎さん。お一人であの鬼ヶ島へ向かわれるなんて無謀ですよ」

犬「私はこの3カ月間、地獄を見てきた犬です。そこらの飼い馴らされた犬どもより強い」

桃太郎「なにチワワが粋がってんだよ。強い弱いは関係ないわ」

桃太郎「大体チワワ連れて鬼へ挑んでみろ、鼻で笑われて終わるぞ」

犬「そう、そのギャップを利用するのです。桃太郎さん」

犬「敵が私の愛らしさに騙されたその時、奴らの首を噛み千切ってくれるのですよ」

桃太郎「鬼の太い首にお前の牙が立つとは思わん。帰れ帰れ!俺はお前に嫌がらせるためにわざわざきび団子を食べてみせたんだ!」

桃太郎「どうしても食いたければ人間にでも変身して出直してくるんだな。一昨日きやがれ、茶毛玉め」

犬「……わかりました。私が人間ならば構わないのですね、桃太郎さん」

桃太郎「応だとも。だが思わせ振りな事は滅多に言うものじゃないぞ、犬。犬が人間へなれるわけがないだろう?」

犬「いえいえ、それがなれる方法があるのですよ。まぁ、疑わずに聞いてくださいな」

犬「私ら犬はきび団子を食べると、あらビックリ、人間へ姿を変身させられてしまうのです!」

桃太郎「何だとう?」

桃太郎「けっ、そんな都合の良い話があってたまるか。出鱈目に決まっているじゃないか」

桃太郎「お前は俺のきび団子を食うためにそんな作り話をしたに違いない。まんまと俺を騙し、きび団子を食えば、屁をこいて逃げ出すのは分かっているぞ」

犬「そう考えるのも無理はありませんね。ですが桃太郎さん、もし、もしそれで私の話が真実ならばどうでしょう?」

犬「私ども犬は滅多なことでは人間へ姿を変えません。それをあなたはこの目で、今から見られるというのですよ」

犬「貴重な経験になることはもちろん。その私を連れて歩けば良い見せ物になること間違いありません」

犬「なんせ、珍しい犬人間なのですからね!銭も稼ぎ放題でしょう!」

桃太郎「ふむ、確かに事実ならば面白そうな事ができそうだ。それを聞くと試しに一つきび団子をくれてやらんでもないと考えを改めたくなってきたぞ」

犬「さすがは桃太郎さん。さ、さ、そうと決まれば私に一つ、お腰のきび団子を!」

桃太郎「……だがな、犬。別にお前で試す必要などないんだぞ。そうだ、村に手ごろな犬がいたな」

犬「ああっ!」

桃太郎「それじゃあ、これからお前の話が真実か、確かめに行くとしようか?」

犬「おのれ、人間畜生……くちおしや……!!」

桃太郎「どうした、犬。しかめっ面を見せて。やましい考えを持っていなければ俺に着いて来て、他の犬が人間へ変身する瞬間を見届けてみろ」

桃太郎「まさかとは思うが、お前がいま俺へ話したものは適当な作り話かな?」

犬「め、滅相もございません、桃太郎さん……では参りましょうではありませんか」

犬「きっとあなたは腰を抜かしてしまうでしょうね」

桃太郎「それは楽しみで仕方がないな。見ろ、丁度腹を空かしたパグがこっちに向かって来たわ」

パグ「きび団子の匂いだねぇ!!この匂いはきび団子だねぇ!!間違いないよぉ!!」

桃太郎「パグ、哀れなお前に俺がきび団子を一つ恵んでやろう。さぁ、犬。お前を信じさせてもらおうじゃないか!」

犬「くっ!」

パグ「それは楽しみで涎が止まらないねぇ!!さっさと恵んでおくれよぉ!!腹ペコで死にそうでぇ!!」

桃太郎「いいぞ、そーら!喜んで食らいつくが良い!」ポイー

パグ「うわぁーい!!」

犬「退け、パグ公ッ!こいつは私のきび団子だぞッ!」

パグ「ひぃん!!」

桃太郎「貴様!犬め!なんて意地汚い真似に出やがった!」

犬「へへへ、ご覧にいただけましたか、桃太郎さん。この通り私はどのような相手であろうと勇敢に立ち向かえるのです」

犬「たとえゴールデンレトリバーだろうが、ダックスフンドだろうが、何でもござれなのです……では遠慮なくきび団子を頂かせてもらいましょうかね」

犬「……まずぅ!?な、何ですかこの出来そこないの団子は!? おえ、おえ!こんな不味い物を美味い美味いと食えるとは、桃太郎さんの舌は異常に違いない!」

桃太郎「いやいや、俺もこいつを美味いとは思えんな」

桃太郎「今お前が食らった団子をよく見るがいい、犬。そいつは田んぼへ撒く肥を俺がよく丸めた即席肥団子だ」

犬「ああ、私を騙したのですか、桃太郎さん。よくも可愛いチワワへこんな仕打ちができるものです!」

桃太郎「騙す?騙していたのは犬、お前の方ではないのか。黙って眺めていればお前がその肥団子を食う事もなかっただろうに」

犬「図りおったな、人間畜生……あなくちおしや……!!」

桃太郎「図るなど人聞きが悪いじゃないか。俺はただ、パグへ肥団子を投げただけ。勝手に横取りしたのはお前だぞ、犬」

桃太郎「これはやましい事を考えた罰だ。あーあ!お前が正直者であれば、美味いきび団子を一つぐらい分け与えたものを!」

桃太郎「犬が人間へ変身するなど見え透いたウソをつくのが悪かったな。これに懲りたら二度と村人へ過ぎた悪戯をしてくれるな、悪犬よ」

犬「き、貴様……最初から私を誘い出すつもりであの様な……おのれ、おのれ!」

犬「……完敗です、桃太郎さん。あなたには参りましたよ」

桃太郎「その言葉だけは信じさせてもらうぞ。ならば、お前はこの桃太郎のお供となる資格があると見た」

桃太郎「着いてくるが良い、犬。さぁ、共に鬼ヶ島へ行こうではないか……千切りの証だ、このきび団子を取れ。安心しろ、こいつは本物さ」

犬「桃太郎さん……かっこいい……!」

犬「鬼どもなんぞ、この私が一吠えすれば、泣いて逃げ出すでしょう。桃太郎さんが刀を抜く暇もないですよ」

桃太郎「そいつは良い。犬、お前はこの調子で、その小さな体に似合わん威勢の良さを武器にするがいいぞ」

桃太郎「見栄っ張りだろうと、意地でも貫き通せば大きく見せられるものだ」

犬「地獄のチワワにお任せを、桃太郎さん。この虚勢で私は今まで生きてこれましたからね。並大抵ではございませんとも!」

桃太郎「ああ、頼りにしているぞ。俺はお前を信じようじゃないか」

犬「ところで桃太郎さん。この先には乱暴者で有名な猿が道を塞いでいるのですよ」

犬「猿は私以上に強く、外道との噂を耳に挟みました。なるべくならば、進む道を変えた方がよろしいのでは?」

桃太郎「お次は乱暴者の猿と来たか。面白いじゃないか。この桃太郎も村一番の力持ちだったぞ!」

桃太郎「どちらが強いか、そいつと力比べと行こうか。さぁ、行こう、お供の犬よ」

犬「ああ、桃太郎さんは何も知らないから呑気でいられるんだ……!」

犬「いるぞいるぞ、猿どものキーキーと喧しい声がここへ入ってピタリと止みおったわ。桃太郎さん、引き返すならばいまですよ!」

桃太郎「どうした、犬。地獄のチワワが泣いて呆れる物だな。お前には勇気が足りないようだ」

桃太郎「ここまで来れば、そろそろ肝を据えるもんだぞ。そうすりゃ猿も舐めてはかからんさ」

犬「桃太郎さんかっこいい……私にもこの小さな体を凌駕する逞しい精神があれば良いのに……」

桃太郎「あるさ。きっとお前はそいつを押しこんじまっているだけよ。さぁさ、噂の悪大将のお出ましときた!」

猿「なんでぇなんでぇ、どこの阿呆がお出でなすったと思いきや、村の人間と犬ころときたもんだ!」

猿「このお山がオラの縄張りと知っての事か!!」

桃太郎「あっれぇえ~~~?その様な事を知らせる立て札もここまで見掛けはしなかったがなぁ~~~?そいつは初耳だぞ、エテ公?」

犬「ああ、桃太郎さん!猿を怒らせてはいけませんよ!見てください、ただでさえ真っ赤な尻が叩かれたかのように染まり上がった!へへへ!」

桃太郎「違いねぇ!ありゃ酷いな!紅葉の鮮やかな朱色が霞んで見える!おい、エテ公、湯にでも浸かっていたのか?」

猿「黙れぇえええええええ!!これ以上オラを悪く言えばその首キュっと絞めて、腸抜いて食いつくすど!」

猿「お前らの回りにはオラの仲間たちが何百も囲んでいる!酷い目に合いたくなけりゃあ、食い物ありったけ置いてとっとと山降りな!」

犬「何ですか、この猿は。噂に聞いていた物とは全然じゃないか。きっと私たちには力で敵いっこないだろうと考えてますね、ありゃあ」

猿「犬なんぞがオラたち相手に何を見栄張りやがる!その気になれば、お前たち1人と1匹は目でもないんじゃ!」

犬「はっは、猿が吠える吠える!強い者ぶりたい気持ちは分からないでもないがね!」

猿「舐めるなよ、犬コロ!オラたちはこの山の誰よりも…いやいや、日本中で一番の強者!力では鬼にも負けんわ!」

桃太郎「俺たち1人と1匹を相手に群れ連れて強がってるぐらいではなぁ! おや、まさか、お前1匹では大した事はないんじゃないのー?」

猿「ぶわぁああああああ!!オラは強い!誰よりも強いだ!」

桃太郎「「それじゃあ、俺と一対一の勝負をしようじゃないか、猿」

桃太郎「そうだな……俺が負けたら、この腰に下がった美味いきび団子をくれてやる。それでも足りんなら、俺と犬を煮るなり焼くなり好きにしな」

猿「言ったなぁ?好きにしていいんだな、お前らを?」

桃太郎「応ともさ。犬もそれで問題ないだろう」

犬「えっ……え、ええ!こんな猿に臆する事はないですもの!」

猿「ならばお前らの望み通り、そこの人間とオラとの一対一の勝負をしてやる!オラを舐めた事を後悔させてやるど!」

犬「ああは言ったけれど、桃太郎さん一人であの猿へ勝てるのだろうか。奴は群れを統べる親分なんですよ」

犬「頭は弱いが、出鱈目に力を振るえばきっと恐ろしい事だろう。煽りに煽って激昂させたのは逆効果だったのでは…」

桃太郎「まぁ、黙って見ておけ。……さぁ、エテ公。準備はいいかな?小便は済ませてきたか?」

猿「おばぁあああああああああ!!まだオラを舐めて!この人間絶対ヒーヒー言わすど!」

桃太郎「それぐらい何度でも言ってやるよ。ヒーヒー!お猿長怖いよー!」

猿「あ、ぐ、げ、ぎぎぎ……とっとと始めるどッ!キィィィーーー!」

桃太郎「ああ、そうだな。あ、あー、痛てて……腰がー……」

猿「あぁ!?」

桃太郎「いやいや、爺さんに着させられた鎧が中々どうして重たくてな。悪いが脱いでも良いだろうか」

猿「……さっさとするど!一体いつまでオラを待たせやがる!じきに日が暮れちまうど!」

桃太郎「分かっているよ。……いやー、にしても重かったぞ。こんな非力な俺がお前に決闘を挑んだのは間違いだったかね」

犬「何ですって、桃太郎さん!?」

猿「へ、へへへ、今さら逃げ腰になったってもう遅いわ!!」

桃太郎「参ったな、こりゃあ。全部こんな鎧を持たせた爺さんが悪い。俺が非力な事を知っているくせに、あんまりじゃないか」

犬「桃太郎さんは村一番の力持ちとお話したではありませんか!」

猿「ヒヒ…お、お前が村一番の力持ちだって?バカ言っちゃなんねぇ、その有り様でかぃ!?」

勇者「村の連中が過大評価していたのだろうな。いや、にしても重たい鎧だ。村一番の俺でも一日着ている事ができないとは」

勇者「ほら、見ろ。もう腕もヘトヘトで持ち上げる事もままならん。おい、猿よ、お前はどうだ?俺でも堪える鎧を持ち上げられるか?」

猿「そんなチャチな鎧なんぞ楽勝だど!貸してみろ!……ほぅーれ、どうだ!やはり楽々持ち上げられるわ!容易い容易い!」

勇者「へー、見事なもんだ。だがそれだけで大口叩かれてもなぁ。お前は日本で一番の強者なんだろう?」

猿「その通りよ!オラは日本最強だどや!オラの力で持ち上げられんモンはない!」

勇者「そうかそうか……じゃあ、あそこに見える地蔵も大丈夫なのだろうなぁ」

猿「地蔵か?待っていろ……そぉーら!地蔵も持ち上げられたど!はっはー!」

勇者「やるなぁ。だが地蔵ていど俺でもその気になれば持つ事はできるぞ。それを聞いてどう思う、猿?」

猿「まだ認めねぇだか!次は何を持ち上げればお前を納得させられる!言ってみやがれ!」

勇者「ほう、それじゃあな……この大きな岩はどうだろう?」

やっべ、桃太郎が勇者に名前変わってるじゃん

猿「岩だぁ!?何処のどいつが身の丈以上にデカい大岩を持ち上げられる!?」

桃太郎「あれ、まさかお前岩ていども持ち上げられないの?」

桃太郎「この桃太郎でさえ、その気になれば楽勝だというのに?まさか、日本最強を謳うお前が持ち上げられないと!?」

猿「な、なんだとぅ……」

桃太郎「それじゃあ俺がこの岩を持ち上げればお前を越えた事になるじゃないか。やった、こいつは良い事を知ったぞ」

猿「あああああぁぁーーー!?」

桃太郎「だってそうじゃないか。お前はこの岩を持ち上げられないんだろう?」

桃太郎「じゃあ、遠慮なく俺がこいつを楽々持って見せて、日本最強にならせていただこうかな…」

猿「ま、待つど!!……こんな岩なんぞオラなら持ち上げられるに決まってる」

猿「退け、人間!オラが先だど!」

桃太郎「ああ、どうぞお先に」

猿「見ていろよ……こ、これぐらいぃぃぃ~~~……ひ、ヒーヒー……!」

桃太郎「おやおや?ヒーヒー言ってるのはお前の方じゃないか、猿」

猿「んぎゃぁあああああああ!!黙れ黙れ!!……ぐ、ぐぬぬ……むぅぅ~~~……」

桃太郎「どうしたどうした、猿。お前の最強はこの程度か?俺が日本最強か?」

猿「い、ぎ、ぎ、ぎぃぃ~~~…こんな、こんな人間が持ち上げられる岩なんぞ、オラならすぐに!」

桃太郎「すぐに持ち上げるんだろう?無理なら俺がまず手本を見せてやらんでもないぞ?」

猿「オラが先だって言ったんだど!!手本もいらんわ!!」

桃太郎「はっはっは、意地を張らんでも良かろうになー」

猿「ヒーヒー…ヒィー…ど、どうして持ちあがらん。オラは日本最強で、力持ちだのに」

桃太郎「だから、お前は日本最強でも、俺に勝る力持ちでもないという事だよ。どーれ、そろそろ決闘を始めようか、猿」

猿「い、ぎ、ぎぃぃ!!んぐ、ぐぐぐぐ、ぐぅ~~~……ヒー、ヒー…えぇ?」

桃太郎「隙あり!」ポコーン

猿「    」

犬「ああ、桃太郎さんのたった一撃で猿が倒れてしまった。でも桃太郎、疲労した相手へ不意打ちなんて卑怯じゃないですか!」

桃太郎「何を言うか。勝手に力持ちを自慢し始めてヘトヘトに疲れ果てたのは向こうじゃないか。一番の力持ちこそが勝ちだといつ決めた?」

犬「でも桃太郎さん、あなたは猿へ力比べを挑むつもりではなかったのですか?」

桃太郎「爺さん曰く、知恵も力の内との事だ。大体、俺一人で猿を相手に真っ向からかかっていける筈がなかろう」

桃太郎「確かに猿には悪い思いをさせてしまったがな。まぁ、容易に軽口へ乗せられたこいつが阿呆だったという事さ」

猿「う、うう」

桃太郎「気がついたか、猿。どれ、傷を見てやろうじゃないか」

猿「オラは眠っていたんだか?少し頭がぼぅっとしているど…」

桃太郎「この程度ならば唾でも付けてやれば問題はないだろう。さて、猿よ。卑怯な手を使い、勝ちを取ってすまなかったな。詫びだ、このきび団子を食っておけ」

犬「ああっ、なんて羨ましい!貴重なきび団子を猿へ与えるだなんてとんでもない!」

桃太郎「貴重だからこそだよ。…さぁ、とっとと俺の手の上から取って食ってしまえ。なに、毒など入ってはいないさ」

猿「む…う、うンめぇ団子だど!!こいつはうンめぇ、日本最強だ!!オラの山で取れる柿より甘いのなんの……もっと欲しいど。お前を殺してしまえばいっぱいきび団子が手に入るはず。仲間にも一口、味あわせてやりたいど」

犬「桃太郎さん、この猿はあなたでも手に負えない!やはり道を変えて進むべきだったんだ!」

桃太郎「ふむ、だが猿。よく考えてみろよ。俺の首をここでへし折るぐらいお前ならば容易な事だろうがな、お前の仲間全員へきび団子を食わせられなくなるだろう。数百の猿へくれてやる数をあいにく俺は持ち合わせちゃいない」

猿「それじゃあ人間の村を襲って奪うまでだど!」

桃太郎「そうかそうか。だが、このきび団子を作ったのはこの桃太郎だぞ。誰が同じ物をお前たちへ食わせてやれるというんだ?」

猿「うぐぐ…」

犬「あれれ、そのきび団子を作ったのは桃太郎さんではなく、そのお婆さんでは」

桃太郎「まぁ、見ていろ、犬。……というわけでだ、猿。どうだ?このきび団子を群れの仲間へも食わせてやりたいならば、俺と共に鬼ヶ島へ行かないか」

猿「鬼ヶ島へだど?それでみんなへきび団子を食わせてやれるのか?」

桃太郎「勿論だともよ。それにな、鬼ヶ島には最近巷を騒がせる鬼がいるぞ。もし鬼を退治できればお前の日本最強にも箔がつくってもんだろう」

犬「この乱暴者で頭の悪い猿をお供にするなんて正気の沙汰じゃないですよ、桃太郎さん」

犬「汚い手を使って勝った相手です。きっと怨みのあまり、桃太郎さんの寝首を掻いてきますよ!」

桃太郎「こいつはそんな卑怯な奴じゃないだろうさ。純粋に強さだけを求める阿呆なのだからよ」

猿「阿呆は取り消せど!!…確かにお前へ負けたのは悔しい。あんなのオラは一生認めはしないど」

猿「だけど、お前なんかより鬼を倒した方がオラの強さをよく見せられるはず。そして仲間へきび団子をやれる。いやこれはまさに一石二鳥でねぇか!」

桃太郎「違いないな。よーし、そうと決まればこんな山に籠って偉ぶってる場合じゃないぞ、猿」

桃太郎「共に鬼ケ島へ向かい、鬼を退治して日本最強の名を轟かせよう!」

猿「そうだど!オラが日本最強なんだど!」

犬「段々日本語が正しく通じない猿へなってきましたね。これだから野猿は嫌だ」

猿「くかぁあああああああッ、やかましいど!チンケな犬コロのくせに!」

桃太郎「獣だがお供が二匹もいると心強いってもんじゃないか。見栄張りの犬、力自慢で阿呆の猿。こいつはしばらく笑いに困らんかね」

猿「オラをお前を楽しませる芸人扱いするんじゃねぇや!そこの犬ならまだしも」

犬「何を言うか!エテ公畜生が血統書付きの誇り高き私を下に見てくれるな!お前は山で糞でも転がして遊んでいればいいものを」

桃太郎「はっはっはっ、やっぱり愉快なお供で間違いないな。猿、お前はもっと己を知らなければいかんな」

桃太郎「そうでなければせっかくの力強さを持て余すだけだろう。ただ強さを見せつけるような力の振るい方をしていては、誰もお前を強者とは認めないぞ」

猿「どうしてだど。強けりゃ強いんだどよ、間違いないねぇ!」

桃太郎「真の強者たるは己の弱さを知り、そして弱者を守る者の事なのだ。力で弱者を捻じ伏せるだけではいかんのよ」

猿「お前が何をオラに言いたいのかさっぱりわからん」

犬「お前ではなく、桃太郎さんでしょうが。お供へついたというに、まず態度からなっていないな、こいつは」

猿「けっ、この犬なによりも腹が立つど!」

犬「こんな阿呆より桃太郎さん。なにやら霧が立ってきましたよ?山道も抜けたというのに」

桃太郎「言われてみればそうだ。霧立つ時間でも、天候でもなかったというのに、珍しい事もあるもんだ?」

犬「…おい、何を阿呆面して小便垂れてやがる、エテ公。ただでさえ間が抜けているのに酷いぞ」

猿「や、やかましいやぃ!!桃太郎、こいつはマジで嫌な感じがするんだど!!」

桃太郎「何故に?言ってみろ、猿よ」

猿「きっとこいつは妖怪の仕業だど。少し前に餌を獲りにいった雌猿がこんな事をオラに話した…」

猿「なんの前兆もなく、霧が現れ、前も後ろも分からなくなった。すると、どこからか恐ろしい妖怪の声が聞こえやがる!」

猿「妖怪は言ったらしいど、食い物置いてけぇ~、全部置いてけぇ~…お、お次は冷たい風が吹き始めて」

犬「何だい、力だけの猿が妖怪なんぞにおっかなびっくりと来たもんだ。情けなくて屁で笑っちまうね!」

猿「うるせぇやい!妖怪は本当に恐ろしいど!なんせオラの自慢の力が発揮できねぇ、そいじゃあどうしたら良いってんだ!」

犬「さてねぇ、私はお前のような阿呆な猿ではないもんで。私ならば妖怪なんて胡散臭いの一吠えで追っ払えるぞ!猿は猿らしく、奴さん向けて漏らした糞でも放り投げちゃどうだい!」

桃太郎「こらこら、いい加減お前は止さんか。しかし、鬼の前に妖怪と来たもんだ。こいつは良いウォーミングアップになるなぁ」

猿「冗談吐いてんでねぇ、桃太郎!生温い相手じゃないというに!」

桃太郎「さてな、それじゃあ霧も鬱陶しくなってきたし、試しにこっちから妖怪さんとやらを呼んでやろうか」

桃太郎「おぅーーーい!この俺、桃太郎とそのお供は逃げも隠れもしないぞ!だからお前も隠れていないで姿を見せたらどうだよ!」

猿「馬鹿かお前はよぅ!いやあああぁぁ!」

犬「へん、いつまでもウジウジ情けのない!妖怪なんぞいるわけがないでしょうに、ねぇ、桃太郎さん」

?「置いてけぇ~~~…食い物置いてけぇ~~~…あるもの全部置いてけぇ~~~…」

犬「あ、ああー!!桃太郎さん桃太郎さん!!」プリプリプリ

猿「真っ先に糞漏らしたのはお前でねぇか…」

猿「妖怪を呼びだしちまったのは桃太郎だど。責任を持ってさっさと退治しちまってくれ!」

桃太郎「だが、退治するに値するかどうか決めるのは俺だぞ。大体声だけで姿がまだ出て来ないじゃないか」

?「置いてけぇ~~~……」

桃太郎「それで食い物置いてけってのも無理があるだろうに。こいつはかなりの臆病者のようだなぁー!」

犬「素直にきび団子を置いてとっとと逃げましょうよ、桃太郎さん。このままでは私たちは妖怪に骨まで食われ、殺されてしまう」

犬「妖怪様、仏様。この猿めをお納めくださいな!猿の脳味噌は珍味とまで言われまして、それはもう満足がゆけるでしょう!」

猿「お前ら、オラを犠牲にして逃げ出すつもりでいんのかい!なんつー外道か!」

犬「猿一匹でこの場をどうにかできるならば安い物!阿呆のお前は妖怪にしゃぶられるのがお似合いよ!」

?「食い物置いてけぇぇぇ~~~……!」

犬・猿「ひぇええええ…」

桃太郎「やれやれ、これから鬼退治だってのにそのビビりようは一体何だ?たかが得体の知れん奴の声だろう?」

猿「得体が知れないから恐ろしいだど!!どうして桃太郎は怖がらないんだぃ!?」

桃太郎「これが怖いものか。そうだな……とっておきの美人でも現れたら、腰を抜かして、食い物そっちの気で逃げ出すかもしれんがよう」

美人「若者よ、食べ物を置いてゆきなさい。さもなければ、そちらへ歩み寄りますよ……」

犬・猿「ああ、美人がやって来やがった!」

桃太郎「こいつはとんでもない美人さんが現れたな。まるで夢みたいだよ、恐ろし過ぎて生唾飲んじまうなぁ」

美人「では、食べ物を置いて」

桃太郎「だがこれじゃあまだ我慢できる域だね。ほれほれ、もっと俺に近寄って来てみろよ」

美人「い、言いましたね、若者よ。良いでしょう…望み通り近寄ってやろうではありませんか…ほーれ、ほーれ…」

猿「桃太郎何を馬鹿言い出すだぁ!?自分から妖怪を近づけちまうなんて気でも違えてやがるよぅ!!」

桃太郎「いやいや、あれはただの美人だろうが。美人をわざわざ自分から遠ざける方がおかしいと俺は思うね」

美人「……これでどうです。あなたが恐ろしいとした美人ですよ。さぁ、震えあがっておしまいなさい」

桃太郎「ううーん、まだ我慢できるぞ。そうだ、妖怪さん。俺は美人の裸が恐ろしい!裸で迫られれば耐えられんなー!」

美人「は、裸ですか…裸になれば良いのですね……うっ」

桃太郎「どうした?妖怪が人間相手に裸見せるのを躊躇うのか?さぁさ、とっとと着物を脱いでくれ。こっちの覚悟は決まっているぞ」

美人「こ、この助兵衛!!変態侍!!」

桃太郎「おや、恐ろしいどころか可愛らしい妖怪じゃないかさ!ある意味で堪らねぇや!」

美人「ひぃ…!?」

桃太郎「さぁ、お前たちも遠慮しないで自分が恐ろしいと思うものを親切な妖怪さんへ教えてやれ」

犬「ああ、それならば私は愛らしいヨークシャテリアが来れば恐ろしくて困ってしまいますね」

猿「お、オラは腹一杯仲間を満たせられるきび団子がいい!いや、怖ぇと思うど!きび団子おっかねー!」

美人「一度に三つは無理です!!体は一つしかないのですから!!」

勇者「そこを何とかしてくれよ~。……ほれ、猿。この妖怪はお前の馬鹿力でも懲らしめられそうだぞ」

猿「かもなぁ…へへへ」

美人「い、いやぁー!!近寄らないでぇー!!」

勇者「そっちが逆に俺たちを怖がってちゃお話にならんだろうよ。お前が恐ろしい物は何だ?俺が喜んでくれてやるぞ?」

美人「あわわわ…ごめんなさい、ごめんなさい、食べ物なんていらないので許してください…!」

勇者「ほう、食い物がお前さんには恐ろしいってか。ならば、俺のきび団子をくれてやろうじゃないか」

美人「えぇ…?」

だからどうして勇者になるかなぁ

桃太郎「このきび団子はな、あまりの美味さに頬っぺたがポロリと落っこちちまう恐ろしい食い物さ」

桃太郎「今俺たちの手元にはこれぐらいしかお前にやる物はない。どうした?要らないなら隠しちまうぞ?」

美人「そ、そんな!とんでもありません!そのきび団子はなんて恐ろしいのでしょう…恐ろし過ぎて勝手に手が伸びてしまう…」

猿「桃太郎、妖怪にやるなんて勿体なさすぎるど!そんなのにくれちまうなら、オラに寄越せ!」

桃太郎「確かに妖怪へくれてやる事はないが、腹を空かせてやせ細ったキジなら構わんだろう」

猿「キジだぁ~~~?どこにキジなんているど?……あぁ」

キジ「美味しい、美味しいよぉ!こんな恐ろしい食べ物が頂けた自分も恐ろしい!」

犬「ははぁ、こいつは驚いた。美人がただのキジに変身しましたよ、桃太郎さん!」

桃太郎「この分なら犬が人間へ姿をいつ変えたとしても滅多に驚きそうにないかね」

猿「まさかこのキジがオラたちを脅して食い物奪おうとしてたってのかぃ?妖怪じゃなくて?」

桃太郎「以前、俺もキツネどもに馬鹿されたときがあってだな。そいつはもう驚いたよ。だが、その経験をまさかこんな所で生かせるとはだな」

キジ「桃太郎さん、騙してごめんなさい。私は群れから離れてしまったキジです。翼も未熟に育ってしまった私には餌を獲る方法がこれしかなかったのです…」

犬「それで猿どもを妖術で脅え上がらせて、食べ物を奪っていたという事か。何だい、正体が分かってしまえば大したこともないですね」

猿「マジでお前は見栄張るのが仕事だどな」

猿「それにしても他人の食い物を横取りとは犬より酷いゲスがいたもんだど!おい、今までオラの群れから奪った飯そっくり全部揃えて返しやがれ!」

キジ「ご、ごめんなさい!もう全て食べてしまった後です!返せません!」

桃太郎「まぁまぁ、ここは男を見せてやろう、猿。このキジも生きる為に必死になっていたんだろうさ」

猿「そんならオラたちだって同じだ!何が妖術だど!糞食らえってんだ!」

犬「私もあまり言いたくはないですけれど、この阿呆と同意見です。自分の食べ物ぐらい自分で獲るのが当たり前でしょう」

犬「それを妖怪のふりして強奪とはいい迷惑だ!」

キジ「ごめんなさい、ごめんなさい!何でもしますから、どうか鍋に煮ることだけはお許しを…」

桃太郎「それじゃあな、キジよ。俺がお前を飼ってやろうじゃないか。家に置けば縁起物の代わりになると爺さんたちも喜ぶ」

犬「こんな薄汚い鳥肉を飼うなんてどうかしちゃってますよ、桃太郎さん。ああ、飼うのならば私の方が良い!きっとお爺さんたちを骨抜きにしてさしあげますとも!」

桃太郎「ただでさえ肉が少ない老体にとんでもない事を抜かしてくれるな、犬」

桃太郎「いいじゃないか。妖術を操るキジだなんて、いくらでも役に立てるぞ。そいつで飯も腹一杯食わせてやれるかもしれない」

キジ「本当によろしいのですか、桃太郎さん。私は罪深いキジなのですよ」

桃太郎「そうだな。ならばこれから俺の鬼退治のお供となってもらおうかね。下手を打てば鬼にキジ鍋に変えられてしまう危険な挑戦だ」

桃太郎「こいつでお前の罪が消えるわけでもないが、皆を脅かす鬼を退治できれば、多少の償いにはなれないだろうか?」

キジ「え、ええ!それで皆さんが助かるというならば、ささやかながら、このキジがお力となりましょう!」

キジ「桃太郎さん、あなたは命の恩人です。一生忠義を尽くすとお約束しましょう」

犬「何ですかこのキジは!キジのくせに生意気で鬱陶しいことこの上ないですよ、桃太郎さん」

犬「しっし、羽根をこっちに飛ばすな。菌がうつってしますじゃないか!」

猿「その通りだど!オラはお前を許さんからな、気抜いたらすぐにでも尻へ噛みついてやらぁ!」

キジ「ああ、なんて乱暴な獣たちでしょうか…ごめんなさい、ごめんなさい!私は皆さんのずぅーっと後ろから着いて行きます…」

桃太郎「いいや、その必要は無いぞ。キジよ、お前には自信が無さ過ぎるな。確かにお前は罪を犯したがな、だからと言っていつまでも陰気になる事はないんだ」

桃太郎「お前は、いやお前たちは全員やればできる奴らなんだぞ。この桃太郎が保障しようじゃないか」

キジ「桃太郎さんはなんてお優しい心に溢れているのでしょう。ああ、桃太郎さんの爪の垢を煎じて飲ませて欲しいほどです」

犬「きったねぇ事言うもんじゃないよ、キジめ。良い子ぶって桃太郎さんに気に入られようとしやがって」

キジ「ごめんなさい!失言でした、もう余計な口を滑らせません。ごめんなさい、犬さん…」

猿「ところで、桃太郎。海の向こうでプカプカ浮いてやがるのが、例の鬼ヶ島だってかぃ?」

桃太郎「ああ、その通りだ。あれこそが俺たちが目指していた鬼ヶ島よ。遂に目と鼻の先まで来てしまったようだなぁ」

桃太郎「うーむ、しかしあそこへ渡るには船が要りそうだ。あいにくこの辺りに使えそうな物もないし、近くの村まで借りに行くしかないかね?」

キジ「桃太郎さん、桃太郎さん。ここで私のお力がさっそく薬に立てられそうです。私が船となり、皆さんを鬼ヶ島へ運びましょう!」

犬・猿(飛べよ)

桃太郎「ほほぉ、こいつは凄い。船にまで姿を変えられるとは、キジの妖術は大したもんだ」

船(キジ)「ささ、皆さん。私の背中へどうぞお乗りくださいな。オンボロ船で申し訳ありませんが…」

犬「桃太郎さん、この船ではきっと鬼ヶ島へ辿り着く前に沈んでしまいます。どこからどう見ても泥舟です」

猿「いやいや、乗り込んだ瞬間バクリとやられるに違いねぇだ!」

桃太郎「もう少しキジを信用してやっても罰は当たらないぞ、お前たち。さっきから聞いていればあんまり過ぎるじゃないか?」

猿「オラにはこの鳥を信用できねぇ理由があるだべよ!大体、ヘンテコな妖怪もどきなんぞ鬼退治に必要ない!オラだけで十分だどや!」

犬「私はこいつが気に食わないのです、桃太郎さん。新入りが妖術を使えるからと調子をこいています。私でもどうにかできるね、こんな胡散臭い術は!」

キジ「うう、ごめんなさい、ごめんなさい。本当になんと謝って良いのか。ごめんなさい!」

桃太郎「もう止さないか、お前たち。いい加減醜いぞ。いつまでもその調子でいるならば、俺は一人で鬼ヶ島へ向かってしまうからな」

猿「おい、桃太郎。ここまで来てそいつはあり得ん話だど!」

犬「そうですよ、桃太郎さん。私だけでも連れて行くべきです。こんな阿呆どもは置いてさっさと行きましょう!」

キジ「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!」

桃太郎「ええい、黙れ黙れ!3匹とも何故自分たちが見苦しいことをやっている事に気付かないのか!」

桃太郎「今のままではお前たちは鬼退治に足手まといとなるだろう。悪いが、お前たちはここで俺の帰りをじっと待っていろ。きっと鬼を懲らしめてくるぞ。それまで頭を冷やしていろ、犬、猿、キジよ…」

犬「ああ、桃太郎さん、鬼ヶ島までこの海を泳いで渡るのは無茶ですよ!桃太郎さんや!」

犬「なんてこったい、桃太郎さんは一人で鬼退治へ向かってしまったではないか。お前たち2匹に問題があったから、私まで巻き込まれた!」

猿「何自分だけ悪くないように言ってるだど。犬公、お前がいつまでも見苦しい意地を張りたがるから、桃太郎が愛想尽かしただ!」

キジ「あの、ごめんなさい。私は猿さんにも問題があると思います…しゃしゃり出てごめんなさい。猿さんも犬さんに負けじと自分勝手だったのではないかと…ああ、本当に私なんかが、ごめんなさい!」

犬「キジめ、お前もいつまでもメソメソとしているのは鬱陶しいぞ。これでは私たちもやるせない気持ちになり、調子を狂わせてしまうではないか!」

キジ「ああ、そんな、気付きませんでした。ごめんなさい、2匹とも」

犬「分かっていての嫌がらせではないだろうな、しつこいたらありゃしない!」

猿「……ふむぅ」

犬「どうした、エテ公。考え事とは、阿呆のお前にしては珍しいじゃないか」

猿「喧しいだど!!…だがな、確かにいまの犬がオラに言った言葉は正しい。オラは頭を今まで一切使わず、力でどうにかしてきたど」

猿「そんなオラが思ったんだど。桃太郎はオラへ、もっと己を知れと話してくれた。最初はいけ好かない奴だったが、奴は賢いんだどな、と」

猿「オラは桃太郎へ出会わなければ、ただのお山の大将で一生を終えていたに違いねぇ。山以外を知らずに、オラの世界に閉じ籠もっていただどよ」

猿「お前たちのような他の獣とこうして会話する事なく、自分がただ一番なのだと、そんな虚しいオラでいたんだろうよ。自己中心なオラでよ」

キジ「ああ、私も桃太郎さんと出会わなければ、今までのような卑怯下劣な私のままでいたに違いないでしょうね」

キジ「私は桃太郎さんから食べ物を奪おうとばかり考えていたのに、あろう事か、桃太郎さんはこんな私へきび団子と救いの手を伸ばしてくれました」

キジ「そして、罪深い私へ向けて、いつまでも陰気になる必要はないとまでお話してくれたのです。あの言葉に私はどれだけ助けられたでしょうか」

キジ「あのまま卑怯な生活をしていたら、きっと、あなたたちのような他の獣と腹を割って会話する事もなかったでしょう。私は臆病で暗いキジで一生を終えていたかもしれない」

猿「だべな。犬も同じだろう?お前も桃太郎と出会わなければ、きっとオラたちと同じ筈だどさ」

犬「私だけは断じて違うぞ。私はお前たちと比べ、由緒正しい血統書付きのチワワなんだ。野獣と一緒にしてくれるな!」

犬「…しかし、私は人間から捨てられた身。お前たちと異なる部分は多いわけでもなかろうな」

犬「桃太郎さんはこの私をお前たち同様に救ってくださった。ただの悪犬をだ。あの人はそれを信じてお供につけやがった」

犬「あろう事か、桃太郎さんは、虚勢だけで意地っ張りな私を頼ると言った。この可愛らしいだけが取り柄のチワワをどう頼れというんだろうか?」

犬「大した人間だよ、桃太郎さんは。だから私が唯一認めてやったのさ、憎き人間の中にも、ああ、こんなにも温かい奴がいたんだな、と」

桃太郎「やれやれ、やっとこさ鬼ヶ島へ到着だ。お供たちには、ここまで来て申し訳ない事をしてしまっただろうか。大丈夫かなぁ」

桃太郎「だけども、今は奴らを心配している場合ではなさそうだよ…」

鬼「お前は人間オニ!おいの島へ人間を招いた覚えは全然ないオニよ!」

桃太郎「そうかい。だがな、こちとらもう回れ右して帰るつもりはないんでね。やいやい、鬼よ!聞いて驚け!」

桃太郎「俺の名は桃太郎。桃から生まれた桃太郎さ。鬼、お前はちっとばかし、人間たちへちょっかいを出し過ぎたぞ」

桃太郎「盗んだお宝や食い物を返してもらおうかね」

鬼「嫌オニ!!それだけは絶対嫌なのオニ!!お前、いきなりおいの家に上がり込んで来て失礼極まりないオニよ!!」

桃太郎「安心しろ、土産は持ってきているぞ。どぅーれ、こいつで茶でも一杯飲み交わそうじゃないか。団子は嫌いか?」

鬼「団子は好きオニ!!…だけど、お前は嫌いオニ。人間はみんな大嫌いオニ」

鬼「痛い目見たくなきゃ、とっとときび団子だけ置いて帰れオニ」

桃太郎「ん?そうさなぁ、そこまで嫌がられては帰らんでもないが、その前にきび団子を一つ、摘まんではくれないか」

桃太郎「せっかくここまで苦労して運んできた土産だ。どうせなら美味い不味いを聞いてみたいじゃないか。それについても問題はあるのだろうか、鬼さんよ」

鬼「むぅ…仕方がないオニ。きび団子を食ってやるぐらいならお安いご用だオニ。ただし、満足したらさっさと帰れオニよ!」

桃太郎「ああ、構わんぞ。ほら、団子が早くお前の口へ跳び込みたいとぷりぷりしてる。パクッと一気にいっちまってくれ!」

鬼「うむむ…では一つ頂くオニ…」

桃太郎「どうだろうか、美味いか?俺の婆さんが作ったきび団子は?」

鬼「滅茶苦茶美味しいオニよ……」

鬼「こ、この団子は何だオニ?今までに味わった事がない美味さオニ。もっと寄越せオニ」

桃太郎「ああ、くれてやるともさ。好きなだけ食べてくれよ。婆さん特製の鬼殺し団子を」

鬼「美味い美味い…もっと、もっと……おい、いまお前なんて言ったオニ」

桃太郎「もう一度言ってやろうか、鬼よ。婆さん特製の鬼殺し団子だ。美味いんだろう?よく噛んで味わうと良いぞ!」

鬼「ううっ、鬼殺しと言ったオニ!?まさかこの団子はおいを殺す為の!?」

桃太郎「そうだとも。俺はお前を退治しにこの島までやって来た。最初から話合いでどうこうするつもりもなかったさ」

桃太郎「紹介し直させてもらうかね。俺は桃太郎。鬼よ、お前を成敗しにきたぞ!」

鬼「汚いオニ!!こんなの卑怯な手段だオニ!!食べ物を粗末に扱うなんて最低オニよ!!」

桃太郎「すまん。こうでもしなければ俺はお前に勝てそうになかったんでよ。さて、鬼。お前の命もあと僅かとなったわけだ」

鬼「オニィ!?」

桃太郎「盛った毒はかなり効くだろうなぁ。恐らくあと3分もせずにお前は地面をのたうち回り、泡を吹いて、醜い死を遂げるだろう!」

桃太郎「ああ、その光景を俺は見届けられるだろうか。あまりの恐怖に小便でもちびらなければ良いのだが…!」

鬼「い、嫌オニ!!死ぬのは勘弁して欲しいオニ!!」

桃太郎「そう今さら言われても困ってしまうぞ!疑わずに口へ入れたのはお前自身なのだからなぁー!」

桃太郎「いやぁ、こいつは参ったなぁ、鬼よ。今もお前の体は団子の毒に侵されているんじゃないか?すぐに全身へ回って苦しみ始めるぞ?」

鬼「嫌だオニぃいいいいい!!団子一つでおいの人生が幕を閉じてしまうなんて許せんオニぃいいいいい!!」

桃太郎「さぁ、大変だ大変だ!どうしたもんだか!はっはっは!」

鬼「うう、ううう~~~…死にたくないオニよ…嫌オニ…」

桃太郎「鬼よ、こいつはな、お前が全て招いてしまった結果なんだよ。お前があちらこちらへ暴れずに、大人しく、俺たちと共存しようとしてくれたらこんな酷い目に合わずに済んだのだ」

桃太郎「もしお前が道を踏み間違えず、正しい方向へ歩んでいれば良かったと一瞬でもいま考え直したのならば、こいつをくれてやらんでもないぞ」

鬼「な、何だそれオニ!!」

桃太郎「解毒薬だよ。飲めばお前の体内へ入った毒を中和してくれる。ようは死なずに済むという事だな」

桃太郎「死ぬ気があるのならば、この薬は海へ流す。だがさっきも話したように反省し、真っ当な生き方をするならばくれてやろう」

桃太郎「さぁ、どうす……」

鬼「決まってるオニよ。お前の首を捻じ切ってそいつをありがたく頂戴させてもらうオニ」

桃太郎「そ、そう来たか。そりゃそうだわな。そっちの方が手っ取り早いものな…」

鬼「おいを舐めたお前は絶対にぶっ殺すオニ!」ゴツン

桃太郎「あうっ」

桃太郎「うう、俺とした事が、最後の最後で爪が甘かったようだな…」

鬼「おい、これが解毒薬オニ?ただの海水じゃないかオニ。本物はどこに隠しているオニ、全部寄越せオニ」

桃太郎「いいや、薬なんて初めから持ってないね。お前は騙されていたんだよ!」

桃太郎「誰がお前を生かしておくものか。そのまま毒が回ってくたばっちまえ。そうだ、先に海へ飛び込んで溺れ死んだ方が楽に逝けるかも知れないぞ!」

鬼「…お前、なんかおかしいオニ。なぜか毒で死なせたくはないと言っているように聞こえるオニ」

鬼「まさかとは思うけれど、最初からあの団子の中に毒なんか盛ってなかったんじゃないかオニ?」

桃太郎「さて、どうだろうかな」

鬼「そういえば時間もだいぶ経ったのに全然痛くも痒くもないオニよ。やっぱりお前、おいへ嘘言って騙していたんだオニね!?」

桃太郎「だからそれは最後にならなきゃ……痛でで!腕が千切れてしまう!よ、止せ!」

鬼「正直に言えオニィー!嘘吐きは泥棒の始まりなんだオニ!」

桃太郎「泥棒なぁ。弱者から無理矢理銭や食い物を奪い取っていく屑と、どっちがましなのか……痛い痛い痛い!」

鬼「このまま腕ひっこ抜いたら、次は足も抜いて、お前を海へドボンと落としてやるオニ。でも次またおいを怒らせる事を話せば、舌を先に抜くオニからね!?」

桃太郎(これは万事休すって感じなのか。ああ、今までが上手く行き過ぎていたんだ。トンチまがいで鬼を騙しきれる筈がなかった)

桃太郎「爺さん、婆さん、申し訳ない!俺はどうも生きて帰られないらしい!親不孝な桃太郎を許してくれよぉー!」

鬼「お前いい加減うるさいオニ!腕を引っこ抜く…………むぅ、向こうに何か見えるオニ?」

鬼「…おい好みの美人さんが微笑んでいるオニ」

桃太郎(あれは、まさかキジのやつが妖術で化けたか。しかし何故鬼ヶ島にいるんだ。待っていてくれと言ったじゃないか)

美人「鬼さんこちら、手のなる方へ。あなたのために用意した美味しいお肉がこちらでお待ちですよ」

鬼「肉、確かに肉の良い匂いがするオニ。おいのための肉オニか、こいつは嬉しい話だオニ…」

美人「さぁさ、蓋を開いてどうぞお召し上がりくださいまし」

鬼「むふふ、それじゃあ遠慮なく頂かせてもらうオニ!」パカ

犬「私を食べても腹は膨れんぞ…」

鬼「何だこれオニ……肉は肉だけれども、小さいし、骨っぽそうオニ。本当にこれは食えるのかオニ?とても不味そうオニよ?」

犬「食えるわけがないだろう。お前の目は節穴か。大体何だね、いきなり私を見て散々ケチをつけてくれたりして」

犬「お前が鬼とかいう間抜けかい。へへへ、地獄のチワワと呼ばれた私にとって赤子のようなものだろうよ!」

鬼「こいつかなり腹が立つオニ…」

犬「お、お?逃げるのか?この私のあまりの可愛らしさに戦慄き、逃げるのか。まぁ、その気持ちは分からんでもない。なにせこの私はお前なんぞ一吠えで泡を吹かせてやれるのだからな。わんわん!」

鬼「オニぃ……?」

猿「今だこの鬼公め、オラは日本最強の猿でぇ。お前なんぞ地蔵様のように軽々と持ち上げてやるど!」グイ

鬼「お、おおおぉぉ! オニぃいいいい!?」

猿「キャッキャ、どうだ見ているか桃太郎。このオラは鬼でさえ容易に持ち上げられてしまっただど!」

鬼「離すオニ!人間に続いて今度は妙な獣どもかオニ!あの美人さんは何処オニ?あー、もう今日は厄日オニよ!」

犬「私が直々に手をかけるまでもなかったとは思わず拍子抜けしてしまったぞ。さぁ、エテ公!その哀れな赤鬼を回してしまうが良いー!」

キジ「上手い事引っ掛けてやれましたよ、桃太郎さん。私たちが力を合わせれば鬼にも負けません」

桃太郎「ああ、まるでいつものお前たちではないみたいじゃないか。見違えてしまったぞ」

キジ「私も犬さんも猿さんも、桃太郎さんの言葉で目が覚めたのです。自分たちの欠点を認め、利点を正しく使う、反省した私たちは誰にも負けませんよ。もう小悪党だとか、乱暴者だとか、卑怯者だなんて言わせません」

キジ「全て、あなたと出会ったことで私たちは生まれ変わる事ができたのです、桃太郎さん」

桃太郎「よせやい。俺は何もしちゃあいないよ。勝手に変化したのはお前たちだろう」

キジ「うふふふ、嬉しいです。ありがとう、ありがとう、桃太郎さん。本当にありがとう」

犬「ああ、猿が潰されてしまいました!この体格さの相手に暴力を振るうとは見っとも無いと思わないのか、鬼!」

鬼「黙れオニ!!良い気になって、もう怒ったオニ。お前ら全員まとめて今晩のおかず行きにしてやるオニ」

キジ「ああ、何と恐ろしい鬼でしょう。桃太郎さん、どうしましょうか…」

桃太郎「はっはっはっ、最後は結局俺に任せられてしまうのか。…おぅーい、鬼よ。ここで一つ俺と腰を据えて話合おうという気はないだろうか?」

鬼「もう何言われても聞く耳持たないオニ。聞こえないオニよ!」

桃太郎「ははぁ、そうかそうか。それならば、俺が旅の途中、妖怪を退治した時に見つけた金銀財宝の隠し場所なんかも聞こえないのだろうなぁ」

鬼「全然聞こえないオニ。おいはそんな物全く興味がないオニね!」

桃太郎「お前は嘘をつけない素直な鬼だなぁ。いいぞ。お前に財宝の在り処を教えてやろうじゃないか」

鬼「……絶対嘘だオニ。お前の言う事は全部信用できないオニ」

桃太郎「それじゃあ仕方がない。俺が直々に案内しようじゃないか、着いて来な。財宝はこの海に浮かぶ島の中へ隠されているんだ」

鬼「ふーむ、それなら船を使うオニ。ただし、お前は乗せてやらんオニ。行きと同じように泳ぐが良いオニよ」

桃太郎「いやいや、俺には家来たちが乗ってきた立派な船があるんでね。そっちに乗らせてもらうとしようじゃないか」

鬼「まさかそのボロっちい船がそれオニ?ガハハ、こいつは笑ってしまうオニ。そんな船すぐに穴が空いて転覆するオニね!」

桃太郎「人の船にケチを付けちゃあよくないな。船を笑うものは船に泣くってな。さ、行こうか鬼大将」

鬼「さっさと案内しろオニ。もし出鱈目だと分かったら村の人間みんな食べちまうオニよ」

桃太郎「ああ、今度ばかりは嘘じゃない。財宝は確かにあるよ」

鬼「…まだ財宝の眠る島には着かないオニか。おいはもう我慢できないオニ!」

桃太郎「まぁまぁ、そう慌てるなよ。財宝に足なんて生えちゃいないんだから、逃げ出したりはしないさ」

鬼「そんなの分からないオニ!この世の全ての金銀財宝は全部おいの物オニ。誰かに取られたら悔しいオニ」

桃太郎「へぇー、鬼さんは欲深でいらっしゃるね。そんな奴には、銭の神様がお叱りに現れてしまうかもしれんなぁ」

鬼「ヘンテコな名前の神様オニ。知らんオニよ、そんな神様。大体、財宝を自分の物にして何が悪いオニ」

桃太郎「やぁ、いけない鬼さんだ。世の中の物は全ての生き物へ平等に行き渡るってのが摂理さ。銭だろうが、財宝もそうだよ?」

桃太郎「おや…何処からか聞こえてこないかぃ、鬼さん。金の神様の声が。ゆっくり、ゆっくりと、こっちに近づいてきているような…」

鬼「聞こえないオニ。なーんにも聞こえてなんかこないオニよ。きっと波の音だオニ」

「財宝を返せぇ~…お前の財宝を村人たちへ返せぇ~…」

鬼「あー!!何にも聞こえてなかったオニよ!ああー!!」

桃太郎「ややっ、霧が出てきやがったぞ。これはいよいよ金の神様がお怒りになってしまったのだろうかね」

鬼「ち、違うオニ!おいは全然悪くないオニ!金の神様なんて出鱈目だオニ!」

桃太郎「本当にいたとしたらどうする?事実ならさ、鬼さんは神様へ酷いことを言っている、というになるんだろうなぁ」

鬼「ほ、本当にいるオニ?金の神様がいるオニ?いま、おいの近くに降りてきたオニ!?」

桃太郎「さてなぁー……どうなんだろう、こいつは恐ろしくなってきたぞう」

「財宝を全部返せぇ~~~……」

鬼「お、オニぃ…!」

桃太郎「やや、真っ赤な顔が青く染まってきているじゃないか。鬼さんよぅ、ここは言われた通り財宝を村人たちへ返してやるべきじゃないかね?」

「財宝を村人たちへ返せぇ~~~……」

鬼「嫌オニ嫌オニ!!絶対に嫌オニよ!!財宝は全部おいのもんだオニ!!」

桃太郎「そいつは困ったね、金の神様はしつこいぞ。夜中に鬼さんの枕元へ立って、ほら、あんな感じに」

「返せぇ~~~……」

鬼「嫌だったら嫌オニ!!たとえ金の神様が言ってもおいは絶対に財宝を返したくないオニ!」

桃太郎「それじゃあもう天罰が下されるしかないわな。お前は最後のチャンスを棒に振っちまったよ」

鬼「オニ? お、オニィいいいいいい!?ふ、船が、おいの船が沈んでるオニ!どうしてオニ!金の神様の天罰オニか!」

桃太郎「よし、キジよ。俺の手に掴まれ!」

キジ「ふぅ、桃太郎さん桃太郎さん。これで十分でしょうか。さすがに大きな鬼を背へ乗せているのは大変でしたよ」

鬼「どういう事オニ!おいの船が、キジになって消えてしまったオニ!お、おぼれる…」

桃太郎「大間抜けの鬼め、お前の船はいま俺が乗っている方よ。お前は自分の船をさっきまで貶していたんだぞ」

桃太郎「それ見ろ、業突張りなお前は自分の所有物でさえ簡単に見分けがつけられん。だから泣かされると言ってやったんだよ」

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