エレン「ミカサは家族」(97)

「エレンとミカサって恋人みたいだよね」

…聞き飽きた言葉だ。
その度に否定するのもめんどくさい。

「ミカサは家族。それ以上でもそれ以下でもない。」

「えー」と不満そうな声を上げる。
男と女が一緒にいたらくっついていないと気がすまないのか。
なんとなく隣にいるミカサを見ると微妙な顔をしている。
嬉しそうな、困ったような、安心したような。

「ほら、もう行くぞ」
ミカサの手を引いて歩きだした。


初めてで緊張してます。

「おはよう」
食堂に着くとアルミンが座っていた。
挨拶を交わすと俺とミカサも席に座る。
アルミンの正面に俺。その隣にミカサ。

「エレン、パン屑がついてる」

食事中にも世話を焼こうとするミカサは正直鬱陶しい。
おまえは俺の親か。
…親と間違われるより恋人に間違われる方がいいんだろうか…
と、そんな事を考えてみた。



「ここ座ってもいい?」

声をかけてきたのはクリスタだった。
その後ろにはユミル。
この二人は四六時中一緒にいる。
こいつらも家族的な何かで俺とミカサと似ている。…と思っている。

「空いてるからいいよ。珍しいね」
クリスタに話しかけるアルミンはほんのりと頬を染めていた。

クリスタ・レンズは所謂高嶺の花と言うやつだ。
彼女の愛らしい容姿、この荒んだ生活に潤いを与える気遣い、元気をくれる笑顔が男子訓練兵に好かれているらしい。
互いに牽制しあい、誰も告白しない(できない)とかなんとか。
俺はこの手の話題に興味はないがたまに耳に入ってくるのを聞いている。
目の前にいる親友もどうやら目の前の少女にほのかな行為を寄せる一人らしい。

「今日は席がここしか空いてなくてな」
そう言ってアルミンの隣に座ったのはユミル。


―クリスタに行為を寄せている者が愛の告白をできない理由がもう一つある。
それがこの女だ。
この女はクリスタの番犬みたいなもの。
クリスタに近づくものに敵意を向け、成績上位にその名前はないもののその実力は凄まじい。

そんな敵意を向けられたアルミンは少しだけ怯んでいた。

「そういえばミカサ、おまえ○○に告白されたんだって?」

何気ない会話の中で突然出てきた爆弾発言。

「…そんな事もあった。なぜ知ってるの?」

「恋愛大好き女子の間で軽く噂になってたからな。」

「そう。」
ミカサは特に興味なさげだ。

「いや~エレンがいるのに告白とか勇気あるよな。玉砕するのは最初からわかってたのに。ジャンも見習えばいいのになー!」
ケラケラと笑うユミル。

「ちょっと、ユミル!」とクリスタはユミルの脇腹に肘をいれた。

「ミカサ、なんで告白されたのを黙ってたんだよ」
食堂を出て寮に戻る途中ミカサを呼びとめた。

「別に話す事はないと思ったから」

「…家族だろ。なんでも話せよ」

「家族だからと言って話す必要のない事もある。…話せない事もある…」
ミカサはそっとマフラーに顔を埋めた。

「…今回はもういいから次告白とかされたらちゃんと俺に教えろよ!」
自分でも驚くほど不機嫌な声だった。

「ああいうのはよくないと思うよ。」
そう言ってきたのはアルミンだった。

「ミカサも女の子なんだから男のエレンに言いづらい事や秘密にしておきたい事たくさんあると思う」

「…家族の事知っておくのは当然だろ?」

「…そうだね。」
諦めた声でアルミンは言った。
…なんなんだよ。

ミカサが告白され、誰かのモノになる。
そんな事を考えた事はなかった。

ミカサの容姿は…多分美人なんだろうと思う。
気遣いは…申し訳程度にはあるだろうが他人がそれに気づくかは微妙だ。
愛想は……俺やアルミン、親しい奴にはいいんだろうが…基本的には良くない。

つまり、俺からみたミカサはクリスタの正反対だった。

クリスタが告白されないのにミカサが誰かに告白される事なんてあるわけない。
そう思っていたのだ。



―ミカサも女の子なんだから男のエレンに言いづらい事や秘密にしておきたい事たくさんあると思う―

家族なんだからなんでも話せよ!
なんだか腹が立ってきた。

見切り発車だから終着点決めてない…

いつもの厳しい訓練を終え、座り込んで水を飲んでいた。
「エレン!」
声をかけてきたのはジャンだ。

「ミカサに話しかけてる○○ってなんだよ」

…それは昨日聞いた名だった。

「まさか…あいつら、付き合ってるとかないよな?」
こっそり耳打ちをされた。

「エレン、○○にもう一度交際を申し込まれた。」
ミカサは昨日言った事を律儀に守っていた。

「ふーん…へ、返事はどうしたんだ?」
少しだけ声が上ずった気がした。

「もちろん断った。」

「そ、そうかー、ジャンが言ってたけど○○は顔も性格もいいらしいじゃないか。…もったいない事したんじゃないか?」
ちらりとミカサの顔を見たがマフラーでよく見えなかった。

「…エレンは、私に恋人が出来たら祝うの?」

「え?」

「仮にエレンに恋人ができたら…祝えないかもしれない……」
消え入りそうな声で言う。

「…俺はミカサに恋人が出来たら…祝うぞ」

「…………」

「ミカサより強くて頭がよくて顔がいい奴なら祝う」

二人の会話にこっそり聞き耳を立ててたアルミンはそっと溜息をついた。

―そんなのそう簡単にいないと思うよ…
僕の親友はミカサに恋人ができるのを祝う気が無いらしい。
自覚してるのかしていないのかはわからないけれど。

とりあえず今日はここまで。
この先何も考えてないけど見てくれる人がいるなら頑張る


―――

「クリスタ知らない?」
ユミルが声をかけてきた。

「おまえ、いつもクリスタを探してるんだな」

「当たり前だろ。片時も離れたくないね」
恥ずかしげもなく言う。

「おまえらは家族みたいなもんなのか?」

「なわけないだろ、私とクリスタは恋人さ。ラヴァーだよ。」

「女同士なのにか?」

「愛に性別は関係ない。逆になんでおまえとミカサは男と女と言う
恵まれた環境のくせに恋人じゃないんだよ」
目を細めじっと見つめられる。

最初はきっと男と女だったのだろう。

でも…そうなったから。
俺とミカサは家族。
だから――


「そもそも恋人と家族の違いがわからねぇ」

「はぁ?」
ユミルはマジではぁ?って顔をしている。


「一緒にいたい、守りたい、ずっとそばにいる、なんでも話してほしい。…家族も恋人も似たようなものじゃないのか?」
…若干ユミルが引いた気がした。

「うーん、まぁーあれだ。ミカサにキスしたいとか色々アレコレしたいと思った事はないのか?」

俺だって年頃の男の子ってやつだ。全く想像しなかった事がないとは言わない。
でもミカサに対してそんな事を想像しちゃだめだと心に誓っていた。
だって家族に対してそんな劣情を持つなんておかしい。
俺はミカサの家族でなければいけない。
…どうしてそう思うようになったんだっけ?


「お~い」
はっと気がつくと馬鹿にするような顔で覗きこまれていた。
どうやらずっと黙りこんで考えていたらしい。

「エレン!」
突然俺を呼ぶ声が響いた
声の主はミカサだった。
俺とユミルの間に割って入る。

ミカサは不機嫌そうな顔をしていた。
ユミルはこらえるように笑っていた。

「アルミンが探してた。行こう」
手を掴まれ強引に引かれる。

「ちょ…おい!」
ユミルがニヤニヤと俺たちを見送った。


過酷な訓練では男も女も当然個人差はあるものの手がごつくなる。
ミカサは俺より強くて力が強い。
手も俺なんかよりずっと大きくてごついんだろうなと想像していた。
…久しぶりに握られた手は思ってたよりと小さくて柔らかい。俺の手を引く力は相当だが…

そう思うとなんだか少し頬が熱くなった気がした。


「あ、エレン」
クリスタが声をかけてきた。
今日はよく声をかけられる日だ。

「ユミルが何か変な事言ってなかった?」
クリスタの美しい金の髪が揺れる。

「うーん…ラヴァーとか言ってたな」

「何それー!」
カァァと頬を染めた。

「愛に性別は関係ないってさ」

「うー…」
両手で頬を包むクリスタはなんというか愛らしかった。
男子訓練生に人気があるというのもわかる。

「ユミルの言う事は気にしないでね!冗談で言ってるだけだから!」
冗談に聞こえなかったんだけどな。
クリスタには言わないけど。

ぱたぱたと去っていくクリスタの後ろ姿を見つめなんとなく思う。
ミカサがもし普通に生きてればあんな感じだったのだろうか。
今のミカサを見ると想像できないが昔はナイフを握る事すら躊躇するか弱い少女だった。
俺が初めて出会った時すでにミカサの両親は殺され、笑顔は失われていた。
想像ではあるがよく笑っていたんじゃないだろうか。
クリスタのように高嶺の花となっていたんだろうか。


――

自分にあてがわれたベッドの上でごろりと転がった。
今日はいつにも増して訓練が厳しかった気がする。
隣ではアルミンも転がっていた。
…その目は虚ろだ。

「おい、××と△△付き合いはじめたらしいぜ」

「マジかよー俺××狙ってたのに…」

「おまえ△△狙いだったのか!うけるー」

話声が聞こえてくる。
どうやら同期の誰と誰が付き合う付き合わないの他愛のない話をしているようだ。
厳しい訓練の後でよくそんな余裕があるもんだ…
思わず感心してしまう。
…というか人の恋愛でキャッキャと盛り上がる同期達はまるで女子のようだ。
女子か!おまえらは女子か!
くだらない。


「そういえば×××と○○○が別れたらしいな」

「マジかよ、あんなにラブラブしてたのに…」

「私たちずっと一緒よ!とか言ってたの聞いたな。あれは恥ずかしい…」

「もう今じゃ目も合わせないらしいぜ」

「周りにいると気まずくってさ…」

「あー…」

気がつけば誰と誰が別れたと失恋話に移行したようだ。
いい加減に寝ろよ。
明日も厳しい訓練があるんだぞ。

「さっきから色々な話が聞こえるね」
さきほどまで目が虚ろだったアルミンが目を輝かせていた。

「アルミン、ああいう話好きだったのか?」

「特別好きってわけじゃないけど興味はあるよ」

嘘だ。
目がもっと聞きたい!もっと聞きたいって言ってる。
おまえも女子か!

「何か僕にとって不名誉な事考えてない?」

(エスパー……)

「大体ずっと一緒にいられるわけないだろ。別れて気まずくなったりするくらいなら最初から付き合わなければいいのに」

「恋って言うのは止められないものじゃないかな…」

誰だこいつは…
本当に小さい頃からいっしょにいる親友なんだろうか…
まるで別人に見えてくる。

「っておじいちゃんの本に書いてたよ」

…高度なギャグだったのだろう。
俺は華麗に聞き流した。
寝る。

記号が多くなったり誤字や消し忘れ多くて申し訳ない…

「隙アリ!」
ばっと掛け布団を取っ払う。
ミカサがごろんと出てきた。
さすがのミカサも反応出来なかったらしい。

「あ!」
驚いたミカサは両手でばっと顔を隠した。
目が少し赤かった。

結局泣いてたのかよ。

あの場では泣かないミカサに腹が立ったが今は罪悪感で胸がチクチクする。
…そして少し嬉しいと思ってしまった。
なんとなく見てはいけない気がしてミカサに背を向けた。

「…エレンはロマンチスト」

「別にいいだろ」
頬杖をつきながら言う。
顔は見てないがミカサが少し笑った気がした。

「おまえがどんどん遠くに行ってしまう気がしてた。…おまえは俺より強いだろ?」
ミカサは黙って俺の話を聞いている。

「初めて会った日俺はおまえを守ってやるって思ってたんだ。」
家族を失ったこの少女をこれ以上泣かせたくない。
寂しい思いをさせたくない。
守ってやりたい。
偽りない自分の気持ちだ。


「おまえがあの時ナイフを握らないままでいたら俺はおまえにあんな事言わなかったんだろうか」
答えは特に求めていない。

「でもナイフを握ったからこそミカサなんだよな」
ミカサに向けた独り言みたいなものだった。

ミカサはあの時ナイフを握り、誰より強くなった。
でも俺の心ない言葉に傷つく女の子だ。
初めから求めてたミカサはそこにいたのだ。

「俺はミカサの事好きだぞ」
ごめんの代わりにそんな言葉がでた。

「!」

ミカサの手が俺の腹の辺りで組まれている。
背中に顔を押しつけられている。

…後ろから抱き締められているようだ。

「エレン、私もエレンが好き」

涙を俺の服で拭うように顔を擦りつける。
…俺はハンカチじゃないぞ。
じわりと染みる涙が暖かい。

ミカサの好きはどういう好きなのだろうか。
俺の好きは―…家族に言うようなニュアンスだ。建前上は。


―もう今じゃ目も合わせないらしいぜ―

―周りにいると気まずくってさ…―


男女の関係は修復が効かないらしい。
一度失敗すると2度と今まで通りとはいかない。
それがこわい。
だから俺は「男女」の好き言わない。


―大体ずっと一緒にいられるわけないだろ。別れて気まずくなったりするくらいなら最初から付き合わなければいいのに―

この世で家族と言う絆は壊れないであろう。
例え俺に恋人ができても、ミカサに恋人ができてもずっと繋がっている唯一の絆。

一緒にいたい、守りたい、ずっとそばにいる、なんでも話してほしい

「ミカサ、好きだ。家族として。…恋人に求めるものと家族に求めるもの、俺にとっては変わらない。
ならば家族の方がいい。家族ならずっと一緒にいられるのだろ。」

「…なんでもいい。エレンと一緒にいたい、守りたい、ずっとそばにいたい、なんでも話してほしい」

「私も恋とかよくわからないけど」

「エレンが好きでずっと一緒にいられるのが家族なら…私もそれでいい。…それがいい」

「ので…」

「…ずっと一緒にいよう。家族として」

…違う言葉を求めていたのかも知れない。

―エレンはわがままだね―

全く持ってその通りだ。

ミカサの腕の力が強くなる。
…心拍数が上がってしまう。
頬も熱くなった。


「家族だから触れ合っても問題はない」

「そうだな」

ミカサの熱に上がり続ける心拍数。

―恋って言うのは止められないものじゃないかな―

(ミカサは家族。ミカサは家族。)
そう自分に言い聞かせた。



おわり

―――――――


くぅ~疲れましたw これにて完結です!
実は、絵を描く事に疲れた気分転換が始まりでした
本当は話のネタなかったのですが←
時間を無駄にするわけには行かないので流行りのネタで挑んでみた所存ですw
以下、エレン達のみんなへのメッセジをどぞ

アルミン「みんな、見てくれてありがとう
ちょっと腹黒なところも見えちゃったけど・・・気にしないでね!」

サシャ「いやーありがとうございます!
私の食欲は二十分に伝わりましたか?」

ミカサ「見てくれたのは嬉しいけどちょっと恥ずかしい・・・」

エレン「見てくれありがとな!
正直、作中で言った俺の気持ちは本当だ!」

エルヴィン「・・・ありがとう」ファサ

では、

エレン、ミカサ、アルミン、サシャ、エルヴィン、俺「皆さんありがとうございました!」



エレン、ミカサ、アルミン、サシャ、エルヴィン「って、なんで俺くんが!?
改めまして、ありがとうございました!」

本当の本当に終わり

新幹線が動かなくて今日の予定がすべて消え、怒りの投下。

はじめてで色々緊張したけどおわり。
誤字脱字消し忘れが多かったり場面転換多かったり全部エレンの一人称に統一できなくて申し訳ない。
なんか途中で何書いてるかわからなくなっちゃったよ。
文字考えられる人ってすごいな。
見てくれてありがとうございました。
やる気でたよ!
また見かける事があれば生温かい目で見守ってください!

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