裕子「それでもスプーンは曲がらない」 (14)

――渋谷凛の場合

「プロデューサー……何処に居るんだろう」

 もう一度掛けてみた。が、返ってきたのは事務的な案内だ。それも、この携帯電話自体の問題があるとのこと。

 そんなはずはない。だってほんの二時間前まではしっかりと電話もメールも出来たんだ。おかしくなったのは、
プロデューサーから、『重大なお知らせ』とタイトルが打たれた一斉送信メールが送られてきてから。
それは簡素な避難勧告だった。

 それに書かれた内容に従って、家族と一緒に事務所が用意したらしい特殊施設に来たは良いけれど、プロデューサーの姿が何処にも見えない。
どういうことなのかちゃんと説明して欲しい。

「……解からない事があったらなんでも聞けって、頼れって、言ったじゃん」

 アイドルになり初めの頃にプロデューサーが言った台詞。まさかもう時効になったなんて思ってないよね?
プロデューサーは私に対して責任を取らないといけないんだから……お願い、プロデューサー……
……会いたいよ……。

「凛!」

「凛ちゃん!」

「卯月……加蓮。未央と奈緒も来てたんだ」

「んもーしぶりん探したんだよ!こんなところで何してるのさ!」

「ちょっと……携帯が繋がるところ、探してたら……迷っちゃって……」

「本当に凛は、頼りになりそうでどっか抜けてるなぁ」

「本当だよ、全く……」

「皆心配したんだよ!?ほら、あっち行こう?」

「うん……ねぇ、皆はプロデューサーに会った?」

「いや……。探してるんだけど、全然……広場に来たのもちひろさんで、大人の人たちへの対応に追われて
て、まともにアタシらと話出来ないって感じ」

「……そっか」

「まったく!可愛いアイドルを放って何処ほっつき歩いているんだろうね!?まーた女の子のお尻でも
おっかけてるんじゃないかな!?」

「あながち否定できないな、それ」

「ごめんねPさん……マモレナカッタよ……」

「ふふっ。でも私、きっとプロデューサーさんなら大丈夫だって思うんだ」

「……なんで?」

「なんとなく!だって私達のプロデューサーだもん!」

「流石はうづきん……」

「……うん、卯月らしいね。……ちょっと、元気出たかな」

 ……そうだよ。あの人はプロデューサーなんだ。私達アイドルを陰で支え、先で導いてくれる存在。

 だからきっと、大丈夫。……だよね? ……信じて、良いよね……? プロデューサー――

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――プロデューサーの場合

「……事態は既に手遅れだ」

 上空に出現したオーロラが何よりも如実にそれを語っている。今はまだ精々電波障害で済んでいるが……さて、一体どれだけ持つことだろう。

「三日」

「三日……まぁ。準備は既に完了してはいるが……」

「それまでに、我々は土星付近まで脱出しなけばいけません」

「……おいおい……土星って……泉……冗談だろ?」

「いいえ。間違いありません」

「もっとも泉の計算さえも希望的観測だ。
予想以上に反応が速くてな。いやいや、全く心当たりのない粒子も幾つか検知したよ。……ははっ」

「勘弁してくれよ天才博士。まだ壊れてもらっちゃ困るんだ」

「贖罪はする。しかし、私は限界を誤魔化して命乞いはしない。最早無理だ、私にはどうしようもない。
この事態をどうにかするには、やはり高峰のあの力が必要だ」

 その名前を聞いて俺は深く深く息を吐いた。『あれ』が発生する数日前に失踪した高峰のあ。
あの子と同種のプロジェクトを受け、機関直々に【失敗作】の銘を打たれた同位体の彼女なら、俺たち一般人よりも
この事態に対して有効な抵抗をすることが出来るだろうが……。

「……まったく……のあさん……あんた何処で何しているんだよ……」

 造り物のようで、だというのに自然物の完成のような存在感を醸していた存在……信じているよ、のあさん……
あんたがまだ俺たちの仲間だってこと。あのときあんたが流した涙は、人形の貯水なんかじゃない。
生きた人間の、高峰のあの魂だってことを――

――高峰のあの場合

「何をしようとしている」

「……」

「答えろッ!!」

 思い描くだけ。それが私達。ただ願えば手に入る。幻想を鎖で縛れば現実は生まれ、現実に楔を打てば幻想が現れる。
いつだってそうやって来た。だから、何も難しいことではない。

 ……だというのに。

「……離して」

 いつからか、それは私の使命ではなくなった。それこそが私の源だというのに、いつの間にか命脈は枯渇を起こし、
波の音は消えた。その代わり、彼らが教えてくれた自分の心の音が、聞こえるようになった。

「……何を、一人で背負い込もうとしているんだ」

「……それは違うわ」

「それは君が判断することではない。全てを知った上で、私が決めさせてもらう事だっ……!
さぁ、話せ、のあ……!」

「……ふっ」

 可笑しな人。本当に可笑しな人。初めて会った時もそうだった。彼女は変わらない。状況がどれだけ困難で怪しくとも
必ず自らの信ずる矜持をして活路を創造してきた。……だから、憧れた。

「……」

「……」

「死なせたくないのよ、誰も。私も、護ってみたいの」

「……そうか。だったら私も協力しよう、同じ気持ちだ。皆で力を合わせ、必ず、この陰鬱な悪夢を終わらせ――」

 木場真奈美――ごめんなさい……「さようなら」――































――続かない

頑張ったけど無理でした。はい、無理でした。裕子ちゃんだってスプーン曲げられないんだもん。仕方ねえよ
みくにゃんばっかりだよ曲がるのはさぁ

本当はどっかで
「橘さん!!」
「……」
「橘さんっ――ナズェミテルンディスッ!?橘さん!?」
「……」
「うっ――ボクノコトウラギッティンディスカッ!?」
って言うの挟みたかったどけど無理でした
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