やよい「木更津のみなさーん、一緒にやっさいもっさいを踊りましょー!」 (78)

―――

千葉県木更津市

龍宮城ホテル三日月


……ドサッ

亜美「はぁーー……やっと着いたね~」

伊織「まったく、この売れっ子の伊織ちゃんに、今更電車とバス乗り継げだなんて」

伊織「素直にアクアライン通らせてくれたっていいじゃないの」

亜美「しょーがないじゃーん、はるるん達が朝イチで来るのに車必要だって言うんだもん」

あずさ「うふふ、でもたまにはこんなのもいいわよね~」

伊織「……まぁ、ね」

亜美「景色よかったもんねー」

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律子「……お待たせ、チェックイン済ませたわ」

律子「亜美と伊織、私とあずささんが同じ部屋ね。はい鍵」チャリン

亜美「あいあいさー!」パシッ

伊織「ちょっ、アンタが持ってたらすぐに無くすでしょうが! 私が持つわよ」

亜美「んっふっふ~……さっさと部屋に入って、いおりんは入れないようにしちゃる!」

伊織「何それぇ!?」

律子「はいはい、ふざけるのもそれくらいにして……荷物置いて、明日の打ち合わせしなきゃいけないんだから」

亜美「はぁ~い」

伊織「ほんとにもう……」

律子「……じゃああずささん、私たちの部屋の鍵は……」

律子「…………」

亜美「…………」

伊織「…………」



亜美「……あれ、あずさお姉ちゃん?」

律子「これは…………ひょ……ひょっとして……」

伊織「ハァ……ひょっとしなくてもそうよ……」

亜美「うわぁ……」

律子「あぁ……また……」

律子「またですか、あずささん……」ガックリ

伊織「……ハァ」

伊織「先が思いやられるわぁ……」

律子「……あの人は……本当に…………」ワナワナ

亜美「えーとりっちゃん……これって、アレだよね」

律子「……ええそうよ」

律子「亜美、伊織……探すわよ!」

―――

同時刻・野球場のグラウンド


ぶっさん「しまっていこーぜぇ!」

「「「「おー!!!!」」」」



……俺の名前は「ぶっさん」

木更津に生まれてから21年、ずっと木更津で暮らしてる

いつもはこうやって、仲の良い連中と野球やったり

昼間っからマスターの店で酒飲んだり、バカやったりしてる


……あ、「マスター」って言うのは


マスター「よっしゃ、ホームランホームラン!」


いまバッターボックスに立ってる、あの爆発頭のお調子者

俺たちの高校の先輩のセツコって人と結婚して、今ではもう子供が三人いる

マスターが経営する、海辺の飲み屋『野球狂の詩』が、俺たちの溜り場だ



アニ「しっかり打てよマスター!」

パスン……

「ストライーック!」

マスター「バッ……急に大声出すなよ!」

アニ「なんだよ、お前が打たないのが悪いんだろぉ!?」


この金髪は「アニ」

弟の純は高校生。俺らの母校の野球部で、地元期待の投手として活躍中

なのに兄貴のこいつは高校卒業してからずっと、実家の写真屋も手伝わないでフラフラしてる

そのせいで家族との折り合いが悪いらしい……ま、俺も人のこと言えねーけど

つっても最近は、その純のいる野球部で監督をやってるけどな



バンビ「ところで……ぶっさん、病院はいいの?」

ぶっさん「……うっせーよ、いいから試合に集中しろよ」


……この、お節介焼きが「バンビ」

俺たちの中じゃ唯一の学生。大学生な。で、呉服屋の息子だ

そんで高校時代は俺ら全員、野球部に入ってたんだけど

俺らの学校じゃ珍しく、三年の夏に、県大会の決勝まで勝ち残った

「あと一歩で甲子園」……ってやつだ

そんでバンビは、その原動力となっていたほどの、優秀なピッチャーの腕前を持ってる

卒業後も、俺たちの草野球チーム「木更津キャッツ」のエース的存在

……あ、あと高校の元同級生で、バカで有名な「モー子」と付き合ってる



うっちー「…………」


そうそう、このモヒカンで何考えてるかわかんないのが「うっちー」

あんま喋んないけど、気が付いたらいつも側にいる

で、同級生だけど、実は年齢が俺たちのいっこ上だとか、

父ちゃんがCIAのスパイだとか、

家が船だったりとか、

……とにかく謎が多い

しかも、知らない間にとんでもないトラブル引き起こしてたり、

逆にとんでもないトラブルを解決してたり

いつのまにかバイバイ言わないで帰ってたり

……とにかく謎だらけだ



……俺たち5人は、昼は草野球「木更津キャッツ」のチーム

夜は時として、怪盗グループ「木更津キャッツアイ」になって、

車盗んだり、ダイヤ盗んだり、オルゴール盗んだり、バンドやったり、

でもやっぱり野球したり…………

そんなメチャクチャで、普通の生活を送ってきた



これからする話は、

俺が一度「死んで」から、また生き返って……

木更津に「ロックフェス」がやってくるまでの間に起こった、

……ごくごく普通の、話である




カキーン!

★★★★★★★★★★★★★★★★★★

木更津キャッツアイ 765オールスターズ編

★★★★★★★★★★★★★★★★★★

導入部ここまで

1回表から9回裏まで……あわよくば、延長10回も

全体的な流れだけ決まってるけど、文章はその都度書いてく感じで

もし見てる人がいたらあんまり期待せずに付き合ってください


とりあえず今日の夜に1回表を書き始めます

今夜っていうか深夜に投下になるかも


1回表

―――


マスター「はぁ~あ、疲れた疲れた」

バンビ「嘘つけよ、試合ならすぐ終わったじゃんか」

マスター「ああそうそう、主に俺のホームランとバンビの速球のお陰でな」

アニ「バンビ今日も切れてたぜ。流石は元童貞」

バンビ「それ関係無いよね!?」


ゾロゾロ


バンビ「はぁ……」

バンビ「……ん?」チラッ

アニ「さっさとマスターの店でビール飲もうぜぇ」

ぶっさん「さんせー」

バンビ「…………」ジーッ

うっちー「……?」

うっちー「……!!」

ぶっさん「? なんだバンビとうっちー、何見てんだよ」

バンビ「いや、コレ……」

マスター「何だぁ?」

アニ「ポスター?」


『この町にアイドルがやって来る! 765プロダクション in 木更津』


アニ「アイドル……が、木更津……?」

マスター「明日じゃん、日付」

バンビ「765プロダクション……だってさ」

ぶっさん「知ってんの?」

バンビ「いや、全然」

うっちー「……」

ぶっさん「……? うっちー、どうかしたか?」

うっちー「! あ、あの、俺

猫田「おぉ!? おいおいお前ら、765プロダクションを知らねーとは随分モグリだなぁ!?」

アニ「あれ、監督いたんすか?」

猫田「ずっといたわコノヤロー!」


……このウルサくてちっこいのは、木更津キャッツの監督の「猫田」

アニが監督になるまでは、高校の野球部でも監督だった。俺らん時も


一言で言うなら……ヒジョーにヤなヤツ

ウルサいしみみっちいし、コスくて下品、正真正銘の小悪党だ


猫田「……おい田淵、お前今なんか失礼なこと考えてただろ!? わかるんだよそーゆーの!」

ぶっさん「……それよりも監督、765プロダクションって何なんすか」

猫田「あぁ、765プロダクションな。今グングン勢いを増してるアイドル事務所だよ!」

猫田「事務所一の稼ぎ頭『竜宮小町』って聞けば、モグリのお前達でも知ってるだろぉ!?」

マスター「あぁ、知ってます」

バンビ「そういや……モー子がこの前CD買ってたな、あれが765プロなんですか」

ぶっさん「いや俺知らねーんだけど……え、何、有名なの?」

猫田「……かぁーっ! 田淵ぃ、お前はほんっとーにダメダメだなぁ!」

アニ「ぶっさん、俺でも知ってるぞ」

うっちー「……お、俺も」

ぶっさん「え、何で!? なんで俺の知らないとこで俺の知らないものが流行ってるの!?」

猫田「てめーはそんなんじゃ時代に取り残されちまうぞぉ!? シシシシシ」

猫田「竜宮小町ってのはな、アイドルグループなんだよ」

猫田「双海亜美・水瀬伊織・三浦あずさ、っつー三人組のアイドルだよコノヤロー!」

猫田「中でも俺のイチオシはやっぱり……三浦あずさだよなぁ……」

猫田「溢れ出る大人の色気、年下なのに甘えたくなる優しさ! 何より巨乳!」

猫田「……かぁーっ!! たまんないねーこりゃ」

猫田「でだなぁ、この765プロin木更津ってのは、竜宮含むその事務所のメンバー全員が木更津に来てだなぁ」

猫田「木更津のロケ番組やったり、ライブやったり……」

猫田「とにかく市全体で765プロを味わい尽そうっていう超画期的な……


シーーーーン……


猫田「いねぇー!? あいつらいねぇー!!」

猫田「なに人が喋ってるときに勝手に帰ってるんだよコラァー!!」

―――

「野球狂の詩」(マスターの店)


マスター「……で、どうする?」

アニ「ビール」

マスター「そっちじゃねーよ! アイドルのことだよ!」

バンビ「どうするって……何が?」

マスター「いやさ、これ使って何か一儲けできないかなーって」ピラッ

ぶっさん「持ってきたんだ張り紙……」

うっちー「…………」モグモグ

バンビ「一儲け……サイン貰って売ったりとか?」

マスター「そうそう、そう言うの!」

ぶっさん「でもアイドルのサインったって1万円すりゃ良いくらいだろ?」

バンビ「いや、相場は俺もわかんないけど……まああんま高くはないかも」

アニ「……じゃあさ、作っちゃえば?」

ぶっさん「何を?」

アニ「サイン」

マスター「どうやって?」

アニ「何とかこう……その竜宮小町のサインを真似てさ、大量に偽造すりゃいいんじゃね?」

アニ「そしたらたくさん売れるから、元が安くてもガッポガッポじゃね?」

ぶっさん「…………なるほど……」

マスター「サイン偽造大作戦、ってとこか」

バンビ「でも……その竜宮のサインって誰か見たことあるの?」

アニ「え?」

マスター「……」

アニ「……」

バンビ「……」

ぶっさん「俺を見んなよ。俺はそもそも竜宮なんとかを知らないの」

うっちー「……」モグモグ

バンビ「……ダメじゃん」

アニ「じゃあ何すりゃいいんだよ」

バンビ「そう言われても……」

ぶっさん「…………」

マスター「……こういうのどう? 『765焼き』っていうの屋台で売って

ぶっさん「盗めば?」

バンビ「え?」

アニ「ぶっさん?」

ぶっさん「俺らさ、夜は怪盗チーム『木更津キャッツアイ』なわけじゃん?」

ぶっさん「だったらやること一つだろ……アイドルのお宝を、盗めばいいんだよ」

アニ「盗むって……な、何盗む!?」

ぶっさん「……」

ぶっさん「…………衣装、とか?」

マスター「で、それ盗んで?」

ぶっさん「……」

ぶっさん「マニアに……売りつける?」

アニ「い、いくらくらいするもんなの?」

ぶっさん「……バンビ、いくらくらい?」

バンビ「いや俺かよ」

バンビ「えぇ~? 俺も詳しくはねーけど……えっと、お宝鑑定とかで見たのは……」

バンビ「昔の人気アイドルの衣装が、50万100万くらい行ってたり」

マスター「ま、マジでかぁ~!?」

アニ「いいじゃん、それいいじゃん!」

ぶっさん「……だろ?」ニカッ

ぶっさん「つーか……下着ってのもアリだよな。衣装とかじゃなくてさぁ」

マスター「おおアイドルの下着! なんて危険な響き!」

アニ「清原のパンツなんかよりもぜってー売れるだろうな、人気アイドルの下着」

うっちー「……!」コクコク

ぶっさん「……じゃメインは衣装で。もしイケたら下着も頂戴しちゃおうぜってことで」

マスター「じゃあ誰の衣装盗むよ。竜宮は確定として」

ぶっさん「他に有名なヤツいるの? 俺はそもそも誰も知らねーんだけど」

アニ「えーっと……俺が見たことあるのは……星井美希、とか」

ぶっさん「どんなん?」

アニ「金髪でバカっぽかった」

マスター「それお前じゃん」

アニ「うるせーよ! じゃあ俺もアイドルなれるんだな、そうなんだな!?」

ぶっさん「ふーん星井美希ねえ……」

バンビ「俺が知ってるのは如月千早くらいかなぁ。なんか歌が上手かった」

ぶっさん「歌ねぇ……」

うっちー「…………」

ぶっさん「他には知らねーの?」

うっちー「! あ、おれ

マスター「うーん……俺もアイドルとかあんま詳しくねーからな」

アニ「俺だってその星井ってヤツ、たまたまテレビで見たくらいだな」

アニ「竜宮小町は有名だけど……他はそんな売れっ子ってわけじゃねーみてーだし」

ぶっさん「……じゃまあ、メインは竜宮、他はオマケってことで」

うっちー「…………」

ぶっさん「? うっちーどうかした?」

うっちー「……! あ、あの、おれ

バンビ「ていうかどうやって盗む気なの?」

ぶっさん「え?」クルッ

バンビ「いや、だって盗むにはその娘らに近づかなきゃじゃん?」

ぶっさん「……」ニヤリ

ぶっさん「そんなの……簡単だろ」

ここまで。
キャッツアイメンバーの掛け合いばっかりでアイドル全然出てこないワロタ
少ししたらガンガン出てくる予定なので待ってて

前にIWGPとのクロス書いてた人?

>>31
そう、書いてた
IWGPと違って、キャッツアイの場合「裏」を考えないといけないんで
複線やら構成やらで時間かかるのは許して欲しい……


ピラッ

マスター「俺が持ってきたポスター?」

ぶっさん「これ、ここの部分見てみろよ」


『アイドルたちが歌にロケに大活躍! ミスター木更津と一緒に、木更津名物やっさいもっさいも踊ってくれる!』


バンビ「!?」ゾクッ

アニ「……で?」

ぶっさん「よく見ろよ、ミスター木更津と一緒にやっさいもっさい踊るって書いてあるだろ!」

バンビ「な、なんだよこれ……こんなの聞いてねーよ!?」

ぶっさん「『ミスター木更津』と言ったらそうバンビ! お前だ!」

マスター「あ、そういやそうだったな。……よっ、ミスター木更津!」

バンビ「……嘘だろ…………」

ぶっさん「つーまーり、お前は明日、絶対にアイドルと接触する!」

ぶっさん「この状況を利用しない手はどこにもねーってわけだ!」

アニ「おぉーなるほどぉー!!」

バンビ「か……勘弁してくれよぉ…………」

バンビ「え、じゃあ何、俺が盗むの? 俺がアイドルの衣装とか、下手したらパンツとか盗まなきゃいけないの?」

ぶっさん「いやいや落ち着けって」

ぶっさん「バンビにはアイドルと仲良くやっさいもっさい踊ってもらってさ……」

ぶっさん「その隙に俺たちがバンビの付き人っつーことで楽屋とか侵入して、上手いこと盗み出してやるんだよ」

マスター「聞いたら踊りだしちゃうから、俺ら全員耳栓つけてた方がいいな」

ぶっさん「おう。そんでバンビは、アイドルとか警備員とかの目を惹きつけてくれればそれで良し!」

ぶっさん「それなら文句ねーだろ?」

バンビ「なんだよそれ、もぉ~……」

アニ「……でもさ、何か結構……上手く行きそうじゃね?」

マスター「ぶっさんのアイデア行けそうだよな」

ぶっさん「だろ? ……俺ってば作詞家かもな」ニヤリ

バンビ「策士な」

ぶっさん「おう」

うっちー「…………」


―――

木更津市・市内


どうも、765プロのプロデューサー、秋月律子です

うちに所属するもう一人プロデューサーが企画した、木更津市でのライブ・番組企画

最初はそんな大掛かりなことが出来るのか、と不安で一杯でしたが……

木更津市の全面協力の下、こうやって形になる所まで漕ぎ着けました

というか後から聞いた話ですがこの企画、

プロデューサーが一人で考えた訳ではなかったのです


……というのも、現市長さんが街の活気作りのために、と

私のプロデュースする人気アイドルグループ「竜宮小町」を、

この街に呼ぼうとしたのがその切っ掛けだったのだとか


そこから、プロデューサーが他のメンバーを売り込むチャンスだ、と息巻き……

竜宮の知名度と「事務所全員参加」というスケールを売りに、この企画を立ち上げた、と



その後正式に企画が通り、そして明日、遂にイベントが始まります

この企画のメインはどうしても知名度のある竜宮に任せる形になってしまうため、

やることの多い私達が前の日……つまり今日のうちに木更津へ来て、

打ち合わせや諸々の準備をすることになったわけですね


……まあ、明日の朝一や昼過ぎにそれぞれ来るメンバーもいますが、

他にも何人かは、同じように前乗りで来ることにはなってました

ただ、これだけ早く着いたのは、私たちだけでしたけど


そして打ち合わせを終えて、後から来たメンバーたちと合流して

みんなで話し合いながら、明日を迎える

……それだけのことでした



律子「それだけのことだったはずなのに…………」

律子「……はぁ~……」

律子「あずささん……何してくれてるんですかもう……」


prrrrrrrr、prrrrrrrrr

ピッ


律子「はい」

伊織『もしもし律子、ホテル周辺見て回ってるけど、今のところ見当たらないわ』

亜美『うん、全然見つかんないよぉー!』

伊織『ちょ……私が話してるんだからムリヤリ入ってこないで!』

律子「あーもー落ち着いて……とにかく、まだ見つかってないのね?」

伊織『ええ』

律子「そう……じゃあホテル周辺はいいから、そのまま海岸線に沿って、探してみてちょうだい」

律子「こっちは街中を中心にこのまま探してみるから」

伊織『わかったわ』

亜美『おっけー』

律子「ある程度まで行って見つからなかったら、ホテルに戻ってもらってもいいわ」

伊織『……大丈夫かしら』

律子「もうそうなったら、あずささんを信じるしかないし」

伊織『まあ、それもそうね。……ほんとあずさってば……』



……ホテルに着いた途端に、事務所一方向音痴のあずささんが行方不明になった

あずささんがフラッとどこかへ行ってしまっては、いつも探す羽目になるのです

探すのは私たちの役目だと言うのに……


律子「ハァ……見つかったら、早速お説教ね」

伊織『期待してるわよ、にひひっ』


あぁ、あずささん。いつもいつも、最終的には戻ってきてくれるのは知っています

でも明日の打ち合わせもまだなんですよ? 結構大きなイベントなんですよ?

お願いだから……さっさと帰ってきてください

心の中で泣き言をいいながら、電話を切った私は大きくため息をついた

短いけどここまでね
ちびちび書いてきます


―――

「野球狂の詩」


アニ「あれ、ぶっさんもう帰るの?」

ぶっさん「ああ、バンビに言われたからな」

バンビ「何か言ったっけ?」

ぶっさん「おい……オメーが言い出してきたんじゃねか……」

ぶっさん「オメーが病院はいいのか、って聞いてきて、思い出したから行ってくんの」

うっちー「……!」

バンビ「あ……あ、あぁ……そっか」

アニ「あ、病院か……」

マスター「……」

ぶっさん「…………何だよ、今更そういう感じになることでもねーだろ」

マスター「ま、そ、そりゃそうか……」

アニ「……そ、そーだよなぁ……あはは、は……」

バンビ「…………悪ぃ」

ぶっさん「……んだよ。……じゃーな」


ガチャ

バタン


マスター「……」

バンビ「……」

アニ「フゥ……しょーがねえよ。どうしても意識しちゃうじゃん」

バンビ「ん……まぁ、な……」

アニ「まー大丈夫だろ、ぶっさんのことだしさっ」

アニ「死にかけたって、またコロッと生き返るだろ、なっ!」

マスター「そ……そーそー」

バンビ「ん、まあ……」

マスター「……」

マスター「……あれ、うっちーは?」

アニ「え?」

バンビ「あれ、いない?」

マスター「んだよ。またバイバイ言わないで帰ったのかよ」

アニ「……つーか明日かぁ」

バンビ「何が?」

アニ「だからアイドル来るの」

バンビ「ああ」

マスター「俺ら会ったことある有名人って、哀川翔さんと氣志團くらいだもんな」

バンビ「あと加藤鷹」

マスター「あったなー、そういえばそんなこと」

アニ「アイドルとか見るの初めてなんだけど。どんだけ可愛けりゃアイドルなれるんだよっつー話だよな」

バンビ「……どうなんだろうなぁ」


………


マスター「……よっし、今日はもう解散か」

アニ「ちょっと早いけどまー、いいだろ」

バンビ「明日色々やるんだろ、朝集まるようにした方がよくない?」

マスター「あ、そうか。わかった」

マスター「あとぶっさんにも連絡しとくわ」

バンビ「そーしといて」

アニ「……うっちーはどうすんの? 連絡は?」

マスター「……まあ来るだろ」

バンビ「……まあ来るかな」

アニ「……だな」



―――

「野球狂の詩」外


マスター「じゃーなー、また明日」


バタン


アニ「うあー……眠いぃ」

バンビ「明日早いんだからさっさと寝ろよ」

アニ「わーってるよ」

アニ「……あ、うっちーだ」

バンビ「え? ……あ、本当だ。ちょうどいいや」

バンビ「うっちー!」

うっちー「!?」ビクッ

バンビ「明日朝早くにここ集合なー!」

うっちー「!? ……わ、わか……わかった……!」

アニ「聞いてんのかぁ、うっちー!?」

うっちー「わ、わかった、わかったから!」

ダッ

バンビ「……なんで逃げるんだよ」

アニ「別に尾行したりしねーのにな、今更」

バンビ「まぁ……うっちーだしな」

アニ「まあうっちーだからな」



―――

夜・木更津市内


prrrrrrr、prrrrrrrr


律子「あぁもう次から次へと……」

ピッ

律子「もしもし」

律子「……」

律子「……! そ、それ本当!?」

律子「……うん、うん……あぁ海岸で……」

律子「……」

律子「……ハァ……ともかくよかったー……」

律子「じゃあ二人とも絶対に手を離さないでね、そのまま連れて帰ってきて」

律子「……え?」

律子「……」

律子「はぁ、なるほど……」

律子「……まあ大丈夫よ、騒ぎにはなってないんでしょ?」

律子「……」

律子「……うん、なら気にしなくていいわ、そのくらいなら」

律子「じゃあとにかく……すぐ帰ってきて」

律子「ええ、両方とも……しっかりやるつもりよ、ふふふふふ」

律子「……」ピッ

律子「…………はぁ~~~~」

律子「よかったー……」



―――

翌日早朝・「野球狂の詩」


よう、俺は佐々木兆

みんなからは……あんま認めたくねーけど、「アニ」って呼ばれてる

なんで弟の純があだ名の基準なんだよ、俺を基準にしろっつーの!


……まあ今はそれは置いといて、

今日はアイドルが木更津にやって来る

昨日計画を立てた「アイドルの衣装戴き大作戦」を実行に移す日なわけだ


つーことで、俺らが泥棒ん時のトレードマーク

「木更津キャッツアイ」の刺繍が入ったユニフォームを着て、

マスターの店に集合しにきたってわけ


ガチャ


アニ「うっすおはよ」

バンビ「……」ムスッ

マスター「よ、よぉ……」

アニ「……え、何、どうしたの?」

マスター「いや、あの……俺もよくわかんないっつーか……」


店の中……つーか、バンビが変だった

何かムスっとして、顔にアザ作ってる


昨日はぶっさんが帰った後、少し飲んでから俺たちも解散した

家に帰って純に何か言われた気もするけど、

眠かったのとアルコールでよく覚えてねえ


とりあえず俺はそんな感じだった

つーかバンビも気になるけど……


アニ「……うっちーとぶっさんは?」

マスター「まだ来てない。ぶっさんには昨日連絡したんだけどな」

アニ「なんだよー……ていうかバンビそのアザどうしたんだよ」

バンビ「…………何でもないよ」

アニ「いや何でもないことねーだろ」

マスター「モー子と喧嘩したらしいよ」

バンビ「!?」

アニ「あ、そうなの?」

バンビ「いや、あの……な、なんでマスターが知ってんの!?」

マスター「セツコ先輩が、昨日買い物行ったときに見たって」

マスター「モー子が『浮気だー!』っつってバンビのこと殴ってんの」

アニ「あー何だそんなことか……」

バンビ「そ、そんなことじゃねえよ、俺にとっては一大事だったの! ていうか誤解だから、浮気も」

マスター「誤解って何が?」

バンビ「いや、だからぁ……


ガチャ


とドアが開いて、うっちーが中に入ってきた

なんかえらく興奮してる



うっちー「み、みん……みん……」

マスター「遅ぇようっちー! アイドル来る前に作戦の最終確認しなきゃなのに」

うっちー「み、みん……!」

アニ「あ? 何どうしたって?」

うっちー「み……みんな……コレ!」


バッ


と、うっちーが、色紙を上に掲げた

よく見ると文字が書いてある

俺たちは、それを見にうっちーの近くに集まる


アニ「何コレ?」

マスター「誰かのサインか?」

バンビ「誰の?」

うっちー「りゅ……りゅーぐー」

アニ「え?」

うっちー「りゅーぐーこまちの……サイン」


マスター「……」

バンビ「……」

アニ「……」

うっちー「……へへ」ニカッ


「「「マジでぇー!!??」」」


うっちーが何故、竜宮小町のサインを持っているのか

話は昨日、俺たちが野球狂の詩を後にしたところまで、まき戻る

次回から「1回裏」になります

深夜に書くかも


―――

1回裏


アニ「……あ、うっちーだ」

バンビ「え? ……あ、本当だ。ちょうどいいや」

バンビ「……うっちー!」

うっちー「!?」ビクッ

バンビ「明日朝早くにここ集合なー!」

うっちー「!?……わ、わか……わかった……!」

アニ「聞いてんのかぁ、うっちー!?」

うっちー「わ、わかった、わかったから!」


ダッ

タッタッタ……


うっちー「……ハァ、ハァ……」

うっちー「え、と……」

うっちー「……! ……い、いた……」


タッタッタ……


―――

「野球狂の詩」近くの海岸


あずさ「……」

テクテクテクテク

あずさ「えぇと……ホテルはどこかしら~……」

テクテクテクテク


みなさんこんにちは、私の名前は三浦あずさと言います

「竜宮小町」というグループでアイドルをさせていただいています

最初は大変だったアイドル活動も、最近は人気がだんだんと出始めて、

明日の木更津でのイベントでも、ライブのメインをさせていただいたり

人気が出てきたがために、961プロや悪徳記者さんの標的にされそうになったり

……あ、今はそういう話をする時じゃありませんでしたね

というのも実は、困ったことに……

私いま、道に迷っているみたいなんです


あずさ「……はぁ……」

あずさ「……どうしていつもこうなっちゃうのかしら……」


いえ……自分が悪いのはわかっているんです

海がとても綺麗だから、ちょっと外に見に行こうとした……

ら、こうなってしまってたんです

ちゃんとみんなを連れて行くべきでしたよね

……え、そういう問題でもないって?



でもよくなかったのは、その後の行動だったのかもしれません

迷ったとしても、海岸に沿って歩けばホテルに戻れる……そう信じて海岸を歩いていたら、

何時の間にかアクアラインの近くまで来てしまったんです

ホテル三日月は逆方向なんですが……本当に私、どうしてこうなってしまうんでしょうか


携帯や荷物をロビーに置きっぱなしで来てしまったから、

律子さんたちと連絡を取ることもできません

ああ……運よくみんなに会えたとしても、お説教は免れないでしょう

今度迷うときは、いついかなる時も携帯だけは手放さないようにしないと……


あずさ「あらぁ、困りましたね……暗くなってきちゃいました……」


着いたのがお昼ごろでしたから、数時間は木更津の海岸をウロウロしていることになります

……そんなにウロウロしてたら、私が道に迷ってるのを見られてるんじゃないかって?

いえいえ、ちゃあんと「売れっ子・竜宮小町」の自覚はありますから、

私だってバレないように、ホテルに着く前から変装はしていました

地元の人に道を教えてもらった時も、私だとは気付かれていませんでしたしね

……気付かれてたら今頃騒ぎになって、

律子さんのお説教の時間が増えていたことでしょうけど……



だから今の私は、ただの「道に迷った人」

確かにどの道迷っているんですから、人に見られたら恥ずかしいですけど……

竜宮の三浦あずさだとバレていないなら、それで良い様な気がするんです


「ちょっとあずさぁ!」


……と思ったのも束の間、早速バレてしまいました

ふふ、なぁんてね。この声は……


あずさ「伊織ちゃん!」

伊織「やっと見つけた……さっさとホテルに戻るわよ!」

亜美「うあー……こんなとこまで来てたんかいあずさおねーちゃん……」

あずさ「あ、亜美ちゃんも……ごめんなさい、私ってば……」

伊織「はいはい、言い訳とか謝罪は帰ってからゆーっくり聞くから」

あずさ「そ、そうね~……」


何はともあれ、これで一安心ですね

律子さんからのお説教が怖いですけど……


―――

伊織「……」

伊織「…………」

亜美「?」

あずさ「……伊織ちゃん……どうかしたの?」

伊織「……二人とも、歩きながらでいいから、落ち着いて聞いて頂戴」

亜美「何が?」

伊織「私たち……つけられてるみたい」

亜美「うぇ!?」

伊織「静かに!」

あずさ「そ、それ……本当なの、伊織ちゃん?」

伊織「ええ……あずさを見つけた時から、誰かに見られてるような感覚があったんだけど……」

伊織「今もそれが続いてるわ。間違いなく尾行されてるわね」

亜美「どど、どーしよう……」

あずさ「ひょ、ひょっとして……迷ってた私を見つけた人が、そのまま……!」

あずさ「どうしましょう……亜美ちゃんと伊織ちゃんも巻き込んじゃうなんて……」

伊織「今更そんなこと言ってもしょうがないじゃない」

伊織「とりあえず……律子に電話ね」


prrrrrrr、prrrrrr、prrrrrrr


亜美「で、出ないね……」

伊織「まったくもぉ……あずさが見つかった連絡すら出来ないじゃないの」

あずさ「……」

あずさ(これ以上、二人にまで迷惑をかけるわけには……)

あずさ「…………」グッ


クルッ


あずさ「す、すす、すみませんが!」

伊織「!?」

亜美「!?」

あずさ「あ、あの……私たちのことをつけて来ている方……出てきてくれませんか?」

伊織「ちょっ……な、何考えてるのよ!」

あずさ「……お、お願いします!……隠れるのはやめてくれませんか!?」

亜美「あ、あずさお姉ちゃん……!」

あずさ「……!」

伊織「!?」

亜美「だ、誰……?」


ヒョコッ


うっちー「……ど、どうも…………」


伊織「……」

亜美「……」

あずさ「こ、こちらこそどうも……」

亜美(……あんまり怖そうな人じゃないみたいだね)

伊織(甘いわよ。ああいうタイプの方が、何してくるかわかんない分危ないのよ)

亜美(うえぇぇ!? そ、それじゃあダメじゃん!)


うっちー「あ、あの……その……」


亜美(ち、近づいてきてるよぉ……!)

伊織(落ち着きなさい! ……いざとなったら、一目散に逃げるのよ)

あずさ「…………」


うっちー「…………」

あずさ「……な、何でしょう」

うっちー「あの……」

伊織「……」

亜美「……」


バッ


うっちー「サインください!」


―――


prrrrrrr、prrrrrrrr

ピッ


律子『もしもし』

伊織「あ、やっと繋がったわ……律子、あずさ見つかったわよ!」

律子『そ、それ本当!?』

伊織「ええ、律子の指示で間違ってなかったみたいね」

伊織「アクアライン近くの海岸でウロウロしてたわ」

律子『あぁ海岸で……』

伊織「こんな時間になっちゃったけど……無事に保護って所かしらね」

律子『……ハァ……ともかくよかったー……』

律子『じゃあ二人とも絶対に手を離さないでね、そのまま連れて帰ってきて』

伊織「はいはい」

伊織「……あ、それはいいんだけど……ちょっとしたトラブル…みたいなものがあったわ」

律子『……え?』

伊織「ファンの人に見つかっちゃって、さっきサインをお願いされたの」

律子『はぁ、なるほど……』

伊織「律子に確認しようとしたけど電話に出なかったから……」

伊織「サインあげちゃったけど大丈夫だったかしら?」

律子『……まあ大丈夫よ、騒ぎにはなってないんでしょ?』

伊織「そうね。最初は後つけられてたけど、サインあげたら素直に帰ってくれたわ」

律子『……うん、なら気にしなくていいわ、そのくらいなら』

律子『じゃあとにかく……すぐ帰ってきて』

伊織「了解よ」

伊織「打ち合わせと…あとあずさへのお説教の準備お願いね」

あずさ「い、伊織ちゃぁん……」

伊織「にひひっ! それくらいの罰は当然でしょぉ?」

律子『ええ、両方とも……しっかりやるつもりよ、ふふふふふ』

あずさ「ううぅ……す、すいませんでした律子さん……」

伊織「……もう電話切ったわよ」


―――

海岸・うっちーの自宅(船)近く


うっちー「……ハァ……ハァ……」


ダッダッダッダッダッ


うっちー「りゅ、りゅーぐーのサイン……貰ったぁーーー!」


ダッダッダッダッダッ


うっちー「ゼェ……ゼェ……ちょ、ちょっと休憩……」ペタン

うっちー「……」

うっちー「…………」


………


うっちー「zzz……zzz……」

うっちー「……!」ハッ

うっちー「も、もう朝……!」

うっちー「!!」

うっちー「サイン……サイン……!!」アタフタ

うっちー「……?」

うっちー「……服の中に……入ってた……」

うっちー「……ホッ」

うっちー「……」

うっちー「……!」

うっちー「み、みんなに見せなきゃ!」ダッ


―――

「野球狂の詩」


ガチャ


うっちー「み、みん……みん……」

マスター「遅ぇようっちー!アイドル来る前に作戦の最終確認しなきゃなのに」

うっちー「み、みん……!」

アニ「あ?何どうしたって?」

うっちー「み……みんな……コレ!」


バッ


アニ「何コレ?」

マスター「誰かのサインか?」

バンビ「誰の?」

うっちー「りゅ……りゅーぐー」

アニ「え?」

うっちー「りゅーぐーこまちの……サイン」


マスター「……」

バンビ「……」

アニ「……」

うっちー「……へへ」ニカッ


「「「マジでぇー!!??」」」

2回表に続く

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