魔王「迫るー勇者!」(19)

魔王城

「その通り、明日にも勇者が攻めてくるそうです。ですから呑気に歌など…」

魔王「異色の集団」

「確かに異色って報告があったな、なあ側近?」

側近「ああ、斥候が息絶えたからそれ以上は聞けなかったが…」

「我らを狙うグロいハゲ」

側近「親衛隊長!貴様まで歌うな…!」

魔王「魔界の平和を守るため」

側近「陛下…!」

魔王・親衛隊長「「GO!GO!Let's go!」」

親衛隊長「輝く肉体(ボディ)」

側近「いい加減にしろ!!」

魔王「そう大声を出すな…続きを忘れてしまっただろう」

側近「もう歌は結構です緊張感に欠けますので!」

親衛隊長「固いこと言うなよ側近、あんま小難しく考えてばっかだとハゲるぜ?」

側近「陛下を守護する貴様は、本来私以上に重く考えるべきだろうが!」

親衛隊長「とは言っても、実際心配いらねえんじゃねえか?実績的に」

魔王「そうだ、過去にこの居城へと辿り着いた勇者が6組、その半数が門前払い」

親衛隊長「残る半分も、陛下が手出しするまでもなく俺らで潰した。今回もそんなもんだろどうせ」

側近「しかし…!」

魔王「それほどまでに心配ならば、なおのことだ…今日はゆっくりと休み英気を養え」

親衛隊長「おうよ!明日の決戦(笑)のためにな!」

側近「陛下…お気遣い感謝します、それでは失礼します」

翌日

「報告!東北東に生命体を確認!勇者一行を思われます!」

側近「分かった、ご苦労。至急、門番に知らせた後、退路を確保、戦線離脱準備をせよ」

「は!失礼します!」

親衛隊長「きやがったな、性懲りもなく」

魔王「うろたえることはない…平時と変わらぬ心持で待とうではないか、久方ぶりの暇つぶしを」

側近「ふ…では座して待つとしましょう、侵入者の訪れを」

親衛隊長「おう!」

魔王「表が騒がしいな、そろそろか…」

「っしゃあ!俺が一番乗りだぜ!」

親衛隊長「何だ?お前が勇者か?」

「俺は戦士!最強王、戦士様だ!!」

「戦士さ〜ん、待って下さいよ〜」

戦士「ちっ!もう追いついてきやがったか!だが魔王討伐の手柄は譲れないぜ!食らえ!!」

側近「させるか!空砲!」

戦士「うお!って何でこんな位置に窓が!?おわあーーー……」

魔王「…何だったんだあの男は…」

「あれ、このパーティーの切り込み隊長です、俗に言う鉄砲玉」

親衛隊長「…そういうお前は?」

「あ、はい、このパーティーの名目上のリーダー、勇者です、どうも」

魔王「これが!?」

勇者「あ、ひでえ!」

親衛隊長「敵にまで謙る勇者なんざ初めて見たぜ」

魔王「異色とはこういうことか…」

側近「しかし、排除すべき敵には変わりありません」

魔王「そうだ、行くぞ」

「私たちを忘れてもらっては困ります!」

側近「貴様ら、勇者の同行者たちか…」

「俺らなんざ視界にも入らねえか、どうせ俺なんて…」

「その通り!東の破戒僧!僧侶です!!」

親衛隊長「破戒僧?んで、お前は?」

「魔法使い…三十路の童貞だ…笑え、笑えよ…」

親衛隊長「な〜る、揃いも揃ってこれじゃ異色って言われる訳だわ」

勇者「俺も漏れなく色物枠!?」

魔王「ふ、ちょうど良い、側近は魔法使いを、親衛隊長は僧侶を相手せよ」

魔法使い「お前、今俺を笑ったか…?あ?」

側近「陛下の邪魔はさせん。貴様の相手はこの私だ」

親衛隊長「俺はお前担当らしいぜ、女相手じゃ役不足だが我慢してやるよ」

僧侶「うふふ、ゴーレムさんか、彫刻刀の振るい甲斐があります〜」

勇者「んー、そいで俺とあなたで大将戦ですか」

魔王「そういうことだ、さあ、かかって来るが良い」

勇者「…ええっと…」

魔王「来ないのか?…ならば、こちらから行くぞ!」

勇者「横巴」

魔王「おぐ!?」

側近「陛下!?」

魔法使い「俺と一緒に地獄に落ちよう」

側近「邪魔をするな…!ぐう!」

勇者「からの送り襟締め」

魔王「んぬー!ん!んお!…お…」

勇者「やべ、一旦離さないと落ちるなこれ」

魔王「かはっ!ひゅー、ひゅ、ごふげふ!」

魔王(な、何だあの投げ技は!?くそ!今度は全力で引き千切ってくれるわ!)

勇者「締め技慣れてなかったんですか?すんません加減忘れ…て!っと、危ない危ない」

魔王「くらえ!」

勇者「払い巻き込み」

魔王「がふ!」

親衛隊長「何かやべえぞ!陛下が押されてんぞ!」

僧侶「余所見をしてる間にまた彫り物が増えましたよ」

親衛隊長「また削られただと!?ん?B…L…?」

勇者「からの腕絡み」

魔王「ぐおおお!腕が!折れる折れる折れる折れる!!」

勇者「やべ!そんな暴れたらすぐ折れちゃうじゃないですか!」

魔王(またも向こうの意思で解放されたか!屈辱的な!)

勇者「あの、関節極められてる時は下手な暴れ方しない方がいいですよ?」

魔王(だが上体を崩せば投げられる!今度は足を払った後同じ目に遭わせてくれよう!)

魔王「死ね勇者あああ!!何!?かわされ…!」

勇者「燕返し」

魔王「のわ!」

側近「陛下!ええい!どけ童貞が!」

親衛隊長「陛下!くっそ、こいつらが邪魔で助けに行けねえ!!」

魔法使い「お前はいいよな…俺なんか…涙もとっくに枯れ果てた」

僧侶「うふふ、ここでは側近×魔王が展開されてるんですか!?それとも親衛隊長×魔王ですか!?」

勇者「からの脇固め」

魔王「ぐあああ!!」

側近・親衛隊長「「陛下!!」」

僧侶「意外と側近×親衛隊長!?」

親衛隊長「てっめえ!陛下を離しやがれ!!」

勇者「離したいのは山々なんですが、こちらとしては魔王さんと個人的に話したいんですよ」

魔王「み、認める!話を聞いてやる!だから腕を離せええ!!」

勇者「はい」

魔王「ぐう…」

側近・親衛隊長「「陛下!!」」

僧侶「勇者さんって今まであんまり戦ってませんでしたけど、強いんですね!」

勇者「取ってて良かった武道選択。やってて良かった部活の冷やかし」

魔法使い「俺が地獄で見てきた奴らにも、こんな武道は見なかったがな…」

続き

はよ

魔王「異世界へ渡る術を教えろだと?」

勇者「はい、異世界、地球の日本、できれば埼玉県川越市に帰してもらいたくて」

側近「どういうことだ、さっぱり事態が飲み込めん…」

勇者「俺、元々この世界の人間じゃないんですよ、勝手に召喚されて勇者を強要されただけなんですよ」

親衛隊長「ますます分かんねえぜ…おい、誰か詳しく説明してくれ」

魔法使い「片っ端から勇者を潰され、俺たち人間は地獄に落ち…」

僧侶「今まで12人現れたこの世界の勇者が全滅したんで、今度は違う世界から勇者を選ぶことになって、この人が召喚されました」

側近「なるほど…して、召喚した術者は、帰還の術を知らなかったということか」

親衛隊長「簡潔だが、漸く概要が分かったぜ!召喚術も魔術の内、魔術のことなら陛下が一番知ってるだろうってことか」

魔法使い「…闇の住人が光を求めるなんざ、やはり間違ってたんだ…」

勇者「いじけないで下さいよ」

魔王「結論から言おう。余には不可能だ」

勇者「何で!?俺帰れないんですか!?」

魔王「帰れないとまでは言っておらん、話しは最後まで聞け」

側近「そもそも召喚術と帰還のための術では発想が異なるのだ」

僧侶「と言うと?」

魔王「繋げる世界も呼ぶ相手も適当でも発動するのが召喚術、対して帰還の場合、対象者を己と限定し、行き先も限定せねばならん」

勇者「今起こったことをありのままに話すぜ…帰る方法を聞いたら魔術の原理を解説された…何を言ってるのか…」

側近「真面目に聞く気がないなら早々に立ち去れ」

勇者「すんません、でもさっきの説明じゃちんぷんかんぷんで…」

側近「…他者に意思を伝えるとき、かわら版を使うか、戸別訪問をするかの違いのようなものだ」

魔法使い「かわら版は誰に読まれるか分からんが、こちらが知らない不特定の相手に書いた内容を伝えることができる」

魔王「対して、戸別訪問は相手の家を知っている必要があり、また、訪問相手にのみ、こちらの意思を伝える形式になる」

勇者「つまり、帰還するには帰還する場所を知ってる奴が術を使うしかない…ってことですか?」

魔王「そうだ。お前の世界を知るのはお前だけ、なればお前が習得する他、お前が帰る術はない」

勇者「終わった…俺魔法からっきしなのに、てか、地球人が魔法使える訳ないだろ…」

魔王「そう悲観せずとも余が直々に教えてやる。必ず習得できるだろう」

勇者「マジですか!?ありがとうございます!!」

僧侶「妙に協力的になりましたね〜」

魔王「もうこいつと戦うなど御免被る…自らこの世界を去ろうと言うならそれに越したことはない」

親衛隊長「既にトラウマかよ…」

側近「しかしお前達こそいいのか?勇者一行が魔王の、陛下の世話になるなど」

魔王「貴様!寝た子を起こすようなことを…!!」

勇者「帰れるんなら別に何でもいいです、ぶっちゃけこの世界どうなっても俺知らないし!」

僧侶「私を破門した教会に尽くす義理はありませんし、薄い本が書ければどこでも構いません」

魔法使い「お前ら、俺の弟になれ」

親衛隊長「何の問題もなさそうだな!安心したぜ!」

「ぱんぱかぱーん!」

勇者・魔王「「ん?」」

「ぱんぱんぱんぱんぱかぱーーん!!」

側近・僧侶「「窓から?」」

「よっと!まだ魔王は倒されてねえみてえだな!」

魔法使い・親衛隊長「「戦士か…」」

戦士「お前ら、よくも窓から突き落としてくれたな!100倍にして返してやるぜ!!」

親衛隊長「させるか…!」

戦士「遅いぜ!」

側近「空砲…!」

戦士「同じ手を食うか…!」

勇者「巴投げ」

戦士「おあ!てめえ何を…!」

勇者「からの片羽締め」

戦士「てめ…!この…うぐ…」

魔法使い「初めて戦士に勝てたな…」

僧侶「ドジ踏まなきゃ戦士さんが一番強いですからね、この中では」

親衛隊長「マジかよ…」

勇者「邪魔者も落としましたし、早速帰還のための術を教えて下さい!」

側近「陛下、ここは…」

魔王「分かっておる!すぐにでも教えてやろう!」

勇者「やったあ!!」

魔王「迅速に習得し、戦士を連れてお前の世界へ行くが良い!!」

勇者「はいもちろ…!ファ!?」

おわり

王道?だな 乙

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